(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】スプリング巻き機
(51)【国際特許分類】
E06B 9/62 20060101AFI20240603BHJP
E06B 9/02 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
E06B9/62 B
E06B9/02 A
(21)【出願番号】P 2020182192
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【氏名又は名称】稲葉 滋
(74)【代理人】
【識別番号】100145838
【氏名又は名称】畑添 隆人
(72)【発明者】
【氏名】浅利 啓太
(72)【発明者】
【氏名】坂本 克広
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-8489(JP,A)
【文献】特開平4-24387(JP,A)
【文献】米国特許第6125582(US,A)
【文献】米国特許第3979977(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00-9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトには開閉体の重量をバランスさせるスプリングが搭載されており、前記スプリングを巻き締めて当該シャフトに回転力を付与するスプリング巻き機であって、
前記シャフトの挿通部を備えた平歯車と、
前記平歯車の回転力を前記スプリングに伝動させる手段と、
前記平歯車と噛合するウォームと、
前記ウォームと一体で回転し、回動駆動源と接続可能な駆動軸と、
を備え、
前記平歯車は2枚のプレート間に回転自在に支持されており、
プレート間には、前記平歯車の周縁の歯に近接して、複数のガイドが設けてあり、前記ガイドは、前記平歯車の歯に接触可能な周面を備えている、
スプリング巻き機。
【請求項2】
前記複数のガイドは、ウォームとの噛合部位を除いて、平歯車の周方向に亘って設けてある、請求項1に記載のスプリング巻き機。
【請求項3】
前記複数のガイドは、ウォームから遠い側に密に設けてある、請求項2に記載のスプリング巻き機。
【請求項4】
前記ガイドは回転自在なローラである、請求項1~3いずれか1項に記載のスプリング巻き機。
【請求項5】
前記ガイドはベアリングである、請求項4に記載のスプリング巻き機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリング巻き機に係り、詳しくは、開閉体の重量をバランスさせるスプリングが搭載されているシャフトにおいて、前記スプリングを巻き締めて当該シャフトに回転力を付与するスプリング巻き機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャッターの中には、扉体の重量をバランスさせるバランススプリングが搭載されたシャフトを備えるものがあり、このようなシャッターとしてオーバーヘッドドアを挙げることができる。オーバーヘッドドアのワイヤを巻き取るシャフトに搭載しているバランススプリングは、一端をブラケットに固定し、他端を当該バランススプリングに固定したワインディングプラグを介してシャフトに固定している。このバランススプリングはパネル開放時の持ち上げ力を蓄えるように予め所定量巻き締める必要があるが、この巻き締め作業としては、手動で行うもの(特許文献1の従来例)、電動で行うもの(特許文献2、3)が知られている。
【0003】
特許文献1には、バランススプリングには捩りコイルバネが使用され、該バランススプリングが所定量回転され初期トルクが付与された状態で一端がブラケット側に固定され、一端がシャフト側にプラグを介して固定され、前記シャフトに巻取方向の回転力を付勢する様になっており、シャッタカーテンにはワイヤを介して上昇力が付勢され、前記シャッタカーテンを開閉する際の動力が軽減されていること、バランススプリングは当初は一端がブラケットに固定され、他端には固定プラグが固定されており、固定プラグはシャフトに対して回転自在であり、該シャフトには固定されていない状態となっており、取付現場で、固定プラグに2本の棒(本願
図2に参照番号18´で示している)を交互に差込みながら、固定プラグを所定量回転させて巻き締め作業を行った後に、ボルトにより固定プラグをシャフトに固定すること、が記載されている。
【0004】
特許文献2、3には、電動ドリルを用いて電動でバランススプリングの巻き締め作業を行う装置が開示されている。特許文献2には、シャフトと同軸に従動ギヤが固定されたシャッターの引上げ装置であって、シャフトに係合させるフックと、該フックを上記シャフトの回転方向に対して固定する固定部材と、上記シャフトにフックを固定した状態で、上記従動ギヤに対して歯合する駆動ギヤと、該駆動ギヤに一端が連結され、他端は電動ドリルに連結された駆動力伝達手段と、を具備していることを特徴とするシャッターの引上力調整治具が開示されている。
【0005】
特許文献3には、平歯車とウォームが、歯車機構により伝動連結されており、平歯車はシャフトを受け入れるようなスロットを備えており、ウォームには駆動軸が一体で設けてあり、駆動軸を電動ドリルで回転させることで、平歯車を回転させ、平歯車の回転力でコイルスプリングを捩じるような電動ツールが開示されている。
【0006】
特許文献3に類似した電動ドリルを用いたスプリング巻き機として、平歯車は、円周状の溝部を備えたフレームないしケーシング内に納まっており、平歯車をウォームに直接噛合させているものが実用化されている。このタイプのものでは、平歯車の回転時における平歯車と溝部の摩擦抵抗が大きく、回転トルクの伝達効率が悪いと共に、平歯車の耐久性が低いという課題がある。また、平歯車が負荷を受けて回転する際に、フレームが僅かに開いて平歯車とウォームとの噛み合いが不安定となり、平歯車とウォームとの噛み合い深さが小さいと、平歯車の歯が欠けやすくなるとう不具合がある。一方、平歯車と溝部のクリアランスを小さくすると、平歯車と溝部の摩擦抵抗がさらに大きくなってしまう。
【文献】特開2005-226291
【文献】特許第2539533号
【文献】米国特許第3979977号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、スプリング巻き機において、駆動源の回転トルクのスプリングへの伝達効率を向上させると共に、平歯車等の構成部品の耐久性を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が採用した技術手段は、
シャフトには開閉体の重量をバランスさせるスプリングが搭載されており、前記スプリングを巻き締めて当該シャフトに回転力を付与するスプリング巻き機であって、
前記シャフトの挿通部を備えた平歯車と、
前記平歯車の回転力を前記スプリングに伝動させる手段と、
前記平歯車と噛合するウォームと、
前記ウォームと一体で回転し、回動駆動源と接続可能な駆動軸と、
を備え、
前記平歯車は2枚のプレート間に回転自在に支持されており、
プレート間には、前記平歯車の周縁の歯に近接して、複数のガイドが設けてあり、前記ガイドは、前記平歯車の歯に接触可能な周面を備えている、
スプリング巻き機、である。
【0009】
1つの態様では、前記複数のガイドは、ウォームとの噛合部位を除いて、平歯車の周方向に亘って設けてある。
【0010】
1つの態様では、前記複数のガイドは、ウォームから遠い側に密に設けてある。
【0011】
1つの態様では、前記ガイドは回転自在なローラである。
後述する実施形態では、前記ガイドはベアリングである。
【0012】
本発明に係るスプリング巻き機は、スプリングの巻き締め作業に加えて、巻き戻し作業に用い得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、平歯車を2枚のプレート間に回転自在に支持すると共に、プレート間には、前記平歯車の周縁の歯に近接して複数のガイドを設け、前記平歯車の歯にガイドの周面を接触可能としたので、平歯車の歯が1つあるいは複数のガイドの周面に接触することで、平歯車の回転時における当該平歯車の変位を低抵抗で規制し、また、平歯車とウォームとの適切な噛合状態が維持されるので、平歯車が負荷を受けて回転する際に、平歯車とウォームとの噛み合いが不安定となることに起因する平歯車の歯の破損を可及的に防止する。
もって、駆動源(例えば電動ドリル)の回転トルクのスプリングへの伝達効率を向上させると共に、平歯車等の構成部品の耐久性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】全閉姿勢にあるオーバーヘッドドアの正面図である。
【
図2】(A)はワイヤ巻取機構の斜視図、(B)はオーバーヘッドドアのワイヤ巻取機構のワインディングプラグを示す図、(C)はバランススプリングとワインディングプラグとの連結を示す図である。
【
図3】本実施形態に係るスプリング巻き機の斜視図である。
【
図4】本実施形態に係るスプリング巻き機を示す正面図及び側面図である。
【
図5】
図4に示すスプリング巻き機において、プラグ支持ボルトを外した状態を示す図である。
【
図6】
図4に示すスプリング巻き機において、一方のプレートを外した状態を示す図である。
【
図7】
図6の部分拡大図であって、ベアリングの配置態様を説明する図である。
【
図8】スプリング巻き機の駆動軸の支持構造を説明する図である。
【
図9】本実施形態に係るスプリング巻き機をプラグにセットした状態を示す図である。
【
図10】本実施形態に係るスプリング巻き機をプラグにセットした状態を示す図である。
【
図12】本実施形態に係るプレートを示す図である。
【
図13】本実施形態に係る軸受ベースを示す図である。
【
図15】本実施形態に係る第1取付プレートを示す図である。
【
図16】(A)は第2取付プレートを示し、(B)はボルト支持プレートを示し、(C)はプラグ支持ボルトを示し、(D)(E)は、平歯車から分離可能な分割アセンブリを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、全閉姿勢にあるオーバーヘッドドアの正面図であり、オーバーヘッドドアの扉体は、横長方形状の複数枚のパネルPを上下方向に互いに回動可能に連結することで構成されている。各パネルPの幅方向左右両端には、ローラブラケットが設けてあり、扉体は、各パネルPの左右両端のローラブラケットのガイドローラが開口部の幅方向左右に設けたガイドレールGに案内されながら上昇、下降することで開口部を開閉する。ガイドレールGは、開口部の高さ方向に延びる第1部位と、第1部位の上方から室内側に向かって後方に延びる湾曲状の第2部位と、第2部位の後方から天井に沿って後方に延びる第3部位と、からなる。
【0016】
最下位のパネルPの幅方向左右両端には、ワイヤWが連結されており、開口部の上方には、ワイヤWの巻取機構1が設けてある。開口部全閉状態から、ワイヤ巻取機構1によって、左右のワイヤWを同時に引き上げることで、各パネルPが第1部位に位置する垂直姿勢から第3部位に位置するほぼ水平姿勢まで引き上げられて、開口部全開状態となる。
【0017】
ワイヤ巻取機構1は、開口幅方向両端の上方に位置する左右の巻取ドラム1A、1Bと、左右の巻取ドラム1A、1Bを一体で同期して回転可能とする回転機構を備えている。
図2(A)に示すように、本実施形態に係る回転機構は、開口幅方向に直列に接続された2本の第1シャフト2A、第2シャフト2Bを備え、第1シャフト2A、第2シャフト2Bの一方の端部同士がジョイント20を介して一体で回転可能に連結されており、第1シャフト2A、第2シャフト2Bの他方の端部が、それぞれ左右の巻取ドラム1A、1Bに一体で回転可能に連結されている。本実施形態では回転機構は2本のシャフトを備えているが、シャフトの本数は、開口幅寸法や扉体の重量等に応じて、1本でもよく、あるいは3本以上のシャフトを一体で回転するように連結したものであってもよい。
【0018】
第1シャフト2Aの長さ方向の一端側は、ブラケット3Aに回転自在に支持されており、他端側はブラケット4Aに回転自在に支持されている。第2シャフト2Bの長さ方向の一端側は、ブラケット3Bに回転自在に支持されており、他端側はブラケット4Bに回転自在に支持されている。ブラケット3A、3B、4A、4Bは、それぞれ開口幅方向に所定の間隔を存して躯体に対して持ち出し状に固定されており、ブラケット3A、4Aが第1シャフト2Aを、長さ方向の2箇所で回転自在(ベアリングによって)に支持しており、ブラケット3B、4Bが第2シャフト2Bを、長さ方向の2箇所で回転自在(ベアリングによって)に支持している。
【0019】
開口部上方の両端部位には、ブラケット5A、5Bがそれぞれ躯体に対して持ち出し状に固定されている。第1巻取ドラム1Aは、ブラケット4Aとブラケット5Aの間に回転自在(ベアリングによって)に支持されている。第2巻取ドラム1Bは、ブラケット4Bとブラケット5Bの間に回転自在(ベアリングによって)に支持されている。
【0020】
第1シャフト2Aには第1コイルスプリング6Aが外装されており、第1コイルスプリングの一端は、ブラケット3Aに固定された第1筒状体60の外面に巻き付けて接続されており、第1コイルスプリングの他端は第1シャフト2Aと一体で回転する第2筒状体ないしワインディングプラグ61の外面に巻き付けて接続されている。第2シャフト2Bには第2コイルスプリング6Bが外装されており、第2コイルスプリング6Bの一端は、ブラケット3Bに固定された第1筒状体60の外面に巻き付けて接続されており、第2コイルスプリング6Bの他端は第2シャフト2Bと一体で回転する第2筒状体ないしワインディングプラグ61の外面に巻き付けて接続されている。
【0021】
図2(B)、(C)に示すように、ワインディングプラグ61は、第1シャフト2A、第2シャフト2Bの挿通部612を備えた本体610と、第1コイルスプリング6A、第2コイルスプリング6Bの端部を接続するスプリング固定部611と、から一体形成されており、本体610には、ワインディングプラグ61と第1シャフト2A、第2シャフト2Bを固定して一体化するためのボルト19用の孔613が径方向に形成されており、ボルト19を締めることによって、ワインディングプラグ61とシャフト2A、2Bを固定する。ワインディングプラグ61の本体610には、さらに、プラグ支持ボルト18(後述する)を挿入するための孔614が径方向に形成されている。従来の手動によるスプリング巻き締め作業は、棒18´(
図2(A)参照)を孔614に差し込んで、ワインディングプラグ61を回転させることで、第1コイルスプリング6A、第2コイルスプリング6Bを巻き締めていた。本実施形態では、電動で駆動するスプリング巻き機によって、ワインディングプラグ61を回転させることで、第1コイルスプリング6A、第2コイルスプリング6Bを巻き締める。
【0022】
第1コイルスプリング6A、第2コイルスプリング6Bは、パネルPの開放時の持ち上げ力を蓄えるように、スプリング巻き機によって、予め所定量巻き締められている。扉体の下降時には、パネルPの自重がワイヤWに作用することで、第1巻取ドラム1A、第2巻取ドラム1Bの回転によって、ワイヤWが引き出されながら第1シャフト2A、第2シャフト2Bが第1の方向に回転して開口部を閉鎖し、開口部開放時には、巻き締められて蓄勢された第1コイルスプリング6A、第2コイルスプリング6Bが解放され、スプリングの戻り力が、第1シャフト2A、第2シャフト2Bを第2の方向へ回転させてワイヤWを巻き上げるように作用し、パネルPの上昇動作をアシストするようになっている。
【0023】
図3に、本実施形態に係るスプリング巻き機の斜視図、
図4に、同スプリング巻き機の正面図及び側面図を示す。
図9、
図10に、本実施形態に係るスプリング巻き機をセットした状態を示す。本実施形態に係るスプリング巻き機は、第1コイルスプリング6A、第2コイルスプリング6Bの端部が固定されているワインディングプラグ61に係脱可能であり、ワインディングプラグ61に係止して当該ワインディングプラグ61に回転力を与える平歯車7と、平歯車7と噛合するウォーム8と、ウォーム8と一体で回転し、回動駆動源(例えば電動ドリル)と接続可能な駆動軸9と、を備え、駆動軸9を電動で回転させることにより、ウォーム8を回転させ、ウォーム8の回転に連動して平歯車7を回転させ、平歯車7の回転力をワインディングプラグ61に伝達して、ワインディングプラグ61を回転させることで、第1コイルスプリング6A、第2コイルスプリング6Bを巻き締めるようになっている。
【0024】
図11に示すように、本実施形態に係る平歯車7は、第1部分70と、第2部分71と、に分割されており、第1部分70と第2部分71を組み合わせることで形成されている。平歯車7の周縁には連続状に歯72が形成されており、ウォーム8と噛合するようになっている。第2部分71は、一端に歯72を備え、他端に半円状の凹部710が形成されている略長方形状の要素であり、第1部分70は、平歯車7から第2部分71を取り除いた要素であり、第2部分71の外形に対応する略長方形状の切り欠き部700を備えており、切り欠き部700の底部には半円状の凹部701が形成されている。第1部分70の切り欠き部700に第2部分71を嵌め込んだ状態において、第1部分70の凹部701と第2部分71の凹部710から、平歯車7の中心に位置して、円形状の挿通部73が形成され、挿通部73に第1シャフト2A、第2シャフト2Bを挿通可能となっている。
【0025】
平歯車7は、ウォーム8に噛合した状態で、2枚のプレート10間に挟まれるような態様で回転自在に保持されており、プレート10は、スプリング巻き機のいわば表面板である。本実施形態では、2枚のプレート10は同一の形状を備えている。
図12に示すように、プレート10は、切り欠きリング状ないしC形状の第1部分100と、第1部分100の基端側に一体形成された台形状の第2部分101と、からなる。プレート10の第1部分100は、左右の湾曲片100A、100Bと、湾曲片100A、100Bの先端側に形成された開口100Cと、左右の湾曲片100A、100Bの間に形成された略円形状の開口100Dと、湾曲片100A、100Bの基端側に開口100Cと対向して位置する基端部位100Eと、からなり、基端側部位100Eには、第1部分100の開口100Cから離れるように台形状の第2部分101が一体形成されている。第1部分100の基端部位100Eには、横長方形状の開口102が形成されている。
【0026】
図4、
図5に示すように、平歯車7の周縁部は、2枚のプレート10の第1部分100に挟まれるように位置しており、平歯車7に噛合しているウォーム8は第1部分100の基端部位100Eに形成された開口102内に非接触状態で納まるようになっている。平歯車7の周縁部を除く面部は、第1部分100の開口100Dに露出している。
【0027】
図4~
図7に示すように、2枚のプレート10の第1部分100の間には、平歯車7の周縁の歯72に近接して、複数のベアリング11が回転自在に設けてあり、ベアリング11は、平歯車7の歯に接触可能な周面を備えている。本実施形態におけるベアリング11の配置態様について、
図7に基づいて詳細に説明する。
【0028】
一方の湾曲片100Aの先端側部位にはベアリング11a、11bが設けられている。ベアリング11aは、湾曲片100Aの先端に設けてあり、ベアリング11aに近い位置にベアリング11bが設けてある。湾曲片100Aの中間部位にはベアリング11cが設けてあり、湾曲片100Aの基端側にはベアリング11dが設けてある。ベアリング11aとベアリング11bの間隔をd1、ベアリング11bとベアリング11cの間隔をd2、ベアリング11cとベアリング11dの間隔をd3とすると、d1<d2<d3である。本実施形態において、複数のベアリング11a~11dの間隔は等間隔ではなく、ウォーム8から遠い側に密に設けてある。
【0029】
他方の湾曲片100Bの先端側部位にはベアリング11e、11fが設けられている。ベアリング11eは、湾曲片100Bの先端に設けてあり、ベアリング11eに近い位置にベアリング11fが設けてある。湾曲片100Bの中間部位にはベアリング11gが設けてあり、湾曲片100Bの基端側にはベアリング11hが設けてある。ベアリング11eとベアリング11fの間隔をd4、ベアリング11fとベアリング11gの間隔をd5、ベアリング11gとベアリング11hの間隔をd6とすると、d4<d5<d6である。本実施形態において、複数のベアリング11e~11hの間隔は等間隔ではなく、ウォーム8から遠い側に密に設けてある。
【0030】
全てのベアリング11a~11hの周面は、平歯車7の周縁の歯72に近接している。平歯車7の回転時に、平歯車7の回転中心が僅かに変位しようとすると、平歯車7の周縁の歯72が、ベアリング11a~11hのいずれかの1つあるいは複数のベアリングの周面に接触して、平歯車7の変位を規制するようになっている。また、ベアリング11a~11hは、平歯車7に比べてはるかに小径であり、従来のフレームの溝部に平歯車が接触する場合に比べて、ベアリング11a~11hと平歯車7の接触時の抵抗は低減されている。
【0031】
左右の湾曲片100A、100Bの先端側には、ベアリング11a、11b、11e、11fが配置されているので、プレート10の左右の湾曲片100A、100Bが開く方向に僅かに変形して、平歯車7がウォーム8から離れる方向に僅かに移動しようとした時には、ベアリング11a、11b、11e、11fの周面に平歯車7の歯72が速やかに接触することで、平歯車7の移動を規制し、平歯車7の歯72とウォーム8との適正な噛合状態を維持する。
【0032】
基端側に配置したベアリング11d、11hの周面は、一側が平歯車7の歯72に近接し、他側が駆動軸9の一側に近接している。駆動軸9の他側は、軸受13(後述する)によって支持されている。駆動軸9が軸受13から離れる方向(駆動軸9と一体で回転するウォーム8が平歯車72の歯72に近づく方向)の移動は、駆動軸9が左右のベアリング11d、11hの周面に接触することで規制される。
【0033】
本実施形態では、ウォーム8との噛合部位を除いて、平歯車7の周方向に亘って8個のベアリング11a~11hが設けてあるが、ベアリングの個数は8個に限定されない。本実施形態ではベアリング配置間隔は、d1<d2<d3、d4<d5<d6であるが、これらは1つの態様であって、例えば、d1<d2=d3、d4<d5=d6であってもよい。あるいは、間隔d1、d4で、左右の湾曲片100A、100Bのそれぞれに5個以上のベアリングを等間隔で配置してもよい。また、本実施形態では、d1=d4、d2=d5、d3=d6であるが、これには必ずしも限定されない。
【0034】
本実施形態に係るベアリング11(11a~11h)は、周面が平歯車7の周縁の歯72に接触して、回転中の平歯車7の変位を規制するガイドであり、ベアリング11はガイドの1つの好ましい実施態様である。本発明に係るガイドは、ベアリング11に限定されるものではなく、平歯車7の周縁の歯72に接触可能な周面を備えたベアリング以外の回転自在のローラであってもよい。あるいは、平歯車7の周縁の歯72に接触可能な周面を備えた非回転体からガイドを形成してもよい。あるいは、ベアリング、ローラ、非回転体の任意の組み合わせのセットから複数のガイドを構成してもよい。例えば、本実施形態におけるベアリング11c、11gをローラや非回転体に置き換えてもよい。
【0035】
図3、
図4等に示すように、2枚のプレート10の第2部分101の間には、軸受ベース12が設けてある。本実施形態では、同形状の2枚の軸受ベース12が、重なった状態で2枚のプレート10の第2部分101の間に挟持され、プレート10に固定されている。
図13に示すように、軸受ベース12は、台形状の第2部分101の外形に略対応する形状を備えており、
図13に示す姿勢(向き)で説明すると、上端にはウォーム8の下側部位を受け入れる凹部120が形成されており、凹部120の両側に位置して、左右の軸受支持部121が形成されており、凹部120の下方には縦長方形状の切り欠き部122が下方に向かって形成されている。2枚の軸受ベース12の凹部120は、第1部分100の基端部位100Eに形成された開口102の下側部位と一致しており、プレート10に形成された開口102と凹部120によって、ウォーム8を回転自在に受け入れる空間が形成されている。
【0036】
図8に示すように、重なった状態の2枚の軸受ベース12の軸受支持部121によって、軸受13が支持されている。
図14に示すように、軸受13は、断面視において、湾曲状ないし円弧状面である上面130と、水平状の下面131と、垂直状の側面132と、を備えたブロックである。軸受13の下面131は、2枚の軸受ベース12の軸受支持部121上に載置されており、軸受13の一方の側面132は一方のプレート10の内面に当接し、他方の側面132は他方のプレート10の内面に当接しており、円弧状の上面130に駆動軸9を回転自在に支持するようになっている。本実施形態に係る軸受13は、駆動軸9よりも摩耗し易いように、駆動軸9よりも軟らかい材料(例えば、真鍮)で形成されており、駆動軸9の回転時の動摩擦係数を低減させている。駆動軸9の長さ方向両端部には、電気ドリルのチャックと嵌合可能な駆動ナット90が取り付けられている。
【0037】
図4~
図8等に示すように、2枚の軸受ベース2の切り欠き部122には、取手14の上端部位が受け入れられており、取手14は、2枚のプレート10の第2部分101の間に挟持され、プレート10に固定されている。
【0038】
平歯車7の面部(一方の側面)には、平歯車7の回転力を第1コイルスプリング6A、第2コイルスプリング6Bの端部が固定されたワインディングプラグ61に伝動させる手段を備えている。
図3、
図4等に示すように、平歯車7の第1部分70の面部には、第1取付ベース15が固定されており、平歯車7の第2部分71の面部には、第2取付ベース16が固定されている。第1取付ベース15、第2取付ベース16には、ボルト取付ベース17がそれぞれ固定され、ボルト取付ベース17には、プラグ支持ボルト18が取り付けられる。
【0039】
図3、
図4、
図9、
図10等に示すように、一対のプラグ支持ボルト18の軸部180は対向状に延びており、プラグ支持ボルト18の軸部180を、ワインディングプラグ61の本体610の孔614に径方向から差し込むことで、プラグ支持ボルト18の軸部180とワインディングプラグ61の本体610の孔614とを係止させ、平歯車7の回転によって、プラグ支持ボルト18を介して、ワインディングプラグ61を回転させることで、第1コイルスプリング6A、第2コイルスプリング6Bを巻き締めるようになっている。
【0040】
図15に示すように、第1取付ベース15は、ボルト取付ベース17が固定される被固定部150と、被固定部150から一体的に延出形成された対向状の左右の側片151と、左右の側片151間に形成された開口152と、からなり、開口152の底部には半円状の凹部153が形成されている。第1取付ベース15は、平歯車7の第1部分70の切り欠き部700に開口152を位置させ、凹部153を凹部701に一致させて、第1部分70の面部(プレート10間に位置しない露出領域)に固定されている。
【0041】
図16(A)に示すように、第2取付ベース16は、ボルト取付ベース17が固定される被固定部160と、半円状の凹部161を備えており、凹部161を、平歯車7の第2部分71の凹部710に一致させて、第2部分71の面部に固定されている。
【0042】
図16(B)に示すように、ボルト取付ベース17は、被固定部150、160に固定される第1部分170と、第1部分170から垂直状に立ち上がる第2部分171と、から側面視L形状に形成されており、第2部分171の内面にはナット172が固定されている。ボルト取付ベース17の第2部分171には第2部分171に対して垂直方向にプラグ支持ボルト18が取り付けられている。
【0043】
図16(D)、(E)に示すように、平歯車7の第2部分71、第2部分71に固定された第2取付ベース16、第2取付ベース16に固定されたボルト取付ベース17、ボルト取付ベース17に取り付けられたプラグ支持ボルト18から分割アセンブリ71´が形成されている。分割アセンブリ71´を構成する平歯車7の第2部分71の背面には、ロック金具21が回転可能に設けてあり、ロック金具21を平歯車7の第2部分71の長さ方向に対して直交する姿勢として、ロック金具21の左右端部を、平歯車7の第1部分70の背面に接触ないし近接させて、螺子で固定することで、分割アセンブリ71´が外れることを防止している(
図4参照)。
【0044】
第2取付ベース16の外形は、第1取付ベース15の開口152と略一致しており、第2取付ベース16が固定された平歯車7の第2部分71を、第1取付ベース15が固定された平歯車7の第1部分70に嵌め込んだ時に、第2取付ベース16が第1取付ベース15の開口152に嵌り込むようになっている。凹部153と凹部701から円形状の挿通部73の一方の半部が形成され、凹部161と凹部710から挿通部73の他方の半部が形成される。
【0045】
このように構成されたスプリング巻き機を用いて、第1コイルスプリング6A、第2コイルスプリング6Bを巻き締める際には、先ず、平歯車7から分割アセンブリ71´を分離し、プレート10の第1部分100の開口100C及び平歯車7の第1部分70の切り欠き部700に第1シャフト2Aないし第2シャフト2Bを受け入れ、第1シャフト2Aないし第2シャフト2Bの周面の下半部を切り欠き部700の底部の半円状の凹部701及び第1取付プレート15の凹部153に位置させる。
【0046】
次いで、分割アセンブリ71´を平歯車7の第1部分70に取り付ける。この時、第1シャフト2Aないし第2シャフト2Bの周面の上半部は、平歯車7の第2部分71の凹部710及び第2取付プレート16の凹部161に位置するようになっている。
【0047】
次いで、一方のプラグ支持ボルト18の軸部180をワインディングプラグ61の本体610の孔部614に差し込み、他方のプラグ支持ボルト18の軸部180をワインディングプラグ61の本体610の反対側の孔部614に反対側から差し込み、スプリング巻き機をワインディングプラグ61にセットする(
図9、
図10参照)。
【0048】
そして、スプリング巻き機の駆動軸9の一方の端部の駆動ナット90に電気ドリルのチャックを嵌合し、電気ドリルによって、駆動軸9を電動回転させて、駆動軸9と一体で回転するウォーム8の回転によって、ウォーム8に噛合している平歯車7が回転し、平歯車7の回転が一対のプラグ支持ボルト18によってワインディングプラグ61に伝達され、ワインディングプラグ61の回転に伴って第1コイルスプリング6Aないし第2コイルスプリング6Bが巻き締められる。第1コイルスプリング6Aないし第2コイルスプリング6Bを予め決定された所定量巻き締めた後に、ワインディングプラグ61の本体610の孔613からボルト19を締め込むことで、ワインディングプラグ61と第1シャフト2Aないし第2シャフト2Bを固定して一体化する。
【0049】
スプリング巻き機を用いた。第1コイルスプリング6Aないし第2コイルスプリング6Bの巻き締め作業について説明したが、第1コイルスプリング6Aないし第2コイルスプリング6Bの巻き戻し作業において、スプリング巻き機を用い得ることに留意されたい。例えば、メンテナンス作業等において、バランススプリングである第1コイルスプリング6Aないし第2コイルスプリング6Bのスプリング力を調整したい場合に、スプリング巻き機をワインディングプラグ61にセットした状態で行うことができ、この時に、スプリング力を弱めたい場合には巻き戻し作業が行われる。
【符号の説明】
【0050】
2A 第1シャフト
2B 第2シャフト
6A 第1コイルスプリング
6B 第2コイルスプリング
7 平歯車
8 ウォーム
9 駆動軸
10 プレート
11 ベアリング