(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 8/02 20060101AFI20240603BHJP
B43K 27/08 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B43K8/02 100
B43K8/02 110
B43K8/02 120
B43K27/08
(21)【出願番号】P 2020110817
(22)【出願日】2020-06-26
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】593157220
【氏名又は名称】サンスター文具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【氏名又は名称】木村 高明
(72)【発明者】
【氏名】小林 大地
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-211190(JP,A)
【文献】実開昭60-187092(JP,U)
【文献】特開平09-099694(JP,A)
【文献】実開昭52-164926(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 8/02
B43K 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部とキャップ部とを備え、
前記軸部
の先端にラインマーキング用の第1チップと、細線筆記用の第2チップとを備え、
前記第1チップ又は前記第2チップのいずれか一方は前記軸部の中心軸に沿って配置されると共に、前記第1チップ又は前記第2チップのいずれか他方は前記中心軸に対して角度を持って延設され、前記第1チップの先端と前記第2チップの先端とが間隔を開けて配置され、
前記軸部の内部には、前記第1チップに半透明のラインマーキングインクを供給する第1インクタンクと、前記第2チップに筆記用インクを供給する第2インクタンクが配置されていることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記
第1チップは、全体薄板状であって側方細長長方形に形成され、前記中心軸に沿って前記軸部の幅方向に沿って配置されると共に、前記第2チップは全体細長針状に形成され、前記
第1チップの幅方向側方において、軸部外方へ傾斜して配置されていることを特徴とする請求項1記載の筆記具。
【請求項3】
前記第1チップは、先端部が、前記軸部の幅方向外端部が幅方向内端部よりも軸方向において短くなるように、幅方向において斜めに傾斜して形成され、紙面に所定幅寸法でマーキング可能な紙面接触部を備えるラインマーキングチップであり、
前記第2チップは、前記第1チップの幅方向内端部の側方において、前記
第1チップとは反対方向へ傾斜して配置されており、極細筆記が可能なフェルトペンチップ、又は線描が可能であり、金属パイプに覆われたプラスチックペンチップであることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【請求項4】
前記第1インクタンク及び第2インクタンクに充填されるインクは水性又は油性のものであることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【請求項5】
前記第1チップ及び前記第2チップは、前記第1チップ及び前記第2チップの位置を固定するチップ固定部材を介して前記軸部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【請求項6】
前記軸部は、内周面部に、前記第1インクタンク及び前記第2インクタンクを前記軸部の前記中心軸に対して平行な所定の位置に案内して保持するガイド突条部を備え、
前記軸部の先端に配置され、前記第1チップ及び前記第2チップの位置を固定するチップ固定部材と、
前記軸部の内部に配置され、前記第1インクタンク及び前記第2インクタンクの位置を固定するインクタンク固定部材と、
前記軸部の後端に配置され、筆記具の使用時に前記キャップ部をはめ込んで保持する尾栓とを備えることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1本でラインマークと文字等の細線とを記載できる筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、教科書や資料等の印刷文字に重ねて、又は印刷文字の近傍に半透明蛍光色のラインマークを引き、記載内容を読みやすく目立つようにすることが行われている。また、資料等には、水性や油性のペンでメモ等の文字を記載することも行われる。
【0003】
しかし、同一の資料等に、ラインマークと文字とを記載する場合、ラインマーキングペンと文字筆記用の筆記ペンとを持ち替えて使用する必要がある。
また、一方から他方のペンに持ち替えるとき、キャップを付け忘れると、インクが蒸発したり、インクで資料や他の物品を汚したりすることから、その都度キャップを閉める必要があり、使用者にとっては煩雑である。
【0004】
従来、1本の軸体に複数の色や種類の筆記用チップや芯を配置した筆記具が提案されている。特許文献1には、ケースの一側に結合される2色ボールペン芯と、前記ケースの他の一側に結合される蛍光ペンと、前記2色ボールペン芯が結合されたケース一側組立孔と結合して2色ボールペン芯が外部から透視されるようにする透明キャップと、を含む2色ボールペンが記載されている。
【0005】
特許文献2には、軸筒内に収容されるインキ吸蔵体の一端又は両端に繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップのいずれかを接続した筆記具であって、前記インキ吸蔵体の縦方向に色調の異なるインキが複数充填され、前記各インキが水溶性高分子凝集剤により顔料を緩やかな凝集状態に懸濁させた顔料系凝集性インキである多色筆記具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2015-536843号公報
【文献】特開2010-100015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載のものは、1本の軸体の一側にボールペン芯が配置され、他側に蛍光ペンが配置されていることから、その都度軸の方向を反対に持ち替える必要がある。
【0008】
また、特許文献2に記載のものは、1本のインキ吸蔵体の一端に複数の繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップのいずれかを接続し、インキ吸蔵体の縦方向に色調の異なるインキが複数充填したものであり、1本の筆記具で2色の筆跡を得ることができるが、端に複数のチップが配置されているだけで、ラインマーキングペンと筆記ペンを個別に使用できる構造とするものではない。
【0009】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、手に持った1本の筆記部を、無駄な動作を必要とせず、簡単な持ち変えで、ラインマーキングペンと筆記ペンとに使い分けることができる筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決する請求項1に記載の発明は、軸部とキャップ部とを備え、前記軸部の先端にラインマーキング用の第1チップと、細線筆記用の第2チップとを備え、前記第1チップ又は前記第2チップのいずれか一方は前記軸部の中心軸に沿って配置されると共に、前記第1チップ又は前記第2チップのいずれか他方は前記中心軸に対して角度を持って延設され、前記第1チップの先端と前記第2チップの先端とが間隔を開けて配置され、前記軸部の内部には、前記第1チップに半透明のラインマーキングインクを供給する第1インクタンクと、前記第2チップに筆記用インクを供給する第2インクタンクが配置されていることを特徴とする。
【0011】
同じく請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の筆記具において、前記第1チップは、全体薄板状であって側方細長長方形に形成され、前記中心軸に沿って前記軸部の幅方向に沿って配置されると共に、前記第2チップは全体細長針状に形成され、前記第1チップの幅方向側方において、軸部外方へ傾斜して配置されていることを特徴とする。
【0012】
同じく請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の筆記具において、前記第1チップは、先端部が、前記軸部の幅方向外端部が幅方向内端部よりも軸方向において短くなるように、幅方向において斜めに傾斜して形成され、紙面に所定幅寸法でマーキング可能な紙面接触部を備えるラインマーキングチップであり、前記第2チップは、前記第1チップの幅方向内端部の側方において、前記第一チップとは反対方向へ傾斜して配置されており、極細筆記が可能なフェルトペンチップ、又は線描が可能であり、金属パイプに覆われたプラスチックペンチップであることを特徴とする。
【0013】
同じく請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の筆記具において、前記第1インクタンク及び第2インクタンクに充填されるインクは水性又は油性のものであることを特徴とする。
【0014】
同じく請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の筆記具において、前記第1チップ及び前記第2チップは、前記第1チップ及び前記第2チップの位置を固定するチップ固定部材を介して前記軸部に配置されていることを特徴とする。
【0015】
同じく請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の筆記具において、前記軸部の内周面部には、前記第1インクタンク及び前記第2インクタンクを前記軸部の前記中心軸に対して平行な所定の位置に案内して保持するガイド突条部を備え、前記軸部の先端に配置され、前記第1チップ及び前記第2チップの位置を固定するチップ固定部材と、前記軸部の内部に配置され、前記第1インクタンク及び前記第2インクタンクの位置を固定するインクタンク固定部材と、前記軸部の後端に配置され、筆記具の使用時に前記キャップ部をはめ込んで保持する尾栓とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る筆記具によれば、手に持った1本の筆記部を、無駄な動作を必要としない簡単な持ち変えで、ラインマーキングペンと筆記ペンとに使い分けることができる。
【0017】
即ち、請求項1に記載の筆記具によれば、軸部の先端にラインマーキング用の第1チップと、細線筆記用の第2チップが、前記第1チップ又は前記第2チップのいずれか一方は前記軸部の中心軸に沿って配置されると共に、前記第1チップ又は前記第2チップのいずれか他方は前記中心軸に対して角度を持って延設され、第1チップの先端と前記第2チップの先端とが間隔を開けて配置されている。また、第1チップには、軸部の内部に配置され第1インクタンクから半透明のラインマーキングインクが供給され、第2チップには、第2インクタンクから筆記用インクが供給される。
【0018】
このため、筆記具を、持ったまま手中において中心軸に沿って周方向に回転させるのみで、第1チップを紙面等に接触させてマークラインを記載することもできると共に、第2チップを紙面等に接触させて文字等の細線を記載することもできる。ここで、マークラインや細線の記載中には、第1チップと第2チップの先端が離間して配置されているのでマークラインと細線とが誤って同時に記載されることがない。
【0019】
また、請求項2に記載の筆記具によれば、前記第1チップは、全体薄板状であって側方細長長方形に形成され、前記中心軸に沿って前記軸部の幅方向に沿って配置されると共に、前記第2チップは全体細長針状に形成され、前記第1チップの幅方向側方において、軸部外方へ傾斜して配置されている。
このため、第1チップでマークラインを記載するときには、筆記具を通常のラインマーキングペンと同様に使用できると共に、紙面に第2チップで文字等を記載するとき、筆記具を適当な角度に傾けて紙面等に接触させることができ、筆記具を自然に保持した状態で筆記ができる。
また、第1チップでマークラインを記載する際には、第2チップは第1チップの軸部における幅方向端部に配置されることから、第1チップの使用時に第2チップが干渉するおそれを排除することが可能となる。
【0020】
また、請求項3に記載の筆記具によれば、第1チップは、先端部が、前記軸部の幅方向外端部が幅方向内端部よりも軸方向において短くなるように、幅方向において斜めに傾斜して形成され、紙面に所定幅寸法でマーキング可能な紙面接触部を備えるラインマーキングチップであり、前記第2チップは、前記第1チップの幅方向内端部の側方において、前記第一チップの幅方向とは反対方向へ傾斜して配置されており、極細筆記が可能なフェルトペンチップ、又は線描が可能であり、金属パイプに覆われたプラスチックペンチップである。
【0021】
このため、第1チップの中心軸に対して斜めに形成された紙面接触部を紙面に密着させた場合には、軸部は指により紙面に対して斜めに保持され、第2チップは第1チップとは、軸部の幅方向の反対方向へ傾斜して配置されることから、第2チップは反紙面方向に第1チップから離間した状態で配置され、第1チップの使用時に第2チップも紙面に干渉する事態を確実に排除することができる。また、同様に第2チップの使用時に第1チップが紙面に干渉する事態も排除することができる。
【0022】
また、請求項4に記載の筆記具によれば、第1インクタンク及び第2インクタンクに充填されるインクは水性又は油性である。このため、各インクタンクに用途に応じた性質のインクを選択して充填しておくことができる。
【0023】
更に、請求項5に記載の筆記具において、第1チップ及び第2チップは、第1チップ及び第2チップの位置を固定するチップ固定部材を介して前記軸部に配置されている。
【0024】
このため、第1チップ及び第2チップを、筆記具の先端部において正確かつ確実に固定できる。また、筆記具の組み立て時において、第1チップ及び第2チップの位置決めを簡単に行うことができる。
【0025】
そして、請求項6に記載の筆記具によれば、前記軸部には、前記第1インクタンク及び前記第2インクタンクを前記軸部の前記中心軸に対して平行な所定の位置に案内して保持するガイド突条部を備え、前記軸部の先端に配置され、前記第1チップ及び前記第2チップの位置を固定するチップ固定部材と、前記軸部の内部に配置され、前記第1インクタンク及び前記第2インクタンクの位置を固定するインクタンク固定部材と、前記軸部の後端に配置され、筆記具の使用時に前記キャップ部をはめ込んで保持する尾栓とを備えている。
【0026】
このため、筆記具の組み立て時において、第1チップを取り付けた第1インクタンク、及び第2チップを取り付けた第2インクタンクを軸部に容易に組み付けることができる。即ち、本発明によれば、それぞれチップを取り付けた第1チップ及び第2チップにチップ固定部材で保持して両者を一体化し、これらを軸部のガイド突条部に沿って軸部の下部から挿入してガイド突条部内に配置し、軸部の先端にチップ固定部材を、軸部の後端に尾栓を取り付けるだけで組み立てが完了する。この工程は、通常の1色ラインマーキングペンの組み立てと同様の手順であり、組み立てコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る筆記具の内部構造を示す側方縦面図である。
【
図3】同筆記具の先端部を示す筆記具の一部拡大側面図である。
【
図4】同筆記具の構成部材を示すものであり、(a)軸部の中心軸に沿った断面図、(b)は軸部の平面図、(c)はキャップ部のキャップ本体の中心軸に沿った断面図、(d)は同キャップ本体を示す側面図、(e)は同キャップ本体を示す平面図、(f)はキャップ部のクリップ部を示す側面図、(g)は同クリップ部を示す側面図である。
【
図5】同筆記具の構成部材を示すものであり、(a)は軸部先端に配置されるチップ固定部材の中心軸に沿った横断面図、(b)は同チップ固定部材の平面図、(c)は同チップ固定部材を示す側面図、(d)は同チップ固定部材の底面図、(e)は同軸部に配置されるインクタンク固定部材の平面図、(f)は同インクタンク固定部材を示す側面図、(g)は同軸部の後端に配置される尾栓の正面図、(h)は同尾栓の平面図である。
【
図6】同筆記具の使用状態を示すものであり、(a)は使用する筆記具の拡大断面図、(b)は同筆記具でラインマークを記載している状態を示す図、(c)は同筆記具で文字を描いている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を実施するための形態に係る筆記具について説明する。
【0029】
<筆記具10の全体構造>
本実施形態において、筆記具はマークラインを記載する水性の蛍光ラインマーキングペン及び文字等を記載する水性筆記ペンとして使用できるものを例として説明する。
図1は本発明の実施形態に係る筆記具の内部構造を示す側方縦断面図、
図2は同筆記具の外観を示す正面図、
図3は同筆記具の先端部を示す筆記具の一部拡大図である。
【0030】
図1及び
図2に示すように、筆記具10は、細長円筒状に形成された軸部11と、キャップ部12とを備える。
図1及び
図4(a)、(b)に示すように、軸部11は、公知の合成樹脂で円筒状に形成されており、先端に向け細く形成されている。軸部11は、全体として透明または白色であって、マークラインの色が識別できるようにクリップ部にはマークラインの色が付されている。
【0031】
図4(a)、(b)に示すように、軸部11の内部には、後述するラインマーキングインクタンク21、ペンインクタンク31を保持するガイド突条部11a、11aが軸方向に沿って、互いに対向するように形成されている。また、軸部11の後端内面には、後述する尾栓15を固定する固定溝部が2列にわたり形成されている。
【0032】
また、軸部11の先端には、第1チップであるラインマーキングチップ24と、第2チップであるプラスチックペンチップ35がチップ固定部材13により固定されて配置されている。
更に、軸部11の後端には、尾栓15がはめ込まれている。ラインマーキングインクタンク21及びペンインクタンク31は、軸部11の先端部及び後端部でそれぞれインクタンク固定部材14、14により位置が保持されている。
【0033】
<軸部11>
図1、及び
図2に示すように、軸部11の内部には、第1インクタンクであるラインマーキングインクタンク21が配置されている。ラインマーキングインクタンク21は、軸部11の中心軸Oに沿って、軸部11内方に径方向一半部に配置されている。このラインマーキングインクタンク21には水性の蛍光ラインマーキング用インクが充填されている。蛍光ラインマーキング用インクの色は蛍光黄、蛍光ピンク、蛍光赤、蛍光青、蛍光緑等適宜選択できる。
【0034】
また、軸部11の内部には、ラインマーキングインクタンク21に並設して第2インクタンクであるペンインクタンク31が、径方向他半部に配置されている。ペンインクタンク31は、軸部11の中心軸Oに平行に、ラインマーキングインクタンク21に並設される。このペンインクタンク31には、筆記用インクとして水性ペンインクが充填されている。水性ペンインクの色は、黒、ブルー、赤、ピンク等適宜選択される。
【0035】
<ラインマーキングインクタンク21>
図1、及び
図3に示すように、ラインマーキングインクタンク21には、ラインマーキング挿入部22が挿入され、このラインマーキング挿入部22はラインマーキング延長部23に連続し、更にラインマーキング延長部23には第1チップであるラインマーキングチップ24が接続され、夫々、インクをラインマーキングチップ24及びプラスチックペンチップ35に供給するように構成されている。ラインマーキング挿入部22、ラインマーキング延長部23、ラインマーキングチップ24は、樹脂製インク含浸素材で一体に形成されている。
【0036】
図3に示すように、本例では、ラインマーキングチップ24は、軸部11の中心軸Oに沿って長さ方向に配置されている。そして、ラインマーキングチップ24は、全体薄板状であって側方細長長方形に形成され、前記中心軸Oに沿って前記軸部の幅方向に沿って、軸部11の径方向一端部側に配置されている。
また、先端部が、前記軸部の幅方向外端部25aが幅方向内端部25bよりも軸方向において短くなるように、径方向において斜めに傾斜して形成され、紙面に所定幅寸法でマーキング可能な紙面接触部を備えている。
【0037】
これにより、本筆記具10は、通常のラインマーキングペンと同様に、紙面接触部25を紙面に密着させて筆記することにより、ラインマーキングインクタンク21からの半透明の蛍光インクを導きラインマーキングチップ24の幅寸法より幅広のマークラインを描くことができる。
【0038】
<ペンインクタンク31>
ペンインクタンク31には、ペン挿入部32が挿入され、ペン挿入部32はペン延長部33に連続し、更にペン延長部33にはプラスチックペンチップ35が接続されている。
本実施形態では、プラスチックペンチップ35は、全体細長針状に形成され、チップ固定部材13に基端部が固定された金属パイプ34により先端部以外が被覆されている。
本実施の形態ではプラスチックペンチップ35は、ラインマーキングチップ24の幅方向内方端部25bの側方において、ラインマーキングチップ24とは軸部11の径方向における反対方向において、軸部11の中心軸Oに対して所定の角度θ分、軸部11外方に傾斜して配置されている。プラスチックペンチップ35はペンインクタンク31からインクを導き文字や線等を描くことができる。
【0039】
これにより、ラインマーキングチップ24の紙面接触部25と、プラスチックペンチップ35とは、距離dだけ離間して配置されている。
使用者は、筆記具10を指でつかみ手に持った際には、中心軸Oを中心として手の中で軸方向に沿って回転させるだけで、ラインマーキングチップ24を紙面等に接触させてマークラインを記載するか、プラスチックペンチップ35を紙面等に接触させて文字等の細線を記載するかを選択できる。
このとき、ラインマーキングチップ24とプラスチックペンチップ35の先端が距離dだけ離間して配置されているので、ラインマーキングチップ24によるマークラインと、プラスチックペンチップ35による細線とが誤って同時に記載されることがない。
【0040】
<キャップ部12>
キャップ部12は、
図4(f)、(g)に示すように軸部11の先端にはめ込まれるキャップ部本体12aと、このキャップ部本体12aに配置されるクリップ取り付け部12bとを備える。クリップ取り付け部12bには、クリップ16が接合されている。
【0041】
キャップ部本体12aには、クリップ取り付け部12bの位置を定める2つの突起部12c、12cが形成されている。また、クリップ取り付け部12bには、キャップ部本体12aの突起部12c、12cにはめ込まれる凹部(図示していない)が形成されている。
【0042】
<チップ固定部材13>
チップ固定部材13は、
図5(a)から(d)に示すように、ラインマーキングチップ24が挿入されるマーカーチップ穴13aと、金属パイプ34に覆われたプラスチックペンチップ35が挿入されるプラスチックペンチップ穴13bと、軸部11の上端面に形成された凸部(図示していない)にはめ込まれる回転防止用の溝部13cが形成されている。
【0043】
<インクタンク固定部材14>
インクタンク固定部材14は、
図1に示すように、軸部11内部の上下の2箇所でラインマーキングインクタンク21とペンインクタンク31とを平行に保持する部材である。
インクタンク固定部材14は、
図5(e)、(f)に示すように、ラインマーキングインクタンク21とペンインクタンク31をはめ込む2つのインクタンク保持凹部14a、14aと、軸部11のガイド突条部11a、11aに嵌まり込む2つの環状溝部11b、11bとが形成されている。
【0044】
<尾栓15>
尾栓15は、
図1に示すように、軸部11の後端部を塞ぐ部材である。尾栓15は、
図5(h)、(d)に示すように、略円柱形の部材であり、軸部11と同材質の合成樹脂で形成される。尾栓15は、キャップ部12が挿入され保持されるキャップ保持凸部15aを備え、キャップ保持凸部15aより上側の外周には軸部11の環状溝部11b、11bに嵌まり込み、軸部11から尾栓15が抜けるのを防止する環状突起14b、14bが形成されている。
【0045】
なお、キャップ部12、チップ固定部材13、インクタンク固定部材14、尾栓15は、軸部11と同じ合成樹脂素材で形成することができる。
【0046】
<筆記具10の使用方法>
以上の構成の筆記具10は以下のように使用する。
図6は同筆記具の使用状態を示すものであり、(a)は使用する筆記具の拡大断面図、(b)は同筆記具でラインマークを記載している状態を示す図、(c)は同筆記具で文字を描いている状態を示す図である。
【0047】
筆記具10のラインマーキングチップ24を使用してラインマーク41を描くには、
図6(a)に示すように、筆記具10からキャップ部12を取り、ラインマーキングチップ24とプラスチックペンチップ35を露出させる。
そして、
図6(b)に示すように、筆記具10を傾けてラインマーキングチップ24が紙面Pに接触させる。これより、紙面Pにラインマーク41を描くことができる。
このとき、同図に示すように、プラスチックペンチップ35はラインマーキングチップ24の幅方向内端部25bの側方に位置することから、ラインマーキングチップ24の上方に位置し、紙面Pとは離間しており、紙面Pには接触しない。従って、使用者はプラスチックペンチップ35の存在を意識することなく自由にラインマーキングを行うことが可能となる。
【0048】
この状態から、筆記具10を使用して文字42を描くには、筆記具10を中心軸Oに沿って軸部11を周方向に沿って半回転させ、
図6(c)に示すように、プラスチックペンチップ35を紙面Pに接触させる。これにより紙面Pに文字42等を描くことができる。
この場合、プラスチックペンチップ35は、ラインマーキングチップ24の幅方向側方において、軸部11の径方向外方へ傾斜して形成されていることから、紙面に対して突出するように設けられており、使用者は容易に文字を記載することが可能となる。
また、この時、同図に示すように、ラインマーキングチップ24はプラスチックペンチップ35の上側、即ち、プラスチックペンチップ35の軸部11の径方向反対側に位置することから紙面には接触しない。
【0049】
このように本実施形態に係る筆記具10によれば、使用者は、1本の筆記具10を持ちながら回転させることでマークラインと文字とを簡単に描き分けることができる。
【0050】
<筆記具10の組み立て>
筆記具10を組み立てるには、まず、ラインマーキングインクタンク21にラインマーキング挿入部22、ラインマーキング延長部23、ラインマーキングチップ24を取り付ける。また、ペンインクタンク31にペン挿入部32、ペン延長部33、金属パイプ34に覆われたプラスチックペンチップ35を取り付ける。
【0051】
次いで、上述したラインマーキングインクタンク21とペンインクタンク31とを2つのインクタンク固定部材14、14で接続して一体化し、これらを軸部11内に挿入して、軸部11の上部にチップ固定部材13を取り付け、下部に尾栓15を取り付ける。更にキャップ部12を取り付け、筆記具10の組み立ては完了する。この筆記具10の組み立て工程は、通常の1色ラインマーキングペンの組み立てと同様の手順である。このため、本発明に係る筆記具10によれば、組み立てコストの低減を図ることができる。
【0052】
<他の実施形態>
なお、上記実施形態では、ラインマーキングインクタンク21には、水性の蛍光ラインマーキング用インクを充填したが、ラインマーキングインクタンク21に充填するインクは油性であってもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、第1インクタンクであるペンインクタンク31に水性インクを充填したが、これは油性インクであってもよい。
更に、第2インクタンクであるペンインクタンク31に水性インクを充填したが、これは油性インクであってもよい。そして、第2チップとしてプラスチックペンチップ35を使用した例について説明したが、第2チップとしてフェルトペンチップ、ボールペンチップ等他のチップを使用することができる。
【0054】
なお、上記実施の形態にあっては、ラインマーキングチップ24が軸部11の中心軸Oに沿って配置されると共に、プラスチックペンチップ35が中心軸Oに対して角度を持って傾斜して配設されている場合を例に説明したが、本実施の形態に限定されず、プラスチックペンチップ35が軸部11の中心軸Oに沿って配置されると共に、ラインマーキングチップ24が中心軸Oに対して角度を持って傾斜して配設されているように構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る筆記具は、手に持った1本の筆記部を、大きな動作を必要とせず、手の中で軸方向に沿って反転させるだけで、ラインマーキングペンと筆記ペンとに使い分けることができるものであり、広く産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0056】
10:筆記具
11:軸部
11a:ガイド突条部
11b:環状溝部
12:キャップ部
12a:キャップ部本体
12b:クリップ取り付け部
12c:突起部
13:チップ固定部材
13a:マーカーチップ穴
13b:プラスチックペンチップ穴
13c:溝部
14:インクタンク固定部材
14a:インクタンク保持凹部
14b:環状突起
15:尾栓
15a:キャップ保持凸部
16:クリップ
21:ラインマーキングインクタンク
22:ラインマーキング挿入部
23:ラインマーキング延長部
24:ラインマーキングチップ
25:紙面接触部
31:ペンインクタンク
32:ペン挿入部
33:ペン延長部
34:金属パイプ
35:プラスチックペンチップ
41:ラインマーク
42:文字