(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】有機EL表示素子用封止剤及びトップエミッション型有機EL表示素子
(51)【国際特許分類】
H05B 33/04 20060101AFI20240603BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240603BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20240603BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240603BHJP
H10K 59/00 20230101ALI20240603BHJP
【FI】
H05B33/04
G09F9/30 309
G09F9/30 365
H05B33/10
H05B33/14 A
H10K59/00
(21)【出願番号】P 2019521511
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 JP2019015824
(87)【国際公開番号】W WO2019203123
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-10
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2018081442
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】金 千鶴
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】七里 徳重
(72)【発明者】
【氏名】笹野 美香
【合議体】
【審判長】神谷 健一
【審判官】大▲瀬▼ 裕久
【審判官】井口 猶二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-179330(JP,A)
【文献】特開2017-228414(JP,A)
【文献】特表2015-524494(JP,A)
【文献】特表2017-531049(JP,A)
【文献】特開2015-50143(JP,A)
【文献】国際公開第2016/167347(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/086144(WO,A1)
【文献】特開2011-210681(JP,A)
【文献】特開2014-225380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00-33/28,H01L 27/32,51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物と重合開始剤とを含有し、
硬化収縮率が11%未満であり、かつ、熱脱着GC-MS法により80℃、30分の熱脱着条件にて測定される硬化物のアウトガス発生量が3000ppm未満であり、
25℃における表面張力が15mN/m以上35mN/m以下であ
って、
トップエミッション型の有機EL表示素子の封止に用いられる
ことを特徴とする有機EL表示素子用封止剤。
【請求項2】
インクジェット法による塗布に用いられる有機EL表示素子用封止剤であって、
重合性化合物と重合開始剤とを含有し、
硬化収縮率が11%未満であり、かつ、熱脱着GC-MS法により80℃、30分の熱脱着条件にて測定される硬化物のアウトガス発生量が3000ppm未満であり、
25℃における表面張力が15mN/m以上35mN/m以下であ
って、
トップエミッション型の有機EL表示素子の封止に用いられる
ことを特徴とする有機EL表示素子用封止剤。
【請求項3】
25℃における粘度が5mPa・s以上50mPa・s以下であり、25℃における表面張力が20mN/m以上35mN/m以下である請求項1又は2記載の有機EL表示素子用封止剤。
【請求項4】
前記重合性化合物は、カチオン重合性化合物を含む請求項1、2又は3記載の有機EL表示素子用封止剤。
【請求項5】
前記重合性化合物は、多官能オキセタン化合物を含む請求項4記載の有機EL表示素子用封止剤。
【請求項6】
前記重合性化合物は、3-エチル-3-(((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)メチル)オキセタンを含む請求項5記載の有機EL表示素子用封止剤。
【請求項7】
波長395nmの紫外線を2000mJ/cm2照射してから30分後の硬化率が80%以上である請求項1、2、3、4、5又は6記載の有機EL表示素子用封止剤。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の有機EL表示素子用封止剤を用いてなるトップエミッション型有機EL表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット塗布性に優れ、かつ、トップエミッション型であっても表示性能に優れる有機EL表示素子を得ることができる有機EL表示素子用封止剤に関する。また、本発明は、該有機EL表示素子用封止剤を用いてなるトップエミッション型有機EL表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」ともいう)表示素子は、互いに対向する一対の電極間に有機発光材料層が挟持された積層体構造を有し、この有機発光材料層に一方の電極から電子が注入されるとともに他方の電極から正孔が注入されることにより有機発光材料層内で電子と正孔とが結合して発光する。このように有機EL表示素子は自己発光を行うことから、バックライトを必要とする液晶表示素子等と比較して視認性がよく、薄型化が可能であり、しかも直流低電圧駆動が可能であるという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-115692号公報
【文献】特開2009-051980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機EL表示素子を構成する有機発光材料層や電極は、水分や酸素等により特性が劣化しやすいという問題がある。従って、実用的な有機EL表示素子を得るためには、有機発光材料層や電極を大気と遮断して長寿命化を図る必要がある。有機発光材料層や電極を大気と遮断する方法としては、封止剤を用いて有機EL表示素子を封止することが行われている(例えば、特許文献1)。有機EL表示素子を封止剤で封止する場合、通常、水分や酸素等の透過を充分に抑えるため、有機発光材料層を有する積層体上にパッシベーション膜と呼ばれる無機膜を設け、該無機膜上を封止剤で封止する方法が用いられている。
近年、有機発光材料層から発せられた光を、発光素子を形成した基板面側から取り出すボトムエミッション型の有機EL表示素子に代わって、有機発光層の上面側から光を取り出すトップエミッション型の有機EL表示素子が注目されている。この方式は、開口率が高く、低電圧駆動となることから、長寿命化に有利であるという利点がある。このようなトップエミッション型の有機EL表示素子では、発光層の上面側が透明であることが必要であることから、発光素子の上面側に透明な封止層を介してガラス等の透明防湿性基材を積層することにより封止している(例えば、特許文献2)。
封止層を形成する方法として、インクジェット法を用いて基材上に封止剤を塗布した後、該封止剤を硬化させる方法がある。このようなインクジェット法による塗布方法を用いれば、高速かつ均一に封止層を形成することができる。しかしながら、トップエミッション型の有機EL表示素子においてインクジェット法による塗布に適した封止剤を用いた場合、得られる有機EL表示素子にダークスポット等の表示不良が生じることがあるという問題があった。特に、ボトムエミッション型では表示不良を発生させなかった封止剤であっても、トップエミッション型の有機EL表示素子に用いた場合に表示不良を発生させることがあった。
本発明は、インクジェット塗布性に優れ、かつ、トップエミッション型であっても表示性能に優れる有機EL表示素子を得ることができる有機EL表示素子用封止剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該有機EL表示素子用封止剤を用いてなるトップエミッション型有機EL表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明1は、重合性化合物と重合開始剤とを含有し、硬化収縮率が11%未満であり、かつ、熱脱着GC-MS法により80℃、30分の熱脱着条件にて測定される硬化物のアウトガス発生量が3000ppm未満である有機EL表示素子用封止剤である。
また、本発明2は、インクジェット法による塗布に用いられる有機EL表示素子用封止剤であって、重合性化合物と重合開始剤とを含有し、硬化収縮率が11%未満であり、かつ、熱脱着GC-MS法により80℃、30分の熱脱着条件にて測定される硬化物のアウトガス発生量が3000ppm未満である有機EL表示素子用封止剤である。
以下に本発明を詳述する。なお、本発明1の有機EL表示素子用封止剤と本発明2の有機EL表示素子用封止剤とに共通する事項については、「本発明の有機EL表示素子用封止剤」として記載する。
【0006】
トップエミッション型の有機EL表示素子では、透光性の観点から陰極が薄膜化されており、薄膜化された陰極は、該陰極上に形成される封止層に用いられる封止剤による影響を受けやすくなる。本発明者らは、トップエミッション型の有機EL表示素子においては、このような封止剤による陰極への影響により、ボトムエミッション型では表示不良を発生させなかった封止剤であっても、表示不良を発生させる原因となっていると考えた。
そこで本発明者らは、インクジェット塗布性に優れる有機EL表示素子用封止剤について、硬化収縮率、及び、従来よりも厳しい条件で測定される硬化物のアウトガス発生量をそれぞれ特定値未満とすることを検討した。その結果、インクジェット塗布性に優れ、かつ、トップエミッション型であっても表示性能に優れる有機EL表示素子を得ることができる有機EL表示素子用封止剤を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、インクジェット法として、非加熱式インクジェット法による塗布に用いることもできるし、加熱式インクジェット法による塗布に用いることもできる。
なお、本明細書において、上記「非加熱式インクジェット法」は、28℃未満の塗布ヘッド温度でインクジェット塗布する方法であり、上記「加熱式インクジェット法」は、28℃以上の塗布ヘッド温度でインクジェット塗布する方法である。
【0008】
上記加熱式インクジェット法には、加熱機構を搭載したインクジェット用塗布ヘッドが用いられる。インクジェット塗布ヘッドが加熱機構を搭載していることにより、有機EL表示素子用封止剤を吐出する際に粘度と表面張力を低下させることができる。
【0009】
上記加熱機構を搭載したインクジェット用塗布ヘッドとしては、例えば、コニカミノルタ社製のKM1024シリーズや、富士フィルムDimatix社製のSG1024シリーズ等が挙げられる。
【0010】
本発明の有機EL表示素子用封止剤を上記加熱式インクジェット法による塗布に用いる場合、塗布ヘッドの加熱温度は、28℃~80℃の範囲であることが好ましい。上記塗布ヘッドの加熱温度がこの範囲であることにより、有機EL表示素子用封止剤の経時的な粘度上昇が更に抑制され、吐出安定性により優れるものとなる。
【0011】
本発明1の有機EL表示素子用封止剤は、25℃における粘度の好ましい下限が5mPa・s、好ましい上限が50mPa・sである。上記25℃における粘度がこの範囲であることにより、インクジェット法によって好適に塗布することができる。
なお、本明細書において上記「粘度」は、E型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定される値を意味する。上記E型粘度計としては、例えば、VISCOMETER TV-22(東機産業社製)等が挙げられ、CP1型のコーンプレートを用いることができる。
【0012】
上記非加熱式インクジェット法によって塗布する場合の本発明の有機EL表示素子用封止剤の25℃における粘度のより好ましい下限は5mPa・s、より好ましい上限は20mPa.sである。上記25℃における粘度がこの範囲であることにより、非加熱式インクジェット法によって好適に塗布することができる。上記非加熱式インクジェット法によって塗布する場合の本発明の有機EL表示素子用封止剤の25℃における粘度の更に好ましい下限は8mPa・s、更に好ましい上限は16mPa.s、特に好ましい下限は10mPa・s、特に好ましい上限は13mPa.sである。
【0013】
一方、上記加熱式インクジェット法による塗布に用いる場合の本発明の有機EL表示素子用封止剤の25℃における粘度のより好ましい下限は10mPa・s、より好ましい上限は50mPa.sである。上記粘度がこの範囲であることにより、加熱式インクジェット法によって好適に塗布することができる。上記加熱式インクジェット法による塗布に用いる場合の本発明の有機EL表示素子用封止剤の25℃における粘度の更に好ましい下限は20mPa・s、更に好ましい上限は40mPa.sである。
【0014】
本発明1の有機EL表示素子用封止剤は、25℃における表面張力の好ましい下限が15mN/m、好ましい上限が35mN/mである。上記25℃における表面張力がこの範囲であることにより、インクジェット法によって好適に塗布することができる。上記25℃における表面張力のより好ましい下限は20mN/m、より好ましい上限は30mN/m、更に好ましい下限は22mN/m、更に好ましい上限は28mN/mである。
また、本発明2の有機EL表示素子用封止剤は、25℃における表面張力の好ましい下限が15mN/m、好ましい上限が35mN/mである。上記25℃における表面張力がこの範囲であることにより、インクジェット法によって好適に塗布することができる。上記25℃における表面張力のより好ましい下限は20mN/m、より好ましい上限は30mN/m、更に好ましい下限は22mN/m、更に好ましい上限は28mN/mである。
なお、上記表面張力は、動的濡れ性試験機によりWilhelmy法によって測定された値を意味する。上記動的濡れ性試験機としては、例えば、WET-6100型(レスカ社製)等が挙げられる。
【0015】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、硬化収縮率が11%未満である。上記硬化収縮率が11%未満であることにより、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、トップエミッション型であっても表示性能に優れる有機EL表示素子を得ることができるものとなる。上記硬化収縮率の好ましい上限は10%であり、より好ましい上限は9%である。
また、上記硬化収縮率の好ましい下限は特にないが、実質的な下限は1%である。
なお、本明細書において上記「硬化収縮率」は、硬化前の封止剤の25℃における比重をGA、封止剤の硬化物の25℃における比重をGBとしたとき、下記式により算出される値である。
硬化収縮率(%)=((GB-GA)/GB)×100
また、上記比重の測定に用いる硬化物は、光硬化性の封止剤であれば、例えば、封止剤にLEDランプにて波長395nmの紫外線を2000mJ/cm2照射することにより得ることができ、熱硬化性の封止剤であれば、例えば、80℃で1時間加熱することにより得ることができる。
【0016】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、熱脱着GC-MS法により80℃、30分の熱脱着条件にて測定される硬化物のアウトガス発生量が3000ppm未満である。上記熱脱着GC-MS法により測定される硬化物のアウトガス発生量が3000ppm未満であることにより、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、トップエミッション型であっても表示性能に優れる有機EL表示素子を得ることができるものとなる。上記熱脱着GC-MS法により測定される硬化物のアウトガス発生量の好ましい上限は2500ppmであり、より好ましい上限は2000ppmである。
上記熱脱着GC-MS法により測定される硬化物のアウトガス発生量は、0ppmであることが最も好ましい。
なお、上記熱脱着GC-MS法による硬化物のアウトガス発生量の測定は、1mgの硬化物について、熱脱着装置とGC-MS装置とを用いて、80℃、30分の熱脱着条件で加熱した際に発生したガス成分の量を測定することにより行うことができる。
また、上記熱脱着GC-MSによるアウトガス発生量の測定に用いる硬化物は、光硬化性の封止剤であれば、例えば、封止剤にLEDランプにて波長395nmの紫外線を2000mJ/cm2照射することにより得ることができ、熱硬化性の封止剤であれば、例えば、80℃で1時間加熱することにより得ることができる。
【0017】
上記25℃における粘度、上記25℃における表面張力、上記硬化収縮率、及び、上記熱脱着GC-MS法により測定される硬化物のアウトガス発生量は、後述する、重合性化合物、重合開始剤、及び、増感剤等のその他の成分について、これらの種類の選択及び含有割合の調整により、上述した範囲とすることができる。
特に、上記硬化収縮率、及び、上記熱脱着GC-MS法により測定される硬化物のアウトガス発生量は、後述する重合性化合物の種類の選択及び含有割合の調整により、上述した範囲とすることが容易となる。
【0018】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、重合性化合物を含有する。
上記重合性化合物としては、カチオン重合性化合物やラジカル重合性化合物を用いることができる。なかでも、上記重合性化合物は、硬化収縮率をより低くする観点から、カチオン重合性化合物を含むことが好ましい。
【0019】
上記カチオン重合性化合物としては、例えば、オキセタン化合物、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。なかでも、上記重合性化合物は、オキセタン化合物及びエポキシ化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましく、オキセタン化合物を含むことがより好ましく、多官能オキセタン化合物を含むことが更に好ましい。
【0020】
上記オキセタン化合物としては、例えば、3-エチル-3-(((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)メチル)オキセタン、3-エチル-3-((2-エチルヘキシルオキシ)メチル)オキセタン、3-エチル-3-((3-(トリエトキシシリル)プロポキシ)メチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタン、1,4-ビス(((3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ)メチル)ベンゼン等が挙げられる。なかでも、3-エチル-3-(((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)メチル)オキセタンが好ましい。
これらのオキセタン化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0021】
上記エポキシ化合物としては、例えば、1,7-オクタジエンジエポキシド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロ-ルプロパントリグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェニレンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0022】
上記ビニルエーテル化合物としては、例えば、ベンジルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ジシクロペンタジエンビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
これらのビニルエーテル化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0023】
上記ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリル化合物が好ましい。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリル化合物」とは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0024】
上記(メタ)アクリル化合物としては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが好ましい。
これらの(メタ)アクリル化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0025】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、重合開始剤を含有する。
上記重合開始剤としては、用いる重合性化合物の種類等に応じて、光カチオン重合開始剤や光ラジカル重合開始剤が好適に用いられる。また、本発明の目的を阻害しない範囲で熱カチオン重合開始剤や熱ラジカル重合開始剤を用いてもよい。
【0026】
上記光カチオン重合開始剤は、光照射によりプロトン酸又はルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、イオン性光酸発生型であってもよいし、非イオン性光酸発生型であってもよい。
【0027】
上記イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤のアニオン部分としては、例えば、BF4
-、PF6
-、SbF6
-、(BX4)-(但し、Xは、少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す)等が挙げられる。また、上記アニオン部分としては、PFm(CnF2n+1)6-m
-(但し、式中、mは0以上5以下の整数であり、nは1以上6以下の整数である)等も挙げられる。
上記イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては、例えば、上記アニオン部分を有する、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族アンモニウム塩、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe塩等が挙げられる。
【0028】
上記芳香族スルホニウム塩としては、例えば、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(4-(4-アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0029】
上記芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0030】
上記芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0031】
上記芳香族アンモニウム塩としては、例えば、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0032】
上記(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe塩としては、例えば、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)ヘキサフルオロホスフェート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)ヘキサフルオロアンチモネート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)テトラフルオロボレート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0033】
上記非イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N-ヒドロキシイミドスルホネート等が挙げられる。
【0034】
上記光カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、みどり化学社製の光カチオン重合開始剤、ユニオンカーバイド社製の光カチオン重合開始剤、ADEKA社製の光カチオン重合開始剤、3M社製の光カチオン重合開始剤、BASF社製の光カチオン重合開始剤、ローディア社製の光カチオン重合開始剤、サンアプロ社製の光カチオン重合開始剤等が挙げられる。
上記みどり化学社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、DTS-200等が挙げられる。
上記ユニオンカーバイド社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、UVI6990、UVI6974等が挙げられる。
上記ADEKA社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、SP-150、SP-170等が挙げられる。
上記3M社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、FC-508、FC-512等が挙げられる。
上記BASF社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、IRGACURE261、IRGACURE290等が挙げられる。
上記ローディア社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、PI2074等が挙げられる。
上記サンアプロ社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、CPI-100P、CPI-200K、CPI-210S等が挙げられる。
【0035】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジル、チオキサントン系化合物等が挙げられる。
【0036】
上記光ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、BASF社製の光ラジカル重合開始剤、東京化成工業社製の光ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
上記BASF社製の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE379、IRGACURE651、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE2959、IRGACURE OXE01、ルシリンTPO等が挙げられる。
上記東京化成工業社製の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
【0037】
上記熱カチオン重合開始剤としては、アニオン部分がBF4
-、PF6
-、SbF6
-、又は、(BX4)-(但し、Xは、少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す)で構成される、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。なかでも、スルホニウム塩、アンモニウム塩が好ましい。
【0038】
上記スルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0039】
上記ホスホニウム塩としては、エチルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、テトラブチルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0040】
上記アンモニウム塩としては、例えば、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムヘキサフルオロホスフェート、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロホスフェート、ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルフェニルジベンジルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、メチルフェニルジベンジルアンモニウムヘキサフルオロアンチモネート、メチルフェニルジベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェニルトリベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルフェニル(3,4-ジメチルベンジル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチル-N-ベンジルアニリニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N-ジエチル-N-ベンジルアニリニウムテトラフルオロボレート、N,N-ジメチル-N-ベンジルピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N-ジエチル-N-ベンジルピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。
【0041】
上記熱カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、三新化学工業社製の熱カチオン重合開始剤、King Industries社製の熱カチオン重合開始剤等が挙げられる。
上記三新化学工業社製の熱カチオン重合開始剤としては、例えば、サンエイドSI-60、サンエイドSI-80、サンエイドSI-B3、サンエイドSI-B3A、サンエイドSI-B4等が挙げられる。
上記King Industries社製の熱カチオン重合開始剤としては、例えば、CXC1612、CXC1821等が挙げられる。
【0042】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等からなるものが挙げられる。
上記アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
上記有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0043】
上記熱ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、VPE-0201、VPE-0401、VPE-0601、VPS-0501、VPS-1001、V-501(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
【0044】
上記重合開始剤の含有量は、上記重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部である。上記重合開始剤の含有量が0.01重量部以上であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が硬化性により優れるものとなる。上記重合開始剤の含有量が10重量部以下であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤の硬化反応が速くなり過ぎず、作業性により優れるものとなり、硬化物をより均一なものとすることができる。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0045】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、増感剤を含有してもよい。上記増感剤は、上記重合開始剤の重合開始効率をより向上させて、本発明の有機EL表示素子用封止剤の硬化反応をより促進させる役割を有する。
【0046】
上記増感剤としては、例えば、チオキサントン系化合物や、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ベンゾフェノン、2,4-ジクロロベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等が挙げられる。
上記チオキサントン系化合物としては、例えば、2,4-ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0047】
上記増感剤の含有量は、上記重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が3重量部である。上記増感剤の含有量が0.01重量部以上であることにより、増感効果がより発揮される。上記増感剤の含有量が3重量部以下であることにより、吸収が大きくなり過ぎずに深部まで光を伝えることができる。上記増感剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は1重量部である。
【0048】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で熱硬化剤を含有してもよい。
上記熱硬化剤としては、例えば、ヒドラジド化合物、イミダゾール誘導体、酸無水物、ジシアンジアミド、グアニジン誘導体、変性脂肪族ポリアミン、各種アミンとエポキシ樹脂との付加生成物等が挙げられる。
上記ヒドラジド化合物としては、例えば、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントイン、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
上記イミダゾール誘導体としては、例えば、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、N-(2-(2-メチル-1-イミダゾリル)エチル)尿素、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、N,N’-ビス(2-メチル-1-イミダゾリルエチル)尿素、N,N’-(2-メチル-1-イミダゾリルエチル)-アジポアミド、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記酸無水物としては、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)等が挙げられる。
これらの熱硬化剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0049】
上記熱硬化剤のうち市販されているものとしては、例えば、大塚化学社製の熱硬化剤、味の素ファインテクノ社製の熱硬化剤等が挙げられる。
上記大塚化学社製の熱硬化剤としては、例えば、SDH、ADH等が挙げられる。
上記味の素ファインテクノ社製の熱硬化剤としては、例えば、アミキュアVDH、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH等が挙げられる。
【0050】
上記熱硬化剤の含有量は、上記重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.5重量部、好ましい上限が30重量部である。上記熱硬化剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が優れた保存安定性を維持したまま、熱硬化性により優れるものとなる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は15重量部である。
【0051】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、シランカップリング剤を含有してもよい。上記シランカップリング剤は、本発明の有機EL表示素子用封止剤と基板等との接着性を向上させる役割を有する。
【0052】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0053】
上記シランカップリング剤の含有量は、上記重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、余剰のシランカップリング剤がブリードアウトすることを抑制しつつ、接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0054】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、更に、本発明の目的を阻害しない範囲において、表面改質剤を含有してもよい。上記表面改質剤を含有することにより、本発明の有機EL表示素子用封止剤の塗膜の平坦性を更に向上させることができる。
上記表面改質剤としては、例えば、界面活性剤やレベリング剤等が挙げられる。
【0055】
上記表面改質剤としては、例えば、シリコーン系やフッ素系等のものが挙げられる。
上記表面改質剤のうち市販されているものとしては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製の表面改質剤、AGCセイミケミカル社製の表面改質剤等が挙げられる。
上記ビックケミー・ジャパン社製の表面改質剤としては、例えば、BYK-340、BYK-345等が挙げられる。
上記AGCセイミケミカル社製の表面改質剤としては、例えば、サーフロンS-611等が挙げられる。
【0056】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、粘度調整等を目的として溶剤を含有してもよいが、残存した溶剤により、有機発光材料層が劣化したりアウトガスが発生したりする等の問題が生じるおそれがあるため、溶剤を含有しない、又は、溶剤の含有量が0.05重量%以下であることが好ましい。
【0057】
また、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、必要に応じて、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の公知の各種添加剤を含有してもよい。
【0058】
本発明の有機EL表示素子用封止剤を製造する方法としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、重合性化合物と、重合開始剤と、増感剤や表面改質剤等の添加剤とを混合する方法等が挙げられる。
【0059】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、波長395nmの紫外線を2000mJ/cm2照射してから30分後の硬化率(以下、「光照射してから30分後の硬化率」ともいう)の好ましい下限が80%である。上記光照射してから30分後の硬化率が80%以上であることにより、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、ゾル成分を低減することができ、表示不良がより低減される。上記光照射してから30分後の硬化率のより好ましい下限は90%である。上記光照射してから30分後の硬化率は、100%であることが最も好ましい。
なお、本明細書において上記「硬化率」は、硬化前の封止剤と、光照射してから30分後の封止剤の硬化物と、光照射してから80℃で1時間加熱した後の封止剤の硬化物について、FT-IRを測定し、得られたスペクトルにおける重合性官能基由来のピークの面積値から、下記式により算出される値である。
硬化率(%)=((1-y/x)/(1-z/x))×100
上記式中、xは、硬化前の封止剤における重合性官能基由来のピーク面積値である。上記式中、yは、光照射してから30分後の封止剤の硬化物における該重合性官能基由来のピーク面積値である。上記式中、zは、光照射してから80℃で1時間加熱した後の封止剤の硬化物における該重合性官能基由来のピーク面積値である。
上記重合性官能基由来のピークは、例えば、上記重合性化合物がエポキシ化合物である場合は、エポキシ基由来のピーク(911cm-1)であり、上記重合性化合物がオキセタン化合物である場合は、オキセタニル基由来のピーク(978cm-1)である。
【0060】
本発明の有機EL表示素子用封止剤の硬化物の波長380nm以上800nm以下における光の全光線透過率の好ましい下限は80%である。上記全光線透過率が80%以上であることにより、得られる有機EL表示素子が光学特性により優れるものとなる。上記全光線透過率のより好ましい下限は85%である。
上記全光線透過率は、例えば、AUTOMATIC HAZE METER MODEL TC-III DPK(東京電色社製)等の分光計を用いて測定することができる。
また、上記全光線透過率の測定に用いる硬化物は、光硬化性の封止剤であれば、例えば、封止剤にLEDランプにて波長395nmの紫外線を2000mJ/cm2照射することにより得ることができ、熱硬化性の封止剤であれば、例えば、80℃で1時間加熱することにより得ることができる。
【0061】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、硬化物に紫外線を100時間照射した後の400nmにおける透過率が20μmの光路長にて85%以上であることが好ましい。上記紫外線を100時間照射した後の透過率が85%以上であることにより、透明性が高く、発光の損失が小さくなり、かつ、色再現性により優れるものとなる。上記紫外線を100時間照射した後の透過率のより好ましい下限は90%、更に好ましい下限は95%である。
上記紫外線を照射する光源としては、例えば、キセノンランプ、カーボンアークランプ等、従来公知の光源を用いることができる。
また、上記紫外線を100時間照射した後の透過率の測定に用いる硬化物は、光硬化性の封止剤であれば、例えば、封止剤にLEDランプにて波長395nmの紫外線を2000mJ/cm2照射することにより得ることができ、熱硬化性の封止剤であれば、例えば、80℃で1時間加熱することにより得ることができる。
【0062】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、JIS Z 0208に準拠して、硬化物を85℃、85%RHの環境下に24時間暴露して測定した100μm厚での透湿度が100g/m2以下であることが好ましい。上記透湿度が100g/m2以下であることにより、有機発光材料層に水分が到達してダークスポットが発生することを防止する効果により優れるものとなり、得られる有機EL表示素子が信頼性により優れるものとなる。
また、上記透湿度の測定に用いる硬化物は、光硬化性の封止剤であれば、例えば、封止剤にLEDランプにて波長395nmの紫外線を2000mJ/cm2照射することにより得ることができ、熱硬化性の封止剤であれば、例えば、80℃で1時間加熱することにより得ることができる。
【0063】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、硬化物を85℃、85%RHの環境下に24時間暴露したときに、硬化物の含水率が0.5%未満であることが好ましい。上記硬化物の含水率が0.5%未満であることにより、硬化物中の水分による有機発光材料層の劣化を防止する効果により優れるものとなり、得られる有機EL表示素子が信頼性により優れるものとなる。上記硬化物の含水率のより好ましい上限は0.3%である。
上記含水率の測定方法としては、例えば、JIS K 7251に準拠してカールフィッシャー法により求める方法や、JIS K 7209-2に準拠して吸水後の重量増分を求める等の方法が挙げられる。
また、上記含水率の測定に用いる硬化物は、光硬化性の封止剤であれば、例えば、封止剤にLEDランプにて波長395nmの紫外線を2000mJ/cm2照射することにより得ることができ、熱硬化性の封止剤であれば、例えば、80℃で1時間加熱することにより得ることができる。
【0064】
本発明1の有機EL表示素子用封止剤は、インクジェット法による塗布に好適に用いられ、本発明2の有機EL表示素子用封止剤は、インクジェット法による塗布に用いられる。
本発明の有機EL表示素子用封止剤を用いて有機EL表示素子を製造する方法としては、例えば、インクジェット法により、本発明の有機EL表示素子用封止剤を基材に塗布する工程と、塗布した有機EL表示素子用封止剤を光照射及び/又は加熱により硬化させる工程とを有する方法等が挙げられる。
【0065】
本発明の有機EL表示素子用封止剤を基材に塗布する工程において、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、基材の全面に塗布してもよく、基材の一部に塗布してもよい。塗布により形成される本発明の有機EL表示素子用封止剤の封止部の形状としては、有機発光材料層を有する積層体を外気から保護しうる形状であれば特に限定されず、該積層体を完全に被覆する形状であってもよいし、該積層体の周辺部に閉じたパターンを形成してもよいし、該積層体の周辺部に一部開口部を設けた形状のパターンを形成してもよい。
【0066】
本発明の有機EL表示素子用封止剤を光照射により硬化させる場合、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、300nm以上400nm以下の波長及び300mJ/cm2以上3000mJ/cm2以下の積算光量の光を照射することによって好適に硬化させることができる。
【0067】
上記光照射に用いる光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、エキシマレーザ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LEDランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が挙げられる。これらの光源は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
これらの光源は、上記光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤の吸収波長に合わせて適宜選択される。
【0068】
本発明の有機EL表示素子用封止剤への光の照射手段としては、例えば、各種光源の同時照射、時間差をおいての逐次照射、同時照射と逐次照射との組み合わせ照射等が挙げられ、いずれの照射手段を用いてもよい。
【0069】
上記有機EL表示素子用封止剤を光照射及び/又は加熱により硬化させる工程により得られる硬化物は、更に無機材料膜で被覆されていてもよい。
上記無機材料膜を構成する無機材料としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、窒化珪素(SiNx)や酸化珪素(SiOx)等が挙げられる。上記無機材料膜は、1層からなるものであってもよく、複数種の層を積層したものであってもよい。また、上記無機材料膜と本発明の有機EL表示素子用封止剤からなる樹脂膜とを、交互に繰り返して上記積層体を被覆してもよい。
【0070】
上記有機EL表示素子を製造する方法は、本発明の有機EL表示素子用封止剤を塗布した基材(以下、「一方の基材」ともいう)と他方の基材とを貼り合わせる工程を有していてもよい。
本発明の有機EL表示素子用封止剤を塗布する基材(以下、「一方の基材」ともいう)は、有機発光材料層を有する積層体の形成されている基材であってもよく、該積層体の形成されていない基材であってもよい。
上記一方の基材が上記積層体の形成されていない基材である場合、上記他方の基材を貼り合わせた際に、上記積層体を外気から保護できるように上記一方の基材に本発明の有機EL表示素子用封止剤を塗布すればよい。即ち、他方の基材を貼り合わせた際に上記積層体の位置となる場所に全面的に塗布するか、又は、他方の基材を貼り合わせた際に上記積層体の位置となる場所が完全に収まる形状に、閉じたパターンの封止剤部を形成してもよい。
【0071】
上記有機EL表示素子用封止剤を光照射及び/又は加熱により硬化させる工程は、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる工程の前に行なってもよいし、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる工程の後に行なってもよい。
上記有機EL表示素子用封止剤を光照射及び/又は加熱により硬化させる工程を、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる工程の前に行なう場合、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、光照射及び/又は加熱してから硬化反応が進行して接着ができなくなるまでの可使時間が1分以上であることが好ましい。上記可使時間が1分以上であることにより、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる前に硬化が進行し過ぎることなく、より高い接着強度を得ることができる。
【0072】
上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる工程において、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる方法は特に限定されないが、減圧雰囲気下で貼り合わせることが好ましい。
上記減圧雰囲気下の真空度の好ましい下限は0.01kPa、好ましい上限は10kPaである。上記減圧雰囲気下の真空度がこの範囲であることにより、真空装置の気密性や真空ポンプの能力から真空状態を達成するのに長時間を費やすことなく、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる際の本発明の有機EL表示素子用封止剤中の気泡をより効率的に除去することができる。
【0073】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、トップエミッション型の有機EL表示素子の封止に好適に用いることができる。本発明の有機EL表示素子用封止剤を用いてなるトップエミッション型有機EL表示素子もまた、本発明の1つである。
なお、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、ボトムエミッション型の有機EL表示素子の封止に用いた場合も、表示性能に優れる有機EL表示素子を得ることができるものとなる。
【発明の効果】
【0074】
本発明によれば、インクジェット塗布性に優れ、かつ、トップエミッション型であっても表示性能に優れる有機EL表示素子を得ることができる有機EL表示素子用封止剤を提供することができる。また、本発明によれば、該有機EL表示素子用封止剤を用いてなるトップエミッション型有機EL表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0076】
(実施例1~4、比較例1~3)
表1に記載された配合比に従い、各材料を、ホモディスパー型撹拌混合機(プライミクス社製、「ホモディスパーL型」)を用い、撹拌速度3000rpmで均一に撹拌混合することにより、実施例1~4、比較例1~3の各有機EL表示素子用封止剤を作製した。得られた有機EL表示素子用封止剤に対して、LEDランプにて波長395nmの紫外線を2000mJ/cm2照射することにより、硬化物を得た。
実施例及び比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤について、E型粘度計(東機産業社製、「VISCOMETER TV-22」)を用い、CP1型のコーンプレートにて、25℃、100rpmの条件において粘度を測定した。結果を表1に示した。
また、実施例及び比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤について、25℃において動的濡れ性試験機(レスカ社製、「WET-6100型」)により表面張力を測定した。結果を表1に示した。
更に、実施例及び比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤及び硬化物の比重を測定した。得られた各比重から、上述した式により硬化収縮率を算出した。結果を表1に示した。
加えて、実施例及び比較例で得られた各硬化物1mgについて、熱脱着装置とGC-MS装置とを用いて、80℃、30分の熱脱着条件で加熱した際に発生したガス成分の量をアウトガス発生量として測定した。具体的な測定条件について以下に示す。
熱脱着装置 :Turbo Matrix650(パーキンエルマー社製)
熱脱着条件 :80℃、30分
スプリット :入口15mL/分、出口15mL/分、注入量5.2%
GC-MS装置 :JMS Q1000(日本電子社製)
分離カラム :EQUITY-1(無極性)
0.32mm×60m×0.25μm
GC昇温速度 :40℃4分→10℃/分→300℃10分
キャリアガス(流量):He(1.5mL/分)
MS測定範囲 :29~600amu(scan 500ms)
イオン化電圧 :70eV
MS温度 :イオン源230℃、インターフェイス250℃
結果を表1に示した。
【0077】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
なお、インクジェット吐出性、濡れ広がり性、及び、ダークスポット直径拡大率の各評価において、インクジェット用塗布ヘッドとしてはIJH-30(IJT社製)を用い、インクジェット塗布は加熱を行わずに行った(ヘッド温度25℃)。
【0078】
(1)インクジェット塗布性
(1-1)インクジェット吐出性
実施例及び比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤を、インクジェット吐出装置(マイクロジェット社製、「NanoPrinter500」)を用いて、10ピコリットルの液滴量にて、アルカリ洗浄した無アルカリガラス(旭硝子社製、「AN100」)上に塗布した。インクジェットノズルから液滴が正常に吐出されて基板に着弾した場合を「○」、正常に吐出されなかった場合を「×」としてインクジェット吐出性を評価した。
【0079】
(1-2)濡れ広がり性
実施例及び比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤を、インクジェット吐出装置(マイクロジェット社製、「NanoPrinter500」)を用いて、10ピコリットルの液滴量にて、アルカリ洗浄した無アルカリガラス(旭硝子社製、「AN100」)上に、5m/秒の速度にて500μmピッチで1000滴塗布した。塗布から10分後の無アルカリガラス上の液滴の直径を測定し、液滴の直径が150μm以上であった場合を「○」、液滴の直径が50μm以上150μm未満であった場合を「△」、液滴の直径が50μm未満であった場合を「×」として濡れ広がり性を評価した。
【0080】
(2)硬化率
実施例及び比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤について、硬化前、光照射してから30分後、及び、光照射してから80℃で1時間加熱した後の封止剤の硬化物について、FT-IRを測定した。得られたスペクトルにおけるエポキシ基由来のピーク(911cm-1)又はオキセタニル基由来のピーク(978cm-1)の面積値から、上述した式により硬化率を算出した。
【0081】
(3)有機EL表示素子の発光状態
以下の(3-1)~(3-4)に示す方法でトップエミッション型有機EL表示素子を得た。また、得られた有機EL表示素子について、以下の(3-5)及び(3-6)に示す方法で有機EL表示素子の発光状態を評価した。
【0082】
(3-1)有機発光材料層を有する積層体が配置された基板の作製
ガラス基板(長さ25mm、幅25mm、厚さ0.7mm)にITO電極を1000Åの厚さで成膜したものを基板とした。上記基板をアセトン、アルカリ水溶液、イオン交換水、イソプロピルアルコールにてそれぞれ15分間超音波洗浄した後、煮沸させたイソプロピルアルコールにて10分間洗浄し、更に、UV-オゾンクリーナ(日本レーザー電子社製、「NL-UV253」)にて直前処理を行った。
次に、この基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、素焼きの坩堝にN,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(α-NPD)を200mg、別の素焼き坩堝にトリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)を200mg入れ、真空チャンバー内を、1×10-4Paまで減圧した。その後、α-NPDの入った坩堝を加熱し、α-NPDを蒸着速度15Å/sで基板に堆積させ、膜厚600Åの正孔輸送層を成膜した。次いで、Alq3の入った坩堝を加熱し、15Å/sの蒸着速度で膜厚600Åの有機発光材料層を成膜した。その後、正孔輸送層及び有機発光材料層が形成された基板を別の真空蒸着装置に移し、この真空蒸着装置内のタングステン製抵抗加熱ボートにフッ化リチウム200mg、別のタングステン製ボートにアルミニウム線1.0gを入れた。その後、真空蒸着装置の蒸着器内を2×10-4Paまで減圧してフッ化リチウムを0.2Å/sの蒸着速度で5Å成膜した後、アルミニウムを20Å/sの速度で1000Å成膜した。窒素により蒸着器内を常圧に戻し、10mm×10mmの有機発光材料層を有する積層体が配置された基板を取り出した。
【0083】
(3-2)無機材料膜Aによる被覆
得られた積層体が配置された基板に13mm×13mmの開口部を有するマスクを設置し、プラズマCVD法にて該積層体全体を覆うように無機材料膜Aを形成した。
プラズマCVD法は、原料ガスとしてSiH4ガス及び窒素ガスを用い、各々の流量をSiH4ガス10sccm、窒素ガス200sccmとし、RFパワーを10W(周波数2.45GHz)、チャンバー内温度を100℃、チャンバー内圧力を0.9Torrとする条件で行った。
形成された無機材料膜Aの厚さは、約1μmであった。
【0084】
(3-3)樹脂保護膜の形成
得られた基板に対し、実施例及び比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤を、インクジェット吐出装置(マイクロジェット社製、「NanoPrinter300」)を使用して基板にパターン塗布した。
その後、LEDランプを用いて波長395nmの紫外線を2000mJ/cm2照射して有機EL表示素子用封止剤を硬化させて樹脂保護膜を形成した。
【0085】
(3-4)無機材料膜Bによる被覆
樹脂保護膜を形成した後、基板に12mm×12mmの開口部を有するマスクを設置し、プラズマCVD法にて該樹脂保護膜の全体を覆うように無機材料膜Bを形成して有機EL表示素子を得た。
プラズマCVD法は、上記「(3-2)無機材料膜Aによる被覆」と同様の条件で行った。
形成された無機材料膜Bの厚さは、約1μmであった。
【0086】
(3-5)初期のダークスポット直径の計測
得られたトップエミッション型有機EL表示素子について、光学顕微鏡にて発光状態を観察し、初期のダークスポット直径を計測した。ダークスポットが複数ある場合には、直径20μm付近のものを優先的に観察した。
【0087】
(3-6)ダークスポット直径拡大率
得られた有機EL表示素子を、温度85℃、湿度85%の環境下で100時間暴露した後、3Vの電圧を印加し、有機EL表示素子の発光状態を光学顕微鏡で観察し、上記「(3-5)」と同様にして85℃、85%、100時間後のダークスポット直径を計測した。
ダークスポット直径拡大率が1.1倍未満であった場合を「◎」、1.1倍以上1.2倍未満であった場合を「○」、1.2倍以上1.5倍未満であった場合を「△」、1.5倍以上又は非発光部が著しく拡大した場合を「×」として有機EL表示素子の発光状態を評価した。
ダークスポット直径拡大率については、下記式により算出した。
ダークスポット直径拡大率=85℃、85%、100時間後のダークスポット直径/初期のダークスポット直径
【0088】
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明によれば、インクジェット塗布性に優れ、かつ、トップエミッション型であっても表示性能に優れる有機EL表示素子を得ることができる有機EL表示素子用封止剤を提供することができる。また、本発明によれば、該有機EL表示素子用封止剤を用いてなるトップエミッション型有機EL表示素子を提供することができる。