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特許7497193皮膚シワ改善剤・皮膚シワ改善方法およびそのスクリーニング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】皮膚シワ改善剤・皮膚シワ改善方法およびそのスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20240603BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20240603BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240603BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240603BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240603BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
G01N33/50 Z
G01N33/50 Q
G01N33/15 Z
A61K45/00
A61P43/00 105
A61P17/00
C12Q1/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020061921
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021162381
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】591230619
【氏名又は名称】株式会社ナリス化粧品
(72)【発明者】
【氏名】森田 美穂
(72)【発明者】
【氏名】堀辻 麻衣
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-206568(JP,A)
【文献】特開2019-184561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
G01N 33/00-33/46
A61K 45/00
A61P 43/00
A61P 17/00
C12Q 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚角層の細胞形状変化が、鳥瞰および/または側面視した像の面積、長径の大きさ、短径の大きさ、から選ばれる一種あるいは二種以上における個々の細胞形状の変化のことをいう場合であって、
細胞形状変化を指標とする皮膚シワ改善剤のスクリーニング方法および/または皮膚シワ改善方法のスクリーニング方法
【請求項2】
前記細胞形状変化が、被験物質または被験方法の適用前後における、皮膚シワ部角層細胞面積と皮膚非シワ部角層細胞面積との対比である請求項1記載のスクリーニング方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスクリーニング方法により選択される皮膚シワ改善剤および/または皮膚シワ改善方法。
【請求項4】
細胞形状変化が、鳥瞰および/または側面視した像の面積、長径の大きさ、短径の大きさ、から選ばれる一種あるいは二種以上における個々の細胞形状の変化のことをいう場合であって、
表皮ケラチノサイトに人為的に伸縮刺激を負荷し、該負荷に起因する表皮ケラチノサイトの細胞形状変化を指標とする皮膚シワ改善剤のスクリーニング方法
【請求項5】
細胞形状変化が、鳥瞰および/または側面視した像の面積、長径の大きさ、短径の大きさ、から選ばれる一種あるいは二種以上における個々の細胞形状の変化のことをいう場合であって、
表皮ケラチノサイトに人為的に伸縮刺激を負荷し、被験物質の表皮ケラチノサイトの細胞形状変化コントロール効果を評価する工程を含む皮膚シワ改善剤のスクリーニング方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚シワ改善剤・皮膚シワ改善方法およびそれらのスクリーニング方法に関する。より詳細には、伸縮刺激負荷による表皮ケラチノサイトの細胞形状変化や皮膚シワ部角層細胞形状のコントロール作用等を有する皮膚シワ改善剤または皮膚シワ改善方法、および当該コントロール作用等を指標として皮膚シワ改善剤または皮膚シワ改善方法をスクリーニングする方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚シワ、特に顔面のシワは、自他共に老化の印象を与える大きなファクターとなるため、予防や改善への期待は大きく、高い有用性を示す皮膚シワ改善剤の提供が期待されている。
【0003】
皮膚シワには、表情に依存して現われる表情ジワと無表情のときにも存在する固定ジワがあり、審美的な立場から改善が求められるのは、特に、固定ジワの方である。以下、本願では、特に断りのない限り、シワは固定ジワを指す。
【0004】
従来、皮膚シワは、加齢や紫外線による真皮細胞外マトリックスの減少や変性、表皮細胞増殖の低下、角層の乾燥などが原因となって発生すると考えられ、皮膚シワ改善剤としては、減少した成分の補給や生成促進、成分の変性の抑制や改善、低下した細胞増殖の回復、角層の保湿、など、皮膚シワの原因として挙げられた皮膚生理機能の正常化を企図したものが数々開発されてきた。
【0005】
たとえば、細胞外マトリックス成分の生成を促進するレチノイン酸、表皮角層を改善するαヒドロキシ酸がシワ改善剤として知られている(非特許文献1)。
【0006】
しかしながら、加齢や紫外線による皮膚生理機能の変化は、皮膚シワ形成原因の構成要素ではあるものの、それら変化による皮膚内部の成分や性状の変化が、外観の変化、すなわち皮膚表面の形状変化として表出する理由を構成するものではなく、上述の皮膚生理機能の正常化を企図した皮膚シワ改善剤は、皮膚の外観上のシワの改善に対し、直接的で迅速な作用を有するものではなかった。
【0007】
また、皮膚の生理機能を対象としない皮膚シワ改善策として、皮膚シワ部表面の伸展による皮膚シワ伸展用具は知られていたが、該用具は適用下における一時的で物理的な皮膚屈曲の伸展を行うものであり、物理的な伸展によって屈曲した皮膚シワ部表面を平滑化するものであるため、所望の平滑性、すなわち、できるだけ完全な皮膚屈曲の伸展を目的として適用されるものであり、皮膚シワ部表面の十分な平滑化が生じない範囲での伸展のために適用することは目的を果たさず、また、平滑化が目的であることから、収縮の必要性については、全く考慮されていなかった。用具の適用により非適用下における皮膚シワ改善を行うものではなかったため、専ら皮膚シワの外観上の低減が有用な場面、たとえば、使用者が他者の視線に晒される際などに利用されてきた。さらに、かかるように、物理的な皮膚屈曲の伸展の皮膚角層細胞の形状への影響も全く報告されていない。
【0008】
一方、皮膚の伸展に関しては、アーティチョーク抽出物を有効成分とする伸展ストレスに起因するシワ改善剤が発明されている(特許文献1)。該発明は、皮膚組織に繰り返し与えられる伸展ストレスが、構成細胞内のNF-κB発現量を増強し、慢性的な炎症状態を起こし、結果としてコラーゲンの破壊などの皮膚加齢が進むことでシワが形成されるとの考えに基づいてなされたもので、皮膚組織に繰り返し与えられる伸展、すなわち伸縮刺激が、シワ形成を助長する考えはあったものの、皮膚シワ部表面に対する伸縮刺激の付与がシワ改善につながる、という逆の事象については全く知られていなかった。また、それら現象の皮膚角層細胞の形状への影響も全く報告されていない。
【0009】
また、伸縮刺激が皮膚シワと皮膚角層の細胞形状との関係や表皮ケラチノサイトの細胞形状、伸縮刺激が皮膚角層細胞や表皮ケラチノサイトに与える影響に着目した皮膚シワ改善剤または皮膚シワ改善美容方法については全く知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2014-108924
【非特許文献】
【0011】
【文献】須賀康.皮膚科医が考えるアンチエイジングー皮膚老化の予防法と対応についてー.順天堂医学.52:429-436,2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、皮膚表面の形状変化に関与する現象を指標とした皮膚シワ改善剤・皮膚シワ改善方法およびそのスクリーニング方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意研究した結果、皮膚シワ部に存在する細胞が周辺部位に比較して小さいこと、皮膚シワ部は顔の中で伸縮距離が短いという特徴を持つこと、皮膚シワ部に対する伸縮刺激の付与が皮膚角層細胞の拡大と同時に皮膚シワ改善をもたらすこと、培養細胞に人為的に伸縮刺激を加えると、細胞形状に変化が生じることを発見し、当該知見に基づいて皮膚シワ部の皮膚シワ改善剤・皮膚シワ改善方法およびそれらのスクリーニング方法を発明するに至った。
〔1〕第一発明は、
皮膚角層の細胞形状変化を指標とする皮膚シワ改善剤および/または皮膚シワ改善方法のスクリーニング方法である。
〔2〕第二発明は、
前記細胞形状変化が、被験物質または被験方法の適用前後における、皮膚シワ部角層細胞面積と皮膚非シワ部角層細胞面積との対比である請求項1記載のスクリーニング方法である。
〔3〕第三発明は、
第一あるいは第二発明に記載のスクリーニング方法により選択される皮膚シワ改善剤および/または皮膚シワ改善方法である。
〔4〕第四発明は、
表皮ケラチノサイトに人為的に伸縮刺激を負荷し、該負荷に起因する表皮ケラチノサイトの細胞形状変化を指標とする皮膚シワ改善剤のスクリーニング方法である。
〔5〕第五発明は、
表皮ケラチノサイトに人為的に伸縮刺激を負荷し、被験物質の表皮ケラチノサイトの細胞形状変化コントロール効果を評価する工程を含む皮膚シワ改善剤のスクリーニング方法である。
〔6〕第六発明は、
第四あるいは第五発明に記載のスクリーニング方法により選択される皮膚シワ改善剤である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、皮膚シワ改善剤または皮膚シワ改善方法の探索が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】顔皮膚角層鳥瞰細胞面積の部位による違い
図2】顔シワ部皮膚角層鳥瞰細胞面積と皮膚シワの関係
図3】顔皮膚伸縮特徴の部位による違い
図4】皮膚シワ部表面に対する伸縮刺激の付与による皮膚角層鳥瞰細胞面積および皮膚シワ深さの変化
図5】伸縮刺激負荷による表皮ケラチノサイトの形状変化
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、皮膚シワが発生しやすい目尻で頬等の周辺部位に比較して皮膚角層細胞形状が小さいとの新たな知見に基づき、皮膚表面における皮膚角層細胞形状の不均一が皮膚表面形態の不均一、たとえば皮膚シワの原因となり、該現象に表情の生成等の顔の動きに伴う皮膚伸縮の関与があるのではないかという仮説の下鋭意検討した結果、皮膚シワ部は顔の中で伸縮距離が短いという特徴を持つこと、皮膚シワ部に対する伸縮刺激の付与が皮膚角層細胞の拡大と同時に皮膚シワ改善をもたらすこと、培養細胞に人為的に伸縮刺激を加えると、細胞形状に変化が生じることを発見した。本発明は当該知見に基づくものであり、伸縮刺激や伸縮刺激によって生じる細胞形状の均一化、すなわち、皮膚シワが発生しやすい部位においては細胞形状を拡大させ、その周辺部位においては細胞形状を縮小させれば、皮膚伸縮特徴の部位による違いに起因する皮膚シワを改善できるとの結論に達し、本発明の完成に至った。以下に詳細を述べる。
【0017】
本発明の第一発明は、皮膚シワが発生しやすい目尻で頬等の周辺部位に比較して皮膚角層細胞形状が小さいとの本発明者らによる新たな知見に基づき、さらに詳細に研究を進めたことによって見出された、シワ上の皮膚角層細胞形状が非シワ部位と比較して小さいという発見に着想を得て、この現象が皮膚シワ改善剤および/または皮膚シワ改善方法のスクリーニングに際する指標となるとの思想から確立された、皮膚角層の細胞形状変化を指標とする皮膚シワ改善剤および/または皮膚シワ改善方法のスクリーニング方法である。より詳細には、皮膚角層細胞形状は周辺部位に比較して皮膚シワに沿って小さい、たとえば、鳥瞰細胞面積が小さい。本第一発明のスクリーニング方法は、この皮膚角層細胞形状の不均一さが皮膚表面形態の不均一さを生むとの思想に基づき、皮膚シワ部における皮膚角層鳥瞰細胞面積の皮膚非シワ部における皮膚角層鳥瞰細胞面積に対する比を大きくすることで皮膚表面における皮膚角層細胞形状の不均一性を低減することが皮膚シワの改善につながると判断する。具体的には、皮膚シワ部で皮膚角層細胞形状が大きくなるもの、および/または、皮膚非シワ部では皮膚角層細胞形状が小さくなるものを皮膚シワ改善剤および/または皮膚シワ改善方法として選択できる。
【0018】
本発明の第二発明は、第一発明における細胞形状変化を、被験物質または被験方法の適用前後における、皮膚シワ部角層細胞面積と皮膚非シワ部角層細胞面積との対比とするものである。具体的には、例えば、被験物質または被験方法の適用前の皮膚シワ部角層細胞面積を(A前)、皮膚非シワ部角層細胞面積を(B前)、適用後の皮膚シワ部角層細胞面積を(A後)、皮膚非シワ部角層細胞面積を(B後)と表した場合に、皮膚角層の細胞形状変化が、〔数1〕を指標として表されることを特徴とする第一発明に記載のスクリーニング方法である。本第二発明のスクリーニング方法では、〔数1〕が1より大きくなるものを皮膚シワ改善剤および/または皮膚シワ改善方法として選択することで、皮膚シワ部で皮膚角層細胞形状が大きくなるもの、および/または、皮膚非シワ部では皮膚角層細胞形状が小さくなるものを簡便に選択することができる。より好ましくは、〔数1〕が1.2より大きくなるもの、さらに好ましくは1.5より大きくなるものを皮膚シワ改善剤および/または皮膚シワ改善方法として選択できる。
【0019】
【数1】
【0020】
本発明の第三発明は、第一あるいは第二発明に記載のスクリーニング方法により選択される皮膚シワ改善剤および/または皮膚シワ改善方法である。該皮膚シワ改善剤は、皮膚に適用するに際し、本発明の効果を損ねない範囲で、生理的に許容される公知の物質と共に使用してもよい。該皮膚シワ改善方法は、皮膚に適用するに際し、本発明の効果を損ねない範囲で、生理的に許容される公知の物質で構成した皮膚外用剤や皮膚に対する施術と組み合わせて皮膚に適用してもよい。
【0021】
本発明の第四発明は、皮膚シワが発生しやすい目尻で頬等の周辺部位に比較して皮膚角層細胞形状が小さいとの新たな知見に基づいた研究の結果、人為的に伸縮刺激を加えることによって、表皮ケラチノサイトの細胞形状に変化が生じることを見出し、この現象が皮膚シワ改善剤のスクリーニングに際する指標となるとの着想から確立されたもので、表皮ケラチノサイトに人為的に伸縮刺激を負荷し、該負荷に起因する表皮ケラチノサイトの細胞形状変化を指標とする皮膚シワ改善剤のスクリーニング方法である。より詳細には、表皮ケラチノサイトの細胞形状は伸縮刺激の負荷によって変化するが、該細胞形状が鳥瞰細胞面積で表される場合、たとえば、伸縮強度が相対的に小さく、鳥瞰細胞面積の拡大の程度が小さい場合には、皮膚角層細胞形状が小さい目尻を、伸縮強度が相対的に大きく、鳥瞰細胞面積の拡大の程度が大きい場合には、皮膚角層細胞形状が大きい頬を再現していると解釈できる。したがって、本第四発明のスクリーニング方法では、表皮ケラチノサイトに人為的に伸縮刺激を負荷することにより生じる表皮ケラチノサイトの細胞形状の変化が小さいときには促進するもの、大きいときには抑制するものが、皮膚表面における皮膚角層細胞サイズの不均一性を低減に寄与し、皮膚シワの改善につながると判断できる。本第四発明は、たとえば、下記の工程を含む皮膚シワ改善剤のスクリーニング方法とも言える。
(1) 表皮ケラチノサイトを被験物質共存下培養する工程
(2) 表皮ケラチノサイトに人為的に伸縮刺激を負荷する工程
(3) 伸縮強度f、pについて、f>pであるとき、伸縮強度fの人為的な伸縮刺激の負荷を行った表皮ケラチノサイトの鳥瞰細胞面積(Sf)と伸縮強度pの人為的な伸縮刺激の負荷を行った表皮ケラチノサイトの鳥瞰細胞面積(Sp)との比較により認識される強さの異なる伸縮刺激の負荷による表皮ケラチノサイトの鳥瞰細胞面積変化の程度(Sf)/(Sp) が、被験物質非共存の場合に比較して小さい被験物質を、シワ改善作用を有すると判断する工程
【0022】
本発明の第五発明は、第四発明を根幹として、第四発明が含む工程を示したものである。本第五発明の(1)、(2)の工程はスクリーニングの目的に応じて実施する順序を入れ替えてよい。(1)、(2)、(3)の順に実施すれば表皮ケラチノサイトに対する伸縮刺激の負荷によって生じる細胞形状変化をコントロールする物質を選択することができ、(2)、(1)、(3)の順に実施すれば表皮ケラチノサイトに対する伸縮刺激の負荷によって生じた細胞形状変化をコントロールする物質を選択することができる。(3)の工程では、たとえば、被験物質共存の場合と非共存の場合の表皮ケラチノサイトを比較したときに、人為的な伸縮刺激の負荷を行っていない表皮ケラチノサイトとの比較により認識される伸縮刺激の負荷による表皮ケラチノサイトの細胞形状変化の程度が、被験物質非共存の場合に比較して小さい被験物質を、シワ改善作用を有すると判断するが、より詳細には、上記伸縮刺激の負荷による表皮ケラチノサイトの細胞形状変化が、被験物質非共存の場合に比較して小さい被験物質を皮膚シワ改善剤として選択できる。また、たとえば、被験物質共存の場合と非共存の場合の表皮ケラチノサイトを比較したときに、人為的な、相対的に大きい伸縮刺激の負荷を行った表皮ケラチノサイトとの比較により認識される相対的に小さい伸縮刺激の負荷を行った表皮ケラチノサイトの細胞形状変化の程度が、被験物質非共存の場合に比較して大きい被験物質を、シワ改善作用を有すると判断できる。
【0023】
本発明の第六発明は、第四および第五発明に基づき、人為的に伸縮刺激を負荷することにより生じる表皮ケラチノサイトの細胞形状の拡大を、細胞形状そのものではなく、細胞形状を制御する因子の機能、たとえば、量や局在などを指標として評価するもので、表皮ケラチノサイトに人為的に伸縮刺激を負荷し、被験物質の表皮ケラチノサイトの細胞形状変化コントロール効果を評価する工程を含む皮膚シワ改善剤のスクリーニング方法である。より詳細には、表皮ケラチノサイトに人為的に伸縮刺激を付加することにより表皮ケラチノサイトの細胞形状にもたらされる変化に関わる因子の量や局在を計測し、この因子の変化をコントロールする効果が高いものを皮膚シワ改善剤として選択できる。
【0024】
本発明の第七発明は、第四乃至第六発明のいずれか一発明に記載のスクリーニング方法により選択される皮膚シワ改善剤である。皮膚に適用するに際し、本発明の効果を損ねない範囲で、生理的に許容される公知の物質と共に使用してもよい。
【0025】
本発明の細胞形状とは、細胞の外形を指すが、1つ1つの細胞の形状だけでなく、複数の細胞を群として把握して細胞群全体の形状を観察される細胞数で除することで、個々の細胞形状と捉えることも可能である。また、鳥瞰(平面視)した際の形状だけでなく、側面視した細胞形状、或いはその両方であってもよい。本発明でいう細胞形状は、鳥瞰および/または側面視した像の面積、長径の大きさ、短径の大きさ、から選ばれる一種あるいは二種以上である。
【0026】
本発明の細胞形状の計測方法は、本発明の細胞形状を計測することができれば、特に限定されない。例えば、培養表皮ケラチノサイトや角層採取用テープを用いて採取した皮膚角層細胞の鳥瞰像にて、鳥瞰される細胞の面積、すなわち鳥瞰細胞面積、を観察することによって評価することができる。顕微鏡での観察を容易にするために、細胞の観察に一般的に用いられる染料や蛍光色素によって表皮ケラチノサイトや皮膚角層細胞を染色してもよい。また、皮膚角層細胞については、画像取得後の解析を容易にするために、角層採取用テープから皮膚角層細胞を剥離・分散後に観察してもよい。鳥瞰細胞面積の測定方法は、例えば、面積に数段階のグレードを設定し、顕微鏡で観察される視野内の個々の細胞のグレード、あるいは任意に個数を決めてランダムに選抜された細胞のグレードを平均化したものを当該細胞試料の面積指標としたり、適当な画像解析ソフトによって細胞の輪郭を指定し、楕円に近似して得られる長径と短径から面積を算出したりする、あるいは、輪郭内のピクセル数を計測するなどの方法で鳥瞰細胞面積を測定して、その平均値を当該細胞試料の面積指標としたり、任意の視野内の細胞の個数を計数し、適当な画像解析ソフトによって視野内の細胞により占有面積を測定して、面積を個数で除することで当該細胞試料の面積指標としたりすることができる。
側面視の場合は、共焦点顕微鏡などによって、深さ方向に複数枚の画像を取得し、各画像から再構築された細胞像を画像上で割断して細胞切断面像を作製することで評価することができる。側面視される細胞形状の測定方法は、伸縮刺激付与前後での変化が評価できればどのような方法によっても構わないが、例えば、細胞の厚みに数段階のグレードを設定し、顕微鏡で観察される視野内の個々の細胞のグレード、あるいは任意に個数を決めてランダムに選抜された細胞のグレードを平均化したものを当該細胞試料の厚み指標としたり、適当な画像解析ソフトによって細胞の輪郭を指定し、楕円に近似して得られる長径を当該細胞の大きさの指標としたり、短径を厚み指標としたりすることができる。
【0027】
本発明のスクリーニング方法による選択の対象とする物質、すなわち、被験物質は、特に制限されない。動植物由来エキス、菌類の培養物またはこれらの酵素処理物、化合物またはその誘導体等であっても被験物質として用いることができ、液状の他、粉末状、ジェル状、シート状等であっても差し支えない。溶解することによって発現する作用を試験するに際し、そのままでは培地あるいは細胞に対する添加用溶液に溶解しない場合は、界面活性剤等の可溶化剤を適宜使用することにより溶解させることで被験物質として用いることが出来る。さらに、被験物質の各原体からの抽出方法も特に限定されない。適用濃度については、試験期間中、皮膚が健常に保たれれば、あるいは細胞の生育が妨げられなければ、どの濃度でも問題ない。また、生理的な作用を有する物質だけではなく、物理的な作用を有する物質、たとえば、被膜を形成して皮膚角層や表皮ケラチノサイトの細胞形状変化をコントロールするものも用いることができる。
【0028】
本発明のスクリーニング方法による選択の対象とする方法は特に限定されない。治具の取り付けや種々のマッサージなどの皮膚への接触を伴う刺激や、電磁波や加温、冷却などの非接触の刺激を用いることができる。
【0029】
本発明の第一から第三発明で用いられる皮膚角層はシワ部、あるいは、シワ部および非シワ部を有していればよく、顔面、腕、下肢など部位は特に限定されない。
【0030】
本発明の第四から第七発明で用いられる表皮ケラチノサイトは、特に限定されない。学術研究用に分譲されている不死化細胞であるHaCaTや、正常細胞として市販品されているEpidercell Human Epidermal Keratinocyte(クラボウ社)やHEK(東洋紡社)等の他、同意が得られたドナーから採取・単離したもの等や、3次元的に再構築された培養皮膚モデルも使用することができ、培地はそれぞれの細胞が正常に培養できれば特に限定されないが、文献や販売会社がそれぞれの細胞種に対して推奨している培地が好ましい。正常細胞の場合、試験に用いるこれらの細胞は継代数が1~3までが増殖活性が高いため好ましいが、それ以降のものでも良好な増殖が見られる場合は使用できる。
【0031】
本発明の第四から第七発明の伸縮刺激は、培養表皮ケラチノサイトが接着した生育基盤、すなわち培養容器底面を人為的に伸縮させるもので、伸縮刺激開始時の容器長あるいは面積を「基準」として、「基準」より容器長あるいは面積を拡大する「伸展」と「基準」を繰り返すことによる伸縮、「基準」より容器長あるいは面積を縮小する「収縮」と「基準」を繰り返すことによる伸縮、「伸展」と「収縮」を繰り返すことによる伸縮、などが行われる。「伸展」と「収縮」の大きさ、すなわち伸縮強度は、容器長あるいは面積として1から50%が望ましく、4から30%がより望ましいが、細胞生存率に大きな影響を与えない範囲であれば特に限定されない。たとえば、一辺が2cmの正方形の底面を有する底面伸縮性細胞培養容器において表皮ケラチノサイトを培養し、伸縮刺激負荷前の容器長2cmを基準として、任意の一辺の方向に4mm分伸展させて基準に戻るという20%の伸縮、同容器において任意の一辺の方向に0.8mm分収縮させて基準に戻るという4%の伸縮、同容器において任意の一辺の方向に4mm分伸展させて4mm分収縮させるという40%の伸縮などが適用できる。また、上記強度が異なる伸縮刺激を負荷した表皮ケラチノサイトの細胞形状の比較を行う場合、表皮ケラチノサイトの細胞形状に検出できるレベルの違いが生じれば強度の程度については特に限定されないが、伸縮の頻度を一定にした場合、たとえば、強い伸縮強度として10%以上、より好ましくは15%以上の伸縮、弱い伸縮強度として、10%以下、より好ましくは5%以下の伸縮が適している。また、もちろん、伸縮の頻度を加味した伸縮強度の設定を行っても構わない。
【0032】
本発明の第四から第七発明の伸縮刺激を与える方法は、細胞生存率に大きな影響を与えない方法であれば特に限定されない。伸縮刺激の大きさは特に限定されないが、目的に応じて適宜制御できることが好ましい。例えば、市販の培養細胞伸展装置と伸展用細胞培養容器を組み合わせて用いることができ、自動伸展装置(ストレックス)とストレッチチャンバー(ストレックス)などが使用できる。
【0033】
本発明の第六発明に記載の被験物質共存下とは、試験対象の細胞と被験物質を共存させることができればどのような状態も含むが、例えば、単層培養細胞を用いた試験においては培地中に被験物質を存在させることができ、3次元的に再構築された培養皮膚モデルを用いた試験においては、培地に溶解させたり、該培養皮膚モデルへの影響が小さい溶媒に被験物質を溶解した添加用溶液を調製し、角層側から適用したりすることもできる。皮膚シワ改善剤をスクリーニングする方法内での順序としては、表皮ケラチノサイトに人為的に伸縮刺激を加える工程の前に被験物質の共存・非共存下の培養を行ってもよいし、表皮ケラチノサイトに人為的に伸縮刺激を加える工程の途中や終了後に被験物質の共存・非共存下の培養を行ってもよい。
【0034】
本発明の第六発明に記載の被験物質非共存下とは、試験対象の細胞と被験物質を共存させていなければどのような状態も含むが、例えば、単層培養細胞を用いた試験においては培地中に被験物質を存在させる被験物質共存下との比較対象として、被験物質を存在させないことの他、被験物質と同重量あるいは同体積の被験物質溶解に用いた溶媒を共存させることや、比較対象物質を共存させることができる。
【実施例
【0035】
以下、本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0036】
-顔皮膚角層鳥瞰細胞面積の部位による違い測定試験-
皮膚外用剤の作用が発揮されやすい皮膚表層近傍におけるシワ発生に関与する現象を明らかにするため、年齢と部位による顔角層形状の違いを測定した。まず、20~60代の女性39名に依頼して洗顔後、22℃、50%湿度下で10-15分間安静にした。その後、1cm×1cmの格子を印字したテープを半顔に貼付して半顔全体の角層を採取し、テープを1cm×1cmの格子毎に切り取り、ディープウェルへ1枚ずつ入れた。そこへ、細胞剥離分散液(SDS 2%、EDTA 5 mM、Tris-HCl 0.1M緩衝液 (pH8.5)、DTT 20 mM)500 μLを入れて5分間煮沸し、得られた角層懸濁液を1.5 mLチューブに入れ、遠心分離した。上澄みを96ウェルプレートに採取し、60℃下で乾燥させたあと、中性ホルマリンを加えて固定し、PBS(-)での洗浄後、角層染色液(ゲンチアナバイオレット 0.8g、蒸留水 99.2g)を添加して浸漬し、PBS(-)で洗浄後一晩風乾した。撮影機能付き顕微鏡(BZ-X700,KEYENCE, 20倍)にて上記処理後の角層画像を取得し、プリントアウトした画像上で細胞の輪郭を強調後、スキャナー(Docucenter-V C4476,富士ゼロックス)で取り込み、画像解析ソフト (ImageJ,open source)上で細胞の輪郭を抽出後輪郭内の面積を個々の角層鳥瞰細胞面積として計測した。計測の結果を図1に示す。角層鳥瞰細胞面積は、1cm×1cmの格子内で計測された個々の角層鳥瞰細胞面積の平均値を平方ピクセルで表したものとし、計測の結果は、小さい順に1200平方ピクセルを黒、2200平方ピクセルを薄い灰色とし、それぞれの面積の間を黒から薄い灰色に変化する階調で表示した。図左上部の数字は被験者の年齢層を示す(例:20’sは20歳代を意味する)。
【0037】
図1より、顔頬部角層鳥瞰細胞面積が加齢に伴って大きくなる一方、皮膚シワを発生しやすい目周辺部では、年齢を問わず角層鳥瞰細胞面積が相対的に小さいことが明らかとなった。顔の変形が必ず皮膚表面積の変化を必要とするわけではないが、骨や筋肉のような位置の移動が生じにくい硬い組織にところどころで接着した顔面皮膚表面の角層鳥瞰細胞面積の変化(例えば、面積の拡大)は、部位ごとの表面積の変化につながり、必ず顔の変形につながる。したがって、本実験で明らかになった角層鳥瞰細胞面積の加齢および部位による違いや変化は、皮膚形状の変化に関与していると考えられた。
【0038】
-顔シワ部皮膚角層鳥瞰細胞面積と皮膚シワの関係観察試験-
顔シワ部位と顔非シワ部位の皮膚角相鳥瞰細胞面積の関係を確認するために、40代男性の目尻のシワ部位に油性ペンでシワの両端に印をつけ、シワ部位をシワが見えなくなるまで上下に引っ張り、角層採取用テープを貼り、角層を採取した。角層採取用テープ上にエタノールを滴下し、角層染色液(ゲンチアナバイオレット 0.8g、蒸留水 99.2g)に一晩浸漬した。3分間流水にて洗浄後一晩風乾した。撮影機能付き顕微鏡(BZ-X700,KEYENCE)にて上記処理後の角層画像を取得し、プリントアウトした画像上で細胞を強調後、スキャナー(Docucenter-V C4476,富士ゼロックス)で取り込み、画像解析ソフト(ImageJ,open source)上で細胞の輪郭を抽出後輪郭内の面積を個々の角層鳥瞰細胞面積として計測した。角層鳥瞰細胞面積は、1mm×1mmの格子内で計測された個々の角層鳥瞰細胞面積の平均値を平方μmで表したものとし、計測の結果は、小さい順に500平方ピクセルを黒、900平方ピクセルを薄い灰色とし、それぞれの面積の間を黒から薄い灰色に変化する階調で表示した。測定の結果を図2に示す。
【0039】
図2より、皮膚非シワ部位と比較して皮膚シワ上の角層鳥瞰細胞面積が小さくなっていることがわかった。これまで顔面と比較して身体部位の角層細胞面積が大きいことは知られていたが、今回、シワ上の角層細胞面積が非シワ部位と比較して小さいことが発明者らによって見出された。
【0040】
-顔皮膚伸縮特徴の部位による違い測定試験-
顔皮膚角層鳥瞰細胞面積の部位による違いや顔シワ部皮膚角層鳥瞰細胞面積と皮膚シワの関係に、皮膚伸縮の関与がある可能性を考え、顔皮膚の伸縮の特徴について、部位による違いを測定した。顔皮膚の伸縮の程度を測定するため、無表情の顔表面に、上下左右に等間隔になるようにラベルを貼った。上下左右のラベル間の距離はそれぞれ2cmとした(図3(a)参照)。その後、「あ・い・う・え・お」と発音した際の顔動画像を取得した。動作解析ソフトKinovea(open source)にて、該顔動画像におけるラベル位置の軌跡を0.03~0.05秒間隔でXY座標として計測し、3点のラベル位置を頂点とする三角形の面積を算出した。「あ・い・う・え・お」の発音前の無表情の顔における図3(a)に示す目尻および頬領域の発音中の各測定時での面積変化率を求め、発音中の平均面積変化率を算出して部位間での比較を行った。
【0041】
図3(b)より、平均面積変化率は目尻と比較して頬で大きいことがわかった。
したがって、以上で見られた皮膚角層鳥瞰細胞面積の部位による違いは、顔皮膚の伸縮特徴が関わることが示唆された。
【0042】
-皮膚シワ改善方法のスクリーニング試験-
皮膚シワ部表面に対する伸縮刺激を本発明のスクリーニング方法による選択の対象とする方法として、本発明の皮膚シワ改善方法のスクリーニングに供した。30~50代の男性5名の目尻の皮膚シワ部を対象に約2週間、1日8時間ほど皮膚屈曲を伸展させ、1日16時間は該伸展刺激を休止して伸展に対する収縮の状態を維持した。該伸展刺激は、片面に粘着面を備えた約1.1cm×3cmの短冊状伸縮性フィルムにて、皮膚シワ部周辺の非シワ部に、皮膚シワ部表面の屈曲を伸展する力がかかるように貼り付けることで負荷した。本試験期間前後において目尻の皮膚シワ部位に油性ペンでシワの両端に印をつけ、皮膚シワの凹部分にもテープが密着するように角層採取用テープを貼り、角層を採取した。また、目尻の皮膚シワ部位のレプリカ(SILFLO、アミックグループ)を採取しその適用前後の2次元シワ解析を行った。レプリカは、シリコンを硬化剤で固めることによって形状を型取るものである。角層採取用テープ上にはエタノールを滴下し、角層染色液(ゲンチアナバイオレット 0.8g、蒸留水 99.2g)に一晩浸漬し、3分間流水にて洗浄後一晩風乾した。撮影機能付き顕微鏡(BZ-X700,KEYENCE)にて上記処理後の角層画像を取得し、プリントアウトした画像上で細胞を強調後、スキャナー(Docucenter-V C4476,富士ゼロックス)で取り込み、画像解析ソフト (ImageJ,open source)上で細胞の輪郭を抽出後輪郭内の面積を計測した。採取したレプリカは、2次元シワ画像解析装置(樫村社)を用いて皮膚シワ面積率を算出した。
【0043】
図4より、皮膚シワ部表面に対する伸縮刺激は、顔角層鳥瞰細胞面積の増大と同時に皮膚シワ面積率の減少を実現した。本では、目尻を皮膚シワ部、頬部を皮膚非シワ部とし、皮膚非シワ部には試験による人為的な作用を付加していないため、被験物質または被験方法の適用前の皮膚シワ部角層細胞面積を(A前)、皮膚非シワ部角層細胞面積を(B前)、適用後の皮膚シワ部角層細胞面積を(A後)、皮膚非シワ部角層細胞面積を(B後)と表した場合に、(B前)と(B後)は実質的な変化がなく、同一の値を示すと考えることができることから、皮膚角層の細胞形状変化は(A後)/(A前)とほぼ等しく、この指標は、伸縮刺激ありで1.51、伸縮刺激なしで0.84であった。すなわち、被験物質または被験方法の適用前後における、皮膚シワ部角層細胞面積と皮膚非シワ部角層細胞面積との対比を指標として、これが大きくなるものを選択すれば、皮膚シワ改善剤および/または皮膚シワ改善方法が選択できることが示された。
【0044】
-伸縮刺激負荷による表皮ケラチノサイトの形状変化観察試験-
コラーゲン(新田ゼラチン)で底面をコートしたストレッチチャンバー(ストレックス)に培地に懸濁した表皮ケラチノサイト(ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)を播種し、37℃、5%CO雰囲気下で一晩培養した。その後ストレッチチャンバーを自動伸展装置(ストレックス)にセットし、チャンバーを一定の一方向に、20%の長さ引き伸ばして戻す伸縮を、1分間に10往復、48時間繰り返した。同条件で培養し、伸縮を行わなかったチャンバーをコントロールとした。
【0045】
図5より、表皮ケラチノサイトに対する伸縮刺激が細胞形状の拡大を生じることが示された。
【0046】
-表皮ケラチノサイトに人為的に伸縮刺激を負荷した際の表皮ケラチノサイトの形状変化を指標とする皮膚シワ改善剤のスクリーニング-
コラーゲンで底面をコートしたストレッチチャンバーに培地に懸濁した表皮ケラチノサイトを播種し、37℃、5%CO雰囲気下で一晩培養した。被験物質共存の場合として被験物質を添加したストレッチチャンバーを一被験物質ごとに6つと、被験物質非共存の場合として被験物質の代わりに被験物質の溶媒である水を添加したストレッチチャンバー6つを用意し、それぞれ3つずつのストレッチチャンバーを自動伸展装置にセットし、チャンバーを一定の一方向に、20%の長さ引き伸ばして戻す伸縮を、1分間に10往復、48時間繰り返した。同条件で培養し、伸縮を行わなかったチャンバーをコントロールとした。中性ホルマリンによる固定後、細胞染色液(ゲンチアナバイオレット0.8g、蒸留水99.2g)にて染色し、顕微鏡で表皮ケラチノサイトの鳥瞰像を撮影した。その後、画像解析ソフト(ImageJ,open source)上で細胞の輪郭を抽出後し、輪郭内の面積を計測した。形状変化の程度を次式により算出した。
【0047】
【数2】
【0048】
〔数2〕の「平均の細胞面積(伸縮刺激あり)」は〔0020〕に記載の「強さfの人為的な伸縮刺激の負荷を行った表皮ケラチノサイトの細胞形状(Sf)」、「平均の細胞面積(伸縮刺激なし)」は同じく「強さpの人為的な伸縮刺激の負荷を行った表皮ケラチノサイトの細胞形状(Sp)」であり、強さの異なる伸縮刺激の負荷による表皮ケラチノサイトの細胞形状変化の程度(Sf)/(Sp)が、被験物質非共存の場合に比較して小さい被験物質をシワ改善作用を有すると判断した。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、皮膚外用剤の作用が発揮されやすい皮膚表層近傍における皮膚シワ発生に関与する現象を指標とした皮膚シワ改善剤・皮膚シワ改善方法およびそのスクリーン方法を提供することができる。
本発明者らは、鋭意研究した結果、皮膚シワ改善剤・皮膚シワ改善方法およびそのスクリーン方法を提供するに至った。

図1
図2
図3
図4
図5