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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】携帯用研磨機
(51)【国際特許分類】
   B24B 23/02 20060101AFI20240603BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20240603BHJP
   B25F 5/02 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B24B23/02
B25F5/00 H
B25F5/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020120213
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022017113
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 智紀
(72)【発明者】
【氏名】大河内 克己
(72)【発明者】
【氏名】木村 卓示
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-030946(JP,A)
【文献】特開2014-148024(JP,A)
【文献】特開2018-103865(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168421(WO,A1)
【文献】特開2019-042891(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0250789(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00-5/02;
B24B 23/00-23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用研磨機であって、
長尺状に延在する把持可能な第1のハンドルと、
電動モータと、
前記電動モータを収容するハウジングと、
前記電動モータの回転駆動力を利用して研磨運動するように構成された研磨部と、
前記電動モータの電源としてのバッテリを装着可能なバッテリ装着部と、
を備え、
前記第1のハンドルが延在する方向を前後方向と定義し、該前後方向に直交する方向であって、前記第1のハンドルと前記研磨部とが並ぶ方向を上下方向と定義し、該上下方向のうちの前記第1のハンドルが位置する側を上側、前記研磨部が位置する側を下側と定義したとき、
前記バッテリ装着部は、
前記バッテリが載置される上向きの載置面と、前記バッテリのうちの、接続インタフェースを有する側の面が前記載置面に載置されたときに前記バッテリと電気的に接続されるように構成された端子と、を有し、
前記前後方向において前記第1のハンドルと並んで配置され、
前記電動モータは、前記上下方向に延在するモータシャフトを備えるとともに、前記研磨部の真上に位置し、
前記載置面は、前記電動モータの真上に位置し、
前記第1のハンドルは、前記ハウジングの上縁部から前記バッテリ装着部と反対側に向けて前記前後方向に延在し、
前記載置面は、前記前後方向において前記第1のハンドルと異なる位置に位置し、前記上下方向において前記第1のハンドルの上端よりも下側に位置する
携帯用研磨機。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯用研磨機であって、
前記バッテリ装着部は、前記バッテリが、前記上下方向に直交する水平方向に対してなす角度が30度以内となる方向にスライド式に装着されるように構成された
携帯用研磨機。
【請求項3】
請求項2に記載の携帯用研磨機であって、
前記バッテリ装着部は、前記バッテリが、前記上下方向に実質的に直交する方向にスライド式に装着されるように構成された
携帯用研磨機。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の携帯用研磨機であって、
前記載置面は、前記上下方向に直交する方向に延在し、
前記上下方向において、前記載置面は、前記第1のハンドルの前記上端よりも前記第1のハンドルの下端に近い位置にある
携帯用研磨機。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の携帯用研磨機であって、
前記電動モータはブラシレスモータである
携帯用研磨機。
【請求項6】
請求項ないし請求項のいずれか一項に記載の携帯用研磨機であって、
前記電動モータの動作を制御するように構成されたコントローラを備え、
前記コントローラは、前記前後方向において前記モータシャフトに対して前記第1のハンドルが位置する側に位置し、前記上下方向において部分的に前記第1のハンドルの真下に位置する
携帯用研磨機。
【請求項7】
請求項に記載の携帯用研磨機であって、
前記コントローラは、前記上下方向に向けられた最広面を有する
携帯用研磨機。
【請求項8】
請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の携帯用研磨機であって、
2のハンドルを備え
前記第2のハンドルの上縁部は、前記バッテリを前記載置面に沿ってスライド式に前記バッテリ装着部に装着する際の前記バッテリのスライド軌跡よりも下側に位置する
携帯用研磨機。
【請求項9】
請求項に記載の携帯用研磨機であって、
前記研磨部は、前記上下方向に見て、前記前後方向を長手方向とする略矩形形状を有し、
前記前後方向のうちの、前記バッテリ装着部が位置する側を前側、前記第1のハンドルが位置する側を後側と定義したとき、前記バッテリ装着部は、前記バッテリが前側から後側に向けてスライド式に装着されるように構成された
携帯用研磨機。
【請求項10】
請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の携帯用研磨機であって、
前記バッテリを備える
携帯用研磨機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯用研磨機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータと、電動モータの電源としてのバッテリと、水平方向に長尺状に延在するハンドルと、を備える携帯用研磨機が従来から知られている。例えば、下記の特許文献1が開示するサンダでは、電動モータに対する一方側に長尺状のメインハンドルが配置され、他方側にバッテリが配置される。さらに、他方側には、バッテリを側方で跨ぐように補助ハンドルが配置される。補助ハンドルは、バッテリの着脱作業を行うための退避位置と、研磨作業時に把持するための把持位置と、の間で枢動可能に構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/168421号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたサンダは、装置内のレイアウトについて改善の余地を残している。例えば、補助ハンドルは上述のように枢動可能ではあるものの、バッテリと補助ハンドルとは近接して配置されているので、研磨作業時にはバッテリが補助ハンドルの操作性を低下させ、バッテリの着脱作業時には補助ハンドルが着脱の作業性を低下させてしまう。この問題は、サンダに限らず、長尺状のハンドルと、バッテリと、を備える種々の携帯用研磨機に共通する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、携帯用研磨機が提供される。この携帯用研磨機は、長尺状に延在する把持可能な第1のハンドルと、電動モータと、電動モータの回転駆動力を利用して研磨運動するように構成された研磨部と、電動モータの電源としてのバッテリを装着可能なバッテリ装着部と、を備えている。第1のハンドルが延在する方向を前後方向と定義し、前後方向に直交する方向であって、第1のハンドルと研磨部とが並ぶ方向を上下方向と定義し、上下方向のうちの第1のハンドルが位置する側を上側、研磨部が位置する側を下側と定義したとき、バッテリ装着部は、バッテリが載置される上向きの載置面と、バッテリのうちの、接続インタフェースを有する側の面が載置面に載置されたときにバッテリと電気的に接続されるように構成された端子と、を有している。載置面は、前後方向において第1のハンドルと異なる位置に位置し、上下方向において第1のハンドルの上端よりも下側に位置する。
【0006】
この携帯用研磨機によれば、バッテリの載置面が第1のハンドルの上端よりも下側に位置しているので、バッテリが装着された状態での携帯用研磨装置の上下方向のサイズが増大することを抑制できる。「上向き」の載置面は、上下方向に対して完全に垂直であってもよく、あるいは、上下方向に対して角度付けられていてもよい。
【0007】
本発明の一態様によれば、バッテリ装着部は、バッテリが、上下方向に直交する水平方向に対してなす角度が30度以内となる方向(つまり、水平方向に対して±30度の範囲内の方向)にスライド式に装着されるように構成されてもよい。この態様によれば、第1のハンドルの上端と、載置面と、の段差が邪魔にならない任意の方向からバッテリをスライド装着する設計が可能となり、高い設計自由度が得られる。したがって、携帯用研磨装置の上下方向のサイズを抑制しつつ、携帯用研磨装置の他の構成要素が邪魔にならない方向からバッテリをスライド装着できるような設計が容易となる。
【0008】
本発明の一態様によれば、バッテリ装着部は、バッテリが、上下方向に実質的に直交する方向(つまり、実質的に水平な方向)にスライド式に装着されるように構成されてもよい。この態様によれば、携帯用研磨機に下向きに作用するバッテリの自重の水平方向における分布が均一になるので、均一な研磨を行いやすい。
【0009】
本発明の一態様によれば、電動モータは、上下方向に延在するモータシャフトを備えていてもよい。バッテリ装着部は、研磨部およびモータシャフトの上方でバッテリを保持するように構成されてもよい。この態様によれば、携帯用研磨装置の前後方向のサイズ、および、前後方向と上下方向とに直交する方向のサイズを低減できる。しかも、通常、モータシャフトは、上下方向に見て研磨部の中心、または、当該中心の比較的近傍に位置するので、本態様によれば、重量の比較的大きいバッテリが荷重として研磨部の中心付近に作用することになる。したがって、研磨部を被研磨物に押しつけるときの押圧力の分布が均一化され、均一な研磨が可能になる。
【0010】
本発明の一態様によれば、モータシャフトの上端は、上下方向において、第1のハンドルの下端よりも下側に位置していてもよい。この態様によれば、携帯用研磨装置の上下方向のサイズを低減できる。
【0011】
本発明の一態様によれば、電動モータはブラシレスモータであってもよい。この態様によれば、モータシャフトの長さを短くできるので、モータシャフトの上端を第1のハンドルの下端よりも下側に配置しやすい。
【0012】
本発明の一態様によれば、携帯用研磨機は、モータシャフトに対して平行に配置され、モータシャフトの回転駆動力を研磨部に伝達するように構成された出力シャフトを備えていてもよい。バッテリ装着部は、出力シャフトの上方でバッテリを保持するように構成されてもよい。出力シャフトの上端は、上下方向において第1のハンドルの下端よりも下側に位置していてもよい。この態様によれば、出力シャフトを備える携帯用研磨機においても、上述したモータシャフトの配置と同様に、携帯用研磨装置の上下方向のサイズ、前後方向のサイズ、および、前後方向と上下方向とに直交する方向のサイズを低減できるとともに、均一な研磨が可能になる。
【0013】
本発明の一態様によれば、携帯用研磨機は、電動モータの動作を制御するように構成されたコントローラを備えていてもよい。コントローラは、前後方向においてモータシャフトに対して第1のハンドルが位置する側に位置し、上下方向において第1のハンドルよりも下側に位置していてもよい。この態様によれば、第1のハンドルの下方のデッドスペースにコントローラを配置できる。つまり、携帯用研磨機を実質的に大型化することなく、コントローラを配置できる。
【0014】
本発明の一態様によれば、コントローラは、上下方向に向けられた最広面を有していてもよい。この態様によれば、上下方向におけるコントローラの配置スペースを最小化できる。したがって、コントローラを第1のハンドルの下方に配置しても、コントローラは、ユーザが第1のハンドルを握る際の邪魔にならない。
【0015】
本発明の一態様によれば、携帯用研磨機は、上下方向においてバッテリ装着部よりも下側に配置された第2のハンドルを備えていてもよい。この態様によれば、ユーザは2つのハンドル(すなわち、第1のハンドルおよび第2のハンドル)を把持して、携帯用研磨機をより安定的に保持することができる。しかも、第2のハンドルは、バッテリの着脱作業の邪魔にならない。
【0016】
本発明の一態様によれば、研磨部は、上下方向に見て、前後方向を長手方向とする略矩形形状を有していてもよい。前後方向のうちの、バッテリ装着部が位置する側を前側、第1のハンドルが位置する側を後側と定義したとき、バッテリ装着部は、バッテリが前側から後側に向けてスライド式に装着されるように構成されてもよい。バッテリのスライド式の装着機構は、スライド方向にある程度の長さを必要とするが、本態様によれば、研磨部の長手方向がバッテリのスライド方向になるので、スライド式の装着機構の必要長さを容易に確保できる。換言すれば、当該必要長さを確保するためだけの目的で、上下方向と前後方向とに直交する方向の装置サイズを大きくする必要がない。
【0017】
本発明の一態様によれば、携帯用研磨機はバッテリを備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態によるサンダの右側面図であり、バッテリが装着された状態を示している。
図2】サンダの右側面図であり、バッテリが取り外された状態を示している。
図3】サンダの平面図であり、バッテリが取り外された状態を示している。
図4】バッテリの斜視図である。
図5】サンダの正面図であり、バッテリが取り外された状態を示している。
図6】サンダの背面図であり、バッテリが取り外された状態を示している。
図7】サンダの縦断面図であり、バッテリが装着された状態を示している。
図8図1のA-A線に沿ったサンダの縦断面図である。
図9図1のB-B線に沿ったサンダの縦断面図である。
図10図9のC-C線に沿ったサンダの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、携帯用研磨機としてオービタルサンダ(以下、単にサンダという)10を例示する。本実施形態で例示するサンダ10は、仕上サンダとも称される。
【0020】
図1~3に示すように、サンダ10は、第1のハンドル22と研磨部30とバッテリ装着部40とを備えている。第1のハンドル22は、サンダ10の使用時にユーザが把持可能な形状および大きさを有している。第1のハンドル22は、メインハンドルとも称される。第1のハンドル22は、棒状体であり、長尺状に延在している。第1のハンドル22は、長手方向に沿って略一定の径を有しており、また、上端23と下端24とを備えている。バッテリ装着部40は、第1のハンドル22が延在する方向において、第1のハンドル22と並んで配置されている。詳しくは後述するが、サンダ10は、電動モータ60の回転駆動力を利用して研磨部30が研磨運動を行うように構成されている。
【0021】
以下の説明では、第1のハンドル22が延在する方向をサンダ10の前後方向と定義する。前後方向のうち、バッテリ装着部40が位置する側を前側と定義し、第1のハンドル22が位置する側を後側と定義する。また、前後方向に直交する方向であって、第1のハンドル22と研磨部30とが並ぶ方向をサンダ10の上下方向と定義する。上下方向のうち、第1のハンドル22が位置する側を上側と定義し、研磨部30が位置する側を下側と定義する。また、前後方向と上下方向とに直交する方向を、サンダ10の左右方向と定義する。左右方向のうち、後側から前側を見たときの右側をサンダ10の右側と定義し、その反対側をサンダ10の左側と定義する。
【0022】
図1~3に示すように、サンダ10はハウジング20を備えている。ハウジング20は、半割体としての右ハウジング20aおよび左ハウジング20b(図3参照)が複数のボルト21(図1および図2参照)によって互いに結合されることによって形成されている。第1のハンドル22は、ハウジング20の一部分として、サンダ10の上端(より正確には、後述するバッテリ50が装着されていない状態での上端)かつ後端に形成されている。
【0023】
図7および図8に示すように、ハウジング20には電動モータ60が収容されている。本実施形態では、電動モータ60はブラシレスモータである。ただし、電動モータ60はブラシ付きモータであってもよい。電動モータ60は、上下方向に延在するモータシャフト61を備えている。モータシャフト61は、ハウジング20に対して固定された軸受62,63によって回転可能に支持されている。軸受62は、モータシャフト61の上端を支持しており、軸受63は、モータシャフト61の中央付近を支持している。モータシャフト61の上端は、上下方向において第1のハンドル22の下端24よりも下側に位置している。軸受62,63の各々は、本実施形態では玉軸受である。モータシャフト61は、上下方向に見て、後述する研磨部30の略中心に位置するように配置されている。
【0024】
図7に示すように、モータシャフト61の周囲には、軸受63の下側において、ファン71が取り付けられている。ファン71の収容空間は、集塵ノズル72と連通している。集塵ノズル72は、ハウジング20の下側および後側の端部から後方に延在している。集塵ノズル72には、集塵機(図示せず)に接続されるホース(図示せず)を取り付けることができる。
【0025】
図1および図2に示すように、研磨部30は、サンダ10の最下部に位置しており、研磨パッド31とベース32とクランパ33,35とレバー34,36とを備えている。研磨パッド31およびベース32は、上下方向に見て、前後方向を長手方向とする略矩形形状を有している。研磨パッド31の上にベース32が配置されており、両者は上下方向に延在するボルト38(図10参照)によって結合されている。
【0026】
研磨パッド31には、クランパ33,35を利用してサンディングペーパー(図示せず)が装着される。具体的には、クランパ33は、ベース32の上方で、ベース32の前側縁部に沿って延在している(図5参照)。このクランパ33は、レバー34の操作によって変位するように構成されている。クランパ35は、ベース32の上方で、ベース32の後側縁部に沿って延在している(図6参照)。このクランパ35は、レバー36の操作によって変位するように構成されている。サンディングペーパーを研磨パッド31の底面に配置した状態で、レバー34を操作して、サンディングペーパーの前端をクランパ33とベース32との間に挟み込み、さらに、レバー36を操作して、サンディングペーパーの後端をクランパ35とベース32との間に挟み込むことによって、サンディングペーパーが研磨パッド31に対して固定される。研磨パッド31の底面は、サンダ10の使用時に研磨面として機能する。
【0027】
図7および図8に示すように、研磨部30は、軸受64を介してモータシャフト61に連結されている。具体的には、モータシャフト61の下端の周囲には、バランサ65が固定されている。バランサ65は、モータシャフト61の下端に形成されたネジ穴に螺合するボルト66によって、モータシャフト61に固定される。軸受64は、このバランサ65の上部とベース32との間に挟持されている。軸受64の内輪は、バランサ65の下部によって支持されている。軸受64は、モータシャフト61に対して偏心した状態で配置されている。バランサ65は、モータシャフト61に対する軸受64の偏心方向と逆方向に重心が偏った形状を有している。これにより、モータシャフト61に対して軸受64が偏心していることに起因する振動の発生を抑制できる。
【0028】
図9および図10に示すように、研磨部30は、さらに、4つのフット73を介してハウジング20に連結されている。フット73は、矩形形状のベース32の4隅付近にそれぞれ配置されている。フット73は、上下方向に延在する略円柱状の形状を有している。フット73の上端および下端は、相対的に小さい直径を有する縮径部として形成されている。上側の縮径部の周りにはOリング74が配置されており、この上側の縮径部は、Oリング74を介して、ハウジング20に係合している。下側の縮径部の周りにはOリング75が配置されており、この下側の縮径部は、Oリング75を介して、ベース32のボス37の内面に係合している。このフット73は、Oリング74,75を潰しながら、上下方向に対して傾くことができる。フット73のまわりには、粉塵が侵入するのを防ぐためスリーブ76が設けられている。スリーブ76はスポンジ製で弾性を有しており、上下にわずかにつぶした状態で取り付けられている。これによって、フット部の高い防塵性が保たれている。
【0029】
図2および図3に示すように、バッテリ装着部40は、第1のハンドル22の前側に配置される。バッテリ装着部40は、電動モータ60の電源としてのバッテリ50をスライド式に装着可能に構成される。
【0030】
図4に示すように、バッテリ50は略直方体の形状を有している。図4に示す方向表示は、バッテリ50をバッテリ装着部40に取り付けた状態での向きを表している。バッテリ50は、バッテリ装着部40との接続インタフェース(機械的および電気的な接続のインタフェース)の一例として、2つのガイド溝52と、3つの端子接続溝53と、を備えている。ガイド溝52は、バッテリ50の下端において、左右方向の両端部に形成されている。ガイド溝52は、左右方向外側が開口するように前後方向に延在しており、前端が閉塞し、後端が開口している。端子接続溝53は、2つのガイド溝52の間に位置している。端子接続溝53は、下側が開口するように前後方向に延在しており、前端が閉塞し、後端が開口している。端子接続溝53の内部には、バッテリ装着部40の端子43(図3および図5参照)と電気的に接続するための端子(図示せず)が設けられている。
【0031】
バッテリ50は、さらに、接続インタフェースとして、係合部54と押しボタン55とを備えている。係合部54は、バッテリ50の底部から下側に向けて突出するように設けられる。押しボタン55は、バッテリ50の前端に設けられる。係合部54と押しボタン55とは、バッテリ50の内部で機械的に連結されており、押しボタン55を押し下げると、係合部54がバッテリ50の内部に退避するように構成されている。
【0032】
バッテリ50は、上述した接続インタフェースを有する側に装着面51を有している。バッテリ50は、本実施形態では、18Vの定格電圧を有している。ただし、バッテリ50は、18Vよりも大きい定格電圧を有していてもよい。
【0033】
このようなバッテリ50を装着可能なバッテリ装着部40は、本実施形態では、バッテリ50が前側から後側に向けてスライド式に装着されるように構成される。バッテリ50のスライド式の装着機構は、スライド方向にある程度の長さを必要とするが、本実施形態のように、研磨部30の長手方向にバッテリ50をスライドさせる構成とすれば、スライド式の装着機構の必要長さを容易に確保できる。換言すれば、当該必要長さを確保するためだけの目的で左右方向の装置サイズを大きくする必要がない。
【0034】
図3および図5に示すように、バッテリ装着部40は、載置面41と、端子台42と、端子台42に支持される3つの端子43と、係合凹部44と、ガイドレール45と、を備えている。載置面41は、バッテリ50(より具体的には、バッテリ50の装着面51)が載置される上向きの面であり、平坦に形成されている。本実施形態では、載置面41は、上下方向に対して実質的に直交する方向に広がっている。このため、バッテリ装着部40は、バッテリ50が実質的に水平方向(すなわち、上下方向に実質的に直交する方向)にスライド式に装着されるように構成される。載置面41は、図3に示すように、後側が閉じられた(換言すれば、バッテリ50の装着時のスライド方向前方が閉じられた)略U字状に形成されている。
【0035】
図2に示すように、この載置面41は、前後方向において第1のハンドル22よりも前側に位置している。また、載置面41は、上下方向において、第1のハンドル22の上端23よりも下側に位置している。より具体的には、第1のハンドル22の上端23と、載置面41との間には、上下方向に延在する壁部26によって段差が形成されている。
【0036】
図3および図5に示すように、端子台42は、載置面41の内側かつ下側に配置されている。端子台42に支持される3つの端子43は、前後方向に延在しており、バッテリ50の3つの端子接続溝53に対応する位置に配置されている。つまり、3つの端子43は、バッテリ装着部40にバッテリ50を装着した際にバッテリ50の3つの端子接続溝53内にそれぞれ受け入れられる位置に配置されている。端子43は、載置面41上にバッテリ50を載置してバッテリ50を装着したときに、バッテリ50と電気的に接続される。
【0037】
図3に示すように、係合凹部44は、下側に向けて部分的に凹むようにバッテリ装着部40の前端付近に形成されている。係合凹部44は、図7に示すように、バッテリ装着部40にバッテリ50を装着した際に係合部54を受け入れる。これによって、バッテリ50が前後方向に離脱することが防止される。バッテリ50の着脱時には、押しボタン55を押しながら着脱作業を行えば、係合部54は、バッテリ50の内部に退避するので、係合凹部44と干渉しない。
【0038】
図3および図5に示すように、ガイドレール45は、載置面41の左右方向の両内側縁部に沿って前後方向に延在している。両側のガイドレール45は、互いに対向するように、左右方向内側に向けて突出している。ガイドレール45は、図8に示すように、バッテリ装着部40にバッテリ50を装着した際にバッテリ50のガイド溝52内に挿入される。これによって、バッテリ50が上下方向に離脱することが防止される。
【0039】
バッテリ50をバッテリ装着部40に装着した様態では、図7および図8に示すように、研磨部30およびモータシャフト61の上方でバッテリ50が保持される。このとき、モータシャフト61は、上下方向に見て、バッテリ50の中心付近に位置する。
【0040】
図7に示すように、ハウジング20内にはコントローラ80が収容されている。コントローラ80は、バッテリ装着部40の端子43と、電動モータ60と、に電気的に接続されており、バッテリ50から電動モータ60へ供給される電力を制御することによって、電動モータ60の動作を制御する。本実施形態では、コントローラ80は、高温保護回路と過電流保護回路と過放電保護回路とを備えている。ただし、これらの保護回路のうちの1つまたは2つは省略されてもよい。
【0041】
図7に示すように、コントローラ80は、前後方向においてモータシャフト61に対して後側(換言すれば、第1のハンドル22が位置する側)に位置し、上下方向において第1のハンドル22よりも下側に位置している。コントローラ80の最広面は、上下方向に向けられている。コントローラ80の後側の約半分は、後側に向けて突出するように形成されたコントローラ収容部27に収容されている。このような配置によれば、第1のハンドル22の下方のデッドスペースにコントローラ80が配置されるので、サンダ10を実質的に大型化することなく、コントローラ80を配置できる。また、コントローラ80の最広面は、上下方向に向けられているので、上下方向におけるコントローラ80の配置スペースを最小化できる。このため、第1のハンドル22とコントローラ収容部27と間に十分な間隔を確保することができ、コントローラ収容部27は、ユーザが第1のハンドル22を握る際の邪魔にならない。
【0042】
図1~3に示すように、第1のハンドル22の基部、すなわち、前端の上部には、スイッチ25が設けられている。スイッチ25は、コントローラ80に電気的に接続されている。スイッチ25は、電動モータ60の起動および停止のための操作を行うために設けられている。図3に示すように、スイッチ25は2つのボタンを備えている。一方のボタンは、電動モータ60の駆動を停止するためのボタンである。他方のボタンは、電動モータ60を駆動させるためのボタンであり、当該他方のボタンを押す度に、電動モータ60の回転速度が、予め定められた段階数で順次変更される。
【0043】
図1~3に示すように、サンダ10は、さらに、第2のハンドル28を備えている。第2のハンドル28は、補助ハンドルとも称される。第2のハンドル28は、本実施形態では略卵形であるが、任意の形状を有し得る。ユーザは、サンダ10の使用時において、一方の手で第1のハンドル22を把持し、他方の手で第2のハンドル28を把持することで、より安定的にサンダ10を保持できる。本実施形態では、第2のハンドル28は、ハウジング20の前端から前側に向けて、研磨部30の前端を越えて延在している。このように、第1のハンドル22と第2のハンドル28との間に研磨部30が位置する配置によれば、研磨作業時において、ユーザは、研磨部30の両側(つまり、前側および後側)から下向きの押圧力を加えることになるので、研磨部30を被研磨物に押しつけるときの押圧力の分布が均一化され、均一な研磨が可能になる。
【0044】
図5および図7に示すように、本実施形態では、第2のハンドル28は、第2のハンドル28を前後方向に貫通する孔を有している。この孔にボルト29を、ハウジング20のネジ孔に螺合するまで挿入することによって、第2のハンドル28をハウジング20に固定することができる。つまり、第2のハンドル28は、着脱可能に構成されている。
【0045】
図2および図5に示すように、第2のハンドル28は、上下方向においてバッテリ装着部40よりも下側に配置されている。このため、バッテリ50を前後方向にスライド式に着脱する際に、第2のハンドル28はバッテリ50の着脱作業の邪魔にならない。
【0046】
図6,7に示すように第1のハンドル22の後端部にアダプタ収容部82が設けられる。アダプタ収容部82は、後方の解放部から前方に向かって凹設される。アダプタ収容部82には、無線通信アダプタ81が差し込まれて装着される。無線通信アダプタ81は、コントローラ80と電気的に接続される。無線通信アダプタ81は、他の付帯設備との間で無線通信をする。付帯設備は、例えば、切屑を吸引する集塵機である。無線通信によって、付帯設備の起動動作や停止動作がサンダ10の起動動作や停止動作と連動する。無線通信アダプタ81は、予め付帯設備に取付けられた無線通信アダプタとの間で無線通信可能とするための関連付け(ペアリング)がなされる。ペアリングは、無線通信アダプタ81が有するボタン83と、付帯設備の無線通信アダプタが同様に有するボタンと、を共に押し操作することでなされる。ボタン83は、例えば、WPS機能またはAOSS機能を起動させるためのボタンである。ペアリングがなされた状態でスイッチ25をオン操作してサンダ10を起動させると、係る起動情報が無線通信アダプタ81から付帯設備に送信される。付帯設備が無線通信アダプタ81からの信号を受信し、信号に基づいて起動する。無線通信ができる状態は無線通信アダプタ81に設けられたランプ84の点灯によって知ることができる。
【0047】
上述したサンダ10は、以下のように動作する。まず、ユーザがスイッチ25を操作して電動モータ60を駆動させると、モータシャフト61が回転を開始する。モータシャフト61と研磨部30とを連結する軸受64はモータシャフト61に対して偏心しているので、モータシャフト61の回転(自転)に伴い、研磨部30は、フット73の周囲に配置されたOリング74,75を押し潰してフット73を傾斜させながら偏心円運動(オービタル運動)を行う。すなわち、研磨部30は、自らは回転せずに、その姿勢を保ちながら水平面に沿って円を描くように移動する。この状態で、研磨部30の底面を被研磨物に押しつけると、研磨部30の偏心円運動が研磨運動として作用して、研磨部30の底面に装着されたサンディングペーパーによって研磨が行われる。
【0048】
このようなサンダ10によれば、バッテリ装着部40の載置面41が、第1のハンドル22の上端23よりも下側に位置しているので、バッテリ50が装着された状態でのサンダ10の上下方向のサイズが増大することを抑制できる。しかも、第1のハンドル22の上端23と、載置面41と、の段差が邪魔にならない任意の方向(つまり、後側から前側に向かう方向以外の任意の方向)からバッテリ50をスライド装着する設計が可能となり、高い設計自由度が得られる。したがって、サンダ10の上下方向のサイズを抑制しつつ、サンダ10の他の構成要素が邪魔にならない方向からバッテリ50をスライド装着できるような設計が容易となる。しかも、バッテリ装着部40は、バッテリ50が実質的に水平方向にスライド装着されるように構成される。つまり、バッテリ50は、水平方向に対して平行に配置される。したがって、サンダ10に下向きに作用するバッテリ50の自重の水平方向における分布が均一になり、均一な研磨を行いやすい。
【0049】
さらに、サンダ10によれば、上下方向に延在するモータシャフト61の上方でバッテリ50が保持される。したがって、サンダ10の上下方向および左右方向のサイズを低減できる。しかも、モータシャフト61は、上下方向に見て研磨部30の中心付近に位置しているので、重量の比較的大きいバッテリ50が荷重として研磨部30の中心付近に作用する。このため、研磨部30を被研磨物に押しつけるときの押圧力の分布が均一化され、均一な研磨が可能になる。
【0050】
さらに、サンダ10によれば、モータシャフト61の上端は、上下方向において、第1のハンドル22の下端24よりも下側に位置しているので、サンダ10の上下方向のサイズを低減できる。本実施形態では、電動モータ60としてブラシレスモータを採用しているので、モータシャフト61の長さを短くできる。このため、モータシャフト61の上端を第1のハンドル22の下端24よりも下側に配置しやすい。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各要素の任意の組み合わせ、または、任意の省略が可能である。
【0052】
例えば、サンダ10は、上述の通り、バッテリ50のスライド装着に関して設計自由度が高いので、バッテリ50のスライド方向が変更されてもよい。例えば、バッテリ装着部40は、バッテリ50が左右方向にスライド式に着脱されるように構成されてもよい。この場合、第2のハンドル28がバッテリ装着部40よりも高い位置にあっても、バッテリ50の着脱作業を行える。さらに、バッテリ50のスライド方向は、実質的に水平な方向に限らず、例えば、水平方向に対してなす角度が30度以内となる任意の方向(つまり、水平方向に対して±30度の範囲内の方向)であってもよい。このようにしても、サンダ10の上下方向のサイズを抑制しつつ、サンダ10の他の構成要素が邪魔にならない方向からバッテリ50をスライド装着できるような設計が容易となる。さらにいえば、バッテリ50のスライド方向は、任意の方向に設定されてもよく、例えば、上下方向であってもよい。このようにしても、サンダ10の上下方向のサイズを抑制することが可能である。
【0053】
さらに、サンダ10は、例えば国際公開第2018/168421号に開示されるような出力シャフトを備えるタイプであってもよい。この出力シャフトは、モータシャフトと平行に配置され、モータシャフトの回転駆動力を研磨部に伝達するように構成される。この場合、研磨部30は、出力シャフトの上方でバッテリを保持するように構成されてもよい。出力シャフトの上端は、上下方向において第1のハンドル22の下端24よりも下側に位置していてもよい。このような構成であっても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0054】
さらに、上述の実施形態は、オービタルサンダに限らず、長尺状のハンドルと、バッテリと、を備える任意の携帯用研磨機に適用可能である。例えば、上述の実施形態は、ランダムオービットサンダ、ポリッシャなどにも適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
10...サンダ
20...ハウジング
20a...右ハウジング
20b...左ハウジング
21...ボルト
22...第1のハンドル
23...第1のハンドルの上端
24...第1のハンドルの下端
25...スイッチ
26...壁部
27...コントローラ収容部
28...第2のハンドル
29...ボルト
30...研磨部
31...研磨パッド
32...ベース
33,35...クランパ
34,36...レバー
37...ボス
38...ボルト
40...バッテリ装着部
41...載置面
42...端子台
43...端子
44...係合凹部
45...ガイドレール
50...バッテリ
51...装着面
52...ガイド溝
53...端子接続溝
54...係合部
55...押しボタン
60...電動モータ
61...モータシャフト
62,63,64...軸受
65...バランサ
66...ボルト
71...ファン
72...集塵ノズル
73...フット
74,75...Oリング
76...スリーブ
80...コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10