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特許7497284ナビゲーション装置、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】ナビゲーション装置、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20240603BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20240603BHJP
   G08G 1/123 20060101ALI20240603BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
G01C21/34
G01C21/26 C
G08G1/123 A
G09B29/10 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020206001
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022092974
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】神谷 尚保
(72)【発明者】
【氏名】稗圃 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】川田 亮一
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-197341(JP,A)
【文献】特表2019-537730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/34
G01C 21/26
G08G 1/123
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔監視が無線通信回線を介して行われる移動体に対して出発地から目的地に到達する経路を示す経路情報を提供するナビゲーション装置であり、
位置と、当該位置における無線通信品質とが関連付けて記録された位置無線品質情報を格納する位置無線品質情報格納部と、
前記位置無線品質情報格納部に格納されている位置無線品質情報に基づいて、位置毎に、無線通信が切断する確率である無線切断確率を算出する無線切断確率算出部と、
前記無線切断確率が高いほど、無線通信が切断しない場合の前記目的地への到達に関する移動コストに比べて無線通信が切断すると発生する前記目的地への到達に関する移動コストの比率が高くなるように、前記経路の候補毎に総合リンクコストを算出し、算出された総合リンクコストに基づいて前記経路の候補の中から前記経路を探索する経路探索部と、
を備えるナビゲーション装置。
【請求項2】
前記経路探索部は、前記目的地への到達までにかかる移動時間に関して、無線通信が切断すると発生する移動時間増大見込み量を前記総合リンクコストに反映させる、
請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
算出対象経路候補の前記総合リンクコストは、次式により算出される、
総合リンクコスト=「算出対象経路候補において無線通信が切断しない確率」×「算出対象経路候補の無線通信品質に関係しない移動コスト」+「算出対象経路候補の無線切断確率」×「(代替の経路候補の移動コスト)+(前記移動体が算出対象経路候補を移動中に無線通信が切断した場合に前記移動体が算出対象経路候補の開始地点まで引き返すために発生する移動コスト)」、
請求項1又は2のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記無線切断確率算出部は、前記移動体が無線通信に利用する無線周波数帯及び前記移動体が移動する日時に応じて、前記無線切断確率を変化させる、
請求項1から3のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記無線切断確率算出部は、前記移動体が各時間帯に各経路候補を通過する確率に応じて、前記無線切断確率を変化させる、
請求項4に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記位置無線品質情報格納部は、各位置における無線通信接続を提供する基地局を識別する基地局識別情報が前記位置無線品質情報に関連付けて記録された位置無線品質基地局情報を格納し、
前記無線切断確率算出部は、前記無線切断確率を、同一基地局エリア内では従属事象として扱う、一方、異なる基地局エリア間では独立事象として扱う、
請求項1から5のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記移動体は、配送を行う移動体であり、
前記経路は、前記移動体が配送する経路である、
請求項1から6のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
遠隔監視が無線通信回線を介して行われる移動体に対して出発地から目的地に到達する経路を示す経路情報を提供するナビゲーション方法であり、
位置と、当該位置における無線通信品質とが関連付けて記録された位置無線品質情報を位置無線品質情報格納部に格納する位置無線品質情報格納ステップと、
前記位置無線品質情報格納部に格納されている位置無線品質情報に基づいて、位置毎に、無線通信が切断する確率である無線切断確率を算出する無線切断確率算出ステップと、
前記無線切断確率が高いほど、無線通信が切断しない場合の前記目的地への到達に関する移動コストに比べて無線通信が切断すると発生する前記目的地への到達に関する移動コストの比率が高くなるように、前記経路の候補毎に総合リンクコストを算出し、算出された総合リンクコストに基づいて前記経路の候補の中から前記経路を探索する経路探索ステップと、
を含むナビゲーション方法。
【請求項9】
遠隔監視が無線通信回線を介して行われる移動体に対して出発地から目的地に到達する経路を示す経路情報を提供するナビゲーション装置のコンピュータに、
位置と、当該位置における無線通信品質とが関連付けて記録された位置無線品質情報を位置無線品質情報格納部に格納する位置無線品質情報格納ステップと、
前記位置無線品質情報格納部に格納されている位置無線品質情報に基づいて、位置毎に、無線通信が切断する確率である無線切断確率を算出する無線切断確率算出ステップと、
前記無線切断確率が高いほど、無線通信が切断しない場合の前記目的地への到達に関する移動コストに比べて無線通信が切断すると発生する前記目的地への到達に関する移動コストの比率が高くなるように、前記経路の候補毎に総合リンクコストを算出し、算出された総合リンクコストに基づいて前記経路の候補の中から前記経路を探索する経路探索ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自律的に移動するロボットや自動運転車両が屋外を走行することを想定したナビゲーション技術が検討されている。例えば特許文献1には、対象物を自動搬送する際に、ナビゲーション経路及び中間ノードのノードタイプ(ノードにおいて車両によって実行されるべき動作)に基づいてナビゲーションデータを取得するナビゲーションデータ生成システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2019-537730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
屋外を自律的に移動するロボットや自動運転車両を無線通信により遠隔で監視する場合、無線通信が切断しない経路を移動することが好ましい。しかしながら、上述した従来のナビゲーション技術では、無線通信の切断を避けるように経路探索を行うことができない。また、無線通信が切断しない場合や切断する場合に対して適切な経路探索を行うことが好ましい。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、無線通信により遠隔で移動体を監視する際に安定的な無線通信の実現を図ると共に、無線通信が切断しない場合や切断する場合に対して適切な経路探索を行うことを図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、遠隔監視が無線通信回線を介して行われる移動体に対して出発地から目的地に到達する経路を示す経路情報を提供するナビゲーション装置であり、位置と、当該位置における無線通信品質とが関連付けて記録された位置無線品質情報を格納する位置無線品質情報格納部と、前記位置無線品質情報格納部に格納されている位置無線品質情報に基づいて、位置毎に、無線通信が切断する確率である無線切断確率を算出する無線切断確率算出部と、前記無線切断確率が高いほど、無線通信が切断しない場合の前記目的地への到達に関する移動コストに比べて無線通信が切断すると発生する前記目的地への到達に関する移動コストの比率が高くなるように、前記経路の候補毎に総合リンクコストを算出し、算出された総合リンクコストに基づいて前記経路の候補の中から前記経路を探索する経路探索部と、を備えるナビゲーション装置である。
(2)本発明の一態様は、前記経路探索部は、前記目的地への到達までにかかる移動時間に関して、無線通信が切断すると発生する移動時間増大見込み量を前記総合リンクコストに反映させる、上記(1)のナビゲーション装置である。
(3)本発明の一態様は、算出対象経路候補の前記総合リンクコストは、次式により算出される、総合リンクコスト=「算出対象経路候補において無線通信が切断しない確率」×「算出対象経路候補の無線通信品質に関係しない移動コスト」+「算出対象経路候補の無線切断確率」×「(代替の経路候補の移動コスト)+(前記移動体が算出対象経路候補を移動中に無線通信が切断した場合に前記移動体が算出対象経路候補の開始地点まで引き返すために発生する移動コスト)」、上記(1)又は(2)のいずれかのナビゲーション装置である。
(4)本発明の一態様は、前記無線切断確率算出部は、前記移動体が無線通信に利用する無線周波数帯及び前記移動体が移動する日時に応じて、前記無線切断確率を変化させる、上記(1)から(3)のいずれかのナビゲーション装置である。
(5)本発明の一態様は、前記無線切断確率算出部は、前記移動体が各時間帯に各経路候補を通過する確率に応じて、前記無線切断確率を変化させる、上記(4)のナビゲーション装置である。
(6)本発明の一態様は、前記位置無線品質情報格納部は、各位置における無線通信接続を提供する基地局を識別する基地局識別情報が前記位置無線品質情報に関連付けて記録された位置無線品質基地局情報を格納し、前記無線切断確率算出部は、前記無線切断確率を、同一基地局エリア内では従属事象として扱う、一方、異なる基地局エリア間では独立事象として扱う、上記(1)から(5)のいずれかのナビゲーション装置である。
(7)本発明の一態様は、前記移動体は、配送を行う移動体であり、前記経路は、前記移動体が配送する経路である、上記(1)から(6)のいずれかのナビゲーション装置である。
【0007】
(8)本発明の一態様は、遠隔監視が無線通信回線を介して行われる移動体に対して出発地から目的地に到達する経路を示す経路情報を提供するナビゲーション方法であり、位置と、当該位置における無線通信品質とが関連付けて記録された位置無線品質情報を位置無線品質情報格納部に格納する位置無線品質情報格納ステップと、前記位置無線品質情報格納部に格納されている位置無線品質情報に基づいて、位置毎に、無線通信が切断する確率である無線切断確率を算出する無線切断確率算出ステップと、前記無線切断確率が高いほど、無線通信が切断しない場合の前記目的地への到達に関する移動コストに比べて無線通信が切断すると発生する前記目的地への到達に関する移動コストの比率が高くなるように、前記経路の候補毎に総合リンクコストを算出し、算出された総合リンクコストに基づいて前記経路の候補の中から前記経路を探索する経路探索ステップと、を含むナビゲーション方法である。
【0008】
(9)本発明の一態様は、遠隔監視が無線通信回線を介して行われる移動体に対して出発地から目的地に到達する経路を示す経路情報を提供するナビゲーション装置のコンピュータに、位置と、当該位置における無線通信品質とが関連付けて記録された位置無線品質情報を位置無線品質情報格納部に格納する位置無線品質情報格納ステップと、前記位置無線品質情報格納部に格納されている位置無線品質情報に基づいて、位置毎に、無線通信が切断する確率である無線切断確率を算出する無線切断確率算出ステップと、前記無線切断確率が高いほど、無線通信が切断しない場合の前記目的地への到達に関する移動コストに比べて無線通信が切断すると発生する前記目的地への到達に関する移動コストの比率が高くなるように、前記経路の候補毎に総合リンクコストを算出し、算出された総合リンクコストに基づいて前記経路の候補の中から前記経路を探索する経路探索ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無線通信により遠隔で移動体を監視する際に安定的な無線通信の実現を図ることができると共に、無線通信が切断しない場合や切断する場合に対して適切な経路探索を行うことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るナビゲーションシステムの構成例を示すブロック図である。
図2】一実施形態に係る位置・無線品質・基地局ID格納部の構成例を示す図である。
図3】経路探索方法の一例を説明するための説明図である。
図4】一実施形態に係る経路探索方法を説明するための説明図である。
図5】一実施形態に係る経路探索の例を説明するための説明図である。
図6】一実施形態に係る経路探索の例を説明するための説明図である。
図7】一実施形態に係る経路探索の例を説明するための説明図である。
図8】一実施形態に係る総合リンクコストの算出手順を示すフローチャートである。
図9】一実施形態に係る経路探索方法の手順の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、自律的に移動するロボット(以下、移動ロボットと称する)を使用して配送を行う配送サービスシステムにおけるナビゲーションシステムを例に挙げて説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係るナビゲーションシステム10の構成例を示すブロック図である。図1において、移動ロボット2は、ナビゲーション装置4との間で無線通信回線を介して通信を行う。移動ロボット2は、移動体の一例である。ナビゲーション装置4は、移動ロボット2に対して出発地から目的地に到達する経路を示す経路情報を提供する。
【0013】
本実施形態に係るナビゲーション装置4は、ナビゲーション機能に加えてさらに遠隔監視機能を備える。なお、遠隔監視機能については、移動ロボット2の外部のナビゲーション装置4以外の他の装置が備えてもよい。
【0014】
ナビゲーション装置4は、遠隔監視機能により、移動ロボット2を無線通信により遠隔で監視する。例えば、ナビゲーション装置4は、移動ロボット2が撮像する画像や収音する音を移動ロボット2から無線通信回線を介して受信し、受信した画像や音を表示や再生する。監視者が当該画像や当該音を視聴することにより、リアルタイムで移動ロボット2の移動の状況の監視が行われる。このため、本実施形態に係る配送サービスシステムでは、移動ロボット2における安定的な無線通信の実現が要求される。そこで、本実施形態では、ナビゲーション装置4が、移動ロボット2における安定的な無線通信の実現を図るための経路情報を提供する。
【0015】
また、万が一、移動ロボット2における無線通信が不安定になってナビゲーション装置4との間の通信が途絶えると、ナビゲーション装置4との間の通信が復旧する場所まで移動ロボット2が自律的に引き返すようになっている。このため、無線通信が切断しない場合と、無線通信が切断する場合とでは、移動ロボット2が目的地に到達するまでの経路が変わる可能性がある。そこで、本実施形態では、ナビゲーション装置4が、移動ロボット2における無線通信が切断しない場合や切断する場合に対して適切な経路探索を行うことを図る。
【0016】
以下、図1を参照して本実施形態に係るナビゲーションシステム10の構成を説明する。
【0017】
[利用者端末]
利用者端末1は、本実施形態に係る配送サービスシステムの利用者(以下、配送サービス利用者と称する)が利用する端末である。配送サービス利用者は、荷物を配送する宛先である目的地を指定して配送を依頼する。利用者端末1は、スマートフォンやタブレット型のコンピュータ(タブレットPC)等の携帯通信端末装置であってもよく、又は据置き型の通信端末装置(例えば据置き型のパーソナルコンピュータ等)であってもよい。
【0018】
利用者端末1は、商品発注部101と、目的地情報入力部102とを備える。商品発注部101は、配送サービス利用者による操作に応じて、商品の選択及び選択した商品の発注を行う。
【0019】
なお、商品発注部101は、配送サービス利用者が所有する物品の残量をリアルタイムに管理し、物品の残量が予め設定された閾値以下になったときに、補充用の商品を自動的に発注してもよい。
【0020】
目的地情報入力部102は、商品発注部101が商品を発注する際に、住所等の目的地を示す目的地情報を入力する。目的地情報は、配送サービス利用者が毎回指定してもよく、又は目的地情報入力部102が過去に配送サービス利用者から指定された目的地情報を記録しておき当該記録の目的地情報を自動的に再利用してもよい。
【0021】
また、目的地情報入力部102は、利用者端末1が備えるGPS(Global Positioning System)による測位機能を用いて、GPSで取得した現在位置を目的地としてもよい。また、目的地情報入力部102は、利用者端末1のカメラで撮影した利用者端末1の周囲の景色の画像を目的地の参考情報として目的地情報に付加してもよい。
【0022】
[移動ロボット]
移動ロボット2は、自律走行可能なロボットである。移動ロボット2は、例えば、街中を走行し、配送サービス利用者が指定した目的地まで荷物を配送する。
【0023】
移動ロボット2は、現在位置取得部201と、無線品質取得部202と、基地局識別情報(基地局ID)取得部203と、状態取得部204と、無線通信部205と、経路情報格納部206と、撮像部207と、動作判断部208と、動作制御部209とを備える。
【0024】
現在位置取得部201は、GPS等の測位システムによって、現在位置(位置情報)を取得する。無線品質取得部202は、無線通信部205が対応する無線通信方式及び無線周波数帯ごとに、無線通信部205がナビゲーション装置4との間で無線通信を行う際の無線通信品質(無線通信品質情報)を取得する。
【0025】
基地局ID取得部203は、移動ロボット2(無線通信部205)が無線通信接続を行うことができる各基地局の基地局IDを取得する。基地局IDは、各基地局を個体識別する識別情報である。基地局IDとして、例えば、CID(Cell ID)と呼ばれるものが挙げられる。なお、MCC(Mobile Country Code:国コード)、MNC(Mobile Network Code:ネットワークコード)、LAC(Location Area Code:エリアコード)、CID(Cell ID:基地局ID)を組合わせることにより、各国、各通信事業者の基地局を一意に特定することができる。
【0026】
状態取得部204は、移動ロボット2に備わっている各種センサから、バッテリー残量や温度や移動速度等の状態データ(状態情報)を取得する。
【0027】
無線通信部205は、ナビゲーション装置4との間で無線通信を行う。無線通信部205は、例えばLTE(Long Term Evolution)や5G(第5世代移動通信システム)等の無線通信方式に対応し、自己が対応する無線通信方式の基地局を介して無線通信を行う。また、無線通信部205は、Wi-Fi(登録商標)等のアンライセンス系の無線通信方式に対応し、当該アンライセンス系の無線通信方式により無線通信を行ってもよい。
【0028】
無線通信部205は、現在位置取得部201や無線品質取得部202や基地局ID取得部203や状態取得部204により得られた情報をナビゲーション装置4の運用監視部401へ送信する。また、無線通信部205は、ナビゲーション装置4の経路配信部411から送信された経路情報を受信して経路情報格納部206に格納する。経路情報格納部206に格納された経路情報は、移動ロボット2の動作の判断に活用される。
【0029】
撮像部207は、移動ロボット2の進行方向を撮像する。動作判断部208は、移動ロボット2の次の動作を判断する。動作判断部208は、経路情報格納部206に格納されている経路情報に示される経路を移動する際に、現在位置取得部201で取得した現在位置や撮像部207で撮像した撮像画像等を用いて、移動ロボット2の周囲の環境に合わせた動作を判断する。
【0030】
動作制御部209は、動作判断部208で判断した動作を移動ロボット2に実行させる。動作制御部209は、移動ロボット2の前進や後退や右左折等の走行種別及び走行速度、並びに撮像部207の撮像方向の変更等の走行以外の動作種別を制御する。
【0031】
[携帯端末]
携帯端末3は、スマートフォンやタブレットPC等の携帯通信端末装置である。携帯端末3は、利用者端末1として利用されるものであってもよく、又は利用者端末1とは別個のものであってもよい。携帯端末3として、例えば、特定の無線通信キャリアに加入した加入者により当該無線通信キャリアとの間で位置情報取得の合意が取れている全ての加入者の携帯端末を対象としてもよい。
【0032】
携帯端末3は、自己が対応する無線通信方式及び無線周波数帯ごとに、現在位置(位置情報)と当該現在位置における無線通信品質(無線通信品質情報)とを定期的にナビゲーション装置4へ報告する。
【0033】
[ナビゲーション装置]
ナビゲーション装置4は、一又は複数の移動ロボット2に対して出発地から目的地までのナビゲーションを行う。また、ナビゲーション装置4は、一又は複数の移動ロボット2に対して運用監視を行う。
【0034】
ナビゲーション装置4は、運用監視部401と、運用情報格納部402と、位置・無線品質・基地局ID格納部403と、地図情報格納部404と、携帯端末位置情報格納部405と、屋外人口密度推計部406と、無線切断確率算出部407と、オーダー情報格納部408と、目的地取得部409と、経路探索部410と、経路配信部411と、を備える。
【0035】
ナビゲーション装置4の各機能は、ナビゲーション装置4がCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、ナビゲーション装置4として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。例えば、ナビゲーション装置4は、インターネット等の通信ネットワークに接続されるサーバコンピュータを使用して構成されてもよい。また、ナビゲーション装置4の各機能はクラウドコンピューティングにより実現されてもよい。また、ナビゲーション装置4は、単独のコンピュータにより実現するものであってもよく、又はナビゲーション装置4の機能を複数のコンピュータに分散させて実現するものであってもよい。また、ナビゲーション装置4として、例えばWWWシステム等を利用してウェブサイトを開設するように構成してもよい。
【0036】
運用監視部401は、一又は複数の移動ロボット2に対して運用監視を行う。運用監視部401は、移動ロボット2からリアルタイムに受信した位置情報や無線通信品質情報や状態情報を当該移動ロボット2の個体を識別する情報(移動ロボットID)と関連付けて、運用監視を行う。運用監視部401は、定期的に、例えば1秒間隔で更新される情報(位置情報や無線通信品質情報や状態情報)に基づいて運用監視する。運用監視部401は、移動ロボット2から受信した位置情報や無線通信品質情報や状態情報を解析し、移動ロボット2の障害を検出した場合には、例えば、監視者に対して警報を発出する。運用情報格納部402は、障害発生時の原因究明や将来の対策検討のために、運用監視部401が移動ロボット2から受信した情報(位置情報や無線通信品質情報や状態情報)を格納する。
【0037】
位置・無線品質・基地局ID格納部403は、無線通信方式及び無線周波数帯ごとに、位置情報と無線通信品質情報と基地局IDとが関連付けて記録された位置無線品質基地局情報を格納する。
【0038】
位置無線品質基地局情報に記録される位置情報、無線通信品質情報及び基地局IDは、移動ロボット2や携帯端末3からナビゲーション装置4へ送信された情報である。なお、移動ロボット2や携帯端末3以外の装置によって測定された位置情報、無線通信品質情報及び基地局IDが位置無線品質基地局情報に記録されてもよい。
【0039】
また、位置情報は、例えばGPS座標である。GPS座標を取得することができない屋内施設等に対しては、IMES(Indoor MEssaging System)等の屋内測位技術により取得された絶対位置情報を位置情報に利用してもよい。また、無線通信品質情報は、例えばLTEの受信電力を示すRSRP(Reference Signal Received Power)である。
【0040】
位置無線品質基地局情報は、日付や曜日や時間帯やイベントごとに、それぞれ設けられてもよい。例えば、平日(月曜から金曜まで)の位置無線品質基地局情報と、休日(土曜、日曜及び祝日)の位置無線品質基地局情報とがそれぞれ設けられてもよい。例えば、昼間の時間帯の位置無線品質基地局情報と、夜間の時間帯の位置無線品質基地局情報とがそれぞれ設けられてもよい。例えば、お正月やゴールデンウィークやお盆の期間の位置無線品質基地局情報が設けられてもよい。
【0041】
図2は、本実施形態に係る位置・無線品質・基地局ID格納部403の構成例を示す図である。図2の例では、位置・無線品質・基地局ID格納部403は、無線通信方式「LTE」について、無線周波数帯_LTE_aの位置無線品質基地局情報4031や無線周波数帯_LTE_bの位置無線品質基地局情報4032等を格納している。また、位置・無線品質・基地局ID格納部403は、無線通信方式「5G」について、無線周波数帯_5G_aの位置無線品質基地局情報4033や無線周波数帯_5G_bの位置無線品質基地局情報4034等を格納している。
【0042】
なお、例えばLTEの無線周波数帯として、Band1(2.1GHz)やBand18(800MHz)等が利用される。また、5Gの無線周波数帯として、例えば28GHz帯等が利用される。
【0043】
例えば、位置無線品質基地局情報4031は、無線通信方式「LTE」の無線周波数帯_LTE_aの各位置_a,位置_b,・・・における無線通信品質及び基地局IDが関連付けて記録された情報である。例えば、位置無線品質基地局情報4033は、無線通信方式「5G」の無線周波数帯_5G_aの各位置_a,位置_b,・・・における無線通信品質及び基地局IDが関連付けて記録された情報である。
【0044】
また、位置無線品質基地局情報4032は、無線通信方式「LTE」の無線周波数帯_LTE_bの各位置_a,位置_b,・・・における無線通信品質及び基地局IDが関連付けて記録された情報である。なお、位置無線品質基地局情報4032において、位置_a及び位置_bには同じ基地局ID_LTE_b_abが関連付けて記録されている。これは、無線通信方式「LTE」の無線周波数帯_LTE_bでは、位置_a及び位置_bにおける無線通信品質の測定時点において、基地局ID_LTE_b_abの基地局が位置_a及び位置_bにおける無線通信接続を提供していたからである。
【0045】
位置無線品質基地局情報において、基地局IDは、当該基地局IDに関連付けられた位置における無線通信接続を提供する基地局を識別する情報である。さらには、位置無線品質基地局情報において、基地局IDは、当該基地局IDに関連付けられた位置における無線通信品質の測定時点において、当該位置における無線通信接続を提供していた基地局を識別する情報である。
【0046】
なお、位置無線品質基地局情報において、位置に関連付けて記録される無線通信品質及び基地局IDは、当該位置において最良の無線通信品質が得られた基地局の基地局IDであってもよい。さらには、位置無線品質基地局情報において、位置に関連付けて記録される無線通信品質及び基地局IDは、当該位置において無線通信品質が得られた全ての基地局の基地局ID及びその無線通信品質であってもよい。
【0047】
本実施形態では、位置・無線品質・基地局ID格納部403は、少なくとも本配送サービスシステムのサービス対象エリアを含む地域の位置無線品質基地局情報を格納する。本配送サービスシステムのサービス対象エリアは、ナビゲーション装置4が経路情報を提供する対象の地域(対象地域)である。本実施形態に係る位置・無線品質・基地局ID格納部403は、ナビゲーション装置4が経路情報を提供する対象地域で無線通信サービスが提供されている無線通信方式(LTEや5G等)及び無線周波数帯(無線周波数帯_LTE_a,無線周波数帯_LTE_bや無線周波数帯_5G_a,無線周波数帯_5G_b等)ごとに、当該対象地域に含まれる位置と当該位置における無線通信品質及び基地局IDとが関連付けて記録された位置無線品質基地局情報を格納する。
【0048】
地図情報格納部404は、全国の道路地図データや、それに付随する各種施設や店舗等の施設データ等を格納する。道路地図データは、例えば、交差点等をノードとして地図上の道路を複数の部分に分割し、各ノード間の部分をリンクとして規定したリンクデータとして与えられる。このリンクデータは、リンク固有の識別子(リンクID)、リンク長、リンクの始点・終点(ノード)の位置情報(経度、緯度)、角度(方向)データ、道路幅、道路種別などのデータを含んで構成される。道路地図データは、移動ロボット2が通行可能なレーンを示すレーン情報を含んでもよい。また、地図情報格納部404は、さらに屋内地図データを格納してもよい。
【0049】
携帯端末位置情報格納部405は、各携帯端末3の位置情報の履歴を格納する。例えば、各携帯端末3のGPS座標を時刻に関連付けて格納する。
【0050】
屋外人口密度推計部406は、携帯端末位置情報格納部405に格納されている位置情報の履歴に基づいて各々の携帯端末3が屋内にいたか又は屋外にいたかを判定し、この判定結果に基づいて、予め設定されたエリアごとに屋外人口密度を推計する。屋外人口密度は、屋外に存在する人の単位面積あたりの人数である。屋外人口密度推計部406によって求められた屋外人口密度等の情報は、地図情報格納部404の道路地図データ内の該当するリンクデータに関連付けて地図情報格納部404に格納される。
【0051】
屋外人口密度推計部406は、例えば、ある携帯端末3について、位置情報の変化が一定未満であってほとんど変化がないと判断される場合には屋内にいたと判定し、当該位置情報の変化が一定以上であってある程度変化していると判断される場合には屋外にいたと判定する。
【0052】
また、屋外人口密度推計部406は、各々の携帯端末3の位置情報と、地図情報格納部404に格納されている道路地図データとを比較してマップマッチングを行い、携帯端末3が道路を利用していたと推定してもよい。マップマッチングは、GPSによって得られた、誤差を含んでいる可能性のある位置情報を、地図情報を用いて道路上になるように補正する処理である。マップマッチングは、例えばカーナビゲーションシステムなどで利用されている。
【0053】
また、屋外人口密度推計部406は、携帯端末3の移動速度に基づいて、当該携帯端末3の移動手段が歩行であるか又は車両であるかを判定してもよい。
【0054】
なお、屋外人口密度推計部406は、月や曜日や時間帯ごとに、それぞれの屋外人口密度を推計してもよい。これは、同じエリアであっても、月や曜日や時間帯等によって屋外人口密度が大きく変化する場合があるからである。
【0055】
また、屋外人口密度推計部406は、携帯端末3の位置情報を用いる方法とは異なる他の方法によって、屋外人口密度を推計してもよい。屋外人口密度推計部406は、例えば、移動ロボット2が撮影した映像を利用し、撮影された映像に対する人の画像認識結果に基づいて屋外人口密度を推計してもよい。
【0056】
無線切断確率算出部407は、各道路における無線切断確率を算出する。無線切断確率は、無線通信が切断する確率である。無線切断確率算出部407は、位置・無線品質・基地局ID格納部403に格納されている位置無線品質情報に基づいて、位置毎に無線切断確率を算出する。位置無線品質情報は、位置無線品質基地局情報のうち、位置と、当該位置における無線通信品質とが関連付けて記録された情報である。
【0057】
無線切断確率算出部407は、移動ロボット2が無線通信に利用する無線周波数帯及び移動ロボット2が移動する日時に応じて、無線切断確率を変化させてもよい。具体的には、無線切断確率算出部407は、位置・無線品質・基地局ID格納部403に格納されている各無線周波数帯の位置無線品質情報や、屋外人口密度推計部406が推計した結果の月や曜日や時間帯ごとの屋外人口密度に基づいて、無線切断確率を変化させる。
【0058】
例えば無線通信方式「5G」で用いられる28GHz帯等の直進性が強い高周波数帯では、車両の混雑状況が電波伝搬に大きな影響を及ぼす可能性がある。一方、例えば無線通信方式「LTE」で用いられる800MHZ帯等の低周波数帯では、車両の混雑状況があまり電波伝搬に影響を及ぼさないと考えられる。したがって、無線切断確率算出部407は、移動ロボット2が無線通信に高周波数帯を利用する場合には、月や曜日や時間帯ごとの屋外人口密度から判別される月や曜日や時間帯ごとの車両の混雑状況に基づいて、無線切断確率を変化させる。例えば、無線切断確率算出部407は、車両の混雑状況が一定以上の混雑度である場合に、無線切断確率を一定量高くする。一方、無線切断確率算出部407は、移動ロボット2が無線通信に低周波数帯を利用する場合には、車両の混雑状況を、無線切断確率に反映させない。
【0059】
また無線切断確率算出部407は、移動ロボット2が各時間帯に各道路を通過する確率に応じて、無線切断確率を変化させてもよい。移動ロボット2が道路を通過する時間帯は、後述する経路探索部410による経路探索結果から移動時間を見積もることにより、各道路を通過する概ねの時間帯を予想することができる。しかし、実際に移動ロボット2が各道路を通過する時間帯は前後にずれる可能性があるので、そのずれによって、例えば移動ロボット2がある道路を通過する時間帯が車両で混雑する時間帯であるか否かが変わる可能性がある。このため、無線切断確率算出部407は、移動ロボット2の過去の移動実績の記録から移動ロボット2が各時間帯に各道路を通過する確率を求め、この確率に応じて各道路における車両の混雑状況を変化させ、この変化後の車両の混雑状況に応じて無線切断確率を変化させる。
【0060】
オーダー情報格納部408は、利用者端末1から商品発注のオーダー情報を受信し、受信したオーダー情報を格納する。オーダー情報格納部408は、購買システム(図示せず)と連携して購買処理を行い、商品配送計画を策定する。オーダー情報格納部408は、策定した商品配送計画により、移動ロボット2が商品を配送する出発地や目的地や時間帯等の予定配送情報を格納する。目的地取得部409は、オーダー情報格納部408に格納されたオーダー情報又は予定配送情報から目的地情報を取得する。
【0061】
経路探索部410は、移動ロボット2が走行する予定の経路として、移動ロボット2の出発地から目的地に到達する経路を探索する。移動ロボット2の目的地は、目的地取得部409が取得した目的地情報が示す場所である。移動ロボット2の出発地は、予め設定される。例えば、商品の配送拠点(例えば、商品が貯蔵されている物流倉庫や目的地の最寄りの配送取り扱い店舗等)が、移動ロボット2の出発地として予め設定される。また、移動ロボット2が車両により目的地付近まで運送される場合には、当該移動ロボット2の運送先の場所が当該移動ロボット2の出発地として予め設定される。
【0062】
経路探索部410は、無線切断確率算出部407の算出結果の無線切断確率と、無線通信が切断しない場合の目的地への到達に関する移動コストと、無線通信が切断すると発生する目的地への到達に関する移動コストとに基づいて経路の候補毎に総合リンクコストを算出する。経路探索部410は、当該算出された総合リンクコストに基づいて、経路の候補の中から経路を探索する。
【0063】
経路探索部410は、出発地から目的地へ向けて、次に到達できる交差点(ノード)までの道路(リンク)のコストの計算(積算)を順次行なっていき、出発地から目的地までが最小コストとなる経路を選択する。したがって、道路に小さな総合リンクコストの値が設定されると、その道路は経路として選択され易くなる。経路探索部410が利用する経路探索方法として、例えば、ダイクストラ法やA*アルゴリズムや遺伝的アルゴリズム等が利用可能である。
【0064】
経路配信部411は、経路探索部410が探索した結果の経路を示す経路情報を移動ロボット2へ送信する。
【0065】
(総合リンクコストの算出方法)
経路探索部410の総合リンクコストの算出方法を説明する。移動ロボット2が移動中に無線通信が切断すると、遠隔監視が不能になるので、移動ロボット2は、無線通信が復旧して移動が再開可能な地点まで引き返し、無線通信が継続可能な代替経路を探索し、発見された代替経路で移動することになる。したがって、無線通信の切断時には、経路の引き返しと代替経路による目的地への移動により、目的地への到達までにかかる移動時間が増大する可能性がある。そこで、本実施形態では、経路探索部410は、目的地への到達までにかかる移動時間に関して、無線通信が切断すると発生する移動時間の増大の見込み量(移動時間増大見込み量)を総合リンクコストに反映させる。これにより、総合的な移動時間の短縮を考慮した効率的な経路を探索することを図る。
【0066】
経路探索部410は、経路候補の各道路(リンク)毎に、例えば以下の(1)式により総合リンクコストを算出する。
【0067】
算出対象リンクの総合リンクコスト=「算出対象リンクにおいて無線通信が切断しない確率」×「算出対象リンクの無線通信品質に関係しない移動コスト」+「算出対象リンクの無線切断確率」×「(代替リンクの移動コスト)+(代替リンクまでの移動に関係する移動コスト)」 ・・・(1)
【0068】
上記(1)式において、「算出対象リンクにおいて無線通信が切断しない確率」と「算出対象リンクの無線切断確率」とは、合計して1(100%)になる数値である。「算出対象リンクの無線通信品質に関係しない移動コスト」は、算出対象リンクの所要距離や移動にかかる所要時間等の無線通信品質に関係しない移動コストである。「代替リンクの移動コスト」は、無線通信が切断した場合に算出対象リンクの代わりに目的地への到達に利用されるリンク(代替リンク)を利用するときの移動コストである。「代替リンクまでの移動に関係する移動コスト」は、無線通信が切断した場合に算出対象リンクの開始地点まで引き返すために発生する移動コストである。
【0069】
次に、本実施形態に係る経路探索の例を説明する。
図3は、経路探索方法の一例を説明するための説明図である。図4は、本実施形態に係る経路探索方法を説明するための説明図である。図3及び図4において、丸印がノードを示し、ノード間を結ぶ線がリンクを示す。また、出発地のノードがSであり、目的地のノードがGである。また、リンク上に記された数字がリンクコストを示す。図3には、無線通信品質が考慮されない場合のリンクコストが示される。一方、図4には、無線通信品質が考慮される場合であって本実施形態に係る総合リンクコストが示される。また、ここでは、ノードbとノードd間のリンクは、無線通信品質が悪く、無線通信が切断する可能性が高いとする。
【0070】
図3のリンクコストの場合、経路探索の結果、出発地「ノードS」から目的地「ノードG」に到達する経路として、リンクコストの合計が最小になる経路である「S→b→d→G」が選択される。図3のリンクコストでは、無線通信品質が考慮されていないので、無線通信が切断する可能性が高いリンク「b→d」が経路として選択されてしまう。この結果、当該選択された経路において、移動ロボット2とナビゲーション装置4との間の無線通信が切断されてしまうと、移動ロボット2が遠隔監視不能になる可能性がある。
【0071】
一方、図4では、リンク「b→d」に対して無線切断確率算出部407が算出した無線切断確率「0.80(80%)」が設定されている。そして、リンク「b→d」の総合リンクコストが、上記(1)式により、以下のように算出される。
【0072】
リンク「b→d」の総合リンクコスト=「リンク「b→d」において無線通信が切断しない確率(1-0.80)」×「リンク「b→d」の無線通信品質に関係しない移動コスト(4)」+「リンク「b→d」の無線切断確率(0.80)」×「(代替リンクの移動コスト(10))+(代替リンクまでの移動に関係する移動コスト(5))」=12.8
【0073】
このリンク「b→d」の総合リンクコストの算出において、「代替リンクの移動コスト」は、ノードbから代替経路を通過して最短でノードdに到着する「b→c→d」の移動コストである「10」となる。また、「代替リンクまでの移動に関係する移動コスト」は、リンク「b→d」の移動中に無線通信が切断してノードbの開始地点まで引き返すために要する平均の移動時間として見込まれる「5」に設定されている。
【0074】
図4の総合リンクコストによれば、無線通信が切断する可能性が高いリンク「b→d」が経路として選択されない。そして、図4の総合リンクコストの場合、経路探索の結果、出発地「ノードS」から目的地「ノードG」に到達する経路として、リンクコストの合計が最小になる経路である「S→a→G」が選択される。この選択された経路「S→a→G」によれば、移動ロボット2における安定的な無線通信の実現を図ることができる。これにより、無線通信により安定して移動ロボット2を遠隔で監視することができる。
【0075】
上記した図4では、リンク「b→d」のみに無線切断確率が設定されたが、実際には、複数のリンクに無線切断確率が設定され得る。以下、複数のリンクに無線切断確率が設定される場合の経路探索の例として図5図6図7を挙げる。
【0076】
図5図6図7では、リンク「b→d」に対して無線切断確率算出部407が算出した無線切断確率「0.8(80%)」が設定され、リンク「c→d」に対して無線切断確率算出部407が算出した無線切断確率「0.65(65%)」が設定されている。
【0077】
移動ロボット2による目的地までの移動では、設置場所が異なる複数の基地局をハンドオーバする可能性がある。ここで、各基地局の設置場所が異なることから、あるリンクにおける無線切断確率は、同じ基地局エリア内にある他のリンクの無線切断確率に影響する一方で、別の基地局エリア内にあるリンクには影響しないと考えられる。このことから、無線切断確率は、同一基地局エリア内では従属事象として扱う、一方、異なる基地局エリア間では独立事象として扱うことが好ましい。本実施形態では、無線切断確率算出部407は、無線切断確率を、同一基地局エリア内では従属事象として扱う、一方、異なる基地局エリア間では独立事象として扱う。
【0078】
図5では、リンク「b→d」に対応する基地局IDは「aaa」であり、リンク「c→d」に対応する基地局IDは「bbb」であり、それぞれ別個の基地局エリアであって無線切断確率が独立事象として扱われる。そして、リンク「b→d」の総合リンクコストが、上記(1)式により、以下のように算出される。
【0079】
リンク「b→d」の総合リンクコスト=「リンク「b→d」において無線通信が切断しない確率(1-0.80)」×「リンク「b→d」の無線通信品質に関係しない移動コスト(4)」+「リンク「b→d」の無線切断確率(0.80)」×「(代替リンクの移動コスト(11×0.65+10×0.35))+(代替リンクまでの移動に関係する移動コスト(5))」=13.32
【0080】
上記の図4では、代替リンクの移動コストを「b→c→d」の移動コスト「10」であった。一方、図5では、「b→a→G」の移動コスト「11」が「0.65」の確率で発生し、「b→c→d」の移動コスト「10」が「0.35(1-0.65)」の確率で発生するとして、代替リンクの移動コストが「11×0.65+10×0.35」になっている。これは、リンク「b→d」で無線通信が切断する際に、リンク「c→d」でも無線通信が切断する場合は、「b→c→d(移動コスト「10」)」の代替経路が使えず、「b→a→G(移動コスト「11」)」の代替経路を使うために、そのような計算になっている。また、リンク「b→d」の無線切断確率「0.80」とリンク「c→d」の無線切断確率「0.65」とが独立事象として扱われている。
【0081】
なお、図5では、リンク「b→d」の代替経路にゴール地点(G)が含まれているため、「b→a→G→d」の移動コストではなく、「b→a→G」の移動コストが使用される。
【0082】
またリンク「c→d」の総合リンクコストが、上記(1)式により、以下のように算出される。
【0083】
リンク「c→d」の総合リンクコスト=「リンク「c→d」において無線通信が切断しない確率(1-0.65)」×「リンク「c→d」の無線通信品質に関係しない移動コスト(7)」+「リンク「c→d」の無線切断確率(0.65)」×「(代替リンクの移動コスト(14×0.8+7×0.2))+(代替リンクまでの移動に関係する移動コスト(8))」=15.84
【0084】
次に図6では、リンク「b→d」及びリンク「c→d」に対応する基地局IDが共に「aaa」であり両方とも同じ基地局エリアであって無線切断確率が従属事象として扱われる。そして、リンク「b→d」の総合リンクコストが、上記(1)式により、以下のように算出される。
【0085】
リンク「b→d」の総合リンクコスト=「リンク「b→d」において無線通信が切断しない確率(1-0.80)」×「リンク「b→d」の無線通信品質に関係しない移動コスト(4)」+「リンク「b→d」の無線切断確率(0.80)」×「(代替リンクの移動コスト(11×(1-(0.8-0.65))+10×(0.8-0.65))+(代替リンクまでの移動に関係する移動コスト(5))」=13.48
【0086】
このリンク「b→d」の総合リンクコストの計算では、リンク「b→d」の無線切断確率「0.8」とリンク「c→d」の無線切断確率「0.65」とが従属事象であるとし、リンク「b→d」で無線切断確率「0.8」で無線通信が切断する場合において、リンク「c→d」では「0.85=1-(0.8-0.65)」の確率で無線通信が切断するとしている。
【0087】
またリンク「c→d」の総合リンクコストが、上記(1)式により、以下のように算出される。
【0088】
リンク「c→d」の総合リンクコスト=「リンク「c→d」において無線通信が切断しない確率(1-0.65)」×「リンク「c→d」の無線通信品質に関係しない移動コスト(7)」+「リンク「c→d」の無線切断確率(0.65)」×「(代替リンクの移動コスト(14)+(代替リンクまでの移動に関係する移動コスト(8))」=16.75
【0089】
このリンク「c→d」の総合リンクコストの計算では、リンク「c→d」で無線通信が切断する場合において、リンク「c→d」よりも無線切断確率が高いリンク「b→d」では100%の確率で無線通信が切断するとしている。このように同一基地局エリア内の無線切断確率を従属事象として扱うと、代替経路を探索する際に同一基地局エリア内にある他の経路は、独立事象の場合よりも高い確率で無線通信が切断することになるので、当該他の経路は代替経路として選択され難くなる。
【0090】
次に図7では、リンク「b→d」に対応する基地局IDは「aaa」であり、リンク「c→d」に対応する基地局IDは「aaa」及び「bbb」であり、リンク「c→d」は複数の基地局の接続範囲に存在する。この場合、リンク「c→d」では、移動ロボット2は、基地局「aaa」間の無線通信が切断されても基地局「bbb」にハンドオーバを行うことにより無線通信を継続することができる。よって、図7では、図5と同様に、リンク「b→d」とリンク「c→d」とで無線切断確率を独立事象として扱う。これにより、リンク「b→d」とリンク「c→d」の各総合リンクコストは、図5と同じになる。
【0091】
次に図8を参照して総合リンクコストの算出手順を説明する。図8は、本実施形態に係る総合リンクコストの算出手順を示すフローチャートである。ここでは、各リンクの識別子(リンクID)として1から始まる自然数が設定されている。
【0092】
(ステップS101) 経路探索部410は、各リンクに対して無線通信品質に関係しない移動コストを設定する。無線通信品質に関係しない移動コストは、例えばリンクの所要距離や移動にかかる所要時間等である。
【0093】
(ステップS102) 経路探索部410は、リンクIDの初期値「1」から全てのリンクIDに対して順次、以降のループ処理を実行する。
【0094】
(ステップS103) 経路探索部410は、算出対象リンクIDのリンクの無線切断確率が0以外であるか否かを判定する。無線切断確率が0以外である場合、ステップS104に進む。一方、無線切断確率が0である場合、ステップS105に進む。
【0095】
(ステップS104) 経路探索部410は、算出対象リンクIDのリンクの総合リンクコストを、上記(1)式により算出する。
【0096】
なお、無線切断確率が0である場合、ステップS104は実行されず、算出対象リンクIDのリンクの総合リンクコストは、ステップS101で設定された、無線通信品質に関係しない移動コストである。
【0097】
(ステップS105) 経路探索部410は、算出対象リンクIDを1だけ増加させる。
【0098】
(ステップS106) 経路探索部410は、全てのリンクIDに対するループ処理が実行完了すると、図8の処理を終了する。
【0099】
次に図9を参照して本実施形態に係る経路探索方法を説明する。図9は、本実施形態に係る経路探索方法の手順の例を示すフローチャートである。
【0100】
(ステップS1) 経路探索部410は、移動ロボット2が走行を開始する出発地と、当該移動ロボット2が走行する行先である目的地とを取得する。
【0101】
(ステップS2) 経路探索部410は、移動ロボット2の種類及び配送の内容を取得する。移動ロボット2の種類は、移動ロボット2のサイズや構造等によって分類される。また、移動ロボット2の種類は、移動ロボット2が利用可能な無線通信方式及び無線周波数帯によって分類される。移動ロボット2による配送の内容は、例えば、移動ロボット2が配送する荷物の種類や積載見込み量等である。
【0102】
移動ロボット2のサイズや構造、及び移動ロボット2が配送する荷物の種類や積載見込み量は、無線通信品質に関係しない移動コストに利用される。例えば、閾値未満の道幅の道路のリンクに対して、小型の移動ロボット2の場合には安全に走行することができるので、無線通信品質に関係しない移動コストを大きくしないが、大型の移動ロボット2の場合には当該移動コストを大きくする。また、移動ロボット2の構造によっては道路の段差を乗り越えることが困難である場合が想定されるので、該当する種類の移動ロボット2には、段差が存在する道路のリンクに対して、当該移動コストを大きくする。また、移動ロボット2が配送する荷物の種類が割れ物である場合には、凸凹が少ない道路を走行することが好ましいので、凸凹が少ない道路のリンクの当該移動コストを小さくする一方、凸凹が多い道路のリンクの当該移動コストを大きくする。
【0103】
(ステップS3) 経路探索部410は、ステップS2で取得した移動ロボット2の種類から、当該移動ロボット2が利用可能な無線通信方式及び無線周波数帯を認識する。移動ロボット2の種類と、利用可能な無線通信方式及び無線周波数帯との対応関係は、予め、ナビゲーション装置4に設定される。
【0104】
(ステップS4) 経路探索部410は、ステップS1で取得した移動ロボット2の出発地及び目的地を含む探索範囲に含まれる各道路の各リンクの無線切断確率を、無線切断確率算出部407から取得する。次いで、経路探索部410は、当該探索範囲に含まれる各道路の各リンクに対して総合リンクコストを算出する。
【0105】
なお、経路探索部410は、移動ロボット2が利用可能な無線通信方式及び無線周波数帯が複数存在する場合には、各道路の各リンクに対して、最良の無線通信品質が得られる無線通信方式及び無線周波数帯についての総合リンクコストを算出してもよい。
【0106】
(ステップS5) 経路探索部410は、ステップS1で取得した移動ロボット2の出発地及び目的地に対して、ステップS4で算出した総合リンクコストに基づいて、出発地から目的地に到達する経路を探索する。この経路探索では、出発地から目的地に到達するまでに通る各リンクの総合リンクコストの合計が最小になる経路の探索が行われる。
【0107】
(ステップS6) 経路配信部411は、ステップS5の探索結果の経路を示す経路情報を移動ロボット2へ送信する。
【0108】
上述した実施形態によれば、移動ロボット2における安定的な無線通信の実現を図るための経路情報を提供することができる。また、移動ロボット2における無線通信が切断しない場合や切断する場合に対して適切な経路探索を行うことができる。また、移動時間増大見込み量を総合リンクコストに反映させることにより、総合的な移動時間の短縮を考慮した効率的な経路を探索することができる。
【0109】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0110】
上述した実施形態では、ナビゲーションシステムを、配送サービスシステムに適用したが、配送サービスシステム以外の他のシステムに適用してもよい。例えば、移動ロボットにより道路を検査する道路検査サービスシステムに、上述した実施形態に係るナビゲーションシステムを適用してもよい。
【0111】
また、上述した実施形態では、移動体として移動ロボットを例に挙げたが、これに限定されない。移動体として、自動運転を行う車両(自動運転車両)や、自律的に飛行する飛行体等を適用してもよい。
【0112】
また、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0113】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0114】
1…利用者端末、2…移動ロボット、3…携帯端末、4…ナビゲーション装置、10…ナビゲーションシステム、401…運用監視部、402…運用情報格納部、403…位置・無線品質・基地局ID格納部、404…地図情報格納部、405…携帯端末位置情報格納部、406…屋外人口密度推計部、407…無線切断確率算出部、408…オーダー情報格納部、409…目的地取得部、410…経路探索部、411…経路配信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9