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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】庇
(51)【国際特許分類】
   E04B 7/02 20060101AFI20240603BHJP
   E04F 10/08 20060101ALI20240603BHJP
   E04B 1/00 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
E04B7/02 501D
E04F10/08
E04B1/00 503
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020091981
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021188290
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鑄物 由喜
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-140817(JP,A)
【文献】特開2005-290821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 7/02
E04B 1/00
E04F 10/08
E04D 1/00- 3/40
E04D 13/00-15/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の側面に取り付けられるフレームユニットと、前記フレームユニットに支持されて軒元から軒先に向かって次第に低い位置に配置されて並ぶ複数の屋根材と、を備えた庇において、
前記複数の屋根材は、それぞれ軒元から軒先に向かって次第に下がる第1勾配で傾斜し、
最も軒先寄りに配置された屋根材である先端屋根材は、前記第1勾配に加えて、水上から水下に向かって次第に下がると共に、前記第1勾配に対して直交する方向に傾く第2勾配で傾斜し、
前記複数の屋根材は、隣接する他の屋根材との連結位置に、軒元寄りの屋根材に形成された第1突出片と、軒先寄りの屋根材に形成された第2突出片とを有し、
前記第1突出片は、前記軒先に向かって延びる第1平坦部と、前記第1平坦部の先端から下方に向けて次第に傾斜する第1傾斜部と、を有し、
前記第2突出片は、前記第1突出片に向かって起立する起立部と、前記起立部の先端から前記軒先に向かって延びると共に前記第1平坦部の下面に沿う第2平坦部と、前記第2平坦部の先端から前記第1傾斜部の下面に沿って延びると共に前記第1傾斜部に連結される第2傾斜部と、を有する
ことを特徴とする庇。
【請求項2】
請求項1に記載された庇において、
前記フレームユニットは、前記軒元から前記軒先まで延びると共に、前記水上と前記水下との間に並ぶ複数の屋根小梁を有し、
前記複数の屋根小梁は、前記屋根材を支持する上面に、前記複数の屋根材のそれぞれに対向すると共に前記第1勾配で傾く複数の傾斜面と、前記複数の傾斜面をつなぐ段差面と、を有し、
前記先端屋根材に対向する傾斜面は、前記水上から前記水下に向かうにつれて次第に低くなる位置に設定されている
ことを特徴とする庇。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された庇において、
前記第1傾斜部又は前記第2傾斜部の少なくとも一方の先端に、鉛直下方に延びる鉛直部が形成されている
ことを特徴とする庇。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された庇において、
前記第1平坦部と前記第2平坦部との間には、隙間なく密着して防水性を有する気密防水材が介装されている
ことを特徴とする庇。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に取り付けられた庇に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の側面に取り付けられたフレームユニットに支持されると共に、軒元と軒先の間に並ぶ複数の屋根材を備えた庇が知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、各屋根材は、軒元から軒先に向かう下り勾配で傾斜している。また、軒元寄りに配置された屋根材よりも、軒先寄りに配置された屋根材の方が下方に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-57897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の庇における各屋根材は、全て軒元から軒先に向かう一方向の下り勾配で傾斜しているだけである。そのため、フレームユニットの軒先部分に貯留した雨水を水下に向けて積極的に流すことが難しく、フレームユニットの軒先部分に雨水が溜まってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、軒先に向かって流れた雨水の排水性を向上させることができる庇を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、建物の側面に取り付けられるフレームユニットと、前記フレームユニットに支持されて軒元から軒先に向かって次第に低い位置に配置されて並ぶ複数の屋根材と、を備える庇である。ここで、前記複数の屋根材は、それぞれ軒元から軒先に向かって次第に下がる第1勾配で傾斜する。さらに、最も軒先側に配置された屋根材である先端屋根材は、前記第1勾配に加えて、水上から水下に向かって次第に下がると共に、前記第1勾配に対して直交する方向に傾く第2勾配で傾斜する。また、前記複数の屋根材は、隣接する他の屋根材との連結位置に、軒元寄りの屋根材に形成された第1突出片と、軒先寄りの屋根材に形成された第2突出片とを有し、前記第1突出片は、前記軒先に向かって延びる第1平坦部と、前記第1平坦部の先端から下方に向けて次第に傾斜する第1傾斜部と、を有し、前記第2突出片は、前記第1突出片に向かって起立する起立部と、前記起立部の先端から前記軒先に向かって延びると共に前記第1平坦部の下面に沿う第2平坦部と、前記第2平坦部の先端から前記第1傾斜部の下面に沿って延びると共に前記第1傾斜部に連結される第2傾斜部と、を有する。

【発明の効果】
【0007】
よって、本発明の庇では、軒先に向かって流れた雨水の排水性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の庇を適用した玄関ポーチを示す外観斜視図である。
図2】実施例1の庇のフレームユニット及び屋根材を示す分解斜視図である。
図3】実施例1の庇の断面図である。
図4】実施例1の庇の屋根小梁を示す斜視図である。
図5図2に示すA-A断面図である。
図6図2に示すB-B断面図である。
図7】実施例1の庇の屋根材の勾配を示す説明図である。
図8図3に示すC部の拡大図である。
図9A】実施例1の庇における屋根材間の防水施工手順を示す説明図であり、(a)は第1ブチルテープ貼付工程を示し、(b)は第2ブチルテープ貼付工程を示し、(c)は図9A(b)のD-D断面図を示す。
図9B】実施例1の庇における屋根材間の防水施工手順を示す説明図であり、(d)は図9A(c)のE-E断面図を示し、(e)はコーキング工程を示し、(f)は図9B(e)のF-F断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の庇を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0010】
(実施例1)
実施例1の庇1は、図1に示すように、建物2の側面3から張り出し、玄関扉4を覆う玄関屋根に適用されている。なお、図1に示す庇1は、一対の柱5によって軒先が支持されている。
【0011】
この庇1は、図2に示すように、建物2の側面3に取り付けられるフレームユニット10と、フレームユニット10に支持される複数の屋根材30と、を備えている。複数(実施例1では一対)の屋根材30は、庇1の軒元から軒先に向かって次第に低い位置に配置されて並んでおり、ここでは、軒元寄りに位置する第1屋根材31と、軒先寄りに位置する第2屋根材32と、を有している。なお、第2屋根材32は、複数の屋根材30のうち最も軒先寄りに配置された先端屋根材に相当する。
【0012】
フレームユニット10は、三本の溝形鋼及び一本の山形鋼を矩形に組み合わせて形成されたメインフレーム11と、メインフレーム11の内側に架け渡された複数(実施例1では四本)の屋根小梁20と、メインフレーム11の内側に適宜配置された下地板受木桟11aと、を有している。このフレームユニット10では、屋根小梁20及び下地板受木桟11aに屋根材30が載置される。
【0013】
メインフレーム11は、図3に示すように、ジョイント金具6を介して建物2の二階の床梁に固定され、建物2の側面3から突出する。また、このメインフレーム11の下側は、複数の軒天受木桟12を介して軒天パネル13によって覆われている。この軒天パネル13には、図示しない縦樋が接続される排水口14(図2参照)が形成されている。この排水口14は、フレームユニット10の軒先側の一方の隅角部Xの近傍に位置する。
【0014】
さらに、メインフレーム11の軒先部分には、軒先材15が設置されている。また、軒天パネル13の裏側には、ダウンライト16が設けられている。このダウンライト16は、カバー材16aが軒天パネル13に形成された孔13aに挿入されることによって、軒天パネル13の下方に露出する。なお、ダウンライト16の本体はグラスウール16bによって覆われている。
【0015】
複数(四本)の屋根小梁20は、いずれも溝形鋼によって形成され、庇1の軒元から軒先まで延びると共に、水上と水下との間に所定間隔をあけて並んでいる。各屋根小梁20は、ウエブ23が鉛直方向に沿って起立した状態でメインフレーム11に固定され、上フランジ21が、屋根材30を支持する屋根小梁20の上面となり、下フランジ22が、軒天受木桟12が固定される屋根小梁20の下面となる。
【0016】
そして、図4に示すように、上フランジ21には、軒先に向かって軒元側から下向きの勾配で傾斜した第1傾斜面21aと、第1傾斜面21aよりも低い位置に設定されると共に、軒先に向かって軒元側から下向きの勾配で傾斜した第2傾斜面21bと、第1傾斜面21aと第2傾斜面21bとをつなぐ段差面21cと、を有する。
【0017】
ここで、第1傾斜面21aは、第2傾斜面21bよりも軒元寄りに位置し、複数の屋根材30のうちの第1屋根材31に対向する。また、第2傾斜面21bは、先端屋根材である第2屋根材32に対向する(図3参照)。一方、下フランジ22は、水平方向に沿って延在している。すなわち、屋根小梁20のウエブ23の高さHは、軒元から軒先に向かうにつれて徐々に低くなり、段差面21cの位置で急減した後、また軒元から軒先に向かうにつれて漸減する。
【0018】
さらに、水下寄りに配置された屋根小梁20は、水上寄りに配置された屋根小梁20よりも、下フランジ22から第2傾斜面21bまでの距離が短くなっている。つまり、図6に示すように、複数の屋根小梁20では、第2傾斜面21bまでのウエブ23の高さH1が、水上から水下に向かうほど低く設定されている。一方、図5及び図6に示すように、各屋根小梁20の下フランジ22の高さ位置は、同一高さ位置に設定されている。このため、複数の屋根小梁20において、水上寄りに配置された屋根小梁20の第2傾斜面21bよりも、水下寄りに配置された屋根小梁20の第2傾斜面21bの方が、低い位置に設けられる。
【0019】
なお、下フランジ22から第1傾斜面21aまでの距離(第1傾斜面21aまでのウエブ23の高さH2)は、複数の屋根小梁20において、全て同一の長さに設定されている(図5参照)。
【0020】
複数(一対)の屋根材30である第1屋根材31及び第2屋根材32は、それぞれ、下地板31a、32aと、下地板31a、32aを覆う屋根板31b、32bと、を有している。
【0021】
下地板31a、32aは、合板によって形成された平板であり、複数の屋根小梁20の上フランジ21及び下地板受木桟11aに固定される。ここで、第2屋根材32の下地板32aは、排水口14に対向する領域に、排水口14を露出させる切欠部32eが形成されている(図2参照)。
【0022】
屋根板31b、32bは、周縁部に立上がり部31c、32cを有する鋼鈑によって形成され、下地板31a、32aに載置されると共に、立上がり部31c、32cの先端に形成されたフランジ部31d、32dがメインフレーム11に固定される。なお、第2屋根材32の屋根板32bは、周縁部が全周にわたって立ち上がった箱樋形状を呈し、排水口14に対向する位置に排水開口32fが形成されている(図2参照)。
【0023】
そして、第1屋根材31は、各屋根小梁20の第1傾斜面21aによって支持される。ここで、第1傾斜面21aは、軒元から軒先に向かう下り勾配で傾斜し、第1傾斜面21aまでのウエブ23の高さH2は、複数の屋根小梁20において、全て同一の長さに設定されている。このため、図7に模式的に示すように、第1屋根材31は、第1傾斜面21aによって支持されることで、軒先に向かって軒元から次第に下がる勾配である第1勾配αで傾斜する。
【0024】
一方、第2屋根材32は、各屋根小梁20の第2傾斜面21bによって支持される。ここで、第2傾斜面21bは、軒元から軒先に向かう下り勾配で傾斜する。さらに、複数の屋根小梁20において、第2傾斜面21bまでのウエブ23の高さH1は、水上から水下に向かうにつれて次第に低くなるように設定されている。これにより、図7に模式的に示すように、第2屋根材32は、第2傾斜面21bによって支持されることで、軒元からの下り勾配である第1勾配αで傾斜すると同時に、水上から水下に向かって次第に下がると共に、第1勾配αに対して直交する方向に傾く勾配である第2勾配βで傾斜する。
【0025】
さらに、第1屋根材31と第2屋根材32との連結位置Yには、軒元寄りの第1屋根材31に、屋根板31bから第2屋根材32の上方に突出した第1突出片33aが形成され、軒先寄りの第2屋根材32に、屋根板32bから起立した第2突出片33bが形成されている。そして、第1突出片33aと第2突出片33bとが連結される。
【0026】
ここで、第1突出片33aは、図8に示すように、第1平坦部34aと、第1傾斜部34bと、鉛直部34cと、を有している。第1平坦部34aは、屋根板31bの軒先側端部を軒先に向けて延長した部分である。第1傾斜部34bは、第1平坦部34aの先端から下方に向けて次第に傾斜する部分である。鉛直部34cは、第1傾斜部34bの先端から鉛直下方に延びる部分である。
【0027】
第2突出片33bは、図8に示すように、起立部35aと、第2平坦部35bと、第2傾斜部35cと、を有している。起立部35aは、屋根板32bの軒元側端部から段差面21cに対して平行に起立した部分である。第2平坦部35bは、起立部35aの先端から軒先に向けて折り返されて、第1平坦部34aの下方に張り出した部分である。この第2平坦部35bは、第1平坦部34aの下面に沿って延びる。第2傾斜部35cは、第2平坦部35bの先端から下方に向けて次第に傾斜する部分である。第2傾斜部35cの傾斜角度は、第1傾斜部34bの傾斜角度と同一に設定され、第2傾斜部35cは第1傾斜部34bの下面に沿って延びる。
【0028】
そして、第1傾斜部34bと第2傾斜部35cとが、リベット36を介して連結されている。また、第1平坦部34aと第2平坦部35bとの間には目地材36aが充填されている。この目地材36aは、第1平坦部34aと第2平坦部35bとの間を隙間なく埋め尽くして密着することで防水性能を発揮する気密防水材である。第1平坦部34aと第2平坦部35bとは、この目地材36aを介して密接する。
【0029】
なお、上述のように第2屋根材32は、水上から水下に向かって下がる第2勾配βを有しており、第1屋根材31は第2勾配βを有していない。そのため、水下に向かうにつれて、第1突出片33aと第2突出片33bとの間に生じる隙間が大きくなる。しかしながら、第2平坦部35bや第2傾斜部35c等が撓むことで隙間を吸収し、第1傾斜部34bと第2傾斜部35cとを連結可能としている。
【0030】
以下、実施例1の庇1における、第1屋根材31と第2屋根材32との連結位置Yでの防水施工手順を説明する。
【0031】
まず、予め組み立てられたフレームユニット10に、下地板31a、32aを固定する。このとき、複数の屋根小梁20の上フランジ21の第1傾斜面21aには、第1屋根材31の下地板31aが固定され、第2傾斜面21bには、第2屋根材32の下地板32aが固定される。
【0032】
続いて、第2屋根材32の屋根板32bを下地板32aに載置し、フランジ部32dをフレームユニット10のメインフレーム11に固定する。フランジ部32dをメインフレーム11に固定したら、図9A(a)に示すように、屋根板32bの立上がり部32c及びフランジ部32dの連結位置Y側の端部に第1ブチルテープ41を貼付する。なお、「ブチルテープ」とは、ブチルゴムを含有する粘着テープである。このブチルテープは、重ねたときに生じる隙間にブチルゴムが押し出されて空間を埋め尽くす自己融着性によって密着する気密防水材である。また、第1ブチルテープ41の端部は、立上がり部32cと第2平坦部35bとの境界(コーナー部)に合わせられる。
【0033】
第1ブチルテープ41を貼付したら、図9A(b)に示すように、第2突出片33bの第2平坦部35bに第2ブチルテープ42を貼付する。このとき、第2ブチルテープ42は、第2平坦部35bと共に第2傾斜部35cの一部も覆う(図9A(c)参照)。また、図9B(d)に示すように、第2ブチルテープ42の端部は、立上がり部32cと第2平坦部35bとの境界(コーナー部)に合わせられ、第1ブチルテープ41との間にピンホールが生じないようにする。
【0034】
第2ブチルテープ42を貼付したら、図9B(e)に示すように、第2突出片33bと、第1屋根材31の下地板31aとの隙間にシリコーン製のコーキング材43を充填する。この結果、図9B(f)に示すように、第1屋根材31と第2屋根材32との連結位置Yがコーキング処理される。そして、第1屋根材31の屋根板31bを設置する際、屋根板31bから突出した第1突出片33aは、第2ブチルテープ42及びコーキング材43を介して第2突出片33bに重なる。つまり、第2ブチルテープ42及びコーキング材43が、第1平坦部34aと第2平坦部35bとの間に充填される目地材36a(気密防水材)となる。これにより、連結位置Yからの漏水が防止される。
【0035】
以下、実施例1の庇1における作用を説明する。
【0036】
実施例1の庇1では、軒元から軒先に向かって次第に低い位置に配置されて並ぶ一対の屋根材30(第1屋根材31、第2屋根材32)が、建物2の側面3に取り付けられたフレームユニット10によって支持されている。ここで、第1屋根材31は、軒元から軒先に向かう下り勾配である第1勾配αで傾斜している。さらに、最も軒先寄りに配置された先端屋根材である第2屋根材32は、第1勾配αで傾斜すると同時に、水上から水下に向かう下り勾配であって、第1勾配αに対して直交する方向に傾く第2勾配βで傾斜している。
【0037】
そのため、第1屋根材31を伝って流れる雨水は、第1勾配αによって軒先に向かって流れ、より低い位置に設置された第2屋根材32上に流れ落ちる。そして、第2屋根材32上に流れ落ちた雨水は、第1勾配αによって軒先に向かって流れると同時に、第2勾配βによって水下に向かって流れていく。
【0038】
これにより、軒先に向かって流れた雨水は、庇1の軒先に貯留することがなく、排水口14が形成された水下に向けて積極的に流下することができる。この結果、軒先に向かって流れた雨水の排水性を向上させることができる。
【0039】
また、屋根材30を第1勾配α及び第2勾配βの双方の勾配で傾斜させる場合、屋根板31b、32bの立上がり部31c、32c等の寸法設計が複雑になる等の影響でフレームユニット10との間に隙間が生じやすくなる。これに対し、実施例1では、最も軒先側に配置された第2屋根材32のみが第1勾配α及び第2勾配βの双方の勾配で傾斜し、第1屋根材31は、第1勾配αだけで傾斜している。そのため、庇1の出幅を大きくしても、屋根材30の寸法設計が複雑になることを防止し、防水性の悪化を抑制することができる。つまり、庇1の出幅の拡大を可能としつつ、軒先に向かって流れた雨水の排水性を向上させることができる。
【0040】
また、実施例1では、フレームユニット10が、軒元から軒先まで延びると共に、水上と水下との間に並ぶ複数の屋根小梁20を有している。そして、複数の屋根小梁20は、屋根材30を支持する上フランジ21に、第1、第2屋根材31、32にそれぞれ対向すると共に軒元から軒先に向かう下り勾配で傾く複数の傾斜面(第1傾斜面21a、第2傾斜面21b)と、複数の傾斜面(第1傾斜面21a、第2傾斜面21b)をつなぐ段差面21cと、を有している。
【0041】
さらに、水下寄りに配置された屋根小梁20は、水上寄りに配置された屋根小梁20よりも、下フランジ22から第2傾斜面21bまでの距離(ウエブ23の高さH1)が短くなっており、水上寄りに配置された屋根小梁20の第2傾斜面21bよりも、水下寄りに配置された屋根小梁20の第2傾斜面21bの方が、低い位置に設けられている。
【0042】
これにより、屋根小梁20上に屋根材30を設置することで、複数の屋根材30のそれぞれを適切な勾配で容易に傾斜させることができる。このため、庇1の施工性の向上を図ることができる。
【0043】
また、実施例1の庇1は、第1屋根材31と第2屋根材32との連結位置Yに、軒元寄りの第1屋根材31に形成された第1突出片33aと、軒先寄りの第2屋根材32に形成された第2突出片33bと、を有している。
【0044】
ここで、第1突出片33aは、軒先に向かって延びる第1平坦部34aと、第1平坦部34aの先端から下方に向けて次第に傾斜する第1傾斜部34bと、を有している。また、第2突出片33bは、第1突出片33aに向かって起立する起立部35aと、起立部35aの先端から軒先に向かうと共に第1平坦部34aの下面に沿って延びる第2平坦部35bと、第2平坦部35bの先端から第1傾斜部34bの下面に沿って延びる第2傾斜部35cと、を有している。そして、第1傾斜部34bと第2傾斜部35cとがリベット36を介して連結される。
【0045】
これにより、例えば、第2傾斜部35cを鉛直方向に延在した場合と比べて、起立部35a、第2平坦部35b、第2傾斜部35cによって囲まれた空間の拡大を図ることができる。そのため、この空間にリベット36を固定するための工具を差し込んだ際、工具が第2傾斜部35c等に干渉しにくくでき、施工性の向上を図ることができる。また、第1突出片33aの表面を流れる雨水が流下しやすく、リベット36の周囲に雨水が溜まることを防止できる。
【0046】
また、実施例1では、第1傾斜部34bの先端に、鉛直方向に沿って下方に延びる鉛直部34cが形成されている。そのため、第1傾斜部34bに沿って流れた雨水は、鉛直部34cを伝って速やかに流下することができる。これにより、さらに排水性を高めることができる。
【0047】
なお、実施例1では、鉛直部34cが第1傾斜部34bの先端に形成されているが、これに限らない。第1傾斜部34bに連結される第2傾斜部35cの先端に鉛直部を形成しても良い。また、第1傾斜部34bと第2傾斜部35cの双方の先端に鉛直部を形成しても良い。
【0048】
さらに、第1平坦部34aと第2平坦部35bとの間には、気密防水材である目地材36aが介装されている。これにより、屋根板31bと屋根板32bとの間からの漏水を抑制し、下地板31a、32aへの浸水を抑制することができる。
【0049】
以上、本発明の庇を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0050】
実施例1では、複数の屋根材30として、第1屋根材31と第2屋根材32の一対の屋根材30を設けた例を示したが、これに限らない。庇1の出幅に応じて、任意の数の屋根材30を設けることができる。
【0051】
また、実施例1では、第1屋根材31と第2屋根材32との連結位置Yにおいて、第1突出片33aと第2突出片33bとをリベット36を介して連結する例を示したが、これに限らない。
【0052】
例えば、連結位置Yにおいて第1、第2突出片33a、33bを形成することなく、第1屋根材31の屋根板31bの下側に、目地材36a(ブチルテープ)を介して第2屋根材32の屋根板32bを重ね合わせ、この重ね合わせた領域をリベット36によって連結してもよい。
【0053】
また、例えば、第1傾斜部34b、第2傾斜部35cを形成しなくてもよい。この場合、第1突出片33aにおいて、第1平坦部34aの先端を鉤状に屈曲させて鉛直部34cを形成し、第2突出片33bにおいて、起立部35a及び第2平坦部35bを形成する。そして、第1平坦部34aと第2平坦部35bをリベット36によって連結する。
【符号の説明】
【0054】
1 庇
2 建物
3 側面
10 フレームユニット
11 メインフレーム
14 排水口
20 屋根小梁
21 上フランジ(上面)
22 下フランジ(下面)
23 ウエブ
21a 第1傾斜面
21b 第2傾斜面
21c 段差面
30 屋根材
31 第1屋根材
31a 下地板
31b 屋根板
32 第2屋根材
32a 下地板
32b 屋根板
33a 第1突出片
33b 第2突出片
34a 第1平坦部
34b 第1傾斜部
34c 鉛直部
35a 起立部
35b 第2平坦部
35c 第2傾斜部
36 リベット
36a 目地材(気密防水材)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B