(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240603BHJP
C09J 7/26 20180101ALI20240603BHJP
C09J 7/24 20180101ALI20240603BHJP
C09J 133/16 20060101ALI20240603BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240603BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/26
C09J7/24
C09J133/16
B32B27/00 M
B32B27/30 A
B32B27/30 D
(21)【出願番号】P 2020096390
(22)【出願日】2020-06-02
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2019103618
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】内田 徳之
(72)【発明者】
【氏名】足立 絢
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 克典
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-302297(JP,A)
【文献】特開2019-048904(JP,A)
【文献】特開2019-048972(JP,A)
【文献】国際公開第2016/075753(WO,A1)
【文献】特開2012-117040(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0121900(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
B32B 1/00 - 43/00
C08J 9/00 - 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体基材と、該発泡体基材の少なくとも一方の面に形成された粘着剤層を有する粘着テープであって、前記発泡体基材は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素化されたフルオロアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を30重量%以上含む(メタ)アクリル共重合体を
発泡してなる、粘着テープ。
【請求項2】
前記発泡体基材は、見かけ密度が0.5g/cm
3以上0.95g/cm
3以下である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記発泡体基材は、気泡の平均長径が10μm以上500μm以下である、請求項1又は2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素化されたフルオロアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を30重量%以上含む(メタ)アクリル共重合を含む粘着剤からなる、請求項1~3のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記発泡体基材の少なくとも一方の面に樹脂層を有する、請求項1~4のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項6】
電子機器の部品を固定するために用いられる、請求項1~5のいずれかに記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置又は入力装置を搭載した携帯電子機器(例えば、携帯電話、携帯情報端末等)においては、組み立てのために粘着テープが用いられている。具体的には、例えば、携帯電子機器の表面を保護するためのカバーパネルをタッチパネルモジュール又はディスプレイパネルモジュールに接着したり、タッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとを接着したりするために両面粘着テープが用いられている。このような両面粘着テープは、例えば、額縁状等の形状に打ち抜かれ、表示画面の周辺に配置されるようにして用いられる(例えば、特許文献1、2)。また、車輌部品(例えば、車載用パネル)を車両本体に固定する用途にも両面粘着テープが用いられている。
【0003】
また、携帯電子機器の部品を固定するために用いられる両面粘着テープには、発泡体基材が用いられることがある。例えば、特許文献1及び2には、基材層の少なくとも片面にアクリル系粘着剤層が積層一体化されており、該基材層が特定の架橋度及び気泡のアスペクト比を有する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートであるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-242541号公報
【文献】特開2009-258274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子機器の小型化、軽量化及び低コスト化によって、携帯電話、スマートフォン、ウェアラブル端末等の常に身に着けたり、手元に置いたりするタイプの電子機器が広く普及している。このような携帯型の電子機器は、頻繁に使用され、また、タッチパネル等により素手で操作が行われる。頻繁に手が触れることで、電子機器の部品を固定するために用いられる粘着テープも皮脂に晒されることになるが、従来の粘着テープに用いられている発泡体基材は、皮脂により膨潤してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、皮脂への耐性に優れる発泡体基材を有する粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、発泡体基材と、該発泡体基材の少なくとも一方の面に形成された粘着剤層を有する粘着テープであって、前記発泡体基材は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素化されたフルオロアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を30重量%以上含む(メタ)アクリル共重合体を含有する、粘着テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の粘着テープは、発泡体基材を有する。粘着テープの基材として発泡体基材を用いることで、被着体の凹凸や曲面に追従する高い柔軟性を発揮することができる。
【0009】
上記発泡体基材は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素化されたフルオロアルキル(メタ)アクリレート(以下、単に「フルオロアルキル(メタ)アクリレート」ともいう。)に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル共重合体(以下、「発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体」ともいう。)を含有する。
従来の発泡体基材では、皮脂を吸収してしまうことにより、発泡体基材自体の強度が低下して破損してしまったり、発泡体基材のコシが失われてしまったり、基材側からも皮脂が触れることにより皮脂による粘着剤層の劣化が促進されてしまったりすることにより、皮脂に対する耐性が低下していたものと考えられる。
これに対して上記フルオロアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体を含有する発泡体基材は、フッ素自身の高い撥水撥油性と、フッ素原子の密なパッキングとにより、(メタ)アクリル共重合体の分子鎖内への皮脂の浸入が抑えられる。発泡体基材が皮脂を吸収しにくいことから、これを用いた本発明の粘着テープは、皮脂に対する優れた耐性を発揮することができる。
【0010】
上記フルオロアルキル(メタ)アクリレートとしては特に限定されず、例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルアクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのフルオロアルキル(メタ)アクリレートは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。なかでも、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート及び2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、これらのアクリレートがより好ましい。皮脂への耐性が特に高いことから、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートが特に好ましい。
【0011】
上記発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体において、上記フルオロアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量の下限は30重量%である。上記含有量が30重量%以上であれば、上記発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体の分子鎖内への皮脂の浸入が抑えられ、粘着テープの皮脂への耐性が向上する。上記含有量の好ましい下限は40重量%、更に好ましい下限は45重量%、特に好ましい下限は50重量%である。上記含有量の上限は特に限定されないが、発泡体基材が硬くなり過ぎず、充分な耐衝撃性を発揮する観点から、好ましい上限は90重量%、より好ましい上限は80重量%、更に好ましい上限は70重量%である。
【0012】
上記発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体は、更に、炭素数が2以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことが好ましい。上記(メタ)アクリル共重合体が、上記炭素数が2以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことにより、上記発泡体基材の凝集力が高くなり、皮脂への耐性が向上する。
【0013】
上記炭素数が2以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの炭素数が2以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。なかでも、高い凝集力を発揮することから、メチルアクリレートが好ましい。
【0014】
上記発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体において、上記炭素数が2以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は10重量%、好ましい上限は40重量%である。上記含有量がこの範囲内であると、上記発泡体基材の凝集力がより高くなり、皮脂への耐性が向上する一方、上記発泡体基材が硬くなり過ぎることなく、充分な耐衝撃性を発揮することができる。上記含有量のより好ましい下限は15重量%、より好ましい上限は30重量%である。
【0015】
上記発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体は、更に、架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含むことが好ましい。上記発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体が上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含むことにより、架橋剤を併用したときに上記(メタ)アクリル共重合体の鎖間が架橋される。その際、架橋度を調整することにより、上記発泡体基材のゲル分率を調整することができる。
【0016】
上記架橋性官能基として、例えば、水酸基、カルボキシル基、グリシジル基、アミノ基、アミド基、ニトリル基等が挙げられる。なかでも、上記発泡体基材のゲル分率の調整が容易であることから、水酸基又はカルボキシル基が好ましく、水酸基がより好ましい。
上記水酸基を有するモノマーとして、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記カルボキシル基を有するモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
上記グリシジル基を有するモノマーとして、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記アミド基を有するモノマーとして、例えば、ヒドロキシエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
上記ニトリル基を有するモノマーとして、例えば、アクリロニトリル等が挙げられる。
これらの架橋性官能基を有するモノマーは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0017】
上記発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体において、上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.05重量%、好ましい上限は10重量%であり、より好ましい下限は1重量%、より好ましい上限は5重量%である。上記含有量が上記範囲内であることで、上記発泡体基材のゲル分率を調整しやすくなる。
【0018】
上記発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体は、本発明の効果を阻害しない範囲で、更に、他のモノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。上記他のモノマーは特に限定されず、例えば、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0019】
また、上記発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体を紫外線重合法により調製する場合には、上記発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体は、更に、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーに由来する構成単位を含むことが好ましい。
【0020】
上記発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限は40万、好ましい上限は200万である。上記発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量がこの範囲内であることにより、上記発泡体基材の皮脂への耐性が向上するとともに、高い耐衝撃性を発揮することができる。上記重量平均分子量のより好ましい下限は50万、より好ましい上限は150万であり、更に好ましい下限は60万、更に好ましい上限は120万である。
なお、重量平均分子量は、GPC測定により求められたポリスチレン換算分子量であり、重合条件(例えば、重合開始剤の種類又は量、重合温度、モノマー濃度等)によって調整できる。なお、GPC測定では、例えば、カラムとして、カラムLF-804(昭和電工社製)、溶媒としてテトラヒドロフランを用いることができ、測定条件として、40℃、流量0.5mL/minを採用することができる。
【0021】
上記発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体を合成するには、上記構成単位の由来となるモノマーを重合開始剤の存在下にてラジカル反応させればよい。
ラジカル反応の方式は特に限定されず、例えば、リビングラジカル重合、フリーラジカル重合等が挙げられる。リビングラジカル重合によれば、フリーラジカル重合と比較してより均一な分子量及び組成を有する共重合体が得られ、低分子量成分等の生成を抑えることができ、上記発泡体基材の凝集力が高くなる。
重合方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、エマルジョン重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。なかでも、合成が簡便であることから、溶液重合が好ましい。
【0022】
重合方法として溶液重合を用いる場合、反応溶剤として、例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルスルホキシド、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル等が挙げられる。これらの反応溶剤は単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0023】
上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。上記有機過酸化物として、例えば、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。上記アゾ化合物として、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
また、リビングラジカル重合の場合には、上記重合開始剤として、例えば、有機テルル重合開始剤が挙げられる。上記有機テルル重合開始剤は、リビングラジカル重合に一般的に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、有機テルル化合物、有機テルリド化合物等が挙げられる。なお、リビングラジカル重合においても、上記有機テルル重合開始剤に加えて、重合速度の促進を目的として上記重合開始剤としてアゾ化合物を用いてもよい。
【0024】
上記発泡体基材は、架橋剤により架橋されていることが好ましい。
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましい。
上記架橋剤の配合量は特に限定されないが、上記発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限は10重量部であり、より好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0025】
上記発泡体基材は、更に、帯電防止剤、離型剤、酸化防止剤、耐候剤、結晶核剤等の添加剤や、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、エラストマー等の樹脂改質剤等を含有していてもよい。
【0026】
上記発泡体基材は、見かけ密度の好ましい下限が0.5g/cm3、好ましい上限が0.95g/cm3である。上記発泡体基材の見かけ密度を上記範囲とすることで、強度を維持しつつ、より柔軟性及び耐衝撃性に優れた粘着テープとすることができる。粘着テープの強度、柔軟性及び耐衝撃性を更に高める観点から、上記発泡体基材の見かけ密度のより好ましい下限は0.6g/cm3、より好ましい上限は0.93g/cm3であり、更に好ましい下限は0.7g/cm3、更に好ましい上限は0.9g/cm3である。
ここで、見かけ密度とは、発泡体基材の空隙を含む全体の体積をVa、気泡部分の体積をVpとしたときに、1-Vp/Vaで表される。Vaは発泡体基材を任意の大きさの直方体として取り出したとき、厚み方向をz方向とし、面方向の短軸をx軸、長軸をy軸としたとき、x、y、z方向の長さの積である。Vpは、CTスキャン(例えば、ヤマト科学社製のTDM1000H-II(2K))で試料の対象領域の3D画像を撮影し、解析ソフト(例えば、ボリュームグラフィックス社製のVGStudio)で構造解析を行うことで、各気泡の体積の合計として求めることができる。
【0027】
上記発泡体基材は、気泡の平均長径の好ましい下限が10μm、好ましい上限が500μmである。上記平均長径を上記範囲内とすることにより、本発明の粘着テープはより高い耐衝撃性を発揮することができる。上記平均長径のより好ましい下限は20μm、より好ましい上限は150μmである。
後述するように発泡剤として熱膨張性マイクロカプセルを用いる場合には、熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルの内孔の平均長径が上記気泡の平均長径となる。
【0028】
上記発泡体基材の気泡の平均長径は、以下の方法により測定することができる。
まず、発泡体基材を50mm四方にカットし、液体窒素に1分間浸した後、カミソリ刃を用いてMD方向に平行かつMD方向とTD方向が成す面に対して垂直な面で切断する。次いで、デジタルマイクロスコープ(例えば、キーエンス社製、「VHX-900」等)を用いて、200倍の倍率で切断面の拡大写真を撮影し、MD方向に2mmの範囲(厚み×2mmの範囲)に存在する全てのセルについてMD方向の気泡径を測定する。この操作を5回繰り返し、得られたすべての気泡径を平均することでMD方向の平均気泡径を算出する。次いで、発泡体基材をTD方向に平行かつMD方向とTD方向が成す面に対して垂直な面で切断する以外は同様の方法でTD方向の平均気泡径を得る。得られたMD及びTD方向の平均気泡径のうち大きいほうを気泡の平均長径、短いほうを気泡の平均短径とする。
なお、MD(Machine Direction)とは、発泡体基材をシート状に押出加工する際の押出方向をいい、TD(Transverse Direction)とはMDに対して垂直な方向をいう。
【0029】
上記発泡体基材は、ゲル分率が95重量%以下であることが好ましい。上記発泡体基材のゲル分率が95重量%以下であることで、得られる粘着テープの耐衝撃性をより高めることができる。粘着テープの耐衝撃性を更に高める観点から、上記ゲル分率のより好ましい上限は80重量%である。上記ゲル分率の下限は特に限定されないが、10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましい。
上記発泡体基材のゲル分率は、上記発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体を架橋させることによって調整することができる。
なお、上記発泡体基材のゲル分率は、以下の方法で測定することができる。即ち、粘着テープから発泡体基材のみを0.1g取り出し、酢酸エチル50ml中に浸漬し、振とう機で温度23度、120rpmの条件で24時間振とうする。振とう後、金属メッシュ(目開き#200メッシュ)を用いて、酢酸エチルと酢酸エチルを吸収し膨潤した発泡体基材を分離する。分離後の発泡体基材を110℃の条件下で1時間乾燥させる。乾燥後の金属メッシュを含む発泡体基材の重量を測定し、下記式を用いて発泡体基材のゲル分率を算出する。
ゲル分率(重量%)=100×(W1-W2)/W0
(W0:初期発泡体基材重量、W1:乾燥後の金属メッシュを含む発泡体基材重量、W2:金属メッシュの初期重量)
【0030】
上記発泡体基材の25%圧縮強度は特に限定されないが、好ましい下限は1kPa、好ましい上限は2000kPaである。上記発泡体基材の25%圧縮強度を上記範囲とすることにより、粘着テープの強度を維持しながら、優れた柔軟性及び耐衝撃性を発揮することができる。粘着テープの強度、柔軟性及び耐衝撃性を更に向上させる観点から、上記発泡体基材の25%圧縮強度のより好ましい下限は20kPa、より好ましい上限は300kPaであり、更に好ましい下限は50kPa、更に好ましい上限は200kPaである。
なお、25%圧縮強度は、JIS K 6254に準拠し測定することで求めることができる。
【0031】
上記発泡体基材の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は40μm、好ましい上限は2900μmである。上記発泡体基材の厚みを上記範囲とすることにより、本発明の粘着テープを携帯電子機器部品、車載用電子機器部品等の固定に好適に用いることができる。上記部品等の固定により好適に用いることができる観点から、上記発泡体基材の厚みのより好ましい下限は60μm、より好ましい上限は1900μm、更に好ましい下限は80μm、更に好ましい上限は1400μm、特に好ましい下限は100μm、特に好ましい上限は1000μmである。
【0032】
上記発泡体基材を製造する方法としては、原料となる樹脂組成物を必要に応じて架橋した後に発泡する方法等、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、以下の工程(1)~(3)を有する方法により製造することができる。なお、上記発泡体基材の製造方法としては、他にも例えば、国際公開第2005/007731号に記載された方法等も挙げられる。
工程(1):上記発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体、架橋剤、発泡剤、及び、その他の添加剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによってシート状にされた樹脂組成物を得る工程
工程(2):シート状にされた樹脂組成物を架橋する工程
工程(3):架橋させたシート状の樹脂組成物を加熱し、発泡剤を発泡させる工程
【0033】
上記発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体に配合する発泡剤は特に限定されず、例えば、エクスパンセル(登録商標)(日本フィライト社製)、アドバンセル(積水化学工業社製)等の熱膨張性マイクロカプセル等が挙げられる。また、アゾジカルボンアミド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p-トルエンスルホニルセミカルバジド等の熱分解発泡剤等が挙げられる。これらの発泡剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記発泡剤の配合量は特に限定されないが、樹脂成分100重量部に対する好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限は12重量部である。上記発泡剤の含有量が上記範囲内であることで、所望の見かけ密度の発泡体基材を得ることができる。上記発泡剤の含有量のより好ましい上限は8重量部である。
【0035】
本発明の粘着テープは、上記発泡体基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する。
上記粘着剤層は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル粘着剤層、ゴム系粘着剤層、ウレタン粘着剤層、シリコーン系粘着剤層等が挙げられる。なかでも、皮脂に対する耐性に優れることから、アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素化されたフルオロアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を30重量%以上含む(メタ)アクリル共重合体(以下、「粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体」ともいう。)を含む粘着剤からなる粘着剤層が好適である。
【0036】
上記粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体に用いるフルオロアルキル(メタ)アクリレートは特に限定されず、例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルアクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのフルオロアルキル(メタ)アクリレートは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。なかでも、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート及び2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、これらのアクリレートがより好ましい。皮脂への耐性が特に高いことから、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートが特に好ましい。
【0037】
上記粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体において、上記フルオロアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量の好ましい下限は30重量%である。上記含有量が30重量%以上であれば、上記粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体の分子鎖内への皮脂の浸入がより抑えられ、粘着テープの皮脂への耐性が向上する。上記含有量のより好ましい下限は40重量%、更に好ましい下限は45重量%、特に好ましい下限は50重量%である。上記含有量の上限は特に限定されないが、粘着剤層が硬くなり過ぎず、充分な接着力を発揮する観点から、好ましい上限は90重量%、より好ましい上限は80重量%、更に好ましい上限は70重量%である。
【0038】
上記粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体は、炭素数が2以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことが好ましい。上記粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体が上記炭素数が2以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことにより、上記粘着剤層の凝集力が高くなる。その結果、上記粘着剤層の皮脂への耐性が向上する。
【0039】
上記炭素数が2以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとして、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの炭素数が2以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。なかでも、高い凝集力を発揮することから、メチルアクリレートが好ましい。
【0040】
上記粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体において、上記炭素数が2以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は10重量%、好ましい上限は40重量%である。上記含有量がこの範囲内であると、上記粘着剤層の凝集力がより高くなり、皮脂への耐性が向上する一方、上記粘着剤層が硬くなり過ぎることなく、充分な接着力を発揮することができる。上記含有量のより好ましい下限は15重量%、より好ましい上限は30重量%である。
【0041】
上記粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体は、更に、架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含むことが好ましい。
上記粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体が上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含むことにより、架橋剤を併用したときに上記(メタ)アクリル共重合体の鎖間が架橋される。その際、架橋度を調整することにより、上記粘着剤層のゲル分率を調整することができる。
【0042】
上記架橋性官能基として、例えば、水酸基、カルボキシル基、グリシジル基、アミノ基、アミド基、ニトリル基等が挙げられる。なかでも、上記粘着剤層のゲル分率の調整が容易であることから、水酸基又はカルボキシル基が好ましく、水酸基がより好ましい。
上記水酸基を有するモノマーとして、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記カルボキシル基を有するモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
上記グリシジル基を有するモノマーとして、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記アミド基を有するモノマーとして、例えば、ヒドロキシエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
上記ニトリル基を有するモノマーとして、例えば、アクリロニトリル等が挙げられる。
これらの架橋性官能基を有するモノマーは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0043】
上記粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体において、上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.05重量%、好ましい上限は10重量%であり、より好ましい下限は1重量%、より好ましい上限は5重量%である。上記含有量が上記範囲内であることで、上記粘着剤層用のゲル分率を調整しやすくなる。
【0044】
上記粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体は、本発明の効果を阻害しない範囲で、更に、他のモノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。上記他のモノマーは特に限定されず、例えば、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0045】
また、上記粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体を紫外線重合法により調製する場合には、上記(メタ)アクリル共重合体は、更に、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーに由来する構成単位を含むことが好ましい。
【0046】
上記粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限が30万である。上記粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量が30万以上であれば、上記粘着剤層の皮脂への耐性が向上するとともに、高温高湿下で生じる発泡をより抑制することができる。上記(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量のより好ましい下限は40万、更に好ましい下限は50万、特に好ましい下限は100万である。
上記(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量の上限は特に限定されないが、好ましい上限は200万、より好ましい上限は180万である。
なお、重量平均分子量は、GPC測定により求められたポリスチレン換算分子量であり、重合条件(例えば、重合開始剤の種類又は量、重合温度、モノマー濃度等)によって調整できる。なお、GPC測定では、例えば、カラムとして、カラムLF-804(昭和電工社製)、溶媒としてテトラヒドロフランを用いることができ、測定条件として、40℃、流量0.5mL/minを採用することができる。
【0047】
上記粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体を合成する方法は特に限定されず、上記発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体を合成する方法と同様の方法を用いることができる。
【0048】
上記粘着剤層は、上記粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体に加えて、架橋剤を含有することが好ましい。
上記粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体が上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含む場合、上記架橋剤によって上記(メタ)アクリル共重合体の鎖間に架橋構造を構築することができる。その際、架橋度を調整することにより、上記粘着剤層のゲル分率を調整することができる。
【0049】
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましく、上記粘着剤層のゲル分率の調整が容易であることから、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。
上記粘着剤層において、上記架橋剤の含有量は特に限定されないが、上記粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部であり、より好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0050】
上記粘着剤層は、更に、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
上記粘着剤層が上記シランカップリング剤を含有することにより、上記粘着剤層の被着体に対する密着性が向上する。その結果、上記粘着剤層の皮脂への耐性が向上するとともに、高温高湿下で生じる発泡をより抑制することができる。
【0051】
上記シランカップリング剤は特に限定されず、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメチルメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトブチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、又は、それらの併用が好ましい。
【0052】
上記粘着剤層において、上記シランカップリング剤の含有量は特に限定されないが、上記粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記含有量が0.1重量部以上であれば、上記粘着剤層の被着体に対する密着性が向上し、皮脂への耐性が向上するとともに、高温高湿下で生じる発泡をより抑制することができる。上記含有量が10重量部以下であれば、粘着シートを剥離した際の糊残りを抑えることができ、粘着シートのリワーク性が向上する。上記含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0053】
上記粘着剤層は、必要に応じて、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料等の添加剤、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等の粘着付与剤、その他の樹脂等を含有していてもよい。
【0054】
上記粘着剤層のゲル分率は、20重量%以上であることが好ましい。上記ゲル分率が20重量%以上であれば、粘着剤の凝集力が適度な範囲となって被着体に対する密着性が向上し、耐皮脂性が向上する。上記ゲル分率のより好ましい下限は25重量%である。上記ゲル分率の上限は特に限定されないが、好ましい上限は95重量%である。
なお、上記粘着剤層のゲル分率は、以下の方法で測定することができる。即ち、粘着テープから粘着剤層のみを0.1g取り出し、酢酸エチル50ml中に浸漬し、振とう機で温度23度、120rpmの条件で24時間振とうする。振とう後、金属メッシュ(目開き#200メッシュ)を用いて、酢酸エチルと酢酸エチルを吸収し膨潤した粘着剤層を分離する。分離後の粘着剤層を110℃の条件下で1時間乾燥させる。乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤層の重量を測定し、下記式を用いて発泡体基材のゲル分率を算出する。
ゲル分率(重量%)=100×(W1-W2)/W0
(W0:初期粘着剤層重量、W1:乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤層重量、W2:金属メッシュの初期重量)
【0055】
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は150μmである。上記厚みが上記範囲内であると、粘着力と加工性が向上する。上記厚みのより好ましい下限は10μm、より好ましい上限は100μmである。
【0056】
本発明の粘着テープは、上記発泡体基材の少なくとも一方の面に樹脂層を有することが好ましい。
上記樹脂層を有することにより、得られる粘着テープの強度が向上するため、耐衝撃性をより高めることができる。上記樹脂層は上記発泡体基材の片面に形成されていてもよく両面に形成されていてもよいが、発泡体基材の片面に形成されていることが好ましい。
【0057】
上記樹脂層を構成する樹脂は耐熱性を有することが好ましい。耐熱性を有する上記樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、ポリカーボネート等が挙げられる。なかでも、柔軟性に優れる粘着テープが得られることから、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0058】
上記樹脂層は、着色されていてもよい。上記樹脂層を着色することにより、粘着テープに遮光性を付与することができる。
上記樹脂層を着色する方法は特に限定されず、例えば、上記樹脂層を構成する樹脂にカーボンブラック、酸化チタン等の粒子又は微細な気泡を練り込む方法、上記樹脂層の表面にインクを塗布する方法等が挙げられる。
【0059】
上記樹脂層は、必要に応じて、無機微粒子、導電微粒子、可塑剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、有機充填剤、無機充填剤等の従来公知の微粒子および添加剤を含有してもよい。
【0060】
上記樹脂層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は100μmである。上記樹脂層の厚みを上記範囲とすることにより、粘着テープの取り扱い性と耐衝撃性を両立することができる。取り扱い性と耐衝撃性を更に両立する観点から、上記樹脂層の厚みのより好ましい下限は10μm、より好ましい上限は70μmである。
【0061】
本発明の粘着テープは、必要に応じて、上記発泡体基材、上記粘着剤層及び上記樹脂層以外の他の層を有してもよい。
【0062】
本発明の粘着テープの厚みは特に限定されないが、好ましい下限は0.04mm、より好ましい下限は0.05mm、好ましい上限は2mm、より好ましい上限は1.5mmである。本発明の粘着テープの厚みを上記範囲とすることにより、取り扱い性に優れた粘着テープとすることができる。
【0063】
本発明の粘着テープの製造方法としては特に限定されず、例えば、以下のような方法が挙げられる。まず、離型フィルムに粘着剤溶液を塗工、乾燥して粘着剤層を形成し、同様の方法で2つ目の粘着剤層を形成する。次いで、上記発泡体基材の両面に得られた粘着剤層を貼り合わせて粘着テープを製造する。
【0064】
本発明の粘着テープの形状は特に限定されないが、長方形、額縁状、円形、楕円形、ドーナツ型等が挙げられる
【0065】
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、耐衝撃性に優れるとともに皮脂への耐性にも優れることから、携帯電子機器部品、車載用電子機器部品等の電子部品を固定するための、耐衝撃性粘着テープとして好適に用いることができる。このような、電子機器の部品の固定に使用される本発明の粘着テープもまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0066】
本発明によれば、皮脂への耐性に優れる発泡体基材を有する粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
(1)発泡体基材の調製
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチルを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。続いて、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入し、ブチルアクリレート67重量部、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート30重量部、アクリル酸3重量部を2時間かけて滴下添加した。滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体含有溶液を得た。
得られた発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体について、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)を用いたGPC測定によりポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量を求めたところ、122万であった。なお、GPC測定では、カラムとして、カラムLF-804(昭和電工社製)、溶媒としてテトラヒドロフランを用い、40℃、流量0.5mL/minの条件で測定を行った。
【0069】
得られた発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体含有溶液に、発泡体基材用(メタ)アクリル共重合体100重量部に対して架橋剤(イソシアネート系架橋剤、コロネートL、東ソー社製)1重量部、エクスパンセル(登録商標)461-DU40(日本フィライト社製)0.16重量部を加え、発泡体基材用樹脂組成物溶液を調製した。得られた樹脂組成物溶液を厚み75μmの離型処理したPETフィルムに、乾燥、発泡後の厚みが120μmとなるように塗工した後、90℃で10分間乾燥させた。乾燥後、PETフィルムがある面と反対の面に、厚み25μmの離型処理したPETフィルムをラミネートし、130℃で5分間加熱し、発泡させる方法により、厚み120μmの発泡体基材を得た。
【0070】
得られた発泡体基材を5mm四方にカットして試料とし、試料全体の体積(Va)を算出した。また、CTスキャン(ヤマト科学社製、TDM1000H-II(2K))で上記試料の3D画像を撮影し、解析ソフト(ボリュームグラフィックス社製、VGStudio)で構造解析を行って気泡部分の体積(Vp)を求めた。このとき、CTスキャンの撮影間隔(スライス厚み)は5μmとした。Va及びVpから、発泡体基材の見かけ密度(1-Vp/Va)を計算した。
【0071】
得られた発泡体基材について、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、「VHX-900」)を用いて気泡の平均長径を算出した。
【0072】
得られた発泡体基材を0.1g取り出し、酢酸エチル50ml中に浸漬し、振とう機で温度23度、120rpmの条件で24時間振とうした。振とう後、金属メッシュ(目開き#200メッシュ)を用いて、酢酸エチルと酢酸エチルを吸収し膨潤した発泡体基材を分離した。分離後の発泡体基材を110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の金属メッシュを含む発泡体基材の重量を測定し、上記式を用いて発泡体基材のゲル分率を算出した。
【0073】
(2)粘着剤溶液の調製
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチルを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。続いて、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入し、ブチルアクリレート47重量部、2-(パーフルオロヘキシル)-エチルアクリレート50重量部、アクリル酸3重量部を2時間かけて滴下添加した。滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体A含有溶液を得た。
得られた粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体Aについて、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)を用いたGPC測定によりポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量を求めたところ、120万であった。
【0074】
(3)粘着テープの製造
得られた粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体A含有溶液に、粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体A100重量部に対して架橋剤(イソシアネート系架橋剤、コロネートL-45、東ソー社製)0.5重量部、シランカップリング剤(KBM-403、信越化学工業社製)1重量部を加え、粘着剤溶液を調製した。
片面に離型処理を施した75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(離型フィルム)の離型処理面上に、得られた粘着剤溶液を乾燥皮膜の厚さが40μmとなるように塗工し、110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させ、粘着剤層を得た。次いで、同様の操作で粘着剤層をもう1つ製造し2つの粘着剤層を得た。
その後、上記で得られた発泡体基材の両面の離型処理したPETフィルムを剥し、得られた2つの粘着剤層をそれぞれ貼り合わせて、両表面を離型フィルムで保護した両面粘着テープを得た。
【0075】
(実施例2~9、比較例1、2)
発泡体基材のモノマー組成を表1に示したようにした以外は、実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0076】
(評価)
実施例及び比較例で得た両面粘着テープについて、以下の方法により評価を行った。
結果を表1に示した。
【0077】
(1)発泡体基材のオレイン酸耐性の評価
発泡体基材を20mm×40mmの平面長方形状に裁断して試験片とし、その重量を測定した。試験片をオレイン酸中に65℃、湿度90%の条件下にて24時間浸漬させた後、取り出し、エタノールで表面を洗浄後、110℃にて3時間乾燥させた。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式を用いてオレイン酸膨潤率を算出した。得られたオレイン酸膨潤率が120重量%未満であった場合を「◎」、120重量%以上、150重量%未満であった場合を「○」、150重量%以上の場合を「×」としてオレイン酸耐性を評価した。なお、オレイン酸は人の皮脂の主成分であり、発泡体基材のオレイン酸耐性を評価することで、皮脂への耐性(皮脂による膨潤の抑制)を確認することができる。
オレイン酸膨潤率(重量%)=100×W2/W1
(W1:オレイン酸浸漬前の重量、W2:オレイン酸浸漬、乾燥後の重量)
【0078】
(2)粘着力の評価
得られた両面粘着テープを10mm幅の短冊状に裁断して試験片を作製し、一方の離型フィルムを剥離除去して粘着剤層を露出させ、厚み50μmのPETフィルムを貼り付けた。更にもう一方の離型フィルムを剥離除去して粘着剤層を露出させ、この試験片をステンレス板に、その粘着剤層がステンレス板に対向した状態となるように載せた後、試験片上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラを一往復させることにより、試験片とステンレス板とを貼り合わせ、その後、23℃で24時間静置して試験サンプルを作製した。
【0079】
この試験サンプルを60℃、湿度90%のオーブンで100時間加熱し、23℃で24時間静置した後に、JIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、オレイン酸浸漬前の180°引きはがし粘着力(N/mm)を測定した。
【0080】
上記試験サンプルをオレイン酸のバスに60℃、湿度90%の条件で100時間浸漬し、取り出した後水で洗浄し、24時間静置した。その後、JIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、オレイン酸浸漬後の180°引きはがし粘着力(N/mm)を測定した。
【0081】
オレイン酸浸漬前後の粘着力の残存率(オレイン酸浸漬後粘着力/オレイン酸浸漬前粘着力×100)を算出し、該残存率が30%以上であった場合を「◎」、15%以上、30%未満であった場合を「○」、15%未満の場合を「×」として評価した。
【0082】
(3)耐衝撃性の評価
得られた両面粘着テープを外形24mm×24mm、幅2mmのロの字型に打ち抜いた。打ち抜いた両面粘着テープの片面を、中央部に20mm×20mmの穴を有する40mm×40mm、厚み2mmのロの字型のステンレス板の中央に貼り付けた。次いで、両面粘着テープのもう片方の面に20mm×20mm、厚み2mmの正方形型のステンレス板を貼り付け、5kgの錘で10秒間圧着し、24時間23℃下で静置することで試験用の積層体を得た。得られた積層体を、ステンレス製の枠状体(内径30mm×30mm)に正方形型のステンレス板が下面となるように固定した。その後100gの鉄球を正方形型のステンレス板の中央へ向けて落下させた。鉄球を落下させる高さを上げていき、正方形型のステンレス板がロの字型のステンレス板から剥離したときの鉄球の高さを測定した。強化ガラス板がステンレス板から剥離したときの鉄球の高さから位置エネルギー(mJ)を算出し、衝撃吸収エネルギーとした。衝撃吸収エネルギーが550mJ以上であった場合を「◎」、300mJ以上、550mJ未満であった場合を「○」、300mJ未満であった場合を「△」として耐衝撃性を評価した。
【0083】
【0084】
(参考例1)
(1)粘着剤溶液の調製
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチルを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。続いて、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入し、ブチルアクリレート97重量部、アクリル酸3重量部を2時間かけて滴下添加した。滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体B含有溶液を得た。
得られた粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体Bについて、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)を用いたGPC測定によりポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量を求めたところ、120万であった。
【0085】
(2)粘着テープの製造
得られた粘着剤層用(メタ)アクリル共重合体B含有溶液を用いた以外は、実施例2と同様にして両面粘着テープを得た。
【0086】
(3)粘着力の評価
実施例と同様の方法により、得られた両面粘着テープの粘着力を評価したところ、オレイン酸浸漬前及びオレイン酸浸漬後の180°引きはがし粘着力は、それぞれ1.33N/mm及び0.10N/mmであった。
【0087】
(参考例2)
発泡体基材の調製において樹脂組成物溶液を塗工して発泡させる際に、厚み75μmの離型処理したPETフィルムに替えて厚み23μmのコロナ処理したPETフィルムを用い、樹脂組成物溶液を塗工した。その後、粘着テープの製造において2つの粘着剤層と発泡体基材とを貼り合わせる際に、この厚み23μmのコロナ処理したPETフィルムは剥離しなかったこと以外は実施例7と同様にして、発泡体基材の一方の面に樹脂層を有し、両表面に粘着剤層を有する両面粘着テープを得た。
実施例と同様の方法により、得られた両面粘着テープの耐衝撃性を評価したところ、衝撃吸収エネルギーは588mJであった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、皮脂への耐性に優れる発泡体基材を有する粘着テープを提供することができる。