(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20240603BHJP
F01N 3/023 20060101ALI20240603BHJP
F01N 3/033 20060101ALI20240603BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20240603BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20240603BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20240603BHJP
F02M 26/15 20160101ALI20240603BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240603BHJP
B01J 23/89 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
F01N3/08 H
F01N3/023 A ZAB
F01N3/033 J
F01N3/035 E
F01N3/10 A
F01N3/24 C
F01N3/24 E
F01N3/24 S
F02M26/15
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J23/89 A
(21)【出願番号】P 2020188137
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信也
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-183666(JP,A)
【文献】特開2014-070566(JP,A)
【文献】特開2020-148130(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0123205(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00- 3/38
F02M 26/15
B01D 53/94
B01J 23/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの排出ガスの流れる排気通路に配設され、酸化触媒を含む第1の触媒装置と、
前記第1の触媒装置の下流側において前記排気通路に配設され、前記排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタ装置と、
フィルタ装置の下流側において前記排気通路に配設され、NOxを選択的に還元する選択還元触媒を含む第2の触媒装置と、
前記第2の触媒装置に還元剤を供給する還元剤供給装置と、
前記排出ガスの一部をEGRガスとして前記エンジンの吸気側に還流するEGR配管と、
前記EGR配管内の前記EGRガスの流量を調整するEGRバルブと、
前記EGRバルブの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記フィルタ装置に流入する前記排出ガスのNO
2濃度である生成NO
2濃度を取得し、
前記フィルタ装置に捕集された前記粒子状物質の酸化処理に必要となるNO
2濃度である必要NO
2濃度を取得し、
前記生成NO
2濃度が前記必要NO
2濃度よりも高いときに、前記EGRバルブを制御して前記EGRガスの流量が増加させる、排気浄化装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記生成NO
2濃度が前記必要NO
2濃度よりも低いときに、前記EGRバルブを制御して前記EGRガスの流量が減少させる、請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記第2の触媒装置は、前記選択還元触媒としてバナジウム系触媒を含む、請求項1又は2に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
前記第2の触媒装置は、銅系触媒を更に含み、前記バナジウム系触媒が前記銅系触媒よりも前記排出ガスの流れ方向の上流側に配置されている、請求項3に記載の排気浄化装置。
【請求項5】
前記第2の触媒装置は、前記選択還元触媒として鉄系触媒を含む、請求項1又は2に記載の排気浄化装置。
【請求項6】
前記第2の触媒装置は、銅系触媒を更に含み、前記鉄系触媒が前記銅系触媒よりも前記排出ガスの流れ方向の上流側に配置されている、請求項5に記載の排気浄化装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記生成NO
2濃度と前記必要NO
2濃度との差が大きいほど、前記EGRガスの流量の変化量を大きくする、請求項1~6の何れか一項に記載の排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンからの排出ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集するフィルタ装置が利用されている。例えば、特許文献1には、排出ガスに含まれるPMを捕集する共に、捕集されたPMを排出ガス中のNO2(二酸化窒素)によって酸化することで除去する連続再生式のDPF(Diesel particulate filter)を備える排気浄化装置が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、排出ガス中のNO(一酸化窒素)をNO2に酸化させるDOCと、連続再生式のDPFと、排出ガス中に尿素水を添加する尿素水噴射装置と、尿素水由来のアンモニアを還元剤として用いて排出ガス中のNOx(窒素酸化物)を還元するSCRとを備え、エンジンから排出されるNOxの量と、DOCで生成されるNO2の量と、DPFにおけるNO2の消費量とに基づいて、SCRに流入する排出ガス中のNOとNO2との比(NO/NO2比)が1:1になるようにエンジンの燃焼状態を制御する排気浄化装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-096039号公報
【文献】特開2014-163253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献2に記載の装置では、還元剤としてアンモニアを用いて排出ガスに含まれるNOxを浄化しているが、SCR上でアンモニアとNO2とが反応するときにN2O(亜酸化窒素)が生成されることがある。N2Oは、CO2(二酸化炭素)の300倍程度の地球温暖化係数を有する強力な温室効果ガスであり、地域によっては大気中への排出が厳しく規制される。
【0006】
そこで本開示は、N2Oの生成量を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様の排気浄化装置は、エンジンからの排出ガスの流れる排気通路に配設され、酸化触媒を含む第1の触媒装置と、第1の触媒装置の下流側において排気通路に配設され、排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタ装置と、フィルタ装置の下流側において排気通路に配設され、NOxを選択的に還元する選択還元触媒を含む第2の触媒装置と、第2の触媒装置に還元剤を供給する還元剤供給装置と、排出ガスの一部をEGRガスとしてエンジンの吸気側に還流するEGR配管と、EGR配管内のEGRガスの流量を調整するEGRバルブと、EGRバルブの動作を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、フィルタ装置に流入する排出ガスのNO2濃度である生成NO2濃度を取得し、フィルタ装置に捕集された粒子状物質の酸化処理に必要となるNO2濃度である必要NO2濃度を取得し、生成NO2濃度が必要NO2濃度よりも高いときに、EGRバルブを制御してEGRガスの流量が増加させる。
【0008】
上記態様の排気浄化装置では、生成NO2濃度が必要NO2濃度よりも高いときに、EGRガスの流量が増加される。EGRガスの流量が増加することによって、エンジンの燃焼温度が低下してエンジンから排出されるNOx量が減少する。エンジンから排出されるNOx量の低下に伴って、フィルタ装置に流入する排出ガスのNO2濃度が低下し、排出ガス中のNO2の大部分が粒子状物質の酸化で消費されることとなる。その結果、第2の触媒装置に流入する排出ガスのNO2濃度が低下し、第2の触媒装置によってNOxが還元される際にN2Oが生成されることが抑制される。
【0009】
一実施形態では、制御装置は、生成NO2濃度が必要NO2濃度よりも低いときに、EGRバルブを制御してEGRガスの流量を減少させてもよい。EGRガスの流量が減少することによって、エンジンの燃焼温度が高くなりエンジンから排出されるNOx量が増加する。エンジンから排出されるNOx量の増加に伴って、フィルタ装置に流入する排出ガスのNO2濃度が増加するので、フィルタ装置においてPMを効果的に燃焼させることが可能となる。
【0010】
一実施形態では、第2の触媒装置は、選択還元触媒としてバナジウム系触媒を含んでいてもよい。バナジウム系触媒は、NOxに占めるNO2の割合が低い場合であってもNOxを高い効率で還元することが可能である。したがって、選択還元触媒としてバナジウム系触媒を含むことによって、第2の触媒装置に流入する排出ガスのNO2濃度が低下した場合であっても、NOxを効果的に浄化することができる。
【0011】
一実施形態では、第2の触媒装置は、銅系触媒を更に含み、バナジウム系触媒が銅系触媒よりも排出ガスの流れ方向の上流側に配置されていてもよい。銅系触媒は、高い効率でNOxを還元することが可能な選択還元触媒であるが、NO2の還元時にN2Oを生成しやすい性質を有する。この実施形態では、上流側に配置されたバナジウム系触媒によってNO2が還元され、NO2の割合が低いNOxを含む排出ガスが銅系触媒によって浄化されるので、N2Oの生成量を抑制しつつ、NOxを効果的に浄化することができる。
【0012】
一実施形態では、第2の触媒装置は、選択還元触媒として鉄系触媒を含んでいてもよい。鉄系触媒は、NOxに占めるNO2の割合が低い場合であってもNOxを浄化することが可能である。したがって、選択還元触媒として鉄系触媒を含むことによって、第2の触媒装置に流入する排出ガスのNO2濃度が低下した場合であっても、NOxを効果的に浄化することができる。
【0013】
一実施形態では、第2の触媒装置は、銅系触媒を更に含み、鉄系触媒が銅系触媒よりも排出ガスの流れ方向の上流側に配置されていてもよい。この実施形態では、上流側に配置された鉄系触媒によってNO2が還元され、NO2の割合が低いNOxを含む排出ガスが銅系触媒によって浄化されるので、N2Oの生成量を抑制しつつ、NOxを効果的に浄化することができる。
【0014】
一実施形態では、制御装置は、生成NO2濃度と必要NO2濃度との差が大きいほど、EGRガスの流量を増加させてもよい。EGRガスの流量を増加させることで、フィルタ装置に流入する排出ガスのNO2濃度をより低くすることができる。その結果、第2の触媒装置に流入する排出ガスのNO2濃度を低くすることができるので、N2Oの生成量を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様及び種々の実施形態によれば、N2Oの生成量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る排気浄化装置を概略的に示す図である。
【
図3】制御装置によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととし、同一又は相当の部分に対する重複した説明は省略する。なお以下の説明において、「上流」及び「下流」の用語は、排出ガスG1の流れ方向を基準として使用される。また、本明細書では、一酸化窒素(NO)及び二酸化窒素(NO2)等をまとめて窒素酸化物(NOx)と称する。
【0018】
図1は、一実施形態に係る排気浄化装置1を概略的に示す図である。排気浄化装置1は、トラック等の車両に搭載され、エンジン10からの排出ガスG1に含まれる有害物質を浄化する。
【0019】
エンジン10は、例えばディーゼルエンジンであり、複数のシリンダ10aを備えている。複数のシリンダ10aに近接した位置には、複数のインジェクタ10bが設置されている。複数のインジェクタ10bは、後述する燃料添加装置20から供給された燃料を複数のシリンダ10a内にそれぞれ噴射する。複数のシリンダ10aには、複数のシリンダ10a内に空気を供給する吸気マニホールド11、及び、複数のシリンダ10aから排出ガスG1を排出する排気マニホールド12が接続されている。
【0020】
吸気マニホールド11には、吸気管13が接続されている。吸気管13には、吸気の上流側からエアクリーナ14、コンプレッサ15及びインタークーラー16が順に設けられている。
【0021】
排気マニホールド12には、タービン17を介して排気管18が接続されている。排気管18は、エンジン10からの排出ガスG1が流れる排気通路25の一部を提供する。タービン17は、連結軸を介してコンプレッサ15に連結されている。タービン17は、エンジン10の排気マニホールド12から排出された排出ガスG1の流れによって回転する。コンプレッサ15は、タービン17の回転に伴って回転し、吸気管13から空気(吸気)を取り込み、圧縮された空気を吸気マニホールド11へ送り出す。すなわち、コンプレッサ15及びタービン17は、ターボチャージャーを構成する。吸気マニホールド11に導入された空気は、複数のシリンダ10aへ導入される。複数のシリンダ10a内に導入された空気は各シリンダ10a内で圧縮される。
【0022】
図1に示すように、排気浄化装置1は、燃料添加装置20、EGRユニット24、後処理装置30及び制御装置40を備えている。燃料添加装置20は、燃料タンク21、ポンプ22及び燃料添加弁23を含み、例えば燃料タンク21に貯えられた軽油等の燃料を燃料供給路10cを介して複数のインジェクタ10bに圧送する。複数のインジェクタ10bは、燃料添加装置20から供給された燃料を複数のシリンダ10a内にそれぞれ噴射する。
【0023】
複数のインジェクタ10bによって噴射された燃料は、各シリンダ10a内で燃焼され、各シリンダ10a内に配置されたピストンをシリンダ10a内で往復移動させる。ピストンが往復運動することにより、エンジン10に連結されたクランクシャフトが回転し、クラッチを介して車両のプロペラシャフトが回転する。燃料の燃焼によって排気マニホールド12から排出された排出ガスG1は、排気管18に排出される。
【0024】
燃料添加弁23は、後処理装置30の上流側において排気管18に設けられ、燃料タンク21に貯えられた燃料を排気通路25内に噴射する。排気通路25内に噴射された燃料は排出ガスG1に添加され、後処理装置30に供給される。燃料添加弁23から排出ガスG1に添加される燃料の量は、制御装置40によって制御される。
【0025】
EGRユニット24は、排出ガスG1の一部をエンジン10の吸気系に還流させる装置である。EGRユニット24は、EGR配管26、EGRクーラ27及びEGRバルブ28を備えている。EGR配管26は、エンジン10の吸気マニホールド11と排気マニホールド12とを接続しており、排出ガスG1の一部をEGRガスG2としてエンジン10の吸気系に還流させる。例えば、EGR配管26内を還流したEGRガスG2は、吸気管13を流れる吸気と共にエンジン10のシリンダ10a内に供給される。
【0026】
EGRクーラ27は、EGR配管26に設置され、EGR配管26を流れるEGRガスG2を冷却する。EGRバルブ28は、EGRガスG2の流れ方向においてEGRクーラ27の下流側に配設されている。EGRバルブ28は、開度を調整可能な弁体を含み、EGR配管26を流れるEGRガスG2の流量を調整する。EGRバルブ28の開度は、制御装置40によって制御される。
【0027】
後処理装置30は、排気管18に接続されている。
図1に示すように、後処理装置30は、第1の触媒装置31、フィルタ装置32、第2の触媒装置33及びアンモニア低減触媒34を含んでいる。第1の触媒装置31、フィルタ装置32、第2の触媒装置33及びアンモニア低減触媒34は、排気管18と共に排気通路25を構成するケース内に収容され、排出ガスG1の流れ方向の上流側からこの順に配置されている。
【0028】
第1の触媒装置31は、排気通路25の上流部に設けられている。第1の触媒装置31は、酸化触媒を含む。この酸化触媒は、例えばセラミック製の担体に担持されている。第1の触媒装置31に含まれる酸化触媒としては、白金、ロジウム、パラジウム等の貴金属触媒が挙げられる。第1の触媒装置31は、エンジン10から排出された排出ガスG1を受け、酸化触媒によって排出ガスG1に含まれるNOの一部をNO2に酸化する。また、第1の触媒装置31の酸化触媒は、排出ガスG1中のHC(炭化水素)及びCO(一酸化炭素)等を酸化することで浄化する。
【0029】
フィルタ装置32は、第1の触媒装置31の下流側において排気通路25に配設されている。フィルタ装置32は、いわゆるDPF(Diesel Particulate Filter)であり、排出ガスG1に含まれる粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集する。また、フィルタ装置32は、第1の触媒装置31によって生成されたNO2を含む排出ガスG1を受けて、NO2によってフィルタ装置32に捕集されたPMを酸化させてPMを除去する。このように、排気ガス中のNO2によってPMを除去する処理は連続再生処理と呼ばれ、例えば排出ガスG1の温度が250℃~400℃であるときに連続的に実行される。
【0030】
フィルタ装置32は、排出ガスG1に含まれる有害成分を酸化する酸化触媒を含有してもよい。フィルタ装置32に含まれる酸化触媒としては、白金、ロジウム、パラジウム等の貴金属触媒が挙げられる。これらの酸化触媒は、例えばフィルタ装置32のフィルタ部材上にコーティングされる。なお、フィルタ装置32には、第1の触媒装置31に含まれる酸化触媒の量よりも多くの酸化触媒が含まれていてもよい。第1の触媒装置31で生成されたNO2は、フィルタ装置32に到達する前に排出ガスに含まれるHCと反応してNOに戻されることがある。このように、排出ガスG1中のNO2の一部がNOに戻されると連続再生で利用されるNO2が不足することがある。これに対し、フィルタ装置32に第1の触媒装置31に含まれる酸化触媒の量よりも多くの酸化触媒が含まれる場合には、PMの近傍でより多くのNO2を生成されるのでPMの燃焼を促進することができる。その結果、排出ガスG1の温度が比較的低い場合であっても、フィルタ装置32において効果的に連続再生処理が行うことが可能となる。
【0031】
第2の触媒装置33は、フィルタ装置32の下流側において排気通路25に配設されている。第2の触媒装置33は、フィルタ装置32を通過した排出ガスG1を受け、当該排出ガスG1に含まれるNOxを還元して浄化する。第2の触媒装置33は、選択還元触媒を含む。選択還元触媒は、例えばセラミック製の担体上に担持される。選択還元触媒は、還元剤を用いて排出ガスG1に含まれるNOxを選択的に還元する触媒であり、選択還元触媒としては例えばバナジウム系触媒又は鉄系触媒が利用される。バナジウム系触媒はバナジウム(V)を含む化合物を主成分とする触媒であり、鉄系触媒は鉄(Fe)を含む化合物を主成分とする触媒である。バナジウム系触媒及び鉄系触媒は、NOxに占めるNO2の割合が低い場合であってもNOxを浄化することが可能である。特に、バナジウム系触媒は、NOxに占めるNO2の割合が低い場合に高い還元効率でNOxを還元可能である。
【0032】
なお、第2の触媒装置33は、複数種類の選択還元触媒を含有していてもよい。例えば、
図2(a)に示すように、第2の触媒装置33の担体には、選択還元触媒としてバナジウム系触媒51及び銅系触媒52が担持され、バナジウム系触媒51が銅系触媒52よりも上流側に配置されていてもよい。銅系触媒52は、高い効率でNOxを還元することが可能な選択還元触媒であるが、NO
2の還元時にN
2Oを生成しやすい性質を有する。
図2(a)に示す第2の触媒装置33では、上流側に配置されたバナジウム系触媒51によってNO
2が還元されるので、銅系触媒52に導入される排出ガスG1のNO
2濃度を低くすることができる。したがって、このような第2の触媒装置33を用いることによって、N
2Oの生成量を抑制しつつ、NOxを効果的に浄化することができる。
【0033】
また、
図2(b)に示すように、第2の触媒装置33の担体には、選択還元触媒として鉄系触媒53及び銅系触媒52が担持され、鉄系触媒53が銅系触媒52よりも上流側に配置されていてもよい。
図2(b)に示す第2の触媒装置33では、上流側に配置された鉄系触媒53によってNO
2が還元されるので、銅系触媒52に導入される排出ガスG1のNO
2濃度を低くすることができる。したがって、このような第2の触媒装置33を用いることによって、N
2Oの生成量を抑制しつつ、NOxを効果的に浄化することができる。
【0034】
図1を再び参照する。アンモニア低減触媒34は、第2の触媒装置33の下流側において排気通路25に配設されている。アンモニア低減触媒34は、第2の触媒装置33を通過した排出ガスG1を受け、例えば排出ガスG1に含まれる過剰なアンモニアを酸化して浄化する。
【0035】
フィルタ装置32の下流側で且つ第2の触媒装置33の上流側には、還元剤供給装置35が設けられている。還元剤供給装置35は、第2の触媒装置33に還元剤を供給する。例えば、還元剤供給装置35は、第2の触媒装置33の上流側において排気通路25内に尿素水を噴射する。
【0036】
排気浄化装置1は、温度センサ36,37,38及びNOxセンサ39を更に備えている。温度センサ36は、第1の触媒装置31に取り付けられ、第1の触媒装置31の温度を計測する。温度センサ37は、フィルタ装置32に取り付けられ、フィルタ装置32の温度を計測する。温度センサ38は、第2の触媒装置33に取り付けられ、第2の触媒装置33の温度を計測する。なお、温度センサ36,37,38は、排気通路25内の排出ガスG1の温度を計測し、当該排出ガスG1の温度から第1の触媒装置31、フィルタ装置32及び第2の触媒装置33の温度を間接的に取得してもよい。温度センサ36,37,38は、取得した第1の触媒装置31、フィルタ装置32及び第2の触媒装置33の温度を示す情報を制御装置40に出力する。
【0037】
NOxセンサ39は、第1の触媒装置31の上流側に設けられ、排気通路25内を流れる排出ガスG1のNOx濃度を計測する。NOxセンサ39は、排出ガスG1のNOx濃度を示す情報を制御装置40に出力する。
【0038】
制御装置40は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]、CAN[Controller Area Network]通信回路等を有する電子制御ユニットであり、排気浄化装置1全体の動作を制御する。制御装置40は、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより後述する各種機能を実現する。
【0039】
制御装置40は、EGRバルブ28、還元剤供給装置35、温度センサ36,37,38及びNOxセンサ39と通信可能に接続されている。制御装置40は、温度センサ36,37,38及びNOxセンサ39によって計測されたデータに基づいて、EGRバルブ28及び還元剤供給装置35の動作を制御する。
【0040】
以下、制御装置40の詳細について説明する。
図1に示すように、制御装置40は、機能的構成要素として、還元剤添加部41、生成NO
2濃度取得部42、必要NO
2濃度取得部43及びEGR制御部44を含んでいる。
【0041】
還元剤添加部41は、還元剤供給装置35を制御して第2の触媒装置33に供給される還元剤の量を制御する。例えば、還元剤添加部41は、第2の触媒装置33の温度情報を温度センサ38から取得し、第2の触媒装置33の温度が活性化温度(例えば、180℃)以上であるときに、還元剤供給装置35を制御して排気通路25内に尿素水を噴射する。排気通路25内に噴射された尿素水は、排出ガスG1の熱で分解されアンモニア(NH3)が生成される。生成されたアンモニアは、排出ガスG1と共に第2の触媒装置33に供給され、第2の触媒装置33の選択還元触媒上で排出ガスG1に含まれるNOxを還元する。
【0042】
生成NO2濃度取得部42は、フィルタ装置32に流入する排出ガスG1のNO2濃度を示す生成NO2濃度を取得する。すなわち、生成NO2濃度は、第1の触媒装置31によって生成されたNO2の濃度である。生成NO2濃度は、例えば第1の触媒装置31に流入する排出ガスG1中のNOx濃度、第1の触媒装置31の温度、第1の触媒装置31の酸化触媒の担持量、排出ガスG1の流量に基づいて算出される。なお、第1の触媒装置31に流入する排出ガスG1中のNOx濃度は、NOxセンサ39によって計測されてもよいし、エンジン10の負荷及び回転数に基づいて算出されてもよい。排出ガスG1の流量は、排気通路25内に設置された流量センサによって計測されてもよいし、エンジン10の吸気流量及び回転数等に基づいて算出されてもよい。
【0043】
なお、生成NO2濃度取得部42は、排出ガスG1のNOx濃度と、第1の触媒装置31の温度と、酸化触媒の担持量と、排出ガスG1の流量と、生成NO2濃度との関係を示すマップを参照して、生成NO2濃度を取得してもよい。また、フィルタ装置32が酸化触媒を含む場合には、フィルタ装置32の酸化触媒によって生成されるNO2量を含めて生成NO2濃度を算出してもよい。この場合には、生成NO2濃度は、第1の触媒装置31及びフィルタ装置32によって生成されたNO2の濃度であるといえる。
【0044】
必要NO2濃度取得部43は、フィルタ装置32に捕集されたPMの酸化処理に最低限必要となる必要NO2濃度を取得する。すなわち、必要NO2濃度は、フィルタ装置32に捕集されたPMの酸化処理によって消費されるNO2濃度であるともいえる。必要NO2濃度は、フィルタ装置32の温度及びフィルタ装置32のPM堆積量に基づいて取得される。例えば、制御装置40の記憶部には、フィルタ装置32の温度とPM堆積量と必要NO2濃度との関係を示すマップが格納され、必要NO2濃度取得部43は、当該マップを参照することで必要NO2濃度を取得する。なお、フィルタ装置32のPM堆積量は、フィルタ装置32の上流側と下流側との差圧に基づいて計測されてもよいし、エンジン10から排出されたPM量と連続再生によって除去されたPM量との差を累積することで算出されてもよい。
【0045】
EGR制御部44は、生成NO2濃度が必要NO2濃度よりも高いときに、EGRガスG2の流量が増加するようにEGRバルブ28を制御する。生成NO2濃度が必要NO2濃度よりも高い場合には、フィルタ装置32に流入したNO2が連続再生処理で全て消費されずに、高いNO2濃度を有する排出ガスG1がフィルタ装置32の下流に配置された第2の触媒装置33に流入する恐れがある。第2の触媒装置33に流入したNO2は、第2の触媒装置33によって還元されるが、このときにN2Oが生成されることとなる。
【0046】
これに対し、EGRガスG2の流量が増加された場合には、エンジン10の燃焼温度が低下して排出ガスG1のNOx量が減少する。これに伴って、フィルタ装置32に流入する排出ガスG1のNO2濃度が低下し、排出ガスG1中のNO2の大部分がPMの燃焼に消費される。その結果、第2の触媒装置33に流入する排出ガスG1のNO2濃度が低下しNOxの還元時に生成されるN2Oの量が抑制される。
【0047】
一実施形態では、EGR制御部44は、生成NO2濃度と必要NO2濃度との差が大きいほどEGRガスG2の流量の変化量を大きくしてもよい。必要NO2濃度に対して生成NO2濃度が大きい場合には、フィルタ装置32に流入する排出ガスG1のNO2濃度が過剰であるといえる。このとき、EGRガスG2の流量を増加させることで、生成NO2濃度と必要NO2濃度との差を小さくし、フィルタ装置32にNO2が過剰に流入することを抑制することができる。その結果、NO2濃度の低い排出ガスG1が第2の触媒装置33に流入することとなり、N2Oの生成量を抑制することが可能となる。
【0048】
一方、生成NO2濃度が必要NO2濃度よりも低いときには、EGR制御部44は、EGRガスG2の流量が減少するようにEGRバルブ28を制御する。生成NO2濃度が必要NO2濃度よりも低い場合には、連続再生で利用されるべきNO2の量が不足する恐れがある。これに対して、EGRガスG2の流量を減少させることで、エンジン10から排出されるNOx量が増加するので、フィルタ装置32に流入する排出ガスG1のNO2濃度が増加する。その結果、NO2の不足が解消され、フィルタ装置32においてPMを効果的に燃焼させることが可能となる。
【0049】
以下、
図3を参照して、制御装置40によって実行される処理について説明する。
図3は、制御装置40によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【0050】
図3に示すように、制御装置40は、まず排気浄化装置1の各種パラメータを取得する(ステップST1)。具体的には、制御装置40は、第1の触媒装置31の温度、フィルタ装置32の温度、第2の触媒装置33の温度、排出ガスG1中のNO
2濃度及びフィルタ装置32のPM堆積量を取得する。
【0051】
次に、生成NO2濃度取得部42は、フィルタ装置32のPMに対して供給される排出ガスG1のNO2濃度である生成NO2濃度を取得する(ステップST2)。例えば、生成NO2濃度取得部42は、第1の触媒装置31に流入する排出ガスG1のNOx濃度、第1の触媒装置31の温度、排出ガスG1の流量、及び、第1の触媒装置31に含まれる酸化触媒の量に基づいて、生成NO2濃度を算出する。
【0052】
次に、制御装置40の必要NO2濃度取得部43は、フィルタ装置32に捕集されたPMの酸化処理に必要となる必要NO2濃度を取得する(ステップST3)。必要NO2濃度取得部43は、例えばフィルタ装置32の温度とフィルタ装置32のPM堆積量と必要NO2濃度との関係を示すマップを参照することによって必要NO2濃度を取得する。
【0053】
次に、EGR制御部44は、生成NO2濃度が必要NO2濃度よりも高いか否かを判定する(ステップST4)。生成NO2濃度が必要NO2濃度よりも高い場合には、フィルタ装置32に流入する排出ガスG1中のNO2が連続再生処理で十分に消費されずに、NO2の一部が第2の触媒装置33に導入されることになる。そこで、EGR制御部44は、EGRバルブ28を制御して、EGRガスG2の流量を増加させる(ステップST5)。EGRガスG2の流量が増加することにより、エンジン10から排出されるNOx量が減少するのでフィルタ装置32に流入する排出ガスG1のNO2濃度が低下する。その結果、フィルタ装置32に導入されたNO2の大部分がPMの酸化処理に消費され、NO2濃度の低い排出ガスG1が第2の触媒装置33に導入される。したがって、第2の触媒装置33によってNO2が還元される際にN2Oが生成されることが抑制される。なお、ステップST5では、必要NO2濃度に対して生成NO2濃度が大きいほどEGRガスG2の流量が増加されてもよい。
【0054】
一方、生成NO2濃度が必要NO2濃度よりも低い場合には、EGRバルブ28を制御して、EGRガスG2の流量を減少させる(ステップST6)。EGRガスG2の流量が減少することにより、エンジン10から排出されるNOx量が増加し、フィルタ装置32に流入する排出ガスG1のNO2濃度が増加する。その結果、十分なNO2がフィルタ装置32に供給され、PMが効果的に燃焼される。なお、生成NO2濃度が必要NO2濃度と一致している場合には、EGRガスG2の流量が維持されてもよい。
【0055】
以上説明したように、排気浄化装置1では、生成NO2濃度が必要NO2濃度よりも高いときに、EGRガスG2の流量を増加させることによってフィルタ装置32に流入する排出ガスG1のNO2濃度が低下される。これにより、排出ガスG1中のNO2の大部分がPMの酸化処理に消費されることとなり、第2の触媒装置33に流入する排出ガスG1のNO2濃度が低下する。その結果、第2の触媒装置33によるNO2の還元時にN2Oが生成されることを抑制することができる。
【0056】
なお、選択還元触媒の種類によってはNOとNO2との比(NO/NO2比)を1:1に近づけることで還元効率が高くなることが知られている。上述の排気浄化装置1では、生成NO2濃度が必要NO2濃度よりも高い場合にEGRガスG2の流量を増加させることで、第2の触媒装置33にはNO2濃度の低い排出ガスG1が流入することとなる。特に、一実施形態の排気浄化装置1では、NOxに占めるNO2の割合がゼロに近づけられる。しかしながら、第2の触媒装置33は、例えば銅系触媒と比較してNO/NO2比の影響を受けづらいバナジウム系触媒を選択還元触媒として含むことでNOxの還元効率の低下を抑制することが可能である。なお、第2の触媒装置33が選択還元触媒として鉄系触媒を含む場合であってもNOxを還元することが可能である。
【0057】
以上、種々の実施形態に係る排気浄化装置について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。
【0058】
例えば、上記実施形態の排気浄化装置1では、還元剤供給装置35によって還元剤として尿素水を供給しているが、例えばアンモニアを供給してもよい。また、後処理装置30は、必ずしもアンモニア低減触媒34を備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…排気浄化装置、20…燃料添加装置、25…排気通路、31…第1の触媒装置、32…フィルタ装置、33…第2の触媒装置、40…制御装置、51…バナジウム系触媒、52…銅系触媒、53…鉄系触媒、G1…排出ガス、G2…EGRガス。