(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】時計の組立方法及び時計
(51)【国際特許分類】
G04B 37/05 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
G04B37/05 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019076118
(22)【出願日】2019-04-12
【審査請求日】2022-03-16
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロタル, ミハエラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラレー, ピエール
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-203211(JP,A)
【文献】特開2017-040647(JP,A)
【文献】特開2016-024192(JP,A)
【文献】特開昭63-124989(JP,A)
【文献】特開2005-265755(JP,A)
【文献】特開2011-203212(JP,A)
【文献】特開2007-263686(JP,A)
【文献】特表2015-500479(JP,A)
【文献】特開平07-270547(JP,A)
【文献】スイス国特許出願公開第00706717(CH,A3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04D 1/00-99/00
G04B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型時計ムーブメント(2)と、耐水ケース(3)を含む、時計(1)の組立方法であって、
前記時計は、裏蓋(31)である第1要素(31)と、前記ケースの内部(4)と前記ケースの外部の環境(5)との間の流体連結が許可される第1構成と前記ケースの内部(4)と前記ケースの外部の前記環境(5)との間の流体連結が制限される第2構成との間で可動である第2要素(32)と
、前記小型時計ムーブメントに有する第3要素とを含み、
前記組立方法は、
前記第2要素を前記第1構成へ位置させる第0段階と、
前記第1要素(31)を取付け固定することで、前記ケースを閉じる第1段階と、
前記第2要素の前記第1構成から前記第2構成への移行動作である第2段階と
の順の各段階を含み、
前記第2段階における前記第2要素の前記第1構成から前記第2構成への移行が、前記ケースの内の圧力の5%以下の圧力の上昇を引き起こすように構成され、
前記第0段階における前記第2要素の前記第1構成への移行は、前記裏蓋を外した状態で時計士による前記第3要素への作用により可能となる組立方法。
【請求項2】
前記第2要素(32)は、前記第2要素の前記第1構成から前記第2構成への移行が、前記ケース内の流体の25%以下の、または10%以下の、または5%以下の体積変化を引き起こすように配置され、流体の前記体積変化は、
前記第1要素の前記ケースの内部(4)と前記ケースの外部の前記環境(5)との間の流体連結が許可される第3構成から前記ケースの内部(4)と前記ケースの外部の前記環境(5)との間の流体連結が制限される第4構成への移行、または
前記第1要素の前記ケースへの位置決め及び固定、
により引き起こされる、
請求項1に記載の組立方法。
【請求項3】
前記組立方法は、前記第2段階に続いて、前記ケースの密閉性をテストする第3段階を含む、
請求項1または2に記載の組立方法。
【請求項4】
前記組立方法は、前記第2段階に続いて、前記小型時計ムーブメントの歩度の値が測定される、前記ケースの密閉性をテストする第3段階を含む、
請求項1または2に記載の組立方法。
【請求項5】
前記組立方法は、前記第1段階に先駆けて、前記小型時計ムーブメントの歩度を調節する段階を含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の組立方法。
【請求項6】
前記ケースを閉じる前記第1段階は、
前記裏蓋(31)をケース胴(33)へねじ留めすることを含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の組立方法。
【請求項7】
前記裏蓋(31)の前記ケース胴(33)へのねじ留めは、第1密閉ガスケット(34)を変形させる、
請求項6に記載の組立方法。
【請求項8】
前記裏蓋(31)の前記ケース胴(33)へのねじ留めは、第1密閉ガスケット(34)を圧縮する、
請求項6に記載の組立方法。
【請求項9】
前記ケースを閉じる前記第2段階は、前記第2要素の前記第1構成から前記第2構成への変位を含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載の組立方法。
【請求項10】
前記第2要素は、前記第2構成においては、第2密閉ガスケット(35)と接触する状態にあり、前記第1構成においては、前記第2密閉ガスケットと中断された接触または部分的に中断された接触状態にある、
請求項1から9のいずれか一項に記載の組立方法。
【請求項11】
前記第2要素は真であり、前記第1構成において、前記真は、前記第2密閉ガスケット(35)に対向する、減少した断面の部分(321)を示す、
請求項10に記載の組立方法。
【請求項12】
前記第2要素は真であり、
前記第3要素は引き抜き片(21)である、
請求項1から11のいずれか一項に記載の組立方法。
【請求項13】
前記第2要素は真であり、
前記第2要素を前記第2構成に位置させるための変位は、前記小型時計ムーブメントの前記第3要素(21)への作用とは独立して実施される
請求項1から
12のいずれか一項に記載の組立方法。
【請求項14】
第3要素を含むムーブメントと、裏蓋と第2要素を含む小型時計ケース(3)を含む、時計(1)であって、
前記第2要素は、前記ケースの密閉性を保証するよう適合される第2構成と、前記小型時計ケースの内部(4)と前記小型時計ケースの外部の環境(5)との間の流体連結を可能にするよう適合される第1構成との間で可動に配置され、
前記第2要素は、前記第2構成においては、第2密閉ガスケット(35)と接触する状態にあり、
前記第2要素は、前記第1構成において、前記第2密閉ガスケット(35)に対向する位置に来るよう意図される、減少した断面の部分(321)を示す真であり、
前記第2要素の前記第2構成から前記第1構成への移行は、前記裏蓋を外して、時計士による前記第3要素への作用により可能となるように、前記第3要素が配置される、
時計(1)。
【請求項15】
前記第2要素は、前記第1構成から第2構成へ一方向に可動に配置される、及びまたは、前記第2要素は、前記第1構成から前記第2構成へ自由に可動に配置される、
請求項14に記載の時計。
【請求項16】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法の実施により得られる、時計(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水性時計の取付けまたは組立方法に関する。本発明はまた、時計、更に具体的には当該方法の実施により得られた時計に関する。
【背景技術】
【0002】
小型時計ムーブメントへの圧力の変動は、その歩度を変動させる。変動は、1日あたり且つ1mmHgあたり、0.01から0.02秒程度であり、または1日あたり且つ1バールあたり10から15秒程度である。小型時計の歩度への圧力の効果は、更に具体的には、特許文献1に記載のように、ケースの密閉完全性を立証するために利用される。
【0003】
耐水性小型時計ケースへムーブメントを入れる段階は、ケースの裏蓋を係止することがケース内の圧力を増加させるため、同様に、ムーブメントの歩度に影響を与える。この圧力は、時の経過により小型時計ケースの外部の環境の圧力と一致するまで相殺される。しかしながら、例えばCOSCへテストまたは認定のために提出され、むき出しのムーブメントの調整は、過大加圧が解消するのに必要な時間である、数か月の期間に分布される。このため、一旦組み立てられた小型時計は、むき出しのムーブメントの歩度とは異なる歩度を示す。
【0004】
ケースへ入れる段階は、ムーブメントをそのケースの中へ配置してそこに固定し、りゅうず真を挿入し、裏蓋を閉じることを含む。ケース入れの最中にムーブメントが曝される圧力の変動は、
- 裏蓋がその位置にあり、密閉ガスケットが圧縮されていないが、それが当接する表面に接触する、ケース内の第1自由体積と、
- 裏蓋が係止され、密閉ガスケットが押しつぶされる、ケース内の第2自由体積と
の間の変化に対応する。
【0005】
このように、圧力の変動は、ケースとムーブメントの形状に依拠する。約40mmの直径を有する小型時計の場合、裏蓋を閉じることに関連する圧力の変動は、1日あたり1秒に近い歩度の遅れをもたらすこともある。
【0006】
非特許文献1によれば、てん輪の振動の周期は、周囲の気体によって影響を受ける。歩度-圧力関数は、一般的には、1mmHgあたり0.01から0.02s/j程度で、圧力が増加すると遅れが生じる。てん輪が大きくなるほど、歩度の変動は小さくなる。
【0007】
非特許文献2によれば、特定の小型時計の歩度への大気圧の効果は、その気圧係数C(圧力単位あたりの歩度の変動)により特徴づけられる。効果は小型時計の通常の動作温度に関して一定であると推定され、時計のそれぞれ(または構造のそれぞれ)について測定されなければならない。
【0008】
当該効果は、特許文献2またはC. Attingerにより早くも1948年に非特許文献3により説明されるように、特に、小型時計ケースの密閉完全性をテストするために利用される。
【0009】
圧力に依拠する歩度の変動を評価するために、さまざまな内径に実施された測定は、1バールの差異について1日あたり10秒を超える変動を示し、同様に、ケースに入れられたムーブメントは、基本的にもはや大気の変動に曝されないことを確認した。小型時計ケースの内部及び外部の圧力が互いに相殺し、歩度が安定するための安定期間は3か月と推定された。
【0010】
耐水性小型時計の利用可能性に関連する利点の1つは、最も多様な環境への携帯性を可能にすることであったが、結果として新たな問題を導いた。その問題は、調節された時点での、またはCOSCによりテストされた時点での、ムーブメントと、小型時計に設置され、裏蓋が閉じられたムーブメントとの、歩度の変動である。
【0011】
実際、耐水性ケースの裏蓋を閉じることは、約0.1バールに達することもあるケース内の圧力の増加をもたらし、または裏蓋の係止により1日あたり1秒の歩度の差をもたらす。
【0012】
ケース胴へねじ留めされた裏蓋を示す、小型時計ケースについての理論的圧力計算を、以下に示す。
【0013】
耐水性小型時計ケース内の圧力は、ボイルの法則に準拠する:p1×V1=p2×V2
ここで、
p1:小型時計ケースの内部の環境が小型時計ケースの外部の環境から隔離された瞬間の、小型時計ケースの周囲の圧力、
V1:小型時計ケースの内部の環境が小型時計ケースの外部の環境から隔離された瞬間の、内部の自由体積、またはケース内側の環境ガスの体積、
p2:第1要素が完全に取り付けられ、ケース胴へ固く締められたときの、小型時計ケース内の圧力、または小型時計ケース内の環境の圧力、
V2:第1要素が完全に取り付けられ、ケース胴へ固く締められたときの、ケース内部の自由体積、またはケース内側の環境ガスの体積。
【0014】
大気圧p1(例えば0.966バール)が、裏蓋が取付けられたムーブメントを含むケースの体積V1に関連する場合、圧力の変動Δpは、以下の数式で与えられる。
Δp=p1×ΔV/V2、ここでΔV=π×h×d2/4
ここで、
d:裏蓋のねじ山の外径、
h:小型時計ケースの内部の環境が小型時計ケースの外部の環境から隔離された構成と、第1要素が完全に取り付けられ、ケース胴へ固く締められた構成との間の、第1密閉ガスケットの高さの差。
【0015】
例として、0.8mmのトーラス直径を有するOリングシールにより密閉完全性が保証される、32mmのねじ山の外径を有する裏蓋を含む、40mmの直径を有する小型時計の裏蓋を閉じると、裏蓋を係止するときに0.028バールの圧力の差が生じる。この差は、1日あたり約0.3秒の歩度の変動をもたらす。
【0016】
耐水性小型時計の場合、均衡はガスケットを通じた空気の拡散により達成されると見做され、海水位での歩度の調整は、所有者が高地にいると迅速に相殺される。しかしながら、製造中とその後の動作中の調節の時点の両方において、時計士が行った調節が維持されることを保証することが有利であると立証することもできる。これは、更に具体的には、小型時計ケース内の圧力の変動の結果、小型時計への介入に続く数か月中、依頼人が歩度の重大な差を見つける危険に曝されるというアフターサービスの時点で当てはまる。
【0017】
ケースへ入れた直後から、ムーブメントがケースに入れられた時に適切な歩度を有することを保証するために、圧力の変動を予測し、それに従ってムーブメントの歩度を調整することで問題を解決することは可能であるが、これには複雑な計算を必要とし、アフターサービスでの困難を伴うことによってのみ達成可能である。加えて、介入の数か月後に圧力が平衡すると、歩度が不適切になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】欧州特許出願公開第3136189号
【文献】欧州特許出願公開第3121663号
【非特許文献】
【0019】
【文献】「Influence of the fluid driven for the period of oscillation of a spring pendulum」、C. Attinger, Annual bulletin of the SSC、 1947
【文献】「Influence of barometric variations on the rate of marine chronometers」、 E. Guyot, Annual bulletin of the SSC, 1938
【文献】「Barometric pressure and watches. Various applications」、 C. Attinger, Annual bulletin of the SSC, 1948
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、上述の欠点に対応し、従来技術からよく知られた方法を改善するために、耐水性時計の取付けまたは組立方法を提案することである。特に、本発明は、簡単であり、当該方法により取り付けられた時計の時計的精度を改善可能な、取付け方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明にかかる組立方法は、請求項1に定義される。
【0022】
組立方法の様々な実施形態は、請求項2から13に定義される。
【0023】
本発明にかかる時計は、請求項14から16に定義される。
【0024】
添付の図面は、本発明にかかる時計の実施例を例として示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、様々な構成による、時計の実施形態の断面図である。
【
図2】
図2は、様々な構成による、時計の実施形態の断面図である。
【
図3】
図3は、様々な構成による、時計の実施形態の断面図である。
【
図4】
図4は、様々な構成による、時計の実施形態の断面図である。
【
図5】
図5は、様々な構成による、時計の実施形態の第1変形例の断面図である。
【
図6】
図6は、時計の実施形態の第2変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
時計1の第1実施形態を、
図1から4を参照して以下に説明する。時計は、例えば小型時計であり、特に腕時計である。時計は、ムーブメント2を含む。ムーブメントは機械式ムーブメントである。ムーブメントは、特に、自動式機械式ムーブメントであってよい。
【0027】
時計はまた、小型時計ケースを、更に具体的には耐水性小型時計ケースを含む。小型時計ケースは、耐水の態様でムーブメントを囲むことが意図される。このため、小型時計ケースは、小型時計ケース内に、小型時計ケースの外部の環境5から隔離された環境4を規定する。
【0028】
小型時計ケースは、第1側がガラスで閉鎖され、第2側が第1ケース要素、例えば裏蓋31で閉鎖された、ケース胴33を含む。小型時計ケースはまた、第2ケース要素の、例えばりゅうず管を取付けるために必要な、1以上の要素を含む。
【0029】
ケース胴と第1要素間の密閉完全性は、第1密閉ガスケット34により保証される。
【0030】
第1要素は、ケース胴に、ねじ留めで取付けられてもよい。すなわち第1要素は、ケース胴へ螺旋状リンクにより結合されてもよい。代替案として、第1要素はねじの助けを借りてケース胴に取付けられてもよい。好ましくは第1要素の取付けは、第1密閉ガスケットを圧縮または押しつぶす。この第1密閉ガスケットの圧縮または押しつぶしは、小型時計ケース内の体積の減少をもたらす。第1要素への第1ガスケットの全周囲周りの継続的な接触の時点から小型時計ケース内の環境4が隔離されているとの前提で、第1密閉ガスケットの変形、より具体的には圧縮または押しつぶしは、他の点で小型時計ケースが開放されていないとの前提で、小型時計ケース内の環境で圧力の増加をもたらす。
【0031】
ケースは更に、第2ケース要素で閉じられる。例えば、
図1から4に示す実施形態において、第2要素は、ケース胴を貫通する真321、特にケース胴を貫通するりゅうず真と関連する、巻上げりゅうず320である。
【0032】
第2要素は、具体的には第1構成及び第2構成間で変位可能な、変位可能要素である。これら2つの構成は、第2要素が異なる位置をとることにより、達成することができる。第2要素は、例えば長手方向に、すなわち第2要素の長手方向に、変位可能である。
図1、2、3は、第
2構成の位置を図示する。
図4は、第
1構成に対応する位置を図示する。
【0033】
第2要素は、第2構成において、第2要素がケースの密閉完全性を保証するよう適合されるように配置され、第1構成において、第2要素が小型時計ケースの内部4と小型時計ケースの外部の環境5との間の流体連結を可能にするよう適合されるように配置される。
【0034】
第2要素は、例えば、ケース胴を貫通する。小型時計ケースは、更に、第2密閉ガスケット35を含む。第2密閉ガスケットは、第2要素とケース胴との間のインターフェースの高さでの小型時計ケースの密閉完全性を保証するために、第2要素と協働する。
【0035】
第2ジョイントの状態は、密閉完全性と第2要素の構成を規定してもよい。このため、第2ジョイントが、そのインターフェースにおいて密閉完全性を保証することが意図されるパーツの一つのみと接触するときは、小型時計ケースの内部は外部と流体連結し、第2要素はその結果第1構成にある。第2ジョイントが、そのインターフェースにおいて密閉完全性を保証することが意図される2つのパーツと接触し、2つのパーツ間で圧縮されると、小型時計ケースの内部は外部から隔離され、ケースは耐水性を有し、第2要素は第2構成にある。最後に、この2つの構成間で、第2ジョイントが、そのインターフェースにおいて密閉完全性を保証することが意図される2つのパーツと接触するだけで、2つのパーツの間で圧縮されない、制限構成を規定することができる。この制限構成において、小型時計ケースの部分的密閉完全性を成立させることができる。
【0036】
第2密閉ガスケットは、例えば第2Oリングシールである。第2密閉ガスケットは、例えばケース胴の溝に、またはケース胴に取付けられた第2要素を固定するために必要な片に、収容される。代替としてまたは追加的に、第2密閉ガスケットは、第2要素の溝に収容されてもよい。代替としてまたは追加的に、第2密閉ガスケットは、第2要素のキャップの裏に、更に具体的にはりゅうずの裏に収容されてもよい。
【0037】
第2要素は、第2構成において、第2密閉ガスケット35と接触の状態にあり、第1構成において、第2密閉ガスケットと中断された接触または部分的に中断された接触の状態にある。
【0038】
好ましくは、第2要素は、第2要素の第1構成において、第2密閉ガスケット35と登録されることが意図される、断面が減少した部分321を示す。断面が減少した部分は、第2要素に設けられた第1窪みまたは第1溝を含んでもよい。
【0039】
第2要素が真を含むと仮定して、当該真は例えば円形の形状を有し、更に具体的には真は好ましくは全体に円柱形状を有する。第2要素は、真と真に取付けられたりゅうずを含んでもよい。更なる代替案として、第2要素は、真と、真に取付けられたキャップとを含んでもよい。
【0040】
第2要素が真を含むと仮定して、当該真は、引き抜き片21と協働することが意図される、更に具体的には引き抜き片のパッド22と協働することが意図される、第2窪みまたは第2溝322を示す。特に、第2溝は、引き抜き片パッドを受け入れることが意図される。引き抜き片の位置は、引き抜き片パッドに対する第2溝の作用により、真の位置により制御されてもよい。
【0041】
図5に図示する時計の実施形態の第1変形例において、第2要素は、バルブ39の真32Aである。当該変形例において、真32Aはケース胴3へねじ込まれ、真とケース胴との間に間隙がある第1構成(
図5、右側の図)と、特にガスケット35Aを用いて真とケース胴との間に密閉完全性が保証される第2構成(
図5、左側の図)との間で、螺旋リンクにより変位されてもよい。真32Aは、ケース胴3へねじ込まれてもよく、第2要素と一体のまたは第2要素の一部であるキャップを用いて螺旋リンクで変位されてもよい。
【0042】
図6に図示する時計の実施形態の第2変形例において、第2要素はまた、バルブ39の真32Aである。当該変形例において、真32Aは、ケース胴に滑動可能に取り付けられ、更に具体的にはケース胴に滑動ピボットとして取付けられる。ばねは、更に具体的には小型時計ケース内部に配置されたばねは、真とケース胴との間の密閉完全性が、更に具体的には第2密閉ガスケットの作用により保証される、第2構成へ真を戻す(
図6)。真は、小型時計ケースの外部に頭部を有する。当該頭部は、工具40を介して、装着者または時計士により動作されるために構成される。実際、工具40の助けにより、真の頭部に作用することが、特に真を真とケース胴との間に間隙が存在する第1構成へ移動するためにばねに対向して真の頭部を引くことが、可能になる。
【0043】
上述の2つの変形例は、りゅうず真とケース胴との間のインターフェースに改善された密閉完全性が提供されるため、及びまたはりゅうずの高さに密閉ガスケットを含むことから、特にダイバーズウォッチに適合することができる。
【0044】
図示しない時計の実施形態の第3変形例において、第2要素は押しボタン真であってもよい。
【0045】
時計の組立方法の実施の態様を、以下に説明する。
【0046】
ムーブメント2は、第1段階で、ケースに入れられる、すなわちムーブメントが小型時計ケース内へ統合される。当該動作は例えば、時計士により時計の製造過程で、または時計士によりアフターサービス作業過程で、行われる。第1段階は、ムーブメントを耐水性小型時計ケースへ、ムーブメントの調節を許可するように挿入し固定することが意図される。第1段階は、ムーブメントの様々な操作に進むことを可能にする真の挿入を含む。当該真は、裏蓋を元通りにねじ留める前に取り外され、裏蓋が元通りにねじ留められると最終真と交換される、作業用真であってもよい。
【0047】
ムーブメントがケースに入れられると、ムーブメントの調節は、第2段階で実施される。特に、ムーブメントの歩度の調節が行われる。
【0048】
ケースに入れられたムーブメントの歩度M1を、第3段階で測定する。
【0049】
第4段階において、第2要素は、ケースの内部4とケース外部の環境5との間の流体連結が許可される第1構成に位置される。特に、当該第1構成において、真の断面が減少した部分321は、第2密閉ガスケット35と登録される。ガスケットは、ケースまたは第2要素のいずれか1つのパーツのみと接触する。
【0050】
第2要素を第1構成に位置させることが意図される変位は、時計士による小型時計ムーブメントの第3要素への作用により、更に具体的には引き抜き片21への、特に引き抜き片のパッド22への作用により、可能となる。このため、当該段階は、ケースの裏蓋が外されなければ実施できない。このため、当該段階は、小型時計の装着者によって実施されることができない。変形例として、更に具体的には時計士が作業用真を用いて、第1要素を固定した後に作業用真を最終真と取り換えるときに、巻上げ真を完全に取り出すことも可能である。
【0051】
第4段階を確実な態様で実施するために、好ましくは、修正されたサポートが用いられる。当該サポートは例えば、ムーブメントからの真の取り出しを制限するための、および真が第1構成へ完全に到達することを保証するための、当接部を含む。このため、当接部は、真の位置がピニオンへの係合を維持し、システムの歯車が真の助力により機能する、第1構成に対応する位置を規定する。好ましくは、第1構成は、ムーブメントへの真の完全な挿入後に、または少なくても真をムーブメントへより深く挿入した後に、達成可能でもよい。変形例として、真は、更に具体的には作業用真は、第1構成を達成するためにムーブメントから完全に取り出されてもよい。しかしながらこの解決策は、その後、最終真を、最終真が滑動ピニオンと係合することを視覚で満足させることなく挿入しなければならない点で、ある程度の器用さを必要とするため、より大きなリスクが伴う。
【0052】
図6に示すように、第2要素がバルブ39の真32Aであると仮定すると、第4段階は、工具40の、更に具体的にはケースバルブを動作させるための工具の助力により、時計士により実施される。このため第4段階は、ケースを閉じる段階の後に実施される。
【0053】
第5段階において、ケースは、第1ケース要素31を、更に具体的には裏蓋を取付け、その位置に係止することで、閉じられる。ケースを閉じることは、裏蓋31をケース胴33へねじ留めすること、またはねじの助力により裏蓋を取付けることを含んでもよい。ケース胴33への裏蓋の係止は、第1密閉ガスケット34を特に押圧することで変形させる。
【0054】
第6段階において、ケースは第2要素32の動作により閉じられる。第2要素の動作は、第2要素を第1構成から、ケースの内部4とケースの外部の環境5との流体連結が制限される第2構成へ移行することを可能にする。ガスケット35は、ケースと第2要素の2つのパーツと接触させられる。理想的には、例えば、りゅうずのねじ込み動作により、より高い密封完全性を保証するために、ガスケット35が押圧される。
【0055】
この第2構成において、ケースの内部4とケースの外部の環境5との流体連携は、可能な限り制限される。この流体連携は、小型時計ケースが耐水であるために、更に具体的にはNIHS 92-10(1986年)またはNIHS 92-11(1996)基準に基づき、100mまたは300mまたは1220mまで耐水であるために、十分に制限されてもよい。更に具体的には、当該流体連結は、小型時計ケースの内部の環境4と小型時計ケースの外部の環境5との間の圧力差が2バールのとき空気の流体連結が50μg/分以下であるように、十分に制限されてもよい。
【0056】
第2要素32の動作は、第1構成から第2構成への第2要素の変位を、更に具体的には真の、特に巻上げ真の、長手方向の変位を含んでもよい。この動作は螺旋状変位(ガスケットを圧縮する、りゅうずのねじ込み)を用いて行われてもよい。
【0057】
第2要素32は、好ましくは、第2要素の第1構成から第2構成への移行が、ケースの圧力の5%以下の、特に2%程度の上昇を引き起こすように配置され、ここで圧力の上昇は、
- 第1要素の第3構成から第4構成への移行が当該小型時計ケースを耐水にするまたは密閉させると仮定して、第1要素をケースの内部4とケースの外部の環境5との間の流体連結が許可される第3構成から、第1要素をケースの内部4とケースの外部の環境5との間の流体連結が制限される第4構成へ移行させること、または
- 第1要素を、ケースの残りへ位置させ固定すること、
により引き起こされる。
【0058】
換言すれば、第2要素32は好ましくは、第2要素の第1構成から第2構成への移行が、ケース内部の流体の25%以下の、または10%以下の、または5%以下の体積変化を引き起こすように、配置され、ここで流体の体積変化は、
- 第1要素の第3構成から第4構成への移行が当該小型時計ケースを耐水にするまたは密閉させると仮定して、第1要素をケースの内部4とケースの外部の環境5との間の流体連結が許可される第3構成から、ケースの内部4とケースの外部の環境5との間の流体連結が制限される第4構成へ移行させること、または
- 第1要素を、ケースの残りへ位置させ固定すること、
により引き起こされる。
【0059】
第2要素32は、例えば、第1構成から第2構成への移行が、ケース内部の圧力の0.1%以下の、または0.5%以下の上昇をもたらす、及びまたはケースの内部の自由体積の0.5%以下のまたは0.2%以下の減少をもたらす、及びまたは歩度の変動をゼロと見做すように、配置される。
【0060】
好ましくは、小型時計ケース内の第2要素32により変更されたガスの体積は、40mm3以下、または30mm3以下、または10mm3以下、または小型時計ケース内の自由体積の1%以下、または0.5%以下である。変更されたガスの体積は、以下の2つの位置の間で規定される。
- 小型時計の密閉完全性がちょうど達成された、更に具体的にはガスケットが、ガスケットの圧縮をなくして、そのインターフェースで密閉完全性を保証しなければならないパーツとちょうど接触した、第2要素の限界位置と、
- 変更された体積が最大化される、第2要素の第2位置、または第2要素が小型時計の通常使用時に存在する第2要素の第2位置(例えば、ねじ留めされたりゅうずの構成)。
第2位置において、ガスケットが、そのインターフェースで密閉完全性を保証しなければならないパーツと接触し、密閉完全性の十分な度合いを保証するために圧縮される。
【0061】
第2構成において、第2要素は、好ましくは、第2密閉ガスケット35と接触の状態にあり、第1構成において、第2要素は、好ましくは、密閉ガスケットと中断された接触状態、または部分的に中断された接触状態にある。
【0062】
第7段階において、小型時計ケース内部に包まれた歩度M2を測定する。歩度の測定の段階は、ケースの密閉完全性の試験の一部であってもよい。
【0063】
任意の第8段階において、先行する段階で測定された歩度M1とM2とが比較される。
【0064】
防水小型時計ケースの場合の、説明した組立方法は、ムーブメントの調節を、ケース外で、またはムーブメントの現場で、裏蓋を閉じる前に行った調節と同じように維持することを可能にする。一般的且つ単純な態様で、第2要素は、第1ケース要素を閉じる前か後に取り出され、第1ケース要素がその位置に入れられ固定された後に、第2ケース要素が再度挿入され、または新たなケース要素が順に挿入される。より安全且つ洗練された態様として、時計士の動作による引き抜き片のパッドへのアクセスのみによって可能であり、巻上げ真タイプの第2要素がその先端まで挿入されたままでいることを保証する、第2構成に対応する特定の位置を提案することも同じく可能である。この特定の位置において、真は、裏蓋を閉じるその瞬間に、ケース胴と真との間で空気が移行することを許可するように、所定の直径の真の部分がケース胴に形成された真穴の高さへ配置されることを保証しつつ、真機構の1または複数のピニオンへ、更に具体的には摺動ピニオンへ、その先端まで挿入されることができる。当該位置において、組立サポートを用いて、正確に決定することができる。当該位置は、好ましくは、巻上げと修正の、更に具体的には時刻の修正、時間帯の修正、日付の修正の小型時計機能を保証することを可能にするための真位置とは別個の位置である。
【0065】
実際、巻上げりゅうずのいくつかの伝統的デザインにおいて、(限定された)密閉完全性は、調整モードにおいても維持される。りゅうず真の一定の断面は、ガスケットを圧縮するために、真の巻上げ専用(
図1)の、及び各種修正(
図2及び3)の様々な位置においてガスケットと協働する。
【0066】
組立方法と、適切な場合には、方法に適合されたサポートは、目的を達成することを可能にする。真は通常通り、時計士により、時計士がムーブメントの調整に進むことができるよう、挿入されてもよい。時計士が裏蓋を閉じることを求めた時点において、時計士は、引き抜き片のパッドへの作用と適切なサポートの使用により、特定位置まで真を取り出してもよい。当該特定位置において、真の減少された断面の細かなパーツまたはパーツは、ガスケット35の高さにある。その後、圧力を増大させることなく裏蓋を閉じて係止することができ、時計士はその後、リスクなくしてムーブメントへ真を完全に挿入することができる。引き抜き片のパッドは、装着者が真を余計に取り出すことを防止し、ケースの密閉完全性の喪失を防止することを可能にし、この密閉完全性は、好ましくは、調節または修正位置においても同様に保証される。
【0067】
代替案として、上述のように、作業用真は、裏蓋をねじ留めし、第2段階において、製品の最終真を設置する前に、引き抜き片のパッドへの作用により取り出されてもよい。最終真は、裏蓋が閉じられた後に設置され、滑動ピニオンと適切に係合するために注意が必要である。
【0068】
真の第1構成は、真がケース胴から最大限取り出された真の位置を含んでもよい。真の第1構成は、りゅうずが緩められた状態の真の位置を含んでもよい。
【0069】
好ましくは、真の第1構成は、りゅうずが緩められた状態の真の位置、及びまたはムーブメントの巻上げを許可する真の位置、及びまたは修正を許可する、更に具体的には日付の修正を許可する真の位置、及びまたは時間帯の修正を許可する位置、及びまたは時刻の修正を許可する真の位置を含んでもよい。
【0070】
好ましくは、第1構成は第2要素の複数の位置を含んでもよく、及びまたは第2構成は第2要素の複数の位置を含んでもよい。
【0071】
真の第2構成は、りゅうずがねじ込まれた真の位置を及びまたは真がケース胴内へ可能な限り導入された位置を含んでもよい。
【0072】
第2要素は、第1構成から第2構成へ一方向に可動に配置されてもよい。特に、第2要素は、第2構成から第1構成へ、ムーブメントへの時計士の動作により可動に配置されてもよく、及びまたは第2要素は第1構成から第2構成へ自由に可動に配置されてもよい。
【0073】
上述の方法が対応する問題は、調節に必要とされる正確性が重要な小型時計について生じる。実際、圧力の変動が歩度の変動に与える影響は、大部分の小型時計において、もっと強い理由から巻上げりゅうずの高さでの密閉完全性の信頼できるシステムを有しない小型時計において、無視可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 時計
2 ムーブメント
3 ケース胴
4 内部
5 環境
31 裏蓋
32 第2要素
33 ケース胴
34 第1密閉ガスケット
35 第2密閉ガスケット