IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ KDDI株式会社の特許一覧

特許7497329ナビゲーション装置、移動体システム、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラム
<>
  • 特許-ナビゲーション装置、移動体システム、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラム 図1
  • 特許-ナビゲーション装置、移動体システム、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラム 図2
  • 特許-ナビゲーション装置、移動体システム、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラム 図3
  • 特許-ナビゲーション装置、移動体システム、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラム 図4
  • 特許-ナビゲーション装置、移動体システム、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラム 図5
  • 特許-ナビゲーション装置、移動体システム、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】ナビゲーション装置、移動体システム、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20240603BHJP
   G05D 1/226 20240101ALI20240603BHJP
   H04W 48/16 20090101ALI20240603BHJP
   H04W 92/08 20090101ALI20240603BHJP
【FI】
G01C21/34
G05D1/226
H04W48/16 134
H04W92/08 110
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021146285
(22)【出願日】2021-09-08
(65)【公開番号】P2023039228
(43)【公開日】2023-03-20
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】神谷 尚保
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-019591(JP,A)
【文献】特開2015-197341(JP,A)
【文献】特開2018-054299(JP,A)
【文献】特開2005-039552(JP,A)
【文献】特開2012-235334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G05D 1/00 - 1/87
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信ネットワークを介して外部装置との間の通信を行う移動体に対して出発地から目的地までの経路を示す経路情報を提供するナビゲーション装置であり、
前記移動体の無線通信が切断されないように前記経路の探索を行う経路探索部を備え、
前記経路探索部は、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用する場合に最小のコストになるビームフォーミング利用経路と、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用しない場合に最小のコストになるビームフォーミング非利用経路と、の両方を算出する、
ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記コストは、移動に要する時間が長いほど大きい値になる、
請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記コストは、前記移動体が移動する際の安全性が低いほど大きい値になる、
請求項1又は2のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用することの効果量を算出し、前記効果量に基づいて、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用するか否かを判断するビームフォーミング制御実施判断部をさらに備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記ビームフォーミング利用経路と前記ビームフォーミング非利用経路との間のコストの比較を行うコスト比較部をさらに備え、
前記ビームフォーミング制御実施判断部は、前記コストの比較の結果に基づいて前記効果量を決定する、
請求項4に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記ビームフォーミング制御実施判断部は、前記ビームフォーミング利用経路のコストが前記ビームフォーミング非利用経路のコストよりも小さいほど前記効果量を大きくする、
請求項5に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記無線通信ネットワークの基地局において、同一経路情報の提供先である一又は複数の前記移動体と無線通信する時間帯における当該一又は複数の前記移動体との間の無線通信に要する通信リソースの第1合計と、当該時間帯における当該一又は複数の前記移動体以外の他の一又は複数の端末との間の無線通信に要する通信リソースの第2合計と、の割合を推定する通信リソース割合推定部をさらに備え、
前記ビームフォーミング制御実施判断部は、前記割合の推定の結果に基づいて前記効果量を決定する、
請求項4から6のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
前記ビームフォーミング制御実施判断部は、前記第2合計に対する前記第1合計の割合が大きいほど前記効果量を大きくする、
請求項7に記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
前記移動体に対するコスト許容量を判断するコスト許容量判断部をさらに備え、
前記ビームフォーミング制御実施判断部は、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用しない場合においてのみ前記コスト許容量が満たされないときには、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用すると判断する、
請求項4から8のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項10】
前記ビームフォーミング利用経路に関する情報と前記ビームフォーミング非利用経路に関する情報とを利用者に提示し、前記ビームフォーミング利用経路と前記ビームフォーミング非利用経路とのうちから前記利用者が選択した結果に基づいて、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用するか否かを判断するビームフォーミング制御実施判断部をさらに備え、
前記利用者に提示される情報において、前記ビームフォーミング非利用経路よりも前記ビームフォーミング利用経路の方が利用料金が高く設定される、
請求項1から3のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項11】
前記無線通信ネットワークの基地局のビームチルト情報を位置情報と無線品質情報とに関連付けて格納する位置無線品質ビームチルト情報格納部をさらに備え、
前記経路探索部は、前記位置無線品質ビームチルト情報格納部内の情報に基づいて、前記無線通信ネットワークの基地局の現在のビームチルト状態における前記移動体の経路候補上の無線品質を判断し、当該無線品質を判断した結果に基づいて、無線通信の切断の可能性が高い前記移動体の経路候補を認識する
請求項1から10のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のナビゲーション装置と、
無線通信ネットワークを介して前記ナビゲーション装置及び前記ナビゲーション装置以外の他の外部装置との間の通信を行う移動体と、を備え、
前記ナビゲーション装置は、前記移動体の出発地から目的地までの経路を示す経路情報を提供する、
移動体システム。
【請求項13】
前記移動体は、配送を行う移動体であり、
前記ナビゲーション装置は、前記移動体の配送経路を示す経路情報を提供する、
請求項12に記載の移動体システム。
【請求項14】
無線通信ネットワークを介して外部装置との間の通信を行う移動体に対して出発地から目的地までの経路を示す経路情報を提供するナビゲーション装置が、前記移動体の無線通信が切断されないように前記経路の探索を行う経路探索ステップを含み、
前記経路探索ステップでは、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用する場合に最小のコストになるビームフォーミング利用経路と、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用しない場合に最小のコストになるビームフォーミング非利用経路と、の両方を算出する、
ナビゲーション方法。
【請求項15】
無線通信ネットワークを介して外部装置との間の通信を行う移動体に対して出発地から目的地までの経路を示す経路情報を提供するナビゲーション装置のコンピュータに、
前記移動体の無線通信が切断されないように前記経路の探索を行う経路探索ステップを実行させるためのコンピュータプログラムであり、
前記経路探索ステップでは、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用する場合に最小のコストになるビームフォーミング利用経路と、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用しない場合に最小のコストになるビームフォーミング非利用経路と、の両方を算出する、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置、移動体システム、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自律的に移動するロボットや自動運転を行う車両(自動運転車両)などが屋外を走行することを想定したナビゲーション技術が検討されている。例えば特許文献1には、対象物を自動搬送する際に、ナビゲーション経路及び中間ノードにおいて車両によって実行されるべき動作を示すノードタイプに基づいてナビゲーションデータを取得する、ナビゲーションデータ生成システムが記載されている。
【0003】
また、ミリ波帯等の高周波数帯を利用する無線通信システムにおいて、ビームフォーミングによって電波を特定のビーム方向へ集中的に発射し、端末の移動に応じてビーム方向を効率的に制御することが検討されている。例えば特許文献2には、現在のサービングセルのネットワーク機器とそれに隣接するネットワーク機器とがビームフォーミング情報を交換し、端末が移動した場合に、現在サービング中のネットワーク機器が隣接するネットワーク機器のビーム測定関連情報に基づいて端末を設定する、ビームフォーミング情報の交換方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2019-537730号公報
【文献】特表2020-500443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の技術では、自律的に移動するロボットや自動運転車両が無線通信ネットワークを介して外部装置との間の通信を行う場合に、様々な経路候補の中から安定的な無線通信を実現する適切な経路を案内することまでは考慮されていない。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、自律的に移動するロボット等の移動体に対して安定的な無線通信を実現する適切な経路を案内することを図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、無線通信ネットワークを介して外部装置との間の通信を行う移動体に対して出発地から目的地までの経路を示す経路情報を提供するナビゲーション装置であり、前記移動体の無線通信が切断されないように前記経路の探索を行う経路探索部を備え、前記経路探索部は、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用する場合に最小のコストになるビームフォーミング利用経路と、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用しない場合に最小のコストになるビームフォーミング非利用経路と、の両方を算出する、ナビゲーション装置である。
(2)本発明の一態様は、前記コストは、移動に要する時間が長いほど大きい値になる、上記(1)のナビゲーション装置である。
(3)本発明の一態様は、前記コストは、前記移動体が移動する際の安全性が低いほど大きい値になる、上記(1)又は(2)のいずれかのナビゲーション装置である。
(4)本発明の一態様は、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用することの効果量を算出し、前記効果量に基づいて、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用するか否かを判断するビームフォーミング制御実施判断部をさらに備える、上記(1)から(3)のいずれかのナビゲーション装置である。
(5)本発明の一態様は、前記ビームフォーミング利用経路と前記ビームフォーミング非利用経路との間のコストの比較を行うコスト比較部をさらに備え、前記ビームフォーミング制御実施判断部は、前記コストの比較の結果に基づいて前記効果量を決定する、上記(4)のナビゲーション装置である。
(6)本発明の一態様は、前記ビームフォーミング制御実施判断部は、前記ビームフォーミング利用経路のコストが前記ビームフォーミング非利用経路のコストよりも小さいほど前記効果量を大きくする、上記(5)のナビゲーション装置である。
(7)本発明の一態様は、前記無線通信ネットワークの基地局において、同一経路情報の提供先である一又は複数の前記移動体と無線通信する時間帯における当該一又は複数の前記移動体との間の無線通信に要する通信リソースの第1合計と、当該時間帯における当該一又は複数の前記移動体以外の他の一又は複数の端末との間の無線通信に要する通信リソースの第2合計と、の割合を推定する通信リソース割合推定部をさらに備え、前記ビームフォーミング制御実施判断部は、前記割合の推定の結果に基づいて前記効果量を決定する、上記(4)から(6)のいずれかのナビゲーション装置である。
(8)本発明の一態様は、前記ビームフォーミング制御実施判断部は、前記第2合計に対する前記第1合計の割合が大きいほど前記効果量を大きくする、上記(7)のナビゲーション装置である。
(9)本発明の一態様は、前記移動体に対するコスト許容量を判断するコスト許容量判断部をさらに備え、前記ビームフォーミング制御実施判断部は、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用しない場合においてのみ前記コスト許容量が満たされないときには、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用すると判断する、上記(4)から(8)のいずれかのナビゲーション装置である。
(10)本発明の一態様は、前記ビームフォーミング利用経路に関する情報と前記ビームフォーミング非利用経路に関する情報とを利用者に提示し、前記ビームフォーミング利用経路と前記ビームフォーミング非利用経路とのうちから前記利用者が選択した結果に基づいて、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用するか否かを判断するビームフォーミング制御実施判断部をさらに備え、前記利用者に提示される情報において、前記ビームフォーミング非利用経路よりも前記ビームフォーミング利用経路の方が利用料金が高く設定される、上記(1)から(3)のいずれかのナビゲーション装置である。
(11)本発明の一態様は、前記無線通信ネットワークの基地局のビームチルト情報を位置情報と無線品質情報とに関連付けて格納する位置無線品質ビームチルト情報格納部をさらに備え、前記経路探索部は、前記位置無線品質ビームチルト情報格納部内の情報に基づいて、前記無線通信ネットワークの基地局の現在のビームチルト状態における前記移動体の経路候補上の無線品質を判断し、当該無線品質を判断した結果に基づいて、無線通信の切断の可能性が高い前記移動体の経路候補を認識する、上記(1)から(10)のいずれかのナビゲーション装置である。
【0008】
(12)本発明の一態様は、上記(1)から(11)のいずれかのナビゲーション装置と、無線通信ネットワークを介して前記ナビゲーション装置及び前記ナビゲーション装置以外の他の外部装置との間の通信を行う移動体と、を備え、前記ナビゲーション装置は、前記移動体の出発地から目的地までの経路を示す経路情報を提供する、移動体システムである。
(13)本発明の一態様は、前記移動体は、配送を行う移動体であり、前記ナビゲーション装置は、前記移動体の配送経路を示す経路情報を提供する、上記(12)の移動体システムである。
【0009】
(14)本発明の一態様は、無線通信ネットワークを介して外部装置との間の通信を行う移動体に対して出発地から目的地までの経路を示す経路情報を提供するナビゲーション装置が、前記移動体の無線通信が切断されないように前記経路の探索を行う経路探索ステップを含み、前記経路探索ステップでは、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用する場合に最小のコストになるビームフォーミング利用経路と、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用しない場合に最小のコストになるビームフォーミング非利用経路と、の両方を算出する、ナビゲーション方法である。
【0010】
(15)本発明の一態様は、無線通信ネットワークを介して外部装置との間の通信を行う移動体に対して出発地から目的地までの経路を示す経路情報を提供するナビゲーション装置のコンピュータに、前記移動体の無線通信が切断されないように前記経路の探索を行う経路探索ステップを実行させるためのコンピュータプログラムであり、前記経路探索ステップでは、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用する場合に最小のコストになるビームフォーミング利用経路と、前記無線通信ネットワークの基地局のビームフォーミングを利用しない場合に最小のコストになるビームフォーミング非利用経路と、の両方を算出する、コンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自律的に移動するロボット等の移動体に対して安定的な無線通信を実現する適切な経路を案内することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係るロボットシステムの構成例を示すブロック図である。
図2】一実施形態に係る経路探索方法を説明するための説明図である。
図3】一実施形態に係る経路探索方法を説明するための説明図である。
図4】一実施形態に係るビームフォーミング制御方法を説明するための説明図である。
図5】一実施形態に係るナビゲーション方法の手順の一例を示すフローチャートである。
図6】一実施形態に係るロボットシステムの一実施例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、自律的に移動するロボット(以下、移動ロボットと称する)を使用して配送を行う配送サービスシステムにおけるロボットシステムを例に挙げて説明する。配送サービスシステムにおいて、移動ロボットは、配送サービス利用者が指定した目的地まで街中を移動し、商品等の荷物を配送する。
【0014】
図1は、一実施形態に係るロボットシステムの構成例を示すブロック図である。図1において、移動ロボット2は、無線通信ネットワークMNWを介してナビゲーション装置4と通信を行う。移動ロボット2は、移動体の一例である。ナビゲーション装置4は、移動ロボット2の出発地から目的地までの経路を示す経路情報を提供する。また、ナビゲーション装置4は、ナビゲーション機能に加えてさらに遠隔監視機能を備える。
【0015】
ナビゲーション装置4は、ビームフォーミング制御装置5と通信を行う。ビームフォーミング制御装置5は、移動ロボット2と通信を行う無線通信ネットワークMNWの基地局(図示せず)のビームを特定の方向へ集中的に発射するように制御する。
【0016】
以下、図1を参照して本実施形態に係るロボットシステムの構成を詳細に説明する。
【0017】
[利用者端末]
利用者端末1は、本実施形態に係る配送サービスシステムの利用者(配送サービス利用者)が利用する端末である。配送サービス利用者は、荷物を配送する宛先である目的地を指定して配送を依頼する。利用者端末1は、スマートフォンやタブレット型のコンピュータ(タブレットPC)等の携帯通信端末装置であってもよく、又は据置き型の通信端末装置(例えば据置き型のパーソナルコンピュータ等)であってもよい。
【0018】
利用者端末1は、商品発注部101と、目的地情報入力部102とを備える。商品発注部101は、配送サービス利用者による操作に応じて、商品の選択及び選択した商品の発注を行う。
【0019】
なお、商品発注部101は、配送サービス利用者が所有する物品の残量をリアルタイムに管理し、物品の残量が予め設定された閾値以下になったときに、補充用の商品を自動的に発注してもよい。
【0020】
目的地情報入力部102は、商品発注部101が商品を発注する際に、住所等の目的地を示す目的地情報を入力する。目的地情報は、配送サービス利用者が毎回指定してもよく、又は目的地情報入力部102が過去に配送サービス利用者から指定された目的地情報を記録しておき当該記録の目的地情報を自動的に再利用してもよい。
【0021】
また、目的地情報入力部102は、利用者端末1が備えるGPS(Global Positioning System)による測位機能を用いて、GPSで取得した現在位置を目的地としてもよい。また、目的地情報入力部102は、利用者端末1のカメラで撮影した利用者端末1の周囲の景色の画像を目的地の参考情報として目的地情報に付加してもよい。
【0022】
[移動ロボット]
移動ロボット2は、自律走行可能なロボットである。移動ロボット2は、現在位置取得部201と、無線品質取得部202と、状態取得部203と、無線通信部204と、経路情報格納部205と、撮像部206と、動作計画部207と、動作制御部208と、を備える。
【0023】
現在位置取得部201は、GPS等の測位システムによって、現在位置を示す位置情報を取得する。
無線品質取得部202は、無線通信部204がナビゲーション装置4との間で無線通信を行う際の無線通信品質(無線品質情報)を取得する。
状態取得部203は、移動ロボット2に備わる各種センサから、バッテリー残量や温度や移動速度等のデータ(状態情報)を取得する。
【0024】
無線通信部204は、無線通信ネットワークMNWを介してナビゲーション装置4との間で無線通信を行う。無線通信部204は、無線通信ネットワークMNWの基地局に無線接続して当該基地局との間の通信を確立する。無線通信部204は、例えば4G(第4世代移動通信システム)や5G(第5世代移動通信システム)等の無線通信方式に対応し、自己が対応する無線通信方式の基地局を介して無線通信を行う。なお、無線通信方式として、将来の実用化が見込まれる6G(第6世代移動通信システム)等が利用されてもよい。
【0025】
無線通信部204は、ナビゲーション装置4の経路配信部413から送信された経路情報を受信して経路情報格納部205に格納する。経路情報格納部205に格納された経路情報は、移動ロボット2の出発地から目的地までの経路を示す経路情報であって、移動ロボット2の動作の判断に活用される。
【0026】
撮像部206は、移動ロボット2の周辺を撮像する。撮像部206は、例えば移動ロボット2の進行方向を撮像する。
【0027】
動作計画部207は、移動ロボット2の動作を計画する。動作計画部207は、経路情報格納部205内の経路情報に示される経路を移動する際に、現在位置取得部201により取得した位置情報、状態取得部203により取得した状態情報及び撮像部206により撮像された撮像画像に基づいて、移動ロボット2の周囲の環境に応じた動作を計画する。例えば、動作計画部207は、経路情報に示される経路上において、位置情報に示される位置から進行方向の前方に、撮像画像の画像認識結果の障害物が存在する場合、障害物回避時の所定の速度で当該障害物を避ける経路を移動するように動作を計画する。
【0028】
動作制御部208は、動作計画部207が計画した計画動作に従って移動ロボット2の動作を制御する。動作制御部208は、移動ロボット2の前進や後退や右左折等の走行種別及び走行速度、並びに撮像部206の撮像方向の変更等の走行以外の動作種別を制御する。
【0029】
無線通信部204は、現在位置取得部201が取得した位置情報、状態取得部203が取得した状態情報、撮像部206が撮像した撮像画像、無線品質取得部202が無線品質情報、動作計画部207が計画した計画動作等の各種の情報をナビゲーション装置4へ送信する。
【0030】
[携帯端末]
携帯端末3は、スマートフォンやタブレットPC等の携帯通信端末装置である。携帯端末3は、利用者端末1として利用されるものであってもよく、又は利用者端末1とは別個のものであってもよい。携帯端末3として、例えば、特定の無線通信キャリアに加入している全ての加入者の携帯端末を対象としてもよい。
【0031】
携帯端末3は、無線通信ネットワークMNWにおける無線通信の実績(無線通信実績情報)を定期的にナビゲーション装置4へ報告する。無線通信実績情報は、無線通信ネットワークMNWの基地局と、当該基地局との間の無線通信における通信実績(通信時間帯、通信リソースの使用実績など)とを示す情報である。
【0032】
[ナビゲーション装置]
ナビゲーション装置4は、一又は複数の移動ロボット2に対して出発地から目的地までのナビゲーションを行う。また、ナビゲーション装置4は、一又は複数の移動ロボット2に対して運用監視や遠隔操作を行う。
【0033】
ナビゲーション装置4は、運用監視部401と、オーダー情報格納部402と、目的地取得部403と、ロボット稼働状況格納部404と、地図情報格納部405と、ロボット割当部406と、位置・無線品質・ビームチルト情報格納部407と、経路探索部408と、コスト比較部409と、コスト許容量判断部410と、通信リソース割合推定部411と、ビームフォーミング制御実施判断部412と、経路配信部413と、を備える。
【0034】
ナビゲーション装置4の各機能は、ナビゲーション装置4がCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、ナビゲーション装置4として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。
【0035】
運用監視部401は、一又は複数の移動ロボット2に対して運用監視を行う。運用監視部401は、移動ロボット2からリアルタイムに受信した位置情報や状態情報や無線品質情報等を当該移動ロボット2の個体を識別する情報(移動ロボットID)と関連付けて、運用監視を行う。運用監視部401は、定期的に、例えば1秒間隔で更新される情報(位置情報や状態情報や無線品質情報等)に基づいて運用監視する。運用監視部401は、移動ロボット2から受信した位置情報や状態情報や無線品質情報等を解析し、移動ロボット2の障害を検出した場合には、例えば、監視者に対して警報を発出する。
【0036】
オーダー情報格納部402は、利用者端末1から商品発注のオーダー情報を受信し、受信したオーダー情報を格納する。オーダー情報格納部402は、購買システム(図示せず)と連携して購買処理を行い、商品配送計画を策定する。オーダー情報格納部402は、策定した商品配送計画により、移動ロボット2が商品を配送する出発地や目的地や時間帯等の予定配送情報を格納する。
【0037】
目的地取得部403は、オーダー情報格納部402に格納されたオーダー情報又は予定配送情報から目的地情報を取得する。
【0038】
ロボット稼働状況格納部404は、各移動ロボット2の稼働状況(稼働状況情報)を格納する。稼働状況情報は、稼働中の移動ロボット2の配送地域や待機中の移動ロボット2の待機場所等の情報を有する。ロボット稼働状況格納部404は、稼働状況情報以外の移動ロボット2の情報として、移動ロボット2の種類や最大積載量や充電状態の情報等をさらに格納してもよい。移動ロボット2の種類は、移動ロボット2のサイズや構造等によって分類される。
【0039】
地図情報格納部405は、全国の道路地図データや、それに付随する各種施設や店舗等の施設データ等を格納する。道路地図データは、例えば、地図上の道路を、交差点等をノードとして複数の部分に分割し、各ノード間の部分をリンクとして規定したリンクデータとして与えられる。このリンクデータは、リンク固有の識別子(リンクID)、リンク長、リンクの始点・終点(ノード)の位置情報(経度、緯度)、角度(方向)データ、道路幅、道路種別などのデータを含んで構成される。道路地図データは、移動ロボット2が通行可能なレーンを示すレーン情報を含んでもよい。また、地図情報格納部405は、さらに屋内地図データを格納してもよい。
【0040】
ロボット割当部406は、商品配送計画に対して、ロボット稼働状況格納部404内の情報に基づいて、商品の配送拠点(例えば、商品が保管されている物流倉庫や目的地の最寄りの配送取り扱い店舗等)に待機中の移動ロボット2の中から、移動ロボット2の種類や最大積載量や充電状態などを考慮して、配送を行う一又は複数の移動ロボット2を決定する。
【0041】
位置・無線品質・ビームチルト情報格納部407は、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームチルト情報を、当該基地局の通信エリア内の位置情報と当該位置情報の位置における無線品質情報とに関連付けて格納する。位置・無線品質・ビームチルト情報格納部407に格納される位置情報及び無線品質情報は、例えば移動ロボット2や携帯端末3からナビゲーション装置4へ送信された情報である。なお、移動ロボット2や携帯端末3以外の装置によって測定された位置情報及び無線品質情報が位置・無線品質・ビームチルト情報格納部407に格納されてもよい。
【0042】
位置情報は、例えばGPS座標である。GPS座標を取得することができない屋内施設等に対しては、IMES(Indoor MEssaging System)等の屋内測位技術により取得された絶対位置情報を位置情報に利用してもよい。無線品質情報は、例えばLTE(Long Term Evolution)の受信電力を示すRSRP(Reference Signal Received Power)である。無線品質情報は、無線通信方式や無線周波数帯毎に区分して格納してもよい。無線通信方式として、例えばLTEや5G等が挙げられる。無線周波数帯として、例えばBand1(2.1GHz)やBand18(800MHz)等が挙げられる。ビームチルト情報は、基地局毎に、ビームチルトの状態を示す情報と基地局の識別情報(基地局ID)とを有する。
【0043】
位置・無線品質・ビームチルト情報格納部407において各基地局のビームチルト情報が位置情報と無線品質情報とに関連付けられて格納されることにより、移動ロボット2がある基地局との間で無線通信を行う場合に、当該基地局の現在のビームチルトの状態が分かれば各位置においてどの程度の無線通信品質が得られるのかを推測することができる。無線通信ネットワークMNWの各基地局の現在のビームチルトの状態を示すビームチルト情報は、ビームフォーミング制御装置5から取得される。
【0044】
なお、位置・無線品質・ビームチルト情報格納部407は、日付や曜日や時間帯やイベントごとに、それぞれ設けられてもよい。例えば、平日(月曜から金曜まで)の位置・無線品質・ビームチルト情報格納部407と、休日(土曜、日曜及び祝日)の位置・無線品質・ビームチルト情報格納部407とがそれぞれ設けられてもよい。例えば、昼間の時間帯の位置・無線品質・ビームチルト情報格納部407と、夜間の時間帯の位置・無線品質・ビームチルト情報格納部407とがそれぞれ設けられてもよい。例えば、お正月やゴールデンウィークやお盆の期間の位置・無線品質・ビームチルト情報格納部407が設けられてもよい。
【0045】
経路探索部408は、地図情報格納部405内の地図情報を使用して、移動ロボット2の出発地から目的地までの経路を探索する。
【0046】
経路探索部408は、位置・無線品質・ビームチルト情報格納部407内の情報に基づいて、無線通信ネットワークMNWの基地局の現在のビームチルト状態における移動ロボット2の経路候補のリンク上の無線品質を判断する。無線通信ネットワークMNWの基地局の現在のビームチルト状態は、ビームフォーミング制御装置5から通知される。経路探索部408は、移動ロボット2の経路候補上の無線品質を判断することによって、無線通信の切断の可能性が高いリンクを認識する。
【0047】
移動ロボット2の目的地は、目的地取得部403が取得した目的地情報が示す場所である。移動ロボット2の出発地は、予め設定される。例えば、商品の配送拠点(例えば、商品が貯蔵されている物流倉庫や目的地の最寄りの配送取り扱い店舗等)が、移動ロボット2の出発地として予め設定される。また、移動ロボット2が車両により目的地付近まで運送される場合には、当該移動ロボット2の運送先の場所が当該移動ロボット2の出発地として予め設定される。
【0048】
経路探索部408が利用する経路探索方法として、例えば、ダイクストラ法やA*アルゴリズムや遺伝的アルゴリズム等が利用可能である。ここでは、経路探索方法の一例としてダイクストラ法を用いて経路探索を行う方法を説明する。
【0049】
経路探索部408は、出発地から目的地へ向けて、次に到達できる交差点(ノード)までの道路(リンク)のコストの計算(積算)を順次行なっていき、出発地から目的地までが最小コストとなる経路を選択する。
【0050】
各リンクのコストは、移動に要する時間が長いほど大きい値になる。例えば、各リンクのコストは、リンクの距離が短いほど、小さな値である。
【0051】
また、各リンクのコストに対して、安全性の観点から重み付けを行ってもよい。具体的には、各リンクのコストは、移動ロボット2が移動する際の安全性が低いほど大きい値になるように、重み付けされてもよい。
【0052】
例えば、所定の閾値未満の道幅の道路のリンクは、移動ロボット2が安全に移動することが難しくなるので、当該リンクに対してコストを大きくする。
【0053】
例えば、移動ロボット2がサイズや構造等により種類分けされる場合、移動ロボット2の種類によっては道路の段差を乗り越えることが難しくなることが考えられる。このため、当該種類の移動ロボット2の経路を探索する場合には、所定の閾値以上の段差が存在する道路のリンクに対してコストを大きくする。
【0054】
例えば、移動ロボット2が配送する荷物の種類が割れ物である場合には、凸凹が少ない道路を走行することが好ましいので、凸凹が少ない道路のリンクのコストを小さくする一方、凸凹が多い道路のリンクのコストを大きくする。
【0055】
例えば、屋外人口密度が閾値以上である道路では移動ロボット2が人を避けて走行することが難しくなるので、屋外人口密度が閾値以上である道路のリンクコストを大きくする。これにより、移動ロボット2が人が少ない道路を走行することを図る。
【0056】
経路探索部408は、移動ロボット2の無線通信が切断されないように、移動ロボット2の出発地から目的地までの経路を探索する。このとき、経路探索部408は、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用する場合に最小のコストになる経路(ビームフォーミング利用経路)と、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用しない場合に最小のコストになる経路(ビームフォーミング非利用経路)と、の両方を算出する。
【0057】
図2及び図3は、本実施形態に係る経路探索方法を説明するための説明図である。図2及び図3において、丸印がノードを示し、ノード間を結ぶ線がリンクを示す。また、出発地のノードがSであり、目的地のノードがGである。また、リンク上に記された数字がリンクコストを示す。ここでは、図2及び図3において、リンクL2は、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用しないと、無線通信が切断される可能性が高いとする。言い換えると、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用することによって、リンクL2における無線通信の切断が防止される。
【0058】
図2には、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用する場合のリンクコストが示される。無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用することによって、移動ロボット2の無線通信が切断されることを防止することができる。したがって、図2では、リンクコストに無線通信の切断の要素が含まれない。
【0059】
図2のリンクコストの場合、経路探索の結果、出発地「ノードS」から目的地「ノードG」までの経路として、リンクコストの合計が最小になる経路である「L1→L2→L3」が選択される。図2のリンクコストでは、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用することによって移動ロボット2の無線通信が切断されることが防止されるので、無線通信の切断の可能性を考慮することなく、経路探索が行われる。その選択された経路「L1→L2→L3」によれば、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用することによってリンクL2における無線通信の切断が防止されるので、移動ロボット2は無線通信ネットワークMNWを介して外部装置との間で安定的な無線通信を行うことができる。
【0060】
図3には、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用しない場合のリンクコストが示される。図3の例では、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用しないために、リンクL2は無線通信が切断される可能性が高いので、リンクL2が経路として選択されないように、リンクL2のコストが「∞」に設定されている。これにより、図3のリンクコストによれば、無線通信が切断される可能性が高いリンクL2が経路として選択されない。
【0061】
図3のリンクコストの場合、経路探索の結果、出発地「ノードS」から目的地「ノードG」までの経路として、リンクコストの合計が最小になる経路である「L4→L5」が選択される。この選択された経路「L4→L5」によれば、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用しなくても、移動ロボット2は無線通信ネットワークMNWを介して外部装置との間で安定的な無線通信を行うことができる。
【0062】
説明を図1に戻す。
コスト比較部409は、ビームフォーミング利用経路とビームフォーミング非利用経路との間のコストの比較を行う。例えば図2及び図3の場合、図2のビームフォーミング利用経路「L1→L2→L3」のコストは「12」であり、図3のビームフォーミング非利用経路のコストは「14」である。これらコストの比較の結果、コスト差は「2」となる。このコスト差「(ビームフォーミング非利用経路のコスト)-(ビームフォーミング利用経路のコスト)」が大きいほど、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用することの効果が大きくなる。
【0063】
コスト許容量判断部410は、移動ロボット2に対するコスト許容量を判断する。コスト許容量は、移動ロボット2が走行する経路に対して許容されるコストの上限である。コスト許容量判断部410は、例えば、移動ロボット2が配送時間が指定される配送を行う場合に、その配送指定時間を超過しないようにコスト許容量を決定する。コスト許容量判断部410は、例えば、鮮度が重要な食べ物を配送する場合に、指定される配送時間を超過しないようにコスト許容量を決定する。コスト許容量判断部410は、例えば、ある配送に用いられた移動ロボット2を次の配送に用いるまでの準備時間(例えば充電時間や荷物の積み込み時間等)を加味して、指定される帰還時刻を超過しないようにコスト許容量を決定する。
【0064】
通信リソース割合推定部411は、無線通信ネットワークMNWの基地局において、同一経路情報の提供先である一又は複数の移動ロボット2と無線通信する時間帯における当該一又は複数の移動ロボット2との間の無線通信に要する通信リソースの合計(第1合計)と、当該時間帯における一又は複数の携帯端末3との間の無線通信に要する通信リソースの合計(第2合計)と、の割合を推定する。当該基地局は、無線通信の切断の可能性がある基地局に限定してもよい。携帯端末3は、移動ロボット2以外の他の端末の一例である。通信リソース割合推定部411は、例えば過去の通信リソースの使用実績の統計値を用いて、第1合計と第2合計との割合を推定する。
【0065】
移動ロボット2の台数が多く、必要な通信リソースが多いほど、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用することによって無線通信の切断を防止することの効果が大きくなる。また、基地局の通信リソースに占める割合が携帯端末3よりも移動ロボット2の方が大きいほど、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用することによって無線通信の切断を防止することの効果が大きくなる。
【0066】
ビームフォーミング制御実施判断部412は、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用することの効果量を算出し、当該効果量に基づいて、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用するか否かを判断する。
【0067】
例えば、ビームフォーミング制御実施判断部412は、コスト比較部409によるコストの比較の結果に基づいて、効果量を決定する。このとき、ビームフォーミング制御実施判断部412は、コスト差「(ビームフォーミング非利用経路のコスト)-(ビームフォーミング利用経路のコスト)」が大きいほど、効果量を大きくする。言い換えれば、ビームフォーミング利用経路のコストがビームフォーミング非利用経路のコストよりも小さいほど効果量を大きくする。
【0068】
例えば、ビームフォーミング制御実施判断部412は、通信リソース割合推定部411による割合の推定の結果に基づいて効果量を決定する。このとき、ビームフォーミング制御実施判断部412は、「移動ロボット2以外の他の端末に関する通信リソースの合計(第2合計)」に対する「移動ロボット2に関する通信リソースの合計(第1合計)」の割合が大きいほど、効果量を大きくする。
【0069】
ビームフォーミング制御実施判断部412は、算出結果の効果量が所定の閾値を超過するか否かを判断する。ビームフォーミング制御実施判断部412は、算出結果の効果量が所定の閾値を超過する場合に、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用すると判断する。一方、ビームフォーミング制御実施判断部412は、算出結果の効果量が所定の閾値を超過しない場合に、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用しないと判断する。
【0070】
なお、ビームフォーミング制御実施判断部412は、コスト許容量判断部410が決定したコスト許容量に基づいて、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用しない場合(ビームフォーミング非利用経路)においてのみコスト許容量が満たされないときには、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用すると判断してもよい。
【0071】
また、ビームフォーミング制御実施判断部412は、ビームフォーミング利用経路に関する情報とビームフォーミング非利用経路に関する情報とを利用者(例えば、配送サービスの提供事業者や配送サービス利用者など)に提示し、ビームフォーミング利用経路とビームフォーミング非利用経路とのうちから利用者が選択した結果に基づいて、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用するか否かを判断してもよい。当該利用者に提示される情報は、利用料金や配送に要する時間(例えば到着予定時刻など)等を有する。当該利用料金は、ビームフォーミング非利用経路よりもビームフォーミング利用経路の方が利用料金が高く設定される。
【0072】
経路配信部413は、経路探索部408が探索した結果の経路を示す経路情報を移動ロボット2へ送信する。移動ロボット2へ送信される経路情報は、ビームフォーミング制御実施判断部412が無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用すると判断した場合には、ビームフォーミング利用経路である。一方、ビームフォーミング制御実施判断部412が無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用しないと判断した場合には、移動ロボット2へ送信される経路情報はビームフォーミング非利用経路である。
【0073】
また、経路配信部413は、移動ロボット2へ送信する経路情報をビームフォーミング制御装置5へも送信する。
【0074】
[ビームフォーミング制御装置]
ビームフォーミング制御装置5は、ビームチルト情報格納部501と、将来ロボット位置推定部502と、ビームフォーミング制御部503と、を備える。
【0075】
ビームフォーミング制御装置5の各機能は、ビームフォーミング制御装置5がCPU及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、ビームフォーミング制御装置5として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。
【0076】
ビームフォーミング制御装置5は、ナビゲーション装置4と連携し、一又は複数の移動ロボット2と無線通信を行う基地局のビームを特定の方向へ集中的に発射するように制御する。
【0077】
ここで、図4を参照して本実施形態に係るビームフォーミング制御方法を説明する。図4は、本実施形態に係るビームフォーミング制御方法を説明するための説明図である。図4において、移動ロボット2は、出発地SPから目的地EPまでの経路70を移動している。経路70は、ナビゲーション装置4の経路配信部413によって配信された経路情報で示される経路である。移動ロボット2は、経路配信部413から送信された経路情報に基づいて、経路70上を、出発地SPから目的地EPまで移動する。
【0078】
移動ロボット2が移動する経路70を含むエリアには、4台の基地局6-1,6-2,6-3,6-4が配置されている。各基地局6-1,6-2,6-3,6-4は、自己の通信範囲を形成するための電波を送受するアンテナを備える。移動ロボット2の無線通信部204は、経路70上において、各基地局6-1,6-2,6-3,6-4と電波を送受することによって無線通信を行う。
【0079】
図4には、一例として基地局6-2が行うビームフォーミングが示される。ビームフォーミング制御装置5は、移動ロボット2の現在位置と経路情報とに基づいて移動ロボット2の将来位置を推定し、推定された将来位置に基づいて、移動ロボット2が将来移動する範囲(移動候補範囲)で移動ロボット2と基地局6-2との間の通信を確立することができるように、基地局6-2のビームフォーミングを制御する。
【0080】
図4において、移動ロボット2は、経路70上の現在位置において、基地局6-2の現在のビーム60-1によって基地局6-2との間の通信を確立している。ビームフォーミング制御装置5は、移動ロボット2の現在位置と経路70とから推定した移動ロボット2の将来位置に基づいた移動候補範囲をカバーするように、基地局6-2のビームフォーミングを制御する。このビームフォーミング制御によって、基地局6-2のビーム60-2が形成される。移動ロボット2は、経路70上を移動し、移動候補範囲の経路70上において、基地局6-2のビーム60-2によって基地局6-2との間の通信を確立する。このように本実施形態によれば、移動ロボット2の現在位置から将来位置までの経路70上の移動に追随するように、基地局6-2のビーム方向をビーム60-1からビーム60-2へと変えることができる。これにより、移動ロボット2に対して、無線通信の切断を防止し、安定的な無線通信を実現することができる。
【0081】
説明を図1に戻す。
ビームチルト情報格納部501は、無線通信ネットワークMNWの各基地局における現在のビームチルトの状態を示すビームチルト情報を格納する。ビームチルト情報格納部501は、ナビゲーション装置4の位置・無線品質・ビームチルト情報格納部407に対して、現在のビームチルトの状態を示すビームチルト情報を送信する。位置・無線品質・ビームチルト情報格納部407は、ビームチルト情報格納部501から受信したビームチルト情報を格納する。
【0082】
将来ロボット位置推定部502は、ナビゲーション装置4の経路配信部413から送信された経路情報と、運用監視部401から送信された移動ロボット2の現在位置を示す位置情報とに基づいて、移動ロボット2の将来位置を推定する。
【0083】
ビームフォーミング制御部503には、ナビゲーション装置4のビームフォーミング制御実施判断部412から、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用するか否かの判断結果が通知される。ビームフォーミング制御部503は、ビームフォーミング制御実施判断部412の判断結果が「無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用する」である場合に、将来ロボット位置推定部502によって推定された移動ロボット2の将来位置に基づいて、当該移動ロボット2が将来移動する範囲で当該移動ロボット2と無線通信ネットワークMNWの基地局との間の通信を確立することができるように、基地局のビームフォーミングを制御する。一方、ビームフォーミング制御部503は、ビームフォーミング制御実施判断部412の判断結果が「無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用しない」である場合には、基地局のビームフォーミングの制御を行わない。
【0084】
基地局のビームフォーミングの制御方法の一例を説明する。将来ロボット位置推定部502によって推定された移動ロボット2の将来位置は候補座標範囲で表される。ビームフォーミング制御部503は、基地局の各ビームで通信可能な範囲をビームカバー座標範囲で表す。ビームフォーミング制御装置5には、ビームカバー座標範囲が予め設定される。ビームフォーミング制御部503は、基地局の各ビームのビームカバー座標範囲によって移動ロボット2の候補座標範囲をカバーするように、基地局のビームフォーミングを制御する。より具体的には、ビームフォーミング制御部503は、候補座標範囲に対応する時刻において、基地局のビームがカバーするビームカバー座標範囲が当該候補座標範囲を全てカバーするように、基地局のビームフォーミングを制御する。
【0085】
次に図5を参照して、本実施形態に係るナビゲーション方法を説明する。図5は、本実施形態に係るナビゲーション方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【0086】
(ステップS1) ナビゲーション装置4は、出発地及び目的地を取得する。
【0087】
(ステップS2) ナビゲーション装置4は、移動ロボット2の無線通信が切断されないように、ステップS1で取得された出発地から目的地までの経路を探索する。このとき、ナビゲーション装置4は、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用する場合に最小のコストになる経路(ビームフォーミング利用経路)と、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用しない場合に最小のコストになる経路(ビームフォーミング非利用経路)と、の両方を算出する。
【0088】
(ステップS3) ナビゲーション装置4は、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用することの効果量を算出する。また、ナビゲーション装置4は、移動ロボット2に対するコスト許容量を判断する。
【0089】
(ステップS4) ナビゲーション装置4は、ステップS3で算出された効果量に基づいて、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用するか否かを判断する。但し、ナビゲーション装置4は、ステップS3で決定されたコスト許容量に基づいて、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用しない場合(ビームフォーミング非利用経路)においてのみコスト許容量が満たされないときには、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用すると判断する。
【0090】
ステップS4の判断の結果、ビームフォーミングを利用する場合はステップS5に進み、ビームフォーミングを利用しない場合はステップS6に進む。
【0091】
(ステップS5) ビームフォーミング制御装置5は、移動ロボット2の将来位置に基づいて、当該移動ロボット2が将来移動する範囲で当該移動ロボット2と無線通信ネットワークMNWの基地局との間の通信を確立することができるように、基地局のビームフォーミングを制御する。
【0092】
(ステップS6) ナビゲーション装置4は、ステップS2の探索の結果の経路を示す経路情報を移動ロボット2へ送信する。移動ロボット2へ送信される経路情報は、ステップS4で無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用すると判断した場合には、ビームフォーミング利用経路である。一方、ステップS4で無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用しないと判断した場合には、移動ロボット2へ送信される経路情報はビームフォーミング非利用経路である。
【0093】
次に図6を参照して本実施形態に係るロボットシステムの実施例を説明する。図6は、本実施形態に係るロボットシステムの一実施例を示す概略構成図である。図6において、無線通信ネットワークMNWの基地局は、信号処理機能を有する収容局装置22と、アンテナを有する張出局装置6とに、光ファイバ無線(Radio over Fiber:RoF)技術を用いて分離される。一の収容局装置22は、複数の張出局装置6-1,6-2,・・・,6-pを収容する。
【0094】
収容局装置22は、バックホールネットワークBNWを介して集約局装置20と通信により接続される。集約局装置20は、複数の収容局装置22を収容する。ビームフォーミングに関して、集約局装置20は、張出局装置6が形成するビームを遠隔で制御する遠隔ビームフォーミング機能を備えてもよい。
【0095】
図6の実施例では、ビームフォーミング制御装置5が収容局装置22に設けられる。当該収容局装置22に収容される複数の張出局装置6-1,6-2,・・・,6-pのうち少なくともいずれかの張出局装置6は、移動ロボット2が移動するエリアにおける無線接続を提供するためのアンテナを有する。これにより、移動ロボット2を対象にしたビームフォーミング制御の遅延をできる限り小さくすることができる。
【0096】
また図6の実施例では、ナビゲーション装置4が集約局装置20に設けられる。これは、集約局装置20が収容する複数の収容局装置22にそれぞれ設けられた複数のビームフォーミング制御装置5に対して、共通のナビゲーション装置4を設けるためである。なお、ナビゲーション装置4が一のビームフォーミング制御装置5のみに対応する場合には、ナビゲーション装置4及びビームフォーミング制御装置5を同じ収容局装置22に設けてもよい。
【0097】
上述した実施形態によれば、無線通信ネットワークMNWの基地局のビームフォーミングを利用することによって移動ロボット2の無線通信が切断しないようにする経路(ビームフォーミング利用経路)と、無線通信品質が悪い場所を避けることによって移動ロボット2の無線通信が切断しないようにする経路(ビームフォーミング非利用経路)とのうちから、適切な経路を案内することができる。これにより、移動ロボット2に対して安定的な無線通信を実現する適切な経路を案内することができるという効果が得られる。
【0098】
なお、これにより、例えば配送サービスシステムにおける総合的なサービス品質の向上を実現することができることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0099】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0100】
上述した実施形態では、ロボットシステムを、配送サービスシステムに適用したが、配送サービスシステム以外の他のシステムに適用してもよい。例えば、移動ロボットにより道路を検査する道路検査サービスシステムに、上述した実施形態に係るロボットシステムを適用してもよい。
【0101】
また、上述した実施形態では、移動体として移動ロボットを例に挙げたが、これに限定されない。移動体として、自動運転を行う車両(自動運転車両)や、ドローンと称される自律的に飛行する飛行体等を適用してもよい。
【0102】
また、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0103】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0104】
1…利用者端末、2…移動ロボット、3…携帯端末、4…ナビゲーション装置、5…ビームフォーミング制御装置、20…集約局装置、22…収容局装置(基地局)、6-1,6-2,・・・,6-p…張出局装置(基地局)、201…現在位置取得部、202…無線品質取得部、203…状態取得部、204…無線通信部、205…経路情報格納部、206…撮像部、207…動作計画部、208…動作制御部、401…運用監視部、402…オーダー情報格納部、403…目的地取得部、404…ロボット稼働状況格納部、405…地図情報格納部、406…ロボット割当部、407…位置・無線品質・ビームチルト情報格納部、408…経路探索部、409…コスト比較部、410…コスト許容量判断部、411…通信リソース割合推定部、412…ビームフォーミング制御実施判断部、413…経路配信部、501…ビームチルト情報格納部、502…将来ロボット位置推定部、503…ビームフォーミング制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6