(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】制御装置、レンズ装置、および撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/08 20210101AFI20240603BHJP
G03B 13/34 20210101ALI20240603BHJP
H04N 23/67 20230101ALI20240603BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20240603BHJP
【FI】
G02B7/08 C
G02B7/08 A
G02B7/08 B
G03B13/34
H04N23/67
H04N23/60
(21)【出願番号】P 2020014226
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】豊田 由美
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-337277(JP,A)
【文献】特開2019-219584(JP,A)
【文献】特開2019-219583(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0394391(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G02B 7/28
G03B 3/10
G03B 13/34-13/36
H04N 23/60
H04N 23/67
H04N 23/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカスレンズを合焦位置に自動で調整する第一の制御手段と、
前記フォーカスレンズをユーザの操作
量に基づいて調整する第二の制御手段と、
前記フォーカスレンズを駆動する第三の制御手段と、
前記第一の制御手段による第一の制御と前記第二の制御手段による第二の制御とを切り替え可能に設定する設定手段と、を有し、
前記第一の制御手段および前記第二の制御手段は、前記フォーカスレンズの第一の駆動領域において有効であり、
前記第一の制御手段は、前記フォーカスレンズの第二の駆動領域において無効であり、
前記第二の制御手段は、前記第二の駆動領域において有効であり、
前記第三の制御手段は、前記設定手段により前記第二の制御が設定されている場合、
前記フォーカスレンズが前記第一の駆動領域に位置し、被写体距離を維持する際に前記フォーカスレンズの位置が前記第二の駆動領域に含まれるように前記第二の駆動領域が変化したとき、または、前記フォーカスレンズが前記第二の駆動領域に位置し、前記被写体距離を維持する際に前記フォーカスレンズの位置が前記第一の駆動領域に含まれるように前記第二の駆動領域が変化したとき、
前記第二の駆動領域の変化前後において前記被写体距離を維持するように前記フォーカスレンズを駆動することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記第三の制御手段は、前記設定手段により前記第一の制御が設定されている場合、
前記フォーカスレンズが前記第一の駆動領域に位置し、被写体距離を維持する際に前記フォーカスレンズの位置が前記第二の駆動領域に含まれるように前記第二の駆動領域が変化したとき、前記フォーカスレンズが前記第一の駆動領域に位置するように前記フォーカスレンズを駆動することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第三の制御手段は、前記フォーカスレンズが前記第一の駆動領域に位置し、前記被写体距離を維持する際に前記フォーカスレンズの位置が前記第一の駆動領域に含まれるように前記第二の駆動領域が変化した場合、前記被写体距離を維持するように前記フォーカスレンズを駆動することを特徴とする請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第三の制御手段は、前記設定手段により前記第一の制御が設定されている場合、
前記フォーカスレンズが前記第二の駆動領域に位置し、前記被写体距離を維持する際に前記フォーカスレンズの位置が前記第一の駆動領域に含まれるように前記第二の駆動領域が変化したとき、前記被写体距離を維持するように前記フォーカスレンズを駆動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第二の駆動領域は、ズームレンズの位置に応じて変化することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記ズームレンズの位置が広角端である場合、前記第二の駆動領域は第一の広さを有し、
前記ズームレンズの位置が望遠端である場合、前記第二の駆動領域は前記第一の広さよりも狭い第二の広さを有することを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記第二の駆動領域は、絞り値に応じて変化することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記絞り値が第一の絞り値である場合、前記第二の駆動領域は第三の広さを有し、
前記絞り値が前記第一の絞り値よりも小さい第二の絞り値である場合、前記第二の駆動領域は前記第三の広さよりも狭い第四の広さを有することを特徴とする請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記第三の制御手段は、全駆動領域における前記第二の駆動領域の割合の増減変化に基づいて、前記フォーカスレンズを駆動することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
フォーカスレンズと、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の制御装置と、を有することを特徴とするレンズ装置。
【請求項11】
撮像素子と、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の制御装置と、を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカスレンズを駆動して焦点調節が可能な制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォーカスレンズを駆動して焦点調節を行う方法として、オートフォーカス(AF)およびマニュアルフォーカス(MF)が知られている。AFは、AFセンサから生成されるAF評価値に基づいてフォーカスレンズの合焦位置を算出して焦点調節を行う方法である。MFは、ユーザが手動でフォーカスリングを操作して焦点調節を行う方法である。
【0003】
また、ズームレンズを駆動した際に生じる像面変動を、フォーカスレンズを駆動することにより補正し、合焦状態を維持するズームトラッキング制御が知られている。特許文献1には、ズームの際に合焦状態を維持するズームレンズ位置とフォーカスレンズ位置との関係を示す電子カム(トラッキング曲線)情報に基づいて、領域モードを切り替える方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、ユーザのズーム操作によるズームトラッキング制御の際に、ユーザが意図せず、領域モードが切り替わる場合がある。ここで領域モードは、AFとMFの両方で焦点調節が可能なAF可能領域、および、MFでのみ焦点調節が可能なMF専用領域に関するモードを含む。MF専用領域では、フォーカスレンズの駆動と撮像センサからの画像取得は可能であるが、AFセンサへ入る光線の入射角等の制限によってAFを行うことができない。
【0006】
MF操作以外の操作で領域モードが切り替わり強制的にMF状態に変わることを避けるために、MF操作以外の操作によるAF可能領域からMF専用領域への駆動を制限すると、被写体距離を維持することができない。一方、ユーザが意図してMF状態に設定している場合、AF可能領域からMF専用領域へ切り替わったとしてもMF状態であることに変化はないため、AF可能領域を維持するよりも被写体距離を維持することが望ましい。
【0007】
そこで本発明は、ユーザの意図を反映してMF操作以外によりAF可能領域からMF専用領域へ切り替わることを防止し、ユーザの操作性を向上させることが可能な制御装置、レンズ装置、および、撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての制御装置は、フォーカスレンズを合焦位置に自動で調整する第一の制御手段と、前記フォーカスレンズをユーザの操作量に基づいて調整する第二の制御手段と、前記フォーカスレンズを駆動する第三の制御手段と、前記第一の制御手段による第一の制御と前記第二の制御手段による第二の制御とを切り替え可能に設定する設定手段とを有し、前記第一の制御手段および前記第二の制御手段は、前記フォーカスレンズの第一の駆動領域において有効であり、前記第一の制御手段は、前記フォーカスレンズの第二の駆動領域において無効であり、前記第二の制御手段は、前記第二の駆動領域において有効であり、前記第三の制御手段は、前記設定手段により前記第二の制御が設定されている場合、前記フォーカスレンズが前記第一の駆動領域に位置し、被写体距離を維持する際に前記フォーカスレンズの位置が前記第二の駆動領域に含まれるように前記第二の駆動領域が変化したとき、または、前記フォーカスレンズが前記第二の駆動領域に位置し、前記被写体距離を維持する際に前記フォーカスレンズの位置が前記第一の駆動領域に含まれるように前記第二の駆動領域が変化したとき、前記第二の駆動領域の変化前後において前記被写体距離を維持するように前記フォーカスレンズを駆動する。
【0009】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザの意図を反映してMF操作以外によりAF可能領域からMF専用領域へ切り替わることを防止し、ユーザの操作性を向上させることが可能な制御装置、レンズ装置、および、撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】各実施例における撮像装置のブロック図である。
【
図2】各実施例における被写体距離ごとの電子カムデータを示す図である。
【
図3】各実施例におけるAF可能領域およびMF専用領域を示す図である。
【
図4】実施例1におけるズームレンズ位置と最短撮影距離との関係を示す図である。
【
図5】実施例1における制御方法のフローチャートである。
【
図10】実施例2における絞り値と最短撮影距離との関係を示す図である。
【
図11】実施例2における制御方法のフローチャートである。
【
図12】実施例2における制御方法の説明図である。
【
図13】実施例2における制御方法の説明図である。
【
図14】実施例2における制御方法の説明図である。
【
図15】実施例2における制御方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
まず、各実施例における撮像装置の構成について説明する。
図1は、撮像装置10のブロック図である。撮像装置10は、カメラ本体(撮像装置本体)200と、カメラ本体200に着脱可能な交換レンズ(レンズ装置)100とを備えて構成される。ただし各実施例の撮像装置は、これに限定されるものではなく、カメラ本体とレンズ装置とが一体的に構成されていてもよい。
【0014】
交換レンズ100は、カメラ本体200に不図示のマウントを介して機械的および電気的に接続されている。交換レンズ100は、前述したマウントに設けられた不図示の電源端子を介して、カメラ本体200から電力の供給を受ける。そして交換レンズ100は、カメラ本体200から受けた電力を用いて、後述する各種アクチュエータやレンズマイコン(レンズマイクロコンピュータ)111を制御する。カメラ本体200は、前述したマウントに設けられた不図示の通信端子部を介して、交換レンズ100と通信を行い、交換レンズ100に制御コマンドを送信することで交換レンズ100を制御する。
【0015】
カメラ本体200は、位相差AFセンサ機能を有する撮像素子201と、信号処理回路202と、記録処理部203と、表示部204と、操作部205と、カメラマイコン(カメラマイクロコンピュータ)206とを有する。撮像素子201は、CMOSセンサやCCDセンサを有し、交換レンズ100内の撮像光学系により形成された被写体像(光学像)を光電変換して電気信号(アナログ信号)を出力する。撮像素子201から出力されたアナログ信号は、不図示のA/D変換回路によりデジタル信号に変換される。
【0016】
信号処理回路202は、A/D変換回路からのデジタル信号に対して各種画像処理を行い、映像信号を生成する。また信号処理回路202は、映像信号から被写体像のコントラスト状態、すなわち撮像光学系の焦点状態を示すフォーカス情報や露出状態を表す輝度情報を生成する。また信号処理回路202は、映像信号を表示部204に出力し、表示部204は映像信号を構図やピント状態等の確認に用いられるライブビュー画像として表示する。また信号処理回路202は、映像信号を記録処理部203に出力する。記録処理部203は、映像信号を静止画像や動画像データとして外部メモリ等に記憶する。
【0017】
カメラ制御部としてのカメラマイコン206は、操作部205に含まれる撮像指示スイッチおよび各種設定スイッチ等の入力に応じて、カメラ本体200を制御する。またカメラマイコン206は、カメラ通信部を介して、輝度情報に応じた絞りユニット103の光量調節動作やフォーカス情報に応じたフォーカスレンズ105の焦点調節動作に関する制御コマンドをレンズマイコン111に送信する。
【0018】
交換レンズ100は、撮像光学系と、撮像光学系を駆動する各アクチュエータを制御する各制御部と、フォーカスレンズ105を操作するための操作リング110と、フォーカスモードスイッチ112と、レンズマイコン111とを有する。
【0019】
レンズマイコン111は、交換レンズ100内の各部の動作を制御するレンズ制御部(制御装置)である。レンズマイコン111は、通信部を介して、カメラ本体200から送信された制御コマンドを受信し、レンズデータの送信要求を受ける。またレンズマイコン111は、制御コマンドに対応するレンズ制御を行い、送信要求に対応するレンズデータをカメラ本体200に送信する。またレンズマイコン111は、フォーカスモードスイッチ112を介してユーザにより選択されたフォーカスモードをカメラ本体200に送信する。
【0020】
またレンズマイコン111は、制御コマンドのうち光量調節に関するコマンドやフォーカシングに関するコマンドに応答して、絞り制御部107およびフォーカスレンズ制御部109に指令を出力する。絞り制御部107およびフォーカスレンズ制御部109は、レンズマイコン111からの指令に従って、絞りユニット103およびフォーカスレンズ105をそれぞれ駆動する。これにより、絞りユニット103およびフォーカスレンズ105による光量調節処理、および焦点調節動作を制御するオートフォーカス処理を行うことができる。またレンズマイコン111は、操作リング110の操作量に応じて、フォーカスレンズ制御部109に指令を出力してフォーカスレンズ105を駆動し、焦点調節動作を制御する。
【0021】
各実施例において、レンズマイコン111は、第一の制御手段111a、第二の制御手段111b、第三の制御手段111c、および、設定手段111dを有する。第一の制御手段111aは、フォーカスレンズ105を合焦位置に自動で調整する(すなわち第一の制御手段111aはAF制御を実現する機能を有する)。第二の制御手段111bは、フォーカスレンズ105を手動で(ユーザの操作量に基づいて)調整する(すなわち第二の制御手段111bはMF制御を実現する機能を有する)。第三の制御手段111cは、フォーカスレンズ105を駆動する(ズームトラッキング制御など)。設定手段111dは、フォーカスモードスイッチ112からの信号を取得して、第一の制御手段111aによる第一の制御(AF制御)と、第二の制御手段111bによる第二の制御(MF制御)とを切り替え可能に設定する。
【0022】
第三の制御手段111cは、後述のように、フォーカスレンズ105の第一の駆動領域(AF可能領域)やフォーカスレンズ105の第二の駆動領域(MF専用領域)が変化した際に、フォーカスレンズ105を制御する。すなわち第三の制御手段111cは、フォーカスレンズ105のAF可能領域やMF専用領域が変化した場合、フォーカスレンズ105を適切な位置に位置させるようフォーカスレンズ105を駆動または静止させる機能を有する。
【0023】
なお、本実施例ではレンズマイコン111が第一の制御手段111a、第二の制御手段111b、第三の制御手段111cを有する例について説明した。これは、レンズマイコン111が第一の制御手段111aの機能に相当する機能、第二の制御手段111bの機能に相当する機能、第三の制御手段111cの機能に相当する機能を有することと等価としてとらえることもできる。
【0024】
後述のように、第一の制御手段111aおよび第二の制御手段111bはフォーカスレンズ105の第一の駆動領域(AF可能領域)において有効であり、第一の制御手段111aはフォーカスレンズ105の第二の駆動領域(MF専用領域)において無効である。第三の制御手段111cは、設定手段111dにより第二の制御が設定されている場合、以下のように制御を行う。すなわち第三の制御手段111cは、フォーカスレンズが第一の駆動領域に位置し、被写体距離を維持する際にフォーカスレンズの位置が第二の駆動領域に含まれるように第二の駆動領域が変化したとき、被写体距離を維持するようにフォーカスレンズを駆動する。また第三の制御手段111cは、フォーカスレンズが第二の駆動領域に位置し、被写体距離を維持する際にフォーカスレンズの位置が第一の駆動領域に含まれるように第二の駆動領域が変化したとき、被写体距離を維持するようにフォーカスレンズを駆動する。各実施例において、第三の制御手段111cは、全駆動領域における第二の駆動領域の割合の増減変化に基づいて、フォーカスレンズ105を駆動する
撮像光学系は、フィールドレンズ101と、変倍を行うズームレンズ102と、光量を調節する絞りユニット103と、像振れ補正レンズ104と、焦点調節を行うフォーカスレンズ105とを含む。ズームレンズ102は、図中に破線で示される光軸OAに沿った方向(光軸方向)に移動可能であり、不図示のズーム機構に連結されたズーム操作部がユーザに操作されることで光軸方向に駆動される。これにより、ズームレンズ102の移動によって撮影光学系の焦点距離が変更される変倍(ズーム)が行われる。
【0025】
ズームレンズ位置検出部106は、可変抵抗等の位置検出センサを用いてズームレンズ位置を検出し、ズームレンズ102の位置データをレンズマイコン111に出力する。ズームレンズ位置検出部106から出力された位置データは、レンズマイコン111にて後述するズームトラッキング制御などに用いられる。
【0026】
絞りユニット103は、絞り羽根やホール素子等のセンサを備えて構成される。絞り羽根の状態は、前述のセンサにより検出され、レンズマイコン111に出力される。絞り制御部107は、レンズマイコン111からの指令に従って、駆動信号を出力してステッピングモータやボイスコイルモータ等のアクチュエータを駆動する。これにより、絞りユニット103による光量調節を行うことができる。
【0027】
像振れ補正レンズ104は、撮像光学系の光軸OAに直交する方向に移動することで、手振れ等に起因する像振れを低減する。像揺れ補正レンズ制御部108は、振動ジャイロ等の不図示の振れセンサにより検出された振れに応じて、レンズマイコン111からの指令に従って、駆動信号を出力して防振アクチュエータを駆動する。これにより、像揺れ補正レンズ104のシフト動作を制御する防振処理を行うことができる。
【0028】
フォーカスレンズ105は、光軸方向に移動可能であり、フォトインタラプタ等の位置検出センサを用いてフォーカスレンズ105の位置を検出し、位置データをレンズマイコン111に出力する。フォーカスレンズ制御部109は、レンズマイコン111からの指令に従って、駆動信号を出力してステッピングモータ等のアクチュエータを駆動し、フォーカスレンズ105を移動させることで焦点調節を行う。
【0029】
またフォーカスレンズ105は、ズームレンズ102による変倍に伴う像面変動を補正する。リアフォーカス式の変倍光学系において、ズームレンズ102を移動させて変倍を行う際に生じる像面変動を、フォーカスレンズ105を移動させることによって補正し、合焦状態を維持するズームトラッキング制御を行う。
【0030】
ここで、
図2を参照して、ズームトラッキング制御について説明する。
図2は、被写体距離ごとの電子カムデータを示す図である。
図2において、横軸はズームレンズ102の位置(ズームレンズ位置)、縦軸はフォーカスレンズ105の位置(フォーカスレンズ位置)をそれぞれ示す。ズームトラッキング制御を行うため、レンズマイコン111に搭載された不図示のメモリ(内部メモリ)には、電子カムデータ(トラッキング曲線)の情報が記憶されている。電子カムデータは、
図2に示されるように、被写体距離に応じて合焦状態を保持するように設定されたズームレンズ位置とフォーカスレンズ位置との関係を示すデータである。レンズマイコン111は、電子カムデータに基づいて、フォーカスレンズ制御部109に制御指令を出力し、フォーカスレンズ105を駆動してトラッキング制御を行う。
【0031】
各実施例において、電子カムデータは、フォーカスレンズ105の単位駆動量に対する像面移動量であるフォーカス敏感度に基づいて作成される。ただし、
図2に示されるように、実際にメモリに記憶されている電子カムデータは、代表的な複数の被写体距離A~Dに対応するデータであり、かつ代表的なズームレンズ位置(代表点)に対するフォーカスレンズ位置を示すデータである。代表点以外のズームレンズ位置に近い複数の代表点に対する距離の比率を算出し、その比率に応じて線形補完を行うことによりフォーカスレンズ位置を算出することができる。
【0032】
次に、
図3を参照して、AF可能領域およびMF専用領域について説明する。
図3は、AF可能領域およびMF専用領域を示す図である。ここで、AF可能領域はAFとMFの両方で焦点調節が可能な領域であり、MF専用領域はMFでのみ焦点調節が可能な領域である。本実施例において、AF可能領域はAF・MF無限端とAF資金端との間の領域であり、MF専用領域はMF至近端とAF至近端との間の領域である。また本実施例において、AF可能領域とMF専用領域とを合わせた領域が全駆動領域である。
【0033】
各実施例の撮像装置10は、自動で焦点調節を行うオートフォーカス(AF)と、手動で焦点調節を行うマニュアルフォーカス(MF)とでフォーカスレンズ105を駆動して焦点調節を行うことが可能である。カメラマイコン206は、フォーカスモードスイッチ112を介してユーザにより選択されたフォーカスモードの設定状態をカメラ通信部を介して取得し、ユーザがAFモードとMFモードのいずれのフォーカスモードに設定しているかを判定する。AFモードが選択されている場合、カメラマイコン206は、レンズマイコン111へフォーカシングに関する制御コマンドを送信する。一方、MFモードが選択されている場合、カメラマイコン206は、フォーカシングに関する制御コマンドを送信せず、操作リング110の操作を優先する。
【0034】
AFにおいて、カメラマイコン206は、撮像素子201で生成される映像信号に応じたAF評価値に基づいてフォーカスレンズ105の合焦位置を算出し、フォーカシングに関する制御コマンドをカメラ通信部を介してレンズマイコン111へ送信する。レンズマイコン111は、カメラマイコン206から送信された制御コマンドに応答して、フォーカスレンズ制御部109に指令を出力し、フォーカスレンズ105を駆動して焦点調節動作を制御する。MFにおいて、レンズマイコン111は、操作リング110の操作量に応じて、フォーカスレンズ制御部109に指令を出力して、フォーカスレンズ105を駆動して焦点調節動作を制御する。
【0035】
図3に示されるAF可能領域は、AFおよびMFの両方により焦点調節が可能な領域である。このため、AF可能領域に存在する被写体Bは、AFおよびMFの両方で合焦させることが可能である。一方、
図3に示されるMF専用領域は、AF評価値を正確に算出することができないため、AFによる焦点調節を行うことができず、MFによる焦点調節のみが可能な領域である。このため、MF専用領域に存在する被写体Aは、MFにおいてのみ合焦させることが可能である。このとき、ユーザがフォーカスモードスイッチ112にてAFモードを選択していたとしても、AFによる焦点調節を行うことができない領域となるためMFモードとなる。
【0036】
以下、各実施例において、撮像装置10の制御方法に関して詳述する。
【実施例1】
【0037】
まず、本発明の実施例1について説明する。本実施例では、ズームトラッキング処理によるフォーカスレンズ制御の流れについて説明する。
図4は、ズームレンズ位置と最短撮影距離との関係を示す図である。
図4において、縦軸はズームレンズ位置(ズームレンズ102の位置)、横軸は最短撮影距離をそれぞれ示す。
図4に示されるように、最短撮影距離はズームレンズ102の位置に応じて変化し、WIDE側でAF可能領域であった撮影距離位置はTELE側でMF専用領域となる。このように本実施例では、ズーム位置に応じてAF可能領域(AF・MF可能領域)とMF専用領域とが切り替わる。
【0038】
次に、
図5を参照して、本実施例におけるズームトラッキング処理によるAF可能領域(第一の駆動領域)とMF専用領域(第二の駆動領域)との切り替わりの際のフォーカスレンズ制御(制御方法)の流れについて説明する。
図5は、本実施例における制御方法のフローチャートである。
【0039】
まずステップS500において、レンズマイコン111は、処理を開始する。続いてステップS501において、レンズマイコン111は、ズームレンズ位置検出部106の位置検出センサにより検出された信号を用いてズームレンズ102の位置データ(ズームレンズ位置)を取得する。続いてステップS502において、レンズマイコン111は、前回取得したズームレンズ位置とステップS501にて検出されたズームレンズ位置とを比較し、ズーム操作が行われたか否かを判定する。ステップS502にてズーム操作があった場合、ステップS503へ進む。一方、ズーム操作がない場合、ステップS501へ戻る。
【0040】
ステップS503において、レンズマイコン111は、ズームレンズ位置とフォーカスレンズ位置との関係を示す電子カムデータ(トラッキング曲線)に基づいて、現在のズームレンズ位置における被写体距離を維持する目標フォーカスレンズ位置を算出する。なお電子カムデータは、例えばレンズマイコン111のメモリに記憶されている。
【0041】
ここで、
図6を参照して、被写体距離を維持する目標フォーカスレンズ位置について説明する。
図6は、本実施例における制御方法の説明図であり、ズームトラッキング処理時にフォーカスモードがMFモードであったときの被写体距離を維持するフォーカス制御を示す。
図6において、縦軸はフォーカスレンズ位置、横軸はズームレンズ位置をそれぞれ示す。
図6に示されるように、現在フォーカスレンズ位置a1が被写体距離Aの電子カム上にあるとする。このとき、ズーム操作が行われズームレンズ位置が焦点距離Aから焦点距離Bに移動すると、被写体距離Aを維持する目標フォーカスレンズ位置はb1となる。
【0042】
続いて、
図5のステップS504において、レンズマイコン111は、フォーカスモードスイッチ112によりAFモードが選択されているか否かを判定する。ステップS504にてMFモードが選択されている場合、ステップS507へ進む。ステップS507において、レンズマイコン111は、フォーカスレンズ制御部109に制御指令を出力し、フォーカスレンズ105を目標フォーカス位置へ駆動する。
図6に示されるように、レンズマイコン111は、現在フォーカスレンズ位置a1が目標フォーカス位置b1へ移動するようにフォーカスレンズ105を駆動し、被写体距離を維持する。
【0043】
一方、ステップS504にてAFモードが選択されている場合、ステップS505へ進む。ステップS505において、レンズマイコン111は、ステップS503にて算出した目標フォーカスレンズ位置が現在のズームレンズ位置におけるMF専用領域の範囲内であるか否かを判定する。レンズマイコン111のメモリは、各ズームレンズ位置におけるAF可能領域の至近端データ(AF至近端)を記憶している。このためレンズマイコン111は、目標フォーカスレンズ位置がAF至近端よりも至近側か無限側にあるかに応じて、目標フォーカスレンズ位置がAF可能領域またはMF専用領域のいずれの範囲内にあるかを判定することができる。
【0044】
図7は、本実施例における制御方法の説明図であり、ズームトラッキング処理前のフォーカスレンズ位置がAF可能領域であったときのAF可能領域を維持するフォーカス制御を示す。
図7において、縦軸はフォーカスレンズ位置、横軸はズームレンズ位置をそれぞれ示す。
図7に示されるように、目標フォーカスレンズ位置b2はAF至近端よりも至近側である。このため目標フォーカスレンズ位置b2は、MF専用領域であると判定される。
【0045】
続いてステップS506において、レンズマイコン111は、現在フォーカスレンズ位置がAF至近端よりも至近側または無限側のいずれにあるかにより、現在フォーカスレンズ位置がAF可能領域またはMF専用領域のいずれの範囲内にあるかを判定する。ステップS506にて現在フォーカスレンズ位置がAF可能領域であると判定された場合、ステップS508へ進む。ステップS508において、レンズマイコン111(第三の制御手段111c)は、フォーカスレンズ制御部109に制御指令を出力し、フォーカスレンズ105をAF至近端へ駆動する。
図7に示されるように、現在フォーカスレンズ位置a2はAF至近端よりも無限側にある。このためレンズマイコン111は、現在フォーカスレンズ位置a2がAF可能領域であると判定し、フォーカスレンズ105をAF至近端c2へ駆動してAF可能領域を維持する。すなわち第三の制御手段111cは、フォーカスレンズがAF可能領域に位置するとき、被写体距離を維持する際にフォーカスレンズの位置がMF専用領域に含まれるようにMF専用領域が変化した場合、AF可能領域に位置するようにフォーカスレンズを駆動する。
【0046】
ステップS505にて目標フォーカスレンズ位置がAF可能領域であると判定された場合、ステップS507へ進む。ステップS507において、レンズマイコン111(第三の制御手段111c)は、フォーカスレンズ制御部109に制御指令を出力し、フォーカスレンズ105を目標フォーカス位置へ駆動する。すなわち第三の制御手段111cは、フォーカスレンズがAF可能領域に位置するとき、被写体距離を維持する際にフォーカスレンズの位置がAF可能領域に含まれるようにMF専用領域が変化した場合、被写体距離を維持するようにフォーカスレンズを駆動する。また第三の制御手段111cは、フォーカスレンズがMF専用領域に位置するとき、被写体距離を維持する際にフォーカスレンズの位置がAF可能領域に含まれるようにMF専用領域が変化した場合、被写体距離を維持するようにフォーカスレンズを駆動する。
【0047】
図8は、本実施例における制御方法の説明図であり、ズームトラッキング処理前のフォーカスレンズ位置がAF可能領域であったときの被写体距離を維持するフォーカス制御を示す。
図8において、縦軸はフォーカスレンズ位置、横軸はズームレンズ位置をそれぞれ示す。
図8に示されるように、目標フォーカスレンズ位置b3は、AF至近端より無限側にある。このためレンズマイコン111は、目標フォーカスレンズ位置b3がAF可能領域にある判定し、フォーカスレンズ105を目標フォーカス位置b3へ駆動して被写体距離を維持する。
【0048】
ステップS506にて現在フォーカスレンズ位置がMF専用領域であると判定された場合、ステップS507へ進む。ステップS507において、レンズマイコン111は、フォーカスレンズ制御部109に制御指令を出力し、フォーカスレンズ105を目標フォーカスレンズ位置へ駆動させる。
【0049】
図9は、本実施例における制御方法の説明図であり、ズームトラッキング処理前のフォーカスレンズ位置がMF専用領域にあるときの被写体距離を維持するフォーカス制御を示す。
図9において、縦軸はフォーカスレンズ位置、横軸はズームレンズ位置をそれぞれ示す。
図9に示されるように、現在フォーカスレンズ位置a4は、AF至近端よりも至近側にある。このためレンズマイコン111は、現在フォーカスレンズ位置a4がMF専用領域の範囲内にあると判定し、フォーカスレンズ105を目標フォーカス位置b4へ駆動して被写体距離を維持する。
【0050】
本実施例において、MF専用領域は、ズームレンズの位置に応じて変化する。また本実施例において、ズームレンズの位置が広角端(WIDE)である場合、MF専用領域は第一の広さを有し、ズームレンズの位置が望遠端(TELE)である場合、MF専用領域は第一の広さよりも狭い第二の広さを有する。ただし本実施例は、これに限定されるものではなく、ズームレンズの位置(広角端、望遠端)とMF専用領域の広さ(第一の広さ、第二の広さ)との関係が逆であってもよい。
【0051】
以上のように、本実施例において、ユーザによりMFモードが選択されている場合、ズームトラッキング処理が行われる前後のフォーカスレンズ位置の領域に関わらず、フォーカスレンズ105を被写体距離を維持する目標フォーカスレンズ位置へ駆動する。これにより、被写体のピント状態(合焦状態)を維持することができる。
【0052】
一方、ユーザによりAFモードが選択されている場合、ズームトラッキング処理が行われる前後のフォーカスレンズ位置の領域に応じて、フォーカスレンズ105の制御を切り替える。ズームトラッキング処理前のフォーカスレンズ位置がAF可能領域であって、ズームトラッキング処理により被写体距離を維持する目標フォーカスレンズ位置がMF専用領域となる場合、以下のように制御を行う。すなわち、ユーザのMF操作以外の操作でフォーカスレンズ105がAF可能領域からMF専用領域へ移動することを禁止する。これにより、ユーザが意図せずフォーカスレンズ105がAF可能領域からMF専用領域へ移動することを防ぐことができる。また、ズームトラッキング処理前のフォーカスレンズ位置がMF専用領域である場合、フォーカスレンズ105を被写体距離を維持する目標フォーカスレンズ位置へ駆動することにより、被写体のピント状態を維持することができる。このように、ユーザのフォーカスモードの設定とズームトラッキング処理が行われる前後のフォーカスレンズ位置の領域とに応じて、フォーカスレンズ105の制御を切り替えることで、ユーザの操作性を向上させることができる。
【実施例2】
【0053】
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例の交換レンズ100において、被写体像の光量を制限する絞りユニット103により撮像素子201の位相差AFセンサに届く光束が小さくなると、AF評価値の精度が低下して高精度なAFが実現できない領域(AF不可能領域)が存在する。本実施例では、絞りユニット103の影響により高精度なAFが実現できない領域をMF専用領域とする。
【0054】
図10は、絞り値(F値)と最短撮影距離との関係を示す図である。
図10において、縦軸は絞り値、横軸は最短撮影距離をそれぞれ示す。
図10に示されるように、最短撮影距離は絞り値に応じて変化し、開放側でAF可能領域であった撮影距離位置は小絞り側でMF専用領域となる。このように本実施例では、絞り値に応じてAF可能領域(AF・MF可能領域)とMF専用領域とが切り替わる。
【0055】
次に、
図11を参照して、本実施例における絞り値の変化によるAF可能領域とMF専用領域との切り替わりの際のフォーカスレンズ制御(制御方法)の流れについて説明する。
図11は、本実施例における制御方法のフローチャートである。
【0056】
まずステップS1100において、レンズマイコン111は、処理を開始する。続いてステップS1101において、レンズマイコン111は、カメラ本体200から送信された制御コマンドに応じて設定された絞り値を取得する。続いてステップS1102において、レンズマイコン111は、前回取得した絞り値とステップS1101にて取得した絞り値とを比較し、絞り値が変化したか否かを判定する。ステップS1102にて絞り値が変化したと判定された場合、ステップS1103へ進む。一方、絞り値が変化していないと判定された場合、ステップS1101へ戻り、レンズマイコン111は絞り値を取得する。
【0057】
ステップS1102にて絞り値が変化したと判定された場合、ステップS1103において、レンズマイコン111は、フォーカスモードスイッチ112によりAFモードが選択されているか否かを判定する。ステップS1103にてMFモードが選択されている場合、レンズマイコン111はフォーカスレンズ105を駆動しない。
【0058】
図12は、本実施例における制御方法の説明図であり、絞り値の変更の際にフォーカスモードがMFモードであるときの被写体距離を維持するフォーカス制御を示す。
図12において、縦軸はフォーカスレンズ位置、横軸は絞り値をそれぞれ示す。
図12に示されるように、絞り値の変化前(絞り値A)と絞り値の変化後(絞り値B)とでフォーカスレンズ105を駆動させず被写体距離を維持する。
【0059】
ステップS1104において、レンズマイコン111は、絞り値の変化前のフォーカスレンズ位置がAF可能領域の範囲内であるか否かを判定する。レンズマイコン111は、メモリに各絞り値におけるAF可能領域の至近端データ(AF至近端)を保持している。そしてレンズマイコン111は、絞り値の変化前のフォーカスレンズ位置がAF至近端よりも至近側または無限側のいずれにあるかにより、絞り値の変化前のフォーカスレンズ位置がAF可能領域またはMF専用領域のいずれにあるかを判定する。
【0060】
図13は、本実施例における制御方法の説明図であり、絞り値の変更前のフォーカスレンズ位置がAF可能領域であるときの被写体距離を維持するフォーカス制御を示す。
図13において、縦軸はフォーカスレンズ位置、横軸は絞り値をそれぞれ示す。
図13に示されるように、絞り値が絞り値Aから絞り値Bに変更された場合、絞り値の変化前(絞り値A)のフォーカスレンズ位置a6はAF至近端よりも無限側になる。このためレンズマイコン111は、絞り値の変化前のフォーカスレンズ位置a6がAF可能領域にあると判定する。
【0061】
ステップS1104にて絞り値の変化前のフォーカスレンズ位置はAF可能領域であると判定された場合、ステップS1105へ進む。ステップS1105において、レンズマイコン111は、絞り値の変化後のフォーカスレンズ位置がAF可能領域の範囲内であるか否かを判定する。レンズマイコン111は、絞り値の変化後のフォーカスレンズ位置がAF至近端よりも至近側か無限側にあるかにより、絞り値の変化後のフォーカスレンズ位置がAF可能領域またはMF専用領域のいずれにあるかを判定する。
図13に示されるように、絞り値の変化後(絞り値B)のフォーカスレンズ位置b6はAF至近端よりも無限側にある。このためレンズマイコン111は、絞り値の変化後のフォーカスレンズ位置b6がAF可能領域にあると判定し、フォーカスレンズ105を駆動させず被写体距離を維持する。
【0062】
ステップS1104にて絞り値の変化前のフォーカスレンズ位置がMF専用領域にあると判定された場合、レンズマイコン111はフォーカスレンズ105を駆動しない。
【0063】
図14は、本実施例における制御方法の説明図であり、絞り値の変更前のフォーカスレンズ位置がMF専用領域にあるときの被写体距離を維持するフォーカス制御を示す。
図14において、縦軸はフォーカスレンズ位置、横軸は絞り値をそれぞれ示す。
図14に示されるように、絞り値の変化前のフォーカスレンズ位置a7は、AF至近端よりも至近側にある。このためレンズマイコン111は、絞り値の変化前のフォーカスレンズ位置a7がMF専用領域にあると判定し、フォーカスレンズ105を駆動させず被写体距離を維持する。
【0064】
ステップS1105にて絞り値の変化後のフォーカスレンズ位置がMF専用領域にあると判定された場合、ステップS1106へ進む。ステップS1106において、レンズマイコン111は、フォーカスレンズ制御部109に制御指令を出力し、フォーカスレンズ105をAF至近端へ駆動する。
【0065】
図15は、本実施例における制御方法の説明図であり、絞り値の変更前のフォーカスレンズ位置がAF可能領域になるときのAF可能領域を維持するフォーカス制御を示す。
図15において、縦軸はフォーカスレンズ位置、横軸は絞り値をそれぞれ示す。
図15に示されるように、絞り値の変化後のフォーカスレンズ位置b8は、AF至近端よりも至近側にある。このためレンズマイコン111は、絞り値の変化後のフォーカスレンズ位置b8がMF専用領域にあると判定し、フォーカスレンズ105をAF至近端c8へ駆動してAF可能領域を維持する。
【0066】
以上のように、本実施例において、ユーザによりMFモードが選択されている場合、絞り値の変化前後のフォーカスレンズ位置の領域に関わらず、フォーカスレンズ105の位置を維持し被写体のピント状態を維持する。一方、ユーザによりAFモードが選択されている場合、絞り値の変化前後のフォーカスレンズ位置の領域に応じて、フォーカスレンズ105の制御を切り替える。絞り値の変化前のフォーカスレンズ位置がAF可能領域であって、絞り値の変更によりMF専用領域に切り替わる場合、ユーザのMF操作以外でAF可能領域からMF専用領域へ切り替わらないようにフォーカスレンズ105をAF可能領域の範囲まで駆動する。これにより、ユーザが意図せずAF可能領域からMF専用領域へ変更されることを防ぐことができる。一方、絞り値の変化前のフォーカスレンズ位置がMF専用領域である場合、フォーカスレンズ105の位置を維持することで、被写体のピント状態を維持する。このように、ユーザのフォーカスモードの設定と絞り値の変化前後のフォーカスレンズ位置の領域とに応じて、フォーカスレンズ105の制御を切り替えることで、ユーザの操作性を向上させることができる。
【0067】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施例の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0068】
各実施例によれば、ユーザの意図を反映してMF操作以外によりAF可能領域からMF専用領域へ切り替わることを防止し、ユーザの操作性を向上させることが可能な制御装置、レンズ装置、撮像装置、制御方法、および、プログラムを提供することができる。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0070】
各実施例において、レンズマイコン111は、第一の制御手段111a、第二の制御手段111b、第三の制御手段111c、および設定手段111dとしての機能を実行するが、これに限定されるものではない。例えば、制御装置としてのカメラマイコン206が、第一の制御手段、第二の制御手段、第三の制御手段、または設定手段の少なくとも一つの機能を実行するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0071】
111 レンズマイコン(制御装置)
111a 第一の制御手段
111b 第二の制御手段
111c 第三の制御手段
111d 設定手段