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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】役員退職給与額診断システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/10 20230101AFI20240603BHJP
   G06Q 40/12 20230101ALI20240603BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20240603BHJP
【FI】
G06Q40/10
G06Q40/12
G06Q10/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024047141
(22)【出願日】2024-03-22
【審査請求日】2024-04-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516343804
【氏名又は名称】シーロムパートナーズ税理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 由妃
(72)【発明者】
【氏名】中島 正裕
(72)【発明者】
【氏名】飯田 秀剛
【審査官】前田 侑香
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-302548(JP,A)
【文献】特開2003-85360(JP,A)
【文献】特開2002-92535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
税務否認リスクの観点から役員の退職給与支給予定額の妥当性を診断するコンピュータシステムであって、
前記コンピュータシステムは、
診断対象となる役員の退職給与支給予定額が税務上妥当な金額の範囲内にあるか否かを診断するための基本情報を受け付ける入力部と、
前記役員に相応な退職給与額を予測するために使用される、統計的手法又は機械学習により予め導出された予測モデル及び前記受け付けた基本情報が保存される記憶部と、
前記受け付けた基本情報を、前記予測モデルに入力して、前記役員に相応な退職給与額を予測する退職給与額予測部と、
前記退職給与額予測部により予測された前記役員に相応な退職給与額と前記予測モデルが有する予測誤差に基づいて税務上の過大否認リスク発生の閾値に相当する額を算出し、前記基本情報に含まれる前記役員の退職給与支給予定額が、前記算出された過大否認リスク発生の閾値に相当する額以下であるか否かを判定し、前記退職給与支給予定額が前記過大否認リスク発生の閾値に相当する額以下である場合、過大否認リスクは低く前記退職給与支給予定額は妥当であると診断し、前記退職給与支給予定額が前記過大否認リスク発生の閾値に相当する額を超える場合、過大否認リスクが高く前記退職給与支給予定額は妥当でないと診断する支給金額診断部と、
前記診断の結果を所定の表示形式で表示手段に出力する診断結果出力部と、
前記入力部、前記記憶部、前記退職給与額予測部、前記支給金額診断部、前記診断結果出力部、及びシステム全般を制御する制御部と、を備え、
前記支給金額診断部は、前記過大否認リスク発生の閾値に相当する額として、前記予測モデルが有する予測誤差に所定の係数を掛けた金額を前記予測された前記役員に相応な退職給与額に加えた金額を設定することを特徴とする役員退職給与額診断システム。
【請求項2】
前記基本情報は、データ項目として、前記診断対象となる役員の役職、役員在任年数、退任時月額報酬、及び勤務先の法人情報をさらに含み、前記勤務先の法人情報は、法人の種類、従業員数、年商、及び資本金のうちの1つ以上をデータ項目に含むことを特徴とする請求項1に記載の役員退職給与額診断システム。
【請求項3】
前記コンピュータシステムは、ユーザ入力に基づいて、前記予測モデルの種類と使用すするデータ項目の設定及び変更を行うモデル設定部をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の役員退職給与額診断システム。
【請求項4】
前記統計的手法により導出された前記予測モデルは、予め収集された統計的に有意な数の法人の役員退職給与支給実績情報を利用して、前記基本情報に含まれるデータ項目のうちの少なくとも2つ以上を説明変数とする重回帰分析により導出された回帰モデルであることを特徴とする請求項2に記載の役員退職給与額診断システム。
【請求項5】
前記機械学習により導出された前記予測モデルは、予め収集された統計的に有意な数の法人の役員退職給与支給実績情報を利用したディープラーニングにより導出された回帰モデルであり、前記基本情報に含まれるデータ項目のうちの少なくとも2つ以上を入力層とし、退職給与額の予測値を出力層とし、中間層として前記基本情報のうちの前記入力層及び前記出力層に設定されていないデータ項目を1つ以上含むことを特徴とする請求項2に記載の役員退職給与額診断システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記受け付けた基本情報及び前記診断の結果を前記診断対象となる役員ごとに前記記憶部に保存することを特徴とする請求項1に記載の役員退職給与額診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、役員退職給与額診断システムに関し、より詳しくは、役員退職給与支給予定額の妥当性を税務否認リスクの観点から診断する役員退職給与額診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
役員退職給与、いわゆる役員退職金は、企業にとって人事政策及び財務管理上の重要事項であり、企業等においては、一般に役員退職金規程を設けて、その企業に属する役員の退職金・死亡退職金等について過去の在位年数、功績倍率、退任時の月額報酬等に基づいて計算されている。
【0003】
役員退職金は、株主総会での決議等を経て支給され、かつ適正な金額の範囲内であれば、税務上損金に算入することが可能である。しかしながら、税務当局からその金額が同業他社の支給状況等に照らして、過大であると判断されると、不相当に高額な部分については損金算入が否認される。
【0004】
一方、税務当局が役員退職給与を否認する根拠として通常採用する平均的功績倍率法については、その倍率を算定する基礎となる同業類似法人のサンプリング過程が非公開であるため、納税者である企業にとっては、支給予定の役員退職給与が税務当局から過大として否認されない金額であるか否かを適正に判断することが難しいという問題がある。
【0005】
従来、企業の資金計画をサポートする目的で、退職金をシミュレーションするシステム(特許文献1)や、企業経営者の死亡による経済的危機に備えるための保険金額を算出する技術(特許文献2)が提案されているが、上述の如く、算出された退職金が、税務上、過大と判断されない適正な金額であるか否かを予測することの必要性については想到されておらず、支給予定の役員退職給与額が、相当と認められる範囲内にあるか否かを適正に診断するシステムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-92535号公報
【文献】特開平10-254970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、役員退職給与支給予定額の妥当性を税務当局による過大否認リスクの観点から診断する役員退職給与額診断システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様による役員退職給与額診断システムは、税務否認リスクの観点から役員の退職給与支給予定額の妥当性を診断するコンピュータシステムであって、前記コンピュータシステムは、診断対象となる役員の退職給与支給予定額が税務上妥当な金額の範囲内にあるか否かを診断するための基本情報を受け付ける入力部と、前記役員に相応な退職給与額を予測するために使用される、統計的手法又は機械学習により予め導出された予測モデルと前記受け付けた基本情報が保存される記憶部と、前記受け付けた基本情報を、前記予測モデルに入力して、前記役員に相応な退職給与額を予測する退職給与額予測部と、前記退職給与額予測部により予測された前記役員に相応な退職給与額と前記予測モデルの予測誤差に基づいて税務上の過大否認リスク発生の閾値に相当する額を算出し、前記基本情報に含まれる前記役員の退職給与支給予定額が、前記算出された過大否認限度額以下であるか否かを判定し、前記退職給与支給予定額が前記過大否認リスク発生の閾値に相当する額以下である場合、過大否認リスクは低く前記退職給与支給予定額は妥当であると診断し、前記退職給与支給予定額が前記過大否認リスク発生の閾値に相当する額を超える場合、過大否認リスクが高く前記退職給与支給予定額は妥当でないと診断する支給金額診断部と、前記診断の結果を所定の表示形式で表示手段に出力する診断結果出力部と、前記入力部、前記記憶部、前記退職給与額予測部、前記支給金額診断部、前記診断結果出力部、及びシステム全般を制御する制御部と、を備え、前記支給金額診断部は、前記過大否認リスク発生の閾値に相当する額として、前記予測モデルが有する予測誤差に所定の係数を掛けた金額を前記予測された前記役員に相応な退職給与額に加えた金額を設定することを特徴とする。
【0009】
前記基本情報は、データ項目として、前記診断対象となる役員の役職、役員在任年数、退任時月額報酬、及び勤務先の法人情報をさらに含み、前記勤務先の法人情報は、法人の種類、従業員数、年商、及び資本金のうちの1つ以上をデータ項目に含むことが好ましい。
前記コンピュータシステムは、ユーザ入力に基づいて、前記予測モデルの種類と使用するデータ項目の設定及び変更を行うモデル設定部をさらに含み得る。
前記統計的手法により導出された前記予測モデルは、予め収集された統計的に有意な数の法人の役員退職給与支給実績情報を利用して、前記基本情報に含まれるデータ項目のうちの少なくとも2つ以上を説明変数とする重回帰分析により導出された回帰モデルであることが好ましい。
前記機械学習により導出された前記予測モデルは、予め収集された統計的に有意な数の法人の役員退職給与支給実績情報を利用したディープラーニングにより導出された回帰モデルであり、基本情報に含まれるデータ項目のうちの少なくとも2つ以上を入力層とし、退職給与額の予測値を出力層とし、中間層として前記基本情報のうちの前記入力層及び前記出力層に設定されていないデータ項目を1つ以上含むことが好ましい。
前記制御部は、前記受け付けた基本情報及び前記診断の結果を前記診断対象となる役員ごとに前記記憶部に保存することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、役員の退職給与支給予定額の妥当性を税務上の過大否認リスクの観点から簡便に診断することができる。したがって、顧客に適切な退職給与準備プランや税務処理を提案することができる。また、本発明による役員退職給与額診断システムは、恣意的なサンプリングを排除し、一般に公開されたデータを利用した統計分析又は機械学習によって最適化された予測モデルを用いることができるため、公平かつ精度の高い予測結果を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態による役員退職給与額診断システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態による役員退職給与額診断システムの機能的構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態による役員退職給与額診断システムの入力部により生成された初期画面の一例を示す図である。
図4】本実施形態による役員退職給与額診断システムの入力部により生成された利用者登録のための入力用画面の一例を示す図である。
図5】利用者登録のための入力用画面から入力されたデータ項目からなるデータテーブルの例を示す図である。
図6】本実施形態による役員退職給与額診断システムの入力部により生成された診断対象者情報の入力用画面の一例を示す図である。
図7】診断対象者情報の入力用画面から入力されたデータ項目からなる診断対象者データテーブルの例を示す図である。
図8】ディープラーニングを適用した退職給与額の予測モデルを説明するための図である
図9】本実施形態による診断結果出力部が出力した診断結果表示画面の一例を示す図である。
図10】本実施形態における役員退職給与額診断システムの入力部により生成されたモデル管理用画面の一例を示す図である。
図11】本実施形態におけるモデル設定部により生成されたモデリング条件を設定するための入力用画面の一例を示す図である。
図12】本発明の一実施形態による役員退職給与額診断システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態による役員退職給与額診断システムの構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示す本発明の一実施形態による役員退職給与額診断システム10は、一般的なコンピュータで構成されるシステムであって、制御装置11、記憶装置12、入力装置13、表示装置14、及び出力装置15を備える。さらに、外部の端末装置20等とのネットワーク接続を行う通信装置16を備える。
【0015】
制御装置11は、中央処理装置(CPU)、並びにROM及びRAM(図示せず)等を有し、OS(Operating System)、所定のプログラム及びデータを読み込んで実行することで、後述する本発明の役員退職給与額診断システム10を構成する各部(各機能部)を実現するとともにこれらの各部を制御する。
【0016】
記憶装置12には、各種のデータ及びプログラムが保存され、後述するデータ内容に応じた記憶領域(以下、保存部という)を含んだ記憶部を構成する。記憶装置12は、SSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性の記憶装置であることが望ましい。また、1台の記憶装置である必要はなく、通信ネットワークで互いに接続された複数台の記憶装置で構成されてもよい。言い換えると、記憶装置12は、役員退職給与額診断システム10に内蔵されるか又は通信ネットワークで接続されたデータサーバで構成され得る。
【0017】
入力装置13は、利用者からの指示を含む各種入力を受け付けるための装置であって、キーボードや、マウス等のポインティングデバイス又はタッチパッドなどで構成される。また、入力装置13は、周辺機器との接続用インタフェースを備えて、コンピュータ読取り可能な記憶媒体に保存されたデータを取得することができるように構成されてもよい。
【0018】
表示装置14は、制御装置11によって生成された入力用画面や、取得した情報及び演算結果を利用者に対して視覚的に表すディスプレイ装置である。表示装置14は、タッチ入力が可能なタッチパッドと組み合わされたタッチパネルとして、入力装置13と一部機能を分担する構成とすることも可能である。
【0019】
出力装置15は、紙媒体への書き込みを行うプリンタ又はコンピュータ読み取り可能な記録媒体への書き込みを行うデータ書き込み装置等であり、コンピュータ本体に接続された外部装置として構成されるか又はコンピュータ内に含まれる形態で構成される。
【0020】
通信装置16は、外部の端末装置20等にネットワーク接続するための通信デバイス等で構成され、通信インタフェースとして機能する。通信装置16は、例えば、有線LAN又は無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、又はWiFi(登録商標)用の通信カード等であり、また、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、又は各種通信用のモデム等であってもよい。
【0021】
端末装置20は、役員退職給与額診断システム10にネットワーク接続された外部のコンピュータ端末又は携帯情報端末であり、役員退職給与額診断システム10を利用して診断対象となる役員に相応な(妥当な)退職給与額を予測するための基本情報を提供(送信)する。端末装置20は、役員退職給与額診断システム10による診断結果を受信するように構成されてもよい。
【0022】
本発明の一実施形態による役員退職給与額診断システム10は、単独のコンピュータで構成される形態に限定されるものではなく、ネットワーク接続されたクラウドコンピューティングによって構成されてもよい。
【0023】
以下、本発明の一実施形態による役員退職給与額診断システムの機能構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態による役員退職給与額診断システムの機能的構成を示すブロック図である。
【0025】
図2に示すように、本発明の一実施形態による役員退職給与額診断システム10は、制御装置11により構成される制御部100のCPUで役員退職給与額診断プログラムを実行させることによって実現される機能部として、モデル設定部120、退職給与予測部130、支給金額診断部140、及び診断結果出力部150を含む。
【0026】
また、役員退職給与額診断システム10は、入力装置13又は端末装置20からの入力情報を受け付ける入力部110と、診断結果を出力装置15又は端末装置20に出力(送信)する出力インタフェース(I/F)部160と、記憶される内容に応じて割り当てられた予測モデル保存部210、予測データ保存部220、及び診断関連情報保存部230を含む記憶部200とを備え、上述した機能部、入力部、出力部、記憶部、及びシステム全般を、制御部100が制御する(制御部と各機能部を結ぶ連結線は図示せず)。
【0027】
入力部110は、本システム(役員退職給与額診断システム)10に実行させる処理を指示する入力を受け付けるための初期画面を生成して表示装置14又はネットワーク接続された端末装置20に表示させ、表示された初期画面に利用者が入力した指示及び/又は情報(データ)を、入力装置13(又は通信装置16)を介して受信し、所定の出力先(該当する機能部又は制御部)に伝送する。
【0028】
具体的に、入力部110は、診断を希望する利用者(個人又は法人)情報を登録する段階、診断対象者に関する情報を入力する段階、及び本システム10で使用する予測モデルに対するモデリング条件等の設定情報を入力する段階へそれぞれ移動(進行)するための指示入力を初期画面で受け付けて、受け付けた指示入力を制御部100に伝送する。制御部100は、指示入力に対応したプログラムを実行することで、該当する各機能部を動作させて指定された処理を進行させる。
【0029】
図3は、本実施形態による役員退職給与額診断システムの入力部により生成された初期画面の一例を示す図である。
【0030】
入力部110は、初期画面300で利用者から、例えば、利用者が所属する法人等に関する情報を入力するための画面に移動する指示入力、即ち、図3に示す「1.利用者登録」の画像部分(ボタン表示)を指示(クリック)する入力を受け付けると、制御部100にその指示入力を伝送する。
【0031】
また、入力部110は、診断対象となる役員の役職や役員在任年数、退職給与支給予定額などの情報を入力するための画面に移動する指示入力、即ち、図3に示す「2.診断対象者情報入力」の画像部分を指示する入力を受け付けると、制御部100を介して退職給与予測部130にその指示入力を伝送する。
【0032】
同様に、入力部110は、初期画面300でユーザから、本システム10で用いられる予測モデルの管理を行うための画面に移動する指示入力、即ち、図3に示す「3.モデル管理」の画像部分を指示する入力を受け付けると、制御部100及びモデル設定部120にその指示入力を伝送する。なお、予測モデルの管理を行える利用者は、予め登録された管理者権限を有する者に限られ、移動した先の画面で個人認証が求められる構成とすることが望ましい。予測モデルの管理には、本システム10で利用される予測モデルの種類の選択、選択した予測モデルで使用するデータ項目、及びモデルパラメータ導出用データテーブルを設定することが含まれる。
【0033】
入力部110は、初期画面300で利用者から、図3に示す「1.利用者登録」の画像部分(ボタン表示)を指示(クリック)する入力を受け付けると、本システム10の利用を希望する利用者(個人又は法人)に関する情報を入力するための画面を生成して、表示装置14又はネットワーク接続された端末装置20に表示させる。
【0034】
図4は、本実施形態による役員退職給与額診断システムの入力部によって生成された利用者登録のための入力用画面の一例を示す図である。以下の説明では、入力用画面が表示装置14に表示される場合について説明するが、ネットワーク接続された端末装置20に表示される場合も同様である。
【0035】
図4に示す入力用画面400に表示された、入力項目に対応した複数のテキストボックス(401~407)に、それぞれ利用者となる法人等の名称、種類(株式会社、同族会社など)、資本金、従業員数、業種、年商、及び所在地が入力装置13を介して入力されると、入力部110は、各テキストボックス(401~407)に対応したデータ項目からなるデータテーブルAを作成して、記憶部200の診断関連情報保存部230に保存する。
【0036】
各テキストボックス(401~407)は表計算ソフトの入力欄(セル)に対応付けられており、一部のテキストボックス(401、402)に入力される情報(データ)は、図6を参照して後述する診断対象者情報の入力に対応付けられたデータテーブルBにリンクされて、データテーブルBの該当する項目(法人等の名称、種類など)に、一部のテキストボックス(401、402)に入力された情報が反映される。
【0037】
図5は、利用者登録のための入力用画面から入力されたデータ項目からなるデータテーブルの例を示す図である。本明細書中の説明において、データテーブルAは「企業情報データテーブルA」と呼ぶ。
【0038】
入力部110は、図4に示す入力用画面400に表示された「登録」ボタン410が指示(クリック)されると、入力が終了したと判断して、作成された企業情報データテーブルAを診断関連情報保存部230に保存する。この際、入力部110は、保存される企業情報データテーブルAに、識別のための「ユーザID」を関連付けて保存する。ユーザIDは、例えば、図4に示す入力用画面400のユーザID表示欄420に表示される。これと同時に、ユーザIDは、出力インタフェース部160を介して出力装置15や端末装置20に出力(送信)されてもよい。
【0039】
入力部110は、初期画面300で利用者から、図3に示す「2.診断対象者情報入力」の画像部分(ボタン表示)を指示(クリック)する入力を受け付けると、診断対象となる役員の役職や役員在任年数、退職給与支給予定額などの情報を入力するための画面を生成して、表示装置14に表示させる。
【0040】
図6は、本実施形態による役員退職給与額診断システムの入力部により生成された診断対象者情報の入力用画面の一例を示す図である。
【0041】
図6に示す入力用画面600で、利用者登録時に付与された「ユーザID」がテキストボックス601に入力されると、制御部100は、入力されたユーザIDの認証を行い、認証されたユーザIDに該当する企業情報データテーブルAを記憶部200内の診断関連情報保存部230から読み出して、利用者が確認できるように所定の形式で表示させる。図6に示す入力用画面600では、法人等の「名称」と「種類」をテキストボックス(602、603)に表示している。
【0042】
診断対象者情報の入力用画面600には、診断対象となる役員の役員歴及び報酬に関する情報を入力するためのテキストボックスが表示される。本実施形態では、診断対象となる役員の役員歴及び報酬に関する入力項目として、役員氏名、役職、役員在任年数、退任時月額報酬、及び退職給与支給予定額が設定され、それぞれの項目に対して、テキストボックス(604~608)が設けられている。但し、入力項目はこれに限定されない。
【0043】
入力装置13(又は通信装置16)を介して、入力用画面600の各入力項目に対応したテキストボックス(604~608)に診断対象となる役員の情報が入力された後、図6に示す入力用画面600に表示された「登録」ボタン610が指示(クリック)されると、入力部110は、入力が終了したと判断し、ユーザIDを識別子として、各テキストボックス(604~608)に対応したデータ項目からなるデータテーブルBを作成して、記憶部200の診断関連情報保存部230に保存する。以下、データテーブルBは、本明細書中の説明において、「診断対象者データテーブルB」と呼ぶ。
【0044】
図7は、診断対象者情報の入力用画面から入力されたデータ項目からなる診断対象者データテーブルの例を示す図である。図7に例示した診断対象者データテーブルBは、ユーザIDを共通の識別子として、図5に例示した企業情報データテーブルAとリンクテーブルを構成する。
【0045】
上述した、利用者登録のための入力用画面400から入力された利用者企業の情報、及び診断対象者情報の入力用画面600から入力された診断対象となる役員の情報は、役員退職給与額診断システム10において、診断対象となる役員の退職給与支給予定額が税務上妥当な金額の範囲内にあるか否かを診断するための基本情報に該当する。
【0046】
図6に示す入力用画面600に表示された「診断に進む」ボタン620が指示(クリック)されると、制御部100は退職給与予測部130を機能させて、企業情報データテーブルA及び診断対象者データテーブルBに登録された基本情報を使用して、診断対象となる役員に相応な退職給与額を予測し、予測された退職給与額(以下、退職給与予測額という)を予測データ保存部220に保存する。
ここで、「相応な退職給与額」とは、診断対象となる役員と同業類似法人に属する同じ役職の役員が通常存在する諸要素の差異やその個々の特殊性を捨象して平準化した場合に受け取ると見込まれる退職給与の相当額を意味する。
【0047】
退職給与予測部130は、診断対象となる役員に相応な退職給与額を予測するためのモデルとして、予め収集された統計的に有意な数の法人の役員退職給与支給実績情報を利用した統計的分析又は機械学習により導出された回帰モデルを予測モデルとして使用することができる。予め導出された予測モデルと当該モデルが有する予測誤差は、記憶部200の予測モデル保存部210に保存される。なお、予測に使用する回帰モデルを設定する段階の詳細については後述する。
【0048】
退職給与予測部130は、統計的分析又は機械学習により導出された予測モデルに、企業情報データテーブルA及び診断対象者データテーブルBの中から、予測モデルの説明変数(又は入力変数)に指定されたデータ項目に登録されているデータを入力して、診断対象の役員の基本情報に対応した(すなわち、相応な)退職給与額を予測(算出)する。
【0049】
一例として、統計的手法により導出された予測モデルを適用する場合、退職給与予測部130は、下記の式(1)に示す重回帰式において、例えば、後述する「モデル管理」に係る処理段階で、企業情報データテーブルAの「従業員数」、「年商」、又は「資本金」のうちの少なくとも1つと、診断対象者データテーブルBの「役員在任年数」とが説明変数に設定されると、これらの説明変数からなる重回帰式に、図5及び図7に示した両データテーブル(A、B)の中から、診断対象となる役員が所属する企業のユーザIDに対応付けられたデータ列の該当するデータ項目のセルに登録されたデータを入力して、目的変数となる退職給与額の予測値(退職給与予測額)を算出する。
【0050】
【数1】
【0051】
具体的に、企業情報データテーブルAの「従業員数」が説明変数Xに、診断対象者データテーブルBの「役員在任年数」が説明変数Xに設定された場合には、式(1)において、X~Xはオミットされる。また、これらの説明変数(X、X)に対応した偏回帰係数(β、β)及び定数βは、当該モデルの導出段階で、予め算出されて予測モデル保存部210に保存されている。但し、説明変数の数及びデータ項目は、上述の2項目に限定されず、例えば、登録された3項目以上のデータ項目に対する多重共線性の評価結果に基づいて、予測計算の際に使用する説明変数を決定する処理を行ってもよい。
【0052】
以上で説明した本実施形態では、予測モデルとして、統計的手法のうちの線形回帰により導出された回帰式を用いているが、本発明はこれに限定されない。
【0053】
他の例として、機械学習により導出された予測モデルを適用する場合には、線形回帰の他に、決定木やランダムフォレスト、サポートベクトルマシン、ニューラルネットワークによるモデル、さらにディープラーニングなどを利用してもよい。
【0054】
図8は、ディープラーニングを適用した退職給与額の予測モデルを説明するための図である。
【0055】
ディープラーニングによる退職給与額の予測モデルの導出にあたっては、例えば、当初は少なくとも、入力層、中間層、出力層の3層で行い、実データの90%を学習データ用に用い、残りの10%をテスト用データに用いてモデルを構築する。その後、予測誤差に応じて、中間層の数や学習データとテストデータとの比率などを見直すことができる。
【0056】
一例として、退職給与額の予測モデルの導出にディープラーニングを適用する場合、例えば、上記の重回帰式に設定された説明変数(X、X)を入力層(x、x)とし、説明変数(X、X)のほかに媒介変数(a、a、a)を中間層とし、目的変数(y(但し、取り得る値がy,…,y))となる退職給与額の予測値を出力層とする多層ニューラルネットワーク(図8を参照)が設定され、予め収集された統計的に有意な数の法人の役員退職給与支給実績情報(データセットに構成されている)を利用して、設定された多層ニューラルネットワークにより算出された退職給与額の予測値(予測額)と支給実績額とを、下記の式(2)に示す2乗誤差関数に入力して、誤差関数値Enが最小になる重みwijを誤差伝搬法により求めることによりモデルを最適化する。なお、説明の便宜上、図8には、3階層のニューラルネットワークが例示されているが、中間層をさらに多層化することでディープラーニングを構成することができる。
【0057】
【数2】
【0058】
なお、予測値yと、入力層(x、x)及び中間層(a、a、a)との関係式は、下記の一連の数式3で表される。
【0059】
【数3】
【0060】
支給金額診断部140は、退職給与予測部130により予測された診断対象となる役員に相応な退職給与額(退職給与予測額)を受け取ると、予測に使用した予測モデルが有する予測誤差(統計的手法により導出された回帰モデルの場合は、標準誤差)に所定の係数を掛けた金額を、受け取った退職給与予測額に加えて、過大否認リスク発生の閾値に相当する額を算出し、算出された過大否認リスク発生の閾値に相当する額と、診断対象者データテーブルBの「退職給与支給予定額」に登録された金額とを比較する。
【0061】
そして、診断対象となる役員の退職給与支給予定額が、過大否認リスク発生の閾値に相当する額以下であるか否かを判定し、退職給与支給予定額が過大否認リスク発生の閾値に相当する額以下である場合、過大否認リスクは低く退職給与支給予定額は妥当であると診断し、退職給与支給予定額が過大否認リスク発生の閾値に相当する額を超える場合、過大否認リスクが高く退職給与支給予定額は妥当でないと診断する。
【0062】
過大否認リスク発生の閾値に相当する額を算出するために予測モデルが有する予測誤差に掛ける(乗じる)係数は、過去の税務当局により過大否認の実績値や判例に基づいて決定される。一例として、統計的手法により導出された予測モデル(重回帰モデル)の場合、係数は、1.0~1.96の範囲内に設定される。
【0063】
診断結果出力部150は、支給金額診断部140から、診断の結果を所定の表示形式で表示手段に出力する。本実施形態では、算出された退職給与予測額を確率分布グラフの形式で表示装置14に出力する。
【0064】
図9は、本実施形態による診断結果出力部が出力した診断結果表示画面の一例を示す図である。図9に示す診断結果表示画面900には、統計的手法により導出された予測モデルにより予測された診断対象となる役員に相応な退職給与予測額を代表値とし、これに予測モデルの標準誤差に基づいて計算された過大否認リスク発生の閾値に相当する額が表示された分布図に、診断対象者データテーブルBに保存された退職給与支給予定額が重ねてプロットされている。診断結果表示画面900には、さらに、テキスト表示欄901に、ユーザID及び法人等の名称が表示され、テキスト表示欄902に、診断対象者に対する支給金額診断部140による税務否認のリスクを判定した結果が表示されている。但し、これは一例であって、診断結果の表示形式は、図9の例に限定されない。
【0065】
入力部110は、初期画面300で利用者から、図3に示す「3.モデル管理」の画像部分(ボタン表示)を指示(クリック)する入力を受け付けると、役員退職給与の調査データ(役員退職給与支給実績情報)の登録や予測モデルの導出に用いられる入力変数等の設定情報を入力するための画面を生成して、表示装置14に表示させる。
【0066】
図10は、本実施形態における役員退職給与額診断システムの入力部により生成されたモデル管理用画面の一例を示す図である。
【0067】
図10に示すモデル管理用画面1000には、作業項目を選択する欄と、管理者IDの入力欄1001が表示され、予め登録された管理者権限を有する利用者のみが次の段階に進むことができるように構成される。
【0068】
制御部100は、図10に示すモデル管理用画面1000から、管理者IDが入力欄1001に入力され、作業項目として「モデリング条件設定」が選択された後に、実行の指示入力(「決定」ボタン1010をクリック)を受信すると、管理者IDの認証を行い、認証に成功すると、モデル設定部120を機能させる。
【0069】
モデル設定部120は、管理者が統計モデル又は機械学習モデルに対応したモデルの導出又は学習条件を設定するための入力用画面を生成して、表示装置14に表示させる。
【0070】
図11は、本実施形態におけるモデル設定部により生成されたモデリング条件を設定するための入力用画面の一例を示す図である。本実施形態では、統計モデルの場合について説明する。
【0071】
図11に示す入力用画面1100には、目的変数となるデータ項目(本実施形態では、退職給与予測額)に対して、影響を及ぼすデータ項目、すなわち、退職給与予測額の算出に使用する予測モデル(本実施形態では、重回帰モデルの場合を説明)の説明変数に設定するデータ項目を選択するための入力欄(説明変数選択欄)Dが表示される。例えば、管理者は、説明変数選択欄Dに表示されたデータ項目の中から、「従業員数」、「年商」、「役職」、「役員在任年数」の欄にチェックを入れる(ポインティングする)。
【0072】
また、入力用画面1100には、予測モデルの種類を選択する欄Eが表示される。選択欄Eにはスクロールボタン1110が配置され、使用する予測モデルの種類をスクロールして選択可能に構成されてもよい。その後、「決定」ボタン1120がクリックされると、モデル設定部120は、診断関連情報保存部230に保存された企業情報データテーブルA及び診断対象者データテーブルBの中から、説明変数選択欄Dで選択されたデータ項目のデータを配列したモデルパラメータ導出用データテーブル(図示せず)を生成する。
【0073】
したがって、説明変数選択欄Dに表示されたデータ項目を指定することで、データ項目の変更や追加が可能であり、「更新」ボタン1130をクリックすると、再配列されたモデルパラメータ導出用データテーブルが作成される。なお、モデルパラメータ導出用データテーブルには、利用者が登録したデータだけでなく、民間で入手可能な統計的に有意な数の法人の役員退職給与支給実績情報からなるデータセット(上述した両データテーブルに含まれるデータ項目で構成されたデータセット)や公刊物から取得された役員退職給与支給額に関するデータを収集して登録しておくことが好ましい。
【0074】
モデル設定部120は、モデルパラメータ導出用データテーブルの作成後、予測モデルの種類を指定する指令を受信すると、予測モデル保存部210から指定された予測モデルの表現式又は数式(予測モデル式と略記)を取得し、作成されたモデルパラメータ導出用データテーブルの当該データ項目に含まれるデータを利用して、統計処理を実行し、予測モデルの各説明変数に対する係数を算出又は最適化する。
【0075】
その後、モデルパラメータ導出用データテーブルを利用して導出された、予測モデル式に含まれる説明変数の係数(重回帰の場合は、偏回帰係数)及び予測誤差(重回帰の場合は、標準誤差)が予測モデル保存部210に保存又は上書き保存する。なお、機械学習モデル(ディープラーニング)の場合には、予測モデルの中間層に指定されるデータ項目自体(即ち、データ項目の組み合わせ)を最適化する処理を加えて、学習処理を実行させてもよい。
【0076】
図10に示すモデル管理用画面において、「予測モデル管理」及び「登録情報管理」は、それぞれ作成された予測モデル式及び登録された利用者情報の修正、削除などを行う処理に対応し、詳細な説明は省略する。
【0077】
モデル管理用の入力用画面1000、1100を上述の構成とすることにより、管理者は、診断のためのデータ項目や予測モデルに、取得した実績データを反映させて適正に設定することができる。なお、管理者は、図11の入力用画面1100の「再設定」ボタン1140を指示(クリック)することにより、説明変数及び/又は予測モデルの選択から、やり直すことができる構成とすることも可能である。
【0078】
以下、本発明の一実施形態による役員退職給与額診断システムよるデータ処理フローを図1~3及び図12を参照しながら詳細に説明する。
【0079】
本実施形態による役員退職給与額診断システム10は、制御部100が役員退職給与額診断プログラムを実行して、後述するステップS100からステップS370までの一連のステップを、利用者の指示入力に基づいて進行させるため、利用者による操作は、上述した役員退職給与額診断システム10が画面表示する選択用アイコン(ボタン)の指示(クリック)及び入力欄への数値入力に簡略化される。
【0080】
したがって、利用者は、役員退職給与の税務に関する専門知識やプログラミング技能を必要とせずに、統計的分析に基づく診断対象役員に相応な(標準的な)役員退職給与額の見積りや税務上の過大否認リスクの観点から役員退職給与支給予定額の妥当性を診断することができる。また、本実施形態による役員退職給与額診断システム10は、取得した診断対象者データと企業情報データに含まれる全てのデータ項目の中から、予測モデルの学習用に有効なデータ項目を選定することも可能である。
【0081】
図12は、本発明の一実施形態による役員退職給与額診断システムの動作を示すフローチャートである。
【0082】
図12に示すように、役員退職給与額診断システム10が起動されると、役員退職給与額診断システム10の制御部100は、役員退職給与額診断プログラムを実行して、入力部110に初期画面(図3を参照)を生成させて、表示装置14に表示させる(ステップS100)。なお、以下の説明では各段階の処理を実行する本システム10の個々の機能部の機能及び動作の詳細説明は上述した通りであるので省略する。画面表示に基づく指示等の入力はタッチパッドを備えて入力装置13のポインティング入力機能を兼ねる表示装置14が対応するものとして説明する。
【0083】
初期画面300に表示された「作業項目」の中の「1.利用者登録」が選択されると(ステップS110)、入力部110は、利用者情報登録のための入力用画面(図4を参照)を生成して表示させる(ステップS120)。入力用画面400に表示されたテキストボックス形式の入力欄(入力セル)に、法人等の名称、種類、資本金、従業員数、業種、年商、及び所在地が入力され、入力用画面400に表示された「登録」ボタン410が指示(クリック)されると、入力部110は各入力欄に入力されたデータ項目からなるデータ行を作成して、記憶部200の診断関連情報保存部230に保存された企業情報データテーブルAに登録する(ステップS130)。その後、ステップS100に戻り、次の指示入力まで待機する。
【0084】
なお、利用者情報の入力は、ネットワーク接続された端末装置20に表示させた入力用画面を介して実施可能に構成されてもよい。この場合、役員退職給与額診断システム10は、通信装置16を介して端末装置20にネットワーク接続され、端末装置20とデータ通信可能に構成される。
【0085】
初期画面300に表示された「作業項目」の中の「2.診断対象者情報入力」が選択されると(ステップS110)、入力部110は、診断対象者情報を入力するための入力用画面600(図6を参照)を生成して表示装置14に表示させる(ステップS220)。その後、入力用画面600に表示されたテキストボックス形式の入力欄(入力セル)に、診断対象となる役員の各情報が入力され、「登録」ボタン610が指示されると、入力部110は、入力されたデータ項目からなるデータ行を作成して、記憶部200の診断関連情報保存部230に保存された診断対象者情報データテーブルBに登録する(ステップS230)。
【0086】
退職給与予測部130は、企業情報データテーブルA及び診断対象者データテーブルBに登録された利用者の企業情報データ及び診断対象者データを使用して、診断対象となる役員と同業類似法人に属する同じ役職の役員が受け取る相応な退職給与額(退職給与予測額)を所定の予測モデルにより予測(算出)する(ステップS240)。
【0087】
退職給与予測部130は、支給金額診断部140に、退職給与予測額を出力し、税務調査予測部140は、受け取った退職給与予測額に、予測に使用した予測モデルの予測誤差に所定の係数を掛けた金額を加えて、過大否認リスク発生の閾値に相当する額を算出する(ステップS250)。
【0088】
支給金額診断部140は、算出された過大否認リスク発生の閾値に相当する額と診断対象者データテーブルBに登録された退職給与支給予定額とを比較して、過大否認リスク面からの妥当性を診断する(ステップS260)。すなわち、退職給与支給予定額が過大否認リスク発生の閾値に相当する額以下である場合には、過大否認リスク低く退職給与支給予定額は妥当であると診断し、退職給与支給予定額が過大否認リスク発生の閾値に相当する額を超える場合には、過大否認リスクが高く退職給与支給予定額は妥当でないと診断する。そして、診断結果出力部150は、支給金額診断部140から、診断の結果を所定の表示形式で表示手段に出力する。
【0089】
初期画面300に表示された「作業項目」の中の「3.モデル管理」が指示されると(ステップS110)、入力部110は、モデル管理用画面(図10を参照)を生成して表示させる(ステップS320)。モデル管理用画面1000に表示された作業項目の中から所望の作業を選択する(ステップS330)。「モデリング条件設定」を選択する入力を受信すると、モデル設定部120は、予測モデルの種類を選択し、選択された予測モデルの導出又は学習条件を設定するための入力用画面1100(図11を参照)を生成して表示させる(ステップS340)。
【0090】
入力部110は、予測モデルの説明変数に設定するデータ項目を選択する入力を受け付けると、モデルパラメータ導出用データテーブルと予測モデルを指定する指令をモデル設定部120に伝送する(ステップS350)。
【0091】
モデル設定部120は、モデルパラメータ導出用データテーブルを利用して、統計的分析または機械学習により、予測モデルの各説明変数に対する係数(又は、各ノードに対する重み)を最適化する(ステップS360)。最適化は、モデル設定部120が、予測モデルにモデルパラメータ導出用データテーブルを適用し、実績値との誤差が最小化されるように係数又は重みを調整することで達成される。なお、調整結果の確認用画面の例示は省略する。
【0092】
その後、制御部100は、ステップS100に戻って、初期画面(図3を参照)を表示させる。作業を終了するか又は別の作業を実行するかが、初期画面300に表示されたボタンにより選択される(ステップS370)。作業を終了する場合は、「終了」ボタン310を指示(クリック)する。また、別の作業が選択されると、制御部100は、引き続き、該当する処理を実行する。
【0093】
上述したデータ処理や統計分析手法による予測は、C++、JavaScript(登録商標)、R言語やPythonなどのプログラミング言語などで記述されたコンピュータによる実行可能なプログラムにより実現でき、ROM、EEPROM、EPROM、フラッシュメモリ、CD-ROM、CD-RW、DVD、SDカード、USBメモリなどコンピュータ読取り可能な記録媒体に格納して頒布することができる。
【0094】
以上、本発明の役員退職給額与診断システムによれば、統計的分析又は機械学習を用いることによって、役員の退職給与支給予定額の妥当性を税務上の過大否認リスクの観点から判定することができる。そのため、役員の退職給与額の妥当性、すなわち、役員の退職給与が過大否認されるリスクを予想する際に要する資料作成などに要する人員、時間などのコストを大幅に削減することができる。さらに、本発明の役員退職給与額診断支援システムによれば、納税者が把握することが困難な役員退職給与の過大判定について、税務訴訟などにおいて税務当局が使用する平均功績倍率法に対抗し得る根拠データを作成して提示することができる。
【0095】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【符号の説明】
【0096】
10 役員退職給与額診断システム
11 制御装置
12 記憶装置
13 入力装置
14 表示装置
15 出力装置
16 通信装置
20 端末装置
100 制御部
110 入力部
120 モデル設定部
130 退職給与額予測部
140 支給金額診断部
150 診断結果出力部
160 出力インタフェース(I/F)部
200 記憶部
210 予測モデル保存部
220 予測データ保存部
230 診断関連情報保存部
【要約】
【課題】統計的分析又は機械学習により導出された予測モデルにより税務否認リスクの観点から役員の退職給与支給予定額の妥当性を診断するシステムを提供する。
【解決手段】本発明の役員退職給与額診断システムは、診断対象となる役員の基本情報を受け付ける入力部と、統計的手法又は機械学習により予め導出された予測モデルが保存された記憶部と、基本情報を予測モデルに入力して診断対象となる役員に相応な退職給与額を予測する退職給与額予測部と、税務上の過大否認リスク発生の閾値に相当する額を算出し、受け付けた基本情報に含まれる役員の退職給与支給予定額と比較して過大否認リスクの観点から退職給与支給予定額の妥当性を診断する支給金額診断部と、診断結果を出力する診断結果出力部と、制御部とを備える。
【選択図】図2

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12