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特許7497310ホーローの傷入れ検査に用いる保護具及びホーローの傷入れ検査方法
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  • 特許-ホーローの傷入れ検査に用いる保護具及びホーローの傷入れ検査方法 図1
  • 特許-ホーローの傷入れ検査に用いる保護具及びホーローの傷入れ検査方法 図2
  • 特許-ホーローの傷入れ検査に用いる保護具及びホーローの傷入れ検査方法 図3
  • 特許-ホーローの傷入れ検査に用いる保護具及びホーローの傷入れ検査方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】ホーローの傷入れ検査に用いる保護具及びホーローの傷入れ検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/40 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
G01N3/40 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021018292
(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2022121122
(43)【公開日】2022-08-19
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】豊岡 守人
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-64979(JP,U)
【文献】特開平7-47180(JP,A)
【文献】特開平7-314988(JP,A)
【文献】特開2006ー123512(JP,A)
【文献】実開昭57-141095(JP,U)
【文献】実開昭60-21901(JP,U)
【文献】特開平4-88694(JP,A)
【文献】特開2014-65306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00-3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホーローの傷入れ検査に用いる保護具であって、
前記ホーローの表面を押さえつける押さえ部と、
前記押さえ部に設けられ、作業者が把持する把持部と、
を備えることを特徴とするホーローの傷入れ検査に用いる保護具。
【請求項2】
前記押さえ部の外縁は、前記把持部よりも外側に突出していることを特徴とする請求項1に記載のホーローの傷入れ検査に用いる保護具。
【請求項3】
前記押さえ部は、少なくとも5mmの高さを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のホーローの傷入れ検査に用いる保護具。
【請求項4】
前記押さえ部は、透明のアクリル板から形成されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載のホーローの傷入れ検査に用いる保護具。
【請求項5】
前記押さえ部の外縁は着色されていることを特徴とする請求項4に記載のホーローの傷入れ検査に用いる保護具。
【請求項6】
ホーローの傷入れ検査方法であって、
前記ホーローの表面を所定の高さを有する保護具で押さえつけるステップと、
前記保護具から離間した位置で刃物を用いて前記ホーローの表面に傷を入れ、傷の状態から前記ホーローの品質を検査するステップと、
を有することを特徴とするホーローの傷入れ検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホーローの傷入れ検査に用いる保護具及びホーローの傷入れ検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホーロー(琺瑯)は、家庭用品、看板、標識等の分野において広く用いられている。ホーローは、生産工程において所定のロット毎にカッターナイフで表面に傷を入れ、傷の状態を見て品質検査(カッター傷検査)が行われている。この検査は、作業者がホーローを上方から片手で押さえつつ、もう一方の手でカッターナイフを持ってホーローの表面に傷を入れる作業を行う。
ホーローの表面に傷を入れる際には、フリーハンドで行う場合もあれば、定規を用いて行う場合もある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-183805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ホーローの表面は平滑であり、カッターナイフの刃先が滑りやすい。そのため、フリーハンドで行う場合には、ホーローを押さえている手の方にカッターナイフが滑らないように慎重にゆっくり行う必要があった。また、定規を用いて行う場合には、定規を押さえる手とカッターナイフとの距離が近いため、定規を押さえている手の方にカッターナイフが滑らないように慎重にゆっくり行う必要があった。いずれの場合もカッターナイフの刃先がホーローの表面を滑らないようにゆっくりと動かさなければならないので、カッター傷検査に時間がかかるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、傷入れ検査にかかる時間を短縮することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係る態様は、ホーローの傷入れ検査に用いる保護具であって、前記ホーローの表面を押さえつける押さえ部と、前記押さえ部に設けられ、作業者が把持する把持部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記押さえ部の外縁は、前記把持部よりも外側に突出していることが好ましい。
【0008】
また、前記押さえ部は、少なくとも5mmの高さを有することが好ましい。
【0009】
また、前記押さえ部は、透明のアクリル板から形成されていることが好ましい。
【0010】
また、前記押さえ部の外縁は着色されていることが好ましい。
【0011】
本発明に係る態様は、ホーローの傷入れ検査方法であって、前記ホーローの表面を所定の高さを有する保護具で押さえつけるステップと、前記保護具から離間した位置で刃物を用いて前記ホーローの表面に傷を入れ、傷の状態から前記ホーローの品質を検査するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る態様によれば、傷入れ検査にかかる時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】カッター傷検査に用いる保護具の斜視図である。
図2】カッター傷検査に用いる保護具を用いてホーローのカッター傷検査を行っている状態を示す図である。
図3】カッター傷検査に用いる保護具の変形例を示す斜視図である。
図4】カッター傷検査に用いる保護具の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は一例であり、本発明の範囲において、種々の実施の形態をとりうる。
【0015】
<保護具の構成>
図1に示すように、刃物によるホーローの傷入れ検査(以下、カッター傷検査という)に用いる保護具(以下、保護具という)1は、例えば、ホーロー鋼板の生産工程において、所定のロット毎にカッターナイフでホーロー鋼板の表面に傷を入れ、傷の状態を見て品質検査を行う際に用いられる。カッター傷検査は、作業者がホーロー鋼板を上方から片手で押さえつつ、もう一方の手でカッターナイフを持ってホーロー鋼板の表面に傷を入れる作業となる。保護具1は、作業者がホーロー鋼板を上方から押さえる際に用いられる。
【0016】
図1に示すように、保護具1は、押さえ部2と、把持部3と、を備えている。
押さえ部2は、ホーロー鋼板の表面を押さえつけるものであり、例えば、平面視矩形状に形成された板材である。押さえ部2は、例えば、透明なアクリル板から形成されている。押さえ部2は、例えば、厚さ(高さ)が少なくとも5mm以上(一般的なカッターナイフのケースからの刃先の突出量)となるように形成されている。これは、カッター傷検査の際にカッターナイフの刃先が平滑なホーロー鋼板の表面を滑って作業者に向かってきたとしても、カッターナイフの刃先を押さえ部2の側面に衝突させることで作業者の手を守るためである。もちろん、押さえ部2は、厚いほど好ましいが、その分重量が大きくなって作業性が低下してしまうので、安全性と作業性とのバランスが取れた厚さである5mm~6mmの範囲とすることが好ましい。
【0017】
押さえ部2は、その主面(上面及び下面)が所定の面積以上となるような大きさに形成されている。具体的には、押さえ部2は、少なくとも一辺が19cm以上の四角形、又は、直径が22cm以上の円形であることが好ましい。これは、カッターナイフの刃先が勢い余って押さえ部2に乗り上げたとしても、押さえ部2の外縁から把持部3までの距離が遠いほど、作業者の安全性が高まるからである。このような場合には、押さえ部2の中心に把持部3を設けることが好ましい。もちろん、押さえ部2は、主面の面積が大きいほど好ましいが、その分重量が大きくなって作業性が低下してしまうので、安全性と作業性とのバランスをとるために、押さえ部2の外縁から把持部3までの距離を6.5cm以上にしておくことが好ましい。言い換えると、押さえ部2は、その外縁が把持部3より6.5cm以上主面方向(ホーロー鋼板の面方向)外側に突出していることが好ましい。
押さえ部2の外縁には、押さえ部2の素材の色とは異なる色の着色部21が設けられており、押さえ部2の大きさ、形状を一目で認識できるようになっている。ここで、着色部21は、押さえ部2本体に直接色を付けてもよいし、押さえ部2本体にテープを貼ってもよい。
【0018】
把持部3は、カッター傷検査の際に作業者が把持する部分である。把持部3は、押さえ部2の一方の主面に設けられている。把持部3は、押さえ部2の主面におけるほぼ中央の位置に設けられている。すなわち、把持部3は、押さえ部2の外縁からできるだけ遠い位置に配置されている。
把持部3は、土台部31と、延出部32と、を備えている。
土台部31は、押さえ部2の主面に固定されている。土台部31は、例えば、押さえ部2の主面方向に長い辺を有する直方体状に形成されており、押さえ部2との当接面積ができるだけ大きくなるように形成することが好ましい。これは、押さえ部2と把持部3の接触領域が増えることで、両者の取り付けを強固にすることができるためである。
延出部32は、土台部31の上面(土台部31における押さえ部2との当接面とは反対側の面)に設けられている。延出部32は、押さえ部2及び土台部31の面に対して垂直方向(図1における上方向)に向かって延びるように形成されている。延出部32は、例えば、直方体状(四角柱状)に形成されており、作業者が手で掴むことができる程度の大きさに形成されている。
なお、土台部31と延出部32は、一体に形成してもよいし、別個に形成してもよい。
【0019】
<保護具を用いたカッター傷検査方法>
次に、保護具1を用いたホーロー鋼板のカッター傷検査方法について説明する。
図2に示すように、ホーロー鋼板100のカッター傷検査を行う際には、作業者は、生産されたホーロー鋼板100を上方から保護具1で押さえつける。保護具1でホーロー鋼板100を押さえつける際には、作業者は、把持部3を片手で持ちながら、押さえ部2をホーロー鋼板100に押し付ける。
次いで、作業者は、もう一方の手でカッターナイフ110を握り、ホーロー鋼板100の表面に刃先を当ててカッターナイフ110を移動させ、ホーロー鋼板100の表面に傷を入れる。このとき、作業者は、カッターナイフ110を保護具1の押さえ部2の外縁に沿わせる必要はなく、保護具1から離れた場所において、ホーロー鋼板100にカッター傷を入れる。
【0020】
以上のように、保護具1とカッターナイフ110は、作業時の場所が離れているので、カッターナイフ110の刃先がホーロー鋼板100の表面を滑っても保護具1を把持している作業者の手まで届きにくくなっている。また、ホーロー鋼板100の表面を滑るカッターナイフ110の刃先は、把持部3よりも外側に突出している押さえ部2の側面に接触するので、把持部3を掴んでいる作業者の手に届きにくくなっている。
よって、作業者は、カッターナイフ110の刃先が手に接触することをほとんど気にしないでカッター傷検査を行うことができるので、ホーロー鋼板100の表面でカッターナイフ110を必要以上に慎重にゆっくりと動かさなくてもよく、カッター傷検査にかかる時間を短縮することができる。
【0021】
また、作業者は、把持部3を掴むことで、指先が自然に内側に曲がるようになるので、指先の保護効果をより高めることができる。
また、押さえ部2は、少なくとも5mmの高さを有するので、カッターナイフ110の刃先が押さえ部2を乗り上げる可能性を大幅に低減することができる。
また、押さえ部2は、透明のアクリル板から形成されているので、ホーロー鋼板100と押さえ部2の双方の表面が平滑な面を有していることになり、押さえ部2のホーロー鋼板100への密着度を高めることができる。これにより、押さえているホーロー鋼板100のずれを抑制することができる。また、アクリル板は、形状が変化しにくく、ホーロー鋼板100ほど硬くないので、押さえ勝手がよく、ホーロー鋼板100に傷をつけることもない。
また、押さえ部2の外縁には着色部21が設けられているので、ホーロー鋼板100上における透明な押さえ部2の位置を容易に把握することができる。
【0022】
<その他>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更することができる。
【0023】
例えば、図3に示すように、作業者が把持部3aをより掴みやすくなるように、延出部32aを球体状に形成した保護具1Aとしてもよい。作業者がこのような延出部32aを掴んだ場合には、作業者の指先はより自然に内側に巻き込まれた状態となるので、指先の保護効果を高めることができる。
また、図4に示すように、押さえ部2aの小型化を図るため、押さえ部2aを図1における押さえ部2よりも小さく形成し、押さえ部2aにおける一部の外縁に、カッターナイフ110の衝突を防止する壁部23を設けた保護具1Bとしてもよい。このとき、壁部23は、少なくとも押さえ部2aの厚さよりも高く形成することが好ましい。図4においては、壁部23は、把持部3と同じくらいの高さに形成されており、長手方向両端部は、押さえ部2aの外縁からその外縁に沿って外側に突出するように形成されている。このような構成の保護具1Bであっても、持ち方を変えることで作業者の利き手に関係なく使用することができる。
【0024】
また、押さえ部2をアクリル板で形成することで、ホーロー鋼板100を押さえる効果は十分であるが、より滑り止め効果を高めるため、押さえ部2におけるホーロー鋼板100と接触する面に滑り止め部材(例えば、ゴム、吸盤等)を設けてもよい。
また、押さえ部2は、アクリル板に限らず、ゴム板等、他の材料から形成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0025】
1,1A,1B 保護具
2,2a 押さえ部
21 着色部
23 壁部
3 把持部
31 土台部
32,32a 延出部
100 ホーロー鋼板
110 カッターナイフ
図1
図2
図3
図4