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特許7497097人工歯形成用組成物、人工歯の製造方法およびその方法により製造された人工歯(Composition for forming artificial tooth, method of preparing artificial tooth and artificial tooth prepared thereby)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】人工歯形成用組成物、人工歯の製造方法およびその方法により製造された人工歯(Composition for forming artificial tooth, method of preparing artificial tooth and artificial tooth prepared thereby)
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/887 20200101AFI20240603BHJP
   A61C 5/70 20170101ALI20240603BHJP
   A61C 13/08 20060101ALI20240603BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20240603BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240603BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240603BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20240603BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
A61K6/887
A61C5/70
A61C13/08 Z
B29C64/106
B33Y10/00
B33Y70/00
C08F220/26
C08F290/06
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023500284
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(86)【国際出願番号】 KR2021011440
(87)【国際公開番号】W WO2022045794
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-01-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0107964
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】323009689
【氏名又は名称】オーディーエス カンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】パク スンウォン
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0257985(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2041603(KR,B1)
【文献】特開2016-013998(JP,A)
【文献】特開平10-218721(JP,A)
【文献】特表2019-536658(JP,A)
【文献】特開2016-065002(JP,A)
【文献】特開2015-043793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/00- 6/90
C08F 210/00-301/00
B29C 64/106
B33Y 10/00
B33Y 70/00
A61C 5/70
A61C 13/08
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で示された第1光硬化性化合物100重量部;
下記化学式2で示された第2光硬化性化合物5~20重量部;
下記化学式3で示された第3光硬化性化合物25~50重量部;および
下記化学式4で示された第4光硬化性化合物1~10重量部を含む人工歯形成用組成物であって、
前記第1光硬化性化合物、前記第2光硬化性化合物、前記第3光硬化性化合物および前記第4光硬化性化合物の総重量100重量部に対してアクリル樹脂0.5~5重量部をさらに含むことを特徴とする人工歯形成用組成物:
[化学式1]
R'CH2[C(CH3)(R)CH2]2CH2R'(RHまたはCH3、R'NHCO2CH2CH2O2CC(CH3)=CH2)
[化学式2]
【化1】
[化学式3]
CH2=C(CH3)COOCH2CH2OH
[化学式4]
CH2=C(CH3)COO(CH2CH2O)3COC(CH3)=CH2.
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
人工歯形成用組成物、人工歯の製造方法およびその方法によって製造された人工歯が開示される。より詳しくは、強度に優れ、割れにくい人工歯を提供できる人工歯形成用組成物、人工歯の製造方法およびその方法によって製造された人工歯が開示される。
【背景技術】
【0002】
人工歯には、金などの金属を利用した金属クラウン、金属構造の表面にポーセレン陶材を築盛する方式のPFM(porcelain fused metal)、酸化ジルコニウムの原石を削って作ったジルコニア、または樹脂で製造された人工歯などがある。
しかし、金属クラウンは、審美的に良くないだけでなく、金を用いたクラウンの場合、金の価格上昇で製造原価が上昇するという問題点があり、ポーセレン陶材を含むPFMはポーセレンの引張強度が天然歯に比べて落ち、咬合圧によって陶材が分離したりひびが入たりする問題点があり、ジルコニア人工歯は酸化ジルコニウムの引張強度が天然歯に比べて強く、移植された人工歯と咬合する正常な歯が咬合圧によってひびが入ったり割れたりする問題点がある。
【0003】
韓国特許公開公報第10-2011-0041682号には、歯全体をジルコニアで成形するジルコニア歯の製造方法が開示されている。しかし、この技術は、審美的効果だけに焦点を合わせたもので、天然歯に比べて引張強度が強いジルコニアを使用して人工歯を形成することによって、移植後の咬合圧によってむしろ正常な歯に損傷を与えかねない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一具現例は、強度に優れ、割れにくい人工歯を提供できる人工歯形成用組成物を提供する。
本発明の他の具現例は、前記人工歯形成用組成物を製造する段階を含む人工歯の製造方法を提供する。
本発明のさらに他の具現例は、前記人工歯の製造方法によって製造された人工歯を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面は、
下記化学式1で示された第1光硬化性化合物100重量部;
下記化学式2で示された第2光硬化性化合物5~20重量部;
下記化学式3で示された第3光硬化性化合物25~50重量部;および
下記化学式4で示された第4光硬化性化合物1~10重量部を含む人工歯形成用組成物を提供する:
[化学式1]
R'CH2[C(CH3)(R)CH2]2CH2R'[R=HまたはCH3、R'=NHCO2CH2CH2O2CC(CH3)=CH2]
[化学式2]
【化1】
[化学式3]
CH2=C(CH3)COOCH2CH2OH
前記人工歯形成用組成物は、前記第1光硬化性化合物、前記第2光硬化性化合物、前記第3光硬化性化合物および前記第4光硬化性化合物の総重量100重量部に対してアクリル樹脂0.5~5重量部をさらに含めることができる。
前記人工歯形成用組成物は、前記第1光硬化性化合物、前記第2光硬化性化合物、前記第3光硬化性化合物および前記第4光硬化性化合物の総重量100重量部に対して光開始剤1~20重量部をさらに含めることができる。
【0006】
前記人工歯形成用組成物は、前記第1光硬化性化合物、前記第2光硬化性化合物、前記第3光硬化性化合物および前記第4光硬化性化合物の総重量100重量部に対して酸化防止剤0.1~2重量部をさらに含めることができる。
前記人工歯形成用組成物は、前記第1光硬化性化合物、前記第2光硬化性化合物、前記第3光硬化性化合物および前記第4光硬化性化合物の総重量100重量部に対して白色顔料0.1~10重量部および有色顔料0.001~0.15重量部をさらに含めることができる。
前記有色顔料は、前記第1光硬化性化合物、前記第2光硬化性化合物、前記第3光硬化性化合物および前記第4光硬化性化合物の総重量100重量部に対して黄色顔料0.0005~0.075重量部および橙色顔料0.0005~0.075重量部を含めることができる。
前記橙色顔料は、赤色顔料および黄色顔料を2:8の重量比で混合して製造されたものであり得る。
【0007】
前記人工歯形成用組成物は、溶媒を含まないことがある。
前記人工歯形成用組成物は、300~800cpsの粘度を有することができる。
前記人工歯形成用組成物は、液状の、光硬化性の、3Dプリンティング用であり得る。
本発明の他の側面は、
前記人工歯形成用組成物を製造する段階(S10);
前記人工歯形成用組成物を3Dプリンティングして部分硬化した人工歯を製造する段階(S20);および
前記部分硬化した人工歯を完全硬化させて最終人工歯を製造する段階(S30)を含む人工歯の製造方法を提供する。
本発明のさらに他の側面は、
前記人工歯の製造方法により製造された人工歯を提供する。
前記人工歯は、不透明または半透明のものであり得る。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一具現例による人工歯形成用組成物は、強度に優れながらも破損しにくく、表面が柔らかくて正常な歯を損傷させない人工歯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一具現例による人工歯の製造方法を示した流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一具現例による人工歯形成用組成物を詳しく説明する。
本発明の一具現例による人工歯形成用組成物は、下記化学式1で示された第1光硬化性化合物100重量部、下記化学式2で示された第2光硬化性化合物5~20重量部、下記化学式3で示された第3光硬化性化合物25~50重量部、および下記化学式4で示された第4光硬化性化合物1~10重量部を含む:
[化学式1]
R'CH2[C(CH3)(R)CH2]2CH2R'[R=HまたはCH3、R'=NHCO2CH2CH2O2CC(CH3)=CH2]
[化学式2]
【化1】
[化学式3]
CH2=C(CH3)COOCH2CH2OH
[化学式4]
CH2=C(CH3)COO(CH2CH2O)3COC(CH3)=CH2
前記第1光硬化性化合物は、R=Hである異性体およびR=CH3である異性体が所定の割合で混合されている混合物であり得る。例えば、前記第1光硬化性化合物は、分子式がC23H38N2O8であり、分子量が470.56であり得る。
前記第1光硬化性化合物、前記第2光硬化性化合物、前記第3光硬化性化合物および前記第4光硬化性化合物を含有量がそれぞれ前記範囲内であれば、曲げ強さ(flexural strength)に優れ、曲げ弾性率(flexural modulus of elasticity)が適正水準であるため、容易に割れないだけでなく、ほとんどが樹脂で形成されていて表面が柔らかいため、正常な歯を損傷させない人工歯を製造することができる。
前記それぞれの光硬化性化合物は、(紫外線)硬化性であり得る。
また、前記人工歯形成用組成物は、前記第1光硬化性化合物、前記第2光硬化性化合物、前記第3光硬化性化合物および前記第4光硬化性化合物の総重量100重量部に対してアクリル樹脂0.5~5重量部をさらに含めることができる。前記アクリル樹脂の含有量が前記範囲内であれば、人工歯の全般的な物性(すなわち、曲げ強さおよび曲げ弾性率以外の物性)が向上する。
前記アクリル樹脂は、Dianal BR-83(三菱レイヨン製造、ガラス転移温度105℃、重量平均分子量40,000)、Dianal BR-87(三菱レイヨン製造、ガラス転移温度105℃、重量平均分子量25,000)、Dianal BR-60(三菱レイヨン製造、ガラス転移温度75C、重量平均分子量70,000)、Dianal BR-77(三菱レイヨン製造、ガラス転移温度80C、重量平均分子量65,000)またはこれらの組み合わせを含めることができる。
【0011】
また、前記人工歯形成用組成物は、前記第1光硬化性化合物、前記第2光硬化性化合物、前記第3光硬化性化合物および前記第4光硬化性化合物の総重量100重量部に対して光開始剤1~20重量部をさらに含めることができる。前記光開始剤の含有量が前記範囲内であれば、前記人工歯形成用組成物の硬化時間が適当であり、保存の安定性が向上し、硬化物(すなわち、最終人工歯)の表面にしわが生じず、滑らかな表面を得ることができる。
前記光開始剤は、アセトフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、4-ベンゾイル安息香酸、2,2'-ビス(2-クロロフェニル)-4,4,5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール、2-ベンゾイル安息香酸メチル、2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、 2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4′-モノホリノブチロフェノン、(±)-カンファーキノン、2-クロロチオキサントン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、1,4-ジベンゾイルベンゼン、2-エチルアントラキノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム、2-メチル-4'-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、2-イソニトロソプロピオフェノン、2-フェニル-2-(p-トルエンスルホニルオキシ)アセトフェノン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドまたはこれらの組み合わせを含めることができる。
【0012】
また、前記人工歯形成用組成物は、前記第1光硬化性化合物、前記第2光硬化性化合物、前記第3光硬化性化合物および前記第4光硬化性化合物の総重量100重量部に対して酸化防止剤0.1~2重量部をさらに含めることができる。前記酸化防止剤の含有量が前記範囲内であれば、十分な酸化防止効果を得ながらも、人工歯の他の物性に悪影響を与えないことができる。
前記酸化防止剤は、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、4,4'-メチレンビス(6-tert-ブチル-o-クレゾール)のようなヒンダードフェノール系化合物;ジオクチルジフェニルアミン、α-フェニルナフタレンのような芳香族アミン系化合物; 硫黄化合物;リン化合物;硫黄とリンの複合物であるジアルキルジチオリン酸塩(例えば、硫化脂肪、ジセチルスルフィド、ジベンジルジスルフィド、アルキルジチオリン酸塩); ジサリシリジンジアミノプロパン;ジドデシルチオベンズイミダゾール;またはこれらの組み合わせを含めることができる。
また、前記人工歯形成用組成物は、前記第1光硬化性化合物、前記第2光硬化性化合物、前記第3光硬化性化合物および前記第4光硬化性化合物の総重量100重量部に対して白色顔料0.1~10重量部および有色顔料0.001~0.15重量部をさらに含めることができる。
【0013】
前記白色顔料は、金紅石(rutile)、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リソフォン(lithopone)、鉛白(leadwhite)、酸化アンチモンまたはこれらの組み合わせを含めることができる。
前記白色顔料は、20~80nm(例えば、40~60nm)の平均粒径を有する。例えば、前記白色顔料は、50nmの平均粒径を有する金紅石を含めることができる。
前記白色顔料の平均粒径が前記範囲(20~80nm)以内であれば、前記人工歯形成用組成物内で前記白色顔料の分散性が向上して貯蔵の安定性が増加するだけでなく、最終人工歯の透明度が向上する。
前記有色顔料は、黄色顔料および橙色顔料を含めることができる。
前記黄色顔料の含有量は、前記第1光硬化性化合物、前記第2光硬化性化合物、前記第3光硬化性化合物および前記第4光硬化性化合物の総重量100重量部に対して0.0005~0.075重量部であり得る。
前記オレンジ色顔料の含量は、前記第1光硬化性化合物、前記第2光硬化性化合物、前記第3光硬化性化合物および前記第4光硬化性化合物の総重量100重量部に対して0.0005~0.075重量部であり得る。
前記橙色顔料は、赤色顔料および黄色顔料を2:8の重量比で混合して製造されたものであり得る。すなわち、前記橙色顔料は、赤色顔料2重量部と黄色顔料8重量部を混合して製造されたものであり得る。
前記黄色顔料は、黄色4号(Tartrazine)、黄色5号(Sunset Yellow FCF)、黄色201号(Fluorescein)、黄色202号の(1)(Uranine)、黄色202号の(2)(Uranine K)、黄色203号(Quinoline Yellow WS)、黄色204号(Quinoline Yellow SS)、黄色401号(Hanza Yellow)、黄色403号の(1)(Naphthol Yellow S)、黄色407号(Fast Light Yellow 3G)、黄色酸化鉄(Iron Oxide Yellow, Hydrated Ferric Oxide)、HC黄色17号(HC YellowNo. 17)、塩基性黄色57号(Basic Yellow 57)、黄土またはこれらの組み合わせを含めることができる。
【0014】
前記赤色顔料は、赤色2号(Amaranth)、赤色40号(Allura Red AC)、赤色102号(New Coccine)、赤色103号の(1)(Eosine YS)、赤色104号の(1)(Phloxine B)、赤色104号の(2)(Phloxine BK)、赤色106号(Acid Red)、赤色201号(Lithol Rubine B)、赤色202号(Lithol Rubine BCA)、赤色205号(Lithol Red)、赤色206号(Lithol Red CA)、赤色207号(Lithol Red BA)、赤色208号(Lithol Red SR)、赤色218号(Tetrachlorotetrabromofluorescein)、赤色219号(Brilliant Lake Red R)、赤色220号(Deep Maroon)、赤色221号(Toluidine Red)、赤色223号(Tetrabromofluorescein)、赤色225号(Sudan III)、赤色226号(Helindone Pink CN)、赤色227号(Fast Acid Magenta)、赤色228号(Permaton Red)、赤色230号の(2)(Eosine YSK)、赤色401号(Violamine R)、赤色405号(Permanent Red F5R)、赤色504号(Ponceau SX)、赤色506号(Fast Red S)、赤色酸化鉄(Iron Oxide Red, Ferric Oxide)、塩基性赤色51号(Basic Red 51)、塩基性赤色76号(Basic Red 76)、HC赤色1号(HC Red No. 1)、酸性赤色52号(Acid Red 52)、酸性赤色92号(Acid Red 92)またはこれらの組み合わせを含めることができる。
前記人工歯形成用組成物は、300~800cps(centipoise)の粘度を有することができる。本明細書において、「粘度」は、Brookfield社のDV- Rheometer RPM(shear rate: 25/s)を使用して常温(25℃)で測定された粘度を意味する。
前記人工歯形成用組成物は、溶媒を含まないことがある。しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、前記人工歯形成用組成物は溶媒をさらに含めることもできる。
【0015】
前記溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、水、メチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、酢酸メチルグリコール、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、ベンジルアルコール、グリセリンまたはこれらの組み合わせを含めることができる。
前記人工歯形成用組成物は、安定化剤、可塑剤などの添加剤をさらに含めることができる。
前記安定化剤は、ベンゾフェノン、オキサニリド、ベンゾトリアゾール、ハロゲン化ベンゾトリアゾール、トリアジンまたはこれらの組み合わせを含めることができる。
前記可塑剤は、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、ソルビトール、マンニトールまたはこれらの組み合わせを含めることができる。
前記人工歯形成用組成物は、液状(または懸濁液)であり、光硬化性であり、3Dプリンティング用であり得る。
前記人工歯形成用組成物は、前記4種の光硬化性化合物の総重量100重量部、前記アクリル樹脂0.5~5重量部、前記光開始剤1~20重量部、前記酸化防止剤0.1~2重量部、前記白色顔料0.1~10重量部および前記有色顔料0.001~0.15重量部の範囲内で各構成成分の含有量比によって人の多様な天然歯の色を有し、不透明または半透明な人工歯を具現することができる。すなわち、前記人工歯形成用組成物の組成範囲内で、前記4種の光硬化性化合物、前記光開始剤、前記白色顔料および前記有色顔料の混合比率を適切に調節することによって、特定患者の天然歯の色と類似した不透明または半透明な人工歯を具現することができる。特に、前記4種の光硬化性化合物、前記アクリル樹脂、前記酸化防止剤、前記白色顔料および前記有色顔料の混合比率によって最終人工歯の色および/または透明度が決まる。また、最終人工歯の透明度は、前記白色顔料の平均粒径によっても変化し得る。
【0016】
以下、本発明の一具現例による人工歯の製造方法を詳しく説明する。
図1は、本発明の一具現例による人工歯の製造方法を示した流れ図である。
図1を参照すると、本発明の一具現例による人工歯の製造方法は、人工歯形成用組成物を製造する段階(S10)、前記人工歯形成用組成物を3Dプリンティングして部分硬化した人工歯を製造する段階(S20)、および前記部分硬化した人工歯を完全硬化させて最終人工歯を製造する段階(S30)を含む。
前記段階(S10)では、特定患者の天然歯の色に合うように前記人工歯形成用組成物の組成範囲内で、前記4種の光硬化性化合物、前記アクリル樹脂、前記光開始剤、前記酸化防止剤、前記白色顔料および前記有色顔料の混合比率を適切に調節することができる。
また、前記段階(S10)では、前記白色顔料の平均粒径を適切に調節して貯蔵の安定性が高い人工歯形成用組成物、および/または不透明または半透明な人工歯を提供できる人工歯形成用組成物を製造することができる。
前記段階(S20)は、3Dプリンターによって行われ、3Dプリンティング工程中にプリンティングされた人工歯形成用組成物に紫外線を連続的または断続的に照射することによって、前記人工歯形成用組成物を部分硬化させて人工歯の形状を作っていく。本明細書において、「部分硬化(partial curing)」とは、硬化率が40%~90%であることを意味する。
前記段階(S30)では、前記部分硬化した人工歯を別途の硬化装置を使用して完全硬化させることによって最終人工歯を製造する。本明細書において、「完全硬化(complete curing)」とは、硬化率が99%~100%であることを意味する。
以下、前記人工歯の製造方法により製造された人工歯を詳しく説明する。
【0017】
前記人工歯は、優れた機械的物性(高い曲げ強さおよび適正水準の曲げ弾性率)と審美性(色)を有する。
前記優れた機械的物性は、前記各光硬化性化合物の物性および配合比によるものであり、優れた審美性は前記各光硬化性化合物、前記アクリル樹脂、前記酸化防止剤、前記白色顔料および前記有色顔料の適切な混合比率および前記白色顔料の粒度調節によるものである。
以下、本発明を下記実施例を挙げて説明するが、本発明は下記実施例に限定されるわけではない。
【0018】
実施例1-1~1-7および比較例1-1~1-6:人工歯形成用組成物の製造
光硬化性化合物として前記化学式1で示されたジウレタンジメタクリレート(Cas No. 72869-4、R=Hである物質およびR=CH3である物質の混合物、分子式: C23H38N2O8)(PP1)、前記化学式2で示されたビスフェノールAグリセロラートジメタクリラート(Cas No. 1565-94-2)(PP2)、前記化学式3で示されたヒドロキシエチルメタクリレート(Cas No. 868-77-9)(PP3)、および前記化学式4で示されたトリエチレングリコールジメタクリレート(Cas No. 109-16-0)(PP4)、アクリル樹脂としてDianal BR-83(三菱レイヨン製造、ガラス転移温度105℃、重量平均分子量40,000)、光重合開始剤としてフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(Cas No. 162881-26-7)、酸化防止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、白色顔料として金紅石(Cas No. 1317-80-2)、黄色顔料(ウシンピグメントに注文製作)および下記のとおり製造された橙色顔料を含む人工歯形成用組成物を製造した。前記橙色顔料は、赤色顔料(ウシンピグメントに注文製作)および黄色顔料(ウシンピグメントに注文製作)を2:8の重量比で混合して製造した。各実施例および比較例で使用された物質および含有量を下表1に示した。下表1において、各数値の単位は重量部である。また、アクリル樹脂、光開始剤、酸化防止剤、白色顔料、黄色顔料および橙色顔料の含有量は、前記4種の光重合性化合物の総重量100重量部に対する含有量である。
【表1】

実施例2-1~2-7および比較例2-1~2-6:人工歯の製造
前記各実施例および比較例で製造された人工歯形成用組成物を3Dプリンターでプリンティングし、部分硬化させて部分硬化した人工歯を製造した。以後、前記部分硬化した人工歯を硬化装置を使用して完全硬化させ、最終人工歯を製造した。前記3Dプリンターと硬化装置は、1セットで製作されたものであり、Ray Dent Studio社の製品である。各人工歯形成用組成物を用いて三つずつの人工歯を製造した。
評価例1:人工歯の機械的物性評価
前記各実施例および比較例で製造された人工歯に対して、Material Testing Machine(MMS Company, Model: HZ-1004C, S/N: ABMMS14 5)を用いて曲げ強さ、曲げ弾性率(曲げ係数)および破断伸び(Elongation at Break)を測定し、その結果を下表2に示した。
【0019】
評価例2:人工歯の色および透明度評価
前記各実施例および比較例で製造された人工歯に対して官能検査を実施した。具体的には、訓練された5人の評価要員を対象に、以下のような方法で官能検査を実施した。まず、色が異なる16のShadeを備えたVita classical Shade guideを用意した。前記各Shadeは、複数人の天然歯の色を模倣して製造されたものである。以後、前記実施例2-1~2-7および比較例2-1~2-6で製造された人工歯を前記Shadeと比較して色および透明度が最も類似したもの同士を1対1でマッチングさせた。以後、互いにマッチングした人工歯とShadeのグループに対して色および透明度の類似性の程度を5点法でそれぞれ評価した後、各点数を項目別に平均して下表2に示した。ここで、各項目の点数が高いほど該当項目の類似性が高いことを意味する。
【表2】
前記表2を参照すると、実施例2-1~2-7で製造された人工歯は、比較例2-1~2-6で製造された人工歯に比べて曲げ強さおよび曲げ弾性率が共に優れていることが分かった。
また、実施例2-1~2-7および比較例2-1~2-6で製造された人工歯は、色は各対応Shadeと類似しているが、透明度が低く半透明であることが分かった。
以上で図面および実施例を参照して本発明による望ましい具現例が説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当該技術分野で通常の知識を持つ者であれば、これから様々な変形および均等な他の具現例が可能だという点を理解できる。したがって、本発明の保護範囲は、添付された特許請求の範囲によって定められなければならない。
図1