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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】ピン切断用工具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/56 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
A61B17/56
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021542035
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2020023947
(87)【国際公開番号】W WO2021039049
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2019153753
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516256548
【氏名又は名称】株式会社トータルメディカルサプライ
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】浅海 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】木村 淳一
【審査官】段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0213202(US,A1)
【文献】特開2012-231839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピンを切断するための工具であって、
第1開口が形成された第1操作部と、
第2開口が形成され、前記第1操作部に対して相対移動可能な第2操作部とを備え、
前記第1開口及び前記第2開口は、互いに対向した第1状態で前記ピンを挿通可能であり、前記第1状態で前記ピンを挿通させてから、前記第1開口及び前記第2開口が互いに対向していない第2状態に相対移動させることにより、前記ピンを切断することができ、
前記第1開口における前記第2開口側の周縁部には、前記第2開口が前記第1状態から前記第2状態に相対移動する方向に前記第1開口を拡張する拡張部が形成されている、ピン切断用工具。
【請求項2】
前記第1開口は、前記第1操作部に形成された切欠きにより構成されており、
切断後の前記ピンの端部は、前記切欠きを介して取出可能である、請求項1に記載のピン切断用工具。
【請求項3】
前記第1開口は、前記第2開口よりも大きく、
切断後の前記ピンの端部は、前記第1開口の軸線方向に対して平行方向に取出可能である、請求項1に記載のピン切断用工具。
【請求項4】
前記第2操作部には、前記第2開口が前記第1状態から前記第2状態に相対移動するときに前記第1開口内を前記拡張部側に向かって移動する突起が形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のピン切断用工具。
【請求項5】
前記第1操作部及び前記第2操作部は、互いに対向する対向面をそれぞれ有しており、
前記第1操作部の前記対向面、及び、前記第2操作部の前記対向面には、前記第1操作部及び前記第2操作部の相対移動を前記第1状態と前記第2状態とでそれぞれ規制するためのストッパ機構が設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載のピン切断用工具。
【請求項6】
ピンを切断するための工具であって、
第1開口が形成された第1操作部と、
第2開口が形成され、前記第1操作部に対して相対移動可能な第2操作部とを備え、
前記第1開口及び前記第2開口は、互いに対向した第1状態で前記ピンを挿通可能であり、前記第1状態で前記ピンを挿通させてから第2状態に相対移動させることにより、前記ピンを切断することができ、
前記第1開口における前記第2開口側の周縁部には、前記第2開口が前記第1状態から前記第2状態に相対移動する方向に前記第1開口を拡張する拡張部が形成されており、
前記第1開口は、前記第2開口よりも大きく、
切断後の前記ピンの端部は、前記第1開口の軸線方向に対して平行方向に取出可能である、ピン切断用工具。
【請求項7】
ピンを切断するための工具であって、
第1開口が形成された第1操作部と、
第2開口が形成され、前記第1操作部に対して相対移動可能な第2操作部とを備え、
前記第1開口及び前記第2開口は、互いに対向した第1状態で前記ピンを挿通可能であり、前記第1状態で前記ピンを挿通させてから第2状態に相対移動させることにより、前記ピンを切断することができ、
前記第1開口における前記第2開口側の周縁部には、前記第2開口が前記第1状態から前記第2状態に相対移動する方向に前記第1開口を拡張する拡張部が形成されており、
前記第2操作部には、前記第2開口が前記第1状態から前記第2状態に相対移動するときに前記第1開口内を前記拡張部側に向かって移動する突起が形成されている、ピン切断用工具。
【請求項8】
ピンを切断するための工具であって、
第1開口が形成された第1操作部と、
第2開口が形成され、前記第1操作部に対して相対移動可能な第2操作部とを備え、
前記第1開口及び前記第2開口は、互いに対向した第1状態で前記ピンを挿通可能であり、前記第1状態で前記ピンを挿通させてから第2状態に相対移動させることにより、前記ピンを切断することができ、
前記第1開口における前記第2開口側の周縁部には、前記第2開口が前記第1状態から前記第2状態に相対移動する方向に前記第1開口を拡張する拡張部が形成されており、
前記第1操作部及び前記第2操作部は、互いに対向する対向面をそれぞれ有しており、
前記第1操作部の前記対向面、及び、前記第2操作部の前記対向面には、前記第1操作部及び前記第2操作部の相対移動を前記第1状態と前記第2状態とでそれぞれ規制するためのストッパ機構が設けられている、ピン切断用工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンを切断するためのピン切断用工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
尺骨肘頭部、膝、足首、手首などの関節に近接する骨、あるいは関節から遠い骨などが骨折した場合に、骨折を治療又は処置する手法の一例として、テンションバンドワイヤリング法が知られている(例えば、下記特許文献1及び2参照)。この手法では、固定具としてのピンを骨に挿入して固定し、当該固定具に設けられたリングに挿入させたワイヤーまたはケーブルを、骨に穿孔した挿通孔に通した後、ワイヤーまたはケーブルを引き締めてテンションを付与する。その後、ニッパーなどのピン切断用工具を用いて、固定具の余ったピンが切断される。
【0003】
固定具としてのピンには、上述のリングが挿通されている。リングは、かしめられることによりピンに固定されてもよいし、ピンに取り付けられた摩擦部材によりリングの移動が制限されてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018−102527号公報
【文献】特許第6420510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ニッパーなどのピン切断用工具を用いた場合、通常、ピンの切断面からバリが突出しないように、ピンを綺麗に切断することができる。そのため、切断されたピンの端部には突出物がなく、リングに大きな力が加わったときには、ピンの端部からリングが抜け落ちる可能性があった。このような問題は、テンションバンドワイヤリング法に用いられるピンの切断に限らず、任意の部材が挿通されたピンを切断した場合に生じ得る。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ピンに挿通された部材がピンから抜け落ちるのを防止することができるピン切断用工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係るピン切断用工具は、ピンを切断するための工具であって、第1操作部と、第2操作部とを備える。前記第1操作部には、第1開口が形成されている。前記第2操作部は、第2開口が形成され、前記第1操作部に対して相対移動可能である。前記第1開口及び前記第2開口は、互いに対向した第1状態で前記ピンを挿通可能であり、前記第1状態で前記ピンを挿通させてから第2状態に相対移動させることにより、前記ピンを切断することができる。前記第1開口における前記第2開口側の周縁部には、前記第2開口が前記第1状態から前記第2状態に相対移動する方向に前記第1開口を拡張する拡張部が形成されている。
【0008】
このような構成によれば、第1開口及び第2開口が互いに対向した第1状態において、第1開口及び第2開口にピンを挿通させ、その後に第2状態に相対移動させることにより、ピンを切断することができる。このとき、第1状態から第2状態への相対移動に伴って、切断されたピンの端部が変形して、当該第1開口を拡張する拡張部内に入り込む。その結果、切断されたピンの端部に意図的に突出物を形成することができる。この突出物によって、ピンに挿通された部材がピンから抜け落ちるのを防止することができる。
【0009】
(2)前記第1開口は、前記第1操作部に形成された切欠きにより構成されていてもよい。この場合、切断後の前記ピンの端部は、前記切欠きを介して取出可能であってもよい。
【0010】
このような構成によれば、切断後のピンの端部に突出物が形成されたとしても、第1開口を構成する切欠きを介して、ピンの端部を容易に取り出すことができる。したがって、ピンを切断した後の操作性が向上する。
【0011】
(3)前記第1開口は、前記第2開口よりも大きくてもよい。この場合、切断後の前記ピンの端部は、前記第1開口の軸線方向に対して平行方向に取出可能であってもよい。
【0012】
このような構成によれば、切断後のピンの端部に突出物が形成されたとしても、第1開口が第2開口よりも大きいため、ピンの端部を第1開口の軸線方向に対して平行方向に容易に取り出すことができる。したがって、ピンを切断した後の操作性が向上する。
【0013】
(4)前記第2操作部には、前記第2開口が前記第1状態から前記第2状態に相対移動するときに前記第1開口内を前記拡張部側に向かって移動する突起が形成されていてもよい。
【0014】
このような構成によれば、第2開口が第1状態から第2状態に相対移動するときに、第1開口内を拡張部側に向かって移動する突起によって、ピンの端部を拡張部側に押圧することができる。これにより、ピンの端部をより強い力で変形させることができるため、切断されたピンの端部に良好に突出物を形成することができる。
【0015】
(5)前記第1操作部及び前記第2操作部は、互いに対向する対向面をそれぞれ有していてもよい。この場合、前記第1操作部の前記対向面、及び、前記第2操作部の前記対向面には、前記第1操作部及び前記第2操作部の相対移動を前記第1状態と前記第2状態とでそれぞれ規制するためのストッパ機構が設けられていてもよい。
【0016】
このような構成によれば、第1操作部及び第2操作部の相対移動を第1状態と第2状態とでそれぞれ規制するためのストッパ機構を、第1操作部及び第2操作部の各対向面に内蔵させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、切断されたピンの端部に意図的に突出物を形成することができるため、この突出物によって、ピンに挿通された部材がピンから抜け落ちるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】工具の平面図である。
図1B】工具の側面図である。
図1C】工具の底面図である。
図1D図1Aにおける工具のA-A断面図である。
図2A】第1把持部及び第2把持部を互いに近接させたときの工具の平面図である。
図2B図2Aにおける工具のB-B断面図である。
図3A】第1状態における工具の断面図であり、ピンが挿通された状態を示している。
図3B】第2状態における工具の断面図であり、挿通されたピンが切断された状態を示している。
図4A】工具の第1変形例を示した底面図であり、第1把持部及び第2把持部などを省略して示している。
図4B】工具の第2変形例を示した底面図であり、第1把持部及び第2把持部などを省略して示している。
図5A】工具の第3変形例を示した斜視図であり、第1操作部の一部の構成のみを示している。
図5B】工具の第3変形例を示した斜視図であり、第2操作部の一部の構成のみを示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.ピン切断用工具の全体構成
本実施形態に係るピン切断用工具100(以下、単に「工具100」という。)は、テンションバンドワイヤリング法による固定に用いられるピンを切断するための工具である。ピンの直径は、例えば1~3mm程度であるが、これに限られるものではない。また、工具100は、他の用途に用いられるピンを切断することも可能である。
【0020】
図1Aは、工具100の平面図である。図1Bは、工具100の側面図である。図1Cは、工具100の底面図である。図1Dは、図1Aにおける工具100のA-A断面図である。工具100は、互いに相対移動可能な第1操作部1及び第2操作部2を備えている。本実施形態では、回転軸3を中心に、第1操作部1及び第2操作部2が相対的に回転可能となっている。ただし、このような構成に限らず、第1操作部1及び第2操作部2は、回転ではなくスライドなどの他の態様で相対移動可能な構成であってもよい。
【0021】
第1操作部1には、ピンが挿通される第1開口11が形成されている。第1開口11は、第1操作部1に形成された切欠き10により構成されている。すなわち、第1開口11は、第1操作部1の周縁部から凹状に形成された切欠き10の一部により構成されている。本実施形態では、回転軸3を中心として径方向に延びるように切欠き10が形成されており、この切欠き10の底部が第1開口11を構成している。
【0022】
第2操作部2には、ピンが挿通される第2開口21が形成されている。第2開口21は、例えば円形であり、その内径はピンの外径より若干大きい。図1A図1Dの状態(第1状態)では、第1開口11及び第2開口21が互いに対向しており、これらの第1開口11及び第2開口21にピンを挿通可能である。すなわち、図1A図1Dの状態では、第1開口11の中心軸線L1と、第2開口21の中心軸線L2とが同軸上に位置し、これらの中心軸線L1,L2に沿ってピンを挿通することができる。
【0023】
第1操作部1には、ユーザが把持するための第1把持部12が設けられている。また、第2操作部2にも、ユーザが把持するための第2把持部22が設けられている。ユーザは、片手で第1把持部12及び第2把持部22の両方を把持し、第1把持部12及び第2把持部22を互いに近接させるように握りしめる。これにより、回転軸3を中心に第1操作部1及び第2操作部2を相対的に回転させることができる。
【0024】
第1把持部12と第2把持部22は、弾性体の一例である板バネ4を介して連結されている。板バネ4は、第1把持部12及び第2把持部22を互いに近接させる方向に力が加えられたときに、その力に抗して、第1把持部12及び第2把持部22を図1A図1Dの状態に戻す方向に弾性力を作用させる。ただし、板バネ4は、第1把持部12及び第2把持部22を連結する構成に限らず、第1操作部1及び第2操作部2の他の部分を連結する構成であってもよい。また、板バネ4に限らず、例えばゴムなどの他の弾性体が設けられた構成であってもよい。
【0025】
第1把持部12及び第2把持部22には、それぞれストッパ5が設けられている。第1把持部12及び第2把持部22を互いに近接させたときには、各ストッパ5が互いに当接することにより、第1操作部1及び第2操作部2の相対的な回転が一定量以内に制限される。ただし、ストッパ5は、第1把持部12及び第2把持部22に設けられた構成に限らず、第1操作部1及び第2操作部2の他の部分に設けられていてもよい。また、ストッパ5は、第1操作部1又は第2操作部2のいずれか一方に設けられていてもよいし、省略されてもよい。
【0026】
2.ピン切断用工具の動作
図2Aは、第1把持部12及び第2把持部22を互いに近接させたときの工具100の平面図である。図2Bは、図2Aにおける工具100のB-B断面図である。図2A及び図2Bの状態(第2状態)では、第1開口11及び第2開口21が互いに対向していない。すなわち、図2A及び図2Bの状態では、第1開口11の中心軸線L1と、第2開口21の中心軸線L2とが同軸上に位置していない。
【0027】
図1D及び図2Bに示すように、第1開口11における第2開口21側の周縁部には、第1開口11を拡張する拡張部111が形成されている。拡張部111は、第2開口21が図1Dの状態(第1状態)から図2Bの状態(第2状態)に相対移動する方向Dに沿って延びることにより、当該方向Dに第1開口11を拡張している。これにより、第1開口11は、拡張部111において、他の部分よりも大きい内径を有している。本実施形態では、第1開口11の中心軸線L1に沿った拡張部111の深さが、第1開口11の中心軸線L1に沿った長さの1/3~1/2となっているが、これに限られるものではない。
【0028】
第1開口11における第2開口21側の周縁部には、上記方向Dとは逆方向に延びる段差部112が形成されている。第1開口11の中心軸線L1に沿った段差部112の深さは、拡張部111の深さと同程度である。第2操作部2における第1操作部1側の面には、第1操作部1に形成された段差部112に挿入される突起23が形成されている。突起23の高さは、拡張部111の深さと同程度である。
【0029】
突起23は、第2開口21が図1Dの状態(第1状態)から図2Bの状態(第2状態)に相対移動するときに、段差部112内を方向Dに沿って移動する。そして、図2Bに示すように、突起23は第1開口11内を拡張部111側に向かって移動する。すなわち、図2Bの状態では、第1開口11におけるピンが挿通される領域に突起23が進入する。
【0030】
3.ピンの切断
図3Aは、第1状態における工具100の断面図であり、ピン200が挿通された状態を示している。図3Bは、第2状態における工具100の断面図であり、挿通されたピン200が切断された状態を示している。ピン200は、例えば金属製であり、切断前は一直線状に延びている。
【0031】
ピン200には、テンションバンドワイヤリング法に用いられるリングなどの部材300が挿通されている。部材300は、かしめられることによりピン200に固定されてもよいし、ピン200に取り付けられた摩擦部材(図示せず)により部材300の移動が制限されてもよい。あるいは、部材300がピン200に対してスライド可能であってもよい。
【0032】
図3Aの状態では、第1開口11の中心軸線L1と、第2開口21の中心軸線L2とが同軸上に位置しており、これらの中心軸線L1,L2に沿ってピン200が挿通される。具体的には、ピン200の先端が、図3Aにおける下方から上方に向かって、第1開口11から第2開口21へと挿通される。このとき、突起23は、挿通されるピン200に干渉しない位置に退避している。
【0033】
その後、第1把持部12及び第2把持部22を互いに近接させると、図3Bに示すように、第1開口11及び第2開口21が互いに対向しない状態となる。これにより、第1開口11及び第2開口21に挿通されているピン200に対して剪断力が作用し、第1開口11と第2開口21との境界においてピン200が切断される。このように、図3Aの状態(第1状態)で第1開口11及び第2開口21にピン200を挿通させてから、図3Bの状態(第2状態)に第1開口11及び第2開口21を相対移動させることにより、ピン200を切断することができる。
【0034】
図3Bに示すように、切断されたピン200は、第1開口11側の第1部分201と、第2開口21側の第2部分202に分離される。ピン200に挿通されている部材300は、ピン200の第1部分201に位置している。ピン200の第1部分201の端部は、第2開口21が第1開口11に対して相対移動する方向Dに向かって変形し、第1開口11を拡張する拡張部111内に入り込む。これにより、ピン200の第1部分201の端部には、方向Dに向かって突出する突出物203が形成される。
【0035】
また、第2開口21が第1開口11に対して方向Dに相対移動するとき、突起23が段差部112内を方向Dに沿って移動し、第1開口11におけるピン200が挿通されている領域に突起23が進入する。これにより、図3Bに示すように、切断されたピン200の第1部分201の端部に突起23が接触し、当該端部を拡張部111側に押圧する。
【0036】
このようにしてピン200の第1部分201の端部を変形させた場合、そのままピン200の第1部分201を第1開口11の中心軸線L1に沿って引き抜こうとしても、突出物203が拡張部111に引っ掛かる。本実施形態では、第1開口11が切欠き10により構成されているため、第1開口11の中心軸線L1に対して直交する面内でピン200の第1部分201を移動させることにより、切欠き10を介してピン200の第1部分201の端部を取り出すことができる。
【0037】
4.作用効果
(1)本実施形態では、第1開口11及び第2開口21が互いに対向した第1状態(図3Aの状態)において、第1開口11及び第2開口21にピン200を挿通させ、その後に第2状態(図3Bの状態)に相対移動させることにより、ピン200を切断することができる。このとき、第1状態から第2状態への相対移動に伴って、切断されたピン200の端部が変形して、当該第1開口11を拡張する拡張部111内に入り込む。その結果、切断されたピン200の端部に意図的に突出物203を形成することができる。この突出物203によって、ピン200に挿通された部材300がピン200から抜け落ちるのを防止することができる。
【0038】
(2)特に、本実施形態では、第2開口21が第1状態(図3Aの状態)から第2状態(図3Bの状態)に相対移動するときに、第1開口11内を拡張部111側に向かって移動する突起23によって、ピン200の端部を拡張部111側に押圧することができる。これにより、ピン200の端部をより強い力で変形させることができるため、切断されたピン200の端部に良好に突出物203を形成することができる。
【0039】
(3)また、本実施形態では、切断後のピン200の端部に突出物203が形成されたとしても、第1開口11を構成する切欠き10を介して、ピン200の端部を容易に取り出すことができる。したがって、ピン200を切断した後の操作性が向上する。
【0040】
5.第1変形例
図4Aは、工具100の第1変形例を示した底面図であり、第1把持部12及び第2把持部22などを省略して示している。上記実施形態では、切欠き10が回転軸3を中心として径方向に延びるように形成されていたが、この例では、径方向に対して交差する方向に切欠き10が延びている。切欠き10の底部は、第1開口11を構成している。
【0041】
この図4Aに示すような構成であっても、第1開口11を構成する切欠き10を介して、ピン200の端部を容易に取り出すことができる。このように、切欠き10は、第1開口11を開放して、第1開口11からピン200の端部を取り出すことができるような構成であれば、切欠き10が延びる方向及び形状は限定されない。
【0042】
6.第2変形例
図4Bは、工具100の第2変形例を示した底面図であり、第1把持部12及び第2把持部22などを省略して示している。この例では、第1開口11が切欠き10により構成されているのではなく、第1開口11が長孔により形成されている。したがって、第1開口11が第2開口21よりも大きく、切断されたピン200の端部を第1開口11内で移動させることができる。
【0043】
これにより、切断後のピン200の端部を第1開口11内でずらした後、第1開口11の軸線方向に対して平行方向に取り出すことができる。すなわち、切断後のピン200の端部に突出物203が形成されたとしても、第1開口11が第2開口21よりも大きいため、ピン200の端部を第1開口11の軸線方向に対して平行方向に容易に取り出すことができる。したがって、ピン200を切断した後の操作性が向上する。
【0044】
ただし、第1開口11を構成する長孔が延びる方向は任意である。また、第1開口11は、長孔に限らず、例えば第2開口21より大径の円形状であってもよいし、円形状以外の形状であってもよい。
【0045】
7.第3変形例
図5A及び図5Bは、工具100の第3変形例を示した斜視図である。図5Aでは、第1操作部1の一部の構成のみを示しており、図5Bでは、第2操作部2の一部の構成のみを示している。これらの第1操作部1及び第2操作部2が互いに組み合わせられることにより、第3変形例の工具100が構成される。
【0046】
図5Aにおける第1操作部1の上面は、第2操作部2に対向する対向面13を構成している。また、図5Bにおける第2操作部2の上面は、第1操作部1に対向する対向面24を構成してる。すなわち、第1操作部1及び第2操作部2は、互いに対向面13,24を対向させた状態で組み合わせられる。このとき、第1操作部1の対向面13から突出するように形成された回転軸3が、第2操作部2の対向面24に形成された凹部31内に嵌め込まれることにより、回転軸3を中心に、第1操作部1及び第2操作部2が相対的に回転可能となる。
【0047】
第1操作部1には、ピンが挿通される第1開口11が2つ形成されている。各第1開口11(第1開口110及び第1開口120)は、上記実施形態と同様に、それぞれ回転軸3に対して径方向に延びる切欠きにより構成されている。第1開口110及び第1開口120は、回転軸3を中心とする周方向に、互いに間隔を隔てて並べて形成されている。
【0048】
第2操作部2には、ピンが挿通される第2開口21が、第1開口11と同数である2つ形成されている。各第2開口21(第2開口210及び第2開口220)は、上記実施形態と同様に、それぞれ円形である。第2開口210及び第2開口220は、回転軸3を中心とする周方向に、互いに間隔を隔てて並べて形成されている。第2開口210及び第2開口220の間隔は、第1開口110及び第1開口120の間隔と一致している。
【0049】
第2開口210及び第2開口220は、互いに異なる内径を有している。具体的には、第2開口210よりも第2開口220の方が大きい内径を有している。第2開口210は、例えば1.65mmの内径で形成されており、外径1.6mmのピンを挿通させるのに適している。一方、第2開口220は、例えば2.05mmの内径で形成されており、外径2.0mmのピンを挿通させるのに適している。
【0050】
第1開口110は第2開口210に対向し、第2開口210に挿通された比較的小径のピンが、第2開口210に連通する第1開口110にも挿通される。一方、第1開口120は第2開口220に対向し、第2開口220に挿通された比較的大径のピンが、第2開口220に連通する第1開口120にも挿通される。第1開口部110及び第1開口部120には、上記実施形態と同様に拡張部111が形成されている。各拡張部111により、第1開口部110及び第1開口部120が、それぞれ回転軸3を中心とする周方向に拡張されている。
【0051】
第1開口部110に形成された拡張部111は、第1開口部120に形成された拡張部111よりも、周方向への拡張量(周方向の長さ)が短い。すなわち、挿通されるピンの外径が比較的小さい第1開口110には、拡張量が比較的小さい拡張部111が形成されており、挿通されるピンの外径が比較的大きい第1開口120には、拡張量が比較的大きい拡張部111が形成されている。このように、拡張部111の拡張量は、第2開口21(第2開口210及び第2開口220)に挿通されるピンの外径に対応していることが好ましい。
【0052】
このように、第1開口11及び第2開口21の数は、1つずつに限らず、それぞれ2つ以上形成されていてもよい。この場合、複数の第1開口11のそれぞれに拡張部111が形成される。各拡張部111は、回転軸3を中心とする周方向の一方向に向かって、それぞれ同じ方向に各第1開口11を拡張するように形成される。
【0053】
第1操作部1の対向面13には、凸部130が形成されている。また、第2操作部2の対向面24には、凹部230が形成されている。第1操作部1及び第2操作部2が、互いに対向面13,24を対向させた状態で組み合わせられたときには、凸部130が凹部230内に入り込む。凹部230は、回転軸3を中心とする周方向に延びており、回転軸3を中心に第1操作部1及び第2操作部2が相対的に回転したときには、凹部230内を凸部130が周方向に移動する。
【0054】
凸部130が凹部230の周方向の一端部に当接する状態では、第1開口11及び第2開口21が互いに対向する第1状態となる。一方、凸部130が凹部230の周方向の他端部に当接する状態では、第1開口11及び第2開口21が互いに対向しない第2状態となる。すなわち、凸部130及び凹部230は、第1操作部1及び第2操作部2の相対移動を第1状態と第2状態とでそれぞれ規制するためのストッパ機構30を構成している。
【0055】
ただし、凸部130が第1操作部1に形成され、凹部230が第2操作部2に形成された構成に限らず、凸部130が第2操作部2に形成され、凹部230が第1操作部1に形成された構成であってもよい。また、ストッパ機構30は、凸部及び凹部により構成されるものに限らず、他の任意の構成を採用することができる。
【0056】
上記の例では、回転軸3を中心とする周方向において、2つの第1開口11(第1開口110及び第1開口120)の間に凸部130が設けられ、2つの第2開口21(第2開口210及び第2開口220)の間に凹部230が設けられている。ただし、このような構成に限らず、第1操作部1及び第2操作部2の各対向面13,24において、上記の例とは異なる位置にストッパ機構30が設けられていてもよい。
【0057】
この変形例では、上記実施形態とは異なり、第2操作部2に突起23が形成されていない。このように、突起23は省略することも可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 第1操作部
2 第2操作部
3 回転軸
4 板バネ
5 ストッパ
10 切欠き
11 第1開口
12 第1把持部
13 対向面
21 第2開口
22 第2把持部
23 突起
24 対向面
30 ストッパ機構
100 ピン切断用工具
111 拡張部
112 段差部
200 ピン
203 突出物
300 部材
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B