(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 29/393 20060101AFI20240603BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20240603BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240603BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240603BHJP
B41J 2/52 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B41J29/393 101
G03G21/14
G03G15/00 303
G03G21/00 510
B41J29/393 107
B41J2/52
(21)【出願番号】P 2020094415
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】竹村 太一
【審査官】大関 朋子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-240950(JP,A)
【文献】特開2010-033037(JP,A)
【文献】特開2007-170883(JP,A)
【文献】特開2009-192463(JP,A)
【文献】特開2000-238341(JP,A)
【文献】特開平10-224653(JP,A)
【文献】特開2005-103850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/393
G03G 21/14
G03G 15/00
G03G 21/00
B41J 2/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号を変換条件に基づき変換する変換手段と、
前記変換手段により変換された前記画像信号に基づき、記録用紙に画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段により形成されたテストパターンが転写される転写体と、
前記転写体へ光を照射する照射手段と、
前記転写体上の前記テストパターンからの反射光を受光する受光手段と、
前記受光手段により受光された前記テストパターンからの反射光に基づき、前記変換条件を生成する生成手段と、を有し、
前記転写体上の前記テストパターンは前記照射手段が前記光を照射する検出位置を通過するように搬送され、
前記テストパターンは、
前記転写体が回転する回転方向に沿って低濃度から高濃度へ濃度を変化させた
第1色の第1パッチ列と、前記転写体の前記回転方向に沿って高濃度から低濃度へ濃度を変化させた
前記第1色の第2パッチ列とが、前記転写体の前記回転方向において隣接して
おり、
前記転写体の前記回転方向に沿って低濃度から高濃度へ濃度を変化させた前記第1色と異なる第2色の第3パッチ列と、前記転写体の前記回転方向に沿って高濃度から低濃度へ濃度を変化させた前記第2色の第4パッチ列とが、前記転写体の前記回転方向において隣接しており、
前記第1パッチ列と前記第3パッチ列との両方は第1疑似中間調処理が施されており、
前記第2パッチ列と前記第4パッチ列との両方は前記第1疑似中間調処理と異なる第2疑似中間調処理が施されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1パッチ列は、前記回転方向において隣接するパッチの濃度差が閾値以下となるように、前記第1パッチ列の各パッチを形成するための画像信号値が決まっており、
前記第2パッチ列は、前記回転方向において隣接するパッチの濃度差が閾値以下となるように、前記第2パッチ列の各パッチを形成するための画像信号値が決まっていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1パッチ列の最後尾のパッチと前記第2パッチ列の先頭のパッチの濃度差が前記閾値以下となるように、前記第1パッチ列の前記最後尾のパッチを形成するための画像信号値と前記第2パッチ列の前記先頭のパッチを形成するための画像信号値とが決まっていることを特徴とする請求項
2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記受光手段は前記テストパターンからの乱反射光のみを受光する位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記変換条件は、前記画像形成手段により形成される画像の濃度が階調毎のターゲット濃度となるように前記画像信号を変換するための階調補正テーブルであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および画像形成装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、設置環境や内部環境の変動に起因する影響により、出力された画像の濃度が所望の濃度にならないことがある。例えば、短期的な変動要因としては、感光体や現像液の経時変化等の影響があり、長期的な変動要因としては、感光体や現像液の経時劣化等の変動の影響がある。このため、画像形成装置は、画像を形成する際には、各種の変動を考慮した補正をする必要がある。濃度や色味の変化を適切に補正する処理としては、キャリブレーションと称される技術が用いられている。例えば、キャリブレーションでは、濃度が一様なパターン画像を用紙や感光体、中間転写体等に形成し、形成したパターンの濃度を測定して目標値と比較し補正することで、各種条件が調整される。
【0003】
関連する技術として、特許文献1乃至3の技術が提案されている。特許文献1の技術は、記録紙上に形成された階調パターン画像を読み取って濃度補正特性を決定し、記憶された濃度と、像担持体上に形成される像の濃度との関係に応じて、濃度補正特性を調整する。特許文献2の技術は、プリンタがルックアップテーブルを調整し、維持することにより、プリンタ内のドリフトや変化を補償している。特許文献3の技術は、決められたタイミングで記録媒体にパッチ画像を形成して、濃度または色彩値を検出し、画像形成ジョブにおいて利用される目標値に近づくように、画像形成条件を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-238341号公報
【文献】特開平10-224653号公報
【文献】特開2005-103850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、キャリブレーションに要する時間の短縮化および消費するトナーの使用量の抑制が求められている。しかしながら、上述した各技術でキャリブレーションに要する時間の短縮化を図る場合、キャリブレーションに使用するパッチが大きくなり、トナーの使用量が多くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、キャリブレーションに使用するパッチの長さを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、画像信号を変換条件に基づき変換する変換手段と、前記変換手段により変換された前記画像信号に基づき、記録用紙に画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段により形成されたテストパターンが転写される転写体と、前記転写体へ光を照射する照射手段と、前記転写体上の前記テストパターンからの反射光を受光する受光手段と、前記受光手段により受光された前記テストパターンからの反射光に基づき、前記変換条件を生成する生成手段と、を有し、前記転写体上の前記テストパターンは前記照射手段が前記光を照射する検出位置を通過するように搬送され、前記テストパターンは、記転写体が回転する回転方向に沿って低濃度から高濃度へ濃度を変化させた第1色の第1パッチ列と、前記転写体の前記回転方向に沿って高濃度から低濃度へ濃度を変化させた前記第1色の第2パッチ列とが、前記転写体の前記回転方向において隣接しており、前記転写体の前記回転方向に沿って低濃度から高濃度へ濃度を変化させた前記第1色と異なる第2色の第3パッチ列と、前記転写体の前記回転方向に沿って高濃度から低濃度へ濃度を変化させた前記第2色の第4パッチ列とが、前記転写体の前記回転方向において隣接しており、前記第1パッチ列と前記第3パッチ列との両方は第1疑似中間調処理が施されており、前記第2パッチ列と前記第4パッチ列との両方は前記第1疑似中間調処理と異なる第2疑似中間調処理が施されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、キャリブレーションに使用するパッチの長さを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】画像形成装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】画像形成装置のソフトウェアモジュールの一例を示す図である。
【
図3】プリンタ画像処理部の内部構成を示すブロック図である。
【
図4】プリンタエンジンの内部構成の一部を示す図である。
【
図5】プリンタエンジンの作像部分の構成を示す図である。
【
図6】画像濃度センサの構造の一部を示す図である。
【
図8】画像濃度センサの出力と画像濃度との関係の一例を示す図である。
【
図9】自動階調補正の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】エンジンγ特性と階調補正テーブルと階調ターゲットとの関係の一例を示す図である。
【
図12】階調補正LUTの作成の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図13】合成補正LUTの作成の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図15】フォトダイオードの測定値の推移の一例を示す図である。
【
図17】本実施形態の画像濃度補正用の画像パターンの配列の一例を示す図である。
【
図18】従来の画像濃度補正用の画像パターンの配列の一例を示す図である。
【
図19】第1変形例における画像濃度補正用の画像パターンの測定順と色と画像信号値との関係を示す図である。
【
図20】第2変形例における画像濃度補正用の画像パターンの測定順と色と画像信号値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の本実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、以下の本実施形態に記載されている構成はあくまで例示に過ぎず、本発明の範囲は実施の形態に記載されている構成によって限定されることはない。以下、画像形成装置は、電子写真方式のレーザビームプリンタであるものとして説明する。ただし、本実施形態の画像形成装置は、電子写真方式のレーザビームプリンタには限定されず、インクジェットプリンタや昇華型プリンタ等に適用されてもよい。
【0011】
図1は、画像形成装置の全体構成を示すブロック図である。
図1において、画像形成装置100は、画像入力デバイスであるスキャナ101、および画像出力デバイスであるプリンタエンジン102を有する。スキャナ101とプリンタエンジン102とは、画像形成装置100の内部で接続されている。スキャナ101は、スキャナ画像処理部118を介して、デバイスI/F117に接続されている。プリンタエンジン102は、プリンタ画像処理部119を介して、デバイスI/F117に接続されている。スキャナ画像処理部118は、画像データの読み取りのための制御を行う。プリンタ画像処理部119は、プリント出力のための制御を行う。また、画像形成装置100は、LAN10や公衆回線104に通信可能に接続され、画像情報やデバイス情報の送受信を行うことができる。
【0012】
CPU105は、画像形成装置100の各部を制御し、本実施形態の各処理を行うプロセッサである。CPU105は、補正手段の機能を有する。RAM106は、CPU105が動作するためのワークメモリである。RAM106は、入力された画像データを一時的に記憶する画像メモリとしても機能する。ROM107は、各種のプログラムを記憶する。例えば、ROM107は、ブートプログラムを記憶する。HDD108は、ハードディスクドライブであり、各種処理のためのシステムソフトウェアや入力された画像データ等を記憶する。本実施形態の処理は、ROM107に記憶されたプログラムがRAM106に展開され、CPU105がRAM106に展開されたプログラムを実行することにより実現され得る。
【0013】
操作部I/F109は、画像データ等を表示可能な表示画面を有する操作部110のインタフェースであり、操作部110に対して操作画面データを出力する。また、操作部I/F109は、操作部110から操作者(例えば、ユーザ)が入力した情報をCPU105に出力する。ネットワークI/F111は、LANカード等で実現され、LAN10に接続される各機器との間で情報の送受信を行う。また、モデム112は公衆回線104と接続され、公衆回線104を介して、外部装置(例えば、サーバ等)との間で情報の送受信を行う。以上の各ユニットがシステムバス113に接続されている。
【0014】
イメージバスI/F114は、システムバス113と画像バス115とを接続するためのインタフェースであり、データ構造を変換するバスブリッジである。画像バス115は、画像データを高速で転送可能なバスである。画像バス115には、画像圧縮部103、RIP部116、デバイスI/F117、画像編集用画像処理部120、画像伸張部121およびCMM130が接続される。RIP部116は、ラスタイメージプロセッサである。CMMは、カラーマネージメントモジュールである。RIP部116は、ページ記述言語(PDL:Page Description Language)コードをイメージデータに展開するラスタイメージプロセッサである。デバイスI/F117は、スキャナ画像処理部118またはプリンタ画像処理部119を介して、スキャナ101またはプリンタエンジン102と接続し、画像データの同期系と非同期系との変換を行う。
【0015】
スキャナ画像処理部118は、スキャナ101から入力した画像データに対して、補正や編集等の各種処理を行う。画像編集用画像処理部120は、画像データの回転や色処理、二値変換、多値変換等の各種画像処理を行う。画像圧縮部103は、RIP部116やスキャナ画像処理部118、画像編集用画像処理部120で処理された画像データを、HDD108に一時的に記憶させる際に所定の圧縮方式で符号化する。
【0016】
画像伸張部121は、HDD108で圧縮されている画像データを、復号化して伸張する。例えば、画像伸張部121は、画像編集用画像処理部120やプリンタ画像処理部119により圧縮された画像データに画像処理を施し、プリンタエンジン102で出力する場合に、画像データを復号化し伸長する。CMM130は、画像データに対して、プロファイルやキャリブレーションデータに基づいた、色変換処理(色空間変換処理とも称される)を施す専用ハードウェアモジュールである。プロファイルは、機器に依存した色空間で表現したカラー画像データを機器に依存しない色空間(例えば、Lab色空間等)に変換するための関数等の情報である。キャリブレーションデータは、スキャナ101やプリンタエンジン102の色再現特性を修正するためのデータである。
【0017】
次に、画像形成装置100のソフトウェアモジュールについて説明する。
図2は、画像形成装置100のソフトウェアモジュールの一例を示す図である。各ソフトウェアモジュールは、記憶部であるHDD108等に記憶される。各ソフトウェアモジュールは、CPU105により実行される。ジョブコントロール処理モジュール201は、コピーやプリント、スキャン、FAX送受信等、画像形成装置100内で発生する各種のジョブの制御を行う。ネットワーク処理モジュール202は、主にネットワークI/F111を介して行われる外部との通信を制御するモジュールである。また、ネットワーク処理モジュール202は、LAN10に接続される機器等との間の通信制御を行う。
【0018】
UI処理モジュール203は、主に操作部I/F109の制御を行う。例えば、UI処理モジュール203は、操作部110の画面の表示制御を行う。FAX処理モジュール204は、FAX機能の制御を行う。FAX処理モジュール204は、モデム112を介してFAXの送受信を行う。プリント処理モジュール207は、ジョブコントロール処理モジュール201の指示に基づいて、プリンタエンジン102、プリンタ画像処理部119および画像編集用画像処理部120を制御し、指定された画像の印刷処理を行う。プリント処理モジュール207は、ジョブコントロール処理モジュール201から、各種の情報を受ける。各種の情報は、例えば、画像データや画像情報(画像データのサイズやカラーモード、解像度等)、レイアウト情報(オフセットや拡大縮小、面つけ等)、出力用紙情報(サイズや印字方向等)等である。
【0019】
そして、プリント処理モジュール207は、画像圧縮部103、画像伸張部121、画像編集用画像処理部120およびプリンタ画像処理部119を制御して、画像データに対して適切な画像処理を施す。プリント処理モジュール207は、画像処理が施された画像データを指定の用紙に印刷するように、プリンタエンジン102を制御する。スキャン処理モジュール210は、ジョブコントロール処理モジュール201の指示に基づいて、スキャナ101およびスキャナ画像処理部118を制御して、スキャナ101上にある原稿の読み込みを行わせる。
【0020】
スキャン処理モジュール210は、スキャナ101の原稿台にある原稿のスキャンを実行するためのモジュールである。スキャン処理モジュール210には、スキャンされた画像データ(デジタルデータ)が入力される。スキャン処理モジュール210は、入力された画像(画像データ)のカラー情報を、ジョブコントロール処理モジュール201へ通知する。また、スキャン処理モジュール210は、スキャナ画像処理部118を制御して、入力された画像に対して圧縮等の画像処理を施した後、ジョブコントロール処理モジュール201へ画像処理が施された画像を通知する。色変換処理モジュール209は、ジョブコントロール処理モジュール201の指示に基づいて、指示された画像に対して、色変換処理を行う。色変換処理モジュール209は、色変換処理後の画像をジョブコントロール処理モジュール201へ通知する。RIP処理モジュール211は、ジョブコントロール処理モジュール201の指示に基づいて、PDL解釈(インタプリット)を行う。そして、RIP処理モジュール211は、RIP部116を制御してレンダリングすることで、ビットマップイメージへの展開を行う。
【0021】
以上の構成の画像形成装置100は、印刷ジョブを受けて、プリントを行う。以下、画像形成装置100が、LAN10から印刷ジョブを受けて、プリントするまでの動作を行う例について説明する。また、プリンタ画像処理部119に入力された画像データの処理フローについても説明する。なお、画像形成装置100は、LAN10以外から印刷ジョブを受けてもよい。
【0022】
上述したように、ネットワークI/F111は、外部機器が送信したPDLを、LAN10を介して受信する。受信したPDLは、イメージバスI/F114からRIP部116へ入力される。RIP部116は、入力されたPDLの解釈を行い、RIP部116が処理可能なコードデータへ変換する。そして、RIP部116は、変換したコードデータに基づいてレンダリングを実行する。RIP部116がレンダリングしたページデータは、後段の画像圧縮部103が圧縮し、圧縮されたページデータ(圧縮データ)はHDD108に順次記憶される。HDD108に格納された圧縮データは、ジョブコントロール処理モジュール201からの指示によるプリント動作において読み出される。画像伸張部121は、読み出された圧縮データに対して伸長処理を施す。伸長された画像データは、デバイスI/F117を介して、プリンタ画像処理部119へ入力される。
【0023】
次に、プリンタ画像処理部119について説明する。
図3は、プリンタ画像処理部119の内部構成を示すブロック図である。色変換部301は、画像データを輝度値(RGBやYUV等)から濃度値(CMYK等)に変換する。色変換部301は、入力した画像データを、後段のプリンタエンジン102で印字できる色成分に対応した色空間に変換する。濃度段差補正部302は、色変換部301が濃度値にした多値の画像データを同一のページ内の濃度段差の補正をした信号値に変換する。濃度段差補正部302は、γ補正回路309と同じ入出力信号を変化させる一次元テーブルを有し、一次元テーブルに、ページ内の位置に合わせて、段差補正のための段差補正係数を乗じる。濃度段差補正部302により濃度段差補正された画像データは、γ補正回路309に入力される。γ補正回路309は、γLUTを有する補正回路である。γ補正回路309は、プリンタエンジン102で、濃度信号の濃度を再現するための信号値に変換する。γLUTは、プリンタエンジン102のγ特性に合わせて作成された出力信号を変換するテーブル(ルックアップテーブル)である。本実施形態では、γ補正回路309は、予め記憶しているテーブルを用いて処理を行うが、既知の階調制御等を用いて作成されたテーブルを用いてもよい。
【0024】
位置情報生成部303は、デバイスI/F117から入力された画像データのページ内の画像位置情報に、濃度値を補正する位置の情報を付加して補正位置情報を生成する。位置情報生成部303は、生成した補正位置情報を濃度段差補正部302に通知する。濃度段差補正部302は補正位置情報に合わせてγLUTを変更する。γ補正回路309が補正した画像データは、中間調処理部304に入力される。中間調処理部304は、入力された画像データの中間調処理を行い、1画素の各色成分が二値(1ビット)で表現される画像データに変換する。中間調処理部304が行う中間調処理としては、ディザ法や誤差拡散法等の任意の手法が用いられてもよい。中間調処理部304が変換処理を行うことにより生成された二値の画像データは、ドラム間遅延メモリ制御部305を介して、画像データ内の各画素の色成分ごとに分離されて、ページバッファメモリ306に一時的に記憶される。プリンタエンジン102より送信される各色成分に対応するビデオデータ要求信号が入力されたタイミングで、ページバッファメモリ306から、対応する色成分の画像データが読み出される。読み出された色成分データは、プリンタエンジン102に送られる。ビデオデータ要求信号は、各色成分に対応して、VREQ_Y、VREQ_M、VREQ_C、VREQ_Kとする。プリンタエンジン102内の各色成分に対応する感光ドラム1401~1404が配置された上流から下流までの距離に応じて、像担持体としての感光ドラム1401~1404のそれぞれに露光するタイミングが異なる。従って、各色成分のデータの読み出すタイミングも異なる。感光ドラム1401~1404については、後述する。
【0025】
次に、プリンタエンジン102の動作について説明する。
図4は、プリンタエンジン102の内部構成の一部を示す図である。プリンタI/F部1201には、プリンタ画像処理部119が順次出力した色成分データが入力される。プリンタI/F部1201は、プリンタエンジン102において印字動作の準備が可能となった場合、各色成分のデータを要求するビデオデータ要求信号VREQ_*(*はY/M/C/Kのいずれか)を出力する。色成分データは、パルス幅変調回路1203に入力される。そして、パルス幅変調回路1203は、実際の色成分データに基づいて、後段の各色のレーザー駆動部1212~1215を駆動させるためのパルス信号(駆動信号)を生成する。そして、パルス幅変調回路1203は、各レーザー駆動部1212~1215に、生成したパルス信号を出力する。各色成分に対応した各レーザー駆動部1212~1215は、パルス幅変調回路1203から入力したパルス信号に基づいて各色成分に対応するレーザー露光装置を駆動する。
【0026】
図5は、プリンタエンジン102の作像部分の構成を示す図である。プリンタエンジン102は、像担持体上にトナー像を形成する像形成手段に対応する。以下、主にイエローの作像部分について説明するが、他の色成分(マゼンタ、シアンおよびブラック)の作像部分についても同様である。本実施形態では、プリンタエンジン102が、YMCKの4色からなるタンデム式エンジンを用いた画像形成装置であるものとして説明する。ただし、本実施形態は、任意のプリンタエンジンを用いた画像形成装置にも適用可能である。プリンタエンジン102は、像担持体である感光ドラム1401、帯電ローラ1405、Yレーザー露光装置1406、1次転写装置1408、2次転写装置1413、定着装置1414およびクリーニング装置1415を有する。Yレーザー露光装置1406は、Yレーザー駆動部1212より駆動される。1次転写装置1408は、可視化されたトナー像を、転写材上に1次転写する。以下、転写材を中間転写ベルト1412として説明するが、転写材は、中間転写ベルトには限定されない。2次転写装置1413は、中間転写ベルト1412上に形成されたトナー像を記録用紙に2次転写する。定着装置1414は、記録用紙上に転写されたトナー像を定着する。クリーニング装置1415は、2次転写後に中間転写ベルト1412に残った転写残トナーを除去する。
【0027】
現像装置1416は、現像剤容器を有する。現像装置1416は、二成分現像剤としてトナー粒子(トナー)と磁性キャリア粒子(キャリア)とが混合された現像剤を収容している。Aスクリュー1420とBスクリュー1421とは、それぞれトナー粒子の搬送と磁性キャリア粒子との混合を行う。現像スリーブ1422は、感光ドラム1401に近接して配置され、感光ドラム1401に従動するように回転して、トナーとキャリアとが混合された現像剤を担持する。現像スリーブ1422に担持された現像剤は感光ドラム1401に接触し、感光ドラム1401上の静電潜像が現像される。プリンタエンジン102は、
図5の例には限定されない。例えば、プリンタエンジン102は、印字用紙を搬送する搬送部等を有する。
【0028】
以上のようなプリンタエンジン102において、イエローを印字する場合には、Yレーザー駆動部1212より駆動されるYレーザー露光装置1406により感光ドラム1401に露光され、感光ドラム1401上に静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、現像装置1416内の現像スリーブ1422上に担持されているイエローの現像剤によりトナー像として可視化される。可視化されたトナー像は、1次転写装置1408により中間転写ベルト1412上に転写される。同様に、マゼンタ、シアン、ブラックの各色成分についても、各現像装置1417、1418、1419により現像され、感光ドラム1402、1403、1404にそれぞれトナー像として可視化される。可視化されたトナー像は、直前に転写された色成分のトナー像と同期して、それぞれ1次転写装置1409、1410、1411により順次転写される。そして、中間転写ベルト1412上には4色のトナー像により形成された最終的なトナー画像が形成される。中間転写ベルト1412に形成されたトナー画像は、2次転写装置1413において、同期して搬送されてくる記録用紙に2次転写され、定着装置1414によりトナー像が定着される。なお、記録用紙を搬送する搬送機構等については、説明を省略する。
【0029】
次に、画像濃度センサ400について説明する。本実施形態では、
図5に示されるように、画像濃度センサ400は、転写材としての中間転写ベルト1412に対向した位置関係で配置されている。ただし、画像濃度センサ400は、任意の位置(例えば、感光ドラム上)に配置されていてもよい。画像濃度センサ400は、転写材としての中間転写ベルト1412上に形成されたトナー像の濃度を計測するセンサである。画像濃度センサ400は、濃度検出手段に対応する。
【0030】
図6は、画像濃度センサ400の構造の一部を示す図である。画像濃度センサ400は、発光ダイオード(LED)401、フォトダイオード(PD)402およびフォトダイオード(PD)403を有する。LED401は、赤外線を入射角度が約15°で照射するように配置されている。PD402は、LED401から中間転写ベルト1412およびトナー像409に照射された光の反射光を、正反射角度の位置で受光する。PD403は、乱反射角度の位置で散乱光を受光する。シャッター410は、画像濃度センサ400と中間転写ベルト1412との間に配置されている。シャッター410は、中間転写ベルト1412およびトナー像を検出する場合には、実線で示した位置に移動して開かれた状態となる。画像濃度センサ400が使用されないときには、シャッター410は、点線で示されるように画像濃度センサ400のレンズ404の前に移動する。これにより、画像濃度センサ400の各部品が汚れないようにすることができる。
【0031】
画像濃度センサ400は、電気基板407を有する。電気基板407には、PD402およびPD403の受光量に応じて流れる電流を電圧変換するIV変換機能を有する受光回路が実装されている。レンズ404は、LED401からの照射光、PD402が受光する光およびPD403が受光する光の経路を作り出すためにエポキシ樹脂から成形された光学部品である。遮蔽部材405は、LED401から発せられた光が、直接的にPD402およびPD403に入射されることを防止するために設けられている。遮蔽部材405は、例えば、黒い樹脂により構成される。遮蔽部材405が、LED401が照射した光を完全に遮蔽できない場合、PD402およびPD403に漏れる光(漏れ光406)が生じることがある。画像濃度センサ400は、正反射光および散乱光(散乱光)の両方を計測可能である。以上のように、正反射光を受光するPD402および散乱光を受光するPD403は、中間転写ベルト1412およびトナー像409の反射光を検出する。
【0032】
次に、パッチ濃度の算出方法の一例について説明する。まず、正反射光を受光するPD402が中間転写ベルト1412上のパッチ濃度を算出する場合について説明する。PD402は、正反射光成分と散乱光成分との両方を検出する。このため、PD403が検出した散乱光成分をPD402が検出した反射光成分から除去する補正演算を行うことにより、正反射光成分を算出することができる。中間転写ベルト1412からの反射光は大きく、トナー像409からの反射光は非常に小さい。トナー像409の濃度が高くなるとPD402が検出する正反射光成分は低下する。トナー像409の濃度と正反射光との関係が予め記憶されることで、検出された正反射光からトナー像409の濃度を算出し、濃度補正を行うことができる。
【0033】
次に、散乱光を受光するPD403で中間転写ベルト1412上のパッチ濃度を算出する場合について説明する。PD403は乱反射成分のみを検出する。また、トナー像409の濃度が濃くなると、トナー像409からの散乱光が増加し、散乱光成分は増加する。トナー像409の濃度と散乱光との関係が予め記憶されることで、検出された散乱光からトナー像409の濃度を算出し、濃度補正を行うことができる。トナー像409の濃度が濃くなると、トナー像409からの散乱光が増加するため、濃度補正を行うためには、PD403が用いられることが好ましい。
【0034】
図7は、画像濃度センサ400に接続される制御部400Cの構成を示すブロック図である。画像濃度センサ400は、中間転写ベルト1412からの反射光(近赤外光)を受光し、0~5Vのアナログ電気信号を生成し、生成したアナログ電気信号を制御部400Cに出力する。A/D変換回路411は、画像濃度センサ400が出力するアナログ電気信号を、8ビットのデジタル信号に変換する。濃度変換回路412は、テーブル412Tを用いて、8ビットのデジタル信号を濃度情報に変換する。濃度変換回路412は、変換されたデジタル信号をCPU413に出力する。
【0035】
図8は、画像濃度センサ400の出力と画像濃度との関係の一例を示す図である。中間転写ベルト1412上に形成された画像の画像濃度を面積階調により段階的に変化させたとき、形成された画像の濃度に応じて画像濃度センサ400の出力が変化する。
図8の例では、トナー像が中間転写ベルト1412に付着していない状態の画像濃度センサ400の出力を基準として、画像濃度のレベルは「0」から「255」まで変化する。
【0036】
中間転写ベルト1412に形成される画素におけるトナー像による面積被覆率が大きくなり、画像濃度が大きくなるに応じて、正反射光の出力は小さく、散乱光の出力は大きくなる。
図8に示されるような画像濃度センサ400の特性に基づき、画像濃度センサ400の出力から各色の濃度信号に変換するための各色専用のテーブルが、上述したテーブル412Tである。テーブル412Tは、例えば、濃度変換回路412に記憶されている。これにより、濃度変換回路412は、各色とも、良好な精度で画像の濃度を読み取ることができる。そして、濃度変換回路412は、生成した濃度情報をCPU413へと出力する。CPU413は、入力された濃度情報をCPU105に出力してもよい。また、濃度変換回路412は、生成した濃度情報をCPU105に出力してもよい。
【0037】
次に、画像濃度制御について説明する。まず、画像濃度制御を行うために必要なターゲット濃度取得方法について説明する。ターゲット濃度は、定期的に行われる、用紙に形成された出力画像(定着後のトナー画像)を用いた自動階調補正の制御時に取得される。取得されたターゲット濃度は、ROM107に記憶される。
図9は、自動階調補正の処理の流れを示すフローチャートである。ユーザ操作に基づき、自動階調補正が実行されると、画像形成装置100は、YMCKの各色所定数の画像パターンをパッチ画像として、記録用紙等の用紙に出力する(S901)。パッチ画像が出力された所定の用紙は、ユーザにより、リーダー部にセットされ、リーダー部が画像パターンの濃度を検出する(S902)。リーダー部は、例えば、CCDセンサおよび画像処理部を有する画像読み取り部である。CCDセンサは、所定の用紙に形成されたパッチ画像の輝度信号を読み取り、画像処理部が画像パターンの濃度を検出する構成を採用してもよい。
【0038】
CPU105は、検出された画像パターンの濃度から、補間処理およびスムージング処理を行い、全濃度領域のエンジンγ特性を取得する。そして、CPU105は、取得されたエンジンγ特性と予め設定されている階調ターゲットとを用いて、入力画像信号に対する階調補正テーブル(LUT)を作成する(S903)。このとき、CPU105は、逆変換処理を行い、階調補正テーブル(LUT)を作成する。
図10は、エンジンγ特性と階調補正テーブルと階調ターゲットとの関係の一例を示す図である。画像形成装置100は、階調ターゲットに対して、エンジンγ特性と一致するように逆変換処理を行い、階調補正テーブルを作成する。これより、階調ターゲットに対して所定の用紙上の濃度が全濃度領域で一致するようになる。
【0039】
図9に示されるように、CPU105は、上述した条件で複数のトナー画像パターンを形成する制御を行う(S904)。例えば、CPU105は、YMCKの各色で5階調の画像パターンを形成する制御を行う。そして、画像濃度センサ400が検出した中間転写ベルト1412上の画像濃度により、制御部400Cは濃度情報を生成する(S905)。生成された濃度情報は、CPU105に出力される(S906)。CPU105は、入力された濃度情報をRAM106やROM107等に記憶する(S907)。
図9の処理が行われることで、階調ターゲットに対して、用紙上の濃度が全ての領域(濃度領域)で合うようになる。これにより、生成された濃度情報は、中間転写ベルト1412上における入力信号に対するターゲット濃度になる。
【0040】
本実施形態では、CPU105は、階調補正テーブルが作成された後に各色5階調(30H、60H、90H、C0H、FFH)の画像パターンを形成する。画像濃度センサ400は、形成された画像パターンを検出し、CPU105は、検出結果をターゲット濃度としてRAM106やROM107等に記憶する。
図11は、ターゲット濃度の一例を示す図である。ここで、作成する階調パターンおよび階調数について、例えば、エンジンのγ特性により濃度変化が大きい中間調領域(濃度変化が所定量以上の階調領域)を重点的に補正するために中間調部分のパターン数を増やしてもよい。また、高濃度側を安定的に出力するために高濃度領域のパターン数を増やしてもよいし、ハイライト側の階調性を重要視するために低濃度領域のパターン数を増やしてもよい。つまり、必要に応じて階調パターンおよび階調数は変更可能である。
【0041】
次に、濃度調整(濃度補正)の処理の流れについて説明する。CPU105は、画像濃度補正が必要であると判定した場合、濃度補正用の画像パターン(テストパターン)を作成する。例えば、CPU105は、長時間のジョブが連続した場合や画像形成の環境が変化した場合に、濃度補正が必要であると判定する。濃度補正用の画像パターンは、上述した30H、60H、90H、C0H、FFHの5階調であるものとするが、これには限定されない。パッチの配列および順番の詳細については、後述する。
図12は、階調補正LUTの作成の処理の流れの一例を示すフローチャートである。画像濃度補正の処理がスタートすると、画像濃度補正用のパターンを形成する(S1201)。画像濃度補正用のパターンは、濃度調整用階調パッチである。そして、画像濃度センサ400は、形成された画像濃度補正用のパターンの画像濃度を検出する(S1202)。CPU105は、検出された画像濃度と予め決められているターゲット濃度とを比較し、階調補正LUTを作成し、画像形成時のLUTに反映する(S1203)。
【0042】
次に、画像濃度センサ400が検出した画像濃度をLUTに反映していく処理について説明する。ユーザ操作に基づき行われた自動階調の補正時に、画像形成装置100は、予め設定されている階調ターゲット(階調LUT)になるように、エンジンγ特性に合わせて階調補正テーブル(初期補正LUT)を形成する。そして、画像形成装置100は、各色5階調のターゲット濃度値を取得する。自動階調の補正後、入力画像データに初期補正LUTを適用してプリンタエンジン102に入力し、エンジンγ特性が合わさって出力されることによって、狙いの階調LUTになるように出力される。そして、CPU105が画像濃度補正用のパターンを作成し、画像濃度センサ400が、画像濃度補正用の画像を検出する。画像形成装置100は、画像濃度センサ400による検出結果に基づいて補正テーブル(逐次補正LUT)を順次作成する。自動階調の補正直後は、初期補正LUTと逐次補正LUTとは同じである。
【0043】
次に、合成補正LUTの作成について説明する。
図13は、合成補正LUTの作成の処理の流れの一例を示すフローチャートである。自動階調補正後において、CPU105は、最初の出力画像および画像濃度補正で使用する画像パターンを、自動階調補正時に得られた
図14(A)に示すような初期補正LUTを掛け合わせることにより作成する(S1301)。画像濃度センサ400は、作成された画像パターンを検出する。(S1302)。このとき、CPU105は、
図14(B)に示す白い丸印のように初期ターゲット濃度値の30H、60H、90H、C0H、FFHの5つの点にプロットする。画像形成装置100は、プロットされた5つの点を用いて、
図14(B)に示す二点鎖線のような濃度カーブを作成する(S1303)。濃度カーブの作成方法は、5点を結ぶような近似式を用いる等、一般的に使用される近似方法等が適用可能である。
【0044】
次に、CPU105は、S1303の時点で作成された濃度カーブを初期濃度カーブに補正するために逆変換を行い、
図14(B)に示す破線で示すような逐次補正LUTを作成する(S1304)。そして、CPU105は、逐次補正LUTと初期補正LUTとを掛け合わせて、
図14(C)の実線に示すような合成補正LUTを作成する(S205)。CPU105は、合成補正LUTを出力画像に反映させて、画像出力を行う。合成補正LUTが反映された後の出力画像および次の画像濃度補正用階調パターンは、合成補正LUTが掛け合わされた状態で画像出力される。なお、自動階調補正直後でない場合においても、合成補正LUTに、新たな逐次LUTを掛け合わせていくことで、同じ画像補正の処理で濃度補正が可能である。
【0045】
次に、パッチを検出する画像濃度センサの応答性について説明する。応答性は、画像濃度センサ400が中間転写ベルト1412上に形成された画像濃度補正用の画像パターン(テストパターン)を検出する際の反応の速さである。例えば、中間転写ベルト1412上に形成された画像パターンが検出されたときに、安定して測定できるまでに要する時間が短くなるに応じて応答性は速くなる。
図15は、中間転写ベルト1412上に画像濃度補正用の画像パターンを形成し、画像濃度センサ400で中間転写ベルト1412および画像パターンを測定したときの、乱反射を受光するPD403の測定値の推移を示す図である。
【0046】
図15において、区間Aは、画像濃度センサ400が、画像パターンが形成されていない中間転写ベルト1412上の下地の部分を測定した領域であり、区間Bは画像パターンを測定した領域である。区間Cは、区間Aと同じく下地の部分を測定した領域である。区間AおよびCでは、画像濃度センサ400のLEDが中間転写ベルト1412に赤外光を照射したとき、PD403では僅かに散乱光を受光している。
【0047】
区間Bは、画像パターンを測定している領域であり、PD403で受光する散乱光が時間的に変化する。区間B1は、画像パターンの領域を読み始めて、実際の画像濃度に相当する出力値に到達するまでの時間(センサ立ち上がり時間)であり、徐々にセンサ出力値が変化することを示している。
図15において、センサ立ち上がり時間は、約10msの時間を要している。また、区間B2は、実際の画像濃度に相当する出力値に到達してから出力値が安定している領域であり、区間B2の領域のセンサ出力値を用いて画像濃度制御が行われる。区間B3は、画像パターンの領域を読み終えてから、センサの出力値が安定的に下地の領域の出力値になるまでの時間(センサ立ち下がり時間)である。
図15の例では、センサ立ち下がり時間は、約13msの時間を要している。
【0048】
以上のように、中間転写ベルト1412上に形成された画像パターンを測定する場合、画像パターン内に、センサ立ち上がり時間およびセンサ立ち下がり時間のための領域が必要となる。例えば、中間転写ベルト1412のプロセススピードを300mm/sとした場合、センサ立ち上がりに必要な領域は「4.5mm=300×0.015」であり、センサ立ち下がりに必要な領域は「5.7mm=300×0.019」である。従って、実際に画像濃度補正用の画像パターン(テストパターン)を作成する際には、上記の領域を考慮して作成する必要がある。
【0049】
次に、本実施形態の画像パターンの配列について説明する。本実施形態では、画像濃度補正用の画像パターンは、低濃度パターンから高濃度パターンに変化する配列になっているか、または高濃度パターンから低濃度パターンに変化する配列となっている。
図16は、濃度の異なる3つの画像パターンを、画像濃度センサ400で測定したときのセンサの応答性(出力値の推移)を示す図である。
図16には、センサの応答性として、下地との濃度差が「0.35」の画像パターン、「0.91」の画像パターンおよび「1.51」の画像パターンの測定結果が示されている。
図16に示されるように、センサ立ち上がり時間およびセンサ立ち下がり時間は、画像パターンの濃度差によって異なる。センサ立ち上がり時間および立ち下がり時間の境界を、センサ出力値が安定になった時点の値から95%の時点であるとすると、各濃度差におけるセンサ立ち上がり時間および立ち下がり時間は、以下の表1のようになる。なお、ΔDは、濃度差を示す。また、上述した濃度差「0.35」は、所定の閾値に対応する。
【0050】
【0051】
図16および表1に示されるように、濃度差が大きくなると、センサ立ち上がり時間および立ち下がり時間が長くなってくることがわかる。上述したように、センサ応答性が遅くなると、測定に必要な領域が増大する。その結果、画像濃度補正用の画像パターンが大きくなり、濃度の補正時間が長くなり、濃度補正に必要なトナー量が増加するという問題が発生する。そこで、本実施形態では、画像濃度補正用の画像パターンは、隣接する画像パターンの濃度差が小さくなるように、低濃度パターンから高濃度パターンに変化する配列、または高濃度パターンから低濃度パターンに変化する配列となっている。
【0052】
図17は、本実施形態の画像濃度補正用の画像パターンの配列の一例を示す図である。本実施形態では、隣接する画像パターンの濃度差が「ΔD=0.35以下」となるように各色の階調パターンが割り振られている。従って、センサの立ち上がりに必要な時間は9msであり、立ち下がりに必要な時間は12msである。
図17(B)は、
図17(A)の画像濃度補正用の画像パターンの1つのパッチ(区画)を拡大した図である。
図17(B)の画像パターンは、主走査方向に16mm、副走査方向に16.3mmの画像パターンである。副走査方向には、センサ立ち上がり時間のための領域として「2.7mm=300mm/s×9ms」が必要となり、センサ立ち下がり時間のための領域として「3.6mm=300mm/s×12ms」が必要となる。また、センサ出力を安定して測定できる領域は10mmである。
【0053】
図17(A)は、本実施形態の各色5階調(30H、60H、90H、C0H、FFH)の画像濃度補正用の画像パターン(テストパターン)の配列を示す図である。このテストパターンでは、複数の色が連続しており、且つそれぞれの色が5階調で表現されている。測定開始位置を左端(Y_30)とした場合、最初の色のYは左端から順に薄い濃度のパッチから濃い濃度のパッチとなるように配列されている。Yの次色のMは左から順に濃い濃度のパッチから薄い濃度のパッチとなるように配列されている。Mの次色のCは左から順に薄い濃度のパッチから濃い濃度のパッチとなるように配列されている。Cの次色のKは左から順に濃い濃度のパッチから薄い濃度のパッチとなるように配列されている。
【0054】
つまり、テストパターンの各色の隣接する2色のうち1色の中の複数のパッチは、濃い濃度から薄い濃度に連続的に変化し、隣接する色の中の複数のパッチは、薄い濃度から濃い濃度に連続的に変化している。そして、テストパターンは、隣接するパッチの間の濃度段差(濃度差)が所定の閾値以下となるような配列となっている。また、隣接する2色の境界の濃度段差(濃度差)も同様に、所定の閾値以下となるような配列となっている。以上のようなテストパターンの配列を採用することで、下地とパッチとの間、およびパッチとパッチとの間に大きな濃度段差がなくなる。その結果、センサの応答性に必要な領域が小さくなり、濃度の補正時間を短縮できるとともに、使用トナー量を削減できる。上述したように、本実施形態では、濃度補正を行うために、散乱光を検出するPD403を用いているが、正反射光を検出するPD402が用いられてもよい。また、
図17(A)のテストパターンの配列において、テストパターンの両端の何れか一方または両方のパッチの濃度は、中間転写ベルト1412の濃度と、上述した所定の閾値以下であってもよい。これにより、下地とパッチとの間の濃度段差を小さくすることができる。
【0055】
図18(A)は、従来の画像濃度補正用の画像パターンの配列を示す図である。
図18(B)は、
図18(A)の画像濃度補正用の画像パターンの1つのパッチ(区画)を拡大した図である。
図18(B)の画像パターンは、主走査方向に16mm、副走査方向に20.2mmの画像パターンである。
図18(A)の画像濃度補正用の画像パターン(テストパターン)の配列は、隣接するパッチの間の濃度段差が「1.5」程度であるとする。副走査方向には、センサ立ち上がり時間のための領域として「4.2mm=300mm/s×14ms」が必要となり、センサ立ち下がり時間のための領域として「6mm=300mm/s×20ms」が必要となる。また、
図17(B)と同様、センサ出力が安定して測定できる領域は10mmである。
図18(A)は、各色5階調(30H、60H、90H、C0H、FFH)の画像濃度補正用の画像パターンの配列を示す図である。
図18(A)の例において、測定開始位置を左端(Y_30H)とした場合、YMCKは、それぞれ左端から順に左から順に薄い濃度のパッチから濃い濃度のパッチとなるように配列されている。
【0056】
以下、表2に、画像パターンの長さ(画像パターンのトータルの長さ)および画像パターンの測定に要する測定時間のそれぞれについて、本実施形態と比較例とを示す。画像パターンの測定に要する時間は、プロセススピードを300mm/sとした場合の時間であるものとする。
【0057】
【0058】
表2に示されるように、画像パターンの長さおよび測定時間は、従来の比較例よりも本実施形態の方が、約20%程度の削減が実現されている。以上説明したように、画像濃度補正用の画像パターン(テストパターン)は、低濃度パターンから高濃度パターン、高濃度パターンから低濃度パターンへ変化する配列を採用している。これにより、色味よび濃度階調性の安定化制御のためのキャリブレーションを、短時間且つ高精度に実行できるとともに、使用するトナー消費量の増加を抑制することができる。
【0059】
次に、第1変形例について説明する。第1変形例は、画像濃度補正用のパターンの配列は上述した実施形態と異なるが、他の点は上述した実施形態と同様である。
図19は、第1変形例における画像濃度補正用の画像パターンの測定順と色と画像信号値との関係を示す図である。色順、信号値については、
図19の例には限定されない。上述した実施形態では、YMCKのそれぞれの色の中で、同じ方向の濃度変化(例えば、Yでは濃くなる方向、Mでは薄くなる方向)についての配列が採用されている。一方、第1変形例では、同一色の中においても、濃度が濃くなる方向および濃度が薄くなる方向の両方の傾きを有する。
【0060】
第1変形例では、画像濃度補正用の画像パターンとして、各色10階調(18H、30H、48H、60H、78H、90H、A8H、C0H、D8H、FFH)の画像濃度補正用の画像パターンが用いられるものとして説明する。
図19は、第1変形例の画像濃度補正用の画像パターンの配列を示す図である。
図19に示されるように、各色のうち所定の色の中では、画像濃度補正用の画像パターンは、最も薄い濃度から最も濃い濃度に変化し、且つ最も濃い濃度から最も薄い濃度に変化する配列になっている。また、他の色の中では、画像濃度補正用の画像パターンは、最も濃い濃度から最も薄い濃度に変化し、且つ最も薄い濃度から最も濃い濃度に変化する配列になっている。第1変形例の画像濃度補正用の画像パターンの配列を採用することにより、隣接するパッチ間の濃度差を小さくできる。その結果、色味よび濃度階調性の安定化制御のためのキャリブレーションを、短時間且つ高精度に実行できるとともに、使用するトナー消費量の増加を抑制することができる。
【0061】
次に、第2変形例について説明する。
図20は、第2変形例における画像濃度補正用の画像パターンの測定順と色と画像信号値との関係を示す図である。色順、信号値については、
図20の例には限定されない。第2変形例では、YMCKのそれぞれの色で、複数のディザ処理のパターンを形成する場合の画像濃度補正用の画像パターン(テストパターン)の配列が採用される。第2変形例の画像濃度補正用の画像パターンは、各色10階調(18H、30H、48H、60H、78H、90H、A8H、C0H、D8H、FFH)の補正用パッチである。
図20は、第2変形例の画像濃度補正用の画像パターンの配列を示す図である。
図20に示されるように、第2変形例の画像濃度補正用の画像パターンの配列は、各色に対して、誤差拡散、低線数および高線数のディザ処理(疑似中間調処理)が行われたパターンである。疑似中間調処理としては、ディザ処理以外の処理が適用されてもよい。
【0062】
すなわち、第2変形例の画像濃度補正用の画像パターンは、それぞれの色、ディザ処理のパターンの中で、最も薄い濃度パターンから最も濃いパターンになり、最も濃いパターンから最も薄い濃度パターンへ戻るというパターンを繰り返す配列になっている。そして、誤差拡散と低線数との間の隣接するパッチの濃度差、低線数と高線数との間の隣接するパッチの濃度差および高線数と誤差拡散との間の隣接するパッチの濃度差は、所定の閾値以下である。これにより、異なる疑似中間処理が施された隣接するパッチの濃度差を小さくすることができる。従って、色味および濃度階調性の安定化制御のためのキャリブレーションを、短時間且つ高精度に実行できるとともに、使用するトナー消費量の増加を抑制することができる。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上述した各実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。本発明は、上述の各実施の形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワークや記憶媒体を介してシステムや装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータの1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行する処理でも実現可能である。また、本発明は、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0064】
100 画像形成装置
102 プリンタエンジン
105 CPU
119 プリンタ画像処理部
309 γ補正回路
400 画像濃度センサ
400C 制御部
1401 感光ドラム
1412 中間転写ベルト