(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/01 20060101AFI20240603BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20240603BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
G03G15/01 Y
G03G15/16
G03G21/14
(21)【出願番号】P 2019209001
(22)【出願日】2019-11-19
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水主村 清治
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-002744(JP,A)
【文献】特開2012-168421(JP,A)
【文献】特開2019-090883(JP,A)
【文献】特開2018-010135(JP,A)
【文献】特開2010-217296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G13/01-13/02
13/14-13/16
13/20
13/34
15/00-15/02
15/14-15/16
15/20
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ色の異なる複数のトナー画像を重ね合わせてシートにカラー画像を形成する画像形成手段と、
前記カラー画像を前記シートに定着させる定着手段と、
前記画像形成手段により形成されたテスト画像の検知結果に基づき、シート上における色ずれを補正するための補正値を求める色ずれ補正を行う補正手段と、を有し、
前記定着手段のウォーミングアップを実行している最中にプリントジョブが投入された場合、前記ウォーミングアップと並行して前記補正手段による前記色ずれ補正を実行し、
前記ウォーミングアップの完了よりも前記色ずれ補正の完了の方が早い場合、前記ウォーミングアップが完了したことにより前記画像形成手段による画像形成を実行し、前記ウォーミングアップの完了よりも前記色ずれ補正の完了の方が遅い場合、前記色ずれ補正が完了したことにより前記画像形成手段による画像形成を実行
し、
前記補正手段は、前記定着手段が前記ウォーミングアップを実行している最中にプリントジョブが投入されなかった場合、前記プリントジョブが投入されるまで待ってから前記色ずれの補正を実行するように構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記定着手段が前記ウォーミングアップを実行している最中にプリントジョブが投入されなかった場合、前記ウォーミングアップが完了した後にプリントジョブが投入されると、前記色ずれの補正を実行するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記定着手段は、
前記画像形成装置に電源が投入されたとき、および、前記画像形成装置が節電状態から非節電状態に復帰したときに、前記ウォーミングアップを実行するように構成されていることを特徴とする請求項1
または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記色ずれ補正がすでに実行されたかどうかを管理する管理手段をさらに有し、
前記補正手段は、
前記管理手段が前記色ずれ補正がすでに実行されたことを示している場合、前記色ずれ補正をスキップし、
前記管理手段が前記色ずれ補正がすでに実行されたことを示していない場合、前記色ずれ補正を実行するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし
3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記管理手段は、前記色ずれ補正が実行されるとオンとなり、前記色ずれ補正が実行されていなければオフとなるフラグを含むことを特徴とする請求項
4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成手段は、
感光体と、
前記感光体に対して帯電電圧を印加することで前記感光体の表面を帯電させる帯電手段と、
前記感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像手段と、
転写電圧を用いて前記トナー画像を中間転写体に転写する転写手段と
前記帯電電圧および前記転写電圧を調整する調整手段と、をさらに有し、
前記ウォーミングアップにおいて前記色ずれ補正が実行される場合、前記補正手段は、前記帯電電圧および前記転写電圧の調整が完了した後で、前記色ずれ補正を実行することを特徴とする請求項1ないし
5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記中間転写体に形成された色ずれ補正のためのテスト画像を検知する検知手段をさらに有し、
前記補正手段は、前記画像形成手段を制御して前記テスト画像を前記中間転写体に形成し、前記検知手段により検知された前記テスト画像に基づき前記色ずれ補正を実行するように構成されていることを特徴とする請求項
6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記露光手段の温度を計測する計測手段と、
前記色ずれ補正が実行されたときに前記計測手段により計測された前記露光手段の温度を記憶する温度記憶手段と、をさらに有し、
前記補正手段は、プリントジョブが投入されたときの前記露光手段の温度と前記温度記憶手段に記憶されている前記露光手段の温度との差が温度閾値を超えていなければ、前記色ずれ補正をスキップするように構成されていることを特徴とする請求項
6または
7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
時刻を計時する時計手段と、
前記色ずれ補正が実行されたときの時刻を記憶する時刻記憶手段と、をさらに有し、
前記補正手段は、プリントジョブが投入されたときの時刻と前記時刻記憶手段に記憶されている時刻との差が時間閾値を超えていなければ、前記色ずれ補正をスキップするように構成されていることを特徴とする請求項1ないし
6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のカラー画像形成装置は、それぞれ色の異なる複数のトナー画像を重ね合わせることでカラー画像を形成する。そのため、それぞれ色の異なる複数のトナー画像の転写位置が理想位置からずれると、いわゆる色ずれが発生する。したがって、カラー画像形成装置は、テスト画像を形成して色ずれ量を求め、色ずれ量に応じてトナー画像の書き出しタイミングを補正する色ずれ補正を実行する。特許文献1によれば、画像形成装置の電源投入時には色ずれ補正を実行せず、プリントジョブが入力されると色ずれ補正を実行することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、定着器に設けられたセンサの検知温度を所定温度まで上げる処理であるウォーミングアップが完了しなければ、プリントジョブを受け付けないし、色ずれ補正も実行しない。そのため、定着器のウォーミングアップと色ずれ補正とを並列に実行できれば、ユーザの待ち時間をさらに削減することが可能となろう。そこで、本発明は、色ずれ補正に伴うユーザの待ち時間を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、たとえば、
それぞれ色の異なる複数のトナー画像を重ね合わせてシートにカラー画像を形成する画像形成手段と、
前記カラー画像を前記シートに定着させる定着手段と、
前記画像形成手段により形成されたテスト画像の検知結果に基づき、シート上における色ずれを補正するための補正値を求める色ずれ補正を行う補正手段と、を有し、
前記定着手段のウォーミングアップを実行している最中にプリントジョブが投入された場合、前記ウォーミングアップと並行して前記補正手段による前記色ずれ補正を実行し、
前記ウォーミングアップの完了よりも前記色ずれ補正の完了の方が早い場合、前記ウォーミングアップが完了したことにより前記画像形成手段による画像形成を実行し、前記ウォーミングアップの完了よりも前記色ずれ補正の完了の方が遅い場合、前記色ずれ補正が完了したことにより前記画像形成手段による画像形成を実行し、
前記補正手段は、前記定着手段が前記ウォーミングアップを実行している最中にプリントジョブが投入されなかった場合、前記プリントジョブが投入されるまで待ってから前記色ずれの補正を実行するように構成されていることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、色ずれ補正に伴うユーザの待ち時間が削減される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態が詳しく説明される。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一または同様の構成に同一の参照番号が付され、重複した説明は省略される。
【0009】
[画像形成装置]
図1が示すように、画像形成装置1は電子写真方式のプリンタ100とイメージリーダ110とを有するマルチファンクションペリフェラル(MFP)である。プリンタ100は、イメージリーダ110またはホストコンピュータから投入されたプリントジョブを実行することでシートPにトナー画像を形成する。
【0010】
●プリンタ100
画像形成部50は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の四色の現像剤(トナー)を重ね合わせることでカラー画像を形成する。
図1において参照番号の末尾にはトナー色を示すYMCKの文字が付与されているが、四つの色に共通する事項が説明される際にはYMCKの文字が省略される。
【0011】
給送カセット2はシートPを収納する収納庫である。給送ローラ4は、給送カセット2からシートPを搬送路へ給送する。搬送ローラ対5は、給送カセット2から給送されたシートPを、シートPの搬送方向においてさらに下流へ搬送する。レジストローラ対6は、シートPが二次転写ローラ19に到着するタイミングと、トナー画像が二次転写ローラ19に到着するタイミングとを整合させるための搬送ローラである。
【0012】
画像形成部50において、感光ドラム11は静電潜像やトナー画像を担持する像担持体である。帯電ローラ12は、感光ドラム11の表面の電位が一様な電位となるように感光ドラム11の表面を帯電させる。露光装置13は感光ドラム11の表面に光を照射することで静電潜像を形成する。現像装置15はトナーを用いて静電潜像を現像し、トナー画像を形成する。一次転写器16は、トナー画像を中間転写体17に転写する。二次転写ローラ19はトナー画像を中間転写体17からシートPへ転写する。定着器20は、熱と圧力とを用いてトナー画像をシートPに定着させる。排出ローラ21は、シートPを画像形成装置1の外部に設けられたトレイに排出する。
【0013】
画像センサ25は、中間転写体17に形成された色ずれ補正のためのテスト画像を読み取るセンサである。中間転写体17の移動方向に対して直交した方向(主走査方向)に、複数の画像センサ25が並べて配置されてもよい。
【0014】
[コントローラ]
図2が示すように、コントローラ200はCPU201とメモリ202を有していてもよい。CPU201は、複数のCPUコアを有していてもよい。ここでは、CPU201は、プロセッサ回路、ASIC(特定用途集積回路)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)のいずれかであってもよいし、これらの集合体であってもよい。
【0015】
CPU201はメモリ202のROM領域に記憶されている制御プログラムを実行することで様々な機能を実現する。様々な機能のうち一つ以上の機能が、CPU201とは異なるハードウエア回路により実現されてもよい。CPU201は、画像センサ25を制御してテスト画像を読み取る。CPU201は駆動回路231を通じてモータ232を駆動する。これにより、感光ドラム11や中間転写体17などが回転する。CPU201は電源回路234を制御して帯電電圧および転写電圧を生成する。CPU201は環境センサ235を制御し、環境温度および環境湿度を測定する。CPU201の定着制御部213は、定着器20に設けられたサーミスタ237により温度を検知し、検知温度が目標温度になるようにヒータ236を制御する。
【0016】
CPU201により実現される機能のうち、状態制御部211は、画像形成装置1の動作状態を制御する。たとえば、状態制御部211は、画像形成装置1を節電状態に移行させたり、画像形成装置1を節電状態から非節電状態(スタンバイ状態)に復帰させたりする。調整部212は、環境センサ235により測定された環境温度に応じて電源回路234により生成される帯電電圧と転写電圧とを調整する。フラグ管理部221は、フラグを用いて色ずれ補正が必要であるか否かを管理する。たとえば、画像形成装置1の電源投入時またはスタンバイ状態への復帰時に色ずれ補正がすでに実行されていれば、フラグ管理部221は、フラグをオン(Highまたは1)に設定する。一方、画像形成装置1の電源投入時またはスタンバイ状態への復帰時に色ずれ補正が実行されていなければ、フラグ管理部221は、フラグをオフ(Lowまたは0)に設定する。フラグはメモリ202に記憶された1ビットのデータであってもよい。ジョブ受付部222は、ホストコンピュータまたはイメージリーダ110からプリントジョブを受け付ける。
【0017】
色ずれ補正部214は、テスト画像の作成、テスト画像の測定、色ずれ量の演算、および補正量の決定を実行する。パターン生成部215は、テスト画像を生成するための画像信号を作成して画像形成部50の露光装置13Y、13M、13C、13Kに出力する。これにより、画像形成部50は、中間転写体17にテスト画像を形成する。ずれ量演算部216は、画像センサ25を制御して画像センサ25にテスト画像を読み取らせ、テスト画像の読取結果を取得する。さらに、ずれ量演算部216は、テスト画像の読取結果に基づき、基準色(例:マゼンタ)に対する注目色(例:イエロー、シアン、ブラック)の色ずれ量を演算する。補正量決定部217は、色ずれ量に基づき、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色について主走査作方向における画像書き出し位置、副走査方向における画像書き出し位置、画像倍率などの補正量を決定する。なお、色ずれ量の演算方法および補正量の演算方法として、画像形成装置の技術分野ですでに知られている方法が採用されてもよい。
【0018】
温度センサ238は、露光装置13の温度を測定するセンサである。露光装置13の温度が変化すると露光位置が変化する。したがって、色ずれ補正を実行したときの露光装置13の温度と、現在の露光装置13の温度との差が閾値を超えたときに、CPU201は色ずれ補正を再度実行してもよい。RTC223は現在時刻を計時するリアルタイムクロックである。
【0019】
[色ずれ補正]
色ずれの原因は、主に、モータ232、ヒータ236、電源回路234などの熱源は発生する熱や画像形成装置1が設置されている環境の変化に依存した、感光ドラム11に対する露光位置の変動である。露光位置の変動量はテスト画像を測定することで求められる。感光ドラム11上の露光位置と中間転写体17上における転写位置とは相関しているため、露光位置および転写位置は画像形成位置と呼ばれてもよい。
【0020】
図3は中間転写体17上に形成されたテスト画像を示している。テスト画像は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックについて複数の色ずれ検知パターン(以下、パターンと称される)を有している。パターン300Ya、300Ybがイエローのパターである。パターン300Ca、300Cbはシアンのパターである。パターン300Ka1、300Ka2、300Kb1、300Kb2はブラックのパターである。パターン300M~307M、300Mak、300Mbkはマゼンタのパターンである。マゼンタのパターンが多い理由は、マゼンタのパターンが基準色だからである。
【0021】
図3が示すように、テスト画像は、三列のパターングループを有している。画像センサ25aは、主走査方向において最も左に位置したパターングループを検知する。画像センサ25bは、主走査方向において真ん中に位置したパターングループを検知する。画像センサ25cは、主走査方向において最も右に位置したパターングループを検知する。
【0022】
ところで、中間転写体17の表面色が黒色に近い場合、画像センサ25がブラックのパターンを検知することが困難となる。これは、中間転写体17の反射率とブラックのパターンの反射率がほぼ等しくなるからである。そのため、マゼンタのパターンの上にブラックのパターンが部分的に重畳されて形成される。マゼンタのパターンの反射率とブラックのパターンの反射率との間には顕著な差があるため、ブラックのパターンを検知可能となる。
【0023】
図4はマゼンタに対するイエローの色ずれ量の演算方法を説明している。
主走査ずれ量 = {(d2Ya-d1Ya)/2-(d2Yb-d1Yb)/2}/2 ・・・(1)
副走査ずれ量 = {(d2Ya-d1Ya)/2+(d2Yb-d1Yb)/2}/2 ・・・(2)
ここで、d1Yaは、マゼンタのパターン300Mとイエローのパターン300Yaとの間の距離である。d2Yaは、マゼンタのパターン301Mとイエローのパターン300Yaとの間の距離である。d1Ybは、マゼンタのパターン304Mとイエローのパターン300Ybとの間の距離である。d2Ybは、マゼンタのパターン305Mとイエローのパターン300Ybとの間の距離である。これらの演算は、シアンとブラックに関しても実行される。
【0024】
図4に示された複数のパターンはサブグループと呼ばれてもよい。つまり、中間転写体17の1周に及ぶパターングループは、N個のサブグループを含む(例:N=10)。ずれ量演算部216は、サブグループごとに、主走査ずれ量と副走査ずれ量を演算し、これらの平均値を求めてもよい。また、この平均値は、画像センサ25a,25b,25cについて演算される。補正量決定部217は、これらの演算結果に基づき、主走査書き出し位置、主走査倍率、副走査書き出し位置、および、副走査傾きなどを補正する。
【0025】
[色ずれ補正の実行タイミング]
色ずれ補正部214は、初期調節処理と準備動作とのいずれかにおいて、色ずれ補正を実行しうる。初期調節処理とは、画像形成装置1を画像形成可能な状態に移行させる処理である。たとえば、初期調節処理は、画像形成装置1の電源がオフからオンに切り替えたときと、画像形成装置1が節電状態から非節電状態(スタンバイ状態)に復帰したときに、実行される。準備動作とは、プリントジョブを実行する直前に実行される画像形成装置1の準備動作である。そのため、準備動作は、スタンバイ状態においてプリントジョブを受信すると、実行される。以下で、初期調節処理と準備動作とに分けて色ずれ補正が説明される。
【0026】
●初期調節処理
図5は初期調節処理を示している。CPU201は、画像形成装置1の電源がオンになったとき、または、画像形成装置1が非節電状態に復帰したときに、以下の処理を実行する。
【0027】
S1でCPU201(定着制御部213)は定着器20のウォーミングアップを開始する。ウォーミングアップは、トナー画像をシートPに定着させることができるように定着器20を起動する処理である。たとえば、定着制御部213は、サーミスタ237により温度を検知し、検知温度が目標温度に到達するようにヒータ236を制御する。ここで、目標温度は、シートPに対してトナー画像を定着させることが可能な定着温度であってもよいし、定着温度よりは低い待機温度であってもよい。目標温度として待機温度が採用される場合、省電力効果が期待される。一方で、目標温度として定着温度が採用される場合、ウォーミングアップが終了するとすぐに画像形成を開始可能となる。
【0028】
S2でCPU201(調整部212)は作像条件の調整処理を開始する。作像条件とは、たとえば、帯電電圧および転写電圧である。環境温度などの環境条件に応じて、適切な帯電電圧および転写電圧は異なる。また、感光ドラム11の表層の膜厚が変化したり、中間転写体17と一次転写器16との間の電気的抵抗が変化したりすると、適切な帯電電圧および転写電圧も変化する。そのため、調整部212は、ウォーミングアップに並行して作像条件の調整処理を実行する。たとえば、調整部212は環境センサ235を用いて環境条件(例:温度、湿度)を測定し、環境条件に応じて帯電電圧および転写電圧を決定する。
【0029】
S3でCPU201(ジョブ受付部222)はホストコンピュータまたはイメージリーダなどからプリントジョブが投入されたかどうかを判定する。プリントジョブが投入されていなければ、CPU201は、処理をS8に進める。プリントジョブが投入されていれば、CPU201は、処理をS4に進める。
【0030】
S4でCPU201(フラグ管理部221)はフラグがオフかどうかを判定する。つまり、CPU201は、初期調節処理において色ずれ補正がすでに実行されたかどうかを判定する。フラグがオンであれば、色ずれ補正がすでに実行されているため、CPU201は処理をS8に進める。フラグがオフであれば、色ずれ補正がまだ実行されていないため、CPU201は処理をS5に進める。
【0031】
S5でCPU201(調整部212)は作像条件の調整処理か完了したかどうかを判定する。調整処理か完了していなければ、CPU201は処理をS8に進める。ただし、ウォーミングアップに必要となる時間は、調整処理に必要となる時間よりも長いものとする。調整処理か完了していれば、CPU201は処理をS6に進める。
【0032】
S6でCPU201(色ずれ補正部214)は色ずれ補正を実行する。色ずれ補正の詳細はすでに説明されたとおりである。
【0033】
S7でCPU201(フラグ管理部221)はフラグをオンに設定する。これにより、フラグは、色ずれ補正が実行済みであることを示すようになる。CPU201は、色ずれ補正を実行した時刻のデータをメモリ202に記憶させてもよい。フラグとともに、時刻のデータは、短期間において複数回にわたる色ずれ補正の実行を抑制するために使用されてもよい。時刻のデータはRTC223から取得可能である。
【0034】
S8でCPU201(定着制御部213)は、定着器20のウォーミングアップが完了したかどうかを判定する。ウォーミングアップが完了していれば、CPU201は初期調節処理を終了し、スタンバイ状態に遷移する。一方、ウォーミングアップが完了していなければ、CPU201は処理をS3に戻す。
【0035】
このように本実施例では、定着器20のウォーミングアップと並行して色ずれ補正が実行される。そのため、本実施例では、色ずれ補正に伴うユーザの待ち時間が削減される。
【0036】
定着制御部213は、スタンバイ状態においてすぐにプリントジョブを開始できるよう、定着器20の検知温度を目標温度に維持する。
図5では作像条件の調整処理と色ずれ補正とが初期調節処理において実行されるように記載されている。しかし、CPU201は、画像形成装置1の停止時間に依存して、作像条件の調整処理と色ずれ補正とをスキップしてもよい。停止時間とは、たとえば、画像形成装置1が節電状態に移行した時刻から、非節電状態に復帰した時刻までの時間であってもよい。この時間は、状態制御部211により計測されてもよい。
【0037】
●準備動作
図6は画像形成装置1の準備動作を示している。画像形成装置1が非節電状態(スタンバイ状態)においてプリントジョブを開始する直前に、準備動作は実行される。
【0038】
S11でCPU201(ジョブ受付部222)はプリントジョブが投入されたかどうかを判定する。プリントジョブが投入されると、CPU201は処理をS12に進める。
【0039】
S12でCPU201(フラグ管理部221)はフラグがオフであるかどうかを判定する。初期調節処理においてプリントジョブが投入されなかった場合、色ずれ補正は実行されていない。この場合、フラグがオフである。一方で、初期調節処理においてプリントジョブが投入された場合、色ずれ補正は実行されている。この場合、フラグがオンである。フラグがオンであれば、色ずれ補正を実行する必要はないため、CPU201は、処理をS15に進める。S15でCPU201(フラグ管理部221)はフラグをオフにする。ここで、CPU201は、メモリ202に保持されている色ずれ補正を実行した時刻と、現在の時刻との差が閾値を超えている場合に、フラグをオフにしてもよい。また、CPU201は、この差が閾値を超えていない場合に、フラグをオンに維持してもよい。これは、短期間において複数回にわたる色ずれ補正の実行を抑制するためである。その後、CPU201は、処理をS14に進める。一方、フラグがオフであれば、色ずれ補正を実行する必要があるため、CPU201は、処理をS13に進める。
【0040】
S13でCPU201(色ずれ補正部214)は色ずれ補正を実行する。S14でCPU201はプリントジョブを実行する。CPU201はプリントジョブにしたがってシートPにトナー画像を形成する。CPU201は、色ずれ補正を実行した時刻のデータをメモリ202に記憶させてもよい。
【0041】
ここで、
図6に示された準備動作は、初期調節処理が完了した後に投入された1回目のプリントジョブについての準備動作であってもよい。この場合、S13でCPU201は温度センサ238により露光装置13の温度を測定し、測定結果をメモリ202のRAM領域に保存する。2回目以降のプリントジョブが投入されると、CPU201は、再度、温度センサ238により露光装置13の温度を測定し、この測定結果と、メモリ202に保持されている測定結果との差を演算する。CPU201は、差が閾値を超えていれば、プリントジョブを実行する直前に色ずれ補正を実行する。このように、露光装置13の温度が色ずれ補正の実行条件として採用されてもよい。上述されたように、実行条件は、現在時刻と、色ずれ補正が実行された時刻との時間差が閾値を超えたことであってもよい。
【0042】
[実施例の効果]
本実施例の効果を説明するために、本実施例と比較例とが比較される。比較例は、初期調節処理においてプリントジョブが投入されると、初期調節処理が完了した後に色ずれ補正を実行するものである。
【0043】
●
図7(A)は作像条件の調整処理の実行中にプリントジョブが投入されたケースを示している。
図7(A)が示すように、比較例は、定着器20のウォーミングアップが完了した後に色ずれ補正を実行し、さらにプリントジョブを実行する。一方、本実施例は、調整処理が完了した後に、ウォーミングアップと並行して色ずれ補正を実行する。さらに、本実施例は、色ずれ補正とウォーミングアップが完了すると、プリントジョブを実行する。そのため、本実施例は、比較例よりも早くプリントジョブを開始でき、ユーザの待ち時間が削減される。
【0044】
●
図7(B)は作像条件の調整処理が完了した後にプリントジョブが投入されたケースを示している。この場合の比較例の動作は
図7(A)に示された動作と同じである。一方で、本実施例は、調整処理が完了した後にプリントジョブが投入されると、すぐに色ずれ補正を実行できる。よって、
図7(B)に示されたケースでも、本実施例は、比較例よりも早くプリントジョブを開始でき、ユーザの待ち時間が削減される。
【0045】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項が添付される。
【0046】
<まとめ>
[観点1、11]
画像形成部50は、それぞれ色の異なる複数のトナー画像を重ね合わせてシートにカラー画像を形成する画像形成手段の一例である。定着器20は、カラー画像をシートに定着させる定着手段の一例である。CPU201(色ずれ補正部214)は画像形成手段における複数のトナー画像のそれぞれの画像形成位置を補正することでシートにおける色ずれを補正する補正手段として機能する。色ずれ補正部214は、定着手段のウォーミングアップと並行して色ずれの補正を実行する。これにより、色ずれ補正に伴うユーザの待ち時間が削減される。
【0047】
[観点2]
色ずれ補正部214は、定着手段がウォーミングアップを実行している最中にプリントジョブが投入された場合、ウォーミングアップと並行して色ずれの補正を実行してもよい。色ずれ補正部214は、定着手段がウォーミングアップを実行している最中にプリントジョブが投入されなかった場合、ウォーミングアップと並行して色ずれの補正を実行しないように構成されていてもよい。プリントジョブが実行される直前のタイミングで色ずれ補正が実行されると、色ずれが精度よく低減される。
【0048】
[観点3]
色ずれ補正部214は、定着手段がウォーミングアップを実行している最中にプリントジョブが投入されなかった場合、プリントジョブが投入されるまで待ってから色ずれの補正を実行してもよい。プリントジョブが実行される直前のタイミングで色ずれ補正が実行されると、色ずれが精度よく低減される。
【0049】
[観点4]
定着器20は、画像形成装置1に電源が投入されたとき、および、画像形成装置1が節電状態から非節電状態に復帰したときに、ウォーミングアップを実行してもよい。これにより、定着器20が適切にシートに対してトナー画像を定着できるようになる。
【0050】
[観点5、6]
CPU201(フラグ管理部221)は、色ずれ補正がすでに実行されたかどうかを管理する管理手段として機能する。色ずれ補正部214は、管理手段が色ずれ補正がすでに実行されたことを示している場合、色ずれ補正をスキップしてもよい。色ずれ補正部214は、管理手段が色ずれ補正がすでに実行されたことを示していない場合、色ずれ補正を実行してもよい。これにより、色ずれ補正を何度も実行してしまうことで発生する無駄な待ち時間の発生が抑制される。さらに、トナーの消費量も削減されよう。フラグ管理部221は、色ずれ補正が実行されるとオンとなり、色ずれ補正が実行されていなければオフとなるフラグを含んでもよい。
【0051】
[観点7]
感光ドラム11は感光体の一例である。帯電ローラ12は、感光体に対して帯電電圧を印加することで感光体の表面を帯電させる帯電手段として機能する。露光装置13は、感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段として機能する。現像装置15は、静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像手段として機能する。一次転写器16は、転写電圧を用いてトナー画像を中間転写体に転写する転写手段として機能する。CPU201(調整部212)は、帯電電圧および転写電圧を調整する調整手段として機能する。ウォーミングアップにおいて色ずれ補正が実行される場合、色ずれ補正部214は、帯電電圧および転写電圧の調整が完了した後で、色ずれ補正を実行してもよい。帯電電圧および転写電圧が適切に調整されることで、トナー画像が中間転写体17に対して適切に転写される。したがって、帯電電圧および転写電圧の調整が完了した後で、色ずれ補正が実行されると、色ずれ補正の精度が向上する。
【0052】
[観点8]
画像センサ25は、中間転写体17に形成された色ずれ補正のためのテスト画像を検知する検知手段の一例である。色ずれ補正部214は、画像形成手段を制御してテスト画像を中間転写体17に形成し、検知手段により検知されたテスト画像に基づき色ずれ補正を実行してもよい。
【0053】
[観点9]
温度センサ238は、露光手段の温度を計測する計測手段として機能してもよい。メモリ202は、色ずれ補正が実行されたときに計測手段により計測された露光手段の温度を記憶する温度記憶手段として機能してもよい。色ずれ補正部214は、プリントジョブが投入されたときの露光手段の温度と温度記憶手段に記憶されている露光手段の温度との差が温度閾値を超えていなければ、色ずれ補正をスキップしてもよい。これによりユーザの待ち時間が削減される。
【0054】
[観点10]
RTC223は、時刻を計時する時計手段として機能してもよい。メモリ202は、色ずれ補正が実行されたときの時刻を記憶する時刻記憶手段として機能してもよい。色ずれ補正部214は、プリントジョブが投入されたときの時刻と時刻記憶手段に記憶されている時刻との差が時間閾値を超えていなければ、色ずれ補正をスキップしてもよい。これによりユーザの待ち時間が削減される。
【符号の説明】
【0055】
1:画像形成装置、50:画像形成部、20:定着器、201:CPU