(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】脂質様ナノ複合体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07C 229/06 20060101AFI20240603BHJP
C07C 229/08 20060101ALI20240603BHJP
C07D 295/13 20060101ALI20240603BHJP
C07D 233/61 20060101ALI20240603BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240603BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20240603BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20240603BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240603BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240603BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240603BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240603BHJP
C12N 9/16 20060101ALI20240603BHJP
C12N 9/99 20060101ALI20240603BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240603BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20240603BHJP
B82Y 5/00 20110101ALI20240603BHJP
A61K 47/59 20170101ALI20240603BHJP
【FI】
C07C229/06 CSP
C07C229/08
C07D295/13
C07D233/61
A61K45/00
A61K31/704
A61K31/7048
A61P31/00
A61P43/00 111
C12N15/11 Z
C07K19/00
C12N9/16 Z
C12N9/99
C12N15/09 110
C12N15/88 Z
B82Y5/00
A61K47/59
(21)【出願番号】P 2020541571
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(86)【国際出願番号】 US2019016362
(87)【国際公開番号】W WO2019152848
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-26
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319009901
【氏名又は名称】トラスティーズ オブ タフツ カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】シュィ,チアオビン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ヤーミン
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-012621(JP,A)
【文献】米国特許第04275236(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0179854(US,A1)
【文献】国際公開第2014/210356(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103131227(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C,C07D
CAPlus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
(式中、
Aは、以下のアミン:
【化2】
のうちの1つから形成されるアミノ部分であり、
Bは、
【化3】
であり、
R
1及びR
2はそれぞれC
1-C
4
二価脂肪族ラジカルであり、
R
3及びR
4はそれぞれH
であり、
R
5はC
1-C
24アルキル
であり、
Wは、O、S、またはSeであり、
Vは結合であり、
リンカーであるXは、
【化4】
であり、
mは0または1である)。
【請求項2】
R
5がC
1-C
20アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
WがOまたはSである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
WがOである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
WがSである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項6】
WがSeである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項7】
Aが、以下のアミン:
【化5】
のうちの1つから形成されるアミノ部分である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
Aが、以下のアミン:
【化6】
のうちの1つから形成されるアミノ部分である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
ナノ複合体を含む医薬組成物であって、前記ナノ複合体が、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物及びタンパク質または核酸から形成され、前記ナノ複合体が、50nm~1000nmの粒径を有し、前記化合物が、非共有結合相互作用、共有結合、またはその両方を介して前記タンパク質または核酸に結合する、医薬組成物。
【請求項10】
前記タンパク質が、GFP-CreまたはCRISPR/Cas9である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
ナノ複合体を含む医薬組成物であって、前記ナノ複合体が、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物及び低分子から形成され;前記ナノ複合体が、50nm~1000nmの粒径を有し、前記化合物が、非共有結合相互作用、共有結合、またはその両方を介して、前記低分子に結合する、医薬組成物。
【請求項12】
前記低分子が、抗真菌剤または化学療法剤である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記低分子が、ボルテゾミブ、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ、ダウノルビシン塩酸塩、シタラビン、フルオロウラシル、イリノテカン塩酸塩、ビンクリスチン硫酸塩、メトトレキサート、パクリタキセル、ビンクリスチン硫酸塩、エピルビシン、ドセタキセル、シクロホスファミド、カルボプラチン、レナリドマイド、イブルチニブ、アビラテロン酢酸エステル、エンザルタミド、ペメトレキセド、パルボシクリブ、ニロチニブ、エベロリムス、ルキソリチニブ、エピルビシン、ピリルビシン、イダルビシン、バルルビシン、アムルビシン、ブレオマイシン、フレオマイシン、ダクチノマイシン、ミトラマイシン、ストレプトゾテシン、ペントスタチン、ミトサン(Mitosanes)マイトマイシンC、エンジインカリケアマイシン、グリコシドレベッカマイシン、マクロライドラクトンエポチヒロン(epotihilones)、イクサベピロン、ペントスタチン、サリノスポラミドA、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、ビノレルビン、ドセタキセル、カンプトテシン、ハイカムチン、ペデリン、テオペデリン(Theopederins)、アナミド(Annamides)、トラベクテジン、アプリジン、及びエクテイナシジン743(ET743)からなる群より選択される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記低分子が、アムホテリシンBまたはドキソルビシンである、請求項11に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年2月1日に出願された米国仮特許出願第62/625,153号に対する優先権の利益を主張し、この内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【政府の支援】
【0002】
本発明は、National Science Foundationにより授与された研究費1452122、National Institutes of Healthにより授与された研究費EB027170及びTR002636、ならびにUnited States Navyにより授与された研究費N00014-16-1-2550に基づき、政府支援と共に行われた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
タンパク質ベースの治療薬は、高い特異性及び低いオフターゲット効果のために、細胞機能の一過性の正確な操作に使用される。例えば、クラスター化された規則的な間隔の短い回文構造反復に関連するタンパク質9、すなわち、CRISPR/Cas9は、遺伝子欠失、挿入、活性化、及び抑制を介するか、または後成的修飾を介する編集ゲノムのための高い柔軟性及び特異性を実証する。CRISPR/Cas9は、疾患のモデリングならびに様々な遺伝性疾患及び感染症に対する新しい処置の特定を容易にする。
【0004】
CRISPR/Cas9などのタンパク質は、治療効果を達成するために、その標的部位、すなわち、細胞内標的、に送達する必要がある。さらに、治療用タンパク質の細胞内送達のための安全で効率的な担体を開発することは、長年の課題であった。
【0005】
タンパク質を送達するための従来の方法は、機械的/物理的手法(例えば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、及び流体力学的注射)ならびに担体ベースの生化学的修飾(例えば、核局在化シグナルペプチド、脂質、または脂質様ナノ複合体、及びポリマーアセンブリー)を含む。機械的/物理的手法は、担体を必要としないが、侵襲性であることが判明して、in vivoでの適用に実用的な問題が生じる。他方では、生化学的修飾に使用される担体は、タンパク質を細胞内に送達することが可能であるが、大きな制限、例えば、低いトランスフェクション効率及び高い細胞毒性、を示す。
【0006】
標的部位にタンパク質を送達するための上記の制限なしに新しい担体を開発する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、その標的部位に、タンパク質、例えば、CRISPR/Cas9を送達するために使用することができる脂質様ナノ複合体を形成するための特定の親油性化合物に関する。予想外に、これらの脂質様ナノ複合体は、タンパク質を送達するために一般に使用される市販の薬剤であるLipofectamine2000(Lpf2k)よりも高いトランスフェクション効率及び低い細胞毒性を実証する。
【0008】
本発明の一態様では、それは、以下の式(I)の脂質様化合物の2つのセットを網羅する:
【化1】
【0009】
1つのセットでは、式(I)に関して、Aは、
【化2】
から選択される親水性頭部であり、R
a、R
a’、R
a”、及びR
a”’のそれぞれは独立して、H、C
1-C
20アルキル、C
2-C
20アルケニル、C
2-C
20アルキニル、C
3-C
20シクロアルキル、C
1-C
20ヘテロアルキル、C
1-C
20ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;Zは、C
1-C
20二価脂肪族ラジカル、C
1-C
20二価ヘテロ脂肪族ラジカル、二価アリールラジカル、または二価ヘテロアリールラジカルであり、Bは、C
1-C
24アルキル、C
2-C
24アルケニル、C
2-C
24アルキニル、C
3-C
24シクロアルキル、C
1-C
24ヘテロアルキル、C
1-C
24ヘテロシクロアルキル、アリール、もしくはヘテロアリール、または
【化3】
であり、R
1及びR
2のそれぞれは独立して、C
1-C
20二価脂肪族ラジカルであり;R
3及びR
4のそれぞれは独立して、HもしくはC
1-C
10アルキルであるか、またはR
3及びR
4は、それらが結合している原子と共に、C
3-C
10シクロアルキルを形成し;R
5は、C
1-C
24アルキル、C
2-C
24アルケニル、C
2-C
24アルキニル、C
3-C
24シクロアルキル、C
1-C
24ヘテロアルキル、C
1-C
24ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;Wは、O、S、またはSeであり;Vは、結合、O、S、またはSeであり、リンカーであるXは、
【化4】
であり、L
1、L
2、L
3、及びL
4のそれぞれは独立して、結合、O、S、またはNR
cであり;Gは、O、S、またはNR
dであり;Qは、OR
f、SR
g、またはNR
hR
iであり;r及びtのそれぞれは独立して、1~6であり、R
c、R
d、R
f、R
g、R
h、及びR
iのそれぞれは独立して、H、C
1-C
10アルキル、C
1-C
10ヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;mは、0または1であり、但し、VがSである時に、mは、1である。
【0010】
他のセットでは、さらに、式(I)に関し、Aは、
【化5】
から選択される親水性頭部であり、R
a、R
a’、R
a”、及びR
a”’のそれぞれは独立して、H、C
1-C
20アルキル、C
2-C
20アルケニル、C
2-C
20アルキニル、C
3-C
20シクロアルキル、C
1-C
20ヘテロアルキル、C
1-C
20ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;Zは、C
1-C
20二価脂肪族ラジカル、C
1-C
20二価ヘテロ脂肪族ラジカル、二価アリールラジカル、または二価ヘテロアリールラジカルであり、Bは、C
1-C
24アルキル、C
2-C
24アルケニル、C
2-C
24アルキニル、C
3-C
24シクロアルキル、C
1-C
24ヘテロアルキル、C
1-C
24ヘテロシクロアルキル、アリール、もしくはヘテロアリール、または
【化6】
であり、R
1は、C
1-C
20二価脂肪族ラジカルであり;R
2は、結合またはC
1-C
20二価脂肪族ラジカルであり;R
3及びR
4のそれぞれは独立して、HもしくはC
1-C
10アルキルであるか、またはR
3及びR
4は、それらが結合している原子と共に、C
3-C
10シクロアルキルを形成し;R
5は、
【化7】
であり、R
6は、結合またはC
1-C
20二価脂肪族ラジカルであり;R
b及びR
b’のそれぞれは、Fであるか、またはR
b及びR
b’は、それらが結合している原子と共に、C=Oを形成し;R
7は、Fまたは脂肪族脂質部分であり;L
1及びL
2のそれぞれは独立して、結合、O、S、またはNR
cであり、R
cは、H、C
1-C
10アルキル、C
1-C
10ヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;nは、1~20であり;W及びVのそれぞれは独立して、結合、O、S、またはSeであり;リンカーであるXは、
【化8】
であり、L
3、L
4、L
5、及びL
6のそれぞれは独立して、結合、O、S、またはNR
cであり;Gは、O、S、またはNR
dであり;Qは、OR
f、SR
g、またはNR
hR
iであり;r及びtのそれぞれは独立して、1~6であり、R
c、R
d、R
e、R
f、R
g、R
h、及びR
iのそれぞれは独立して、H、C
1-C
10アルキル、C
1-C
10ヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;mは、0または1である。
【0011】
通常は、上記の脂質様化合物は、
【化9】
のいずれかのような変数Aを有し、R
a及びR
a’のそれぞれは独立して、C
1-C
10一価脂肪族ラジカル、C
1-C
10一価ヘテロ脂肪族ラジカル、一価アリールラジカル、または一価ヘテロアリールラジカルであり;Zは、C
1-C
10二価脂肪族ラジカル、C
1-C
10二価ヘテロ脂肪族ラジカル、二価アリールラジカル、または二価ヘテロアリールラジカルである。これらの化合物は、好ましくは、
【化10】
のような変数Bを有する。
【0012】
本明細書における「脂質様化合物」という用語は、1つ以上の親水性(または極性)アミン含有頭部基及び1つ以上の疎水性(または無極性)炭化水素含有尾部を含有する化合物を指す。例えば、以下を参照のこと、Love et al.,PNAS,2010,107(5),1864-1869。「脂質様ナノ複合体」という用語は、脂質様化合物のうちの1つを含有するナノ複合体を指す。例えば、以下を参照のこと、Wang et al.,Angew.Chem.Int.Ed.,2014,53(11),2893-2898。
【0013】
本明細書における「脂肪族」という用語は、飽和または不飽和、直鎖状または分枝状、非環式、環式、または多環式炭化水素部分を指す。例としては、アルキル、アルキレン、アルケニル、アルケニレン、アルキニル、アルキニレン、シクロアルキル、シクロアルキレン、シクロアルケニル、シクロアルケニレン、シクロアルキニル、及びシクロアルキニレン部分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書における「脂肪族脂質部分」という用語は、長鎖、飽和または不飽和、直鎖状または分枝状、非環式、環式、または多環式炭化水素、アルコール、アルデヒド、またはカルボン酸を含有する疎水性部分を指す。例としては、コレステロール、デスモステロール、及びラノステロールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
「アルキル」または「アルキレン」という用語は、メチル、メチレン、エチル、エチレン、プロピル、プロピレン、ブチル、ブチレン、ペンチル、ペンチレン、ヘキシル、ヘキシレン、ヘプチル、ヘプチレン、オクチル、オクチレン、ノニル、ノニレン、デシル、デシレン、ウンデシル、ウンデシレン、ドデシル、ドデシレン、トリデシル、トリデシレン、テトラデシル、テトラデシレン、ペンタデシル、ペンタデシレン、ヘキサデシル、ヘキサデシレン、ヘプタデシル、ヘプタデシレン、オクタデシル、オクタデシレン、ノナデシル、ノナデシレン、イコシル、イコシレン、トリアコンチル、及びトリアコチレンなどの飽和、直鎖状または分枝状炭化水素部分を指す。「アルケニル」または「アルケニレン」という用語は、-CH=CH-CH3及び-CH=CH-CH2-などの、少なくとも1つの二重結合を含有する直鎖状または分枝状炭化水素部分を指す。「アルキニル」または「アルキニレン」という用語は、-C≡C-CH3及び-C≡C-CH2-などの少なくとも1つの三重結合を含有する直鎖状または分枝状炭化水素部分を指す。「シクロアルキル」または「シクロアルキレン」という用語は、シクロヘキシル及びシクロヘキシレンなどの飽和環状炭化水素部分を指す。「シクロアルケニル」または「シクロアルケニレン」という用語は、シクロヘキセニルシクロヘキセニレンなどの、少なくとも1つの二重結合を含有する非芳香族環状炭化水素部分を指す。「シクロアルキニル」または「シクロアルキニレン」という用語は、少なくとも1つの三重結合を含有する非芳香族環状炭化水素部分であるシクロオクチニル及びシクロオクチニレンを指す。
【0016】
本明細書における「ヘテロ脂肪族」という用語は、N、O、P、B、S、Si、Sb、Al、Sn、As、Se、及びGeから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する脂肪族部分を指す。
【0017】
本明細書における「アルコキシ」という用語は、-O-アルキルを指す。アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、及びtert-ブトキシが挙げられる。
【0018】
本明細書における「アリール」という用語は、C6単環式、C10二環式、C14三環式、C20四環式、またはC24五環式芳香環系を指す。アリール基の例としては、フェニル、フェニレン、ナフチル、ナフチレン、アントラセニル、アントラセニレン、ピレニル、及びピレニレンが挙げられる。「ヘテロアリール」という用語は、本明細書では、1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、N、S、またはSe)を有する芳香族5~8員単環式、8~12員二環式、11~14員三環式、及び15~20員四環式環系を指す。ヘテロアリール基の例としては、フリル、フリレン、フルオレニル、フルオレニレン、ピロリル、ピロリレン、チエニル、チエニレン、オキサゾリル、オキサゾリレン、イミダゾリル、イミダゾリレン、ベンズイミダゾリル、ベンズイミダゾリレン、チアゾリル、チアゾリレン、ピリジル、ピリジレン、ピリミジニル、ピリミジニレン、キナゾリニル、キナゾリニレン、キノリニル、キノリニレン、イソキノリル、イソキノリレン、インドリル、及びインドリレンが挙げられる。
【0019】
別途明記のない限り、本明細書で言及される脂肪族、ヘテロ脂肪族、アルコキシ、アルキル、アルキレン、アルケニル、アルケニレン、アルキニル、アルキニレン、シクロアルキル、シクロアルキレン、シクロアルケニル、シクロアルケニレン、シクロアルキニル、シクロアルキニレン、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキレン、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニレン、アリール、及びヘテロアリールは、置換及び非置換部分の両方を含む。シクロアルキル、シクロアルキレン、シクロアルケニル、シクロアルケニレン、シクロアルキニル、シクロアルキニレン、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキレン、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニレン、アリール、及びヘテロアリールの可能な置換基は、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、C1-C20アルコキシ、C3-C20シクロアルキル、C3-C20シクロアルケニル、C3-C20ヘテロシクロアルキル、C3-C20ヘテロシクロアルケニル、C1-C10アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、アミノ、C1-C10アルキルアミノ、C2-C20ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、C1-C10アルキルスルホンアミノ、アリールスルホンアミノ、C1-C10アルキルイミノ、アリールイミノ、C1-C10アルキルスルホンイミノ、アリールスルホンイミノ、ヒドロキシル、ハロ、チオ、C1-C10アルキルチオ、アリールチオ、C1-C10アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アシルアミノ、アミノアシル、アミノチオアシル、アミド、アミジノ、グアニジン、ウレイド、チオウレイド、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、アシル、チオアシル、アシルオキシ、カルボキシル、及びカルボン酸エステルを含むが、これらに限定されない。他方では、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アルキル、アルキレン、アルケニル、アルケニレン、アルキニル、及びアルキニレンの可能な置換基は、C1-C10アルキル以外の上記の置換基の全てを含む。シクロアルキル、シクロアルキレン、シクロアルケニル、シクロアルケニレン、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキレン、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニレン、アリール、及びヘテロアリールも互いに融合することができる。
【0020】
上記の脂質様化合物は、化合物自体、ならびに該当する場合、それらの塩及び溶媒和物を含む。例えば、塩は、アニオン及び脂質様化合物の正荷電基(例えば、アミノ)間で形成することができる。好適なアニオンとしては、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、トシル酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グルクロン酸塩、乳酸塩、グルタル酸塩、及びマレイン酸塩が挙げられる。同様に、塩はまた、カチオン及び脂質様化合物の負荷電基(例えば、カルボン酸塩)間で形成することができる。好適なカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、及びテトラメチルアンモニウムイオンなどのアンモニウムカチオンが挙げられる。脂質様化合物は、4級窒素原子を含有する塩も含む。溶媒和物は、脂質様化合物及び薬学的に許容される溶媒間で形成される複合体を指す。薬学的に許容される溶媒の例としては、水、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸、及びエタノールアミンが挙げられる。
【0021】
本発明の別の態様は、上述の脂質様化合物から形成されたナノ複合体及びタンパク質または核酸を含有する医薬組成物に関する。この組成物では、ナノ複合体は、50~1000nm(例えば、50~500nm、50~300nm、及び50~180nm)の粒径を有する。脂質様化合物は、非共有相互作用、共有結合、またはその両方を介してタンパク質または核酸に結合する。
【0022】
「タンパク質」という用語は、アミド結合により互いに連結されており且つ800ダルトン以上の分子量を有する天然または非天然アミノ酸のポリマーを指す。「核酸」という用語は、800ダルトン以上の分子量を有する、ホスホジエステル結合により互いに連結されているヌクレオチドのポリマーを指す。これらのポリマーの両方は、化学修飾することができる。タンパク質修飾の例としては、そこに含有されるリジン残基のアミン基のPEG化及びカルボキシル化が挙げられる。より具体的には、タンパク質またはペプチドのカルボキシル化は、cis-アコニット酸無水物を使用することにより達成することができる。以下を参照のこと、Angew.Chem.Int.Ed.,2009,48,5309-5312;Lee et al.,Angew.Chem.Int.Ed.,2010,49,2552-2555;及びMaier et al.,Journal of the American Chemical Society,2012,134,10169-10173。
【0023】
「非共有相互作用」という用語は、イオン相互作用、水素結合、ファンデルワールス相互作用、及び疎水性相互作用を含む、任意の非共有結合を指す。
【0024】
医薬組成物は通常は、薬学的に許容される担体を含有する。医薬組成物中の担体は、それが組成物の活性成分と適合し(好ましくは、活性成分を安定化することが可能な)、処置されるべき対象に有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。1つ以上の可溶化剤は、活性グリコシド化合物の送達のための医薬賦形剤として利用することができる。他の担体の例としては、コロイド状酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、及びD&Cイエロー#10が挙げられる。
【0025】
病状、例えば、肺疾患の処置方法は、本発明によりさらに網羅される。方法は、それを必要とする対象に、有効量の上記医薬組成物を投与するステップを含む。
【0026】
本発明の詳細は、以下の明細書に記載される。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、以下の図面及びいくつかの実施形態の詳細な説明から、また特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】脂質様化合物(リピドイド)の合成及びリピドイドナノ粒子へのタンパク質のカプセル化の概略図である。(a)細胞内タンパク質の送達及びゲノム編集のための、合成カチオン性リピドイドナノ粒子(LNP)への負荷電GFP-Cre及びCas9:sgRNAのカプセル化。(b)合成経路及びリピドイドの命名法。(c)リピドイド合成のためのアミン頭部の化学構造。
【
図2】リピドイド及びLNPの特性決定の概略図である。(a)及び(b)76-O17O、76-O17S、及び76-O17Se(以下の例示的な脂質様化合物を参照のこと)の
1HNMR及びESI-MSスペクトル。(c)LNPの平均流体力学的直径(<D
h>)分布の統計分析。(d)76-O17O、76-O17S、及び76-O17Se LNPの代表的な流体力学的直径分布。
【
図3】リピドイド及びLNPの別の特性決定の概略図である。(a)及び(b)76-O17O、76-O17S、及び76-O17Se LNPの代表的な透過型電子顕微鏡(TEM)画像及び相対的なサイズ変動(スケールバーは100nmである)。(c)保存中のDiO/DiI搭載76-O17Se LNPの蛍光発光強度及びFRET比。
【
図4】タンパク質送達のためのLNPのin vitroスクリーニングの概略図である。(a)(-30)GFP-Creタンパク質ならびに(-30)GFP-Cre搭載76-O17O、76-O17S、及び76-O17Se LNPで処置されたHeLa-DsRed細胞の代表的な画像。スケールバー=200μm。(b)試験された51のLNPに対して示されたGFP陽性細胞のパーセンテージ。LNPで誘導された高レベルのトランスフェクションに対して赤色で示されたデータポイント。(c)尾部(O17O、O17S、及びO17Se)は、(-30)GFP-Creタンパク質トランスフェクション活性に影響を与えた。
【
図5】LNPの構造活性相関の概略図である。(a)及び(b)見かけのpKa値及びリン脂質二重層膜破壊能は、(-30)GFP-Creタンパク質送達効率に影響を与えた。(c)特性がない、1つまたは2つの特性を有する効果的なLNPの相対的なヒット率。(d)O17O、O17S、またはO17Se尾部を有する効果的なLNPの相対ヒット率。
【
図6】LNPを用いる(-30)GFP-Cre送達の効率を示す。(a)(-30)GFP-Cre及び(-30)GFP-Cre搭載LNPで処置されたHeLa-DsRed細胞のDsRed発現。(b)(-30)GFP-Cre及び(-30)GFP-Cre搭載LNPで処置されたHeLa-DsRed細胞の細胞生存率。
【
図7】PBS及びGFP-Cre/LNPで処置されたAi14マウスから得られた肺の切片の代表的な蛍光画像の概略図である(1列目は、4′,6-ジアミジノ-2-フェニルインドールまたはDAPIであり;2列目は、tdTomatoであり;3列目は、1列目及び2列目のマージを示し、スケールバーは、100μmである)。
【
図8】LNPを用いるCas9:sgRNA送達の効率を示す。(a)Cas9:sgRNA及びCas9:sgRNA/LNPで処置されたGFP-HEK細胞のGFPノックアウト。(b)Cas9:sgRNA及びCas9:sgRNA/LNPで処置されたGFP-HEK細胞の細胞生存率。
【
図9】細胞内送達のためのコレステロール系及び還元応答性コンビナトリアルリピドイドの概略表現である。(A)カチオン性リピドイド及びアミン頭部基の化学構造。(B)抗がん剤、mRNA、及びタンパク質送達のための多機能プラットフォームとしてのリピドイドナノ粒子。
【
図10】リピオイド及びナノ粒子の特性決定を示す。(A)リピドイドのMALDI-TOFスペクトル。(B)DLSで測定されたリピドイドナノ粒子の流体力学的直径及び多分散性。(C)リピドイドナノ粒子のTEM画像。スケールバー=200nm。(D)保存中のブランクナノ粒子の相対的なサイズ変化。(E)OcholB、O16B、及びLpf2kナノ粒子の細胞毒性試験。P<0.05、スチューデントのt検定。
【
図11-1】チオール誘発性形態学的変動及びカーゴ放出を示す。(A)DTT及びシステイン処理を用いるリピドイドナノ粒子の時間依存性相対的なサイズ変動。(B)DTTで処理されたリピドイドナノ粒子のTEM画像。スケールバー=600nm。(C)24時間のDTT処理後のリピドイドナノ粒子の相対的なサイズ変化。
【
図11-2】チオール誘発性形態学的変動及びカーゴ放出を示す。(D)カーゴ搭載ナノ粒子の蛍光発光スペクトル。(E)時間依存性NR放出プロファイル。(F)DTTまたはシステインで処理されたカルセインカプセル化リピドイドナノ粒子の蛍光強度。(G)DTT処理あり及びDTT処理なしのリピドイドナノ粒子のRNA結合テスト。
【
図12】カーゴ搭載リピドイドナノ粒子の内在化研究を示す。(A)DiO-DiI搭載ナノ粒子の時間依存性FRET比の変動。(B)NR搭載ナノ粒子で処置されたHeLa細胞の時間依存性NR
+細胞の割合。(C)8時間の曝露後のリピドイドナノ粒子のNR
+細胞の割合。(D)NR搭載ナノ粒子で処置されたHeLa細胞の蛍光画像。スケールバー=100μm。(E)遊離またはナノ粒子カプセル化カルセインで処置されたHeLa細胞の平均蛍光強度。(F)HeLa-DsRed細胞に対するリピドイドナノ粒子による(-30)GFP-Creタンパク質のトランスフェクション効率。(G)平均蛍光強度。(H)フローサイトメトリーヒストグラム。(I)蛍光画像。(J)(-30)GFP-Cre/LNPで処置されたHeLa-DsRed細胞の明視野画像。スケールバー=110μm。
【
図13】抗がん剤の細胞内送達を示す。(A)CPT及びDox搭載ナノ粒子の吸収及び蛍光発光スペクトル。(B)遊離及びナノ粒子カプセル化Doxで処置されたHeLa細胞の平均蛍光強度。(C)遊離Dox及びブランク及びDox搭載ナノ粒子の用量依存性細胞毒性。(D)遊離及びナノ粒子カプセル化CPT及びOxaの細胞毒性。
【
図14】mRNAの細胞内送達を示す。(A)LNP/mRNA重量比トランスフェクション効果。(B)mRNA用量依存性トランスフェクション効果。(C)mRNA/LNPで処置されたHeLa細胞の蛍光画像。スケールバー=100μm。(D)トランスフェクション効率。(E)mRNA/LNPの細胞毒性。(F)mRNA/LNPで処置されたHeLa細胞の明視野画像。スケールバー=110μm。(G)OCholB LNPによるCre mRNA送達。(H)OCholB LNPによるCas9 mRNA及びsgRNA送達。
【
図15】ゲノム編集タンパク質の細胞内送達を示す。(A)内在化機序の研究。(B)ゲノム編集効率。(C)フローサイトメトリーヒストグラム。(D)細胞毒性。(E)(-30)GFP-Cre/LNPで処置されたHeLa-DsRed細胞の明視野画像。スケールバー=200μm。(F)ゲノム編集効果を、各試験条件について細胞生存率に対してプロットした。
【
図16】in vivo毒性試験を示す。(A)時間依存体重。(B)ブランクLNPが注射されたBalb/cマウスに対する生化学的血液分析。
【
図17】成体Ai14マウスを使用した、in vivoゲノム編集のためのmRNA及びタンパク質送達を示す。(A)Cre媒介性遺伝子組み換え。(B)筋肉内に使用されたプロトコール。(C)静脈内注射に使用されたプロトコール。(D)筋肉内タンパク質/LNP(スケールバー=270μm)が注射された骨格筋の蛍光画像。元の画像の赤色チャネル、tdTomato;元の画像の青色チャネル、DAPI。上パネルの画像は、ナノ粒子を注射されたマウス由来のものであり、下パネルの画像は、未処置の対照マウス由来のものである。(E)筋肉内mRNA/LNP(スケールバー=270μm)が注射された骨格筋の蛍光画像。元の画像の赤色チャネル、tdTomato;元の画像の青色チャネル、DAPI。上パネルの画像は、ナノ粒子を注射されたマウス由来のものであり、下パネルの画像は、未処置の対照マウス由来のものである。(F)対照及びタンパク質/LNPが静脈内注射されたマウス由来の肺(スケールバー=135μm)の蛍光画像。元の画像の赤色チャネル、tdTomato;元の画像の青色チャネル、DAPI。上パネルの画像は、ナノ粒子を注射されたマウス由来のものであり、下パネルの画像は、未処置の対照マウス由来のものである。(G)mRNA/LNPが静脈内注射されたマウス由来の脾臓(スケールバー=190μm)の蛍光画像。元の画像の赤色チャネル、tdTomato;元の画像の青色チャネル、DAPI。上パネルの画像は、ナノ粒子を注射されたマウス由来のものであり、下パネルの画像は、未処置の対照マウス由来のものである。
【
図18】(a)合成カチオン性リピドイドナノ粒子へのAmBのカプセル化及び真菌細胞への効果を示す概略図である。(d)四級化リピドイドは、アミン及びアルキル-エポキシド分子のコンビナトリアル合成されたものであった。リピドイドは、以下の通り呼ばれる(尾部の炭素数)-(アミン数)。
【
図19】調製後に視覚的な安定状態を示し;AmB/(75-O4B,78-O14B,87-O14B)カプセル化物は、不透明な懸濁を実証し、全ては、1週間以内に沈殿し、AmB/(75-O14B,78-O14B,87-O14B)-Fカプセル化物は、調製後に半透明溶液を示し、2週間の終わりに均質化せず、AmB/(Q75-O14B,Q78-O14B,Q87-O14B)及びAmB/(Q75-O14B,Q78-O14B,Q87-O14B)-Fカプセル化物は、均質の透明黄色溶液を実証し、続く2週間で安定であった。
【
図20】(a)調製後及び続く2週間でAmBカプセル化物及びFungizone(登録商標)の流体力学的サイズ(n=9)を示す。(b)DLSで決定された調製後及び続く2週間でのAmBカプセル化物の多分散性インデックス(n=9)を示す。調製後の粒径及びPDIに対して*p<0.05及び**p<0.001。
【
図21】(a)AmBカプセル化物及びFungizone(登録商標)のDLCを示す(n=3)。(b)14.0~0.109375μg/mLの24時間及び48時間のインキュベーション後のCandida.albicans(SC5314)に対する種々のAmBカプセル化物、遊離AmB、及びFungizone(登録商標)のMIC(n=9)、Fungizone(登録商標)に対して*P<0.05。
【
図22】(a)37℃で1時間インキュベートした後のAmB濃度(25、50、100、200μg/mL)と同等のAmBカプセル化物、遊離AmB、及びFungizone(登録商標)によるヒトRBCの溶血を示す(n=9)。(b)24時間のインキュベーション後のAmB濃度(25、50、100、200μg/mL)と同等のHEK293細胞株に対する種々のAmBカプセル化物、遊離AmB、及びFungizone(登録商標)のin vitro MTT試験。全てのデータは、平均±SD(n=9)として存在する、Fungizone(登録商標)に対して*P<0.05及び**p<0.001。
【
図23】(a)SDラットに2mgのAmB/kgの用量でAmB/Q78-O14B-F及びFungizone(登録商標)を静脈内注射した後のAmBの血漿濃度を示す。HPLCによるAmB/Q78-O14B-F(それぞれ10mg、5mg、2mgのAmB/kg)及びFungizone(登録商標)(2mgのAmB/kg)の48時間及び72時間の静脈内処置後のマウス組織のAmB濃度を示す;(b)肝臓、(c)脾臓、(d)肺、(e)腎臓;Fungizone(登録商標)に対して*p<0.05及び**P<0.001。
【
図24】10mg、5mg、及び2mgのAmB/kgの用量のAmB/Q78-O14B-Fならびに2mgのAmB/kgの用量のFungizone(登録商標)を静脈内投与された48時間及び72時間後の健常BALB/cマウスの(a)クレアチニンレベル、(b)BUNレベル、(c)ALTレベル、(d)ASTレベルのin vivo毒性(n=3)を示す、Fungizone(登録商標)に対して*p<0.05及び**p<0.001。
【
図25】タンパク質送達に使用されるフッ素含有リピドイドの関数としてのGFP陽性細胞(GFP+)のパーセンテージを示す棒グラフである。
【
図26】タンパク質送達に使用されるフッ素含有リピドイドの関数としてのDsRed陽性細胞のパーセンテージを示す棒グラフである。
【
図27】タンパク質の送達に使用されるリピドイド(種々の疎水性尾部を有する脂質から誘導され、アミン200から合成された)の関数としてのGFP+細胞のパーセンテージを示す棒グラフである。
【
図28】タンパク質送達に使用されるリピドイド(種々の環状アミンアナログから合成された脂質から誘導された)の関数としてのGFP+細胞のパーセンテージを示す棒グラフである。
【
図29】リピドイド(種々のイミダゾール含有アミンアナログから合成された脂質から誘導された)の関数としてのCD8+T細胞へのmRNA送達から生じる観察された発光を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の脂質様化合物は、本明細書では、詳細に開示される。より具体的には、2つの実施形態は、以下の順序で記載される。
【0029】
第1の実施形態では、上に示される式(I)に関して、Aは、
【化11】
から選択される親水性頭部であり、R
a、R
a’、R
a”、及びR
a”’のそれぞれは独立して、H、C
1-C
20アルキル、C
2-C
20アルケニル、C
2-C
20アルキニル、C
3-C
20シクロアルキル、C
1-C
20ヘテロアルキル、C
1-C
20ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;Zは、C
1-C
20二価脂肪族ラジカル、C
1-C
20二価ヘテロ脂肪族ラジカル、二価アリールラジカル、または二価ヘテロアリールラジカルであり、Bは、C
1-C
24アルキル、C
2-C
24アルケニル、C
2-C
24アルキニル、C
3-C
24シクロアルキル、C
1-C
24ヘテロアルキル、C
1-C
24ヘテロシクロアルキル、アリール、もしくはヘテロアリール、または
【化12】
であり、R
1及びR
2のそれぞれは独立して、C
1-C
20二価脂肪族ラジカルであり;R
3及びR
4のそれぞれは独立して、HもしくはC
1-C
10アルキルであるか、またはR
3及びR
4は、それらが結合している原子と共に、C
3-C
10シクロアルキルを形成し;R
5は、C
1-C
24アルキル、C
2-C
24アルケニル、C
2-C
24アルキニル、C
3-C
24シクロアルキル、C
1-C
24ヘテロアルキル、C
1-C
24ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;Wは、O、S、またはSeであり;Vは、結合、O、S、またはSeであり、リンカーであるXは、
【化13】
であり、L
1、L
2、L
3、及びL
4のそれぞれは独立して、結合、O、S、またはNR
cであり;Gは、O、S、またはNR
dであり;Qは、OR
f、SR
g、またはNR
hR
iであり;r及びtのそれぞれは独立して、1~6であり、R
c、R
d、R
f、R
g、R
h、及びR
iのそれぞれは独立して、H、C
1-C
10アルキル、C
1-C
10ヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;mは、0または1であり、但し、VがSである場合に、mは、1である。
【0030】
この実施形態は、好ましくは、通常、
【化14】
のような変数A及び
【化15】
のような変数Bを有する化合物を含む。例示化合物は、以下の通り、変数A、B、及びR
1-R
5を有し:Aは、
【化16】
であり;Bは、
【化17】
であり;R
1及びR
2のそれぞれは独立して、C
1-C
4二価脂肪族ラジカルであり;R
3及びR
4のそれぞれは独立して、HまたはC
1-C
4アルキルであり;R
5は、C
1-C
20アルキルである。
【0031】
好ましくは、Aは、以下のアミンのうちの1つから形成されるアミノ部分である:
【化18】
【0032】
上記のように、Xは、リンカーである。Xの例としては、
【化19】
が挙げられるが、これらに限定されず、R
c及びR
dのそれぞれは独立して、HまたはC
1-C
10アルキルである。これらの化合物は、好ましくは、C
1-C
4二価脂肪族ラジカルとして独立してR
1及びR
2のそれぞれを;HまたはC
1-C
4アルキルとして独立してR
3及びR
4のそれぞれを;C
1-C
20アルキルとしてR
5を有する。
【0033】
変数W、V、及びmを参照すると、本実施形態は、これらの3つの変数に基づいて、化合物の以下の3つのサブセットを含み得る。
【0034】
サブセット(i)は、式(I)の化合物を含み、W及びVのそれぞれは独立して、OまたはSeであり;mは、0である。
【0035】
化合物のこのサブセットは、以下の分子
【化20】
のうちの1つから形成される部分
【化21】
を有することができ、qは8~12の整数である。
【0036】
サブセット(ii)は、式(I)の化合物を含み、Wは、O、S、またはSeであり;Vは、結合であり;mは、0または1である。
【0037】
化合物のこのサブセットは、以下の分子:
【化22】
のうちの1つから形成される部分
【化23】
を有することができ、qは8~12の整数である。
【0038】
サブセット(iii)は、式(I)の化合物を含み、W及びVのそれぞれは、OまたはSであり、mは、1である。
【0039】
化合物のこのサブセットは、以下の分子
【化24】
のうちの1つから形成される部分
【化25】
を有することができ、qは、8~12の整数である。
【0040】
あるいは、化合物のこのサブセットは、以下の分子
【化26】
のうちの1つから形成される部分
【化27】
を有することができ、XはO、S、またはNHであり;RはHまたはMeであり;pは0~3の整数であり;qは1~16の整数であり;vは1~10の整数である。
【0041】
第2の実施形態では、さらに上記の式(I)に関して、Aは、
【化28】
から選択される親水性頭部であり、R
a、R
a’、R
a”、及びR
a”’のそれぞれは独立して、H、C
1-C
20アルキル、C
2-C
20アルケニル、C
2-C
20アルキニル、C
3-C
20シクロアルキル、C
1-C
20ヘテロアルキル、C
1-C
20ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;Zは、C
1-C
20二価脂肪族ラジカル、C
1-C
20二価ヘテロ脂肪族ラジカル、二価アリールラジカル、または二価ヘテロアリールラジカルであり、Bは、C
1-C
24アルキル、C
2-C
24アルケニル、C
2-C
24アルキニル、C
3-C
24シクロアルキル、C
1-C
24ヘテロアルキル、C
1-C
24ヘテロシクロアルキル、アリール、もしくはヘテロアリール、または
【化29】
であり、R
1は、C
1-C
20二価脂肪族ラジカルであり;R
2は、結合またはC
1-C
20二価脂肪族ラジカルであり;R
3及びR
4のそれぞれは独立して、HもしくはC
1-C
10アルキルであるか、またはR
3及びR
4は、それらが結合している原子と共に、C
3-C
10シクロアルキルを形成し;R
5は、
【化30】
であり、R
6は、結合またはC
1-C
20二価脂肪族ラジカルであり;R
b及びR
b’のそれぞれは、Fであるか、またはR
b及びR
b’は、それらが結合している原子と共に、C=Oを形成し;R
7は、Fまたは脂肪族脂質部分であり;L
1及びL
2のそれぞれは独立して、結合、O、S、またはNR
cであり、R
cは、H、C
1-C
10アルキル、C
1-C
10ヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;nは、1~20であり;W及びVのそれぞれは独立して、結合、O、S、またはSeであり;リンカーであるXは、
【化31】
であり、L
3、L
4、L
5、及びL
6のそれぞれは独立して、結合、O、S、またはNR
cであり;Gは、O、S、またはNR
dであり;Qは、OR
f、SR
g、またはNR
hR
iであり;r及びtのそれぞれは独立して、1~6であり、R
c、R
d、R
e、R
f、R
g、R
h、及びR
iのそれぞれは独立して、H、C
1-C
10アルキル、C
1-C
10ヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;mは、0または1である。
【0042】
第1の実施形態と同様に、第2の実施形態は、
【化32】
のような変数A、及び
【化33】
のような変数Bを有する化合物も含み得る。
【0043】
本実施形態の例示化合物は、以下の通り変数A、B、及びR
1-R
4を有し:Aは、
【化34】
であり;Bは、
【化35】
であり;R
1及びR
2のそれぞれは独立して、C
1-C
4二価脂肪族ラジカルであり;R
3及びR
4のそれぞれは独立して、HまたはC
1-C
4アルキルである。
【0044】
さらに、Aは、以下のアミンのうちの1つから形成されるアミノ部分であり得る:
【化36-1】
【化36-2】
【化36-3】
【0045】
第2の実施形態では、Xの例としては、
【化37】
が挙げられるが、これらに限定されず、R
c及びR
dのそれぞれは独立して、HまたはC
1-C
10アルキルである。これらの化合物は、好ましくは、C
1-C
4二価脂肪族ラジカルとしてR
1及びR
2のそれぞれを;HまたはC
1-C
4アルキルとしてR
3及びR
4のそれぞれを独立して;C
1-C
20アルキルとしてR
5を有する。
【0046】
変数W、V、及びmに関して、第2の実施形態は、結合としてR2、W、及びVのそれぞれを、0としてmを有する化合物を含み得る。
【0047】
変数R
5、すなわち、
【化38】
に関して、本実施形態における化合物は、結合としてL
1及びL
2のそれぞれを、FとしてR
b、R
b’、及びR
7のそれぞれを有し得る。例示化合物は、以下の分子
【化39】
のうちの1つから形成される部分
【化40】
を有し、jは0~10の整数であり、kは1~20の整数である。
【0048】
あるいは、本実施形態は、化合物を含み、R
6は、C
1-C
4二価脂肪族ラジカルであり;L
1及びL
2のそれぞれは独立して、OまたはNR
Cであり、R
cは、HまたはC
1-C
10アルキルであり;R
b及びR
b’は、それらが結合している原子と共に、C=Oを形成し;nは、1または2であり;R
7は、脂肪族脂質部分である。脂肪族脂質部分は、コレステロールであり得る。例示化合物は、以下の分子
【化41】
のうちの1つから形成される部分
【化42】
を有し、XはOまたはNHであり、WはO、S、またはSeである。
【0049】
本発明の脂質様化合物は、当該技術分野で周知の方法で調製することができる。例えば、以下を参照のこと、Wang et al.,ACS Synthetic Biology,2012,1,403-407;Manoharan et al.、WO2008/042973;及びZugates et al.、米国特許8,071,082。
【0050】
以下に示される合成経路は、上述の特定の脂質様化合物の合成を例示し:
【化43】
変数R
a、R
2-R
5、X、W、V、及びmのそれぞれは、上で定義される。
【0051】
この例示的な合成経路では、アミン化合物、すなわち、化合物Dは、ビニルカルボニル化合物Eと反応して、最終生成物、すなわち、化合物Fを得る。アミノ化合物Dは、上記の化合物10、17、63、75~78、80~82、87、90、93、103、304、306、及び400のうちの1つであり得る。
【0052】
本発明の他の脂質様化合物は、上記の合成経路及び当該技術分野で既知の他のものを介して、他の好適な出発物質を使用して調製することができる。上記の方法は、最終的に脂質様化合物の合成を可能にするために、好適な保護基を追加または除去する追加のステップ(複数可)を含み得る。加えて、様々な合成ステップは、所望の材料を得るために、別の配列または順序で実施することができる。例えば、R.Larock,Comprehensive Organic Transformations(2nd Ed.,VCH Publishers 1999);P.G.M.Wuts and T.W.Greene,Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis(4th Ed.,John Wiley and Sons 2007);L.Fieser and M.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis(John Wiley and Sons 1994);及びL.Paquette,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis(2nd ed.,John Wiley and Sons 2009)及びそれの後続の版を含む、適用可能な脂質様化合物の合成に有用な合成化学変換及び保護基の方法論(保護及び脱保護)は、当該技術分野で既知である。
【0053】
特定の脂質様化合物は、非芳香族二重結合及び1つ以上の不斉中心を含有してもよい。従って、それらは、ラセミ化合物及びラセミ混合物、単一の鏡像異性体、個々のジアステレオマー、ジアステレオマー混合物、ならびにシスまたはトランス異性体の形態として生じ得る。そのような異性体が全て、企図される。
【0054】
上述のように、これらの脂質様化合物は、タンパク質または核酸の送達に有用である。それらは、予めin vitroアッセイで医薬品を送達する効果についてスクリーニングし、次に、動物実験及び臨床試験で確認することができる。他の方法もまた、当業者らには明らかであろう。
【0055】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、脂質様化合物は、複合体、例えば、ナノ複合体及びマイクロ粒子、を形成することによりタンパク質または核酸の送達を促進する。正荷電または負荷電の、そのような脂質様化合物の親水性頭部は、反対に荷電したタンパク質または核酸の部分に結合し、その疎水性部分は、タンパク質または核酸の疎水性部分に結合する。いずれの結合も、共有結合または非共有結合であり得る。
【0056】
上記の複合体は、Wang et al.,ACS Synthetic Biology,2012,1,403-407などの刊行物に記載される手順を使用して調製することができる。一般に、それらは、酢酸ナトリウム緩衝液またはリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)などの緩衝液中で、脂質様化合物及びタンパク質または核酸をインキュベートすることにより得られる。
【0057】
さらに、上述の脂質様化合物から形成されるナノ複合体及びタンパク質または核酸を含有する医薬組成物は、本発明により網羅される。さらに、脂質様化合物は、非共有相互作用、共有結合、またはその両方を介してタンパク質または核酸に結合する。
【0058】
タンパク質または核酸の例としては、クラスター化された規則的な間隔の短い回文構造反復に関連するタンパク質9(CRISPR/Cas9)、Creリコンビナーゼ((-30)GFP-Cre)、及びCas9:単一ガイドRNA(Cas9:sgRNA)リボ核タンパク質(RNP)またはCas9:sgRNA RNPが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
さらに、上記の医薬組成物を用いる、病状、例えば、肺疾患の処置方法は、本発明の範囲内にある。方法は、それを必要とする対象(例えば、患者)に、有効量の医薬組成物を投与することを含む。
【0060】
「有効量」という用語は、処置対象に治療効果を与えるのに必要な複合体の量を指す。当業者らにより認識されるような有効用量は、処置される疾患のタイプ、投与経路、賦形剤の使用、及び他の治療的処置との併用の可能性に応じて変動するであろう。
【0061】
本発明の方法を実施するために、上記の複合体を有する組成物は、非経口的、経口的、経鼻的、直腸的、局所的、または口腔的に投与することができる。本明細書で使用される「非経口」という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、病巣内、または頭蓋内注射、及び任意の好適な注入手法を指す。
【0062】
無菌の注射可能な組成物は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の溶液または懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液、であり得る。用いることができる許容可能なビヒクル及び溶媒の中には、マンニトール、水、リンガー溶液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体(例えば、合成モノグリセリドまたはジグリセリド)として従来用いられる。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、注射可能薬物の調製において有用であり、特に、ポリオキシエチル化バージョンにおける、オリーブ油またはヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油も同様である。これらの油性溶液または懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤もしくは分散剤、カルボキシメチルセルロース、または同様の分散剤を含み得る。TweensもしくはSpansなどの他の一般に使用される界面活性剤、または薬学的に許容される固体、液体、または他の剤形の製造に一般に使用される他の同様の乳化剤もしくはバイオアベイラビリティーエンハンサーは、製剤のために使用することもできる。
【0063】
経口投与のための組成物は、カプセル剤、錠剤、エマルション及び水性懸濁液、分散液、ならびに液剤を含む経口的に許容される任意の剤形であり得る。錠剤の場合、一般に使用される担体は、ラクトース及びコーンスターチを含む。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も通常添加される。カプセル形態での経口投与のために、有用な希釈剤は、ラクトース及び乾燥コーンスターチを含む。水性懸濁液またはエマルションが経口投与される時、有効成分は、乳化剤または懸濁剤と組み合わせた油相に懸濁または溶解することができる。必要に応じて、特定の甘味剤、香味剤、または着色剤を添加することができる。
【0064】
経鼻エアゾールまたは吸入組成物は、医薬製剤の技術分野で周知の手法に従って調製することができる。例えば、そのような組成物を生理食塩水中の溶液として調製して、ベンジルアルコールまたは他の好適な防腐剤、バイオアベイラビリティーを促進する吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/または当該技術分野で既知の他の可溶化剤もしくは分散剤を用いることができる。
【0065】
ナノ複合体を含有する組成物はまた、直腸投与用の坐剤の形態で投与することができる。
【実施例】
【0066】
さらに詳述することなく、当業者は、上記の説明に基づいて、本発明を最大限に利用することができると考えられる。それ故、以下の特定の例は、単なる例示であると解釈されるべきであり、いかなる方法でも、本開示の残りの部分を限定するものではない。
【0067】
方法及び材料
概要
リピドイド合成に使用される全ての化学物質を、別途記載のない限り、さらに精製せずに、Sigma-Aldrichから購入した。(-30)GFP-Creリコンビナーゼ、S.pyogenes Cas9(spCas9)、及びsgRNAを、Wang at al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2016,113,2868-2873(“Wang”)に報告されるプロトコールに従って生成した。10%のウシ胎児血清(FBS、Sigma-Aldrich)及び1%のペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Sigma-Aldrich)中で、HeLa-DsRed及びGFP-HEK細胞を培養した。全ての1H NMRスペクトルは、フーリエ変換モードで動作するBruker AVIII 500MHz NMR分光計で記録された。ナノ粒子の流体力学的サイズ及び多分散性指数を、ゼータ-PALS粒径分析器(Brookhaven Instruments)で測定した。Heyes et al.,J.Controlled Release,2005,107,276-287に報告されるプロトコールに従って、蛍光プローブとして2-(p-トルイジニナフタレン-6-スルホン酸)(TNS、Sigma-Aldrich)を使用して、リピドイドの見かけのpKa値を決定した。TEM測定をFEI Technai透過型電子顕微鏡で実施した。BZ-X分析器蛍光顕微鏡を使用して、組織スライスの蛍光画像を取得した。
【0068】
脂質様化合物(すなわち、リピドイド)の合成
ねじ蓋式テフロンライニングガラスバイアル中で、頭部アミン(Sigma-Aldrich)をアクリラート尾部(例えば、O17O、O17S、及びO17Se)と1:2.4のモル比、70℃で48時間混合した。Teledyne Iscoクロマトグラフィーシステムを使用して、粗生成物を精製した。
【0069】
式(I)の脂質様化合物の1つのクラスは、以下に示される合成経路に従って合成された。
【化44】
【0070】
上記のスキームに示される頭部アミンR
a-NH
2を、化合物10、17、63、75~78、80~82、87、90、93、103、304、306、及び400から選択した。
【化45】
【0071】
式(I)の51の例示的な脂質様化合物(「リピドイド」)のコード、化学式、及び分析データ(ESI-MS)が下表に示される。各リピドイドが、X-O17Yとしてコード化され、Xが、アミノ化合物の数を表し、Yが、O、S、またはSeを表すことに留意すべきである。コードX-O17Yは、リピドイドが、化合物Xのアミン及びO17Y(Yは、O、S、またはSeである)の脂質分子から形成されることを示す。
【0072】
例えば、リピドイド10-O17Oは、以下の通り、アミン化合物10及び脂質分子O17Oから形成される。
【化46】
【0073】
下表の各コードは、O17O、O17S、またはO17Seを含有し、これは、以下の3つの分子のうちの1つを表す。
【化47】
【0074】
式(I)の脂質様化合物の別のクラスは、以下に示される合成経路に従って合成された。
【化48】
【0075】
さらに、上記のスキームに示される頭部アミンRa-NH2を、化合物10、17、63、75~78、80~82、87、90、93、103、304、306、及び400から選択した。
【0076】
式(I)の脂質様化合物のさらに別のクラスは、以下に示される合成経路に従って合成された。
【化49】
【0077】
上記のスキームに示される頭部アミンRa-NH2を、化合物10、17、63、75~78、80~82、87、90、93、103、304、306、及び400から選択した。
【0078】
リピドイド及びタンパク質からのナノ複合体の作製。
リピドイドを、タンパク質または核酸を送達するためのナノ粒子に加工した。要約すると、リピドイドを酢酸ナトリウム緩衝液(25mM、pH5.2)と混合し、超音波浴中で30分間超音波処理し、続いて、さらに30分間激しくボルテックスして、脂質様ナノ粒子またはLNPに形成した。こうして得られたLNPを4℃で保存した。タンパク質/LNP複合体化のために、PBS緩衝液(25mM、pH7.4)中でLNPを、Wangに報告されるプロトコールに従って(-30)GFP-CreまたはCas9:sgRNAと混合し、室温で30分間インキュベートした。
【0079】
リン脂質二重層膜破壊の評価
ヒト赤血球(hRBC)をPBS緩衝液で3回洗浄し、1000rpmで5分間遠心分離した後、回収した。得られた貯蔵液(約10%v/vのhRBC)をPBS緩衝液中で3倍に希釈して、アッセイ溶液を得た。90μLのアッセイ溶液を10μLのLNP溶液(リピドイドの最終濃度=3.3mg/L)と混合し、37℃で60分間インキュベートした。次に、試料を再度1000rpmで10分間遠心分離した。10μLの上清を90μLのPBS緩衝液にさらに希釈し、マイクロプレートリーダーを使用して、405nmでの吸光度(OD405)が記録された。PBS緩衝液及びTriton X-100(1%v/v)を、それぞれ陰性対照及び陽性対照として使用した。
【0080】
(-30)GFP-Cre/LNPの細胞内送達
細胞内取り込み研究では、HeLa-DsRed細胞を2×104細胞/ウェルの密度で48ウェルプレートに播種した。37℃、5%のCO2で24時間インキュベートした後、(-30)GFP-Cre/LNPナノ粒子を細胞に添加し、蛍光顕微鏡及びフローサイトメトリー(BD FACS Calibur、BD Science、カリフォルニア)分析(GFPの緑色発光)前に6時間インキュベートした。最終(-30)GFP-Creタンパク質濃度は、25nMであり、リピドイド濃度は、3.3mg/Lである。遺伝子組み換え機能研究のために、HeLa-DsRed細胞を同じ条件で処置し、送達の24時間後にフローサイトメトリーにより、DsRedの赤色蛍光発光を分析した。
【0081】
Cas9:sgRNA/LNPの細胞内送達
CRISPR/Cas9遺伝子ノックアウト研究では、GFP-HEK細胞を2×104細胞/ウェルの密度で48ウェルプレートに播種した。24時間のインキュベーション後、Cas9:sgRNA/LNPナノ粒子を細胞に添加し、4時間インキュベートし、続いて、培地を交換した。48時間のインキュベーション後、GFPからの緑色発光をフローサイトメトリーで分析した。最終Cas9:sgRNA RNP濃度は、25nMであり、リピドイド濃度は、3.3mg/Lであった。
【0082】
in vitro細胞毒性アッセイ。
細胞生存率を標準MTTアッセイで測定した。HeLa-DsRedまたはGFP-HEK細胞を5×103細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種した。(-30)GFP-Cre/LNPまたはCas9:sgRNA/LNPナノ粒子を、24時間のインキュベーション後に添加した。タンパク質の最終濃度は、25nMであり、LNPは、3.3mg/Lである。24時間または48時間インキュベートした後、MTT試薬(30μLのPBS緩衝液中の5mg/mL)を添加し、細胞を37℃でさらに4時間インキュベートした。次に、細胞培地を慎重に除去し、200μLのDMSOを添加した。DMSO溶液を別の96ウェルプレートに移し、570nmでの吸光度がマイクロプレートリーダーで記録された。全ての実験を4回ずつ実施した。
【0083】
Ai14マウスへのin vivoタンパク質送達
配合されたLNP(リピドイド/コレステロール/DOPE/DSPE-PEG2k=16/4/1/4、重量比)をタンパク質の搭載及びマウスへの注射のために調製した。12時間の明/暗サイクルの、温度及び湿度が制御された施設に、Ai14マウスを収容した。各群の2匹のマウスに、0日目及び5日目に(-30)GFP-Cre/LNP製剤を注射した(各注射に対して100μgのタンパク質)。全ての群から心臓、肝臓、脾臓、肺、及び腎臓を含む器官を注射の20日後に収集した。組織を4%のパラホルムアルデヒド(PFA)で一晩固定した後、10μmのスライスに切断した。スライスを収集し、蛍光イメージングのためにDAPIで染色した。
【0084】
実施例1:脂質様ナノ粒子(LNP)の調製及び特性決定
下記の手順に従って、式(I)の脂質様化合物、すなわち、リピドイドから、特定の脂質様ナノ粒子(LNP)を調製した。
【0085】
O17Oの合成
O17Oを合成するために、以下のスキームに従った。
【化50】
【0086】
水素化ナトリウム(0.72g、30mmol)をエチレングリコール(5.6g、90mmol)の無水DMF(30mL)溶液に添加し、0℃で10分間撹拌した。次に、1-ブロモテトラデカン(6.0g、20mmol)及びKI(3.3g、20mmol)を添加し、反応混合物を95℃でさらに4時間維持した。室温に冷却した後、混合物を冷水で希釈し、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。移動相としてn-ヘキサン/酢酸エチルを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製の後、化合物1(3.3g、収率約65%)を得た。次に、化合物1(3.3g、12.8mmol)及びトリエチルアミン(TEA、1.9g、19.2mmol)を無水DCM(80mL)に溶解させた。塩化アクリロイル(1.4g、15.4mmol)を0℃で滴加し、反応混合物を一晩撹拌した。カラムクロマトグラフィー精製後、O17Oを無色油として得た(3.2g、収率約82%)。O17Oの構造をCDCl3中で記録された1H NMRスペクトルで確認した。
【0087】
O17Sの合成
O17Sを合成するために、以下のスキームに従った。
【化51】
【0088】
2-メルカプトエタノール(1.1g、14mmol)のアセトニトリル(20mL)溶液に、1-ブロモテトラデカン(5.0g、18mmol)及び炭酸カリウム(3.6g、26mmol)を添加した。反応溶液を40℃で一晩撹拌し、濾過し、濃縮した。移動相としてn-ヘキサン/酢酸エチルを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製の後、化合物2(1.8g、収率約48%)を得た。O17Oの調製と同様の方法で、O17Sを合成し、油状液体として精製した(3.5g、収率約75%)。O17Sの構造をCDCl3中で記録された1H NMRスペクトルで確認した。
【0089】
O17Seの合成
O17Seを合成するために、以下のスキームに従った。
【化52】
【0090】
セレノシアン酸カリウム(1.5g、10mmol)を2-ブロモエタノール(1.6g、13mmol)のアセトン(50mL)溶液に室温で少しずつ添加した。溶液を2時間加熱還流した。室温に冷却した後、白色沈殿物を濾別し、アセトンを真空下のロータリーエバポレーションで除去した。次に、化合物3をエタノール(25mL)に溶解させ、水素化ホウ素ナトリウム(0.9g、24mmol)を0℃で徐々に添加した。反応液が無色になった後、滴下ロートを通して、1-ブロモテトラデカン(4.1g、15mmol)を添加した。30分後にDI水(10mL)を添加することにより、反応を停止させた。次に、エタノールを減圧下で除去し、反応混合物を飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で希釈し、DCM(3×50mL)で抽出した。溶出液としてn-ヘキサン/酢酸エチルを使用するシリカゲルのカラムクロマトグラフィー精製後に、化合物5(1.5g、収率約46%)を得た。O17O及びO17Sの調製と類似の方法で、O17Seを油状液体として得た(2.7g、収率約72%)。O17Seの構造をCDCl3中で記録された1H NMRスペクトルで確認した。
【0091】
リピドイド合成
市販のアミン頭部、例えば、化合物10、17、及び63を化学量論的にアクリラート尾部O17O、O17S、またはO17Seと混合した。こうして得られた混合物を70℃で48時間撹拌した。
図1を参照のこと。リピドイドをTeledyne Iscoクロマトグラフィーシステムで精製し、
1H NMR及びESI-MSにより特性決定し、上表に示されるように、アミン価(X)及びO17Y(R-O17Y、Yは、O、SまたはSeである)としてコード化した。76-O17O、76-O-17S、及び76-O17Seの代表的な
1H NMR及びESI-MSスペクトルは、
図2a及び2bに示される。
【0092】
リピドイドナノ粒子の作製及び特性決定。
上記の簡単な超音波処理及びボルテックス手順に従って、酢酸ナトリウム緩衝液(25mM、pH5.2)中で、リピドイドナノ粒子(LNP)を作製した。LNPの流体力学的サイズ及び多分散性指数(PDI)を動的レーザー散乱(DLS)分析で測定した。
図2cに示されるように、O、S、及びSeエーテル含有LNPのほとんどは、100~300nmの平均された流体力学的直径(<D
h>)及び細胞内タンパク質送達用途に適する0.1~0.3の範囲のPDIを有した。さらに、
図2cにも示されるように、取り込まれたカルコゲン原子が水溶液中での超分子自己集合挙動に及ぼす影響に起因して、O17O尾部を含むLNPの約53%、O17S LNPの約82%、及びO17Se LNPの約65%が、200nm未満の<D
h>を有することが判明した。76-O17O(<D
h>は170.1nmであり、μ
2/Г
2は0.37である)、76-O17S(<D
h>は114.3nmであり、μ
2/Г
2は0.24である)、及び76-O17Se(<D
h>は129.4nmであり、μ
2/Г
2は0.18である)LNPの代表的なサイズ分布プロファイルは、
図2dに示される。
【0093】
さらに、LNPの形態を透過型電子顕微鏡(TEM)で研究した。
図3aに示されるように、球状粒子は、76-O17O、76-O17S、及び76-O17Se LNPの画像で観察され、測定された数平均サイズ(76-O17O、76-O17S、及び76-O17Seに対してそれぞれ145nm、94nm、及び133nm)は、DLSで決定されるような流体力学的直径に相当する。
図2dを参照のこと。80-O17O、80-O17S、及び80-O17Seを含む他のLNPの形態をTEM画像でも調査し、これは、球形微粒子の存在を示す。続いて、こうして調製されたLNPの安定性をDLS及び蛍光測定で調査した。
図3bに示されるように、時間依存性のDLS測定により、76-O17O、76-O17S、及び76-O17Se LNPの明らかな凝集が室温での5日間の保管中に生じず、相対的なサイズの変化は、±15%未満であることが明らかになった。
図3cに示されるように、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)ペア、DiO、及びDiI、搭載された76-O17Se LNPはまた、5日間の保管で、FRET比(I
575/(I
575+I
505))のわずかな変動も示し、これは、LNPの構造完全性及び長期保存安定性を示した。
【0094】
実施例2:タンパク質送達のためのLNPの評価
以下のように、タンパク質送達への実施例1で調製されたLNPの影響を評価する研究を実施した。
【0095】
タンパク質送達のためのLNPのin vitroスクリーニング
負に過剰に荷電したGFP多様体に融合しているCreリコンビナーゼタンパク質((-30)GFP-Cre)をモデルカーゴタンパク質として使用した。(-30)GFP-Creタンパク質は、静電引力及び他のタイプの超分子相互作用を介して、カチオン性LNPと複合体化することが可能であった。LNPの細胞取り込みは、Wangで報告されるような細胞内GFP蛍光強度の直接分析で決定することができる。HeLa-DsRed細胞をこの研究で使用し、これは、以下の研究で送達されたタンパク質の機能研究を容易にするために、Cre媒介性組み換えによる赤色蛍光DsRedを発現した。
【0096】
最初に、周囲条件で、事前に計算された量のLNP及びタンパク質の水溶液を単純に混合することにより(-30)GFP-Creタンパク質搭載LNP(GFP-Cre/LNP)を調製した。細胞内送達の場合、GFP-Cre/LNPナノ粒子と6時間インキュベートした後、蛍光顕微鏡を使用して、GFP陽性細胞を観察し、採取し、フローサイトメトリーで計数した。
図4aに示されるように、対照群、すなわち、未処置のHeLa-DsRed細胞と比較すると、鮮緑色蛍光発光が、GFP-Cre/Lpf2k(Lpf2kは、市販のトランスフェクション剤であるLipofectamine 2000)、GFP-Cre/76-O17O、GFP-Cre/76-O17S、及びGFP-Cre/76-O17Seで処置された細胞から観察された。しかし、ネイキッドタンパク質(-30)GFP-Creで処置された細胞は、脂質促進送達システムと比較して、ごくわずかな蛍光発光を示し、これは、ネイキッド(-30)GFP-Creタンパク質がHeLa-DsRed細胞に効率的に入ることができないことを示した。さらに、細胞内(-30)GFP-Creタンパク質送達効率をフローサイトメトリーで定量した。
図4bに示されるように、ネイキッド(-30)GFP-Creタンパク質及び対照群の両方が、GFP陽性細胞の低い割合を示した。これは、
図4aにされる蛍光顕微鏡の結果と一致する。
【0097】
他方では、LNPの存在下では、GFP陽性細胞の割合が増加し、4~42%の範囲にあり、それらのほとんどが約12~18%であった。LNPの送達効率は、Lpf2kのものに相当した(GFP陽性細胞の約31%)。例えば、(-30)GFP-Creタンパク質搭載400-O17Se、80-O17Se、及び77-O17Se LNPで処置されたGFP陽性細胞の割合は、それぞれ42%、39%、及び37%であることが判明した。
【0098】
構造活性相関の調査。
こうして調製された51のO、S、及びSeエーテル含有リピドイドのライブラリーを利用して、LNP及び細胞内タンパク質送達効果間の構造活性相関を研究した。
【0099】
より具体的には、(-30)GFP-Creタンパク質/LNPナノ粒子で処置された20%を超えるGFP陽性細胞を有するリピドイドが、バルクLNP(黒色データポイント)と比較した効果的なLNP(
図4bの赤色データポイント)と定義された。次に、リピドイドライブラリーは、疎水性尾部構造(O17O、O17S、及びO17Se)に従って3つの群に分類され;各尾部は、ライブラリーの33.3%を占めていた。効果的なLNP群では、リピドイドの21.4%、28.6%、及び50%が、それぞれO17O、O17S、及びO17Se尾部を有していた。それ故、O17O、O17S、及びO17Se尾部を有するLNPの相対ヒット率は、初期ライブラリーに対して、それぞれ-11.9%、-4.7%、及び16.7%であった(
図4c)。換言すれば、20%を超える送達効果を有するO17O及びO17S尾部を有するリピドイドは、LNP間で有意に過小に表示されたが、O17Se尾部を有するリピドイドは、過大に表示され、O17Se尾部が効果的なLNPと関連していたことを示唆した。
【0100】
LNPの送達効率は、アミン頭部の化学構造、疎水性尾部、置換数、及び見かけのpKa値に関連していることが判明した。この研究では、O、S、Seエーテル含有リピドイドの構造活性相関をさらに解明するために、LNPの見かけのpKa値及びリン脂質二重層膜破壊能の影響をさらに分析した。蛍光プローブとして2-(p-トルイジニル)ナフタレン-6-スルホン酸(TNS)を使用する以前に報告された手順に従って、見かけのpKa値を測定した。
【0101】
モデルとしてのヒト赤血球(hRBC)及び発色団レポーター剤としてのヘモグロビンを使用して、LNPのリン脂質二重層膜破壊能を評価した。それぞれ陰性対照及び陽性対照としてPBS緩衝液及びTriton X-100(1%v/v)を使用して、放出されたヘモグロビンの量を評価するために、405nmでの吸光度(OD405)が記録された。より高いOD405値は、より強い膜破壊能を示す。
図5a及び5bに示されるように、LNPの見かけのpKa及びOD405値を、各LNPについて、GFP陽性細胞のパーセンテージに対してプロットし、効果的なナノ粒子(20%を超えるGFP陽性細胞を有する)のほとんどが、pKa>5.1及びOD405>0.2の領域にあることが判明した(
図5a及び5bにおいて青色破線で導かれる)。さらなる試験の後、これらの2つの特性が、HeLa-DsRed細胞における(-30)GFP-Creタンパク質トランスフェクション効率に顕著な影響を与えることが判明した。
図5cに示されるように、LNPが特性の両方(すなわち、pKa>5.1及びOD405>0.2)を有する時、高いトランスフェクション効率を媒介することができる相対ヒット率は、77%であった。特性の1つまたは2つがLNPから除去された時、HeLa-DsRed細胞への(-30)GFP-Creタンパク質の高いトランスフェクション効率を達成する可能性は、8~33%に大幅に低下した。
【0102】
さらに、構造活性相関については、O17O、O17S、及びO17Se尾部を有するLNPの場合、上記の効果基準の相対ヒット率は、それぞれ-1.9%/-14.6%、0.99%/4.2%、及び0.99%/10.5%であることが判明した(pKa>5.1/OD405>0.2)。
図5dを参照のこと。2つの特性の両方が、O17O尾部を有するLNPの群において過小評価され(これは、
図4cに示される結果と一致する)、O17O尾部が効果的なリピドイドにおいて過少評価されたことが明らかであった。高いpKa値及びOD405値の両方の特性は、O17S及びO17Se尾部を有するLNPの群において過大に表示された。
【0103】
さらに、
図5c及び5dに示される結果によると、これらのLNPの膜破壊能は、HeLa-DsRed細胞へのin vitro(-30)GFP-Creタンパク質送達効率を決定する際に、見かけのpKa値と比較して、より影響力のある要因であるようにみえた。
【0104】
実施例3:遺伝子組み換え及び細胞毒性のための(-30)GFP-Creタンパク質送達
以下のように、遺伝子組み換え及び細胞毒性について、(-30)GFP-Creタンパク質送達への実施例1で調製されたLNPの影響を評価する研究を実施した。
【0105】
さらに、HeLa-DsRedモデル細胞を使用して、細胞内送達スクリーニング実験を通して同定されたLNPの上位12を遺伝子組み換えについて試験した。遊離(-30)GFP-Creタンパク質及びタンパク質搭載LNPと共に24時間共インキュベートした後に、Creタンパク質媒介性遺伝子組み換えからのDsRedの発現を分析した。
図6aに示されるように、ネイキッド(-30)GFP-Creタンパク質は、内在化能が低いために、DsRedの発現を誘導しなかった。これは、
図4aで実証された蛍光顕微鏡観察及びフローサイトメトリー分析と一致する。他方では、試験LNPのほとんどは、(-30)GFP-Creタンパク質を効率的に送達し、遺伝子組み換えを誘発し、細胞の14~46%が、DsRed陽性であった。
【0106】
より具体的には、特定のLNPは、高いタンパク質トランスフェクション効率、すなわち、76-O17S(40.8%)、76-O17Se(36.1%)、77-O17S(38.6%)、77-O17Se(31.0%)、78-O17Se(37.8%)、及び80-O17S(45.6%)を示した。これらのLNPは、Lpf2k(33.5%)と比較した場合に、より高いまたは同様のトランスフェクション効率を示した。
【0107】
HeLa-DsRed細胞に対するMTTアッセイを通じて、76-O17S、76-O17Se、77-O17S、及び77-O17Se LNPは、Lpf2k、400-O17Se、78-O17Se、80-O17S、及び80-O17Seと比較して、80%を超える細胞が生存していたので、低い細胞毒性を示し、細胞生存率は、67~77%であった。
図6bを参照のこと。
【0108】
これらの結果は、76-O17S、76-O17Se、77-O17S、及び77-O17Seが高い細胞内タンパク質送達及びCre媒介性ゲノム組み換え効果を示し、細胞毒性がLpf2kよりも低いことを示す。
【0109】
実施例4:Ai14マウスにおける遺伝子組み換えのためのin vivo GFP-Cre送達
以下のように、Ai14マウスにおける遺伝子組み換えのためのGFP-Cre送達への実施例1で調製されたLNPの影響を評価する研究を実施した。
【0110】
ゲノム編集タンパク質をin vivoで送達することは、広範な遺伝性疾患を処置するための治療上の可能性を有する。in vitroスクリーニングの結果に基づいて、Cre媒介性遺伝子組み換えのためのin vivoでの(-30)GFP-Creタンパク質の送達への、上記のO、S、及びSeエーテル含有LNPの効果を評価するために、この研究を行った。
【0111】
研究は、Ai14マウスモデルを使用し、これは、赤色蛍光タンパク質であるtdTomatoの転写を妨げる遺伝的に統合されたloxPが側面に位置するSTOPカセットを有した。Cre媒介性遺伝子組み換え時に、STOPカセットを除去して、tdTomatoの発現を生じさせた。カーゴ搭載LNPのin vitro及びin vivoでの異なる性能を考慮して、同じアミン頭部及び異なる尾部(76-O17O、76-O17S、及び76-O17Se)を有する3つのLNPをこの研究で試験した。配合されたLNP(リピドイド/コレステロール/DOPE/DSPE-PEG2k=16/4/1/4、重量比)を調製した。0日目及び5日目に、マウスに(-30)GFP-Cre搭載配合LNP(GFP-Cre/76-O17O、GFP-Cre/76-O17S、及びGFP-Cre/76-O17Se)を注射(静脈内注射)した(各注射に対して100μgのタンパク質)。tdTomatoの発現を測定及び分析するために、心臓、肝臓、脾臓、肺、及び腎臓を含む器官を20日目に収集した。
図7に示されるように、同じ調製及びイメージング条件下で、GFP-Cre/76-O17S及びGFP-Cre/76-O17Seが注射されたマウス由来の肺の切片において、強いtdTomatoシグナルが観察された。より低い倍率及びより大きな実視野の蛍光画像が得られた。GFP/76-O17S及びGFP/76-O17Se注射は、対照群及びGFP/76-O17Oで処置された群と比較して、肺でCre媒介性ゲノム組み換えを効率的に誘導することが予想外に観察された。それ故、本発明のLNPを含有する組成物は、肺疾患の処置に有用である。
【0112】
特に、in vitroスクリーニング結果及びin vivo試験の両方は、同じアミン頭部及び異なる疎水性尾部を有するリピドイドが非常に異なる物理化学的特性、細胞内送達効果、及びゲノム組み換えプロファイルを有することを示した。
【0113】
実施例5:ゲノム改変のためのCas9:sgRNA RNPの送達
以下のように、ゲノム改変のためのCas9:sgRNA RNPの送達への実施例1で調製されたLNPの影響を評価する研究を実施した。
【0114】
この研究では、Cas9:sgRNA RNPターゲティングゲノムGFPレポーター遺伝子及びGFP-HEK細胞を使用した。Cas9:sgRNA搭載LNPの形態をTEMで調査し、Cas9:sgRNA搭載76-O17Se LNP(Cas9:sgRNA/76-O17Se)の代表的な画像を得た。細胞内送達では、Cas9:sgRNA/LNPナノ複合体で48時間処置した後、GFP-HEK細胞を採取した。さらに、GFP遺伝子ノックアウト効果をフローサイトメトリーで評価した。
図8aに示されるように、ネイキッドCas9:sgRNA RNPは、GFP遺伝子ノックアウトを誘発しなかったが、Cas9:sgRNA/Lpf2kのノックアウト効率は比較的高く、GFP陰性細胞の63%であった。O、S、及びSeエーテル含有LNPを送達ビヒクルとして使用する時、GFP-HEK細胞は、14%~58%のGFP発現の損失を示した。特に、細胞を、76-O17Se、80-O17Se、81-O17Se、及び400-O17Se LNP搭載Cas9:sgRNAで処置した時、GFPノックアウトの50.2%、57.7%、54.7%、及び57.4%が観察された。これらのリピドイドは、HeLa-DsRed細胞におけるCreタンパク質の遺伝子組み換え及びGFP-HEK細胞におけるCas9:sgRNA RNP送達のGFP遺伝子ノックアウトの結果に基づいて、ゲノム編集タンパク質を異なる哺乳動物細胞株にin vitroで効率的に送達することができる。
【0115】
さらに、GFP-HEK細胞に対するCas9:sgRNA/LNPのin vitro細胞毒性をMTTアッセイで評価した。
図8bに示されるように、Cas9:sgRNA/LNPと37℃で48時間インキュベートした後に、細胞生存率を67%~119%であると決定して、特定のLNPがGFP-HEK細胞に対して非細胞毒性であったが、一部が、同じ実験条件下で、Lpf2k(細胞生存率約66%)と同じ細胞生存率を示すことが示された。高いCas9:sgRNA送達効率を有する2つのLNP、すなわち、80-O17Se及び400-O17Seは、Lpf2kの細胞生存率と同様の細胞生存率、すなわち、80-O17Se及び400-O17Seに対してそれぞれ68.2%及び66.7%の細胞生存率を示すことも観察された。予想外に、76-O17Se及び81-O17Se LNPは、高いCas9:sgRNAトランスフェクション効率(50.2%及び54.7%)ならびに低い細胞毒性(48時間のインキュベーション後の細胞生存率が76.3%及び97.7%)を示した。
【0116】
式(I)の脂質様化合物から形成されるLNPが、高いタンパク質トランスフェクション効率及び低い細胞毒性を示したことをこれらの結果は示す。
【0117】
方法及び材料
ブランク及びカーゴ搭載リピドイドナノ粒子の調製
リピドイドを全ての送達用途のためのナノ粒子に加工した。要約すると、リピドイドを酢酸ナトリウム緩衝液(25mM、pH5.2)と混合し、超音波浴中で30分間超音波処理し、続いて、さらに30分間激しくボルテックスした。調製したままのブランクLNPを4℃で保存した。Cy5-RNA/LNP、mRNA/LNP、及びタンパク質/LNPの複合体化では、本発明者らが以前に報告した手順に従って、PBS緩衝液(pH7.4)中で、ブランクリピドイドナノ粒子をRNA分子または(-30)GFP-Creタンパク質と混合し、使用前にさらに30分間、室温でインキュベートした。ナイルレッドのカプセル化の代表的な手順は、以下の通りである:アセトン中の5μLのナイルレッド貯蔵液を空のバイアルに添加し、次に、これを真空オーブンに入れて、有機溶媒を完全に除去した。次に、所定量のブランクLNP貯蔵液(1.0mg/mL)をバイアルに添加した。混合物を超音波浴中で40分間超音波処理し、室温で一晩撹拌した。必要に応じてPBSで希釈することにより、チオール誘発放出研究及び細胞インキュベーションのために、ナイルレッドの最終濃度を、それぞれ6.6×10-7mol L-1及び6×10-7mol L-1に調整した。CPT及びDiO/DiI FRETペアのカプセル化の代表的な手順は、以下の通りである:MeOH中の100μLのDiO/DiI貯蔵液を空のバイアルに入れ、真空オーブンに入れて有機溶媒を除去した。次に、200μLのメタノール中のリピドイド(2.0mg)をバイアルに添加し、撹拌して均質溶液を生成した。次に、継続的に撹拌しながら、600μLのDI水を10分滴加した。得られた混合物をDI水に対して24時間透析し(Thermo Scientific Slide-A-Lyzer透析カセット、MWCO=3500Da)、新しい水を4時間毎に交換した。カルセイン及びドキソノルビシン塩酸塩のカプセル化のための代表的な手順は、次の通りである:事前に計算された量のカルセインまたはDI水中のDox貯蔵液を酢酸ナトリウム緩衝液で800μLに希釈し、それぞれ、メタノール(5mg/mL)中でリピドイドの自己組織化プロセスを誘発するために選択溶媒として使用した。搭載されなかったカルセインまたはDoxを、DI水に対する透析により除去した(Thermo Scientific Slide-A-Lyzer透析カセット、MWCO=3500Da)。
【0118】
カーゴ搭載リピドイドナノ粒子の細胞内送達
細胞内取り込み研究では、HeLaまたはHeLa-DsRed細胞を、2×104細胞/ウェルの初期播種密度で48ウェルプレートに播種した。37℃、5%のCO2で24時間インキュベートした後、NRまたは(-30)GFP-Cre搭載ナノ粒子を細胞に添加し、蛍光顕微鏡(BZ-X分析器)観察及びフローサイトメトリー(BD FACS Calibur、BD Science、カリフォルニア)分析(NRの赤色蛍光発光及びGFPの緑色蛍光発光)前に一定時間(1~8時間)インキュベートした。NRの最終濃度は、6×10-7mol L-1である。(-30)GFP-Creタンパク質濃度の最終濃度は、25~100×10-9mol L-1である。低分子抗がん剤送達では、HeLa細胞を、5×103細胞/ウェルの初期播種密度で96ウェルプレートに播種した。37℃、5%のCO2で24時間インキュベートした後、Dox、CPT、またはOxa搭載ナノ粒子を細胞に添加し、8時間インキュベートし、続いて、培地交換を行った。次に、細胞生存率分析の前に、細胞をさらに40時間インキュベートした。mRNA送達では、HeLa、B16F10、HEK293、NIH3T3、またはJurkat細胞を、2×104細胞/ウェルの初期播種密度で48ウェルプレートに播種した。37℃、5%のCO2で24時間インキュベートした後、mRNA搭載ナノ粒子を細胞に添加し、蛍光顕微鏡及びフローサイトメトリー分析の前にさらに24時間インキュベートした。タンパク質送達では、HeLa-DsRed細胞を、2×104細胞/ウェルの初期播種密度で48ウェルプレートに播種した。37℃、5%のCO2で24時間インキュベートした後、(-30)GFP-Creタンパク質搭載ナノ粒子を細胞に添加し、8時間インキュベートし、続いて、完全培地交換を行った。次に、蛍光顕微鏡及びフローサイトメトリー分析前に、細胞をさらに16時間(合計24時間のインキュベーション)インキュベートした。
【0119】
in vitro及びin vivo毒性アッセイ
標準のMTTアッセイを使用して、HeLa及びHeLa-DsRedの細胞生存率を測定した。96ウェルプレート中で、ブランクまたはカーゴ搭載ナノ粒子と共にHeLa細胞またはHeLa-DsRed細胞をインキュベートした後、MTT試薬(30μLのPBS緩衝液中の5mg/mL)を添加し、細胞を37℃でさらに4時間インキュベートした。次に、細胞培養培地を慎重に除去し、200μLのDMSOを各ウェルに添加した。次に、DMSO溶液を清浄な96ウェルプレートに移し、570nmでの吸光度がマイクロプレートリーダーで記録された。全ての実験を4回ずつ実施した。
【0120】
in vivo毒性研究では、1、3、5、7、9、11、13、及び14日目に、未処置の及びナノ粒子が注射されたBalb/cマウス(12時間の明/暗サイクルの、温度及び湿度が制御された施設に収容された)を測定した。製造業者のプロトコールに従って、対応する検出キット(MilliporeSigma)を使用して、腎臓及び肝臓の生物学的機能を血清生化学試験で調査し、クレアチニン、尿素、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の濃度を測定した。
【0121】
Ai14マウスへのin vivoタンパク質及びmRNAの送達
in vitroトランスフェクション研究と同様に、mRNAまたはタンパク質の搭載及びin vivoでの送達のためのリピドイドナノ粒子を調製した。12時間の明/暗サイクルの、温度及び湿度が制御された施設に、Ai14マウスを収容した。各群の3匹のマウスに、Cre mRNA搭載または(-30)GFP-Creタンパク質搭載LNP製剤を(静脈内または筋肉内)注射した。注射後10日目(筋肉内注射)または14日目(静脈内注射)に、全ての群由来の心臓、肝臓、脾臓、肺、及び腎臓を含む臓器を収集した。組織を4%パラホルムアルデヒド(PFA)中で一晩固定し、30%スクロースで脱水した後、OCTで凍結し、10~15μmのスライスに切断した。次に、蛍光イメージングのために、スライスを収集して、DAPIで染色した(BZ-Xアナライザー蛍光顕微鏡法)。
【0122】
実施例6:コレステリルリピドイド合成、ナノ粒子の作製及び特性決定。
【化53】
【0123】
Py-SS-Cholの合成
コレステリルクロロホルメート(10.71g、23.85mmol)を無水DCM(50mL)に溶解させ、PY-SS-NH2(4.47g、23.99mmol)及びTEA(3.71g、36.69mmol)のDCM溶液に0℃で滴加した。反応混合物を一晩撹拌し、移動相として酢酸エチル、ジクロロメタン、及びn-ヘキサンを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製の後、Py-SS-Cholを淡黄色粘性固体(4.89g、収率約34.26%)として得た。
【0124】
OH-SS-Cholの合成
Py-SS-Chol(3.55g、5.93mmol)及び酢酸(600μL)をDCM(100mL)に溶解させた。次に、2-メルカプトエタノール(0.51g、6.52mmol)を滴加し、連続的に撹拌しながら、反応混合物をさらに24時間35℃に維持した。移動相として酢酸エチル及びn-ヘキサンを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーで、OH-SS-Cholを精製し、無色固体を得た(2.74g、収率約81.63%)。
【0125】
OCholBの合成
OH-SS-Chol(2.41g、4.26mmol)及びTEA(0.65g、6.39mmol)を無水DCM(100mL)に溶解させた。塩化アクリロイル(0.46g、5.11mmol)を0℃で滴加した。反応混合物を一晩撹拌し、移動相として、酢酸エチル、ジクロロメタン、及びn-ヘキサンを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製の後に、OCholBを無色固体(2.52g、収率約95.68%)として得た。
【0126】
リピドイドの合成
上に示されたコレステロール含有アクリラート尾部を、頭部アミンR
a-NH
2(すなわち、化合物75~78、80、81、87、90、及び304)と反応させて、以下の脂質様化合物を得た。
【化54-1】
【化54-2】
【化54-3】
【化54-4】
【化54-5】
【0127】
ブランク及びカーゴ搭載リピドイドナノ粒子の調製
リピドイドを全ての送達用途のためのナノ粒子に加工した。
図10Bに示されるように、ほとんどのナノ粒子は、70~300nmの範囲の平均直径及びPDI0.1~0.3を示した。OCholB尾部を有するリピドイドから自己組織化されたLNPのサイズは、本発明者らが以前に報告したアルキル鎖を有するLNPライブラリーと同様である。比較的低いPDI値は、これらのナノ粒子の均一性を示した。
【0128】
次に、OCholBで完全に置換されたLNPの形態を透過型電子顕微鏡(TEM)で調査した。
図10Cに示されるように、親水性の内部コロナ及び外部コロナに挟まれた疎水性の二重層壁を有する中空球状物である球状小胞状構造が、75-OCholB、76-OCholB、77-OCholB、78-OCholB、80-OCholB、81-OCholB、及び304-OCholBから観察された。対照的に、小胞構造は、それらの対応物と比較して、87-OCholB及び90-OCholBによく形成されておらず、その代わりに、非晶質の凝集体が観察された。TEMイメージングにより、最大粒子が81-OCholB(216.9nm)及び304-OCholB(394.0nm)であることが明らかになった。これは、
図10Bに示されるように、DLS測定結果と一致する。
【0129】
OCholBで完全に置換されたLNP(75-OCholB、76-OCholB、及び77-OCholB)ならびにO16B LNP(75-O16B、76-O16B、及び77-O16B)の細胞毒性を種々の条件下、すなわち、標準のMTTアッセイを使用した、HeLa細胞株に対して少ない投薬量/短い曝露時間及び多い投薬量/長い曝露時間、で並べて試験した。
図10Eに示されるように、少ない投薬量/短い曝露時間条件(すなわち、[リピドイド]=1.0または3.3μg mL
-1、曝露時間=8時間)で、全てのOCholB及びO16B LNPは、わずかな細胞毒性を示し、83%を超える細胞生存率が全てのリピドイドについて報告された(例えば、[リピドイド]=3.3μg mL
-1の場合、75-OCholB及び75-O16Bで処置された細胞の生存率は、それぞれ86.5%及び87.7%である)。投薬量及び曝露期間が両方とも増加した時(すなわち、[リピドイド]=47または91μg mL
-1、曝露時間=24時間)、OCholBで完全に置換されたLNPで処置された細胞は、O16B LNPで処置されたものと比較して、有意により高い生存率を示した([リピドイド]=47μg mL
-1の場合、細胞生存率は、75-OCholB/75-O16B=57.4%/41.9%、76-OCholB/76-O16B=65.5%/32.8%、77-OCholB/77-O16B=79.6%/29.0%であり;[リピドイド]=91μg mL
-1の場合、細胞生存率は、75-OCholB/75-O16B=55.1%/29.5%、76-OCholB/76-O16B=60.2%/24.3%、77-OCholB/77-O16B=64.1%/21.9%である)。これらの結果は、コレステリルリピドイドが、線形アルキル鎖を有するリピドイドと比較して、より低い細胞毒性を有することを示す。さらに、本発明者らは、本発明者らの新たに開発されたOCholB LNPの生体適合性を、市販の広く使用されるカチオン性トランスフェクション試薬であるLipofectamine 2000(Lpf2k)と比較した。Lpf2kは、タンパク質及び核酸の両方の送達に非常に効率的であることが示されるが;特に、標的細胞が比較的高い投薬量と長いインキュベーション期間を受ける時、その細胞毒性が多くの場合主要な懸念である。
図10Eに示されるように、HeLa細胞を47及び91μg mL
-1のLpf2kで24時間処置した時、それらの生存率を8.9%及び6.8%と決定し、これは、同じ条件で、OCholB LNPで処置された細胞の生存率よりもはるかに低い。とりわけ、in vitro細胞毒性試験は、新たに開発されたコレステリル含有(OCholB)LNPの優れた生体適合性を実証した。
【0130】
実施例7:ゲスト分子のチオール応答性、搭載、及び誘発放出。
OCholB LNPのチオール誘発性分解及び解離を時間依存性DLS測定及びTEM観察で研究した。通常、
図11Aに示されるように、細胞内還元条件に類似する以前の研究に広く使用される1,4-ジチオスレイトール(DTT)10mMの存在下で、
25本発明者らは、75-OCholB、76-OCholB、及び77-OCholBの相対サイズの増加が、インキュベーション期間に応じて漸進的に増加した(最初の2時間で、それぞれ566.4%、498.5%、及び1591.4%)ことを観察した。次に、ナノ粒子のサイズは通常、75-OCholBを除いて、次の4時間にわたって維持され、これは、6時間でサイズが1315.7%増加したことを示した。次に、DTTで処理されたLNPの代表的な形態をTEMで調査し、画像は
図11Bに示される。
図10Cに示されるような適切に形成された小胞構造の不存在及びアモルファス構造を有するマイクロメートルスケールの大きな凝集体(DLS測定から得られた結果と一致する;
図11A)が、75-OCholB、76-OCholB、及び77-OCholB LNPについて観察された。小胞構造の破壊は、OCholBリピドイドのチオール交換及びジスルフィド結合開裂反応に起因すると考えられる。次に、本発明者らは、血清中のチオール含有分子(例えば、アルブミン、システイン、ホモシステイン、システイニルグリシンなど)が、これらのジスルフィド結合含有LNPの構造的崩壊を誘導し得るかどうかを調査した。血清中に存在した低分子及び高分子の遊離チオールに類似する20μMのL-システイン(Cys)の存在下でのLNPの安定性を調査した。
図11Aに示されるように、本発明者らは、全ての3つの試験LNPのためのこの研究の範囲にわたって1時間間隔のいずれかで、流体力学的直径の25%未満の変化を観察し、実際には、6時間のインキュベーション後の75-OCholB、76-OCholB、及び77-OCholBに対して、それぞれ、12.2%、14.6%、及び7.2%のサイズ減少が観察された。システインで処理されたLNPのサイズ変化は、未処理の対照群と比較した場合、わずかな差異を示し(
図11A)、血清中の遊離チオール濃度に類似する条件下でのOCholB LNPの良好な安定性を示した。さらに、10mMのDTTまたは20μMのCysのいずれかの存在下で24時間インキュベートした後のOCholB LNPの相対的なサイズ変動を決定した。結果が、
図11Cに示される。10mMのDTTで及び24時間の処理後、75-OCholB、78-OCholB、及び304-OCholB LNPは、最大のサイズ変化を示し、平均流体力学的直径の2872.4%、4642.8%、及び3849.6%の増加が観察され;76-OCholB、77-OCholB、80-OCholB、及び81-OCholB LNPについて、766.9%~1266.4%の中程度のサイズ増加が記録されたが;87-OCholB(210.3%)及び90-OCholB(179.5%)の両方は、TEM画像に基づいて一貫した小胞を形成できず(
図10C)、24時間にわたり最小のサイズ増加を示した。他方では、20μMのシステインと共に24時間インキュベートされた全てのLNPは、未処置の対照群と同様に、最小のサイズ変化を示した(
図11C)。これらの結果は、細胞内及び細胞外の還元可能な環境に関連してこれらのOCholB LNPの分解の動態を実証した。サイズ変化の程度は、種々のアミン頭部群を有するリピドイド間で変動し、全てのリピドイドは、システイン(血清中のモデリング条件)よりもDTT(細胞内条件のモデリング)により応答した。さらに、OCholB LNPは、低濃度のチオール(20μMのシステイン処理に類似する)の存在下で比較的良好な安定性を示し、これは、これらの新しいLNPが全身薬物送達に使用することができることを示す。
【0131】
実施例8:OCholB LNPを使用する薬物カプセル化:
次に、様々な物理的特性を有するカーゴ分子をカプセル化するナノキャリアとしてのOCholB LNPの機能を研究した。この文脈では、代表的な低分子疎水性カーゴとしてのクマリン(励起(Ex.)350nm、発光(Em.)448nm)及びナイルレッド(NR;Ex.520nm、Em.613nm)、代表的な低分子親水性カーゴとしてのカルセイン(Ex.475nm、Em.529nm)、ならびに代表的な高分子親水性カーゴとしての(-30)GFP-Cre組み換え蛍光タンパク質(Ex.420nm、Em.510nm)及び二本鎖Cy5標識RNA(Cy5-RNA、13kDa;Ex.625nm、Em.672nm)をモデルカーゴとして使用した。研究では、モデル脂質担体として75-OCholBを選択した。
図11Dは、全てのカーゴを75-OCholB LNPにうまく搭載することができることを示した。疎水性相互作用(クマリン及びNR)、静電相互作用(カルセイン、(-30)GFP-Cre、及びCy5-RNA)、または物理的カプセル化のいずれかにより、カーゴ分子をLNPに搭載した。さらに、
図3Dに示されるように、モデルとして、疎水性蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)ペア、DiO、及びDiI(Ex.425nm、Em.504nm(DiO)、及び578nm(DiI))を使用して、カーゴ分子の同時カプセル化を行うこともでき、これは、併用療法のために、これらのOCholB LNPを使用して複数のタイプの生物活性分子を同時に搭載する可能性を実証する。
30超分子相互作用(例えば、静電相互作用及び水素結合)を利用すること、ならびに/または自己組織化プロセス中にカーゴをカプセル化することにより、低分子及び高分子親水性分子の両方(例えば、ゲノム編集プラットフォーム及び細胞シグナル阻害剤)は、新たに開発されたLNPで、容易に搭載及び送達することができる。
【0132】
次に、ナイルレッドの微環境極性に感受性のある光物理特性を利用するナイルレッド搭載75-OCholB LNP(NR/75-OCholB)を使用することにより、カプセル化カーゴの還元誘発性放出挙動を研究した。
図11Eに示されるように、1mM、5mM、及び10mMのDTTの存在下で、カプセル化されたナイルレッドの33.5%、61.7%、及び67.4%が、2時間以内にナイルレッド/75-OCholB LNPから放出され、6時間のインキュベーションで、それぞれ44.0%、84.2%、及び86.4%が放出された。その間に、20μMのシステインで処置されたNR/75-OCholBは、2時間で4.2%及び6時間で6.9%のナイルレッドを放出し、これは、低濃度のチオールの刺激下で、LNPの上述した最小構造的及び形態学的変化に起因することができる(
図11A及び11C)。さらに、高濃度で自己消光特性を有する親水性蛍光色素であるカルセインの誘発性放出を研究した。
31DTT(1mM、5mM、及び10mM)で処置されたカルセイン/75-OCholB LNPの蛍光強度は、未処置の対照LNP及び20μMのシステインで処置された群の4.7~6.4倍に、12時間のインキュベーション後に増加した(
図11F)。さらに、負荷電高分子カーゴであるCy5-RNAとOCholB LNPの結合親和性を調査した。10/1の重量比(リピドイド/Cy5-RNA)で、RNA分子の82.9%が75-OCholB LNPと効率的に複合化することができるが、結合効果は、DTT(10mM、24時間)で処理されたナノ粒子を使用する時に、15.5%に劇的に低減する(84.5%の未結合Cy5-RNAが決定された場合;
図11G)ことが判明した。さらに、応答性研究と同様に、カーゴ放出プロファイルは、チオール含有試薬の種類及び濃度の両方に依存することができることが合理的である。とりわけ、カーゴが搭載されたOCholB LNPは、低濃度のチオールの存在下で比較的安定しており、種々の物理化学的特性(疎水性/親水性、低/高分子量など)を有するカーゴ分子の誘発性放出挙動を予想することができる。
【0133】
実施例9:内在化研究。
低分子疎水性(ナイルレッド)及び親水性(カルセイン)蛍光色素及び高分子蛍光組み換えタンパク質((-30)GFP-Cre)搭載OCholB LNPを使用して、細胞(HeLa及びHeLa-DsRed細胞株)の内在化研究を行った。最初に、時間依存性DLS及び蛍光測定を使用して、カーゴ搭載LNPの安定性を調査した。
図12Aに示されるように、FRETペアDiO及びDiIカプセル化LNP(DiO-DiI/75-OCholB、DiO-DiI/76-OCholB、及びDiO-DiI/77-OCholB)の蛍光強度は、7日間の保管後にFRET比(I
575/I
575+I
505)のわずかな変動を示した。
【0134】
次に、NR搭載LNP及びHeLa細胞を使用して、OCholB LNPの内在化動力学及び効率を研究した。
図12Bに示されるように、未処置の対照細胞と比較して、NR/LNP(NR/75-OCholB、NR/76-OCholB、及びNR/77-OCholB)と共にインキュベートされた全ての細胞は、経時的に徐々に増加するNR陽性(NR
+)細胞のパーセンテージを示し、これは、NR/LNPの内在化プロセスが、この研究の時間スケールにわたって曝露時間に依存することを意味する。さらに、NR/75-OCholB及びNR/77-OCholBの両方は、同様のNR
+集団成長パターンを示し、4時間の曝露後に成長率を減少させたが(4時間で、NR/75-OCholB、NR/76-OCholB、及びNR/77-OCholBで処置された細胞に対するNR
+パーセンテージは、それぞれ、85.2%、65.0%、及び90.3%である)、一般に、NR/76-OCholBは、NR/75-OCholB及びNR/77-OCholBと比較して、8時間後に、一定の増加率及びより低いNR
+パーセンテージを示した。次に、8時間の曝露後、8つのOCholB LNPの全てのNR送達効率を決定した。
図12Cに示されるように、NR/75-OCholB、NR/76-OCholB、NR/77-OCholB、NR/78-OCholB、及びNR/80-OCholBは、細胞の85.2%、65.0%、90.3%、92.3%、及び71.4%がNR
+と判定される最大送達効率を示し;NR
+細胞の27.0%、12.9%、及び22.8%が、NR/81-OCholB、NR/90-OCholB、及びNR/304-OCholBに対して記録され;NR/87-OCholBは、未処置の対照群に匹敵する最小トランスフェクション効果を示し、これは、87-OCholBが試験条件下でHeLa細胞にNRを効率的に送達することができないことを意味する。NR/LNP(NR/75-OCholB、NR/76-OCholB、及びNR/77-OCholB)で処置されたHeLa細胞の代表的な蛍光画像は、
図12Dに示され、OCholB LNPにより、NRが細胞に送達され、主に、細胞質に分布したことが容易に観察される。次に、負荷電親水性蛍光色素であるカルセインの内在化を研究した。
図12Eに示されるように、8時間の曝露後、遊離カルセイン分子は、効率的に細胞に入ることができず、これは、以前に報告された結果と一致する。遊離カルセインで処置された細胞と比較した場合、平均蛍光強度の約9.4倍が記録されたので、カルセイン/75-OCholBで処置された細胞は、比較的高い緑色蛍光強度を示した。これらの結果は、OCholB LNPが親水性及び疎水性の両方のカーゴ分子の細胞内送達のための効率的なナノキャリアとして役立ち得ることを証明した。次に、モデルシステムとして蛍光組み換え(-30)GFP-Creタンパク質及びHeLa-DsRed細胞を使用して、高分子カーゴの細胞内送達のためのOCholB LNPの使用を調査した。
図12Fに示されるように、ネイキッド(-30)GFP-Creタンパク質が細胞に入ることができず、Lpf2kが(-30)GFP-Cre送達に非常に効率的であることが実証されているので、ネイキッド(-30)GFP-Cre及び(-30)GFP-Cre搭載Lpf2k((-30)GFP-Cre/Lpf2k)を陰性対照及び陽性対照として使用した。一定の脂質/タンパク質比(すなわち、それぞれ、1.7、3.3、及び6.6μg mL
-1の最終脂質濃度を有する送達)を有する広範な(-30)GFP-Creタンパク質濃度(25、50、及び100nM)で、送達効率を試験した。33.2%、43.8%、及び74%のGFP陽性(GFP
+)細胞は、それぞれ、(-30)GFP-Cre濃度25nM、50nM、及び100nMで(-30)GFP-Cre/Lpf2kで処置された細胞について記録された。25nMで(-30)GFP-Cre濃度、(-30)GFP-Cre/76-OCholB(66.4%)、(-30)GFP-Cre/77-OCholB(66.4%)、(-30)GFP-Cre/80-OCholB(54.7%)、及び(-30)GFP-Cre/81-OCholB(40.9%)は全て、(-30)GFP-Cre/Lpf2kよりも高いトランスフェクション効率を示した。より高い(-30)GFP-Cre濃度(すなわち、50nM及び100nM)では、(-30)GFP-Cre/75-OCholB(50nM及び100nMで、それぞれ、42.3%及び93.1%のGFP
+細胞)、(-30)GFP-Cre/76-OCholB(96.3%及び98.7%)、(-30)GFP-Cre/77-OCholB(90.7%及び97.9%)、(-30)GFP-Cre/78-OCholB(46.1%及び90.1%)、(-30)GFP-Cre/80-OCholB(88.9%及び97.0%)、ならびに(-30)GFP-Cre/81-OCholB(87.4%及び91.5%)は、Lpf2kと同等のまたはそれより高いトランスフェクション効果を示し、GFP
+細胞の48.8%を、タンパク質濃度100nMの(-30)GFP-Cre/304-OCholBで処置された細胞から得たが、(-30)GFP-Cre搭載87-OCholB及び90-OCholBの両方は、他のOCholB LNPと比較して、最小送達効率を示した。この結果は、
図12Cに示されるような低分子NR送達結果と一致して、これらの2つのナノ粒子が細胞内送達用途にはおそらく非効率的であることを示す。
図12G([リピドイド]=6.6μg mL
-1及び[(-30)GFP-Cre]=100nM)に示されるように、OCholB LNPの多く及びLpf2kが、同様のGFP
+細胞のパーセンテージを有した(
図4F)が、さらなる分析は、より多くの量の(-30)GFP-Creタンパク質を表すより高い平均蛍光強度がうまく細胞に送達されたので、(-30)GFP-Cre搭載ナノ粒子で処理された細胞の平均蛍光強度が大幅に変動したことを明らかにした。これは、LNP(75-OCholB、76-OCholB、77-OCholB、80-OCholB、及び81-OCholB)の一部が、他のもの(Lpf2k及び78-OCholB)よりもはるかに効率的であることを示す。ネイキッド(-30)GFP-Creタンパク質及び(-30)GFP-Cre搭載ナノ粒子((-30)GFP-Cre/75-OCholB、(-30)GFP-Cre/76-OCholB、(-30)GFP-Cre/77-OCholB、及び(-30)GFP-Cre/Lpf2k)で処置されたHeLa-DsRed細胞の代表的なフローサイトメトリープロファイルは、
図12Hに示され([リピドイド]=6.6μg mL
-1及び[(-30)GFP-Cre]=100nM)、これは、
図12Gに示される統計結果と一致する。さらに、タンパク質及びタンパク質/ナノ粒子で処置されたHeLa-DsRed細胞の代表的な蛍光画像も
図12Iに示される。(-30)GFP-Cre/75-OCholB、(-30)GFP-Cre/76-OCholB、(-30)GFP-Cre/77-OCholB、及び(-30)GFP-Cre/Lpf2k由来の強い緑色蛍光シグナル、ならびに(-30)GFP-Creで処置された細胞及び未処置の細胞由来のわずかなシグナルを検出し、これはまた、フローサイトメトリー分析の結果と一致する。
図12Jは、(-30)GFP-Cre/LNP((-30)GFP-Cre/75-OCholB、(-30)GFP-Cre/76-OCholB、及び(-30)GFP-Cre/77-OCholB)で処置された細胞の代表的な明視野画像を示し([リピドイド]=6.6μg mL
-1及び[(-30)GFP-Cre]=100nM)、明らかな形態学的変化は、未処置の細胞と比較して観察されなかった。これはさらに、OCholB LNPの生体適合性を実証する。総合すると、このデータは、新たに開発された完全置換OCholB LNPのほとんどが、in vitroでの哺乳動物細胞への低分子の疎水性及び親水性カーゴならびに高分子カーゴの送達に効率的であることを示す。
【0135】
実施例10:低分子抗がん剤の細胞内送達。
OCholB LNPを使用して、疎水性及び親水性の両方の低分子薬物を送達する可能性を調査した。ドキソルビシン塩酸塩(Dox)(水溶性)、ならびにカンプトテシン(CPT)及びオキサリプラチン(Oxa)(非水溶性)をLNPにカプセル化し(実験のセクションを参照のこと)、HeLa細胞に対して試験した。Dox(Ex.495nm、Em.594nm)及びCPT(Ex.360nm、Em.446nm)搭載75-OCholB LNPの吸収及び蛍光発光スペクトルを試験することにより、低分子薬物の良好なカプセル化を実証し、Dox及びCPTの特徴的な吸光度及び発光ピークが、
図13Aに示されるように観察された。対応する標準曲線を使用して、薬物搭載含有量(DLC%=[W
搭載薬物]/[W
搭載薬物+W
リピドイド]*100%)を、Dox及びCPTに対してそれぞれ19.2%及び5.2%と決定した。次に、フローサイトメトリーを使用して8時間曝露した後、Dox搭載75-OCholB LNP(Dox/75-OCholB)の内在化を研究した。
図13Bに示されるように、カルセイン(
図12E)及び(-30)GFP-Cre(
図4f)とは際立って対照的に、遊離Doxは、8時間のインキュベーション後にHeLa細胞に容易に内在化することができる。Dox/75-OCholBで処置されたHeLa細胞はまた、遊離Doxで処置された細胞と同等の平均蛍光強度を示し、未処置の対照細胞と比較して約28.9倍大きく、Dox/75-OCholBナノ粒子がこの条件下でDoxの細胞内送達に効率的であり得ることが示された。
【0136】
次に、用量依存性細胞毒性を調査した。
図13Cから、Dox/75-OCholBは、HeLa細胞に対する遊離Doxと同様の濃度依存性細胞毒性プロファイルを示した(8時間の曝露、48時間のインキュベーション後のMTTアッセイ)。一方で、ブランク75-OCholB LNPは、同じ条件下でわずかな毒性を示した。ブランクLNPで処置された細胞生存率は、80%超に維持され、これはさらに、OCholB LNPの安全性を確認する。次に、疎水性抗がん剤、CPT、及びOxaを75-OCholB LNP(CPT/75-OCholB及びOxa/75-OCholB)にカプセル化し、48時間のインキュベーション後のCPT/75-OCholB及びOxa/75-OCholBで処置されたHeLa細胞の細胞生存率(両方とも8時間の曝露;[CPT]=1.8μg mL
-1;[Oxa]=2.4μg mL
-1)を42.4%及び66.9%と決定した(
図13D)。全体的に、Dox及びOxaでカプセル化された75-OCholB LNPは、それらの遊離の同等物と同等またはそれより高い毒性を示したが、CPT搭載75-OCholBは、遊離CPTよりも効率が悪かった。これは、カーゴ薬物の物理化学的特性がOCholB LNPの送達性能に大きな影響を与え得ることを示し、原則は、他の担体システムにも当てはまり得る。
【0137】
実施例11:mRNAの細胞内送達。
メッセンジャーRNA送達は、がん治療、タンパク質補充療法、及び神経障害の処置に大きな可能性を有する。
42GFP mRNA及び種々の細胞株(HeLa、B16F10、HEK-293、NIH/3T3、及びJurkat)を使用して、OCholB LNPを使用したmRNAの細胞内送達を研究した。最初に、HeLa細胞を使用して、LNP/mRNAの重量比を最適化した。
図14Aに示されるように、0.86μg mL
-1でのmRNAの最終濃度を固定すること及びLNP/mRNA重量比を0/1(すなわち、遊離mRNA、LNPなし)から15/1に増加させることにより、LNP/mRNA比が1/1未満である場合、24時間の曝露後に、最小GFP
+細胞を決定した(LNP/mRNA=0/1、0.5/1、及び1/1に対して、それぞれ、0.7%、0.8%、及び1.4%のGFP
+細胞を決定した)。GFP
+集団における漸増は、比が2/1から15/1に増加する時に観察され、2/1、5/1、10/1、及び15/1のLNP/mRNA比に対して、24.3%、39.2%、64.7%、及び68.9%のGFP
+細胞が記録された。次に、LNP/mRNAの重量比=10/1を、以下のmRNA送達研究のために選択した。mRNA/LNPの投薬量を増加させる時、GFP
+細胞の継続的な増加(3.3%~76.3%)が観察されたので、GFP mRNAの細胞内送達はまた、0.027~1.5μg mL
-1のmRNAの濃度範囲に用量依存することが判明した(
図14B)。次に、全ての完全置換OCholB LNPの細胞内送達効率をHeLa細胞に対して試験し、Lpf2k及びネイキッドGFP mRNAを対照として使用した(LNP/mRNA=10/1;[mRNA]=0.86μg mL
-1;24時間の曝露)。
図14Dに示されるように、ネイキッドmRNAは、わずかなGFP
+細胞を誘導し、これは、未処置の細胞に匹敵するが、Lpf2kは、98.1%のGFP
+HeLa細胞と共に、mRNA送達に非常に効率的である。OCholB LNPに関して、75-OCholB(GFP
+細胞の62.0%)、76-OCholB(79.8%)、77-OCholB(73.5%)、78-OCholB(67.1%)、80-OCholB(55.6%)、81-OCholB(51.6%)、及び304-OCholB(52.1%)は全て、有効であると決定される。mRNA/LNP(mRNA/75-OCholB、mRNA/76-OCholB、及びmRNA/77-OCholB)で処置されたHeLa細胞の代表的な蛍光画像は、
図14Cに示される。未処置のHeLa細胞と比較すると、ナノ粒子がインキュベートされた細胞から、強い緑色蛍光シグナルが記録され、これは、
図14Dに示されるようなフローサイトメトリーデータと一致する。一方で、87-OCholB(6.1%)及び90-OCholB(2.5%)の両方は、HeLa細胞へのGFPmRNA送達に非効率的であることが判明し、これは、蛍光レポーターとしてのNR(
図12C)及び(-30)GFP-Creタンパク質(
図12F)を使用した内在化研究と一致する。送達性能の一貫性が、これらのOCholB LNPに存在し得ることが明らかであり、非活性LNPの内在化効果は、搭載カーゴの特性に関係なく最小のままであった。
【0138】
次に、新たに開発されたLNPの送達スペクトルを調査するために、GFP mRNA搭載OCholB LNPを他の4種類の細胞株に対してチャレンジした。B16F10(マウスメラノーマ細胞)、HEK293(ヒト胚性腎細胞)、NIH3T3(マウス胚性線維芽細胞)及びJurkat(ヒトTリンパ球細胞)細胞を試験した(LNP/mRNA=10/1;[mRNA]=0.86μg mL
-1;24時間の曝露)、結果は、
図14Dに示される。陽性対照として、Lpf2kは、GFP mRNAをB16F10(GFP
+細胞の63.2%)、HEK293(80.1%)、及びNIH3T3(70.1%)細胞に送達するのに非常に効率的であることがわかったが、Jurkat細胞への送達はわずかに効率が悪く(28.7%)、これは通常、トランスフェクションが最も難しい細胞株の1つと考えられている。OCholB LNPに関して、一般に、87-OCholB、90-OCholB、及び304-OCholBは、これら全ての細胞株にmRNAを送達する効率が低いことが証明されたが、他の6つのOCholB LNPは、はるかに効率的であることが判明した。例えば、GFP
+細胞の63.0%、60.9%、54.1%、及び50.1%を、mRNA/75-OCholBで処置されたB16F10、HEK293、NIH3T3、及びJurkat細胞から決定し;mRNA/76-OCholBで処置された細胞についての数値は、それぞれ、70.7%、75.8%、24.1%、及び7.7%であった。リピドイドの種類だけでなく、標的細胞株も、送達効果に大きな影響を与え得ることが明らかであった。全体的に、陽性対照であるLpf2kは、比較的大きな活性の広域スペクトルのトランスフェクション試薬であり;OCholB LNPのほとんど(9つのうち6つ)はまた、試験条件下で有効な広域スペクトルのトランスフェクション試薬である。OCholB LNPの一部(例えば、75-OCholB、77-OCholB、及び78-OCholB)は、Jurkat細胞への送達の効果に関して、Lpf2kに優る特定の利点を示した。さらなる製剤最適化、例えば、賦形剤(ヘルパー脂質様低分子リン脂質(例えば、DOPE及びDSPC)ならびに高分子脂質(例えば、PEG-DSPE及びPEG-セラミド))をLNPに添加すること、ならびに/またはより制御可能な自己組織化手順を使用することを通して、完全置換OCholB LNPのトランスフェクション効率の改善を達成することができることが予想された。
【0139】
次に、MTTアッセイを実行して、HeLa細胞に対するmRNA搭載ナノ粒子の細胞毒性を調査した。
図14Eに示されるように、24時間の曝露後(リピドイド/mRNA=10/1;[mRNA]=0.86μg mL
-1)、最高のGFP
+細胞パーセンテージがmRNA/Lpf2kで処置された群から得られた場合(
図14D)であっても、mRNA/Lpf2k複合体は、37.5%の細胞生存率が記録されたように、HeLa細胞に対して有意な細胞毒性を示したことが明らかであった。他方では、GFPmRNA搭載OCholB LNPの全ては、同じ条件下でわずかな細胞毒性を示し(例えば、mRNA/75-OCholB、mRNA/76-OCholB、及びmRNA/77-OCholBがインキュベートされた試料に対して、細胞生存率を84.7%、94.5%、及び100.1%と決定し)、これは、ブランクOCholB LNPの以前の毒性研究と一致する(
図10E)。この結果は、OCholB LNPの優れた適合性ならびにmRNA/LNP複合体の合計投薬量及び/または露出時間を増加させることにより、さらに細胞内送達効率を増加させる可能性を示す。
図14Fに示される明視野画像から、24時間の曝露後、有意な形態学的変化が、mRNA/Lpf2kで処置された細胞から観察されたが、明らかな変動は、未処置の対照群と比較して、mRNA/LNP(mRNA/75-OCholB、mRNA/76-OCholB、及びmRNA/77-OCholB)ならびにネイキッドmRNAで処置された細胞の両方に対して観察された。この結果は、
図14Eに示されるような細胞生存率の研究と一致し、さらに比較的安全なトランスフェクションナノキャリアとしてのOCholB LNPの利点を確認した。
【0140】
次に、OCholB LNPを使用して、ゲノム編集(Cre-loxP及びCRISPR/Cas9システム)目的でmRNAを送達する可能性を調査した。最初に、Cre mRNAをOCholB LNPと複合化し、HeLa-DsRed細胞に対して試験した。HeLa-DsRed細胞は、Creタンパク質媒介性組み換えによってのみ、赤色蛍光タンパク質DsRedを発現する。mRNA/LNP(リピドイド/mRNA=10/1;[mRNA]=0.86μg mL
-1)との24時間のインキュベーション後、DsRed
+細胞の割合を、フローサイトメトリーで測定した。
図14Gに示されるように、75-OCholB、76-OCholB、及び77-OCholBは全て、それぞれ、DsRed
+細胞の67.2%、48.7%、及び72.8%が記録されたので、有効であった。次に、Streptococcus pyogenes SF370 Cas9タンパク質のバージョンをN末端及びC末端核局在化シグナル(NLS)で発現するCas9 mRNAを、GFP遺伝子の配列を標的とする単一ガイドRNA(sgRNA)と共にLNPに搭載した。この場合、GFPタンパク質を着実に発現するGFP-HEK細胞を細胞モデルとして使用した。フローサイトメトリーを使用して、GFP発現の良好なCas9媒介性ノックダウンを示すGFP
-細胞を分析した。48時間のインキュベーション後(リピドイド/mRNA/sgRNA=10/1/1;[mRNA]=[sgRNA]=0.86μg mL
-1)、3つ試験LNP全て(75-OCholB、76-OCholB、及び77-OCholB)が、この条件下で任意の明らかなGFPノックアウトを誘導することができないことが判明した。mRNA及びsgRNA搭載75-OCholB、76-OCholB、及び77-OCholB LNPで処置されたGFP-HEKに対して記録されたGFP
-細胞の割合は、それぞれ6.1%、7.7%、及び4.4%であった。これは、未処置の対照細胞のもの(7.0%)に匹敵する。
図14D及び14Gに示されるように、GFP、Cre、及びCas9 mRNA分子の細胞内送達結果は、mRNA/LNPの効果が、カーゴmRNA分子により発現されるタンパク質の試験細胞型及び機能の両方に依存することを示した。これにより、本発明者らの以前の研究においてタンパク質送達に適用可能であることも判明した。
【0141】
さらに、細胞内送達用途における、新たに開発されたOCholB LNPライブラリーの可能性を実証するために、ゲノム編集のためのCas9 mRNA送達の改善のために、製剤最適化を調査した。この文脈では、2つの方策を試験し、すなわち、完全置換ではなく単一の尾部を有する新しいOCholB尾部のリピドイドを合成し、完全置換OCholB LNPにヘルパー脂質(リン脂質)を添加する。以前に説明されたような同様のプロトコールに従って、最初に、単一尾部のリピドイド、75-OCholB-1、76-OCholB-1、及び76-OCholB-1を合成し、ESI-MSで特性決定した([75-OCholB-1+H]
+、736.55;[76-OCholB-1+H]
+、734.64;[77-OCholB-1+H]
+、748.73)。次に、同じ超音波処理/ボルテックス手順を使用して、ナノ粒子を作製し、得られたLNPをDLSで測定した(75-OCholB-1、<D
h>=302.6nm、μ
2/Г
2=0.30;76-OCholB-1、<D
h>=294.5nm、μ
2/Г
2=0.30;77-OCholB-1、<D
h>=254.2nm、μ
2/Г
2=0.33)。最初に、HeLa細胞に対してGFP mRNAを使用して、単一尾部のLNPの送達効果を試験した(リピドイド/mRNA=10/1;[mRNA]=0.86μg mL
-1;24時間の曝露)。mRNA/75-OCholB-1、mRNA/76-OCholB-1、及びmRNA/77-OCholB-1で処置されたHeLa細胞に対して、それぞれ、69.4%、72.5%、及び68.9%のGFP
+細胞を決定した。Cre mRNAはまた、24時間の曝露後に、細胞の87.3%(mRNA/75-OCholB-1)、82.8%(mRNA/76-OCholB-1)、及び81.5%(mRNA/77-OCholB-1)をDsRed
+であると決定したので、HeLa-DsRed細胞に効率的に送達することができる(
図14G)。しかし、Cas9 mRNA及びsgRNA複合化単一尾部のOCholB LNPはまた、GFP-HEK細胞に対してわずかなGFPノックアウトを誘導することが判明した。単一尾部のOCholBリピドイドは、GFP及びCre mRNAに関して、同等またはわずかに高い送達効果を示したが、2つの尾部の対応物と同様に、Cas9 mRNA及びsgRNA送達に失敗した。次に、本発明者らは、元の2つの尾部のOCholBリピドイドナノ粒子製剤にヘルパー脂質を添加しようとした。概念実証として、DOPEをOCholBリピドイドと混合し(リピドイド/DOPE=1/1、重量比)、ナノ粒子を作製し(75-OCholB-F、76-OCholB-F、及び77-OCholB-Fと表され)、Cas9 mRNA及びsgRNAを搭載した(mRNA/sgRNA=1/1、重量比)。
図14Hに示されるように、48時間の曝露後(OCholBリピドイド/mRNA=10/1;[mRNA]=0.86μg mL
-1)、76-OCholB-Fは、未処置の(6.3%)及びネイキッドCas9 mRNA及びsgRNAで処置された(5.6%)細胞と同様のGFP
-の割合(6.4%)を示した。しかし、細胞の15.3%及び12.9%がGFP
-であると判定されたように、75-OCholB-F及び77-OCholB-Fで処置されたGFP-HEK細胞について、GFPノックアウト細胞の量の増加が記録された。これらの結果は、ナノ粒子製剤の最適化が、性能の改善を達成するための有効な方策であり得ることを示した。全体的に、mRNA搭載OCholB LNPのGFPノックアウト効果は、本発明者らが以前に報告したリボ核タンパク質(RNP)送達結果と比較した場合に、比較的低いことが認められたが;さらなる分子設計(例えば、コンビナトリアルライブラリーを拡大するカチオン性アミン頭部基の新しいタイプを組み込むこと)ならびに超分子構造の最適化(例えば、種々の種のスクリーニングならびに賦形剤の組成、カーゴ/担体比の最適化、及び曝露期間のようなインキュベーション条件、及び投薬量)により、最適化された細胞内送達及びその後のゲノム編集性能を予想することができる。
【0142】
実施例12:ゲノム編集タンパク質の細胞内送達。
タンパク質及びペプチドベースの治療法は、特異性が比較的高く、オフターゲット効果が低いため、過去30年間に多大な注目を集めている。がん、感染症、炎症、及び変性疾患の処置のための製剤が開発されている。タンパク質及びペプチドの有効な細胞内送達方法はさらに、それらの治療法を拡大し得る。OCholB LNPを使用したタンパク質の細胞内送達が、カーゴとしての(-30)GFP-Creタンパク質及び蛍光レポーターとしてのGFPを使用して、以前の内在化研究においてうまく実証されており、HeLa-DsRed細胞株及び蛍光レポーターとしてのDsRedタンパク質を使用して、機能性研究を実行した。
【0143】
この文脈では、最初に、本発明者らが以前に報告した手順に従って、種々のエンドサイトーシス阻害剤、すなわち、スクロース(クラスリン媒介性エンドサイトーシス阻害剤)、メチル-β-シクロデキストリン(M-β-CD、コレステロール枯渇剤)、ダイナソール(ダイナミンII阻害剤)、及びナイスタチン(カベオリン媒介性エンドサイトーシス阻害剤)を誘導することにより、(-30)GFP-Cre/LNP複合体の内在化機序を研究した。
図15Aに示されるように、3つ全ての試験タンパク質/LNP((-30)GFP-Cre/75-OCholB、(-30)GFP-Cre/76-OCholB、(-30)GFP-Cre/77-OCholB)の内在化効率([リピドイド]=6.6μg mL
-1、[(-30)GFP-Cre]=100nM;曝露期間=6時間)は、スクロース及びダイナソールで有意に抑制された。他方では、M-β-CD及びナイスタチンは、これらのナノ粒子の細胞取り込みの明らかな抑制を誘導しなかった。これは、クラスリン及びダイナミンがこれらの(-30)GFP-Creタンパク質複合化OCholB LNPの細胞取り込みに重要な役割を果たすことを示す。他のコンビナトリアルライブラリー研究と比較すると、同じカーゴが搭載され、同じ細胞株に対して試験されたとしても、種々の化学構造を有する種々のリピドイドは、非常に異なる経路を介して内在化することができることが明らかである。次に、24時間のインキュベーション後に、(-30)GFP-Cre/LNPのゲノム編集効率をフローサイトメトリーで測定した(8時間の(-30)GFP-Cre/LNP複合体曝露で)。3つの異なる濃度のタンパク質/リピドイド複合体(25nM/1.7μg mL
-1、50nM/3.4μg mL
-1、及び100nM/6.6μg mL
-1)を、各リピドイドナノ粒子について試験した。
図15Bに示されるように、ネイキッド(-30)GFP-Creタンパク質は、タンパク質濃度に関係なく、わずかなゲノム編集効果を誘導するが、Lpf2kを含む全ての試験ナノ粒子は、用量依存的なDsRed
+細胞パーセンテージパターンを示し、すなわち、より高いタンパク質濃度は、より高いゲノム編集及びDsRed発現レベルと相関する。3つの脂質、すなわち、87-OCholB、90-OCholB、及び304-OCholBは、送達時に効率が低いことが判明した(NR及びmRNA送達に対して非効率的であることも示される)。他の全ての完全置換OCholB LNP(75-OCholB、76-OCholB、77-OCholB、78-OCholB、80-OCholB、及び81-OCholB)は、陽性対照であるLpf2kと同等のまたはそれよりはるかに高いDsRed
+細胞を示した。例えば、DsRed
+細胞は、25、50、及び100nMのタンパク質濃度で、(-30)GFP-Cre搭載75-OCholB、76-OCholB、及び77-OCholBに対して、それぞれ、10.5%/24.9%/88.9%、13.5%/55.4%/88.8%、及び27.7%/47.8%/94.7%と記録された。特に、OCholB LNPの6つ(75-OCholB、76-OCholB、77OCholB、78-OCholB、80-OCholB、及び81-OCholB)は、100nMの(-30)GFP-Creで試験した時、Lpf2kを上回り、これは、さらに、新たに開発されたLNPの利点を示した。さらに、(-30)GFP-Cre/LNP((-30)GFP-Cre/75-OCholB、(-30)GFP-Cre/76-OCholB、(-30)GFP-Cre/77-OCholB)、(-30)GFP-Cre/Lpf2k、及びネイキッド(-30)GFP-Cre)で処置されたHeLa-DsRed細胞の代表的なフローサイトメトリープロファイルは、
図15Cに示され、ナノ粒子系送達システムに対して、DsRed蛍光シグナル強度の増強が観察され、これは、
図15Bに示される結果と一致する。次に、HeLa-DsRed細胞に対する種々の濃度の(-30)GFP-Cre/LNP、(-30)GFP-Cre/Lpf2k、及びネイキッド(-30)GFP-Creの細胞毒性プロファイルは、24時間のインキュベーション後に、MTTアッセイを使用して測定される(8時間の曝露;(-30)GFP-Cre/LNP=25nM/1.7μg mL
-1、50nM/3.4μg mL
-1、及び100nM/6.6μg mL
-1)。
図15Dに示されるように、一般に、試験された全試料について、より高い(-30)GFP-Cre濃度は、より低い細胞生存率を誘導した。タンパク質が搭載された完全置換OCholB LNPの9つ全てが、比較的高い細胞生存率を示した。(-30)GFP-Cre/75-OCholBで処置された細胞では、25、50、及び100nMのタンパク質濃度の生存率は、それぞれ、95.5%、91.8%、及び83.1%であると決定し;(-30)GFP-Cre/76-OCholB及び(-30)GFP-Cre/77-OCholBの数値は、97.8%/98.2%/97.2及び100.9%/96.6%/98.6%である。(-30)GFP-Cre搭載78-OChlB、80-OChlB、及び304-OChlBで処置された細胞は、100nMのタンパク質で79.1~81.4%の生存率を示したが、他の全ての試料は、試験条件下でHeLa-DsRed細胞に対して非毒性であることが実証された。際立って対照的に、Lpf2kは、同じ条件下で細胞毒性を示し、25nM、50nM、及び100nMの(-30)GFP-Cre濃度で、それぞれ、細胞生存率58.9%、56.7%、及び51.2%を決定した。一方で、種々のナノ粒子製剤で処置されたHeLa-DsRed細胞の形態変化を研究し、結果が、
図15Eに示される。GFP mRNA搭載Lpf2kで処置されたHeLa細胞(
図14F)と同様に、(-30)GFP-Cre/Lpf2kに曝露されたHeLa-DsRed細胞は、不健康で収縮していたことが明らかであるが;OCholB LNP((-30)GFP-Cre/75-OCholB、(-30)GFP-Cre/76-OCholB、及び(-30)GFP-Cre/77-OCholB)で処置されたものは、未処置の及びネイキッドタンパク質で処置された対照群と比較して影響が少なかった。次に、
図15Fに示されるように、全ての試験条件(3つの異なる濃度で11の試料)について、DsRed
+細胞パーセンテージを、対応する細胞生存率に対してプロットした。点線は、それぞれ、細胞生存率80%及びゲノム編集効果50%(DsRed
+細胞の割合)表す。左上象限にある試料は、無毒で、送達には非効率的であり;左下象限の試料は、有毒で、非効率的であり;右下象限の試料は、効率的であるが毒性があり;右上象限の試料は、非毒性で、効率的であり、これは、さらなる研究の最有力候補となるであろう。高濃度のLpf2k(点線の紫色の円で示される)は、ゲノム編集には比較的効率的であるが、標的細胞にも毒性があることは明らかである。他方では、(-30)GFP-Cre搭載OCholB LNPのほとんどは、ネイキッド(-30)GFP-Creタンパク質と同様に、(-30)GFP-Cre/Lpf2kと比較した場合、ほとんど非毒性である。87-OCholB、90-OCholB、及び304-OCholB(点線濃青色円で示される)は、ゲノム編集効率が低いが;75-OCholB、76-OCholB、及び77-OCholB(点線緑色円で示される)を使用することにより、高いゲノム編集効果及び優れた忍容性を達成した。とりわけ、これらの結果は、新たに開発されたOCholB LNPがin vitroゲノム編集用のCreリコンビナーゼタンパク質送達のための非常に効率的で安全なナノキャリアとして機能し得ることを示した。
【0144】
実施例13:in Vivo毒性研究。
ブランク(
図10E及び13C)とカーゴ(GFP mRNA及びゲノム編集タンパク質)搭載(
図14E及び15D)OCholB LNPの両方は、in vitroで比較的高い生体適合性を示した。Balb/cマウスを使用する血清生化学的試験を通じて、体重変化ならびに腎臓及び肝臓の生物学的機能を測定することにより、OCholB LNPのin vivo毒性をさらに調査した。1日目及び5日目に、4-6週齢のBalb/cマウス(n=3)に、ブランク75-OCholB、76-OCholB、及び77-OCholB LNPを尾静脈経由で注射した(各注射に対して50μgのLNP)。体重を14日間監視し、14日目に、血液を収集及び分析した。
図16Aに示されるように、未処置の対照群と比較して、LNP(75-OCholB、76-OCholB、及び77-OCholB)が注射されたマウスの体重は、研究全体にわたってわずかな差異を示した。LNPが注射されたマウスのクレアチニン、尿素、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血清濃度は、対照マウスと非常に類似していた(
図16B)。
【0145】
これらの結果は、これらのOCholB LNPが、試験条件下で全身投与により有意な体重変化を誘発するか、または臓器損傷を引き起こさないことを示した。これは、これらのLNPがin vivo送達目的の安全な担体として使用することができることを示す。
【0146】
実施例14:ゲノム編集のためのin vivoタンパク質及びmRNA送達。
Cre-loxPシステム及びトランスジェニックAi14マウスモデルをin vivoゲノム編集研究で使用した。
図17Aに示されるように、このマウスモデルは、赤色蛍光タンパク質であるtdTomatoの転写を防止する、遺伝的に統合されたloxP隣接STOPカセットを有する。Creリコンビナーゼ媒介性遺伝子再編成が生じた時、STOPカセットを除去して、蛍光tdTomatoレポータータンパク質の発現を生じさせ得る。
【0147】
(-30)GFP-Creタンパク質及びCre mRNA搭載76-OCholB LNPを使用する、筋肉内注射(IM注射、後脚)による局所送達(
図17B)。Ai14マウス(n=3)は、1日目に(-30)GFP-Cre/LNPの単回用量(50μgのタンパク質)またはmRMA/LNP(10μgのmRNA)注射を受け、10日目に死亡させた。tdTomato発現解析のために、骨格筋を、収集、固定、凍結切断、及びイメージングした(実験セクションを参照のこと)。
図17D及び17E(青色チャネル、DAPI;赤色チャネル、tdTomato)に示されるように、未処置の対照筋肉とは対照的に、(-30)GFP-Cre/LNP及びmRNA/LNPの両方が注射された筋肉の強いtdTomato蛍光シグナルが記録された。tdTomato陽性細胞の大部分は、mRNA/LNPの対応物よりも、タンパク質/LNPが注射された筋肉試料で見出された。
【0148】
全身投与経路を介してin vivoで遺伝子編集をうまく誘導し得る場合、OCholB LNPをさらに調査した。最初に、Ai14マウス(n=3)に、1日目及び5日目に(-30)GFP-Creタンパク質搭載LNPを尾静脈経由で(静脈内(IV)注射)注射した(各注射に対して50μgのタンパク質、合計100μg)、次に、分析のために14日目に死亡させた(
図17C)。この場合、
図17Fに示されるように、in vitroで有効であることが実証されている上位OCholB LNPの5つ、すなわち、75-OCholB、76-OCholB、77-OCholB、78-OCholB、80-OCholBを試験した。各群から心臓、肝臓、脾臓、肺、及び腎臓を収集して分析した。
図17Fに示されるように、(-30)GFP-Cre/80-OCholB及び(-30)GFP-Cre/76-OCholBが注射されたAi14マウスの肺及び脾臓で、それぞれ、相対的に高いゲノム編集効果を達成した。ほとんどの静脈内ナノ治療薬と同様に、尾静脈経由で注射された(-30)GFP-Creタンパク質複合化OCholBナノ粒子は、最初に心臓に、そこから肺に直接移動するであろう。ナノ粒子製剤(血清タンパク質と複合化していることがある)は、肺の毛細血管床の血管系構造中に容易に補足されて、肝臓、脾臓、及び他の臓器へのLNPの再分布を遅延または阻害することができる。in vivoでの輸送及び再分配プロセス中に、タンパク質搭載LNPの一部は、肺または脾臓の細胞にうまく入り、正常ゲノム編集及びtdTomato発現カスケードを誘導し得る。カーゴタンパク質及び担体LNPの分解、凝集、及び/または免疫細胞の隔離が劇的に低減させるか、またはおそらくゲノム編集イベントをさらに妨げるであろう。それにもかかわらず、80-OCholB及び76-OCholBは、全身投与によるin vivoでの肺及び脾臓への(-30)GFP-Creタンパク質送達に、それぞれ効率的であることが実証された。
【0149】
次に、類似の静脈内注射プロトコールを使用して、OCholB LNPを使用するin vivo全身mRNA送達を試験した(
図17C)。1日目及び5日目に、Cre mRNA搭載76-OCholB LNPを注射し(各注射に対して10μgのmRNA;合計20μg)、マウスを14日目に死亡させた。全ての主要な臓器(心臓、肝臓、脾臓、肺、及び腎臓)を収集して分析した。
図17Gに示されるように、tdTomato陽性細胞の有意な量は、脾臓で記録され、陽性シグナルは、他の臓器中に見出されなかった。(-30)GFP-Creタンパク質及びCre mRNA搭載76-OCholB LNPの両方は、ゲノ無編集を誘導したことが認められ、これは、担体リピドイドが、送達系全体の代謝及び生体内分布を影響を与え得ることを示した。全体的に、全身投与されたナノ粒子((-30)GFP-Creタンパク質及びCre mRNA搭載LNPの両方)のゲノム編集効果は、局所注射よりもはるかに低くみえた。これは、静脈を介して注射された製剤がはるかに多くの物理的及び生化学的障壁に遭遇するので理解できる。しかし、それは、全身投与がヒト状態または疾患の処置に幅広い可能性を提供するので、依然として追求する価値がある。とりわけ、これらのin vivoゲノム編集の結果は、ナノキャリアとしてOCholB LNPを使用して、ゲノム編集目的で全身及び局所の両方の投与経路を介して、mRNA同様に機能タンパク質をin vivoで送達する可能性を示唆した。
【0150】
材料及び方法
概要
リピドイド合成に使用される化学物質であるアムホテリシンBならびに肝毒性及び腎毒性の評価に使用される市販のキットをSigma-Aldrichから購入した。1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG2000アミン)をアバンティに注文した。1%のペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)及び10%のウシ胎児血清(FBS、Sigma-Aldrich)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Sigma-Aldrich)中で、HEK293細胞を培養した。AmBナノ粒子の流体力学的サイズ及び多分散性指数(PDI)を、Zeta-PALS粒径分析器(Brookhaven Instruments)で測定した。AmBカプセル化物の濃度、RBC溶血、及び細胞生存率をpectraMax M2eマイクロプレートリーダーで測定した。AmBカプセル化物を凍結乾燥機(Labconco)で凍結乾燥した。ヒト全血を、Reaserch Blood Component,LLCに注文した。C.albicansの株(SC5314)を、Tufts medical centerの分子生物学及び微生物部門のCarol A.Kumamoto教授の研究室から入手した。組織試料(100mg)をBeadBugマイクロチューブホモジナイザー(Benchmark scientific)で粉砕した。AmBの血漿及び組織濃度を、Tufts Universityの化学学科の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(Agilent 1200)で測定した。雌BALB/cマウス(6-8週齢、体重20~30g)及び雌Sprague Dawleyラット(8~10週齢、体重200~250g)をCharles Riverに注文した。この研究の動物プロトコールは、Tufts Universityの施設内動物管理及び使用委員会(IACUC)に承認され(B2018-73)、in vivo実験は全て、承認された動物ケアガイドラインに基づいて実施された。
【0151】
AmBナノ粒子の調製。
AmBカプセル化物を以下の通り調製した:要約すると、1mgの各リピドイドを、既に300μlのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させた1mgのAmBと混合した。混合物を30分間超音波処理し、次に、それぞれが完全に溶解するまで、10分間ボルテックスした。次に、AmBナノ粒子を、エタノールに溶解した10mg/mLのDSPE-PEGを1:6.8のモル比(DSPE-PEG対リピドイド)と共に製剤化した。対照群として、AmBナノ粒子を、DSPE-PEGと共に製剤化しなかった。700rpmで連続的に均質化しながら、600μlの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)を含有するガラス瓶に、各溶液を滴下した。次に、透析バッグ(MWCO:3500Da)を4時間使用して、蒸留水に対して溶液をさらに透析し、600rpm/分の撹拌速度でDMSO及び酢酸ナトリウム緩衝液を除去した。AmBカプセル化物を2mlのガラス瓶に移して、2週間の視覚的な透明性を観察した。記録されたデータは、独立して実施された3つの実験の平均である。
【0152】
安定性及び粒径
AmBナノ粒子の安定性を評価するために、1及び2週間のエンドポイントに、粒径及びPDIを動的光散乱(DLS)で分析した。数のサイズ分布に基づいて、平均サイズ(nm)及びPDIを決定した。測定前に、AmBナノ粒子を脱イオン水中に10倍希釈で分散させた。同じ条件で、試料当たり60sの3回の実施を、90°の検出角度で行った。全てのナノ粒子を調製し、3回ずつ測定した。
【0153】
薬物搭載含有量
搭載されたAmBの量を定量するために、SpectraMax M2eで、DMSOに溶解させた種々のAmB濃度(0.001~1.0mg/mL)の吸光度を研究することにより、AmB濃度の回帰検量線を計算した。UV-Vis吸収スペクトルのために、300~450nmの範囲の波長を選択した。DMSOにナノ粒子を溶解させることにより、リポソームにカプセル化されたAmBの量を測定し、次に、波長392nmでの吸光度を測定した。線形回帰検量線、次に、以下の等式:薬物搭載含有量(%)=W搭載×100/Wポリマー+W搭載(式中、W搭載は、カプセル化後にリポソーム中に搭載されたAmBの重量であり、Wポリマーは、リピドイドの重量である)に従って、AmBの薬物搭載含有量(DLC)を計算した。記録されたデータは、独立して実施された3つの実験の平均である。
【0154】
in Vitro抗真菌活性
酵母の培養液希釈抗真菌感受性試験のための標準的方法に従って、最小阻止濃度(MIC)及びC.albicans(SC5314)株を使用して、in vitroでのAmBカプセル化物の抗真菌効果を試験した。要約すると、酵母をサブローデキストロース寒天(SDA)プレート上で成長させ、水に接種して、1~5×106の酵母細胞/mLの最終接種濃度を得た。C.albicans細胞懸濁液を、RPMI-MOPS成長培地中に1:20で希釈し、100μlを0.125~32μg/mL及び0.109375μg/mL~14.0μg/mLの範囲の連続濃度のAmBを含有するマイクロリットルのトレイに分注した。薬物不含培地及び接種物を含有する3つのウェルを、陽性対照及び陰性対照として使用した。接種させたプレートを35℃で48時間インキュベートした。各ウェル中の成長を、24時間及び48時間で視覚的に推定した。MICは、C.albicansの視覚的な成長を妨げるAmBの最低濃度であると記録され、μg/mLで表された。記録されたデータは、独立して実施された3つの実験の平均である。
【0155】
ヒト赤血球の溶血試験
最適化されたAmBカプセル化物をスクリーニングするために、高用量のAmBカプセル化物が、毒性評価に必要とされた。AmBカプセル化物を凍結防止剤で凍結乾燥し、次に、濾過された脱イオン水で適切な容量に再構成し、続いて、振とうして、均質なリポソーム分散液を得た。上述のように溶血を実施した。6±2℃で保存された健康なボランティアから入手した静脈血。全血を遠心分離し(1600×gで30分)、上清をピペッティングして、廃棄した。次に、RBCをpH7.4の等張PBSで3回洗浄し、2%の貯蔵液で、PBS中に細かく分散させた。続いて、90μlのRBC懸濁液を、種々のAmBカプセル化物、遊離AmB、及びFungizone(登録商標)を含有するPBS 10μlと3回混合した。最終のAmBの濃度は、全てのナノ粒子中に、それぞれ、200、100、50、及び25μg/mLであった。次に、各試料を37℃でインキュベートした。1時間のインキュベーション後、溶血を停止させ、溶解しなかったRBCを遠心分離(5000xgで5分)で除去した。SpectraMax M2eで、540nmでのヘモグロビンの吸収を読み取ることにより、溶血の程度を決定する分析のために、上清を収集した。溶血(%)=(Abs-Abs0)×100/(Abs100-Abs0)(式中、Absは、AmBカプセル化物の吸光度であり、Abs100は、1%のTriton X100試料で処理された100%の溶解試料の吸光度であり、Abs0は、PBSで処理された未溶解試料の吸光度である。
【0156】
哺乳動物細胞におけるin vitro毒性
ヒト胎児腎臓HEK293細胞を使用して、AmBカプセル化物の細胞生存率を評価した。細胞をウェル当たり5×103の細胞で96ウェル組織培養プレートに移し、薬物処置前に37℃で24時間インキュベートし、これは、種々の濃度のAmBカプセル化物、遊離AmB、及びFungizone(登録商標)(AmB200、100、50、及び25μg/mLに相当する)を含有する。30μLのMTT貯蔵液(5mg/mL)を各ウェルに添加し、プレートを37℃で4時間インキュベートした。培地を捨てた後、200μlのDMSOを添加して、MTTから変換された青色ホルマザン結晶を溶解させた。SpectraMax M2eで、570nmでの吸光度を測定することにより、細胞生存率を評価した。細胞生存率は、以下の等式:細胞生存率(%)=Abst/Absc×100%(式中、Abstは、薬物処置ウェルの吸光度であり、Abscは、薬物処置なしの対照の吸光度である)を使用して、薬物処置なしの対照ウェルから得られた吸光度で計算されたパーセンテージとして表された。
【0157】
薬物動態分析研究
この実験では、6匹の雌Sprague Dawleyラットは、水の入手は自由にして約12時間一晩絶食させ、2群に無作為に分けた。Fungizone(登録商標)の最大耐量(MTD)が2mgのAmB/kgであることを考慮して、スクリーニングされたAmBカプセル化物またはFungizone(登録商標)のいずれかを、ラットに、AmB 2mg/kgに相当する単回用量で尾静脈経由で静脈内投与した。各群の血液試料(約0.5ml)を、投与後の各時点(10、30分間、及び1、2、4、6、8、12、24、36時間)で、眼窩穿刺によりヘパリン処理チューブ中に収集した。各血液試料を10000rpmで10分間遠心分離し、血漿をAmB濃度の決定のために収集した。2部のメタノールを1部の血漿に添加した。混合物を5分間ボルテックスし、続いて、遠心分離した(13000g、4℃、及び30分)。上述のように、上清をHPLC用に収集した。各試料のHPLC分析を、モジュール式液体クロマトグラフシステム(Agilent(商標))で実施した。移動相は、アセトニトリル及び10mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH4.0(40:60、v/v)で構成され、流速は、1mL/分に維持した。4.6×100mm、3.5μmサイズのeclipse plus C18逆相カラムで、化合物を分離させた。AmBの相対保持時間は、4分であった。流出液を、408nmで監視した。血漿AmB濃度を線形回帰検量線から計算した。Zhangにより設計されたPksソフトウェアの非コンパートメント薬物動態分析を使用して、AmB血漿中濃度対時間データを評価した。
【0158】
組織生体内分布試験
組織分布研究のために、24匹のBALB/cマウスを4群(n=6)に無作為に分けた。3つの群に、それぞれ、10mg、5mg、2mgのAmB/kgの単回用量で、スクリーニングされたAmBカプセル化物を尾静脈経由で注射した。1つの群に、2mgのAmB/kgの単回用量でFungizone(登録商標)を静脈内注射した。各群の3匹のマウスをCO2吸入で死亡させ、組織(肝臓、脾臓、肺、腎臓、心臓、及び脳)を、それぞれ、投与の48時間及び72時間後に取り出し、それらがさらに処理されるまで-80℃に維持する。組織試料(100mg)を粉砕し、BeadBug組織ホモジナイザー(2分、4000rpm)で、高速で200μlのDI水で均質化した。2部のメタノールを1部のホモジネートに添加した。得られた混合物を、2分間ボルテックスし、続いて、遠心分離した(13000g、4℃、及び30分)。HPLC分析用に、薬物動態分析と同じ方法で、上清を使用した。
【0159】
肝毒性及び腎毒性試験
15匹の雌BALB/cマウスを5群(n=3)に無作為に分けた。3つの群に、それぞれ、10mg、5mg、2mgのAmB/kgの単回用量のスクリーニングされたAmBカプセル化物を尾静脈経由で注射した。1つの群を、2mgのAmB/kgの単回用量のFungizone(登録商標)を用いる同じ方法で投与した。対照群にPBSを注射した。注射の48時間及び72時間後に、血液試料(約0.2mL)を下顎静脈穿刺により収集し、4℃で凝固させ、次に、5000rpmで10分間遠心分離して、血清を収集する。腎臓及び肝臓の生化学的パラメータを、製造者のガイドラインに従って実施して、クレアチニン(Cr)、血中尿素窒素(BUN)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)を含む腎毒性及び肝毒性調査を分析した。濃度を各キットの回帰検量線に基づいて計算した。
【0160】
統計分析
平均±標準偏差(SD)として表された全てのデータ。Prismソフトウェア(Graph Prism7.0 Software Inc.米国カリフォルニア州)を使用して、3群以上を比較するための二元配置分散分析(ANOVA)、続いて、Turkey-Kramer多重比較検定、及び2群を比較するためのstudent t検定で、群間の差異を評価した。差異は、p<0.05の時に、有意であるとみなされた。一方、凡例に記載される対照群に対して、*p<0.05及び**p<0.001。
【0161】
実施例15:AmBリピドイドカプセル化物の最適化及び安定性評価
AmBは、水性及び有機溶媒に可溶でない。生理学的pHでの水溶性は、1mg/L未満である。両親媒性の特性は、効率的で経済的な送達の課題とした。両親媒性の特徴は、ラクトン環の無極性側及び極性側から生じるが、両性特性は、イオン化可能なカルボキシル基及びアミン基の存在によるものである(
図18a)。最初に、AmBを種々のリピドイド75-O14B、78-O14B、または87-O14Bで製剤化し、不透明な懸濁液を得たが、全てが、
図2に示されるように1週間未満に沈殿した。粒径は、劇的に増加した。PDIは、2週間の終わりに0.7超まで増加する。言うまでもなく、粒径は、薬物動態及び毒性に重要な役割を果たす。直径が100nmを超える粒径が、血漿タンパク質と容易に相互作用するので、RESで容易に認識し、Amphocil(登録商標)などの血液からより迅速に排除することができる。しかし、粒径が小さすぎると、糸球体濾過及びFungizone(登録商標)などの薬物腎排泄を増加させ得る。ナノ粒子の最適化可能なサイズは、50~100nmである。
【0162】
溶解性及び安定性を増加させるために、AmBを、DSPE-PEGと共に製剤化したか、またはQLDsにカプセル化した。その結果、ナノ粒子は、より明確な黄色がかった半透明の溶液で、より優れた薬物溶解性を実証したが、DSPE-PEG2000で製剤化された時に、依然として、わずかに濁っていた(
図19)。2週間の終わりに、粒径は、500~900nmに増加し、PDIは、0.5超に増加した(
図20a及び20b)。しかし、AmBをQLDsで搭載した時、均質な透明な黄色溶液を得、次の2週間、安定したままであった(
図2)。粒径を、100~160nmに減少させたが、依然として、ナノ粒子の最適化可能なサイズよりも少し大きい(
図20a及び20b)。それ故、本発明者らはさらに、QLDと共にDSPE-PEGを製剤化した。AmB/Q75-O14B-F及びAmB/Q78-O14B-Fの粒径は、70~100nmに減少した(
図20a)。AmB/Q87-O14B-Fの粒径が少し高かった(110~120nm)が、依然として、AmB/Q87-O14Bと比較して減少した。DSPE-PEGで製剤化されたまたは製剤化されていない4級化リポソーム小胞は全て、2週間後であっても、均質であり、調製後の粒径及びPDIに関して性質が似ていた(
図20b)。
【0163】
QLD及びDSPE-PEGは、安定したAmBカプセル化物の形成を可能にし、AmBが脂質二重層間に挿入された、より小さな凝縮構造の生成を促進した(
図18a)。リポソームの安定性は、構造に含有されリン脂質分子の性質に依存した。QLDは、より高い溶解性、より簡単で経済的なコンビナトリアル合成、及びより高い送達効率を特徴とする2つの4級化アミン頭部を有し、これは、QLDを魅力的なものにする。PEGは、生体適合性であるが、水溶性AmB複合体には、大量が必要である。QLDは、AmB溶解度特性を増加させ、1:6.8のPEG対リピドイドのモル比を有するDSPE-PEGの量を減少させた。THFに溶解させて、過剰量のヨウ化メチルと暗所室温で一晩反応させることにより、リピドイドを4級化した。沈殿物を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄して、次に、真空で乾燥させた(
図18a)。本明細書で記載のAmBカプセル化物の別の優れた態様は、Ambisome(登録商標)と比較して、より安価な賦形剤及びより容易な調製である。Ambisome(登録商標)は、牛海綿状脳症/伝染性海綿状脳症の薬剤及び関連する分析手順のために、注射可能な適正製造基準(GMP)グレードのコレステロールを用いて製剤化されており、これにより、最終製品が高価になる。
【0164】
実施例16:薬物搭載含有量
以前に報告されるように、DMSOに溶解したAmBは、UV範囲で3つの主要な分光光度ピークを示した。AmB濃度を392nmでの適切に希釈した比の吸光度で測定し、0.9985と同等の相関係数を用いる検量線で計算した。AmBカプセル化物のDLCは、38.9~49.9%であり、
図21aに示されるように、リポソームとのAmBの優れた会合が示された。AmB/Q78-O14B-Fは、これらのカプセル化物の中で約49.9%の最高のDLCを示した。極性及び分配係数に依存するDLC効率は、リポソーム膜における局在を決定した。AmBが両親媒性であるので、水-脂質界面に隣接するアシル炭化水素鎖に属する(
図18a)。
【0165】
実施例17:in vitro抗真菌活性
AmBは、真菌細胞膜中のエルゴステロールに高い親和性を有し、細孔形成、細胞間イオンの漏出、最終的に、真菌細胞死がもたらされる。24及び48時間のインキュベーションを用いるMIC試験は、酵母菌株C.albicans(SC5314)に対する遊離AmB及びFungizone(登録商標)と比較した場合、全てのAmBカプセル化物のMICが低いことが示された(
図21b)。Fungizone(登録商標)のMICは、0.875μg/mLであり、C.albicansに対して、48時間のインキュベーション後の遊離AmBは、1.75μg/mLであった(
図21b)。全てのAmBカプセル化物の中では、AmB/Q78-O14B-Fは、最も低いMIC(0.29±0.13μg/mL)を示し、これは、
図21bに示されるように、遊離AmBのほぼ6分の1であり、Fungizone(登録商標)の3分の1であった(p<0.05)。4級アミノ基に特徴的な構造は、真菌細胞膜におけるAmB濃度の増加及びAmBとの相乗的な抗真菌効果により、より高い抗真菌効果に寄与し得る。
【0166】
実施例18:ヒト赤血球(RBC)の溶血試験
AmBカプセル化物の毒性を評価するために、種々の濃度のAmBにより誘導される溶血を、遊離AmB及びFungizone(登録商標)と比較した。遊離AmBは、100及び200μgのAmB/mLで、それぞれ、ほぼ80.69±2.39%及び102.47±1.04%の溶血を示した(
図22a)。Fungizone(登録商標)は、同じ濃度のAmBで、ほぼ52.05±9.83%及び68.84±10.28%の溶血を示した。
図22aに示されるように、AmBカプセル化物の溶血特性は、AmB/Q75-O14B-Fカプセル化物を除いて、200μgのAmB/mLまでは、ほとんど影響を受けなかった。これは、200μgのAmB/mLで21.39±3.58%を示す(p<0.05)。従って、二重層の単層から放出されたAmBは、ミセル製剤よりも低かったので、AmBカプセル化物は、Fungizone(登録商標)よりも血液毒性が低かった。Fungizone(登録商標)のミセルは、脂質二重層に比べて比較して、比較的弱い障壁があり、Fungizone(登録商標)の薬剤は、AmBカプセル化物よりも入手しやすく、ヘモグロビン及びカリウムの漏出が早くなる。Fungizone(登録商標)の溶血が増加する別の理由は、界面活性剤として作用するデオキシコール酸ナトリウムの構成成分が、溶血自体を誘導し得ることである。
【0167】
実施例19:哺乳動物細胞におけるin vitro毒性
図22bは、25~200μgのAmB/mLの範囲の濃度のAmBカプセル化物、Fungizone(登録商標)、及び遊離AmBの細胞生存率を示す。遊離AmB及びFungizone(登録商標)は、低濃度でも、24時間のインキュベーション後にのみ、HEK293に対して明らかな細胞毒性を示した。QLDと共に製剤化された後、AmB/(Q75-O14B,Q78-O14B,Q87-O14B)カプセル化物の細胞生存率は、AmB/(75-O14B,78-O14B 87-O14B)-Fカプセル化物と比較して、わずかに減少した。同時に、全てのAmBナノ粒子の細胞生存率は、Fungizone(登録商標)及び遊離AmBと比較した場合、劇的に増加した(p<0.05)。DSPE-PEGで製剤化した後、AmB/(Q75-O14B,Q78-O14B,Q87-O14B)-Fカプセル化物の細胞生存率は、200μgのAmB/mLまでは、70~80%のままであった。これはおそらく、生体適合性であり比較的毒性のないDSPE-PEGに寄与し、これは、AmBの正のアミノ基と相互作用して、二重層のイオン複合体を形成することが可能である。別の理由は、QLDが、AmBを有効にカプセル化して、ゆっくりと持続的なAmBの放出及び毒性の低減をもたらすことである。
【0168】
最終的に、in vivoでのさらなる分析に最も有効な送達システムであるように、in vitro評価の結果に基づいて、最小限の毒性、MIC、及びほとんどの安定性を示すAmB/Q78-O14B-Fをスクリーニングした。
【0169】
実施例20:薬物動態分析研究
薬物動態は、組織内の薬物の蓄積に影響を与える。薬物動態プロファイルを比較するために、AmB/Q78-O14B-F及びFungizone(登録商標)を、ラットに2mgのAmB/kg体重の用量で静脈内注射した。推定された血漿濃度対時間プロファイルは、
図23aに示され、対応する平均薬物動態パラメータは、表1にまとめられた。
【0170】
結果は、AmB/Q78-O14B-F及びFungizone(登録商標)の両方の血漿濃度プロファイルが、迅速な初期分布相を示したことを実証した。一方で、AmB/Q78-O14B-Fは、Fungizone(登録商標)よりも高い最大血漿中濃度(Cmax)を生じた(それぞれ、25.13±7.05及び2.66±0.81μg/mL、p<0.05)(表1)。24時間に全てのラットで及び12時間に1匹のラットで、Fungizone(登録商標)のAmB濃度は、検出できなかった。AmBは依然として、投与の24時間後に検出可能であり(0.74±0.12μg/mL)、MIC(0.39±0.13μg/mL)を超えたままであった。AmBは、濃度がMICの0.5~1倍未満である場合、静真菌活性を示し、MICの濃度の0.5~1倍超である場合、強力な殺真菌活性を発揮するであろう。結果は、24時間の投与後に、AmB/Q78-O14B-Fが依然として、播種性カンジダ症などの血液による感染症に有益な殺真菌活性を有することを示した。
【0171】
さらに、AmB/Q78-O14B-Fは、Fungizone(登録商標)(10.98±5.02mg*h/L)の4倍を上回るAUC(46.58±6.28mg*h/L)及びFungizone(登録商標)(296.86±12.02L/kg)のほぼ半分の分布容積(Vd)(177.08±46.05L/kg)を示した(p<0.05)(表1)。AmB/Q78-O14B-Fの薬物動態学的挙動は、高いCmax、AUC、遅いCI、及び小さいVdも示すAmbisome(登録商標)と同様であると思われる。1つの説明は、正荷電を有するAmBのアミノ基がQLDとイオン複合体を形成することである。それにより、この機序は、リポソーム二重層内でのAmBの保持が促進され、徐々に放出され、血液中の循環が長くなった。別の理由は、DSPE-PEGが、生体適合性の特性及び変化した立体配座の柔軟性を有することであり、これは、アニオン性脂質の表面に付着することにより血液循環時間を延長し、それにより、さらに二重層内のAmBの保持を促進する。
【0172】
感染した標的が肝臓及び脾臓以外の組織である時に、分布及び効果を向上させるために、RESによる取り込みを回避して、血症循環時間を延長することは、非常に重要である。Fungizone(登録商標)は、以前に報告された結果と一致する低いAUC、Cmax、大きいCI、及び広いVd(表1)を示した。Fungizone(登録商標)の低いAmB血漿中濃度は、Fungizone(登録商標)のミセル製剤からのAmBの迅速放出ならびに肝臓及び脾臓のRESによるAmBの高い取り込みにより説明することができる。本発明者らはまた、Fungizone(登録商標)が、Swenson及びSerranoが以前にそれぞれ報告している、投与の4時間後の血漿レベルに第2のピークを示したという興味深い現象を観察した(
図6a)。これは、肝臓などの組織からの再分布に関連し得る。
【表1】
【0173】
実施例21:組織の生体内分布試験
ナノ粒子が血液循環を離れると、薬剤がどこに行き、特定の組織にどれだけ留まるかを知ることが非常に重要である。その理由は、組織が全身性真菌感染症の主要な部位でもあるからである。48時間及び72時間の静脈内投与後の組織分布の結果は、
図23b~23eに示された。AmB 5mg/kg及び2mg/kgと同等の単回用量のAmB/Q78-O14B-Fを投与した場合、全てのマウスは生存していた。AmB 10mg/kgのAmB/Q78-O14B-F及びFungizone(登録商標)2mg/kgと同等の用量で投与された場合、各群は、1匹の死亡したマウスを有する。
【0174】
結果は、2mgのAmB/kgの単回用量の48時間の注射後に、AmB/Q78-O14B-Fが、Fungizone(登録商標)(肝臓で5.80±1.43μg/mL及び脾臓で6.25±1.30μg/mL)と比較して、肝臓(2.07±0.30μg/g)及び脾臓(5.10±0.97μg/g)でより低い濃度を示したことを示した(
図23b及び23c)。その理由は、回避されたAmB/Q78-O14B-Fが、RESにより即座に認識されて、血漿中の循環の延長がもたらされるからである。粒子の認識は、粒子及びオプソニン間の距離に応じて、血液中のオプソニン化により仲介される。Fungizone(登録商標)のように距離が短い場合、オプソニンは、粒子の表面に結合し、次に、RESで認識することができる。さらに、AmB/Q78-O14B-FのAmB濃度は、72時間の注射後に、Fungizone(登録商標)(それぞれ、1.80±0.10及び1.23±0.14μg/mL)と比較して、肝臓(1.46±0.06μg/g)及び脾臓(1.37±0.06μg/g)での同等レベルまで低下し、依然として、MICを上回ったままである(
図23b及び23c)。長期の組織保持は、薬が、効果を失うことなく、毎日ではなく断続的に与えることができることを示唆し、これは、コスト及び起こり得る毒性の副作用を低減させるであろう。残念ながら、AmB/Q78-O14B-Fは、脳組織中のAmBの分布を示さず、これは、クリプトコッカス髄膜炎などの頭蓋内真菌感染症には有益ではなかった。
【0175】
本発明者らは、AmB濃度が、Fungizone(登録商標)(48時間、1.93±0.23μg/g;72時間、0.83±0.74μg/g)と比較して、腎臓では低い(48時間、0.79±0.70μg/g、72時間、0.45±0.39μg/g)ことがわかった(
図23e)。これは、腎臓へのAmBの分布の低減を示す。説明は、リポソームが、糸球体濾過及び薬物の腎排泄を回避するのに十分大きく、AmBのカプセル化物の腎毒性の低減がもたらされたことである。
【0176】
AmB/Q78-O14B-Fが、Fungizone(登録商標)よりも高濃度で肺に蓄積する(それぞれ、1.45±0.24μg/gに対して2.96±1.06、p<0.05)このナノ粒子の別の優れた属性があった(
図23d)。72時間の注射後、AmBカプセル化物の肺内濃度は、2.12±0.27μg/gであったが、Fungizone(登録商標)で処置されたマウスの肺では、低AmB濃度が検出された(p<0.05)(
図23d)。AmB/Q78-O14B-Fの標的が侵襲性アスペルギルス症などの肺部位である場合、肺真菌感染症に有益である。残念ながら、AmB/Q78-O14B-Fは、脳組織にいかなる分布も示さず、これは、クリプトコッカス髄膜炎などの頭蓋内真菌感染症には有益でなかった。
【0177】
AmB/Q78-O14B-Fで処置されたマウスの組織では、用量依存的応答の増加が認められた(
図23b~23e)。注射用量が5mgのAmB/Kgに増加させた場合、マウスの全ての臓器組織で高濃度が検出された。実験で全てのマウスが生存し、後続のin vivo毒性試験では、毒性は確認されなかった。しかし、AmB/Q78-O14B-Fの用量を10mgのAmB/kgに増加させた場合、1匹のマウスが12時間で死亡した。それは、投与後に高濃度のAmBが組織に蓄積する場合、毒性が増加することを意味する。10mgのAmB/kgの用量で48時間投与した後、低濃度のAmBが心臓組織で見出された。1匹のマウスが、2mgのAmb/kgの単回用量の静脈内投与のFungizone(登録商標)で死亡した。これらの結果は、AmB/Q78-O14B-Fが、Fungizone(登録商標)と比較して、より広く、より安全な治療ウィンドウを有することを示し、これは、以下のin vivo毒性試験で確認された。
【0178】
実施例22:in Vivo毒性試験
in vivo毒性評価の結果は、AmB/Q78-O14B-Fが、対照群と比較して、2mgまたは5mgのAmB/kgのいずれかの用量で処置されたマウスで、肝臓(ALT及びAST)ならびに腎臓(Cr及びBUN)機能に影響を与えなかったことを示唆した(
図24)。結果は、2mgまたは5mgのAmB/kgのAmB/Q78-O14B-Fで処置されたマウスの腎臓におけるAmB濃度蓄積の低減と一致した(
図23e)。従って、糸球体濾過が低減し、腎毒性が最小限に抑えられる。しかし、AmB/Q78-O14B-Fは、用量を10mgのAmB/kgに上昇させた場合、Cr及びBUNレベルまたは肝臓酵素AST及びALTを増加させた。全てが対照群と比較して有意差がある(p<0.05)(
図24)。
【0179】
肝毒性及び腎毒性は、用量投与を増加させた後に、腎臓及び肝臓でのAmB保持に関連し得る。比較すると、Fungizone(登録商標)は、AmB/Q78-O14B-Fと比較した場合、同様の用量2mgのAmB/kgで72時間投与された後に、Cr、BUN、ALT、及びASTにおいて有意な増加を引き起こした(p<0.05)(
図24)。結果は、AmB/Q78-O14B-Fが、Fungizone(登録商標)と比較して、毒性の大幅な低減及び治療ウィンドウの増加をもたらすことを実証した。
【0180】
【0181】
合成
清浄なガラスバイアル中で、フッ素含有尾部(2.5当量)をアミン頭部(1当量)と混合した。48時間継続的に撹拌しながら、混合物を70℃未満に維持した。次に、反応を停止させ、移動相としてメタノール及びジクロロメタンを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーで、粗生成物を精製した。
【0182】
アッセイ
上記の種々のフッ素鎖を有する脂質のGFP陽性細胞及びDsRed陽性細胞のパーセンテージの結果は、
図25及び
図26の棒グラフにまとめられる。
【0183】
実施例24:新しいライブラリー1-異なる疎水性尾部を有するアミン200
【化56】
上記の種々の疎水性尾部を有する脂質(アミン200から合成された)に対するGFP+細胞のパーセンテージの結果は、
図27の棒グラフにまとめられる。
【0184】
実施例25:新しいライブラリー2-環状アミンアナログ
【化57】
種々の環状アミンアナログから合成された脂質に対するGFP+細胞のパーセンテージの結果は、
図28の棒グラフにまとめられる。
【0185】
実施例26:新しいライブラリー3-イミダゾール含有アミンアナログ
【化58】
種々のイミダゾール含有アミンアナログから合成された上記の脂質に対するCD8+T細胞へのmRNA送達効率の結果は、
図29の棒グラフにまとめられる。
【0186】
追加の実施形態
本明細書に開示される特徴は全て、任意の組み合わせで、組み合わせてもよい。本明細書に開示される各特徴は、同じ、同等の、または同様の目的を果たす代替の特徴で置き換えられてもよい。従って、別途明記のない限り、開示の各特徴は、一般的な一連の同等または同様の特徴の例示にすぎない。
【0187】
上記の説明から、当業者は、記載の実施形態の本質的な特徴を容易に確認することができ、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な用途及び条件に適合させるように実施形態の様々な変更及び修正を行い得る。従って、他の実施形態も、特許請求の範囲内である。開示の実施形態に対して、様々な修正及び変形を行うことができることは、当業者らには明らかであろう。本明細書及び実施例は、単に例示と考えられることが意図され、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの等価物によって示される。
最後に、本発明の好ましい実施態様を項分け記載する。
[実施形態1]
式(I)の化合物
【化59】
(式中、
親水性頭部であるAは、
【化60】
であり、
R
a
、R
a
’、R
a
”、及びR
a
”’のそれぞれは独立して、H、C
1
-C
20
アルキル、C
2
-C
20
アルケニル、C
2
-C
20
アルキニル、C
3-
C
20
シクロアルキル、C
1
-C
20
ヘテロアルキル、C
1
-C
20
ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;Zは、C
1
-C
20
二価脂肪族ラジカル、C
1
-C
20
二価ヘテロ脂肪族ラジカル、二価アリールラジカル、または二価ヘテロアリールラジカルであり、
Bは、C
1
-C
24
アルキル、C
2
-C
24
アルケニル、C
2
-C
24
アルキニル、C
3
-C
24
シクロアルキル、C
1
-C
24
ヘテロアルキル、C
1
-C
24
ヘテロシクロアルキル、アリール、もしくはヘテロアリール、または
【化61】
であり、
R
1
及びR
2
のそれぞれは、C
1
-C
20
二価脂肪族ラジカルであり、
R
3
及びR
4
のそれぞれは独立して、HもしくはC
1
-C
10
アルキルであるか、またはR
3
及びR
4
は、それらが結合している原子と共に、C
3
-C
10
シクロアルキルを形成し、
R
5
は、C
1
-C
24
アルキル、C
2
-C
24
アルケニル、C
2
-C
24
アルキニル、C
3
-C
24
シクロアルキル、C
1
-C
24
ヘテロアルキル、C
1
-C
24
ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、
Wは、O、S、またはSeであり、
Vは、結合、O、S、またはSeであり、
リンカーであるXは、
【化62】
であり、
L
1
、L
2
、L
3
、及びL
4
のそれぞれは独立して、結合、O、S、またはNR
c
であり;Gは、O、S、またはNR
d
であり;Qは、OR
f
、SR
g
、またはNR
h
R
i
であり;r及びtのそれぞれは独立して、1~6であり、R
c
、R
d
、R
f
、R
g
、R
h
、及びR
i
のそれぞれは独立して、H、C
1
-C
10
アルキル、C
1
-C
10
ヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、
mは、0または1であり、但し、VがSである場合、mは、1である)。
[実施形態2]
Aが、
【化63】
である、請求項1に記載の化合物。
[実施形態3]
Bが、
【化64】
である、請求項1~2に記載の化合物。
[実施形態4]
Xが、
【化65】
であり、
R
c
及びR
d
のそれぞれが独立して、HまたはC
1
-C
10
アルキルである、請求項1~3に記載の化合物。
[実施形態5]
R
1
及びR
2
のそれぞれが、C
1
-C
4
二価脂肪族ラジカルであり;R
3
及びR
4
のそれぞれが独立して、HまたはC
1
-C
4
アルキルであり;R
5
がC
1
-C
20
アルキルである、請求項1~4に記載の化合物。
[実施形態6]
Wが、O、S、またはSeであり;Vが結合である、請求項1~5に記載の化合物。
[実施形態7]
W及びVのそれぞれが独立して、OまたはSeであり、mが0である、請求項1~5に記載の化合物。
[実施形態8]
W及びVのそれぞれが、OまたはSであり;mが1である、請求項1~5に記載の化合物。
[実施形態9]
Aが、以下のアミンのうちの1つから形成されるアミノ部分である、請求項1~8に記載の化合物:
【化66】
[実施形態10]
Aが、以下のアミンのうちの1つから形成されるアミノ部分である、請求項1~8に記載の化合物。
【化67-1】
【化67-2】
[実施形態11]
Aが、
【化68】
であり、
Bが、
【化69】
であり、
R
1
及びR
2
のそれぞれが、C
1
-C
4
二価脂肪族ラジカルであり;R
3
及びR
4
のそれぞれが独立して、HまたはC
1
-C
4
アルキルであり;R
5
がC
1
-C
20
アルキルである、請求項1~10に記載の化合物。
[実施形態12]
Aが、以下のアミンのうちの1つから形成されるアミノ部分である、請求項1~11のいずれかに記載の化合物:
【化70】
[実施形態13]
Aが、以下のアミンのうちの1つから形成されるアミノ部分である、請求項1~11のいずれかに記載の化合物:
【化71-1】
【化71-2】
[実施形態14]
Wが、O、S、またはSeであり;Vが結合である、請求項11~13のいずれかに記載の化合物。
[実施形態15]
W及びVのそれぞれが独立して、OまたはSeであり、mが0である、請求項11~13のいずれかに記載の化合物。
[実施形態16]
W及びVのそれぞれがOであり、mが1である、請求項11~13のいずれかに記載の化合物。
[実施形態17]
式(I)の化合物
【化72】
(式中、
親水性頭部であるAは、
【化73】
であり、
R
a
、R
a
’、R
a
”、及びR
a
”’のそれぞれは独立して、H、C
1
-C
20
アルキル、C
2
-C
20
アルケニル、C
2
-C
20
アルキニル、C
3-
C
20
シクロアルキル、C
1
-C
20
ヘテロアルキル、C
1
-C
20
ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;Zは、C
1
-C
20
二価脂肪族ラジカル、C
1
-C
20
二価ヘテロ脂肪族ラジカル、二価アリールラジカル、または二価ヘテロアリールラジカルであり、
Bは、C
1
-C
24
アルキル、C
2
-C
24
アルケニル、C
2
-C
24
アルキニル、C
3
-C
24
シクロアルキル、C
1
-C
24
ヘテロアルキル、C
1
-C
24
ヘテロシクロアルキル、アリール、もしくはヘテロアリール、または
【化74】
であり、
R
1
が、C
1
-C
20
二価脂肪族ラジカルであり、
R
2
が、結合またはC
1~
C
20
二価脂肪族ラジカルであり、
R
3
及びR
4
のそれぞれは独立して、HもしくはC
1
-C
10
アルキルであるか、またはR
3
及びR
4
は、それらが結合している原子と共に、C
3
-C
10
シクロアルキルを形成し、
R
5
が、
【化75】
であり、
R
6
は、結合またはC
1
-C
20
二価脂肪族ラジカルであり;R
b
及びR
b
’はそれぞれ、Fであるか、またはR
b
及びR
b
’は、それらが結合している原子と共に、C=Oを形成し;R
7
は、Fまたは脂肪族脂質部分であり;L
1
及びL
2
のそれぞれは独立して、結合、O、S、またはNR
c
であり、R
c
は、H、C
1
-C
10
アルキル、C
1
-C
10
ヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;nは、1~20であり;
W及びVのそれぞれが独立して、結合、O、S、またはSeであり、
リンカーであるXは、
【化76】
であり、
L
3
、L
4
、L
5
、及びL
6
のそれぞれは独立して、結合、O、S、またはNR
c
であり;Gは、O、S、またはNR
d
であり;Qは、OR
f
、SR
g
、またはNR
h
R
i
であり;r及びtのそれぞれは独立して、1~6であり、R
c
、R
d
、R
e
、R
f
、R
g
、R
h
、及びR
i
のそれぞれは独立して、H、C
1
-C
10
アルキル、C
1
-C
10
ヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、
mが0または1である)。
[実施形態18]
Aが、
【化77】
であり、
Bが、
【化78】
である、請求項17に記載の化合物。
[実施形態19]
R
1
及びR
2
のそれぞれが、C
1
-C
4
二価脂肪族ラジカルであり;R
3
及びR
4
のそれぞれが独立して、HまたはC
1
-C
4
アルキルである、請求項17または18に記載の化合物。
[実施形態20]
L
1
及びL
2
のそれぞれが結合であり、R
b
、R
b
’、及びR
7
のそれぞれがFである、請求項17~19のいずれかに記載の化合物。
[実施形態21]
R
2
、W、及びVのそれぞれが結合であり、mが0である、請求項17~20のいずれかに記載の化合物。
[実施形態22]
Aが、
【化79】
であり、
Bが、
【化80】
である、請求項19に記載の化合物。
[実施形態23]
R
1
が、C
1
-C
4
二価脂肪族ラジカルであり;Xが、
【化81】
であり、
R
c
及びR
d
のそれぞれが独立して、HまたはC
1
-C
10
アルキルである、請求項22に記載の化合物。
[実施形態24]
Aが、以下のアミンのうちの1つから形成されるアミノ部分である、請求項23に記載の化合物:
【化82】
[実施形態25]
Aが、以下のアミンのうちの1つから形成されるアミノ部分である、請求項23に記載の化合物:
【化83-1】
【化83-2】
[実施形態26]
R
6
が、C
1
-C
4
二価脂肪族ラジカルであり、L
1
及びL
2
のそれぞれが独立して、OまたはNR
c
であり、R
c
が、HまたはC
1
-C
10
アルキルであり;R
b
及びR
b
’が、それらが結合している原子と共に、C=Oを形成し;nが1または2であり;R
7
が脂肪族脂質部分である、請求項17に記載の化合物。
[実施形態27]
R
7
が、コレステロールから形成される脂肪族脂質部分である、請求項26に記載の化合物。
[実施形態28]
R
1
及びR
2
のそれぞれが、C
1
-C
4
二価脂肪族ラジカルであり;Xが、
【化84】
であり、
R
c
及びR
d
のそれぞれが独立して、HまたはC
1
-C
10
アルキルであり;W及びVのそれぞれが独立して、O、S、またはSeであり;mが0である、請求項26に記載の化合物。
[実施形態29]
Aが、以下のアミンのうちの1つから形成されるアミノ部分である、請求項27に記載の化合物:
【化85】
[実施形態30]
Aが、以下のアミンのうちの1つから形成されるアミノ部分である、請求項27に記載の化合物:
【化86-1】
【化86-2】
[実施形態31]
ナノ複合体を含む医薬組成物であって、前記ナノ複合体が、請求項1~16のいずれかに記載の化合物及びタンパク質または核酸から形成され、前記ナノ複合体が、50nm~1000nmの粒径を有し、前記化合物が、非共有結合相互作用、共有結合、またはその両方を介して前記タンパク質または核酸に結合する、医薬組成物。
[実施形態32]
前記タンパク質が、GFP-CreまたはCRISPR/Cas9である、請求項31に記載の医薬組成物。
[実施形態33]
ナノ複合体を含む医薬組成物であって、前記ナノ複合体が、請求項17~30のいずれかに記載の化合物及びタンパク質または核酸から形成され、前記ナノ複合体が、50nm~1000nmの粒径を有し、前記化合物が、非共有結合相互作用、共有結合、またはその両方を介して前記タンパク質または核酸に結合する、医薬組成物。
[実施形態34]
前記タンパク質が、GFP-CreまたはCRISPR/Cas9である、請求項33に記載の医薬組成物。
[実施形態35]
病状を処置する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の請求項31または32に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
[実施形態36]
病状を処置する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の請求項33または34に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
[実施形態37]
ナノ複合体を含む医薬組成物であって、前記ナノ複合体が、請求項1~16のいずれかに記載の化合物及び低分子から形成され;前記ナノ複合体が、50nm~1000nmの粒径を有し、前記化合物が、非共有結合相互作用、共有結合、またはその両方を介して、前記低分子に結合する、医薬組成物。
[実施形態38]
前記低分子が、抗真菌剤または化学療法剤である、請求項37に記載の医薬組成物。
[実施形態39]
前記低分子が、ボルテゾミブ、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ、ダウノルビシン塩酸塩、シタラビン、フルオロウラシル、イリノテカン塩酸塩、ビンクリスチン硫酸塩、メトトレキサート、パクリタキセル、ビンクリスチン硫酸塩、エピルビシン、ドセタキセル、シクロホスファミド、カルボプラチン、レナリドマイド、イブルチニブ、アビラテロン酢酸エステル、エンザルタミド、ペメトレキセド、パルボシクリブ、ニロチニブ、エベロリムス、ルキソリチニブ、エピルビシン、ピリルビシン、イダルビシン、バルルビシン、アムルビシン、ブレオマイシン、フレオマイシン、ダクチノマイシン、ミトラマイシン、ストレプトゾテシン、ペントスタチン、ミトサン(Mitosanes)マイトマイシンC、エンジインカリケアマイシン、グリコシドレベッカマイシン、マクロライドラクトンエポチヒロン(epotihilones)、イクサベピロン、ペントスタチン、サリノスポラミドA、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、ビノレルビン、ドセタキセル、カンプトテシン、ハイカムチン、ペデリン、テオペデリン(Theopederins)、アナミド(Annamides)、トラベクテジン、アプリジン、及びエクテイナシジン743(ET743)からなる群より選択される、請求項37に記載の医薬組成物。
[実施形態40]
前記低分子が、アムホテリシンBまたはドキソルビシンである、請求項37に記載の医薬組成物。
[実施形態41]
ナノ複合体を含む医薬組成物であって、前記ナノ複合体が、請求項17~30のいずれかに記載の化合物及び低分子から形成され;前記ナノ複合体が、50nm~1000nmの粒径を有し、前記化合物が、非共有結合相互作用、共有結合、またはその両方を介して、前記低分子に結合する、医薬組成物。
[実施形態42]
前記低分子が、抗真菌剤または化学療法剤である、請求項41に記載の医薬組成物。
[実施形態43]
前記低分子が、ボルテゾミブ、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ、ダウノルビシン塩酸塩、シタラビン、フルオロウラシル、イリノテカン塩酸塩、ビンクリスチン硫酸塩、メトトレキサート、パクリタキセル、ビンクリスチン硫酸塩、エピルビシン、ドセタキセル、シクロホスファミド、カルボプラチン、レナリドマイド、イブルチニブ、アビラテロン酢酸エステル、エンザルタミド、ペメトレキセド、パルボシクリブ、ニロチニブ、エベロリムス、ルキソリチニブ、エピルビシン、ピリルビシン、イダルビシン、バルルビシン、アムルビシン、ブレオマイシン、フレオマイシン、ダクチノマイシン、ミトラマイシン、ストレプトゾテシン、ペントスタチン、ミトサンマイトマイシンC、エンジインカリケアマイシン、グリコシドレベッカマイシン、マクロライドラクトンエポチヒロン、イクサベピロン、ペントスタチン、サリノスポラミドA、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、ビノレルビン、ドセタキセル、カンプトテシン、ハイカムチン、ペデリン、テオペデリン、アナミド、トラベクテジン、アプリジン、及びエクテイナシジン743(ET743)からなる群より選択される、請求項41に記載の医薬組成物。
[実施形態44]
前記低分子が、アムホテリシンBまたはドキソルビシンである、請求項41に記載の医薬組成物。
[実施形態45]
病状を処置する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の請求項37~40のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
[実施形態46]
病状を処置する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の請求項41~44のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。