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特許7497060抗TNF-α剤による関節リウマチの治療効果の予測判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】抗TNF-α剤による関節リウマチの治療効果の予測判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20240603BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240603BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
G01N33/68
A61K39/395 N
A61P19/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021502375
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2020008079
(87)【国際公開番号】W WO2020175633
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2019036782
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019103186
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519070781
【氏名又は名称】吉崎 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 和幸
(72)【発明者】
【氏名】宇野 賀津子
(72)【発明者】
【氏名】藤宮 仁
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/038840(WO,A1)
【文献】特開2015-000048(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083765(WO,A1)
【文献】山村 昌弘,治療経過のモニタリング,日本臨牀,株式会社日本臨牀社,第65巻第7号,PP.1269-1275
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的製剤による関節リウマチ患者への治療効果を予測判定するための方法であって、
該生物学的製剤の投与前の関節リウマチ患者における少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータを得る工程、および
該臨床データまたは生体パラメータのうち少なくとも1種を内在性コントロールとして、生体パラメータを分析し、該治療効果を予測判定するための指標とする工程
を含み、該生物学的製剤が抗TNF-α剤であり、
該少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、TNFα、0週目ESR、ADAMTS13、CD44、0週目General.VAS、0週目DAS-ESR、TRAIL、キチナーゼ3、BMP2、BAFF、MCP1、TWEAK、0週目RF、IL-1β、オステオポンチン、RANTES、IL-12p70、OSM、GM-CSF、IP10、TNFR2、CD30、IL-13、IL-9、およびsTNFRIからなる群から選択されるパラメータを含み、
該少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータのうちの該内在性コントロールではないパラメータの、該内在性コントロールに対する比を用いることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記治療効果が、前記患者の寛解である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生物学的製剤による関節リウマチ患者への治療効果を予測判定するための方法であって、
該生物学的製剤の投与前の関節リウマチ患者における少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータを得る工程
を含み、該生物学的製剤が、抗TNF-α剤であり、該治療効果が、該患者の寛解であり、
該少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、TNFα、0週目ESR、ADAMTS13、CD44、0週目General.VAS、0週目DAS-ESR、TRAIL、キチナーゼ3、BMP2、BAFF、MCP1、TWEAK、0週目RF、IL-1β、オステオポンチン、RANTES、IL-12p70、OSM、GM-CSF、IP10、TNFR2、CD30、IL-13、IL-9、およびsTNFRIからなる群から選択されるパラメータを含み、
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータのうちの少なくとも1つを内在性コントロールとして用いて、かつ前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータのうちの前記内在性コントロールではないパラメータの、前記内在性コントロールに対する比を用いることを特徴とする、方法。
【請求項4】
前記抗TNF-α剤が、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ、およびセルトリズマブからなる群から選択される、請求項1または3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗TNF-α剤がインフリキシマブである、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、sTNFRI、0週目ESR、IL-12p70、MCP1、TRAIL、TNFα、ADAMTS13、CD44、GM-CSFOSM、IL-1β、TWEAK、およびBMP2からなる群から選択されるパラメータを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、以下:
BlogTNF.a、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogCD44、およびRlogTRAIL;
BlogChitinase.3、BlogBAFF、BlogMCP.1、BlogRANTES、BlogTWEAK、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
BlogIL.1b、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogBMP.2およびRlogCD44;
BlogOsteopontin、BlogMCP.1およびBlogRANTES;
DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
MlogsTNFRI、BlogIL.12p70、BlogMCP.1、DAS.ESR.0wおよびESR_0w;
RlogTRAIL、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0WおよびlogRF0w;
BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44、RlogOSMおよびRlogTRAIL;
RlogADAMTS13、BlogGM.CSF、BlogIL.12p70、BlogMCP.1、BlogTNF.a、DAS.ESR.0wおよびESR_0w;
BlogGM.CSF、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogCD44およびRlogOSM;
BlogTNF.R2、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
BlogCD30、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogCD44およびlogRF0w;
BlogIL.13、BlogIL.12p70、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、MTX.mg、RlogADAMTS13、RlogBMP.2およびRlogCD44;および
BlogIL.9、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0wおよびRlogADAMTS13
からなる群から選択されるパラメータの組合せを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、以下:
内在性コントロールとしてのBlogTNF.a、ならびにDAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogCD44、およびRlogTRAIL;
内在性コントロールとしてのBlogChitinase.3、ならびにBlogBAFF、BlogMCP.1、BlogRANTES、BlogTWEAK、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
内在性コントロールとしてのBlogIL.1b、ならびにDAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogBMP.2およびRlogCD44;
内在性コントロールとしてのBlogOsteopontin、ならびにBlogMCP.1およびBlogRANTES;
内在性コントロールとしてのDAS.ESR.0w、ならびにESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
内在性コントロールとしてのMlogsTNFRI、ならびにBlogIL.12p70、BlogMCP.1、DAS.ESR.0wおよびESR_0w;
内在性コントロールとしてのRlogTRAIL、ならびにBlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0WおよびlogRF0w;
内在性コントロールとしてのBlogMCP.1、ならびにDAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44、RlogOSMおよびRlogTRAIL;
内在性コントロールとしてのRlogADAMTS13、ならびに、BlogGM.CSF、BlogIL.12p70、BlogMCP.1、BlogTNF.a、DAS.ESR.0wおよびESR_0w;
内在性コントロールとしてのBlogGM.CSF、ならびに、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogCD44およびRlogOSM;
内在性コントロールとしてのBlogTNF.R2、ならびにBlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
内在性コントロールとしてのBlogCD30、ならびにBlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogCD44およびlogRF0w;
内在性コントロールとしてのBlogIL.13、ならびにBlogIL.12p70、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、MTX.mg、RlogADAMTS13、RlogBMP.2およびRlogCD44;および
内在性コントロールとしてのBlogIL.9、ならびにBlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0wおよびRlogADAMTS13
からなる群から選択されるパラメータの組合せを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、以下:
MlogsTNFRI、BlogIL.12p70、BlogMCP.1およびESR_0w;
RlogTRAIL、BlogMCP.1およびESR_0w;
BlogTNF.a、ESR_0wおよびRlogADAMTS13;
RlogCD44、BlogMCP.1およびESR_0w;
BlogGM.CSF、ESR_0wおよびRlogADAMTS13;
RlogADAMTS13、BlogIL.12p70、BlogMCP.1およびESR_0w;
RlogBMP.2、BlogMCP.1およびESR_0w;
BlogMCP.1、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogCD44およびRlogOSM;および
BlogIL.1b、BlogTWEAK、ESR_0wおよびRlogADAMTS13;
からなる群から選択されるパラメータの組合せを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、以下:
内在性コントロールとしてのMlogsTNFRI、ならびに、BlogIL.12p70、BlogMCP.1およびESR_0w;
内在性コントロールとしてのRlogTRAIL、ならびに、BlogMCP.1およびESR_0w;
内在性コントロールとしてのBlogTNF.a、ならびにESR_0wおよびRlogADAMTS13;
内在性コントロールとしてのRlogCD44、ならびに、BlogMCP.1およびESR_0w;
内在性コントロールとしてのBlogGM.CSF、ならびに、ESR_0wおよびRlogADAMTS13;
内在性コントロールとしてのRlogADAMTS13、ならびに、BlogIL.12p70、BlogMCP.1およびESR_0w;
内在性コントロールとしてのRlogBMP.2、ならびにBlogMCP.1およびESR_0w;
内在性コントロールとしてのBlogMCP.1、ならびにESR_0w、RlogADAMTS13、RlogCD44およびRlogOSM;および
内在性コントロールとしてのBlogIL.1b、ならびに、BlogTWEAK、ESR_0wおよびRlogADAMTS13;
からなる群から選択されるパラメータの組合せを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
生物学的製剤による関節リウマチ患者への治療効果を予測判定するためのインビトロの方法であって、
該生物学的製剤の投与前の関節リウマチ患者における少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータを得る工程
を含み、該生物学的製剤が、抗TNF-α剤であり、該治療効果が、該患者の寛解であり、
該少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、TNFα、0週目ESR、ADAMTS13、CD44、0週目General.VAS、0週目DAS-ESR、TRAIL、キチナーゼ3、BMP2、BAFF、MCP1、TWEAK、0週目RF、IL-1β、オステオポンチン、RANTES、IL-12p70、OSM、GM-CSF、IP10、TNFR2、CD30、IL-13、IL-9、およびsTNFRIからなる群から選択されるパラメータを含み、
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータのうちの少なくとも1つを内在性コントロールとして用いて、かつ前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータのうちの前記内在性コントロールではないパラメータの、前記内在性コントロールに対する比を用いることを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記抗TNF-α剤が、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ、およびセルトリズマブからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗TNF-α剤がインフリキシマブである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも2種の臨床データが、
ESR_0WおよびlogRF0W;
ESR_0w、DAS.ESR.0wおよびlogRF0w;
General.VAS.0W、ESR_0w、DAS.ESR.0w、およびlogRF0w;
General.VAS.0W、ESR_0w、DAS.ESR.0w、MTX.mgおよびlogRF0w;ならびに
sex、General.VAS.0W、ESR_0w、DAS.ESR.0w、CDAI.0w、BioStartAge、MTX.mgおよびlogRF0w
からなる群から選択されるパラメータの組合せを含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、関節リウマチ患者への生物学的製剤による治療効果を予測判定する方法に関する。より具体的には、本開示は、抗TNF-α剤を含む生物学的製剤による関節リウマチの治療効果を予測判定する方法に関する。より詳細には、本開示は、関節リウマチ患者に生物学的製剤を投与する前に、症状の改善度、寛解の可能性等の治療効果を予測判定する方法に関する。さらに、本開示は、関節リウマチ患者への生物学的製剤による治療効果を予測判定するための診断剤に関する。より特定すると、本開示は、抗TNF-α剤を含む生物学的製剤による治療を事前に判定し有効な治療薬を患者に提供するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチは、関節滑膜を病変の中心とする全身性の炎症性疾患であり、その患者数は日本で約70万人といわれている。関節リウマチの治療には、炎症性サイトカインを標的にする多くの生物学的製剤が開発されており、例えば、近年では、TNF-αの作用を阻害する抗TNF-α剤が臨床的に実用化されている。
【0003】
一例として、エタネルセプトは、ヒトIgG1のFc領域とヒト腫瘍壊死因子II型受容体の細胞外ドメインのサブユニット2量体とからなる完全ヒト型可溶性TNF/LTαレセプター製剤であり、TNFα/βの両方に結合し、TNF受容体へのシグナル伝達を阻害することにより、関節リウマチを鎮静化させる薬剤である。アダリムマブおよびインフリキシマブは、ヒト型およびキメラ型抗TNF-α抗体であり、過剰に産生されたTNF-αに特異的に結合し、TNF-αのTNF-α受容体への結合を阻害することによって、関節リウマチを鎮静化させる薬剤である。このようにTNF-αシグナルを標的とする製剤は、その標的が多種類存在するが一旦標的に結合した後の作用機序は同様であることから、その薬剤の種類にかかわらず阻害機構が同様であり、そのため、一般に抗TNF-α剤と総称されている。例えば、エタネルセプト、アダリムマブ、インフリキシマブ、ゴリムマブ、およびセルトリズマブ等は、抗TNF-α剤に分類される。
【0004】
このような生物学的製剤は、関節リウマチの治療において一定の有効性が確認されており、その種類も増加しつつあり、普及が進んでいる。他方、薬価が高い、治療効果判定に時間がかかる等の欠点があることに加えて、無効例も一定の割合で存在しており、さらに感染症、間質性肺炎等の副作用発現も認められることがある。そのため、生物学的製剤を使用可能な症例は限定されている。それゆえ、炎症性サイトカインを標的にした生物学的製剤の有効性を関節リウマチ患者毎に事前に推測できれば、関節リウマチ患者に福音をもたらし、医療経済にも寄与することになる。すなわち、厚生労働省等の社会保障費を担当する政府当局にとっては社会保障費を削減するための合理的な良好なツールとなるものであり、患者にとっても悪化してからその医薬品が効果がなかったことを知るようなことが回避され質の高い治療を受けることができる。また、製薬メーカーにとっても、生物学的製剤の確度または治療効果確立度が高まることによって生物学的製剤をこれまで選択しなかった患者に適用してもらえる可能性が格段に高まることとなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、抗TNF-α剤のような生物学的製剤を関節リウマチ患者に投与する前に、高い正確性をもって、治療効果(症状の改善度や寛解の可能性)を予測判定する方法を提供する。本開示はまた、上記方法を実施するための診断剤、ならびに上記方法を実施することを特徴とする抗TNF-α剤のような生物学的製剤を含む治療剤を提供する。
【0006】
本発明者らは、生物学的製剤を投与した関節リウマチ患者の予後の状態と、生物学的製剤の投与前の当該患者のパラメータ(例えば、血清等の体液サンプル中のサイトカイン、ケモカインおよびそれらの可溶性受容体の濃度などを含む)とを分析し、後ろ向き解析を行って、抗TNF-α剤のような生物学的製剤による関節リウマチの寛解の可能性、症状の改善度および疾患活動性指標を予測し判定することができることを見出した。本発明者らは、この解析の結果、そのような判定のためのマーカーとして、臨床データを含めて、TNFα、0週目ESR、ADAMTS13、CD44、0週目General.VAS、0週目DAS-ESR、TRAIL、キチナーゼ3、BMP2、BAFF、MCP1、TWEAK、0週目RF、IL-1β、オステオポンチン、RANTES、IL-12p70、OSM、GM-CSF、IP10、TNFR2、CD30、IL-13、IL-9、およびsTNFRIのようなパラメータを利用することができることを見出した。本発明者らは、これらの特定のマーカーの値を利用することによって、TNF-α等の炎症性サイトカインを標的にした生物学的製剤を投与する前に、関節リウマチ患者に対する治療効果(例えば、寛解の可能性、症状の改善度および疾患活動性指標)を簡便且つ廉価で如何なる施設でも可能でしかも高い正確性をもって、事前に判定(予測判定)することができることを見出した。
【0007】
本開示の実施形態の例が、以下の項目に示される。
(項目1)
生物学的製剤による関節リウマチ患者への治療効果を予測判定するための方法であって、
該生物学的製剤の投与前の関節リウマチ患者における少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータを得る工程、および
該臨床データまたは生体パラメータのうち少なくとも1種をコントロールとして、生体パラメータを分析し、該治療効果を予測判定するための指標とする工程
を含む、方法。
(項目2)
前記生物学的製剤は、抗TNF-α剤を含む、前記項目に記載の方法。
(項目3)
前記治療効果が、前記患者の寛解である、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目4)
生物学的製剤による関節リウマチ患者への治療効果を予測判定するための方法であって、
該生物学的製剤の投与前の関節リウマチ患者における少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータを得る工程
を含み、該生物学的製剤が、抗TNF-α剤であり、該治療効果が、該患者の寛解であり、
該少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、TNFα、0週目ESR、ADAMTS13、CD44、0週目General.VAS、0週目DAS-ESR、TRAIL、キチナーゼ3、BMP2、BAFF、MCP1、TWEAK、0週目RF、IL-1β、オステオポンチン、RANTES、IL-12p70、OSM、GM-CSF、IP10、TNFR2、CD30、IL-13、IL-9、およびsTNFRIからなる群から選択されるパラメータを含む、方法。
(項目4A)
前記項目のいずれか1つまたは複数に記載の特徴をさらに備える、前記項目に記載の方法。
(項目5)
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータのうちの少なくとも1つを内在性コントロールとして用いることを特徴とする、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータのうちの前記内在性コントロールではないパラメータの、前記内在性コントロールに対する比を用いることを特徴とする、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記抗TNF-α剤が、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ、およびセルトリズマブからなる群から選択される、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記抗TNF-α剤がインフリキシマブである、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、sTNFRI、0週目ESR、IL-12p70、MCP1、TRAIL、TNFα、ADAMTS13、CD44、GM-CSF、BMP2、MMP2、OSM、IL-1β、TWEAK、およびBMP2からなる群から選択されるパラメータを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、以下:
BlogTNF.a、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogCD44、およびRlogTRAIL;
BlogChitinase.3、BlogBAFF、BlogMCP.1、BlogRANTES、BlogTWEAK、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
BlogIL.1b、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogBMP.2およびRlogCD44;
BlogOsteopontin、BlogMCP.1およびBlogRANTES;
DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
MlogsTNFRI、BlogIL.12p70、BlogMCP.1、DAS.ESR.0wおよびESR_0w;
RlogTRAIL、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0WおよびlogRF0w;
BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44、RlogOSMおよびRlogTRAIL;
RlogADAMTS13、BlogGM.CSF、BlogIL.12p70、BlogMCP.1、BlogTNF.a、DAS.ESR.0wおよびESR_0w;
BlogGM.CSF、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogCD44およびRlogOSM;
BlogTNF.R2、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
BlogCD30、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogCD44およびlogRF0w;
BlogIL.13、BlogIL.12p70、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、MTX.mg
、RlogADAMTS13、RlogBMP.2およびRlogCD44;および
BlogIL.9、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0wおよびRlogADAMTS13
からなる群から選択されるパラメータの組合せを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、以下:
内在性コントロールとしてのBlogTNF.a、ならびにDAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogCD44、およびRlogTRAIL;
内在性コントロールとしてのBlogChitinase.3、ならびにBlogBAFF、BlogMCP.1、BlogRANTES、BlogTWEAK、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
内在性コントロールとしてのBlogIL.1b、ならびにDAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogBMP.2およびRlogCD44;
内在性コントロールとしてのBlogOsteopontin、ならびにBlogMCP.1およびBlogRANTES;
内在性コントロールとしてのDAS.ESR.0w、ならびにESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
内在性コントロールとしてのMlogsTNFRI、ならびにBlogIL.12p70、BlogMCP.1、DAS.ESR.0wおよびESR_0w;
内在性コントロールとしてのRlogTRAIL、ならびにBlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0WおよびlogRF0w;
内在性コントロールとしてのBlogMCP.1、ならびにDAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44、RlogOSMおよびRlogTRAIL;
内在性コントロールとしてのRlogADAMTS13、ならびに、BlogGM.CSF、BlogIL.12p70、BlogMCP.1、BlogTNF.a、DAS.ESR.0wおよびESR_0w;
内在性コントロールとしてのBlogGM.CSF、ならびに、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogCD44およびRlogOSM;
内在性コントロールとしてのBlogTNF.R2、ならびにBlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
内在性コントロールとしてのBlogCD30、ならびにBlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogCD44およびlogRF0w;
内在性コントロールとしてのBlogIL.13、ならびにBlogIL.12p70、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、MTX.mg、RlogADAMTS13、RlogBMP.2およびRlogCD44;および
内在性コントロールとしてのBlogIL.9、ならびにBlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0wおよびRlogADAMTS13
からなる群から選択されるパラメータの組合せを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、以下:
MlogsTNFRI、BlogIL.12p70、BlogMCP.1およびESR_0w;
RlogTRAIL、BlogMCP.1およびESR_0w;
BlogTNF.a、ESR_0wおよびRlogADAMTS13;
RlogCD44、BlogMCP.1およびESR_0w;
BlogGM.CSF、ESR_0wおよびRlogADAMTS13;
RlogADAMTS13、BlogIL.12p70、BlogMCP.1およびESR_0w;
RlogBMP.2、BlogMCP.1およびESR_0w;
BlogMCP.1、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogCD44およびRlogOSM;および
BlogIL.1b、BlogTWEAK、ESR_0wおよびRlogADAMTS13;
からなる群から選択されるパラメータの組合せを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、以下:
内在性コントロールとしてのMlogsTNFRI、ならびに、BlogIL.12p70、BlogMCP.1およびESR_0w;
内在性コントロールとしてのRlogTRAIL、ならびに、BlogMCP.1およびESR_0w;
内在性コントロールとしてのBlogTNF.a、ならびにESR_0wおよびRlogADAMTS13;
内在性コントロールとしてのRlogCD44、ならびに、BlogMCP.1およびESR_0w;
内在性コントロールとしてのBlogGM.CSF、ならびに、ESR_0wおよびRlogADAMTS13;
内在性コントロールとしてのRlogADAMTS13、ならびに、BlogIL.12p70、BlogMCP.1およびESR_0w;
内在性コントロールとしてのRlogBMP.2、ならびにBlogMCP.1およびESR_0w;
内在性コントロールとしてのBlogMCP.1、ならびにESR_0w、RlogADAMTS13、RlogCD44およびRlogOSM;および
内在性コントロールとしてのBlogIL.1b、ならびに、BlogTWEAK、ESR_0wおよびRlogADAMTS13;
からなる群から選択されるパラメータの組合せを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目14)
少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータを、生物学的製剤による関節リウマチ患者への治療効果の予測判定の指標とする方法であって、該少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、TNFα、0週目ESR、ADAMTS13、CD44、0週目General.VAS、0週目DAS-ESR、TRAIL、キチナーゼ3、BMP2、BAFF、MCP1、TWEAK、0週目RF、IL-1β、オステオポンチン、RANTES、IL-12p70、OSM、GM-CSF、IP10、TNFR2、CD30、IL-13、IL-9、およびsTNFRIからなる群から選択されるパラメータを含む、方法。
(項目14-1)
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータのうちの少なくとも1つを内在性コントロールとして用いることを特徴とする、前記項目に記載の方法。
(項目14-2)
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータのうちの前記内在性コントロールではないパラメータの、前記内在性コントロールに対する比を用いることを特徴とする、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目14-3)
前記抗TNF-α剤が、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ、およびセルトリズマブからなる群から選択される、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目14-4)
前記抗TNF-α剤がインフリキシマブである、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目14-5)
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、sTNFRI、0週目ESR、IL-12p70、MCP1、TRAIL、TNFα、ADAMTS13、CD44、GM-CSF、BMP2、MMP2、OSM、IL-1β、TWEAK、およびBMP2からなる群から選択されるパラメータを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目14-6)
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、以下:
BlogTNF.a、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogCD44、およびRlogTRAIL;
BlogChitinase.3、BlogBAFF、BlogMCP.1、BlogRANTES、BlogTWEAK、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
BlogIL.1b、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogBMP.2およびRlogCD44;
BlogOsteopontin、BlogMCP.1およびBlogRANTES;
DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
MlogsTNFRI、BlogIL.12p70、BlogMCP.1、DAS.ESR.0wおよびESR_0w;
RlogTRAIL、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0WおよびlogRF0w;
BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44、RlogOSMおよびRlogTRAIL;
RlogADAMTS13、BlogGM.CSF、BlogIL.12p70、BlogMCP.1、BlogTNF.a、DAS.ESR.0wおよびESR_0w;
BlogGM.CSF、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogCD44およびRlogOSM;
BlogTNF.R2、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
BlogCD30、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogCD44およびlogRF0w;
BlogIL.13、BlogIL.12p70、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、MTX.mg、RlogADAMTS13、RlogBMP.2およびRlogCD44;および
BlogIL.9、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0wおよびRlogADAMTS13
からなる群から選択されるパラメータの組合せを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目14-7)
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、以下:
内在性コントロールとしてのBlogTNF.a、ならびにDAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogCD44、およびRlogTRAIL;
内在性コントロールとしてのBlogChitinase.3、ならびにBlogBAFF、BlogMCP.1、BlogRANTES、BlogTWEAK、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
内在性コントロールとしてのBlogIL.1b、ならびにDAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogBMP.2およびRlogCD44;
内在性コントロールとしてのBlogOsteopontin、ならびにBlogMCP.1およびBlogRANTES;
内在性コントロールとしてのDAS.ESR.0w、ならびにESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
内在性コントロールとしてのMlogsTNFRI、ならびにBlogIL.12p70、BlogMCP.1、DAS.ESR.0wおよびESR_0w;
内在性コントロールとしてのRlogTRAIL、ならびにBlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0WおよびlogRF0w;
内在性コントロールとしてのBlogMCP.1、ならびにDAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44、RlogOSMおよびRlogTRAIL;
内在性コントロールとしてのRlogADAMTS13、ならびに、BlogGM.CSF、BlogIL.12p70、BlogMCP.1、BlogTNF.a、DAS.ESR.0wおよびESR_0w;
内在性コントロールとしてのBlogGM.CSF、ならびに、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogCD44およびRlogOSM;
内在性コントロールとしてのBlogTNF.R2、ならびにBlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
内在性コントロールとしてのBlogCD30、ならびにBlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogCD44およびlogRF0w;
内在性コントロールとしてのBlogIL.13、ならびにBlogIL.12p70、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、MTX.mg、RlogADAMTS13、RlogBMP.2およびRlogCD44;および
内在性コントロールとしてのBlogIL.9、ならびにBlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0wおよびRlogADAMTS13
からなる群から選択されるパラメータの組合せを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目14-8)
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、以下:
MlogsTNFRI、BlogIL.12p70、BlogMCP.1およびESR_0w;
RlogTRAIL、BlogMCP.1およびESR_0w;
BlogTNF.a、ESR_0wおよびRlogADAMTS13;
RlogCD44、BlogMCP.1およびESR_0w;
BlogGM.CSF、ESR_0wおよびRlogADAMTS13;
RlogADAMTS13、BlogIL.12p70、BlogMCP.1およびESR_0w;
RlogBMP.2、BlogMCP.1およびESR_0w;
BlogMCP.1、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogCD44およびRlogOSM;および
BlogIL.1b、BlogTWEAK、ESR_0wおよびRlogADAMTS13;
からなる群から選択されるパラメータの組合せを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目14-9)
前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、以下:
内在性コントロールとしてのMlogsTNFRI、ならびに、BlogIL.12p70、BlogMCP.1およびESR_0w;
内在性コントロールとしてのRlogTRAIL、ならびに、BlogMCP.1およびESR_0w;
内在性コントロールとしてのBlogTNF.a、ならびにESR_0wおよびRlogADAMTS13;
内在性コントロールとしてのRlogCD44、ならびに、BlogMCP.1およびESR_0w;
内在性コントロールとしてのBlogGM.CSF、ならびに、ESR_0wおよびRlogADAMTS13;
内在性コントロールとしてのRlogADAMTS13、ならびに、BlogIL.12p70、BlogMCP.1およびESR_0w;
内在性コントロールとしてのRlogBMP.2、ならびにBlogMCP.1およびESR_0w;
内在性コントロールとしてのBlogMCP.1、ならびにESR_0w、RlogADAMTS13、RlogCD44およびRlogOSM;および
内在性コントロールとしてのBlogIL.1b、ならびに、BlogTWEAK、ESR_0wおよびRlogADAMTS13;
からなる群から選択されるパラメータの組合せを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目15)
関節リウマチ患者を治療する方法であって、
(i)生物学的製剤による関節リウマチ患者への治療効果を予測判定する工程であって、
該生物学的製剤の投与前の関節リウマチ患者における少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータを得る工程
を含み、該生物学的製剤が、抗TNF-α剤であり、該治療効果が、該患者の寛解であり、
該少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、TNFα、0週目ESR、ADAMTS13、CD44、0週目General.VAS、0週目DAS-ESR、TRAIL、キチナーゼ3、BMP2、BAFF、MCP1、TWEAK、0週目RF、IL-1β、オステオポンチン、RANTES、IL-12p70、OSM、GM-CSF、IP10、TNFR2、CD30、IL-13、IL-9、およびsTNFRIからなる群から選択されるパラメータを含む、工程と;
(ii)該関節リウマチ患者が該生物学的製剤によって寛解を達成すると判定された場合に、該生物学的製剤を該関節リウマチ患者に投与する工程と
を含む、方法。
(項目15A)
前記項目のいずれか1つまたは複数に記載の特徴をさらに備える、前記項目に記載の方法。
(項目15-1)
前記生物学的製剤による関節リウマチ患者への治療効果を予測判定する工程が、前記少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータを、前記生物学的製剤の治療効果と臨床データまたは生体パラメータの測定値との回帰式に当てはめる工程をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目15-2)
前記回帰式により前記関節リウマチ患者が前記生物学的製剤によって寛解を達成する確率を算出し、該確率が所定の基準以上の場合に、該関節リウマチ患者が該生物学的製剤によって寛解を達成すると判定する工程をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目15-3)
前記回帰式により前記関節リウマチ患者が前記生物学的製剤によって寛解を達成する確率を算出し、該確率が所定の基準以上の場合に、該関節リウマチ患者が該生物学的製剤によって寛解を達成すると判定した場合に、該関節リウマチ患者に該生物学的製剤の有効量を投与する工程をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法または関節リウマチ患者を治療または予防するための方法。
(項目16)
生物学的製剤による関節リウマチ患者への治療効果を予測判定するためのインビトロの方法であって、
該生物学的製剤の投与前の関節リウマチ患者における少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータを得る工程
を含み、該生物学的製剤が、抗TNF-α剤であり、該治療効果が、該患者の寛解であり、
該少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、TNFα、0週目ESR、ADAMTS13、CD44、0週目General.VAS、0週目DAS-ESR、TRAIL、キチナーゼ3、BMP2、BAFF、MCP1、TWEAK、0週目RF、IL-1β、オステオポンチン、RANTES、IL-12p70、OSM、GM-CSF、IP10、TNFR2、CD30、IL-13、IL-9、およびsTNFRIからなる群から選択されるパラメータを含む、方法。
(項目16A)
前記項目のいずれか1つまたは複数に記載の特徴をさらに備える、前記項目に記載の方法。
(項目17)
少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータを、生物学的製剤による関節リウマチ患者への治療効果の予測判定の指標とするインビトロの方法であって、該少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、TNFα、0週目ESR、ADAMTS13、CD44、0週目General.VAS、0週目DAS-ESR、TRAIL、キチナーゼ3、BMP2、BAFF、MCP1、TWEAK、0週目RF、IL-1β、オステオポンチン、RANTES、IL-12p70、OSM、GM-CSF、IP10、TNFR2、CD30、IL-13、IL-9、およびsTNFRIからなる群から選択されるパラメータを含む、方法。
(項目17A)
前記項目のいずれか1つまたは複数に記載の特徴をさらに備える、前記項目に記載の方法。
(項目18)
関節リウマチ患者における生物学的製剤の治療効果を予測判定するための指標を特定する方法であって、
(A)n個の生体マーカー候補のパラメータに対して総当たりで多変量解析を行うステップであって、ここで、該解析において、n個のパラメータの少なくとも1つをコントロールとして相対値を総当たりで多変量解析することを含む、ステップと、
(B)該解析に基づいて、予測能力の高いパラメータの組み合わせを選択するステップ
とを含む、方法。
(項目18A)
前記項目のいずれか1つまたは複数に記載の特徴をさらに備える、前記項目に記載の方法。
(項目19)
前記生物学的製剤が、抗TNF-α剤である、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目20)
生物学的製剤による関節リウマチ患者への治療効果を予測判定するための方法であって、
該生物学的製剤の投与前の関節リウマチ患者における少なくとも2種の臨床データを得る工程、および
該臨床データを分析し、該治療効果を予測判定するための指標とする工程
を含む、方法。
(項目20A)
前記項目のいずれか1つまたは複数に記載の特徴をさらに備える、前記項目に記載の方法。
(項目21)
前記生物学的製剤は、抗TNF-α剤を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目22)
前記治療効果が、前記患者の寛解である、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目23)
前記抗TNF-α剤が、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ、およびセルトリズマブからなる群から選択される、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目24)
前記抗TNF-α剤がインフリキシマブである、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目25)
前記少なくとも2種の臨床データが、DAS-CRP、DAS-ESR、関節リウマチの機能障害度分類、性別、圧痛関節数(TJC)、膨張関節数(SJC)、医師VAS、患者VAS、CCP、CRP(C反応性蛋白値)、ESR(赤血球沈降速度)、SDAI、CDAI、Bio開始時年齢、年齢、罹病期間(年)、抗体療法とメトトレキサート(MTX)併用の有無、MTX用量、プレドニゾロン(PSL)併用の有無、RF、MMP-3レベル、MTX併用の有無、DMARDs薬併用の有無およびPSL併用の有無からなる群から選択されるパラメータを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目26)
前記少なくとも2種の臨床データが、DAS-ESR、性別、患者VAS、ESR(赤血球沈降速度)、CDAI、MTX用量、RFおよびBio開始時年齢からなる群から選択されるパラメータを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目27)
前記少なくとも2種の臨床データが、
ESR_0WおよびlogRF0W;
ESR_0w、DAS.ESR.0wおよびlogRF0w;
General.VAS.0W、ESR_0w、DAS.ESR.0w、およびlogRF0w;
General.VAS.0W、ESR_0w、DAS.ESR.0w、MTX.mgおよびlogRF0w;ならびに
sex、General.VAS.0W、ESR_0w、DAS.ESR.0w、CDAI.0w、BioStartAge、MTX.mgおよびlogRF0wからなる群から選択されるパラメータの組合せを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目A1)
生物学的製剤による関節リウマチ患者への治療効果を予測判定するための方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は
該生物学的製剤の投与前の関節リウマチ患者における少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータを得る工程、および
該臨床データまたは生体パラメータのうち少なくとも1種をコントロールとして、生体パラメータを分析し、該治療効果を予測判定する工程
を含む、プログラム。
(項目A1A)
前記項目のいずれか1つまたは複数に記載の特徴をさらに備える、前記項目に記載のプログラム。
(項目A2)
生物学的製剤による関節リウマチ患者への治療効果を予測判定するための方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は、
該生物学的製剤の投与前の関節リウマチ患者における少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータを得る工程
を含み、該生物学的製剤が、抗TNF-α剤であり、該治療効果が、該患者の寛解であり、
該少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、TNFα、0週目ESR、ADAMTS13、CD44、0週目General.VAS、0週目DAS-ESR、TRAIL、キチナーゼ3、BMP2、BAFF、MCP1、TWEAK、0週目RF、IL-1β、オステオポンチン、RANTES、IL-12p70、OSM、GM-CSF、IP10、TNFR2、CD30、IL-13、IL-9、およびsTNFRIからなる群から選択されるパラメータを含む、プログラム。
(項目A2A)
前記項目のいずれか1つまたは複数に記載の特徴をさらに備える、前記項目に記載のプログラム。
(項目A3)
関節リウマチ患者における生物学的製剤の治療効果を予測判定するための指標を特定する方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は、
(A)n個の生体マーカー候補のパラメータに対して総当たりで多変量解析を行うステップであって、ここで、該解析において、n個のパラメータの少なくとも1つをコントロールとして相対値を総当たりで多変量解析することを含む、ステップと、
(B)該解析に基づいて、予測能力の高いパラメータの組み合わせを選択するステップ
とを含む、プログラム。
(項目A3A)
前記項目のいずれか1つまたは複数に記載の特徴をさらに備える、前記項目に記載のプログラム。
(項目A4)
前記項目のいずれかに記載のプログラムを格納した記録媒体。
(項目A5)
前記項目のいずれかに記載の方法を実行するためのシステムであって、前記項目のいずれかに記載のプログラムまたは記録媒体と、プログラムによって指示される命令を実行するための計算装置とを備える、システム。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、TNF-α等の炎症性サイトカインを標的にした生物学的製剤(本明細書において、特に断らない限り「生物学的製剤」という)を投与する前に、関節リウマチ患者に対する治療効果を正確に推測することができ、当該生物学的製剤によって関節リウマチが完全寛解状態になるか否かを高い精度で判定することができる。さらに、本開示によれば、当該生物学的製剤の投与前に、関節リウマチ患者に対する症状の改善度を正確に判定することもでき、当該生物学的製剤による治療効果を見越した適切な治療方針を立てることが可能になる。また、本開示によれば、検討治療対象薬を増加させることにより、治療前の関節リウマチ患者にとって、どの生物学的製剤の投与が最も効果的であるかを予測することもできるので、患者毎に最適な生物学的製剤を選択して、患者毎に最も有効な治療方針を立てることも可能になる。
【0009】
このように、本開示を利用することにより、生物学的製剤の投与が有効な関節リウマチ患者を識別することができるので、患者にとっては治療費の抑制、治療効果の予測による安心感の付与等のメリットがあり、医師にとっても生物学的製剤の有効性の正確な予測に基づく適切な治療方針の確立が可能になる。
【0010】
本開示を利用することにより、無効剤患者を極力減少させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)で言及される用語は、特に言及しない限りその複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。本明細書において使用される用語はまた、特に言及しない限り当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。従って、通常用いられる意味と異なって定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書の説明と当該分野の説明との相違がある場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0012】
1.判定方法
本開示は、関節リウマチ患者への炎症性サイトカインを標的にした生物学的製剤による治療の有効性(例えば、寛解の可能性、治療後の症状の改善度、疾患活動性指標等)を判定する方法を提供する。
【0013】
1つの実施形態では、本開示の方法は、関節リウマチ患者のパラメータを得ることで生物学的製剤による該患者の寛解を事前に判定する方法を含む。別の実施形態では、本開示の方法は、関節リウマチ患者のパラメータを得ることで該患者への生物学的製剤による治療後の症状の改善度を事前に判定する方法を含む。他の実施形態では、本開示は、関節リウマチ患者のパラメータを得ることで該患者への特定生物学的製剤による治療後の疾患活動性指標を事前に判定する方法を含む。
【0014】
本明細書において「身体サンプル」とは、患者の身体から採取される任意のサンプルをいい、例えば、血清、血液、尿、唾液等を含むがこれらに限定されない。本開示では、好ましくは血清が使用される。従って、本開示の好ましい実施形態では、生物学的製剤の投与前の関節リウマチ患者から採取された血清における測定から得られたパラメータを用いて、本開示の方法が実施される。
【0015】
本開示において、生物学的製剤の治療の有効性を判定するために使用されるパラメータとしては、TNFα、0週目ESR、ADAMTS13、CD44、0週目General.VAS、0週目DAS-ESR、TRAIL、キチナーゼ3、BMP2、BAFF、MCP1、TWEAK、0週目RF、IL-1β、オステオポンチン、RANTES、IL-12p70、OSM、GM-CSF、IP10、TNFR2、CD30、IL-13、IL-9、およびsTNFRIよりなる群から選択される1種または2種以上を挙げることができる。必要な場合、パラメータとして患者の治療前の状態の指標(例えば、治療前のDAS28スコア、CDAI、SDAI等)を使用してもよい。したがって、本開示におけるパラメータには、患者の治療前の状態の指標も包含される。本開示において、少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータを、生物学的製剤による関節リウマチ患者への治療効果の予測判定の指標とする方法であって、少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータとして、本明細書において具体的に言及される任意のパラメータ(またはその組み合わせ)が含まれる方法が提供される。本開示において、臨床データのみ、または生体パラメータのみを用いることも可能である。
【0016】
本開示の判定方法の一実施形態では、本開示のマーカーの身体サンプル中の濃度を含むパラメータを用いて判定が行われることから、本開示の方法は、マーカーの身体サンプル中(例えば、血清中)の濃度を測定する工程を包含し得る。以下、本開示の判定方法について詳述する。
【0017】
本開示の判定方法では、少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータのうち少なくとも1種をコントロールとして、生体パラメータを分析し、治療効果を予測判定するための指標とすることができる。1つの実施形態では、方法は、生物学的製剤の投与前の関節リウマチ患者における少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータを得る工程を含み得る。生物学的製剤は、抗TNF-α剤を含み得る。また、治療効果は、患者の寛解であり得る。
【0018】
(判定対象となる生物学的製剤)
本開示の判定方法は、関節リウマチ患者に対して、炎症性サイトカインを標的にした生物学的製剤の治療効果を予測判定する方法である。本開示の判定方法では、炎症性サイトカインを標的にした生物学的製剤としては、関節リウマチの治療に使用される生物学的製剤であることに制限されず、使用する生物学的製剤の種類に応じて、その治療効果を予測判定することができる。炎症性サイトカインを標的にした生物学的製剤としては、例えば、抗TNF-α剤が挙げられる。
【0019】
本明細書で使用される「抗TNF-α剤」とは、TNF-αシグナル伝達経路を抑制することによって、関節リウマチを治療することができる医薬をいう。抗TNF-α剤としては、具体的にはヒトIgG1のFc領域とヒト腫瘍壊死因子II型受容体の細胞外ドメインのサブユニット2量体とからなるヒト型可溶性TNF/LTαレセプター、抗TNF-α抗体等が挙げられる。ヒト型可溶性TNF/LTαレセプターの具体例としてはエタネルセプトが挙げられ、抗TNF-α抗体の具体例としては、アダリムマブ、インフリキシマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ等が挙げられる。インフリキシマブは、本明細書において、IFXと称される場合がある。なお、本明細書において、「インフリキシマブ」等と記載する場合、その生物学的製剤のバイオシミラーも含む。
【0020】
抗TNF-α剤は、その種類(例えば、ヒトIgG1のFc領域とヒト腫瘍壊死因子II型受容体の細胞外ドメインのサブユニット2量体からなるヒト型可溶性TNF/LTαレセプター、抗TNF-α抗体)に拘わらず、いずれもTNF-αとTNF-α受容体との結合が何らかの様式で抑制されるという意味で同様の作用機構で治療効果を発揮するものである。TNF-αシグナル伝達が抑制された後の反応は、その抑制形式に拘らず同様であると理解されるため、関節リウマチの治療過程に関する生体内の反応も、抗TNF-α剤の種類に拘らず同様である。従って、抗TNF-α剤に属するある治療剤についての生体内の反応に関する知見は、同一のカテゴリーに属する他の治療剤(例えば、ある治療剤がヒト型可溶性TNF/LTαレセプターであれば、他の種類のヒト型可溶性TNF/LTαレセプターまたは抗TNF-α抗体、断片、誘導体等)にも適用され得ることが理解される。
【0021】
(判定対象となる患者)
本開示の判定方法では、生物学的製剤を投与する前の関節リウマチ患者において、前記生物学的製剤の投与が有効であるか否かを判定する。
【0022】
本開示の判定方法において、対象となる関節リウマチ患者については、前記生物学的製剤の投与前である限り、特に制限されることなく、メトトレキサート等のDMARDsの投与薬を受けているか否かの別や、過去の抗サイトカイン療法(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマム、トシリズマブ等の投与)の投与履歴も問わない。必要に応じて、本開示の判定方法では、過去の薬剤の投与履歴を、予測のためのパラメータとして組み入れ、生物学的製剤による治療効果を予測判定することができる。
【0023】
(マーカー)
本開示の判定方法では、関節リウマチ患者のDAS-CRP、DAS-ESR、関節リウマチの機能障害度分類、性別、圧痛関節数(TJC)、膨張関節数(SJC)、医師VAS、患者VAS、環状シトルリン化ペプチド(CCP)、CRP(C反応性蛋白値)、ESR(赤血球沈降速度)、SDAI(Simplified disease activity index)、CDAI(Clinical disease activity index)、Bio開始時年齢(生物学的製剤の開示時年齢)、年齢、罹病期間(年)、抗体療法とメトトレキサート(MTX)併用の有無、MTX用量、プレドニゾロン(PSL)併用の有無、RF(Rheumatoid Factor)、MMP-3レベル、MTX併用の有無、DMARDs薬併用の有無、PSL併用の有無、ならびにAPRIL、BAFF、CD163、CD30、キチナーゼ-3、エオタキシン、塩基性FGF、G-CSF、GM-CSF、IFN-α2、IFN-βb、IFN-γ、IL-1β、IL-1Ra、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12p70、IL-13、IL-17、IL-19、IL-20、IL-22、IL-28A、IL-35、IP-10、MCP-1、MIP-1a、MIP-1b、MMP-1、MMP-2、MMP-3、オステオカルシン、オステオポンチン、PDGF-BB、ペントラキシン-3、RANTES、TNF-α、TSLP、TWEAK、VEGF、IL-6Ra、sIL-6R、TNF-R1、TNF-R2、VEGFR1、VEGFR2、sgp130、ADAMTS13、アンジオポエチン2、BMP-2、CD40リガンド、CX3CL1フラクタルカイン、HGF、IFNγR1、L-セレクチン、LIF、TRAIL、VEGFR2/KDR(ここで、スラッシュ「/」は、同一の物質についての別名を示す)アグリカン、B7H1/PDL-1、CD40、CD44、E-セレクチン、ICAM-1、IL-18、レプチン、OSMおよびVCAM-1からなる群から選択される1種または複数種のサイトカインレベルからなる群から選択される1種または2種以上のパラメータ(本明細書では「判定パラメータ」ともいう)を使用し得る。
【0024】
本開示において、「臨床データ」とは、患者から臨床的に得られるパラメータであって、血中サイトカイン濃度を除くパラメータを指す。臨床データとしては、例えば、関節リウマチ患者のDAS-CRP、DAS-ESR、関節リウマチの機能障害度分類、性別、圧痛関節数(TJC)、膨張関節数(SJC)、医師VAS、患者VAS、CCP、CRP(C反応性蛋白値)、ESR(赤血球沈降速度)、SDAI(Simplified disease activity index)、CDAI(Clinical disease activity index)、Bio開始時年齢、年齢、罹病期間(年)、抗体療法とメトトレキサート(MTX)併用の有無、MTX用量、プレドニゾロン(PSL)併用の有無、RF(Rheumatoid Factor)、MMP-3レベル、MTX併用の有無、DMARDs薬併用の有無、PSL併用の有無が挙げられる。臨床データは、連続的ではなく、離散的な数値を採り得る。例えば、併用の有無は、「有」を「1」、「無」を「0」として計算され得る。臨床データのみでの診断は確度が不十分となると考えられていたが、本開示において、臨床データの組み合わせによって生物学的製剤による治療効果を予測判定し得ることが示された。特に、本開示において同定される特定の臨床パラメータの組み合わせや、それらを用いた回帰式は、生物学的製剤による治療効果の予測判定に有用であり得る。
【0025】
臨床データとして、例えば、DAS-ESR、性別、患者VAS、ESR(赤血球沈降速度)、CDAI、MTX用量、RFおよびBio開始時年齢からなる群から選択されるパラメータを含む少なくとも2種の臨床データを用い得る。
【0026】
本開示の判定方法において、前述するパラメータの中の1種を単独で判定パラメータとしてもよいが、より高い精度で生物学的製剤による治療効果を予測判定するという観点から、これらの中の2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。さらに、本明細書で示された判定精度の高いパラメータのセットを使用することがより好ましい。前記パラメータは、予測判定する治療効果の内容等に応じて、適宜選択して使用され得る。以下、判定パラメータとして好ましい例を具体的に示す。
【0027】
例えば、判定パラメータの好ましい組み合わせとして、以下:
BlogTNF.a、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogCD44、およびRlogTRAIL;
BlogChitinase.3、BlogBAFF、BlogMCP.1、BlogRANTES、BlogTWEAK、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
BlogIL.1b、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogBMP.2およびRlogCD44;
BlogOsteopontin、BlogMCP.1およびBlogRANTES;
DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
MlogsTNFRI、BlogIL.12p70、BlogMCP.1、DAS.ESR.0wおよびESR_0w;
RlogTRAIL、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0WおよびlogRF0w;
BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44、RlogOSMおよびRlogTRAIL;
RlogADAMTS13、、BlogGM.CSF、BlogIL.12p70、BlogMCP.1、BlogTNF.a、DAS.ESR.0wおよびESR_0w;
BlogGM.CSF、、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogCD44およびRlogOSM;
BlogTNF.R2、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
BlogCD30、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogCD44およびlogRF0w;
BlogIL.13、BlogIL.12p70、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、MTX.mg、RlogADAMTS13、RlogBMP.2およびRlogCD44;および
BlogIL.9、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0wおよびRlogADAMTS13
からなる群から選択されるパラメータの組合せを含むものが挙げられる。
【0028】
例えば、判定パラメータの好ましい組み合わせとして、以下:
内在性コントロールとしてのBlogTNF.a、ならびにDAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogCD44、およびRlogTRAIL;
内在性コントロールとしてのBlogChitinase.3、ならびにBlogBAFF、BlogMCP.1、BlogRANTES、BlogTWEAK、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
内在性コントロールとしてのBlogIL.1b、ならびにDAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogBMP.2およびRlogCD44;
内在性コントロールとしてのBlogOsteopontin、ならびにBlogMCP.1およびBlogRANTES;
内在性コントロールとしてのDAS.ESR.0w、ならびにESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
内在性コントロールとしてのMlogsTNFRI、ならびにBlogIL.12p70、BlogMCP.1、DAS.ESR.0wおよびESR_0w;
内在性コントロールとしてのRlogTRAIL、ならびにBlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0WおよびlogRF0w;
内在性コントロールとしてのBlogMCP.1、ならびにDAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44、RlogOSMおよびRlogTRAIL;
内在性コントロールとしてのRlogADAMTS13、ならびに、BlogGM.CSF、BlogIL.12p70、BlogMCP.1、BlogTNF.a、DAS.ESR.0wおよびESR_0w;
内在性コントロールとしてのBlogGM.CSF、ならびに、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、RlogADAMTS13、RlogCD44およびRlogOSM;
内在性コントロールとしてのBlogTNF.R2、ならびにBlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、RlogCD44およびlogRF0w;
内在性コントロールとしてのBlogCD30、ならびにBlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogCD44およびlogRF0w;
内在性コントロールとしてのBlogIL.13、ならびにBlogIL.12p70、BlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0w、General.VAS.0W、MTX.mg、RlogADAMTS13、RlogBMP.2およびRlogCD44;
内在性コントロールとしてのBlogIL.9、ならびにBlogMCP.1、DAS.ESR.0w、ESR_0wおよびRlogADAMTS13
からなる群から選択されるパラメータの組合せを含むものが挙げられる。
【0029】
例えば、判定パラメータの好ましい組み合わせの別の例として、以下:
MlogsTNFRI、BlogIL.12p70、BlogMCP.1およびESR_0w;
RlogTRAIL、BlogMCP.1およびESR_0w;
BlogTNF.a、ESR_0wおよびRlogADAMTS13;
RlogCD44、BlogMCP.1およびESR_0w;
BlogGM.CSF、ESR_0wおよびRlogADAMTS13;
RlogADAMTS13、BlogIL.12p70、BlogMCP.1およびESR_0w;
RlogBMP.2、BlogMCP.1およびESR_0w;
BlogMCP.1、ESR_0w、RlogADAMTS13、RlogCD44およびRlogOSM;および
BlogIL.1b、BlogTWEAK、ESR_0wおよびRlogADAMTS13
からなる群から選択されるパラメータの組合せを含むものが挙げられる。
【0030】
例えば、判定パラメータの好ましい組み合わせの別の例として、以下:
内在性コントロールとしてのMlogsTNFRI、ならびに、BlogIL.12p70、BlogMCP.1およびESR_0w;
内在性コントロールとしてのRlogTRAIL、ならびに、BlogMCP.1およびESR_0w;
内在性コントロールとしてのBlogTNF.a、ならびにESR_0wおよびRlogADAMTS13;
内在性コントロールとしてのRlogCD44、ならびに、BlogMCP.1およびESR_0w;
内在性コントロールとしてのBlogGM.CSF、ならびに、ESR_0wおよびRlogADAMTS13;
内在性コントロールとしてのRlogADAMTS13、ならびに、BlogIL.12p70、BlogMCP.1およびESR_0w;
内在性コントロールとしてのRlogBMP.2、ならびにBlogMCP.1およびESR_0w;
内在性コントロールとしてのBlogMCP.1、ならびにESR_0w、RlogADAMTS13、RlogCD44およびRlogOSM;および
内在性コントロールとしてのBlogIL.1b、ならびに、BlogTWEAK、ESR_0wおよびRlogADAMTS13;
からなる群から選択されるパラメータの組合せを含むものが挙げられる。
【0031】
例えば、臨床データのみの好ましい組み合わせの例としては、
ESR_0WおよびlogRF0W;
ESR_0w、DAS.ESR.0wおよびlogRF0w;
General.VAS.0W、ESR_0w、DAS.ESR.0w、およびlogRF0w;
General.VAS.0W、ESR_0w、DAS.ESR.0w、MTX.mgおよびlogRF0w;および
sex、General.VAS.0W、ESR_0w、DAS.ESR.0w、CDAI.0w、BioStartAge、MTX.mgおよびlogRF0w
からなる群から選択されるパラメータの組合せを含むものが挙げられる。
【0032】
本開示のパラメータの組み合わせにおいて、組み合わせのうちの少なくとも1つを内在性コントロールとして用いることができる。本明細書において、あるパラメータを「内在性コントロールとして用いる」とは、パラメータの組み合わせにおける他のパラメータを、内在性コントロールとして用いるパラメータとの相対値(対数化したものではその差を用いる)にして用いることを指す。相対値の1つの例は、パラメータ同士の比である。内在性コントロールを用いることで、患者間差のほか、生化学アッセイのロットごと、測定における人為的なぶれ等の誤差がキャンセルされ得る。集団ではなく1サンプルで検査するときにはこのような正確性は非常に重要である。ロットばらつきがある場合には、一人ひとり検査する場合にはロットばらつきがわからないため、内在性コントロールを2つ以上入れて変数の値を補正するような方法を取ることも可能である。ロット補正が効果的である場合には、選択された変数が比較的少なくなり、内在性コントロールが1つで十分となり得る。
【0033】
パラメータとして使用され得るサイトカイン、ケモカインおよび可溶性受容体の血清中の各濃度は、ELISAのような抗原抗体反応を利用した測定系によって測定できることは公知であり、これらの測定キットも市販されている。従って、本開示の判定方法において、サイトカイン、ケモカインおよび可溶性受容体は、公知の方法、公知の測定キットにより測定することができる。このような抗原抗体反応を利用した測定系に使用する試薬は、各生物学的製剤の判定用の診断剤として個別にまたはセットで提供することができる。
【0034】
(生物学的製剤による治療効果の予測判定)
前記パラメータに基づいて、抗TNF-α剤等の特定生物学的製剤による治療効果を予測判定することができる。例えば、特定生物学的製剤による治療で完全寛解した患者、非寛解であった患者について、予め前記特定マーカーの測定を行い、回帰分析によって生物学的製剤の治療効果(目的変数)と前記特定マーカーの測定値(説明変数)の回帰式を求めておき、当該回帰式に、判定対象となる関節リウマチ患者の特定マーカーの測定値を当てはめる方法が挙げられる。
【0035】
回帰式の例としては、限定されるものではないが、
●1.2±0.1+(DAS.ESR.0w×(-0.05±0.01)+ESR_0w×(-0.01±0.01)+General.VAS.0W×(-0.002±0.01)+(RlogADAMTS13-BlogTNF.a)×(0.7±0.1)+(RlogCD44- BlogTNF.a)×(0.06±0.01)+(RlogIL.18 -BlogTNF.a)×(0.01±0.01)+(RlogTRAIL-BlogTNF.a)×(0.1±0.1));
●0.7±0.1+(BlogBAFF-BlogChitinase.3)×(0.5±0.1)+(BlogMCP.1- BlogChitinase.3)×(-0.3±0.1)+(BlogRANTES-BlogChitinase.3)×(0.5±0.1)+(BlogTWEAK- BlogChitinase.3)×(0.07±0.1)+DAS.ESR.0w×(-0.05)+ESR_0w×(-0.07±0.1)+General.VAS.0W×(±0.01)+MTX.mg×(±0.01)+(RlogADAMTS13-BlogChitinase.3)×(0.3±0.1)+(RlogBMP.2- BlogChitinase.3)×(0.6±0.1)+(RlogCD44-BlogChitinase.3)×(0.1±0.1)+(RlogTRAIL -BlogChitinase.3)×(±0.01)+logRF0w×(-0.04±0.1);
●1.0±0.1+(CDAI.0w×(±0.01)+DAS.ESR.0w×(-0.06±0.1)+ESR_0w×(-0.01±0.1)+General.VAS.0W×(±0.01)+MTX.mg×(±0.01)+(RlogADAMTS13-BlogIL.1b)×(0.3±0.1)+(RlogBMP.2- BlogIL.1b)×(0.6±0.1)+(RlogCD44 - BlogIL.1b)×(0.1±0.1)+(RlogTRAIL-BlogIL.1b)×(±0.01)+logRF0w×(±0.01));
●0.7±0.1+((BlogMCP.1-BlogOsteopontin)×(-0.2±0.1)+(BlogRANTES- BlogOsteopontin)×(0.2±0.1)+DAS.ESR.0w×(±0.01)+ESR_0w×(-0.01±0.01)+(RlogADAMTS13-BlogOsteopontin)×(0.4±0.1)+(RlogBMP.2- BlogOsteopontin)×(0.3±0.1)+(RlogCD44-BlogOsteopontin)×(0.04±0.1)+logRF0w×(-0.04±0.1));
●0.6±0.1+((BlogChitinase.3-MlogsTNFRI)×(±0.01)+(BlogIL.12p70- MlogsTNFRI)×(-0.5±0.1)+(BlogMCP.1 -MlogsTNFRI)×(-0.2±0.1)+DAS.ESR.0w×(±0.01)+ESR_0w×(±0.01)+General.VAS.0W×(±0.01));
●0.9±0.1+((BlogMCP.1-RlogTRAIL)×(-0.3±0.1)+DAS.ESR.0w×(-0.03±0.1)+ESR_0w×(-0.01±0.1)+General.VAS.0W×(±0.01)+logRF0w×(-0.1±0.1));
●1.0±0.1+(DAS.ESR.0w×(-0.07±0.01)+ESR_0w×(-0.01±0.01)+General.VAS.0W×(±0.01)+(RlogADAMTS13-BlogMCP.1)×(0.3±0.1)+(RlogBMP.2- BlogMCP.1)×(0.02±0.01)+(RlogCD44 -BlogMCP.1)×(0.2±0.1)+(RlogOSM- BlogMCP.1)×(0.1±0.1)+(RlogTRAIL- BlogMCP.1)×(0.2±0.1));
●0.7±0.1+((BlogChitinase.3-RlogADAMTS13)×(±0.01)+(BlogGM.CSF- RlogADAMTS13)×(-0.02±0.1)+(BlogIL.12p70-RlogADAMTS13)×(-0.4±0.1)+(BlogMCP.1 -RlogADAMTS13)×(-0.2±0.1)+(BlogTNF.a-RlogADAMTS13)×(-0.2±0.1)+DAS.ESR.0w×(-0.01±0.01)+ESR_0w×(-0.01±0.01)+General.VAS.0W×(±0.01)+logRF0w×(±0.01));
●1.0±0.1+(DAS.ESR.0w×(-0.07±0.01)+ESR_0w×(-0.01±0.01)+General.VAS.0W×(±0.01)+(RlogADAMTS13-BlogGM.CSF)×(0.6±0.1)+(RlogBMP.2- BlogGM.CSF)×(±0.01)+(RlogCD44 - BlogGM.CSF)×(0.1±0.1)+(RlogIL.18-BlogGM.CSF)×(±0.01)+(RlogOSM- BlogGM.CSF)×(0.04±0.1)+(RlogTRAIL - BlogGM.CSF)×(±0.01));
●0.9±0.1+((BlogMCP.1-BlogTNF.R2)×(-0.3±0.1)+(BlogRANTES- BlogTNF.R2)×(0.03±0.01)+DAS.ESR.0w×(-0.02±0.01)+ESR_0w×(-0.01±0.01)+MTX.mg×(±0.01)+(RlogADAMTS13-BlogTNF.R2)×(0.3±0.1)+(RlogBMP.2- BlogTNF.R2)×(0.1±0.1)+(RlogCD44 - BlogTNF.R2)×(0.2±0.1)+(RlogTRAIL-BlogTNF.R2)×(0.01±0.01)+logRF0w×(-0.05±0.01));
●1.0±0.1+((BlogMCP.1-BlogCD30)×(-0.3±0.1)+DAS.ESR.0w×(-0.05±0.01)+ESR_0w×(-0.01±0.01)+General.VAS.0W×(±0.01)+(RlogADAMTS13-BlogCD30)×(0.4±0.1)+(RlogCD44- BlogCD30)×(0.2±0.1)+(RlogTRAIL - BlogCD30)×(±0.01)+logRF0w×(-0.03±0.01));
●0.8±0.1+((BlogIL.12p70-BlogIL.13)×(-0.3±0.1)+(BlogIL.1b- BlogIL.13)×(±0.01)+(BlogMCP.1 - BlogIL.13)×(-0.3±0.1)+DAS.ESR.0w×(-0.03±0.1)+ESR_0w×(-0.01±0.1)+General.VAS.0W×(±0.01)+MTX.mg×(±0.01)+(RlogADAMTS13-BlogIL.13)×(0.4±0.1)+(RlogBMP.2- BlogIL.13)×(±0.01)+(RlogCD44 - BlogIL.13)×(0.1±0.1)+(RlogTRAIL-BlogIL.13)×(±0.01)+logRF0w×(±0.01));
●1.1±0.1+((BlogMCP.1-BlogIL.9)×(-0.2±0.1)+DAS.ESR.0w×(-0.06±0.01)+ESR_0w×(-0.01±0.01)+General.VAS.0W×(±0.01)+MTX.mg×(±0.01)+(RlogADAMTS13-BlogIL.9)×(0.6±0.1)+(RlogCD44- BlogIL.9)×(0.01±0.1));
●0.3±0.1+((BlogIL.12p70-MlogsTNFRI)×(-0.3±0.1)+(BlogMCP.1- MlogsTNFRI)×(-0.1±0.1)+ESR_0w×(-0.01±0.01));
●0.5±0.1+((BlogMCP.1-RlogTRAIL)×(-0.2±0.1)+ESR_0w×(-0.01±0.01));
●0.5±0.1+(ESR_0w×(-0.01±0.01)+(RlogADAMTS13-BlogTNF.a)×(0.3±0.1)+(RlogCD44- BlogTNF.a)×(±0.1));
●0.3±0.1+((BlogMCP.1-RlogCD44)×(-0.2±0.1)+ESR_0w×(-0.01±0.01));
●0.4±0.1+(ESR_0w×(-0.01±0.01)+(RlogADAMTS13-BlogGM.CSF)×(0.2±0.1)+(RlogCD44- BlogGM.CSF)×(-0.01±0.01));
●0.3±0.1+((BlogIL.12p70-RlogADAMTS13)×(-0.3±0.1)+(BlogMCP.1- RlogADAMTS13)×(-0.1±0.1)+(BlogTNF.a-RlogADAMTS13)×(±0.01)+ESR_0w×(-0.01±0.01));
●0.4±0.1+((BlogChitinase.3-RlogBMP.2)×(±0.01)+(BlogMCP.1 - RlogBMP.2)×(-0.2±0.1)+ESR_0w×(-0.01±0.01));
●0.4±0.1+((BlogMMP.2-BlogMCP.1)×(±0.01)+ESR_0w×(-0.01±0.01)+(RlogADAMTS13 - BlogMCP.1)×(0.1±0.1)+(RlogCD44-BlogMCP.1)×(0.1±0.1)+(RlogOSM- BlogMCP.1)×(0.2±0.1)+(RlogTRAIL - BlogMCP.1)×(±0.01));および
●0.4±0.1+((BlogTWEAK-BlogIL.1b)×(0.1±0.1)+ESR_0w×(-0.01±0.01)+(RlogADAMTS13 - BlogIL.1b)×(0.2±0.1)+(RlogBMP.2-BlogIL.1b)×(±0.01)+(RlogCD44 - BlogIL.1b)×(±0.01))
などを挙げることができる。
【0036】
臨床データの組み合わせを用いた回帰式の例としては、限定されるものではないが、
●0.7±0.1+ESR_0W×(-0.01±0.01)+logRF0W×(-0.04±0.01);
●0.9±0.1+ESR_0w×(-0.01±0.01)+DAS.ESR.0w×(-0.007±0.001)+logRF0w×(-0.1±0.1)
●1.1±0.1+General.VAS.0W×(-7.1±0.1e-05)+ESR_0w×(-1.3±0.1e-02)+DAS.ESR.0w×(-2.6±0.1e-02)+logRF0w×(-1.7±0.1e-01);
●1.4±0.1+General.VAS.0W×(-0.002±0.001)+ESR_0w×(-0.01±0.01)+DAS.ESR.0w×(-0.03±0.01)+MTX.mg×(0.006±0.001)+logRF0w×(-0.3±0.1);ならびに
●1.6±0.1+sex×(2.7±0.16e-01)+General.VAS.0W×(-5.0±1.0e-03)+ESR_0w×(-1.6±0.1e-02)+DAS.ESR.0w×(-2.3±0.1e-02)+CDAI.0w×(-6.8±0.1e-05)+BioStartAge×(-1.0±0.1e-04)+MTX.mg×(3.5±0.1e-02)+logRF0w×(-4.2±0.1e-01)
などを挙げることができる。
【0037】
あるいは、寛解の確率について、予めあるいは経験に基づいて抗TNF-α剤等の生物学的製剤について個々採用するかどうかの基準を定めておき、実際に算出された寛解の確率が所定の基準以上の場合にその特定生物学的製剤を投与すると判定することもできる。具体的には予測した寛解の確率が、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上の場合にその特定の生物学的製剤を投与すると判定することができる。このような基準の具体的な値は、本明細書に記載される具体的な数値のほか、経験等に基づいて微調整することが可能であり、本明細書に記載される具体的な値以外であっても採用することができる。
【0038】
2.診断剤
本開示は、さらに前記検出方法を実施するための診断剤を提供する。具体的には、本開示の診断剤は、関節リウマチ患者への炎症性サイトカインを標的にした生物学的製剤による治療の有効性を判定するための診断剤であって、TNFα、0週目ESR、ADAMTS13、CD44、0週目General.VAS、0週目DAS-ESR、TRAIL、キチナーゼ3、BMP2、BAFF、MCP1、TWEAK、0週目RF、IL-1β、オステオポンチン、RANTES、IL-12p70、OSM、GM-CSF、IP10、TNFR2、CD30、IL-13、IL-9、およびsTNFRIよりなる群から選択される少なくとも1種のマーカーを検出可能な試薬を含むことを特徴とする。
【0039】
1つの実施形態では、本開示の診断剤は、関節リウマチ患者の身体サンプル中のマーカーの濃度を測定して特定生物学的製剤による該患者の寛解を事前に判定する方法に用いられる診断剤であって、この診断剤は該マーカーを検出するための試薬を含む。寛解を事前に判定した後は、寛解の確率について所定のレベルを事前に設定することによって、その生物学的製剤を投与するとの判定に用いることができる。これらの実施形態に使用される各マーカーの具体的手法については、「1.判定方法」の項を含む本明細書の他の箇所で具体的に説明される手法を用いることができる。
【0040】
具体的な実施形態では、本明細書に記載される情報に基づいて必要なマーカーに対する試薬を選択して使用することができる。そのような試薬が複数ある場合は、別々に提供されていてもよく、まとめてセットとして提供されてもよく、必要な他の試薬(例えば、発色剤)とともにキットとして提供されてもよい。
【0041】
前記マーカーは、ELISA等の抗原抗体反応を利用した測定系によって測定でき、前記マーカーを検出可能な試薬としては、具体的には、前記マーカーに特異的に結合可能な抗体、およびそのフラグメントが挙げられる。また、前記マーカーに特異的に結合可能な抗体は、適切な支持体の上に結合させて抗体アレイとして提供してもよい。
【0042】
さらに、本開示の診断剤は、抗原抗体反応により前記マーカーを検出するために必要となる試薬(二次抗体、発色物質等)が含まれていてもよい。
【0043】
3.治療剤
本開示は、さらに前記検出方法、診断方法および選択方法によって選択されあるいは適切であると判断した治療剤(プレシジョンメディスン、パーソナライズドメディスンあるいはコンパニオン治療剤とも呼ばれる)を提供する。より詳細には、本開示の治療剤は、抗TNF-α剤を含む関節リウマチ患者を治療するための治療剤であって、該患者のパラメータに基づいて、該抗TNF-α剤による有効性を判定し、判定した事項に基づいて選択しあるいは適切であると判断した抗TNF-α剤が投与されることを特徴とする。抗TNF-α剤が投与されるべきかを決定するために、患者のパラメータ(例えば、身体サンプル(例えば、血清)中のマーカーの濃度を含み得る)を測定して該抗TNF-α剤による有効性を判定し、判定した事項に基づいて選択しあるいは適切であると判断した場合に投与されることを説明した添付文書等が添付されていてもよい。添付文書は紙媒体で提供されていてもよいが、電子媒体で提供されてもよく、インターネット等で提供されてもよい。本開示の治療剤または治療剤のセットとして使用され得る抗TNF-α剤としては、エタネルセプト、アダリムマブ、インフリキシマブ、ゴリムマブ、およびセルトリズマブ等を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0044】
1つの実施形態では、本開示の関節リウマチ患者の治療方法は、(A)関節リウマチ患者のパラメータを得て抗TNF-α剤による該患者の寛解を事前に判定する工程と、(B)(A)工程により抗TNF-α剤により該患者が寛解すると判定された場合、抗TNF-α剤を該患者に投与する工程とを包含する。寛解するとの判断は、寛解を予測する回帰式において寛解の確率が一定の基準以上である場合に行われ得る。そのような判断は、「1.判定方法」「2.診断剤」の項を含む本明細書の他の箇所で具体的に述べられている手法を用いて行うことができる。
【0045】
ここで、抗TNF-α剤としてはそのカテゴリーに属する限りどの種類の生物学的製剤を用いてもよいことが理解される。本明細書において別の箇所において述べたように、本開示の特定マーカーは生物学的製剤のカテゴリー(例えば、抗TNF-α剤等)が同じである限り適用できると理解されるからである。このほか具体的な選択、判断の手法については、上記「1.判定方法」「2.診断剤」の項を含む本明細書の他の箇所で具体的に述べられている手法を用いて行うことができる。
【0046】
本開示では、前記回帰式により前記関節リウマチ患者が前記生物学的製剤によって寛解を達成する確率を算出し、該確率が所定の基準以上の場合に、該関節リウマチ患者が該生物学的製剤によって寛解を達成すると判定した場合に、該関節リウマチ患者に該生物学的製剤の有効量を投与する工程をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法または関節リウマチ患者を治療または予防するための方法が提供される。このほか具体的な選択、判断の手法については、上記「1.判定方法」「2.診断剤」および「3.治療剤」の項を含む本明細書の他の箇所で具体的に述べられている手法を用いて行うことができる。
【0047】
4.解析方法
本開示は、別の局面において、生体パラメータをある疾患または該疾患の適切な医薬の予測マーカーとして同定する方法を提供し得る。特に、多数のパラメータから、適切な組み合わせを同定する方法が提供され得る。
【0048】
1つの実施形態では、方法は、(A)n個の生体マーカー候補のパラメータに対して総当たりで多変量解析を行うステップであって、ここで、該解析において、n個のパラメータの少なくとも1つをコントロールとして相対値(対数化したものではその差)を総当たりで多変量解析することを含む、ステップと、(B)該解析に基づいて、予測能力の高いパラメータの組み合わせを選択するステップとを含み得る。
【0049】
さらなる実施形態では、方法は、(A)n個の生体マーカー候補のパラメータに対して総当たりで多変量解析を行うステップと、(B)該解析に基づいて、予測能力の高いパラメータの組み合わせを選択するステップであって、ここで、該選択においてλminから特定の標準偏差分の範囲内で候補パラメータの組み合わせを選択することを含む、ステップとを含み得る。
【0050】
本開示の解析方法において、多変量解析は、LASSO(Least Absolute Shrinkage and Selection Operator)を使用し得る(Trevor et. al.: Statistical Learning with Sparsity: The Lasso and Generalizations, CRC Press, 2015)。これは、パラメータ推定と変数選択を同時に行う手法(回帰推定とシステム工学の最適化理論が融合した技術)であり、説明変数がサンプル数よりも多くても計算が可能である。本当に有効な変数は数少ないという仮定が背景にある。例えば遺伝子情報解析では、説明変数が2万個に対して、サンプル数は数百程度でも適用可能である。説明変数を選択しつつ、その回帰係数を得ることができる。代表となる説明変数を自動的に選択するため、多重共線性の問題が発生しない。したがって、限られたデータの中で可能な限り過剰適合の程度を数値的に評価しながら説明変数を決定することができる。
【0051】
モデルの性能は、予め8対2に分割したデータセットの8割のデータを用いて前記LASSOによる回帰モデル構築を行い、残りの2割のデータに対して得られた予測値の分布からCohen’s dを用いて評価することができる(J. Cohen: Statistical Power Analysis for the Behavioral Sciences, second edition, Psycology Press.)。Cohen’s dは、サンプルサイズに依存しない値である。Cohen’s dは、2群の平均値の差を、両群を合わせた(プールした)標準偏差で割ったものである。予測モデルの性能は、検証用群と、学習用群との間のCohen’s dを用いて評価でき、医療関連の分野では、Cohen’s dが1.2以上のモデルが好ましいとされる。
【0052】
5.他の実施の形態
本開示の1つまたは複数の態様に係る判定方法および解析方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0053】
判定方法または解析方法は、プログラムによって実行され得る。すなわち、生物学的製剤による関節リウマチ患者への治療効果を予測判定するための方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は、該生物学的製剤の投与前の関節リウマチ患者における少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータを得る工程、および該臨床データまたは生体パラメータのうち少なくとも1種をコントロールとして、生体パラメータを分析し、該治療効果を予測判定する工程を含む、プログラムが提供され得る。あるいは、生物学的製剤による関節リウマチ患者への治療効果を予測判定するための方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は、該生物学的製剤の投与前の関節リウマチ患者における少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータを得る工程を含み、該生物学的製剤が、抗TNF-α剤であり、該治療効果が、該患者の寛解であり、該少なくとも2種の臨床データまたは生体パラメータが、TNFα、0週目ESR、ADAMTS13、CD44、0週目General.VAS、0週目DAS-ESR、TRAIL、キチナーゼ3、BMP2、BAFF、MCP1、TWEAK、0週目RF、IL-1β、オステオポンチン、RANTES、IL-12p70、OSM、GM-CSF、IP10、TNFR2、CD30、IL-13、IL-9、およびsTNFRIからなる群から選択されるパラメータを含む、プログラムが提供され得る。あるいは、関節リウマチ患者における生物学的製剤の治療効果を予測判定するための指標を特定する方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は、(A)n個の生体マーカー候補のパラメータに対して総当たりで多変量解析を行うステップであって、ここで、該解析において、n個のパラメータの少なくとも1つをコントロールとして相対値を総当たりで多変量解析することを含む、ステップと、(B)該解析に基づいて、予測能力の高いパラメータの組み合わせを選択するステップとを含む、プログラムが提供され得る。プログラムにおいて、治療効果の予測判定の結果または治療効果を予測判定するための指標を表示する表示工程がさらに含まれ得る。このようなプログラムを格納した記録媒体もまた提供され得る。記録媒体は、非一時的な記録媒体であり得る。
【0054】
システムは、本明細書に記載される方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを備えていてよく、例えば、そのようなプログラムを格納した記録媒体を備え得る。また、プログラムによって指示される命令を実行するための計算装置(例えば、コンピュータ)を備えていてよい。計算装置は、物理的に一体としていても、あるいは、物理的に分離した複数の構成要素からなっていてもよい。これらの計算装置の内部において、学習部、計算部および取得部等に対応する機能が必要に応じて備えられ得る。
【0055】
本開示のシステムは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIとして実現することができ、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含んで構成されるコンピュータシステムであり得る。ROMには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0056】
なお、ここでは、システムLSIとしたが、集積度の違いにより、IC、LSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいはLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0057】
また、本開示の一態様は、このような治療効果の予測判定または治療効果の予測判定のための指標の特定のためのシステムだけではなく、治療効果の予測判定または治療効果の予測判定のための指標の特定のためのシステムに含まれる特徴的な構成部をステップとする治療効果の予測判定または治療効果の予測判定のための指標の特定のための方法であってもよい。また、本開示の一態様は、治療効果の予測判定または治療効果の予測判定のための指標の特定のための方法に含まれる特徴的な各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであってもよい。また、本開示の一態様は、そのようなコンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体であってもよい。
【0058】
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0059】
本明細書において「プログラム」は、当該分野で使用される通常の意味で用いられ、コンピュータが行うべき処理を順序立てて記述したものであり、法律上「物」として扱われるものである。すべてのコンピュータはプログラムに従って動作している。現代のコンピュータではプログラムはデータとして表現され、記録媒体または記憶装置に格納される。
【0060】
本明細書において「記録媒体」は、本開示を実行させるプログラムを格納した記録媒体であり、記録媒体は、プログラムを記録できる限り、どのようなものであってもよい。例えば、内部に格納され得るROMやHDD、磁気ディスク、USBメモリ等のフラッシュメモリなどの外部記憶装置でありうるがこれらに限定されない。
【0061】
本明細書において「システム」とは、本発明の方法またはプログラムを実行する構成をいい、本来的には、目的を遂行するための体系や組織を意味し、複数の要素が体系的に構成され、相互に影響するものであり、コンピュータの分野では、ハードウェア、ソフトウェア、OS、ネットワークなどの、全体の構成をいう。
【0062】
本開示を種々の実施形態を用いて説明してきた。本明細書において本開示の説明のために引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用される。
【実施例
【0063】
以下に、理解の容易のために実施例を挙げて、本開示を具体的に説明する。しかしながら、提供される実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本開示の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0064】
(略語)
本実施例を含めた本明細書において、各々のパラメータは以下のとおり略称で表記される場合がある。
【表1】
【0065】
(実施例1:インフリキシマブ投与患者における治療効果予測モデル)
患者および有効性の評価
本実施例におけるリウマチ(RA)の診断は、米国リウマチ学会(ACR)のRAの分類の1987修正基準または2010年のACR/EULAR分類基準に基づいて行われた。本実施例において、MTX(≧6mg/week)に対して不応であり、そして、2007年5月から2017年11月の間に、慶応大学病院および東広島記念病院において最初の生物学的製剤のうちの少なくとも1つとしてIFX(インフリキシマブ)の投与を受けた85人のRA患者を組み入れた。生物学的製剤は、日本リウマチ学会のガイドラインに沿って投与された(http://www.ryumachi-jp.com/guideline.html)。治療効果は、生物学的製剤の治療の6ヶ月時点(22~24週)の臨床疾患活動性指標(CDAI)に基づいて、寛解を達成した(REM;臨床疾患活動性指標[DAR-ESR]≦2.6として定義)か、または寛解を達成しなかった(NON-REM;[DAR-ESR]>2.6として定義)として定義された。
【0066】
研究の手順
IFX処置を受ける前に、全てのリウマチ患者は血清サンプルを提供した。この処置前の血清を保管していたものを用いて、生物学的製剤にナイーブなRA患者のコホートにおける、サイトカイン、ケモカインおよび可溶性レセプターレベルを測定した。
【0067】
患者は、MTX有、およびPSL/DMARD有または無で、3mg/kgのIFXを静脈内注射により、2週間に1回、そして、4週間ごとに投与された。処置の臨床的有効性の後ろ向き評価と、患者が寛解を達成したか、または非寛解であったかの判定を、患者の22~24週のDAS28-ESRスコア(Inoueetal.によって検証されたグレーディング法)を用いて行った。非寛解RA患者は、DAS28-ESRスコアに反映される症状の重症度に基づいて、3つの群:低(2.6~3.1)、中(3.2~5.1)および高(>5.1)に分類された。本実施例では、統計解析において、完全寛解(DAS28-ESR<2.6)と非寛解(DAS-28-CRP≧2.6)の二分類を用いた。
【0068】
臨床パラメータ
以下の表2に、患者のベースラインの臨床的特性を要約する。この観察研究の目的のために、少なくとも22週にわたって処置を受け、血清および臨床データが利用可能であり、処置への有害応答を発症しなかった患者を選択した。
【表2-1】


【表2-2】


【表2-3】


【表2-4】
【0069】
サイトカイン/ケモカイン/可溶性レセプターアッセイ
サイトカインおよびバイマーカーは、マルチプレックスサイトカインアレイシステムであるBio-Plex 200(Bio-RadLaboratories、CA、USA)を用いて、製造者の指示に従って定量した。RA患者からの血清を回収し、1600×gで10分遠心した。血清サンプルは分析するまで-80℃で凍結させた。RA患者におけるサイトカイン/ケモカイン/可溶性レセプターを同時に定量した。以下のキットまたは装置:TheBio-PlexHumanCytokine 27-Plex Panel (IL-1β、IL-1Ra、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12(p70)、IL-13、IL-15、IL-17、basicFGF、eotaxin、G-CSF、GM-CSF、IFN-γ、IP-10、MCP-1、MIP-1α、MIP-1β、PDGF-bb、RANTES、TNF-α、VEGF)およびInflammation1kit(APRIL、BAFF、sCD30、sCD163、sgp130、IFN-α2、IFN-β、sIL-6Rα、IL-11、IL-12(p40)、IL-19、IL-20、IL-22、IL-26、IL-27、IL-28A、IL-29、IL-32、IL-34、IL-35、LIGHT、MMP-1、MMP-2、MMP-3、Osteocalcin、Osteopontin、Pentraxin-3、sTNF-R1、sTNF-R2、TSLP、TWEAK:Bio-RadLaboratories、CA、USA)、HumanSoluble Cytokine Receptor Panel (sIL-6R、sgp130、sTNFR-I、sTNFR-II:MilliplexRMAP,:Millipore Co.、MA、USA)ならびにR & D LuminixScreening Assay 21plex(ADAMTS13、Aggrecan、Angiopoietin-2、PD-L1、BMP-2、CD40、CD40Ligand、CD44、CX3XL1、E-Selectin、HGF、ICAM-1、IFN-γR1、L-Selectin、Leptin、LIF、OncostatinM、TRAIL、VCAM-1、VEGFR2、IL-18:R& D Systems、Inc.Minneapolis、MN 55413 Toll Free USA、Canada) を用いて、示される各サイトカイン/ケモカイン/可溶性レセプターの定量を行った。これらのマイプレックスサイトカインアレイは、製造者の指示に従って測定を行った。データ取得および分析は、Bio-PlexManagerソフトウェアversion5.0を用いて行った。
【0070】
(統計解析)
統計解析の概要を、以下の表3に要約する。
【表3】
【0071】
全てのパラメータは、より分布が正規化することから、log変換して用いた。サイトカイン/ケモカイン/可溶性レセプターの値は、pg/mlとして表現される。医師は治療プロトコルを選択する前に、患者が寛解(2.6未満のDAS28-ESR)または非寛解を経験するかを観察することから、本実施例においては、患者が寛解または非寛解の状態であるかを判定する解析を行った。
【0072】
Lassoアプローチを使用して、モデルに含めるマーカーを選択した。複数マーカーを含む予後モデル構築の過程では、過剰適合を避けながら性能を評価するために、Leave-Some-Randomly-Selected-Samples-Out交差検証(LSRSSO)を使用した。ここでSomeは3に設定している。各LSRSSOサイクル内で、glmnetパッケージに実装されている最小絶対収縮/選択演算子(Lasso)アプローチを使用して、寛解または非寛解に最も有益な組み合わせマーカーを選択した。Lassoモデルが選択され、寛解モデルまたは非寛解モデルに含まれ、その後、除外されたモデルのリスクスコアを生成するために使用された。
【0073】
受信者動作特性(ROC)分析を使用して、22~24週のREM対NON-REMカテゴリーを予測するモデルの能力を評価した。各LSRSSOサイクル内で真の交差検証を実施する際に、選択されたマーカーはデータの変動のために多少異なっていた。モデルを構築するために使用されたものと同じサンプル群での、サイトカイン/ケモカイン/可溶性受容体の値に対してモデルを適用した。NON-REMは「陽性」と定義された。感度、特異性、陽性適中率(PPV)、および陰性適中率はROC曲線からの最適カットオフ値(閾値)で決定された。分析はRソフトウェアバージョン3.4.1を用いて行った。
【0074】
(1)臨床データ及びサイトカインデータの読み込み
(1-1)説明変数
上記患者およびサンプルから得られたデータを、説明変数として読み込んだ。
【0075】
臨床データとしては、以下:
【表4】


のパラメータを読み込んだ。
【0076】
サイトカインデータとしては、以下:
【表5-1】


【表5-2】


のパラメータを読み込んだ。
【0077】
(1-2)目的変数
治療後DAS-ESRのしきい値を2.6として、2.6以下の場合に、目的変数:寛解=1とし、2.6超の場合に、目的変数:非寛解=0とした。患者中、寛解の人数=46、非寛解の人数=39であった。
【0078】
(2)lot間のばらつきの補正
(2-1)lot別に集計
使用した試薬のロットが異なるデータであったため、ロット別に患者のデータをグループ化し、試薬ごとにそのデータのメディアン値を算出した。
【0079】
(2-2)medianで補正
前項で得られた試薬ごとのメディアン値を使用し、該当する試薬ロットの被験者の測定データから減算した。したがって、見かけ上全ての測定値は小さな値に移動している。本実施例では、試薬ロットのばらつきを確認するために、多人数のメディアン値を利用してばらつきを補正しているが、実際の検査では、特定されたマーカーに対して、標準のサンプルを測定することで、補正が可能であるため、問題とならない。
【0080】
(3)内在性コントロールを用いた判定性能評価
78個のサイトカインデータに関して一つひとつ引き算(対数化してあるため)し、LASSOを実施した。8割の学習データを用いてLASSOでモデルを構築し、λmin、λmin+1se位置の変数を決めた。LASSOは、ランダムにサンプルをシャッフルし、3個ごとにセットになるようにして順に除外してCrossValidationを行った(LSRSSO)。(今回の場合nfold=約20に相当)
λmin, min+1seのモデルで学習データの予測値を算出 AUC.m PPV.m NPV.m ACC.m AUC.t PPV.t NPV.t ACC.tを算出。(m:学習データ、t:検証データ)
λmin, min+1seのモデルで検証データの予測値を算出 AUC.m PPV.m NPV.m ACC.m AUC.t PPV.t NPV.t ACC.tを算出。(m:学習データ、t:検証データ)
【0081】
(4)Repeated Cross Validation
データの0.8をモデル用のデータとして利用しLASSO回帰を行い、できた予測モデルに残り0.2を検証用データとして与えて評価する、これらを50回ランダムにサンプルリングしながら、繰り返す処理、Repeated Cross Validationを実行した。50回の検証データの予測結果から得られる寛解群の予測値の分布と非寛解群の予測値の分布を使用し、Cohen’s d(J. Cohen: Statistical Power Analysis for the Behavioral Sciences, second edition, Psycology Press.)を算出した。
【0082】
(結果)
λminのモデルにおいて、BlogTNF.a、BlogChitinase.3、BlogIL.1b、BlogOsteopontin、MlogsTNFRI、RlogTRAIL、BlogMCP.1、RlogADAMTS13、BlogGM.CSF、BlogTNF.R2、BlogCD30、BlogIL.13、およびBlogIL.9を内在性コントロールとして用いた場合に、1.35以上のCohen'dが得られた。
【0083】
各内在性コントロールについて、50回の試行のうち、以下のようなパラメータが示される頻度で予測モデルに包含された。
【表6-1】


【表6-2】
【0084】
λmin+1seのモデルにおいて、MlogsTNFRI、RlogTRAIL、BlogTNF.a、RlogCD44、BlogGM.CSF、RlogADAMTS13、RlogBMP.2、BlogMCP.1、およびBlogIL.1bを内在性コントロールとして用いた場合に、1.25以上のCohen'dが得られた。
【0085】
各内在性コントロールについて、50回の試行のうち、以下のようなパラメータが示される頻度で予測モデルに包含された。
【表7】
【0086】
(考察)
上述の結果から、TNFα、0週目ESR、ADAMTS13、CD44、0週目General.VAS、0週目DAS-ESR、TRAIL、キチナーゼ3、BMP2、BAFF、MCP1、TWEAK、0週目RF、IL-1β、オステオポンチン、RANTES、IL-12p70、OSM、GM-CSF、IP10、TNFR2、CD30、IL-13、IL-9、およびsTNFRIのうちのパラメータの組合せによって生物学的製剤に対する患者の応答性を高い予測力で予測するモデルを構築できると考えらる。また、その中でも、sTNFRI、0週目ESR、IL-12p70、MCP1、TRAIL、TNFα、ADAMTS13、CD44、GM-CSF、BMP2、MMP2、OSM、IL-1β、TWEAK、およびBMP2のうちのパラメータの組合せを用いることでよりロバストなモデルとなると考えられる。
【0087】
(実施例1-2:臨床データを用いたモデル)
上記データのうち、臨床データのみを組み合わせたモデルによって、寛解を予測できるかの検証を行った。臨床データは、パラメータごとに次元が異なるため、内在性コントロールは使用しなかった。実施例1で読み込んだデータのうちの臨床データを用いて、実施例1と同様に、モデルを作成し50回の試行を行った。
【0088】
50回の試行のうち、以下に示されるパラメータが、示される頻度で予測モデルに包含された。
【表8】
【0089】
モデルとして、以下の回帰式モデル:
【表9】


を用いた場合に、AUC=0.778で寛解を予測することができた。この回帰式でのCohen’s dは、1.036であった。
【0090】
(実施例2:ESR_0WのCohen’s d)
実施例1に記載される方法に従って、ESR_0Wのみを単独の説明変数として用いた場合の、寛解の予測モデルの性能を算出した。この場合の予測モデルのCohen’s dの値は、0.9558004(95%信頼区間0.4996557-1.4119451)であった。
【0091】
(実施例3:実際の臨床における応用)
1.IFX治療を予定されているリウマチ患者の治療前血清を採取する
2.あらかじめ寛解/非寛解を予測し得る、特定されたバイオマーカー(複数個)を測定し定量する
3.特定された臨床データ値と、特定されたバイオマーカー量とをある数式に導入して計算により判定する。即ち、+値となった場合は寛解、-値となった場合は非寛解と予測する
4.寛解と予測された患者がIFX治療を受ける
5.非寛解と予測された患者は別治療薬を考慮する
【0092】
(注記)
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願及び他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本願は、日本国特許出願第2019-036782号(2019年2月28日出願)および同第2019-103186号(2019年5月31日出願)に対して優先権を主張するものであり、その内容の全体は、本願において参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本開示は、リウマチの治療薬を適切に選択する技術を提供し、医薬品産業において利用可能である。