(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】検知装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/87 20060101AFI20240603BHJP
G01S 13/62 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
G01S13/87
G01S13/62
(21)【出願番号】P 2020145904
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【氏名又は名称】大山 夏子
(72)【発明者】
【氏名】河野 裕己
(72)【発明者】
【氏名】深貝 直史
(72)【発明者】
【氏名】古田 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】大橋 洋介
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-192427(JP,A)
【文献】特開2006-349602(JP,A)
【文献】特表2018-508011(JP,A)
【文献】特開平11-083999(JP,A)
【文献】特開2000-065927(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0241925(US,A1)
【文献】特開2017-173114(JP,A)
【文献】特開2011-145111(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013008953(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - G01S 7/42
G01S 13/00 - G01S 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知装置であって、
無線通信部による無線信号の送受信を制御する制御部、
を備え、
前記制御部は、前記無線通信部に、当該検知装置が配置される環境の状態の検知に用いられる
超広帯域無線通信規格に準拠した検知用信号を送信させ、
前記無線通信部は、送信した前記検知用信号に対する反射波を受信し、
前記制御部は、
前記無線通信部が送信する第1の信号と、当該検知装置とは異なる他の通信装置が前記第1の信号への応答として送信する第2の信号とが用いられる測距をさらに制御し、前記無線通信部が前記第1の信号を送信してから規定時間内に前記第2の信号が前記無線通信部により受信されない場合に、前記無線通信部に前記検知用信号を送信させ、前記反射波に基づいて、前記環境の状態を検知する、
検知装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記反射波に係る受信特性の変化に基づいて、前記環境中に存在する物体の状態変化を検知する、
請求項1に記載の検知装置。
【請求項3】
前記制御部は、前回に前記無線通信部に送信させた前記検知用信号に対する前記反射波に係る受信特性と、
今回に前記無線通信部に送信させた前記検知用信号に対する前記反射波に係る受信特性との比較に基づいて、前記環境中に存在する物体の状態変化を検知する、
請求項2に記載の検知装置。
【請求項4】
前記反射波に係る受信特性は、時系列における前記反射波の受信強度の変化を含み、
前記制御部は、前回において前記反射波の受信強度の変化を時系列に記録した第1の波形と、
今回において前記反射波の受信強度の変化を時系列に記録した第2の波形との比較に基づいて、前記環境中に存在する物体の状態変化を検知する、
請求項3に記載の検知装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1の波形および前記第2の波形に共通して検出される特徴波形に関し、前記第2の波形における前記特徴波形の検出時刻が、前記第1の波形における前記特徴波形の検出時刻よりも早くなった場合、前記環境中に存在する物体が当該検知装置に近づいたと判定する、
請求項4に記載の検知装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1の波形および前記第2の波形に共通して検出される特徴波形に関し、前記第2の波形における前記特徴波形の検出時刻が、前記第1の波形における前記特徴波形の検出時刻よりも遅くなった場合、前記環境中に存在する物体が当該検知装置から遠のいたと判定する、
請求項4または請求項5のうちいずれか一項に記載の検知装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1の波形において検出された特徴波形が前記第2の波形において検出されない場合、前記環境中に存在した物体が消失したと判定する、
請求項4から請求項6までのうちいずれか一項に記載の検知装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1の波形において検出されなかった特徴波形が前記第2の波形において検出された場合、前記環境中に新たな物体が出現したと判定する、
請求項4から請求項7までのうちいずれか一項に記載の検知装置。
【請求項9】
コンピュータを
検知装置として機能させるプログラムであって、
前記検知装置に無線通信部による無線信号の送受信を制御する制御機能、
を実現させ、
前記制御機能に
、前記無線通信部が送信する第1の信号と、前記検知装置とは異なる他の通信装置が前記第1の信号への応答として送信する第2の信号とが用いられる測距を制御させ、前記無線通信部が前記第1の信号を送信してから規定時間内に前記第2の信号が前記無線通信部により受信されない場合に、前記無線通信部に、前記検知装置が配置される環境の状態の検知に用いられる
超広帯域無線通信規格に準拠した検知用信号を前記無線通信部に送信させ、前記無線通信部が受信した前記検知用信号に対する反射波に基づいて前記環境の状態を検知させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、装置間で無線信号を送受信した結果に従って各種の処理を行う技術が開発されている。例えば、下記特許文献1では、超広帯域(UWB:Ultra Wide Band)の信号を用いて装置間における測距を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような無線信号を用いるシステムにおいては、当該無線信号をより有効に活用する仕組みが求められる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、環境状態の検出に無線信号をより有効に活用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、無線通信部による無線信号の送受信を制御する制御部、を備え、前記制御部は、前記無線通信部に、当該検知装置が配置される環境の状態の検知に用いられる検知用信号を送信させ、前記無線通信部は、送信した前記検知用信号に対する反射波を受信し、前記制御部は、前記反射波に基づいて、前記環境の状態を検知する、検知装置が提供される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータに、無線通信部による無線信号の送受信を制御する制御機能、を実現させ、前記制御機能に、当該検知装置が配置される環境の状態の検知に用いられる検知用信号を前記無線通信部に送信させ、前記無線通信部が受信した前記検知用信号に対する反射波に基づいて前記環境の状態を検知させる、プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明によれば、環境状態の検知に無線信号をより有効に活用するが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る検知装置10の機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】同実施形態に係る物体の状態変化の検知について説明するための図である。
【
図3】同実施形態に係る反射波の受信強度に基づく物体の状態検知の一例について説明するための図である。
【
図4】同実施形態に係る反射波の受信強度に基づく物体の状態検知の一例について説明するための図である。
【
図5】同実施形態に係る反射波の受信強度に基づく物体の状態検知の一例について説明するための図である。
【
図6】同実施形態に係る反射波の受信強度に基づく物体の状態検知の一例について説明するための図である。
【
図7】同実施形態に係る検知装置10による処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<実施形態>
<1.実施形態>
<<1.1.検知装置10の機能構成例>>
まず、本発明の一実施形態に係る検知装置10の機能構成例について述べる。
【0012】
本実施形態に係る検知装置10は、配置される環境の検知を行う情報処理装置である。例えば、本実施形態に係る検知装置10は、車両等の移動体に搭載されてもよい。この場合、検知装置10は、搭載される移動体の周辺の環境を検知してもよい。また、例えば、本実施形態に係る検知装置10は、スマートフォン等のモバイル端末に搭載されてもよい。この場合、検知装置10は、搭載されるモバイル端末の周辺の環境を検知してもよい。
【0013】
図1は、本実施形態に係る検知装置10の機能構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る検知装置10は、制御部110および無線通信部120を備えてもよい。
【0014】
(制御部110)
本実施形態に係る制御部110は、検知装置10が備える各構成を制御する。本実施形態に係る制御部110が有する機能は、CPU等のプロセッサにより実現される。
【0015】
例えば、本実施形態に係る制御部110は、無線通信部120による無線信号の送受信をしてよい。一例として、本実施形態に係る制御部110は、無線通信部120に検知用信号を送信させ、当該検知用信号に対する反射波を受信させる。また、この際、本実施形態に係る制御部110は、上記反射波に基づいて、検知装置10が配置される環境の状態を検知してもよい。
【0016】
本実施形態に係る検知用信号は、検知装置10が配置される環境の状態の検知に用いられる信号である。検知用信号の一例としては、超広帯域無線通信規格に準拠した信号が挙げられる。
【0017】
本実施形態に係る制御部110は、無線通信部120に、超広帯域無線通信規格に準拠した検知用信号を送信させ、また当該検知用信号が環境中に存在する物体に到達した際に生じる反射波を受信させてもよい。
【0018】
また、この際、本実施形態に係る制御部110は、上記反射波に係る受信特性の変化に基づいて、検知装置10が配置される環境の状態を検知してもよい。上記環境の状態には、当該環境中に存在する物体の状態変化が含まれる。
【0019】
また、上記物体の状態変化の一例としては、例えば、検知装置10に対する物体の接近または離反、環境中からの物体の消失、環境中への物体の出現などが挙げられる。
【0020】
このように、本実施形態に係る検知装置10によれば、これまで主に測距に用いられてきた超広帯域の信号(以下、UWB信号、とも称する)を、レーダーに活用することができる。UWB信号の送受信はボタン電池等でも十分に可能なことから、本実施形態に係るUWB通信を用いた環境状態の検知によれば、他の通信規格に準拠した信号を用いる場合と比較して省電力を実現することができる。
【0021】
また、本実施形態に係る制御部110は、環境状態の検知に加え、同一の通信規格に準拠した信号を用いた他の処理を制御してもよい。
【0022】
例えば、本実施形態に係る制御部110は、無線通信部が送信する第1の信号と、当該検知装置とは異なる他の通信装置が当該第1の信号への応答として送信する第2の信号とが用いられる規定の処理をさらに制御してもよい。
【0023】
上記規定の処理の一例としては、UWB信号を用いた測距が挙げられる。
【0024】
例えば、本実施形態に係る制御部110は、無線通信部120に、測距に用いられる第1の信号を送信させてもよい。この場合、無線通信部120、検知装置10とは異なる他の通信装置が上記第1の信号への応答として送信する第2の信号を受信する。
【0025】
この際、制御部110は、無線通信部120が第1の信号を送信した時刻から第2の信号の受信する時刻までの時間ΔT1と、他の通信装置が第1の信号を受信した時刻から第2の信号を送信するまでの時間ΔT2に基づいて測距を行うことができる。
【0026】
より具体的には、制御部110は、時間ΔT1から時間ΔT2を差し引くことにより測距用信号の往復の通信に要した時間が算出し、また当該時間を2で割ることにより測距用信号の片道の通信に要した時間が算出することができる。さらに、制御部110は、(時間ΔT1-時間ΔT2)/2の値に信号の速度を掛けることで検知装置10と他の通信装置との間の距離(以下、測距値、とも称する)を得ることが可能である。
【0027】
このように、本実施形態に係る制御部110によれば、同一の通信規格に準拠した信号を、測距等の規定の処理と、環境の状態検知とに有効に活用することが可能となる。
【0028】
なお、本実施形態に係る規定の処理は、測距に限定されない。また、本実施形態に係る規定の処理および環境の状態検知に用いられる信号は、UWB信号に限定されない。
【0029】
例えば、本実施形態に係る規定の処理は、認証要求として用いられる第1の信号、および認証応答として用いられる第2の信号に基づく認証処理であってもよい。
【0030】
また、例えば、本実施形態に係る規定の処理および環境の状態検知に用いられる信号は、LF(Low Frequency)帯の信号、UHF(Ultra High Frequency)帯の信号などであってもよい。
【0031】
また、この際、本実施形態に係る制御部110は、まず規定の処理の実行を制御し、規定の処理に用いられる第2の信号を無線通信部120が受信できない場合に、環境の状態検知に係る制御を実行してもよい。
【0032】
一例として、本実施形態に係る制御部110は、無線通信部120が第1の信号を送信してから規定時間内に第2の信号が前記無線通信部120により受信されない場合に、無線通信部120に検知用信号を送信させてもよい。
【0033】
例えば、規定の処理が測距である場合を想定する。この場合、制御部110は、まず、第1の信号および第2の信号を用いた測距を制御する。
【0034】
具体的には、制御部110は、無線通信部120に第1の信号を送信させる。ここで、規定時間内に無線通信部120が第2の信号を受信した場合、制御部110は、第1の信号および第2の信号を用いた測距を実行してもよい。
【0035】
一方、規定時間内に無線通信部120が第2の信号を受信できない場合、検知装置10が配置される環境中には、相手となる他の通信装置が存在しないことが想定される。
【0036】
この場合、本実施形態に係る制御部110は、測距に代えて、環境の状態検知に係る制御を行ってもよい。すなわち、本実施形態に係る制御部110は、無線通信部120に第2の信号を受信するための待機状態を解除させ、検知用信号を送信させる。
【0037】
上記のような制御によれば、通信相手の有無等に応じて測距と環境の状態検知とを効率的に切り替えることができ、より効果が得られる処理に無線信号を有効に活用することが可能となる。
【0038】
(無線通信部120)
本実施形態に係る無線通信部120は、制御部110による制御に従い、無線信号の送受信を行う。例えば、本実施形態に係る無線通信部120は、制御部110による制御に従い、第1の信号を送信する。この場合、無線通信部120は、他の通信装置が第1の信号への応答として送信する第2の信号を受信する状態へと遷移する。
【0039】
また、例えば、本実施形態に係る無線通信部120は、制御部110による制御に従い、検知用信号を送信する。この場合、無線通信部120は、検知用信号が物体に到達することにより生じる反射波を受信する。
【0040】
以上、本実施形態に係る検知装置10の機能構成例について述べた。なお、
図1を用いて説明した上記の機能構成はあくまで一例であり、本実施形態に係る検知装置10の機能構成例は係る例に限定されない。例えば、本実施形態に係る検知装置10は、ユーザによる操作を受け付ける操作受付部や、処理の結果等を表示する表示部、処理の結果に基づく通知を行う通知部などをさらに備えてもよい。本実施形態に係る検知装置10の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0041】
<<1.2.機能の詳細>>
次に、本実施形態に係る制御部110が有する機能について詳細に説明する。上述したように、本実施形態に係る制御部110は、無線通信部120による無線信号の送受信を制御することで、検知装置10が配置される環境の状態を検知することができる。また、上記環境の状態には、環境中に存在する物体の状態変化が挙げられる。
【0042】
図2は、本実施形態に係る物体の状態変化の検知について説明するための図である。
図2には、ある環境に配置される検知装置10と、同一環境(検知装置10の周辺)に存在する物体90aおよび90bが模式的に示されている。
【0043】
このような状況においては、本実施形態に係る制御部110は、無線通信部120に、検知用信号を周囲に向けて送信させる。この際、制御部110は、無線通信部120に送信させる検知用信号の方向および距離に指向性を持たせてもよい。なお、
図2においては、検知用信号が実線の矢印により示されている。
【0044】
また、
図2においては、検知用信号に対する反射波が破線の矢印により示されている。
【0045】
例えば、
図2に示す一例の場合、無線通信部120は、送信した検知用信号が物体90aに到達したことにより生じる反射波を受信することができる。
【0046】
同様に、無線通信部120は、送信した検知用信号が物体90bに到達したことにより生じる反射波を受信することができる。
【0047】
この際、本実施形態に係る制御部110は、無線通信部120が受信した反射波に係る受信特性の変化に基づいて、環境中に存在する物体90aや物体90bの状態変化を検知してもよい。
【0048】
具体的には、本実施形態に係る制御部110は、検知用信号の送信と反射波の受信を無線通信部120に繰り返し実行させ、反射波に係る受信特性の変化を観察してもよい。一例として、本実施形態に係る制御部110は、前回に無線通信部120に送信させた検知用信号に対する反射波に係る受信特性と、該当回に無線通信部120に送信させた検知用信号に対する反射波に係る受信特性との比較に基づいて、環境中に存在する物体の状態変化を検知してもよい。
【0049】
ここで、反射波に係る受信特性の一例としては、時系列における反射波の受信強度の変化が挙げられる。この場合、本実施形態に係る制御部110は、前回において反射波の受信強度の変化を時系列に記録した第1の波形と、当該回において反射波の受信強度の変化を時系列に記録した第2の波形との比較に基づいて、環境中に存在する物体の状態変化を検知してもよい。
【0050】
以下、
図3~
図6を参照して、反射波の受信強度に基づく物体の状態検知について具体例を挙げて説明する。
【0051】
なお、
図3~
図6には、前回(n-1回)において反射波の受信強度の変化を時系列に記録した第1の波形が上段に、当該回(n-1回)において反射波の受信強度の変化を時系列に記録した第2の波形が上段にそれぞれ示されている。
【0052】
例えば、本実施形態に係る制御部110は、
図3に示す一例のように、第1の波形および第2の波形に共通して検出される特徴波形に関し、第2の波形における特徴波形の検出時刻が、第1の波形における特徴波形の検出時刻よりも早くなった場合、環境中に存在する物体が当該検知装置に近づいたと判定してもよい。
【0053】
上記特徴波形には、例えば、ピーク等が挙げられる。
図3に示す一例の場合、第1の波形および第2の波形には、ピークP1およびピークP2が共通して検出されている。
【0054】
ここで、マルチパスの影響がないと仮定した場合、ピークP1およびピークP2は、無線通信部120がそれぞれ異なる物体からの反射波を直線的に受信した際の受信強度を示すものと仮定することができる。
【0055】
一方、マルチパスの影響がある場合であっても、ピークP1およびピークP2は、上記のとおり、あるいは無線通信部120が単一の物体からの反射波を直線的および間接的(他の物体よる反射を経て)に受信した際の受信強度を示すものと仮定することもできる。
【0056】
この際、検知用信号および反射波の伝搬速度は一定であることから、無線通信部120が送信した検知用信号が直線的に物体に到達し、また無線通信部120が物体から反射波を直線的に受信する時刻は、検知装置10(より正確には無線通信部120)と物体との距離に応じて変化することが想定される。
【0057】
すなわち、検知装置10(より正確には無線通信部120)と物体との距離が近いほど、無線通信部120が送信した検知用信号が直線的に物体に到達し、また無線通信部120が物体から反射波を直線的に受信する時刻は早くなることが想定される。
【0058】
例えば、
図3に示す一例では、第2の波形におけるピークP1の検出時刻が第1の波形におけるピークP1の検出時刻よりも早くなっている。このような場合、本実施形態に係る制御部110は、検知装置10が配置される環境中に存在する物体が検知装置10に近づいたと判定してもよい。
【0059】
一方、検知装置10(より正確には無線通信部120)と物体との距離が遠いほど、無線通信部120が送信した検知用信号が直線的に物体に到達し、また無線通信部120が物体から反射波を直線的に受信する時刻は遅くなることが想定される。
【0060】
このため、本実施形態に係る制御部110は、第2の波形における特徴波形の検出時刻が、第1の波形における特徴波形の検出時刻よりも遅くなった場合、環境中に存在する物体が当該検知装置から遠のいたと判定してもよい。
【0061】
例えば、
図4に示す一例では、第2の波形におけるピークP2の検出時刻が第1の波形におけるピークP2の検出時刻よりも遅くなっている。このような場合、本実施形態に係る制御部110は、検知装置10が配置される環境中に存在する物体が検知装置10から遠のいたと判定することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る制御部110による判定は、上記に示す一例に限定されない。例えば、本実施形態に係る制御部は、第1の波形において検出された特徴波形が第2の波形において検出されない場合、環境中に存在した物体が消失した(物体の存在を検知可能な範囲から離脱した)と判定してもよい。
【0063】
図5に示す一例では、第1の波形において検出されていたピークP2が第2の波形においては検出されていない。このような場合、本実施形態に係る制御部110は、環境中に存在した物体が消失したと判定することができる。
【0064】
反対に、本実施形態に係る制御部は、第1の波形において検出されなかった特徴波形が第2の波形において検出された場合、環境中に新たな物体が出現した(物体の存在を検知可能な範囲に進入した)と判定してもよい。
【0065】
図6に示す一例では、第1の波形において検出されていなかったピークP2が第2の波形において新たに検出されている。このような場合、本実施形態に係る制御部110は、環境中に新たな物体が出現したと判定することができる。
【0066】
以上、本実施形態に係る物体の状態変化の検知について、具体例を挙げて説明した。上記で説明したような制御によれば、環境状態の検知に無線信号をより有効に活用するが可能となる。
【0067】
なお、上記では、第1の波形および第2の波形において検出される特徴波形の一例としてピークを挙げたが、本実施形態に係る特徴波形は係る例に限定されない。本実施形態に係る特徴波形には、他の時刻における遷移とは明確に区別ができる様々な波形が採用され得る。
【0068】
<<1.3.処理の流れ>>
次に、本実施形態に係る検知装置10による処理の流れについて詳細に説明する。
図7は、本実施形態に係る検知装置10による処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0069】
図7に示す一例の場合、まず、制御部110が無線通信部120に第1の信号を送信させる(S102)。
【0070】
次に、制御部110は、無線通信部120が規定時間内に第2の信号を受信したか否かを判定する(S104)。
【0071】
ここで、無線通信部120が規定時間内に第2の信号を受信したと判定した場合(S104:Yes)、制御部110は、第1の信号および第2の信号に基づく規定の処理を制御する(S106)。なお、上述したように、上記規定の処理には、例えば、測距が含まれる。
【0072】
一方、無線通信部120が規定時間内に第2の信号を受信していないと判定した場合(S104:No)、制御部110は、環境の状態を検知する検知モードへと遷移する(S108)。
【0073】
検知モードへと遷移した場合、制御部110は、無線通信部120に検知用信号を送信させる(S110)。
【0074】
また、無線通信部120は、ステップS110において送信した検知用信号に対する反射波を受信する(S112)。
【0075】
次に、制御部110は、前回における反射波の受信特性と、当該回における反射波の受信特性とを比較する(S114)。なお、当該回が初回である場合、制御部110は、ステップS114およびS116をスキップし、ステップS110に復帰してよい。
【0076】
一方、当該回が2回目以降である場合、制御部110は、ステップS114において実行した比較の結果に基づいて環境の変化を検知する(S116)。
【0077】
ステップS116における処理の後、制御部110はステップS110に復帰し、処理の終了が入力される(例えば、ユーザによる指示)、あるいは処理の終了条件(例えば、所定時間の経過)が検出されるまで、以降の処理を繰り返し実行してもよい。
【0078】
以上、本実施形態に係る検知装置10による処理の流れについて一例を挙げて説明した。なお、
図7に示すフローチャートはあくまで一例であり、本実施形態に係る検知装置10による処理の流れは係る例に限定されない。
【0079】
本実施形態に係る検知装置10は、検知した環境の変化に基づく処理をさらに実行してもよい。例えば、制御部110は、環境の変化を検知した場合、当該変化に関する通知がユーザに送信されるよう制御を行ってもよい。一例として、制御部110は、検知装置10に不審者が近づいてきている可能性がある旨がユーザに通知されるよう制御することができる。
【0080】
また、例えば、制御部110は、検知した状態の変化に応じた処理が実行されるよう制御を行ってもよい。一例として、制御部110は、検知装置10が搭載される移動体に、ユーザが近づいてきていると判定し、ランプを点灯させる等の各種の制御を行うことができる。
【0081】
<2.補足>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0082】
また、本明細書において説明した各装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記録媒体(非一時的な媒体:non-transitory media)に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、コンピュータによる実行時にRAMに読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。上記記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10:検知装置、110:制御部、120:無線通信部