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特許7497054抗原提示細胞模倣足場およびそれを作製および使用するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】抗原提示細胞模倣足場およびそれを作製および使用するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20240603BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240603BHJP
   C07K 17/14 20060101ALI20240603BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240603BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240603BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240603BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240603BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240603BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240603BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20240603BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240603BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20240603BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12N5/0783 ZNA
C07K17/14
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/02
A61P37/06
A61P43/00 105
A61P31/18
C07K16/28
C07K14/47
【請求項の数】 50
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021168585
(22)【出願日】2021-10-14
(62)【分割の表示】P 2019501623の分割
【原出願日】2017-07-13
(65)【公開番号】P2022001069
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】62/361,891
(32)【優先日】2016-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー シン チュン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ジェイ. ムーニー
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-522486(JP,A)
【文献】特表2015-516398(JP,A)
【文献】Sirkka B Stephan et al,Biopolymer implants enhance the efficacy of adoptive T-cell therapy,Nature Biotechnology,2015年,33,97-101
【文献】Joel C. Sunshine et al,Particle shape dependence of CD8+ T cell activation by artificial Antigen Presenting Cells,Biomaterials,2014年,35(1),269-277
【文献】Jaeyun Kim et al,Injectable, spontaneously assembling, inorganic scaffolds modulate immune cells in vivo and increase,Nature Biotechnology,2015年,33,64-72
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00-5/28
C07K 17/00
C12M 1/00ー3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)であって、
高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)と;
前記MSR上に層化された流体支持脂質二重層(SLB)と;
T細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子と
を含み、
前記T細胞活性化分子および前記T細胞共刺激分子が、前記SLB上に提示され、
前記足場が、T細胞の浸潤を可能にする、前記MSR間の空間を含む、足場。
【請求項2】
前記T細胞活性化分子および前記T細胞共刺激分子が、化学的カップリングの親和性ペアリングを介して前記SLB上に提示される、請求項1に記載の足場。
【請求項3】
T細胞ホメオスタシス因子をさらに含む、請求項1に記載の足場。
【請求項4】
前記T細胞ホメオスタシス因子が前記MSR上に負荷される、請求項3に記載の足場。
【請求項5】
前記T細胞ホメオスタシス因子が前記SLB上に負荷される、請求項4に記載の足場。
【請求項6】
前記T細胞ホメオスタシス因子は、前記MSR上に負荷され、かつ、前記足場が懸濁される培地中に存在する、請求項3に記載の足場。
【請求項7】
前記T細胞が、ナチュラルキラーT細胞、ガンマデルタT細胞、CD3+ T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、調節性T細胞(Treg)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の足場。
【請求項8】
前記調節性T細胞(Treg)が、FOXP3+ Treg細胞、FOXP3- Treg細胞、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項7に記載の足場。
【請求項9】
前記T細胞活性化分子が、抗体もしくはその抗原結合フラグメント、MHCペプチドを負荷した主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子もしくはそのマルチマー、MHC-免疫グロブリン(Ig)結合体もしくはそのマルチマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の足場。
【請求項10】
前記T細胞共刺激分子が、抗体もしくはその抗原結合フラグメントである、請求項1に記載の足場。
【請求項11】
前記抗体もしくはその抗原結合フラグメントが、共刺激抗原に特異的に結合し、前記共刺激抗原がCD28、4.1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD27(TNFRSF7)、GITR(CD357)、CD30(TNFRSF8)、HVEM(CD270)、LTβR(TNFRSF3)、DR3(TNFRSF25)、ICOS(CD278)、CD226(DNAM1)、CRTAM(CD355),TIM1(HAVCR1、KIM1)、CD2(LFA2、OX34)、SLAM(CD150、SLAMF1)、2B4(CD244、SLAMF4)、Ly108(NTBA、CD352、SLAMF6)、CD84(SLAMF5)、Ly9(CD229、SLAMF3)、CRACC(CD319、BLAME)およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項10に記載の足場。
【請求項12】
前記T細胞ホメオスタシス因子が、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-17、IL-21、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項3に記載の足場。
【請求項13】
Fc融合タンパク質に特異的に結合する免疫グロブリン分子を含む請求項1に記載の足場であって、前記免疫グロブリン分子が前記SLB上に提示される、足場。
【請求項14】
前記足場が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド21(CCL-21)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド19(CCL-19)、C-X-Cモチーフケモカインリガンド12(CXCL12)、インターフェロンγ(IFNγ)、FMS様チロシンキナーゼ3(Flt-3)リガンド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される動員化合物を含む、請求項1に記載の足場。
【請求項15】
前記動員化合物がGM-CSFを含む、請求項14に記載の足場。
【請求項16】
前記足場が抗原を含む、請求項1に記載の足場。
【請求項17】
前記抗原が腫瘍抗原を含む、請求項16に記載の足場。
【請求項18】
前記腫瘍抗原が、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、CEA、チロシナーゼ、ミッドカイン、BAGE、CASP-8、β-カテニン、γ-カテニン、CA-125、CDK-1、CDK4、ESO-1、gp75、gp100、MART-1、MUC-1、MUM-1、p53、PAP、PSA、PSMA、ras、trp-1、HER-2、TRP-1、TRP-2、IL13Rα、IL13Rα2、AIM-2、AIM-3、NY-ESO-1、C9orf 112、SART1、SART2、SART3、BRAP、RTN4、GLEA2、TNKS2、KIAA0376、ING4、HSPH1、C13orf24、RBPSUH、C6orf153、NKTR、NSEP1、U2AF1L、CYNL2、TPR、SOX2、GOLGA、BMI1、COX-2、EGFRvIII、EZH2、LICAM、Livin、Livinβ、MRP-3、ネスチン、OLIG2、ART1、ART4、B-サイクリン、Gli1、Cav-1、カテプシンB、CD74、E-カドヘリン、EphA2/Eck、Fra-1/Fosl 1、GAGE-1、ガングリオシド/GD2、GnT-V、β1,6-N、Ki67、Ku70/80、PROX1、PSCA、SOX10、SOX11、サバイビン、UPAR、WT-1、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(AD Abp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、T細胞レセプター/CD3-ζ鎖、腫瘍抗原のGAGEファミリー、RAGE、LAGE-I、NAG、RCAS1、α-フェトプロテイン、pl20ctn、Pmel117、PRAME、脳型グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX-I、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-4、SSX-5、SCP-I、CT-7、cdc27、腺腫様多発結腸ポリープタンパク質(APC)、フォドリン、PlA、コネキシン37、Ig-イディオタイプ、p15、GM2、GD2ガングリオシド、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp-1、EBVコード核抗原(EBNA)-I、UL16結合タンパク質様転写物1(Mult1)、RAE-1タンパク質、H60、MICA、MICB、c-erbB-2、患者特異的ネオアンチゲン、またはこれらの免疫原性ペプチド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項17に記載の足場。
【請求項19】
前記SLB 対 前記MSRの重量比が、10:1~1:20の間である、請求項1に記載の足場。
【請求項20】
前記SLB 対 前記MSRの重量比が、1:4~1:20の間である、請求項19に記載の足場。
【請求項21】
前記SLBが、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、パルミトイル-オレオイルホスファチジルコリン(POPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される脂質を含む、請求項1に記載の足場。
【請求項22】
前記SLBが、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、パルミトイル-オレオイルホスファチジルコリン(POPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される脂質を含む、請求項1に記載の足場。
【請求項23】
前記MSR 対 前記T細胞活性化分子と前記T細胞共刺激分子の両方、の乾燥重量比が、500:1~1:1の間である、請求項1に記載の足場。
【請求項24】
前記MSR 対 前記T細胞活性化分子と前記T細胞共刺激分子の両方、の乾燥重量比が、100:1~20:1の間である、請求項23に記載の足場。
【請求項25】
前記足場が、別の生分解性足場へと被包される、請求項1に記載の足場。
【請求項26】
前記足場が、T細胞の浸潤および操作を可能にし、前記T細胞の操作が、T細胞の活性化および/または増殖を含む、請求項1に記載の足場。
【請求項27】
前記MSR間の前記空間が、6.8μm~12μmの平均直径を有するT細胞の浸潤を可能にする、請求項1に記載の足場。
【請求項28】
前記MSRが、5μm~500μmの間の長さを構成する、請求項1に記載の足場。
【請求項29】
前記MSRが、50μm~200μmの間の長さを構成する、請求項1に記載の足場。
【請求項30】
前記MSRが、80μm~120μmの間の長さを構成する、請求項1に記載の足場。
【請求項31】
前記MSRが、100μmの平均長さを構成する、請求項1に記載の足場。
【請求項32】
前記MSRが、88μmの平均長さを構成する、請求項1に記載の足場。
【請求項33】
前記MSRが、4.5μmの平均直径を構成する、請求項32に記載の足場。
【請求項34】
前記MSRが20のアスペクト比を構成する、請求項1に記載の足場。
【請求項35】
請求項1~34のいずれか一項に記載の足場と、薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬学的組成物であって、前記組成物が、必要性のある患者に静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、または筋肉内投与のために製剤化される、薬学的組成物。
【請求項36】
請求項1~34のいずれか一項に記載の足場と、前記足場の中にクラスター化されたT細胞とを含む、組成物。
【請求項37】
必要性のある被験体における疾患の処置に使用するための、請求項1~34のいずれか一項に記載の足場を含む組成物であって、前記足場がT細胞集団を含む、組成物。
【請求項38】
必要性のある被験体において疾患を処置するための医薬の製造における、請求項1~34のいずれか一項に記載の足場の使用であって、
T細胞集団を含むサンプルが、前記足場と、1日間~30日間の間の期間にわたって、接触させられ、それにより、前記T細胞の集団をインビトロまたはエキソビボで活性化、共刺激および/またはホメオスタシス的に維持し;
前記T細胞の集団が、インビトロまたはエキソビボで増殖され;そして
前記活性化、共刺激、および/または維持され、かつ、増殖されたT細胞が、前記被験体に投与され、それにより、前記被験体における前記疾患を処置する、
使用。
【請求項39】
請求項1~34のいずれか一項に記載の足場を作製する方法であって、
(a)前記MSRを提供する工程;
(b)前記MSR上に前記SLBを層化する工程であって、それにより、MSR-SLB複合体を生成する工程;
(c)前記MSR-SLB複合体内の1つまたはそれより多くの非特異的組み込み部位を、遮断因子で遮断する工程;および
(d)前記MSR-SLB複合体上に前記T細胞活性化分子および前記T細胞共刺激分子を負荷する工程、
を包含し、それにより、請求項1~34のいずれか一項に記載の足場を作製する、方法。
【請求項40】
工程(a)の後の前記MSR上、または、工程(c)の後の前記MSR-SLB複合体上に、T細胞ホメオスタシス因子を負荷する工程をさらに包含する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
請求項1~34のいずれか一項に記載の足場を、T細胞を含む生物学的サンプルと接触させる工程を包含する、T細胞を操作するための方法。
【請求項42】
前記生物学的サンプル中の前記T細胞が、消耗したT細胞を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記消耗したT細胞が、CD8+PD-1+および/またはLAG-3+TIM-3+である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記操作されたT細胞において細胞表面マーカーの発現を検出する工程をさらに包含する、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記細胞表面マーカーが、CD4、CD8、CD25、CD28、CD36、CD40、CD44、CD45、CD62L、CD69、CD134、FOXP3、4-1BB、LAG-3、TIM-3、PD-1およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記生物学的サンプルが被験体から得られたものであり、前記足場が、前記生物学的サンプルとエキソビボで接触させられる、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記T細胞が、エフェクターメモリーT細胞、エフェクターT細胞、セントラルメモリーT細胞、および/またはナイーブT細胞の増殖した集団を生成するように操作される、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記操作されたT細胞が、CD8+細胞、CD4+細胞、CD4+/FOXP3- T細胞、CD44+/CD62L- T細胞、CD8+/CD69+ T細胞、グランザイムB+CD8+ T細胞、および/またはIFN-γ生成T細胞を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記生物学的サンプルが、ヒトから得られた血液サンプル、骨髄サンプル、リンパ液サンプルまたは脾臓サンプルである、請求項41に記載の方法。
【請求項50】
前記操作により、前記T細胞の分化、増殖または活性の改善;および/または、前記T細胞の消耗、アネルギーまたは死滅の低減がもたらされる、請求項41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年7月13日に出願された米国仮特許出願番号第62/361,891号に基づく優先権を主張しており、その全体の内容は、参考として明示して本明細書中に援用される。
【0002】
政府支援の陳述
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された認可番号EB015498、EB014703およびDE013033の下、政府支援でなされた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
Tリンパ球(T細胞)のプライミングおよび拡大を含む免疫療法は、がんおよび感染性疾患の処置のために、特に、ヒトにおいて有望である(Meliefら, Immunol. Rev. 145: 167-177(1995); Riddellら, Annu. Rev. Immunol. 13:545-586(1995))。ウイルス感染および/またはがんを有する患者における養子移入の現在の研究は、自家樹状細胞(DC)、ウイルス感染したB細胞、および/または同種異系フィーダー細胞上で何週間もの間インビトロで刺激し、クローン化し、そして拡大したT細胞の注入を含む(Riddellら, Science 257:238-241(1992); Yeeら, J. Exp. Med. 192:1637-1644(2000), Brodieら, Nat. Med. 5:34-41(1999); Riddellら, Hum. Gene Ther. 3:319-338(1992), Riddellら, J. Immunol. Methods 128:189-201(1990))。しかし、養子T細胞免疫療法の臨床試験はしばしば、数十億個の細胞を要する(Riddellら, 1995)ことから、既存のインビトロT細胞拡大プロトコルはしばしば、このような治験の要求を満たすには不十分である。
【0004】
さらに、最適な生着は、再注入の時点で、機能的であり、かつ老化していないT細胞の使用を要する。臨床適用のために、T細胞が所望の機能性を有する、すなわち、それらが増殖し、エフェクター機能を発揮し、所望の様式でサイトカインを生成することを担保することが重要である(Liebowitzら, Current Opinion Oncology, 10, 533-541, 1998)。天然の状況において、T細胞活性化は、抗原提示細胞(APC)の表面上の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合したペプチド抗原による、T細胞レセプター/CD3複合体(TCR/CD3)のエンゲージメントによって開始される(Schwartz, Science 248:1349(1990))。これは、T細胞活性化における一次シグナルである一方で、APCとT細胞との間の他のレセプター-リガンド相互作用も、完全な活性化に必要とされる。例えば、他の分子相互作用の非存在下でのTCR刺激は、これらの細胞が再刺激の際に完全な活性化シグナルに応答できないように、アネルギーの状態を誘導し得る(Schwartz, 1990; Harding,ら, Nature 356:607, 1992; Dudleyら, Clinical Cancer Research., 16, 6122-6131, 2010; Rosenbergら, Clinical Cancer Research., 17, 4550-4557, 2011)。代わりに、T細胞は、TCRエンゲージメント単独によって活性化される場合に、プログラムされた細胞死(アポトーシス)によって死滅し得る(Webbら, Cell 63:1249, 1990; Kawabeら, Nature 349:245, 1991; Kabelitzら, Int. Immunol. 4:1381, 1992; Grouxら, Eur J. Immunol. 23:1623, 1993)。
【0005】
よって、最適な機能性は、第2のシグナル伝達分子、例えば、膜結合タンパク質またはAPCの分泌生成物の使用を介して付与され得る。膜結合タンパク質の状況では、このような第2の相互作用は通常、本質的に接着性であり、その2種の細胞の間の接触を強化する(Springerら, Ann. Rev. Immunol. 5:223, 1987)。他のシグナル伝達分子(例えば、APCからT細胞へのさらなる活性化シグナルの伝達)がまた、関連し得る(Biererら, Adv. Cancer Res. 56:49, 1991))。例えば、CD28は、ヒトにおいて末梢T細胞のうちの80%に存在する表面糖タンパク質であり、静止T細胞および活性化T細胞の両方に存在する。CD28は、B7-1(CD80)またはB7-2(CD86)に結合し、公知の共刺激分子の中で最も強力なもののうちの1つである(Juneら, Immunol. Today 15:321(1994), Linsleyら, Ann. Rev. Immunol. 11:191(1993))。TCRエンゲージメントと合同してT細胞上のCD28連結は、インターロイキン-2(IL-2)の生成を誘導する(Juneら, 1994; Jenkinsら, 1993; Schwartz, 1992)。分泌されたIL-2は、エキソビボT細胞拡大にとっての重要な因子である(Smithら, Ann. N.Y. Acad. Sci. 332:423-432(1979); Gillisら, Nature 268:154-156(1977))。
【0006】
T細胞の共刺激は、T細胞活性化の複数の局面に影響を及ぼすことが示された(Juneら, 1994)。それは、培養において増殖応答を誘導するために必要な抗CD3の濃度を低下させる(Gimmiら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:6575(1991))。CD28共刺激はまた、遺伝子発現の転写調節および転写後調節を通じて、ヘルパーT細胞によるリンホカインの生成を顕著に増強し(Lindstenら, Science 244:339(1989); Fraserら, Science 251:313(1991))、細胞傷害性T細胞の細胞融解潜在能力を活性化し得る。インビボでのCD28共刺激の阻害は、異種移植片拒絶を遮断し得、そして同種異系移植片拒絶は、かなり遅れる(Lenschowら, Science 257:789(1992); Turkaら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11102(1992))。
【0007】
より重要なことには、刺激性/共刺激性の刺激に関する前述のエフェクターは、インビトロでのT細胞の操作の状況において広く適用されてきた。この状況では、抗CD3モノクローナル抗体(第1のシグナル)および抗CD28モノクローナル抗体(第2のシグナル)の組み合わせは、APCを刺激するために最も一般的に使用される。抗CD3および抗CD28モノクローナル抗体によって提供されるシグナルは、その抗体が固体表面(例えば、プラスチックプレート(Barojaら, Cellular Immunology, vol. 120, 205-217, 1989; Damleら, The Journal of Immunology, vol. 143, 1761-1767, 1989))またはセファロースビーズ(Andersonら, Cellular Immunology, vol. 115, 246-256, 1988))上に固定化される場合、T細胞に最もよく送達される。Juneらに発行された米国特許第6,352,694号もまた参照のこと。
【0008】
種々の表面、ならびに抗CD3および抗CD28モノクローナル抗体を含む試薬が、種々の適用のためにT細胞を得て拡大するために開発されてきた。例えば、Levineら(The Journal of Immunology, vol. 159, No. 12: pp. 5921-5930, 1997)は、抗CD3および抗CD28モノクローナル抗体を含む4.5ミクロン(μM)直径を有するトシル-活性化常磁性ビーズを開示し、これらは、T細胞を刺激および増殖し、それらを誘導して、炎症促進性サイトカインを生成するために利用され得る。これらビーズで活性化されたT細胞が、サイトカイン生成のような、それらT細胞を養子免疫療法に潜在的に有用にする特性を示すことがまた、示された(Garlieら, J Immunother 22(4): 336-45, 1999; Shibuyaら, Arch Otolaryngol Head Neck Surg, vol. 126, No. 4: 473-479, 2000)。これらビーズは、Thermo-Fisher Scientific, Inc.から商品名DYNABEADS CD3/CD28 T-cell expansionの下で市販されている。
【0009】
細胞療法におけるT細胞の拡大のための固定化されたモノクローナル抗体を有する常磁性ビーズの使用は、患者に注入する前に、T細胞からビーズを分離および除去することを要する。これは、非常に労働集約的なプロセスであり、細胞喪失、細胞損傷、夾雑するリスクの増大および処理コストの増大を生じる。そのビーズ上の固定化されたモノクローナル抗体と、標的T細胞の表面上の対応リガンドとの強固な会合が原因で、そのビーズをT細胞から除去することは困難である。そのビーズ-細胞結合体はしばしば、T細胞がその標的抗原を内部移行するまで待ち、次いで、機械的破壊技術を使用して、そのビーズをT細胞から分離することによって、分離される。この技術は、T細胞に損傷を引き起こし得、そしてまた、そのT細胞上の連結した抗原をその細胞表面から除去させ得る(Rubbiら, Journal of Immunology Methods, 166, 233-241, 1993)。さらに、活性化T細胞はしばしば、細胞療法プロトコルにおける使用に最も望ましく、そしてその細胞の望ましい特性は24~72時間の待ち時間の間に失われることから、常磁性分離は、養子細胞療法の状況では使用が制限されていた。
常磁性ビーズに付着した細胞を分離および精製するための技術はまた、臨床状況では使用できない。例えば、T細胞から分離した後に常磁性ビーズを除去するプロセスは、細胞/ビーズ溶液を磁石の上に通過させることを要する。このプロセスは、T細胞とともに残っているビーズの数を大いに低減するが、そのビーズを完全には排除しない。ビーズを含む組成物を患者に移植すると、毒性効果が引き起こされ得る。ビーズ除去プロセスはまた、多くのT細胞が、機械的に解離した後ですら常磁性ビーズと会合したままであることから、治療に利用可能なT細胞の数を低減する。細胞喪失はまた、操作されているが、それ以外はビーズに結合していないT細胞に関して起こることもある。なぜならこれら細胞は、内部移行および/または機械的除去工程の前に洗い流されてしまうからである。
従って、ヒトの疾患(例えば、免疫不全障害、自己免疫障害、およびがん)の治療に容易に利用され得る、T細胞の単離を可能にする組成物および方法の必要性は未だ満たされていない。本発明の実施形態は、以下に詳細に記載され、これらの必要性に対処する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第6,352,694号明細書
【非特許文献】
【0011】
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【文献】Levineら,The Journal of Immunology, vol. 159, No. 12: pp. 5921-5930, 1997
【文献】Garlieら, J Immunother 22(4): 336-45, 1999
【文献】Shibuyaら, Arch Otolaryngol Head Neck Surg, vol. 126, No. 4: 473-479, 2000
【文献】Rubbiら, Journal of Immunology Methods, 166, 233-241, 1993
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要旨
本発明は、T細胞を操作する、例えば、活性化する、刺激する、拡大する、増殖させる、または賦活する(energizing)ための組成物および方法を提供する。この状況では、本発明の実施形態は、ある種のマーカーおよび/もしくは細胞表面レセプターを発現するか、またはT細胞媒介性免疫応答に最適なある種のサイトカインを生成する多数の(または実質的に純粋な部分集団の)活性化T細胞を生成するための方法を提供する。このような操作されたT細胞は、多くの疾患(例えば、がん、感染性疾患、自己免疫疾患、アレルギー、加齢に関連得る免疫機能不全、または処置にT細胞が望まれる任意の他の疾患状態)の処置および防止において使用され得る。本明細書で記載されるさらなる実施形態は、最適な反応性を有するT細胞を利用することによる、前述の疾患のうちのいずれかの有効な治療のための方法および組成物に関し、その細胞は、本発明の組成物および/または方法を使用して選択またはスクリーニングされる。本発明の組成物および方法は、多数の活性化T細胞を生成する能力に関するのみならず、インビボの状況でのこのようなT細胞の顕著に改善された有効性に関しても、既存の組成物および方法より有効である。従って、本発明の組成物および方法は、生着、自家移入のために、および治療適用のために非常に望ましいヒトTリンパ球の生成に有用である。
【0013】
よって、一実施形態において、本発明は、高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層;上記MSR基部層上に層化された連続流体支持脂質二重層(SLB);上記足場に吸着された、複数のT細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子;および上記足場に吸着された、複数のT細胞ホメオスタシス因子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)を提供する。
【0014】
一実施形態において、本発明は、ナチュラルキラー(NK)細胞、CD3+ T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、および調節性T細胞(Treg)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるT細胞を隔離する抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)を提供する。
【0015】
一実施形態において、本発明は、上記SLB層上に吸着された複数のT細胞ホメオスタシス因子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)を提供する。
【0016】
一実施形態において、本発明は、上記MSR層上に吸着された複数のT細胞ホメオスタシス因子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)を提供する。
【0017】
一実施形態において、本発明は、放出制御様式において上記足場から放出される複数のT細胞ホメオスタシス因子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)を提供する。いくつかの実施形態において、上記T細胞ホメオスタシス因子は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、30日間、35日間、40日間、45日間、50日間、60日間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、またはこれより長い期間にわたって、放出制御様式において上記足場から放出される。
【0018】
一実施形態において、本発明は、15日間までにわたって持続様式において上記足場から放出される、複数のT細胞ホメオスタシス因子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)を提供する。いくつかの実施形態において、上記T細胞ホメオスタシス因子は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、30日間、35日間、40日間、45日間、50日間、60日間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、またはこれより長い間にわたって、持続様式において上記足場から放出される。いくつかの実施形態において、上記T細胞ホメオスタシス因子は、少なくとも30日間にわたって持続様式において上記足場から放出される。いくつかの実施形態において、上記T細胞ホメオスタシス因子は、少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、30日間、35日間、40日間、45日間、50日間、60日間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、またはこれより長い間にわたって、持続様式において上記足場から放出される。
【0019】
一実施形態において、本発明は、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-17、IL-21、およびトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)、またはそのアゴニスト、その模倣物、その改変体、その機能的フラグメント、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される複数のT細胞ホメオスタシス因子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)を提供する。
【0020】
一実施形態において、本発明は、IL-2、そのアゴニスト、その模倣物、その改変体、その機能的フラグメント、またはこれらの組み合わせである複数のT細胞ホメオスタシス因子と、IL-7、IL-21、IL-15、およびIL-15スーパーアゴニストからなる群より選択される第2のホメオスタシス因子とを含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)を提供する。一実施形態において、上記T細胞ホメオスタシス因子は、IL-2の最初の30アミノ酸(p1-30)、IL-2スーパーカインペプチド、およびIL-2部分アゴニストペプチド、またはこれらの組み合わせを含むN末端IL-2フラグメントからなる群より選択され得る。
【0021】
別の実施形態において、本発明は、複数の活性化分子および共刺激分子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)に関し、ここで上記T細胞活性化分子および上記T細胞共刺激分子は、各々、独立して、上記流体支持脂質二重層(SLB)上に吸着される。一実施形態において、上記T細胞活性化分子および上記T細胞共刺激分子は、親和性対形成または化学的カップリングを介して吸着され得る。いくつかの実施形態において、上記化学的カップリングは、クリックケミストリー試薬(例えば、DBCOまたはアジド)を含む。一実施形態において、上記T細胞活性化分子および上記T細胞共刺激分子は、ビオチン-ストレプトアビジンの対、抗体-抗原の対、抗体-ハプテンの対、アプタマー親和性の対、捕捉タンパク質の対、Fcレセプター-IgGの対、金属-キレート化脂質の対、金属-キレート化脂質-ヒスチジン(HIS)タグ化タンパク質の対、またはこれらの組み合わせを含む親和性対形成を介して吸着され得る。一実施形態において、上記T細胞活性化分子および上記T細胞共刺激分子は、アジド-アルキン化学(AAC)反応、ジベンゾ-シクロオクチン連結(DCL)、またはテトラジン-アルケン連結(TAL)を含む化学的カップリングを介して吸着され得る。
【0022】
別の実施形態において、本発明は、複数の活性化分子および共刺激分子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)に関し、ここで上記T細胞活性化分子および上記T細胞共刺激分子は、各々、独立して、上記流体支持脂質二重層(SLB)上に被覆される、あるいは、別の実施形態において、本発明は、複数の活性化分子および共刺激分子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)に関し、ここで上記T細胞活性化分子および上記T細胞共刺激分子は、各々、独立して、上記流体支持脂質二重層(SLB)に部分的に埋め込まれる。
【0023】
別の実施形態において、本発明は、複数の活性化分子および共刺激分子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)に関し、ここで上記T細胞活性化分子および上記T細胞共刺激分子は、各々、独立して、上記メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)上に吸着される。
【0024】
別の実施形態において、本発明は、複数の活性化分子および共刺激分子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)に関し、ここで上記T細胞活性化分子および上記T細胞共刺激分子は、各々、独立して、抗体分子またはその抗原結合フラグメントである。
【0025】
別の実施形態において、本発明は、複数の活性化分子および共刺激分子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)に関し、ここで上記T細胞活性化分子は、抗CD3抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗CD2抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗CD47抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗マクロファージスカベンジャーレセプター(MSR1)抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗T細胞レセプター(TCR)抗体もしくはその抗原結合フラグメント、MHCペプチドを負荷した主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子もしくはそのマルチマー、およびMHC-免疫グロブリン(Ig)結合体もしくはそのマルチマー、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0026】
別の実施形態において、本発明は、複数の活性化分子および共刺激分子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)に関し、ここで上記T細胞共刺激分子は、CD28、4.1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD27(TNFRSF7)、GITR(CD357)、CD30(TNFRSF8)、HVEM(CD270)、LTβR(TNFRSF3)、DR3(TNFRSF25)、ICOS(CD278)、CD226(DNAM1)、CRTAM(CD355),TIM1(HAVCR1、KIM1)、CD2(LFA2、OX34)、SLAM(CD150、SLAMF1)、2B4(CD244、SLAMF4)、Ly108(NTBA、CD352、SLAMF6)、CD84(SLAMF5)、Ly9(CD229、SLAMF3)、CD279(PD1)およびCRACC(CD319、BLAME)からなる群より選択される共刺激抗原に特異的に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントである。
【0027】
別の実施形態において、本発明は、複数の活性化分子および共刺激分子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)に関し、ここで上記T細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子は、二重特異的抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。
【0028】
別の実施形態において、本発明は、複数の活性化分子および共刺激分子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)に関し、ここで上記T細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子は、CD3/CD28、必要に応じてCD28とともにCD3/ICOS、必要に応じてCD28とともにCD3/CD27、および必要に応じてCD28とともにCD3/CD137、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される対を含む。
【0029】
別の実施形態において、本発明は、Fc融合タンパク質に特異的に結合する免疫グロブリン分子をさらに含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)に関する。
【0030】
別の実施形態において、本発明は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド21(CCL-21)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド19(CCL-19)、C-X-Cモチーフケモカインリガンド12(CXCL12)、インターフェロンγ(IFNγ)、またはFMS様チロシンキナーゼ3(Flt-3)リガンド、またはこれらのアゴニスト、これらの模倣物、これらの改変体、これらの機能的フラグメント、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される動員化合物をさらに含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)に関する。一実施形態において、上記足場は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、またはそのアゴニスト、その模倣物、その改変体、またはその機能的フラグメントである動員化合物をさらに含む。
【0031】
別の実施形態において、本発明は、抗原をさらに含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)に関する。一実施形態において、上記抗原は、腫瘍抗原を含む。さらになおこの実施形態の下では、上記腫瘍抗原は、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、CEA、チロシナーゼ、ミッドカイン、BAGE、CASP-8、β-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、CA-125、CDK-1、CDK4、ESO-1、gp75、gp100、MART-1、MUC-1、MUM-1、p53、PAP、PSA、PSMA、ras、trp-1、HER-2、TRP-1、TRP-2、IL13Rα、IL13Rα2、AIM-2、AIM-3、NY-ESO-1、C9orf 112、SART1、SART2、SART3、BRAP、RTN4、GLEA2、TNKS2、KIAA0376、ING4、HSPH1、C13orf24、RBPSUH、C6orf153、NKTR、NSEP1、U2AF1L、CYNL2、TPR、SOX2、GOLGA、BMI1、COX-2、EGFRvIII、EZH2、LICAM、Livin、Livinβ、MRP-3、ネスチン、OLIG2、ART1、ART4、B-サイクリン、Gli1、Cav-1、カテプシンB、CD74、E-カドヘリン、EphA2/Eck、Fra-1/Fosl 1、GAGE-1、ガングリオシド/GD2、GnT-V、β1,6-N、Ki67、Ku70/80、PROX1、PSCA、SOX10、SOX11、サバイビン、UPAR、WT-1、ジペプチジルペプチダーゼ IV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(AD Abp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、T細胞レセプター/CD3-ζ鎖、腫瘍抗原のGAGEファミリー、RAGE、LAGE-I、NAG、GnT-V、RCASl、α-フェトプロテイン、pl20ctn、Pmel117、PRAME、脳型グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX-I、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-I、SSX-4、SSX-5、SCP-I、CT-7、cdc27、腺腫様多発結腸ポリープタンパク質(APC)、フォドリン、PlA、コネキシン37、Ig-イディオタイプ、pl5、GM2、GD2ガングリオシド、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp-1、EBVコード核抗原(EBNA)-I、UL16結合タンパク質様転写物1(Mult1)、RAE-1タンパク質、H60、MICA、MICB、c-erbB-2、患者特異的様式で同定されるネオアンチゲン、またはこれらの免疫原性ペプチド、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0032】
関連する実施形態において、本発明は、高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層;上記MSR基部層上に層化された連続流体支持脂質二重層(SLB);上記足場に吸着された、複数のT細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子;ならびに上記足場に吸着された、複数のT細胞ホメオスタシス因子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)に関し、ここで上記支持脂質二重層(SLB) 対 上記メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)の重量比は、 約10:1~約1:20の間である。一実施形態において、上記重量比は、負荷前のSLB 対 MSRの比を反映する。別の実施形態において、上記重量比は、望ましい足場組成物を達成するために調節される。一実施形態において、上記SLB 対 上記MSRの重量比は、約9:1~約1:15の間、約5:1~約1:10の間、約3:1~約1:5の間(その間の全ての比を含む)、例えば、約3;1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10であり得る。
【0033】
別の実施形態において、本発明は、高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層;上記MSR基部層上に層化された連続流体支持脂質二重層(SLB);上記足場に吸着された、複数のT細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子;ならびに上記足場に吸着された、複数のT細胞ホメオスタシス因子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)に関し、ここで上記連続流体支持脂質二重層(SLB)は、14~23個の炭素原子を含む脂質を含む。一実施形態において、上記脂質は、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルセリン(PS)、またはホスホイノシチド、またはこれらの誘導体である。一実施形態において、上記APC-MSは、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、パルミトイル-オレオイルホスファチジルコリン(POPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される脂質を含む流体支持脂質二重層(SLB)を含む。いくつかの実施形態において、上記脂質二重層は、哺乳動物の細胞膜(例えば、ヒト細胞の形質膜)の脂質組成を模倣する脂質組成を含む。多くの哺乳動物の細胞膜の脂質組成は、特徴づけられており、当業者によって容易に確認可能である(例えば、Essaidら Biochim. Biophys. Acta 1858(11): 2725-36(2016)(その内容全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。いくつかの実施形態において、上記脂質二重層は、コレステロールを含む。いくつかの実施形態において、上記脂質二重層は、スフィンゴ脂質を含む。いくつかの実施形態において、上記脂質二重層は、リン脂質を含む。いくつかの実施形態において、上記脂質は、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスホイノシチド、6~20個の炭素を含む飽和または不飽和のテールを有するホスホスフィンゴ脂質、またはこれらの組み合わせである。
【0034】
別の実施形態において、本発明は、高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層;上記MSR基部層上に層化された連続流体支持脂質二重層(SLB);上記足場に吸着された、複数のT細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子;ならびに上記足場に吸着された、複数のT細胞ホメオスタシス因子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)に関し、ここで上記メソポーラスシリカマイクロロッド-脂質二重層(MSR-SLB)足場は、少なくとも14日間にわたって連続流体体系を保持する。いくつかの実施形態において、上記MSR-SLB足場は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、25日間、30日間、35日間、40日間、50日間、またはこれより長い間にわたって連続流体体系を保持する。いくつかの実施形態において、上記MSR-SLB足場のMSRは、約1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、25日間、30日間、35日間、40日間、50日間、または50日間超で分解する。いくつかの実施形態において、上記MSR-SLB足場の脂質二重層は、約1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、25日間、30日間、35日間、40日間、50日間、または50日間超で分解する。
【0035】
別の実施形態において、本発明は、高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層;上記MSR基部層上で層化された連続流体支持脂質二重層(SLB);上記足場に吸着された、複数のT細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子;ならびに上記足場に吸着された、複数のT細胞ホメオスタシス因子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)に関し、ここで上記メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR) 対 上記T細胞活性化分子/共刺激分子の重量重量比は、約1:1~約50:1の間である。一実施形態において、MSR 対 T細胞活性化分子/共刺激分子の比は、上記MSRの重量 対 T細胞活性化分子/共刺激分子として使用される抗体の重量を反映する。別の実施形態において、上記MSR:抗体重量比は、所望の足場組成物を達成するために調節される。一実施形態において、上記SLB 対 抗体組成物の重量比は、約2:1~約20:1の間、約3:1~約10:1の間、約4:1~約8:1の間(その間の全ての比を含む)、例えば、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約15:1、約20:1、約25:1、約30:1、約40:1である。
【0036】
別の実施形態において、本発明は、高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層;上記MSR基部層上に層化された連続流体支持脂質二重層(SLB);上記足場に吸着された、複数のT細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子;ならびに上記足場に吸着された、複数のT細胞ホメオスタシス因子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)に関し、ここで上記足場は、上記メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)へのT細胞の浸潤を選択的に可能にするように積み重ねられる。一実施形態において、本発明は、APC-MSをさらに提供し、ここで上記T細胞活性化分子および/または共刺激分子は、T細胞のインサイチュ操作を可能にするために十分な濃度で前記足場上に存在する。
【0037】
別の局面において、本発明は、高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層;上記MSR基部層上に層化された連続流体支持脂質二重層(SLB);上記足場に吸着された、複数のT細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子;ならびに上記足場に吸着された、複数のT細胞ホメオスタシス因子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS);ならびに薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物に関する。一実施形態において、本発明は、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、または筋肉内投与のために製剤化される薬学的組成物をさらに提供する。
【0038】
別の局面において、本発明は、高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層;上記MSR基部層上に層化された連続流体支持脂質二重層(SLB);上記足場に吸着された、複数のT細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子;ならびに上記足場に吸着された、複数のT細胞ホメオスタシス因子を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS);ならびに上記足場の中にクラスター化されたT細胞を含む組成物に関する。一実施形態において、本発明は、APC-MS、ならびにナチュラルキラー(NK)細胞、CD3+ T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、および調節性T細胞(Treg)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるT細胞を含む組成物をさらに提供する。
【0039】
さらになお、本発明の実施形態は、必要性のある被験体において疾患を処置するための方法に関し、上記方法は、上記被験体から得られたT細胞集団を含むサンプルと、抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)とを接触させる工程であって、それによって、上記T細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持する工程;上記T細胞の集団を必要に応じて拡大する工程;および上記活性化され、共刺激され、維持され、そして必要に応じて拡大されたT細胞を、上記被験体へと投与する工程であって、それによって、上記被験体において上記疾患を処置する工程を包含する。一実施形態において、本発明はさらに、必要性のある被験体において疾患を処置するための方法に関し、ここで上記方法は、上記投与する工程の前に、上記T細胞の集団を再刺激する工程をさらに包含する。一実施形態において、上記方法は、2日間~5日間の間の期間にわたって上記足場と接触させた後に、上記T細胞の集団を拡大する工程を包含する。
【0040】
別の治療的実施形態において、本発明は、必要性のある被験体において疾患を処置するための方法に関し、上記方法は、上記被験体から得られたT細胞集団を含む、血液サンプル、骨髄サンプル、リンパ液サンプルまたは脾臓サンプルであるサンプルと、上記抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)とを接触させる工程であって、それによって、上記T細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持する工程;上記T細胞の集団を必要に応じて拡大する工程;および上記活性化され、共刺激され、維持され、そして必要に応じて拡大されたT細胞を、上記被験体へと投与する工程であって、それによって、上記被験体において上記疾患を処置する工程を包含する。一実施形態において、上記被験体は、ヒト被験体である。一実施形態において、上記方法は、がんの処置のために提供し、上記足場は、少なくとも1種の細胞傷害性T細胞特異的活性化分子および少なくとも1種の細胞傷害性T細胞特異的共刺激分子を含む。
【0041】
別の治療的実施形態において、本発明は、必要性のある被験体においてがんを処置するための方法に関し、上記方法は、上記被験体から得られたT細胞集団を含むサンプルと、上記抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)とを接触させる工程であって、それによって、上記T細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持する工程;上記T細胞の集団を必要に応じて拡大する工程;および上記活性化され、共刺激され、維持され、そして必要に応じて拡大されたT細胞を、上記被験体へと投与する工程であって、それによって、上記被験体においてがんを処置する工程を包含する。一実施形態において、上記がんは、頭頚部がん、乳がん、膵臓がん、前立腺がん、腎臓がん、食道がん、骨がん、精巣がん、子宮頚がん、消化器がん、膠芽腫、白血病、リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肺における前癌病変、結腸がん、黒色腫、および膀胱がんからなる群より選択される。一実施形態において、上記方法は、上記サンプルおよび/または上記拡大された細胞集団から、細胞傷害性T細胞をソートし、必要に応じて富化する工程をさらに包含し得る。
【0042】
さらに別の治療的実施形態において、本発明は、必要性のある被験体において免疫不全障害を処置するための方法に関し、上記方法は、上記被験体から得られたT細胞集団を含むサンプルと、上記抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)とを接触させる工程であって、それによって、上記T細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持する工程;上記T細胞の集団を必要に応じて拡大する工程;および上記活性化され、共刺激され、維持され、そして必要に応じて拡大されたT細胞を、上記被験体へと投与する工程であって、それによって、上記被験体において免疫不全障害を処置する工程を包含する。一実施形態において、上記足場は、少なくとも1種のヘルパーT細胞(Th)特異的活性化分子および少なくとも1種のヘルパーT細胞(Th)特異的共刺激分子を含む。一実施形態において、上記方法は、原発性免疫不全障害および後天性免疫不全障害からなる群より選択される免疫不全障害を処置するために使用され得る。一実施形態において、上記方法は、後天性免疫不全症候群(AIDS)、またはディジョージ症候群(DGS)、染色体切断症候群(CBS)、毛細血管拡張性運動失調症(AT)およびウィスコット-オルドリッチ症候群(WAS)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される遺伝性障害を処置するために使用され得る。
【0043】
別の実施形態において、本発明は、必要性のある被験体において疾患を処置するための方法に関し、上記方法は、上記被験体から得られたT細胞集団を含むサンプルと、上記抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)とを接触させる工程であって、それによって、上記T細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持する工程;上記T細胞の集団を必要に応じて拡大する工程;上記サンプルおよび/または上記拡大した細胞集団から、上記T細胞をさらにソートする工程であって、必要に応じて富化する工程;ならびに上記活性化され、共刺激され、維持され、そして必要に応じて拡大されたT細胞を、上記被験体へと投与する工程であって、それによって上記被験体において上記疾患を処置する工程を包含する。一実施形態において、上記T細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、CD3+ T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、および調節性T細胞(Treg)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択され得る。
【0044】
別の実施形態において、本発明は、必要性のある被験体において自己免疫障害を処置するための方法に関し、上記方法は、上記被験体から得られたT細胞集団を含むサンプルと、上記抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)とを接触させる工程であって、それによって、上記T細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持する工程;上記T細胞の集団を必要に応じて拡大する工程;上記サンプルおよび/または上記拡大した細胞集団から、上記T細胞をさらに必要に応じてソートし、富化する工程;ならびに上記活性化され、共刺激され、維持され、そして必要に応じて拡大されたT細胞を、上記被験体へと投与する工程であって、それによって上記被験体において自己免疫障害を処置する工程を包含する。
【0045】
別の実施形態において、本発明は、必要性のある被験体において疾患を処置するための方法に関し、上記方法は、上記被験体から得られたT細胞集団を含むサンプルと、上記抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)とを接触させる工程であって、それによって、上記T細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持する工程;上記T細胞の集団を必要に応じて拡大する工程;上記サンプルおよび/または上記拡大した細胞集団から、上記T細胞をさらに必要に応じてソートし、富化する工程;ならびに上記活性化され、共刺激され、維持され、そして必要に応じて拡大されたT細胞を、上記被験体へと皮下投与または静脈内投与し、それによって上記被験体において上記疾患を処置する工程を包含する。一実施形態において、上記T細胞は、上記サンプルと上記足場とを、約1日間~約20日間の間の期間にわたって接触させることによって、活性化され得、共刺激され得、ホメオスタシス的に維持され得、そして必要に応じて拡大され得る。
【0046】
別の実施形態において、本発明は、T細胞の操作のための方法に関し、上記方法は、上記抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)と被験体の生物学的サンプルとを接触させる工程であって、それによって、上記サンプル内に存在するT細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持し、そして必要に応じて拡大し、それによって、上記T細胞を操作する工程を包含する。一実施形態において、上記操作は、T細胞の刺激、活性化、生存性の変化、成長、分裂、分化、拡大、増殖、消耗、アネルギー、静止、アポトーシス、または死滅を促進することを包含し得る。一実施形態において、上記操作は、好ましくは、T細胞の拡大または増殖を促進することを包含する。さらなる実施形態において、上記操作されたT細胞は、さらに形質転換され得る。具体的実施形態において、上記T細胞は、キメラ抗原レセプター(CAR)を発現するように形質転換され得る。上記CAR T細胞生成物は、上記CAR T細胞に対して特異的な抗原を含む上記抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)とともにインキュベートすることによって、さらに拡大され得る。ある種の実施形態において、上記CAR T細胞特異的抗原は、CD19、CD22、またはこれらのフラグメントまたはこれらの改変体からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、上記CAR T細胞特異的抗原は、腫瘍抗原である。腫瘍抗原は、当該分野で周知であり、これらとしては、例えば、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、αフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸管カルボキシエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、前立腺、前立腺特異的抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン(prostein)、PSMA、Her2/neu、サバイビンおよびテロメラーゼ、前立腺がん腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-Iレセプターおよびメソテリンが挙げられる。いくつかの実施形態において、CAR T細胞生成物は、CAR T細胞のより大きな集団を生成するために、生成後にポリクローナル拡大され得る。
【0047】
別の実施形態において、本発明は、T細胞の操作のための方法に関し、上記方法は、上記抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)を接触させる工程を包含し、ここで上記方法は、上記高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層および上記連続流体支持脂質二重層(SLB)を含むが、上記T細胞活性化分子および上記T細胞共刺激分子を含まないコントロール足場と比較して、上記足場との約1週間の接触後に上記T細胞の集団の増大した拡大を付与する。一実施形態において、上記方法は、上記高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層および上記連続流体支持脂質二重層(SLB)を含むが、上記T細胞活性化分子および上記T細胞共刺激分子を含まないコントロール足場と比較して、上記足場との約1週間の接触後に上記T細胞の集団の拡大において約50倍~800倍の増大を付与する。
【0048】
別の実施形態において、本発明は、T細胞の操作のための方法に関し、上記方法は、上記抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)を接触させる工程を包含し、ここで上記方法は、上記T細胞活性化分子および上記T細胞共刺激分子を含む超常磁性球状ポリマー粒子(DYNABEAD)と比較して、上記足場との約1週間の接触後に上記T細胞の集団の増大した拡大を付与する。一実施形態において、上記方法は、上記T細胞活性化分子および上記T細胞共刺激分子を含む超常磁性球状ポリマー粒子(DYNABEAD)と比較して、上記足場との約1週間の接触後に上記T細胞の集団の拡大において約5倍~20倍の増大を付与する。
【0049】
別の実施形態において、本発明は、T細胞の代謝活性を改善するための方法に関し、上記方法は、上記抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)と被験体の生物学的サンプルとを接触させる工程であって、それによって、上記サンプル内に存在する上記T細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持し、そして必要に応じて拡大し、それによってT細胞代謝活性を改善する工程を包含する。一実施形態において、上記方法は、上記高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層および上記連続流体支持脂質二重層(SLB)を含むが、上記T細胞活性化分子および上記T細胞共刺激分子を含まないコントロール足場と比較して、上記足場との約1週間の接触後に上記T細胞の集団の改善された代謝活性を付与する。一実施形態において、上記方法は、上記高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層および上記連続流体支持脂質二重層(SLB)を含むが、上記T細胞活性化分子および上記T細胞共刺激分子を含まないコントロール足場と比較して、上記足場との約1週間の接触後に上記T細胞の集団の約5倍~20倍改善された代謝活性を付与する。一実施形態において、上記方法は、上記T細胞活性化分子および上記T細胞共刺激分子を含む超常磁性球状ポリマー粒子(DYNABEAD)と比較して、上記足場との約1週間の接触後に上記T細胞の集団の改善された代謝活性を付与する。一実施形態において、上記方法は、上記T細胞活性化分子および上記T細胞共刺激分子を含む超常磁性球状ポリマー粒子(DYNABEAD)と比較して、上記足場との約1週間の接触後に上記T細胞の集団の拡大において約1倍~10倍の増大をさらに付与する。
【0050】
別の実施形態において、本発明は、代謝的に活性なT細胞をスクリーニングするための方法に関し、上記方法は、上記抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)と被験体の生物学的サンプルとを接触させる工程であって、それによって、上記サンプル内に存在する上記T細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持し、そして必要に応じて拡大する工程;上記活性化され、共刺激され、ホメオスタシス的に維持され、そして必要に応じて拡大されたT細胞の集団において代謝的に活性な細胞を同定する工程;それによって代謝的に活性なT細胞をスクリーニングする工程を包含する。一実施形態において、上記拡大されたT細胞は、上記足場との接触後に少なくとも約7日間にわたって代謝的に活性である。一実施形態において、上記拡大されたT細胞は、上記足場との接触後に少なくとも約7日間にわたって凝集物を形成する。
【0051】
さらに別の実施形態において、本発明は、T細胞のポリクローナル集団を生成するための方法に関し、上記方法は、上記抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)と被験体の生物学的サンプルとを接触させる工程であって、それによって、上記サンプル内に存在するT細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持し、そして必要に応じて拡大する工程;上記拡大されたT細胞における複数のマーカーの発現に基づいて、上記T細胞の拡大された集団からT細胞の特定の集団を同定する工程;上記T細胞の同定された集団を必要に応じて単離または精製する工程であって、それによって、T細胞のポリクローナル集団を生成する工程を包含する。一実施形態において、上記方法は、CD4+ 細胞またはCD8+ 細胞のポリクローナル集団の生成のために適合され得る。関連する実施形態において、上記方法は、CD4+/FOXP3+ T細胞のポリクローナル集団の生成のために適合され得る。さらになお、上記方法は、CD44+/CD62L- T細胞(エフェクターメモリーおよび/またはエフェクターT細胞)のポリクローナル集団の生成のために適合され得る。別の実施形態において、上記方法は、CD8+/CD69+ T細胞(活性化T細胞)のポリクローナル集団の生成のために適合され得る。別の実施形態において、上記方法は、グランザイムB+ CD8+ T細胞(サイトトキシン分泌T細胞)のポリクローナル集団の生成のために適合され得る。さらに別の実施形態において、上記方法は、IFNγ+ T細胞(アクチベーターサイトカイン分泌T細胞)のポリクローナル集団の生成のために適合され得る。さらに別の実施形態において、上記方法は、CD62L+/CCR7+ T細胞(メモリーT細胞)のポリクローナル集団の生成のために適合され得る。
【0052】
別の実施形態において、本発明は、T細胞のポリクローナル部分集団を生成するための方法に関し、上記方法は、上記抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)と被験体の生物学的サンプルとを接触させる工程であって、それによって、上記サンプル内に存在するT細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持し、そして必要に応じて拡大する工程;上記拡大されたT細胞における複数のマーカーの発現に基づいて、上記T細胞の拡大された集団から消耗したT細胞の特定の集団を同定する工程;上記T細胞の同定された集団を必要に応じて除去する工程であって、それによって、T細胞のポリクローナル部分集団を生成する工程を包含する。一実施形態において、上記消耗したT細胞は、CD8+/PD-1+の細胞表面発現に基づいて同定または単離される。別の実施形態において、上記消耗したT細胞は、LAG3+/TIM3+の細胞表面発現に基づいて同定または単離される。
【0053】
別の実施形態において、本発明は、エキソビボでのT細胞の操作のための方法に関し、上記方法は、上記抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)と被験体の生物学的サンプルとをエキソビボで接触させる工程であって、それによって、上記サンプル内に存在するT細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持し、そして必要に応じて拡大し、それによって、上記T細胞をエキソビボで操作する工程を包含する。一実施形態において、上記サンプルは、約1日間~約20日間の期間にわたって上記足場と接触される。一実施形態において、上記方法は、上記操作されたT細胞によって生成される1種またはこれより多くのサイトカインまたはサイトトキシンの生成を検出する工程をさらに包含し得る。一実施形態において、上記方法は、上記操作されたT細胞による、インターフェロンγ(IFNγ)、組織壊死因子α(TNFα)、IL-2、IL-1、IL-4、IL-5、IL-10、およびIL-13、IL-17、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるサイトカインの生成をさらに検出する工程を包含する。
【0054】
関連する実施形態において、本発明は、前述の方法に従うT細胞のエキソビボでの操作のための方法に関し、ここで上記操作されたT細胞は、Tヘルパー1(Th1)細胞であり、上記方法は、IL-2、インターフェロンγ(IFNγ)および組織壊死因子α(TNFα)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるサイトカインの生成を検出する工程を包含する。あるいは、関連する実施形態において、本発明は、前述の方法に従うT細胞のエキソビボでの操作のための方法に関し、ここで上記操作されたT細胞は、Tヘルパー2(Th2)細胞であり、上記方法は、IL-4、IL-5、IL-10およびIL-13、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるサイトカインの生成を検出する工程を包含する。さらになお関連する実施形態において、本発明は、前述の方法に従うT細胞のエキソビボでの操作のための方法に関し、ここで上記操作されたT細胞は、細胞傷害性T(Tc)細胞であり、上記方法は、インターフェロンγ(IFNγ)およびリンホトキシンα(LTα/TNFβ)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるサイトカインの生成を検出する工程を包含する。一実施形態において、上記操作されたT細胞は、細胞傷害性T(Tc)細胞であり、上記方法は、グランザイムまたはパーフォリン、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるサイトトキシンの分泌を検出する工程を包含する。
【0055】
関連する実施形態において、本発明は、前述の方法に従うT細胞のエキソビボでの操作のための方法に関し、ここで上記方法は、上記操作されたT細胞において細胞表面マーカーの発現を検出する工程をさらに包含する。一実施形態において、上記細胞表面マーカーは、CD69、CD4、CD8、CD25、CD62L、FOXP3、HLA-DR、CD28、およびCD134、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される。代わりにまたはさらに、一実施形態において、上記細胞表面マーカーは、CD36、CD40、およびCD44、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される非T細胞マーカーである。
【0056】
別の関連する実施形態において、本発明は、前述の方法に従うT細胞のエキソビボでの操作のための方法に関し、ここで上記被験体は、ヒト被験体である。
【0057】
別の関連する実施形態において、本発明は、前述の方法に従うT細胞のインビボでの操作のための方法に関し、ここで上記足場は、上記T細胞を含む生物学的サンプルが上記足場とインビボで接触することを可能にするために、上記被験体に投与される。一実施形態において、上記足場は、約3日間~約15日間の間の期間にわたって、好ましくは、約7日間~約11日間の間の期間にわたって、上記被験体において維持され得る。いくつかの実施形態において、上記足場は、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、少なくとも14日間、少なくとも15日間、少なくとも16日間、少なくとも17日間、少なくとも18日間、少なくとも19日間、少なくとも20日間、少なくとも21日間、少なくとも25日間、少なくとも30日間、少なくとも35日間、少なくとも40日間、少なくとも50日間、またはこれより長い期間にわたって、上記被験体において維持され得る。
【0058】
さらに別の実施形態において、本発明は、上記抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)を作製するための方法に関し、上記方法は、(a)高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層を提供する工程;(b)上記T細胞ホメオスタシス因子を上記MSR上に必要に応じて負荷する工程;(c)連続流体支持脂質二重層(SLB)を、上記MSRを含む基部層上に層化する工程であって、それによって、MSR-SLB足場を生成する工程;(d)工程(b)が行われなかった場合に、上記T細胞ホメオスタシス因子を、上記MSR-SLB足場上に負荷する工程;(e)上記MSR-SLB足場における1またはこれより多くの非特異的組み込み部位を、遮断因子で必要に応じて遮断する工程;ならびに(f)上記T細胞活性化分子および上記T細胞共刺激分子を、上記MSR-SLB足場に負荷する工程であって、それによって上記APC-MSを作製する工程を包含する。一実施形態において、上記方法は、複数の足場をアセンブルする工程であって、T細胞の浸潤を可能にする十分な多孔性を有する積み重ねを生成する工程をさらに包含し得る。一実施形態において、上記方法は、増殖因子、サイトカイン、インターロイキン、接着シグナル伝達分子、インテグリンシグナル伝達分子、またはこれらのフラグメント、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種のさらなる薬剤を負荷する工程を包含し得る。
【0059】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1は、メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)と会合した脂質の位相差顕微鏡および蛍光顕微鏡画像を示す。上のパネルは、1:20の脂質:MSR比における上記脂質およびメソポーラスシリカマイクロロッドの合成写真を示す(スケール=200μm)。中央のパネルは、1:4の脂質:MSR比における脂質およびメソポーラスシリカマイクロロッドの合成写真を示す(スケール=200μm)。下のパネルは、より高倍率でのMSRと会合した脂質の位相差顕微鏡の合成写真を示す(スケール=20μm)。
【0061】
図2図2A、2B、2C、および2Dは、抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)のアセンブリおよび特性が、脂質のタイプおよび脂質の含有量に依存することを示す。図2Aは、種々の脂質の化学構造を示す。略語:DOPC-ジオレオイルホスファチジルコリン;POPC-パルミトイル-オレオイルホスファチジルコリン;およびDSPC-ジステアロイルホスファチジルコリン。図2Bは、メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)および流体支持脂質二重層(SLB)を含む種々の組成物に保持される脂質のパーセンテージを示す。この実験では、250μg脂質のペイロードを、500μg MSR組成物へと投入した。図2Cは、37℃において2週間(14日間)の期間にわたってリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中にDOPC、POPCまたはDSPCを含む種々のMSR-SLB組成物の相対的蛍光の変化を示す。図2Dは、37℃において2週間(14日間)の期間にわたって完全ロズウェルパーク記念研究所培地(cRPMI)中にDOPC、POPCまたはDSPCを含む種々のMSR-SLB組成物の相対的蛍光の変化を示す。
【0062】
図3図3は、位相差および蛍光顕微鏡法で分析した場合に、0日目、3日目、7日目、および14日目におけるPBS中の種々のMSR-SLB組成物の安定性を示す(脂質被覆)。上のパネルは、MSR-SLB組成物中のDOPCの安定性を示す;中央のパネルは、MSR-SLB組成物中のPOPCの安定性を示す;そして下のパネルは、MSR-SLB組成物中のDSPCの安定性を示す。
【0063】
図4ABC図4A、4B、4C、4D、および4Eは、MSR-SLB流体構造のアセンブリおよび特性の変化を経時的に示す。図4Aは、脂質組成物の退色前(pre)、退色直後(t=0)および退色の5分後(t=5分)に、高倍率で撮影したメソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)と会合した脂質の位相差および蛍光顕微鏡画像を示す(スケール=2μM)。図4Bは、光退色後の蛍光回復(FRAP)の変化を時間とともに示す。蛍光「ソース」は、領域(2)に示され、蛍光「吸い込み」は、領域(3)に示され、正規化点は、領域(1)に示される。差次的分布は、播種後の早い時点で最もよく認められ、およそ2分間(120秒間)で平衡に達した。図4Cは、正規化した画像から得られる場合、FRAPにおける平均変化を示す平滑適合曲線(smooth-fitting curve)を経時的に示す。図4Dおよび4Eは、脂質組成物の退色前(pre)、退色直後(t=0)および退色の3分後(t=3分)に、MSR-SLB流体構造の2セットの高解像度画像を示す。
図4DE図4A、4B、4C、4D、および4Eは、MSR-SLB流体構造のアセンブリおよび特性の変化を経時的に示す。図4Aは、脂質組成物の退色前(pre)、退色直後(t=0)および退色の5分後(t=5分)に、高倍率で撮影したメソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)と会合した脂質の位相差および蛍光顕微鏡画像を示す(スケール=2μM)。図4Bは、光退色後の蛍光回復(FRAP)の変化を時間とともに示す。蛍光「ソース」は、領域(2)に示され、蛍光「吸い込み」は、領域(3)に示され、正規化点は、領域(1)に示される。差次的分布は、播種後の早い時点で最もよく認められ、およそ2分間(120秒間)で平衡に達した。図4Cは、正規化した画像から得られる場合、FRAPにおける平均変化を示す平滑適合曲線(smooth-fitting curve)を経時的に示す。図4Dおよび4Eは、脂質組成物の退色前(pre)、退色直後(t=0)および退色の3分後(t=3分)に、MSR-SLB流体構造の2セットの高解像度画像を示す。
【0064】
図5図5Aおよび5Bは、種々の部分を含むMSR-SLB組成物の構造的および機能的特性を示す。B3ZレポーターT細胞株を使用する実験に基づいて、APC-MS足場の最大機能性を、個々の構成要素全てが足場に存在する場合に観察した。図5Aは、フィコエリトリンビオチン(ビオチンPE)(これは、ストレプトアビジン分子(例えば、ストレプトアビジンダイマー)に結合体化され、翻って、ビオチン化抗体(例えば、ビオチン化抗CD3抗体またはビオチン化抗CD28抗体または別の特異的もしくは非特異的抗体)に結合体化される)を含むPOPCの脂質二重層を含むAPC-MSの構造の模式図を示す。図5Bは、MPS(シリカ)、POPC(脂質)、MPS-POPC複合材、ビオチン化MPS-POPC複合材(ストレプトアビジンの存在下または非存在下)、ならびにフィコエリトリンビオチン(ビオチンPE)および/もしくはストレプトアビジンの存在下または非存在下でビオチン化抗体と一緒にMPS-POPC複合材の組み合わせでの処理後の、B3Zレポーター細胞β-ガラクトシダーゼ発現の分光光度分析を示す。吸光度の有意な増大は、個々の構成要素全て-ストレプトアビジンリンカーを介してビオチン化抗体に結合体化したホスホエタノールアミンビオチン(ビオチンPE)を含むMSR-SLB組成物において観察される(濃いバー;**は、統計的有意性を示す(p<0.001、一元配置ANOVAを使用し、続いて、Tukey HSD事後検定を使用することによって分析;データは、3回の実験反復の平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である)。
【0065】
図6図6Aおよび6Bは、IL-2を含むMSR-SLB組成物からのIL-2の放出制御を示す。図6Aは、IL-2を含むMSRの多孔性構造の電子顕微鏡写真を示す(スケールバー=100nm)。図6Bは、15日間の期間にわたるIL-2の累積放出レベルのプロットを示す。
【0066】
図7図7Aおよび7Bは、MSR-SLB複合材を含む抗原提示細胞模倣足場へのT細胞(球体)の浸潤を示す共焦点顕微鏡画像を示す。図7Aは、2種の異なる色素で染色した細胞を示す。図7Bは、単一の色素で染色した細胞を示す(生細胞を示す)。
【0067】
図8図8は、初代T細胞と共培養したメソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)と会合した脂質の位相差顕微鏡画像および蛍光画像を示す。初代T細胞が、T細胞活性化のキューがその材料の表面に付着される場合に、細胞/材料クラスターを形成する傾向にあることを観察した。下のパネルは、結合体化抗体、IL-2、または結合体化抗体およびIL-2の組み合わせを含むMSR-SLB複合材における脂質およびメソポーラスシリカマイクロロッドの合成写真を示す。右側の画像は、結合体化抗体およびIL-2の両方を含むMSR-SLB複合材を高倍率で示す(スケール=20μm)。
【0068】
図9図9Aおよび9Bは、マウス脾臓T細胞における抗体誘導性変化の用量応答チャートを示す。図9Aは、コントロール足場(モック;なし;POPC脂質のみ;ならびにPOPCおよびIL-2の組み合わせ)および実験用足場(POPCおよびIL-2の組み合わせを抗体とともに含む)でのT細胞の3日間の刺激後のT細胞のポリクローナル拡大を示す。抗体の3種の異なる用量(MSR:抗体比は1:50、1:25および1:10)を研究した。図9Bは、コントロール足場(モック;なし;POPC脂質のみ;ならびにPOPCおよびIL-2の組み合わせ)および実験用足場(POPCおよびIL-2の組み合わせを抗体とともに含む)でのT細胞の3日間の刺激後のIFNγの分泌を示す。抗体の3種の異なる用量(MSR:抗体比は1:50、1:25および1:10)を研究した。
【0069】
図10図10および図11は、本発明の抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)が代謝的に活性なT細胞の迅速な拡大を促進することを示す。図10は、コントロール(モック;なし;SLB+IL-2;DYNABEAD+IL-2)または実験用組成物とインキュベーションした際の初代T細胞の倍数拡大を示す。初代T細胞と本発明の組成物とをインキュベートすると、モック組成物またはSLBなしの組成物と比較して、T細胞拡大(再刺激ありまたはなし)が有意に誘導された。より重要なことには、DYNABEADSおよびIL-2の組成物と比較して、初代T細胞と本発明の足場とをインキュベートすると、再刺激の際に7日目に測定可能により強い増殖が生じた。図11は、IL-2を負荷した本発明の足場(SLB/IL2/ABS)またはIL-2を負荷したDYNABEADS(DYNABEADS-IL2)とともにインキュベートしたT細胞の細胞代謝活性(細胞数に対して正規化したAlamar Blue還元の相対的蛍光単位(RFU)によって測定される場合)の棒グラフを示す。
図11図10および図11は、本発明の抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)が代謝的に活性なT細胞の迅速な拡大を促進することを示す。図10は、コントロール(モック;なし;SLB+IL-2;DYNABEAD+IL-2)または実験用組成物とインキュベーションした際の初代T細胞の倍数拡大を示す。初代T細胞と本発明の組成物とをインキュベートすると、モック組成物またはSLBなしの組成物と比較して、T細胞拡大(再刺激ありまたはなし)が有意に誘導された。より重要なことには、DYNABEADSおよびIL-2の組成物と比較して、初代T細胞と本発明の足場とをインキュベートすると、再刺激の際に7日目に測定可能により強い増殖が生じた。図11は、IL-2を負荷した本発明の足場(SLB/IL2/ABS)またはIL-2を負荷したDYNABEADS(DYNABEADS-IL2)とともにインキュベートしたT細胞の細胞代謝活性(細胞数に対して正規化したAlamar Blue還元の相対的蛍光単位(RFU)によって測定される場合)の棒グラフを示す。
【0070】
図12図12Aおよび12Bは、本発明の足場(APC-MS)が脾臓T細胞(マウス)のポリクローナル拡大を付与し、T細胞凝集物の形成を促進することを示す。図12Aは、0日目、3日目、および7日目に、DYNABEADSまたはAPC-MSとともにインキュベートした際の脾臓T細胞の凝集物の顕微鏡写真(4×倍率)を示す。図12Bは、0日目、3日目、および7日目に、DYNABEADSまたはAPC-MSとともにインキュベートした際の脾臓T細胞の凝集物の顕微鏡写真(10×倍率)を示す(白いスケールバー=100μM)。
【0071】
図13A図13Aおよび13Bは、APC-MSまたはDYNABEADSとともにインキュベートした際のマウス脾臓T細胞のポリクローナル拡大を示す。図13Aは、APC-MSまたはDYNABEADSとのインキュベーション(7日間のインキュベーション後に再刺激またはIL-2処理を伴う)後に、種々の時点(t=0日間、5日間、7日間、11日間および13日間)でのT細胞集団のフローサイトメトリー(FACS)散布図を示す。ここでX軸上の値は、CD8+染色の強度を示し、Y軸上の値は、CD4+染色の強度を示す。フローデータを、各サンプルに関して、各時点で、蛍光マイナス1(Fluorescence Minus ONE)(FMO)コントロールに対してゲート制御した。データは、少なくとも2回の独立した実験の代表である。図13Bは、種々の時点(t=0日間、5日間、7日間、11日間および13日間)でのAPC-MS(四角)またはDYNABEADS(三角)とともにインキュベートした後のCD4+ 対 CD8+ T細胞部分集団のパーセンテージにおける変化を示す線グラフである。7日間のインキュベーション後に、その細胞を2つの部分集団に分けた。ここで第1の部分集団を、再刺激し(破線)、第2の部分集団を、IL-2で処理した(実線)。APC-MSを、APC-MS条件の再刺激のために使用し、DYNABEADSを、DYNABEADS条件を再刺激するために使用した。
図13B図13Aおよび13Bは、APC-MSまたはDYNABEADSとともにインキュベートした際のマウス脾臓T細胞のポリクローナル拡大を示す。図13Aは、APC-MSまたはDYNABEADSとのインキュベーション(7日間のインキュベーション後に再刺激またはIL-2処理を伴う)後に、種々の時点(t=0日間、5日間、7日間、11日間および13日間)でのT細胞集団のフローサイトメトリー(FACS)散布図を示す。ここでX軸上の値は、CD8+染色の強度を示し、Y軸上の値は、CD4+染色の強度を示す。フローデータを、各サンプルに関して、各時点で、蛍光マイナス1(Fluorescence Minus ONE)(FMO)コントロールに対してゲート制御した。データは、少なくとも2回の独立した実験の代表である。図13Bは、種々の時点(t=0日間、5日間、7日間、11日間および13日間)でのAPC-MS(四角)またはDYNABEADS(三角)とともにインキュベートした後のCD4+ 対 CD8+ T細胞部分集団のパーセンテージにおける変化を示す線グラフである。7日間のインキュベーション後に、その細胞を2つの部分集団に分けた。ここで第1の部分集団を、再刺激し(破線)、第2の部分集団を、IL-2で処理した(実線)。APC-MSを、APC-MS条件の再刺激のために使用し、DYNABEADSを、DYNABEADS条件を再刺激するために使用した。
【0072】
図14図14は、APC-MSまたはDYNABEADSとのインキュベーションの際のFoxP3+ マウス脾臓T細胞の部分セットのポリクローナル拡大の測定を示す。結果は、APC-MSまたはDYNABEADSとのインキュベーション(7日間のインキュベーション後に再刺激またはIL-2処理を伴う)後の種々の時点(t=0日間、5日間、7日間、11日間および13日間)でのT細胞集団のフローサイトメトリー(FACS)散布図の形態で示す。ここでX軸上の値は、FoxP3+染色の強度を示し、Y軸上の値は、CD4+染色の強度を示す。四角形のゲートを適用して、種々の画分におけるFoxP3+ 細胞の数および/または割合を計数した。示されるように、特定の製剤でFoxP3+ マウス脾臓T細胞の拡大は制限されたかまたは存在しなかった。
【0073】
図15図15は、APC-MSまたはDYNABEADSとのインキュベーションの際のCD62L+ マウス脾臓T細胞の部分セットのポリクローナル拡大を示す。結果は、APC-MSまたはDYNABEADSとのインキュベーション(7日間のインキュベーション後に再刺激またはIL-2処理を伴う)後の種々の時点(t=0日間、5日間、7日間、11日間および13日間)でのT細胞集団のフローサイトメトリー(FACS)散布図の形態で示す。ここでX軸上の値は、CD62L+染色の強度を示し、Y軸上の値は、CD44+染色の強度を示す。CD62L+ 細胞は、散布図の右側(上および下の象限)に出現する。
【0074】
図16図16は、APC-MSまたはDYNABEADSとのインキュベーションの際のCD8+/CD69+ マウス脾臓T細胞の部分セットのポリクローナル拡大を示す。結果は、APC-MSまたはDYNABEADSとのインキュベーション(7日間のインキュベーション後に再刺激またはIL-2処理を伴う)後の種々の時点(t=0日間、5日間、7日間、11日間および13日間)でのT細胞集団のフローサイトメトリー(FACS)散布図の形態で示される。ここでX軸上の値は、CD8+染色の強度を示し、Y軸上の値は、CD69+染色の強度を示す。CD8+/CD69+ 細胞は、散布図の右上の象限に出現する。
【0075】
図17図17は、APC-MSまたはDYNABEADSとのインキュベーションの際のCD8+/グランザイムB+ マウス脾臓T細胞の部分セットのポリクローナル拡大を示す。結果は、APC-MSまたはDYNABEADSとのインキュベーション(7日間のインキュベーション後に再刺激またはIL-2処理を伴う)後の種々の時点(t=0日間、5日間、7日間、11日間および13日間)でのT細胞集団のフローサイトメトリー(FACS)散布図の形態で示される。ここでX軸上の値は、CD8+染色の強度を示し、Y軸上の値は、グランザイムB+染色の強度を示す。CD8+/グランザイムB+ 細胞は、散布図の右上の象限に出現する。
【0076】
図18図18は、APC-MS(四角)またはDYNABEADS(三角)でのインキュベーション後の種々の時点(t=0日間、5日間、7日間、11日間および13日間)でのIFNγのT細胞分泌(pg/細胞)を示す。7日間のインキュベーション後に、細胞を2つの部分集団に分けた。ここで第1の部分集団を、再刺激し(破線)、第2の部分集団をIL-2で処理した(実線)。ここでは、APC-MSを、APC-MSとともにインキュベートした細胞集団およびDYNABEADとともにインキュベートした細胞集団の両方の再刺激において使用した。
【0077】
図19図19は、APC-MSまたはDYNABEADSとのインキュベーションの際のPD-1+ マウス脾臓T細胞のレベルを示す。結果は、APC-MSまたはDYNABEADSとのインキュベーション(7日間のインキュベーション後に再刺激またはIL-2処理を伴う)後の種々の時点(t=0日間、5日間、7日間、11日間および13日間)でのT細胞集団のフローサイトメトリー(FACS)散布図の形態で示される。ここでX軸上の値は、CD8+染色の強度を示し、Y軸上の値は、PD-1+染色(消耗の潜在的マーカー)の強度を示す。
【0078】
図20図20Aおよび20Bは、ヒト末梢血T細胞を種々の組成物とともにインキュベートすることの効果を示す。図20Aは、コントロール足場または実験用足場とともにインキュベートした初代T細胞の種々の時点(t=0日間、5日間、7日間、11日間および13日間)でのポリクローナル拡大の線グラフを示す。コントロール足場は、偽(「モック」;黒い線)組成物およびSLBを含まない組成物(「なし」;赤い線)を含む。実験用足場は、(1)DYNABEADS(青い線)および(2)本発明の脂質二重層(SLB)(緑の線)を含む。図20Bは、コントロール足場または実験用足場とともにインキュベートした初代T細胞の種々の時点(t=0日間、5日間、7日間、11日間および13日間)での代謝活性(標準的なAlamar Blue染色アッセイで測定)を示す棒グラフを示す。コントロール足場は、偽組成物(「モック」;「m」)およびSLBを含まない組成物(「なし」;「f」)を含む。実験用足場は、(1)DYNABEADS(「d」)および(2)本発明の脂質二重層(SLB)(「s」)を含む。
【0079】
図21図21Aおよび21Bは、ヒト末梢血T細胞を種々の抗CD3抗体とともにインキュベートすることの効果を示す。被験体1(図21A)および被験体2(図21B)から得られたヒト血液サンプルを、コントロール足場(「モック」)または列挙した抗CD3抗体-ムロモナブ(OKT3)、CD3抗原/T細胞抗原レセプター(TCR)複合体内のCD3の17~19kD ε鎖を認識する抗体(HIT3a)、およびCD3e内のTCR複合体の20kDaサブユニットを認識するモノクローナル抗体(UCHT1)を含む実験用足場とともにインキュベートした。3種の異なる投与量を調査した-5μg(上のスライド)、1μg(被験体2の下のスライド)および0.5μg(被験体1の下のスライド)。各場合において、共刺激を、抗CD28抗体で提供した。ここで抗CD3抗体:抗CD28抗体の比を、1:1において維持した。T細胞の倍数拡大を、種々の時点(t=0日間、7日間、11日間および13日間)で測定した。
【0080】
図22図22は、コントロール足場(「モック」)または列挙した抗CD3抗体-OKT3、HIT3a、およびUCHT1を含む実験用足場とのインキュベーションの際のヒトT細胞のポリクローナル拡大を示す。下のパネルは、刺激分子としての抗CD3抗体および共刺激分子としての抗CD28抗体の各々を含むAPC-MSとのインキュベーション後の種々の時点(t=8日間、11日間および14日間)でのT細胞集団のフローサイトメトリー(FACS)散布図を示す。散布図のX軸上の値は、CD8+染色の強度を示し、Y軸上の値は、CD4+染色の強度を示す。その散布図は、上のパネルの線グラフ(これは、前述の抗CD3抗体-OKT3(丸)、HIT3a(四角)およびUCHT1(三角)を含むAPC-MSとのインキュベーション後のCD4+ 対 CD8+ T細胞部分集団のパーセンテージにおける変化を示す)にまとめられる。2種の異なる抗体投与量を調査した-5μg(1×希釈)および0.5μg(1:10×希釈)。
【0081】
図23図23は、1×負荷濃度(約5μg)において、IL-2ならびに前述の抗CD3抗体-OKT3(左のパネル)、HIT3a(中央のパネル)およびUCHT1(右のパネル)、および抗CD28抗体を1:1比において含むAPC-MSを使用して、14日間拡大した生きているT細胞上でのCD62LおよびCCR7の発現を示す。全生細胞におけるCD62LおよびCCR7の発現は、上のパネルに示され、ゲート制御したCD8+ 細胞におけるこれらマーカーの発現は、下のパネルに示される。本発明のAPC-MSで拡大した細胞の大部分は、14日間のインキュベーション後にCD62L+CCR7+(これは、ヒト患者におけるインビボ機能性によって重要であることが示されている)を保持する。さらに、OKT3を含むAPC-MS足場は、UCHT1および/またはHIT3aを含む足場と比較して、CD62L+CCR7+ T細胞を拡大および/または保持するにあたって特に有効であった。
【0082】
図24図24は、本発明の足場を作製するための代表的スキームを概説する。
【0083】
図25図25Aおよび25Bは、抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)のデザインを示す。図25Aは、APC-MSを調製するための例示的プロセスを示す: 1)メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を合成する; 2)MSRにIL-2を吸着させる; 3)IL-2吸着したMSRをリポソームで被覆し、MSR-SLBを形成する; 4)T細胞活性化のキューを、MSR-SLBの表面に付着させる; 5)MSR-SLBを、T細胞とともに培養する;および6) MSR-SLBを沈殿させ、積み重ねて、T細胞が浸潤した足場を形成する。IL-2を負荷し、T細胞活性化のキューで表面官能化したMSR-SLBから形成される足場を、APC-MSという。図25Bは、別個のAPC-MS製剤の例示的構造および機能を示す。IL-2は、APC-MSから時間を経て放出され、局所のT細胞へのIL-2の傍分泌送達を生じる。リポソーム製剤へのビオチン化リン脂質の所定の量の組み込みは、ストレプトアビジン-ビオチン相互作用を介してビオチン化T細胞活性化のキューの正確な表面付着を可能にし、天然のAPCによるT細胞へのキューの細胞表面提示を模倣する。ポリクローナルT細胞拡大のために、CD3(αCD3)およびCD28(αCD28)に対する活性化抗体が付着される(左)。抗原特異的T細胞拡大のために、ペプチドを負荷したMHC(pMHC)およびαCD28が付着される(右)。
【0084】
図26図26Aおよび26Bは、MSR-SLBをアセンブリするために使用される構成要素の物理的特徴付けを示す。図26Aは、MSRの代表的な明視野顕微鏡画像を示す。スケールバー=100μm。図26Bは、動的光散乱法(DLS)によって測定される場合のPOPCリポソームのサイズ分布を示す。図26Bにおけるデータは、3つのサンプルの平均サイズ分布を表す。
【0085】
図27図27Aおよび27Bは、脂質被覆MSRの顕微鏡画像を示す。図27Aは、低い脂質:MSRにおいてMSRの凝集を示す顕微鏡画像である。MSR(左)、発蛍光団タグ化リン脂質(全脂質のうちの1モル%;中央)、ならびにMSRおよび脂質の共局在(右)の明視野画像を示す脂質被覆MSR(脂質:MSR 1:20 w/w)の代表的顕微鏡画像。スケールバー=200μm。図27Bは、MSR(左)、発蛍光団タグ化リン脂質(全脂質のうちの1モル%;中央)、ならびにMSRおよび脂質の共局在(右)の明視野画像を示す脂質被覆MSR(脂質:MSR 1:4 w/w)の顕微鏡画像である。スケールバー=200μm。
【0086】
図28AB図28A~28Eは、APC-MSのアセンブリおよび特徴付けを示す。図28Aは、細胞培養条件を維持したPBSまたは10% 血清を含むRPMI培地(cRPMI)のいずれかの中でのMSR上の脂質被覆(1モル% 発蛍光団タグ化脂質を含む)の保持を経時的に示す。図28Bは、標準的細胞培養条件下で、経時的にcRPMI中で維持された脂質被覆MSR(MSR、明視野;脂質(1モル% 発蛍光団タグ化脂質)、緑)の代表的な重ね合わせた蛍光顕微鏡画像である。スケールバー=100μm。データは、3回の実験反復の平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である。図28Cは、MSR-SLB(500μgのMSR)からインビトロで経時的(データ点)に放出されたIL-2の定量を1フェーズ指数関数フィット(破線;R=0.98)とともに示すグラフである。データは、3回の実験反復の平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である。図28Dは、0.01モル%、0.1モル%、または1モル%のビオチン化脂質を含む脂質製剤で被覆したMSR上への種々の投入量のビオチン化IgGの付着の定量を示すグラフである。棒の上の値は、各それぞれの条件についての付着したIgGの濃度(μg)を示す。データは、4回の実験反復の平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である。図28Eは、初代ヒトT細胞とAPC-MSとの密な会合を示すSEM画像である。スケールバー=10μm。
図28CDE図28A~28Eは、APC-MSのアセンブリおよび特徴付けを示す。図28Aは、細胞培養条件を維持したPBSまたは10% 血清を含むRPMI培地(cRPMI)のいずれかの中でのMSR上の脂質被覆(1モル% 発蛍光団タグ化脂質を含む)の保持を経時的に示す。図28Bは、標準的細胞培養条件下で、経時的にcRPMI中で維持された脂質被覆MSR(MSR、明視野;脂質(1モル% 発蛍光団タグ化脂質)、緑)の代表的な重ね合わせた蛍光顕微鏡画像である。スケールバー=100μm。データは、3回の実験反復の平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である。図28Cは、MSR-SLB(500μgのMSR)からインビトロで経時的(データ点)に放出されたIL-2の定量を1フェーズ指数関数フィット(破線;R=0.98)とともに示すグラフである。データは、3回の実験反復の平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である。図28Dは、0.01モル%、0.1モル%、または1モル%のビオチン化脂質を含む脂質製剤で被覆したMSR上への種々の投入量のビオチン化IgGの付着の定量を示すグラフである。棒の上の値は、各それぞれの条件についての付着したIgGの濃度(μg)を示す。データは、4回の実験反復の平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である。図28Eは、初代ヒトT細胞とAPC-MSとの密な会合を示すSEM画像である。スケールバー=10μm。
【0087】
図29図29は、T細胞とAPC-MSとの会合を示す。低倍率(左)および高倍率(右)での、初代マウスT細胞とともに1日間培養した、いかなる表面キューも提示しない(cue-)、またはαCD3およびαCD28を表面提示する(cue+)かのいずれかのMSR-SLBの代表的顕微鏡画像。細胞および物質は、明視野画像(上)の中で認識でき、MSR-SLB脂質被覆は、緑色チャネルにおいて認識できる(1モル% 発蛍光団タグ化脂質;中央)。合成画像を、下に示す。低倍率のスケールバー=500μm、高倍率のスケールバー=100μm。
【0088】
図30ABC図30A、30B、30C、30D、30E、30F、および30Gは、初代マウスおよびヒトT細胞のポリクローナル拡大を示す。図30Aは、低倍率(左)または高倍率(右)において、種々の時点での、DYNABEADSまたはAPC-MSとともに培養した初代マウスT細胞の代表的な明視野顕微鏡画像である。スケールバー=100μm。図30Bは、非処理(モック)であったか、または遊離キュー(110nM αCD3、110nM αCD28、1.3μg/ml IL-2)、市販のCD3/CD28マウスT細胞拡大ビーズおよび外因性IL-2(DYNABEADS)、二重層表面上に提示されるT細胞キューなしのIL-2負荷MSR-SLB(MSR-SLB(cue-))、またはAPC-MS(αCD3、αCD28、IL-2を負荷)とともに培養したかのいずれかである初代マウスT細胞の拡大を示す。モックおよび遊離の曲線は、MSR-SLB(cue-)曲線から区別できなかった。図30Cは、FACSによって測定して、APC-MSまたはDynabead培養物において生きている単一の細胞の中でCD4+ およびCD8+ 細胞の出現率を経時的に示す。データを、二元配置ANOVA、続いて、Tukey HSD事後検定を使用して分析した。図30Dは、種々の時点での、DYNABEADSまたはAPC-MS製剤とともに培養した初代ヒトT細胞の代表的な明視野顕微鏡画像である。スケールバー=100μm。(F1)333μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したαCD3およびαCD28飽和1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS、(F2)33μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したαCD3およびαCD28飽和1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS、(F3)333μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したαCD3およびαCD28飽和0.1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS、ならびに(F4)33μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したαCD3およびαCD28飽和0.1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS。図30Eは、非処理であったか(モック)、または市販のCD3/CD28ヒトT細胞拡大ビーズおよび外因性IL-2(DYNABEADS)とともに、または種々のAPC-MS製剤とともに培養したかのいずれかである初代ヒトT細胞の拡大を示す。図30Fは、DYNABEADSまたは種々のAPC-MS製剤のいずれかとともに14日間拡大したサンプル中の、生きている単一のCD3+ 細胞の中でのCD4およびCD8単一陽性細胞のFACS定量を示す。図30Gは、DYNABEADSまたは種々のAPC-MS製剤のいずれかとともに拡大されたサンプル中、生きている単一細胞の中でPD-1およびLAG-3を共発現する細胞のFACS定量を示す。図30Fおよび30Gにおけるデータは、3回の実験複製の平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である。図30Eにおけるデータは、2回の独立した実験からの少なくとも3つの異なるドナーサンプルの平均±s.d.を表す。図30Fおよび30Gにおけるデータは、3つの異なるドナーサンプルの平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である。**p<0.01、***p<0.001。
図30DE図30A、30B、30C、30D、30E、30F、および30Gは、初代マウスおよびヒトT細胞のポリクローナル拡大を示す。図30Aは、低倍率(左)または高倍率(右)において、種々の時点での、DYNABEADSまたはAPC-MSとともに培養した初代マウスT細胞の代表的な明視野顕微鏡画像である。スケールバー=100μm。図30Bは、非処理(モック)であったか、または遊離キュー(110nM αCD3、110nM αCD28、1.3μg/ml IL-2)、市販のCD3/CD28マウスT細胞拡大ビーズおよび外因性IL-2(DYNABEADS)、二重層表面上に提示されるT細胞キューなしのIL-2負荷MSR-SLB(MSR-SLB(cue-))、またはAPC-MS(αCD3、αCD28、IL-2を負荷)とともに培養したかのいずれかである初代マウスT細胞の拡大を示す。モックおよび遊離の曲線は、MSR-SLB(cue-)曲線から区別できなかった。図30Cは、FACSによって測定して、APC-MSまたはDynabead培養物において生きている単一の細胞の中でCD4+ およびCD8+ 細胞の出現率を経時的に示す。データを、二元配置ANOVA、続いて、Tukey HSD事後検定を使用して分析した。図30Dは、種々の時点での、DYNABEADSまたはAPC-MS製剤とともに培養した初代ヒトT細胞の代表的な明視野顕微鏡画像である。スケールバー=100μm。(F1)333μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したαCD3およびαCD28飽和1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS、(F2)33μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したαCD3およびαCD28飽和1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS、(F3)333μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したαCD3およびαCD28飽和0.1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS、ならびに(F4)33μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したαCD3およびαCD28飽和0.1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS。図30Eは、非処理であったか(モック)、または市販のCD3/CD28ヒトT細胞拡大ビーズおよび外因性IL-2(DYNABEADS)とともに、または種々のAPC-MS製剤とともに培養したかのいずれかである初代ヒトT細胞の拡大を示す。図30Fは、DYNABEADSまたは種々のAPC-MS製剤のいずれかとともに14日間拡大したサンプル中の、生きている単一のCD3+ 細胞の中でのCD4およびCD8単一陽性細胞のFACS定量を示す。図30Gは、DYNABEADSまたは種々のAPC-MS製剤のいずれかとともに拡大されたサンプル中、生きている単一細胞の中でPD-1およびLAG-3を共発現する細胞のFACS定量を示す。図30Fおよび30Gにおけるデータは、3回の実験複製の平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である。図30Eにおけるデータは、2回の独立した実験からの少なくとも3つの異なるドナーサンプルの平均±s.d.を表す。図30Fおよび30Gにおけるデータは、3つの異なるドナーサンプルの平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である。**p<0.01、***p<0.001。
図30FG図30A、30B、30C、30D、30E、30F、および30Gは、初代マウスおよびヒトT細胞のポリクローナル拡大を示す。図30Aは、低倍率(左)または高倍率(右)において、種々の時点での、DYNABEADSまたはAPC-MSとともに培養した初代マウスT細胞の代表的な明視野顕微鏡画像である。スケールバー=100μm。図30Bは、非処理(モック)であったか、または遊離キュー(110nM αCD3、110nM αCD28、1.3μg/ml IL-2)、市販のCD3/CD28マウスT細胞拡大ビーズおよび外因性IL-2(DYNABEADS)、二重層表面上に提示されるT細胞キューなしのIL-2負荷MSR-SLB(MSR-SLB(cue-))、またはAPC-MS(αCD3、αCD28、IL-2を負荷)とともに培養したかのいずれかである初代マウスT細胞の拡大を示す。モックおよび遊離の曲線は、MSR-SLB(cue-)曲線から区別できなかった。図30Cは、FACSによって測定して、APC-MSまたはDynabead培養物において生きている単一の細胞の中でCD4+ およびCD8+ 細胞の出現率を経時的に示す。データを、二元配置ANOVA、続いて、Tukey HSD事後検定を使用して分析した。図30Dは、種々の時点での、DYNABEADSまたはAPC-MS製剤とともに培養した初代ヒトT細胞の代表的な明視野顕微鏡画像である。スケールバー=100μm。(F1)333μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したαCD3およびαCD28飽和1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS、(F2)33μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したαCD3およびαCD28飽和1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS、(F3)333μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したαCD3およびαCD28飽和0.1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS、ならびに(F4)33μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したαCD3およびαCD28飽和0.1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS。図30Eは、非処理であったか(モック)、または市販のCD3/CD28ヒトT細胞拡大ビーズおよび外因性IL-2(DYNABEADS)とともに、または種々のAPC-MS製剤とともに培養したかのいずれかである初代ヒトT細胞の拡大を示す。図30Fは、DYNABEADSまたは種々のAPC-MS製剤のいずれかとともに14日間拡大したサンプル中の、生きている単一のCD3+ 細胞の中でのCD4およびCD8単一陽性細胞のFACS定量を示す。図30Gは、DYNABEADSまたは種々のAPC-MS製剤のいずれかとともに拡大されたサンプル中、生きている単一細胞の中でPD-1およびLAG-3を共発現する細胞のFACS定量を示す。図30Fおよび30Gにおけるデータは、3回の実験複製の平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である。図30Eにおけるデータは、2回の独立した実験からの少なくとも3つの異なるドナーサンプルの平均±s.d.を表す。図30Fおよび30Gにおけるデータは、3つの異なるドナーサンプルの平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である。**p<0.01、***p<0.001。
【0089】
図31図31は、ポリクローナル拡大した初代マウスT細胞上のCD4およびCD8発現の代表的FACSプロットを示す。APC-MSまたはDYNABEADSのいずれかでポリクローナル拡大した生きている単一の細胞上のCD4およびCD8発現を示す代表的FACSプロット。フローデータを、各サンプルに関して、各時点において蛍光マイナス1(FMO)コントロールに対してゲート制御した。データは、少なくとも2回の独立した実験の代表である。
【0090】
図32AB図32A、32B、32Cおよび32Dは、ポリクローナル拡大した初代マウスT細胞の拡大した表現型特徴づけを示す。図32Aは、DYNABEADSまたはAPC-MSのいずれかで拡大したサンプルにおける生きている単一CD8+ 細胞の中でのグランザイムB陽性細胞のFACS定量(左)および代表的FACSプロット(右)を示す。図32Bは、DYNABEADSまたはAPC-MSのいずれかで拡大したサンプルにおける生きている単一CD4+ 細胞の中でのFoxP3陽性細胞のFACS定量を示す。図32Cおよび32Dは、CD8発現の関数として、生きている単一細胞上でPD-1発現を示す代表的FACSプロットを示す。フローデータを、各サンプルに関して、各時点において、蛍光マイナス1(FMO)コントロールに対してゲート制御した。データは、3回の実験反復の平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である。
図32CD図32A、32B、32Cおよび32Dは、ポリクローナル拡大した初代マウスT細胞の拡大した表現型特徴づけを示す。図32Aは、DYNABEADSまたはAPC-MSのいずれかで拡大したサンプルにおける生きている単一CD8+ 細胞の中でのグランザイムB陽性細胞のFACS定量(左)および代表的FACSプロット(右)を示す。図32Bは、DYNABEADSまたはAPC-MSのいずれかで拡大したサンプルにおける生きている単一CD4+ 細胞の中でのFoxP3陽性細胞のFACS定量を示す。図32Cおよび32Dは、CD8発現の関数として、生きている単一細胞上でPD-1発現を示す代表的FACSプロットを示す。フローデータを、各サンプルに関して、各時点において、蛍光マイナス1(FMO)コントロールに対してゲート制御した。データは、3回の実験反復の平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である。
【0091】
図33図33は、ポリクローナル拡大した初代ヒトT細胞上の接着分子発現を示す。DYNABEADSまたは種々のAPC-MS製剤のいずれかで拡大したサンプルにおけるCD62LおよびCCR7を共発現する生きている単一細胞のFACS定量。(F1)333μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したαCD3およびαCD28飽和1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS、(F2)33μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したαCD3およびαCD28飽和1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS、(F3)333μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したαCD3およびαCD28飽和0.1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS、および(F4)33μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したαCD3およびαCD28飽和0.1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS。データは、3つの異なるドナーサンプルの平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である。
【0092】
図34ABCD図34A、34B、34C、34D、および34Eは、初代マウスT細胞の抗原特異的拡大を示す。図34Aは、H-2K(b)において無関係のペプチド(SVYDFFVWL(配列番号3);左)または関連ペプチド(SIINFEKL(配列番号4);右)を提示するAPC-MSとともに2日間培養した初代CD8+ OT-I T細胞の代表的な明視野顕微鏡画像を示す。スケールバー=100μm。図34Bは、非処理(モック)であったか、または種々のAPC-MS製剤とともに培養したかのいずれかである初代CD8+ OT-I T細胞の拡大を示す。(F1)333μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したSIINFEKL(配列番号4)/H-2K(b)およびαCD28飽和1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS、(F2)33μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したSIINFEKL(配列番号4)/H-2K(b)およびαCD28飽和1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS、(F3)333μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したSIINFEKL(配列番号4)/H-2K(b)およびαCD28飽和0.1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS、ならびに(F4)33μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したSIINFEKL(配列番号4)/H-2K(b)およびαCD28飽和0.1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS。図34Cは、種々のAPC-MS製剤で13日間拡大し、次いで、モック適用した(-)かまたはSIINFEKL(配列番号4)ペプチドを適用した(+)かのいずれかであるB16-F10細胞と共培養した、生きている単一のCD8+ OT-I T細胞によるIFNγおよびTNFα発現のFACS定量を示す。図34Dは、種々のAPC-MS製剤で13日間拡大し、次いで、種々のエフェクター:標的細胞比で共培養したCD8+ OT-I T細胞による、モック適用した(-)かまたはSIINFEKL(配列番号4)適用(+)したB16-F10標的細胞のインビトロ殺滅の定量を示す。図34Eは、モック適用した(pep-)かまたはSIINFEKL(配列番号4)ペプチドを適用した(pep+)かのいずれかであるB16-F10細胞と種々のエフェクター:標的細胞比での共培養に応じて、種々のAPC-MS製剤で13日間拡大したCD8+ OT-I T細胞によるIFNγ分泌の定量を示す。図34B、34C、34D、および34Eにおけるデータは、3回の実験反復の平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である。
図34E図34A、34B、34C、34D、および34Eは、初代マウスT細胞の抗原特異的拡大を示す。図34Aは、H-2K(b)において無関係のペプチド(SVYDFFVWL(配列番号3);左)または関連ペプチド(SIINFEKL(配列番号4);右)を提示するAPC-MSとともに2日間培養した初代CD8+ OT-I T細胞の代表的な明視野顕微鏡画像を示す。スケールバー=100μm。図34Bは、非処理(モック)であったか、または種々のAPC-MS製剤とともに培養したかのいずれかである初代CD8+ OT-I T細胞の拡大を示す。(F1)333μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したSIINFEKL(配列番号4)/H-2K(b)およびαCD28飽和1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS、(F2)33μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したSIINFEKL(配列番号4)/H-2K(b)およびαCD28飽和1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS、(F3)333μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したSIINFEKL(配列番号4)/H-2K(b)およびαCD28飽和0.1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS、ならびに(F4)33μg/mlのMSRにおいて初期培養物に投入したSIINFEKL(配列番号4)/H-2K(b)およびαCD28飽和0.1モル% ビオチン化脂質を提示するAPC-MS。図34Cは、種々のAPC-MS製剤で13日間拡大し、次いで、モック適用した(-)かまたはSIINFEKL(配列番号4)ペプチドを適用した(+)かのいずれかであるB16-F10細胞と共培養した、生きている単一のCD8+ OT-I T細胞によるIFNγおよびTNFα発現のFACS定量を示す。図34Dは、種々のAPC-MS製剤で13日間拡大し、次いで、種々のエフェクター:標的細胞比で共培養したCD8+ OT-I T細胞による、モック適用した(-)かまたはSIINFEKL(配列番号4)適用(+)したB16-F10標的細胞のインビトロ殺滅の定量を示す。図34Eは、モック適用した(pep-)かまたはSIINFEKL(配列番号4)ペプチドを適用した(pep+)かのいずれかであるB16-F10細胞と種々のエフェクター:標的細胞比での共培養に応じて、種々のAPC-MS製剤で13日間拡大したCD8+ OT-I T細胞によるIFNγ分泌の定量を示す。図34B、34C、34D、および34Eにおけるデータは、3回の実験反復の平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である。
【0093】
図35ABCD図35A、35B、35C、35Dおよび35Eは、抗原特異的APC-MS製剤で拡大した初代ヒトT細胞の拡大した特徴づけを示す。図35Aは、モック処理した(30 U/ml IL-2)か、またはHLA-A2においてCLGもしくはGLCペプチドのいずれかを提示するAPC-MS(pMHC、αCD28、IL-2を負荷)とともに培養した初代ヒトCD8+ T細胞単離物の全拡大を示す。モック処理細胞のデータは、0日目および7日目に関してのみ利用可能。図35B、35Cおよび35Dは、適用しなかった(ペプチド-)(図35B)か、CLGペプチドを適用した(+CLGペプチド)(図35C)か、もしくはGLCペプチドを適用した(+GLCペプチド)(図35D)のいずれかであったT2細胞との共培養後に、モック処理した(30 U/ml IL-2)か、またはCLGペプチド(APC-MS CLG)もしくはGLCペプチド(APC-MSGLC)のいずれかを提示するAPC-MSとともに培養したCD8+ T細胞単離物のIFNγ分泌の定量を示す。モック処理した細胞のデータは、7日目に関してのみ利用可能。図35Eは、適用しなかった(ペプチドなし;上)か、CLGペプチドを適用した(+CLGペプチド;中央)か、もしくはGLCペプチドを適用した(+GLCペプチド;下)かのいずれかであるT2細胞との共培養後に、CLGペプチド(APC-MS/CLG)もしくはGLCペプチド(APC-MS/GLC)のいずれかを提示するAPC-MSとともに培養したCD8+ T細胞単離物のIFNγおよびTNFα発現を示す代表的なFACSプロットを示す。図35Aおよび35Bにおけるデータは、3回の実験反復の平均±s.d.を表し、2つの異なるドナーサンプルでの2回の実験の代表である。
図35E図35A、35B、35C、35Dおよび35Eは、抗原特異的APC-MS製剤で拡大した初代ヒトT細胞の拡大した特徴づけを示す。図35Aは、モック処理した(30 U/ml IL-2)か、またはHLA-A2においてCLGもしくはGLCペプチドのいずれかを提示するAPC-MS(pMHC、αCD28、IL-2を負荷)とともに培養した初代ヒトCD8+ T細胞単離物の全拡大を示す。モック処理細胞のデータは、0日目および7日目に関してのみ利用可能。図35B、35Cおよび35Dは、適用しなかった(ペプチド-)(図35B)か、CLGペプチドを適用した(+CLGペプチド)(図35C)か、もしくはGLCペプチドを適用した(+GLCペプチド)(図35D)のいずれかであったT2細胞との共培養後に、モック処理した(30 U/ml IL-2)か、またはCLGペプチド(APC-MS CLG)もしくはGLCペプチド(APC-MSGLC)のいずれかを提示するAPC-MSとともに培養したCD8+ T細胞単離物のIFNγ分泌の定量を示す。モック処理した細胞のデータは、7日目に関してのみ利用可能。図35Eは、適用しなかった(ペプチドなし;上)か、CLGペプチドを適用した(+CLGペプチド;中央)か、もしくはGLCペプチドを適用した(+GLCペプチド;下)かのいずれかであるT2細胞との共培養後に、CLGペプチド(APC-MS/CLG)もしくはGLCペプチド(APC-MS/GLC)のいずれかを提示するAPC-MSとともに培養したCD8+ T細胞単離物のIFNγおよびTNFα発現を示す代表的なFACSプロットを示す。図35Aおよび35Bにおけるデータは、3回の実験反復の平均±s.d.を表し、2つの異なるドナーサンプルでの2回の実験の代表である。
【0094】
図36ABC図36A、35B、36C、36D、36E、36F、36G、36H、36I、36J、36K、36L、36M、および36Nは、初代ヒトT細胞の抗原特異的拡大を示す。図36A、36B、36C、36D、36E、36F、36G、36H、36I、および36Jは、CD8+ T細胞単離物からの初代ヒトT細胞の抗原特異的拡大を示す。図36A、36Bおよび36Dは、EBV由来ペプチドCLGGLLTMV(配列番号1)(CLG;図36Aおよび36B)およびGLCTLVAML(配列番号2)(GLC;図36Dおよび36E)に特異的な生きているCD8+ 単一細胞のテトラマー分析を示す。それぞれのテトラマーに特異的な生きている単一CD8+ 細胞の%を示すゲートの中の数とともに代表的なFACSプロット(図36Aおよび36D)、ならびにモック処理した(30 U/ml IL-2)か、またはHLA-A2においてCLGペプチドもしくはGLCペプチドのいずれかを提示するAPC-MS(pMHC、αCD28、IL-2を負荷)とともに培養した初代HLA-A2+ ヒトCD8+ T細胞の種々の時点でのFACSデータの定量(図36Bおよび36E)。モック処理した細胞のデータは、0日目および7日目に関してのみ利用可能。図36Fは、モック処理したか、またはHLA-A2においてCLGもしくはGLCペプチドのいずれかを提示するAPC-MSとともに培養したかのいずれかであるCLG(図36C)もしくはGLC(図36F)に特異的な初代ヒトCD8+ T細胞の拡大を示す。モック処理した細胞に関するデータは、0日目および7日目に関してのみ利用可能。図36G、36Hおよび36Iは、適用していない(ペプチド-;図36G)か、CLGペプチドを適用した(+CLGペプチド;図36H)か、もしくはGLCペプチドを適用した(+GLCペプチド;図36I)かのいずれかであるT2細胞との共培養後に、モック処理したか、またはHLA-A2においてCLGもしくはGLCペプチドのいずれかを提示するAPC-MSとともに培養した生きている単一CD8+ T細胞の中でのTNFα+IFNγ+ 細胞の出現率を示す。モック処理した細胞に関するデータは、7日目に関してのみ利用可能。図36Jは、HLA-A2においてCLGもしくはGLCペプチドのいずれかを提示するAPC-MSで14日間拡大した初代ヒトCD8+ T細胞による、モック適用した(ペプチドなし)か、またはCLGペプチド(+CLG)もしくはGLCペプチド(+GLC)のいずれかを適用したT2標的細胞のインビトロでの殺滅の定量を示す。図36K、36L、36Mおよび36Nは、PBMCに由来する初代ヒトT細胞の抗原特異的拡大を示す。図36Kは、30 U/ml IL-2(モック)中で、またはHLA-A2においてGLCペプチドを提示するAPC-MSとともに7日間培養したPBMC内で、生きている単一CD8+ T細胞の中のGLC特異的細胞の出現率を示す。図36Lは、30 U/ml IL-2(モック)中で、またはHLA-A2においてGLCペプチドを提示するAPC-MSとともに7日間培養したPBMC内でのGLC特異的CD8+ T細胞の数を示す。棒の上の数字は、倍数拡大(平均±s.d.)を示す。図36Mおよび36Nは、適用しなかった(ペプチドなし)、CLGペプチドを適用したか(+CLG)、もしくはGLCペプチドを適用したか(+GLC)かのいずれかであるT2との共培養後に、30 U/ml IL-2(モック)中で、またはHLA-A2においてGLCペプチドを提示するAPC-MSとともに7日間培養したPBMCに由来する生きている単一CD8+ T細胞の中でのTNFα+IFNγ+ 細胞の出現率(図36M)、ならびにIFNγ分泌(図36N)を示す。全てのデータは、3回の実験反復の平均±s.d.を表し、2つの異なるドナーサンプルでの2回の実験の代表である。
図36DEF図36A、35B、36C、36D、36E、36F、36G、36H、36I、36J、36K、36L、36M、および36Nは、初代ヒトT細胞の抗原特異的拡大を示す。図36A、36B、36C、36D、36E、36F、36G、36H、36I、および36Jは、CD8+ T細胞単離物からの初代ヒトT細胞の抗原特異的拡大を示す。図36A、36Bおよび36Dは、EBV由来ペプチドCLGGLLTMV(配列番号1)(CLG;図36Aおよび36B)およびGLCTLVAML(配列番号2)(GLC;図36Dおよび36E)に特異的な生きているCD8+ 単一細胞のテトラマー分析を示す。それぞれのテトラマーに特異的な生きている単一CD8+ 細胞の%を示すゲートの中の数とともに代表的なFACSプロット(図36Aおよび36D)、ならびにモック処理した(30 U/ml IL-2)か、またはHLA-A2においてCLGペプチドもしくはGLCペプチドのいずれかを提示するAPC-MS(pMHC、αCD28、IL-2を負荷)とともに培養した初代HLA-A2+ ヒトCD8+ T細胞の種々の時点でのFACSデータの定量(図36Bおよび36E)。モック処理した細胞のデータは、0日目および7日目に関してのみ利用可能。図36Fは、モック処理したか、またはHLA-A2においてCLGもしくはGLCペプチドのいずれかを提示するAPC-MSとともに培養したかのいずれかであるCLG(図36C)もしくはGLC(図36F)に特異的な初代ヒトCD8+ T細胞の拡大を示す。モック処理した細胞に関するデータは、0日目および7日目に関してのみ利用可能。図36G、36Hおよび36Iは、適用していない(ペプチド-;図36G)か、CLGペプチドを適用した(+CLGペプチド;図36H)か、もしくはGLCペプチドを適用した(+GLCペプチド;図36I)かのいずれかであるT2細胞との共培養後に、モック処理したか、またはHLA-A2においてCLGもしくはGLCペプチドのいずれかを提示するAPC-MSとともに培養した生きている単一CD8+ T細胞の中でのTNFα+IFNγ+ 細胞の出現率を示す。モック処理した細胞に関するデータは、7日目に関してのみ利用可能。図36Jは、HLA-A2においてCLGもしくはGLCペプチドのいずれかを提示するAPC-MSで14日間拡大した初代ヒトCD8+ T細胞による、モック適用した(ペプチドなし)か、またはCLGペプチド(+CLG)もしくはGLCペプチド(+GLC)のいずれかを適用したT2標的細胞のインビトロでの殺滅の定量を示す。図36K、36L、36Mおよび36Nは、PBMCに由来する初代ヒトT細胞の抗原特異的拡大を示す。図36Kは、30 U/ml IL-2(モック)中で、またはHLA-A2においてGLCペプチドを提示するAPC-MSとともに7日間培養したPBMC内で、生きている単一CD8+ T細胞の中のGLC特異的細胞の出現率を示す。図36Lは、30 U/ml IL-2(モック)中で、またはHLA-A2においてGLCペプチドを提示するAPC-MSとともに7日間培養したPBMC内でのGLC特異的CD8+ T細胞の数を示す。棒の上の数字は、倍数拡大(平均±s.d.)を示す。図36Mおよび36Nは、適用しなかった(ペプチドなし)、CLGペプチドを適用したか(+CLG)、もしくはGLCペプチドを適用したか(+GLC)かのいずれかであるT2との共培養後に、30 U/ml IL-2(モック)中で、またはHLA-A2においてGLCペプチドを提示するAPC-MSとともに7日間培養したPBMCに由来する生きている単一CD8+ T細胞の中でのTNFα+IFNγ+ 細胞の出現率(図36M)、ならびにIFNγ分泌(図36N)を示す。全てのデータは、3回の実験反復の平均±s.d.を表し、2つの異なるドナーサンプルでの2回の実験の代表である。
図36GHIJ図36A、35B、36C、36D、36E、36F、36G、36H、36I、36J、36K、36L、36M、および36Nは、初代ヒトT細胞の抗原特異的拡大を示す。図36A、36B、36C、36D、36E、36F、36G、36H、36I、および36Jは、CD8+ T細胞単離物からの初代ヒトT細胞の抗原特異的拡大を示す。図36A、36Bおよび36Dは、EBV由来ペプチドCLGGLLTMV(配列番号1)(CLG;図36Aおよび36B)およびGLCTLVAML(配列番号2)(GLC;図36Dおよび36E)に特異的な生きているCD8+ 単一細胞のテトラマー分析を示す。それぞれのテトラマーに特異的な生きている単一CD8+ 細胞の%を示すゲートの中の数とともに代表的なFACSプロット(図36Aおよび36D)、ならびにモック処理した(30 U/ml IL-2)か、またはHLA-A2においてCLGペプチドもしくはGLCペプチドのいずれかを提示するAPC-MS(pMHC、αCD28、IL-2を負荷)とともに培養した初代HLA-A2+ ヒトCD8+ T細胞の種々の時点でのFACSデータの定量(図36Bおよび36E)。モック処理した細胞のデータは、0日目および7日目に関してのみ利用可能。図36Fは、モック処理したか、またはHLA-A2においてCLGもしくはGLCペプチドのいずれかを提示するAPC-MSとともに培養したかのいずれかであるCLG(図36C)もしくはGLC(図36F)に特異的な初代ヒトCD8+ T細胞の拡大を示す。モック処理した細胞に関するデータは、0日目および7日目に関してのみ利用可能。図36G、36Hおよび36Iは、適用していない(ペプチド-;図36G)か、CLGペプチドを適用した(+CLGペプチド;図36H)か、もしくはGLCペプチドを適用した(+GLCペプチド;図36I)かのいずれかであるT2細胞との共培養後に、モック処理したか、またはHLA-A2においてCLGもしくはGLCペプチドのいずれかを提示するAPC-MSとともに培養した生きている単一CD8+ T細胞の中でのTNFα+IFNγ+ 細胞の出現率を示す。モック処理した細胞に関するデータは、7日目に関してのみ利用可能。図36Jは、HLA-A2においてCLGもしくはGLCペプチドのいずれかを提示するAPC-MSで14日間拡大した初代ヒトCD8+ T細胞による、モック適用した(ペプチドなし)か、またはCLGペプチド(+CLG)もしくはGLCペプチド(+GLC)のいずれかを適用したT2標的細胞のインビトロでの殺滅の定量を示す。図36K、36L、36Mおよび36Nは、PBMCに由来する初代ヒトT細胞の抗原特異的拡大を示す。図36Kは、30 U/ml IL-2(モック)中で、またはHLA-A2においてGLCペプチドを提示するAPC-MSとともに7日間培養したPBMC内で、生きている単一CD8+ T細胞の中のGLC特異的細胞の出現率を示す。図36Lは、30 U/ml IL-2(モック)中で、またはHLA-A2においてGLCペプチドを提示するAPC-MSとともに7日間培養したPBMC内でのGLC特異的CD8+ T細胞の数を示す。棒の上の数字は、倍数拡大(平均±s.d.)を示す。図36Mおよび36Nは、適用しなかった(ペプチドなし)、CLGペプチドを適用したか(+CLG)、もしくはGLCペプチドを適用したか(+GLC)かのいずれかであるT2との共培養後に、30 U/ml IL-2(モック)中で、またはHLA-A2においてGLCペプチドを提示するAPC-MSとともに7日間培養したPBMCに由来する生きている単一CD8+ T細胞の中でのTNFα+IFNγ+ 細胞の出現率(図36M)、ならびにIFNγ分泌(図36N)を示す。全てのデータは、3回の実験反復の平均±s.d.を表し、2つの異なるドナーサンプルでの2回の実験の代表である。
図36KLMN図36A、35B、36C、36D、36E、36F、36G、36H、36I、36J、36K、36L、36M、および36Nは、初代ヒトT細胞の抗原特異的拡大を示す。図36A、36B、36C、36D、36E、36F、36G、36H、36I、および36Jは、CD8+ T細胞単離物からの初代ヒトT細胞の抗原特異的拡大を示す。図36A、36Bおよび36Dは、EBV由来ペプチドCLGGLLTMV(配列番号1)(CLG;図36Aおよび36B)およびGLCTLVAML(配列番号2)(GLC;図36Dおよび36E)に特異的な生きているCD8+ 単一細胞のテトラマー分析を示す。それぞれのテトラマーに特異的な生きている単一CD8+ 細胞の%を示すゲートの中の数とともに代表的なFACSプロット(図36Aおよび36D)、ならびにモック処理した(30 U/ml IL-2)か、またはHLA-A2においてCLGペプチドもしくはGLCペプチドのいずれかを提示するAPC-MS(pMHC、αCD28、IL-2を負荷)とともに培養した初代HLA-A2+ ヒトCD8+ T細胞の種々の時点でのFACSデータの定量(図36Bおよび36E)。モック処理した細胞のデータは、0日目および7日目に関してのみ利用可能。図36Fは、モック処理したか、またはHLA-A2においてCLGもしくはGLCペプチドのいずれかを提示するAPC-MSとともに培養したかのいずれかであるCLG(図36C)もしくはGLC(図36F)に特異的な初代ヒトCD8+ T細胞の拡大を示す。モック処理した細胞に関するデータは、0日目および7日目に関してのみ利用可能。図36G、36Hおよび36Iは、適用していない(ペプチド-;図36G)か、CLGペプチドを適用した(+CLGペプチド;図36H)か、もしくはGLCペプチドを適用した(+GLCペプチド;図36I)かのいずれかであるT2細胞との共培養後に、モック処理したか、またはHLA-A2においてCLGもしくはGLCペプチドのいずれかを提示するAPC-MSとともに培養した生きている単一CD8+ T細胞の中でのTNFα+IFNγ+ 細胞の出現率を示す。モック処理した細胞に関するデータは、7日目に関してのみ利用可能。図36Jは、HLA-A2においてCLGもしくはGLCペプチドのいずれかを提示するAPC-MSで14日間拡大した初代ヒトCD8+ T細胞による、モック適用した(ペプチドなし)か、またはCLGペプチド(+CLG)もしくはGLCペプチド(+GLC)のいずれかを適用したT2標的細胞のインビトロでの殺滅の定量を示す。図36K、36L、36Mおよび36Nは、PBMCに由来する初代ヒトT細胞の抗原特異的拡大を示す。図36Kは、30 U/ml IL-2(モック)中で、またはHLA-A2においてGLCペプチドを提示するAPC-MSとともに7日間培養したPBMC内で、生きている単一CD8+ T細胞の中のGLC特異的細胞の出現率を示す。図36Lは、30 U/ml IL-2(モック)中で、またはHLA-A2においてGLCペプチドを提示するAPC-MSとともに7日間培養したPBMC内でのGLC特異的CD8+ T細胞の数を示す。棒の上の数字は、倍数拡大(平均±s.d.)を示す。図36Mおよび36Nは、適用しなかった(ペプチドなし)、CLGペプチドを適用したか(+CLG)、もしくはGLCペプチドを適用したか(+GLC)かのいずれかであるT2との共培養後に、30 U/ml IL-2(モック)中で、またはHLA-A2においてGLCペプチドを提示するAPC-MSとともに7日間培養したPBMCに由来する生きている単一CD8+ T細胞の中でのTNFα+IFNγ+ 細胞の出現率(図36M)、ならびにIFNγ分泌(図36N)を示す。全てのデータは、3回の実験反復の平均±s.d.を表し、2つの異なるドナーサンプルでの2回の実験の代表である。
【0095】
図37図37は、インビトロでのAPC-MS足場の分解を示す。αCD3/αCD28(1% ビオチン化脂質)を提示し、IL-2を放出するAPC-MS(167μg)を、初代マウスT細胞とともに培養した(25×10 T細胞/167μg APC-MS)。種々の時点において、培養物を、700 rcfにおいて5分遠心分離し、ペレット中のSi含有量を、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES; Galbraith Laboratories)を介して定量した。Siは、培養開始後1週間まで培養物ペレットにおいて検出不能である。
【0096】
図38図38は、APC-MSからの多様な可溶性免疫指向性ペイロードの放出制御を示す。4種のAPC-MSを生成した(各々、脂質被覆の前に500μg APC-MSに負荷された、IL-2、IL-21、TGFβまたはIL-15SAのうちのいずれか2μgを含む)。サンプルを徹底して洗浄して、負荷されていないタンパク質を除去し、その後、37℃において28日間まで維持した。経時的なペイロード放出を、ELISAを介して評価した。
【0097】
図39図39Aおよび39Bは、10% カルボキシフルオレセインヘッド基タグ化脂質を含むMSR-SLBを使用する光退色後の蛍光回復(FRAP)実験を示す。図39Aは、3回の独立したFRAP事象の代表的な画像である。画像は、光退色前(左)、光退色直後(中央)、および蛍光回復後(右)の蛍光タグ化MSR-SLBを示す。光退色領域は、赤い矢印によって示される。図39Bは、蛍光回復の定量を経時的に示す。異なるMSR-SLBに対する8回の独立した光退色の蛍光回復を、黒の破線で示し、平均傾向を、実線で示す。
【0098】
図40AB図40A、40B、40C、および40Dは、DYNABEADと比較して、APC-MSを使用して行ったT細胞拡大実験の結果を示す。ここでDYNABEADの量を、APC-MSと同じ量の抗CD3および抗CD28抗体を含むように正規化した。図40A。全タンパク質定量のためのビシコニン酸アッセイ(BCA)分析を行って、市販のマウスまたはヒトCD3/CD28 T細胞アクチベーターDYNABEADSの表面に結合したタンパク質の量を決定した。DYNABEADストック溶液を徹底的に洗浄し、DYNABEAD抗体負荷を、BCAアッセイを介して評価した。マウスおよびヒトT細胞に標的化されたDYNABEADは、類似の抗体負荷(約20μg/ml)を有することが見出された。細胞あたりの基準では、5:1のDYNABEAD:細胞比(条件D-B)は、16.7μgにおいて投入された0.1% T細胞キューを提示するAPC-MS(条件M-D)と同じ用量の抗CD28/抗CD3抗体に相当した。図40B。初代マウスT細胞の用量依存性拡大を、13日間の培養期間にわたってAPC-MSで観察したが、その試験した用量範囲内でDYNABEADでは観察しなかった。APC-MSは、同じ量の抗CD3および抗CD28抗体を提示するDYNABEADSと比較して、増強されたT細胞拡大を有意に促進した(条件M-D 対 D-Bを参照のこと)。図40C。より大きな拡大にも拘わらず、APC-MS条件M-Dで拡大した細胞は、同じ量の抗CD3および抗CD28抗体を提示するDYNABEAD(条件D-B)で拡大した細胞と比較して、消耗マーカー(exhaustion markets)PD-1およびLAG-3の増強した共発現を示さなかった。図40D。低用量から中程度の用量のDYNABEADで拡大したT細胞は、主にCD4に傾いた非対称性を示した(条件D-A、D-B)。DYNABEADを極めて高用量で添加した場合、中程度のCD8に傾いた非対称性が観察された(条件D-C)。対照的に、APC-MSは、非対称性の程度はAPC-MSの製剤に依存して、重くCD8に傾いた非対称性を示す傾向にあった。図40B、40Cおよび40Dにおけるデータは、4匹の異なるマウスに由来するサンプルの平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である。***p<0.001、(b)二元配置ANOVA、続いて、Tukey HSD事後検定を使用して分析。
図40CD図40A、40B、40C、および40Dは、DYNABEADと比較して、APC-MSを使用して行ったT細胞拡大実験の結果を示す。ここでDYNABEADの量を、APC-MSと同じ量の抗CD3および抗CD28抗体を含むように正規化した。図40A。全タンパク質定量のためのビシコニン酸アッセイ(BCA)分析を行って、市販のマウスまたはヒトCD3/CD28 T細胞アクチベーターDYNABEADSの表面に結合したタンパク質の量を決定した。DYNABEADストック溶液を徹底的に洗浄し、DYNABEAD抗体負荷を、BCAアッセイを介して評価した。マウスおよびヒトT細胞に標的化されたDYNABEADは、類似の抗体負荷(約20μg/ml)を有することが見出された。細胞あたりの基準では、5:1のDYNABEAD:細胞比(条件D-B)は、16.7μgにおいて投入された0.1% T細胞キューを提示するAPC-MS(条件M-D)と同じ用量の抗CD28/抗CD3抗体に相当した。図40B。初代マウスT細胞の用量依存性拡大を、13日間の培養期間にわたってAPC-MSで観察したが、その試験した用量範囲内でDYNABEADでは観察しなかった。APC-MSは、同じ量の抗CD3および抗CD28抗体を提示するDYNABEADSと比較して、増強されたT細胞拡大を有意に促進した(条件M-D 対 D-Bを参照のこと)。図40C。より大きな拡大にも拘わらず、APC-MS条件M-Dで拡大した細胞は、同じ量の抗CD3および抗CD28抗体を提示するDYNABEAD(条件D-B)で拡大した細胞と比較して、消耗マーカー(exhaustion markets)PD-1およびLAG-3の増強した共発現を示さなかった。図40D。低用量から中程度の用量のDYNABEADで拡大したT細胞は、主にCD4に傾いた非対称性を示した(条件D-A、D-B)。DYNABEADを極めて高用量で添加した場合、中程度のCD8に傾いた非対称性が観察された(条件D-C)。対照的に、APC-MSは、非対称性の程度はAPC-MSの製剤に依存して、重くCD8に傾いた非対称性を示す傾向にあった。図40B、40Cおよび40Dにおけるデータは、4匹の異なるマウスに由来するサンプルの平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である。***p<0.001、(b)二元配置ANOVA、続いて、Tukey HSD事後検定を使用して分析。
【0099】
図41図41Aおよび41Bは、DYNABEADと比較してIL-2用量の初代マウスT細胞拡大に対する効果およびAPC-MSからの徐放性を評価するために行った実験の結果を示す。図41Aは、IL-2を負荷したAPC-MS(M-D)、培地に添加したAPC-MSおよびIL-2(M-D bIL2);DYNABEAD(D-B)または培地に添加したDYNABEADおよびIL-2(D-B bIL-2)のいずれかで処理した初代マウスT細胞の拡大を示す。D-B:DYNABEAD 5:1; D-B-bIL-2:DYNABEAD 5:1+IL-2ボーラス; M-D:0.1% T細胞キュー/1:10X 材料/負荷IL-2; M-S/bIL-2: 0.1% T細胞キュー/1L10X 材料/IL-2ボーラス。図41Bは、IL-2を負荷したAPC-MS(M-D);培地に添加したAPC-MSおよびIL-2(M-D bIL2);DYNABEAD(D-B);または培地に添加したDYNABEADおよびIL-2(D-B bIL-2)のいずれかで拡大した初代マウスT細胞における消耗マーカーPD-1およびLAG-3の共発現を示す。データは、4匹の異なるマウスに由来するサンプルの平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である。***p<0.001、二元配置ANOVA、続いて、Tukey HSD事後検定によって分析。
【0100】
図42図42Aおよび42Bは、クリックケミストリー結合体化を介するDBCO提示MSR-SLBへのアジド標識IgGの付着を示す。図42A。種々の量のアジド改変IgG(示されるとおり)を、種々の量のDBCO改変脂質(示されるとおり)を含むMSR-SLBとともにインキュベートした。棒の上の値は、MSR-SLBに付着されたアジド改変IgGのμgを表す。図42Bは、種々の量のDBCO改変脂質を含むMSR-SLBに投入したアジド改変IgGのより広い用量滴定を示す。nIgGは、アジド改変しなかったIgGを表す。棒の上の値は、MSR-SLBに付着されたアジド改変IgGのμgを表す。
【発明を実施するための形態】
【0101】
発明の詳細な説明
本発明は、操作中のT細胞の問題に対する解決策を提供する。具体的には、本発明は、抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)を提供し、この足場は、このような細胞の操作において有用である。その足場は、メソポーラスシリカロッド(MSR)を含み、MSRは、連続流体支持脂質二重層(SLB)を組み込むかまたはSLBで被覆され、それによって、MSR-SLB足場を形成する。MSR-SLB足場は、複数のT細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子を、複数のT細胞ホメオスタシス因子とともにさらに含み、これらは一緒になって、抗原提示細胞(APC)を模倣し、その足場が種々のエフェクター機能を標的細胞(例えば、T細胞)に対して誘起することを可能にする構造を構成する。いくつかの実施形態において、その足場は、標的細胞にある細胞表面分子とその足場によって提示される種々の結合パートナーとの間の直接的または間接的な相互作用を介して、これらの効果を媒介する。足場が使用される適用に依存して、その足場は、その足場自体の物理的または化学的特性を通じて、標的化された細胞の生存および成長を調節する。適用に依存して、足場組成物は、ある種の活性化シグナルおよび共刺激シグナル、ならびにホメオスタシスシグナル伝達分子を含むように改変され得、これらは一緒に作用して、標的細胞の種々のエフェクター機能、例えば、活性化、分裂を媒介し、分化、成長、拡大、再プログラミング、アネルギー、静止、老化、アポトーシスまたは死滅を促進する。これらの適用において、足場は、標的化した細胞の細胞代謝活性および成長を驚くほど改善することを見出した。さらに、本発明の足場によって付与される成長および代謝活性における改善は、既存のプラットフォーム(例えば、磁性ビーズ)より予測外に優れていた。
【0102】
特定の細胞(例えば、T細胞)の操作を可能にするために、足場組成物の透過性は、例えば、より大きなまたはより小さな孔サイズ、密度、ポリマー架橋、剛性、頑丈さ、延性、または弾性に関して材料を選択または操作することによって調節され得る。その足場組成物は、物理的チャネルまたは経路を含み得、これを通じて標的化された細胞が、その足場と相互作用する、および/またはその足場の特定の区画もしくは領域へと動く。その区画化を促進するために、その足場組成物は、区画または層(各々異なる透過性を有する)へと必要に応じて組織化され得、その結果細胞は、細胞のある種の部分集団のみへのアクセスを可能にするようにソートまたはフィルタにかけられる。足場における標的細胞集団の隔離はまた、その足場組成物の分解、脱水もしくは再水和、酸素化、化学的もしくはpH変化、または自己アセンブリの継続によって調節され得る。それらの捕捉の後、その標的化された細胞は、刺激分子、サイトカイン、および足場に存在する他の補因子の助けを借りて、その足場内で成長または拡大することを可能にされ得る。他の例では、別の方法でその足場に浸潤した標的化されなかった細胞が、負の選択薬剤を使用して拒絶または除去され得る。
【0103】
本発明の足場内に含まれるかまたは隔離される細胞は、主に免疫細胞である。ある種の実施形態において、本発明は、T細胞を隔離および/または操作するための足場に関する。他の実施形態において、本発明は、他のリンパ球、例えば、B細胞に透過可能である足場に関する。なお他の実施形態において、本発明は、足場の組み合わせ、例えば、T細胞足場およびB細胞足場の組み合わせに関する。免疫細胞、例えば、T細胞は、疾患の診断または治療において有用である別個の部分集団を同定するために必要に応じて採取および分析される。その採取された細胞はまた、治療において使用されるべきである組成物または製剤を開発するために、再プログラムまたは拡大され得る。
【0104】
本発明は、以下の小節においてより詳細にさらに詳述される。
【0105】
I.抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)
一実施形態において、本発明は、抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)を提供する。その足場は、高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層;そのMSR基部層上に層化された連続流体支持脂質二重層(SLB);その足場上に吸着された、複数のT細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子;ならびにその足場上に吸着された、複数のT細胞ホメオスタシス因子を含む。
【0106】
A.メソポーラスシリカ
一実施形態において、本発明の足場の構成要素は、メソポーラスシリカを含む。メソポーラスシリカは、立方最密充填され、円筒状の均一な孔を有する多孔性の本体である。この材料は、テンプレートとして界面活性剤のロッド様ミセル(これは、酸または塩基性触媒の存在下で水またはアルコール中にシリカ供給源(例えば、アルコキシシラン、ケイ酸ナトリウム溶液、カネマイト、シリカ微粒子)を溶解および加水分解することによって、水の中で形成される)を使用することによって合成される。米国公開番号2015-0072009およびHoffmannら, Angewandte Chemie International Edition, 45, 3216-3251, 2006を参照のこと。多くの種類の界面活性剤(例えば、カチオン性、アニオン性、および非イオン性の界面活性剤)が、界面活性剤として試験され、概して、カチオン性界面活性剤のアルキルトリメチルアンモニウム塩が、最高の比表面積および孔容積を有するメソポーラスシリカをもたらすことが公知になった。米国公開番号2013/0052117およびKatiyarら(Journal of Chromatography 1122(1-2): 13-20)を参照のこと。用語「メソスケール(mesoscale)」、「メソポア(mesopore)」、「メソポーラス(mesoporous)」などは、本明細書で使用される場合、5nm~100nmの範囲の、特に、2nm~50nmの範囲の外形サイズ(feature size)を有する構造に言及し得る。よって、いくつかの実施形態において、メソポーラス材料は孔を含み、その孔は、規則正しく分布していてもよいし、無作為に分布していてもよく、5nm~100nmの範囲の直径を有する。
【0107】
本発明の足場において使用されるメソポーラスシリカは、種々の形態(例えば、マイクロスフェア、不規則な粒子、方形のロッド、円筒状のナノロッドなど)において提供され得るが、構造化されたロッド形態(MSR)が、特に好ましい。粒子は、種々の所定の形状(例えば、回転楕円体形状、楕円体形状、ロッド様形状、または曲線状の円筒形状が挙げられる)を有し得る。メソポーラスシリカをアセンブリして、マイクロロッドを生成するための方法は、当該分野で公知である。Wangら, Journal of Nanoparticle Research, 15:1501, 2013を参照のこと。一実施形態において、メソポーラスシリカナノ粒子は、オルトケイ酸テトラエチルとミセル状ロッドから作製されたテンプレートとを反応させることによって合成される。その結果は、規則的な孔の配置で満たされたナノサイズのスフェアまたはロッドの集まりである。次いで、そのテンプレートは、適切なpHに調節された溶媒で洗浄することによって除去され得る。この例では、界面活性剤テンプレートの除去後に、均質な、規則正しい、かつ連続したメソ多孔性(mesoporosity)によって特徴づけられる親水性シリカナノ粒子が、例えば、約600m/g~約1200m/g、特に約800m/g~約1000m/gおよび特に約850m/g~約950m/gの比表面積を伴って調製される。別の実施形態において、そのメソポーラス粒子は、単純なゾル-ゲル法または噴霧乾燥法を使用して合成され得る。オルトケイ酸テトラエチルはまた、さらなるポリマーモノマー(テンプレートとして)とともに使用される。さらに別の実施形態において、1種またはこれより多くのテトラアルコキシ-シランおよび1種またはこれより多くの(3-シアノプロピル)トリアルコキシ-シランは、共縮合(co-condense)して、メソポーラスシリケート粒子をロッドとして提供し得る。米国公開番号2013-0145488、同第2012-0264599および同第2012-0256336(これらは、参考として援用される)を参照のこと。
【0108】
メソポーラスシリカロッドは、直径が2~50nmの間の孔、例えば、2~5nm、10~20nm、10~30nm、10~40nm、20~30nm、30~50nm、30~40nm、40~50nmの間の孔を含み得る。特定の実施形態において、マイクロロッドは、直径がおよそ5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、10nm、11nm、12nmの、またはこれより大きい孔を含む。その孔サイズは、適用のタイプに依存して変更され得る。
【0109】
別の実施形態において、マイクロロッドの長さは、マイクロメートルの範囲にあり、約5μm~約500μmの範囲に及ぶ。一例では、マイクロロッドは、5~50μm、例えば、10~20μm、10~30μm、10~40μm、20~30μm、30~50μm、30~40μm、40~50μmの長さを構成する。他の実施形態において、ロッドは、50μm~250μmの長さ、例えば、約60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、120μm、150μm、180μm、200μm、225μm、または225μm超を構成する。細胞の動員のために、より高いアスペクト比を有するMSR組成物を使用することは好ましいことであり得る(例えば、ロッドは、50μm~200μmの長さ、特に、80μm~120μmの長さ、特に、約100μmもしくはこれより長い長さを構成する)。
【0110】
さらに別の実施形態において、MSRは、標的細胞、例えば、T細胞への付着および/または結合のために、高表面積を提供する。高表面積メソポーラスシリケートを得るための方法は、当該分野で公知である。例えば、米国特許第8,883,308号および米国公開番号2011-0253643(これらの内容全体が、本明細書に参考として援用される)を参照のこと。一実施形態において、高表面積は、ナノ粒子の繊維状の形態に起因し、このことは、高濃度の、表面上に高度に分散しかつ容易にアクセス可能な部分を得ることを可能にする。ある種の実施形態において、高表面積MSRは、少なくとも約100m/g、少なくとも150m/g、または少なくとも300m/gの表面積を有する。他の実施形態において、高表面積MSRは、約100m/g~約1000m/g(その中の全ての値または部分範囲を含み、例えば、50m/g、100m/g、200m/g、300m/g、400m/g、600m/g、800m/g、100~500m/g、100~300m/g、500~800m/gまたは500~1000m/g)の表面積を有する。
【0111】
B.脂質
本発明の足場は、MSR基部層上に連続流体支持脂質二重層(SLB)を含む。用語「脂質(lipid)」とは一般に、水に不溶性であるという共通する特性を有する、生体系と関連する物質の不均質な群を意味し、低い極性の有機溶媒(例えば、クロロホルムおよびエーテル)によって細胞から抽出され得る。一実施形態において、「脂質」とは、長い脂肪酸の鎖(好ましくは、10~30個の炭素単位を含み、特に、14~23個の炭素単位を含み、特に、16~18個の炭素単位を含む)を含む、任意の物質に言及する。
【0112】
一実施形態において、脂質は、単層として提供される。別の実施形態において、脂質は、二重層として提供される。脂質二重層は、2層の脂質分子から作製される薄い極性の膜である。好ましくは、その脂質二重層は、流体であり、ここで個々の脂質分子は、単層内で迅速に拡散し得る。その膜脂質分子は、好ましくは両親媒性である。
【0113】
一実施形態において、脂質層は、連続する二重層であり、例えば、細胞形質膜のような天然の生物学的膜において見出されるものに似ている。別の実施形態において、脂質は、支持二重層(SLB)の形態で提供される。SLBは、固体支持体、例えば、メソポーラスシリカロッド(MSR)上に位置する平面構造である。このような配置では、その支持二重層の上側の面が露出される一方で、その支持二重層の内側の面は、支持体と接触した状態にある。MSR-SLB足場は、安定であり、高い流速または振動に供される場合にすら、十分に無傷なままであり、ホール、例えば、メソポーラスシリカ基部層の孔と整列されるホールに耐え得る。この安定性が原因で、数週間、そしてさらには数カ月間継続する実験が、支持二重層を用いて可能である。SLBはまた、多くの化学的および/または生物学的部分での改変、誘導体化および化学的結合体化に反応しやすい。
【0114】
一実施形態において、SLBは、任意の公知の方法(共有結合的および非共有結合的な相互作用を含む)を使用して、MSR基部層上に固定化され得る。非共有結合的な相互作用のタイプとしては、例えば、静電的相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、π効果(π-effect)、疎水性相互作用などが挙げられる。一実施形態において、脂質は、MSR基部層上に吸着される。別の実施形態において、SLBは、共有結合的な相互作用を介してMSR基部層に付着されるかまたはテザーで繋がれる。シリケートに脂質を付着させるための方法は、当該分野で公知である(例えば、表面吸収、物理的固定化、例えば、相変化を使用して、足場材料の中の物質を捕捉する)。一実施形態において、脂質二重層は、MSR基部層上に層化される。例えば、脂質フィルム(例えば、クロロホルム中に77.5:20:2.5のモル比においてDPPC/コレステロール/DSPE-PEGの溶液を含む)は、メソポーラスシリカ上にスポットされ得、その溶媒は、ロータリーエバポレーターを使用してエバポレートされる。Mengら, ACS Nano, 9(4), 3540-3557, 2015を参照のこと。一実施形態において、脂質二重層は、例えば、水和した脂質フィルムを、例えば、約100nmの孔サイズを有するフィルタを通して、標準的プロトコルを使用して押し出すことによって、調製され得る。次いで、そのフィルタに通された脂質二重層フィルムは、多孔性粒子コアと、例えば、ピペットで混合することによって融合され得る。
【0115】
あるいは、アルキル化剤またはアシル化剤を介する共有結合的カップリングは、安定な構造化されかつ長期の、MSR層上のSLBの保持を提供するために使用され得る。このような実施形態において、脂質二重層は、公知の技術を使用して、MSR層上に可逆的にまたは不可逆的に固定化され得る。例えば、MSR基部層は、親水性であり得、より親水性の表面を提供するために、例えば、水酸化アンモニウムおよび過酸化水素でさらに処置され得る。脂質二重層は、例えば、公知のカップリング技術を使用して、多孔性のMSR基部層上に融合されて、MSR-SLB足場を形成し得る。その足場は、その構造上に他の二次的薬剤の付着および/または固定化を可能にするために、さらに加工処理されてさらなる部分で誘導体化され得る。
【0116】
よって、一実施形態において、本発明は、MSR-SLB足場を提供し、ここでそのSLB構成要素は、リン脂質である。このような脂質の代表例としては、米国特許第9,066,867号および同第8,3676,28号に記載される両性リポソームが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、脂質二重層は、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、パルミトイル-オレオイルホスファチジルコリン(POPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)およびジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)またはこれらの組み合わせから選択される脂質を含み得る。いくつかの実施形態において、脂質二重層は、哺乳動物の細胞膜(例えば、ヒト細胞形質膜)の脂質組成を模倣する脂質組成を含む。多くの哺乳動物細胞膜の脂質組成は、特徴づけられており、当業者によって容易に確認され得る(例えば、Essaidら Biochim. Biophys. Acta 1858(11): 2725-36(2016)(その内容全体は、本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。脂質二重層の組成は、脂質二重層の電荷または流動性を改変するために変更され得る。いくつかの実施形態において、脂質二重層は、コレステロールを含む。いくつかの実施形態において、脂質二重層は、スフィンゴ脂質を含む。いくつかの実施形態において、脂質二重層は、リン脂質を含む。いくつかの実施形態において、脂質は、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスホイノシチド、6~20個の炭素を含む飽和もしくは不飽和のテールを有するホスホスフィンゴ脂質、またはこれらの組み合わせである。
【0117】
別の実施形態において、脂質は、DIYNE PC脂質である。このような脂質の代表例としては、1-パルミトイル-2-10,12 トリコサジイノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(16:0-23:2 DIYNE PC)および1,2-ビス(10,12-トリコサジイノイル)-SN-グリセロ-3-ホスホコリン(23:2 Diyne PC)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
一実施形態において、本発明のMSR-SLB足場は、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、少なくとも14日間、少なくとも15日間、少なくとも16日間、少なくとも17日間、少なくとも18日間、少なくとも19日間、少なくとも20日間、少なくとも21日間、少なくとも25日間、少なくとも30日間、少なくとも35日間、少なくとも40日間、少なくとも50日間、または50日間超にわたって、連続流体体系を保持する。
【0119】
MSR-SLB足場の体系は、任意の公知の技術(以下の実施例において例証される顕微鏡による可視化技術が挙げられる)で研究され得る。
【0120】
C.機能的分子
本発明の一実施形態において、MSR-SLB足場は、1種またはこれより多くの機能的分子を含み得る。用語「機能的分子(functional molecule)」とは、生物学的に所望の特性を有する任意の分子を含む。本発明の状況では、このような機能的分子の例としては、タンパク質、ペプチド、抗原、抗体、DNA、RNA、炭水化物、ハプテン、および他の低分子、例えば、薬物が挙げられる。一実施形態において、機能的分子は、T細胞活性化分子である。別の実施形態において、機能的分子は、T細胞共刺激分子である。さらになお、一実施形態において、機能的分子は、T細胞ホメオスタシス因子である。ある種の実施形態において、MSR-SLB足場は、複数の機能的分子、例えば、少なくとも1種のT細胞活性化分子、少なくとも1種のT細胞共刺激分子、および少なくとも1種のT細胞ホメオスタシス因子を含む。
【0121】
T細胞活性化分子
一実施形態において、本発明は、複数のT細胞活性化分子を含むMSR-SLB足場を提供する。これらの活性化分子は、T細胞の標的集団の直接的、間接的、または半直接的な活性化を媒介し得る。Benichouら, Immunotherapy, 3(6): 757-770, 2011を参照のこと。好ましくは、T細胞活性化分子は、T細胞の直接的活性化を媒介する。
【0122】
一実施形態において、本発明は、T細胞を、例えば、標的T細胞上の細胞表面レセプターへの結合を介して直接的に活性化する分子を含むMSR-SLB足場を提供する。特に、その直接的活性化は、分化抗原群-3(CD3)を介して媒介され得、これは、細胞傷害性T細胞を活性化する助けとなるT細胞補助レセプターである。別の実施形態において、T細胞は、CD3の同時の関与なしに、例えば、CD3非依存性様式で、直接的に活性化され得る。
【0123】
一実施形態において、標的T細胞は、CD3依存性様式で活性化される。T細胞活性化は、MHC分子の状況においてそのコグネイトペプチドを認識するためにT細胞レセプター(TCR)を要求すると一般的に考えられている。さらに、CD3とTCR-ペプチド-MHC複合体との会合は、活性化シグナルを細胞内シグナル伝達分子に伝達して、T細胞においてシグナル伝達カスケードを開始する。Ryanら, Nature Reviews Immunology 10, 7, 2010を参照のこと。T細胞上で見出されるCD3レセプター複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、および2本のCD3ε鎖を含み、これらは、TCRおよびζ鎖(ゼータ鎖;CD247)と会合して、T細胞において活性化シグナルを生成する。そのTCR、ζ鎖、およびCD3分子は、T細胞レセプター(TCR)複合体を一緒になって構成する。TCR複合体のメンバーのうちの1またはこれより多くへの活性化分子の、例えば、抗体の結合は、T細胞を活性化し得る。
【0124】
一実施形態において、T細胞活性化分子は、抗体またはその抗原結合フラグメントである。T細胞活性化分子がCD3依存性様式で作用する場合、そのT細胞活性化分子は、好ましくは、抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントである。別の実施形態において、T細胞活性化分子としては、例えば、抗CD2抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗CD47抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗マクロファージスカベンジャーレセプター(MSR1)抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗T細胞レセプター(TCR)抗体もしくはその抗原結合フラグメントなどが挙げられ得る。別の実施形態において、T細胞活性化分子は、MHCペプチドを必要に応じて負荷した主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子またはそのマルチマーである。なおさらに、T細胞活性化分子は、MHCおよび免疫グロブリン(Ig)を含む結合体またはそのマルチマーである。
【0125】
用語「抗体(antibody)」とは、本明細書で使用される場合、広くは、4個のポリペプチド鎖、2個の重(H)鎖および2個の軽(L)鎖から構成される任意の免疫グロブリン(Ig)分子、またはこれらの任意の機能的フラグメント、変異体、改変体、もしくは誘導体(これらは、Ig分子の本質的なエピトープ結合特徴を保持する)に言及する。このような変異体、改変体、または誘導体の抗体形式は、当該分野で公知である。その非限定的な実施形態は、本明細書で考察される。一実施形態において、本開示の組成物および方法において使用されるT細胞活性化抗体は、ムロモナブ(OKT3)、オテリキシズマブ(TRX4)、テプリズマブ(hOKT3γ1(Ala-Ala))、ビシリズマブ、CD3抗原/T細胞抗原レセプター(TCR)複合体内のCD3の17~19kD ε鎖を認識する抗体(HIT3a)、およびCD3e内のTCR複合体の20kD サブユニットを認識する抗体(UCHT1)、またはこれらの抗原結合フラグメントからなる群より選択される抗CD3抗体である。他の抗CD3抗体(その抗原結合フラグメントを含む)は、米国特許公開番号2014-0088295(これは、参考として援用される)に記載される。
【0126】
本発明の実施形態は、「全長(full-length)」抗体を含む。全長抗体では、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてHCVRまたはVHと略される)および重鎖定常領域から構成される。その重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてLCVRまたはVLと略される)および軽鎖定常領域から構成される。その軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから構成される。VHおよびVL領域は、より保存された領域(フレームワーク領域(FR)といわれる)の間に配置された超可変性の領域(相補性決定領域(CDR)といわれる)へとさらに細かく分けられ得る。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスのものであり得る。
【0127】
用語抗体の「抗原結合部分(antigen-binding portion)」(または単に「抗体部分(antibody portion)」)とは、本明細書で使用される場合、抗原(例えば、IL-13)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1またはこれより多くのフラグメントに言及する。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメントによって行われ得ることが、示されてきた。このような抗体の実施形態はまた、二重特異的(bispecific)、二重特異的(dual specific)、または多重特異的形式であり得;2種またはこれより多くの異なる抗原に特異的に結合する。用語抗体の「抗原結合部分」内に包含される結合フラグメントの例としては、以下が挙げられる:(i)Fabフラグメント(VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメント);(ii)F(ab’)フラグメント(ヒンジ領域におけるジスルフィド結合によって連結された2個のFabフラグメントを含む二価フラグメント);(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の1本のアームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(v)単一の可変ドメインを含むdAbフラグメント(Wardら,(1989) Nature 341:544-546, Winterら, PCT公開WO 90/05144 A1(本明細書に参考として援用される));ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)。さらに、Fvフラグメントの2個のドメイン、VLおよびVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え法を使用して、合成リンカー(VLおよびVH領域が対になって、一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Birdら (1988) Science 242:423-426;およびHustonら (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照のこと)として作製されることを可能にする)によって、繋げられ得る。このような一本鎖抗体はまた、用語抗体の「抗原結合部分」の範囲内に包含されることが意図される。一本鎖抗体の他の形態(例えば、ダイアボディー)もまた、包含される。ダイアボディーは、VHおよびVLドメインが一本のポリペプチド鎖上で発現されるが、その同じ鎖上の2つのドメインの間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用し、それによって、そのドメインを別の鎖の相補的ドメインと対形成するように強いて、2つの抗原結合部位を作り出す二価の二重特異的抗体である(例えば、Holligerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448(1993);Poljakら, Structure 2:1121-1123(1994)を参照のこと)。このような抗体結合部分は、当該分野で公知である(Kontermann and Dubel編, Antibody Engineering(2001) Springer-Verlag. New York. 790 pp.(ISBN 3-540-41354-5)。
【0128】
「抗体フラグメント(antibody fragment)」は、無傷の抗体の部分のみを含み、ここでその部分は、好ましくは、無傷の抗体に存在する場合にその部分と通常は関連する機能のうちの少なくとも1つ、および代表的には大部分または全てを保持する。一実施形態において、抗体フラグメントは、無傷の抗体の抗原結合部位を含み、従って、抗原に結合する能力を保持する。別の実施形態において、抗体フラグメント(例えば、Fc領域を含むもの)は、無傷の抗体に存在する場合にFc領域と通常は関連する生物学的機能のうちの少なくとも1つ(例えば、FcRn結合、抗体半減期調節、ADCC機能および補体結合)を保持する。一実施形態において、抗体フラグメントは、無傷の抗体に実質的に類似のインビボ半減期を有する一価の抗体である。例えば、このような抗体フラグメントは、そのフラグメントにインビボ安定性を付与し得るFc配列に連結された抗原結合アームを含み得る。
【0129】
用語「抗体構築物(antibody construct)」とは、本明細書で使用される場合、リンカーポリペプチドまたは免疫グロブリン定常ドメインに連結された1種またはこれより多くの本開示の抗原結合部分を含むポリペプチドに言及する。リンカーポリペプチドは、ペプチド結合によって接続された2個またはこれより多くのアミノ酸残基を含み、1種またはこれより大河の抗原結合部分を連結するために使用される。このようなリンカーポリペプチドは、当該分野で周知である(例えば、Holligerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448(1993); Poljakら, Structure 2:1121-1123(1994)を参照のこと)。免疫グロブリン定常ドメインとは、重鎖または軽鎖の定常ドメインをいう。ヒトIgG重鎖および軽鎖の定常ドメインアミノ酸配列は、当該分野で公知であり、米国特許第7,915,388号(その内容全体が、本明細書に参考として援用される)の表2に開示される。
【0130】
さらになお、抗体またはその抗原結合部分は、その抗体または抗体部分と1種またはこれより多くの他のタンパク質またはペプチドとの共有結合的会合または非共有結合的会合によって形成される、より大きな免疫接着分子の一部であり得る。このような免疫接着分子の例としては、テトラマーscFv分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanovら, Human Antibodies and Hybridomas 6:93-101(1995))ならびに二価のビオチン化scFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチドおよびC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanovら, Mol. Immunol. 31:1047-1058(1994))が挙げられる。抗体部分(例えば、FabおよびF(ab’)フラグメント)は、従来の技術(例えば、抗体全体のそれぞれ、パパインまたはペプシンでの消化)を使用して、抗体全体から調製され得る。さらに、抗体、抗体部分および免疫接着分子は、本明細書で記載されるように、標準的組換えDNA技術を使用して得られ得る。
【0131】
「単離された抗体(isolated antibody)」とは、本明細書で使用される場合、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体をいうことが意図される(例えば、CD3に特異的に結合する単離された抗体は、CD3以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、CD3に特異的に結合する単離された抗体は、他の抗原(例えば、他の種に由来するCD3分子)に対する交差反応性を有し得る。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0132】
用語「ヒト抗体(human antibody)」とは、本明細書で使用される場合、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことが意図される。本開示のヒト抗体は、例えば、CDRにおいて、および特に、CDR3において、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発によって、またはインビボでの体細胞変異によって導入される変異)を含み得る。しかし、用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用される場合、別の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上にグラフト化された抗体を含むとは意図されない。
【0133】
用語「組換えヒト抗体(recombinant human antibody)」とは、本明細書で使用される場合、組換え手段によって調製されるか、発現されるか、作製されるか、または単離される全てのヒト抗体(例えば、宿主細胞へ移入される組換え発現ベクターを使用して発現される抗体(米国特許第7,915,388号(その内容は、本明細書に参考として援用される)にさらに記載される)、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離される抗体(Hoogenboomら, TIB Tech. 15:62-70(1994); Azzazyら, Clin. Biochem. 35:425-445(2002); Gavilondoら, BioTechniques 29:128-145(2002); Hoogenboomら, Immunology Today 21:371-378(2000))、ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylorら, Nucl. Acids Res. 20:6287-6295(1992); Kellermannら, Current Opinion in Biotechnology 13:593-597(2002); Littleら, Immunology Today 21:364-370(2002)を参照のこと)またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の、他のDNA配列へのスプライシングを伴う任意の他の手段によって調製されるか、発現されるか、作製されるか、または単離される抗体)を含むことが意図される。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。しかし、ある種の実施形態において、このような組換えヒト抗体は、インビトロ変異誘発(またはヒトIg配列に関してトランスジェニックな動物が使用される場合、インビボ体細胞変異誘発)に供され、従って、その組換え抗体のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VHおよびVL配列に由来しかつ関連する一方で、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在しなくてもよい配列である。一実施形態は、当該分野で周知の技術(例えば、Jermutusら, PCT公開番号WO 2005/007699 A2に開示されるもののようなヒトIgファージライブラリーを使用することが挙げられるが、これらに限定されない)を使用して生成され得るヒトCD3に結合し得る完全ヒト抗体を提供する。
【0134】
用語「キメラ抗体(chimeric antibody)」とは、1つの種に由来する重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列ならびに別に種に由来する定常領域配列を含む抗体(例えば、ヒト定常領域に連結したマウス重鎖可変領域および軽鎖可変領域を有する抗体)に言及する。キメラ抗体を生成するための方法は、当該分野で公知であり、実施例2.1において詳細に考察される。例えば、Morrison, Science 229:1202(1985); Oiら, BioTechniques 4:214(1986); Gilliesら,(1989) J. Immunol. Methods 125:191-202;米国特許第5,807,715号;同第4,816,567号;および同第4,816,397号(これらは、それらの全体において本明細書に参考として援用される)を参照のこと。さらに、「キメラ抗体」は、当該分野で公知の技術によって生成され得る。Morrisonら, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. 81:851-855; Neubergerら, 1984, Nature 312:604-608; Takedaら, 1985, Nature 314:452-454(これらは、それら全体において本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
【0135】
用語「特異的結合(specific binding)」または「特異的に結合する(specifically binding)」とは、本明細書で使用される場合、抗体、タンパク質、またはペプチドと、第2の化学種との相互作用に言及して、その相互作用がその化学種上の特定の構造(例えば、抗原性決定基またはエピトープ)の存在に依存する;例えば、抗体が、概してタンパク質に対するのではなく特定のタンパク質構造を認識および結合することを意味する。抗体がエピトープ「A」に対して特異的である場合、標識された「A」およびその抗体を含む反応においてエピトープAを含む分子(または遊離の非標識A)の存在は、その抗体に結合した標識されたAの量を低減し得る。
【0136】
本発明の足場において使用される抗体は、「単一特異的(monospecific)」、「二重特異的(bi-specific)」または「多重特異的(multispecific)」であり得る。本明細書で使用される場合、本明細書中での表現「抗体」とは、単一特異的抗体(例えば、抗CD3抗体)、ならびに目的の抗原に結合するアーム(例えば、CD3結合アーム)および第2の標的抗原に結合する第2のアームを含む二重特異的抗体の両方を含むことが意図される。CD3二重特異的抗体の他のアームが結合するその標的抗原は、細胞、組織、器官、微生物もしくはウイルス(これらに対して標的化された免疫応答が望まれる)上にまたはその付近に発現される任意の抗原であり得る。ある種の実施形態において、CD3結合アームは、ヒトCD3に結合し、ヒトT細胞増殖を誘導する。CD3分子の異なる領域に結合する抗体、例えば、CD3抗原/T細胞抗原レセプター(TCR)複合体内のCD3の17~19kD ε鎖に結合するアーム(例えば、HIT3aに由来する)、およびCD3e内のTCR複合体の20kDaサブユニットに結合するアーム(例えば、UCHT1に由来する)はまた、この用語の意味の範囲内に含まれる。好ましくは、抗CD3抗体は、OKT3またはそのCD3結合フラグメントである。
【0137】
一実施形態において、本発明の足場において使用される抗体分子は、二重特異的抗体である。二重特異的抗体は、本発明の状況において、目的の細胞(例えば、がん細胞または病原体)を本発明の標的エフェクター細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)と直ぐ近接した状態にするために使用され得、その結果、標的エフェクター細胞のエフェクター機能が目的の細胞に際して特異的に媒介される。従って、一実施形態において、本発明は、二重特異的抗体を含む足場を提供し、ここでその抗体の一方のアームは、CD3に結合し、他方のアームは、腫瘍関連抗原である標的抗原に結合する。特定の腫瘍関連抗原の非限定的な例としては、以下が挙げられる:例えば、AFP、ALK、BAGEタンパク質、β-カテニン、brc-abl、BRCA1、BORIS、CA9、炭酸脱水素酵素IX、カスパーゼ-8、CCR5、CD19、CD20、CD30、CD40、CDK4、CEA、CTLA4、サイクリン-B1、CYP1 B1、EGFR、EGFRvlll、ErbB2/Her2、ErbB3、ErbB4、ETV6-AML、EpCAM、EphA2、Fra-1、FOLR1、GAGEタンパク質(例えば、GAGE-1、-2)、GD2、GD3、GloboH、グリピカン-3、GM3、gp100、Her2、HLA/B-raf、HLA/k-ras、H LA/MAG E-A3、hTERT、LMP2、MAGEタンパク質(例えば、MAGE-1、-2、-3、-4、-6、および-12)、MART-1、メソテリン、ML-IAP、Mud、Muc2、Muc3、Muc4、Muc5、Muc16(CA-125)、MUM1、NA17、NY-BR1、NY-BR62、NY-BR85、NY-ES01、OX40、p15、p53、PAP、PAX3、PAX5、PCTA-1、PLAC1、PRLR、PRAME、PSMA(FOLHI)、RAGEタンパク質、Ras、RGS5、Rho、SART-1、SART-3、Steap-1、Steap-2、サバイビン、TAG-72、TGF-β、TMPRSS2、Tn、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、およびウロプラキン-3。
【0138】
1つの具体的実施形態において、がん抗原は、上皮増殖因子レセプター(EGFR)ファミリーのメンバー、例えば、EGFR(ErbB-1)、HER2/c-neu(ErbB-2)、Her 3(ErbB-3)および「Her 4(ErbB-4)、またはこれらの変異体からなる群より選択されるレセプターである。
【0139】
別の実施形態において、本発明は、二重特異的T細胞関与物質(bispecific T-cell engager)(BiTE)分子を含む足場に関する。このBiTE分子は具体的には、前述の腫瘍抗原のうちの少なくとも1種および少なくとも1種のT細胞細胞表面分子(例えば、CD3)を認識する抗体である。このような二重特異的T細胞関与物質分子の代表的な例としては、ソリトマブ(solitomab)(CD3×EpCAM)、ブリナツモマブ(CD3×CD19)、MAB MT-111(CD3×CEA)、およびBAY-2010112(CD3×PSMA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
二重特異的抗体はまた、本発明の状況において、エフェクター細胞(例えば、T細胞またはB細胞)を標的化して、病原体(例えば、細菌、ウイルス、真菌、原生生物、および他の微生物)に対する効果を、直接的または間接的いずれかで媒介するために使用され得る。一実施形態において、その病原体は、ウイルスである。別の実施形態において、その病原体は、細菌である。二重特異的抗体は、細菌感染(例えば、薬物耐性Pseudomonas aeruginosa)を処置するために使用されてきた。DiGiandomenicoら, Sci Transl Med., 6(262), 2014; Kingwellら, Nat Rev Drug Discov., 14(1):15, 2015を参照のこと。他の二重特異的抗体は、細胞傷害性Tリンパ球を再指向して、HIVを殺滅する(Bergら, Proc Natl Acad Sci., 88(11):4723-7, 1991)、HBV感染を防御する(Parkら, Mol Immunol., 37(18):1123-30, 2000)、および他の基本型の病原体を防御する(Taylorら, J Immunol., 159(8):4035-44, 1997)ように開発されてきた。
【0141】
よって、一実施形態において、本発明は、二重特異的抗体(ここでその抗体の一方のアームは、CD3に結合し、他方のアームは、感染性疾患と関連する抗原(例えば、細菌、原生動物、ウイルス、または真菌の抗原)である標的抗原に結合する)を含む足場を提供する。感染性疾患と関連する抗原の非限定的な例としては、例えば、ウイルス粒子の表面上で発現されるか、またはウイルスに感染している細胞上で優先的に発現される抗原が挙げられ、ここでそのウイルスは、HIV、肝炎ウイルス(A、BまたはC)、ヘルペスウイルス(例えば、HSV-1、HSV-2、CMV、HAV-6、VZV、エプスタイン・バーウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、RAウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLV、デングウイルス、パピローマウイルス、伝染性軟属腫ウイルス(molluscum virus)、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス、およびアルボウイルス脳炎ウイルス(arboviral encephalitis virus)からなる群より選択される。あるいは、標的抗原は、細菌の表面上で発現される、または細菌に感染している細胞上で優先的に発現される抗原であり得、ここでその細菌は、Chlamydia、Rickettsia、Mycobacteria、Staphylococci、Streptococci、Pneumonococci、Meningococci、Gonococci、Klebsiella、Proteus、Serratia、Pseudomonas、Legionella、Diphtheria、Salmonella、Bacilli、Clostridium、およびLeptospiraからなる群より選択される属に由来する。いくつかの実施形態において、その細菌は、コレラ、破傷風、ボツリヌス中毒、炭疽、疫病、またはライム病を引き起こす。ある種の実施形態において、標的抗原は、真菌の表面上に発現される、または真菌に感染している細胞上に優先的に発現される抗原であり、ここでその真菌は、Candida(例えば、C.albicans、C.krusei、C.glabrata、C.tropicalisなど)、Crytococcus neoformans、Aspergillus(例えば、A.fumigatus、A.nigerなど)、Mucorales(例えば、M.mucor、M.absidia、M.rhizopusなど)、Sporothrix schenkii、Blastomyces dermatitidis、Paracoccidioides brasiliensis、Coccidioides immitis、およびHistoplasma capsulatumからなる群より選択される。ある種の実施形態において、標的抗原は、寄生生物の表面上で発現される、または寄生生物に感染している細胞上で優先的に発現される抗原であり、ここでその寄生生物は、Entamoeba histolytica、Balantidium coli、Naegleriafowleri、Acanthamoeba sp.、Giardia lambia、Cryptosporidium sp.、Pneumocystis carinii、Plasmodium vivax、Babesia microti、Trypanosoma brucei、Trypanosoma cruzi、Leishmania donovani、Toxoplasma gondii、Nippostrongylus brasiliensis、Taenia crassiceps、およびBrugia malayiからなる群より選択される。特定の病原体と関連する抗原の非限定的な例としては、例えば、HIV gp120、HIV CD4、B型肝炎糖タンパク質L、B型肝炎糖タンパク質M、B型肝炎糖タンパク質S、C型肝炎E1、C型肝炎E2、肝細胞特異的タンパク質、単純ヘルペスウイルスgB、サイトメガロウイルスgB、およびHTLVエンベロープタンパク質が挙げられる。
【0142】
いくつかの実施形態において、本発明の足場は、アレルギー反応またはアレルギー応答の処置および/または防止のために使用され得る。例えば、いくつかの実施形態において、足場は、アレルギー応答またはアレルギー反応を抑制するT細胞(例えば、Treg)を生成するために使用され得る。例えば、いくつかの実施形態において、足場は、抗CD3抗体およびTGF-βを含む。いくつかの実施形態において、足場は、抗CD3抗体およびIL-10を含む。いくつかの実施形態において、足場は、抗CD3抗体およびラパマイシンを含む。いくつかの実施形態において、足場は、抗CD3抗体、TGF-β、IL-10およびラパマイシンを含む。いくつかの実施形態において、足場は、抗CD3抗体、TGF-β、およびIL-10を含む。いくつかの実施形態において、足場は、抗CD3抗体およびTGF-βおよびラパマイシンを含む。いくつかの実施形態において、足場は、抗CD3抗体およびIL-10およびラパマイシンを含む。
【0143】
いくつかの実施形態において、本発明の足場は、アレルゲン反応性T細胞(例えば、Treg)を選択的に拡大するために使用され得る。いくつかの実施形態において、足場は、アレルゲンに由来するペプチドを含む。いくつかの実施形態において、アレルゲンに由来するペプチドは、MHC分子(例えば、MHCクラスIまたはMHCクラスIIの分子)上に(例えば、複合体化して)提示される。いくつかの実施形態において、そのMHC分子は、モノマーである。いくつかの実施形態において、アレルゲンは、食物アレルゲン(例えば、バナナ、ミルク、マメ科植物、甲殻類、堅果、核果、卵、魚、大豆、または小麦のアレルゲン)である。一実施形態において、アレルゲンは、食物アレルゲン、植物アレルゲン、昆虫アレルゲン、動物アレルゲン、真菌アレルゲン、ウイルスアレルゲン、ラテックスアレルゲン、およびカビ胞子アレルゲンからなる群より選択される。一実施形態において、アレルゲンポリペプチドは、昆虫アレルゲンである。一実施形態において、その昆虫アレルゲンは、チリダニ(dust mite)アレルゲン(例えば、Dermatophagoides farinaまたはDermatophagoides pteronyssinusに由来するアレルゲン)である。一実施形態において、アレルゲンポリペプチドは、オボアルブミンポリペプチドである。一実施形態において、アレルゲンポリペプチドは、食品アレルゲンポリペプチドである。いくつかの実施形態において、足場は、アレルゲンに由来するペプチドおよびTh1非対称性サイトカイン(例えば、IL-12またはIFNγ)を含む。一実施形態において、アレルゲンポリペプチドは、食品アレルゲンポリペプチドである。いくつかの実施形態において、足場は、MHC分子上に提示されるアレルゲンに由来するペプチドおよびTh1非対称性サイトカイン(例えば、IL-12またはIFNγ)を含む。ある種の例示的実施形態によれば、本発明は、CD3およびCD28に特異的に結合する二重特異的抗原結合分子を含む。このような分子は、例えば、「抗CD3/抗CD28」,、または「抗CD3×CD28」または「CD3×CD28」二重特異的分子(または他の類似の用語法)として本明細書で言及され得る。
【0144】
用語「CD28」とは、本明細書で使用される場合、非ヒト種(例えば、「マウスCD28」、サル「CD28」など)に由来していると特定されなければ、ヒトCD28タンパク質に言及する。ヒトCD28タンパク質は、GENBANKアクセッション番号NP_001230006.1、NP_001230007.1、またはNP_006130.1に示されるアミノ酸配列を有する。マウスCD28タンパク質は、GENBANKアクセッション番号NP_031668.3に示されるアミノ酸配列を有する。前述のアクセッション番号によって包含される種々のポリペプチド配列は、その対応するmRNAおよび遺伝子配列を含み、それらの全体において本明細書に参考として援用される。本明細書で使用される場合、表現「抗原結合分子(antigen-binding molecule)」は、単独で、または1個もしくはこれより多くのさらなるCDRおよび/またはフレームワーク領域(FR)と組み合わせて、特定の抗原に特異的に結合する少なくとも1個の相補性決定領域(CDR)を含むかまたはこれらからなるタンパク質、ポリペプチドまたは分子複合体を意味する。ある種の実施形態において、抗原結合分子は、抗体または抗体のフラグメント(それら用語は本明細書のどこかで定義されるとおり)である。
【0145】
本明細書で使用される場合、表現「二重特異的抗原結合分子(bispecific antigen-binding molecule)」とは、少なくとも第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインを含む、タンパク質、ポリペプチドまたは分子複合体を意味する。その二重特異的抗原結合分子内の各抗原結合ドメインは、単独で、または1種もしくはこれより多くのさらなるCDRおよび/もしくはFRと組み合わせて、特定の抗原に特異的に結合する少なくとも1種のCDRを含む。本発明の状況において、その第1の抗原結合ドメインは、第1の抗原(例えば、CD3)に特異的に結合し、その第2の抗原結合ドメインは、第2の別個の抗原(例えば、CD28)に特異的に結合する。
【0146】
二重特異的抗体の第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインは、互いに直接的にまたは間接的に接続され得る。あるいは、第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインは、別個のマルチマー化ドメインに各々接続され得る。1つのマルチマー化ドメインと別のマルチマー化ドメインとの会合は、2つの抗原結合ドメインの間の会合を促進し、それによって、二重特異的抗原結合分子を形成する。本明細書で使用される場合、「マルチマー化ドメイン(multimerizing domain)」とは、同じまたは類似の構造または構成の第2のマルチマー化ドメインと会合する能力を有する、任意の高分子、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、またはアミノ酸である。例えば、マルチマー化ドメインは、免疫グロブリンCH3ドメインを含むポリペプチドであり得る。マルチマー化構成要素の非限定的な例は、免疫グロブリンのFc部分(CH2-CH3ドメインを含む)、例えば、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択されるIgGのFcドメイン、ならびに各アイソタイプグループ内の任意のアロタイプである。
【0147】
本発明の二重特異的抗原結合分子は、代表的には、2個のマルチマー化ドメイン、例えば、別個の抗体重鎖の各個々の一部である2個のFcドメインを含む。その第1および第2のマルチマー化ドメインは、同じIgGアイソタイプ(例えば、例えば、IgG1/IgG1、IgG2/IgG2、IgG4/IgG4)であり得る。あるいは、その第1および第2のマルチマー化ドメインは、異なるIgGアイソタイプ(例えば、IgG1/IgG2、IgG1/IgG4、IgG2/IgG4などのような)であり得る。
【0148】
ある種の実施形態において、マルチマー化ドメインは、Fcフラグメントまたは少なくとも1個のシステイン残基を含む長さが1~約200アミノ酸のアミノ酸配列である。他の実施形態において、マルチマー化ドメインは、システイン残基、または短いシステイン含有ペプチドである。他のマルチマー化ドメインとしては、ロイシンジッパー、ヘリックス-ループモチーフ、またはコイルドコイルモチーフを含むかまたはこれらからなる、ペプチドまたはポリペプチドを含む。
【0149】
任意の二重特異的抗体の形式または技術は、本発明の二重特異的抗原結合分子を作製するために使用され得る。例えば、第1の抗原結合特異性を有する抗体またはそのフラグメントは、二重特異的抗原結合分子を生成するために、(例えば、化学的カップリング、遺伝的融合、非共有結合的会合または別の方法によって)1種またはこれより多くの他の分子実態(例えば、第2の抗原特異性を有する別の抗体または抗体フラグメント)に機能的に連結され得る。本発明の状況において使用され得る具体的な例示的二重特異的形式としては、例えば、scFvベースのまたはダイアボディー(diabody)二重特異的形式、IgG-scFv融合物、二重可変性ドメイン(DVD)-Ig、クアドローマ(Quadroma)、ノブ-イントゥー-ホール(knobs-into-holes)、共通軽鎖(例えば、ノブ-イントゥー-ホールとの共通軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)body、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二重作用Fab(DAF)-IgG、およびMab2二重特異的形式(前述の形式の総説に関しては例えば、Kleinら, mAbs 4:6, 1-11, 2012およびその中で引用される参考文献を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
多重特異的抗体は、1種の標的ポリペプチドの異なるエピトープに対して特異的であってもよいし、1種より多くの標的ポリペプチドに対して特異的な抗原結合ドメインを含んでいてもよい。例えば、Tuttら, 1991, J. Immunol. 147:60-69; Kuferら, 2004, Trends Biotechnol. 22:238-244を参照のこと。本発明の抗CD3抗体は、別の機能的分子(例えば、別のペプチドまたはタンパク質)に連結され得るかまたは別の機能的分子と共発現され得る。例えば、抗体またはそのフラグメントは第2の結合特異性を有する二重特異的または多重特異的抗体を生成するために、1種またはこれより多くの他の分子実態(例えば、別の抗体または抗体フラグメント)に(例えば、化学的カップリング、遺伝的融合、非共有結合的会合または別の方法によって)機能的に連結され得る。抗体の多重特異的抗原結合フラグメントは、代表的には、少なくとも2種の異なる可変ドメインを含み、ここで各可変ドメインは、別個の抗原にまたは同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合し得る。任意の多重特異的抗体形式は、本明細書で開示される例示的な二重特異的抗体形式を含め、本発明の抗体の抗原結合フラグメントの状況において、当該分野で利用可能な慣用的技術を使用して使用するために適合され得る。本発明の多重特異的抗原結合分子は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体に由来する。多重特異的抗体を作製するための方法は、当該分野で周知である。例えば、本発明の二重特異的抗原結合分子の重鎖および/または軽鎖のうちの1種またはこれより多くは、VELOCIMMUNETM技術を使用して調製され得る。VELOCIMMUNETM技術(または任意の他のヒト抗体生成技術)を使用して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する、特定の抗原(例えば、CD3またはCD28)に対する高親和性キメラ抗体は、最初に単離される。その抗体は、特徴づけられ、望ましい特性(親和性、選択性、エピトープなどが挙げられる)に関して選択される。マウス定常領域は、望ましいヒト定常領域で置き換えられて、本発明の二重特異的抗原結合分子へと組みこまれ得る完全ヒト重鎖および/または軽鎖を生成する。
【0151】
本発明の二重特異的抗原結合分子の状況において、マルチマー化ドメイン、例えば、Fcドメインは、Fcドメインの野生型の天然に存在するバージョンと比較して、1またはこれより多くのアミノ酸変化(例えば、挿入、欠失または置換)を含み得る。例えば、本発明は、Fcドメインにおいて1またはこれより多くの改変を含む二重特異的抗原結合分子を含み、その改変は、FcとFcRnとの間に改変された結合相互作用(例えば、増強されるかまたは低下された)を有する改変されたFcドメインを生じる。一実施形態において、二重特異的抗原結合分子は、CH2またはCH3領域に改変を含み、ここでその改変は、酸性環境において(例えば、pHが約5.5~約6.0の範囲に及ぶエンドソームの中で)FcRnに対するFcドメインの親和性を増大させる。非限定的な例は、例えば、米国公開番号2014-0088295において提供される。本発明はまた、第1のCH3ドメインおよび第2のIg CH3ドメインを含む二重特異的抗原結合分子を含み、ここでその第1のおよび第2のIg CH3ドメインは、少なくとも1個のアミノ酸によっては、互いから異なっており、ここで少なくとも1個のアミノ酸の差異は、そのアミノ酸差異を欠く二重特異的抗体と比較して、プロテインAに対するその二重特異的抗体の結合を低下させる。ある種の実施形態において、Fcドメインは、1種より多くの免疫グロブリンアイソタイプに由来するFc配列を併せ持つキメラであり得る。
【0152】
別の実施形態において、T細胞活性化分子は、CD3に結合する主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子である。代表的な例としては、TCRおよびCD8に結合するMHCタイプIまたはTCRおよびCD4に結合するMHCタイプIIが挙げられるが、これらに限定されない。そのMHC分子は、抗原、例えば、ビオチン化ペプチドが必要に応じて負荷され得る。他の実施形態において、MHC分子は、免疫グロブリン、例えば、免疫グロブリンG(IgG)鎖のFc部分に結合体化され得る。別の実施形態において、複数のMHC-ペプチド複合体が使用され得る。後者の場合では、MHC-ペプチド複合体の複数のコピーが、マルチマー化ドメイン(multimerization domain)に共有結合的にまたは非共有結合的に付着され得る。このようなMHCマルチマーの公知の例としては、MHC-ダイマー(2コピーのMHC-ペプチドを含む;IgGは、マルチマー化ドメインとして使用され、MHCタンパク質のドメインのうちの1つは、IgGに共有結合される);MHC-テトラマー(4コピーのMHC-ペプチドを含み、そのうちの各々はビオチン化され、そしてそのMHC複合体は、ストレプトアビジンモノマーとMHCタンパク質との間に非共有結合的連結を提供して、ストレプトアビジンテトラマータンパク質によって複合体の中で一緒に保持される);MHCペンタマー(5コピーのMHC-ペプチド複合体を含み、自己アセンブリするコイルドコイルドメインによってマルチマー化される)、MHCデキストラマー(代表的には、デキストランポリマーに付着される10より多くのMHC複合体を含む)およびMHCストレプタマー(ストレプトアクチンに付着した8~12個のMHC-ペプチド複合体を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。MHCテトラマーは、米国特許第5,635,363号に記載される;MHCペンタマーは、米国特許2004209295に記載される;MHC-デキストラマーは、特許出願WO 02/072631に記載される。MHCストレプタマーは、Knabel Mら, Nature Medicine 6. 631-637, 2002に記載される。
【0153】
標的T細胞はまた、CD3非依存性様式で、例えば、CD3以外の1種またはこれより多くの細胞表面レセプターの結合および/または連結を介して活性化され得る。このような細胞表面分子の代表的な例としては、例えば、CD2、CD47、CD81、MSR1などが挙げられる。
【0154】
この状況では、CD2は、実質的に全てのT細胞上に(およびナチュラルキラー(NK)細胞にも)見出され、そしてTリンパ球機能において重要である。CD2は、CD3、CD5およびCD45を含むいくつかのタンパク質と会合される。CD2-CD58相互作用は、T細胞とAPCとの間の細胞-細胞接触を促進し、それによって、TCR/CD3複合体を通じて抗原認識を増強する。CD2はまた、シグナル伝達の役割を果たす。CD2に対して指向される抗体を使用する共刺激遮断は、臓器移植における強力な免疫抑制ストラテジーであり得る。従って、一実施形態において、そのT細胞は、CD2に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントの使用を介して活性化される。抗CD2抗体の代表的な例としては、例えば、シプリズマブ(MEDI-507)およびLO-CD2b(ATCCアクセッション番号PTA-802;1999年6月22日に寄託)が挙げられる。
【0155】
CD47(IAP)は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、膜インテグリンのパートナーであり、そしてまた、リガンドであるトロンボスポンディン-1(TSP-1)およびシグナル調節タンパク質α(SIRPα)に結合する。Barclayら, Curr. Opin. Immunol. 21(1): 47-52, 2009; Br. J. Pharmacol., 167(7): 1415-30, 2012を参照のこと。CD47は、シグナル調節タンパク質α(SIRPα)、骨髄系細胞上に存在する阻害性膜貫通レセプターと相互作用する。そのCD47/SIRPα相互作用は、2方向性のシグナル伝達をもたらし、ファゴサイトーシスの阻害、細胞-細胞融合の刺激、およびT細胞活性化を含む異なる細胞間応答を生じる。Reinholdら, J Exp Med., 185(1): 1-12, 1997を参照のこと。本発明によれば、一実施形態において、T細胞は、CD47に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントの使用を介して活性化される。抗CD47抗体の代表的な例としては、例えば、モノクローナル抗体Hu5F9-G4(これは、骨髄性白血病に対して種々の臨床試験において調査中である)、ならびにモノクローナル抗体MABL-1およびMABL-2(FERM寄託番号BP-6100およびBP-6101)が挙げられる。例えば、WO1999/12973(その中の開示は、本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
【0156】
CD81は、タンパク質のテトラスパニンスーパーファミリーのメンバーである。それは、広い範囲の組織(T細胞および造血細胞を含む)上で発現される。CD81は、免疫調節の役割を果たすことが公知である。特に、CD81の交差連結は、αβおよびγδ Tリンパ球のCD3媒介性活性化を増強し、インビトロでのγδ T細胞によるサイトカインのTCR非依存性生成を誘導する。本発明によれば、一実施形態において、T細胞は、CD81に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントの使用を介して活性化される。Mennoら, J. Clin. Invest., 4:1265, 2010を参照のこと。抗CD81抗体の代表的な例としては、例えば、モノクローナル抗体5A6が挙げられる。例えば、Maeckerら, BMC Immunol., 4:1, 2003(その中の開示は、本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
【0157】
MSR1(CD204)は、クラスAマクロファージスカベンジャーレセプターのファミリーに属し、このファミリーは、MSR1遺伝子の選択的スプライシングによって生成される3種の異なるタイプ(1、2、3)を含む。これらレセプターまたはアイソフォームは、トリマーの内在性膜糖タンパク質であり、多くのマクロファージ関連の生理学的および病理学的プロセス(アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、および宿主防御を含む)に関与していた。Matsumotoら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87(23): 9133-7, 1990を参照のこと。近年の研究は、樹状細胞(DC)MSR1がCD8 T細胞の活性化および増殖に影響を与え、MSR1の抗体媒介性遮断がインビトロでのT細胞の増殖および拡大を増大したことを示す。Lerretら, PLoS One., 7(7):e41240, 2012を参照のこと。本発明によれば、一実施形態において、T細胞は、MSR1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントの使用を介して活性化される。抗MSR1抗体の代表的な例としては、例えば、ラット抗ヒトCD204抗体(Thermoカタログ番号MA5-16494)およびヤギ抗ヒトCD204/MSR1抗体(Bioradカタログ番号AHP563)が挙げられる。
【0158】
別の実施形態において、T細胞は、T細胞レセプター(TCR)分子への連結/結合によって活性化され、この分子は、T細胞において遍在して発現される。TCRは、2種の異なるタンパク質鎖から構成されるヘテロダイマーである。ヒトでは、T細胞のうちの95%において、TCRは、アルファ(α)鎖およびベータ(β)鎖からなるのに対して、T細胞のうちの5%において、TCRは、ガンマおよびデルタ(γ/δ)鎖からなる。TCRが、抗原性ペプチドおよびMHCとエンゲージする(ペプチド/MHC)場合、Tリンパ球は、シグナル伝達を通じて活性化される。本発明によれば、一実施形態において、T細胞は、TCRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントの使用を介して活性化される。抗TCR抗体の代表的な例としては、例えば、マウス抗ヒトTCRモノクローナル抗体IMMU510(Immunotech, Beckman Coulter, Fullerton, CA)(Zhouら, Cell Mol Immunol., 9(1): 34-44, 2012に記載される)およびアルファ/ベータTCR WT31を定義するモノクローナル抗体(Guptaら, Cell Immunol., 132(1):26-44, 1991に記載される)が挙げられる。
【0159】
別の実施形態において、T細胞活性化分子は、MHCペプチドを必要に応じて負荷した主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子である。MHC分子には2つの包括的なクラスがある。クラスI MHC(pMHC)分子は、ほぼ全ての細胞上で見出され、ペプチドを細胞傷害性Tリンパ球(CTL)に提示する。クラスII MHC分子は、主に抗原提示免疫細胞(APC)上で見出され、この細胞は、ポリペプチド抗原(例えば、微生物における)を摂取し、それらをペプチドフラグメントへと消化する。次いで、そのMHC-II分子は、ペプチドフラグメントをヘルパーT細胞に提示し、それは活性化後、免疫系の他の細胞(例えば、CTLまたは抗体生成するB細胞)の応答のために概して必要とされるヘルパー活性を提供する。MHCクラスI(pMHC)の重鎖の結合溝において結合したペプチドとT細胞レセプター(TCR)の相補性決定領域(CDR)との間の相互作用は、細胞免疫の求心性および遠心性の段階の間のT細胞活性化の可能性を決定する。TCRとMHC-ペプチド複合体との間に存在する親和性は、発生、初期活性化、およびエフェクター機能の発揮の間のT細胞の結末を決定する。
【0160】
よって、一実施形態において、本発明は、ペプチドを必要に応じて負荷したヒトMHC分子を含むMSR-SLB足場に関する。このようなMHC分子の代表的な例としては、HLA-A、HLA-B、HLA-C、DP、DQおよびDR、またはこれらの組み合わせが挙げられる。そのMHC分子は、一価または二価であり得る。いくつかの実施形態において、MHC分子の二価または多価は、T細胞へのシグナル送達(活性化または阻害いずれかのシグナル)にとって望ましい。従って、いくつかの実施形態において、本発明のMSR-SLB足場は、リンカーに付着した少なくとも2つの同一のMHC分子を含む。
【0161】
二価MHC分子のリンカーは、3つの機能を果たす。第1に、リンカーは、必要とされる二価または多価を与える。第2に、リンカーは、インビボで融合タンパク質全体の半減期を増大させる。第3に、リンカーは、融合タンパク質がT細胞を活性化または抑制するか否かを決定する。T細胞初回刺激は、TCRを介する刺激およびAPCによって概して送達されるさらなる第2のシグナルを要する。第2のシグナルの非存在下では、T細胞の低応答性が生じ得る。リンカーが第2のシグナルの送達を可能にする融合タンパク質を構築することによって、T細胞刺激は、増強されたT細胞免疫を生じる。リンカーが第2のシグナルの送達を提供しない融合タンパク質を構築することによって、T細胞抑制は、免疫抑制を生じる。T細胞刺激特性を有する融合タンパク質は、TCRを介して送達されるシグナルに加えてT細胞への第2のシグナルの送達を可能にするリンカーを使用することによって構築され得る。これは、別の細胞(その細胞は、T細胞に第2のシグナルを送達し得る)上の細胞表面構造に対する結合親和性を有するリンカーを使用することによって達成され得る。従って、そのリンカーは、T細胞および他の細胞を架橋するように働く。T細胞に直ぐ近接して他の細胞を架橋することによって、他の細胞は、そのT細胞に第2のシグナルを送達し得る。
【0162】
例としては、他の細胞上のFcレセプターに結合し得るリンカー(例えば、ある種の免疫グロブリン鎖または免疫グロブリン鎖の一部)が挙げられる。具体例としては、IgG、IgA、IgD、IgE、およびIgMが挙げられる。免疫グロブリンが使用される場合、そのタンパク質全体は必要とされない。例えば、免疫グロブリン遺伝子は、ヒンジ領域において切断され得、その重鎖のヒンジ、CH2、およびCH3ドメインをコードする遺伝子のみが、融合タンパク質を形成するために使用される。リンカーは、他の細胞表面構造に結合し得る。例えば、リンカーは、第2の細胞をT細胞と直ぐ近接した状態にするために架橋として働き得る多くの細胞表面抗原のためのコグネート部分を含み得る。そのリンカーはまた、第2のシグナルを独立して送達し得る。例えば、T細胞抗原CD28に対して結合親和性を有するリンカーは、第2のシグナルを送達し得る。さらに、そのリンカーは、インビボで融合タンパク質全体の半減期を増大し得る。T細胞阻害特性を有する融合タンパク質は、第2のシグナルの送達を生じないリンカーを使用することによって構築され得る。例としては、Fcレセプターに結合しないIg鎖、Ig F(ab’)2フラグメント、ジンクフィインガーモチーフ、ロイシンジッパー、および非生物学的物質が挙げられる。非生物学的物質の例としては、プラスチックマイクロビーズ、またはさらにより大きなプラスチック部材(例えば、プラスチックロッドまたはチューブ)、ならびにインビボで移植医可能な他の生理学的に受容可能なキャリアが挙げられる。
【0163】
いくつかの実施形態において、MHC分子は、リンカーに付着されない。いかなる特定の理論によっても拘束されることは望まないが、脂質二重層の流体の性質は、T細胞が膜を認識し、多価クラスターを形成することを可能にすると考えられる。これらのクラスターは、その後分解され得る。これは、シグナル伝達分子がリンカーと一緒に付着される場合には可能でなかった。これらの多価クラスターを分解できないことで、過剰刺激およびT細胞消耗またはアネルギーが潜在的にもたらされ得る(例えば、Lee K-Hら Science 302(5648): 1218-22(2003)を参照のこと)。
【0164】
いくつかの実施形態において、APC-MSの脂質二重層は、液体秩序ドメイン(liquid-ordered domain)への脂質種の自発的分配を促進する脂質組成物を含む(例えば、Wang T-Yら Biochemistry 40(43):13031-40(2001)を参照のこと)。
【0165】
必要に応じて、MHC分子は、特定のペプチド(例えば、ウイルス抗原、細菌抗原、またはアレルゲンに由来するペプチド)が負荷され得る。融合タンパク質の特定のペプチドは、融合タンパク質が作製された後に、MHC分子へと負荷され得る。ペプチドはまた、その後、例えば、UV架橋によって、MHCへと共有結合的に付着され得る。あるいは、ペプチド配列は、そのペプチドが、融合タンパク質の生成の間にMHC分子へと負荷されるように、融合タンパク質をコードするDNA配列へと組みこまれ得る。後者の場合、そのペプチドは、融合タンパク質のMHC部分と複合体化することを可能にするテザー(例えば、ポリペプチド)で付着され得る。MHC分子へと負荷されるべき特定のペプチドは、実質的に無制限であり、そして望ましい適用に基づいて決定される。例えば、T細胞免疫を増強するために、種々の供給源(例えば、ウイルス、真菌および細菌感染)からの、または腫瘍までのペプチドが、使用され得る。自己免疫ではT細胞免疫を抑制するために、自己反応性ペプチドが使用され得る。移植した組織に対するT細胞免疫を抑制するために、アロ抗原によって提示される自己ペプチドが使用され得る。
【0166】
毒素(例えば、リシンおよびジフテリア毒素)および放射性同位体は、特定のT細胞クローンを殺滅するために、融合タンパク質に(例えば、5-メチル-2-イミノチオランを使用して)複合体化され得る。これらの毒素は、リンカーに、または融合タンパク質のMHC部分に化学的にカップリングされ得るか、またはそれら毒素は、その毒素が融合タンパク質の生成の間に融合タンパク質に複合体化されるように、融合タンパク質をコードするDNA配列に組みこまれ得る。
【0167】
MHC-ペプチド/免疫グロブリン融合タンパク質は、この融合タンパク質の生成をコードする遺伝子を構築することによって調製され得る。あるいは、融合タンパク質の構成要素は、化学的な結合体化方法を使用してアセンブリされ得る。MHC分子およびリンカーをコードする遺伝子の供給源は、種々のデータベースから得られ得る。MHCクラスI融合タンパク質の場合には、そのMHCフラグメントは、リンカーに付着され得、β2ミクログロブリンは、自己会合させられ得る。あるいは、融合タンパク質遺伝子は、β2ミクログロブリンがエーテルによってMHCフラグメントに付着されるように構築され得る。MHCクラスII融合タンパク質の場合には、α鎖またはβ鎖のいずれかがリンカーに付着され得、その他方の鎖が自己会合させられ得る。あるいは、融合タンパク質遺伝子は、そのα鎖およびβ鎖がテザーによって接続されるように構築され得る。ペプチドは、それらを融合タンパク質遺伝子構築物へコードすることによって、または代わりに、ペプチド合成器で当業者に利用可能な標準的方法論を使用して調製され得る。その得られた完全な融合タンパク質は、慣用的技術を使用して投与され得る。
【0168】
T細胞共刺激分子
一実施形態において、本発明は、複数のT細胞共刺激分子を含むMSR-SLB足場を提供する。これらの共刺激分子は、T細胞の標的集団の直接的、間接的、または半直接的な刺激を媒介し得る。好ましくは、その共刺激分子は、1種またはこれより多くのT細胞活性化分子の存在下でT細胞の活性化を媒介する。
【0169】
用語「共刺激分子(co-stimulatory molecule)」は、本明細書において、免疫T細胞活性化においてその分野で認識される意味に従って使用される。具体的には、「共刺激分子」とは、T細胞と抗原提示細胞との間をエンゲージし、抗原提示細胞上の抗原のT細胞レセプター(「TCR」)認識から生じるT細胞における刺激シグナル(すなわち、「共刺激(co-stimulation)」)と併せてT細胞において刺激シグナルを生成する免疫細胞表面レセプター/リガンドの一群に言及する。本明細書で使用される場合、「APCに由来する(derived from an APC)」共刺激分子の可溶性形態とは、B細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞および他のAPCによって通常発現される共刺激分子に言及する。Huppaら, Nature Reviews Immunology. 3, 973-983(2003)を参照のこと。「T細胞活性化の共刺激因子(co-stimulator of T cells activation)」とは、共刺激リガンドが、前述の機構または経路のうちのいずれかを介して、例えば、CD3依存性またはCD3非依存性のT細胞活性化を介して活性化されたT細胞に結合し活性化する能力に言及する。共刺激活性化は、周知であるようにサイトカインの生成によって、および周知である増殖アッセイによって(例えば、CFSE染色)および/または以下の実施例で記載されるように、T細胞に関して測定され得る。
【0170】
一実施形態において、本発明は、共刺激抗原に特異的に結合する分子を含むMSR-SLB足場を提供する。特に、MSR-SLB足場は、CD28、4.1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD27(TNFRSF7)、GITR(CD357)、CD30(TNFRSF8)、HVEM(CD270)、LTβR(TNFRSF3)、DR3(TNFRSF25)、ICOS(CD278)、CD226(DNAM1)、CRTAM(CD355)、TIM1(HAVCR1、KIM1)、CD2(LFA2、OX34)、SLAM(CD150、SLAMF1)、2B4(CD244、SLAMF4)、Ly108(NTBA、CD352、SLAMF6)、CD84(SLAMF5)、Ly9(CD229、SLAMF3)、CD279(PD-1)および/またはCRACC(CD319、BLAME)に特異的に結合する複数のT細胞共刺激分子を含む。
【0171】
一実施形態において、共刺激分子は、前述の共刺激抗原のうちの1種またはこれより多くに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである。この状況では、CD28は、基本型のT細胞共刺激抗原であり、APC(例えば、樹状細胞および活性化B細胞)上に発現されるB7ファミリーの分子に結合する。ヒトCD28は、全てのCD4+ T細胞に、およびCD8+ T細胞のうちの約半分に見出される。CD28に帰するT細胞の作用としては、アネルギーの防止(prevention of energy)、サイトカイン遺伝子転写の誘導、サイトカインmRNAの安定化およびCD8+ 細胞傷害性Tリンパ球の活性化が挙げられる。CD80(B7-1)およびCD86(B7-2)として同定されたCD28のリガンドは、それぞれ、60kdおよび80kdの免疫グロブリンスーパーファミリーモノマー膜貫通糖タンパク質である。
【0172】
一実施形態において、本発明は、CD28に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場に関する。抗CD28抗体の代表的な例としては、例えば、ルリズマブペゴルおよびTGN1412が挙げられる。米国特許第8,785,604号もまた参照のこと。
【0173】
別の実施形態において、本発明は、ICOS(CD278)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むSR-SLB足場に関する。ICOSは、活性化T細胞上に発現されるCD28スーパーファミリー共刺激分子である。それは、Th2細胞にとって特に重要であると考えられる。抗ICOS抗体の代表的な例としては、例えば、モノクローナル抗体2C7(これは、活性化T細胞上で発現されるICOS分子を認識し、抗ヒトCD3モノクローナル抗体によって予め刺激されたT細胞の活性化および増殖を誘導する)が挙げられる。Dengら, Hybrid Hybridomics., 23(3):176-82, 2004を参照のこと。
【0174】
別の実施形態において、本発明は、CD152(CTLA4)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場を提供する。その抗体は、好ましくは、中和抗体または遮断抗体である。CD152は、活性化CD4+およびCD8+ T細胞上で、ならびに調節性T細胞(Treg)上で発現される。T細胞生物学において、感染に対する免疫応答の間に、およびがん免疫療法に関する標的としてのその機能は、十分に記載されてきた(Egenら, Nat. Immunol., 3(7):611-618, 2002)。CTLA-4は、CD28に相同な対応物であり、これらはともに、APC上のCD80およびCD86に結合する。免疫寛容に関するCTLA-4の重要性は、明らかである(Waterhouseら, Science, 270(5238):985-988, 1995)。これらは、リガンド結合に関して低親和性CD28分子に打ち勝って、T細胞共刺激を最小限にすること、阻害性ホスファターゼをTCR複合体へと動員して、正のシグナル伝達カスケードを破壊すること、ならびにCD80およびCD86をトランスエンドサイトーシスによってAPCの表面から除去し、それによって、APCがT細胞を適切に活性化するか別の方法でT細胞を応答性にする能力を低減することが挙げられる。よって、CTLA-4レセプター/経路の活用は、T細胞免疫を調節する魅力的なストラテジーである。実際に、抗CTLA-4は、がん患者におけるチェックポイント遮断処置に関してFDAが承認した最初のモノクローナル抗体(イピリムマブ)であった。本発明に従って使用され得るCTLA-4抗体の他の例としては、トレメリムマブおよびその抗原結合フラグメントが挙げられる。
【0175】
別の実施形態において、本発明は、プログラムされた死-1(PD-1;CD279)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場を提供する。PD1は、CD28およびCTLA-4と同じレセプターファミリーのメンバーであり、リンパ系および骨髄系の細胞上で広く発現される。PD-1は、APCおよび他の周りの組織上のB7リガンド、PD-L1およびPD-L2に特有に結合し、慢性感染症の状況において応答しているCD8+ T細胞の結末に大きく影響を及ぼす。T細胞上では、PD-1は、抗原に遭遇した後に発現されるが、ほぼ直ぐに作用して、PD-1細胞質テールにおけるシグナル伝達モチーフを通じてホスファターゼSHP-1およびSHP-2を動員することによってT細胞活性化を妨害し、これは、Aktリン酸化を低減し、そしてT細胞代謝、増殖および生存を減少させる。よって、その抗体は、好ましくは、中和抗体または遮断抗体である。このような抗PD-1抗体の代表的な例としては、例えば、ニボルマブ、ランブロリズマブ(MK-3475)、ピディリズマブ(CT-011)およびAMP-224が挙げられる。
【0176】
別の実施形態において、本発明は、CD81に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場を提供する。CD81のエンゲージメントは、CD4+ T細胞におけるT細胞/CD3媒介性プロウイルスDNAを誘起するために必要とされるシグナル伝達閾値を下げる(Tardifら, J. Virol. 79(7): 4316-28, 2005)。抗CD81抗体の代表的な例としては、例えば、モノクローナル抗体5A6が挙げられる。例えば、Maeckerら, BMC Immunol., 4:1, 2003(その中の開示は、本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
【0177】
別の実施形態において、本発明は、CD137に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場に関する。CD137の架橋は、T細胞増殖、IL-2分泌、生存および細胞溶解活性を増強する。さらに、それは、免役活性を増強して、インビボで腫瘍を排除し得る。よって、CD137に結合する抗体は、好ましくは、アゴニスト的抗体である。抗CD137抗体の代表的な例としては、例えば、モノクローナル抗体ウトミルマブ(これは、現在臨床試験において調査されている最中であるヒトIgGである)が挙げられる。National Clinical Trials ID: NCT01307267を参照のこと。
【0178】
別の実施形態において、本発明は、OX40(CD134)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場を提供する。OX40Lは、T細胞上のOX40レセプターに結合し、T細胞が死滅するのを防止し、その後、サイトカイン分泌を増大させる。OX40は、その生存を増強する能力に起因して、最初の数日間を過ぎて、かつメモリー応答に進む免疫応答の維持において極めて重要な役割を有する。OX40はまた、インビボでTh1媒介性およびTh2媒介性の両方の反応において極めて重要な役割を果たす。よって、OX40に結合する抗体は、好ましくは、アゴニスト的抗体である。抗OX40抗体の代表的な例としては、例えば、抗OX40モノクローナル抗体ウトミルマブ(これは、種々の臨床試験において調査されている最中である)が挙げられる(National Clinical Trials ID: NCT01644968、NCT01303705およびNCT01862900を参照のこと)。
【0179】
別の実施形態において、本発明は、CD27(TNFRSF7)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場に関する。CD27は、TNFレセプタースーパーファミリーのメンバーであり、T細胞免疫の生成および長期間の維持に必要とされる。それは、リガンドCD70に結合し、免疫グロブリン合成を調節するにあたって重要な役割を果たす。CD27は、CD28およびIL2の細胞周期促進活性とは無関係に、ナイーブT細胞の抗原特異的拡大(しかしエフェクター細胞成熟ではない)を支援する(Hendriksら, Nature Immunology 1, 433-440, 2000))。よって、本発明のMSR-SLB足場は、好ましくは、CD27に結合するアゴニスト的抗体を含む。抗CD27抗体の代表的な例としては、例えば、モノクローナル抗体バルリルマブ(varlilumab)が挙げられる。Ramakrishnaら, Journal for ImmunoTherapy of Cancer, 3:37, 2015を参照のこと。
【0180】
別の実施形態において、本発明は、グルココルチコイド誘導性TNFレセプターファミリー調節性遺伝子(GITRまたはCD357)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場に関する。GITRは、活性化リンパ球上で発現される25kD TNFレセプタースーパーファミリーのメンバーである。GITRは、T細胞レセプターエンゲージメントによってアップレギュレートされる。GITRの細胞質ドメインは、CD40、4-1BBおよびCD27に相同である。GITRシグナル伝達は、T細胞増殖およびTCR媒介性アポトーシスを調節し、そして免疫学的な自己寛容を破壊することが示された。GITRは、GITRLにさらに結合し、調節性T細胞の発生に関与し、Th1部分セットの活性を調節する。アゴニスト的抗体でのGITRの調節は、複数の機構を介して動物モデルにおいて抗腫瘍免疫応答を増幅することが示された。抗GITR抗体は、GITRレセプターを活性化するようにデザインされ、それによって、エフェクターT細胞の増殖および機能を増大させる。同時に、Tregの表面上でのGITRの連結は、これらの細胞の、腫瘍特異的エフェクターT細胞に対する抑制的機能を排除し得、従って、T細胞免疫応答をさらに増大させる。抗GITR抗体の代表的な例としては、例えば、ヒト化Fc無力化(Fc disabled)抗ヒトGITRモノクローナル抗体TRX518(これは、腫瘍抗原特異的Tエフェクター細胞の活性化、および不適切に活性化されたT調節性細胞によって誘導される抑制を排除することの両方を誘導する)が挙げられる。TRX518は、種々の臨床試験において調査されている最中である(National Clinical Trials ID: NCT01239134を参照のこと)。
【0181】
別の実施形態において、本発明は、CD30(TNFRSF8)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場に関する。CD30抗原は、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリーに属する膜貫通糖タンパク質であり、これは、刺激された場合、細胞成長および生存に対して多面発現性効果を発揮する。正常のまたは炎症した組織において、CD30発現は、中程度/大型の活性化Bリンパ球および/またはTリンパ球に制限される。それは、活性化されたT細胞およびB細胞によって発現されるが、静止T細胞およびB細胞によっては発現されない(Guoら, Infect. Immun., 81(10), 3923-3934, 2013)。アゴニスト的抗CD30モノクローナル抗体(MAb)のインビボ投与によるCD30L/CD30シグナル伝達の刺激は、CD30LノックアウトマウスにおいてVγ1- Vγ4- γδ T細胞によるIL-17A生成を回復させた。抗CD30抗体の代表的な例としては、例えば、ブレンツキシマブベドチン(Adcetris)が挙げられる。
【0182】
別の実施形態において、本発明は、HVEM(CD270)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場に関する。CD270は、TNFレセプタースーパーファミリーのメンバーである。このレセプターは、単純ヘルペスウイルス(HSV)進入の細胞メディエーターとして同定された。この遺伝子における変異は、繰り返して、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の症例に関連付けられた。抗CD270抗体の代表的な例としては、例えば、モノクローナル抗体HVEM-122が挙げられる。Cheungら, J. Immunol., 185:1949, 2010; Hoboら, J Immunol., 189:39, 2012を参照のこと。
【0183】
別の実施形態において、本発明は、リンホトキシンβレセプター(LTβR; TNFRSF3)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場に関する。LTβRは、CD4+ T細胞初回刺激に関与する(Summers deLucaら, J Exp Med., 204(5):1071-81, 2007)。抗LTβR抗体の代表的な例としては、例えば、モノクローナル抗体BBF6抗体が挙げられる。WO2010/078526(参考として援用される)もまた参照のこと。
【0184】
別の実施形態において、本発明は、DR3(TNFRSF25)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場に関する。DR3は、T細胞活性化によって誘導されるリンパ球増殖の制御に関与すると考えられる。具体的には、DR3の活性化は、T細胞レセプターの事前のエンゲージメントに依存する。TL1Aに結合した後に、DR3シグナル伝達は、IL-2レセプターを介して内因性IL-2に対するT細胞の感受性を増大させ、T細胞増殖を増強する。レセプターの活性化は、T細胞レセプター依存性であるので、DR3のインビボでの活性は、コグネート抗原に遭遇しているそれらT細胞に特異的である。静止時には、および根底に自己免疫のない個体に関しては、コグネート抗原に定期的に遭遇するT細胞の大部分は、FoxP3+ 調節性T細胞である。TNFRSF25の刺激は、いかなる他の外因性シグナルもない場合には、5日間以内に、彼らの全CD4+ T細胞のうちの8~10%から全CD4+ T細胞のうちの35~40%へと、FoxP3+ 調節性T細胞の顕著なかつ高度に特異性の増殖を刺激する。DR3アゴニストの代表的な例としては、例えば、DR3に特異的に結合する抗体(Reddyら, J. Virol., 86(19) 10606-10620, 2012)およびアゴニスト4C12(Wolfら, Transplantation, 27;94(6):569-74, 2012)が挙げられる。
【0185】
別の実施形態において、本発明は、CD226(DNAM1)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場に関する。CD226は、ナチュラルキラー細胞、血小板、単球およびT細胞の部分セットの表面上に発現される約65kDa 糖タンパク質である。それは、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、そのリガンド、CD112およびCD155を有する他の細胞への細胞接着を媒介する。CD226と抗体との架橋は、細胞活性化を引き起こし、そしてCD226およびLFA-1とそれらそれぞれのリガンドとの連結は、細胞傷害性ならびにT細胞およびNK細胞によるサイトカイン分泌を誘発するにあたって協働する(Taharaら, Int. Immunol. 16(4): 533-8, 2004)。
【0186】
別の実施形態において、本発明は、CRTAM(CD355)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場に関する。CTRAMは、MHCクラスI拘束T細胞関連分子であり、いくらかのCD4+ T細胞における細胞極性の後期相を調節する。CTRAMはまた、インターフェロン-γ(IFNγ)およびインターロイキン-22(IL-22)生成を調節する。一実施形態において、MSR-SLB足場は、モノクローナル抗CTRAM抗体を含む。CTRAM抗体の代表的な例としては、例えば、マウス抗ヒトCTRAM抗体21A9(GENTEX Inc. USA, Irvine, CA)が挙げられる。
【0187】
別の実施形態において、本発明は、TIM1(HAVCR1、KIM1)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場に関する。TIM遺伝子は、タイプI細胞表面糖タンパク質に属し、これは、N末端免疫グロブリン(Ig)様ドメイン、別個の長さを有するムチンドメイン、単一の膜貫通ドメイン、およびC末端の短い細胞質テールを含む。TIM遺伝子の位置および機能は、各メンバー間で多様である。TIM-1は、Th2細胞上で優先的に発現され、T細胞活性化の刺激分子として同定された(Umetsuら, Nat. Immunol. 6(5): 447-54, 2005)。一実施形態において、MSR-SLB足場は、モノクローナル抗TIM1抗体を含む。TIM1抗体の代表的な例としては、例えば、ウサギ抗ヒトTIM1抗体ab47635(ABCAM, Cambridge, MA)が挙げられる。
【0188】
別の実施形態において、本発明は、SLAM(CD150、SLAMF1)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場に関する。SLAM(CD150)は、共刺激分子として機能する自己リガンドおよび細胞表面レセプターであり、そしてマクロファージによるグラム陰性細菌の殺滅を制御した微生物センサでもある。特に、SLAMは、細菌外膜タンパク質との相互作用の後に、NADPHオキシダーゼNOX2複合体の活性およびファゴソーム進入後のファゴリソソーム成熟を調節した(Bergerら, Nature Immunology 11, 920-927, 2010)。Slamf1は、活性化およびメモリーT細胞の表面上に、ならびに活性化B細胞、樹状細胞、マクロファージおよび血小板上に発現される(Calpeら, Adv. Immunol. 2008;97:177)。一実施形態において、MSR-SLB足場は、モノクローナル抗SLAM1抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。SLAM1抗体の代表的な例としては、例えば、ウサギ抗ヒトSLAM1抗体600-401-EN3(Rockland Antibodies, Limerick, PA)が挙げられる。
【0189】
別の実施形態において、本発明は、2B4(CD244、SLAMF4)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場に関する。CD244は、非主要組織適合遺伝子複合体(MHC)拘束殺滅を媒介するナチュラルキラー細胞(NK細胞)(およびいくつかのT細胞)上で発現される細胞表面レセプターである。このレセプターを介するNK細胞と標的細胞との間の相互作用は、NK細胞の細胞溶解活性を調節すると考えられる。CD244は、選択的CD28遮断に伴う免疫調節の存在下での初代抗原特異的CD8(+) T細胞応答を弱める共阻害SLAMファミリーメンバーである。近年の研究は、CD28シグナル伝達が遮断された動物において抗原特異的CD8(+)T細胞上の2B4の特異的アップレギュレートを明らかにする(Liuら, J Exp Med. 2014 Feb 10;211(2):297-311)。一実施形態において、MSR-SLB足場は、モノクローナル抗CD244抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。CD244抗体の代表的な例としては、例えば、抗2B4抗体C1.7またはPE結合体化抗2B4(C1.7)が挙げられ、これら抗体は、Sanduskyら(Eur J Immunol. 2006 Dec;36(12):3268-76)において特徴づけられている。
【0190】
別の実施形態において、本発明は、Ly108(NTBA、CD352、SLAMF6)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場に関する。SLAMF6は、タイプI膜貫通タンパク質であり、免疫グロブリンスーパーファミリーのCD2サブファミリーに属し、ナチュラルキラー(NK)細胞、Tリンパ球、およびBリンパ球上で発現される。SLAMF3/SLAMF6経路を通じたTリンパ球の共刺激は、標準的なCD28経路と比較した場合に、IL-17A発現に対してより強力な効果を媒介する。SLAMF3/SLAMF6シグナル伝達は、増大した核の存在量および近接するIL17AプロモーターへのRORγtの動員を媒介し、トランス活性化および遺伝子発現の増大を生じる(Chatterjeeら, J Biol Chem., 287(45): 38168-38177, 2012)。一実施形態において、MSR-SLB足場は、モノクローナル抗CD244抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。CD244抗体の代表的な例としては、例えば、Flaigら(J. Immunol. 2004. 172: 6524-6527)およびStarkら(J. Immunol. Methods 2005. 296: 149-158)において特徴づけられた抗NTB-A抗体が挙げられる。
【0191】
別の実施形態において、本発明は、CD84(SLAMF5)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場に関する。CD84は、免疫グロブリンレセプタースーパーファミリーのCD2下位グループのメンバーである。このファミリーのメンバーは、T細胞およびNK細胞の活性化にかかわっていた。CD84は、活性化T細胞の増殖応答を増大させ、同種親和性(homophilic)相互作用は、リンパ球におけるインターフェロンγ分泌を増強する。CD84はまた、造血前駆体細胞のマーカーとして働き得る。PUBMED ID番号11564780、12115647、12928397、12962726、16037392を有する参考文献中の開示を参照のこと(これらは、長期のT細胞:B細胞接触、最適なTh機能、および胚中心形成に必要とされることを示す)。一実施形態において、MSR-SLB足場は、モノクローナル抗CD84抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。CD84抗体の代表的な例としては、例えば、PE抗ヒトCD84抗体CD84.1.21(これは、CD3誘導性IFN-γ生成を増強でき、そしてリンパ球へのCD84-Ig結合を部分的に遮断できる)を包含する(BioLegend, San Diego, CA;カタログ番号326008)。
【0192】
別の実施形態において、本発明は、Ly9(CD229、SLAMF3)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場に関する。CD229は、同種親和性相互作用によってTリンパ球とアクセサリ細胞との間の接着反応に関する。またそれは、ヘルパーT細胞Th17表現型へのT細胞分化を促進し、増大したIL-17分泌をもたらす;共刺激活性は、SH2D1Aを要する(Chatterjeeら, J Biol Chem., 287(45): 38168-38177, 2012)。特に、CD229およびTCRと固定化CD229-Hisタンパク質および抗CD3抗体との同時の連結は、マウスCD3+脾細胞において用量依存性様式で細胞増殖およびIFN-γ分泌を有意に増強した(Wangら, The Journal of Immunology, 188(sup. 1) 176.7, May 2012)。よって、一実施形態において、MSR-SLB足場は、モノクローナル抗CD229抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。CD229抗体の代表的な例としては、例えば、PE抗ヒトCD229抗体HLy-9.1.25(BIOLEGEND, San Diego, CA;カタログ番号326108)またはマウス抗ヒトCD229抗体(R&D Systemsカタログ番号AF1898)が挙げられる。
【0193】
別の実施形態において、本発明は、CD279(PD-1)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場に関する。PD-1は、免疫チェックポイントとして機能し、T細胞の活性化を防止することによって免疫系をダウンレギュレートすることにおいて重要な役割を果たし、これは翻って、自己免疫を低減し、自己寛容を促進する。PD-1の阻害効果は、調節性T細胞(サプレッサーT細胞)におけるアポトーシスを同時に低減しながら、リンパ節における抗原特異的T細胞のアポトーシス(プログラムされた細胞死)を促進する二重機構を通じて達成される。CD229抗体の代表的な例としては、例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ(CT-011、Cure Tech)、BMS936559、およびアテゾリズマブが挙げられる。
【0194】
別の実施形態において、本発明は、CRACC(CD319、BLAME)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むMSR-SLB足場に関する。CD319は、SH2D1A非依存性細胞外シグナル調節性ERK媒介性経路を通じてNK細胞活性化を媒介する(Bouchonら, J Immunol. 2001 Nov 15;167(10):5517-21)。CD319はまた、NK細胞機能を正方向に調節し、NK細胞の活性化に寄与し得る。よって、一実施形態において、MSR-SLB足場は、モノクローナル抗CD319抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。CD319抗体の代表的な例としては、例えば、エロツズマブまたはその抗原結合フラグメントが挙げられる。
【0195】
ある種の実施形態において、本発明は、少なくとも1種のT細胞活性化分子および少なくとも1種のT細胞共刺激分子を含む結合対を含むMSR-SLB足場を提供する。このような対の代表的な例としては、例えば、CD3/CD28、CD3/ICOS、CD3/CD27、およびCD3/CD137に結合する抗体、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。この状況では、共刺激分子の活性の所望の調節に依存して、第1の構成要素(CD3)に関するアゴニスト抗体および第2の構成要素に関するアゴニスト抗体またはアンタゴニスト抗体を使用することが望ましいことであり得る。
【0196】
ある種の実施形態において、本発明は、CD3に結合する抗体である少なくとも1種のT細胞活性化分子およびCD28に結合する抗体である少なくとも1種のT細胞共刺激分子を含む結合対を、必要に応じてICOS、CD27、およびCD137からなる群より選択される抗原に結合する抗体である第2の共刺激分子と一緒に含むMSR-SLB足場を提供する。一実施形態において、MSR-SLB足場は、以下の組み合わせから選択される機能的分子の組み合わせを含む:(a)CD3、CD28およびICOSに結合する抗体、(b)CD3、CD28およびCD27に結合する抗体、(c)CD3、CD28およびCD137に結合する抗体、(d)CD3、CD28、ICOSおよびCD27に結合する抗体。この点に関して、実験データは、これらの二次T細胞共刺激因子の刺激は、適切な活性化刺激(例えば、CD3+CD28)とともに適用される場合、T細胞にある種のタイプの分化を刺激し得ることを示唆する。例えば、ICOS刺激は、CD3+CD28+刺激と協働する場合、Thエフェクター細胞の分化を促進するのに対して、それは、共刺激シグナルが不十分である場合には、調節性T細胞の分化を支援する。Mesturiniら, Eur J Immunol., 36(10):2601-12, 2006を参照のこと。同様に、抗CD27抗体は、そのシステムを微細に調節するために使用され得る。この状況では、抗CD27抗体1F5は(抗CD3抗体とともに使用される場合)、潜在的に危険なポリクローナルT細胞活性化-共刺激CD28特異的スーパーアゴニスト的抗体で観察された現象を誘発しなかった。Thomasら, Oncoimmunology, 3: e27255, 2014を参照のこと。
【0197】
一実施形態において、その結合対は、単一特異的抗体であって、ここで第1の抗体はその対の第1のメンバー(例えば、CD3)に結合し、第2の抗体は、その対の第2のメンバー(例えば、CD28)に結合するものを含む。別の実施形態において、その対は、二重特異的抗体であって、ここで単一の抗体は、個々の対のメンバーに結合するもの(例えば、CD3およびCD28に結合する二重特異的抗体)を含む。この状況では、二重特異的抗体は、増強されたT細胞活性化を付与するそれらの能力に起因して好ましい。Willemsら, Cancer Immunol Immunother. 2005 Nov;54(11):1059-71を参照のこと。
【0198】
あるいは、その結合対は、単一特異的抗体であって、ここで第1の抗体はCD3に結合し、第2の抗体は、ICOSに結合するものを含む。ICOSに結合する抗体の状況では、その分子が移植片対宿主病の病因に関わっている限りにおいて(Satoら, Transplantation, 96(1): 34-41, 2013を参照のこと)、ICOSを中和するアンタゴニスト的抗体を使用することは、好ましいことであり得る。アゴニストCD3結合抗体フラグメントおよびアンタゴニストICOS結合抗体フラグメントを含む二重特異的抗体はまた、使用され得る。
【0199】
あるいは、その結合対は、単一特異的抗体であって、ここで第1の抗体は、CD3に結合し、第2の抗体は、CD27に結合するものを含む。この実施形態において、両方の抗体は、好ましくは、刺激抗体またはアゴニスト抗体である。CD27共刺激は、インビボで再指向されたヒトT細胞の生存および抗腫瘍活性を高めることが報告されている(Songら, Blood, 119(3):696-706, 2012)。アゴニストCD3結合抗体フラグメントおよびアゴニストCD27結合抗体フラグメントを含む二重特異的抗体はまた、使用され得る。
【0200】
あるいは、その結合対は、単一特異的抗体であって、ここで第1の抗体は、CD3に結合し、第2の抗体は、CD137に結合するものを含む。この実施形態において、両方の抗体は、好ましくは、刺激抗体またはアゴニスト抗体である。CD137共刺激は、養子T細胞療法のためのCD8(+) 黒色腫腫瘍浸潤リンパ球の拡大および機能を改善することが報告されている(Chaconら, PLoS One. 2013;8(4):e60031, 2013)。アゴニストCD3結合抗体フラグメントおよびアゴニストCD27結合抗体フラグメントを含む二重特異的抗体また、使用され得る。
【0201】
T細胞ホメオスタシス因子
一実施形態において、MSR-SLB足場および/または抗原提示細胞模倣足場は、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-17、IL-21、およびトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)、またはこれらのアゴニスト、これらの模倣物、これらの改変体、これらの機能的フラグメント、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるホメオスタシス因子を含む。いくつかの実施形態において、MSR-SLB足場および/または抗原提示細胞模倣足場は、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-17、IL-21、およびトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)、またはこれらのアゴニスト、これらの模倣物、これらの改変体、これらの機能的フラグメント、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される複数のホメオスタシス因子を含む。これらのホメオスタシス因子の機能的フラグメント(これは、標的細胞の活性を調節するそれらの能力によって特徴づけられる)はまた、使用され得る。ホメオスタシス因子の代表的なタイプ(ヒトのおよび/またはこれらのマウスホモログのNCBIアクセッション番号を含む)は、表1に提供される。
【表1-1】
【表1-2】
【0202】
前述のT細胞ホメオスタシス因子のフラグメントおよび改変体は、当該分野で公知である。例えば、前述のホメオスタシス因子の各々のUNIPROTデータベース登録は、その改変体と野生型生体マーカーとの間の構造的関連性を含め、「天然の改変体」を列挙する。純粋に代表として、ヒトIL-1βタンパク質(UNIPROT: P01584)は、推定ヒトIL-1βタンパク質配列のアミノ酸残基141においてE→Nアミノ酸置換を有する天然の改変体(VAR_073951)を含む。フラグメントは、公知であれば、この節の下に同様に列挙される。
【0203】
好ましくは、T細胞ホメオスタシス因子は、インターロイキン-2(IL-2)またはそのアゴニスト、その模倣物、その改変体、その機能的フラグメント、またはこれらの、表1に列挙される1種またはこれより多くのT細胞ホメオスタシス因子との組み合わせである。IL-2アゴニストの例としては、例えば、BAY 50-4798(Margolinら, Clin Cancer Res. 2007 Jun 1;13(11):3312-9)が挙げられる。IL-2模倣物の例としては、例えば、ペプチド1-30(P1-30)が挙げられ、これは、IL-2と相乗効果的に作用する(Eckenbergら, J Immunol 2000; 165:4312-4318)。IL-2フラグメントの例としては、例えば、IL-2の最初の100アミノ酸を含むバラスト部分(ballast portion)が挙げられる(米国特許第5,496,924号を参照のこと)。IL-2改変体の例としては、例えば、天然の改変体VAR_003967および天然の改変体VAR_003968が挙げられる。IL-2を含む融合タンパク質、例えば、F16-IL2もまた含まれ、これは、短い5アミノ酸リンカーを介して、ヒトIL-2の組換え形態に融合されているテネイシン-CのエクストラドメインA1に対するscFvである。F16-IL2融合タンパク質のモノクローナル抗体部分は、腫瘍関連抗原(TAA)テネイシン-Cを発現する腫瘍細胞に結合する。翻って、その融合タンパク質のIL-2部分は、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージおよび好中球を刺激し、T細胞抗腫瘍細胞性免疫応答を誘導する。本発明に従って使用され得る他のIL-2模倣物としては、例えば、IL-2スーパーカインペプチド(Levinら, Nature 484, 529-533, 2012)、およびIL-2部分アゴニストペプチド(Zurawskiら, EMBO Journal, 9(12): 3899-3905, 1990および米国特許第6,955,807号)、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0204】
本発明の実施形態は、MSR-SLB足場(このような足場から作製されたAPC-MS足場を含む)をさらに含み、その足場は、複数の前述のT細胞ホメオスタシス因子をさらに含む。従って、一実施形態において、本発明は、IL-2である第1のT細胞ホメオスタシス因子およびIL-7、IL-21、IL-15、またはIL-15スーパーアゴニストである第2のT細胞ホメオスタシス因子を含むMSR-SLB足場を提供する。この状況では、IL-15スーパーアゴニスト(IL-15 SA)は、IL-15と可溶性IL-15レセプター-αとの組み合わせであり、これは、IL-15単独より大きな生物学的活性を有する。IL-15 SAは、NKおよびメモリーCD8+ T(mCD8+ T)リンパ球を選択的に拡大するその能力から、魅力的な抗腫瘍および抗ウイルス薬剤と考えられる。Guoら, J Immunol. 2015 Sep 1;195(5):2353-64を参照のこと。
【0205】
本発明の実施形態はさらに、複数のT細胞刺激分子、T細胞共刺激分子およびT細胞ホメオスタシス因子を含む足場に関する。代表的な足場は、前述のT細胞刺激分子、T細胞共刺激分子およびT細胞ホメオスタシス因子の各々のうちの少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種、少なくとも11種、または11種超を含み得る。
【0206】
本発明の足場では、任意の機能的分子、例えば、抗原、抗体、タンパク質、酵素(これらのフラグメントを含む)は、慣用的な技術を使用して、MSR基部層および/またはSLB上に直接的または間接的に固定化され得る。ある種の実施形態において、その機能的分子は、オルガネラ(例えば、ゴルジ膜または形質膜)、細胞、細胞クラスター、組織、微生物、動物、植物、またはこれらの抽出物の中で提供され得、これは、翻って、MSR層またはSLB層上に固定化される。機能的分子はまた、所望の位置(例えば、SLB層の外面)での遺伝子操作または化学反応によって合成され得る。
【0207】
本明細書で記載される足場は、シグナル伝達分子、例えば、T細胞ホメオスタシス因子を含み、放出して、機能的T細胞応答を誘発する。一実施形態において、その放出されたT細胞ホメオスタシス因子は、内因性の供給源から単離されるか、またはインビボもしくはインビトロで合成されるポリペプチドである。例えば、内因性IL-2ポリペプチドは、健康なヒト組織から単離され得る。あるいは、合成機能的分子は、宿主生物または細胞(例えば、培養したヒト細胞株または哺乳動物(例えば、ヒト化マウスまたはウサギ))へのテンプレートDNAのトランスフェクションまたは形質転換を介して合成され得る。あるいは、タンパク質形態にある合成機能的分子は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または他の当該分野で認識される方法によって、インビトロで合成され得る(Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, Vol. 1, 2, 3(1989)(本明細書に参考として援用される))。
【0208】
機能的分子は、インビボでのタンパク質安定性を増大させるために改変され得る。あるいは、機能的分子は、多かれ少なかれ免疫原性であるように操作される。例えば、種々の機能的分子の構造が公知である限りにおいて、その配列は、免疫原性改変体を生成するために、アミノ酸残基のうちの1またはこれより多くにおいて、例えば、グリコシル化部位において、改変され得る。
【0209】
一実施形態において、機能的分子は、組換えである。あるいは、機能的分子は、哺乳動物対応物のヒト化誘導体である。機能的分子が由来する例示的な哺乳動物種としては、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、フェレット、ネコ、イヌ、サルまたは霊長類が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、機能的分子は、前述の機能的分子のヒトまたはヒト化バージョンである。
【0210】
前述の機能的分子、例えば、T細胞刺激分子、T細胞共刺激分子およびT細胞ホメオスタシス因子の各々は、互いから独立して、MSR基部層またはSLB基部層に吸着または組み込まれ得る。従って、一実施形態において、T細胞刺激分子がMSR基部層に吸着または組み込まれたAPC-MSが提供される。好ましくは、T細胞刺激分子がSLB層に吸着または組み込まれたAPC-MSが提供される。別の実施形態において、T細胞刺激分子がMSR基部層およびSLB層の両方に吸着または組み込まれたAPC-MSが提供される。別の実施形態において、T細胞共刺激分子がMSR基部層に吸着または組み込まれたAPC-MSが提供される。好ましくは、T細胞共刺激分子がSLB層に吸着または組み込まれたAPC-MSが提供される。さらに別の実施形態において、T細胞共刺激分子がMSR基部層およびSLB層の両方に吸着または組み込まれたAPC-MSが提供される。別の実施形態において、T細胞ホメオスタシス因子がMSR基部層に吸着または組み込まれたAPC-MSが提供される。別の実施形態において、T細胞ホメオスタシス因子がSLB層に吸着または組み込まれたAPC-MSが提供される。さらに別の実施形態において、T細胞ホメオスタシス因子がMSR基部層およびSLB層の両方に吸着または組み込まれたAPC-MSが提供される。
【0211】
一般に、機能的分子ならびにMSR基部層および/またはSLB層は、反応性基の使用を通じて一緒に連結され得、それらは代表的には、新たな有機性官能基または非反応性種へと連結プロセスによって変換される。その反応性官能基は、前述の構成要素のうちのいずれかに位置し得る。本発明の実施において有用な反応性基および反応のクラスは、一般に、バイオコンジュゲーションケミストリーの分野において周知であるものである。反応性キレート化合物で利用可能な反応の現在都合の良いクラスは、比較的穏やかな条件下で進行するものである。これらとしては、求核性置換(例えば、アミンおよびアルコールとアシルハライド、活性エステルとの反応)、求電子性置換(例えば、エナミン反応)、ならびに炭素-炭素および炭素-ヘテロ原子多重結合への付加(例えば、マイケル反応、ディールス-アルダー付加)が挙げられるが、これらに限定されない。これらおよび他の有用な反応は、例えば、March, Advanced Organic Chemistry, 第3版, John Wiley & Sons, New York, 1985; Hermanson, Bioconjugate Techniques, Academic Press, San Diego, 1996;およびFeeneyら, Modification of Proteins; vol. 198, American Chemical Society, Washington, D.C., 1982において考察される。
【0212】
有用な反応性ペンダント官能基としては、例えば、以下が挙げられる:
(a)カルボキシル基およびその種々の誘導体(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、N-ヒドロキシベンゾトリアゾールエステル、酸ハライド(例えば、I、Br、Cl)、アシルイミダゾール、チオエステル、p-ニトロフェニルエステル、アルキル、アルケニル、アルキニルおよび芳香族エステルが挙げられるが、これらに限定されない);
(b)ヒドロキシル基(これは、例えば、エステル、エーテル、アルデヒドなどに変換され得る)
(c)ハロアルキル基(ここでそのハライドは、求核性基(例えば、アミン、カルボキシレートアニオン、チオールアニオン、カルバニオン、またはアルコキシドイオンのような)と後に置換され得、それによって、ハロゲン原子の官能基において新たな基の共有結合的付着を生じる);
(d)ジエノフィル基(これは、ディールス-アルダー反応に関与し得る(例えば、マレイミド基のような));
(e)アルデヒドまたはケトン基(その後の誘導体化は、カルボニル誘導体(例えば、イミン、ヒドラゾン、セミカルバゾンまたはオキシムのような)の形成を介して、またはグリニャール付加もしくはアルキルリチウム付加のような機構を介して可能である);
(f)アミンとその後反応して、例えば、スルホンアミドを形成するためのスルホニルハライド基;
(g)チオール基(これは、例えば、ジスルフィドに変換され得るか、またはアシルハライドと反応させられ得る);
(h)アミンまたはスルフヒドリル基(これらは、例えば、アシル化される得るか、アルキル化され得るか、またはオキシド化され得る);
(i)アルケン(これは、例えば、環化付加、アシル化、マイケル付加などを受け得る);
(j)エポキシド(これは、例えば、アミンおよびヒドロキシル化合物と反応し得る);ならびに
(k)核酸合成において有用なホスホロアミダイトおよび他の標準的官能基。
【0213】
反応性官能基は、反応性キレート化合物をアセンブリするために必要な反応に関与しないか、または干渉しないように、選択され得る。あるいは、反応性官能基は、保護基の存在によって反応に関与することから保護され得る。当業者は、特定の官能基が選択された反応条件のセットに干渉しないように、その特定の官能基をどのように保護するかを理解する。例えば、Greeneら, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, New York, 1991を参照のこと。
【0214】
一実施形態において、機能的分子は、親和性ペアリングまたは化学的カップリングを介して、MSR基部層もしくはSLB、またはMSR層およびSLBの両方に負荷/吸着される。
【0215】
用語「親和性の対(affinity pair)」とは、本明細書で使用される場合、抗原-抗体、レセプター-ホルモン、レセプター-リガンド、アゴニスト-アンタゴニスト、レクチン-炭水化物、核酸(RNAもしくはDNA)のハイブリダイズする配列、FcレセプターもしくはマウスIgG-プロテインA、アビジン-ビオチン、ストレプトアビジン-ビオチン、ビオチン/ビオチン結合薬剤、Ni2+またはCu2+/Hisタグ(6×ヒスチジン)およびウイルス-レセプター相互作用を含む。種々の他の特異的結合対は、本発明の方法を実施することにおける使用に関して企図される。
【0216】
本明細書で使用される場合、「ビオチン結合薬剤(biotin binding agent)」とは、アビジン、ストレプトアビジンおよび他のアビジンアナログ(例えば、ストレプトアビジンまたはアビジン結合体、アビジンまたはストレプトアビジンの高度に精製され、かつ分画された種、ならびに非アミノ酸改変体または部分的アミノ酸改変体、ビオチン結合になお適合するアミノ酸置換もしくは化学的置換を有する組換えまたは化学合成されたアビジンアナログを包含する。好ましくは、各ビオチン結合薬剤分子は、少なくとも2つのビオチン部分、およびより好ましくは少なくとも4つのビオチン部分を結合する。本明細書で使用される場合、「ビオチン」は、ビオチンに加えて、ビオシチンおよび他のビオチンアナログ(例えば、ビオチンアミノカプロエートN-ヒドロキシスクシンイミドエステル、ビオチン4-アミド安息香酸、ビオチンアミドカプロイルヒドラジドならびに他のビオチン誘導体および結合体)を包含する。他の誘導体としては、ビオチン-デキストラン、ビオチン-ジスルフィド-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、ビオチン-6 アミドキノリン、ビオチンヒドラジド、d-ビオチン-N ヒドロキシスクシンイミドエステル、ビオチンマレイミド、d-ビオチンp-ニトロフェニルエステル、ビオチン化ヌクレオチドおよびビオチン化アミノ酸(例えば、Nε-ビオチニル-1-リジン)が挙げられる。
【0217】
親和性対形成を介して官能化され得るリガンドとしては、天然または合成の供給源から調製または単離される、レセプター、モノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体、ウイルス、化学療法剤、レセプターアゴニストおよびアンタゴニスト、抗体フラグメント、レクチン、アルブミン、ペプチド、プロテイン、ホルモン、アミノ糖、脂質、脂肪酸、核酸および細胞が挙げられるが、これらに限定されない。簡潔には、本発明の実施を通じて検出されるべき任意の分子エピトープまたはレセプターの任意の部位特異的リガンドが、利用され得る。好ましくは、そのリガンドは、膜結合タンパク質(membrane-anchored protein)である。そのリガンドはまた、膜結合タンパク質の誘導体(たとえば、可溶性細胞外ドメイン)であり得る。リガンドは、レセプター-レセプター細胞相互作用(例えば、MHCレセプターへのTCR結合)に関与するレセプターであり得る。
【0218】
本発明のリガンドは、当該分野で公知の任意の方法によって発現および精製され得る。ある種の実施形態において、そのタンパク質は、バキュロウイルスベースの昆虫発現系または哺乳動物発現系によって発現される。AVITAGTMペプチドの15個の残基は、その分子の全てのC末端に付加され得る。AVITAGTM(Avidity, CO)におけるリジン残基は、BirA酵素(Avidity, CO)によって特異的にビオチン化され得る。そのタンパク質はまた、細胞培養物の上清へと分泌されるようにデザインされ得る。
【0219】
機能的分子は、本明細書中上記で特に言及されるように、任意のタンパク質またはペプチドであり得る。好ましくは、そのタンパク質は、リガンド-レセプター相互作用に関与する。例えば、T細胞活性化の重要な事象は、T細胞とAPCとの間の膜-膜接触の結果であり、ここで種々のリガンド-レセプター相互作用が、2種の対向する膜(MHC-ペプチドおよびTCR、LFA-1およびICAM-1、CD2およびCD48、ならびにB7またはCTLA-4およびCD28が挙げられる)の間で起こる。これらの相互作用の結合価要件を理解すれば、ある種の抗原に対する免疫応答を増強または阻害する治療剤のデザインが促進される。本発明はまた、アゴニストおよびアンタゴニスト抗原によって誘導されるT細胞細胞内シグナル伝達経路における微妙な差異を研究するツールとして使用され得る。その足場は、生化学的分析をしばしば複雑にする天然の抗原提示細胞を使用することなく、微妙な差異を試験する間違いの少ない生理学的状況を提供する。
【0220】
ストレプトアビジン-ビオチン相互作用は、本明細書および実施例全体を通じて例証されると同時に、本明細書中上記で記載されるとおりの特異的結合対メンバーは、本発明の方法においてストレプトアビジンおよびビオチンの代わりに使用され得る。さらに、特異的結合対のうちの1より多くのセットは、特に、1種より多くのリガンドが膜表面に付着される場合に使用され得る。この状況では、旧来のpep-MHC-ストレプトアビジンテトラマー技術はまた、ある種のpep-MHC特異性のT細胞をスクリーニングするために使用され得る。しかし、同じ特異性を有するT細胞は、同じ抗原刺激によって活性化されてもよいし、活性化されなくてもよい。免疫応答(例えば、ワクチン接種[ウイルスまたはがんのワクチン]に対する応答、免疫寛容、自己免疫)を研究するために、それらの抗原に対する応答性に基づいて、T細胞を区別することは、重要である。T細胞活性化の指標として顕微鏡検査法によるカルシウムフラックスを使用して、本発明はまた、特定の抗原に応答する初代T細胞を定量するためにスクリーニングアッセイを提供する。あるいは、ビオチン化pep-MHCおよび共刺激分子は、ストレプトアビジン被覆チップ上にカップリングされ得、そのチップは、本発明の足場と対にされる。
【0221】
別の実施形態において、機能的分子は、MSR基部層および/またはSLB層に化学的にカップリングされる。ある種の実施形態において、化学的カップリングとしては、クリックケミストリー、例えば、アジド-アルキン化学(AAC)反応、ジベンゾ-シクロオクチン連結(DCL)、またはテトラジン-アルケン連結(TAL)が挙げられる。例えば、AACの状況では、MSRまたはSLBのいずれかが、複数の単一クリックケミストリー官能基を含み、そしてしばしば2種、3種またはこれより多くのこのような官能基を含む。1分子あたり1種または2種のこのような官能基が好ましい。一実施形態において、クリック可能試薬(clickable reagent)(例えば、3-アジドプロピルアミンまたは10-ウンデシン酸)は、相当するアルキンまたはアジド化合物および適切な触媒とのクリック反応を介してそれぞれ、ペプチドまたはタンパク質のカルボキシ末端またはアミノ末端にアミド結合されて、1,2,3-トリアゾール環連結基を形成し得る。例えば、米国公開番号2007/0060658を参照のこと。生体直交型銅非含有クリック試薬(bioorthogonal copper-free click reagent)の武器をさらに拡大するために、アジドカップリング反応のアザ-ジベンゾシクロオクチン(ADIBO)含有化合物は、タンパク質機能的分子(例えば、抗体、インターロイキンおよびサイトカイン)の部位特異的共有結合的なアンカーによる固定(anchoring)のために使用され得る。その同じ金属非含有クリック反応は、表面の非官能化領域のPEG化のために使用される。このような処理は、非特異的結合の劇的低減または完全な排除を可能にする。その銅非含有クリック固定化法は、種々のタイプのアレイの調製、ならびにマイクロビーズおよびナノ粒子の誘導体化に適用され得る。例えば、米国特許第8,912,322号を参照のこと。いくつかの実施形態において、機能的分子は、アジド、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)、トランスシクロオクテン、テトラジンおよびノルボルネンならびにこれらの改変体からなる群より選択されるクリック試薬を使用してMSR基部層および/またはSLB層にカップリングされる。いくつかの実施形態において、機能的分子は、アジドを含み、MSR-SLBの脂質二重層の脂質は、DBCOを含む。
【0222】
用語「クリックケミストリー(click chemistry)とは、反応性基を含む小さな単位を一緒に結合することによって迅速かつ信頼性高く共有結合を生成するように目的に合わせて作られる化学現象を記載する、The Scripps Research InstituteのK. Barry Sharplessによって導入された化学原理をいう。クリックケミストリーは、特定の反応に言及するのではなく、天然において見出される反応を模倣する反応を含む概念に言及する。いくつかの実施形態において、クリックケミストリー反応は、モジュール性であり、範囲が広く、高化学収量を与え、害にならない副生成物を生成し、立体特異的であり、単一の反応生成物を伴う>84kJ/モルの反応に都合のよい大きな熱力学的駆動力を示し、そして/または生理学的条件下で行われ得る。明確な発熱反応は、反応物を「飛躍的に効率的に」作製する。いくつかの実施形態において、クリックケミストリー反応は、高原子効率を示し、単純な反応条件下で行われ得、容易に利用可能な出発物質および試薬を使用し、毒性溶媒を使用しないか、または温和なもしくは容易に除去可能な溶媒(好ましくは、水)を使用し、そして/あるいはクロマトグラフィーでない方法(結晶化または蒸留)によって単純な生成物単離を提供する。
【0223】
用語「クリックケミストリーハンドル(click chemistry handle)」とは、本明細書で使用される場合、クリックケミストリー反応に参加し得る反応物、または反応性基に言及する。例えば、歪みアルキン、例えば、シクロオクチンは、クリックケミストリーハンドルである。なぜならそれは、歪み促進型環化付加に参加し得るからである。一般に、クリックケミストリー反応は、互いと反応し得るクリックケミストリーハンドルを含む少なくとも2種の分子を要求する。このような互いと反応性であるクリックケミストリーハンドル対はときおり、パートナークリックケミストリーハンドルと本明細書で言及される。例えば、アジドは、シクロオクチンまたは任意の他のアルキンに対するパートナークリックケミストリーハンドルである。本発明のいくつかの局面に従って使用するのに適した例示的クリックケミストリーハンドルは、本明細書で、例えば、US 2014/0249296で記載される。他の適切なクリックケミストリーハンドルは、当業者に公知である。
【0224】
一実施形態において、本発明は、複数のT細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子を、必要に応じてT細胞ホメオスタシス因子と一緒に含むAPC-MSを提供し、これらは、その足場へと金属-キレート化脂質ヘッド基を介して吸着される。Maloneyら, Chem Biol., 3(3):185-92, 1996を参照のこと。キレート化金属イオンを使用するいくつかのアプローチは、ヒスチジンタグ化タンパク質が、いくつかのタイプの界面(例えば、脂質界面および金属-キレート化脂質を有する脂質単層、金属キレート化アルカンチオールと形成される自己アセンブリ単層を有する金表面、および金属キレート化シランを有するオキシド表面)において固定化されることを可能にすることを報告した。例えば、Petersonら(米国特許第5,674,677号)は、有機キレート化剤をタンパク質(例えば、酵素)にカップリングし、そしてそのキレート化剤を金属イオンで荷電することによって2種のアミノ酸配列を連結するための方法を記載する。次いで、この複合体は、ヒスチジンタグを含む任意のタンパク質と混合されて、その複合体をヒスチジンタグ化タンパク質とカップリングする。米国特許第6,087,452号(これは、その全体において本明細書に参考として援用される)もまた参照のこと。
【0225】
本発明の機能的分子は、好ましくは、タンパク質である。用語「タンパク質(protein)」、「ペプチド(peptide)」および「ポリペプチド(poolypeptide)」は、交換可能に使用され、ペプチド(アミド)結合によって一緒に連結されたアミノ酸残基のポリマーに言及する。この用語は、任意のサイズ、構造、または機能のタンパク質、ペプチド、またはポリペプチドに言及する。代表的には、タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸の長さである。タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドは、個々のタンパク質またはタンパク質の集まりに言及し得る。タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドの中のアミノ酸のうちの1個またはこれより多くが、例えば、化学的実体(例えば、カルボキシレート基、ヒドロキシル基、ホスフェート基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、結合体化、官能化、または他の改変のためのリンカーなど)の付加によって改変され得る。タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドはまた、単一の分子であってもよいし、複数分子の複合体であってもよい。タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドは、単に、天然に存在するタンパク質またはペプチドのフラグメントであり得る。タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドは、天然に存在しても、組換えであっても、または合成であっても、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせであってもよい。
【0226】
用語「結合体化され(conjugated)または「結合体化(conjugation)」とは、2種の分子、例えば、2種のタンパク質を、これらが直接的なまたは間接的な共有結合的または非共有結合的な相互作用によって連結されるような方法で互いと会合することに言及する。クリックケミストリーを介する結合体化の状況では、その結合体化は、クリックケミストリーハンドルの反応によって形成される共有結合を介してであり得る。ある種の実施形態において、その会合は共有結合的であり、そしてその実体は、互いに「結合体化される」といわれる。いくつかの実施形態において、タンパク質は、別の分子、例えば、第2のタンパク質に、そのタンパク質と他の分子との間に、そのタンパク質が翻訳された後に、そしていくつかの実施形態では、そのタンパク質が単離された後に共有結合を形成することによって翻訳後に結合体化される。いくつかの実施形態において、そのタンパク質および第2の分子、例えば、第2のタンパク質の翻訳後結合体化は、そのタンパク質上にクリックケミストリーハンドルを、およびその第2の分子上に第2のクリックケミストリーハンドル(これは、その第1のクリックケミストリーハンドルに反応し得る)を取り付け、そしてクリックケミストリーハンドルが反応し、そのタンパク質と第2の分子との間で共有結合を形成するクリックケミストリー反応を行い、従って、キメラタンパク質を生成することを介してもたらされる。いくつかの実施形態において、2種のタンパク質は、それらそれぞれのC末端において結合体化され、C-C結合体化キメラタンパク質を生成する。いくつかの実施形態において、2種のタンパク質は、それらそれぞれのN末端において結合体化され、N-N結合体化キメラタンパク質を生成する。
【0227】
ある種の実施形態において、複数の検出可能な標識は、結合体化プロセスを分析および/または研究するために使用され得る。本明細書で使用される場合、「検出可能な標識(detectable label)」とは、その分子(例えば、タンパク質もしくはポリペプチド)またはその標識が付着される他の実体の検出を可能にする部分へと組み込まれた少なくとも1種の元素、同位体、または官能基を有する部分をいう。標識は、直接的に(すなわち、結合を介して)付着され得るか、またはテザー(例えば、テザーを作製し得る、必要に応じて置換されたアルキレン;必要に応じて置換されたアルケニレン;必要に応じて置換されたアルキニレン;必要に応じて置換されたヘテロアルキレン;必要に応じて置換されたヘテロアルケニレン;必要に応じて置換されたヘテロアルキニレン;必要に応じて置換されたアリーレン;必要に応じて置換されたヘテロアリーレン;または必要に応じて置換されたアシレン(acylene)、またはこれらのうちの任意の組み合わせのような))によって付着され得る。その標識は、分子、例えば、タンパク質、ポリペプチド、または他の実体へと、任意の位置において付着または組み込まれ得ることが認識される。
【0228】
一般に、標識は、5つのクラスのうちのいずれか1つ(またはこれより多く)に入り得る:a)同位体部分(これは、放射反応性または重い同位体であり得る)を含む標識(H、H、13C、14C、15N、18F、31P、32P、35S、67Ga、99mTc(Tc-99 m)、111In、125I、131I、153Gd、169Yb、および186Reが挙げられるが、これらに限定されない);b)免疫部分を含む標識(これは、抗体または抗原であってもよいし、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼのような)に結合されてもよい);c)着色、発光、リン光、または蛍光の部分である標識(例えば、蛍光標識フルオレセインイソチオシアネート(FITC)またはカルボキシフルオレセインのような);d)1種またはこれより多くの光親和性部分を有する標識;ならびにe)1種またはこれより多くの公知の結合パートナー(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン、FK506-FKBP)のリガンドである標識。ある種の実施形態において、標識は、放射活性同位体、好ましくは検出可能な粒子を発する同位体を含む。ある種の実施形態において、その標識は、蛍光部分を含む。ある種の実施形態において、その標識は、蛍光標識、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)である。ある種の実施形態において、その標識は、1種またはこれより多くの公知の結合パートナーを有するリガンド部分を含む。ある種の実施形態において、その標識は、ビオチンを含む。いくつかの実施形態において、標識は、蛍光ポリペプチド(例えば、GFPまたはその誘導体(例えば、増強GFP(EGFP)))またはルシフェラーゼ(例えば、ホタル、Renilla、またはGaussiaのルシフェラーゼ)である。ある種の実施形態において、標識が適切な基質(例えば、ルシフェリン)と反応して、検出可能なシグナルを生成し得ることは理解される。蛍光タンパク質の非限定的な例としては、GFPおよびその誘導体、種々の色の光を発する発色団を含むタンパク質(例えば、赤、黄色、およびシアン蛍光タンパク質など)が挙げられる。例示的な蛍光タンパク質としては、以下が挙げられる:例えば、Sirius、Azurite、EBFP2、TagBFP、mTurquoise、ECFP、Cerulean、TagCFP、mTFP1、mUkG1、mAG1、AcGFP1、TagGFP2、EGFP、mWasabi、EmGFP、TagYPF、EYFP、Topaz、SYFP2、Venus、Citrine、mKO、mKO2、mOrange、mOrange2、TagRFP、TagRFP-T、mStrawberry、mRuby、mCherry、mRaspberry、mKate2、mPlum、mNeptune、T-Sapphire、mAmetrine、mKeima。例えば、Chalfie, M. and Kain, S R(編) Green fluorescent protein: properties, applications, and protocols(Methods of Biochemical Analysis, v. 47). Wiley-Interscience, Hoboken, N.J., 2006、ならびに/またはGFPおよび多くの他の蛍光もしくは発光タンパク質の考察に関してはChudakovら, Physiol Rev. 90(3):1103-63, 2010を参照のこと。いくつかの実施形態において、標識は、ダーククエンチャー(例えば、発蛍光団からの励起エネルギーを吸収し、熱としてエネルギーを放散する物質)を含む。
【0229】
別の実施形態において、機能的分子は、当該分野で公知の共有結合的または非共有結合的な負荷技術を使用して、メソポーラスシリカおよび/または脂質二重層上に負荷され得る。一実施形態において、機能的分子は、非共有結合的に負荷される。例えば、Leiら(米国公開番号2011-0256184)は、天然のまたは官能化された構造内に非共有結合を介してIgGのような抗体の増強された自発的負荷を提供するメソポーラスシリケートを記載する。よって、本発明の足場は、このようなシリケートで製剤化され得る。
【0230】
別の実施形態において、機能的分子は、MSR上に化学的にカップリングされる。このような実施形態において、そのカップリングは、以下の分子およびその中に含まれる反応性基のうちの1種またはこれより多くを利用することによって行われ得る:システイン(チオール基)、セリンまたはスレオニン(ヒドロキシル基)、リジン(アミノ基)、アスパラギン酸またはグルタミン酸(カルボキシル基)。あるいは、その機能的分子は、ポリヒスチジンタグ(Hisタグ)、ポリヒスチジンタグを含むペプチドまたはポリヒスチジンタグを含む抗体の利用を介してMSRに結合体化され得る。本明細書において、そのポリヒスチジンタグは、少なくとも4個、5個、6個または7個のヒスチジン(His)残基からなる。
【0231】
一実施形態において、アンカー(anchor)は、機能的分子を孔の壁に接続するために使用される。しかし、そのアンカーは、必須の構成要素ではない。ある種の実施形態において、メソポーラスシリカの各孔は、少なくとも1つの機能的分子に適合する。従って、その孔は、生物学的物質を固定化するために適したサイズを有しなければならない。孔のサイズは、固定化されるべき機能的分子のサイズに依存する。機能的分子が孔に固定化される場合、その機能的分子は、静電的結合によってその孔の内表面に吸着され得る。機能的分子はまた、非共有結合的結合(例えば、ファン・デル・ワールス力、水素結合、またはイオン結合)によって孔の中に維持され得る。
【0232】
MSRがアンカーにより固定する部分を含む前述の実施形態において、そのアンカーは、機能的分子の大きな構造変化を低減して、これを安定して維持するという効果を有し得る。好ましくは、そのアンカーは、メソポーラス材料と実質的に同じ構成要素から構成される。そのアンカーは、所望の機能的分子への結合を可能にする1種またはこれより多くの官能基:ヒドロキシル基、アミド基、アミノ基、ピリジン基、ウレア基、ウレタン基、カルボキシル基、フェノール基、アゾ基、ヒドロキシル基、マレイミド基、シラン誘導体、またはアミノアルキレン基を含み得る。
【0233】
本発明の実施形態はさらに、本発明のMSR-SLB足場(脂質マトリクスの中に吸着される複数の前述の機能的分子を含むこのような足場を含む足場が挙げられる)に関する。
【0234】
一実施形態において、機能的分子は、物理的挿入を介して支持脂質二重層の中に吸着される。両親媒性分子の二重層の中にタンパク質を挿入するための技術は、当該分野で公知である。一実施形態において、二重層の環境の中、例えば、疎水性媒体および/または親水性本体および/または水和支持体の中にあるタンパク質は、その二重層の中に自発的に挿入され得る。あるいは、タンパク質は、電圧の印加によっておよび/またはタンパク質負荷小胞と二重層との融合によって、二重層の中に押しやられ得る。その小胞は、親水性本体の中に含まれてもよいし、その本体へと導入されてもよい。一例では、タンパク質は、PCT公開番号WO 2009/024775に開示されるプローブ法を使用することによって膜の中に導入され得る。その挿入されたタンパク質は、公知の膜会合タンパク質(例えば、前述のT細胞活性化分子および/またはT細胞共刺激分子のうちの1種もしくはこれより多く)であり得る。
【0235】
別の実施形態において、機能的分子は、T細胞の拡大において使用される抗原であり得る。T細胞拡大において使用可能なこのような抗原の代表的な例としては、全長CD19またはそのフラグメントまたはその改変体が挙げられる。CD19は、キメラ抗原レセプター(CAR)T細胞の拡大において使用される基本型の抗原である。Turtleら, Blood, 126:184, 2015; Turtleら, J Clin Invest., 126, 2123-38, 2016を参照のこと。別の実施形態において、その抗原は、全長CD22またはそのフラグメントまたはその改変体であり、これらはまた、CAR T細胞の拡大において有用である。Hasoら, Blood, 121(7): 1165-1174, 2013; Qinら, Blood, 122:1431, 2013を参照のこと。
【0236】
代替の実施形態において、機能的分子は、二重層へと直接的または間接的にアンカーにより固定される膜会合タンパク質であり得る。他の機能的分子(例えば、選択的もしくは非選択的膜輸送タンパク質、イオンチャネル、孔形成タンパク質または膜内在レセプター(membrane-resident receptor)など)はまた、この方法を介してSLBの中に挿入され得る。
【0237】
別の実施形態において、機能的分子は、SLBと会合するおよび/またはSLBの中に挿入する膜会合タンパク質(例えば、グラミシジン);αヘリックスバンドル(例えば、バクテリオロドプシンもしくはK+チャネル);およびβバレル(例えば、α-溶血素、ロイコシジンもしくはE.coliポリン);またはこれらの組み合わせに結合体化され得る。
【0238】
ある種の実施形態において、製作されたSLB(1種またはこれより多くの機能的分子を含む)は、イオン性または非イオン性の界面活性剤のような化合物によって安定化され得る。適切な界面活性剤としては、以下の例が挙げられるが、これらに限定されない:合成リン脂質、これらの水素化誘導体および混合物、スフィンゴ脂質および糖スフィンゴ脂質、飽和もしくは不飽和の脂肪酸、脂肪アルコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、エトキシル化脂肪酸およびそのエステルもしくはエーテル、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、または上記で言及されたもののうちの2種もしくはこれより多くの組み合わせ。本発明に従う好ましい界面活性剤は、ジミリストイルホスファチジルグリセロールである。
【0239】
製作されたSLBは、ブタノール、酪酸、ヘキサン酸、コール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウムおよびグリココール酸ナトリウムを含むかまたはこれらからなる群の中で選択される少なくとも1種の補助界面活性剤、より具体的には、コール酸ナトリウムによって必要に応じて安定化され得る。
【0240】
製作されたSLBはまた、他の賦形剤(例えば、生体接着性または吸着増強特性を有するポリマー)を含み得、アクリルポリマー(CARBOPOL(登録商標)、Polycarbophil、NOVEON(登録商標))、中鎖脂肪酸およびポリエチレングリコールを含むかまたはこれらからなる群より選択され得る。好ましい賦形剤は、上記で言及したアクリルポリマーである。
【0241】
SLBは、膜会合タンパク質を検出するための試薬で改変され得る。好ましくは、その膜会合タンパク質は、イオンチャネルタンパク質および/または孔形成タンパク質である。好ましくは、その膜会合タンパク質は、二重層において特性の検出可能な変化を引き起こして、二重層の中に拡散するおよび/または二重層と会合する。その変化した特性は、物理的、光学的、電気的または生化学的であり得る。
【0242】
いくつかの実施形態において、MSR-SLB足場および/または抗原提示細胞模倣足場は、低分子薬物を含む。いくつかの実施形態において、MSR-SLB足場および/または抗原提示細胞模倣足場は、サロミドアナログを含む。いくつかの実施形態において、MSR-SLB足場および/または抗原提示細胞模倣足場は、IDO/MEKインヒビターを含む。いくつかの実施形態において、MSR-SLB足場および/または抗原提示細胞模倣足場は、免疫調節効果を有する低分子薬物を含む。免疫調節効果を有する低分子薬物は、当該分野で公知である(例えば、Murphyら Hum. Vaccin. Immunother. 11(10): 2463-8(2015)(その内容全体は、本明細書に明示的に参考として援用される)を参照のこと)。
【0243】
ある種の実施形態において、機能的分子を含むMSR-SLB足場は、二重層の中の両親媒性分子とおよび/または二重層の中の機能的分子と相互作用し得る細胞を検出するために使用され得る。その相互作用は、本質的に特異的であってもよいし、非特異的であってもよい。あるいは、その細胞は、物理的、光学的、電気的、または生化学的な変化を引き起こすために、機能的分子と、または脂質二重層と相互作用してもよい。このような相互作用は、多くの異なる方法(視覚的な変化によって、SLBの中の蛍光標識された脂質もしくはタンパク質の活性化、またはSLBのキャパシタンスの変化を介して、が挙げられるが、これらに限定されない)で検出され得る。
【0244】
生分解性足場
本発明の実施形態はさらに、生分解性足場に関する。一実施形態において、その足場構造は、生物学的環境に曝される場合に、実質的に分解し得る。一実施形態において、その生物学的環境は、組織培養条件、例えば、リンパ球(例えば、T細胞)を培養するために必要に応じて適合された組織培養培地である。別の実施形態において、その生物学的環境は、生物学的流体、例えば、血液、リンパ液、CSF、腹水などである。さらに別の実施形態において、その生物学的環境は、移植部位における組織環境(例えば、血管、リンパ系、脂肪組織など)である。
【0245】
ある種の実施形態において、生分解性足場は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7,日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、20日間、30日間、45日間、60日間、90日間、または90日間超にわたるインビボでの生物学的環境との接触後に実質的に分解される。ある種の実施形態において、生分解性足場は、1週間未満でインビボでの生物学的環境との接触後に実質的に分解される。ある種の実施形態において、生分解性足場は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7,日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、20日間、30日間、45日間、60日間、90日間、または90日間超にわたるインビトロでの生物学的環境との接触後に実質的に分解される。ある種の実施形態において、生分解性足場は、1週間未満でインビトロの生物学的環境との接触後に実質的に分解される。実質的な分解とは、足場組成物のうちの少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも90%、少なくとも95%、または95%超が、その足場組成物が生物学的環境と接触されている場合に分解することを意味する。
【0246】
ある種の実施形態において、生分解性足場を使用することは有利であり得る。例えば、足場組成物を、これがインキュベーション期間の間に(例えば、T細胞が拡大することが可能にされる場合に)実質的に分解するように製作することによって、さらなる精製および/または製剤化工程に供する必要なしに、拡大されたT細胞を使用することは、可能である得る。下流の精製および/または製剤化工程を回避することは、T細胞が所望の適用のために所望の機能性に適合し、その機能性を有することを担保する。
【0247】
よって、ある種の実施形態において、足場組成物の分解動態を、メソポーラスシリカロッドの特性(例えば、サイズ、幾何形状、多孔性)を改変することによって目的に合わせて作ることは、有利であり得る。あるいは、足場組成物の分解動態は、培養条件を変化させることによって(例えば、培地のpHを調節することによって)改変され得る。
【0248】
前述の目的によれば、本発明の実施形態は、必要に応じて生分解性である、複数の機能的分子を含むMSR-SLB足場に関する。一実施形態において、本発明の足場は、他の生分解性足場へと被包され得る。このような複合生分解性足場組成物を作製するにあたって有用である試薬および技術は、当該分野で公知である。Liaoら, J. Biomed. Mater. Res. B. Appl. Biomater., 102(2):293-302, 2014を参照のこと。一実施形態において、足場は、生理学的に適合性でありかつ必要に応じて生分解性のポリマーから作製される。足場において使用可能なポリマーの例は、当該分野で公知である。例えば、米国公開番号2011/0020216(その内容全体は、本明細書に参考として援用される)を参照のこと。このようなポリマーの代表的な例としては、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリエーテルエステル、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリシアノアクリレート、ポリウレタン、ポリアクリレートおよびこれらのブレンドまたはコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。生分解性足場は、生分解性物質、例えば、コラーゲン、アルギネート、ポリサッカリド、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、またはポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)またはシルクを含み得る。足場組成物を製作するための方法は、当該分野で公知である。例えば、Martinsenら(Biotech. & Bioeng., 33(1989) 79-89),(Matthewら(Biomaterials, 16(1995) 265-274), Atalaら(J Urology, 152(1994) 641-643)、およびSmidsrod(TIBTECH 8(1990) 71-78)(これらの開示は、本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
【0249】
例示的な足場は、比較的低分子量の、好ましくは、溶解後に、ヒトによるクリアランスに関して腎閾値にあるサイズのグリコリドまたはアルギネートを利用し、例えば、そのアルギネートまたはポリサッカリドは、1000~80,000ダルトンの分子量に低減される。好ましくは、その分子質量は、1000~60,000ダルトン、特に好ましくは、1000~50,000ダルトンである。高グルロネート含有量のアルギネート物質を使用することも有用である。なぜならグルロネートユニットは、マンヌロネートユニットとは対照的に、二価カチオンを通じてイオン性架橋のための部位を提供して、ポリマーをゲル化するからである。例えば、米国特許第6,642,363号(本明細書に参考として援用される)は、ポリサッカリド(例えば、アルギネート)を含むポリマーを作製および使用するための方法を開示する。
【0250】
本発明の足場は、足場が抗原提示を維持し得、免疫細胞を誘引および操作し得るように多孔性であり得る。一実施形態において、足場は、多孔性マトリクスを含み、ここでその孔は、10nm~500μmの間、特に、100nm~100μmの間の直径を有する。これらの実施形態において、本発明は、メソポーラス足場を含む足場を利用する。所望の孔サイズおよび孔アラインメントを有するポリマーマトリクスを作製するための方法は、当該分野で、例えば、米国公開番号2011/0020216および米国特許第6,511,650号(これらは、本明細書に参考として援用される)に記載される。
【0251】
メソポーラスシリカロッドは、薬物(例えば、化学療法剤およびDNA/siRNA、抗体およびタンパク質生物製剤、細胞など)を送達するための多機能送達プラットフォームへと改変され得る(Leeら, Adv. Funct. Mater., 215-222, 2009; Liongら, ACS Nano, 889-896, 2008; Mengら, ACS Nano, 4539-4550, 2010; Mengら, J. Am. Chem. Soc., 12690-12697, 2010; Xiaら, ACS Nano, 3273-3286, 2009; Raduら, J. Am. Chem. Soc., 13216-13217, 2004; Slowingら, J. Am. Chem. Soc., 8845-8849, 2007)。この送達プラットフォームは、制御されかつ要求に応じた送達のための、送達部位をも画像化するさらなる能力を有する、疎水性および荷電した抗がん薬の有効かつ保護的なパッケージングを可能にする(Liongら, ACS Nano, vol. 2, pp. 889-896, 2008)。現在の重要な難題は、効率的かつ安全なインビボでの薬物送達のためのデザインの特徴を最適化することであり(Heら, Small, vol. 7, pp. 271-280, 2011; Leeら, Angew. Chem. Int. Ed., vol. 49, pp. 8214-8219, 2010; Liuら, Biomaterials, vol. 32, pp. 1657-1668, 2011; Al Shamsiら, Chem. Res. Toxicol., vol. 23, pp. 1796-1805, 2010)、これらは、ヌードマウスにおけるヒト異種移植片腫瘍の使用を通じて評価され得る(Luら, Small, vol. 6, pp. 1794-1805, 2010)。
【0252】
本明細書で記載される実施形態はさらに、MSR-SLB足場(このような足場を含む足場が挙げられる)に関し、ここでメソポーラスシリカマイクロロッド(MSR) 対 T細胞活性化/共刺激分子の乾燥重量比は、約1:1~約100:1の間、好ましくは約10:1~約50:1の間、特に約20:1~約50:1の間である。いくつかの実施形態において、MSR-SLB足場のメソポーラスシリカマイクロロッド(MSR) 対 T細胞活性化/共刺激分子の乾燥重量比は、約10,000:1~約1:1の間である。いくつかの実施形態において、MSR-SLB足場のメソポーラスシリカマイクロロッド(MSR) 対 T細胞活性化/共刺激分子の乾燥重量比は、約5,000:1~約1:1の間、約1,000:1~約1:1の間、約500:1~約1:1の間、約100:1~約1:1の間である。いくつかの実施形態において、MSR-SLB足場のメソポーラスシリカマイクロロッド(MSR) 対 T細胞活性化/共刺激分子の乾燥重量比は、約10,000:1、約5,000:1、約2,500:1、約1,000:1、約750:1、約500:1、約250:1、約100:1、約75:1、約50:1、約40:1、約30:1、約25:1、約20:1、約10:1、または約1:1である。
【0253】
本明細書で記載される実施形態はさらに、MSR-SLB足場を、機能的分子(例えば、T細胞活性化分子、T細胞共刺激分子、およびT細胞ホメオスタシス因子)と一緒に、必要に応じて1種もしくはこれより多くのさらなる薬剤(以下で列挙)と一緒に含む前述の足場を含む組成物およびデバイスに関する。一実施形態において、本発明は、足場およびその中にクラスター化したT細胞を含む組成物を提供する。一実施形態において、そのT細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、CD3+ T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、および調節性T細胞(Treg)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される。他の実施形態において、その組成物は、薬学的組成物であり得、これは、当該分野で周知の方法を使用して生成され得る。例えば、薬学的組成物は、医科学の許容された原理を使用して、当業者によって生成され得る。その組成物、足場、およびデバイスは、目的の細胞を選択し、培養し、拡大し、維持し、そして/または移植するための1種またはこれより多くの試薬とともに提供され得る。T細胞、B細胞および抗原提示細胞に関する細胞選択キット、培養キット、拡大キット、移植キットの代表的な例は、当該分野で公知である。例えば、目的の標的細胞がT細胞である場合、このような細胞は、DYNABEADS、MACS-beads(Miltenyi Biosciences)を使用して最初にソートされ得、STEMXVIVOヒトT細胞基礎培地(R&D Systems)中で維持され得、OPTIMIZER培養培地(Thermo Fisher Scientific)で拡大され得る。その細胞は、当業者に公知の遠心分離技術(例えば、FICOLL(登録商標)勾配が挙げられる)を使用することによってサンプル中で富化され得る。細胞はまた、ある種のマーカーの発現に基づいて、正の選択、負の選択、またはこれらの組み合わせを使用することによってサンプル中で富化され得る。
【0254】
本発明のさらなる実施形態は、T細胞操作デバイスに関する。そのデバイスは、本発明の足場を、標的T細胞を誘引/結合する複数の分子と一緒に含む。一実施形態において、本発明は、メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)へのT細胞の浸潤を選択的に可能にするように積み重ねられた足場を含むデバイスに関する。選択的浸潤とは、選択的許容性/透過性、結合の特異性、選択的排除(望ましくない細胞の)および/または拡大(望ましい細胞の)のせいで、その足場が、全血中に存在する標的T細胞と比較して、インキュベーション期間後に、少なくとも10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、100%超、150%超、200%超、300%超、400%超、500%超、600%超、800%超、1000%超、またはこれより多くの数の標的T細胞を含むことを意味する。ある種の実施形態において、そのインキュベーション期間は、1~30日間の間、好ましくは4~15日間の間、特に7~12日間の間である。他の実施形態において、選択的浸潤は、他の血球(例えば、全血中に存在するB細胞、樹状細胞、マクロファージ、赤血球または血小板)と比較して、T細胞の保持および/または拡大に関する。
【0255】
他の実施形態において、本発明の足場は、T細胞、例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、CD3+ T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、または調節性T細胞(Treg)の特定の部分集団の選択的浸潤を可能にする。本明細書では、足場は、全血中に存在する標的T細胞と比較して、4~14日間のインキュベーション後に少なくとも10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、100%超、150%超、200%超、300%超、400%超、500%超、600%超、800%超、1000%超、またはこれより多くの数の標的T細胞を含む。ヒト全血中の種々のタイプのリンパ球のパーセンテージおよび範囲は、以下のとおりである:NK細胞 7%(範囲:2~13%);ヘルパーT細胞 46%(範囲:28~59%);細胞傷害性T細胞 19%(範囲:13~32%);γδ T細胞 5%(範囲:2%~8%);B細胞 23%(範囲:18~47%)(Berringtonら, Clin Exp Immunol 140(2): 289-292, 2005)。
【0256】
さらなる薬剤
本発明の足場は、1種またはこれより多くの薬剤を含み、これらは、天然に存在するか、合成して生成されるか、または組換えの化合物(例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、低分子、ハプテン、炭水化物、または他の薬剤)であり得る(これらのフラグメントまたはこれらの組み合わせを含む)。一実施形態において、その薬剤は、抗原である。一実施形態において、その抗原は、ペプチドもしくはタンパク質またはその免疫学的に活性なフラグメントである。一実施形態において、本明細書で記載される抗原は精製される。精製された化合物は、少なくとも60重量%(乾燥重量)の目的の化合物を含む。特に、その抗原は、少なくとも75%純粋、好ましくは少なくとも90%純粋、およびより好ましくは少なくとも99%純粋である。純度は、任意の適切な方法によって、例えば、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、またはHPLC分析によって、測定される。その抗原は、自己抗原であってもよいし、非自己抗原であってもよい。
【0257】
非自己抗原の代表的な例としては、例えば、ウイルス、細菌、原生動物、寄生生物、および真菌からなる群より選択される病原体に由来する抗原が挙げられる。その抗原は、MHC分子(例えば、HLA-A、HLA-B、HLA-C、DP、DQおよびDR)上に必要に応じて負荷され得、次いで、これらは、足場へと組み込まれる。
【0258】
あるいは、足場は、複数の自己抗原(これらは、必要に応じて疾患または障害と連鎖するかまたは関連する)を含む。好ましくは、その自己抗原は、ヒトの疾患または障害と特異的に関連する。一実施形態において、その自己抗原は、関節リウマチ、狼瘡、セリアック病、炎症性腸疾患もしくはクローン病、シェーグレン症候群、リウマチ性多発筋痛(polymyalgia rheumatic)、多発性硬化症、強直性脊椎炎、I型糖尿病、円形脱毛症、血管炎、側頭動脈炎などからなる群より選択される自己免疫障害と関連する。I型糖尿病、多発性硬化症、クローン病、および関節リウマチなどと関連する抗原の特異的タイプ(そのフラグメントを含む)は、文献中で特徴づけられている。例えば、関節リウマチ関連抗原は、47kDaタンパク質(RA-A47)である。Hattoriら, J Bone Miner Metab., 18(6):328-34(2000)を参照のこと。クローン病において、その抗原は、細菌のフラジェリンであり得る。Lodesら, J Clin Invest. 113(9):1296-306(2004)を参照のこと。同様に、主要ミエリンタンパク質(例えば、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)およびプロテオリピドタンパク質(PLP))は、多発性硬化症(MS)の経過において重要であるようである。deRosboら, J Clin Invest. 92(6): 2602-260(1993)を参照のこと。I型糖尿病の状況では、複数の自己抗原が関わり得る(例えば、プレプロインスリン(PPI)、膵島特異的グルコース-6-ホスファターゼ(IGRP)、グルタメートデカルボキシラーゼ(GAD65)、インスリノーマ抗原-2(IA-2)、クロモグラニンAおよびヒートショックタンパク質60)。Roepら, Cold Spring Harb Perspect Med.2(4), 2012(PMID: 22474615)を参照のこと。
【0259】
別の実施形態において、自己抗原は、がんと関連する。がん抗原の代表的なタイプとしては、以下が挙げられる:例えば、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、CEA、チロシナーゼ、ミッドカイン、BAGE、CASP-8、β-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、CA-125、CDK-1、CDK4、ESO-1、gp75、gp100、MART-1、MUC-1、MUM-1、p53、PAP、PSA、PSMA、ras、trp-1、HER-2、TRP-1、TRP-2、IL13Rα、IL13Rα2、AIM-2、AIM-3、NY-ESO-1、C9orf 112、SART1、SART2、SART3、BRAP、RTN4、GLEA2、TNKS2、KIAA0376、ING4、HSPH1、C13orf24、RBPSUH、C6orf153、NKTR、NSEP1、U2AF1L、CYNL2、TPR、SOX2、GOLGA、BMI1、COX-2、EGFRvIII、EZH2、LICAM、Livin、Livinβ、MRP-3、ネスチン、OLIG2、ART1、ART4、B-サイクリン、Gli1、Cav-1、カテプシンB、CD74、E-カドヘリン、EphA2/Eck、Fra-1/Fosl 1、GAGE-1、ガングリオシド/GD2、GnT-V、β1,6-N、Ki67、Ku70/80、PROX1、PSCA、SOX10、SOX11、サバイビン、UPAR、WT-1、ジペプチジルペプチダーゼ IV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(AD Abp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、T細胞レセプター/CD3-ζ鎖、腫瘍抗原のGAGEファミリー、RAGE、LAGE-I、NAG、GnT-V、RCASl、α-フェトプロテイン、pl20ctn、Pmel117、PRAME、脳型グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX-I、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-I、SSX-4、SSX-5、SCP-I、CT-7、cdc27、腺腫様多発結腸ポリープタンパク質(APC)、フォドリン、PlA、コネキシン37、Ig-イディオタイプ、pl5、GM2、GD2ガングリオシド、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp-1、EBVコード核抗原(EBNA)-I、UL16結合タンパク質様転写物1(Mult1)、RAE-1タンパク質、H60、MICA、MICB、およびc-erbB-2、またはこれらの免疫原性ペプチド、ならびにこれらの組み合わせ。
【0260】
別の実施形態において、抗原は、改変されたT細胞、例えば、上記で記載されるCAR T細胞の標的である。このような実施形態において、その抗原は、CD19またはそのフラグメントまたはその改変体である。別の実施形態において、その抗原は、CD22またはそのフラグメントまたはその改変体である。
【0261】
前述の抗原は、任意の公知の方法(共有結合的および非共有結合的な相互作用を含む)を使用して、足場組成物と組み合わされ得る。これらの方法のうちのいくつかは、MSR-SLB足場を本発明の機能的分子とともに製作することに関連する節において、上記で概説されている。非共有結合的な相互作用の例としては、例えば、静電的相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、π効果、疎水性相互作用、物理的挿入などが挙げられる。例えば、全長膜貫通タンパク質抗原は、慣用的方法を使用する物理的挿入を介して、脂質二重層の中に組み込まれ得る。Cymerら, Journal of Molecular Biology, 427.5: 999-1022, 2015および米国特許第7,569,850号(これらは、本明細書で参考として援用される)を参照のこと。
【0262】
抗原はまた、共有結合的な相互作用を介して、足場組成物に付着され得るかまたはテザーで繋がれ得る。抗原を足場/表面に付着させるための方法は、当該分野で公知である(例えば、表面吸着、例えば、足場材料の中に物質を捕捉するための相変化を使用する物理的固定化)。あるいは、アルキル化剤またはアシル化剤を介する共有結合的なカップリングは、規定されたコンホメーションにおいて足場上に抗原の安定な長期の提示を提供するために使用され得る。ペプチド/タンパク質をポリマーに共有結合的にカップリングするための例示的な試薬および方法は、当該分野で公知である。例えば、米国特許第6,001,395号(これは、本明細書に参考として援用される)を参照のこと。他の実施形態において、抗原は、足場の中に被包される。抗原を適切な足場(例えば、PLGAマイクロスフェア)の中に被包するための方法は、当該分野で公知である。例えば、米国特許第6,913,767号および国際公開番号WO 1995/011010(これらの各々の開示は、本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
【0263】
抗原は、直接的結合または間接的結合を介して、免疫細胞と相互作用するように製剤化され得る。直接的結合のタイプとしては、例えば、抗原とコグネートレセプター(例えば、T細胞レセプター)とのエンゲージメントまたはカップリングが挙げられる。間接的結合は、1種またはこれより多くの二次的薬剤または細胞タイプの仲介を通じて起こり得る。例えば、その抗原は、B細胞または抗原提示細胞(APC)に先ず結合され得、プロセシングされ得(例えば、分解され得)、細胞表面主要組織適合遺伝子複合体(MHC)(これに対して標的細胞集団(例えば、T細胞)が結合する)上に提示され得る。あるいは、その抗原は、種々のサイトカイン、増殖因子、ケモカインなどを分泌する他の仲介細胞を動員し得、これは翻って、標的免疫細胞集団を誘引する。機構が何であろうと、その動員された構成要素は、免疫細胞を操作または改変するために協働して作用する。
【0264】
抗原は、細胞溶解物、分画された細胞溶解物、新鮮に採取された細胞、生物学的流体(血液、血清、腹水が挙げられる)、組織抽出物などに由来し得る。一実施形態において、抗原は、所望の免疫細胞(例えば、T細胞)が結合する標的細胞の溶解物に由来する。これらの実施形態において、その抗原は、足場に負荷する前に、その細胞溶解物において先ず分画される。その溶解物は、所望の標的組織(例えば、初代組織から得られた自己免疫疾患特異的細胞)に由来し得る。あるいは、その溶解物は、がん細胞(例えば、腫瘍サンプルもしくは組織培養物から得られる個々の細胞、または生検組織構造から得られる腫瘍細胞)に由来し得る。
【0265】
本発明の足場はまた、1種またはこれより多くの動員薬剤を含み得る。その動員薬剤は、T細胞動員薬剤、B細胞動員薬剤、樹状細胞動員薬剤、およびマクロファージ動員薬剤からなる群より選択される薬剤であり得る。
【0266】
一実施形態において、足場は、T細胞動員薬剤を含む。T細胞動員薬剤の非限定的な例としては、例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド21(CCL-21)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド19(CCL-19)、またはFMS様チロシンキナーゼ3(Flt-3)リガンド、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、IFNγ、CXCL12およびCXCR4からなる群より選択されるC-X-Cモチーフケモカインリガンド(CXCL)、またはこれらのフラグメント、これらの改変体、またはこれらの組み合わせが挙げられる。他のタイプのT細胞動員薬剤としては、Tヘルパータイプ1(Th1)部分セットを動員するためのCCR5およびCXCR3レセプターのリガンドが挙げられる。CCR5リガンド、CCL5およびマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1α)は、公知である。あるいは、CCR3、CCR4、CCR8およびCXCR4のリガンドは、Th2部分セットの特異的動員のために使用され得る。リガンドの組み合わせもまた、使用され得る。
【0267】
前述のT細胞動員薬剤の種々のホモログ(これらの機能的フラグメント、またはこれらの改変体が挙げられる)は、当該分野で公知である。ホモログの代表的な例としては、ハエ、マウス、ラット、ブタ、ウシ、サル、ヒトなどに由来する関連タンパク質が挙げられる。そのホモログは、好ましくは、前述の動員薬剤のうちのヒトまたはマウスのホモログを含む。
【0268】
本発明の足場は、細胞の単一のタイプまたは単一のサブタイプの優先的な動員(例えば、T細胞の、および特に、Treg細胞またはNK細胞の部分セットの優先的な動員)のために適合される。優先的な動員は、デバイスにおける(または動員薬剤を欠くコントロール足場における)免疫細胞の他のタイプと比較して、デバイスにおける免疫細胞の特定のタイプ(例えば、T細胞、B細胞、DC/マクロファージ)のうち1種またはこれより多くにおいて、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、またはこれより多くの増大の蓄積によって特徴づけられる。免疫細胞の組み合わせ(例えば、T細胞およびDC/マクロファージの組み合わせ)を動員するように適合された足場において、優先的な動員は、動員された細胞の全てのパーセンテージが、デバイス(またはコントロール足場における)免疫細胞の他のタイプより少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも2倍(すなわち、200%)、少なくとも5倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、またはこれより多い場合に特徴づけられる。特に、優先的な動員は、他の免疫細胞と比較して、目的の細胞の数の1~10倍の増大によって特徴づけられる。
【0269】
一実施形態において、本発明は、GM-CSF、そのアゴニスト、その模倣物、そのフラグメント、その改変体、またはこれらの組み合わせである動員薬剤をさらに含むMSR-SLB足場に関する。好ましくは、その動員薬剤は、CCL-21、CCL-19、Flt-3またはGCSFのうちの少なくとも1種との組み合わせにおけるGM-CSFである。このような動員薬剤の代表的な例としては、例えば、ヒトGM-CSF(NCBIアクセッション番号NP_000749.2)およびマウスGM-CSF(NCBIアクセッション番号NP_034099.2)が挙げられる。別の実施形態において、本発明は、GM-CSFのフラグメント(例えば、hGM-CSF配列のアミノ酸18~144を含むポリペプチド)を含むMSR-SLB足場に関する。さらに別の実施形態において、本発明は、GM-CSF改変体(例えば、VAR_013089およびVAR_001975が挙げられ、これらの配列は、UNIPROTに受け入れられている(アクセッション番号P04141))を含む足場に関する。別の実施形態において、本発明は、GM-CSF模倣物(例えば、GM-CSFレセプターに結合する抗体、例えば、Monfardiniら, Curr Pharm Des., 8(24): 2185-99, 2002によって記載されるものが挙げられる)を含むMSR-SLB足場に関する。
【0270】
本発明の実施形態はさらに、複数のさらなる薬剤を含む、免疫細胞を操作するための足場を提供する。このような実施形態において、そのさらなる薬剤は、増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、インターロイキン、接着シグナル伝達分子、インテグリンシグナル伝達分子またはこれらのフラグメントまたはこれらの組み合わせを含み得る。
【0271】
増殖因子/サイトカインの代表的な例としては、アドレノメジュリン(AM)、アンジオポエチン(Ang)、自己分泌型細胞運動刺激因子(autocrine motility factor)、骨形成タンパク質(BMP)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、上皮増殖因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、ウシ胎仔ソマトトロフィン(foetal Bovine Somatotrophin)(FBS)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、増殖分化因子-9(GDF9)、肝細胞増殖因子(HGF)、肝がん由来増殖因子(HDGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、移動刺激因子(migration-stimulating factor)(MSF)、ミオスタチン(GDF-8)、神経増殖因子(NGF)、ニューロトロフィン、血小板由来増殖因子(PDGF)、トロンボポエチン(TPO)、T細胞増殖因子(TCGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF-αまたはTGF-β)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、血管内皮増殖因子(VEGF)、Wnt、胎盤増殖因子(PGF)、またはこれらの機能的フラグメント、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0272】
インターロイキンの代表的なタイプとしては、IL-1(T細胞、B細胞、NK細胞、およびマクロファージを活性化する)、IL-2(B細胞およびNK細胞を活性化する)、IL-3(非リンパ系細胞を刺激する)、IL-4(活性化B細胞、静止T細胞、およびマスト細胞の増殖因子)、IL-5(活性化B細胞の分化のため)、IL-6(形質細胞およびT細胞の増殖因子)、IL-7(プレB細胞/プレT細胞およびNK細胞の増殖因子)、IL-10(マクロファージ、B細胞、マスト細胞、Th1/Th2細胞を活性化する)、IL-12(T細胞およびNK細胞を活性化する)、IL-17(Th細胞を活性化する)が挙げられるが、これらに限定されない。インターロイキンの機能的フラグメント(これらは、標的細胞の活性を調節するそれらの能力によって特徴づけられる)がまた、使用され得る。
【0273】
必要に応じて、足場は、接着分子を含み得、これは、シグナル伝達因子としても働き得る。接着シグナル伝達分子の代表的な例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、トロンボスポンディン1、ビトロネクチン、エラスチン、テネイシン、アグリカン、アグリン、骨シアロタンパク質、軟骨マトリクスタンパク質、フィブリノゲン、フィブリン(fibrin)、ファイブリン(fibulin)、ムチン、エンタクチン、オステオポンチン、プラスミノゲン、レストリクチン(restrictin)、セルグリシン(serglycin)、SPARC/オステオネクチン、ベルシカン(versican)、フォン・ヴィレブランド因子、ポリサッカリドヘパリン硫酸、コネキシン、コラーゲン、RGD(Arg-Gly-Asp)およびYIGSR(Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg)ペプチド、ならびに環状ペプチド、グリコサミノグリカン(GAG)、ヒアルロン酸(HA)、コンドロイチン-6-硫酸、インテグリンリガンド、セレクチン、カドヘリンならびに免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバー。他の例としては、神経系細胞接着分子(NCAM)、細胞内接着分子(ICAM)、血管細胞接着分子(VCAM-1)、血小板-内皮細胞接着分子(PECAM-1)、L1、およびCHL1が挙げられる。接着分子の機能的フラグメント(これは、本発明の足場への標的細胞の結合を調節するそれらの能力によって特徴づけられる)がまた、使用され得る。特に、接着分子は、アミノ酸配列アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)(これは、細胞付着リガンドとして公知であり、種々の天然の細胞外マトリクス分子において見出される)を含むペプチドまたは環状ペプチドを含む。別の実施形態において、接着ペプチドは、コラーゲン模倣物である。代表的な例としては、構造GGYGGGPC(GPP)5GFOGER(GPP)5GPC(ここでOは、ヒドロキシプロリンである)を有するペプチドが挙げられる。このようなペプチドは、GFOGERペプチドとまとめて言及され得る。GFOGERペプチドは、T細胞接着に関して特に良好であることが以前に示されている。Stephanら, Nature Biotechnology 33, 2015を参照のこと。
【0274】
このような改変を有するポリマーマトリクスは、本発明の足場に対する細胞接着特性を提供し、哺乳動物細胞系の長期間の生存、ならびに細胞増殖および分化の支持を維持する。接着分子は、当業者に一般に公知であり、実施例に記載される合成法を使用して達成されるポリマーマトリクスにカップリングされ得る。例えば、Hiranoら, Advanced Materials, 17-25, 2004; Hermansonら, Bioconjugate Techniques, p. 152-185, 1996; Massia and Hubbell, J. Cell Biol. 114:1089-1100, 1991; Mooneyら, J. Cell Phys. 151:497-505, 1992;およびHansenら, Mol. Biol. Cell 5:967-975, 1994(これらにおける開示は、参考として援用される)を参照のこと。
【0275】
標的細胞タイプに依存して、標的細胞に対して特異的な接着シグナル伝達分子を使用することは、好ましいことであり得る。従って、一実施形態において、足場は、T細胞の結合/隔離において有用な接着レセプターを含む。これらの実施形態において、足場は、T細胞特異的接着分子(例えば、MHCクラスII(CD4+ 細胞に関して)、MHCクラスI(CD8+ 細胞に関して)、LFA-3(CD2リガンド)、ICAM1(LFA-1のリガンド)またはこれらの改変体、これらのフラグメントまたはこれらの組み合わせからなる群より選択されるレセプター)を含み得る。
【0276】
必要性に依存して、足場は、免疫細胞の特定の部分セット(例えば、T細胞の特定の部分集団)を操作するために、動員薬剤および接着分子の部分セットを含むように特異的に製剤化され得る。これらの実施形態において、その足場は、標的細胞において発現される細胞表面マーカーに特異的に結合する薬剤を使用して、製剤化/製作され得る。例えば、T細胞の状況において、足場は、ヘルパーT細胞(T細胞;これは、CD4+を差次的に発現する)、細胞傷害性T細胞(T細胞;これは、CD8+を差次的に発現する)、メモリーT細胞(T細胞;これは、CD45ROを差次的に発現する)、サプレッサーT細胞(T細胞)、調節性T細胞(Tregs;FOXP3+ Treg細胞およびFOXP3- Tregとしてさらに特徴づけられる)、ナチュラルキラーT細胞(NK細胞;CD1d+を差次的に発現する)、粘膜関連インバリアント(MAIT;MR1を差次的に発現する)、ガンマデルタT細胞(γδ T細胞;1つのγ鎖および1つのδ鎖を含むTCRを含む)の優先的な動員のために適合され得る。細胞表面マーカーに結合するこのような薬剤としては、例えば、ハプテン、ペプチド、リガンド、抗体などが挙げられ得る。1種またはこれより多くの細胞サブタイプを有する単離物を富化するための他の慣用的技術は、インサイチュでまたはエクスサイチュで必要に応じて使用され得る。
【0277】
足場はまた、疾患に特異的である免疫細胞を動員するために適合され得る。例えば、自己免疫疾患の特定のタイプに対して特異的な複数のT細胞が動員され得る。従って、一実施形態において、自己免疫障害の診断において有用な足場は、その障害に関わる免疫細胞に特異的な動員薬剤を含むように製剤化され得る。このような動員薬剤は、例えば、調節性T細胞(Treg)、サプレッサーT細胞(Ts)またはこれらの組み合わせに特異的であり得る。関連する実施形態において、がんの診断において有用な足場は、がん特異的なT細胞タイプ、例えば、細胞傷害性T細胞(Tc)、ナチュラルキラー細胞(NK)またはこれらの組み合わせを優先的に動員するための動員薬剤を含むように製剤化され得る。
【0278】
ある種の実施形態において、足場は、疾患特異的細胞をパニング(pan for)するために有用である。このようなものとしては、例えば、疾患進行を直接的に促進する細胞が挙げられ得る。多くの自己免疫疾患の状況では、その疾患は、細胞の特定の集団、例えば、T1Dにおいては膵臓のβ細胞および多発性硬化症においてはニューロン細胞の標的化された殺滅を介して媒介および促進され得る。他の自己免疫疾患では、その疾患は、関節リウマチの状況では、例えば、リウマチ因子(RF)およびシトルリン化ペプチド(ACPA)のような特異的エピトープ、ならびにクローン病の状況では、腸内細菌叢に存在する抗原の標的化された攻撃によって促進され得る。細胞の標的化された破壊は、一般に、免疫細胞の特異的タイプまたは部分セットを必要とする。従って、細胞標的の性質および特性に基づいて、これらに特異的な免疫細胞は、本発明の足場を使用して優先的に操作され得る。
【0279】
前述の実施形態において、足場は、疾患特異的免疫細胞(例えば、T細胞)が結合する抗原とともに提供される。これらの自己免疫細胞は、非自己免疫表現型へと操作および必要に応じて再プログラムされ得る。T細胞を多能性へと再プログラムするための方法は、当該分野で公知である。Nishimuraら, Stem Cell 12, 114-126(2013); Themeliら, Nature Biotechnology 31, 928-933(2013)を参照のこと。ある種の場合では、特に、がん特異的T細胞の状況では、その再プログラムされた細胞は、がんを標的化するために若返らせられ得る。あるいは、自己免疫疾患に特異的なT細胞の状況では、その細胞は、排除され得る。
【0280】
ある種の実施形態において、本発明の足場は、抗原提示を維持するように操作された多孔性構造として製作される。多孔性足場を製作するための方法は、当該分野で記載されている。例えば、米国公開番号2011/0020216、同第2013/0202707、同第2011/0020216および米国特許第8,067,237号(これらにおける開示は、本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
【0281】
本発明の実施形態はさらに、種々のエキソビボおよびインビボ適用のために望ましい安定性を有するMSR-SLB足場を含む足場を提供する。例えば、その足場は、組織培養適用、細胞成長実験において、または組織(採取もしくは操作された)そしてまた被験体へと投与されるべき移植用材料として安定である。一実施形態において、本発明は、少なくとも0.5日間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、25日間、30日間、35日間、40日間、45日間、50日間、または50日間超にわたって、連続流体体系を保持するメソポーラスシリカマイクロロッド-脂質二重層(MSR-SLB)足場に関する。足場の安定性および/または流体体系は、慣用的技術(例えば、以下の実施例で例証される顕微鏡による可視化技術)を使用してモニターされ得る。
【0282】
II.本発明の足場を作製するための方法
本発明の実施形態はさらに、本発明の抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)を作製するための方法に関する。上記方法は、高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層を提供する工程;T細胞ホメオスタシス因子をMSR上に必要に応じて負荷する工程;連続流体支持脂質二重層(SLB)を、上記MSRを含む基部層上に層化する工程であって、それによってMSR-SLB足場を生成する工程;工程(b)が行われない場合、T細胞ホメオスタシス因子を上記MSR-SLB足場上に負荷する工程;MSR-SLB足場における1種またはこれより多くの非特異的相互作用を遮断因子で必要に応じて遮断する工程;およびT細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子を、MSR-SLB足場上に負荷する工程であって、それによってAPC-MSを作製する工程を包含する。これらの実施形態において、その方法は、増殖因子、サイトカイン、インターロイキン、接着シグナル伝達分子、インテグリンシグナル伝達分子、またはこれらのフラグメントまたはこれらの組み合わせである少なくとも1種のさらなる薬剤を、足場の中にさらに負荷する工程を包含し得る。そのさらなる成分を負荷するための方法は、デバイス製作の節において先に記載されている。本発明の足場を作製するための代表的な方法は、図24に提供される。
【0283】
一実施形態において、T細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子(例えば、抗CD3抗体および抗CD28抗体)の1:1混合物を含む機能的分子の混合物は、機能的分子:MSR-SLB足場の重量比が約1:2~約1:20の間、好ましくは約1:4~約1:15の間、特に、約1:5~約1:10の間であるように、MSR-SLB足場と組み合わせられる。T細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子の重量比は、機能的分子とMSR-SLB足場との間の同じ乾燥重量比を保持しながら、例えば、約5:1~約1:5の間に調節され得る。
【0284】
さらに、本発明の実施形態はさらに、複数の足場をアセンブリして、T細胞、より具体的には、ヘルパーT細胞または細胞傷害性T細胞の別個の部分集団の浸潤を可能にするために十分な多孔性を有する積み重ねを生成することによって、APC-MSを作製するための方法に関する。
【0285】
III.本発明の足場を使用するための方法
本発明の足場は、種々の適用(標的エフェクター細胞、例えば、T細胞の操作、エフェクター細胞の特定の集団(例えば、CD8+ T細胞の部分集団)の単離、疾患の診断および治療、ならびに疾患の診断および治療のための組成物およびキットの生成が挙げられるが、これらに限定されない)のために使用され得る。
【0286】
標的細胞を操作するための方法
一実施形態において、本発明は、標的エフェクター細胞またはその部分集団(例えば、ヘルパーT細胞または細胞傷害性T細胞)を操作するための方法を提供する。この状況では、用語「操作(manipulation)」とは、標的エフェクター細胞の例えば、活性化、分裂、分化、成長、拡大、再プログラミング、アネルギー、静止、老化、アポトーシスまたは死滅を含む。
【0287】
一実施形態において、標的エフェクター細胞(例えば、T細胞)は、その標的エフェクター細胞が足場と接触した状態になるように本発明の足場を提供することによって、インサイチュで操作(例えば、活性化)される。接触を促進するために、足場は、被験体において適切な部位に、例えば、皮下にまたは静脈内に、移植され得る。他の実施形態において、標的細胞は、標的エフェクター細胞を含むサンプルを本発明の足場とともに培養することによって、エキソビボで操作される。
【0288】
被験体から与えられる新鮮なサンプル、初代培養細胞、不死化細胞、細胞株、ハイブリドーマなどを含む、種々の標的エフェクター細胞が、操作され得る。その操作された細胞は、種々の免疫療法的適用および研究のために使用され得る。
【0289】
標的エフェクター細胞の操作の部位は、インサイチュであってもエキソサイチュであってもよい。従って、一実施形態において、細胞は、インサイチュで(例えば、足場内で)操作される。この状況では、細胞は、操作されるべき足場から物理的に除去される必要はない。別の実施形態において、細胞は、エキソサイチュで(例えば、足場から細胞を先ず除去し、そしてその除去された細胞を操作することによって)操作される。足場が被験体に移植される場合、細胞は、移植部位においてまたはその付近において操作され得る。他の実施形態において、その移植された足場は、移植部位から先ず除去され得、そのエフェクター細胞は、先に記載されるように、インサイチュまたはエキソサイチュで操作され得る。
【0290】
ある種の実施形態において、エフェクター細胞を操作するにあたって使用される足場は、抗原提示細胞(APC)および/またはこのようなAPCに由来する種々の抗原とともに提供され得る。これらの二次的な薬剤(例えば、APCまたはAPCに由来する抗原)は、足場構造において提供されてもよいし、外因的に、例えば、培養培地において提供されてもよい。ある種の実施形態において、足場は、APCを誘引および/または動員する種々の抗原とともに提供され得る。このような誘引および/または動員する分子の代表的な例は、先の節において提供されている。
【0291】
ある種の実施形態において、抗原含有足場は、標的エフェクター細胞をインビボで操作するために使用され得る。このような適用のために、その足場は、標的エフェクター細胞が足場と接触した状態になるように、血管の内部、リンパ組織の中、腫瘍部位に、疾患部位(例えば、関節リウマチによって影響をうけた組織の周りの領域)に、または皮下に移植され得る。あるいは、その足場は、最小限に侵襲性の様式で、例えば、針、カテーテルなどを介して注射され得る。その移植された足場は、約0.5日間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、1年、2年、またはこれより長く移植部位において保持することを可能にされ得る。周期的に、その足場は、エフェクター細胞を研究、分析、またはさらになお操作するために外植され得る。
【0292】
関連する実施形態において、本発明は、抗原特異的エフェクター細胞のインサイチュでの操作に関する。この状況では、本発明の足場は、機能的分子を吸着するための同じストラテジーを使用して、足場上に吸着された目的の抗原を含み得る。あるいは、本発明の足場は、目的の抗原を提示するAPCと一緒に、培養培地中に抗原特異的エフェクターT細胞を含むサンプルとともにインキュベートされ得る。次いで、その標的エフェクター細胞は、足場と接触した状態にさせられ、その足場に含まれる機能的分子は、エフェクター細胞の操作を促進するために一緒に作用する。純粋に代表的実施形態として、実施例の節に記載されるように、T細胞を含むサンプルは、本発明の足場とともにインキュベートされ、これは、その標的エフェクター細胞を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持する。そのサンプルは、約1日間~30日間、約1~15日間または約4~13日間、例えば、約7~8日間、足場とともにインキュベートされ得、エフェクター細胞集団の選択的操作を生じる。その抗原特異的エフェクター細胞は、ある種の遺伝子生成物(例えば、抗原または目的の抗原提示細胞を認識するT細胞レセプター(TCR))の発現に基づいて細胞を選択することによって、さらに操作され得る。
【0293】
本明細書で記載される実施形態はさらに、抗原特異的エフェクター細胞をエキソサイチュで操作するための方法に関し、ここで足場は、目的の抗原を発現するAPCまたはその抗原自体とともに提供される。操作工程は、エキソサイチュまたはインサイチュで行われ得る。
【0294】
別の実施形態において、抗原またはAPCに対して特異的なエフェクター標的細胞は、他のエフェクター細胞より選択的に操作され得る(例えば、CD4+ T細胞よりCD8+ T細胞が好まれる)。例えば、CD8+ T細胞を(CD4+ T細胞とともに)含むサンプルは、CD8+ T細胞の浸潤および/または隔離を可能にするように機械的にまたは化学的に製作された本発明の足場とともにインキュベートされ得る。その浸潤および/または隔離されたCD8+ T細胞はさらに、当該分野で公知の技術を使用して、拡大、活性化、増殖、または成長され得る。代表的な方法は、先に記載されている。
【0295】
別の実施形態において、抗原またはAPCに対して特異的なエフェクター標的細胞は、望まれていないもの(例えば、調節性/サプレッサーT細胞)でもよく、それらは、本発明の足場との接触後に、アポトーシス、アネルギーまたは死滅を受けるように誘導される。例えば、調節性T細胞を(他のT細胞とともに)含むサンプルは、調節性/サプレッサーT細胞の浸潤および/または隔離を可能にするように機械的にまたは化学的に製作された本発明の足場とともにインキュベートされ得る。その浸潤および/または隔離されたT細胞は、当該分野で公知の技術を使用して排除され得る。
【0296】
この状況では、本発明の足場において浸潤および/または隔離された細胞が何であるかは、当該分野で公知の技術を使用してさらに決定され得る。従って、一実施形態において、活性化T細胞を同定または選択するための遺伝子生成物は、細胞表面マーカーまたはサイトカイン、またはこれらの組み合わせであり得る。活性化T細胞を同定するための細胞表面マーカーとしては、CD69、CD4、CD8、CD25、HLA-DR、CD28、およびCD134が挙げられるが、これらに限定されない。CD69は、BおよびTリンパ球、NK細胞、ならびに顆粒球上で見出される初期活性化マーカーである。CD25は、IL-2レセプターであり、活性化T細胞およびB細胞のマーカーである。CD4は、TCR補助レセプターであり、胸腺細胞(thymocte)、TH1タイプおよびTH2タイプのT細胞、単球、ならびにマクロファージのマーカーである。CD8はまた、TCR補助レセプターであり、細胞傷害性T細胞のマーカーである。CD134は、活性化CD4+ T細胞においてのみ発現される。
【0297】
活性化T細胞を選択するための細胞表面マーカーとしては、CD36、CD40、およびCD44が挙げられるが、これらに限定されない。CD28は、T細胞レセプター経路とは独立した刺激性T細胞活性化経路として作用し、CD4+およびCD8+ 細胞上で発現される。CD36は、膜糖タンパク質であり、血小板、単球および内皮細胞のマーカーである。CD40は、B細胞、マクロファージおよび樹状細胞のマーカーである。CD44は、マクロファージおよび他の食細胞のマーカーである。T細胞の部分セットは、ヘルパーT細胞または細胞傷害性T細胞の細胞表面遺伝子生成物の発現に関して正の選択、負の選択、またはこれらの組み合わせを使用することによって単離され得る(例えば、CD4 対 CD8)。本発明の活性化T細胞を同定するためのサイトカインとしては、TH1タイプT細胞(細胞媒介性応答)およびTH2タイプT細胞(抗体応答)によって生成されるサイトカインが挙げられるが、これらに限定されない。活性化TH1タイプT細胞を同定するためのサイトカインとしては、IL-2、γインターフェロン(γIFN)および組織壊死因子α(TNFα)が挙げられるが、これらに限定されない。活性化TH2タイプT細胞を同定するためのサイトカインとしては、IL-4、IL-5、IL-10およびIL-13が挙げられるが、これらに限定されない。T細胞の部分セットはまた、ヘルパーT細胞または細胞傷害性T細胞のサイトカイン遺伝子生成物の発現に関して正の選択、負の選択、またはこれらの組み合わせを使用することによって単離され得る(例えば、γIFN 対 IL4)。
【0298】
目的の抗原に対して特異的な活性化TH1タイプT細胞は、CD69、CD4、CD25、IL-2、IFNγ、TNFα、またはこれらの組み合わせを発現する細胞を同定することによって単離され得る。目的の抗原に対して特異的な活性化TH1タイプT細胞はまた、CD69およびCD4を、IFNγまたはTNFαと一緒に発現する細胞を同定することによって単離され得る。目的の抗原に対して特異的な活性化TH2タイプT細胞は、CD69、CD4、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13、またはこれらの組み合わせを発現する細胞を同定することによって単離され得る。目的の抗原に対して特異的な活性化TH1タイプT細胞およびTH2タイプT細胞の組み合わせは、CD69、CD4、CD25、IL-2、IFNγ、TNFα、またはこれらの組み合わせを発現する細胞、およびCD69、CD4、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13、またはこれらの組み合わせを発現する細胞を同定することによって単離され得る。
【0299】
本発明の活性化T細胞の正の選択または負の選択に使用される遺伝子生成物は、抗体を利用する当業者に公知の免疫選択技術(蛍光活性化セルソーティング(FACS)、磁性セルソーティング、パニング、およびクロマトグラフィーが挙げられるが、これらに限定されない)によって同定され得る。活性化T細胞上の2種またはこれより多くのマーカーの免疫選択は、1またはこれより多くの工程において行われ得、ここで各工程は、1種またはこれより多くのマーカーを正にまたは負に選択する。2種またはこれより多くのマーカーの免疫選択が、FACSを使用して1工程で行われる場合、2種またはこれより多くの異なる抗体が、異なる発蛍光団で標識され得る。あるいは、上記のように、細胞は、マイクロビーズを使用してソートされ得る。
【0300】
細胞表面に発現される遺伝子生成物に関して、抗体は、その遺伝子生成物に直接的に結合し得、細胞選択のために使用され得る。低濃度で発現される細胞表面遺伝子生成物に関しては、磁性蛍光リポソームが、細胞選択のために使用され得る。低レベルの発現では、従来の蛍光標識抗体は、細胞表面に発現される遺伝子生成物の存在を検出するために十分感度が高くない可能性がある。発蛍光団含有リポソームは、目的の特異性を有する抗体に結合体化され得、それによって、細胞表面マーカーの検出を可能にする。
【0301】
細胞内遺伝子生成物(例えば、サイトカイン)に関しては、抗体は、細胞を透過性にした後に使用され得る。あるいは、透過性にすることによる細胞の殺滅を回避するために、細胞内遺伝子生成物は、その細胞から最終的に分泌される場合には、細胞表面上で「捕捉」抗体を使用して細胞膜を通じて分泌されるときに検出され得る。その捕捉抗体は、2種の異なる抗原:(i)分泌された目的の遺伝子生成物および(ii)細胞表面タンパク質に対して特異的な二重抗体(double antibody)であり得る。その細胞表面タンパク質は、概して、T細胞、特に、またはリンパ球上に存在する任意の表面マーカー(例えば、CD45)であり得る。その捕捉抗体は、細胞表面タンパク質に先ず結合し得、次いで、膜を通って分泌されたときに目的の細胞内遺伝子生成物に結合し得、それによって、細胞表面上で遺伝子生成物を保持する。次いで、その捕捉された遺伝子生成物に対して特異的な標識抗体は、その捕捉された遺伝子生成物に結合するために使用され得、これは、活性化T細胞の選択を可能にする。ある種の形態のサイトカインはまた、細胞表面上で、低濃度で発現されることが見出される。例えば、γIFNは、細胞内γIFN発現の動態に類似の動態で細胞表面上に低濃度で提示される(Assenmacher,ら Eur J. Immunol, 1996, 26:263-267)。細胞表面上で発現されるサイトカインの形態に関しては、従来の蛍光標識抗体または発蛍光団含有リポソームが、目的のサイトカインを検出するために使用され得る。当業者は、活性化T細胞に対して特異的な細胞外および細胞内遺伝子生成物を検出および選択するための他の技術を認識する。
【0302】
本発明の方法によって単離されたT細胞は、全血から少なくとも40%~90%富化され得る。T細胞はまた、全血から少なくとも95%富化され得る。そのT細胞はまた、全血から少なくとも98%富化され得る。そのT細胞はまた、少なくとも99.5%富化され得る。類似の方法が、B細胞のインサイチュまたはエキソサイチュでの操作において使用され得る。ある種の実施形態において、低温保存された細胞が融解され、本明細書で記載されるように洗浄され、活性化の前に室温において1時間静置させられる。
【0303】
適用に依存して、足場 対 細胞サンプルの乾燥重量比は、調節され得る。例えば、足場:細胞乾燥重量比は1:500~500:1の範囲に及び得、その間の任意の整数値は、エフェクター細胞を操作するために使用され得る。当業者が容易に認識し得るとおり、足場 対 細胞の比は、標的細胞に対する足場サイズに依存し得る。
【0304】
T細胞集団の拡大
関連する実施形態において、本発明はさらに、免疫細胞の集団からT細胞を拡大する、例えば、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、形質細胞などを含むサンプル中に含まれるT細胞を拡大するための方法に関する。別の実施形態において、本発明はまた、T細胞の特定の集団を拡大する、例えば、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、調節性/サプレッサーT細胞などを含むサンプルから、細胞傷害性T細胞を拡大するための方法に関する。T細胞の特定の部分集団は、下流で種々の免疫療法的適用において使用され得る。いかなる特定の理論によっても拘束されることは望まないが、本発明のAPC-MSは、T細胞の拡大のために特に有効であると考えられる。なぜならメソポーラスシリカロッドの比較的大きなサイズおよび高いアスペクト比は、各ロッドと相互作用するT細胞の大きなクラスターの形成を可能にし、このことは、T細胞/T細胞相互作用および/または傍分泌シグナル伝達を可能にすることによって、T細胞の効果的拡大を促進し得るからである。
【0305】
一実施形態において、標的エフェクター細胞(例えば、T細胞)は、その標的エフェクター細胞が足場と接触した状態になるように、本発明の足場を提供することによってインサイチュで拡大(例えば、成長または分化)される。接触を促進するために、その足場は、被験体において適切な部位に、例えば、皮下にまたは静脈内に移植され得る。他の実施形態において、その標的細胞は、標的エフェクター細胞を含むサンプルを本発明の足場とともに培養することによって、エキソビボで拡大される。一実施形態において、エキソビボでのT細胞拡大は、エフェクターT細胞が活性化され、共刺激され、そしてホメオスタシス的に維持されるように、サンプルからT細胞を先ず単離し、そして本発明の足場と接触させることによってT細胞をその後刺激することによって、行われ得る。
【0306】
本発明の一実施形態において、T細胞は、被験体から得られた初代T細胞である。用語「被験体(subject)」とは、免疫応答が誘起され得る生きている生物(例えば、哺乳動物)を含むことが意図される。被験体の例としては、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびこれらのトランスジェニック種が挙げられる。T細胞は、多くの供給源(末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、脾臓組織、および腫瘍が挙げられる)から得られ得る。本発明のある種の実施形態において、初代T細胞および/または当該分野で入手可能なT細胞株の任意の数が、使用され得る。
【0307】
全血計数に関する研究から、全血中のT細胞の数が非常に低いことが明らかである。例えば、Stem Cell Technologies, Vancouver, BC, CANADAによって発行された製品カタログ(Document #23629, VERSION 2.1.0)によれば、全血中の白血球集団は、約0.1~0.2%であり(赤血球が優勢であることに起因する)、そのうち、T細胞は、白血球集団全体のうちの約7~24%を構成する。T細胞の中では、CD4+ T細胞は、白血球集団全体のうちの約4~20%を構成し(全血における細胞集団全体のうちの0.04%未満に解釈)、CD8+ T細胞は、白血球集団全体のうちの約2~11%を構成する(全血における細胞集団全体のうちの0.022%未満に解釈)。従って、本発明のある種の実施形態において、本発明の方法は、標的細胞の富化のための他の当該分野で公知の技術と合わされ得る。その富化工程は、サンプルと本発明の足場とを接触させる前に行われ得る。別の実施形態において、その富化工程は、サンプルを本発明の足場と接触させた後に行われ得る。
【0308】
一実施形態において、エフェクター細胞集団は、FICOLL分離を使用して富化され得る。一実施形態において、個体の循環血液に由来する細胞は、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシス(leukapheresis)によって得られる。アフェレーシス生成物は、代表的にはT細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含め、リンパ球を含む。アフェレーシスによって集められた細胞は、血漿画分を除去し、その後の処理工程のために適切な緩衝液または培地中に細胞を置くために洗浄され得る。次いで、その細胞は、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で洗浄される。あるいは、その洗浄溶液はカルシウムを欠き、そしてマグネシウムを欠いていてもよいし、全ての二価カチオンではないかもしれないが、多くを欠いていてもよい。半自動化「フロースルー(flow-through)」遠心分離はまた、製造業者の説明書に従って使用され得る。洗浄後に、その細胞は、種々の生体適合性緩衝液(例えば、Ca非含有、Mg非含有PBSのような)の中に再懸濁され得る。あるいは、アフェレーシスサンプルの望ましくない構成要素は、除去され得、細胞は、培養培地中に直接再懸濁され得る。
【0309】
別の実施形態において、末梢T細胞または全血T細胞は、赤血球を溶解し、単球を、例えば、PERCOLLTM勾配を通じた遠心分離によって枯渇させることによって富化され得る。T細胞の特定の部分集団(例えば、CD28+、CD4+、CD8+、CD45RA+、およびCD45RO+T細胞)は、正の選択または負の選択の技術によってさらに単離され得る。
【0310】
本発明によれば、種々のソーティング技術が、必要に応じて使用され得る。例えば、拡大されたかまたは操作されたT細胞集団は、細胞に特有の表面マーカーに対して指向される抗体の組み合わせを使用してさらにソートされ得る。好ましい方法は、磁性免疫接着を介するセルソーティングおよび/もしくは選択であるか、または選択される細胞上に存在する細胞表面マーカーに対して指向されるモノクローナル抗体のカクテルを使用するフローサイトメトリーである。例えば、CD4+ 細胞を負の選択によって富化するために、モノクローナル抗体カクテルは、代表的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。ある種の実施形態において、CD4+、CD25+、CD62Lhi、GITR+、およびFoxP3+を代表的には発現する調節性T細胞を富化するかまたは負の選択することは、望ましいことであり得る。
【0311】
細胞の望ましい集団を単離するために、細胞および足場表面の濃度は、変動され得る。ある種の実施形態において、細胞および足場の最大の接触を担保するために、容積をかなり低下させ、ここでその足場および細胞が一緒に混合される(すなわち、細胞の濃度を増大させる)ことは、望ましいことであり得る。例えば、一実施形態において、20億個の細胞/mlの濃度が使用される。一実施形態において、10億個の細胞/mlの濃度が使用される。さらなる実施形態において、1億個超の細胞/mlが使用される。さらなる実施形態において、1000万個、1500万個、2000万個、2500万個、3000万個、3500万個、4000万個、4500万個、または5000万個の細胞/mlの細胞の濃度が、使用される。さらに別の実施形態において、7500万個、8000万個、8500万個、9000万個、9500万個、または1億個の細胞/mlの細胞の濃度が使用される。さらなる実施形態において、1億2500万個または1億5000万個の細胞/mlの濃度が使用され得る。高濃度の使用は、増大した細胞収量、細胞活性化、および細胞拡大を生じ得る。さらに、高い細胞濃度を使用することで、目的の標的抗原を弱く発現し得る細胞(例えば、CD28陰性T細胞)の、または多くの腫瘍細胞が存在するサンプル(すなわち、白血病血液、腫瘍組織など)からの、より効率的な捕捉が可能になる。細胞のこのような集団は、治療上の価値を有し得、そして得るのが望ましい。例えば、高濃度の細胞を使用することは、より弱いCD28発現を通常有するCD8+ T細胞のより効率的な選択を可能にする。
【0312】
関連する実施形態において、低濃度の細胞を使用することは、望ましいことであり得る。これは、足場:細胞比を低くすることによって達成され得、その結果、足場と細胞との間の相互作用は最小限にされる。この方法は、足場に結合されるべき多量の望ましい抗原を発現する細胞を選択する。例えば、CD4+ T細胞は、より高いレベルのCD28を発現し、薄い濃度でCD8+ T細胞より効率的に捕捉される。一実施形態において、使用される細胞の濃度は、5×10/mlである。他の実施形態において、使用される濃度は、約1×10/ml~1×10/ml、およびその間の任意の整数値であり得る(例えば、1×10/ml~1×10/ml、1×10/ml~1×10/ml、1×10/ml~1×10/ml)。
【0313】
一実施形態において、本発明は、サンプル調製のための当該分野で公知の手順を包含し得る。例えば、T細胞は、洗浄工程後に凍結され得、使用前に融解され得る。凍結およびその後の融解は、細胞集団中の顆粒球をおよびある程度まで単球を除去することによって、より均質な生成物を提供する。血漿および血小板を除去する洗浄工程の後に、細胞は、凍結溶液の中に懸濁され得る。多くの凍結溶液およびパラメーターが当該分野で公知であり、この状況で有用である一方で、1つの方法は、20% DMSOおよび8% ヒト血清アルブミンを含むPBS、または例えば、HESPANおよびPLASMALYTE Aを含む他の適切な細胞凍結培地を使用することを要し、次いで、その細胞は、1℃/分の速度で-80℃へと凍結され、そして液体窒素貯蔵タンクの気相の中で貯蔵される。凍結制御の他の方法が、直ぐに-20℃でまたは液体窒素中での制御されない凍結と同様に使用され得る。
【0314】
本発明の状況では、本明細書で記載されるとおりの拡大された細胞が必要とされ得るときより前の期間に、血液サンプルまたは白血球アフェレーシス生成物を被験体から集めることもまた、企図される。よって、拡大されるべき細胞の供給源は、必要な任意の時点で集められ得、そして所望の細胞(例えば、T細胞)は、T細胞療法から利益を受ける任意の数の疾患または状態(例えば、本明細書で記載されるもの)のために、T細胞療法において後に使用するために単離および凍結され得る。一実施形態において、血液サンプルまたは白血球アフェレーシスは、概して健康な被験体から採取される。ある種の実施形態において、血液サンプルまたは白血球アフェレーシスは、疾患を発症するリスクにあるが、疾患を未だ発症していない概して健康な被験体から採取され、そしてその目的の細胞は、後の使用のために単離および凍結される。ある種の実施形態において、T細胞は、後に拡大、凍結、および使用され得る。ある種の実施形態において、サンプルは、本明細書で記載されるとおりの特定の疾患の診断の直後であるが、何らかの処置の前に、患者から集められる。さらなる実施形態において、細胞は、任意の数の関連する処置モダリティー(抗ウイルス剤、化学療法、放射線療法、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノレート、およびFK506)、抗体、または他の免疫除去薬剤(immunoablative agent)(例えば、CAMPATH、抗CD3抗体、サイトキシン(cytoxin)、フルダラビン(fludaribine)、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、および照射)のような薬剤での処置が挙げられるが、これらに限定されない)の前に、被験体からの血液サンプルまたは白血球アフェレーシスから単離される。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼカルシニューリンを阻害する(シクロスポリンおよびFK506)か、または増殖因子誘導性シグナル伝達によって重要であるp70S6キナーゼを阻害する(ラパマイシン)かのいずれかである(Liuら, Cell 66:807-815, 1991; Hendersonら, Immun. 73:316-321, 1991; Biererら, Curr. Opin. Immun. 5:763-773, 1993; Isoniemi(前出))。さらなる実施形態において、細胞は、患者のために単離され、骨髄移植、フルダラビンのような化学療法剤、体外照射療法(XRT)、シクロホスファミド、またはOKT3もしくはCAMPATHのような抗体のいずれかを使用するT細胞除去療法(T cell ablative therapy)とともに(例えば、その前に、同時にまたは後に)、後の使用のために凍結される。別の実施形態において、細胞は、事前に単離され、B細胞除去療法(例えば、CD20と反応する薬剤、例えば、Rituxan)後の処置に関して後の使用のために凍結され得る。
【0315】
本発明のさらなる実施形態において、T細胞は、処置の直後に患者から得られる。この点において、ある種の癌の処置、特に、免疫系を損傷する薬物での処置の後、処置の直ぐ後に、患者がその処置から正常に回復しつつある期間の間に、得られるT細胞の品質は、それらがエキソビボで拡大する能力に関して最適であるかまたは改善され得ることが観察された。同様に、本明細書で記載される方法を使用するエキソビボでの操作後に、これらの細胞は、増強された生着およびインビボでの拡大の好ましい状態にあり得る。従って、本発明の状況では、この回復相の間に血球(T細胞、樹状細胞、または造血系統の他の細胞を含む)を集めることが企図される。さらに、ある種の実施形態において、動員(mobilization)(例えば、GM-CSFでの動員)および前処置レジメンは、被験体においてある状態を作り出すために使用され得る。ここで特に治療後の規定された時間帯の間に、特定の細胞タイプの再増殖(repopulation)、再循環、再生、および/または拡大が好都合である、例証的な細胞タイプとしては、T細胞、B細胞、樹状細胞、および免疫系の他の細胞が挙げられる。
【0316】
任意の比のT細胞活性化分子:T細胞共刺激分子を含む足場は、本発明の方法に従って使用され得る。T細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子がともに抗体である一実施形態において、各抗体の1:1比が使用され得る。一実施形態において、足場に結合されるCD3:CD28抗体の比は、100:1~1:100の範囲およびその間の全ての整数値である。本発明の一局面において、抗CD3抗体より多くの抗CD28抗体が、足場に結合される。すなわち、CD3:CD28の比は、1未満である。本発明のある種の実施形態において、足場に結合される抗CD28抗体 対 抗CD3抗体の比は、2:1より大きい。1つの特定の実施形態において、足場に結合される抗体の1:100 CD3:CD28比が使用される。別の実施形態において、足場に結合される抗体の1:75 CD3:CD28比が使用される。さらなる実施形態において、足場に結合される抗体の1:50 CD3:CD28比が使用される。別の実施形態において、足場に結合される抗体の1:30 CD3:CD28比が使用される。1つの好ましい実施形態において、足場に結合される抗体の1:10 CD3:CD28比が使用される。別の実施形態において、足場に結合される抗体の1:3 CD3:CD28比が使用される。さらに別の実施形態において、足場に結合される抗体の3:1 CD3:CD28比が使用される。
【0317】
本発明の一局面は、高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層および連続流体支持脂質二重層(SLB)を含むが、T細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子を含まないコントロール足場と比較して、上記方法が上記足場との約1週間の接触後に、T細胞の集団の増大した拡大を付与するという驚くべき知見から生じる。一実施形態において、本発明の方法によれば、T細胞の集団の拡大において約10倍~1000倍、好ましくは約50倍~500倍、またはこれより大きい増大が、高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層および連続流体支持脂質二重層(SLB)を含むが、T細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子を含まないコントロール足場と比較して、上記足場との約1週間の接触後に観察された。
【0318】
本発明の別の局面は、上記方法が、T細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子を含む超常磁性球状ポリマー粒子(DYNABEAD)と比較して、上記足場との約1週間の接触後に、T細胞の集団の増大した拡大を付与するという驚くべき知見から生じる。一実施形態において、本発明の方法によれば、T細胞の集団の拡大において約2倍~100倍、好ましくは約5倍~20倍、またはこれより大きい増大は、T細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子を含む超常磁性球状ポリマー粒子(DYNABEAD)と比較して、上記足場との約1週間の接触後に観察された。
【0319】
本発明のさらに別の局面は、前述の方法に従ってT細胞を操作することが、T細胞の代謝活性を改善するという驚くべき知見から生じる。特に、T細胞の改善された代謝活性は、高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層および連続流体支持脂質二重層(SLB)を含むが、T細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子を含まないコントロール足場と比較して、上記足場との1週間の接触後に観察された。一実施形態において、本発明の方法によれば、T細胞の集団の代謝活性において約2倍~100倍、好ましくは約5倍~20倍、またはこれより高い改善が、高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層および連続流体支持脂質二重層(SLB)を含むが、T細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子を含まないコントロール足場と比較して、上記足場との約1週間の接触後に観察された。
【0320】
本発明の別の局面は、上記方法が、T細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子を含む超常磁性球状ポリマー粒子(DYNABEAD)と比較して、上記足場との約1週間の接触後に、T細胞の集団のより良好な代謝活性を付与するという驚くべき知見から生じる。一実施形態において、本発明の方法によれば、約1倍(例えば、100%増大)~20倍、好ましくは2倍~10倍の増大、またはこれより大きな増大は、T細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子を含む超常磁性球状ポリマー粒子(DYNABEAD)と比較して、上記足場との約1週間の接触後に、T細胞の集団の拡大において観察された。
【0321】
さらに、本発明の方法によれば、拡大されたT細胞が、足場と接触後少なくとも約7日間にわたって代謝的に活性であることが見出された。T細胞代謝活性を、慣用的技術を介して、例えば、サイトカイン生成のレベルを分析するか、または細胞倍加をモニターして、測定した。さらに、本発明の方法によれば、拡大されたT細胞は、コントロール足場より大きなかつより安定した凝集物(例えば、より長く持続する)を形成した。例えば、1つの実験において、その拡大されたT細胞は、足場との接触後少なくとも約7日間にわたって安定な凝集物を形成したのに対して、その凝集物は、MSR基部層およびSLB層のみを含むコントロール足場とともにインキュベートしたサンプル中ではかなり崩壊した。
【0322】
本発明のさらなる実施形態は、CD8+ 細胞のポリクローナル集団を得るための方法に関し、上記方法は、本発明の足場と被験体の生物学的サンプルとを接触させ、それによって、上記サンプル内に存在するT細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持し、そして必要に応じて拡大する工程;上記サンプル中のT細胞とCD8+ 細胞の検出のための試薬とを接触させる工程;および検出されたCD8+ T細胞の部分集団を上記サンプルから単離する工程を包含する。
【0323】
関連する実施形態において、本発明は、CD4+ 細胞のポリクローナル集団を得るための方法に関し、上記方法は、本発明の足場と被験体の生物学的サンプルとを接触させ、それによって、上記サンプル内に存在するT細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持し、そして必要に応じて拡大する工程;上記サンプル中のT細胞とCD4+ 細胞の検出のための試薬とを接触させる工程;および検出されたCD4+ T細胞の部分集団を上記サンプルから単離する工程を包含する。
【0324】
関連する実施形態において、本発明は、CD4+/FOXP3+ 細胞またはCD4+/FOXP3- 細胞のポリクローナル集団を得るための方法に関する。上記方法は、本発明の足場と被験体の生物学的サンプルとを接触させ、それによって、上記サンプル内に存在するT細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持し、そして必要に応じて拡大する工程;上記サンプル中のT細胞とCD4+ 細胞の検出のための試薬とを接触させる工程;上記T細胞とFOXP3+ 細胞の検出のための試薬とをさらに接触させる工程;および検出されたCD4+/FOXP3+ 細胞またはCD4+/FOXP3- T細胞の部分集団を上記サンプルから単離する工程を包含する。これらの実施形態において、CD4+および/またはFOXP3+ T細胞の検出および/または単離のための試薬は、好ましくは、CD4+およびFOXP3マーカーに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである。この状況では、FOXP3が、調節性T細胞(これは、免疫応答を低下させる)の発生および機能における調節経路の主要調節因子として認識される限りにおいて、ある種の適用のためにFOXP3+ 細胞を、および他の適用のためにFOXP3- 細胞を単離することは、望ましいことであり得る。例えば、がん治療適用において、T細胞薬学的組成物において調節性T細胞 活性を排除または低減することは、望ましいことであり得る。よって、上記方法は、FOXP3- 細胞をスクリーニングするために適合され得る。あるいは、自己免疫疾患の処置の状況では、T細胞薬学的組成物において調節性T細胞活性を増大させることは、望ましいことであり得る(なぜなら弱められた調節性T細胞活性は、身体の自己免疫状態に寄与していることもあるからである)。よって、このような場合には、製剤化方法は、FOXP3+ 細胞を正に選択し、かつ含むように改変され得る。
【0325】
さらに別の実施形態において、本発明は、エフェクターメモリーおよび/またはエフェクターT細胞のポリクローナル集団を得るための方法に関する。上記方法は、本発明の足場と被験体の生物学的サンプルとを接触させ、それによって、上記サンプル内に存在するT細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持し、そして必要に応じて拡大する工程;上記サンプル中のT細胞とCD44+ 細胞の検出のための試薬とを接触させる工程;上記T細胞とCD62Lの検出のための試薬とをさらに接触させる工程;および検出されたCD4+//CD62L+ T細胞またはCD4+//CD62L- T細胞の部分集団を上記サンプルから単離する工程を包含する。これらの実施形態において、そのエフェクターメモリーおよび/またはエフェクターT細胞は、好ましくは CD4+//CD62L-である。
【0326】
さらに別の実施形態において、本発明は、活性化CD8+ T細胞のポリクローナル集団を得るための方法に関する。上記方法は、本発明の足場と被験体の生物学的サンプルとを接触させ、それによって、上記サンプル内に存在するT細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持し、そして必要に応じて拡大する工程;上記サンプル中のT細胞とCD8+ 細胞の検出のための試薬とを接触させる工程;上記T細胞とCD69+の検出のための試薬とをさらに接触させる工程;検出されたCD8+//CD69+ T細胞またはCD8+//CD69- T細胞の部分集団を上記サンプルから単離する工程を包含する。これらの実施形態において、その活性化T細胞は、好ましくは、CD8+/CD69+である。
【0327】
さらに別の実施形態において、本発明は、サイトトキシン分泌T細胞のポリクローナル集団を得るための方法に関する。上記方法は、本発明の足場と被験体の生物学的サンプルとを接触させ、それによって、上記サンプル内に存在するT細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持し、そして必要に応じて拡大する工程;上記サンプル中のT細胞とCD8+ 細胞の検出のための試薬とを接触させる工程;上記T細胞とグランザイムBの検出のための試薬とをさらに接触させる工程;および検出されたCD8+//グランザイムB+ T細胞またはCD8+//グランザイムB- T細胞の部分集団を上記サンプルから単離する工程を包含する。これらの実施形態において、そのサイトトキシン分泌T細胞は、好ましくは、CD8+/グランザイムB+である。
【0328】
さらに別の実施形態において、本発明は、アクチベーターサイトカイン分泌T細胞のポリクローナル集団を得るための方法に関する。上記方法は、本発明の足場と被験体の生物学的サンプルとを接触させ、それによって、上記サンプル内に存在するT細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持し、そして必要に応じて拡大する工程;上記サンプル中のT細胞とIFNγ+の検出のための試薬とを接触させる工程;および検出されたIFNγ+ T細胞の部分集団を上記サンプルから単離する工程を包含する。これらの実施形態において、そのT細胞は、好ましくは、IFNγ分泌細胞である。
【0329】
さらに別の実施形態において、本発明は、メモリーT細胞のポリクローナル集団を得るための方法に関する。上記方法は、本発明の足場と被験体の生物学的サンプルとを接触させ、それによって、上記サンプル内に存在するT細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持し、そして必要に応じて拡大する工程;上記サンプル中のT細胞とCD62L+CCR7+ T細胞の検出のための試薬とを接触させる工程;および検出されたCD62L+CCR7+ T細胞の部分集団を上記サンプルから単離する工程を包含する。これらの実施形態において、そのT細胞は、好ましくは、CD62L+CCR7+ CD4+ セントラルメモリーT細胞である。Okadaら, Int Immunol., 20(9):1189-99, 2008を参照のこと。別の実施形態において、本発明は、メモリーT細胞のポリクローナル集団を得るための方法に関し、上記方法は、本発明の足場と被験体の生物学的サンプルとを接触させ、それによって、上記サンプル内に存在するT細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持し、そして必要に応じて拡大する工程;上記サンプル中のT細胞とCD62L+CCR7+ T細胞の検出のための試薬とを接触させる工程;および検出されたCD62L-CCR7- T細胞の部分集団を上記サンプルから単離する工程を包含する。これらの実施形態において、そのCD62L-CCR7- T細胞は、エフェクターメモリーT細胞である。Sallustoら, Nature 401: 708-712, 1999を参照のこと。
【0330】
さらに別の実施形態において、本発明は、消耗したT細胞のポリクローナル集団を検出し、そして/またはサンプルから除去するための方法に関する。上記方法は、本発明の足場と被験体の生物学的サンプルとを接触させ、それによって、上記サンプル中に存在するT細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持し、必要に応じて拡大する工程;上記サンプル中のT細胞とCD8+ T細胞の検出のための試薬とを接触させる工程;上記T細胞とPD-1+ T細胞の検出のための試薬とをさらに接触させる工程;および検出されたCD8+/ PD-1+ T細胞の部分集団を上記サンプルから単離する工程を包含する。そのCD8+/ PD-1+ T細胞(これは、消耗した細胞を示す)は、上記サンプルから必要に応じて排除され得る。
【0331】
T細胞を検出し、そして/またはサンプルから除去するための別の実施形態において、本発明は、本発明の足場と被験体の生物学的サンプルとを接触させ、それによって、上記サンプル内に存在するT細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持し、そして必要に応じて拡大する工程;上記サンプル中のT細胞とT細胞上の共阻害レセプターの検出のための試薬とを接触させる工程;および上記共阻害レセプターを発現するT細胞の部分集団を上記サンプルから単離する工程を包含する方法を提供する。共阻害レセプターの発現は一般に、消耗した細胞を示し、これは、サンプルから必要に応じて排除され得る。これらの実施形態において、その共阻害レセプターは、CTLA-4、TIM3、LAG3、2B4、BTLA、CD160およびKLRG1からなる群より選択されるレセプターである。Legatら, Front Immunol., 2013 Dec 19;4:455を参照のこと。
【0332】
前述の実施形態において、細胞の検出および/または単離のための試薬は、好ましくは、抗体またはその抗原結合フラグメント、例えば、前述のマーカー、例えば、CD8、CD4、FOXP3、CD62L、PD-1、グランザイムBなどに特異的に結合する抗体である。これらの細胞表面マーカーの検出は、好ましくは、FACS分析を使用して行われる。
【0333】
本発明はさらに、ポリクローナルT細胞集団を、前述の方法のうちの1種またはこれより多くを使用して単離すること、およびさらに、インターフェロンγ(IFNγ)、組織壊死因子α(TNFα)、IL-2、IL-1、IL-4、IL-5、IL-10、およびIL-13、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるサイトカインの生成を検出することに関する。そのサイトカインは、単離方法の実証を可能にし得る。例えば、操作されたT細胞がTヘルパー1(Th1)細胞である場合、その方法は、IL-2、インターフェロンγ(IFNγ)および組織壊死因子α(TNFα)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるサイトカインの生成を検出する工程を包含し得る。同様に、その操作されたT細胞がTヘルパー2(Th2)細胞である場合、上記方法は、IL-4、IL-5、IL-10およびIL-13、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるサイトカインの生成を検出する工程を包含する。さらに、その操作されたT細胞が細胞傷害性T(Tc)細胞である場合、上記方法は、インターフェロンγ(IFNγ)およびリンホトキシンα(LTα/TNFβ)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるサイトカインの生成を、必要に応じてグランザイムもしくはパーフォリン、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される分泌型サイトトキシンの検出と一緒に検出する工程をさらに包含し得る。
【0334】
ある種の方法論を使用すると、最初の活性化および刺激後に、T細胞を、約12~約14日間の期間の後に刺激から分離することによって、そのT細胞の集団の長期間刺激を維持することは、有利であり得る。T細胞増殖の速度は、例えば、サイズを調べるかまたはT細胞の容積を(例えば、コールターカウンタ-で)測定することによって、周期的に(例えば、毎日)モニターされる。この点において、静止T細胞は、約6.8ミクロンの平均直径を有し、最初の活性化および刺激に際して、刺激リガンドの存在下では、そのT細胞の平均直径は、4日目までに12ミクロン超へと増大し、約6日目までに低下し始める。平均T細胞直径が、およそ8ミクロンへと低下する場合、そのT細胞は、T細胞のさらなる増殖を誘導するために再活性化および再刺激され得る。あるいは、T細胞増殖の速度およびT細胞再刺激のための時間は、細胞表面分子(例えば、CD69、CD4、CD8、CD25、CD62L、FOXP3、HLA-DR、CD28、およびCD134、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカー)の存在に関してアッセイすることによってモニターされ得る。さらに、上記方法は、非T細胞表面分子(例えば、CD36、CD40、およびCD44、またはこれらの組み合わせ)の存在に関してアッセイすることによって補完され得る。ある種の場合では、上記方法は、非T細胞表面分子(例えば、CD154、CD54、CD25、CD137、CD134(これらは、活性化T細胞上で誘導される))の存在に関してアッセイすることによって補完され得る。
【0335】
疾患の診断および治療
本明細書で記載される実施形態はさらに、被験体において疾患または障害を処置するための方法に関する。一実施形態において、その疾患は、がんである。別の実施形態において、その疾患は、自己免疫障害である。第3の実施形態において、その疾患は、病原体によって引き起こされる疾患である。
【0336】
これらの実施形態において、疾患を有する被験体はT細胞集団を含むその被験体のサンプルと、本発明の抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)とを接触させ、それによって、T細胞の集団を活性化し、共刺激し、そしてホメオスタシス的に維持する工程;必要に応じてT細胞の集団を拡大する工程;およびその活性化され、共刺激され、維持され、そして必要に応じて拡大されたT細胞を上記被験体に投与し、それによって、上記被験体における疾患を処置する工程によって処置され得る。一実施形態において、そのT細胞集団は、例えば、0.5日間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、25日間、30日間、35日間、38日間、45日間、50日間、60日間、またはこれより長い期間にわたって足場と接触され、そしてその中に含まれる細胞は、前述の技術のうちの1種またはこれより多くを使用して操作される。操作の例としては、例えば、活性化、分裂、分化、成長、拡大、再プログラミング、アネルギー、静止、老化、アポトーシス、死滅などが挙げられる。その細胞は、操作されるべき足場から物理的に除去される必要はない。従って、一実施形態において、その足場は、被験体のサンプルとインサイチュで(例えば、足場を被験体に移植することによって)接触される。他の実施形態において、その細胞は、エキソサイチュで操作される(例えば、その足場およびその被験体の引き抜かれた血液サンプルをインキュベートする)。
【0337】
本発明の治療的実施形態において、哺乳動物に投与されるT細胞は、約4~約35日齢であり、すると、哺乳動物における疾患の退縮が促進される。いくつかの実施形態において、その投与されるT細胞は、約14日齢未満、例えば、約7~約21日齢である。本発明の方法は、多くの利点を提供する。例えば、約4~約14日齢であるT細胞は、約60日齢または約60日齢超であるT細胞と比較して、改善されたインビボでの増殖、生存および活性を提供すると考えられる。養子細胞療法(ACT)のT細胞を生成するために必要とされる期間は、平均約44日間から、約4~約15日間の範囲(または約35日間未満、例えば、約7~約15日間)へと短縮され得る。よって、より多くの患者が、彼らの疾患負荷が、ACTの投与がもはや安全または可能ではない可能性があるステージへと進行する前に、処置され得る。さらに、本発明の方法の好ましい実施形態は、投与前に特異的抗原反応性のインビトロ試験を要求しないことから、本発明の方法は、患者の処置と関連する時間、費用、および労働を低減する。さらに、本発明の方法は、有利なことには、ミクロ培養から得られたものの代わりに、バルク培養からプールされたT細胞を投与し得る。臨床上有効なT細胞を生成するためのより単純かつより迅速な方法の開発は、養子細胞療法の使用のより大きな拡がりを助けると考えられる。本発明の方法はまた、有利なことには、特異的抗原反応性のインビトロでの試験によって、インビボで非反応性であると誤って推定され得るT細胞培養物を利用する。単一の腫瘍標本から生成されるT細胞培養物は、多様な特異的反応性を有するので、インビトロでの抗原反応性試験がないことで、有利なことには、ごくわずかなT細胞培養物を選択して拡大しなければならないことが回避され、従って、患者に投与されるべき腫瘍反応性のより多様なレパートリーを提供する。約4~約30日齢であるT細胞はまた、細胞のより大きな多様性を含み、ならびにT細胞より活性/健康な細胞の出現率がより高い。さらに、本発明の方法の1種またはこれより多くの局面(例えば、培養および/または拡大が挙げられるが、これらに限定されない)は、自動化可能であり得る。
【0338】
上記方法の一実施形態は、自家T細胞を培養する工程を包含する。腫瘍サンプルは、患者から得られ、単一の細胞懸濁物が得られる。その単一の細胞懸濁物は、任意の適切な様式で、例えば、機械的に(例えば、GENTLEMACSTM Dissociator(Miltenyi Biotec, Auburn, Calif.)を使用して腫瘍をバラバラにする)または酵素的に(例えば、コラゲナーゼまたはDNase)、得られ得る。腫瘍酵素消化物の単一細胞懸濁物は、本発明の足場において培養され得る。その細胞は、コンフルエントになるまで(例えば、約2×10リンパ球)、例えば、約2~約21日間、好ましくは約4~約14日間培養される。例えば、細胞は、5日間、5.5日間、または5.8日間、6.0日間、6.5日間、7.0日間~21日間、21.5日間、または21.8日間、好ましくは10日間、10.5日間、または10.8日間~14日間、14.5日間、または14.8日間、培養され得る。
【0339】
上記方法の一実施形態は、培養されたT細胞を拡大する工程を包含する。その培養されたT細胞は、プールされ、迅速に拡大される。迅速な拡大は、約7~約14日間、好ましくは約14日間の期間にわたって、少なくとも約10倍(例えば、10倍、20倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、もしくは100倍、または100倍超)の抗原特異的T細胞の数の増大を提供する。より好ましくは、迅速な拡大は、約7~約14日間、好ましくは約14日間の期間にわたって、少なくとも約200倍(例えば、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、または900倍超)の増大を提供する。最も好ましくは、迅速な拡大は、約10~約14日間、好ましくは約14日間の期間にわたって、少なくとも約400倍または400倍超の増大を提供する。必要に応じて、その細胞は、足場における最初の拡大を受け得る。その際に、それらは、迅速な拡大を受けやすい。この2工程の拡大プロトコルの下で、約7~14日間の期間にわたる約1000倍の増大が、達成され得る。
【0340】
拡大は、当該分野で公知であるとおりの多くの方法のうちのいずれかによって達成され得る。例えば、T細胞は、フィーダーリンパ球およびインターロイキン-2(IL-2)またはインターロイキン-15(IL-15)のいずれか(IL-2が好ましい)の存在下で、非特異的T細胞レセプター刺激を使用して迅速に拡大され得る。その非特異的T細胞レセプター刺激は、およそ30ng/mlのOKT3、マウスモノクローナル抗CD3抗体(Ortho-McNeil(登録商標), Raritan, N.J.から入手可能)を含み得る。あるいは、T細胞は、がんの1種またはこれより多くの抗原(細胞の抗原性部分(例えば、エピトープ)または細胞が挙げられる)で、T細胞増殖因子(例えば、300 IU/ml IL-2またはIL-15(IL-2が好ましい)の存在下で、インビトロで末梢血単核細胞(PBMC)を刺激することによって迅速に拡大され得る。これら抗原は、必要に応じてベクターから発現され得る(ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)結合ペプチド、例えば、0.3μm MART-1:26-35(27L)またはgp100:209-217(210M))。そのインビトロで誘導したT細胞は、HLA-A2発現抗原提示細胞に適用されるがんのその同じ抗原での再刺激によって迅速に拡大される。あるいは、そのT細胞は、照射した自家リンパ球または照射したHLA-A2+ 同種異系リンパ球および例えばIL-2で、再刺激され得る。
【0341】
上記方法の一実施形態は、被験体に拡大したT細胞を投与する工程を包含し、ここでその哺乳動物に投与されるT細胞は、約4~約35日齢である。例えば、その投与される細胞は、6、7、もしくは8~14、15、もしくは16日齢であり得る。いくつかの実施形態において、その哺乳動物に投与されるT細胞は、約4~約29日齢または約7~約15日齢、または約10日齢である。この点において、本発明の一実施形態に従ってその哺乳動物に投与されるT細胞は、「若い」T細胞、すなわち、最小限に培養されたT細胞である。
【0342】
本発明の一実施形態に従ってその哺乳動物に投与される若いT細胞培養物は、有利なことには、インビボでの持続性、増殖、および抗腫瘍活性と関連する特徴を有する。例えば、若いT細胞培養物は、約44日齢であるT細胞より高いCD27および/またはCD28の発現を有する。特定の理論に拘束されず、CD27およびCD28は、増殖、インビボでの持続性、およびT細胞のより少ない分化状態と関連すると考えられる(T細胞の増大した分化は、T細胞がインビボで機能する能力に負の影響を及ぼすと考えられる)。より高いレベルのCD27を発現するT細胞は、CD27が低い細胞より良好な抗腫瘍活性を有すると考えられる。さらに、若いT細胞培養物は、約44日齢であるT細胞より高い出現率のCD4+ 細胞を有する。
【0343】
さらに、若いT細胞培養物は、約44日齢であるT細胞のものより長い平均テロメア長を有する。特定の理論に拘束されず、T細胞は、培養において1週間あたり0.8kbの推測テロメア長を失い、そして若いT細胞培養物は、約44日齢であるT細胞より約1.4kb長いテロメア得を有すると考えられる。特定の理論に拘束されず、より長いテロメア長は、患者における正の客観的臨床応答、およびインビボでの細胞の持続性と関連すると考えられる。
【0344】
T細胞は、当該分野で公知であるとおりの任意の適切な経路によって投与され得る。好ましくは、T細胞は、動脈内または静脈内注入物として投与され、これは、好ましくは約30~約60分間続く。投与経路の他の例としては、皮下、腹腔内、くも膜下およびリンパ内が挙げられる。
【0345】
さらに、本発明の実施形態は、拡大された細胞を含む治療用組成物を投与する種々の様式を提供する。一実施形態において、その拡大された細胞は、先ず精製され、次いで、被験体に投与される。あるいは、その拡大された細胞は、被験体へと投与する前に、本発明の足場と混合され得る。この代替のアプローチの下では、その足場(APC-MS)は、インビボで細胞を刺激し続け得、また、インビボの状況において標的全血球を選択的に操作するように機能し得る。
【0346】
本発明の治療方法は、投与工程の前に、T細胞の集団を再刺激する工程を包含し得る。その再刺激工程は、当該分野で公知の技術を使用して行われ得る。一実施形態において、その再刺激工程は、細胞を足場組成物とともに再インキュベートすることによって行われる。別の実施形態において、再刺激は、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA、10ng/ml、Sigma-Aldrich, Inc.)、イオノマイシン(0.5μg/ml、Sigma-Aldrich, Inc.)およびブレフェルジンA(eBiosciences, Inc.)の添加によって行われる。さらに別の実施形態において、その再刺激工程は、抗原(例えば、病原体抗原またはがん抗原)を足場の中にまたは培養物の中に外因的に含めることによって行われる。
【0347】
一実施形態において、その治療方法は、被験体の血液サンプル、骨髄サンプル、リンパ液サンプルまたは脾臓サンプルから得られるT細胞を操作することによって行われる。
【0348】
よって、本発明の実施形態は、被験体においてがんを処置するための方法を提供する。上記方法は、T細胞集団を含むその被験体のサンプルと本発明の抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)とを接触させ、それによってT細胞の集団を活性化し、共刺激し、そしてホメオスタシス的に維持する工程;T細胞の集団を必要に応じて拡大する工程;その活性化され、共刺激され、維持され、そして必要に応じて拡大されたT細胞をその被験体に投与し、それによって、その被験体においてがんを処置する工程を包含する。ある種の実施形態において、その足場は、がん抗原とともに提供される。一実施形態において、そのがん抗原は、MHC分子またはそのフラグメントにおいて、例えば、T細胞による認識のために提示される。ある種の場合では、全細胞生成物が、提供され得る。
【0349】
がん抗原の代表的な例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、CEA、チロシナーゼ、ミッドカイン、BAGE、CASP-8、β-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、CA-125、CDK-1、CDK4、ESO-1、gp75、gp100、MART-1、MUC-1、MUM-1、p53、PAP、PSA、PSMA、ras、trp-1、HER-2、TRP-1、TRP-2、IL13Rα、IL13Rα2、AIM-2、AIM-3、NY-ESO-1、C9orf 112、SART1、SART2、SART3、BRAP、RTN4、GLEA2、TNKS2、KIAA0376、ING4、HSPH1、C13orf24、RBPSUH、C6orf153、NKTR、NSEP1、U2AF1L、CYNL2、TPR、SOX2、GOLGA、BMI1、COX-2、EGFRvIII、EZH2、LICAM、Livin、Livinβ、MRP-3、ネスチン、OLIG2、ART1、ART4、B-サイクリン、Gli1、Cav-1、カテプシンB、CD74、E-カドヘリン、EphA2/Eck、Fra-1/Fosl 1、GAGE-1、ガングリオシド/GD2、GnT-V、β1,6-N、Ki67、Ku70/80、PROX1、PSCA、SOX10、SOX11、サバイビン、UPAR、WT-1、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(AD Abp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、T細胞レセプター/CD3-ζ鎖、腫瘍抗原のGAGEファミリー、RAGE、LAGE-I、NAG、GnT-V、RCASl、α-フェトプロテイン、pl20ctn、Pmel117、PRAME、脳型グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX-I、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-I、SSX-4、SSX-5、SCP-I、CT-7、cdc27、腺腫様多発結腸ポリープタンパク質(APC)、フォドリン、PlA、コネキシン37、Ig-イディオタイプ、pl5、GM2、GD2 ガングリオシド、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp-1、EBVコード核抗原(EBNA)-I、UL16結合タンパク質様転写物1(Mult1)、RAE-1タンパク質、H60、MICA、MICB、およびc-erbB-2、またはこれらの免疫原性ペプチド、ならびにこれらの組み合わせ。
【0350】
別の実施形態において、そのがん抗原は、患者において同定されるネオアンチゲンである。ネオアンチゲン決定基は、ネオアンチゲン上のエピトープであり、これは、免疫系が以前に認識していなかった新たに形成された抗原である。ネオアンチゲンはしばしば、腫瘍抗原と関連し、腫瘍形成細胞において見出される。ネオアンチゲンおよびさらに拡げると、ネオアンチゲン決定基は、タンパク質が生化学的経路内でのさらなる改変(例えば、グリコシル化、リン酸化またはタンパク質分解)を受け、新しいエピトープの生成をもたらす場合に形成され得る。これらのエピトープは、別個の特異的抗体によって認識され得る。Schumacherら, Science 348(6230): 69-74, 2015を参照のこと。一実施形態において、ネオアンチゲンは、患者特異的様式で検出され得る。患者サンプル、例えば、血液サンプルからネオアンチゲンを検出するための方法は、米国特許第9,115,402号(これは、本明細書に参考として援用される)に記載される。一実施形態において、ネオアンチゲンは、SF3B1、MYD88、TP53、ATM、Abl、A FBXW7、DDX3X、MAPK1、GNB1、CDK4、MUM1、CTNNB1、CDC27、TRAPPC1、TPI、ASCC3、HHAT、FN1、OS-9、PTPRK、CDKN2A、HLA-A11、GAS7、GAPDH、SIRT2、GPNMB、SNRP116、RBAF600、SNRPD1、Prdx5、CLPP、PPP1R3B、EF2、ACTN4、ME1、NF-YC、HLA-A2、HSP70-2、KIAA1440、CASP8に由来するペプチド、またはこれらの組み合わせである。Luら, Seminars in Immunology, 28(1), 22-27, 2016を参照のこと。
【0351】
上記で概説されるがん治療実施形態を実施するにあたって、細胞傷害性T細胞特異的活性化分子および細胞傷害性T細胞特異的共刺激分子とともに、必要に応じて細胞傷害性T細胞の活性化、分裂、分化、成長、拡大、または再プログラミングを付与する1種またはこれより多くのさらなる薬剤と一緒に製作された足場を提供することは、有利であり得る。このような分子の代表的な例は、上記で提供されている。
【0352】
ある種の実施形態において、その隔離されたおよび/または単離された細胞は、遺伝的に改変され得る。一実施形態において、エフェクター細胞は、CD19に対して特異的なキメラ抗原レセプター(CAR)を発現するように遺伝的に改変される(CD19 CAR-T細胞)。この特定のタイプのT細胞は、小規模の第I相臨床試験において再発性および難治性のB細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)を有する成人および小児患者において高率の完全奏効(CR)を生じた。Turtleら(J Clin Invest., 126, 2123-38, 2016)およびその中で引用される参考文献を参照のこと。好都合な結果は、非ホジキンリンパ腫(NHL)および慢性リンパ性白血病(CLL)においてCD19 CAR-T細胞療法の臨床試験においても認められた。これらの研究は、レシピエントにおいて移入したCAR-T細胞の強い増殖が臨床応答と相関し、機能的CAR-T細胞の長期間のインビボ持続性が、疾患再発を防止し得ることを示唆する。よって、一実施形態において、本発明は、がん治療のためのT細胞組成物をさらに製剤化するための方法に関し、上記方法は、足場から得られるT細胞をさらに遺伝的に改変する工程を包含する。その遺伝的改変は、エキソサイチュまたはインサイチュで媒介され得る。任意の技術が、T細胞を遺伝的に改変するために使用され得る(ウイルスベクター、プラスミド、トランスポゾン/トランスポザーゼ系、shRNA、siRNA、アンチセンスRNAなどを使用することが挙げられるが、これらに限定されない)。いくつかの実施形態において、T細胞は、遺伝子編集系(例えば、CRISPR/Cas9系)を使用して遺伝的に改変されている。いくつかの実施形態において、その単離されたT細胞は、ウイルス送達系を使用して遺伝的に改変される。いくつかの実施形態において、その単離されたT細胞は、レンチウイルス系を使用して遺伝的に改変される。いくつかの実施形態において、その単離されたT細胞は、レトロウイルス系を使用して遺伝的に改変される。いくつかの実施形態において、その単離されたT細胞は、アデノウイルス系を使用して遺伝的に改変される。いくつかの実施形態において、その単離されたT細胞は、ウイルス送達系またはウイルス隔離との相互作用を促進する薬剤(例えば、ウイルス送達系とのレセプター媒介性相互作用を促進する薬剤またはウイルス送達系との静電的相互作用を促進する薬剤)と接触される。
【0353】
いくつかの実施形態において、その単離されたT細胞は、ウイルス送達系をインサイチュで使用して遺伝的に改変される。その単離されたT細胞がインサイチュで遺伝的に改変される実施形態において、足場は、ウイルス隔離を促進する薬剤を含み得る。ウイルス隔離を促進する薬剤は、吸着を通じて、または脂質ヘッド基への付着によってかのいずれかで、MSR-SLBの脂質二重層の表面上に存在し得る。いくつかの実施形態において、ウイルス隔離を促進する薬剤は、フィブロネクチンペプチド(例えば、RetroNectin(登録商標))である。いくつかの実施形態において、ウイルス隔離を促進する薬剤は、両親媒性ペプチド(例えば、Vectofusin-1(登録商標))である。いくつかの実施形態において、足場は、T細胞活性化分子、T細胞共刺激分子および/またはT細胞ホメオスタシス因子をさらに含み得る。いかなる特定の理論によっても拘束されることは望まないが、T細胞が、ウイルス隔離を促進する薬剤を、T細胞活性化分子、T細胞共刺激分子および/またはT細胞ホメオスタシス因子と組み合わせて含む足場と接触される場合、その足場は、細胞クラスター化をもたらし得、かつウイルス送達系がT細胞と直ぐ近接して存在し、それによって、その細胞のより効率的な形質導入を促進することを可能にし得るT細胞の活性化および拡大を促進し得ると考えられる。その足場上に存在するT細胞活性化分子、T細胞共刺激分子および/またはT細胞ホメオスタシス因子は、得られたT細胞の治療有効性を増強し得る所望のT細胞表現型を生じるように選択され得る(例えば、Sommermeyerら, Leukemia 30(2): 492-500(2016)を参照のこと)。
【0354】
いくつかの実施形態において、その単離されたT細胞は、キメラ抗原レセプター(CAR)を発現するように遺伝的に改変される。一実施形態において、CD4+ およびCD8+ T細胞は、CD19 CAR、および抗EGFRモノクローナル抗体セツキシマブを使用するフローサイトメトリーによって形質導入された細胞の同定を可能にする短縮型ヒト上皮増殖因子レセプター(EGFRt)を発現するようにレンチウイルスで形質導入される。形質導入されたEGFRt+ CD4+ およびCD8+ T細胞は、照射されたCD19+ リンパ芽球細胞株(LCL)での単一の刺激による培養の間に富化される。注入物に関するリリース時の製品中のCD3+CD4+ およびCD3+CD8+部分セット内のEGFRt+ CAR-T細胞のメジアン出現率(これは、良好な治療転帰を付与する)は、それぞれ、約80%(範囲 50.0%~95.9%)および約85%(範囲 13.0%~95.6%)である。Turtleら(J Clin Invest., 126, 2123-38, 2016)を参照のこと。その遺伝的に改変されたT細胞は、T細胞生成物を本発明の足場とともにインキュベートすることによってさらに拡大され得る。一実施形態において、CAR T細胞特異的抗原、例えば、CD19、CD22またはこれらのフラグメントまたはこれらの改変体を含む足場は、所望のCAR T細胞を選択的に拡大するために使用され得る。
【0355】
ある種の実施形態において、足場は、がん治療法を実施するにあたって有用である生成物とともに提供される。代表的な例としては、例えば、B細胞のハイブリドーマ、T細胞の安定な系統、B細胞もしくはそのハイブリドーマに由来する抗体、がん抗原に結合するレセプター(抗原を提示するMHC分子に結合するレセプター)(これらのフラグメントを含む)、これらのレセプターもしくは抗原結合ドメインをコードする核酸、抗体をコードする核酸が挙げられ、全細胞を含む。
【0356】
本発明の実施形態は、被験体において免疫不全障害を処置するための方法を提供し、上記方法は、T細胞集団を含む被験体のサンプルと本発明の抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)とを接触させ、それによって、T細胞の集団を活性化し、共刺激し、そしてホメオスタシス的に維持する工程;そのT細胞の集団を必要に応じて拡大する工程;およびその活性化され、共刺激され、維持され、そして必要に応じて拡大されたT細胞を、その被験体に投与し、それによって、その被験体において免疫不全障害を処置する工程を包含する。
【0357】
一実施形態において、原発性免疫不全障害および後天性免疫不全障害からなる群より選択される免疫不全障害を処置するための方法が提供され、上記方法は、T細胞集団を含む被験体のサンプルと本発明のAPC-MSとを接触させ、それによって、T細胞の集団を活性化し、共刺激し、そしてホメオスタシス的に維持する工程;そのT細胞の集団を必要に応じて拡大する工程;およびその活性化され、共刺激され、維持され、そして必要に応じて拡大されたT細胞を被験体に投与し、それによって、その被験体において免疫不全障害を処置する工程を包含する。一実施形態において、その免疫不全障害は、後天性免疫不全障害、例えば、後天性免疫不全症候群(AIDS)または遺伝性障害、例えば、ディジョージ症候群(DGS)、染色体切断症候群(CBS)、毛細血管拡張性運動失調症(AT)およびウィスコット-オルドリッチ症候群(WAS)、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0358】
上記で概説されるように、免疫不全障害の治療を実施するにあたって、ヘルパーT細胞特異的活性化分子およびヘルパーT細胞特異的共刺激分子とともに、必要に応じてヘルパーT細胞の活性化、分裂、分化、成長、拡大、または再プログラミングを付与する1種またはこれより多くのさらなる薬剤と一緒に製作された足場を提供することは、有利であり得る。このような分子および薬剤の代表的な例としては、上記で提供されている。
【0359】
本発明の実施形態は、被験体において病原体による疾患を処置するための補右方を提供し、上記方法は、T細胞集団を含む被験体のサンプルと本発明の抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)とを接触させ、それによって、T細胞の集団を活性化し、共刺激し、そしてホメオスタシス的に維持する工程;そのT細胞の集団を必要に応じて拡大する工程;およびその活性化され、共刺激され、維持され、そして必要に応じて拡大されたT細胞を被験体に投与し、それによって、その被験体において病原体による疾患を処置する工程を包含する。場合によっては、操作工程から得られる免疫細胞または組成物は、予防的に、例えば、被験体において疾患の症状が開始する前に投与され得る。前述の実施形態に従って処置され得る病原体による疾患としては、細菌疾患、ウイルス疾患、真菌疾患、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0360】
本発明の実施形態は、被験体において自己免疫疾患を処置するための方法を提供する。上記方法は、T細胞集団を含む被験体のサンプルと本発明の抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)とを接触させ、それによって、T細胞の集団を活性化し、共刺激し、そしてホメオスタシス的に維持する工程;そのT細胞の集団を必要に応じて拡大する工程;およびその活性化され、共刺激され、維持され、そして必要に応じて拡大されたT細胞を被験体に投与し、それによって、その被験体における自己免疫疾患を処置する工程を包含する。
【0361】
自己免疫疾患を処置する状況では、活性な免疫細胞を投与するのではなく(なぜならこれらは自己反応性であるので)、むしろ静止、老化または不活性化された免疫細胞を投与することは、好ましいことであり得る。好ましくは、その免疫細胞は、T細胞である。あるいは、免疫細胞(例えば、調節性T細胞またはサプレッサーT細胞)の調節因子が、投与され得る。その足場/デバイスは、Ts/Treg細胞部分集団(これは、次いで、被験体へと投与される)の操作のために製作され得る。
【0362】
よって、いくつかの実施形態において、本発明は、自己免疫疾患を処置するための方法を提供し、上記方法は、必要性のある被験体に、本発明の足場を投与する工程であって、ここでその足場の中の複数の抗原は、自己免疫疾患に対して特異的である工程、その足場/デバイスの中の複数の調節性またはサプレッサーT細胞を集める工程であって、ここでその複数の調節性またはサプレッサーT細胞は、その自己免疫抗原に対して特異的である工程、ならびにその複数の調節性T細胞またはサプレッサーT細胞またはこれらに由来する生成物をその被験体へと投与し、それによって自己免疫疾患を処置する工程による。
【0363】
自己免疫疾患の治療を実施するにあたって有用である細胞生成物としては、例えば、自己反応性細胞に結合する抗体およびレセプター、サプレッサーまたは調節性T細胞に位置する調節性タンパク質(このような分子をコードする核酸配列を含む)が挙げられる。
【0364】
上記の治療的実施形態において、細胞は、約5×10 細胞/ml~約1×10 細胞/mlを含む全細胞濃度において製剤化され得る。T細胞の好ましい用量は、約2×10 細胞~約9×10 細胞の範囲に及ぶ。
【0365】
本発明の実施形態はさらに、前述の組成物のうちの1種またはこれより多くを投与することによる疾患の治療に関する。その組成物は、薬学的組成物であり得、これは、それらの意図された目的を達成する任意の手段によって投与される。例えば、投与は、非経口、皮下、静脈内、動脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、経皮、経粘膜、大脳内、くも膜下、または室内経路によるものであり得る。あるいは、または同時に、投与は、経口経路によるものであり得る。その薬学的組成物は、ボーラス注射によって、または経時的に徐々に灌流することによって、非経口的に投与され得る。
【0366】
投与される投与量は、レシピエントの年齢、性別、健康状態、および体重、同時処置の種類(あるとすれば)、処置の頻度、ならびに望ましい効果の性質に依存し得る。薬学的組成物の投与のための用量範囲は、所望の効果を生じるために十分大きくてもよく、それによって、例えば、自己反応性T細胞は枯渇され、そして/または自己免疫疾患は、顕著に防止、抑制、または処置される。その用量は、有害な副作用(例えば、望ましくない交差反応、全身の免疫抑制、アナフィラキシー反応など)を引き起こすほど大きくてはならない。
【0367】
本明細書で記載される実施形態はさらに、被験体において疾患または障害を検出または診断するための方法に関する。任意の疾患または障害が、前述の方法を使用して検出または診断され得る。特に好ましくは、その疾患は、関節リウマチ、狼瘡、セリアック病、炎症性腸疾患もしくはクローン病、シェーグレン症候群、リウマチ性多発筋痛、多発性硬化症、強直性脊椎炎、I型糖尿病、円形脱毛症、血管炎、側頭動脈炎などからなる群より選択される自己免疫疾患である。他の実施形態において、その疾患は、頭頚部がん、乳がん、膵臓がん、前立腺がん、腎臓がん、食道がん、骨がん、精巣がん、子宮頚がん、消化器がん、膠芽腫、白血病、リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肺における前癌病変、結腸がん、黒色腫、および膀胱がんからなる群より選択されるがんである。前述の実施形態に従って診断され得る病原体による疾患としては、細菌疾患、ウイルス疾患、真菌疾患、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0368】
これらの実施形態において、疾患を有する被験体は、目的の免疫細胞を含む被験体のサンプルと本発明の足場とを先ず接触させることによって診断され得、ここでその足場の中の抗原は、その疾患に対して特異的である。一実施形態において、そのサンプルは、T細胞を含み、その足場/デバイスは、例えば、0.5日間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、25日間、30日間、35日間、40日間、45日間、50日間、60日間、またはこれより長い期間にわたってそのサンプルと接触され、その足場の中の細胞は、前述の技術のうちの1種またはこれより多くを使用して分析される。例えば、自己免疫疾患を診断する状況では、分析される細胞は、活性化T細胞を含み得る。がん診断の状況では、分析される細胞は、腫瘍抗原特異的T細胞を含み得る。病原体による疾患の状況では、分析される細胞は、その病原体を特異的に排除するT細胞を含み得る(例えば、細胞内病原体の場合にはTh1細胞を、および細胞外病原体の場合にはTh2細胞を分析することによる)。
【0369】
被験体は、動物、好ましくは哺乳動物または鳥類である。特に好ましくは、その被験体は、ヒト、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、スイギュウおよびウマからなる群より選択される。最も好ましくは、その被験体は、ヒトである。任意の免疫細胞は、その疾患または障害の診断において使用され得る。好ましくは、診断は、リンパ球、例えば、T細胞で行われる。
【0370】
分析工程は、任意の慣用的方法を使用して行われ得る。よって、一実施形態において、分析工程は、自己免疫疾患に対して特異的である免疫細胞の数を決定する工程を包含し得る。任意の慣用的技術は、免疫細胞の抗原結合特異性を決定するために使用され得る(例えば、細胞サンプルを抗原被覆表面上に負荷し、非特異的に結合した細胞を洗い流し、そして抗原特異的細胞の数を(結合した細胞を放出することによる遊離形態、または結合した形態のいずれかで)、検出薬剤(例えば、抗原特異的細胞上に位置する細胞表面エピトープに結合する抗体)を使用して定量する)。別の実施形態において、分析工程は、抗原特異的免疫細胞の物理的または生物学的特徴を決定する工程を包含し得る。物理的特徴の例としては、例えば、サイズ、形状、反射率、形態、密度が挙げられる。生物学的特徴の例としては、例えば、特定の細胞表面マーカーの発現、サイトカインの分泌、特定の抗原または薬剤に対する反応性、遺伝子発現のパターンが挙げられる。
【0371】
分析工程は、相関工程に結びつけられ得、ここでその分析工程の結果は、目的のパラメーターと相関される。パラメーターの代表的なタイプとしては、存在(または疾患の非存在)、疾患のタイプ(例えば、非攻撃的な自己免疫障害に対して攻撃的;創薬不能な(non-druggable)疾患に対して創薬可能な疾患、例えば、抗生物質耐性細菌感染に対して抗生物質感受性、免疫療法感受性がんに対して免疫療法耐性)、疾患のステージ、疾患の進行/退縮(経時的な)などが挙げられる。一実施形態において、そのパラメーターは、疾患の存在または非存在に関する(これは、一対の用語において表され得る)。別の実施形態において、そのパラメーターは、疾患のステージ分類に関する(これは、数値スケール(例えば、ステージI~IV(ステージIVは、最高である)で表され得る)。なお別の実施形態において、そのパラメーターは、疾患の発生のオッズまたは可能性(例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、2倍、3倍、5倍、10倍、20倍または20倍超)に関する。
【0372】
前述の診断法において、そのパラメーターは、ベースライン値と比較され得る。そのベースライン値は、例えば、健康な被験体の集団において予め決定された値であり得る。例えば、目的の抗原が関節リウマチ(RA)抗原である場合、健康な被験体におけるRA特異的抗体(またはT細胞)のベースラインレベルは、相関工程において使用され得る。あるいは、そのベースライン値は、適切なコントロールを使用して実験で同定され得る。当業者は、慣用的技術を使用して、種々の被験体群の間を相関し得、そして/または推論を導き得る。
【0373】
よって、本発明の実施形態は、被験体のサンプルと、自己免疫疾患、がん疾患、または病原体による疾患に対して特異的な抗原を含む本発明の足場とを接触させ、そしてその中に含まれる免疫細胞を分析することによって、被験体において自己免疫疾患、がん、または病原体による疾患を検出または診断することに関する。その接触させる工程は、インビボで(例えば、その足場を被験体に移植することによって)またはエキソビボで(例えば、被験体から引き抜かれた血液サンプルをその足場とともに培養することによって)行われ得る。ある種の実施形態において、その分析工程は、その免疫細胞をその足場から、慣用的技術を使用して先ず除去することによって、すなわち、エキソサイチュ分析を介して行われ得る。例えば、穏やかな界面活性剤および酵素は、その足場から細胞を取り除くために使用され得る。あるいは、その検出/分析工程は、その足場から細胞を除去することなく、すなわち、インサイチュ分析を介して行われ得る。
【0374】
関連する実施形態は、被験体において疾患の進行をモニターするための方法に関する。上記方法は、被験体のサンプルと疾患に対して特異的な抗原を含む本発明の足場とを請求項食させる工程およびその中に含まれる免疫細胞を分析する工程を包含する。デバイスの中に含まれる免疫細胞の数/タイプは、その疾患の進行に関する価値のあるキューを提供し得る。あるいは、被験体が治療介入を受けた場合、類似の方法は、疾患の治療および/または疾患の管理をモニターするために使用され得る。
【0375】
前述の方法は、自己免疫障害、がん、病原体による疾患などの進行/治療をモニターするために使用され得る。好ましくは、診断法において使用される免疫細胞は、T細胞である。
【0376】
自己免疫障害の状況において、疾患の進行は、自己反応性T細胞の数および/またはタイプを分析することによってモニターされ得る。分析の結果に依存して、介入および/または治療の方法は、症状の重篤度を最小限にするためにデザインされ得る。他の例では、防止的方法がとられ得る(食事、栄養および/または他の生活様式の変化に関して被験体へ推奨することを含む)。
【0377】
本明細書で記載される実施形態はさらに、疾患を処置するための新規な組成物を考案および生成するための方法に関する。上記方法は、疾患特異的抗原を含む本発明の足場を被験体に投与する工程であって、その足場は、次いで、疾患に対して特異的な免疫細胞を操作する工程、そのデバイスにおいて操作された免疫細胞を必要に応じて単離し、富化し、そして拡大する工程、および次いで、その免疫細胞を被験体に投与し戻す工程を包含する。あるいは、このような免疫細胞に由来する生成物は、被験体に投与され得る。免疫細胞に由来する生成物の例としては、核酸(このような核酸を含むベクターおよび細胞を含む)、ペプチド、タンパク質、抗体、サイトカインなどが挙げられる。
【0378】
好ましくは、その疾患は、自己免疫疾患である。一実施形態において、前述の方法によって単離された(そして本明細書で記載されるように培養物中で必要に応じて拡大された)自己反応性T細胞は、インサイチュまたはエキソサイチュで不活性化され得る。T細胞を不活性化するための方法は、当該分野で公知である。例としては、化学的不活性化または照射が挙げられるが、これらに限定されない。自己反応性T細胞は、当業者に公知の多くの技術(冷凍保存が挙げられるが、これらに限定されない)を使用して、不活性化の前または後のいずれかに、保存され得る。以下に記載されるように、その組成物は、自己免疫患者において自己反応性T細胞を枯渇させるためにワクチンとして使用される。
【0379】
本明細書で記載される実施形態はさらに、前述の方法によって生成される組成物およびワクチンに関する。その組成物は、薬学的組成物であり得、これは、当該分野で周知の方法を使用して生成され得る。疾患または障害の処置において前臨床上のおよび臨床上の治療剤として使用される薬学的組成物は、診断および処置の許容された原理を使用して、当業者によって生成され得る。
【0380】
一実施形態において、ワクチンは、Vβ-Dβ-Jβ遺伝子使用法の均質な(「モノクローナル」な)または不均質な(「ポリクローナル」な)パターンを含む自己反応性T細胞を含み得る。臨床研究は、自家モノクローナルT細胞ワクチン接種を受ける自己免疫患者が、自己反応性T細胞に対する免疫において徐々に低下を示し得ることを示す。いくつかの症例では、自己反応性T細胞の再出現は、異なるクローン集団から起こり得、このことは、T細胞が継続している疾患プロセスと潜在的に関連するクローンシフトまたはエピトープ拡大(epitope spreading)を受け得ることを示唆する。クローンシフトまたはエピトープ拡大は、自己反応性T細胞によって媒介される自己免疫疾患における問題であり得る。自己反応性T細胞の複数の集団を枯渇し得るポリクローナル自己反応性T細胞を含むワクチンは、クローンシフトまたはエピトープ拡大に伴う問題を回避し得る。望ましいT細胞を含む本発明の組成物/ワクチンは、薬学的に受容可能なキャリアとともに提供され得る。T細胞の凍結乾燥調製物が、同様に提供され得る。
【0381】
IV.キット/デバイス
ある種の実施形態において、本発明は、1つまたは別個の区画の中に本発明の足場を含むキットを提供する。そのキットは、さらなる成分をさらに含み得る。そのキットは、診断または治療適用のために足場を製剤化するための説明書を必要に応じて含む。そのキットはまた、種々の障害および/または疾患の治療または診断において、そのキット構成要素を、個々にまたは一緒に、のいずれかで使用するための説明書を含み得る。
【0382】
関連する実施形態において、本発明は、本発明の足場を、目的の操作された細胞を選択、培養、拡大、維持、および/または移植するための試薬とともに含むキットを提供する。T細胞、B細胞および抗原提示細胞のための細胞選択キット、培養キット、拡大キット、移植キットの代表的な例は、当該分野で公知である。
【0383】
本発明は、以下の実施例によってさらに例証されるが、実施例は限定すると解釈されるべきではない。本出願全体を通じて引用された全ての参考文献、特許および公開特許出願の内容全体、ならびに図面は、本明細書に参考として援用される。
【実施例
【0384】
実施例1:足場の構築およびアセンブルされた構造の顕微鏡分析
抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)を、以下で記載される方法論を使用してアセンブルした。簡潔には、高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層を先ず提供した。その上に、種々のT細胞ホメオスタシス因子、例えば、インターロイキン(例えば、IL2)および/またはサイトカイン(例えば、TGF-β)を、必要に応じて負荷する。ある種の実施形態において、ホメオスタシス因子をそのMSR層上に負荷することは、好ましいことであり得る。次いで、連続流体支持脂質二重層(SLB)を、基部層上に層化し、それによって、MSR-SLB足場を生成した。そのホメオスタシス因子がMSR層上に直接負荷されない場合、それらは、SLBペイロードをMSR層の一番上に適用した後に負荷され得る。次いで、遮断薬剤(例えば、BSA)を適用して、MSR-SLB足場における非特異的相互作用部位を遮断し得、その後、1種またはこれより多くのT細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子を、MSR-SLB足場上に負荷する。位相差顕微鏡(ここでは、顕微鏡にデジタルカメラを装備した)を用いたメソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)と会合した脂質の構造を使用して、図1に示される構造の画像を得た。上のパネルは、脂質:MSR比 1:20での脂質(緑色)およびメソポーラスシリカマイクロロッド(灰色)の合成写真を示す(スケール=200μm)。中央のパネルは、脂質:MSR比 1:4での脂質(緑色)およびメソポーラスシリカマイクロロッド(灰色)の合成写真を示す(スケール=200μm)。下のパネルは、より高い倍率において、MSRと会合した脂質の位相差顕微鏡の合成画像を示す(スケール=20μm)。
【0385】
抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)の特徴は、脂質のタイプおよび脂質の含有量に依存することが見出された。図2Aは、所望の体系および/または足場の特性を達成するために使用され得る脂質の列挙(例えば、ジオレオイル-ホスファチジルコリン(DOPC);パルミトイル-オレオイルホスファチジルコリン(POPC);またはジステアロイル-ホスファチジルコリン(DSPC))を提供する。さらに、MSR-SLB組成物上に層化された脂質の保持が、その脂質のタイプおよび/または含有量に依存することが見出された(図2Bを参照のこと)。次に、本発明の足場における脂質二重層の組織化を、蛍光分析を使用して研究した。図2Cは、2週間(14日間)の期間にわたる、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中にDOPC、POPCまたはDSPCを含む種々のMSR-SLB組成物の相対的蛍光の変化を示す。図2Dは、37℃において2週間(14日間)の期間にわたる、完全ロズウェルパーク記念研究所培地(cRPMI)中にDOPC、POPCまたはDSPCを含む種々のMSR-SLB組成物の相対的蛍光の変化を示す。
【0386】
さらに、種々の時点での種々のMSR-SLB組成物の安定性を、3日間、7日間、および14日間にわたってPBS中で足場を懸濁することによって調査した。次いで、その足場体系および/または構造を、位相差蛍光顕微鏡法で分析した。結果を図3に示す。上のパネルは、MSR-SLB組成物中のDOPCの安定性を示す;中央のパネルは、MSR-SLB組成物中のPOPCの安定性を示す;そして下のパネルは、MSR-SLB組成物中のDSPCの安定性を示す。
【0387】
その後、MSR-SLB流体構造のアセンブリおよび特徴を、位相差顕微鏡法で経時的に研究した。結果を図4A~4Eに示す。図4Aは、脂質組成物の退色前(「pre」)、脂質組成物の退色時(t=0)および脂質組成物の退色の5分後(t=5分)に、高倍率(スケール=2μm)において撮影した、メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)と会合した脂質の位相差共焦点蛍光顕微鏡画像を示す。図4Bは、光退色後の蛍光回復(FRAP)の変化を時間とともに示す。そのソースは、領域(2)に示され、その吸い込みは、領域(3)に示され、正規化点は、領域(1)として示される。差次的分布は、退色後の早い時点で最もよく認められ、およそ2分間(120秒間)で平衡に達した。右側の図は、正規化した画像から得られる場合、FRAPの平均変化を示す平滑適合曲線を経時的に示す。図4Cおよび図4Dは、脂質組成物での退色前(pre)、退色時(t=0)および退色の3分後(t=3分)に、MSR-SLB流体構造の2セットの高解像度画像を示す。
【0388】
さらに、種々の脂質部分を含むMSR-SLB組成物の構造的および機能的特性を、分光光度分析を使用して研究した。結果を、図5Aおよび5Bに示す。図5Aは、ホスホエタノールアミンビオチン(ビオチンPE)(これは、ストレプトアビジン分子(例えば、ストレプトアビジンダイマー)に結合体化され、翻って、ビオチン化抗体(例えば、ビオチン化抗CD3抗体またはビオチン化抗CD28抗体または別の特異的もしくは非特異的抗体)に結合体化される)を含むPOPCの脂質二重層を含むMSR-SLB組成物の模式的代表図を示す。図5Bは、MPS(シリカ)、POPC(脂質)、MPS-POPC複合材、ビオチン化MPS-POPC複合材(ストレプトアビジンの存在下または非存在下)、ならびにフィコエリトリンビオチン(ビオチンPE)および/またはストレプトアビジンの存在下または非存在下でビオチン化抗体と一緒にMPS-POPC複合材の分光光度分析を示す。吸光度の有意な増大は、ストレプトアビジンリンカーを介してビオチン化抗体に結合体化したホスホエタノールアミンビオチン(ビオチンPE)を含むMSR-SLB組成物において観察される(濃いバー;**は、統計的有意性を示す)。B3Zハイブリドーマ細胞(これは、活性化に応答してβ-ガラクトシダーゼを生成する)の活性の増大は、全ての構成要素の存在とともに観察された。これは、APC-MSが(A)に示される構造を主にとることを示す。
【0389】
実施例2:APC-MSの機能的特性の分析
IL-2のようなホメオスタシス因子の放出
メソポーラスシリカロッド(MSR)および支持脂質二重層(SLB)を含むAPC-MS(これはさらにIL-2を含む)を、実施例1に記載される方法を使用して製造した。これらのMSR-SLB組成物からのIL-2の放出を、染色技術および/または結合アッセイを使用して分析した。その結果を、図6Aおよび6Bに示す。図6Aの電子顕微鏡写真に図示されるように、MSRの高表面積の孔は、IL2または他の可溶性ペイロードの潜在的吸着のために利用可能である(スケールバー=100nm)。15日間の期間にわたる累積IL-2放出を示すプロット(図6B)は、本発明のAPC-MSが、2週間の研究期間の全過程の間に、制御されかつ持続した様式でホメオスタシス因子(例えば、IL-2)を放出し得ることを示す。
【0390】
T細胞との会合
MSR-SLB足場を含む抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)を、機能的T細胞を含む培地とともにインキュベートし、その足場へのT細胞の浸潤を、位相差顕微鏡法で分析した。その結果を図7Aおよび7Bに示す。図7Aは、生細胞色素および核色素で染色した全細胞を示す。その画像は、積み重なった高アスペクト比脂質被覆MSR-SLB足場の粒子内空間へと浸潤した生きているT細胞を示す。図5Bは、単一の色素で染色した細胞を示す(生細胞を示す)。
【0391】
実施例3:抗体負荷
次いで、MSR-SLBを含むAPC-MSに、種々の刺激分子、共刺激分子および/またはT細胞ホメオスタシス因子を負荷し、その得られた構造を、蛍光顕微鏡法で分析した。4種の異なるタイプのMSR-SLB足場を分析した-(1)裸のMSR-SLB足場(コントロール);(2)結合体化抗体を含むMSR-SLB;(3)IL-2を含むMSR-SLB;および(4)結合体化抗体およびIL-2を含むMSR-SLB。顕微鏡写真を図8に示す(低解像度画像は左側にあり、高解像度画像は右側にある)。上のパネル(グレースケール画像)は、前述のMSR-SLB足場の各々の位相差顕微鏡画像を含む。下のパネルは、脂質蛍光を捕捉する画像とメソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)のグレースケール画像とを合成する。右側の画像は、高倍率でのMSR-SLB足場を示す(スケールバー=20μm)。
【0392】
実施例4:抗体負荷APC-MSの特性
T細胞拡大に対する抗体負荷APC-MSの効果を、慣用的な細胞学的アッセイを使用して調査した。この目的のために、T細胞を種々のコントロールおよび実験用足場と接触させ、T細胞集団に対する各々の効果をAlamar blue色素(代謝活性を示す)によって測定し、IFNγ生成を、ELISAによって測定した。コントロール足場は、偽(「モック」)、SLB非含有足場(「なし」)、POPC脂質のみを含む足場(「POPC」)、ならびにPOPCおよびIL-2の組み合わせを含む足場を含む。その実験用足場は、抗体とともに、POPCおよびIL-2の組み合わせを含む。抗体の3種の異なる用量(MSR:抗体比が1:50、1:25および1:10)を調査した。その結果を図9Aおよび9Bに示す。図9Aに示されるように、その実験用足場でのT細胞の3日間刺激は、T細胞拡大を有意に増大した。さらに、T細胞の拡大に対するその抗体の効果は、用量依存性であることが見出された。次に、同一の設定を使用して、T細胞によるIFNγ生成を分析した。結果を図9Bに示す。実験用足場(POPCおよびIL-2および抗体を含む)におけるT細胞のインキュベーションは、コントロール足場においてインキュベートされたT細胞と比較して、IFNγ分泌を大いに改善することが見出された。さらに、IFNγのT細胞依存性分泌に対するその抗体の効果は、用量依存性であることが見出された。
【0393】
代謝的に活性なT細胞の拡大に対する本発明の抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)の効果を、慣用的なサイトメトリー研究を使用して分析した。結果を、図10および11に示す。一般に、本発明の足場は、インビトロでのT細胞の迅速な拡大を促進することが見出された。この点において、図10は、コントロールまたは実験用足場とのインキュベーションの際の初代T細胞の倍数拡大を示す。初代T細胞と本発明の組成物とのインキュベーションは、モック組成物またはSLBなしの組成物と比較して、T細胞拡大を(再刺激ありまたはなしで)有意に誘導することを見出した。より重要なことには、DYNABEADSおよびIL-2の組成物と比較して、初代T細胞と本発明の足場とのインキュベーションは、7日目の再刺激の際に、測定可能なより強い増殖を生じた。図11は、IL-2を負荷した本発明の足場(SLB/IL2/ABS)またはIL-2を負荷したDYNABEADS(DYNABEADS-IL2)とともにインキュベートしたT細胞の代謝活性の棒グラフを示す(細胞あたりの相対的Alamar Blue(RFU)によって測定)。有意により高い代謝活性を、5日目および7日目(再刺激の前)に、ならびに11日目にも(非再刺激サンプルにおいて、緑色および橙色の棒によって示されるように)、本発明の足場とともにインキュベートしたサンプルにおいて観察した(左側の列)。7日目での再刺激は、T細胞の両方の群の代謝活性を増大した。すなわち、SLB/IL2/ABS組成物またはDYNABEADS-IL2組成物とともにインキュベートしたものは、非再刺激細胞と比較して、以前に7日目に観察されたレベルを達成した。再刺激は、13日目に、この時点でT細胞消耗を示す有糸細胞分裂活性を上昇させなかった。
【0394】
T細胞凝集物の形成に対する本発明の足場の効果をまた、顕微鏡分析を使用して研究した。結果を図12に示す。左側パネルの画像は、0日目、3日目、および7日目に、DYNABEADSまたはAPC-MSとともにインキュベートした際の脾臓T細胞の凝集物の顕微鏡写真を(4×倍率において)示す。右側パネルの画像は、0日目、3日目、および7日目に、DYNABEADSまたはAPC-MSとともにインキュベートした際の脾臓T細胞の凝集物の光学顕微鏡写真を(10×倍率において)示す(白のスケールバー=100μM)。本発明の足場(APC-MS)が、脾臓T細胞(マウス)のより大きなポリクローナル拡大を付与し、DYNABEADSよりT細胞凝集物の形成を促進することが見出された。
【0395】
実施例5:別個のT細胞部分集団を刺激および拡大するための足場の使用
特定のT細胞部分集団を刺激および拡大することにおける本発明のAPC-MS組成物の有用性を、セルソーティング技術を使用して行った。脾臓T細胞を、APC-MSまたはDYNABEADSとともにインキュベートし、細胞表現型の変化を(細胞表面マーカーの発現に基づいて)、インキュベーション後の種々の時点(t=0日間、5日間、7日間、11日間および13日間)においてFACSによって分析した。第1の実験において、CD4+ およびCD8+ T細胞部分集団の相対的出現率の変化を、FACSを使用して分析した。ここでX軸上の値は、CD8+染色の強度を示し、Y軸上の値は、CD4+染色の強度を示す。第2の実験において、APC-MSまたはDYNABEADSとのインキュベーションの際のFoxP3+ マウス脾臓T細胞の部分セットのポリクローナル拡大を、第3の実験において、本発明の足場(APC-MS)またはDYNABEADSとのインキュベーションの際のCD62L+ マウス脾臓T細胞の部分セットのポリクローナル拡大を、第4の実験において、APC-MSまたはDYNABEADSとのインキュベーションの際のCD8+/CD69+ マウス脾臓T細胞の部分セットのポリクローナル拡大を、第5の実験において、APC-MSまたはDYNABEADSとのインキュベーションの際のCD8+/グランザイムB+ マウス脾臓T細胞の部分セットのポリクローナル拡大を、分析した。前述の実験の各々において、7日間日後に、第1のT細胞部分集団を、IL-2処理に供した一方で、第2のT細胞部分集団を再刺激し、その細胞懸濁物を、さらに6日間培養した。さらに、実験において使用したAPC-MSおよびDYNABEADSの両方は、刺激分子および共刺激分子の同一のレパートリーを含むことを担保した。
【0396】
第1の実験の結果を、図13Aおよび13Bに示す。その結果は、DYNABEADSとのインキュベーションと比較して、本発明の足場(APC-MS)とのインキュベーションが、14日間のインキュベーション期間の終了時にポリクローナルCD8+ マウス脾臓T細胞のより大きな拡大を達成したことを示す。また、IL-2処理は、DYNABEADSで刺激した細胞の拡大を阻害した(約20%低減)が、APC-MSとともにインキュベートした細胞では、このような効果は観察されなかった。
【0397】
第2の実験では、四角形のゲートを適用して、種々の画分におけるFoxP3+ 細胞の数および/または割合を計数した。その結果を図14に示す。
【0398】
第3の実験(その結果を図15に示す)では、本発明のAPC-MS組成物は、DYNABEADSで達成されたものに類似および匹敵する様式で、CD62L+ マウス脾臓T細胞の部分セットのポリクローナル拡大を付与することが見出された。その結果は、APC-MSまたはDYNABEADSとのインキュベーション(7日間のインキュベーション後に再刺激またはIL-2処理を伴う)後の種々の時点(t=0日間、5日間、7日間、11日間および13日間)でのT細胞集団のフローサイトメトリー(FACS)散布図の形態で示される。CD62L+ 細胞は、散布図の右側(上下)象限に出現する。その結果は、本発明のAPC-MS組成物が、標的T細胞部分集団を選択的に拡大するときに等しく有効であることを示し、その部分集団は、次いで、公知の細胞学的技術を使用して操作または製剤化され得る。
【0399】
第4の実験(その結果を図16に示す)では、本発明のAPC-MS組成物は、DYNABEADSで達成されたものに類似および匹敵する様式で、CD8+/CD69+ マウス脾臓T細胞の部分セットのポリクローナル拡大を付与することが見出された。その結果は、APC-MSまたはDYNABEADSとのインキュベーション(7日間のインキュベーション後に再刺激またはIL-2処理を伴う)後の種々の時点(t=0日間、5日間、7日間、11日間および13日間)でのT細胞集団のフローサイトメトリー(FACS)散布図の形態で示される。CD8+/CD69+ 細胞は、その散布図の右上の象限に出現する。その結果は、DYNABEADSとのインキュベーションと比較して、APC-MSとのインキュベーションが、14日間のインキュベーション期間の終了時にポリクローナルCD8+/CD69+ T細胞のより大きな拡大を達成したことを示す(APC-MSとともにインキュベートしたサンプル中の約90% CD8+/CD69+ T細胞 対 DYNABEADSとともにインキュベートしたサンプル中の約50% CD8+/CD69+ T細胞の相対的割合)。
【0400】
第5の実験(その結果を図17に示す)では、本発明のAPC-MS組成物は、DYNABEADSで達成されたものに類似および匹敵する様式で、CD8+/グランザイムB+ マウス脾臓T細胞の部分セットのポリクローナル拡大を付与することが見出された。その結果は、APC-MSまたはDYNABEADSとのインキュベーション(7日間のインキュベーション後に再刺激またはIL-2処理を伴う)後の種々の時点(t=0日間、5日間、7日間、11日間および13日間)でのT細胞集団のフローサイトメトリー(FACS)散布図の形態で示される。CD8+/グランザイムB+ 細胞は、散布図の右上の象限に出現する。その結果は、DYNABEADSとのインキュベーションと比較して、APC-MSとのインキュベーションが、14日間のインキュベーション期間の終了時にポリクローナルCD8+/グランザイムB+ T細胞のより大きな拡大を達成したことを示す(APC-MSとともにインキュベートしたサンプル中の約95% CD8+/グランザイムB+ T細胞 対 DYNABEADSとともにインキュベートしたサンプル中の約80% CD8+/グランザイムB+ T細胞の相対的割合)。
【0401】
実施例6:サイトカイン分泌細胞を刺激および拡大するための足場の使用
マウス脾臓T細胞を、種々の継続期間(t=0日間、5日間、7日間、11日間および13日間)にわたって、APC-MSまたはDYNABEADSとともにインキュベートした。7日間のインキュベーション後に、T細胞の第1の部分集団を、それぞれ、APC-MSまたはDYNABEADSで再刺激し、第2の部分集団を、IL-2で処理した。サイトカイン(IFNγ)分泌を、生物学的サンプル中のIFNγ濃度を測定するための標準的アッセイ(例えば、ELISAアッセイ)を使用して測定した。その結果(図18に示される)は、DYNABEADSとのインキュベーションと比較して、APC-MSとのインキュベーションが、5日間のインキュベーション後にポリクローナルCD8 マウス脾臓T細胞のより大きな拡大を達成したことを示す。この効果は、13日間の実験期間全体を通じて維持された。脾臓T細胞と足場とのインキュベーションは、IFNγ分泌を増大させた。さらに、再刺激は、DYNABEADSとともにインキュベートした細胞の部分集団におけるIFNγ分泌を増強することにおいて特に有効であることが見出された。
【0402】
実施例7:アネルギー、静止または弱ったT細胞を除去するための足場の使用
いくつかの新たな共刺激分子は、B7およびCD28ファミリーとのそれらの相同性に基づいて発見された。プログラムされた細胞死タンパク質1(PD-1; UNIPROTアクセッション番号Q15116)は、活性化T細胞上で発現され、2つのB7様リガンド、PD-L1およびPD-L2を有する(Freemanら, J. Exp. Med. 192:1027-1034(2000); Latchmanら, Nat. Immunol. 2:261-268(2001); Dongら, Nat. Med. 5:1365-1369(1999); Tsengら, J. Exp. Med. 193:839-846(2001))。PD-1は、アネルギーのマーカーであると考えられる(Chikumaら, J Immunol., 182(11):6682-9, 2009)。従って、T細胞アネルギーを誘導することに対する本発明の足場の効果を、フローサイトメトリーを使用して調査した。マウス脾臓T細胞を、種々の継続期間(t=0日間、5日間、7日間、11日間および13日間)にわたって、本発明の足場(APC-MS)またはDYNABEADSとともにインキュベートした。7日間のインキュベーション後に、T細胞の第1の部分集団を再刺激し、第2の部分集団をIL-2で処理した。各T細胞部分集団を、FACS散布図を使用して細胞表面マーカーの発現を分析した。ここでX軸上の値は、CD8+染色の強度を示し、Y軸上の値は、PD-1+染色の強度を示す。その結果(図19に示される)は、マウス脾臓T細胞の増大したPD-1発現(すなわち、増大したアネルギー)を時間とともに示す。T細胞消耗を、両方の部分集団において達成した。その結果は、培養期間全体を通じて細胞の大部分がPD-1陰性である(下側の象限)が、いくらかの細胞は、PD-1の発現をアップレギュレートすることを示す。APC-MSでの再刺激は、PD-1発現を増大する傾向にある。注:IL-2への曝露は、全ての設定において提供された。
【0403】
実施例8:T細胞拡大を増大し、細胞活性を改善するための足場の使用
T細胞拡大および/または代謝活性を改善することにおける本発明のAPC-MS組成物の効果を、サイトメトリーを使用して行った。ヒト末梢血T細胞を、コントロール足場または実験用足場とともにインキュベートし、T細胞の数および/または代謝活性を、標準的アッセイ(例えば、トリパンブルー排除/血球計算板を使用する生細胞の手動での細胞計数、Alamar Blueアッセイを使用して分析される代謝活性)を使用して種々の時点(t=0日間、5日間、7日間、11日間および13日間)で測定した。結果を図20Aおよび20Bに示す。T細胞拡大研究の場合には、コントロール足場は、偽組成物(表示:「モック」;黒い線で示した)および刺激物質抗CD3、抗CD28、IL-2の可溶性の遊離形態を含む組成物(「なし」;赤い線で示した)を含む一方で、実験用足場は、(1)DYNABEADS(青い線)および(2)本発明の脂質二重層(SLB)(緑の線)を含む。結果を図20Aに示す。13日間の実験期間の終了時に、SLBとのインキュベーションが、DYNABEADSとのインキュベーションと比較して、T細胞のほぼ2倍大きな拡大を生じたことが認められ得る。より驚くべきことには、「なし」足場すら、DYNABEADSの効果に匹敵する、T細胞に対する刺激効果を誘発した。
【0404】
初代T細胞の代謝活性に対する本発明の足場の効果に関する結果を、図20Bに示す。脾臓T細胞を、コントロール足場または実験用足場とともにインキュベートし、T細胞の代謝活性を、Alamar Blue染色を使用して種々の時点(t=0日間、5日間、7日間、11日間および13日間)で測定した。そのコントロール足場は、偽組成物(「モック」;「m」)およびSLBを含まない組成物(「なし」;「f」)を含む一方で、その実験用足場は、(1)DYNABEADS(「d」)および(2)脂質二重層(SLB)(「s」)を含む。14日間の実験期間の終了時に、「モック」足場とインキュベートした細胞は全て消滅する一方で、実験用足場(SLBまたはDYNABEADS)とともにインキュベートした細胞は、経時的に持続した成長および拡大を経験することが認められ得る。より重要なことには、本発明のSLB足場は、14日間の実験期間の終了時に、DYNABEADSによって付与される効果と比較して、T細胞のより良好な成長および代謝活性を促進した。
【0405】
実施例9:ヒトT細胞の拡大を促進するための足場の使用
被験体1(図21A)および被験体2(図21B)から得たヒト血液サンプルを、コントロール足場(「モック」)、または列挙された抗CD3抗体-ムロモナブ(OKT3)、CD3抗原/T細胞抗原レセプター(TCR)複合体内のCD3の17~19kD ε鎖を認識する抗体(HIT3a)およびCD3e内のTCR複合体の20kDaサブユニットを認識するモノクローナル抗体(UCHT1)を含む実験用足場とともにインキュベートした。3種の異なる投与量を、調査した-5μg(上のスライド)、1μg(被験体2の下のスライド)および0.5μg(被験体1の下のスライド)。各場合において、共刺激を、抗CD28抗体で提供し、ここで抗CD3抗体:抗CD28抗体の比を1:1で維持した。細胞の倍数拡大を、種々の時点(t=0日間、7日間、11日間および13日間)で測定した。その結果(図21Aおよび21Bに示す)は、より高い抗体投与量(5μg)において、全3種の抗CD3抗体が、ヒトT細胞の拡大を刺激できたことを示す。全ての場合に、T細胞集団の拡大は、最初は7日目までゆっくりであったが、その後、指数関数的に増大した。最高用量では、T細胞の数において600~800倍の増大が、実験期間の終了時(13日目)に達成された。中間の投与量(1μg)では、OKT3およびHIT3aのみ(UCHT1ではない)が、T細胞拡大を刺激できた。ここでT細胞の数において300~400倍の増大が、実験期間の終了時(13日目)に達成された。最低投与量(0.5μg)では、OKT3のみ(UCHT1および/またはHIT3aではない)が、T細胞拡大を刺激できた。ここでT細胞の数において600~700倍の増大が、実験期間の終了時(13日目)に達成された。その結果は、拡大速度に対する抗CD3抗体クローンおよび抗体の用量の両方の効果を示す。
【0406】
次に、コントロール足場(「モック」)または列挙された抗CD3抗体-OKT3、HIT3a、およびUCHT1を含む実験用足場とのインキュベーションの際のヒトT細胞のポリクローナル拡大を、フローサイトメトリーを介して分析した。結果を図22に示す。ここで下のパネルは、刺激分子としての抗CD3抗体およびT細胞共刺激分子としての抗CD28抗体の各々を含むAPC-MSとのインキュベーション後の種々の時点(t=8日間、11日間および14日間)でのT細胞集団のフローサイトメトリー(FACS)散布図を示す。散布図のX軸上の値は、CD8+染色の強度を示し、Y軸上の値は、CD4+染色の強度を示す。その散布図は、上のパネルの線グラフ(これは、前述の抗CD3抗体-OKT3(丸)、HIT3a(四角)およびUCHT1(三角)を含むAPC-MSとのインキュベーション後のCD4+ 対 CD8+ T細胞部分集団のパーセンテージにおける変化を示す)にまとめられる。2種の異なる抗体投与量を調査した-第1の用量5μg(1×希釈)および第2の用量0.5μg(1:10×希釈)。その結果は、低い抗体投与量(1:10×希釈;0.5μg)において、全3種の抗CD3抗体が、高い抗体濃度に対して低い抗体濃度を使用して、CD8+特異的T細胞を富化できたことを示す。CD8+特異的T細胞の数において3~4倍の増大が、実験期間の終了時(14日目)に達成された。例えば、CD8+ T細胞の相対的出現率は、実験の開始時には20%であったが、14日目には、約60%~80%に増大した。さらに、抗CD3抗体UHCT1およびOKT1は、等しく有効であり、CD8+ T細胞の拡大を促進することにおいて抗CD3抗体HIT3aより優れていることが見出された。高い(5μg)抗体用量では、全体のT細胞集団におけるCD8+:CD4+の比は、14日目に変化しなかった(またはさらに低下した)。その結果は、CD8+特異的T細胞の拡大に対する抗CD3抗体クローンおよびその抗体の用量の両方の効果を示す。
【0407】
実施例10:特異的ヒトT細胞部分集団の拡大を促進するための足場の使用
ヒト血液サンプルを、列挙された抗CD3抗体-ムロモナブ(OKT3)、HIT3aおよびUCHT1を1×投与量(5μg)において含む実験用足場とともにインキュベートした。各場合において、共刺激を、抗CD28抗体で提供した。T細胞の倍数拡大を、14日間後に測定した。全生細胞におけるCD62LおよびCCR7の発現を上のパネルに示し、ゲート制御したCD8+ 細胞におけるこれらのマーカーの発現を下のパネルに示す。その結果(図23に示す)は、全3種の抗CD3抗体がヒトT細胞の別個の部分集団の拡大を刺激できたことを示す。驚くべきことに、その種々の本発明の抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)で拡大した細胞の大部分は、インキュベーションの14日間後ですら、CD62L+CCR7+を保持する。その結果は、エキソビボでの拡大後に拡大したT細胞のインビボで保持された機能性を示す。よって、抗原提示細胞模倣足場を使用して、CD62L+CCR7+ T細胞(例えば、メモリー細胞)の別個の部分集団を選択的に拡大および維持することは可能である。
【0408】
さらに、OKT3を含むAPC-MS足場は、UCHT1および/またはHIT3aを含む足場と比較して。CD62L+CCR7+ T細胞を拡大および/または保持することにおいて特に有効であった。
【0409】
実施例11:抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)を使用するT細胞のエキソビボでの拡大
T細胞の養子細胞移入(ACT)は、がんおよび感染性疾患に関する有望な処置である。しかし、エキソビボでのT細胞拡大に関する現在のアプローチ(ACTにおける重量な工程)は、最適状態には及ばない拡大速度および細胞の機能性の制限を頻繁に生じる。そこで、本発明者らは、流体脂質二重層上に局所的に所定の密度にあるT細胞レセプター刺激および共刺激に関するキューを提示するメソポーラスシリカマイクロロッド-支持脂質二重層を開発し、これらのキューが抗原提示細胞(APC)によって天然に提示される方法に類似した、可溶性インターロイキン-2の放出制御を促進した。細胞培養では、APC模倣足場(APC-MS)へと形成される材料は、マウスおよびヒトT細胞の活性化および浸潤を促進した。APC-MSは、2週間後に市販の拡大ビーズより2~10倍大きなポリクローナルT細胞拡大、および機能的細胞傷害性T細胞の希な部分集団の強力な抗原特異的拡大を促進した。この研究は、ACTのために機能的T細胞を迅速に拡大する新たなプラットフォームを示す。
【0410】
T細胞を使用する養子細胞移入(ACT)は、種々の悪性腫瘍および感染性疾患の処置に関する有望なアプローチである(例えば、Rosenberg, S.A. & Restifo, N.P. Science 348, 62-68(2015); June, C.H.ら Science Translational Medicine 7(280): 280ps7(2015);およびFesnak, A.D.ら Nature Reviews Cancer 16, 566-581(2016)を参照のこと)。しかし、機能的T細胞の迅速なエキソビボ拡大(ACTのためのT細胞の生成において重要な工程)は、未だに大きな難題である。T細胞活性化は、3種のシグナルを要求する:(1)T細胞レセプター(TCR)刺激、(2)共刺激、および(3)プロサバイバルサイトカイン(pro-survival cytokine)(Huppa, J.B. & Davis, M.M. Nature Reviews Immunology 3, 973-983(2003))。身体において、これらのシグナルは、抗原提示細胞(APC)によって提供され、これら細胞は、特定の時空間パターンにおいてこれらのキューをT細胞に提示する(Huppa and Davis(2003); Lee, K.-H.ら Science 302, 1218-1222(2003); Alarcon, B.ら Immunology 133, 420-425(2011);およびMinguet, S.ら Immunity 26, 43-54(2007))。種々のアプローチが、ACTのためにT細胞をエキソビボで拡大するために使用され、合成の人工APC(aAPC)は、特に便利である(Rosenberg and Restifo(2015); Hasan, A.ら Advancements in Genetic Engineering 2015(2015);Hollyman, D.ら Journal of Immunotherapy(Hagerstown, Md.: 1997) 32, 169(2009); Maus, M.V.ら Nature Biotechnology 20, 143-148(2002); Zappasodi, R.ら Haematologica 93, 1523-1534(2008); Perica, K.ら ACS Nano 9, 6861-6871(2015); Mandal, S.ら ACS Chemical Biology 10, 485-492(2014); Steenblock, E.R. & Fahmy, T.M. Molecular Therapy 16, 765-772(2008); Fadel, T.R.ら Nature Nanotechnology 9, 639-647(2014); Sunshine, J.C.ら Biomaterials 35, 269-277(2014); Fadel, T.R.ら Nano letters 8, 2070-2076(2008); Meyer, R.A.ら Small 11, 1519-1525(2015);およびSteenblock, E.R.ら Journal of Biological Chemistry 286, 34883-34892(2011))。現在、CD3に対する活性化抗体(aCD3; TCR刺激因子)およびCD28に対する活性化抗体(aCD28;共刺激キュー)で官能化された市販のマイクロビーズ(DYNABEADS)が、T細胞を拡大するための唯一のFDA承認の合成系である(Hollymanら(2009))。これらのビーズは、外因性インターロイキン-2(IL-2)補充を用いてポリクローナルT細胞活性化を促進する。これらの培養物は、T細胞に3種の重要なシグナルを提供するが、これらのシグナルが提示される状況は、それらがAPCによって天然で提示される方法の代表ではない。この文脈上の不一致は、制限されるかまたは調節不全の機能とともに、最適状態に及ばないT細胞拡大速度およびT細胞生成物をもたらし得る(Zappasodiら(2008); Fadelら(2014); Li, Y. & Kurlander, R.J. Journal of Translational Medicine 8, 1(2010);およびJJin, C.ら Molecular Therapy-Methods & Clinical Development 1(2014))。さらに、これらのビーズは、非常に機能的な治療用T細胞の生成にとって重要であり得る、多数のセットのキューの提示には従いにくい(Hasanら(2015); and Hendriks, J.ら Nature immunology 1, 433-440(2000))。
【0411】
高アスペクト比メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)上に形成された支持脂質二重層(SLB)から構成される複合材が開発された(Kim, J.ら Nature Biotechnology 33, 64-72(2015);およびLi, W.A.ら Biomaterials 83, 249-256(2016))。そのSLBは、流体脂質二重層上で所定の密度においてT細胞活性化キューの組み合わせの提示を可能にした一方で、MSRは、近くのT細胞への可溶性のキューの持続した傍分泌放出を促進した。従って、複合材MSR-SLBは、天然のAPCに類似の状況で、T細胞への表面のおよび可溶性のキューの提示を可能にした。細胞培養物において、その高アスペクト比ロッドは沈んで積み重なって、3D足場構造を形成した。T細胞活性化キューで官能化されたMSR-SLBから形成された足場は、APC模倣足場(APC-MS)といわれる。APC-MSは、2週間後に、市販のDYNABEADSより初代マウスおよびヒトT細胞の2~10倍大きなポリクローナル拡大を促進した。APC-MSはまた、機能的マウスおよびヒト細胞傷害性T細胞の強い抗原特異的拡大を促進した。特に、エプスタイン・バーウイルス(EBV)関連抗原を提示するAPC-MSは、抗原特異的様式で、ヒトT細胞の希な部分集団を拡大および富化した。全体的に、APC-MSは、ACTのために、時空間パターンにおいて非常に機能的なT細胞の迅速な拡大を可能にし得る融通性がありかつ調整可能なプラットフォーム技術を表す(Huppa and Davis(2003); Leeら(2003); Alarconら(2011);およびMinguetら(2007))。
【0412】
APC-MSのアセンブリおよび特徴づけ
APC-MSを、T細胞活性化(図25A)のために、ポリクローナルおよび抗原特異的拡大(図25B)に特有のキューを使用して調製した。長さ88μm、直径4.5μm(アスペクト比 約20)、および10.9nmの孔という平均寸法を有する高アスペクト比MSRを、先に記載されるように合成し(Kimら(2015);およびLiら(2016))(図26Aを参照のこと)、IL-2を吸着させた。
【0413】
所定の量のビオチン化脂質を含むリポソーム(140nm)を調製し、1L-2負荷MSR上に被覆し、MSR-SLBを形成した(図26Bを参照のこと)。次に、TCR活性化および共刺激のビオチン化キューを、ストレプトアビジン中間体を介してMSR-SLB表面に付着させた。細胞培養物では、3D足場は、ロッドの沈殿およびランダムな積み重なりを通じて自発的に形成し、APC-MSを形成した。T細胞は、足場の粒子内空間に浸潤した。全体としては、足場は、脂質二重層の表面上でTCR活性化および共刺激のキューを提示し、これらのキューが天然のAPCによってT細胞に提示される方法に類似する傍分泌様式で浸潤しているT細胞へと可溶性IL-2を経時的に放出する(Huppa and Davis(2003)を参照のこと)。
【0414】
MSRを、リン脂質1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)で被覆した。POPCは、哺乳動物の細胞膜のモデルとして一般に使用される(Jerabek, H.R.ら Journal of the American Chemical Society 132, 7990-7(2010);およびTorresら Lab on a Chip 13, 90-99(2013))。低い脂質:MSR比では、MSRの脂質媒介性凝集が観察された(図27A)。その一方でより高い脂質:MSR比では、脂質被覆MSRは、十分に分散した単一粒子状態で維持された(図27B)。このより高い脂質:MSR比では、投入したPOPCのうちの34.1±0.9%が、MSRと最初に会合し、POPC被覆は、細胞培養条件において経時的にゆっくりと失われた(図28A)。なぜならPOPC被覆MSRが分解したからである(図28B)。MSRはまた、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)および1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)で成功裡に被覆された。MSRと会合した脂質の量は、脂質二重層の中により高い飽和度の脂質がより密に充填されていることにおそらく起因して、脂質の飽和度に逆に関連した。種々の脂質被覆の安定性において有意差は観察されなかった。MSR脂質被覆が連続しているか否かを評価するために、流体SLB構造、光退色後の蛍光回復(FRAP)研究を、発蛍光団タグ化脂質を使用して行った。脂質被覆MSRの光退色領域における蛍光の回復および退色したロッドにわたる蛍光の同時の正規化が観察された。これは、MSR脂質被覆が連続しており、流体SLBであることを示した(図39Aおよび39B)。
【0415】
可溶性キューの負荷および放出、ならびに表面キューの負荷もまた、分析した。MSRは、分子ペイロードの表面吸着に利用可能な非常に高い表面積を有する(Kimら(2015))。そして500μgのMSRに2μgのIL-2(0.04mg/ml IL-2)を負荷した場合、その投入したIL-2のうちの50±1%が、MSRとともに保持された。その負荷したIL-2はその後、9日間にわたって制御された様式で放出された。その傾向は、1フェーズ指数関数を使用して十分に近似できた(R=0.98)。これは、IL-2の放出が一次速度論に従ったことを示す(図28E)。
【0416】
脂質製剤の中に組み込まれたビオチン化脂質種の量を変化させる場合の表面キューの付着をまた、分析した。ストレプトアビジンを、それぞれのMSR-SLB製剤に関してビオチン化脂質基のモル量の30%において添加し、そしてビオチン化IgGを表面キューの代用として添加した。飽和時に、種々のMSR-SLB製剤に負荷できたビオチン化IgGの最大量は、約10倍異なった(図28F)。この差異は、種々のMSR-SLB製剤におけるビオチン化脂質の量における相対的差異と一致する。これは、表面に結合したIgGの密度が、被覆している脂質製剤中の接着性脂質の量を定義することによって正確に制御できたことを示す。全てのその後の実験において、MSR-SLBを、記載されるように表面キューで飽和させ、相対的表面キュー密度を、製剤中のビオチン化脂質のモル%によって記載する。
【0417】
足場表面上の活性化キューの提示がT細胞相互作用を促進したことを確認するために、初代T細胞を、表面T細胞キューなしのMSR-SLB、または完全APC-MSのいずれかとともに培養した。T細胞は、表面T細胞キューなしのMSR-SLBを概して無視したのに対して、それらは、APC-MSと強く相互作用し、足場の構造を再組織化して、広範囲の高密度細胞-材料クラスターを形成した(図28Gおよび図29)。
【0418】
初代マウスおよびヒトT細胞のポリクローナル拡大
初代マウスT細胞を、DYNABEADSまたはAPC-MSのいずれかとともに培養した。APC-MSとの培養は、大きな細胞-材料クラスターの形成をもたらし、これらのクラスターのサイズおよび出現率は、Dynabead培養物においてよりAPC-MS培養物においてより高かった(図30A)。APC-MSとの培養は、DYNABEADSとの培養より2倍超の高い拡大を促進した(図30B)。興味深いことに、DYNABEADSは、培養期間にわたってT細胞集団の中程度のCD8に傾いた非対称性を促進した一方で、APC-MSは、全T細胞のうちの95%超がCD8+であるように促進した(図30Cおよび図31)。APC-MSを使用して拡大したエフェクターCD8+ T細胞は、培養期間にわたって、DYNABEADSで拡大したCD8+ T細胞よりも、細胞傷害性メディエーターグランザイムBをより迅速にかつより大きな程度までアップレギュレートした(図32A)。Dynabeadで拡大したおよびAPC-MSで拡大した両方のT細胞生成物において、CD4+ FoxP3+ 細胞の拡大は観察されなかった(図32B)。重要なことに、迅速な拡大速度が観察されたにも関わらず、APC-MSで拡大したT細胞のうちの大部分は、消耗マーカーPD-1に関して陰性のままであった(図32C)。
【0419】
APC-MS製剤をまた、初代ヒトT細胞のポリクローナル拡大に関して評価した。初代ヒトT細胞をAPC-MSとともに培養すると、大きな細胞-材料クラスターの形成もまたもたらされ、これらのクラスターのサイズおよび出現率は、Dynabead培養物中よりAPC-MS培養物中においてより大きかった。これらのクラスターの安定性および持続性は、表面キュー密度および最初の物質投入量の両方に依存することが観察された(図30D)。その試験したAPC-MS製剤のうちの全てを用いての14日間の培養は、DYNABEADSを用いるより2倍~10倍の間の大きな拡大をもたらした(図30E)。興味深いことに、より高い量のT細胞刺激(より高い表面キュー密度またはより高い最初の物質の質量のいずれかを介する)を含むAPC-MS製剤は、14日間の培養後に、極めてCD4に偏った非対称性を促進した。対照的に、他のAPC-MS製剤(F4)に対して低い全体量のT細胞刺激を含むAPC-MS製剤は、DYNABEADSに匹敵する、よりバランスのとれたCD4+およびCD8+ 拡大を促進した(図30F)。試験したAPC-MS製剤の中で、その製剤中のT細胞刺激の総量と培養期間終了時に消耗マーカーPD-1およびLAG-3を共発現した細胞の出現率との間には、正の相関が観察された。顕著なことには、2週間の培養期間にわたっておよそ10倍高い拡大があったにも関わらず、PD-1およびLAG-3共発現細胞の低い出現率(<5%)が、DYNABEADSに類似する低T細胞刺激APC-MS製剤(F4)で観察された。しかし、PD-1およびLAG-3を共発現する細胞のより高い出現率が、DYNABEADS条件において7日目に観察された(図30G)。リンパ系ホーミング分子CCR7およびCD62Lを共発現する細胞の出現率において、Dynabeadで拡大またはAPC-MSで拡大したT細胞生成物の間で有意差は観察されなかった(図33)。これらホーミング分子は、よりナイーブなT細胞表現型を示し、インビボ移入後の機能にとって重要であることが示されている(Gattinoni, L.ら The Journal of Clinical Investigation 115, 1616-1626(2005))。全体として、これらのデータは、APC-MSが、DYNABEADSより迅速にマウスおよびヒトT細胞をポリクローナル拡大できたことを示す。
【0420】
初代マウスT細胞の抗原特異的拡大
OT-Iマウス(これは、H-2K(b) MHCクラスIの状況においてニワトリオボアルブミンに由来するSIINFEKL(配列番号4)ペプチドに対して特異的なTCRを発現する)から単離された初代マウスCD8+ T細胞を使用して、APC-MSが抗原特異的拡大に適合され得るか否かを決定した。これらの細胞を、無関係のペプチドを負荷したMHC(pMHC)を提示するAPC-MS製剤とともに培養した場合に、最小限の細胞-材料相互作用を観察した。しかし、その細胞を、SIINFEKL(配列番号4)を提示するAPC-MS製剤とともに培養した場合には、広範囲の細胞-材料クラスターの形成を生じる強い相互作用が観察された(図34A)。SIINFEKL(配列番号4)を提示するAPC-MS製剤は、表面キューが脂質のうちの0.01モル%程度の低さで提示されているとしても、OT-I CD8+ T細胞の強い拡大を促進した(図34B)。B16-F10黒色腫細胞に由来するSIINFEKL(配列番号4)提示に応じて、その拡大されたT細胞は、IFNyを分泌し(図34E)、IFNyおよびTNFaの共発現をアップレギュレートし(図34C)、標的細胞をインビトロで殺滅した(図34D)。
【0421】
初代ヒトT細胞の抗原特異的拡大
APC-MSが、希なヒトT細胞部分集団の抗原特異的富化および拡大に使用され得るか否かを決定した(これは、腫瘍または血液に由来する希ながん抗原特異的T細胞の選択的拡大に有用であり得る(Cohen, C.J.ら The Journal of Clinical Investigation 125, 3981-3991(2015);およびStreinen, E.ら Science 352, 1337-1341(2016)))。APC-MS製剤は、MHCクラスIのHLA-A2アロタイプの状況で、異なるEBV関連タンパク質に由来する2種のペプチド(CLGまたはGLCいずれかで略称される)のうちの1種を提示した。CD8+ T細胞を、以前にEBV曝露があったHLA-A2マッチしたドナーのヒト血液サンプルから単離し、可溶性IL-2(30 U/ml)単独(モック)で処理するか、またはCLGもしくはGLCペプチドのいずれかを提示するAPC-MSとともに培養するかのいずれかを行った。その2種のT細胞部分セットの強い抗原特異的富化および拡大が観察された一方で、全T細胞における最小限の増大が特に言及された(図35A)。CLG特異的CD8+ T細胞の出現率は、CLG提示APC-MSとともに培養した場合に、0日目での全CD8+ T細胞のうちの0.04%から、14日目でのCD8+ T細胞のうちの3.3±0.9%へと増大し(図36Aおよび36B)、これは、細胞数において170±70倍の拡大に相当した(図36C)。同様に、GLC特異的CD8+ T細胞の出現率は、GLC提示APC-MSとともに培養した場合に、0日目での全CD8+ T細胞のうちの0.66%から、14日目での48±9%へと増大し(図36Dおよび36E)、これは、細胞数において300±100倍の拡大に相当した(図36F)。種々のT細胞生成物の機能性を、IFNy分泌(図35B)、IFNγおよびTNFαの共発現(図35C、ならびに図36G、36H、および36I)、ならびにペプチド負荷標的細胞のインビトロでの殺滅(図36J)を評価することによって、T2刺激細胞(stimulator cell)との共培養実験において分析した。CLGまたはGLCのいずれかを提示するAPC-MSで拡大したCD8+ T細胞集団は、それらのコグネート抗原を提示した刺激細胞に強く応答した。顕著なことには、T2細胞との共培養後に、テトラマー染色を介して検出したCLG特異的およびGLC特異的細胞の出現率は、IFNyおよびTNFaを共発現する細胞の出現率に類似しており、これは、その拡大されたT細胞のうちの大部分が機能的であることを示した。
【0422】
抗原特異的T細胞が、T細胞単離の必要性を事前に回避して、不均質な細胞集団(例えば、PBMC)から直接拡大され得るか否かを決定するために、以下の実験を行った。以前にEBV曝露があったBLA-A2マッチさせたドナーのPBMCサンプルを、GLC提示APC-MS製剤とともに培養した。顕著なことには、GLC特異的T細胞の出現率は、0日目での全CD8+ T細胞のうちの0.66%から、7日目での15±1%へと増大した;モック処理サンプルにおいては最小限の変化が見出された(図36K)。これは、GLC特異的T細胞の60±9倍の拡大に相当する(図36L)。その拡大されたT細胞の機能性を、適用しないか、またはCLGもしくはGLCペプチドを適用するかのいずれかであったT2細胞との共培養によって評価した。TNFaおよびIFNyを共発現する細胞の出現率(図36M)および1FN1分泌(図36N)の定量は、PBMCからGLC提示APC-MSで拡大したCD8+ T細胞集団が、それらのコグネート抗原を提示したT2細胞にのみ強く応答することを示した。まとめると、これらのデータは、APC-MSが抗原特異的様式においてマウスおよびヒトT細胞の両方を強く拡大する能力を示す。
【0423】
APC-MSを使用して観察される、DYNABEADSを超える改善が、提示される抗CD3抗体および抗CD28抗体の量における差異にのみ原因があるわけではないか否かを決定するために、DYNABEADSにおける抗CD3抗体および抗CD28抗体の量を、APC-MSにおけるこれら抗体の濃度に相当するように正規化した。図40B、40Cおよび40Dに示されるように、APC-MSおよびDYNABEADに存在する抗CD3抗体および抗CD28抗体の量が匹敵する場合、APC-MSは、消耗マーカーPD-1およびLAG-3の匹敵する共発現レベルを維持しながら(図40C)、初代マウスT細胞のより迅速な拡大を促進した(図40B)。また、APC-MS製剤を調整することによって、CD4:CD8比は調整され得る(図40D)。
【0424】
IL-2は、持続様式において、およそ1週間の過程にわたってAPC-MSから放出されることが観察された。IL-2用量の効果およびAPC-MSからの徐放を評価するために、初代マウスT細胞を、同じ量の抗CD3抗体および抗CD28抗体を提示するDYNABEADまたはAPC-MSのいずれかとともに、7日間培養した。APC-MS条件に関しては、IL-2をAPC-MS上に負荷し、経時的に放出させる(M-D)か、または同じ用量のIL-2を可溶性ボーラスとしてd0に培地の中に添加する(M-D/bIL-2)のいずれかであった。DYNABEAD条件に関しては、IL-2を製造業者の推奨する量で培地の中に補充し、各培地交換時に補給する(refresh)(D-B)か、または可溶性ボーラスとしてd0に培地の中にAPC-MSへと負荷したその同じ用量で添加する(D-B/bIL-2)かのいずれかであった。図41Aに示されるように、APC-MSは、IL-2をAPC-MSに負荷し、経時的に放出させた場合に、IL-2のその同じ用量を培地の中に可溶性ボーラスとして添加した場合よりも大きく初代マウスT細胞の拡大を促進した。このことは、この状況においてIL-2を提示する利益を示す。APC-MSは、提示される抗CD3、抗CD28およびIL-2の量が匹敵する場合(M-D/bIL-2 対 D-B/eIL-2)に、DYNABEADより大きく初代マウスT細胞の拡大を促進した。このことは、APC-MSの状況においてこれらのキューを提示する利益を示す。図41Bに示されるように、提示される抗CD3、抗CD28およびIL-2の量が匹敵する場合、APC-MSで拡大されたT細胞は、DYNABEADで拡大されたものより低い消耗マーカーPD-1およびLAG-3の共発現を示した(M-D/bIL-2 対 D-B/bIL-2)。
【0425】
上記の実験は、APC-MSが多機能性の材料であり、流体脂質二重層の表面上で局所的にTCR刺激および共刺激キューを提示し得、そして近くのT細胞への可溶性サイトカインの持続した傍分泌送達を促進し得ることを示す。aCD3またはpMHC、aCD28、およびIL-2を提示する3成分の製剤は、市販のDYNABEADSより有意に速いポリクローナル拡大を含め、初代マウスおよびヒトT細胞の迅速なポリクローナルおよび抗原特異的拡大を促進した。重要なことには、増大した拡大速度が、この実施例において使用したAPC-MSで観察されるにも拘わらず、拡大されたT細胞は、機能的表現型を保持できた。このことは、拡大速度が基本的に、機能に逆に関連するわけではないことを示す。T細胞は、APC-MSが関連するTCRキューを提示するように製剤化されなければ、APC-MSを概して無視した。このことは、複雑な細胞混合物(例えば、PBMC)からですら、T細胞の希な部分集団の特定の拡大を可能にした。
【0426】
これらの研究の結果は、これらのキューが天然に提示される方法に匹敵する様式で、T細胞に表面および可溶性キューの両方を提示する重要性を裏付ける。合成aAPCに関する以前の研究は、サイトカイン(例えば、IL-2)をT細胞へと傍分泌様式で送達することがサイトカインの効果を強化し得ることを示した(Steenblock and Fahmy(2008);およびFadelら(2014))。現在のシステムは、TCRクラスター化を促進するために、刺激の静的な高密度提示を通じてT細胞活性化を強化することに主に焦点を当てる(Zappasodiら(2008); Fadelら(2014);およびFadelら(2008))。しかし、TCRのクラスター化は、T細胞活性化を増強するのみならず、T細胞過剰刺激から防御するためにTCRシグナル伝達の持続時間を制限するようにも働く、時間を経て多くの細胞表面分子の再組織化を要する動的プロセスにおける1工程に過ぎない(Huppa and Davis(2003); Leeら(2003); Alarconら(2011))。流体脂質二重層の表面にわたってT細胞キューを提示する場合に、これらのキューがAPC形質膜の表面上で天然に遭遇される方法をまねると、比較的低い表面キュー密度は、より迅速な拡大速度およびより機能的かつより消耗の低い表現型を有するT細胞の生成を促進することが観察された。
【0427】
非常に高いアスペクト比の粒子を使用して、APC-MSを形成したところ、これは、大部分の以前に記載された合成aAPC材料とは対照的である(Steenblock and Fahmy(2008); Fadelら(2014); Sunshineら(2014); Fadelら(2008); Meyerら(2015);およびSteenblock(2011))。これらの粒子は、自発的に沈殿および積み重なって、高表面積の3D構造を形成し、T細胞が浸潤するこの構造はリモデルされて、密な細胞-材料クラスターを形成し、T細胞がその材料に直ぐ近接している微小環境を作り出した。これはおそらく、IL-2のより効率的な傍分泌送達、および増大したT細胞-T細胞傍分泌シグナル伝達を可能にする(Long, M. & Adler, A.J.The Journal of Immunology 177, 4257-4261(2006))。そのロッドの比較的大きなサイズおよび高アスペクト比はおそらく、Dynabead培養物に対して、APC-MSにおいて観察されたより大きなクラスターの形成に寄与した。なぜならより多くのT細胞が、より小さい球状のDYNABEADSとより、各ロッドと相互作用できたからである。APC-MS培養物におけるこれらクラスターの持続性は、表面キュー密度および培養物中の材料の量に依存し、これはおそらく、種々のAPC-MS条件において観察された異なる表現型に寄与した。
【0428】
ポリクローナルマウスT細胞拡大研究において、APC-MSは、T細胞集団の極端にCD8に偏った非対称性を促進した。これは、IL-2の傍分泌送達がマウスCD8+ T細胞の増殖を増強したが、マウスCD4+ T細胞において活性化誘導性細胞死を促進したという以前の観察と一致する(Steenblockら(2011))。しかし、ポリクローナルヒトT細胞拡大研究において、非対称性は、極めてCD4に偏った非対称性を促進するT細胞刺激のより高い量を含む条件とともに、APC-MSによって提示されたT細胞刺激の全体的な量に依存した。この矛盾は、マウスおよびヒトT細胞がこれらのキューに応答する方法における基本的な差異を示し得る。この挙動をよりよく理解することは、養子的に移入されるT細胞の機能にとって重要であることが近年示された特性である、混合のT細胞集団を特定のCD4:CD8比に向かって偏らせる材料製剤を可能にし得る(Turtle, C.J.ら The Journal of Clinical Investigation 126(2016))。
【0429】
機能的T細胞の治療上関連する数をエキソビボで迅速に生成する必要性は、個別化されたT細胞療法においてかなりの難題であり、この研究の結果は、APC-MSがこの必要性を満たすことに向かってかなりの前進をもたらすことを示す(Turtle, C.J. & Riddell, S.R. Cancer Journal(Sudbury, Mass.) 16, 374(2010);およびEggermont, L.J.ら Trends in Biotechnology 32, 456-465(2014))。3成分のAPC-MS製剤での単一の刺激は、市販のDYNABEADSより有意に速いT細胞拡大を促進することが観察され、その材料のパラメーターが、迅速な拡大速度を損なうことなく、細胞生成物の表現型を改善するように操作され得ることを示した。APC-MSは分子プラットフォーム技術であることから、そのシステムの構成要素は、キューが提示される空間的および時間的状況を改変するように変更または変化され得る。例えば、MSR特性を変更することは、足場微小環境または分解動態の調整を可能にし得る。脂質製剤を変化させることは、SLB安定性、流動性、もしくは表面キュー分配の調整、または異なる化学現象を介するキューの付着を可能にし得る(Torresら(2013); Puu, G. & Gustafson, I. Biochimica et Biophysica Acta(BBA)-Biomembranes 1327, 149-161(1997); Anderson, N.A.ら Journal of the American Chemical Society 129, 2094-2100(2007); Collins, M.D. & Keller, S.L. Proceedings of the National Academy of Sciences 105, 124-128(2008); Reich, C.ら Biophysical Journal 95, 657-668(2008); Longo, G.S.ら Biophysical Journal 96, 3977-3986(2009); Kwong, B.ら Biomaterials 32, 5134-5147(2011); Koo, H.ら Angewandte Chemie International Edition 51, 11836-11840(2012);およびDesai, R.M.ら Biomaterials 50, 30-37(2015))。本明細書で記載されるAPC-MSはまた、表面および可溶性キューの両方のより大きなセットを提示するように変更されうる。これは、ACTSのためにさらに最適化されたT細胞の生成を可能にし得る(Hasanら(2015);およびHendriksら(2000))。
【0430】
方法
細胞および試薬
B16-F10マウス黒色腫細胞株をATCCから得、マイコプラズマが陰性であることを確認した。B16-F10細胞を、10% 熱非働化ウシ胎仔血清(FBS)(HI-FBS)および1% ペニシリン-ストレプトマイシンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で培養した。B3ZマウスT細胞ハイブリドーマ細胞を、10% HI-FBS、2mM L-グルタミン、1mM ピルビン酸ナトリウム、50μM β-メルカプトエタノール、および1% ペニシリン-ストレプトマイシンを補充したRPMI 1640中で培養した。T2(174 x CEM.T2) ヒトリンパ芽球細胞を、10% HI-FBS、2mM L-グルタミン、1mM ピルビン酸ナトリウム、50μM β-メルカプトエタノール、0.1mM 非必須アミノ酸、1mM ピルビン酸ナトリウム、10mM HEPES、および1% ペニシリン-ストレプトマイシンを補充したRPMI 1640中で培養した。初代マウスおよびヒトT細胞を、10% HI-FBS、2mM L-グルタミン、1mM ピルビン酸ナトリウム、50μM β-メルカプトエタノール、0.1mM 非必須アミノ酸、1mM ピルビン酸ナトリウム、10mM HEPES、および1% ペニシリン-ストレプトマイシンを補充し、それぞれ、30 U/ml 組換えマウスまたはヒトIL-2を補充したRPMI 1640中で培養した。
【0431】
MSR合成のための全化学試薬を、Sigma-Aldrichから購入した。全ての脂質を、Avanti Polar Lipidsから購入した。これらの研究において使用される特定の脂質は、以下のとおりである: DOPC(850375C)、POPC(850457C)、DPSC(850365C)、PE-cap-ビオチン(870273C)、18:1 PE-カルボキシフルオレセイン(810332C)。FoxP3抗体を、eBioscienceから購入した。全ての他の抗体を、Biolegendから購入した。マウスおよびヒト組換えIL-2を、Biolegendから購入した。ビオチン化ペプチド負荷MHCモノマーおよび発蛍光団標識テトラマーを、National Institutes of Health Tetramer Core Facilityから購入した。マウスおよびヒトCD3/CD28 T細胞拡大DYNABEADSを、ThermoFisher Scientificから購入した。オボアルブミン由来ペプチドSIINFEKL(配列番号4)を、Anaspecから購入した。EBV由来ペプチドCLGGLLTMV(配列番号1)およびGLCTLVAML(配列番号2)を、Proimmuneから購入した。
【0432】
メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)の合成
MSRを、先に報告されるように合成した(Kimら(2015);およびLiら(2016))。簡潔には、4gのPluronic P123界面活性剤(平均Mn 約5,800、Sigma-Aldrich)を、150gの1.6M HCl溶液に溶解し、8.6gのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS, 98%, Sigma-Aldrich)とともに40℃において20時間撹拌し、続いて、100℃において24時間撹拌した。その後、界面活性剤を、1% HCl/エタノール(v/v)中、70℃において20時間抽出することによって、調製されたままの粒子から除去した。懸濁物を、0.22μmフィルタを通すことによって粒子を回収し、エタノールで洗浄し、乾燥させた。
【0433】
初代マウスT細胞単離
動物に関わる全ての手順を、National Institutes of Health and Institutionalのガイドラインに準拠して行った。動物を、The Jackson Laboratoryから購入した。ポリクローナルT細胞拡大研究に関しては、C57BL/6Jマウスを細胞ドナーとして使用した。抗原特異的T細胞拡大研究に関しては、C57BL/6-Tg(TcraTcrb)1100Mjb/J(OT-I)マウスを細胞ドナーとして使用した。全ての動物は雌性であり、実験の開始時に6~9週齢の間で使用した。T細胞を単離するために、脾細胞を、70μmナイロンセルストレーナーを通して脾臓を潰すことによって調製し、赤血球をACK緩衝液中に溶解した。その後、CD3+ T細胞を、汎T細胞単離MACSキット(Miltenyi Biotec)を使用してポリクローナルT細胞拡大研究のために単離するか、またはCD8+ T細胞を、CD8a+ T細胞単離MACSキット(Miltenyi Biotec)を使用して抗原特異的T細胞拡大研究のために単離するかのいずれかを行った。
【0434】
初代ヒトT細胞単離
匿名化した白血球低減カラー(leukoreduction collar)を、Brigham and Women’s Hospital Specimen Bankから得た。PBMCを、Ficoll勾配で白血球低減物(leukoreduction)から単離し、続いて、2回洗浄して、血小板夾雑物を除去した。その後、いくつかの研究では、CD3+ T細胞を、汎T細胞単離MACSキット(Miltenyi Biotec)を使用してポリクローナルT細胞拡大研究のために単離するか、またはCD8+ T細胞を、CD8+ T細胞単離MACSキット(Miltenyi Biotec)を使用して抗原特異的T細胞拡大研究のために単離するかのいずれかを行った。
【0435】
抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)の調製
MSRおよびリポソームを、APC-MSアセンブリの前に調製した。リポソームを調製するために、所定の脂質製剤から構成される脂質フィルムを、脂質-クロロホルム懸濁物を混合し、大半のクロロホルムを窒素下でエバポレートし、そして残留クロロホルムを一晩真空チャンバの中で除去することによって先ず調製した。全ての機能研究のために、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)を、主な脂質として使用し、脂質製剤を、0.01~1モル%の間の、カルボキシフルオレセインタグ化脂質1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(カルボキシフルオレセイン)、またはビオチン化脂質1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(キャップビオチニル)のいずれかでドープした。いくつかの特徴づけ研究のために、脂質、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)および1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)を、主な脂質として代わりに使用した。脂質フィルムを、2.5mg/ml 脂質でPBS中に再懸濁し、1時間にわたって10分ごとにボルテックスルすることによって再水和した。その後、脂質懸濁物を、Mini-Extruder(Avanti Polar Lipids)を使用して100nm ポリカーボネートフィルタを通して押し出して、単分散リポソーム懸濁物を得た。リポソーム懸濁物を、4℃で貯蔵し、1週間以内に使用した。APC-MS製剤を調製するために、MSR(10mg/ml)を、PBS中の組換えIL-2(0.04mg/ml)とともに1時間室温においてインキュベートした。MSR-SLBを形成するために、リポソームを、脂質:MSR 1:4(w/w)で添加し、1時間、室温において10分ごとにピペッティングしながらインキュベートした。次に、その物質を、PBSで2回洗浄し、次いで、PBS中の0.25% ウシ血清アルブミン(BSA)(w/v)中、その材料を2.5mg/ml(MSRに関して)で再懸濁することによって、15分間遮断した。その後、ストレプトアビジンを、特定の製剤(POPCに対して34% 脂質保持と想定)中のビオチン化脂質の量の30% 理論的飽和に相当するモル量において添加し(1% ビオチン化脂質製剤に関して500μg MSRあたり25μg ストレプトアビジン)、その懸濁物を、20分間にわたり5分ごとにピペッティングすることによって混合した。次に、ビオチン化T細胞活性化キュー(1:1 モル比 TCR活性化キュー:αCD28)を、その添加されたストレプトアビジンの80%モル飽和に相当する量で添加し、その懸濁物を、1時間にわたって10分ごとにピペッティングすることによって混合した。最後に、その材料をPBSで2回洗浄し、インビトロアッセイのために細胞培養培地中に再懸濁した。APC-MS製剤は、T細胞拡大実験のために直ぐ使用するか、または4℃で貯蔵し、特徴づけ研究のために1週間以内に使用するかのいずれかであった。
【0436】
MSR-支持脂質二重層(MSR-SLB)構造および安定性の特徴づけ
明視野および蛍光顕微鏡法を、MSR脂質被覆、MSR-SLB分散性、およびMSR-SLB分解を評価するために使用し、EVOS FL Cell Imaging Systemを用いて行った。共焦点顕微鏡法を、Zeiss LSM 710共焦点システムを使用して行った。MSRでの脂質保持を評価するために、MSRを、1モル% 発蛍光団タグ化脂質を含む脂質製剤で被覆し、その脂質保持を、プレートリーダーを使用して定量した。経時的なパーセント脂質保持を計算するために、培養した材料を、700rcfで5分間遠心分離することによって、特定された時点で回収し、蛍光強度を、培養前の蛍光強度に対して正規化した。MSR-SLB流動性を評価するために、光退色後の蛍光回復(FRAP)実験を、1モル% 発蛍光団タグ化脂質を含む脂質製剤で被覆したMSRに対して、Zeiss LSM 710共焦点システムを使用して行った。光退色を、488nmレーザー線で行い、少なくとも150秒間にわたって10秒ごとに画像を撮った。蛍光回復を、異なるロッドに関して、各時点で、光退色した領域内の蛍光強度を退色していない領域における蛍光強度に対して正規化することによって、ImageJを使用して分析した。
【0437】
IL-2負荷および放出を定量するために、500μgのMSRに2μgのIL-2を負荷し、次いで、記載されるとおりの脂質で被覆した。PBSで2回洗浄した後、IL-2負荷MSR-SLBを、500μl 放出緩衝液(PBS中1% BSA(w/v))中に再懸濁し、細胞培養条件でインキュベートした。示された時点で、サンプルを遠心分離し(700rcfで5分間)、その上清を集めた。その後、MSRを新鮮な放出緩衝液中に再懸濁し、培養物に戻した。上清サンプル中のIL-2を、ELISA(Biolegend)を介して定量した。
【0438】
表面キュー負荷を定量するために、MSR-SLBサンプルを、0.01、0.1、または1モル% ビオチン化脂質を含む脂質製剤を使用して調製した。ストレプトアビジンを、その保持されたビオチン化脂質(POPCに対して35% 脂質保持と想定)の30% 理論的飽和に相当する量において添加し、続いて、ビオチン化IgGを、その添加されたストレプトアビジンの40%飽和または80%飽和のいずれかに等しい量で添加した。コントロールとして、その同じ量のビオチン化IgGを含むが、材料を含まないサンプルもまた調製した。全てのサンプルを、700rcfで5分間遠心分離して、その材料をペレットにし、その上清画分中のIgGの量を、ELISA(eBioscience)を介して定量した。サンプルを調製するために使用されたビオチン化IgGストックをまた使用して、標準曲線を調製した。その材料上に負荷したIgGの量を、コントロールサンプル上清中で検出されたIgGの量を、それぞれの材料サンプル上清中で検出されたIgGの量から差し引くことによって計算した。走査型電子顕微鏡法(SEM)のために、細胞を、ガラス化バースリップ上のAPC-MSとともに一晩培養し、4% パラホルムアルデヒド中で固定し、次いで、2000rpmで5分間遠心分離した。固定したサンプルを、水中の0%、30%、50%、75%、90%、100%エタノールの勾配を通じて連続して移した。サンプルを、ヘキサメチルジシラザン(Electron Microscopy Sciences)中に沈め、ベンチトップデシケーター中で一晩維持した。乾燥したカバースリップをSEMスタブ上にカーボンテープを使用して取り付け、5nmの白金-パラジウムでスパッタコーティングし、Carl Zeiss Supra
55 VP電界放出型走査型電子顕微鏡での二次電子検出を使用して画像化した。
【0439】
インビトロでのT細胞拡大研究
ポリクローナルマウスおよびヒトT細胞拡大実験を、初代CD3+ T細胞を使用して行った。抗原特異的マウスT細胞拡大実験を、OT-Iマウスから単離したCD8+ T細胞を使用して行った。抗原特異的ヒトT細胞拡大実験を、CD8+ T細胞、または匿名化したドナー血液サンプルから単離したPBMCSのいずれかを使用して行った。単離された初代マウスもしくはヒトT細胞、またはヒトPBMCを、活性化刺激と混合し、2週間まで培養した。全ての実験において、非組織培養処理培養容器を使用した。ヒト抗原特異的T細胞拡大研究のために、培養物を確立する前に、ドナーサンプルを、FACSを介してHLA-A2 MEW I発現に関して、および血清の抗EBV VCA ELISA(1BL International)を介して以前のEBV曝露に関してアッセイした。HLA-A2+ EBVを経験したサンプルのみを、拡大研究に使用した。
【0440】
ヒト抗原特異的T細胞拡大実験におけるモック処理サンプルを、30 U/ml 組換えIL-2を補充した培地中で培養した。全ての他のT細胞拡大実験におけるモック処理サンプルを、非補充培地中で培養した。市販のDynabead条件に関しては、DYNABEADSを、キットともに含まれる製造業者が最適化したプロトコルに従って使用した。簡潔には、T細胞を、1×10 T細胞/mlの密度で予備洗浄したDYNABEADSとともにビーズ-対-細胞比 1:1で、30 U/ml 組換えIL-2を補充した培地中に播種した。Dynabead培養物に関しては、1×10 細胞を、出発培養において播種した。細胞を3日ごとに計数し、新鮮なIL-2補充培地を、細胞懸濁物が0.5~1×10 細胞/mlの密度になるように添加した。一般に、細胞を、培養期間全体を通じて2.5×10 細胞/mlの密度未満に維持した。
【0441】
マウスポリクローナル研究に関しては、1:1モル比において0.2~1モル%の間の脂質上に表面キュー(αCD3+αCD28)を提示するAPC-MSを調製し、333μg/mlで出発培養物に添加した。ヒトポリクローナル研究に関しては、1:1モル比において0.1モル%または1モル%いずれかの脂質上に表面キュー(αCD3+αCD28)を提示するAPC-MSを調製し、33μg/mlまたは333μg/mlで出発培養物に添加した。マウス抗原特異的研究に関しては、1:1モル比において0.01モル%または0.1モル%のいずれかの脂質上に表面キュー(SVYDFFVWL(配列番号3)/H-2K(b)またはSIINFEKL(配列番号4)/H-2K(b)+αCD28)を提示するAPC-MSを調製し、33μg/mlまたは333μg/mlで出発培養物に添加した。ヒト抗原特異的研究に関しては、1:1モル比において1モル%の脂質上に表面キュー(CLGGLLTMV(配列番号1)/HLA-A2またはGLCTLVAML(配列番号2)/HLA-A2+αCD28)を提示するAPC-MSを調製し、333μg/mlで出発培養物に添加した。1モル%の脂質上にキューを提示し、333μg/mlにおいて添加されたAPC-MSは、出発培養物において約55nMのTCR刺激およびαCD28に相当する。APC ms条件に関しては、T細胞を、5×10 細胞/mlにおいて特定された量の材料とともにIL-2を補充しなかった培地中に播種した。全てのAPC-MS条件において、2.5×10 細胞を、出発培養物中に播種した。培地を、培養期間全体を通じて添加して、細胞を密度2.5×10 細胞/ml未満に維持した。7日目に開始して、大部分の物質に負荷されたIL-2が放出された場合に、添加した新鮮な培地に、30 U/ml 組換えIL-2を補充した。特定された時点において、生細胞を、トリパンブルー排除を使用して血球計算板を用いて手動で計数して、物質の夾雑の結果として、自動化計数システムに伴って考えられるアーチファクトを回避した。計数後、フローサイトメトリーを使用して細胞表現型を評価した。ゲートを、蛍光マイナス1(FMO)コントロールに基づいて独立して設定した各時点およびサンプルについて設定した。
【0442】
インビトロでのT細胞機能研究
IFNγおよびTNFαのT細胞発現を細胞内サイトカイン染色を介して評価した共培養実験に関して、刺激細胞(マウス、B16-F10;ヒト、T2)を、1μg/ml ペプチド(マウス、SIINFEKL(配列番号4);ヒト、CLGGLLTMV(配列番号1)またはGLCTLVAML(配列番号2))を30分間37℃において適用しないかまたは適用するかのいずれかを先ず行った。その後、1×10の拡大された細胞を、2×10 刺激細胞とともに、ブレフェルジンA(BD Biosciences)を添加する前に1時間培養して、サイトカイン分泌を阻害し、次いで、さら4時間培養した。次いで、細胞を染色し、FACSを使用して分析した。
【0443】
インビトロ殺滅アッセイを、標的細胞(マウス、B16-F10;ヒト、T2)を20μg/ml Calcein AM(Biotium)中で30分間、37℃において先ずインキュベートすることによって行った。その後、標的細胞は、1μg/ml ペプチド(マウス、SIINFEKL(配列番号4);ヒト、CLGGLLTMV(配列番号1)またはGLCTLVAML(配列番号2))を30分間、37℃において適用しないかまたは適用するかのいずれかであった。次いで、5×10 標的細胞を、拡大されたエフェクター細胞とともに、エフェクター細胞:標的細胞(E:T)比 0、1、10、25、または50において4時間培養した。次いで、細胞をペレットにし、上清サンプルの蛍光強度を、プレートリーダーを使用して定量した。上清サンプル中のIFNγ濃度をまた、ELISA(Biolegend)を介して定量した。
【0444】
統計分析
全ての値を、別段特定されなければ、平均±s.d.として表した。統計分析を、GraphPad Prismを使用して行った。統計方法を本文中に述べる。全ての場合に、p<0.05を有意と見做した。
【0445】
実施例12:インビトロでのAPC-MSの分解の分析
例示的APC-MSのインビトロでの分解を研究するために、以下の実験を行った。αCD3/αCD28抗体(1% ビオチン化脂質)を含み、IL-2を放出するAPC-ms(167μg)を、初代マウスT細胞(25e T細胞/167μg MSR)とともに培養した。種々の時点において、培養物を700rcfで5分間遠心分離し、ペレット中のシリカ(Si)含有量を、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES; Galbraith Laboratories)を介して定量した。図37に示されるように、シリカは、約1週間後に培養物ペレット中で検出不能であった。
【0446】
実施例13:APC-MSからの多様な溶解性免疫指向性ペイロードの放出制御
例示的APC-MSからのサイトカインペイロードの放出を研究するために、以下の実験を行った。2μgのIL-2、IL-21、TGFβまたはIL-15SAいずれかを各々含む4種のAPC-MSを、脂質被覆の前に、500μg メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)に負荷した。サンプルを徹底的に洗浄して、いかなる負荷されていないタンパク質をも除去し、その後、37℃において28日間まで維持した。経時的なペイロード放出を、ELISAを使用して評価した。図38に示されるように、APC-MSからのサイトカインの放出制御が、実験の過程にわたって得られた。放出動態はおそらく、特定のサイトカインの物理化学的特性に依存する。
【0447】
実施例14:クリックケミストリー反応を介するMSR-SLBへの抗体の結合体化
機能的分子がMSR-SLB脂質二重層に結合体化され得るか否かを決定するために、以下の実験を行った。IgGを、Thermo SiteClick Antibody Labeling Systemを使用して、アジド基で部位特異的に標識した。種々の量の(モル%)のDBCO改変脂質(Avanti Polar Lipids)を含むMSR-SLBもまた、調製した。図42Aおよび42Bに示されるように、アジド改変IgGは、濃度依存性様式で、MSR-SLBの脂質二重層上に成功裡に結合体化された。
【0448】
均等論
当業者は、慣用的実験法のみを使用して、本明細書で記載される具体的な実施形態および方法に対する多くの均等物を認識するかまたは確認することができる。このような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)であって、該足場は、
高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層;
該MSR基部層上に層化された連続流体支持脂質二重層(SLB);
該足場に吸着された、複数のT細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子;ならびに
該足場上に吸着された複数のT細胞ホメオスタシス因子、
を含む足場。
(項目2)
前記T細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、CD3+ T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、および調節性T細胞(Treg)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目1に記載の足場。
(項目3)
前記T細胞ホメオスタシス因子は、前記SLB層上に吸着される、項目1に記載の足場。
(項目4)
前記T細胞ホメオスタシス因子は、前記MSR基部層上に吸着される、項目1に記載の足場。
(項目5)
前記T細胞ホメオスタシス因子は、放出制御様式において前記足場から放出される、項目1に記載の足場。
(項目6)
前記T細胞ホメオスタシス因子は、少なくとも30日間にわたって持続様式において前記足場から放出される、項目1に記載の足場。
(項目7)
前記T細胞ホメオスタシス因子は、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-17、IL-21、およびトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)、またはこれらのアゴニスト、これらの模倣物、これらの改変体、その機能的フラグメント、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目1に記載の足場。
(項目8)
前記T細胞ホメオスタシス因子は、IL-2、そのアゴニスト、その模倣物、その改変体、その機能的フラグメント、またはこれらのIL-7、IL-21、IL-15、およびIL-15スーパーアゴニストからなる群より選択される第2のホメオスタシス因子との組み合わせである、項目7に記載の足場。
(項目9)
前記T細胞ホメオスタシス因子は、IL-2の最初の30アミノ酸(p1-30)を含むN末端IL-2フラグメント、IL-2スーパーカインペプチド、およびIL-2部分アゴニストペプチド、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目7に記載の足場。
(項目10)
前記T細胞活性化分子および前記T細胞共刺激分子は、各々、独立して、前記流体支持脂質二重層(SLB)上に吸着される、項目1に記載の足場。
(項目11)
前記T細胞活性化分子および前記T細胞共刺激分子は、親和性対形成または化学的カップリングを介して吸着される、項目10に記載の足場。
(項目12)
前記親和性のカップリングは、ビオチン-ストレプトアビジンの対、抗体-抗原の対、抗体-ハプテンの対、親和性の対、捕捉タンパク質の対、Fcレセプター-IgGの対、金属-キレート化脂質の対、またはこれらの組み合わせを含む、項目11に記載の足場。
(項目13)
前記化学的カップリングは、アジド-アルキン化学(AAC)反応、ジベンゾ-シクロオクチン連結(DCL)、またはテトラジン-アルケン連結(TAL)を含む、項目11に記載の足場。
(項目14)
前記T細胞活性化分子および前記T細胞共刺激分子は、各々、独立して、前記流体支持脂質二重層(SLB)上に被覆される、項目10に記載の足場。
(項目15)
前記T細胞活性化分子および前記T細胞共刺激分子は、各々、独立して、前記流体支持脂質二重層(SLB)に部分的に埋め込まれる、項目10に記載の足場。
(項目16)
前記T細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子は、各々、独立して、前記メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)上に吸着される、項目1に記載の足場。
(項目17)
前記T細胞活性化分子および前記T細胞共刺激分子は、各々、独立して、抗体分子またはその抗原結合フラグメントである、項目1に記載の足場。
(項目18)
前記T細胞活性化分子は、抗CD3抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗マクロファージスカベンジャーレセプター(MSR1)抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗T細胞レセプター(TCR)抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗CD2抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗CD47抗体もしくはその抗原結合フラグメント、MHCペプチドを負荷した主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子もしくはそのマルチマー、およびMHC-免疫グロブリン(Ig)結合体もしくはそのマルチマー、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目1に記載の足場。
(項目19)
前記T細胞共刺激分子は、CD28、4.1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD27(TNFRSF7)、GITR(CD357)、CD30(TNFRSF8)、HVEM(CD270)、LTβR(TNFRSF3)、DR3(TNFRSF25)、ICOS(CD278)、CD226(DNAM1)、CRTAM(CD355),TIM1(HAVCR1、KIM1)、CD2(LFA2、OX34)、SLAM(CD150、SLAMF1)、2B4(CD244、SLAMF4)、Ly108(NTBA、CD352、SLAMF6)、CD84(SLAMF5)、Ly9(CD229、SLAMF3)およびCRACC(CD319、BLAME)からなる群より選択される共刺激抗原に特異的に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントである、項目1に記載の足場。
(項目20)
前記T細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子は、二重特異的抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、項目1に記載の足場。
(項目21)
前記T細胞活性化分子およびT細胞共刺激分子は、CD3/CD28、CD3/ICOS、CD3/CD27、およびCD3/CD137、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される対を含む、項目1に記載の足場。
(項目22)
前記足場は、Fc融合タンパク質に特異的に結合する免疫グロブリン分子をさらに含む、項目1に記載の足場。
(項目23)
前記足場は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド21(CCL-21)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド19(CCL-19)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド12(CXCL12)、インターフェロンγ(IFNγ)、またはFMS様チロシンキナーゼ3(Flt-3)リガンドからなる群より選択される動員化合物をさらに含む、項目1に記載の足場。
(項目24)
前記動員化合物は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む、項目23に記載の足場。
(項目25)
前記足場は、抗原をさらに含む、項目1に記載の足場。
(項目26)
前記抗原は、腫瘍抗原を含む、項目25に記載の足場。
(項目27)
前記腫瘍抗原は、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、CEA、チロシナーゼ、ミッドカイン、BAGE、CASP-8、β-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、CA-125、CDK-1、CDK4、ESO-1、gp75、gp100、MART-1、MUC-1、MUM-1、p53、PAP、PSA、PSMA、ras、trp-1、HER-2、TRP-1、TRP-2、IL13Rα、IL13Rα2、AIM-2、AIM-3、NY-ESO-1、C9orf 112、SART1、SART2、SART3、BRAP、RTN4、GLEA2、TNKS2、KIAA0376、ING4、HSPH1、C13orf24、RBPSUH、C6orf153、NKTR、NSEP1、U2AF1L、CYNL2、TPR、SOX2、GOLGA、BMI1、COX-2、EGFRvIII、EZH2、LICAM、Livin、Livinβ、MRP-3、ネスチン、OLIG2、ART1、ART4、B-サイクリン、Gli1、Cav-1、カテプシンB、CD74、E-カドヘリン、EphA2/Eck、Fra-1/Fosl 1、GAGE-1、ガングリオシド/GD2、GnT-V、β1,6-N、Ki67、Ku70/80、PROX1、PSCA、SOX10、SOX11、サバイビン、UPAR、WT-1、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(AD Abp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、T細胞レセプター/CD3-ζ鎖、腫瘍抗原のGAGEファミリー、RAGE、LAGE-I、NAG、GnT-V、RCASl、α-フェトプロテイン、pl20ctn、Pmel117、PRAME、脳型グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX-I、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-I、SSX-4、SSX-5、SCP-I、CT-7、cdc27、腺腫様多発結腸ポリープタンパク質(APC)、フォドリン、PlA、コネキシン37、Ig-イディオタイプ、pl5、GM2、GD2ガングリオシド、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp-1、EBVコード核抗原(EBNA)-I、UL16結合タンパク質様転写物1(Mult1)、RAE-1タンパク質、H60、MICA、MICB、およびc-erbB-2、患者特異的ネオアンチゲン、またはこれらの免疫原性ペプチド、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目25に記載の足場。
(項目28)
前記支持脂質二重層(SLB) 対 前記メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)の重量比は、約10:1~約1:20の間である、項目1に記載の足場。
(項目29)
前記連続流体支持脂質二重層(SLB)は、(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、パルミトイル-オレオイルホスファチジルコリン(POPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)またはこれらの組み合わせからなる群より選択される脂質を含む、項目1に記載の足場。
(項目30)
前記メソポーラスシリカマイクロロッド-脂質二重層(MSR-SLB)足場は、連続流体体系を少なくとも14日間にわたって保持する、項目1に記載の足場。
(項目31)
前記メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR) 対 前記T細胞活性化/共刺激分子の乾燥重量比は、1:1~50:1の間である、項目1に記載の足場。
(項目32)
複数の項目1の足場を含むデバイスであって、ここで該足場は、前記メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)へのT細胞の浸潤を選択的に可能にするように積み重ねられる、デバイス。
(項目33)
前記T細胞活性化分子および/または共刺激分子は、T細胞のインサイチュ操作を可能にするために十分な濃度で前記足場上に存在する、項目32に記載のデバイス。
(項目34)
項目1に記載の足場および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
(項目35)
前記組成物は、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、または筋肉内投与のために製剤化される、項目34に記載の薬学的組成物。
(項目36)
項目1に記載の足場および該足場の中にクラスター化されたT細胞を含む、組成物。
(項目37)
前記T細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、CD3+ T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、および調節性T細胞(Treg)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目36に記載の組成物。
(項目38)
必要性のある被験体において疾患を処置するための方法であって、該方法は、
該被験体から得られたT細胞集団を含むサンプルと、項目1に記載の抗原提示細胞模倣足場(APC-MS)とを接触させる工程であって、それによって、該T細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持する工程;
該T細胞の集団を必要に応じて拡大する工程;および
該活性化され、共刺激され、維持され、そして必要に応じて拡大されたT細胞を、該被験体へと投与するステップであって、それによって、該被験体において該疾患を処置する工程、
を包含する方法。
(項目39)
前記方法は、前記投与する工程の前に、前記T細胞の集団を再刺激する工程をさらに包含する、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記サンプルは、血液サンプル、骨髄サンプル、リンパ液サンプル、または脾臓サンプルである、項目38に記載の方法。
(項目41)
前記被験体は、ヒトである、項目38に記載の方法。
(項目42)
前記疾患は、がんであり、前記足場は、少なくとも1種の細胞傷害性T細胞特異的活性化分子および少なくとも1種の細胞傷害性T細胞特異的共刺激分子を含む、項目38に記載の方法。
(項目43)
前記がんは、頭頚部がん、乳がん、膵臓がん、前立腺がん、腎臓がん、食道がん、骨がん、精巣がん、子宮頚がん、消化器がん、膠芽腫、白血病、リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肺における前癌病変、結腸がん、黒色腫、および膀胱がんからなる群より選択される、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記方法は、前記サンプルおよび/または前記拡大された細胞集団から、前記細胞傷害性T細胞をさらにソートする工程であって、必要に応じて富化する工程を包含する、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記疾患は、免疫不全障害であり、前記足場は、少なくとも1種のヘルパーT細胞特異的活性化分子および少なくとも1種のヘルパーT細胞特異的共刺激分子を含む、項目38に記載の方法。
(項目46)
前記免疫不全障害は、原発性免疫不全障害および後天性免疫不全障害からなる群より選択される、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記後天性免疫不全障害は、後天性免疫不全症候群(AIDS)に起因する、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記免疫不全障害は、ディジョージ症候群(DGS)、染色体切断症候群(CBS)、毛細血管拡張性運動失調症(AT)およびウィスコット-オルドリッチ症候群(WAS)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される遺伝性障害に起因する、項目45に記載の方法。
(項目49)
前記方法は、前記サンプルに由来するヘルパーT細胞および/または前記拡大された細胞集団をさらにソートする工程であって、必要に応じて富化する工程を包含する、項目45に記載の方法。
(項目50)
前記疾患は、自己免疫障害である、項目38に記載の方法。
(項目51)
前記活性化され、共刺激され、ホメオスタシス的に維持され、そして必要に応じて拡大されたT細胞は、前記被験体へと皮下投与される、項目38に記載の方法。
(項目52)
前記活性化され、共刺激され、ホメオスタシス的に維持され、そして必要に応じて拡大されたT細胞は、前記被験体へと静脈内投与される、項目38に記載の方法。
(項目53)
前記T細胞の集団は、前記サンプルと前記足場とを、1日間~約20日間の間の期間にわたって接触させることによって、活性化され、共刺激され、ホメオスタシス的に維持され、そして必要に応じて拡大される、項目38に記載の方法。
(項目54)
T細胞の操作のための方法であって、該方法は、
項目1に記載の足場と、被験体の生物学的サンプルとを接触させる工程であって、それによって、該サンプル内に存在するT細胞の集団を活性化し、共刺激し、ホメオスタシス的に維持し、そして必要に応じて拡大し、それによって該T細胞を操作する工程、
を包含する方法。
(項目55)
前記操作は、T細胞の成長、分裂、分化、拡大、増殖、活性、生存性、消耗、アネルギー、静止、アポトーシス、または死滅を促進することを包含する、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記操作は、T細胞の拡大または増殖を促進することを包含する、項目55に記載の方法。
(項目57)
前記方法は、前記高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層および前記連続流体支持脂質二重層(SLB)を含むが、前記T細胞活性化分子および前記T細胞共刺激分子を含まないコントロール足場と比較して、前記足場との約1週間の接触後に前記T細胞の集団の増大した拡大を付与する、項目54に記載の方法。
(項目58)
前記方法は、前記高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層および前記連続流体支持脂質二重層(SLB)を含むが、前記T細胞活性化分子および前記T細胞共刺激分子を含まないコントロール足場と比較して、前記足場との約1週間の接触後に前記T細胞の集団の拡大において約50倍~500倍の増大を付与する、項目57に記載の方法。
(項目59)
前記方法は、前記T細胞活性化分子および前記T細胞共刺激分子を含む超常磁性球状ポリマー粒子(DYNABEAD)と比較して、前記足場との約1週間の接触後に前記T細胞の集団の増大した拡大を付与する、項目57に記載の方法。
(項目60)
前記方法は、前記T細胞活性化分子および前記T細胞共刺激分子を含む超常磁性球状ポリマー粒子(DYNABEAD)と比較して、前記足場との約1週間の接触後に前記T細胞の集団の拡大において約5倍~20倍の増大を付与する、項目59に記載の方法。
(項目61)
前記操作は、T細胞の代謝活性を改善することを包含する、項目54に記載の方法。
(項目62)
前記方法は、前記高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層および前記連続流体支持脂質二重層(SLB)を含むが、前記T細胞活性化分子および前記T細胞共刺激分子を含まないコントロール足場と比較して、前記足場との約1週間の接触後に前記T細胞の集団の改善された代謝活性を付与する、項目54に記載の方法。
(項目63)
前記方法は、前記高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層および前記連続流体支持脂質二重層(SLB)を含むが、前記T細胞活性化分子および前記T細胞共刺激分子を含まないコントロール足場と比較して、前記足場との約1週間の接触後に前記T細胞の集団の約5倍~20倍改善された代謝活性を付与する、項目62に記載の方法。
(項目64)
前記方法は、前記T細胞活性化分子および前記T細胞共刺激分子を含む超常磁性球状ポリマー粒子(DYNABEAD)と比較して、前記足場との約1週間の接触後に前記T細胞の集団の改善された代謝活性を付与する、項目61に記載の方法。
(項目65)
前記方法は、前記T細胞活性化分子および前記T細胞共刺激分子を含む超常磁性球状ポリマー粒子(DYNABEAD)と比較して、前記足場との約1週間の接触後に前記T細胞の集団の拡大において約1倍~10倍の増大をさらに付与する、項目64に記載の方法。
(項目66)
前記拡大されたT細胞は、前記足場との接触後少なくとも約7日間にわたって代謝的に活性である、項目54に記載の方法。
(項目67)
前記拡大されたT細胞は、前記足場との接触後少なくとも約7日間にわたって凝集物を形成する、項目54に記載の方法。
(項目68)
前記T細胞は、CD8+ 細胞のポリクローナル集団を生成するように選択的に拡大される、項目54に記載の方法。
(項目69)
前記T細胞は、CD4+ 細胞のポリクローナル集団を生成するように選択的に拡大される、項目54に記載の方法。
(項目70)
前記T細胞は、CD4+/FOXP3-細胞のポリクローナル集団を生成するように選択的に拡大される、項目54に記載の方法。
(項目71)
前記T細胞は、CD44+/CD62L-T細胞(エフェクターメモリーおよび/またはエフェクターT細胞)のポリクローナル集団を生成するように選択的に拡大される、項目54に記載の方法。
(項目72)
前記T細胞は、CD8+/CD69+ T細胞(活性化T細胞)のポリクローナル集団を生成するように選択的に拡大される、項目54に記載の方法。
(項目73)
前記T細胞は、グランザイムB+ CD8+ T細胞(サイトトキシン分泌T細胞)のポリクローナル集団を生成するように選択的に拡大される、項目54に記載の方法。
(項目74)
前記T細胞は、IFNγ+ T細胞(アクチベーターサイトカイン分泌T細胞)のポリクローナル集団を生成するように選択的に拡大される、項目54に記載の方法。
(項目75)
前記細胞の集団は、約3日間にわたる前記足場との接触後に拡大される、項目68~74のいずれかに記載の方法。
(項目76)
前記細胞の集団は、約5日間にわたる前記足場との接触後に拡大される、項目68~74のいずれかに記載の方法。
(項目77)
前記操作は、消耗したT細胞を同定または単離することおよび必要に応じて該消耗したT細胞を除去することを包含する、項目54に記載の方法。
(項目78)
前記消耗したT細胞は、CD8+/PD-1+の細胞表面発現に基づいて同定または単離される、項目77に記載の方法。
(項目79)
生物学的サンプルは、被験体から得られ;そして項目1に記載の足場は、該被験体のT細胞をエキソビボで操作するために、該生物学的サンプルとエキソビボで接触される、項目54に記載の方法。
(項目80)
前記サンプルは、約1日間~約20日間の期間にわたって前記足場と接触される、項目79に記載の方法。
(項目81)
前記操作されたT細胞によって生成される1種またはこれより多くのサイトカインまたはサイトトキシンの生成を検出する工程をさらに包含する、項目79に記載の方法。
(項目82)
インターフェロンγ(IFNγ)、組織壊死因子α(TNFα)、IL-2、IL-1、IL-4、IL-5、IL-10、およびIL-13、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるサイトカインの生成をさらに検出する工程をさらに包含する、項目81に記載の方法。
(項目83)
前記操作されたT細胞は、Tヘルパー1(Th1)細胞であり、前記方法は、IL-2、インターフェロンγ(IFNγ)および組織壊死因子α(TNFα)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるサイトカインの生成を検出する工程を包含する、項目82に記載の方法。
(項目84)
前記操作されたT細胞は、Tヘルパー2(Th2)細胞であり、前記方法は、IL-4、IL-5、IL-10およびIL-13、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるサイトカインの生成を検出する工程を包含する、項目82に記載の方法。
(項目85)
前記操作されたT細胞は、細胞傷害性T(Tc)細胞であり、前記方法は、インターフェロンγ(IFNγ)およびリンホトキシンα(LTα/TNFβ)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるサイトカインの生成を検出する工程を包含する、項目54に記載の方法。
(項目86)
前記操作されたT細胞は、細胞傷害性T(Tc)細胞であり、前記方法は、グランザイムまたはパーフォリン、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるサイトトキシンの分泌を検出する工程を包含する、項目54に記載の方法。
(項目87)
前記操作されたT細胞における細胞表面マーカーの発現を検出する工程をさらに包含する、項目79に記載の方法。
(項目88)
前記細胞表面マーカーは、CD69、CD4、CD8、CD25、CD62L、FOXP3、HLA-DR、CD28、およびCD134、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目87に記載の方法。
(項目89)
前記細胞表面マーカーは、CD36、CD40、およびCD44、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される非T細胞マーカーである、項目87に記載の方法。
(項目90)
前記被験体は、ヒトである、項目54に記載の方法。
(項目91)
前記足場は、T細胞を含む前記生物学的サンプルが該足場とインビボで接触することを可能にするために、前記被験体に投与される、項目54に記載の方法。
(項目92)
前記足場は、約7日間の期間にわたって前記被験体において維持される、項目91に記載の方法。
(項目93)
項目1に記載の足場を作製するための方法であって、該方法は、
(a)高表面積メソポーラスシリカマイクロロッド(MSR)を含む基部層を提供する工程;
(b)T細胞ホメオスタシス因子を該MSR上に必要に応じて負荷する工程;
(c)連続流体支持脂質二重層(SLB)を、該MSRを含む基部層上に層化する工程であって、それによって、MSR-SLB複合材を生成する工程;
(d)工程(b)が行われなかった場合に、該T細胞ホメオスタシス因子を、該MSR-SLB複合材上に負荷する工程;
(e)該MSR-SLB複合材における1またはこれより多くの非特異的組み込み部位を、遮断因子で必要に応じて遮断する工程;ならびに
(f)前記T細胞活性化分子および前記T細胞共刺激分子を、該MSR-SLB複合材上に負荷する工程であって、それによって、項目1に記載の足場を作製する工程、
を包含する方法。
(項目94)
複数の足場をアセンブリルする工程であって、T細胞の浸潤を可能にするために十分な多孔性を有する積み重ねを生成する工程をさらに包含する、項目93に記載の方法。
(項目95)
増殖因子、サイトカイン、インターロイキン、接着シグナル伝達分子、インテグリンシグナル伝達分子、またはこれらのフラグメント、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種のさらなる薬剤を負荷する工程をさらに包含する、項目93に記載の方法。
図1
図2
図3
図4ABC
図4DE
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28AB
図28CDE
図29
図30ABC
図30DE
図30FG
図31
図32AB
図32CD
図33
図34ABCD
図34E
図35ABCD
図35E
図36ABC
図36DEF
図36GHIJ
図36KLMN
図37
図38
図39
図40AB
図40CD
図41
図42
【配列表】
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