(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】電子回路及び電力変換器
(51)【国際特許分類】
H03K 17/687 20060101AFI20240603BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20240603BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240603BHJP
【FI】
H03K17/687 A
H02M1/08 A
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2020149313
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】川井 秀介
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/054143(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/042636(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/198426(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/225436(WO,A1)
【文献】特許第6497475(JP,B1)
【文献】特開2012-227877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00-17/70
H02M 1/08
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子の駆動回路を制御する制御回路と、
前記半導体素子を第1駆動力で駆動することを指示する第1信号を受けて前記第1信号を前記制御回路に出力し、
前記第1信号を受けた後、第1時間の間隔もしくは前記第1時間のn倍の時間の間隔(nは2以上の整数)で、前記半導体素子を第2駆動力で駆動することを指示する第2信号を受けて、前記第2信号を前記第1時間より短い遅延量だけ遅延させ、前記第1信号の出力から前記第1時間もしくは前記第1時間のn倍の時間と前記遅延量とが経過した後、前記第2信号を前記制御回路に出力する
遅延回路と、
前記第1時間をカウントする第1カウンタとを備え、
前記遅延回路は、前記第1カウンタにより前記第1時間もしくは前記第1時間のn倍の時間がカウントされることにより、前記第1時間もしくは前記第1時間のn倍の時間の経過
後に前記第2信号を受ける、
電子回路。
【請求項2】
前記半導体素子の導通又は非導通を指示する第3信号を検出する第1検出回路と、
前記第1信号と前記第2信号とを記憶する記憶回路を備え、
前記記憶回路は、前記第3信号が検出されたことに応じて、前記第1信号を前記遅延回路に出力し、
前記第1カウンタは、前記第3信号が検出されたことに応じて、前記第1時間をカウントし、
前記記憶回路は、前記第1カウンタにより前記第1時間もしくは前記第1時間のn倍の時間がカウントされた後、前記第2信号を前記遅延回路に出力する
請求項1に記載の電子回路。
【請求項3】
前記遅延量を示す第4信号を保持し、前記第1時間もしくは第1時間のn倍の時間がカウントされた後、前記第4信号を前記遅延回路に出力するスイッチ回路と、を備え、
前記遅延回路は、前記第4信号に同期して受けた前記第2信号を前記遅延させる対象の信号として特定する
請求項2に記載の電子回路。
【請求項4】
前記記憶回路は、前記第1時間がn(nは2以上の整数)回カウントされるまで、前記第1時間がカウントされるごとに、前記第1信号を繰り返し出力し、
前記記憶回路は、前記第1時間が前記n回カウントされた後、前記第2信号を前記遅延回路に出力し
前記スイッチ回路は、前記第1時間が前記n回カウントされた後、前記第4信号を出力する
請求項3に記載の電子回路。
【請求項5】
前記遅延回路は、前記遅延量を示す第4信号を受けて、前記第4信号に含まれる前記遅延量だけ前記第2信号を遅延させる
請求項1~4のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項6】
前記第4信号はデジタル信号であり、
前記第4信号をアナログ信号に変換するDA変換回路を備え、
前記スイッチ回路は、前記アナログ信号に変換された前記第4信号を前記遅延回路に送出する
請求項3又は4に記載の電子回路。
【請求項7】
前記第4信号を受けて、前記第4信号の位相と基準信号の位相との差を調整し、調整後の前記第4信号を前記スイッチ回路に提供する遅延同期回路
を備えた
請求項3、4及び6のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項8】
前記遅延回路は、
前記第1信号又は前記第2信号のビットを反転もしくは反転させずに伝送する、第1インバータもしくは前記第1インバータを2つ以上従属接続した回路と、前記第1インバータで反転させられた前記ビットを反転もしくは反転させずに伝送する、第2インバータもしくは前記第2インバータを2つ以上従属接続した回路と、を含み、
前記遅延回路は、前記第4信号に基づき、前記第1インバータもしくは前記第1インバータを2つ以上従属接続した回路、及び前記第2インバータもしくは前記第2インバータを2つ以上従属接続した回路の少なくとも一方の出力応答を制御する、
請求項3~7のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項9】
前記遅延回路は、前記第1インバータもしくは前記第1インバータを2つ以上従属接続した回路と第1電圧との間に接続された第1電流源と、前記第1インバータもしくは前記第1インバータを2つ以上従属接続した回路と第2電圧との間に接続された第2電流源を備え、前記第1電流源及び前記第2電流源を制御することで、前記第1インバータもしくは前記第1インバータを2つ以上従属接続した回路の出力応答を制御する
請求項8に記載の電子回路。
【請求項10】
前記第2インバータもしくは前記第2インバータを2つ以上従属接続した回路と第3電圧との間に接続された第3電流源と、前記第2インバータもしくは前記第2インバータを2つ以上従属接続した回路と第4電圧との間に接続された第4電流源を備え、前記第3電流源及び前記第4電流源を制御することで、前記第2インバータもしくは前記第2インバータを2つ以上従属接続した回路の出力応答を制御する
請求項8又は9に記載の電子回路。
【請求項11】
前記第1信号、前記第2信号、及び前記第4信号はデジタル信号であり、
前記遅延回路は、
パルスを発生させるパルス発生器と、
入力される前記第1信号又は前記第2信号を保持し、前記第1信号又は前記第2信号を出力する動作を前記パルスに従って行うフリップフロップ回路と、を含み、
前記遅延回路は、前記第4信号に基づき前記パルス発生器を制御することで、前記第2信号の出力を前記遅延量だけ遅延させる
請求項3~7のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項12】
前記制御回路は、
前記遅延回路から送られる前記第1信号に基づき、前記半導体素子を駆動する第1制御信号を前記駆動回路に出力し、
前記遅延回路から送られる前記第2信号に基づき、前記半導体素子を駆動する第2制御信号を前記駆動回路に出力する
請求項1~11のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項13】
前記駆動回路は、並列に接続された複数のスイッチング素子を含み、
前記第1駆動力は、前記複数のスイッチング素子のうちオン又はオフにするスイッチング素子の個数を表し、
前記第2駆動力は、前記複数のスイッチング素子のうちオン又はオフにするスイッチング素子の個数を表し、
前記第1駆動力が表す個数は、前記第2駆動力が表す個数と異なる
請求項1~12のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項14】
前記駆動回路
を備えた請求項1~13のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項15】
複数対の半導体素子と、
前記複数対の半導体素子の複数の前記半導体素子に対応する複数のゲートドライバ回路と、を備え、
前記ゲートドライバ回路は、前記半導体素子を駆動する駆動回路と、前記駆動回路を制御する電子回路とを備え、
前記電子回路は、
前記半導体素子の駆動回路を制御する制御回路と、
前記半導体素子を第1駆動力で駆動することを指示する第1信号を受けて、前記第1信号を前記制御回路に出力し、
前記第1信号を受けた後、第1時間の間隔もしくは前記第1時間のn倍の時間の間隔(nは2以上の整数)で、前記半導体素子を第2駆動力で駆動することを指示する第2信号を受けて、前記第2信号を前記第1時間より短い遅延量だけ遅延させ、前記第1信号の出力から前記第1時間もしくは前記第1時間のn倍の時間と前記遅延量とが経過した後、前記第2信号を前記制御回路に出力する遅延回路と、
前記第1時間をカウントする第1カウンタと、
を備え、
前記遅延回路は、前記第1カウンタにより前記第1時間もしくは前記第1時間のn倍の時間がカウントされることにより、前記第1時間もしくは前記第1時間のn倍の時間の経過
後に、前記第2信号を受け、
少なくとも一部の期間同時にオンする前記半導体素子の対を順次切り替えることにより直流電圧から交流電流を生成する、電力変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、電子回路及び電力変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体素子の損失を低減しつつ、当該パワー半導体のドレイン電圧の立ち上がり速度を抑えるために、パワー半導体素子のゲート端子に、複雑なゲート駆動波形を入力する必要があった。複雑な波形を生成する手法の一つにデジタルアナログ変換機(DAC)を用いる手法がある。
【0003】
しかしながら、この手法では、パワー半導体素子のゲート駆動波形を作る際に、速度の高いDACと、デジタル信号を記憶するための大きな記憶容量(以下メモリ容量)が必要であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】M. Blank, et. al.,“Digital Slew Rate and S-Shape Control for Smart Power Switches to Reduce EMI Generation” IEEE TPEL 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、半導体素子を駆動する波形を容易に生成可能にする電子回路及び電力変換器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る電子回路は、半導体素子の駆動回路を制御する制御回路と、前記半導体素子を第1駆動力で駆動することを指示する第1信号を受けて前記第1信号を前記制御回路に出力し、前記第1信号を受けた後、第1時間の間隔もしくは前記第1時間のn倍の時間の間隔(nは2以上の整数)で、前記半導体素子を第2駆動力で駆動することを指示する第2信号を受けて、前記第2信号を前記第1時間より短い遅延量だけ遅延させ、前記第1信号の出力から前記第1時間もしくは前記第1時間のn倍の時間と前記遅延量とが経過した後、前記第2信号を前記制御回路に出力する遅延回路と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る回路システムのブロック図。
【
図2】ハイサイド駆動回路とローサイド駆動回路との詳細回路図。
【
図3】トランジスタのオン数と時間との関係の一例を示す波形。
【
図5】
図3の例における初期データ区間及び続くデータ区間を示す図。
【
図7】遅延回路から出力されるデータ列の例を示す図。
【
図8】第2の実施形態に係る遅延回路の第1の構成例を示す。
【
図9】第2の実施形態に係る遅延回路の第2の構成例を示す。
【
図10】第2の実施形態に係る遅延回路の第3の構成例を示す。
【
図11】第3の実施形態に係るハイサイド制御回路又はローサイド制御回路の構成例を示す図。
【
図12】第3の実施形態に係るハイサイド制御回路又はローサイド制御回路の他の構成例を示す図。
【
図13】第4の実施形態に係る電力変換器のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下では、電子回路及び電力変換器の主要な構成部分を中心に説明するが、電子回路及び電力変換器には、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る回路システムのブロック図である。
図1の回路システムは、本実施形態に係る電子回路であるゲートドライバ回路1と、ゲートドライバ回路1により駆動される半導体素子であるパワー半導体素子10と、入力回路9と、発振器8とを含む。
図1の例では発振器8はゲートドライバ回路1の外部に設けられているが、発振器8がゲートドライバ回路1の内部に設けられていてもよい。ゲートドライバ回路1は電源電圧VDDと、基準電圧Vrefとの間に接続されている。パワー半導体素子10は、nチャネルの電界効果トランジスタ(以下、NMOSトランジスタ)である。パワー半導体素子10として、PMOSトランジスタ、バイポーラトランジスタ、サイリスタ、IGBTなどその他のパワーデバイスを用いてもよい。パワー半導体素子10のドレインは所定のノードに接続され、ソースは基準電圧Vrefに接続されている。ソースの基準電圧はVrefに限定されず、Vref以外の他の電圧でもよい。所定のノードは、例えば、電源電圧、又は他のトランジスタ等の素子の端子である。ゲートドライバ回路1は、パワー半導体素子10のゲート(制御端子)に与える所望のゲート電圧波形を生成するために必要な情報を含むゲート波形生成データの信号を入力回路9から受信する。ゲートドライバ回路1は、ゲート波形生成データに含まれる情報に従って動作することで、所望の波形のゲート電圧(制御電圧)を生成し、生成したゲート電圧をパワー半導体素子10のゲートに供給する。ゲート電圧は、パワー半導体素子10を駆動する電圧である。
【0010】
図2は、ハイサイド駆動回路5Aとローサイド駆動回路5Bとの詳細回路図である。ハイサイド駆動回路5Aは、並列に接続された複数のスイッチング素子として、複数のPMOSトランジスタMP0~MP7を含む。ローサイド駆動回路5Bは、並列に接続された複数のスイッチング素子として、複数のNMOSトランジスタMN0~MN7を含む。
【0011】
PMOSトランジスタMP0~MP6のソースは電源電圧VDDに接続されており、ドレインは、NMOSトランジスタMN0~MN7のドレインに接続されている。NMOSトランジスタMN0~MN7のソースは、基準電圧Vrefに接続されている。PMOSトランジスタMP0~MP7とNMOSトランジスタMN0~MN7とが接続されるノードN0~N7は、パワー半導体素子10のゲートに接続されている。
図2の例では、PMOSトランジスタの個数及びNMOSトランジスタの個数はいずれも8個であるが、PMOSトランジスタの個数及びNMOSトランジスタの個数は2以上であれば、特定の値に制限されない。
【0012】
ハイサイド制御回路4Aは、PMOSトランジスタMP0~MP7に供給するゲート電圧を制御することで、PMOSトランジスタMP0~MP7のオン又はオフを制御する。ローサイド制御回路4Bは、NMOSトランジスタMN0~MN7に供給するゲート電圧を制御することで、NMOSトランジスタMN0~MN7のオン又はオフを制御する。
【0013】
パワー半導体素子10を駆動(オン)する場合、ハイサイド制御回路4Aが、PMOSトランジスタMP0~MP7のうち1つ以上をオンにする。NMOSトランジスタMN0~MN7は全てオフである。オンするPMOSトランジスタ数が多いほど、多くの電流がパワー半導体素子10のゲートに供給される。すなわち、ゲートに供給される電流が多いほど、ゲート電圧の上昇する速度が速くなる。パワー半導体素子10は閾値以上のゲート電圧でオンし、ゲート電圧が大きいほど大きな電流が流れる。すなわち、オンするPMOSトランジスタ数が多いほど、高い駆動力でパワー半導体素子10が駆動される。オン又はオフするPMOSトランジスタ数は、パワー半導体素子10の駆動力を表している。オンする個数が第1個の場合の駆動力は、オンする個数が第2個の場合の駆動力と異なる。パワー半導体素子10のゲートに所望の波形のゲート電圧を供給する場合、MOSトランジスタMP0~MP7のオンする個数と、オンする時間とを制御することで所望のゲート電圧波形を生成できる。例えばドレイン電圧が急速に立ち上がらないような(例えばゲート電圧の微分値が一定となる)ゲート電圧の波形を生成できる。
【0014】
パワー半導体素子10の駆動を停止(オフ)する場合、ローサイド制御回路4Bが、NMOSトランジスタMN0~MN7のうち1つ以上をオンにする。PMOSトランジスタMP0~MP7は全てオフである。オンするNMOSトランジスタ数が多いほど、パワー半導体素子10に流す電流を高速に下げることができる。パワー半導体素子10のゲートに所望の波形のゲート電圧を供給する場合、MOSトランジスタMN0~MN7のオンする個数と、オンする時間とを制御することで所望のゲート電圧波形を生成できる。
【0015】
所望のゲート電圧波形を生成するために、パワー半導体素子10のオン時刻からオフ時刻までの間(制御区間)について、オンするトランジスタの個数(トランジスタオン数)と時間との関係が予め分かっている。
【0016】
図3は、所望のゲート電圧波形を生成するためのトランジスタオン数と時間との関係の一例を示す波形である。横軸が時間、縦軸がトランジスタオン数を表す。パワー半導体素子10をオンにする時刻あるいは、パワー半導体素子10のオンを指示する時刻を基準時刻Rtとする。基準時刻Rtより前において、トランジスタオン数はN0個(N0は例えば0)である。
【0017】
基準時刻Rt以降、ゲート電圧を制御する期間(パワー半導体素子10をオンにしている期間)は、パワー半導体素子10の制御区間CSに対応する。基準時刻Rt以降、制御区間CSが一定時間幅のデータ区間DSに分割される。データ区間DSの時間は、サンプル時間又は第1時間に対応する。
【0018】
基準時刻RtでN2個のPMOSトランジスタがオンにされる。基準時刻Rtの後、最初の2つのデータ区間DSではトランジスタオン数はN2である。3番目のデータ区間DSの途中でトランジスタオン数はN1に変更される。具体的には、3番目のデータ区間DSの開始時刻から遅延量DTだけ経過した時刻Ct1で、オントランジスタ数がN1に変更される。パワー半導体素子10が時刻Rtでオンされた後、最初にトランジスタオン数が変更されるデータ区間(本例では3番目のデータ区間)の位置を、変更区間位置と呼ぶ。変更区間位置又は変更区間位置を特定する情報を、変更区間位置P又は変更区間位置情報Pと記載する。
【0019】
その後、時刻Ct1から2つのデータ区間分の時間(2つのサンプル時間の合計)が経過した時刻Ct2で、オントランジスタ数がN2に変更される。
【0020】
その後、トランジスタオン数は制御区間CSの終わりまでN2で一定である。但し、サンプル時間の単位でトランジスタオン数が変更されることも可能である。
【0021】
本実施形態は、トランジスタオン数を時間に応じて制御することで、所望のゲート電圧波形を生成する処理を、少ないメモリ容量及びメモリからの低いデジタル出力レート(サンプリングレート)で行うことを実現する。以下、
図3の例に基づき説明を行う。
【0022】
図1の入力回路9は、処理回路2が必要な情報を含む信号(変更区間位置情報P、パワー半導体素子10のオン/オフ指示信号)を処理回路2に出力する。また、入力回路9は、ハイサイド制御回路4A、ローサイド制御回路4Bに遅延量DTを含む信号を出力する。
【0023】
発振器8は、クロックを生成し、生成したクロックを処理回路2に出力する。発振器8は、クロックをさらにハイサイド制御回路4A又はローサイド制御回路4Bに出力してもよい。
【0024】
図4は、処理回路2の詳細ブロック図である。処理回路2は、エッジ検出回路11(第1検出回路)と、カウンタ12(第2カウンタ)と、メモリ13(記憶回路)と、を備えている。
図4に示す構成が、ハイサイド用と、ローサイド用にそれぞれ設けられている。
図4では、ハイサイド及びローサイドのいずれか一方を示されている。処理回路2は、発振器8及び入力回路9に接続されている。
【0025】
カウンタ12にはクロックが入力され、クロックのパルス数をカウントする。またカウンタ12は、入力されたクロックを後段の回路に出力(送信)する。後段の回路は、ハイサイド用のカウンタ12の場合は、レベルシフタ3であり、ローサイド用のカウンタ12の場合は、バッファ7である。
【0026】
エッジ検出回路11には、パワー半導体素子10のオン(導通)又はオフ(非導通)を指示するオン/オフ指示信号(第3信号)が入力される。ハイサイド用のエッジ検出回路11の場合は、オン信号が入力され、ローサイド用のエッジ検出回路11の場合はオフ信号が入力される。
【0027】
オン/オフ指示信号は、一例としてPWM(Pulse Width Modulation)信号の形態を有する。エッジ検出回路11は、PWM信号のエッジを検出する。エッジは、パワー半導体素子10のオン(導通)又はオフ(非導通)をオンに指示する時刻に対応する。
【0028】
エッジ検出回路11は、エッジを検出すると、エッジ検出信号をカウンタ12に出力する。カウンタ12は、エッジ検出信号が入力されると、クロックのパルス数のカウントを開始する。また、エッジ検出回路11は、オン/オフ指示信号を、カウンタ12から出力されるクロックに同期させて、後段の回路に出力(送信)する。後段の回路は、ハイサイド用のエッジ検出回路11の場合は、レベルシフタ3であり、ローサイド用のエッジ検出回路11の場合は、バッファ7である。
【0029】
カウンタ12には、変更区間位置情報Pの信号が入力される。変更区間位置情報Pは、前述したように、オンするトランジスタの個数(以下、トランジスタオン数)が最初に変更される時刻Ct1を含むデータ区間の位置を特定する情報である(
図3参照)。変更区間位置情報Pは、一例として複数ビット(例えば4ビット)のデジタル値、又はアナログ電圧値である。オンするトランジスタは、ハイサイドの場合はPMOSトランジスタ、ローサイドの場合はNMOSトランジスタである(以下同様)。
【0030】
メモリ13には、データ又は情報を記憶する任意の記憶素子である。ここではメモリ13は、シフトレジスタであるとする。但し、メモリ13は、NANDやNORなどのFLASHメモリを含んでもよいし、SRAMでもよいし、磁気抵抗メモリ、抵抗変化メモリ等でもよい。
【0031】
メモリ13には、オンするトランジスタの個数(トランジスタオン数)の順序に関する情報が予めデータ又はデータ信号(以下、データに統一)として格納されている。具体的には、トランジスタオン数を含むデータが、当該データを適用する順番に格納されている。
【0032】
データはパワー半導体素子10の駆動力を示す。駆動力は一例として、オンスイッチ数又はパワー半導体素子10に流す電流の大きさに対応する。パワー半導体素子10の第1駆動力を示すデータは第1信号、パワー半導体素子10の第2駆動力を示すデータは第2信号に対応する。第2駆動力は第1駆動力より大きくても、小さくてもよい。本実施形態ではトランジスタオン数によって駆動力を示すとするが、駆動力を示す方法はこれに限定されない。例えば各トランジスタのサイズを異ならせ、オンするトランジスタのサイズを駆動力として表してもよい。この場合、オンするトランジスタのサイズを切り替えることでパワー半導体素子10の出力電流を調整できる。
【0033】
1つのデータのビット数は、ハイサイド駆動回路5A又はローサイド駆動回路5Bで用いられるトランジスタの最大数に応じて決まる。一例として、ビット数が3であれば、最大8個までトランジスタのオン数を定義できる。図ではビット数をX(Xは1以上の整数)と表記している。一例として、データが3ビットの場合で、5個のトランジスタをオンする場合、データのビットは“101”である。
【0034】
トランジスタオン数が最初に変更される時刻Ct1を含むデータ区間(データ区間DSpとする)より前の1つ以上のデータ区間(変更区間位置情報Pに示されるデータ区間の前までの1つ以上のデータ区間)を初期データ区間DSiniと記載する。データ区間DSpは、パワー半導体素子10が基準時刻Rtでオンされてから最初にトランジスタオン数が変更されるデータ区間(本例では3番目のデータ区間)である。
【0035】
図5は、
図3の例における初期データ区間DSini及びデータ区間DSpを示す。
【0036】
データ区間DSpの位置は、前述した変更区間位置Pに対応する。初期データ区間DSiniは、データ区間DSpより前のデータ区間である。
【0037】
図5の例では初期データ区間DSiniは2つであるが、初期データ区間DSiniは1つでもよい。これらの初期データ区間DSiniでは、トランジスタオン数が同一(固定)であるため、これらの初期データ区間DSiniに対して共通に、データを1つのみメモリ4に記憶しておく。
【0038】
データ区間DSp以降については、データ区間の時間長に対応するサンプル時間毎にトランジスタオン数を含むデータが格納されている。
【0039】
このように初期データ区間DSiniについてはデータを1つのみ記憶することで、メモリ4のサイズを低減できる。初期データ区間DSiniの個数が多いほど、サイズ低減の効果が大きくなる。但し、初期データ区間DSiniについてもデータ区間毎にデータを記憶してもかまわない。
【0040】
図4のカウンタ12は、エッジ検出回路11の検出時刻から、各初期データ区間DSiniのサンプル時間に対応するクロックのパルス数をカウントする。カウント開始時に、すなわちオン/オフ指示信号が検出されたことに応じて、メモリ13に記憶された初期データ(固定データ)を出力(送信)する。その後、初期データ区間に対応するクロックのパルス数がカウントされるごとに、初期データ区間が続く間、初期データを繰り返し出力する。初期データ区間が終わると、その後は、サンプル時間に対応するクロックのパルス数をカウントするごとに、初期データに続くデータ群を、格納されている順番に出力する。つまり、メモリ13は、サンプル時間がN(Nは2以上の整数。本例では2)回カウントされる前までは、サンプル時間がカウントされるごとに、初期データを繰り返し出力する。メモリ13は、サンプル時間がN回カウントされた後、初期データに続くデータ群を、サンプル時間の間隔で遅延回路41に出力する。このようにすることで、一定のデータ出力レートで、1つ以上の初期データおよび続くデータ群が順次出力される。このようにメモリ13は、カウンタ12によりサンプル時間もしくはサンプル時間のn(nは2以上の整数)倍の時間が経過した後、初期データに続くデータ群を、順次、サンプル時間の間隔で出力する。
【0041】
図4の例では、2つの初期データ区間DSiniが存在し、2つの初期データ区間DSiniについて初期データ(Diniと記載する)を、クロックの所定パルス数(例えば1パルス)間隔で出力している。続けて、データ区間Dspに対応するデータD1が出力され、さらにその後、データD2、データD3・・・が、それぞれクロックの所定パルス数ごとに(サンプル時間の間隔あるいは第1時間の間隔で)出力されている。このようにして2回の初期データDiniと、データD1、データD2、データD3・・・が一定のデータ出力レートで出力される。一例として、データ区間の幅(サンプル時間)が一例として10nとすると、メモリ13からのデータ出力レート(速度)は、100MS/sである。
【0042】
メモリ13にはデータを出力するため、一構成例として、データのビット数と同じ本数のデータ線が出力側に設けられていてもよい。一例として、3ビットの値をパラレルに出力する場合、メモリ13からは一例として3つのビットに対応する3本の信号線が出力側に接続される。
【0043】
レベルシフタ3は、処理回路2から入力されるデータ、オン/オフ指示信号、クロックをそれぞれハイサイド用にレベルシフト(電圧上昇)し、レベルシフト後のデータ、オン/オフ指示信号、クロックをそれぞれハイサイド制御回路4Aに出力する。レベルシフタ3を、処理回路2とハイサイド制御回路4Aとの間ではなく、ハイサイド制御回路4Aとハイサイド駆動回路5Aとの間に設けてもよい。
【0044】
バッファ7は、処理回路2から入力されるデータ、オン/オフ指示信号、クロックの電圧を補正し(例えば配線抵抗による電圧降下を補正し)、それぞれローサイド制御回路4Bに出力する。
【0045】
図6は、ハイサイド制御回路4Aの詳細ブロック図である。ローサイド制御回路4Bの構成は、信号の入力元がバッファ7であることを除き、
図6と同様であるため説明を省略する。ハイサイド制御回路4Aは、遅延回路41と、エッジ検出回路42と、カウンタ43と、スイッチ回路44と、端子45(受信回路)と、制御回路46とを備えている。
【0046】
エッジ検出回路42及び前述したエッジ検出回路11は、パワー半導体素子10のオン(導通)又はオフ(非導通)を指示するオン/オフ指示信号(第3信号)を検出する第1検出回路の一例に相当する。カウンタ43又は前述したカウンタ12は、本実施形態に係る第1カウンタの一例に相当する。
【0047】
遅延回路41は、処理回路2からレベルシフタ3を介してパワー半導体素子10の駆動力(トランジスタオン数)を示すデータを受信する。
図5の例では、データDini、Dini、D1、D2、D3・・・の順序で、サンプル時間の間隔で(一定のデータ出力レート)で入力されるデータを受信する。一例としてデータが3ビットの場合、3ビットを3本の信号線でパラレルに同時に受信する。
【0048】
端子(受信部)45は、データ区間DSpに対するデータ(図の例ではデータD1)に対して、サンプル時間より短い遅延量TDを示す遅延指示信号(第4信号)を入力回路9からレベルシフタ6を介して、受信する。レベルシフタ6は、入力回路9から入力される遅延指示信号をハイサイド用にレベルシフト(電圧上昇)し、レベルシフト後の信号を端子45に出力する。サンプル時間の逆数が、データ出力レートになる。
【0049】
端子45はスイッチ回路44を介して遅延回路41に接続されている。スイッチ回路44がオフにされている間、遅延指示信号は端子45で保持されている。これによりスイッチ回路44は、遅延指示信号を保持する機能を有する。
【0050】
エッジ検出回路42は、処理回路2からレベルシフタ3を介して入力されるオン/オフ指示信号(PWM信号)を受信する。エッジ検出回路42は、オン/オフ指示信号のエッジを検出し、エッジ検出信号をカウンタ43に出力する。
【0051】
カウンタ43は、処理回路2からレベルシフタ3を介して入力されるクロックを受信する。またカウンタ43は入力回路9から変更区間位置情報Pを含む信号を受信する。処理回路2から変更区間位置情報Pを示す信号を受信する構成でもよい。
【0052】
カウンタ43は、エッジ検出信号(本例では立ち上がりエッジ)に同期してクロックのカウントを開始する。エッジ検出信号の時刻(オン/オフ指示信号の検出時刻)から全ての初期データ区間DSiniの終了までの時間に対応するクロック数をカウントする。すなわち、全ての初期データ区間DSiniに対応するサンプル時間の合計をカウントする。換言すれば、変更区間位置情報Pが示すデータ区間Dspの直前のデータ区間の末尾までの時間をカウントする。なお、前述の変更区間位置情報P(本例では3番目のデータ区間を示す)は、エッジ検出信号の時刻から、最後の初期データ区間の末尾の時刻までの間に、サンプル時間(第1時間)が含まれている回数に1を加算した値に対応する。
【0053】
カウンタ43は、全ての初期データ区間DSiniに対応するサンプル時間の合計をカウントすると、スイッチ回路44をオンにする。これにより端子45に保持されている遅延指示信号(第4信号)がスイッチ回路44を介して出力され、遅延回路41に受信(入力)される。例えば、初期データ区間DSiniがN個であれば、スイッチ回路44は、サンプル時間がN回カウントされた後、遅延指示信号を出力する。スイッチ回路44は、サンプル時間もしくはサンプル時間のn倍の時間がカウントされた後、遅延指示信号を出力する。
【0054】
遅延回路41は、イネーブル端子に遅延指示信号が受信されると、遅延処理が有効になる。遅延処理が有効になっていない間は、処理回路2からレベルシフタ3を介して入力されるデータ(パワー半導体素子10の駆動力を示す信号)を、入力される順に、サンプル時間の間隔で出力(送信)する。すなわち一定のデータ出力レートで出力する。一方、スイッチ回路44から遅延指示信号が入力されると、遅延処理が有効になり、遅延回路41は、遅延指示信号の入力と同期したタイミングで入力されるデータを、遅延量TDだけ遅延させる。遅延回路41は、遅延させたデータを、サンプル時間と遅延量TDとの合計だけ経過した後、出力(送信)する。遅延指示信号の入力と同期したタイミングで入力されるとは、例えば遅延指示信号の入力と同時又は一定の誤差時間内のタイミングで入力されることである。遅延回路41は、遅延させたデータを出力した後は、遅延処理が無効になり、後続して入力されるデータを、サンプル時間の間隔で出力する。遅延指示信号の入力と同期したタイミングで入力されるデータは、当該データより前にデータを受けた後、サンプル時間もしくはサンプル時間のn(nは2以上の整数)倍の時間の間隔で入力されるデータに対応する。遅延回路41は、遅延させたデータを、サンプル時間もしくはサンプル時間のn倍の時間と遅延量TDとが経過した後、出力(送信)する。
【0055】
図6に示した例では、遅延回路41には遅延指示信号の入力に同期してデータD1が入力される。このため、遅延回路41は、データD1を、遅延指示信号で示される遅延量TDだけ遅延させる。遅延回路41は、遅延量TDだけ遅延させられたデータD1を出力し、データD1の出力後、データD2、D3・・・を、サンプル時間の間隔で出力する。
【0056】
図7は、遅延回路41から出力されるデータ列の例を示す。最初の2つのデータDiniがサンプル時間の間隔で出力される。2つ目のデータDiniからサンプル時間と遅延量TDとの合計だけ時間が空いた後、データD1が出力される。データD1の出力に続けて、データD2、D3・・・が、サンプル時間の間隔で出力される。
【0057】
遅延回路41による遅延量TDの分解能は、メモリ13のデータ出力レートの時間より高い必要がある。一例として、遅延量TDの分解能は一例として1nsecである。この遅延量を達成する遅延回路は任意の構成のアナログ回路又はデジタル回路で実現できる。遅延回路の構成例は後述する。
【0058】
遅延回路41から出力されたデータDini、Dini、D1、D2、D3・・・は制御回路46に入力される。
【0059】
図6の制御回路46は、遅延回路41から順次入力されるデータに基づき、ハイサイド駆動回路5Aを制御する。すなわち、制御回路46は、ハイサイド駆動回路5Aにおけるトランジスタ(PMOSトランジスタMP0~MP7)のオン及びオフを制御する。制御回路46は、遅延回路41からデータが入力されるごとに、データが示す個数だけトランジスタを選択し、選択したトランジスタをオンにする制御信号を生成する。生成した制御信号を、オンにするトランジスタのゲートに供給する。オンするトランジスタの個数に応じて、どのトランジスタを選択するかは予め決められている。制御回路46は論理回路を用いて構成してもよいし、テーブルを用いて構成してもよい。
【0060】
一例として、オンにするトランジスタ数が1個のときはPMOSトランジスタMP0、2個のときはPMOSトランジスタMP0、MP1、3個のときはPMOSトランジスタMP0~MP2である。そして、4個のときはPMOSトランジスタMP0~MP3、5個のときはPMOSトランジスタMP0~MP4、6個のときはPMOSトランジスタMP0~MP5である。7個のときはPMOSトランジスタMP0~MP6、8個のときはPMOSトランジスタMP0~MP7を選択する。選択する方法は任意でよい。
【0061】
例えばデータDiniが“101”(=5)、データD1が“011”(=3)、データD2が“011”(=3)、データD3が“101”(=5)であるとする。この場合、最初に入力されるデータDiniに対して最初に5個のPMOSトランジスタMP0~MP4をサンプル時間の間、オンにし、次に入力されるデータDiniに対しても、続けてサンプル時間の間、PMOSトランジスタMP0~MP4のオンを維持する。次にデータD1の入力は、遅延量TDだけ遅延させられているため、遅延量TDだけ、PMOSトランジスタMP0~MP4のオンを継続する。遅延量TDの時間の経過後、遅延して入力されたデータD1に対して3個のPMOSトランジスタMP0~MP2をサンプル時間の間オンにする。続けて入力されるデータD2に対しても、3個のトランジスタMP0~MP2をサンプル時間の間オンにし、続けて入力されるデータD3に対して、5個のPMOSトランジスタMP0~MP4をサンプル時間の間オンにする。
【0062】
1回以上入力されるデータDiniに対してPMOSトランジスタをオンにする制御信号は、一例としてパワー半導体素子10を第1駆動力で駆動する第1制御信号に対応する。当該データDiniに続いて入力されるデータD1に対してPMOSトランジスタをオンにする制御信号は、パワー半導体素子10を第2駆動力で駆動する第2制御信号に対応する。
【0063】
本実施形態では処理回路2とハイサイド制御回路4A間にレベルシフタが設けられていたが、レベルシフタを設けずに、処理回路2とハイサイド制御回路4A間を直接接続してもよい。同様に、入力回路9とハイサイド制御回路4Aとの間にレベルシフタを設けずに、入力回路9とハイサイド制御回路4A間を直接接続してもよい。同様に、処理回路2とローサイド制御回路4B間にバッファを設けずに、処理回路2とローサイド制御回路4B間を直接接続してもよい。
【0064】
本実施形態の効果について説明する。
図3又は
図5に示した波形を生成することを考える。所望のゲート波形を生成する時間範囲(制御区間CS)には、最大で1μsec必要であるとする。またオンするトランジスタのビット数(データサイズ)は3ビット必要であるとする。遅延量DTを表すために、1nsecの分解能が必要であるとする。
【0065】
この条件の元、比較例としてメモリから一定のレートでデータを駆動回路に出力することで、
図3又は
図5と同様のゲート波形を生成する場合を考える。この場合、ゲート波形の生成のために1nsecのデータ区間ごとにメモリにデータを記憶する必要がある。メモリのデータ出力レートを1GS/sとする必要がある。また、1000個のデータ区間が必要になる。よって、データサイズが3ビットとすると、必要なメモリの容量は3kビットである。
【0066】
これに対して、本実施形態では、データ区間DSの幅として、一例として10nの分解能が必要であり、データ区間数(初期データ区間を含む)は100個でよく、メモリのデータ出力レートは100MS/sでよい。データサイズは3bitとする。低面積の遅延回路の追加が必要になるものの、必要なメモリの容量は、300ビットである。遅延量TDを表すのに4ビット、変更区間位置情報として4ビットが必要としても、大きな影響はない。初期データ区間数が2以上であれば、同一のデータを複数の初期データ区間で共通に適用できるため、初期データ区間数が増える分、メモリの容量を削減できる。さらに、ゲート波形を制御する制御範囲CSのうち、オンするトランジスタ数を変更する可能性があるデータ区間が、初期データ区間の後、連続する10個以内であり、当該10個のデータ区間の後は、オンするトランジスタ数が一定であるとする。この場合は、当該10個のデータ区間で任意のゲート波形を生成(オンするトランジスタ数を変更)できればよい。このため、10個のデータ区間分の30ビットと、初期データ区間用のデータ(3ビット)で済むため、メモリ容量をより一層削減できる。
【0067】
以上、本実施形態により、小さいメモリ容量及び低いデータ出力レートで、所望のゲート電圧波形を生成することができる。
【0068】
[変形例]
上述した実施形態ではスイッチ回路44から遅延指示信号を遅延回路41に出力したが、遅延指示信号を予め遅延回路41に保持させておいてもよい。遅延指示信号には予め何番目に入力されるデータに対してどれだけの遅延量を与えるかの情報が含まれている。遅延回路41は当該順番のデータが入力された場合に、当該データを遅延させる。遅延回路41は例えばデジタル回路、アナログ回路又はこれらの両方により構成すればよい。
【0069】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係るゲートドライバ回路おける遅延回路41の第1の構成例を示す。遅延回路41は、第1インバータ81と、第1インバータ81の後段に接続された第2インバータ82とを備えている。第1インバータ81の電源電圧(第1電圧)側の端子には電流源83(第1電流源)が接続され、基準電圧(第2電圧)側の端子には電流源84(第2電流源)が接続されている。第1インバータ81、第2インバータ82は一例としてそれぞれCMOS回路により構成され、電流源83、84はそれぞれN型又はP型のMOSトランジスタにより構成される。
図8に示す構成が、データの各ビットに対して配置されている。図示の構成は1つのビットに対応する構成である。データが3ビットであれば、図示の構成が並列に3つ設けられる。
【0070】
第1インバータ81の入力端子には処理回路2からデータ(Dini、Dini、D1、D2、D3・・・)のビットのうち、該当するビットの信号が入力される。第1インバータ81は、入力端子から入力されるビットを反転させる。第2インバータ82は、第1インバータ81で反転させられたビットを再度反転させる。第2インバータ82の出力は制御回路46に接続される。
【0071】
遅延回路41は、電流源83、84を制御することで第1インバータ81の出力応答を制御できる。これにより、第1インバータ81の出力の遅延量を制御できる。例えばビット“1”を“0”に反転させる場合(例えばハイレベルが10[V]、ローレベルが5[V]であり、10[V]から5[V]にする場合)、電流源84の電流を小さくするほど(電流源84を絞るほど)出力ビットの信号の遅延を大きくできる。逆に、“0”から“1”に反転させる場合、電流源83の電流を小さくするほど(電流源84を絞るほど)、出力ビットの信号の遅延を大きくできる。遅延量TDの大きさに応じた電圧を、電流源83、84(MOSトランジスタ)のゲートに与えることで、このように遅延量TDを制御することができる。このような構成にすることによって、比較的小面積な回路で遅延を実現することができる。
【0072】
図8の例では第1インバータ81は1つのインバータを含む回路であったが、第1インバータ81は、2つ以上インバータを従属接続した回路でもよい。従属接続したインバータ数が奇数のときは、当該回路は入力ビットを反転させ、偶数のときは入力ビットを反転させない回路となる。遅延回路41は、当該回路と第1電圧との間に接続された第1電流源と、当該回路と第2電圧との間に接続された第2電流源を制御することで、当該回路の出力応答を制御する。第2インバータ82は1つのインバータを含む回路であったが、第2インバータ82は、2つ以上インバータを従属接続した回路でもよい。従属接続したインバータ数が奇数のときは、当該回路は入力ビットを反転させ、偶数のときは入力ビットを反転させない回路となる。
【0073】
図8の構成では電流源が第1インバータ81に接続されていたが、第2インバータ82に電流源を接続する構成も可能である。
【0074】
図9は、第2の実施形態に係るゲートドライバ回路おける遅延回路41の第2の構成例を示す。第2インバータ82の電源電圧(第3電圧)側の端子には電流源85(第3電流源)が接続され、基準電圧(第4電圧)側の端子には電流源86(第4電流源)が接続されている。出力応答を制御する対象となるインバータが第2インバータ82であること以外は
図8と同様であるため、
図9の動作の説明は省略する。第2インバータ82が2つ以上インバータを従属接続した回路である場合、当該回路と第3電圧との間に接続された第3電流源と、当該回路と第4電圧との間に接続された第4電流源と制御することで、当該回路の出力応答を制御する。
【0075】
なお、第1インバータ81と第2インバータ82との両方にそれぞれ2つの電流源を接続する構成も可能である。
【0076】
図10は、第2の実施形態に係るゲートドライバ回路おける遅延回路41の第3の構成例を示す。遅延回路41は、フリップフロップ回路61とパルス発生回路62とを含む。
図10に示す構成が、データの各ビットに対して配置されている。図示の構成は1つのビットに対応する構成である。データが3ビットであれば、図示の構成が並列に3つ設けられる。
図10の構成では、パルス発生回路62で発生させるパルスに基づきフリップフロップ回路61を動作させる。フリップフロップ回路61は、処理回路2から入力されるビットをフリップフロップ回路61で一時的に保持し、保持しているビットを出力する動作をパルスに従って行う。遅延量に応じてパルスの発生を制御することで、ビット信号を遅延させることができる。フリップフロップ回路61及びパルス発生回路62を用いることで、微細化したプロセスにおいては、より小面積に遅延回路を生成することができる。
【0077】
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態に係るゲートドライバ回路におけるハイサイド制御回路4A又はローサイド制御回路4Bの構成例を示す。遅延量TDがデジタル信号として入力回路9から与えられる場合に、デジタル信号をアナログ信号に変換するデジタルアナログ変換器71(DA変換器)が設けられている。デジタルアナログ変換器71はデジタル信号の遅延量TDを、アナログ信号に変換する。遅延回路41は
図8に示した構成が用いられているが、他の構成でもよい。
図11の構成により、遅延量の信号はデジタル信号で遅延回路41に与えることができるため、遅延量の信号のノイズ耐性を高めることができる。
【0078】
図12は、第3の実施形態に係るゲートドライバ回路におけるハイサイド制御回路4A又はローサイド制御回路4Bの他の構成例を示す。スイッチ回路44の前段にDLL(遅延同期回路)81が設けられている。DLL81は、基準信号(内部のクロック信号)に応じて入力信号の位相を調整する。DLL81の入力信号はアナログ信号でも、デジタル信号でもよい。
【0079】
DLL81は、入力回路9から入力される入力信号である遅延量の信号(第4信号)の位相を調整して、調整後の信号をスイッチ回路44に出力する。一例として遅延量の信号の位相と基準信号(クロック信号)の位相との差を一定にする。DLL81は、入力信号と基準信号の位相比較を行い、入力信号の位相および基準信号の位相が一定の関係を維持するように制御する回路である。ゲートドライバ回路1又は半導体素子10では、プロセス(P)、電源電圧(V)、温度(T)等に起因して回路の遅延時間が変動し得る。すなわち、半導体回路のデバイスのばらつき(閾値のばらつき等)、電源電圧、温度といったPVT特性に起因して、回路の遅延時間が変動し得る。DLL81は、遅延時間の誤差を、基準信号を用いて計測し、当該誤差を補正する入力をフィードバックすることで、これに追従(補償)した動作を行うことができる。これにより、PVT特性によらず、遅延量TDの信号の遅延の変動を防止できる。よって、遅延指示信号が遅延することを防止し、高精度に遅延量を遅延回路41に提供できる。
【0080】
(第4の実施形態)
図13は、第4の実施形態に係る電力変換器のブロック図である。
図13の電力変換器21は、三相モータ22を駆動するための交流電圧を発生させる3相インバータである。電力変換器21は、複数のアーム23a~23fと、直流電源24と、コンバータ25と、平滑コンデンサC2とを有する。
【0081】
複数のアーム23a~23fのそれぞれは、上述した第1の実施形態~第3の実施形態で示したいずれかのゲートドライバ回路及びパワー半導体素子を有する。アーム23a~23fは、それぞれ所定のタイミングでオン又はオフ動作を行う。
【0082】
コンバータ25はDC-DCコンバータであり、直流電源24からの直流電圧を、電圧レベルの異なる直流電圧に変換する。平滑コンデンサC2は、コンバータ25から出力される電圧を平滑化する。
【0083】
アーム23a~23fのうち、対となる2つのアームが同時にオンし、三相モータ22内の対応するコイルに電流を流す。同時にオンする2つのアームを順次切り替えることで、モータを三相駆動することができる。すなわち、同時にオンするスイッチング素子の対を順次切り替えることにより、直流電源24の直流電圧から3相交流を生成することができる。2つのアームを同時にオンするとは、必ずしもオンする開始タイミングが一致している必要はなく、少なくとも一部の期間が2つのアームが同時にオンになっていればよい。
【0084】
上述した各実施形態の説明で記載されたNMOSトランジスタの代わりに、PMOSトランジスタを用いてもよいし、PMOSトランジスタの代わりにNMOSトランジスタを用いてもよい。また上述した各実施形態の説明で記載されたMOSトランジスタの代わりに、バイポーラトランジスタ又はIGBT等を用いてもよい。
【0085】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 ゲートドライバ回路
2 処理回路
3、6 レベルシフタ
4A ハイサイド制御回路
4B ローサイド制御回路
5A ハイサイド駆動回路
5B ローサイド駆動回路
7 バッファ
8 発振器
9 入力回路
10 パワー半導体素子
11 エッジ検出回路(第1検出回路)
12 カウンタ(第1カウンタ)
13 メモリ
21 電力変換器
22 三相モータ
23a、23b、23c、23d、23e、23f アーム
24 直流電源
25 コンバータ
41 遅延回路
42 エッジ検出回路(第1検出回路)
43 カウンタ(第1カウンタ)
44 スイッチ回路
45 端子(受信部)
46 制御回路
61 フリップフロップ回路
62 パルス発生回路
71 デジタルアナログ変換器
81 第1インバータ
82 第2インバータ
83 電流源(第1電流源)
84 電流源(第2電流源)
85 電流源(第3電流源)
86 電流源(第4電流源)