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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240603BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20240603BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G21/14
G03G21/00 530
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020063489
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021162689
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 充
(72)【発明者】
【氏名】河合 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】虎谷 泰靖
(72)【発明者】
【氏名】緒方 彩乃
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-002536(JP,A)
【文献】特開平09-190116(JP,A)
【文献】特開2019-211649(JP,A)
【文献】特開2011-253113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/14
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を記録材に定着するための回転可能なベルトと、
前記ベルトとの間で記録材を挟持搬送するニップ部を形成する加圧部材と、
内部にヒータを有し、前記ベルトを張架して前記ベルトを加熱する加熱ローラと、
前記加熱ローラの温度または前記加熱ローラと接触する領域の前記ベルトの温度を検知する温度検知部材と、
前記ベルトを回転させるための駆動源と、
前記駆動源を制御する制御部と、
前記加熱ローラの温度を制御する温度制御部と、
画像形成装置の電源をOFFにする信号を受信する受信部と、を備え、
記録材にトナー像を定着する定着状態と、前記ベルトが回転しており画像形成を待機するスタンバイ状態と、に遷移可能であって、
前記温度制御部は、前記定着状態における前記加熱ローラの温度を第一の温度にし、前記スタンバイ状態における前記加熱ローラの温度を前記第一の温度よりも低い第二の温度にし、
前記スタンバイ状態において、前記制御部は、前記受信部が前記画像形成装置の電源をOFFにする信号を受信したとき前記温度検知部材が検知する温度が前記第一の温度以下である所定の温度以下の場合前記電源はOFFになり、
前記温度検知部材が検知する温度が前記所定の温度よりも高い場合、前記ヒータへの通電をOFFして回転を継続し、前記温度検知部材が検知する温度が前記所定の温度以下になったことに応じて前記電源をOFFにする、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ベルトを張架し、前記ベルトを介して加圧部材を加圧するパッド部材を有する、
ことを特徴とする、請求項に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記駆動源は、前記加圧部材を回転させ、前記加圧部材は前記ニップ部を介して前記ベルトを回転させる、
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記駆動源は、前記加熱ローラを回転させる、
ことを特徴とする、請求項1ないしの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記所定の温度は、前記第二の温度より高い、
ことを特徴とする、請求項1ないし4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記定着状態における前記ベルトの回転速度を、前記スタンバイ状態における前記ベルトの回転速度も高くする、
ことを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
トナー像を記録材に定着するための回転可能なベルトと、
前記ベルトとの間で記録材を挟持搬送するニップ部を形成する加圧部材と、
内部にヒータを有し、前記ベルトを張架して前記ベルトを加熱する加熱ローラと、
前記加熱ローラの温度または前記加熱ローラと接触する領域の前記ベルトの温度を検知する温度検知部材と、
前記ベルトを回転駆動するための駆動源と、
前記駆動源を制御する制御部と、
前記加熱ローラの温度を制御する温度制御部と、
記録材にトナー像を定着する定着状態と、前記ベルトが回転しており画像形成を待機するスタンバイ状態と、前記ベルトが回転せず前記スタンバイ状態よりも低電力であるスリープ状態と、に遷移可能であって、
前記スタンバイ状態において、前記スタンバイ状態から前記スリープ状態に切換える信号を受信する受信部と、を備え、
前記温度制御部は、前記定着状態における前記加熱ローラの温度を第一の温度にし、前記スタンバイ状態における前記加熱ローラの温度を前記第一の温度よりも低い第二の温度にし、
前記スタンバイ状態において、前記制御部は、前記受信部が前記スリープ状態にする信号を受信したとき前記温度検知部材が検知する温度が前記第一の温度以下である所定の温度以下の合、前記スリープ状態に遷移し、
前記温度検知部材が検知する温度が前記所定の温度より高い場合、前記ヒータへの通電をOFFして回転を継続し、前記温度検知部材が検知する温度が前記所定の温度以下になったことに応じて前記スリープ状態に遷移する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記ベルトを張架し、前記ベルトを介して加圧部材を加圧するパッド部材を有する、
ことを特徴とする、請求項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記駆動源は、前記加圧部材を回転させ、前記加圧部材は前記ニップ部を介して前記ベルトを回転させる、
ことを特徴とする、請求項7または8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記駆動源は、前記加熱ローラを回転させる、
ことを特徴とする、請求項ないしの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記所定の温度は、前記第二の温度より高い、
ことを特徴とする、請求項7ないし10の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記定着状態における前記ベルトの回転速度を、前記スタンバイ状態における前記ベルトの回転速度も高くする、
ことを特徴とする請求項7ないし11の何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複数の機能を有する複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、記録材に担持されたトナー像を加熱することでトナー像を記録材に定着させる定着装置を備えている。定着装置として、複数の張架部材により張架されたベルトを用いた構成が従来から知られている(特許文献1)。特許文献1に記載の構成の場合、張架ローラとして、内部にハロゲンヒータを有する加熱ローラを有し、加熱ローラによりベルトを加熱している。また、特許文献1には、画像形成終了後には、定着ベルトの温度が所定温度低下するまでヒータをOFFしながら、ベルトを回転する構成が記載されている。このような構成にするとで、画像形成後のベルト停止時にベルトの温度が高くなることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-142398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように、ベルトの回転方向の一部で加熱ローラにより局所的にベルトを加熱する構成の場合、ベルトの加熱領域と非加熱領域とで温度差ができる虞がある。例えば、ベルトが加熱されながら回転している状態から回転を停止した場合に、ベルトが加熱ローラと接触している領域と接触していない領域で温度差が大きくなり易い。これは、加熱ローラの熱容量がベルトの熱容量に対して大きい構成で顕著になる。
【0005】
ここで、ベルト回転中に、電源をOFFとする信号や画像形成装置を低電力状態で待機するスリープモードに移行する信号が入力されたときに、入力された信号を優先させてベルトの回転を停止すると、ベルトの劣化への影響が大きくなることがわかった。
【0006】
本発明は、ベルトの回転中に電源をOFFする信号やスリープモードに移行する信号が入力されたときに、ベルトの温度が高い状態でベルトが停止することを抑制する画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、トナー像を記録材に定着するための回転可能なベルトと、前記ベルトとの間で記録材を挟持搬送するニップ部を形成する加圧部材と、内部にヒータを有し、前記ベルトを張架して前記ベルトを加熱する加熱ローラと、前記加熱ローラの温度または前記加熱ローラと接触する領域の前記ベルトの温度を検知する温度検知部材と、前記ベルトを回転させるための駆動源と、前記駆動源を制御する制御部と、前記加熱ローラの温度を制御する温度制御部と、画像形成装置の電源をOFFにする信号を受信する受信部と、を備え、記録材にトナー像を定着する定着状態と、前記ベルトが回転しており画像形成を待機するスタンバイ状態と、に遷移可能であって、前記温度制御部は、前記定着状態における前記加熱ローラの温度を第一の温度にし、前記スタンバイ状態における前記加熱ローラの温度を前記第一の温度よりも低い第二の温度にし、前記スタンバイ状態において、前記制御部は、前記受信部が前記画像形成装置の電源をOFFにする信号を受信したとき前記温度検知部材が検知する温度が前記第一の温度以下である所定の温度以下の場合、前記電源OFFになり、前記温度検知部材が検知する温度が前記所定の温度よりも高い場合、前記ヒータへの通電をOFFして回転を継続し、前記温度検知部材が検知する温度が前記所定の温度以下なったことに応じて前記電源をOFFにすることを特徴とする画像形成装置である
【0008】
発明の一態様は、トナー像を記録材に定着するための回転可能なベルトと、前記ベルトとの間で記録材を挟持搬送するニップ部を形成する加圧部材と、内部にヒータを有し、前記ベルトを張架して前記ベルトを加熱する加熱ローラと、前記加熱ローラの温度または前記加熱ローラと接触する領域の前記ベルトの温度を検知する温度検知部材と、前記ベルトを回転駆動するための駆動源と、前記駆動源を制御する制御部と、前記加熱ローラの温度を制御する温度制御部と、記録材にトナー像を定着する定着状態と、前記ベルトが回転しており画像形成を待機するスタンバイ状態と、前記ベルトが回転せず前記スタンバイ状態よりも低電力であるスリープ状態と、に遷移可能であって、前記スタンバイ状態において、前記スタンバイ状態から前記スリープ状態に切換える信号を受信する受信部と、を備え、前記温度制御部は、前記定着状態における前記加熱ローラの温度を第一の温度にし、前記スタンバイ状態における前記加熱ローラの温度を前記第一の温度よりも低い第二の温度にし、前記スタンバイ状態において、前記制御部は、前記受信部が前記スリープ状態にする信号を受信したとき前記温度検知部材が検知する温度が前記第一の温度以下である所定の温度以下の場合、前記スリープ状態遷移し、前記温度検知部材が検知する温度が前記所定の温度より高い場合、前記ヒータへの通電をOFFして回転を継続し、前記温度検知部材が検知する温度が前記所定の温度以下なったことに応じて前記スリープ状態に遷移することを特徴とする画像形成装置でる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ベルトの回転中に電源をOFFする信号やスリープモードに移行する信号が入力されたときに、ベルトの温度が高い状態でベルトが停止することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成断面図。
図2】第1の実施形態に係る定着装置の概略構成断面図。
図3】定着パッドと定着ベルトの関係を示す模式図。
図4】第1の実施形態に係る画像形成装置の制御構成の一部を示す制御ブロック図。
図5】定着ベルトの回転方向位置の温度分布を示すグラフ。
図6】定着ベルトの回転停止時の温度が(a)170℃、(b)185℃、(c)200℃の時の加熱ローラの温度時間推移を示すグラフ。
図7】定着ベルトの回転停止時の加熱ローラの温度と定着ベルトの回転方向における最大温度差との関係を示すグラフ。
図8】定着ベルトの回転方向における温度差と定着ベルトの座屈破壊との関係を示す表。
図9】第1の実施形態に係る定着装置の駆動停止時における制御のフローチャート。
図10】比較例における定着ベルト駆動のタイミングチャート。
図11】第1の実施形態における定着ベルト駆動の第1例のタイミングチャート。
図12】第1の実施形態における定着ベルト駆動の第2例のタイミングチャート。
図13】第1の実施形態における定着ベルト駆動の第3例のタイミングチャート。
図14】第2の実施形態に係る定着装置の概略構成断面図。
図15】第2の実施形態に係る定着装置の駆動停止の際の2つのサーミスタの温度差の時間推移を示すグラフ。
図16】第2の実施形態に係る定着装置の駆動停止時における制御のフローチャート。
図17】第3の実施形態に係る定着装置の概略構成断面図。
図18】第3の実施形態に係る定着装置の駆動停止時における制御のフローチャート。
図19】第3の実施形態における定着ベルト駆動、ベルト着脱、冷却ファン駆動のタイミングチャート。
図20】第4の実施形態に係る定着装置の概略構成断面図。
図21】第4の実施形態に係る定着装置の駆動停止時における制御のフローチャート。
図22】第4の実施形態における定着ベルト駆動、清掃部材着脱のタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
第1の実施形態について、図1ないし図13を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成装置の概略構成について、図1を用いて説明する。
【0012】
[画像形成装置]
画像形成装置1は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色に対応して設けられた4つの画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを有する電子写真方式のフルカラープリンタである。本実施形態では、画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを後述する中間転写ベルト204の回転方向に沿って配置したタンデム型としている。画像形成装置1は、画像形成装置本体3に接続された画像読取部(原稿読取装置)2又は画像形成装置本体3に対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器からの画像信号に応じてトナー像(画像)を記録材に形成する。記録材としては、用紙、プラスチックフィルム、布などのシート材が挙げられる。
【0013】
画像形成装置1は、画像読取部2と画像形成装置本体3とを備える。画像読取部2は、原稿台ガラス21上に置かれた原稿を読み取るもので、光源22から照射された光が原稿で反射し、レンズなどの光学系部材23を介してCCDセンサ24に結像される。このような光学系ユニットは矢印の方向に走査することにより、原稿をライン毎の電気信号データ列に変換する。CCDセンサ24により得られた画像信号は、画像形成装置本体3に送られ、制御部30で後述する各画像形成部に合わせた画像処理がなされる。また、制御部30は画像信号としてプリントサーバなどの外部のホスト機器からの外部入力も受ける。
【0014】
画像形成装置本体3は、複数の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを備え、各画像形成部では、上述の画像信号に基づいて画像形成が行われる。即ち、画像信号は制御部30によりPWM(パルス幅変調制御)されたレーザービームに変換される。露光装置としてのポリゴンスキャナ31は、画像信号に応じたレーザービームを走査する。そして、各画像形成部Pa~Pdの像担持体としての感光ドラム200a~200dにレーザービームが照射される。
【0015】
なお、Paはイエロー色(Y)の画像形成部、Pbはマゼンタ色(M)の画像形成部、Pcはシアン色(C)の画像形成部、Pdはブラック色(Bk)の画像形成部で、それぞれ対応する色の画像を形成する。画像形成部Pa~Pdは略同一なので、以下にYの画像形成部Paの詳細を説明して、他の画像形成部の説明は省略する。画像形成部Paにおいて、感光ドラム200aは、次述するように、画像信号に基づいて表面にトナー画像が形成される。
【0016】
1次帯電器としての帯電ローラ201aは、感光ドラム200aの表面を所定の電位に帯電させて静電潜像形成の準備を施す。ポリゴンスキャナ31からのレーザービームによって、所定の電位に帯電された感光ドラム200aの表面に静電潜像が形成される。現像器202aは、感光ドラム200a上の静電潜像を現像してトナー像を形成する。1次転写ローラ203aは、中間転写ベルト204の背面から放電を行いトナーと逆極性の一次転写バイアスを印加し、感光ドラム200a上のトナー像を中間転写ベルト204上へ転写する。転写後の感光ドラム200aは、クリーナー207aでその表面を清掃される。
【0017】
また、中間転写ベルト204上のトナー像は次の画像形成部に搬送され、Y、M、C、Bkの順に、順次それぞれの画像形成部にて形成された各色のトナー像が転写され、4色の画像がその表面に形成される。そして、中間転写ベルト204の回転方向最下流にあるBkの画像形成部Pdを通過したトナー像は、2次転写ローラ対205、206で構成される2次転写部に搬送される。そして、2次転写部おいて、中間転写ベルト204上のトナー画像と逆極性の2次転写電界が印加されることにより、記録材に2次転写される。
【0018】
記録材は、カセット9に収容されており、カセット9から給送された記録材は、例えば1対のレジストレーションローラで構成されるレジ部208に搬送され、レジ部208で待機する。その後、レジ部208は、中間転写ベルト204上のトナー像と用紙の位置を合わせるためにタイミングが制御され、記録材を2次転写部に搬送する。
【0019】
2次転写部でトナー像が転写された記録材は、定着装置8に搬送され、定着装置8において、加熱、加圧されることで、記録材に担持されたトナー像が記録材に定着される。定着装置8を通過した記録材は、排出トレイ7に排出される。なお、記録材の両面に画像形成を行う場合には、記録材の第一面(表面)へのトナー像の転写及び定着が終了すると、反転搬送部10を経て記録材の表裏を逆転し、記録材の第二面(裏面)へのトナー像の転写及び定着を行い、排出トレイ7上に積載される。
【0020】
[定着装置]
次に、図2を用いて本実施形態における定着装置8の構成について説明する。本実施形態では、無端状のベルトを用いたベルト加熱方式の定着装置を採用している。図2において、記録材は、矢印αで示すように、右から左方向に搬送される。定着装置8は、無端状で回転可能なベルトとしての定着ベルト310を有する加熱ユニット300と、定着ベルト310に当接し、定着ベルト310と共にニップ部Nを形成する加圧回転体(加圧部材)としての加圧ローラ330を有する。
【0021】
加熱ユニット300は、上述の定着ベルト310と、ニップ部形成部材及びパッド部材としての定着パッド320、張架ローラとしての加熱ローラ340及びステアリングローラ350を有する。加圧ローラ330は、定着ベルト310の外周面に当接して回転し、定着ベルト310に駆動力を付与する駆動ローラでもある。
【0022】
無端状のベルトである定着ベルト310は、熱伝導性や耐熱性等を有しており、例えば内径120mmで薄肉の円筒形状である。本実施形態においては、基層、基層の外周に弾性層、その外周に離型層を形成した3層構造としている。そして、基層は厚さ60μmで材質はポリイミド樹脂(PI)を、弾性層は厚さ300μmでシリコーンゴムを、離型層は厚さ30μmでフッ素樹脂としてのPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)を用いている。このような定着ベルト310は、複数の張架部材としての定着パッド320、加熱ローラ340、ステアリングローラ350によって張架される。即ち、定着ベルト310を張架する複数の張架部材は、2つの張架ローラとしての加熱ローラ340、ステアリングローラ350と、パッド部材としての定着パッド320とを含む。
【0023】
定着パッド320は、定着ベルト310の内側に、定着ベルト310を挟んで加圧ローラ330と対向するように配置されると共に、定着ベルト310と加圧ローラ330との間で記録材を挟持搬送するニップ部Nを形成する。本実施形態では、定着パッド320は、定着ベルト310の幅方向(定着ベルト310の回転方向と交差する長手方向、加熱ローラ340の回転軸線方向)に沿って長い、略板状の部材である。定着パッド320が定着ベルト310を挟んで加圧ローラ330に押圧されることで、ニップ部Nが形成される。定着パッド320の材質は、LCP(液晶ポリマー)樹脂を用いている。
【0024】
定着パッド320は、ニップ部Nを形成する部分の少なくとも一部が平面状に形成されている。即ち、定着ベルト310の内周面と後述する潤滑シート370を介して接触する部分がほぼ平面形状に形成され、ニップ部の形状を略フラット状としている。このように構成することで、特に、記録材として封筒にトナー像を定着する場合に、封筒に皺や画像ずれが発生することを抑制できる。
【0025】
定着パッド320は、定着ベルト310の内側に配置された支持部材としてのステイ360により支持されている。即ち、ステイ360は、定着パッド320の加圧ローラ330と反対側に配置され、定着パッド320を支持する。このようなステイ360は、定着ベルト310の長手方向に沿って長い剛性を有する補強部材であり、定着パッド320に当接して、定着パッド320をバックアップする。即ち、ステイ360は、定着パッド320が加圧ローラ330から押圧された際に、定着パッド320に強度を持たせてニップ部Nにおける加圧力を確保するものである。
【0026】
ステイ360は、ステンレス鋼などの金属製であり、定着ベルト310の回転方向と交差するステイ360の長手方向に直交する断面(横断面)が略矩形状である。例えば、ステイ360は、肉厚3mmのSUS304(ステンレス鋼)の引き抜き材を用い、横断面を略ロの字の中空に成形することで強度を確保している。なお、ステイ360は、複数の板金を組み合わせ、溶接などにより互いに固定することで、断面略矩形状に形成しても良い。また、ステイ360の材質は強度が担保できればステンレスに限らない。
【0027】
また、図3に示すように、定着パッド320のニップ部Nにおける記録材搬送方向両端部は、それぞれ曲面形状部320a、320bとしている。曲面形状部320a、320bは、それぞれ端部に向かってニップ面から離れていく方向(図3の上方)に湾曲した曲面としている。ニップ面は、定着ベルト310と加圧ローラ330との間に形成され、定着パッド320の加圧ローラ330側の面(図3の下面)に沿った面である。
【0028】
このように本実施形態では、定着パッド320の下流端部を曲面形状部320bとし、曲面形状部320bの曲率により定着ベルト310を湾曲させている。そして、ニップ部Nを通過した記録材を、定着ベルト310の曲率により定着ベルト310から分離させるようにしている。
【0029】
定着パッド320と定着ベルト310の間には、潤滑シート370を介在させている。本実施形態では、潤滑シート370として、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)をコーティングしたPI(ポリイミド)シートを用いていて、厚みを100μmとしている。PIシートには、1mm間隔で100μmの突起形状を形成していて、定着ベルト310との接触面積を減らすことにより摺動抵抗を低減させている。
【0030】
また、定着ベルト310の内周面には潤滑剤を塗布しており、定着ベルト310は、潤滑シート370に覆われた定着パッド320に対して滑らかに摺動するようになっている。潤滑材としては、粘度100cStのシリコーンオイルを用いている。
【0031】
図2に示すように、複数の張架部材のうちの1個の所定の張架部材としての加熱ローラ340は、定着ベルト310の内側に配置され、定着パッド320及びステアリングローラ350と共に定着ベルト310を張架する。上述のように、定着ベルト310の内周面には潤滑剤が塗布されているため、加熱ローラ340は、この潤滑剤を介して定着ベルト310を張架する。また、加熱ローラ340は、定着ベルト310の回転方向に関して、定着パッド320の下流でステアリングローラ350の上流に配置されている。なお、加熱ローラ340は、モータにより駆動されることで定着ベルト310に補助駆動力を付与する補助駆動ローラの機能を持つようにしても良い。
【0032】
加熱ローラ340は、アルミニウムやステンレスなどの金属により円筒状に形成され、その内部に定着ベルト310を加熱するための加熱手段としてのハロゲンヒータ340aが配設されている。即ち、ハロゲンヒータ340aは、加熱ローラ340内(張架ローラ内)に配置されている。そして、加熱ローラ340は、ハロゲンヒータ340aにより所定の温度まで加熱される。このような加熱ローラ340は、定着ベルト310を加熱するローラである。言い換えれば、ハロゲンヒータ340aは、加熱ローラ340を加熱することで定着ベルト310を加熱する。
【0033】
本実施形態では、加熱ローラ340は、熱伝導率の観点から、例えば外径40mm、厚み1mmのステンレス製のパイプにより形成されている。また、ハロゲンヒータ340aは、1本でも良いが、加熱ローラ340の長手方向(回転軸線方向)の温度分布制御を鑑みると複数本あることが望ましい。複数本設けられたハロゲンヒータ340aは、長手方向において互いに異なる配光分布を有しており、記録材のサイズに応じて点灯比率を制御している。本実施形態では2本のハロゲンヒータ340aを配置している。なお、加熱源は、ハロゲンヒータに限らず、例えばカーボンヒータなど加熱ローラ340を加熱可能な他のヒータであっても良い。
【0034】
定着ベルト310は、ハロゲンヒータ340aにより加熱された加熱ローラ340よって加熱され、温度検知部材としてのサーミスタ390による温度検出に基づき、記録材の種類に応じた所定の目標温度に制御される。サーミスタ390は、図2に示すように、加熱ローラ340の外周面に接触又は近接して配置され、加熱ローラ340の温度を検出する。
【0035】
ステアリングローラ350は、定着ベルト310の内側に配置され、定着パッド320及び加熱ローラ340と共に定着ベルト310を張架して、定着ベルト310に従動回転する。ステアリングローラ350は、加熱ローラ340の回転軸線方向(長手方向)に対して傾動することで、この回転軸線方向に関する定着ベルト310の位置(寄り位置)を制御する。即ち、ステアリングローラ350は、ステアリングローラ350の回転軸線方向(長手方向)中央に回動中心を有し、この回動中心を中心として揺動することで、加熱ローラ340の長手方向に対して傾動する。これにより、定着ベルト310の長手方向の一方側と他方側とでテンション差を発生させ、定着ベルト310を長手方向に移動させる。
【0036】
定着ベルト310は、張架するローラの外径精度や各ローラ間のアライメント精度などによって、回転中に何れかの端部に寄ってしまう。このため、ステアリングローラ350によりこのような寄りを制御している。なお、ステアリングローラ350は、モータなどの駆動源により揺動させても良いし、自動調心により揺動する構成であっても良い。また、回動中心は、本実施形態のように長手方向の中央でも良いし、長手方向の端部であっても良い。
【0037】
また、本実施形態の場合、ステアリングローラ350は、加熱ユニット300のフレームによって支持されたばねによって付勢されており、定着ベルト310に所定の張力を与えるテンションローラでもある。このようにステアリングローラ350により定着ベルト310にテンションを与えることで、定着ベルト310を定着パッド320の曲面形状部320a、320bに追従させている。即ち、定着ベルト310を曲面形状部320a、320bに沿って湾曲させている。
【0038】
また、ステアリングローラ350は、アルミニウムやステンレスなどの金属により円筒状に形成されている。本実施形態では、ステアリングローラ350は、外径40mm、厚み1mmのステンレス又はアルミニウム製パイプで、端部を不図示のベアリングにより回転支持される。なお、ステアリングローラ350の位置に配置される張架ローラは、このようなステアリング機能を有さないローラであっても良い。
【0039】
回転体及び駆動ローラとしての加圧ローラ330は、定着ベルト310との間で記録材を挟持搬送して記録材に担持されたトナー像を記録材に定着させる上述のニップ部を形成する。このような加圧ローラ330は、定着ベルト310の外周面に当接して回転し、定着ベルト310に駆動力を付与する。本実施形態では、加圧ローラ330は、軸の外周に弾性層を、その外周に離型性層を形成したローラである。また、軸はステンレスを、弾性層は厚さ5mmで導電シリコーンゴムを、離型性層は厚さ50μmでフッ素樹脂としてのPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)をそれぞれ用いている。加圧ローラ330は、定着装置8の定着フレーム380によって回転自在に支持されており、片端部にはギアが固定され、ギアを介して駆動としてのモータM0に接続されて、回転駆動される。
【0040】
定着フレーム380は、加熱ユニット位置決め部381、加圧フレーム383、加圧ばね384が設けられている。加熱ユニット300は、加熱ユニット位置決め部381にステイ360が挿入され、不図示の固定手段によりステイ360が加熱ユニット位置決め部381に固定されることで、定着フレーム380に位置決めされる。ここで、加熱ユニット位置決め部381は、加圧ローラ330に対向する加圧方向規制面381aと、加熱ユニット300の挿入方向の突き当て面である搬送方向規制面381bとを有する。ステイ360は、加圧方向規制面381aと搬送方向規制面318bに移動が規制された状態で固定される。この際、加圧ローラ330は、定着ベルト310から離間している。
【0041】
加圧ローラ330は、加熱ユニット300が加熱ユニット位置決め部381に位置決めされた後、不図示の駆動源とカムにより加圧フレーム383が移動することで定着ベルト310に当接する。そして、加圧ローラ330が定着ベルト310を介して定着パッド320に対して加圧される。即ち、本実施形態では、加圧ローラ330は、定着ベルト310に向けて加圧される加圧部材でもある。本実施形態では、画像形成時の加圧力は1000Nである。
【0042】
また、本実施形態の場合、ニップ部Nの記録材搬送方向下流側に、記録材を定着ベルト310から分離する分離部材(本実施形態では分離板)401を有する分離装置400を設けている。分離部材401は、定着ベルト310の外周面と隙間をあけて配置され、ニップ部Nを通過した記録材を定着ベルトから分離する。具体的には、分離部材401は、定着ベルト310の外周面のうち、定着パッド320と加熱ローラ340との間で張架された部分に近接して配置されている。また、分離部材401は、ブレード状に形成され、先端を定着ベルト310の外周面に対向させている。また、分離部材401には摺動による記録材のトナー付着や画像傷等を防ぐために金属板にフッ素系テープが貼付されている。本実施形態では、このように分離部材401を定着ベルト310の外周面と隙間をあけて配置すべく、ステイ360に対して記録材の搬送方向(ステイ360の短手方向、X方向)の位置決めするようにしている。
【0043】
上述のように構成される定着装置8は、定着ベルト310と加圧ローラ330との間に形成されるニップ部Nにおいて、トナー像を担持した記録材Pを挟持し、搬送しながらトナー像を加熱する。これにより、トナー像が溶融され、記録材に定着される。本実施形態の場合、画像形成時における、定着ベルト310の周速は300mm/s、ニップ部Nにおける加圧力は1000N、定着ベルト310の温度は180℃である。
【0044】
[制御部]
次に、画像形成装置1の制御部30の定着装置8に関する制御構成について、図4を用いて説明する。制御部30は、CPU32(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリ33を有する。
【0045】
CPU32は、操作部4により入力された各種データを取得して、メモリ33に記憶する。操作部4は、画像形成装置1に備えられており、例えば、タッチ操作が可能なタッチパネルやボタンなどである。
【0046】
また、CPU32は、例えばユーザによる画像形成装置1の電源オン等の起動操作に応じて、印刷(画像形成)プログラムをメモリ33から読み出して実行可能である。
【0047】
メモリ33は、例えば印刷プログラムや画像形成ジョブなどの各種プログラム、各種データが記憶されている。なお、メモリ33は、各種プログラムの実行に伴う演算処理結果なども一時的に記憶することもできる。
【0048】
本実施形態の場合、CPU32は、印刷プログラムを実行することにより、記録材への印刷に関する画像形成装置1の動作を制御する。なお、印刷プログラムはソフトウェアプログラムの形態に限られず、例えばDSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)によって処理されるマイクロプログラムの形態などでも実施可能である。よって、CPU32は画像形成ジョブなどの制御プログラムを実行して画像形成動作などの各種制御を行うものを併用してよいが、これに限らず、印刷プログラムを実行するのに専用に用意されたものを用いてもよい。
【0049】
また、CPU32は、サーミスタ390により検出した検出温度に基づいて、上述のようにハロゲンヒータ340aを制御したり、加圧ローラ330を駆動するモータM0を制御する。サーミスタ390による検出温度に基づくモータM0の制御については後述する。
【0050】
[定着ベルトの回転方向位置の温度分布]
ここで、上述のように定着ベルト310の回転方向の一部で加熱ローラ340により局所的に定着ベルト310を加熱する構成の場合、定着ベルト310の加熱領域と非加熱領域とで温度差ができる虞がある。この点について、図5ないし図8を用いて説明する。図5は、定着ベルト310の回転方向のスタンバイ加熱回転時と、加熱回転停止後の温度分布を示す。
【0051】
スタンバイ加熱回転時とは、定着装置8のスタンバイ状態で定着ベルト310を回転させている状態である。スタンバイ状態とは、記録材にトナー像を形成する画像形成動作時よりも画像形成装置1の消費電力が低い状態であり、本実施形態では、スタンバイ状態では、加熱ローラ340の温度を画像形成動作時より低くしている。例えば、スタンバイ状態では、加熱ローラ340が180℃となるように温度制御される。また、加熱回転停止後とは、本実施形態では、スタンバイ状態で定着ベルト310の回転の停止及びハロゲンヒータ340aによる加熱停止後、30秒経過後の状態である。
【0052】
図5の横軸は、定着ベルト310の回転方向位置であり、加熱ローラ340と定着パッド320の中間点を0として図2の時計回りを正方向としている。図5の破線で示すように、定着ベルト310のスタンバイ加熱回転時は加熱ローラ340が180℃となるように温度制御されていて、定着ベルト310は回転方向に均一に加熱され約170℃となっている。
【0053】
一方、図5の実線で示すように、加熱回転を停止して30秒経過後は、加熱を停止しているため定着ベルト310は放熱により温度低下していく。しかし、定着ベルト310のうち、加熱ローラ340やステアリングローラ350、定着パッド320と接触している領域は、それらが加熱回転時に蓄熱しているため、加熱回転停止後の温度低下に時間がかかる。逆に、何れの張架部材にも接触していない定着ベルト310の領域は熱容量の小さい薄肉ベルト単体なので温度低下は速い。
【0054】
このように、定着ベルト310の回転方向に温度低下の速度に差があるため、定着ベルト310の回転方向に関し、ローラなどの張架部材により張架された張架部と、張架されていない非張架部で温度差が生じる。そして、局所的な熱膨張差による定着ベルト310の歪みが発生してしまう。特に、加熱ローラ340、ステアリングローラ350、定着パッド320の熱容量が、定着ベルトの熱容量に対して大きいと、この温度差が顕著になり易い。
【0055】
図6(a)~(c)に、定着ベルト310の回転駆動停止時の加熱ローラ340の温度を変えたときの定着ベルト310回転駆動停止後の温度時間推移を示す。図6(a)は、停止時温度が170℃、図6(b)は停止時温度が185℃、図6(c)は停止時温度が200℃である。170℃は、プリント待機状態(スタンバイ状態)の温度設定、185℃は通常プリント時(画像形成動作時)の温度設定、200℃は厚紙(坪量300gsm(g/m)以上)プリント時の温度設定である。
【0056】
横軸は、時間であり5秒時点で定着ベルト310の回転駆動を停止している。加熱ローラ340との接触部の定着ベルト310の温度(実線)は、定着ベルト310が加熱ローラ340と接触している領域の回転方向中心位置を外周面側から非接触放射温度計で計測している。また、非接触部の定着ベルト310の温度(破線)は、加熱ローラ340とステアリングローラ350の中間点を外周面側から非接触放射温度計で計測している。
【0057】
ここで、加熱ローラ340との接触部の定着ベルト310の温度は、加熱ローラ340の蓄熱量が多いほど冷えにくいため、停止時の加熱ローラ340温度が高いほど温度低下が遅い結果になっている。一方、非接触部の定着ベルト310の温度は、停止時の加熱ローラ340の温度の影響は小さく、ほぼ同じ温度低下を示している。この結果、定着ベルト310の回転方向における最大温度差は、図6(a)が53℃、図6(b)が67℃、図6(c)が82℃となり、停止時の加熱ローラ340の温度が高いほど温度差が大きくなることがわかった。
【0058】
図7に、定着ベルト310の回転停止時の加熱ローラ340の温度と、定着ベルト310の回転方向の最大温度差の関係を示す。また、図8に、定着ベルト310の回転方向における温度差と、定着ベルト310の座屈破壊の発生有無の実験結果を示す。「○」が座屈破壊の発生無し、「×」が座屈破壊の発生有りを表す。発生の判定は目視で行った。この結果から、定着ベルト310の回転方向における温度差が80℃以下であれば座屈破壊の発生は無いが、90℃では発生してしまうことがわかった。また図7を参照して、定着ベルト310の回転方向の最大温度差を座屈破壊が発生しない80℃以下にするためには、停止時の加熱ローラ340の温度を200℃未満、好ましくは185℃以下に抑える必要があることがわかった。
【0059】
[定着ベルトの駆動停止時の制御]
上述のように、定着ベルト310の回転停止時には、定着ベルト310の回転方向に関して温度差が生じ、回転停止時の温度が高いほど、この温度差が高くなる。このように定着ベルトの回転方向に温度差が生じると、定着ベルトに歪みが発生してしまい、更に、その歪みが定着ベルトの降伏応力を超えると、ベルトに座屈破壊が生じる虞がある。
【0060】
そこで、本実施形態では、制御部、温度制御部及び受信部としてのCPU32(図4)は、定着ベルト310の回転を停止させる際に、サーミスタ390により検出した検出温度が所定温度よりも高い場合には、定着ベルト310の回転を継続させるようにしている。ここで、定着ベルト310の回転を停止させる際とは、CPU32が定着ベルト310の回転を停止させる指令を受けた際である。具体的には、装置の電源オフ時や電源をオンした状態であって低電力状態であるスリープ状態への移行時である。例えば、定着ベルト310の回転を停止させる指令として、ボタン操作などにより電源オフされたときにCPU32が受ける指令や、スリープ状態への移行の指令がある。本実施形態では、画像形成可能状態であるスタンバイ状態時には、定着ベルト310は回転し続けている。そして、電源がオフとスリープ状態のときは回転を停止する構成である。
【0061】
スリープ状態とは、スタンバイ状態よりも更に画像形成装置1の消費電力が低い状態であり、例えば、スタンバイ状態で所定時間操作がなかった場合やプリント信号を受信しなかった場合にスタンバイ状態からスリープ状態に移行する。また、操作によりスリープ状態に移行する場合もある。
【0062】
以下、図9を用いて定着ベルト310の駆動停止時の制御の流れについて説明する。まず、CPU32は、定着装置8の駆動停止要求(電源をオフする要求またはスリープ状態に移行する要求)、即ち、定着ベルト310の回転を停止させる要求を取得すると(S1)、サーミスタ390の温度検知結果を取得する(S2)。定着装置8の駆動停止要求を取得するとは、上述したように、CPU32がスリープ移行や電源オフの信号を受けることである。
【0063】
CPU32は、S2で検出した結果が所定温度以下、ここでは185℃以下であるか否かを判断する(S3)。そして、検出温度が所定温度よりも高い場合、即ち、185℃よりも高い場合には(S3のNO)、S2に戻り、定着ベルト310の回転を継続し、再度、サーミスタ390による温度検出結果を取得する。なお、この際、加圧ローラ330を定着ベルト310から離間させていても良いし、接触させていても良い。また、離間させる場合には、定着装置8の駆動停止要求を取得したときに離間させても良い。
【0064】
一方、CPU32は、S2で検出した温度が所定温度以下である場合、即ち、185℃以下である場合には(S3のYES)、定着装置8の駆動を停止する、即ち、定着ベルト310の回転を停止させる(S4)。なお、加圧ローラ330を定着ベルト310に接触させていた場合には、少なくとも定着ベルト310の回転停止時には加圧ローラ330を定着ベルト310から離間させておく。このように、CPU32は、定着ベルト310の回転を停止させる指令を受けた際に、サーミスタ390により検出した検出した温度が所定温度よりも高い場合には、検出温度が所定温度以下になるまで定着ベルト310の回転を継続させる。なお、所定温度は、上述の例では185℃としたが、200℃未満の値としても良い。即ち、定着ベルト310の回転を停止させる際に検出温度が200℃以上の場合には回転を継続し、200℃未満の場合に回転を停止させるようにしても良い。
【0065】
次に、定着ベルト駆動の制御例について図10ないし図13のタイミングチャートを用いて説明する。以下では、プリント動作(画像形成動作)、プリント動作の終了、スリープ移行、スリープ解除、プリン動作の順で動作するものとする。なお、プリント動作は、プリント信号に基づいて画像形成を行う動作であり、プリント動作が終了するとスタンバイ動作を開始する。また、スタンバイ状態が所定時間継続すると、スリープ状態に移行する。そして、プリント信号が入力されるとスリープ状態が解除(スリープ復帰)され、その後、プリント動作が開始する。
【0066】
また、駆動としてのモータM0は、定着ベルト310を第1速度と、第1速度よりも遅い速度で駆動可能である。ここで、第1速度をプリント速度(本例では300mm/s)とする。即ち、CPU32は、画像形成動作中は、定着ベルトを第1速度で駆動する。また、第2速度をスタンバイ速度(本例では50mm/s)とする。即ち、CPU32は、画像形成動作が終了してスタンバイ状態になった場合に、定着ベルト310の駆動速度を第1速度から第2速度に切り替える。
【0067】
図10は比較例を、図11は本実施形態の第1例を、図12は同じく第2例を、図13は同じく第3例を示す。比較例では、スリープ移行時にサーミスタ390の検出温度に拘わらず定着ベルト310の回転を停止させるようにしている。その他の構成は本実施形態と同様である。
【0068】
まず、図10に示す比較例では、プリント動作終了後に定着ベルト310の駆動をプリント速度(本例では300mm/s)からスタンバイ速度(本例では50mm/s)に変更する。その後、スリープ状態に移行する信号を受信したときに定着ベルト310の駆動を停止する。
【0069】
次に、図11に示す本実施形態の第1例では、スリープ状態に移行する信号を受信したときにサーミスタ390の温度検知結果に応じて定着ベルト310の駆動の継続の可否を判断する。定着ベルト310の回転を継続する場合、定着ベルト310駆動速度はプリント速度であってもよいし、スタンバイ速度であってもよい。即ち、スリープ移行時の3本の破線部のうち、上と中央の破線部は、サーミスタ390の検出温度が所定温度よりも高く定着ベルト310の回転を継続していることを示している。また、上の破線部はプリン速度で継続している場合、中央の破線部はスタンバイ速度で継続している場合を示している。下の破線部は、サーミスタ390の検出温度が所定温度以下で定着ベルト310の回転を停止している状態を示している。定着ベルト310の回転を継続している場合、その後にサーミスタ390の温度検知結果が所定条件を満たした場合、即ち、検出温度が所定温度以下となった場合に、定着ベルト310の駆動を停止する。
【0070】
次に、図12に示す本実施形態の第2例は、サーミスタ390の温度検知結果に応じて、定着ベルト310の駆動を継続している間に、スリープ状態から復帰する信号を受信した場合である。このときは、定着ベルト310の駆動を停止せずに駆動したままスタンバイ状態に移行する。このとき、定着ベルト310駆動速度はプリント速度であってもよいし、スタンバイ速度であってもよい(破線部)。即ち、CPU32は、定着ベルト310の回転を停止させる指令を受けた状態で定着ベルト310の回転を継続している場合に、定着ベルト310の回転を開始する指令を受けたとき、定着ベルト310の回転を継続させる。このとき、仮に、サーミスタ390の検出温度が所定温度以下となっても定着ベルト310の回転を停止することなく回転を継続させる。
【0071】
図13に示す本実施形態の第3例は、定着ベルト310がプリント速度で駆動しているときに、スリープ状態に移行する信号を受信した場合である。このときもサーミスタ390の温度検知結果に応じて、定着ベルト310の駆動の継続を判断する。図11と同様に、定着ベルト310の回転を継続する場合、定着ベルト310駆動速度はプリント速度であってもよいし、スタンバイ速度であってもよい(破線部)。
【0072】
以上、本実施形態では、定着ベルト310の駆動停止時にサーミスタ390の検出温度が所定温度よりも高い場合には、定着ベルト310の回転を継続するようにしている。これにより、定着ベルト310の回転方向の温度差による局所的な熱膨張歪みを抑制することができ、定着ベルト310の座屈破壊を防止して不良画像の形成を防止することが可能である。
【0073】
なお、本実施形態では、サーミスタ390により加熱ローラ340の温度を検出し、この検出温度に基づいて上述のような制御を行った。但し、定着ベルト310の外周面のうち、加熱ローラ340に張架された部分の温度を検出し、この検出温度に基づいて上述の制御を行うようにしても良い。即ち、定着ベルト310のうち、所定の張架部材としての加熱ローラ340に張架されている部分に関する温度は、加熱ローラ340自体の温度でも良いし、加熱ローラ340に張架された定着ベルト310の外周面(加熱ローラ340と接触する領域の定着ベルト310)であっても良い。加熱ローラ340に張架された定着ベルト310の外周面とは、定着ベルト310の回転方向に関し、加熱ローラ340と接触している部分の上流端から下流端までの範囲の外周面である。この場合、この範囲の定着ベルト310の外周面にサーミスタ390を接触又は近接させる。
【0074】
また、本実施形態では、記録材の未定着トナー像が接触する側の定着部材をベルト構成とした場合について説明した。但し、定着部材との間でニップ部を形成する加圧部材がベルト構成で、この構成に上述の制御を適用してもよいし、両方がベルト構成で、これらの構成に上述の制御を適用してもよい。
【0075】
<第2の実施形態>
第2の実施形態について、図14ないし図16を用いて説明する。上述の第1の実施形態では、加熱ローラ340の温度をサーミスタ390により検出し、この検出温度に基づいて定着ベルト310の駆動停止時の回転継続の可否を判断した。これに対して本実施形態では、定着ベルト310の回転停止後に、加熱ローラ340の温度を検出するサーミスタ390の温度と、定着ベルト310のうち、張架部材に張架されていない部分の温度を検出するサーミスタ391の温度とを検出する。そして、これらの温度差を用いて回転を差異化するか否かを判断する。その他の構成及び作用は、上述の第1の実施形態と同様であるため、同様の構成には同一の符号を付して説明及び図示を省略又は簡略にし、以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0076】
第1の実施形態では、加熱ローラ340に配置したサーミスタ390の温度検知結果に応じて定着ベルト310の駆動継続判断を行ったが、停止状態の経過時間によっては、定着ベルト310の回転方向の温度差は変化する。このため、次の駆動開始タイミングによっては、定着ベルト310の駆動を停止しなくてもよい場合もある。
【0077】
前述の図6(c)を参照すると、定着ベルト310の回転方向の温度差が80℃を超えるのは、回転を停止してから35秒経過したときである。よって、30秒以内に次のプリント信号を受信するなどして、定着ベルト310の駆動を行う場合は回転方向の温度差が80℃を超える虞はない。図8で説明したように、定着ベルト310の回転方向の温度差が80℃を超えると座屈破壊が発生する虞があるため、温度差が80℃を超えた場合には定着ベルト310を回転させて、それ以上温度差が大きくならないようにすることが好ましい。そこで、本実施形態では、以下のように構成し、定着ベルト310の駆動制御を行うようにしている。
【0078】
本実施形態の加熱ユニット300Aの定着装置8Aでは、2つのサーミスタ390、391を備える。第1温度検知部材としてのサーミスタ390は、所定の張架部材としての加熱ローラ340の温度を検出する。また、第2温度検知部材としてのサーミスタ391は、定着ベルト310のうち、複数の張架部材としての加熱ローラ340、ステアリングローラ350、定着パッド320と接触していない部分(定着ベルト310の張架されている面)の温度を検出する。
【0079】
具体的には、サーミスタ391は、定着ベルト310の回転方向における、ステアリングローラ350と定着パッド320の間で、張架されていない部分の内周面側に、接触又は近接配置されている。そして、本実施形態では、このように定着ベルト310の非張架部にサーミスタ391を配置したことで、定着ベルト310の駆動停止後において、定着ベルト310の回転方向の温度差を検出している。更に、この温度差が所定の温度差よりも大きくなった場合は、定着ベルト310の駆動を再開するようにしている。所定の温度差は、例えば80℃である。
【0080】
図15に、本実施形態の定着ベルト310の温度の回転を停止させる指令を受けて定着ベルト310の駆動を停止する際の時間推移を示す。停止時の加熱ローラ340の温度は200℃である。定着ベルト310駆動停止時のサーミスタ390とサーミスタ391の温度差を検出し、所定の温度差を超える場合に定着ベルト310の駆動を再開し、定着ベルト310の回転を再開させてから所定時間経過したときに回転を停止させる。所定時間は、例えば、15秒である。図15の例では、定着ベルト310の駆動停止から30秒後に駆動を再開し、15秒間継続した後に駆動を停止する。これにより、必要なときのみ温度差を低減する動作を行うことができ、不必要な回転動作を省き長寿命化が実現できる。
【0081】
図16を用いて定着ベルト310の駆動停止時の制御の流れについて説明する。まず、CPU32(図4)は、定着装置8Aの駆動停止要求、即ち、定着ベルト310の回転を停止させる要求を取得すると(S21)、定着装置8Aの駆動を停止、即ち、定着ベルト310の回転を停止する(S22)。定着装置8Aの駆動停止要求を取得するとは、上述したように、CPU32がスリープ移行や電源オフの信号を受けることである。次いで、CPU32は、サーミスタ390、391の温度検知結果を取得する(S23)。
【0082】
CPU32は、S23で検出したサーミスタ390、391の温度差が所定の温度差以下、ここでは80℃以下であるか否かを判断する(S24)。そして、温度差が所定の温度差以下の場合、即ち、80℃以下の場合には(S24のYES)、S23に戻り、定着ベルト310の回転を停止したまま、再度、サーミスタ390、391による温度検出結果を取得する。なお、この際、加圧ローラ330を定着ベルト310から離間させておくことが好ましい。
【0083】
一方、CPU32は、S23で検出したサーミスタ390、391の温度差が所定の温度差よりも大きくなった場合、即ち、80℃よりも大きくなった場合には(S24のNO)、定着装置8Aの駆動を再開する。即ち、定着ベルト310の回転を再開させる(S25)。この際、加圧ローラ330を定着ベルト310に接触させておくことが好ましい。そして、定着装置8Aの駆動再開から所定時間経過したとき、ここでは、15秒経過したとき(S26)、定着装置8Aの駆動を停止、即ち、定着ベルト310の回転を停止する(S27)。
【0084】
このように、CPU32は、定着ベルト310の回転を停止させる指令を受けた際に、定着ベルト310の駆動を停止する。そして、その後にサーミスタ390、391により検出した検出した温度差が所定の温度差よりも大きくなった場合には、定着ベルト310の回転を再開させ、所定時間経過したときに回転を停止する。これにより、定着ベルト310の回転方向の温度差による局所的な熱膨張歪みを抑制することができ、定着ベルト310の座屈破壊を防止して不良画像の形成を防止することが可能である。また、不要な定着ベルト310の回転を抑制することで長寿命化も図れる。
【0085】
なお、本実施形態では、サーミスタ390により加熱ローラ340の温度を検出した。但し、定着ベルト310の外周面のうち、加熱ローラ340に張架された部分の温度を検出し、この検出温度を用いて上述の制御を行うようにしても良い。即ち、定着ベルト310のうち、所定の張架部材としての加熱ローラ340に張架されている部分に関する温度は、加熱ローラ340自体の温度でも良いし、加熱ローラ340に張架された定着ベルト310の外周面であっても良い。加熱ローラ340に張架された定着ベルト310の外周面とは、定着ベルト310の回転方向に関し、加熱ローラ340と接触している部分の上流端から下流端までの範囲の外周面である。この場合、この範囲の定着ベルト310の外周面にサーミスタ390を接触又は近接させる。
【0086】
また、本実施形態では、記録材の未定着トナー像が接触する側の定着部材をベルト構成とした場合について説明した。但し、定着部材との間でニップ部を形成する加圧部材がベルト構成で、この構成に上述の制御を適用してもよいし、両方がベルト構成で、これらの構成に上述の制御を適用してもよい。
【0087】
また、本実施形態の場合も、前述の図12で説明した場合と同様に、定着ベルト310の回転再開後で、回転を継続している場合に、定着ベルト310の回転を開始する指令を受けたときは、定着ベルト310の回転を停止することなく回転を継続させる。例えば、回転再開後から所定時間経過する前に、スリープ動作から復帰する信号を受けた場合には、所定時間経過しても回転を停止することなく回転を継続する。
【0088】
<第3の実施形態>
第3の実施形態について、図17ないし図19を用いて説明する。本実施形態は、上述の第1の実施形態の構成に加えて、加圧ローラ330に向けて送風する冷却ファン393を設けている。その他の構成及び作用は、上述の第1の実施形態と同様であるため、同様の構成には同一の符号を付して説明及び図示を省略又は簡略にし、以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0089】
本実施形態の加熱ユニット300Bの定着装置8Bでは、加圧ローラ330のニップ部Nと反対側に冷却ファン393を配置し、加圧ローラ330を冷却可能としている。具体的には、図17に示すように、加圧ローラ330の鉛直方向下方に冷却ファン393を配置している。そして、定着ベルト310の駆動継続中において、温度低下を促進するために冷却ファン393を動作させる。
【0090】
即ち、CPU32(図4)は、定着ベルト310の回転を停止させる指令を受けた際に、サーミスタ390により検出した検出温度が所定温度よりも高い場合には、冷却ファン393の駆動を開始する。そして、検出温度が所定温度以下となったときに、冷却ファン393の駆動を停止させる。したがって、本実施形態では、定着ベルト310の回転を停止する際に、第1の実施形態における定着ベルト310の駆動継続期間に冷却ファン393を動作させている。
【0091】
以下、図18を用いて定着ベルト310の駆動停止時の制御の流れについて説明する。まず、CPU32は、定着装置8Bの駆動停止要求、即ち、定着ベルト310の回転を停止させる要求を取得すると(S31)、サーミスタ390の温度検知結果を取得する(S32)。定着装置8Bの駆動停止要求を取得するとは、上述したように、CPU32がスリープ移行や電源オフの信号を受けることである。定着装置8Bの駆動停止要求を取得したときには、加圧ローラ330を定着ベルト310から離間させておいても良いし、接触させたままでも良い。
【0092】
CPU32は、S32で検出した結果が所定温度以下、ここでは185℃以下であるか否かを判断する(S33)。そして、検出温度が所定温度よりも高い場合、即ち、185℃よりも高い場合には(S33のNO)、定着装置8Bを加圧状態にして冷却ファン393を駆動する(S34)。即ち、加圧ローラ330を定着ベルト310に接触させた状態で、定着ベルト310の回転を継続し、冷却ファン393を駆動する。なお、加圧ローラ330が定着ベルト310から離間していた場合には、このときに加圧ローラ330を定着ベルト310に接触させる。次いで、S32に戻り、再度、サーミスタ390による温度検出結果を取得する。
【0093】
一方、CPU32は、S32で検出した温度が所定温度以下である場合、即ち、185℃以下である場合には(S33のYES)、冷却ファン393が駆動していれば駆動を停止し、定着装置8Bを離間させる(S35)。即ち、加圧ローラ330を定着ベルト310から離間させると共に、冷却ファン393の駆動を停止する。更に、定着装置8Bの駆動を停止する、即ち、定着ベルト310の回転を停止させる(S36)。
【0094】
このように、CPU32は、定着ベルト310の回転を停止させる指令を受けた際に、サーミスタ390により検出した検出した温度が所定温度よりも高い場合には、定着ベルト310の回転を継続させると共に冷却ファン393を駆動する。なお、所定温度は、上述の例では185℃としたが、200℃未満の値としても良い。即ち、定着ベルト310の回転を停止させる際に検出温度が200℃以上の場合には冷却ファン393を駆動し、200℃未満の場合に冷却ファン393を駆動しないようにしても良い。
【0095】
次に、定着ベルト駆動の制御例について図19のタイミングチャートを用いて説明する。図19に示すベルト駆動については、前述の図11と同じである。図19に示すように、プリント動作が終了すると、加圧ローラ330を定着ベルト310から離間させる。そして、スリープ状態に移行する信号を受信したときにサーミスタ390の温度検知結果に応じて定着ベルト310の駆動の継続及び冷却ファン393の駆動の可否を判断する。定着ベルト310の駆動の継続及び冷却ファン393の駆動を行う場合には、加圧ローラ330を定着ベルト310に接触させて行う。その後にサーミスタ390の検出温度が所定温度以下となった場合に、定着ベルト310の駆動の停止、加圧ローラ330の離間、冷却ファン393の停止を行う。
【0096】
以上、本実施形態では、定着ベルト310の駆動停止時にサーミスタ390の検出温度が所定温度よりも高い場合には、定着ベルト310の回転を継続すると共に冷却ファン393を駆動するようにしている。これにより、定着ベルト310の温度差による局所的な熱膨張歪みを抑制することができ、定着ベルト310の座屈破壊を防止して不良画像の形成を防止することが可能である。更に、本実施形態では、冷却ファン393を駆動することで、定着ベルト310の冷却を促進し、より確実に定着ベルト310の局所的な熱膨張歪みを抑制することができる。
【0097】
なお、本実施形態では、冷却ファン393により加圧ローラ330を冷却する構成について説明した。但し、冷却ファン393は、定着ベルト310を冷却する構成であってもよい。更には、両方を冷却する構成であっても良い。要は、冷却ファンは、定着ベルト310と回転体としての加圧ローラ330の少なくとも一方に向けて送風するファンであれば良い。
【0098】
また、本実施形態では、第1の実施形態の制御に冷却ファン393の制御を組み合わせた例について説明したが、第2の実施形態の制御に冷却ファン393の制御を組み合わせても良い。この場合、CPU32は、定着ベルト310の回転を停止させる指令を受けて定着ベルト310の回転を停止した後に、サーミスタ390、391(図14)の温度差が所定の温度差よりも大きくなった場合には、冷却ファン393の駆動を開始する。そして、定着ベルト310の回転を停止する際に、冷却ファン393の駆動を停止させる。例えば、定着ベルト310の駆動再開から所定時間経過したときに冷却ファン393の駆動も停止する。
【0099】
<第4の実施形態>
第4の実施形態について、図20ないし図22を用いて説明する。本実施形態は、上述の第1の実施形態の構成に加えて、定着ベルト310の外周面を清掃する清掃ローラ394を設けている。その他の構成及び作用は、上述の第1の実施形態と同様であるため、同様の構成には同一の符号を付して説明及び図示を省略又は簡略にし、以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0100】
本実施形態の加熱ユニット300Cの定着装置8Cでは、定着ベルト310の外周面のうち、加熱ローラ340に張架された部分に対して当接及び離間可能な接離部材としての清掃ローラ394を配置している。清掃ローラ394は、図20に示すように、当接状態で定着ベルト310を加熱ローラ340との間で挟持するように配置されている。
【0101】
このような清掃ローラ394は、不図示の接離機構により定着ベルト310の外周面に対して当接又は離間し、当接した状態で定着ベルト310の外周面を清掃する。即ち、定着ベルト310には、定着動作に伴い、トナーや紙粉などの異物が付着する可能性がある。このため、本実施形態では、定期的或いは所定のタイミングで清掃ローラ394を定着ベルト310に接触させて定着ベルト310の外周面を清掃するようにしている。具体的には、所定のプリント枚数ごとや、定着装置8Cで記録材がジャムしたときなどに、清掃ローラ394を定着ベルト310に当接回転させて、表面を清掃するようにしている。
【0102】
また、本実施形態では、定着ベルト310の駆動継続中において、温度低下を促進するために清掃ローラ394を定着ベルト310に接触させるようにしている。即ち、CPU32(図4)は、定着ベルト310の回転を停止させる指令を受けた際に、サーミスタ390により検出した検出温度が所定温度よりも高い場合には、清掃ローラ394を定着ベルト310に当接させる。そして、検出温度が所定温度以下となったときに、清掃ローラ394を定着ベルト310から離間させる。したがって、本実施形態では、定着ベルト310の回転を停止する際に、第1の実施形態における定着ベルト310の駆動継続期間に清掃ローラ394を定着ベルト310に当接させている。
【0103】
以下、図21を用いて定着ベルト310の駆動停止時の制御の流れについて説明する。まず、CPU32は、定着装置8Cの駆動停止要求、即ち、定着ベルト310の回転を停止させる要求を取得すると(S41)、サーミスタ390の温度検知結果を取得する(S42)。定着装置8Cの駆動停止要求を取得するとは、上述したように、CPU32がスリープ移行や電源オフの信号を受けることである。定着装置8Bの駆動停止要求を取得したときには、加圧ローラ330を定着ベルト310から離間させておいても良いし、接触させたままでも良い。
【0104】
CPU32は、S42で検出した結果が所定温度以下、ここでは185℃以下であるか否かを判断する(S43)。そして、検出温度が所定温度よりも高い場合、即ち、185℃よりも高い場合には(S43のNO)、清掃ローラ394を定着ベルト310に当接させる(S44)。即ち、定着ベルト310の回転を継続し、清掃ローラ394を定着ベルト310に当接させる。次いで、S42に戻り、再度、サーミスタ390による温度検出結果を取得する。
【0105】
一方、CPU32は、S42で検出した温度が所定温度以下である場合、即ち、185℃以下である場合には(S43のYES)、清掃ローラ394が定着ベルト310に当接していれば清掃ローラ394を定着ベルト310から離間させる(S45)。更に、定着装置8Cの駆動を停止する、即ち、定着ベルト310の回転を停止させる(S46)。
【0106】
このように、CPU32は、定着ベルト310の回転を停止させる指令を受けた際に、サーミスタ390の検出温度が所定温度よりも高い場合には、定着ベルト310の回転を継続させると共に清掃ローラ394を定着ベルト310に当接させる。なお、所定温度は、上述の例では185℃としたが、200℃未満の値としても良い。即ち、定着ベルト310の回転を停止させる際に検出温度が200℃以上の場合には清掃ローラ394を当接させ、200℃未満の場合に清掃ローラ394を離間状態のままとしても良い。
【0107】
次に、定着ベルト駆動の制御例について図22のタイミングチャートを用いて説明する。図22に示すベルト駆動については、前述の図11と同じである。図22に示すように、スリープ状態に移行する信号を受信したときにサーミスタ390の温度検知結果に応じて定着ベルト310の駆動の継続及び清掃ローラ394の清掃ローラ394の着脱の可否を判断する。そして、定着ベルト310の駆動の継続及び清掃ローラ394の当接を行った場合、その後にサーミスタ390の検出温度が所定温度以下となった場合に、定着ベルト310の駆動の停止、清掃ローラ394の離間を行う。
【0108】
以上、本実施形態では、定着ベルト310の駆動停止時にサーミスタ390の検出温度が所定温度よりも高い場合には、定着ベルト310の回転を継続すると共に清掃ローラ394を当接させるようにしている。これにより、定着ベルト310の温度差による局所的な熱膨張歪みを抑制することができ、定着ベルト310の座屈破壊を防止して不良画像の形成を防止することが可能である。更に、本実施形態では、清掃ローラ394を定着ベルト310に当接させることで、定着ベルト310の冷却を促進し、より確実に定着ベルト310の局所的な熱膨張歪みを抑制することができる。
【0109】
なお、本実施形態では、定着ベルト310を清掃する清掃部材が清掃ローラである場合について説明したが、定着ベルト310に当接又は離間可能な清掃部材は、例えば不織布などにより形成されたウェブなどであっても良い。また、定着ベルト310に当接又は離間可能な接離部材は、清掃部材以外に、定着ベルト310の表面を研磨する研磨部材でもよいし、定着ベルト310の温度を長手方向に亙って均熱させる均熱部材でもよい。さらには、定着ベルト310の内周面に当接して潤滑剤を定着ベルトに供給する潤滑剤供給部材でもよい。
【0110】
また、本実施形態では、第1の実施形態の制御に接離部材の接離制御を組み合わせた例について説明したが、第2の実施形態の制御に接離部材の接離制御を組み合わせても良い。この場合、CPU32は、定着ベルト310の回転を停止させる指令を受けて定着ベルト310の回転を停止した後に、サーミスタ390、391(図14)の温度差が所定の温度差よりも大きくなった場合には、接離部材を定着ベルト310に当接させる。そして、定着ベルト310の回転を停止する際に、接離部材を定着ベルト310から離間させる。例えば、定着ベルト310の駆動再開から所定時間経過したときに接離部材を定着ベルト310から離間させる。
【0111】
<他の実施形態>
上述の第3、第4実施形態は、互いに組み合わせて実施しても良い。例えば、第1の実施形態に第3、第4の実施形態を組み合わせた場合、第1の実施形態における定着ベルト310の駆動継続期間に冷却ファン393の駆動を行うと共に、接離部材を定着ベルト310に当接させる。また、第2の実施形態に第3、第4の実施形態を組み合わせた場合、定着ベルト310の駆動を再開させるときに、冷却ファン393の駆動を行うと共に、接離部材を定着ベルト310に当接させる。
【0112】
また、上述の各実施形態では、定着ベルトを定着パッド、補助駆動ローラ及びステアリングローラにより張架する定着装置について説明した。但し、本発明が適用可能な定着装置はこれに限らず、例えば、1個の張架ローラと定着パッドのみにより定着ベルトが張架される構成であっても良い。要は、定着パッドと共に定着ベルトを張架する少なくとも1個の張架ローラを備えていれば良い。
【符号の説明】
【0113】
1・・・画像形成装置/8、8A、8B、8C・・・定着装置/32・・・CPU(制御)/310・・・定着ベルト(ベルト)/320・・・定着パッド(張架部材、パッド部材)/330・・・加圧ローラ(回転体、駆動ローラ)/340・・・加熱ローラ(所定の張架部材、張架ローラ)/340a・・・ハロゲンヒータ(加熱手段)/350・・・ステアリングローラ(張架部材、張架ローラ)/390・・・サーミスタ(温度検知部材、第1温度検知部材)/391・・・サーミスタ(第2温度検知部材)/393・・・冷却ファン(ファン)/394・・・清掃ローラ(接離部材)/M0・・・モータ(駆動
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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図22