(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】制御装置および変速システム
(51)【国際特許分類】
B62M 9/122 20100101AFI20240603BHJP
B62M 6/45 20100101ALI20240603BHJP
【FI】
B62M9/122
B62M6/45
(21)【出願番号】P 2020094532
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】謝花 聡
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 充彦
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-202733(JP,A)
【文献】特開2005-041480(JP,A)
【文献】特開平11-059554(JP,A)
【文献】特開2020-062925(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102745299(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 9/122
B62M 6/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車の制御装置であって、
前記人力駆動車のクランク軸の回転速度に対する車輪の回転速度の比率である変速比を変更する変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記人力駆動車に関するパラメータが第1範囲内から前記第1範囲外になることに応じて、前記変速比を変更するように前記変速装置を制御し
前記制御部は、前記変速比を変更するように前記変速装置を制御した後の所定期間の間、
前記人力駆動車に関する所定パラメータに基づく変速条件が成立する場合の前記変速比の変化を抑制するように前記変速装置を制御し、前記所定期間は、前記人力駆動車に関する情報によって異なる、制御装置。
【請求項2】
前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸の回転速度、前記クランク軸に作用するトルク、前記クランク軸に作用する仕事率、前記人力駆動車の車速、前記人力駆動車の傾斜角度、前
記変速比の変更方向、および、前記人力駆動車に駆動力を付与するモータの出力値の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
人力駆動車の制御装置であって、
前記人力駆動車のクランク軸の回転速度に対する車輪の回転速度の比率である変速比を変更する変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記人力駆動車に関するパラメータが第1範囲内から前記第1範囲外になることに応じて、前記変速比を前記変速比が大きくなる第1変速方向または前記変速比が小さくなる第2変速方向のいずれかに変更するように前記変速装置を制御し、
前記変速比を前記第1変速方向および前記第2変速方向の一方に変更するように前記変速装置を制御した後の所定期間の間、前記変速比の前記第1変速方向および前記第2変速方向の他方への変化を抑制するように前記変速装置を制御し、
前記所定期間は、前記人力駆動車に関する情報によって異なる、制御装置。
【請求項4】
前記第1範囲は、第1閾値および前記第1閾値よりも小さい第2閾値を含み、
前記制御部は、前記パラメータが前記第1閾値以上である場合に、前記変速比が大きくなるように第1変速方向に前記変速装置を制御し、前記パラメータが前記第2閾値以下である場合に、前
記変速比が小さくなるように第2変速方向に前記変速装置を制御する、請求項2
または3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記パラメータは、前記クランク軸の回転速度、前記クランク軸に作用するトルク、前記クランク軸に作用する仕事率、前記人力駆動車の車速、前記人力駆動車の傾斜角度、前
記変速比の変更方向、および、前記人力駆動車に駆動力を付与するモータの出力モードの少なくとも1つを含む、請求項
4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、
前記パラメータは、前記クランク軸の回転速度を含み、
前記制御部は、前記第2変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第1変速方向の前記変速装置の制御を前記所定期間の間抑制し、
前記トルクが大きいほど、前記所定期間は長い、請求項
4または
5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、
前記パラメータは、前記クランク軸の回転速度を含み、
前記制御部は、前記第2変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第2変速方向の前記変速装置の制御を前記所定期間の間抑制し、
前記トルクが大きいほど、前記所定期間は長い、請求項
4から
6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記所定期間は、第1所定期間を含み、
前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、
前記パラメータは、前記クランク軸の回転速度を含み、
前記制御部は、前記トルクが第1所定値以上である場合、前記第2変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第1所定期間の間前記第1変速方向の前記変速装置の制御を抑制する、請求項
4から
7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記所定期間は、第2所定期間を含み、
前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、
前記パラメータは、前記クランク軸の回転速度を含み、
前記制御部は、前記トルクが第2所定値未満である場合、前記第2変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第2所定期間の間前記第1変速方向の前記変速装置の制御を抑制する、請求項
4から
8のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記所定期間は、第3所定期間を含み、
前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、
前記パラメータは、前記クランク軸の回転速度を含み、
前記制御部は、前記トルクが第3所定値以上である場合、前記第2変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第3所定期間の間前記第2変速方向の前記変速装置の制御を抑制する、請求項
4から
9のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記所定期間は、第4所定期間を含み、
前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、
前記パラメータは、前記クランク軸の回転速度を含み、
前記制御部は、前記トルクが第4所定値未満である場合、前記第2変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第4所定期間の間前記第2変速方向の前記変速装置の制御を抑制する、請求項
4から
10のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記所定期間は、第5所定期間を含み、
前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、
前記パラメータは、前記人力駆動車の車速を含み、
前記制御部は、前記トルクが第5所定値以上である場合、前記第2変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第5所定期間の間前記第1変速方向の前記変速装置の制御を抑制する、請求項
4から
11のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項13】
前記所定期間は、第6所定期間を含み、
前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、
前記パラメータは、前記人力駆動車の車速を含み、
前記制御部は、前記トルクが第6所定値未満である場合、前記第2変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第6所定期間の間前記第1変速方向の前記変速装置の制御を抑制する、請求項
4から
12のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項14】
前記所定期間は、第7所定期間を含み、
前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、
前記パラメータは、前記人力駆動車の車速を含み、
前記制御部は、前記トルクが第7所定値以上である場合、前記第2変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第7所定期間の間前記第2変速方向の前記変速装置の制御を抑制する、請求項
4から
13のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項15】
前記所定期間は、第8所定期間を含み、
前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、
前記パラメータは、前記人力駆動車の車速を含み、
前記制御部は、前記トルクが第8所定値未満である場合、前記第2変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第8所定期間の間前記第2変速方向の前記変速装置の制御を抑制する、請求項
4から
14のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項16】
前記所定期間は、第9所定期間、および、第10所定期間を含み、
前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸の回転速度を含み、
前記パラメータは、前記クランク軸の回転速度を含み、
前記制御部は、前記クランク軸の回転速度が、前記第1閾値より大きい第3閾値以上の場合、前記第1変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第1変速方向の前記変速装置の制御を前記第9所定期間の間抑制し、
前記制御部は、前記クランク軸の回転速度が、前記第1閾値より大きく、かつ、前記第3閾値より小さい場合、前記第1変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第1変速方向の前記変速装置の制御を前記第10所定期間の間抑制し、
前記第9所定期間は、前記第10所定期間よりも短い、請求項
4から
15のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項17】
前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを更に含み、
前記トルクが大きいほど、前記第3閾値は小さい、請求項
16に記載の制御装置。
【請求項18】
前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、
前記パラメータは、前記クランク軸の回転速度を含み、
前記制御部は、前記第1変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第1変速方向の前記変速装置の制御を前記所定期間抑制し、
前記トルクが大きいほど、前記所定期間が長い、請求項
4から
17のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項19】
前記所定期間は、第11所定期間を含み、
前記制御部は、前記人力駆動車のユーザにより操作される操作装置からの操作信号により、前記変速比を変更するように前記変速装置を制御した後に、前記第11所定期間の間前記第2変速方向の前記変速装置の制御を抑制する、請求項
4から
18のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項20】
前記所定期間は、第12所定期間を含み、
前記制御部は、前記人力駆動車のユーザにより操作される操作装置からの操作信号により、前記変速比を変更するように前記変速装置を制御した後に、前記第12所定期間の間前記第1変速
方向の前記変速装置の制御を抑制する、請求項
4から
19のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項21】
前記所定期間は、第11所定期間、および、第12所定期間を含み、
前記制御部は、前記人力駆動車のユーザにより操作される操作装置からの操作信号により、前記変速比を変更するように前記変速装置を制御した後に、前記第11所定期間の間前記第2変速方向の前記変速装置の制御を抑制し、
前記制御部は、前記操作信号により、前記変速比を変更するように前記変速装置を制御した後に、前記第12所定期間の間前記第1変速
方向の前記変速装置の制御を抑制し、
前記第11所定期間よりも、前記第12所定期間の方が長い、請求項
4から
20のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項22】
前記制御部は、第1制御状態および前記第1制御状態とは異なる第2制御状態により前記変速装置を制御し、
前記第1制御状態と前記第2制御状態とは、前記所定期間の少なくとも1つが異なる、請求項
4から
21のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項23】
前記人力駆動車に駆動力を付与するモータの出力モードは、前記第1制御状態における第1出力モードと、前記第2制御状態における第2出力モードとを含み、前記第1出力モードは前記第2出力モードとは異なる、請求項22に記載の制御装置。
【請求項24】
前記制御部は、第3制御状態、および、前記第3制御状態とは異なる第4制御状態により前記変速装置を制御し、
前記第3制御状態と前記第4制御状態とは、前記所定期間の少なくとも1つが異なり、
前記制御部は、
前記第3制御状態において、前記変速比が第1上限変速比未満の場合、前記パラメータが前記第1閾値以上になったら、前
記変速比が大きくなるように第1変速方向に前記変速装置を制御し、前記変速比が前記第1上限変速比以上の場合、前記パラメータが前記第1閾値以上になっても、前
記変速比が大きくなるように第1変速方向に前記変速装置を制御せず、
前記第4制御状態において、前記変速比が第1上限変速比よりも大きい第2上限変速比未満の場合、前記パラメータが前記第1閾値以上になったら、前
記変速比が大きくなるように第1変速方向に前記変速装置を制御し、前記変速比が前記第2上限変速比以上の場合、前記パラメータが前記第1閾値以上になっても、前
記変速比が大きくなるように第1変速方向に前記変速装置を制御しない、請求項
22または
23に記載の制御装置。
【請求項25】
前記制御部は、第3制御状態、および、前記第3制御状態とは異なる第4制御状態により前記変速装置を制御し、
前記第3制御状態と前記第4制御状態とは、前記所定期間の少なくとも1つが異なり、
前記制御部は、前記第3制御状態において前記人力駆動車の車速が所定車速以下になった場合に前記変速比が第1開始変速比となるように前記変速装置を制御し、前記第4制御状態において前記車速が前記所定車速以下になった場合に前記変速比が第1開始変速比とは異なる第2開始変速比となるように前記変速装置を制御する、請求項
22から
24のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項26】
前記制御部は、前記第1範囲と前記パラメータとに基づいて、前記人力駆動車のサスペンション、および、
前記人力駆動車のアジャスタブルシートポストの少なくとも1つをさらに制御する、請求項1から
25のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項27】
請求項1から
26のいずれか一項に記載の制御装置と、
前記変速装置と、を含む、変速システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および変速システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、人力駆動車用の制御装置を開示する。特許文献1の人力駆動車用の制御装置は、所定の条件に応じて変速機を制御し、変速比を変更させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、変速比を好適に変更できる人力駆動車用の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に従う制御装置は、人力駆動車の制御装置であって、前記人力駆動車のクランク軸の回転速度に対する車輪の回転速度の比率である変速比を変更する変速装置を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記人力駆動車に関するパラメータが第1範囲内から前記第1範囲外になることに応じて、前記変速比を変更するように前記変速装置を制御し前記制御部は、前記変速比を変更するように前記変速装置を制御した後の所定期間の間、前記変速比の変化を抑制するように前記変速装置を制御し、前記所定期間は、前記人力駆動車に関する情報によって異なる。
上記第1側面の制御装置によれば、人力駆動車に関する情報によって変速比の変化を抑制する所定期間が異なる。これにより、上記第1側面の制御装置によれば、意図しない変速が抑制されるため変速比を好適に変更できる。
【0006】
前記第1側面に従う第2側面の制御装置において、前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸の回転速度、前記クランク軸に作用するトルク、前記クランク軸に作用する仕事率、前記人力駆動車の車速、前記人力駆動車の傾斜角度、前記人力駆動車の変速比の変更方向、および、前記人力駆動車に駆動力を付与するモータの出力値の少なくとも1つを含む。
上記第2側面の制御装置によれば、好適な人力駆動車に関する情報によって、変速比の変化を抑制できる所定期間を設定できる。このため、意図しない変速が抑制される。
【0007】
前記第2側面に従う第3側面の制御装置において、前記第1範囲は、第1閾値および前記第1閾値よりも小さい第2閾値を含み、前記制御部は、前記パラメータが前記第1閾値以上である場合に、前記変速比が大きくなるように第1変速方向に前記変速装置を制御し、前記パラメータが前記第2閾値以下である場合に、前記変速比が小さくなるように第2変速方向に前記変速装置を制御する。
上記第3側面の制御装置によれば、人力駆動車の変速比を好適に変更することができる。
【0008】
前記第3側面に従う第4側面の制御装置において、前記パラメータは、前記クランク軸の回転速度、前記クランク軸に作用するトルク、前記クランク軸に作用する仕事率、前記人力駆動車の車速、前記人力駆動車の傾斜角度、前記人力駆動車の変速比の変更方向、および、前記人力駆動車に駆動力を付与するモータの出力モードの少なくとも1つを含む。
上記第4側面の制御装置によれば、好適なパラメータによって人力駆動車の変速比を好適に変更することができる。
【0009】
前記第3側面または第4側面に従う第5側面の制御装置において、前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、前記パラメータは、前記クランク軸の回転速度を含み、前記制御部は、前記第2変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第1変速方向の前記変速装置の制御を前記所定期間の間抑制し、前記トルクが大きいほど、前記所定期間は長い。
上記第5側面の制御装置によれば、前記クランク軸に作用するトルクが大きいほど、所定期間が長く設定される。このため、人力駆動車の変速比の意図しない変更が抑制される。
【0010】
前記第3側面から第5側面のいずれか1つに従う第6側面の制御装置において、前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、前記パラメータは、前記クランク軸の回転速度を含み、前記制御部は、前記第2変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第2変速方向の前記変速装置の制御を前記所定期間の間抑制し、前記トルクが大きいほど、前記所定期間は長い。
上記第6側面の制御装置によれば、クランク軸に作用するトルクが大きいほど、所定期間が長く設定される。このため、人力駆動車の変速比の意図しない変更が抑制される。
【0011】
前記第3側面から第6側面のいずれか1つに従う第7側面の制御装置において、前記所定期間は、第1所定期間を含み、前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、前記パラメータは、前記クランク軸の回転速度を含み、前記制御部は、前記トルクが第1所定値以上である場合、前記第2変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第1所定期間の間前記第1変速方向の前記変速装置の制御を抑制する。
上記第7側面の制御装置によれば、クランク軸に作用するトルクが第1所定値以上である場合、第1所定期間の間第1変速方向の変速を抑制する。このため、人力駆動車の変速比の意図しない変更が抑制される。
【0012】
前記第3側面から第7側面のいずれか1つに従う第8側面の制御装置において、前記所定期間は、第2所定期間を含み、前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、前記パラメータは、前記クランク軸の回転速度を含み、前記制御部は、前記トルクが第2所定値未満である場合、前記第2変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第2所定期間の間前記第1変速方向の前記変速装置の制御を抑制する。
上記第8側面の制御装置によれば、人力駆動車の変速比の意図しない変更が抑制される。
【0013】
前記第3側面から第8側面のいずれか1つに従う第9側面の制御装置において、前記所定期間は、第3所定期間を含み、前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、前記パラメータは、前記クランク軸の回転速度を含み、前記制御部は、前記トルクが第3所定値以上である場合、前記第2変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第3所定期間の間前記第2変速方向の前記変速装置の制御を抑制する。
上記第9側面の制御装置によれば、人力駆動車の変速比の意図しない変更が抑制される。
【0014】
前記第3側面から第9側面のいずれか1つに従う第10側面の制御装置において、前記所定期間は、第4所定期間を含み、前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、前記パラメータは、前記クランク軸の回転速度を含み、前記制御部は、前記トルクが第4所定値未満である場合、前記第2変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第4所定期間の間前記第2変速方向の前記変速装置の制御を抑制する。
上記第10側面の制御装置によれば、人力駆動車の変速比の意図しない変更が抑制される。
【0015】
前記第3側面から第10側面のいずれか1つに従う第11側面の制御装置において、前記所定期間は、第5所定期間を含み、前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、前記パラメータは、前記人力駆動車の車速を含み、前記制御部は、前記トルクが第5所定値以上である場合、前記第2変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第5所定期間の間前記第1変速方向の前記変速装置の制御を抑制する。
上記第11側面の制御装置によれば、人力駆動車の変速比の意図しない変更が抑制される。
【0016】
前記第3側面から第11側面のいずれか1つに従う第12側面の制御装置において、前記所定期間は、第6所定期間を含み、前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、前記パラメータは、前記人力駆動車の車速を含み、前記制御部は、前記トルクが第6所定値未満である場合、前記第2変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第6所定期間の間前記第1変速方向の前記変速装置の制御を抑制する。
上記第12側面の制御装置によれば、人力駆動車の変速比の意図しない変更が抑制される。
【0017】
前記第3側面から第12側面のいずれか1つに従う第13側面の制御装置において、前記所定期間は、第7所定期間を含み、前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、前記パラメータは、前記人力駆動車の車速を含み、前記制御部は、前記トルクが第7所定値以上である場合、前記第2変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第7所定期間の間前記第2変速方向の前記変速装置の制御を抑制する。
上記第13側面の制御装置によれば、人力駆動車の変速比の意図しない変更が抑制される。
【0018】
前記第3側面から第13側面のいずれか1つに従う第14側面の制御装置において、前記所定期間は、第8所定期間を含み、前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、前記パラメータは、前記人力駆動車の車速を含み、前記制御部は、前記トルクが第8所定値未満である場合、前記第2変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第8所定期間の間前記第2変速方向の前記変速装置の制御を抑制する。
上記第14側面の制御装置によれば、人力駆動車の変速比の意図しない変更が抑制される。
【0019】
前記第3側面から第14側面のいずれか1つに従う第15側面の制御装置において、前記所定期間は、第9所定期間、および、第10所定期間を含み、前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸の回転速度を含み、前記パラメータは、前記クランク軸の回転速度を含み、前記制御部は、前記クランク軸の回転速度が、前記第1閾値より大きい第3閾値以上の場合、前記第1変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第1変速方向の前記変速装置の制御を前記第9所定期間の間抑制し、前記制御部は、前記クランク軸の回転速度が、前記第1閾値より大きく、かつ、前記第3閾値より小さい場合、前記第1変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第1変速方向の前記変速装置の制御を前記第10所定期間の間抑制し、前記第9所定期間は、前記第10所定期間よりも短い。
上記第15側面の制御装置によれば、人力駆動車の変速比の意図しない変更が抑制される。
【0020】
前記第15側面に従う第16側面の制御装置において、前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを更に含み、前記トルクが大きいほど、前記第3閾値は小さい。
上記第16側面の制御装置によれば、適切な第3閾値が設定されるため、人力駆動車の変速比の意図しない変更が抑制される。
【0021】
前記第3側面から第16側面のいずれか1つに従う第17側面の制御装置において、前記人力駆動車に関する情報は、前記クランク軸に作用するトルクを含み、前記パラメータは、前記クランク軸の回転速度を含み、前記制御部は、前記第1変速方向に前記変速装置を制御した後に、前記第1変速方向の前記変速装置の制御を前記所定期間抑制し、前記トルクが大きいほど、前記所定期間が長い。
上記第17側面の制御装置によれば、所定期間が定められることにより、人力駆動車の変速比の意図しない変更が抑制される。
【0022】
前記第3側面から第17側面のいずれか1つに従う第18側面の制御装置において、前記所定期間は、第11所定期間を含み、前記制御部は、前記人力駆動車のユーザにより操作される操作装置からの操作信号により、前記変速比を変更するように前記変速装置を制御した後に、前記第11所定期間の間前記第2変速方向の前記変速装置の制御を抑制する。
上記第18側面の制御装置によれば、人力駆動車の変速比の意図しない変更が抑制される。
【0023】
前記第3側面から第18側面のいずれか1つに従う第19側面の制御装置において、前記所定期間は、第12所定期間を含み、前記制御部は、前記人力駆動車のユーザにより操作される操作装置からの操作信号により、前記変速比を変更するように前記変速装置を制御した後に、前記第12所定期間の間前記第1変速方向の前記変速装置の制御を抑制する。
上記第19側面の制御装置によれば、人力駆動車の変速比の意図しない変更が抑制される。
【0024】
前記第3側面から第19側面のいずれか1つに従う第20側面の制御装置において、前記所定期間は、第11所定期間、および、第12所定期間を含み、前記制御部は、前記人力駆動車のユーザにより操作される操作装置からの操作信号により、前記変速比を変更するように前記変速装置を制御した後に、前記第11所定期間の間前記第2変速方向の前記変速装置の制御を抑制し、前記制御部は、前記操作信号により、前記変速比を変更するように前記変速装置を制御した後に、前記第12所定期間の間前記第1変速方向の前記変速装置の制御を抑制し、前記第11所定期間よりも、前記第12所定期間の方が長い。
上記第20側面の制御装置によれば、変速比をユーザが変更した後における人力駆動車の変速比の意図しない変更が抑制される。
【0025】
前記第3側面から第20側面のいずれか1つに従う第21側面の制御装置において、前記制御部は、第1制御状態および前記第1制御状態とは異なる第2制御状態により前記変速装置を制御し、前記第1制御状態と前記第2制御状態とは、前記所定期間の少なくとも1つが異なる。
上記第21側面の制御装置によれば、制御状態ごとに所定期間を設定できるため、人力駆動車の変速比の意図しない変更が抑制される。
【0026】
前記第21側面に従う第22側面の制御装置において、前記人力駆動車に駆動力を付与するモータの出力モードは、前記第1制御状態における第1出力モードと、前記第2制御状態における第2出力モードとを含み、前記第1出力モードは前記第2出力モードとは異なる。
上記第22側面の制御装置によれば、モータの出力モードに応じて適切な所定期間が設定されるため、人力駆動車の変速比の意図しない変更が抑制される。
【0027】
前記第21側面または第22側面に従う第23側面の制御装置において、前記制御部は、第3制御状態、および、前記第3制御状態とは異なる第4制御状態により前記変速装置を制御し、前記第3制御状態と前記第4制御状態とは、前記所定期間の少なくとも1つが異なり、前記制御部は、前記第3制御状態において、前記変速比が第1上限変速比未満の場合、前記パラメータが前記第1閾値以上になったら、前記変速比が大きくなるように第1変速方向に前記変速装置を制御し、前記変速比が前記第1上限変速比以上の場合、前記パラメータが前記第1閾値以上になっても、前記変速比が大きくなるように第1変速方向に前記変速装置を制御せず、前記第4制御状態において、前記変速比が第1上限変速比よりも大きい第2上限変速比未満の場合、前記パラメータが前記第1閾値以上になったら、前記変速比が大きくなるように第1変速方向に前記変速装置を制御し、前記変速比が前記第2上限変速比以上の場合、前記パラメータが前記第1閾値以上になっても、前記変速比が大きくなるように第1変速方向に前記変速装置を制御しない。
上記第23側面の制御装置によれば、制御状態ごとに所定期間を設定できるため、人力駆動車の変速比の意図しない変更が抑制される。
【0028】
前記第21側面から第23側面のいずれか1つに従う第24側面の制御装置において、前記制御部は、第3制御状態、および、前記第3制御状態とは異なる第4制御状態により前記変速装置を制御し、前記第3制御状態と前記第4制御状態とは、前記所定期間の少なくとも1つが異なり、前記制御部は、前記第3制御状態において前記人力駆動車の車速が所定車速以下になった場合に前記変速比が第1開始変速比となるように前記変速装置を制御し、前記第4制御状態において前記車速が前記所定車速以下になった場合に前記変速比が第1開始変速比とは異なる第2開始変速比となるように前記変速装置を制御する。
上記第24側面の制御装置によれば、人力駆動車の変速比が適切に設定される。
【0029】
前記第1側面から第24側面のいずれか1つに従う第25側面の制御装置において、前記制御部は、前記第1範囲と前記パラメータとに基づいて、前記人力駆動車のサスペンション、および、前記人力駆動車のアジャスタブルシートポストの少なくとも1つをさらに制御する。
上記第25側面の制御装置によれば、人力駆動車の好適な走行に貢献できる。
【0030】
本発明の第26側面に従う制御装置は、制御装置と、前記変速装置と、を含む、変速システム。
上記第26側面の変速システムによれば、人力駆動車の好適な走行に貢献できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の制御装置および変速システムによれば、変速装置を好適に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】第1実施形態の人力駆動車用の制御装置を含む人力駆動車の側面図。
【
図2】第1実施形態の人力駆動車用の制御装置を含む人力駆動車の電気的な構成を示すブロック図。
【
図3】検出部が検出するパラメータと閾値との関係の一例を表すグラフ。
【
図4】第1実施形態の制御部が実行する変速抑制制御の手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<第1実施形態>
図1から
図4を参照して、第1実施形態の制御装置50と、変速装置38と、を含む、変速システムSについて説明する。なお、以下では人力駆動車10用の制御装置50を、単に制御装置50と記載する。人力駆動車10は、少なくとも1つの車輪を有し、少なくとも人力駆動力によって駆動できる乗り物である。人力駆動車10は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、および、ハンドバイク、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車10が有する車輪の数は限定されない。人力駆動車10は、例えば1輪車および3輪以上の車輪を有する乗り物も含む。人力駆動車10は、人力駆動力のみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車10は、人力駆動力だけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するイーバイク(E-bike)を含む。イーバイクは、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車10を、自転車として説明する。
【0034】
人力駆動車10は、人力駆動力が入力されるクランク12を備える。人力駆動車10は、車輪14と、車体16と、を、さらに備える。車輪14は、後輪14Aと、前輪14Bと、を含む。車体16は、フレーム18を含む。クランク12は、フレーム18に対して回転可能なクランク軸12Aと、クランク軸12Aの軸方向の端部にそれぞれ設けられる一対のクランクアーム12Bとを含む。各クランクアーム12Bには、一対のペダル20がそれぞれ連結される。後輪14Aは、クランク12が回転することによって駆動される。後輪14Aは、フレーム18に支持される。クランク12は、駆動機構22によって後輪14Aと連結される。駆動機構22は、クランク軸12Aに連結される第1回転体24を含む。クランク軸12Aは、第1回転体24と一体回転するように連結されてもよく、第1ワンウェイクラッチを介して連結されていてもよい。第1ワンウェイクラッチは、クランク12が前転した場合に、第1回転体24を前転させ、クランク12が後転した場合に、クランク12と第1回転体24との相対回転を許容するように構成される。第1回転体24は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。駆動機構22は、第2回転体26と、連結部材28とをさらに含む。連結部材28は、第1回転体24の回転力を第2回転体26に伝達する。連結部材28は、例えば、チェーン、ベルト、または、シャフトを含む。
【0035】
第2回転体26は、後輪14Aに連結される。第2回転体26は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。第2回転体26と後輪14Aとの間には、好ましくは、第2ワンウェイクラッチが設けられている。第2ワンウェイクラッチは、第2回転体26が前転した場合に、後輪14Aを前転させ、第2回転体26が後転した場合に、第2回転体26と後輪14Aとの相対回転を許容するように構成される。
【0036】
フレーム18には、フロントフォーク30を介して前輪14Bが取り付けられている。フロントフォーク30には、ハンドルバー34がステム32を介して連結されている。本実施形態では、後輪14Aが駆動機構22によってクランク12に連結されるが、後輪14Aおよび前輪14Bの少なくとも1つが、駆動機構22によってクランク12に連結されてもよい。
【0037】
好ましくは、人力駆動車10は、バッテリ36をさらに含む。バッテリ36は、1または複数のバッテリ素子を含む。バッテリ素子は、充電池を含む。バッテリ36は、制御装置50に電力を供給するように構成される。バッテリ36は、好ましくは、制御装置50の制御部52と有線または無線によって通信可能に接続される。バッテリ36は、例えば電力線通信(PLC;power line communication)、CAN(Controller Area Network)、または、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)によって制御部52と通信可能である。
【0038】
人力駆動車10は、変速装置38を備える。変速装置38は、人力駆動車10のクランク軸12Aの回転速度に対する車輪14の回転速度の比率である変速比を変更する。本実施形態では、駆動輪は後輪14Aである。変速装置38は、例えばフロントディレイラ、リアディレイラ、および、内装変速機の少なくとも1つを含む。変速装置38が内装変速機を含む場合、内装変速機は、例えば、後輪14Aのハブに設けられる。変速装置38は、アクチュエータ38Aによって動作するように構成される。アクチュエータ38Aは、電気アクチュエータを含む。アクチュエータ38Aは、例えば、電気モータを含む。
【0039】
人力駆動車10は、検出部40をさらに含む。検出部40は、人力駆動車10に関する情報およびパラメータPを検出するように構成される。人力駆動車10に関する情報は、クランク軸12Aの回転速度、クランク軸12Aに作用するトルク、クランク軸12Aに作用する仕事率、人力駆動車10の車速、人力駆動車10の傾斜角度、人力駆動車10の変速比の変更方向、および、人力駆動車10に駆動力を付与するモータ58の出力値の少なくとも1つを含む。パラメータPは、クランク軸12Aの回転速度、クランク軸12Aに作用するトルク、クランク軸12Aに作用する仕事率、人力駆動車10の車速、人力駆動車10の傾斜角度、人力駆動車10の変速比の変更方向、および、人力駆動車10に駆動力を付与するモータ58の出力モードの少なくとも1つを含む。人力駆動車10に関する情報またはパラメータPがクランク軸12Aの回転速度を含む場合、検出部40は、クランク回転センサ42を含む。人力駆動車10に関する情報またはパラメータPが車速を含む場合、検出部40は、車速センサ44を含む。人力駆動車10に関する情報またはパラメータPがクランク軸12Aに作用するトルクを含む場合、検出部40は、人力駆動力検出部46を含む。人力駆動車10に関する情報またはパラメータPが仕事率を含む場合、検出部40は、クランク回転センサ42および人力駆動力検出部46を含む。人力駆動車10に関する情報またはパラメータPが傾斜角度を含む場合、検出部40は、傾斜検出部48を含む。人力駆動車10に関する情報またはパラメータPが変速比の変更方向を含む場合、検出部40は、変速装置38による変速比の変更方向を検出可能に構成される。人力駆動車10に関する情報が、人力駆動車10に駆動力を付与するモータ58の出力値を含む場合、検出部40は、モータ58の出力を検出可能に構成される。
【0040】
好ましくは、検出部40は、予め定める期間TAにおいて、パラメータPを2回以上検出するように構成される。予め定める期間TAは、例えば、クランク12が1回転する期間、車輪14が1回転する期間、および、予め定める時間TBである。予め定める時間TBは、例えば、一般的なライダが人力駆動車10の平道を走行する場合にクランク12が1回転する時間よりも短い時間が設定される。検出部40は、予め定める期間TAにおいて、パラメータPを1回検出するように構成されてもよい。
【0041】
クランク回転センサ42は、クランク軸12Aの回転速度に応じた情報を検出するように構成される。クランク回転センサ42は、例えば、人力駆動車10のフレーム18に設けられる。クランク回転センサ42は、磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを含んで構成される。周方向に磁界の強度が変化する環状の磁石が、クランク軸12A、クランク軸12Aに連動して回転する部材、または、クランク軸12Aから第1回転体24までの間の動力伝達経路に設けられる。クランク回転センサ42は、クランク12の回転速度に応じた信号を出力する。磁石は、クランク軸12Aから第1回転体24までの人力駆動力の動力伝達経路において、クランク軸12Aと一体に回転する部材に設けられてもよい。例えば、磁石は、クランク軸12Aと第1回転体24との間に第1ワンウェイクラッチが設けられない場合、第1回転体24に設けられてもよい。クランク回転センサ42は、磁気センサに代えて光学センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、またはトルクセンサなどを含んでいてもよい。クランク回転センサ42は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部52に接続される。好ましくは、クランク回転センサ42は、クランク12が1回転する間において、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。予め定める回数は、例えば、2以上である。好ましくは、予め定める回数は、4以上である。予め定める回数は、好ましくは4の倍数である。好ましくは、予め定める回数は、8、12、または、16である。クランク回転センサ42は、車速センサを含んで構成されていてもよい。クランク回転センサ42が車速センサを含む場合、例えば、制御部52は、車速センサによって検出される車速と、変速比とに応じてクランク12の回転速度を算出するように構成される。
【0042】
車速センサ44は、人力駆動車10の車輪14の回転速度に応じた情報を検出するように構成される。車速センサ44は、例えば、人力駆動車10の車輪14に設けられる磁石を検出するように構成される。車速センサ44は、車輪14の回転速度に応じた信号を出力する。制御部52は、車輪14の回転速度と、車輪14の周長に関する情報とに基づいて人力駆動車10の車速を算出できる。記憶部54には車輪14の周長に関する情報が記憶される。車速センサ44は、例えばリードスイッチを構成する磁性リード、または、ホール素子を含む。車速センサ44は、人力駆動車10のフレーム18のチェーンステイに取り付けられ、後輪14Aに取り付けられる磁石を検出する構成としてもよく、フロントフォーク30に設けられ、前輪14Bに取り付けられる磁石を検出する構成としてもよい。車速センサ44は、車輪14に設けられる磁石を検出する構成に限らず、例えば、光学センサなどを含んで構成されてもよい。車速センサ44は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部52に接続される。好ましくは、車速センサ44は、例えば、車輪14が1回転する間に、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。予め定める回数は、例えば、2以上である。好ましくは、予め定める回数は、4以上である。予め定める回数は、好ましくは4の倍数である。好ましくは、予め定める回数は、8、12、または、16である。本実施形態において、車速センサ44は、車輪14が一回転した場合に、リードスイッチが磁石を2回以上検出するように構成される。
【0043】
人力駆動力検出部46は、例えば、トルクセンサを含む。トルクセンサは、人力駆動力によってクランク軸12Aに与えられるトルクに応じた信号を出力するように構成される。トルクセンサは、例えば、動力伝達経路に第1ワンウェイクラッチが設けられる場合、好ましくは、第1ワンウェイクラッチよりも動力伝達経路の上流側に設けられる。トルクセンサは、歪センサ、磁歪センサ、または、圧力センサなどを含む。歪センサは、歪ゲージを含む。トルクセンサは、動力伝達経路、または、動力伝達経路に含まれる部材の近傍に含まれる部材に設けられる。動力伝達経路に含まれる部材は、例えば、クランク軸12A、クランク軸12Aと第1回転体24との間において人力駆動力を伝達する部材、クランクアーム12B、または、ペダル20である。トルクセンサは、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部52に接続される。人力駆動力検出部46は、人力駆動力に関する情報を取得できればどのような構成であってもよく、例えば、ペダル20に与えられる圧力を検出するセンサ、または、チェーンの張力を検出するセンサなどを含んでいてもよい。好ましくは、トルクセンサは、クランク12が1回転する間において、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。予め定める回数は、例えば、2以上である。好ましくは、予め定める回数は、4以上である。予め定める回数は、好ましくは4の倍数である。好ましくは、予め定める回数は、8、12、または、16である。
【0044】
傾斜検出部48は、人力駆動車10の走行する路面の傾斜角度を検出するように構成される。人力駆動車10の走行する路面の傾斜角度は、人力駆動車10の進行方向における傾斜角度によって検出できる。人力駆動車10の走行する路面の傾斜角度は、人力駆動車10の傾斜角度と対応する。傾斜検出部48は、一例では、傾斜センサを含む。傾斜センサの一例は、ジャイロセンサまたは加速度センサである。別の例では、傾斜検出部48は、GPS(Global positioning system)受信部を含む。制御部52は、GPS受信部によって取得したGPS情報と、記憶部54に予め記録されている地図情報に含まれる路面勾配とに応じて、人力駆動車10の走行する路面の傾斜角度を演算してもよい。傾斜検出部48は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部52に接続される。好ましくは、傾斜検出部48は、予め定める時間TBにおいて、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。予め定める回数は、例えば、2以上である。好ましくは、予め定める回数は、4以上である。予め定める回数は、好ましくは4の倍数である。好ましくは、予め定める回数は、8、12、または、16である。
【0045】
制御装置50は、制御部52を備える。制御部52は、変速装置38を制御する。制御部52は、予め定められる制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。演算処理装置は、相互に離れた複数の場所に設けられてもよい。制御部52は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。好ましくは、制御装置50は、記憶部54をさらに含む。記憶部54には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部54は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、および、フラッシュメモリの少なくとも1つを含む。揮発性メモリは、例えば、RAM(Random access memory)を含む。記憶部54は、モータ58の出力モードを記憶する。
【0046】
人力駆動車10は、人力駆動車10に関する情報を表示する、報知部56をさらに含む。制御部52は、報知部56を制御する。報知部56は、例えば表示部を含む。表示部は、例えば、表示パネルを備える。表示部は、例えば、携帯型電子機器、ディスプレイ、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、および、サイクルコンピュータの少なくとも1つを含む。報知部56は、スピーカを含んでいてもよい。人力駆動車10に関する情報は、人力駆動車10の車速、および、人力駆動車10の変速比を含む。
【0047】
人力駆動車10は、人力駆動車10に駆動力を付与するモータ58をさらに備える。モータ58は、人力駆動車10に推進力を付与する。モータ58は、1または複数の電気モータを含む。電気モータは、例えば、ブラシレスモータである。モータ58は、ペダル20から後輪14Aまでの人力駆動力の動力伝達経路、および、前輪14Bの少なくとも1つに回転力を伝達するように構成される。ペダル20から後輪14Aまでの人力駆動力の動力伝達経路には、後輪14Aも含まれる。
【0048】
人力駆動車10は、ユーザからの操作を受け付け、少なくとも制御部52に所定の信号を出力する操作装置60をさらに備える。操作装置60は、少なくとも変速装置38の変速比を変更する操作信号を出力する。操作信号は、変速比を第1変速方向に変更する第1操作信号と、変速比を第2変速方向に変更する第2操作信号と、を含む。好ましくは、操作装置60は複数の操作部により構成され、ユーザにより対応する操作部が操作されることにより、第1変速信号または第2変速信号を出力する。
【0049】
図3を参照して、制御部52が実行する変速制御について説明する。変速制御において、制御部52は、人力駆動車10に関するパラメータが第1範囲内から第1範囲外になることに応じて、変速比を変更するように変速装置38を制御する。第1範囲は、第1閾値TH1および第1閾値TH1よりも小さい第2閾値TH2を含む。制御部52は、パラメータPが第1閾値TH1以上である場合に、変速比が大きくなるように第1変速方向に変速装置38を制御し、パラメータPが第2閾値TH2以下である場合に、人力駆動車10の変速比が小さくなるように第2変速方向に変速装置38を制御する。
【0050】
制御部52が実行する変速抑制制御について説明する。制御部52は、変速比を変更するように変速装置38を制御した後の所定期間の間、変速比の変化を抑制するように変速装置38を制御する。所定期間は、人力駆動車10に関する情報によって異なる。一例では、人力駆動車10に関する情報がクランク軸12Aの回転速度を含む場合、クランク軸12Aの回転速度の大きさに基づいて所定期間が設定される。人力駆動車10に関する情報がクランク軸12Aに作用するトルクを含む場合、トルクの大きさに基づいて所定期間が設定される。人力駆動車10に関する情報がクランク軸12Aに作用する仕事率を含む場合、仕事率の大きさに基づいて所定期間が設定される。仕事率は、クランク軸12Aの回転速度とトルクとの積で定義される。人力駆動車10に関する情報が人力駆動車10の車速を含む場合、車速の値に基づいて所定期間が設定される。人力駆動車10に関する情報が人力駆動車10の傾斜角度を含む場合、傾斜角度の値に基づいて所定期間が設定される。人力駆動車10に関する情報が人力駆動車10の変速比の変更方向を含む場合、変速方向が第1変速方向か第2変速方向かに基づいて所定期間が設定される。人力駆動車10に関する情報が人力駆動車10に駆動力を付与するモータ58の出力値を含む場合、モータ58の出力値に応じて所定期間が設定される。
【0051】
一例では、人力駆動車10に関する情報は、クランク軸12Aに作用するトルクを含み、パラメータPは、クランク軸12Aの回転速度を含む。制御部52は、第2変速方向に変速装置38を制御した後に、第1変速方向の変速装置38の制御を所定期間の間抑制し、トルクが大きいほど、所定期間は長い。制御部52は、第2変速方向に変速装置38を制御した後に、第2変速方向の変速装置38の制御を所定期間の間抑制し、トルクが大きいほど、所定期間は長い。所定期間は、任意に設定される。第1例では、人力駆動車10に関する情報であるトルクの値が所定値以上であるか否かに応じて、所定期間が設定される。トルクの値が所定値以上である場合の所定期間の長さは、トルクの値が所定値未満である場合の所定期間の長さよりも長い。第2例では、トルクの値に応じて連続的に所定期間が変化する。制御部52は、例えば記憶部54に記憶されるトルクの値と所定期間との対応を示す変換表または変換式を参照し、トルクの値に応じた所定期間の長さが設定される。
【0052】
制御部52が実行する第1変速抑制制御について説明する。第1変速抑制制御は、変速比の変更後に第1変速方向への変速を抑制する制御である。第1変速抑制制御において、所定期間は、第1所定期間を含む。人力駆動車10に関する情報は、クランク軸12Aに作用するトルクを含み、パラメータPは、クランク軸12Aの回転速度を含む。制御部52は、トルクが第1所定値以上である場合、第2変速方向に変速装置38を制御した後に、第1所定期間の間第1変速方向の変速装置38の制御を抑制する。第1変速抑制制御において、所定期間は、第2所定期間を含む。人力駆動車10に関する情報は、クランク軸12Aに作用するトルクを含み、パラメータPは、クランク軸12Aの回転速度を含む。制御部52は、トルクが第2所定値未満である場合、第2変速方向に変速装置38を制御した後に、第2所定期間の間第1変速方向の変速装置38の制御を抑制する。第1所定期間と第2所定期間とは、同じ長さであってもよく、異なる長さであってもよい。第1所定値と第2所定値とは、同じ値であってもよく、第1所定値の方が第2所定値よりも大きい値であってもよい。
【0053】
制御部52が実行する第2変速抑制制御について説明する。第2変速抑制制御は、変速比の変更後に第2変速方向への変速を抑制する制御である。第2変速抑制制御において、所定期間は、第3所定期間を含む。人力駆動車10に関する情報は、クランク軸12Aに作用するトルクを含み、パラメータPは、クランク軸12Aの回転速度を含む。制御部52は、トルクが第3所定値以上である場合、第2変速方向に変速装置38を制御した後に、第3所定期間の間第2変速方向の変速装置38の制御を抑制する。第2変速抑制制御において、所定期間は、第4所定期間を含む。人力駆動車10に関する情報は、クランク軸12Aに作用するトルクを含み、パラメータPは、クランク軸12Aの回転速度を含む。制御部52は、トルクが第4所定値未満である場合、第2変速方向に変速装置38を制御した後に、第4所定期間の間第2変速方向の変速装置38の制御を抑制する。第3所定期間と第4所定期間とは、同じ長さであってもよく、異なる長さであってもよい。第3所定値と第4所定値とは、同じ値であってもよく、第3所定値の方が第4所定値よりも大きい値であってもよい。
【0054】
制御部52が実行する第3変速抑制制御について説明する。第3変速抑制制御は、参照するパラメータPおよび所定値が第1変速抑制制御と異なる制御である。第3変速抑制制御において、所定期間は、第5所定期間を含む。人力駆動車10に関する情報は、クランク軸12Aに作用するトルクを含み、パラメータPは、人力駆動車10の車速を含む。制御部52は、トルクが第5所定値以上である場合、第2変速方向に変速装置38を制御した後に、第5所定期間の間第1変速方向の変速装置38の制御を抑制する。第3変速抑制制御において、所定期間は、第6所定期間を含む。人力駆動車10に関する情報は、クランク軸12Aに作用するトルクを含み、パラメータPは、人力駆動車10の車速を含む。制御部52は、トルクが第6所定値未満である場合、第2変速方向に変速装置38を制御した後に、第6所定期間の間第1変速方向の変速装置38の制御を抑制する。第5所定期間と第6所定期間とは、同じ長さであってもよく、異なる長さであってもよい。第5所定値と第6所定値とは、同じ値であってもよく、第5所定値の方が第6所定値よりも大きい値であってもよい。
【0055】
制御部52は、人力駆動車10の車速から、人力駆動車10のクランク軸12Aの回転速度を推定する。制御部52は、推定されたクランク軸12Aの回転速度をパラメータPとして参照する。以下、推定されたクランク軸12Aの回転速度を単に推定回転速度と記載する場合がある。推定回転速度は、例えば人力駆動車10の車輪14の周長および変速装置38の変速比から算出される。
【0056】
制御部52が実行する第4変速抑制制御について説明する。第4変速抑制制御は、参照するパラメータPおよび所定値が第2変速抑制制御と異なる制御である。第4変速抑制制御において、所定期間は、第7所定期間を含む。人力駆動車10に関する情報は、クランク軸12Aに作用するトルクを含み、パラメータPは、人力駆動車10の車速を含む。制御部52は、トルクが第7所定値以上である場合、第2変速方向に変速装置38を制御した後に、第7所定期間の間第2変速方向の変速装置38の制御を抑制する。第4変速抑制制御において、所定期間は、第8所定期間を含む。人力駆動車10に関する情報は、クランク軸12Aに作用するトルクを含み、パラメータPは、人力駆動車10の車速を含む。制御部52は、トルクが第8所定値未満である場合、第2変速方向に変速装置38を制御した後に、第8所定期間の間第2変速方向の変速装置38の制御を抑制する。第7所定期間と第8所定期間とは、同じ長さであってもよく、異なる長さであってもよい。第7所定値と第8所定値とは、同じ値であってもよく、第7所定値の方が第8所定値よりも大きい値であってもよい。
【0057】
好ましくは、パラメータPが推定回転速度である場合、パラメータPが検出部40により検出されたクランク軸12Aの回転速度である場合よりも所定期間の長さが短い。第5所定期間は、第1所定期間よりも短い。一例では、第5所定期間は2秒であり、第1所定期間は、5秒である。第6所定期間は、第2所定期間よりも短い。一例では、第6所定期間は1秒であり、第2所定期間は3秒である。第7所定期間は、第3所定期間よりも短い。一例では、第7所定期間は1秒であり、第3所定期間は2秒である。第8所定期間は、第4所定期間よりも短い。一例では、第8所定期間は0秒であり、第4所定期間は1秒である。
【0058】
制御部52が実行する第5変速抑制制御について説明する。第5変速抑制制御において、所定期間は、第9所定期間、および、第10所定期間を含む。人力駆動車10に関する情報は、クランク軸12Aの回転速度を含み、パラメータPは、クランク軸12Aの回転速度を含む。制御部52は、クランク軸12Aの回転速度が、第1閾値TH1より大きい第3閾値TH3以上の場合、第1変速方向に変速装置38を制御した後に、第1変速方向の変速装置38の制御を第9所定期間の間抑制する。制御部52は、クランク軸12Aの回転速度が、第1閾値TH1より大きく、かつ、第3閾値TH3より小さい場合、第1変速方向に変速装置38を制御した後に、第1変速方向の変速装置38の制御を第10所定期間の間抑制する。第9所定期間は、第10所定期間よりも短い。第5変速抑制制御において、人力駆動車10に関する情報は、クランク軸12Aに作用するトルクを更に含み、トルクが大きいほど、第3閾値は小さい。一例では、第1閾値は、80rpmである。第3閾値は、100rpmである。人力駆動車10に関する情報が、クランク軸12Aに作用するトルクをさらに含む場合、トルクの値に応じて第3閾値を小さくする。一例では、トルクの値が所定値以上である場合、第3閾値は、90rpmである。別の例では、制御部52は、トルクの値に応じて、80rpmより大きく100rpmより小さい任意の値を第3閾値として設定する。
【0059】
制御部52が実行する第6変速抑制制御について説明する。第6変速抑制制御は、第1変速方向に変速比を変更した後に、所定期間の間第1変速方向および第2変速方向への変速比の変更を抑制する制御である。第6変速抑制制御において、人力駆動車10に関する情報は、クランク軸12Aに作用するトルクを含み、パラメータPは、クランク軸12Aの回転速度を含む。制御部52は、第1変速方向に変速装置38を制御した後に、第1変速方向の変速装置38の制御を所定期間抑制し、トルクが大きいほど、所定期間が長い。所定期間は、任意に設定される。第1例では、人力駆動車10に関する情報であるトルクの値が所定値以上であるか否かに応じて、所定期間が設定される。トルクの値が所定値以上である場合の所定期間の長さは、トルクの値が所定値未満である場合の所定期間の長さよりも長い。第2例では、トルクの値に応じて連続的に所定期間が変化する。制御部52は、例えば記憶部54に記憶されるトルクの値と所定期間との対応を示す変換表または変換式を参照し、トルクの値に応じた所定期間の長さが設定される。
【0060】
制御部52が実行する第7変速抑制制御について説明する。第7変速抑制制御において、第1例では所定期間は、第11所定期間を含む。制御部52は、人力駆動車10のユーザにより操作される操作装置60からの操作信号により、変速比を変更するように変速装置38を制御した後に、第11所定期間の間第2変速方向の変速装置38の制御を抑制する。操作信号は、第1操作信号および第2操作信号のいずれか1つを含む。第7変速抑制制御において、第2例では所定期間は、第12所定期間を含む。制御部52は、人力駆動車10のユーザにより操作される操作装置60からの操作信号により、変速比を変更するように変速装置38を制御した後に、第12所定期間の間第1変速方向の変速装置38の制御を抑制する。第7変速抑制制御において、第3例では所定期間は、第11所定期間、および、第12所定期間を含む。制御部52は、人力駆動車10のユーザにより操作される操作装置60からの操作信号により、変速比を変更するように変速装置38を制御した後に、第11所定期間の間第2変速方向の変速装置38の制御を抑制する。制御部52は、操作信号により、変速比を変更するように変速装置38を制御した後に、第12所定期間の間第1変速方向の変速装置38の制御を抑制する。第11所定期間よりも、第12所定期間の方が長い。一例では、第11所定期間は5秒であり第12所定期間は10秒である。
【0061】
制御部52は、第1変速抑制制御から第7変速抑制制御の少なくとも1つを人力駆動車10のバッテリ36から電力が供給される間実行する。第1例では、制御部52は、第1変速抑制制御と第2変速抑制制御とを実行する。第2例では、第3変速抑制制御と第4変速抑制制御とを実行する。第3例では、第5変速抑制制御を実行する。第4例では、第6変速抑制制御を実行する。第5例では、第7変速抑制制御を実行する。第6例では、第1例から第5例の2つ以上を実行する。第7例では、第1変速抑制制御から第7変速抑制制御のいずれか1つを実行する。第8例では、第1変速抑制制御から第7変速抑制制御のすべてを実行する。
【0062】
各所定期間について説明する。第1所定期間は、第2所定期間、第3所定期間、第4所定期間、第5所定期間、第6所定期間、第7所定期間、第8所定期間、第9所定期間、第10所定期間、第11所定期間、および、第12所定期間の少なくとも1つと所定期間の長さが異なる。第2所定期間は、第3所定期間、第4所定期間、第5所定期間、第6所定期間、第7所定期間、第8所定期間、第9所定期間、第10所定期間、第11所定期間、および、第12所定期間の少なくとも1つと所定期間の長さが異なる。第3所定期間は、第4所定期間、第5所定期間、第6所定期間、第7所定期間、第8所定期間、第9所定期間、第10所定期間、第11所定期間、および、第12所定期間の少なくとも1つと所定期間の長さが異なる。第4所定期間は、第5所定期間、第6所定期間、第7所定期間、第8所定期間、第9所定期間、第10所定期間、第11所定期間、および、第12所定期間の少なくとも1つと所定期間の長さが異なる。第5所定期間は、第6所定期間、第7所定期間、第8所定期間、第9所定期間、第10所定期間、第11所定期間、および、第12所定期間の少なくとも1つと所定期間の長さが異なる。第6所定期間は、第7所定期間、第8所定期間、第9所定期間、第10所定期間、第11所定期間、および、第12所定期間の少なくとも1つと所定期間の長さが異なる。第7所定期間は、第8所定期間、第9所定期間、第10所定期間、第11所定期間、および、第12所定期間の少なくとも1つと所定期間の長さが異なる。第8所定期間は、第9所定期間、第10所定期間、第11所定期間、および、第12所定期間の少なくとも1つと所定期間の長さが異なる。第9所定期間は、第10所定期間、第11所定期間、および、第12所定期間の少なくとも1つと所定期間の長さが異なる。第10所定期間は、第11所定期間、および、第12所定期間の少なくとも1つと所定期間の長さが異なる。第11所定期間は、第12所定期間と長さが異なる。
【0063】
図4を参照して、制御部52が実行する変速抑制制御の手順について説明する。制御部52は、バッテリ36から電力が供給される間、所定の間隔で変速抑制制御を実行する。
【0064】
制御部52は、ステップS11において、パラメータPの値が第1範囲外か否かを判定する。肯定判定の場合、制御部52は、ステップS13の処理を実行する。否定判定の場合、制御部52は、ステップS12の処理を実行する。
【0065】
制御部52は、ステップS12において、操作信号を受信したか否かを判定する。肯定判定の場合、制御部52は、ステップS13の処理を実行する。否定判定の場合、制御部52は、変速抑制制御を終了する。
【0066】
制御部52は、ステップS13において、変速比を変更する。ステップS13の終了後、制御部52は、ステップS14において、変速比の変化を抑制する所定期間を設定する。所定期間は、第1変速抑制制御から第7変速抑制制御のいずれを実行しているかに応じて異なる。ステップS14の終了後、制御部52は、所定期間の間変速装置38の制御を抑制する。ステップS15の終了後、制御部52は、変速抑制制御を終了する。
【0067】
<第2実施形態>
第2実施形態の制御装置50について説明する。第2実施形態の制御装置50は、第1制御状態および第2制御状態で変速装置38を制御すること以外は、第1実施形態の制御装置50と同様である。第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0068】
制御部52は、第1制御状態および第1制御状態とは異なる第2制御状態により変速装置38を制御する。第1制御状態と第2制御状態とは、所定期間の少なくとも1つが異なる。一例では、第1制御状態と第2制御状態とは、第1変速抑制制御における第1所定期間および第2所定期間の少なくとも1つが異なる。一例では、第1制御状態と第2制御状態とは、第2変速抑制制御における第3所定期間および第4所定期間の少なくとも1つが異なる。一例では、第1制御状態と第2制御状態とは、第3変速抑制制御における第5所定期間および第6所定期間の少なくとも1つが異なる。一例では、第1制御状態と第2制御状態とは、第4変速抑制制御における第7所定期間および第8所定期間の少なくとも1つが異なる。一例では、第1制御状態と第2制御状態とは、第5変速抑制制御における第9所定期間および第10所定期間の少なくとも1つが異なる。一例では、第1制御状態と第2制御状態とは、第6変速抑制制御における所定期間が異なる。一例では、第1制御状態と第2制御状態とは、第7変速抑制制御における第11所定期間および第12所定期間の少なくとも1つが異なる。
【0069】
第1制御状態と第2制御状態とは、人力駆動車10に駆動力を付与するモータ58の出力モードが異なる。人力駆動車10に駆動力を付与するモータ58の出力モードは、第1制御状態における第1出力モードと、第2制御状態における第2出力モードとを含み、第1出力モードは第2出力モードとは異なる。第1出力モードと第2出力モードとは、人力駆動車10に入力される人力トルクに対するモータ58の出力の割合であるアシスト比が異なる。第1制御状態において、制御部52は、第1アシスト比となるようにモータ58を制御する。第2制御状態において、制御部52は、第2アシスト比となるようにモータ58を制御する。一例では、第2アシスト比は、第1アシスト比よりも大きい。第2制御状態における所定期間は、第1制御状態における所定期間よりも長い。
【0070】
<第3実施形態>
第3実施形態の制御装置50について説明する。第3実施形態の制御装置50は、第3制御状態および第4制御状態で変速装置38を制御すること以外は、第1実施形態および第2実施形態の制御装置50と同様である。第1実施形態および第2実施形態と共通する構成については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0071】
制御部52は、第3制御状態、および、第3制御状態とは異なる第4制御状態により変速装置38を制御する。第3制御状態と第4制御状態とは、所定期間の少なくとも1つが異なる。制御部52は、第3制御状態において、変速比が第1上限変速比未満の場合、パラメータPが第1閾値TH1以上になったら、変速装置38を変速比が大きくなるように第1変速方向に変速装置38を制御し、変速比が第1上限変速比以上の場合、パラメータPが第1閾値TH1以上になっても、変速装置38を変速比が大きくなるように第1変速方向に変速装置38を制御しない。制御部52は、第4制御状態において、変速比が第1上限変速比よりも大きい第2上限変速比未満の場合、パラメータPが第1閾値TH1以上になったら、変速装置38を変速比が大きくなるように第1変速方向に変速装置38を制御し、変速比が第2上限変速比以上の場合、パラメータPが第1閾値TH1以上になっても、変速装置38を変速比が大きくなるように第1変速方向に変速装置38を制御しない。一例では、第1上限変速比は2.5である。別の例では、第1上限変速比は2.0である。第1上限変速比に対応する第1上限変速段は、第2上限変速比に対応する第2上限変速段とは異なる。変速比が最も小さい変速段を1速とした場合、一例では、第1上限変速段は8速である。一例では、第2上限変速段は、変速比が最も大きい変速段である。制御部52は、第3制御状態で変速装置38を制御しているときに操作装置60からの操作信号を受信した場合、第1上限変速比よりも変速比が大きくなるように変速装置38を制御する。一例では、第3制御状態と第4制御状態とは、第1変速抑制制御における第1所定期間および第2所定期間の少なくとも1つが異なる。一例では、第3制御状態と第4制御状態とは、第2変速抑制制御における第3所定期間および第4所定期間の少なくとも1つが異なる。一例では、第3制御状態と第4制御状態とは、第3変速抑制制御における第5所定期間および第6所定期間の少なくとも1つが異なる。一例では、第3制御状態と第4制御状態とは、第4変速抑制制御における第7所定期間および第8所定期間の少なくとも1つが異なる。一例では、第3制御状態と第4制御状態とは、第5変速抑制制御における第9所定期間および第10所定期間の少なくとも1つが異なる。一例では、第3制御状態と第4制御状態とは、第6変速抑制制御における所定期間が異なる。一例では、第3制御状態と第4制御状態とは、第7変速抑制制御における第11所定期間および第12所定期間の少なくとも1つが異なる。
【0072】
制御部52は、第3制御状態、および、第3制御状態とは異なる第4制御状態により変速装置38を制御し、第3制御状態と第4制御状態とは、所定期間の少なくとも1つが異なり、制御部52は、第3制御状態において人力駆動車10の車速が所定車速以下になった場合に変速比が第1開始変速比となるように変速装置38を制御し、第4制御状態において車速が所定車速以下になった場合に変速比が第1開始変速比とは異なる第2開始変速比となるように変速装置38を制御する。第1開始変速比は、第2開始変速比よりも小さい。第1開始変速比に対応する第1開始変速段は、第2開始変速比に対応する第2開始変速段とは異なる。変速比が最も小さい変速段を1速とした場合、一例では、第1開始変速段は、1速から5速のいずれかである。例えば、第1開始変速段は、変速比が最も小さい変速段である。変速比が最も小さい変速段を1速とした場合、一例では、第2開始変速段は5速から9速のいずれかである。例えば、第2開始変速段は6速である。所定車速は、例えば10km/hである。
【0073】
<第4実施形態>
第4実施形態の制御装置50について説明する。第4実施形態の制御装置50は、パラメータPが第1範囲内にある場合において変速装置38を制御して変速比を変更する制御を実行すること以外は、第1実施形態から第3実施形態の制御装置50と同様である。第1実施形態から第3実施形態と共通する構成については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0074】
制御部52は、所定条件が成立したと判断した場合、パラメータPが第1範囲内にある場合において変速装置38を制御して変速比を変更する。所定条件は、複数の成立条件を含む。一例では、成立条件は人力駆動車10の車速の変化量、人力駆動車10のクランク軸12Aに作用するトルクの変化量、および、人力駆動車10のクランク軸12Aの回転速度の変化量を含む。制御部52は、変化量が所定量以上である場合、成立条件が成立したと判断する。
【0075】
所定条件は、第1変速方向に変速する第1所定条件と第2変速方向に変速する第2所定条件を含む。一例では、第1所定条件は、所定の間における人力駆動車10の車速の上昇量、人力駆動車10のクランク軸12Aに作用するトルクの低下量、および、人力駆動車10のクランク軸12Aの回転速度の上昇量を含む。一例では、第2所定条件は、所定の間における人力駆動車10の車速の低下量、人力駆動車10のクランク軸12Aに作用するトルクの上昇量、および、人力駆動車10のクランク軸12Aの回転速度の低下量を含む。所定の間は、例えば検出部40によりパラメータPが検出される間の時間である。
【0076】
制御部52は、第1所定条件に含まれる複数の成立条件のうち、例えば、半数の成立条件よりも多くの条件が成立した場合、第1所定条件が成立したと判断する。例えば、第1所定条件に3つの成立条件が含まれる場合、2つの成立条件が成立した場合、1つの成立条件が成立していなくても、制御部52は、第1所定条件が成立したと判断する。第1所定条件が成立した場合、制御部52は、第1変速方向に変速するように変速装置38を制御する。制御部52は、第2所定条件に含まれる複数の成立条件のうち、例えば、半数の成立条件よりも多くの条件が成立した場合、第2所定条件が成立したと判断する。例えば、第2所定条件に3つの成立条件が含まれる場合、2つの成立条件が成立した場合、1つの成立条件が成立していなくても、制御部52は、第2所定条件が成立したと判断する。第2所定条件が成立した場合、制御部52は、第2変速方向に変速するように変速装置38を制御する。
【0077】
<変形例>
各実施形態に関する説明は、本発明に従う制御装置および変速システムが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う制御装置および変速システムは、例えば以下に示される各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0078】
・制御部52は、第1範囲とパラメータPとに基づいて、人力駆動車10のサスペンション、および、人力駆動車10のアジャスタブルシートポストの少なくとも1つをさらに制御する。一例では、パラメータPの値が第1閾値TH1以上である場合、サスペンションの沈み込み量が少なくなるように変更する。パラメータPの値が第1閾値TH1以上である場合、アジャスタブルシートポストのフレーム18に対する高さが高くなるように変更する。
【0079】
・第2実施形態の制御装置50において、第1制御状態と第2制御状態とは、第1閾値、第2閾値、および、第3閾値の少なくとも1つがさらに異なるように構成されていてもよい。
【0080】
・所定期間の少なくとも1つは、ユーザの特性に応じて設定されていてもよい。一例では、ユーザの特性は、人力駆動車10を使用するユーザの運動レベルである。第1例では、人力駆動車10のクランク軸12Aに作用する仕事率により制御部52がユーザの運動レベルを決定する。第2例では、ユーザが例えば操作装置60を操作することにより、ユーザが運動レベルを決定する。
【0081】
・所定期間は、人力駆動車10の走行距離、クランク軸12Aの回転数、および、クランク軸12Aの回転角度の少なくとも1つにより設定されていてもよい。所定期間がクランク軸12Aの回転数、および、クランク軸12Aの回転角度の少なくとも1つに応じて設定される場合、クランク軸12Aが半回転する回数に相当するストローク回数に応じて所定期間が設定されてもよい。所定期間がストローク数に応じて設定される場合、好ましくは、人力駆動車10の変速比および変速方向に応じて、所定期間に相当するストローク回数が異なる。一例では、変速方向が第1変速方向であり変速比が最も小さい変速段を1速とした場合に変速段が3速以下である場合、所定期間に相当するストローク回数は7回である。この場合、制御部52は、ストローク回数が7回経過するまでの間、変速比の変化を抑制するように変速装置38を制御する。変速段が4速以上である場合、所定期間に相当するストローク回数は5回である。より好ましくは、クランク軸12Aの回転速度に応じて、ストローク回数により設定される所定期間が異なる。クランク軸12Aの回転速度が第1閾値より大きい第3閾値以上であり変速段が3速以下である場合、所定期間に相当するストローク回数は5回である。変速段が4速以上である場合、所定期間に相当するストローク回数は3回である。
【0082】
変速方向が第2変速方向であり変速段が3速以下である場合、所定期間に相当するストローク回数は7回である。変速段が4速以上8速以下である場合、所定期間に相当するストローク回数は5回である。変速段が9速以上である場合、所定期間に相当するストローク回数は3回である。
【0083】
クランク軸12Aに作用するトルクに応じて、所定期間に相当するストローク回数を設定してもよい。一例では、クランク軸12Aに作用するトルクが所定値以上であり変速方向が第1変速方向である場合に変速段が3速以下である場合、所定期間に相当する人ストローク回数は7回である。変速段が4速以上である場合、所定期間に相当するストローク回数は5回である。クランク軸12Aに作用するトルクが所定値未満であり変速方向が第1変速方向である場合に変速段が3速以下である場合、所定期間に相当するストローク回数は5回である。変速段が4速以上8速以下である場合、所定期間に相当するストローク回数は3回である。変速方向が第2変速方向であり変速段が9速以上である場合、所定期間に相当するストローク回数は5回である。
【0084】
・第4実施形態の制御装置50において、制御部52は、所定条件が成立したか否かを複数回判定して、変速装置38を制御するように構成されていてもよい。一例では、制御部52は、複数回の判定の内、1回以上所定条件が成立した場合に、変速装置38を制御して変速比を変更する。別の例では、制御部52は、複数回の判定の内すべての場合において所定条件が成立した場合に、変速装置38を制御して変速比を変更する。
【0085】
・第4実施形態の制御装置50において、成立条件は、人力駆動車10の傾斜角度の変化量を含んでいてもよい。第1所定条件は、所定の間における人力駆動車10の傾斜角度の減少量を含む。第2所定条件は、所定の間における人力駆動車10の傾斜角度の増加量を含む。
【0086】
・第4実施形態の制御装置50において、機械学習等の手法を用いて、変化量と所定量との関係を補正するように構成されていてもよい。補正された変化量と所定量との関係は、記憶部54に記憶されていてもよく、外部のサーバ等に保存され、制御部52が通信装置を用いてアクセスするように構成されていてもよい。
【0087】
・本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0088】
10…人力駆動車、12A…クランク軸、14…車輪、38…変速装置、50…制御装置、52…制御部、58…モータ、60…操作装置、P…パラメータ、S…変速システム。