(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】低液流を濃縮するためのバッフル壁を有する接触トレー及びそれを伴う方法
(51)【国際特許分類】
B01D 3/22 20060101AFI20240603BHJP
B01J 10/00 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B01D3/22 Z
B01J10/00 101
(21)【出願番号】P 2019537355
(86)(22)【出願日】2018-01-10
(86)【国際出願番号】 IB2018050136
(87)【国際公開番号】W WO2018130941
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-10-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-05
(32)【優先日】2017-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503195045
【氏名又は名称】コーク-グリッシュ,リミティド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニーウァウト アイザック
(72)【発明者】
【氏名】グリーセル チャールズ
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】増山 淳子
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】旧東ドイツ国経済特許第86168(DD,A1)
【文献】特公昭38-1872(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D3/00-3/42
B01J19/00-19/32
B01D53/14-53/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の流体が物質移動カラム内を流れるときの前記流体間の相互作用を促進するために、前記物質移動カラムで使用するためのトレーであって、
上面を有するトレーデッキと、
前記トレーデッキの前記上面上へ下向きに流れる液体を受容するための前記トレーデッキ上の入口領域と、
流体が前記トレーデッキを通って上向きに通過するように前記トレーデッキの領域にわたって分布しかつ前記トレーデッキを貫通する複数の開口であって、前記液体が前記入口領域を出て、前記開口が分布している前記トレーデッキの前記領域の上方にわたって流れた後に、前記流体と前記液体とが相互作用するように泡又はしぶきの生成を可能にする、複数の開口と、
液体が前記入口領域から流れ、前記領域内の前記開口を上向きに通過する前記流体と相互作用した後に、前記液体を前記トレーデッキの前記上面から除去することを可能にするように前記トレーデッキの前記入口領域から離れて配置された出口と、
前記トレーデッキの前記上面から上向きに延在し、前記液体が前記入口領域から前記出口に流れるときに前記液体の流路の幅を狭め、かつ前記液体の流れる方向を3回以上の偶数回変化させ、それによって前記流路を延長するように配置された複数の離間したバッフル壁と、
前記出口から下向きに延在して、液体が前記出口に入ったときに前記液体を受容し、次いで、前記液体を下端に位置する排出口へと下向きに搬送するダウンカマー、
を有し、
前記ダウンカマーは、前記排出口を、前記トレーデッキ上の前記入口領域の下で前記入口領域と垂直整列して配置させる傾斜部分又は水平部分を含み、
前記入口領域及び前記出口は、前記トレーデッキの両端で互いに斜向かいに位置する、トレー。
【請求項2】
前記流路が、蛇行流路である、請求項
1に記載のトレー。
【請求項3】
前記開口によって部分的に形成されたバルブを含む、請求項
2に記載のトレー。
【請求項4】
前記バルブが、前記開口を通る流体の上向きの流れによって加えられた力に応じて上下に浮動することができるバルブカバーを含む、請求項
3に記載のトレー。
【請求項5】
前記ダウンカマーが、パイプセグメントによって形成されている、請求項1に記載のトレー。
【請求項6】
前記ダウンカマーが、前記複数の離間したバッフル壁のうちの1つ以上を通って延在する、請求項
5に記載のトレー。
【請求項7】
シェルと、前記シェル内の開放内部領域と、前記開放内部領域の断面内で、かつ前記開放内部領域の断面にわたって延在する垂直に離間した関係で配置された請求項1に記載の複数のトレーと、を含む、物質移動カラムであって、前記トレーデッキの前記入口領域が垂直整列しており、前記トレーデッキ上の前記出口も垂直整列しており、前記流路が、前記トレーの各々の上で同じ方向にある蛇行流路である、物質移動カラム。
【請求項8】
前記バッフル壁の各々が、前記シェルの一方の側に当接する端部と、前記シェルの反対側から予め選択された距離だけ離間した反対側の端部と、を有する、請求項
7に記載の物質移動カラム。
【請求項9】
前記開口によって部分的に形成されたバルブを含む、請求項
7に記載の物質移動カラム。
【請求項10】
前記バルブが、前記開口を通る流体の上向きの流れによって加えられた力に応じて上下に浮動することができるバルブカバーを含む、請求項
9に記載の物質移動カラム。
【請求項11】
前記ダウンカマーが、パイプセグメントによって形成されている、請求項
7に記載の物質移動カラム。
【請求項12】
前記バッフル壁が、隣接する重なったトレーデッキの下面まで上向きに延在する、請求項
11に記載の物質移動カラム。
【請求項13】
物質移動カラム内で垂直に離間した関係で配置され、前記物質移動カラムのシェルによって形成された開放内部領域の断面にわたって延在するトレーのトレーデッキの上面上、かつ前記上面の上方で流体を相互作用させる方法であって、
前記トレーの各々の上でトレーデッキの入口領域上に液体を送達し、前記トレーデッキの前記上面に沿ってかつ前記上面の上方で、前記トレーデッキの各々の上面から上向きに延在する複数のバッフル壁によって部分的に画定された蛇行流路に沿って、前記液体が流れるようにする工程であって、前記液体が、前記トレーデッキの前記上面に沿ってかつ前記上面の上方で、前記蛇行流路に沿って、流路幅1メートル当たり0.0052m
3/s未満の速度で流れる、工程と、
蒸気を前記トレーデッキ内の複数の開口を通して上昇させて、前記液体がその蛇行流路に沿って流れるときに前記液体と相互作用するように泡又はしぶきを生成させる工程と、
前記トレーデッキ内の出口を通して、かつダウンカマー内へと前記液体を方向付けることによって、前記液体の蛇行流路の端部で前記トレーデッキから前記液体を除去する工程と、
次いで、前記ダウンカマーから、前記トレーのうちの隣接する重なったトレーの前記入口領域上に前記液体を排出する工程と、を含む、方法。
【請求項14】
前記液体が、前記トレーデッキの前記上面に沿って、かつ前記上面の上方で、前記流路に沿って、流路幅1メートル当たり0.0021m
3/s未満の速度で流れる、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記トレーのうちの隣接するトレー上の前記蛇行流路に沿って同じ方向に前記液体を流すことを含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項16】
各トレーデッキの前記上面上の前記バッフル壁のうちの3つの周囲に前記液体を流すことを含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
隣接する重なったトレーデッキの下面まで前記バッフル壁を上向きに延在させ、前記バッフル壁を前記隣接する重なったトレーデッキに取り付けることによって、前記トレーデッキのうちの隣接するトレーデッキ間の間隔を維持することを含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項18】
前記液体が、前記トレーデッキの前記上面に沿ってかつ前記上面の上方で、前記流路に沿って、流路幅1メートル当たり0.0021m
3/s未満の速度で流れる、請求項
17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、一般に、物質移動及び熱交換が生じるカラムに関し、より具体的には、カラム内を流れる流体流間の相互作用を容易にするために、そのようなカラムで使用する接触トレー並びに物質移動及び/又は熱交換用の接触トレーの使用方法に関する。
【0002】
物質移動カラムは、特定の組成物及び/又は温度の製品流を提供するために、少なくとも2つの流入流体流に接触するように構成される。本明細書で使用するとき、用語「物質移動カラム」は、物質及び/又は熱の移動が主目的であるカラムを包含することを意図する。多成分蒸留及び吸収用途で利用されるものなど、気相流を液相流に接触させる物質移動カラムがあるが、抽出カラムなど、異なる密度の2つの液相間の接触を促進するように設計される他の物質移動カラムもあり得る。多くの場合、物質移動カラムは、通常、カラム内に配置された複数のトレー又は他の物質移動表面に沿って、上昇蒸気流又は上昇液体流を下降液体流に接触させるように構成される。
【0003】
種々のタイプのトレーは一般に、上昇流体流と下向きに流れる流体流との間での所望の接触及び物質移動を推進するために物質移動カラムにおいて使用される。各トレーは通常、実質的にカラムの水平断面全体にわたって水平に延在し、円形カラムの壁の内面又はシェルに溶接された支持輪によってその周囲の周りで支持される。いくつかのトレーは、隣接するトレーの間の一定の垂直線間距離を有するこの方式で配置される。トレーは、カラムで行われる多段階過程の1つの部分を実行するためにカラムの一部のみに位置してもよい。あるいは、トレーは、カラムの実質的に垂直高さ全体に沿って配置されてもよい。
【0004】
上記のタイプのトレーは、液体が1つのトレーから隣接するより下のトレーに下降するための通路を設けるためにトレーデッキ内の出口開口に配置された1つ以上のダウンカマーを含む。ダウンカマーに入る前に、トレーデッキ上の液体は、トレーデッキの選択された部分に設けられた開口を通過する上昇蒸気と相互作用し、次いで、トレーデッキ上の出口開口内に出口堰を越えて流れる。蒸気開口を含むトレーデッキのそれらの領域は一般に、蒸気及び液体の混合、並びにトレーのそれらの領域の上で発生する泡立ちを理由に「活性化」領域と称される。
【0005】
液体流路幅1メートル当たり0.0052m
3
/秒未満の速度(流路幅1メートル当たり0.0052m
3
/s)などの低液体流量下では、トレーの活性領域にわたって流れる液体のかなりの部分が、上昇蒸気内の液滴として同伴し、重なったトレーへの蒸気と共に運ばれ得る。より小さい同伴液滴は、重なったトレーデッキ内の蒸気開口を通って蒸気と共に運ばれ得て、一方で、より大きな液滴は、重なったトレーデッキの下面に対して衝突し、フィルムを形成し得る。次いで、フィルムの一部は、重なったトレー内の蒸気開口を通る蒸気によって運ばれ得る。この同伴液体は、蒸気開口を通って蒸気によって運ばれることから、蒸気流のために利用可能な断面積を制限し、トレー全体の圧力低下を増加させる。同伴液体はまた、下部トレー上の蒸気との所望の相互作用から逃れて、動作効率を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、低液体流量中の上昇蒸気中の液体の同伴を低減する改善されたトレーが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本発明は、物質移動カラム内を流れるときの流体間の相互作用を促進するために、物質移動カラムで使用するためのトレーを対象とする。トレーは、上面を有するトレーデッキと、トレーデッキの上面上に液体の下向きの流れを受容するためのトレーデッキ上の入口領域と、トレーデッキの領域にわたって分布しかつトレーデッキを通って延在する複数の開口であって、流体が入口領域を出て、開口が上に分布しているトレーデッキの領域にわたって、かつトレーデッキの領域の上方で流れた後に、液体との相互作用のためにトレーデッキを通って流体が上向きに通過することを可能にする、複数の開口と、トレーデッキの入口領域から離れて配置された出口であって、液体が入口領域から流れ、領域内の開口を上向きに通過する流体と相互作用した後に、液体をトレーデッキの上面から除去することを可能にする、出口と、トレーデッキの上面から上向きに延在し、液体が入口領域から出口に流れるときの液体の流路の幅を狭めるように、かつ液体にその流れ方向を少なくとも2回変化させ、それによって上記流路を延長するように配置された複数のバッフル壁と、出口から下向きに延在するダウンカマーであって、液体が出口に入ったときに液体を受容し、次いで、液体をダウンカマーの下端に位置する排出口へと下向きに搬送する、ダウンカマーと、を含む。ダウンカマーは、排出口を、トレーデッキ上の入口領域の下に、かつトレーデッキ上の入口領域と垂直整列して配置させる傾斜部分又は水平部分を含む。
【0008】
別の態様では、本発明は、シェルと、シェル内の開放内部領域と、カラムの開放内部領域の断面内で、かつその断面にわたって延在する垂直に離間した関係で配置された上記の複数のトレーと、を含む物質移動カラムを対象とする。
【0009】
更なる態様では、本発明は、物質移動カラム内で垂直に離間した関係で配置され、物質移動カラムのシェルによって形成された開放内部領域の断面にわたって延在するトレーのトレーデッキの上面上で、かつその上面の上方で流体を相互作用させる方法を対象とする。本方法は、トレーの各々の上でトレーデッキの入口領域上に液体を送達し、トレーデッキの上面に沿ってかつその上面の上方で、トレーデッキの各々の上面から上向きに延在する複数のバッフル壁によって部分的に画定された蛇行流路に沿って、その液体が流れるようにする工程であって、その液体が、トレーデッキの上面に沿ってかつその上面の上方で、蛇行流路に沿って、流路幅1メートル当たり0.0052m
3
/s未満の速度で流れる、工程と、蒸気をトレーデッキ内の複数の開口を通して上昇させて、液体がその蛇行流路に沿って流れるときに液体と相互作用させる工程と、トレーデッキ内の出口を通して、かつダウンカマー内へと液体を方向付けることによって、液体の蛇行流路の端部でトレーデッキから液体を除去する工程と、次いで、ダウンカマーから、トレーのうちの隣接する重なったトレーの入口領域上に液体を排出する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
添付の図面は、明細書の一部を形成し、種々の図において同一の構成要素を示すために同一の参照符号が使用される。
【0011】
【
図1】物質移動及び/又は熱交換が発生することが意図され、本発明のトレーの一実施形態を示すためにカラムのシェルの一部が切り取られた、カラムの断片的な斜視図である。
【
図2】
図1に示す左端の視点から得られたカラムの一部分の拡大部分図である。
【
図3】
図2と類似するが右端の視点から得られた拡大部分図。
【
図4】
図1~
図3に示すトレーのうちの1つを示すカラムの平面図である。
【
図5】
図1と類似するが、本発明のトレーの第2の実施形態を示すカラムの部分斜視図である。
【
図6】
図5に示すカラムであるが異なる視点から得られた図である。
【
図7】
図5及び
図6に示すトレーのうちの1つを示すカラムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に図面をより詳しく、最初に
図1を参照すると、物質移動又は熱交換プロセスに使用するために好適な物質移動カラムは、全体にわたって番号10で示す。カラム10は、多角形を含む他の形状が可能であり、本発明の範囲内であるが、概ね円筒形の形状とすることができる直立の外部シェル12を含む。シェル12は、任意の好適な直径及び高さのシェルであってもよく、不活性であることが望ましいか、又はそうでなければカラム10の稼働中に存在する流体及び条件と適合性がある1つ以上の硬質材料で構成されてもよい。
【0013】
カラム10は、分留製品を得るために又は流体流間で物質移動若しくは熱交換を他の方法で引き起こすために、流体流、典型的には液体流又は蒸気流の処理に使用されるタイプのものである。例えば、カラム10は、粗大気(crude atmospheric)、ルブ真空(lube vacuum)、粗真空(crude vacuum)、流体若しくは熱分解分留、コーカー若しくはビスブレーカー分留、コークススクラビング、反応器オフガススクラビング、ガス急冷、食用油脱臭、汚染防止スクラビング、又は他のプロセスがその内部で生じるものであってもよい。
【0014】
カラム10のシェル12は、流体流間で望ましい物質移動又は熱交換が発生する開放内部領域14を画定する。一実施態様では、流体流は、1つ以上の上昇蒸気流及び1つ以上の下降液体流を含んでもよい。他の実施態様では、流体流は、上昇若しくは下降液体流又は上昇若しくは下降蒸気流の任意の組み合わせを実質的に含んでもよい。
【0015】
1つ以上の流体流は、カラム10の高さに沿って適切な位置に配置された、下部フィードライン16a又は上部フィードライン16bなどの任意の数のフィードライン16を通ってカラム10に方向付けられてもよい。一実施態様では、蒸気流は、フィードライン16a、16bを通ってカラム10に取り入れられるのではなく、カラム10内部で生成されてもよい。1つ以上の流体流は、下部テイクオフライン18a及び上部テイクオフライン18bなどの任意の数のテイクオフライン18を通ってカラム10の外に方向付けられてもよい。一実施態様では、液体は、上部フィードライン16bを通って取り入れられ、カラム10を通って下降し、下部テイクオフライン18aを通って取り除かれてもよく、蒸気は、下部フィードライン16aを通って取り入れられ、カラム10を通って上昇し、上部テイクオフライン18bを通って取り除かれてもよい。
【0016】
例えば、還流ライン、リボイラー、コンデンサー、蒸気ホーン、及び液体分配器などの典型的に存在する他のカラム構成要素は、従来本質的なものであり、これらの構成要素の図が本発明の理解のために必要であるとは考えられないため、図面に例示されていない。
【0017】
更に
図2~
図4を参照すると、複数の接触トレー20は、開放内部領域14内を流れる流体の相互作用を促進するために、カラム10の開放内部領域14内で垂直に離間した関係で配置される。トレー20は、概ね同じ又は類似の構造であり、カラム10の横断面全体にわたって概ね水平に延在する。図示した実施形態において隣接するトレー20は、中心の垂直軸の周りに互いに180度回転されている。
【0018】
各トレー20は、以下により詳細に記載されるように、流体が沿うように流れる上面24を有する、概ね平面のトレーデッキ22を有する。トレーデッキ22は、通常、シェル12内のマンウェイ(図示せず)を通って各々が嵌合するようにサイズ決めされた、相互接続されたトレーパネルから形成される。入口領域26は、トレーデッキ22の上面24上に、重なったトレー20から、は液体分配器(図示せず)からなどの、液体の下向きの流れを受容するためにトレーデッキ上に配置される。複数の開口28は、活性領域として知られる、トレーデッキ22の領域にわたって分布する。開口28は、トレーデッキ22を完全に通って延在しており、入口領域26を出て、開口28が分布したトレーデッキ22の活性領域にわたってかつその活性領域の上方で流れた後の液体との相互作用のために流体がトレーデッキ22を上向きに通過できるようにする。開口28は、単純な篩穴であってもよく、又は固定バルブ若しくは可動バルブの一部を形成してもよい。図示した実施形態において、
図4で最も良くわかるように、開口28は、開口28を通って、蒸気などの流体の上向きの流れによって加えられた力に応じて上下に浮動することができるバルブカバー32を有するバルブ30の一部を形成する。
図4では、バルブカバー32のうちの1つを取り外して、バルブ30に関連付けられた開口28を示す。別の実施形態では、バルブカバーは、トレーデッキに固定されてもよく、これにより、上下に浮動することができない。
【0019】
各トレー20は、トレーデッキ22内で入口領域26から離れて配置された出口34を更に含み、これは、液体が入口領域26から流れ、トレーデッキ22の活性領域内の開口28を上向きに通過する流体と相互作用した後に、液体をトレーデッキ22の上面24から除去することを可能にする。開口28又はバルブ30を通って上昇する蒸気とトレーデッキ22の上面24に沿って流れる液体との間の相互作用は、通常、トレーデッキ22の上方で泡又はしぶきを生成する。各トレー20はまた、出口34から下向きに延在して、液体が出口34に入ったときに液体を受容するダウンカマー36を含む。次いで、ダウンカマー36は、液体を、下側に隣接するトレー20の入口領域26上に排出するために、又は最も下側のトレー20の場合には、液体コレクタ(図示せず)若しくは他の内部装置へと排出するために、下向きに搬送する。
【0020】
図4で最も良くわかるように、一実施形態において、入口領域26及び出口34は、トレーデッキ22の両端で互いに
斜向かいに位置する。入口領域26及び出口34は各々、トレー20上の液体の設計された体積流量に対応するようにサイズ決めされる。図示した実施形態において、入口領域26及び出口34は各々、トレーデッキ22の両端で弦領域の副セグメントのみを占める。他の実施形態において、入口領域26及び出口34は各々、トレーデッキ22の両端で弦領域の全てを含む主セグメントを占めてもよい。
【0021】
各トレー20は、トレーデッキ22の上面24から上向きに延在しかつ入口領域26から出口34へとトレーデッキ22の上及び上方で流れるときの液体の流路の幅を低減するようにして、並びに液体を、その流れ方向を2回反転させることなどにより、その流れ方向を少なくとも2回変化させてその流路を長くするようにして、配置された複数のバッフル壁38を含む。このように流路を構造化することにより、バッフル壁38は、液体流を濃縮し、トレーデッキ22の活性領域の任意の部分上及びその上方に存在する液体及び液体ヘッドの体積流量を増加させる。液体の体積流量のこの増加は、トレーデッキ22の開口28を通って上昇する蒸気内で液体が同伴される機会を低減し、低液体流束又は流量条件下、特に、流路幅1メートル当たり0.0052m
3
/s未満、又は流路幅1メートル当たり0.0021m
3
/s未満の液体流量下で、トレー20の効率を高める。
【0022】
一実施形態において、
図1~
図4に示されるように、バッフル壁38のうちの第1のバッフル壁及び第2のバッフル壁が使用され、離間した関係で配置される。図示した実施形態において、第1及び第2のバッフル壁38は、互いに平行な関係で配置され、トレーデッキ22を略等しい面積の3つのセグメントに分割する。第1のバッフル壁38の一端部は、シェル12の一方の側に当接し、第1のバッフル壁38の反対側の端部は、シェル12の反対側から予め選択された距離だけ離間している。予め選択された距離は、通常、液体が第1のバッフル壁38の端部を周るときのトレーデッキ22上の流路の幅が第1のバッフル壁38の両側の流路の幅と略同じであるように選択される。第2のバッフル壁38は、第1のバッフル壁38と反対側に配置される。すなわち、第2のバッフル壁38の一端部は、第1のバッフル壁38が当接するシェル12の側から予め選択された距離だけ離間し、第2のバッフル壁38の反対側の端部は、第1のバッフル壁38が予め選択された距離だけ離間しているシェル12の反対側に当接する。このようにバッフル壁38を配置することによって、入口領域26から出口34までトレーデッキ22上を流れるときの液体に対して蛇行流路を形成する。バッフル壁38が、弦ダウンカマー、壁セグメント(図示せず)、又は部分的な弦プレート(図示せず)を有する既存のトレー20の改良内に設置される状況では、液体流路の所望の端部を除いて、ダウンカマーへの液体の進入を遮断するように使用してもよい。
【0023】
バッフル壁38は各々、バッフル壁38のうちの一方の側に沿ってトレーデッキ22の上及び上方で流れる液体泡及びしぶきの大部分を案内するのに十分な高さを有し、それがバッフル壁38の端部に到達すると、任意の泡及びしぶきを含む液体を、バッフル壁38の反対側に沿って向き及び流れが逆になるようにさせる。一例として、バッフル壁38の高さは、それが配置されているトレーデッキデッキ22の上面24と、隣接する重なったトレーデッキ22の下面との間の垂直間隔の少なくとも50%であってもよい。別の例として、バッフル壁38の高さは、トレーデッキ22間のそのような垂直間隔の少なくとも75%である。更なる例として、バッフル壁38の高さは、バッフル壁38が、隣接する重なったトレーデッキ22の下面まで上向きに延在するように、垂直間隔の100%である。この例では、バッフル壁38は、隣接するトレーデッキ22間の所望の間隔を維持し、トレー20のより剛性のアセンブリを提供するために、重なったトレーデッキ22に取り付けられてもよい。
【0024】
追加のバッフル壁38を使用して、トレーデッキ22上の液体の流路を更に長くし、流路の幅を小さくしてもよいことを理解されたい。この流路の狭小化は、トレーデッキ22の活性領域の任意の部分における液体の体積流量を増加させる。例えば、
図5~
図7に示されるように、バッフル壁38のうちの第3のバッフル壁は、バッフル壁38のうちの第1及び第2のバッフル壁に対して離間した関係で配置されて、液体が入口領域26から出口34に流れるときに、その方向を3回変化させてもよい。第3のバッフル壁38及び任意の奇数のバッフル壁38を使用することは、トレー20上の入口領域26が垂直整列にありかつ出口34もトレー20上で垂直整列にある状態で、入口領域26及び出口34がトレーデッキ22の同じ端部に位置することを可能にする点で特に有利である。入口領域26及び出口34がこのように垂直に整列されるとき、液体の蛇行流は、
図1~
図4に示されるトレーの実施形態において反対方向ではなく、各トレー上で同じ方向であってもよい。これにより、液体が1つのトレー20から次のトレーへと連続的に下降するときにコックスクリュー型流路が形成される。この蛇行流が連続するトレー20の各々の上で同じ方向にある結果として、トレー20の効率を高めることができる。
【0025】
1つのトレー20上の出口34から次の下部トレー20上の入口領域26に液体を送達するために、パイプセグメントから形成されるようなダウンカマー40は、出口34から下向きに延在し、ダウンカマー40の排出口44を下側のトレー20のトレーデッキ22上の入口領域26と垂直整列して配置させる傾斜部分又は水平部分42を含む。ダウンカマー40は、下側のトレーデッキ22上のバッフル壁38のうちの1つ以上を通って延在して、この共通の方向の又は螺旋の流れを達成する必要があり得る。
【0026】
本発明はまた、トレー20が物質移動カラム10内で垂直に離間した関係で配置されて物質移動カラム10のシェル12によって形成された開放内部領域14の断面にわたって延在する場合のトレー20のトレーデッキ22の上面24の上で及び上方で流体を相互作用させる方法を対象とする。この方法は、トレー20の各々の入口領域26上に液体を送達し、第1のバッフル壁38の一方の側に一方向に配向され、次いで、第1のバッフル壁の反対側で別の方向に配向され、次いで出口34で終端する流路に沿ってトレーデッキの上面24に沿ってかつその上方で液体が流れることを可能にする工程を含む。蒸気は、開口28又はバルブ30(存在する場合)を通って、トレーデッキ22内で上昇させられて、その流路に沿って流れる際に液体と相互作用する。液体は、出口34を通ってダウンカマー36又は40へと方向付けられることによって、その流路の端部でトレーデッキ22から除去される。次いで、液体は、ダウンカマー36又は40から、トレー20のうちの下側に隣接するトレーの入口領域26上に排出される。一実施形態において、トレー20の各々の入口領域26上に送達される液体の量は、液体の流路に沿ってトレーデッキ22の上面24に沿ってかつその上方で、流路幅1メートル当たり0.0052m
3
/s未満の流量で流れるようになっている。別の実施形態において、液体流量は、流路幅1メートル当たり0.0021m
3
/s未満である。
【0027】
本方法はまた、トレーデッキ22の上面24から上向きに延在してかつ液体流路が蛇行流路であるように配置される、バッフル壁38のうちの追加のバッフル壁の周囲に液体を流すことも含む。一実施形態において、液体は、トレー20のうちの隣接するトレー上の蛇行流路に沿って反対方向に流れる。別の実施形態において、液体は、トレー20上の蛇行流路に沿って同じ方向に流れる。
【0028】
以上により、本発明は、その構造に対して固有である他の利点と共に上記目的及び目標を全て実現するようによく適合された発明であることがわかるであろう。
【0029】
特定の機能及びサブコンビネーションは有用なものであり、他の機能及びサブコンビネーションに関係なく使用され得ることが理解されるだろう。これは本発明の範囲によって想到されるものであり、本発明の範囲内である。
【0030】
本発明の範囲から逸脱することなく多くの考えられる実施形態が本発明から作られてよいため、本明細書に記載された又は添付図面に示された全ての事項は実例として解釈されるべきで、限定する趣旨ではないことが理解されるべきである。