(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】イソヘキシドを含有する芳香族ポリエーテルスルホンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 65/40 20060101AFI20240603BHJP
C08G 75/23 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
C08G65/40
C08G75/23
(21)【出願番号】P 2021509886
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(86)【国際出願番号】 FR2019000137
(87)【国際公開番号】W WO2020039127
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-19
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(73)【特許権者】
【識別番号】523165352
【氏名又は名称】ユニヴェルスィテ クラウド ベルナール リヨン 1
(73)【特許権者】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ジャッケル
(72)【発明者】
【氏名】サラ ドグラ
(72)【発明者】
【氏名】レジ メルシエ
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー ドロネー
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-530763(JP,A)
【文献】特表2017-525818(JP,A)
【文献】特表2015-533916(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0186624(US,A1)
【文献】BELGACEM, Chaouki et al.,Copolyethersulfones of 1,4:3,6-dianhydrohexitols and bisphenol A,Designed Monomers and Polymers,2016,Vol.19,p.248-255
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の連続するステージ:
a)繰り返し単位:
【化1】
(1000~30000g/molの数平均モル質量M
nを有すると共に、式中、nは2以上の整数であり、XはCl又はFであり、並びに、YはCO又はSO
2である)
を有する第1のポリマーブロックの調製であって、
前記第1の
ポリマーブロックの調製は、塩基の存在下、有機溶剤中における、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’-ジフルオロジフェニルケトン及び4,4’-ジクロロジフェニルケトンから選択される過剰量のハロゲン化ビス芳香族化合物との反応からなり、
b)繰り返し単位:
【化2】
(1000~30000g/molの数平均モル質量M
nを有すると共に、式中、mは2以上の整数であり、及び、Rは
ビスフェノールAに由来する)
を有する第2のポリマーブロックの調製であって、
前
記第2の
ポリマーブロックの調製は、塩基の存在下、有機溶剤中及び任意選択により共溶剤中における、過剰量又は理論量の
ビスフェノールAと、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンとの反応からなり、
前記第2のポリマーブロックを形成する前記ビスフェノールAの総量は、前記第1のポリマーブロックの調製中における前記第1のポリマーブロックの形成に用いられる前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの量に対して、40/60~60/40の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール/ビスフェノールAのモル比であり、
c)2つの連続するステージにおけるブロック共重合、又は、2つの別個のステージにおけるブロック共重合に従う前記第1の
ポリマーブロックと前記第2の
ポリマーブロックとの反応
を含む、芳香族ポリエーテル型のブロックコポリマーの調製プロセス。
【請求項2】
前記第1のポリマーブロックの調製に係るステージにおける前記有機溶剤は、極性非プロトン性溶剤であることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第1のポリマーブロックの調製に係るステージにおいて用いられる前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールはイソソルビドであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
モノマーの割合は、前記溶剤の重量と前記モノマーの重量との和に対して10重量%~50重量%であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記第1のポリマーブロックの調製に係るステージは、160℃~250℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第1のポリマーブロックの調製及び前記第2のポリマーブロックの調製は、同一の反応媒体中において実施されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記第2の
ポリマーブロックの調製に係るステージは
、50/
50のモル比の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール/ビスフェノールAを伴って実施されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第2のポリマーブロックの調製に係るステージにおける前記有機溶剤は、極性非プロトン性溶剤であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記極性非プロトン性溶剤/共溶剤のモル比は0.1~10であることを特徴とする、請求
項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第2のポリマーブロックの調製に係るステージは、90℃~150℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第1の
ポリマーブロックと前記第2の
ポリマーブロックとの反応における前記ステージは150℃~200℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
式Iの繰り返し単位:
【化3】
(ここで:
Aは
【化4】
(式中、YはCO又はSO
2であり、及び、nは2以上の整数である)
であり、
Bは
【化5】
(式中、Rは
ビスフェノールAに由来し、及び、mは2以上の整数である)
であり、
n’及びm’は各々、相互に独立して、2以上の整数であり、モル比n’/m’は
40/
60~
60/
40であり、並びに、pは2以上の整数である)
を含む芳香族ポリエーテル型のブロックコポリマー。
【請求項13】
数平均分子量は30000g/mol超である、請求項12に記載のブロックコポリマー。
【請求項14】
メンブランを生産するための、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセスによって入手可能であるブロックコポリマー、又は、請求項12又は13に記載のコポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物由来ジオールに基づくポリエーテルスルホン型のブロックコポリマーの調製プロセス、前記プロセスによって入手可能であるブロックコポリマー、並びに、メンブランを生産するための前記ブロックコポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルスルホンは熱可塑性ポリマーであって、特に、温度安定性が優れていることで知られている。これらはまた、加水分解に対する良好な耐性を示し、これにより、例えばオートクレーブ中における滅菌が必要とされる医療用途での使用が可能とされる。これらのポリマーはまた、40ナノメートルまで孔径が制御されたメンブランの1種の生産に使用される。このようなメンブランは、血液透析、排水回収、食品及び飲料加工、並びに、気体分離などの用途において使用可能である。
【0003】
イソヘキシド又は1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、糖質から得られる剛性の二環式キラルジオールである。特に、イソソルビドは、グルコースの水素化反応からもたらされるソルビトールの二重脱水反応から得られる。イソヘキシドは、プラスチック産業などの種々の分野において用途を有する多くの化合物の合成において選択される中間体を構成するものであり、それ故、石油化学産業からもたらされる対応物を代替する。イソヘキシドは、液相・気相分離メンブランが主な用途である「高性能」ポリマーである、ポリエーテルスルホン型の特殊ポリマーの生産に使用可能である。
【0004】
それ故、先ず、Kricheldorf et al.により、シリル化イソソルビド及びジフルオロジフェニルスルホンからのイソソルビド-含有ポリエーテルスルホンの調製及び特徴付けが記載されている(H.Kricheldorf et al.,J.Polymer Sci.,Part A:Polym.Chem.,1995,33,2667-2671)。シリル化イソソルビドは高価であるため、Kricheldorf及びChattiによって、それぞれの重合条件が変更されると共に、非官能化イソソルビド及びジフルオロジフェニルスルホンからのイソソルビド-含有ポリエーテルスルホンの合成が記載されている(S.Chatti et al.,High Perform.Polym.,2009,21,105-118)。
【0005】
国際公開第2014/072473号パンフレットには、イソソルビド、イソマンニド及びイソイジド、並びに、ジハロアリールモノマーから選択された特に1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを含有するポリエーテルスルホンの合成が記載されている。
【0006】
その後、Belgacem et al.によって、同一の反応媒体中で一緒に反応に供されるモノマーとしてのジフルオロジフェニルスルホン、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール及びビスフェノールAからの、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール及びビスフェノールAを含有するポリエーテルスルホンの合成が記載されている(Belgacem et al.,Des. Monomers Polym.,2016,19,248-255)。これらの条件下では、得られるポリマーは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール及びビスフェノールAを含有するユニットの配列がランダムである統計共重合体である。
【0007】
米国特許出願公開第2017/0240708号明細書にはまた、同様のプロセスを経る1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール及びビスフェノールAを含有するポリエーテルスルホンの合成が記載されている。得られるポリエーテルスルホンは、ビスフェノー
ルA及びイソソルビドに基づく統計共重合体である。
【0008】
しかしながら、一般論では、生物由来原料を優先し化石原料を節約するアプローチにおいて、生物由来化合物から得られるポリエーテルスルホン型のポリマーのライブラリを増やすことが当業者において望ましいとされている。
【0009】
メンブランの生産における使用に好適な特徴を示すポリエーテルスルホン型のポリマーを提供する必要性もまた存在している。これらの特徴は、例えば、フィルム形成特性の達成に必要とされる高い数平均分子量(Mn)である。これらのポリマーはまた、有利なことに、高い親水性を示すことが可能であり:メンブランである場合には、後者のものは濡れが速く、高い流量及び収率での急速ろ過をもたらす。最後に、これらのポリマーはまた、浸透特性を示すことが可能であると共に、一定の気体及び/又は液体に対して特に選択特性を示すことが可能であり、これにより、メンブランろ過プロセスにおいて特に有利であることが実証可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の連続するステージ:
a)繰り返し単位:
【化1】
(1000~30000g/molの数平均モル質量M
nを有すると共に、式中、nは2以上の整数であり、XはCl又はFであり、並びに、YはCO又はSO
2である)
を有する第1のポリマーブロックの調製であって、
前記第1のブロックの調製は、塩基の存在下、有機溶剤中における、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと、過剰量の4,4’-ジクロロジフェニルスルホン又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン又は4,4’-ジフルオロジフェニルケトン又は4,4’-ジクロロジフェニルケトンとの反応からなり、
b)繰り返し単位:
【化2】
(1000~30000g/molの数平均モル質量M
nを有すると共に、式中、mは2以上の整数であり、及び、Rは芳香族又は脂肪族ジオールに由来する)
を有する第2のポリマーブロックの調製であって
この第2のブロックの調製は、塩基の存在下、有機溶剤中及び任意選択により共溶剤中における、過剰量又は理論量の芳香族又は脂肪族ジオールと、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンとの反応からなり、
c)2つの連続するステージにおけるブロック共重合、又は、2つの別個のステージにおけるブロック共重合に従う第1のブロックと第2のブロックとの反応
を含む、芳香族ポリエーテルスルホン型のブロックコポリマーの調製プロセスに関する。
【0011】
「2つの連続するステージにおけるブロック共重合」という表記は、プロセスの第2のステージの完了時に、第1のブロック及び第2のブロックが同一の反応媒体中に存在していることを意味する。プロセスの第3のステージは、第1のブロック及び第2のブロックを含む反応媒体の温度を上げて、これらの2つのブロックを一緒に反応させるステップからなる。
【0012】
「2つの別個のステージにおけるブロック共重合」において、プロセスの第3のステージは、プロセスの第1のステージの完了時に得られる第1のポリマーブロックを、プロセスの第2のステージの完了時に得られる第2のポリマーブロックの存在下に供して、第1のブロックと第2のブロックとを一緒に反応させるステップからなる。
【0013】
本発明はまた、前記プロセスによって入手可能である芳香族ポリエーテルスルホン型のブロックコポリマーに関する。このコポリマーは、式Iの繰り返し単位:
【化3】
(ここで:
Aは
【化4】
(式中、YはCO又はSO
2であり、及び、nは2以上の整数である)
であり、
Bは
【化5】
(式中、Rは脂肪族又は芳香族ジオールに由来し、及び、mは2以上の整数である)
であり、
n’及びm’は各々、相互に独立して、2以上の整数であり、モル比n’/m’は1/99~99/1であり、並びに、pは2以上の整数である)
を含む。
【0014】
本発明の他の主題は、メンブランを生産するための、本発明に係るプロセスによって入手可能であるブロックコポリマーの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1に係るブロックコポリマーで得られたメンブランの写真である。
【
図2】20℃から300℃まで10℃/分で実施された示差走査熱量測定法である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、以下の連続するステージ:
a)繰り返し単位:
【化6】
(1000~30000g/molの数平均モル質量M
nを有すると共に、式中、nは2以上の整数であり、XはCl又はFであり、並びに、YはCO又はSO
2である)
を有する第1のポリマーブロックの調製であって、
前記第1のブロックの調製は、塩基の存在下、有機溶剤中における、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’-ジフルオロジフェニルケトン及び4,4’-ジクロロジフェニルケトンから選択される過剰量の二ハロゲン化ビス芳香族化合物との反応からなり、
b)繰り返し単位:
【化7】
(1000~30000g/molの数平均モル質量M
nを有すると共に、式中、mは2以上の整数であり、及び、Rは芳香族又は脂肪族ジオールに由来する)
を有する第2のポリマーブロックの調製であって、
この第2のブロックの調製は、塩基の存在下、有機溶剤中及び任意選択により共溶剤中における、過剰量又は理論量の芳香族又は脂肪族ジオールと、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンとの反応からなり、
c)2つの連続するステージにおけるブロック共重合、又は、2つの別個のステージにおけるブロック共重合に従う第1のブロックと第2のブロックとの反応
を含む、芳香族ポリエーテルスルホン型のブロックコポリマーの調製プロセスに関する。
【0017】
「1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール」という用語は、本発明における意味の範囲内において、マンニトール、ソルビトール及びイジトールなどのヘキシトールの二重脱水によって得られるヘテロ環式化合物を意味すると理解される。1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは主に:イソマンニド、イソソルビド及びイソイジドといった立体異性体の形態で存在する。1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、本発明において、第1のポリマーブロックを形成するためのモノマーとして用いられる。好ましくは、
第1のポリマーブロックの調製に係るステージにおいて用いられる1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールはイソソルビドである。
【0018】
第1のブロックについて、芳香族ジハロゲン化合物は、二ハロゲン化芳香族スルホン又は二ハロゲン化芳香族ケトンから有利に選択される。用いられる芳香族ジハロゲン化合物は、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’-ジクロロジフェニルケトン及び4,4’-ジフルオロジフェニルケトンであることが可能である。好ましくは、第1のポリマーブロックの調製に係るステージにおいて用いられる芳香族ジハロゲン化合物は、4,4’-ジクロロジフェニルスルホンである。
【0019】
第2のブロックについて、ジオールは、芳香族ジオール及び脂肪族ジオールから有利に選択される。本発明に好ましい芳香族ジオールは当業者に公知であり、有利には、以下のリストに該当するものである:
ジヒドロキシベンゼン、特にハイドロキノン及びレゾルシノール;
ジヒドロキシナフタレン、特に1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン及び2,7-ジヒドロキシナフタレン;
ジヒドロキシビフェニル、特に4,4’-ビフェノール及び2,2’-ビフェノール;ビフェニルエーテル、特にビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル及びビス(2-ヒドロキシフェニル)エーテル;
ビスフェニルプロパン、特に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン及び2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;
ビスフェニルメタン、特にビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン;
ビスフェニルシクロヘキサン、特にビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2,4-トリメチルシクロヘキサン;ビスフェニルスルホン、特にビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン;
ビスフェニルスルフィド、特にビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド;
ビスフェニルケトン、特にビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン;
ビスフェニルヘキサフルオロプロパン、特に2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン;及びビスフェニルフルオレン、特に9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン。
【0020】
脂肪族ジオールは、以下のリスト:スピログリコール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール(TCDDM)、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、テトラヒドロフランジメタノール(THFDM)、フランジメタノール、1,2-シクロペンタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘプタンジオール、1,5-ナフタレンジオール、2,7-ナフタレンジオール、1,4-ナフタレンジオール、2,3-ナフタレンジオール、2-メチル-1,4-ナフタレンジオール、1,4-ベンジルジオール、オクタヒドロナフタレン-4,8-ジオール、ジオキサングリコール(DOG)、ノルボルナンジオール、アダマンタンジオール及びペンタシクロペンタデカンジメタノールから選択可能である。好ましくは、第2のポリマーブロックの調製に係るステージにおいて用いられるジオールはビスフェノールAである。
【0021】
有利には、本発明のプロセスでは、高い親水性及び/又は良好な浸透性特性を示すポリマーが得られるよう、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール対ビスフェノールAのモル比を制御することが可能となる。
【0022】
プロセスの第1のステージはそれ故、繰り返し単位:
【化8】
(1000~30000g/molの数平均モル質量M
nを有すると共に、式中、nは2以上の整数であり、XはCl又はFであり、並びに、YはCO又はSO
2である)
を有する第1のポリマーブロックを調製するステップからなり、
前記第1のブロックの調製は、塩基の存在下、有機溶剤中における、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと、過剰量の4,4’-ジクロロジフェニルスルホン又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン又は4,4’-ジフルオロジフェニルケトン又は4,4’-ジクロロジフェニルケトンとの反応からなる。
【0023】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン又は4,4’-ジフルオロジフェニルケトン又は4,4’-ジクロロジフェニルケトンとの反応は、塩基の存在下、有機溶剤中において実施され、ハロゲン化末端を有する第1のブロックを形成可能となる。
【0024】
塩基は、アルカリ金属塩から有利に選択される。塩基は、以下のリスト:炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸セシウム(CsCO3)、炭酸リチウム(LiCO3)、カリウムtert-ブトキシド、カリウムビス(トリメチル)シラノレート、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は、これらの混合物から選択可能である。好ましくは、塩基は、炭酸カリウム(K2CO3)及び炭酸ナトリウム(Na2CO3)から選択される。
【0025】
有利には、塩基の割合は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの量に対して1~3モル当量である。好ましくは、塩基の割合は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの量に対しておよそ2モル当量である。
【0026】
第1のポリマーブロックの調製に係るステージにおける有機溶剤は、極性非プロトン性溶剤、又は、極性非プロトン性溶剤の混合物から有利に選択される。「極性非プロトン性溶剤」という用語は、本発明における意味の範囲内において、酸性水素原子(すなわち、ヘテロ原子に結合する水素原子)を伴うことなく磁気双極子モーメントを有する溶剤を意味すると理解される。好ましくは、溶剤は、硫黄を含有する極性非プロトン性溶剤から選択される。硫黄を含有する極性非プロトン性溶剤のうち、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、ジエチルスルホキシド、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、テトラヒドロチオフェン-1-モノキシド及びこれらの混合物が好ましい。ジメチルアセタミド、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、又は、これらの混合物などの窒素を含有する極性非プロトン性溶剤を、本発明において用いることが可能である。より好ましくは、溶剤は、ジメチルスルホキシド又はN-メチル-2-ピロリドンである。
【0027】
特に好ましい実施形態において、第1のポリマーブロックの調製に係るステージにおいて用いられる1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールはイソソルビドである。
【0028】
第1のブロックの調製に用いられるイソソルビドは、特に粉末、顆粒若しくはフレーク形態といった固体形態、又は、溶融形態で提供されることが可能である。好ましくは、イ
ソソルビドは固体形態で提供される。
【0029】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン又は4,4’-ジフルオロジフェニルケトン又は4,4’-ジクロロジフェニルケトンとの反応は、モル過剰量の4,4’-ジクロロジフェニルスルホンの存在下において有利に実施される。換言すると、4,4’-ジクロロジフェニルスルホンの量は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの量に対して1モル当量超である。好ましくは、4,4’-ジクロロジフェニルスルホンの量は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの量に対して、1.01~1.5モル当量、より好ましくは1.05~1.25モル当量である。さらに好ましくは、4,4’-ジクロロジフェニルスルホンの量は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの量に対しておよそ1.076モル当量である。
【0030】
それ故、第1のポリマーブロックは、モノマーとしての、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン又は4,4’-ジフルオロジフェニルケトン又は4,4’-ジクロロジフェニルケトンとの反応によって形成される。有利には、モノマーの合計割合、すなわち、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの量と4,4’-ジクロロジフェニルスルホンの量との和は、溶剤の重量とモノマーの重量との和に対して、重量基準で、10%~50%、好ましくは20%~40%である。より好ましくは、モノマーの割合は、溶剤の重量とモノマーの重量との和に対しておよそ30重量%である。
【0031】
第1のポリマーブロックを形成するための1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと二ハロゲン化ビス芳香族化合物との反応を開始するためには、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール及び二ハロゲン化ビス芳香族化合物を含む反応媒体を加熱する。有利には、第1のポリマーブロックの調製に係るステージは、160℃~250℃、好ましくは180℃~250℃、好ましくは190℃~240℃、より好ましくは200℃~230℃の温度で、1時間~24時間、好ましくは2時間~18時間、より好ましくは3時間~12時間の間で実施される。さらに好ましくは、第1のポリマーブロックの調製に係るステージは、およそ210℃の温度で、およそ7時間30分の時間で実施される。
【0032】
反応の後、反応媒体の温度は、反応を停止させるために、90℃~150℃、好ましくは100℃~140℃の温度、より好ましくはおよそ120℃の温度に下げられる。
【0033】
本発明に係るプロセスの第2のステージは、繰り返し単位:
【化9】
(1000~30000g/molの数平均モル質量M
nを有すると共に、式中、mは2以上の整数であり、並びに、Rは芳香族又は脂肪族ジオールに由来する)
を有する第2のポリマーブロックを提供するステップからなり、
この第2のブロックの調製は、塩基の存在下、有機溶剤中及び任意選択により共溶剤中における、過剰量又は理論量の芳香族又は脂肪族ジオールと、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンとの反応からなる。
【0034】
第1の特定の実施形態によれば、第2のポリマーブロックの調製は、第1のポリマーブ
ロックの調製に用いられたものと同一の反応媒体中において実施される。これは、「2つの連続するステージにおけるブロック共重合」と称される。それ故、第1のポリマーブロックの調製に係る反応媒体の温度を低下させた後、ビスフェノールA及び4,4’-ジクロロジフェニルスルホン又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンが、第2のポリマーブロックを形成するために当業者に公知であるモル量で添加される。ビスフェノールA対4,4’-ジクロロジフェニルスルホン又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンのモル比は、好ましくは1~1.2、特に1~1.1であり、及び、より好ましくは1~1.05である。これらは低モル質量であるため、前駆体オリゴマーの長さの測定は度々誤差が伴うものであり、これにより、2つの別個のステージにおけるブロックコポリマーの合成に係る厳密なオリゴマーの化学量論を観察することは不可能とされている。米国特許第8 759 458 B2号明細書によれば、2つの連続するステージにおける共重合は、化学量論を制御可能であり、それ故、より高いモル質量が達成されるという利点を有することが知られている。
【0035】
ビスフェノールAと4,4’-ジクロロジフェニルスルホン又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンとの反応は、塩基の存在下、及び、有機溶剤並びに共溶剤中において実施され、これにより、ヒドロキシル基を有する末端で第2のブロックが形成可能となる。
【0036】
第2のブロックを形成するビスフェノールAの総量は、プロセスの第1のステージ中における第1のブロックの形成に用いられる1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの量に対して様々であることが可能である。それ故、第2のポリマーブロックの調製に係るステージは、1/99~99/1、好ましくは10/90~90/10、より好ましくは20/80~80/20、より好ましくは40/60~60/40の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール/ビスフェノールAモル比で実施されることが有利である。さらに好ましくは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール/ビスフェノールAモル比はおよそ50/50である。
【0037】
塩基は、アルカリ金属塩から有利に選択される。塩基は、以下のリスト:炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸セシウム(CsCO3)、炭酸リチウム(LiCO3)、カリウムtert-ブトキシド、カリウムビス(トリメチル)シラノレート、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は、これらの混合物から選択可能である。好ましくは、塩基は、炭酸カリウム(K2CO3)及び炭酸ナトリウム(Na2CO3)から選択される。
【0038】
有利には、塩基の割合はビスフェノールAの量に対して1~3モル当量である。好ましくは、塩基の割合はビスフェノールAの量に対しておよそ2モル当量である。
【0039】
第2のポリマーブロックの調製に係るステージにおける有機溶剤は、極性非プロトン性溶剤から有利に選択される。「極性非プロトン性溶剤」という用語は、本発明における意味の範囲内において、酸性水素原子(すなわち、ヘテロ原子に結合する水素原子)を伴わない磁気双極子モーメントを有する溶剤を意味すると理解される。好ましくは、溶剤は硫黄を含有するものから選択される。硫黄を含有する極性非プロトン性溶剤のうち、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、ジエチルスルホキシド、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、テトラヒドロチオフェン-1-モノキシド及びこれらの混合物が好ましい。ジメチルアセタミド、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、又は、これらの混合物などの窒素を含有する極性非プロトン性溶剤が、本発明において用いられる。より好ましくは、溶剤は、ジメチルスルホキシド又はN-メチル-2-ピロリドンである。
【0040】
共溶剤は、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン又はキシレンなどの非極性溶剤から有利に選択される。好ましくは、共溶剤はトルエンである。
【0041】
有利には、極性非プロトン性溶剤/共溶剤のモル比は、0.1~10、好ましくは0.5~5、より好ましくは1~2である。さらに好ましくは、極性非プロトン性溶剤/共溶剤のモル比はおよそ1.5である。
【0042】
ビスフェノールA及び4,4’-ジクロロジフェニルスルホン又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンを添加した後、反応媒体は、第2のポリマーブロックを形成するために、90℃~150℃、好ましくは100℃~140℃の温度、より好ましくはおよそ120℃の温度で、1時間~24時間、好ましくは6時間~20時間、より好ましくは12時間~18時間の間、より好ましくはおよそ15時間の間維持される。
【0043】
第2の特定の実施形態によれば、第2のポリマーブロックの調製は、第1のポリマーブロックの調製に用いられるものとは異なる媒体中において実施される。これは「2つの別個のステージにおけるブロック共重合」と称される。それ故、モノマーとしてのビスフェノールA及び4,4’-ジクロロジフェニルスルホン又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンは、第2のポリマーブロックを形成するために、塩基の存在下、極性非プロトン性溶剤中において反応に供される。
【0044】
本発明に係るプロセスの第3のステージは、ブロックコポリマーを得るために第1のポリマーブロックと第2のポリマーブロックとを反応させるステップからなる。
【0045】
本発明の第1の実施形態によれば、すなわち、「2つの連続するステージにおけるブロック共重合」によれば、プロセスの第2のステージの完了時に、第1のブロック及び第2のブロックが同一の反応媒体中に存在している。プロセスの第3のステージは、第1のブロック及び第2のブロックを含む反応媒体の温度を上げて、これらの2つのブロックを一緒に反応させるステップからなる。
【0046】
有利には、第1のブロックと第2のブロックとの反応におけるステージは、150℃~200℃の温度で、1時間~24時間の間実施される。
【0047】
反応の最中に、反応媒体の粘度が高まるが、これは、第1のブロック及び第2のブロックが一緒に反応していることを意味する。
【0048】
本発明の第2の実施形態によれば、すなわち、「2つの別個のステージにおけるブロック共重合」によれば、プロセスの第3のステージは、プロセスの第1のステージの完了時に得られる第1のポリマーブロックを、プロセスの第2のステージの完了時に得られる第2のポリマーブロックの存在下に供して、第1のブロックと第2のブロックとを一緒に反応させるステップからなる。
【0049】
第1のブロック及び第2のブロックが混合されたら、第1のブロックと第2のブロックとの反応におけるステージが、150℃~200℃の温度で実施される。
【0050】
第1のブロックと第2のブロックとの反応が完了したら、得られたブロックコポリマーは、例えば、反応媒体の体積のおよそ10倍といった大体積の水からの反応媒体の析出などの当業者に公知である技術により回収可能である。ブロックコポリマーは、その後、当業者に公知である技術に従って、例えば、80℃で12時間、オーブン中に置くことなどにより乾燥可能である。
【0051】
それ故、本発明はまた、本発明に係るプロセスによって入手可能である芳香族ポリエーテルスルホン型のブロックコポリマーに関する。
【0052】
このコポリマーは、式Iの繰り返し単位:
【化10】
(ここで:
Aは
【化11】
(式中、YはSO
2又はCOであり、及び、nは2以上の整数である)
であり、
Bは
【化12】
(式中、Rは脂肪族又は芳香族ジオールに由来し、及び、mは2以上の整数である)
であり、
n’及びm’は各々、相互に独立して、2以上の整数であり、モル比n’/m’は1/99~99/1であり、並びに、pは2以上の整数である)
を含む。
【0053】
特に好ましい式Iのブロックコポリマーは:
Aが
【化13】
(式中、YはSO
2又はCOであり、及び、nは2以上の整数である)
であり、及び
Bが
【化14】
(式中、Rは脂肪族又は芳香族ジオールに由来し、及び、mは2以上の整数である)
であるものである。
【0054】
有利には、本発明に係るプロセスによって入手可能であるブロックコポリマーは、30000g/molを超える数平均分子量Mnを有する。
【0055】
本発明に係るプロセスによって入手可能であるブロックコポリマーは、140℃超、好ましくはおよそ210℃超のガラス転移温度を示す。
【0056】
本発明の他の主題は、メンブラン、生産されたコンポーネント及びコーティングの生産のための本発明に係るブロックコポリマーの使用に関する。
【0057】
メンブランは、本発明のブロックコポリマーから当業者に公知である技術に従って生産可能である。
【0058】
特に、本発明に係るブロックコポリマーで得られたメンブランは、親水性及び通気性といった有利な特性を示す。メンブランは、多孔性又は非多孔性フィルムの形態で存在可能である。メンブランは、モノフィラメント又は中空繊維の形態で生産されることが可能である。本発明に係るブロックコポリマーの組成物は、体液を含む水性媒体中において用いることが可能である。本発明に係るブロックコポリマーは、生体適合性であり、それ故、血液透析などの医療分野、消費者分野(食品及び飲料)、又は、排水処理における分野においてメンブランの形態で用いられることが可能である。チューブ又は中空繊維の形態である多孔性メンブランは、その用途(精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過、逆浸透法)に応じて、当業者に公知である異なるサイズの細孔を示していることが可能である。本発明に係るブロックコポリマーにより得られる水性メンブランの性能品質は、特に、スルホン化モノマーの使用、又は、スルホン化若しくは表面処理による目詰まりを防止するためのメンブランの後処理といった当業者に公知である技術によって向上することが可能である。
【0059】
気相メンブランは、空気中の窒素と酸素の混合物の分離による窒素の生成、又は、メタン及びCO2の分離によるメタンの生成に使用可能である。本発明に係るブロックコポリマーで得られる気体メンブランの性能品質は、特に、ヒンダードモノマーの使用、又は、ナフタレン若しくはフルオレンで置換されているビスフェノールなどの添加剤、又は、細孔を形成するための熱不安定性化合物の使用といった、当業者に公知である技術により向上することが可能である。
【0060】
フィルム又はシートの形態であるメンブランは、光学用又はパッケージング用に用いられることが可能である。
【0061】
成型されたコンポーネントは、本発明のブロックコポリマーから当業者に公知である技術に従って生産可能である。本発明に係るブロックコポリマーの射出成形により、衛生分野(金属製、ガラス製及び他の使い捨て若しくは再利用可能な器具を交換する歯科用途)において、また、航空学、電子工学及び自動車分野において用いられるコンポーネントの製造を実現することが可能である。
【0062】
本発明の他の主題は、腐食を防止するために金属をコーティングするための樹脂として
のブロックコポリマーの使用である。本発明に係るブロックコポリマーから出発されるコーティングは、消費者分野(食品及び飲料)、船舶分野(船舶のハル)、宇宙分野、自動車分野、電気分野(ケーブル)、及び、電子工学分野(回路)において用いられるスチール、アルミニウム、銅といった金属に適用可能である。本発明に係るブロックコポリマーの樹脂はまた、樹脂から溶剤を蒸発させた後に複合体を形成するため、炭素繊維又はガラスなどの他の基材に適用することも可能である。本発明に係るブロックコポリマーの樹脂から形成されるこの複合体は、金属コンポーネントを置き換えるために宇宙空間及び自動車分野において使用可能である。
【0063】
本発明のさらに良好な理解は、純粋に例示的であると共に保護の範囲を如何様にも限定しないことが意図される以下の図面及び実施例を読み取ることで得られ得る。
【実施例】
【0064】
実施例1.1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール/ビスフェノールA比が50/50である本発明に係るブロックコポリマーの調製。
Sトラップ、撹拌機及び窒素インレットを備える3首フラスコ中において、0.7313g(5mmol、1当量)のイソソルビド、1.5606g(5.38mmol、1.076当量)の4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)、及び、1.3961g(10mmol、2当量)のK2CO3を、5.31gのDMSO中に溶解する。DMSOを凝縮させるために還流凝縮器を取り付ける。丸底フラスコを油浴にて210℃で7時間30分加熱する。その後、温度を120℃に戻す。
【0065】
その後、12.71gのNMP及び8.47gのトルエン中の1.1533g(5mmol、1当量)のビスフェノールA(BPA)、1.4509g(5mmol、1当量)の4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)、及び、1.3963g(10mmol、2当量)のK2CO3(99%)を添加する。水-トルエン共沸物を形成するためにディーンスターク装置を取り付ける。媒体を、120℃で15時間、次いで、160℃で3時間30分、及び、最後に180℃で4時間置く。
【0066】
反応媒体を水に注ぎ入れ、ポリマーを析出させ、その後、これをろ出し、次いで、80℃で16時間乾燥させた。その後、ポリマーを20mlのDMSO中に溶解し、大体積の水から析出させ、ろ出し、減圧下に、40℃で16時間乾燥させる。
【0067】
比較例2.
この例は、透明な顆粒の形態のAcros Organics 178910050から購入したポリエーテルスルホンである。生成物は、いかなる処理にも供されていない。この生成物は、イソソルビドを含まず、ビスフェノールAを含有するポリエーテルスルホンである。
【0068】
比較例3.
この比較例は、反応溶剤としてのDMSO中において実施される、Solvay Specialty Polymers,USAによる国際公開第2014/072473号パンフレットの実施例5に相当する。これは、イソソルビドから出発されるポリエーテルスルホンホモポリマーである。
【0069】
比較例4.
この比較例は、共溶剤としてのクロロベンゼンを伴わずに、反応溶剤としてのDMSO中においてSamyang Corporationによる国際公開第2016/032179号パンフレットの実施例5に相当する。これは、イソソルビド/ビスフェノールAモル比が50/50である、イソソルビド及びビスフェノールAに基づくポリエーテルス
ルホンの統計共重合体である。
【0070】
比較例5.
この比較例は、20重量%でDMSO中に溶解され、次いで、水から析出された比較例2と比較例3との混合物に相当する。その後、混合物は、80℃で16時間乾燥される。
【0071】
実施例に適用される特徴付けは以下のとおりである:
-核磁気共嗚(NMR)。100MHz
13Cスペクトルを、5mmのガラス管中においてd
6-DMSO中に、Brueueker Ascend(商標)400で生成した。-示差走査熱量測定法(DSC)(
図2) 示差走査熱量測定分析を、DSC-Q5000 SA、TA Instruments,USA(50ml/分の窒素流量、20℃から300℃まで10℃/分又は20℃/分、及び、穿孔アルミニウム製坩堝)で実施した。
-サイズ排除クロマトグラフィ(SEC):モル質量の分析を、Agilent PLgel 5μmカラムを有するサイズ排除クロマトグラフィ(DMF/LiBr中に、50℃で35分間、0.5ml/分の流量、及び、PS較正)により実施した。
【0072】
【0073】
13C NMRは、組み込まれたジオールの合計レベルに対して、56%のイソソルビドの組み込みレベルを実証する。
【0074】
SECでは、ポリスチレン較正における80000g/molの単一のガウス曲線を観察する。本発明に係るブロックコポリマー(実施例1)のモル質量Mnは、イソソルビド系ホモポリマー(比較例3)のものよりも高く、及び、50/50イソソルビド/ビスフェノールA統計共重合体(比較例4)のものよりも高く、それぞれ、34000及び30000g/molである。DSC分析(
図2)は、本発明に係るブロックコポリマー(実施例1)が192℃で単一のTgを有することを示す。イソソルビド系ホモポリマー(比較例3)(
図2中のC3)と市販のPES(比較例2)(
図2中のC2)との混合物は、2つのTg値を183℃及び208℃で示す(比較例5;
図2中のC4)。これらの2つの分析は、本発明のポリマーのブロックの性質と合致すると共に、2つのホモポリマー(一方はイソソルビドに基づくものであり、及び、他方はビスフェノールAに基づくものである)の形成に係る仮説に反論するものである。
【0075】
特に有利には、本発明に係るコポリマーは、市場基準に匹敵する平均分子量を示す。特に50000g/molよりも重いという点で大重量であり、それ故、前記コポリマーはメンブランの生産における使用が可能となる。
【0076】
メンブランの調製
メンブランは、ガラスシート上に注がれたNMP中のポリマーの20重量%溶液から調製可能である。その後、溶剤は、以下の熱サイクルを用いて蒸発される:70℃で2時間、120℃で1時間、150℃で1時間、及び、200℃で1時間。硬化の後、透明で茶色のメンブランが得られる(実施例1(
図1))。メンブランは、比較例2でも得られる。
【0077】
本発明のコポリマーは、文献の比較例3及び4とは異なりフィルム形成性である。
【0078】
2つのメンブランに適用される特徴付けは以下のとおり記載する:
【0079】
接触角
接触角を、Owens-Wendt-Rabel-Kaelbleモデルに従って、水及びジヨードメタンで計測した。
【0080】
動的吸着
水吸収の計測を、Dynamic Vapor Sorptionデバイス(DVS Q-5000 SA、TA Instruments)により、大気圧で、及び、21℃の等温で、0%~90%湿度での吸着/脱着サイクルで実施した。
【0081】
浸透性
実験を周囲温度で実施する。取り扱い操作は、調査対象のフィルムを浸透セルに挿入するステップからなる。16時間の高減圧脱着の後、浸透実験は、セルの上流の区画に選択された気体で圧力(3bar)を印加するステップ、及び、セルの下流の区画における圧力の上昇を計測するステップからなる。浸透性は、静的状態下における時間の関数としての直線の圧力線の勾配から計算され、必要に応じて、固定減圧について補正される。
【0082】
【0083】
要するに、これらの分析から、一定の気体に対する選択性が向上する。例えば、特に有利で差別的な方法において、CO2/O2選択性は、比較例2の2.30から実施例1の5.86に変化する。より顕著に、及び、より有利には、親水性の性質は、本発明に係る生成物にはかなり重要であり:吸水度は、市販の生成物について観察されるものよりも2倍を超えて大きい。この特性は、メンブランに特に有利であり、迅速に水和されるその能力は、その収率及びその効率を条件とする。