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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】レーダ検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20240603BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20240603BHJP
   G01S 3/48 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
G01S7/40 130
G01S13/931
G01S3/48
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020126517
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023522
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】大久保 巌謙
(72)【発明者】
【氏名】内田 宏章
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅仁
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-331352(JP,A)
【文献】特開2012-168194(JP,A)
【文献】特開2011-220732(JP,A)
【文献】国際公開第99/034234(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/124352(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
G01S 3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたレーダモジュールと、
前記レーダモジュールから送信された電波の、前記レーダモジュールを起点とした照射軸の位置を検出する照射軸検出部と、
第1地点と第2地点とにそれぞれ設置され、前記レーダモジュールから送信された電波を受信する一対のアンテナと、を備え、
前記照射軸検出部は、前記第1地点と前記第2地点との間における前記レーダモジュールから送信された電波の位相差を検出する位相差検出部を有し、
前記位相差検出部は、前記一対のアンテナを左右方向に移動しながら受信した電波を処理して前記第1地点と前記第2地点との間における位相差が0となる位置を検出し、
前記照射軸検出部は、前記位相差検出部により検出された位相差が0となる位置での前記アンテナ同士を結ぶ線分の垂直2等分線を前記照射軸の位置することを特徴とするレーダ検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダ検出装置において、
前記一対のアンテナを、互いに所定距離あけて一体に連結する連結部をさらに備えることを特徴とするレーダ検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレーダ検出器において、
前記位相差検出部は、前記第1地点と前記第2地点との間における位相差が0となる位置での出力値が所定値となるように構成された位相回転素子を有することを特徴とするレーダ検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダモジュールから送信された電波の照射軸(ビーム軸)の理想的な方位である照射軸の位置を検出するレーダ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両にレーダモジュールを搭載する場合、予め、レーダモジュールから送信された電波をターゲットに照射して照射軸の調整作業(エイミング)が必要となるが、その前提として、照射軸とターゲットとの位置関係を把握する必要がある。この点に関し、車両の平面視画像を撮影し、その平面視画像に基づいて照射軸(ビーム軸)の位置を検出するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-331353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両に取り付けられるレーダモジュールは、エンブレムやバンパーの内側に配置されるため、組付誤差を直接的に検出することが困難である。この点、上記特許文献1記載の装置では、レーダモジュールの車両への組付誤差を考慮することなく、レーダモジュールが車両の正規の位置に取り付けられていることを前提として照射軸の位置を検出する。このため、照射軸の位置を正確に検出することができず、エイミングを精度よく行うことが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様であるレーダ検出装置は、車両に搭載されたレーダモジュールと、レーダモジュールから送信された電波の、レーダモジュールを起点とした照射軸(ビーム軸)の理想的な方位である照射軸の位置を検出する照射軸検出部と、第1地点と第2地点とにそれぞれ設置され、レーダモジュールから送信された電波を受信する一対のアンテナと、を備える。照射軸検出部は、第1地点と第2地点との間におけるレーダモジュールから送信された電波の位相差を検出する位相差検出部を有し、位相差検出部は、一対のアンテナを左右方向に移動しながら受信した電波を処理して第1地点と第2地点との間における位相差が0となる位置を検出し、照射軸検出部は、位相差検出部により検出された位相差が0となる位置でのアンテナ同士を結ぶ線分の垂直2等分線を前記照射軸の位置する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、レーダモジュールから送信された電波の照射軸(ビーム軸)の理想的な方位である照射軸の位置を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係るレーダ検出装置に用いられるレーダモジュールとターゲットとの位置関係を示す平面図。
図2】本発明の実施形態に係るレーダ検出装置による照射軸の検出原理を説明する図。
図3図1のレーダモジュールから送信される所定周波数の電波の波形の一例を示す図。
図4】本発明の実施形態に係るレーダ検出装置を構成するレーダ制御装置の要部構成を示すブロック図。
図5図4のコントローラの一部である位相差検出回路の概略構成を示す回路図。
図6】本発明の実施形態に係るレーダ検出方法による動作の一例を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図6を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係るレーダ検出装置は、車両に搭載されたレーダモジュールから送信された電波の照射軸、すなわちレーダモジュールを起点として延びる照射軸の位置を検出するように構成される。電波の照射軸の位置が検出されると、その照射軸に直交するように電波を反射するリフレクタ、すなわちターゲットを精度よく配置することができる。その結果、レーダモジュールから送信された電波をターゲットに照射して行う照射軸の調整作業(エイミング)を精度よく行うことができる。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係るレーダ検出装置に用いられるレーダモジュール1とターゲット2との位置関係を示す平面図であり、エイミングを行う状況を示す図である。エイミングは、例えば車両3の製造工場等でレーダモジュール1が車両3に取り付けられたときに行われる。以下では、図示のように車両3を基準として前後方向(車両長さ方向)および左右方向(車幅方向)を定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。
【0010】
図1に示すように、レーダモジュール1は、車両3の最前部の左右方向中央部に配置され、車両3の前方の図示しない他の車両や障害物(検出対象物と呼ぶ)の有無および検出対象物までの距離を測定するために用いられる。より詳しくは、レーダモジュール1は、例えばミリ波レーダである。レーダモジュール1は、車両3の前方に向けて電波を送信する送信機と、検出対象物で反射した電波を受信する受信機とを有する。
【0011】
電波は、レーダモジュール1の送信機から直線状に延びる照射軸10に沿って送信される。レーダモジュール1を左右方向中央部に設けた場合、照射軸10は、例えば車両3の進行方向と平行(前方)に、換言すると、車両3の左右方向に延びる前面3aあるいは左右の車輪3L,3Rの中心を結ぶ軸線CL0に対し直交する方向に延在する。
【0012】
ターゲット2は、支持部材21に取り付けられ、ターゲット2の後面に、レーダモジュール1からの電波が入射する入射面2aが設けられる。支持部材21は、ベース部材22により床面から支持される。ベース部材22は、例えば車両3の前面3aから所定距離離れて配置された左右方向に延在するレール23に沿って、左右方向に移動可能に設けられる。具体的には、ベース部材22の底部には、レール23上を回転しながら移動する車輪が設けられる。車輪は、電動モータ等のアクチュエータにより駆動され、これによりベース部材22がレール23に沿って移動し、ターゲット2を左右方向に移動することができる。
【0013】
支持部材21は、図示しない昇降機構を介してベース部材22に支持される。昇降機構は、例えばボールねじを駆動する電動モータ等のアクチュエータを有する。これにより、ボールねじがアクチュエータにより駆動され、ターゲット2を上下方向に移動することができる。すなわち、ターゲット2は、レーダモジュール1に対して上下方向および左右方向に相対移動可能であり、これにより、図示のように入射面2aが照射軸10と直交する姿勢にて、ターゲット2を照射軸10上の目標位置に配置することができる。
【0014】
アクチュエータの動力によりターゲット2を移動することに代えて、作業員が手動でターゲット2を移動して、レーダモジュール1に対するターゲット2の相対位置を調整するようにしてもよい。すなわち、作業員が照射軸10上の目標位置にターゲット2を移動した後、その目標位置にターゲット2を固定するようにしてもよい。アクチュエータを用いるか否かに拘わらず、ターゲット2の目標位置を把握するためには、照射軸10の位置を検出する必要がある。照射軸10の位置検出は以下のように行われる。
【0015】
図2は、本発明の実施形態に係るレーダ検出装置による照射軸10の検出原理を説明する図である。なお、図2には、車両3の前面3aよりも前方の空間が疑似的に示される。図2に示すように、車両3の前方には、左右一対の受信アンテナ31,32が配置される。受信アンテナ31,32は、例えば支持部材21の左右両端部に、上下方向の高さが互いに等しく、かつ、左右方向に互いに所定距離L0だけ互いに離間した状態で取り付けられる。より詳しくは、受信アンテナ31,32の中間にターゲット2が位置するように受信アンテナ31,32が取り付けられる。
【0016】
これにより、受信アンテナ31,32は、左右方向に互いに所定距離L0だけ離間した状態で、図2の矢印LRに示すように左右方向に互いに一体となって移動可能であり、かつ、上下方向にも互いに一体となって移動可能である。なお、一対の受信アンテナ31,32を、支持部材21によって連結する代わりに、ターゲット2を支持する部材とは別の連結部材によって互いに連結するようにしてもよい。したがって、受信アンテナ31,32とターゲット2とを別々に移動するようにしてもよい。
【0017】
図3は、レーダモジュール1から送信される所定周波数の電波の波形の一例を示す図である。図3の横軸はレーダモジュール1からの距離、縦軸は振幅である。図3に示すように、電波は、振幅A、波長λのsin波形によって表される。図2は、レーダモジュール1から送信される電波が、レーダモジュール1を中心として放射状に広がる複数の同心円によって示される。なお、径方向に隣り合う複数の同心円(例えばC1,C2)は、互いに位相が同一であることを示しており、複数の同心円間の距離が波長λに相当する。
【0018】
図2に示すように、受信アンテナ31,32が互いに同一位相に位置するとき、照射軸10(点線)は、受信アンテナ31,32同士を結ぶ線分L1の中間地点においてに線分L1と直交する。すなわち、線分L1の垂直二等分線が照射軸10となる。
【0019】
したがって、互いに連結された一対の受信アンテナ31,32を左右方向に移動しながら、各受信アンテナ31,32が受信した電波に基づいて受信アンテナ31,32が互いに同一位相に位置するか否かを判定するように構成すれば、照射軸10の平面視の位置(左右方向の位置)を検出することができる。また、同様に、一対の受信アンテナ31,32を上下方向に移動しながら、各受信アンテナ31,32が受信した電波に基づいて受信アンテナ31,32が互いに同一位相に位置するか否かを判定するように構成すれば、照射軸10の側面視の位置(上下方向の位置)を検出することができる。このような判定は、レーダ制御装置によって行われる。
【0020】
図4は、レーダ制御装置の要部構成を示すブロック図である。図4に示すように、レーダ制御装置は、コントローラ30と、コントローラ30にそれぞれ接続された一対の受信アンテナ31,32と、報知部33とを有する。報知部33は、ディスプレイやインジケータ等の表示部、またはスピーカ等の音声出力部によって構成され、所定の状態を作業員に報知する。なお、図示は省略するが、レーダ制御装置にはレーダモジュール1も接続され、レーダ制御装置により、エイミングを行う場合のレーダモジュール1の動作が制御される。
【0021】
コントローラ30は、CPU,ROM、RAMおよびその他の周辺回路を有する演算処理装置を含んで構成されるコンピュータである。コントローラ30は、受信アンテナ31,32からの信号に基づいて処理の処理を実行し、報知部33に制御信号を出力する。コントローラ30は、受信アンテナ31,32が受信した電波の位相差を検出する位相差検出回路を有する。
【0022】
図5は、位相差検出回路40の概略構成を示す回路図である。図5に示すように、受信アンテナ31,32により受信された信号は、それぞれ増幅器41,42で増幅された後、混合器43,44に入力される。混合器43,44にはオシレータ45からの信号が入力され、受信アンテナ31,32から出力された所定周波数(レーダモジュール1が使用するミリ波の周波数、例えば76GHz~77GHz)の信号は混合器43,44で所定周波数(レーダモジュール1の占有周波数帯域幅を表現できる周波数)の信号に変換される。なお、ここでは、混合器43,44を用いて周波数の変換(ダウンコンバート)を行っているが、これは、後段の混合器48を入手しやすい部品で構成した場合の周波数制限によるものである。よって、受信アンテナ31,32から信号周波数がそのまま処理できる場合は、周波数の変換(ダウンコンバート)は必須とはならない。
【0023】
混合器43,44から出力された信号は、位相調整回路46,47を介して混合器48に入力される。位相調整回路46,47は、受信アンテナ31,32からコントローラ30に入力される信号における、各部品やケーブル等の個体差によるずれを補正するための回路である。位相調整回路46を介して混合器48に入力される信号を信号1、位相調整回路47を介して混合器48に入力される信号を信号2とし、さらに信号1,2の周波数をそれぞれf1,f2、振幅をA1,A2、位相をφ,ψとすると、次式(I),(II)が成り立つ。
信号1=A1・sin(2π・f1・t+φ)=A1・sin(ω1・t+ψ) ・・(I)
信号2=A2・sin(2π・f2・t+φ)=A2・sin(ω2・t+ψ) ・・(II)
【0024】
混合器48は、次式(III)で示すように、上式(I),(II)の信号1,2を乗算して信号の積を出力する。
A1・A2・sin(ω1・t+φ)・sin(ω2・t+φ)
=A1・A2/2・cos(ω1・t-ω2・t+φ-ψ)
-A1・A2/2・cos(ω1・t+ω2・t+φ+ψ) ・・(III)
【0025】
上式(III)より、周波数としてf1+f2およびf1-f2が得られる。これらf1+f2およびf1-f2の一方であるf1-f2を、フィルタ回路等を用いて出力すると、次式(IV)を得ることができる。
A1・A2/2・cos(ω1・t-ω2・t+φ-ψ) ・・(IV)
【0026】
信号1の周波数と信号2の周波数とが等しく、信号1の位相がφ、信号2の位相がψであると仮定すると、上式(IV)は次式(V)のようになる。
A1・A2/2・cos(φ-ψ) ・・(V)
【0027】
これにより、受信アンテナ31,32で受信された電波の位相差が電圧値に変換されて出力され、同位相(位相差0)のときに出力値が最大となり、逆位相のときに最小となる。なお、上式(V)が成立するのは、二つの受信アンテナ31,32で受信された電波の周波数が等しいときであるが、周波数の変動するFMCWレーダを測定する場合、その成立条件は、二つの受信アンテナ31,32と電波放射源との距離が互いに等しいときであり、出力値が最大となるときでもある。距離が互いに等しいとき以外には、周波数が一致しないために、得られる位相差に誤差が含まれるが、その誤差がエイミング誤差の許容範囲内であれば、利用できる場合がある。なお、混合器48に入力される信号の強度が低いと、正しい位相差を出力することができない。このため、混合器43,44から出力された信号の強度(受信強度)が所定値以上であるときに、混合器48で位相差の検出が行われるように構成される。
【0028】
コントローラ30は、以上のようにして求められた位相差の出力値を報知部33に出力する。報知部33は、この出力値を例えば表示によって作業員に報知する。これにより、作業員は、受信アンテナ31,32により受信された電波の位相が同一(位相差0)となる受信アンテナ31,32の位置を把握することができる。その結果、受信アンテナ31,32を結んだ線分L1(図2)の垂直二等分線である照射軸10の位置を特定することが可能となる。
【0029】
以上をまとめると、本実施形態に係るレーダ検出方法は以下のように行われる。なお、以下では、作業員が手動で受信アンテナ31,32を移動し、二次元方向(水平位置と垂直位置)でエイミングを行う場合を想定する。二次元方向のうちどちらか一方(水平位置もしくは垂直位置)のみのエイミングを行うことで十分な場合もある。
【0030】
まず、レーダモジュール1から電波を送信させながら、作業員が、図6に示すように一対の受信アンテナ31,32を左右方向(矢印LR)に平行移動する。このとき、コントローラ30は、受信アンテナ31,32が受信した信号に基づいて、受信波形の位相差を検出するとともに、位相差に応じた信号を報知部33に出力する。この場合、例えば図6の状態A(点線)では、受信アンテナ31,32による受信波形の位相が互いに異なるため、位相差に応じた信号の出力値は小さい。一方、図6の状態B(実線)では、受信波形の位相が同一(位相差0)になるため、出力値は最大となる。
【0031】
作業員は、報知部33から出力値が最大である旨の情報が出力されると、受信アンテナ31,32の移動をやめて、受信アンテナ31,32をその位置に固定する。次いで、作業員は、受信アンテナ31,32の左右方向の位置を固定したまま、受信アンテナ31,32を上下方向に移動する。そして、報知部33から出力値が最大である旨の情報が出力されると、受信アンテナ31,32の移動をやめて、受信アンテナ31,32をその位置に固定する。このときのレーダモジュール1から一対の受信アンテナ31,32の中間位置に向かう線が照射軸10に相当し、これにより照射軸10の位置を検出することができる。
【0032】
その後、ターゲット2が照射軸10上の目標位置に固定された状態で、レーダモジュール1からターゲット2に電波が照射されて、調整作業(エイミング)が行われる。
【0033】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態に係るレーダ検出装置は、車両3に搭載されたレーダモジュール1と、レーダモジュール1から送信された電波のレーダモジュール1を起点とした照射軸10の位置を検出するコントローラ30と、を備える(図1,4)。コントローラ30は、受信アンテナ31が位置する第1地点と受信アンテナ32が位置する第2地点との間における位相差を検出する位相差検出回路40を有し、位相差検出回路40により検出された位相差に基づいて照射軸10の位置を検出する(図5)。これにより照射軸10の位置を正確に検出することが可能となり、レーダモジュール1から送信された電波をターゲット2に照射して行う調整作業(エイミング)を、精度よく行うことができる。
【0034】
(2)レーダ検出装置は、互いに異なる地点にそれぞれ設置され、レーダモジュール1から送信された電波を受信する一対のアンテナ31,32をさらに備える(図4)。位相差検出回路40は、一対の受信アンテナ31,32によって受信された電波を処理して位相差を算出する。これにより、一対の受信アンテナ31,32による電波の位相差を容易に検出することができ、照射軸の位置、すなわちターゲット2の目標位置を容易に求めることができる。
【0035】
(3)一対の受信アンテナ31,32を、互いに所定距離L0あけて一体に連結する連結部(例えば支持部材21)をさらに有する(図2)。これにより、一対の受信アンテナ31,32間の距離を一定に保ったまま受信アンテナ31,32を移動することができ、一対の受信アンテナ31,32により受信された電波の位相差を精度よく検出することができる。
【0036】
なお、レーダモジュールは、仕様によって周波数帯域や変調方法、パルスの長さなどが異なり、車載レーダで多用されるFMCW方式では周波数が常に変動する。これに加え、レーダモジュールと検出器とは非同期に構成される。したがって、位相差を利用した測角では推定角度に波長が必要となるため、予測できない周波数の変動は推定角度の誤差要因となる。よって、レーダの種類によらず誤差の少ない照射軸(ビーム軸)の理想的な方位である照射軸の位置を検出する構成が望まれるが、本実施形態によればそのような構成を容易に実現可能である。
【0037】
以上の説明では、信号の出力が最大値となる位置を求めるようにしたが、最大値付近では出力値の変化量が少ないため、計測誤差が生じやすい。また、上式(V)より明らかなように、最大値の位置を基準にすると、左右いずれにずれた場合にも出力値は低下するため、どちらに移動したら最大値の位置に近づくかは、受信アンテナの移動を伴わない限り判断できない。この問題を解決するためには、位相差が0のときの出力が最大値以外、例えば出力が0となる方が扱いやすい。
【0038】
この場合、出力を変更するための手段として、以下のようなものが考えられる。例えば混合器の入力段に位相調整回路を設け、受信アンテナ31,32からの信号周波数の位相差が0のときに、出力信号が任意の値(例えば0)となるように構成する。あるいは、混合器の出力段に位相調整回路を設け、受信アンテナ31,32からの信号周波数の位相差が0のときに、出力信号が任意の値(例えば0)となるように構成する。あるいは、混合器にIQミキサを利用し、その出力である直交したIQから任意の値(例えば0)となるように構成する。すなわち、上述したように種々の方式で、位相差が0となる位置での出力が任意の値となるように位相回転素子を設けることが考えられる。以上の構成により、電波の位相差が0のときでも、出力を任意の値(例えば0)にすることができ、受信アンテナの移動すべき方向を一意的に判断することができる。なお、上述した混合器(ミキサ)に関し、二つの信号の位相差を検出できるなら、他の方式(位相検出器や乗算器を用いた方式や、その他の方式、例えばAD変換後にデジタル処理にて位相差を検出する方式)であってもよい。
【0039】
なお、上記実施形態では、車両3の最前部の左右方向中央部に搭載されたレーダモジュール1を起点とした照射軸10の位置を検出するようにしたが、車両3の他の位置に搭載されたレーダモジュールを起点とした照射軸の位置検出も上述したのと同様に行うことができる。上記実施形態では、位相差検出回路40により一対の受信アンテナ31,32によって受信された電波を処理して位相差を算出するようにしたが、位相差検出部の構成は上述したものに限らない。レーダモジュールから送信された電波の第1地点と第2地点との間の位相差に基づいてレーダモジュールの照射軸を検出するのであれば、照射軸検出部の構成はいかなるものでもよい。上記実施形態では、支持部材21を介して一対の受信アンテナ31,32を互いに所定距離L0あけて一体に連結するようにしたが、連結部の構成は上述したものに限らない。
【0040】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 レーダモジュール、2 ターゲット、10 照射軸、21 支持部材、30 コントローラ、31,32 受信アンテナ、40 位相差検出回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6