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特許7497166判定装置、キックダウン制御装置および車両
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  • 特許-判定装置、キックダウン制御装置および車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】判定装置、キックダウン制御装置および車両
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20240603BHJP
   F16H 59/20 20060101ALI20240603BHJP
   F16H 59/42 20060101ALI20240603BHJP
   F16H 59/44 20060101ALI20240603BHJP
   F16H 61/68 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H59/20
F16H59/42
F16H59/44
F16H61/68
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020026286
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021131119
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-03-30
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内野 厚
(72)【発明者】
【氏名】神田 好崇
(72)【発明者】
【氏名】角田 進
【合議体】
【審判長】中屋 裕一郎
【審判官】平城 俊雅
【審判官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-89465(JP,A)
【文献】特開昭62-292539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00-61/12
F16H 61/66-61/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の変速機の変速段をシフトダウンさせるキックダウン制御の実行条件であって、前記車両のアクセル開度に基づいて成立の有無が判断されるキックダウン制御の実行条件が成立した場合、シフトダウン後の前記車両の速度に関するパラメータを取得する取得部と、
前記パラメータに基づいて前記キックダウン制御の実行の有無を判定する判定部と、
前記キックダウン制御の実行条件が成立した場合、前記キックダウン制御の予約信号をONにする予約部と、
を備え、
前記予約部は、前記予約信号をONにした後、前記判定部により前記キックダウン制御を実行すると判定された場合、または、前記キックダウン制御の実行条件が不成立となった場合、または、前記車両の前記変速機の前記変速段がシフトアップされた場合、前記予約信号をONからOFFに切り替え、
前記判定部は、前記キックダウン制御を実行しないと判定した後、前記予約信号がONになってからOFFになるまでの間、前記キックダウン制御の実行の有無の判定を繰り返す、
判定装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記判定部により前記キックダウン制御を実行しないと判定された後、前記予約信号がONである場合、前記パラメータを再度取得し、
前記判定部は、再度取得された前記パラメータに基づいて前記キックダウン制御の実行の有無を判定する、
請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記予約信号がOFFになった場合、前記キックダウン制御の実行の有無の判定を行わない、
請求項1または請求項2に記載の判定装置。
【請求項4】
シフトダウン後の前記車両の速度に関するパラメータを算出する算出部を備える、
請求項1~3の何れか1項に記載の判定装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記車両に搭載される駆動源のシフトダウン後の回転数を前記パラメータとして算出する、
請求項4に記載の判定装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記パラメータが所定値より大きい場合、前記キックダウン制御を実行しないと判定し、前記パラメータが前記所定値以下である場合、前記キックダウン制御を実行すると判定する、
請求項1~5の何れか1項に記載の判定装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の判定装置と、
前記判定装置の判定結果に基づいて前記キックダウン制御を実行する実行部と、
を備え、
前記実行部は、前記キックダウン制御を実行した後、前記車両に搭載される駆動源の回転数が上限値を超える場合、前記キックダウン制御を解除する、
キックダウン制御装置。
【請求項8】
複数の変速段を有する変速機と、
請求項7に記載のキックダウン制御装置と、
を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、判定装置、キックダウン制御装置および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変速機の変速段を変速可能な車両において、運転者がアクセルペダルを一杯に踏み込んだ際に所望の加速力を得るべく、変速機の変速段を高トルク側の変速段にシフトダウンさせるキックダウン制御が行われるものが知られている。
【0003】
キックダウン制御においては、キックダウン制御により車両の走行速度が上昇した際に、シフトダウン後における駆動源の回転数が所定の上限値を超えた場合、駆動源を保護するためにキックダウン制御を解除する保護制御が行われる。
【0004】
しかし、保護制御が行われると、運転者がアクセルペダルを一杯に踏み込んでいるにも関わらず、キックダウン制御が解除された状態となるので、次第に車両が失速していくという問題が発生する。
【0005】
例えば、特許文献1には、キックダウン制御の実行条件が満たされても、所定のリセット信号が出力される前に車両の速度が所定の速度設定値以上である場合、キックダウン制御の実行を阻止する制御を行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭61-17751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の構成は、キックダウン制御の実行を阻止した後もキックダウン制御の実行条件が満たされ続ける場合、所定のリセット信号が出力される前に車両の速度が所定の速度設定値以上であることから、キックダウン制御の実行が阻止されたままである。
【0008】
そのため、車両の速度が所定の速度設定値未満になっても、キックダウン制御の実行が阻止されることとなる。つまり、特許文献1に記載の構成は、キックダウン制御に基づく車両の失速の問題を解決する構成として一定の限界があった。
【0009】
本開示の目的は、キックダウン制御に基づく車両の失速を抑制することが可能な判定装置、キックダウン制御装置および車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る判定装置は、
車両の変速機の変速段をシフトダウンさせるキックダウン制御の実行条件であって、前記車両のアクセル開度に基づいて成立の有無が判断されるキックダウン制御の実行条件が成立した場合、シフトダウン後の前記車両の速度に関するパラメータを取得する取得部と、
前記パラメータに基づいて前記キックダウン制御の実行の有無を判定する判定部と、
前記キックダウン制御の実行条件が成立した場合、前記キックダウン制御の予約信号をONにする予約部と、
を備え、
前記予約部は、前記予約信号をONにした後、前記判定部により前記キックダウン制御を実行すると判定された場合、または、前記キックダウン制御の実行条件が不成立となった場合、または、前記車両の前記変速機の前記変速段がシフトアップされた場合、前記予約信号をONからOFFに切り替え、
前記判定部は、前記キックダウン制御を実行しないと判定した後、前記予約信号がONになってからOFFになるまでの間、前記キックダウン制御の実行の有無の判定を繰り返す。
【0011】
本開示に係るキックダウン制御装置は、
上記の判定装置と、
前記判定装置の判定結果に基づいて前記キックダウン制御を実行する実行部と、
を備え、
前記実行部は、前記キックダウン制御を実行した後、前記車両に搭載される駆動源の回転数が上限値を超える場合、前記キックダウン制御を解除する。
【0012】
本開示に係る車両は、
複数の変速段を有する変速機と、
上記のキックダウン制御装置と、
を備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、キックダウン制御に基づく車両の失速を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の実施の形態に係るキックダウン制御装置を備えた車両の構成を示す図である。
図2】変速段、キックダウンスイッチおよび予約信号のタイムチャートの一例を示す図である。
図3】変速段、キックダウンスイッチおよび予約信号のタイムチャートの一例を示す図である。
図4】変速段、キックダウンスイッチおよび予約信号のタイムチャートの一例を示す図である。
図5】変速段、キックダウンスイッチおよび予約信号のタイムチャートの一例を示す図である。
図6】判定部における判定制御の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本開示の実施の形態に係るキックダウン制御装置100を備えた車両1の構成を示す図である。
【0016】
図1に示すように、車両1は、プロペラシャフト2と、ディファレンシャルギア3と、駆動輪4と、エンジン5と、トランスミッション6と、回転センサ7と、キックダウン信号出力部8と、キックダウン制御装置100とを有する。
【0017】
エンジン5は、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関(駆動源)である。エンジン5の動力は、図示しないクラッチを経由してトランスミッション6に伝達され、トランスミッション6に伝達された動力は、プロペラシャフト2およびディファレンシャルギア3を介して駆動輪4に伝達される。
【0018】
トランスミッション6は、オートマチックトランスミッション(AMT(Automated Manual Transmission))等の変速機であり、複数の変速段を構成している。言い換えると、トランスミッション6は、エンジン5の出力軸とプロペラシャフト2とを接続あるいは切断するとともに変速比を変化させる変速機構等を有する。
【0019】
回転センサ7は、例えば、トランスミッション6のアウトプットシャフトの回転数を検出する公知のセンサである。回転センサ7は、アウトプットシャフトの回転数を検出し、キックダウン制御装置100(算出部120)に検出した回転数を出力する。
【0020】
キックダウン信号出力部8は、キックダウンスイッチ8Aが作動したときにキックダウン信号を出力する。キックダウンスイッチ8Aは、例えば、運転者が車両1を急加速させるべくアクセルペダル8Bを一杯に踏み込んだ際に作動するスイッチである。このキックダウンスイッチ8Aが作動したことにより、後述するキックダウン制御の実行条件が成立したこととなる。
【0021】
また、キックダウン信号出力部8は、キックダウンスイッチ8Aが作動し続けている場合(キックダウン制御の実行条件が成立し続けている場合)、キックダウン信号を出力し続ける。キックダウン信号出力部8は、キックダウンスイッチ8Aが作動していない場合(キックダウン制御の実行条件が不成立の場合)、キックダウン信号を出力しない。なお、キックダウン信号出力部8の位置は、図1においては車軸の左側であるが、キックダウンスイッチ8Aの信号を取得できる限り、どの位置であっても良い。また、キックダウンスイッチ8Aおよびアクセルペダル8Bは、図1においては便宜上車軸の右側に配置されているが、車両1の構成に合わせて適宜変更可能である。また、本実施の形態では、キックダウンスイッチ8Aの信号を取得することで、キックダウン信号出力部8がキックダウン信号を出力しているが、本開示はこれに限定されない。例えば、アクセルペダル8Bの位置(アクセル開度等)を検出して、キックダウン制御を実行するか否かについて判定した上で、キックダウン信号出力部8がキックダウン信号を出力するようにしても良い。
【0022】
キックダウン制御装置100は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)および入出力回路を備えている。キックダウン制御装置100は、予め設定されたプログラムに基づいて、車両1のトランスミッション6の変速段をシフトダウンさせて、車両1を急加速させるキックダウン制御の実行を制御する。
【0023】
キックダウン制御装置100は、実行部110と、算出部120と、予約部130と、判定部140とを有する。算出部120、予約部130および判定部140は、本開示の「判定装置」に対応する。
【0024】
実行部110は、判定部140の判定結果に基づいてキックダウン制御を実行する。また、実行部110は、キックダウン制御を実行した後、エンジン5の回転数が上限値を超える場合、キックダウン制御を解除するキックダウン解除制御を行う。上限値は、エンジン5の回転数の最大値、最大値に近似する値、最大値に対して多少余裕を持たせた値等に適宜設定される。
【0025】
車両1の走行中に運転者がキックダウンを行おうとした際に、車両1の速度が比較的速いような場合、シフトダウン後のエンジン5の回転数が上限値を超えることがある。この場合、エンジン5への負荷が過剰になるので、エンジン5を保護するべく、キックダウン解除制御が行われる。
【0026】
算出部120は、キックダウン制御の実行条件が成立した場合、キックダウン制御におけるシフトダウン後のエンジン5の回転数を算出する。具体的には、算出部120は、キックダウン信号を取得した場合、回転センサ7が検出した回転数を取得し、当該回転数に基づいてシフトダウン後のエンジン5の回転数を算出する。
【0027】
シフトダウン後のエンジン5の回転数は、例えばシフトダウン前の変速段(キックダウン信号取得時に設定されている変速段)と、シフトダウン後の変速段との変速比と、回転センサ7により検出されたアウトプットシャフトの回転数とによって算出される。
【0028】
なお、本実施の形態では、回転センサ7によって検出されるアウトプットシャフトの回転数を、エンジン5の回転数の算出に用いているが、インプットシャフトの回転数等、その他のパラメータをエンジン5の回転数の算出に用いても良い。
【0029】
予約部130は、キックダウン制御の実行条件が成立した場合、つまり、キックダウンスイッチ8Aが作動している場合、キックダウン制御の予約信号をONにする。また、予約部130は、予約信号をONにした後において、判定部140によりキックダウン制御を実行すると判定された場合、キックダウン制御の実行条件が不成立となった場合、または、トランスミッション6の変速段がシフトアップされた場合、予約信号をOFFに切り替える。
【0030】
判定部140は、キックダウン制御の実行条件が成立した場合、算出部120より、シフトダウン後のエンジン5の回転数を取得し、シフトダウン後のエンジン5の回転数に基づいてキックダウン制御の実行の有無を判定する。判定部140は、本開示の「取得部」に対応する。
【0031】
具体的には、判定部140は、シフトダウン後のエンジン5の回転数が所定値より大きい場合、キックダウン制御を実行しないと判定し、シフトダウン後のエンジン5の回転数が所定値未満である場合、キックダウン制御を実行すると判定する。所定値は、例えばエンジン5の回転数が上限値に限りなく近い値である等、上記のキックダウン解除制御が行われるような回転数である。
【0032】
そして、判定部140は、キックダウン制御を実行しないと判定した後、所定条件が満たされた場合、キックダウン制御の実行の有無の判定を繰り返す。具体的には、判定部140は、キックダウン制御を実行しないと判定した後、上述の予約信号がONである場合、シフトダウン後のエンジン5の回転数を、算出部120から再度取得し、再度取得した、シフトダウン後のエンジン5の回転数に基づいてキックダウン制御の実行の有無を判定する。
【0033】
判定部140が再度取得するシフトダウン後のエンジン5の回転数は、算出部120により、最新の回転センサ7の検出結果に基づいて算出されたものである。
【0034】
このように、キックダウン制御の実行の有無を判定部140が判定するので、本実施の形態では、シフトダウン後のエンジン5の回転数が所定値より大きい場合は、キックダウン制御が実行されない。
【0035】
例えば、キックダウン制御の実行前において、車両1の速度がある程度大きくなっている際に、運転者がキックダウンを行おうとすると、キックダウン制御の実行後に、すぐに上述のキックダウン解除制御が行われる。
【0036】
そうすると、運転者がキックダウンと行おうとしているにも関わらずキックダウン制御、つまり、トランスミッション6のシフトダウンが行われないので、車両1が徐々に失速していく可能性がある。
【0037】
それに対し、本実施の形態では、このような場合、つまり、シフトダウン後のエンジン5の回転数が所定値より大きい場合、キックダウン制御が実行されない。そのため、キックダウン解除制御に起因する車両1の失速を抑制することができる。そして、キックダウン制御を実行しないと判定された後、予約信号がONである場合、キックダウン制御の実行の有無の判定が繰り返される。
【0038】
ここで、キックダウン制御を実行しないと判定された後、キックダウン制御の実行の有無の判定が繰り返されない場合、キックダウンスイッチ8Aが作動した状態でありながら、いつまでもキックダウン制御が行われないことが起こり得る。そのため、トランスミッションにおけるシフトダウンが行われないため、車両1が徐々に失速していくおそれがある。
【0039】
それに対し、本実施の形態では、キックダウン制御を実行しないと判定された後、予約信号がONである場合、キックダウン制御の実行の有無の判定が繰り返される。例えば、図2に示すように、車両1の走行中にキックダウンスイッチ8Aが作動した場合、予約信号がONとなるが、シフトダウン後の回転数が所定値より大きいと、キックダウン制御が実行されないので、トランスミッション6の変速段はシフトダウンしない。
【0040】
そして、シフトダウン後の回転数が所定値以下になると、キックダウン制御が実行されて、変速段はシフトダウンし、予約信号がOFFになる。すなわち、キックダウン制御が最終的に実行されるので、キックダウン制御が行われないことに起因する車両1の失速を抑制することができる。
【0041】
また、判定部140は、上記の予約信号がOFFになった場合、キックダウン制御の実行の有無の判定を行わない。例えば、図3に示すように、キックダウン制御が行われた場合、つまり、トランスミッション6の変速段がシフトダウンした場合、予約信号はすぐにOFFになる。
【0042】
また、図4に示すように、キックダウンの実行条件が成立した後、キックダウン制御が実行される前にキックダウンの実行条件が不成立になる場合がある。例えば、キックダウンスイッチ8Aが作動した後に、キックダウンスイッチ8Aの作動が解除される場合である。この場合、予約信号は、キックダウンスイッチ8Aが作動中はONであるが、キックダウンスイッチ8Aの作動が解除されるとOFFになる。
【0043】
また、図5に示すように、キックダウンの実行条件が成立した後、変速段がシフトアップした場合、予約信号は、変速段が、キックダウン制御が実行されないことにより変わらない場合、ONであるが、変速段がシフトアップした場合、OFFになる。
【0044】
このように、予約信号がOFFに切り替わった場合は、キックダウン制御を実行する必要がない状況であるので、キックダウン制御の実行の有無を判定する必要がなくなる。そのため、無駄にキックダウン制御の実行の有無を判定することを抑制することができる。
【0045】
次に、判定部140における判定制御の動作例について説明する。図6は、判定部140における判定制御の動作例を示すフローチャートである。図6における処理は、例えば、キックダウンが作動した際に適宜実行される。
【0046】
図6に示すように、判定部140は、シフトダウン後の回転数を取得して、シフトダウン後の回転数が所定値より大きいか否かについて判定する(ステップS101)。判定の結果、シフトダウン後の回転数が所定値以下である場合(ステップS101、NO)、判定部140は、キックダウン制御を実行すると判定する(ステップS102)。ステップS102の後、本制御は終了する。
【0047】
一方、シフトダウン後の回転数が所定値より大きいと判定する場合(ステップS101、YES)、判定部140は、キックダウン制御を実行しないと判定する(ステップS103)。次に、判定部140は、予約信号がOFFであるか否かについて判定する(ステップS104)。
【0048】
判定の結果、予約信号がONである場合(ステップS104、NO)、処理はステップS101に戻る。一方、予約信号がOFFである場合(ステップS104、YES)、本制御は終了する。
【0049】
以上のように構成された本実施の形態によれば、キックダウン制御を実行しないと判定した後、所定条件が満たされる場合、キックダウン制御の実行の有無の判定を繰り返すので、キックダウン制御を実行する必要がある限り、最終的にキックダウン制御が行われる。その結果、キックダウン制御に基づく車両1の失速を抑制することができる。
【0050】
また、予約信号によってキックダウン制御の実行の必要性の有無を識別するので、簡易な制御により、本制御を行うことができる。
【0051】
また、シフトダウン後のエンジン5の回転数に基づいて、キックダウン制御の実行の有無を判定するので、必要な場合においてキックダウン制御を確実に実行させることができる。
【0052】
なお、上記実施の形態によれば、所定条件が満たされた場合を、予約信号がONである
場合としていたが、本開示はこれに限定されない。例えば、キックダウン制御の実行条件が成立してからキックダウン制御が実行されていないこと、キックダウン制御の実行条件が成立してから当該実行条件が不成立になっていないこと、トランスミッション6の変速段のシフトアップがされていないこと等、キックダウン制御の実行可能性の存在を示す条件を、所定条件としても良い。この場合は、例えば、キックダウン制御の実行の存在を示す条件を識別する信号等を判定部140が取得することで、所定条件が満たされたか否かを判定部140が判定するようにすれば良い。
【0053】
また、上記実施の形態では、シフトダウン後の車両1の速度に関するパラメータとして、シフトダウン後のエンジン5の回転数としていたが、本開示はこれに限定されない。例えば、シフトダウン後の車両1の速度等、シフトダウン後の車両1の速度に関連するものである限り、シフトダウン後のエンジン5の回転数以外のものを上記パラメータとしても良い。
【0054】
また、上記実施の形態では、算出部120が判定装置(キックダウン制御装置100)に組み込まれていたが、本開示はこれに限定されず、外部の装置で算出したパラメータを判定部140が取得するようにしても良い。
【0055】
また、上記実施の形態では、駆動源としてエンジン5を例示したが、本開示はこれに限定されず、車両に搭載される駆動源である限り、電動モータ等、エンジン以外のものであっても良い。
【0056】
また、上記実施の形態では、トランスミッションとしてAMTを例示したが、本開示はこれに限定されず、オートマチックトランスミッション(AT)、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)、連続可変式変速機(CVT(Continuously Variable Transmission))であっても良い。
【0057】
また、上記実施の形態では、キックダウンスイッチ8Aの作動をキックダウン制御の実行条件の成立としていたが、本開示はこれに限定されず、例えば、アクセルペダル8Bのアクセル開度等によってキックダウン制御の実行条件を判断しても良い。
【0058】
また、上記実施の形態では、判定装置がキックダウン制御装置100に組み込まれた構成であったが、本開示はこれに限定されず、判定装置がキックダウン制御装置100とは別体で構成されていても良い。
【0059】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示のキックダウン制御装置は、キックダウン制御に基づく車両の失速を抑制することが可能な判定装置、キックダウン制御装置および車両として有用である。
【符号の説明】
【0061】
1 車両
2 プロペラシャフト
3 ディファレンシャルギア
4 駆動輪
5 エンジン
6 トランスミッション
7 回転センサ
8 キックダウン信号出力部
8A キックダウンスイッチ
8B アクセルペダル
100 キックダウン制御装置
110 実行部
120 算出部
130 予約部
140 判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6