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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】周辺他車監視システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20240603BHJP
   G01C 21/30 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
G08G1/09 H
G01C21/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020213451
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099600
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 卓哉
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-212337(JP,A)
【文献】特開2019-079182(JP,A)
【文献】特開2019-096153(JP,A)
【文献】特開2019-074347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36
G08G 1/00-99/00
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載された、自車周辺の他車の位置を算定する周辺他車監視システムであって、
他車において衛星測位された当該他車の緯度、経度、高度を含む座標と、当該他車において衛星測位によらずに計測された当該他車の速度と方位とを含む報知情報を、当該他車から無線通信を介して受信する車車間通信手段と、
道路地図を表す、道路上の任意の地点間の高度差を算定可能な高度関連情報を含んだ地図データと、
他車の位置を算定する他車位置算定手段とを有し、
当該他車位置算定手段は、他車から受信した報知情報である第1報知情報の座標が示す高度の、当該他車から前記第1報知情報以前に受信した報知情報である第2報知情報の座標が示す高度に対する変化である衛星測位高度変化と、当該他車の前記第1報知情報の受信時の位置として推定される道路上の地点である第1道路上地点の、当該他車の前記第2報知情報の受信時の位置として推定される道路上の地点である第2道路上地点に対する、前記地図データの高度関連情報から求まる高度変化である地図上高度変化との差が所定のレベルより小さいときには、前記第1報知情報の座標に基づいて当該他車の位置を算定し、前記差が所定のレベルより小さくないときには、前記第1報知情報の速度と方位と、前回算定した当該他車の位置とに基づいて当該他車の位置を算定することを特徴とする周辺他車監視システム。
【請求項2】
請求項1記載の周辺他車監視システムであって、
前記他車位置算定手段は、前記第1報知情報の座標を前記地図データが表す道路地図にマップマッチングして前記第1道路上地点を算定し、前記第2報知情報の座標を前記地図データが表す道路地図にマップマッチングして前記第2道路上地点を算定することを特徴とする周辺他車監視システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の周辺他車監視システムであって、
前記他車位置算定手段は、前記差が所定のレベルより小さいときには、前記第1道路上地点を、前記他車の位置として算定することを特徴とする周辺他車監視システム。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の周辺他車監視システムであって、
前記他車位置算定手段は、前記差が所定のレベルより小さくないときには、前回算定した他車の位置から、前記第1報知情報の方位が示す方向に、前記第1報知情報の速度で、前記第2報知情報の受信時と前記第1報知情報の受信時の時間差分、進めた位置を前記地図データが表す道路地図にマップマッチングして前記他車の位置を算定することを特徴とする周辺他車監視システム。
【請求項5】
請求項1、2または4記載の周辺他車監視システムであって、
前記地図データに含まれる高度関連情報は、道路の各区間の勾配の情報、または、道路の各地点の高度の情報であることを特徴とする周辺他車監視システム。
【請求項6】
自動車に搭載された、自車周辺の他車の位置を算定する周辺他車監視システムであって、
他車において衛星測位された当該他車の緯度、経度、高度を含む座標を含む報知情報を、当該他車から無線通信を介して受信する車車間通信手段と、
道路地図を表す地図データと、
他車から受信した前記報知情報の座標と、前記地図データが表す道路地図とに基づいて他車の位置を算定する他車位置算定手段とを有し、
当該他車位置算定手段は、第1の道路上の、当該第1の道路と第2の道路との分岐点を通過した地点を、当該他車の位置として算定している他車である第1の他車から受信した報知情報の座標が示す、前記分岐点通過直後の高度の変化である第1高度変化と、前記分岐点を通過した直後の第2の他車から受信した報知情報の座標が示す、前記分岐点通過直後の高度の変化である第2高度変化との差が所定のレベルより小さい場合に、前記第2の他車の位置として前記第1の道路上の位置を算定し、前記差が所定のレベルより小さくない場合に、前記第2の他車の位置として前記第2の道路上の位置を算定することを特徴とする周辺他車監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車周辺の他車を監視する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自車周辺の他車を監視する技術としては、車車間通信を介して自動車間で自車の位置情報を交換し、各車において、自車の位置と他車から取得した位置情報とに基づいて、自車と他車の遭遇を予測する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-40780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
GPS受信機などのGNSS受信機で衛星測位した位置を車車間通信を介して自動車間で位置情報として交換する場合には以下のような問題が生じる。
すなわち、市街地などでは、マルチパスや見通し不可(NLOS;no line of sight)の衛星が断続的に発生するために、衛星配置による精度低下率(DOP;Dilution of Precision)が大きい状況では衛星測位した位置の誤差が大きくなる
このため、DOPが大きい状況では、他車から取得した位置の誤差を大きく見積もる必要があり、自車と他車の遭遇の予測などの他車の位置に関する処理を適切に行うことができなくなる。
【0005】
そこで、本発明は、他車から取得した当該他車で衛星測位された位置の誤差が大きいときにも、他車の位置をより小さい誤差で検知することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題達成のために、本発明は、自動車に搭載された、自車周辺の他車の位置を算定する周辺他車監視システムに、他車において衛星測位された当該他車の緯度、経度、高度を含む座標と、当該他車において衛星測位によらずに計測された当該他車の速度と方位とを含む報知情報を、当該他車から無線通信を介して受信する車車間通信手段と、道路地図を表す、道路上の任意の地点間の高度差を算定可能な高度関連情報を含んだ地図データと、他車の位置を算定する他車位置算定手段とを備えたものである。ここで、前記他車位置算定手段は、他車から受信した報知情報である第1報知情報の座標が示す高度の、当該他車から前記第1報知情報以前に受信した報知情報である第2報知情報の座標が示す高度に対する変化である衛星測位高度変化と、当該他車の前記第1報知情報の受信時の位置として推定される道路上の地点である第1道路上地点の、当該他車の前記第2報知情報の受信時の位置として推定される道路上の地点である第2道路上地点に対する、前記地図データの高度関連情報から求まる高度変化である地図上高度変化との差が所定のレベルより小さいときには、前記第1報知情報の座標に基づいて当該他車の位置を算定し、前記差が所定のレベルより小さくないときには、前記第1報知情報の速度と方位と、前回算定した当該他車の位置とに基づいて当該他車の位置を算定する。
【0007】
ここで、このような周辺他車監視システムは、前記他車位置算定手段において、前記第1報知情報の座標を前記地図データが表す道路地図にマップマッチングして前記第1道路上地点を算定し、前記第2報知情報の座標を前記地図データが表す道路地図にマップマッチングして前記第2道路上地点を算定するように構成してよい。
【0008】
また、このような周辺他車監視システムは、前記他車位置算定手段において、前記差が所定のレベルより小さいときには、前記第1道路上地点を、前記他車の位置として算定するように構成してよい。
【0009】
また、このような周辺他車監視システムは、前記他車位置算定手段において、前記差が所定のレベルより小さくないときには、前回算定した他車の位置から、前記第1報知情報の方位が示す方向に、前記第1報知情報の速度で、前記第2報知情報の受信時と前記第1報知情報の受信時の時間差分、進めた位置を前記地図データが表す道路地図にマップマッチングして前記他車の位置を算定するように構成してよい。
【0010】
また、このような周辺他車監視システムにおいて、前記地図データに含まれる高度関連情報は、道路の各区間の勾配の情報、または、道路の各地点の高度の情報であってよい。
以上のような周辺他車監視システムによれば、他車において、マルチパスや見通し不可(NLOS)の衛星が発生して衛星測位に大きな誤差が生じているときには、道路地図が表す高度変化に対する、衛星測位された高度変化の異常から当該誤差の発生が検出され、衛星測位された座標に代えて、他車で衛星測位によらずに計測された方位と速度を用いて他車の位置が算定される。結果、他車において、マルチパスや見通し不可(NLOS)の衛星が発生して衛星測位に大きな誤差が生じているときにも、衛星測位された位置から他車の位置を算定する場合に比べ、他車の位置を正しく算定することができる。
【0011】
また、併せて、本発明は、自動車に搭載された、自車周辺の他車の位置を算定する周辺他車監視システムに、他車において衛星測位された当該他車の緯度、経度、高度を含む座標を含む報知情報を、当該他車から無線通信を介して受信する車車間通信手段と、道路地図を表す地図データと、他車から受信した前記報知情報の座標と、前記地図データが表す道路地図とに基づいて他車の位置を算定する他車位置算定手段とを備えたものである。ここで、他車位置算定手段は、第1の道路上の、当該第1の道路と第2の道路との分岐点を通過した地点を、当該他車の位置として算定している他車である第1の他車から受信した報知情報の座標が示す、前記分岐点通過直後の高度の変化である第1高度変化と、前記分岐点を通過した直後の第2の他車から受信した報知情報の座標が示す、前記分岐点通過直後の高度の変化である第2高度変化との差が所定のレベルより小さい場合に、前記第2の他車の位置として前記第1の道路上の位置を算定し、前記差が所定のレベルより小さくない場合に、前記第2の他車の位置として前記第2の道路上の位置を算定する。
【0012】
このような周辺他車監視システムによれば、マルチパスや見通し不可(NLOS)の衛星が発生して衛星測位に大きな誤差が生じているときにも、高速道路とランプの分岐点などの道路が上下に狭角に分岐する分岐点以降の区間等について、当該区間を既に通過した当該区間通過後に位置する道路が既知の第1の他車が当該区間を走行した際に当該第1の他車において衛星測位された高度変化と、当該区間を走行している第2の他車において衛星測位された高度変化との異同に基づいて、第2の他車が位置する道路を、第2の他車において衛星測位された座標のみから当該第2の他車の位置を算定する場合よりも信頼性高く算定することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、他車から取得した当該他車で衛星測位された位置の誤差が大きいときにも、他車の位置をより小さい誤差で検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る道路交通システムを示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る車載システムの構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る他車位置算定処理を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る他車位置算定処理の処理例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る他車位置算定処理の処理例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る道路交通システムは、各車両に搭載された車載システム1を含んで構成される。
各車の車載システム1は、測位衛星2を利用して自車の位置を衛星測位する機能を備えていると共に、無線通信によって相互に通信する車車間通信の機能を備えている。
図2に、このような車載システム1の構成を示す。
図示するように、車載システム1は、測位衛星2を利用して自車の位置を衛星測位するGNSS受信機11、無線通信によって他車の車載システム1と車車間通信を行う車車間通信装置12、ジャイロセンサや加速度センサや方位センサや速度センサなどの自車の各種状態を検知する自車状態センサ13、地図データを格納した地図データベース14、自律航法装置15、自車情報提供部16、周辺車両監視部17、運転支援装置18を備えている。
【0016】
地図データベース14の地図には、道路網の緯度、経度の情報の他、道路上の各地点の高度の情報、もしくは、道路の各区間の勾配の情報が含まれている。
自律航法装置15は、自車状態センサ13で検出した自車の各種状態から、自車の速度、進行している方位を算定する。また、算定した自車の速度、方位から推定される自車位置や、GNSS受信機11で衛星測位した自車位置と、地図データベース14の地図のマップマッチングを行って、自車の現在位置を算定する。
【0017】
自車情報提供部16は、GNSS受信機11で衛星測位した自車位置の座標(緯度、経度、高度)、GNSS受信機11の衛星測位の信頼度指標、自律航法装置15で算定した速度、方位を含む報知情報を生成し、車車間通信装置12を用いて周辺の他車に同報配信する。ここで、GNSS受信機11の衛星測位の信頼度指標としては、衛星配置による精度低下率(DOP)等を用いる。
【0018】
周辺車両監視部17は、他車の車載システム1から受信した報知情報から、自車の周辺の他車の位置や速度や進行している方位を算定する。
ここで、このような周辺車両監視部17が自車の周辺の他車の位置を算定するために行う他車位置算定処理について説明する。
図3に、他車位置算定処理の手順を示す。
図示するように、周辺車両監視部17は、車車間通信装置12が他車の報知情報を受信したならば(ステップ302)、報知情報を受信した他車を対象他車として、対象他車の位置としての尤度が最大の地図の道路上の位置を対象他車の地図上他車位置として推定する(ステップ304)。
【0019】
ここで地図上他車位置は、たとえば、対象他車から受信した報知情報に含まれる、対象他車のGNSS受信機11で衛星測位された座標(緯度、経度、高度)を、地図データベース14の地図にマップマッチングして、対象他車の位置としての尤度が最大の地図の道路上の位置を算定することにより求める。すなわち、たとえば、受信した報知情報に含まれる座標に最寄りの、地図の道路上の位置を地図上他車位置とする。ただし、地図上の道路の分岐点がない区域においては、前回算定した対象他車の位置が求まった道路と同じ道路上の位置のみをマップマッチングの対象として対象他車の地図上他車位置を算定してもよい。
【0020】
または、地図上の道路の分岐点がない区域等においては、地図上他車位置は、前回算定した対象他車の位置がある道路を、前回算定した対象他車の位置から、対象他車の位置を前回算定したときと同じ方向に、受信した報知情報に含まれる速度や、近々の対象他車の位置の推移が示す速度で、前回対象他車の報知情報を受信してからの経過時間、進行した位置を地図上他車位置とすること等より求めても良い。
【0021】
次に、対象他車の地図上他車位置の高度変化と報知情報の座標の高度変化を算出する(ステップ306)。
地図上他車位置の高度変化は、ステップ304で算定した地図上他車位置と、対象他車から前回報知情報を受信したときに算定した地図上他車位置との間の地図上の高度変化を、地図に含まれる道路上の各地点の高度の情報、もしくは、道路の各区間の勾配の情報から、地図上他車位置の高度変化として算定することにより求める。
【0022】
また、報知情報の座標の高度変化は、今回対象他車から受信した報知情報に含まれる座標中の高度と、対象他車から前回受信した報知情報に含まれる座標中の高度との差を、報知情報の座標の高度変化とすることにより求める。
【0023】
そして、地図上他車位置の高度変化と、報知情報の座標の高度変化との差が、所定のしきい値Th以上であるかどうかを調べる(ステップ308)。
ここで、マルチパスや見通し不可(NLOS)の衛星が発生すると、衛星測位される高度の誤差が際だって大きくなり、実際の高度変化と衛星測位された高度の変化との差が大きくなる。そこで、地図より求めた道路上の地点間の高度変化である地図上他車位置間の高度変化に対して、衛星測位された高度の変化である報知情報の座標の高度変化が所定のしきい値Th以上であるときには、対象他車において、マルチパスや見通し不可(NLOS)の衛星が発生しており、対象他車から受信した報知情報の座標には大きな誤差が含まれている蓋然性が高いことを検知できる。
【0024】
そして、報知情報の座標の高度変化との差が、所定のしきい値Th以上でなければ(ステップ308)、ステップ304で算定した地図上他車位置を、対象他車の位置として設定する(ステップ312)。そして、ステップ302からの処理に戻る。
【0025】
一方、報知情報の座標の高度変化との差が、所定のしきい値Th以上であれば(ステップ308)、前回算定した対象他車の位置と、受信した報知情報に含まれる速度、方位と、地図データベース14の地図のマップマッチングを行って得られる道路上の位置を求め、対象他車の位置として設定する(ステップ310)。そして、ステップ302からの処理に戻る。
【0026】
ここで、ステップ310における対象他車の位置の設定は、たとえば、前回算定した対象他車の位置から、受信した報知情報に含まれる方位に、受信した報知情報に含まれる速度で、前回対象他車の報知情報を受信してからの経過時間、進行した位置に対して、地図データベース14の地図とのマップマッチングを行って得られる道路上の位置を対象他車の位置とすることにより行うことができる。ただし、この場合において、地図上の道路の分岐点がない区域においては、前回算定した対象他車の位置が求まった道路と同じ道路上の位置のみを、マップマッチングの対象として対象他車の位置を算定してもよい。
【0027】
以上、周辺車両監視部17が行う他車位置算定処理について説明した。
なお、以上の他車位置算定処理ステップ304の地図上他車位置の算定は、ステップ310と同様に行ってもよい。すなわち、ステップ304において、前回算定した対象他車の位置から、受信した報知情報に含まれる方位に、受信した報知情報に含まれる速度で、前回対象他車の報知情報を受信してからの経過時間、進行した位置に対して、地図データベース14の地図とのマップマッチングを行って得られる道路上の位置を地図上他車位置とするようにしてもよい。
【0028】
以下、このような他車位置算定処理の処理例を示す。
いま、図4aに示すように、道路R上を進行している他車から受信した報知情報に含まれる衛星測位された座標(緯度、経度、高度)が、黒丸で表したP1-P2-P3-P4-P5-P6-P7-P8-P9のように推移しているものとする。また、P1-P2-P3の区間とP6-P7-P8-P9の区間は、他車においてマルチパスや見通し不可(NLOS)の衛星が発生しておらず他車において道路R上の正しい位置が衛星測位されている区間であり、P4-P5の区間は他車においてマルチパスや見通し不可(NLOS)の衛星が発生して衛星測位に大きな誤差が生じ道路R外の位置が衛星測位された区間であるものとする。
【0029】
また、この場合、図示するように、衛星測位された座標P1-P2-P3-P4-P5-P6-P7-P8-P9が含まれる各報知情報に対して、地図上他車位置としてXで表した道路R上のk1-k2-k3-k4-k5-k6-k7-k8-k9の位置が算定されたものとする。
【0030】
この場合、マルチパスや見通し不可(NLOS)の衛星が発生した状態で衛星測位されたP4、P5の座標の高度には大きな誤差が含まれているので、図4bに示すように、他車が実際に走行している道路Rの高度変化である地図上他車位置間の高度変化と、衛星測位された高度の変化との差dhは、P1-P2-P3とP7-P8-P9に対応する差dhを表すdh1-dh2-dh3とdh7-dh8-dh9おいてしきい値Thを下回り、P4-P5-P6に対応する差dhを表すdh4-dh5-dh6おいてしきい値Thを上回る。
【0031】
そして、しきい値Thを下回る座標P1-P2-P3とP7-P8-P9を含む報知情報に対しては、その座標に対して算定された道路上の位置である道路R上のk1-k2-k3、k7-k8-k9が他車の位置として算定される。
【0032】
一方、しきい値Thを上回る座標P4-P5-P6に対しては、次のように他車位置が算定される。すなわち、座標P4に対しては、前回他車位置として算定されたk3から、座標P4と同じ報知情報に含まれる方位と速度が表す速度ベクトルV4で移動した位置と、地図とのマップマッチングで求められた道路R上の位置CP4が他車位置として算定される。また、座標P5に対しては、前回他車位置として算定されたCP4から、座標P5と同じ報知情報に含まれる方位と速度が表す速度ベクトルV5で移動した位置と、地図とのマップマッチングで求められた道路R上の位置CP5が他車位置として算定される。また、座標P6に対しては、前回他車位置として算定されたCP5から、座標P6と同じ報知情報に含まれる方位と速度が表す速度ベクトルV6で移動した位置と、地図とのマップマッチングで求められた道路R上の位置CP6が他車位置として算定される。
【0033】
このように、他車位置算定処理によれば、他車において、マルチパスや見通し不可(NLOS)の衛星が発生して衛星測位に大きな誤差が生じているときには、衛星測位された高度変化の異常から当該誤差の発生が検出され、衛星測位された座標に代えて、他車で自車状態センサ13を用いて検知された方位と速度を用いて他車の位置が算定される。結果、他車において、マルチパスや見通し不可(NLOS)の衛星が発生して衛星測位に大きな誤差が生じているときにも、衛星測位された位置を他車の位置とする場合に比べ、他車の位置を正しく算定することができる。
【0034】
さて、次に、周辺車両監視部17は、他車の速度や方位については、他車から受信した報知情報の速度や方位を、そのまま他車の速度や方位とすることにより算定する。ただし、以上のような他車位置算定処理により算定した他車の位置の変化から他車の速度を算定したり、他車位置算定処理により算定した他車の位置における地図が表す道路の向きから他車の方位を算定したりしてもよい。
【0035】
また、周辺車両監視部17は、他車位置算定処理により算定した他車の位置の誤差を設定する。誤差の設定は、他車位置算定処理のステップ312で地図上他車位置を他車の位置として設定したときには当該他車から受信した報知情報に含まれるGNSS受信機11の衛星測位の信頼度指標に応じた値を誤差として設定し、ステップ310で当該他車から受信した報知情報に含まれる速度、方位に応じた道路上の位置を他車の位置として設定したときには、固定値(たとえば、自動車の平均的な車長Lの1/2程度)を誤差として設定することにより行う。
【0036】
そして、周辺車両監視部17は、以上のようにして算定した他車の位置や速度や方位や他車の位置の誤差を、運転支援装置18に通知する。
図2に戻り、運転支援装置18は、周辺車両監視部17から通知された自車の周辺の他車の位置や速度や方位と、自律航法装置15で算定した自車の位置や速度や方位とより、周辺車両監視部17から通知された他車の位置の誤差を考慮しつつ、自車と他車との合流や交差などの遭遇等を予測し、予測に応じて、他車への注意喚起など運転支援を行う。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明した。
ところで、周辺車両監視部17は、高速道路とランプの分岐点などの道路が上下に狭角に分岐する分岐点以降の区間内の他車については、次のように他車の位置を算定する処理を行うようにしてもよい。
【0038】
すなわち、図5aに示すように、道路R1を走行している他車Aと他車Aに後続する他車Bが存在し、その後、他車Aが道路R1とランプL1との分岐点Dを直進して道路R1上の走行を継続したものとする。また、この場合において、自車の周辺車両監視部17は、分岐点Dを通過した直後の図5bに示す時点では、他車A周辺において道路R1とランプL1との距離が近く、他車Aの位置が道路R1上にあるのかランプL1上にあるのかを確定できなかったが、その後、他車Aが道路R1上を進み、図5cに示す時点で、他車A周辺において道路R1とランプL1との距離が大きくなって、他車Aの位置が道路R1上にあること、すなわち、他車Aが分岐点Dを直進したことが確定できたものとする。
【0039】
この場合、自車の周辺車両監視部17では、他車Aから受信した報知情報を蓄積しておき、他車Bが分岐点Dを通過した直後において、他車Bから受信した報知情報が、他車Bの高度が、他車Aが分岐点Dを通過した直後の他車Aの高度の変化と同様の変化をしていることを示している場合には、図5dに示すように、他車Bが他車Aと同様に分岐点Dを直進したものと判定し、他車Bの位置として道路R1上の位置を算定する。一方、他車Bが分岐点Dを通過した直後において、他車Bから受信した報知情報が、他車Bの高度が、他車Aが分岐点Dを通過した直後の他車Aの高度の変化と異なる変化をしていることを示している場合には、図5eに示すように、他車Bが分岐点DからランプL1に進んだものとして判定し、他車Bの位置としてランプL1上の位置を算定する。
【0040】
このように道路が上下に狭角に分岐する分岐点以降の区間について、当該区間を既に通過した他車Aにおいて当該区間通過時に衛星測位された高度変化と、当該区間通過中の他車Bにおいて衛星測位された高度変化との異同に基づいて、他車Bが位置する道路を算定することにより、マルチパスや見通し不可(NLOS)の衛星が発生して衛星測位に大きな誤差が生じているときにも、他車Bの位置を、他車Bにおいて衛星測位された座標のみから当該他車Bの位置を算定する場合よりも信頼性高く算定することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…車載システム、2…測位衛星、11…GNSS受信機、12…車車間通信装置、13…自車状態センサ、14…地図データベース、15…自律航法装置、16…自車情報提供部、17…周辺車両監視部、18…運転支援装置。
図1
図2
図3
図4
図5