(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】成長因子耳用製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 38/18 20060101AFI20240603BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240603BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240603BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
A61K38/18
A61K9/06
A61K47/32
A61P27/16
(21)【出願番号】P 2020536967
(86)(22)【出願日】2019-01-09
(86)【国際出願番号】 US2019012941
(87)【国際公開番号】W WO2019140012
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2022-01-07
(32)【優先日】2018-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523461645
【氏名又は名称】ドンペ ファーマシューティシ エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピウ,ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】ジャックス,ボニー
(72)【発明者】
【氏名】ツィブコフスカイヤ,ナタリア
(72)【発明者】
【氏名】チー,ホン
(72)【発明者】
【氏名】サベル,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】コールマン,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ザンポー
(72)【発明者】
【氏名】パストゥシュカ,マーサ
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-534121(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0022661(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0243028(US,A1)
【文献】特開2005-220070(JP,A)
【文献】Key Engineering Materials, 2017, Vol.719, p.57-61
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.00
5重量%~
0.5重量%の成長因子と14wt%~18wt%のポロキサマー407とを含む耳用製剤であって、耳用製剤はシナプスの形成またはシナプスの修復を促進するために、内耳への成長因子の徐放をもたらすように製剤化される、耳用製剤であって、
前記成長因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、またはこれらの組み合わせである、耳用製剤。
【請求項2】
前記成長因子は、ニューロトロフィン-3である、請求項1に記載の耳用製剤。
【請求項3】
前記成長因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)である、請求項1に記載の耳用製剤。
【請求項4】
前記耳用製剤は、15,000cP~3,000,000cPのゲル化粘度を有する耳に許容可能な熱可逆性ゲルである、請求項1に記載の耳用製剤。
【請求項5】
前記耳用製剤は、100mOsm/L~1000mOsm/Lのモル浸透圧濃度を有する、請求項1に記載の耳用製剤。
【請求項6】
前記耳用製剤は、19°C~42°Cのゲル化温度を有する耳に許容可能な熱可逆性ゲルである、請求項1に記載の耳用製剤。
【請求項7】
前記耳用製剤は、7.0~8.0のpHを有する、請求項1に記載の耳用製剤。
【請求項8】
前記耳用製剤は、15wt%~16wt%のポロキサマー407を含む、請求項1に記載の耳用製剤。
【請求項9】
前記耳用製剤は、0.05重量%~0.5重量%の成長因子を含む、請求項1に記載の耳用製剤。
【請求項10】
前記成長因子は耳用製剤に溶解している、請求項1に記載の耳用製剤。
【請求項11】
難聴を処置するための、請求項1に記載の耳用製剤。
【請求項12】
蝸牛シナプス変性症を処置するための、請求項1に記載の耳用製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本発明は、2018年1月9日に出願された米国仮特許出願第62/615,358号の利益を主張し、これは引用によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
脊椎動物には頭の両側に対称的に置かれた1対の耳がある。耳は音を検知する感覚器官、および平衡と体位を維持する器官の両方として役立つ。耳は、3つの部分:すなわち、外耳、中耳(auris mediaまたはmiddle ear)、および内耳(auris internaまたはinner ear)に分けられる。
【0003】
蝸牛と前庭迷路を含む、外耳、中耳、および/または内耳への薬物送達のための、成長因子を含む耳用製剤が本明細書に記載されている。こうした成長因子は、難聴を処置または改善するために有用である。
【発明の概要】
【0004】
治療上有効な量の成長因子と耳に許容可能なビヒクルとを含む耳用製剤が一態様で提供される。
【0005】
いくつかの実施形態では、成長因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、またはこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、成長因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)である。
【0006】
いくつかの実施形態において、耳に許容可能なビヒクルは、耳に許容可能なゲルである。いくつかの実施形態において、耳に許容可能なゲルは熱可逆性ゲルである。いくつかの実施形態において、耳に許容可能なゲルは、約15,000cP~約3,000,000cPのゲル化粘度を有する。いくつかの実施形態において、耳に許容可能なゲルは、約15,000cP~約1,000,000cPのゲル化粘度を有する。いくつかの実施形態において、耳に許容可能なゲルは、約100,000cP~約500,000cPのゲル化粘度を有する。いくつかの実施形態において、耳に許容可能なゲルは、約250,000cP~約500,000cPのゲル化粘度を有する。いくつかの実施形態において、耳に許容可能なゲルは、鼓膜を通って細いゲージの針またはカニューレによって注入されることができる。いくつかの実施形態において、耳用製剤は、約100mOsm/L~約1000mOsm/Lのモル浸透圧濃度を有する。いくつかの実施形態において、耳用製剤は、約150mOsm/L~約500mOsm/Lのモル浸透圧濃度を有する。いくつかの実施形態において、耳用製剤は、約200mOsm/L~約400mOsm/Lのモル浸透圧濃度を有する。いくつかの実施形態において、耳用製剤は、約250mOsm/L~約320mOsm/Lのモル浸透圧濃度を有する。いくつかの実施形態において、耳用製剤は、約19°C~約42°Cのゲル化温度を有する。いくつかの実施形態において、耳用製剤は、約7.0~約8.0のpHを有する。いくつかの実施形態において、耳に許容可能なゲルは、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのコポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのコポリマーは、ポロキサマー407である。いくつかの実施形態において、耳用製剤は、約14wt%から約18wt%のポロキサマー407を含む。いくつかの実施形態において、耳用製剤は、約15wt%から約17wt%のポロキサマー407を含む。いくつかの実施形態において、耳用製剤は、約16wt%のポロキサマー407を含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、耳に許容可能なビヒクルは、中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドを含んでいる。いくつかの実施形態において、トリグリセリドは、グリセロールと中鎖脂肪酸に由来する。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸はそれぞれ独立して、炭素鎖中に6~12の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸はそれぞれ独立して、炭素鎖中に8~12の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸は飽和した中鎖脂肪酸、不飽和の中鎖脂肪酸、またはこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸は、カプロン酸(ヘキサン酸)、エナント酸(ヘプタン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ウンデシレン酸(ウンデカ-10-エン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、またはこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドは、バラッサ(balassee)油、ココナッツ油、コフネヤシ油、パーム核油、ホシダネヤシ(tucum)油、あるいはこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドは、ココナッツ油、コフネヤシ油、パーム核油、ホシダネヤシ(tucum)油、あるいはこれらの任意の組み合わせである。
【0008】
いくつかの実施形態において、耳用製剤は、少なくとも約50重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用製剤は、約50重量%~約99.99重量%のトリグリセリド、約55重量%~約99.99重量%のトリグリセリド、約60重量%~約99.99重量%のトリグリセリド、約65重量%~約99.99重量%のトリグリセリド、約70重量%~約99.99重量%のトリグリセリド、約75重量%~約99.99重量%のトリグリセリド、約80重量%~約99.99重量%のトリグリセリド、約85重量%~約99.99重量%のトリグリセリド、約90重量%~約99.99重量%のトリグリセリド、または、約95重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、耳用製剤は、細いゲージの針によって製剤の送達を可能にするのに十分な量のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態において、耳用製剤は少なくとも1つの粘度調節剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの粘度調節剤は、二酸化ケイ素、ポビドン、カルボマー、ポロキサマー、あるいはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は二酸化ケイ素である。
【0010】
いくつかの実施形態において、粘度調節剤は二酸化ケイ素とポビドンである。いくつかの実施形態において、耳用製剤は、約0.01重量%~約20重量%のポビドン、約0.01重量%~約15重量%のポビドン、約0.01重量%~約10重量%のポビドン、約0.01重量%~約7重量%のポビドン、約0.01重量%~約5重量%のポビドン、約0.01重量%~約3重量%のポビドン、約0.01重量%~約2重量%のポビドン、または約0.01重量%~約1重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は二酸化ケイ素とカルボマーである。いくつかの実施形態において、耳用製剤は、約0.01重量%~約20重量%のカルボマー、約0.01重量%~約15重量%のカルボマー、約0.01重量%~約10重量%のカルボマー、約0.01重量%~約7重量%のカルボマー、約0.01重量%~約5重量%のカルボマー、約0.01重量%~約3重量%のカルボマー、約0.01重量%~約2重量%のカルボマー、または約0.01重量%~約1重量%のカルボマーを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、粘度調節剤は二酸化ケイ素とポロキサマーである。いくつかの実施形態において、耳用製剤は、約0.01重量%~約20重量%のポロキサマー、約0.01重量%~約15重量%のポロキサマー、約0.01重量%~約10重量%のポロキサマー、約0.01重量%~約7重量%のポロキサマー、約0.01重量%~約5重量%のポロキサマー、約0.01重量%~約3重量%のポロキサマー、約0.01重量%~約2重量%のポロキサマー、または約0.01重量%~約1重量%のポロキサマーを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、耳用製剤は、約0.01重量%~約10重量%の二酸化ケイ素、約0.01重量%~約7重量%の二酸化ケイ素、約0.01重量%~約5重量%の二酸化ケイ素、約0.01重量%~約3重量%の二酸化ケイ素、約0.01重量%~約2重量%の二酸化ケイ素、または約0.01重量%~約1重量%の二酸化ケイ素を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、耳用製剤は、約10cP~約10,000cP、約10cP~約5,000cP、約10cP~約1,000cP、約10cP~約500cP、約10cP~約250cP、約10cP~約100 cP、または約10cP~約50cPの粘度を有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、耳用製剤は、約0.0001重量%~約20重量%の成長因子、約0.0001重量%~約15重量%の成長因子、約0.0001重量%~約10重量%の成長因子、約0.0001重量%~約5重量%の成長因子、または約0.0001重量%~約1重量%の成長因子を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、耳用製剤は、約0.01重量%~約20重量%の成長因子、約0.01重量%~約15重量%の成長因子、約0.01重量%~約10重量%の成長因子、約0.01重量%~約7重量%の成長因子、約0.01重量%~約5重量%の成長因子、約0.01重量%~約3重量%の成長因子、約0.01重量%~約2重量%の成長因子、または約0.01重量%~約1重量%の成長因子を含む。いくつかの実施形態において、耳用製剤は、約0.05重量%~約0.5重量%の成長因子を含む。いくつかの実施形態において、耳用製剤は、約0.05重量%の成長因子を含む。いくつかの実施形態において、耳用製剤は、約0.5重量%の成長因子を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、耳用製剤は、水、C1-C6アルコールまたはC1-C6グリコール、C1-C4アルコールまたはC1-C4グリコール、あるいはこれらの任意の組み合わせを含まないか、実質的に含まない。いくつかの実施形態において、成長因子は約30時間の平均溶解時間を有している。いくつかの実施形態において、成長因子は少なくとも3日間にわたって製剤から放出される。いくつかの実施形態において、成長因子は少なくとも4日間にわたって製剤から放出される。いくつかの実施形態において、成長因子は少なくとも5日間にわたって製剤から放出される。いくつかの実施形態において、成長因子は少なくとも7日間にわたって製剤から放出される。いくつかの実施形態において、成長因子は少なくとも14日間にわたって製剤から放出される。いくつかの実施形態において、成長因子は多粒子である。いくつかの実施形態において、成長因子は本質的に微粒子化された粒子の形態である。いくつかの実施形態において、成長因子は本質的にナノサイズの粒子の形態である。いくつかの実施形態において、成長因子は本質的に耳用製剤に溶解している。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物は、針および注射器、ポンプ、微量注入デバイス、ガーゼ、海面状材料、およびこれらの組み合わせから選択される薬物送達デバイスをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物はさらに抗酸化剤を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物は、粘膜付着剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物は、浸透促進剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物は、防腐剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物は、増粘剤または粘度調節剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物は、キレート剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物は、抗菌剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物は、色素をさらに含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物は、治療薬の放出速度を増加させる賦形剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物は、治療薬の放出速度を下げる賦形剤をさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物はコレステロールをさらに含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約20重量%のコレステロール、約0.01重量%~約15重量%のコレステロール、約0.01重量%~約10重量%のコレステロール、約0.01重量%~約7重量%のコレステロール、約0.01重量%~約5重量%のコレステロール、約0.01重量%~約3重量%のコレステロール、約0.01重量%~約2重量%のコレステロール、または約0.01重量%~約1重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約20重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約10重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約5重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約2重量%のコレステロールを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物は、外耳、中耳、および/または内耳に関連する耳の疾患または疾病の処置に役立つ。いくつかの実施形態において、外耳、中耳、および/または内耳に関連する耳の疾患または疾病は、難聴である。いくつかの実施形態において、耳用製剤はリボンシナプスを修復する。引用による組み込み
【0020】
本明細書で言及されるすべての出版物、特許、および特許出願は、あたかも個々の出版物、特許、または特許出願が参照により組み込まれるように具体的かつ個々に指示される程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本開示の新規な特徴は、とりわけ添付の請求項で説明される。本開示の特徴と利点についてのよりよい理解は、本開示の原則が用いられている例証的な実施形態と添付の図面を説明する以下の詳細な記載を参照することによって得られる:
【
図3A】徐放性BDNF製剤を用いる処置が、ビヒクル処置と比較して、騒音に晒された成体ラットにおいて聴力機能(I波振幅)の改善を導いたことを示す。
【
図3B】徐放性BDNF製剤を用いる処置が、ビヒクル処置と比較して、騒音に晒された成体ラットにおいて、1つの内毛細胞当たりのリボンシナプスの数の増加を導いたことを示す。
【
図4】ポロキサマー407製剤における、ラット中の単回のIT注射後のBDNFの外リンパ濃度を示す。BDNFは指示された投与量で投与された。外リンパBDNFは任意の単位である。
【
図5A】MCT製剤における、ラットでの単回のIT注射後のBDNFの外リンパ濃度を示す。BDNFは、様々なポリマー:2あるいは10%(
図5A)のPVP(ポリビニルピロリドン);0.15%のカルボマー(
図5B);あるいは10%(
図5C)のP407(ポロキサマー407)を含有しているMCT製剤中で0.15%(1.5mg/ml)の投与量で投与された。外リンパBDNFは任意の単位である。
【
図5B】MCT製剤における、ラットでの単回のIT注射後のBDNFの外リンパ濃度を示す。BDNFは、様々なポリマー:2あるいは10%(
図5A)のPVP(ポリビニルピロリドン);0.15%のカルボマー(
図5B);あるいは10%(
図5C)のP407(ポロキサマー407)を含有しているMCT製剤中で0.15%(1.5mg/ml)の投与量で投与された。外リンパBDNFは任意の単位である。
【
図5C】MCT製剤における、ラットでの単回のIT注射後のBDNFの外リンパ濃度を示す。BDNFは、様々なポリマー:2あるいは10%(
図5A)のPVP(ポリビニルピロリドン);0.15%のカルボマー(
図5B);あるいは10%(
図5C)のP407(ポロキサマー407)を含有しているMCT製剤中で0.15%(1.5mg/ml)の投与量で投与された。外リンパBDNFは任意の単位である。
【
図6B】DAPI染色したニューロフィラメントを示す。
【
図6C】様々なニューロトロフィンおよび抗体を用いる処置のために1nMのNT-3に正規化されたらせん神経節ニューロン(SGN)生存率を示す。
【
図6D】ニューロトロフィンと抗体の様々な濃度での処置のために1nMのNT-3に正規化されたSGN生存率を示す。
【
図7A】様々な薬剤を用いる処置でのSGNの複雑さの変動を示す。ニューロフィラメントとDAPIについて免疫染色され、20xで画像化されたSGNを示す。
【
図7B】様々な薬剤を用いる処置でのSGNの複雑さの変動を示す。根(アスタリスクで示される)、末端(extremeties)(白点で示される)、節(矢印で示される)、セグメント(節または末端の間の神経突起の個別の部分で示される)、および、各ニューロンについて測定された全神経突起長を示す。
【
図7C】様々な薬剤を用いる処置でのSGNの複雑さの変動を示す。IgGで処置された対照と比較して、10nMのBDNF、1nMのNT-3、あるいは1nMのM3を用いる処置時に様々な数の根を有するSGNの割合を示す(*p<0.05、**p<0.005、およびp<0.001)。
【
図7D】様々な薬剤を用いる処置でのSGNの複雑さの変動を示す。BDNF、NT-3、あるいはM3を用いる処置時の全神経突起長(左パネル)と、1つの細胞当たりの末端、セグメント、および節の合計数を示す。
【
図8A】実施例Eの実験のスキームを概略的に描く。
【
図8B】ニュートロフィン/抗体を用いずに(上部の左画像)、10nMのBDNF(上部の右画像)、10nMのNT-3(中央の左画像)、100nMのNT-3(中央の右画像)、10nMのM3(下部の左画像)、および100nMのM3(下部の右画像)を用いて処置されたサンプルに関するニューロフィラメントを示す。
【
図8C】NT-3(
図8C)とBDNF(
図8D)の様々な濃度での1つの組織当たりの神経突起を示す。
【
図8D】NT-3(
図8C)とBDNF(
図8D)の様々な濃度での1つの組織当たりの神経突起を示す。
【
図8E】hIgG4(左)およびM3(右)の様々な濃度での1つの組織当たりの神経突起を示す。
【
図8G】IgGで処置された対照または未処置の対照と比較して、SGN外植片の神経突起複雑さに対するBDNF、NT-3、およびM3の効果を示す。
【
図9A】実施例Fの実験のスキームを概略的に描く。
【
図9B】内毛細胞(IHC;三角形)を計数することと、外毛細胞(OHC;円)まで通過する線維の数を引くことに基づく、I型のSGNの推定を示す。
【
図9C】興奮毒処理なく72時間の培養(左パネル)、および、興奮毒処理と18時間の培養(右パネル)に関して、様々な薬剤についてCTLに正規化されたSGN線維/IHCを示す。
【
図9D】様々な条件下で得られた蝸牛外植片の画像を示す。
【
図9E】PSD-95、CtBP2、ニューロフィラメント(線)、およびMyo7aを有する蝸牛外植片の画像を示す。
【
図9F】興奮毒処理なく72時間の培養(左パネル)、および、興奮毒処理と72時間の培養(右パネル)に関して、様々なTrkアゴニストについてCTLに正規化された点(PSD95)/IHCを示す(*p<0.05(CTL対NK))。
【
図10】BDNFなどの薬剤の中耳内への非侵襲的な送達を概略的に例証する。
【
図11】P407におけるBDNFの様々な濃度について鼓室内注射後の様々な時点の外リンパ中のBDNF(pg/ml)を示す。
【
図12A】P407ビヒクルのみとP407中の0.05mg/mlのBDNFについて、様々な周波数でのABR閾値変動(dB SPL)を示す。
【
図12B】ABR波成分(左パネル)および騒音誘導I波欠損(右パネル)を示す。
【
図12C】騒音曝露後のBDNF処置またはビヒクル処置の後にオスの成体ラットで、あるいは未処置の損傷を受けていない耳において測定されたABRI波振幅を示す。
【
図13A】内毛細胞神経支配(上パネル)と有毛細胞リボンシナプス(下パネル)を示す。
【
図13B】騒音損傷後のBDNF処置またはビヒクル処置の後の成体ラットからの40kHzの領域からの、あるいは未処置の損傷を受けていない蝸牛における、内毛細胞の高倍率図を示す。デジタルX圧縮された断面は右に示される。
【
図13C】BDNF処置後の蝸牛全体にわたる各周波数領域について1つの内毛細胞当たりのシナプス点(CtBp2とGluR2の共発現によって定義される)の増加を示す。
【
図15】BDNFポロキサマー407製剤の、ネコにおける単回の鼓室内注射後のBDNFの外リンパ濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
活性薬剤の全身投与は、いくつかの例において、内耳構造に作用する疾患の処置に有効なものではない。蝸牛管と蝸牛とは、例えば、循環器から離されており、活性薬剤の内耳内の標的部位への全身送達を制限する。いくつかの例において、全身薬物投与は、血中濃度が血清内で高く、標的とする内耳の臓器構造内で低い状態の薬物濃度の不均衡を生じさせる可能性がある。特定の例では、十分な治療上有効な量の薬物を聴覚構造に送達するために、この不均衡を克服する大量の薬剤が必要とされる。いくつかの例において、全身薬物投与はさらに、副次的な全身蓄積と結果として生じる副作用の可能性を増加させる。
【0023】
内耳の疾患に現在利用可能な処置には、付随する副作用の危険を伴う。例えば、利用可能な方法は、薬物の複数の1日量(例えば、鼓室内注射または点滴)を必要とする。特定の例において、複数回の1日量の鼓室内注射は、患者に不快感を与え、服薬違反を生じさせる。特定の例において、外耳道内で投与された耳用の点滴を介する、または、鼓室内注射を介する、内耳への活性薬剤の送達は、鼓膜、卵円窓膜、および/または正円窓膜によって示される生物学的障壁によって妨害される。いくつかの例において、耳用の点滴または鼓室内注射による内耳への活性薬剤の送達は、内耳構造内での浸透性の不均衡を生じさせ、微生物または内毒素の存在の結果として感染または他の免疫異常を導き、あるいは、難聴等を引き起こすことになる取り返しの付かない構造上の損傷(例えば、鼓膜の穿孔)を引き起こす。
【0024】
治療薬の鼓室内注射は、鼓膜の後ろから中耳および/または内耳へと治療薬を注入する技術である。鼓室内注射には複数の課題が残っている。例えば、内耳への薬物吸収の部位である正円窓膜へのアクセスは、複数の例では問題が多い。加えて、鼓室内注射を使用する現在のレジメンは、外リンパと内リンパのモル浸透圧濃度とpHを変更したり、内耳に直接的または間接的に損傷を与える病原体と内毒素を導入したりすることには対応していない。
【0025】
一態様において、成長因子などの治療上有効な量の活性薬剤を含む耳用の製剤および組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、成長因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、またはこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、成長因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)である。いくつかの実施形態において、耳用製剤は、耳に許容可能なゲルである。いくつかの実施形態において、耳用製剤は、トリグリセリドベースの耳に許容可能な製剤である。
【0026】
これらの耳用の医薬製剤は、外耳、中耳、および/または内耳への薬物送達に適している。いくつかの例では、これらの耳用医薬製剤および組成物はヒトへの投与に適している。いくつかの例では、本明細書で開示される耳用の製剤および組成物は、pH、モル浸透圧濃度、イオン平衡、無菌性、内毒素、および/または発熱物質レベルについて厳格な基準を満たす。いくつかの例では、耳用の製剤および組成物は、内耳の微小環境(例えば、外リンパ)と適合する。
【0027】
したがって、特定の実施形態において、耳の標的構造を局所的に処置し、および、標的の耳構造への耳用の活性薬剤の長時間曝露をもたらす制御放出性の耳に許容可能な製剤と組成物が本明細書で提供される。特定の実施形態において、本明細書に耳用の製剤および組成物は、耳構造、および/または、内リンパと外リンパに適合する、厳格なモル浸透圧濃度とpH範囲の範囲に対応するように設計される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤および組成物は、少なくとも3日間長時間放出を行い、厳格な無菌性要求を満たす制御放出製剤である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤および組成物は、低い内毒素レベル(例えば、0.5EU/mLの局所的に許容可能な内毒素レベルと比較して、0.5EU/mL未満)を含んでいる。いくつかの例において、本明細書に記載される耳用の製剤および組成物は、製剤または組成物1g当たり、低いレベルのコロニー形成単位(例えば、50CFU未満)を含む。いくつかの例では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、発熱物質および/または微生物を実質的に含まない。いくつかの例では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、内リンパおよび/または外リンパのイオン平衡を維持するために製剤化される。
【0028】
いくつかの例において、本明細書に記載される耳用の製剤および組成物の局所投与は、活性薬剤の全身投与の結果として、起こり得る有害な副作用を回避するものである。いくつかの例では、本明細書に記載される局所適用された耳用の製剤および組成物は、耳構造と適合する。こうした適合する耳構造は、外耳、中耳、および/または内耳に関連するものを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤および組成物は、所望の耳構造、例えば、蝸牛領域に直接投与されるか、または、耳構造の領域に直接連通している構造物(蝸牛領域の場合、例えば、限定されないが、正円窓、内襞窓、あるいは、卵円窓膜を含む)に投与される。いくつかの例において、本明細書で開示される耳用の製剤および組成物は、製剤から一定の割合の薬物の放出をもたらし、および、耳疾患を患っている個体または患者の内耳に対して耳用の活性薬剤の一定の長時間暴露源を与えて、他の処置方法(例えば、耳用の点滴、および/または、複数の鼓室内注射)に関連するあらゆる可変性を減らすか取り除く、制御放出性の製剤または組成物である。
【0029】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤および組成物、外耳への有効成分の持続放出をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤および組成物は、蝸牛と前庭迷路を含む中耳および/または内耳(内耳)への有効成分の持続放出をもたらす。いくつかの実施形態において、耳用の製剤および組成物はさらに、制御放出成分と組み合わせて、即時または迅速な放出成分を含む。
【0030】
特定の定義
製剤、組成物、または成分に関して、「耳に許容可能な」との用語は、本明細書で使用されるように、処置されている被験体の外耳(auris externa)(または、external ear、あるいはouter ear)、中耳(auris mediaあるいはmiddle ear)、および/または内耳(auris internaあるいはinner ear)に対していかなる永続的で有害な影響がないことを含む。「耳に薬学的に許容可能な」によって、本明細書で使用されるように、外耳(auris externa)(または、external ear、あるいはouter ear)、中耳(auris mediaあるいはmiddle ear)、および/または内耳(auris internaあるいはinner ear)に関して化合物の生物学的活性または特性を阻害し、ならびに、外耳(auris externa)(または、external ear、あるいはouter ear)、中耳(auris mediaあるいはmiddle ear)、および/または内耳(auris internaあるいはinner ear)に対する毒性が減少あるいは比較的減少した、担体または希釈液などの材料を指し、すなわち、材料は望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、あるいは、それが含まれている組成物の成分のいずれとも有害に相互作用することなく、個体に投与される。
【0031】
本明細書で使用されるように、特定の化合物または医薬組成物の投与による特定の耳の疾患、障害、または疾病の症状の改善または減少は、化合物または組成物の投与に起因するか関連付けられる(永久的または一時的であれ、持続的または一過的であれ)、重症度の任意の低下、発病の遅れ、進行の遅れ、または持続期間の短縮を指す。
【0032】
本明細書で使用されるように、「抗菌剤」との用語は、微生物の成長、増殖、または増加を阻害するか、もしくは微生物を殺す化合物を指す。適切な「抗菌剤」は、抗菌薬(最近に対して効果的)、抗ウイルス剤(ウイルスに対して効果的)、抗真菌剤(真菌に対して効果的)、抗原虫剤(原虫に対して効果的)、および/または、任意のクラスの微生物寄生体に対する抗寄生虫剤である。「抗菌剤」は、有毒であるか、または細胞増殖抑制性であることを含む微生物に対する任意の適切なメカニズムによって作用する。
【0033】
「抗酸化剤」は、薬学的に耳に許容可能な抗酸化剤であり、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム、およびトコフェロールを含む。ある実施形態では、必要に応じて、抗酸化剤は化学安定性を増強する。抗酸化剤はさらに、特定の治療剤の耳毒性効果を打ち消すためにも使用される。
【0034】
製剤、組成物、または成分に関して「耳に許容可能な浸透促進剤」との用語は、本明細書で使用されるように、障壁耐性を減少させる特性を指す。
【0035】
「外耳(Auris externa)」とは、外耳(externalまたはouter ear)を指し、耳介および外耳道(EAC)を含む。
【0036】
「内耳(Auris interna)」は、蝸牛および前庭迷路、ならびに、蝸牛を中耳に繋げる正円窓を含む、内耳(inner ear)を指す。
【0037】
「内耳のバイオアベイラビリティ」または「中耳のバイオアベイラビリティ」とは、試験されている動物またはヒトの内耳または中耳それぞれで利用可能となっている本明細書で開示される化合物の投与された投与量の割合を指す。
【0038】
「中耳」とは、鼓室、耳小骨、および中耳を内耳につなぐ卵円窓を含む中耳を指す。
【0039】
「内耳のバイオアベイラビリティ」とは、試験されている動物またはヒトの内耳で利用可能となっている本明細書で開示される化合物の投与された投与量の割合を指す。
【0040】
「平衡障害」とは、被験体にふらつきを感じさせる、または動いている感覚を持たせる、障害、病気、または、疾病を指す。この定義には、限定されないが、めまい、回転性めまい、不均衡、失神性めまいが含まれる。平衡疾患をとして分類される疾患は、限定されないが、ラムゼイハント症候群、メニエール病、デバルクマン(mal de debarquement)、良性発作性頭位めまい症、迷路炎、および老人性難聴を含む。
【0041】
「血漿濃度」は、被験体の血液の血漿成分中の本明細書で提供される化合物の濃度を指す。
【0042】
「担体材料」とは、耳用の薬剤、中耳、内耳、耳に許容可能な医薬製剤の放出特性とに適合する賦形剤である。このような担体材料は、例えば、結合剤、懸濁化剤、崩壊剤、充填剤、界面活性剤、可溶化剤、安定化剤、潤滑剤、湿潤剤、希釈剤などを含む。「耳に薬学的に適合する担体材料」としては、限定されないが、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、マルトデキストリン、グリセリン、ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、コレステロール、コレステロールエステル、カゼイン酸ナトリウム、ダイズレシチン、タウロコール酸、ホスファチジルコリン、塩化ナトリウム、リン酸三カルシウム、リン酸二カリウム、セルロースとセルロース抱合体、糖類ステアロイル乳酸ナトリウム、カラギーナン、モノグリセリド、ジグリセリド、α化デンプン、アルギネート、カルボマー、ヒアルロン酸(HA)、ポロキサマー、デキストランなどが挙げられる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「細胞毒性薬剤」という用語は、耳の疾患、例えば、耳の自己免疫疾患や耳の癌の処置に有効な細胞毒性(すなわち、細胞に対する毒性)である化合物を指し、本明細書で開示される製剤中での使用に適している。
【0044】
「希釈剤」という用語は、送達前に耳用の薬剤を希釈するために使用され、かつ、中耳および/または内耳に適合する化合物である。
【0045】
「分散剤」および/または「粘度調節剤」および/または「増粘剤」は、液体媒体を介する耳用の薬剤の分散と均質性を制御する材料である。分散促進剤/分散剤の例としては、限定されないが、親水性ポリマー、電解質、Tween(登録商標)60あるいは80、PEG、ポリビニルピロリドン(PVP;Plasdone(登録商標)として商業的に知られている)、および、炭水化物ベースの分散剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、HPC、HPC-SL、およびHPC-L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、HPMC K100、HPMC K4M、HPMC K15M、HPMC E10M、およびHPMC K100M)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートステアレート(HPMCAS)、非晶質セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S630)、エチレンオキシドとホルムアルデヒドを伴う4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールポリマー(チロキサポールとしても知られる)、ポロキサマー(例えば、Pluronics F68(登録商標)、F88(登録商標)、F108(登録商標)、およびF127(登録商標)であり、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーである);ならびに、ポロキサミン(例えば、Tetronic 908(登録商標)Poloxamine 908(登録商標)としても知られており、エチレンジアミンへのプロピレンオキシドとエチレンオキシドの連続添加に由来する四官能基ブロックコポリマーである(BASF Corporation, Parsippany, N.J.))、ポリビニルピロリドンK12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、あるいはポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル酢酸コポリマー(S-630)、ポリエチレングリコール、(例えば、ポリエチレングリコールは約300~約6000、あるいは約3350~約4000、あるいは約7000~約5400の分子量を有する)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリソルベート80、アルギン酸ナトリウム、ゴム、例えば、トラガカントゴムおよびアラビアガム、グアーガム、キサンタンガムを含むキサンタン、糖類、セルロース化合物、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリソルベート80、アルギン酸ナトリウム、ポリエトキシル化モノラウリン酸ソルビタン、ポリエトキシル化モノラウリン酸ソルビタン、ポビドン、カルボマー、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸塩、キトサン、二酸化ケイ素、およびこれらの組み合わせが挙げられる。セルロースまたはトリエチルセルロースなどの可塑剤も分散剤として使用される。本明細書で開示される耳用薬剤のリポソーム分散液および自己乳化性分散液に有用な随意の分散剤は、ジミリストイルホスファチジルコリン、卵由来の天然ホスファチジルコリン、卵由来の天然ホスファチジルグリセロール、コレステロール、およびミリスチン酸イソプロピルである。いくつかの実施形態では、「分散剤」および/または「粘度調節剤」および/または「増粘剤」は、ポロキサマーではない。
【0046】
「薬物吸収」または「吸収」とは、投与の局所的な部位、ほんの一例として、内耳の正円窓膜から、障壁(以下に記載されるような正円窓膜)を超えて内耳構造に至る耳用製剤の移動のプロセスを指す。「同時投与」等の用語は、本明細書で使用されるように、耳用薬剤を一人の患者に投与することを包含することを意味しており、耳用薬剤が、同じ投薬経路または異なる投薬経路で投与されるか、あるいは、同時または異なる時間に投与される処置レジメンを含むことを意図している。
【0047】
「有効な量」または「治療上有効な量」との用語は、本明細書で使用されるように、処置されている疾患または疾病の1以上の症状をある程度まで緩和すると予想されるのに十分な量の投与されている耳用薬剤を指す。例えば、本明細書で開示される耳用薬剤の投与の結果は、本明細書で開示される疾患または疾病のいずれか1つの徴候、症状、または原因の減少および/または軽減である。例えば、治療用途のための「有効な量」とは、過度の有害な副作用を伴うことなく、疾患症状を減らすかまたは改善するのに必要とされる、本明細書で開示されるような製剤を含む耳用薬剤の量である。「治療上有効な量」との用語は、例えば、予防上有効な量を含む。本明細書で開示される耳用薬剤組成物の「有効な量」とは、過度の有害な副作用を伴うことなく、所望の薬理学的効果または治療の向上を達成するのに有効な量である。「有効な量」または「治療上有効な量」は、実施形態によっては、投与される化合物の代謝の変動、被験体の年齢、体重、一般的な状態、処置されている疾病、処置されている疾病の重篤度、および処方する医師の判断次第で、被験体ごとに変化することが理解されよう。いくつかの例では、持続放出型の投与フォーマットにおける「有効な量」が、薬物動態および薬理学を考慮して、即時放出性の投与フォーマットにおける「有効な量」とは異なることも理解される。
【0048】
「高める」または「高めること」との用語は、耳用薬剤の所望の効果の有効性または持続時間のいずれかを増やすか長くすること、あるいは、任意の有害な症状を減らすことを指す。例えば、本明細書で開示される耳用薬剤の作用を高めることに関して、「高めること」との用語は、本明細書で開示される耳用薬剤と組み合わせて使用される他の治療薬の効果である有効性または持続時間のいずれかを増やすか長くする能力を指す。「高めるのに有効な量」とは、本明細書で使用されるように、所望の系で別の治療薬または耳用薬剤の効果を高めるのに十分な耳用薬剤または他の治療薬の量を指す。患者に使用されるとき、こうした使用に有効な量は、疾患、障害、または疾病の重症度と経過、以前の治療、患者の健康状態、および薬物に対する反応、ならびに治療する医師の判断によって変わる。
【0049】
「阻害する」との用語は、本明細書に記載される疾病の1つの疾病を含む、疾病の進行を防ぎ、遅らせ、または撤回すること、あるいは、処置を必要としている患者の疾病の進歩を含む。
【0050】
「キット」および「製品」との用語は同義語として使用される。
【0051】
「局所麻酔薬」は、感覚の可逆的な喪失および/または痛覚の喪失を引き起こす物質を意味する。しばしば、これらの物質は、興奮性膜(例えば、ニューロン)の脱分極と再分極の速度を減少させることにより機能する。非制限的な例として、局所麻酔薬は、リドカイン、ベンゾカイン、プリロカイン、およびテトラカインを含む。
【0052】
本明細書で使用されるように、「耳用薬剤」または「耳構造調節剤」または「耳用治療薬」または「耳用活性薬剤」または「活性薬剤」または「治療薬」との用語は、耳疾患、例えば、中耳炎、耳硬化症、耳の自己免疫疾患、および耳癌の処置に有効であり、かつ、本明細書に記載される製剤中での使用に適している化合物を指す。「耳用薬剤」または「耳構造調節剤」または「耳用治療薬」または「耳活性薬剤」または「活性薬剤」は、限定されないが、アゴニスト、半アゴニスト、アンタゴニスト、半アンタゴニスト、逆アゴニスト、競合的アンタゴニスト、ニュートラルアンタゴニスト、オルソステリックアンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、耳構造調節標的の正のアロステリックモジュレータ、耳構造調節標的の負のアロステリックモジュレータ、またはこれらの組み合わせとして機能する化合物を含む。
【0053】
用語「耳の治療介入」とは、1つ以上の耳構造に対する外部の損傷または外傷を意味し、移植片、耳の手術、注射、カニューレ挿入などを含む。これらの例は、内耳または中耳の医療デバイスを含み、その例としては、蝸牛移植片、聴力温存デバイス、聴力改善デバイス、短い電極、ミクロの人工器官またはピストン様人工器官;針;幹細胞移植;薬物送達デバイス;任意の細胞ベースの治療薬などを含む。耳の手術は、中耳手術、内耳手術、鼓膜切開術、蝸牛開口(cochleostomy)、迷路切開、乳突削開術、アブミ骨切除術(stapedectomy)、アブミ骨切開術(stapedotomy)、内リンパ球嚢切開術(sacculotomy)などを含む。注射は中耳内注射、蝸牛内注射、正円窓膜全体の注射などを含む。カニューレ挿入は中耳内、蝸牛内、内リンパ、外リンパ、または前庭のカニューレ挿入などを含む。
【0054】
「浸透促進剤」との用語は、障壁耐性(例えば、正円窓膜の障壁耐性、BLB等)を減少させる薬剤を指す。
【0055】
「薬力学」とは、中耳および/または内耳内の所望の部位で薬物の濃度に対して観察される生物学的反応を決定する因子を指す。
【0056】
「薬物動態」とは、中耳および/または内耳内の所望の部位で薬物の適切な濃度の達成ならびに維持を決定する因子を指す。
【0057】
予防的な用途では、本明細書に記載される耳用薬剤を含む組成物は、特定の疾患、障害、あるいは疾病になりやすい、あるいはそのリスクのある患者に投与される。このような量は、「予防上有効な量または投与量」であると定義される。この用途では、正確な量は患者の健康状態、体重などによっても変わる。
【0058】
「プロドラッグ」とは、インビボで親薬物へ変換される耳用薬剤を表す。特定の実施形態では、プロドラッグは、化合物の生物学的、薬学的、または治療的な形態へと1つ以上の工程またはプロセスによって酵素的に代謝される。プロドラッグを生成するために、活性化合物がインビボ投与で再生成されるように、薬学的に活性な化合物は修飾される。1つの実施形態では、プロドラッグは、薬物の代謝安定性または移動特性を変え、副作用または毒性を消すか、または薬物の他の特性または性質を変えるように設計される。本明細書に提供される化合物は、いくつかの実施形態において、適切なプロドラッグへと誘導体化される。
【0059】
「可溶化剤」は、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、ドキュセートナトリウム、ビタミンE TPGS、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、n-ブタノール、イソプロピルアルコール、コレステロール、胆汁酸塩、ポリエチレングリコール200-600、グリコフロール、トランスクトール(登録商標)、プロピレングリコール、およびジメチルイソソルビドなどの耳に許容可能な化合物を指す。
【0060】
「安定化剤」は、任意の酸化防止剤、緩衝液、酸、防腐剤等などの、中耳および/または内耳の環境に適合する化合物を指す。安定化剤は、限定されないが、(1)賦形剤の、容器または送達系(注射器またはガラス瓶を含む)との適合性を向上させる、(2)組成物の成分の安定性を向上させる、または(3)製剤の安定性を向上させる、のいずれかを行う薬剤を含む。
【0061】
「定常状態」は、本明細書で使用されるように、中耳および/または内耳に投与される薬物の量が、1回の投薬間隔以内に排泄される薬物の量と等しく、結果として、標的とする構造内での薬物曝露濃度を水平または一定レベルになるときである。
【0062】
本明細書で使用されるように、「被験体」との用語は、動物、好ましくはヒトまたはヒト以外を含む哺乳動物を意味するために使用される。患者および被験体との用語は交換可能に使用される。
【0063】
「界面活性剤」は、耳に許容可能である化合物、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドクサートナトリウム、Tween(登録商標)60または80、トリアセチン、ビタミンE TPGS、ホスホリン脂質、レシチン、ホスファチジルコリン(c8~c18)ホスファチジルエタノールアミン(c8~c18)、ホスファチジルグリセロール(c8~c18)、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリソルベート、ポロキサマー、胆汁酸塩、グリセリルモノステアレート、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー、例えば、Pluronic(登録商標))(BASF)などを含む。他のいくつかの界面活性剤は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび植物油、例えば、ポリオキシエチレン(60)水素化ヒマシ油;および、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとアルキルフェニルエーテル、例えば、オクトキシノール10、オクトキシノール40を含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、物理的な安定性を増強するためにまたは他の目的のために含まれる。
【0064】
「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」、および「処置(treatment)」との用語は、本明細書に使用されるように、予防的および/または治療的にのいずれかで、疾患または疾病あるいは関連する症状を軽減、緩和、または改善すること、さらなる症状を予防すること、症状の根底にある代謝の原因を改善または予防すること、疾患または疾病を阻害する、例えば、疾患または疾病の進行を阻止すること、疾患または疾病を和らげること、疾患または疾病を退行させること、疾患または疾病により生じる状態を和らげること、あるいは疾患または疾病の症状を制御するか止めることを含む。
【0065】
「実質的に低い分解生成物」との用語は、活性薬剤の約10重量%が活性薬剤の分解生成物であることを意味する。さらなる実施形態において、この用語は、活性薬剤の10重量%未満が活性薬剤の分解生成物であることを意味する。さらなる実施形態において、この用語は、活性薬剤の9重量%未満が活性薬剤の分解生成物であることを意味する。さらなる実施形態において、この用語は、活性薬剤の8重量%未満が活性薬剤の分解生成物であることを意味する。さらなる実施形態において、この用語は、活性薬剤の7重量%未満が活性薬剤の分解生成物であることを意味する。さらなる実施形態において、この用語は、活性薬剤の6重量%未満が活性薬剤の分解生成物であることを意味する。さらなる実施形態において、この用語は、活性薬剤の5重量%未満が活性薬剤の分解生成物であることを意味する。さらなる実施形態において、この用語は、活性薬剤の4重量%未満が活性薬剤の分解生成物であることを意味する。さらなる実施形態において、この用語は、活性薬剤の3重量%未満が活性薬剤の分解産物であることを意味する。またさらなる実施形態において、この用語は、活性薬剤の2重量%未満が、活性薬剤の分解産物であることを意味する。さらなる実施形態において、この用語は、活性薬剤の1重量%未満が、活性薬剤の分解産物であることを意味する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤中に存在する任意の個々の不純物(例えば、金属不純物、活性薬剤の分解生成物、および/または賦形剤など)は、活性薬剤の5重量%未満、2重量%未満、または1重量%未満である。いくつかの実施形態では、製剤は、貯蔵中の沈殿物を含まず、製造および貯蔵の後に色を変化させない。
【0066】
化合物の薬学的に許容可能な誘導体は、塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、アセタール、ケタール、オルトエステル、ヘミアセタール、ヘミケタール、酸、塩基、溶媒和物、水和物、あるいはこれらのプロドラッグを含む。いくつかの実施形態において、このような誘導体は、そのような誘導体化のための既知の方法を使用して、当業者によって容易に調製される。薬学的に許容可能な塩としては、限定されないが、アミン塩、例えば、限定されないが、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、アンモニア、ジエタノールアミン、および他のヒドロキシアルキルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、l-パラ-クロロベンジル-2-ピロリジン-l’-イルメチルベンズイミダゾール、ジエチルアミン、および他のアルキルアミン、ピペラジン、ならびにトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;アルカリ金属塩、例えば、限定されないが、リチウム、カリウム、およびナトリウム;アルカリ土類金属塩、例えば、限定されないが、バリウム、カルシウム、およびマグネシウム;遷移金属塩、例えば、限定されないが、亜鉛;および、無機塩、例えば、限定されないが、リン酸水素ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウム;および、同様に、例えば、限定されないが、塩酸塩と硫酸塩などの鉱酸の塩;ならびに、有機酸の塩、例えば、限定されないが、酢酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、メシル酸塩、およびフマル酸塩が挙げられる。薬学的に許容可能なエステルは、限定されないが、カルボン酸、リン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、スルフィン酸、およびボロン酸を含む、酸性基のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、およびシクロアルキルのエステルを含む。薬学的に許容可能なエノールエステルは、限定されないが、式C=C(OR)の誘導体を含み、ここで、Rは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、およびシクロアルキルである。薬学的に許容可能なエノールエステルは、限定されないが、式C=C(OC(O)R)の誘導体を含み、ここで、Rは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、およびシクロアルキルである。薬学的に許容可能な溶媒和物および水和物は、1つ以上の溶剤または水分子、あるいは、1~約100、あるいは1~約10、あるいは1~約2、3、または4の溶剤または水分子を有する化合物の複合体である。
【0067】
本明細書で提供される化合物はキラル中心を含み得ることが理解される。こうしたキラル中心は(R)あるいは(S)配置のいずれかであり得、あるいはその混合物であり得る。したがって、本明細書で提供される化合物は、鏡像異性的に純粋であるか、あるいは立体異性またはかジアステレオマーの混合物であり得る。したがって、当業者は、その(R)形態の化合物の投与が、インビボのエピマー化を経験する化合物について、その(S)形態の化合物の投与と同等であるということを認識するであろう。
【0068】
本開示は、そのようなすべての起こり得る異性体と、そのラセミ体および光学的に純粋な形態を含むよう意図される。光学的に活性(+)および(-)、(R)-および-(S)、あるいは(D)-および(L)-異性体は、例によっては、キラルシントンあるいはキラル試薬を使用して調製され、あるいは、逆相HPLCなどの従来の技術を使用して分解される。本明細書に記載される化合物がオレフィン二重結合または幾何学的な不斉の他の中心を含むとき、および、別段の定めがない限り、化合物はEおよびZの幾何異性体の両方を含むことが意図される。同様に、すべての互変異性型も含まれるように意図される。
【0069】
本明細書で使用されるように、アルキル、アルケニル、およびアルキニルの炭素鎖は、指定されない限り、1~20の炭素、1~16の炭素、あるいは1~6つの炭素を含み、直鎖または分岐鎖である。ある実施形態では、アルキル、アルケニル、およびアルキニルの炭素鎖は、1~6つの炭素を含む。2~20の炭素からのアルケニル炭素鎖は、ある実施形態では、1~8つの二重結合を含み、2~16の炭素からのアルケニル炭素鎖は、ある実施形態では、1~5つの二重結合を含む。2~6つの炭素からのアルケニル炭素鎖は、ある実施形態では、1~2の二重結合を含む。2~20の炭素からのアルキニル炭素鎖は、ある実施形態では、1~8つの三重結合を含み、2~16の炭素からのアルキニル炭素鎖は、ある実施形態では、1~5つの三重結合を含む。2~6つの炭素からのアルキニル炭素鎖は、ある実施形態では、1~2の三重結合を含む。本明細書に記載される例示的なアルキル、アルケニル、およびアルキニルの基は、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、イソヘキシル、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1,3-ブタジエニル基、エチニル、1-プロピニル、および2-プロピニルを含む。本明細書で使用されるように、低級アルキル、低級アルケニル、および低級アルキニルは、約1あるいは約2の炭素から最大で約6つの炭素を有する炭素鎖を指す。
【0070】
「シクロアルキル」との用語は、3~10の炭素原子のある実施形態、3~6の炭素原子の他の実施形態では、飽和された単環系または多環系を指し;シクロアルケニルとシクロアルキニルは、少なくとも1つの二重結合と少なくとも1つの三重結合をそれぞれ含む単環系あるいは多環系を指す。シクロアルケニルとシクロアルキニルの基は、ある実施形態では、3~10の炭素原子を含み、シクロアルケニル基は、さらなる実施形態では、4~7つの炭素原子とシクロアルキニル基を含み、さらなる実施形態では、8~10の炭素原子を含む。シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニルの基の環系は、1つの環、あるいは、縮合、架橋、またはスピロ接続された方法で一緒に接合され得る2つ以上の環から構成され得る。
【0071】
「アリール」との用語は、6~19の炭素原子を含む芳香族の単環基または多環基を指す。アリール基はとしては、限定されないが、フルオレニル、置換されたフルオレニル、フェニル、置換されたフェニル、ナフチル、および置換されたナフチルなどの基が挙げられる。
【0072】
「アラルキル」との用語は、アルキルの水素原子の1つがアリールと取り替えられたアルキル基を指す。
【0073】
本明細書に記載される方法および組成物の他の目的、特徴、および利点は以下の詳細な記載から明らかとなる。しかしながら、詳細な記載と特定の例は、特定の実施形態を示しているが、例証目的でのみ与えられることを理解されたい。
【0074】
耳の解剖学的構造
耳は音を検出する感覚器官、および平衡と体位を維持する器官の両方として役立つ。耳は一般に3つの部分:外耳、中耳、および内耳inner earまたはauris interna)に分けられる。
図1に示すように、外耳は、この器官の外側部分であり、耳介(pinna、auricle)と、耳道(外耳道)と、鼓膜(tympanic menbrane、ear drumとしても知られている)の外側に面する部分から構成される。外耳の肉質部分であり、頭部の側面にある目に見える耳介は、音波を集め、音波を耳道に向かわせる。したがって、外耳の機能とは1つには音波を集め、音波を鼓膜と中耳へ向けることである。
【0075】
中耳は鼓膜の後ろの鼓室と呼ばれる空気で膨らんだ空洞である。鼓膜(tympanic membrane;ear drumとしても知られている)は、中耳と外耳を分ける薄い膜である。中耳は側頭骨内にあり、この空間内に3つの耳骨(耳小骨):槌骨、キヌタ骨、およびアブミ骨を含む。耳小骨は、鼓室の空間を横切って架け橋を形成する小さな靭帯によって一緒に連結される。一方の端部で鼓膜に付いている槌骨は、その前方の端部でキヌタ骨に連結され、これが順にアブミ骨に連結している。アブミ骨は、鼓室内にある2つの卵円窓の1つの卵円窓に付いている。環状靭帯としても知られている線維組織層は卵円窓にアブミ骨を接続する。外耳からの音波はまず鼓膜を振動させる。振動は耳小骨と卵円窓を通って蝸牛全体に伝えられ、これが内耳中の流体に運動を伝える。したがって、耳小骨は鼓膜と液体で満たされた内耳の卵円窓との間で機械的結合を与えるように配され、音は変形・変換されて内耳に入り、さらに処理される。耳小骨、鼓膜、または卵円窓の堅さ、硬直性、または移動の喪失は、難聴、例えば、耳硬化症、またはアブミ骨の硬直化の原因となる。
【0076】
鼓室は耳管によって咽喉にも繋がっている。耳管は外部空気と中耳腔との間の圧力を等しくする能力を与える。内耳の一構成要素であるが鼓室内にも到達可能である正円窓は、内耳の蝸牛に開口している。正円窓は膜により覆われており、これは3つの層:外部または粘液層、中間または腺維層、および蝸牛の流体と直接連通する内膜からなる。ゆえに、正円窓は内膜を介して内耳と直接連通している。
【0077】
卵円窓と正円窓との動きは、相互接続されており、すなわち、アブミ骨が、鼓膜から正円窓へとこの動きを伝え、内耳の流体に対して内側に動き、正円窓が、対応するように押し出されて蝸牛の流体から離れる。正円窓のこの動きによって、蝸牛内の流体が動き、次いで、蝸牛の内側の有毛細胞が移動し、聴覚信号が変換できるようになる。正円窓膜が硬化し、硬直すると、蝸牛の流体が移動できなくなるため、難聴を引き起こす。最近の研究は正円窓上に機械的な変換器を埋め込むことに焦点を当てており、これは卵円窓を通る正常な導電性の経路を迂回し、増幅された入力を蝸牛室に与えるものである。
【0078】
聴覚信号伝達は内耳内で起こる。流体で満たされた内耳(inner earまたはinner ear)は、2つの構成要素:蝸牛と前庭器からなる。
【0079】
蝸牛は聴力に関連する内耳の部分である。蝸牛はカタツムリに似た形状に巻かれた先細りのチューブのような構造である。蝸牛の内部は3つの領域に分けられ、これは前庭膜と基底膜の位置によってさらに定義される。前庭膜の上の部分は前庭階であり、これは卵円窓から蝸牛の頂端まで伸びており、カリウム含有量が少なく、ナトリウム含有量が多い水性液である外リンパ流体を含む。基底膜は鼓室階領域を定義し、それは蝸牛の頂端から正円窓に伸びており、外リンパもさらに含む。基底膜は何千もの堅い線維を含み、これは正円窓から蝸牛の頂端まで長さが徐々に増加する。音によって活性化されると、基底膜の線維は振動する。前庭膜と鼓室階の間は蝸牛管であり、これは蝸牛の頂端で閉じられた嚢として終わる。蝸牛管は内リンパ流体を含み、これは脳脊髄液に似ていてカリウムが多い。
【0080】
聴覚の感覚器であるコルチ器官は基底膜に位置し、上方へ伸びて蝸牛管に達する。コルチ器官は、自由表面から延びる毛状突起を有する有毛細胞を含んでおり、蓋膜と呼ばれるゼラチン状表面と接触している。有毛細胞に軸索はないが、内耳神経(第III脳神経)の蝸牛枝を形成する感覚神経線維によって囲まれる。
【0081】
議論されるように、楕円窓としても知られている卵円窓は、アブミ骨と連通することで、鼓膜から振動する音波を中継する。卵円窓に伝わった振動は、外リンパと前庭階/鼓室階とを介して、流体で満たされた蝸牛内の圧力を高め、次いで、正円窓膜が応答して膨らむ。卵円窓の内部押圧/正円窓の外部への拡張の協働により、蝸牛内の圧力を変化させることなく、蝸牛内での流体の移動が可能となる。しかしながら、振動が前庭膜中の外リンパを通って伝わるため、振動は前庭膜中で対応する発振を生成する。こうした対応する発振は蝸牛管の内リンパを通って伝わり、基底膜へと移動する。基底膜が振動するか、または上下に移動するとき、コルチ器官は基底膜と共に動く。その後、コルチ器官中の有毛細胞受容体は蓋膜とは逆の方向に動き、蓋膜中の機械的な変形を引き起こす。この機械的な変形が神経インパルスを開始し、これは内耳神経を介して中枢神経系に移動し、受け取った音波を信号へと機械的に送信し、信号は中枢神経系によりその後処理される。
【0082】
内耳は頭蓋の側頭骨中の入り組んだ一連の通路である骨迷路(osseous or bony labyrinth))内にその一部がある。前庭は平衡の器官であり、三半規管と前庭からなる。この3つの半円状の管は互いに対して配置されており、空間内での3つの直交面に沿った頭部の動作は、流体の移動により、および、膨大部稜と呼ばれる半円状の管の感覚器官によるその後の信号処理により検出されるようになっている。膨大部綾は有毛細胞と支持細胞を含み、頂と呼ばれるドーム型のゼラチン状の塊により覆われる。有毛細胞の毛は頂に埋め込まれている。三半規管は動的平衡、回転運動と角運動の平衡を検知する。
【0083】
頭部をすばやく回転させるとき、三半規管は頭部とともに動くが、膜質の三半規管にある内リンパ流体は静止したままである傾向にある。内リンパ流体は頂を押圧し、この頂が一方の側に傾く。頂が傾斜するにつれて、頂は膨大部綾の有毛細胞に毛の一部を折り曲げ、これが感覚刺激を引き起こす。それぞれの三半規管が異なる面に位置するので、各三半規管の対応する膨大部綾は頭部の同じ動作に対して異なるように応答する。これにより刺激の寄せ集めが形成され、これは内耳神経の前庭枝上の中枢神経系に送信される。中枢神経系はこの情報を解釈し、平衡を維持するために適切な反応を始める。中枢神経系では小脳が重要であり、これはバランス感覚と平衡感覚を媒介する。
【0084】
前庭は内耳の中心部分であり、静的均衡、または重力に対する頭部の位置を確認する有毛細胞を有する機械受容器を含む。頭部が静止しているか、またはまっすぐに動いているとき、静的均衡は一定の役割を果たしている。前庭の膜迷路は、2つの嚢のような構造である、卵形嚢および球形嚢に分けられる。それぞれの構造は斑と呼ばれる小さな構造を含み、これが静的均衡の維持に関与する。斑は感覚毛細胞からなり、これは斑を覆うゼラチン状の塊(頂に似ている)に埋め込まれている。耳石と呼ばれる炭酸カルシウムの粒は、ゼラチン状の層の表面上に埋め込まれている。
【0085】
頭部が直立位置にあるとき、毛は斑に沿って直線である。頭部を傾けると、ゼラチン状の塊と耳石がそれに対応して傾斜し、斑の有毛細胞の毛の一部を曲げる。この曲げ作用により中枢神経系に対する信号刺激が開始され、信号刺激は内耳神経の前庭枝を通って伝わり、これが運動心拍を適切な筋肉に伝えることでバランスが維持される。
【0086】
いくつかの例では、本明細書に記載される耳用製剤は、外耳に置かれる。いくつかの例では、本明細書に記載される耳用製剤、蝸牛と前庭迷路を含む中耳または内耳に置かれ:1つのオプションは、注射器/針またはポンプを使用して、鼓膜全体に製剤を注入することである。いくつかの例では、蝸牛と前庭迷路送達のために、1つのオプションは、正円窓膜全体に、あるいは、蝸牛の微小灌流としても知られている中耳への直接の微量注入によって、活性成分を送達することである。
【0087】
耳の疾患あるいは疾病
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤および組成物は、外耳、中耳、および/または内耳に関連する疾患または疾病の処置および/または予防に適している。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤および組成物は、外耳に関連する疾患あるいは疾病の処置および/または予防に適している。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤および組成物は、中耳に関連する疾患あるいは疾病の処置および/または予防に適している。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤および組成物は、内耳に関連する疾患あるいは疾病の処置および/または予防に適している。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤および組成物は、耳の疾患あるいは疾病の症状、例えば、本明細書で開示されるこれらのうちの1つを減少させ、撤回させ、および/または、改善する。これらの障害または疾病には多くの原因があり、それは、限定されないが、感染、損傷、炎症、腫瘍、および、薬物あるいは他の化学薬品に対する有害な反応を含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤および組成物は、耳そう痒症、外耳炎、耳痛症、耳鳴、回転性めまい、耳閉感、難聴、またはこれらの組み合わせを処置するのに役立つ。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤および組成物は、メニエール病、感音難聴、騒音性難聴、老人性難聴(年齢に関連する難聴)、自己免疫性耳疾患、耳鳴、耳毒性、興奮毒性、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼイハント症候群、前庭ニューロン炎、微小血管圧迫症候群、聴覚過敏、加齢性平衡障害(presbystasis)、中枢性聴覚処理障害、あるいは聴覚神経障害の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤および組成物は、蝸牛移植パフォーマンスの改善のために使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤および組成物は、メニエール病の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤および組成物は、感音難聴の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤および組成物は、騒音性難聴の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤および組成物は、老人性難聴(年齢に関連する難聴)の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤および組成物は、自己免疫性耳疾患の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤および組成物は、耳鳴の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤および組成物は、耳毒性の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤および組成物は、興奮毒性の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤および組成物は、内リンパ水腫の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤および組成物は、迷路炎の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤および組成物は、ラムゼイハント症候群の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤および組成物は、前庭ニューロン炎の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤および組成物は、微小血管圧迫症候群の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤および組成物は、聴覚過敏の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤および組成物は、加齢性平衡障害の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤および組成物は、中枢性聴覚処理障害の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤および組成物は、聴覚神経障害の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、本明細書にされる耳用の製剤および組成物は、蝸牛移植パフォーマンスの改善のために使用される。
【0089】
耳そう痒症
耳そう痒症、すなわち、外耳道のかゆみは、罹患した領域を引っ掻きたいという欲望または反射を引き起こす、擽感または刺激感覚である。場合によっては、発赤、腫れ、痛み、および剥離が罹患した領域で進行しかねない。耳そう痒症は、様々な薬剤により引き起こされる。いくつかの実施形態において、耳の中の一次微生物感染により、または、後に耳道に広がる身体からの二次感染として、耳そう痒症が生じる。いくつかの実施形態において、湿疹または乾癬などの皮膚疾病は、外耳道内の皮層刺激に繋がる。さらに、いくつかの例では、ヘアスプレー、シャンプー、シャワー用ジェル、あるいは、ほこり、ペット、および花粉などのアレルゲンなどの外因性刺激物が、耳そう痒症に繋がる。いくつかの実施形態において、耳そう痒症は、外耳炎などのより重症な合併症の初期徴候として機能する。
【0090】
耳痛症
耳痛(earache)または耳の痛みとして知られる耳痛症は、2つのタイプ、一次耳痛症と関連耳痛症に分類される。一次耳痛症は耳の内部から生じる耳の痛みである。関連耳痛症は耳の外部から生じる耳の痛みである。関連耳痛症の病因は複合的であり得るが、様々な周知の犯人は、歯牙障害、静脈洞炎、首の問題、扁桃炎、咽頭炎、および迷走神経と舌咽神経からの感覚枝を含む。場合によっては、関連耳痛は頭頸部の悪性腫瘍に関連する。
【0091】
耳閉感
耳閉感または耳閉塞感は、耳が塞がっている、詰まっている、または充満している感覚として説明される。耳痛症と同様に、耳閉感の病因は、様々な根本的な原因によるものである。通常、耳閉感は、耳鳴、耳痛、および難聴も伴うことがある。
【0092】
難聴
難聴は、聴力の部分的または完全な欠損である。難聴は3つのタイプ、すなわち、伝音難聴、感音難聴、および混合性難聴に分類される。伝音難聴は、音が外耳道を通って鼓膜へと効率的に伝えられない場合に生じる。いくつかの実施形態において、伝音難聴は、音響レベル、またはかすかな音を聞く能力の低下を含む。処置は、矯正的な医療手順または外科手術手順を含む。感音難聴は、蝸牛(内耳)に対して、または蝸牛から脳までの神経経路に対して損傷がある場合に生じる。このタイプの難聴は通常、恒久的な難聴に繋がる。混合性難聴は、外耳と内耳の両方の領域に沿って損傷が生じる、伝音難聴と感音難聴の組み合わせである。
【0093】
難聴の程度または重症度は、正常から、軽微、軽度、中程度、やや重傷、重傷、深刻までの範囲の7つの群に分類される。加えて、難聴はいくつかの例では周波数に基づいて階層化される。例えば、高音域のみに影響する難聴は高周波難聴と呼ばれ、一方で低音域に影響するものは低周波難聴と呼ばれる。場合によっては、難聴は高周波と低周波の両方に影響する。
【0094】
難聴はしばしば、耳垢症、外耳炎、耳痛症、耳鳴、および回転性めまいなどの付加的な原因と症状が付随する。いくつかの実施形態において、耳垢症が聴力を40-45dB減少させ得ることが示されている。こうした障害は、とりわけ高齢者において、コミュニケーションの困難、および身体的な不動性状態までも引き起こしかねない。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の組成物および製剤は難聴の処置に役立つ。
【0095】
有毛細胞の再生
哺乳動物の蝸牛中の有毛細胞は聴力にとって重要である。コルチ器官中の内毛細胞と外毛細胞は、音によって生じる蝸牛流体中の振動を感知し、振動を聴神経応答に変換して、これが脳に移動して音が認知される。有毛細胞の喪失は、年齢、大きな騒音への暴露、耳毒性薬物、および遺伝的要因までによって引き起こされる難聴に関連している。鳥と両生類では、有毛細胞への損傷は、蝸牛中の上皮細胞(支持細胞)を新しい有毛細胞へと分化転換させ、および、聴力を回復するために新しい支持細胞と有毛細胞を分割および再生成させるメカニズムを誘発する。有毛細胞を再生成するこの能力は哺乳動物では失われている。
【0096】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤あるいは組成物は、耳の有毛細胞の再生に役立つ。
【0097】
回転性めまい
回転性めまいは、身体が静止している間に回転しているまたは揺動しているような感覚として説明される。2つのタイプの回転性めまいが存在する。自覚的回転性めまいは、身体の誤った運動感覚である。他覚的回転性めまいは、自身の周囲が動いているような知覚である。回転性めまいにはたいてい、吐き気、嘔吐症状、およびバランス感覚維持の困難が付随する。いくつかの実施形態において、外耳炎は回転性めまいを誘発し得る。
【0098】
メニエール病
メニエール病は、3~24時間続き、徐々におさまっていく、回転性めまい、吐き気、および嘔吐に突然襲われることを特徴とする特発性の疾病である。進行性の聴力損失、耳鳴、および耳の中の圧迫感は経時的にこの疾患に伴う。メニエール病の原因はおそらく、内耳液の産生量の増加または吸収量の減少を含む、内耳液の恒常性のバランスが崩れることに関連する。
【0099】
メニエール病に関連する症状の原因は、内耳流体の生成の増加または再吸収の減少を含む、内耳流体ホメオスタシスの不均衡である可能性がある。
【0100】
内耳内のバソプレシン(VP)媒介アクアポリン2(AQP2)システムの最近の研究では、内リンパ生成物を誘発するVPの役割が示唆されており、これによって、前庭と蝸牛構造内で圧力が増加する。VPのレベルは内リンパ水腫(メニエール病)の場合にアップレギュレートすると判明し、モルモットでのVPの長期投与は内リンパ水腫を誘導することがわかった。鼓室階へのOPC-31260(V2-Rの競合アンタゴニスト)の注入を含むVPアンタゴニストによる処置は、メニエール病の症状の顕著な軽減をもたらした。他のVPのアンタゴニストは、WAY-140288、CL-385004、トルバプタン、コニバプタン、SR121463A、およびVPA985を含む。(Sanghi et al. Eur. Heart J. (2005) 26:538-543; Palm et al. Nephrol. Dial Transplant (1999) 14:2559-2562)。
【0101】
他の研究は、内リンパ生成物を制御し、ゆえに、前庭/蝸牛器内での圧力を制御する際のエストロゲン関連受容体β/NR3B2(ERR/Nr3b2)の役割を示唆している。マウスでのノックアウト研究は、内リンパ流体の生成を調節する際のNr3b2遺伝子のタンパク質生成物の役割を実証する。Nr3b2発現は、内リンパ分泌線状辺緑細胞(strial marginal cell)と、蝸牛前庭器官の前庭暗細胞と、それぞれに局在化されている。さらに、Nr3b2遺伝子のコンディショナルノックアウトは、聴覚消失と内リンパ液体量の減少とを引き起こす。場合によっては、ERR/Nr3b2に対するアンタゴニストによる処置は、内リンパ量の減少を促し、ゆえに、内耳構造内の圧力を変化させる。
【0102】
他の処置は、即時の症状への対処および再発の予防を目標とする。低ナトリウム食、カフェイン、アルコール、およびタバコを避けることが提唱されてきた。一時的に回転性めまいの発作を緩和する薬物は、抗ヒスタミン(メクリジン(Antivert, Bonine, Dramamine, Driminate)および他の抗ヒスタミンを含む)、ならびに、ロラゼパムまたはジアゼパムを含む、バルビツール酸塩および/またはベンゾジアゼピンを含む中枢神経系剤を含む。症状を和らげるのに役立つ薬物の他の例は、スコポラミンを含むムスカリン性アンタゴニストを含んでいる。吐き気と嘔吐とは、統合失調症治療薬を含有している座薬(フェノチアジン剤プロクロルベラジン(Compazine、Buccastem、Stemetil、Phenotil)を含む)によって和やらげられる。
【0103】
回転性めまいの症状を和らげるために、前庭機能の破壊を含むメニエール病の症状を軽減する外科的処置も使用されてきた。こうした処置は、内耳中の流体圧力を下げるおよび/または内耳平衡機能を破壊することを目的としている。流体圧力を和らげる内リンパ嚢シャント手術は、前庭機能不全の症状を和らげるために内耳内に施される。前庭神経の切断も使用され、これは聴力を保持しつつ回転性めまいを制御する。
【0104】
深刻なメニエール病の処置のための前庭機能の破壊に対する別のアプローチは、前庭系中の感覚毛細胞機能を破壊する薬剤の中耳内適用であり、それによって内耳平衡機能を失わせる。ゲンタマイシンとストレプトマイシンなどのアミノグリコシドを含む様々な抗菌剤がこの処置で使用される。薬剤は、小さな針、ガーゼを備えたまたは備えていない鼓膜切開チューブ、または手術用カテーテルを用いて鼓膜を介して注入される。少量の薬剤が長期間にわたって(例えば、注入の間が1ヶ月)投与される低投与量方法、および、大量の薬剤が短い時間枠(例えば、毎週)に投与される高投与量方法を含む、様々な投与レジメンを用いて、抗菌剤を投与する。高投与量方法の方が一般に効果的であるが、場合によっては、難聴を引き起こすことがあるためリスクも高い。
【0105】
メニエール症候群
メニエール病と似た症状を示すメニエール症候群は、別の疾患プロセスへの二次的な苦痛(例えば、梅毒感染による甲状腺疾患または内耳炎症)であると考えられる。ゆえに、メニエール症候群は、内分泌異常、電解質不均衡、自己免疫性機能不全、薬物療法、感染(例えば、寄生虫感染)、または脂質異状症を含む、内リンパの正常な産生または再吸収を妨害する様々なプロセスへの二次的な影響である。メニエール症候群を患う患者の処置は、メニエール病と同様である。
【0106】
感音難聴
感音難聴は、内耳の内耳神経(脳神経VIIIとしても知られる)または感覚細胞における異常(先天性および後天性)に由来するタイプの難聴である。内耳の主な異常は、耳有毛細胞の異常である。
【0107】
蝸牛の形成不全、染色体異常、および先天性コレステリン腫は、感音難聴の結果として生じる先天性異常の例である。ほんの一例として、炎症性疾患(例えば、化膿性迷路炎、鼓膜炎、流行性耳下腺炎、麻疹、ウイルス性梅毒、および自己免疫障害)、メニエール病、耳毒性の薬物(例えば、アミノグリコシド、ループ利尿薬、抗代謝物、サリチル塩、シスプラチン)への暴露、身体外傷、老人性難聴、および音響性外傷(90dBを超える音に長時間曝されること)はすべて、後天性感音難聴を引き起こす。
【0108】
感音難聴を引き起こす異常が聴覚路における異常である場合、感音難聴は中枢性難聴と呼ばれる。感音難聴を結果として生じる異常が、聴覚路内の異常である場合、感音軟調は、皮膚性難聴と呼ばれる。
【0109】
いくつかの例において、感音難聴は、内耳の成分または付随する神経成分が侵され、および、神経(すなわち、脳内の聴神経または聴覚神経路が侵されたとき)あるいは感覚成分を含むときに生じる。感覚性難聴は遺伝性のものであり、または、音響性外傷(すなわち、非常に大きな騒音)、ウイルス感染、薬物誘発性、または、メニエール病によって引き起こされる。いくつかの例では、神経性難聴は、脳腫瘍、感染症、または脳卒中などの様々な脳と神経の障害の結果として生じる。レフサム病(分枝脂肪酸の異常な蓄積)などのいくつかの遺伝性疾患が難聴に影響を与える神経の障害を引き起こす。聴覚神経路は、脱髄疾患、例えば、突発性脱髄性炎症(多発性硬化症を含む)、横断性脊髄炎、デビック病、進行性多巣性白質脳症、ギランバレー症候群、慢性脱髄性炎症多発性神経障害、および抗MAG末梢神経障害によって損傷を受ける。
【0110】
突発性難聴または感音難聴の発生は5,000人の個体のうち約1人で生じ、ウイルス感染または細菌感染、例えば、流行性耳下腺炎、麻疹、インフルエンザ、水痘、サイトメガロウイルス、梅毒、または感染性腺熱、もしくは内耳器官に対する物理的な怪我によって引き起こされる。場合によってはいかなる原因も特定されない。場合によっては、耳鳴と回転性めまいが突発性難聴に伴い、それは徐々に治まる。経口のコルチコステロイドは感音難聴を処置するために頻繁に処方される。場合によっては、外科的処置が必要である。他の処置は、内耳耳鳴と急性の感音難聴の処置のために開発中の化合物であるAM-101とAM-111を含む。(Auris Medical AG, Basel, Switzerland)。
【0111】
騒音性難聴
騒音性難聴(NIHL)は、長時間のあまりにも大きな声または大きな音に曝されることによって引き起こされる。いくつかの例では、難聴は、高音量の音楽、重機または機械、飛行機、または、銃声音などの騒音に長期間曝露されることによって生じる。85デシベル以上の音に長時間、または、繰り返し、または、突発的に曝されることは、難聴を引き起こす。NIHLは有毛細胞および/または聴神経への損傷を引き起こす。有毛細胞は、音響エネルギーを、脳に伝わる電気信号に変換する小感覚細胞である。場合によっては、突発的な音は、永続的な即時の難聴を引き起こす。この種の難聴は、場合によっては時間の経過とともに治まる、耳または頭で鳴り響く音、うなり、または、ごうごうという音である、耳鳴を伴う。難聴と耳鳴は一方または両方の耳で起こり、耳鳴は、いくつかの例では、一生涯、継続的にまたは時々続く。難聴に至る永久的な損傷と診断されることも多い。騒音への継続的な曝露は有毛細胞の構造にも損傷を与え、難聴および耳鳴を結果としてもたらすが、このプロセスは、突発性の騒音よりも緩やかに生じる。
【0112】
いくつかの実施形態において、耳保護剤(otoprotectants)は、NIHLを撤回、減少、または改善する。NIHLを処置または予防する耳保護剤の例としては、限定されないが、D-メチオニン、L-メチオニン、エチオニン、ヒドロキシルメチオニン、メチオニノル(methioninol)アミホスチン、メスナ(ナトリウム2-スルファニルエタンスルホネート(sodium 2-sulfanylethanesulfonate)、DとLとのメチオニンの混合液、ノルメチオニン、ホモメチオニン、S-アデノジル-L-メチオニン)、ジメチルジチオカルバメート、エブセレン(2-フェニル-1、2-ベンズイソセレナゾール-3(2H)-オン)、チオ硫酸ナトリウム、AM-111(細胞透過性JNK阻害剤、(Laboratoires Auris SAS))、ロイコボリン、ロイコボリンカルシウム、デクスラゾキサン、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0113】
老人性難聴(年齢に関連する難聴)
老人性難聴(年齢に関連する難聴(ARHL))は、老化に起因する進行性の両側難聴である。ほとんどの難聴が、より高い周波数(つまり15または16Hz以上の周波数)で起こり、(男性の音声に対するのと逆に)女性の音を聞くことが困難になり、(「s」および「th」のような)高調子の音を区別することができなくなる。暗騒音を除去するのは困難である。この障害はほとんどの場合、補聴器の移植、および/またはROSの蓄積を避ける医薬品の投与によって、処置される。
【0114】
障害は、内耳、中耳、および/または、VIII神経の生理機能の変化によって引き起こされる。老人性難聴を引き起こす内耳の変化は、耳の有毛細胞および/または不動毛の損失を伴う上皮萎縮、神経細胞の萎縮症、血管線条の萎縮症および基底膜の肥厚/硬直を含む。老人性難聴の一因であるさらなる変化は、鼓膜と小骨における障害の蓄積を含む。
【0115】
いくつかの例では、老人性難聴を導く変化は、DNA中の突然変異の蓄積およびミトコンドリアDNA中の突然変異により生じる;しかしながら、変化は、大騒音に曝されること、耳毒性薬剤に曝されること、感染、および/または、耳への血流が減少することによって悪化する。後者は、アテローム性動脈硬化、糖尿病、高血圧、および喫煙に起因する。
【0116】
老人性難聴または加齢性難聴は、通常の加齢の一部として起こるとともに、内耳のらせん状のコルチ器にある受容体細胞の変性の結果、生じる。他の原因は、内耳神経の多くの神経線維の減少、および蝸牛にある基底膜の柔軟性の喪失によるものもある。最も一般的には、難聴は、人が加齢するにつれて内耳の変化から生じるが、難聴は、中耳の変化、または耳から脳までの神経経路に沿った複雑な変化からも生じる。特定の医学的状態と薬物療法は同様の役割を果たす場合もある。いくつかの例では、老人性難聴は、らせん神経節ニューロンの求心性線維および有毛細胞を有するそのシナプス(リボンシナプス)の緩やかな喪失の結果として生じ、音を検出する感覚細胞と、聴性脳にこの情報を伝達する聴神経との間で離断を引き起こす。らせん神経節ニューロンと有毛細胞の損失も生じる。場合によっては、大きな雑音への事前暴露または他の耳の傷害は、この加齢のプロセスを悪化させ、聴力の損失の加速を引き起こす。老人性難聴は「隠れた難聴」も含み、これは、聴力閾値の著しい変化の欠如にもかかわらず暗騒音(「雑音中の音声(speech-in-noise)」)に対する音を検出することができないものである。聴力におけるこのようなわずかな減少は、らせん神経節ニューロンの求心性線維および有毛細胞を持つそのシナプス結合(リボンシナプス)の損失に関連している。
【0117】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される薬剤は、リボンシナプスを修復し、聴力機能を回復させる。いくつかの実施形態において、リボンシナプスは騒音外傷または曝露により損傷を受ける。
【0118】
自己免疫性内耳疾患
自己免疫性内耳疾患(AIED)は感音難聴の数少ない可逆的な原因の1つである。AIEDは、内耳の音声受信機能および前庭機能の両側性障害をしばしば含む、成人および子供の両方に起こるまれな障害である。AIEDの由来は、内耳構造を攻撃する、自己抗体および/または免疫細胞とみられているが、他の自己免疫疾病に関連している。多くの場合、AIEDは全身性の自己免疫の症状なく生じるが、最大で三分の一の患者が、炎症性腸感染、関節リウマチ、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、コーガン病、潰瘍性大腸炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、および強皮症などの全身性の自己免疫疾患にも苦しんでいる。多系統疾患であるベーチェット病にも一般に聴覚前庭の問題がある。食物に関連するアレルギーが蝸牛および前庭の自己免疫の原因であるといういくつかの証拠が存在するが、この疾患の原因論の重要性については、現在ではまだ議論がまとまっていない。AIEDの分類スキームが開発されている(HarrisおよびKeithleyの文献「(2002)Autoimmune inner ear disease、Otorhinolaryngology Head and Neck Surgery.91、18-32」)。
【0119】
免疫系は通常、細菌やウイルスなどの侵襲性の病原体から内耳を保護する際に重大な役割を果たす。しかし、AIED内では、免疫システムそれ自体が、デリケートな内耳組織を傷つけ始める。内耳は、外来抗原に対する局在化された免疫応答を開始する十分な能力を有していることが確かめられている。外来抗原が内耳に入ると、内リンパ嚢内とその周りにいる免疫担当細胞によってまず処理される。いったん外来抗原がこれらの免疫担当細胞によって処理されると、こうした細胞は、内耳の免疫応答を調節する様々なサイトカインを分泌する。このサイトカイン放出の結果の1つが体循環から補充される炎症細胞の流入を促すことである。こうした全身性の炎症細胞はらせん状の蝸牛軸の静脈とその支脈を通って漏出により蝸牛に入り、身体の他の部分で生じると、抗原の取り込みと調節解除に関与し始める。インターロイキン1(IL-1)は自然(非特異的)免疫応答を調整する際に重要な役割を果たし、ヘルパーT細胞とB細胞を休止させる既知の活性化因子である。ヘルパーT細胞はIL-1によって活性化されるとIL-2を産生する。IL-2の分泌は多能性T細胞の、ヘルパーT細胞、細胞毒性T細胞、および抑制遺伝子T細胞のサブタイプへの分化をもたらす。IL-2はさらに、Bリンパ球の活性化においてヘルパーT細胞を補助し、かつ、内耳の免疫応答の免疫調節において中心的な役割を果たしていると思われる。IL-2は、抗原負荷後6時間で早くも内耳の外リンパ内で確認され、そのピークレベルは抗原負荷から18時間であった。IL-2の外リンパレベルはその後消失し、抗原負荷の120時間後に外リンパ内にはもはや存在しなかった(Gloddek、Acta Otolaryngol.(1989年)108,68-75)。
【0120】
IL-1βと腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の両方が免疫応答の開始と増幅に重要な役割を果たす。IL-1βは、非特異的反応時における手術による外傷または音響性外傷といった外傷が存在する場合、らせん靱帯の線維細胞によって発現される。THF-αは、浸潤性の全身細胞によって、または、抗原の存在下で内リンパ嚢内に含まれる常在細胞によって、発現される。TNF-αは動物モデル中の適応性の(特異的な)免疫応答の一部として放出される。抗原がマウスの内耳に注入されると、IL-1βとTNF-αは両方とも発現され、活発な免疫応答が生じる。しかし、内耳に対して外傷を与えることなく、抗原が脳脊髄液を介して内耳へ導入されると、TNF-αのみが発現し、免疫応答が最小化される(Satoh等による論文、“J.Assoc.Res.Otolaryngol”、(2003年)、 4、139-147)。重要なことに、蝸牛の外傷は単独でも最小限の免疫応答を引き起こす。こうした結果は、最大の応答を達成するために、免疫応答の非特異的および特異的な構成要素の両方が、内耳中で協調して作用することを示唆している。
【0121】
ゆえに、蝸牛が傷つけられ、抗原が注入されると(または、自己免疫疾患の場合、患者は内耳抗原に向けられた免疫細胞を有している)、非特異的および特異的な免疫応答の両方が同時に活性化される。このことは、内耳へと実質的な損傷を与えることになる大きく増幅された炎症レベルを引き起こす、THF-αとIL-1βの同時の産生をもたらす。動物モデルでのその後の実験は、免疫を媒介とした損傷におけるある重要な工程が、特異的な適応免疫応答が損傷を生じさせるほどの十分な炎症を引き起こす前に、内耳が非特異的な先天性の免疫応答によって条件付けられることを必要としていることを確認する。その結果、いくつかの例では、特異的な免疫応答をダウンレギュレートするか遮断する薬剤は、特異的および非特異的な免疫応答の両方が同時に活性化されるときに見られる過度の免疫応答を防ぐ。
【0122】
耳鳴
耳鳴は、任意の外部刺激のない状態での音の知覚として定義される。例によっては、それは、継続的または散発的に片方または両方の耳で生じ、ほとんどの場合は鳴り響く音として記載される。ほとんどの場合、他の疾患の診断症状として用いられる。耳鳴には、他覚的と自覚的の2つのタイプの耳鳴がある。前者は、誰にでも聞こえる、身体で生み出される音である。後者は、病気に冒された個体にのみ聞こえるものである。研究では、5000万以上の米国人がある種の耳鳴を経験していると推定している。これらの5000万のうち約1200万人が激しい耳鳴を経験している。
【0123】
いくつかの例において、耳鳴は、耳構造(例えば、不動毛)への損傷、1以上の分子受容体の機能障害、および/または、1以上の複数の神経路の機能障害が原因で生じる。ある例では、耳鳴は、NMDA受容体の異常活性によって引き起こされた興奮毒性が原因で生じる。ある例では、耳鳴は、α9および/またはα10アセチルコリン受容体の機能障害が原因で生じる。ある例では、耳鳴は内耳神経に対する損傷に由来する。ある実施形態では、神経伝達物質の再取り込みの減少(例えば、細胞外の神経伝達物質の増加)は、耳鳴の症状を処置および/または改善する。ある実施形態では、NK1受容体のアンタゴニストは、耳鳴の症状を処置および/または改善する。ある実施形態では、神経伝達物質の再取り込みとNK1受容体の拮抗作用の減少は、耳鳴の症状を処置および/または改善する。
【0124】
耳鳴の様々な処置が存在する。IVにより投与されるリドカインは、病人の約60%-80%の耳鳴に関連する騒音を減少または排除する。ノルトリプチリン、セルトラリン、パロキセチン等の選択的な神経伝達物質再取り込み阻害剤は、耳鳴に対する実証された効き目も有している。ベンゾジアゼピンも耳鳴を処置するために処方される。
【0125】
耳毒性
耳毒性は毒素によって引き起こされる難聴を指す。難聴は、耳の有毛細胞、蝸牛、および/または脳神経VIIIに対する外傷が原因である。多剤は耳毒性であることが知られている。多くの場合、耳毒性は用量依存性である。耳毒性は、薬の中止後に恒久的または可逆的となる。
【0126】
既知の耳毒性薬物は、限定されないが、アミノグリコシドクラスの抗生物質(例えば、ゲンタマイシンおよびアミカシン)、マクロライドクラスの抗生物質のいくつかのメンバー(例えば、エリスロマイシン)、糖タンパク質クラスの抗生物質のいくつかのメンバー(例えば、バンコマイシン)、サリチル酸、ニコチン、いくつかの化学療法剤(例えば、アクチノマイシン、ブレオマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、およびビンクリスチン)、ならびにループ利尿薬ファミリー薬物のいくつかのメンバー(例えば、フロセミド)を含む。
【0127】
シスプラチンおよびアミノグリコシドクラスの抗生物質は、活性酸素種(ROS)の産生を誘導する。ROSは、DNA、ポリペプチド、および/または脂質を損傷することにより、細胞に直接損傷を与える。抗酸化剤は、細胞に損傷を与える前に、ROSの形成を妨げることにより、または遊離ラジカルを除去する(scavenging)ことにより、ROSの損傷を妨げる。シスプラチンおよびアミノグリコシドクラスの抗生物質の両方も、内耳の血管線条でメラニンを結合することによって耳を損傷すると考えられる。
【0128】
サリチル酸は、ポリペプチドプレスチン(prestin)の機能を阻害するため、耳毒性と分類される。プレスチン(prestin)は、外部の耳の有毛細胞の原形質膜にわたって塩化物と炭酸塩の交換を制御することによって、外部の耳の有毛細胞運動性を媒介する。それは、外部の耳の有毛細胞でのみ見られ、内部の耳の有毛細胞では見られない。これに応じて、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される制御放出性の耳用組成物の使用は、限定されないが、シスプラチン処置、アミノグリコシドまたはサリチル酸の投与、あるいは他の耳毒性薬剤を含む化学療法の耳毒性効果を改善するか、または減少させる。
【0129】
興奮毒性
興奮毒性は、グルタミン酸塩および/または同様の物質による、神経および/または有毛細胞の死滅または損傷を指す。
【0130】
グルタミン酸塩は、中枢神経系において最も大量にある興奮性の神経伝達物質である。シナプス前細胞は、刺激に対してグルタミン酸を放出する。グルタミン酸はシナプスに流れて、シナプス後細胞に位置する受容体に結合し、これらの神経細胞を活性化させる。グルタミン酸受容体は、NMDA、AMPA、およびカイニン酸受容体を含む。グルタミン酸輸送体は、シナプスから細胞外のグルタミン酸を除去する役目を課されている。特定の事象(例えば、乏血または脳卒中)は、グルタミン酸輸送体に損傷を与える。これはシナプス内に蓄積する過剰なグルタミン酸を生じさせる。シナプス内の過剰なグルタミン酸は、グルタミン酸受容体の過剰な活性化を引き起こす。
【0131】
AMPA受容体は、グルタミン酸塩とAMPAの両方の結合により活性化される。AMPA受容体の特定のイソフォームの活性化は、ニューロンの原形質膜に位置しているイオンチャンネルの開放を引き起こす。チャンネルが開くと、Na+とCa2+のイオンがニューロンへと流れ、K+イオンがニューロンの外へ流れ出る。
【0132】
NMDA受容体はコアゴニスト・グリシンまたはD-セリンと一緒に、両方のグルタミン酸塩あるいはNMDAの結合によって活性化される。NMDA受容体の活性化は、ニューロンの原形質膜に位置しているイオンチャンネルの開放を結果として生じる。しかし、これらのチャンネルはMg2+イオンによってブロックされる。AMPA受容体の活性化は、イオンチャンネルからシナプスへのMg2+イオンの排出を引き起こす。イオンチャンネルが開き、イオンチャンネルがMg2+イオンを排出すると、Na+とCa2+イオンがニューロンへ流れ込み、K+イオンがニューロンの外へ流れ出る。
【0133】
興奮毒性は、NMDA受容体およびAMPA受容体が過剰な量のリガンド、例えば、異常な量のグルタミン酸塩の結合によって過剰に活性化されるときに生じる。これらの受容体の過剰な活性化は、その制御下でイオンチャンネルの過剰な開放を起こす。これにより、異常に高いレベルのCa2+とNa+がニューロンに入ることができる。これらのレベルのCa2+とNa+とが神経細胞へと流れ込むことで、神経細胞を頻繁に興奮させ、細胞内に急激に発達した遊離基と炎症性の化合物が生じる。遊離基は最終的には、細胞内の貯蔵エネルギーを使い果たし、ミトコンドリアを損傷する。さらに、過剰なレベルのCa2+とNa+イオンは、限定されないが、ホスホリパーゼ、エンドヌクレアーゼ、プロテアーゼを含む過剰なレベルの酵素を活性化する。これらの酵素の過剰な活性は結果として、細胞骨格、原形質膜、ミトコンドリア、および感覚神経のDNAに損傷を与える。
【0134】
内リンパ水腫
内リンパ腫は、内耳の内リンパ系内の水圧の増加を指す。内リンパと外リンパとは、複数の神経を含む薄膜によって分離されている。圧力変化の変動は、それらが収容している膜と神経とにストレスを与える。圧力が十分に大きい場合ぬは、これらの膜で破壊が生じる。これが流体の混合を引き起こし、脱分極の遮断および機能の一時的損失に至る。前庭神経発火の速度の変化はしばしば、回転性めまいに繋がる。さらに、コルチ器官は、場合によっては影響を受ける。基底膜、および内毛細胞と外毛細胞の歪みは、難聴および/または耳鳴を引き起こす。
【0135】
原因は、代謝性障害、ホルモンの不均衡、自己免疫性疾患、および、ウイルス感染、細菌感染、または真菌感染を含む。症状は、難聴、回転性めまい、耳鳴、耳閉塞感を含む。いくつかの例では、眼振も存在する。処置は、ベンゾジアゼピン、利尿剤(流体圧力を下げるため)、コルチコステロイド、および/または、抗菌性、抗ウイルス性、または、抗真菌性の薬剤を含む。
【0136】
迷路炎
迷路炎は、内耳の前庭系を含む耳の迷路の炎症である。原因は、細菌感染、ウイルス感染、および真菌感染を含む。迷路炎は、いくつかの例では、頭部外傷またはアレルギーによっても引き起こされる。迷路炎の症状は、バランス感覚維持の困難、目まい、回転性めまい、耳鳴、および難聴を含む。場合によっては、回復には1~6週間かかる;しかし、慢性症状は数年存在する。
【0137】
迷路炎の様々な処置が存在する。プロクラルペラジンはしばしば、制吐剤として処方される。セロトニン再取り込み阻害剤は、内耳内の新たな神経の成長を刺激することが示されている。加えて、原因が細菌感染である場合に抗生物質を用いた処置が処方され、この疾病がウイルス感染によって引き起こされる場合にはコルチコイドと抗ウイルス剤を用いた処置が推奨される。
【0138】
ラムゼイハント症候群(帯状疱疹の感染)
ラムゼイハント症候群は、聴神経の帯状疱疹の感染によって引き起こされる。この感染は、激しい耳痛、難聴、回転性めまいの他に、神経によりもたらされる外耳上、外耳道中、および顔または首の皮膚上の水膨れを引き起こす。場合によっては、顔面神経が腫れにより圧迫されるると、顔面筋も麻痺してしまう。難聴は一時的または恒久的なものであり、回転性めまいの症状は通常は数日から数週まで持続する。
【0139】
ラムゼイハント症候群の処置は、アシクロビルを含む抗ウイルス剤の投与を含む。他の抗ウイルス剤は、ファムシクロビルとバラシクロビルを含む。抗ウイルス剤とコルチコステロイドの治療の組み合わせも、帯状疱疹の感染を改善するために使用される。鎮痛剤または麻薬も、疼痛を和らげるために投与され、ジアゼパムまたは他の中枢神経系剤は回転性めまいを抑えるために投与される。カプサイシン、リドカインパッチ、および神経ブロックも使用される。顔面神経麻痺を和らげるために、圧迫された顔面神経に手術も行われる。
【0140】
前庭ニューロン炎
前庭ニューロン炎または前庭神経病は、末梢性前庭系の急性の持続的な機能障害である。前庭ニューロン炎は、片方または両方の前庭器からの求心性神経入力の破壊によって引き起こされると理論付けられている。この破壊の源は、前庭神経および/または迷路のウイルス感染および急性の局所的虚血を含む。前庭ニューロン炎は突発的な回転性めまい発作を特徴とし、これは、回転性めまいの1回の発作、一連の発作、または数週間で減少する持続的な疾病として現れる。症状は一般的に悪心、嘔吐、および前述の上気道感染を含むが、一般的にはいかなる聴覚症状もない。回転性めまいの最初の発作は通常重症であり、罹患した側に向かって眼を不随意に点滅させることを特徴とする疾病である眼振を引き起こす。難聴は通常生じない。
【0141】
いくつかの例では、前庭ニューロン炎は、脳に内耳を接続すす神経である前庭神経の炎症によって引き起こされ、おそらくはウイルス感染によって引き起こされる。前庭ニューロン炎の診断は通常、眼球運動を電子的に記録する方法である電気眼振検査を使用する眼振に関するテストを含む。他の原因が回転性めまいの症状に役割を果たすことがあるかどうか判断するために、磁気共鳴画像も行われる。
【0142】
前庭ニューロン炎の処置は典型的には、疾患が自然になくなるまで、疾患(主として回転性めまい)の症状を緩和することを含む。回転性めまいの処置はしばしばメニエール病と同一であり、メクリジン、ロラゼパム、プロクロルペラジン、あるいはスコポラミンを随意に含む。嘔吐が深刻な場合には、流体と電解液も静脈内に投与される。この疾患が十分に初期に検出される場合には、プレドニゾロンなどのコルチコステロイドも与えられる。
【0143】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される組成物は、前庭ニューロン炎の処置のために投与される。さらに、いくつかの実施形態において、組成物は、抗コリン作用薬、抗ヒスタミン薬、ベンゾジアゼピン、またはステロイドを含む、疾患の症状を処置するために一般に使用される他の薬剤と共に投与される。回転性めまいの処置はメニエール病の処置と同一であり、メクリジン、ロラゼパム、プロクロルペラジン、またはスコポラミンを含む。嘔吐が深刻な場合、流体と電解液も静脈内に投与される。
【0144】
前庭ニューロン炎を診断する際の最も重要な所見は、自発性、一方向性、水平性の眼振である。これにはしばしば、吐き気、嘔吐、および回転性めまいが伴う。前庭ニューロン炎には難聴または他の聴覚症状は通常伴わない。
【0145】
前庭ニューロン炎には複数の処置がある。ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、メクリジン、およびプロメタジンなどのH1-受容体アンタゴニストは、抗コリン作用によって前庭刺激を減少させて、迷路機能を低下させる。ジアゼパムおよびロラゼパムなどのベンゾジアゼピンは、GABAA受容体に対するベンゾジアゼピンの効果によって前庭反応を阻害するためにも使用される。抗コリン薬、例えば、スコポラミンも処方される。これらは、前庭の小脳の経路における伝導を抑えることにより機能する。最後に、前庭神経および関連する器官の炎症を改善するために、コルチコイド(すなわち、プレドニゾン)が処方される。
【0146】
微小血管圧迫症候群
「血管圧迫」または「神経血管圧迫」とも称される微小血管圧迫症候群(MCS)は、回転性めまいおよび耳鳴を特徴とする障害である。微小血管圧迫症候群は、血管による脳神経VIIの刺激作用によって引き起こされる。MCSを抱える被験体に見られる他の症状は、限定されないが、重度の動作の不耐性、および「クイックスピン(quick spins)」などの神経痛を含む。MCSは、カルバマゼピン、TRILEPTAL(登録商標)、およびバクロフェンで処置される。これはさらに、いくつかの症例について外科的に処置される。
【0147】
聴神経腫瘍
聴神経腫、聴神経鞘腫、前庭神経鞘腫、および第8神経腫を含む聴神経腫瘍は、神経を囲む細胞であるシュワン細胞に由来する腫瘍である。聴神経腫は、頭蓋骨由来のすべての腫瘍の約7~8%の割合を占めており、患者の神経線維腫症の診断にしばしば関連付けられる。腫瘍の位置によっては、いくつかの症状は、難聴、耳鳴、めまい、平衡感覚の喪失を含む。場合によっては、腫瘍が大きくなるにつれて、他のさらに深刻な症状が表れ、これは、脳と、口、目、または顎との間の接続に作用する顔面神経または三叉神経を圧迫する。小さな腫瘍は、顕微鏡手術または分割定位放射線治療を含む定位放射線放射技術によって除去される。悪性のシュワン腫は、ビンクリスチン、アドリアマイシン、シクロホスファミド、およびイミダゾールカルボキサミドを含む化学治療薬によって処置される。
【0148】
聴覚神経障害
聴覚神経障害(AN)は、聴覚神経障害/聴覚同期不全(AN/AD)あるいは聴覚神経障害スペクトル障害(ANSD)としても知られている。聴覚神経障害は、蝸牛内の外毛細胞が存在して機能的であるが、聴覚情報が聴神経と脳に適切に伝達されない難聴と表現される。
【0149】
良性発作性頭位めまい症
良性発作性頭位めまい症は、自由に浮遊している炭酸カルシウム結晶(耳石)が卵形嚢から三半規管の1つ(ほとんどの場合は後部三半規管)に移動することによって生じる。頭部の移動は、異常な内リンパ変位とその結果として生じる回転性めまいの感覚とを引き起こす耳石の移動を生じさせる。回転性めまいの発作は通常、約1分間続き、他の聴覚症状を伴って起きることはまれである。
【0150】
耳の癌
原因は知られてないが、耳の癌はしばしば、長期間未処置の耳炎に関連しており、少なくともいくつかの例では、慢性炎症と癌の進行との間のつながりを示唆している。いくつかの例では、耳の腫瘍は、良性または悪性であり、外耳、中耳、内耳に存在する。耳の癌の症状は、耳漏、耳痛症、難聴、顔面神経麻痺、耳鳴、および回転性めまいを含む。処置の選択肢は限定されており、手術、放射線療法、化学療法、およびこれらの組み合わせを含む。同様に、癌に関連する症状や疾病を処置するために追加の医薬品が使用され、顔面神経麻痺の場合にはコルチコステロイド、耳炎があるときには抗菌剤を含む。
【0151】
放射線療法とメトトレキセートと組み合わせたシクロホスファミドの全身投与(CHOP化学療法で)や外頚動脈を介するメトトレキセートの潅流を含む従来の細胞毒性薬剤の全身投与が、耳の癌を処置するために使用されてきた。しかしながら、活性薬剤の全身投与を必要とするこうした処置は、本明細書で開示される同じ欠点にさらされている。すなわち、耳の中で必要な治療投与量を成し遂げるために比較的高投与量の薬剤が必要とされ、その結果、望ましくない副作用が増える。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物と製剤中の活性薬剤の局所投与は、有効投与量が少なく、副作用の発生率および/または重傷度が低下した耳の癌の処置をもたらす。耳の癌の処置のための、細胞毒性薬剤(例えば、メトトレキサート、シクロホスファミド、およびサリドマイド)の全身投与の典型的な副作用は、貧血症、好中球減少症、挫傷、吐き気、皮膚炎、肝炎、肺線維症、催奇形、末梢性神経障害、疲労、便秘、深部静脈血栓、肺水腫、無気肺、誤嚥性肺炎、低血圧、骨髄抑制、下痢、皮膚や爪の黒ずみ、脱毛、髪の色と質感の変化、無気力、出血性膀胱炎、癌腫、口内炎、および免疫減少を含む。
【0152】
いくつかの実施形態において、化合物は抗炎症特性を有しており、AIEDを含む、耳の炎症性疾患を処置するための本明細書で開示される製剤と組成物に用いられる。
【0153】
メトトレキサート、シクロホスファミド、およびサリドマイドの全身投与は、耳の癌と同様に、AIED、メニエール病、ベーチェット病を含む、炎症性の耳疾患などの耳の疾患を処置するために現在使用されているか、または、上記処置のために研究されているが、細胞毒性薬剤は深刻な副作用の可能性がないわけではない。さらに、有効性を実証しているが安全性を考慮して承認されていない細胞毒性薬剤も、本明細書で開示される実施形態内で企図される。いくつかの実施形態において、耳の癌と同様に、自己免疫性および/または炎症性の疾患の処置のための、標的とする耳構造への活性薬剤の局所的な適用は、結果として全身投与で経験する有害な副作用を減らすか、取り除く。いくつかの実施形態において、本明細書で企図された活性薬剤の局所的な処置は、例えば、内耳および/または中耳での活性薬剤の滞留時間の増加、内耳での生物学的血液障壁の存在、または、中耳への十分な全身アクセスの欠如が理由で、標的とされた疾患の有効な処置のために必要とされる薬剤の量を減らす。
【0154】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物、製剤、および方法で使用される活性薬剤は、活性薬剤の代謝産物、塩、多形体、プロドラッグ、アナログ、および誘導体である。いくつかの実施形態において、活性薬剤は、親化合物の細胞毒性と抗炎症性特性を少なくとも部分的に保持する、活性薬剤の代謝産物、塩、多形体、プロドラッグ、アナログ、および誘導体である。
【0155】
中枢性聴覚処理障害
聴覚処理障害(APD)とも呼ばれる中枢性聴覚処理障害(CAPD)は、脳が聴覚情報を処理する方法に影響を与える様々な障害を表現するための一般的な用語である。CAPDを有する個体は通常、外耳、中耳、および内耳の正常な組織と機能を有する(末梢聴力)。しかしながら、これらの個体は聴覚情報を処理することができず、これは、音、とりわけ、発話音を認識および解釈するのが困難になる。中枢性聴覚処理障害は発達性あるいは後天性であり、中枢神経系の機能障害から発生すると考えられている。
【0156】
コレステリン腫
コレステリン腫はしばしば中耳で見られる増殖性嚢胞である。コレステリン腫は先天性または後天性と分類される。後天性コレステリン腫は、鼓膜の退縮(一次的)および/または鼓膜内の破れ(二次的)に由来する。
【0157】
最も一般的な一次的なコレステリン腫は、上鼓室へと退縮する弛緩部に由来している。弛緩部が退縮し続けるため、上鼓室の側壁は緩やかに蝕まれていく。これにより、上鼓室の側壁内に緩やかに広がる欠陥が生じる。あまり一般的でないタイプの一次的な後天性コレステリン腫は、後中耳内への鼓膜の後方象限の退縮に由来する。鼓膜が退縮するにつれて、扁平上皮はアブミ骨を包み、鼓室洞へと退縮する。二次的なコレステリン腫は鼓膜への損傷(例えば、内耳の外傷、または、外科手術による穿孔)に由来する。
【0158】
コレステリン腫成長に関連する合併症は、破骨細胞に対する外傷、例によっては、脳からの耳の頂部を分離する脛骨の劣化を含む。破骨細胞に対する損傷は、コレステリン腫の拡大に由来する骨への持続的な加圧に由来する。加えて、コレステリン腫の上皮内に多くのサイトカイン(例えば、TNF-α、TGF-β1、TGF-β2、IL-1、およびIL-6)が存在することにより、周囲の骨の分解が生じる。
【0159】
コレステリン腫を抱える患者にはしばしば、耳痛、難聴、粘液膿性排出物、および/または、めまいがある。健康診断はコレステリン腫の存在を確認する。健康診断で確認される症状には、小骨と、粘膜膿と肉芽組織とで満たされている耳道とに対する損傷を含む。
【0160】
コレステリン腫に対する有効な医学療法は現在存在しない。コレステリン腫には血液供給がないため、抗生物質の全身投与では処置できない。抗生物質の局所投与はしばしば、コレステリン腫を処置することができない。
【0161】
薬物誘発性の内耳損傷
耳(例えば、内耳)のすべてあるいは一部に対する損傷は、特定の抗生物質、利尿薬(例えば、エタクリン酸とフロセミド)、アスピリン、アスピリン様物質(例えば、サリチレート)、およびキニーネを含む薬物の投与によって引き起こされ得る。内耳器官の劣化は、作用する薬物とその代謝物のクリアランスを減少させる同様の機能障害によって促進される。いくつかの例では、こうした薬物は聴力と平衡感覚の両方に影響を与える;しかしながら、これらの薬物は聴力の方に、より大きな影響を与える可能性が高い。
【0162】
例えば、ネオマイシン、カナマイシン、アミカシンは、平衡よりも聴覚の方に、より大きな影響を与える。抗生物質であるバイオマイシン、ゲンタマイシン、およびトブラマイシンは、聴覚と平衡感覚の両方に影響を及ぼす。別の一般的に投与される抗生物質であるストレプトマイシンは難聴よりも回転性めまいを誘発し、暗闇での歩行が困難になり、一歩進むごとに環境が動いているという感覚を誘発するダンディ症候群を引き起こす。アスピリンは、きわめて高投与量で接種されると、一時的な難聴と、外部の音が存在しない状態で音を知覚する疾病である耳鳴も引き起こす。同様に、キニーネ、エタクリン酸、およびフロセミドは、いくつかの例では、一時的なまたは永久的な難聴を引き起こす。
【0163】
遺伝性障害
Scheibe型、Mondini-Michelle型、Waardenburg型、Michel型、Alexanderの耳奇形、両眼隔離症、ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群、レフサム症候群、およびアッシャー症候群を含む遺伝性障害は、感音難聴患者のおよそ20%で見られる。いくつかの例では、先天性耳奇形は、膜質迷路、骨迷路、またはその両方の進行の異常に起因する。深刻な聴力損失と前庭機能異常に加えて、遺伝的奇形は、再発する髄膜炎の進行、脳脊髄液(CSF)漏れ、外リンパの瘻孔を含む他の機能不全にも関連付けられる。慢性感染の処置は、遺伝性疾患患者に必要とされる。
【0164】
中耳の炎症性障害
一例として、急性中耳炎(AOM)、滲出性中耳炎(OME)および慢性中耳炎を含む中耳炎(OM)は、成人にも子供にも起こる疾病である。OMの感受性は多元的かつ複合的であり、環境因子、微生物因子、および宿主因子を含む。細菌感染はOMの事例の大部分を占め、40%を超える事例が肺炎球菌感染に起因する。しかし、ウイルス原因も、場合によっては、他の微生物因子と同様、OM疾病の原因となる。
【0165】
原因物質にかかわらず、インターロイキンとTNFを含むサイトカイン産生の増加は、OMに罹患した個体の滲出媒体中で観察された。IL-1β、IL-6、およびTNF-αは、ウイルスおよび細菌への感染後に急性の炎症反応を誘発する急性期サイトカインである。一般的な研究は、TNF-α SNP(一塩基多型)の発生と、AOMに罹患し、後に鼓膜切開チューブの設置を必要とする小児科患者におけるOMに対する感受性の増加との相互関係を実証することにより、サイトカインとOMとの間の関連を支持している。肺炎球菌の接種によって誘発されたOMの動物モデルにおいて、TNF-αとインターロイキンのレベルは、OMの初期発生期で増加することがわかり、TNF-αレベルは接種後72時間、着実に増加した。さらに、より高いTNF-αレベルは、多くの鼓膜切開チューブ留置の歴史に関連付けられており、慢性的なOMの事例におけるTNF-αの役割を示唆している。最後に、TNF-αとインターロイキンの直接注入は、モルモットモデルにおいて中耳の炎症を誘発することが示されている。こうした研究は、サイトカインが中耳におけるOMの起原と維持に果たす役割を支持するものである。
【0166】
いくつかの例では、OMがウイルス、細菌、またはその両方によって引き起こされるため、正確な原因と、したがって最も適切な処置を特定することが困難なことが多い。中耳でのOMの処置の選択肢は、アモキシシリン、クラブラン酸、トリメトプリム・スルファメトキサゾール、セフロキシム、クラリスロマイシンおよびアジスロマイシンなどの抗生物質、ならびに他のセファロスポリン、マクロライド、ペニシリン、あるいはスルホンアミドを用いる処置を含む。さらに、流体を流出させて、外耳と中耳の間の圧力の平衡を保つために、鼓膜を通って患者の中耳へ鼓膜切開チューブを挿入するための手術である鼓膜切開を含む外科的介入が利用可能である。いくつかの例では、付随する発熱または痛みの効果を処置するために、ベンゾカイン、イブプロフェン、およびアセトアミノフェンを含む下熱薬と鎮痛剤も処方される。実験的なリポ多糖(LPS)誘導性のOM動物モデルにおけるTNF-α阻害剤を用いる前処理は、OMの進行を抑えることが示されており、OMまたはOMEの処置における役割を示唆している。加えて、このような疾病の処置は、血小板活性化因子アンタゴニスト、一酸化窒素合成酵素阻害剤、ヒスタミンアンタゴニストを含む他の炎症反応メディエーターと組み合わたTNF-α阻害剤の使用を含む。
【0167】
加えて、他の耳の障害は、炎症反応の側面を有しており、または、メニエール病、非突発性難聴、または騒音性難聴を含む自己免疫疾病にわずかに関連している。これらの障害は、本明細書で開示される耳用製剤から利益を得るとして明示的に企図され、ゆえに、本開示された実施形態の範囲内にあるものである。
【0168】
聴覚過敏
聴覚過敏は、音の特定の周波数と音量範囲に対する感度の増加(通常の環境音に対する耐性の崩壊)を特徴とする疾病である。場合によっては、聴覚過敏は徐々に生じ、その他の場合では、聴覚過敏が急に現われる。重度の聴覚過敏を抱える人は、日常的な音を許容することが困難であり、こうした音のいくつかは、罹患した人には不快であるか苦痛なほどにうるさいものであるが、それ以外の人にはそうではない。
【0169】
外耳の炎症性障害
水泳選手の耳とも呼ばれる外耳炎(OE)は、外耳の炎症および/または感染症である。OEは外耳中の細菌によって引き起こされることが多く、これは外耳道の皮膚への損傷を伴う感染を確立する。OEを引き起こす主要な病原菌は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)と黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)であるが、疾患はグラム陽性細菌とグラム陰性細菌の他の多くの菌株の存在に関連付けられる。OEはしばしば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)とアスペルギルス(Aspergillus)を含む外耳中の真菌感染によっても引き起こされる。OEの症状は耳痛症、腫れ、および耳漏を含む。疾患が著しく進行した場合には、OEは腫れと分泌の結果として一時的な伝音難聴を引き起こす。
【0170】
OEの処置は外耳道から悪化する病原体を取り除き、炎症を減らすことを含み、これは通常、抗炎症薬、例えば、ステロイドと共に、抗菌剤、例えば、抗菌薬と抗真菌剤の組み合わせを投与することにより、達成される。OEの処置のための典型的な抗菌薬は、アミノグリコシド(例えば、ネオマイシン、ゲンタマイシン、およびトブラマイシン)、ポリミキシン(例えば、ポリミキシンB)、フルオロキノロン(例えば、オフロキサシンとシプロフロキサシン)、セファロスポリン(例えば、セフロキシム、セファクロル、セフプロジル、ロラカルベフ、セフジニル、セフィキシム、セフポドキシムプロキセチル、セフチブテン、およびセフトリアキソン)、ペニシリン(例えば、アモキシシリン、アモキシシリン・クラブラン、およびペニシリナーゼ耐性ペニシリン)、ならびにこれらの組み合わせを含む。OEの処置のための典型的な抗真菌剤は、クロトリマゾール、チメロサール、M-酢酸クレシル、トルナフタート、イトラコナゾール、およびこれらの組み合わせを含む。細菌と真菌の感染を処置するために、酢酸も、単独で、および他の薬剤と組み合わせて耳に投与される。点耳液は活性な薬剤の投与のためにビヒクルとして使用されることが多い。耳の腫れが著しく進行して点耳液が外耳道にさほど浸透しない場合には、処理溶液の浸透を促すためにガーゼが外耳道に挿入される。顔と首までに及ぶ広範囲な軟組織の腫れの場合には、経口の抗生物質も投与される。OEの痛みが極端に深刻であり、結果として、正常な活動(例えば、睡眠)に支障をきたす場合には、局所鎮痛剤または経口麻薬等の鎮痛剤は、根底にある炎症と感染とが緩和するまで、投与される。
【0171】
とりわけ、ネオマイシンを含む点耳液などの複数のタイプの局所的な点耳液は、外耳道での使用に安全かつ効果的であるが、中耳を刺激したり、中耳に対して聴覚毒性となったりすることさえあり、鼓膜が無傷であることがわからない限り、こうした局所的な調製物を使用してはならないという懸念を促す。いくつかの実施形態において、鼓膜が無傷でないときでも、OEの処置のための本明細書で開示される製剤の利用は、中耳に損傷を与える可能性のある活性な薬剤の使用を可能にする。具体的には、本明細書で開示される制御放出製剤は、いくつかの例では、滞留時間の改善によって外耳で局所的に適用され、それにより、活性薬剤が外耳道から中耳へ漏れるという懸念を払拭する。さらに、ネオマイシンなどの耳毒性薬剤が使用される場合、耳保護剤が随意に加えられる。
【0172】
高粘性および/または粘膜付着性の製剤などの本明細書で開示される組成物を用いる深刻なOEの処置により、耳用ガーゼを拡大使用する必要性もなくなる。具体的には、いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物は、製剤技術の結果として外耳道中の滞留時間を増加させ、それにより、外耳中でその存在を維持する装置を必要としなくなる。いくつかの実施形態において、製剤は針または耳用の点滴器を用いて外耳に適用され、活性薬剤は耳用ガーゼの力を借りることなく炎症部位で維持される。
【0173】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される耳用製剤を用いるOEの処置は、鼓膜の緊張部の慢性的な炎症を特徴とするOEの特殊な形態である肉芽性鼓膜炎(granular myringitis)の処置を包含する。鼓膜の外部の上皮層と下部の線維層は増殖性の肉芽組織に取って代えられる。主な症状は悪臭のする耳漏である。プロテウス(Proteus)とシュードモナス(Pseudomonas)の種を含む様々な細菌と真菌がこの疾患を引き起こす。これに応じて、本明細書で開示される耳用製剤は、いくつかの実施形態において、粒状の鼓膜炎の処置に役立つ。
【0174】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される耳用製剤を用いるOEの処置は、慢性の狭窄性外耳炎の処置を包含する。慢性の狭窄性外耳炎は一般に、細菌または真菌によって引き起こされる反復性感染症を特徴とする。主な症状は、外耳道のそう痒、耳漏、および慢性的な腫れである。本明細書で開示される耳用製剤は、慢性的な狭窄性外耳炎の処置に役立つ。
【0175】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される耳用製剤を用いるOEの処置は、側頭骨と隣接する骨を含む感染である、悪性または壊死性の外耳炎の処置を包含する。悪性外耳道炎は一般に外耳炎の合併症である。これは主として免疫力の低下した人、特に真性糖尿病の高齢者で生じる。悪性外耳道炎は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によってしばしば引き起こされる。処置は一般に、可能な場合には、抗菌治療と鎮痛剤と併用する免疫抑制の矯正を含む。これに応じて、いくつかの実施形態では、本明細書で開示される耳用製剤は、悪性または壊死性の外耳炎の処置に役立つ。
【0176】
例として、急性中耳炎(AOM)、慢性中耳炎、滲出液を伴う中耳炎(OME)、滲出性中耳炎、および慢性滲出性中耳炎を含む中耳炎(OM)は、大人と子供の双方を襲う疾病である。OMの感受性は多元的かつ複合的であり、環境因子、微生物因子、および宿主因子を含む。細菌感染はOMの事例の大部分を占め、40%を超える事例が肺炎球菌感染に起因する。しかしながら、ウイルスも他の微生物と同様に、場合によっては、OM疾病の原因となる。
【0177】
いくつかの例では、OMがウイルス、細菌、またはその両方によって引き起こされるため、正確な原因と、したがって最も適切な処置を特定することが困難なことが多い。OMの処置の選択肢は、ペニシリン(例えば、アモキシシリン、およびアモキシシリン-クラブラン酸)、クラブラン酸(clavulanate acid)、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、セファロスポリン(例えば、セフロキシム、セファクロル、セフプロジル、ロラカルベフ、セフィンディール(Cefindir)、セフィキシム、セフポドキシムプロキセチル、セフチブテン、およびセフトリアキソン)、マクロライドおよびアザライド(Azalides)(例えば、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、およびアジスロマイシン)、スルホンアミド、ならびにこれらの組み合わせなどの抗生物質を含む。さらに、流体を流出させて、外耳と中耳の間の圧力の平衡を保つために、鼓膜を通って患者の中耳へ鼓膜切開チューブを挿入するための手術である鼓膜切開を含む外科的処置が利用可能である。付随する発熱または痛みの効果を処置するために、ベンゾカイン、イブプロフェン、およびアセトアミノフェンを含む下熱薬と鎮痛剤が処方される。
【0178】
原因物質にかかわらず、インターロイキンとTNFを含むサイトカイン産生の増加は、OMに罹患した個体の滲出媒体中で観察された。IL-1β、IL-6、およびTNF-αは、ウイルスおよび細菌への感染後に急性の炎症反応を誘発する急性期サイトカインである。さらに、より高いTNF-αレベルは、多くの鼓膜切開チューブ留置の歴史に関連付けられており、慢性的なOMの事例におけるTNF-αの役割を示唆している。最後に、TNF-αとインターロイキンの直接注入は、モルモットモデルにおいて中耳の炎症を誘発することが示されている。こうした研究は、サイトカインが中耳におけるOMの起原と維持に果たす役割を支持するものである。したがって、OMの処置は、病原体を除去し、かつ炎症の症状を処置するために抗炎症薬と併用して、抗菌剤を使用することを含む。こうした処置は、ステロイド、TNF-α阻害剤、血小板活性因子アンタゴニスト、一酸化窒素合成酵素阻害剤、ヒスタミンアンタゴニスト、およびこれらの組み合わせの使用を含む。
【0179】
乳様突起炎は耳の後ろの側頭骨の一部である乳様突起の感染である。乳様突起炎は一般に、未処置の急性中耳炎によって引き起こされる。乳様突起炎は急性または慢性である。症状は耳痛症、紅斑、およびと耳漏と同様に、乳様突起領域の痛み、腫れ、および圧痛を含む。乳様突起炎は一般に細菌が中耳から乳突蜂巣まで広がると生じ、ここで炎症は骨構造に対する損傷を引き起こす。最も一般的な病原菌は、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、およびグラム陰性桿菌である。これに応じて、いくつかの実施形態において、細菌に対して効果的である本明細書で開示される製剤は、急性乳様突起炎と慢性乳様突起炎を含む乳様突起炎の処置に役立つ。
【0180】
水疱性鼓膜炎は、ミコプラズマ細菌を含む様々な細菌とウイルスによって引き起こされる鼓膜の感染症である。この感染症は鼓膜とその付近の耳道の炎症の原因となり、鼓膜上で水疱の形成を引き起こす。水疱性鼓膜炎の初期症状は、痛みであり、この痛みは、鎮痛剤の投与によって和らげられる。いくつかの実施形態において、抗菌薬と抗ウイルス剤を含む本明細書で開示される抗菌製剤は、水疱性鼓膜炎の処置に役立つ。
【0181】
耳管カタルまたは耳管炎は、耳管の炎症と腫れから引き起こされ、カタルの蓄積をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される抗菌製剤は、耳管炎の処置に役立つ。
【0182】
迷路炎、例えば、漿液性迷路炎は、前庭系を収容する1つ以上の迷路を含む内耳の炎症である。主な症状は回転性めまいであるが、この疾患は聴力損失、耳鳴、および眼振も特徴とする。迷路炎は急性であり、1~6週間続いて深刻な回転性めまいと嘔吐を伴うこともあれば、あるいは、慢性であり、数ヶ月または数年にわたって続く症状を伴うこともある。迷路炎は、ウイルス感染または細菌感染によって一般に引き起こされる。いくつかの実施形態において、抗菌剤と抗ウイルス剤を含む本明細書で開示される抗菌製剤は、迷路炎の処置に役立つ。
【0183】
顔面神経神経炎は、顔面神経を苦しめる末梢神経系の炎症である神経炎の形態である。この疾患の主な症状は、ピリピリ感と灼熱感、および罹患した神経の刺すような痛みである。ひどい場合には、知覚麻痺、感覚消失、および付近の筋肉の麻痺がある。この疾患は、一般に帯状疱疹または単純疱疹のウイルス感染によって引き起こされるが、細菌感染(例えば、ハンセン病)に関連付けられる。いくつかの実施形態において、抗菌薬と抗ウイルス剤を含む本明細書で開示される抗菌製剤は、顔面神経神経炎の処置に役立つ。
【0184】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される抗菌製剤は、さらに側頭骨放射線骨壊死の処置に役立つ。
【0185】
加速度病
動揺病としても知られている加速度病は、視覚的に知覚された移動と前庭系の移動感覚との間の断絶がある疾病である。めまい、疲労、および悪心は、加速度病の最も一般的な症状である。ジメンヒドリナート、シンナリジン、およびメクリジンはすべて、加速度病のための全身療法である。加えて、ベンゾジアゼピンと抗ヒスタミンは、加速度病の処置における有効性を実証している。デバルクマン(Mal de Debarquement)
【0186】
デバルクマンは通常、持続的な動揺事象、例えば、船旅、自動車旅行、飛行機旅行の後に生じる疾病である。これは、絶え間ない動揺感覚、バランス感覚維持の困難、疲労、および認知障害を特徴とする。症状はさらにめまい、頭痛、聴覚過敏、および/または耳鳴を含む。症状はしばしば一ヶ月以上続く。処置はベンゾジアゼピン、利尿薬、ナトリウムチャネル遮断薬、および三環系抗うつ薬を含む。
【0187】
蝸牛前庭障害を引き起こす他の微生物感染症
他の微生物感染症は、難聴を含む蝸牛前庭の障害を引き起こすことが知られている。こうした感染症は、風疹、サイトメガロウイルス、伝染性単核症、水痘帯状疱疹(水痘)、肺炎、細菌(ライム病)のボレリア種、および特定の真菌感染を含む。これに応じて、いくつかの実施形態において、本明細書で開示される制御放出性の抗菌剤製剤は、こうした耳の感染症の局所的な処置にも使用される。
【0188】
遊離基によって引き起こされる耳の障害
遊離基は高反応性の原子、分子、あるいはイオンであり、その反応性は不対電子の存在に起因するものである。活性酸素種(「ROS」)は、分子酸素の連続還元の結果として生じる。所望の活性酸素種(「ROS」)の例としては、限定されないが、スーパーオキシド、過酸化水素、およびヒドロキシルラジカルが挙げられる。ROSは、ATPの産生の副産物として自然に産生される。場合によっては、ROSはシスプラチンの使用およびアミノグリコシドにも起因する。さらに、音響外傷によって引き起こされた不動毛へのストレスは、ROSを産生する耳の有毛細胞をもたらす。
【0189】
いくつかの例では、ROSは、核DNAとミトコンドリアDNAを破損することにより細胞を直接破損する。前者に対する損傷は、聴細胞および/またはアポトーシスの機能化を損なう突然変異を引き起こす。後者に対する損傷はしばしば、エネルギー生産の減少とROS産生の増加を引き起こし、その両方ともが細胞機能またはアポトーシスの損傷を生じさせる。さらに、ROSは、脂質を含む多価不飽和化脂肪酸を酸化すること、タンパク質を含むアミノ酸を酸化すること、および、酵素の活性に必要な補助因子を酸化することにより細胞を損傷するか、細胞を殺す。抗酸化剤は、その形成を防ぐことによって、あるいは、細胞に損傷を与える前にROSを除去することによって、ROSによって引き起こされた損傷を改善する。
【0190】
ROSによるミトコンドリアに対する損傷はしばしば、難聴、とりわけ、老化による難聴で見られる。ATPの喪失は、内耳内の神経機能の喪失と相関する。それは、内耳中の生理学的変化も引き起こす。さらに、ミトコンドリアに対する損傷はしばしば、細胞の分解および内耳細胞のアポトーシスの速度の増加を生じさせる。血管条の細胞は、内耳中の流体のイオンの平衡を維持するために必要とされる広大なエネルギー必要量によって最も代謝的に活性である。したがって、血管条の細胞はほとんどの場合、ミトコンドリアの損傷によって損傷を受けるか、殺される。
【0191】
耳硬化症
耳硬化症は中耳内の骨の成長異常であり、これは、耳内の構造が振動を伝達するのを防ぎ、これが難聴を引き起こす。耳硬化症は通常、小骨、特にアブミ骨に影響を与え、これは卵円窓中の蝸牛へ至る入口に原因がある。異常な骨成長は卵円窓上にアブミ骨を固定させ、音波が蝸牛に伝わらないようにする。耳硬化症は感音難聴、つまり、神経線維または聴覚毛細胞の損傷、あるいは伝音難聴を引き起こす。
【0192】
場合によっては、耳硬化症の処置は、アブミ骨摘出術と呼ばれる、固定されたアブミ骨を取り除くための手術を含む。場合によっては、フッ化物処置も用いられ、これは、難聴を回復に向かわせないが、耳硬化症の発生を遅らせる。
【0193】
加齢性平衡障害
老化の不均衡としても知られている加齢性平衡障害は、罹患した患者が全身性の不均衡を抱えているが、回転性目眩はない。全身性の不均衡は典型的には、歩行中に気づかされる。
【0194】
体位性眩暈
頭位眩暈症としても知られている体位性眩暈は、特定の頭部の位置が引き金となって起きる突然の激しい眩暈を特徴とする。この疾患は、内耳に対する肉体的な損傷、中耳炎、耳の手術、または内耳に対する動脈の閉塞により引き起こされる半規管の損傷によって生じる。
【0195】
体位性眩暈を抱える患者の眩暈の発症は、一方の耳に当てて横たわるか、または見上げようとして頭を傾けるときに発症するのが一般的である。眩暈は眼振を伴う。体位性眩暈の深刻な場合では、前庭神経は影響を受けた半規管に切断される。眩暈の処置はしばしば、メニエール病の処置と同一であり、メクリジン、ロラゼパム、プロクロルペラジン、またはスコポラミンを含む。嘔吐が深刻な場合には、流体と電解液が静脈内に投与される。
【0196】
再発性の前庭障害
再発性の前庭障害は、被験体が深刻な回転性めまいの複数のエピソードを経験する疾病である。回転性めまいのエピソードは数分または数時間続く。メニエール病とは異なり、これには難聴が伴わない。場合によっては、これはメニエール病または良性発作性頭位めまい症へと進行する。処置はメニエール病のそれとは似ている。
【0197】
梅毒感染
梅毒感染は、大人の突発性難聴と同様に、米国の100,000人の出生数当たりおよそ11.2人に影響を与えている先天性の出生前の難聴も引き起こす。梅毒はスピロヘータ梅毒トレポネーマによって引き起こされる性病であり、その二次および三次段階では、膜性迷路炎による聴覚障害と前庭障害を引き起こし、二次的には髄膜炎を含む。
【0198】
後天性および先天性の両方の梅毒は耳の障害を引き起こす。梅毒に起因する蝸牛前庭の障害の症状は、AIEDとメニエール病などの他の耳の障害の症状に類似することが多く、耳鳴、難聴、回転性めまい、倦怠感、咽喉痛、頭痛、および皮疹を含む。いくつかの例では、梅毒感染は、大人の突発性難聴と同様に、米国の100,000人の出生数当たりおよそ11.2人に影響を与えている先天性の出生前の難聴を引き起こす。
【0199】
ペニシリン(例えば、ベンザチンペニシリンG(BICILLIN LA(登録商標))を含むステロイドと抗生物質による治療は、スピロヘータ生物を根絶するのに効果的である。しかしながら、トレポネーマは身体中の他の部位からの根絶後でも、蝸牛および前庭の内リンパに留まる。これに応じて、内リンパ流体からスピロヘータ生物の根絶を達成するためには、ペニシリンを用いる長期的な処置が正当化される。
【0200】
内耳梅毒(耳の症状を呈する梅毒)の処置は一般的に、ステロイド(例えば、プレドニゾロン)と抗菌薬(例えば、ベンザチンペニシリンG(BICILLIN LA)(登録商標))、ペニシリンGプロカイン、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、セフトリアキソン、アジスロマイシン)の組み合わせを含む。こうした処置はスピロヘータ生物を根絶するのに効果的である。しかしながら、トレポネーマは身体中の他の部位からの根絶後でも蝸牛および前庭の内リンパに留まる。これに応じて、内リンパ流体からスピロヘータ生物の完全な根絶を達成するために、ペニシリンを用いる長期的な処置が必要とされる。さらに、深刻なまたは進行した梅毒の症例の場合には、プロベネシッドなどの尿酸排出促進薬がその有効性を増大させるために、抗菌薬と共に投与される。
【0201】
側頭骨骨折
外耳道、中耳、および内内耳の部分を含む側頭骨は、頭蓋の強打による骨折から他の損傷に晒される。耳あるいは斑状のあざによる出血は、側頭骨に対する骨折の徴候であり、正確な診断のためにはコンピューター断層撮影(CT)を必要とする。側頭骨骨折は鼓膜を破壊し、顔面神経麻痺と感音難聴を引き起こす。
【0202】
検出された側頭骨骨折の処置は、脳膜炎あるいは脳組織の感染を防ぐための抗菌レジメンを含む。加えて、腫れまたは感染による顔面神経に対するその後の任意の圧力を軽減するために、手術が行われる。
【0203】
顎関節疾患
顎関節疾患(TMD)と内耳障害の関係について、いくつかの証拠が存在する。解剖学的試験は三叉神経の関与の可能性を実証しており、血管系の三叉神経支配が蝸牛と前庭迷路機能を制御することが示されている。加えて、場合によっては、基底と前下小脳動脈を介する蝸牛に対する三叉神経のガッサー神経節の眼の線維の突起は、代謝性ストレス(例えば、極度の騒音)に対する迅速な血管拡張性の反応において血管緊張で重要な役割を果たす。突発性の難聴、回転性めまい、耳鳴などの内耳疾患および疾病は、三叉神経節中の異常な活動の存在によって、例えば、片頭痛から、あるいは、TMDによりもたらされる慢性痛または深部痛覚に由来する中枢興奮作用により、蝸牛血流の減少に由来する。
【0204】
同様に、他の研究者たちは、三叉神経節が、TMD症例で眼と下顎の三叉神経の末梢神経支配からの一定の末梢体細胞シグナルが生じる聴覚皮質に至る聴覚路に干渉する、腹側蝸牛殻核と上オリーブ複合体も神経支配することを発見した。中枢神経系によるこうした体性感覚と聴覚系の相互作用は、耳、鼻、あるいは咽喉に既存の疾患がない状態の耳の症状について説明するものである。
【0205】
これに応じて、TMD中の強力な筋収縮は神経学的機能と聴覚機能と平衡機能において調節を誘発する。例えば、聴覚と前庭の調節は、過緊張性と筋痙縮の結果として生じ、これは、筋肉捕捉(muscular trapping)によって内耳機能に影響を与える神経と血管を刺激する。影響を受けた神経あるいは筋収縮の緩和は、聴覚または前庭の症状を軽減するように作用する。バルビツール酸またはジアゼパムを含む薬物は、こうしてTMD患者の聴覚または前庭の機能障害を軽減する。
【0206】
卵形嚢機能障害
卵形嚢は、前庭迷路で見られる2つの耳石器の1つである。これは水平面に沿って重力と直線加速度の両方に反応する。卵形嚢機能障害は損傷によって卵形嚢にもたらされた障害である。これはしばしば、被験体の傾きまたは平衡失調の知覚を特徴とする。
【0207】
回転性めまい
暈は身体が静止している間に回っているか揺れているという感覚として記載される。2つのタイプの回転性めまいが存在する。自覚的回転性めまいは身体の偽の運動感覚である。は、身体の誤った運動感覚である。他覚的回転性めまいは自分の周囲が動いているという知覚である。これにはしばしば、悪心、嘔吐、および平衡を維持する難しさが伴う。
【0208】
任意の1つの理論に束縛されることなく、回転性めまいは内リンパ中の流体の過剰な蓄積によって引き起こされると仮定される。この体液平衡失調は、運動感覚に結びつく内耳の細胞への圧力の増加を引き起こす。回転性めまいの最も一般的な原因は良性発作性頭位めまい症、すなわちBPPVである。場合によっては、回転性めまいは、頭部損傷または血圧の突然の変化によって引き起こされる。回転性めまいは、上半規管裂隙症候群を含む複数の疾患の診断症状である。
【0209】
局所的な耳への投与
さらに、外耳、中耳、および/または内耳の構造への治療薬(耳用薬剤)の局所送達のための方法、製剤、および組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、治療薬(耳用薬剤)の局所送達は、全身送達の毒性かつ付随する副作用を克服する。いくつかの実施形態において、前庭器および蝸牛器へのアクセスは中耳を介し、正円窓膜、卵円窓/アブミ骨底板、輪状靭帯を含み、および耳嚢/側頭骨を介する。
【0210】
特定の実施形態では、長時間、標的とする聴覚表面(例えば、正円窓)に接したままである耳用の製剤と組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、耳用の製剤と組成物は、耳用製剤を耳の粘膜表面に接着させる粘膜付着性のさらにふくむ。いくつかの例において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、耳管を介する活性薬剤のドレナージまたは漏れが原因の治療上の利点の弱体化を回避する。
【0211】
いくつかの実施形態において、外耳、中耳、および/または内耳の局所的な処置は、脆弱なPKプロフィール、脆弱な取り込み、低い全身放出および/または毒性の問題を抱える薬剤を含む、以前は望ましくなかった治療薬の使用を可能にする。いくつかの実施形態において、耳用の薬剤製剤と組成物の局所的な標的化は、あらかじめ特徴づけられた毒性のまたは効果のない治療薬(耳用活性薬剤)を用いる副作用のリスクを減らす。これに応じて、治療薬(耳用薬剤)の副作用あるいは効果のなさが原因で以前は専門家から敬遠されていた活性薬剤および/または薬剤の使用も本明細書に記載される実施形態の範囲内で企図される。
【0212】
いくつかの実施形態において、外耳、中耳、および/または内耳の構造を特異的に標的とすることで、全身療法に通常伴う有害な副作用が回避される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、耳の病気に苦しむ個体または患者に治療薬(耳用薬剤)の一定の、可変の、および/または持続的な供給源を与えることにより、耳の障害を処置し、それによって、治療の可変性を減少させるか、取り除く、制御放出型治療薬製剤と組成物である。これに応じて、本明細書で開示される1つの実施形態は、少なくとも1つの治療薬(耳用薬剤)の連続的な放出を保証するなどのために、少なくとも1つの治療薬(耳用薬剤)を可変のまたは一定の速度で治療上有効な量で放出することを可能にする製剤または組成物を提供することである。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される治療薬(耳用薬剤)は、即時放出型の製剤または組成物として投与される。他の実施形態では、治療薬(耳用薬剤)は、連続的に、あるいはパルス方式で、またはその両方の変形で放出される制御放出製剤として投与される。さらに他の実施形態では、治療薬(耳用薬剤)製剤または組成物は、連続的に、あるいはパルス方式で、またはその両方の変形で放出される即時放出型と制御放出型の両方の製剤または組成物として投与される。この放出は随意に、環境的な条件または生理学的な条件、例えば、外部のイオン環境に依存する(例えば、Oros(登録商標)release system、Johnson & Johnsonを参照)。
【0213】
加えて、本明細書に含まれる耳用の製剤または組成物は、担体、アジュバント、例えば、保存剤、安定化剤、湿潤剤、または乳化剤、溶液促進剤、浸透圧を調節するための塩、および/または緩衝液を含んでいる。こうした担体、アジュバント、および他の賦形剤は、外耳、中耳、および/または内耳中の環境と適合する。これに応じて、標的とされる区域または領域で最低限の副作用で本明細書において企図される耳の病気の効果的な処置を可能にするために、耳毒性を欠くか、または耳毒性が最小限である担体、アジュバント、および賦形剤が具体的に企図される。耳毒性を防ぐために、本明細書で開示される耳用の組成物または製剤は随意に、限定されないが、鼓室、前庭骨、および前庭膜の迷路、蝸牛骨および蝸牛膜の迷路、ならびに内耳内に位置する他の解剖学的構造または生理学的構造を含む、外耳、中耳、および/または内耳の特徴的な領域を標的とする。
【0214】
処置
個体または患者への本明細書に記載される治療薬(耳用薬剤)の投与を含む、本明細書に記載される任意の耳の疾病、疾患、あるいは障害(例えば、外耳、中耳、および/または内耳の障害)の処置に適している耳用の製剤と組成物が本明細書で提供される。本明細書に記載される製剤と組成物は、本明細書に記載される任意の疾患の処置に適している。いくつかの例では、処置は慢性の再発性の疾患のための長期的な処置である。いくつかの例では、処置は、本明細書に記載される任意の耳の疾患あるいは障害の処置のための本明細書に記載される耳用製剤の予防的な投与である。いくつかの例では、予防的な投与は、疾患を患っている疑いのある個体、あるいは耳の疾患または障害に遺伝学的にかかりやすい個体における疾患の発生を回避する。いくつかの例では、処置は予防維持療法である。いくつかの例では、予防維持療法は、疾患の再発を回避する。
【0215】
いくつかの例では、耳への適合性と無菌性の改善のおかげで、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は長期的な投与に対して安全である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は耳毒性が非常に低い。
【0216】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも1日、3日、5日、1週、2週、3週、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、あるいは1年の期間に、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも3日間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも5日間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも1週間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも2週間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも3週間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも1ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも2ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも3ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも4ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも5ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも6ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも1年間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。
【0217】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約1日、3日、5日、1週、2週、3週、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、あるいは1年の期間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約3日間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約5日間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約1週間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約2週間、治療薬耳用の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約3週間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約1ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約2ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約3ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約4ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約5ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約6ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約1年間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。
【0218】
1つの態様では、耳に関連する疾患あるいは疾病を処置および/または予防するための制御放出型の組成物および製剤が本明細書で提供される。いくつかの例では、耳に関連するこれらの疾患または疾病は、外耳、中耳、および/または内耳を含む。
【0219】
いくつかの実施形態において、疾患あるいは疾病は、耳そう痒症、外耳炎、耳痛症、耳鳴、回転性めまい、耳閉感、難聴、あるいはこれらの組み合わせである。
【0220】
他の耳の疾患あるいは疾病は、自己免疫性内耳障害(AIED)、メニエール病、内リンパ水腫、騒音性難聴(NIHL)、感音性難聴(SNL)、耳鳴、耳硬化症、平衡障害、回転性めまいなどを含む。いくつかの実施形態において、耳に関連する疾患または疾病は、メニエール病、感音性難聴、騒音性難聴、老人性難聴(加齢性難聴)、自己免疫性耳疾患、耳鳴、耳毒性、興奮毒性、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼイハント症候群、前庭ニューロン炎、微小血管圧迫症候群、聴覚過敏、加齢性平衡障害、中枢性聴覚処理障害、聴覚神経障害、あるいは人工内耳の性能の改善である。
【0221】
いくつかの耳の疾患あるいは障害の病因は、騒音性難聴と加齢性難聴、めまい、悪心、眼振、回転性めまい、耳鳴、炎症、腫れ、感染、および/またはうっ血を含む、進行性の難聴の症候群からなる。こうした障害は、感染症、騒音への暴露、損傷、炎症、腫瘍、および/または、医薬品あるいは他の化学薬品に対する有害な反応などの多くの原因を有する。聴覚および/または平衡感覚の機能障害のいくつかの原因は、炎症および/または自己免疫障害および/またはサイトカイン媒介性の炎症反応による。
【0222】
治療薬
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は耳に許容可能なpHとモル浸透圧濃度を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、本明細書に記載される厳格な無菌要件を満たし、かつ、内リンパおよび/または外リンパと適合する。本明細書で開示される製剤と組成物と共に使用される医薬品は、内耳障害と、限定されないが、難聴、眼振、回転性めまい、耳鳴、炎症、腫れ、感染、およびうっ血を含むその付随する症状とを含んでいる耳の障害を改善するか、減少させる薬剤を含む。耳の障害には多くの原因があり、感染、損傷、炎症、腫瘍、および本明細書で開示される医薬品に反応する薬物あるいは他の化学薬品に対する有害な反応を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用薬剤の薬学的に活性な代謝物、塩、多形体、プロドラッグ、アナログ、および誘導体は製剤中で使用される。
【0223】
いくつかの実施形態について、製剤または組成物は、有効成分の全身放出が制限されるか、全身放出がなされないように設計され、全身毒性(例えば、肝臓毒性)をもたらす、あるいは、貧弱なPK特性(例えば、短い半減期)を有する治療薬も随意に使用される。ゆえに、いくつかの実施形態において、例えば、肝臓処理の後に形成される有毒な代謝産物により、特定の器官、組織、または系における薬物の毒性により、有効性を達成するために必要とされる高いレベルゆえに、全身経路を通って放出できないことを理由に、または、不十分なPK特性により、全身適用の間に有毒、有害、または非効果的であると以前は示されてきた治療薬が役に立つ。本明細書で開示される製剤と組成物は、処置が必要な耳の構造体を直接標的とするように企図され、例えば、企図された1つの実施形態は、内耳または内耳の構成要素の直接的なアクセスと処置を可能にする、内耳の正円窓膜または蝸牛窓稜への本明細書で開示される耳用製剤の直接的な適用である。他の実施形態では、本明細書で開示される耳用の製剤および組成物は、卵円窓に直接適用される。さらなる他の実施形態において、直接的なアクセスは、内耳への直接的な微量注入(例えば、蝸牛への微小潅流)により得られる。こうした実施形態は、薬物送達デバイスを随意に含み、この薬物送達デバイスは、針および注射器、ポンプ、マイクロインジェクションデバイス、スポンジ状物質、またはこれらの組み合わせを用いることによって耳用製剤を送達する。
【0224】
さらなる他の実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物の適用は、鼓室内膜に穿孔することによって、および、鼓室または耳小骨の壁を含む影響を受けた中耳構造に耳用薬剤製剤を直接適用することによって、中耳に標的化される。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の活性薬剤製剤または組成物は、標的とされる中耳構造に閉じ込められ、例えば、耳管または穿孔した鼓膜から拡散したり漏れたりすることにより、失われることはない。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤と組成物は、綿棒、注入、あるいは点耳液を含む任意の適切な方法で外耳に送達される。同様に、他の実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、針および注射器、ポンプ、マイクロインジェクションデバイス、スポンジ状物質、またはこれらの任意の組み合わせを用いる適用によって外耳の特定領域に標的化される。例えば、外耳炎の処置の場合、本明細書で開示される抗菌薬製剤は外耳道に直接送達され、そこで、抗菌薬製剤は保持され、これによって、ドレナージまたは漏出が原因で標的耳構造からの活性薬剤の損害を減少させる。
【0225】
成長因子
ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の変性を調節し、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の生存および/または成長を促進する薬剤、および、破壊され、発育不良の、機能不全の、損傷した、脆弱な、または欠けている内耳内の毛に起因する難聴または聴力の減少を処置または改善するための薬剤が、本明細書で開示される製剤と組成物との使用について企図される。したがって、いくつかの実施形態は、ニューロンおよび耳の有毛細胞の生存、および/またはニューロンおよび耳の有毛細胞の成長を促進する薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態では、耳の有毛細胞の生存を促進する薬剤は成長因子である。いくつかの実施形態では、成長因子は神経栄養性である。特定の例では、神経栄養因子は、細胞がアポトーシスを開始するのを防ぎ、損傷したニューロンと耳の有毛細胞を修復し、および/または前駆細胞における分化を誘発する成長因子である。いくつかの実施形態では、成長因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、および/またはこれらいくつかの実施形態において、成長因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)である。いくつかの実施形態において、成長因子は、毛様体神経栄養因子(CNTF)である。いくつかの実施形態において、成長因子は、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)である。いくつかの実施形態において、成長因子は、ニューロトロフィン-3である。いくつかの実施形態において、成長因子は、ニューロトロフィン-4である。いくつかの実施形態では、成長因子は線維芽細胞増殖因子(FGF)、インスリン様成長因子(IGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PGF)、および/またはそれらのアゴニストである。いくつかの実施形態では、成長因子は、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、インスリン様成長因子(IGF)受容体、上皮成長因子(EGF)受容体、および/または血小板由来成長因子のアゴニストである。いくつかの実施形態では、成長因子は肝細胞増殖因子である。
【0226】
いくつかの実施形態では、成長因子は上皮成長因子(EGF)である。いくつかの実施形態では、EGFはヘレグリン(HRG)である。特定の例では、HRGは、卵形嚢感覚上皮の増殖を刺激する。特定の例では、HRG結合受容体は、前庭および耳の感覚上皮で見られる。
【0227】
いくつかの実施形態では、成長因子はインスリン様成長因子(IGF)である。いくつかの実施形態では、IGFはIGF-1である。いくつかの実施形態では、IGF-1はメカセルミンである。特定の例では、IGF-1は、アミノグリコシドへの暴露によって誘発された損傷を弱める。特定の例では、IGF-1は、蝸牛神経節細胞の分化および/または成熟を刺激する。
【0228】
いくつかの実施形態では、FGF受容体アゴニストはFGF-2である。いくつかの実施形態では、IGF受容体アゴニストはIGF-1である。FGFとIGFの受容体は共に、卵形嚢上皮を含む細胞で見られる。
【0229】
いくつかの実施形態では、成長因子は肝細胞増殖因子(HGF)である。いくつかの例では、HGFは、騒音誘導された損傷から蝸牛有毛細胞を保護し、音への暴露により引き起こされたABR閾値変動を減らす。
【0230】
さらに、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物に使用するために企図される成長因子としては、エリスロポイエチン(EPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、成長分化因子-9(GDF9)、インスリン様成長因子(IGF)、ミオスタチン(GDF-8)、血小板由来成長因子(PDGF)、トロンボポイエチン(TPO)、形質転換増殖因子アルファ(TGF-α)、形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)、血管内皮増殖因子(VEGF)、またはこれら組み合わせが挙げられる。
【0231】
神経栄養因子
いくつかの実施形態では、成長因子は神経栄養因子である。特定の例では、神経栄養因子は、細胞がアポトーシスを開始するのを防ぎ、損傷したニューロンと耳の有毛細胞を修復し、および/または前駆細胞における分化を誘発する成長因子である。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、および/またはそれらの組み合わせである。
【0232】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子はBDNFである。特定の例では、BDNFは、損傷した細胞を修復し、ROSの生成を阻害し、およびアポトーシスの誘発を阻害することによって、既存のニューロン(例えば、らせん神経節ニューロン)および耳の有毛細胞の生存を促進する神経栄養因子である。特定の実施形態では、それはさらに神経と耳の有毛細胞の前駆体の分化を促進する。さらに、特定の実施形態では、それは変性から脳神経VIIを保護する。いくつかの実施形態では、BDNFは線維芽細胞増殖因子と共に投与される。
【0233】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子はニューロトロフィン-3である。特定の実施形態では、ニューロトロフィン-3は、既存のニューロンおよび耳の有毛細胞の生存を促進し、および神経と耳の有毛細胞の前駆体の分化を促進する。さらに、特定の実施形態では、それは変性からVII神経を保護する。
【0234】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子はCNTFである。特定の実施形態では、CNTFは、神経伝達物質の合成および神経突起の成長を促進する。いくつかの実施形態では、CNTFはBDNFと共に投与される。
【0235】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子はGDNFである。特定の実施形態では、GDNF発現は、耳毒性薬剤による処置によって増加する。さらに、特定の実施形態では、外因性のGDNFで処置された細胞は、未処置細胞よりも外傷後の生存率が高い。
【0236】
いくつかの実施形態において、神経栄養因子は、TrkBまたはTrkCのアゴニストなどのTrkアゴニストである。例えば、BDNFおよびNT-3は、生存、神経突起の成長、およびシナプス形成を促進するためにらせん神経節ニューロン上のTrkBとTrkCを活性化する。ヒト化されたTrkCモノクローナル抗体アゴニストM1、M2、およびM7と、ヒト化されたTrkBモノクローナル抗体アゴニストM3とM6、ならびに、M4とM5マウスを含む他のTrkアゴニストも、本明細書で提供される方法の使用について企図される。
【0237】
治療薬の量
いくつかの実施形態では、耳用製剤は、約0.0001重量%~約99.9999重量%の治療薬(例えば、成長因子)、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用製剤は、約0.0001重量%~約20重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用製剤は、約0.0001重量%~約15重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用製剤は、約0.0001重量%~約10重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用製剤は、約0.0001重量%~約5重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用製剤は、約0.0001重量%~約1重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用製剤は、約0.05重量%~約0.5重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。
【0238】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約99.99重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約99.9重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約99重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約90重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約80重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約70重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約60重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約50重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約40重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約30重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約20重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約15重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約10重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約7重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約5重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約3重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約2重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約1重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用製剤は、約0.05重量%~約0.5重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。
【0239】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約99.99重量%の治療薬(例えば、成長因子)、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約99.9重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約99重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約90重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約80重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約70重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約60重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約50重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約40重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約30重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約20重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約15重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約10重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約7重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約5重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約3重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約2重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約1重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。
【0240】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.1重量%~約40重量%の治療薬(例えば、成長因子)、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.1重量%~約30重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.10重量%~約20重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.10重量%~約15重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.10重量%~約10重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.10重量%~約7重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.10重量%~約5重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.10重量%~約3重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.10重量%~約2重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.10重量%~約1重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。
【0241】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%~約40重量%の治療薬(例えば、成長因子)、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%~約30重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%~約20重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%~約15重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%~約10重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%~約7重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%~約5重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%~約3重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%~約2重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。
【0242】
いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は、約0.0001重量%、約0.0002重量%、約0.0003重量%、約0.0004重量%、約0.0005重量%、約0.0006重量%、約0.0007重量%、約0.0008重量%、約0.0009重量%、約0.001重量%、約0.002重量%、約0.003重量%、約0.004重量%、約0.005重量%、約0.006重量%、約0.007重量%、約0.008重量%、約0.009重量%、約0.01重量%、約0.02重量%、約0.03重量%、約0.04重量%、約0.05重量%、約0.06重量%、約0.07重量%、約0.08重量%、約0.09重量%、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7%m 約8重量%、約9重量%、約10重量%、約約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、または約40重量%の治療薬(例えば、成長因子) 、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。
【0243】
いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%、約0.002重量%、約0.003重量%、約0.004重量%、約0.005重量%、約0.006重量%、約0.007重量%、約0.008重量%、約0.009重量%、約0.01重量%、約0.02重量%、約0.03重量%、約0.04重量%、約0.05重量%、約0.06重量%、約0.07重量%、約0.08重量%、約0.09重量%、約0.1重量%、約0.2% 約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、または約40重量%の治療薬(例えば、成長因子) 、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.02重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.03重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.04重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.05重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.06重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.07重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.08重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.09重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.1重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.2重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.3重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.4重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.5重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.6重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.7重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.8重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.9重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約2重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約3重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約4重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約5重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約6重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約7重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約8重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約9重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約10重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約11重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約12重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約13重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約14重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約15重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約16重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約17重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約18重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約19重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約20重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩を含む。
【0244】
デバイス
本明細書で開示される医薬製剤と医薬組成物の送達のための、あるいは、代替的に、本明細書で開示される耳用製剤の機能の測定または監視のための、装置の使用も本明細書で企図される。例えば、1つの実施形態では、ポンプ、浸透性デバイス、または医薬製剤と組成物を機械的に送達する他の手段が、本明細書で開示される医薬製剤の送達のために使用される。リザーバー装置は、医薬品の薬物送達ユニットと共に随意に使用され、薬物送達ユニットと共に耳構造の内部にあるか、または外部にあるかのいずれかである。
【0245】
他の実施形態は、聴力、平衡、または他の耳の障害をモニタリングまたは調査するために、機械的または画像化デバイスの使用を企図する。例えば、磁気共鳴画像(MRI)デバイスは、実施形態の範囲内で具体的に企図され、ここで、MRIデバイス(例えば、3 Tesla MRIデバイス)は、メニエール病の進行、および本明細書で開示される医薬製剤を用いるその後の処置を評価することができる。Carfrae et al Laryngoscope 118:501-505 (March 2008)を参照。全身スキャナーまたは代替的に頭蓋スキャナーが企図され、およびより高い解像度(ヒト用の7 Tesla、8 Tesla、9.5 Tesla または11 Tesla)が随意にMRIスキャンに使用される。
【0246】
耳用製剤の可視化
いくつかの実施形態において、染料(例えば、トリパンブルー染料、エバンスブルー染料)、または他のトレーサー化合物を含む耳用の製剤と組成物が本明細書でさらに提供される。いくつかの例では、耳に適合可能な染料を、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物に加えると、耳(例えば、げっ歯類の耳および/またはヒトの耳)に投与された製剤または組成物を可視化する助けになる。特定の実施形態では、染料または他のトレーサー化合物を含む耳用の製剤または組成物は、内リンパおよび/または外リンパ内の薬物の濃度をモニタリングするために、動物モデルに現在使用されている侵襲的な手法を不要にする。
【0247】
いくつかの例では、鼓室内注射は、送達される薬の効果を最大化するために、専門家が必要とされ、および耳の特定部位に送達される必要のある製剤または組成物を要求する。いくつかの例では、本明細書に記載される製剤または組成物に対する可視化技術は、投与部位(例えば正円窓)の可視化を可能にし、その結果、薬は適切な位置に適用される。いくつかの例では、染料を含む製剤または組成物は、耳(例えば、ヒトの耳)への製剤の投与中に、製剤または組成物の可視化を可能にし、薬剤が意図した部位に確実に送達されるようにするとともに、製剤または組成物の不正確な配置による合併症を回避する。適用時、製剤または組成物の可視化を高める助けとなる染料を含有すること、および、さらなる治療介入なく投与後に製剤または組成物の位置を視覚的に調べる能力は、動物モデルおよび/またはヒトの試験において、鼓室内治療を試験するために現在利用可能な方法を上回る利点を表すものである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用組成物と適合する染料は、エバンスブルー(例えば、耳用製剤の総重量の0.5%)、メチレンブルー(例えば、耳用製剤の総重量の1%)、イソスルファンブルー(例えば、耳用製剤の総重量の1%)、トリパンブルー(例えば、耳用製剤の総重量の0.15%)、および/またはインドシアニングリーン(例えば、25mg/バイアル)を含む。他の一般的な染料、例えば、FD&Cレッド40、FD&Cレッド3、FD&Cイエロー5、FD&Cイエロー6、FD&Cブルー1、FD&Cブルー2、FD&Cグリーン3、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、Alexa Fluors、DyLight Fluors)、および/またはMRI、CATスキャン、PETスキャンなどの非侵襲性の画像化技術で可視化される染料(例えば、ガドリニウムベースのMRI色素、ヨードベースの色素、バリウムベースの色素など)も、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物との使用について企図される。本明細書に記載される製剤または組成物と適合する他の染料は、Sigma-Aldrichのカタログの染料の欄に列挙されている(開示のために参照により本明細書に含まれる)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用製剤中の染料の濃度は、本明細書に記載される製剤または組成物の総重量および/または容積の2%未満、1.5%未満、1%未満、0.5%未満、0.25%未満、0.1%未満、または100ppm未満である。
【0248】
染料を含む、こうした耳に適合可能な製剤または組成物の特定の実施形態では、耳の中で染料を含む耳用の製剤または組成物の制御放出を可視化する能力は、ヒトへの使用に適した鼓室内の耳用の製剤または組成物の開発に適用可能な適切な試験方法に対する長年にわたるニーズを満たすものである。染料を含む、こうした耳に適合可能な製剤または組成物の特定の実施形態では、染料を含む耳用の製剤または組成物の制御放出を可視化する能力は、ヒト臨床試験において、本明細書に記載される耳用製剤の試験を可能にする。
【0249】
一般的な滅菌の方法
内耳の環境は、隔離された環境である。内リンパと外リンパは静止流体であり、循環系と連続して接触していない。血液内リンパ関門および血液外リンパ関門を含む、血液迷路関門(BLB)は、迷路空間(すなわち、前庭と蝸牛の空間)における特定の上皮細胞間の密着結合からなる。BLBの存在は、内耳の隔離された微小環境への活性薬剤の送達を制限する。耳有毛細胞は、内リンパまたは外リンパの流体に浸され、カリウムイオンの蝸牛再循環は、有毛細胞機能にとって重要である。内耳が感染すると、内リンパおよび/または外リンパへの(例えば、微生物感染に応じた)白血球および/または免疫グロブリンの流入があり、内耳流体の繊細なイオン組成物は、白血球および/または免疫グロブリンの流入によって乱される。特定の例では、内耳流体のイオン組成物の変化は、難聴、平衡感覚障害、および/または聴覚構造の骨化につながる。特定の例では、微量の発熱物質および/または微生物でさえも、内耳の隔離された微小環境における感染および関連する生理学的変化を引き起こす。
【0250】
一態様において、厳格な無菌要件で無菌化され、中耳および/または内耳への投与に適した耳用の製剤または組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、耳に適合可能な組成物である。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、発熱物質および/または微生物を実質的に含まない。
【0251】
本明細書に記載される耳の障害を改善または低減する耳用の製剤または組成物が本明細書で提供される。さらに、上記耳用の製剤または組成物の投与を含む方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は減菌される。ヒトでの使用のための、本明細書で開示される医薬組成物の滅菌のための手段およびプロセスが本明細書で開示される実施形態に含まれる。この目標は、感染症を引き起こす微生物を比較的含まない、安全な医薬製品を提供することである。米国食品医薬品局は、“Guidance for Industry:Sterile Drug Products Produced by Aseptic Processing”として規制の手引きを発行しており、http://www.fda.gov/cder/guidance/5882fnl.htmで利用可能であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。内耳の処置のための安全な医薬品に有効な特定のガイドラインはない。
【0252】
本明細書で使用されるように、滅菌は、生成物または包装に存在する微生物を破壊または除去するために使用されるプロセスを意味する。対象および製剤または組成物の滅菌に利用可能な任意の適切な方法が使用される。微生物の不活性化に利用可能な方法としては、限定されないが、非常に強い熱、致死薬、あるいはγ線の適用が挙げられる。いくつかの実施形態では、耳用の治療製剤の調製のためのプロセスは、加熱滅菌、化学的滅菌、放射線滅菌、またはろ過滅菌から選択される滅菌法に製剤をさらす工程を含む。使用される方法は、デバイスまたは滅菌される組成物の性質に大きく依存する。滅菌の多くの方法の詳細な記載は、Lippincott,Williams&Wilkinsによって公開された、Remington:The Science and Practice of Pharmacyの第40章に提供されており、この主題に関して引用により組み込まれる。
【0253】
加熱滅菌
激しく熱を加えることによって滅菌するために、多くの方法が利用可能である。1つの方法は飽和水蒸気オートクレーブを使用するものである。この方法では、少なくとも121℃の温度の飽和水蒸気を、滅菌される対象に接触させる。対象が滅菌される場合、熱は微生物に直接伝達され、または滅菌される水溶液の大部分を加熱することによって微生物に間接的に伝達される。この方法は、滅菌プロセスにおいて柔軟性があり、安全で、経済的であるため、広く実行される。
【0254】
乾熱滅菌は、高温で微生物を殺して発熱物質の除去を行う方法である。このプロセスは、滅菌プロセスのために少なくとも130~180℃の温度まで、および発熱物質の除去プロセスのために少なくとも230~250℃の温度まで、HEPAろ過した微生物のない空気を加熱するのに適した装置で行われる。濃縮製剤または粉末製剤を再構成するための水も、オートクレーブによって滅菌される。
【0255】
化学的滅菌
化学的滅菌法は、激しい熱による滅菌に耐えられない生成物のための代替法である。この方法では、酸化エチレン、二酸化塩素、ホルムアルデヒド、またはオゾンなどの殺菌特性を備えた様々な気体および蒸気が、抗アポトーシス剤として使用される。エチレンオキシドの殺菌活性は、例えば、反応性アルキル化剤として作用するその能力から生じる。したがって、滅菌プロセスでは、エチレンオキシド蒸気が、滅菌される生成物と直接接触する必要がある。
【0256】
放射線滅菌
放射線滅菌の1つの利点は、熱による分解または他の損傷を受けずに、多くの種類の生成物を滅菌できることである。一般に使用される放射線はベータ線であり、または代替的には60Co源からのγ線である。γ線は、その透過性能力ゆえに、溶液、組成物、および不均質な混合物を含む多くの種類の製品の滅菌に使用することができる。照射の殺菌効果は生体高分子とのγ線の相互作用から発生する。この相互作用は、荷電種と遊離ラジカルを生成する。転位と架橋結合プロセスなどのその後の化学反応は、こうした生体高分子のための正常な機能を喪失させる。本明細書に記載される製剤も、ベータ照射を使用して随意に滅菌される。
【0257】
ろ過
ろ過滅菌は、微生物を破壊するのではなく、溶液から除去するために用いられる方法である。膜フィルターは感熱性の溶液をろ過するために使用される。そのようなフィルターは、混合セルロースエステル(MCE)、ポリフッ化ビニリデン(PVF;PVDFとしても知られる)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の薄く、強力で、均質なポリマーであり、および0.1~0.22μmの範囲の孔径を有する。様々なフィルター膜を使用して様々な特性の溶液を、随意にろ過する。例えば、PVFとPTFEの膜は、有機溶媒のろ過に非常に適しているが、水溶液はPVFまたはMCEの膜によってろ過される。ろ過装置は、注射器に取り付けられた単一の使用場所で使い捨て可能なフィルターから、製造工場で使用される商業用スケールフィルタに至るまで、多くのスケールでの使用に利用可能である。膜フィルターはオートクレーブまたは化学的滅菌によって滅菌される。膜ろ過システムの検証は、以下の標準化されたプロトコルによって行われ(Microbiological Evaluation of Filters for Sterilizing Liquids,Vol4,No.3.Washington,D.C:Health Industry Manufacturers Association,1981)、およびBrevundimonas diminuta(ATCC 19146)などの既知数(約107/cm2)の非常に小さな微生物を膜フィルターに負荷することを含む。
【0258】
医薬製剤または組成物は、膜フィルターを通すことによって随意に滅菌される。いくつかの実施形態では、ナノ粒子を含む製剤または組成物(米国特許第6,139,870号)、または多重膜小胞(Richard et al.,International Journal of Pharmaceutics(2006),312(1~2):144-50)を含む製剤または組成物は、それらの組織化された構造を破壊することなく、0.22μmのフィルターを介したろ過滅菌に適用可能である。
【0259】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される方法は、ろ過滅菌の手段によって、製剤または組成物(または、その成分)を滅菌する工程を含む。別の実施形態では、耳用の製剤または組成物は粒子を含み、粒子の製剤または組成物はろ過滅菌に適している。さらなる実施形態では、上記粒子の製剤または組成物は、300nm未満のサイズ、200nm未満のサイズ、または100nm未満のサイズの粒子を含む。別の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、粒子の製剤または組成物を含み、粒子の滅菌性は、前駆体成分の溶液を滅菌ろ過することによって確保される。別の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、粒子の製剤または組成物を含み、粒子の製剤または組成物の滅菌性は、低温滅菌ろ過によって確保される。さらなる実施形態では、上記低温ろ過滅菌は、0-30℃、0-20℃、0-10℃、10-20℃、または20-30℃の温度で起こる。別の実施形態では、耳に許容可能な粒子の製剤または組成物を調製するプロセスは、以下を含む:粒子の製剤または組成物を含む水溶液を低温で滅菌フィルターに通してろ過する工程;無菌液の凍結乾燥;および投与前に滅菌水を用いて粒子の製剤または組成物を再構成する工程。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、微粉化した医薬品有効成分を含む単一のバイアル製剤中の懸濁液として製造される。単一のバイアル製剤は、滅菌したポロキサマー溶液を、滅菌した微粉化した有効成分(例えば、ケタミン)と無菌的に混合し、製剤を滅菌した医薬容器に移すことによって調製される。いくつかの実施形態では、懸濁液として本明細書に記載される製剤を含む単一のバイアルは、分注および/または投与前に再懸濁される。
【0260】
具体的な実施形態では、ろ過および/または充填の手順は、本明細書に記載される製剤のゲル化温度(Tgel)よりも5℃下で、および100cPの理論値より下の粘度で実行され、それにより、蠕動ポンプを使用する妥当な時間内でのろ過が可能となる。
【0261】
別の実施形態では、耳用の製剤または組成物はナノ粒子の製剤または組成物を含み、ナノ粒子の製剤または組成物はろ過滅菌に適している。さらなる実施形態では、ナノ粒子の製剤または組成物は、300nm未満のサイズ、200nm未満のサイズ、または100nm未満のサイズのナノ粒子を含む。別の実施形態において、耳用の製剤または組成物は、マイクロスフィアの製剤または組成物を含み、このマイクロスフィア滅菌性は、前駆体の有機溶液および水溶液を滅菌ろ過することによって確保される。別の実施形態では、耳用の製剤または組成物の滅菌性は低温ろ過によって確保される。さらなる実施形態では、低温ろ過滅菌は、0~30℃、0~20℃、0~10℃、10~20℃、または20~30℃の温度で起きる。別の実施形態では、耳に許容可能な熱可逆性ゲル製剤の調製のためのプロセスがあり、上記プロセスは、熱可逆性ゲル成分を含む水溶液を低温で滅菌フィルターに通してろ過すること;無菌液を凍結乾燥すること;および、投与前に滅菌水を用いて熱可逆性ゲル製剤を再構成すること、を含む。
【0262】
特定の実施形態では、有効成分は、適切なビヒクル(例えば、緩衝液)中に溶解され、(例えば、加熱処理、ろ過、ガンマ線によって)別々に滅菌され;残りの賦形剤は、適切な方法(例えば、賦形剤の冷やした混合物のろ過および/または照射)によって別々の工程で滅菌され;その後、別々に滅菌された2つの溶液を無菌的に混合することで、最終的な耳用の製剤または組成物を得る。
【0263】
いくつかの例では、従来使用される滅菌の方法(例えば、熱処理(例えば、オートクレーブ)、γ線照射、ろ過)は、製剤または組成物中の治療薬の不可逆的分解をもたらす。
【0264】
いくつかの例では、従来使用される滅菌の方法(例えば、加熱処理(例えば、オートクレーブ)、γ線照射、ろ過)は、製剤中のポリマー成分(例えば、熱硬化性、ゲル化、または粘膜付着性のポリマー成分)および/または活性薬剤の不可逆な分解につながる。いくつかの例において、耳用製剤を膜(例えば、0.2μmの膜)に通してろ過することによる滅菌は、製剤がろ過プロセス中にゲル化するチキソトロピー性ポリマーを含む場合には、不可能である。
【0265】
したがって、本明細書には、ポリマー成分(例えば、熱硬化性および/またはゲル化および/または粘膜付着性のポリマー成分)ならびに/あるいは滅菌のプロセスの間の治療薬の分解を防ぐ耳用製剤の滅菌のための方法が提供される。いくつかの実施形態では、治療薬の分解は、緩衝液成分向けの特定のpH範囲と製剤中のゲル化剤の特定の割合の使用を通じて減らされるか、解消される。いくつかの実施形態では、適切なゲル化剤および/または熱硬化性ポリマーの選択によって、ろ過による本明細書に記載される製剤の滅菌が可能となる。いくつかの実施形態では、製剤のための具体的なpH範囲と組み合わせた、適切な熱硬化性ポリマーおよび適切なコポリマー(例えば、ゲル化剤)の使用によって、治療薬またはポリマー賦形剤の分解が実質的にない、本明細書に記載される製剤の高温滅菌が可能になる。本明細書で提供される滅菌の方法の利点は、特定の例において、製剤が、滅菌工程中に活性薬剤および/または賦形剤および/またはポリマー成分を失うことなくオートクレーブ滅菌を介して最終滅菌にさらされ、微生物および/または発熱物質が実質的にないようにされるということである。
【0266】
微生物
本明細書では、本明細書に記載される耳障害を改善または低減する耳用の製剤または組成物が提供される。本明細書にはさらに、上記耳用の製剤または組成物の投与を含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、上記製剤または組成物は、微生物を実質的に含まない。許容可能な滅菌レベルは、限定されないが、米国薬局方1111章(以下参照)を含む、治療に許容可能な耳用の製剤または組成物を規定する適用可能な標準に基づく。例えば、許容可能な滅菌レベルとしては、製剤または組成物1グラム10コロニー形成単位(cfu)、製剤または組成物1グラムあたり50cfu、製剤または組成物1グラムあたり100cfu、製剤または組成物1グラムあたり500cfu、または製剤または組成物1グラムあたり1000cfuが挙げられる。加えて、許容可能な滅菌レベルは、特定の好ましくない微生物剤が除外されていることを含む。一例として、指定された好ましくない微生物薬剤としては、限定されないが、大腸菌(E.coli)、サルモネラ属、緑膿菌(P.aeruginosa)、および/または他の特定の微生物剤が挙げられる。
【0267】
耳に可能な耳用製剤の滅菌性は、米国薬局方61章、62章、および71章に従い、滅菌保証プログラムで確認する。滅菌保証の品質管理、品質保証、および検証過程の主要な要素は、滅菌試験の方法である。滅菌試験は、ほんの一例として、2つの方法によって行われる。第1の方法は直接接種であり、試験される製剤のサンプルを増殖培地に加え、最大で21日間インキュベートする。増殖培地の混濁度が汚染を示す。この方法の短所として、感度を弱める小さなサンプルサイズの塊状材料と目視観察に基づく微生物成長の検出が挙げられる。もう1つの方法は膜ろ過無菌試験である。この方法では、大量の生成物を小さな膜フィルター紙に通す。その後、ろ過紙を培地に入れて微生物の成長を促す。この方法は、塊状の生成物がすべてサンプリングされるため、感度が高いという長所を持つ。市販のMillipore Steritest無菌試験システムは、膜ろ過無菌試験による判定に随意に使用される。クリーム剤または軟膏剤のろ過試験には、SteritestフィルタシステムNo.TLHVSL210を使用する。乳剤または粘着性生成物のろ過試験には、SteritestフィルタシステムNo.TLAREM210またはTDAREM210を使用する。あらかじめ充填された注射器のろ過試験には、SteritestフィルタシステムNo.TTHASY210を使用する。エアロゾルまたは泡として調合された物質のろ過試験には、SteritestフィルタシステムNo.TTHVA210を使用する。アンプルまたはバイアルにおける溶解性の粉末のろ過試験には、SteritestフィルタシステムNo.TTHADA210またはTTHADV210を使用する。
【0268】
大腸菌とサルモネラ菌のための試験は、30~35℃で24~72時間インキュベートされたラクトース培養液の使用、MacConkey寒天および/またはEMB寒天での18~24時間のインキュベーション、および/またはラパポート培地の使用を含む。緑膿菌の検出のための試験は、NAC寒天の使用を含む。米国薬局方(United States Pharmacopeia)の62章はさらに、指定された好ましくない微生物向けの試験手順を列挙している。
【0269】
ある実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、製剤1グラム当たり約60未満のコロニー形成単位(CFU)、約50未満のコロニー形成単位、約40未満のコロニー形成単位、あるいは約30未満のコロニー形成単位の微生物剤を有する。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、内リンパおよび/または外リンパと等張となるように製剤化される。
【0270】
内毒素
本明細書では、本明細書に記載される耳障害を改善または低減する耳用の製剤または組成物が提供される。本明細書にはさらに、上記耳用の製剤または組成物の投与を含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は内毒素を実質的に含まない。滅菌処理法のさらなる態様は、副産物が微生物(以後、「生成物」)を死滅させないようにすることである。発熱物質除去のプロセスはサンプルから発熱物質を取り除く。発熱物質は免疫応答を引き起こす内毒素または外毒素である。内毒素の一例は、グラム陰性菌の細胞壁で見られるリポ多糖類(LPS)分子である。オートクレーブ滅菌またはエチレンオキシドを用いる処置のような滅菌処理は細菌を殺すが、LPS残留物は敗血症性ショックなどの炎症誘発性の免疫応答を引き起こす。内毒素の分子サイズが広く変動するため、内毒素の存在は、「内毒素単位」(EU)で表される。1EUはE.coli LPSの100ピコグラムに相当する。いくつかの場合では、ヒトは、体重のわずか5EU/kgほどに対する反応しか進行させない。滅菌状態(sterility)は、当該技術分野で認識されているような任意の単位で表される。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、従来の許容可能な内毒素レベル(例えば、被験体の体重の5EU/kg)と比較して、より低い内毒素レベル(例えば、被験体の体重の4EU/kg未満)を含んでいる。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、被験体の体重の約5EU/kg未満を有する。他の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、被験体の体重の約4EU/kg未満を有する。さらなる実施形態では、耳用の製剤または組成物は、被験体の体重の約3EU/kg未満を有する。さらなる実施形態では、耳用の製剤または組成物は、被験体の体重の約2EU/kg未満を有する。
【0271】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約5EU/kg未満の製剤を有する。他の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約4EU/kg未満の製剤を有する。さらなる実施形態では、耳用のまたは組成物は、約3EU/kg未満の製剤を有する。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約5EU/kg未満の生成物を有する。他の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1EU/kg未満の生成物を有する。さらなる実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.2EU/kg未満の生成物を有する。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約5EU/g未満の単位(unit)または生成物を有する。他の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約4EU/g未満の単位(unit)または生成物を有する。さらなる実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約3EU/g未満の単位(unit)または生成物を有する。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約5EU/mg未満の単位(unit)または生成物を有する。他の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約4EU/mg未満の単位(unit)または生成物を有する。さらなる実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約3EU/mg未満の単位(unit)または生成物を有する。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、約1~約5EU/mLの製剤または組成物を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、約2~約5EU/mLの製剤または組成物、約3~約5EU/mLの製剤または組成物、あるいは約4~約5EU/mLの製剤または組成物を含む。
【0272】
特定の実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、従来の許容可能な内毒素レベル(例えば、0.5EU/mLの製剤または組成物)と比較して、より低い内毒素レベル(例えば、0.5EU/mL未満の製剤または組成物)を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.5EU/mL未満の製剤または組成物を有する。他の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.4EU/mL未満の製剤または組成物を有する。さらなる実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.2EU/mL未満の製剤または組成物を有する。
【0273】
発熱物質の検出は、ほんの一例として、複数の方法によって行われる。無菌に適切な試験は、米国薬局方(USP)<71>無菌試験法(23rd edition,1995)に記載される試験を含む。ウサギの発熱性物質試験法とリムルス変形細胞溶解物試験は両方とも、米国薬局方チャプター<85>および<151>(USP23/NF 18, Biological Tests, The United States Pharmacopeial Convention, Rockville, MD, 1995)で指定される。代替的な発熱物質アッセイは単球活性化サイトカインアッセイに基づいて開発されている。品質管理適用に適した均一の細胞株が開発されており、ウサギの発熱性物質試験法とリムルス変形細胞溶解物試験に合格したサンプルの発熱性を検知する能力を実証している(Taktak et al, J. Pharm. Pharmacol. (1990), 43:578-82)。さらなる実施形態では、耳用の製剤または組成物は発熱物質除去にさらされる。さらなる実施形態では、耳用の製剤または組成物の製造のプロセスは、発熱性に関して製剤または組成物を試験することを含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、発熱物質を実質的に含まない。
【0274】
pHとモル浸透圧濃度
本明細書には、外リンパおよび/または内リンパに適合可能であり、蝸牛電位にいかなる変化も生じさせないイオン平衡を有する耳用の製剤または組成物が記載される。特定の実施形態では、本製剤のモル浸透圧濃度/オスモル濃度は、例えば、適切な塩濃度(例えば、ナトリウム塩の濃度)の使用、または、製剤または組成物を内リンパと適合および/または外リンパと適合(すなわち、内リンパおよび/または外リンパと等張)させる等張化剤の使用によって、調節される。いくつかの例において、外リンパ適合性および/または内リンパ適合性の本明細書に記載の製剤または組成物は、内耳の環境に最小の障害しか引き起こさず、投与時に哺乳動物(例えば、ヒト)に最小限の不快感(例えば、回転性めまい)しか引き起こさない。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物は、防腐剤を含んでおらず、聴覚構造体内に最少限の不快感(例えば、pHまたはモル浸透圧濃度の変化、炎症)しか引き起こさない。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物は、耳構造体に対して非刺激性のおよび/または無毒な抗酸化剤を含む。
【0275】
本明細書で使用されるように、「実用的なモル浸透圧濃度」は、活性薬剤、およびゲル化剤および/または増粘剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、カルボキシメチルセルロースなど)を除くすべての賦形剤を含めることによって測定される製剤のモル浸透圧濃度を意味する。本明細書に記載される製剤の実用的なモル浸透圧濃度は、任意の適切な方法(例えば、Viegas et. al., Int. J. Pharm., 1998, 160, 157-16に記載されるような凝固点降下方法)によって測定される。いくつかの例において、本明細書に記載される製剤の実用的なモル浸透圧濃度は、より高い温度で製剤のモル浸透圧濃度を決定することができる、蒸気圧浸透圧法(例えば、蒸気圧降下法)によって測定される。いくつかの例では、蒸気圧降下法は、より高温でのゲル化剤(例えば、熱可逆性ポリマー)を含む製剤のモル浸透圧濃度の判定を可能にし、ここでゲル化剤はゲルの形態である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用製剤の実用的なモル浸透圧濃度は、約100mOsm/kgから約1000mOsm/kg、約200mOsm/kgから約800mOsm/kg、約250mOsm/kgから約500mOsm/kg、約250mOsm/kgから約320mOsm/kg、約250mOsm/kgから約350mOsm/kg、または約280mOsm/kgから約320mOsm/kgまでである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用製剤は、約100mOsm/Lから約1000mOsm/L、約200mOsm/Lから約800mOsm/L、約250mOsm/Lから約500mOsm/L、約250mOsm/Lから約350mOsm/L、約250mOsm/Lから約320mOsm/L、または約280mOsm/Lから約320mOsm/Lまでの実用的なモル浸透圧濃度を有する。
【0276】
いくつかの実施形態では、作用の標的部位(例えば、外リンパ)でのモル浸透圧濃度は、本明細書に記載される送達された製剤のモル浸透圧濃度(すなわち、正円窓膜と交差するかまたはそれに浸透する物質のモル浸透圧濃度)とほぼ同じである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、約150mOsm/Lから約500mOsm/L、約250mOsm/Lから約500mOsm/L、約250mOsm/Lから約350mOsm/L、約280mOsm/Lから約370mOsm/L、または約250mOsm/Lから約320mOsm/Lまでの送達可能なモル浸透圧濃度を有する。
【0277】
内リンパ中に存在する主なカチオンはカリウムである。加えて、内リンパは高濃度の正に荷電したアミノ酸を有する。外リンパ中に存在する主なカチオンはナトリウムである。ある例では、内リンパと外リンパのイオン組成は、有毛細胞の電気化学的刺激を調節する。ある例では、内リンパまたは外リンパのイオンのバランスの任意の変化が、耳の有毛細胞に沿った電気化学的刺激の伝導の変化により聴力損失を引き起こす。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される組成物または製剤は、外リンパのイオンのバランスを崩さない。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される組成物または製剤は、外リンパと同じか、または実質的に同じイオンのバランスを有する。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される組成物または製剤は、内リンパのイオンのバランスを崩さない。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される組成物または製剤は、内リンパと同じか、または実質的に同じイオンバランスを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物または製剤は、内耳流体(すなわち、内リンパおよび/または外リンパ)と適合するイオンのバランスを提供するように製剤化される。
【0278】
内リンパと外リンパは血液の生理的なpHに近いpHを有する。内リンパは約7.2-7.9のpH範囲を有し、外リンパは約7.2-7.4のpH範囲を有する。近位の内リンパのインサイツのpHは約7.4であり、その一方で遠位の内リンパのpHは約7.9である。
【0279】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物のpHは、約7.0~8.0の内リンパに適合するpH範囲、および約7.2~7.9の好ましいpH範囲に調節される(例えば、緩衝液を使用)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物のpHは、約7.0~7.6の外リンパに適合するpH、および約7.2~7.4の好ましいpH範囲に調節される(例えば、緩衝液を使用)。
【0280】
いくつかの実施形態では、有用な製剤または組成物は、1つ以上のpH調整剤または緩衝剤を含む。適切なpH調整剤または緩衝剤は、限定されないが、酢酸塩、炭酸水素塩、塩化アンモニウム、クエン酸塩、リン酸塩、その薬学的に許容可能な塩、およびその組み合わせ、またはこれらの混合物を含む。
【0281】
1つの実施形態において、本開示の製剤または組成物に使用されるとき、例えば、薬学的に許容可能な媒介物と組み合わせられ、例えば、約0.1%~約20%、約0.5%~約10%の量で、最終的な製剤または組成物中に存在する。本開示の特定の実施形態では、製剤または組成物に含まれる緩衝液の量は、製剤または組成物のpHが身体の生来の緩衝系に干渉しないような量である。いくつかの実施形態では、約5mM~約200mMの濃度の緩衝液が製剤または組成物中に存在する。特定の実施形態では、約20mMから約100mMの濃度の緩衝液が存在する。他の実施形態では、緩衝液の濃度は、製剤または組成物のpHが3~9、5~8、または代替的に6~7になるような濃度である。他の実施形態において、製剤または組成物のpHは約7である。1つの実施形態では、弱酸性のpHの酢酸塩またはクエン酸塩などの緩衝液を有する。1つの実施形態では、緩衝剤は、約4.5-約6.5のpHを有する酢酸ナトリウム緩衝液である。他の実施形態では、緩衝液は、約5.5-約6.0のpHを有する酢酸ナトリウム緩衝液である。さらなる実施形態では、緩衝液は、約6.0-約6.5のpHを有する酢酸ナトリウム緩衝液である。1つの実施形態では、緩衝剤は、約5.0-約8.0のpHを有するクエン酸ナトリウム緩衝液である。別の実施形態では、緩衝液は、約5.5-約7.0のpHを有するクエン酸ナトリウム緩衝液である。1つの実施形態では、緩衝剤は、約6.0-約6.5のpHを有するクエン酸ナトリウム緩衝液である。
【0282】
いくつかの実施形態では、緩衝液の濃度は、製剤または組成物のpHが6~9、6~8、6~7.6、および7~8になるような濃度である。他の実施形態では、製剤または組成物のpHは、約6.0、約6.5、約7、または約7.5である。一実施形態では、緩衝液はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、重炭酸塩、炭酸塩、またはわずかに塩基性pHのリン酸塩などの緩衝液である。一実施形態では、緩衝液は、約7.5~約8.5のpHを有する炭酸水素ナトリウム緩衝液である。別の実施形態では、緩衝液は、約7.0~約8.0のpHを有する炭酸水素ナトリウム緩衝液である。さらなる実施形態では、緩衝液は、約6.5~約7.0のpHを有する炭酸水素ナトリウム緩衝液である。一実施形態では、緩衝液は、約6.0~約9.0のpHを有するリン酸水素ナトリウム緩衝液である。別の実施形態では、緩衝液は、約7.0~約8.5のpHを有するリン酸水素ナトリウム緩衝液である。一実施形態では、緩衝液は、約7.5~約8.0のpHを有するリン酸水素ナトリウム緩衝液である。
【0283】
1つの実施形態では、希釈剤は、より安定した環境を提供することから、化合物を安定させるために使用される。限定されないが、リン酸緩衝生理食塩水を含む緩衝液中に溶解した塩(pHの制御あるいは維持ももたらす)が、当該技術分野の希釈剤として利用される。
【0284】
特定の実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物のpHは、約6.0~約7.6、約7~約7.8、約7.0~約7.6、約7.2~約7.6、または約7.2~約7.4である。特定の実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物のpHは、約6.0、約6.5、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、または約7.6である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物のpHは、標的とする耳の構造(例えば、内リンパ、外リンパなど)と適合するように設計される。
【0285】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤または組成物は、治療薬を分解することなく、製剤または組成物を滅菌することができるpHを有する(例えば、ろ過、または無菌混合、または熱処理、および/またはオートクレーブ滅菌(例えば、最終滅菌))。滅菌中に治療薬の加水分解および/または分解を減らすために、緩衝液のpHは、滅菌プロセス中に製剤または組成物のpHを7~8の範囲に維持するように設計される。
【0286】
特定の実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、治療薬が分解することなく、製剤または組成物の最終滅菌(例えば、熱処理および/またはオートクレーブ滅菌)を可能にするpHを有する。例えば、オートクレーブ滅菌中に治療薬の加水分解および/または分解を減らすために、緩衝液のpHは、製剤のpHが高温で7~8の範囲を維持するように設計される。製剤または組成物に使用される治療薬に依存して任意の適切な緩衝剤が用いられる。いくつかの例では、温度がほぼ-0.03/℃で上昇するにつれてTRISのpKaが減少し、温度がほぼ0.003/℃で上昇するにつれてPBSのpKaが増加することから、250°F(121°C)でのオートクレーブ滅菌は、トリス緩衝液中で著しい下方へのpHの変化(つまり、より酸性)を引き起こすが、PBS緩衝液中での上方へのpH変化は比較的少なく、したがって、PBSよりもトリスS中で耳用の薬剤の加水分解および/または分解がはるかに増加した。いくつかの実施形態では、治療薬の分解は、本明細書に記載されるような緩衝剤の適切な使用によって減らされる。
【0287】
約6.0~約7.6、約7~約7.8、約7.0~約7.6、約7.2~約7.6、約7.2~約7.4のpHが、本明細書に記載される製剤または組成物の滅菌に適している(例えば、ろ過、または無菌混合、または熱処理、および/またはオートクレーブ滅菌(例えば、最終滅菌))。特定の実施形態では、約6.0、約6.5、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、または約7.6の製剤または組成物のpHが、本明細書に記載される製剤または組成物の滅菌に適している(例えば、ろ過、または無菌混合、または熱処理。および/またはオートクレーブ滅菌(例えば、最終滅菌))。
【0288】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、約3~約9、約4~8、約5~8、約6~約7、約6.5~約7、約5.5~約7.5、または約7.1~約7.7のpHを有し、および約0.1mM~約100mMの有効医薬成分の濃度を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、約5~8、約6~約7、約6.5~約7、約6.5~約7.5、約5.5~約7.5、または約7.1~約7.7のpHを有し、および約1~約100mMの有効医薬成分の濃度を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、約5~8、約6~約7、約6.5~約7、約6.5~約7.5、約5.5~約7.5、または約7.1~約7.7のpHを有し、および約50~約80mMの有効活性成分の濃度を有する。いくつかの実施形態では、有効活性成分の濃度は、約10~約100mMである。他の実施形態では、有効活性成分の濃度は、約20~約80mMである。さらなる実施形態では、有効活性成分の濃度は、約10~約50mMである。
【0289】
いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、本明細書に記載されるpHを有し、非限定的な例として、本明細書に記載されるセルロース系増粘剤などの増粘剤(例えば、粘度増強剤または粘度調節剤)を含む。いくつかの例では、増粘剤の付加および本明細書に記載される製剤または組成物のpHは、耳用の製剤または組成物中の治療薬を実質的に分解することなく、本明細書に記載される製剤の滅菌を可能にする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物中の増粘剤の量は、製剤または組成物の全重量の約1%、5%、約10%または約15%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物中の増粘剤の量は、製剤または組成物の総重量の約0.5%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、約9%、約9.5%、約10%、または約15%である。いくつかの例では、第2のポリマー(例えば、増粘剤)の追加と本明細書に記載されるような製剤のpHは、耳用製剤中の耳用薬剤および/またはポリマー成分を実質的に分解することなく、本明細書に記載される製剤の滅菌を可能にする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるようなpHを有する製剤中の増粘剤に対する熱可逆性ポロキサマーの比率は、約40:1、約35:1、約30:1、約25:1、約20:1、約15:1、約10:1、または約5:1である。例えば、特定の実施形態では、本明細書に記載される徐放および/または持続放出型の製剤は、製剤または組成物の総重量の約40:1、約35:1、約30:1、約25:1、約20:1、約15:1、約10:1、または約5:1、4%、約4.5%、または約5%の比率で、ポロキサマー407(プルロニックF127)とカルボキシメチルセルロース(CMC)の組み合わせを含む。
【0290】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマーの量は、製剤の総重量の約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.5%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、または約40%である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマーの量は、製剤の総重量の約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.5%、約1%、約5%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、または約25%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約7.5%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約10%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約11%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約12%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約13%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約14%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約15%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約16%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約17%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約18%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約19%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約20%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約21%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約23%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約25%である。
【0291】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される任意の製剤中の増粘剤(例えば、ゲル化剤)の量は、製剤の総重量の約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約5%、約10%、または約15%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の増粘剤(例えば、ゲル化剤)の量は、製剤の総重量の約0.1%、約0.5%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、または約5%である。
【0292】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬製剤または組成物は、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約2ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約5ヶ月間、または少なくとも約6ヶ月間のいずれかの期間にわたってpHに関して安定している。他の実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、少なくとも約1週間、pHに関して安定している。本明細書には、少なくとも約1ヶ月の期間にわたって、pHに関して安定している製剤または組成物も記載される。
【0293】
等張化剤
一般に、内リンパは外リンパよりも高いモル浸透圧濃度を有する。例えば、内リンパは、約304mOsm/kgのH2Oのモル浸透圧濃度を有しているが、一方で外リンパは約294mOsm/kgのH2Oのモル浸透圧濃度を有する。くつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、約250~約320mM(約250~約320mOsm/kgのH2Oのモル浸透圧濃度)、および好ましくは、約270~約320mM(約270~約320mOsm/kgのH2Oのモル浸透圧濃度)のモル浸透圧濃度を提供するように調剤される。ある実施形態では、等張化剤は、約100mOsm/kgから約1000mOsm/kg、約200mOsm/kgから約800mOsm/kg、約250mOsm/kgから約500mOsm/kg、約250mOsm/kgから約350mOsm/kg、または約280mOsmkgから約320mOsm/kgまでの耳の製剤の実用的なモル浸透圧濃度を提供するための量で、本明細書に記載される製剤に加えられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、約100mOsm/Lから約1000mOsm/L、約200mOsm/Lから約800mOsm/L、約250mOsm/Lから約500mOsm/L、約250mOsm/Lから約350mOsm/L、約280mOsm/Lから約320mOsm/L、約250mOsm/Lから約320mOsm/Lの実用的なモル浸透圧濃度を有する。
【0294】
特定の実施形態では、本製剤または組成物のモル浸透圧濃度/オスモル濃度は、例えば、適切な塩濃度(例えば、カリウム塩の濃度)の使用、または製剤を内リンパ適合性および/または外リンパ適合性(すなわち、内リンパおよび/または外リンパと等張)にさせる等張化剤の使用によって、調節される。いくつかの例において、外リンパ適合性および/または内リンパ適合性の本明細書に記載される製剤または組成物は、内耳の環境に最小限の障害しか引き起こさず、投与時に被験体に最小限の不快感(例えば、回転性めまいおよび/または吐気)しか引き起こさない。
【0295】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤の送達可能なモル浸透圧濃度は、標的とされる耳の構造(例えば、内リンパ、外リンパなど)と等張になるように設計される。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳用製剤は、約250-約320mOsm/L、好ましくは、約270-約320mOsm/Lの作用の標的部位に送達される外リンパに適切なモル浸透圧濃度を提供するために製剤化される。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳用製剤は、約250-約320mOsm/kgのH2O、または、好ましくは、約270-約320mOsm/kgのH2Oのモル浸透圧濃度の、作用の標的部位に送達される外リンパに適切なモル浸透圧濃度を提供するように製剤化される。特定の実施形態では、製剤の送達可能な浸透圧/浸透圧(すなわち、ゲル化剤または増粘剤(例えば、浸透圧/熱可逆性ゲルポリマーが存在しない製剤の浸透圧/浸透圧)は、例えば、適切な濃度の塩(例えば、カリウム塩またはナトリウム塩の濃度を用いることによって調節されるか、または標的部位に送達する際に、製剤を内リンパに適合性および/または外リンパに適合性にする(すなわち、内リンパおよび/または外リンパと等張)ようにする等張化剤を用いることによって調節される。熱可逆性ゲルポリマーを含む製剤のモル浸透圧濃度は、ポリマーのモノマー単位と変動する水の量との関係性ゆえに、信頼性の低い尺度である。製剤の実用的なモル浸透圧濃度(つまり、ゲル化剤または増粘剤(例えば、熱可逆性ゲルポリマー)のない状態でのモル浸透圧濃度)は、信頼できる尺度であり、任意の適切な方法(例えば、凝固点降下方法、蒸気降下方法)によって測定される。いくつかの例では、本明細書に記載される製剤は、内耳の環境に最小限の妨害をもたらし、および例えば、投与後に哺乳動物に最小限の不快感(例えば眩暈および/または悪心)を引き起こす(例えば、標的部位(例えば外リンパ)の)実用的な浸透圧モル濃度を提供する。
【0296】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるいかなる製剤または組成物も外リンパと等張である。等張な製剤または組成物は等張化剤を加えることで提供される。適切な等張化剤は限定されないが、任意の薬学的に許容可能な砂糖、塩、またはその任意の組み合わせもしくは混合物、限定されないが、デキストロース、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、および他の電解質を含む。
【0297】
有用な耳用の製剤または組成物は、組成物のモル浸透圧濃度を許容可能な範囲へするのに必要な量の1つ以上の塩を含む。こうした塩は、ナトリウム、カリウム、またはアンモニウムのカチオン、ならびに塩化物、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、チオ硫酸塩、または重亜硫酸塩のアニオンを含み、適切な塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、および、硫酸アンモニウムを含む。
【0298】
さらなる実施形態では、等張化剤は、約100mOsm/kg~約500 mOsm/kg、約200mOsm/kg~約400 mOsm/kg、約250mOsm/kg~約350 mOsm/kg、または約280mOsm/kg~約320 mOsm/kgの耳用の製剤または組成物の最終モル浸透圧濃度をもたらす量で存在する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、約100mOsm/Lから約500mOsm/L、約200mOsm/Lから約400mOsm/L、約250mOsm/Lから約350mOsm/L、あるいは約280mOsm/Lから320mOsm/Lまでのモル浸透圧濃度を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物のモル浸透圧濃度は、標的とする耳の構造(例えば、内リンパ、外リンパなど)とモル浸透圧濃度が等しくなるように設計される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、本明細書に記載されるようなpHおよび/または実用的なモル浸透圧濃度を有し、組成物の約0.0001重量%~約60重量%、約0.001重量%~約40重量%、約0.01重量%~約20重量%、約0.01重量%~約10重量%、約0.01重量%~約7.5重量%、約0.01重量%~約6重量%、約0.01重量%~約5重量%、約0.1重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約6重量%の有効成分の有効医薬品成分濃度を有する。
【0299】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物は、本明細書に記載されるようなpHとモル浸透圧濃度を有しており、および約1μM~約10μM、約1mM~約100mM、約0.1mM~約100mM、約0.1mM~約100nMの有効医薬品成分濃度を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、本明細書に記載されるようなpHとモル浸透圧濃度を有しており、および、製剤または組成物の約0.01~約20重量%、約0.01~約10重量%、約0.01~約7重量%、約0.01~5重量%、約0.01~約3重量%、約0.01~約2重量%の有効成分の有効医薬品成分濃度を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、本明細書に記載されるようなpHとモル浸透圧濃度を有しており、製剤または組成物の容積あたり約0.1~約70mg/mL、約1mg~約70mg/mL、約1mg~約50mg/mL、約1mg/mL~約20mg/mL、約1mg/mL~約10mg/mL、約1mg/mL~約5mg/mL、または約0.5mg/mL~約5mg/mLの活性薬剤の活性医薬品成分濃度を有する。
【0300】
調整可能な放出特性
本明細書に記載される任意の製剤またはデバイスからの本明細書に記載される治療薬の放出は、所望の放出特性に随意に調整可能(tunable)である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤はゲル化成分をほとんど含まない溶液である。このような例では、製剤は本質的に治療薬の即時放出をもたらす。こうした実施形態のいくつかでは、製剤は例えば手術中の耳の構造の潅流に役立つ。
【0301】
こうした実施形態のいくつかでは、製剤は、約2日から約4日間、治療薬の放出をもたらす。
【0302】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤はさらに、ゲル化剤(例えば、ポロキサマー407)を含み、約1日から約3日の期間にわたって治療薬の放出をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤はさらに、ゲル化剤(例えば、ポロキサマー407)を含み、約1日から約5日の期間にわたって治療薬の放出をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤はさらに、ゲル化剤(例えば、ポロキサマー407)を含み、約2日から約7日の期間にわたって治療薬の放出をもたらす。
【0303】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤はさらに、約14-17%のゲル化剤(例えば、ポロキサマー407)を含み、約1週間から約3週間の期間にわたって長期的な徐放をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤はさらに、約18-21%のゲル化剤(例えば、ポロキサマー407)を含み、約3週間から約6週間の期間にわたって長期的な徐放をもたらす。
【0304】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤の粘性は、耳に適合性のゲルからの適切な放出速度をもたらすことを目的としている。いくつかの実施形態では、増粘剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)の濃度は、調整可能な平均溶解時間(MDT)を可能にする。MDTは、本明細書に記載される製剤またはデバイスからの活性薬剤の放出速度に反比例する。実験的に、放出された活性薬剤は、Korsmeyer-Peppas方程式に随意にあてはめられる。
【0305】
【化1】
ここで、Qは時間tにおいて放出される活性薬剤の量であり、Qαは活性薬剤の全放出量であり、kはn次の放出定数であり、nは溶解機構に関連する無次元数であり、bは軸切片であり、n=1が侵食制御機構(erosion controlled mechanism)を特徴づける初期バースト放出機構を特徴としている。平均溶解時間(MDT)は薬物分子が放出前にマトリクス中に留まる様々な時間の合計であり、分子の合計数で割られ、以下によって随意に計算される:
【0306】
【0307】
例えば、製剤またはデバイスの平均溶解時間(MDT)と、ゲル化剤(例えば、ポロキサマー)の濃度との間の直線関係は、活性薬剤が拡散によってではなくポリマーゲル(例えば、ポロキサマー)の侵食により放出されることを示す。別の例において、非直線関係は、拡散および/またはポリマーゲルの分解の組み合わせによる耳用薬剤の放出を示している。別の例において、製剤またはデバイスの迅速なゲル排除時間経過(活性薬剤の迅速な放出)は、低平均溶解時間(MDT)を示している。製剤中のゲル化成分および/または活性薬剤の濃度を試験して、MDTに適したパラメータを決定する。いくつかの実施形態では、前臨床研究と臨床研究に適切なパラメータを決定するために注入量も試験する。活性薬剤のゲル強度と濃度は、製剤からの耳用薬剤の放出動態(release kinetics)に影響を及ぼす。低ポロキサマー濃度では、排出速度が加速される(MDTはより低い)。製剤またはデバイス中の活性薬剤濃度の増加は、耳の中での活性薬剤の滞留時間および/またはMDTを伸ばす。
【0308】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤またはデバイスからのポロキサマーのMDTは、少なくとも6時間である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤またはデバイスからのポロキサマーのMDTは、少なくとも10時間である。
【0309】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤またはデバイスからの活性薬剤のMDTは、約30時間から約48時間までである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤またはデバイスからの活性薬剤のMDTは、約30時間から約96時間までである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤またはデバイスからの活性薬剤のMDTは、約30時間から約1週間である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤またはデバイスからの活性薬剤のMDTは、約1週間から約6週間である。
【0310】
特定の実施形態では、本明細書に記載される制御放出性耳用製剤は、制御放出性耳用製剤ではない耳用製剤と比較して、活性薬剤の曝露を増加させ、耳の流体(例えば、内リンパおよび/または外リンパ)における曲線下面積(AUC)を、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、または約100%以上増加させる。特定の実施形態では、本明細書に記載される任意の制御放出性耳用製剤は、制御放出性耳用製剤ではない製剤と比較して、活性薬剤の暴露時間を増加させ、耳の流体(例えば、内リンパおよび/または外リンパ)のCmaxを、約40%、約30%、約20%、または約10%減少させる。特定の実施形態では、本明細書に記載される任意の制御放出性の耳用製剤は、制御放出性の耳用製剤ではない製剤と比較して、Cmax対Cminの比率を変動させる(例えば、減らす)。特定の実施形態では、本明細書に記載される任意の制御放出性の耳用製剤は、制御放出性の耳用製剤ではない製剤と比較して、活性薬剤の曝露を増加させるとともに、活性薬剤の濃度がCminを上回る時間を、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%増加させる。特定の実施形態では、制御放出性の耳用製剤ではない製剤と比較して、活性薬剤の曝露の増加、および、活性薬剤の濃度がCminを上回る時間の増加は、100%を超える。特定の例では、本明細書に記載される制御放出性の耳用製剤はCmax到達時間を遅らせる。特定の例では、薬物の安定した制御放出は、活性薬剤の濃度がCminを上回る時間を延ばす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用製剤は、内耳中での活性薬剤の滞留時間を延ばし、安定した薬物曝露プロファイルを提供する。いくつかの例では、耳用製剤中の活性薬剤の濃度の増加は、除去プロセスを飽和させ、より迅速かつ安定した定常状態に到達することを可能にする。
【0311】
特定の例において、いったん活性薬剤の曝露(例えば、内リンパまたは外リンパ中の濃度)が定常状態に達すると、内リンパまたは外リンパ中の活性薬剤の濃度は、長期間(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、3週、6週、または2か月)の間、その治療量で、あるいはその治療量付近にとどまる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される制御放出性の耳用製剤から放出される活性薬剤の定常状態濃度は、制御放出性の耳用製剤ではない製剤から放出される活性薬剤の定常状態濃度の約20-約50倍である。
【0312】
粒径
径の減少は表面積を増やすために、および/または製剤の溶解特性を調整するために使用される。径の減少は、本明細書に記載される任意の製剤または組成物について、一貫した平均粒度分布(PSD)(例えば、マイクロメートルサイズの粒子、ナノメートルサイズの粒子など)を維持するために用いられる。いくつかの実施形態では、製剤または組成物はマイクロメートルサイズの粒子を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物はナノメートルサイズの粒子を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、多重微粒子であり、つまり、複数の粒径(例えば、微粉化した粒子、ナノサイズの粒子、サイズのない粒子)を含み、すなわち、製剤または組成物は多重微粒子の製剤または組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、1つ以上の多重微粒子の(例えば、微粉化した)治療薬を含む。微粉化は固形材料の粒子の平均直径を減らすプロセスである。微粉化した粒子は、直径でほぼマイクロメートルのサイズから直径でほぼピコメートルのサイズまでである。いくつかの実施形態では、治療薬または耳用薬剤の多重微粒子の粒子(例えば、微粉化した粒子)を用いることにより、非多重微粒子の(例えば、微粉化されていない)治療薬を含む製剤または組成物と比較して、本明細書に記載される製剤からの治療薬の持続放出および/または徐放が可能となる。いくつかの例では、多重微粒子の(例えば、微粉化された)治療薬を含む製剤または組成物は、塞がれたり詰まったりすることのない27G針を適用した1mLの注射器から放出される。いくつかの実施形態では、治療薬は本質的に、微粉化された粒子の形態である。いくつかの実施形態では、治療薬は本質的に、マイクロサイズの粒子の形態である。いくつかの実施形態では、治療薬は本質的に、ナノサイズの粒子の形態である。
【0313】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物の粒径は、本明細書に記載される製剤または組成物の滞留時間を増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物の粒径は、治療薬のゆっくりとした放出を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物の粒径は、治療薬の徐放をもたらす。いくつかの実施形態では、粒径は、450nm未満、400nm未満、350nm未満、300nm未満、275nm未満、250nm未満、225nm未満、200nm未満のサイズ、175nm未満、150nm未満、または125nm未満、または100nm未満である。いくつかの実施形態では、粒径は300nm未満である。いくつかの実施形態では、粒径は250nm未満である。いくつかの実施形態では、粒径は200nm未満である。
【0314】
いくつかの例では、本明細書に記載される任意の製剤または組成物中の任意の粒子は、コーティングされた粒子(例えば、コーティングされた微粉化粒子)および/またはマイクロスフェアおよび/またはリポソーム粒子である。微粉化技術は、例として、粉砕、摩砕(例えば、空気摩擦摩鉱(ジェットミル)、ボールミル磨砕)、コアセルベーション、高圧均質化、噴霧乾燥、および/または超臨界流体結晶化を含む。いくつかの例では、粒子は、機械的な影響により(例えば、ハンマーミル、ボールミル、および/またはピンミルにより)大きさを決められる。いくつかの例では、粒子は、流体エネルギーにより(例えば、スパイラルジェットミル、ループジェットミル、および/または流動床ジェットミルにより)大きさを決められる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は結晶粒子を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物は非晶質粒子を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は治療薬の粒子を含み、治療薬は治療薬の遊離塩基、塩、または、プロドラッグ、あるいはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0315】
いくつかの例では、治療薬および治療薬の塩の組み合わせは、本明細書に記載される手順を使用して、パルス放出型耳用の製剤または組成物を調製するために使用される。いくつかの製剤では、微粉化した治療薬(および/またはその塩もしくはプロドラッグ)とコーティングした粒子(例えば、ナノ粒子、リポソーム、マイクロスフェア)の組み合わせを用いて、本明細書に記載される任意の手順でパルス放出型の耳用の製剤または組成物を調製する。
【0316】
いくつかの実施形態では、パルス放出型プロファイルは、シクロデキストリン、界面活性剤(例えば、ポロキサマー(407、338、188)、トゥイーン(80、60、20、81))、PEG水素化ヒマシ油、N-メチル-2-ピロリドン等の共溶媒などの助けを借りて、治療薬(例えば、微粉化した治療薬、またはその遊離塩基、塩、あるいはプロドラッグ;多重微粒子の治療薬、またはその遊離塩基あるいは塩あるいはプロドラッグ)の送達投与量の最大で40%を可溶化し、および、本明細書に記載される任意の手順を用いてパルス放出型の製剤または組成物を調製することによって、達成される。
【0317】
いくつかの特定の実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、1つ以上の微粉化した治療薬を含む。そのような実施形態のいくつかでは、微粉化した治療薬は、微粉化した粒子、(例えば、持続放出型コーティングで)コーティングした微粉化した粒子、またはその組み合わせを含む。そのような実施形態のいくつかでは、微粉化した粒子、コーティングした微粉化した粒子、またはその組み合わせを含む微粉化した治療薬は、遊離塩基、その塩、プロドラッグ、またはこれらの任意の組み合わせとしての治療薬を含む。
【0318】
制御放出性の耳用製剤
特定の実施形態では、本明細書に記載される任意の制御放出性の耳用の製剤または組成物は、制御放出性の耳用の製剤または組成物ではない製剤または組成物と比較して、治療薬の暴露を増加させ、および、耳の流体(例えば、内リンパおよび/または外リンパ)中の曲線下面積(AUC)を約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%増加させる。特定の実施形態では、本明細書に記載される制御放出性の耳用の製剤または組成物は、制御放出性ではない耳用の製剤または組成物と比較して、治療薬の暴露を増加させ、および、耳の流体(例えば、内リンパおよび/または外リンパ)中のCmaxを約40%、約30%、約20%、または約10%減少させる。特定の実施形態では、本明細書に記載される制御放出性の耳用の製剤または組成物は、制御放出性ではない耳用の製剤または組成物と比較して、Cmax対Cminの比率を変化させる(例えば、減少させる)。特定の実施形態では、Cmax対Cminの比率は、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、または1:1である。特定の実施形態では、本明細書に記載される制御放出性の耳用製剤は、制御放出性ではない耳用の製剤または組成物と比較して、治療薬の暴露を増加させ、および、治療薬の濃度がCminを上回る時間を、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%増加させる。特定の例において、本明細書に記載される制御放出性の製剤または組成物は、Cmaxまでの時間を遅らせる。特定の例では、薬物の安定した制御放出は、薬物の濃度がCminを上回る時間を延ばす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、内耳における薬物の滞留時間を延長する。特定の例では、いったん、薬物の薬物暴露(例えば、内リンパまたは外リンパ中の濃度)が定常状態に達すると、内リンパまたは外リンパ中の薬物濃度は、長期間(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、または1年)の間、その治療量またはほぼその治療量でとどまる。
【0319】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、蝸牛と前庭迷路を含む、外耳、中耳、および/または内耳に活性薬剤を送達する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物の局所的な耳送達は、耳構造への活性薬剤の制御放出を可能にし、および、全身性の投与に関する欠点(例えば、内リンパまたは外リンパ中での薬物の低いバイオアベイラビリティ、外耳、中耳、および/または内耳での薬物濃度のばらつき)を克服する。
【0320】
制御放出オプションとしては、限定されないが、リポソーム、シクロデキストリン、生分解性ポリマー、分散性ポリマー、エマルジョン、マイクロスフェアまたは微粒子、他の粘着性の媒体、塗料、泡、海綿状物質、リポソーム、ナノカプセルまたはナノスフェア、およびこれらの組み合わせが挙げられる;他のオプションまたは成分としては、粘膜接着剤、浸透促進剤、生体付着性剤、抗酸化剤、界面活性剤、緩衝剤、賦形剤、塩、および防腐剤が挙げられる。粘度への考慮が潜在的に注射器/針送達系を制限する範囲で、熱可逆性ゲル剤または投与後に粘度を増強するオプションが、ポンプ、マイクロインジェクションデバイスなどを含む代替的な送達系と共にさらに構想される。
【0321】
本明細書に記載される耳用の製剤または組成物の一実施形態では、耳用の製剤または組成物は、粘度の高い液体製剤組成物として提供され、本明細書では「耳に許容可能な粘度の高い液体製剤または組成物」、「耳用の粘度の高い粘度の高い液体製剤または組成物」、またはその変形として言及される。粘度の高い液体製剤または組成物の成分はすべて、内耳と適合しなければならない。さらに、粘度の高い液体製剤または組成物は、いくつかの実施形態では、内耳内の所望の部位に治療薬の制御放出をもたらす。いくつかの実施形態では、粘度の高い液体製剤または組成物はさらに、所望の標的部位に治療薬を送達するための即時的または速放性の成分を有する。
【0322】
本明細書に記載される耳用の製剤または組成物の一実施形態では、耳用の製剤または組成物は、懸濁製剤組成物として提供され、本明細書では「耳に許容可能な懸濁製剤または組成物」、「耳用の懸濁製剤または組成物」、またはその変形としても言及される。懸濁製剤または組成物の成分はすべて、内耳と適合しなければならない。さらに、懸濁製剤または組成物は、いくつかの実施形態では、内耳内の所望の部位に治療薬の制御放出をもたらす。いくつかの実施形態では、懸濁製剤または組成物はさらに、所望の標的部位に治療薬を送達するための即時的または速放性の成分を有する。
【0323】
本明細書に記載される耳用の製剤または組成物の一実施形態では、耳用の製剤または組成物は、溶液製剤組成物として提供され、本明細書では「耳に許容可能な溶液製剤または組成物」、「耳用の溶液製剤または組成物」、またはその変形としても言及される。溶液製剤または組成物の成分はすべて、内耳と適合しなければならない。さらに、溶液製剤または組成物は、いくつかの実施形態では内耳内の所望の部位に治療薬の制御放出をもたらす。いくつかの実施形態では、溶液製剤または組成物はさらに、所望の標的部位に治療薬を送達するための即時的または速放性の成分を有する。
【0324】
本明細書に記載される耳用の製剤または組成物の一実施形態では、耳用の製剤または組成物は、ゲル製剤組成物として提供され、本明細書では「耳に許容可能なゲル製剤または組成物」、「耳用のゲル製剤または組成物」、またはその変形としても言及される。ゲル製剤または組成物の成分はすべて、内耳と適合しなければならない。さらに、ゲル製剤または組成物は、いくつかの実施形態では内耳内の所望の部位に治療薬の制御放出をもたらす。いくつかの実施形態では、ゲル製剤または組成物はさらに、所望の標的部位に治療薬を送達するための即時的または速放性の成分を有する。
【0325】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、二峰性の製剤または組成物であり、および速放性成分と持続放出性成分を含む。いくつかの例では、二峰性の製剤は、速放性成分(多重微粒子の薬剤(例えば、微粉化された活性薬剤))の一定の放出速度、および持続放出性成分(例えば、活性薬剤の放出を広げるためのデポー剤として作用するカプセル化された活性薬剤)の一定の放出速度を可能にする。他の実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、制御放出性の製剤または組成物として投与され、連続的またはパルス型の方法のいずれかで、またはその両方の変化形体で放出される。さらに別の実施形態では、活性薬剤の製剤または組成物は、速放性であり、かつ制御放出性の製剤または組成物として、連続的またはパルス型の方法のいずれかで、またはその両方の変化形体で投与される。特定の実施形態では、製剤または組成物は、治療薬の放出速度を増加させる賦形剤を含む。特定の実施形態では、製剤または組成物は、治療薬の放出速度を低下させる賦形剤を含む。特定の実施形態では、製剤または組成物は、耳の卵円窓または正円窓への活性薬剤の送達を可能にする浸透促進剤を含む。
【0326】
いくつかの実施形態では、耳用製剤は生分解性である。他の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、正円窓の外側粘膜に付着可能なように粘膜付着性賦形剤を含む。さらに他の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、浸透促進賦形剤を含み、さらなる実施形態では、耳用の製剤または組成物は粘度増強剤を含む。他の実施形態では、耳用の医薬製剤または組成物は、耳に許容可能なマイクロスフェアまたは微粒子を提供し、さらに別の実施形態では、耳用の医薬製剤または組成物は、耳に許容可能なリポソームを提供し、さらに他の実施形態では、耳用の医薬製剤または組成物は、耳に許容可能な塗料または泡を提供する。他の実施形態では、耳用の医薬製剤または組成物は、耳に許容可能な海綿状物質を提供する。
【0327】
本明細書で開示される製剤または組成物は、代替的に、特定の治療薬または賦形剤、希釈剤、あるいは担体の使用により生じる潜在的な耳毒性の影響を中和するために、少なくとも1つの活性薬剤、および/または、限定されないが、抗酸化剤、αリポ酸、カルシウム、ホスホマイシン、または鉄キレート剤を含む賦形剤に加えて、耳保護性の薬剤を含む。
【0328】
本明細書で開示される実施形態の1つの態様は、流体のホメオスタシス障害の処置のために制御放出性の組成物または製剤を提供することである。本明細書で開示される組成物および/または製剤の制御放出の態様は、限定されないが、内耳または他の耳構造における使用に許容可能である賦形剤、薬剤、または物質を含む、様々な薬剤によって与えられる。ほんの一例として、そのような賦形剤、薬剤、または物質は、耳に許容可能なポリマー、耳に許容可能な粘度増強剤、耳に許容可能なマイクロスフェア、耳に許容可能なリポソーム、耳に許容可能なナノカプセルまたはナノスフェア、あるいはこれらの組み合わせを含む。
【0329】
したがって、少なくとも1つの耳用の治療薬と、耳に許容可能な希釈剤、賦形剤、および/または担体を含む医薬製剤または組成物が、本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、他の薬剤または医薬品、担体、保存剤、湿潤剤、または乳化剤などのアジュバント、溶液促進剤、浸透圧を調節するための塩、および/または緩衝剤を含んでいる。他の実施形態では、医薬製剤または組成物はさらに他の治療物質を含有する。
【0330】
耳に許容可能なゲル製剤/組成物
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳に許容可能な製剤あるいは組成物は、ゲル製剤あるいはゲル組成物である。
【0331】
いくつかの実施形態では、耳用のゲル製剤または組成物は、少なくとも治療薬および薬学的に許容可能な希釈液、賦形剤、あるいは担体を含む。いくつかの実施形態において、耳用ゲル製剤あるいは組成物は、他の薬剤または医薬品薬剤;担体;アジュバント;防腐剤、安定化剤、湿潤剤、または乳化剤;溶解促進剤(solution promoters);浸透圧を調節するための塩;および/または緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、耳用のゲル製剤または組成物は、(i)治療薬、(ii)ゲル化剤および粘度増強剤、(iii)pH調整剤、および(iv)滅菌水を含む。
【0332】
しばしばゼリーとも呼ばれるゲルは、様々な方法で定義されている。例えば、米国薬局方は、液体の浸透した小さな無機質微粒子または大きな有機分子から構成されるいずれかの懸濁液からなる半固体の系としてゲルを定義する。ゲルは単相または二相の系を含む。単相のゲルは、分散した巨大分子と液体との間に明白な境界が存在しないように、液体全体に均一に分布した有機的な巨大分子からなる。いくつかの単相ゲルは、合成成る分子(例えば、カルボマー)または天然ゴム(例えば、トラガカント)から調製される。いくつかの実施形態では、単相のゲルは一般に水性であるが、アルコールと油を使用しても作られる。二相のゲルは小さな離散粒子のネットワークからなる。
【0333】
ゲルは疎水性または親水性として分類可能である。特定の実施形態では、疎水性ゲルの塩基は、ポリエチレンを含む流動パラフィン、または、コロイダルシリカあるいはアルミニウム石けんあるいは亜鉛の石けんを用いてゲル化させた脂肪油からなる。対照的に、親水性ゲルの塩基は通常、水、グリセロール、または、適切なゲル化剤(例えば、トラガント、デンプン、セルロース誘導体、カルボキシビニルポリマー、およびケイ酸マグネシウムアルミニウム)でゲル化したプロピレングリコールからなる。特定の実施形態では、本明細書で開示される製剤またはデバイスのレオロジーは、擬塑性、可塑性、揺変性、または膨張性である。
【0334】
1つの実施形態では、本明細書に記載される粘度を増強した耳に許容可能な製剤は、室温の液体ではない。特定の実施形態では、粘度増強製剤は、室温と体温との間の相転移を特徴とする(例えば、最大約42℃までの深刻な熱のある個体を含む)。いくつかの実施形態では、相転移は、体温よりも約1℃下で、体温よりも約2℃下で、体温よりも約3℃下で、体温よりも約4℃下で、体温よりも約6℃下で、体温よりも約8℃下で、または体温よりも約10℃下で生じる。いくつかの実施形態では、相転移は、体温よりも約15℃下で、体温よりも約20℃下で、または体温よりも約25℃下で生じる。具体的な実施形態では、本明細書に記載される製剤のゲル化温度(Tgel)は、約20℃、約25℃、または約30℃である。特定の実施形態では、本明細書に記載される製剤のゲル化温度(Tgel)は、約35℃または約40℃である。1つの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤のほぼ体温での投与は、耳用製剤の鼓室内投与に関連する回転性めまいを減らすか、または抑える。体温の定義内には、健康な個体、または熱(最大42℃まで)のある個体を含む、不健康な個体の体温が含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬製剤またはデバイスはほぼ室温の液体であり、室温またはほぼ室温で投与され、例えば、回転性めまいなどの副作用を減らすか、緩和する。
【0335】
ポリオキシプロピレンとポリオキシエチレンから構成されるポリマーは、水溶液に組み入れられると熱可逆性ゲルを形成する。こうしたポリマーは、体温に近い温度で液体状態からゲル状態に変化する能力を有し、ゆえに、標的となる耳の構造に適用される有用な製剤を可能にする。液体状態からゲル状態への相転移は溶液中のポリマー濃度と成分に依存する。
【0336】
ポロキサマー407(PF-127)は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーから構成される非イオン性界面活性剤である。他のポロキサマーは、188(F-68グレード)、237(F-87グレード)、および338(F-108グレード)を含む。ポロキサマーの水溶液は酸、アルカリ、および金属イオンの存在下で安定している。PF-127は、13,000の平均モル質量を有する、一般式E106 P70 E106の市販のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーである。ポリマーは、ポリマーのゲル化性を増強する適切な方法によってさらに精製され得る。上記ポロキサマーはおよそ70%のエチレンオキシドを含んでおり、これがその親水性の主たる理由である。そのメンバーが以下に示す化学式を共有するのは一連のポロキサマーABAブロックコポリマーの1つである。
【0337】
【0338】
コポリマーの濃縮溶液(>20%w/w)が、体温までの加熱時に低粘度の透明な溶液から固体ゲルまで変化させられることから、PF-127は特に興味深い。したがって、この現象は、ゲル製剤が、身体と接触して配されると、半固体構造および徐放性デポー剤を形成することを示唆している。さらに、PF-127は、優れた可溶化能力および低毒性を有しており、ゆえに、薬物送達系にとって優れた培地であると考えられる。
【0339】
代替的な実施形態において、熱ゲルは、PEG-PLGA-PEGトリブロックコポリマーである(Jeong et al,Nature(1997)、388:860-2;Jeong et al,J.Control.Release(2000)、63:155-63;Jeong et al,Adv.Drug Delivery Rev.(2002)、54:37-51)。ポリマーは、約5%w/wから約40%w/wの濃度にわたってゾル-ゲル挙動を示す。望ましい特性に依存して、PLGAコポリマー中のラクチド/グリコリドのモル比は、約1:1から約20:1に及ぶ。結果として生じるコポリマーは水に溶解可能であり、室温では流れるように動く液体を形成するが、体温ではヒドロゲルを形成する。市販で入手可能なPEG-PLGA-PEG トリブロックコポリマーは、Boehringer Ingelheimによって製造されたRESOMER RGP t50106である。この材料は50:50ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)のPGLAコポリマーから構成され、10%w/wのPEGであり、約6000の分子量を有する。
【0340】
ReGel(登録商標)は、米国特許第6,004,573号、第6,117,949合、第6,201,072号、および第6,287,588号に記載されるような熱可逆性のゲル化特性を有する生分解性ブロック共重合体を有する低分子量の生分解性ブロックコポリマーのクラスに関するMacroMed Incorporatedの商標名である。さらに、これは、継続中の米国特許出願公開第09/906,041号、09/559,799号、および第10/919,603で開示された生分解性ポリマー薬物担体も含む。生分解性の薬物担体は、ABAタイプまたはBABタイプのトリブロックコポリマー、あるいはその混合物を含み、ここで、Aブロックは比較的疎水性であり、生分解性ポリエステルまたはポリ(オルトエステル)sを含み、Bブロックは比較的親水性であり、ポリエチレングリコール(PEG)を含み、上記コポリマーは50.1~83重量%の疎水性含有量と17~49.9重量%の親水性含有物と、2000~8000ダルトンの全ブロックコポリマー分子量を有する。薬物担体は正常な哺乳動物の体温以下の温度で水溶性を示し、哺乳動物の生理的な体温と等しい温度でゲルとして存在するために可逆的な熱ゲル化方法に晒される。生分解性の疎水性Aポリマーブロックは、ポリエステルまたポリ(オルトエステル)を含み、ここで、ポリエステルは、D,L-ラクチド、D-ラクチド、L-ラクチド、D,L-乳酸、D-乳酸、L-乳酸、グリコリド、グリコール酸、ε-カプロラクトン、ε-ヒドロキシヘキサン酸、γ-ブチロラクトン、γ-ヒドロキシ酪酸、δ-バレロラクトン、δ-ヒドロキシバレリアン酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、およびそれらのコポリマーからなる群から選択され、約600~3000ダルトンの間の平均分子量を有している、モノマーから合成される。親水性のBブロックセグメントは好ましくは、約500~2200ダルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)である。
【0341】
さらなる生分解性の熱可塑性ポリエステルは、AtriGel(登録商標)(Atrix Laboratories,Inc.によって提供される)および/または、例えば、米国特許第5,324,519号;第4,938,763号;第5,702,716号;第5,744,153号;および第5,990,194号に開示されるものを含み、ここで、適切な生分解性の熱可塑性ポリエステルは熱可塑性ポリマーとして開示される。適切な生分解性の熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリラクチド、ポリグリコシド、ポリカプロラクトン、これらのコポリマー、ターポリマー、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかのこうした実施形態では、適切な生分解性の熱可塑性ポリエステルは、ポリラクチド、ポリグリコシド、これらのコポリマー、ターポリマー、またはこれらの任意の組み合わせである。1つの実施形態では、生分解性の熱可塑性ポリエステルは、カルボキシ末端基を有する50/50ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)であり、約30重量%から約40重量%の製剤中に存在し、および、約23,000~約45,000の平均分子量を有する。代替的に、別の実施形態では、生分解性の熱可塑性ポリエステルは、カルボキシ末端基を含まない75/25ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)であり、約40重量%から約50重量%の製剤中に存在し、および、約15,000~約24,000の平均分子量を有する。さらなるまたは代替的な実施形態では、ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)の末端基は、重合の方法に依存して、ヒドロキシル、カルボキシル、またはエステルのいずれかである。乳酸またはグリコール酸の重縮合は、末端のヒドロキシル基とカルボキシル基を有するポリマーを提供する。水、乳酸、またはグリコール酸を用いる環状のラクチドまたはグリコリドモノマーの開環重合により、同じ末端基を有するポリマーが得られる。しかしながら、メタノール、エタノール、または1-ドデカノールなどの単機能アルコールを用いる環状モノマーの開環により、1つのヒドロキシル基と1つのエステル末端基を有するポリマーが得られる。1,6-ヘキサンジオールなどのジオールまたはポリエチレングリコールを用いる環状モノマーの開環重合は、ヒドロキシル末端基のみを有するポリマーをもたらす。
【0342】
熱可逆性ゲルのポリマー系が還元温度でより完全に溶解するため、可溶化の方法は、還元温度で使用される量の水に、必要とされる量のポリマーを加える工程を含む。一般に、振盪によってポリマーを湿らせた後、混合物は、ポリマーを溶解するために、蓋をされ、約0-10℃で冷却チャンバーまたは恒温容器に入れられる。混合物を撹拌または振盪することで熱可逆性ゲルポリマーの急速な溶解を引き起こす。活性薬剤と緩衝液、塩、および防腐剤などの様々な添加剤がその後加えられて、溶かされる。例によっては、活性薬剤および/または他の薬学的に活性な薬剤は、水に溶けない場合には懸濁される。pHは適切な緩衝剤を加えることで調整される。正円窓膜の粘膜付着特性は、製剤へのCarbopol(登録商標)934Pなどの正円窓膜の粘膜付着性カルボマーの取り込みによって、熱可逆性ゲルに随意に与えられる(Majithiya etal, AAPS PharmSciTech(2006),7(3),p.E1;EP0551626。両文献とも開示のために参照により本明細書に組み込まれる)。
【0343】
1つの実施形態では、粘度増強剤または粘度調節剤を加えて使用する必要のない耳に許容可能な医薬ゲル製剤がある。こうしたゲル製剤は少なくとも1つの薬学的に許容可能な緩衝液を組み込む。1つの態様において、薬学的に許容可能な緩衝液とゲル製剤がある。別の実施形態では、薬学的に許容可能な賦形剤または担体はゲル化剤である。
【0344】
他の実施形態では、有用な耳に許容可能な医薬製剤は、内リンパまたは外リンパに適切なpHを供給するために1つ以上のpH調整剤または緩衝剤をさらに含む。適切なpH調整剤または緩衝液は、限定されないが、酢酸塩、炭酸水素塩、塩化アンモニウム、クエン酸塩、リン酸塩、その薬学的に許容可能な塩、およびこれらの組み合わせまたは混合物を含む。そのようなpH調整剤と緩衝液は、約5から約9のpH、一実施形態では約6.5から約7.5のpH、およびさらに別の実施形態では約6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、あるいは8.0のpHで製剤のpHを維持するのに必要な量で含まれる。1つの実施形態では、1つ以上の緩衝液が本開示の製剤で利用される場合、これらは、例えば、薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わされ、および、例えば、約0.1%から約20%、約0.5%から約10%までの範囲の量で最終製剤中に存在する。本開示の特定の実施形態では、ゲル製剤に含まれる緩衝液の量は、ゲル製剤のpHが、内耳(auris internaまたはinner ear)の天然の緩衝系を妨害せず、かつ、内リンパまたは外リンパの天然のpHを妨害しないような量であり、この量は、蝸牛中、耳用製剤がどの箇所を標的にするかによって変わる。いくつかの実施形態では、約10mM~約200mMの濃度の緩衝液がゲル製剤中に存在する。特定の実施形態では、約5mMから約200mMの濃度の緩衝液が存在する。特定の実施形態では、約20mMから約100mMの濃度の緩衝液が存在する。1つの実施形態では、弱酸性のpHの酢酸塩またはクエン酸塩などの緩衝液がある。1つの実施形態では、緩衝液は、約4.5-約6.5のpHを有する酢酸ナトリウム緩衝液である。1つの実施形態では、緩衝液は、約5.0-約8.0または約5.5-約7.0のpHを有するクエン酸ナトリウム緩衝液である。
【0345】
他の実施形態では、使用される緩衝液は、わずかに塩基性のpHのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、重炭酸塩、炭酸塩、あるいはリン酸塩である。1つの実施形態では、緩衝液は、約6.5-約8.5または約7.0-約8.0のpHを有する重炭酸ナトリウム緩衝液である。別の実施形態では、緩衝液は、約6.0-約9.0のpHを有するリン酸ナトリウム二塩基性緩衝液である。
【0346】
粘度増強剤または粘度調節剤を含む制御放出性の製剤あるいはデバイスがさらに本明細書に記載される。適切な粘度増強剤または粘度調節剤としては、ほんの一例として、ゲル化剤および懸濁化剤が挙げられる。1つの実施形態では、粘度増強製剤は緩衝液を含まない。他の実施形態では、粘度増強製剤は薬学的に許容可能な緩衝液を含む。必要に応じて、塩化ナトリウムまたは他の等張化剤が張性を調節するために随意に使用される。
【0347】
ほんの一例として、耳に許容可能な増粘剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムを含む。標的とされた耳構造と適合する他の粘度増強剤としては、限定されないが、アカシア(アラビアゴム)、寒天、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、アルギン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ヒバマタ、ベントナイト、カルボマー、カラギーナン、カルボポール、キサンタン、セルロース、微結晶性セルロース(MCC)、セラトニア、キチン、カルボキシメチル化キトサン、ツノマタ、デキストロース、ファーセレラン、ゼラチン、ガティゴム、グアーガム、ヘクトライト、ラクトース、スクロース、マルトデキストリン、マンニトール、ソルビトール、ハチミツ、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、アラヤゴム、キサンタンガム、トラガカントゴム、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、オキシポリゼラチン、ペクチン、ポリゲリン、ポビドン、プロピレンカーボネート、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー(PVM/mA)、ポリ(メタクリル酸メトキシエチル)、ポリ(メタクリル酸メトキシエトキシエチル)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース(HPMC)、ナトリウムカルボキシメチル-セルロース(CMC)、二酸化ケイ素、ポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)、Splenda(登録商標)(デキストロース、マルトデキストリン、およびスクラロース)、またはこれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、粘度増強賦形剤は、MCCとCMCの組み合わせである。別の実施形態では、粘度増強剤は、カルボキシメチル化キトサンまたはキチンとアルギン酸塩の組み合わせである。本明細書で開示される活性薬剤とのキチンおよびアルギン酸塩の組み合わせは、制御放出製剤として機能し、製剤からの活性薬剤の拡散を制限する。さらに、カルボキシメチル化キトサンとアルギン酸塩の組み合わせは随意に使用されることで、正円窓膜を通る活性薬剤の透過性を増やすのに役立つ。
【0348】
いくつかの実施形態では、粘度増強製剤は、約0.1mM-約100mMの活性薬剤、薬学的に許容可能な粘度増強剤または粘度調節剤、および注射用水を含み、水中の粘度増強剤または粘度調節剤の濃度は、約100から約100,000cPの最終粘度を有する粘度増強製剤を提供するのに十分なものである。特定の実施形態では、ゲルの粘度は、約100から約50,000cP、約100cPから約1,000cP、約500cPから約1500cP、約1000cPから約3000cP、約2000cPから約8,000cP、約4,000cPから約50,000cP、約10,000cPから約500,000cP、約15,000cPから約1,000,000cPまでの範囲である。特定の実施形態では、ゲルの粘度は、約100から約50,000cP、約100cPから約1,000cP、約500cPから約1500cP、約1000cPから約3000cP、約2000cPから約8,000cP、約4,000cPから約50,000cP、約10,000cPから約500,000cP、約15,000cPから約3,000,000cPまでの範囲である。他の実施形態では、もっと粘性の強い媒体が望ましい場合、生体適合性のゲルは、少なくとも約35重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、または少なくとも約80重量%もの活性薬剤を含む。高濃縮サンプルでは、生体適合性の粘度増強製剤は、少なくとも約25重量%、少なくとも約35重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%、または少なくとも約95%重量以上の活性薬剤を含む。
【0349】
いくつかの実施形態において、本明細書で提示されるゲル製剤の粘度は、記載される任意の手段によって測定される。例えば、いくつかの実施形態では、LVDV-II+CPCone Plate ViscometerとCone Spindle CPE-40を用いて、本明細書に記載されるゲル製剤の粘度を計算する。他の実施形態では、Brookfield(スピンドルとカップ)粘度計を用いて、本明細書に記載されるゲル製剤の粘度を計算する。いくつかの実施形態では、本明細書で言及される粘度範囲は室温で測定される。他の実施形態では、本明細書で言及される粘度範囲は、体温(例えば、健康なヒトの平均体温)で測定される。
【0350】
1つの実施形態では、薬学的に許容可能な粘度を増強した耳に許容可能な製剤は、少なくとも1つの活性薬剤と少なくとも1つのゲル化剤を含む。ゲル製剤の調製で使用するための適切なゲル化剤としては、限定されないが、セルロース、セルロース誘導体、セルロースエーテル(例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース)、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アルギネート(例えば、アルギン酸)、シリケート、デンプン、トラガント、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、パラフィン、ワセリン、およびこれらの任意の組み合わせまたは混合物が挙げられる。他のいくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocel(登録商標))はゲル化剤として利用される。特定の実施形態では、本明細書に記載される粘度増強剤または粘度調節剤は、本明細書で提示されるゲル製剤のためのゲル化剤としても利用される。
【0351】
本明細書に記載される耳に許容可能な制御放出性製剤の特定の実施形態では、活性薬剤は、本明細書で「耳に許容可能なゲル製剤」、「内耳に許容可能なゲル製剤」、「中耳に許容可能なゲル製剤」、「外耳に許容可能なゲル製剤」、「耳用ゲル製剤」、またはこの変形でも呼ばれるゲルマトリクスで提供される。ゲル製剤の成分はすべて、標的とされる耳構造と適合しなければならない。さらに、ゲル製剤は、標的とされる耳構造内の所望の部位に活性薬剤の制御放出をもたらし、いくつかの実施形態では、ゲル製剤はさらに、所望の標的部位に活性薬剤を送達するための即時放出または急速放出性の成分を有する。他の実施形態では、ゲル製剤は、活性薬剤の送達のための徐放性成分を有する。いくつかの実施形態では、耳用ゲル製剤は生分解性である。他の実施形態では、耳用ゲル製剤は、正円窓膜の外部粘液層への付着を可能にする粘膜付着性賦形剤を含む。さらに他の実施形態では、耳用ゲル製剤は、浸透増強賦形剤(penetration enhancer excipient)を含み、さらなる実施形態では、耳用ゲル製剤は、約10~1,000,000センチポアズ、約500~1,000,000センチポアズ;約750~約1,000,000センチポアズ;約1000~約1,000,000センチポアズ;約1000~約400,000センチポアズ;約2000~約100,000センチポアズ;約3000~約50,000センチポアズ;約4000~約25,000センチポアズ;約5000~約20,000センチポアズ;あるいは約6000~約15,000センチポアズの粘度をもたらす。いくつかの実施形態では、耳用のゲル製剤は、約50,0000~約1,000,000センチポアズの粘度を提供するのに十分な粘度増強剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用のゲル製剤は、約50,0000~約3,000,000センチポアズの粘度を提供するのに十分な粘度増強剤を含む。
【0352】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の医薬製剤またはデバイスは、体温では低粘度の組成物またはデバイスである。いくつかの実施形態では、低粘度の製剤またはデバイスは、約1%から約10%までの粘度増強剤剤または粘度調節剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)を含有している。いくつかの実施形態では、低粘度の製剤またはデバイスは、約2%から約10%までの粘度増強剤剤または粘度調節剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)を含有している。いくつかの実施形態では、低粘度の製剤またはデバイスは、約5%から約10%までの粘度増強剤剤または粘度調節剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)を含有している。いくつかの実施形態では、低粘度の製剤またはデバイスは、粘度増強剤または粘度調節剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される低粘度の耳用製剤またはデバイスは、約100cPから約10,000cPの見かけ粘度をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される低粘度の耳用製剤またはデバイスは、約500cPから約10,000cPの見かけ粘度をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される低粘度の耳用製剤またはデバイスは、約1000cPから約10,000cPの見かけ粘度をもたらす。そのような実施形態のいくつかでは、低粘度の耳用製剤またはデバイスは、耳の外部の介入治療(例えば、限定されないが、中耳手術、内耳手術、鼓室穿孔術、蝸牛形成術、迷路切開、乳突起削開術、アブミ骨切除術(stapedectomy)、アブミ骨切開術(stapedotomy)、内リンパ球嚢切開術(sacculotomy)などを含む外科手術と組み合わせて投与される。そのような実施形態のいくつかでは、低粘度の耳用製剤またはデバイスは、耳の介入治療中に投与される。他のそのような実施形態では、低粘度の耳用製剤またはデバイスは、耳の介入治療前に投与される。
【0353】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用製剤またはデバイスは、体温では高粘度の耳用製剤またはデバイスである。いくつかの実施形態では、高粘度の製剤またはデバイスは、約10%から約25%までの粘度増強剤剤または粘度調節剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)を含有している。いくつかの実施形態では、高粘度の製剤またはデバイスは、約14%から約22%までの粘度増強剤剤または粘度調節剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)を含有している。いくつかの実施形態では、高粘度の製剤またはデバイスは、約15%から約21%までの粘度増強剤剤または粘度調節剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)を含有している。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される高粘度の耳用製剤またはデバイスは、約100,000cPから約3,000,000cPの見かけ粘度をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される高粘度の耳用製剤またはデバイスは、約100,000cPから約1,000,000cPの見かけ粘度をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される高粘度の耳用製剤またはデバイスは、約150,000cPから約500,000cPの見かけ粘度をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される高粘度の耳用製剤またはデバイスは、約250,000cPから約500,000cPの見かけ粘度をもたらす。そのような実施形態のいくつかでは、高粘度の製剤またはデバイスは、室温では液体であり、室温と体温との間あたりでゲル化する(例えば、最大約42℃までの深刻な熱のある個体を含む)。いくつかの実施形態では、高粘度の耳用製剤またはデバイスは、本明細書に記載されている耳の疾患または疾病の処置用の単剤療法として投与される。いくつかの実施形態では、高粘度の耳用製剤またはデバイスは、耳の外部の介入治療(例えば、限定されないが、中耳手術、内耳手術、鼓室穿孔術、蝸牛形成術、迷路切開、乳突起削開術、アブミ骨切除術(stapedectomy)、アブミ骨切開術(stapedotomy)、内リンパ球嚢切開術(sacculotomy)などを含む外科手術と組み合わせて投与される。そのような実施形態のうちのいくつかでは、高粘度の耳用製剤またはデバイスは、耳の介入治療後に投与される。他のそのような実施形態では、高粘度の耳用製剤またはデバイスは、耳の介入治療前に投与される。
【0354】
他の実施形態では、本明細書に記載される耳用の医薬製剤はさらに、耳に許容可能なヒドロゲルを提供し、さらに他の実施形態では、耳用の医薬製剤は、耳に許容可能なマイクロスフェアまたは微粒子を提供し、さらに他の実施形態では、耳用の医薬製剤は、耳に許容可能なリポソームを提供する。いくつかの実施形態では、耳用の医薬製剤は、耳に許容可能な泡を提供し、さらに他の実施形態では、耳用の医薬製剤は、耳に許容可能な塗料を提供し、またさらなる実施形態では、耳用の医薬製剤は、耳に許容可能なインサイツ形成海綿状物質を提供する。いくつかの実施形態では、耳用の医薬製剤は、耳に許容可能な溶媒放出ゲルを提供する。いくつかの実施形態では、耳用の医薬製剤は、化学線硬化性ゲルを供給する。さらなる実施形態は、耳用の医薬製剤中に熱可逆性ゲルを含み、室温以下でのゲルの調製後に、製剤は流体であるが、鼓室、正円窓膜、またはクリスタ蝸牛窓を含む内耳および/または中耳の標的部位またはその付近でのゲルの適用後に、耳用の医薬製剤は、ゲル状物質へと硬直または硬化する。
【0355】
さらなるまたは代替的な実施形態では、耳用のゲル製剤は、鼓室内注射によって正円窓膜またはその近くで投与されることができる。他の実施形態では、耳用のゲル製剤は、耳後部切開術および正円窓またはクリスタ蝸牛窓の領域への外科的処置による進入を介して、正円窓またはクリスタ蝸牛窓またはその近くに投与される。代替的に、耳用のゲル製剤は、注射器および針によって適用され、ここで、針は、鼓膜を通って挿入され、正円窓またはクリスタ蝸牛窓の領域に誘導される。その後、耳用のゲル製剤は、自己免疫性の耳障害の局部的処置のために正円窓またはクリスタ蝸牛窓またはその近くに堆積される。他の実施形態では、耳用のゲル製剤は、患者へと移植されたマイクロカテーテルを介して適用され、またさらなる実施形態では、耳用のゲル製剤は、正円窓膜またはその近くにポンプ装置を介して投与される。またさらなる実施形態では、耳用のゲル製剤は、マイクロインジェクション装置を介して正円窓膜にまたはその近くに適用される。また他の実施形態では、耳用のゲル製剤は、鼓室へと適用される。いくつかの実施形態では、耳用のゲル製剤は、鼓膜上に適用される。さらに他の実施形態では、耳用のゲル製剤は、耳道上へとまたは耳道に適用される。
【0356】
トリグリセリドベースの耳用の製剤および組成物
1つの実施形態において、トリグリセリドを含む耳用の製剤および組成物が本明細書で提供される。トリグリセリドはグリセロールおよび3つの脂肪酸に由来するエステルである。いくつかの例では、これらの脂肪酸は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、あるいはこれらの組み合わせである。本明細書では、1つの態様において、治療薬、あるいはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたは塩;および、中鎖脂肪酸を含むトリグリセリド;を含む耳の製剤あるいは組成物が提供され、ここで、トリグリセリドは、耳への注入のために治療薬を安定させるのに十分な量で存在し、耳用の医薬製剤または組成物は、少なくとも約50重量%のトリグリセリドを含む。
【0357】
いくつかの例では、これらのトリグリセリドは中鎖トリグリセリド(MCT)である。いくつかの実施形態において、これらのトリグリセリドは中鎖脂肪酸を含む。いくつかの実施形態において、これらのトリグリセリドはグリセロールと中鎖脂肪酸に由来する。いくつかの実施形態において、これらのトリグリセリドは、グリセロールと少なくとも2つの中鎖脂肪酸に由来する。いくつかの実施形態において、これらのトリグリセリドは、グリセロール、2つの中鎖脂肪酸、および1つの長鎖脂肪酸に由来する。いくつかの実施形態において、これらのトリグリセリドは、グリセロールと3つの中鎖脂肪酸に由来する。
【0358】
いくつかの実施形態において、トリグリセリドはグリセロールと中鎖脂肪酸に由来する。いくつかの実施形態において、トリグリセリドはグリセロールと少なくとも2つの中鎖脂肪酸に由来する。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸はそれぞれ独立して、炭素鎖中に6~12の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸はそれぞれ独立して、炭素鎖中に8~12の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸はそれぞれ独立して、炭素鎖中に6、7、8、9、10、11、あるいは12の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸はそれぞれ独立して、炭素鎖中に8または10の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸は、カプロン酸(ヘキサン酸)、エナント酸(ヘプタン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ウンデシレン酸(ウンデカ-10-エン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸は、カプリル酸(オクタン酸)、カプリン酸(デカン酸)、あるいはこれらの組み合わせである。
【0359】
いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドは、バラッサ油、ココナッツ油、コフネヤシ油、パーム核油、ホシダネヤシ油、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドは、ココナッツ油、コフネヤシ油、パーム核油、ホシダネヤシ(tucum)油、あるいはこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドはバラッサ油である。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドはココナッツである。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドはコフネヤシ油である。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドはパーム核油である。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドはホシダネヤシ油である。
【0360】
いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、耳への注入のために治療薬を安定化させるのに十分な量のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、耳での十分な滞留時間を提供するのに十分な量のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態において、耳は外耳、中耳、または内耳である。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、治療薬の十分な徐放をもたらすのに十分な量のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態において、耳用製剤は、細いゲージの針によって製剤の送達を可能にするのに十分な量のトリグリセリドを有する。
【0361】
いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約50重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約55重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約60重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約65重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約70重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約75重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約80重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約85重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約90重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約95重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。
【0362】
いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約50重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約55重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約60重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約65重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約70重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約75重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約80重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約85重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約90重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約95重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。
【0363】
いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約50重量%~約95重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約55重量%~約95重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約60重量%~約95重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約65重量%~約95重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約70重量%~約95重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約75重量%~約95重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約80重量%~約95重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約85重量%~約95重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約90重量%~約95重量%のトリグリセリドを含む。
【0364】
いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約50重量%~約55重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約55重量%~約60重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約60重量%~約65重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約65重量%~約70重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約70重量%~約75重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約75重量%~約80重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約80重量%~約85重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約85重量%~約90重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約90重量%~約95重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約95重量%~約99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約95重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約95重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。
【0365】
いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約50重量%~約60重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約60重量%~約70重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約70重量%~約80重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約80重量%~約90重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約90重量%~約99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約90重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約90重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。
【0366】
いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、約50重量%、約51重量%、約52重量%、約53重量%、約54重量%、約55重量%、約56重量%、約57重量%、約58重量%、約59重量%、約60重量%、約61重量%、約62重量%、約63重量%、約64重量%、約65重量%、約66重量%、約67重量%、約68重量%、約69重量%、約70重量%、約71重量%、約72重量%、約73重量%、約74重量%、約75重量%、約76重量%、約77重量%、約78重量%、約79重量%、約80重量%、約81重量%、約82重量%、約83重量%、約84重量%、約85重量%、約86重量%、約87重量%、約88重量%、約89重量%、約90重量%、約91重量%、約92重量%、約93重量%、約94重量%、約95重量%、約96重量%、約97重量%、約98重量%、または約99重量のトリグリセリドを含む。
【0367】
いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約50重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約51重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約52重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約53重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約54重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約55重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約56重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約57重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約58重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約59重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約60重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約61重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約62重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約63重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約64重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約65重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約66重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約67重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約68重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約69重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約70重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約71重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約72重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約73重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約74重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約75重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約76重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約77重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約78重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約79重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約80重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約81重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約82重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約83重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約84重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約85重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約86重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約87重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約88重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約89重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約90重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約91重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約92重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約93重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約94重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約95重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約96重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約97重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約98重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用の医薬製剤は、少なくとも約99重量%のトリグリセリドを含む。
【0368】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤および組成物のいずれか1つにおけるトリグリセリドは、本明細書で開示される製剤または組成物中の対応する量のトリグリセリド中の以下の成分の少なくとも1つと取り替えられる:鉱油あるいは任意の対応する高いアルカン;ワセリン(ワセリンゼリー);様々な分子量のシリコーン油(ポリジメチルシロキサン);本明細書で開示される油のいずれかに溶けた蜜ろう。
【0369】
いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は、少なくとも1つの粘度調節剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの粘度調節剤は、二酸化ケイ素、ポビドン、カルボマー、ポロキサマー、あるいはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は二酸化ケイ素である。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はポビドンである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はカルボマーである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はポロキサマーである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は二酸化ケイ素とポビドンである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は二酸化ケイ素とカルボマーである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は二酸化ケイ素とポロキサマーである。いくつかの実施形態において、ポロキサマーは、P407である。
【0370】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約40重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約35重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約30重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約25重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約20重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約15重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約10重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約7重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約5重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約3重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約2重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約1重量%のポビドンを含む。
【0371】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.02重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.03重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.04重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.05重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.06重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.07重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.08重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.09重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.1重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.2重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.3重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.4重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.5重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.6重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.7重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.8重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.9重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約2重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約3重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約4重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約5重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約6重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約7重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約8重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約9重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約10重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約11重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約12重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約13重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約14重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約15重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約16重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約17重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約18重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約19重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約20重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約25重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約30重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約35重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約40重量%のポビドンを含む。
【0372】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約40重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約35重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約30重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約25重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約20重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約15重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約10重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約7重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約5重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約3重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約2重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約1重量%のカルボマーを含む。
【0373】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.02重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.03重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.04重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.05重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.06重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.07重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.08重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.09重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.1重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.2重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.3重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.4重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.5重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.6重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.7重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.8重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.9重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約2重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約3重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約4重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約5重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約6重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約7重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約8重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約9重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約10重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約11重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約12重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約13重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約14重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約15重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約16重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約17重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約18重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約19重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約20重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約25重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約30重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約35重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約40重量%のカルボマーを含む。
【0374】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約40重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約35重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約30重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約25重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約20重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約15重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約10重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約7重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約5重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約3重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約2重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約1重量%のポロキサマーを含む。
【0375】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.02重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.03重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.04重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.05重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.06重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.07重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.08重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.09重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.1重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.2重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.3重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.4重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.5重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.6重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.7重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.8重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.9重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約2重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約3重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約4重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約5重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約6重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約7重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約8重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約9重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約10重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約11重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約12重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約13重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約14重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約15重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約16重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約17重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約18重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約19重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約20重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約25重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約30重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約35重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約40重量%のポロキサマーを含む。
【0376】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約20重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約15重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約10重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約7重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約5重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約3重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約2重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約1重量%の二酸化ケイ素を含む。
【0377】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.02重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.03重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.04重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.05重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.06重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.07重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.08重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.09重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.1重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.2重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.3重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.4重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.5重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.6重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.7重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.8重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.9重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約2重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約3重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約4重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約5重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約6重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約7重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約8重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約9重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約10重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約11重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約12重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約13重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約14重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約15重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約16重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約17重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約18重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約19重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約20重量%の二酸化ケイ素を含む。
【0378】
いくつかの実施形態において、粘度調節剤は二酸化ケイ素である。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はポビドン、カルボマー、あるいはポロキサマーなどのポリマーである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はデキストラン、アルギネート、あるいはヒアルロン酸などの多糖類である。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートステアレート(HPMCAS)、および非晶質セルロースなどのセルロースベースである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はポリビニルアルコール(PVA)である。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はポリエチレングリコール(PEG)ベースである。
【0379】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約40重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約35重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約30重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約25重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約20重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約15重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約10重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約7重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約5重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約3重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約2重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約1重量%の粘度調節剤を含む。
【0380】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.02重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.03重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.04重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.05重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.06重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.07重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.08重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.09重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.1重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.2重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.3重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.4重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.5重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.6重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.7重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.8重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.9重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約2重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約3重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約4重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約5重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約6重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約7重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約8重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約9重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約10重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約11重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約12重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約13重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約14重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約15重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約16重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約17重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約18重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約19重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約20重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約25重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約30重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約35重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約40重量%の粘度調節剤を含む。
【0381】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用製剤および組成物は、コレステロールをさらに含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約40重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約35重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約30重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約25重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約20重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約15重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約10重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約7重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約5重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約3重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約2重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約1重量%のポロキサマーを含む。
【0382】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.02重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.03重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.04重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.05重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.06重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.07重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.08重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.09重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.1重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.2重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.3重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.4重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.5重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.6重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.7重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.8重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.9重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約2重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約3重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約4重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約5重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約6重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約7重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約8重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約9重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約10重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約11重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約12重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約13重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約14重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約15重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約16重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約17重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約18重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約19重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約20重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約25重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約30重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約35重量%のコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約40重量%のコレステロールを含む。
【0383】
いくつかの実施形態において、トリグリセリドは長鎖トリグリセリドと中鎖トリグリセリドの混合物である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約0.01:99.99~約99.99:0.01である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約0.1:99.9~約99.9:0.1である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約0.1:99.9である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約0.5:99.5である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約0.1:99.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約5.0:95.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約10.0:80.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約15.0:85.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約20.0:80.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約25.0:75.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約30.0:70.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約35.0:65.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約40.0:60.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約45.0:55.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約50.0:50.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約55.0:45.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約60.0:40.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約65.0:35.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約70.0:30.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約75.0:25.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約80.0:20.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約85.0:15.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約90.0:10.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約95.0:5.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約99.0:1.0である。いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリド対中鎖トリグリセリドの比率は、約99.9:0.1である。
【0384】
長鎖トリグリセリド(LCT)は、グリセロールと少なくとも2つの長鎖脂肪酸に由来するトリグリセリドである。いくつかの実施形態において、トリグリセリドはグリセロールと少なくとも2つの長鎖脂肪酸に由来する。いくつかの実施形態において、トリグリセリドは、グリセロール、2つの長鎖脂肪酸、および1つの中鎖脂肪酸に由来する。
【0385】
いくつかの実施形態において、長鎖トリグリセリドは、グリセロールと少なくとも2つの長鎖脂肪酸に由来する。いくつかの実施形態において、長鎖脂肪酸はそれぞれ独立して、炭素鎖中に12を超える炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、長鎖脂肪酸はそれぞれ独立して、炭素鎖中に13~38の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、長鎖脂肪酸は、飽和長鎖脂肪酸、不飽和長鎖脂肪酸、あるいはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、長鎖脂肪酸はそれぞれ独立して、炭素鎖中に13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、あるいは38の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、長鎖脂肪酸はそれぞれ独立して、炭素鎖中に13~24の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、長鎖脂肪酸は、飽和長鎖脂肪酸、不飽和長鎖脂肪酸、あるいはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、長鎖脂肪酸はそれぞれ独立して、炭素鎖中に13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、あるいは24の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、長鎖脂肪酸はそれぞれ独立して、炭素鎖中に13~22の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、長鎖脂肪酸は、飽和長鎖脂肪酸、不飽和長鎖脂肪酸、あるいはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、長鎖脂肪酸はそれぞれ独立して、炭素鎖中に13、14、15、16、17、18、19、20、21、あるいは22の炭素原子を含む。
【0386】
いくつかの実施形態において、長鎖脂肪酸はそれぞれ独立して、トリデシル酸(トリデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデシル酸(ペンタデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ノナデシル酸(ノナデカン酸)、アラキジン酸(エイコサン酸)、ヘンイコシル酸(ヘンイコサノン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、トリコシル酸(トリコサン酸)、リグノセリン酸(テトラコサン酸)、ペンタコシル酸(ペンタコサン酸)、セロチン酸(ヘキコサン酸)、ヘプタコシル酸(ヘプタコサン酸)、モンタン酸(オクタコサン酸)、ノナコシル酸(ノナコサン酸)、メリシン酸(トリアコンタン酸)、ヘナトリアコンチル酸(ヘナトリアコンタン酸)、ラセロ酸(ドトリアコンタン酸)、プシリン酸(psyllic acid)(トリトリアコンタン酸)、ゲダ酸(テトラトリアコンタン酸)、セロプラスチック酸(ペンタトリアコンタン酸)、ヘキサトリアコンチル酸(ヘキサトリアコンタン酸)、ヘプタトリアコンタン酸(ヘプタトリアコンタン酸)、あるいはオクタトリアコンタン酸である。
【0387】
いくつかの実施形態において、長鎖脂肪酸はそれぞれ独立して、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、ドコサテトラエン酸、パルミトレイン酸、バクセン酸、パウリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ゴンドイン(gondoic)酸、エルカ酸、ネルボン酸、あるいはミード酸である。
【0388】
いくつかの実施形態において、耳用のトリグリセリドベースの医薬製剤は、耳への注入のために治療薬を安定化させるのに十分な量のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態において、注入は外耳内に行われる。いくつかの実施形態において、注入は中耳内に行われる。いくつかの実施形態において、注入は鼓室内である。いくつかの実施形態において、注入は内耳内に行われる。いくつかの実施形態において、耳用のトリグリセリドベースの医薬製剤は、耳での十分な滞留時間を提供するのに十分な量のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態において、耳での十分な滞留時間は中耳に対するものである。いくつかの実施形態において、耳での十分な滞留時間は内耳に対するものである。いくつかの実施形態において、耳での十分な滞留時間は外耳に対するものである。いくつかの実施形態において、外耳は、外耳道、鼓膜の外面、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、外耳は外耳道である。いくつかの実施形態において、耳用のトリグリセリドベースの医薬製剤は、治療薬の徐放をもたらすのに十分な量のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態において、治療薬の徐放は外耳内で行われる。いくつかの実施形態において、治療薬の徐放は中耳内で行われる。いくつかの実施形態において、治療薬の徐放は内耳内で行われる。
【0389】
耳に許容可能な製剤/組成物
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、粘度の高い液体製剤または組成物である。本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は懸濁製剤または組成物である。本明細書に記載された耳用の製剤または組成物は溶液製剤または組成物である。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、水性の液体組成物よりも高い粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は1cP(センチポイズ)よりも高い粘度を有する。いくつかの実施形態において、製剤または組成物は、少なくとも約10cP、約20cP、約30cP、約40cP、約50cP、約60cP、約70cP、約80cP、約90cP、約100cP、約200cP、約300cP、約400cP、約500cP、約600cP、約700cP、約800cP、約900cP、約1,000cP、約2,000cP、約3,000cP、約4,000cP、約5,000cP、約6,000cP、約7,000cP、約8,000cP、約9,000cP、約10,000cP、約15,000cP、または約20,000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約1,000cP未満の粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約10,000cP未満の粘度を有する。いくつかの実施形態において、製剤または組成物は、約2cP~約250,000cP、約2cP~約100,000cP、約2cP~約50,000cP、約2cP~約25,000cP、約2cP~約10,000cP、約2cP~約5,000cP、約2cP~約1,000cP、約2cP~約500cP、約2cP~約250cP、約2cP~約100cP、約2cP~約90cP、約2cP~約80cP、約2cP~約70cP、約2cP~約60cP、約2cP~約50cP、約2cP~約40cP、約2cP~約30cP、約2cP~約20 cP、または約2cP~約10cPの粘度を有する。いくつかの実施形態において、液体製剤または組成物は、約2cP、約5cP、約10cP、約20cP、約30cP、約40cP、約50cP、約60cP、約70cP、約80cP、約90cP、約100cP、約200cP、約300cP、約400cP、約500cP、約600cP、約700cP、約800cP、約900cP、約1,000cP、約5,000cP、約10,000cP、約20,000cP、約50,000cP、約100,000cP、または約250,000cPの粘度を有する。
【0390】
いくつかの実施形態において、製剤または組成物は、約10cP~約20,000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態において、製剤または組成物は、約10cP~約10,000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態において、製剤または組成物は、約10cP~約5,000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態において、製剤または組成物は、約10cP~約1,000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態において、製剤または組成物は、約10cP~約500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態において、製剤または組成物は、約10cP~約250cPの粘度を有する。いくつかの実施形態において、製剤または組成物は、約10cP~約100cPの粘度を有する。いくつかの実施形態において、製剤または組成物は、約10cP~約50cPの粘度を有する。
【0391】
いくつかの実施形態において、製剤または組成物は、約10cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約20cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約30cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約40cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約50cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約60cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約70cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約80cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約90cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約100cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約150cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約200cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約250cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約300cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約350cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約400cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約450cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約550cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約600cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約650cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約700cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約750cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約800cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約850cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約900cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約950cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約1000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約1500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約2000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約2500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約3000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約3500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約4000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約4500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約5000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約5500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約6000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約6500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約7000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約7500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約8000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約8500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約9000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約9500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約10000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約20000cPの粘度を有する。
【0392】
いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、粘度調節剤を含まないか、実質的に含まない。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は、耳用の製剤または組成物に少なくとも約10cP、約20cP、約30cP、約40cP、約50cP、約60cP、約70cP、約80cP、約90cP、約100cP、約200cP、約300cP、約400cP、約500cP、約600cP、約700cP、約800cP、約900cP、約1000cP、約2,000cP、約3,000cP、約4,000cP、約5,000cP、約6,000cP、約7,000cP、約8,000cP、約9,000cP、約10,000cP、約15,000 cP、または約20,000cPの粘度をもたらす少なくとも1つの粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、製剤または組成物は、耳用の製剤または組成物に、約1,000cP未満の粘度をもたらす少なくとも1つの粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、製剤または組成物は、耳用の製剤または組成物に、約10,000cP未満の粘度をもたらす少なくとも1つの粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、約2cP~約250,000cP、約2cP~約100,000cP、約2cP~約50,000cP、約2cP~約25,000cP、約2cP~約10,000cP、約2cP~約5,000cP、約2cP~約1,000cP、約2cP~約500cP、約2cP~約250cP、約2cP~約100cP、約2cP~約90cP、約2cP~約80cP、約2cP~約70cP、約2cP~約60cP、約2cP~約50cP、約2cP~約40cP、約2cP~約30cP、約2cP~約20cP、または約2cP~約10cPの粘度を耳用の組成物または製剤にもたらす少なくとも1つの粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は、約2cP、約5cP、約10cP、約20cP、約30cP、約40cP、約50cP、約60cP、約70cP、約80cP、約90cP、約100cP、約200cP、約300cP、約400cP、約500cP、約600cP、約700cP、約800cP、約900cP、約1,000cP、約5,000cP、約10,000cP、約20,000cP、約50,000cP、約100,000cP、または約250,000cPの粘度を耳用の製剤または組成物にもたらす少なくとも1つの粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はポロキサマーではない。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はポロキサマーである。いくつかの実施形態において、ポロキサマーは、P407である。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はポビドンである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はカルボマーである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はポリマーである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は二酸化ケイ素である。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は、二酸化ケイ素、ポロキサマー、カルボマー、ポビドン、あるいはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はデキストラン、アルギネート、あるいはヒアルロン酸などの多糖類である。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートステアレート(HPMCAS)、および非晶質セルロースなどのセルロースベースである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はポリビニルアルコール(PVA)である。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はポリエチレングリコール(PEG)ベースである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は、二酸化ケイ素、ポロキサマー、カルボマー、ポビドン、多糖類、セルロースベースのポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、あるいはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は油である。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は蜜ろうである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はワセリンである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はワセリンゼリーである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は12-ヒドロキシステアリン酸である。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%~約80重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%~約50重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%~約20重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%~約15重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%~約10重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%~約9重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%~約8重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%~約7重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%~約6重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%~約5重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%~約4重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%~約3重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%~約2重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%~約1重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.1重量%~約80重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.1重量%~約50重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.1重量%~約20重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.1重量%~約10重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.1重量%~約5重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約1重量%~約80重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約1重量%~約50重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約1重量%~約20重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約1重量%~約10重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約1重量%~約5重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、製剤または組成物は、約0.01重量%、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、約90重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、製剤または組成物は、約0.01重量%を超える、約0.05重量%を超える、約0.1重量%を超える、約0.2重量%を超える、約0.3重量%を超える、約0.4重量%を超える、約0.5重量%を超える、約0.6重量%を超える、約0.7重量%を超える、約0.8重量%を超える、約0.9重量%を超える、約1.0重量%を超える、約2重量%を超える、約3重量%を超える、約4重量%を超える、約5重量%を超える、約6重量%を超える、約7重量%を超える、約8重量%を超える、約9重量%を超える、約10重量%を超える、約11重量%を超える、約12重量%を超える、約13重量%を超える、約14重量%を超える、約15重量%を超える、約16重量%を超える、約17重量%を超える、約18重量%を超える、約19重量%を超える、約20重量%を超える、約25重量%を超える、約30重量%を超える、約35重量%を超える、約40重量%を超える、約45重量%を超える、約50重量%を超える、約55重量%を超える、約60重量%を超える、約65重量%を超える、約70重量%を超える、約75重量%を超える、約80重量%を超える、約85重量%を超える、約90重量%を超える粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、製剤または組成物は、約0.01重量%未満、約0.05重量%未満、約0.1重量%未満、約0.2重量%未満、約0.3重量%未満、約0.4重量%未満、約0.5重量%未満、約0.6重量%未満、約0.7重量%未満、約0.8重量%未満、約0.9重量%未満、約1.0重量%未満、約2重量%未満、約3重量%未満、約4重量%未満、約5重量%未満、約6重量%未満、約7重量%未満、約8重量%未満、約9重量%未満、約10重量%未満、約11重量%未満、約12重量%未満、約13重量%未満、約14重量%未満、約15重量%未満、約16重量%未満、約17重量%未満、約18重量%未満、約19重量%未満、約20重量%未満、約25重量%未満、約30重量%未満、約35重量%未満、約40重量%未満、約45重量%未満、約50重量%未満、約55重量%未満、約60重量%未満、約65重量%未満、約70重量%未満、約75重量%未満、約80重量%未満、約85重量%未満、約90重量%未満の粘度調節剤を含む。
【0393】
いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、水を含まないか、実質的に含まない。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、10重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、9重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、8重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、7重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、6重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、5重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、4重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、3重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、2重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、1重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、0.5重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、0.1重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の組成物または製剤は、約50ppm未満の水を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の組成物または製剤は、約25ppm未満の水を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の組成物または製剤は、約20ppm未満の水を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の組成物または製剤は、約10ppm未満の水を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の組成物または製剤は、約5ppm未満の水を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の組成物または製剤は、約1ppm未満の水を含む。
【0394】
いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、ポロキサマーを含まないか、実質的に含まない。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、ポロキサマー407を含まないか、実質的に含まない。
【0395】
いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、C1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含まないか、実質的に含まない。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、C1-C6アルコールを含まないか、実質的に含まない。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、C1-C6グリコールを含まないか、実質的に含まない。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、10重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、9重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、8重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、7重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、6重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、5重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、4重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、3重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、2重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、1重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、0.5重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、0.1重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、各々約50ppm未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、各々約25ppm未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、各々約20ppm未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、各々約10ppm未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、各々約5ppm未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、各々約1ppm未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。
【0396】
いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、C1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含まないか、実質的に含まない。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、C1-C4アルコールを含まないか、実質的に含まない。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、C1-C4グリコールを含まないか、実質的に含まない。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、10重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、9重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、8重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、7重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、6重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、5重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、4重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、3重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、2重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、1重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、0.5重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、0.1重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、各々約50ppm未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、各々約25ppm未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、各々約20ppm未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、各々約10ppm未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、各々約5ppm未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、各々約1ppm未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。
【0397】
非制限的な例として、耳への投与のための薬剤を製剤化するときに、以下の一般に使用される溶媒:アルコール、プロピレングリコール、およびシクロヘキサンの使用は、限定されるか、減らされるか、除去されなければならない。ゆえに、いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の組成物または製剤は、アルコール、プロピレングリコール、およびシクロヘキサンを含まないか、実質的に含まない。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、各々約50ppm未満のアルコール、プロピレングリコール、およびシクロヘキサンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、各々約25ppm未満のアルコール、プロピレングリコール、およびシクロヘキサンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、各々約20ppm未満のアルコール、プロピレングリコール、およびシクロヘキサンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、各々約10ppm未満のアルコール、プロピレングリコール、およびシクロヘキサンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、各々約5ppm未満のアルコール、プロピレングリコール、およびシクロヘキサンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、各々約1ppm未満のアルコール、プロピレングリコール、およびシクロヘキサンを含む。
【0398】
いくつかの実施形態において、治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩は多粒子である。いくつかの実施形態では、治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩は実質的に、微粒子化された粒子の形態をしている。いくつかの実施形態では、治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいは塩は、耳用の医薬製剤または組成物に実質的に溶解している。
【0399】
ポロキサマー
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、ポロキサマーをさらに含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物は、ポロキサマーを含まないか、実質的に含まない。ポロキサマー407(PF-127)の一例は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーから構成される非イオン性界面活性剤である。他の一般的に使用されるポロキサマーは、限定されないが、188(F-68グレード)、237(F-87グレード)、338(F-108グレード)も含む。
【0400】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物は、PF-127、188(F-68グレード)、237(F-87グレード)、または338(F-108グレード)を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物はポロキサマー407を含む。
【0401】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物は、PF-127、188(F-68グレード)、237(F-87グレード)、または338(F-108グレード)を含まないか、実質的に含まない。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物は、ポロキサマー407を含まないか、実質的に含まない。
【0402】
特定の実施形態において、増粘剤(すなわち、粘度増強剤または粘度調節剤)も、本明細書で提供される耳用の製剤または組成物に利用される。いくつかの実施形態において、増粘剤はセルロースベースの増粘剤である。いくつかの例において、増粘剤の添加は拡散的な障壁を導入し、かつ治療薬の放出の速度を下げる。いくつかの実施形態において、増粘剤、粘度増強剤、または粘度調節剤はポロキサマーではない。いくつかの実施形態において、増粘剤、粘度増強剤、または粘度調節剤はポロキサマー407ではない。いくつかの実施形態において、増粘剤、粘度増強剤、または粘度調節剤はポロキサマーである。いくつかの実施形態において、増粘剤、粘度増強剤、または粘度調節剤はポロキサマー407である。
【0403】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物も、緩衝剤に加えて、防腐剤、共溶媒、懸濁化剤、粘度増強剤、イオン強度およびオスモル濃度の調整剤、ならびに他の賦形剤を含む。薬物送達ビヒクルで用いられる適切な水溶性防腐剤は、二亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビンベート、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、パラベン、ベンジルアルコール、フェニルエタノールなどである。これらの薬剤は通常、約0.001重量%~約5重量%の量で、好ましくは、約0.01重量%~約2重量%の量で存在する。
【0404】
適切な水溶性緩衝剤は、アルカリ金属またはアルカリ性の土類金属のカーボネート、ホスフェート、ビカーボネート、シトレート、ボレート、アセテート、スクシネートなどであり、例えば、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、およびトロメタミン(TRIS)などである。これらの薬剤は、系のpHを7.4±0.2、好ましくは7.4に維持するのに十分な量で存在する。このように、緩衝剤は、いくつかの例において、組成物全体の重量基準で5%と同等である。
【0405】
いくつかの実施形態において、共溶媒は、薬物溶解度を増強するために使用される。しかしながら、いくつかの薬剤は不溶性である。
【0406】
粘膜付着性賦形剤
いくつかの実施形態において、カルボポール934Pなどの粘膜付着性カルボマーを組成物に組み込むことによって、粘膜付着特性も、本明細書で開示される耳用製剤に付与される(Majithiya et al,AAPS PharmSciTech(2006),7(3),p.E1;EP0551626)。
【0407】
「粘膜付着」との用語は、生体膜のムチン層に結合する物質に共通して使用される。粘膜付着性ポリマーとしての機能を果たすために、ポリマーは、多くの水素結合形成基との顕著なアニオン親水性、粘液/粘膜組織表面を浸潤させるのに適した表面特性、および粘液の網目に浸透するのに十分な可撓性などの、いくつかの一般的な物理化学的特徴を有している。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される粘膜付着性の製剤または組成物は、正円窓および/または卵円窓および/または任意の内耳構造に付着する。いくつかの実施形態において、粘膜付着剤は正円窓膜に付着する。いくつかの実施形態において、粘膜付着剤は正円窓膜の粘膜付着剤である。
【0408】
粘膜付着剤には、限定されないが、少なくとも1つの溶解性のポリビニルピロリドンポリマー(PVP);水膨潤性で線維状の架橋されたカルボキシ官能化ポリマー;架橋されたポリ(アクリル酸)(例えば、カルボポール947P);カルボマーホモポリマー;カルボマーコポリマー;親水性の多糖類ゴム、マルトデキストリン、架橋されたアルギネートゴムゲル、水分散可能なポリカルボキシル化ビニルポリマー、二酸化チタン、二酸化ケイ素、および粘土、あるいはこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも2つの微粒子成分が挙げられる。いくつかの実施形態において、粘膜付着剤は、粘度増大させる賦形剤と組み合わせて使用され、あるいは、組成物の粘膜層との相互作用を増大させるために単独で使用される。ある非限定的な例では、粘膜付着剤は、マルトデキストリンおよび/またはアルギネートゴムである。当業者は、製剤または組成物に付与される粘膜付着特性が、有効な量の組成物を、例えば、粘膜を覆う量で正円窓膜の粘膜に送達し、その後、組成物を、ほんの一例ではあるが、内耳の前庭構造および/または蝸牛構造を含む影響を受けた部位に送達するのに十分なレベルでなければならないことを、認識するであろう。当業者は、本明細書で提供される組成物の粘膜付着特性を決定し、ゆえに適切な範囲を決定することができる。十分な粘膜接着性を決定するための1つの方法は、限定されないが、限定されないが、賦形剤の存在下および不在下で組成物の滞留または滞留時間の変化を測定する工程を含む、組成物と粘膜層との相互作用の変化をモニタリングする工程を含んでいる。
【0409】
粘膜付着剤は、例えば、米国特許第6,638,521号、第6,562,363号、第6,509,028号、第6,348,502号、第6,319,513号、第6,306,789号、第5,814,330号、および第4,900,552号に記載されており、その各々は、全体において参照により本明細書に組み込まれる。
【0410】
1つの非限定的な例において、粘膜付着剤はマルトデキストリンである。マルトデキストリンは、トウモロコシ、ジャガイモ、小麦、または他の植物製品由来のデンプンの加水分解によって得られる炭水化物である。マルトデキストリンは、単独で使用されるか、または、他の粘膜付着剤と組み合わせて使用され、本明細書で開示される製剤または組成物に粘膜付着特性を付与する。1つの実施形態において、マルトデキストリンとカルボポールポリマーとの組み合わせは、本明細書で開示される製剤または組成物の粘膜付着特性を増大させるために使用される。
【0411】
別の非限定的な例において、粘膜付着剤は、例えば、二酸化チタン、二酸化ケイ素、および粘土から選択される少なくとも2つの粒子状成分であり、組成物は、投与前にさらに液体に希釈されず、および、二酸化ケイ素のレベルは、存在する場合、組成物の約3重量%から約15重量%である。二酸化ケイ素は、存在する場合、噴霧化された二酸化ケイ素、沈殿された二酸化ケイ素、コアセルベートされた二酸化ケイ素、ゲル二酸化ケイ素、およびこれらの混合物からなる群から選択される。粘土は、存在する場合、カオリン鉱物、セルペンチン鉱物、スメクタイト、イライト、またはこれらの混合物である。例えば、粘土は、ラポナイト、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイト、モンモリロナイト、またはこれらの混合物である。
【0412】
1つの非限定的な例において、粘膜付着剤はマルトデキストリンである。マルトデキストリンは、トウモロコシ、ジャガイモ、小麦、あるいは他の植物生成物に随意に由来するデンプンの加水分解によって生成された炭水化物である。マルトデキストリンは、本明細書で開示される製剤に付着特性を与えるために、単独で、あるいは他の粘膜付着剤と組み合わせて、随意に使用される。1つの実施形態において、マルトデキストリンとカルボポールポリマーとの組み合わせは、本明細書で開示される製剤またはデバイスの粘膜付着特性を増大させるために使用される。
【0413】
別の実施形態では、粘膜付着剤は、アルキル-グリコシドおよび/または糖類アルキルエステルである。本明細書で使用されるように、「アルキル-グリコシド」は、疎水性のアルキルに結合された任意の親水性の糖類(例えば、スクロース、マルトース、あるいはグルコース)を含む化合物を意味する。いくつかの実施形態において、正円窓膜用の粘膜付着剤はアルキル-グリコシドであり、ここで、アルキル-グリコシドは、アミド結合、アミン結合、カルバメート結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、グリコシド結合、チオグリコシド結合、および/または、ウレイド結合によって、疎水性のアルキル(例えば、約6-約25の炭素原子を含むアルキル)に結合された砂糖を含む。いくつかの実施形態において、正円窓膜用の粘膜付着剤は、ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、オクタデシルα-D-、あるいはオクタデシルβ-Dマルトシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、オクタデシルα-D-、あるいはオクタデシルβ-D-グルコシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、オクタデシルα-D-、あるいはオクタデシルβ-D-スクロシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ドデシル-、トリデシル-、あるいはテトラデシル-β-D-チオマルトシド;ドデシルマルトシド;ヘプチル-あるいはオクチル-1-チオ-α-あるいはβ-D-グルコピラノシド;アルキルチオスクロース;アルキルマルトトリオシド;スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミド;アミド結合によってアルキル鎖に結合したパラチノーゼまたはイソマルトアミンの誘導体、および尿素によってアルキル鎖に結合したイソマルトアミンの誘導体;スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸ウレイドと、スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミド、あるいはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、粘膜付着剤はアルキル-グリコシドであり、ここで、アルキル-グリコシドは、グリコシド結合によって9-16の炭素原子(例えば、ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシル・スクロシド;ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシル・グルコシド;ならびに、ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシルマルトシド)のアルキル鎖に結合した、マルトース、スクロース、グルコース、あるいはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、粘膜付着剤はアルキル-グリコシドであり、ここで、アルキル-グリコシドは、ドデシルマルトシド、トリデシルマルトシド、およびテトラデシルマルトシドである。
【0414】
いくつかの実施形態において、粘膜付着剤はアルキル-グリコシドであり、ここで、アルキル-グリコシドは少なくとも1つのグルコースを有する二糖である。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、α-D-グルコピラノシル-β-グリコピラノシド、n-ドデシル-4-O-α-D-グルコピラノシル-β-グリコピラノシド、および/またはn-テトラデシル-4-O-α-D-グルコピラノシル-β-グリコピラノシドを含む界面活性剤である。いくつかの実施形態において、粘膜付着剤はアルキル-グリコシドであり、ここで、アルキル-グリコシドは、純水あるいは水溶液中で約1mM未満の臨界ミセル濃度(CMC)を有する。いくつかの実施形態において、粘膜付着剤はアルキル-グリコシドであり、ここで、アルキル-グリコシド内の酸素原子は硫黄原子で置換される。いくつかの実施形態において、粘膜付着剤はアルキル-グリコシドであり、ここで、アルキル-グリコシドはβアノマーである。いくつかの実施形態において、粘膜付着剤はアルキル-グリコシドであり、ここで、アルキル-グリコシド、βアノマーの90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.5%、あるいは99.9%を含む。
【0415】
安定化剤
1つの実施形態において、安定化剤は、例えば、脂肪酸、脂肪アルコール、アルコール、長鎖脂肪酸エステル、長鎖エーテル、脂肪酸の親水性誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、炭化水素、疎水性ポリマー、吸湿性ポリマー、およびこれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、安定化剤のアミドアナログも使用される。さらなる実施形態において、選択される安定化剤は、製剤または組成物の疎水性を変化させ(例えば、オレイン酸、ワックス)、あるいは製剤または組成物中の様々な成分の混合を改善し(例えば、エタノール)、組成物中の水分レベルを制御し(例えば、PVPまたはポリビニルピロリドン)、相の移動度を制御し(長鎖脂肪酸、アルコール、エステル、エーテル、アミド、またはこれらの組み合わせなどの室温より高い融点を有する物質;ワックス)、および/または製剤の封入材料との適合性を改善する(例えば、オレイン酸、ワックス)。別の実施形態では、こうした安定化剤のいくつかは溶媒/共溶媒として使用される(例えば、エタノール)。さらなる実施形態において、安定化剤は、活性医薬成分の劣化を阻害するのに十分な量で存在する。そのような安定化剤の例としては、限定されないが、以下が挙げられる:(a)約0.5%~約2%w/vのグリセロール、(b)約0.1%~約1%w/vのメチオニン、(c)約0.1%~約2%w/vのモノチオグリセロール、(d)約1mM~約10mMのEDTA、(e)約0.01%~約2%w/vのアスコルビン酸、(f)0.003%~約0.02%w/vのポリソルベート80、(g)0.001%~約0.05%w/vのポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)ヘパリン、(j)硫酸デキストラン、(k)シクロデキストリン、(l)ペントサンポリサルフェートおよび他のヘパリノイド、(m)マグネシウムおよび亜鉛などの二価カチオン;または(n)これらの組み合わせ。
【0416】
いくつかの実施形態において、安定化剤は二酸化ケイ素である。いくつかの実施形態において、二酸化ケイ素は懸濁製剤中の安定化剤である。いくつかの実施形態において、二酸化ケイ素は固化防止剤(すなわち、塊の形成を防ぐ薬剤)である。いくつかの実施形態において、二酸化ケイ素は懸濁製剤を安定させる固化防止剤(すなわち、塊の形成を防ぐ薬剤)である。いくつかの実施形態において、安定化剤は固化防止剤である。
【0417】
いくつかの実施形態では、安定化剤はカルボマーである。いくつかの実施形態において、カルボマーは、正に荷電されたタンパク質のための錯化剤である。いくつかの実施形態において、錯化剤中の正に荷電されたタンパク質は、溶解度を減少させており、ゆえに、製剤からゆっくりと放出される。
【0418】
いくつかの実施形態において、安定化剤は錯化剤である。いくつかの実施形態において、安定化剤は、複合体を形成するために治療薬と相互作用する。いくつかの実施形態において、安定化剤はタンパク質錯化剤である。いくつかの実施形態において、タンパク質錯化剤は、タンパク質治療薬の電荷とは反対の電荷を持つポリマーである。いくつかの実施形態において、ポリマーはカルボマーまたはアルギネートである。いくつかの実施形態において、安定化剤は、タンパク質治療薬の溶解度を減らす、タンパク質治療薬との複合体を形成する。いくつかの実施形態において、安定化剤は、タンパク質治療薬の遅延放出をもたらす、タンパク質治療薬との複合体を形成する。いくつかの実施形態において、安定化剤は、タンパク質治療薬の徐放をもたらす、タンパク質治療薬との複合体を形成する。
【0419】
いくつかの実施形態において、安定化剤は中性ポリマーである。中性ポリマーの例は、ポビドン、ポロキサマー、およびHMPCを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、中性ポリマーは、治療薬を封入し、かつ治療薬の遅延放出をもたらすポリマーマトリクスを形成する。いくつかの実施形態において、中性ポリマーは、治療薬を封入し、かつ治療薬の徐放をもたらすポリマーマトリクスを形成する。
【0420】
さらなる有用な耳に許容可能な製剤または組成物は、タンパク質凝集の速度を低下させることにより、耳用の製剤または組成物の安定性を高めるために1つ以上の抗凝集添加剤を含む。選択される抗凝集添加剤は、治療薬、または耳用薬剤、例えば、抗TNF抗体が晒される疾病の性質に依存する。例えば、撹拌および熱応力を経る特定の製剤または組成物は、凍結乾燥および再構成を経る製剤とは異なる抗凝集添加剤を必要とする。有用な抗凝集添加剤は、ほんの一例として、尿素、塩化グアニジウム、単純なアミノ酸、例えば、グリシンまたはアルギニン、糖、多価アルコール、ポリソルベート、ポリマー、例えば、ポリエチレングリコールおよびデキストラン、アルキル糖類、例えば、アルキルグリコシド、ならびに界面活性剤を含む。
【0421】
他の有用な製剤または組成物は、必要に応じて化学安定性を増強するための1つ以上の抗酸化剤を含む。適切な抗酸化剤は、ほんの一例ではあるが、アスコルビン酸および二亜硫酸ナトリウムを含む。1つの実施形態では、抗酸化剤は、金属キレート剤、チオール含有化合物、および他の一般的な安定化剤から選択される。
【0422】
また他の有用な製剤または組成物は、物理的安定性を増強するために、または他の目的のために、1つ以上の界面活性剤を含む。適切な非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび植物油、例えば、ポリオキシエチレン(60)水素化ヒマシ油;および、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとアルキルフェニルエーテル、例えば、オクトキシノール10、オクトキシノール40などを含む。
【0423】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される医薬製剤または組成物は、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約2ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約5ヶ月間、または少なくとも約6ヶ月間のいずれかの期間にわたって、化合物の分解に関して安定している。他の実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物は、少なくとも約1週間の期間にわたって、化合物の分解に関して安定している。本明細書には、少なくとも約1ヶ月の期間にわたって、化合物の分解に関して安定する製剤または組成物も記載される。
【0424】
他の実施形態では、さらなる界面活性剤(共界面活性剤(co-surfactant))および/または緩衝剤は、界面活性剤および/または緩衝剤が、安定性のために最適なpHで生成物を維持するように、本明細書に前述される薬学的に許容可能なビヒクルの1以上と組み合わされる。適切な共界面活性剤としては、限定されないが、以下が挙げられる:a)天然および合成の親油性の薬剤、例えば、リン脂質、コレステロール、およびコレステロール脂肪酸エステル、ならびにこれらの誘導体;例えば、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエステル、ソルビタン脂肪酸エステル(Spans)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Tween80)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(Tween60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween 20)、および、他のTween、ソルビタンエステル、グリセリンエステル、例えば、Myrjおよびグリセロールトリアセテート(トリアセチン)、ポリエチレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ポリソルベート80、ポロキサマー、ポロキサミン、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(例えば、Cremophor(登録商標)RH40、Cremphor A25、Cremphor A20、Cremophor(登録商標)EL)、および他のCremophor、スルホスクシネート、アルキルサルフェート(SLS);PEG-8カプリル酸グリセリル/カプリン酸グリセリル(Labrasol)、PEG-4カプリル酸グリセリル/カプリン酸グリセリル(LabrafacヒドロWL 1219)、PEG-32ラウリン酸グリセリル(Gelucire 444/14)、PEG-6モノオレイン酸グリセリル(Labrafil M 1944 CS)、PEG-6リノール酸グリセリル(Labrafil M 2125 CS)などのPEGグリセリル脂肪酸エステル;ラウリン酸プロピレングリコール、カプリル酸プロピレングリコール/カプリン酸カプラートプロピレングリコールなどのプロピレングリコール・モノ-およびジ-脂肪酸エステル;Brij(登録商標)700、アスコルビル-6-パルミテート、ステアリルアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレングリセロールトリイリシンオレアート(triiricinoleate)、およびこれらの任意の組み合わせまたは混合物;c)アニオン性界面活性剤としては、限定されないが、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ナトリウムスルホサクシネート、ジオクチル、アルギン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硫酸アルキル、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリン酸カリウム、胆汁酸塩、およびこれらの任意の組み合わせあるいは混合物が挙げられる;ならびに、d)カチオン性界面活性剤、例えば、四級アンモニウム化合物、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、および塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム。
【0425】
さらなる実施形態において、1つ以上の共界面活性剤が本開示の製剤または組成物に利用されるとき、これらは、例えば、薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わされ、および、例えば、約0.1%から約20%の範囲、約0.5%から約10%の範囲の量で最終製剤中に存在する。1つの実施形態では、界面活性剤は、0から20のHLB値を有する。さらなる実施形態では、界面活性剤は、0~3、4~6、7~9、8~18、13~15、10~18のHLB値を有する。
【0426】
防腐剤
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物は、防腐剤を含まない。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物は、防腐剤を含む。本明細書で開示される製剤または組成物での使用に適切な耳に許容可能な防腐剤としては、限定されないが、安息香酸、ホウ酸、p-ヒドロキシベンゾエート、ベンジルアルコール、低級アルキルアルコール(例えば、エタノール、ブタノールなど)、四級化合物、安定化された二酸化塩素、水銀、例えば、メルフェンおよびチオメルサール、これらの混合物などが挙げられる。本明細書で開示される製剤との使用に適切な防腐剤は耳毒性ではない。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤または組成物は、耳毒性である防腐剤を含まない。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤または組成物は、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムを含まない。
【0427】
特定の実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、0.5EU/kg未満、0.4EU/kg未満、または0.3EU/kg未満の内毒素レベルを有する。特定の実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、製剤または組成物1グラムあたり、約60未満のコロニー形成単位(CFU)、約50未満のコロニー形成単位、約40未満のコロニー形成単位、または約30未満のコロニー形成単位の微生物剤を有する。特定の実施形態において、本明細書に記載される制御放出性の製剤または組成物は、発熱物質を実質的に含まない。
【0428】
さらなる実施形態において、防腐剤は、ほんの一例ではあるが、本明細書に提示される製剤または組成物中の抗菌剤である。1つの実施形態において、製剤または組成物は、ほんの一例として、メチルパラベンなどの防腐剤を含む。別の実施形態では、メチルパラベンは、約0.05%~約1.0%、約0.1%~約0.2%までの濃度である。特定の実施形態において、本明細書に記載される耳に適合性の製剤に利用される防腐剤は、抗酸化剤(例えば、本明細書に記載されるようなブチルヒドロキシトルエン(BHT)など)である。特定の実施形態において、酸化防止性の防腐剤は、無毒であり、および/または内耳環境に刺激を引き起こさない。
【0429】
担体
本明細書に記載される製剤または組成物での使用に適切な担体は、限定されないが、薬学的に許容可能な溶媒を含む。例えば、適切な溶媒は、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)などのポリアルキレングリコール、およびこれらの任意の組み合わせまたは混合物を含む。他の実施形態において、塩基は薬学的に許容可能な界面活性剤と溶媒の組み合わせである。
【0430】
いくつかの実施形態において、他の賦形剤は、フマル酸ステアリルナトリウム、ジエタノールアミンセチルサルフェート、イソステアレート、ポリエトキシ化ヒマシ油、塩化ベンザルコニウム、ノンオキシル10、オクトキシノール9、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル(モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ラウリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリイソステアリン酸ソルビタン)、レシチン、リン脂質、ホスファチジルコリン(c8-c18)、ホスファチジルエタノールアミン(c8-c18)、ホスファチジルグリセロール(c8-c18)、これらの薬学的に許容可能な塩、およびこれらの組み合わせまたは混合物を含む。
【0431】
さらなる実施形態において、担体はポリエチレングリコールである。ポリエチレングリコールは、様々な分子量を有する様々なグレードで利用可能である。例えば、ポリエチレングリコールは、PEG200;PEG300;PEG400;PEG500(ブレンド);PEG600;PEG900;PEG1000;PEG1450;PEG1540;PEG2000;PEG3000;PEG3350;PEG4000;PEG4600、およびPEG8000として利用可能である。本開示の目的のために、ポリエチレングリコールのすべてのグレードが、本明細書に記載される製剤の調製での使用について企図される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤を調製するために使用されるポリエチレングリコールは、PEG300である。
【0432】
他の実施形態において、担体はポリソルベートである。ポリソルベートはソルビタンエステルの非イオン性界面活性剤である。本開示で役立つポリソルベートとしては、限定されないが、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80(Tween80)、およびこれらの任意の組み合わせまたは混合物が挙げられる。さらなる実施形態では、ポリソルベート80は薬学的に許容可能な担体として利用される。
【0433】
一実施形態では、薬学的な送達ビヒクルの調製で利用される水溶性のグリセリンベースの耳に許容可能な粘度増強製剤は、少なくとも約0.1%またはそれ以上の水溶性のグリセリン化合物を含有する少なくとも1つの活性薬剤を含む。いくつかの実施形態では、活性薬剤のパーセントは、全医薬製剤の重量または量の約1%から約95%の間、約5%から約80%の間、約10%から約60%の間で、またはそれ以上で変動する。いくつかの実施形態において、治療に有用なコルチコステロイド製剤のそれぞれにおける化合物の量は、適切な投与量が任意の所定の単位用量の化合物で得られるように、調製される。溶解度、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与ルート、製品貯蔵期間と、他の薬理学的考察などの因子が本明細書で企図される。
【0434】
望ましい場合、耳に許容可能な医薬品ゲルは、緩衝剤に加えて、共溶媒(co-solvent)、防腐剤、共溶媒(cosolvent)、イオン強度およびモル浸透圧濃度の調整剤、および他の賦係形も含む。適切な耳に許容可能な水溶性緩衝剤は、アルカリまたはアルカリ土類金属炭酸塩、ホスフェート、ビカーボネート、シトレート、ボレート、アセテート、スクシネートなどであり、例えば、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムおよびトロメタミン(TRIS)ナトリウムなどである。これらの薬剤は、系のpHを7.4±0.2、好ましくは7.4に維持するのに十分な量で存在する。このように、緩衝剤は全製剤の重量ベースで5%と同じである。
【0435】
共溶媒は活性薬剤の溶解度を増強するために使用されるが、しかしながら、いくつかの活性薬剤は不溶性である。これらは、しばしば適切な懸濁化剤または粘度増強剤を用いて、ポリマービヒクル中で懸濁される。
【0436】
さらに、いくつかの薬学的な賦形剤、希釈剤、または担体は、潜在的には耳毒性である。例えば、一般的な防腐剤である塩化ベンザルコニウムは耳毒性であり、従って、前庭または蝸牛の構造に取り込まれると潜在的に有害である。制御放出性の製剤を製剤化する際に、製剤から潜在的な耳毒性の化合物を減少させるか、除去するために、適切な賦形剤、希釈剤、または担体を避けるか、組み合わせること、あるいは上記の賦形剤、希釈剤、または担体の量を減少させることが推奨される。随意に、制御放出性の製剤は、賦形剤、希釈剤、または担体の特定の治療薬を使用することで生じ得る潜在的な耳毒性の影響を弱めるために、抗酸化剤、アルファリポ酸、カルシウム、ホスホマイシン、または鉄キレート剤などの耳保護剤を含む。
【0437】
いくつかの実施形態において、治療上許容可能な耳用製剤は以下である:
【0438】
【0439】
【0440】
本明細書で開示される製剤は代替的に、特定の治療薬、あるいは賦形剤、希釈剤、または担体の使用により生じ得る潜在的な耳毒性の影響を弱めるために、少なくとも1つの活性薬剤、および/または、限定されないが、抗酸化剤、αリポ酸、カルシウム、ホスホマイシン、または鉄キレート剤などの薬剤を含む賦形剤に加えて、耳保護剤を含んでいる。
【0441】
いくつかの実施形態において、有効医薬成分の割合は、全体の医薬製剤または組成物の重量または体積の約0.01%から約20%、約0.01%から約10%、約0.01%から約5%、またはそれ以上の範囲で変動する。いくつかの実施形態において、治療に有用な製剤または組成物それぞれにおける化合物の量は、適切な投与量が任意の所定の単位用量の化合物で得られるように、調製される。溶解度、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、製品貯蔵期間などの因子は、他の薬学的な検討事項と同様に本明細書で企図され、そのような医薬製剤または組成物の調製は本明細書で提示される。
【0442】
懸濁化剤
1つの実施形態において、薬学的に許容可能な製剤中の有効医薬成分であって、製剤または組成物は少なくとも1つの懸濁化剤を含む。1つの実施形態において、薬学的に許容可能なゲル製剤または組成物中の有効医薬成分であって、製剤または組成物は少なくとも1つの懸濁化剤を含む。
【0443】
1つの実施形態において、少なくとも1つの治療薬は、薬学的に許容可能な粘度増強製剤または組成物に含まれ、上記製剤または組成物は、少なくとも1つの懸濁化剤をさらに含み、懸濁化剤は上記製剤または組成物に制御放出特性を付与するのを助ける。いくつかの実施形態において、懸濁化剤は、耳に許容可能な治療薬製剤または組成物の粘度を増加させる機能を果たす。
【0444】
懸濁化剤は、ほんの一例として、ポリビニルピロリドン、例えば、ポリビニルピロリドンK12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、またはポリビニルピロリドンK30、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S630)、ポリエチレングリコール、例えば、約300~6000、約3350~約4000、または約7000~約5400の分子量を有するポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースアセテートステアレート、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ガム、例えば、トラガカントガムおよびアカシアガム、グアーガム、キサンタンガムを含むキサンタン、糖、セルロース化合物、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリソルベート-80、アルギン酸ナトリウム、ポリエトキシ化ソルビタンモノラウレート、ポリエトキシ化ソルビタンモノラウレート、ポビドンなどの化合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、有用な水性懸濁液は、懸濁化剤として1つ以上のポリマーを含む。有用なポリマーは、セルロースポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性ポリマー、および、架橋カルボキシル含有ポリマーなどの非水溶性ポリマーを含む。有用なポリマーは、セルロース酸ポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)などの水溶性ポリマーと、架橋したカルボキシル含有ポリマーなどの不水溶性のポリマーを含む。有用なポリマーはさらにヒアルロン酸も含む。
【0445】
1つの実施形態では、本開示は、治療上有効な量のヒドロキシエチルセルロースゲルを含む、耳に許容可能なゲル製剤を提供する。ヒドロキシエチルセルロース(HEC)は、水中で再構成される乾燥粉末として、または所望の粘度(一般に約200cps~約30,000cps、約0.2%~約10%のHECに相当する)を与える水性緩衝液として得られる。1つの実施形態では、HECの濃度は、約1%~約15%、約1%~約2%、または約1.5%~約2%である。
【0446】
いくつかの実施形態において、製剤または組成物は、賦形剤、他の医療薬剤または医薬品、担体、アジュバント、例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤、または乳化剤、溶解促進剤、および塩を含む。いくつかの実施形態において、賦形剤、担体、アジュバントは、薬学的に許容可能な製剤または組成物を形成するのに有用である。いくつかの実施形態において、製剤または組成物は安定化剤をさらに含む。別の実施形態において、製剤または組成物は可溶化剤を含む。さらなる実施形態において、製剤または組成物は発泡防止剤を含む。またさらなる実施形態において、製剤または組成物は抗酸化剤を含む。また別の実施形態において、製剤または組成物は分散剤を含む。1つの実施形態において、製剤または組成物は界面活性剤をさらに含む。また別の実施形態において、製剤または組成物は湿潤剤を含む。
【0447】
粘度増強剤
1つの実施形態において、粘度増強剤を含まないか、実質的に含まない製剤または組成物がある。1つの実施形態において、少なくとも1つの有効医薬成分および増粘剤(viscosity agent)を含む製剤または組成物がある。本明細書には、粘度増強剤を含まないか、実質的に含まない制御放出性の製剤または組成物も記載される。本明細書には、治療薬および粘度増強剤を含む制御放出性の製剤または組成物も記載されている。いくつかの実施形態において、適切な粘度増強剤はポロキサマーを含まない。適切な粘度増強剤には、ほんの一例として、増粘剤および懸濁化剤が挙げられる。1つの実施形態において、粘度増強製剤または組成物は、薬学的に許容可能な緩衝液を含まない。他の実施形態において、粘度増強製剤または組成物は、薬学的に許容可能な緩衝液を含む。必要に応じて、張性を調節するために、塩化ナトリウムまたは他の等張化剤が随意に使用される。
【0448】
本明細書には、有効医薬成分と増粘剤を含む製剤または組成物が記載される。適切な増粘剤には、ほんの一例として懸濁化剤が挙げられる。1つの実施形態において、粘度の高い製剤または組成物は、薬学的に許容可能な緩衝液を含まない。別の実施形態において、粘度の高い製剤または組成物は、薬学的に許容可能な緩衝液を含む。
【0449】
ほんの一例として、耳に許容可能な増粘剤には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムが挙げられる。本明細書に記載される医薬組成物で使用される他の増粘剤としては、限定されないが、アカシア(アラビアゴム)、寒天、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、アルギン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ヒバマタ、ベントナイト、カルボマー、カラギーナン、カルボポール、キサンタン、セルロース、微結晶性セルロース(MCC)、セラトニア、ツノマタ、デキストロース、ファーセレラン、ゼラチン、ガティゴム、グアーガム、ヘクトライト、ラクトース、スクロース、マルトデキストリン、マンニトール、ソルビトール、ハチミツ、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、アラヤゴム、キサンタンガム、ポリエチレングリコール(例えば、PEG200-4500)、トラガカントゴム、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、オキシポリゼラチン、ペクチン、ポリゲリン、ポビドン、プロピレンカーボネート、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー(PVM/mA)、ポリ(メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(メトキシエトキシエチルメタクリレート)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシルメチルセルロースナトリウム(CMC)、二酸化ケイ素、Splenda(登録商標)(デキストロース、マルトデキストリン、およびスクラロース)、またはこれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態において、粘度増強賦形剤は、メチルセルロース(MC)とCMCの組み合わせである。別の実施形態では、粘度増強剤は、カルボキシメチル化キトサン、またはキチン、およびアルギネートの組み合わせである。本明細書に記載される活性薬剤とのキチンとアルギネートの組み合わせは、制御放出製剤として機能し、製剤からの活性薬剤の拡散を制限する。さらに、カルボキシメチル化キトサンおよびアルギネートの組み合わせは、正円窓膜を通る本明細書に記載される有効成分の透過性を増やすことを助けるために随意に使用される。
【0450】
さらなる実施形態において、耳用の製剤または組成物は、約10~1,000,000センチポアズ、約100~1,000,000センチポアズ、約500~1,000,000センチポアズ、約750~1,000,000センチポアズ;約1000~40,000センチポアズ;約2000~35,000センチポアズ;約3000~30,000センチポアズ;約4000~25,000センチポアズ;約5000~20,000センチポアズ;または、約6000~15,000センチポアズの粘度を提供するのに十分な粘度増強剤または粘度調節剤を含む。
【0451】
さらなる実施形態では、耳の製剤または組成物は、約2cP~約250,000cP、約2cP~約100,000cP、約2cP~約50,000cP、約2cP~約25,000cP、約2cP~約10,000cP、約2cP~約5,000cP、約2cP~約1,000cP、約2cP~約500cP、約2cP~約250cP、約2cP~約100cP、約2cP~約90cP、約2cP~約80cP、約2cP~約70cP、約2cP~約60cP、約2cP~約50cP、約2cP~約40cP、約2cP~約30cP、約2cP~約20cP、または約2cP~約10cPの粘度をもたらすのに十分な粘度増強剤または粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、製剤または組成物は、約2cP、約5cP、約10cP、約20cP、約30cP、約40cP、約50cP、約60cP、約70cP、約80cP、約90cP、約100cP、約200cP、約300cP、約400cP、約500cP、約600cP、約700cP、約800cP、約900cP、約1,000cP、約5,000cP、約10,000cP、約20,000cP、約50,000cP、約100,000cP、または約250,000cPの粘度を有する。
【0452】
いくつかの実施形態において、本明細書に提示される耳用の製剤または組成物の粘度は、本明細書に記載される任意の手段で測定される。例えば、特定の実施形態において、LVDV-II+CP Cone PlateViscometerおよびCone Spindle CPE-40が、本明細書に記載される製剤の粘度を算出するために使用される。他の実施形態において、Brookfield(スピンドルおよびカップ)粘度計が、本明細書に記載される製剤または組成物の粘度を算出するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で言及される粘度範囲は室温で測定される。他の実施形態において、本明細書で言及される粘度範囲は、体温で測定される。
【0453】
耳に許容可能な浸透促進剤
別の実施形態において、製剤または組成物は、1つ以上の浸透促進剤をさらに含む。生体膜への浸透は浸透促進剤により増強される。浸透促進剤は、生体膜での同時投与された物質の輸送を促進する化学物質である。浸透促進剤は化学構造に従って分類される。イオン性と非イオン性の両方の界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-20-セチルエーテル、ラウレス-9、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル(PLE)、Tween80、ノニルフェノキシポリエチレン(NP-POE)、ポリソルベートなどが、浸透促進剤として機能する。胆汁塩(グリココール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、タウロジヒドロフシジン酸ナトリウム、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウムなど)、脂肪酸および誘導体(オレイン酸、カプリン酸、モノ-グリセリドおよびジ-グリセリド、ラウリル酸、アシルコリン、カプリル酸、アシルカルニチン、カプリル酸ナトリウムなど)、キレート剤(EDTA、クエン酸、サリチレートなど)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、デシルメチルスルホキシドなど)、およびアルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、プロパンジオールなど)も、浸透促進剤として機能する。加えて、米国特許第7,151,191号、第6,221,367号、および第5,714,167号に記載されているペプチド様浸透促進剤もさらなる実施形態として企図され、当該文献は開示のために参照することにより本明細書に組み込まれる。これらの浸透促進剤は、アミノ酸とペプチド誘導体で、膜または細胞間の細胞間隙の完全性に影響を与えることなく、受動の細胞間拡散による薬物吸収を可能にする。いくつかの実施形態において、浸透促進剤はヒアルロン酸である。
【0454】
いくつかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は界面活性剤である。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキル-グリコシドおよび/またはアルキルエステルサッカライドを含む界面活性剤である。本明細書で使用されるように、「アルキル-グリコシド」は、疎水性アルキルに結合した任意の親水性サッカライド(例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、またはグルコース)を含む化合物を意味する。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキル-グリコシドを含む界面活性剤であり、アルキル-グリコシドは、アミド結合、アミン結合、カルバメート結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、グリコシド結合、チオグリコシド結合、および/またはウレイド結合によって疎水性アルキル(例えば、約6~25の炭素原子を含むアルキル)に結合した糖を含む。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、オクタデシルα-またはβ-D-マルトシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、およびオクタデシルα-あるいはβ-D-グルコシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、およびオクタデシルα-あるいはβ-D-スクロシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ドデシル-、トリデシル-、およびテトラデシル-β-D-チオマルトシド;ヘプチル-あるいはオクチル-1-チオ-α-あるいはβ-D-グルコピラノシド;アルキルチオスクロース;アルキルマルトトリオシド;スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミド;アミド結合によってアルキル鎖に結合したパラチノーゼまたはイソマルトアミンの誘導体、および尿素によってアルキル鎖に結合したイソマルトアミンの誘導体;スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸ウレイドと、スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミドを含む、界面活性剤である。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキル-グリコシドを含む界面活性剤であり、アルキル-グリコシドは、グリコシド結合によって9~16個の炭素原子のアルキル鎖に結合したマルトース、スクロース、グルコース、またはこれらの組み合わせである(例えば、ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシル-スクロシド;ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシル-グルコシド;ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシル-マルトシド)。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキル-グリコシドを含む界面活性剤であり、アルキル-グリコシドは、ドデシルマルトシド、トリデシルマルトシド、およびテトラデシルマルトシドである。いくつかの実施形態では、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキルグリコシドがテトラデシル-β-D-マルトシドである、アルキル-グリコシドを含む界面活性剤である。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキル-グリコシドを含む界面活性剤であり、アルキル-グリコシドは少なくとも1つのグルコースを有する二糖類である。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、α-D-グルコピラノシル-β-グルコピラノシド、n-ドデシル-4-O-α-D-グルコピラノシル-β-グルコピラノシド、および/またはn-テトラデシル-4-O-α-D-グルコピラノシル-β-グルコピラノシドを含む界面活性剤である。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキル-グリコシドを含む界面活性剤であり、アルキル-グリコシドは、純水中または水溶液中で、約1mM未満の臨界ミセル濃度(CMC)を有する。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキル-グリコシドを含む界面活性剤であり、アルキル-グリコシド内の酸素原子は硫黄原子で置換される。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキル-グリコシドを含む界面活性剤であり、アルキル-グリコシドはβアノマーであるる。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキル-グリコシドを含む界面活性剤であり、アルキル-グリコシドは、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.5%、または99.9%のβアノマーを含む。
【0455】
ある例では、浸透促進剤はヒアルロニダーゼである。ある例では、ヒアルロニダーゼはヒトまたはウシのヒアルロニダーゼである。いくつかの例において、ヒアルロニダーゼは、ヒトのヒアルロニダーゼ(例えば、ヒトの精子で見られるヒアルロニダーゼ、PH20(Halozyme)、Hyelenex(登録商標)(Baxter International,Inc.))である。いくつかの例において、ヒアルロニダーゼは、ウシのヒアルロニダーゼ(例えば、ウシの睾丸のヒアルロニダーゼ、Amphadase(登録商標)(Amphastar Pharmaceuticals)、Hydase(登録商標)(PrimaPHarm,Inc.))である。いくつかの例において、ヒアルロニダーゼは、ヒツジのヒアルロニダーゼ、Vitrase(登録商標)(ISTA Pharmaceuticals)である。ある例では、本明細書に記載されるヒアルロニダーゼは組み換えヒアルロニダーゼである。いくつかの例では、本明細書に記載されるヒアルロニダーゼは、ヒト化組み換えヒアルロニダーゼである。いくつかの例では、本明細書に記載されるヒアルロニダーゼはペグ化ヒアルロニダーゼ(例えば、PEGPH20(Halozyme))である。
【0456】
泡および塗料
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される耳用の治療薬は、耳に許容可能な塗料として分注される。本明細書で使用されるように、塗料(膜形成剤としても知られている)は、溶媒、モノマーまたはポリマー、活性薬剤、および随意に1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤で構成される溶液である。組織への塗布後、溶媒は、モノマーまたはポリマーと活性薬剤で構成された薄い被膜を残して蒸発する。被膜は活性薬剤を保護し、これを塗布部位で固定された状態で維持する。これにより、失われる活性薬剤の量は減少し、これに対応して被験体に送達される量は増加する。非限定的な例として、塗料はコロジオン(例えば、Flexible Collodion(USP))、および、糖類シロキサンコポリマーと架橋剤を含む溶液を含んでいる。コロジオンはピロキシリン(ニトロセルロース)を含むエチルエーテル/エタノールの溶液である。塗布後、エチルエーテル/エタノールの溶液はピロキシリンの薄膜を残して蒸発する。糖類シロキサンコポリマーを含む溶液では、溶媒の蒸発が糖類シロキサンコポリマーの架橋結合を引き起こした後、糖類シロキサンコポリマーは被膜を形成する。塗料に関するさらなる開示については、Remington: The Science and Practice of Pharmacyを参照。この文献は全体として本明細書に組み込まれる。本明細書において使用について企図される塗料は、耳を通る圧力波の伝播を妨げないように、軟性である。さらに、塗料は、液体(すなわち、溶液、懸濁液、またはエマルジョン)、半固体(すなわち、ゲル、泡、ペースト、またはゼリー)、あるいはエアロゾルとして塗布される。
【0457】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される耳の治療薬は、制御放出泡として分注される。本明細書で開示される組成物での使用のための適切な泡状担体の例は、制限されないが、アルギネートおよびその誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびその誘導体、コラーゲン、例えば、デキストラン、デキストラン誘導体、ペクチン、デンプン、さらなるカルボキシル基および/またはカルボキサミド基を有する、および/または、親水性の側鎖を有するデンプンなどの加工デンプン、セルロースおよびそれらの誘導体を含む多糖、寒天およびその誘導体、例えば、ポリアクリルアミドで安定させた寒天、ポリエチレンオキシド、グリコールメタクリレート、ゼラチン、ガム、例えば、キサンタンガム、グアーガム、カラヤガム、ゲランガム、アラビアゴム、トラガカントゴム、およびローカストビーンガム、あるいはこれらの組み合わせを含む。さらに、前述の担体、例えば、アルギン酸ナトリウムの塩も適切である。製剤は随意に、界面活性剤または外用の噴霧剤を含む、泡の形成を促す発泡剤をさらに含む。適切な発泡剤の例としては、セトリミド、レシチン、石鹸、シリコーンなどが挙げられる。Tween(登録商標)などの市販の界面活性剤も適切である。
【0458】
いくつかの実施形態では、他のゲル製剤は、特定の活性薬剤、他の医薬品、または使用される賦形剤/添加剤次第では有用であり、そのようなものとして本開示の範囲内にあるとみなされる。例えば、他の市販のグリセリンベースのゲル、グリセリン由来の化合物、抱合または架橋したゲル、マトリクス、ヒドロゲル、およびポリマー、同様には、ゼラチンとその誘導体、アルギンネート、アルギネートベースのゲル、および、様々な天然ならびに合成のヒドロゲルとヒドロゲル由来の化合物は、本明細書に記載される耳用の製剤中で役に立つことが予想される。いくつかの実施形態では、耳に許容可能なゲルは、限定されないが、アルギネートヒドロゲルSAFR-ゲル(ConvaTec,Princeton,N.J.)、デュオダーム(登録商標)ハイドロアクティブゲル(ConvaTec)、ニューゲル((登録商標)Johnson & Johnson Medical,Arlington,Tex.)、Carrasyn((登録商標)(V)アセマンナンヒドロゲル(Carrington Laboratories,Inc.,Irving,Tex.)グリセリンゲルElta(登録商標)ヒドロゲル(Swiss-American Products,Inc.,Dallas,Tex.)、およびK-Y(登録商標Sterile(Johnson & Johnson)を含む。さらなる実施形態では、生分解性の生体適合性のゲルは、本明細書で記載および開示される耳に許容可能な製剤中に存在する化合物も表す。
【0459】
哺乳動物への投与のために開発されたいくつかの製剤、および、ヒトへの投与のために製剤化された製剤では、耳に許容可能なゲルは、実質的に全重量の製剤を含む。他の実施形態では、耳に許容可能なゲルは、約98重量%または約99重量%もの組成物を含む。実質的に非流体であるか、あるいは実質的に粘着性の製剤が必要な場合には、これは望ましい。さらなる実施形態では、わずかに粘着性の弱いまたはわずかに流動性の強い耳に許容可能な医薬ゲル製剤が望ましい場合、製剤の生体適合性のゲル部分は、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、または少なくとも90重量%もの化合物を含む。こうした範囲内の中間の整数は本開示の範囲内であると企図され、複数の代替的な実施形態では、さらにより流動性の強い(従って粘性の弱い)耳に許容可能なゲル製剤、例えば、混合物のゲルまたはマトリクス成分が約50重量%以下、約40重量%以下、約30重量%以下、または、約15重量%以下、または約20重量%以下の製剤を含むものが製剤化される。
【0460】
耳に許容可能な化学線硬化性ゲル
他の実施形態において、標的とされた耳構造へのあるいはその付近での投与、化学線(あるいは、UV光、可視光、あるいは赤外光を含む光)の使用後に、所望のゲル特性が形成されるように、ゲルは化学線硬化性ゲルである。ほんの一例として、所望のゲル特性を形成するために、光ファイバーは化学線を提供するように使用される。いくつかの実施形態では、光ファイバーとゲル投与装置は単一のユニットを形成する。他の実施形態では、光ファイバーとゲル投与装置は別々に提供される。
【0461】
耳に許容可能な溶媒放出ゲル
いくつかの実施形態では、ゲルは溶媒放出ゲルであり、標的とされる耳構造またはその付近への投与の後に所望のゲル特性が形成され、すなわち、注入されるゲル製剤中の溶媒がゲルを拡散すると、所望のゲル特性が形成される。例えば、スクロースアセテートイソブチレート、薬学的に許容可能な溶媒、1つ以上の添加剤、および活性薬剤を含むを製剤は、正円窓膜またはその近くで投与され:注入された製剤からの溶媒の拡散は、所望のゲル特性を有するデポー剤をもたらす。例えば、溶媒が注入された製剤から迅速に拡散するとき、水溶性の溶媒を用いることで高粘度のデポー剤が得られる。他方で、疎水性の溶媒(例えば、安息香酸ベンジル)を用いると、低粘度のデポー剤が得られる。耳に許容可能な溶媒放出ゲル製剤の1つの例は、DURECT Corporationから発売されているSABER(商標)Delivery Systemである。
【0462】
耳に許容可能な海綿状物質
内耳または中耳における海綿状物質の使用も、本実施形態の範囲内で企図される。いくつかの実施形態において、海綿状材料はヒアルロン酸またはその誘導体から形成される。海綿状物質は望ましい耳用治療薬を含浸させられ、かつ、内耳内に耳用治療剤の制御放出をもたらすように内耳内に配され、あるいは、内耳への耳用治療薬の制御放出をもたらすように正円窓膜に接触させられる。いくつかの実施形態において、海綿状材料は生分解性である。
【0463】
シクロデキストリン製剤/組成物
特異的な実施形態において、製剤または組成物は代替的にシクロデキストリンを含む。シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、またはγ-シクロデキストリンとそれぞれ呼ばれる、6、7、または8のグルコピラノース単位を含む、環状のオリゴ糖である。シクロデキストリンは医薬製剤または組成物に特に有用であると分かっている。シクロデキストリンは、水溶性を増強する親水性の外部と、空洞を形成する疎水性の内部を有する。水性の環境では、他の分子の疎水性部分はしばしば、シクロデキストリンの疎水性の空洞に入って包接化合物を形成する。さらに、シクロデキストリンは、疎水性の空洞の内部にはない分子と他のタイプの非結合型の相互作用を行うこともできる。シクロデキストリンは、各グルコピラノース単位につき3つの遊離ヒドロキシル基、すなわち、α-シクロデキストリン上に18のヒドロキシル基、β-シクロデキストリン上に21のヒドロキシル基、およびγ-シクロデキストリン上に24のヒドロキシル基を有する。これら水酸基のうち1つ以上は、多くの試薬のいずれかと反応して、多種多様なシクロデキストリン誘導体を形成する。シクロデキストリンのより一般的な誘導体のいくつかは、ヒドロキシプロピルエーテル、スルホネート、、およびスルホアルキルエーテルである。β-シクロデキストリンとヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)の構造を以下に示す。
【0464】
【0465】
シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体が薬物の溶解度を改善するために頻繁に使用されるため、医薬製剤または組成物におけるシクロデキストリンの使用は当該技術分野で周知である。包接化合物は、溶解度の増強の多くの例に関与するが、しかしながら、シクロデキストリンと不溶性化合物との他の相互作用も溶解度を改善する。ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)は、発熱物質を含まない生成物として市販されている。これは水に容易に溶ける非吸湿性の白色粉末である。HPβCDは熱的に安定しており、中性のpHでは分解しない。したがって、シクロデキストリンは、組成物または製剤中の治療薬の溶解度を改善する。これに応じて、いくつかの実施形態において、シクロデキストリンは、本明細書に記載される製剤または組成物内に、治療薬あるいは耳に許容可能な耳用薬剤の溶解度を増加させるために含まれる。他の実施形態において、シクロデキストリンはさらに、本明細書に記載される製剤または組成物内で制御放出賦形剤として機能する。
【0466】
使用に好ましいシクロデキストリン誘導体は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチルβ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルγ-シクロデキストリン、硫酸β-シクロデキストリン、硫酸α-シクロデキストリン、およびスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンを含む。
【0467】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物および方法に使用されるシクロデキストリンの濃度は、生理学的性質、薬物動態的性質、副作用または有害事象、製剤または組成物の濃度、あるいは、治療薬またはその塩あるいはプロドラッグに関連する他の要因に従って変化する。製剤または組成物中の他の賦形剤の特性は、いくつかの例においても重要である。ゆえに、本明細書で開示される製剤、組成物、および方法に従って使用されるシクロデキストリンの濃度または量は、実施形態によって変化する。
【0468】
特定の実施形態において、組成物または製剤はさらに、必要に応じて、分散剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムなどの適切な増粘剤を含む。ポリソルベート80、ポリソルベート20、チロキサポール、Cremophor、HCO40などの非イオン性界面活性剤が随意に使用される。特定の実施形態において、調製物は随意に、ホスフェート、シトレート、ボレート、トリスなど適切な緩衝化系を含み、および、水酸化ナトリウムと塩酸などのpH調整剤も随意に本開示の製剤に使用される。必要に応じて、等張性を調節するために、塩化ナトリウムまたは他の等張化剤も使用される。
【0469】
耳に許容可能なマイクロスフェアおよびナノスフェア
本明細書で開示される耳用薬剤および/または他の医薬品は随意に、制御放出粒子、脂質複合体、リポソーム、ナノ粒子、マイクロスフェア、ナノカプセル、または耳用薬剤の局所送達を増強または促進する他の薬剤中に組み込まれる。いくつかの実施形態において、単一の製剤または組成物が使用され、そこでは、少なくとも1つの有効医薬成分が存在し、一方で、他の実施形態では、2つ以上の別個の製剤または組成物の混合物を含む医薬製剤または組成物が使用され、そこでは、少なくとも1つの有効医薬成分が存在する。特定の実施形態において、製剤または組成物は、製剤または組成物の特性を変更または改善するために、1つ以上の薬剤によって架橋される。
【0470】
マイクロスフェアは、参照により本明細書に組み込まれる以下の文献に記載されている:Luzzi, L. A., J. Pharm. Psy. 59:1367 (1970);米国特許第4,530,840号; Lewis, D. H., “Controlled Release of Bioactive Agents from Lactides/Glycolide Polymers” in Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems, Chasin, M. and Langer, R., eds., Marcel Decker (1990);米国特許第4,675,189号; Beck et al., “Poly(lactic acid) and Poly(lactic acid-co-glycolic acid) Contraceptive Delivery Systems,” in Long Acting Steroid Contraception, Mishell, D. R., ed., Raven Press (1983);米国特許第4,758,435号;米国特許第3,773,919号;米国特許第4,474,572号; G. Johns et al. “Broad Applicability of a Continuous Formation Process,” Drug Delivery Technology vol. 4 (Jan./Feb. 2004)。文献はこの開示のために参照により本明細書に組み込まれる。マイクロスフェアとして製剤されるタンパク質治療薬の例は、米国特許第6,458,387号;米国特許第6,268,053号;米国特許第6,090,925号;米国特許第5,981,719号;および、米国特許第5,578,709号を含み、その開示のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0471】
マイクロスフェアは通常球形であるが、不規則に形作られた微粒子も可能である。マイクロスフェアは、サブミクロンから1000ミクロンまでの直径に及ぶ大きさで変動する。好ましくは、サブミクロンから250ミクロンの直径のマイクロスフェアが望ましく、これにより標準的なゲージ針での注射による投与が可能になる。それゆえ、マイクロスフェアは、注射可能な製剤または組成物での使用に許容可能なサイズの範囲で、マイクロスフェアを生成する任意の方法によって調製される。注射は、液体製剤または組成物の投与のために使用される標準的なゲージ針で遂行される。
【0472】
高分子マトリクス材料の適切な例としては、ポリ(グリコール酸)、ポリ-d,l-乳酸、ポリ-l-乳酸、前述のもののコポリマー、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸カプロラクトン)、ポリジオキサノン(polydioxonene)、ポリ無水物、ポリホスファゼン(polyphosphazines)、および、アルブミン、カゼイン、ならびにグリセロールモノステアラートおよびグリセロールジステアラートなどのいくつかのワックスなどを含む天然ポリマーが挙げられる。様々な市販で入手可能なポリ(ラクチド-co-グリコリド)材料(PLGA)は、本明細書で開示される方法で使用される。例えば、ポリ(d,l-乳酸-co-グリコール酸)は、RESOMER RG 503HとしてBoehringer-Ingelheimから市販されている。この製品は50%のラクチドと50%のグリコリドのモルパーセント組成物を有する。これらのコポリマーは、グリコール酸対乳酸の広範な分子量と比率で利用可能である。使用に好ましいポリマーは、ポリ(d,l-ラクチド-co-グリコリド)である。こうしたコポリマーにおけるラクチド対グリコリドの分子比は、約95:5から約50:50の範囲にあることが好ましい。他の実施形態において、ポリエチレングリコール(PEG)を有するPLGAコポリマーは、本明細書で開示される製剤に適切なポリマーマトリクスである。例えば、PEG-PLGA-PEGブロックポリマーは、高い機械的安定度の結果として生じる製剤をもたらす生分解性マトリクスである。PEG-PLGA-PEGブロックポリマーを使用する製剤の機械的安定度は、インビトロで1ヶ月を超えて維持される。いくつかの実施形態において、異なる物理的性質を有する活性薬剤の放出速度を制御するために、PEG-PLGA-PEGブロックポリマーが使用される。特に、いくつかの実施形態において、親水性の活性薬剤は迅速に放出され、例えば、薬物の約50%が24時間後に放出され、残りは約5日かけて放出され、一方で、疎水性の薬剤はさらにゆっくりと放出され、例えば、約80%が8週間後に放出される。
【0473】
ポリマーマトリクス材料の分子量は非常に重要である。分子量は、満足なポリマーコーティングを形成するように十分に高くなければならず、つまり、ポリマーは優れた膜形成剤でなければならない。通常、満足な分子量は5,000~500,000ダルトンの範囲である。ポリマーの分子量は、分子量がポリマーの生分解速度に影響を及ぼすという観点から重要である。薬物放出の拡散メカニズムについて、薬物のすべてが微粒子から放出されて分解するまで、ポリマーは無傷のままでなければならない。薬物は、ポリマー賦形剤のバイオエロード(bioerodes)として微小粒子から放出される。ポリマー材料の適切な選択によって、結果として生じるマイクロスフェアが拡散放出と生分解放出の両方の性質を示すように、マイクロスフェア製剤が形成される。これは多相放出パターンを与えるのに役立つ。
【0474】
化合物がマイクロスフェアでカプセル化される様々な方法が知られている。これらの方法において、有効医薬成分は通常、壁を形成する材料を含有する溶媒において、スターラー、アジテーター、または他の動的な混合技術を用いて、分散または乳化される。その後、溶媒はマイクロスフェアから取り除かれ、その後、マイクロスフェア生成物が得られる。
【0475】
1つの実施形態において、制御放出性の製剤または組成物は、耳用薬剤および/または他の医薬品のエチレン酢酸ビニルコポリマーマトリクスへの取り込みを介して作られる。(米国特許第6,083,534号を参照。この文献は開示のために本明細書に組み込まれる)。別の実施形態において、耳用薬剤は、ポリ(乳酸-グリコール酸)またはポリ-L-乳酸マイクロスフェアに取り込まれる。また別の実施形態において、耳用薬剤はアルギネートマイクロスフェアにカプセル化される。(米国特許第6,036,978号を参照。この文献は開示のために本明細書に組み込まれる)。耳用薬剤または組成物を封入するための生体適合性のメタクリル酸ベースのポリマーは、本明細書で開示される製剤および方法に随意に使用される。広範なメタクリレートベースのポリマー系は、Evonikによって市販されているEUDRAGITポリマーなど、市販で入手可能である。メタクリレートポリマーの1つの有用な態様は、様々なコポリマーを組み込むことにより、製剤の特性が変えられるということである。例えば、ポリ(アクリル酸-co-メチルメタクリル酸)微小粒子は、ポリ(アクリル酸)中のカルボン酸基がムチンと水素結合を形成すると、増強された粘膜付着特性を示す(Park et al, Pharm. Res. (1987) 4(6):457-464)。アクリル酸とメタクリル酸メチルのモノマー間の比率の変動は、コポリマーの特性を調節する役割を果たす。メタクリレートベースの微粒子はタンパク質治療製剤中で使用されている(Naha et al,Journal of Microencapsulation 04 February,2008 (online publication))。1つの実施形態において、本明細書に記載される粘度を増強した耳に許容可能な製剤は、耳用薬剤のマイクロスフェアを含み、マイクロスフェアはメタクリル酸ポリマーまたはコポリマーから形成される。付加的な実施形態において、本明細書に記載される粘度を増強した製剤は耳用薬剤のマイクロスフェアを含み、マイクロスフェアは粘膜付着性である。ポリマーの材料またはマトリクスの、耳用薬剤を含有する中実または中空のスフェアへの取り込みまたは沈着を含む他の制御放出系は、本明細書で開示される実施形態内でも明示的に企図される。耳用薬剤の活性をほとんど失うことなく利用可能な制御放出系のタイプは、本明細書で開示される教示、実施例、および原理を用いて決定される。
【0476】
医薬調製物のための従来のマイクロカプセル化プロセスの一例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,737,337号に示される。カプセル化または埋め込まれる物質は、(分散の準備段階で)振動器および高速スターラーなどを含む従来の混合器を用いて、ポリマーの有機溶液(相A)中に溶解または分散される。溶液または懸濁液中にコア材料を含む相(A)の分散は、水相(B)において、高速ミキサー、振動ミキサー、あるいはスプレーノズルなどの従来のミキサーを使用して再度行われ、この場合、マイクロスフェアの粒径は、相(A)の濃度だけではなく、エマルジョン(emulsate)またはマイクロスフェアの大きさによって決定される。有効医薬成分のマイクロカプセル化のための従来の技術を用いて、活性薬剤およびポリマーを含有する溶媒がしばしば、比較的長時間にわたって、撹拌、振盪、振動、または他のいくつかの動的な混合技術によって不混和溶液中で乳化または分散されると、マイクロスフェアが形成される。
【0477】
マイクロスフェアの構造のための従来の方法は、米国特許第4,389,330号と米国特許第4,530,840号にも記載され、両文献は参照により本明細書に組み込まれる。望ましい薬剤は適切な溶媒に溶解または分散する。薬剤を含有する培地に、所望の充填量の活性薬剤の生成物をもたらす活性成分に対するある量のポリマーマトリクス材料が与えられる。随意に、マイクロスフェア生成物の成分のすべてが溶媒培地中で混合される。薬剤およびポリマーマトリクス材料に適切な溶媒は、アセトン、ハロゲン化炭化水素、例えば、クロロホルム、塩化メチレンなど、芳香族炭化水素化合物、ハロゲン化芳香族炭化水素化合物、環状エーテル、アルコール、酢酸エチルなどの有機溶媒を含む。
【0478】
いくつかの実施形態において、制御放出性の耳に許容可能なマイクロスフェアは、制御放出性の耳に許容可能な粘度を増強した製剤または組成物中で組み合わされる。
【0479】
本明細書で開示される耳に許容可能な治療薬との使用のための適切な制御放出性の耳に許容可能なマイクロスフェアの例は、CHRONIJECT(商標)、すなわちPLGAベースの制御放出性の注射可能な薬物送達系を含む。Chronijectのマイクロスフェアは、疎水性および親水性の両方の耳用治療薬に有用であり、放出の達成された持続時間は、1週間ほどの短さから1年ほどの長さにまで及ぶ。マイクロスフェアの放出特性は、ポリマーおよび/またはプロセスの条件を修正することにより達成され、耳用治療薬の最初の放出またはバースト(burst)も利用可能である。製造プロセスは、製造された生成物の直接的な治療用途を可能にする無菌条件に適合可能でである。Chronijectの製造プロセスは、米国特許第5,945,126号;第6,270,802号、および第 6,3361,798号に記載され、これらの文献はそれぞれ、開示目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0480】
いくつかの実施形態において、溶媒中の成分の混合物は、連続相処理培地において乳化され;連続相処理培地とは、示された成分を含有する微小液滴の分散が連続相培地内で形成されるようなものである。必然的に、連続相処理培地および有機溶媒は不混和でなければならず、最も一般的には水であるが、キシレンおよびトルエン、ならびに、合成油および天然油などの非水系の培地が使用可能である。通常、界面活性剤は、微小粒子が凝集するのを妨げ、かつ、エマルジョン中の溶媒微小液滴のサイズを制御するために、連続相処理培地に加えられる。好ましい界面活性剤-分散培地の組み合わせは、水混合物中で1~10重量%のポリビニルアルコールである。分散液は、その混合された材料の機械的な攪拌によって形成される。エマルジョンは、連続相処理培地に、活性薬剤-壁形成材料溶液を数滴加えることによっても形成される。エマルジョンの形成中の温度はとりわけ重要ではないが、場合によっては、マイクロスフェアのサイズと品質、および連続相中の薬物の溶解度に影響を与える。連続相にできるだけ薬剤が少ないことが望ましい。さらに、使用される溶媒と連続相処理培地によっては、温度は低すぎてはならず、さもなければ、溶媒と処理培地が凝固したり、または、処理培地が実用的な目的には粘度がありすぎるか、あるいは、温度が高すぎて処理培地が蒸発したり、または、流体処理培地が維持されなくなる。さらに、培地の温度は、マイクロスフェアに取り込まれている特定の薬剤の安定性が悪影響を受けるほど高くてはあってはならない。従って、分散プロセスは、安定な操作条件を維持する温度で行われ、好ましい温度は、選択された薬物と賦形剤に依存して、約30℃~60℃である。
【0481】
いくつかの実施形態において、形成される分散液は、安定なエマルジョンであり、この分散液から、有機溶媒の不混和流体が、溶媒除去プロセスの第1工程において随意に部分的に除去される。溶媒は、加熱、減圧の適用、またはその両方の組み合わせなどの一般的な技術によって容易に除去される。微少液滴から溶媒を蒸発させるために利用される温度は重要ではないが、所定の微小粒子の調製に使用される薬剤を分解するほど高すぎてはならず、かつ、壁形成材料に欠陥を引き起こすような急激な速度で溶媒を蒸発させるほど高いものであってはならない。通常、溶媒の5~75%が、第1の溶媒除去工程で除去される。
【0482】
いくつかの実施形態において、第1段階の後、溶媒不混和流体培地中の分散した微小粒子は、任意の従来の分離手段によって流体培地から単離される。従って、例えば、流体は、マイクロスフェアからデカントされるか、マイクロスフェアの懸濁液はろ過される。必要に応じて、分離技術のさらに別の様々な組み合わせを用いる。
【0483】
いくつかの実施形態において、連続相処理培地からのマイクロスフェアの分離後、マイクロスフェア中の溶媒の残りは、抽出によって除去される。この段階で、マイクロスフェアは、界面活性剤と共に、または界面活性剤を用いずに、第1の工程で使用された同じ連続相処理培地中に、あるいは別の液体中に、懸濁される。抽出培地は、マイクロスフェアから溶媒を除去するが、マイクロスフェアを溶解しない。抽出中、溶解された溶媒を含む抽出培地は随意に除去され、新しい抽出培地に取り替えられる。これは連続的に行うことが最良である。明らかに、所定のプロセスの抽出培地の速度は変動可能であり、これはプロセスが行われている時に容易に決定され、したがって、速度に対する正確な限界をあらかじめ決定してはならない。溶媒の大部分がマイクロスフェアから除去された後に、マイクロスフェアを空気にさらして、あるいは真空乾燥や乾燥剤による乾燥などの他の従来の乾燥技術によって乾燥させる。最大80重量%、好ましくは最大60重量%のコア充填(core loadings)が得られるため、このプロセスは薬剤をカプセル化する際に非常に効果的である。
【0484】
いくつかの実施形態において、有効医薬品を含む制御放出マイクロスフェアは、スタティックミキサーの使用により調製される。スタティックミキサーあるいは静止型ミキサーは、多くの静的な混合剤を収容する導管あるいはチューブからなる。スタティックミキサーは、比較的短い長さの導管の中で、かつ、比較的短時間で均質な混合をもたらす。スタティックミキサーを用いると、ブレードなどのミキサーの一部が流体を通って動くというよりも、流体がミキサーを通って移動する。
【0485】
いくつかの実施形態において、スタティックミキサーは、エマルジョンを作るために使用される。エマルジョンを形成するためにスタティックミキサーを使用する場合、混合される様々な溶液や相の密度や粘度、相の容積比、相の間の界面張力、スタティックミキサーのパラメータ(導管の直径、混合要素の長さ;混合要素の数)、およびスタティックミキサーを介する直線速度を含む複数の因子が、エマルジョンの粒径を決定する。温度は、密度、粘度、および界面張力に影響するため、可変である。制御変数は、直線速度、ずり速度、およびスタティックミキサーの単位長さ当たりの圧力降下である。
【0486】
有効医薬品を含むマイクロスフェアを作製するために、有機相と水相が実施形態によっては組み合わされる。有機相と水相は、ほとんどあるいは実質的に不混和であり、水相は、エマルジョンの連続相を形成する。有機相は、壁を形成するポリマーまたはポリマーマトリクス材料に加えて、有効医薬品を含む。いくつかの実施形態において、有機相は、有機溶媒または他の適切な溶媒に有効医薬品を溶かすことにより、あるいは、活性薬剤を含む分散液またはエマルジョンを形成することにより調製される。有機相と水相は、2つの相がスタティックミキサーを介して同時に流れるようにポンプで送り込まれ、それにより、ポリマーマトリクス材料にカプセル化される有効医薬品を含有するマイクロスフェアを含むエマルジョンが形成される。有機相と水相は、有機溶媒を抽出あるいは除去するために、スタティックミキサーを介して大量のクエンチ液にポンプで送り込まれる。有機溶媒は、クエンチ液の中で洗浄または撹拌されている間に、マイクロスフェアから除去される。マイクロスフェアをクエンチ液で洗浄した後、ふるいなどによって単離させ、乾燥させる。
【0487】
いくつかの実施形態において、スタティックミキサーを用いてマイクロスフェアが調製されるプロセスは、活性薬剤をカプセル化するために使用される様々な技術に対して随意に実行される。いくつかの実施形態において、プロセスは、上記で議論される溶媒抽出技術に限定されず、他のカプセル化技術と共に使用される。例えば、このプロセスは、いくつかの例において相分離カプセル化技術と共に使用される。そうするために、ポリマー溶液中に懸濁または分散される有効医薬品を含む有機相が調製される。非溶媒の第2相は、ポリマーおよび活性薬剤のための溶媒を含んでいない。好ましい非溶媒の第2相はシリコンオイルである。有機相と非溶媒の相は、スタティックミキサーによってヘプタンなどの非溶媒のクエンチ液にポンプで送り込まれる。半固体の粒子は、完全な硬化と洗浄のためにクエンチされる。マイクロカプセル化のプロセスは、噴霧乾燥、溶媒蒸発、蒸発と抽出の組み合わせ、および溶解押出も含む。
【0488】
別の実施形態では、マイクロカプセル化プロセスは、単一の溶媒とともにスタティックミキサーの使用を含む。このプロセスは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第08/338,805号に詳細に記載されている。代替的なプロセスは、共溶媒とともにスタティックミキサーを使用することを含む。生分解性ポリマー結合剤と有効医薬品を含む生分解性マイクロスフェアを調製するためのこのプロセスにおいて、ハロゲン化炭化水素を含まない少なくとも2つの実質的に無毒の溶媒の混合物が使用されることで、薬剤とポリマーの両方を溶解させる。溶解した薬剤とポリマーを含む溶媒混合物を水溶液中に分散させることで、液滴が形成される。その後、結果としてできるエマルジョンは、混合物の溶媒の少なくとも1つを好ましくは含む水性抽出培地に加えられ、それによって、各溶媒の抽出速度は制御され、そうするとすぐに、薬学的に活性な薬剤を含む生分解性のマイクロスフェアが形成される。このプロセスには抽出培地があまり必要とされないという利点がある。というのも、水中の1つの溶媒の溶解度が他のものとは実質的に無関係であり、かつ、特に抽出が困難な溶媒では溶媒の選択が増えるからである。
【0489】
ナノ粒子は、約100nm以下のサイズの材料構造である。粒子表面の溶媒との相互作用が、密度の差を克服するほど十分に強いことから、医薬組成物におけるナノ粒子の1つの用途は、懸濁液の形成である。ナノ粒子は滅菌ろ過にさらされるほど十分に小さいことから、ナノ粒子懸濁液は滅菌される(米国特許第6,139,870号)。ナノ粒子は、界面活性剤、リン脂質、または脂肪酸の溶液または水溶性分散液中に乳化した、少なくとも1つの疎水性の、水不溶性の、または水に分散しないポリマーまたはコポリマーを含む。有効医薬成分はポリマーまたはコポリマーを用いてナノ粒子へと導入される。
【0490】
脂質ナノ粒子は制御放出構造として作用し、正円窓膜を貫通し、内耳の標的に到達することと同様に、本明細書で企図される。Zou et al. J. Biomed. Materials Res.,online pub. (April 24, 2008)を参照。脂質ナノ粒子は、1.028gのカプリン酸およびカプリル酸トリグリセリド(LABRAFAC WL1349;平均分子量(avg.mw)512)、0.075の大豆レシチン(LIPOID S75-3;69%のホスファチジルコリンおよび他のリン脂質)、0.846gの界面活性剤(SOLUTOL HS15)、ポリエチレングリコール660ヒドロキシステアレートおよび遊離ポリエチレングリコール660の混合物;0.089gのNaClおよび2.962gの水gを乳化させることによって形成される。この混合物を室温で攪拌することで、水中オイルエマルジョンが得られる。磁気攪拌下において4℃/minの速度で徐々に加熱した後、70℃近くで短期間の透明化が起こり、85℃で逆相(油中水滴)が得られる。その後、冷却と加熱の3サイクルを4 ℃/minの速度で85℃と60℃の間で適用し、0℃近くの温度で冷たい水の中で急速に希釈させて、ナノカプセルの懸濁液が生成される。内耳の活性薬剤をカプセル化するために、この薬剤が冷水による希釈の直前に加えられる。
【0491】
いくつかの例において、薬剤は、内耳用の活性薬剤の水溶性ミセル溶液と共に、90分間インキュベートすることによって脂質ナノ粒子に入れられる。懸濁液はその後、15分毎にボルテックスされ(vortexed)、その後、1分間氷水浴でクエンチされる。
【0492】
適切な界面活性剤は、ほんの一例として、コール酸またはタウロコール酸の塩である。タウロコール酸は、コール酸とタウリンから形成された複合体であり、完全に代謝可能なスルホン酸の界面活性剤である。タウロコール酸のアナログである、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)は、自然発生する胆汁酸であり、タウリンとウルソデオキシコール酸(UDCA)の複合体である。他の自然発生するアニオン性界面活性剤(例えば、硫酸ガラクトセレブロシド)、中性の界面活性剤(例えば、ラクトシルセラミド)、または双性イオン性界面活性剤(例えば、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、パルミトイルカルニチン)が、いくつかの例では、ナノ粒子を調製するために使用される。
【0493】
リン脂質は、例として、天然の、合成の、または半合成のリン脂質から選択され;レシチン、例えば、精製した卵または大豆レシチン(レシチンE100、レシチンE80、およびホスホリポン、例えば、ホスホリポン90)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルグリセロホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、およびホスファチジン酸、またはこれらの混合物が特によく使用される。
【0494】
脂肪酸は、例として、ラウリン酸、ミリスチン酸(mysristic acid)、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラギジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、α-リノール酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸などから選択される。
【0495】
適切な界面活性剤は好ましくは、既知の有機および無機の薬学的賦形剤から選択される。そのような賦形剤は様々なポリマー、低分子量オリゴマー、天然の生成物、および界面活性剤を含んでいる。好ましい表面改質剤は非イオン性およびイオン性界面活性剤を含んでいる。いくつかの実施形態については、2つ以上の表面改質剤は組み合わせて使用される。
【0496】
界面活性剤の代表的な例は、塩化セチルピリジニウム、ゼラチン、カゼイン、レシチン(リン脂質)、デキストラン、グリセロール、アラビアガム、コレステロール、トラガント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセロール、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール、ドデシルトリメチル臭化アンモニウム、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、HPC-SL、およびHPC-L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロースフタラート、非晶質セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エチレンオキシドおよびホルムアルデヒドを有する4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル(tetaamethylbutyl))-フェノールポリマー(チロキサポール、スペリオン(superione)、およびトリトンとしても知られている)、ポロキサマー、ポロキサミン、ジミリストイルホスファチジルグリセロールなどの荷電リン脂質、ジオクチルスルホスクシネート(DOSS);Tetronic 1508、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、Duponol P、Tritons X-200、Crodestas F-110、p-イソノニルフェノキシポリ-(グリシドール)、Crodestas SL-40.RTM.(Croda, Inc.);および、C18H37CH2(CON(CH3)-CH2(CHOH)4(CH2OH)2であるSA9OHCO(Eastman Kodak Co.);デカノイル-N-メチルグルカミド;n-デシルβ-D-グルコピラノシド;n-デシルβ-D-マルトピラノシド;n-ドデシルβ-D-グルコピラノシド;n-ドデシルβ-D-マルトシド;ヘプタノイル-N-メチルグルカミド;n-ヘプチル-β-D-グルコピラノシド;n-ヘプチルβ-D-チオグルコシド;n-ヘキシルβ-D-グルコピラノシド;ノナノイル-N-メチルグルカミド;n-ノイルβ-D-グルコピラノシド;オクタノイル-N-メチルグルカミド;n-オクチル-β-D-グルコピラノシド;オクチルβ-D-チオグルコピラノシド;などを含む。
【0497】
こうした界面活性剤のほとんどは既知の医薬賦形剤であり、American Pharmaceutical Associationと、The Pharmaceutical Society of Great Britain (The Pharmaceutical Press,1986)とによって合同で出版されたHandbook of Pharmaceutical Excipientsに詳細に記載されており、当該文献は引用により本明細書に詳細に組み込まれる。
【0498】
疎水性で、水不溶性で、水非分散性のポリマーまたはコポリマーは、生体適合性かつ生分解性のポリマー、例えば、乳酸ポリマーあるいはグリコール酸ポリマーおよびそれらのコポリマー、あるいはポリ乳酸/ポリエチレン(または、ポリプロピレン)オキシドコポリマーから、好ましくは、分子量が1000~200,000のポリヒドロキシブチル酸ポリマー、少なくとも12個の炭素原子を含む脂肪酸のポリラクトン、またはポリ酸無水物を含むものから選択される。
【0499】
1つの実施形態において、ナノ粒子は疎水性有効成分との使用に適している。いくつかの実施形態において、有効成分は、ヒトまたは動物の医薬での使用のための主要なクラスの薬剤から選択される。いくつかの実施形態において、有効成分は、化粧品または農業食品産業またはスポーツ医学における使用のための成分から、あるいは診断用薬剤から選択される。一例として、医薬品産業での対象である有効成分は、非限定的な様式で、抗リウマチ剤、非ステロイド剤、抗炎症剤(例えば、NSAID)、鎮痛剤、鎮咳剤および向精神薬、ステロイド、バルビツール酸塩、抗菌剤、抗アレルギー剤、抗喘息薬、鎮痙剤、抗分泌性および心血管作動薬、脳血管拡張薬、大脳および肝臓の保護剤、胃腸管の治療薬、抗癌剤または抗ウイルス剤、ビタミン、避妊薬、ワクチンなどから選択される。
【0500】
ナノ粒子は、溶媒の蒸発の技術によって、リン脂質の水性の分散液または溶液、あるいはオレイン酸塩の水性分散液または溶液から得られ、これに活性な有効成分と疎水性で、非水溶性で、かつ水非分散性のポリマーまたはコポリマーを含む不混和性の有機相が加えられる。その混合物をあらかじめ乳化し、その後、均質化と有機溶媒の蒸発に晒すことで、超極小のナノ粒子の水性懸濁液が得られる。
【0501】
ナノ粒子を作り上げるための様々な方法が利用される。これらの方法は、自由噴流拡大、レーザー蒸発、放電加工、電気爆発、および化学蒸着などの蒸着方法;機械的な研磨(例えば、「パールミリング(pearlmilling)」技術、 Elan Nanosystems)、超臨界CO2、および溶媒置換後の界面沈着を含む物理的方法を含む。1つの実施形態では、溶媒置換方法が使用される。この方法により生成されたナノ粒子のサイズは、有機溶媒中のポリマーの濃度;混合速度;および、プロセスに利用される界面活性剤に敏感である。連続流ミキサーは、小さな粒径を確保するために必要な乱流を与える。ナノ粒子を調製するために使用される連続流混合デバイスの1つのタイプが記載されている(Hansen et al.J Phys Chem 92,2189-96,1988)。他の実施形態において、超音波装置、フロースルー(flow through)ホモジナイザーまたは超臨界CO2デバイスが、ナノ粒子を調製するために使用される。
【0502】
直接合成によって適切なナノ粒子の均質性が得られない場合、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて均一性の高い薬物含有粒子を生成し、上記粒子には生成に関与する他の成分が含まれていない。ゲルろ過クロマトグラフィーなどのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)技術は、遊離薬物から粒子結合薬物を分離するために、あるいは薬物含有ナノ粒子の適切なサイズ範囲を選択するために、使用される。Superdex 200、Superose 6、およびSephacryl 1000などの様々なSEC媒体が市販されており、および、混合物のサイズに基づく分画のために当業者に容易に利用される。加えて、ナノ粒子は、遠心分離、膜ろ過によって、および、他の分子ふるいデバイス、架橋したゲル/物質、および膜の使用によって、精製される。
【0503】
いくつかの実施形態において、耳用薬剤製剤または組成物をカプセル化するために、リポソームまたは脂質粒子も利用される。水溶性培地中にゆっくりと分散したリン脂質は、多層構造の小胞を形成し、捕捉された水性媒体の領域は脂質層を分離する。これらの多層構造の小胞の超音波処理または激しい攪拌により、一般にリポソームと呼ばれる、約10~1000nmの大きさの単層の小胞が形成される。こうしたリポソームは、薬物運搬体として多くの利点を持つ。これらは生物学的に不活性で、生分解性で、無毒で、および非抗原性である。リポソームは様々な大きさで、および変動する組成物と表面特性を伴って形成される。加えて、これらは、広範囲の小分子薬物を捕捉し、かつリポソーム崩壊の部位で薬物を放出することができる。
【0504】
本組成物での使用に適切なリン脂質は、例えば、ホスファチジルコリン、エタノールアミン、およびセリン、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、プラズマロゲン、ホスファチジン酸、およびセレブロシド、具体的には、非毒性で薬学的に許容可能な有機溶媒においてピロキシカムと共に溶解可能なものである。好ましいリン脂質は、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホズファチジルコリン、ホスファチジルグリセロールなどと、それらの混合物、とりわけ、レシチン、例えば、大豆レシチンである。本製剤に使用されるリン脂質の量は、約10%から約30%、好ましくは約15%から約25%の範囲であり、具体的には約20%である。
【0505】
親油性の添加剤は、リポソームの特徴を選択的に修飾するために有効に利用される。そのような添加剤の例は、例えば、ステアリルアミン、ホスファチジン酸、トコフェロール、コレステロール、コレステロールヘミスクシネート、およびラノリン抽出物を含む。使用される親油性の添加剤の量は0.5から8%、好ましくは1.5から4%に及び、具体的には約2%である。通常、親油性の添加剤の量対リン脂質の量の比率は、約1:8~約1:12の範囲であり、特に約1:10である。上記リン脂質、脂溶性添加物、および有効成分ピロキシカムは、上記成分を溶解する非毒性の薬学的に許容可能な有機溶媒系と共に用いられる。上記溶媒系は有効医薬成分を完全に溶解するだけでなく、安定した単一の二層のリポソームの製剤を可能としなければならない。溶媒系は、約8~約30%の量のジメチルイソソルビドおよびテトラグリコール(グリコフロール、テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル)を含有している。上記溶媒系において、ジメチルイソソルビドの量対テトラグリコールの量の比率は、約2:1から約1:3、具体的には約1:1から約1:2.5に及び、好ましくは約1:2である。従って、最終の組成物中のテトラグリコールの量は、5から20%まで、とりわけ、5から15%まで変化し、好ましくは、約10%である。最終の組成物中のジメチルイソソルビドの量は、3から10%まで、とりわけ、3から7%まで変化し、好ましくは、約5%である。
【0506】
本明細書で以下に使用される「有機成分」との用語は、上記リン脂質、親油性添加剤、および有機溶媒を含む混合物を指す。
【0507】
有効医薬成分は有機成分中に溶解する。有効成分の微粉化形態を使用してその溶解を容易にすることが有利である。最終製剤中の有効成分の量は0.1から5.0%におよぶ。加えて、抗酸化物などの他の成分は有機成分に加えられる。例としては、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、アスコルビルパルミテート、アスコルビルオレエートなどが挙げられる。
【0508】
いくつかの実施形態において、本製剤の水性成分は主に水を含み、電解液、緩衝系、防腐剤などの様々な添加剤を随意に含む。適切な電解液は、金属塩、具体的にはアアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩、例えば、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、好ましくは塩化ナトリウムを含む。いくつかの例において、電解液の濃度は広範囲にわたり変化し、最終製剤中の成分の各々の性質および濃度に依存し、かつ、リポソーム膜を安定させるのに十分でなければならない。本組成物において、塩化ナトリウムの量は0.05から0.2%に及ぶ。緩衝系は、リン酸、コハク酸、または好ましくはクエン酸などの適切な量の酸と、塩基、具体的には水酸化ナトリウムの混合物を含む。上記緩衝系は、3から9の範囲内、代替的には6から8の範囲内、あるいは5~7の範囲間で製剤のpHを維持しなければならない。微生物による分解を防ぐために本組成物に利用される防腐剤は、いくつかの実施形態において、安息香酸、メチルパラベン、およびプロピルパラベンを含む。
【0509】
リポソーム製剤は、(a)血管中で約60-80℃にリン脂質および有機溶剤系を加熱し、有効成分を溶解し、その後、追加の製剤化剤を加え、および完全な溶解が得られるまで混合物を撹拌することによって;(b)第2の容器に90~95℃まで水溶液を加熱し、その中に防腐剤を溶解し、混合物を冷却させて、その後、補助的な製剤化剤の残りと水の残りを加え、完全な溶解が得られるまで攪拌し;そのようにして水溶性成分を調製することによって;(c)有機相を直接水性成分へと移し、一方で、高性能混合デバイス、具体的には高剪断力ミキサーを組み合わせて均質化することによって;および、(d)結果として生じる混合物に増粘剤を加え、一方でさらに均質化することによって、随意に調製される。好ましくは、水性成分は、ホモジナイザーを備えた適切な容器に入れられ、均質化は、有機成分の注入中に大きな乱流を作ることによって達成される。混合物に高剪断力を及ぼす任意の混合手段またはホモジナイザーが使用される。通常、約1,500から20,000rpmまでの、とりわけ、約3,000から約6,000rpmまでの速度が可能なミキサーが使用される。プロセスの工程(d)で使用するのに適切な増粘剤は、例えば、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはそれらの混合物であり、セルロース誘導体が好ましい。増粘剤の量は、他の成分の性質と濃度に依存し、通常は約0.5から1.5%に及び、具体的には約1.5%である。リポソーム製剤の調製中に使用される材料の分解を防ぐためには、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスですべての溶液をパージすることと、不活性な環境下ですべての工程を行うことが有用である。上記方法によって調製されたリポソームは通常、脂質二重層中で結合された活性成分のほとんどを含んでおり、カプセル化されていない材料からリポソームを分離することは要求されない。
【0510】
耳に許容可能な脂質製剤/組成物
いくつかの実施形態において、薬物送達用の製剤または組成物は、脂質ベースの製剤または組成物である。いくつかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達用の製剤または組成物は、脂肪乳剤(例えば、マイクロエマルジョンおよび水中油型エマルション)、脂質小胞(例えば、リポソーム、ミセル、およびトランスファーソーム)、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達用の製剤または組成物は、リポソームである脂質小胞である。いくつかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達用の製剤または組成物は、リン脂質ベースの製剤または組成物である。いくつかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達用の製剤または組成物は、リン脂質ベースの製剤または組成物であり、天然または合成のリン脂質は、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リゾリン脂質、卵または大豆のリン脂質、あるいはそれらの組み合わせである。リン脂質は随意に塩化または脱塩され、水素化または部分的に水素化され、天然、合成、あるいは半合成である。いくつかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達製剤は、リン脂質ベースの製剤(例えば、水素化または非水素化リン脂質、レシチン、ホスファチジルコリン(C8-C18)、ホスファチジルエタノールアミン(C8-C18)、ホスファチジルグリセロール(C8-C18))であり、リン脂質は、ホスホリポン90H(1,2-ジア-シル-SN-グリセロ-3-ホスファチジルコリン)、卵のリン脂質P123、リポイドE80;ホスホリポン80H(登録商標)、80G(登録商標)、90H(登録商標)、および100H(登録商標)、またはその組み合わせである。
【0511】
いくつかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達用の製剤または組成物は、水溶性防腐剤(すなわち、微生物が実質的に増殖および繁殖するのを防ぐ成分)を含む。いくつかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達用の製剤または組成物は、水溶性防腐剤を含み、防腐剤は、ベンゼトニウム塩(例えば、塩化ベンゼトニウム)、安息香酸、および/またはベンジルコニウム塩(例えば、塩化ベンジルコニウム)である。本明細書で使用されるように、水溶性とは、成分が約100μg/mL(0.01%)から約0.01mg/mL(0.1%)の水中での溶解度を持つことを意味する。
【0512】
いくつかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達用の製剤または組成物は、脂溶性抗酸化物を含む。いくつかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達用の製剤または組成物は、ビタミンEを含む。
【0513】
いくつかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達用の製剤または組成物は、約2%w/w未満、約1.5%未満、約1.0%未満、約0.5%未満、または約0.25%未満の粘度増強剤を含む。
【0514】
いくつかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達用の製剤または組成物は、メチルセルロースまたは他の粘度増強剤の存在せずに、すべて58℃で、少なくとも約10,000センチポアズ、少なくとも約20,000センチポアズ、少なくとも約30,000センチポアズ、少なくとも約40,000センチポアズ、少なくとも約50,000センチポアズ、少なくとも約60,000センチポアズ、または少なくとも約70,000センチポアズの粘度を有する。いくつかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達用の製剤または組成物は、膜貫通を増強するためにオレイルアルコールを含む。
【0515】
いくつかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達用の製剤または組成物は、浸透促進剤(例えば、単独で、または、組み合わせて、低分子量アルコール(例えば、エタノール、オレイルアルコール)、アルキルメタノールスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、脂肪族アミン(例えば、オレイルアミン)、脂肪酸(例えば、オレイン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、ミリスチン酸)、グルコン酸(C-1におけるアルデヒド基のカルボキシル基への酸化によりグルコースから導かれるヘキソン酸)およびその誘導体、例えば、グルコノラクトン(とりわけ、グルコノ-D-ラクトン、グルコースの酸化により生成されるキレート剤)、アゾン(azone)、およびプロピレングリコール)を含む。いくつかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達用の製剤または組成物は浸透促進剤であり、浸透促進剤はプロピレングリコールであり、単独で、あるいはオレイン酸またはエタノールなどの別の促進剤と共に最大1:1の比率で用いられる。いくつかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達用の製剤または組成物は浸透促進剤であり、浸透促進剤はグルコノラクトン(例えば、グルコノ-D-ラクトン)であり、単独で、またはプロピレングリコールなどの別の促進剤と共に最大1:1の比率で用いられる。
【0516】
いくつかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達用の製剤または組成物は、約25%v/v以下の1つ以上の化学浸透促進剤、最も好ましくは約2%から15%v/vを含むが、正確な製剤または組成物は、それに含まれる賦形剤、防腐剤、水、pHモジュレーターなどの存在および量に依存して変化する。
【0517】
いくつかの実施形態において、本明細書中の活性薬剤で充填された調製リポソームは、粘性剤、粘膜付着剤、または吸収浸透促進剤と共に優しく混合される。例えば、リポソームに充填された活性薬剤は、キトサン-グリセロホスフェートの組成物と混合される。リポソームのサイズは随意に、制御放出粒子の放出動態を調整するために増減される。さらなる態様において、放出動態は、上記のようなリポソームの脂質組成を変化させることによって変えられる。
【0518】
本明細書に記載される製剤または組成物は、任意の適切な形態で投与される。非限定的な例として、製剤は、耳用滴剤として、鼓室内注射剤として、泡として、あるいは耳用の塗料として投与される。製剤または組成物は、カニューレおよび/または注射を介して、滴剤ディスペンサーを介して、外耳道中の噴霧として、あるいは綿棒を介した塗料として投与される。
【0519】
制御放出動態
すべての薬物送達技術の目標は、治療上の利点を得るために正しい時間で作用部位に適切な量の薬物を送達することである。一般に、制御放出性の薬物製剤は、放出部位および体内の放出時間に関して、薬物放出の制御を与える。本明細書で議論されるように、制御放出は、単独での即時放出以外の任意の放出を指す。いくつかの例において、制御放出は、遅延放出、持続放出、徐放、および/またはパルス放出(例えば、持続放出と即時放出の組み合わせ)、あるいはこれらの組み合わせである。制御放出によって多くの利点が与えられる。まず、医薬品の制御放出により、投薬の頻度が減り、処置の繰り返しを最小限に抑える。第2に、制御放出による治療は、薬物をより効率的に利用し、残留物として残る化合物が減る。第3に、制御放出は、疾患の部位に送達デバイスまたは製剤を配することにより、局所的な薬物送達の可能性を与える。またさらに、制御放出は、各々が特有の放出プロファイルを有する2つ以上の様々な薬物を投与および放出する機会、または、単一の投与ユニットによって様々な速度で、または様々な継続期間にわたって同じ薬物を放出する機会を与える。
【0520】
特定の実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物は、全身曝露を伴わない疾患部位において、治療上有効な量の少なくとも1つの有効医薬成分を提供する。追加の実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物は、検出可能な全身曝露を伴わない疾患部位において、治療上有効な量の少なくとも1つの有効医薬成分を提供する。
【0521】
特定の実施形態において、製剤または組成物は、治療薬の放出速度を増加させる賦形剤を含む。特定の実施形態において、製剤または組成物は、治療薬の放出速度を下げる賦形剤を含む。
【0522】
製剤または組成物は、最大数週間の期間を含む、望ましい期間にわたって薬物送達を提供するように設計される。そのため、患者は、薬物の繰り返しの投与を必要とせず、あるいは、最小の、より少ない、およびあまり頻繁でない投与しか必要としない。
【0523】
内耳に送達される薬物は一般に、経口経路、静脈内経路、または筋肉内経路を介して全身投与される。しかしながら、内耳に起因する病理に対する全身投与は、全身の毒性および副作用の可能性を増大させ、薬物の非生産的な分布をもたらし、この分布では、高レベルの薬物が血清中で見られ、これに対応して低レベルの薬物が内耳で見られる。
【0524】
1つの実施形態において、本明細書で開示される製剤または組成物はさらに、製剤または組成物から、または1分、5分、10分、15分、30分、60分、あるいは90分以内の、治療薬または耳用薬剤の即時放出をもたらす。他の実施形態において、治療上有効な量の少なくとも1つの治療薬、または耳用薬剤は、即時に、または1分、5分、10分、15分、30分、60分、または90分以内に、製剤または組成物から放出される。製剤または組成物の付加的な実施形態は、本明細書に含まれる製剤の粘度を増強する薬剤も含む。
【0525】
即時または迅速な放出の選択は、異なる粘度増強ポリマー、多成分製剤または組成物、およびナノスフェア(またはサブミクロンスフェア)の使用を含む。加えて、マイクロスフェアは、即時放出成分および制御放出成分で随意に覆われる。
【0526】
特定の実施形態において、製剤または組成物は、少なくとも1つの有効医薬成分の即時放出を提供する。製剤または組成物の付加的な実施形態は、本明細書に含まれる製剤または組成物を濃密にする増粘剤も含む。他の実施形態において、製剤または組成物は、少なくとも1つの有効医薬成分の即時放出を提供するリポソーム製剤または組成物を含む。特定の他の実施形態において、製剤または組成物は、少なくとも1つの有効医薬成分の即時放出を提供するシクロデキストリン含有製剤または組成物を含む。さらなる実施形態において、製剤または組成物は、少なくとも1つの有効医薬成分の即時放出を提供するマイクロスフェア製剤または組成物を含む。さらなる実施形態において、製剤または組成物は、少なくとも1つの有効医薬成分の即時放出を提供するナノ粒子製剤または組成物を含む。
【0527】
他のまたはさらなる実施形態において、製剤または組成物は、少なくとも1つの治療薬、あるいは耳用薬剤の制御放出性の製剤または組成物を提供する。特定の実施形態において、製剤または組成物からの少なくとも1つの耳用薬剤の拡散は、5分、または15分、または30分、または1時間、または4時間、または6時間、または12時間、または18時間、または1日、または2日、または3日、または4日、または5日、または6日、または7日、または10日、または12日、または14日、または18日、または21日、または25日、または30日、または45日、または2か月、または3か月、または4か月、または5か月、または6か月、または9か月、または1年を超える期間にわたって生じる。他の実施形態において、治療上有効な量の少なくとも1つの耳用薬剤は、5分、または15分、または30分、または1時間、または4時間、または6時間、または12時間、または18時間、または1日、または2日、または3日、または4日、または5日、または6日、または7日、または10日、または12日、または14日、または18日、または21日、または25日、または30日、または45日、または2か月、または3か月、または4か月、または5か月、または6か月、または9か月、または1年を超える期間にわたって、製剤または組成物から放出される。
【0528】
他の実施形態において、製剤または組成物は、即時放出性と持続放出性の両方の治療薬あるいは耳用薬剤を提供する。さらに他の実施形態において、製剤または組成物は、0.25:1の比率、または0.5:1の比率、または1:1の比率、または1:2の比率、または1:3の比率、または1:4の比率、または1:5の比率、または1:7の比率、または1:10の比率、1:15の比率、または1:20の比率の即時放出性と持続放出性の製剤または組成物を含む。さらなる実施形態において、製剤または組成物は、即時放出性の第1の耳用薬剤、および、持続放出性の第2の耳用薬剤または他の治療薬を提供する。さらに他の実施形態において、製剤または組成物は、少なくとも1つの耳用薬剤、および少なくとも1つの治療薬の、即時放出性と持続放出性の製剤または組成物を提供する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、0.25:1の比率、または0.5:1の比率、または1:1の比率、または1:2の比率、または1:3の比率、または1:4の比率、または1:5の比率、または1:7の比率、または1:10の比率、または1:15の比率、または1:20の比率の、第1の耳用薬剤および第2の耳用薬剤それぞれの即時放出性と持続放出性の製剤または組成物を提供する。
【0529】
特定の実施形態において、製剤または組成物は、本質的に全身曝露を伴わない疾患の部位において、治療上有効な量の少なくとも1つの耳用薬剤を提供する。さらなる実施形態において、製剤または組成物は、基本的に検出可能な全身曝露を伴わない疾患の部位において、治療上有効な量の少なくとも1つの耳用薬剤を提供する。他の実施形態において、製剤または組成物は、基本的に検出可能な全身曝露を少しだけまたは全く伴わない疾患の部位において、治療上有効な量の少なくとも1つの耳用薬剤を提供する。
【0530】
いくつかの例において、従来の耳用の製剤または組成物(例えば、緩衝液中のDSP)の投与後(例えば、鼓室内注射)、個体の外リンパにおける薬物の濃度は急激に上昇し(約1-2時間でCmax)、その後、Cminよりも下まで小さくなる(taper off)。いくつかの例において、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物の投与は、Cmax対Cminの比率を小さくし、Cminに基づく持続性のPKプロファイルを有する、より大きな曲線下面積(AUC)を提供する。特定の例において、本明細書に記載される制御放出性の製剤または組成物は、Cmaxまでの時間を遅らせる。特定の例において、薬物の制御安定性放出は、薬物の濃度が最小治療濃度(すなわち、Cmin)以上である時間を延長する。いくつかの例において、本明細書に記載される製剤または組成物により提供される耳用薬剤の制御放出は、少なくとも1日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、14日、3週、1ヶ月、または6ヶ月の期間にわたって、Cminよりも大きな濃度で耳用薬剤の放出を可能にする。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、内耳における薬物の滞留時間を延長する。特定の例において、いったん薬物の薬物曝露(例えば、外リンパ中の濃度)が定常状態に達すると、外リンパ中の薬物濃度は、長期間(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、1ヶ月、または6ヶ月)の間、その治療量またはその付近にとどまる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、耳の構造(例えば、内耳、および/または内リンパ、および/または外リンパ)における薬物の生物学的利用能および/または定常状態レベルを増大させる。
【0531】
いくつかの例では、本明細書に記載される制御放出性の耳用の製剤または組成物(例えば、治療薬を含む製剤)の投与後、1つ以上の耳用受容体の結合定数に対する薬物濃度は、生物学的に有意なPKプロファイルまたは治療効果に必要とされる活性薬剤の最低濃度を判定することに関連する。いくつかの例において、本明細書に記載される制御放出性の耳用の製剤または組成物の投与後、ほんの一例として、ミネラルコルチコイド受容体(MR)およびグルココルチコイド受容体(GR)などの2つの受容体の結合定数に対する薬物濃度は、Cminまたは生物学的に最も有意なPKプロファイルを判定することに関連する。いくつかの例において、薬物は、最初に第1の受容体(例えば、GR)を飽和させ、次に第2の受容体(例えば、MR)を飽和させ、第1の受容体が飽和され、かつ、第2の受容体がまだ飽和されないときでも治療上の利点が存在する。いくつかの例において、第2の受容体の飽和に関する薬物濃度はCminとほぼ同じである。このような例のいくつかにおいて、例えば、薬物濃度が第2の受容体の飽和レベルおよび/またはCminよりも下に低下すると、次の投与量が投与される。
【0532】
即時放出性、遅延放出性、および/または持続放出性の耳用の組成物または製剤の組み合わせは、賦形剤、希釈剤、安定化剤、等張化剤、および本明細書で開示される他の組成物だけでなく、他の医薬品とも組み合わされる。そのため、使用される耳用薬剤、望ましい濃さまたは粘度、あるいは選択される送達の方法に依存して、本明細書で開示される実施形態の代替的な態様は、即時放出性、遅延放出性、および/または持続放出性の実施形態と組み合わされる。
【0533】
特定の実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物の薬物動態は、試験動物(ほんの一例として、モルモット、チンチラ、またはラットを含む)の正円窓膜またはその付近に、製剤を注射することによって決定される。決定された期間(例えば、1または2週間の期間にわたって製剤または組成物の薬物動態を試験するために、6時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、および14日)において、試験動物は屠殺され、内耳を取り除かれ、耳用薬剤の存在について試験される。必要に応じて、耳用薬剤のレベルは他の器官で測定される。さらに、耳用薬剤の全身レベルが、試験動物から血液サンプルを採取することによって測定される。製剤または組成物が聴覚を妨害するか否かを判定するために、試験動物の聴覚が随意に試験される。
【0534】
代替的に、内耳が(試験動物から取り除かれるように)提供され、耳用薬剤の移動が測定される。また別の代案として、正円窓膜のインビトロのモデルが提供され、耳用薬剤の移動が測定される。
【0535】
滞留時間
いくつかの実施形態において、製剤または組成物は、約5分、約15分、約30分、約1時間、約4時間、約6時間、約12時間、約18時間、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約10日、約12日、約14日、約18日、約21日、約25日、約30日、約45日、約2か月、約3か月、約4か月、約5か月、約6か月、約9か月、または約1年の、耳における滞留時間を有する。いくつかの実施形態において、製剤または組成物は、少なくとも5分、少なくとも15分、少なくとも30分、少なくとも1時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも18時間、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも10日、少なくとも12日、少なくとも14日、少なくとも18日、少なくとも21日、少なくとも25日、少なくとも30日、少なくとも45日、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、または少なくとも1ヶ月の、耳における滞留時間を有する。
【0536】
いくつかの実施形態において、耳は外耳、中耳、または内耳である。いくつかの実施形態において、耳は中耳である。いくつかの実施形態において、耳は内耳である。いくつかの実施形態において、耳は外耳である。いくつかの実施形態において、外耳は、外耳道、鼓膜の外面、またはそれらの組み合わせである。
【0537】
耳への投与の形態
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、外耳道へと、または、耳の前庭内で投与される。例えば、前庭と蝸牛器(cochlear apparatus)へのアクセスは、正円窓膜、卵円窓/アブミ骨底板と、輪状靱帯を含む中耳を通じて、および、耳のカプセル/側頭骨を通じて生じる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物の耳への投与は、活性薬剤の全身投与に関連する毒性(例えば、肝毒性、心臓毒性、胃腸の副作用、および肝臓毒性)を回避する。いくつかの例では、耳の中での局在化された投与は、活性薬剤の全身投与を伴うことなく、活性薬剤が、標的器官(例えば、内耳)に到達することを可能にする。いくつかの例において、耳への局所的な投与は、それ以外の方法では容量を制限する全身毒性を有する活性薬剤に対して高い治療指標を提供する。
【0538】
本明細書では、本明細書に記載される耳の障害を改善または減らす、耳用の製剤または組成物のための処置の形態が提供される。内耳に送達される薬物は、経口経路、静脈経路、または筋肉内経路で全身的に投与されてきた。しかしながら、内耳に対する局所的な病理に関する全身投与により、全身への毒性および副作用の可能性を増大し、薬物の非生産的な分布が形成され、この分布では、血清中で高濃度の薬物が見られ、これに呼応して内耳では低濃度の薬物が見られる。
【0539】
本明細書では、鼓室内注射を介する正円窓膜またはその付近での上記耳用の製剤または組成物の投与を含む方法が提供される。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物は、正円窓または蝸牛窓稜の領域あるいはその付近への、耳介後部の切開および外科的処置を介した進入を通じて、正円窓または蝸牛窓稜あるいはその付近に投与される。代替的に、本明細書で開示される製剤または組成物は、注射器および針を介して適用され、針は鼓膜を通って挿入され、正円窓または蝸牛窓稜の領域へと導かれる。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤または組成物はその後、局所的な処置のために、正円窓または蝸牛窓稜あるいはその付近に配される。他の実施形態において、本明細書で開示される製剤または組成物は、患者に移植されるマイクロカテーテルを介して適用され、またさらなる実施形態では、本明細書で開示される組成物は、ポンプ装置を介して正円窓膜またはその付近に投与される。またさらなる実施形態において、本明細書で開示される製剤または組成物は、マイクロインジェクションデバイスよって正円窓膜またはその付近に投与される。また他の実施形態において、本明細書で開示される製剤または組成物は鼓室で適用される。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤または組成物は鼓膜で適用される。また他の実施形態において、本明細書で開示される製剤または組成物は耳道上または耳道中に適用される。本明細書に記載される製剤または組成物、およびその投与形態も、内耳区画の直接的な滴下または灌流の方法に適用可能である。したがって、本明細書に記載される製剤または組成物は、非限定的な例として、蝸牛形成術(cochleostomy)、内耳手術(labyrinthotomy)、乳突削開術、アブミ骨切除術、内リンパ球形嚢手術(endolymphatic sacculotomy)などを含む外科手術に有用である。
【0540】
鼓室内注射
いくつかの実施形態において、鼓室膜を可視化するために外科用顕微鏡が使用される。いくつかの実施形態において、任意の適切な方法(例えば、フェノール、リドカイン、およびキシロカインの使用)により、鼓膜に麻酔がかけられる。いくつかの実施形態において、鼓膜の前部上方および後部下方象限に麻酔がかけられる。
【0541】
いくつかの実施形態において、鼓膜の後ろに気体を放つために、鼓膜に穿刺穴が空けられる。いくつかの実施形態において、鼓膜の後ろに気体を放つために、鼓膜の前部上方象限に穿刺穴が空けられる。いくつかの実施形態において、穿刺穴は針(例えば、25ゲージ針)で空けられる。いくつかの実施形態では、穿刺穴はレーザー(例えば、CO2レーザー)で空けられる。1つの実施形態において、送達系は、鼓膜を貫通するとともに、正円窓膜または内耳の蝸牛窓稜に直接到達可能な注射器および注射針の装置である。
【0542】
1つの実施形態では、針はゲル製剤の即時送達に使用される皮下注射針である。皮下注射針は、一回用の針または使い捨て針である。いくつかの実施形態において、注射器は、本明細書で開示される薬学的に許容可能な耳用薬剤を含有する組成物の送達のために利用され、注射器はプレスフィット(Luer)またはツイストオン(Luer-lock)フィッティングを有する。1つの実施形態において、注射器は、皮下注射用注射器である。別の実施形態において、注射器は、プラスチックまたはガラスで作られている。さらに別の実施形態において、皮下注射用注射器は、一回使用の注射器である。さらなる実施形態において、ガラス注射器は、滅菌することができる。さらに別の実施形態において、滅菌は、オートクレーブによって行う。別の実施形態において、注射器は円筒状注射器本体を備え、製剤は使用前に保管される。他の実施形態において、注射器は、円筒状注射器本体を備え、本明細書で開示されるような薬学的に許容可能な耳用の製剤または組成物は使用前に保存され、この使用は適切な薬学的に許容可能な緩衝液との混合を有利に可能にする。他の実施形態において、注射器は、内部に含まれる耳用薬剤または他の医薬化合物を安定させるか、さもなければ安定的に保存するために、他の賦形剤、安定化剤、懸濁化剤、希釈剤、またはこれらの組み合わせを含む。
【0543】
いくつかの実施形態では、注射器は、円筒状の注射器本体を含み、注射器本体は区画分けされ、各区画が耳に許容可能な耳用ゲル製剤の少なくとも1つの成分を保存することができることを特徴とする。さらなる実施形態において、区画化される本体を有する注射器は、中耳または内耳への注入の前に、成分を混合させることができる。他の実施形態において、送達システムは、多くの注射器を備え、多くの注射器の各注射器は製剤の少なくとも1つの成分を含有し、各成分が注射前にあらかじめ混合されるか、あるいは注射後に混合されるようになっている。さらなる実施形態において、本明細書で開示される注射器は、少なくとも1つのリザーバーを備え、少なくとも1つのリザーバーは、耳用薬剤、あるいは薬学的に許容可能な緩衝液、粘度増強剤、またはこれらの組み合わせを含む。市販の注射装置は、鼓室内注射を行うために、注射器バレルを備えたすぐに使えるプラスチック注射器、針を備えた針アセンブリ、プランジャーロッドを備えたプランジャー、および、保持フランジのような最もシンプルな形態で随意に使用される。
【0544】
いくつかの実施形態において、針は、本明細書に記載される製剤または組成物を送達するために使用される。いくつかの実施形態において、針は、鼓膜の後部下方象限を穿刺する。いくつかの実施形態において、針は標準ゲージの針である。いくつかの実施形態において、針は細いゲージの針である。いくつかの実施形態において、針は18ゲージより幅広い針である。別の実施形態において、針のゲージは約18ゲージから約30ゲージである。いくつかの実施形態において、針のゲージは約20ゲージから約30ゲージである。いくつかの実施形態において、針のゲージは約25ゲージから約30ゲージである。いくつかの実施形態において、針のゲージは、約18ゲージ、約19ゲージ、約20ゲージ、約21ゲージ、約22ゲージ、約23ゲージ、約24ゲージ、約25ゲージ、約26ゲージ、約27ゲージ、約28ゲージ、約29ゲージ、または約30ゲージである。さらなる実施形態において、針は25ゲージの針である。本明細書で開示される製剤または組成物の濃さまたは粘度に依存して、注射器または皮下注射針のゲージの水準は適宜変更される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物は液体であり、細いゲージの針またはカニューレ(例えば、22ゲージの針、25ゲージの針、あるいはカニューレ)を介して投与され、投与後の鼓膜の損傷を最小限にする。本明細書に記載される製剤または組成物は、患者に対する不快感を最小限にして投与される。
【0545】
いくつかの実施形態において、正円窓膜を可視化するために耳内視鏡(otoendoscope)(例えば、直径約1.7mm)が使用される。いくつかの実施形態において、正円窓膜の閉塞物(例えば、誤った正円窓膜、太い栓、線維組織)が取り除かれる。
【0546】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤または組成物は正円窓膜に注入される。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される0.1~0.5ccの製剤または組成物が正円窓膜に注入される。
【0547】
いくつかの実施形態において、鼓膜の穿刺穴は自然治癒するように放置される。いくつかの実施形態において、紙パッチ鼓膜形成術(paper patch myringoplasty)は訓練された医師により行われる。いくつかの実施形態では、鼓室形成術は訓練された医師により行われる。いくつかの実施形態において、個体は水を避けるように助言される。いくつかの実施形態において、水および他の環境要因に対する障壁として、ワセリンゼリーに浸された綿ボールが利用される。
【0548】
他の送達経路
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤または組成物は、外耳道、鼓膜の外面、またはこれらの組み合わせなどの外耳に局所的に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物は、鼓膜を介して投与されない。
【0549】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤または組成物は内耳に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤または組成物は、アブミ骨底板での切開を介して内耳に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤または組成物は、蝸牛形成術を介して蝸牛に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤または組成物は、前庭器(例えば、三半規管または前庭)に投与される。
【0550】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤または組成物は、注射器および針を介して適用される。他の実施形態において、本明細書で開示される製剤または組成物は、患者に差し込まれるマイクロカテーテルを介して適用される。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤または組成物は、ポンプデバイスを介して投与される。またさらなる実施形態において、本明細書で開示される製剤または組成物は、マイクロインジェクションデバイスを介して適用される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物は、人工装具、人工内耳、持続注入ポンプ、またはウイックを介して投与される。
【0551】
いくつかの実施形態において、送達デバイスは、中耳および/または内耳への治療薬の投与のために設計された装置である。ほんの一例として、GYRUS Medical GmbHは、正円窓小窩の可視化および正円窓小窩への薬物送達のためのマイクロオトスコープを提供し;Arenbergは米国特許第5,421,818号、第5,474,529号、および第5,476,446号において、内耳構造に流体を送達するための治療デバイスを記載している。これらはそれぞれ、開示目的のために参照により本明細書に組み込まれる。開示のために参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許出願第08/874,208号は、内耳に治療薬を送達するための流体輸送管を埋め込む外科的方法について記載している。開示のために参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2007/0167918号は、鼓室内の流体サンプリングおよび薬剤投与について併用される耳用アスピレーターと投薬ディスペンサーについてさらに記載している。
【0552】
投与量
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、制御放出製剤であり、現在の標準治療と比べて少ない投与頻度で投与される。特定の例において、耳用の製剤または組成物が鼓室内注射を介して投与されるとき、投与頻度の減少は、中耳および/または内耳の疾患、障害、疾病の処置を受ける個体における複数回の鼓室内注射によって引き起こされる不快感を和らげる。特定の例では、鼓室内への注射の投与頻度の減少は、鼓膜に対する永久的な傷(例えば、穿孔)のリスクを減らす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物は、活性薬剤の内耳環境への一定速度、除放速度、持続速度、遅延速度、またはパルス速度での放出をもたらし、ゆえに、耳の障害の処置における薬物曝露のばらつきを防ぐ。
【0553】
本明細書に記載される化合物を含む組成物は、予防的および/または治療的な処置のために投与される。治療的用途において、製剤または組成物は、疾患、疾病、または障害の症状を治癒するか、少なくとも部分的に止めるのに十分な量で、疾患、疾病、または障害に既に苦しんでいる患者に投与される。この使用に対する効果的な量は、疾患、症状または障害の重症度および経過、薬歴、患者の健康状態および薬物応答性、ならびに処置する医師の判断による。
【0554】
こうした量に相当する所定の薬剤の量は、特定の化合物、疾患の状態およびその重症度などの因子にによって変わるが、それにもかかわらず、例えば、投与される特定の薬剤、投与経路、処置される疾病、および処置される被験体または宿主を含む、症例を取り囲む特定の状況に従って、当該技術分野で知られている方式で慣例的に決定される。しかしながら、一般に、成人の処置に用いられる投与量は通常、1回の投与につき0.02-50mgの幅であり、好ましくは1回の投与につき1-15mgである。いくつかの実施形態において、望ましい投与量は、1回の投与量、あるいは、同時に(または短期間にわたり)または適切な間隔で投与される分割投与量で慣習的に提供される。
【0555】
投与の頻度
患者の疾病が改善しない場合、医師の判断で、化合物の投与は長期的に、すなわち、患者の疾患または疾病の症状を改善するか、さもなければ、制御または制限するために、患者の生涯にわたる期間を含む長期間にわたって投与される。
【0556】
患者の状態が改善する場合、医師の判断で、化合物の投与は継続的に行われる。代替的に、投与される薬物の投与量は、一定の長さの時間にわたって一時的に減らされ、あるいは一時的に中止される(すなわち、「休薬期間」)。休薬期間の長さは、2日から1年の間で変化し、ほんの一例として、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、35日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、280日、300日、320日、350日、および、365日を含む。休薬期間中の投与量減少は、10%-100%であり、ほんの一例として、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、および100%を含む。
【0557】
いったん患者の状態が改善すると、必要に応じて維持用量が投与される。次に、投与量または投与頻度またはその両方は、症状に応じて、改善された疾患、障害、または疾病が維持される水準になるまで減らされる。しかしながら、患者は、実施形態によっては、症状の再発後、断続的な処置を長期的に必要とする。
【0558】
いくつかの実施形態において、最初の投与は特定の製剤の投与であり、その後の投与は異なる製剤または有効医薬成分の投与である。
【0559】
耳の手術およびインプラント
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される医薬製剤および組成物は、インプラント(例えば、蝸牛インプラント)と組み合わせて(例えば、移植、短期間の使用、長期間の使用、または除去)使用される。本明細書で使用されるように、インプラントは、内耳または中耳用の医療デバイスを含み、それらの例としては、人工内耳、聴覚保護装置、聴力改善装置、短電極、マイクロプロテーゼ、またはピストン状プロテーゼ;針;幹細胞移植;薬物送達装置;任意の細胞ベースの治療薬などが挙げられる。いくつかの事例では、インプラントは、難聴を経験している患者とともに使用される。いくつかの事例では、難聴は出生時に見られる。いくつかの事例では、難聴は、蝸牛構造の急速な閉塞および深刻な難聴失を伴う骨新生および/または神経損傷につながる、AIED、細菌性髄膜炎などの疾病に関連付けられる。
【0560】
いくつかの事例では、インプラントは、耳における免疫細胞または幹細胞移植片である。いくつかの事例では、インプラントは、耳の後ろに置かれた外側部分、および深刻な聾または重度に難聴である人に音の感覚を提供する助けとなる、皮膚の下に外科的に入れられる第2の部分を有する、小型電子デバイスである。例として、こうした蝸牛用医療デバイスインプラントは、耳の損傷部分を迂回して、聴神経を直接刺激する。いくつかの事例では、人工内耳は、片耳聾に使用される。いくつかの事例では、人工内耳は、両耳の聾のために使用される。
【0561】
いくつかの実施形態において、耳介入処置(例えば、鼓室内注射、アブミ骨切除術、医療デバイスの埋込み、または細胞ベースの移植)と組み合わせた、本明細書に記載される製剤、組成物、またはデバイスの投与は、耳構造に対する損傷、例えば、外部耳介入処置(例えば、耳での外部デバイスおよび/または細胞の設置)によって引き起こされる、刺激、細胞損傷、細胞死、骨新生、および/またはさらなる神経退化を遅らせるか、防ぐ。いくつかの実施形態において、インプラントと組み合わせた、本明細書に記載される製剤またはデバイスの投与は、インプラント単独と比較して、難聴のより有効な回復を可能にする。
【0562】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物またはデバイスの投与は、基礎疾患(例えば、細菌性髄膜炎、自己免疫性耳疾患(AIED))によって引き起こされた蝸牛構造に対する損傷を減少させ、蝸牛デバイスの移植を成功させる。いくつかの実施形態において、耳の外科手術、医療デバイスの埋め込み、および/または細胞移植と共に、本明細書に記載される製剤、組成物、またはデバイスの投与は、耳の外科手術、医療デバイスの埋め込み、および/または細胞移植に関連する細胞損傷および/または細胞死(例えば、耳感覚毛細胞の死滅および/または損傷)を減らすか、防ぐ。
【0563】
いくつかの実施形態では、蝸牛インプラントまたは幹細胞移植を伴う本明細書に記載される製剤または組成物デバイスの投与には、栄養作用がある(例えば、細胞の健全な成長、および/または、インプラントまたは移植片の領域における組織の治癒を促進する)。いくつかの実施形態では、耳の手術または鼓室内注射の処置中に栄養作用が望まれる。いくつかの実施形態では、医療機器の設置後または細胞移植後に栄養作用が望まれる。そのような実施形態のいくつかにおいて、本明細書に記載される製剤、組成物、またはデバイスは、蝸牛への直接注入によって、蝸牛形成術を介して、または正円窓膜上への沈着によって投与される。
【0564】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物の投与は、耳の手術、医療デバイスの埋め込み、あるいは細胞移植に関連する炎症および/または感染を減少させる。いくつかの例において、本明細書に記載される製剤を用いる手術領域の灌流は、手術後および/または移植後の合併症(例えば、炎症、有毛細胞の損傷、神経退化、骨新生など)を減らすか、取り除く。いくつかの例において、本明細書に記載される製剤または組成物を用いる手術領域の灌流は、手術後または埋め込み後の回復時間を短くする。いくつかの実施形態において、医療デバイスは、耳への埋め込み前に本明細書に記載される製剤または組成物で覆われる。
【0565】
1つの態様では、本明細書に記載される製剤または組成物、およびその投与の様式は、内耳区画の直接灌流の方法に適用可能である。ゆえに、本明細書に記載される製剤または組成物は、耳の介入処置と組み合わせて有用である。いくつかの実施形態では、耳介入は、移植処置(例えば、蝸牛における聴力デバイスの埋め込み)である。いくつかの実施形態では、耳介入は、非限定的な例として、蝸牛切開術、迷路切開術、乳突起削開術、アブミ骨切除術、アブミ骨切開術、内リンパ球形嚢手術、鼓膜切開術などを含む、外科的処置である。いくつかの実施形態において、内耳の区画は、耳の介入処置の前、耳の介入処置の間、耳の介入処置の後、あるいはこれらの組み合わせで、本明細書に記載される製剤または組成物を用いて灌流される。
【0566】
いくつかの実施形態において、灌流が耳介入処置と組み合わせて実行されるとき、製剤または組成物は即時放出組成物である。そのような実施形態のいくつかにおいて、本明細書に記載される即時放出製剤は、持続放出成分を実質的に含まない。
【0567】
キットおよび他の製品
本開示は、哺乳動物の疾患または障害の症状を予防、処置、または改善するためのキットも提供する。そのようなキットは、本明細書で開示されるような薬学的に許容可能な組成物の1つ以上、およびキットを使用するための説明書を含む。本開示は、内耳障害を抱えている、抱えている疑いがある、あるいはそれを進行させる危険があるヒトなどの哺乳動物における疾患、機能障害、または障害の症状を処置、緩和、減少、または改善するための薬剤の製造における、製剤または組成物の1つ以上の使用についても企図している。
【0568】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるキットは、鼓膜および/または正円窓を貫通する針を備える。いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるキットはさらに、浸透促進剤(例えば、アルキルグリコシドおよび/または糖類アルキルエステル)を含むヒドロゲルを備える。
【0569】
いくつかの実施形態において、キットは、バイアル、チューブなどの1以上の容器を収容するために区画化された運搬装置、パッケージ、または容器を備え、容器の各々は、本明細書中に記載される方法で使用される別の要素の1つを含む。適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、注射器、および試験管を含む。他の実施形態において、容器はガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成される。
【0570】
本明細書で提供される製品は包装材料を含む。医薬品を包装する際に使用するための包装材料が本明細書で示される。例えば、米国特許第5,323,907号、第5,052,558号、および第5,033,252号を参照。医薬包装材料の例としては、限定されないが、ブリスターパック、瓶、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、注射器、瓶、および選択された製剤と意図された投与ならびに処置の様式に適切な任意の包装材料が挙げられる。多様な化合物の製剤または組成物、および本明細書で提供される製剤または組成物は、内耳への治療薬の持続放出投与によって利益を得ることになる、任意の疾患、障害、または疾病の様々な処置として企図される。
【0571】
いくつかの実施形態において、キットは典型的には、1以上の追加の容器を備え、その各々は、本明細書に記載される製剤または組成物の使用のための商業上およびユーザーの観点から望ましい様々な材料(随意に濃縮された形態の試薬、および/またはデバイス)の1以上を有する。こうした材料の非限定的な例としては、限定されないが、緩衝液、賦形剤、フィルター、針、注射器;担体、包装、容器、バイアル、および/または、内容物および/または使用説明書、ならびに使用説明書を備える添付文書を列挙した試験管のラベルが挙げられる。説明書のセットも通常、含まれる。
【0572】
さらなる実施形態では、ラベルは容器上にあるか容器に関連付けられる。さらなる実施形態において、ラベルを形成している文字、数字、または他の符号が添付され、容器自体に成型され、あるいはエッチングされる場合、ラベルは容器上にあり;ラベルは、例えば、添付文書として、容器を保持するレセプタクルまたは運搬装置内に存在するとき、容器に関連付けられる。他の実施形態において、ラベルは、内容物が特定の治療用途に使用されるべきであることを示すために使用される。さらに他の実施形態において、ラベルはさらに、本明細書に記載される方法などにおいて、内容物の使用のための指示を示す。
【0573】
ある実施形態では、医薬組成物または製剤は、本明細書で提供される化合物を含む1つ以上の単位剤形を含むパックまたはディスペンサーデバイスで提示される。他の実施形態では、ブリスターパックなどのパックは、金属またはプラスチックホイルを含む。さらなる実施形態では、パックまたはディスペンサーデバイスは投与の説明書を伴う。さらなる実施形態では、パックまたはディスペンサーには、医薬品の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって規定された形態の容器に関連する通知も添えられ、通知は、人間または動物への投与に関して薬物の形態の政府機関による承認を反映したものである。別の実施形態では、こうした通知は例えば、処方薬について米国食品医薬品局で承認されたラベルであるか、承認された製品の挿入物である。さらに他の実施形態において、適合性のある医薬担体で製剤化される本明細書で提供される化合物を含む組成物も調製され、適切な容器に入れられ、表示された疾病の処置に関してラベルを付けられる。
【実施例】
【0574】
実施例1-インビボでの騒音性難聴に対するBDNFの効果
難聴のいくつかの形態において、聴性脳幹反応(ABR)I波振幅の減少と、蝸牛の内毛細胞のシナプスリボンシナプスの喪失が一般的な特徴である。BDNFは、蝸牛中のらせん神経節ニューロンに対する栄養的なサポートをもたらし、その生存とシナプスの完全性を促進することを知られている。騒音曝露のげっ歯類モデルは、難聴に対するBDNFのインビボでの有効性(とりわけ、I波振幅の減少とシナプス変性症)を試験するために使用することができる。
【0575】
ポロキサマー407中のBDNF
16%のポロキサマー407ゲルを冷たい方法を用いて調製した。簡潔に言えば、ポロキサマー407の16%w/w保存液を、冷たい緩衝溶液(10mM PBS、pH7.4)にゆっくりと加えて調製した。ろ過により滅菌を達成した。0.05~5.0mg/mlのBDNFの濃度範囲に達するために、ヒト組み換えBDNFを適切な量のポロキサマー407溶液で懸濁した。
【0576】
騒音性難聴/シナプス変性症
およそ生後10-11ヶ月のオスのラット(Charles River)を、被験体(1つの群当たりN=6)とした。任意の手順の前に、腹腔内経路を介してキシラジン(10mg/kg)とケタミン(90mg/kg)の組み合わせを最大で1時間使用して動物に麻酔をかけた。必要に応じて、もとの投与量の10分の1を表す手術時の追加免疫を腹腔内投与した。
【0577】
騒音曝露-麻酔をかけられた動物(一度に4匹)を筐体に入れ、騒音に晒した。音響外傷の特徴は以下のとおりであった:1時間の単一期間、8-16kHzの狭帯域で105dBのSPLの音圧レベル。騒音はGrason Stadler white雑音発生器を使用して送られ、Krohn Hite 3750 unitを通ってフィルター処理され、Crown D75 unitを使用して増幅され、JBLスピーカー(2446Hモデル)を介して伝えられた。処置後、動物は飼育器に戻された。騒音曝露は、Acoustical Interface Precision Microphone Systemと、Tucker Davis Technologies システムを使用して、広範囲な周波数で80-115dBのSPLで較正された。
【0578】
鼓室内注射-正円窓窩への注入に好都合な角度まで頭が傾くように、各動物を配置した。簡潔に言えば、手術用顕微鏡で可視化した状態で、25G(ゲージ)11/2インチの針を使用して、20μlの製剤を、鼓膜を介して上方の後部象限へ注射した。2μL/秒の速度で灌流ポンプを使用して製剤を送達した。動物を横臥位に置くことによって、正円窓膜との接触を30分間維持した。手順中に、および、回復するまで、動物を意識が回復するまで温度制御した(40°C)温熱パッドに置き、意識が回復すると飼育器に戻した。
【0579】
聴性脳幹反応(ABR)評価(I波)-手術中に、固定と緩和を確保するのに十分な麻酔深度を維持することが必要な場合に、さらなる麻酔薬(キシラジンとケタミン)が投与された。ABRは、電気的かつ聴覚的に保護されたチャンバーに一度に片耳ずつ記録された。針電極を頭頂(活性)に置き、すぐに被験耳(基準)と対側耳(接地)の耳介の下に置いた。刺激を示すとともにABR反応を記録するために、Tucker Davis Technologies(TDT) System III ハードウェアとSigGen/BioSig ソフトウェア(TDT)を用いた。トーンは、動物の耳の5cm上に置かれたTucker-DavisオープンフィールドES1ドライバーを介して送られた。音響の較正は、TDTソフトウェア(SigCal)を用いて行われ、閾値は、動物中の閾値の記録と同一の状態のdB SPLとして表現された。刺激提示(15msのトーンバースト、1msの上昇/下降時間を有する)を1秒ごとに10示した。最大512の応答を各刺激レベルに対して平均化した。反応は、4つの周波数:4kHz、10kHz、20kHz、および40kHzで5dBの漸減工程で刺激レベルに対して集められた。閾値は、応答が観察された最低刺激レベル間で補間され、5dB低いと応答は観察されなかった。その後、閾値は、これらの2つの刺激条件間の平均値として報告された。I波は、60-80dBのSPL間の範囲の強度からのI波振幅を平均化することによって定量化された。
【0580】
組織採取-IT注射の28日後に、動物は以下のように屠殺された。キシラジン(10mg/kg)とケタミン(90mg/kg)の組み合わせを用いて、動物に麻酔をかけた。その後、麻酔をかけた動物に心臓穿刺によって致死量の麻酔を与えた。動物が死ぬと、すぐに首を切り落とし、側頭骨を単離させて、蝸牛殻を露出させるために中耳の骨胞を開いた。その後、以下のように、蝸牛殻に固定剤を直接灌流した。小さなゲージ針を用いて、蝸牛の正円窓膜と卵円窓内の骨を穿刺した。蝸牛の頂回転へ小さな孔を開け、1-2mlsの冷たいPFAを頂端の孔を通ってゆっくりと灌流させた。その後、灌流された蝸牛を、4%のPFAで浸たし、2-6時間、後固定した。その後、蝸牛をPBSですすぎ、4°Cの新鮮なPBS中で保存した。
【0581】
蝸牛脱灰/切開-固定された蝸牛を、72時間軽く撹拌しながら、室温でPBS中の大量の10%EDTAで脱灰した。脱灰の後、サンプルをPBSですすぎ、蝸牛軸のコアに取り付けられた蝸牛管だけが残るように、注意深く切開して組織から残りの骨を取り除いた。その後、切開した組織を最低3時間、室温で0.5%PBSトリトン(PBS-T)中で透過性にした。
【0582】
免疫組織化学的検査-固定されて切開された蝸牛を、ニューテーションしながら4°Cで以下の一次抗体:CtBP2(1:250;マウス・モノクローナルIgG1、BD Biosciences)、GluR2(1:2000;マウス・モノクローナルIgG2a、Millipore)、MyosinVIIa(1:1000;ウサギ・ポリクローナル、Proteus Biosciences)を用いて、10%の正常なヤギ血清を有するPBS-T中で夜通しインキュベートした。その後、蝸牛をPBS-Tですすぎ、室温で2時間、10%のヤギ血清を有するPBS-T中の適切な蛍光性の二次抗体(1:1000;抗マウスIgG1-546、抗マウスIgG2a-488、および抗ウサギIgG-633)でインキュベートした。その後、蝸牛をPBSですすぎ、DAPIで染色してPBS中の細かく切開された核を標識し、抗フェード封入剤(Southern Biotech)を用いてスライドガラスに水平に載せた。
【0583】
シナプス分析-各耳から水平に載せられた蝸牛片を、低倍率(10x)で画像化し、画像化した組織の全長を測定し、周波数領域(4、10、20、および40kHz)を画像上にマッピングした。その後、内毛細胞がその基底極からクチクラ板まで十分に画像化されるように、最小0.35μm工程の各固有周波数で共焦点顕微鏡を走査するZeiss LSM880レーザーを使用して、高倍率の共焦点のZスタック画像を獲得した。画像は、1つの周波数領域当たり少なくとも10の隣接する内毛細胞を含んでいた。その後、位置合わせされたシナプス前/シナプス後の点は、1つの領域当たりの各内毛細胞について計測され、1つの周波数領域当たりの1つの内毛細胞当たりの点の平均数が計算された。
【0584】
研究設計
動物は0日目に騒音に晒された。1日目(24時間後)に、動物は、ビヒクル(ポロキサマー407)あるいはBDNF製剤(ポロキサマー407中の0.005%BDNF)の1回の片側だけの鼓室内投与を受けた。ABR閾値とABRI波振幅は、最大4週間、生きている動物で毎週測定された。シナプスの計算は、28日目に屠殺された動物から得られた処理組織上で行われた。未処置の動物は騒音には晒されず、鼓室内注射も受けなかった。
【0585】
図2は有毛細胞上のシナプスの可視化を示す。
図3Aは、徐放性BDNF製剤を用いる処置が、ビヒクル処置と比較して、騒音に晒された成体ラットにおいて聴力機能(I波振幅)の改善を導いたことを示す。
図3Bは、徐放性BDNF製剤を用いる処置が、ビヒクル処置と比較して、騒音に晒された成体ラットにおいて、1つの内毛細胞当たりのリボンシナプスの数の増加を導いたことを示す。
【0586】
実施例A2-ポロキサマーとMCT製剤中でのBDNFの徐放
ポロキサマー407中のBDNF
32%のポロキサマー407溶液は、冷たい緩衝溶液(生理食塩水を有する50mMのトリス緩衝液、pH7.4)にそれをゆっくり加えることによって調製された。ろ過により滅菌を達成した。ヒト組み換えBDNFを希釈するか、標的濃度の2倍の濃度になるまで同じトリス緩衝溶液で濃縮した。溶液をろ過により滅菌した。1:1の比率で上記の2つの溶液を組み合わせることにより、16%のP407を含み、かつ、0.005%~0.5%のBDNFの濃度範囲を有する溶液または懸濁液が得られる。
【0587】
MCT SiO2中のBDNF/PVP(K25)
MCT/SiO2(0.5%)製剤中のBDNF/PVP(2%あるいは10%)を、以下のように調製した。PVPを2%あるいは10%の濃度の注射用水に溶かした。BDNF凍結溶液を夜通し5°Cで解凍し、その後、0.15%BDNFの濃度になるまで注射用水で希釈した。1:1(w/w)の比率で上記の2つの溶液を組み合わせることにより、0.075%BDNFと1%あるいは5%のPVPを有する溶液が得られる。溶液を0.22umフィルターによって滅菌ろ過し、バイアルに充填し、その後、凍結乾燥した。それから、乾燥粉末粉をビーズブラスチングによって、滅菌ろ過されたMCTへ分散させた。最後に、熱殺菌したSiO2を加えた。最終懸濁液はMCT中に0.15%BDNF、2%あるいは10%のPVP、および0.5%のSiO2を含んでいる。
【0588】
MCT/SiO2中のBDNF/カルボポール(971P)
MCT/SiO2(0.5%)製剤中のBDNF/カルボポール(0.15%)を、以下のように調製した。カルボポールを0.04%の濃度の注射用水に溶かした。BDNF凍結溶液を夜通し5°Cで解凍し、その後、0.04%BDNFの濃度になるまで注射用水で希釈した。1:1(w/w)の比率で上記の2つの溶液を組み合わせることにより、0.02%BDNFと0.02%のカルボポールを有する溶液が得られる。溶液を0.22umフィルターによって滅菌ろ過し、バイアルに充填し、その後、凍結乾燥した。それから、乾燥粉末粉をビーズブラスチングによって、滅菌ろ過されたMCTへ分散させた。最後に、熱殺菌したSiO2を加えた。最終懸濁液はMCT中に0.15%のBDNF、0.15%のカルボポール、および0.5%のSiOを含んでいる。
【0589】
MCT/SiO2中のBDNF/ポロキサマー(P407)
MCT/SiO2(0.5%)製剤中のBDNF/P407(10%)を、以下のように調製した。P407を10%の濃度の注射用水に溶かした。BDNF凍結溶液を夜通し5°Cで解凍し、その後、0.15%BDNFの濃度になるまで注射用水で希釈した。1:1(w/w)の比率で上記の2つの溶液を組み合わせることにより、0.075%BDNFと5%のP407を有する溶液が得られる。溶液を0.22umフィルターによって滅菌ろ過し、バイアルに充填し、その後、凍結乾燥した。それから、乾燥粉末粉をビーズブラスチングによって、滅菌ろ過されたMCTへ分散させた。最後に、熱殺菌したSiO2を加えた。最終懸濁液はMCT中に0.15%のBDNF、10%のP407、および0.5%のSiOを含んでいる。
【0590】
薬物動態
およそ生後12-16週で体重が200-300gのメスのラット(Charles River)を、被験体(1つの群当たりN=4)とした。任意の手順の前に、腹腔内経路を介してキシラジン(10mg/kg)とケタミン(90mg/kg)の組み合わせを最大で1時間使用して動物に麻酔をかけた。必要に応じて、もとの投与量の10分の1を表す手術時の追加免疫を腹腔内投与した。
【0591】
鼓室内注射-正円窓窩への注入に好都合な角度まで頭が傾くように、各動物を配置した。簡潔に言えば、手術用顕微鏡による可視化の下で、25G(ゲージ)11/2の針を使用し、鼓膜を介して上方の後部象限へと20μlの製剤を注射した。2μL/秒の速度で灌流ポンプを使用して製剤を送達した。動物を横臥位に置くことによって、正円窓膜との接触を30分間維持した。手順中に、および、回復するまで、動物を意識が回復するまで温度制御した(40°C)温熱パッドに置き、意識が回復すると飼育器に戻した。
【0592】
外リンパサンプリング手順-麻酔をかけたラットの耳の後ろの皮膚を剪毛して、ポビドン-ヨードで消毒した。その後、耳の後ろを切開し、骨胞全体から筋肉を慎重に引っ込ませた。中耳を露出させてアクセスできるように、歯科用バーを用いて骨胞に穴を開けた。蝸牛と正円窓膜を立体外科用顕微鏡下で可視化した。骨胞の基底回転を、小片の綿を使用して清浄した。正円窓に隣接する蝸牛(蝸牛嚢(cochlear capsule)の骨質の殻にハンドドリルで特有の微細な穴を開けた。その後、蝸牛の鼓室階に挿入したマイクロキャピラリーを使用して、外リンパ(約2μl)を集めた。外リンパサンプルを、18μLのアセトニトリル/水(50/50v/v)を含むバイアルに加え、分析まで-80°Cで保存した。
【0593】
分析法
外リンパとサンプル中のBDNFの濃度は市販のELISAキットを使用して決定された。ヒトBDNFの検出限界は4pg/mLであった。
【0594】
図4は、ポロキサマー407製剤における、ラット中の単回のIT注射後のBDNFの外リンパ濃度を示す。BDNFは指示された投与量で投与された。外リンパBDNFは任意の単位である。
【0595】
図5A、
図5B、および
図5Cは、MCT製剤における、ラットでの単回のIT注射後のBDNFの外リンパ濃度を示す。BDNFは様々なポリマー:2%あるいは10%のPVP(ポリビニルピロリドン)(
図5A);0.15%のカルボマー(
図5B);あるいは、10%のP407(ポロキサマー407)(
図5)を含むMCT製剤中で0.15%(1.5mg/ml)の投与量で投与された。外リンパBDNFは任意の単位である。
【0596】
実施例B1-熱可逆性ゲル製剤の調製
【0597】
【0598】
例えば、本明細書に記載される1.5%の成長因子を含むゲル製剤の例示的なバッチは、5.5-8.0の間のpHを有する、50mMのトリス緩衝液および77mMのNaCl溶液に、ポロキサマー407(BASF Corp.)を溶かすことにより調製される。適切な量の成長因子を加え、均質な懸濁液が精製されるまで、製剤を混合する。混合物を、使用するまで室温以下に維持する。
【0599】
実施例B2-ゲル化温度のインビトロ比較
ポロキサマー407のゲル化温度と粘度に対するポロキサマー188と本明細書に記載される成長因子のいずれか1つの効果は、ゲル化温度を操作する目的で評価される。いくつかの実施形態において、成長因子はBDNFである。
【0600】
PBS緩衝液中の25%のポロキサマー407保存液と、BASFからのポロキサマー188NFが使用される。適切な量の成長因子を表Bに記載される溶液に加えて、2%の成長因子製剤を得る。
【0601】
PBS緩衝液(pH7.3)は、805.5mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific)、606mgの無水第2リン酸ナトリウム(Fisher Scientific)、247mgの無水の一塩基リン酸ナトリウム(Fisher Scientific)、その後、適量(QS)から200gまでの滅菌ろ過されたDI水を溶かすことにより調製される。
【0602】
【0603】
上記の製剤のゲル化温度を、本明細書に記載される手順を使用して測定する。
【0604】
得られたデータに方程式を適合させ、これを利用して(17-20%のF127と0-10%のF68について)F127/F68混合物のゲル化温度を推定する。
Tgel=-1.8(%F127)+1.3(%F68)+53
【0605】
得られたデータに方程式を適合させ、これを利用して、上記の例で得られた結果を使用して、(17-25%のF127と0-10%のF68について)F127/F68混合物のゲル化温度に基づいて平均溶解時間(hr)を推定する:
MDT=-0.2(Tgel)+8
【0606】
実施例B3-中鎖脂肪酸トリグリセリド製剤の調製
製剤1、2、および3は、以下の表(表C)で示されるような適切な量の成長因子と中鎖トリグリセリド(CRODAMOL、GTCC-LQ-(MV)、PhEur)で調製される。
【0607】
製剤は、約100mLの全容積に対して、適切な量の中鎖トリグリセリドに、本明細書に記載される成長因子のいずれか1つの標的の重量パーセントを加えることによって調製される。製剤を完全に溶解するまで混合する。その後、製剤を、無菌条件下で0.22μmの滅菌グレートフィルターを通過させることによって、製剤を滅菌する。その後、滅菌された溶液を、製剤を試験するために使用されたバイアルまたはあらかじめ充填された注射器に充填する。
【0608】
【0609】
実施例B4-中鎖トリグリセリド製剤-成長因子のさらなる調製
製剤4、5、および6は、以下の表(表D)で示されるような適切な量の成長因子と中鎖トリグリセリド(CRODAMOL、GTCC-LQ-(MV)、PhEur)で調製される。
【0610】
製剤は、適切な量の中鎖トリグリセリドに、成長因子の標的の重量パーセントを加えることにより、調製されている。製剤を完全に溶解するまで混合する。その後、製剤を、無菌条件下で0.22μmの滅菌グレートフィルターを通過させることによって、製剤を滅菌する。その後、滅菌された溶液を、製剤を試験するために使用されるバイアルまたはあらかじめ充填された注射器に充填する。
【0611】
【0612】
実施例B5-中鎖脂肪酸トリグリセリド製剤の調製
中鎖トリグリセリド製剤は、以下の表(表E-H)に示されるような適切な量の成長因子、中鎖トリグリセリド、および粘度調節剤を用いて調製される。いくつかの実施形態において、製剤はさらに、以下の表(表I-L)で示されるようなコレステロールを含む。さらに、いくつかの例では、以下の表で示される中鎖トリグリセリドは、長鎖中性脂肪と中鎖トリグリセリドの混合物(0.1:99.9~99.9:0.1)と取り替えられる。
【0613】
MCT中の成長因子溶液
製剤は、注射用水中に、適切な量の成長因子と、PVP、カルボマー、およびP407などの粘度調節剤のうちの1つ以上とを溶かすことにより、および、その溶液を滅菌濾過することにより、調製される。滅菌された溶液を凍結乾燥して、乾燥ケーキを形成する。適切な量の乾燥ケーキは、適切な量の滅菌ろ過された中鎖トリグリセリドに無菌的に添加される。均一な懸濁液が達成されるまで、製剤が混合される。必要に応じて、10ミクロン未満(D50)まで粒子径を減らすために、懸濁液を均質化する。その後、必要に応じて、適切な量の滅菌された二酸化ケイ素を懸濁液に添加する。均質な懸濁液が達成され、その後、バイアルへ充填されるまで、最終製剤を混合する。
【0614】
MCTとSiO2中の成長因子懸濁液
製剤は、微粉化され、ガンマ線を照射された成長因子の総重量パーセントを、ろ過によって滅菌された適切な量の中鎖トリグリセリドに加えることにより、調製される。均質な懸濁液が形成されるまで、製剤を混合する。その後、適切な量のSiO2が添加され、均質になるまで混合される。その後、結果として生じる均質な懸濁液が、バイアルへ充填される。
【0615】
MCTとSiO2中の成長因子ナノ懸濁液
製剤は、微粉化され、ガンマ線を照射された成長因子の総重量パーセントを、ろ過によって滅菌された適切な量の中鎖トリグリセリドに加えることにより、調製される。均質な懸濁液が形成されるまで、製剤を混合する。その後、ボールミル磨砕装置を用いて、0.2未満μmに粒子径を減らす。その後、適切な量のSiO2が添加され、均質になるまで混合される。その後、結果として生じる均質な懸濁液が、バイアルへ充填される。
【0616】
【0617】
【0618】
【0619】
【0620】
【0621】
【0622】
【0623】
【0624】
実施例C-らせん神経節ニューロンの生存
らせん神経節ニューロン(SGN)は、P1-P3速度で収穫され、分離され、96ウェルプレート中で培養された。SGNは様々な濃度でニューロトロフィンおよび/または抗体を用いて処置された。約24時間後、培地を無血清培地に交換し、ニューロトロフィンおよび/または抗体が補充された。細胞をさらに48-72時間培養し、その後、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)を使用して固定し、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)を使用して染色した。
図6Aはこの実験のスキームを概略的に描いており、
図6Bは、ニューロフィラメント(緑)で染色されたニューロンの細胞体と神経突起、およびDAPIで染色された核を示す。生き残ったニューロンは、無傷の細胞体と少なくとも1つの神経突起を有する細胞として同定された。
【0625】
図6Cは、1nMのNT-3、10nMのBDNF、10nMのM1、10nMのM2、10nMのM3、10nMのM4、10nMのM5、10nMのM6、10nMのM7、10nMのmIgG1、10nMのhIgG4、1μMのLM22b10、および、0.01%のDMSOを含む様々な濃度のニューロトロフィンと抗体を用いる処置に対する1ナノモル(nM)のNT-3に正規化されたSGN生存を示す。図で示されるように、マウスIgG1とヒトIgG4アイソタイプの対照で処置された場合と比較して、ニューロトロフィンあるいはM抗体で培養されたとき、生き残った生存数SGNの数は増加した。SGNの生存は、ビヒクルのみの対照、0.01%のDMSOと比較して、LM22b10では改善されなかった。
【0626】
図6Dは、様々な濃度のニューロトロフィンと抗体を用いる処置に対して1nMのNT-3に正規化されたSGN生存を示す。図で示されるように、正規化されたSGN生存は、すべての濃度のM1、M2、M6、およびM7について比較的低かった。
【0627】
実施例D-TrkB/TrkCアゴニストはSGN複雑性(分離されたSGN)を促進する
SGNは免疫染色され、画像化され、およびPerkinElmer Harmony4.6ソフトウェアでバッチ分析された。様々な薬剤を用いる処置でのSGNの複雑性の変化が検査された。
図7Aは、ニューロフィラメントとDAPIについて免疫染色され、20xで画像化されたSGNを示す。単一のウェル内の画像のすべてをまとめてスティッチし、分析した。SGN細胞体は右上のパネルで示され、SGN神経突起は左下のパネルで示される。右下のパネルで示されるように、各神経突起樹は分析のために単一の細胞に割り当てられる。ステッチングによっては、神経突起はしばしば、ユーザーによって定義された閾値を越える間隙によって、基準を満たさない。
図7Bは、根(アスタリスクで示される)、末端(白点で示される)、節(矢印で示される)、セグメント(節または末端の間の神経突起の個別の部分で示される)、および、各ニューロンについて測定された全神経突起長を示す。
図7Cは、IgGで処置された対照と比較して、10nMのBDNF、1nMのNT-3、あるいは1nMのM3を用いる処置時に様々な数の根を有するSGNの割合を示す(*p<0.05、**p<0.005、およびp<0.001)。
図7Dは、BDNF、NT-3、あるいはM3を用いる処置時の全神経突起長(左パネル)と、1つの細胞当たりの末端、セグメント、および節の合計数を示す。これらの違いは統計的に有意ではなかった。
【0628】
実施例E-神経突起成長(SGN外植片)
様々な薬剤を用いる処置は、SGN外植片中の神経突起の伸長を促し得る。SGNはP7-8ラットから収穫され、~1ミリメートル(mm)の節に切断され、およびヒトのフィブロネクチンで覆われた96ウェルプレートで培養された。約24時間後、培地を無血清培地に交換し、ニューロトロフィンおよび/または抗体を様々な濃度で加えた。組織をさらに48-72時間培養し、その後、4%のPFAで固定し、免疫染色した。
図8Aはこの実験のスキームを概略的に描き、
図8Bは、ニュートロフィン/抗体を用いずに(上部の左画像)、10nMのBDNF(上部の右画像)、10nMのNT-3(中央の左画像)、100nMのNT-3(中央の右画像)、10nMのM3(下部の左画像)、および100nMのM3(下部の右画像)を用いて処置されたサンプルに関するニューロフィラメントを示す。
【0629】
図8Cと
図8Dは、NT-3(
図8C)とBDNF(
図8D)の様々な濃度での1つの組織当たりの神経突起を示す。
図8Eは、hIgG4(左)およびM3(右)の様々な濃度での1つの組織当たりの神経突起を示す。
図8C-8Eで、*はp<0.05を示し、**はp<0.005を示し、および、***はp<0.0005対未処置を示す。
【0630】
図8Fで示されるように、外植片を画像化し、Harmony分析ソフトウェアを使用して個々に分析して、神経突起長、節(矢印)、セグメント(矢じり)、および末端(アスタリスク)の数を調べた。
図8Gは、IgGで処置された対照または未処置の対照と比較して、SGN外植片の神経突起複雑さに対するBDNF、NT-3、およびM3の効果を示す。
【0631】
実施例F-シナプス変性症モデル(蝸牛外植片)
蝸牛シナプス変性症は、加齢性難聴を含む様々な耳の損傷の原発性の病態である。それは、求心性神経シナプス、内毛細胞とI型Iらせん神経節ニューロンとの間のシナプス結合の喪失を特徴とする。ヒトにおける蝸牛シナプス変性症は、「隠れた難聴」(つまり、雑音中の音声の聴覚障害)に関与している。
【0632】
BDNFやNT-3などのニューロトロフィンおよびその模倣剤は、進行中に求心性シナプスを確立し、BDNF、NT-3、あるいはその受容体(TrkBとTrkC)の破壊は、求心性シナプスと聴力機能に影響を与える。
【0633】
ニューロトロフィンおよび/または抗体による処置は、興奮毒処理と組み合わされ得る。興奮毒は、ニューロン受容体を過剰刺激し、ニューロン受容体を消耗させるような速度でインパルスを発射させる、アミノ酸などの化学薬品である。
【0634】
SGN線維の修復。P2-P3ラット蝸牛殻が確立され、その後、約2時間興奮毒(NK:0.5mMのNMDA+0.5mMのカイニン酸)に晒された。興奮毒が取り除かれた後、ニューロトロフィンおよび/または抗体(例えば、Trkアゴニスト)が様々な濃度で添加された。外植片はさらに18時間あるいは72時間培養され、その後、4%のPFAで固定されて免疫染色された。
図9Aはこの実験のスキームを概略的に描く。
図9Bで示されるように、I型のSGNは、内毛細胞(IHC;三角形)に接近する線維の数を数え、および、外毛細胞(OHC;円)まで通過する線維の数を引くことによって推定された。
図9Cは、興奮毒処理なく72時間の培養(左パネル)、および、興奮毒処理と18時間の培養(右パネル)に関して、様々な薬剤についてCTLに正規化されたSGN線維/IHCを示す。Trkアゴニストは、外植片中の線維の数を増加させた。
【0635】
図9Dは、様々な条件下で得られた蝸牛外植片の画像を示す。左上の画像は、興奮毒で処置されない対照に対応する。中央左の画像は興奮毒処置後72時間のサンプルに対応する。右上の画像、中央右の画像、および右下の画像はそれぞれ、興奮毒とBDNF、NT-3、あるいはM-3処置後72時間のサンプルに対応する。左下の画像は、シナプス後密度タンパク質95(PSD-95)とC末端結合タンパク質2(CtBP2)を示す。
【0636】
シナプスの修復。蝸牛殻は上記のように、興奮毒とTrkのアゴニストに晒され、その後、72時間培養された。シナプスはPSD-95に対して染色され、画像化され、計測された。Trkアゴニストは、シナプスの点の数を増加させ、興奮毒性の損傷の後に制御レベルまでそれらを回復させた。
【0637】
図9Eは、PSD-95、CtBP2、ニューロフィラメント(線)、およびMyo7aを有する蝸牛外植片の画像を示す。
図9Fは、興奮毒処理なく72時間の培養(左パネル)、および、興奮毒処理と72時間の培養(右パネル)に関して、様々なTrkアゴニストについてCTLに正規化された点(PSD95)/IHCを示す(*p<0.05(CTL対NK))。
【0638】
実施例G-P407中のBDNFの内耳薬物動態
動物:オスのスプラーグドーリーラット(生後5-6ヶ月)を有効性試験に使用し、メス(2-3ヶ月)を薬物動態研究に使用した。
【0639】
製剤:ヒト組み換えBDNFを熱可逆性ポリマーポロキサマー407(16%)中に懸濁させて、一連のBDNF濃度に到達させた。
【0640】
鼓室内(IT)注射:正円窓膜(RWM)を標的として、鼓膜を通って中耳まで、単一のIT注射(20μl)として製剤を麻酔下で投与した。
【0641】
内耳薬物動態:動物(1つの時点当たりn=4)は、様々な処置投与量の1回の片側だけの鼓室内注射を受けた。外リンパ中のBDNFレベルはELISAによって指定された時に判定された。
【0642】
騒音誘導性の蝸牛シナプス変性症:ラット(1つの処置群当たりn=44)は、麻酔下で1回の音響外傷(105dBのSPL、8-16kHz、1時間)を受けた。24時間後(1日目)、動物は、処置レジメンの1回の両側のIT注射を受けた。聴覚機能(ABRとABRのI波振幅)を1日目、その後、7日毎に28日間モニタリングした。終了時点(28日目)で、蝸牛殻を集めて、蝸牛シナプス変性症の証拠について評価した(IHCのシナプス点の計測)。
【0643】
免疫組織化学:シナプス前(CtBP2)およびシナプス後(GluR2)タンパク質とMyosinVIIaに対する抗体を用いて蝸牛殻を免疫染色切開して、有毛細胞を標識した。蝸牛殻を周波数マッピングし、Zeiss LSM-880共焦点顕微鏡を用いて高倍率画像を得て、0.35μmの間隔で画像化した。
【0644】
図10は、BDNFなどの薬剤の内耳への非侵襲的な鼓室内(IT)送達を概略的に例証している。
【0645】
蝸牛の外リンパ中のBDNFレベル。成熟したラットは、0日目に20μlのBDNF/P407製剤の片側だけの鼓室内注射を受けた。外リンパは1、3、7、および14日目に蝸牛切開術によって蝸牛の基部から採取され、BDNFレベルがELISAによって定量化された。
図11は、P407におけるBDNFの様々な濃度について鼓室内注射後の様々な時点の外リンパ中のBDNF(pg/ml)を示す。
【0646】
鼓室内のBDNFは、成体のラットにおける聴性脳幹反応(ABR)閾値とI波振幅を改善する。聴性脳幹反応(ABR)は、聴力感度を測定し、末梢聴覚系の異常や脳幹までの聴覚経路を特定することができる、客観的検査である。オスの成体ラットは両側とも騒音に晒され、その後、騒音曝露の24時間後にP407中の0.05mg/mlのBDNFの鼓室内注射を受けた。ABRの記録は1、7、14、および28日目に得られた。BDNFで処置された動物は、当初の閾値変動のより迅速な回復と難聴の全体的なレベルの低下を示した。
図12Aは、P407ビヒクルのみとP407中の0.05mg/mlのBDNFについて、様々な周波数でのABR閾値変動(dB SPL)を示す。
【0647】
ABRI波振幅は、遠位の蝸牛神経信号の強度、つまり、らせん神経節ニューロン/シナプスの応答のインジケータである。
図12Bは、ABR波成分(左パネル)および騒音誘導I波欠乏(右パネル)を示す。I波振幅は、騒音曝露前のベースライン(黒い線)と騒音曝露後28日目において同じ耳で、10kHzで変動した。差し込まれた破線は、騒音曝露後のI波の有意な減少を強調する。
図12Cで示されるように、騒音曝露後のBDNF処置またはビヒクル処置の後にオスの成体ラットで、あるいは未処置の損傷を受けていない耳において、ABRI波振幅が測定された。I波振幅における有意な改善は、多くの周波数にわたってBDNFで処置された動物において検出された。
【0648】
鼓室内のBDNFは、成体のラットにおける蝸牛シナプス変性症を修復する。官能性の内毛細胞シナプスは、内毛細胞とSGNにそれぞれ関連付けられるシナプス前およびシナプス後のタンパク質の共局在によって定義される。
図13Aは、内毛細胞神経支配(上パネル)と有毛細胞リボンシナプス(下パネル)を示す。
図13Bは、騒音損傷後のBDNF処置またはビヒクル処置の後の成体ラットからの40kHzの領域からの、あるいは未処置の損傷を受けていない蝸牛における、内毛細胞の高倍率図を示す。デジタルX圧縮された断面は右に示される。
【0649】
図13Cで示されるように、1つの内毛細胞当たりのシナプス点(CtBp2とGluR2の共発現によって定義される)の増加が、BDNF処置後の蝸牛全体にわたる各周波数領域について観察された。
図13Dで示されるように、切開された蝸牛の全体長が測定され、その後、空間的な軸に沿った周波数がマッピングされて評価された。
【0650】
実施例H-成長因子製剤の試験デザイン
無作為化された、二重盲検のプラセボ対照試験は、雑音中の音声の障害と、軽度から中程度の加齢性の難聴を特徴とする、聴覚障害を抱える被験体で実施される。それぞれ8人の被験体の4つの投与レベルのコホートには、単回の漸増用量が使用される。各投与レベルのコホートの8人の被験体のうち、6人には治療薬が割り当てられ、2人にはプラセボが割り当てられた。試験は、鼓室内の治療用組成物の安全性、薬物動態、および、試験的な有効性を評価するために実施される。試験結果は、安全性(例えば、耳鏡検査法、ティンパノメトリー、バイタルサイン、臨床安全性研究室、有害事象、自殺傾向)、血漿薬物動態、シナプス変性症評価(例えば、中耳筋反射、ABR波1/5比率、エンベロープ追随反応)、雑音中の音声試験、およびと聴覚ハンディキャップアンケートを含む。
図14はこの試験のスキームを概略的に描く。治療用組成物は耳の投与に構成され、成長因子と熱可逆性のゲルなどの耳に許容可能なビヒクルを含む。
【0651】
実施例I-成長因子製剤のための投与量
耳用製剤のための優良試験所基準の毒物用量は、約0.05%(約0.5mg/ml)の低用量~、約0.15%(約1.5mg/ml)までの中程度用量、0.5%(約5mg/ml)の高用量の成長因子までの成長因子を含む。場合によっては、成長因子はBDNFである。製剤の残りは、本明細書で開示されるように、熱可逆性のゲルと任意の他の成分などの耳に許容可能なビヒクルを含む。場合によっては、こうした投与量を調製には、50mg/mlの成長因子(例えば、BDNF)濃縮物を必要とする。こうした濃縮物は経時的な安定性が制限され得る。
【0652】
臨床的な投与量は、約0.01%から約0.25%(例えば、約0.1mg/ml~約2.5mg/ml)の成長因子(例えば、BDNF)までの範囲である。場合によっては、(例えば、第1相あるいは第2相臨床試験での使用のための)こうした臨床的な投与量の調製は、1mg/mlから25mg/mlの10X成長因子濃縮物を必要とし得る。
【0653】
成長因子製剤の溶解性と安定性は、最も高い使用可能な濃度を決定するために、1mg/ml~15mg/mlの間の濃縮物(例えば、BDNF濃縮物)について評価される。成長因子(例えば、BDNF)の溶解度は、活性なバイアル濃縮物の濃度範囲を決定するために、3つの緩衝系、リン酸塩緩衝液(PB)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、およびTrisで評価される。
【0654】
成長因子を含む耳用の製剤の注射量は、約0.2mlである。
【0655】
実施例J-ポロキサマー製剤(Feline PK)中でのBDNFの徐放
ポロキサマー407中のBDNF。16%のポロキサマー407溶液は、冷たい緩衝溶液(生理食塩水を有する50mMのトリス緩衝液、pH7.4)にそれをゆっくり加えることによって調製された。ろ過により滅菌を達成した。ヒト組み換えBDNFは、標的濃度の10倍の濃度まで同じトリス緩衝溶液を有する濃縮物として製剤化された。溶液をろ過により滅菌した。1:10の比率で上記の2つの溶液を組み合わせることにより、16%のP407を含み、かつ、0.05%と0.5%のBDNFの濃度を有する溶液または懸濁液が得られる。
【0656】
薬物動態。重さ2-4kgのオスの成体ネコ(Liberty Research)は、被験体(1つの群当たりN=3)として役立った。任意の手順の前に、筋肉内経路を介してキシラジン(0.11mg/kg)とケタミン(20mg/kg)の組み合わせを最大で1時間使用して動物に麻酔をかけた。必要に応じて、もとの投与量の10分の1を表す手術時の追加免疫を筋肉内投与した。
【0657】
鼓室内注射。正円窓窩への注入に好都合な角度まで頭が傾くように、各動物を配置した。簡潔に言えば、手術用顕微鏡による可視化の下で、25G(ゲージ)11/2の針を使用し、鼓膜を介して上方の後部象限へと150μlの製剤を注射した。2μL/秒の速度で灌流ポンプを使用して製剤を送達した。動物を横臥位に置くことによって、正円窓膜との接触を30分間維持した。手順中に、および、回復するまで、動物を意識が回復するまで温度制御した(40°C)温熱パッドに置き、意識が回復すると飼育器に戻した。
【0658】
外リンパサンプリング手術。頚部腹側から胸骨切痕まで伸びる皮膚は削られ、ポビドンヨードで消毒された。その後、中空の骨胞(側頭骨の鼓室部)の上に直接ある頸部の腹側面の二腹筋の内側で、および二頭筋に平行に切開を行った。皮膚、皮下組織、広頚筋、および顎舌骨筋を切開した。その後、骨胞は、顎二腹筋、茎突舌筋、および舌骨舌筋の間での鈍的切開によって露出された。骨胞中の2cmの直径のアクセス部位は、歯科用ドリルに搭載された回転式のバーツールを使用して作られた。骨胞の内部の粘膜は、骨胞の後外側壁の正円窓の可視化を可能にするために取り除かれた。正円窓の位置は、岬角の特定と、卵円窓へのアブミ骨の取り付けとによって実証された。基底回転内で外科用顕微鏡下のダイヤモンドバーを用いて直径1mmの穴を開け、マイクロキャピラリー管を用いて外リンパ(20μl)を採取した。
【0659】
分析。外リンパとサンプル中のBDNFの濃度を、市販で入手可能なELISAキットを使用して判定した。ヒトBDNFの検出限界は4pg/mLであった。
図15は、BDNFポロキサマー407製剤の、ネコにおける単回の鼓室内注射後のBDNFの外リンパ濃度を示す。BDNFは指示された投与量で投与された。外リンパBDNFは任意の単位である。
【0660】
実施形態
【0661】
実施形態1:治療上有効な量の成長因子と耳に許容可能なビヒクルとを含む耳用製剤。
【0662】
実施形態2:成長因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、またはこれらの任意の組み合わせである、実施形態1の耳用製剤。
【0663】
実施形態3:成長因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)である、実施形態1あるいは実施形態2の耳用製剤。
【0664】
実施形態4:耳に許容可能なビヒクルは耳に許容可能なゲルである、実施形態1-3のいずれか1つの耳用製剤。
【0665】
実施形態5:耳に許容可能なゲルは熱可逆性のゲルである、実施形態4の耳用製剤。
【0666】
実施形態6:耳に許容可能なゲルは、約15,000cP~約3,000,000cPのゲル化粘度を有する、実施形態4あるいは実施形態5の耳用製剤。
【0667】
実施形態7:耳に許容可能なゲルは、約100,000cP~約500,000cPのゲル化粘度を有する、実施形態6の耳用製剤。
【0668】
実施形態8:耳に許容可能なゲルは、約250,000cP~約500,000cPのゲル化粘度を有する、実施形態6の耳用製剤。
【0669】
実施形態9:耳に許容可能なゲルは、鼓膜を通って細いゲージの針またはカニューレによって注入されることができる、実施形態4-8のいずれか1つの耳用製剤。
【0670】
実施形態10:耳用製剤は、約100mOsm/L~約1000mOsm/Lのモル浸透圧濃度を有する、実施形態4-9のいずれか1つの耳用製剤。
【0671】
実施形態11:耳用製剤は、約150mOsm/L~約500mOsm/Lのモル浸透圧濃度を有する、実施形態10の耳用製剤。
【0672】
実施形態12:耳用製剤は、約200mOsm/L~約400mOsm/Lのモル浸透圧濃度を有する、実施形態10の耳用製剤。
【0673】
実施形態13:耳用製剤は、約250mOsm/L~約320mOsm/Lのモル浸透圧濃度を有する、実施形態10の耳用製剤。
【0674】
実施形態14:耳用製剤は、約19°C~約42°Cのゲル化温度を有する、実施形態4-13のいずれか1つの耳用製剤。
【0675】
実施形態15:耳用製剤は、約7.0~約8.0のpHを有する、実施形態4-14のいずれか1つの耳用製剤。
【0676】
実施形態16:耳に許容可能なゲルは、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのコポリマーを含む、実施形態4-15のいずれか1つの耳用製剤。
【0677】
実施形態17:ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのコポリマーは、ポロキサマー407である、実施形態16の耳用製剤。
【0678】
実施形態18:耳用製剤は、約14wt%から約18wt%のポロキサマー407を含む、実施形態17の耳用製剤。
【0679】
実施形態19:耳用製剤は、約15wt%から約17wt%のポロキサマー407を含む、実施形態17の耳用製剤。
【0680】
実施形態20:耳用製剤は、約16wt%のポロキサマー407を含む、実施形態17の耳用製剤。
【0681】
実施形態21:耳に許容可能なビヒクルは中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドを含む、実施形態1-3のいずれか1つの耳用製剤。
【0682】
実施形態22:トリグリセリドは、グリセロールと中鎖脂肪酸に由来する、実施形態21の耳用製剤。
【0683】
実施形態23:中鎖脂肪酸はそれぞれ独立して、炭素鎖中に6~12の炭素原子を含む、実施形態21あるいは実施形態22の耳用製剤。
【0684】
実施形態24:中鎖脂肪酸はそれぞれ独立して、炭素鎖中に8~12の炭素原子を含む、実施形態21あるいは実施形態22の耳用製剤。
【0685】
実施形態25:中鎖脂肪酸は飽和した中鎖脂肪酸、不飽和の中鎖脂肪酸、またはこれらの任意の組み合わせである、実施形態21-24のいずれか1つの耳用製剤。
【0686】
実施形態26:中鎖脂肪酸は、カプロン酸(ヘキサン酸)、エナント酸(ヘプタン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ウンデシレン酸(ウンデカ-10-エン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、またはこれらの任意の組み合わせである、実施形態21-24のいずれか1つの耳用製剤。
【0687】
実施形態27:中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドは、バラッサ(balassee)油、ココナッツ油、コフネヤシ油、パーム核油、ホシダネヤシ(tucum)油、あるいはこれらの任意の組み合わせである、実施形態21の耳用製剤。
【0688】
実施形態28:耳用製剤は少なくとも約50重量%のトリグリセリドを含む、実施形態21-27のいずれか1つの耳用製剤。
【0689】
実施形態29:耳用製剤は、約50重量%~約99.99重量%のトリグリセリド、約55重量%~約99.99重量%のトリグリセリド、約60重量%~約99.99重量%のトリグリセリド、約65重量%~約99.99重量%のトリグリセリド、約70重量%~約99.99重量%のトリグリセリド、約75重量%~約99.99重量%のトリグリセリド、約80重量%~約99.99重量%のトリグリセリド、約85重量%~約99.99重量%のトリグリセリド、約90重量%~約99.99重量%のトリグリセリド、または、約95重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む、実施形態21-27のいずれか1つの耳用製剤。
【0690】
実施形態30:実施形態28あるいは実施形態29の耳用製剤。耳用製剤は、細いゲージの針によって製剤の送達を可能にするのに十分な量のトリグリセリドを有する。
【0691】
実施形態31:耳用製剤は少なくとも1つの粘度調節剤をさらに含む、実施形態21-30のいずれか1つの耳用製剤。
【0692】
実施形態32:少なくとも1つの粘度調節剤は、二酸化ケイ素、ポビドン、カルボマー、ポロキサマー、あるいはこれらの組み合わせである、実施形態31の耳用製剤。
【0693】
実施形態33:粘度調節剤は二酸化ケイ素である、実施形態32の耳用製剤。
【0694】
実施形態34:粘度調節剤は二酸化ケイ素とポビドンである、実施形態32の耳用製剤。
【0695】
実施形態35:耳用製剤は、約0.01重量%~約20重量%のポビドン、約0.01重量%~約15重量%のポビドン、約0.01重量%~約10重量%のポビドン、約0.01重量%~約7重量%のポビドン、約0.01重量%~約5重量%のポビドン、約0.01重量%~約3重量%のポビドン、約0.01重量%~約2重量%のポビドン、または約0.01重量%~約1重量%のポビドンを含む、実施形態34の耳用製剤。
【0696】
実施形態36:粘度調節剤は二酸化ケイ素とカルボマーである、実施形態32の耳用製剤。
【0697】
実施形態37:耳用製剤は、約0.01重量%~約20重量%のカルボマー、約0.01重量%~約15重量%のカルボマー、約0.01重量%~約10重量%のカルボマー、約0.01重量%~約7重量%のカルボマー、約0.01重量%~約5重量%のカルボマー、約0.01重量%~約3重量%のカルボマー、約0.01重量%~約2重量%のカルボマー、または約0.01重量%~約1重量%のカルボマーを含む、実施形態36の耳用製剤、実施形態36の耳用製剤。
【0698】
実施形態38:粘度調節剤は二酸化ケイ素とポロキサマーである、実施形態32の耳用製剤。
【0699】
実施形態39:耳用製剤は、約0.01重量%~約20重量%のポロキサマー、約0.01重量%~約15重量%のポロキサマー、約0.01重量%~約10重量%のポロキサマー、約0.01重量%~約7重量%のポロキサマー、約0.01重量%~約5重量%のポロキサマー、約0.01重量%~約3重量%のポロキサマー、約0.01重量%~約2重量%のポロキサマー、または約0.01重量%~約1重量%のポロキサマーを含む、実施形態38の耳用製剤。
【0700】
実施形態40:耳用製剤は、約0.01重量%~約10重量%の二酸化ケイ素、約0.01重量%~約7重量%の二酸化ケイ素、約0.01重量%~約5重量%の二酸化ケイ素、約0.01重量%~約3重量%の二酸化ケイ素、約0.01重量%~約2重量%の二酸化ケイ素、または約0.01重量%~約1重量%の二酸化ケイ素を含む、実施形態32-39のいずれか1つの耳用製剤。
【0701】
実施形態41:耳用製剤は、約10cP~約10,000cP、約10cP~約5,000cP、約10cP~約1,000cP、約10cP~約500cP、約10cP~約250cP、約10cP~約100 cP、または約10cP~約50cPの粘度を有する、実施形態21-40のいずれか1つの耳用製剤。
【0702】
実施形態42:耳用製剤は、約0.0001重量%~約20重量%の成長因子、約0.0001重量%~約15重量%の成長因子、約0.0001重量%~約10重量%の成長因子、約0.0001重量%~約5重量%の成長因子、または約0.0001重量%~約1重量%の成長因子を含む、実施形態21-41のいずれか1つの耳用製剤。
【0703】
実施形態43:耳用製剤は、水、C1-C6アルコールまたはC1-C6グリコール、C1-C4アルコールまたはC1-C4グリコール、あるいはこれらの任意の組み合わせを含まないか、実質的に含まない、実施形態21-42のいずれか1つの耳用製剤。
【0704】
実施形態44:成長因子は約30時間の平均溶解時間を有する、実施形態1-43のいずれか1つの耳用製剤。
【0705】
実施形態45:成長因子は少なくとも3日間にわたって製剤から放出される、実施形態1-44のいずれか1つの耳用製剤。
【0706】
実施形態46:成長因子は少なくとも4日間にわたって製剤から放出される、実施形態1-45のいずれか1つの耳用製剤。
【0707】
実施形態47:成長因子は少なくとも5日間にわたって製剤から放出される、実施形態1-46のいずれか1つの耳用製剤。
【0708】
実施形態48:成長因子は少なくとも7日間にわたって製剤から放出される、実施形態1-47のいずれか1つの耳用製剤。
【0709】
実施形態49:成長因子は少なくとも14日間にわたって製剤から放出される、実施形態1-48のいずれか1つの耳用製剤。
【0710】
実施形態50:成長因子は多粒子である、実施形態1-49のいずれか1つの耳用製剤。
【0711】
実施形態51:成長因子は本質的に微粒子化された粒子の形態である、実施形態1-50のいずれか1つの耳用製剤。
【0712】
実施形態52:成長因子は本質的にナノサイズの粒子の形態である、実施形態1-50のいずれか1つの耳用製剤。
【0713】
実施形態53:成長因子は本質的に耳用製剤に溶解している、実施形態1-49のいずれか1つの耳用製剤。
【0714】
実施形態54:針および注射器、ポンプ、微量注入デバイス、ガーゼ、海面状材料、およびこれらの組み合わせから選択される薬物送達デバイスをさらに含む、実施形態1-53のいずれか1つの耳用製剤。
【0715】
実施形態55:抗酸化剤をさらに含む、実施形態1-54のいずれか1つの耳用製剤。
【0716】
実施形態56:粘膜付着剤をさらに含む、実施形態1-55のいずれか1つの耳用製剤。
【0717】
実施形態57:浸透促進剤をさらに含む、実施形態1-56のいずれか1つの耳用製剤。
【0718】
実施形態58:防腐剤をさらに含む、実施形態1-57のいずれか1つの耳用製剤。
【0719】
実施形態59:増粘剤または粘度調節剤をさらに含む、実施形態1-58のいずれか1つの耳用製剤。
【0720】
実施形態60:キレート剤をさらに含む、実施形態1-59のいずれか1つの耳用製剤。
【0721】
実施形態61:抗菌剤をさらに含む、実施形態1-60のいずれか1つの耳用製剤。
【0722】
実施形態62:染料をさらに含む、実施形態1-61のいずれか1つの耳用製剤。
【0723】
実施形態63:コレステロールをさらに含む、実施形態1-62のいずれか1つの耳用製剤。
【0724】
実施形態64:耳用製剤は、約0.01重量%~約20重量%のコレステロール、約0.01重量%~約15重量%のコレステロール、約0.01重量%~約10重量%のコレステロール、約0.01重量%~約7重量%のコレステロール、約0.01重量%~約5重量%のコレステロール、約0.01重量%~約3重量%のコレステロール、約0.01重量%~約2重量%のコレステロール、または約0.01重量%~約1重量%のコレステロールを含む、実施形態63の耳用製剤。
【0725】
実施形態65:治療薬の放出速度を増加させる賦形剤をさらに含む、実施形態1-64のいずれか1つの耳用製剤。
【0726】
実施形態66:治療薬の放出速度を減少させる賦形剤をさらに含む、実施形態1-64のいずれか1つの耳用製剤。
【0727】
実施形態67:外耳、中耳、および/または内耳に関連する耳の疾患または疾病の処置で使用するための、実施形態1-66のいずれか1つの耳用製剤。
【0728】
実施形態68:外耳、中耳、および/または内耳に関連する耳の疾患または疾病は、難聴である、実施形態67の耳用製剤。
【0729】
実施形態69:耳用製剤はリボンシナプスを修復する、実施形態67あるいは実施形態68の耳用製剤。
【0730】
実施形態70:耳用製剤は、約0.05重量%~約0.5重量%の成長因子を含む、実施形態42の耳用製剤。
【0731】
実施形態71:耳用製剤はポロキサマー407中の約0.05重量%のBDNFを含む、実施形態70の耳用製剤。
【0732】
実施形態72:耳用製剤は、ポロキサマー407中の約0.5重量%のBDNFを含む、実施形態70の耳用製剤。
【0733】
実施形態73:治療上有効な量の成長因子と耳に許容可能なビヒクルとを含み、ここで、耳用製剤はシナプスの形成を促進するために、内耳への成長因子の徐放をもたらすように製剤化される、実施形態1-72のいずれか1つの耳用製剤。
【0734】
本開示の好ましい実施形態が本明細書に示され記載されているが、そのような実施形態はほんの一例として提供される。本発明が明細書内で提供される特定の例によって制限されることは意図していない。本明細書に記載される実施形態の様々な代案が随意に利用される。さらに、本発明のすべての態様は、様々な条件および変数に依存する、本明細書で説明された特定の描写、構成、または相対的な比率に限定されないことが理解されよう。以下の特許請求の範囲は本開示の範囲を定義するものであり、ならびに、この特許請求の範囲およびその同等物の範囲内の方法および構造はそれによって包含されることが、意図されている。