(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】人力駆動車用の制御装置
(51)【国際特許分類】
B62M 9/122 20100101AFI20240603BHJP
B62M 6/45 20100101ALI20240603BHJP
【FI】
B62M9/122
B62M6/45
(21)【出願番号】P 2020094533
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】謝花 聡
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 充彦
(72)【発明者】
【氏名】島津 速人
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-202733(JP,A)
【文献】特開2017-154722(JP,A)
【文献】特開2017-007610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 9/122
B62M 6/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車のクランク軸の回転速度に対する駆動輪の回転速度の比率である変速比率を変更する変速機を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記駆動輪を含む前記人力駆動車の車輪がスリップする場合、
前記変速比率が大きくなる変更が抑制され、かつ、前記変速比率が小さくなる変更が抑制されないように前記変速機を制御する、制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記変速機の制御状態を、第1制御状態と、前記第1制御状態よりも前記変速比率の変更が抑制される第2制御状態との一方から他方に切り替え、
前記車輪のスリップに関連する指標値に応じて、前記制御状態を前記第1制御状態から前記第2制御状態に切り替える、請求項
1に記載の制御装置。
【請求項3】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車のクランク軸の回転速度に対する駆動輪の回転速度の比率である変速比率を変更する変速機を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記変速機の制御状態を、第1制御状態と、前記第1制御状態よりも前記変速比率の変更が抑制される第2制御状態との一方から他方に切り替え、
前記駆動輪を含む前記人力駆動車の車輪のスリップに関連する指標値に応じて、前記制御状態を、前記第1制御状態から前記第2制御状態に切り替
え、
前記制御部は、前記第2制御状態において、前記第1制御状態よりも前記変速比率が大きくなる変更が抑制され、かつ、前記変速比率が小さくなる変更が抑制されないように前記変速機を制御する、制御装置。
【請求項4】
前記車輪のスリップに関連する指標値は、前記車輪のトラクションに関連する第1パラメータを含む、請求項
2または
3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第1パラメータは、前記人力駆動車の走行状態に関連する第2パラメータの変化量と、前記人力駆動車に設けられる2つの回転体の回転状態の差と、の少なくとも1つを含む、請求項
4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記人力駆動車に関する変速パラメータと設定値との比較に応じて前記変速比率を変更するように前記変速機を制御し、
前記第1制御状態の前記設定値と前記第2制御状態の前記設定値とを異ならせることによって前記第2制御状態における前記変速比率の変更を抑制する、請求項
2から
5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記変速パラメータは、前記クランク軸の回転速度を含む、請求項
6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記設定値は、第1設定値と第2設定値とを有し、
前記制御部は、
前記第1制御状態において、前記変速パラメータが前記第1設定値よりも大きい場合、前記変速比率が大きくなるように前記変速機を制御し、
前記第1制御状態において、前記変速パラメータが前記第2設定値よりも小さい場合、前記変速比率が小さくなるように前記変速機を制御する、請求項
6または
7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記第2制御状態において、前記変速パラメータが前記第1設定値よりも大きい場合、前記変速比率が大きくなるように前記変速機を制御し、
前記第2制御状態において、前記変速パラメータが前記第2設定値よりも小さい場合、前記変速比率が小さくなるように前記変速機を制御し、
前記第2制御状態における前記第1設定値は、前記第1制御状態における前記第1設定値よりも大きく、
前記第2制御状態における前記第2設定値は、前記第1制御状態における前記第2設定値よりも小さい、請求項
8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記制御状態を、前記第2制御状態に切り替えてから所定期間が経過すると、前記制御状態を、前記第1制御状態に切り替える、請求項
2から
9のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記人力駆動車の推進をアシストするモータをさらに制御し、
前記第2制御状態における前記モータの出力が前記第1制御状態における前記モータの出力よりも抑制されるように前記モータを制御する、請求項
2から
10のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記人力駆動車の走行路の道路勾配に応じて、前記制御状態を、前記第1制御状態から前記第2制御状態に切り替える、請求項
2から
9のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記道路勾配が所定勾配以上の場合、前記制御状態を、前記第1制御状態から前記第2制御状態に切り替え、前記道路勾配が前記所定勾配よりも小さい場合、前記第1制御状態から前記第2制御状態に切り替えない、請求項
12に記載の制御装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記人力駆動車に入力される人力駆動力に応じて、前記第1制御状態から前記第2制御状態に切り替える、請求項
2から
13のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記人力駆動力が所定人力駆動力以上の場合、前記第1制御状態から前記第2制御状態に切り替え、前記人力駆動力が前記所定人力駆動力よりも小さい場合、前記第1制御状態から前記第2制御状態に切り替えない、請求項
14に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車用の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されている人力駆動車用の制御装置は、人力駆動車の変速比率を変更する変速機を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的の1つは、変速機を好適に制御できる人力駆動車用の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、前記人力駆動車のクランク軸の回転速度に対する駆動輪の回転速度の比率である変速比率を変更する変速機を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記駆動輪を含む前記人力駆動車の車輪がスリップする場合、前記変速比率の変更が抑制されるように前記変速機を制御する。
上記第1側面の制御装置によれば、人力駆動車の車輪がスリップする場合、変速比率の変更を抑制できるため、変速機を好適に制御できる。このため、ライダが違和感を覚えにくい。
【0006】
前記第1側面に従う第2側面の制御装置において、前記制御部は、前記車輪がスリップする場合、前記変速比率が大きくなる変更が抑制されるように前記変速機を制御する。
上記第2側面の制御装置によれば、人力駆動車の車輪がスリップする場合、変速比率が大きくなる変更を抑制できる。このため、ライダの負荷が大きくなることを抑制できる。
【0007】
前記第1または第2側面に従う第3側面の制御装置において、前記制御部は、前記変速機の制御状態を、第1制御状態と、前記第1制御状態よりも前記変速比率の変更が抑制される第2制御状態との一方から他方に切り替え、前記車輪のスリップに関連する指標値に応じて、前記制御状態を前記第1制御状態から前記第2制御状態に切り替える。
上記第3側面の制御装置によれば、車輪のスリップに関連する指標値に応じて制御状態を好適に切り替えできる。
【0008】
本発明の第4側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、前記人力駆動車のクランク軸の回転速度に対する駆動輪の回転速度の比率である変速比率を変更する変速機を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記変速機の制御状態を、第1制御状態と、前記第1制御状態よりも前記変速比率の変更が抑制される第2制御状態との一方から他方に切り替え、前記駆動輪を含む前記人力駆動車の車輪のスリップに関連する指標値に応じて、前記制御状態を、前記第1制御状態から前記第2制御状態に切り替える。
上記第4側面の制御装置によれば、車輪のスリップに関連する指標値に応じて制御状態を切り替えることによって、変速比率の変更を抑制できるため、変速機を好適に制御できる。このため、ライダが違和感を覚えにくい。
【0009】
前記第3または第4側面に従う第5側面の制御装置において、前記車輪のスリップに関連する指標値は、前記車輪のトラクションに関連する第1パラメータを含む。
上記第5側面の制御装置によれば、トラクションに関連する第1パラメータに応じて好適に制御状態を切り替えできる。
【0010】
前記第5側面に従う第6側面の制御装置において、前記第1パラメータは、前記人力駆動車の走行状態に関連する第2パラメータの変化量と、前記人力駆動車に設けられる2つの回転体の回転状態の差と、の少なくとも1つを含む。
上記第6側面の制御装置によれば、人力駆動車の走行状態に関連する第2パラメータの変化量と、人力駆動車に設けられる2つの回転体の回転状態の差と、の少なくとも1つに応じて好適に制御状態を切り替えできる。
【0011】
前記第3から第6側面のいずれか1つに従う第7側面の制御装置において、前記制御部は、前記第2制御状態において前記第1制御状態よりも前記変速比率が大きくなる変更が抑制されるように前記変速機を制御する。
上記第7側面の制御装置によれば、第2制御状態において第1制御状態よりも変速比率が大きくなる変更を抑制できる。このため、ライダの負荷が大きくなることを抑制できる。
【0012】
前記第3から第7側面のいずれか1つに従う第8側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車に関する変速パラメータと設定値との比較に応じて前記変速比率を変更するように前記変速機を制御し、前記第1制御状態の前記設定値と前記第2制御状態の前記設定値とを異ならせることによって前記第2制御状態における前記変速比率の変更を抑制する。
上記第8側面の制御装置によれば、第1制御状態の設定値と第2制御状態の設定値とを異ならせることによって変速比率の変更を抑制できる。
【0013】
前記第8側面に従う第9側面の制御装置において、前記変速パラメータは、前記クランク軸の回転速度を含む。
上記第9側面の制御装置によれば、クランク軸の回転速度に応じて変速機を制御できる。
【0014】
前記第8または第9側面に従う第10側面の制御装置において、前記設定値は、第1設定値と第2設定値とを有し、前記制御部は、前記第1制御状態において、前記変速パラメータが前記第1設定値よりも大きい場合、前記変速比率が大きくなるように前記変速機を制御し、前記第1制御状態において、前記変速パラメータが前記第2設定値よりも小さい場合、前記変速比率が小さくなるように前記変速機を制御する。
上記第10側面の制御装置によれば、変速パラメータが第1設定値よりも大きい場合、変速比率が大きくなるように変速機を制御でき、第1制御状態において、変速パラメータが第2設定値よりも小さい場合、変速比率が小さくなるように変速機を制できる。
【0015】
前記第10側面に従う第11側面の制御装置において、前記制御部は、前記第2制御状態において、前記変速パラメータが前記第1設定値よりも大きい場合、前記変速比率が大きくなるように前記変速機を制御し、前記第2制御状態において、前記変速パラメータが前記第2設定値よりも小さい場合、前記変速比率が小さくなるように前記変速機を制御し、前記第2制御状態における前記第1設定値は、前記第1制御状態における前記第1設定値よりも大きく、前記第2制御状態における前記第2設定値は、前記第1制御状態における前記第2設定値よりも小さい。
上記第11側面の制御装置によれば、第1制御状態における第1設定値よりも大きく、第2制御状態における第2設定値は、第1制御状態における第2設定値よりも小さくすることによって、変速比率の変更が抑制される。
【0016】
前記第3から第11側面のいずれか1つに従う第12側面の制御装置において、前記制御部は、前記制御状態を、前記第2制御状態に切り替えてから所定期間が経過すると、前記制御状態を、前記第1制御状態に切り替える。
上記第12側面の制御装置によれば、第1制御状態から第2制御状態に切り替えてから所定期間が経過すると、第2制御状態から第1制御状態に切り替えできる。
【0017】
前記第3から第12側面のいずれか1つに従う第13側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の推進をアシストするモータをさらに制御し、前記第2制御状態における前記モータの出力が前記第1制御状態における前記モータの出力よりも抑制されるように前記モータを制御する。
上記第13側面の制御装置によれば、第2制御状態におけるモータの出力を第1制御状態におけるモータの出力よりも抑制できる。
【0018】
前記第3から第11側面のいずれか1つに従う第14側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の走行路の道路勾配に応じて、前記制御状態を、前記第1制御状態から前記第2制御状態に切り替える。
上記第14側面の制御装置によれば、走行路の道路勾配に応じて制御状態を第1制御状態から第2制御状態に切り替えできる。
【0019】
前記第14側面に従う第15側面の制御装置において、前記制御部は、前記道路勾配が所定勾配以上の場合、前記制御状態を、前記第1制御状態から前記第2制御状態に切り替え、前記道路勾配が前記所定勾配よりも小さい場合、前記第1制御状態から前記第2制御状態に切り替えない。
上記第15側面の制御装置によれば、道路勾配が所定勾配以上の場合、制御状態を第1制御状態から第2制御状態に切り替えできる。
【0020】
前記第3から第15側面のいずれか1つに従う第16側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車に入力される人力駆動力に応じて、前記第1制御状態から前記第2制御状態に切り替える。
上記第16側面の制御装置によれば、人力駆動力に応じて制御状態を第1制御状態から第2制御状態に切り替えできる。
【0021】
前記第16側面に従う第17側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動力が所定人力駆動力以上の場合、前記第1制御状態から前記第2制御状態に切り替え、前記人力駆動力が前記所定人力駆動力よりも小さい場合、前記第1制御状態から前記第2制御状態に切り替えない。
上記第17側面の制御装置によれば、人力駆動力が所定人力駆動力以上の場合、制御状態を第1制御状態から第2制御状態に切り替えできる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の人力駆動車用の制御装置は、変速機を好適に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態の人力駆動車用の制御装置を含む人力駆動車の側面図。
【
図2】実施形態の人力駆動車用の制御装置を含む人力駆動車の電気的な構成を示すブロック図。
【
図3】
図2の制御部によって実行され、変速機の制御状態を切り替える処理のフローチャート。
【
図4】
図2の制御部によって実行され、変速機を制御する処理のフローチャート。
【
図5】
図2の制御部によって実行され、モータを制御する処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<実施形態>
図1から
図5を参照して、実施形態の人力駆動車用の制御装置50について説明する。人力駆動車10は、少なくとも1つの車輪を有し、少なくとも人力駆動力によって駆動できる乗り物である。人力駆動車10は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、および、ハンドバイク、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車10が有する車輪の数は限定されない。人力駆動車10は、例えば1輪車および3輪以上の車輪を有する乗り物も含む。人力駆動車10は、人力駆動力Hのみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車10は、人力駆動力Hだけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するイーバイク(E-bike)を含む。イーバイクは、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車10を、自転車として説明する。
【0025】
人力駆動車10は、人力駆動力Hが入力されるクランク12を備える。人力駆動車10は、車輪14と、車体16と、を、さらに備える。人力駆動車10の車輪14は、駆動輪14Aを含む。車輪14は、従動輪14Bをさらに含む。車体16は、フレーム18を含む。クランク12は、フレーム18に対して回転可能なクランク軸12Aと、クランク軸12Aの軸方向の端部にそれぞれ設けられる一対のクランクアーム12Bとを含む。各クランクアーム12Bには、一対のペダル20がそれぞれ連結される。駆動輪14Aは、クランク12が回転することによって駆動される。駆動輪14Aは、フレーム18に支持される。クランク12は、駆動機構22によって駆動輪14Aと連結される。駆動機構22は、クランク軸12Aに連結される第1回転体24を含む。クランク軸12Aは、第1回転体24と一体回転するように連結されてもよく、第1ワンウェイクラッチを介して連結されていてもよい。第1ワンウェイクラッチは、クランク12が前転した場合に、第1回転体24を前転させ、クランク12が後転した場合に、クランク12と第1回転体24との相対回転を許容するように構成される。第1回転体24は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。駆動機構22は、第2回転体26と、連結部材28とをさらに含む。連結部材28は、第1回転体24の回転力を第2回転体26に伝達する。連結部材28は、例えば、チェーン、ベルト、または、シャフトを含む。
【0026】
第2回転体26は、駆動輪14Aに連結される。第2回転体26は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。第2回転体26と駆動輪14Aとの間には、好ましくは、第2ワンウェイクラッチが設けられている。第2ワンウェイクラッチは、第2回転体26が前転した場合に、駆動輪14Aを前転させ、第2回転体26が後転した場合に、第2回転体26と駆動輪14Aとの相対回転を許容するように構成される。
【0027】
フレーム18には、フロントフォーク30を介して従動輪14Bが取り付けられている。フロントフォーク30には、ハンドルバー34がステム32を介して連結されている。本実施形態では、駆動輪14Aが駆動機構22によってクランク12に連結されるが、駆動輪14Aおよび従動輪14Bの少なくとも1つが、駆動機構22によってクランク12に連結されてもよい。
【0028】
人力駆動車10は、変速機36を備える。変速機36は、人力駆動車のクランク軸12Aの回転速度Cに対する駆動輪14Aの回転速度W1の比率である変速比率Rを変更する。変速比率Rは、クランク12の回転速度Cに対する駆動輪の回転速度Wの比率である。本実施形態では、駆動輪は駆動輪14Aである。変速機36は、例えばフロントディレイラ、リアディレイラ、および、内装変速機の少なくとも1つを含む。変速機36が内装変速機を含む場合、内装変速機は、例えば、駆動輪14Aのハブに設けられる。変速機36は、アクチュエータ38によって動作するように構成される。アクチュエータ38は、電気アクチュエータを含む。アクチュエータ38は、例えば、電気モータを含む。
【0029】
好ましくは、人力駆動車10は、モータ40を備える。モータ40は、人力駆動車10の推進をアシストする。モータ40は、人力駆動車10に推進力を付与する。モータ40は、1または複数の電気モータを含む。モータ40は、ペダル20から駆動輪14Aまでの人力駆動力Hの動力伝達経路、および、従動輪14Bの少なくとも1つに回転を伝達するように構成される。ペダル20から駆動輪14Aまでの人力駆動力Hの動力伝達経路は、駆動輪14Aを含む。本実施形態では、モータ40は、人力駆動車10のフレーム18に設けられ、第1回転体24に回転を伝達するように構成される。モータ40は、ハウジングに設けられる。ハウジングは、フレーム18に設けられる。ハウジングは、例えばフレーム18に着脱可能に取り付けられる。モータ40およびモータ40が設けられるハウジングを含んで、ドライブユニットが構成される。モータ40とクランク軸12Aとの間の動力伝達経路には、好ましくは、クランク軸12Aを人力駆動車10が前進する方向に回転させた場合にクランク12の回転力がモータ40に伝達されないように第3ワンウェイクラッチが設けられる。駆動輪14Aおよび従動輪14Bの少なくとも1つにモータ40を設ける場合、モータ40は、ハブモータを含んでもよい。
【0030】
制御装置50は、制御部52を備える。制御部52は、予め定められる制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。演算処理装置は、相互に離れた複数の場所に設けられてもよい。制御部52は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。好ましくは、制御装置50は、記憶部54をさらに含む。記憶部54には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部54は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、および、フラッシュメモリの少なくとも1つを含む。揮発性メモリは、例えば、RAM(Random access memory)を含む。
【0031】
好ましくは、人力駆動車10は、クランク回転センサ42を含む。クランク回転センサ42は、クランク軸12Aの回転速度Cに応じた情報を検出するように構成される。クランク回転センサ42は、例えば、人力駆動車10のフレーム18に設けられる。クランク回転センサ42は、磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを含んで構成される。周方向に磁界の強度が変化する環状の磁石が、クランク軸12A、クランク軸12Aに連動して回転する部材、または、クランク軸12Aから第1回転体24までの間の動力伝達経路に設けられる。クランク回転センサ42は、クランク軸12Aの回転速度Cに応じた信号を出力する。磁石は、クランク軸12Aから第1回転体24までの人力駆動力Hの動力伝達経路において、クランク軸12Aと一体に回転する部材に設けられてもよい。例えば、磁石は、クランク軸12Aと第1回転体24との間に第1ワンウェイクラッチが設けられない場合、第1回転体24に設けられてもよい。クランク回転センサ42は、磁気センサに代えて光学センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、またはトルクセンサなどを含んでいてもよい。クランク回転センサ42は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部52に接続される。好ましくは、クランク回転センサ42は、クランク12が1回転する間において、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。予め定める回数は、例えば、2以上である。好ましくは、予め定める回数は、4以上である。予め定める回数は、好ましくは4の倍数である。好ましくは、予め定める回数は、8、12、または、16である。クランク回転センサ42は、車速センサを含んで構成されていてもよい。クランク回転センサ42が車速センサを含む場合、例えば、制御部52は、車速センサによって検出される車速と、変速比率Rとに応じてクランク軸12Aの回転速度Cを算出するように構成される。
【0032】
好ましくは、人力駆動車10は、トルクセンサ44を含む。トルクセンサ44は、人力駆動力Hによってクランク12に与えられるトルクに応じた信号を出力するように構成される。トルクセンサ44は、例えば、動力伝達経路に第1ワンウェイクラッチが設けられる場合、好ましくは、第1ワンウェイクラッチよりも動力伝達経路の上流側に設けられる。トルクセンサ44は、歪センサ、磁歪センサ、または、圧力センサなどを含む。歪センサは、歪ゲージを含む。トルクセンサ44は、動力伝達経路、または、動力伝達経路に含まれる部材の近傍に含まれる部材に設けられる。動力伝達経路に含まれる部材は、例えば、クランク軸12A、クランク軸12Aと第1回転体24との間において人力駆動力Hを伝達する部材、クランクアーム12B、または、ペダル20である。トルクセンサ44は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部52に接続される。トルクセンサ44は、人力駆動力Hに関する情報を取得できればどのような構成であってもよく、例えば、ペダル20に与えられる圧力を検出するセンサ、または、チェーンの張力を検出するセンサなどを含んでいてもよい。
【0033】
好ましくは、人力駆動車10は、車速センサ46を含む。車速センサ46は、人力駆動車10の車輪14の回転速度に応じた情報を検出するように構成される。車速センサ46は、例えば、人力駆動車10の車輪14に設けられる磁石を検出するように構成される。車速センサ46は、車輪14の回転速度に応じた信号を出力する。制御部52は、車輪14の回転速度と、車輪14の周長に関する情報とに基づいて人力駆動車10の車速Vを算出できる。記憶部54には車輪14の周長に関する情報が記憶される。
【0034】
車速センサ46は、駆動輪14Aの回転速度W1、および、従動輪14Bの回転速度W2の少なくとも1つを検出する。好ましくは、車速センサ46は、駆動輪14Aの回転速度W1を検出する第1車速センサ46Aと、従動輪14Bの回転速度W2の少なくとも1つを検出する第2車速センサ46Bと、を含む。
【0035】
第1車速センサ46Aは、駆動輪14Aの回転速度W1に応じた情報を検出するように構成される。第1車速センサ46Aは、例えば、人力駆動車10の駆動輪14Aに設けられる環状体の回転を検出するように構成される。環状体は周方向に複数の被検出部を有する。被検出部は溝または孔である。第1車速センサ46Aは、環状体に設けられる複数の被検出部の通過に基づいて、駆動輪14Aの回転速度W1に応じた信号を出力する。第1車速センサ46Aは、例えば、コイルと磁極とから構成される。環状体が回転するとコイルを通過する磁束が変化し、交流電圧が発生するため、駆動輪14Aの回転速度W1が検出される。第1車速センサ46Aは、例えば、ホール素子を含む。第1車速センサ46Aは、駆動輪14Aに設けられる被検出部を検出する構成に限らず、例えば、リードスイッチを構成する磁性リード、または、光学センサなどを含んで構成されてもよい。第1車速センサ46Aは、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部52に接続される。好ましくは、第1車速センサ46Aは、例えば、駆動輪14Aが1回転する間に、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。予め定める回数は、例えば、2以上である。好ましくは、予め定める回数は、4以上である。好ましくは、予め定める回数は、4の倍数である。好ましくは、予め定める回数は、30以上である。本実施形態において、第1車速センサ46Aは、駆動輪14Aが一回転した場合に、被検出部を60回以上検出するように構成される。
【0036】
第2車速センサ46Bは、従動輪14Bの回転速度W2に応じた情報を検出するように構成される。第2車速センサ46Bは、例えば、人力駆動車10の従動輪14Bに設けられる環状体の回転を検出するように構成される。環状体は周方向に複数の被検出部を有する。被検出部は溝または孔である。第2車速センサ46Bは、環状体に設けられる複数の被検出部の通過に基づいて、従動輪14Bの回転速度W2に応じた信号を出力する。第2車速センサ46Bは、例えば、コイルと磁極とから構成される。環状体が回転するとコイルを通過する磁束が変化し、交流電圧が発生するため、従動輪14Bの回転速度W2が検出される。第2車速センサ46Bは、例えば、ホール素子を含む。第2車速センサ46Bは、従動輪14Bに設けられる被検出部を検出する構成に限らず、例えば、リードスイッチを構成する磁性リード、または、光学センサなどを含んで構成されてもよい。第2車速センサ46Bは、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部52に接続される。好ましくは、第2車速センサ46Bは、例えば、従動輪14Bが1回転する間に、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。予め定める回数は、例えば、2以上である。好ましくは、予め定める回数は、4以上である。好ましくは、予め定める回数は、4の倍数である。好ましくは、予め定める回数は、30以上である。本実施形態において、第2車速センサ46Bは、従動輪14Bが一回転した場合に、被検出部を60回以上検出するように構成される。
【0037】
好ましくは、人力駆動車10は、傾斜角度検出部48を含む。傾斜角度検出部48は、人力駆動車10の走行する路面の道路勾配Dを検出するように構成される。道路勾配Dは、人力駆動車10の進行方向における傾斜角度によって検出できる。道路勾配Dは、人力駆動車10の傾斜角度と対応する。傾斜角度検出部48の一例は、ジャイロセンサまたは加速度センサである。別の例では、傾斜角度検出部48は、GPS(Global positioning system)受信部を含む。制御部52は、GPS受信部によって取得したGPS情報と、記憶部54に予め記録されている地図情報に含まれる路面勾配とに応じて、人力駆動車10の走行する路面の傾斜角度Bを演算してもよい。傾斜角度検出部48は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部52に接続される。
【0038】
制御部52は、変速機36を制御する。制御部52は、人力駆動車10に関する変速パラメータPSと設定値PXとの比較に応じて変速比率Rを変更するように変速機36を制御する。好ましくは、変速パラメータPSは、人力駆動車10の走行環境および人力駆動車10の走行状態の少なくとも1つに関するパラメータを含む。好ましくは、変速パラメータは、クランク軸12Aの回転速度Cを含む。制御部52は、人力駆動車10に関する変速パラメータPSと設定値PXとの比較に応じて変速比率Rを変更するように変速機36を制御する。設定値PXは、第1設定値PS1と第2設定値PS2とを有する。制御部52は、変速パラメータPSが第1設定値PS1よりも大きい場合、変速比率Rが大きくなるように変速機36を制御する。制御部52は、変速パラメータPSが第2設定値PS2よりも小さい場合、変速比率Rが小さくなるように変速機36を制御する。
【0039】
制御部52は、車輪14がスリップする場合、変速比率Rの変更が抑制されるように変速機36を制御する。本実施形態では、制御部52は、駆動輪14Aがスリップする場合、変速比率Rの変更が抑制されるように変速機36を制御する。制御部52は、車輪14のスリップに関連する指標値に応じて、車輪14がスリップするか否かを判定する。制御部52は、車輪14のスリップに関連する指標値に応じて、車輪14がスリップすると判定される場合、変速比率Rの変更が抑制されるように変速機36を制御する。好ましくは、制御部52は、車輪14がスリップする場合、変速比率Rが大きくなる変更が抑制されるように変速機36を制御する。好ましくは、制御部52は、車輪14がスリップする場合、変速比率Rが小さくなる変更が抑制されるように変速機36を制御する。制御部52は、車輪14がスリップする場合、変速比率Rが小さくなる変更が抑制されないように変速機36を制御してもよい。
【0040】
制御部52は、変速機36の制御状態を、第1制御状態と、第1制御状態よりも変速比率Rの変更が抑制される第2制御状態との一方から他方に切り替える。制御部52は、車輪14のスリップに関連する指標値に応じて、制御状態を、第1制御状態から第2制御状態に切り替える。本実施形態では、制御部52は、駆動輪14Aのスリップに関連する指標値に応じて、制御状態を、第1制御状態から第2制御状態に切り替える。制御部52は、車輪14のスリップに関連する指標値に応じて、車輪14がスリップするか否かを判定する。制御部52は、車輪14のスリップに関連する指標値に応じて、車輪14がスリップすると判定される場合、第1制御状態から第2制御状態に切り替える。好ましくは、制御部52は、第2制御状態において第1制御状態よりも変速比率Rが大きくなる変更が抑制されるように変速機36を制御する。好ましくは、制御部52は、第2制御状態において第1制御状態よりも変速比率Rが小さくなる変更が抑制されるように変速機36を制御する。制御部52は、第2制御状態において第1制御状態よりも変速比率Rが小さくなる変更が抑制されないように変速機36を制御してもよい。
【0041】
制御部52は、第1制御状態の設定値PXと第2制御状態の設定値PXとを異ならせることによって第2制御状態における変速比率Rの変更を抑制する。設定値PXは、第1設定値PS1と第2設定値PS2とを有する。制御部52は、第1制御状態において、変速パラメータPSが第1設定値PS1よりも大きい場合、変速比率Rが大きくなるように変速機36を制御する。制御部52は、第1制御状態において、変速パラメータPSが第2設定値PS2よりも小さい場合、変速比率Rが小さくなるように変速機36を制御する。制御部52は、第2制御状態において、変速パラメータPSが第1設定値PS1よりも大きい場合、変速比率Rが大きくなるように変速機36を制御する。制御部52は、第2制御状態において、変速パラメータPSが第2設定値PS2よりも小さい場合、変速比率Rが小さくなるように変速機36を制御する。第2制御状態における第1設定値PS1は、第1制御状態における第1設定値PS1よりも大きく、第2制御状態における第2設定値PS2は、第1制御状態における第2設定値PS2よりも小さい。制御部52は、第2制御状態において第1制御状態よりも変速比率Rが小さくなる変更が抑制されないように変速機36を制御する場合、第1制御状態と第2制御状態とのそれぞれにおいて同一の第2設定値PS2を用いてもよい。
【0042】
車輪14のスリップに関連する指標値は、車輪14のトラクションに関連する第1パラメータP1を含む。第1パラメータP1は、人力駆動車10の走行状態に関連する第2パラメータP2の変化量と、人力駆動車10に設けられる2つの回転体の回転状態の差と、の少なくとも1つを含む。第2パラメータP2は、例えば、人力駆動力Hおよびクランク軸12Aの回転速度Cの少なくとも1つを含む。2つの回転体は、例えば、駆動輪14Aおよび従動輪14Bである。制御部52は、例えば、車輪14のスリップに関連する指標値を用いた第1判定手段、第2判定手段、第3判定手段、および、第4判定手段の少なくとも1つよって車輪14のスリップを判定する。制御部52は、第1判定手段、第2判定手段、第3判定手段、第4判定手段、および、第5判定手段のうちの2つ以上を用いて車輪14のスリップを判定してもよい。制御部52は、第1判定手段、第2判定手段、第3判定手段、第4判定手段、および、第5判定手段のうちの2つ以上を用いて車輪14のスリップを判定する場合、2つ以上の判定手段が車輪14のスリップを判定した場合に車輪14がスリップすると判定してもよく、少なくとも1つの判定手段が車輪14のスリップを判定した場合に車輪14がスリップすると判定してもよい。
【0043】
第1判定手段において、車輪14のスリップに関連する指標値は、人力駆動力Hの変化量である第2パラメータP2を含む。第1判定手段において、制御部52は、例えば、人力駆動力Hが所定期間において第1駆動力HA以上から第2駆動力HB以下になった場合に、車輪14がスリップしていると判定する。
【0044】
第2判定手段において、車輪14のスリップに関連する指標値は、人力駆動力Hの変化量である第2パラメータP2を含む。第2判定手段において、制御部52は、例えば、人力駆動力Hが第3駆動力HC以上から0Nmまたは0Nmよりも僅かに大きい値になった場合に、車輪14がスリップしていると判定する。
【0045】
第3判定手段において、車輪14のスリップに関連する指標値は、クランク軸12Aの回転速度Cの変化量である第2パラメータP2を含む。第3判定手段において、制御部52は、例えば、クランク軸12Aの回転速度Cの所定期間における増加量が所定増加量以上になった場合、車輪14がスリップしていると判定する。
【0046】
第4判定手段において、車輪14のスリップに関連する指標値は、駆動輪14Aおよび従動輪14Bの回転状態の差を含む。第4判定手段において、制御部52は、例えば、従動輪14Bの回転速度W2に対する駆動輪14Aの回転速度W1の比率が、所定比率以上の場合、車輪14がスリップしていると判定する。所定比率は、例えば、50%である。
【0047】
第5判定手段において、車輪14のスリップに関連する指標値は、駆動輪14Aおよび従動輪14Bの回転状態の差を含む。第5判定手段において、制御部52は、例えば、従動輪14Bの回転速度W2が、駆動輪14Aの回転速度W1よりも大きく、かつ、従動輪14Bの回転速度W2と駆動輪14Aの回転速度W1との差が所定値以上の場合、車輪14がスリップしていると判定する。
【0048】
好ましくは、制御部52は、制御状態を、第2制御状態に切り替えてから所定期間TXが経過すると、制御状態を、第1制御状態に切り替える。所定期間TXは、時間によって規定されてもよく、クランク軸12Aの回転角度によって規定されてもよく、車輪14の回転角度によって規定されてもよい。所定期間TXが時間によって規定される場合、所定期間TXは、例えば、3秒である。所定期間TXがクランク軸12Aの回転角度によって規定される場合、所定期間TXは、例えば、1800度である。所定期間TXが車輪14の回転角度によって規定される場合、所定期間TXは、例えば、720度である。
【0049】
好ましくは、制御部52は、人力駆動車10の走行路の道路勾配Dに応じて、制御状態を、第1制御状態から第2制御状態に切り替える。例えば、制御部52は、道路勾配Dが所定勾配DX以上の場合、制御状態を、第1制御状態から第2制御状態に切り替え、道路勾配Dが所定勾配DXよりも小さい場合、第1制御状態から第2制御状態に切り替えない。所定勾配DXは、例えば、上り坂の道路勾配Dと対応する。所定勾配DXは、例えば、20%である。
【0050】
好ましくは、制御部52は、人力駆動車10に入力される人力駆動力Hに応じて、第1制御状態から第2制御状態に切り替える。例えば、制御部52は、人力駆動力Hが所定人力駆動力HX以上の場合、第1制御状態から第2制御状態に切り替え、人力駆動力Hが所定人力駆動力HXよりも小さい場合、第1制御状態から第2制御状態に切り替えない。所定人力駆動力HXは、例えば、20Nmから70Nmまでのいずれかである。所定人力駆動力HXは、例えば、40Nmである。
【0051】
図3を参照して、変速機36の制御状態を切り替える処理について説明する。制御部52は、制御部52に電力が供給されると、処理を開始して
図3に示すフローチャートのステップS11に移行する。制御部52は、
図3のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS11からの処理を繰り返す。
【0052】
制御部52は、ステップS11において、第1制御状態か否かを判定する。制御部52は、第1制御状態ではない場合、処理を終了する。制御部52は、第1制御状態の場合、ステップS12に移行する。
【0053】
制御部52は、ステップS12において、車輪14がスリップしているか否かを判定する。制御部52は、例えば、ステップS12において、車輪14のスリップに関する指標に応じて車輪14がスリップしているか否かを判定する。制御部52は、例えば、第1判定手段、第2判定手段、第3判定手段、第4判定手段、および、第5判定手段の少なくとも1つを用いて、車輪14のスリップが判定される場合、車輪14がスリップしていると判定する。制御部52は、車輪14がスリップしていない場合、処理を終了する。制御部52は、車輪14がスリップしている場合、ステップS13に移行する。
【0054】
制御部52は、ステップS13において、道路勾配Dが所定勾配DX以上か否かを判定する。制御部52は、道路勾配Dが所定勾配DX以上ではない場合、処理を終了する。制御部52は、道路勾配Dが所定勾配DX以上の場合、ステップS14に移行する。
【0055】
制御部52は、ステップS14において、人力駆動力Hが所定駆動力HX以上か否かを判定する。制御部52は、人力駆動力Hが所定駆動力HX以上ではない場合、処理を終了する。制御部52は、人力駆動力Hが所定駆動力HX以上の場合、ステップS15に移行する。
【0056】
制御部52は、ステップS15において、第2制御状態に切り替え、ステップS16に移行する。制御部52は、ステップS15において、設定値PXを、第2制御状態に対して予め設定されている値に変更し、変更した設定値PXに応じて変速機36を制御する。
【0057】
制御部52は、ステップS16において、第2制御状態に切り替えてから所定期間TXが経過したか否かを判定する。制御部52は、第2制御状態に切り替えてから所定期間TXが経過していない場合、所定周期後に再びステップS16の処理を実行する。制御部52は、第2制御状態に切り替えてから所定期間TXが経過した場合、ステップS17に移行する。
【0058】
制御部52は、ステップS17において、第1制御状態に切り替え、処理を終了する。制御部52は、ステップS17において、設定値PXを、第1制御状態に対して予め設定されている値に変更し、変更した設定値PXに応じて変速機36を制御する。
【0059】
図4を参照して、設定値PXに応じて変速機36を制御する処理について説明する。制御部52は、制御部52に電力が供給されると、処理を開始して
図4に示すフローチャートのステップS21に移行する。制御部52は、
図4のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS21からの処理を繰り返す。
【0060】
制御部52は、ステップS21において、変速パラメータPSが第1設定値PS1よりも大きいか否かを判定する。制御部52は、変速パラメータPSが第1設定値PS1よりも大きい場合、ステップS22に移行する。制御部52は、ステップS22において、変速比率Rが大きくなるように変速機36を制御し、処理を終了する。
【0061】
制御部52は、ステップS21において、変速パラメータPSが第1設定値PS1よりも大きくない場合、ステップS23に移行する。制御部52は、ステップS23において、変速パラメータPSが第2設定値PS2よりも小さいか否かを判定する。制御部52は、変速パラメータPSが第2設定値PS2よりも小さくない場合、処理を終了する。制御部52は、変速パラメータPSが第2設定値PS2よりも小さい場合、ステップS24に移行する。制御部52は、ステップS24において、変速比率Rが小さくなるように変速機36を制御し、処理を終了する。
【0062】
制御部52は、ステップS21において、第1制御状態の場合は、第1制御状態の第1設定値PS1を用いて判定処理を行い、第2制御状態の場合は、第2制御状態の第2設定値PS2を用いて判定処理を行う。
【0063】
制御部52は、ステップS23において、第1制御状態の場合は、第1制御状態の第1設定値PS1を用いて判定処理を行い、第2制御状態の場合は、第2制御状態の第2設定値PS2を用いて判定処理を行う。
【0064】
好ましくは、制御部52は、モータ40をさらに制御する。制御部52は、第2制御状態におけるモータ40の出力が第1制御状態におけるモータ40の出力よりも抑制されるようにモータ40を制御する。
【0065】
モータ40の出力は、例えば、人力駆動力Hに対するモータ40の出力の割合であるアシスト比率、モータ40の出力のトルク、モータ40の出力の仕事率、および、モータ40の出力のトルクの上限値の少なくとも1つを含む。モータ40の出力がアシスト比率を含む場合、例えば、制御部52は、第2制御状態におけるアシスト比率が第1制御状態におけるアシスト比率よりも小さくなるようにモータ40を制御する。モータ40の出力がモータ40の出力のトルクを含む場合、例えば、制御部52は、第2制御状態におけるモータ40の出力のトルクが第1制御状態におけるモータ40の出力のトルクよりも小さくなるようにモータ40を制御する。モータ40の出力がモータ40の出力の仕事率を含む場合、例えば、制御部52は、第2制御状態におけるモータ40の出力の仕事率が第1制御状態におけるモータ40の出力の仕事率よりも小さくなるようにモータ40を制御する。モータ40の出力がモータ40の出力のトルクの上限値を含む場合、例えば、制御部52は、第2制御状態におけるモータ40の出力のトルクの上限値が第1制御状態におけるモータ40の出力のトルクの上限値よりも小さくなるようにモータ40を制御する。
【0066】
図5を参照して、制御状態に応じてモータ40を制御する処理について説明する。制御部52は、制御部52に電力が供給されると、処理を開始して
図5に示すフローチャートのステップS31に移行する。制御部52は、
図5のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS31からの処理を繰り返す。
【0067】
制御部52は、ステップS31において、第2制御状態か否かを判定する。制御部52は、第2制御状態ではない場合、処理を終了する。制御部52は、第2制御状態の場合、ステップS32に移行する。制御部52は、ステップS32において、モータ40の出力を抑制し、処理を終了する。
【0068】
<変形例>
実施形態に関する説明は、本開示に従う人力駆動車用の制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に従う人力駆動車用の制御装置は、例えば以下に示される実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
・制御部52は、従動輪14Bがスリップする場合、変速比率Rの変更が抑制されるように変速機36を制御してもよい。制御部52は、従動輪14Bのスリップに関連する指標値に応じて、制御状態を、第1制御状態から第2制御状態に切り替えてもよい。従動輪14Bのスリップは、従動輪14Bのロック状態を含む。制御部52は、例えば、第1判定手段、第2判定手段、および、第3判定手段に加えて、または、第1判定手段、第2判定手段、および、第3判定手段の少なくとも1つ代えて、第6判定手段および第7判定手段を用いて、従動輪14Bのスリップを判定する。
第6判定手段において、車輪14のスリップに関連する指標値は、駆動輪14Aおよび従動輪14Bの回転状態の差を含む。第6判定手段において、制御部52は、例えば、駆動輪14Aの回転速度W1に対する従動輪14Bの回転速度W2の比率が、所定割合以上の場合、車輪14がスリップしていると判定する。所定比率は、例えば、50%である。
第7判定手段において、車輪14のスリップに関連する指標値は、駆動輪14Aおよび従動輪14Bの回転状態の差を含む。第7判定手段において、制御部52は、例えば、従動輪14Bの回転速度W2が、駆動輪14Aの回転速度W1よりも小さく、かつ、従動輪14Bの回転速度W2と駆動輪14Aの回転速度W1との差が所定値以上の場合、車輪14がスリップしていると判定する。
【0070】
・制御部52は、第1判定手段、第2判定手段、第3判定手段、第4判定手段、第5判定手段、第6判定手段、および、第7判定手段の少なくとも1つによって、駆動輪14Aのスリップと従動輪14Bのスリップを判定し、駆動輪14Aおよび従動輪14Bの少なくとも1つがスリップする場合、変速比率Rの変更が抑制されるように変速機36を制御してもよい。制御部52は、第1判定手段、第2判定手段、第3判定手段、第4判定手段、第5判定手段、第6判定手段、および、第7判定手段の少なくとも1つによって、駆動輪14Aのスリップと従動輪14Bのスリップを判定し、制御状態を、第1制御状態から第2制御状態に切り替えてもよい。
【0071】
・制御部52は、第1判定手段、第2判定手段、第3判定手段、第4判定手段、第5判定手段、第6判定手段、および、第7判定手段の少なくとも1つに代えてまたは加えて、第8判定手段によって車輪14のスリップを判定してもよい。第8判定手段において、車輪14のスリップに関連する指標値は、車速Vを含む。第8判定手段において、制御部52は、例えば、車輪14に設けられる車速センサ46に基づく車速Vと、GPS装置または対地センサによって取得した車速との差が所定速度以上の場合、車輪14がスリップしていると判定する。第8判定手段において、車速センサ46が駆動輪14Aに設けられる場合、制御部52は、駆動輪14Aのスリップを検出できる。第8判定手段において、車速センサ46が従動輪14Bに設けられる場合、制御部52は、従動輪14Bのスリップを検出できる。
【0072】
・人力駆動車10がABS(アンチロックブレーキシステム)を有する場合、車輪14のスリップの判定方法は、第1判定手段、第2判定手段、第3判定手段、第4判定手段、第5判定手段、第6判定手段、第7判定手段、および、第8判定手段に代えてまたは加えて、ABSの作動に応じて車輪14のスリップを判定してもよい。制御部52は、例えば、ABSが作動中であることに基づいて、車輪14がスリップしていると判定してもよい。この場合、制御部52は、ABSが作動中であると、変速比率Rの変更が抑制されるように変速機36を制御する。
【0073】
・車輪14のスリップの判定方法は、第1判定手段、第2判定手段、第3判定手段、第4判定手段、第5判定手段、第6判定手段、第7判定手段、および、第8判定手段以外の方法を含んでいてもよい。要するに、車輪14のスリップが判定できる方法であれば、いずれの判定方法を含んでいてもよい。
【0074】
・制御部52は、
図3の処理において、ステップS13の処理を省略してもよい。この場合、制御部52は、ステップS12の判定処理においてYESの場合、ステップS14に移行する。
【0075】
・制御部52は、
図3の処理において、ステップS14の処理を省略してもよい。この場合、制御部52は、ステップS13の判定処理においてYESの場合、ステップS15に移行する。
【0076】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0077】
10…人力駆動車、12A…クランク軸、14…車輪、14A…駆動輪、36…変速機、40…モータ、50…制御装置、52…制御部。