(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/023 20120101AFI20240603BHJP
【FI】
F16H57/023
(21)【出願番号】P 2019237544
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-11-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】檀上 弥輝
(72)【発明者】
【氏名】山中 駿平
【審査官】角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/067655(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻をなすケースと、
前記ケース内に設けられて、前記ケースに回転可能に支持される第1シャフトと、
前記第1シャフトに支持される第1ヘリカルギヤと、
前記ケース内に設けられて、前記ケースに対して固定され
、一方側に凹んだ凹部が形成されたアダプタと、
前記ケース内に設けられて、
前記一方側の端部が前記凹部に挿入されて、前記一
方側の端部が前記アダプタに回転可能に支持される第2シャフトと、
前記第2シャフトに支持されて、前記第1ヘリカルギヤと噛合する第2ヘリカルギヤと、を含み、
前記第1ヘリカルギヤおよび前記第2ヘリカルギヤは、前記第1シャフトから前記第1ヘリカルギヤおよび前記第2ヘリカルギヤを介して前記第2シャフトに動力が伝達されるときに、前記第2シャフトに前記第2シャフトの軸線方向のスラスト荷重が前記アダプタ側に向けて生じるように設けられており、
前記ケースに、前記アダプタに向けて突出する板状のケース側突出部が形成され、
前記アダプタに、前記ケースに向けて突出する板状のアダプタ側突出部が形成され、
前記アダプタ側突出部は、前記ケース側突出部に対応した形状をなし、
前記ケース側突出部と前記アダプタ側突出部とが突き合わされて当接している、動力伝達装置。
【請求項2】
前記ケースに形成されたケース側合わせ面と前記アダプタに形成されたアダプタ側合わせ面とが突き合わされて、その突き合わされた部分で前記ケースと前記アダプタとが接合されており、
前記ケース側突出部と前記アダプタ側突出部とは、前記ケース側合わせ面および前記アダプタ側合わせ面を含む平面上で突き合わされる、請求項1に記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて、駆動源の動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、変速機を搭載した車両では、エンジンの動力がトルクコンバータを介して変速機に入力され、変速機で変速された動力がデファレンシャルギヤ(差動装置)などを介して駆動輪に伝達される。変速機としては、無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)や有段式の自動変速機(AT:Automatic Transmission)が広く知られている。
【0003】
ベルト式の無段変速機では、エンジンからの動力が入力されるインプットシャフトが無段変速機構のプライマリシャフトに動力を伝達可能に接続されており、インプットシャフトに入力される動力は、インプットシャフトからプライマリシャフトに伝達される。無段変速機構では、セカンダリシャフトがプライマリシャフトと間隔を空けて平行に配置されて、プライマリシャフトに支持されるプライマリプーリとセカンダリシャフトに支持されるセカンダリプーリとの間に無端状のベルトが巻き掛けられている。これにより、インプットシャフトからプライマリシャフトに伝達される動力は、プライマリプーリからベルトに伝達され、ベルトからセカンダリプーリに伝達される。そして、セカンダリプーリに伝達される動力がセカンダリシャフトを介してアウトプットシャフトに伝達され、アウトプットシャフトからデファレンシャルギヤを介して左右の駆動輪に動力が伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インプットシャフトの動力は、ギヤを介して、プライマリシャフトに伝達される。そのギヤには、斜歯を有するヘリカルギヤが用いられることが多く、プライマリシャフトは、セカンダリシャフトとの間の軸間力以外に、ヘリカルギヤで生じるスラスト荷重を受ける。
【0006】
プライマリシャフトなどの各シャフトは、ベアリングを介して、無段変速機の外殻をなすケースに保持される。そのため、ケースにおけるプライマリシャフトのベアリングを保持する部分の厚さ(壁厚)が小さいと、その部分がプライマリシャフトのスラスト荷重により変形するおそれがある。ケースが変形すると、プライマリシャフトの位置がずれ、ベルトのアライメントやギヤの噛み合いが変化する。そのため、ベルト効率の悪化やそれに伴う燃費の悪化、ベルト破損の懸念、ギヤ音の悪化などの問題が生じうる。ケースの変形を抑制するには、ケースの厚さを大きくすればよいが、ケースの体格および質量が大きくなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、ケースの壁厚を増大させずに、軸線方向の荷重を受けるシャフトの位置ずれを抑制できる、動力伝達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明に係る動力伝達装置は、外殻をなすケースと、ケース内に設けられて、ケースに対して固定されるアダプタと、ケース内に設けられて、一端部がアダプタに回転可能に支持され、軸線方向の荷重を受けるシャフトとを含み、ケースおよびアダプタの一方に他方に向けて軸線方向に突出する突出部が形成され、突出部が他方に当接している。
【0009】
この構成によれば、外殻をなすケース内には、アダプタが設けられている。アダプタは、ケースに対して固定されており、アダプタには、軸線方向の荷重を受けるシャフトが回転可能に支持される。そして、ケースおよびアダプタの一方には、他方に向けてシャフトの軸線方向に突出する突出部が形成されており、その突出部が他方に当接している。これにより、シャフトからアダプタに入力されるスラスト荷重を突出部で受けることができ、そのスラスト荷重によりアダプタが変形することを抑制できる。そのため、ケースの壁厚を増大させずに、軸線方向の荷重を受けるシャフトの位置ずれを抑制することができる。その結果、ベルトのアライメントなどが変化することを抑制でき、ベルト効率の悪化やそれに伴う燃費の悪化、ベルト破損の懸念などの問題の発生を抑制できる。
【0010】
ケースに形成されたケース側合わせ面とアダプタに形成されたアダプタ側合わせ面とが突き合わされて、その突き合わされた部分でケースとアダプタとが接合されてもよい。この場合、突出部は、ケースに形成されて、アダプタに向けて突出するケース側突出部と、アダプタに形成されて、ケースに向けて突出するアダプタ側突出部とを含み、ケース側突出部とアダプタ側突出部とは、ケース側合わせ面およびアダプタ側合わせ面を含む平面上で突き合わされることが好ましい。
【0011】
この構成により、ケース側合わせ面とアダプタ側合わせ面とを突き合わしたときに、ケース側突出部とアダプタ側突出部とを良好に突き合わすことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ケースの壁厚を増大させずに、軸線方向の荷重を受けるシャフトの位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る変速ユニットの構成を示す断面図である。
【
図2】アダプタの近傍を
図1よりも拡大して示す断面図である。
【
図3】第3トランスミッションケース内の構成を示す斜視図である。
【
図4】第3トランスミッションケース内の構成を示す斜視図であり、アダプタが取り外された状態を示す。
【
図6】CVTの構成を図解的に示すスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
<変速ユニット>
図1は、本発明の一実施形態に係る変速ユニット1の構成を示す断面図である。なお、
図1以降の断面図では、断面を表すハッチングの付与が省略されている。
【0016】
変速ユニット1は、車両に搭載されて、走行用の駆動源としてのエンジン2(E/G)2が発生する動力を変速するユニットである。車両は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)レイアウトを採用している。
【0017】
エンジン2は、たとえば、3気筒4ストロークエンジンであり、クランクシャフトが車体の前後方向に対して縦向きになる縦置きで搭載される。エンジン2の気筒数は、3気筒に限らず、4気筒以上であってもよいし、2気筒以下であってもよい。また、エンジン2のストローク数は、4ストロークに限らず、2ストロークであってもよい。
【0018】
変速ユニット1は、外殻をなすユニットケース3内に、トルクコンバータ4およびCVT(Continuously Variable Transmission:無段変速機)5を備えている。
【0019】
<ユニットケース>
ユニットケース3は、第1トランスミッションケース11、第2トランスミッションケース12および第3トランスミッションケース13の3分割で構成されている。第1トランスミッションケース11、第2トランスミッションケース12および第3トランスミッションケース13は、たとえば、アルミ合金製であり、ダイカスト法によって鋳造される。
【0020】
第1トランスミッションケース11、第2トランスミッションケース12および第3トランスミッションケース13は、前側(エンジン2側)からこの順に並べられている。第1トランスミッションケース11と第2トランスミッションケース12とがボルト(図示せず)で締結され、第2トランスミッションケース12と第3トランスミッションケース13とがボルト17で締結されることにより、第1トランスミッションケース11、第2トランスミッションケース12および第3トランスミッションケース13は、一体化されている。
【0021】
<トルクコンバータ>
トルクコンバータ4は、第1トランスミッションケース11内に収容されている。トルクコンバータ4は、フロントカバー21、ポンプインペラ22、タービンハブ23、タービンランナ24、ロックアップ機構25およびステータ26を備えている。
【0022】
フロントカバー21は、車両(車体)の前後方向に延びる回転軸線を中心に略円板状に延び、その外周端部がエンジン2側と反対側(後述する無段変速機構42側)である後側に屈曲した形状をなしている。フロントカバー21の中心部は、前側に膨出している。この膨出した部分には、エンジン2のクランクシャフトが相対回転不能に結合される。
【0023】
ポンプインペラ22は、フロントカバー21の後側に配置されている。ポンプインペラ22の外周端部は、フロントカバー21の外周端部に接続され、回転軸線を中心にフロントカバー21と一体回転可能に設けられている。ポンプインペラ22の内面には、複数のブレード27が放射状に並べて配置されている。
【0024】
タービンハブ23は、フロントカバー21とポンプインペラ22との間に配置されている。
【0025】
タービンランナ24は、タービンハブ23に固定されている。タービンランナ24のポンプインペラ22との対向面には、複数のブレード28が放射状に並べて配置されている。
【0026】
ロックアップ機構25は、ロックアップピストン31およびダンパ機構32を備えている。
【0027】
ロックアップピストン31は、略円環板状をなし、その内周端部がタービンハブ23に外嵌されて、フロントカバー21とタービンランナ24との間に位置している。ロックアップピストン31に対してタービンランナ24側の係合側油室33の油圧がフロントカバー21側の解放側油室34の油圧よりも高いと、その差圧により、ロックアップピストン31がフロントカバー21側に移動する。そして、ロックアップピストン31がフロントカバー21に押し付けられると、ポンプインペラ22とタービンランナ24とが直結(ロックアップオン)される。逆に、解放側油室34の油圧が係合側油室33の油圧よりも高いと、その差圧により、ロックアップピストン31がタービンランナ24側に移動する。ロックアップピストン31がフロントカバー21から離間した状態では、ポンプインペラ22とタービンランナ24との直結が解除(ロックアップオフ)される。
【0028】
ダンパ機構32は、ポンプインペラ22とタービンランナ24との直結時にエンジン2からの振動を減衰するための機構である。
【0029】
ステータ26は、ポンプインペラ22とタービンランナ24との間に配置されている。
【0030】
ロックアップオフの状態において、エンジントルクによりポンプインペラ22が回転すると、ポンプインペラ22からタービンランナ24に向かうオイルの流れが生じる。このオイルの流れがタービンランナ24のブレード28で受けられて、タービンランナ24が回転する。このとき、トルクコンバータ4の増幅作用が生じ、タービンランナ24には、エンジントルクよりも大きなトルクが発生する。
【0031】
<CVT>
CVT5は、第2トランスミッションケース12および第3トランスミッションケース13内に収容されている。CVT5は、インプットシャフト41、無段変速機構42、アウトプットシャフト43およびリバース伝達機構44を備えている。変速ユニット1は、エンジン2の後側に、CVT5のインプットシャフト41が車両の前後方向に延びる縦向きとなる縦置きで、インプットシャフト41が後下がりに傾斜するように配置されている。
【0032】
インプットシャフト41は、中空軸に形成されて、トルクコンバータ4の回転軸線上を延びている。インプットシャフト41の前端部は、トルクコンバータ4内に挿入されて、タービンハブ23とスプライン嵌合している。
【0033】
なお、以下の説明において、インプットシャフト41の軸線(軸心)が延びる方向を「軸線方向」という。また、軸線方向と直交する方向、つまりインプットシャフト41の径方向を「軸径方向」という。
【0034】
インプットシャフト41の後端部は、第2トランスミッションケース12内に配置された機械式のオイルポンプ45に回転可能に支持されている。具体的には、オイルポンプ45は、ポンプケース46と、ポンプケース46に後側から接合されるポンプカバー47と、ポンプケース46内のスペースに配置されるポンプギヤ48と、ポンプギヤ48に相対回転不能に結合されるポンプ軸49とを備えている。ポンプカバー47は、第2トランスミッションケース12に固定され、ポンプケース46内のスペースを後側から閉鎖している。ポンプケース46の前端部には、前側に開放されて、後側に略円柱状に凹んだ軸受凹部51が形成されている。インプットシャフト41の後端部は、軸受凹部51内に挿入されて、インプットシャフト41の周面と軸受凹部51の内周面との間に介在されるボールベアリング52を介してポンプケース46に回転可能に支持されている。言い換えれば、インプットシャフト41の後端部にボールベアリング52が外嵌され、そのボールベアリング52が軸受凹部51に嵌入されることにより、インプットシャフト41の後端部は、ボールベアリング52を介してポンプケース46に回転可能に支持されている。
【0035】
ポンプ軸49は、ポンプケース46およびポンプカバー47を貫通して設けられている。ポンプ軸49は、ポンプケース46から前側に延び、インプットシャフト41にその内周面との間に隙間を空けて挿通されている。ポンプ軸49の前端部は、トルクコンバータ4のフロントカバー21に達し、そのフロントカバー21の中心部に相対回転不能に接続されている。これにより、エンジン2の動力によりフロントカバー21が回転すると、フロントカバー21と一体にポンプ軸49およびポンプギヤ48が回転し、オイルポンプ45から油圧が発生する。
【0036】
無段変速機構42は、プライマリシャフト54、セカンダリシャフト55、プライマリプーリ56、セカンダリプーリ57およびベルト58を備えている。
【0037】
プライマリシャフト54およびセカンダリシャフト55は、第1トランスミッションケース11と第2トランスミッションケース12との間において、インプットシャフト41と平行に延び、その軸心まわりに回転可能に設けられている。
【0038】
プライマリプーリ56は、プライマリシャフト54に固定されたプライマリ固定シーブ61と、プライマリ固定シーブ61にベルト58を挟んで対向配置され、プライマリシャフト54に軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されたプライマリ可動シーブ62とを備えている。プライマリ可動シーブ62は、プライマリ固定シーブ61に対して前側に配置されている。プライマリ可動シーブ62に対してプライマリ固定シーブ61側と反対側、つまり前側には、シリンダ63が設けられ、プライマリ可動シーブ62とシリンダ63との間には、油圧室(ピストン室)64が形成されている。
【0039】
セカンダリプーリ57は、セカンダリシャフト55に固定されたセカンダリ固定シーブ65と、セカンダリ固定シーブ65にベルト58を挟んで対向配置され、セカンダリシャフト55に軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されたセカンダリ可動シーブ66とを備えている。セカンダリ可動シーブ66は、セカンダリ固定シーブ65に対して後側に配置されている。セカンダリ可動シーブ66に対してセカンダリ固定シーブ65と反対側、つまり後側には、ピストン67が設けられ、セカンダリ可動シーブ66とピストン67との間には、油圧室68が形成されている。
【0040】
ベルト58は、無端状に形成され、プライマリ固定シーブ61とプライマリ可動シーブ62との間に挟まれた状態でプライマリプーリ56に巻き掛けられるとともに、セカンダリ固定シーブ65とセカンダリ可動シーブ66との間に挟まれた状態でセカンダリプーリ57に巻き掛けられている。
【0041】
無段変速機構42では、プライマリプーリ56およびセカンダリプーリ57の各油圧室64,68に供給される油圧が制御されて、プライマリプーリ56およびセカンダリプーリ57の各溝幅が変更されることにより、ベルト変速比(プライマリプーリ56とセカンダリプーリ57とのプーリ比)が一定の変速比範囲内で連続的に無段階で変更される。
【0042】
具体的には、ベルト変速比が小さくされるときには、プライマリプーリ56の油圧室64に供給される油圧が上げられる。これにより、プライマリプーリ56のプライマリ可動シーブ62がプライマリ固定シーブ61側に移動し、プライマリ固定シーブ61とプライマリ可動シーブ62との間隔(溝幅)が小さくなる。これに伴い、プライマリプーリ56に対するベルト58の巻き掛け径が大きくなり、セカンダリプーリ57のセカンダリ固定シーブ65とセカンダリ可動シーブ66との間隔(溝幅)が大きくなる。その結果、ベルト変速比が小さくなる。
【0043】
ベルト変速比が大きくされるときには、プライマリプーリ56の油圧室64に供給される油圧が下げられる。これにより、ベルト58に対するセカンダリプーリ57の推力がベルト58に対するプライマリプーリ56の推力よりも大きくなり、セカンダリプーリ57のセカンダリ固定シーブ65とセカンダリ可動シーブ66との間隔が小さくなるとともに、プライマリ固定シーブ61とプライマリ可動シーブ62との間隔が大きくなる。その結果、ベルト変速比が大きくなる。
【0044】
セカンダリプーリ57の油圧室68には、バイアススプリング69が設けられている。バイアススプリング69は、一端がセカンダリ可動シーブ66に弾性的に当接し、他端がピストン67に弾性的に当接している。バイアススプリング69の弾性力により、セカンダリ可動シーブ66およびピストン67が互いに離間する方向に付勢されている。セカンダリ可動シーブ66には、油圧室68内の油圧およびバイアススプリング69による付勢力が付与され、ベルト58には、それに応じた挟圧が付与される。
【0045】
また、インプットシャフト41には、軸線方向の中央部に、入力ギヤ81が一体に形成されている。これに対応して、プライマリシャフト54には、入力ギヤ81と噛合するプライマリ入力ギヤ82が相対回転可能に支持されている。入力ギヤ81およびプライマリ入力ギヤ82は、斜歯を有するヘリカルギヤからなる。これらの互いに噛合する入力ギヤ81およびプライマリ入力ギヤ82とオイルポンプ45との間のスペースを利用して、プライマリシャフト54に対するプライマリ入力ギヤ82の回転を許容/禁止する前進クラッチ83が設けられている。前進クラッチ83の一部は、オイルポンプ45と軸径方向に重なっている(軸線方向に見て重なっている)。
【0046】
前進クラッチ83は、クラッチドラム84、クラッチハブ85およびクラッチピストン86を備えている。クラッチドラム84は、内周端がプライマリシャフト54に固定され、プライマリシャフト54から軸径方向に延び、外周端部がプライマリ入力ギヤ82側、つまり前側に屈曲して延びている。クラッチハブ85は、プライマリ入力ギヤ82と一体に形成され、プライマリ入力ギヤ82から後側に延出する円筒状をなし、クラッチドラム84の外周端部に対して軸径方向の内側から間隔を空けて対向している。クラッチピストン86は、クラッチドラム84とクラッチハブ85との間に、軸線方向に移動可能に設けられている。クラッチピストン86は、クラッチドラム84に液密的に当接しており、クラッチドラム84とクラッチピストン86との間には、クラッチピストン86に作用する油圧が供給される油圧室87が形成されている。また、クラッチピストン86は、リターンスプリング88により、後側に弾性的に付勢されている。
【0047】
クラッチドラム84の外周端部とクラッチハブ85とに軸径方向に挟まれる空間において、クラッチドラム84に保持されるクラッチプレートとクラッチハブ85に保持されるクラッチディスクとが軸線方向に交互に並んでいる。油圧室87に供給される油圧により、クラッチピストン86が前側に移動してクラッチプレートを後側から押圧すると、クラッチプレートとクラッチディスクとが圧接し、前進クラッチ83が係合する。前進クラッチ83の係合により、プライマリシャフト54に対するプライマリ入力ギヤ82の回転が禁止され、プライマリ入力ギヤ82が回転すると、プライマリシャフト54がプライマリ入力ギヤ82と一体に回転する。前進クラッチ83の係合状態から油圧が開放されると、リターンスプリング88の付勢力により、クラッチピストン86が後側に移動し、クラッチディスクとクラッチプレートとの圧接が解除されて、前進クラッチ83が解放される。前進クラッチ83の解放により、プライマリシャフト54に対するプライマリ入力ギヤ82の回転が許容され、プライマリ入力ギヤ82が回転しても、その回転がプライマリシャフト54に伝達されない。
【0048】
セカンダリシャフト55には、セカンダリ入力ギヤ91が相対回転可能に支持されている。セカンダリ入力ギヤ91は、軸線方向において、入力ギヤ81とオイルポンプ45との間に配置されている。また、セカンダリ入力ギヤ91とオイルポンプ45との間のスペースを利用して、セカンダリシャフト55に対するセカンダリ入力ギヤ91の回転を許容/禁止する後進クラッチ92が設けられている。後進クラッチ92の一部は、オイルポンプ45と軸径方向に重なっている(軸線方向に見て重なっている)。
【0049】
後進クラッチ92は、クラッチドラム93、クラッチハブ94およびクラッチピストン95を備えている。クラッチドラム93は、内周端がセカンダリシャフト55に固定され、セカンダリシャフト55から軸径方向に延び、外周端部がセカンダリ入力ギヤ91側、つまり前側に屈曲して延びている。クラッチハブ94は、セカンダリ入力ギヤ91と一体に形成され、セカンダリ入力ギヤ91から後側に延出する円筒状をなし、クラッチドラム93の外周端部に対して軸径方向内側から間隔を空けて対向している。クラッチピストン95は、クラッチドラム93とクラッチハブ94との間に、軸線方向に移動可能に設けられている。クラッチピストン95は、クラッチドラム93に液密的に当接しており、クラッチドラム93とクラッチピストン95との間には、クラッチピストン95に作用する油圧が供給される油圧室96が形成されている。また、クラッチピストン95は、リターンスプリング97により、後側に弾性的に付勢されている。
【0050】
クラッチドラム93の外周端部とクラッチハブ94とに軸径方向に挟まれる空間において、クラッチドラム93に保持されるクラッチプレートとクラッチハブ94に保持されるクラッチディスクとが軸線方向に交互に並んでいる。油圧室96に供給される油圧により、クラッチピストン95が前側に移動してクラッチプレートを後側から押圧すると、クラッチプレートとクラッチディスクとが圧接し、後進クラッチ92が係合する。後進クラッチ92の係合により、セカンダリシャフト55に対するセカンダリ入力ギヤ91の回転が禁止され、セカンダリ入力ギヤ91が回転すると、セカンダリシャフト55がセカンダリ入力ギヤ91と一体に回転する。後進クラッチ92の係合状態から油圧が開放されると、リターンスプリング97の付勢力により、クラッチピストン95が後側に移動し、クラッチディスクとクラッチプレートとの圧接が解除されて、後進クラッチ92が解放される。後進クラッチ92の解放により、セカンダリシャフト55に対するセカンダリ入力ギヤ91の回転が許容され、セカンダリ入力ギヤ91が回転しても、その回転がセカンダリシャフト55に伝達されない。
【0051】
アウトプットシャフト43は、インプットシャフト41に対して後側に間隔を空けて、インプットシャフト41と同一軸線上に配置されている。言い換えれば、インプットシャフト41とアウトプットシャフト43とは、軸線方向に間隔を空けてそれぞれ前後に、車両の前後方向に沿った縦向きに延びる共通の軸線を有するように配置されている。アウトプットシャフト43には、出力伝達ギヤ101が一体に形成されている。これに対応して、セカンダリシャフト55には、出力伝達ギヤ101と噛合するセカンダリ出力ギヤ102が相対回転不能に支持されている。
【0052】
リバース伝達機構44は、インプットシャフト41の動力(回転)をセカンダリ入力ギヤ91に伝達する機構である。リバース伝達機構44には、リバースアイドラシャフト103、第1リバースギヤ104および第2リバースギヤ105が含まれる。リバースアイドラシャフト103は、軸線方向に延び、第1トランスミッションケース11と第2トランスミッションケース12とに跨がって、第1トランスミッションケース11および第2トランスミッションケース12に回転可能に支持されている。第1リバースギヤ104は、リバースアイドラシャフト103と一体に形成されて、入力ギヤ81と噛合している。第2リバースギヤ105は、第1リバースギヤ104の後側において、リバースアイドラシャフト103と一体に形成され、セカンダリ入力ギヤ91と噛合している。
【0053】
アウトプットシャフト43とプライマリシャフト54との間には、アダプタ111が設けられている。アダプタ111は、たとえば、アルミ合金製であり、ダイカスト法によって鋳造される鋳物である。アダプタ111は、アウトプットシャフト43とプライマリシャフト54との間を軸径方向に延びている。アダプタ111の上端部は、後側に突出しており、その突出した部分には、前側に略円柱状に凹んだ凹部112が形成されている。アウトプットシャフト43の前端部は、凹部112内に挿入されている。アウトプットシャフト43の周面と凹部112の内周面との間には、ラジアルベアリング113が介在されている。アウトプットシャフト43の前端部は、ラジアルベアリング113を介して、アダプタ111に回転可能に支持されている。また、アウトプットシャフト43には、出力伝達ギヤ101が形成されている部分と凹部112内に挿入される部分との間に、軸径方向に沿った円環状の段差面が形成されている。段差面とアダプタ111との間には、スラストベアリング114が介在されている。これにより、アウトプットシャフト43の前端部は、ラジアルベアリング113およびスラストベアリング114を介して、アダプタ111に回転可能に支持されている。
【0054】
また、アダプタ111には、後側に略円柱状に凹んだ凹部115が形成されている。プライマリシャフト54の後端部は、凹部115に挿入されている。プライマリシャフト54の周面と凹部115の内周面との間には、ボールベアリング116が介在されている。プライマリシャフト54の後端部は、ボールベアリング116を介して、アダプタ111に回転可能に支持されている。
【0055】
アダプタ111の下端部には、前側からボルト117が挿通される。そして、そのボルト117により、アダプタ111は、第3トランスミッションケース13に取り付けられている。
【0056】
第2トランスミッションケース12の底部には、変速ユニット1の各部へのオイルの供給を制御するためのバルブボディ121が設けられている。
【0057】
また、第2トランスミッションケース12の底部には、ストレーナ122が設けられている。ストレーナ122は、バルブボディ121と横並びで配置される濾過部123と、濾過部123から延出する管部124とを備えている。管部124は、濾過部123の下部から前側に延出して、バルブボディ121の下側を延びている。管部124は、中空の管状に形成され、その内部は、濾過部123の内部と連通している。また、管部124の先端部の下面は、オイルを吸い込むための吸込口125として開口している。
【0058】
第2トランスミッションケース12には、オイルパン131が下側から複数のボルト132で固定されている。ストレーナ122の管部124の先端部は、オイルパン131の中央部に位置しており、その先端部の吸込口125は、オイルパン131の中央部と対向している。
【0059】
オイルポンプ45のポンプギヤ48の回転により吸引力が発生し、その吸引力により、オイルパン131に溜まったオイルが吸込口125から管部124内に吸い込まれる。管部124内に吸い込まれたオイルは、管部124内を濾過部123に向けて流れ、濾過部123内に設けられた濾過材を通過する。オイルが濾過材を通過することにより、オイル中に含まれる異物が濾過材に捕獲されて、オイル中から異物が除去される。濾過材を通過したオイルは、オイルポンプ45を経由して、バルブボディ121に供給される。そして、バルブボディ121から無段変速機構42などのオイルの供給を必要とする各部に作動油または潤滑油としてオイルが供給される。
【0060】
図2は、アダプタ111の近傍を
図1よりも拡大して示す断面図である。
【0061】
アウトプットシャフト43には、その軸心に沿って延びる軸心油路141が形成されている。軸心油路141は、アウトプットシャフト43の前端で開口しており、アダプタ111に形成されているアダプタ油路142と連通している。アダプタ油路142には、バルブボディ121から延びる油路が接続されており、バルブボディ121から送出されるオイルがその油路を通して供給される。
【0062】
また、アウトプットシャフト43には、連通油路143が形成されている。連通油路143は、一端が軸心油路141に接続され、軸心油路141と連通している。そして、連通油路143は、アウトプットシャフト43の軸径方向に延び、アウトプットシャフト43の外周面で開口されている。
【0063】
軸心油路141にオイルが供給されると、軸心油路141から連通油路143にオイルが流れ込み、そのオイルが連通油路143からアウトプットシャフト43の周囲に放出される。アウトプットシャフト43の回転時には、その回転に伴って、連通油路143からアウトプットシャフト43の周囲にオイルが放射状に放出される。そのため、アウトプットシャフト43およびその周囲にオイルを良好に供給でき、アウトプットシャフト43およびその周囲の部材を良好に潤滑することができる。
【0064】
図3は、第3トランスミッションケース13内の構成を示す斜視図である。
図4は、
図3は、第3トランスミッションケース13内の構成を示す斜視図であり、アダプタ111が取り外された状態を示す。
図5は、アダプタ111の後側から見た斜視図である。
【0065】
第3トランスミッションケース13には、アダプタ111と軸線方向に対向する部分に、アダプタ111に向けて突出する壁部151が形成されている。壁部151は、
図4に示されるように、アウトプットシャフト43の右側からアウトプットシャフト43の下方をプライマリプーリ56(プライマリ固定シーブ61およびプライマリ可動シーブ62)が配置される空間152を左側に越える位置まで延びている。
【0066】
具体的には、壁部151は、第1傾斜部153、湾曲部154および第2傾斜部155を一体に有している。第1傾斜部153は、平板状をなし、アウトプットシャフト43に対して右側に離間し、かつ、アウトプットシャフト43の軸心よりも高い位置から左側ほど下方に位置するように傾斜して延びている。湾曲部154は、第1傾斜部153の下端に連続し、アウトプットシャフト43の周面に沿うように湾曲する湾曲板状をなし、アウトプットシャフト43の下方を左下がりに延びている。第2傾斜部155は、平板状をなし、湾曲部154の下端(左端)に連続し、左側ほど下方に位置するように第1傾斜部153よりも小さい傾斜角で傾斜して延びている。第2傾斜部155には、その先端縁から矩形状に切り欠かれた切欠部156が形成されている。
【0067】
壁部151に対応して、アダプタ111には、
図2および
図5に示されるように、突出部161が形成されている。突出部161は、壁部151の湾曲部154および第2傾斜部155に対応した形状をなし、その湾曲部154および第2傾斜部155と突き合わされる。壁部151の湾曲部154および第2傾斜部155と突出部161とが突き合わされた状態で、それらの間には、切欠部156による開口が形成される。
【0068】
また、第3トランスミッションケース13には、軸径方向に延びる平面からなるケース側合わせ面162が形成されている。一方、アダプタ111には、ケース側合わせ面162と突き合わされる平面からなるアダプタ側合わせ面163が形成されている。第3トランスミッションケース13とアダプタ111とは、ケース側合わせ面162とアダプタ側合わせ面163とが突き合わされる部分において、ボルト117により接合される。
【0069】
そして、壁部151は、その先端がケース側合わせ面162を含む平面P上に位置する高さに形成されている。また、突出部161は、その先端がアダプタ側合わせ面163を含む平面P上に位置する高さに形成されている。これにより、壁部151と突出部161とは、ケース側合わせ面162とアダプタ側合わせ面163との突き合わせ面を含む平面P上で突き合わされる。
【0070】
<動力伝達経路>
図6は、CVT5の構成を図解的に示すスケルトン図である。
【0071】
車両の前進時には、前進クラッチ83が係合されて、後進クラッチ92が解放される。エンジン2からトルクコンバータ4を介してインプットシャフト41に入力される動力は、前進クラッチ83の係合により、入力ギヤ81からプライマリ入力ギヤ82を介してプライマリシャフト54に伝達される。一方、インプットシャフト41に入力される動力が入力ギヤ81からセカンダリ入力ギヤ91に伝達されて、セカンダリ入力ギヤ91が回転しても、後進クラッチ92の解放により、セカンダリ入力ギヤ91がセカンダリシャフト55に対して空転し、セカンダリシャフト55に動力が伝達されない。
【0072】
プライマリシャフト54に伝達される動力は、プライマリプーリ56とセカンダリプーリ57とのプーリ比に応じたベルト変速比で変速されて、セカンダリシャフト55に伝達される。そして、セカンダリシャフト55に伝達される動力は、セカンダリ出力ギヤ102から出力伝達ギヤ101を介してアウトプットシャフト43に伝達される。
【0073】
車両の後進時には、前進クラッチ83が解放されて、後進クラッチ92が係合される。エンジン2からトルクコンバータ4を介してインプットシャフト41に入力される動力は、後進クラッチ92の係合により、入力ギヤ81からリバース伝達機構44およびセカンダリ入力ギヤ91を介してセカンダリシャフト55に伝達される。このとき、セカンダリシャフト55は、車両の前進時と逆方向に回転する。一方、インプットシャフト41に入力される動力が入力ギヤ81からプライマリ入力ギヤ82に伝達されて、プライマリ入力ギヤ82が回転しても、前進クラッチ83の解放により、プライマリ入力ギヤ82がプライマリシャフト54に対して空転し、プライマリシャフト54に動力が伝達されない。
【0074】
セカンダリシャフト55に伝達される動力は、セカンダリ出力ギヤ102から出力伝達ギヤ101を介してアウトプットシャフト43に伝達される。
【0075】
そして、アウトプットシャフト43に伝達される動力は、アウトプットシャフト43からプロペラシャフト118に出力されて、プロペラシャフト118からリヤデファレンシャルギヤ(リヤデフ)およびドライブシャフトを介して左右の後輪に伝達される。
【0076】
<作用効果>
以上のように、外殻をなす第3トランスミッションケース13内には、アダプタ111が設けられている。アダプタ111は、第3トランスミッションケース13に対して固定されており、アダプタ111には、プライマリシャフト54が回転可能に支持されている。プライマリシャフト54には、プライマリ入力ギヤ82が支持されており、プライマリシャフト54には、インプットシャフト41から入力ギヤ81およびプライマリ入力ギヤ82を介して動力が伝達される。入力ギヤ81およびプライマリ入力ギヤ82は、ヘリカルギヤからなる。そのため、プライマリシャフト54には、軸線方向のスラスト荷重がアダプタ111側に向けて生じる。
【0077】
第3トランスミッションケース13には、アダプタ111に向けて突出する壁部151が形成されている。アダプタ111には、壁部151と突き合わされる突出部161が形成されている。これにより、壁部151および突出部161は、アダプタ111のバックアップリブを構成し、プライマリシャフト54からアダプタ111に入力されるスラスト荷重を壁部151および突出部161で受けることができる。その結果、スラスト荷重によりアダプタ111が変形することを抑制できる。そのため、第3トランスミッションケース13の壁厚を増大させずに、プライマリシャフト54の位置ずれを抑制することができる。その結果、ベルト58のアライメントおよび入力ギヤ81とプライマリ入力ギヤ82との噛み合いなどが変化することを抑制でき、ベルト効率の悪化やそれに伴う燃費の悪化、ベルト破損の懸念、ギヤ音の悪化などの問題の発生を抑制できる。
【0078】
壁部151と突出部161とは、ケース側合わせ面162およびアダプタ側合わせ面163を含む平面P上で突き合わされるように形成されている。これにより、ケース側合わせ面162とアダプタ側合わせ面163とを突き合わしたときに、壁部151と突出部161とを良好に突き合わすことができる。
【0079】
また、壁部151および突出部161は、プライマリプーリ56(プライマリ固定シーブ61およびプライマリ可動シーブ62)をアウトプットシャフト43から隔離する隔壁を構成している。これにより、アウトプットシャフト43に潤滑のために供給されるオイルがプライマリプーリ56を収容する空間152に流れ込むことを抑制できる。そのため、プライマリ固定シーブ61、プライマリ可動シーブ62およびベルト58の油面干渉が生じることを抑制できる。その結果、プライマリ固定シーブ61、プライマリ可動シーブ62およびベルト58の油面干渉によるエネルギ損失を抑制でき、変速ユニット1が搭載される車両の燃費の向上を図ることができる。また、プライマリ固定シーブ61、プライマリ可動シーブ62およびベルト58の撹拌によるオイルの泡立ちを抑制でき、オイルポンプ45のエア噛みによる異音の発生を抑制できる。
【0080】
壁部151および突出部161は、プライマリプーリ56が配置される空間152を左側に越える位置まで下り傾斜している。そのため、壁部151および突出部161に付着したオイルを空間152の左側の空間に流すことができ、空間152にオイルが流れ込むことをより良好に抑制できる。
【0081】
また、壁部151の湾曲部154および第2傾斜部155と突出部161とが突き合わされた状態で、それらの間には、切欠部156による開口が形成される。そのため、車両の旋回時などにより変速ユニット1が傾斜したときに、壁部151および突出部161上にオイルが溜まっても、そのオイルを切欠部156による開口から排出することができる。
【0082】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0083】
たとえば、前述の実施形態では、変速ユニット1は、エンジン2の後側に、CVT5のインプットシャフト41が車両の前後方向に延びる縦向きとなる縦置きで配置されているとした。しかしながら、これに限らず、本発明は、エンジン2の左側または右側に、CVTのインプットシャフトが車両の左右方向に延びるように横置きされる変速ユニットに適用することもできる。
【0084】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1:変速ユニット(動力伝達装置)
3:ユニットケース(ケース)
13:第3トランスミッションケース(ケース)
54:プライマリシャフト(シャフト)
111:アダプタ
151:壁部(ケース側突出部)
161:突出部(アダプタ側突出部)
162:ケース側合わせ面
163:アダプタ側合わせ面
P:平面