(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】リチウムダイシリケート含有リチウム含有酸化ケイ素およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/32 20060101AFI20240603BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240603BHJP
【FI】
C01B33/32
H01M4/58
(21)【出願番号】P 2020088793
(22)【出願日】2020-05-21
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】397064944
【氏名又は名称】株式会社大阪チタニウムテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】竹下 浩樹
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/189747(WO,A1)
【文献】特開2012-140261(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101072(WO,A1)
【文献】特開2015-153520(JP,A)
【文献】特開2017-188344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20-39/54
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折測定結果において23°以上25°以下の回折角範囲内に現れる3本のピークにおいて、回折角が最も小さいピークの強度に対する中央のピークの強度の比が1超であり、回折角が最も大きいピークの強度に対する前記中央のピークの強度の比が0.8超である、リチウムダイシリケート(Li
2Si
2O
5)含有リチウム含有酸化ケイ素
(組成がLiO
2
・xSiO
2
で表されるものを除く)。
【請求項2】
前記3本のピークのうち前記中央のピークの強度が最も大きい
請求項1に記載のリチウムダイシリケート(Li
2Si
2O
5)含有リチウム含有酸化ケイ素
(組成がLiO
2
・xSiO
2
で表されるものを除く)。
【請求項3】
酸素原子数に対するリチウム原子数の比が0超1/2未満の範囲内となるようにリチウム含有酸化ケイ素
(組成がLiO
2
・xSiO
2
で表されるものを除く)を調製するリチウム含有酸化ケイ素調製工程と、
前記リチウム含有酸化ケイ素を1030℃以上
1400℃以下の範囲内の温度で熱処理する熱処理工程と
を備え、
前記リチウム含有酸化ケイ素調整工程では、(i)酸化ケイ素粉末とリチウム化合物とを混合して熱処理する方法、(ii)塊状の酸化ケイ素あるいは酸化ケイ素粉末に電気化学的にリチウムを反応させる方法、および、(iii)基体にリチウム含有酸化ケイ素の薄膜を形成した後、その薄膜を基体から掻き取る方法のいずれか1つの方法により前記リチウム含有酸化ケイ素(組成がLiO
2
・xSiO
2
で表されているものを除く)が調製される
リチウムダイシリケート(Li
2Si
2O
5)含有リチウム含有酸化ケイ素
(組成がLiO
2
・xSiO
2
で表されるものを除く)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムダイシリケート含有リチウム含有酸化ケイ素およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池の負極形成物質としてリチウム含有酸化ケイ素が知られている。このリチウム含有酸化ケイ素には、通常、酸化ケイ素(SiOx)のみならず、Li2SiO3、Li4SiO4、Li4Si3O8、Li2Si2O5等のケイ酸リチウムが含まれている(例えば、特開2005-183264号公報等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、上述のリチウム含有酸化ケイ素から成る電極を有する電池の出力特性の向上を望む声がある。本発明の課題は、電池の出力特性の向上を実現することができるリチウム含有酸化ケイ素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1局面に係るリチウムダイシリケート(Li2Si2O5)含有リチウム含有酸化ケイ素(組成がLiO
2
・xSiO
2
で表されるものを除く、以下同様。)は、リチウムダイシリケートを含むリチウム含有酸化ケイ素(組成がLiO
2
・xSiO
2
で表されるものを除く、以下同様。)であって、X線回折測定結果において23°以上25°以下の回折角範囲内に現れる3本のピーク(リチウムダイシリケートに由来するピーク)において、回折角が最も小さいピークの強度に対する中央のピークの強度の比が1超であり、回折角が最も大きいピークの強度に対する中央のピークの強度の比が0.8超である。
【0006】
ところで、回折角が最も小さいピークは(130)面由来の回折によるものであり、中央のピークは、(040)面由来の回折によるものであり、回折角が最も大きいピークは(111)面由来の回折によるものである。そして、回折角が最も大きいピークの強度を1000とすると、回折角が最も小さいピークの理論強度は69.046と計算され、中央のピークの理論強度は42.632と計算される。したがって、回折角が最も小さいピークの理論強度に対する中央のピークの理論強度の比は0.61744となり、回折角が最も大きいピークの理論強度に対する中央のピークの理論強度の比は0.42632となる(参考:https://materialsproject.org/materials/mp-4117/)。すなわち、本発明の第1局面に係るリチウムダイシリケート(Li2Si2O5)含有リチウム含有酸化ケイ素では、回折角が最も小さいピークの強度に対する中央のピークの強度の比、および、回折角が最も大きいピークの強度に対する中央のピークの強度の比が、理論値よりも十分に大きくなっている。
【0007】
本願発明者の鋭意検討の結果、上述のピーク関係を有するリチウムダイシリケートを含むリチウム含有酸化ケイ素は、電極の主材料として利用された際、上述のピーク関係を有さないリチウムダイシリケートを含むリチウム含有酸化ケイ素に比べて電池の出力特性に優れることが明らかとなった。おそらくこれは、リチウムダイシリケート(Li2Si2O5)の結晶に異方性(配向)があり、特定方向に対するリチウム伝導性が高くなるためであると推察される。
【0008】
なお、上述の3本のピークのうち中央のピークの強度が最も大きいことが好ましい。このようなピーク関係を有するリチウムダイシリケートを含むリチウム含有酸化ケイ素は、電極の主材料として利用された際、電池の出力特性がより良好になるからである。
【0009】
本発明の第2局面に係るリチウムダイシリケート(Li2Si2O5)含有リチウム含有酸化ケイ素の製造方法は、リチウム含有酸化ケイ素調製工程および熱処理工程を備える。リチウム含有酸化ケイ素調製工程では、酸素原子数に対するリチウム原子数の比が0超1/2未満の範囲内となるように(すなわち、0<Li/O<1/2となるように)リチウム含有酸化ケイ素が調製される。なお、リチウム含有酸化ケイ素調製工程では、以下の(i)から(iii)までのいずれか1つの方法により前記リチウム含有酸化ケイ素が調製される。
(i)酸化ケイ素粉末とリチウム化合物とを混合して熱処理する方法。
(ii)塊状の酸化ケイ素あるいは酸化ケイ素粉末に電気化学的にリチウムを反応させる方法。
(iii)基体にリチウム含有酸化ケイ素の薄膜を形成した後、その薄膜を基体から掻き取る方法。
また、リチウム含有酸化ケイ素調製工程では、一酸化ケイ素ガスとリチウムガスとを併せて蒸着させることによってリチウム含有酸化ケイ素を生成することが好ましい。熱処理工程では、リチウム含有酸化ケイ素調製工程において得られたリチウム含有酸化ケイ素が1030℃以上の温度で熱処理される。なお、熱処理温度の上限は1400℃である。また、この熱処理は、不活性ガス雰囲気で実施されるのが好ましい。
【0010】
このリチウムダイシリケート(Li2Si2O5)含有リチウム含有酸化ケイ素の製造方法を利用することによって、第1局面に係るリチウムダイシリケート(Li2Si2O5)含有リチウム含有酸化ケイ素を得ることができる。したがって、この製造方法により、電池の出力特性を向上させるリチウム含有酸化ケイ素を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係るリチウム含有酸化ケイ素粉体の製造装置の概略である。
【
図2】実施例1に係るリチウム含有酸化ケイ素粉体のX線回析チャートである。
【
図3】実施例2に係るリチウム含有酸化ケイ素粉体のX線回析チャートである。
【
図4】比較例1に係るリチウム含有酸化ケイ素粉体のX線回析チャートである。
【
図5】比較例2に係るリチウム含有酸化ケイ素粉体のX線回析チャートである。
【
図6】比較例3に係るリチウム含有酸化ケイ素粉体のX線回析チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係るリチウムダイシリケート(Li2Si2O5)含有リチウム含有酸化ケイ素は、リチウムダイシリケートを含むリチウム含有酸化ケイ素であって、X線回折測定結果において23°以上25°以下の回折角範囲内に現れる3本のピーク(リチウムダイシリケートに由来するピーク)において、回折角が最も小さいピークの強度に対する中央のピークの強度の比が1超であり、回折角が最も大きいピークの強度に対する中央のピークの強度の比が0.8超である。なお、上述の3本のピークのうち中央のピークの強度が最も大きいことが好ましい。
【0013】
なお、通常、回折角が最も小さいピークの頂点は23.6°以上24.0°以下の範囲内に位置し、回折角が最も大きいピークの頂点は24.6°以上25.0°以下の範囲内に位置し、中央のピークの頂点は24.1°以上24.5°以下の範囲内に位置する。
【0014】
ところで、本発明の実施の形態に係るリチウムダイシリケート(Li2Si2O5)含有リチウム含有酸化ケイ素は、リチウム含有酸化ケイ素調製工程および熱処理工程を経て製造される。以下、これらの工程について詳述する。
【0015】
(1)リチウム含有酸化ケイ素調製工程
リチウム含有酸化ケイ素調製工程では、酸素原子数に対するリチウム原子数の比が0超1/2未満の範囲内となるように(すなち、0<Li/O<1/2となるように)リチウム含有酸化ケイ素が調製される。
【0016】
ところで、このリチウム含有酸化ケイ素調製工程は、i)酸化ケイ素粉末とリチウム化合物とを混合して熱処理する方法、ii)塊状の酸化ケイ素あるいは酸化ケイ素粉末に電気化学的にリチウムを反応させる方法、iii)基体にリチウム含有酸化ケイ素の薄膜を形成した後、その薄膜を基体から掻き取る方法等を用いて実現することができるが、製造費用抑制等の観点から
図1に示されるような蒸着装置100を用いて上記iii)の方法により実施されることが好ましい。このため、先ず、この蒸着装置100を説明した後に、この蒸着装置100を用いたリチウム含有酸化ケイ素の製造方法を説明する。
【0017】
蒸着装置100は、
図1に示されるように、主に、ルツボ110、ヒータ120、蒸着ドラム130、スクレーパ141、粒体ガイド143、チャンバ150、原料供給ホッパ160、原料導入管170、回収容器180、第1バルブVL1および第2バルブVL2から構成されている。
【0018】
ルツボ110は、
図1に示されるように天壁の中央部分が開口する耐熱容器であって、チャンバ150に設置されている。また、このルツボ110の天壁の周囲部の一箇所に貫通孔(図示せず)が形成されており、この貫通孔には原料導入管170が挿通されている。すなわち、原料供給ホッパ160内の原料は、原料導入管170を通ってルツボ110に供給されている。また、このルツボ110の天壁の上側には、ガスガイドGgが配設されている。このガスガイドGgは、ルツボ110で発生する原料ガスを蒸着ドラム130に導く部材であって、
図1に示される通り、天壁の中央部分を囲むように天壁の上面に設置されている。
【0019】
ヒータ120は、ルツボ110を高温加熱するためのものであって、ルツボ110の外周を取り込むように配設されている。
【0020】
蒸着ドラム130は、例えば、円筒形状の水平ドラムであって、
図1に示されるように、ルツボ110の天壁の開口OPの上方に配設されており、その下部がガスガイドGgに囲まれている。そして、この蒸着ドラム130は、図示されない駆動機構により一方向に回転駆動される。なお、この蒸着ドラム130には、外周面を一定温度に保つための温度調節器(図示せず)が設けられている。この温度調節器は、外部から供給される冷却媒体により、蒸着ドラム130の外周面温度を、蒸着源ガスの蒸着に適した温度に冷却する。また、蒸着ドラム130の外周面温度は、蒸着ドラム上に残った析出物の上に堆積する析出物の結晶性に影響を与え得る。この温度が低すぎると、析出物の組織構造が疎になりすぎるおそれがあり、反対に高すぎると不均化反応による結晶成長が進行するおそれがある。なお、この温度は、900℃以下であることが好ましく、150℃以上800℃以下の範囲内であることがより好ましく、150℃以上700℃以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0021】
スクレーパ141は、蒸着ドラム上に形成される積層膜を蒸着ドラム130から掻き取る役目を担う部材であって、
図1に示されるように蒸着ドラム130の近傍に配設されている。このスクレーパ141によって掻き落とされた薄片(活物質粒子)は、粒体ガイド143に落下する。また、このスクレーパ141の材質は活物質粒子の不純物汚染に影響する。その影響を抑制する観点から、スクレーパ141の材質はステンレス鋼やセラミックスであることが好ましく、セラミックスであることが特に好ましい。また、このスクレーパ141は、蒸着ドラム130の外周面に接触させないのがよい。回収される活物質粒子に、蒸着ドラム130とスクレーパ141との直接接触により生じ得る不純物汚染が混入することを防止することができるからである。
【0022】
粒体ガイド143は、例えば、振動式の搬送部材であって、
図1に示されるように、蒸着ドラムの近傍からチャンバ150の回収部152に向かうに従って下方に傾斜するように配設されており、その上方に配設されるスクレーパ141により掻き落とされる積層膜片を受けてチャンバ150の回収部152へと送る。
【0023】
チャンバ150は、
図1に示されるように、主に、チャンバ本体部151、回収部152および排気管153から形成されている。チャンバ本体部151は、
図1に示されるように内部に析出室RMを有する箱状部位であって、ルツボ110、ヒータ120、蒸着ドラム130、スクレーパ141および粒体ガイド143を収容している。回収部152は、
図1に示されるように、チャンバ本体部151の側壁から外方に突出する部位であって、チャンバ本体部151の析出室RMに連通する空間を有している。なお、上述の通り、この回収部152には、粒体ガイド143の先端部位が位置している。
【0024】
原料供給ホッパ160は、原料供給源であって、
図1に示されるように出口が原料導入管170に接続されている。すなわち、原料供給ホッパ160に投入された原料は、適当なタイミングで原料導入管170を介してルツボ110に供給される。なお、ルツボ110に供給された原料は、溶湯Srとなった後に気化して原料ガスとなる。
【0025】
原料導入管170は、原料供給ホッパ160に投入されている固体の原料をルツボ110に供給するための丸孔状のノズルであって、ルツボ110の天板部の中央部分において上方に口を向けるように配設されている。
【0026】
回収容器180は、第1バルブVL1および第2バルブVL2を通過してきた積層膜片を回収するための容器である。
【0027】
第1バルブVL1および第2バルブVL2は、開閉により回収容器180への積層膜片の回収量を調整するためのものであって、チャンバ150の回収部152と回収容器180とを繋ぐ回収管190に設けられている。
【0028】
以下のa)~e)に上述の蒸着装置100を利用したリチウム含有酸化ケイ素調製工程の例を示す。
【0029】
a)
本例では、二酸化ケイ素(SiO2)と炭酸リチウム(Li2CO3)との混合粉体がルツボ110に投入される。なお、この原料投入は、原料供給ホッパ160から原料導入管170を介して行ってもよいし、直接ルツボ110に行ってもよい。
【0030】
ルツボ110への原料投入後、析出室RM内に不活性ガスを流しながら、ルツボ110をヒータ120によって炭酸リチウムの融点以上の温度に加熱する。なお、ここで、不活性ガスとは、例えば、希ガス(アルゴンガスン等)や窒素ガス等である。
【0031】
上段落に記載の通りに混合粉体を加熱することにより、リチウム含有酸化ケイ素(SiLixOy)の粉体が得られる。その後、このリチウム含有酸化ケイ素(SiLixOy)の粉体を粉砕し、その粉砕したリチウム含有酸化ケイ素の粉体にケイ素(Si)粉体を混合して造粒する。次いで、その造粒物がルツボ110に投入される。なお、この原料投入は、原料供給ホッパ160から原料導入管170を介して行ってもよいし、直接ルツボ110に行ってもよい。
【0032】
ルツボ110への造粒物投入後、析出室RM内を減圧しながら、ルツボ110をヒータ120によって700℃以上の温度に加熱する。この際、SiLixOy+(y-1)Si→xLi↑+ySiO↑の反応が進行する。そして、ルツボ110から生じる一酸化ケイ素ガスおよびリチウムガスがガスガイドGgを通って蒸着ドラム130に供給される。そして、この際、蒸着ドラム130が、駆動源によって回転駆動されている。なお、蒸着ドラム130の外周面の温度は、析出室RM内の温度より低く設定されている。より詳しくは、同温度は、一酸化ケイ素ガスおよびリチウムガスの凝縮温度より低く設定されている。この設定により、ルツボ110から生じる一酸化ケイ素ガスおよびリチウムガスが、回転する蒸着ドラム130の外周面に蒸着(析出)して堆積し、スクレーパ141により蒸着ドラム130からその堆積物が掻き取られる。なお、掻き取られた堆積物の欠片は蒸着ドラム130の外周面に沿って粒体ガイド143に落下していく。
【0033】
b)
本例では、炭酸リチウムの粉体、二酸化ケイ素の粉体およびケイ素の粉体の混合粉体が原料としてルツボ110に投入される。なお、この原料投入は、原料供給ホッパ160から原料導入管170を介して行ってもよいし、直接ルツボ110に行ってもよい。
【0034】
ルツボ110への原料投入後、析出室RM内を減圧しながら、ルツボ110をヒータ120によって400℃以上炭酸リチウムの融点未満の範囲内の温度に加熱する。なお、析出室RM内の圧力は、高すぎると原料からSiOガスが発生する反応が起こりにくくなる。このため、析出室RM内の圧力は、1000Pa以下であることが好ましく、750Pa以下であることがより好ましく、20Pa以下であることが特に好ましい。また、析出室RM内の温度はSiOの反応速度に影響し、同温度が低すぎると反応速度が遅くなり、同温度が高すぎると原料の融解による副反応進行や、エネルギー効率低下などが懸念される。この観点から、析出室RM内の温度は、425℃以上675℃以下の範囲内であることが好ましく、450℃以上650℃以下の範囲内であることがより好ましく、475℃以上625℃以下の範囲内であることがさらに好ましく、500℃以上600℃以下の範囲内であることがさらに好ましく、525℃以上575℃以下の範囲内であることが特に好ましい。なお、析出室RM内を減圧しない場合も想定されるが、その際、析出室RMに不活性ガスが通されるのが好ましい。ここで、不活性ガスとは、例えば、希ガス(アルゴンガスン等)や窒素ガス等である。また、この段階では、原料粉体はそのまま粉体形状を保っている。
【0035】
上段落に記載の通りに原料を加熱することにより、炭化ケイ素の生成反応(Li2CO3+Si→Li2SiO3+SiC)の進行が抑制されつつ炭酸リチウムの脱炭酸反応(Li2CO3→Li2O+CO2↑の反応)が進行する。なお、この際、原料重量を監視するか二酸化炭素を検知することによって炭酸リチウムの脱炭酸反応の進行具合を確認することができる。また、上述の確認後に本例に係る方法を繰り返し行う場合、時間管理によって炭酸リチウムの脱炭酸反応の進行具合を管理することも可能である。
【0036】
上述の通りにして炭酸リチウムの脱炭酸反応の進行具合を管理し、炭酸リチウムの脱炭酸反応が完結したと思われる時点から、析出室RM内を減圧しながら、ルツボ110をヒータ120によって700℃以上の温度に加熱する。そして、ルツボ110から生じる一酸化ケイ素ガスおよびリチウムガスがガスガイドGgを通って蒸着ドラム130に供給される。そして、この際、蒸着ドラム130が、駆動源によって回転駆動されている。なお、蒸着ドラム130の外周面の温度は、析出室RM内の温度より低く設定されている。より詳しくは、同温度は、一酸化ケイ素ガスおよびリチウムガスの凝縮温度より低く設定されている。この設定により、ルツボ110から生じる一酸化ケイ素ガスおよびリチウムガスが、回転する蒸着ドラム130の外周面に蒸着し析出させて堆積し、スクレーパ141により蒸着ドラム130からその堆積物が掻き取られる。なお、掻き取られた堆積物の欠片は蒸着ドラム130の外周面に沿って粒体ガイド143に落下していく。
【0037】
c)
本例では、炭酸リチウムの粉体、二酸化ケイ素の粉体およびケイ素の粉体が原料としてルツボ110に投入される際に、炭酸リチウムの粉体の層とケイ素の粉体の層との間に二酸化ケイ素の粉体の層が位置するように、炭酸リチウムの粉体、二酸化ケイ素の粉体およびケイ素の粉体が層状に積み重ねられる。すなわち、本例では、炭酸リチウムの粉体とケイ素の粉体とが接触しないが、炭酸リチウムの粉体と二酸化ケイ素の粉体と接触することになる。なお、このような原料投入は、ルツボ110に直接行われる。また、この際、ケイ素の粉体の層が最下層とされるのが好ましい。また、この際、炭酸リチウムの粉体の層と二酸化ケイ素の粉体の層とが一層ずつ積層されてもよいし、炭酸リチウムの粉体の層と二酸化ケイ素の粉体の層とが交互に複数層積み重ねられてもよい。
【0038】
ルツボ110への原料投入後、析出室RM内を減圧しながら、ルツボ110をヒータ120によって炭酸リチウムの融点以上の温度に加熱する。なお、析出室RM内の圧力は、高すぎると原料からSiOガスが発生する反応が起こりにくくなる。このため、析出室RM内の圧力は、1000Pa以下であることが好ましく、750Pa以下であることがより好ましく、20Pa以下であることが特に好ましい。また、析出室RM内の温度はSiOの反応速度に影響し、同温度が低すぎると反応速度が遅くなり、同温度が高すぎると原料の融解による副反応進行や、エネルギー効率低下などが懸念される。この観点から、析出室RM内の温度は、800℃超であることが好ましく、900℃超であることがより好ましく、1000℃超であることがさらに好ましく、1100℃超であることがさらに好ましく、1200℃超であることがさらに好ましく、1300℃超であることが特に好ましい。なお、この温度の上限は1400℃である。なお、この際、一定時間経過後に原料を攪拌機等により撹拌するようにしてもよい。
【0039】
上段落に記載の通りに原料を減圧加熱することにより、炭化ケイ素の生成反応(Li2CO3+Si→Li2SiO3+SiC)の進行よりもLi2CO3+SiO2→SiLixOy+CO2↑で示される反応の進行が優先される。そして、その後にSiLixOy+(y-1)Si→xLi↑+ySiO↑の反応が進行する。そして、ルツボ110から生じる一酸化ケイ素ガスおよびリチウムガスがガスガイドGgを通って蒸着ドラム130に供給される。そして、この際、蒸着ドラム130が、駆動源によって回転駆動されている。なお、蒸着ドラム130の外周面の温度は、析出室RM内の温度より低く設定されている。より詳しくは、同温度は、一酸化ケイ素ガスおよびリチウムガスの凝縮温度より低く設定されている。この設定により、ルツボ110から生じる一酸化ケイ素ガスおよびリチウムガスが、回転する蒸着ドラム130の外周面に蒸着(析出)して堆積し、スクレーパ141により蒸着ドラム130からその堆積物が掻き取られる。なお、掻き取られた堆積物の欠片は蒸着ドラム130の外周面に沿って粒体ガイド143に落下していく。
【0040】
d)
本例では、炭酸リチウムの粉体、二酸化ケイ素の粉体およびケイ素の粉体が原料としてルツボ110に投入される際に、炭酸リチウムの粉体と二酸化ケイ素の粉体とが混合され、その混合粉体の層とケイ素の粉体の層とが隣接するように、混合粉体およびケイ素の粉体が層状に積み重ねられる。なお、このような原料投入は、ルツボ110に直接行われる。また、この際、ケイ素の粉体の層が混合粉体の層よりも下側に配置されるのが好ましく、ケイ素の粉体の層が最下層とされるのが好ましい。また、この際、混合粉体の層とケイ素の粉体の層とが一層ずつ積層されてもよいし、混合粉体の層とケイ素の粉体の層とが交互に複数層積み重ねられてもよい。
【0041】
ルツボ110への原料投入後、析出室RM内を減圧しながら、ルツボ110をヒータ120によって炭酸リチウムの融点以上の温度に加熱する。なお、析出室RM内の圧力は、高すぎると原料からSiOガスが発生する反応が起こりにくくなる。このため、析出室RM内の圧力は、1000Pa以下であることが好ましく、750Pa以下であることがより好ましく、20Pa以下であることが特に好ましい。また、析出室RM内の温度はSiOの反応速度に影響し、同温度が低すぎると反応速度が遅くなり、同温度が高すぎると原料の融解による副反応進行や、エネルギー効率低下などが懸念される。この観点から、析出室RM内の温度は、800℃超であることが好ましく、900℃超であることがより好ましく、1000℃超であることがさらに好ましく、1100℃超であることがさらに好ましく、1200℃超であることがさらに好ましく、1300℃超であることが特に好ましい。なお、この温度の上限は1400℃である。なお、この際、一定時間経過後に原料を攪拌機等により撹拌するようにしてもよい。
【0042】
上段落に記載の通りに原料を減圧加熱することにより、炭化ケイ素の生成反応(Li2CO3+Si→Li2SiO3+SiC)の進行よりもLi2CO3+SiO2→SiLixOy+CO2↑で示される反応の進行が優先される。そして、その後にSiLixOy+(y-1)Si→xLi↑+ySiO↑の反応が進行する。そして、ルツボ110から生じる一酸化ケイ素ガスおよびリチウムガスがガスガイドGgを通って蒸着ドラム130に供給される。そして、この際、蒸着ドラム130が、駆動源によって回転駆動されている。なお、蒸着ドラム130の外周面の温度は、析出室RM内の温度より低く設定されている。より詳しくは、同温度は、一酸化ケイ素ガスおよびリチウムガスの凝縮温度より低く設定されている。この設定により、ルツボ110から生じる一酸化ケイ素ガスおよびリチウムガスが、回転する蒸着ドラム130の外周面に蒸着(析出)して堆積し、スクレーパ141により蒸着ドラム130からその堆積物が掻き取られる。なお、掻き取られた堆積物の欠片は蒸着ドラム130の外周面に沿って粒体ガイド143に落下していく。
【0043】
e)
本例では、先ず、炭酸リチウムの粉体および二酸化ケイ素の粉体の混合粉体が原料としてルツボ110に投入される。なお、この原料投入は、原料供給ホッパ160から原料導入管170を介して行ってもよいし、直接ルツボ110に行ってもよい。
【0044】
ルツボ110への原料投入後、ルツボ110をヒータ120によって炭酸リチウムの融点以上の温度に加熱する。かかる場合、析出室RM内を減圧しておいてもよいし、析出室RMに不活性ガスを通してもよい。ここで、不活性ガスとは、例えば、希ガス(アルゴンガスン等)や窒素ガス等である。
【0045】
以上の通りに原料を加熱することにより、Li2CO3+SiO2→SiLixOy+CO2↑で示される反応を行わせることができる。なお、この際、原料重量を監視するか二酸化炭素を検知することによって上記反応の進行具合を確認することができる。また、上述の確認後に本例に係る方法を繰り返し行う場合、時間管理によって上記反応の進行具合を管理することも可能である。
【0046】
上述の通りにして上記反応の進行具合を管理し、上記反応が完結したと思われる時点から、原料供給ホッパ160から原料導入管170を介してルツボ110にケイ素の粉体を投入する。なお、ケイ素の粉体の投入前に既に析出室RMが減圧されていた場合、上記の減圧度および温度はそのまま維持されてもよいし、適切に変更されてもよい。また、ケイ素の粉体の投入前に析出室RMが減圧されていかった場合、析出室RMは減圧される。なお、析出室RM内の圧力は、高すぎると原料からSiOガスが発生する反応が起こりにくくなる。このため、析出室RM内の圧力は、1000Pa以下であることが好ましく、750Pa以下であることがより好ましく、20Pa以下であることが特に好ましい。また、析出室RM内の温度はSiOの反応速度に影響し、同温度が低すぎると反応速度が遅くなり、同温度が高すぎると原料の融解による副反応進行や、エネルギー効率低下などが懸念される。この観点から、析出室RM内の温度は、800℃超であることが好ましく、900℃超であることがより好ましく、1000℃超であることがさらに好ましく、1100℃超であることがさらに好ましく、1200℃超であることがさらに好ましく、1300℃超であることが特に好ましい。なお、この温度の上限は1400℃である。また、この際、撹拌機等により原料が撹拌混合されてもよい。
【0047】
そして、SiLixOy+(y-1)Si→xLi↑+ySiO↑の反応が進行する。そして、ルツボ110から生じる一酸化ケイ素ガスおよびリチウムガスがガスガイドGgを通って蒸着ドラム130に供給される。そして、この際、蒸着ドラム130が、駆動源によって回転駆動されている。なお、蒸着ドラム130の外周面の温度は、析出室RM内の温度より低く設定されている。より詳しくは、同温度は、一酸化ケイ素ガスおよびリチウムガスの凝縮温度より低く設定されている。この設定により、ルツボ110から生じる一酸化ケイ素ガスおよびリチウムガスが、回転する蒸着ドラム130の外周面に蒸着(析出)して堆積し、スクレーパ141により蒸着ドラム130からその堆積物が掻き取られる。なお、掻き取られた堆積物の欠片は蒸着ドラム130の外周面に沿って粒体ガイド143に落下していく。
【0048】
(2)熱処理工程
熱処理工程では、リチウム含有酸化ケイ素調製工程で得られたリチウム含有酸化ケイ素が1030℃以上の温度で熱処理される。なお、この熱処理時にリチウム含有酸化ケイ素にリチウムダイシリケート(Li2Si2O5)の結晶が形成されることになる。また、熱処理温度の上限は1400℃である。また、熱処理時間および熱処理時間は、焼成炉のタイプや粉体の充填方法、1バッチあたりの処理量により変化する。例えば、10g程度のリチウム含有酸化ケイ素粉体を静置式電気炉で焼成する場合は1200℃で10分程度処理すれば十分な効果が得られるが、10kgの粉体を静置式電気炉で焼成する場合には、1hr程度の処理が必要になるであろう。焼成炉としては、例えば、雰囲気制御が可能な静置式の電気炉や、ロータリーキルン、ローラーハースキルン、流動層型熱処理炉などが挙げられるが、大量の粉末を均一に処理するという工業的な観点からは撹拌しながら加熱できるロータリーキルンや流動層型加熱炉が望ましい。基本的に温度が高く、時間が長くなるほど、中央のピークが、そのピークに隣接する2つピーク(上述の3つのピークのうち、回折角が最も小さいピークおよび回折角が最も大きいピーク)に対して強くなる。
【0049】
<本発明の実施の形態に係るリチウムダイシリケート含有リチウム含有酸化ケイ素粉体の特徴>
本発明の実施の形態に係るリチウムダイシリケート含有リチウム含有酸化ケイ素粉体粉体は、X線回折測定結果において23°以上25°以下の回折角範囲内に現れる3本のピーク(リチウムダイシリケートに由来するピーク)において、回折角が最も小さいピークの強度に対する中央のピークの強度の比が1超であり、回折角が最も大きいピークの強度に対する前記中央のピークの強度の比が0.8超である。このようなチウムダイシリケート含有リチウム含有酸化ケイ素は、電極の主材料として利用された際、上述のピーク関係を有さないリチウムダイシリケートを含むリチウム含有酸化ケイ素に比べて電池の出力特性に優れる。
【0050】
以下、本発明をより詳細に説明するために実施例および比較例を示すが、本発明がこの実施例には限定されることはない。
【実施例1】
【0051】
1.リチウム含有酸化ケイ素粉体の製造
図1に示す蒸着装置100のルツボ110に二酸化ケイ素(SiO
2)と炭酸リチウム(Li
2CO
3)との混合粉体(二酸化ケイ素の粉体:炭酸リチウムの粉体=120:74(質量比))を投入し、析出室RM内にアルゴンガスを流しながら、ルツボ110をヒータ120によって1000℃に加熱した。なお、この加熱は、排気に二酸化炭素が検出されなくなるまで継続された。
【0052】
系内からの排気に二酸化炭素が検出されなくなったことを確認した後に、ルツボ110を自然冷却させ、そのルツボからリチウム含有酸化ケイ素(SiLixOy)の粉体を取り出した。そして、そのリチウム含有酸化ケイ素(SiLixOy)の粉体をケイ素(Si)粉体と混合して造粒した。そして、その造粒物をルツボ110に投入した。
【0053】
続いて、ヒータ120の出力を上げてルツボ110の温度を1300℃にまで上昇させて、一酸化ケイ素ガスおよびリチウムガスを発生させた。そして、その一酸化ケイ素ガスおよびリチウムガスを蒸着ドラム130の外周面に蒸着(析出)させて堆積させ、スクレーパ141により蒸着ドラム130からその堆積物を掻き取った。
【0054】
そして、この掻き取った堆積物を粉砕した後、その粉砕物を1100℃の温度で30分熱処理した。その後、その粉砕物を、ボールミルを用いて、メディアン径(D50)が5μmとなるまで更に粉砕し、その粉砕物を目開き45μmの篩で分級し、その粉砕物の粒度を調整して目的のリチウム含有酸化ケイ素粉体を得た。
【0055】
2.リチウム含有酸化ケイ素粉体の物性
(1)X線回折特性
上述の熱処理済みの粉体を、X線回折装置(マルバーン・パナリティカル株式会社製,波長1.5418nm(CuKα)、モノクロメーターなし、スキャンステップ0.01313°)で分析したところ、
図1に示されるX線回折チャートが得られた。
図1に示される通り、上記X線回折チャートの23°以上25°以下の回折角範囲に3つのピークがみられた。これらのピークのうち回折角が最も小さいピークの頂点は23.8°に位置し、回折角が最も大きいピークの頂点は24.8°に位置し、中央のピークの頂点は24.3°に位置していた。次に、以下の通りにして上述の各ピークの強度を求めたところ、回折角が最も小さいピークの強度は2889.28cpsであり、回折角が最も大きいピークの強度は3413.73cpsであり、中央のピークの強度は2971.43cpsであった(表1参照)。
【0056】
先ず、23°の点と26°の点を結んだ直線をベース強度として差し引く。そして、その状態のX線回折チャートにおいて、23.6°から24.0°の範囲のピーク強度の最大値を求めてそれを回折角が最も小さいピークの強度とし、24.1°から24.5°の範囲のピーク強度の最大値を求めてそれを中央のピークの強度とし、24.6°から25.0°の範囲のピーク強度の最大値を求めて回折角が最も大きいピークの強度とする。
【0057】
上述の結果より、回折角が最も小さいピークの強度に対する中央のピークの強度の比は1.02843(=2971.43/2889.28)となって1よりも大きくなり、回折角が最も大きいピークの強度に対する中央のピークの強度の比は0.87069(=2971.43/3413.73)となって0.8よりも大きくなり、目的のリチウム含有酸化ケイ素粉体が得られていることが明らかとなった(表1参照)。
【0058】
(2)リチウム含有酸化ケイ素粉体の電極特性測定
a)負極の作製
上述の通りして得られたリチウム含有酸化ケイ素粉体、ケッチェンブラックおよび非水溶剤系バインダーであるポリイミド前駆体を85:5:10の質量比で混合し、その混合物にN-メチルピロリドンを加えた後にその混合物を混練してスラリーを調製した。そして、そのスラリーを厚さ40μmの銅箔上に塗布し、その塗膜を80℃で15分間予備乾燥した後、その乾燥塗膜付き銅箔を直径11mmに打ち抜いた後、それを減圧下350℃で加熱して負極を作製した。なお、乾燥塗膜付き銅箔を350℃で加熱することによって、乾燥塗膜中のポリイミド前駆体はイミド化している。
【0059】
b)コインセル(リチウムイオン二次電池)の作製と電池物性測定
対極としてリチウム箔を用い、電解質として「六フッ化リンチリウム(LiPF6)が1モル/Lの濃度になるように、エチレンカーボネイトおよびジエチルカーボネイトを1:1の体積比で混合した溶液に六フッ化リンチリウムを溶解させた溶液」を用い、セパレータとして厚さ20μmのポリエチレン製多孔質フィルムを用いてコインセルを作製した。
【0060】
そして、株式会社エレクトロフィールド製の二次電池充放電試験装置を用いてこのコインセルの充放電試験を行った。なお、充放電試験における試験条件は表2に示される通りであった。この充放電試験により、初回充電容量、初回放電容量、初回充電容量に対する初回放電容量の比(初回クーロン効率)、初回の放電容量に対する3回目の放電容量の比(出力特性)を求めた。測定結果は表1に示される通りであった。なお、ここにいう「出力特性」とは、「初回の0.1Cで充放電したときの放電容量」に対する「3サイクル目の0.5Cで充放電したときの放電容量」の割合をいう。
【実施例2】
【0061】
実施例1における熱処理温度を1100℃から1200℃に代えた以外は、実施例1と同様にしてリチウム含有酸化ケイ素粉体を得、実施例1と同様にしてそのリチウム含有酸化ケイ素粉体のX線回折特性および電極の出力特性を測定した。その結果を表1に示した。この結果から目的のリチウム含有酸化ケイ素粉体が得られていることが明らかとなった。
【0062】
(比較例1)
原料として、二酸化ケイ素(SiO2)とケイ素(Si)との混合粉体(二酸化ケイ素の粉体:ケイ素の粉体=60:28(質量比))を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム含有酸化ケイ素粉体を得、実施例1と同様にしてそのリチウム含有酸化ケイ素粉体のX線回折特性および電極特性を測定した。その結果を表1に示した。この結果から目的のリチウム含有酸化ケイ素粉体は得られていないことが明らかとなった。
【0063】
(比較例2)
実施例1における熱処理温度を1100℃から700℃に代えた以外は、実施例1と同様にしてリチウム含有酸化ケイ素粉体を得、実施例1と同様にしてそのリチウム含有酸化ケイ素粉体のX線回折特性および電極の出力特性を測定した。その結果を表1に示した。この結果から目的のリチウム含有酸化ケイ素粉体は得られていないことが明らかとなった。
【0064】
(比較例3)
実施例1における熱処理温度を1100℃から1000℃に代えた以外は、実施例1と同様にしてリチウム含有酸化ケイ素粉体を得、実施例1と同様にしてそのリチウム含有酸化ケイ素粉体のX線回折特性および電極の出力特性を測定した。その結果を表1に示した。この結果から目的のリチウム含有酸化ケイ素粉体は得られていないことが明らかとなった。
【0065】
【0066】
なお、表1中、「Pmin」は回折角が最も小さいピークを示し、「Pmid」は中央のピークを示し、「Pmax」は回折角が最も大きいピークを示している。
【0067】
【0068】
(まとめ)
表1に示される結果から、実施例1および2に係るコインセルは比較例1-3に係るコインセルよりも優れた出力特性を示すことが明らかとなった。
【符号の説明】
【0069】
100 蒸着装置
110 ルツボ
120 ヒータ
130 蒸着ドラム
141 スクレーパ
143 粒体ガイド
150 チャンバ
151 チャンバ本体部
152 回収部
153 排気管
160 原料供給ホッパ
170 原料導入管
180 回収容器
190 回収管
Gg ガスガイド
OP 開口
RM 析出室
Sr 溶湯
VL1 第1バルブ
VL2 第2バルブ