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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】装着システム
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/00 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
A41D13/00 107
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021043566
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143178
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】酒井 隆太
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓之
(72)【発明者】
【氏名】中平 雅章
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和彦
(72)【発明者】
【氏名】木下 昭二
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 晃輔
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-110870(JP,A)
【文献】特開2016-209443(JP,A)
【文献】特開2020-093311(JP,A)
【文献】特開2019-039098(JP,A)
【文献】米国特許第06035440(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00-13/12
A61H1/00-5/00
A61F5/00-6/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の上体を起こす動作をアシストするアシスト装置の装着に用いる装着システムであって、
前記アシスト装置は、左右の動力発生ユニット及び動力発生ユニットが発生した動力を装着者の動作に対するアシスト力となるように大腿部に伝える左右の伝達ユニットを含み、
前記装着システムは、装着部及び上衣を含み、
前記装着部は、腰ベルト、背面連結部材、背面サポート部材、左右の上部肩ベルト、左右の下部肩ベルト、胸ベルト、及び左右の胸サポート部材を含み、
前記腰ベルトは、身体の前面で脱着可能に連結される左右の端部を有し、
前記背面サポート部材は、背面連結部材に脱着可能に連結され、
前記左右の上部肩ベルトは、第1の端部が前記背面サポート部材に固定されており、左右の下部肩ベルトのそれぞれの第2の端部と脱着可能に連結される第2の端部を有し、
前記左右の下部肩ベルトは、第1の端部が前記背面サポート部材に固定されており、左右の上部肩ベルトのそれぞれの第2の端部と脱着可能に連結される第2の端部を有し、
前記胸ベルトは、前記背面サポート部材に固定され、脱着可能に連結される左右の端部を有し、
前記左右の胸サポート部材は、前記胸ベルトに左右対称的に脱着可能に取り付けられ、
前記背面連結部材は、左右の動力発生ユニットと背面サポート部材を連結する部材であり、
前記上衣は、後身頃に設けられている一対の肩開口部、一対の上部開口部、及び一対の下部開口部、並びに前身頃の下部に設けられている一対の腰開口部を備えており、
前記一対の肩開口部は、後身頃の肩部に左右対称的に設けられ、前記左右の上部肩ベルトのそれぞれが挿通され、
前記一対の上部開口部は、後身頃の上部に左右対称的に設けられ、前記胸ベルトの左右の端部が挿通され、
前記一対の下部開口部は、後身頃の下部に左右対称的に設けられ、前記左右の下部肩ベルトのそれぞれが挿通され、
前記一対の腰開口部は、前身頃の下部に左右対称的に設けられ、前記腰ベルトの左右の端部が挿通されており、
前記上衣の内側で、前記肩開口部を挿通した左右の上部肩ベルトは、前記下部開口部を挿通した左右の下部肩ベルトとそれぞれ脱着可能に連結され、前記上衣の内側で、前記上部開口部を挿通した胸ベルトの左右の端部が脱着可能に連結され、前記上衣の内側で、前記腰開口部を挿通した腰ベルトの左右の端部が脱着可能に連結されることを特徴とする、装着システム。
【請求項2】
前記背面連結部材は、一本の棒状の剛体で構成され、上端は連結され、下端は左右に分離された逆漏斗形状を有する、請求項1に記載の装着システム。
【請求項3】
前記背面サポート部材は、前記背面連結部材の上部を収容する袋部を有し、前記背面連結部材は、前記袋部の上部において、留め具によって、背面サポート部材に保持されている、請求項に記載の装着システム。
【請求項4】
前記下部肩ベルト及び前記上部肩ベルトは、少なくとも一つは長さ調整可能であり、前記装着システムを装着した際、前記下部肩ベルトと前記上部肩ベルトの全体長さは、前記腰ベルトの下端から前記背面連部材の上端までの長さの1.7倍以上2.6倍以下である、請求項1~のいずれかに記載の装着システム。
【請求項5】
前記胸サポート部材の長さは、前記胸ベルトの幅の2.6倍以上4.7倍以下であり、前記胸サポート部材の幅は、前記胸ベルトの幅の1.1倍以上3.7倍以下であり、前記胸サポート部材の厚みは、前記胸ベルトの幅の0.1倍以上1.1倍以下である、請求項1~のいずれかに記載の装着システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着者の動作を補助するアシスト装置の装着に用いる装着システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製造、物流、医療、介護、農業等の様々な分野において、装着者の動作を補助するアシスト装置の使用が提案されている。例えば、特許文献1には、装着者の関節を中心とする動作をアシストする非外骨格型のアシスト装置と、該アシスト装置装着用のウエアを備えたアシストウエアシステムが記載されている。特許文献2には、使用者の上体を起こす動作を補助する動作補助装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-222017号公報
【文献】特開2020-110870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載のようなアシスト装置は、通常、ウエアの外側に装着されることから、装着者の身体の前面においてウエアの外側に配置されているアシスト装置の部材によって、作業性が低減することや安全性が劣る問題があった。また、特許文献2に記載の動作補助装置の場合、装着部が肩には装着されないため、装着性が劣る問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題を解決するため、装着性に優れ、作業性及び安全性が向上した装着システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、装着者の動作をアシストするアシスト装置の装着に用いる装着システムであって、前記装着システムは、装着部及び上衣を含み、前記装着部は、腰ベルト、背面サポート部材、左右の上部肩ベルト、左右の下部肩ベルト、胸ベルト、及び左右の胸サポート部材を含み、前記上衣は、後身頃に設けられている一対の肩開口部、一対の上部開口部、及び一対の下部開口部、並びに前身頃の下部に設けられている一対の腰開口部を備えており、前記上衣の内側で、前記肩開口部を挿通した左右の上部肩ベルトは、前記下部開口部を挿通した左右の下部肩ベルトとそれぞれ脱着可能に連結され、前記上部開口部を挿通した胸ベルトの左右の端部が脱着可能に連結され、前記腰開口部を挿通した腰ベルトの左右の端部が脱着可能に連結されることを特徴とする装着システムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の装着システムにおいて、上衣を透過した状態の模式的正面図である。破線は、上位の内側、二点鎖線は上衣の背面外側を示す。
図2】同模式的背面図である。破線は、上位の内側を示す。
図3】同模式的左側面図である。破線は、上位の内側を示す。
図4】本発明の一実施形態における装着部の模式的正面図である。
図5】同模式的背面図である。
図6】同模式的左側面図である。
図7】本発明の一実施形態における上衣の模式的正面図である。
図8】同模式的背面図である。
図9】同模式的左側面図である。
図10】アシスト装置と連結されている本発明の一実施形態の装着システムの模式的正面図である。
図11】同模式的背面図である。
図12】同模式的左側面図である。
図13】本発明の一実施形態の装着システムによりアシスト装置を装着した状態(直立状態)を説明する模式的左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の発明者らは、前記課題を解決するために、検討を重ねた。その結果、アシスト装置の装着に用いる装着システムとして、腰ベルト、背面連結部材、背面サポート部材、胸サポート部材、胸ベルト、及び肩ベルトを含む装着部を、後身頃に肩開口部、上部開口部、及び下部開口部を有し、前身頃に腰開口部を有する上衣と組み合わせて用い、上衣の内側で、肩開口部を挿通した左右の上部肩ベルトと下部開口部を挿通した左右の下部肩ベルトを脱着可能に連結し、上部開口部を挿通した胸ベルトの左右の端部を脱着可能に連結し、腰開口部を挿通した腰ベルトの左右の端部を脱着可能に連結することで、装着者が該装着システムを用いてアシスト装置を装着した際に、上半身の前面にいては、ベルト等の部材が上衣の外側に露出せず、上半身の背面にいては、ベルト等の部材が上衣の外側に露出することで、装着性に優れ、作業性及び安全性が向上した装着システムを提供し得ることを見出した。
【0009】
具体的には、前記装着システムは、装着部及び上衣を含み、装着部は、左右の端部が身体の前面で脱着可能に連結される腰ベルト、背面連結部材に脱着可能に連結される背面サポート部材、第1の端部が前記背面サポート部材の上部にそれぞれ固定される左右の上部肩ベルト、第1の端部が前記背面サポート部材の下部にそれぞれ固定され、第2の端部が前記上部肩部ベルトの第2の端部と脱着可能に連結される左右の下部肩ベルト、前記背面サポート部材に固定され、左右の端部が互いに脱着可能に連結される胸ベルト、胸ベルトに左右対称的に脱着可能に取り付ける左右の胸サポート部材を含み、前記上衣は、後身頃の肩部に左右対称的に設けられ、前記左右の上部肩部ベルトのそれぞれが挿通される一対の肩開口部、後身頃の上部に左右対称的に設けられ、前記胸ベルトが挿通される一対の上部開口部、後身頃の下部に左右対称的に設けられ、前記左右の下部肩部ベルトのそれぞれが挿通される一対の下部開口部、前身頃の下部に左右対称的に設けられ、前記腰ベルトの左右の端部が挿通される一対の腰開口部を含み、前記上衣の内側で、前記肩開口部を挿通した左右の上部肩ベルトの第2の端部のそれぞれは、前記下部開口部を挿通した左右の下部肩ベルトの第2の端部のそれぞれと脱着可能に連結され、前記上部開口部を挿通した胸ベルトの左右の端部が脱着可能に連結され、前記腰開口部を挿通した腰ベルトの左右の端部が脱着可能に連結される。
【0010】
前記装着システムは、腰部に装着され、装着者の上体を起こす動作をアシストすることができるアシスト装置の装着に好適に用いられる。このようなアシスト装置は、通常、動力発生ユニット及び動力発生ユニットが発生した動力を装着者の動作に対するアシスト力となるように大腿部に伝える伝達ユニットを含む。前記装着システムによって、アシスト装置を装着させることで、装着者の上体を起こす動作をアシストすることができる。腰ベルトにて動力発生ユニットの位置を固定し、アシスト力の支点位置を保持することができる。
【0011】
前記動力発生ユニットは、動力発生可能なものであればよく、動力発生手段は特に限定されない。例えば、モータ又はアクチュエータ等の電力を動力発生手段(動力源)とするものであってもよい。軽量であり、着用性に優れる観点から、ゼンマイばねや圧縮コイルスプリング等の弾性体の元に戻ろうとする力を動力発生手段(動力源)とするものが好ましい。
【0012】
前記背面連結部材は、一本の棒状の剛体で構成され、上端は連結され、下端は左右に分離された逆漏斗形状を有することが好ましい。背面連結部材の左右の下端部は、左右の腰部のそれぞれに装着される動力発生ユニットを連結される。背面連結部材がこのような上部が狭く、下部が広い形状を有することで、上体の回旋運動や後屈を阻害せずに、上体を起こす動作をより効果的にアシストすることができる。
【0013】
前記背面サポート部材は、前記背面連結部材の上部を収容する袋部を有し、前記背面連結部材は、前記袋部の上部において、留め具によって、背面サポート部材に保持されていることが好ましい。これにより、剛体で構成されている背面連結部材が背中に対する圧迫感を軽減することができる。
【0014】
前記下部肩ベルト及び前記上部肩部ベルトは、少なくとも一つは長さ調整可能であることが好ましい。下部肩ベルト及び上部肩部ベルトを有することで、装着しやすくなり、長さを調整することで、下部肩ベルト及び上部肩部ベルトを連結する際の長さを調整することで、上体を起こす動作時に上部肩ベルトが肩に食い込むことを防止し、肩にかかる負担を軽減することができる。前記装着システムにてアシスト装置を装着した際、連結された下部肩ベルトと上部肩部ベルトの全体長さは、腰ベルトの下端から背面連絡部材の上端までの長さの1.7倍以上2.6倍以下であることが好ましく、1.8倍以上2.5倍以下であることがより好ましく、1.9倍以上2.4倍以下であることがさらに好ましく、2.0倍以上2.3倍以下であることが特に好ましい。
【0015】
前記胸サポート部材の長さは、前記胸ベルトの幅の2.6倍以上4.7倍以下であり、前記胸サポート部材の幅は、前記胸ベルトの幅の1.1倍以上3.7倍以下であり、前記胸サポート部材の厚みは、前記胸ベルトの幅の0.1倍以上1.1倍以下であることが好ましい。これにより、アシスト力の作用点としての胸サポート部材のフィット性を高めつつ、圧迫感を効果的に軽減することができる。
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の1以上の実施形態の装着システムを具体的に説明する。本発明は、図面に示されたものに限定されない。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態の装着システムの上衣を透過した状態の模式的正面図であり、破線は、上位の内側、二点鎖線は上衣の背面外側を示す。図2は同模式的背面図であり、破線は、上位の内側を示し、図3は同模式的左側面図であり、破線は、上位の内側を示す。図4は装着部の模式的正面図であり、図5は同模式的背面図であり、図6は同模式的左側面図である。図7は上衣の模式的正面図であり、図8は同模式的背面図であり、図9は同模式的左側面図である。
【0018】
該実施形態の装着システム1は、装着部2及び上衣3を含む。
【0019】
装着部2は、腰ベルト23、背面連結部材24、背面サポート部材25、左右の上部肩ベルト26a、26b、左右の下部肩ベルト27a、27b、胸ベルト28、左右の胸サポート部材29a、29bを備えている。
【0020】
腰ベルト23は、帯状であり、左右の端部が身体の前面で脱着可能に連結される。脱着可能な連結手段は特に限定されないが、バックルや面ファスナー等の脱着手段を有し、長さを調整し得ることが好ましい。腰ベルト23により、左右の動力発生手段を、装着箇所である臀部の外側、例えば大転子付近に保持することができる。腰ベルト23は、少なくとも身体側は、弾性力のある柔らかい素材(弾性素材)で構成することが望ましい。或いは、必要に応じて、腰ベルト23の身体側に、弾性素材で構成された弾性部材を面ファスナーにて脱着可能に取り付けてもよい。
【0021】
腰ベルト23は、左右の動力発生ユニット(図示なし)のそれぞれに回転可能に連結することができる。
【0022】
背面連結部材24は、左右の動力発生ユニット(図示なし)と背面サポート部材25を連結することができる。背面連結部材24は、左右対称であり、中空丸棒等の棒状の剛体で構成されている。剛体は、例えば、金属等の無機材料で構成することができる。背面連結部材24は、一本の棒状の剛体で構成され、上端は連結され、下端は左右に分離された逆漏斗形状を有することが好ましい。左右の下端のそれぞれは、左右の動力発生ユニットに連結可能であり、上端は背中上部まで伸びている。背面連結部材24は、上部が狭く、下部が広い逆漏斗形状を有することで、上体の回旋運動や後屈を阻害することがなく、上体を起こす動作をより効果的にアシストすることができる。装着システム1にてアシスト装置を装着した際、背面連結部材24の上端は装着者の肩甲骨より下部に位置することが好ましい。背面連結部材24において、少なくとも、装着者の胸椎に対応する部分は、剛体間の幅が狭く、例えば、100mm以上150以下であることが好ましい。
【0023】
背面サポート部材25は、装着時に背中をサポートし、少なくとも身体側は、弾性素材で構成される。このような素材としては、例えば、発泡ウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、発泡ラバー、不織布及びラッセル生地等が挙げられる。背面サポート部材25は、背面連結部材24を介して、アシスト力の支点位置となる左右の動力発生ユニット(図示なし)と、アシスト力の作用点位置となる胸サポート部材29a、29bの相対位置関係を固定する。特に、背面連結部材24が剛体であるため、左右の動力発生ユニットは、背面連結部材24により連結されて固定される。これにより、左右の動力発生ユニットに互いにねじれるような力が発生しても、左右の動力発生ユニットのねじれを抑制し、左右の動力発生ユニットによるアシスト力を使用者に確実に伝達することができる。
【0024】
背面サポート部材25は、背面連結部材24の上部を収容する袋部を有し、背面連結部材24の上部は、袋部の下部の身体側に設けられている袋部挿入口40から袋部に挿入され、袋部の上部において、留め具41によって、背面サポート部材25に保持されていることが好ましい。具体的には、袋部の上部には留め具41が挿通される留め具用開口部42が設けられ、留め具用開口部42を挿通した留め具41により、背面連結部材24の上端と背面サポート部材25の上端を結合することで、背面連結部材24を背面サポート部材25に保持することができる。これにより、背中に対する剛体で構成されている背面連結部材の圧迫感を軽減することができる。背面サポート部材25の形状は、背面連結部材24の上部を収容する形状であればよく、図示した形状以外の形状でもよい。留め具41としては、例えば、面ファスナー等を用いることができる。留め具用開口部42は、スリット状でもよく、その他の形状でもよい。
【0025】
背面サポート部材25の上部の身体側又は反対側には、左右の上部肩ベルト26a、26bの第1の端部が固定されている。固定手段は、特に限定されず、上部肩ベルト26a、26bの第1の端部を背面サポート部材25に直接縫製してもよく、縫製部材に上部肩ベルト26a、26bの第1の端部及び背面サポート部材25のそれぞれを縫製することで固定してもよい。背面サポート部材25の下部の身体側又は反対側には、左右の下部肩ベルト27a、27bの第1の端部が固定されている。固定手段は、特に限定されず、直接縫製してもよく、縫製部材を介して縫製してもよい。左右の上部肩ベルト26a、26bのそれぞれの第2の端部が左右の下部肩ベルト27a、27bのそれぞれの第2の端部と脱着可能に連結される。装着部として、肩ベルトを有することで、アシスト装置を装着しやすくなる。上部肩部ベルトは、少なくとも身体側は、弾性素材で構成されることが好ましい。このような素材としては、例えば、発泡ウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、発泡ラバー、不織布及びラッセル生地等が挙げられる。
【0026】
肩ベルトにおいて、脱着可能な連結手段は特に限定されないが、バックル等の脱着手段を有し、長さを調整し得ることが好ましい。これにより、下部肩ベルト及び上部肩部ベルトを連結する際の長さを調整することで、上体の起こす動作時に上部肩ベルトと肩に食い込むことを防止し、肩にかかる負担を軽減することができる。装着システム1にてアシスト装置を装着した際、連結された上部肩部ベルト26aと下部肩ベルト27a(又は上部肩部ベルト26bと下部肩ベルト27b)の全体長さL1は、腰ベルト23の下端から背面連絡部材24の上端までの長さL2の1.7倍以上2.6倍以下であることが好ましく、1.8倍以上2.5倍以下であることがより好ましく、1.9倍以上2.4倍以下であることがさらに好ましく、2.0倍以上2.3倍以下であることが特に好ましい。
【0027】
胸ベルト28には、左右対称的に胸サポート部材29a、29bが脱着可能に取り付けられる。脱着可能な連結手段は特に限定されないが、胸ベルト28は、左右の端部にバックル等の脱着手段を有し、長さを調整し得ることが好ましい。これにより、胸サポート部材29a、29bを装着時において使用者の胸部に固定することができる。
【0028】
胸サポート部材29a、29bは、弾性素材で構成することが望ましい。このような素材としては、例えば、発泡ウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、発泡ラバー、不織布及びラッセル生地等が挙げられる。これにより、アシスト力の作用点としての胸サポート部材29a、29bのフィット性を高めつつ、圧迫感を軽減することができる。
【0029】
胸サポート部材の長さは、胸ベルトの幅の2.6倍以上4.7倍以下であり、胸サポート部材の幅は、胸ベルトの幅の1.1倍以上3.7倍以下であり、胸サポート部材の厚みは、前記胸ベルトの幅の0.1倍以上1.1倍以下であることが好ましい。これにより、より効果的にアシスト力の作用点としての胸サポート部材フィット性を高めつつ、圧迫感を軽減することができる。本発明の1以上の実施形態において、長さは、長手方向のサイズであり、幅は長手方向に直交する方向のサイズである。
【0030】
上衣3は、前身頃4、後身頃5及び襟部6を含み、前身頃4は、左の前身頃及び右の前身頃に分けられており、結合部材7によって開閉可能に連結されている。襟部6も結合部材7によって開閉可能に連結されている。結合部材7としては、衣服内の空気の圧力を高める観点から、例えば、チャックやファスナー等を用いることが好ましい。上衣3は、襟部を有しなくてもよい。
【0031】
後身頃5には、肩開口部31a、31b、上部開口部32a、32b、及び下部開口部33a、33bが設けられており、前身頃4には、腰開口部34a、34bが設けられている。
【0032】
肩開口部31a、31bは、後身頃5の肩部に左右対称的に設けられており、上部肩ベルト26a、26の第2の端部がそれぞれ挿通される。肩開口部31a、31bは、スリット状でもよく、その他の形状でもよい。
【0033】
上部開口部32a、32bは、後身頃5の上部に左右対称的に設けられ、胸ベルト28の左右の端部がそれぞれ挿通される。上部開口部32a、32bは、スリット状でもよく、その他の形状でもよい。
【0034】
下部開口部33a、33bは、後身頃5の下部に左右対称的に設けられ、下部肩部ベルトの27a、27bの第2の端部がそれぞれ挿通される。下部開口部33a、33bは、スリット状でもよく、その他の形状でもよい。
【0035】
腰開口部34a、34bは、前身頃4の下部に左右対称的に設けられ、腰ベルトの左右の端部がそれぞれ挿通される。腰開口部34a、34bは、スリット状でもよく、その他の形状でもよい。
【0036】
上衣3は、前身頃4において、腰開口部が設けられている箇所以外の領域に配置されているポケットを有してもよい。装着者がアシスト装置を装着した際に、上半身の前面にはベルト等の部材が露出しないことで、上衣3の前身頃にはポケットを設けることができる。また、上衣3は、必要に応じて袖部を有してもよい。また、必要に応じて、フードを有してもよい。
【0037】
上衣3は、衣類用生地を用いて適宜構成することができる。衣類用生地としては、例えば織物、編物等を用いることができる。織物としては、例えば平織、斜文織、朱子織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織、変わり織、紋織、片重ね織、二重組織、多重組織、経パイル織、緯パイル織、絡み織等が挙げられる。編物としては、例えば丸編、緯編、経編(トリコット編、ラッセル編を含む)、パイル編、平編、天竺編、リブ編、スムース編(両面編)、ゴム編、パール編、デンビー組織、コード組織、アトラス組織、鎖組織、挿入組織等が挙げられる。
【0038】
軽量性に優れる観点から、上衣3は、目付が300g/m2以下の生地で構成されていることが好ましい。前記生地の目付は50g/m2以上250g/m2以下であることがより好ましい。
【0039】
前記生地を構成する繊維としては、特に限定されず、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリアミド繊維、アセテート繊維、コットン繊維、レーヨン繊維、エチレンビニルアルコール繊維、ナイロン繊維等を用いることができる。
【0040】
図10はアシスト装置と連結されている本発明の一実施形態の装着システムの模式的正面図であり、図11は同模式的背面図であり、図12は同模式的左側面図である。装着システムは、図1~9に示されたものと同様のものであり、共通する部分の説明は省略する。
【0041】
装着システム1を用いて装着されるアシスト装置8は、動力発生ユニットとして第1の補助ユニット21a、第2の補助ユニット21b、伝達ユニットして第1伝達ユニット22a、第2の伝達ユニット22bを含む。第1の補助ユニット21a及び第2の補助ユニット21bとしては、軽量であり、着用性に優れる観点から、ゼンマイばねや圧縮コイルスプリング等の弾性体を動力発生手段(動力源)とするものが好ましい。第1伝達ユニット22a及び第2の伝達ユニット22bは、補助ユニットが発生する動力を装着者の動作、具体的には上体を起こす動作のアシスト力となるように大腿部に伝える。
【0042】
補助ユニット21a、21bは、回転発生可能な第1のギア(図示なし)を備え、伝達ユニット22a、22bは前記回転発生可能な第1のギアの回転軸に連結され、大腿部の前面に取り付け可能な下肢ロッド50a、50b、及び前記第1のギアの回転を下肢ロッド50a、50bに伝達する、又は、下肢ロッド50a、50bの回転を前記第1のギアに伝達する伝達機構を備えていることが好ましい。このような補助ユニット、下肢ロッド及び伝達機構としては、例えば、特開2020-110870号公報に記載のものを用いることができる。
【0043】
例えば、補助ユニット21a、21bは、第1回転軸を有し、当該第1回転軸を中心に回転可能な第1プーリと、前記第1回転軸に設けられ、前記第1プーリの回転角度に応じた力を前記第1プーリに付勢する弾性体と、前記第1プーリに第1端が連結される索状体と、前記索状体の第2端が連結され、第2回転軸を中心に回転可能な第2プーリであって、前記第1プーリの外径より大きい外径を有する第2プーリと、前記第2プーリに設けられ、前記第2プーリと共に前記第2回転軸を中心に回転する第2のギアと、前記第2のギアより歯数が多く、前記第2のギアと嵌合可能な第1のギアであって、第3回転軸を中心に回転可能な第1のギアとを有し、下肢ロッド50a、50bは、前記第3回転軸に連結され、前記索状体は、前記第1プーリ及び前記第2プーリの外周面に巻回されており、前記弾性体の付勢力により前記第1プーリが回転して前記索状体を前記第1プーリに巻回し、かつ前記索状体を前記第2プーリからほどくことで前記第2プーリが回転し、前記第2プーリの回転により前記第2のギア及び前記第1のギアが回転し、前記伝達機構を介して前記第1のギアが前記下肢ロッドを回転させる。
【0044】
下肢ロッド50a、50bは、それぞれ、下肢ロッド連結部51a、51b、ヒンジ52a、52b、パッド支持体53a、53bを有し、パッド支持体53a、53bには大腿部装着用パッド60a、60bが結合しており、大腿部装着用パッド60a、60bを大腿部前面に当接させることで、下肢ロッド50a、50bを大腿部に取り付ける。
【0045】
本発明の1以上の実施形態において、特に限定されないが、第1のギアの下肢ロッド50a、50bが連結されている側の面には、回転軸を中心とする略扇状の窪みが設けられている。窪みは、第1の側壁及び第2の側壁を有する。下肢ロッド連結部51a、51bは、窪みの深さより薄い細長い平板状の部材であり、窪みの内部を窪みの底部の平面に沿って回動可能である。下肢ロッド連結部51a、51bと第1の側壁が当接すると、下肢ロッド50a、50bの回動が第1のギアに伝達可能になり、第1のギアの回動が下肢ロッド50a、50bに伝達可能になる。この場合、窪み、側壁及び下肢ロッド連結部51aが伝達機構を構成する。該伝達機構は、下肢ロッド連結部51a、51bが第1のギアを回転させない第1態様と、下肢ロッド連結部51a、51bが第1のギアに回転方向の力を付与して第1のギアを回転させる第2態様とを切り替え可能である。第1のギアの形状は上記形状に特に限定されず、下肢ロッド連結部51aと伝達機構を構成する形状を有するものであればよい。
【0046】
弾性体としては、例えば板状部材を面方向に巻きこんで渦巻き状にしたゼンマイばねを用い、ケース内部に保持してもよい。弾性体は初期状態(下肢ロッドにより第1のギアに負荷がかかっていない状態)においても一定の回転数分だけ巻き締められており、その巻き締め状態が保持されている。これにより、弾性体の付勢力の強弱が調整可能である。
【0047】
装着者が腰をかがめる方向に動くと、下肢ロッド50a、50b及び第1のギアは、弾性体の付勢力に抗して時計回りに回転し、第1のギアの回転により第2のギア及び第2プーリが弾性体の付勢力に抗して回転する。また、第2プーリの回転により索状体が第1プーリから解かれて第2プーリに巻回されることで、弾性体の付勢力に抗して第1プーリが回転する。
【0048】
装着者が腰を伸ばす方向に動くときには、弾性体は、引き出された索状体を元の位置に引き込む復元力が働く。つまり、弾性体の付勢力により第1プーリが回転して、索状体を第1プーリのプーリ本体に巻回し、かつ索状体を第2プーリからほどくことで、索状体が第2プーリを回転させ、第2プーリの回転により第2のギア及び第1のギアがそれぞれ回転することで、下肢ロッド50a、50bが元の位置に戻る。
【0049】
このような補助ユニット、下肢ロッド及び伝達機構を用いることで、電気等の外部の動力を用いることなく、簡易な構成で、前屈姿勢から起き上がるときの腰の伸展動作を補助することができる。また、弾性体の付勢力を2段階で増幅させることができるため、弾性体の付勢力よりも大きい力で下肢ロッドを付勢することができる。これにより、弾性体の付勢力よりも大きなアシスト力を発生させ、使用者の腰を直立状態に戻す動作を効率良く補助することができる。
【0050】
また、所定角度以内で下肢ロッド50a、50bが動いている間、例えば装着者が歩行している間は、下肢ロッド50a、50bが空転するため、アシスト力が発生しない。したがって、歩行動作中に使用者の動作を妨げることがない。また、アシストの有無は下肢ロッドと第1のギアとの相対角度に応じて切り替わるため、アシスト力を発生させるか否かについて切り替え操作を行う必要がなく、使い勝手をよくすることができる。
【0051】
腰ベルト23により、左右の動力発生手段、具体的には補助ユニット21a、21bを装着箇所である臀部の外側、例えば大転子付近に保持することができる。
【0052】
腰ベルト23は、左右の動力発生手段、具体的には補助ユニット21a、21bのそれぞれに回転可能に連結することができる。左右の動力発生ユニット、具体的には補助ユニット21a、21bのそれぞれには、回転軸が挿通されている平板状の連結部30a、30bが設けられており、補助ユニット及び連結部は回転軸を中心に回転可能である。連結部30a、30bには、回転軸が挿通されている平板状の連結部(図示なし)が設けられ、該連結部に腰ベルト23が連結されている。
【0053】
左右の動力発生手段、具体的には補助ユニット21a、21bと腰ベルトとの間に連結部が介在していることにより、連結部30a、30bと補助ユニット21a、21bとの回転軸と、連結部30a、30bと腰ベルト23との回転軸とを異なる位置に配置することができる。そのため、補助ユニット21a、21b及び腰ベルトの一方の回転運動が他方に直接伝達されることがなく、独立して回動可能である。また、補助ユニット21a、21bは大腿部の角度に応じて回動するのに対し、腰ベルト23は腰部の角度に応じて回動する。人体においては、大腿部の回転軸と腰部の回転軸は垂直軸方向の高さが異なる。それに対し、連結部30a、30bと補助ユニット21a、21bとの回転軸と連結部30a、30bと腰ベルト23との回転軸とを異なる位置にすることで、連結部30a、30bと補助ユニット21a、21bとの回転軸の位置を使用者の大腿部の回転位置と略一致させ、連結部30a、30bと腰ベルト23との回転軸の位置を使用者の腰部の回転位置と略一致させて、アシスト装置が人体の前屈動作により追従しやすくなる。
【0054】
背面連結部材24は、左右の動力発生ユニット、具体的には補助ユニット21a、21bと背面サポート部材25を連結することができる。背面サポート部材25は、背面連結部材24を介して、アシスト力の支点位置となる補助ユニット21a、21bと、アシスト力の作用点位置となる胸サポート部材29a、29bの相対位置関係を固定する。特に、背面連結部材24が剛体であるため、第1の補助ユニット21a及び第2の補助ユニット21bは、背面連結部材24により連結されて固定される。これにより、第1の補助ユニット21aと第2の補助ユニット21bとが互いにねじれるような力が発生しても、補助ユニット21a、21bのねじれを抑制し、補助ユニット21a、21bによるアシスト力を使用者に確実に伝達することができる。
【0055】
アシスト装置を装着時には、例えば、まず、留め具41により、背面連結部材24の上端と背面サポート部材25の上端を結合する。次に、上部肩ベルト26a、26bの第2の端部を肩開口部31a、31bに挿通させ、胸ベルト28の左右の端部を上部開口部32a、32bに挿通させ、下部肩部ベルトの27a、27bの第2の端部を下部開口部33a、33bに挿通させ、腰ベルト23の左右の端部を腰開口部34a、34bに挿通させる。次に、上部肩ベルト26a、26bを装着者の肩に通し、左右の動力発生ユニット、具体的には補助ユニット21a、21bを臀部の外側、望ましくは大転子付近に装着し、上衣3の内側で、上部肩ベルト26a、26bの第2の端部のそれぞれを、下部肩ベルトの27a、27bの第2の端部のそれぞれと連結し、胸ベルト28の左右の端部を連結し、腰ベルト23の左右の端部を連結することで、補助ユニット21a、21bを大転子付近に固定する。次に、第1及び第2の伝達ユニット22a、22b、具体的には下肢ロッド50a、50bを大腿部に取り付ける。下肢ロッド50a、50bは、大腿部装着用パッド60a、60bを大腿部前面に当接させることで、大腿部に取り付ける。図13は、アシスト装置を装着した状態(直立状態)を説明する模式的左側面図である。図13では、説明のため、装着者の上肢を省略している。大腿部装着用パッド60a、60bは、装着性等の観点から、例えば、弾性素材で構成することができる。
【0056】
このように装着者がアシスト装置を装着した際に、上半身の前面においては、上衣の外側にベルト等の部材が露出せず、装着性に優れ、作業性及び安全性が向上し、背面においては、アシスト装置が上衣の外側に露出することで、動きやすくなる。また、肩ベルトを有することで、装着性が高まる。本発明において、肩ベルトは、アシスト装置の装着を容易にするために設けた構成であり、直立状態及び腰をかがめる状態のいずれの場合も、肩に固定されることはない、すなわち肩に負荷を与えない。
【符号の説明】
【0057】
1 装着システム
2 装着部
3 上衣
4 前身頃
5 後身頃
6 襟部
7 結合部材
8 アシスト装置
21a、21b 補助ユニット
22a、22b 伝達ユニット
23 腰ベルト
24 背面連絡部材
25 背面サポート部材
26a、26b 上部肩ベルト
27a、27b 下部肩ベルト
28 胸ベルト
29a、29b 胸サポート部材
30a、30b 連結部
31a、31b 肩開口部
32a、32b 上部開口部
33a、33b 下部開口部
34a、34b 腰開口部
40 袋部挿入口
41 留め具
42 留め具用開口部
50a、50b 下肢ロッド
51a、51b 下肢ロッド連結部
52a、52b ヒンジ
53a、53b パッド支持体
60a、60b 大腿部装着用パッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図13