(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】画像処理装置及び方法、撮像装置、プログラム、記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H04N 1/64 20060101AFI20240603BHJP
H04N 19/85 20140101ALI20240603BHJP
H04N 23/741 20230101ALI20240603BHJP
H03M 7/40 20060101ALI20240603BHJP
H03M 7/36 20060101ALI20240603BHJP
H04N 25/10 20230101ALI20240603BHJP
【FI】
H04N1/64
H04N19/85
H04N23/741
H03M7/40
H03M7/36
H04N25/10
(21)【出願番号】P 2020094912
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】望月 成記
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-311240(JP,A)
【文献】特開2018-160777(JP,A)
【文献】国際公開第2010/116731(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/100039(WO,A1)
【文献】特開2018-006869(JP,A)
【文献】特開2016-201733(JP,A)
【文献】特開2013-066140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/41 - 1/419
1/64
H04N 7/12
19/00 -19/98
H04N 5/222- 5/257
23/00
23/40 -23/76
23/90 -23/959
H03M 3/00 - 9/00
H04N 9/01 - 9/11
23/10
23/12 -23/17
25/10 -25/17
25/611
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素ごとに異なる露光時間で撮影可能な撮像素子から得られた
、第1の露光時間に対応するRAWデータと、前記第1の露光時間よりも長い第2の露光時間に対応するRAWデータとから、複数のRAWデータを生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された複数のRAWデータを符号化する符号化手段と、
を備え
、
前記生成手段は、前記第1の露光時間と前記第2の露光時間のうちの一方に対応するRAWデータにゲインをかけたRAWデータと、前記第1の露光時間と前記第2の露光時間のうちの他方に対応するRAWデータとの差分から差分RAWデータを生成し、
前記符号化手段は、前記差分RAWデータと、前記第1の露光時間と前記第2の露光時間のうちの他方に対応するRAWデータとを符号化することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記生成手段は、露光時間ごとのベイヤー配列構造のRAWデータを生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記生成手段は、前記第1の露光時間に対応するRAWデータにゲインをかけたRAWデータと、前記第2の露光時間に対応するRAWデータとの差分から差分RAWデータを生成し、
前記符号化手段は、前記差分RAWデータと、前記第2の露光時間に対応するRAWデータとを符号化することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記生成手段は、前記第1の露光時間の
同一色成分の複数の画素データを加算することにより、前記第1の露光時間に対応する1つのRAWデータを生成し、前記第2の露光時間の
同一色成分の複数の画素データを加算することにより、前記第2の露光時間に対応する1つのRAWデータを生成し、
前記第1の露光時間と前記第2の露光時間のうちの一方に対応する前記生成した1つのRAWデータにゲインをかけたRAWデータと、前記第1の露光時間と前記第2の露光時間のうちの他方に対応する前記生成した1つのRAWデータとの差分から差分RAWデータを生成することを特徴とする請求項
1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記生成手段は、複数の画素データの加算平均を算出することにより、前記第1の露光時間に対応する1つのRAWデータ及び前記第2の露光時間に対応する1つのRAWデータを生成することを特徴とする請求項
4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記ゲインは、露光時間に応じて決定されることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記ゲインは、前記第1の露光時間の画素と前記第2の露光時間の画素のヒストグラムに応じて決定されることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記生成手段は、前記第1の露光時間と前記第2の露光時間のうちの一方に対応するRAWデータにゲインを乗算してかつ所定のオフセットを加算したRAWデータと、前記第1の露光時間と前記第2の露光時間のうちの他方に対応するRAWデータとの差分から差分RAWデータを生成する、ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記撮像素子の画素ごとの露光時間を制御する制御手段を有し、
前記生成手段は、前記画素ごとの露光時間が異なる場合は、前記複数のRAWデータを生成し、前記画素ごとの露光時間が同一の場合は、1つのRAWデータを生成することを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記生成手段は、前記画素ごとの露光時間が同一の場合は、近傍の同一色の画像データの平均値を算出することにより、1つのRAWデータを生成することを特徴とする請求項
9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記符号化手段は、前記第1の露光時間と前記第2の露光時間のうちの一方に対応するRAWデータの量子化パラメータを基準として、前記第1の露光時間と前記第2の露光時間のうちの他方に対応するRAWデータの量子化パラメータを決定することを特徴とする請求項
1に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記符号化手段は、前記第1の露光時間に対応するRAWデータの量子化パラメータを基準として、前記第2の露光時間に対応するRAWデータの量子化パラメータを決定することを特徴とする請求項
11に記載の画像処理装置。
【請求項13】
画素ごとに露光時間を制御可能な撮像素子と、
請求項1乃至
12のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項14】
画素ごとに異なる露光時間で撮影可能な撮像素子から得られた
、第1の露光時間に対応するRAWデータと、前記第1の露光時間よりも長い第2の露光時間に対応するRAWデータとから、複数のRAWデータを生成する生成工程と、
前記生成工程において生成された複数のRAWデータを符号化する符号化工程と、
を有
し、
前記生成工程では、前記第1の露光時間と前記第2の露光時間のうちの一方に対応するRAWデータにゲインをかけたRAWデータと、前記第1の露光時間と前記第2の露光時間のうちの他方に対応するRAWデータとの差分から差分RAWデータを生成し、
前記符号化工程では、前記差分RAWデータと、前記第1の露光時間と前記第2の露光時間のうちの他方に対応するRAWデータとを符号化することを特徴とする画像処理方法。
【請求項15】
コンピュータを、請求項1乃至
12のいずれか1項に記載の画像処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項16】
コンピュータを、請求項1乃至
12のいずれか1項に記載の画像処理装置の各手段として機能させるためのプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素ごとに露光時間が制御可能な撮像センサーで取得した画像を符号化して記録する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の撮像装置では、撮像センサーによって撮像された生の画像情報(RAWデータ)をデベイヤー処理(デモザイク処理)し、輝度と色差から成る信号に変換して、各信号についてノイズ除去、光学的な歪補正、画像の適正化などの所謂現像処理を行っている。そして、現像処理された輝度信号及び色差信号を圧縮符号化し、記録媒体に記録するのが一般的である。
【0003】
一方、撮像センサーで得られた直後の現像未処理の撮像データ(RAWデータ)を記録媒体に格納する撮像装置もある。RAWデータを記録すると、撮像センサーからの色情報を損ねることなく豊富な色階調数を保ったままの状態で保存できるため、自由度の高い編集が可能である。しかし、RAWデータは記録データ量が膨大となるため、記録メディアに多くの空き領域を必要とするという問題がある。そのため、RAWデータにおいても圧縮符号化を行い、データ量を抑えて記録することが望まれる。
【0004】
ところで、ハイダイナミックレンジ画像を取得するデバイスとして、特許文献1に開示されているように、同一平面上に露光時間が異なる画素を配置することにより、1度の撮影でダイナミックレンジの広い画像を取得できる撮像デバイスが知られている。特許文献1には、その撮像デバイスを使用した場合の、現像におけるハイダイナミックレンジ画像を生成する際の合成方法に関して開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された従来技術では、合成前のRAWデータを符号化する方法が開示されていない。
【0007】
また、特許文献1に記載されているような撮像デバイスを用いた場合、合成前のRAWデータを符号化しようとすると、同一平面上に配置された露光時間の異なる画素間でのレベル差が大きいため、高周波成分が多く発生して符号化効率が低下する。そのため、RAWデータを記録する際のデータ量が大きくなる課題がある。
【0008】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、露光時間が異なる画素信号が混在したRAWデータを符号化して記録する場合に、データ量を削減できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る画像処理装置は、画素ごとに異なる露光時間で撮影可能な撮像素子から得られた、第1の露光時間に対応するRAWデータと、前記第1の露光時間よりも長い第2の露光時間に対応するRAWデータとから、複数のRAWデータを生成する生成手段と、前記生成手段により生成された複数のRAWデータを符号化する符号化手段と、を備え、前記生成手段は、前記第1の露光時間と前記第2の露光時間のうちの一方に対応するRAWデータにゲインをかけたRAWデータと、前記第1の露光時間と前記第2の露光時間のうちの他方に対応するRAWデータとの差分から差分RAWデータを生成し、前記符号化手段は、前記差分RAWデータと、前記第1の露光時間と前記第2の露光時間のうちの他方に対応するRAWデータとを符号化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、露光時間が異なる画素信号が混在したRAWデータを符号化して記録する場合に、データ量を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の画像処理装置の第1の実施形態であるデジタルカメラの機能構成を示すブロック図。
【
図3】撮像部の画素配列及び露光時間の設定を示す図。
【
図4A】第1の実施形態におけるRAWデータの分離方法を示す図。
【
図4B】第1の実施形態におけるRAWデータの分離方法を示す図。
【
図4C】第1の実施形態におけるRAWデータの分離方法を示す図。
【
図4D】第1の実施形態におけるRAWデータの分離方法を示す図。
【
図5】画素の露光時間が同一の場合におけるRAWデータ出力を示す図。
【
図7】周波数変換(サブバンド分割)の例を示す図。
【
図8】量子化パラメータを生成する単位の例を示す図。
【
図10】第2の実施形態におけるRAWデータの分離方法を示す図。
【
図11】第3の実施形態におけるRAWデータの分離方法を示す図。
【
図12】第4の実施形態における画素配列及び露光時間の設定を示す図。
【
図13】第4の実施形態における画素配列の置き換えを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の画像処理装置の第1の実施形態であるデジタルカメラ100の機能構成を示すブロック図である。デジタルカメラ100は、撮像部101、分離部102、RAW符号化部103、記録処理部104、記録媒体105、メモリI/F(メモリインターフェース)106、メモリ107を備えて構成される。
【0014】
撮像部101は、光学レンズ、絞り、フォーカス制御部及びレンズ駆動部を含む光学ズームが可能なレンズ光学系と、光電変換素子を有する画素が2次元的に複数配列されたイメージセンサ(撮像素子)とを含む。
【0015】
イメージセンサは、レンズ光学系により結像された被写体像を各画素で光電変換し、さらにA/D変換回路によってアナログ・デジタル変換して、画素単位のデジタル信号(画素データ、RAWデータ)を出力する。イメージセンサには、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどが用いられる。
【0016】
なお、本実施形態においては、イメージセンサの各画素に、
図2に示すようにR(赤)、G1/G2(緑)、B(青)の何れかのカラーフィルタが設けられている。なお、撮像部101から出力されるRAWデータは、メモリI/F106を介してメモリ107に格納される。
【0017】
分離部102は、撮像部101で取得したRAWデータを露光時間ごとのRAWデータに分離する回路またはモジュールである。メモリ107に格納されているRAWデータをメモリI/F106を介して読み出して、露光時間ごとのRAWデータに分離してRAW符号化部103へ出力する。
【0018】
RAW符号化部103は、RAWデータに対する演算を行う回路またはモジュールであり、分離部102から入力されたRAWデータを符号化する。RAW符号化部103は、符号化によって生成した符号化データを、メモリI/F106を介してメモリ107に格納する。
【0019】
記録処理部104は、メモリ107へ格納された符号化データ等の各種データを、メモリI/F106を介して読み出し、記録媒体105へ記録する。記録媒体105は、大容量のランダムアクセス可能な、例えば不揮発性メモリで構成される記録メディアである。
【0020】
メモリI/F106は、各処理部からのメモリ・アクセス要求を調停し、メモリ107に対する読み出し・書き込み制御を行う。メモリ107は、例えばSDRAMなどの揮発性メモリであり、記憶手段として動作する。メモリ107は、上述の画像データ、音声データ等の各種のデータ、あるいはデジタルカメラ100を構成する各処理部から出力される各種データを格納するための記憶領域を提供する。
【0021】
次に、撮像部101の画素の配列構造について、
図2を参照して説明する。
図2に示すように、撮像部101には、2×2画素ごとにR画素、G1画素、G2画素、B画素が配列されており、同一の色が2×2画素ごとに配列されているのが特徴である。撮像部101は、これらの計4×4画素を最小単位として、この最小単位を繰り返し配列した構造を有する。
【0022】
図2に示す画素配列構造を有し、画素ごとに露光時間を制御可能(画素ごとに異なる露光時間で撮影可能)な撮像素子における露光時間の設定について、
図3を参照して説明する。
図3に示すように、水平方向をx、垂直方向をyとして、列番号をx座標で表し、行番号をy座標で表している。括弧で示した数字はイメージセンサ上の各画素の位置を示す座標を示している。また、白色の画素が短時間露光画素、灰色の画素が長時間露光画素を表している。本実施形態においては、
図3に示すように列方向にジグザグ状に短時間露光を行う短時間露光画素と長時間露光を行う長時間露光画素が設定されている。
【0023】
例えば、
図3の左上端の4つのR画素の露光時間の設定は以下のとおりである。R(1,1)は短時間露光画素、R(2,1)は長時間露光画素、R(1,2)は長時間露光画素、R(2,2)は短時間露光画素となっている。このように、各列において短時間露光画素と長時間露光画素が交互に設定され、また各行に短時間露光画素と長時間露光画素が交互に設定されている。第1列と、第2列においてy方向に短時間露光画素のみを辿ると、上から第1行では第1列が短時間露光画素、第2行では第2列が短時間露光画素、第3行では第1列が短時間露光画素、第4行では第2列が短時間露光画素となっている。同様に、第1列と、第2列においてy方向に長時間露光画素のみを辿ると、上から第1行では第2列が長時間露光画素、第2行では第1列が長時間露光画素、第3行では第2列が長時間露光画素、第4行では第1列が長時間露光画素となっている。
【0024】
以上のように、画素配列構造とその露光時間の設定は、同一色の画素が2×2画素単位で設定され、この4画素中に2つの短時間露光画素(2種類の露光時間の一方)と2つの長時間露光画素(2種類の露光時間の他方)が配置されている構造となっている。
【0025】
ここで、撮像部101でRAWデータを取得したまま、すなわち露光時間の異なる画素が混在したまま符号化しようとすると、露光時間が異なる画素間でのレベル差が大きいため、高周波成分が多く発生しRAWデータの記録データ量が大きくなってしまう。そこで本実施形態では、分離部102で露光時間ごとのRAWデータに分離して、画素間のレベルを合わせ高周波成分を抑制することでRAWデータの記録データ量を削減する。
【0026】
次に、その分離方法に関して、
図4A~
図4Dを参照して説明する。分離部102は、
図4A~
図4Dに示すように、撮像部101から入力されるRAWデータを、短時間露光画素のみで構成されるベイヤー配列構造のRAWデータと、長時間露光画素のみで構成されるベイヤー配列構造のRAWデータとにそれぞれ分離し、RAW符号化部103へ出力する。
【0027】
具体的には、短時間露光画素のみで構成されるRAWデータを、
図4AのRAWデータ401aと
図4BのRAWデータ401bで示す、2面の短時間露光RAWデータに分離する。RAWデータ401aは、
図4Aに示すように、奇数行・奇数列のひし形で囲った短時間露光画素を抜き出して構成される短時間露光RAWデータである。また、RAWデータ401bは、
図4Bに示すように、偶数行・偶数列のひし形で囲った短時間露光画素を抜き出して構成される短時間露光RAWデータである。
【0028】
同様にして、長時間露光画素のみで構成されるRAWデータを、
図4CのRAWデータ401cと
図4DのRAWデータ401dで示す、2面の長時間露光RAWデータに分離する。RAWデータ401cは、
図4Cに示すように、奇数行・偶数列のひし形で囲った長時間露光画素を抜き出して構成される長時間露光RAWデータである。また、RAWデータ401dは、
図4Dに示すように、偶数行・奇数列のひし形で囲った長時間露光画素を抜き出して構成される長時間露光RAWデータである。RAW符号化部103は、分離部102からベイヤー配列状に入力されるRAWデータ401a,401b,401c,401dをそれぞれ符号化する。
【0029】
なお、ここまでは、
図2の画素配列を用いて、同一平面上に配置される画素の露光時間が異なる場合の分離部102の分離方法について説明したが、次に、画素の露光時間を全て同じにした場合の分離部102の処理に関して、
図5を参照して説明する。
【0030】
この場合、分離部102は、撮像部101で取得したRAWデータに対して、
図5に示すように、灰色で示したひし形で囲った同一の色成分4画素ごとの画素平均値を算出して、RAWデータ501を構成し、RAW符号化部103へ出力する。具体的には、以下の式1~式4に示すように同色成分ごとの加算平均を算出して分離を行う。
【0031】
【0032】
続いて、短時間露光RAWデータ401a,401bと、長時間露光RAWデータ401c,401dに対して処理を行うRAW符号化部103の詳細な構成及び処理の流れについて、
図6に示すブロック図を参照しながら説明する。
【0033】
RAW符号化部103は、チャネル変換部601、周波数変換部602、量子化パラメータ生成部603、量子化部604、符号化部605、量子化パラメータ符号化部606を備えて構成されている。
【0034】
チャネル変換部601は、分離部102から入力されるベイヤー配列状のRAWデータを複数のチャネルに変換する。例えば、ベイヤー配列のR、G1、G2、B毎に4つのチャネルへ変換する。あるいは、R、G1、G2、Bに対して更に以下の変換式5~8により4つのチャネルへ変換する。
【0035】
Y=(R+G1+G2+B)/4 式5
C0=R-B 式6
C1=(G0+G1)/2-(R+B)/2 式7
C2=G0-G1 式8
なお、ここでは4つのチャネルへ変換する構成例を示しているが、チャネル数や変換方法は上記以外の方法であってもよい。
【0036】
周波数変換部602は、チャネル単位に所定の分解レベル(以降、levと呼ぶ)で離散ウェーブレット変換による周波数変換処理を行い、生成されたサブバンドデータ(変換係数)を量子化パラメータ生成部603及び量子化部604へ出力する。
【0037】
図7(a)は、lev=1のサブバンド分割処理に関わる離散ウェーブレット変換を実現するためのフィルタバンクの構成を示している。離散ウェーブレット変換処理を水平、垂直方向に実行すると、
図7(b)に示すように1つの低周波数サブバンド(LL)と、3つの高周波数サブバンド(HL,LH,HH)へ分割される。
【0038】
図7(a)に示すローパスフィルタ(以降、lpfと呼ぶ)及びハイパスフィルタ(以降、hpfと呼ぶ)の伝達関数をそれぞれ式9、式10に示す。
【0039】
lpf(z)=(-z-2+2z-1+6+2z1-z2)/8 式9
hpf(z)=(-z-1+2-z1)/2 式10
levが1よりも大きい場合には、低周波数サブバンド(LL)に対して階層的にサブバンド分割が実行される。なお、ここでは離散ウェーブレット変換は、式9、式10に示されるように、5タップのlpfと3タップのhpfで構成されているが、これとは異なるタップ数及び異なる係数のフィルタ構成であってもよい。
【0040】
量子化パラメータ生成部603は、周波数変換部602により生成されたサブバンドデータ(変換係数)に対してある所定のサブバンドデータ単位ごとに量子化処理を行うための量子化パラメータを生成する。生成した量子化パラメータは、量子化パラメータ符号化部606へ入力されると共に量子化部604へも供給される。
【0041】
量子化部604は、周波数変換部602から出力されたサブバンドデータ(変換係数)に対して量子化パラメータ生成部603から供給された量子化パラメータに基づき量子化処理を行い、量子化後のサブバンドデータ(変換係数)を符号化部605へ出力する。
【0042】
符号化部605は、量子化部604から出力された量子化後のサブバンドデータ(変換係数)に対して、サブバンド毎にラスタースキャン順で予測差分型エントロピー符号化を行い、生成した符号化RAWデータをメモリ107へ格納する。なお、予測方式やエントロピー符号化方式は、他の方式であってもよい。
【0043】
量子化パラメータ符号化部606は、量子化パラメータ生成部603から入力された量子化パラメータに対して符号化を行う処理部である。符号化部605と共通の符号化方式により量子化パラメータを符号化し、生成した符号化量子化パラメータをメモリ107へ格納する。
【0044】
次に、上述した所定のサブバンドの単位を4×4として量子化パラメータを生成する場合のサブバンドデータとチャネルデータ及びRAWデータの関係を
図8を参照して説明する。
【0045】
4×4のサブバンドは、
図8に示すように各チャネルの8×8画素相当に対応し、また各RAWデータの16×16画素相当のブロックに対応する。よって、この場合には、量子化パラメータを、短時間露光RAWデータ401a,401b及び長時間露光RAWデータ401c,401dにおいて、それぞれ16×16画素相当のRAWデータブロックごとにメモリ107へ格納することが必要となる。
【0046】
なお、量子化パラメータのデータ量を削減するためには、短時間露光RAWデータ401a,401bと長時間露光RAWデータ401c,401dを共通の量子化パラメータとすることが有効である。この場合は、データ量を1/2に削減することができる。また、本実施形態では、さらにデータ量を削減すべく、適正露出に近い方の露光時間で生成された量子化パラメータを基準として、もう片方の量子化パラメータを算出する。これにより、量子化パラメータのデータ量を1/4に削減することができる。ここで、適正露出に近い方を基準とするのは、白とびや黒つぶれが発生している露出過多及び露出不足の画像では、被写体の正確な特徴に応じた量子化パラメータの生成ができないためである。
【0047】
具体例として、短時間露光の方を適正露出に近いとする場合、短時間露光RAWデータで生成した量子化パラメータを基準として、長時間露光RAWデータの量子化パラメータを算出するための計算式を式11に示す。
【0048】
L_Qp=α×S_Qp+β 式11
ここで、
L_Qp:長時間露光RAWデータの量子化パラメータ
S_Qp:短時間露光RAWデータの量子化パラメータ
α:傾き
β:切片
である。
【0049】
なお、本実施形態では、短時間露光RAWデータで生成した量子化パラメータを基準として、長時間露光RAWデータの量子化パラメータを算出している。しかし、長時間露光RAWデータで生成した量子化パラメータを基準として短時間露光RAWデータの量子化パラメータを生成してもよい。また、短時間露光と長時間露光のどちらも基準とせずに、短時間露光と長時間露光のそれぞれでα、βを設定して、量子化パラメータを算出してもよい。
【0050】
次に、式11に示したα、βの決定方法に関して説明する。α,βは任意の値でもよいが、本実施形態では詳細なパラメータの決定方法について説明する。上述した例のように、短時間露光の方を適正露出に近いとした場合、長時間露光では短時間露光と比較して露光時間が長いため露出過多となる。よって、短時間露光で明るさが中位から明部の領域に関しては、長時間露光では画素値が飽和レベルに達して被写体の明るさに応じた画素値出力ができなくなっている可能性が高くなる。一方で、暗部領域に関しては短時間露光より詳細な情報を取得することが可能となる。そのため、長時間露光RAWデータの量子化パラメータは、短時間露光RAWデータにおいて明るさが中位から明部と判定された領域に関しては短時間露光と比較して大きくする。また、暗部と判定された領域に関しては同じにすることにより、画質を担保しながら量子化パラメータのデータ量を削減することが可能となる。
【0051】
具体的に、
図9A~
図9Cを参照して説明する。
図9Aは、短時間露光RAWデータにおける、短時間露光RAWデータの明るさに応じた量子化パラメータの設定の一例を示している。また、
図9Bは、長時間露光RAWデータにおける、短時間露光RAWデータの明るさに応じた量子化パラメータ設定の一例を示している。なお、明るさの指標としては、上述した量子化パラメータ生成単位に対応する1LLサブバンドを用いて評価してもよい。それぞれの量子化パラメータの大小関係を、式12~式14に示す。
【0052】
Q0<Q1<Q2 式12
Q1<Q3 式13
Q2<Q4 式14
まず、短時間露光RAWデータにおける量子化パラメータは、視覚特性を考慮して、暗部ほど量子化パラメータが小さくなるように設定する(Q0<Q1<Q2)。これに対し、長時間露光RAWデータでは、短時間露光RAWデータの暗部に対応する領域では短時間露光RAWデータと同じQ0となるように、中位から明部に対応する領域では短時間露光RAWデータよりも量子化パラメータが大きくなるように(Q1<Q3、Q2<Q4)設定する。
【0053】
図9Cは、短時間露光RAWデータで生成した量子化パラメータを基準として、長時間露光RAWデータの量子化パラメータを算出するためのグラフを示している。横軸は、短時間露光RAWデータの量子化パラメータ(S_Qp)を、縦軸は長時間露光RAWデータの量子化パラメータ(L_Qp)を表している。式11に示したα、βは式12~式14の関係となるように設定すればよい。
【0054】
なお、α、βは符号化データと同様、メモリ107へ格納され、メモリI/F106を介して記録媒体105に符号化データと共に記録される。また、基準とする量子化パラメータを短時間露光と長時間露光のどちらにするかを示すフラグをメモリ107へ格納し、メモリI/F106を介して記録媒体105に符号化データと共に記録する。ただし、短時間露光及び長時間露光のどちらも基準とせずにそれぞれの露光時間でα、βを持つ場合は、フラグを持たなくてよい。
【0055】
また、上述したいずれの場合にも対応する場合は、まず基準とする露光時間を持つか否かを示すフラグを持ち、次に基準とする露光時間がある場合は短時間露光と長時間露光のどちらを基準としたかを示すフラグを持てばよい。この場合も、それぞれのフラグ情報をメモリ107へ格納し、メモリI/F106を介して記録媒体105に符号化データと共に記録する。
【0056】
以上説明したように、本実施形態では、分離部102で露光時間ごとにRAWデータを分離して、符号化する画素間のレベル差をなくし、高周波成分を抑制することにより、RAWデータの記録データ量を削減することが可能になる。また、片方のRAWデータで算出した量子化パラメータを基準として、露光時間の異なるもう片方の量子化パラメータを決定することにより、RAWデータの記録データ量を削減することが可能になる。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、分離部102におけるRAWデータの分離方法が第1の実施形態と異なる。なお、第2の実施形態のデジタルカメラの構成は、第1の実施形態と同一であるため、重複する説明は省略し、相違点について説明する。
【0058】
第1の実施形態では、分離部102において露光時間の同じ画素ごとに分離したRAWデータ、具体的には短時間露光画素のみで構成されるRAWデータ2面と、長時間露光画素のみで構成されるRAWデータ2面を、RAW符号化部103へ出力した。
【0059】
これに対し、第2の実施形態では、さらにデータ量を削減するために、分離部102において、近傍にある同露光時間かつ同一色成分の画素値を加算し、その平均画素値を算出してRAW符号化部103へ出力する方法について説明する。
【0060】
本実施形態における分離部102の処理について、
図10を参照して説明する。撮像部101から入力される露光時間が異なる画素が混在するRAWデータに対して、分離部102は
図10(a)に示す長方形で囲った画素、すなわち短時間露光画素かつ同一色成分の画素値の加算平均を算出し、短時間露光RAWデータ1001aに分離する。具体的には、以下の式15~式18に示すように、同色成分ごとの加算平均を算出して分離を行う。
【0061】
【0062】
同様に、
図10(b)に示す長方形で囲った画素である長時間露光画素かつ同一色成分の画素同士を加算平均して長時間露光RAWデータ1001bに分離する。具体的には、以下の式19~式22に示すように同色成分ごとの加算平均を算出して分離を行う。
【0063】
【0064】
以上説明したように、第2の実施形態では、撮像部101で取得したRAWデータを分離部102で加算平均して分離することにより、RAW符号化部103へ出力するデータ量を第1の実施形態と比較して1/2に削減することが可能となる。
【0065】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、分離部102におけるRAWデータの分離方法が、第1の実施形態及び第2の実施形態と異なる。なお、本実施形態のデジタルカメラの構成は、第1の実施形態及び第2の実施形態と同一であるため、重複する説明は省略し、相違点について説明する。
【0066】
第2の実施形態では、分離部102において、近傍にある同露光時間画素かつ同一色成分同士の加算平均を算出してRAW符号化部103へ出力した。第3の実施形態では、第2の実施形態と比べてさらにデータ量を削減するために、片方の露光時間に合わせて、もう片方の露光時間のRAWデータに対してゲインを掛けて、その差分値をRAW符号化部103へ出力する。つまり、RAW符号化部103は、一方の露光時間については加算平均のRAWデータを符号化し、他方の露光時間については差分値のRAWデータ(差分RAWデータ)を符号化する。
【0067】
図11を参照して、本実施形態における分離部102における処理について説明する。まず、分離部102は第2の実施形態と同様、
図10(a)と
図10(b)に示すように、近傍にある同露光時間かつ同一色成分の画素同士を加算し、その平均を算出してRAWデータ1001a,1001bを取得する。続いて、長露光RAWデータ1001bの1行目と、短露光RAWデータ1001aの1行目に対して長露光RAWデータに対応したゲインγを乗算し、かつオフセットεを加算したものとの差分値を取得する。このとき、ゲインγ及びオフセットεは、予め露光時間から逆算して決定してもよいし、取得した短時間露光画素と長時間露光画素のヒストグラム等を用いて決定してもよい。
【0068】
具体的には、以下の式23~式26に示すように1行目の差分を算出する。
【0069】
【0070】
これを1行目だけでなく、2行目、3行目、4行目についても同様に行い、算出した差分値をRAW符号化部103へ出力する。なお、本実施形態では短時間露光RAWデータに対して補正を行っているが、長時間露光RAWデータに対して補正を行ってもよい。ただし、丸め処理の観点から考えると、短時間露光RAWデータに対してゲインγを掛けて差分を算出した方が差分値の精度は高まる。
【0071】
以上説明したように、第3の実施形態では、RAWデータをそのままRAW符号化部103へ出力するのではなく、差分値として出力することにより、第2の実施形態と比べてさらにRAWデータの記録データ量を削減することが可能となる。
【0072】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、撮像部101に、第1乃至第3の実施形態とは異なる画素配列、具体的には
図12に示す画素配列を適用する。
【0073】
上述した第1乃至第3の実施形態では、
図2に示すR、G1、G2、Bの4つの異なる画素からなる4×4の16画素を最小単位として、この最小単位を繰り返して配置した構造の撮像部101について説明した。
【0074】
これに対し、
図12は、第4の実施形態における撮像部101の画素配列及び露光時間の設定を示している。水平方向をx、垂直方向をyとして、列番号をx座標で表し、行番号をy座標で表している。括弧で示した数字はイメージセンサ上の各画素の位置の座標を示している。また、白色の画素が短時間露光画素、灰色の画素が長時間露光画素を表している。このように、
図12では、R、G1、G2、Bの配列からなるベイヤー配列の画素配列において、2列単位で短時間露光画素と長時間露光画素が交互に設定されている。
【0075】
図12の画素配列及び露光時間の設定においても、
図13に示すように
図2に示す画素配列構造に置き換えて処理を行うことにより、第1乃至第3の実施形態で説明した処理を行うことができる。
【0076】
以上説明したように、第4の実施形態では、画素配列を変更しても、第1乃至第3の実施形態で説明した処理と同様のことが可能となる。
【0077】
(他の実施形態)
また本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現できる。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現できる。
【0078】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0079】
101:撮像部、102:分離部、103:RAW符号化部、104:記録処理部、105:記録媒体、106:メモリインターフェース、107:メモリ