(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】貨幣処理装置及び貨幣処理方法
(51)【国際特許分類】
G07D 11/25 20190101AFI20240603BHJP
G07D 11/26 20190101ALI20240603BHJP
G07D 11/16 20190101ALI20240603BHJP
G07D 11/60 20190101ALI20240603BHJP
【FI】
G07D11/25
G07D11/26
G07D11/16
G07D11/60
(21)【出願番号】P 2020097185
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小林 慧
(72)【発明者】
【氏名】陳 楊
(72)【発明者】
【氏名】土井 一宏
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-016283(JP,A)
【文献】特開平04-021087(JP,A)
【文献】特開2017-134444(JP,A)
【文献】特開平04-123287(JP,A)
【文献】特開平08-050673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00- 3/16,
9/00-13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入金処理時に貨幣を受ける入金部と、
前記入金部に受けた貨幣の収納及び収納した貨幣の繰り出しを行う複数の収納部と、
着脱可能に設けられた回収容器に貨幣を収納する回収部と、
装置外へ回収される回収対象貨幣を前記回収容器
に保管する処理を実行する制御部と
、
出金処理時に前記収納部から繰り出された貨幣を装置外へ排出する出金部と
を備え
、
前記制御部は、装置外へ回収される貨幣の金額が確定すると、該金額を構成する回収対象貨幣を前記収納部から前記回収容器に移動して収納し、前記回収容器に貨幣を収納できなくなると、残りの回収対象貨幣を前記収納部に保管した状態で、前記収納部に収納されている貨幣のうち前記回収対象貨幣を除く他の貨幣を使用して前記出金処理を実行する
ことを特徴とする貨幣処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
店舗の営業を終えて売上金の金額が確定すると、前記売上金を構成する回収対象貨幣を前記収納部から前記回収容器に移動して収納し、前記回収容器に貨幣を収納できない場合には、回収対象貨幣を前記収納部に保管し、
次の営業時には、前記収納部に収納されている貨幣量から、前記収納部に収納されている回収対象貨幣の金額に相当する貨幣量を除き、残りの貨幣量に相当する貨幣を使用して出金処理を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の貨幣処理装置。
【請求項3】
入金処理時に貨幣を受ける入金部と、
前記入金部に受けた貨幣の収納及び収納した貨幣の繰り出しを行う複数の収納部と、
着脱可能に設けられた回収容器に貨幣を収納する回収部と、
装置外へ回収される回収対象貨幣を前記回収容器に保管する処理を実行する制御部と、
出金処理時に前記収納部から繰り出された貨幣を装置外へ排出する出金部と
を備え、
前記制御部は、装置外へ回収される貨幣の金額が確定すると、該金額を構成する回収対象貨幣を前記収納部から前記回収容器に移動して収納し、前記回収容器に貨幣を収納できなくなると、少なくとも1つの収納部の利用方法を収納部としての利用から回収部としての利用に切り替えて該回収部に回収対象貨幣を収納し、利用方法を切り替えた収納部を除く他の収納部の貨幣を使用して前記出金処理を実行する
ことを特徴とする貨幣処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
店舗の営業を終えて売上金の金額が確定すると、前記売上金を構成する回収対象貨幣を前記収納部から前記回収容器に移動して収納し、前記回収容器に貨幣を収納できない場合には、少なくとも1つの収納部の利用方法を収納部としての利用から回収部としての利用に切り替えて該回収部に回収対象貨幣を収納し、
次の営業時には、利用方法を切り替えた収納部を除く他の収納部の貨幣を使用して出金処理を実行する
ことを特徴とする請求項3に記載の貨幣処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記回収対象貨幣を装置外へ回収するために必要な回収容器の数を報知する報知処理を実行することを特徴とする請求項1
~4のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項6】
前記収納部は前記回収対象貨幣と共に出金用の貨幣を収納し、
前記制御部は、前記収納部が保管する回収対象
貨幣の枚数が所定枚数以上となった場合に、前記収納部から貨幣を回収する必要があることを示す情報を外部装置に報知する報知処理を実行する
ことを特徴とする請求項1
~5のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項7】
前記回収容器が保管する回収対象貨幣の枚数が、前記回収容器に収納可能な貨幣の最大枚数を超えた場合に、前記収納部が回収対象貨幣を保管することを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項8】
前記収納部に収納されている回収対象貨幣の枚数を示す情報と、前記回収容器に収納されている回収対象貨幣の枚数を示す情報とを金種別に表示する表示部
をさらに備えることを特徴とする請求項1~
7のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記回収容器の取り外し及び別の回収容器の装着を指示する情報を前記表示部に表示する処理を実行することを特徴とする請求項
8に記載の貨幣処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、回収対象貨幣が装置外へ回収される際、回収対象貨幣が収納されている回収容器が前記回収部から取り外されて別の回収容器が装着されると、該回収容器に、前記収納部に保管していた回収対象貨幣を収納する処理を実行することを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項11】
貨幣を受ける入金部と、
前記入金部に受けた貨幣の収納及び収納した貨幣の繰り出しを行う複数の収納部と、
着脱可能に設けられた回収容器に貨幣を収納する回収部と、
装置外へ回収される回収対象貨幣を前記回収容器と少なくとも1つの前記収納部とに保管する処理を実行する制御部と
を備え、
前記収納部は前記回収対象貨幣と共に出金用の貨幣を収納し、
前記制御部は、前記収納部が保管する回収対象貨幣の枚数が所定枚数以上となった場合に、前記収納部から貨幣を回収する必要があることを示す情報を外部装置に報知する報知処理を実行する
ことを特徴とする貨幣処理装置。
【請求項12】
貨幣を受ける入金部と、
前記入金部に受けた貨幣の収納及び収納した貨幣の繰り出しを行う複数の収納部と、
着脱可能に設けられた回収容器に貨幣を収納する回収部と、
装置外へ回収される回収対象貨幣を前記回収容器と少なくとも1つの前記収納部とに保管する処理を実行する制御部と、
前記収納部に収納されている回収対象貨幣の枚数を示す情報と、前記回収容器に収納されている回収対象貨幣の枚数を示す情報とを金種別に表示する表示部と
を備えることを特徴とする貨幣処理装置。
【請求項13】
貨幣処理装置の入金部が貨幣を受ける工程と、
貨幣を繰出可能な複数の
前記貨幣処理装置の収納部が、前記入金部に受けた貨幣を収納する工程と、
前記貨幣処理装置の制御部が、装置外へ回収される回収対象貨幣を決定する工程と、
前記収納部が回収対象貨幣を繰り出して、
前記貨幣処理装置の回収部が、着脱可能に設けられた回収容器に前記回収対象貨幣を収納する工程と、
前記回収容器に回収対象貨幣を収納できなくなった場合に、前記収納部が前記回収対象貨幣を保管する工程と
、
前記収納部から繰り出された貨幣を前記貨幣処理装置の出金部から装置外へ排出する出金処理を実行する場合に、前記収納部に収納されている貨幣のうち前記回収対象貨幣を除く他の貨幣を使用して前記出金処理を実行する工程と
を含むことを特徴とする貨幣処理方法。
【請求項14】
貨幣処理装置の入金部が貨幣を受ける工程と、
貨幣を繰出可能な複数の前記貨幣処理装置の収納部が、前記入金部に受けた貨幣を収納する工程と、
前記貨幣処理装置の制御部が、装置外へ回収される回収対象貨幣を決定する工程と、
前記収納部が回収対象貨幣を繰り出して、前記貨幣処理装置の回収部が、着脱可能に設けられた回収容器に前記回収対象貨幣を収納する工程と、
前記回収容器に回収対象貨幣を収納できなくなった場合に、少なくとも1つの収納部の利用方法を収納部としての利用から回収部としての利用に切り替えて該回収部に回収対象貨幣を収納する工程と、
前記収納部から繰り出された貨幣を前記貨幣処理装置の出金部から装置外へ排出する出金処理を実行する場合に、利用方法を切り替えた収納部を除く他の収納部の貨幣を使用して前記出金処理を実行する工程と
を含むことを特徴とする貨幣処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貨幣を処理する貨幣処理装置及び貨幣処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貨幣を処理する貨幣処理装置が様々な場所で利用されている。例えば、特許文献1には、店舗で利用される紙幣処理装置が開示されている。紙幣処理装置は、入金される紙幣を識別して、装置内の複数の収納部に金種別に収納する。紙幣処理装置は、着脱可能に設けられた回収カセットを備える。回収カセットは紙幣回収用の回収容器として利用される。紙幣処理装置から紙幣が回収される際、回収対象の紙幣は収納部から繰り出されて回収カセットに収納される。
【0003】
紙幣処理装置は金庫部を含み、収納部及び回収カセットは金庫内に設けられている。これにより、装置内に大量の紙幣がある場合でもセキュリティを確保できるようになっている。例えば、店舗は、銀行へ運ぶ店舗の売上金を回収カセットに収納して、現金輸送会社に売上金の運搬を依頼する。現金輸送会社は、紙幣処理装置の金庫の扉を開けて、売上金の紙幣が収納された回収カセットを抜き取り、店舗の売上金をカセットごと銀行へ運ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、現金輸送会社に売上金の運搬を依頼した店員が、貨幣処理装置で売上金を回収カセットへ収納する処理を開始して処理の途中で回収カセットが貨幣で満杯になると、処理が中断されて、店員は貨幣処理装置を使用できなくなる。具体的には、中断した売上金の処理が完了するまで、店員は、貨幣処理装置で他の貨幣処理を実行することができない。店舗に到着した現金輸送会社の担当者が、貨幣で満杯になった回収カセットを回収して代わりの回収カセットを装着し、中断していた処理を再開して売上金の回収を完了するまで、店員が貨幣処理装置を使用できない状態が続く。このような事態を回避するため、店員は、回収カセットに収納する売上金の貨幣量が、回収カセットに収納可能な貨幣の最大量を超えないように注意する必要があった。
【0006】
本発明は、上記従来技術による課題に鑑みてなされたもので、回収対象の貨幣の量が回収容器の収納容量を超えた場合でも、この貨幣を装置内に保管して装置の使用を継続することができる貨幣処理装置及び貨幣処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、貨幣処理装置であって、入金処理時に貨幣を受ける入金部と、前記入金部に受けた貨幣の収納及び収納した貨幣の繰り出しを行う複数の収納部と、着脱可能に設けられた回収容器に貨幣を収納する回収部と、装置外へ回収される回収対象貨幣を前記回収容器に保管する処理を実行する制御部と、出金処理時に前記収納部から繰り出された貨幣を装置外へ排出する出金部とを備え、前記制御部は、装置外へ回収される貨幣の金額が確定すると、該金額を構成する回収対象貨幣を前記収納部から前記回収容器に移動して収納し、前記回収容器に貨幣を収納できなくなると、残りの回収対象貨幣を前記収納部に保管した状態で、前記収納部に収納されている貨幣のうち前記回収対象貨幣を除く他の貨幣を使用して前記出金処理を実行することを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、店舗の営業を終えて売上金の金額が確定すると、前記売上金を構成する回収対象貨幣を前記収納部から前記回収容器に移動して収納し、前記回収容器に貨幣を収納できない場合には、回収対象貨幣を前記収納部に保管し、次の営業時には、前記収納部に収納されている貨幣量から、前記収納部に収納されている回収対象貨幣の金額に相当する貨幣量を除き、残りの貨幣量に相当する貨幣を使用して出金処理を実行することを特徴とする。
また、本発明は、貨幣処理装置であって、入金処理時に貨幣を受ける入金部と、前記入金部に受けた貨幣の収納及び収納した貨幣の繰り出しを行う複数の収納部と、着脱可能に設けられた回収容器に貨幣を収納する回収部と、装置外へ回収される回収対象貨幣を前記回収容器に保管する処理を実行する制御部と、出金処理時に前記収納部から繰り出された貨幣を装置外へ排出する出金部とを備え、前記制御部は、装置外へ回収される貨幣の金額が確定すると、該金額を構成する回収対象貨幣を前記収納部から前記回収容器に移動して収納し、前記回収容器に貨幣を収納できなくなると、少なくとも1つの収納部の利用方法を収納部としての利用から回収部としての利用に切り替えて該回収部に回収対象貨幣を収納し、利用方法を切り替えた収納部を除く他の収納部の貨幣を使用して前記出金処理を実行することを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、店舗の営業を終えて売上金の金額が確定すると、前記売上金を構成する回収対象貨幣を前記収納部から前記回収容器に移動して収納し、前記回収容器に貨幣を収納できない場合には、少なくとも1つの収納部の利用方法を収納部としての利用から回収部としての利用に切り替えて該回収部に回収対象貨幣を収納し、次の営業時には、利用方法を切り替えた収納部を除く他の収納部の貨幣を使用して出金処理を実行することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、前記回収対象貨幣を装置外へ回収するために必要な回収容器の数を報知する報知処理を実行することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記収納部は前記回収対象貨幣と共に出金用の貨幣を収納し、前記制御部は、前記収納部が保管する回収対象貨幣の枚数が所定枚数以上となった場合に、前記収納部から貨幣を回収する必要があることを示す情報を外部装置に報知する報知処理を実行することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記回収容器が保管する回収対象貨幣の枚数が、前記回収容器に収納可能な貨幣の最大枚数を超えた場合に、前記収納部が回収対象貨幣を保管することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記収納部に収納されている回収対象貨幣の枚数を示す情報と、前記回収容器に収納されている回収対象貨幣の枚数を示す情報とを金種別に表示する表示部をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、前記回収容器の取り外し及び別の回収容器の装着を指示する情報を前記表示部に表示する処理を実行することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、回収対象貨幣が装置外へ回収される際、回収対象貨幣が収納されている回収容器が前記回収部から取り外されて別の回収容器が装着されると、該回収容器に、前記収納部に保管していた回収対象貨幣を収納する処理を実行することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、貨幣処理装置であって、貨幣を受ける入金部と、前記入金部に受けた貨幣の収納及び収納した貨幣の繰り出しを行う複数の収納部と、着脱可能に設けられた回収容器に貨幣を収納する回収部と、装置外へ回収される回収対象貨幣を前記回収容器と少なくとも1つの前記収納部とに保管する処理を実行する制御部とを備え、前記収納部は前記回収対象貨幣と共に出金用の貨幣を収納し、前記制御部は、前記収納部が保管する回収対象貨幣の枚数が所定枚数以上となった場合に、前記収納部から貨幣を回収する必要があることを示す情報を外部装置に報知する報知処理を実行することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、貨幣処理装置であって、貨幣を受ける入金部と、前記入金部に受けた貨幣の収納及び収納した貨幣の繰り出しを行う複数の収納部と、着脱可能に設けられた回収容器に貨幣を収納する回収部と、装置外へ回収される回収対象貨幣を前記回収容器と少なくとも1つの前記収納部とに保管する処理を実行する制御部と、前記収納部に収納されている回収対象貨幣の枚数を示す情報と、前記回収容器に収納されている回収対象貨幣の枚数を示す情報とを金種別に表示する表示部とを備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、貨幣処理方法であって、貨幣処理装置の入金部が貨幣を受ける工程と、貨幣を繰出可能な複数の前記貨幣処理装置の収納部が、前記入金部に受けた貨幣を収納する工程と、前記貨幣処理装置の制御部が、装置外へ回収される回収対象貨幣を決定する工程と、前記収納部が回収対象貨幣を繰り出して、前記貨幣処理装置の回収部が、着脱可能に設けられた回収容器に前記回収対象貨幣を収納する工程と、前記回収容器に回収対象貨幣を収納できなくなった場合に、前記収納部が前記回収対象貨幣を保管する工程と、前記収納部から繰り出された貨幣を前記貨幣処理装置の出金部から装置外へ排出する出金処理を実行する場合に、前記収納部に収納されている貨幣のうち前記回収対象貨幣を除く他の貨幣を使用して前記出金処理を実行する工程とを含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、貨幣処理方法であって、貨幣処理装置の入金部が貨幣を受ける工程と、貨幣を繰出可能な複数の前記貨幣処理装置の収納部が、前記入金部に受けた貨幣を収納する工程と、前記貨幣処理装置の制御部が、装置外へ回収される回収対象貨幣を決定する工程と、前記収納部が回収対象貨幣を繰り出して、前記貨幣処理装置の回収部が、着脱可能に設けられた回収容器に前記回収対象貨幣を収納する工程と、前記回収容器に回収対象貨幣を収納できなくなった場合に、少なくとも1つの収納部の利用方法を収納部としての利用から回収部としての利用に切り替えて該回収部に回収対象貨幣を収納する工程と、前記収納部から繰り出された貨幣を前記貨幣処理装置の出金部から装置外へ排出する出金処理を実行する場合に、利用方法を切り替えた収納部を除く他の収納部の貨幣を使用して前記出金処理を実行する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の貨幣処理装置によれば、貨幣処理装置に脱着可能に設けられた貨幣回収用の回収容器の収納容量を超える貨幣を、回収容器と、リサイクル使用する貨幣を繰出可能に収納する収納部とに保管することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る紙幣処理装置の概要を説明するための模式図である。
【
図2】
図2は、紙幣処理装置の内部構成概略を示す断面模式図である。
【
図3】
図3は、紙幣処理装置の機能構成概略を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、紙幣処理装置で行われる入金処理を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、紙幣処理装置で行われる出金処理を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、紙幣処理装置で行われる在高確認処理を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、紙幣処理装置で行われる回収処理時の紙幣の動き示す模式図である。
【
図8】
図8は、紙幣処理装置で行われる紙幣処理の例を説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、一部の収納部を回収専用とする紙幣処理の例を説明するための模式図である。
【
図10】
図10は、一部の収納部を在高確認処理用とした場合の紙幣処理の例を説明するための模式図である。
【
図11】
図11は、紙幣処理装置で行われる容器回収処理を説明するための模式図である。
【
図12】
図12は、容器回収処理時の操作部の画面例を示す図である。
【
図13】
図13は、収納部の回収対象紙幣を在高確認用の収納部へ移してから回収容器に回収する第1方法を説明する模式図である。
【
図14】
図14は、収納部から回収容器へ回収対象紙幣を直接回収する第2方法を説明する模式図である。
【
図15】
図15は、操作部に表示される紙幣情報の画面例を示す図である。
【
図16】
図16は、記番号による紙幣の管理方法を説明するための模式図である。
【
図18】
図18は、紙幣処理装置の別の構成例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る貨幣処理装置及び貨幣処理方法の実施の形態について説明する。貨幣処理装置は、紙幣と硬貨の少なくともいずれか一方を処理対象とする。本実施形態では、貨幣処理装置が紙幣を処理する紙幣処理装置である場合を例に説明するが、以下に記載する紙幣処理装置の特徴は、硬貨を処理する硬貨処理装置を含む様々な貨幣処理装置に適用することができる。
【0022】
[紙幣処理装置の構成]
図1は、本実施形態に係る紙幣処理装置(貨幣処理装置)1の概要を説明するための模式図である。
図1(a)は、紙幣処理装置1の内部構成及び機能構成の概略を示す図である。
図1(b)及び(c)は、紙幣処理装置1が行う紙幣処理を説明するための図である。
【0023】
紙幣処理装置1は、金属製の金庫部151を含む。金庫部151内には、複数の収納部130(130a、130b)と、回収部141とが設けられている。回収部141は、回収容器140を装着可能に構成されている。回収部141は、紙幣処理装置1に入金された紙幣のうち、売上金として現金輸送会社へ運搬される紙幣を回収容器140に収納する。
【0024】
金庫部151は、施解錠可能な金属製の金庫扉5を有する。金庫扉5は、通常は施錠されており、収納部130及び回収容器140の紙幣を金庫部151の外に取り出せないようになっている。施錠された金庫扉5を所定の鍵で解錠して開くことにより、収納部130及び回収容器140の紙幣を、金庫部151の外、すなわち紙幣処理装置1の外へ取り出すことができる。大量の紙幣が収納される収納部130及び回収容器140を金庫部151の中に設けることにより紙幣に係るセキュリティが確保されている。
【0025】
識別部80は、イメージセンサ、超音波センサ、磁気センサ等の各種センサを備えている。識別部80は、各センサを利用して、紙幣の種類を識別するための識別データを取得する。識別データには、例えば、金種、真偽及び正損を識別するためのデータが含まれる。識別部80は、取得した識別データを、制御部100へ送信する。
【0026】
搬送部90は、搬送路に沿って紙幣を搬送するためのローラ及びベルトを含む搬送機構(コンベア)と、搬送路の分岐部で紙幣の搬送方向を変更するための分岐機構とを備えている。搬送機構及び分岐機構は、制御部100によって制御され、装置内の各部を接続する搬送路に沿って紙幣を搬送する。搬送部90は、金庫部151の外にある入金部30、出金部40及び識別部80と、金庫部151の中にある収納部130及び回収容器140との間で紙幣を搬送することができる。
【0027】
各収納部130は、紙幣を集積するための集積機構を備えている。集積機構は、制御部100によって制御され、搬送路を搬送されてきた紙幣を、紙幣面を略水平にした状態で集積する。また、各収納部130は、収納部130に接続された搬送路へ紙幣を繰り出すための複数のローラで構成された繰出機構を備えている。繰出機構は、制御部100によって制御され、収納部130に集積されている紙幣を上から順に、各収納部130に接続された搬送路へ繰り出す。
【0028】
紙幣処理装置1は操作部(入力部)10を備えている。操作部10は、例えばタッチパネル式の液晶表示装置から成り、入力部として機能すると共に表示部としても機能する。操作者は、操作部10で、紙幣処理装置1に収納されている紙幣の情報の確認、紙幣処理に係る設定情報の確認及び更新、紙幣処理に係る指示等の操作を行うことができる。操作部10を操作して入力された情報は制御部100へ送信される。
【0029】
操作者は、操作部10を操作し、各収納部130に対して、収納する紙幣の種類を示す情報を設定することができる。制御部100は、操作者が操作部10で入力した紙幣の種類を示す情報と、収納部130を示す情報とを関連付ける。制御部100は、紙幣の種類と収納部130の関係を示す情報を記憶部110に保存する。制御部100は、記憶部110に保存されている情報に基づいて、入金部30、識別部80、搬送部90及び収納部130を制御することにより、複数の収納部130に紙幣を収納することができる。
【0030】
紙幣処理装置1で識別される紙幣の種類には金種が含まれる。紙幣の種類には、金種に加えて、正損と真偽の少なくともいずれか一方が含まれていてもよい。紙幣の種類には、さらに、例えばカナダドル、アメリカドル、メキシコペソ、ユーロのように通貨を示す情報が含まれていてもよい。
【0031】
操作部10で行われる操作には、入金する紙幣を入金部30から収納部130まで搬送する入金処理に必要な情報を入力する入金操作と、出金する紙幣を収納部130から出金部40まで搬送する出金処理に必要な情報を入力する出金操作とが含まれる。また、操作部10で行われる操作には、回収容器140に回収する紙幣を収納部130から回収部141まで搬送する回収処理に必要な情報を入力する回収操作が含まれる。さらに、操作部10で行われる操作には、回収対象の紙幣が収納された回収容器140を紙幣処理装置1から取り外す容器回収処理に必要な情報を入力する容器回収操作が含まれる。これらの処理の詳細は後述する。
【0032】
収納部130は、紙幣処理装置1に対して脱着可能に設けられている。具体的には、収納部130は、紙幣処理装置1の前後方向(
図1左右方向)に移動可能なフレーム上に脱着可能に設けられている。紙幣処理装置1の前面に設けられた金庫扉5を開いて、フレームを金庫部151から装置前面側に引き出し、フレームに対して各収納部130を脱着することができる。
図1には、2つの収納部130a、130bを設けた例を示しているが、収納部130の種類及び数は特に限定されない。例えば、収納部130は、テープに紙幣を挟んだ状態で、テープと紙幣を一緒にドラムに巻き取って収納するテープ式の収納部であってもよい。
【0033】
金庫部151に設けられた回収部141は、搬送部90によって搬送された紙幣を回収容器140内に集積する集積機構と、集積機構によって集積された紙幣を回収容器内へ押し込むレバー及び該レバーを駆動する駆動部を含む収納機構とを備えている。回収部141は、紙幣処理装置1の前後方向(
図1左右方向)に移動可能なフレーム上に設けられている。
【0034】
回収容器140は紙幣処理装置1に対して脱着可能に設けられている。紙幣処理装置1の前面に設けられた金庫扉5を開いて、回収部141が設けられたフレームを金庫部151から装置前面側に引き出し、回収部141に対して回収容器140を装着したり、取り外したりすることができる。
【0035】
回収容器140は、回収対象紙幣を収納する袋である。ただし、回収容器140は、袋に限定されず、例えば、容器と、容器内の紙幣を取り出す際に開閉される蓋と、この蓋を閉じた状態で施錠する施錠機構とを備えるカセットであってもよい。回収容器140がカセットである場合、カセットは、例えば、複数のローラと紙幣を支えるステージとを含む収納機構を備え、搬送部90によって搬送された紙幣を収納機構によって容器内に収納する。
【0036】
図1に示すように、紙幣処理装置1は、制御部100及び記憶部110を有する。制御部100は、回路、プロセッサー又はコンピュータ装置と呼ばれることがある。記憶部110は、不揮発性の記憶装置である。記憶部110は、在高情報、回収情報及び設定情報を保存する。在高情報は、各収納部130に収納されている紙幣の金種、金種別枚数及び金額を示す情報と、回収容器140に収納されている紙幣の金種、金種別枚数及び金額を示す情報とを含む。回収情報は、回収対象紙幣の金種、金種別枚数及び金額を示す情報と、回収対象紙幣が収納されている場所を示す情報とを含む。設定情報は、各収納部130に収納する紙幣の種類を示す情報と、紙幣処理装置1で行われる紙幣処理の処理内容を示す情報とを含む。操作者は、操作部10を操作して、在高情報、回収情報及び設定情報に含まれる少なくとも一部の情報を操作部10の画面上に表示することができる。操作者は、操作部10を操作して、記憶部110に保存されている設定情報を更新することができる。
【0037】
制御部100は、操作部10で行われた操作に基づいて、記憶部110に保存されている各種情報を利用しながら
図1に示す各構成部を制御する。制御部100は、識別部80で取得した識別データに基づいて、紙幣の種類を識別する。例えば、紙幣の金種が識別される。また、制御部100は、識別部80で取得した識別データに基づいて、種類毎の紙幣の枚数を計数する。例えば、金種毎の紙幣枚数が計数される。各紙幣の情報及び種類毎の紙幣枚数を示す情報は、制御部100から記憶部110に送信されて、在高情報又は回収情報として記憶部110に保存される。
【0038】
制御部100が、操作部10から入力された情報に基づいて各構成部を制御することにより、本実施形態に記載する紙幣処理装置1の機能及び動作が実現される。紙幣処理装置1は、様々な紙幣処理を実行することができる。以下、紙幣処理装置1が店舗で利用されているものとして説明を続ける。
【0039】
紙幣処理装置1は、通信部をさらに備えていてもよい。この場合、通信部は、制御部100によって制御され、外部装置との間で情報を送受信する。通信部は、LAN、WAN、インターネット等のネットワークを介して外部装置と通信可能に接続される。例えば、紙幣が収納された回収容器140を紙幣処理装置1から取り外して店舗外へ運ぶ必要が生じた場合、制御部100は、通信部を制御して、現金輸送会社に設置された通信端末(外部装置)に、回収容器140の回収を依頼するための情報を送信する。通信部と通信する外部装置は、店舗内に設置された通信端末であってもよい。この場合、制御部100は、店舗の通信端末を経由して、現金輸送会社に設置された通信端末へ回収容器140の回収を依頼するための情報を送信すればよい。なお、通信端末は、コンピュータ装置と呼ばれることもある。
【0040】
[回収処理]
店員は、操作部10を操作して回収処理を行うことができる。回収処理では、当日の店舗の売上金額分の紙幣が回収対象の紙幣(回収対象紙幣)とみなされる。回収処理は、収納部130から繰り出された回収対象紙幣を回収容器140に収納し、収納した回収対象紙幣の金額情報を、売上金に関する情報として記憶部110に保存するための処理を含む。
【0041】
紙幣処理装置1は、回収対象紙幣の枚数が、回収容器140に収納可能な紙幣枚数を超えた場合でも、回収対象紙幣を、回収容器140とは異なる装置内の収納部130に保管することができる。回収処理には、回収処理の途中で回収容器140が紙幣で満杯になった場合に、一又は複数の収納部130から回収容器140に移動できなかった回収対象紙幣を収納部130に収納した状態のまま、これら回収対象紙幣の金額を売上金に計上する処理が含まれる。この場合、回収容器140に収納された回収対象紙幣の金額と、売上金として計上された収納部130の回収対象紙幣の金額と、回収対象紙幣が収納されている収納部130を示す情報とが、売上金に関する情報として、記憶部110に保存される。
【0042】
回収処理には、回収処理の開始前に既に回収容器140が満杯であった場合に、一又は複数の収納部130で、各収納部130に収納されている回収対象紙幣の金額を、売上金として計上する処理が含まれる。この場合、売上金として計上された回収対象紙幣の金額と、これら回収対象紙幣が収納されている収納部130を示す情報とが、売上金に関する情報として、記憶部110に保存される。
【0043】
紙幣処理装置1は、売上金に関する情報を記憶部110の回収情報に保存している。具体的には、回収対象紙幣、すなわち売上金として計上された金額分の紙幣の収納場所を示す情報と、各収納場所にある回収対象紙幣の金額を示す情報とが、売上金に関する情報として保存されている。収納場所とは、回収対象紙幣、すなわち記憶部110の回収情報に登録された紙幣が収納されている場所を示す情報である。紙幣処理装置1は、回収容器140が満杯になった後も、収納部130に回収対象紙幣を保管することができる。このため、収納場所には、回収容器140のみが含まれる場合もあるし、回収容器140と一又は複数の収納部130とが含まれる場合もある。
【0044】
収納部130に収納された回収対象紙幣が予め記憶部110に記憶された所定枚数以上になった場合、制御部100は現金輸送会社による回収が必要と判断し、通信部から現金輸送会社に設置された通信端末(外部装置)に回収が必要なことを示す情報を送信することができる。
【0045】
店員が操作部10を操作して回収処理の内容を入力すると、制御部100は回収処理を開始する。回収処理が開始されると、収納部130にある回収対象紙幣が繰り出されて回収容器140に収納される。具体的には、各収納部130から順に紙幣が搬送路に繰り出される。回収対象紙幣は、搬送部90により回収部141まで搬送されて、回収部141の回収容器140に収納される。
【0046】
識別部80は、収納部130から搬送路に繰り出された各紙幣の識別データを取得する。制御部100は、識別データに基づいて、回収容器140に収納された紙幣の種類の判定及び計数を行う。
【0047】
制御部100によって得られた計数結果は、記憶部110に送られて、回収情報に記憶される。回収容器140が紙幣で満杯になった後、制御部100は、収納部130を回収対象紙幣の保管に利用する。以下、収納部130を回収対象紙幣の保管に利用する紙幣処理の2つの例を順に説明する。
【0048】
[回収対象紙幣を収納部に保管する紙幣処理の例1]
図1(b)は、紙幣処理装置1で行われる紙幣処理の例を説明するための模式図である。
図1(b)では、収納部130及び回収容器140の紙幣の収納状態について説明するため、説明に必要な構成のみを模式的に示して他の構成は省略している。
【0049】
紙幣処理装置1の収納部130には、それぞれに収納する紙幣の金種が予め割り当てられている。収納部130に収納して釣銭用とする紙幣の枚数も金種毎に予め設定されている。各収納部130に割り当てられた金種の情報、及び釣銭用紙幣の金種別枚数の情報は、記憶部110の設定情報に予め保存されている。
【0050】
図1(b)に示すように、紙幣処理装置1の収納部130には、予め設定された金種及び枚数の釣銭用紙幣が、各金種に対応する収納部130に収納されている。また、回収容器140には、回収対象紙幣が収納されている。例えば、前日の売上金の金額から当日の釣銭準備金の金額を差し引いた金額分の紙幣が回収容器140に収納されている。
【0051】
店舗の営業中に、紙幣処理装置1で出金処理及び入金処理が実行される。店員が紙幣処理装置1で、客へ渡す釣銭として使用する釣銭用紙幣の出金処理を実行すると、収納部130から紙幣が繰り出されて装置外へ排出される。店員が紙幣処理装置1で、客から受け取った売上金の紙幣を入金する入金処理を実行すると、入金部30の紙幣が装置内の搬送路に繰り出されて、収納部130へ収納される。紙幣処理装置1は、入金処理時に収納部130に収納された紙幣を、出金処理時に収納部130から繰り出して出金する、紙幣のリサイクルを行うことができる。
【0052】
入金処理で入金された紙幣のうち、制御部100が出金できないと判定した紙幣は、回収容器140に収納される。この他、紙幣処理装置1に入金可能であるが収納部130に割り当てられていない金種の紙幣と、収納部130に収納すべき紙幣であるが収納部130が満杯で収納できなかった紙幣も回収容器140に収納される。回収容器140は、回収される紙幣の収納に利用され。回収容器内の紙幣は出金処理に利用されない。
【0053】
店舗の営業が終了すると、店員は操作部10を操作して回収処理を行う。紙幣処理装置1は、当日の店舗の売上金を算出する。例えば、営業終了後に店舗内の全ての紙幣が紙幣処理装置1に入金される場合、店員が店舗内の紙幣を集めて紙幣処理装置1に入金した後に装置内にある紙幣の合計金額から、営業開始前に装置内にあった紙幣の金額を差し引いた金額が、当日の店舗の売上金となる。売上金の計算は制御部100によって行われる。売上金の金額が確定すると、制御部100は、売上金を構成する紙幣の金種及び枚数を決定する。売上金を構成する紙幣が回収対象紙幣となる。すなわち、売上金額と同額になるように、回収対象紙幣の金種及び枚数が決定される。例えば、売上金の金額と、既に回収容器140に収納されている紙幣の合計金額と、翌日の営業で使用する釣銭用紙幣の金種別枚数とに基づいて、収納部130から回収容器140に移動する回収対象紙幣の金種及び金種別枚数が決定される。
【0054】
制御部100は、決定結果に基づいて、収納部130に収納されている紙幣のうち、売上金を構成する回収対象紙幣(以下「売上金紙幣」と記載する)を搬送路に繰り出すように収納部130を制御する。収納部130から繰り出された売上金紙幣は、搬送路を搬送されて回収容器140に収納される。具体的には、翌日の営業に必要な釣銭用の紙幣を収納部130に残して、他の紙幣が、売上金紙幣として回収容器140に集められる。回収容器140には、売上金紙幣が金種混合状態で収納されることになる。
【0055】
回収処理の途中で、回収容器140が紙幣で満杯になると、制御部100は、
図1(c)に示すように、残りの売上金紙幣を収納部130に保管した状態とする。具体的には、紙幣処理装置1は、翌日の営業に必要な釣銭用の紙幣を収納部130に残すと共に、売上金紙幣を回収容器140と少なくとも1つの収納部130とに分けて収納した状態にする。
【0056】
回収容器140には、複数日分の売上金紙幣が金種混合で収納される場合がある。少なくとも一部の収納部130は、売上金紙幣と、店舗の営業に使用する釣銭用紙幣とを収納した状態となる。すなわち収納部130は回収対象紙幣とリサイクル用の紙幣とを収納した状態となる。制御部100は、これらの紙幣の収納状態を示す情報を記憶部110の在高情報及び回収情報に保存する。回収情報には、一部の売上金紙幣が収納部130に収納されていることを示す情報が保存される。
【0057】
図1(c)に示すように、売上金を構成する紙幣が、回収容器140と収納部130とに分けて収納された状態で、翌日の営業が開始される。店員は、回収容器140が満杯の状態であっても紙幣処理装置1の使用を継続することができる。制御部100は、出金処理を行う際、収納部130に売上金紙幣として保管している金額分の紙幣は出金せず、売上金紙幣の金額を除いた金額分の紙幣を使用して出金処理を行う。例えば、50万円分の紙幣が収納されている収納部130で、売上金紙幣の金額が10万円である場合、残り40万円分の紙幣を使用して出金処理が行われる。
【0058】
制御部100は、店舗の営業中に入金された紙幣及び出金された紙幣に応じて、売上金紙幣と出金処理時に出金可能な紙幣(リサイクル紙幣)との入れ替えを行うこともできる。例えば、低額金種の売上金紙幣と置き換え可能な高額金種の紙幣が入金されると、制御部100は、入金された紙幣を売上金紙幣とみなし、入金された紙幣の金額に相当する枚数分の売上金紙幣を出金処理時にリサイクル紙幣に変更する。
【0059】
例えば、入金処理が行われて、200ユーロ紙幣1枚が収納部130に収納された場合、制御部100は、この200ユーロのリサイクル紙幣1枚と、売上金紙幣として収納部130に保管していた10ユーロ紙幣20枚とを入れ替えることができる。具体的には、制御部100は、入金された200ユーロ紙幣1枚を売上金紙幣とみなし、この紙幣の代わりに、売上金紙幣とみなしていた10ユーロ紙幣20枚をリサイクル紙幣に変更する。これにより、出金処理時に出金可能な10ユーロ紙幣の枚数が20枚増加する。
【0060】
入金時に売上金紙幣とみなす金種と、これと置き換えて、売上金紙幣からリサイクル紙幣に変更する金種とを制御部100が選択するための設定は、設定情報として予め記憶部110に保存される。
【0061】
店員は、制御部100が売上金紙幣からリサイクル紙幣に変更する金種を自動選択する設定を、記憶部110の設定情報に保存することもできる。この場合、制御部100は、当日の各金種の紙幣枚数の変化に基づいて、当日不足しそうなリサイクル紙幣の金種を特定し、特定した金種を売上金紙幣からリサイクル紙幣に戻す金種として自動選択する。制御部100は、自動選択した金種の紙幣と両替可能な金種の紙幣が入金されると、入金された紙幣を売上金紙幣として保管し、これと入れ替えに、自動選択された金種の紙幣を売上金紙幣からリサイクル紙幣に変更する。
【0062】
このように、制御部100は、記憶部110の設定情報113に予め準備された設定に基づいて、回収対象である売上金紙幣と、出金用のリサイクル紙幣との入れ替えを行うことができる。紙幣の入れ替えを行った場合、制御部100は、記憶部110に保存されている在高情報及び回収情報が入れ替え後の紙幣の収納状態と一致するように、関連する情報を更新する。
【0063】
[回収対象紙幣を収納部に保管する紙幣処理の例2]
図1(c)に示した例では、少なくとも1つの収納部130に売上金紙幣及びリサイクル紙幣の両方が収納されるが、一部の収納部130を売上金紙幣の収納専用にして、リサイクル紙幣を収納する収納部130には売上金紙幣を収納しない設定とすることも可能である。
【0064】
例えば、店員は、回収容器140が満杯になった場合に一部の収納部130aを回収専用とする設定情報を記憶部110の設定情報に保存する。営業終了後に回収処理が開始されて、全ての売上金紙幣を回収容器140に収納できないことを認識した制御部100は、一部の収納部130aの設定を、金種別にリサイクル紙幣を収納する設定から、売上金紙幣のみを収納する設定に変更する。
【0065】
制御部100は、記憶部110の設定情報で、収納部130aに収納する紙幣の種類に関する設定を、変更後の内容に更新する。更新後、これらの収納部130aは、紙幣の回収部として利用されることになる。
【0066】
回収処理の終了後、売上金紙幣は、一部が回収容器140に収納され、回収容器140に収納できなかった残りの紙幣が、回収部としての利用に切り替えられた収納部130aに収納された状態となる。回収容器140及び収納部130aは売上金紙幣を金種混合状態で収納し、収納部130bは、売上金紙幣を収納せずリサイクル紙幣のみを収納した状態となる。なお、収納部としての利用から回収部としての利用に切り替える収納部130の数は特に限定されない。
【0067】
[容器回収処理]
記憶部110の設定情報には、売上金の回収を現金輸送会社に依頼するか否かを判定するための判定条件が保存されている。店員は、操作部10を操作して、設定情報に、判定条件を登録することができる。例えば、店員は、店舗の営業終了後に売上金紙幣の一部が収納部130に収納された際、この収納部130に収納している売上金紙幣の枚数が、予め設定された所定枚数(閾値枚数)を超えた場合に、現金輸送会社に紙幣の回収を依頼するよう判定条件を設定し、設定情報に記憶する。また、例えば、店員は、収納部130に収納した売上金紙幣の枚数が、この収納部130に収納可能な紙幣の最大枚数の所定割合を超えた場合に、現金輸送会社に回収を依頼するよう判定条件を設定し、設定情報に記憶するようにしてもよい。
【0068】
店員は、現金輸送会社に回収を依頼する売上金紙幣の枚数と、回収容器140に収納可能な紙幣の最大枚数とに基づいて、判定条件を設定し、設定情報に記憶することもできる。例えば、売上金紙幣(回収対象紙幣)の枚数が、最大で3000枚の紙幣を収納可能な回収容器140の1.8個分に相当する5400枚に到達した場合に、現金輸送会社に回収を依頼するよう判定条件を設定し、設定情報に記憶するようにしてもよい。
【0069】
制御部100は、例えば回収処理の実行後に、紙幣の収納状態が、店員が予め設定した判定条件を満たすか否かを判定し、条件を満たす場合には、現金輸送会社へ紙幣の回収を依頼する報知処理を行う。報知処理は、通信部を利用して行われる。報知処理では、回収依頼の通知と、回収を依頼する売上金紙幣に関する情報とが、現金輸送会社が利用する通信端末に送信される。売上金紙幣に関する情報には、店舗からの回収を依頼する紙幣の金種、金種別枚数、合計枚数及び合計金額を示す情報と、回収に必要な回収容器140の数を示す情報とが含まれる。例えば、紙幣処理装置1から店舗の売上金を回収するために、2つの回収容器140が必要である場合、2つの回収容器140を持って店舗に紙幣を回収しにくるよう現金輸送会社に通知される。
【0070】
店舗から依頼を受けた現金輸送会社の担当者(以下「担当者」と記載する)は、通知された数の回収容器140を持って店舗へ向かう。店舗に到着した担当者は、紙幣処理装置1の操作部10を操作して、容器回収処理を開始する。
【0071】
営業終了後に、担当者が2つの回収容器140b、140cを持って来店して容器回収処理を行う場合を例に、容器回収処理について説明する。例えば、営業終了後、回収容器140aには、1日目の売上金紙幣と、2日目の売上金紙幣の一部とが収納されている。リサイクル紙幣及び売上金紙幣は、釣銭用の紙幣を金種別に収納するよう設定された収納部130に収納されている。
【0072】
担当者が容器回収処理を開始すると、操作部10の画面上に、担当者に作業内容を案内する情報が表示される。容器回収処理の開始後、回収対象である売上金紙幣の枚数と、担当者への作業指示とが操作部10の画面上に表示される。
【0073】
操作部10の画面を確認した担当者は、売上金紙幣で満杯になっている回収容器140aを紙幣処理装置1から取り外して、代わりに、店舗に持参した空の回収容器140bを回収部141に装着する。
【0074】
容器回収処理が開始されると、制御部100は、記憶部110に保存されている回収情報に基づいて、売上金紙幣が収納部130に収納されていることを認識する。回収部141に空の回収容器140bが装着されると、制御部100は、各収納部130から売上金紙幣を繰り出し、回収容器140bに収納する。この間、操作部10には、2つ目の回収容器140bに紙幣を収納していることを示す情報が表示される。
【0075】
制御部100は、収納部130に収納されていた売上金紙幣を回収容器140bに収納し終えると、これを報知する情報を操作部10の画面に表示する。担当者は、売上金紙幣が収納された2つ目の回収容器140bを紙幣処理装置1から取り外し、代わりに、店舗に持参した空の回収容器140cを回収部141に装着する。回収部141に空の回収容器140cが装着されると、制御部100は容器回収処理を終了する。
【0076】
容器回収処理の終了後、紙幣処理装置1に装着された回収容器140cは空で、収納部130に釣銭用の紙幣のみが収納された状態となる。また、紙幣処理装置1の装置外へ回収された2つの回収容器140a、140bには、複数営業日の売上金紙幣が収納された状態となる。
【0077】
こうして容器回収処理を終えた担当者は、複数営業日における店舗の売上金が収納された2つの回収容器140a、140bを店舗から運び出す。担当者は、2つの回収容器140a、140bを、店舗から所定拠点へ運搬する。売上金は、例えば、複数の店舗から回収された紙幣を処理する現金センターに運搬される。
【0078】
[紙幣情報の確認]
制御部100は、記憶部110で管理する在高情報及び回収情報に基づいて、各収納部130に収納されている紙幣の情報と、回収容器140に収納されている紙幣の情報とを操作部10に表示することができる。店員及び現金輸送会社の担当者は、操作部10の画面上で、紙幣処理装置1内にある紙幣の情報を確認することができる。
【0079】
在高確認画面には、金種、リサイクル及び回収の項目が表示される。回収の項目には、収納部、回収部及び合計の項目が含まれる。金種の項目には、紙幣処理装置1内に収納されている紙幣の金種が表示される。リサイクルの項目には、紙幣処理装置1内に収納されている紙幣のうちリサイクル可能な紙幣枚数が表示される。収納部130に収納中の紙幣の一部が回収対象の売上金とみなされている場合、これら回収対象紙幣(売上金紙幣)を除く紙幣の枚数がリサイクルの項目に表示される。
【0080】
回収の項目には、店舗から回収される紙幣の情報が表示される。収納部の項目には、収納部130に保管されている回収対象紙幣の枚数が表示される。回収部の項目には回収容器140に収納されている回収対象紙幣の枚数が表示される。合計の項目には、これらの合計枚数が表示される。リサイクルの項目には、リサイクル紙幣の枚数に加えて、リサイクル可能な紙幣の最大枚数が括弧書きで表示される。
【0081】
制御部100は、例えば、200枚の5ユーロ紙幣をリサイクルしながら紙幣処理を実行するが、緊急時には、回収対象紙幣として保管している100枚の5ユーロ紙幣を、リサイクル紙幣として使用して紙幣処理を実行できるようにしてもよい。この場合、操作部10の画面上には、リサイクル紙幣の最大枚数が300枚と表示される。例えば、制御部100は、店舗に釣銭用の5ユーロ紙幣を配送するよう依頼する通知を現金輸送会社の通信端末に送信した後、所定時間が経過しても紙幣処理装置1で紙幣の補充処理が行われなかった場合に緊急事態と判定する。緊急事態と判定した制御部100は、回収対象紙幣として保管している100枚の5ユーロ紙幣をリサイクル紙幣として使用しながら紙幣処理を継続することができる。
【0082】
制御部100は、回収対象紙幣をリサイクル紙幣として使用した場合、使用した紙幣の金額分を、紙幣処理装置1内にある他金種の紙幣又は紙幣処理装置1に新たに収納された紙幣によって補填する。例えば、回収対象紙幣として保管していた5ユーロ紙幣4枚を出金処理に使用した場合、制御部100は、使用した20ユーロ分に相当する他金種のリサイクル紙幣を、回収対象紙幣に変更して保管を開始する。例えば、制御部100は、リサイクル対象としていた10ユーロ紙幣2枚、20ユーロ紙幣1枚等を、回収対象紙幣に変更し、これらの紙幣をリサイクルせずに収納部130内に保管する。
【0083】
また、例えば、制御部100は、リサイクル使用した回収対象紙幣の合計金額20ユーロを記録しておいて、新たに入金又は補充されて枚数が増加した紙幣を回収対象紙幣とする。例えば、現金輸送会社が店舗に到着して紙幣処理装置1に紙幣が補充され、収納部130の5ユーロ紙幣が増加すると、制御部100は、補充された5ユーロ紙幣4枚を回収対象紙幣とみなして保管する。また、例えば、入金処理が行われて、20ユーロ分の1又は複数の紙幣が収納部130に収納されると、制御部100は、新たに収納されたこれら20ユーロ分の紙幣を回収対象紙幣とみなして保管する。
【0084】
紙幣処理装置1から回収する紙幣の情報を確認する際に、操作部10に表示される画面上には、金種、リサイクル及び回収の項目が表示される。回収の項目には、収納部、回収部及び合計の項目が含まれる。
【0085】
金種の項目には、紙幣処理装置1から回収される紙幣の金種が表示される。リサイクルの項目には、紙幣処理装置1から回収されずに装置内に残される紙幣枚数が表示される。回収の各項目には、収納部130に収納されている回収対象紙幣の枚数と、回収容器140に収納されている回収対象紙幣の枚数と、これらの合計枚数とが表示される。
【0086】
画面上には、紙幣処理装置1の装置外へ紙幣を回収する際に必要となる回収容器140の個数が表示される。例えば、店員が紙幣処理装置1の装置外へ売上金紙幣を回収して現金輸送会社に引き渡す場合、操作部10の画面を確認した店員は、回収容器140を2つ準備して、容器回収処理を行うことができる。
【0087】
なお、紙幣の情報を確認する画面上に表示する情報は、設定により変更できるようになっている。例えば、紙幣処理装置1内にある紙幣の情報を確認する画面では、回収対象紙幣の情報を表示しない設定とすることができる。また、例えば、回収対象紙幣の情報を確認する画面では、リサイクル使用する紙幣の情報を表示しない設定とすることができる。
【0088】
紙幣処理装置1は複数種類の紙幣処理を実行可能であるが、紙幣処理装置1が上述した全ての紙幣処理を実行する態様に限定されず、上述した紙幣処理の一部を実行する態様であってもよい。
【0089】
図1(a)に紙幣処理装置1の構成を示したが、これは例示である。収納部130は、紙幣を集積しながら収納するスタック式の収納部に限定されず、ドラムの外周面にテープと共に紙幣を巻き取って収納して、ドラムを逆回転して紙幣を繰り出すテープ式の収納部であってもよい。回収部141が、回収容器140として機能する回収袋に紙幣を収納する構成に限定されず、回収部141に脱着可能に設けられたカセットに紙幣を収納する構成であってもよい。操作部10が操作部と表示部を兼ねる態様に限定されず、操作部と表示部が独立して設けられる態様であってもよい。操作部10が紙幣処理装置1に含まれる態様に限定されず、紙幣処理装置1と有線又は無線で通信可能に接続されたモバイル端末を操作部10として利用する態様であってもよい。
【0090】
何日分の売上金紙幣を紙幣処理装置1内に保管した状態で紙幣処理装置1の使用を継続できるかは、収納部130に収納可能な紙幣枚数、回収容器140に収納可能な紙幣枚数、釣銭用に必要な紙幣枚数、売上金紙幣の枚数等に応じて異なる。また、紙幣処理装置1の装置外へ紙幣を回収する際に2つの回収容器140(2枚の回収袋)に紙幣を回収する例を説明したが、これも例示であって、回収する紙幣量に応じて、3つ以上の回収容器140に紙幣を回収する場合もある。回収対象紙幣を収納した回収容器140を取り外して、代わりに回収部141に装着した空の回収容器140に、収納部130に残っている回収対象紙幣を収納する処理を繰り返すことにより、回収容器140の数によらず、容器回収処理を実行することができる。
【0091】
紙幣処理装置1は、装置内の回収対象紙幣の枚数が回収容器140に収納可能な紙幣の最大枚数を超えた場合でも、回収対象紙幣の一部を、それまでリサイクル紙幣のみを収納していた収納部130に保管して、入金処理及び出金処理を含む紙幣処理を継続して行うことができる。紙幣処理装置1は、紙幣処理を継続不能となる前に、紙幣の回収が必要であることを店舗の店員又は現金輸送会社の担当者に報知する報知処理を行う。報知処理では、紙幣の回収に必要な回収容器140の数が報知される。紙幣処理装置1は、回収容器140に紙幣を収納して装置外へ回収する容器回収処理が開始されると、操作部10の画面上に、紙幣の回収状況を示す情報を表示する。回収作業の担当者は、予め必要な数の回収容器140を準備して、操作部10の画面を確認しながら容易に回収作業を進めることができる。
【0092】
次に、具体的な紙幣処理装置1の例を説明する。
図2は、紙幣処理装置1の内部構成概略を示す断面模式図である。
図3は、紙幣処理装置1の機能構成概略を示すブロック図である。紙幣処理装置1は、例えば、店舗のバックオフィスに設置される。紙幣処理装置1は、入金処理及び出金処理を含む様々な紙幣処理を行うことができる。例えば、紙幣処理装置1は、店舗のチェックアウトカウンターで釣銭として使用する紙幣を出金する出金処理と、チェックアウトカウンターから店舗の売上金として回収した紙幣を入金する入金処理とを行うことができる。
【0093】
紙幣処理装置1は、
図2に破線で示すように、紙幣処理部150、第1金庫部151及び第2金庫部152の3つに分かれている。第1金庫部151内に設けられた収納部130(130a~130h)、及び第2金庫部152内に設けられた回収部141の回収容器140は、紙幣処理部150で処理された紙幣を収納することができる。第1金庫部151及び第2金庫部152は、金属製の金庫を構成している。収納部130及び回収容器140の紙幣は、施錠された金属製の金庫扉5を所定の鍵で解錠して、金庫扉5を開かなければ、装置外へ取り出せないようになっている。大量の紙幣が収納される収納部130及び回収部141をそれぞれ第1金庫部151及び第2金庫部152に設けることにより紙幣に係るセキュリティが確保されている。
【0094】
紙幣処理部150には、カセット20、入金部30、出金部40、第1リジェクト部51、第2リジェクト部52、回転部60、一時保留部70及び識別部80が設けられている。
【0095】
識別部80は、イメージセンサ、超音波センサ、磁気センサ等の各種センサを備えている。識別部80は、各センサを利用して、紙幣の種類を識別するための識別データを取得する。識別データには、例えば、金種、真偽及び正損を識別するためのデータが含まれる。識別部80は、取得した識別データを、制御部100へ送信する(
図3参照)。例えば、識別部80は、イメージセンサによって取得した紙幣画像のデータを制御部100へ送信する。制御部100は、紙幣画像を利用して紙幣の種類を特定すると共に、紙幣の記番号を読み取ることができる。
【0096】
搬送部90は、搬送路に沿って紙幣を搬送するためのローラ及びベルトを含む搬送機構(コンベア)と、搬送路の分岐部で紙幣の搬送方向を変更するための分岐機構とを備えている。搬送機構及び分岐機構は、制御部100によって制御され、装置内の各部を接続する搬送路に沿って紙幣を搬送する。紙幣処理部150の搬送路は、第1金庫部151に設けられた搬送路及び第2金庫部152に設けられた搬送路と接続されている。第1金庫部151及び第2金庫部152は上面にスリット状の開口を有し、この開口を通る搬送路によって、金庫外から金庫内へ紙幣を受けられるようになっている。これにより、搬送部90は、紙幣処理部150で処理した紙幣を、第1金庫部151の収納部130及び第2金庫部152の回収容器140へ搬送することができる。
【0097】
第1金庫部151に設けられた各収納部130は、紙幣を集積するための集積機構を備えている。集積機構は、制御部100によって制御され、搬送路を搬送されてきた紙幣を、紙幣面を略水平にした状態で集積する。また、各収納部130は、収納部130に接続された搬送路へ紙幣を繰り出すための複数のローラで構成された繰出機構を備えている。繰出機構は、制御部100によって制御され、収納部130に集積されている紙幣を上から順に、各収納部130に接続された搬送路へ繰り出す。
【0098】
紙幣処理部150の上部に、操作部10が設けられている。操作部10は、例えばタッチパネル式の液晶表示装置から成り、操作部として機能すると共に表示部としても機能する。店員は、操作部10で、紙幣処理装置1に収納されている紙幣の情報の確認、紙幣処理に係る設定情報の確認及び更新、紙幣処理に係る指示等の操作を行うことができる。操作部10を操作して入力された情報は制御部100へ送信される。
【0099】
店員は、操作部10を操作し、各収納部130に対して、収納する紙幣の種類を示す情報を設定することができる。制御部100は、店員が操作部10で入力した紙幣の種類を示す情報と、収納部130を示す情報とを関連付ける。制御部100は、紙幣の種類と収納部130の関係を示す情報を記憶部110に保存する。制御部100は、記憶部110に保存されている情報に基づいて、入金部30、一時保留部70、識別部80、搬送部90及び収納部130を制御することにより、複数の収納部130に紙幣を収納することができる。
【0100】
紙幣処理装置1で識別される紙幣の種類には金種が含まれる。紙幣の種類には、金種に加えて、正損と真偽の少なくともいずれか一方が含まれていてもよい。紙幣の種類には、さらに、例えばカナダドル、アメリカドル、メキシコペソ、ユーロのように通貨を示す情報が含まれていてもよい。
【0101】
店員は、操作部10を操作して、一部の収納部130に対して、紙幣を収納しないことを示す情報を設定することもできる。制御部100は、設定された収納部130の情報を記憶部110に保存する。例えば、紙幣を収納しない空の収納部130は、他の収納部130に収納されている紙幣を一枚ずつ繰り出して調べる在高確認処理を行う際に、繰り出された紙幣の一時的な収納場所として利用されるが、詳細は後述する。
【0102】
操作部10で行われる操作には、入金する紙幣を入金部30又はカセット20から収納部130まで搬送する入金処理に必要な情報を入力する入金操作と、出金する紙幣を収納部130から出金部40又はカセット20まで搬送する出金処理に必要な情報を入力する出金操作とが含まれる。また、操作部10で行われる操作には、回収容器140に回収する紙幣を収納部130から回収部141まで搬送する回収処理に必要な情報を入力する回収操作が含まれる。さらに、操作部10で行われる操作には、回収対象の紙幣が収納された回収容器140を紙幣処理装置1から取り外す容器回収処理に必要な情報を入力する容器回収操作が含まれる。これらの処理の詳細は後述する。
【0103】
収納部130は、紙幣処理装置1に対して脱着可能に設けられている。具体的には、収納部130は、紙幣処理装置1の前後方向(
図2左右方向)に移動可能なフレーム上に脱着可能に設けられている。紙幣処理装置1の前面に設けられた金庫扉5を開いて、フレームを第1金庫部151から装置前面側に引き出し、フレームに対して各収納部130を脱着することができる。
図2には、小型の4つの収納部130a~130dと、大型の4つの収納部130e~130hとの2種類の収納部130を合計8つ設けた例を示しているが、収納部130の種類及び数は特に限定されない。
【0104】
第2金庫部152に設けられた回収部141は、搬送部90によって搬送された紙幣を回収容器140内に集積する集積機構と、集積機構によって集積された紙幣を回収容器内へ押し込むレバー及び該レバーを駆動する駆動部を含む収納機構とを備えている。回収部141は、紙幣処理装置1の前後方向(
図2左右方向)に移動可能なフレーム上に設けられている。
【0105】
回収容器140は紙幣処理装置1に対して脱着可能に設けられている。紙幣処理装置1の前面に設けられた金庫扉5を開いて、回収部141が設けられたフレームを第2金庫部152から装置前面側に引き出し、回収部141に対して回収容器140を脱着することができる。
【0106】
回収容器140は、回収対象紙幣を収納する袋である。ただし、回収容器140は、袋に限定されず、例えば、容器と、店員が容器内の紙幣を取り出す際に開閉する蓋と、この蓋を閉じた状態で施錠する施錠機構とを備えるカセットであってもよい。回収容器140がカセットである場合、例えば、複数のローラと紙幣を支えるステージとを含み、搬送部90によって搬送された紙幣を容器内に収納する収納機構がカセット側に設けられる。
【0107】
図3に示すように、紙幣処理装置1は、
図2に示す構成の他に、制御部100、記憶部110及び通信部120を有する。制御部100は、回路、プロセッサー又はコンピュータ装置と呼ばれることがある。通信部120は、制御部100によって制御され、外部装置との間で情報を送受信する。通信部120は、LAN、WAN、インターネット等のネットワークを介して外部装置と通信可能に接続されている。例えば、紙幣が収納された回収容器140を紙幣処理装置1から取り外して店舗外へ運ぶ必要が生じた場合、制御部100は、通信部120を制御して、現金輸送会社に設置された通信端末(外部装置)に、回収容器140の回収を依頼するための情報を送信する。通信部120と通信する外部装置は、店舗内に設置された通信端末であってもよい。この場合、制御部100は、店舗の通信端末を経由して、現金輸送会社に設置された通信端末へ回収容器140の回収を依頼するための情報を送信すればよい。なお、通信端末は、コンピュータ装置と呼ばれることもある。
【0108】
記憶部110は、不揮発性の記憶装置である。記憶部110は、在高情報111、回収情報112及び設定情報113を保存する。在高情報111は、各収納部130に収納されている紙幣の金種、金種別枚数及び金額を示す情報と、回収容器140に収納されている紙幣の金種、金種別枚数及び金額を示す情報とを含む。回収情報112は、回収対象紙幣の金種、金種別枚数及び金額を示す情報と、回収対象紙幣が収納されている場所を示す情報とを含む。また、在高情報111及び回収情報112は各紙幣の記番号情報を含む。設定情報113は、各収納部130に収納する紙幣の種類を示す設定情報と、紙幣処理装置1で行われる紙幣処理の処理内容を示す設定情報とを含む。店員は、操作部10を操作して、在高情報111、回収情報112及び設定情報113を含む各種情報を操作部10の画面上に表示することができる。店員は、操作部10を操作して、記憶部110に保存されている設定情報113を更新することができる。
【0109】
制御部100は、操作部10で行われた操作に基づいて、記憶部110に保存されている各種情報を利用しながら
図2及び
図3に示す各構成部を制御する。制御部100は、識別部80で取得した識別データに基づいて、紙幣の種類を識別する。例えば、紙幣の金種、真偽及び正損が識別される。また、制御部100は、識別部80で取得した識別データに基づいて、種類毎の紙幣の枚数を計数する。例えば、金種毎の紙幣枚数が計数される。各紙幣の情報及び種類毎の紙幣枚数を示す情報は、制御部100から記憶部110に送信されて、在高情報111として記憶部110に保存される。
【0110】
制御部100が、操作部10及び通信部120から入力された情報に基づいて各構成部を制御することにより、本実施形態に記載する紙幣処理装置1の機能及び動作が実現される。紙幣処理装置1は、様々な紙幣処理を実行することができる。
【0111】
[入金処理]
図4は、紙幣処理装置1で行われる入金処理を説明するための模式図である。
図4以降の装置図では、操作部10を省略している。店員は、操作部10を操作して入金処理を開始する。入金処理は、装置外部から紙幣を受け入れて装置内に収納する処理である。店員は、入金部30から紙幣を装置内に入金することもできるし、紙幣処理装置1に対して脱着可能に設けられたカセット20から紙幣を装置内に入金することもできる。
【0112】
入金部30を利用して入金処理を行う場合、店員は複数枚の紙幣を入金部30に載置することができる。入金部30は、制御部100によって制御され、載置された紙幣を1枚ずつ装置内の搬送路へ繰り出す。搬送部90は、制御部100によって制御され、
図4に実線矢印で示すように搬送路に沿って紙幣を搬送する。入金部30から繰り出された紙幣は、識別部80まで搬送される。制御部100は、識別部80で紙幣画像を取得して、紙幣画像から紙幣の記番号を読み取ることができる。制御部100は、識別部80で識別データを取得して、識別データに基づいて、紙幣の種類を識別すると共に該紙幣を入金できるか否かを判定する。制御部100が入金可能と判定した紙幣は、識別結果に基づいて、複数の収納部130a~130hのうち、紙幣の種類に対応するいずれかの収納部130a~130hまで搬送される。収納部130は、搬送されてきた紙幣を収納する。
【0113】
図4には示していないが、制御部100が、入金できないと判定したリジェクト紙幣は、出金部40まで搬送される。搬送されたリジェクト紙幣は出金部40に集積される。出金部40は、集積された紙幣を装置外へ取出可能に構成されている。出金部40に集積されたリジェクト紙幣は店員によって出金部40から取り除かれる。
【0114】
偽券を紙幣処理装置1の装置内に保管する設定情報が記憶部110に保存されている場合、制御部100が偽券と判定したリジェクト紙幣は、出金部40ではなく第2リジェクト部52まで搬送される。第2リジェクト部52は、搬送されてきたリジェクト紙幣を収納して保管する。なお、偽券が、一時保留部70に一時的に収納された後、所定のタイミングで一時保留部70から搬送路に繰り出されて第1リジェクト部51まで搬送され、第1リジェクト部51に収納されて保管される設定とすることも可能である。
【0115】
一時保留部70を利用して、入金部30の紙幣の入金処理を行うこともできる。この場合、識別部80を通過した紙幣は、紙幣処理部150内の搬送路を移動して一時保留部70に収納される。入金される紙幣が全て一時保留部70に収納されると、これらの紙幣の計数結果が操作部10に表示される。店員が、計数結果の承認を示す操作を行うと、一時保留部70に収納された紙幣が繰り出されて、各紙幣の識別結果に対応する収納部130まで搬送される。収納部130は、搬送されてきた紙幣を収納する。店員が、承認ではなくキャンセルを示す操作を行った場合、一時保留部70から繰り出された紙幣は出金部40まで搬送される。出金部40は、搬送されてきた紙幣を集積する。出金部40に集積された紙幣は店員によって出金部40から取り除かれる。
【0116】
カセット20を利用して、入金処理を行うこともできる。この場合、店員は、紙幣処理装置1に入金する紙幣を予めカセット20に収納するために、他の紙幣処理装置を使用する。カセット20は、他の紙幣処理装置にも脱着できるようになっている。例えば、カセット20は、店舗のチェックアウトカウンターで客と取り引きする際に客から受けた貨幣を収納すると共に必要に応じて釣銭を払い出す釣銭機に脱着することができる。例えば、店員は、釣銭機から紙幣を回収して紙幣処理装置1に入金するために、釣銭機にカセット20を装着して、釣銭機で、回収対象紙幣をカセット20に収納する処理を実行する。店員は、回収対象紙幣が収納されたカセット20を釣銭機から取り外し、
図4に示すように紙幣処理装置1に装着し、操作部10で入金操作を行う。紙幣処理装置1で入金処理が開始されると、制御部100によって制御されたカセット20は、カセット20内の紙幣を1枚ずつ装置内の搬送路へ繰り出す。
【0117】
搬送部90は、
図4に破線矢印で示すように紙幣を回転部60まで搬送する。回転部60は、紙幣の表裏方向はそのままに天地方向を回転する。回転部60は、紙幣を回転するための複数のローラを備えている。制御部100は、回転部60の各ローラの回転速度を制御することができる。例えば、紙幣の搬送方向と直交する方向に配設された複数のローラが紙幣面に接し、各ローラが異なる回転速度で回転することにより、紙幣が回転するようになっている。
【0118】
カセット20の紙幣は、紙幣の長手を搬送方向と平行にして繰り出される。一方、入金部30の紙幣は、紙幣の短手を搬送方向と平行にして繰り出され、搬送路に沿って搬送されて収納部130に収納される。回転部60が、カセット20から繰り出された紙幣を、紙幣の短手が搬送方向と平行になるように90度回転することにより、この紙幣を、入金部30から入金された紙幣と同様に処理できるようになる。
【0119】
回転部60で回転された紙幣は、識別部80まで搬送され、入金部30から紙幣を入金する場合と同様に処理される。また、入金部30から紙幣を入金する場合と同様に、カセット20の紙幣を、一時保留部70を利用して入金することもできる。この場合、カセット20から繰り出された紙幣は、紙幣処理部150内の搬送路を移動して一時保留部70に収納され、店員が操作部10で紙幣の計数結果を承認する操作を行った後、一時保留部70から繰り出されて収納部130に収納される。一方、店員が、操作部10で入金処理をキャンセルする操作を行った場合、一時保留部70から繰り出された紙幣はカセット20へ戻されることになる。
【0120】
[出金処理]
店員は、操作部10を操作して出金処理を行うことができる。
図5は、紙幣処理装置1で行われる出金処理を説明するための模式図である。出金処理は、収納部130の紙幣を繰り出して装置外へ排出する処理である。例えば、店員は、操作部10で、収納部130に収納されている紙幣をカセット20へ出金するように出金操作を行う。この場合、制御部100は、店員が入力した出金内容を示す情報を操作部10から受信して、搬送部90、収納部130及びカセット20を制御して出金処理を実行する。また、例えば、店員は、操作部10で、収納部130に収納された紙幣を出金部40へ出金するように出金操作を行うこともできる。この場合、制御部100は、店員が入力した出金内容を示す情報を操作部10から受信して、搬送部90、収納部130及び出金部40を制御して出金処理を実行する。
【0121】
出金部40を利用して出金処理を行う場合、店員が操作部10を操作して出金内容を指定すると、制御部100によって制御された収納部130が、出金する紙幣を1枚ずつ搬送路へ繰り出す。制御部100によって制御された搬送部90は、
図5に実線矢印で示すように紙幣を搬送する。収納部130から繰り出された紙幣は識別部80まで搬送される。制御部100は、識別部80で識別データを取得し、得られた識別データに基づいて、紙幣を出金できるか否かを判定する。制御部100が出金可能と判定した紙幣は、出金部40へ搬送される。搬送された紙幣は出金部40に集積される。店員は、出金された紙幣を出金部40から取り出すことができる。なお、制御部100が、紙幣を出金できるか否かを判定する際に、識別部80で得られた識別データに基づいて記番号を認識するようにしてもよい。
【0122】
図5には示していないが、制御部100が出金できないと判定したリジェクト紙幣は、第1リジェクト部51に収納される。例えば、リジェクト紙幣は、一時保留部70に一時的に収納された後、所定のタイミングで一時保留部70から搬送路に繰り出されて第1リジェクト部51まで搬送され、第1リジェクト部51に収納されて保管される。なお、リジェクト紙幣が第2リジェクト部52まで搬送され、第2リジェクト部52に収納されて保管されるように設定することも可能である。
【0123】
入金処理時に制御部100により偽券と識別されたリジェクト紙幣と、出金処理時に制御部100により出金不可と判定されたリジェクト紙幣とで、装置外に取り出された後の処理が異なる場合がある。この場合、第1リジェクト部51と第2リジェクト部52とに、偽券と出金処理時のリジェクト紙幣とを分けて保管するための設定情報を記憶部110に保存するようにしてもよい。例えば、入金処理時に偽券と判定された紙幣は第2リジェクト部52に保管して、出金処理時にリジェクト紙幣と判定された紙幣は第1リジェクト部51に保管する設定情報が記憶部110に保存されると、制御部100は、この設定情報に基づいて各部を制御する。これにより、入金処理時のリジェクト紙幣と出金処理時のリジェクト紙幣とが、第1リジェクト部51と第2リジェクト部52とに分けて保管される。
【0124】
カセット20を利用して出金処理を行う場合、店員が操作部10を操作して出金内容を指定すると、制御部100によって制御された収納部130が、出金する紙幣を1枚ずつ搬送路へ繰り出す。制御部100によって制御された搬送部90は、繰り出された紙幣を識別部80まで搬送した後、この紙幣を、搬送路上の図示しない分岐機構により分岐する。搬送部90は、分岐機構により分岐された紙幣を、
図5に破線矢印で示すようにカセット20まで搬送する。搬送の途中で、制御部100によって制御された回転部60が、短手を搬送方向と平行にして搬送されてきた紙幣を、長手が搬送方向と平行となるように、表裏方向はそのままに紙幣面と平行に90度回転する。回転部60には図示しないラインセンサが設けられており、このラインセンサが、回転された紙幣の姿勢を検出する。ラインセンサにより検出された紙幣の姿勢に関する情報は制御部100に送信される。制御部100は、受信した紙幣の姿勢に関する情報に基づいて、紙幣を出金できるか否か、すなわちカセット20に収納できるか否かを判定する。制御部100は、出金可能と判定した紙幣はカセット20へ搬送し、出金できないと判定した紙幣は第1リジェクト部51に搬送するように搬送部90を制御する。カセット20は、搬送されてきた紙幣を収納する。第1リジェクト部51は、搬送されてきたリジェクト紙幣を収納する。
【0125】
[在高確認処理]
在高確認処理は、収納部130に実際に収納されている紙幣の数量が、記憶部110の在高情報111及び回収情報112で管理されている紙幣の数量と一致することを確認するための処理である。
【0126】
収納部130で紙幣の出し入れをしている間に、複数枚の紙幣が重なった状態で搬送される重送等の搬送エラーが発生し、収納部130に実際に収納されている紙幣枚数を確定できない状態となる場合がある。このような場合に、制御部100が在高確認処理を実行して、収納部130に収納されている紙幣を調べることができる。
【0127】
図6は、紙幣処理装置1で行われる在高確認処理を説明するための模式図である。在高確認処理用に空の収納部130a、130bが確保されている場合を例に在高確認処理について説明する(
図10(a)参照)。
【0128】
収納部130d~130hの紙幣を調べる場合、制御部100は、各収納部130d~130hから紙幣を1枚ずつ繰り出して
図6(a)に矢印で示すように搬送し、識別部80で識別データを取得した後、収納部130aに収納する。収納部130aが紙幣で満杯になった場合、制御部100は、続く紙幣を収納部130bに収納する。大型の収納部130e~130hに多くの紙幣が収納されている場合でも、全ての紙幣を調べて、2つの収納部130a、130bに収納できるようになっている。なお、
図6(a)では複数収納部130d~130hの紙幣の搬送経路を示しているが、在高確認処理は、1つの収納部130を対象に実行される。複数の収納部130を調べる場合も、収納部130が1つずつ調べられる。
【0129】
一方、収納部130cの紙幣を調べる場合、制御部100は、収納部130cから紙幣を1枚ずつ繰り出して
図6(b)に矢印で示すように搬送し、識別部80で識別データを取得した後、収納部130bに収納する。
【0130】
1つの収納部130に収納されていた全ての紙幣の識別データを取得した後、制御部100は、収納部130a、130bに収納した紙幣を繰り出して元の収納部130へ搬送して収納する。例えば、収納部130a、130bから繰り出された紙幣は、収納部130a、130bに搬送されてきた経路を逆にたどって元の収納部130へ搬送される。
【0131】
制御部100は、識別部80で取得した識別データに基づいて、1つの収納部130に収納されていた全ての紙幣を対象に、各紙幣の識別及び記番号の読み取りと、紙幣の計数とを行う。これにより、制御部100は、収納部130の在高、すなわち収納部130に実際に収納されていた紙幣の金種、金種別枚数及び合計金額を確認することができる。
【0132】
このように、紙幣処理装置1は、各収納部130の全ての紙幣を1枚ずつ繰り出して調べることにより、収納部130に実際に収納されている紙幣が在高情報111及び回収情報112で管理されている紙幣情報と一致することを確認することができる。
【0133】
[回収処理]
店員は、操作部10を操作して回収処理を行うことができる。回収処理では、当日の店舗の売上金額分の紙幣が回収対象紙幣とみなされる。回収処理は、収納部130から繰り出された回収対象紙幣を回収容器140に収納し、収納した回収対象紙幣の金額情報を、売上金に関する情報として記憶部110に保存するための処理を含む。
【0134】
紙幣処理装置1は、回収対象紙幣の枚数が、回収容器140に収納可能な紙幣枚数を超えた場合でも、回収対象紙幣を装置内に保管することができる。回収処理の途中で回収容器140が紙幣で満杯になった場合、回収処理は、一又は複数の収納部130から回収容器140に移動できなかった回収対象紙幣を収納部130に収納した状態のまま、これら回収対象紙幣の金額を売上金に計上する処理を含む。この場合、回収容器140に収納された回収対象紙幣の金額と、売上金として計上された収納部130の回収対象紙幣の金額と、回収対象紙幣が収納されている収納部130を示す情報とが、売上金に関する情報として、記憶部110に保存される。
【0135】
回収処理の開始前に既に回収容器140が満杯であった場合、回収処理は、一又は複数の収納部130で、各収納部130に収納されている回収対象紙幣の金額を、売上金として計上する処理を含む。この場合、売上金として計上された回収対象紙幣の金額と、これら回収対象紙幣が収納されている収納部130を示す情報とが、売上金に関する情報として、記憶部110に保存される。
【0136】
紙幣処理装置1は、売上金に関する情報を記憶部110の回収情報112に保存している。具体的には、回収対象紙幣、すなわち売上金として計上された金額分の紙幣の収納場所を示す情報と、各収納場所にある回収対象紙幣の金種、金種別枚数及び合計金額を示す情報とが、売上金に関する情報として保存されている。収納場所とは、回収対象紙幣、すなわち記憶部110の回収情報112に情報が登録された紙幣が、収納されている場所を示す情報である。紙幣処理装置1は、回収容器140が満杯になった後も、収納部130に回収対象紙幣を保管することができる。このため、収納場所には、回収容器140のみが含まれる場合もあるし、回収容器140と一又は複数の収納部130とが含まれる場合もある。
【0137】
店員が操作部10を操作して回収処理の内容を入力すると、制御部100は回収処理を開始する。回収処理が開始されると、収納部130にある回収対象紙幣が繰り出されて回収容器140に収納される。
図7は、紙幣処理装置1で行われる回収処理時の紙幣の動き示す模式図である。
図7(a)は一部の収納部130d~130hから回収する紙幣の動きを示し、
図7(b)及び
図7(c)はその他の収納部130a~130cから回収する紙幣の動きを示している。
図7(a)及び
図7(b)では、複数の収納部130の紙幣の動きを示しているが、紙幣を回収する際には、各収納部130から順に紙幣が搬送路に繰り出され、搬送部90により回収部141まで搬送されて、回収部141の回収容器140に収納される。
【0138】
収納部130d~130hから紙幣を回収する場合は、
図7(a)に示すように、各収納部130d~130hの紙幣が1枚ずつ搬送路に繰り出され、識別部80で得られた識別データに基づいて、制御部100で識別計数されて、回収容器140に収納される。
【0139】
収納部130a~130cから紙幣を回収する場合は、
図7(b)に示すように、各収納部130a~130cの紙幣が1枚ずつ繰り出され、識別部80で得られた識別データに基づいて制御部100で識別計数されて、一時保留部70に一時的に収納される。その後、
図7(c)に示すように、紙幣は所定のタイミングで一時保留部70から搬送路に繰り出されて回収容器140に収納される。
【0140】
制御部100によって得られた計数結果は、記憶部110に送られて、回収情報112に記憶される。回収容器140が紙幣で満杯になった後、制御部100は、収納部130を回収対象紙幣の保管に利用する。以下、収納部130を回収対象紙幣の保管に利用する紙幣処理の3つの具体例を順に説明する。
【0141】
[回収対象紙幣を収納部に保管する紙幣処理の例1]
図8は、紙幣処理装置1で行われる紙幣処理の例を説明するための模式図である。
図8では、収納部130及び回収容器140の紙幣の収納状態について説明するため、説明に必要な構成のみを模式的に示して他の構成は省略している。
【0142】
図8(a)に示すように、紙幣処理装置1の収納部130には、店舗の営業を開始する前に、チェックアウトカウンターで釣銭として使用するための紙幣が収納されている。店舗の営業開始前であるため、紙幣を繰り出さず収納するだけの回収容器140には紙幣は収納されていない。
【0143】
8つの収納部130それぞれに、収納する紙幣の金種が予め割り当てられている。釣銭用紙幣の枚数は金種毎に予め設定されている。各収納部130に割り当てられた金種の情報、及び釣銭用紙幣の金種別枚数の情報は、記憶部110の設定情報113に予め保存されている。予め設定された金種及び枚数の釣銭用紙幣が、各金種に対応する収納部130に収納されている。店舗の営業を開始する前、店員は、紙幣処理装置1で、チェックアウトカウンターで釣銭として使用する紙幣の出金処理を実行する。制御部100は、出金する紙幣を各収納部130から搬送路へ繰り出してカセット20又は出金部40まで搬送する。店員は、カセット20に収納された紙幣又は出金部40に出金された紙幣をチェックアウトカウンターまで運び釣銭として使用する。
【0144】
店舗の営業中に、チェックアウトカウンターで紙幣が不足したり過多になったりした場合に、紙幣処理装置1で出金処理及び入金処理が実行される。チェックアウトカウンターで釣銭用の紙幣が不足した場合、店員は、紙幣処理装置1で、釣銭用紙幣の出金処理を実行する。出金処理が実行されると、
図5で説明したように、出金する紙幣が収納部130から繰り出されて装置外へ排出される。チェックアウトカウンターで紙幣が過多になった場合、店員は、紙幣処理装置1で、チェックアウトカウンターから回収した紙幣の入金処理を実行する。入金処理が実行されると、
図4で説明したように、入金された紙幣が収納部130へ収納される。収納部130では、入金処理時に入金された紙幣を出金処理時に出金するリサイクルが行われる。店舗の営業中、収納部130は、
図8(b)に示すようにリサイクル紙幣の収納に利用される。
【0145】
入金処理で入金された紙幣のうち、制御部100がリサイクルできないと判定した紙幣は、回収容器140に収納される。この他、紙幣処理装置1に入金可能であるが収納部130に割り当てられていない金種の紙幣と、収納部130に収納すべき紙幣であるが収納部130が満杯で収納できなかった紙幣も回収容器140に収納される。
図8(b)に示すように、回収容器140は、リサイクルされずに回収される紙幣の収納に利用される。
【0146】
店舗の営業が終了すると、チェックアウトカウンターを含む店舗内の紙幣が集められて紙幣処理装置1に入金される。店員が入金処理を終えて操作部10で所定操作を行うと、当日の店舗の売上金が確定されて回収処理が開始される。紙幣処理装置1内にある紙幣の合計金額から、営業開始前からあった店舗内にあった紙幣(
図8(a)の釣銭用紙幣)の金額を差し引いた金額が売上金となる。売上金の計算は制御部100によって行われる。売上金が確定すると、制御部100は、売上金を構成する紙幣の金種及び枚数を決定する。決定された、売上金を構成する紙幣が、回収対象紙幣となる。例えば、売上金の金額と、
図8(b)に示すように既に回収容器140に収納されている紙幣の合計金額と、翌日の営業の釣銭用に残す紙幣の金種及び金種別枚数とに基づいて、収納部130から回収容器140に移動する回収対象紙幣の金種及び金種別枚数が決定される。
【0147】
制御部100は、決定結果に基づいて、収納部130に収納されている紙幣のうち、売上金を構成する回収対象紙幣(以下「売上金紙幣」と記載する)を搬送路に繰り出すように収納部130を制御する。収納部130から繰り出された紙幣は
図7に示したように搬送路を搬送されて回収容器140に収納される。具体的には、翌日の営業に必要な釣銭用の紙幣を収納部130に残して、他の紙幣が回収容器140に集められる。回収容器140には、売上金紙幣が金種混合状態で収納されることになる。
【0148】
回収処理の終了後、営業開始前と同様に、収納部130は
図8(c)に示すように翌日の営業に使用する釣銭用の紙幣を収納した状態となる。一方、回収容器140は、売上金紙幣(売上金額に相当する紙幣群)を収納した状態となる。
図8(c)に示す状態で2日目の店舗の営業が開始される。
【0149】
従来、店員は、2日目の営業中に、回収容器140に収納可能な紙幣枚数、2日目の売上金紙幣の予測枚数等に基づいて、経験則から、2日目の営業終了後に2日目の売上金紙幣全てを回収容器140に収納できるか否かを予測していた。2日目の営業終了後に売上金紙幣全てを回収容器140に収納できないと判断した場合、店員は、現金輸送会社に、紙幣が収納されている回収容器140の回収を依頼していた。依頼を受けた現金輸送会社の担当者は、空の回収容器140を持って来店し、1日目の売上金紙幣を含む複数紙幣が収納されている回収容器140を回収すると共に、空の回収容器140を紙幣処理装置1に装着していた。店員は、回収容器140内の紙幣の金額、すなわち現金輸送会社が回収する紙幣の金額を確定してから、現金輸送会社への依頼を行う。このため、依頼後は、回収容器140が回収されるまで回収容器140に紙幣を収納することはできず、店員は、紙幣処理装置1で入金処理等の紙幣処理を行うことができなかった。本実施形態に係る紙幣処理装置1は、以下に説明するように、回収容器140内の紙幣枚数によらず、回収容器140が紙幣で満杯になった後も、店員が紙幣処理装置1の使用を継続できる点に1つの特徴を有している。
【0150】
図8(c)に示す状態で2日目の店舗の営業を開始した際、収納部130には、2日目の営業に必要な釣銭用の紙幣が収納されている。このため、紙幣処理装置1は、収納部130の紙幣を釣銭用紙幣として出金部40又はカセット20に搬送する出金処理を実行することができる。
【0151】
2日目の営業中、店員は、1日目の営業中と同様に、紙幣処理装置1で釣銭用紙幣の出金処理及び売上金紙幣の入金処理を実行することができる。2日目の営業が終了すると、1日目と同様に、店員は、店舗内の紙幣を集めて紙幣処理装置1に入金して2日目の店舗の売上金を確定し、回収処理を実行する。制御部100は、1日目と同様に、2日目の売上金紙幣を収納部130から繰り出して回収容器140への収納を開始する。処理の途中で、回収容器140が紙幣で満杯になると、制御部100は、
図8(d)に示すように、残りの売上金紙幣を収納部130に保管した状態とする。
【0152】
具体的には、紙幣処理装置1は、営業開始前と同様に翌日の営業に必要な釣銭用の紙幣を収納部130に残すと共に、売上金紙幣を回収容器140と少なくとも1つの収納部130とに分けて収納した状態とする。回収容器140は、1日目の売上金紙幣と、2日目の売上金紙幣の一部とを金種混合で収納した状態となる。少なくとも一部の収納部130は、2日目の売上金紙幣と、3日目の営業に使用する釣銭用紙幣とを金種別に収納した状態となる。すなわち収納部130は回収対象紙幣とリサイクル紙幣とを収納した状態となる。制御部100は、これらの紙幣の収納状態を示す情報を記憶部110の在高情報111及び回収情報112に保存する。回収情報112には、一部の売上金紙幣が収納部130に収納されていることを示す情報が保存される。
【0153】
図8(d)に示すように、2日目の売上金を構成する紙幣が、回収容器140と収納部130とに分けて収納された状態で、3日目の営業が開始される。3日目の営業中も、店員は、1日目及び2日目の営業中と同様に、紙幣処理装置1で紙幣処理を実行することができる。すなわち店員は、紙幣処理装置1の使用を継続することができる。制御部100は、出金処理を行う際、収納部130の売上金紙幣を出金せず、売上金紙幣を除く他の紙幣(リサイクル紙幣)を出金する。例えば、50万円分の紙幣が収納されている収納部130で、売上金紙幣の金額が10万円である場合、残り40万円分の紙幣を使用して出金処理が行われる。
【0154】
なお、制御部100は、3日目の営業中に入金された紙幣及び出金された紙幣に応じて、売上金紙幣とリサイクル紙幣の入れ替えを行うこともできる。例えば、低額金種の売上金紙幣と置き換え可能な高額金種の紙幣が入金されると、制御部100は、入金された紙幣を売上金紙幣とみなし、入金された紙幣の金額に相当する枚数分の売上金紙幣をリサイクル紙幣に変更する。
【0155】
例えば、入金処理で収納部130bに200ユーロ紙幣が1枚収納された場合、制御部100は、リサイクル紙幣である200ユーロ紙幣1枚と、売上金紙幣である10ユーロ紙幣20枚とを入れ替える。具体的には、制御部100は、入金された200ユーロ紙幣1枚を売上金紙幣とみなし、この紙幣の代わりに、売上金紙幣とみなしていた10ユーロ紙幣20枚をリサイクル紙幣に変更する。これにより、出金処理時に出金可能な10ユーロ紙幣の枚数が20枚増加する。
【0156】
入金時に売上金紙幣とみなす金種と、これと置き換えてリサイクル紙幣に変更する金種とを制御部100が選択するための設定は、設定情報113として予め記憶部110に保存される。
【0157】
例えば、店員は、操作部10を操作して、入金時に売上金紙幣とみなす金種と、これと置き換えて売上金紙幣からリサイクル紙幣に変更する金種とを選択して作成した設定を記憶部110の設定情報113に保存することができる。
【0158】
また、例えば、店員は、制御部100が、売上金紙幣からリサイクル紙幣に変更する金種を自動選択する設定を記憶部110の設定情報113に保存することもできる。この場合、制御部100は、当日の各金種の紙幣枚数の変化に基づいて、当日不足しそうなリサイクル紙幣の金種を特定し、特定した金種を売上金紙幣から出金用のリサイクル紙幣に戻す金種として自動選択する。制御部100は、自動選択した金種の紙幣と両替可能な、該金種より高額な金種の紙幣が入金されると、入金された紙幣と入れ替えに、自動選択された金種の紙幣を売上金紙幣からリサイクル紙幣に変更する。
【0159】
このように、制御部100は、記憶部110の設定情報113に予め準備された設定に基づいて、回収対象である売上金紙幣と、出金用のリサイクル紙幣との入れ替えを行うことができる。紙幣の入れ替えを行った場合、制御部100は、記憶部110に保存されている在高情報111及び回収情報112が入れ替え後の紙幣の収納状態と一致するように、関連する情報を更新する。
【0160】
[回収対象紙幣を収納部に保管する紙幣処理の例2]
図8(d)に示した例では、少なくとも1つの収納部130に売上金紙幣及びリサイクル紙幣が収納されるが、一部の収納部130を売上金紙幣の収納専用にして、リサイクル紙幣を収納する収納部130には売上金紙幣を収納しない設定とすることも可能である。
【0161】
図9は、一部の収納部130a~130cを回収専用とする紙幣処理の例を説明するための模式図である。なお、
図9では、収納部130及び回収容器140の紙幣の収納状態について説明するため、説明に必要な構成のみを模式的に示して他の構成は省略している。
【0162】
例えば、店員は、回収容器140が満杯になった場合には一部の収納部130a~130cを回収専用とする設定情報を、記憶部110の設定情報113に保存する。この場合も、1日目の営業開始後、
図8(a)及び(b)に示すように紙幣処理が行われる。そして、1日目の営業終了後に回収処理が実行されて、
図8(c)に示すように、1日目の全ての売上金紙幣が回収容器140に収納された状態で、2日目の営業が開始される。
【0163】
2日目の営業終了後に回収処理が開始されて、2日目の全ての売上金紙幣を回収容器140に収納できないことを認識した制御部100は、一部の収納部130a~130cの設定を、
図8に示すように金種別にリサイクル紙幣を収納する設定から、
図9に示すように売上金紙幣のみを収納する設定に変更する。
【0164】
制御部100は、記憶部110の設定情報113で、収納部130a~130cに収納する紙幣の種類に関する設定を、変更後の内容に更新する。更新後、これらの収納部130a~130cは、紙幣の回収部として利用されることになる。
【0165】
回収処理の終了後、
図9に示すように、2日目の売上金紙幣は、一部が回収容器140に収納され、回収容器140に収納できなかった残りの紙幣が、回収部としての利用に切り替えられた収納部130a~130cに収納された状態となる。回収容器140及び収納部130a~130cは売上金紙幣を金種混合状態で収納し、収納部130d~130hは、売上金紙幣を収納せず、釣銭用の紙幣、すなわち出金可能なリサイクル紙幣のみを金種別に収納した状態となる。
【0166】
図9に示す状態で3日目の営業が開始される。3日目の営業中、店員は、1日目及び2日目の営業中と同様に、紙幣処理装置1で釣銭用紙幣の出金処理及び売上金紙幣の入金処理を実行することができる。制御部100は、出金処理を行う際、収納部130d~130hの紙幣を出金し、収納部130a~130cに保管されている売上金紙幣を出金することはない。
【0167】
なお、
図9では、3つの収納部130a~130cの利用方法を、収納部としての利用から回収部としての利用に切り替える例を示したが、利用方法を切り替える収納部130の数は特に限定されない。例えば、1つの収納部130aを回収部として利用することで全ての売上金紙幣を収納できる場合は、1つの収納部130aのみを回収部とすればよい。
【0168】
[回収対象紙幣を収納部に保管する紙幣処理の例3]
図8では、全ての収納部130に、収納する紙幣の金種が予め割り当てられている場合の紙幣処理の例を示したが、収納部130に金種が割り当てられず、在高確認処理用とされる場合もある。
図10は、一部の収納部130a、130bを在高確認処理用とした場合の紙幣処理の例を説明するための模式図である。
図10に示す例では、2つの収納部130a、130bが、在高確認処理に割り当てられている。なお、
図10では、収納部130及び回収容器140の紙幣の収納状態について説明するため、説明に必要な構成のみを模式的に示して他の構成は省略している。
【0169】
図10(a)に示すように、収納部130c~130hに金種を割り当てて釣銭用の紙幣を準備した状態で、店舗の1日目の営業が開始される。店舗の営業中、紙幣処理装置1は、収納部130c~130hへ紙幣を収納する入金処理、及び収納部130c~130hから紙幣を出金する出金処理を実行することができる。また、紙幣処理装置1は、収納部130a、130bを利用して、
図6で説明したように在高確認処理を実行することができる。
【0170】
1日目の営業終了後に回収処理が実行されて、
図8(c)と同様に全ての売上金紙幣が回収容器140に収納され、釣銭用の紙幣が収納部130c~130hに収納された状態で、2日目の営業が開始される。2日目の営業中も1日目の営業中と同様に紙幣処理が行われる。2日目の営業終了後に回収処理が開始されて、2日目の全ての売上金紙幣を回収容器140に収納できないことを認識した制御部100は、在高確認処理に割り当てていた2つの空の収納部130a、130bを、売上金紙幣を収納する設定に変更する。すなわち、これらの収納部130a、130bの利用方法が、紙幣の回収部としての利用に切り替えられる。制御部100は、2日目の売上金紙幣を、回収容器140と、回収部としての利用に切り替えられた収納部130a、130bに収納する。
【0171】
回収処理の終了後、
図10(b)に示すように、2日目の売上金紙幣は、一部が回収容器140に収納され、回収容器140に収納できなかった残りが収納部130a、130bに収納された状態となる。なお、回収容器140と2つの収納部130a、130bとを利用しても、全ての売上金紙幣を収納できない場合は、
図8(d)で説明したように、他の収納部130c~130hの少なくともいずれか1つに売上金紙幣の一部が収納されることになる。
【0172】
図10(b)に示すように、収納部130c~130hに釣銭用の紙幣を収納した状態で3日目の営業が開始される。制御部100は、収納部130c~130hの紙幣をリサイクルしながら入金処理及び出金処理を実行する。収納部130a、130bに保管されている売上金紙幣はリサイクルされず、出金処理に使用されることはない。
【0173】
図10では、2つの収納部130a、130bの利用方法を、在高確認処理用の収納部としての利用から回収部としての利用に切り替える例を示したが、利用方法を切り替える収納部130の数は特に限定されない。例えば、1つの収納部130aを回収部としての利用することで全ての売上金紙幣を収納できる場合は、1つの収納部130aのみを回収部とすればよい。
【0174】
在高確認処理を実行できるように、例えば、在高確認処理用の複数の収納部130a、130bのうち、一部の収納部130aには売上金紙幣を収納せず、残りの収納部130bの利用方法を回収部としての利用に切り替えるようにしてもよい。
【0175】
また、例えば、在高確認処理用の収納部130a、130bには売上金紙幣を収納せず、他の収納部130c~130hに、
図8に示したように売上金紙幣とリサイクル紙幣とを収納するようにしてもよい。
【0176】
回収処理の実行後も在高確認処理用の収納部130を確保することにより、売上金紙幣を回収容器140と少なくとも1つの収納部130とに分けて収納しながら、必要に応じて、在高確認処理を実行することが可能となる。
【0177】
[容器回収処理]
記憶部110の設定情報113には、売上金の回収を現金輸送会社に依頼するか否かを判定するための判定条件が保存されている。店員は、操作部10を操作して、設定情報113に、判定条件を登録することができる。例えば、店員は、店舗の営業終了後に売上金紙幣の一部が収納部130に収納された際、この収納部130で釣銭用紙幣と売上金紙幣の合計枚数が、予め設定された所定枚数(閾値枚数)を超えた場合に、現金輸送会社に紙幣の回収を依頼するよう判定条件を設定する。また、例えば、店員は、収納部130の釣銭用紙幣と売上金紙幣の合計枚数が、この収納部130に収納可能な紙幣の最大枚数の所定割合を超えた場合に、現金輸送会社に回収を依頼するよう判定条件を設定する。
【0178】
店員は、現金輸送会社に回収を依頼する売上金紙幣の枚数と、回収容器140に収納可能な紙幣の最大枚数とに基づいて、判定条件を設定することもできる。例えば、売上金紙幣(回収対象紙幣)の枚数が、最大で3000枚の紙幣を収納可能な回収容器140の1.8個分に相当する5400枚に到達した場合に、現金輸送会社に回収を依頼するよう判定条件を設定する。
【0179】
制御部100は、例えば回収処理の実行後に、紙幣の収納状態が、店員が予め設定した判定条件を満たすか否かを判定し、条件を満たす場合には、現金輸送会社へ紙幣の回収を依頼する報知処理を行う。報知処理は、通信部120を利用して行われる。報知処理では、回収依頼の通知と、回収を依頼する売上金紙幣に関する情報とが、現金輸送会社が利用する通信端末に送信される。売上金紙幣に関する情報には、店舗からの回収を依頼する紙幣の金種、金種別枚数、合計枚数及び合計金額を示す情報と、回収に必要な回収容器140の数を示す情報とが含まれる。例えば、紙幣処理装置1から店舗の売上金を回収するために、2つの回収容器140が必要である場合、2つの回収容器140を持って店舗に紙幣を回収しにくるよう現金輸送会社に通知される。
【0180】
店舗から依頼を受けた現金輸送会社の担当者(以下「担当者」と記載する)は、通知された数の回収容器140を持って店舗へ向かう。店舗に到着した担当者は、紙幣処理装置1の操作部10を操作して、容器回収処理を開始する。
【0181】
4日目の営業終了後に容器回収処理を行う場合を例に容器回収処理について説明する。
図11は、紙幣処理装置1で行われる容器回収処理を説明するための模式図である。
図11では、収納部130及び回収容器140の紙幣の収納状態について説明するため、説明に必要な構成のみを模式的に示して他の構成は省略している。
図11(a)は、4日目の営業終了後、容器回収処理を開始する前の紙幣の収納状態を示している。
図11(b)は、容器回収処理を終了した後の紙幣の収納状態を示している。
【0182】
図11(a)に示すように、4日目の営業終了後、回収容器140aには、1日目の売上金紙幣と、2日目の売上金紙幣の一部とが収納されている。
図11に示す例では、収納部130a、130bは在高確認処理用に空の状態で確保されている。このため、
図11(a)に示すように、これらの収納部130a、130bに紙幣は収納されていない。
【0183】
リサイクル紙幣及び売上金紙幣は、釣銭用のリサイクル紙幣を金種別に収納するよう設定された収納部130c~130hに収納されている。例えば、
図11(a)に示すように、1金種に2つの収納部130c、130dが割り当てられた100ユーロ紙幣については、一方の収納部130cにリサイクル紙幣が収納され、他方の収納部130dに2日目~4日目の売上金紙幣が収納されている。1金種に1つの収納部130e~130hが割り当てられた他金種については、各収納部130e~130hに、リサイクル紙幣と2日目~4日目の売上金紙幣の両方が収納されている。このように、紙幣処理装置1は、1つの収納部130d~130hに、複数営業日の売上金紙幣を収納した状態で、リサイクル紙幣を使用して入金処理及び出金処理を含む紙幣処理を行うことができる。
【0184】
図11(a)に示す状態で担当者が容器回収処理を開始すると、操作部10の画面上に、担当者に作業内容を案内する情報が表示される。
図12は、容器回収処理時の操作部10の画面例を示す図である。容器回収処理の開始後、
図12(a)に示すように、回収対象である売上金紙幣の枚数と、担当者への作業指示とが操作部10の画面上に表示される。
【0185】
図12(a)に示す画面を確認した担当者は、
図11(a)に示すように売上金紙幣で満杯になっている回収容器140aを紙幣処理装置1から取り外して、代わりに、店舗に持参した空の回収容器140bを回収部141に装着する。
【0186】
容器回収処理が開始されると、制御部100は、記憶部110に保存されている回収情報112に基づいて、
図11(a)に示すように2日目から4日目までの売上金紙幣が収納部130d~130hに収納されていることを認識する。回収部141に空の回収容器140bが装着されると、制御部100は、各収納部130d~130hから売上金紙幣を繰り出し、
図7に示したように搬送して回収容器140bに収納する。この間、操作部10には、
図12(b)に示すように、2つ目の回収容器140b(2枚目の回収袋)に紙幣を収納していることを示す情報が表示される。
【0187】
制御部100は、収納部130c~130hに収納されていた売上金紙幣を回収容器140bに収納し終えると、
図12(c)に示すように、これを報知する情報を操作部10の画面に表示する。担当者は、売上金紙幣が収納された2つ目の回収容器140b(2枚目の収納袋)を紙幣処理装置1から取り外し、代わりに、店舗に持参した空の回収容器140cを回収部141に装着する。回収部141に空の回収容器140cが装着されると、制御部100は容器回収処理を終了する。
【0188】
容器回収処理の終了後、
図11(b)に示すように、紙幣処理装置1に装着された回収容器140cは空で、収納部130に釣銭用のリサイクル紙幣のみが収納された状態となる。また、紙幣処理装置1の装置外へ回収された2つの回収容器140a、140bには、複数営業日の売上金紙幣が収納された状態となる。
【0189】
こうして容器回収処理を終えた担当者は、
図11(b)に示すように1日目から4日目の店舗の売上金が収納された2つの回収容器140a、140bを店舗から運び出す。担当者は、2つの回収容器140a、140bを、店舗から所定拠点へ運搬する。売上金は、例えば、複数の店舗から回収された紙幣を処理する現金センターに運搬される。
【0190】
[紙幣移動時の在高確認処理]
紙幣処理装置1は、1つの収納部130に、売上金紙幣及びリサイクル紙幣を収納することができる。容器回収処理時には、売上金紙幣を収納した回収容器140が紙幣処理装置1から取り外されて装置外へ回収された後、回収部141に空の回収容器140が装着される。制御部100は、収納部130に収納されている紙幣のうち売上金紙幣を繰り出して、空の回収容器140に移動する。
【0191】
図11に示すように紙幣処理装置1内に在高確認処理用の収納部130がある場合、制御部100は、容器回収処理を実行して売上金紙幣を移動する際に、在高確認処理を行うことができる。店員は、売上金紙幣を在高確認処理用の収納部130へ移してから回収容器140に回収する第1方法と、売上金紙幣を回収容器140へ直接回収する第2方法とのいずれかを選択することができる。以下、売上金紙幣、すなわち回収対象紙幣が収納されている収納部の符号を130、在高確認処理用の収納部の符号を131と区別して、第1方法及び第2方法について説明する。
【0192】
図13は、収納部130の回収対象紙幣を在高確認用の収納部131へ移してから回収容器140に回収する第1方法を説明する模式図である。制御部100は、
図13(a)に示すように収納部130に収納されている全ての紙幣を、1枚ずつ繰り出して識別部80で調べ、
図13(b)に示すように在高確認処理用の収納部131に収納する。制御部100は、収納部130から繰り出した全ての紙幣を収納部131に収納して在高確認処理を終了する。在高確認処理を終えた制御部100は、
図13(c)に示すように、収納部131から回収対象紙幣を繰り出して回収容器140に収納する。続いて制御部100は、
図13(d)に示すように、収納部131からリサイクル紙幣を繰り出して元の収納部130へ戻す。このように、制御部100は、在高確認処理を行って、収納部131に実際に収納されていた紙幣が記憶部110の在高情報111及び回収情報112で管理されている情報と一致することを確認すると同時に、回収対象紙幣を回収容器140に収納することができる。
【0193】
在高確認処理を行った結果、記憶部110で管理されている情報と異なり、収納部131に実際に収納されていた紙幣が不足していた場合、不足分をどのように処理するかは設定により変更できるようになっている。
【0194】
不足分をリサイクル紙幣の不足として処理する設定となっている場合、制御部100は、
図13(c)に示す紙幣の移動で、記憶部110の情報と一致するように回収対象紙幣を回収容器140に確保した後、残りの紙幣を
図13(d)に示す移動で収納部130へ戻してリサイクル紙幣とする。一方、不足分を回収対象紙幣の不足として処理する設定となっている場合、制御部100は、記憶部110の情報と一致するように、収納部130へ戻すリサイクル紙幣を収納部131内に確保して、
図13(c)に示す移動では、収納部131にある紙幣の枚数から、確保したリサイクル紙幣の枚数を差し引いた残りの枚数の紙幣を回収容器140に収納して回収対象紙幣とする。その後、制御部100は、収納部131に確保していたリサイクル紙幣を
図13(d)に示す移動で収納部130へ戻す。
【0195】
例えば、売上金紙幣100枚と、リサイクル紙幣200枚との合計300枚の紙幣が収納部130にあるはずが、在高確認処理を行った結果、紙幣が299枚しかなかったとする。不足分がリサイクル紙幣で処理される場合、回収容器140には予定通り売上金紙幣100枚が収納され、収納部130に199枚のリサイクル紙幣が収納されることになる。一方、不足分が売上金で処理される場合、収納部130に予定通りリサイクル紙幣200枚が収納され、回収容器140に99枚の売上金紙幣が収納されることになる。
【0196】
図14は、収納部130から回収容器140へ回収対象紙幣を直接回収する第2方法を説明する模式図である。制御部100は、
図14(a)に示すように収納部130に収納されている紙幣を、1枚ずつ順に繰り出して識別部80で調べ、
図14(b)に示すように、在高確認処理用の収納部131に収納する。リサイクル紙幣全てを収納部131に収納し終えた制御部100は、引き続き収納部130から紙幣を1枚ずつ繰り出して識別部80で調べ、
図14(c)に示すように回収容器140に収納する。制御部100は、収納部130から全ての紙幣を繰り出して在高確認処理を終了する。
【0197】
続いて制御部100は、
図14(d)に示すように、収納部131から全ての紙幣を繰り出して元の収納部130へ戻す。このように、制御部100は、在高確認処理を行って、収納部131に実際に収納されていた紙幣が記憶部110の在高情報111及び回収情報112で管理されている情報と一致することを確認すると同時に、回収対象紙幣を回収容器140に収納することができる。
【0198】
在高確認処理時に不足分を回収対象紙幣の不足として処理する設定となっている場合、制御部100は、
図14(b)に示す移動で、記憶部110の情報と一致するようにリサイクル紙幣を収納部131に確保した後、収納部130にある残りの紙幣を
図14(c)に示す移動で収納部130へ収納する。一方、不足分をリサイクル紙幣の不足として処理する設定となっている場合、制御部100は、
図14(c)に示すように収納部130から回収容器140へ移動する紙幣の移動を先に行って、記憶部110の情報と一致するように回収対象紙幣を回収容器140に確保した後、
図14(b)に示すように収納部130から収納部131へ移動する紙幣の移動を行って、収納部130にある残りの紙幣を収納部131へ移動する。いずれの場合も、収納部131の紙幣は、その後、
図14(d)に示す移動で収納部130へ戻されることになる。
【0199】
例えば、制御部100は、記憶部110の在高情報111及び回収情報112に基づいて、回収対象の売上金紙幣100枚と、リサイクル紙幣200枚の合計300枚の紙幣が収納部130にあることを認識する。このとき、収納部130に実際に収納されている紙幣が実際は299枚であるものとする。不足分が売上金で処理される場合、収納部130から収納部131へ予定通り200枚の紙幣が移動した後、回収容器140に残り99枚の紙幣が収納される。その後、収納部131の200枚の紙幣は収納部130へ戻されることになる。一方、不足分がリサイクル紙幣で処理される場合、収納部130から回収容器140へ予定通り100枚の紙幣が移動した後、残り199枚の紙幣が収納部130から収納部131へ移動し、その後、収納部130へ戻されることになる。
【0200】
[紙幣情報の確認]
制御部100は、記憶部110で管理する在高情報111及び回収情報112に基づいて、各収納部130に収納されている紙幣の情報と、回収容器140に収納されている紙幣の情報とを操作部10に表示することができる。店員及び現金輸送会社の担当者は、操作部10の画面上で、紙幣処理装置1内にある紙幣の情報を確認することができる。
【0201】
図15は、操作部10に表示される紙幣情報の画面例を示す図である。
図15(a)は、店員が、紙幣処理装置1に収納されている紙幣の情報を確認する在高確認画面の例である。
【0202】
在高確認画面には、金種、リサイクル及び回収の項目が表示される。回収の項目には、収納部、回収部及び合計の項目が含まれる。金種の項目には、紙幣処理装置1内に収納されている紙幣の金種が表示される。リサイクルの項目には、紙幣処理装置1内に収納されている紙幣のうちリサイクル可能な紙幣枚数が表示される。
図8(d)に示したように収納部130に収納中の紙幣の一部が回収対象の売上金とみなされている場合、これら回収対象紙幣(売上金紙幣)を除く紙幣の枚数がリサイクルの項目に表示される。
【0203】
回収の項目には、店舗から回収される紙幣の情報が表示される。収納部の項目には、
図8(d)に示したように収納部130に保管されている回収対象紙幣の枚数が表示される。回収部の項目には回収容器140に収納されている回収対象紙幣の枚数が表示される。合計の項目には、これらの合計枚数が表示される。
【0204】
図15(a)は、収納部130に収納されている5ユーロ紙幣が300枚あって、このうち200枚がリサイクル紙幣で、残り100枚が回収対象紙幣であることを示している。また、収納部130に保管されている5ユーロ紙幣100枚と、既に回収容器140に収納されている5ユーロ紙幣130枚とを合わせた合計230枚の5ユーロ紙幣が、回収対象紙幣であることを示している。
【0205】
図15(a)に示すリサイクルの項目には、リサイクル紙幣の枚数に加えて、リサイクル可能な紙幣の最大枚数が括弧書きで表示される。収納部130に収納されている5ユーロ紙幣が300枚あって、このうち100枚が回収対象紙幣として保管されている場合、リサイクルの項目には、200枚と表示され、最大紙幣枚数の300枚が括弧書きで表示される。
【0206】
制御部100は、200枚の5ユーロ紙幣をリサイクルしながら紙幣処理を実行するが、緊急時には、回収対象紙幣として保管している100枚の5ユーロ紙幣をリサイクル紙幣として使用して紙幣処理を実行することができる。このため、操作部10の画面上には、リサイクル紙幣の最大枚数が300枚と表示される。例えば、制御部100は、店舗に釣銭用の5ユーロ紙幣を配送するよう依頼する通知を現金輸送会社の通信端末に送信した後、所定時間が経過しても紙幣処理装置1で紙幣の補充処理が行われなかった場合に緊急事態と判定する。緊急事態と判定した制御部100は、回収対象紙幣として保管している100枚の5ユーロ紙幣をリサイクル紙幣として使用しながら紙幣処理を継続することができる。
【0207】
制御部100は、回収対象紙幣をリサイクル紙幣として使用した場合、使用した紙幣の金額分を、紙幣処理装置1内にある他金種の紙幣又は紙幣処理装置1に新たに収納された紙幣によって補填する。例えば、回収対象紙幣として保管していた5ユーロ紙幣4枚を出金処理に使用した場合、制御部100は、使用した20ユーロ分に相当する他金種のリサイクル紙幣を、回収対象紙幣に変更して保管を開始する。例えば、制御部100は、リサイクル対象としていた10ユーロ紙幣2枚、20ユーロ紙幣1枚等を、回収対象紙幣に変更し、これらの紙幣をリサイクルせずに収納部130内に保管する。
【0208】
また、例えば、制御部100は、リサイクル使用した回収対象紙幣の合計金額20ユーロを記録しておいて、新たに入金又は補充されて枚数が増加した紙幣を回収対象紙幣とする。例えば、現金輸送会社が店舗に到着して紙幣処理装置1に紙幣が補充され、収納部130の5ユーロ紙幣が増加すると、制御部100は、補充された5ユーロ紙幣4枚を回収対象紙幣とみなして保管する。また、例えば、入金処理が行われて、20ユーロ分の1又は複数の紙幣が収納部130に収納されると、制御部100は、新たに収納されたこれら20ユーロ分の紙幣を回収対象紙幣とみなして保管する。
【0209】
なお、
図15(a)は、リサイクル紙幣の情報と、回収対象紙幣の情報とを含む画面例を示しているが、表示する情報は、設定により変更できるようになっている。例えば、回収対象紙幣の情報は表示しない設定とすることができる。
【0210】
図15(b)は、紙幣処理装置1から回収する紙幣の情報を確認する際に、操作部10に表示される画面例である。画面上には、金種、リサイクル及び回収の項目が表示される。回収の項目には、収納部、回収部及び合計の項目が含まれる。
【0211】
金種の項目には、紙幣処理装置1から回収される紙幣の金種が表示される。リサイクルの項目には、紙幣処理装置1から回収されずに装置内に残される紙幣枚数が表示される。回収の各項目には、収納部130に収納されている回収対象紙幣の枚数と、回収容器140に収納されている回収対象紙幣の枚数と、これらの合計枚数とが表示される。
【0212】
画面下部には、紙幣処理装置1の装置外へ紙幣を回収する際に必要となる回収容器140の個数が表示される。例えば、店員が紙幣処理装置1の装置外へ売上金紙幣を回収して現金輸送会社に引き渡す場合、
図15(b)に示す画面を確認した店員は、回収容器140を2つ準備して、
図11及び12で説明したように容器回収処理を行うことができる。
【0213】
図15(b)は、リサイクル可能な紙幣の情報と、回収対象紙幣の情報とを含む画面例を示しているが、表示する情報は、設定により変更できるようになっている。例えば、リサイクル可能な紙幣の情報は表示しない設定とすることができる。
【0214】
[記番号処理]
制御部100が、各収納部130に収納されている各紙幣の記番号を管理する処理について説明する。制御部100は、識別部80で得られた紙幣画像のOCR(Optical Character Recognition)処理を行って、紙幣の記番号を認識することができる。制御部100は、認識した記番号を示す情報を記憶部110の在高情報111に保存する。
【0215】
図16は、記番号による紙幣の管理方法を説明するための模式図である。収納部130は、複数の紙幣を、紙幣面を略水平にした集積状態で収納する。制御部100は、
図16(a)に示すように、収納部130の各紙幣の記番号を集積順に管理している。入金処理時には、入金された紙幣が、収納部130に既に集積されている紙幣の上に、順に集積される。出金処理時には、収納部130の紙幣が一番上の紙幣から順に搬送路へ繰り出される。このため、
図8(d)に示したように回収対象紙幣(売上金紙幣)とリサイクル紙幣とが収納部130に収納されている場合、制御部100は、
図16(a)に示すように、下側にある紙幣を回収対象紙幣として保管し、上側にある紙幣をリサイクル紙幣として使用しながら紙幣処理を実行する。
【0216】
収納部130に収納されている回収対象紙幣を回収容器140に収納して紙幣処理装置1の装置外へ回収する容器回収処理時には、収納部130の紙幣は、一番上の紙幣から順に搬送路に繰り出されて回収容器140に収納される。このため、容器回収処理が開始されると、制御部100は、
図16(b)に示すように、一番上の紙幣から順に上側の紙幣を回収対象紙幣とみなし、下側の紙幣をリサイクル紙幣とみなす。
【0217】
例えば、
図16(a)に示すように収納部130の下側にある記番号XXXX00001~XXXX00100の100枚の紙幣が回収対象紙幣として保管され、記番号AAAA00001~AAAA00200の200枚の紙幣がリサイクル紙幣として集積されているとする。この状態で、容器回収処理が開始されると、一番上にある紙幣から順に100枚の紙幣が収納部130から繰り出されて回収容器140に収納され、この回収容器140が回収部141から取り外されて装置外へ回収されることになる。容器回収処理の実行を認識した制御部100は、
図16(b)に示すように、一番上にある紙幣から順に記番号AAAA0001~AAAA00100の100枚の紙幣を回収対象紙幣とみなし、下側200枚の紙幣をリサイクル紙幣とみなす。
【0218】
このように、制御部100は、容器回収処理時に回収容器140に収納される回収対象紙幣の記番号を特定することにより、現金輸送会社が回収する回収容器140内の全ての紙幣の記番号を管理することができる。紙幣の紛失などのトラブルが生じたときには、紙幣の記番号を調査に利用することができる。
【0219】
[紙幣の所有権]
紙幣処理装置1では、紙幣の所有権を設定することができる。
図17は、紙幣の所有権を説明するための図である。
図17に破線の矩形で示すように、紙幣処理装置1を、紙幣処理部150及び第1金庫部151を含む第1領域201と、第2金庫部152を含む第2領域202とに分けて、各領域の紙幣に所有権を設定することができる。設定は、店員が、操作部10を操作して行うことができる。制御部100は、操作部10を操作して作成された所有権の設定を記憶部110の設定情報113に保存する。
【0220】
店舗が第1領域201の紙幣の所有権を有し、現金輸送会社が第2領域202の紙幣の所有権を有する設定とすることができる。店舗が第1領域201及び第2領域202の両方の紙幣の所有権を有する設定とすることもできる。現金輸送会社が第1領域201及び第2領域202の両方の紙幣の所有権を有する設定とすることもできる。
【0221】
第1領域201の紙幣の所有権は店舗が有し、第2領域202の紙幣の所有権は現金輸送会社が有する設定とした上で、第1領域201の収納部130に収納されている紙幣のうち、回収対象紙幣の所有権は現金輸送会社が有する設定とすることも可能である。この場合、回収対象紙幣がリサイクル紙幣として出金処理に使用されると、店舗が現金輸送会社から紙幣を借用したことになる。このように店舗が現金輸送会社の紙幣を借用した場合、制御部100は、緊急時の処理として
図15で説明したように、店舗が所有権を有する収納部130のリサイクル紙幣を回収対象紙幣に変更することにより、借用した金額を現金輸送会社に返却する処理を実行する。
【0222】
本実施形態では、紙幣処理装置1が行う様々な紙幣処理の例を示したが、紙幣処理装置1が上述した全ての紙幣処理を実行する態様に限定されず、一部の紙幣処理を実行する態様であってもよい。
【0223】
本実施形態では、
図2に紙幣処理装置1の具体的な構成を示したが、これは例示である。
図18は、紙幣処理装置1の別の構成例を示す断面模式図である。
図18では、
図1と同じ構成部には同じ符号を付している。
図18に示すように、紙幣処理装置1が、リジェクト部を1つしか有さない構成であってもよいし、カセット20及び回転部60を有さない構成であってもよい。収納部130は、紙幣を集積しながら収納するスタック式の収納部に限定されず、ドラムの外周面にテープと共に紙幣を巻き取って収納して、ドラムを逆回転して紙幣を繰り出すテープ式の収納部であってもよい。回収部141が、回収容器140として機能する回収袋に紙幣を収納する構成に限定されず、回収部141に脱着可能に設けられたカセットに紙幣を収納する構成であってもよい。操作部10が操作部と表示部を兼ねる態様に限定されず、操作部と表示部が独立して設けられる態様であってもよい。操作部10が紙幣処理装置1に含まれる態様に限定されず、紙幣処理装置1と有線又は無線で通信可能に接続されたモバイル端末を操作部10として利用する態様であってもよい。
【0224】
本実施形態では、2日分又は4日分の店舗の売上金紙幣を紙幣処理装置1内に保管する具体例を示したが、これは例示である。何日分の売上金紙幣を紙幣処理装置1内に収納した状態で紙幣処理装置1の使用を継続できるかは、収納部130に収納可能な紙幣枚数、回収容器140に収納可能な紙幣枚数、釣銭用に必要な紙幣枚数、売上金紙幣の枚数等に応じて異なる。また、紙幣処理装置1の装置外へ紙幣を回収する際に2つの回収容器140(2枚の回収袋)に紙幣を回収する例を説明したが、これも例示であって、回収する紙幣量に応じて、3つ以上の回収容器140に紙幣を回収する場合もある。回収対象紙幣を収納した回収容器140を取り外して、代わりに回収部141に装着した空の回収容器140に、収納部130に残っている回収対象紙幣を収納する処理を繰り返すことにより、回収容器140の数によらず、容器回収処理を実行することができる。
【0225】
上述したように、本実施形態に係る紙幣処理装置1は、装置内の回収対象紙幣の枚数が回収容器140に収納可能な紙幣の最大枚数を超えた場合でも、回収対象紙幣の一部を、それまでリサイクル紙幣のみを収納していた収納部130に保管して、入金処理及び出金処理を含む紙幣処理を継続して行うことができる。紙幣処理装置1は、紙幣処理を継続不能となる前に、紙幣の回収が必要であることを店舗の店員又は現金輸送会社の担当者に報知する報知処理を行う。報知処理では、紙幣の回収に必要な回収容器140の数が報知される。紙幣処理装置1は、回収容器140に紙幣を収納して装置外へ回収する容器回収処理が開始されると、操作部10の画面上に、紙幣の回収状況を示す情報を表示する。回収作業の担当者は、予め必要な数の回収容器140を準備して、操作部10の画面を確認しながら容易に回収作業を進めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0226】
以上のように、本発明に係る貨幣処理装置及び貨幣処理方法は、回収対象の貨幣の量が、貨幣処理装置が備える回収容器の収納容量を超えた場合でも、この貨幣を装置内に保管して装置の使用を継続するために有用である。
【符号の説明】
【0227】
1 紙幣処理装置
5 金庫扉
10 操作部
20 カセット
30 入金部
40 出金部
51 第1リジェクト部
52 第2リジェクト部
60 回転部
70 一時保留部
80 識別部
90 搬送部
100 制御部
110 記憶部
120 通信部
130(130a~130h)、131 収納部
140(140a~140c) 回収容器
141 回収部
150 紙幣処理部
151 第1金庫部(金庫部)
152 第2金庫部