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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】コーナー建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/16 20060101AFI20240603BHJP
   E06B 3/46 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
E06B7/16 B
E06B3/46
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021102451
(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公開番号】P2023001620
(43)【公開日】2023-01-06
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 靖幸
(72)【発明者】
【氏名】有田 高宏
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-91151(JP,A)
【文献】実開平3-14289(JP,U)
【文献】特開2017-31580(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0362922(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/16
E06B 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向にスライド移動可能な第1障子と、
前記第1方向に交差する第2方向にスライド移動可能な第2障子とを、コーナー側の閉鎖位置に移動して内側空間および外側空間を区画するコーナー建具であって、
前記第1障子は、コーナー側に設けられた第1戸先框を有し、
前記第2障子は、コーナー側に設けられた第2戸先框を有し、
前記第1戸先框は、前記内側空間側に設けられる第1内側見付面部と、前記外側空間側に設けられる第1外側見付面部と、前記第1内側見付面部および前記第1外側見付面部に連続して設けられる第1見込面部とを備えて構成され、
前記第2戸先框は、前記内側空間側に設けられる第2内側見付面部と、前記外側空間側に設けられる第2外側見付面部と、前記第2内側見付面部および前記第2外側見付面部に連続して設けられる第2見込面部とを備えて構成され、
前記第2見込面部には、前記第2見込面部に取り付けられる基部と、前記基部から前記第2方向に突出する突出部とを有する戸当り材が設けられ、
前記第1障子および前記第2障子が前記コーナー側の閉鎖位置に位置する場合に、
前記第1内側見付面部と前記第2見込面部とが対向し、
前記第1見込面部は、前記第1方向の位置が前記第2内側見付面部および前記第2外側見付面部の間に位置し、
前記基部は、前記第1内側見付面部と前記第2見込面部との間に配置され、
前記突出部の先端は、前記第2方向の位置が前記第1内側見付面部よりも前記第1外側見付面部側に位置し、前記第1方向の位置が前記第1内側見付面部よりも前記第2外側見付面部側に位置する
ことを特徴とするコーナー建具。
【請求項2】
請求項1に記載のコーナー建具において、
前記第1内側見付面部および前記第1外側見付面部の前記第1方向に沿った幅寸法は、前記第2見込面部の前記第1方向に沿った幅寸法未満である
ことを特徴とするコーナー建具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコーナー建具において、
前記突出部は、前記第1戸先框に対向し、前記先端に向かうに従って前記第1見込面部との間隔が広がる向きに傾斜された傾斜面を備える
ことを特徴とするコーナー建具。
【請求項4】
請求項3に記載のコーナー建具において、
前記第1戸先框の前記第1内側見付面部と前記第1見込面部とは、面取り部を介して連続して形成され、
前記傾斜面は、前記面取り部に沿って配置され、前記面取り部よりも長く延出されている
ことを特徴とするコーナー建具。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のコーナー建具において、
前記突出部は、前記基部の表面から前記第2方向に突出されたヒレ状の突片で構成されている
ことを特徴とするコーナー建具。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のコーナー建具において、
前記基部は硬質樹脂で構成され、前記突出部は軟質樹脂で構成されている
ことを特徴とするコーナー建具。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のコーナー建具において、
前記第2戸先框は、前記第2見込面部に開口する溝部を有し、前記基部は前記溝部に係合する係合部を有する
ことを特徴とするコーナー建具。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のコーナー建具において、
前記第1戸先框および前記第2戸先框は、同一断面形状の部材で構成されている
ことを特徴とするコーナー建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内建具等として用いられるコーナー建具に関する。
【背景技術】
【0002】
室内空間を仕切る室内建具として、支持レールに沿ってスライド移動自在に扉体を配設し、L字状に配置された支持レールのコーナー部において略直交するように隣合わせて扉体を配置した間仕切り扉が知られている(特許文献1参照)。
この間仕切り扉では、各扉体の端面に戸当たりを取り付け、各戸当たりの先端面に係合部を設け、一方の扉体に設けられた戸当たりの係合部に他方の扉体の端面に設けられた戸当たりの内側面に当接される弾接材を設け、他方の扉体に設けられた戸当たりの係合部に弾接材と戸当たりの弾接部分の外面側を覆うカバー材を配置することで、弾接材と戸当りとの間に生じる隙間からの光漏れを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-91151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の間仕切り扉は、各扉体の端面にそれぞれ戸当りを設け、さらに一方の戸当りに弾接材を設け、他方の戸当りにカバー材を配置する必要があり、部品数が多くなり、コスト低減が難しいという課題がある。
また、カバー材は弾接材の外面側を覆うため、先に弾接材が取り付けられた扉体を閉鎖位置に移動すると、カバー材が取り付けられた扉体を閉鎖位置にスライド移動した際に、カバー材が弾接材や戸当りに当たり、閉鎖位置に移動できないという課題もある。
【0005】
本発明の目的は、互いにスライド移動される第1障子および第2障子を備えるコーナー建具において、部品数を少なくできて光漏れを防止でき、かつ、各障子を確実に閉鎖位置に移動できるコーナー建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1方向にスライド移動可能な第1障子と、前記第1方向に交差する第2方向にスライド移動可能な第2障子とを、コーナー側の閉鎖位置に移動して内側空間および外側空間を区画するコーナー建具であって、前記第1障子は、コーナー側に設けられた第1戸先框を有し、前記第2障子は、コーナー側に設けられた第2戸先框を有し、前記第1戸先框は、前記内側空間側に設けられる第1内側見付面部と、前記外側空間側に設けられる第1外側見付面部と、前記第1内側見付面部および前記第1外側見付面部に連続して設けられる第1見込面部とを備えて構成され、前記第2戸先框は、前記内側空間側に設けられる第2内側見付面部と、前記外側空間側に設けられる第2外側見付面部と、前記第2内側見付面部および前記第2外側見付面部に連続して設けられる第2見込面部とを備えて構成され、前記第2見込面部には、前記第2見込面部に取り付けられる基部と、前記基部から前記第2方向に突出する突出部とを有する戸当り材が設けられ、前記第1障子および前記第2障子が前記コーナー側の閉鎖位置に位置する場合に、前記第1内側見付面部と前記第2見込面部とが対向し、前記第1見込面部は、前記第1方向の位置が前記第2内側見付面部および前記第2外側見付面部の間に位置し、前記基部は、前記第1内側見付面部と前記第2見込面部との間に配置され、前記突出部の先端は、前記第2方向の位置が前記第1内側見付面部よりも前記第1外側見付面部側に位置し、前記第1方向の位置が前記第1内側見付面部よりも前記第2外側見付面部側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコーナー建具によれば、互いにスライド移動される第1障子および第2障子を備えるコーナー建具において、部品数を少なくできて光漏れを防止でき、かつ、各障子を確実に閉鎖位置に移動できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態のコーナー建具を示す斜視図である。
図2】前記コーナー建具を示す概略平面図である。
図3】前記コーナー建具の第1障子を示す縦断面図である。
図4】第1障子の第1戸先框および第2障子の第2戸先框を示す横断面図である。
図5】第1障子および第2障子を閉鎖位置に移動する際の第2戸先框の調整手順を示す図である。
図6】第2実施形態のコーナー建具の要部を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態に係るコーナー建具1を示す斜視図であり、図2は概略平面図である。コーナー建具1は、室内において直交配置されたコーナー壁5の開口55を開閉する第1障子10および第2障子20を備える。
コーナー壁5は、天井から床面まで連続する間仕切壁51,52と、天井から垂れ下がる垂れ壁53,54とを備え、開口55はこれらの壁51~54で区画される。なお、コーナー壁5および第1障子10、第2障子20で区画される室内空間のうち、第1障子10および第2障子20が入隅面となる空間を内側空間S1、出隅面となる空間を外側空間S2と定義する。
【0010】
第1障子10および第2障子20は、上吊りタイプの引戸である。図3は、第1障子10の縦断面図であり、垂れ壁53の下面には上レール60が固定されている。上レール60は、第1障子10に取り付けられた吊車61を案内可能に構成され、側面にはカバー62が取り付けられている。
なお、図示は省略するが、垂れ壁54の下面にも上レール60が固定され、第2障子20に取り付けられた吊車61を案内している。
【0011】
第1障子10は、第1上框11と、第1下框12と、第1戸先框13と、第1戸尻框14と、パネル15とで構成されている。
第2障子20は、第2上框21と、第2下框22と、第2戸先框23と、第2戸尻框24と、パネル25とで構成されている。
第1障子10および第2障子20は、後述するように、戸当り材30の有無のみが相違し、他の構成は共通する。すなわち、第1上框11および第2上框21は同一断面形状のアルミ押出形材で構成され、第1下框12および第2下框22も同一断面形状のアルミ押出形材で構成される。また、第1戸先框13、第1戸尻框14、第2戸先框23、第2戸尻框24は、同一断面形状のアルミ押出形材で構成される。
パネル15、25は、各框11~14、21~24の内周面に形成された保持溝に四辺が挿入されて保持されている。なお、パネル15、25は、ガラスパネルや、壁紙などが貼られたクロスパネル等が利用できる。また、パネル15,25の両面には、引手16、26が取り付けられている。
【0012】
第1障子10、第2障子20は、床面ノンレールタイプの上吊り引戸である。このため、床面7には、各障子10,20の振れ止め用の床付けガイドピン71が固定されている。各障子10、20は、下面に形成された溝に挿入された床付けガイドピン71によってスライド方向に交差する見込み方向への振れを抑制しつつ、上レール60に沿ってスライド移動可能に構成されている。第1障子10は、間仕切壁51および垂れ壁53に沿った第1方向(図3の一点鎖線L1に沿った方向)にスライド移動可能とされ、第2障子20は、間仕切壁52および垂れ壁54に沿った第2方向(図3の一点鎖線L2に沿った方向)にスライド移動可能とされている。第1方向および第2方向は互いに直交する方向である。
なお、床付けガイドピン71の代わりに、床面7にマグネットガイド受け金具を固定し、第1障子10、第2障子20の第1戸先框13、第2戸先框23の下面にボトムロックを取り付けて各障子10,20が閉鎖位置に移動した際に、ボトムロックが下方に突出してマグネットガイド受け金具に係合するように構成してもよい。また、床面7に下レールを取り付け、第1障子10、第2障子20に下レールで案内される戸車を設けてもよい。
【0013】
次に、第1戸先框13および第2戸先框23について、図4を参照して説明する。
第1戸先框13は、アルミ押出形材で中空筒状に形成され、第1内側見付面部131と、第1外側見付面部132と、第1見込面部133と、第1内面部134とを備える。
第1内側見付面部131は、内側空間S1に面する見付け面部であり、第1外側見付面部132は、外側空間S2に面する見付け面部である。このため、第1内側見付面部131、第1外側見付面部132の表面は、第1方向に沿った平面とされている。
第1見込面部133は、面取り部135、136を介して第1内側見付面部131、第1外側見付面部132に連続して設けられている。面取り部135は、第1内側見付面部131および第1見込面部133に対して45°の角度で傾斜された傾斜面部である。同様に、面取り部136は、第1外側見付面部132および第1見込面部133に対して45°の角度で傾斜された傾斜面部である。
第1見込面部133は、幅方向の中央部に上下方向つまり第1戸先框13の全長に渡って形成された溝部140を備えている。溝部140は、互いに対向する一対の係止片141と、係止片141の裏側に間隔を空けて形成される当接片142と、底辺部143とを備えて形成されている。
第1内面部134は、第1内側見付面部131および第1外側見付面部132の戸尻側端縁間に形成されている。第1内面部134には、一対の保持片137が第1戸尻框14に向かって突設され、保持片137間にパネル15が保持されている。
【0014】
第2戸先框23は、第1戸先框13と形状および寸法が同一のアルミ押出形材で構成され、第2内側見付面部231、第2外側見付面部232、第2見込面部233、第2内面部234、面取り部235、236、保持片237を備える。これらは、第1戸先框13の第1内側見付面部131、第1外側見付面部132、第1見込面部133、第1内面部134、面取り部135、136、保持片137と同一であるため説明を省略する。
【0015】
第1戸先框13において、第1戸先框13の保持片137を除く部分の見付け方向の幅寸法をW1とし、保持片137の見付け方向の幅寸法をW2とする。また、第2戸先框23の見込み方向の幅寸法をW3とする。なお、第1戸先框13の見付け方向とは、第1障子10がスライド移動する第1方向であり、第2戸先框23の見込み方向とは、第2障子20がスライド移動する第2方向に直交する方向つまり第1方向である。
本実施形態では、幅寸法W1は幅寸法W3よりも小さく、より詳しくは、幅寸法W1は幅寸法W3の半分よりも小さい。また、幅寸法W3は幅寸法W1とW2とを加算した寸法よりも大きい。すなわち、W1<W3、W1<W3×0.5、(W1+W2)<W3である。
【0016】
本実施形態では、第1障子10および第2障子20がコーナー側に移動し、上レール60に設けられた図示しないストッパーに吊車61が当接して閉鎖位置で停止した際に、第1戸先框13および第2戸先框23は、図4に示す位置関係となる。すなわち、第1方向において、第1戸先框13の第1見込面部133は、第2戸先框23の第2内側見付面部231および第2外側見付面部232の間つまり第2見込面部233の幅方向の範囲内に位置し、より具体的には、第2見込面部233の幅方向の中心よりも第2外側見付面部232側に位置している。このため、閉鎖位置にある第1戸先框13および第2戸先框23の外側空間S2側には、第1見込面部133と第2見込面部233とで区画される凹部空間つまり入隅状の空間が形成される。
また、第1方向における第1戸先框13の保持片137の先端位置は、第2戸先框23の第2内側見付面部231の表面位置に揃っている。
【0017】
第1戸先框13の溝部140、具体的には係止片141と当接片142との間の溝部分には溝部140を塞ぐカバー材138が係合して取り付けられている。
一方、第2戸先框23の溝部240には、戸当り材30が取り付けられている。
戸当り材30は、第2見込面部233に固定される基部31と、基部31から第2方向に突出する突出部35とを有する。本実施形態では、基部31は硬質樹脂で構成され、突出部35は軟質樹脂で構成されている。但し、基部31および突出部35の両方を硬質樹脂で構成してもよい。
基部31は、板状に形成されて第2見込面部233および第1内側見付面部131の間に配置される本体部32と、溝部240の係止片241および当接片242間の溝部に挿入される係合部33とを備える。係合部33は、先端に向かうにしたがって当接片242から離れるように傾斜されて肉厚も薄くなるように構成されている。このため、係合部33の先端側を弾性変形させることで、係合部33を溝部240に係合させたり、取り外すことができる。
【0018】
突出部35は、本体部32の第2外側見付面部232側の端部から第2方向に突出されて設けられ、断面三角形状に構成されている。このため、突出部35は、第1戸先框13、より具体的には面取り部135に対向する傾斜面36を備える。そして、第1障子10および第2障子20がコーナー側の閉鎖位置に位置する場合、突出部35の先端37は、第2方向の位置が第1内側見付面部131よりも第1外側見付面部132側、より具体的には面取り部135よりも第1外側見付面部132側に位置し、第1見込面部133に対向する位置まで突出されている。また、突出部35の先端37は、第1方向の位置が第1内側見付面部131よりも第2外側見付面部232側、より具体的には面取り部135よりも第2外側見付面部232側に位置する。すなわち、図4に示すように、コーナー建具1では、第1障子10および第2障子20がコーナー側の閉鎖位置に位置する場合、第1見込面部133と第2見込面部233とで入隅状の凹部空間が形成され、突出部35の先端37はこの凹部空間に位置する。したがって、突出部35は、基部31と第1内側見付面部131との隙間の延長線上に配置され、この隙間を覆うように配置される。このため、突出部35は、第1戸先框13および第2戸先框23間の隙間からの光漏れを防止する。
また、突出部35の傾斜面36は、面取り部135よりも長く延出されているため、第2戸先框23が閉鎖位置に到達する前に傾斜面36が面取り部135に当接可能に構成されている。すなわち、傾斜面36の幅寸法は、面取り部135の幅寸法よりも大きくされている。ここで、傾斜面36の幅寸法は、傾斜面36が本体部32に連続する端縁から突出部35の先端までの寸法であり、面取り部135の幅寸法は、面取り部135の第1内側見付面部131側の端縁から第1見込面部133側の端縁までの寸法である。
これにより、図5に示すように、第1障子10および第2障子20を閉鎖位置にスライド移動する場合に、第2障子20が見込み方向にずれても、傾斜面36が面取り部135に当接することで規定の閉鎖位置に案内できる。
例えば、図5の(A)に示すように、第2障子20をコーナー側にスライド移動させた際に、第2障子20が見込み方向、具体的には図5において内側空間S1側(左側)にずれて突出部35の先端が第1戸先框13の面取り部135に当接した場合、図5の(B),(C)に示すように、突出部35の傾斜面36が面取り部135に案内されることで、第2戸先框23はコーナー側端部の閉鎖位置に向かって移動するに従い、図5において外側空間S2側(右側)にも移動し、第2障子20を図5の(D)に示す規定の閉鎖位置まで移動して閉じることができる。
【0019】
本実施形態によれば、第1障子10および第2障子20をコーナー側の閉鎖位置に移動した際に、第1見込面部133および第2見込面部233とで区画される入隅状の凹部空間が形成され、この凹部空間に戸当り材30の突出部35の先端37が配置される。このため、第1障子10を閉鎖位置に移動してから第2障子20を閉鎖位置に移動した場合と、第2障子20を閉鎖位置に移動してから第1障子10を閉鎖位置に移動した場合とのいずれの場合も、突出部35が第1障子10の閉鎖位置への移動を阻害することがなく、第1障子10、第2障子20を確実に閉鎖位置に移動できる。
戸当り材30の基部31は、第2見込面部233と第1内側見付面部131との間に配置されるため、第1戸先框13と第2戸先框23とが直接衝突することを防止でき、第1戸先框13、第2戸先框23が傷付くことを防止できる。
戸当り材30の突出部35は、基部31と第1内側見付面部131との隙間を覆うように配置されて、前記隙間からの光漏れを遮断する。このため、第2戸先框23に戸当り材30を取り付けるだけで光漏れを防止でき、第1戸先框13、第2戸先框23にそれぞれ戸当り材を設ける必要が無いため、部品数も少なくできる。
【0020】
第1内側見付面部131および第1外側見付面部132の幅寸法を、第2見込面部233の幅寸法未満にしているので、第1障子10を内部空間や外部空間から視認した際に、第1戸先框13の第1内側見付面部131および第1外側見付面部132の幅寸法が細いスリムな意匠にでき、第1障子10は、第1戸先框13が目立たないデザインにすることができる。
また、第2戸先框23は、第1戸先框13と同一形状、サイズであるため、同様にスリムな意匠にでき、第2障子20は、第2戸先框23が目立たないデザインにすることができる。
このため、第1内側見付面部131、第1外側見付面部132、第2内側見付面部231、第2外側見付面部232の幅寸法を、第1見込面部133や第2見込面部233の幅寸法と一致させる場合に比べてデザイン自由度を高めることができる。
【0021】
戸当り材30の突出部35は傾斜面36を備えるため、第1障子10および第2障子20をコーナー側にスライド移動して閉じる際に、第1戸先框13に突出部35の傾斜面を当接させて第2戸先框23の見込み方向の位置を調整できる。このため、第2障子20を規定の位置まで確実に閉じることができる。
また、第1戸先框13に面取り部135を形成しているので、面取り部135を突出部35の傾斜面36に当接させることができ、第2戸先框23をスムーズに見込み方向に移動させることができる。さらに、傾斜面36の幅寸法が面取り部135の幅寸法よりも大きいため、第2戸先框23の面取り部135を傾斜面36に当接させながら第2戸先框23をコーナー部側に移動できる。このため、第2戸先框23の見込み方向の位置を調整しながら規定の閉鎖位置に移動できる。
【0022】
戸当り材30の基部31を硬質樹脂で構成しているので、戸当り材30を第2見込面部233に安定して固定できる。戸当り材30の突出部35を軟質樹脂で構成しているので、仮に第1戸先框13が突出部35に衝突しても突出部35が適宜変形して衝撃を吸収でき、突出部35の破損を防止できる。
戸当り材30の基部31を、第2見込面部233の溝部240に係合して取り付けているので、基部31を両面テープや接着剤で取り付ける場合に比べて取付強度を向上できる。
【0023】
第1戸先框13および第2戸先框23は、同一断面形状の部材で構成されているので、アルミや樹脂の押出形材で構成する際の製造コストを低減できる。第1戸尻框14や第2戸尻框24も、第1戸先框13や第2戸先框23と同一断面形状の部材で構成しているので、さらに製造コストを低減できる。
【0024】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のコーナー建具1Bについて、図6を参照して説明する。なお、コーナー建具1Bは、第1実施形態の戸当り材30とは異なる戸当り材40を用いた点が相違する。このため、第1実施形態と同一の構成には同一符号を付し、説明を省略または簡略する。
【0025】
戸当り材40は、第2見込面部233に固定される基部41と、基部41から突出する突出部45とを有する。本実施形態では、基部41は硬質樹脂で構成され、突出部45は軟質樹脂で構成されている。
基部41は、板状に形成されて第1内側見付面部131および第2見込面部233の間に配置される本体部42と、溝部240の係止片241および当接片242間の溝部に係合される係合部43とを備える。係合部43の構成は係合部33と同じであり、係合部43の先端側を弾性変形させることで、係合部43を溝部240に係合させたり、取り外すことができる。
突出部45は、第2見込面部233の幅方向の中心位置に配置されて基部41から第2方向に突出されたヒレ状の部材であり、突出部45の先端47は断面略円形に形成されている。
そして、第1障子10および第2障子20がコーナー側の閉鎖位置に位置する場合、突出部45の先端47は、第2方向の位置が第1内側見付面部131よりも第1外側見付面部132側、より具体的には面取り部135よりも第1外側見付面部132側に位置し、第1見込面部133に対向する位置まで突出されている。
また、突出部45の先端47は、第1方向の位置が第1内側見付面部131よりも第2外側見付面部232側、より具体的には面取り部135よりも第2外側見付面部232側に位置する。すなわち、図6に示すように、コーナー建具1Bでは、第1障子10および第2障子20がコーナー側の閉鎖位置に位置する場合、第1戸先框13の第1内面部134の表面と、第2戸先框23の第2内側見付面部231の表面とが同一平面上に位置するように設定され、かつ、W1がW3の半分未満であるため、第2見込面部233の幅方向の中心位置に配置された突出部45は、第1見込面部133よりも第2外側見付面部232側に位置する。
【0026】
本実施形態によれば、前記第1実施形態と同一の構成を採用することで同様の作用効果を奏することができる。
さらに、コーナー建具1Bでは、ヒレ状の突片で構成された突出部45を有する戸当り材40を第2戸先框23に取り付けているので、第1戸先框13および第2戸先框23間に隙間が生じた場合の光漏れを、隙間の延長線上に配置される突出部45で防ぐことができる。また、突出部45の突出寸法を、第1戸先框13および第2戸先框23間に生じる可能性がある隙間の最大寸法以上に容易に設定でき、簡易な構成で確実に光漏れを防止できる。
【0027】
[変形例]
前記各実施形態では、第1戸先框13および第2戸先框23は、同一断面形状の部材で構成していたが、断面形状が異なる部材を用いてもよく、また、第1内側見付面部131の幅寸法が第2見込面部233の幅寸法以上でもよく、少なくとも第1見込面部133の第1方向の位置が、第2内側見付面部231および第2外側見付面部232間であり、第1内側見付面部131と第2見込面部233との間に戸当り材30、40の基部31、41を配置でき、第1見込面部133および第2見込面部233で区画される凹部空間に突出部35、45の先端37、47を配置できる構成であればよい。
このため、戸当り材も、各実施形態の戸当り材30、40に限定されず、閉鎖位置における第1内側見付面部131の位置、すなわち、第1内側見付面部131の戸先側端縁よりも第2外側見付面部232側の位置に突出部が設けられるものであればよい。例えば、戸当り材の幅方向の中央位置に、両側に傾斜面を備える突出部を設けた戸当り材を用いてもよい。また、閉鎖位置において、突出部35、45の先端37、47の第2方向および第1方向の位置が、面取り部135の第1内側見付面部131側の端縁から第1見込面部133側の端縁までの範囲内である戸当り材を用いてもよい。
また、戸当り材は、基部31、41および突出部35、45の両方が硬質樹脂で構成されたものでもよい。さらに、戸当り材は、両面テープや接着剤で第2見込面部233に取り付けたものでもよい。
【0028】
[本発明のまとめ]
本発明は、第1方向にスライド移動可能な第1障子と、前記第1方向に交差する第2方向にスライド移動可能な第2障子とを、コーナー側の閉鎖位置に移動して内側空間および外側空間を区画するコーナー建具であって、前記第1障子は、コーナー側に設けられた第1戸先框を有し、前記第2障子は、コーナー側に設けられた第2戸先框を有し、前記第1戸先框は、前記内側空間側に設けられる第1内側見付面部と、前記外側空間側に設けられる第1外側見付面部と、前記第1内側見付面部および前記第1外側見付面部に連続して設けられる第1見込面部とを備えて構成され、前記第2戸先框は、前記内側空間側に設けられる第2内側見付面部と、前記外側空間側に設けられる第2外側見付面部と、前記第2内側見付面部および前記第2外側見付面部に連続して設けられる第2見込面部とを備えて構成され、前記第2見込面部には、前記第2見込面部に取り付けられる基部と、前記基部から前記第2方向に突出する突出部とを有する戸当り材が設けられ、前記第1障子および前記第2障子が前記コーナー側の閉鎖位置に位置する場合に、前記第1内側見付面部と前記第2見込面部とが対向し、前記第1見込面部は、前記第1方向の位置が前記第2内側見付面部および前記第2外側見付面部の間に位置し、前記基部は、前記第1内側見付面部と前記第2見込面部との間に配置され、前記突出部の先端は、前記第2方向の位置が前記第1内側見付面部よりも前記第1外側見付面部側に位置し、前記第1方向の位置が前記第1内側見付面部よりも前記第2外側見付面部側に位置することを特徴とする。
【0029】
本発明によれば、第1障子および第2障子をコーナー側の閉鎖位置に移動した際に、第1内側見付面部と前記第2見込面部とが対向し、前記第1見込面部は、前記第1方向の位置が前記第2内側見付面部および前記第2外側見付面部の間に位置する。このため、第1見込面部および第2見込面部で区画される入隅状の凹部空間が形成され、この凹部空間に戸当り材の突出部が配置される。このため、第1障子を閉鎖位置に移動してから第2障子を閉鎖位置に移動した場合と、第2障子を閉鎖位置に移動してから第1障子を閉鎖位置に移動した場合とのいずれの場合も、突出部が第1障子の閉鎖位置への移動を阻害することがなく、各障子を確実に閉鎖位置に移動できる。
基部は、第2見込面部と第1内側見付面部との間に配置されるため、第1戸先框と第2戸先框とが直接衝突することを防止でき、各戸先框が傷付くことを防止できる。
突出部は、基部と第1内側見付面部との隙間を覆うように配置されて、前記隙間からの光漏れを遮断するため、第2戸先框に戸当り材を取り付けるだけで光漏れを防止でき、各戸先框にそれぞれ戸当り材を設ける必要が無いため、部品数も少なくできる。
【0030】
本発明のコーナー建具において、前記第1内側見付面部および前記第1外側見付面部の前記第1方向に沿った幅寸法は、前記第2見込面部の前記第1方向に沿った幅寸法未満であることが好ましい。
本発明によれば、第1内側見付面部および第1外側見付面部の幅寸法を、第2見込面部の幅寸法未満としているので、第1障子を内部空間や外部空間から視認した際に、第1戸先框の第1内側見付面部および第1外側見付面部の幅寸法が細いスリムな意匠にでき、第1戸先框が目立たないデザインにすることができる。
【0031】
本発明のコーナー建具において、前記突出部は、前記第1戸先框に対向し、前記先端に向かうに従って前記第1見込面部との間隔が広がる向きに傾斜された傾斜面を備えることが好ましい。
本発明によれば、戸当り材の突出部は傾斜面を備えるため、第1障子および第2障子をコーナー側にスライド移動して閉じる際に、第1戸先框に突出部の傾斜面を当接させて第2戸先框の見込み方向の位置を調整でき、第2障子を規定の位置まで確実に閉じることができる。
【0032】
本発明のコーナー建具において、前記第1戸先框の前記第1内側見付面部と前記第1見込面部とは、面取り部を介して連続して形成され、前記傾斜面は、前記面取り部に沿って配置され、前記面取り部よりも長く延出されていることが好ましい。
本発明によれば、第1戸先框の面取り部を前記突出部の傾斜面に当接させることができ、第2戸先框をスムーズに見込み方向に移動させることができる。また、傾斜面が面取り部よりも長く延出されているため、第2戸先框の面取り部を傾斜面に当接させながら第2戸先框をコーナー部側に移動できる。このため、第2戸先框の見込み方向の位置を調整しながら規定の閉鎖位置に移動できる。
【0033】
本発明のコーナー建具において、前記突出部は、前記基部の表面から前記第2方向に突出されたヒレ状の突片で構成されていることが好ましい。
本発明によれば、ヒレ状の突片で突出部を構成しているので、第1戸先框および第2戸先框間に隙間が生じた場合の光漏れを、前記隙間の延長線上に配置される突出部で防ぐことができる。また、突出部の突出寸法を、第1戸先框および第2戸先框間に生じる可能性がある隙間の最大寸法以上に容易に設定でき、簡易な構成で確実に光漏れを防止できる。
【0034】
本発明のコーナー建具において、前記基部は硬質樹脂で構成され、前記突出部は軟質樹脂で構成されていることが好ましい。
本発明によれば、基部を硬質樹脂で構成しているので、第2戸先框の第2見込面部に安定して固定できる。また、突出部を軟質樹脂で構成しているので、仮に第1戸先框が突出部に衝突しても突出部が適宜変形して衝撃を吸収でき、突出部の破損を防止できる。
【0035】
本発明のコーナー建具において、前記第2戸先框は、前記第2見込面部に開口する溝部を有し、前記基部は前記溝部に係合する係合部を有することが好ましい。
本発明によれば、戸当り材の基部を、第2見込面部の溝部に係合して取り付けることができるので、基部を両面テープや接着剤で第2見込み面部に取り付ける場合に比べて取付強度を向上できる。
【0036】
本発明のコーナー建具において、前記第1戸先框および前記第2戸先框は、同一断面形状の部材で構成されていることが好ましい。
本発明によれば、第1戸先框および第2戸先框を同一断面形状にできるので、アルミや樹脂の押出形材で構成する際の製造コストを低減できる。
【符号の説明】
【0037】
1、1B…コーナー建具、5…コーナー壁、7…床面、10…第1障子、11…第1上框、12…第1下框、13…第1戸先框、14…第1戸尻框、15…パネル、16…引手、20…第2障子、21…第2上框、22…第2下框、23…第2戸先框、24…第2戸尻框、25…パネル、26…引手、30…戸当り材、31…基部、32…本体部、33…係合部、35…突出部、36…傾斜面、37…先端、40…戸当り材、41…基部、42…本体部、43…係合部、45…突出部、47…先端、51、52…間仕切壁、53、54…垂れ壁、55…開口、60…上レール、61…吊車、62…カバー、71…床付けガイドピン、131…第1内側見付面部、132…第1外側見付面部、133…第1見込面部、134…第1内面部、135…面取り部、136…面取り部、137…保持片、138…カバー材、140…溝部、141…係止片、142…当接片、143…底辺部、231…第2内側見付面部、232…第2外側見付面部、233…第2見込面部、234…第2内面部、235…面取り部、236…面取り部、240…溝部、241…係止片、242…当接片、L1…一点鎖線、L2…一点鎖線、S1…内側空間、S2…外側空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6