(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】インターロイキン-31に対するペプチドワクチン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20240603BHJP
A61K 39/385 20060101ALI20240603BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20240603BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240603BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20240603BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240603BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240603BHJP
C07K 7/06 20060101ALN20240603BHJP
C07K 7/08 20060101ALN20240603BHJP
C07K 7/64 20060101ALN20240603BHJP
C07K 14/005 20060101ALN20240603BHJP
C07K 14/54 20060101ALN20240603BHJP
C07K 16/24 20060101ALN20240603BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240603BHJP
G01N 33/53 20060101ALN20240603BHJP
G01N 33/543 20060101ALN20240603BHJP
【FI】
A61K39/00 H ZNA
A61K39/385
A61K39/39
A61P11/06
A61P17/04
A61P17/06
A61P37/08
C07K7/06
C07K7/08
C07K7/64
C07K14/005
C07K14/54
C07K16/24
C07K19/00
G01N33/53 N
G01N33/53 P
G01N33/543 501A
(21)【出願番号】P 2020549686
(86)(22)【出願日】2019-03-18
(86)【国際出願番号】 US2019022774
(87)【国際公開番号】W WO2019178601
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-09
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515230154
【氏名又は名称】ゾエティス・サービシーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】バマート,ギャリー・フランシス
(72)【発明者】
【氏名】ダンナム,スティーブン・アラン
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/042212(WO,A1)
【文献】特表2017-538672(JP,A)
【文献】特表2014-529295(JP,A)
【文献】特公平07-119760(JP,B1)
【文献】特表2002-528517(JP,A)
【文献】特表2004-526418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61K 39/385
A61K 39/39
A61P 11/06
A61P 17/04
A61P 17/06
A61P 37/08
C07K 7/06
C07K 7/08
C07K 7/64
C07K 14/005
C07K 14/54
C07K 16/24
C07K 19/00
G01N 33/53
G01N 33/543
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-31媒介性障害に対し、イヌ、ネコ、またはウマである哺乳類を免疫化及び/または保護するためのワクチン組成物であって、
担体ポリペプチドと、少なくとも1つのIL-31ペプチドミモトープとの組合せ、ならびに
アジュバントを含み、
前記IL-31ペプチドミモトープ
は5~40アミノ酸残基の長さであり、以下の(i)~(iv)からなる群から選択される、前記ワクチン組成物:
(i)アミノ酸配列SVPADTFECKSF(配列番号186)、SVPADTFERKSF(配列番号187)、NSSAILPYFRAIRPLSDKNIIDKIIEQLDKLKF(配列番号192)、APTHQLPPSDVRKIILELQPLSRG(配列番号196)、
もしくはTGVPES(配列番号200
)である、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む、イヌIL-31ミモトープ;
(ii)アミノ酸配列SMPADNFERKNF(配列番号188)、NGSAILPYFRAIRPLSDKNTIDKIIEQLDKLKF(配列番号193)、APAHRLQPSDIRKIILELRPMSKG(配列番号197)、
もしくはIGLPES(配列番号201
)である、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む、ネコIL-31ミモトープ;
(iii)アミノ酸配列SMPTDNFERKRF(配列番号189)、NSSAILPYFKAISPSLNNDKSLYIIEQLDKLNF(配列番号194)、GPIYQLQPKEIQAIIVELQNLS KK(配列番号198)、
もしくはKGVQKF(配列番号202
)である、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む、ウマIL-31ミモトープ;
(iv)アミノ酸配列SVPTDTHECKRF(配列番号190)、SVPTDTHERKRF(配列番号191)、HSPAIRAYLKTIRQLDNKSVIDEIIEHLDKLIF(配列番号195)、LPVRLLRPSDDVQKIVEELQSLSKM(配列番号199)、
もしくはKGVLVS(配列番号203
)である、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む、ヒトIL-31ミモトープ。
【請求項2】
前記ミモトープが、哺乳類のIL-31タンパク質とその共受容体との相互作用に関与する前記IL-31タンパク質上の領域に特異的に結合する抗IL-31抗体またはその抗原結合部分に結合する、請求項
1に記載のワクチン組成物。
【請求項3】
前記抗体の前記領域への前記結合が、以下:
a)配列番号157(ネコ_IL31_野生型)によって表されるネコIL-31配列のアミノ酸残基約124から135の間の領域、
b)配列番号155(イヌ_IL31)によって表されるイヌIL-31配列のアミノ酸残基約124から135の間の領域、及び
c)配列番号165(ウマ_IL31)によって表されるウマIL-31配列のアミノ酸残基約118から129の間の領域
からなる群より選択される15H05エピトープ結合領域の変異によって影響を受ける、請求項
2に記載のワクチン組成物。
【請求項4】
前記ミモトープが、以下の相補性決定領域(CDR)配列の組合せ:
1)抗体15H05:可変重鎖(VH)-CDR1がSYTIH(配列番号1)、VH-CDR2がNINPTSGYTENNQRFKD(配列番号2)、VH-CDR3がWGFKYDGEWSFDV(配列番号3)、可変軽鎖(VL)-CDR1がRASQGISIWLS(配列番号4)、VL-CDR2がKASNLHI(配列番号5)、VL-CDR3がLQSQTYPLT(配列番号6)、
2)抗体ZIL1:可変重鎖(VH)-CDR1がSYGMS(配列番号13)、VH-CDR2がHINSGGSSTYYADAVKG(配列番号14)、VH-CDR3がVYTTLAAFWTDNFDY(配列番号15)、可変軽鎖(VL)-CDR1がSGSTNNIGILAAT(配列番号16)、VL-CDR2がSDGNRPS(配列番号17)、VL-CDR3がQSFDTTLDAYV(配列番号18)、
3)抗体ZIL8:VH-CDR1がDYAMS(配列番号19)、VH-CDR2がGIDSVGSGTSYADAVKG(配列番号20)、VH-CDR3がGFPGSFEH(配列番号21)、VL-CDR1がTGSSSNIGSGYVG(配列番号22)、VL-CDR2がYNSDRPS(配列番号23)、VL-CDR3がSVYDRTFNAV(配列番号24)、
4)抗体ZIL9:VH-CDR1がSYDMT(配列番号25)、VH-CDR2がDVNSGGTGTAYAVAVKG(配列番号26)、VH-CDR3がLGVRDGLSV(配列番号27)、VL-CDR1がSGESLNEYYTQ(配列番号28)、VL-CDR2がRDTERPS(配列番号29)、VL-CDR3がESAVDTGTLV(配列番号30)、
5)抗体ZIL11:VH-CDR1がTYVMN(配列番号31)、VH-CDR2がSINGGGSSPTYADAVRG(配列番号32)、VH-CDR3がSMVGPFDY(配列番号33)、VL-CDR1がSGESLSNYYAQ(配列番号34)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号35)、VL-CDR3がESAVSSDTIV(配列番号36)、
6)抗体ZIL69:VH-CDR1がSYAMK(配列番号37)、VH-CDR2がTINNDGTRTGYADAVRG(配列番号38)、VH-CDR3がGNAESGCTGDHCPPY(配列番号39)、VL-CDR1がSGESLNKYYAQ(配列番号40)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号41)、VL-CDR3がESAVSSETNV(配列番号42)、
7)抗体ZIL94:VH-CDR1がTYFMS(配列番号43)、VH-CDR2がLISSDGSGTYYADAVKG(配列番号44)、VH-CDR3がFWRAFND(配列番号45)、VL-CDR1がGLNSGSVSTSNYPG(配列番号46)、VL-CDR2がDTGSRPS(配列番号47)、VL-CDR3がSLYTDSDILV(配列番号48)、
8)抗体ZIL154:VH-CDR1がDRGMS(配列番号49)、VH-CDR2がYIRYDGSRTDYADAVEG(配列番号50)、VH-CDR3がWDGSSFDY(配列番号51)、VL-CDR1がKASQSLLHSDGNTYLD(配列番号52)、VL-CDR2がKVSNRDP(配列番号53)、VL-CDR3がMQAIHFPLT(配列番号54)、
9)抗体ZIL159:VH-CDR1がSYVMT(配列番号55)、VH-CDR2がGINSEGSRTAYADAVKG(配列番号56)、VH-CDR3がGDIVATGTSY(配列番号57)、VL-CDR1がSGETLNRFYTQ(配列番号58)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号59)、VL-CDR3がKSAVSIDVGV(配列番号60)、
10)抗体ZIL171:VH-CDR1がTYVMN(配列番号61)、VH-CDR2がSINGGGSSPTYADAVRG(配列番号62)、VH-CDR3がSMVGPFDY(配列番号63)、VL-CDR1がSGKSLSYYYAQ(配列番号64)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号65)、VL-CDR3がESAVSSDTIV(配列番号66)、または
11)VHまたはVLのCDR1、CDR2、もしくはCDR3のうちの少なくとも1つにおける1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失、及び/または置換によってそれぞれの親抗体15H05、ZIL1、ZIL8、ZIL9、ZIL11、ZIL69、ZIL94、ZIL154、ZIL159、もしくはZIL171と相違する、1)~10)のバリアント
のうちの少なくとも1つを含む、抗IL-31抗体またはその抗原結合部分に結合する、請求項
2に記載のワクチン組成物。
【請求項5】
前記ミモトープが拘束性ミモトープである、請求項1~
4のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
前記拘束性ミモトープが化学的に連結した環状ペプチドである、請求項
5に記載のワクチン組成物。
【請求項7】
前記ミモトープが前記担体ポリペプチドと化学的に結合している、請求項1~
6のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項8】
前記担体ポリペプチド及び前記ミモトープが組換え融合タンパク質の一部である、請求項1~
6のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項9】
前記担体ポリペプチドが、細菌トキソイドもしくはその誘導体、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、またはウイルス様粒子を含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項10】
前記細菌トキソイドまたは誘導体が、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、B群N.meningitidisからの外膜タンパク質複合体、Pseudomonas外毒素、またはジフテリア毒素の無毒性変異型(CRM197)である、請求項
9に記載のワクチン組成物。
【請求項11】
前記ウイルス様粒子が、HBsAg、HBcAg、E.coliバクテリオファージQベータ、ノーウォークウイルス、犬ジステンパーウイルス(CDV)、またはインフルエンザHAである、請求項
9に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
前記担体ポリペプチドが、CRM197を含むまたはそれからなる、請求項
10に記載のワクチン組成物。
【請求項13】
前記アジュバントが、水中油型アジュバント、ポリマー及び水アジュバント、油中水型アジュバント、水酸化アルミニウムアジュバント、ビタミンEアジュバント、ならびにこれらの組合せからなる群より選択される、請求項1~
12のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項14】
前記アジュバントが、サポニン、ステロール、第4級アンモニウム化合物、及びポリマーを含む製剤である、請求項1~
13のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項15】
前記サポニンがQuil Aまたはその精製画分であり、前記ステロールがコレステロールであり、前記第4級アンモニウム化合物がジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)であり、前記ポリマーがポリアクリル酸である、請求項
14に記載のワクチン組成物。
【請求項16】
前記アジュバントが、1つ以上の単離免疫刺激性オリゴヌクレオチド、ステロール、及びサポニンの組合せを含む、請求項1~
13のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項17】
前記1つ以上の単離免疫刺激性オリゴヌクレオチドがCpGを含み、前記ステロールがコレステロールであり、前記サポニンがQuil Aまたはその精製画分である、請求項
16に記載のワクチン組成物。
【請求項18】
IL-31媒介性障害に対し哺乳類を保護する方法であって、請求項1~
17のいずれか1項に記載のワクチン組成物を前記哺乳類に投与することを含
み、前記哺乳類はイヌ、ネコ、及びウマからなる群から選択される、前記方法。
【請求項19】
前記ワクチン組成物に含まれる前記IL-31ミモトープが、用量当たり約10μg~約100μgで前記哺乳類に投与される、請求項
18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドワクチンの分野、ならびに診断手順を含めた臨床的及び科学的手順における組換え型モノクローナル抗体の使用に関する。本発明のペプチドワクチンは、IL-31媒介性障害に対するネコ、イヌ、ウマ、またはヒトなどの哺乳類の免疫化及び/または保護に有用である。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚炎は、American College of Veterinary Dermatology特別委員会によって「特有の臨床的特徴を伴った、遺伝的素因のある炎症性及び掻痒性のアレルギー性皮膚疾患」と定義されている(Olivry et al.Veterinary Immunology and Immunopathology 2001;81:143-146)。また、当該特別委員会は、イヌの疾患はアレルゲン特異的IgEに関連していることも認識している(Olivry,et al.2001(前掲);Marsella & Olivry Clinics in Dermatology 2003;21:122-133)。重度の掻痒は、続発性脱毛症及び紅斑と共に、ペットの飼い主にとって最も目につき心配な症状である。
【0003】
アレルギー性皮膚炎に関与する潜在的要因は多数あり、十分には理解されていない。食品の成分がアトピー性皮膚炎の誘因となる(Picco,et al.Vet Dermatol.2008;19:150-155)場合もあれば、ノミ、チリダニ、ブタクサ、植物抽出物などのような環境アレルゲンが誘因となる場合もある。遺伝的因子も重要な役割を担う。品種の偏向は確認されていないが、何らかの遺伝様式がアトピー性皮膚炎の素因を高めると考えられている(Sousa & Marsella Veterinary Immunology and Immunopathology 2001;81:153-157;Schwartzman,et al.Clin.Exp.Immunol.1971;9:549-569)。
【0004】
アトピー性皮膚炎の有病率は、全イヌ集団の10%と推定されている(Marsella & Olivry 2003(前掲);Scott,et al.Canadian Veterinary Journal 2002;43:601-603;Hillier Veterinary Immunology and Immunopathology 2001;81:147-151)。全世界で約450万頭のイヌが、この慢性的で生涯にわたる状態に罹患している。発生率は増加しているように思われる。イヌの品種及び性別の偏向が疑われているが、地理的地域に応じて大きく変動する可能性がある(Hillier,2001(前掲);Picco,et al.2008(前掲))。
【0005】
ネコアレルギー性皮膚炎は、健康なネコでは反応を誘導しない物質に対する免疫系の異常な応答によって引き起こされると考えられている、炎症性及び掻痒性の皮膚状態である。ネコアレルギー性皮膚炎の最も一貫した特徴は、慢性再発性の掻痒である。ネコのアレルギー性皮膚炎の一般的な臨床症状としては、自己誘発性脱毛、粟粒性皮膚炎、好酸性肉芽腫複合病変(プラーク、肉芽腫、及び無痛潰瘍を含む)、ならびに表皮剥離、びらん、及び/または潰瘍を特徴とする頭頚部に集中した掻痒が挙げられる。品種及び性別の偏向は実証されていないが、若齢のネコが疾患にかかりやすいように思われる(Hobi et al.Vet Dermatol 2011 22:406-413;Ravens et al.Vet Dermatol 2014;25:95-102;Buckely In Practice 2017;39:242-254)。
【0006】
アレルギー性皮膚炎と診断されたネコに対する現状の治療は、臨床徴候の重症度、期間、及び飼い主の選好に依存し、アレルゲン特異的免疫療法、ならびにグルココルチコイド及びシクロスポリンのような鎮痒薬が含まれる(Buckley(前掲))。免疫療法治療は一部の患者に有効であるが、頻繁な注射を要し、6~9ヵ月間臨床的改善が見られない場合がある(Buckley(前掲))。グルココルチコイドやシクロスポリンのような免疫抑制薬は概して有効であるが、長期間使用すると、しばしば望ましくない有害作用が生じる。
【0007】
ウマアトピー性皮膚炎は、掻痒の潜在的原因として認識されている。ウマアトピー性皮膚炎における環境アレルゲンの役割については、より十分に理解されつつある。当該疾患は、関与するアレルゲン(複数可)に応じて季節性の場合も非季節性の場合もある。年齢、品種、性別の偏向はあまり報告されていない。School of Veterinary Medicine,University of California,Davis(SVM-UCD)の予備研究では、発症年齢の中央値は6.5歳、サラブレッドが最も一般的な品種でウマの25%を占め、オス(通常は去勢馬)の有病率はメスのほぼ2倍であった。ただし、これらのデータはわずか24頭のウマからのものであり、全体としての病院集団との比較はまだ行われていない。しばしば顔、遠位四肢、または体幹に向けられる掻痒は、ウマアトピー性皮膚炎における最も一般的な臨床徴候である。脱毛症、紅斑、蕁麻疹、丘疹はいずれも存在し得る。蕁麻疹病変は非常に重症であるが、掻痒性ではない。ウマの蕁麻疹様アトピー性皮膚炎には家族性素因の可能性がある。ウマは続発性膿皮症を有することがあり、これは、過剰な鱗屑、小さな表皮小環、または痂皮を伴う丘疹(「粟粒性皮膚炎」)が特徴である。アトピー性皮膚炎の診断は、臨床徴候及び他の診断、特に昆虫(Culicoides)過敏症の除外に基づく(White Clin Tech Equine Pract 2005;4:311-313;Fadok Vet Clin Equine 2013;29 541-550)。現在、ウマアトピー性皮膚炎の管理は、アレルギー応答により誘発される炎症及び掻痒を抑制することによって対症的に行われると共に、特定の原因に対処することによって(すなわち、原因となるアレルゲンを同定すること及びアレルゲン特異的ワクチンを製剤化することによって)も行われる。対症的アプローチは、典型的には、患者を快適にし自己外傷を最小限に抑えるため、短期的に必要とされる。このアプローチは、抗ヒスタミン剤、必須脂肪酸、ペントキシフィリン、及びグルココルチコイドを含めた局所療法と全身療法との組合せに依存する。環境アレルギーコントロールに対する一次的アプローチは、過敏性反応を誘発するアレルゲンの同定を伴う。アレルゲン特異的免疫療法がアトピー性ウマに有用であり得ることは、皮膚科医によって一般的に認められている。ただし、原則として、ほとんどのウマが改善を示すのは、免疫療法の最初の6ヵ月の後に過ぎない(Marsella Vet Clin Equine 2013;29:551-557)。また、ウマにおける免疫抑制薬の長期使用は、望ましくない有害作用をもたらす恐れがある。
【0008】
2型ヘルパーT細胞が産生するサイトカインであるインターロイキン31(IL-31)は、ヒト、マウス、及びイヌの掻痒を誘導することが示されている(Bieber N Engl J Med 2008;358:1483-1494;Dillon et al.Nat Immunol 2004;5:752-60;Bammert et al.に対する米国特許第8,790,651号;Gonzalez et al.Vet Dermatl.2013;24(1):48-53)。IL-31は、IL-31受容体A(IL-31RA)及びオンコスタチンM受容体(OSMR)から構成された共受容体に結合する(Dillon et al.2004(前掲)及びBilsborough et al.J Allergy Clin Immunol.2006 117(2):418-25)。受容体活性化により、JAK受容体(複数可)を介しSTATがリン酸化される。共受容体の発現は、マクロファージ、ケラチノサイト、及び背根神経節で示されている。
【0009】
最近、IL-31が皮膚炎、掻痒性皮膚病変、アレルギー、及び気道過敏症に関与していることが分かった。Zoetis Inc.(Parsippany,NJ)が製造したイヌ抗IL-31モノクローナル抗体であるCytopoint(登録商標)は、アトピー性皮膚炎を有するイヌの掻痒及び皮膚病変を低減することが示されている(Gonzalez et al.2013(前掲);Michels et al.Vet Dermatol.2016;Dec;27(6):478-e129)。哺乳類におけるIL-31媒介性障害を防止及び治療するための代替的アプローチを提供することが望ましいと考えられる。特に、アトピー性皮膚炎を有するイヌ、ネコ、ウマ、及びヒトにおける掻痒及び皮膚病変を低減するためのワクチンを提供することが望ましいと考えられる。
【発明の概要】
【0010】
1つの実施形態において、本発明は、IL-31媒介性障害に対し哺乳類を免疫化する及び/または保護するためのワクチン組成物であって、担体ポリペプチドと、ネコIL-31ミモトープ、イヌIL-31ミモトープ、ウマIL-31ミモトープ、またはヒトIL-31ミモトープから選択される少なくとも1つのミモトープとの組合せ、及びアジュバントを含む、ワクチン組成物を提供する。
【0011】
ワクチン組成物の1つの実施形態において、イヌIL-31ミモトープは、アミノ酸配列SVPADTFECKSF(配列番号186)、SVPADTFERKSF(配列番号187)、NSSAILPYFRAIRPLSDKNIIDKIIEQLDKLKF(配列番号192)、APTHQLPPSDVRKIILELQPLSRG(配列番号196)、TGVPES(配列番号200)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む。
【0012】
ワクチン組成物の別の実施形態において、ネコIL-31ミモトープは、アミノ酸配列SMPADNFERKNF(配列番号188)、NGSAILPYFRAIRPLSDKNTIDKIIEQLDKLKF(配列番号193)、APAHRLQPSDIRKIILELRPMSKG(配列番号197)、IGLPES(配列番号201)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む。
【0013】
ワクチン組成物のなおさらなる実施形態において、ウマIL-31ミモトープは、アミノ酸配列SMPTDNFERKRF(配列番号189)、NSSAILPYFKAISPSLNNDKSLYIIEQLDKLNF(配列番号194)、GPIYQLQPKEIQAIIVELQNLSKK(配列番号198)、KGVQKF(配列番号202)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む。
【0014】
ワクチン組成物のまた別の実施形態において、ヒトIL-31ミモトープは、アミノ酸配列SVPTDTHECKRF(配列番号190)、SVPTDTHERKRF(配列番号191)、HSPAIRAYLKTIRQLDNKSVIDEIIEHLDKLIF(配列番号195)、LPVRLLRPSDDVQKIVEELQSLSKM(配列番号199)、KGVLVS(配列番号203)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む。
【0015】
1つの実施形態において、ワクチン組成物に含まれるミモトープは、哺乳類のIL-31タンパク質とその共受容体との相互作用に関与するIL-31タンパク質上の領域に特異的に結合する抗IL-31抗体またはその抗原結合部分に結合する。1つの実施形態において、当該抗体の当該領域への結合は、以下:
a)配列番号157(ネコ_IL31_野生型)によって表されるネコIL-31配列のアミノ酸残基約124から135の間の領域、
b)配列番号155(イヌ_IL31)によって表されるイヌIL-31配列のアミノ酸残基約124から135の間の領域、及び
c)配列番号165(ウマ_IL31)によって表されるウマIL-31配列のアミノ酸残基約118から129の間の領域
からなる群より選択される15H05エピトープ結合領域の変異によって影響を受ける。
【0016】
特定の実施形態において、ミモトープは、以下の相補性決定領域(CDR)配列の組合せ:
1)抗体15H05:可変重鎖(VH)-CDR1がSYTIH(配列番号1)、VH-CDR2がNINPTSGYTENNQRFKD(配列番号2)、VH-CDR3がWGFKYDGEWSFDV(配列番号3)、可変軽鎖(VL)-CDR1がRASQGISIWLS(配列番号4)、VL-CDR2がKASNLHI(配列番号5)、VL-CDR3がLQSQTYPLT(配列番号6)、
2)抗体ZIL1:可変重鎖(VH)-CDR1がSYGMS(配列番号13)、VH-CDR2がHINSGGSSTYYADAVKG(配列番号14)、VH-CDR3がVYTTLAAFWTDNFDY(配列番号15)、可変軽鎖(VL)-CDR1がSGSTNNIGILAAT(配列番号16)、VL-CDR2がSDGNRPS(配列番号17)、VL-CDR3がQSFDTTLDAYV(配列番号18)、
3)抗体ZIL8:VH-CDR1がDYAMS(配列番号19)、VH-CDR2がGIDSVGSGTSYADAVKG(配列番号20)、VH-CDR3がGFPGSFEH(配列番号21)、VL-CDR1がTGSSSNIGSGYVG(配列番号22)、VL-CDR2がYNSDRPS(配列番号23)、VL-CDR3がSVYDRTFNAV(配列番号24)、
4)抗体ZIL9:VH-CDR1がSYDMT(配列番号25)、VH-CDR2がDVNSGGTGTAYAVAVKG(配列番号26)、VH-CDR3がLGVRDGLSV(配列番号27)、VL-CDR1がSGESLNEYYTQ(配列番号28)、VL-CDR2がRDTERPS(配列番号29)、VL-CDR3がESAVDTGTLV(配列番号30)、
5)抗体ZIL11:VH-CDR1がTYVMN(配列番号31)、VH-CDR2がSINGGGSSPTYADAVRG(配列番号32)、VH-CDR3がSMVGPFDY(配列番号33)、VL-CDR1がSGESLSNYYAQ(配列番号34)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号35)、VL-CDR3がESAVSSDTIV(配列番号36)、
6)抗体ZIL69:VH-CDR1がSYAMK(配列番号37)、VH-CDR2がTINNDGTRTGYADAVRG(配列番号38)、VH-CDR3がGNAESGCTGDHCPPY(配列番号39)、VL-CDR1がSGESLNKYYAQ(配列番号40)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号41)、VL-CDR3がESAVSSETNV(配列番号42)、
7)抗体ZIL94:VH-CDR1がTYFMS(配列番号43)、VH-CDR2がLISSDGSGTYYADAVKG(配列番号44)、VH-CDR3がFWRAFND(配列番号45)、VL-CDR1がGLNSGSVSTSNYPG(配列番号46)、VL-CDR2がDTGSRPS(配列番号47)、VL-CDR3がSLYTDSDILV(配列番号48)、
8)抗体ZIL154:VH-CDR1がDRGMS(配列番号49)、VH-CDR2がYIRYDGSRTDYADAVEG(配列番号50)、VH-CDR3がWDGSSFDY(配列番号51)、VL-CDR1がKASQSLLHSDGNTYLD(配列番号52)、VL-CDR2がKVSNRDP(配列番号53)、VL-CDR3がMQAIHFPLT(配列番号54)、
9)抗体ZIL159:VH-CDR1がSYVMT(配列番号55)、VH-CDR2がGINSEGSRTAYADAVKG(配列番号56)、VH-CDR3がGDIVATGTSY(配列番号57)、VL-CDR1がSGETLNRFYTQ(配列番号58)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号59)、VL-CDR3がKSAVSIDVGV(配列番号60)、
10)抗体ZIL171:VH-CDR1がTYVMN(配列番号61)、VH-CDR2がSINGGGSSPTYADAVRG(配列番号62)、VH-CDR3がSMVGPFDY(配列番号63)、VL-CDR1がSGKSLSYYYAQ(配列番号64)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号65)、VL-CDR3がESAVSSDTIV(配列番号66)、または
11)VHまたはVLのCDR1、CDR2、もしくはCDR3のうちの少なくとも1つにおける1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失、及び/または置換によってそれぞれの親抗体15H05、ZIL1、ZIL8、ZIL9、ZIL11、ZIL69、ZIL94、ZIL154、ZIL159、もしくはZIL171と相違する、1)~10)のバリアント
のうちの少なくとも1つを含む、抗IL-31抗体またはその抗原結合部分に結合する。
【0017】
いくつかの実施形態において、本発明のワクチン組成物で用いられるミモトープは、ネコIL-31に結合する抗IL-31抗体またはその抗原結合部分に結合し、このとき、当該抗体は、以下:42位のリジンからアスパラギンへの置換、43位のバリンからイソロイシンへの置換、46位のロイシンからバリンへの置換、49位のリジンからアスパラギンへの置換、及びこれらの組合せから選択されるフレームワーク2(FW2)変化を含むVL鎖を含み、このとき、これらの位置は配列番号127(FEL_15H05_VL1)のナンバリングに準拠している。
【0018】
上記のワクチン組成物の1つの実施形態において、ミモトープは拘束性ミモトープである。特定の実施形態において、拘束性ミモトープは、化学的に連結した環状ペプチドである。
【0019】
上記のワクチン組成物のいくつかの実施形態において、ミモトープは、担体ポリペプチドと化学的に結合体化している。他の実施形態において、担体ポリペプチド及びミモトープは、組換え融合タンパク質の一部である。
【0020】
上記のワクチン組成物の1つの実施形態において、ミモトープと組み合わせる担体ポリペプチドは、細菌トキソイドもしくはその誘導体、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、またはウイルス様粒子を含む。1つの実施形態において、ミモトープは、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、B群N.meningitidisからの外膜タンパク質複合体、Pseudomonas外毒素、またはジフテリア毒素の無毒性変異型(CRM197)から選択される細菌トキソイドまたは誘導体と組み合わされる。別の実施形態において、ミモトープは、HBsAg、HBcAg、E.coliバクテリオファージQベータ、ノーウォークウイルス、イヌジステンパーウイルス(CDV)、またはインフルエンザHAから選択されるウイルス様粒子と組み合わされる。特定の実施形態において、ミモトープは、CRM197を含むまたはそれからなる担体ポリペプチドと組み合わされる。
【0021】
1つの実施形態において、本発明の上記ワクチン組成物に含まれるアジュバントは、水中油型アジュバント、ポリマー及び水アジュバント、油中水型アジュバント、水酸化アルミニウムアジュバント、ビタミンEアジュバント、ならびにこれらの組合せから選択される。
【0022】
1つの実施形態において、アジュバントは、サポニン、ステロール、第4級アンモニウム化合物、及びポリマーを含む製剤である。特定の実施形態において、サポニンはQuil Aまたはその精製画分であり、ステロールはコレステロールであり、第4級アンモニウム化合物はジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)であり、ポリマーはポリアクリル酸である。
【0023】
別の実施形態において、アジュバントは、1つ以上の単離免疫刺激性オリゴヌクレオチド、ステロール、及びサポニンの組合せを含む。特定の実施形態において、1つ以上の単離免疫刺激性オリゴヌクレオチドはCpGを含み、ステロールはコレステロールであり、サポニンはQuil Aまたはその精製画分である。
【0024】
また、本発明は、IL-31媒介性障害に対し哺乳類を保護する方法も提供する。このような方法は、本発明に従うワクチン組成物を哺乳類に投与することを含む。1つの実施形態において、本発明に従うワクチンが投与される哺乳類は、イヌ、ネコ、ウマ、またはヒトから選択される。特定の実施形態において、ワクチン組成物は、用量当たり約10μg~約100μgで、または同等の免疫応答を誘発するための対応する用量で哺乳類に投与される、IL-31ペプチドミモトープを含む。1つの実施形態において、ワクチン組成物は、用量当たり約10μgでネコなどの哺乳類に投与されるIL-31ミモトープを含む。
【0025】
1つの実施形態において、IL-31媒介性障害は、掻痒状態またはアレルギー状態である。いくつかの実施形態において、掻痒状態またはアレルギー状態は、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬、強皮症、及び掻痒から選択される掻痒状態である。他の実施形態において、掻痒状態またはアレルギー状態は、アレルギー性皮膚炎、夏季湿疹、蕁麻疹、ヒーブ、炎症性気道疾患、再発性気道閉塞、気道過敏症、慢性閉塞性肺疾患、及び自己免疫に起因する炎症プロセスから選択されるアレルギー状態である。他の実施形態において、IL-31媒介性障害は腫瘍進行である。いくつかの実施形態において、IL-31媒介性障害は好酸球性疾患またはマスト細胞腫である。
【0026】
また、本明細書では、試料中の抗IL-31抗体の同一性及び/または量を定量する方法も提供される。このような方法は、ネコIL-31ミモトープ、イヌIL-31ミモトープ、ウマIL-31ミモトープ、及びヒトIL-31ミモトープから選択される少なくとも1つのミモトープと共に抗IL-31抗体を含む試料をインキュベートすることと、試料中の抗IL-31同一性及び/または量を定量することとを含む。
【0027】
1つの実施形態において、試料中の抗IL-31抗体の同一性及び/または量を定量するための方法で用いられるイヌIL-31ミモトープは、アミノ酸配列SVPADTFECKSF(配列番号186)、SVPADTFERKSF(配列番号187)、NSSAILPYFRAIRPLSDKNIIDKIIEQLDKLKF(配列番号192)、APTHQLPPSDVRKIILELQPLSRG(配列番号196)、TGVPES(配列番号200)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む。
【0028】
別の実施形態において、このような方法で用いられるネコIL-31ミモトープは、アミノ酸配列SMPADNFERKNF(配列番号188)、NGSAILPYFRAIRPLSDKNTIDKIIEQLDKLKF(配列番号193)、APAHRLQPSDIRKIILELRPM SKG(配列番号197)、IGLPES(配列番号201)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む。
【0029】
さらなる実施形態において、このような方法で用いられるウマIL-31ミモトープは、アミノ酸配列SMPTDNFERKRF(配列番号189)、NSSAILPYFKAISPSLNNDKSLYIIEQLDKLNF(配列番号194)、GPIYQLQPKEIQAIIVELQNLS KK(配列番号198)、KGVQKF(配列番号202)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む。
【0030】
またさらに、このような方法で用いられるヒトIL-31ミモトープは、アミノ酸配列SVPTDTHECKRF(配列番号190)、SVPTDTHERKRF(配列番号191)、HSPAIRAYLKTIRQLDNKSVIDEIIEHLDKLIF(配列番号195)、LPVRLLRPSDDVQKIVEELQSLSKM(配列番号199)、KGVLVS(配列番号203)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む。
【0031】
上記の診断方法の1つの実施形態において、ミモトープは、固体表面に結合した捕捉試薬である。1つの実施形態において、試料中の抗体の量を定量化するために、試料がミモトープ捕捉試薬に添加され、次に二次検出試薬が添加される。
【0032】
また、本発明は、哺乳類からの試料中のIL-31の量を定量する方法も提供する。このような方法は、固体表面に繋留した標識抗IL-31抗体:IL-31ミモトープ複合体と共にIL-31を含む哺乳類試料をインキュベートすることであって、複合体中のミモトープが、ネコIL-31ミモトープ、イヌIL-31ミモトープ、ウマIL-31ミモトープ、及びヒトIL-31ミモトープからなる群より選択される、インキュベートすることと、試料中のIL-31のレベルを定量することであって、複合体中のミモトープに対する複合体中の標識抗IL-31抗体の親和性が、試料中のIL-31に対するその親和性よりも低い、定量することとを含む。この方法の1つの実施形態において、定量するステップは、試料中のIL-31が複合体の標識抗IL-31抗体に結合したときに固体表面から解放される標識抗体から来るシグナルを測定することを含み、試料中のIL-31のレベルは、シグナルに対し反比例する。
【0033】
1つの実施形態において、試料中のIL-31の量を定量する方法で用いられるイヌIL-31ミモトープは、アミノ酸配列SVPADTFECKSF(配列番号186)、SVPADTFERKSF(配列番号187)、NSSAILPYFRAIRPLSDKNIIDKIIEQLDKLKF(配列番号192)、APTHQLPPSDVRKIILELQPLSRG(配列番号196)、TGVPES(配列番号200)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む。
【0034】
別の実施形態において、このような方法で用いられるネコIL-31ミモトープは、アミノ酸配列SMPADNFERKNF(配列番号188)、NGSAILPYFRAIRPLSDKNTIDKIIEQLDKLKF(配列番号193)、APAHRLQPSDIRKIILELRPM SKG(配列番号197)、IGLPES(配列番号201)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む。
【0035】
また別の実施形態において、このような方法で用いられるウマIL-31ミモトープは、アミノ酸配列SMPTDNFERKRF(配列番号189)、NSSAILPYFKAISPSLNNDKSLYIIEQLDKLNF(配列番号194)、GPIYQLQPKEIQAIIVELQNLS KK(配列番号198)、KGVQKF(配列番号202)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む。
【0036】
なおさらなる実施形態において、このような方法で用いられるヒトIL-31ミモトープは、アミノ酸配列SVPTDTHECKRF(配列番号190)、SVPTDTHERKRF(配列番号191)、HSPAIRAYLKTIRQLDNKSVIDEIIEHLDKLIF(配列番号195)、LPVRLLRPSDDVQKIVEELQSLSKM(配列番号199)、KGVLVS(配列番号203)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む。
【0037】
本発明の上記の診断方法のいずれかにおけるいくつかの実施形態において、ミモトープは、哺乳類のIL-31タンパク質とその共受容体との相互作用に関与するIL-31タンパク質上の領域に特異的に結合する抗IL-31抗体またはその抗原結合部分に結合する。本発明の診断方法の1つの実施形態において、当該抗体の当該領域への結合は、以下:
a)配列番号157(ネコ_IL31_野生型)によって表されるネコIL-31配列のアミノ酸残基約124から135の間の領域、
b)配列番号155(イヌ_IL31)によって表されるイヌIL-31配列のアミノ酸残基約124から135の間の領域、及び
c)配列番号165(ウマ_IL31)によって表されるウマIL-31配列のアミノ酸残基約118から129の間の領域
からなる群より選択される15H05エピトープ結合領域の変異によって影響を受ける。
【0038】
本発明の診断方法のいずれかにおける1つの特定の実施形態において、ミモトープは、以下の相補性決定領域(CDR)配列の組合せ:
1)抗体15H05:可変重鎖(VH)-CDR1がSYTIH(配列番号1)、VH-CDR2がNINPTSGYTENNQRFKD(配列番号2)、VH-CDR3がWGFKYDGEWSFDV(配列番号3)、可変軽鎖(VL)-CDR1がRASQGISIWLS(配列番号4)、VL-CDR2がKASNLHI(配列番号5)、VL-CDR3がLQSQTYPLT(配列番号6)、
2)抗体ZIL1:可変重鎖(VH)-CDR1がSYGMS(配列番号13)、VH-CDR2がHINSGGSSTYYADAVKG(配列番号14)、VH-CDR3がVYTTLAAFWTDNFDY(配列番号15)、可変軽鎖(VL)-CDR1がSGSTNNIGILAAT(配列番号16)、VL-CDR2がSDGNRPS(配列番号17)、VL-CDR3がQSFDTTLDAYV(配列番号18)、
3)抗体ZIL8:VH-CDR1がDYAMS(配列番号19)、VH-CDR2がGIDSVGSGTSYADAVKG(配列番号20)、VH-CDR3がGFPGSFEH(配列番号21)、VL-CDR1がTGSSSNIGSGYVG(配列番号22)、VL-CDR2がYNSDRPS(配列番号23)、VL-CDR3がSVYDRTFNAV(配列番号24)、
4)抗体ZIL9:VH-CDR1がSYDMT(配列番号25)、VH-CDR2がDVNSGGTGTAYAVAVKG(配列番号26)、VH-CDR3がLGVRDGLSV(配列番号27)、VL-CDR1がSGESLNEYYTQ(配列番号28)、VL-CDR2がRDTERPS(配列番号29)、VL-CDR3がESAVDTGTLV(配列番号30)、
5)抗体ZIL11:VH-CDR1がTYVMN(配列番号31)、VH-CDR2がSINGGGSSPTYADAVRG(配列番号32)、VH-CDR3がSMVGPFDY(配列番号33)、VL-CDR1がSGESLSNYYAQ(配列番号34)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号35)、VL-CDR3がESAVSSDTIV(配列番号36)、
6)抗体ZIL69:VH-CDR1がSYAMK(配列番号37)、VH-CDR2がTINNDGTRTGYADAVRG(配列番号38)、VH-CDR3がGNAESGCTGDHCPPY(配列番号39)、VL-CDR1がSGESLNKYYAQ(配列番号40)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号41)、VL-CDR3がESAVSSETNV(配列番号42)、
7)抗体ZIL94:VH-CDR1がTYFMS(配列番号43)、VH-CDR2がLISSDGSGTYYADAVKG(配列番号44)、VH-CDR3がFWRAFND(配列番号45)、VL-CDR1がGLNSGSVSTSNYPG(配列番号46)、VL-CDR2がDTGSRPS(配列番号47)、VL-CDR3がSLYTDSDILV(配列番号48)、
8)抗体ZIL154:VH-CDR1がDRGMS(配列番号49)、VH-CDR2がYIRYDGSRTDYADAVEG(配列番号50)、VH-CDR3がWDGSSFDY(配列番号51)、VL-CDR1がKASQSLLHSDGNTYLD(配列番号52)、VL-CDR2がKVSNRDP(配列番号53)、VL-CDR3がMQAIHFPLT(配列番号54)、
9)抗体ZIL159:VH-CDR1がSYVMT(配列番号55)、VH-CDR2がGINSEGSRTAYADAVKG(配列番号56)、VH-CDR3がGDIVATGTSY(配列番号57)、VL-CDR1がSGETLNRFYTQ(配列番号58)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号59)、VL-CDR3がKSAVSIDVGV(配列番号60)、
10)抗体ZIL171:VH-CDR1がTYVMN(配列番号61)、VH-CDR2がSINGGGSSPTYADAVRG(配列番号62)、VH-CDR3がSMVGPFDY(配列番号63)、VL-CDR1がSGKSLSYYYAQ(配列番号64)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号65)、VL-CDR3がESAVSSDTIV(配列番号66)、または
11)VHまたはVLのCDR1、CDR2、もしくはCDR3のうちの少なくとも1つにおける1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失、及び/または置換によってそれぞれの親抗体15H05、ZIL1、ZIL8、ZIL9、ZIL11、ZIL69、ZIL94、ZIL154、ZIL159、もしくはZIL171と相違する、1)~10)のバリアント
のうちの少なくとも1つを含む、抗IL-31抗体またはその抗原結合部分に結合する。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明の診断方法で用いられるミモトープは、ネコIL-31に結合する抗IL-31抗体またはその抗原結合部分に結合し、このとき、当該抗体は、以下:42位のリジンからアスパラギンへの置換、43位のバリンからイソロイシンへの置換、46位のロイシンからバリンへの置換、49位のリジンからアスパラギンへの置換、及びこれらの組合せから選択されるフレームワーク2(FW2)変化を含むVL鎖を含み、このとき、これらの位置は配列番号127(FEL_15H05_VL1)のナンバリングに準拠している。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】異なる種由来のIL-31間でアミノ酸配列が保存されていることを示すアラインメントである。詳細には、配列番号155(イヌIL-31)、配列番号157(ネコIL-31)、配列番号165(イヌIL-31)、及び配列番号181(ヒトIL-31)間の比較を示している。イヌ、ネコ、ウマ、及びヒトのIL-31間におけるアミノ酸配列同一性パーセントも示されている。
【
図2】Biacoreシステム(Biacore Life Sciences(GE Healthcare),Uppsala,Sweden)の表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて、マウス起源由来のCDRを有する候補Abがイヌ及びネコのIL-31に結合する親和性を詳述している。
【
図3】イヌ及びネコの細胞アッセイで測定された、マウス起源由来のCDRを有する候補抗体の効力(IC50(μg/ml))を示す表である。詳細には、候補抗体について、イヌDH-82またはネコFCWF4マクロファージ様細胞内でのIL-31媒介性STATリン酸化を阻害する能力を評価した。
【
図4】間接ELISA及びBiacore両方の方法を用いて、イヌ起源のCDRを有する候補モノクローナル抗体の様々なタンパク質との結合において得られた結果を示している。間接ELISAについては、野生型ネコIL-31への結合と、モノクローナル抗体15H05エピトープ領域内に変異を有するネコIL-31 15H05変異型への結合(ELISA OD)とを評価した。結合を確認するため、イヌ、ネコ、ウマ、ヒト、ネコ15H05変異型、及びネコ11E12変異型のIL-31タンパク質を表面として使用し、単一試験濃度の抗体を使用してbiacore分析を実施した。ネコIL-31 11E12変異型は、モノクローナル抗体11E12エピトープ領域内に変異を有した。
【
図5】Aは、マウス抗体11E12 VL配列(配列番号73)のアラインメントを示しており、過去に開示されたCan_11E12_VL_cUn_1(配列番号182)及びCAN_11E12_VL_cUn_FW2(配列番号184)と称されるイヌ化11E12配列を、FEL_11E12_VH1(配列番号111)及びFEL_11E12_VL1_FW2(配列番号117)という名称のネコ化バージョンと比較している。Aのアラインメントの下に記されているドットはFel_11E12_VL1の関連する変化の位置を示しており、この変化はこの抗体のIL-31タンパク質に対する親和性を回復するために必要であった。Bは、本明細書でMU_15H05_VL(配列番号69)と称されるマウス抗体15H05 VL配列と、本明細書でFEl_15H05_VL1(配列番号127)及びFEl_15H05_VL_FW2(配列番号135)と称されるネコ化15H05 VL配列とのアラインメントを示している。Bのアラインメントの下にあるドットは、ネコ化15H05 VL(Fel_15H05_VL1)に必要な変化を示しており、この変化は、この抗体のマウス及びキメラ形態と比較したときのイヌ及びネコのIL-31に対する親和性を回復するだけでなく改善するために必要であった。
【
図6A】変異型15H05(配列番号163)及び11E12(配列番号161)との野生型ネコIL-31(配列番号157)のアラインメントを示しており、アラニン置換が生じる位置は強調表示されている。
【
図6B】ネコIL-31ホモロジーモデルを示しており、抗体11E12(部位1)及び15H05(部位2)の結合に関与する2つのアミノ酸の位置が強調表示されている。
【
図6C】モノクローナル抗体11E12及び15H05と、野生型ネコIL-31、ならびに変異型IL-31タンパク質15H05(配列番号163)及び11E12(配列番号161)との結合において得られた結果を示すグラフであり、野生型及びこれらの変異型はコーティング抗原として使用されている。
【
図7】Biacoreを用いたmAb 15H05及び11E12の競合結合評価を示すグラフである。
図7Aは、マウス15H05及び11E12抗体のイヌIL-31との競合結合データを示している。Bは、抗体15H05及び11E12のネコIL-31表面上での競合結合データを示している。
【
図8】OSMR及びIL-31Raの個々の受容体サブユニットと、野生型ネコIL-31、ならびに変異型IL-31タンパク質15H05(配列番号163)及び11E12(配列番号161)との結合において得られた結果を示すグラフであり、野生型及びこれらの変異型はコーティング抗原として使用されている。
【
図9】ネコIL-31誘導性掻痒モデルにおけるマウス:ネコ11E12キメラ型、マウス:ネコ15H05キメラ型、及びネコ化11E12(ネコ11E12 1.1)の予備的有効性を示すグラフである。
【
図10】ネコ掻痒チャレンジモデルにおける、ZTS-361と称されるネコ化15H05抗IL-31抗体の有効性のin vivo評価を示すグラフである。Aは、T01のビヒクルプラセボ群及びT02の抗体ZTS-361群における-7日目から28日目まで(ゼロ日目をT02群への抗体投与日とする)のベースラインチャレンジ前掻痒行動を示している。Bは抗体ZTS-361の有効性を示しており、IL-31チャレンジ後、ビヒクルプラセボ対照と比較したときの掻痒の有意な低減が7日目(p<.0001)、21日目(p<0.0027)、及び28日目(p<0.0238)に実証されている。
【
図11】Aは、正常な実験用イヌと比較して、アトピー性及びアレルギー性皮膚炎を有するイヌのうちのクライアント所有動物のIL-31の血漿レベルを示すグラフである。Bは、米国内のいくつかの異なる地理的地域からの、アレルギー性皮膚炎(AD)の推定診断を受けたネコの血清IL-31レベルを定量する最近の研究の結果を示すグラフである。Cは、1.75μg/kgのイヌIL-31を皮下投与した後のイヌにおけるイヌIL-31の薬物動態プロファイルを示すグラフである。
【
図12】
図12で囲まれているアミノ酸を包含するイヌIL-31の完全置換スキャンの結果を示す表である。全長イヌIL-31タンパク質(配列番号155)において、示された各位置を他の可能な19個のアミノ酸のうちの1個で個別に置き換え、間接ELISAを用いて抗体15H05の結合を評価した。比較のため、ネコ(配列番号157)、ウマ(配列番号165)、及びヒトIL-31(配列番号181)上の対応する領域が示されている。
【
図13】Aは、様々な拘束性ペプチドの配列及び化学的リンカーを示す表である。ペプチドZTS-561は、配列番号155の121~138位に対応するアミノ酸配列N-TEISVPADTFERKSFILT-Cを含み、位置番号132におけるシステイン(C)からアルギニン(R)への置換を伴う。ペプチドZTS-562は、配列番号155の122~135位に対応するアミノ酸配列N-EISVPADTFERKSF-Cを含み、位置番号132におけるシステイン(C)からアルギニン(R)への置換を伴う。ペプチドZTS-563は、配列番号157の121~138位に対応するアミノ酸配列N-AKVSMPADNFERKNFILT-Cを含み、位置番号138におけるアラニン(A)からスレオニン(T)への置換を伴う。ペプチドZTS-564は、配列番号155の121~138位に対応するアミノ酸配列N-TEISVPADTFERKSFILT-Cを含む。また、ペプチドZTS-561、ZTS-562、ZTS-563、及びZTS-564の各々は、遊離チオール基を用いた結合体化化学を促進するために、示されているようなN及びC末端側システインも含む。Bは、担体ポリペプチド(CRM-197)と独立的に結合体化させたペプチドZTS-561、ZTS-562、ZTS-563、及びZTS-564の各々の親和性評価の結果を示している。親和性評価のため、各ペプチドを独立的にbiacore表面に固定化し、ネコ化抗IL-31 15H05 mAb(ZTS-927)に対するKDを定量した。
【
図14】CRM-197結合体化IL-31ミモトープにおける、本明細書で開示されている抗体15H05及びその他の抗IL-31抗体が結合するIL-31タンパク質上の関連領域に向けて駆動されるエピトープ特異的免疫応答を生成する能力を評価するために行う、免疫原性研究の研究デザインを示している。
【
図15A】IL-31 15H05イヌ及びネコのミモトープならびに全長ネコIL-31タンパク質をイヌにワクチン接種した後に生成された血清力価を処置群別に示すグラフであり、血清を採取した各日の応答を示している。
図15Aは、全長ネコIL-31タンパク質(配列番号159)に対する平均イヌ抗体力価を示している。
【
図15B】IL-31 15H05イヌ及びネコのミモトープならびに全長ネコIL-31タンパク質をイヌにワクチン接種した後に生成された血清力価を処置群別に示すグラフであり、血清を採取した各日の応答を示している。
図15Bは、全長ネコIL-31 15H05変異型(配列番号163)に対する平均イヌ抗体力価を示している。
【
図15C】IL-31 15H05イヌ及びネコのミモトープならびに全長ネコIL-31タンパク質をイヌにワクチン接種した後に生成された血清力価を処置群別に示すグラフであり、血清を採取した各日の応答を示している。
図15Cは、全長イヌIL-31(配列番号155)に対する平均イヌ抗体力価を示している。
【
図15D】IL-31 15H05イヌ及びネコのミモトープならびに全長ネコIL-31タンパク質をイヌにワクチン接種した後に生成された血清力価を処置群別に示すグラフであり、血清を採取した各日の応答を示している。
図15Dは、全長ウマIL-31(配列番号165)に対する平均イヌ抗体力価を示している。
【
図15E】IL-31 15H05イヌ及びネコのミモトープならびに全長ネコIL-31タンパク質をイヌにワクチン接種した後に生成された血清力価を処置群別に示すグラフであり、血清を採取した各日の応答を示している。
図15Eは、全長ヒトIL-31(配列番号181)に対する平均イヌ抗体力価を示している。
【
図16】Aは、実験用ビーグル犬においてCRM-197結合体化全長イヌIL-31タンパク質またはミモトープの免疫応答を誘発する能力を評価するために行った免疫原性試験の設計を示している。本明細書で説明されている各ミモトープは、本明細書で開示されている抗体15H05及びその他の抗IL-31抗体が結合するIL-31タンパク質上の関連領域に向けて駆動されるエピトープ特異的免疫応答を生成するように設計された。様々なミモトープペプチドの配列及び化学的リンカーは、T02~T04群として示されている。ペプチドZTS-420は、配列番号155の121~138位に対応するアミノ酸配列N-TEISVPADTFERKSFILT-Cを含み、位置番号132におけるシステイン(C)からアルギニン(R)への置換を伴う。ペプチドZTS-421は、配列番号181の122~139位に対応するアミノ酸配列N-TNISVPTDTHECKRFILT-Cを含む。ペプチドZTS-766は、配列番号155の83~115位に対応するアミノ酸配列N-NSSAILPYFRAIRPLSDKNIIDKIIEQLDKLKF-Cを含む。また、ペプチドZTS-420、ZTS-421、及びZTS-766の各々は、遊離チオール基を用いた結合体化化学を促進するために、示されているようなN及びC末端側システインも含む。ZTS-766は、N末端側システインの隣にさらなる3アミノ酸のスペーサー配列(GSG)も含む。Bは、イヌBCヘリックスミモトープ(ZTS-766)とネコ、ウマ、及びヒトIL-31からの対応する配列との比較が可能な相同配列を示しており、各々の配列参照番号及びアミノ酸位置を含む。
【
図17】IL-31 15H05イヌ及びヒトのミモトープ、イヌBCヘリックスミモトープ、ならびに全長ネコIL-31タンパク質をイヌにワクチン接種した後に生成された血清力価を処置群別に示すグラフであり、血清を採取した各日の応答を示している。矢印で示されている0、28、及び56日目にイヌに投与した。Aは、全長イヌIL-31タンパク質(配列番号155)に対する平均イヌ抗体力価を示している。Bは、T03群のみにおける0、42、及び84日目の全長ヒトIL-31(配列番号181)に対する平均イヌ抗体力価を示している。T03群(ヒト15H05ミモトープ)のイヌには、イヌIL-31に対するCRARが認められなかった(データは示されず)。
【
図18】Aは、実験用ネコにおいてCRM-197結合体化全長ネコIL-31タンパク質またはミモトープの免疫応答を誘発する能力を評価するために行った免疫原性試験の設計を示している。全ての処置群に対し、糖脂質アジュバントBay R1005(N-(2-デオキシ-2-L-ロイシルアミノ-β-D-グルコピラノシル)-N-オクタデシルドデカノイルアミドヒドロアセテート)及びCpGオリゴヌクレオチドを含むアジュバント混合物を処方した。本明細書で説明されている各ミモトープは、本明細書で開示されている抗体15H05及びその他の抗IL-31抗体が結合するIL-31タンパク質上の関連領域に向けて駆動されるエピトープ特異的免疫応答を生成するように設計された。様々なミモトープペプチドの配列及び化学的リンカーは、T02~T05群として示されている。ペプチドZTS-563は、配列番号157の121~138位に対応するアミノ酸配列N-AKVSMPADNFERKNFILT-Cを含み、位置番号138におけるアラニン(A)からスレオニン(T)への置換を伴う。ペプチドZTS-418は、配列番号165の115~132位に対応するアミノ酸配列N-TEVSMPTDNFERKRFILT-Cを含む。ペプチドZTS-423は、配列番号157の83~115位に対応するアミノ酸配列N-NGSAILPYFRAIRPLSDKNTIDKIIEQLDKLKF-Cを含む。ペプチドZTS-422は、配列番号157の121~138位に対応するアミノ酸配列N-AKVSMPADNFERKNFILT-Cを含み、位置番号138におけるアラニン(A)からスレオニン(T)への置換を伴う。また、ペプチドZTS-563、ZTS-418、ZTS-423、及びZTS-422の各々は、遊離チオール基を用いた結合体化化学を促進するために、示されているようなN及びC末端側システインも含む。ZTS-422は、2つのN末端側システイン間にさらなるアミノヘキサン酸リンカー(Ahx)も含む。ZTS-423は、N末端側システインの隣にさらなる3アミノ酸のスペーサー配列(GSG)も含む。Bは、T03以外の全ての処置群における全長ネコIL-31(配列番号157)に対する平均ネコ抗体力価を示している。T03群(ウマ15H05ミモトープ)のネコには、ネコIL-31に対するCRARが認められなかった(データは示されず)。
【
図19】Aは、WO2018/156367(Kindred Biosciences,Inc.)に従う抗イヌIL-31抗体M14が結合する最小エピトープアミノ酸配列である。複数の種、配列参照ID、及び相対的アミノ酸位置の比較が示されている。Bは、このイヌIL-31上の最小アミノ酸配列を黒色の枠で強調して示している。また、この図は、タンパク質の周囲領域の配列のアラインメントや、示された配列ID内の対応するアミノ酸の相対的位置も示している。
【
図20】ヘリックスA及び後続のランダムコイル配列の収束によって形成された、15H05ループの位置的及び構造的属性を共有するループからのIL-31タンパク質のフラグメントを示している。複数種からのアミノ酸配列の比較と、配列ID及びアミノ酸位置への言及とが示されている。
【
図21】Aは、3つのウマIL-31ミモトープペプチドのアミノ酸配列を示しており、これらはタンパク質のキーとなる異なるエピトープ領域を表す。ミモトープ15H05は、配列番号165の115~132位に対応するアミノ酸配列N-TEVSMPTDNFERKRFILT-Cを含む。ミモトープBCヘリックスは、配列番号165の77~109位に対応するアミノ酸配列N-NSSAILPYFKAISPSLNNDKSLYIIEQLDKLNF-Cを含む。ミモトープAヘリックスは、配列番号165の20~43位に対応するアミノ酸配列N-GPIYQLQPKEIQAIIVELQNLSKK-Cを含む。また、ミモトープ15H05は、遊離チオール基を用いた結合体化化学を促進するために、示されているようなN及びC末端側システインも含む。3つのミモトープは全て、Nビオチン基の隣に、配列内で太字及び下線付きで示されたさらなる3アミノ酸スペーサー配列(GSG)を含む。配列番号165の各アミノ酸残基の対応する位置が示されている。Bは、バイオレイヤー干渉法を用いた結合アッセイの結果を示している。示されたミモトープをストレプトアビジンピンに吸収させ、マウス血清の複数の希釈物をプローブするために使用した。使用した血清は、ウマIL-31タンパク質(配列番号165)をワクチン接種したマウスからの血清、または無関係のタンパク質をワクチン接種したマウスからの対照血清であった。
【0041】
定義
本発明を詳細に説明する前に、本発明の文脈で使用されるいくつかの用語について定義する。これらの用語に加えて、必要に応じて他の用語についても本明細書の別の箇所で定義する。本明細書で別段の明示的な定義がない限り、本明細書で使用される技術用語は、当技術分野で認識されている意味を有する。
【0042】
本明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈による別段の明確な定めがない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「(1つの)抗体」と言及するときには、複数のこのような抗体が含まれる。別の例として、「(1つの)ミモトープ」、「(1つの)IL-31ミモトープ」などと言及するときには、複数のこのようなミモトープを含む。
【0043】
本明細書で使用する場合、「含む」という用語は、組成物及び方法が挙げられた要素を含むが、他の要素を排除しないことを意味するように意図されている。
【0044】
本明細書で使用する場合、「ワクチン組成物」という用語は、宿主内の免疫応答の誘導に有用である、医薬的に許容されるビヒクル中の少なくとも1つの抗原または免疫原を含む。このような組成物は、レシピエント哺乳類の年齢、性別、体重、及び状態、ならびに投与経路のような因子を考慮に入れて、医学または獣医学の技術分野の当業者に周知されている薬用量及び技法によって投与することができる。投与経路は経皮とすることができ、粘膜投与(例えば、経口、鼻、肛門、膣)または非経口経路(皮内、経皮、筋肉内、皮下、静脈内、もしくは腹腔内)を介したものとすることができる。ワクチン組成物は、単独で投与しても、他の治療または療法と共に同時投与または順次投与してもよい。ワクチンの形態としては、懸濁液、シロップ、またはエリキシル、及び非経口、皮下、皮内、筋肉内、もしくは静脈内の投与(例えば、注射投与)のための調製物、例えば、滅菌懸濁液または乳濁液を挙げることができる。ワクチン組成物は、スプレーとして投与してもよく、食品及び/または水に混合してもよく、好適な担体、希釈剤、または賦形剤(例えば、滅菌水、生理食塩水、グルコースなど)と混合して送達してもよい。組成物は、投与経路及び所望の調製物に応じて、湿潤または乳化剤、pH緩衝剤、アジュバント、ゲル化または粘度増強添加剤、保存料、香味剤、着色料などの補助物質を含むことができる。“Remington’s Pharmaceutical Sciences”(1990)のような標準的な製薬テキストを参照して、過度に実験を行うことなく好適な製剤を調製することができる。
【0045】
本明細書で使用する場合、「免疫応答」という用語は、動物またはヒトにおいて誘発される応答を意味する。免疫応答は、細胞性免疫(CMI)を意味する場合もあれば、液性免疫を意味する場合もあれば、両方を意味する場合もある。また、本発明は、免疫系の一部に限定された応答も企図している。通常、「免疫学的応答」には、限定されるものではないが、対象となる組成物またはワクチンに含まれる抗原(1つまたは複数)に特異的に向けられている、抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、及び/または細胞傷害性T細胞、及び/またはyd T細胞のうちの1つ以上が含まれる。好ましくは、宿主は、治療的または保護的な免疫学的応答を示して、疾患もしくは障害に対する耐性を増強する、及び/または疾患の臨床的重症度が低減するようにする。このような保護は、罹患した宿主が通常示す症状の低減もしくは欠如、回復時間の迅速化、及び/または罹患した宿主における抗原(例えば、IL-31)力価の低減によって示される。
【0046】
本明細書で使用する場合、「保護する」という用語は、疾患もしくは障害に対する耐性が増強されるように、及び/または宿主哺乳類における疾患の臨床的重症度が低減するように、宿主哺乳類に治療的免疫学的応答を付与することを意味する。
【0047】
本明細書で使用する場合、「免疫原性」という用語は、抗原(1つまたは複数)に対し宿主哺乳類の免疫応答を産生可能であることを意味する。この免疫応答は、特定の抗原に対するワクチンによって誘発される防御免疫の基礎を形成する。
【0048】
本明細書で使用する場合、免疫化する、免疫化などは、典型的にはワクチンの投与により、哺乳類を疾患に対し免疫性または耐性にするプロセスのことである。ワクチンは、哺乳類自身の免疫系を刺激して、この後に生じる疾患から哺乳類を保護する。
【0049】
本明細書で使用する場合、「アジュバント」とは、抗原(複数可)に対する免疫応答を増強する1つ以上の物質から構成された組成物を意味する。アジュバントがどのように機能するかの機序については完全には分かっていない。抗原をゆっくり放出することによって免疫応答を増強すると考えられているアジュバントもあれば、それ自体が強力な免疫原性を有し、相乗的に機能すると考えられているアジュバントもある。
【0050】
本明細書で使用する場合、エピトープとは、抗体のCDRによって認識される抗原決定基を意味する。言い換えれば、エピトープとは、抗体によって認識され、結合されることが可能な任意の分子のその部分を意味する。別段の明記がない限り、「エピトープ」という用語は、本明細書で使用する場合、抗IL-31剤が反応するIL-31の領域を意味する。
【0051】
「抗原」とは、抗体によって結合されることが可能な分子または分子の部分であり、これはさらに、抗体によって認識され、結合されることが可能である(対応する抗体の結合領域は、パラトープと称されることがある)。概して、エピトープは、分子(例えば、アミノ酸または糖側鎖)の化学活性表面グルーピングからなり、特定の3次元構造特性及び特定の荷電特性を有する。エピトープは、免疫系によって認識されるタンパク質上の抗原決定基である。エピトープを認識する免疫系の構成要素は、抗体、T細胞、及びB細胞である。T細胞エピトープは抗原提示細胞(APC)の表面に表示され、典型的には8~11アミノ酸長(MHCクラスI)または15アミノ酸長以上(MHCクラスII)である。T細胞の活性化には、表示されたMHC-ペプチド複合体を認識することが不可欠である。これらの機構により、細菌やウイルスのような「非自己」タンパク質に対し自己タンパク質を適切に認識することが可能になる。必ずしも隣接していない独立したアミノ酸残基は、APC結合溝との相互作用や、その後のT細胞受容体による認識に寄与する(Janeway,Travers,Walport,Immunobiology:The Immune System in Health and Disease.5th edition New York:Garland Science;2001)。可溶性抗体及び細胞表面関連B細胞受容体によって認識されるエピトープは、長さ及び連続性の程度が非常に様々である(Sivalingam and Shepherd,Immunol.2012 Jul;51(3-4):304-309 9)。線状エピトープまたは連続したタンパク質配列内に見出されるエピトープでさえも、抗体パラトープまたはB細胞受容体とのキーとなる接触点に相当する非連続的アミノ酸を有することが多い。抗体及びB細胞によって認識されるエピトープは、3次元空間でタンパク質上に共通の接触領域を構成するアミノ酸と共に立体構造をとる場合があり、タンパク質の3次及び4次構造の特徴に依存する。このような残基は、一次アミノ酸配列の空間的に異なる領域内でみられることが多い。
【0052】
本明細書で使用する場合、「ミモトープ」とは、抗原のエピトープを模倣する線状または拘束性のペプチドである。ミモトープは、T細胞エフェクター応答を誘発可能な1次アミノ酸配列、及び/または動物における獲得免疫応答を成熟させるB細胞と結合するのに必要な3次元構造を有することができる。所与のエピトープ抗原に対する抗体は、そのエピトープを模倣するミモトープを認識する。IL-31ミモトープは、本明細書では代替的にIL-31ペプチドミモトープと称されることがある。いくつかの実施形態において、本発明の組成物及び/または方法で使用するためのミモトープ(線状または拘束性)は、約5アミノ酸残基~約40アミノ酸残基の長さのペプチドである、及び/またはその一部としてこのようなペプチドを含む。
【0053】
抗体結合の文脈における「特異的に」という用語は、抗体と特定の抗原、すなわちポリペプチド、またはエピトープとの高いアビディティー及び/または高い親和性の結合を意味する。多くの実施形態において、特異的抗原は、抗体産生細胞を単離する動物宿主の免疫化に使用される抗原(または抗原のフラグメントもしくは細画分)である。ある抗原に対する抗体の特異的な結合は、他の抗原に対する同じ抗体の結合よりも強力である。あるポリペプチドに特異的に結合する抗体は、他のポリペプチドに対し、弱いながらも検出可能なレベル(例えば、目的ポリペプチドに対し示される結合の10%以下)で結合可能な場合がある。このような弱い結合、すなわちバックグラウンド結合は、例えば、適切な対照を使用することにより、対象ポリペプチドに対する抗体の特異的結合と容易に識別することができる。概して、特異的抗体は、抗原に対し、10-7M以下、例えば10-8M以下(例えば、10-9M以下、10-10以下、10-11以下、10-12以下、または10-13以下など)のKDの結合親和性で結合する。
【0054】
本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、2つの軽鎖及び2つの重鎖を有するインタクト免疫グロブリンを意味する。したがって、単一の単離抗体またはフラグメントは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、合成抗体、組換え型抗体、キメラ型抗体、ヘテロキメラ型抗体、イヌ化抗体、ネコ化抗体、完全イヌ抗体、完全ネコ抗体、完全ウマ抗体、または完全ヒト抗体とすることができる。「抗体」という用語は、好ましくは、モノクローナル抗体及びそのフラグメント(例えば、限定されるものではないが、抗体の抗原結合部分を含む)、ならびにIL-31タンパク質及びそのフラグメントまたは修飾フラグメントに結合することができるこれらの免疫結合等価物を意味する。このようなIL-31のフラグメント及び修飾フラグメントには、本発明の様々な実施形態で用いられるIL-31ペプチドミモトープが含まれ得る。例えば、IL-31上の所与のエピトープに対する抗体は、そのエピトープを模倣するIL-31ペプチドミモトープを認識する。抗体という用語は、均質な分子、または複数の異なる分子実体から構成された血清産物のような混合物の両方を意味するように使用される。
【0055】
「ネイティブ抗体」及び「ネイティブ免疫グロブリン」とは、通常は、約150,000ダルトンのヘテロ4量体糖タンパク質であり、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖とから構成されている。各軽鎖は、1つのジスルフィド共有結合によって重鎖に結合しているが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖によって変動する。また、各々の重鎖及び軽鎖は、一定の間隔が置かれた鎖間ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)を有し、それに続いて複数の定常ドメインを有する。各軽鎖は、一端(VL)に可変ドメイン、他端に定常ドメインを有し、この軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと共に整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと共に整列している。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間の界面を形成すると考えられている。
【0056】
「抗体フラグメント」という用語は、インタクト抗体構造に満たないものを意味し、限定されるものではないが、単離された単一の抗体鎖、Fvコンストラクト、Fabコンストラクト、Fcコンストラクト、軽鎖可変または相補性決定領域(CDR)の配列などが含まれる。例えば、抗体フラグメントは、抗体の抗原結合部分を含むことができる。
【0057】
「可変」領域という用語は、フレームワーク及びCDR(超可変領域の別名でも知られている)を含み、当該用語は、可変ドメインのある特定の部分が、抗体間で配列が大きく相違し、かつ各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合及び特異性で使用されるという事実を意味する。ただし、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたり均等に分布しているわけではない。可変性は、軽鎖及び重鎖両方の可変ドメイン内の超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。より高度に保存された可変ドメインの部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。ネイティブな重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、大部分がβシート構成を採用する複数のFR領域を含み、これらは3つの超可変領域によって接続され、これにより、βシート構造に接続し、場合によってはβシート構造の一部を形成するループが形成される。各鎖における超可変領域は、FRによって、他方の鎖の超可変領域と近接して保持されており、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)、647-669ページを参照)。定常ドメインは、抗体を抗原に結合させることに直接は関係しないが、抗体を抗体依存性細胞毒性に関与させるなどの様々なエフェクター機能を示す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」という用語は、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を意味する。超可変領域は、「相補性決定領域」すなわち「CDR」(Kabat,et al.(1991)(上記))からのアミノ酸残基及び/または「超可変ループ」からのアミノ酸残基(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987)を含む。「フレームワーク」すなわち「FR」残基は、本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0059】
抗体のパパイン消化により、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントが産生される。各Fabは単一の抗原結合部位と残部の「Fc」フラグメントとを有し、Fcという名称には容易に結晶化する能力が反映されている。ペプシン処理はF(ab’)2フラグメントをもたらす。このフラグメントは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋可能である。
【0060】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。この領域は、1つの重鎖及び1つの軽鎖可変ドメインが緊密に非共有結合的に会合した2量体からなる。この構成において、各可変ドメインの3つの超可変領域が相互作用してVH-VL2量体の表面上に抗原結合部位を画定する。まとめると、6つの超可変領域は、抗体に抗原結合特異性を付与する。ただし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つの超可変領域のみを含むFvの半分)であっても、全結合部位よりは親和性が低いものの、抗原を認識し、抗原に結合する能力を有する。
【0061】
また、Fabフラグメントは、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含む。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステイン(複数可)を含めたいくつかの残基が重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に付加されている点で、Fabフラグメントと相違する。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有するFab’に対する本明細書における呼称である。F(ab’)2抗体フラグメントは、元々は、間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントの対として産生されたものである。抗体フラグメントにおけるその他の化学的結合も知られている。
【0062】
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に異なるタイプの一方に割り当てることができる。
【0063】
免疫グロブリンは、その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、異なるクラスに割り当てることができる。現在、免疫グロブリンには5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのいくつかはさらに、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2(マウス及びヒトの呼称による定義)に分類することができる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる。種々のクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び3次元構成は、複数の種において周知されている。これらの定常ドメインに関連する個別のアイソタイプ及び機能的活性の普及は種特異的であり、実験により定義されなければならない。
【0064】
本明細書で定義される「モノクローナル抗体」とは、単一の細胞クローン(具体的には、ハイブリドーマ細胞のような単一の細胞クローン)によって産生される抗体であり、したがって単一の純粋で均質なタイプの抗体である。同じクローンから産生される全てのモノクローナル抗体は同一であり、同じ抗原特異性を有する。「モノクローナル」という用語は、単一の細胞クローン、単一の細胞、及び当該細胞の子孫に関係する。
【0065】
本明細書で定義される「完全イヌ抗体」とは、細胞クローン(典型的にはCHO細胞系)によって産生されるモノクローナル抗体であり、したがって単一の純粋で均質なタイプの抗体である。イヌなどの免疫化哺乳類の単一のB細胞から同定された抗体は、その可変ドメイン配列の同定後に組換え型IgGタンパク質として作成される。このような可変ドメインをイヌ定常ドメイン(重鎖及び軽鎖カッパまたはラムダ定常)に移植すると、組換え型完全イヌ抗体が生成される。同じクローンから産生される全ての完全イヌモノクローナル抗体は同一であり、同じ抗原特異性を有する。「モノクローナル」という用語は、単一の細胞クローン、単一の細胞、及び当該細胞の子孫に関係する。
【0066】
本明細書で定義される「完全ネコ抗体」とは、細胞クローン(典型的にはCHO細胞系)によって産生されるモノクローナル抗体であり、したがって単一の純粋で均質なタイプの抗体である。イヌなどの免疫化哺乳類の単一のB細胞から同定された抗体は、その可変ドメイン配列の同定後に組換え型IgGタンパク質として作成される。このような可変ドメインをネコ定常ドメイン(重鎖及び軽鎖カッパまたはラムダ定常)に移植すると、組換え型完全ネコ抗体が生成される。同じクローンから産生される全ての完全ネコモノクローナル抗体は同一であり、同じ抗原特異性を有する。「モノクローナル」という用語は、単一の細胞クローン、単一の細胞、及び当該細胞の子孫に関係する。
【0067】
本明細書で定義される「完全ウマ抗体」とは、細胞クローン(典型的にはCHO細胞系)によって産生されるモノクローナル抗体であり、したがって単一の純粋で均質なタイプの抗体である。イヌなどの免疫化哺乳類の単一のB細胞から同定された抗体は、その可変ドメイン配列の同定後に組換え型IgGタンパク質として作成される。このような可変ドメインをウマ定常ドメイン(重鎖及び軽鎖カッパまたはラムダ定常)に移植すると、組換え型完全ウマ抗体が生成される。同じクローンから産生される全ての完全ウマモノクローナル抗体は同一であり、同じ抗原特異性を有する。「モノクローナル」という用語は、単一の細胞クローン、単一の細胞、及び当該細胞の子孫に関係する。
【0068】
本明細書で定義される「完全ヒト抗体」とは、細胞クローン(典型的にはCHO細胞系)によって産生されるモノクローナル抗体であり、したがって単一の純粋で均質なタイプの抗体である。イヌなどの免疫化哺乳類の単一のB細胞から同定された抗体は、その可変ドメイン配列の同定後に組換え型IgGタンパク質として作成される。このような可変ドメインをヒト定常ドメイン(重鎖及び軽鎖カッパまたはラムダ定常)に移植すると、組換え型完全ヒト抗体が生成される。同じクローンから産生される全ての完全ヒトモノクローナル抗体は同一であり、同じ抗原特異性を有する。「モノクローナル」という用語は、単一の細胞クローン、単一の細胞、及び当該細胞の子孫に関係する。
【0069】
本明細書におけるモノクローナル抗体には、具体的には、重鎖及び/または軽鎖の部分が、特定の種に由来する抗体内の対応する配列と同一または相同である一方で、鎖(複数可)の残部は別の種に由来する抗体内の対応する配列と同一または相同である「キメラ型」抗体(免疫グロブリン)を含み、加えて、所望の生物学的活性を示す限りでは、このような抗体のフラグメントも含む。典型的には、キメラ型抗体とは、その軽鎖及び重鎖遺伝子が、典型的には遺伝子工学により、異なる種に属する抗体可変領域及び定常領域遺伝子から構築された抗体である。例えば、マウスモノクローナル抗体からの遺伝子の可変セグメントは、イヌ定常セグメントに連結させることができる。キメラ型マウス:イヌIgGの1つの実施形態において、抗原結合部位はマウスに由来し、FC部分はイヌのものである。
【0070】
非イヌ(例えば、マウス)抗体の「イヌ化」形態は、非イヌ免疫グロブリン由来の最小配列を含む遺伝子操作抗体である。イヌ化抗体とは、レシピエントの超可変領域残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウスのような非イヌ種(ドナー抗体)からの超可変領域残基で置き換えられたイヌ免疫グロブリン配列(レシピエント抗体)である。いくつかの場合において、イヌ免疫グロブリン配列のフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非イヌ残基で置き換えられる。さらに、イヌ化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含むことができる。このような修飾は、抗体性能をさらに精緻化するために行われる。概して、イヌ化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、超可変領域の全てまたは実質的に全てが非イヌ免疫グロブリン配列の超可変領域に対応し、FRの全てまたは実質的に全てがイヌ免疫グロブリン配列のFRである。また、イヌ化抗体は、任意選択で、完全なまたは少なくとも一部分の免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、完全なまたは少なくとも一部分のイヌ免疫グロブリン配列も含む。マウスIgGの種分化またはイヌ化の1つの実施形態において、マウスCDRがイヌフレームワークに移植される。
【0071】
非ネコ(例えば、マウス)抗体の「ネコ化」形態は、非ネコ免疫グロブリンに由来する最小配列を含む遺伝子操作抗体である。ネコ化抗体とは、レシピエントの超可変領域残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウスのような非ネコ種(ドナー抗体)からの超可変領域残基で置き換えられたネコ免疫グロブリン配列(レシピエント抗体)である。いくつかの場合において、ネコ免疫グロブリン配列のフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ネコ残基で置き換えられる。さらに、ネコ化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含むことができる。このような修飾は、抗体性能をさらに精緻化するために行われる。概して、ネコ化抗体は、超可変領域の全てまたは実質的に全てが非ネコ免疫グロブリン配列の超可変領域に対応し、FRの全てまたは実質的に全てがネコ免疫グロブリン配列のFRである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。また、ネコ化抗体は、任意選択で、完全なまたは少なくとも一部分の免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、完全なまたは少なくとも一部分のネコ免疫グロブリン定常領域(Fc)も含む。
【0072】
非ウマ(例えば、マウス)抗体の「ウマ化」形態は、非ウマ免疫グロブリンに由来する最小配列を含む遺伝子操作抗体である。ウマ化抗体とは、レシピエントの超可変領域残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウスのような非ウマ種(ドナー抗体)からの超可変領域残基で置き換えられたウマ免疫グロブリン配列(レシピエント抗体)である。いくつかの場合において、ウマ免疫グロブリン配列のフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ウマ残基で置き換えられる。さらに、ウマ化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含むことができる。このような修飾は、抗体性能をさらに精緻化するために行われる。概して、ウマ化抗体は、超可変領域の全てまたは実質的に全てが非ウマ免疫グロブリン配列の超可変領域に対応し、FRの全てまたは実質的に全てがウマ免疫グロブリン配列のFRである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。また、ウマ化抗体は、任意選択で、完全なまたは少なくとも一部分の免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、完全なまたは少なくとも一部分のウマ免疫グロブリン定常領域(Fc)も含む。
【0073】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む遺伝子操作抗体である。ヒト化抗体とは、レシピエントの超可変領域残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウスのような非ヒト種(ドナー抗体)からの超可変領域残基で置き換えられたヒト免疫グロブリン配列(レシピエント抗体)である。いくつかの事例では、ヒト免疫グロブリン配列のフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基に置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含むことができる。このような修飾は、抗体性能をさらに精緻化するために行われる。概して、ヒト化抗体は、超可変領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリン配列の超可変領域に対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。また、ヒト化抗体は、任意選択で、完全なまたは少なくとも一部分の免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、完全なまたは少なくとも一部分のヒト免疫グロブリン定常領域(Fc)も含む。
【0074】
「完全イヌ」抗体とは、非イヌ免疫グロブリンに由来する配列を含まない遺伝子操作抗体である。完全イヌ抗体とは、超可変領域残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する天然イヌ抗体イヌ(ドナー抗体)に由来するイヌ免疫グロブリン配列(レシピエント抗体)である。いくつかの場合において、イヌ免疫グロブリン配列のフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非イヌ残基で置き換えられる。さらに、完全イヌ抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含むことができ、例えば、限定されるものではないが、親和性を修飾するためのCDRの変化がこれに含まれる。このような修飾は、抗体性能をさらに精緻化するために行われる。概して、完全イヌ抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、超可変領域の全てまたは実質的に全てがイヌ免疫グロブリン配列の超可変領域に対応し、FRの全てまたは実質的に全てがイヌ免疫グロブリン配列のFRである。また、完全イヌ抗体は、任意選択で、完全なまたは少なくとも一部分の免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、完全なまたは少なくとも一部分のイヌ免疫グロブリン配列も含む。
【0075】
「完全ネコ」抗体とは、非ネコ免疫グロブリンに由来する配列を含まない遺伝子操作抗体である。完全ネコ抗体とは、超可変領域残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する天然ネコ抗体イヌ(ドナー抗体)に由来するネコ免疫グロブリン配列(レシピエント抗体)である。いくつかの場合において、ネコ免疫グロブリン配列のフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ネコ残基で置き換えられる。さらに、完全ネコ抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含むことができ、例えば、限定されるものではないが、親和性を修飾するためのCDRの変化がこれに含まれる。このような修飾は、抗体性能をさらに精緻化するために行われる。概して、完全ネコ抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、超可変領域の全てまたは実質的に全てがネコ免疫グロブリン配列の超可変領域に対応し、FRの全てまたは実質的に全てがネコ免疫グロブリン配列のFRである。また、完全ネコ抗体は、任意選択で、完全なまたは少なくとも一部分の免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、完全なまたは少なくとも一部分のネコ免疫グロブリン配列も含む。
【0076】
「完全ウマ」抗体とは、非ウマ免疫グロブリンに由来する配列を含まない遺伝子操作抗体である。完全ウマ抗体とは、超可変領域残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する天然ウマ抗体イヌ(ドナー抗体)に由来するウマ免疫グロブリン配列(レシピエント抗体)である。いくつかの場合において、ウマ免疫グロブリン配列のフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ウマ残基で置き換えられる。さらに、完全ウマ抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含むことができ、例えば、限定されるものではないが、親和性を修飾するためのCDRの変化がこれに含まれる。このような修飾は、抗体性能をさらに精緻化するために行われる。概して、完全ウマ抗体は、超可変領域の全てまたは実質的に全てウマ免疫グロブリン配列の超可変領域に対応し、FRの全てまたは実質的に全てがウマ免疫グロブリン配列のFRである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。また、完全ウマ抗体は、任意選択で、完全なまたは少なくとも一部分の免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、完全なまたは少なくとも一部分のウマ免疫グロブリン配列も含む。
【0077】
「完全ヒト」抗体とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を含まない遺伝子操作抗体である。完全ヒト抗体とは、超可変領域残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する天然ヒト抗体(ドナー抗体)に由来するヒト免疫グロブリン配列(レシピエント抗体)である。いくつかの事例では、ヒト免疫グロブリン配列のフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基に置き換えられる。さらに、完全ヒト抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含むことができ、例えば、限定されるものではないが、親和性を修飾するためのCDRの変化がこれに含まれる。このような修飾は、抗体性能をさらに精緻化するために行われる。概して、完全ヒト抗体は、超可変領域の全てまたは実質的に全てヒト免疫グロブリン配列の超可変領域に対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。また、完全ヒト抗体は、任意選択で、完全なまたは少なくとも一部分の免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、完全なまたは少なくとも一部分のヒト免疫グロブリン配列も含む。
【0078】
本明細書で定義する「ヘテロキメラ型」という用語は、抗体鎖の一方(重鎖または軽鎖)が、例えば、イヌ化、ネコ化、ウマ化、またはヒト化され、他方はキメラ型である抗体を意味する。1つの実施形態において、ネコ化可変重鎖(全てのCDRがマウスであり全てのFRがネコである)は、キメラ型可変軽鎖(全てのCDRがマウスであり全てのFRがマウスである)と対形成する。この実施形態では、可変重鎖及び可変軽鎖の両方をネコ定常領域と融合する。
【0079】
本明細書で使用する場合、「バリアント」という用語は、1つ以上の保存的アミノ酸バリエーションまたはその他の軽微な修飾を有し、対応するペプチドまたはポリペプチドが野生型のペプチドまたはポリペプチドと比較したときに実質的に同等の機能を有するような、ペプチド、ポリペプチド、またはペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸配列を意味する。通常、本発明で使用するためのバリアントペプチドミモトープは、親ミモトープに対し少なくとも30%の同一性を有し、より好ましくは親ミモトープに対し少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0080】
本明細書において「バリアント」抗IL-31抗体とは、親抗体配列における1つ以上のアミノ酸残基(複数可)の付加、欠失、及び/または置換によって「親」抗IL-31抗体アミノ酸配列とアミノ酸配列が相違し、親抗IL-31抗体における少なくとも1つの所望の活性を保持する分子を意味する。所望の活性としては、抗原に特異的に結合する能力、動物のIL-31活性を低減、阻害、または中和する能力、及び細胞ベースアッセイにおけるIL-31媒介性pSTATシグナル伝達の阻害能力を挙げることができる。1つの実施形態において、バリアントは、親抗体の1つ以上の超可変及び/またはフレームワーク領域(複数可)に1つ以上のアミノ酸置換(複数可)を含む。例えば、バリアントは、親抗体の1つ以上の超可変及び/またはフレームワーク領域に少なくとも1つ、例えば、約1~約10、好ましくは約2~約5の置換を含むことができる。通常、バリアントは、親抗体の重鎖または軽鎖可変ドメイン配列に対し少なくとも50%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。この配列に対する同一性または相同性は、本明細書では、配列を整列し必要に応じてギャップを導入して最大のパーセント配列同一性を達成した後に親抗体残基と同一である候補配列のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。抗体配列へのN末端側、C末端側、または内部の伸長、欠失、または挿入はいずれも、配列の同一性または相同性に影響を及ぼすとはみなさないものとする。バリアントは、IL-31に結合する能力を保持し、好ましくは、親抗体の活性よりも優れた所望の活性を有する。例えば、バリアントは、より強力な結合親和性を有する場合も、動物のIL-31活性を低減、阻害、もしくは中和する能力が強化される場合も、及び/または細胞ベースアッセイにおけるIL-31媒介性pSTATシグナル伝達の阻害能力が強化される場合もある。
【0081】
「バリアント」核酸とは、本明細書では、「親」核酸と配列が相違する分子を意味する。ポリヌクレオチド配列の相違は、1つ以上のヌクレオチドの欠失、置換、または付加のような変異による変化から生じ得る。これらの変化の各々は、所与の配列内で、単独または組合せで1回以上生じ得る。
【0082】
本明細書における「親」抗体とは、バリアントの調製に使用されるアミノ酸配列によってコードされる抗体である。1つの実施形態において、親抗体は、イヌフレームワーク領域を有し、存在する場合はイヌ抗体定常領域(複数可)を有する。例えば、親抗体は、イヌ化抗体またはイヌ抗体とすることができる。別の例として、親抗体は、ネコ化抗体またはネコ抗体とすることができる。また別の例として、親抗体は、ウマ化抗体またはウマ抗体とすることができる。別の例として、親抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体とすることができる。さらに別の例において、親抗体は、マウスモノクローナル抗体である。
【0083】
本明細書及び特許請求の範囲の全体にわたって使用される「抗原結合領域」、「抗原結合部分」などの用語は、抗原と相互作用し、抗原に対するその特異性及び親和性を抗体に付与するアミノ酸残基を含む、抗体分子の部分を意味する。抗体結合領域は、抗原結合残基の適切な立体構造を維持するために必要な「フレームワーク」アミノ酸残基を含む。代替的に、本発明に従う抗体の抗原結合部分は、本明細書では、例えば、IL-31特異的ペプチドもしくはポリペプチド、または抗IL-31ペプチドもしくはポリペプチドと称されることがある。
【0084】
「単離された」という用語は、物質(例えば、抗体または核酸)がその自然環境の構成要素から分離及び/または回収されていることを意味する。当該物質の自然環境における混入構成要素は、当該物質の診断上または治療上の使用を妨げ得る物質であり、このような構成要素としては、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質溶質または非タンパク質溶質を挙げることができる。核酸に関しては、単離核酸は、染色体内で通常会合している5’から3’への配列から分離されたものを含むことができる。好ましい実施形態において、当該物質は、物質の95重量%超まで、最も好ましくは99重量%超まで精製される。単離物質は、物質の自然環境における少なくとも1つの構成要素が存在しないことから、組換え型細胞内のin situの物質を含む。ただし、通常、単離物質は少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0085】
「標識」という語は、本明細書で使用する場合、例えば、抗体、核酸、またはミモトープと直接的または間接的に結合体化している検出可能な化合物または組成物を意味する。標識そのものは、それ自体が検出可能であってもよく(例えば、放射性同位体標識もしくは蛍光標識)、または酵素標識の場合は、検出可能な基質化合物もしくは組成物の化学改変を触媒してもよい。
【0086】
「核酸」、「ポリヌクレオチド」、「核酸分子」などの用語は本明細書では互換的に使用され得、DNA及びRNAにおける一連のヌクレオチド塩基(「ヌクレオチド」とも呼ばれる)を意味する。核酸は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、及び/またはこれらの類似体を含むことができる。「核酸」という用語は、例えば、1本鎖及び2本鎖の分子を含む。核酸は、例えば、遺伝子または遺伝子フラグメント、エクソン、イントロン、DNA分子(例えば、cDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、組換え型核酸、プラスミド、ならびにその他のベクター、プライマー、及びプローブであり得る。5’から3’(センス)及び3’から5’(アンチセンス)両方のポリヌクレオチドが含まれる。
【0087】
「対象」または「患者」とは、本発明の分子によって影響を受ける可能性がある治療を必要とする哺乳類を意味する。本発明に従って治療することができる哺乳類には脊椎動物が含まれ、イヌ、ネコ、ウマ、及びヒト哺乳類のような哺乳類が特に好ましい例である。
【0088】
「治療的有効量」(または「有効量」)とは、対象または患者に投与したときに有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な活性成分(例えば、本発明に従う薬剤)の量を意味する。有効量は、1回以上の投与、適用、または薬用量で投与することができる。本発明に従う組成物の治療有効量は、当業者によって容易に定量することができる。本発明の文脈において、「治療有効量」とは、IL-31媒介性障害、例えば、掻痒状態もしくはアレルギー状態、または腫瘍進行の治療に関連する1つ以上のパラメーターの客観的に測定された変化(症状の臨床的改善を含む)をもたらす量である。当然ながら、治療有効量は、治療を行う特定の対象及び状態、対象の体重及び年齢、疾患状態の重症度、選択される特定の化合物、従うべき投薬レジメン、投与のタイミング、投与方法などに応じて変動し、これらは全て当業者が容易に定量することができる。
【0089】
本明細書で使用する場合、「治療的」という用語は、疾患または障害の治療の全範囲を包含する。本発明の「治療」剤は、リスクがあると同定され得る動物を標的化するように設計された手順(薬理遺伝学)を組み込むものを含めて、予防もしくは防止する方式で、または本質的に改善もしくは治癒する方式で、作用することができ、あるいは治療を行う疾患または障害の少なくとも1つの症状の進行の速度または程度を遅くするように作用することができる。
【0090】
「治療」、「治療する」などは、治療処置及び予防的もしくは防止的措置のいずれも意味する。治療を必要とする動物には、既に障害を有する動物に加えて障害が防止されるべき動物が含まれる。疾患もしくは障害の「治療」またはこれらを「治療する」という用語は、疾患もしくは障害に対し防止もしくは保護すること(すなわち、臨床症状を発生させないこと)、疾患もしくは障害を阻害すること(すなわち、臨床症状の発生を阻止もしくは抑制すること)、及び/または疾患もしくは障害を緩和すること(すなわち、臨床症状を軽減すること)を含む。最終的な誘導事象(1つまたは複数)は未知または潜在的であり得るため、理解されるであろうが、疾患または障害の「防止」及び「抑制」を区別するのは必ずしも可能ではない。したがって、「予防」という用語は、「防止」及び「抑制」の両方を包含する一種の「治療」を構成するように理解されたい。したがって、「治療」という用語は「予防」を含む。
【0091】
「アレルギー状態」という用語は、本明細書では、免疫システムと身体に対する異物との間の相互作用によって引き起こされる疾患または障害として定義される。この外来物質は「アレルゲン」と称される。一般的なアレルゲンとしては、空中アレルゲン、例えば、花粉、粉塵、カビ、チリダニタンパク質、虫刺されから注入された唾液などが挙げられる。アレルギー状態の例としては、限定されるものではないが、以下:アレルギー性皮膚炎、夏季湿疹、蕁麻疹、ヒーブ、炎症性気道疾患、再発性気道閉塞、気道過敏症、慢性閉塞性肺疾患、過敏性腸症候群(IBS)のような自己免疫に起因する炎症プロセスが挙げられる。
【0092】
「掻痒状態」という用語は、本明細書では、皮膚をこするまたは引っ掻いて緩和を得たくなる衝動をもたらす強いかゆみ感覚を特徴とする疾患または障害として定義される。掻痒状態の例としては、限定されるものではないが、以下:アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、湿疹、乾癬、強皮症、及び掻痒が挙げられる。
【0093】
本明細書で使用する場合、「細胞」、「細胞系」、及び「細胞培養物」という用語は互換的に使用され得る。これらの用語の全てはその子孫も含み、子孫はあらゆる後続の世代である。全ての子孫は、故意のまたは偶発的な変異により、同一でない場合があることを理解されたい。異種核酸配列を発現させる文脈において、「宿主細胞」とは、in vitroまたはin vivoのいずれにあるかにかかわらず、原核細胞または真核細胞(例えば、細菌細胞、酵母細胞、哺乳類細胞、及び昆虫細胞)を意味する。例えば、宿主細胞は、トランジェニック動物内にあってもよい。宿主細胞は、ベクターのレシピエントとして使用することができ、ベクターを複製可能な及び/またはベクターにコードされる異種核酸を発現可能な任意の形質転換可能な生物を含むことができる。
【0094】
「組成物」とは、活性薬剤と別の化合物または組成物との組合せを意味するように意図され、別の化合物または組成物は不活性(例えば、標識)であっても活性(例えば、アジュバント)であってもよい。
【0095】
本明細書で使用する場合、「医薬的に許容される担体」及び「医薬的に許容されるビヒクル」という用語は相互に交換可能であり、有害作用を伴わずに宿主に注射することができるワクチン抗原を含むための流体ビヒクルを意味する。本発明での使用に適した医薬的に許容される担体は、当業者に周知されている。このような担体としては、限定されるものではないが、水、食塩水、緩衝食塩水、リン酸緩衝液、アルコール溶液/水溶液、乳濁液、または懸濁液が挙げられる。その他の従来的に用いられている希釈剤、アジュバント、及び賦形剤は、従来的な技法に従って添加することができる。このような担体としては、エタノール、ポリオール、及びこれらの好適な混合物、植物油、ならびに注射用有機エステルを挙げることができる。緩衝液及びpH調整剤も用いることができる。緩衝液としては、限定されるものではないが、有機酸または塩基から調製される塩が挙げられる。代表的な緩衝液としては、限定されるものではないが、有機酸塩、例えば、クエン酸の塩(例えば、シトレート)、アスコルビン酸、グルコン酸、ヒスチジン-HCl、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、もしくはフタル酸の塩、トリス、トリメタンミン塩酸塩(trimethanmine hydrochloride)、またはリン酸緩衝液が挙げられる。非経口用担体としては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース、トレハロース、スクロース、及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲルまたは固定油を挙げることができる。静注用担体としては、液体及び栄養補充液、電解質補充液、例えば、リンゲルデキストロースに基づくものなどを挙げることができる。防腐剤及びその他の添加物、例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤(例えば、EDTA)、不活性ガスなども医薬担体中に提供され得る。本発明は、担体の選択によって限定されるものではない。これらの医薬的に許容される組成物を適切なpH等張性、安定性、及びその他の従来的な特性を有する上記の構成要素から調製することは、当業者の技能範囲内である。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th ed,Lippincott Williams & Wilkins,publ.,2000及びThe Handbook of Pharmaceutical Excipients,4.sup.th edit.,eds.R.C.Rowe et al,APhA Publications,2003などのテキストを参照。
【0096】
「保存的アミノ酸置換」という用語は、所与のアミノ酸残基の任意のアミノ酸置換を示すものであり、置換残基は所与の残基と非常に化学的に類似するため、ポリペプチド機能(例えば、酵素活性)が実質的に低下しない。保存的アミノ酸置換は、当技術分野で一般に知られており、その例は、例えば、米国特許第6,790,639号、第6,774,107号、第6,194,167号、または第5,350,576号で説明されている。好ましい実施形態において、保存的アミノ酸置換は、以下の6つの群のうちの1つの中で生じるいずれか1つである。
●1.低分子脂肪族で実質的に非極性の残基:Ala、Gly、Pro、Ser、及びThr
●2.高分子脂肪族で非極性の残基:Ile、Leu、及びVal;Met
●3.極性で負に帯電した残基及びそのアミド:Asp及びGlu
●4.極性で負に帯電した残基のアミド:Asn及びGln;His
●5.極性で正に帯電した残基:Arg及びLys;His
●6.高分子芳香族残基:Trp及びTyr;Phe
【0097】
好ましい実施形態において、保存的アミノ酸置換は、ネイティブ残基(保存的置換)対としてリストされる以下のうちのいずれか1つである:Ala(Ser);Arg(Lys);Asn(Gln;His);Asp(Glu);Gln(Asn);Glu(Asp);Gly(Pro);His(Asn;Gln);Ile(Leu;Val);Leu(Ile;Val);Lys(Arg;Gln;Glu);Met(Leu;Ile);Phe(Met;Leu;Tyr);Ser(Thr);Thr(Ser);Trp(Tyr);Tyr(Trp;Phe);及びVal(Ile;Leu)。
【0098】
ポリペプチドが保存的アミノ酸置換(複数可)を含むことができるのと同様に、ポリペプチドのポリヌクレオチドも保存的コドン置換(複数可)を含むことができる。コドン置換は、発現したときに上記のように保存的アミノ酸置換をもたらす場合には、保存的であるとみなされる。また、アミノ酸置換を生じない縮重コドン置換も、本発明に従うポリヌクレオチドでは有用である。したがって、例えば、本発明の実施形態で有用な選択されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、それを用いて形質転換を行う発現宿主細胞によって示されるコドン使用頻度に近づけるために、または別の方法でその発現を改善するために、縮重コドン置換によって変異させてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0099】
本発明は、本明細書で説明されている特定の方法論、プロトコル、及び試薬などに限定されず、そのため変動する可能性があることを理解されたい。本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するようには意図されていない。本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0100】
別段の定義がない限り、本明細書で説明されているワクチン組成物及び抗体に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈による別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。概して、本明細書で説明されている細胞及び組織培養、分子生物学、ならびにタンパク質及びオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド化学及びハイブリダイゼーションに関連して利用されている命名法及びこれらの技法は、当技術分野で周知され、一般的に使用されているものである。組換え型DNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養及び形質移入(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)については、標準的な技法が使用される。
【0101】
酵素反応及び精製の技法は、製造業者の仕様に従って、または当技術分野で一般的に遂行されているように、または本明細書で説明されているように実施される。上記の技法及び手順は、概して、当技術分野で周知されている従来的な方法に従って、また本明細書全体で引用され論じられている様々な全般的及びより具体的な参考文献に記載されているように、実施される。例えば、Sambrook et al.MOLECULAR CLONING:LAB.MANUAL(3rd ed.,Cold Spring Harbor Lab.Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2001)及びAusubel et al.Current Protocols in Molecular Biology(New York:Greene Publishing Association/Wiley Interscience),1993を参照。本明細書で説明されている分析化学、合成有機化学、ならびに医薬品化学及び製薬化学に関連して利用されている名称、ならびにこれらの実験手順及び技法は、当技術分野で周知され一般的に使用されているものである。化学合成、化学分析、医薬の調製、製剤化、及び送達、ならびに患者の治療で標準的な技法が使用される。
【0102】
作業実施例または別途指示されている場合以外では、本明細書で使用される成分または反応条件の量を表現する全ての数字は、全ての場合において「約」という用語で修飾されるものとして理解されたい。
【0103】
特定された全ての特許及びその他の刊行物は、例えば、本発明と関連して使用され得るこのような刊行物で説明されている方法論を説明及び開示する目的において、参照により本明細書に明示的に援用される。これらの刊行物は、単に本出願の出願日以前に開示されたために提供するものである。
【0104】
組成物
本発明は、IL-31ミモトープ(ペプチド)及びそのバリアント、ならびに診断手順を含めた臨床的及び科学的手順におけるこれらの使用を提供する。本明細書で使用する場合、このようなIL-31ミモトープは、抗原のエピトープを模倣する線状または拘束性のペプチドである。所与のIL-31エピトープ抗原に対する抗IL-31抗体は、そのエピトープを模倣するIL-31ミモトープを認識する。
【0105】
IL-31ミモトープ(ペプチド)は、本発明に従うワクチン組成物で用いられる。このようなワクチン組成物は、掻痒状態またはアレルギー性状態のようなIL-31媒介性障害に対し哺乳類を保護するのに有用である。いくつかの実施形態において、IL-31媒介性の掻痒状態またはアレルギー状態は、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬、強皮症、及び掻痒から選択される掻痒状態である。他の実施形態において、IL-31媒介性の掻痒状態またはアレルギー状態は、アレルギー性皮膚炎、夏季湿疹、蕁麻疹、ヒーブ、炎症性気道疾患、再発性気道閉塞、気道過敏症、慢性閉塞性肺疾患、及び自己免疫に起因する炎症プロセスから選択されるアレルギー状態である。他の実施形態において、IL-31媒介性障害は腫瘍進行である。いくつかの実施形態において、IL-31媒介性障害は好酸球性疾患またはマスト細胞腫である。
【0106】
1つの実施形態において、本発明に従うワクチン組成物は、担体ポリペプチドと、ネコIL-31ミモトープ、イヌIL-31ミモトープ、ウマIL-31ミモトープ、及びヒトIL-31ミモトープから選択される少なくとも1つのミモトープとの組合せ、ならびにアジュバントを含む。いくつかの実施形態において、本発明のワクチン組成物は、所与の種からの2つ以上のIL-31ミモトープを含むことができ、またはさらに異なる種からのIL-31ミモトープの組合せも含むことができる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物及び/または方法で使用するためのミモトープ(線状または拘束性)は、約5アミノ酸残基~約40アミノ酸残基の長さのペプチドである、及び/またはその一部としてこのようなペプチドを含む。
【0107】
1つの実施形態において、本発明の組成物及び方法で用いられる少なくとも1つのミモトープは、IL-31 15H05ミモトープ、IL-31ヘリックスBC領域ミモトープ、IL-31ヘリックスA領域ミモトープ、IL-31 ABループ領域ミモトープ、またはこれらの任意の組合せから選択される。
【0108】
1つの実施形態において、本発明の組成物及び方法で使用するための少なくとも1つのミモトープは、IL-31の生物活性を中和する抗体を生成する。
【0109】
別の実施形態において、本発明のワクチン組成物は、IL-31上の少なくとも1つの中和エピトープに向けられ、IL-31上の非中和エピトープには向けられない哺乳類における抗体を生成するための焦点を絞った免疫応答を誘発可能である。
【0110】
1つの実施形態において、ワクチン組成物は、アミノ酸配列SVPADTFECKSF(配列番号186)、SVPADTFERKSF(配列番号187)、NSSAILPYFRAIRPLSDKNIIDKIIEQLDKLKF(配列番号192)、APTHQLPPSDVRKIILELQPLSRG(配列番号196)、TGVPES(配列番号200)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む、イヌIL-31ミモトープを含む。
【0111】
別の実施形態において、ワクチン組成物は、アミノ酸配列SMPADNFERKNF(配列番号188)、NGSAILPYFRAIRPLSDKNTIDKIIEQLDKLKF(配列番号193)、APAHRLQPSDIRKIILELRPMSKG(配列番号197)、IGLPES(配列番号201)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む、ネコIL-31ミモトープを含む。
【0112】
また別の実施形態において、ワクチン組成物は、アミノ酸配列SMPTDNFERKRF(配列番号189)、NSSAILPYFKAISPSLNNDKSLYIIEQLDKLNF(配列番号194)、GPIYQLQPKEIQAIIVELQNLS KK(配列番号198)、KGVQKF(配列番号202)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む、ウマIL-31ミモトープを含む。
【0113】
なおさらなる実施形態において、ワクチン組成物は、アミノ酸配列SVPTDTHECKRF(配列番号190)、SVPTDTHERKRF(配列番号191)、HSPAIRAYLKTIRQLDNKSVIDEIIEHLDKLIF(配列番号195)、LPVRLLRPSDDVQKIVEELQSLSKM(配列番号199)、KGVLVS(配列番号203)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む、ヒトIL-31ミモトープを含む。
【0114】
1つの実施形態において、本発明に従うワクチン組成物で用いられるミモトープは、拘束性ミモトープである。1つの実施形態において、このような拘束性ミモトープは、化学的に連結した環状ペプチドである。
【0115】
線状IL-31ミモトープは、化学合成で産生することも組換えで産生することもできる。拘束性IL-31ミモトープ(例えば、化学的に連結した環状ペプチド)は、化学的に合成することも、化学合成と組換え技術との組合せを用いて作製することもできる。
【0116】
いくつかの実施形態において、ワクチン組成物で用いられるIL-31ミモトープは、担体ポリペプチドと化学的に結合体化している。他の実施形態において、担体ポリペプチド及びミモトープは、組換え融合タンパク質の一部である。
【0117】
IL-31ミモトープと組み合わされる担体ポリペプチドは、細菌トキソイドもしくはその誘導体、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、またはウイルス様粒子とすることができる、あるいはその一部としてこれらのいずれかを含むことができる。非限定的な例として、細菌トキソイドまたは誘導体は、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、B群N.meningitidisからの外膜タンパク質複合体、Pseudomonas外毒素、またはジフテリア毒素の無毒性変異型(CRM197)とすることができる。他の非限定的な例として、ウイルス様粒子は、HBsAg、HBcAg、E.coliバクテリオファージQベータ、ノーウォークウイルス、犬ジステンパーウイルス(CDV)、またはインフルエンザHAとすることができる。1つの好ましい実施形態において、IL-31ミモトープは、CRM197を含むまたはそれからなる担体ポリペプチドと組み合わされる。
【0118】
本発明に従うワクチン組成物は、以下でさらに詳細に説明されるように、少なくとも1つのアジュバントまたはアジュバント製剤を含む。
【0119】
本発明のワクチンは、ヒト(適用可能な場合)を含めた動物のための医薬的に許容される担体(例えば、標準的な緩衝剤、安定剤、希釈剤、保存料、及び/または溶解剤)を含むように、一般に認められている慣行に従って製剤化することができ、また持続性放出を促進するように製剤化することもできる。希釈剤には、水、食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロールなどが含まれる。等張性のための添加剤としては、特に、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、及びラクトースが挙げられる。安定剤としては、特に、アルブミンが挙げられる。その他の好適なワクチンビヒクル及び添加剤は、修飾生ワクチンの製剤化に特に有用なものを含めて、当業者に知られているか、または明らかになるあろう。例えば、Remington’s Pharmaceutical Science,18th ed.,1990,MackPublishingを参照(当該文献は、参照により本明細書に援用される)。
【0120】
本発明のワクチンはさらに、1つ以上のさらなる免疫調節性構成成分、例えば、特に、アジュバントまたはサイトカインを含むことができる。本発明の組成物における使用に適したアジュバントのタイプとしては、以下:水中油型アジュバント、ポリマー及び水アジュバント、油中水型アジュバント、水酸化アルミニウムアジュバント、ビタミンEアジュバント、ならびにこれらの組合せが挙げられる。アジュバントのいくつかの具体的な例としては、限定されるものではないが、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、Corynebacterium parvum、Bacillus Calmette Guerin、水酸化アルミニウムゲル、グルカン、デキストラン硫酸、酸化鉄、アルギン酸ナトリウム、Bactoアジュバント、ある特定の合成ポリマー、例えば、ポリアミノ酸及びアミノ酸のコポリマー、ブロックコポリマー(CytRx,Atlanta,Ga.)、QS-21(Cambridge Biotech Inc.,Cambridge Mass.)、SAF-M(Chiron,Emeryville Calif.)、AMPHIGEN(登録商標)アジュバント、サポニン、Quil A、またはその他のサポニン画分、モノホスホリルリピドA、ならびにAvridine脂質-アミンアジュバント(N,N-ジオクタデシル-N’,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)-プロパンジアミン)、「REGRESSIN」(Vetrepharm,Athens,Ga.)、パラフィンオイル、RIBIアジュバントシステム(Ribi Inc.,Hamilton,Mont.)、ムラミルジペプチドなどが挙げられる。
【0121】
本発明のワクチンに有用な水中油型乳濁液の非限定的な例としては、修飾SEAM62及びSEAM 1/2製剤が挙げられる。修飾SEAM62は、5%(v/v)スクアレン(Sigma)、1%(v/v)SPAN(登録商標)85界面活性剤(ICI Surfactants)、0.7%(v/v)TWEEN(登録商標)80界面活性剤(ICI Surfactants)、2.5%(v/v)エタノール、200μg/mlのQuil A、100μg/mlのコレステロール、及び0.5%(v/v)レシチンを含む水中油型乳濁液である。修飾SEAM 1/2は、5%(v/v)スクアレン、1%(v/v)SPAN(登録商標)85界面活性剤、0.7%(v/v)Tween 80界面活性剤、2.5%(v/v)エタノール、100μg/mlのQuil A、及び50μg/mlのコレステロールを含む水中油型乳濁液である。
【0122】
本発明の組成物に有用なアジュバントのもう1つの例は、SP油である。本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「SP油」という用語は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、スクアラン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、及び緩衝塩溶液を含む油乳濁液を指す。ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーは、固体及び液体の構成要素の懸濁を助ける界面活性剤である。このような界面活性剤は、Pluronic(登録商標)の商品名でポリマーとして市販されている。好ましい界面活性剤は、商品名Pluronic(登録商標)L-121で市販されているポロキサマー401である。一般的には、SP油乳濁液は、約1~3%vol/volのブロックコポリマー、約2~6%vol/volのスクアラン、より特定的には約3~6%のスクアラン、及び約0.1~0.5%vol/volのモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンポリオキシエチレンソルビタンを含み、残部は緩衝塩溶液である、免疫刺激性アジュバント混合物である。
【0123】
ワクチンに含めることができる「免疫調節剤」としては、例えば、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、1つ以上のインターロイキン、インターフェロン、または他の既知のサイトカインが挙げられる。1つの実施形態において、アジュバントは、それぞれ米国特許第6,165,995号及び第6,610,310号に説明されているようなシクロデキストリン誘導体またはポリアニオン性ポリマーとすることができる。
【0124】
1つの実施形態において、アジュバントは、サポニン、ステロール、第4級アンモニウム化合物、及びポリマーを含む製剤である。特定の実施形態において、サポニンはQuil Aまたはその精製画分であり、ステロールはコレステロールであり、第4級アンモニウム化合物はジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)であり、ポリマーはポリアクリル酸である。
【0125】
別の実施形態において、アジュバントは、1つ以上の単離免疫刺激性オリゴヌクレオチド、ステロール、及びサポニンの組合せを含む。特定の実施形態において、1つ以上の単離免疫刺激性オリゴヌクレオチドはCpGを含み、ステロールはコレステロールであり、サポニンはQuil Aまたはその精製画分である。本明細書で使用する場合、実施例セクションで言及されるZA-01アジュバントは、Quil A(サポニン)、コレステロール、CpG、及び希釈剤を含む。
【0126】
別の実施形態において、本発明の組成物で用いられる有用なアジュバントとしては、CpG含有免疫刺激性オリゴヌクレオチドが挙げられる。CpG含有オリゴヌクレオチドは、例えば、米国特許第8,580,280号で説明されている。1つの特定の実施形態において、本発明で使用するためのアジュバントは、少なくとも1つの糖脂質アジュバント及びCpG含有オリゴヌクレオチドを含む混合物である。有用なアジュバントの具体的な例は、糖脂質アジュバントBay R1005(N-(2-デオキシ-2-L-ロイシルアミノ-β-D-グルコピラノシル)-N-オクタデシルドデカノイルアミドヒドロアセテート)及びCpGオリゴヌクレオチドを含む混合物である。
【0127】
1つの実施形態において、アジュバントまたはアジュバント混合物は、用量当たり約100μg~約10mgの量で添加される。別の実施形態において、アジュバント/アジュバント混合物は、用量当たり約200μg~約5mgの量で添加される。また別の実施形態において、アジュバント/アジュバント混合物は、約300μg~約1mg/用量の量で添加される。
【0128】
分子生物学及び組換え技術の方法の出現により、組換え手段によって上記のペプチド及びポリペプチドを産生し、それによりペプチドまたはポリペプチド構造に見られる特定のアミノ酸配列をコードする遺伝子配列を生成することが可能である。1つの実施形態において、ペプチドは、IL-31ミモトープであるか、またはIL-31ミモトープの少なくとも一部である。別の実施形態において、ポリペプチドは、IL-31ミモトープとの組合せで存在する担体ポリペプチドである。なおさらなる実施形態において、ポリペプチドは抗体であり、例えば、本発明のワクチン組成物または診断方法で用いられるIL-31ミモトープが結合する抗体である。このような抗体は、当該抗体のポリペプチド鎖をコードする遺伝子配列をクローンし、または当該ポリペプチド鎖を直接合成し、合成した鎖を組み立てて特定のエピトープ及び抗原決定基に対する親和性を備えた活性4量体(H2L2)構造を形成することによって産生することができる。これにより、異なる種及び供給源から中和抗体に特徴的な配列を有する抗体を容易に産生することが可能になった。
【0129】
抗体の供給源、または抗体がどのように組換え構築されているか、または抗体がどのように合成されているか、in vitroかin vivoか、トランスジェニック動物の使用、実験サイズもしくは商業サイズの大規模細胞培養、トランスジェニック植物の使用、または任意のプロセス段階で生物を用いない直接的化学合成によるものかにかかわらず、全ての抗体は、同様の全体的3次元構造を有する。この構造は、しばしばH2L2として定められ、抗体が一般的に2つのアミノ酸軽鎖(L)と2つのアミノ酸重鎖(H)とを含むという事実を意味する。両方の鎖は、構造的に相補的な抗原標的と相互作用可能な領域を有する。標的と相互作用する領域は、「可変」または「V」領域と称され、抗原特異性が異なる抗体からのアミノ酸配列の違いによって特徴付けられる。H鎖またはL鎖の可変領域は、抗原標的に対し特異的に結合可能なアミノ酸配列を含む。
【0130】
抗体の「抗原結合領域」または「抗原結合部分」とは、抗原と相互作用し、抗原に対するその特異性及び親和性を抗体に付与するアミノ酸残基を含む、抗体分子の部分を意味する。抗体結合領域は、抗原結合残基の適切な立体構造を維持するために必要な「フレームワーク」アミノ酸残基を含む。本明細書及び特許請求の範囲で言及されている抗体の抗原結合部分は、本明細書では、例えば、IL-31特異的ペプチドもしくはポリペプチド、または抗IL-31ペプチドもしくはポリペプチドと称されることがある。
【0131】
抗原結合領域を提供するH鎖またはL鎖の可変領域内には、特異性の異なる抗体間で極度に変動することから「超可変」と呼ばれるより小さな配列がある。このような超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」領域とも称される。これらのCDR領域は、特定の抗原決定基構造に対する抗体の基本的な特異性の根拠となる。
【0132】
CDRは、可変領域内の非連続的なアミノ酸の連なりに相当するが、種に関係なく、可変重鎖及び軽鎖領域内におけるこれらの不可欠なアミノ酸配列の位置は、可変鎖のアミノ酸配列内で同様の位置を有することが分かっている。全ての抗体の可変重鎖及び軽鎖は各々3つのCDR領域を有し、各々が他のCDR領域と隣接していない。
【0133】
全ての哺乳類種において、抗体ペプチドは定常(すなわち、高度に保存された)領域及び可変領域を含み、可変領域内にはCDRといわゆる「フレームワーク領域」とがあり、フレームワーク領域は、重鎖または軽鎖の可変領域内のCDR以外のアミノ酸配列から構成される。
【0134】
抗体のCDR領域に認識される抗原決定基に関しては、「エピトープ」とも称される。言い換えれば、エピトープとは、抗体が認識可能であり、かつ抗体が結合可能である任意の分子のその部分を意味する(対応する抗体結合領域は、パラトープと称されることがある)。
【0135】
「抗原」とは、抗体が結合可能であり、さらに、その抗原のエピトープに結合可能な抗体を産生するように動物を誘導可能である分子または分子の部分である。抗原は、1つまたは複数のエピトープを有することができる。上記で言及した特異的反応は、抗体が、高度に選択的な方法で、対応する抗体に反応し、他の抗原によって誘発され得る他の多数の抗体には反応しないことを示すように意図されている。
【0136】
本明細書で言及されている抗体は、インタクト免疫グロブリン分子と、その部分、フラグメント、ペプチド、及び誘導体(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fse、CDR領域、パラトープ、または抗原もしくはエピトープに結合可能な抗体の任意の部分(例えば、ポリペプチド)もしくはペプチド配列)とを含むように意図されている。抗体は、分子と特異的に反応してその分子を抗体に結合させることが可能である場合、分子に「結合可能」であるとされる。
【0137】
また、本明細書で言及されている抗体は、任意の既知の技法(例えば、限定されるものではないが、酵素切断、ペプチド合成、または組換え技法)によって提供されるキメラ型抗体、ヘテロキメラ型抗体、イヌ化抗体、ネコ化抗体、またはウマ化抗体、ヒト化抗体、完全イヌ抗体、完全ネコ抗体、完全ウマ抗体、完全ヒト抗体、及びこれらのフラグメント、部分、領域、ペプチド、または誘導体も含む。本明細書で言及されているこのような抗体は、イヌIL-31、ネコIL-31、ウマIL-31、またはヒトIL-31のうちの少なくとも1つに特異的に結合可能である。抗体のフラグメントまたは部分は、インタクト抗体のFcフラグメントが欠如し、血液循環からより迅速に除去される可能性があり、インタクト抗体よりも低い非特異的組織結合を有する可能性がある。抗体フラグメントの例は、当技術分野で周知された方法を用いて、例えば、(Fabフラグメントを産生するための)パパインまたは(F(ab’)2フラグメントを産生するための)ペプシンのような酵素によるタンパク質分解切断によって、インタクト抗体から産生することができる。例えば、Wahl et al.,24 J.Nucl.Med.316-25(1983)を参照。抗体の部分は、上記の方法のいずれかによって作製することも、組換え型分子の部分を発現させることによって作製することもできる。例えば、組換え型抗体のCDR領域(複数可)を単離し、適切な発現ベクター内でサブクローンすることができる。例えば、米国特許第6,680,053号を参照。
【0138】
クローン15H05、ZIL1、ZIL8、ZIL9、ZIL11、ZIL69、ZIL94、ZIL154、ZIL159、及びZIL171のヌクレオチド及びアミノ酸配列
いくつかの実施形態において、本発明は、イヌIL-31、ネコIL-31、またはウマIL-31のうちの少なくとも1つに特異的に結合する新規のモノクローナル抗体に結合するIL-31ミモトープを提供する。このようなモノクローナル抗体は、IL-31ミモトープと共に本発明の診断方法で用いることができる。1つの実施形態において、本明細書及び特許請求の範囲で言及されているモノクローナル抗体は、イヌIL-31、ネコIL-31、またはウマIL-31に結合し、IL-31受容体A(IL-31Ra)及びオンコスタチンM特異的受容体(OsmRまたはIL-31Rb)を含む共受容体へのその結合及び活性化を防止する。このようなモノクローナル抗体の例は、本明細書では「15H05」、「ZIL1」、「ZIL8」、「ZIL9」、「ZIL11」、「ZIL69」、「ZIL94」、「ZIL154」、「ZIL159」、及び「ZIL171」として同定され、これらはそのクローンに割り当てられた番号を意味する。また、本明細書では、「15H05」、「ZIL1」、「ZIL8」、「ZIL9」、「ZIL11」、「ZIL69」、「ZIL94」、「ZIL154」、「ZIL159」、及び「ZIL171」は、それぞれ15H05、ZIL1、ZIL8、ZIL9、ZIL11、ZIL69、ZIL94、ZIL154、ZIL159、及びZIL171抗体に結合する能力を有することから15H05、ZIL1、ZIL8、ZIL9、ZIL11、ZIL69、ZIL94、ZIL154、ZIL159、及びZIL171として同定されるIL-31エピトープと特異的に結合するモノクローナル抗体の部分、CDR、またはパラトープも意味する。本明細書で説明されている15H05、ZIL1、ZIL8、ZIL9、ZIL11、ZIL69、ZIL94、ZIL154、ZIL159、及びZIL171のいくつかの組換え型、キメラ型、ヘテロキメラ型、イヌ化、ネコ化、ウマ化、完全イヌ、完全ネコ、及び/または完全ウマ形態は、同じ名称で称される場合がある。
【0139】
1つの実施形態において、本発明に従うワクチン組成物は、哺乳類のIL-31タンパク質とその共受容体との相互作用に関与するIL-31タンパク質上の領域に特異的に結合する抗IL-31抗体またはその抗原結合部分に結合するミモトープを含む。1つの実施形態において、当該抗体の当該領域との結合は、以下:a)配列番号157(ネコ_IL31_野生型)によって表されるネコIL-31配列のアミノ酸残基約124から135の間の領域、b)配列番号155(イヌ_IL31)によって表されるイヌIL-31配列のアミノ酸残基約124から135の間の領域、及びc)配列番号165(ウマ_IL31)によって表されるウマIL-31のアミノ酸残基約118から129の間の領域から選択される15H05エピトープ結合領域の変異によって影響を受ける。1つの実施形態において、本発明の組成物で使用するためのミモトープは、上記の15H05エピトープ領域に特異的に結合する抗IL-31抗体またはその抗原結合部分に結合する。
【0140】
本発明によるワクチン組成物の1つの特定の実施形態において、ミモトープは、相補性決定領域(CDR)配列の以下の組み合わせのうちの少なくとも1つを含む抗IL-31抗体またはその抗原結合部分に結合する。
1)抗体15H05:可変重鎖(VH)-CDR1がSYTIH(配列番号1)、VH-CDR2がNINPTSGYTENNQRFKD(配列番号2)、VH-CDR3がWGFKYDGEWSFDV(配列番号3)、可変軽鎖(VL)-CDR1がRASQGISIWLS(配列番号4)、VL-CDR2がKASNLHI(配列番号5)、VL-CDR3がLQSQTYPLT(配列番号6)、
2)抗体ZIL1:可変重鎖(VH)-CDR1がSYGMS(配列番号13)、VH-CDR2がHINSGGSSTYYADAVKG(配列番号14)、VH-CDR3がVYTTLAAFWTDNFDY(配列番号15)、可変軽鎖(VL)-CDR1がSGSTNNIGILAAT(配列番号16)、VL-CDR2がSDGNRPS(配列番号17)、VL-CDR3がQSFDTTLDAYV(配列番号18)、
3)抗体ZIL8:VH-CDR1がDYAMS(配列番号19)、VH-CDR2がGIDSVGSGTSYADAVKG(配列番号20)、VH-CDR3がGFPGSFEH(配列番号21)、VL-CDR1がTGSSSNIGSGYVG(配列番号22)、VL-CDR2がYNSDRPS(配列番号23)、VL-CDR3がSVYDRTFNAV(配列番号24)、
4)抗体ZIL9:VH-CDR1がSYDMT(配列番号25)、VH-CDR2がDVNSGGTGTAYAVAVKG(配列番号26)、VH-CDR3がLGVRDGLSV(配列番号27)、VL-CDR1がSGESLNEYYTQ(配列番号28)、VL-CDR2がRDTERPS(配列番号29)、VL-CDR3がESAVDTGTLV(配列番号30)、
5)抗体ZIL11:VH-CDR1がTYVMN(配列番号31)、VH-CDR2がSINGGGSSPTYADAVRG(配列番号32)、VH-CDR3がSMVGPFDY(配列番号33)、VL-CDR1がSGESLSNYYAQ(配列番号34)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号35)、VL-CDR3がESAVSSDTIV(配列番号36)、
6)抗体ZIL69:VH-CDR1がSYAMK(配列番号37)、VH-CDR2がTINNDGTRTGYADAVRG(配列番号38)、VH-CDR3がGNAESGCTGDHCPPY(配列番号39)、VL-CDR1がSGESLNKYYAQ(配列番号40)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号41)、VL-CDR3がESAVSSETNV(配列番号42)、
7)抗体ZIL94:VH-CDR1がTYFMS(配列番号43)、VH-CDR2がLISSDGSGTYYADAVKG(配列番号44)、VH-CDR3がFWRAFND(配列番号45)、VL-CDR1がGLNSGSVSTSNYPG(配列番号46)、VL-CDR2がDTGSRPS(配列番号47)、VL-CDR3がSLYTDSDILV(配列番号48)、
8)抗体ZIL154:VH-CDR1がDRGMS(配列番号49)、VH-CDR2がYIRYDGSRTDYADAVEG(配列番号50)、VH-CDR3がWDGSSFDY(配列番号51)、VL-CDR1がKASQSLLHSDGNTYLD(配列番号52)、VL-CDR2がKVSNRDP(配列番号53)、VL-CDR3がMQAIHFPLT(配列番号54)、
9)抗体ZIL159:VH-CDR1がSYVMT(配列番号55)、VH-CDR2がGINSEGSRTAYADAVKG(配列番号56)、VH-CDR3がGDIVATGTSY(配列番号57)、VL-CDR1がSGETLNRFYTQ(配列番号58)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号59)、VL-CDR3がKSAVSIDVGV(配列番号60)、
10)抗体ZIL171:VH-CDR1がTYVMN(配列番号61)、VH-CDR2がSINGGGSSPTYADAVRG(配列番号62)、VH-CDR3がSMVGPFDY(配列番号63)、VL-CDR1がSGKSLSYYYAQ(配列番号64)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号65)、VL-CDR3がESAVSSDTIV(配列番号66)、または
11)VHまたはVLのCDR1、CDR2、もしくはCDR3のうちの少なくとも1つにおける1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失、及び/または置換によってそれぞれの親抗体15H05、ZIL1、ZIL8、ZIL9、ZIL11、ZIL69、ZIL94、ZIL154、ZIL159、もしくはZIL171と相違する、1)~10)のバリアント
のうちの少なくとも1つを含む、抗IL-31抗体またはその抗原結合部分に結合する。
【0141】
1つの実施形態において、ワクチン組成物で使用されるIL-31ミモトープは、ネコIL-31に特異的に結合し、このとき、抗体は、配列番号157(ネコ_IL31_野生型)によって表されるネコIL-31配列のアミノ酸残基約125から134の間の領域に結合する。いくつかの実施形態において、このような抗体は、以下:42位のリジンからアスパラギンへの置換、43位のバリンからイソロイシンへの置換、46位のロイシンからバリンへの置換、49位のリジンからアスパラギンへの置換、及びこれらの組合せから選択されるフレームワーク2(FW2)変化を含むVL鎖を含み、このとき、これらの位置は配列番号127(FEL_15H05_VL1)のナンバリングに準拠している。
【0142】
いくつかの実施形態において、ミモトープは、以下を特徴とする抗体に結合する。
1)抗体ZIL1は、以下:
a)CAN-ZIL1_VL:
QSVLTQPTSVSGSLGQRVTISCSGSTNNIGILAATWYQQLPGKAPKVLVYSDGNRPSGVPDRFSGSKSGNSATLTITGLQAEDEADYYCQSFDTTLDAYVFGSGTQLTVL(配列番号77)を含む可変軽鎖、及び
b)CAN-ZIL1_VH:
EVQLVESGGDLVKPGGSLRLSCVASGFTFSSYGMSWVRQAPGKGLQWVAHINSGGSSTYYADAVKGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCVEVYTTLAAFWTDNFDYWGQGTLVTVSS(配列番号75)を含む可変重鎖
のうちの少なくとも1つを含み、
2)抗体ZIL8は、以下:
a)CAN-ZIL8_VL:
QSVLTQPASVSGSLGQKVTISCTGSSSNIGSGYVGWYQQLPGTGPRTLIYYNSDRPSGVPDRFSGSRSGTTATLTISGLQAEDEADYYCSVYDRTFNAVFGGGT(配列番号81)を含む可変軽鎖、及び
b)CAN-ZIL8_VH:
EVQLVESGGDLVKPAGSLRLSCVASGFTFSDYAMSWVRQAPGRGLQWVAGIDSVGSGTSYADAVKGRFTISRDDAKNTLYLQMFNLRAEDTAIYYCASGFPGSFEHWGQGTLVTVSS(配列番号79)を含む可変重鎖
のうちの少なくとも1つを含み、
3)抗体ZIL9は、以下:
a)CAN-ZIL9_VL:SSVLTQPPSVSVSLGQTATISCSGESLNEYYTQWFQQKAGQAPVLVIYRDTERPSGIPDRFSGSSSGNTHTLTISGARAEDEADYYCESAVDTGTLVFGGGTHLAVL(配列番号85)を含む可変軽鎖、及び
b)CAN-ZIL9_VH:
EVQLVESGGDLVKPPGSLRLSCVASGFTFSSYDMTWVRQAPGKGLQWVADVNSGGTGTAYAVAVKGRFTISRDNAKKTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKLGVRDGLSVWGQGTLVTVSS(配列番号83)を含む可変重鎖
のうちの少なくとも1つを含み、
4)抗体ZIL11は、以下:
a)CAN-ZIL11_VL:SSVLTQPPSVSVSLGQTATISCSGESLSNYYAQWFQQKAGQAPVLVIYKDTERPSGIPDRFSGSSSGNTHTLTISGARAEDEADYYCESAVSSDTIVFGGGT(配列番号89)を含む可変軽鎖、及び
b)CAN-ZIL11_VH:EVQLVESGGDLVKPAGSLRLSCVASGFTFRTYVMNWVRQAPGKGLQWVASINGGGSSPTYADAVRGRFTVSRDNAQNSLFLQMNSLRAEDTAVYFCVVSMVGPFDYWGQGTLVTVSS(配列番号87)を含む可変重鎖
のうちの少なくとも1つを含み、
5)抗体ZIL69は、以下:
a)CAN-ZIL69_VL:SSVLTQPPSVSVSLGQTATISCSGESLNKYYAQWFQQKAGQAPVLVIYKDTERPSGIPDRFSGSSAGNTHTLTISGARAEDEADYYCESAVSSETNVFGSGTQLTVL(配列番号93)を含む可変軽鎖、及び
b)CAN-ZIL69_VH:EVQLVESGGDLVKPAGSLRLSCVASGFTFSSYAMKWVRQAPGKGLQWVATINNDGTRTGYADAVRGRFTISKDNAKNTLYLQMDSLRADDTAVYYCTKGNAESGCTGDHCPPYWGQGTLVTVSS(配列番号91)を含む可変重鎖
のうちの少なくとも1つを含み、
6)抗体ZIL94は、以下:
a)CAN-ZIL94_VL:QTVVIQEPSLSVSPGGTVTLTCGLNSGSVSTSNYPGWYQQTRGRTPRTIIYDTGSRPSGVPNRFSGSISGNKAALTITGAQPEDEADYYCSLYTDSDILVFGGGTHLTVL(配列番号97)を含む可変軽鎖、及び
b)CAN-ZIL94_VH:EVQLVDSGGDLVKPGGSLRLSCVASGFTFSTYFMSWVRQAPGRGLQWVALISSDGSGTYYADAVKGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLRAEDTAMYYCAIFWRAFNDWGQGTLVTVSS(配列番号95)を含む可変重鎖
のうちの少なくとも1つを含み、
7)抗体ZIL154は、以下:
a)CAN-ZIL154_VL:DIVVTQTPLSLSVSPGETASFSCKASQSLLHSDGNTYLDWFRQKPGQSPQRLIYKVSNRDPGVPDRFSGSGSGTDFTLRISGVEADDAGLYYCMQAIHFPLTFGAGTKVELK(配列番号101)を含む可変軽鎖、及び
b)CAN-ZIL154_VH:EVHLVESGGDLVKPWGSLRLSCVASGFTFSDRGMSWVRQSPGKGLQWVAYIRYDGSRTDYADAVEGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARWDGSSFDYWGQGTLVTVSS(配列番号99)を含む可変重鎖
のうちの少なくとも1つを含み、
8)抗体ZIL159は、以下:
a)CAN-ZIL159_VL:SNVLTQPPSVSVSLGQTATISCSGETLNRFYTQWFQQKAGQAPVLVIYKDTERPSGIPDRFSGSSSGNIHTLTISGARAEDEAAYYCKSAVSIDVGVFGGGTHLTVF(配列番号105)を含む可変軽鎖、及び
b)CAN-ZIL159_VH:EVQLVESGGDLVKPAGSLRLSCVASGFTFSSYVMTWVRQAPGKGLQWVAGINSEGSRTAYADAVKGRFTISRDNAKNTLYLQIDSLRAEDTAIYYCATGDIVATGTSYWGQGTLVTVSS(配列番号103)を含む可変重鎖
のうちの少なくとも1つを含み、
9)抗体ZIL171は、以下:
a)CAN-ZIL171_VL:SSVLTQPPSVSVSLGQTATISCSGKSLSYYYAQWFQQKAGQAPVLVIYKDTERPSGIPDRFSGSSSGNTHTLTISGARAEDEADYYCESAVSSDTIVFGGGTHLTVL(配列番号109)を含む可変軽鎖、及び
b)CAN-ZIL171_VH:EVQLVESGGDLVKPAGSLRLSCVASGFTFRTYVMNWVRQAPGKGLQWVASINGGGSSPTYADAVRGRFTVSRDNAQNSLFLQMNSLRAEDTAIYFCVVSMVGPFDYWGHGTLVTVSS(配列番号107)を含む可変重鎖
のうちの少なくとも1つを含む。
【0143】
宿主細胞を使用して、上記の抗体を産生することができる。このような抗体は、本発明の一部として説明されている診断手順で使用することができる。ただし、診断手順がこれらの特定の抗体に限定されるわけではない。
【0144】
抗IL-31抗体の軽鎖及び重鎖の可変領域をコードするヌクレオチド配列を用いて、本明細書で説明されている抗IL-31抗体を作製することができる。このようなヌクレオチド配列には、限定されるものではないが、15H05、ZIL1、ZIL8、ZIL9、ZIL11、ZIL69、ZIL94、ZIL154、ZIL159、もしくはZIL171、またはこれらのIL-31特異的ポリペプチドもしくはペプチドのアミノ酸配列をコードする任意のヌクレオチド配列が含まれる。加えて、1つの実施形態において、IL-31ミモトープをコードするヌクレオチド配列を使用して、単独で、または担体ポリペプチドと共に融合タンパク質の一部として、ミモトープを組換え産生することができる。代替的に、または追加として、ミモトープは化学的に合成することができる。
【0145】
いくつかの実施形態において、単離核酸を用いて有用な抗体を作製することができ、このとき、核酸は、以下の可変重鎖の相補性決定領域(CDR)配列の組合せ:
1) 15H05:可変重鎖(VH)-CDR1がSYTIH(配列番号1)、VH-CDR2がNINPTSGYTENNQRFKD(配列番号2)、VH-CDR3がWGFKYDGEWSFDV(配列番号3)、
2) ZIL1:VH-CDR1がSYGMS(配列番号13)、VH-CDR2がHINSGGSSTYYADAVKG(配列番号14)、VH-CDR3がVYTTLAAFWTDNFDY(配列番号15)、
3) ZIL8:VH-CDR1がDYAMS(配列番号19)、VH-CDR2がGIDSVGSGTSYADAVKG(配列番号20)、VH-CDR3がGFPGSFEH(配列番号21)、
4) ZIL9:VH-CDR1がSYDMT(配列番号25)、VH-CDR2がDVNSGGTGTAYAVAVKG(配列番号26)、VH-CDR3がLGVRDGLSV(配列番号27)、
5) ZIL11:VH-CDR1がTYVMN(配列番号31)、VH-CDR2がSINGGGSSPTYADAVRG(配列番号32)、VH-CDR3がSMVGPFDY(配列番号33)、
6) ZIL69:VH-CDR1がSYAMK(配列番号37)、VH-CDR2がTINNDGTRTGYADAVRG(配列番号38)、VH-CDR3がGNAESGCTGDHCPPY(配列番号39)、
7) ZIL94:VH-CDR1がTYFMS(配列番号43)、VH-CDR2がLISSDGSGTYYADAVKG(配列番号44)、VH-CDR3がFWRAFND(配列番号45)、
8) ZIL154:VH-CDR1がDRGMS(配列番号49)、VH-CDR2がYIRYDGSRTDYADAVEG(配列番号50)、VH-CDR3がWDGSSFDY(配列番号51)、
9) ZIL159:VH-CDR1がSYVMT(配列番号55)、VH-CDR2がGINSEGSRTAYADAVKG(配列番号56)、VH-CDR3がGDIVATGTSY(配列番号57)、
10) ZIL171:VH-CDR1がTYVMN(配列番号61)、VH-CDR2がSINGGGSSPTYADAVRG(配列番号62)、VH-CDR3がSMVGPFDY(配列番号63)、または
11) VHのCDR1、CDR2、もしくはCDR3のうちの少なくとも1つにおける1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失、及び/または置換によってそれぞれの親抗体15H05、ZIL1、ZIL8、ZIL9、ZIL11、ZIL69、ZIL94、ZIL154、ZIL159、もしくはZIL171のCDRと相違する、1)~10)のバリアント
のうちの少なくとも1つをコードする。
【0146】
別の実施形態において、単離核酸は、以下の可変軽鎖の相補性決定領域(CDR)配列の組合せ:
1)15H05:可変軽鎖(VL)-CDR1がRASQGISIWLS(配列番号4)、VL-CDR2がKASNLHI(配列番号5)、VL-CDR3がLQSQTYPLT(配列番号6)、
2)ZIL1:VL-CDR1がSGSTNNIGILAAT(配列番号16)、VL-CDR2がSDGNRPS(配列番号17)、VL-CDR3がQSFDTTLDAYV(配列番号18)、
3)ZIL8:VL-CDR1がTGSSSNIGSGYVG(配列番号22)、VL-CDR2がYNSDRPS(配列番号23)、VL-CDR3がSVYDRTFNAV(配列番号24)、
4)ZIL9:VL-CDR1がSGESLNEYYTQ(配列番号28)、VL-CDR2がRDTERPS(配列番号29)、VL-CDR3がESAVDTGTLV(配列番号30)、
5)ZIL11:VL-CDR1がSGESLSNYYAQ(配列番号34)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号35)、VL-CDR3がESAVSSDTIV(配列番号36)、
6)ZIL69:VL-CDR1がSGESLNKYYAQ(配列番号40)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号41)、VL-CDR3がESAVSSETNV(配列番号42)、
7)ZIL94:VL-CDR1がGLNSGSVSTSNYPG(配列番号46)、VL-CDR2がDTGSRPS(配列番号47)、VL-CDR3がSLYTDSDILV(配列番号48)、
8)ZIL154:VL-CDR1がKASQSLLHSDGNTYLD(配列番号52)、VL-CDR2がKVSNRDP(配列番号53)、VL-CDR3がMQAIHFPLT(配列番号54)、
9)ZIL159:VL-CDR1がSGETLNRFYTQ(配列番号58)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号59)、VL-CDR3がKSAVSIDVGV(配列番号60)、
10)ZIL171:VL-CDR1がSGKSLSYYYAQ(配列番号64)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号65)、VL-CDR3がESAVSSDTIV(配列番号66)、または
11)VLのCDR1、CDR2、もしくはCDR3のうちの少なくとも1つにおける1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失、及び/または置換によってそれぞれの親抗体15H05、ZIL1、ZIL8、ZIL9、ZIL11、ZIL69、ZIL94、ZIL154、ZIL159、もしくはZIL171のCDRと相違する、1)~10)のバリアント
のうちの少なくとも1つをコードする核酸配列を含む。
【0147】
また別の実施形態において、本明細書で説明されている抗体の製造で使用される単離核酸は、それぞれの親抗体15H05、ZIL1、ZIL8、ZIL9、ZIL11、ZIL69、ZIL94、ZIL154、ZIL159、もしくはZIL171、またはこれらのバリアントの上記の可変軽鎖相補性決定領域(CDR)配列と、上記の可変重鎖CDR配列とをコードする核酸配列を含む。
【0148】
上記の核酸のうちの少なくとも1つを含むベクターは、これらの抗体の製造に使用することができる。以下でさらに詳細に説明するように、上記の可変重鎖の相補性決定領域(CDR)配列の組合せのうちの少なくとも1つをコードする核酸配列は、上記の可変軽鎖のCDR配列の組合せのうちの少なくとも1つをコードする核酸配列と共に、同じベクターに含まれてもよい。代替的に、上記の可変軽鎖のCDR配列の組合せのうちの少なくとも1つをコードする核酸配列及び上記の可変重鎖のCDR配列の組合せのうちの少なくとも1つをコードする核酸配列は各々、別々のベクターに含まれてもよい。
【0149】
遺伝暗号は縮重しているため、特定のアミノ酸をコードするのに2つ以上のコドンを使用することができる。遺伝暗号を用いて、各々がそのアミノ酸をコード可能と考えられる1つ以上の異なるヌクレオチド配列を同定することができる。特定のオリゴヌクレオチドが実際に実際のXXXコード配列を構成する可能性は、抗IL-31抗体またはそのIL-31特異的部分を発現する真核細胞または原核細胞における異常な塩基対の関係と、特定のコドンが実際に(特定のアミノ酸をコードするのに)使用される頻度とを考慮することによって推定することができる。このような「コドン使用頻度ルール」は、Lathe,et al.,183 J.Molec.Biol.1-12(1985)によって開示されている。Latheの「コドン使用頻度ルール」を用いて、抗IL-31配列をコード可能な理論上「最も可能性の高い」ヌクレオチド配列を含む単一のヌクレオチド配列またはヌクレオチド配列のセットを同定することができる。また、抗体コード領域は、本明細書に記載の抗体及びペプチドのバリアント(アゴニスト)をもたらす標準的な分子生物学的手法を用いて既存の抗体遺伝子を改変することによって提供され得ることも意図されている。このようなバリアントとしては、限定されるものではないが、抗IL-31抗体またはIL-31特異的ポリペプチドもしくはペプチド(例えば、抗体部分もしくはフラグメント)のアミノ酸配列の欠失、付加、及び置換が挙げられる。また、本明細書で説明されているペプチドミモトープのバリアントは、親ペプチドミモトープをコードするヌクレオチド配列を改変することによって作製することができる。
【0150】
例えば、置換における1つのクラスが保存的アミノ酸置換である。このような置換は、抗IL-31抗体、またはIL-31特異的ポリペプチドもしくはペプチド内の所与のアミノ酸を、同様の特性を有する別のアミノ酸で置換するものである。同様に、このような抗体またはその抗原結合部分に結合するIL-31ミモトープは、保存的置換または他のタイプのアミノ酸置換を含むことができる。典型的に保存的置換として見られるものとしては、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、及びIleの間での一方から別のものへの置換、ヒドロキシル残基Ser及びThrの交換、酸性残基Asp及びGluの交換、アミド残基Asn及びGln間の置換、塩基性残基Lys及びArgの交換、芳香族残基Phe、Tyrなどの間での置換がある。どのアミノ酸変化が表現型的にサイレントであり得るかについての指針は、Bowie et al.,247 Science 1306-10(1990)に見出される。
【0151】
バリアントまたはアゴニストの抗IL-31抗体またはIL-31特異的ポリペプチドもしくはペプチドは、完全に機能する場合もあれば、1つ以上の活性において機能が欠如する場合もある。バリアントまたはアゴニストのIL-31ミモトープも同様に、完全に機能する場合もあれば、1つ以上の活性において機能が欠如する場合もある。完全に機能するバリアントは、典型的には、保存的バリエーションのみを含むか、または不可欠でない残基もしくは不可欠でない領域のバリエーションを含む。また、機能するバリアントは、機能に変化をもたらさないかまたは重要でない変化をもたらす類似のアミノ酸の置換を含む場合もある。代替的に、このような置換は、機能にある程度の正または負の影響を及ぼす場合がある。機能しないバリアントは、典型的には、1つ以上の非保存的なアミノ酸の置換、欠失、挿入、逆位、もしくは切断、または不可欠な残基もしくは不可欠な領域の置換、挿入、逆位、もしくは欠失を含む。
【0152】
機能に必須となるアミノ酸は、部位特異的変異誘発またはアラニンスキャニング変異誘発のような当技術分野で公知の方法によって同定することができる。Cunningham et al.,244 Science 1081-85(1989)。後者の手順では、分子内の全ての残基に単一のアラニン変異が導入される。得られた変異分子に対し、次に、エピトープ結合またはin vitro ADCC活性のような生物学的活性を試験する。リガンド-受容体結合に不可欠な部位は、結晶学、核磁気共鳴、または光親和性標識のような構造分析によって決定することもできる。Smith et al.,224 J.Mol.Biol.899-904(1992);de Vos et al.,255 Science 306-12(1992)。
【0153】
さらに、ポリペプチドは、しばしば20種の「天然」アミノ酸以外のアミノ酸を含む。さらに、末端側アミノ酸を含めた多くのアミノ酸は、プロセッシング及びその他の翻訳後修飾のような自然のプロセスによって、または当技術分野で周知されている化学修飾技術によって修飾することができる。既知の修飾としては、限定されるものではないが、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、タンパク質に対するアミノ酸のトランスファーRNA媒介性付加(例えば、アルギニル化)、及びユビキチン化が挙げられる。
【0154】
このような修飾は当技術分野で周知されており、科学文献で非常に詳細に説明されている。いくつかの特に一般的な修飾、例えば、グリコシル化、脂質結合、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化、ヒドロキシル化、及びADPリボシル化は、最も基本的なテキスト、例えば、Proteins--Structure and Molecular Properties(2nd ed.,T.E.Creighton,W.H.Freeman & Co.,NY,1993)で説明されている。この主題については、Wold,Posttranslational Covalent Modification of proteins,1-12(Johnson,ed.,Academic Press,NY,1983)、Seifter et al.182 Meth.Enzymol.626-46(1990)、及びRattan et al.663 Ann.NY Acad.Sci.48-62(1992)などによる多くの詳細な概説が利用可能である。
【0155】
したがって、本明細書で説明されているIL-31特異的抗体、ポリペプチド、及びペプチド、ならびに本明細書で説明されているIL-31ペプチドミモトープは、置換されたアミノ酸残基が遺伝暗号によってコードされていない誘導体または類似体も包含する。
【0156】
同様に、アミノ酸配列の付加及び置換、ならびに今説明したバリエーション及び修飾は、IL-31抗原及び/またはそのエピトープまたはペプチドのアミノ酸配列にも等しく適用可能であり得、したがって、これらも本発明に包含される。
【0157】
抗体及びミモトープの誘導体
抗体及びミモトープの誘導体は、本発明の範囲内に含まれる。抗体またはミモトープの「誘導体」は、通常はタンパク質またはペプチドの一部ではない追加的な化学的部分を含む。タンパク質またはペプチドの共有結合修飾は、本発明の範囲内に含まれる。このような修飾は、抗体またはミモトープの標的アミノ酸残基を、選択された側鎖または末端側残基と反応可能な有機誘導体化剤と反応させることにより、分子に導入することができる。例えば、当技術分野で周知されている二官能性剤による誘導体化は、抗体もしくはフラグメントまたはミモトープを水不溶性支持マトリックスまたは他の巨大分子担体と架橋させるのに有用である。
【0158】
誘導体には、放射性標識モノクローナル抗体またはミモトープも含まれる。例えば、放射性ヨウ素(125I、131I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、インジウム(111In)、トリチウム(3H)など;モノクローナル抗体とビオチンまたはアビジン、酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-D-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、カルボン酸アンヒドラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、またはグルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼとの結合体;さらに、モノクローナル抗体と生物発光剤(例えば、ルシフェラーゼ)、化学発光剤(例えば、アクリジンエステル)、または蛍光剤(例えば、フィコビリンタンパク質)との結合体。同様に、ミモトープは、いくつかの実施形態では標識することができる。
【0159】
別の誘導体二官能性抗体は、2つの異なる抗原基を認識する2つの別々の抗体の一部を組み合わせることにより生成される、二重特異性抗体である。これは、架橋または組換え技法によって達成することができる。
【0160】
加えて、本明細書で説明されている抗体もしくはその一部またはIL-31ミモトープに成分を加えて、(例えば、血流からのクリアランスまでの時間を長くすることによって)in vivoでの半減期を増加させることができる。このような技法としては、例えば、PEG成分の付加(PEG化とも呼ばれる)が挙げられ、当技術分野で周知されている。米国特許出願公開第20030031671号を参照。
【0161】
抗体、ミモトープ、及び担体ポリペプチドの組換え発現
いくつかの実施形態において、主題モノクローナル抗体またはミモトープ及び担体ポリペプチドの両方を含む融合タンパク質をコードする核酸は、宿主細胞に直接導入され、細胞は、コードされる抗体または融合タンパク質の発現を誘発するのに十分な条件下でインキュベートされる。細胞は、主題核酸を導入された後、抗体またはペプチドミモトープ及び担体ポリペプチドを保有する融合タンパク質の発現を可能にするため、典型的には、通常37℃で、場合により選択下で、約1~24時間の期間インキュベートされる。1つの実施形態において、抗体または融合タンパク質は、細胞が成長している培地の上清に分泌される。
【0162】
従来、モノクローナル抗体は、マウスハイブリドーマ系のネイティブ分子として産生された。その技術に加えて、本発明は、モノクローナル抗体の組換え型DNA発現を提供する。これによって、イヌ化、ネコ化、ウマ化、ヒト化、完全イヌ、完全ネコ、完全ウマ抗体、及び完全ヒト抗体、ならびに選択した宿主種における抗体誘導体及び融合タンパク質のスペクトルの産生が可能になる。
【0163】
少なくとも1つの抗IL-31抗体、部分、もしくはそのIL-31特異的ポリペプチド、またはその一部としての、このような抗体もしくはその部分に結合する少なくとも1つのIL-31ペプチドミモトープをコードする核酸配列は、ライゲーション用の平滑末端またはねじれ末端、制限酵素消化を含めた従来の技法に従って、ベクターDNAを用いて組み換えて、適切な末端、必要に応じた付着末端の充填、望ましくない連結を回避するためのアルカリホスファターゼ処置、及び適切なリガーゼを用いたライゲーションを提供することができる。このような操作のための技法は、例えば、Maniatis et al.,MOLECULAR CLONING,LAB.MANUAL,(Cold Spring Harbor Lab.Press,NY,1982及び1989)によって開示されており、またAusubel et al.1993(上記)を使用して、モノクローナル抗体分子もしくはその抗原結合領域、またはIL-31ペプチドミモトープをコードする核酸配列を構築することができる。
【0164】
DNAのような核酸分子は、転写及び翻訳の制御情報を含むヌクレオチド配列を含み、かつこのような配列が、あるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と「作用可能に結合」している場合、そのポリペプチドを「発現可能」であるものとされる。作用可能な結合とは、調節DNA配列と、発現が求められるDNA配列とが、回収可能な量の抗IL-31ペプチドもしくは抗体部分として、またはIL-31ミモトープを保有する融合タンパク質としての遺伝子発現を可能にするような方法で接続している結合である。遺伝子発現に必要な制御領域の詳細な性質は、類似技術分野で周知されているように生物によって異なり得る。例えば、Sambrook et al.,2001(前掲)、Ausubel et al.,1993(前掲)を参照。
【0165】
したがって、本発明は、原核細胞または真核細胞のいずれかにおける、抗IL-31抗体、またはIL-31特異的ポリペプチドもしくはペプチド、またはIL-31ミモトープを含む融合タンパク質の発現を包含する。好適な宿主としては、in vivoもしくはin situいずれかの細菌、酵母、昆虫、菌類、鳥類、及び哺乳類細胞を含めた細菌もしくは真核生物の宿主、または哺乳類、昆虫、鳥類、もしくは酵母を起源とする宿主細胞が挙げられる。哺乳類の細胞または組織は、ヒト、霊長類、ハムスター、ウサギ、げっ歯類、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ヤギ、イヌ、またはネコ起源とすることができるが、他の任意の哺乳類細胞が使用されてもよい。
【0166】
1つの実施形態において、導入されたヌクレオチド配列は、レシピエント宿主内で自律複製可能なプラスミドまたはウイルスベクターに組み込まれる。この目的のために、多種多様なベクターのいずれかを使用することができる。例えば、Ausubel et al.,1993(前掲)を参照。特定のプラスミドまたはウイルスベクターを選択する上で重要な因子としては、ベクターを含まないレシピエント細胞から、ベクターを含むレシピエント細胞を容易に認識及び選択することができること、特定の宿主に所望されるベクターのコピー数、ならびに異なる種の宿主細胞間でベクターを「シャッフル」できることが望ましいかどうかが挙げられる。
【0167】
当技術分野で知られている原核生物ベクターの例としては、プラスミド、例えば、E.coli内での複製が可能なプラスミド(例えば、pBR322、ColE1、pSC101、pACYC 184、pi.VX)が挙げられる。このようなプラスミドは、例えば、Maniatis et al.,1989(前掲)、Ausubel et al,1993(前掲)によって開示されている。Bacillusプラスミドとしては、pC194、pC221、pT127などが挙げられる。このようなプラスミドは、Gryczan(THE MOLEC.BIO.OF THE BACILLI 307-329(Academic Press,NY,1982))によって開示されている。好適なStreptomyces属プラスミドとしては、pIJ101(Kendall et al.,169 J.Bacteriol.4177-83(1987))、及びphi.C31のようなStreptomyces属バクテリオファージ(Chater et al.(SIXTH INT’L SYMPOSIUM ON ACTINOMYCETALES BIO.45-54(Akademiai Kaido,Budapest,Hungary 1986))が挙げられる。Pseudomonas属プラスミドは、John et al.,8 Rev.Infect.Dis.693-704(1986)、Izaki,33 Jpn.J.Bacteriol.729-42(1978)、及びAusubel et al.,1993(前掲)で概説されている。
【0168】
代替的に、本明細書で説明されている抗IL-31抗体もしくはペプチド、または融合タンパク質をコードするcDNAの発現に有用な遺伝子発現エレメントとしては、限定されるものではないが、(a)ウイルス転写プロモーター及びそのエンハンサーエレメント、例えば、SV40初期プロモーター(Okayama et al.,3 Mol.Cell.Biol.280(1983))、ラウス肉腫ウイルスLTR(Gorman et al.,79 Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 6777(1982))、及びモロニーマウス白血病ウイルスLTR(Grosschedl et al.,41 Cell 885(1985))、(b)スプライス領域及びポリアデニル化部位、例えば、SV40後期領域(Okayarea et al.,MCB,3:280(1983)、ならびに(c)ポリアデニル化部位、例えば、SV40内の部位(Okayama et al.,1983(前掲))が挙げられる。
【0169】
免疫グロブリンcDNA遺伝子は、Weidle et al.,51(1)Gene 21-29(1987)によって説明されているように、発現エレメントとして、SV40初期プロモーター及びそのエンハンサー、マウス免疫グロブリンH鎖プロモーターエンハンサー、SV40後期領域mRNAスプライシング、ウサギS-グロビン介在配列、免疫グロブリン及びウサギS-グロビンポリアデニル化部位、ならびにSV40ポリアデニル化エレメントを用いて発現させることができる。
【0170】
cDNAの一部、ゲノムDNAの一部から構成された免疫グロブリン遺伝子(Whittle et al.,1 Protein Engin.499-505(1987))については、転写プロモーターはヒトサイトメガロウイルスとすることができ、プロモーターエンハンサーは、サイトメガロウイルス及びマウス/ヒト免疫グロブリンとすることができ、mRNAスプライシング及びポリアデニル化領域は、ネイティブ染色体免疫グロブリン配列とすることができる。
【0171】
1つの実施形態において、げっ歯類細胞内のcDNA遺伝子の発現については、転写プロモーターはウイルスLTR配列であり、転写プロモーターエンハンサーは、マウス免疫グロブリン重鎖エンハンサー及びウイルスLTRエンハンサーのいずれかまたは両方であり、スプライス領域は、31bp超のイントロンを含み、ポリアデニル化領域及び転写終結領域は、合成されている免疫グロブリン鎖に対応するネイティブ染色体配列に由来する。他の実施形態において、他のタンパク質をコードするcDNA配列は、哺乳類細胞内でのタンパク質の発現を達成するために上記の発現エレメントと組み合わせる。
【0172】
各々の融合遺伝子は、発現ベクター内で組み立てるか、または発現ベクターに挿入することができる。次に、キメラ型免疫グロブリン鎖遺伝子産物を発現可能なレシピエント細胞を、抗IL-31ペプチドまたはキメラ型Hもしくはキメラ型L鎖をコードする遺伝子で単独で形質移入するか、またはキメラ型H及びキメラ型L鎖遺伝子で同時形質移入する。形質移入したレシピエント細胞は、組み込まれた遺伝子の発現を許容する条件下で培養し、発現した免疫グロブリン鎖またはインタクト抗体もしくはフラグメントを培養物から回収する。
【0173】
1つの実施形態において、抗IL-31ペプチドもしくはキメラ型H鎖及びL鎖をコードする融合遺伝子、またはこれらの部分を別々の発現ベクター内で組み立て、次にこれらのベクターをレシピエント細胞の同時形質移入に使用する。代替的に、キメラ型H鎖及びL鎖をコードする融合遺伝子を同じ発現ベクター上で組み立ててもよい。
【0174】
発現ベクターの形質移入及びキメラ型抗体の産生については、レシピエント細胞系は骨髄腫細胞であってもよい。骨髄腫細胞は、形質移入した免疫グロブリン遺伝子によってコードされる免疫グロブリンを合成し、組み立て、分泌することができ、その免疫グロブリンのグリコシル化の機構を有する。骨髄腫細胞は、培養物中またはマウスの腹腔内で成長させることができ、腹腔内の場合、分泌された免疫グロブリンは腹水から得ることができる。その他の好適なレシピエント細胞としては、リンパ球様細胞、例えば、ヒトもしくは非ヒト起源のBリンパ球、ヒトもしくは非ヒト起源のハイブリドーマ細胞、または種間ヘテロハイブリドーマ細胞が挙げられる。
【0175】
キメラ型、イヌ化、ネコ化、ウマ化、ヒト化、完全イヌ、完全ネコ、完全ウマ、または完全ヒトの抗IL-31抗体コンストラクトまたはIL-31特異的ポリペプチドもしくはペプチド(例えば、本明細書で説明されている抗体の抗原結合部分)をコードするヌクレオチド配列を保有する発現ベクター、あるいは本明細書で説明されている融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を保有する発現ベクターは、形質転換、形質移入、結合体化、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿法のような生化学的手段、ジエチルアミノエチル(DEAE)デキストランのようなポリカチオンを用いた適用、ならびにエレクトロポレーション、直接マイクロインジェクション、及び微粒子銃のような機械的手段を含めた、様々な好適な手段のいずれかによって、適切な宿主細胞に導入することができる。Johnston et al.,240 Science 1538-1541(1988)。
【0176】
酵母は、免疫グロブリンのH鎖及びL鎖の産生において、細菌を上回る相当な利点をもたらし得る。酵母は、グリコシル化を含めた翻訳後ペプチド修飾を行う。現在、複数の組換え型DNA戦略が存在し、これらの戦略は、酵母内での所望タンパク質の産生に使用することができる強力なプロモーター配列及び高コピー数のプラスミドを利用している。酵母は、クローン化哺乳類遺伝子産物のリーダー配列を認識し、リーダー配列を有するペプチド(すなわち、プレペプチド)を分泌する。Hitzman et al.,11th Int’l Conference on Yeast,Genetics & Molec.Biol.(Montpelier,France,1982)。
【0177】
酵母遺伝子発現システムは、抗IL-31ペプチド、抗体、ならびに組み立てられたマウス及びキメラ型、ヘテロキメラ型、イヌ化、ネコ化、ウマ化、ヒト化、完全イヌ、完全ネコ、完全ウマ、または完全ヒト抗体、これらのフラグメント及び領域の産生、分泌、及び安定性のレベルを通例的に評価することができる。酵母がグルコースに富む培地中で成長するときに大量に産生される解糖酵素をコードする活発に発現した遺伝子からのプロモーター及び終結エレメントを組み込む、任意の一連の酵母遺伝子発現システムを利用することができる。また、既知の解糖遺伝子も非常に効率的な転写調節シグナルを提供することができる。例えば、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)遺伝子のプロモーター及び終結シグナルを利用することができる。酵母内でのクローン化免疫グロブリンcDNAの発現に最適な発現プラスミドを評価するために、複数のアプローチがとられ得る。Vol.II DNA Cloning,45-66(Glover,ed.,IRL Press,Oxford,UK 1985)を参照。
【0178】
また、細菌株も、本発明によって説明される抗体分子もしくはペプチド、または融合タンパク質の産生のための宿主として利用することができる。このような細菌宿主と共に、宿主細胞に適合性の種に由来するレプリコン及び調節配列を含むプラスミドベクターが使用される。このベクターは、複製部位に加えて、形質転換細胞の表現型選択を提供可能な特異的遺伝子を保有する。細菌内のクローン化免疫グロブリンcDNAによってコードされたマウス、キメラ型、ヘテロキメラ型、イヌ化、ネコ化、ウマ化、ヒト化、完全イヌ、完全ネコ、完全ウマ、もしくは完全ヒト抗体、フラグメント及び領域、または抗体鎖を産生するための発現プラスミドを評価するために、複数のアプローチがとられ得る(Glover,1985(前掲);Ausubel,1993(前掲);Sambrook,2001(前掲);Colligan et al.,eds.Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,NY,NY(1994-2001);Colligan et al.,eds.Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY(1997-2001)を参照)。
【0179】
宿主哺乳類細胞は、in vitro またはin vivoで成長させることができる。哺乳類細胞は免疫グロブリンタンパク質分子に対し、リーダーペプチドの除去、H鎖及びL鎖のフォールディング及び組み立て、抗体分子のグリコシル化、ならびに機能的抗体タンパク質の分泌を含めた翻訳後修飾をもたらす。
【0180】
抗体タンパク質を産生するための宿主として有用であり得る哺乳類細胞としては、上記のリンパ系起源の細胞に加えて、線維芽細胞起源の細胞、例えば、ベロ細胞(ATCC CRL 81)またはCHO-K1細胞(ATCC CRL 61)が挙げられる。
【0181】
哺乳類細胞内でクローン化抗IL-31ペプチドH鎖及びL鎖遺伝子を発現させるには多くのベクターシステムが利用可能である(Glover,1985(前掲)を参照)。種々のアプローチに従って、完全なH2L2抗体を得ることができる。同じ細胞内でH鎖及びL鎖を同時発現させて、H鎖及びL鎖の細胞内会合及び結合を達成し、完全な4量体H2L2抗体及び/または抗IL-31ペプチドにすることが可能である。同時発現は、同じ宿主内で同じまたは異なるプラスミドを使用することによって生じ得る。H鎖及びL鎖両方の遺伝子及び/または抗IL-31ペプチドを同じプラスミドに入れ、次にこのプラスミドを細胞に形質移入して、両方の鎖を発現する細胞を直接選択することができる。代替的に、まず細胞に1つの鎖、例えばL鎖をコードするプラスミドを形質移入し、次に得られた細胞系に、第2の選択マーカーを含むH鎖プラスミドを形質移入することができる。いずれかの経路によって抗IL-31ペプチド及び/またはH2L2分子を産生する細胞系に対し、追加的な選択マーカーと共にペプチド、H、L、またはH及びL鎖の追加的なコピーをコードするプラスミドを形質移入して、性質の強化(例えば、組み立てられたH2L2抗体分子の生産量向上または形質移入細胞系の安定性強化)を伴った細胞系を生成することができる。
【0182】
組換え型抗体を長期にわたり高収率で産生するために、安定した発現を使用することができる。例えば、抗体分子を安定して発現させる細胞系を操作することができる。ウイルスの複製起点を含む発現ベクターを使用する代わりに、免疫グロブリン発現カセット及び選択マーカーを用いて宿主細胞を形質転換してもよい。外来DNAの導入後、操作した細胞は、濃縮培地で1~2日間成長させることができ、次に選択培地に切り替える。組換え型プラスミド内の選択マーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞が安定的にプラスミドを染色体に統合し、成長して増殖巣を形成し、これがクローン化し拡大して細胞系になることを可能にする。このような操作細胞系は、抗体分子と直接的または間接的に相互作用する化合物/構成要素のスクリーニング及び評価をする上で特に有用であり得る。
【0183】
抗体が産生されたら、この抗体を、当技術分野で知られている免疫グロブリン分子を精製する任意の方法により、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特にプロテインAの後の特異的抗原に対する親和性、及びサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度の差によって、またはタンパク質精製における他の任意の標準的技法によって精製することができる。多くの実施形態において、抗体は細胞から培養培地に分泌され、培養培地から採取される。
【0184】
医薬用途
本発明のワクチン組成物は、イヌ、ネコ、ウマ、及びヒトのような哺乳類におけるIL-31媒介性障害、例えば、掻痒状態及び/またはアレルギー状態の治療及び/またはそれに対する保護で使用することができる。本発明の医薬組成物は、非経口投与、例えば、皮下、筋肉内、または静脈内投与に有用である。その他の適切な投与様式も本明細書で説明されている。
【0185】
本発明のワクチンは、個別の治療剤として、または他の治療剤と組み合わせて、投与することができる。これらは単独で投与することができるが、概して、選択された投与経路及び標準的なやり方に基づいて選択した医薬担体と共に投与される。
【0186】
本明細書で開示されているワクチン組成物の投与は、非経口注射(例えば、腹腔内、皮下、または筋肉内注射)、経口投与、または気道表面へのワクチンの局所投与を含めた任意の適切な手段によって行うことができる。気道表面への局所投与は、鼻腔内投与によって(例えば、ドロッパー、スワブ、または吸入器の使用によって)行うことができる。また、気道表面へのワクチンの局所投与は、吸入投与によって、例えば、ワクチンを含んだ吸込可能な医薬製剤粒子(固体及び液体両方の粒子を含む)をエアロゾル懸濁液として作成し、次いで対象に吸込可能な粒子を吸入させることによって行ってもよい。吸込可能な医薬製剤粒子を投与するための方法及び装置は周知されており、任意の従来的技法を用いることができる。経口投与は、例えば、経口摂取可能な液体または固体製剤の形態をとることができる。
【0187】
いくつかの望ましい実施形態において、ワクチンは非経口注射によって投与される。非経口投与の場合、ワクチンは、医薬的に許容される非経口ビヒクルと共に、溶液、懸濁液、乳濁液、または凍結乾燥粉末として製剤化することができる。例えば、ビヒクルは、水性担体のような許容される担体に溶解したミモトープ及び担体ポリペプチドの組合せ(例えば、ミモトープ結合体)の溶液またはそのカクテルの溶液とすることができ、このようなビヒクルは、水、食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液、トレハロースもしくはスクロースの溶液、または5%血清アルブミン、0.4%食塩水、0.3%グリシンなどである。また、リポソーム及び非水性ビヒクル(例えば、不揮発性油)も使用することができる。このような溶液は無菌であり、概して粒子状物質を含まない。このような組成物は、従来の周知されている滅菌技法によって滅菌することができる。組成物は、必要に応じて生理的条件に近づけるための医薬的に許容される補助物質、例えば、pH調整剤及び緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含んでもよい。また、本明細書で説明されているように、本発明のワクチン組成物は、アジュバントまたはアジュバント製剤を含む。このようなワクチン組成物中のミモトープ結合体の濃度は、例えば、約0.5重量%未満から、通常は約1重量%以上最大15重量%または20重量%まで幅広く変動する可能性があり、選択された特定の投与様式に従って、主に液体の体積、粘度などに基づいて選択される。ビヒクルまたは凍結乾燥粉末は、等張性を維持する添加物(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール)及び化学的安定性を維持する添加物(例えば、緩衝液及び防腐剤)を維持する添加物を含むことができる。製剤は、一般的に使用されている技法によって滅菌される。
【0188】
非経口投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、当業者に公知または明らかであり、例えば、REMINGTON’S PHARMA.SCI.(15th ed.,Mack Pub.Co.,Easton,Pa.,1980)でより詳細に説明されている。
【0189】
本発明のワクチンは、保存のために凍結乾燥し、使用前に好適な担体で再構成することができる。任意の好適な凍結乾燥及び再構成技法を用いることができる。凍結乾燥及び再構成によって様々な程度の活性損失に至る可能性があり、補うために使用レベルを調整しなければならない場合があることは、当業者に理解されよう。
【0190】
本発明のIL-31ミモトープ(例えば、IL-31ミモトープ結合体)またはそのカクテルを含む組成物は、既存の疾患の再発防止及び/または治療処置のために投与することができる。好適な医薬担体については、当技術分野の標準的参考文献であるREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCESの最新版で説明されている。
【0191】
治療用途において、組成物は、既に疾患を患っている患者に対し、疾患及びその合併症を治癒するか、または少なくとも部分的に抑止もしくは軽減するのに十分な量を投与することができる。これを達成するのに十分な量は、「治療有効用量」または「治療有効量」として定義される。この用途に効果的な量は、疾患の重症度、及び対象自身の免疫系の一般的な状態に依存する。本発明に従うワクチン組成物の治療有効量は、当業者によって容易に定量することができる。
【0192】
投与する薬用量は、当然ながら、特定の薬剤の薬力学特性、その投与様式及び投与経路、レシピエントの年齢、健康状態、及び体重、症状の性質及び程度、併用治療の種類、治療の頻度、ならびに所望の効果などの既知の因子に応じて変動する。
【0193】
非限定的な例として、イヌ、ネコ、ウマ、またはヒトのIL-31関連病態の治療は、上記の薬用量範囲内における本発明のワクチンの隔週または毎月の薬用量として提供することができる。
【0194】
ワクチン組成物の単回または複数回投与は、治療する獣医師または医師が選択する用量レベル及びパターンを用いて実施することができる。いずれにしても、医薬製剤は、対象を有効に治療するのに十分な量の本発明のワクチン組成物を提供すべきである。
【0195】
診断用途
また、本発明は、哺乳類試料(限定されるものではないが、掻痒状態及び/またはアレルギー状態であることが知られているかまたはそれを有する疑いのある哺乳類からの試料を含む)中のIL-31または抗IL-31抗体を検出するための診断方法で使用するためのIL-31ミモトープ及び抗IL-31抗体も提供する。
【0196】
例えば、本発明は、試料中の抗IL-31抗体の同一性及び/または量を定量する方法を提供する。この方法は、少なくとも1つのIL-31ミモトープ(例えば、ネコIL-31ミモトープ、イヌIL-31ミモトープ、ウマIL-31ミモトープ、またはヒトIL-31ミモトープ)と共に抗IL-31抗体を含む試料をインキュベートすることと、試料中の抗IL-31同一性及び/または量を定量することとを含む。
【0197】
1つの実施形態において、試料中の抗IL-31抗体の同一性及び/または量を定量するための方法で用いられるイヌIL-31ミモトープは、アミノ酸配列SVPADTFECKSF(配列番号186)、SVPADTFERKSF(配列番号187)、NSSAILPYFRAIRPLSDKNIIDKIIEQLDKLKF(配列番号192)、APTHQLPPSDVRKIILELQPLSRG(配列番号196)、TGVPES(配列番号200)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む。
【0198】
別の実施形態において、このような方法で用いられるネコIL-31ミモトープは、アミノ酸配列SMPADNFERKNF(配列番号188)、NGSAILPYFRAIRPLSDKNTIDKIIEQLDKLKF(配列番号193)、APAHRLQPSDIRKIILELRPM SKG(配列番号197)、IGLPES(配列番号201)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む。
【0199】
さらなる実施形態において、このような方法で用いられるウマIL-31ミモトープは、アミノ酸配列SMPTDNFERKRF(配列番号189)、NSSAILPYFKAISPSLNNDKSLYIIEQLDKLNF(配列番号194)、GPIYQLQPKEIQAIIVELQNLS KK(配列番号198)、KGVQKF(配列番号202)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む。
【0200】
またさらに、このような方法で用いられるヒトIL-31ミモトープは、アミノ酸配列SVPTDTHECKRF(配列番号190)、SVPTDTHERKRF(配列番号191)、HSPAIRAYLKTIRQLDNKSVIDEIIEHLDKLIF(配列番号195)、LPVRLLRPSDDVQKIVEELQSLSKM(配列番号199)、KGVLVS(配列番号203)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む。
【0201】
上記の診断方法の1つの実施形態において、ミモトープは、固体表面に結合した捕捉試薬である。1つの実施形態において、試料中の抗体の量を定量化するために、試料がミモトープ捕捉試薬に添加され、次に二次検出試薬が添加される。
【0202】
また、本発明は、哺乳類からの試料中のIL-31の量を定量する方法も提供する。このような方法は、複数の種からのIL-31を検出するのに有用である。このような方法は、固体表面に繋留した標識抗IL-31抗体:IL-31ミモトープ複合体と共にIL-31を含む哺乳類試料をインキュベートすることであって、複合体中のミモトープが、ネコIL-31ミモトープ、イヌIL-31ミモトープ、ウマIL-31ミモトープ、及びヒトIL-31ミモトープからなる群より選択される、インキュベートすることと、試料中のIL-31のレベルを定量することであって、複合体中のミモトープに対する複合体中の標識抗IL-31抗体の親和性が、試料中のIL-31に対するその親和性よりも低い、定量することとを含む。この方法の1つの実施形態において、定量するステップは、試料中のIL-31が複合体の標識抗IL-31抗体に結合したときに固体表面から解放される標識抗体から来るシグナルを測定することを含み、試料中のIL-31のレベルは、シグナルに対し反比例する。
【0203】
1つの実施形態において、試料中のIL-31の量を定量する方法で用いられるイヌIL-31ミモトープは、アミノ酸配列SVPADTFECKSF(配列番号186)、SVPADTFERKSF(配列番号187)、NSSAILPYFRAIRPLSDKNIIDKIIEQLDKLKF(配列番号192)、APTHQLPPSDVRKIILELQPLSRG(配列番号196)、TGVPES(配列番号200)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む。
【0204】
別の実施形態において、このような方法で用いられるネコIL-31ミモトープは、アミノ酸配列SMPADNFERKNF(配列番号188)、NGSAILPYFRAIRPLSDKNTIDKIIEQLDKLKF(配列番号193)、APAHRLQPSDIRKIILELRPM SKG(配列番号197)、IGLPES(配列番号201)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む。
【0205】
また別の実施形態において、このような方法で用いられるウマIL-31ミモトープは、アミノ酸配列SMPTDNFERKRF(配列番号189)、NSSAILPYFKAISPSLNNDKSLYIIEQLDKLNF(配列番号194)、GPIYQLQPKEIQAIIVELQNLS KK(配列番号198)、KGVQKF(配列番号202)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む。
【0206】
なおさらなる実施形態において、このような方法で用いられるヒトIL-31ミモトープは、アミノ酸配列SVPTDTHECKRF(配列番号190)、SVPTDTHERKRF(配列番号191)、HSPAIRAYLKTIRQLDNKSVIDEIIEHLDKLIF(配列番号195)、LPVRLLRPSDDVQKIVEELQSLSKM(配列番号199)、KGVLVS(配列番号203)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む。
【0207】
本発明の診断方法のいずれかにおけるいくつかの実施形態において、ミモトープは、哺乳類のIL-31タンパク質とその共受容体との相互作用に関与するIL-31タンパク質上の領域に特異的に結合する抗IL-31抗体またはその抗原結合部分に結合する。本発明の診断方法の1つの実施形態において、当該抗体の当該領域への結合は、以下:
a)配列番号157(ネコ_IL31_野生型)によって表されるネコIL-31配列のアミノ酸残基約124から135の間の領域、
b)配列番号155(イヌ_IL31)によって表されるイヌIL-31配列のアミノ酸残基約124から135の間の領域、及び
c)配列番号165(ウマ_IL31)によって表されるウマIL-31配列のアミノ酸残基約118から129の間の領域
からなる群より選択される15H05エピトープ結合領域の変異によって影響を受ける。
【0208】
本発明の診断方法の1つの実施形態において、ミモトープは、抗上記の15H05エピトープ領域に特異的に結合するIL-31抗体またはその抗原結合部分に結合する。本発明の診断方法のいずれかにおける1つの特定の実施形態において、ミモトープは、以下の相補性決定領域(CDR)配列の組合せ:
1)抗体15H05:可変重鎖(VH)-CDR1がSYTIH(配列番号1)、VH-CDR2がNINPTSGYTENNQRFKD(配列番号2)、VH-CDR3がWGFKYDGEWSFDV(配列番号3)、可変軽鎖(VL)-CDR1がRASQGISIWLS(配列番号4)、VL-CDR2がKASNLHI(配列番号5)、VL-CDR3がLQSQTYPLT(配列番号6)、
2)抗体ZIL1:可変重鎖(VH)-CDR1がSYGMS(配列番号13)、VH-CDR2がHINSGGSSTYYADAVKG(配列番号14)、VH-CDR3がVYTTLAAFWTDNFDY(配列番号15)、可変軽鎖(VL)-CDR1がSGSTNNIGILAAT(配列番号16)、VL-CDR2がSDGNRPS(配列番号17)、VL-CDR3がQSFDTTLDAYV(配列番号18)、
3)抗体ZIL8:VH-CDR1がDYAMS(配列番号19)、VH-CDR2がGIDSVGSGTSYADAVKG(配列番号20)、VH-CDR3がGFPGSFEH(配列番号21)、VL-CDR1がTGSSSNIGSGYVG(配列番号22)、VL-CDR2がYNSDRPS(配列番号23)、VL-CDR3がSVYDRTFNAV(配列番号24)、
4)抗体ZIL9:VH-CDR1がSYDMT(配列番号25)、VH-CDR2がDVNSGGTGTAYAVAVKG(配列番号26)、VH-CDR3がLGVRDGLSV(配列番号27)、VL-CDR1がSGESLNEYYTQ(配列番号28)、VL-CDR2がRDTERPS(配列番号29)、VL-CDR3がESAVDTGTLV(配列番号30)、
5)抗体ZIL11:VH-CDR1がTYVMN(配列番号31)、VH-CDR2がSINGGGSSPTYADAVRG(配列番号32)、VH-CDR3がSMVGPFDY(配列番号33)、VL-CDR1がSGESLSNYYAQ(配列番号34)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号35)、VL-CDR3がESAVSSDTIV(配列番号36)、
6)抗体ZIL69:VH-CDR1がSYAMK(配列番号37)、VH-CDR2がTINNDGTRTGYADAVRG(配列番号38)、VH-CDR3がGNAESGCTGDHCPPY(配列番号39)、VL-CDR1がSGESLNKYYAQ(配列番号40)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号41)、VL-CDR3がESAVSSETNV(配列番号42)、
7)抗体ZIL94:VH-CDR1がTYFMS(配列番号43)、VH-CDR2がLISSDGSGTYYADAVKG(配列番号44)、VH-CDR3がFWRAFND(配列番号45)、VL-CDR1がGLNSGSVSTSNYPG(配列番号46)、VL-CDR2がDTGSRPS(配列番号47)、VL-CDR3がSLYTDSDILV(配列番号48)、
8)抗体ZIL154:VH-CDR1がDRGMS(配列番号49)、VH-CDR2がYIRYDGSRTDYADAVEG(配列番号50)、VH-CDR3がWDGSSFDY(配列番号51)、VL-CDR1がKASQSLLHSDGNTYLD(配列番号52)、VL-CDR2がKVSNRDP(配列番号53)、VL-CDR3がMQAIHFPLT(配列番号54)、
9)抗体ZIL159:VH-CDR1がSYVMT(配列番号55)、VH-CDR2がGINSEGSRTAYADAVKG(配列番号56)、VH-CDR3がGDIVATGTSY(配列番号57)、VL-CDR1がSGETLNRFYTQ(配列番号58)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号59)、VL-CDR3がKSAVSIDVGV(配列番号60)、
10)抗体ZIL171:VH-CDR1がTYVMN(配列番号61)、VH-CDR2がSINGGGSSPTYADAVRG(配列番号62)、VH-CDR3がSMVGPFDY(配列番号63)、VL-CDR1がSGKSLSYYYAQ(配列番号64)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号65)、VL-CDR3がESAVSSDTIV(配列番号66)、または
11)VHまたはVLのCDR1、CDR2、もしくはCDR3のうちの少なくとも1つにおける1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失、及び/または置換によってそれぞれの親抗体15H05、ZIL1、ZIL8、ZIL9、ZIL11、ZIL69、ZIL94、ZIL154、ZIL159、もしくはZIL171と相違する、1)~10)のバリアント
のうちの少なくとも1つを含む、抗IL-31抗体またはその抗原結合部分に結合する。
【0209】
いくつかの実施形態において、本発明の診断方法で用いられるミモトープは、ネコIL-31に結合する抗IL-31抗体またはその抗原結合部分に結合し、このとき、当該抗体は、以下:42位のリジンからアスパラギンへの置換、43位のバリンからイソロイシンへの置換、46位のロイシンからバリンへの置換、49位のリジンからアスパラギンへの置換、及びこれらの組合せから選択されるフレームワーク2(FW2)変化を含むVL鎖を含み、このとき、これらの位置は配列番号127(FEL_15H05_VL1)のナンバリングに準拠している。
【0210】
本発明の抗IL-31抗体、ポリペプチド、及び/またはペプチド、ならびにIL-31ペプチドミモトープは、試料中のIL-31または抗IL-31抗体を検出または定量化するイムノアッセイに有用である。IL-31のイムノアッセイは、典型的には、選択的にIL-31に結合可能である本発明の検出可能に標識された高親和性(または高アビディティー)の抗IL-31抗体、ポリペプチド、またはペプチドの存在下で臨床試料または生体試料をインキュベートすることと、試料中で結合している標識されたポリペプチド、ペプチド、または抗体を検出することとを含む。好ましい実施形態において、IL-31ミモトープは、固体表面に結合しており、標識抗IL-31抗体の捕捉に使用され、その結果、標識抗IL-31抗体:IL-31ミモトープ複合体が固体表面に繋留される。複合体中の標識IL-31抗体が有する複合体中のミモトープに対する親和性は、試料中のIL-31に対する親和性よりも低い。そのため、試料中のIL-31のレベルは、試料中のIL-31が抗IL-31抗体:IL-31ミモトープ複合体の標識抗IL-31抗体に結合したときに、固体表面から解放される標識抗体から来るシグナルを測定することによって、定量することができる。この場合、試料中のIL-31のレベルは、シグナルに対し反比例する。様々な臨床アッセイ手順が当技術分野で周知されている。例えば、IMMUNOASSAYS FOR THE 80’S(Voller et al.,eds.,Univ.Park,1981)を参照。このような試料には、動物対象から収集され、以下に説明するELISA分析に供される組織生検、血液、血清、糞便試料、または液体が含まれる。
【0211】
いくつかの実施形態において、抗原の抗体との結合は、固体支持体を使用せずに検出される。例えば、抗原の抗体との結合は、液体形式で検出することができる。
【0212】
他の実施形態において、IL-31ペプチドミモトープ、または抗IL-31抗体、ポリペプチド、もしくはペプチドは、例えば、ニトロセルロースに固定するか、または細胞、細胞粒子、もしくは可溶性タンパク質を固定化可能な別の固体支持体に固定することができる。次いで支持体を好適な緩衝液で洗浄してから、検出可能に標識されたIL-31特異的なポリペプチド、ペプチド、または抗体で処置することができる。次いで固相支持体を緩衝液でもう一度洗浄して、結合していないポリペプチド、ペプチド、または抗体を除去することができる。次いで、固体支持体上の結合した標識の量を、既知の方法ステップによって検出することができる。
【0213】
「固相支持体」または「担体」とは、ポリペプチド、ペプチド、抗原、または抗体を結合可能な任意の支持体を意味する。周知されている支持体または担体としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然及び変性セルロース類(例えば、ニトロセルロース)、ポリアクリルアミド、アガロース、ならびに磁鉄鉱が挙げられる。担体の性質は、本発明の目的においてある程度可溶性であるか、または不溶性であり得る。支持体物質は、結合分子が、IL-31ペプチドミモトープ、IL-31、または抗IL-31抗体に結合可能である限り、考えられるほぼ全ての構造的構成を有することができる。所望に応じて、支持体に結合したIL-31ミモトープ自体が担体ポリペプチドと結合体化し得ることが想定されている。したがって、支持体の構成は、ビーズのように球形であっても、試験管の内側面または棒の外側面のように円柱状であってもよい。代替的に、表面は、シート、培養皿、試験片などのように平坦であってもよい。例えば、支持体は、ポリスチレンビーズを含んでもよい。当業者は、抗体、ポリペプチド、ペプチド、もしくは抗原を結合するための多くの他の好適な担体を知っており、または日常的な実験によって好適な担体を確認することができる。
【0214】
周知されている方法ステップは、所与のロットのミモトープ、あるいは抗IL-31ポリペプチド、ペプチド、及び/または抗体の結合活性を決定することができる。当業者は、日常的な実験によって、効果的かつ最適なアッセイ条件を決定することができる。
【0215】
IL-31特異的なポリペプチド、ペプチド、及び/または抗体の検出可能な標識ならびにIL-31ペプチドミモトープ(またはその結合体)の標識は、いくつかの異なる方法によって遂行することができ、このような方法には、酵素イムノアッセイ(EIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)で使用するための酵素に結合することが含まれる。結合した酵素は、露出した基質と反応して、例えば、分光光度的、蛍光光度的、または視覚的な手段により、検出され得る化学成分を生成する。本明細書で説明されているIL-31特異的抗体またはミモトープの検出可能な標識に使用することができる酵素としては、限定されるものではないが、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ-グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、及びアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。
【0216】
IL-31特異的抗体またはミモトープを放射能標識することにより、ラジオイムノアッセイ(RIA)を使用してIL-31を検出することが可能である。Work et al.,LAB.TECHNIQUES & BIOCHEM.1N MOLEC.Bio.(No.Holland Pub.Co.,NY,1978)を参照。放射性同位体は、ガンマカウンターもしくはシンチレーションカウンターを使用するなどの手段により、またはオートラジオグラフィーにより、検出することができる。本発明の目的において特に有用な同位体としては、3H、125I、131I、35S、14C、及び125Iが挙げられる。
【0217】
IL-31特異的抗体またはミモトープを蛍光化合物で標識することも可能である。蛍光標識抗体を適切な波長の光に曝露すると、その存在を蛍光によって検出することができる。最も一般的に使用される蛍光標識化合物に含まれるものとして、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド、フルオレスカミンがある。
【0218】
また、IL-31特異的抗体またはミモトープは、蛍光発光金属、例えば、125Euまたはランタニド系列の他の金属を用いても、検出可能に標識することができる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレート基を用いて、IL-31特異的抗体またはミモトープに結合させることができる。
【0219】
また、IL-31特異的抗体は、化学発光化合物との結合によっても検出可能に標識することができる。この場合、化学発光で標識された抗体またはミモトープの存在は、化学反応の途中で生じる発光の存在を検出することによって決定される。有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、及びシュウ酸エステルである。
【0220】
同様に、生物発光化合物を使用して、ミモトープ、またはIL-31特異的な抗体、部分、フラグメント、ポリペプチド、もしくはその誘導体を標識することができる。生物発光は、生体系で見られる化学発光の一種であり、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を高めている。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することによって決定される。標識の目的において重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、及びエクオリンである。
【0221】
ミモトープ、IL-31特異的な抗体、部分、フラグメント、ポリペプチド、または誘導体の検出は、例えば、検出可能な標識が放射性ガンマエミッターである場合はシンチレーションカウンターにより、または、例えば、標識が蛍光物質の場合は蛍光系により、遂行することができる。酵素標識の場合には、検出は、酵素の基質を用いる比色法によって遂行することができる。また、検出は、同様に調製された標準物質に対し、基質の酵素反応の程度の視覚的比較によっても遂行することができる。
【0222】
本発明の目的において、上記のアッセイによって検出されるIL-31は、生体試料中に存在する可能性がある。IL-31を含む任意の試料を使用することができる。例えば、試料は、生体液であり、例えば、血液、血清、リンパ液、尿、糞便、炎症滲出液、脳脊髄液、羊水、組織抽出物またはホモジネートなどである。本発明は、これらの試料のみを使用するアッセイに限定されるものではないが、当業者は、本明細書に照らして、他の試料の使用が可能になる好適な条件を決定することが可能である。
【0223】
in situ検出は、動物対象から組織学的試験片を取り出し、このような試験片に標識抗体(単独で、または本明細書で説明されているIL-31ミモトープとの複合体で)を加えることによって遂行することができる。また、複合体中の抗体は、抗体の部分のみを含み得ることも想定されている。抗体(またはその部分)は、標識抗体(または部分)を生体試料に適用するか、または上に重ねることによって提供することができる。このような手順を使用することにより、IL-31の存在だけでなく、検査組織中のIL-31の分布も決定することが可能である。当業者は、本発明を使用すれば、このようなin situ検出を達成するために任意の多種多様な組織学的方法(例えば、染色手順)を変更することができることを容易に理解するであろう。
【0224】
本発明のミモトープ、抗体、フラグメント、または誘導体は、「2部位」または「サンドイッチ」アッセイとしても知られるイムノメトリックアッセイでの利用に適合させることができる。典型的なイムノメトリックアッセイでは、ある量の非標識抗体(または抗体のフラグメント)は、試験を行う液体中で不溶性の固体支持体と結合させ、検出可能に標識された可溶性の抗体を加えて、固相抗体、抗原、及び標識抗体の間で形成された三元複合体の検出及び/または定量化を可能にする。
【0225】
抗体または抗体:ミモトープ複合体は、試料中のIL-31を定量的または定性的に検出するため、またはIL-31を発現する細胞の存在を検出するために使用することができる。これは、蛍光顕微鏡、フローサイトメトリー、または蛍光定量的検出を伴う蛍光標識抗体または抗体:ミモトープ複合体(下記参照)を用いた免疫蛍光技法により、遂行することができる。診断目的においては、抗体は標識されていても標識されていなくてもよい。非標識抗体は、抗体に反応する他の標識抗体(二次抗体)(例えば、イヌまたはネコ免疫グロブリン定常領域に対し特異的な抗体)と組み合わせて使用することができる。代替的に、抗体を直接標識することもできる。多種多様な標識、例えば、放射性核種、蛍光物質、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、リガンド(詳細にはハプテン)などを用いることができる。これまでに論じたアッセイのような多数のタイプのイムノアッセイが利用可能であり、当業者に周知されている。
【0226】
1つの実施形態において、IL-31を検出するための診断方法は、ラテラルフローイムノアッセイ試験である。これは、イムノクロマトグラフィックアッセイ、ラピッドイムノマイグレーション(Rapid ImmunoMigration)(RIM(登録商標))またはストリップテストとしても知られている。ラテラルフローイムノアッセイは、本質的には、テストストリップ形式に合わせるための単一の軸に沿って動作するように適合させたイムノアッセイである。この技術の複数のバリエーションが開発されて商用製品となっているが、これらは全て同じ基本原理に従って動作する。典型的なテストストリップは、以下の構成要素:(1)試料パッド(試験試料を適用する吸収パッド)、(2)結合体または試薬パッド(これは、着色粒子(通常はコロイド金粒子、またはラテックスミクロスフェア)と結合体化した標的アナライトに特異的な抗体を含む)と、(3)反応メンブレン(典型的には、疎水性のニトロセルロースまたは酢酸セルロースのメンブレンであり、その上に抗標的アナライト抗体が捕捉ゾーンまたは試験ラインとしてメンブレンを横断するライン内に固定化されている(結合体抗体に特異的な抗体を含む対照ゾーンが存在してもよい))と、(4)吸取りまたは廃棄物リザーバー(毛細管作用によって反応メンブレンを横断して試料を引き出し収集するように設計されたさらなる吸収パッド)とからなる。ストリップの構成要素は通常、不活性のバッキング材に固定されており、シンプルなディップスティック形式で提供されるか、または捕捉ゾーン及び対照ゾーンを示す試料ポート及び反応ウィンドウを備えたプラスチックケース入りで提供される。
【0227】
微生物学的試験で使用されるラテラルフローイムノアッセイには、2つの主要なタイプ:二重抗体サンドイッチアッセイ及び競合アッセイが存在する。二重抗体サンドイッチ形式では、試料は試料パッドから結合体パッドを通って移動し、存在する標的アナライトは結合体に結合する。次に、試料は捕捉ゾーンに到達するまでメンブレンを横断して移動を継続し、捕捉ゾーンに到達したところで標的/結合体複合体は固定化された抗体に結合し、メンブレン上のラインが可視化される。次に、試料は対照ゾーンに到達するまでストリップに沿ってさらに移動し、対照ゾーンに到達したところで過剰な結合体が結合し、メンブレン上の第2のラインが可視化される。この対照ラインは、試料が意図通りにメンブレンを横断して移動したことを示す。メンブレン上に2つの明確なラインがあれば、結果は陽性である。対照ゾーンに1つのラインがあれば、結果は陰性である。競合アッセイは、結合体パッドが標的アナライトまたはその類似体に既に結合した抗体を含んでいるという点で、二重抗体サンドイッチ形式とは相違する。そのため、標的アナライトが試料中に存在する場合、標的アナライトは結合体に結合せず、非標識のまま保たれる。試料がメンブレンに沿って移動し捕捉ゾーンに到達すると、過剰な非標識アナライトは固定化された抗体に結合し、結合体の捕捉を遮断するため、ラインは可視化されない。次に、結合していない結合体が対照ゾーンの抗体に結合し、対照ラインが可視化される。メンブレン上に1つの対照ラインがあれば、結果は陽性である。捕捉ゾーン及び対照ゾーンに2つのラインが見えれば、結果は陰性である。ただし、過剰な非標識標的アナライトが存在しない場合は捕捉ゾーンに薄いラインが生成されることがあり、これは決定的ではない結果を示す。ラテラルフロー技術には複数のバリエーションが存在する。メンブレン上の捕捉ゾーンは、標的アナライトに応じて、抗体ではなく固定化された抗原または酵素を含んでもよい。また、複数の捕捉ゾーンを適用して多重化試験を作成することも可能である。例えば、同じ試料中のEHEC志賀毒素ST1及びST2の両方を別々に検出することができる市販のテストストリップが開発された。
【0228】
重要なことに、本明細書で説明されているミモトープ及び抗体は、イヌ、ネコ、またはウマの掻痒状態またはアレルギー状態の診断に有用であり得る。より具体的には、抗体:ミモトープ複合体中の抗体は、試料中のIL-31に結合し、伴侶動物を含めた哺乳類のIL-31過剰発現を同定する一助となり得る。したがって、本明細書で説明されている抗体は、ミモトープと共に使用することができ、重要な免疫組織化学ツールを提供することができる。1つの実施形態において、IL-31ミモトープ(ペプチド)を使用して、アッセイで検出するために標識された本発明の抗体を捕捉するというアッセイ設計がここでは考えられる。この捕捉された抗体は、結合したミモトープに対し、宿主種のネイティブ循環IL-31の親和性よりも低い親和性を有すると考えられる。この実施形態において、宿主種に由来する液のインキュベートは、固体表面に繋留した標識抗体:ミモトープ複合体と共にインキュベートされる。宿主種に由来する試験液中にIL-31が存在すれば抗体に対する親和性がより高いため、標識抗体は固体表面から遊離し、洗浄ステップ中に除去され得る。したがって、試験液中のIL-31レベルは、ミモトープ結合表面に現れるシグナルの欠如と相関する可能性がある。このようなアッセイは、診断試験としての使用のための研究または臨床設定でIL-31を測定するのに有用であると考えられている。
【0229】
本明細書で説明されている抗体及びミモトープはアレイ上で使用することができ、これは遺伝子発現プロファイルを測定する上で非常に好適である。
【0230】
キット
主題の治療方法及び診断方法を実施するためのキットも、本発明の範囲内に含まれる。1つの実施形態において、本発明に従うキットは、少なくとも本発明のワクチン組成物を含む。1つの実施形態において、本発明のワクチンは、通常、容器に入った凍結乾燥形態で提供することができる。別の実施形態において、本発明に従うキットは、本発明の診断方法を行うために必要な構成要素を含むことができる。例えば、本発明のキットは、その構成要素の1つとして、本明細書で説明されているIL-31ミモトープ、例えば、ネコIL-31ミモトープ、イヌIL-31ミモトープ、ウマIL-31ミモトープ、またはヒトIL-31ミモトープを含むことができる。このようなミモトープは、既に固体表面に結合していてもよい。また、本発明に従うキットは、抗体も含むことができる。標識または毒素と結合体化してもよく結合体化していなくてもよい抗体が、典型的には、緩衝液(例えば、トリス、リン酸、炭酸など)、安定化剤、殺生物剤、不活性タンパク質(例えば、血清アルブミン)などと共にキットに含まれる。概して、これらの材料は、活性抗体の量に基づいて5wt%未満で存在し、通常は、再び抗体濃度に基づいて少なくとも約0.001wt%の総量で存在する。多くの場合、活性成分を希釈するために不活性の増量剤または賦形剤を含むことが望ましく、このとき賦形剤は、組成物全体の約1wt%~99wt%で存在することができる。一次抗体に結合可能な二次抗体がアッセイで用いられる場合、これは通常別々のバイアルに存在する。二次抗体は、典型的には、標識と結合体化し上記の抗体製剤と類似の方法で製剤化される。また、キットは概して使用説明書一式も含む。
【0231】
1つの実施形態において、本発明に従うキットは、試料中のIL-31、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、またはヒトのIL-31タンパク質を検出するのに有用なテストストリップキット(ラテラルフローイムノアッセイキット)である。このようなテストストリップは、典型的には、試験試料を適用する試料パッドと、イヌ、ネコ、ウマ、またはヒトIL-31に特異的であり着色粒子(通常はコロイド金粒子)と結合体化している抗体または抗体:ミモトープ複合体を含む、結合体または試薬パッドと、反応メンブレンであって、その上に抗IL-31抗体または抗体:ミモトープ複合体が捕捉ゾーンまたは試験ラインとしてメンブレンを横断するライン内に固定化されている、反応メンブレン(結合体抗体に特異的な抗体または抗体:ミモトープ複合体を含む対照ゾーンが存在してもよい)と、毛細管作用によって反応メンブレンを横断して試料を引き出し収集するように設計されたさらなる吸収パッドとを含む。概して、テストストリップキットは使用説明書も含む。
【0232】
国際出願時の請求の範囲は以下のとおりである。
〔出願時請求項1〕 IL-31媒介性障害に対し哺乳類を免疫化及び/または保護するためのワクチン組成物であって、担体ポリペプチドと、ネコIL-31ミモトープ、イヌIL-31ミモトープ、ウマIL-31ミモトープ、及びヒトIL-31ミモトープからなる群より選択される少なくとも1つのミモトープとの組合せ、ならびにアジュバントを含む、前記ワクチン組成物。
〔出願時請求項2〕 前記イヌIL-31ミモトープが、アミノ酸配列SVPADTFECKSF(配列番号186)、SVPADTFERKSF(配列番号187)、NSSAILPYFRAIRPLSDKNIIDKIIEQLDKLKF(配列番号192)、APTHQLPPSDVRKIILELQPLSRG(配列番号196)、TGVPES(配列番号200)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む、請求項1に記載のワクチン組成物。
〔出願時請求項3〕 前記ネコIL-31ミモトープが、アミノ酸配列SMPADNFERKNF(配列番号188)、NGSAILPYFRAIRPLSDKNTIDKIIEQLDKLKF(配列番号193)、APAHRLQPSDIRKIILELRPMSKG(配列番号197)、IGLPES(配列番号201)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む、請求項1に記載のワクチン組成物。
〔出願時請求項4〕 前記ウマIL-31ミモトープが、アミノ酸配列SMPTDNFERKRF(配列番号189)、NSSAILPYFKAISPSLNNDKSLYIIEQLDKLNF(配列番号194)、GPIYQLQPKEIQAIIVELQNLS KK(配列番号198)、KGVQKF(配列番号202)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む、請求項1に記載のワクチン組成物。
〔出願時請求項5〕 前記ヒトIL-31ミモトープが、アミノ酸配列SVPTDTHECKRF(配列番号190)、SVPTDTHERKRF(配列番号191)、HSPAIRAYLKTIRQLDNKSVIDEIIEHLDKLIF(配列番号195)、LPVRLLRPSDDVQKIVEELQSLSKM(配列番号199)、KGVLVS(配列番号203)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む、請求項1に記載のワクチン組成物。
〔出願時請求項6〕 前記ミモトープが、哺乳類のIL-31タンパク質とその共受容体との相互作用に関与する前記IL-31タンパク質上の領域に特異的に結合する抗IL-31抗体またはその抗原結合部分に結合する、請求項1~5のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
〔出願時請求項7〕 前記抗体の前記領域への前記結合が、以下:
a)配列番号157(ネコ_IL31_野生型)によって表されるネコIL-31配列のアミノ酸残基約124から135の間の領域、
b)配列番号155(イヌ_IL31)によって表されるイヌIL-31配列のアミノ酸残基約124から135の間の領域、及び
c)配列番号165(ウマ_IL31)によって表されるウマIL-31配列のアミノ酸残基約118から129の間の領域
からなる群より選択される15H05エピトープ結合領域の変異によって影響を受ける、請求項6に記載のワクチン組成物。
〔出願時請求項8〕 前記ミモトープが、以下の相補性決定領域(CDR)配列の組合せ:
1)抗体15H05:可変重鎖(VH)-CDR1がSYTIH(配列番号1)、VH-CDR2がNINPTSGYTENNQRFKD(配列番号2)、VH-CDR3がWGFKYDGEWSFDV(配列番号3)、可変軽鎖(VL)-CDR1がRASQGISIWLS(配列番号4)、VL-CDR2がKASNLHI(配列番号5)、VL-CDR3がLQSQTYPLT(配列番号6)、
2)抗体ZIL1:可変重鎖(VH)-CDR1がSYGMS(配列番号13)、VH-CDR2がHINSGGSSTYYADAVKG(配列番号14)、VH-CDR3がVYTTLAAFWTDNFDY(配列番号15)、可変軽鎖(VL)-CDR1がSGSTNNIGILAAT(配列番号16)、VL-CDR2がSDGNRPS(配列番号17)、VL-CDR3がQSFDTTLDAYV(配列番号18)、
3)抗体ZIL8:VH-CDR1がDYAMS(配列番号19)、VH-CDR2がGIDSVGSGTSYADAVKG(配列番号20)、VH-CDR3がGFPGSFEH(配列番号21)、VL-CDR1がTGSSSNIGSGYVG(配列番号22)、VL-CDR2がYNSDRPS(配列番号23)、VL-CDR3がSVYDRTFNAV(配列番号24)、
4)抗体ZIL9:VH-CDR1がSYDMT(配列番号25)、VH-CDR2がDVNSGGTGTAYAVAVKG(配列番号26)、VH-CDR3がLGVRDGLSV(配列番号27)、VL-CDR1がSGESLNEYYTQ(配列番号28)、VL-CDR2がRDTERPS(配列番号29)、VL-CDR3がESAVDTGTLV(配列番号30)、
5)抗体ZIL11:VH-CDR1がTYVMN(配列番号31)、VH-CDR2がSINGGGSSPTYADAVRG(配列番号32)、VH-CDR3がSMVGPFDY(配列番号33)、VL-CDR1がSGESLSNYYAQ(配列番号34)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号35)、VL-CDR3がESAVSSDTIV(配列番号36)、
6)抗体ZIL69:VH-CDR1がSYAMK(配列番号37)、VH-CDR2がTINNDGTRTGYADAVRG(配列番号38)、VH-CDR3がGNAESGCTGDHCPPY(配列番号39)、VL-CDR1がSGESLNKYYAQ(配列番号40)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号41)、VL-CDR3がESAVSSETNV(配列番号42)、
7)抗体ZIL94:VH-CDR1がTYFMS(配列番号43)、VH-CDR2がLISSDGSGTYYADAVKG(配列番号44)、VH-CDR3がFWRAFND(配列番号45)、VL-CDR1がGLNSGSVSTSNYPG(配列番号46)、VL-CDR2がDTGSRPS(配列番号47)、VL-CDR3がSLYTDSDILV(配列番号48)、
8)抗体ZIL154:VH-CDR1がDRGMS(配列番号49)、VH-CDR2がYIRYDGSRTDYADAVEG(配列番号50)、VH-CDR3がWDGSSFDY(配列番号51)、VL-CDR1がKASQSLLHSDGNTYLD(配列番号52)、VL-CDR2がKVSNRDP(配列番号53)、VL-CDR3がMQAIHFPLT(配列番号54)、
9)抗体ZIL159:VH-CDR1がSYVMT(配列番号55)、VH-CDR2がGINSEGSRTAYADAVKG(配列番号56)、VH-CDR3がGDIVATGTSY(配列番号57)、VL-CDR1がSGETLNRFYTQ(配列番号58)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号59)、VL-CDR3がKSAVSIDVGV(配列番号60)、
10)抗体ZIL171:VH-CDR1がTYVMN(配列番号61)、VH-CDR2がSINGGGSSPTYADAVRG(配列番号62)、VH-CDR3がSMVGPFDY(配列番号63)、VL-CDR1がSGKSLSYYYAQ(配列番号64)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号65)、VL-CDR3がESAVSSDTIV(配列番号66)、または
11)VHまたはVLのCDR1、CDR2、もしくはCDR3のうちの少なくとも1つにおける1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失、及び/または置換によってそれぞれの親抗体15H05、ZIL1、ZIL8、ZIL9、ZIL11、ZIL69、ZIL94、ZIL154、ZIL159、もしくはZIL171と相違する、1)~10)のバリアント
のうちの少なくとも1つを含む、抗IL-31抗体またはその抗原結合部分に結合する、請求項6に記載のワクチン組成物。
〔出願時請求項9〕 前記ミモトープが拘束性ミモトープである、請求項1~8のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
〔出願時請求項10〕 前記拘束性ミモトープが化学的に連結した環状ペプチドである、請求項9に記載のワクチン組成物。
〔出願時請求項11〕 前記ミモトープが前記担体ポリペプチドと化学的に結合している、請求項1~10のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
〔出願時請求項12〕 前記担体ポリペプチド及び前記ミモトープが組換え融合タンパク質の一部である、請求項1~10のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
〔出願時請求項13〕 前記担体ポリペプチドが、細菌トキソイドもしくはその誘導体、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、またはウイルス様粒子を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
〔出願時請求項14〕 前記細菌トキソイドまたは誘導体が、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、B群N.meningitidisからの外膜タンパク質複合体、Pseudomonas外毒素、またはジフテリア毒素の無毒性変異型(CRM197)である、請求項13に記載のワクチン組成物。
〔出願時請求項15〕 前記ウイルス様粒子が、HBsAg、HBcAg、E.coliバクテリオファージQベータ、ノーウォークウイルス、犬ジステンパーウイルス(CDV)、またはインフルエンザHAである、請求項13に記載のワクチン組成物。
〔出願時請求項16〕 前記担体ポリペプチドが、CRM197を含むまたはそれからなる、請求項14に記載のワクチン組成物。
〔出願時請求項17〕 前記アジュバントが、水中油型アジュバント、ポリマー及び水アジュバント、油中水型アジュバント、水酸化アルミニウムアジュバント、ビタミンEアジュバント、ならびにこれらの組合せからなる群より選択される、請求項1~16のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
〔出願時請求項18〕 前記アジュバントが、サポニン、ステロール、第4級アンモニウム化合物、及びポリマーを含む製剤である、請求項1~17のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
〔出願時請求項19〕 前記サポニンがQuil Aまたはその精製画分であり、前記ステロールがコレステロールであり、前記第4級アンモニウム化合物がジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)であり、前記ポリマーがポリアクリル酸である、請求項18に記載のワクチン組成物。
〔出願時請求項20〕 前記アジュバントが、1つ以上の単離免疫刺激性オリゴヌクレオチド、ステロール、及びサポニンの組合せを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
〔出願時請求項21〕 前記1つ以上の単離免疫刺激性オリゴヌクレオチドがCpGを含み、前記ステロールがコレステロールであり、前記サポニンがQuil Aまたはその精製画分である、請求項20に記載のワクチン組成物。
〔出願時請求項22〕 IL-31媒介性障害に対し哺乳類を保護する方法であって、請求項1~21のいずれか1項に記載のワクチン組成物を前記哺乳類に投与することを含む、前記方法。
〔出願時請求項23〕 前記哺乳類が、イヌ、ネコ、ウマ、及びヒトからなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
〔出願時請求項24〕 前記ワクチン組成物に含まれる前記IL-31ミモトープが、用量当たり約10μg~約100μgで前記哺乳類に投与される、請求項22に記載の方法。
〔出願時請求項25〕 試料中の抗IL-31抗体の同一性及び/または量を定量する方法であって、抗IL-31抗体を含む試料を、ネコIL-31ミモトープ、イヌIL-31ミモトープ、ウマIL-31ミモトープ、及びヒトIL-31ミモトープからなる群より選択される少なくとも1つのミモトープと共にインキュベートすることと、前記試料中の前記抗IL-31の同一性及び/または量を定量することとを含む、前記方法。
〔出願時請求項26〕 前記イヌIL-31ミモトープが、アミノ酸配列SVPADTFECKSF(配列番号186)、SVPADTFERKSF(配列番号187)、NSSAILPYFRAIRPLSDKNIIDKIIEQLDKLKF(配列番号192)、APTHQLPPSDVRKIILELQPLSRG(配列番号196)、TGVPES(配列番号200)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む、請求項25に記載の方法。
〔出願時請求項27〕 前記ネコIL-31ミモトープが、アミノ酸配列SMPADNFERKNF(配列番号188)、NGSAILPYFRAIRPLSDKNTIDKIIEQLDKLKF(配列番号193)、APAHRLQPSDIRKIILELRPMSKG(配列番号197)、IGLPES(配列番号201)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む、請求項25に記載の方法。
〔出願時請求項28〕 前記ウマIL-31ミモトープが、アミノ酸配列SMPTDNFERKRF(配列番号189)、NSSAILPYFKAISPSLNNDKSLYIIEQLDKLNF(配列番号194)、GPIYQLQPKEIQAIIVELQNLS KK(配列番号198)、KGVQKF(配列番号202)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む、請求項25に記載の方法。
〔出願時請求項29〕 前記ヒトIL-31ミモトープが、アミノ酸配列SVPTDTHECKRF(配列番号190)、SVPTDTHERKRF(配列番号191)、HSPAIRAYLKTIRQLDNKSVIDEIIEHLDKLIF(配列番号195)、LPVRLLRPSDDVQKIVEELQSLSKM(配列番号199)、KGVLVS(配列番号203)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む、請求項25に記載の方法。
〔出願時請求項30〕 前記ミモトープが、固体表面に結合した捕捉試薬である、請求項25~29のいずれか1項に記載の方法。
〔出願時請求項31〕 前記試料中の前記抗体の量を定量化するために、前記試料がミモトープ捕捉試薬に添加され、次に二次検出試薬が添加される、請求項30に記載の方法。
〔出願時請求項32〕 哺乳類からの試料中のIL-31の量を定量する方法であって、
IL-31を含む哺乳類試料を、固体表面に繋留した標識抗IL-31抗体:IL-31ミモトープ複合体と共にインキュベートすることであって、前記複合体中の前記ミモトープが、ネコIL-31ミモトープ、イヌIL-31ミモトープ、ウマIL-31ミモトープ、及びヒトIL-31ミモトープからなる群より選択される、前記インキュベートすることと、
前記試料中の前記IL-31のレベルを定量することであって、前記複合体中の前記標識IL-31抗体が有する前記複合体中の前記ミモトープに対する親和性が、前記試料中の前記IL-31に対する親和性よりも低い、前記定量することとを含む、前記方法。
〔出願時請求項33〕 前記定量するステップが、前記試料中の前記IL-31が前記複合体の前記標識抗IL-31抗体に結合したときに前記固体表面から解放される標識抗体から来るシグナルを測定することを含み、前記試料中のIL-31のレベルが、前記シグナルに対し反比例する、請求項32に記載の方法。
〔出願時請求項34〕 前記イヌIL-31ミモトープが、アミノ酸配列SVPADTFECKSF(配列番号186)、SVPADTFERKSF(配列番号187)、NSSAILPYFRAIRPLSDKNIIDKIIEQLDKLKF(配列番号192)、APTHQLPPSDVRKIILELQPLSRG(配列番号196)、TGVPES(配列番号200)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む、請求項32または請求項33に記載の方法。
〔出願時請求項35〕 前記ネコIL-31ミモトープが、アミノ酸配列SMPADNFERKNF(配列番号188)、NGSAILPYFRAIRPLSDKNTIDKIIEQLDKLKF(配列番号193)、APAHRLQPSDIRKIILELRPMSKG(配列番号197)、IGLPES(配列番号201)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む、請求項32または請求項33に記載の方法。
〔出願時請求項36〕 前記ウマIL-31ミモトープが、アミノ酸配列SMPTDNFERKRF(配列番号189)、NSSAILPYFKAISPSLNNDKSLYIIEQLDKLNF(配列番号194)、GPIYQLQPKEIQAIIVELQNLS KK(配列番号198)、KGVQKF(配列番号202)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む、請求項32または請求項33に記載の方法。
〔出願時請求項37〕 前記ヒトIL-31ミモトープが、アミノ酸配列SVPTDTHECKRF(配列番号190)、SVPTDTHERKRF(配列番号191)、HSPAIRAYLKTIRQLDNKSVIDEIIEHLDKLIF(配列番号195)、LPVRLLRPSDDVQKIVEELQSLSKM(配列番号199)、KGVLVS(配列番号203)、もしくは抗IL-31結合を保持するこれらのバリアントである、及び/またはその一部としてこれらの配列のいずれかを含む、請求項32または請求項33に記載の方法。
〔出願時請求項38〕 前記ミモトープが、哺乳類のIL-31タンパク質とその共受容体との相互作用に関与する前記IL-31タンパク質上の領域に特異的に結合する抗IL-31抗体またはその抗原結合部分に結合する、請求項25~37のいずれか1項に記載の方法。
〔出願時請求項39〕 前記抗体の前記領域への前記結合が、以下:
a)配列番号157(ネコ_IL31_野生型)によって表されるネコIL-31配列のアミノ酸残基約124から135の間の領域、
b)配列番号155(イヌ_IL31)によって表されるイヌIL-31配列のアミノ酸残基約124から135の間の領域、及び
c)配列番号165(ウマ_IL31)によって表されるウマIL-31配列のアミノ酸残基約118から129の間の領域
からなる群より選択される15H05エピトープ結合領域の変異によって影響を受ける、請求項38に記載の方法。
〔出願時請求項40〕 前記ミモトープが、以下の相補性決定領域(CDR)配列の組合せ:
1)抗体15H05:可変重鎖(VH)-CDR1がSYTIH(配列番号1)、VH-CDR2がNINPTSGYTENNQRFKD(配列番号2)、VH-CDR3がWGFKYDGEWSFDV(配列番号3)、可変軽鎖(VL)-CDR1がRASQGISIWLS(配列番号4)、VL-CDR2がKASNLHI(配列番号5)、VL-CDR3がLQSQTYPLT(配列番号6)、
2)抗体ZIL1:可変重鎖(VH)-CDR1がSYGMS(配列番号13)、VH-CDR2がHINSGGSSTYYADAVKG(配列番号14)、VH-CDR3がVYTTLAAFWTDNFDY(配列番号15)、可変軽鎖(VL)-CDR1がSGSTNNIGILAAT(配列番号16)、VL-CDR2がSDGNRPS(配列番号17)、VL-CDR3がQSFDTTLDAYV(配列番号18)、
3)抗体ZIL8:VH-CDR1がDYAMS(配列番号19)、VH-CDR2がGIDSVGSGTSYADAVKG(配列番号20)、VH-CDR3がGFPGSFEH(配列番号21)、VL-CDR1がTGSSSNIGSGYVG(配列番号22)、VL-CDR2がYNSDRPS(配列番号23)、VL-CDR3がSVYDRTFNAV(配列番号24)、
4)抗体ZIL9:VH-CDR1がSYDMT(配列番号25)、VH-CDR2がDVNSGGTGTAYAVAVKG(配列番号26)、VH-CDR3がLGVRDGLSV(配列番号27)、VL-CDR1がSGESLNEYYTQ(配列番号28)、VL-CDR2がRDTERPS(配列番号29)、VL-CDR3がESAVDTGTLV(配列番号30)、
5)抗体ZIL11:VH-CDR1がTYVMN(配列番号31)、VH-CDR2がSINGGGSSPTYADAVRG(配列番号32)、VH-CDR3がSMVGPFDY(配列番号33)、VL-CDR1がSGESLSNYYAQ(配列番号34)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号35)、VL-CDR3がESAVSSDTIV(配列番号36)、
6)抗体ZIL69:VH-CDR1がSYAMK(配列番号37)、VH-CDR2がTINNDGTRTGYADAVRG(配列番号38)、VH-CDR3がGNAESGCTGDHCPPY(配列番号39)、VL-CDR1がSGESLNKYYAQ(配列番号40)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号41)、VL-CDR3がESAVSSETNV(配列番号42)、
7)抗体ZIL94:VH-CDR1がTYFMS(配列番号43)、VH-CDR2がLISSDGSGTYYADAVKG(配列番号44)、VH-CDR3がFWRAFND(配列番号45)、VL-CDR1がGLNSGSVSTSNYPG(配列番号46)、VL-CDR2がDTGSRPS(配列番号47)、VL-CDR3がSLYTDSDILV(配列番号48)、
8)抗体ZIL154:VH-CDR1がDRGMS(配列番号49)、VH-CDR2がYIRYDGSRTDYADAVEG(配列番号50)、VH-CDR3がWDGSSFDY(配列番号51)、VL-CDR1がKASQSLLHSDGNTYLD(配列番号52)、VL-CDR2がKVSNRDP(配列番号53)、VL-CDR3がMQAIHFPLT(配列番号54)、
9)抗体ZIL159:VH-CDR1がSYVMT(配列番号55)、VH-CDR2がGINSEGSRTAYADAVKG(配列番号56)、VH-CDR3がGDIVATGTSY(配列番号57)、VL-CDR1がSGETLNRFYTQ(配列番号58)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号59)、VL-CDR3がKSAVSIDVGV(配列番号60)、
10)抗体ZIL171:VH-CDR1がTYVMN(配列番号61)、VH-CDR2がSINGGGSSPTYADAVRG(配列番号62)、VH-CDR3がSMVGPFDY(配列番号63)、VL-CDR1がSGKSLSYYYAQ(配列番号64)、VL-CDR2がKDTERPS(配列番号65)、VL-CDR3がESAVSSDTIV(配列番号66)、または
11)VHまたはVLのCDR1、CDR2、もしくはCDR3のうちの少なくとも1つにおける1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失、及び/または置換によってそれぞれの親抗体15H05、ZIL1、ZIL8、ZIL9、ZIL11、ZIL69、ZIL94、ZIL154、ZIL159、もしくはZIL171と相違する、1)~10)のバリアント
のうちの少なくとも1つを含む、抗IL-31抗体またはその抗原結合部分に結合する、請求項38に記載のワクチン組成物。
次に、本発明を以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。以下の実施例セクション及び図面において、名称に「11E12」を含む抗体について示される任意のデータは、本発明の抗体との比較を目的としている。
【実施例】
【0233】
1.実施例1
1.1.チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞からのイヌインターロイキン31(cIL-31)の産生
インターロイキン31タンパク質は、相同種間でアミノ酸配列の保存が異なる(
図1)が、I型サイトカインファミリーの他のメンバーと共通の構造アーキテクチャーを有すると考えられている(Boulay et al.2003,Immunity.Aug;19(2):159-632003;Dillon et al.2004 Nat Immunol.Jul;5(7):752-60)。このアップダウンバンドルトポロジーは、これらのサイトカインが共有する受容体認識の様式に重要である(Dillon et al.(前掲),Cornelissen et al.2012 Eur J Cell Biol.Jun-Jul;91(6-7):552-66)。異なる種間でIL-31タンパク質配列同一性が変動するため、ある種に対し産生した抗体が、他の異なるエピトープ性質及び局所的アミノ酸組成を仮定した他の種と交差反応するか予測することは不可能である。結果的に、この課題については複数の種及び発現系に相当するIL-31タンパク質の複数形態が検討された。イヌIL-31タンパク質(cIL-31)を産生して、抗体ヒットの親和性及び効力を試験するための免疫原及び試薬として使用した。CHROMOS ACE(人工染色体発現)(Chromos Molecular Systems,Inc.,Burnaby,British Columbia)を用いてシステムCHO細胞内で組換え型cIL-31を作成し、(配列番号155;イヌ_IL31)の配列(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号156;イヌ_IL31)である)を有する分泌イヌIL-31タンパク質を生成した。条件培地は400mlの細胞培養物(CHO細胞系)から取得し、10体積のQA緩衝液(20mMトリスpH 8.0、20mM NaCl)nに対し4.5時間透析した。透析した培地を0.2μmで濾過し、QA緩衝液で予め平衡化したSOURCE(商標)Qカラム(GE Healthcare,Uppsala,Sweden)に1ml/分で装填した。マルチステップ直線勾配を用いてタンパク質を溶出した。cIL-31の大部分はフロースルー(FT)画分に残存し、少量のcIL-31が勾配の初期に溶出した。タンパク質の同定は、ウェスタンイムノブロッティング及びトリプシン消化物の質量分析(MS)によって予め確認した。FT画分中のタンパク質を4~5倍濃縮し、4℃のリン酸緩衝食塩水(PBS)に対し終夜透析した。PBSへの透析後にタンパク質の安定性を調べた。4℃で数日おいた後、沈殿は観察されず、タンパク質分解も観察されなかった。N-グリコシダーゼFを用いた脱グリコシル化実験の結果、SDS-PAGE上で約15kDaのシングルバンドまでタンパク質が凝縮された。タンパク質濃度は、ウシ血清アルブミン(BSA)を標準物質として用いたビシンコニン酸アッセイ(BCAアッセイ)を使用して決定した(ThermoFisher Scientific,Inc.,Rockford,IL)。タンパク質溶液をアリコートに分割し、スナップ凍結し(液体N
2)、-80℃で保存した。
【0234】
1.2.CHO細胞からの野生型及び変異型ネコインターロイキン31(fIL-31)の一過性発現
適切なエピトープ結合特性を備えた抗体の同定を補助するため、哺乳類発現系で野生型及び変異型ネコIL-31タンパク質を発現させて、親和性及び細胞ベースのアッセイで産生、精製、及び評価を行った。IL-31上の抗体11E12の結合部位については過去に説明されている(Bammert,et al.に対する米国特許第8,790,651号)。抗体15H05が認識するIL-31上の新規結合部位のキャラクタリゼーションについては、本明細書で説明されている。野生型の名称は全長ネコIL-31タンパク質であり、ネイティブアミノ酸残基に変化はない。変異型タンパク質は対応する抗体名(11E12及び15H05)により命名されており、(改変された場合に)各それぞれの抗体との結合に影響を及ぼすIL-31タンパク質のアミノ酸の変異を意味する。ネコIL-31 15H05タンパク質に必要な適切な変異の同定については、セクション1.10で説明されている。目的は、IL-31エピトープのアミノ酸を変更し、各それぞれの抗体に対する結合表現型の喪失を観察することであった。次に、スクリーニング中に比較を行って、新しい候補抗体が野生型タンパク質に結合し変異型に結合しないかを確認することができる。次に、新たな抗体ヒットを、抗体11E12または15H05と同じまたは類似のエピトープとの結合に応じてビニングすることができる。
【0235】
発現コンストラクトを、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞内での発現用にコドン最適化し合成した。合成した遺伝子を一過性発現用にpD2529(ATUMベクター)内でクローンした。野生型ネコIL-31タンパク質は(配列番号157;ネコ_IL31_野生型)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号158;ネコ_IL31_野生型)である)によって表される。変異型ネコIL-31 11E12タンパク質は(配列番号161;ネコ_IL31_11E12_変異型)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号162;ネコ_IL31_11E12_変異型)である)によって表される。変異型ネコIL-31 15H05タンパク質は(配列番号163;ネコ_IL31_15H05_変異型)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号164;ネコ_IL31_15H05_変異型)である)によって表される。製造業者による一過性CHO発現用の最大力価プロトコルに従うことにより、ExpiCHO-S(商標)細胞(ThermoFisher Scientific,Inc.,Rockford,IL)内で組換え型ネコIL-31タンパク質を発現させた。形質移入から12日後、細胞を遠心分離及び濾過して、条件培地中の分泌タンパク質を捕捉した。各コンストラクト(野生型及び変異型)に対し、120mLの条件培地(CHO細胞培養物から0.2μmで濾過)を、NaCl、5mMイミダゾール、及びpH7.4を加えることにより30mS/cmに調整した。各培地試料を、5mMイミダゾール、20mMリン酸ナトリウム、300mM NaCl、pH7.4で平衡化した5mLのHisPurコバルト樹脂(ThermoFisher Scientific,Inc.,Rockford,IL)と合わせた。各試料及び樹脂を4℃で終夜混合した。BioRadエコノカラム(Econcolumn)(Bio-Rad,Hercules,CA)を介して注ぐことにより、樹脂を収集(及び結合していない画分から分離)した。樹脂を5×5mLの緩衝液(上記と同じ)で洗浄し、次いで同じ緩衝液中の5×5mLの500mMイミダゾールで溶出した。画分をSDS-PAGEによって評価した。濃度は、標準的な方法を用いてBCAタンパク質アッセイによって測定した。
【0236】
1.3.E.coliからのネコインターロイキン31(fIL-31)の産生
アッセイ試薬として、及びネコの掻痒応答を誘導するin vivoチャレンジ研究に使用するため、E.coli発現宿主内で組換えネコIL-31タンパク質を生成した。E.coli内での最適な発現用にネコIL-31に相当する遺伝子を合成した。検出及び精製用にN末端側6-Hisタグを含む全長ネコIL-31遺伝子を有する発現コンストラクトを作成した。このネコIL-31タンパク質は(配列番号159;ネコ_IL-31_E_coli)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号160;ネコ_IL-31_E_coli)である)によって表される。配列確認済みプラスミドを使用してE.coli BL21 DE3(Invitrogen Corp.,Carlsbad,CA)を形質転換し、次にタンパク質を発現させた。
【0237】
E.coliからの細胞ペースト(262.3g)を以下のようにして溶解した:細胞ペーストを500mLの50mMトリスpH8に再懸濁させ、ステンレスメッシュフィルターで濾過して粒子を除去し、次にマイクロフルイダイザーに1300psiで2回通過させることによって溶解した。ライセート(約1200mLの体積)を4つのボトルに分割し、10℃で20分間、12,000gで遠心分離した。上清をデカントし廃棄した。各ペレットを、300mLの5mM EDTA、0.5%トリトンX-100、pH9.0に懸濁させることにより洗浄し、次いで10℃で50分間、12,000gで遠心分離した。上清をデカントし廃棄した。洗浄したペレットは、フォールディング及び単離を行うまで-20℃で保存した。
【0238】
単離の前に、ペレットの1つを水で洗浄して残留洗剤を除去し、次いで4℃で20分間、10,000gで遠心分離した。再び上清をデカントした。最後に、洗浄したペレットを60mLの50mMリン酸ナトリウム、300mM NaCl、6Mグアニジン-HCl、5mMイミダゾール、pH7.4に溶解した。ペレットを室温でおよそ25分間混合した後、再び4℃で20分間、10,000gで遠心分離した。このときは上清をデカントし、これをさらなる処理のために保管した。ペレット(水に再懸濁させ元の体積にしたもの)をSDS-PAGE専用に確保した。粗製IMAC(固定化金属親和性クロマトグラフィー)を実施して、フォールディングの前に純度を高めた。この場合において、15mLのNi-NTA Superflow(Qiagen Inc,Germantown,MD(カタログ番号30450、同じ緩衝液中で予め平衡化したもの))を清澄化した上清に添加し、室温でおよそ90分間混合した。結合していない画分をデカントし、SDS-PAGE用に確保した。IMAC樹脂を5mMイミダゾール、50mMリン酸ナトリウム、300mM NaCl、6Mグアニジン-HCl、pH7.4(溶解バッファーと同じもの)で洗浄した。樹脂を200mMイミダゾール、50mMリン酸ナトリウム、300mM NaCl、6Mグアニジン-HCl、pH7.4で溶出した(最初は7.5mL、次いで15mLの倍数で行い、Bradfordアッセイによりタンパク質溶出をモニターした)。タンパク質を含む溶出画分(Bradfordに従う)をさらなる処理用にプールした(125mL)。
【0239】
IL-31タンパク質を以下のようにしてフォールディングした。ジチオトレイトールを添加することによりIL-31を最終的に10mMまで還元し、室温で2時間混合した。次いで希釈した試料を、2500mL(20倍体積)のPBS+1M NaClに滴下して迅速に撹拌しながら希釈した。この時点では、尿素の理論的濃度は約0.4Mであったと考えられる。残りの尿素は、3回交換したPBS(各4L)に対する透析により、4℃で終夜にわたりゆっくり除去した。透析後、試料を0.2μmで濾過して、任意のフォールディングしていない/沈殿したタンパク質を除去した。
【0240】
第2ラウンドのIMACにより、今回は直線勾配溶出を用いて、試料をさらに精製した。15mLのNi-NTA Superflow樹脂を試料に添加し、4℃で終夜(懸濁撹拌棒で)撹拌することにより、バッチ式で結合した。再度、結合していない画分をデカントし、これを確保した。Ni-NTA Superflow樹脂をXK16カラム(GE Healthcare Lifesciences,Marlborough,MA)に充填し、AKTAブランドのクロマトグラフィーシステム(GE Healthcare Lifesciences,Marlborough,MA)に接続した。次いでカラムを50mMトリス、300mM NaCl、pH8.2で洗浄し、0~500mMイミダゾールの150mL直線勾配により、各々を洗浄緩衝液中で溶出した。画分をSDS-PAGEによって分析した。十分な純度のIL-31を有する画分をプールし、4℃で終夜にわたり、3回交換したPBS(各2L)に対する透析によって緩衝液を再度交換した。最後に、フォールディング及び精製した試料を透析から収集し、滅菌濾過し、濃度を測定し、分取し、ドライアイス/イソプロパノール浴中でスナップ凍結し、-80℃で保存した。
【0241】
1.4.表面プラズモン共鳴を用いて抗IL-31抗体のIL-31に対する親和性を決定する方法
候補mAbがイヌ及びネコのIL-31に結合する親和性を、Biacoreシステム(Biocore Life Sciences(GE Healthcare),Uppsala,Sweden)の表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて決定した。抗体を表面に固定化する際に生じ得る異なる表面調製に関連する親和性の差を回避するため、IL-31を表面に直接結合体化させる戦略が採用された。固定化は、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)/1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)化学を用いて5μg/mLのIL-31をアミンカップリングすることによって得た。チップをエタノールアミンでクエンチし、固定化されたIL-31に結合した全ての候補mAbとの親和性を評価した。全ての曲線を1:1モデルに適合させた。1×10-11M(1E-11M)未満の親和性定数(KD)を装置による検出の定量下限未満とする。親和性測定の結果を本明細書に記載する。
【0242】
1.5.イヌ及びネコのマクロファージ細胞のイヌ及びネコIL-31誘導性pSTAT3シグナル伝達の阻害によって評価される抗IL-31抗体の効力を定量する方法
阻害活性を有する候補を同定するため、イヌまたはネコいずれかの細胞ベースアッセイで、抗体のIL-31媒介性STAT3リン酸化に影響を及ぼす能力を評価した。イヌDH-82(ATCC(登録商標)CRL-10389(商標))またはネコFCWF4マクロファージ様細胞(ATCC CRL-2787)でSTAT3リン酸化を定量したDH82及びFCWF4細胞を、それぞれ10ng/mLのイヌインターフェロンガンマ(R&D Systems,Minneapolis,MN)で24時間、または125ng/mLのネコインターフェロンガンマ(R&D Systems,Minneapolis,MN)で96時間プライミングして、受容体発現を増加させた。いずれの細胞タイプも、IL-31及びmAb処置の前の2時間、血清飢餓状態にした。2つの独立した方法を用いて、全ての候補mAbについて、1μg/mLイヌまたは0.2μg/mLネコにおけるIL-31誘導性STAT3リン酸化の阻害能力を評価した。またアッセイは、イヌ及びネコのサイトカインの交差反応性と、抗体における両方の種のシグナル伝達の阻害能力の交差機能性とを実証するためにも行った。複合体形成を確実に行うため、細胞を刺激する前にmAb及びIL-31サイトカインの1時間の共インキュベートを完了させた。IL-31細胞刺激を5分間行った。STAT3リン酸化は、AlphaLISA SureFire ULTRA(商標)技術(Perkin Elmer,Waltham,MA)を用いて測定した。抗体の濃度及び純度が不明の場合は、ハイブリドーマ上清を1mg/mlのイヌIL-31または0.2mg/mlのネコIL-31と共に1時間共インキュベートした後、ハイブリドーマ上清のSTAT3リン酸化阻害能力を定性的に測定した。これらのアッセイにおける個々のモノクローナル抗体のIL-31媒介性STAT3リン酸化阻害能力によって定義されるモノクローナル抗体の効力は、抗体選択をさらに進める上でのキーとなる選択基準とみなされた。効力という用語は、これらのアッセイから計算されたIC50値を意味し、IL-31によって誘導されるシグナル伝達が最大値の半分まで減少する抗体の濃度である。本明細書で説明されている効力の増加は、IC50値の低下と相関する。
【0243】
1.6.イヌ及びネコのインターロイキン31を認識するマウス及びイヌのモノクローナル抗体の同定
抗体を同定する目的で、マウス及びイヌを組換え型イヌIL-31(配列番号155)で免疫化した。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて免疫動物の血清抗体価を定量した。イヌまたはネコのIL-31(50ng/ウェル)をポリスチレンマイクロプレートに固定化し、捕捉抗原として使用した。免疫動物からの血清を0.05% tween-20(PBST)を含むリン酸緩衝食塩水で希釈した。抗IL-31抗体の存在を、適切なHRP標識二次抗体で検出した。発色基質(SureBlue Reserve TMB 1-Component Microwell Peroxidase Substrate(KPL,Inc.,Gaithersburg,MD))を添加し、室温(RT)で10分間インキュベートした後、100μLの0.1N HClを添加して反応を停止した。各ウェルの吸光度を450nmの光学密度(OD)で定量した。ELISAを用いて、イヌ及びネコのIL-31への結合能力によって抗体を選択した。場合によっては、ネコIL-31タンパク質の変異型形態を捕捉抗原として用いたELISAを使用して、選択時にさらなるキャラクタリゼーションを実施した。IgGの可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)に相当するRNA転写物の配列分析のために、所望の結合及び阻害特性を備えた抗体を産生する細胞を選択した。
【0244】
マウス抗体の場合、単一応答性CF-1マウスからのドナー脾細胞を融合に使用し、ELISAにより、ハイブリドーマ上清においてイヌまたはネコのIL-31タンパク質のいずれかに結合する抗体をスクリーニングした。これにより、両方の種のIL-31に対しナノモル以下の親和性を有する単一のマウス抗体Mu-15H05が同定された(
図2A)。マウス抗IL-31 15H05をさらにサブクローニングして均質な抗体を産生するハイブリドーマを生成し、可変重鎖及び軽鎖をシークエンシングした。抗体15H05について決定したマウス抗IL-31可変配列は以下の通りであり、15H05可変重鎖(配列番号67;MU-15H05-VH)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号68;MU-15H05-VH)である)、及び15H05可変軽鎖(配列番号69;MU-15H05-VL)(これに対応するヌクレオチド配列(配列番号70;MU-15H05-VL)である)である。
【0245】
マウス抗体15H05に加えて、さらに、過去にBammert,et al.に対する米国特許第8,790,651号で説明されているさマウス由来抗体11E12について検討した。本明細書では、抗体11E12がイヌ及びネコ両方のIL-31タンパク質に高親和性で結合する能力を示すデータを記載する。11E12はネコIL-31に結合することができるため、この抗体はネコ化とネコにおける治療使用の潜在可能性とにおいて好適な候補となった。抗体11E12について以前に決定したマウス抗IL-31可変配列は以下の通りであり、11E12可変重鎖(配列番号71;MU-11E12-VH)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号72;MU-11E12-VH)である)、及び11E12可変軽鎖(配列番号73;MU-11E12-VL)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号74;MU-11E12-VL)である)である。
【0246】
ワクチン接種後に抗IL-31力価が上昇したイヌを、所望の表現型を備えた抗体を産生するB細胞集団の分析用に選択した。B細胞は、さらなる分析のためにPBMC、骨髄、脾臓、またはリンパ節から誘導した。単一のB細胞を個々のウェルに分離し、US2012/0009671 A1、US2016/0252495 A1、US9,188,593、WO2015/176162 A9、及びWO2016/123692 A1で説明されている方法を用いて、イヌIL-31(AbCellera,Vancouver,BC)の野生型、11E12変異型、及び15H05変異型形態に結合可能な分泌IgGが存在するかアッセイした。
【0247】
このスクリーニング戦略は、IL-31タンパク質の共受容体複合体を介した結合及びシグナル伝達に不可欠となるIL-31タンパク質の既知の領域に基づくものである。スクリーニング用のこれらの変異型タンパク質の選択については、本出願のセクション1.2で説明されている。IgGの可変重鎖及び軽鎖ドメインのシークエンシングは、個々の候補B細胞からのRT-PCR反応後に行った。これらのスクリーニングによって9つのイヌ抗体が同定され、これらをさらなる評価用に選択した。これらのイヌ抗IL-31可変配列は、以下の通りであり、ZIL1可変重鎖(配列番号75;CAN-ZIL1_VH)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号76;CAN-ZIL1_VH)である)、ZIL1可変軽鎖(配列番号77;CAN-ZIL1_VL)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号78;CAN-ZIL1_VL)である);ZIL8可変重鎖(配列番号79;CAN-ZIL8_VH)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号80;CAN-ZIL8_VH)である)、ZIL8可変軽鎖(配列番号81;CAN-ZIL8_VL)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号82;CAN-ZIL8_VL)である);ZIL9可変重鎖(配列番号83;CAN-ZIL9_VH)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号84;CAN-ZIL9_VH)である)、ZIL9可変軽鎖(配列番号85;CAN-ZIL9_VL)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号86;CAN-ZIL9_VL)である);ZIL11可変重鎖(配列番号87;CAN-ZIL11_VH)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号88;CAN-ZIL11_VH)である)、ZIL11可変軽鎖(配列番号89;CAN-ZIL11_VL)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号90;CAN-ZIL11_VL)である);ZIL69可変重鎖(配列番号91;CAN-ZIL69_VH)(これに対応するはヌクレオチド配列(配列番号92;CAN-ZIL69_VH)である)、ZIL69可変軽鎖(配列番号93;CAN-ZIL69_VL)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号94;CAN-ZIL69_VL)である);ZIL94可変重鎖(配列番号95;CAN-ZIL94_VH)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号96;CAN-ZIL94_VH)である)、ZIL94可変軽鎖(配列番号97;CAN-ZIL94_VL)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号98;CAN-ZIL94_VL)である);ZIL154可変重鎖(配列番号99;CAN-ZIL154_VH)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号100;CAN-ZIL154_VH)である)、ZIL154可変軽鎖(配列番号101;CAN-ZIL154_VL)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号102;CAN-ZIL154_VL)である);ZIL159可変重鎖(配列番号103;CAN-ZIL159_VH)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号104;CAN-ZIL159_VH)である)、ZIL159可変軽鎖(配列番号105;CAN-ZIL159_VL)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号106;CAN-ZIL159_VL)である);ZIL171可変重鎖(配列番号107;CAN-ZIL171_VH)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号108;CAN-ZIL171_VH)である)、ZIL171可変軽鎖(配列番号109;CAN-ZIL171_VL)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号110;CAN-ZIL171_VL)である)である。
【0248】
さらなるキャラクタリゼーション用に選択した上記の9つのモノクローナル抗体は、本明細書の他の箇所、図面、または特許請求の範囲でZIL1、ZIL8、ZIL8、ZIL11、ZIL69、ZIL94、ZIL154、ZIL159、及びZIL171と称されることがある。
【0249】
1.7.組換え型のキメラ型抗体及び完全イヌ抗体の構築
抗体可変ドメインは、抗原結合を担当する。完全可変ドメインをそれぞれの定常領域に移植した場合、抗体のIL-31免疫原への結合能力はほとんどまたは全く影響を受けないことが予想される。重鎖及び軽鎖可変領域の正しい配列が同定されたことを同時に確認し、均質な材料を生成するため、発現ベクターを、哺乳類発現系で組換え型のキメラ型抗体または完全イヌ抗体を生成するように設計した。ここで説明するキメラ型抗体は、ネコまたはイヌのIgG分子のそれぞれの重鎖及び軽鎖の定常領域に移植された宿主種抗体からの可変配列(CDR及びフレームワークの両方)からなる(例えば、マウス可変配列:イヌ定常領域はマウス:イヌキメラ型と称される)。ここで説明する完全イヌ抗体は、イヌIgG分子のそれぞれの重鎖及び軽鎖の定常領域に移植された宿主種抗体(イヌ)からの可変配列(CDRとフレームワークの両方)からなる。選択した抗体の可変重鎖(VH)配列及び可変軽鎖(VL)配列のために合成DNA配列を構築した。これらの配列は、ユニークな制限エンドヌクレアーゼ部位と、Kozakコンセンサス配列と、哺乳類細胞系からの組換え型抗体の発現及び分泌を促進するためのN末端側分泌リーダーとを含む。
【0250】
マウス:ネコキメラ型については、各それぞれの可変領域を、ネコIgG重鎖定常領域(配列番号173;ネコ_HC_アレルA_1)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号174;ネコ_HC_アレルA_1)である)、または軽鎖定常領域(配列番号175;ネコ_LC_カッパ_G_マイナス)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号176;ネコ_LC_カッパ_G_マイナス)である)のいずれかを含む哺乳類発現プラスミド内でクローンした。マウス:イヌキメラ型抗体または完全イヌ抗体については、各々のマウスまたはイヌの可変領域を、イヌIgG重鎖定常領域(配列番号177:イヌ_HC_65_1)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号178;イヌ_HC_65_1)である)または軽鎖定常領域(配列番号179;イヌ_LC_カッパ)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号180;イヌ_LC_カッパ)である)のいずれかを含む哺乳類発現プラスミド内でクローンした。標準的な方法を用いて、CMVプロモーターの制御下で各々の重鎖及び軽鎖をコードするプラスミドをHEK293細胞に同時形質移入した。発現から6日後、タンパク質精製の標準的方法に従ってMabSelect SureプロテインA樹脂(GE Healthcare,Uppsala,Sweden)を用いて、50mlの一過的に形質移入したHEK293FS細胞上清からキメラ型mAbを精製した。溶出画分をプールし、10,000名目MWカットオフNanosep Omega遠心デバイス(Pall Corp.,Port Washington,NY)を用いて約500μlまでのウシュク氏、1×PBS、pH7.2中4℃で終夜透析し、さらなる使用のために4℃で保存した。以下、選択組換え型抗体の親和性及び細胞ベース効力について説明する。
【0251】
図2は、biacoreを用いてマウス起源由来のCDRを有する抗体の親和性を詳述している。
図2aは、マウス抗IL-31抗体11E12及び15H05の親和性、ならびにネコ及びイヌ両方のIL-31表面に対するネコ及びイヌのキメラ型形態の対応する親和性を示している。これらの観察結果から、両方のマウス抗体の正しい配列が確認され、そしてキメラ型への変換により、マウス親抗体と比較して同等またはそれ以上の親和性を備えた抗体が得られることが示される。ただし、マウス:ネコ15H05キメラ型は例外で、キメラ型形態に変換した結果、両方のIL-31種に対するいくらかの親和性が喪失した。
【0252】
抗体11E12及び15H05の完全マウス及びキメラ型形態についても、セクション1.5で説明されているイヌ及びネコの細胞アッセイにおける活性を試験した。
図3は、これらのアッセイの結果を示している。マウス抗体11E12及び15H05について、シグナル伝達を刺激するためにイヌ及びネコ両方のIL-31を用いてイヌ及びネコの細胞タイプに対する活性を試験した。両方のマウス抗体の効力は、ネコサイトカインを用いたイヌ及びネコ両方の細胞に対し同等であったが、ネコFCWF4細胞におけるネコIL-31に対する15H05は例外で、IC50のわずかな増加を示している。マウス15H05はネコ及びイヌ両方の細胞でイヌIL-31シグナル伝達を遮断可能であり、イヌアッセイでの効力がわずかに高かった。これらの結果は、これらの抗体が認識するそれぞれのエピトープが、イヌ及びネコ両方のIL-31に存在することと、これらの抗体の結合が、両方の種からの関連細胞系における受容体媒介性細胞シグナル伝達を中和可能であることとを示している。
【0253】
図3は、両方の細胞アッセイでの選択キメラの効力についても記載している。ネコ効力アッセイにおいて、ネコ抗体からネコ及びイヌのキメラ型への変換がネコIL-31に対する効力に及ぼす影響は最小限であった(IC50範囲1.15~3.45μg/ml)。これらのキメラ型をイヌDH82細胞系でネコIL-31シグナル伝達に対し試験したときにも同様の結果が観察され、15H05マウス:イヌキメラ型においてわずかな効力の増加(IC50=0.71μg/ml)が観察された。概して、イヌ及びネコ両方の細胞タイプにおいてイヌIL-31に対するIC50値が増加した。マウス:ネコ15H05キメラ型は、このアッセイ形式ではマウス:イヌ形態と比較してわずかに効力が弱かった(IC50 12.49μg/mlに対し28.61μg/ml)。マウス抗体での観察結果と整合して、イヌ及びネコのキメラ型形態への変換による効力の変化は最小限であった。
【0254】
上記の免疫化したイヌの単一のB細胞から同定した抗体を、これらの可変ドメイン配列を同定した後に組換え型IgGタンパク質として構築した。これらの可変ドメインをイヌ重鎖Fc(65_1アイソタイプ)に移植した結果、組換え型の完全イヌ抗体が生成された。関心対象となったのは、野生型ネコIL-31に結合する追加的なイヌ抗体を同定し、どのイヌ抗体のネコIL-31 15H05変異型との結合が減少するかを同定することであった(すなわち、15H05エピトープを対象とする)。この代替供給源(イヌvsマウス)から得られたこれらの抗体は、15H05エピトープを認識し、そのため選択対象となる異なる物理的特性を備えた抗体の多様性を高める追加的なパラトープ(IL-31タンパク質を認識する抗体の部分、CDRを含む)を提供する。
【0255】
図4は、ELISA及びBiacore両方の方法を用いて、これらの組換え型イヌ抗体の様々なタンパク質との結合において得られた結果を示している。間接ELISA法では、野生型及びネコIL-31 15H05変異型タンパク質に対する抗体結合を評価した。9つのイヌモノクローナル抗体(ZIL1、ZIL8、ZIL8、ZIL11、ZIL69、ZIL94、ZIL154、ZIL159、及びZIL171)全てが野生型ネコIL-31に結合可能であり、結合はmAb 15H05エピトープ領域の変異による影響を受けており、これらの同定に使用した最初のスクリーニング中に決定した結合表現型が正しいことが確認された。一方、11E12抗体は野生型ネコIL-31に結合し、その結合は、
図4のデータで裏付けられているように15H05エピトープ領域の変異による影響を受けなかった。結合を確認するため、イヌ、ネコ、ウマ、ヒト、ネコ15H05変異型、及びネコ11E12変異型のIL-31タンパク質を表面として用い、そして抗体の単一試験濃度を用いてbiacore分析を実施した。ELISAでの観察結果と同様に、全ての試験抗体は野生型ネコIL-31に結合した。このセクションで先に説明したデータと一致して、マウス抗体11E12及び15H05の両方がイヌ及びネコのIL-31表面に結合した。3つの追加的な抗体、ZIL69(部分的イヌ結合)、ZIL94、及びZIL159が、この二重結合特性を有することが示された。この9つの完全イヌ抗体の群からは、ZIL1及びZIL9のみがウマIL-31と交差反応した。注目すべきことに、抗体15H05は、本明細書でアッセイした全ての抗体の中でイヌ、ネコ、及びウマのIL-31に結合した唯一の抗体であり、3種にまたがるいくらかのレベルのエピトープ保存を示している。これに対し、本明細書で説明されている抗体でヒトIL-31に結合したものはない。追加的なbiacore表面を使用して、諸抗体において野生型ネコIL-31ならびに15H05エピトープの変異(15H05変異型)または11E12エピトープの変異(11E12変異型)を伴った2つのタンパク質との結合に差があることを示すELISAの観察結果を検証した。予想された通り、対照マウス抗体11E12は、15H05 IL-31変異型には結合したが、エピトープの変異により、11E12 IL-31変異型には結合しなかった。同様に、マウス15H05は、15H05変異型には結合しなかったが、11E12 IL-31変異型との結合は保持しており、これら2つの抗体が認識する別々の結合エピトープをさらに区別した。ELISAの結果と一致して、(部分的に影響を受けた)ZIL94、ZIL154、及びZIL171を除き、全ての完全イヌ抗体は15H05変異による影響を受けた。結果の相違は、2つのアッセイの方法論の違いに起因するものと考えられる。加えて、3つの抗体の結合は、11E12変異型による影響も受けることが示された(ZIL1(部分的な効果)、ZIL8、及びZIL159)。これらの結果は、これらの抗体が認識するエピトープが、IL-31タンパク質の両方の領域の変化によって影響を受けることを示すものである。まとめると、これらの結果は、抗体15H05が認識するネコIL-31タンパク質上の領域との結合を共有するイヌB細胞由来の9つの抗体のキャラクタリゼーションを支持するものである。
【0256】
1.8.マウス11E12及び15H05抗体のネコ化ならびに結合親和性の最適化
抗薬物抗体(ADA)の生成は、モノクローナル抗体を含めた任意の生物治療用タンパク質の有効性の喪失と関連する可能性がある。網羅的な文献評価により、モノクローナル抗体の種分化はmAbが免疫原性になる傾向を低減し得ることが示されているが、免疫原性の完全ヒトmAb及び非免疫原性のキメラmAbの例も見出され得る。本明細書で提供する抗IL-31モノクローナル抗体のADA形成に関連するリスクを軽減する一助とするため、ネコ化戦略が採用された。このネコ化戦略は、CDR移植に最も適切なネコ生殖系列抗体配列を同定することに基づく。可変重鎖及び軽鎖両方において全ての利用可能なネコ生殖系列配列を詳細に分析した後に、マウスmAbに対する相同性に基づいて生殖系列候補を選択し、マウスmAb前駆細胞からのCDRを使用してネイティブネコCDRを置き換えた。目的は、ネコ抗体フレームワークを用いて高い親和性及び細胞ベース活性を保持して、in vivoでの免疫原性の潜在可能性を最小限に抑えることであった。ネコ化mAbを発現させ、細胞ベースアッセイでネコ化mAbのネコIL-31に対する親和性と効力とをキャラクタリゼーションした。ネコ化抗体がIL-31への結合能力を喪失した場合、系統的な精査を行って、1)機能喪失の原因となる鎖と、2)機能喪失の原因となるフレームワークと、3)機能喪失の原因となるアミノ酸(複数可)とを同定した。
【0257】
mAb 11E12及び15H05のネコ化可変重鎖及び軽鎖に相当する合成ヌクレオチドコンストラクトを作製した。各々の可変鎖をそれぞれのネコ重鎖またはカッパ定常領域を含むプラスミド内でサブクローンした後、抗体を発現させるため、プラスミドをHEK293細胞に同時形質移入した。抗体11E12のネコ化における最初の試みは、VLフレームワーク(配列番号113;FEL_11E12_VL1)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号114;FEL_11E12_VL1)である)及び(配列番号115;FEL_11E12_VL2)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号116;FEL_11E12_VL2)である)と別個に対形成した単一のネコVHフレームワーク(配列番号111;FEL_11E12_VH1)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号112;FEL_11E12_VH1)である)の利用に焦点を絞って、それぞれネコ11E12 1.1及びネコ11E12 1.2を形成することであった。この種分化の試みにより、マウス形態の抗体と比較すると、ネコ及びイヌ両方のIL-31タンパク質に対するネコ11E12 1.1の親和性が喪失し、ネコ11E12 1.2 mAbの結合は完全に喪失した(
図2b)。これらの種分化抗体の効力を、ネコIL-31サイトカインを用いたイヌDH82及びネコFCWF4細胞アッセイで試験した。ネコ化11E12 1.1のネコIL-31に対する効力は、ネコFCWFアッセイにおいて、マウスバージョンの抗体と比較するとおよそ2倍減少した。ネコ化11E12 1.2における親和性喪失と一致して、この抗体における細胞効力の完全な喪失が観察された(
図3)。mAb 11E12オーソログのイヌ化中における過去の経験に基づき、同様の戦略をとってネコ化に対する親和性喪失の回復を試みた(Bammert, et al.に対する米国特許第8,790,651号)。ネコ11E12 VL1のネコ化フレームワーク2(FW2)領域を(配列番号73;Mu_11E12_VL)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号74;Mu_11E12_VL)である)からのマウスFW2で置き換えて、ネコ11E12 VL1 FW2を生成した。加えて、ネコVLの46位における単一置換(K46Q)を実施して、(配列番号119;FEL_11E12_VL1_K46Q)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号120;FEL_11E12_VL1_K46Q)である)を生成した。上記のVLとFel_11E12_VH1との対形成により、それぞれネコ11E12 1.1 FW2及びネコ11E12 1.1 K46Qが得られた。FW2の変更によってネコIL-31タンパク質に対するネコ11E12 1.1 FW2の親和性が回復し、その結果、マウス及びキメラ型形態と同等のKDが得られた(
図2A及び2B)。ただし、これらの変更により、イヌIL-31タンパク質に対するネコ11E12 1.1 FW2の親和性に有害な影響がもたらされた。このことは、抗体11E12におけるネコ及びイヌのサイトカイン上のこのエピトープへの結合能力の性質に明確な違いがあることを示している。ネコ11E12 1.1 K46Qの単一アミノ酸置換は、この抗体の親和性に影響を及ぼすことができなかった。抗体11E12 1.1 FW2のネコIL-31タンパク質に対する親和性が増加したことにより、イヌDH82アッセイでネコサイトカインに対する効力が増加した(
図3)。
【0258】
マウス抗体15H05に対するネコ化の試みは、合計9つのネコ化mAbにおける3つのネコVHフレームワークと3つのネコVLフレームワークとの組合せに焦点を絞った。FEL_15H05_VH1(配列番号121;FEL_15H05_VH1)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号122;FEL_15H05_VH1)である)を、(配列番号127;FEL_15H05_VL1)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号128;FEL_15H05_VL1)である)、(配列番号129;FEL_15H05_VL2)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号130;FEL_15H05_VL2)である)、及び(配列番号131;FEL_15H05_VL3)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号132;FEL_15H05_VL3)である)と組み合わせて、それぞれネコ15H05 1.1、ネコ15H05 1.2、及びネコ15H05 1.3を作成した。FEL_15H05_VH2(配列番号123;FEL_15H05_VH2)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号124;FEL_15H05_VH2)である)を、(配列番号127;FEL_15H05_VL1)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号128;FEL_15H05_VL1)である)、(配列番号129;FEL_15H05_VL2)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号130;FEL_15H05_VL2)である)、及び(配列番号131;FEL_15H05_VL3)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号132;FEL_15H05_VL3)である)と組み合わせて、それぞれネコ15H05 2.1、ネコ15H05 2.2、及びネコ15H05 2.3を作成した。FEL_15H05_VH3(配列番号125;FEL_15H05_VH3)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号126;FEL_15H05_VH3)である)を、(配列番号127;FEL_15H05_VL1)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号128;FEL_15H05_VL1)である)、(配列番号129;FEL_15H05_VL2)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号130;FEL_15H05_VL2)である)、及び(配列番号131;FEL_15H05_VL3)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号132;FEL_15H05_VL3)である)と組み合わせて、それぞれネコ15H05 3.1、ネコ15H05 3.2、及びネコ15H05 3.3を作成した。抗体11E12における観察結果と同様に、抗体15H05のネコ化の最初の試みにより、マウス15H05と比較するとネコIL-31タンパク質に対する親和性が喪失し、15H05マウスネコキメラ型と比較すると中立的影響がもたらされた(
図2A及び2C)。ネコ化抗体11E12のイヌIL-31との結合における観察結果と同様に、ネコ15H05のある特定のVHフレームワークとVLフレームワークとの組合せは、イヌIL-31に対する親和性に中立的~肯定的な影響を及ぼした(
図2C:ネコ15H05 1.1、2.2、及び3.2を参照)。
【0259】
ネコ化抗体15H05の親和性を回復する試みにおいて、各ネコ化15H05 VHをマウス15H05 VLと対形成してヘテロキメラ型抗体を生成した。FEL_15H05_VH1(配列番号121;FEL_15H05_VH1)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号122;FEL_15H05_VH1)である)をMU_15H05_VL(配列番号69;MU_15H05_VL)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号70;MU_15H05_VL)である)と組み合わせてネコ15H05 VH1マウスVLを生成した。FEL_15H05_VH2(配列番号123;FEL_15H05_VH2)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号124;FEL_15H05_VH2)である)をMU_15H05_VL(配列番号69;MU_15H05_VL)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号70;MU_15H05_VL)である)と組み合わせてネコ15H05 VH2マウスVLを生成した。FEL_15H05_VH3(配列番号125;FEL_15H05_VH3)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号126;FEL_15H05_VH3)である)をMU_15H05_VL(配列番号69;MU_15H05_VL)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号70;MU_15H05_VL)である)と組み合わせてネコ15H05 VH3マウスVLを生成した。これらのネコ化VHマウスVLヘテロキメラ型について、イヌ及びネコのIL-31に対する親和性を分析した。ネコ化15H05 VH1及びVH3をマウス15H05 VLと対形成することにより、ネコIL-31に対する親和性がマウス及びキメラ形態と同等以上に回復した。この親和性改善傾向は、イヌIL-31タンパク質に対しても観察された(
図2A及び2C)。
【0260】
親和性喪失の原因となる15H05フレームワークの位置をさらに精査するため、15H05の単一ネコ化VH(FEL_15H05_VH1)を使用して、マウス15H05 VLからの個々のフレームワーク置換と対形成した。FEL_15H05_VH1(配列番号122;FEL_15H05_VH1)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号123;FEL_15H05_VH1)である)を、FEL_15H05_VL1_FW1(配列番号133;FEL_15H05_VL1_FW1)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号134;FEL_15H05_VL1_FW1)である)、FEL_15H05_VL1_FW2(配列番号135;FEL_15H05_VL1_FW2)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号136;FEL_15H05_VL1_FW2)である)、及びFEL_15H05_VL1_FW3(配列番号137;FEL_15H05_VL1_FW3)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号138;FEL_15H05_VL1_FW3)である)と別個に組み合わせて、それぞれネコ15H05 1.1 FW1、ネコ15H05 1.1 FW2、及びネコ15H05 1.1 FW3を作成した。ネコ15H05 1.1に対するマウス15H05 FW1の置換は、ネコ及びイヌ両方のIL-31に対する親和性に有害であったが、ネコ15H05 1.1に対しマウスFW2またはFW3を置換した場合は、イヌ及びネコのIL-31に対する秀逸な親和性が達成され、両方の種においてFW2がより優れていた(
図2C)。追加的な対によるフレームワーク置換を実施して、このアプローチによる親和性調節の程度を定量した。FEL_15H05_VH1(配列番号121;FEL_15H05_VH1)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号122;FEL_15H05_VH1)である)を、FEL_15H05_VL1_FW1_2(配列番号139;FEL_15H05_VL1_FW1_FW2)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号140;FEL_15H05_VL1_FW1_FW2)である)、FEL_15H05_VL1_FW2_3(配列番号143;FEL_15H05_VL1_FW2_FW3)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号144;FEL_15H05_VL1_FW2_FW3)である)、及びFEL_15H05_VL1_FW1_3(配列番号141;FEL_15H05_VL1_FW1_FW3)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号142;FEL_15H05_VL1_FW1_FW3)である)と別個に組み合わせて、それぞれネコ15H05 1.1 FW1_2、ネコ15H05 1.1 FW2_3、及びネコ15H05 1.1 FW1_3を得た。興味深いことに、マウスFW1単独の置換は親和性に有害であったが、FW1とFW2またはFW3との組合せは、ネコ及びイヌ両方のIL-31に良好な親和性をもたらした(
図2C)。
【0261】
最後に、ネコフレームワークの復帰変異の数を最小限に抑える試みを、最も有望なネコ化VH及びVL配列の組合せから行った。このために、FEL_15H05_VH1(配列番号121;FEL_15H05_VH1)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号122;FEL_15H05_VH1)である)を、FEL_15H05_VL1_FW2_K42N(配列番号145;FEL_15H05_VL1_FW2_K42N)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号146;FEL_15H05_VL1_FW2_K42N)である)、FEL_15H05_VL1_FW2_V43I(配列番号147;FEL_15H05_VL1_FW2_V43I)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号148;FEL_15H05_VL1_FW2_V43I)である)、FEL_15H05_VL1_FW2_L46V(配列番号149;FEL_15H05_VL1_FW2_L46V)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号150;FEL_15H05_VL1_FW2_L46V)である)、FEL_15H05_VL1_FW2_Y49N(配列番号151;FEL_15H05_VL1_FW2_Y49N)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号152;FEL_15H05_VL1_FW2_Y49N)である)、及びFEL_15H05_VL1_FW2_K42N_V43I(配列番号153;FEL_15H05_VL1_FW2_K42N_V43I)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号154;FEL_15H05_VL1_FW2_K42N_V43I)である)と別個に組み合わせて、それぞれネコ15H05 1.1 K42N、ネコ15H05 1.1 V43I、ネコ15H05 1.1 L46V、ネコ15H05 1.1 Y49N、及びネコ15H05 1.1 K42N_V43Iを作成した。ネコ化15H05 VL1に対しマウスFW2フレームワーク全体を置換したところ、イヌ及びネコのIL-31に対する秀逸な親和性を備えた抗体が得られた(
図2C、ネコ15H05 1.1 FW2)が、FW2アミノ酸残基の個別の復帰変異は中立的または有害な影響を及ぼした。このことから、IL-31エピトープにCDRを配置するための最適な3次構造を維持するには、4つ全ての置換が必要であることが示される。ネコ化15H05 1.1 FW2がネコ及びイヌのIL-31に対する親和性を増加させたことにより、この抗体をさらなる課題向けに選択する。
【0262】
図5Aはマウス抗体11E12 VL配列のアラインメントを示し、先に言及したイヌ化11E12配列をネコ化バージョンと比較している。アラインメントの下に記されているドットはFel_11E12_VL1の関連する変化の位置を示しており、この変化はこの抗体のIL-31タンパク質に対する親和性を回復するために必要であった。同様に、
図5Bは、ネコ化15H05 VL(Fel_15H05_VL1)に必要な変化を示しており、この変化は、この抗体のマウス及びキメラ形態と比較したときのイヌ及びネコのIL-31に対する親和性を回復するだけでなく改善するために必要であった。
【0263】
1.9.グルタミンシンターゼ(GS)プラスミドからネコ化抗IL-31抗体を発現させる細胞系の生成
ネコ化15H05 1.1 FW2を、さらなるキャラクタリゼーション用の抗体を均質に供給する安定した細胞系を生成するための候補として選択した。細胞系産生のためのネコ化重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子を、それぞれGSプラスミドpEE 6.4及びpEE 12.4(Lonza,Basel,Switzerland)内でクローンした。得られたプラスミドを製造業者のプロトコルに従って消化させ、共にライゲーションして単一の哺乳類発現プラスミドを形成した。ZTS-927において、重鎖は、(配列番号121;FEL_15H05_VH1)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号122;FEL_15H05_VH1)である)とネコIgG重鎖定常領域(配列番号171;ネコ_HC_アレルA_wt)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号172;ネコ_HC_アレルA_wt)である)との組合せである。ZTS-927において、軽鎖は、(配列番号135;FEL-15H05-VL1_FW2)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号136;FEL-15H05-VL1_FW2)である)とネコIgG軽鎖定常領域(配列番号175;ネコ_LC_カッパ_G_マイナス)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号176;ネコ_LC_カッパ_G_マイナス)である)との組合せである。ZTS-361において、重鎖は、(配列番号121;FEL_15H05_VH1)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号122;FEL_15H05_VH1)である)とネコIgG重鎖定常領域(配列番号173;ネコ_HC_アレルA_1)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号174;ネコ_HC_アレルA_1)である)との組合せである。ZTS-361において、軽鎖は、(配列番号135;FEL-15H05-VL1_FW2)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号136;FEL-15H05-VL1_FW2)である)とネコIgG軽鎖定常領域(配列番号175;ネコ_LC_カッパ_G_マイナス)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号176;ネコ_LC_カッパ_G_マイナス)である)との組合せである。
【0264】
抗体の一過性産生を実証するため、各プラスミドをHEK293細胞の形質移入に使用し、発現を様々なサイズの培養物で行った。標準的なタンパク質精製法に従い、プロテインA親和性クロマトグラフィーを用いて条件HEK培地からタンパク質を単離した。培地をクロマトグラフィー樹脂に装填し、pHシフトによって溶出した。溶出したタンパク質は、使用前にpH調整、透析、滅菌濾過を行った。次に、ZTS-361をネコ掻痒モデルの評価に使用してin vivo有効性を評価した。
【0265】
単一のGSプラスミドから産生した抗体、ZTS-927及びZTS-361の親和性及び効力を試験した。
図2Dは、biacoreを用いたこれらの抗体の親和性評価の結果を示している。ネコIL-31に対するZTS-927及びZTS-361の親和性は、マウス及びキメラ型形態の前駆細胞マウスmAb 15H05の親和性との整合性が高い。イヌ及びネコ両方の細胞アッセイを用いて、イヌ及びネコのIL-31に対するこれら2つの抗体の効力を定量した(
図3)。以前の観察結果と整合して、両方の細胞タイプに対しイヌ形態のIL-31を使用した場合、IC50値は比例して高くなった。ネコIL-31に対するZTS-927及びZTS-361のIC50値は、キメラ型及びマウス形態の抗体に由来する値との整合性も高く、このことから単一のGSプラスミドから産生した最終ネコ化バージョンのmAb 15H05が細胞系開発に好適であることが示された。
【0266】
候補抗体を産生する安定した細胞株を生成するため、GSプラスミドを線状化してから、プラスミド骨格内の単一部位を切断する制限酵素PvuIを形質移入した。エレクトロポレーションを介してGS-CHOK1SV(クローン144E12)細胞に線状化プラスミドDNAを形質移入した。形質移入後、安定したプールを生成するため、細胞を48ウェルプレート(48WP)で平板培養した。48WPでプールが少なくとも50%コンフルエントになったら、ForteBio Octet及びプロテインAバイオセンサー(Pall ForteBio,Fremont,CA)を用いて100μl上清のIgG発現を分析した。最良の発現クローンを6ウェルプレート(6WP)にスケールアップし、次いで125mL振とうフラスコ(SF)にスケールアップした。細胞が125mLフラスコの懸濁培養に適応したら、各細胞系プールの2つのバイアルをLN保管用にバンクした。細胞系の製造はクローン性でなければならないため、96ウェル培養プレートでの限界希釈により上位3つの高発現プールをサブクローンした。クローン性を証明し、第2ラウンドの限界希釈を回避するため、単一細胞及びその後の成長の画像を取り込むMolecular Devices Clone-Select Imager(CSI)(Molecular Devices LLC,San Jose,CA)を用いて96ウェルプレートをイメージングした。クローンは、96WPにおける好結果のCSI画像、成長、及び産生に基づき選択した。
【0267】
細胞培養の成長及び生産性を評価するため、上位発現プールを125mL SF中14日間の流加バッチでさらに評価した。細胞を、プラットフォーム培地ならびにLife TechnologiesのCD CHOに4つのアミノ酸を加えたもの、独自フィードCDF v6.2、及び10%グルコースからなるフィードに播種した。14日間の流加バッチ後にプールを遠心分離し、0.20μmポリエーテルスルホン(PES)メンブレンを介し上清を濾過することによってCD CHOで産生されたmABを単離し、それから精製を行った。
【0268】
典型的な精製は、2リットルの条件培地(CHO細胞培養からのもの、0.2μm濾過済み)をMabSelect(GE healthcare、カタログ番号17-5199-02)の235mLカラムに装填することからなった。カラムは、予めPBSで平衡化した。試料は>2.5分の滞留時間で装填した。装填後、カラムをPBSで再度洗浄し、次いで25mM酢酸ナトリウム(ほぼ中性のpH)で洗浄した。カラムを25mM酢酸、pH3.6で溶出し、次いで250mM酢酸、250mM塩化ナトリウム、pH約2.2でストリッピングした。溶出及びストリップのステップ中に画分(50mL)を収集した。A280におけるUV吸光度を終始モニターした。ピーク画分をプールし、20mM酢酸ナトリウムを添加することでpHを約5.5に調整し、3回交換した緩衝液に対し透析した。透析液を収集し、滅菌濾過し、4℃で保存した。
【0269】
1.10.抗体15H05が認識するIL-31のエピトープの同定
抗体が認識するIL-31のエピトープについて知ることは、抗体がサイトカインのIL-31Ra:OSMR共受容体への結合を中和するメカニズムを理解する上で不可欠である。加えて、エピトープを知ることで、(限定されるものではないが)抗体結合親和性の最適化が可能になり、また、分析用捕捉試薬として、及び関連する焦点を絞った免疫応答を誘発するサブユニットワクチンとして非常に有用であり得るペプチドエピトープミメティック(ミモトープ)の設計が可能になる。CLIPS(Chemical Linkage of Peptides onto Scaffolds)技術(Timmerman et al.J Mol Recognit.2007;20(5):283-299)を用いたマルチステッププロセスを使用して、mAb 15H05(Pepscan,Lelystad Netherlands)のパラトープに結合可能なペプチドを同定及び最適化した。イヌ及びネコのIL-31タンパク質に対するmAb 15H05の親和性が高い(
図2、MU-15H05)ことから、いずれのIL-31種の一次配列もこの試みに関連すると考えられた。イヌIL-31タンパク質に相当するペプチドマイクロアレイライブラリーを作成し、間接ELISAを用いたmAb 15H05に結合可能なペプチドの同定に使用した。一次アミノ酸配列がIL-31上のmAb 15H05の結合領域に相当するペプチドを同定した後に、焦点を絞った完全置換分析を実施して、IL-31の一セグメントに相当するペプチドを使用し、このmAb 15H05結合領域の12個のアミノ酸の各々を各位置において19個の他の可能なアミノ酸残基で置き換えた。この分析は、mAb 15H05結合に関与するIL-31上のキーとなるアミノ酸残基を同定するために必須であり、また抗体結合の強化につながるイヌ一次配列上の置換位置についても実証した。
【0270】
抗体11E12が認識するイヌIL-31タンパク質上のアミノ酸については過去に説明されている(Bammert ,et al.に対する米国特許第8,790,651号)。この文献では、アラニンに変換したときにmAb 11E12の結合に影響を及ぼすイヌIL-31タンパク質上の位置を示すイヌIL-31タンパク質の変異分析について説明された。上記のmAb 15H05について説明した完全置換分析及び11E12の結合エピトープについての過去の知見に基づき、各抗体が認識するエピトープ上の2つのキーとなる残基をアラニンに置換することにより、ネコIL-31タンパク質の変異型形態を作成した(上記のセクション1.2で説明した変異型)。各エピトープの変異は、変異の部位を認識する抗体に従って命名した(ネイティブwtタンパク質配列に対し変異型11E12及び15H05)。
【0271】
図6Aは、変異型15H05(配列番号163)及び11E12(配列番号161)との野生型ネコIL-31(配列番号157)のアラインメントを示しており、アラニン置換が生じる位置は強調表示されている。IL-31はサイトカインのIL-6ファミリーに属し、4つのヘリックスバンドルがアップダウンアーキテクチャーを有する(CATH database,Dawson et al.2017 Nucleic Acids Res.2017 Jan 4;45(Database issue):D289-D295)。ホモロジーモデルは、ヒトIL-6構造1P9M(Boulanger et al.2003 Science.Jun 27;300(5628):2101-4)に基づき、MOEソフトウェア(Chemical Computing Group,Montreal,QC,Canada)を用いて生成した。
図6BはネコIL-31ホモロジーモデルを示しており、抗体11E12(部位1)及び15H05(部位2)の結合に関与するアミノ酸の位置が強調表示されている。各抗体の結合部位は、IL-31タンパク質上の別々の位置にあるように思われる。
【0272】
mAbs 11E12及び15H05におけるこれらのネコIL-31変異型形態への結合能力による影響を定量するため、イムノアッセイプレートに直接コーティングされた変異型を用いて間接ELISAを実行した。
図6CはこのELISAの結果を示しており、mAb 11E12及び15H05がこのアッセイ形式において野生型ネコIL-31に結合可能であることを実証している。変異型11E12が捕捉タンパク質として使用される場合、mAb 11E12の結合は非常に弱まり、mAb 15H05の結合は部分的に弱まる。イヌIL-31の11E12エピトープに対する過去の分析(Bammert et al.に対する米国特許第8,790,651号に記載)では、4つのアミノ酸残基がアラニンに変異するとmAbの結合に影響を及ぼすことが示されたため、この場合、2つの残基の変異では、このELISA形式を用いてmAb 11E12の高親和性結合を完全に除去するのに十分でない可能性がある。mAb 15H05の11E12変異型との結合がわずかに弱まるのは、15H05結合部位に影響を及ぼす2つの前面のヘリックスが移動することによる変異の翻訳効果によるものと考えられる。mAb 15H05の結合に影響を及ぼすように設計された変異(変異型15H05)は、ELISAにより、mAb 1505のこのIL-31変異型への結合能力が完全に喪失していることを示している。11E12変異型とは異なり、mAb 15H05(変異型15H05)が認識するランダムコイルの変化はmAb 11E12の結合に影響を及ぼさなかったが、これは2つのエピトープ間の相違をさらに支持するものである(
図6C)。
【0273】
1.11.biacoreを用いたmAb 15H05及び11E12の競合結合評価
mAbs 15H05及び11E12が結合するIL-31エピトープをさらにキャラクタリゼーションするため、biacoreを用いて遮断実験を行い、IL-31タンパク質を含む表面を生成してから抗体を順次加えた。
図7は、11E12または15H05の捕捉後における各抗体のIL-31との相対的結合を示している。HBS-EP(アッセイ緩衝液)と表示された列は、競合なしに単独でIL-31表面に結合する各抗体から得られた最大信号を示す。
図7Aは、マウス15H05及び11E12抗体のイヌIL-31との競合結合データを示している。これらの結果は明らかに、抗体15H05及び11E12が互いの存在下でイヌIL-31に結合可能であることを示しており、これにより、これらの抗体がタンパク質上の異なるエピトープを認識したことが示される。
図7Aに関連するセンサーグラムは、この新たに形成されたbiacore表面上でいずれの抗体の解離速度も非常に遅く、そのため、同じ抗体を加えても結合部位の追加的な占有が生じ得ないことを示している(データは示されず)。
【0274】
図7Bは、抗体15H05及び11E12のネコIL-31表面上の競合結合データを示しており、ここでもまた、認識するエピトープに重複がないことが示される。同じ抗体の存在下で追加的な抗体が結合するのは、使用される表面の質が低いことによりオフ速度が増加する結果である。オフ率の増加が見られ、
図2の新たに形成されたネコIL-31表面からのKD値と比較することができる。
【0275】
これらの結果はさらに、抗体MU-11E12と比較したときに、抗体MU-15H05に含まれるCDRが異なるエピトープを認識することを示すセクション1.10のエピトープマッピングデータを支持するものである。抗体15H05が認識するエピトープは、(Bammert, et al.に対する米国特許第8,790,651号)で説明されている抗体11E12とは異なるものであり、複数の種においてこのサイトカイン活性を中和するためのIL-31タンパク質上の新規標的である。これらの知見は、ネコIL-31ホモロジーモデル(
図6B)で説明されている結合部位の異なる空間関係を強調し、また、サイトカインのこの面が、IL-31Ra:OSMR受容体複合体との相互作用に不可欠であるという仮説を支持するものである。
【0276】
1.12.可溶性ネコIL-31共受容体(IL-31RA及びOSMR)の合成ならびにキャラクタリゼーション
IL31Ra及びOSMRサブユニットからなるヒトIL-31ヘテロマー受容体共複合体は、JAK-STAT経路のIL31媒介性細胞間活性化に必要であり、アトピー性皮膚疾患に関与していることが示された(Dillon et al.2004 Nat Immunol.Jul;5(7):752-60;Dreuw et al.2004 J Biol Chem.279:36112-36120;及びDiveu et al.2004 Eur Cytokine Netw.15:291-302)。ヒトIL-31 Raサブユニットはその後、IL-31が細胞表面受容体と接触しているときに生じる最初の結合事象として説明され、この事象は、OSMRの動員及びその後の高親和性共受容体複合体の形成にとって必須条件である(Le Saux et al.2010 J Biol Chem.Jan 29;285(5):3470-7)。本明細書では、ネコIL-31タンパク質がOSMR及びIL-31 Raの両方に独立的に結合可能であるという根拠について説明する。この観察結果は新規であり、IL-31タンパク質がどのようにIL-31Ra:OSMR共受容体と相互作用するかについての理解に対し、また、IL-31が個々のサブユニットと独立的に相互作用する際のIL-31の生物学的役割に対し、重要な意義を有する。
【0277】
IL-31がその共受容体にどのように結合するか理解できるようにするため、及び同定された抗体の阻害特性をキャラクタリゼーションするため、2つの受容体形態を合成した。個々のIL-31受容体サブユニットIL-31Ra(配列番号169;ネコ_IL31Ra_HIgG1_Fc_X1_Fn3)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号170;ネコ_IL31Ra_HIgG1_Fc_X1_Fn3)である)及びOSMR-(配列番号167;ネコ_OSMR_hIgG1_Fc)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号168;ネコ_OSMR_hIgG1_Fc)である)を、いずれもヒトIgG1 Fc融合物として構築した。ヒト相同体との相同性により、サイトカイン結合、フィブロネクチンIII、及びIg様ドメインが同定された。個々の受容体サブユニットを評価するため、OSMR及びIL-31Raの細胞外ドメイン(及び予想されるN末端近位のフィブロネクチンIIIドメイン)を、いずれもネイティブシグナルペプチドを用いてヒトIgG1 Fc融合物として生成した。全ての合成カセットをpcDNA3.1内でクローニングし、ExpiCHO系で発現させ、上記で説明されているように精製した。
【0278】
これらの受容体形態の野生型及び変異型IL-31タンパク質への結合能力を分析するため、4Cの炭酸/重炭酸緩衝液(sigma C3041-100CAP)中で終夜immulon 2HBプレート(1μg/ml)に100ulの各それぞれのタンパク質をコーティングすることにより、間接ELISAを実行した。次いで、室温で1時間、ELISAプレートをPBST中5% NFDMブロッキング緩衝液でブロックし、それから複数の濃度の各受容体コンストラクトを室温で1時間結合した。PBSTで洗浄した後、室温で1時間、マウス抗ヒトIgG1(Lifetech A10684、1:500希釈)を用いて、結合した受容体(Fc融合物)の存在を同定した。ウェルを再びPBSTで洗浄し、KPL sureblue 3,3’,5,5’-テトラ-メチルベンジジン(TMB)マイクロウェル基質で発色させた。
図8は、野生型及び変異型形態のネコIL-31タンパク質を捕捉物質として用いた、この間接ELISAの結果を示している。これらのデータは、野生型ネコIL-31がIL-31Ra及びOSMR受容体サブユニットに独立的に結合することができることを実証している。これらの観察結果は、IL-31タンパク質が最初にIL-31Raサブユニットに結合し、さらにその部位にOSMRを動員することを示した過去の報告とは対照的である。IL-31の生物学的役割はまだ判定の途上にあるため、受容体結合の動態や、アトピー性皮膚炎などの疾患でその役割が弱まることに対する潜在的な結果を理解することは、非常に重要である。このため、これらの観察結果は、IL-31のIL-31Ra及びOSMRに対する認識能力を妨害可能なエピトープに結合する抗体をキャラクタリゼーションする際に、さらなる検討を行った。
【0279】
セクション1.2では、抗体11E12及び15H05について、これらの結合部位内のキーとなるアミノ酸がアラニンに変換された変異型(それぞれ変異型11E12及び15H05)との結合が弱まることを説明している。そのため、これらの変異が個々のIL-31Ra及びOSMR受容体サブユニットへの結合能力に及ぼす影響について理解することが大きな関心対象となった。
図8は、11E12または15H05いずれかの結合部位の変異がIL-31Ra及びOSMRの結合能力を完全に破壊することを示しており、このことから、いずれの抗体も、IL-31と両方の受容体サブユニットとの相互作用に必要なエピトープに結合することが示される。結合の欠如は、変異から生じるIL-31の確認の変化に起因する可能性もあるが、これらの変異型が依然として抗体に結合可能であることから、これは該当しないことが示唆される。このキーとなる知見は、サイトカインがその共受容体を通じてシグナル伝達するのを中和し、さらにこのプロセス中にサイトカインといずれかの受容体との細胞会合を遮断するIL-31上のエピトープを認識する、抗体11E12及び15H05(ならびに誘導体)両方の能力を支持するものである。これらのデータは、IL-31を循環から除去し細胞表面または可溶性受容体形態に結合できなくすることが可能な抗体が同定されたことを支持するものである。
【0280】
1.13.ネコIL-31掻痒チャレンジモデルにおけるキメラ型抗体のin vivo評価
抗体のその標的を効果的に中和する能力は、適切な親和性を備えた標的タンパク質上の関連するエピトープへの結合と、in vivo効力への外挿が可能な細胞ベースアッセイでの効力とを調べることにより、in vitroで評価することができる。上記は、マウス前駆細胞mAb 11E12及び15H05から生成された2系列の抗体をキャラクタリゼーションするために取られたステップである。セクション1.7では、ネコ及びイヌのIL-31に対し元のマウスモノクローナル抗体と同等の親和性が得られたmAb 11E12及び15H05のマウス:ネコキメラ型形態の生成について説明している(
図2A)。また、11E12及び15H05のマウス:ネコキメラ型形態は、イヌ及びネコのマクロファージ細胞におけるネコIL-31誘導性pSTAT3シグナル伝達の阻害を示す同等のIC50値も得た(
図3)。セクション1.8のネコ化プロセス中に、マウスmAb 11E12はネコ化バージョン(ネコ11E12 1.1)に変換され、続いてイヌ及びネコのIL-31に対する親和性を喪失し(
図3)、イヌ及びネコの細胞内でのネコIL-31シグナル伝達に対する効力を喪失した(
図3)。セクション1.8で説明したネコ化11E12及び15H05抗体を最適化する前に、関心対象となったのは、ネコ曝露モデルにおいてこれらの予備的なネコ化及びキメラ型形態のネコIL-31掻痒活性を中和する能力について理解することであった。関心対象となったのは、これらの異なる抗体が掻痒の中和に及ぼす薬力学的効果、そして有効性に影響を及ぼし得る親和性、細胞効力、またはエピトープ認識との任意の相関を理解することであった。掻痒チャレンジモデルにおいてin vivo有効性と相関する一連の細胞効力を先に進めることで、in vitroアッセイを用いてさらなる必要な最適化を予測できると考えられた。
【0281】
マウス:ネコ11E12キメラ型、マウス:ネコ15H05キメラ型、及びネコ化11E12(ネコ11E12 1.1)の予備的有効性を試験するため、ネコIL-31誘導性掻痒モデルを開発した。0.5μg/kgのネコIL-31(配列番号159;ネコ_IL-31_E_coli)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号160;ネコ_IL-31_E_coli)である)の静脈内投与後、ネコは、(限定されるものではないが)舐める、噛む、引っ掻く、及び頭または身体を揺らす行動を含めた一過性の掻痒行動を表現する。ケージに身体を擦り付けることは掻痒活動とみなさなかった。掻痒の観察は、IL-31タンパク質の投与前の30分間及び投与後の1時間、訓練を受けた研究者によって行われる。この研究において、ネコIL-31によるベースラインチャレンジは、抗体を投与する1ヵ月前まで実施した。ゼロ日目に、0.5mg/kg抗体用量を0.5μg/kgのネコIL-31と室温で60分間合わせた後、この予め結合した複合体を各動物に注射した。対照には「mAbなし」対照を含めた。mAbの用量は、サイトカインに対する総モル過剰の抗体に相当する。掻痒活動は、0、7、及び21日目に説明通りにモニターした。
図9の結果は、プラセボ対照と比較したときに、0、7、及び21日目のマウス:ネコ15H05キメラ型の掻痒スコアが有意に改善した(p<0.05)ことを示している。マウス:ネコ11E12キメラ型は、ゼロ日目に初期的な有効性の傾向を示したが、ビヒクルプラセボと比較したときに、いかなる時点においても掻痒の有意な低減は達成されなかった。ネコ11E12 1.1はゼロ日目に掻痒を低減せず、ビヒクルプラセボと比較したときに有効性の傾向を示さなかったため、7日目及び21日目のIL-31チャレンジは実施しなかった。
【0282】
まとめると、これらの結果は、IL-31によって誘導されるネコの掻痒行動を防止することにおける11E12 1.1の有効性欠如により、これらの抗体の活性間で明確な線引きがされたことを示すものである。おそらくは、ネコ11E12 1.1の親和性及び効力が喪失した結果、in vivoでの有効性欠如が生じたと考えられる。マウス:ネコ11E12キメラ型及びマウス:ネコ15H05キメラ型の有効性の結果を比較すると、区別はより微妙となる。両mAbのキメラ型形態のKD値はそれらのマウス前駆細胞と同等であり、ネコ及びイヌ両方のIL-31に対するマウス:ネコ11E12の親和性がわずかに優れている(
図2A)。ただし、ネコFCWF4細胞内のネコIL-31誘導性pSTAT3シグナル伝達に対するマウス:ネコ15H05キメラ型のIC50はマウス:ネコ11E12キメラ型のおよそ2倍高い(
図3)ため、この親和性の増加は、直接的に効力の増加に変換されるわけではない。これらのデータは、抗体15H05 CDRがネコIL-31を認識する方法が、サイトカインのその共受容体を介したシグナル伝達能力を中和することにおいて優れており、そのためネコの掻痒の遮断においてもより有効となることを示唆している。これらの細胞アッセイで観察されたIC50の差により、in vivoでの効力を予測し、一連の抗体内及び一連の抗体間のエピトープ認識の微妙な差を識別するための有望な手段がもたらされる。
【0283】
1.14.ネコ掻痒チャレンジモデルにおけるネコ化15H05抗IL-31抗体の有効性のin vivo評価
上記のマウス:ネコ15H05キメラ型を用いた肯定的な有効性の結果に基づき、ネコ化15H05の親和性及び効力を増加させるためのさらなる作業を行った(上記のセクション1.8で説明)。ネコ15H05 1.1抗体内のネコ可変軽鎖フレームワークを系統的に置換することにより、マウス15H05と比較してネコ及びイヌ両方のIL-31に対する親和性が増加したネコ15H05 1.1 FW2の同定につながる(
図2)。ネコ15H05 1.1 FW2の重鎖及び軽鎖を単一のプラスミド内で組み合わせることにより、HEK及びCHO発現系からの産生後にZTS-927及びZTS-361抗体が形成される。単一のプラスミドからの発現から生じた両抗体の親和性及び効力は、それぞれ
図2及び3にも記載されている。
【0284】
IL-31誘導性in vivoネコモデルにおいて、完全ネコ化抗ネコIL-31 mAb ZTS-361の有効性を、掻痒行動に対する当該抗体の中和能力について評価した。
図10Aは、T01のビヒクルプラセボ群及びT02の抗体ZTS-361群における-7日目から28日目まで(ゼロ日目をT02群への抗体投与日とする)のベースラインチャレンジ前掻痒行動を示している。このグラフに示されているように、IL-31チャレンジ前のT01群及びT02群の両方でスコア化した掻痒行動の分散はほとんど変化せず、掻痒事象の回数は30分の観察期間内に0~10で観察された。この研究は、ネコIL-31と合わせて予め結合した複合体を生成せずに4mg/kgのZTS-361をゼロ日目のネコに皮下投与した点において、上記のセクション1.13で説明した予備的ネコチャレンジモデルとは異なった。抗体が循環するIL-31に結合しこれを中和するには十分な曝露を必要とする初回IL-31チャレンジ前の7日間に抗体ZTS-361が血液循環するため、この研究はより厳密な有効性評価となる。
【0285】
この研究では、7、21、28日目にIL-31タンパク質0.5μg/kgの静脈内チャレンジ後の1時間、掻痒行動を評価した。
図10Bは抗体ZTS-361の有効性を示しており、IL-31チャレンジ後、ビヒクルプラセボ対照と比較したときの掻痒の有意な低減が7日目(p<.0001)、21日目(p<0.0027)、及び28日目(p<0.0238)に実証されている。このチャレンジモデルからのデータは、マウス:ネコ15H05キメラ型の有効性を実証する過去の観察結果を支持し、また、15H05 CDRが認識するネコIL-31上のエピトープにおける細胞ベースの効力及び関連性を支持するものである。これらのデータはさらに、抗体ZTS-361のネコIL-31によって誘導される掻痒に対する中和能力を支持し、この抗体がネコにおけるアトピー性皮膚炎を含めたIL-31媒介性疾患の治療薬として機能し得ることを示唆している。
【0286】
クライアント所有の動物におけるIL-31の血漿レベルを調べた最近のデータでは、正常な実験用ビーグル犬と比較して、アトピー性及びアレルギー性皮膚炎を有するイヌの間で循環中のサイトカイン量が増加していることが示されている(
図11A)。最近の研究は、米国内のいくつかの異なる地理的地域からのアレルギー性皮膚炎(AD)の推定診断を受けたネコの血清中IL-31レベルを定量するために実施した。
図11Bはこの評価からの結果を示しており、アトピー性及びアレルギー性皮膚炎を有するイヌと同様に、この推定診断によって調査したネコ73例の平均循環IL-31レベルは8799fg/mlであり、これに対し同齢の対照ネコ17例は205fg/mlであったことが示されている。過去のモデル開発研究におけるイヌIL-31のレベルを理解するため、イヌIL-31の薬物動態プロファイルを、1.75μg/kg皮下投与した後のイヌで分析した。
図11Cはピーク血漿レベルを示しており、最初の1時間以内に最大の約30ng/mlに達し、3時間時に約400pg/mlの維持レベルを示している。これらの知見に基づけば、このネコモデルで使用した0.5μg/kgのネコIL-31を静脈内投与すると、イヌ及びネコの自然発生的疾患状態で観察される循環量よりもはるかに過剰な循環量になると考えるのが妥当である。
【0287】
2.実施例2:ワクチン及び診断におけるIL-31ミモトープのキャラクタリゼーション及び使用
2.1. 抗体15H05結合に関与するイヌIL-31上のアミノ酸残基
本出願のセクション1.10で説明されているように、
図12で囲まれているアミノ酸を包含するイヌIL-31タンパク質の完全置換スキャンを実施した。全長タンパク質において、このIL-31セクション内で説明されている各位置を他の可能な19個のアミノ酸のうちの1個で個別に置き換え、間接ELISAを用いて抗体15H05の結合を評価した。結合に影響を及ぼさないこれらの置換を行ったところ、ELISAシグナルはIL-31タンパク質と同等(またはそれ以上)となったが、抗体結合に影響を及ぼす置換を行ったところ、アッセイのシグナルは低く(またはゼロに)なった。
図12で詳述されているように、イヌIL-31上のいくつかの位置は、示されたアミノ酸のある特定の置換(配列番号155;124、125、129、及び132~135位)を許容したが、その他の置換は許容しなかった(配列番号155;126、127、128、130、及び131位)。比較のため、ネコ(配列番号157)、ウマ(配列番号165)、及びヒトIL-31(配列番号181)上の対応する領域が示されている。イヌIL-31における変異の観察結果を、他の種に対し推定して相同ペプチドを設計することができる。イヌIL-31上のエピトープ領域をこのように微細に位置マッピングしたことにより、抗体15H05が認識するIL-31タンパク質上の結合部位を模倣する線状及び拘束性両方のペプチドの設計が可能になった。セクション1.10で説明されているネコIL-31モデル(
図6B)と併せたこれらの結果は、mAb 15H05が認識するエピトープが、サイトカインの第4のヘリックスドメインにつながるランダムコイルの収束を形成するアミノ酸の連続的な領域であることを示すものである。このエピトープを表現することによって、線状及び拘束性両方のペプチド表現に対するmAb 15H05の結合が可能になり、拘束性形態に関連する親和性が高くなる。上記の変異データ(セクション1.12)は、共受容体複合体との結合に関するIL-31タンパク質の表面上のこのエピトープ(及びBammert et al.に対する米国特許第US8,790,651号で過去に説明されている11E12エピトープ)の重要な位置付けをさらに強調するものである。
【0288】
2.2.抗体15H05が認識するIL-31上のエピトープを表現するペプチドミメティックのキャラクタリゼーション
前述のように、ペプチドエピトープミメティック(ミモトープ)の設計は、IL-31上の中和エピトープに向けられた動物の抗体を生成するために、分析用捕捉試薬として、及び関連する焦点を絞った免疫応答を誘発するサブユニットワクチンとして、非常に有用である。この目標に向けて、イヌ及びネコのペプチドを設計し、抗体ZTS-927に対する親和性と、ネコFCFW4細胞上のIL-31媒介性受容体シグナル伝達を阻害する抗体ZTS-361の能力を遮断する能力とについてキャラクタリゼーションを行った。抗体ZTS-927及びZTS-361(いずれもマウス抗体15H05からのCDRを含む)の構築については、上記のセクション1.9.で説明されている。ペプチドZTS-561は、配列番号155の121~138位に対応するアミノ酸配列N-TEISVPADTFERKSFILT-Cを含み、位置番号132におけるシステイン(C)からアルギニン(R)への置換を伴う。また、ペプチドZTS-561は、遊離チオール基を用いた結合体化化学を促進するためにN及びC末端側システインも含む。ペプチドZTS-562は、配列番号155の122~135位に対応するアミノ酸配列N-EISVPADTFERKSF-Cを含み、位置番号132におけるシステイン(C)からアルギニン(R)への置換を伴う。また、ペプチドZTS-562は、遊離チオール基を用いた結合体化化学を促進するためにN及びC末端側システインも含む。ペプチドZTS-563は、配列番号157の121~138位に対応するアミノ酸配列N-AKVSMPADNFERKNFILT-Cを含み、位置番号138におけるアラニン(A)からスレオニン(T)への置換を伴う。また、ペプチドZTS-563は、遊離チオール基を用いた結合体化化学を促進するためにN及びC末端側システインも含む。ペプチドZTS-564は、配列番号155の121~138位に対応するアミノ酸配列N-TEISVPADTFERKSFILT-Cを含む。また、ペプチドZTS-564は、遊離チオール基を用いた結合体化化学を促進するためにN及びC末端側システインも含む。CLIPS技術(Timmerman et al.J Mol Recognit.2007;20(5):283-299)を用いたマルチステッププロセスを使用して、mAb 15H05(Pepscan,Lelystad Netherlands)のパラトープに結合可能なこれらの4つのペプチドを同定及び最適化した。免疫原を生成する目的で、これらの4つのペプチド(
図13Aに示す)を、標準的な架橋化学を用いて、ジフテリア毒素(CRM197)の不活性変異型(無毒性)形態である担体タンパク質と独立的に結合体化させた。親和性評価のため、各ペプチドを独立的にbiacore表面に固定化し、ネコ化抗IL-31 15H05 mAb(ZTS-927)のKDを定量した(
図13B)。4つのペプチド全てがナノモルの親和性でZTS-927に結合した。このことは、これらが全長IL-31上の結合部位を綿密に表現していることを示すものである。各ペプチドの効力を評価するため、結合体化ペプチドまたは非結合体化ペプチドの用量滴定を、0.2μM(6.5μg/ml)のmAb ZTS-361と共に37℃で1時間共インキュベートし、その後にネコIL-31をFCWF-4(ネコマクロファージ様細胞)に添加した。IC50値は、ペプチド濃度の増加(x軸)と、ネコFCWF-4マクロファージ内のIL-31タンパク質媒介性STAT3リン酸化のmAb ZTS-361阻害に結合しこれを遮断するペプチドの能力として定義されるパーセント効果(y軸)とを用いて計算した。ペプチドZTS-564は溶液中の溶解度が低減しており、そのために結合体化が非効率になり、エピトープ密度が低くなり、効力が不十分だった可能性がある。ペプチドZTS-561は、結合体形態では効力が不十分だったものの、非結合体化形態では良好な効力を維持した(IC60約1.7μg/ml)。ZTS-562及びZTS-563はいずれも非結合体化の場合に優れた効力を示し、それぞれIC50は1.046μg/ml及び1.742μg/mlであった。結合体化した後の効力はおよそ3倍減少し、ZTS-562及びZTS-563のIC50はそれぞれ3.024μg/ml及び3.384μg/mlとなった(
図13B)。mAb ZTS-361のIL-31タンパク質への高親和性結合を遮断するこれらのペプチドの能力は非常に有望であり、IL-31上の関連するエピトープのエピトープミメティック(さらにIL-31 15H05ミモトープと称される)としての有用性を支持するさらなる証拠が得られた。これらのIL-31 15H05ミモトープに対し、抗IL-31免疫応答を誘発する免疫原としての有用性をさらに調べた。
【0289】
2.3.IL-31 15H05イヌ及びネコのミモトープならびに全長ネコIL-31タンパク質でビーグル犬を免疫化した後のIL-31に対する血清力価を生成するための試験設計
免疫原性試験を行って、CRM-197結合体化IL-31 15H05ミモトープにおける、抗体15H05が結合し、サイトカインのIL-31Ra:OSMR共受容体活性化能力を中和するIL-31タンパク質上の関連領域に向けて駆動されるエピトープ特異的免疫応答を生成する能力を評価した。試験設計を
図14に示す。純血種のオスビーグル犬に、ZA-01をアジュバント添加した結合体化IL-31 15H05ミモトープを皮下投与した。下の図表は、群ごとの実験設計を示している。ZA-01アジュバントCRM-197のみ(T01)及びZA-01中のCRM-197結合体化ネコIL-31(配列番号159;ネコ_IL-31_E_coli)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号160;ネコ_IL-31_E_coli)である)(T02)を含むものを対照群に含めた。10μg/用量の各アジュバント添加ミモトープまたは対照を、0、28、及び56日目に皮下投与した(20μg/ml溶液中の0.5ml)。血清用の血液は、0日目(投与前)、7、12、28日目(投与前)、35、42、49、56日目(投与前)、63、70、77、及び84日目に採取した。加えて、35日目及び84日目に、各動物からおよそ40mlの血液をリチウムヘパリンチューブに収集し、標準的な方法を用いてPBMC単離用に処理した。PBMCを単離後、抗原特異的B細胞のさらなる評価を行うまで凍結保存した。
【0290】
2.4.IL-31 15H05イヌ及びネコのミモトープならびに全長ネコIL-31タンパク質をイヌにワクチン接種した後に生成された血清力価
上記のセクション2.3に示された各試験日の血清力価を各動物に対し評価した。力価は、全長IL-31タンパク質をそれぞれのアッセイの捕捉材料として使用する間接ELISAを用いて定量した。各試験群からの血清に対し、ネコ、ネコ15H05変異型、イヌ、ウマ、及びヒトのIL-31タンパク質への結合をアッセイした。目的は、ネコIL-31タンパク質(配列番号159;ネコ_IL-31_E_coli)または15H05ペプチドミモトープが、相互に様々なアミノ酸配列同一性を有する複数種のIL-31(
図1A)に対し誘発する免疫応答を理解することであった。処置群2(全長ネコIL-31 CRM)は、タンパク質配列全体にまたがる複数のエピトープに対する適応免疫応答を表す。完全タンパク質を免疫原として使用すると、IL-31の生体活性に対し中和性である抗体も非中和性である抗体も生成される。IL-31シグナル伝達に対する中和抗体の同定について説明している過去のマウス研究では、このような中和抗体のパーセンテージが小さいことを示しており、そのため、全長タンパク質に対するポリクローナル応答の大部分は非中和タイプのものとなる(Bammert, et al.に対するUS8790651)。ワクチンのアプローチとしては、IL-31に対する非中和抗体が生成されることで安全性及び有効性に悪影響が及ぶ恐れがある。非中和抗体により、抗体サイトカイン複合体が結合するために循環中の生体活性IL-31の量が増加する可能性がある。このような複合体は、IL-31の単量体形態または凝集形態が循環中に存在する可能性をもたらし、それにより、IL-31の受容体結合部分がIL-31:OSMR共受容体と相互作用する可能性が生じ得る。循環中のIL-31の増加に起因するpSTATシグナル伝達の増加により、アトピー性皮膚炎のような疾患状態の掻痒活性が悪化する(Gonzales et al.Vet Dermatol.2013 Feb;24(1):48-53.e11-2)。
【0291】
図15A~Eは、それぞれのIL-31タンパク質に対する平均力価の結果を処置群別に示しており、血清を採取した各日の応答を示している。生じ得る交差反応性抗体応答(CRAR)の程度を理解するため、複数種のタンパク質を用いてIL-31の血清力価を調べた。各血清試料に対し試験した最大希釈率は1:50,000であり、そのため力価がこの値を超えた場合は50,000とした。明快性のため、以下の図面の説明は、捕捉ELISAに使用した各IL-31タンパク質に対する個別の処置群の応答に従って進める。
【0292】
全長ネコIL-31をワクチン接種したイヌ(T02)の場合、相同体間の同一性パーセントが高いことを考慮して、生成したポリクローナル血清が複数の種に結合することが予想された。
図15Aは、ネコIL-31に結合するイヌ抗体の生成された力価を示している。T02群を分析すると、3回目の投与後に全長ネコIL-31タンパク質に対し中程度の持続的な抗体応答が生成され、84日目の試験終了まで応答が持続したことが示される。ネコ15H05変異型タンパク質(配列番号163;ネコ_IL31_15H05_変異型)に対するT02群の応答について検討すると、同様のプロファイルが見られ、力価が63、70、及び77日目にさらに上昇している(
図15B)。
図15Cは、イヌIL-31に対する力価を示している。T02群からの力価を見る際には、ワクチン接種したイヌがイヌIL-31タンパク質に対しCRARをマウントした程度を調べる。ネコIL-31 CRMの3回目投与前には、応答は観察されなかった。56日目の3回目投与後、63~77日目に一過性のCRARが観察することができ、これは84日目までにベースライン付近に戻っている。抗イヌ応答の大きさは抗ネコ応答に類似していたが、持続時間はより短かった。興味深いことに、ウマ及びヒトIL-31に対するCRARはそれぞれ無視できる程度にとどまった(
図15D及びE、ヒトにおける63及び84日目)。要約すると、ネコIL-31 CRMに対するイヌの免疫応答がネコIL-31タンパク質自体に対し最もロバストかつ持続的であった。ネコ及びイヌIL-31は、互いに対する76%のアミノ酸同一性を共有しており、これは、CRARがイヌタンパク質に生じる上で十分に高いレベルであるように思われる。ウマ及びヒトIL-31のネコに対する同一性はそれぞれ57%及び49%であり、ヒトのタンパク質力価の場合に生じるCRARはほんのわずかである。
【0293】
IL-31 15H05ミモトープZTS-561は、抗体15H05が認識するイヌIL-31上の結合部位を表す。ZTS-561 CRMをワクチン接種したイヌからの抗体応答は、
図15A~EでT03として説明されている。ここでの目的は、サイトカインとその受容体との相互作用に関与することが知られているIL-31上のこの特定の領域に対する抗体応答を評価することであった。免疫応答を特定のエピトープに集中させることで、抗体が確実にタンパク質上の1つの領域に向けられ、その結果その生物学的活性が中和される。ZTS-561 CRMは拘束性の20-merであり、VL(配列番号69;MU_15H05_VL)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号70;MU_15H05_VL)である)と対形成されたマウス抗体15H05(配列番号67;MU_15H05_VH)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号68;MU_15H05_VH)である)と同一のCDRを有する抗体が認識するイヌIL-31タンパク質の部分を表す。ミモトープZTS-561は、試験全体において(
図15A)(ネコIL-31 15H05変異型に対する試験(
図15B)を含む)、強力な抗ネコIL-31応答をもたらさなかった。これとは対照的に、イヌIL-31タンパク質に対しては、ZTS-561 CRMの場合のイヌの免疫応答は、2回目の注射後の35日目から非常に強力であり、84日目の試験終了まで持続した(
図15C)。ZTS-561によって誘発されたCRARは、ウマIL-31に対しては無視できる程度であり、ヒトに対しては試験56日目にわずかな反応しか観察されなかった(
図15D及びE)。興味深いことには、タンパク質のこの領域でネコ及びイヌのタンパク質が高度な同一性を共有している(
図1)にもかかわらず、イヌ15H05ミモトープをイヌにワクチン接種した後は、イヌIL-31タンパク質に種特異的免疫応答が向けられた。
【0294】
ZTS-562 CRMは拘束性の16-merのZTS-561短縮バージョンであり、これもまた、VL(配列番号69;MU_15H05_VL)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号70;MU_15H05_VL)である)と対形成されたマウス抗体15H05(配列番号67;MU_15H05_VH)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号68;MU_15H05_VH)である)と同一のCDRを有する抗体が認識するイヌIL-31タンパク質の部分を表す。ZTS-562に対するイヌの応答についてのデータは、
図15A~EのT04群として示されている。興味深いことには、この短いバージョンによって誘発されたCRARはより顕著であり、35~70日目まで中程度の抗ネコ力価が得られた(
図15A)。また、変異型15H05 IL-31タンパク質に対しても35~63日目にいくらかの応答が観察された(
図15B)。このミモトープによって誘発された抗イヌIL-31応答は、2回目投与後の35日目から試験終了の84日目まで持続した。イヌペプチドZTS-561 CRMにおける他の結果と同様に、ZTS-562 CRMのCRARは、ウマ及びヒトタンパク質の場合には認められなかった。
【0295】
ZTS-563 CRMは拘束性の18-merであり、VL(配列番号69;MU_15H05_VL)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号70;MU_15H05_VL)である)と対形成されたマウス抗体15H05(配列番号67;MU_15H05_VH)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号68;MU_15H05_VH)である)と同一のCDRを有する抗体が認識するネコIL-31タンパク質の部分を表す唯一のミモトープである。ZTS-563に対するイヌの応答についてのデータは、
図15A~EのT05群として示されている。ミモトープに対する種特異的反応について先に観察された結果と同様に、ネコミモトープ(ZTS-563)は、イヌにおいてネコ特異的な抗IL31応答を誘発した。
図15Aは、ZTS-563のワクチン接種に対する抗ネコIL-31力価応答が、35日目に1:50,000超に達して77日目までこのレベルを維持し、84日目に中程度に低下したことを示している。T05(ZTS-563)処置群を
図15Aと15Bとの間で比較すると、ネコIL-31とネコIL-31 15H05変異型との間の力価の差が明確に分かる。(野生型タンパク質と比較した場合の)変異型タンパク質に対する力価の時間依存的減少は、免疫応答のかなりの部分が、ミモトープZTS-563によって表されるタンパク質の非常に特定的な部分に向けられていることを示すものである。注目すべきことには、抗イヌIL-31応答は中程度から低いものであった。これは、2つの種のアミノ酸配列の微妙な違いに対し、イヌ免疫系が生成する種特異的応答をさらに支持するものである。ZTS-563のワクチン接種は、イヌにおいてウマのIL-31タンパク質に対しCRARを生成した唯一のミモトープである。これらの観察結果は、ミモトープ配列の微妙な変化が種特異性をもたらす可能性があり、また種間の免疫原性応答も付与する可能性があることを示している。これらの特性を理解することは、この技術を用いて単一種または複数種で使用するためのIL-31指向性ワクチンを設計する上で有益である。
【0296】
最後はZTS-564 CRMであり、これはZTS-561と同一の拘束性18-merであるが、ただし代替的リンカーmT2bを利用している(
図15A)。ZTS-564 CRMは、VL(配列番号69;MU_15H05_VL)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号70;MU_15H05_VL)である)と対形成されたマウス抗体15H05(配列番号67;MU_15H05_VH)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号68;MU_15H05_VH)である)と同一のCDRを有する抗体が認識するイヌIL-31タンパク質の部分を表す。ZTS-564に対するイヌの応答についてのデータは、
図15A~EのT06群として示されている。他の観察結果と同様に、このミモトープによって誘発されたイヌの抗ネコIL-31応答は、ほとんどまたは全く認められなかった(
図15A及び15B)。ZTS-564によって生成された抗イヌIL-31応答は非常にロバストであった。
図15Cは、本試験における全ての処置群を示しており、T06(ZTS-564)は、単回投与後にイヌIL-31に対する免疫応答を生成した唯一の群である。2回目及び3回目の投与後に生成された抗イヌIL-31力価は、35日目から試験終了の84日目まで最大のアッセイ応答(1:50000超)をもたらした。ウマIL-31に対するCRARは観察されなかったが、このミモトープでは、治療群の中で唯一、ヒトIL-31に対する一貫した応答が観察された。注目すべきことは、リンカーの化学的性質におけるこのような微妙な違いや、場合によってはmT2bリンカーのより定義された制約によって、頻回投与の必要を軽減する可能性を秘めたより正確な指向性の抗IL-31応答がもたらされることである。
【0297】
この試験からのデータは、中和性抗IL-31抗体15H05の結合部位を表すペプチドミメティックが動物における免疫応答を誘発可能であり、また、この免疫応答が抗体15H05のCDRが認識するエピトープに対し向けられることを示している。これらのデータから、組換えIL-31共受容体を用いたこの抗血清のさらなる特性評価を使用して、このポリクローナル応答中に生成されるIL-31中和画分を定義することができると考えられる。これらの結果はさらに、アトピー性皮膚炎のようなIL-31媒介性障害に対するワクチンとしてのこのような使用アプローチの有用性を示唆する。
【0298】
2.5.IL-31 15H05ミモトープ免疫化ビーグル犬の形質細胞から単離した個別B細胞からのIL-31中和抗体の同定
上記のように、試験の35及び84日目にPBMCを分離する目的で血液を採取した。ロバストな15H05エピトープ指向性応答が見られた(
図15A及び15B)ことから、ZTS-563 CRM(ネコミモトープ)をワクチン接種したT05イヌ1頭からのPBMCを使用して、抗体陽性B細胞のさらなる評価を行った。ビーズに結合させた抗イヌIgG Fc抗体を用いて、活性化メモリーB細胞に対し、抗体を分泌する細胞をスクリーニングした。同時に、分泌されたIgGに対し、野生型ネコIL-31に結合する能力及びネコIL-31 15H05変異型に結合する能力を評価した。これらの一次スクリーニングの結果によって、このPBMC細胞集団から7つのヒットを選択する。これらの7つのヒットのうち、3つは15H05変異型に結合しなかった。このことは、これらのB細胞が、IL-31 15H05ミモトープZTS-563で免疫化した結果として15H05エピトープを最も綿密に認識する抗体を作製していることを示すものである(データは示されず)。これらの7つのヒットに対する可変重鎖及び軽鎖をシークエンシングした後、本明細書で先に説明したように、組換え型完全イヌバージョンを構築し、HEK細胞内で発現させ、精製した。これらの7つの組換え型イヌIgGの再スクリーニングによって、ネコIL-31タンパク質への結合を保持した1つのヒット(ZIL1)のみが得られた(
図4)。さらに、ELISA及びBiacore法を使用したところ、ZIL1のIL-31 15H05変異型への結合は減少しており、このことから、この抗体が抗体15H05としての共通のエピトープ領域に結合することが示される。セクション1.6及び
図4(ZIL8~ZIL171)におけるイヌB細胞に直接由来するさらなるヒットは、全長ネコIL-31で免疫化したイヌからのもの、及び本明細書で先に説明されている他の組織源からのものであった。ZIL1抗体のみが、ペプチドミモトープのワクチン接種後のPBMCに由来するものであった。
【0299】
これらの発見の重要な側面は、IL-31タンパク質からのペプチドミモトープで免疫化した後に、イヌの血液循環中でmAb 15H05エピトープ特異的抗体を分泌するB細胞を同定可能であることである。これらの結果から、抗体15H05の阻害作用の様式に関連することが知られているIL-31のエピトープ領域を模倣するペプチドを使用することの妥当性が確認される。mAb 15H05に由来するCDRを有する抗体は、in vivoでIL-31媒介性掻痒を防止可能であるため、これらの結果は、アトピー性皮膚炎のようなIL-31媒介性疾患を防止するためのワクチンアプローチとしての、エピトープに焦点を絞った免疫応答を生成するように設計されたミメティックによる免疫化の概念をさらに支持するものである。
【0300】
2.6.抗体15H05及びその誘導体の同一性及び効力を測定するための捕捉試薬としてのIL-31 15H05ミモトープの使用
IL-31 15H05ミモトープは、マウス前駆細胞mAb 15H05からのCDRが認識するIL-31タンパク質上の結合部位を表す。前述のように、製造全体にわたって抗体産生プロセスをモニターするには、ELISA(またはその他の)アッセイ形式で使用するためのこのような試薬を有することが望ましい。本明細書では、説明されているこのようなミモトープの有用性は、抗IL-31抗体の生産ロットを行う際に、生産された抗体の同一性及び量を検証するための分析アッセイでペプチドミモトープを使用するといった有用性であると考えられる。
【0301】
2.7.抗体レベルを測定するための、または宿主種のIL-31レベルを定量するための診断法としてのIL-31 15H05ミモトープの使用
本明細書ではさらに、説明されているペプチドミモトープは、アトピー性皮膚炎のようなIL-31媒介性障害に対する治療薬で治療した後の宿主における循環抗体の量を測定するための分析アッセイ試薬として使用されることが考えられる。動物からの体液を、固体表面に結合しているミモトープに直接添加し、次いで適切な二次検出試薬を添加して、抗体のレベルを定量化する。加えて、ミモトープを使用して、アッセイで検出するために標識された抗体を捕捉するというアッセイ設計がここでは考えられる。この捕捉された抗体は、結合したミモトープに対し、宿主種のネイティブ循環IL-31の親和性よりも低い親和性を有すると考えられる。この実施形態において、宿主種に由来する液のインキュベートは、固体表面に繋留した標識抗体:ミモトープ複合体と共にインキュベートされる。宿主種に由来する試験液中にIL-31が存在すれば抗体に対する親和性がより高いため、標識抗体は固体表面から遊離し、洗浄ステップ中に除去され得る。したがって、試験液中のIL-31レベルは、ミモトープ結合表面に現れるシグナルの欠如と相関する可能性がある。このようなアッセイは、診断試験としての使用のための研究または臨床設定でIL-31を測定するのに有用であると考えられている。
【0302】
2.8.IL-31ミモトープ及び全長イヌIL-31タンパク質でビーグル犬を免疫化した後のIL-31に対する血清力価
セクション2.3で説明されている試験設計のようにして、純血種の去勢オスビーグル犬を用いて第2の血清学試験を実施し、ただしこの試験では異なるミモトープを比較した。純血種のオスビーグル犬に、ZA-01でアジュバント添加した結合体化IL-31ミモトープを皮下投与した。ZA-01中のCRM-197結合体化イヌIL-31(配列番号155;イヌ_IL-31)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号156;イヌ_IL-31)である)(T01)を含むものを対照群に含めた。10μg/用量の各アジュバント添加ミモトープまたは対照を、0、28、及び56日目に皮下投与した(20μg/ml溶液中の0.5ml)。血清用の血液は、-1、0日目(投与前)、14、28日目(投与前)、42、56日目(投与前)、70、及び84日目に採取した。加えて、-1、35、及び63日目に、各動物からおよそ40mlの血液をリチウムヘパリンチューブに収集し、標準的な方法を用いてPBMC単離用に処理した。PBMCを単離後、抗原特異的B細胞のさらなる評価を行うまで凍結保存した。
【0303】
処置群1(全長イヌIL-31 CRM)は、全長ネコタンパク質を用いたセクション2.4で説明されている原理的説明のように、タンパク質配列全体にまたがる複数のエピトープに対する適応免疫応答を表す。
図16Aは、試験処置群の概要を説明する表を示している。T01に関して説明されている全長タンパク質に加えて、イヌ(T02、ZTS-420)及びヒト(T03、ZTS-421)上の15H05エピトープを表す2つのミモトープを使用した。ZTS-420は、ネコ血清学試験で先に説明したZTS-561に類似しているが、ZTS-420は、ZTS-561に見られるmT2aリンカーと比較して、ペプチドのN末端及びC末端のシステインによって形成されるジスルフィド結合によって拘束されている。ZTS-421は、ヒトIL-31タンパク質(配列番号181;ヒト_IL-31)上の相同領域であり、
図13Aで説明されているmT2bリンカーによるN末端及びC末端の連結によって拘束されている。抗体15H05の結合に関与するキーとなるアミノ酸配列に対する言及は、
図12で見いだすことができる。イヌにおけるIL-31媒介性pSTATシグナル伝達及びIL-31媒介性掻痒を中和することが知られている(Bammert, et al.に対するUS8790651)2つの抗体を用いて、先に説明したイヌIL-31上のキーとなる抗体結合領域における免疫原性の可能性を検討するために、第4の群を含めた。ネコIL-31上のこの領域は、
図6Bで示されているホモロジーモデルで強調表示されている。IL-31のモデルは、ヘリックスが交互の上下トポロジーを形成する4ヘリックスドメインサイトカインとして受け入れられている。さらなる説明のため、イヌIL-31(配列番号155;イヌ_IL-31)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号156;イヌ_IL-31)である)上のこれらの4つのヘリックスに関するIL-31タンパク質の構造を、他の種からの相同IL-31タンパク質の対応する位置に関連して説明する(
図1)。ヘリックスAは約アミノ酸33~59の配列から構成され、ヘリックスBは約アミノ酸83~98の配列から構成され、ヘリックスCは約アミノ酸101~114の配列から構成され、ヘリックスDは約アミノ酸129~156の配列から構成されている。定義されたループ領域は、約アミノ酸97~101の間に存在する。ヘリックスAに続くループは約アミノ酸57~62に存在し、ヘリックスDに先行するループは約アミノ酸126~129に存在する。予測された二次構造が欠如した任意の介在配列は、ランダムコイルと称される。処置群4(ZTS-766)は、イヌIL-31のヘリックスB及びCを表すミモトープであり、CRM-197担体タンパク質の結合を容易にするN末端側システイン残基を含む。IL-31タンパク質のこの領域のペプチド配列アラインメントは
図16Bに示されており、対応する配列参照番号及びアミノ酸位置の注釈付きでイヌ、ネコ、ウマ、及びヒトのタンパク質を比較している。
【0304】
力価は間接ELISAを用いて定量し、間接ELISAでは全長IL-31タンパク質をそれぞれのアッセイの捕捉材料として使用した。各試験群からの血清に対し、イヌ及びヒトIL-31タンパク質への結合をアッセイした(それぞれ
図17A及び17B)。CRM-197結合体化全長イヌIL-31タンパク質(T01)をワクチン接種したイヌは、28日目の2回目投与後、42日目に中程度の力価の増加を示した。この群は、試験期間中に力価の漸減を示し、56日目に3回目を投与した後も漸減した。IL-31タンパク質上の全てのエピトープ(中和及び非中和の両方)に全般的に応答することと、力価が低いここととを考慮すれば、全長IL-31タンパク質によるワクチン接種がワクチン開発の有力な候補となる可能性は低い。この試験の群2(ZTS-420)は、セクション2.4で説明されているZTS-561のようなイヌ15H05ミモトープであるが、ZTS-561におけるmT2aリンカーに対し、ZTS-420は、ペプチドのN末端及びC末端に付加されたシステイン間のジスルフィド結合によって拘束されている。このミモトープは、mT2a拘束性形態と比較してロバストな免疫応答を生成しなかった(
図17Aを15Cと比較されたい)。56日目の3回目投与後、84日目に中程度の力価の増加が観察される。ジスルフィド環化が不十分であるかまたはCRM-197の結合体化中に修飾され、その結果イヌの免疫細胞に対する免疫原の提示が最適でなかった可能性がある。イヌIL-31のヘリックスB及びCを表す第4群(ZTS-766)が最もロバストな応答をもたらし、28日目の2回目の投与後に力価が出現し、試験完了時の84日目まで増加した。先に説明されているこの配列を認識する抗体のIL-31中和能力を考慮すれば、このミモトープは、IL-31媒介性障害を防止するための有望なワクチン候補となる。処置群3(ZTS-421)は、ミモトープのこの領域内でヒトIL-31配列を使用する15H05エピトープである。興味深いことに、このミモトープをワクチン接種したイヌはいずれも、イヌIL-31タンパク質に対する応答を生じなかった(データは示されず)が、2回目及び3回目の投与後にヒトIL-31タンパク質に対する免疫応答が観察された(
図17B)。15H05ミモトープのコアエピトープ領域間の配列の類似性を考慮すれば、これは、イヌの抗ヒトIL-31応答における注目すべき特異性である(
図12)。
【0305】
2.9.IL-31ネコ及びウマミモトープならびに全長IL-31ネコタンパク質で実験用ネコを免疫化した後のIL-31に対する血清力価
セクション2.3で説明されている試験設計のようにして、実験用ネコを用いて血清学試験を実施し、ただしこの試験ではネコ及びウマのミモトープを比較した。実験用ネコに、糖脂質アジュバントBay R1005(N-(2-デオキシ-2-L-ロイシルアミノ-β-D-グルコピラノシル)-N-オクタデシルドデカノイルアミドヒドロアセテート)及びCpGオリゴヌクレオチドを含む混合物をアジュバント添加した結合体化IL-31ミモトープを皮下投与した。糖脂質アジュバントBay R1005(N-(2-デオキシ-2-L-ロイシルアミノ-β-D-グルコピラノシル)-N-オクタデシルドデカノイルアミドヒドロアセテート)及びCpGオリゴヌクレオチドを含むアジュバント混合物中にCRM-197結合体化ネコIL-31(配列番号157;ネコ_IL31_野生型)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号158;ネコ_IL-31_野生型)である)を含む対照群を含めた。(T01)10μg/用量の各アジュバント添加ミモトープまたは対照を0、28、及び56日目に皮下投与した(20μg/ml溶液の0.5ml)。血清用の血液は、-14、0日目(投与前)、28日目(投与前)、42、56日目(投与前)、70、及び84日目に採取した。加えて、35及び63日目に、各動物からおよそ40mlの血液をリチウムヘパリンチューブに収集し、標準的な方法を用いてPBMC単離用に処理した。PBMCを単離後、抗原特異的B細胞のさらなる評価を行うまで凍結保存した。試験処置群の概要を
図18Aに示す。ZTS-563(T02)については、以前のイヌ血清学試験で使用した免疫原として本明細書のセクション2.4で説明されている。ZTS-563は、CRM-197と結合体化したmT2a拘束性15H05ミモトープである。T03(ZTS-418)は、ウマの配列を有する15H05ミモトープである(
図16Aにある相同のイヌバージョンZTS-420と比較されたい)。処置群4はZTS-423であり、ネコIL-31配列を有するセクション2.8で説明されているBCヘリックスを表すミモトープペプチドである。処置群5はZTS-422であり、アミノヘキサン酸(Ahx)mT2bリンカーを有するネコ15H05ミモトープである。
図18Bは、間接ELISAを用いた-14、42、及び84日目における全長ネコIL-31に対する処置群T01、T02、T04、及びT05の血清抗体応答の結果を示している(T03にはネコIL-31タンパク質に対するCRARが認められなかった(データは示されず))。ここでもまた、全長IL-31タンパク質(T01)の結合体形態はネコにおいて最も低い抗体応答を示し、全長IL-31に対する力価は試験期間中1:20000を超えなかった。T02(ZTS-563)は、試験全体にわたり中程度の応答を示し、84日目まで用量依存的に増加した。このことから、このネコ15H05エピトープの表現が好適なワクチンであり得ることが示される。ZTS-423(T04)の3回投与後のネコにおける全長ネコIL-31タンパク質に対する平均力価は、用量依存的に増加し、2回目及び3回目の投与後に1:100,000超に達した。これは、関連性の高いエピトープ領域に対する著明な免疫応答を示すものである。また、AhX mT2bリンカーを有する15H05ミモトープを表すZTS-422(T05)も、ネコにおいてロバストな免疫応答を示し、力価は2回目及び3回目の投与後に1:100000を超えた。この形態の15H05エピトープは、明らかにIL-31タンパク質のこの領域の適切な表現であり、in vivoのIL-31活性を中和するための有望なワクチンミモトープとなる。
【0306】
2.10.ワクチンとして使用するためのミモトープを適切に設計するための配列及び構造上の考慮事項
本明細書では、由来種のアミノ酸に対応する固有の配列を有するIL-31タンパク質(ミモトープ)上のエピトープにおけるいくつかのペプチド表現が説明されている。ワクチン設計の最終的な目的は、免疫系が認識しロバストで特異的な応答を生成するエピトープを描写することである。ワクチン設計は、限定されるものではないが、CRM-197のような担体タンパク質を添加することや、アジュバントを用いた製剤化によって促進される。本明細書では、結合する抗体の特性に基づいて同定されたエピトープの例が説明されている。キーとなるエピトープは、抗体が結合したときに、さらにIL-31RA:OSMR受容体複合体を係合させることができず、そのため細胞培養液中でまたはin vivoでpSTATシグナル伝達を誘発することができないIL-31タンパク質上の領域である。そのため、IL-31媒介性受容体シグナル伝達の遮断は、アトピー性皮膚炎のようなIL-31媒介性障害を防止及び/または治療予防するための1つのアプローチである。
【0307】
変異技法を用いたタンパク質上の抗体結合部位のマッピングは、Bammert, et al.に対するUS8790651で過去にIL-31について説明されているように、抗体:抗原認識に関与するキーとなる残基を同定するための有効な方法である。この知見に基づくことで、イヌ及びネコにおいてロバストな抗IL-31応答を誘発する有効な免疫原として本明細書で説明されているイヌ及びネコBCヘリックスミモトープの設計が可能になった。最近、抗イヌIL-31抗体M14をマッピングするためのGSTイヌIL-31融合タンパク質を用いた別の方法が説明されている(WO2018/156367(Kindred Biosciences,Inc.))。この著者らは、アミノ酸PSDX
1X
2KI(配列番号155、アミノ酸34~40)(式中、Xは任意のアミノ酸である)から構成されたM14抗体が認識する最小エピトープ配列を定義することを試みた。この配列を相同のIL-31種と比較しながら説明したものは、
図19Aで見いだすことができる。上記の周囲の隣接配列を含めたさらなる説明は、
図19Bに示されている。
図19Bに示されている最小結合フラグメント(アミノ酸34~42の周りの灰色の影付き囲み)を同定した後、著者らはこのペプチドフラグメントのGST融合を用いて各位置におけるアラニン置換を生成した。これらのデータから、上記のM14最小結合フラグメントが説明された。このアプローチの根本的な欠陥は、説明されている結合フラグメントの性質が、GST融合タンパク質の文脈においてその構造に依存していることである。単一の理論に拘束されるわけではないが、M14抗体が認識するアミノ酸配列は、本明細書でヘリックスAとして説明されている秩序化されたアルファヘリックスドメインの一部であると考えられている。ペプチド及びタンパク質内のアルファヘリックスは、限定されるものではないが、カルボニルの酸素とアミン骨格基の窒素との間の水素結合パターンの協調によって存在する(Corey-Pauling rules,a dictionary of chemistry,2008)。M14抗体に対し説明されている最小結合フラグメントは、GSTスキャフォールドの不在下での結合特性に対する証拠がないため、エピトープの妥当な説明となるとは考えられていない。さらに、報告されたM14エピトープを含めてこれを取り囲む配列の組成は、非極性アミノ酸(I、L、V、P、G、A、M)を豊富に含む(
図19B)。ペプチド内のこれらのアミノ酸の物理的特性は、介在する極性アミノ酸または荷電アミノ酸が存在しない場合、水不溶性で無秩序な二次構造をもたらす。そのため、本明細書では、WO2018/156367(Kindred Biosciences,Inc.)で説明されているM14抗体の最小結合フラグメントは、GST融合産物が付与する特性に依存しており、ペプチド自体に固有のものではないと考えられている。
【0308】
IL-31エピトープにおけるいくつかのペプチド提示が本明細書で説明されており、その特性は、融合タンパク質の非存在下で独立したペプチドとして存在する。これはセクション2.2(
図13B)で例示されており、結合体化形態及び非結合体化形態の両方における15H05クラスのミモトープの結合特性及び阻害特性が示されている。ペプチドの二次構造的特徴に加えて、一次アミノ酸配列は、T細胞の表面上での適切な提示に必要とされる、もう1つのキーとなるワクチン設計の局面に相当する。適切なアミノ酸配列は、B及びT細胞エピトープを有する担体タンパク質と共に、IL-31タンパク質上のキーとなる領域に対し、直接的に免疫応答を誘発する。IL-31上の複数の領域が、イヌ及びネコにおける指向性免疫応答の誘発に適しているものとして本明細書で説明されている。ワクチンミモトープの成否は本明細書で説明されている因子に依存し、最終的にはin vivoで、応答の有効性によって判定される。ただし、本明細書で説明されているIL-31上のいくつかのエピトープ領域から学んだことに基づけば、好適なワクチンミモトープをもたらすエピトープが他にも存在し得ると考えられる。抗体15H05は、
図6Bで部位2として示されているヘリックスDに先行するループを認識する。タンパク質上の他のループは、場合によっては抗体によってアクセス可能なエピトープを表すと考えられる。一例として、ヘリックスA及び後続のランダムコイル配列の収束によって形成されるループは、15H05ループのような位置的及び構造的属性を共有する。このABループについては、
図20で複数種からの一次アミノ酸配列と比較しながら説明されている。単一の例としてこれに限定されることは望まないが、他のこのようなタンパク質上の領域は免疫原性を共有し得ると考えられている。
【0309】
2.11.全長ウマIL-31タンパク質をマウスにワクチン接種した後のウマIL-31ミモトープに対する血清力価
本出願のセクション1.6で説明されている方法のようにCRM-197と結合体化した全長ウマIL-31(配列番号165;ウマ_IL-31)(これに対応するヌクレオチド配列は(配列番号166;イヌ_IL-31)である)でマウスを免疫化した。本明細書で説明されている3つのエピトープ領域を表すビオチン結合ペプチドをバイオレイヤー干渉結合アッセイ(Octet,ForteBio)用に設計した。これらのペプチドについては、
図21Aで説明されている。各ペプチドは、N末端側ビオチンと、図面内で太字の下線付きテキストで注釈が付された3アミノ酸スペーサー配列(GSG)とを含む。配列番号165からの対応するアミノ酸配列位置番号も図面に示されている。15H05ミモトープは、ジスルフィド結合による環化を促進するために2つの末端側システイン残基(これも太字及び下線で強調表示されている)を含む。
図21Bは、バイオレイヤー干渉法の結果を示しており、この方法では、
図21Aで説明されているペプチドをストレプトアビジンコーティングピンに固定化し、次いでこれを使用して、マウス抗ウマIL-31または対照マウス血清の複数の希釈物をプローブする。対照マウス血清は、無関係のタンパク質をワクチン接種したマウスからの血清とした。応答(ここでは、抗血清会合から120秒後のシグナルの振幅として説明される)は、図面のy軸に表される。これらのデータから、完全ウマIL-31タンパク質上のエピトープ提示から生じる免疫応答を評価することができる。さらに、このような免疫応答が認識するこれらのIL-31ミモトープの能力は、結合によって評価することができる。これらのデータは、説明されている3つのミモトープペプチド(15H05、BCヘリックス、及びAヘリックス)の全てが、in vivoでのウマIL-31タンパク質の処理及び提示から、関連する免疫原として認識されることを示すものである。Aヘリックス以外の各ミモトープに対する対照血清の結合で最小限のシグナルが観察され、Aヘリックスに対する結合ではいくらかの希釈依存的シグナルが示された。全長タンパク質に対する免疫応答を誘発する、本明細書で説明されているミモトープの提示と同様、この実験は、これらのエピトープの相互的検証を説明するものであり、ミモトープに対するタンパク質からの免疫応答が検証されている。
【配列表】