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特許7497340活性化可能なインターロイキン12ポリペプチド及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】活性化可能なインターロイキン12ポリペプチド及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240603BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240603BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20240603BHJP
   C12N 15/14 20060101ALI20240603BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240603BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240603BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20240603BHJP
   C07K 14/765 20060101ALI20240603BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240603BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
C07K19/00
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/24
C12N15/14
C12N15/13
C12N5/10
C07K14/54
C07K14/765
C07K16/00
A61K38/20
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2021514302
(86)(22)【出願日】2019-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 US2019032322
(87)【国際公開番号】W WO2019222296
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】62/671,225
(32)【優先日】2018-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/756,504
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/756,507
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/756,515
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520446126
【氏名又は名称】ウェアウルフ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウィンストン, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ヒックリン, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】バスカー, ビナイ
(72)【発明者】
【氏名】エヴニン, ルーク
(72)【発明者】
【氏名】バウアリー, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】サルメロン ガルシア, ホセ アンドレス
(72)【発明者】
【氏名】ブロドキン, ヘザー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェッシェ, ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】リン, シュオイェン ジャック
(72)【発明者】
【氏名】サイデル-デュガン, シンシア
【審査官】松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/097308(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/123683(WO,A2)
【文献】国際公開第2009/025846(WO,A2)
【文献】特表2021-524757(JP,A)
【文献】Immunology,2011年,Vol.133,P.206-220
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】

[A]-[L1]-[D]-[L2]-[B]または[B]-[L1]-[A]-[L1]-[D]
[式中、
[A]は、インターロイキン12(IL-12)ポリペプチドであり、
[B]は、半減期延長要素であり、前記半減期延長要素が、ヒト血清アルブミン、ヒト血清アルブミンに結合する抗原結合ポリペプチド、または免疫グロブリンFcであり、
[L1]は、プロテアーゼ切断可能なポリペプチドリンカーであり、[L2]は、任意選択でプロテアーゼ切断可能であるポリペプチドリンカーであり、L2がプロテアーゼ切断可能である場合、L2がプロテアーゼにより切断可能である少なくとも1つ配列を含み、[D]は、IL-12遮断部分であり、前記遮断部分が、IL-12に結合する抗体、IL-12に結合する抗体の抗原結合断片、または、IL-12に対する同族受容体のリガンド結合ドメインもしくは断片である]の融合ポリペプチドを含む条件付きで活性であるIL-12であって、
前記融合ポリペプチドは、減弱されたIL-12受容体活性化活性を有し、
前記融合ポリペプチドのIL-12受容体活性化活性は、前記IL-12ポリペプチドを含むポリペプチドの前記IL-12受容体活性化活性よりも少なくとも約10倍低く、前記IL-12ポリペプチドは、前記プロテアーゼ切断可能リンカーL1の切断により、または、[L2]がプロテアーゼ切断可能である場合に[L1]および[L2]の両方の切断により産生され、
前記IL-12受容体活性化活性は、HEK Blueレポーター細胞アッセイを使用してモルに基づく等量の前記IL-12ポリペプチド及び前記融合ポリペプチドで評価される、前記条件付きで活性であるIL-12。
【請求項2】
a)IL-12p35およびIL-12p40から選択されるIL-12サブユニットポリペプチドを含むインターロイキン12(IL-12)ポリペプチド、
b)IL-12遮断部分であって、IL-12に結合する抗体もしくは抗体の抗原結合断片、または、IL-12に対する同族受容体のリガンド結合ドメインもしくは断片を含む、IL-12遮断部分
c)プロテアーゼ切断可能なポリペプチドリンカー、及び
d)半減期延長要素であり、ヒト血清アルブミン、ヒト血清アルブミンに結合する抗原結合ポリペプチド、または免疫グロブリンFcである、半減期延長要素
のそれぞれのうちの少なくとも1つを含む融合ポリペプチドを含む条件付きで活性であるIL-12であって、
前記IL-12ポリペプチドと前記IL-12遮断部分とは、前記プロテアーゼ切断可能なポリペプチドリンカーによって機能的に連結され、前記融合ポリペプチドは、減弱されたIL-12受容体活性化活性を有しており、前記融合ポリペプチドのIL-2受容体活性化活性は、前記プロテアーゼ切断可能なポリペプチドリンカーの切断により産生される前記IL-12ポリペプチドを含有するポリペプチドのIL-12受容体活性化活性よりも少なくとも約10倍低く、前記IL-12受容体活性化活性は、HEK Blueレポーター細胞アッセイを使用してモルに基づく等量の前記IL-12ポリペプチド及び前記融合ポリペプチドで評価される、前記条件付きで活性であるIL-12。
【請求項3】
[A]は、式
[A1]-[L3]-[A2]または[A2]-[L3]-[A1]を有し、式中、
[A1]は、IL-12p40サブユニットポリペプチドであり、
[A2]は、IL-12p35サブユニットポリペプチドであり、
[L3]は、任意選択でプロテアーゼ切断が可能なポリペプチドリンカーである、請求項1記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項4】
[A]は、式[A1]-[L3]-[A2]を有し、L3は、プロテアーゼ切断が可能ではない、請求項3に記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項5】
各プロテアーゼ切断可能ポリペプチドリンカーは、独立して、カリクレイン、トロンビン、キマーゼ、カルボキシペプチダーゼA、エラスターゼ、PR-3、グランザイムM、カルパイン、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、ADAMメタロプロテアーゼ、プラスミノーゲン活性化因子、カテプシン、カスパーゼ、トリプターゼ、及び腫瘍細胞表面プロテアーゼからなる群から選択されるプロテアーゼによる切断を受けることができる少なくとも1つの配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項6】
前記L2がプロテアーゼ切断可能なポリペプチドリンカーである、請求項1に記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項7】
前記L1が第1のプロテアーゼに対する基質であり、前記L2が第2のプロテアーゼに対する基質である、請求項1に記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項8】
各プロテアーゼ切断可能ポリペプチドは、独立して、同じプロテアーゼのための2つ以上の切断部位、もしくは異なるプロテアーゼによって切断される2つ以上の切断部位を含むか、または前記プロテアーゼ切断可能ポリペプチドのうちの少なくとも1つが、2つ以上の異なるプロテアーゼの切断部位を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項9】
IL-12遮断部分は、前記融合ポリペプチドによる前記IL-12受容体の活性化を阻害する、請求項1~8のいずれか一項に記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項10】
前記IL-12遮断部分は前記IL-12ポリペプチドに非共有結合で結合する、請求項1~9のいずれか一項に記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項11】
前記IL-12遮断部分は前記IL-12 p40サブユニットポリペプチドと結合する、請求項1~9のいずれか一項に記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項12】
前記IL-12遮断部分は前記IL-12 p35サブユニットポリペプチドと結合する、請求項1~9のいずれか一項に条件付きで活性であるIL-12。
【請求項13】
前記IL-12遮断部分は、前記IL-12ポリペプチドに結合する、単一ドメイン抗体、Fab、またはscFvを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項14】
前記IL-12は、前記プロテアーゼ切断可能なポリペプチドリンカーがプロテアーゼによって切断された後、前記IL-12遮断部分から自由に解離する、請求項1~13のいずれか一項に記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項15】
腫瘍特異抗原結合ペプチドをさらに含む、請求項1~14のいずれかに記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項16】
前記腫瘍特異抗原結合ペプチドは、切断不可能なリンカーによって前記IL-12ポリペプチドに連結される、請求項15に記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項17】
前記腫瘍特異的抗原結合ペプチドは、切断可能なリンカーによって、前記IL-12ポリペプチド、前記半減期延長要素または前記IL-12遮断部分に連結される、請求項15に記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項18】
前記カテプシンが、カテプシンB、カテプシンC、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンK、カテプシンL、または、カテプシンGである、請求項5に記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項19】
前記マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)が、MMP1、MMP2、MMP3、MMP8、MMP9、MMP10、MMP11、MMP12、MMP13、またはMMP14である、請求項5に記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項20】
前記半減期延長要素は、IL-12p35に機能的に連結されている、請求項1~19のいずれか一項に記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項21】
前記半減期延長要素は、IL-12p40に機能的に連結されている、請求項1~20のいずれか一項に記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項22】
前記IL-12p35が、IL-12p40に結合してヘテロ二量体を形成する、請求項20に記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項23】
前記IL-12p40が、IL-12p30に結合してヘテロ二量体を形成する、請求項21に記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項24】
前記IL-12に対する同族受容体は、IL-12Rベータ1(IL-12Rβ1)またはIL-12Rベータ2(IL-12Rβ2)である、請求項1~23のいずれか一項に記載の条件付きで活性であるIL-12。
【請求項25】
請求項1~24のいずれかに記載の条件付きで活性であるIL-12をコードする核酸。
【請求項26】
請求項25に記載の核酸を含むベクター。
【請求項27】
請求項26に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項28】
請求項27に記載の宿主細胞を、所望のポリペプチドの発現及び採取に適切な条件下で培養することを含む、医薬組成物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年5月14日に出願された米国仮出願第62/671,225号、2018年11月6日に出願された米国仮出願第62/756,504号、及び2018年11月6日に出願された米国仮出願第62/756,515号の利益を主張するものである。上記出願の教示全体は、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2019年5月14日に作成された上記ASCIIコピーは105365-0022_SL.txtという名前であり、サイズは232,520バイトである。
【背景技術】
【0003】
コミットメントの低い前駆体からの成熟免疫担当リンパ系細胞の発達、その後のそれらの抗原駆動免疫応答、及びこれらの望ましくない自己反応性応答の抑制は、共通γ鎖(γc)ファミリー(Rochman et al.,2009)ならびにIl-12、Il-18、及びIl-23等のファミリーメンバーの受容体を利用するサイトカイン(インターロイキン-2[IL-2]、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、及びIL-21等)に大きく依存し、調節される。IL-2は、Treg細胞の胸腺での発生に不可欠であり、成熟した末梢Treg及び抗原により活性化された従来のT細胞のいくつかの重要な側面を決定的に調節する。IL-2は、そのインビトロでの強力なT細胞増殖因子活性のため、一部には、この活性が、例えば、がん及びAIDS-HIV等の患者で免疫を直接促進する強力な手段、または望ましくない応答、例えば、移植拒絶及び自己免疫疾患等に拮抗する標的を提供したという理由で広く研究されてきた。IL-2を用いるインビトロ研究では、これらの研究についての強い理論的根拠が得られたが、インビボでのIL-2の機能はIL-2欠損マウスで最初に例証されているように明らかに、よりはるかに複雑であり、免疫欠如ではなく、急速で致死的な自己免疫症候群が観察された(Sadlack et al.,1993,1995)。後に、IL-2Rα(Il2ra)及びIL-2Rβ(Il2rb)をコードする遺伝子を個々に除去した際に、同様の観察が行われた(Suzuki et al.,1995、Willerford et al.,1995)。
【0004】
本発明は、免疫のアップレギュレーションもしくはダウンレギュレーションに依存するがん及び他の疾患の治療における使用のための、条件付きで活性である、及び/または標的化されたサイトカインを指す。例えば、いくつかのサイトカインの抗腫瘍活性は十分に知られ、また記載されており、いくつかのサイトカインはすでにヒトで治療的に使用されている。インターロイキン-2(IL-2)及びインターフェロンα(IFNα)等のサイトカインでは、様々な種類の腫瘍、例えば、腎臓転移性癌腫、有毛細胞白血病、カポシ肉腫、黒色腫、多発性骨髄腫等の患者において陽性の抗腫瘍活性が示されている。IFNβ、腫瘍壊死因子(TNF)α、TNFβ、IL-1、IL-4、IL-6、IL-12、IL-15及びCSFのような他のサイトカインでは、いくつかの種類の腫瘍に対して特定の抗腫瘍活性が示されており、したがって、それらはさらなる研究課題である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、疾患または障害、例えば、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫障害、自己免疫疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫反応、移植片対宿主病等の治療のための、治療用タンパク質、かかるタンパク質をコードする核酸、ならびにかかるタンパク質及び核酸を使用する組成物及び方法が提供される。
【0006】
本発明は、IL-12の条件付きで活性な変異型である融合タンパク質を特徴とする。一態様では、本発明の完全長ポリペプチドは、それらが機能的IL-12ポリペプチドを含有していても、IL-12受容体活性化活性が低下しているか、または最小限である。例えば、遮断部分、例えば、立体遮断ポリペプチド等を、活性サイトカインに順次連結するリンカーの切断等による活性化時、IL-12、またはその機能的断片もしくは変異タンパク質は、その受容体と結合し、シグナル伝達を実行することができる。所望される場合、完全長ポリペプチドは、追加の有利な特性も提供する遮断ポリペプチド部分を含むことができる。例えば、完全長ポリペプチドはまた、血清中半減期も延長させ、及び/または完全長ポリペプチドをサイトカイン活性の所望の部位に指向もさせる、遮断ポリペプチド部分を含有することもできる。別法として、完全長融合ポリペプチドは、遮断ポリペプチド部分とは別個の、血清中半減期延長要素及び/または標的指向性ドメインを含有することができる。好ましくは、融合タンパク質は、インビボでの循環血中半減期を延長することができる少なくとも1つの要素またはドメインを含有する。好ましくは、この要素は、身体の所望の部位で酵素により除去され(例えば、腫瘍微小環境におけるプロテアーゼによる切断)、天然に存在するペイロード分子と実質的に同様の薬物動態学的特性をペイロード分子(例えば、IL2またはIFNa)に回復させる。融合タンパク質を所望の細胞または組織に指向させる。本明細書に記載されるように、標的指向は、所望の標的にも結合する遮断ポリペプチド部分の作用を介して、または標的指向性ドメインを介して達成される。好ましい標的上の標的抗原(例えば、腫瘍特異的抗原)を認識するドメインは、切断可能または切断不可能なリンカーを介してサイトカインに結合され得る。切断不可能なリンカーで結合された場合、標的指向性ドメインは、腫瘍内にサイトカインを保持することにさらに役立つ場合があり、保持ドメインとみなされ得る。標的指向性ドメインは、必ずしもペイロード分子に直接連結される必要はなく、融合タンパク質の別の要素に直接連結されてよい。これは、標的指向性ドメインが切断可能なリンカーで結合されている場合に特に当てはまる。
【0007】
一態様では、IL-12ポリペプチド、またはその機能的断片もしくは変異タンパク質、及び遮断部分、例えば、立体遮断ドメイン等を含む融合ポリペプチドが提供される。遮断部分は、直接またはリンカーを介してIL-12ポリペプチドに融合され、融合部位もしくはリンカーまたは遮断部分内あるいはそれらの近傍での融合ポリペプチドの切断(例えば、プロテアーゼが媒介する切断)によってIL-12ポリペプチドから分離させることができる。例えば、IL-12ポリペプチドが、プロテアーゼ切断部位を含有するリンカーを介して遮断部分に融合される場合、IL-12ポリペプチドは、プロテアーゼの媒介によるリンカーの切断時に遮断部分から遊離し、その受容体と結合することができる。リンカーは、所望のサイトカイン活性の部位、例えば、腫瘍微小環境内等にて切断され、オフターゲットのサイトカイン活性を回避し、サイトカイン療法の全体的な毒性を低減するよう設計される。
【0008】
遮断部分は、血清中半減期延長要素としても機能することができる。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドはさらに、別々の血清中半減期延長要素を含む。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドはさらに、標的指向性ドメインを含む。様々な実施形態では、血清中半減期延長要素は、任意選択で分岐もしくはマルチアーム型のポリエチレングリコール(PEG)、完全長ヒト血清アルブミン(HSA)またはFcRnに対する結合性を維持する断片、Fc断片、あるいはFcRnに直接結合するかもしくはヒト血清アルブミンに結合するナノボディ等の水溶性ポリペプチドである。
【0009】
血清中半減期延長要素に加えて、本明細書に記載する医薬組成物は、好ましくは、1つ以上の標的抗原または単一標的抗原上の1つ以上の領域に結合する、少なくとも1つ、もしくはそれ以上の標的指向性ドメインを含む。本明細書では、本発明のポリペプチド構成体は、例えば、対象の疾患特異的微小環境内または血液中でプロテアーゼ切断部位にて切断されること、及び標的指向性ドメイン(複数可)は標的細胞上の標的抗原に結合することが企図される。少なくとも1つの標的抗原が疾患、障害もしくは状態に関与し、及び/または関連している。例示的標的抗原には、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫障害、自己免疫疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫反応、移植片対宿主病または宿主対移植片病に関連するものが含まれる。
【0010】
いくつかの実施形態では、標的抗原は、タンパク質、脂質または多糖等の細胞表面分子である。いくつかの実施形態では、標的抗原は、腫瘍細胞、ウイルス感染細胞、細菌感染細胞、損傷した赤血球、動脈プラーク細胞、または線維性組織細胞上にある。
【0011】
標的抗原は、場合によっては、罹患した細胞または組織、例えば、腫瘍またはがん細胞の表面に発現されている。腫瘍の標的抗原としては、線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAPa)、栄養膜糖タンパク質(5T4)、腫瘍関連カルシウムシグナル伝達物質2(Trop2)、フィブロネクチンEDB(EDB-FN)、フィブロネクチンEIIIBドメイン、CGS-2、EpCAM、EGFR、HER-2、HER-3、c-Met、FOLR1、及びCEAが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に開示される医薬組成物には、罹患した細胞または組織上で発現されることが知られている2つの異なる標的抗原に結合する2つの抗原結合ドメインを含むタンパク質も含まれる。抗原結合ドメインの例示的な対としては、EGFR/CEA、EpCAM/CEA、及びHER-2/HER-3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
いくつかの実施形態では、標的指向性ポリペプチドは、独立して、scFv、VHドメイン、VLドメイン、非Igドメイン、または標的抗原に特異的に結合するリガンドを含む。いくつかの実施形態では、標的指向性ポリペプチドは、細胞表面分子に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、標的指向性ポリペプチドは、腫瘍抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、標的指向性ポリペプチドは、EpCAM、EGFR、HER-2、HER-3、cMet、CEA、及びFOLR1のうちの少なくとも1つから選択される腫瘍抗原に特異的かつ独立して結合する。いくつかの実施形態では、標的指向性ポリペプチドは、2つの異なる抗原に特異的かつ独立して結合し、抗原のうちの少なくとも1つは、EpCAM、EGFR、HER-2、HER-3、cMet、CEA、及びFOLR1から選択される腫瘍抗原である。いくつかの実施形態では、標的指向性ポリペプチドは、保持ドメインとして機能し、切断不可能なリンカーを介してサイトカインに結合されている。
【0013】
本明細書に記載されるように、サイトカイン遮断部分は、サイトカインに結合し、それによりサイトカインの同族受容体の活性化を遮断することができる。
【0014】
本開示はまた、本明細書に記載される、条件付きで活性なタンパク質をコードする核酸、例えば、DNA、RNA、mRNA等、ならびにそのような核酸を含有するベクター及び宿主細胞にも関する。
【0015】
本開示はまた、条件付きで活性なタンパク質を含有する医薬組成物、条件付きで活性なタンパク質をコードする核酸、及びそのような核酸を含有するベクター及び宿主細胞にも関する。典型的には、医薬組成物は、1つ以上の生理学的に許容される担体及び/または添加物を含有する。
【0016】
本開示はまた、前述のうちのいずれかの、条件付きで活性なタンパク質、条件付きで活性なタンパク質をコードする核酸、そのような核酸を含有するベクターまたは宿主細胞、及び医薬組成物を有効量にて、それを必要とする対象に投与することを含む治療方法にも関する。典型的には、対象は、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫障害、自己免疫疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫反応、移植片対宿主病もしくは宿主対移植片病を有するか、または発症するリスクがある。
【0017】
本開示はまた、前述のうちのいずれかの、条件付きで活性なタンパク質、条件付きで活性なタンパク質をコードする核酸、そのような核酸を含有するベクターまたは宿主細胞、及び医薬組成物の、それを必要とする対象を治療するための使用にも関する。典型的には、対象は、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫障害、自己免疫疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫反応、移植片対宿主病もしくは宿主対移植片病を有するか、または発症するリスクがある。
【0018】
本開示はまた、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫障害、自己免疫疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫反応、移植片対宿主病または宿主対移植片病等の疾患を治療するための医薬品の製造のための、条件付きで活性なタンパク質、条件付きで活性なタンパク質をコードする核酸、そのような核酸を含有するベクターもしくは宿主細胞の使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1-1】プロテアーゼにより活性化される、遮断部分を含むサイトカインまたはケモカインを示す概略図である。遮断部分は、任意選択で、血清中半減期延長ドメインとして機能し得る。矢印の左側は、サイトカインが、プロテアーゼ切断可能リンカーを介して遮断部分に接続されており、そのため、サイトカインがその受容体に結合する能力が遮断されていることを示す図である。矢印の右側は、炎症性または腫瘍の環境では、プロテアーゼがリンカー上のプロテアーゼ切断部位で切断して遮断部分を遊離させ、サイトカインがその受容体に結合するのを可能にすることを示す図である。
図1-2】HSA(遮断部分)が目的のサイトカインまたはケモカインに直接結合され、プロテアーゼ切断部位は、HSAと目的のサイトカインまたはケモカインとの間にある、プロテアーゼにより活性化されるサイトカインまたはケモカインを示す概略図である。矢印の左側は、サイトカインが、プロテアーゼ切断可能リンカーを介して遮断部分に接続されており、そのため、サイトカインがその受容体に結合する能力が遮断されていることを示す図である。矢印の右側は、炎症性または腫瘍の環境では、プロテアーゼがリンカー上のプロテアーゼ切断部位で切断して遮断部分を遊離させ、サイトカインがその受容体に結合するのを可能にすることを示す図である。
図1-3】2つ以上のHSA(遮断部分)が目的分子に直接結合されている、プロテアーゼにより活性化されるサイトカインまたはケモカインを示す概略図である。所望される場合、HSAのうち1つ以上を、プロテアーゼ切断部位を含有するリンカー等のリンカーを介してサイトカインまたはケモカインに結合させることができる。矢印の左側は、サイトカインが、プロテアーゼ切断可能リンカーを介して遮断部分に接続されており、そのため、サイトカインがその受容体に結合する能力が遮断されていることを示す図である。矢印の右側は、炎症性または腫瘍の環境では、プロテアーゼがリンカー上のプロテアーゼ切断部位で切断して遮断部分を遊離させ、サイトカインが受容体と結合するのを可能にすることを示す図である。サイトカインはここで天然サイトカインと比較して同様のpK特性を有する(例えば、半減期が短い)。
図1-4】同じ種類または異なる種類の2つ以上のサイトカインを含む、プロテアーゼにより活性化されるサイトカインまたはケモカインを示す概略図であり、その各々が、プロテアーゼ切断可能リンカーを介して結合ドメインに結合されている。矢印の左側は、サイトカインが、プロテアーゼ切断可能リンカーを介して遮断部分に接続されており、そのため、サイトカインがその受容体に結合する能力が遮断されていることを示す図である。矢印の右側は、炎症性または腫瘍の環境では、プロテアーゼがリンカー上のプロテアーゼ切断部位で切断して遮断部分を遊離させ、サイトカインがその受容体に結合するのを可能にすることを示す図である。
図2】少なくとも1つのプロテアーゼ切断可能リンカーにより接続されている、サイトカインまたはケモカインポリペプチド、遮断部分、及び血清中半減期延長ドメインを含む、プロテアーゼにより活性化されるサイトカインまたはケモカインを示す概略図である。矢印の左側は、サイトカインが、プロテアーゼ切断可能リンカーを介して遮断部分に接続されており、そのため、サイトカインがその受容体に結合する能力が遮断されていることを示す図である。サイトカインはまた、血清中での半減期を延長する別個の半減期延長要素にも結合されている。矢印の右側は、炎症性または腫瘍の環境では、プロテアーゼがリンカー上のプロテアーゼ切断部位で切断し、そのため、血清中半減期延長要素及び遮断部分を遊離させ、サイトカインがその受容体に結合するのを可能にすることを示す図である。サイトカインはここで天然サイトカインと比較して同様のpK特性を有する(例えば、半減期が短い)。
図3】少なくとも1つのプロテアーゼ切断可能リンカーにより接続されている、サイトカインまたはケモカインポリペプチド、遮断部分、及び標的指向性ドメインを含む、プロテアーゼにより活性化されるサイトカインまたはケモカインを示す概略図である。矢印の左側は、サイトカインが、プロテアーゼ切断可能リンカーを介して遮断部分及び標的指向性ドメインに接続されており、そのため、サイトカインがその受容体に結合する能力が遮断されていることを示す図である。矢印の右側は、炎症性または腫瘍の微小環境では、プロテアーゼが、リンカー内のプロテアーゼ切断部位で切断して標的指向性ドメイン及び遮断部分を遊離させ、サイトカインがその受容体に結合するのを可能にすることを示す図である。
図4-1】少なくとも1つのプロテアーゼ切断可能リンカーにより接続されている、サイトカインまたはケモカインポリペプチド、遮断部分、標的指向性ドメイン、及び血清中半減期延長ドメインを含み、サイトカインポリペプチドと標的指向性ドメインとがプロテアーゼ切断可能リンカーにより接続されている、プロテアーゼにより活性化されるサイトカインまたはケモカインを示す概略図である。矢印の左側は、プロテアーゼ切断可能リンカー(複数可)を介して標的指向性ドメイン、遮断部分、及び半減期延長要素に接続されており、そのため、それがその受容体に結合する能力が遮断されていることを示す図である。矢印の右側は、炎症性または腫瘍の環境では、プロテアーゼが、リンカー(複数可)上のプロテアーゼ切断部位で切断して半減期延長要素、標的指向性ドメイン、及び遮断部分を遊離させ、サイトカインがその受容体に結合するのを可能にすることを示す図である。サイトカインはここで天然サイトカインと比較して同様のpK特性を有する(例えば、半減期が短い)。
図4-2】少なくとも1つのプロテアーゼ切断可能リンカーにより接続されている、サイトカインまたはケモカインポリペプチド、遮断部分、標的指向性ドメイン、及び血清中半減期延長ドメインを含む、プロテアーゼにより活性化されるサイトカインまたはケモカインを示す概略図である。矢印の左側は、サイトカインが、プロテアーゼ切断可能リンカー(複数可)を介して標的指向性ドメイン、遮断部分、及び半減期延長要素に接続されており、そのため、サイトカインがその受容体に結合する能力が遮断されていることを示す図である。矢印の右側は、炎症性または腫瘍の環境では、プロテアーゼが、リンカー(複数可)上のプロテアーゼ切断部位で切断して半減期延長要素及び遮断部分を遊離させ、サイトカインが受容体に結合するのを可能にすることを示す図である。標的指向性部分は結合されたまま残り、サイトカインを腫瘍微小環境内に維持する。サイトカインはここで天然サイトカインと比較して同様のpK特性を有する(例えば、半減期が短い)。
図5】免疫グロブリン分子の可変ドメインの構造を示す概略図である。免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の両方の可変ドメインは、3つの超可変ループ、または相補性決定領域(CDR)を含有する。Vドメインの3つのCDR(CDR1、CDR2、CDR3)がベータバレルの一端でクラスターを形成する。CDRは、免疫グロブリンフォールドのベータ鎖B-C、C’-C”、及びF-Gをつなぐループであるが、免疫グロブリンフォールドのベータ鎖AB、CC’、C”-D及びE-Fをつなぐ下部ループ、ならびに免疫グロブリンフォールドのD-E鎖をつなぐ上部ループは非CDRループである。
図6】サイトカインまたはケモカインポリペプチド、血清アルブミン結合ドメイン(例えば、dAb)である遮断部分、及びプロテアーゼ切断可能リンカーを含む、プロテアーゼにより活性化されるサイトカインまたはケモカインを示す概略図である。図示の例では、血清アルブミン結合ドメイン(例えば、sdAb)内の非CDRループはサイトカインIL-12に対する結合部位を形成することができる。この例では、血清アルブミンの結合部位は血清アルブミン結合ドメインのCDRにより形成することができる。
図7】プロテアーゼによる切断の前後にヒトp40/マウスp35 IL12融合タンパク質で実施したHEK-Blue IL-12レポーターアッセイから得た結果を示すグラフである。試薬QUANTI-Blue(登録商標)(InvivoGen)を使用して、分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)活性の定量に基づいて分析を実施した。結果から、IL12タンパク質融合タンパク質は活性であることが確認される。
図8-1】 図8a~8fは、MMP9による切断の前後の、4つのIL-12融合タンパク質のHEK-blueアッセイの結果を示す一連のグラフを示す。試薬QUANTI-Blue(InvivoGen)を使用して、分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)活性の定量に基づいて分析を実施した。データは、完全融合タンパク質よりも切断型IL12において活性が大きいことを示す。被験構成体は、ACP06(図8a)、ACP07(図8)、ACP08(図8)、ACP09(図8d)、ACP10(図8e)、ACP11(図8f)であった。
図8-2】 図8a~8fは、MMP9による切断の前後の、4つのIL-12融合タンパク質のHEK-blueアッセイの結果を示す一連のグラフを示す。試薬QUANTI-Blue(InvivoGen)を使用して、分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)活性の定量に基づいて分析を実施した。データは、完全融合タンパク質よりも切断型IL12において活性が大きいことを示す。被験構成体は、ACP06(図8a)、ACP07(図8)、ACP08(図8)、ACP09(図8d)、ACP10(図8e)、ACP11(図8f)であった。
図9】タンパク質切断アッセイの結果を示す。融合タンパク質ACP11を切断形態及び非切断形態の両方でSDS-PAGEゲルにかけた。ゲルに示されるように、切断は完了した。
図10】誘導性サイトカインタンパク質の非限定的な例を示す概略図であり、構成体は、サイトカインの2つのサブユニット間に結合されたリンカーのプロテアーゼによる切断時に活性化される。
図11図11a~図11dは、プロテアーゼによる切断の前後にヒトp40/マウスp35 IL12融合タンパク質で実施したHEK-Blueアッセイから得た結果を示すグラフである。アッセイを実施した。結果から、IL12タンパク質融合タンパク質は活性であることが確認される。各増殖アッセイは、HSAを用いて、またはHSAを用いずに実施された。
図12図12は、B16レポーターアッセイを使用して、未切断型の融合タンパ ク質の活性と比較した、MMP9により切断された例示的IFNγ融合タンパク質(ACP51およびACP52)の活性を示す2つのグラフである。各融合タンパク質は、抗HSA結合体および腫瘍標的化ドメインを含む。
図13-1】HEKBlueレポーターアッセイにおいて、切断されたIL-12ポリペプチドは活性であることを示す一連のグラフである。左上のパネルは、このアッセイにおいてマウスIL-12は活性であることを示す(陽性対照)。左下のパネル及び右下のパネルはそれぞれ、未切断型(四角)及び切断型(三角)の活性を示す。各々のEC50値を挿入表、右上のパネルに示す。
図13-2】HEKBlueレポーターアッセイにおいて、切断されたIL-12ポリペプチドは活性であることを示す一連のグラフである。左上のパネルは、このアッセイにおいてマウスIL-12は活性であることを示す(陽性対照)。左下のパネル及び右下のパネルはそれぞれ、未切断型(四角)及び切断型(三角)の活性を示す。各々のEC50値を挿入表、右上のパネルに示す。
図147.5μgのACP11(四角)、175μgのACP31(三角)、525μgのACP31(丸)、ならびに対照としての2μgのACP04(破線、三角)及び10μgのACP04(破線、菱形)で処置したマウスにおける経時的な腫瘍体積を示す。ビヒクル単体は大きい白丸で示される。データは、ACP11及びACP04(ヒトp40/マウスp35 IL12融合タンパク質)で処置したいずれのマウスにおいても腫瘍体積が用量依存的に経時的に減少することを示す。
図15】ビヒクル単体(上段左)、2μgのACP04(上段中央)、10μgのACP04(上段右)、17.5μgのACP11(下段左)、175μgのACP11(下段中央)、及び525μgのACP11(下段右)で処置した各マウスのマウス異種移植腫瘍モデルにおける経時的な腫瘍体積を示す一連のスパゲッティプロットである。各線は1匹のマウスを表す。
図16】プロテアーゼで切断可能な融合タンパク質の例示として使用するTriTacポリペプチドの特性を示す。
図17】プロテアーゼで切断可能な融合タンパク質の例示として使用するTriTacポリペプチドの特性を示す。
図18】プロテアーゼで切断可能な融合タンパク質の例示として使用するTriTacポリペプチドの特性を示す。
図19】プロテアーゼで切断可能な融合タンパク質の例示として使用するTriTacポリペプチドの特性を示す。
図20】プロテアーゼで切断可能な融合タンパク質の例示として使用するTriTacポリペプチドの特性を示す。
図21プロテアーゼで切断可能な融合タンパク質の例示として使用するTriT acポリペプチドの特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書では、誘導性IL-12を含む構成体を操作し使用するための方法及び組成物を開示する。IL-12は強力な免疫アゴニストであり、そのため、サイトカインが腫瘍学の有望な治療剤とみなされるようになる。しかしながら、IL-12及び他のサイトカインは治療域が非常に狭いことが証明された。IL-12等のサイトカインは血清中半減期が短く、また極めて強力であると考えられている。結果として、サイトカインの治療的投与により望ましくない全身性の作用及び毒性が生じる。これらは、サイトカイン作用が意図される部位(例えば、腫瘍)で所望のサイトカインレベルを達成するために大量のサイトカインを投与する必要性により悪化した。残念なことに、サイトカインの生物学、及びそれらの活性を効果的に標的とし、制御できないために、サイトカインでは、腫瘍の治療において期待される臨床的利点は達成されなかった。
【0021】
本明細書では、腫瘍学におけるIL-12の臨床用途を厳しく制限していた毒性及び短い半減期という問題を克服する融合タンパク質を開示する。融合タンパク質は、受容体アゴニスト活性を有するIL-12ポリペプチドを含有する。しかし、融合タンパク質との関連においては、IL-12受容体アゴニスト活性は減弱され、循環血中半減期は延長される。融合タンパク質にはプロテアーゼ切断部位が含まれ、これらは、IL-12活性の所望の部位(例えば、腫瘍)に関連するプロテアーゼによって切断され、所望の活性の部位において典型的には濃縮されるかまたは選択的に存在する。したがって、融合タンパク質は、優先的(または選択的)かつ効率的に活性の所望の部位で切断して、サイトカイン活性を活性の所望の部位、例えば、腫瘍微小環境等に実質的に制限する。腫瘍微小環境内等、活性の所望の部位でのプロテアーゼによる切断により、融合タンパク質よりもIL-12受容体アゴニストとしてはるかに活性な(典型的には融合タンパク質よりも少なくとも約100倍活性である)融合タンパク質から、ある形態のIL-12を遊離させる。融合タンパク質の切断時に遊離するIL-12の形態は典型的には半減期が短く、天然に存在するIL-12の半減期と実質的に同様であることが多く、IL-12サイトカイン活性を腫瘍微小環境にさらに制限する。融合タンパク質の半減期は延長されるが、循環融合タンパク質は減弱されており、活性サイトカインが腫瘍微小環境に指向されるため、毒性は劇的に低減または排除される。本明細書に記載される融合タンパク質は、初めて、サイトカインの活性を実質的に腫瘍微小環境に制限し、サイトカインの望ましくない全身性の作用及び毒性を劇的に低減または排除する、腫瘍を治療する有効治療量のサイトカインの投与を可能にする。
【0022】
特別に定義しない限り、本明細書で使用される技術用語、表記法及び他の科学用語はいずれも、本発明が関連する当業者により共通して理解される意味を持つことが意図される。場合によっては、共通して理解される意味を持つ用語は、分かりやすくするため、及び/またはすぐに参照できるようにするために本明細書で定義され、そのような定義を本明細書に含めることは、必ずしも当該技術分野で一般に理解されるものとの相違を表すものではないと解釈されるべきである。本明細書で記載または参照される技術及び手順は、一般によく理解されており、当業者による従来の方法論、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 4th ed.(2012) Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYに記載されている、広く利用されている分子クローニング方法論等を使用して一般的に使用される。必要に応じて、市販のキット及び試薬の使用を伴う手順は一般に、特に断りのない限り、製造者が定義するプロトコル及び条件に従って行われる。
【0023】
「サイトカイン」は、特に免疫系の細胞によって分泌され、免疫系の調節因子である一群の免疫調節タンパク質(インターロイキンまたはインターフェロン等)のいずれかを指す周知の技術用語である。本明細書に開示される融合タンパク質で使用できるサイトカインポリペプチドとしては、TGF-α及びTGF-β(例えば、TGFベータ1、TGFベータ2、TGFベータ3)等のトランスフォーミング増殖因子;インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターフェロン-カッパ及びインターフェロン-オメガ等のインターフェロン;IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-21及びIL-25等のインターロイキン;腫瘍壊死因子アルファ及びリンホトキシン等の腫瘍壊死因子;ケモカイン(例えば、C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)、CCL19、CCL20、CCL21)、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CS)、ならびにサイトカインの同族受容体を活性化するようなポリペプチドの断片(すなわち、前述のものの機能的断片)が挙げられるが、これらに限定されない。「ケモカイン」は、応答性細胞近傍へ向けられる走化性を誘導する能力のある小さなサイトカインのファミリーのいずれかを指す技術用語である。
【0024】
サイトカインは血清中半減期が短く、わずか数分である場合が多いことが周知である。血清中半減期を延長することを意図した改変アミノ酸配列を有するが受容体アゴニスト活性は保持するサイトカインの形態でさえも、典型的には血清中半減期が短い。本明細書で使用する場合、「半減期が短いサイトカイン」とは、対象の血清中を循環する半減期が実質的に短時間である、例えば、血清中半減期が10分未満、15分未満、30分未満、60分未満、90分未満、120分未満、240分未満、または480分未満であるサイトカインを指す。本明細書で使用する場合、半減期の短いサイトカインには、対象の体内で通常よりも長い半減期を達成するように、その配列が修飾されていないサイトカイン、及び血清中半減期を延長することを意図した改変アミノ酸配列を有するが、受容体アゴニスト活性は保持するポリペプチドが含まれる。この後者の場合、異種タンパク質ドメイン、例えば、真正な半減期延長要素、例えば、血清アルブミン等の付加を含めることを意図しない。典型的には、IL-12ポリペプチド等の短い半減期サイトカインポリペプチドは、天然に存在するIL-12に匹敵する血清中半減期を有し、例えば、天然に存在するIL-12の5倍、4倍、3倍または2倍以内である。
【0025】
「ソルターゼ」は、標的とするタンパク質もしくはペプチドに包埋されているかまたはその末端に結合しているカルボキシル末端の局在化シグナルを認識して切断することによってタンパク質を修飾するペプチド転移酵素である。ソルターゼAは、標的タンパク質上のThr残基とGly残基の間のLPXTGモチーフ(配列番号80)(Xは、任意の標準アミノ酸)の切断を触媒し、Thr残基が酵素上の活性部位であるCys残基に一過性に結合し、酵素-チオアシル中間体を形成する。ペプチド転移を完了させ、ペプチド-単量体複合体を作るために、N末端求核基、典型的にはオリゴグリシンモチーフを有する生体分子は中間体を攻撃し、ソルターゼAを置換して2つの分子を連結する。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「立体遮断物質」とは、サイトカインポリペプチドに、例えば、キメラポリペプチド(融合タンパク質)等の形態で、リンカー等の他の部分を介して共有結合で直接または間接的に結合させることができるが、それ以外の場合にはそのサイトカインポリペプチドには共有結合で結合しないポリペプチドまたはポリペプチド部分を指す。立体遮断物質は、サイトカインポリペプチドに非共有結合的に、例えば、静電結合、疎水結合、イオン結合または水素結合を介して結合することができる。立体遮断物質は、典型的には、それがサイトカイン部分に近接していること及び同等のサイズであることによりサイトカイン部分の活性を阻害するかまたは遮断する。
【0027】
本明細書で使用及び記載される場合、「半減期延長要素」は、例えば、そのサイズ(例えば、腎臓ろ過カットオフ値を上回るよう)、形状、流体力学的半径、電荷を改変するか、または吸収、生体内分布、代謝、及び消失というパラメータを改変することによって、血清中半減期を延長させ、かつpKを改善するキメラポリペプチドの一部である。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「活性化可能な」、「活性化する」、「誘導する」、及び「誘導性」とは、タンパク質、すなわち、融合タンパク質の一部であるサイトカインが、融合タンパク質からの追加要素の切断時に自身の受容体と結合して活性を実現する能力を指す。
【0029】
本明細書で使用する場合、「プラスミド」または「ウイルスベクター」は、開示の核酸を分解されない状態で細胞に輸送し、かつ、送達先の細胞に核酸分子及び/またはポリペプチドの発現をもたらすプロモーターを含む、物質である。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、または「タンパク質」は、ペプチド結合によって連結される2つ以上のアミノ酸を意味するために広く使用される。タンパク質、ペプチド、及びポリペプチドはまた、本明細書ではアミノ酸配列を指すために同じ意味で使用される。本明細書では、分子を構成するアミノ酸の特定のサイズまたは数を示唆するためにはポリペプチドという用語は使用されないこと、本発明のペプチドは最大で数個からそれ以上のアミノ酸残基を含有することができることを認識されるべきである。
【0031】
全体を通して使用する場合、「対象」は、脊椎動物、より具体的には、哺乳類(例えば、ヒト、ウマ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、マウス、ウサギ、ラット、及びモルモット)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、及び他の任意の動物であり得る。かかる用語は特定の年齢または性別を意味しない。したがって、雌雄を問わず、成体及び新生の対象が包含されることが意図される。
【0032】
本明細書で使用する場合、「患者」または「対象」は、同じ意味で使用されてよく、疾患または障害(例えば、がん)を有する対象を指し得る。患者または対象という用語には、ヒト対象及び獣医学の対象が含まれる。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「治療」、「治療する」、または「治療すること」とは、疾患もしくは状態の影響またはその疾患もしくは状態の症状を低減する方法を指す。したがって、開示の方法では、治療は、確立された疾患もしくは状態またはその疾患もしくは状態の症状の重症度における、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または実質的に完全な低減を指し得る。例えば、疾患を治療するための方法は、対象の疾患の1つ以上の症状において、対照と比較して10%の低減がある場合、治療とみなされる。したがって、低減は、天然または対照でのレベルと比較して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、または10%~100%の間の任意の低減率であり得る。治療は必ずしも疾患、状態、またはその疾患もしくは状態の症状の治癒または完全な除去を指すものではないと理解される。
【0034】
本明細書で使用する場合、疾患または障害について「予防する」、「予防すること」、及び「予防」という用語は、行為、例えば、対象がその疾患または障害の1つ以上の症状を示し始める前、またはそれとほぼ同時に行われる、キメラポリペプチドまたはキメラポリペプチドをコードする核酸配列の投与等であって、その疾患もしくは障害の1つ以上の症状の発症または増悪を阻害するかまたは遅らせる行為を指す。
【0035】
本明細書で使用する場合、「減少すること」、「低減すること」、または「阻害すること」への言及には、適切な対照のレベルと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%またはそれより大きい変化が含まれる。そのような用語には、機能または特性、例えば、アゴニスト活性等の完全な消失が含まれ得るが、必ずしも含まれるわけではない。
【0036】
「減弱されたサイトカイン受容体アゴニスト」は、そのサイトカイン受容体の天然に存在するアゴニストと比較して受容体アゴニスト活性が低下しているサイトカイン受容体アゴニストである。減弱されたサイトカインアゴニストは、その受容体の天然に存在するアゴニストと比較して、少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約250倍、少なくとも約500倍、少なくとも約1000倍またはそれより低いアゴニスト活性を有してよい。本明細書に記載のサイトカインポリペプチドを含有する融合タンパク質が「減弱された」または「減弱された活性」を有すると記載されている場合、その融合タンパク質は、減弱されたサイトカイン受容体アゴニストであることを意味する。
【0037】
「無傷の融合タンパク質」は、例えば、プロテアーゼによる切断等によって除去されているドメインがない融合タンパク質である。ドメインはプロテアーゼによる切断または他の酵素活性によって除去可能であり得るが、融合タンパク質が「無傷」の場合は、これは起こっていない。
【0038】
本明細書で使用する場合、「部分」とは、分子の一部分であって、その分子内部で別個の機能を有し、別の分子の状況においてその機能がその部分によって実行され得るものを指す。部分は、特定の機能を有する化学物質であるか、または特定の機能を有する生物学的分子の一部分であってよい。例えば、融合タンパク質内部の「遮断部分」は、融合ポリペプチドの一部またはすべての活性を遮断することができる、融合タンパク質の一部分である。これは、血清アルブミン等のタンパク質ドメインであってよい。
【0039】
一般に、サイトカインの治療的使用は、その全身毒性により強く制限される。例えば、TNFは当初、それが一部の腫瘍の出血性壊死を誘発する能力、及び様々な腫瘍株に対するインビトロでの細胞毒性作用について発見されたが、その後、強い炎症誘発性活性を有することが証明され、それが過剰産生状態になった場合、危険なほど人体に影響を及ぼす場合がある。全身毒性は、ヒトにおいて薬理学的に活性な量のサイトカインの使用に関連する根本的な問題であるため、このクラスの生物学的エフェクターの治療有効性を維持しつつ、その毒性作用を低減することを目的とした新規の誘導体及び治療的戦略が現在評価中である。
【0040】
インターロイキン-12(IL-12)は、別々にコードされた2つのサブユニット(p35及びp40)のジスルフィド結合ヘテロ二量体であり、それらは、共有結合で連結されていわゆる生物活性ヘテロ二量体の(p70)分子を生じさせる(Lieschke et al.,1997、Jana et al.,2014)。ヘテロ二量体(IL-12及びIL-23)の形成とは別に、p40サブユニットはまた、単量体(p40)として、及びホモ二量体(p40)としても分泌される。p35をp40サブユニットに接続するリンカーを用いた一本鎖としてのヘテロ二量体の合成により、ヘテロ二量体の完全な生物学的活性が保存されることは当該技術分野で公知である。IL-12は、感染に対する初期炎症反応、及び細胞性免疫に有利なTh1細胞の発生において重要な役割を果たす。IL-12の過剰産生は、それが、いくつかの自己免疫性炎症性疾患(例えば、MS、関節炎、1型糖尿病)の病因に関与しているため、宿主にとって危険であり得ることがわかっている。
【0041】
IL-12受容体(IL-12R)は、活性化T細胞及びナチュラルキラー細胞の表面に発現するIL-12Rβ1鎖及びIL-12Rβ2鎖からなるヘテロ二量体複合体である(Trinchieri et al.,2003)。IL-12Rβ1鎖はIL-12p40サブユニットに結合するが、IL-12Rβ2と会合したIL-12p35は、細胞内シグナル伝達能力を付与する(Benson et al.,2011)。IL-12Rを介したシグナル伝達は、シグナル伝達物質及び転写(STAT)1、STAT3、STAT4、及びSTAT5の活性化因子をリン酸化し、活性化する、ヤヌスキナーゼ(Jak2)及びチロシンキナーゼ(Tyk2)のリン酸化を誘導する。IL-12の細胞への特定の作用は主にSTAT4の活性化によるものである。IL-12は、Th1表現型へのCD4+ T細胞の分化等、IL-12の炎症誘発性活性の多くを媒介するサイトカイン、特にインターフェロン(IFN)γを産生するようナチュラルキラー及びT細胞を誘導する(Montepaone et al.,2014)。
【0042】
IL-12は多面的サイトカインであり、その作用により自然免疫と適応免疫の間の相互接続が形成される。IL-12は最初、PMAで誘導されたEBV形質転換B細胞株から分泌される因子として記載された。その作用に基づき、IL-12は、細胞傷害性リンパ球成熟因子及びナチュラルキラー細胞刺激性因子であるとされている。自然免疫と適応免疫との橋渡しをすること、及び自然の抗がん防御機構を統合するサイトカインであるIFNγの産生を強力に刺激することから、IL-12はヒトでの腫瘍免疫療法の理想的候補と思われた。しかしながら、臨床研究におけるIL-12の全身投与に関連する重篤な副作用、及びこのサイトカインの治療指数が非常に狭いことにより、がん患者におけるこのサイトカインの使用に対する意気込みが著しく弱められた(Lasek et.al.,2014)。サイトカインの送達が腫瘍を標的とするIL-12療法に対する試みは、IL-12療法に関するこれまでの問題のいくつかを軽減する可能性があり、現在、それらによるがんの臨床試験が行われている。
【0043】
本発明は、直接的なIL-12療法及び他のサイトカインを使用する療法の欠点に対処するよう設計されており、例えば、サイトカイン遮断部分、例えば、立体遮断ポリペプチド、血清中半減期延長ポリペプチド、標的指向性ポリペプチド、プロテアーゼ切断可能リンカー等の連結ポリペプチド、及びその組み合わせ等を使用する。サイトカインは、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21 IL-23)、インターフェロン(IFNアルファ、IFNベータ及びIFNガンマ等のIFN)、腫瘍壊死因子(例えば、TNFアルファ、リンホトキシン)、トランスフォーミング増殖因子(例えば、TGFベータ1、TGFベータ2、TGFベータ3)、ケモカイン(C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)、CCL19、CCL20、CCL21)、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CS)を含め、患者に投与した場合に極めて強力である。本明細書で使用する場合、「ケモカイン」は、応答性細胞近傍へ向けられる走化性を誘導する能力のある小さなサイトカインのファミリーを意味する。サイトカインは、強力な治療法を提供できるが、臨床的に管理が困難な望ましくない作用を伴い、これによりサイトカインの臨床用途が制限されている。本開示は、望ましくない作用が低減または排除された、患者で使用することができる新しい形態のサイトカインに関する。特に、本開示は、キメラポリペプチド(融合タンパク質)が含まれる医薬組成物、融合タンパク質をコードする核酸、及び対応するサイトカインと比較してサイトカイン受容体活性化活性が低下しているサイトカインまたはサイトカインの活性断片もしくは変異タンパク質を含有する前述の医薬製剤に関する。ただし、選択された条件下または選択された生物学的環境では、キメラポリペプチドはそれらの同族受容体を活性化し、しばしば、対応する天然に存在するサイトカインと同じかまたはそれより高い効力を有する。本明細書に記載されるように、これは、典型的には、サイトカイン、その活性断片もしくは変異タンパク質の受容体活性化機能を遮断または阻害するサイトカイン遮断部分を、サイトカイン活性の所望の部位(例えば、炎症部位または腫瘍)に存在する条件等の選択された条件下ではなく一般的な条件下で使用して達成される。
【0044】
キメラポリペプチド及びキメラポリペプチドをコードする核酸は、任意の適切な方法を使用して作製することができる。例えば、キメラポリペプチドをコードする核酸は、組換えDNA技術、合成化学、またはこれらの技術の組み合わせを使用して作製され得、そしてCHO細胞等の適切な発現系において発現され得る。キメラポリペプチドは同様に、例えば、合成または半合成の化学技術等を使用した、適切な核酸の発現によって作製することができる。いくつかの実施形態では、遮断部分は、ソルターゼ媒介性の結合を介してサイトカインポリペプチドに結合させることができる。「ソルターゼ」は、標的とするタンパク質もしくはペプチドに包埋されているかまたはその末端に結合しているカルボキシル末端の局在化シグナルを認識して切断することによってタンパク質を修飾するペプチド転移酵素である。ソルターゼAは、標的タンパク質上のThr残基とGly残基の間のLPXTGモチーフ(配列番号80)(Xは、任意の標準アミノ酸)の切断を触媒し、Thr残基が酵素上の活性部位であるCys残基に一過性に結合し、酵素-チオアシル中間体を形成する。ペプチド転移を完了させ、ペプチド-単量体複合体を作るために、N末端求核基、典型的にはオリゴグリシンモチーフを有する生体分子は中間体を攻撃し、ソルターゼAを置換して2つの分子を連結する。
【0045】
サイトカイン遮断部分融合タンパク質を形成するために、サイトカインポリペプチドは、最初に、N末端にてポリグリシン配列でタグ付けされるか、または別法として、C末端にてLPXTGモチーフ(配列番号80)でタグ付けされる。遮断部分または他の要素にはそれぞれにペプチドが結合され、タグ付きポリペプチド用のアクセプター部位として機能する。自身のN末端を介して結合しているLPXTG(配列番号80)アクセプターペプチドを保持するドメインへの結合の場合、ポリペプチドは、N末端のポリグリシンストレッチでタグ付けされる。自身のC末端を介して結合しているポリグリシンペプチドを保持するドメインへの結合の場合、ポリペプチドは、そのC末端にてLPXTG(配列番号80)ソルターゼ認識配列でタグ付けされる。ソルターゼは、ポリグリシン配列及びLPXTG(配列番号80)配列を認識すると、ポリマーのペプチドとタグ付きポリペプチドとの間にペプチド結合を形成する。ソルターゼの反応は、グリシン残基を中間体として切り離し、これは室温で起こる。
【0046】
様々な機構を利用して、遮断部分により生じる阻害を除去または低減することができる。例えば、医薬組成物には、IL-12ポリペプチド、ならびに遮断部分、例えば、立体遮断部分等とともに、IL-12ポリペプチドとサイトカイン遮断部分との間またはサイトカイン遮断部分内部に位置するプロテアーゼ切断部位を含むプロテアーゼ切断可能リンカーが含まれ得る。プロテアーゼ切断部位が切断されると、遮断部分はサイトカインから解離することができ、次いで、サイトカインが、サイトカイン受容体を活性化することができる。
【0047】
任意の適切なリンカーを使用することができる。例えば、リンカーは、グリシン-グリシン、ソルターゼ認識モチーフ、またはソルターゼ認識モチーフとペプチド配列(GlySer)(配列番号81)もしくは(GlySer)(配列番号82)(ここで、nは、1、2、3、4または5)を含むことができる。典型的には、ソルターゼ認識モチーフは、ペプチド配列LPXTG(配列番号80)を含み、ここで、Xは任意のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、共有結合は、サイトカインポリペプチドのC末端に結合している反応性リジン残基と、遮断物質または他のドメインのN末端に結合している反応性アスパラギン酸との間にある。他の実施形態では、共有結合は、サイトカインポリペプチドのN末端に結合している反応性アスパラギン酸残基と、前記遮断物質または他のドメインのC末端に結合している反応性リジン残基との間にある。
【0048】
したがって、本明細書に詳述されるように、使用したサイトカイン遮断部分(IL-12遮断部分)は立体遮断物質であり得る。本明細書で使用する場合、「立体遮断物質」とは、サイトカインポリペプチドに、例えば、キメラポリペプチド(融合タンパク質)等の形態で、リンカー等の他の部分を介して共有結合で直接または間接的に結合させることができるが、それ以外の場合にはそのサイトカインポリペプチドには共有結合で結合しないポリペプチドまたはポリペプチド部分を指す。立体遮断物質は、サイトカインポリペプチドに非共有結合的に、例えば、静電結合、疎水結合、イオン結合または水素結合を介して結合することができる。立体遮断物質は、典型的には、それがサイトカイン部分に近接していること及び同等のサイズであることによりサイトカイン部分の活性を阻害するかまたは遮断する。サイトカイン部分の立体阻害は、立体遮断物質からサイトカイン部分を空間的に分離することによって、例えば、立体遮断物質とサイトカインポリペプチドとを含有する融合タンパク質を、立体遮断物質とサイトカインポリペプチドの間の部位で酵素により切断することによって取り除くことができる。
【0049】
本明細書でさらに詳述されるように、遮断機能は、医薬組成物中の追加の機能的成分、例えば、標的指向性ドメイン、血清中半減期延長要素、及びプロテアーゼ切断可能連結ポリペプチド等との組み合わせであっても、またそれらが存在することによるものであってもよい。例えば、血清中半減期延長ポリペプチドは立体遮断物質でもあり得る。
【0050】
様々な要素により、所望のIL-12活性の部位に優先的にIL-12の送達と活性を保証し、血清中半減期延長戦略に優先的に連結させた遮断及び/または標的指向戦略を介してインターロイキンへの全身曝露を厳しく制限する。この血清中半減期延長戦略では、遮断型のインターロイキンは、長時間(好ましくは1~2週間またはそれ以上)循環するが、活性化型はインターロイキンの典型的な血清中半減期を有する。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態では、半減期延長要素は、リンカーを介してインターロイキンに連結され、作用部位で切断(例えば、炎症特異的または腫瘍特異的なプロテアーゼによって)されて、所望の部位でインターロイキンの完全な活性を遊離し、また、それを非切断型半減期延長から分離させる。そのような実施形態では、完全に活性な遊離インターロイキンは、非常に異なる薬物動態(pK)特性を有し、半減期は数週間ではなく数時間である。さらに、活性サイトカインへの曝露は、所望のサイトカイン活性の部位(例えば、炎症部位または腫瘍)に限定され、活性サイトカインへの全身曝露、ならびに関連する毒性及び副作用が低減される。
【0052】
以下に詳述される遮断部分はまた、1つ以上の受容体への結合または活性化を促進するためにも使用することができる。この遮断は、特定の環境における遮断部分の除去によって、例えば、1つ以上の遮断部分をサイトカインに連結するリンカーのタンパク質分解性切断によって軽減され得る。
【0053】
別の態様では、他のサイトカインを、例えば、がん治療用等、特に免疫刺激薬としての使用について改善するために適用することができる。例えば、この態様では、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21 IL-23、IFNアルファ、IFNベータ及びIFNガンマ、TNFアルファ、リンホトキシン、TGFベータ1、TGFベータ2、TGFベータ3 GM-CSF、CXCL10、CCL19、CCL20、及びCCL21等の薬物動態及び/または薬力学は、エフェクター細胞(例えば、エフェクトT細胞、NK細胞)及び/または細胞傷害性免疫応答促進細胞を、腫瘍内等所望の活性の部位にて、好ましくは全身性ではなく、最大限に活性化させる(例えば、樹状細胞の成熟を誘導する)よう調整することができる。
【0054】
したがって、本明細書では、少なくとも1つのサイトカインポリペプチド、例えば、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、IL-23)、インターフェロン(IFNアルファ、IFNベータ及びIFNガンマ等のIFN)、腫瘍壊死因子(例えば、TNFアルファ、リンホトキシン)、トランスフォーミング増殖因子(例えば、TGFベータ1、TGFベータ2、TGFベータ3)、ケモカイン(例えば、CXCL10、CCL19、CCL20、CCL21)及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CS)等、または前述のうちのいずれかの機能的断片もしくは変異タンパク質を含む、医薬組成物が提供される。ポリペプチドには、典型的には、少なくとも1つのリンカーアミノ酸配列も含まれ、アミノ酸配列は、特定の実施形態では、内在性プロテアーゼによる切断を受けることができる。一実施形態では、リンカーは、HSSKLQ(配列番号24)、GPLGVRG(配列番号83)、IPVSLRSG(配列番号84)、VPLSLYSG(配列番号85)、またはSGESPAYYTA(配列番号86)を含むアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、キメラポリペプチドはさらに、インターロイキンポリペプチドの活性を遮断することができる遮断部分、例えば、立体遮断ポリペプチド部分等を含有する。遮断部分は、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)結合ドメインまたは任意選択で分岐もしくはマルチアーム型のポリエチレングリコール(PEG)を含むことができる。別法として、医薬組成物は、第1のサイトカインポリペプチドまたはその断片、及び遮断部分、例えば、立体遮断ポリペプチド部分を含み、遮断部分は、サイトカイン受容体上でサイトカインポリペプチドの活性を遮断し、特定の実施形態では、遮断部分はプロテアーゼ切断可能ドメインを含む。いくつかの実施形態では、サイトカイン活性の遮断及び低減は、非常に短いリンカーを用いてインターロイキンドメインのN末端またはC末端に追加ドメインを結合させることにより簡単に達成される。そのような実施形態では、遮断は、遮断部分、または遮断物質をインターロイキンに繋ぎ止める短いリンカーが、プロテアーゼにより消化されることにより軽減されることが予測される。一旦ドメインが切り取られるかまたは遊離されると、サイトカイン活性の遮断を達成することはできなくなる。
【0055】
医薬組成物、例えば、キメラポリペプチドは、2つ以上のサイトカインを含むことができ、それらは、同一サイトカインポリペプチドでも異なるサイトカインポリペプチドでもあり得る。例えば、2つ以上の異なる種類のサイトカインは補完的機能を有する。いくつかの例では、第1のサイトカインはIL-12であり、第2のサイトカインはIL-2である。いくつかの実施形態では、2つ以上の異なる種類のサイトカインポリペプチドの各々は、他のサイトカインポリペプチドの活性を調節する活性を有する。2つのサイトカインポリペプチドを含有するキメラポリペプチドのいくつかの例では、第1のサイトカインポリペプチドはT細胞活性化であり、第2のサイトカインポリペプチドは非T細胞活性化である。2つのサイトカインポリペプチドを含有するキメラポリペプチドのいくつかの例では、第1のサイトカインは化学誘引物質、例えば、CXCL10であり、第2のサイトカインは免疫細胞活性化因子である。
【0056】
好ましくは、本明細書に開示の融合タンパク質に含まれるIL-12ポリペプチド(機能的断片を含む)は、受容体結合の親和性及び特異性または血清中半減期等、天然に存在するサイトカインの特性を改変するよう変異または操作されない。ただし、天然に存在する(野生型を含む)サイトカインからのアミノ酸配列の変化は、例えば、クローニングを容易にするため、及び所望の発現レベルを達成するために許容される。
【0057】
遮断部分
遮断部分は、サイトカインがその受容体と結合及び/または活性化する能力を阻害する任意の部分であり得る。遮断部分は、サイトカインがその受容体と結合及び/または活性化する能力を、立体的に遮断することによって、及び/またはサイトカインに共有結合で結合することによって阻害することができる。適切な遮断部分の例には、サイトカインの同族受容体の、完全長またはサイトカイン結合断片または変異タンパク質が含まれる。サイトカインと結合する、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体 一本鎖可変断片(scFv)、単一ドメイン抗体(重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)及びラクダ型ナノボディ(VHH)の可変ドメイン等)、dAb等のような、抗体及びその断片を使用することもできる。サイトカインと結合する他の適切な抗原結合ドメインを使用することもでき、これには、抗体の結合及び/または構造を模倣する非免疫グロブリンタンパク質、例えば、アンチカリン、アフィリン、アフィボディ分子、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アビマー、DARPin、フィノマー(fynomer)、クニッツドメインペプチド、モノボディ、ならびにSpA、GroEL、フィブロネクチン、リポカリン及びCTLA4といった足場等の他の操作された足場に基づく結合ドメイン等が含まれる。適切な遮断ポリペプチドのさらなる例には、サイトカインのその同族受容体への結合を立体的に阻害または遮断するポリペプチドが含まれる。有利なことに、そのような部分はまた、半減期延長要素としても機能する。例えば、PEG等の水溶性ポリマーへの結合により修飾されているペプチドは、サイトカインのその受容体への結合を立体的に阻害または防止することができる。血清アルブミン(ヒト血清アルブミン)、免疫グロブリンFc、トランスフェリン等、ならびにそのようなポリペプチドの断片及び変異タンパク質等、血清中半減期が長いポリペプチドまたはその断片を使用することもできる。例えば、HSA、免疫グロブリンまたはトランスフェリン等の血清中半減期の長いタンパク質に結合するか、またはFcRnもしくはトランスフェリン受容体のような形質膜に再利用される受容体に結合する抗体及び抗原結合ドメインはまた、特にそれらの抗原に結合した場合に、サイトカインを阻害することができる。そのような抗原結合ポリペプチドの例には、一本鎖可変断片(scFv)、単一ドメイン抗体(重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)及びラクダ型ナノボディ(VHH)の可変ドメイン等)、dAb等が含まれる。サイトカインと結合する他の適切な抗原結合ドメインを使用することもでき、これには、抗体の結合及び/または構造を模倣する非免疫グロブリンタンパク質、例えば、アンチカリン、アフィリン、アフィボディ分子、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アビマー、DARPin、フィノマー(fynomer)、クニッツドメインペプチド、モノボディ、ならびにSpA、GroEL、フィブロネクチン、リポカリン及びCTLA4といった足場等の他の操作された足場に基づく結合ドメイン等が含まれる。
【0058】
例示的な例では、IL-12がキメラポリペプチド内のサイトカインである場合、遮断部分は、IL-12受容体(IL-12Rβ1)またはベータ(IL-12Rβ2)の第1の分子の完全長または断片もしくは変異タンパク質、抗IL-2単一ドメイン抗体(dAb)もしくはscFv、抗IL-12Rβ1抗体もしくはその断片、抗IL-12Rβ2抗体もしくはその断片、及び抗HSA dAbもしくはscFv等であり得る。
【0059】
本発明のさらなる態様
1.非CDRループと切断可能なリンカーとを含む結合部分に、機能的に連結されているサイトカイン部分を含む融合タンパク質であって、前記結合部分は、前記サイトカインのその受容体への結合及び/または前記サイトカインによる前記受容体の活性化をマスキングすることができる、前記融合タンパク質。
【0060】
2.前記結合部分は、天然ペプチド、合成ペプチド、操作された足場、または操作されたバルク血清タンパク質である、態様1に記載の融合タンパク質。
【0061】
3.前記操作された足場は、sdAb、scFv、Fab、VHH、フィブロネクチンIII型ドメイン、免疫グロブリン様足場、DARPin、シスチンノットペプチド、リポカリン、3ヘリックスバンドル足場、プロテインG関連アルブミン結合モジュール、またはDNAもしくはRNAアプタマー足場を含む、態様1または2に記載の融合タンパク質。
【0062】
4.前記結合部分は、バルク血清タンパク質に結合することができる、態様1~2のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0063】
5.前記非CDRループは、可変ドメイン、定常ドメイン、C1セットドメイン、C2セットドメイン、Iドメイン、またはその任意の組み合わせに由来する、態様1~3のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0064】
6.前記結合部分はさらに、相補性決定領域(CDR)を含む、態様1~4のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0065】
7.前記結合部分は、前記バルク血清タンパク質に結合することができる、態様5に記載の融合タンパク質。
【0066】
8.前記バルク血清タンパク質は半減期延長タンパク質である、態様6に記載の融合タンパク質。
【0067】
9.前記バルク血清タンパク質は、アルブミン、トランスフェリン、第XIII因子、またはフィブリノゲンである、態様6または7に記載の融合タンパク質。
【0068】
10.前記CDRループは、前記バルク血清タンパク質または前記免疫グロブリン軽鎖、またはその任意の組み合わせに対して特異的な結合部位を提供する、態様5~8のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0069】
11.前記切断可能なリンカーが切断部位を含む、態様1~9のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0070】
12.前記切断部位はプロテアーゼによって認識される、態様10に記載の融合タンパク質。
【0071】
13.前記結合部分は前記サイトカインに結合されている、態様11に記載の融合タンパク質。
【0072】
14.前記結合部分は、共有結合で前記サイトカインに連結されている、態様11または11に記載の融合タンパク質。
【0073】
15.前記結合部分は、前記結合部分と前記サイトカインの間の特異的な分子間相互作用を介して、前記サイトカインのその標的への結合をマスキングすることができる、態様11、11、または14に記載の融合タンパク質。
【0074】
16.前記非CDRループは、前記部分の前記サイトカインへの結合に対して特異的な結合部位を提供する、態様11~14のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0075】
17.前記切断可能なリンカーの切断時、前記結合部分は、前記サイトカインから分離され、前記サイトカインがその標的に結合する、態様11~15のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0076】
18.前記サイトカインはサイトカイン受容体に結合する、態様1~16のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0077】
19.前記サイトカイン受容体は、I型サイトカイン受容体、I型IL受容体、II型IL受容体、ケモカイン受容体、または腫瘍壊死受容体スーパーファミリー受容体を含む、態様17に記載の融合タンパク質。
【0078】
20.前記切断可能なリンカーは切断部位を含む、態様1~18のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0079】
21.前記切断部位はプロテアーゼによって認識される、態様20に記載の融合タンパク質。
【0080】
22.前記プロテアーゼ切断部位は、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、ゼラチナーゼ、またはアスパラギンペプチドリアーゼによって認識される、態様21に記載の融合タンパク質。
【0081】
23.前記プロテアーゼ切断部位は、カテプシンB、カテプシンC、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンK、カテプシンL、カリクレイン、hK1、hK10、hK15、プラスミン、コラゲナーゼ、IV型コラゲナーゼ、ストロメライシン、第Xa因子、キモトリプシン様プロテアーゼ、トリプシン様プロテアーゼ、エラスターゼ様プロテアーゼ、サブチリシン様プロテアーゼ、アクチニダイン、ブロメライン、カルパイン、カスパーゼ、カスパーゼ-3、Mir1-CP、パパイン、HIV-1プロテアーゼ、HSVプロテアーゼ、CMVプロテアーゼ、キモシン、レニン、ペプシン、マトリプターゼ、レグマイン、プラスメプシン、ネペンテシン、メタロエキソペプチダーゼ、メタロエンドペプチダーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、MMP1、MMP2、MMP3、MMP8、MMP9、MMP10、MMP11、MMP12、MMP13、MMP14、ADAM10、ADAM17、ADAM12、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、エンテロキナーゼ、前立腺特異標的(PSA、hK3)、インターロイキン-1β変換酵素、トロンビン、FAP(FAP-α)、ジペプチジルペプチダーゼ、またはジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV/CD26)、II型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TTSP)、好中球エラスターゼ、カテプシンG、プロテイナーゼ3、好中球セリンプロテアーゼ4、マスト細胞キマーゼ、マスト細胞トリプターゼ、ジペプチジルペプチダーゼ、及びジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV/CD26)によって認識される、態様21に記載の融合タンパク質。
【0082】
24.非CDRループ、サイトカイン、及び切断可能なリンカー(L)を含む結合部分(M)を含む、条件付きで活性な結合タンパク質であって、前記非CDRループは、前記サイトカインに結合することができ、前記結合部分は、前記サイトカインのその受容体への結合を阻害すること、及び/または前記サイトカインによる前記受容体の活性化を阻害することができる、前記条件付きで活性な結合タンパク質。
【0083】
25.前記結合部分は、半減期延長タンパク質に結合することができる、態様24に記載の条件付きで活性な結合タンパク質。
【0084】
26.前記結合部分は、天然ペプチド、合成ペプチド、操作された足場、または操作された血清バルクタンパク質である、態様24または25に記載の条件付きで活性な結合タンパク質。
【0085】
27.前記操作された足場は、sdAb、scFv、Fab、VHH、フィブロネクチンIII型ドメイン、免疫グロブリン様足場、DARPin、シスチンノットペプチド、リポカリン、3ヘリックスバンドル足場、プロテインG関連アルブミン結合モジュール、またはDNAもしくはRNAアプタマー足場を含む、態様26に記載の条件付きで活性な結合タンパク質。
【0086】
28.前記非CDRループは、可変ドメイン、定常ドメイン、C1セットドメイン、C2セットドメイン、Iドメイン、またはその任意の組み合わせに由来する、態様24~27のいずれか1つに記載の条件付きで活性な結合タンパク質。
【0087】
29.前記結合部分はさらに、相補性決定領域(CDR)を含む、態様24~28のいずれか1つに記載の条件付きで活性な結合タンパク質。
【0088】
30.前記結合部分は、バルク血清タンパク質に対して特異的な結合部位を含む、態様24~29のいずれか1つに記載の条件付きで活性な結合タンパク質。
【0089】
31.前記バルク血清タンパク質は、アルブミン、トランスフェリン、第XIII因子、またはフィブリノゲンである、態様30に記載の条件付きで活性な結合タンパク質。
【0090】
32.前記CDRは、前記バルク血清タンパク質または免疫グロブリン軽鎖、またはその任意の組み合わせに対して特異的な結合部位を提供する、態様29~31のいずれか1つに記載の条件付きで活性な結合タンパク質。
【0091】
33.前記結合部分は、前記結合部分と前記サイトカインの間の特異的な分子間相互作用を介して、前記サイトカインのその標的への結合をマスキングすることができる、態様29~32のいずれか1つに記載の条件付きで活性な結合タンパク質。
【0092】
34.前記非CDRループは、前記結合部分の前記サイトカインへの結合に対して特異的な結合部位を提供する、態様29~33のいずれか1つに記載の条件付きで活性な結合タンパク質。
【0093】
35.前記サイトカインはサイトカイン受容体に結合する、態様24~34のいずれか1つに記載の条件付きで活性な結合タンパク質。
【0094】
36.前記サイトカイン受容体は、I型サイトカイン受容体、I型IL受容体、II型IL受容体、ケモカイン受容体、または腫瘍壊死受容体スーパーファミリー受容体を含む、態様35に記載の条件付きで活性な結合タンパク質。
【0095】
37.前記切断可能なリンカーは切断部位を含む、態様24~36に記載の条件付きで活性な結合タンパク質。
【0096】
38.前記切断部位はプロテアーゼによって認識される、態様37に記載の条件付きで活性な結合タンパク質。
【0097】
39.前記プロテアーゼ切断部位は、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、ゼラチナーゼ、またはアスパラギンペプチドリアーゼによって認識される、態様38に記載の条件付きで活性な結合タンパク質。
【0098】
40.前記プロテアーゼ切断部位は、カテプシンB、カテプシンC、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンK、カテプシンL、カリクレイン、hK1、hK10、hK15、プラスミン、コラゲナーゼ、IV型コラゲナーゼ、ストロメライシン、第Xa因子、キモトリプシン様プロテアーゼ、トリプシン様プロテアーゼ、エラスターゼ様プロテアーゼ、サブチリシン様プロテアーゼ、アクチニダイン、ブロメライン、カルパイン、カスパーゼ、カスパーゼ-3、Mir1-CP、パパイン、HIV-1プロテアーゼ、HSVプロテアーゼ、CMVプロテアーゼ、キモシン、レニン、ペプシン、マトリプターゼ、レグマイン、プラスメプシン、ネペンテシン、メタロエキソペプチダーゼ、メタロエンドペプチダーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、MMP1、MMP2、MMP3、MMP8、MMP9、MMP10、MMP11、MMP12、MMP13、MMP14、ADAM10、ADAM17、ADAM12、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、エンテロキナーゼ、前立腺特異標的(PSA、hK3)、インターロイキン-1β変換酵素、トロンビン、FAP(FAP-α)、ジペプチジルペプチダーゼ、またはジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV/CD26)、II型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TTSP)、好中球エラスターゼ、カテプシンG、プロテイナーゼ3、好中球セリンプロテアーゼ4、マスト細胞キマーゼ、マスト細胞トリプターゼ、ジペプチジルペプチダーゼ、及びジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV/CD26)によって認識される、態様38に記載の条件付きで活性な結合タンパク質。
【0099】
41.前記結合部分に結合した半減期延長ドメインをさらに含み、ここで、前記半減期延長ドメインは、前記結合タンパク質に安全スイッチを提供し、前記リンカーの切断時、前記サイトカインからの前記結合部分と前記半減期延長ドメインの分離によって前記結合タンパク質が活性化され、それにより、前記結合タンパク質が前記安全スイッチから分離される、態様24に記載の条件付きで活性な結合タンパク質。
【0100】
42.前記リンカーの前記切断は腫瘍微小環境におけるものである、態様41に記載の条件付きで活性な結合タンパク質。
【0101】
43.結合部分内部の非CDRループを介してサイトカインに結合する前記結合部分を含む条件付きで活性な結合タンパク質であって、前記結合部分がさらに半減期延長ドメインに連結され、かつ切断可能なリンカーを含み、前記結合タンパク質は、前記リンカーの切断によるその活性化より前の半減期が延長されており、活性化時、前記結合部分及び前記半減期延長ドメインは前記サイトカインから分離され、前記結合タンパク質は、その活性化状態では、半減期が延長されていない、前記条件付きで活性な結合タンパク質。
【0102】
44.前記リンカーの前記切断は腫瘍微小環境におけるものである、態様43に記載の条件付きで活性な結合タンパク質。
【0103】
インビボ半減期延長要素
好ましくは、キメラポリペプチドは、インビボ半減期延長要素を含む。天然では半減期が短い治療用分子のインビボ半減期を増加させることにより、有効性を犠牲にすることなく、より許容できる管理可能な投与レジメンが可能になる。本明細書で使用する場合、「半減期延長要素」は、例えば、そのサイズ(例えば、腎臓ろ過カットオフ値を上回るよう)、形状、流体力学的半径、電荷を改変するか、または吸収、生体内分布、代謝、及び消失というパラメータを改変することによって、インビボ半減期を増加させ、pKを改善するキメラポリペプチドの一部である。ポリペプチドのpKを改善する例示的方法は、内皮細胞上のFcRn受容体及びトランスフェリン受容体等、リソソームで分解されるのではなく細胞の形質膜に再利用される受容体に結合するポリペプチド鎖の要素の発現によるものである。3種のタンパク質、例えば、ヒトIgG、HSA(または断片)、及びトランスフェリン等は、ヒト血清中では、そのサイズだけから予測されるよりはるかに長く存続し、これは、リソソームで分解されるのではなく再利用される受容体に対するそれらの結合能の作用である。これらのタンパク質、またはFcRn結合を保持するそれらの断片は、それらの血清中半減期を延長させるために他のポリペプチドに日常的に連結される。一実施形態では、半減期延長要素は、ヒト血清アルブミン(HSA)結合ドメインである。HSA(配列番号1)はまた、医薬組成物に直接結合させても短いリンカーを介して結合させてもよい。HSAの断片を使用してもよい。HSA及びその断片は、遮断部分としても半減期延長要素としても機能することができる。ヒトIgGもまた同様の機能を実行することができる。
【0104】
血清中半減期延長要素はまた、血清アルブミン、トランスフェリン等の血清中半減期の長いタンパク質に結合する抗原結合ポリペプチドでもあり得る。そのようなポリペプチドの例には、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体 一本鎖可変断片(scFv)、単一ドメイン抗体(重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)及びラクダ型ナノボディ(VHH)の可変ドメイン等)、dAb等のような、抗体及びその断片が含まれる。他の適切な抗原結合ドメインには、抗体の結合及び/または構造を模倣する非免疫グロブリンタンパク質、例えば、アンチカリン、アフィリン、アフィボディ分子、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アビマー、DARPin、フィノマー(fynomer)、クニッツドメインペプチド、モノボディ、ならびにSpA、GroEL、フィブロネクチン、リポカリン及びCTLA4といった足場等の他の操作された足場に基づく結合ドメイン等が含まれる。抗原結合ポリペプチドのさらなる例には、所望の受容体に対するリガンド、受容体のリガンド結合部分、レクチン、及び1つ以上の標的抗原に結合するかまたは会合するペプチドが含まれる。
【0105】
いくつかの好ましい血清中半減期延長要素は、相補性決定領域(CDR)、及び任意選択で非CDRループを含むポリペプチドである。有利なことに、そのような血清中半減期延長要素は、サイトカインの血清中半減期を延長させることができ、また、サイトカイン阻害物質として(例えば、立体遮断、非共有結合の相互作用またはそれらの組み合わせを介して)、及び/または標的指向性ドメインとしても機能する。場合によっては、血清中半減期延長要素は、免疫グロブリン分子(Ig分子)に由来するドメインであるか、あるいは抗体の構造及び/または結合活性を模倣する、操作されたタンパク質足場である。Igは、任意のクラスまたはサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM等)のものであってよい。Ig分子のポリペプチド鎖は、折り畳まれてループで連結された一連の平行なベータ鎖になる。可変領域では、ループのうちの3つが「相補性決定領域」(CDR)を構成し、分子の抗原結合特異性を決定する。IgG分子は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖、またはその抗原結合性断片を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)及び重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)及び軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は1つのドメインCLで構成される。VH及びVL領域はさらに、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に細分することができ、それらは、配列が超可変であり、及び/または抗原認識に関与し、及び/または通常構造的に定義されたループを形成し、より保存性の高いフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域が散在する。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端へ向かってFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4という順序で並んでいる。本開示のいくつかの実施形態では、FR1、FR2、FR3、及びFR4のアミノ酸配列の少なくとも一部またはすべては、本明細書に記載する結合部分の「非CDRループ」の一部である。図5に示すように、免疫グロブリン分子の可変ドメインは、2枚のシート状に並んだいくつかのベータ鎖を有する。免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の両方の可変ドメインは、3つの超可変ループ、または相補性決定領域(CDR)を含有する。Vドメインの3つのCDR(CDR1、CDR2、CDR3)がベータバレルの一端でクラスターを形成する。CDRは、免疫グロブリンフォールドのベータ鎖B-C、C’-C”、及びF-Gをつなぐループであるが、免疫グロブリンフォールドのベータ鎖AB、CC’、C”-D及びE-Fをつなぐ下部ループ、ならびに免疫グロブリンフォールドのD-E鎖をつなぐ上部ループは非CDRループである。本開示のいくつかの実施形態では、定常ドメイン、CH1、CH2、またはCH3の少なくともいくつかのアミノ酸残基は、本明細書に記載する結合部分の「非CDRループ」の一部である。非CDRループは、いくつかの実施形態では、IgまたはIg様分子のC1セットドメインのAB、CD、EF、及びDEループ;IgまたはIg様分子のC2セットドメインのAB、CC’、EF、FG、BC、及びEC’ループ;IgまたはIg様分子のI(中間体)セットドメインのDE、BD、GF、A(A1A2)B、及びEFループのうち1つ以上を含む。
【0106】
可変ドメイン内部では、CDRは抗原認識及び結合に関与すると考えられており、FR残基は、CDRの足場とみなされている。しかしながら、特定の場合には、FR残基のいくつかは抗原認識及び結合において重要な役割を果たす。Ag結合に影響を与えるフレームワーク領域の残基は、2つのカテゴリーに分けられる。1つ目は、抗原と接触するFR残基であり、そのため、それらは結合部位の一部であり、これらの残基のいくつかはCDRに並んで近接する。他の残基は、CDRから離れて並んでいるが、分子の3-D構造においては近接しており、例えば、重鎖のループである。血清中半減期延長ドメイン(例えば、CDRを含むドメイン)は、少なくとも1つの非CDRループを含むことができる。いくつかの実施形態では、非CDRループは、サイトカイン、バルク血清タンパク質または他の標的抗原に結合するための結合部位を提供する。
【0107】
血清中半減期延長要素は、CDRを含有することに加えて、または代替的に、非CDRループを含む。いくつかの実施形態では、非CDRループは、アルブミン等のバルク血清タンパク質等の所望の標的抗原に対して、またはサイトカイン部分もしくは他の標的とする抗原に対して特異的な抗原結合部位を生成するよう修飾される。非CDRループを修飾するために、様々な技術、例えば、部位特異的変異導入、ランダム変異誘発、非CDRループアミノ酸配列にとって外来性である少なくとも1つのアミノ酸の挿入、アミノ酸置換等を使用することができることが企図される。いくつかの例では、非CDRループに抗原ペプチドを挿入する。いくつかの例では、非CDRループを抗原ペプチドに置き換える。抗原結合部位を生成するための修飾は、場合によっては、1つの非CDRループにおいてのみである。他の場合には、2つ以上の非CDRループを修飾する。例えば、修飾は、図5に示される非CDRループ、すなわち、AB、CC’、C”D、EF、及びD-Eのいずれか1つにおいてである。場合によっては、修飾は、DEループ内である。他の場合では、修飾は、AB、CC’、C”-D、E-Fの4つのループすべてにおいてである。
【0108】
いくつかの例では、血清中半減期延長要素は二重結合特異性を有し、血清アルブミン等のバルク血清タンパク質と特異的に結合するCDR、及びサイトカインドメインと特異的に結合して遮断する非CDRループを含有する。他の例では、血清中半減期延長要素は、サイトカインドメインまたは他の標的抗原等の標的抗原と特異的に結合するCDR、及び血清アルブミン等のバルク血清タンパク質と特異的に結合する非CDRループを含有する。好ましくは、血清中半減期延長要素は、サイトカインドメインの同族のサイトカイン受容体への結合を、例えば、立体閉塞を介して、特異的分子間相互作用を介して、または両方の組み合わせで阻害する。
【0109】
いくつかの実施形態では、血清中半減期延長要素は、非共有結合でサイトカインと直接結合し、その活性を阻害する。
【0110】
特定の例では、結合部分は、AB、CC’、C”D、及びE-Fループのうちの1つ以上を介してサイトカインに結合し、BC、C’C”、及びFGループのうちの1つ以上を介してアルブミン等のバルク血清タンパク質に結合する。特定の例では、結合部分は、そのAB、CC’、C”D、またはEFループを介して、アルブミン等のバルク血清タンパク質に結合し、そのBC、C’C”、またはFGループを介してサイトカインに結合する。特定の例では、結合部分は、そのAB、CC’、C”D、及びEFループを介してアルブミン等のバルク血清タンパク質に結合し、そのBC、C’C”、及びFGループを介してサイトカインに結合されている。特定の例では、結合部分は、AB、CC’、C”D、及びE-Fループのうち1つ以上を介してアルブミン等のバルク血清タンパク質に結合し、BC、C’C”、及びFGループのうち1つ以上を介してサイトカインに結合する。
【0111】
結合部分は、任意の種類のポリペプチドである。例えば、場合によっては、結合部分は、天然ペプチド、合成ペプチド、またはフィブロネクチン足場、または操作されたバルク血清タンパク質である。バルク血清タンパク質は、例えば、アルブミン、フィブリノゲン、またはグロブリンを含む。いくつかの実施形態では、結合部分は操作された足場である。操作された足場は、例えば、sdAb、scFv、Fab、VHH、フィブロネクチンIII型ドメイン、免疫グロブリン様足場(Halaby et al.,1999.Prot Eng 12(7):563-571で示唆されるように)、DARPin、シスチンノットペプチド、リポカリン、3ヘリックスバンドル足場、プロテインG関連アルブミン結合モジュール、またはDNAもしくはRNAアプタマー足場を含む。
【0112】
場合によっては、血清中半減期延長要素は、その非CDRループを介してサイトカインドメインに結合し、サイトカインドメインはさらに、本明細書に記載する標的指向性ドメインに接続される。場合によっては、血清中半減期延長要素は、バルク血清タンパク質に対する結合部位を含む。いくつかの実施形態では、CDRは、バルク血清タンパク質に対する結合部位を提供する。バルク血清タンパク質は、いくつかの例では、グロブリン、アルブミン、トランスフェリン、IgG1、IgG2、IgG4、IgG3、IgAモノマー、第XIII因子、フィブリノゲン、IgE、または五量体IgMである。いくつかの実施形態では、CDRは、免疫グロブリン軽鎖、例えば、Igκ遊離軽鎖またはIgλ遊離軽鎖等に対する結合部位を形成する。
【0113】
例示的な条件付きで活性なタンパク質の1つを図6に示す。図示の例では、血清アルブミン結合ドメイン(例えば、dAb)内の非CDRループはサイトカインIL-12に対する結合部位を形成することができる。この例では、血清アルブミンの結合部位は血清アルブミン結合ドメインのCDRにより形成することができる。
【0114】
血清中半減期延長要素は、任意の種類の結合ドメインであり得、これには、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体からのドメインが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、結合部分は、一本鎖可変断片(scFv)、単一ドメイン抗体、例えば、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)及びラクダ由来ナノボディの可変ドメイン(VHH)等である。他の実施形態では、結合部分は、非Ig結合ドメイン、すなわち、アンチカリン、アフィリン、アフィボディ分子、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アビマー、DARPin、フィノマー(fynomer)、クニッツドメインペプチド、及びモノボディ等の抗体模倣物である。
【0115】
他の実施形態では、血清中半減期延長要素は、水溶性ポリマー、またはPEG等の水溶性ポリマーに結合されているペプチドであり得る。本明細書で使用する場合、「PEG」、「ポリエチレングリコール」及び「ポリ(エチレングリコール)」は同じ意味であり、任意の非ペプチド水溶性ポリ(エチレンオキシド)を包含する。用語「PEG」はまた、大部分、すなわち、50%超に-OCHCH-反復サブユニットが含有されるポリマーを意味する。特定の形態に関して、PEGは、任意の数の様々な分子量、ならびに構造または幾何学、例えば、「分岐」、「直鎖」、「フォーク型」、「多官能性」等をとることができ、詳細は以下に記載する。PEGは、特定の構造に限定されず、直鎖(例えば、封止末端、例えば、アルコキシPEGまたは二官能性PEG)、分岐またはマルチアーム型(例えば、フォーク型PEGまたはポリオールコアに結合しているPEG)、樹状(または星状)構造であり得、それぞれ、1つ以上の分解性結合がある場合とない場合がある。さらに、PEGの内部構造は、任意の数の異なる反復パターンで組織化することができ、また、ホモポリマー、交互コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、交互トリポリマー、ランダムトリポリマー、及びブロックトリポリマーからなる群から選択され得る。PEGは、ポリペプチド及びペプチドに任意の適切な方法により結合させることができる。典型的には、N-ヒドロキシスクシンアミジル(N-hydroxysuccinamidyl)エステルPEG等の反応性PEG誘導体を、システイン、リジン、アスパラギン、グルタミン、テオニン(theonine)、チロシン、セリン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸等の、アミン、スルフヒドリル、カルボン酸またはヒドロキシル官能基を含有する側鎖を有するアミノ酸が含まれるペプチドまたはポリペプチドと反応させる。
【0116】
標的指向性ドメイン及び保持ドメイン
特定の用途では、構成体がその所望される体内の部位に存在する時間を最大化することが望ましい場合がある。これは、キメラポリペプチド(融合タンパク質)にさらに1つのドメインを含めて、体内でのその移動に影響を与えることにより実現することができる。例えば、キメラ核酸は、ポリペプチドを体内の部位、例えば、腫瘍細胞もしくは炎症部位等に向けるドメイン(このドメインは「標的指向性ドメイン」と呼ばれる)をコードする、及び/またはポリペプチドを体内の部位、例えば、腫瘍細胞もしくは炎症部位等に保持するドメイン(このドメインは「保持ドメイン」と呼ばれる)をコードすることができる。いくつかの実施形態では、ドメインは、標的指向性ドメインとしても保持ドメインとしても機能することができる。いくつかの実施形態では、標的指向性ドメイン及び/または保持ドメインは、プロテアーゼに富む環境に特異的である。いくつかの実施形態では、コードされた標的指向性ドメイン及び/または保持ドメインは、制御性T細胞(Treg)に対して特異的であり、例えば、CCR4受容体またはCD39受容体を標的とする。他の適切な標的指向性ドメイン及び/または保持ドメインは、炎症組織で過剰発現される同族リガンド、例えば、IL-1受容体、またはIL-6受容体の同族リガンドを有するものを含む。他の実施形態では、適切な標的指向性ドメイン及び/または保持ドメインは、腫瘍組織で過剰発現される同族リガンド、例えば、Epcam、CEAまたはメソテリンの同族リガンドを有するものを含む。いくつかの実施形態では、標的指向性ドメインは、リンカーを介してインターロイキンに連結され、作用部位で切断(例えば、炎症またはがんに特異的なプロテアーゼによって)されて、所望の部位でインターロイキンの完全な活性を遊離する。いくつかの実施形態では、標的指向性ドメイン及び/または保持ドメインは、リンカーを介してインターロイキンに連結され、作用部位で切断(例えば、炎症またはがんに特異的なプロテアーゼによって)されずに、サイトカインを所望の部位に留まらせる。
【0117】
選択される抗原は、場合によっては、罹患した細胞または組織、例えば、腫瘍またはがん細胞の表面に発現されている。腫瘍への標的指向及び保持に有用な抗原としては、線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAPa)、栄養膜糖タンパク質(5T4)、腫瘍関連カルシウムシグナル伝達物質2(Trop2)、フィブロネクチンEDB(EDB-FN)、FOLR1、フィブロネクチンEIIIBドメイン、EpCAM、EGFR、HER-2、HER-3、c-Met、FOLR1、及びCEAが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に開示される医薬組成物には、罹患した細胞または組織上で発現されることが知られている2つの異なる標的抗原に結合する2つの標的指向性ドメイン及び/または保持ドメインを含むタンパク質も含まれる。抗原結合ドメインの例示的な対としては、EGFR/CEA、EpCAM/CEA、及びHER-2/HER-3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
適切な標的指向性ドメイン及び/または保持ドメインには、抗原結合ドメイン、例えば、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体 一本鎖可変断片(scFv)、単一ドメイン抗体(重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)及びラクダ型ナノボディ(VHH)の可変ドメイン等)、dAb等の、抗体及びその断片が含まれる。他の適切な抗原結合ドメインには、抗体の結合及び/または構造を模倣する非免疫グロブリンタンパク質、例えば、アンチカリン、アフィリン、アフィボディ分子、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アビマー、DARPin、フィノマー(fynomer)、クニッツドメインペプチド、モノボディ、ならびにSpA、GroEL、フィブロネクチン、リポカリン及びCTLA4といった足場等の他の操作された足場に基づく結合ドメイン等が含まれる。抗原結合ポリペプチドのさらなる例には、所望の受容体に対するリガンド、受容体のリガンド結合部分、レクチン、及び1つ以上の標的抗原に結合するかまたは会合するペプチドが含まれる。
【0119】
いくつかの実施形態では、標的指向性ドメイン及び/または保持ドメインは細胞表面分子に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、標的指向性ドメイン及び/または保持ドメインは腫瘍抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、標的指向性ポリペプチドは、線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAPa)、栄養膜糖タンパク質(5T4)、腫瘍関連カルシウムシグナル伝達物質2(Trop2)、フィブロネクチンEDB(EDB-FN)、FOLR1、フィブロネクチンEIIIBドメイン、EpCAM、EGFR、HER-2、HER-3、cMet、CEA、及びFOLR1のうちの少なくとも1つから選択される腫瘍抗原に特異的かつ独立して結合する。いくつかの実施形態では、標的指向性ポリペプチドは、2つの異なる抗原に特異的かつ独立して結合し、抗原のうちの少なくとも1つは、線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAPa)、栄養膜糖タンパク質(5T4)、腫瘍関連カルシウムシグナル伝達物質2(Trop2)、フィブロネクチンEDB(EDB-FN)、FOLR1、フィブロネクチンEIIIBドメイン、EpCAM、EGFR、HER-2、HER-3、cMet、CEA、及びFOLR1から選択される腫瘍抗原である。
【0120】
標的及び/または保持の抗原は、腫瘍細胞で発現される腫瘍抗原であり得る。腫瘍抗原は、当該技術分野において周知であり、例えば、線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAPa)、栄養膜糖タンパク質(5T4)、腫瘍関連カルシウムシグナル伝達物質2(Trop2)、フィブロネクチンEDB(EDB-FN)、FOLR1、フィブロネクチンEIIIBドメイン、EpCAM、EGFR、HER-2、HER-3、c-Met、FOLR1、PSMA、CD38、BCMA、及びCEA、5T4、AFP、B7-H3、カドヘリン-6、CAIX、CD117、CD123、CD138、CD166、CD19、CD20、CD205、CD22、CD30、CD33、CD352、CD37、CD44、CD52、CD56、CD70、CD71、CD74、CD79b、DLL3、EphA2、FAP、FGFR2、FGFR3、GPC3、gpA33、FLT-3、gpNMB、HPV-16 E6、HPV-16 E7、ITGA2、ITGA3、SLC39A6、MAGE、メソテリン、Muc1、Muc16、NaPi2b、Nectin-4、P-カドヘリン、NY-ESO-1、PRLR、PSCA、PTK7、ROR1、SLC44A4、SLTRK5、SLTRK6、STEAP1、TIM1、Trop2、WT1が含まれる。
【0121】
標的及び/または保持の抗原は、免疫チェックポイントタンパク質であり得る。免疫チェックポイントタンパク質の例としては、CD27、CD137、2B4、TIGIT、CD155、ICOS、HVEM、CD40L、LIGHT、TIM-1、OX40、DNAM-1、PD-L1、PD1、PD-L2、CTLA-4、CD8、CD40、CEACAM1、CD48、CD70、A2AR、CD39、CD73、B7-H3、B7-H4、BTLA、IDO1、IDO2、TDO、KIR、LAG-3、TIM-3、またはVISTAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
標的及び/または保持の抗原は、タンパク質、脂質または多糖等の細胞表面分子であり得る。いくつかの実施形態では、標的及び/または保持の抗原は、腫瘍細胞、ウイルス感染細胞、細菌感染細胞、損傷した赤血球、動脈プラーク細胞、炎症組織細胞または線維性組織細胞の上にある。標的及び/または保持の抗原は、免疫応答モジュレーターを含むことができる。免疫応答モジュレーターの例としては、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン15(IL-15)、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、GITRL、CD3、またはGITRが挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
標的及び/または保持の抗原は、サイトカイン受容体であり得る。サイトカイン受容体の例としては、I型サイトカイン受容体、例えば、GM-CSF受容体、G-CSF受容体、I型IL受容体、Epo受容体、LIF受容体、CNTF受容体、TPO受容体等;II型サイトカイン受容体、例えば、IFN-アルファ受容体(IFNAR1、IFNAR2)、IFB-ベータ受容体、IFN-ガンマ受容体(IFNGR1、IFNGR2)、II型IL受容体等;ケモカイン受容体、例えば、CCケモカイン受容体、CXCケモカイン受容体、CX3Cケモカイン受容体、XCケモカイン受容体等;腫瘍壊死受容体スーパーファミリー受容体、例えば、TNFRSF5/CD40、TNFRSF8/CD30、TNFRSF7/CD27、TNFRSF1A/TNFR1/CD120a、TNFRSF1B/TNFR2/CD120b等;TGF-ベータ受容体、例えば、TGF-ベータ受容体1、TGF-ベータ受容体2等;Igスーパーファミリー受容体、例えば、IL-1受容体、CSF-1R、PDGFR(PDGFRA、PDGFRB)、SCFR等、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
リンカー
上述のように、医薬組成物は、1つ以上のリンカー配列を含む。リンカー配列は、ポリペプチド間に柔軟性を提供して、例えば、遮断部分がサイトカインポリペプチドの活性を阻害することができるようにするのに役立つ。リンカー配列は、サイトカインポリペプチド、血清中半減期延長要素、及び/または遮断部分のうちのいずれかまたは全ての間に位置させることができる。本明細書に記載するように、リンカーのうちの少なくとも1つはプロテアーゼで切断可能であり、(1つ以上の)所望のプロテアーゼのための(1つ以上の)切断部位を含有する。好ましくは、所望のプロテアーゼは、サイトカイン活性の所望の部位(例えば、腫瘍微小環境)において豊富にされるかまたは選択的に発現される。したがって、融合タンパク質は、所望のサイトカイン活性の部位で優先的または選択的に切断される。
【0125】
医薬組成物の成分の配向は主に設計の選択の問題であり、複数の配向が可能であること、また、いずれも本開示により包含されることが意図されることが認識される。例えば、遮断部分は、サイトカインポリペプチドのC末端またはN末端に位置させることができる。
【0126】
罹患した細胞または組織に関連することが知られているプロテアーゼとしては、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、アスパラギンペプチドリアーゼ、血清プロテアーゼ、カテプシン、カテプシンB、カテプシンC、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンK、カテプシンL、カリクレイン、hKl、hK10、hK15、プラスミン、コラゲナーゼ、IV型コラゲナーゼ、ストロメライシン、第Xa因子、キモトリプシン様プロテアーゼ、トリプシン様プロテアーゼ、エラスターゼ様プロテアーゼ、サブチリ シン様プロテアーゼ、アクチニダイン、ブロメライン、カルパイン、カスパーゼ、カスパーゼ-3、Mirl-CP、パパイン、HIV-1プロテアーゼ、HSVプロテアーゼ、CMVプロテアーゼ、キモシン、レニン、ペプシン、マトリプターゼ、レグマイン、プラスメプシン、ネペンテシン、メタロエキソペプチダーゼ、メタロエンドペプチダーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、MMP1、MMP2、MMP3、MMP8、MMP9、MMP13、MMP11、MMP14、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、エンテロキナーゼ、前立腺特異抗原(PSA、hK3)、インターロイキン-1β変換酵素、トロンビン、FAP(FAP-a)、ジペプチジルペプチダーゼ、メプリン、グランザイム及びジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV/CD26)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で提供されるキメラ核酸配列によりコードされるアミノ酸配列を切断することができるプロテアーゼは、例えば、前立腺特異抗原(PSA)、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、Aディスインチグリン及びメタロプロテアーゼ(ADAM)、プラスミノーゲン活性化因子、カテプシン、カスパーゼ、腫瘍細胞表面プロテアーゼ、及びエラスターゼからなる群から選択され得る。MMPは、例えば、マトリックスメタロプロテアーゼ2(MMP2)またはマトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP9)であり得る。
【0127】
本明細書に開示する方法において有用なプロテアーゼを表1に示し、例示的プロテアーゼとそれらの切断部位を表1aに示す。
表1.炎症及びがんに関連するプロテアーゼ
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
表1a:例示的プロテアーゼ及びプロテアーゼ認識配列
【表1a-1】

【表1a-2】
【0128】
本明細書では、ポリペプチド配列を含む医薬組成物が提供される。すべてのペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質(それらの断片を含む)の場合と同様、キメラポリペプチド(アミノ酸配列変異型)のアミノ酸配列において、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の性質または機能を改変しない追加の修飾が起こり得ることが理解される。そのような修飾には、保存的アミノ酸置換が含まれ、以下でさらに詳細に考察される。
【0129】
本明細書で提供する組成物は所望の機能を有する。組成物は、少なくともIL-12サイトカインポリペプチド、遮断部分、例えば、立体遮断ポリペプチド等、ならびに任意選択の血清中半減期延長要素、及び任意選択の標的指向性ポリペプチド、さらに組成物中の各ポリペプチドを接続する1つ以上のリンカーで構成される。第1のポリペプチド、例えば、IL-12ポリペプチドは、活性物質として提供される。遮断部分は、インターロイキンの活性を遮断するために提供される。リンカーポリペプチド、例えば、プロテアーゼで切断可能なポリペプチドは、活性物質の意図される標的で特異的に発現されるプロテアーゼで切断されるよう提供される。任意選択で、遮断部分は、インターロイキンポリペプチドと結合することによって第1のポリペプチドの活性を遮断する。いくつかの実施形態では、遮断部分、例えば、立体遮断ペプチドは、プロテアーゼ切断可能リンカーを介してインターロイキンに連結され、作用部位で切断(例えば、炎症特異的プロテアーゼによって)されて、所望の部位でサイトカイン完全活性を遊離する。
【0130】
プロテアーゼ切断部位は、天然に存在するプロテアーゼ切断部位であっても、または人工的に操作されたプロテアーゼ切断部位であってもよい。人工的に操作されたプロテアーゼ切断部位は、切断が起こる所望の環境、例えば、腫瘍等に特異的な2つ以上のプロテアーゼによって切断することができる。プロテアーゼ切断部位は、少なくとも1つのプロテアーゼ、少なくとも2つのプロテアーゼ、少なくとも3つのプロテアーゼ、または少なくとも4つプロテアーゼによって切断可能であり得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン-グリシン、ソルターゼ認識モチーフ、またはソルターゼ認識モチーフとペプチド配列(GlySer)(配列番号81)もしくは(GlySer)(配列番号82)(ここで、nは、1、2、3、4または5)を含む。一実施形態では、ソルターゼ認識モチーフは、ペプチド配列LPXTG(配列番号80)を含み、ここで、Xは任意のアミノ酸である。一実施形態では、共有結合は、サイトカインポリペプチドのC末端に結合している反応性リジン残基と、遮断部分または他の部分のN末端に結合している反応性アスパラギン酸との間にある。一実施形態では、共有結合は、サイトカインポリペプチドのN末端に結合している反応性アスパラギン酸残基と、遮断部分または他の部分のC末端に結合している反応性リジン残基との間にある。
【0132】
切断及び誘導性
本明細書に記載されるように、融合タンパク質においてはサイトカインポリペプチドの活性は減弱されており、腫瘍微小環境内等、活性の所望の部位でのプロテアーゼによる切断により、融合タンパク質よりもサイトカイン受容体アゴニストとしてはるかに活性な融合タンパク質から、ある形態のサイトカインを遊離させる。例えば、融合ポリペプチドのサイトカイン受容体活性化(アゴニスト)活性は、別個の分子実体としてのサイトカインポリペプチドのサイトカイン受容体活性化活性よりも少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約250倍、少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍小さくてよい。融合タンパク質の一部であるサイトカインポリペプチドが別個の分子実体として存在するのは、その分子実体が、サイトカインポリペプチドと実質的に同一なアミノ酸を含有し、追加のアミノ酸を実質的に含まず、他の分子と(共有結合または非共有結合によって)会合していない場合である。必要に応じて、別個の分子実体としてのサイトカインポリペプチドには、発現及び/または精製を助けるためのタグまたは短い配列等のいくつかの追加のアミノ酸配列が含まれてよい。
【0133】
他の例では、融合ポリペプチドのサイトカイン受容体活性化(アゴニスト)活性は、融合タンパク質中のプロテアーゼ切断可能リンカーの切断により産生されるサイトカインポリペプチドを含有するポリペプチドのサイトカイン受容体活性化活性よりも少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約250倍、少なくとも約500倍、または約1000倍小さい。言い換えれば、融合タンパク質中のプロテアーゼ切断可能リンカーの切断により産生されるサイトカインポリペプチドを含有するポリペプチドのサイトカイン受容体活性化(アゴニスト)活性は、融合タンパク質のサイトカイン受容体活性化活性よりも少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約250倍、少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍大きい。
【0134】
ポリペプチド置換
本明細書に記載するポリペプチドには、所望の機能が維持される限り、対応する天然に存在するタンパク質(例えば、IL-2、IL-15、HSA)と同じアミノ酸配列を有する成分(例えば、サイトカイン、遮断部分)を含めること、または天然に存在するタンパク質とは異なるアミノ酸配列を有することができる。開示されるタンパク質及びそれらをコードする核酸の任意の既知の修飾及び誘導体または発生し得るものを定義する1つの方法は、特定の既知の参照配列に対する同一性の点で配列変異型を定義することによるものであることが理解される。具体的には、本明細書で提供されるキメラポリペプチドに対して少なくとも、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99パーセントの同一性を有するポリペプチド及び核酸を開示する。例えば、本明細書に記載の核酸またはポリペプチドのうちのいずれかの配列に対して少なくとも、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99パーセントの同一性を有するポリペプチドまたは核酸を提供する。当業者は、2つのポリペプチドまたは2つの核酸の同一性を決定する方法を容易に理解する。例えば、同一性は、同一性がその最高レベルになるように2つの配列を整列させた後に計算することができる。
【0135】
同一性を計算する別の方法は、公開されているアルゴリズムによって実施することができる。比較のための配列の最適なアラインメントは、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math 2:482(1981)の局所的同一性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の同一性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性方法の検索によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実装によって(Wisconsin Genetics Software Package内のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA、Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis)、または検査によって、行われてもよい。
【0136】
同じ種類の同一性を核酸について、例えば、Zuker,Science 244:48-52(1989)、Jaeger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:7706-7710(1989)、Jaeger et al.,Methods Enzymol.183:281-306(1989)に開示されるアルゴリズムによって得ることができ、それらは、少なくとも核酸アラインメントに関連する材料については参照により本明細書に組み込まれる。いずれの方法も、典型的には、使用することができること、また、場合によっては、これらの様々な方法の結果が異なる場合があることが理解されるが、当業者は、これらの方法のうちの少なくとも1つで同一性が見出された場合に、その配列が、記述の同一性を有し、かつ本明細書に開示されると言われることを理解する。
【0137】
タンパク質の修飾には、アミノ酸配列の修飾が含まれる。アミノ酸配列での修飾は、アレル変異として(例えば、遺伝子多型による)自然に生じ得るか、環境の影響により(例えば、紫外光への曝露による)生じ得るか、または誘発された点変異体、欠失変異体、挿入変異体及び置換変異体等人の介入によって(例えば、クローン化DNA配列の変異誘発による)作られ得る。これらの修飾により、アミノ酸配列の変化をもたらすこと、サイレント突然変異を提供すること、制限部位を修飾すること、または他の特定の変異を提供することができる。アミノ酸配列の修飾は、典型的には、置換修飾、挿入修飾または欠失修飾という3つの種類のうちの1つ以上に該当する。挿入には、アミノ末端及び/またはカルボキシル末端での融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。挿入は、通常、アミノ末端またはカルボキシル末端での融合の挿入よりも小さい、例えば、約1~4個の残基の挿入である。欠失は、タンパク質配列からの1つ以上のアミノ酸残基除去を特徴とする。典型的には、タンパク質分子内の任意の一部位で約2~6個以下の残基を欠失させる。アミノ酸置換は、典型的には、単一の残基の置換であるが、一度にいくつかの異なる位置で発生させることができ、挿入は、通常、約1~10個のアミノ酸残基上であり、欠失は、約1~30個の残基の範囲である。欠失または挿入は、好ましくは、隣接する対で、すなわち、2個の残基の欠失または2個の残基の挿入で行われる。置換、欠失、挿入、またはそれらの任意の組み合わせを組み合わせて、最終構成体に到達してよい。変異は、読み枠の外に配列を配置してはならず、好ましくは、二次的mRNA構造を生成し得る相補領域を生じさせることがない。置換修飾は、少なくとも1つの残基が除去され、その場所に異なる残基が挿入されている修飾である。そのような置換は一般に以下の表2に従って行われ、保存的置換と呼ばれる。
表2.例示的アミノ酸置換
【表2-1】
【表2-2】
【0138】
特定のアミノ酸置換を含め、修飾は、既知の方法によって行われる。例えば、修飾は、ポリペプチドをコードするDNAのヌクレオチドの部位特異的変異誘発によって行われ、それにより、修飾をコードするDNAが生成され、その後、組換え細胞培養においてDNAを発現させる。既知配列を有するDNAの所定の部位における置換変異を行う技術は周知であり、例えば、M13プライマー変異誘発及びPCR変異がある。
【0139】
修飾を選択して結合を最適化することができる。例えば、親和性成熟技術は、相補性決定領域(CDR)内にランダム変異を導入することによってscFvの結合を改変するために使用することができる。そのようなランダム変異は、放射線、化学的変異原、エラープローンPCR等、様々な技術を使用して導入することができる。複数ラウンドの変異及び選択を、例えば、ファージディスプレイ等を使用して実行することができる。
【0140】
本開示はまた、本明細書に記載のキメラポリペプチドをコードする核酸、ならびにそのような核酸の、キメラポリペプチドを製造するため、及び治療目的のための、使用に関する。例えば、本発明には、キメラポリペプチドをコードするDNA分子及びRNA分子(例えば、mRNA、自己複製RNA)、ならびにそのようなDNA分子及びRNA分子の治療的使用が含まれる。
【0141】
例示的組成物
本発明の例示的な融合タンパク質は、上記の要素を様々な指向で組み合わせる。この項で記載する指向は例としての指向を意味するものであり、限定的なものとみなされるべきではない。
【0142】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、IL-12ポリペプチド、遮断部分及び半減期延長要素を含む。いくつかの実施形態では、IL-12ポリペプチドを、半減期延長要素と遮断部分の間に位置させる。いくつかの実施形態では、IL-12ポリペプチドは、遮断部分及び半減期延長要素に対するN末端である。そのようないくつかの実施形態では、IL-12ポリペプチドは遮断部分の近位にあり、そのようないくつかの実施形態では、IL-12ポリペプチドは半減期延長要素の近位にある。IL-12ポリペプチドが切断時に活性であり得るように、少なくとも1つのプロテアーゼ切断可能リンカーがすべての実施形態に含まれていなければならない。いくつかの実施形態では、IL-12ポリペプチドは、遮断部分及び半減期延長要素に対するC末端である。追加要素は、切断可能なリンカー、切断不可能なリンカーによって、または直接融合によって互いに結合させてよい。
【0143】
いくつかの実施形態では、使用される遮断ドメインは半減期を延長させることができ、そのような2つの遮断ドメイン間にIL-12ポリペプチドを位置させる。いくつかの実施形態では、IL-12ポリペプチドを、2つの遮断ドメイン間に位置させ、そのうちの一方は、半減期を延長させることができる。
【0144】
いくつかの実施形態では、2つのサイトカインは同じ構成体に含まれる。いくつかの実施形態では、サイトカインにはそれぞれ2つの遮断ドメインが接続され(1分子内に合計3つ)、2つのサイトカインドメイン間に1つの遮断ドメインがある。いくつかの実施形態では、薬物動態学的特性を最適化するために1つ以上の追加の半減期延長ドメインを含めてよい。
【0145】
いくつかの実施形態では、3つのサイトカインは同じ構成体に含まれる。いくつかの実施形態では、第3のサイトカインは、2つのサイトカイン間の遮断ドメインの代わりに他の2つのサイトカインを遮断するように機能し得る。
【0146】
融合タンパク質で使用するための好ましい半減期延長要素は、ヒト血清アルブミン(HSA)、血清アルブミンと結合する抗体または抗体断片(例えば、scFV、dAb)、ヒトもしくはヒト化IgG、または前述のうちのいずれかの断片である。いくつかの好ましい実施形態では、遮断部分は、ヒト血清アルブミン(HSA)、または血清アルブミンに結合する抗体もしくは抗体断片、サイトカインと結合してサイトカイン受容体の結合の活性化もしくは活性化を防止する抗体、別のサイトカイン、または前述のうちのいずれかの断片である。追加の標的指向性ドメインを含む好ましい実施形態では、標的指向性ドメインは、EpCAM、FOLR1、及びフィブロネクチン等、がん細胞の表面で豊富になっている細胞表面タンパク質と結合する抗体である。
【0147】
治療方法及び医薬組成物
さらに、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫障害、自己免疫疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫反応、もしくは移植片対宿主病等の疾患もしくは障害を有するかまたは発症するリスクがある対象を治療する方法を提供する。典型的には医薬組成物として投与される、本明細書に開示する融合タンパク質を有効量にて投与することを、それを必要とする対象に行う方法。いくつかの実施形態では、方法はさらに、そのような疾患または障害を有するかまたは発症するリスクがある対象を選択することを含む。医薬組成物は、好ましくは、炎症部位で活性化される、遮断されたIL-12ポリペプチド、その断片もしくは変異タンパク質を含む。一実施形態では、キメラポリペプチドは、IL-12ポリペプチド、その断片または変異タンパク質及び血清中半減期延長要素を含む。別の実施形態では、キメラポリペプチドは、IL-12ポリペプチド、その断片または変異タンパク質及び遮断部分、例えば、立体遮断ポリペプチドを含み、かかる立体遮断ポリペプチドは、IL-12ポリペプチド、その断片または変異タンパク質の活性を立体的に遮断することができる。別の実施形態では、キメラポリペプチドは、IL-12ポリペプチド、その断片または変異タンパク質、遮断部分、及び血清中半減期延長要素を含む。
【0148】
炎症は、病原体、損傷した細胞、刺激物質等の有害な刺激に対する体組織の複雑な生物学的応答の一部であり、免疫細胞、血管、分子メディエーターが関与する防御反応である。炎症の機能は、細胞傷害の最初の原因を排除し、元の傷害及び炎症過程により損傷を受けた壊死細胞及び壊死組織を取り除き、組織修復を開始することである。炎症は、感染により生じるか、症状として生じるか、または疾患、例えば、がん、アテローム性動脈硬化症、アレルギー、ミオパシー、HIV、肥満、もしくは自己免疫疾患として生じ得る。自己免疫疾患は、自己抗原に対する異常な免疫応答から生じる慢性病態である。本明細書に開示するポリペプチドで治療され得る自己免疫疾患としては、狼瘡、セリアック病、1型真性糖尿病、グレーブス病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、及び全身性エリテマトーデスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
医薬組成物は、1つ以上のプロテアーゼ切断可能リンカー配列を含むことができる。リンカー配列は、それぞれのポリペプチドが第1のポリペプチドの活性を阻害することができるよう、ポリペプチド間に柔軟性を提供するのに役立つ。リンカー配列は、サイトカインポリペプチド、その断片または変異タンパク質、遮断部分、及び血清中半減期延長要素のうちのいずれかまたは全ての間に位置させることができる。任意選択で、組成物は、2つ、3つ、4つ、または5つのリンカー配列を含む。リンカー配列、2つ、3つ、または4つのリンカー配列は同一または異なるリンカー配列であり得る。一実施形態では、リンカー配列は、GGGGS(配列番号87)、GSGSGS(配列番号88)、またはG(SGGG)SGGT(配列番号89)を含む。別の実施形態では、リンカーは、HSSKLQ(配列番号24)、GPLGVRG(配列番号83)、IPVSLRSG(配列番号84)、VPLSLYSG(配列番号85)、及びSGESPAYYTA(配列番号86)からなる群から選択されるプロテアーゼ切断可能配列を含む。
【0150】
適切なリンカーは、1アミノ酸(例えば、Gly)~20アミノ酸、2アミノ酸~15アミノ酸、3アミノ酸~12アミノ酸等の異なる長さであり得、これには、4アミノ酸~10アミノ酸、アミノ酸~9アミノ酸、6アミノ酸~8アミノ酸、または7アミノ酸~8アミノ酸が含まれ、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、もしくは60のアミノ酸であってよい。
【0151】
いくつかの実施形態では、リンカーは、カリクレイン、トロンビン、キマーゼ、カルボキシペプチダーゼA、カテプシンG、エラスターゼ、PR-3、グランザイムM、カルパイン、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、プラスミノーゲン活性化因子、カテプシン、カスパーゼ、トリプターゼ、または腫瘍細胞表面プロテアーゼからなる群から選択されるプロテアーゼによって切断される。
【0152】
さらに、がんを有するかまたは発症するリスクがある対象を治療する方法を提供する。方法は、典型的には医薬組成物として投与される、本明細書に開示するキメラポリペプチド(融合タンパク質)を有効量にて投与することを、それを必要とする対象に行うことを含む。いくつかの実施形態では、方法はさらに、がんを有するかまたは発症するリスクがある対象を選択することを含む。医薬組成物は、好ましくは、腫瘍部位で活性化される、遮断されたサイトカイン、その断片もしくは変異タンパク質を含む。好ましくは、腫瘍は固形腫瘍である。がんは、結腸癌、肺癌、黒色腫、肉腫、腎細胞腫、乳癌であり得る。
【0153】
方法ではさらに、がんを治療する1つ以上の追加の薬剤、例えば、化学療法薬(例えば、アドリアマイシン、セルビジン、ブレオマイシン、アルケラン、ベルバン、オンコビン、フルオロウラシル、チオテパ、メトトレキサート、ビサントレン、ノアントロン(Noantrone)、チグアニン(Thiguanine)、シタリビン(Cytaribine)、プロカラビジン(Procarabizine))、腫瘍免疫療法薬(例えば、抗PD-L1、抗CTLA4、抗PD-1、抗CD47、抗GD2)、細胞治療薬(例えば、CAR-T、T細胞療法)、腫瘍溶解性ウイルス等の投与を行うことを含む。
【0154】
本明細書では、キメラポリペプチド及び薬理学的に許容される担体を含有する医薬製剤または組成物が提供される。本明細書で提供される組成物は、インビトロまたはインビボでの投与に好適である。薬理学的に許容される担体とは、生物学的または他の点で望ましくないということがない材料を意味し、すなわち、かかる材料は、望ましくない生物学的作用を引き起こすか、またはそれが含有されている医薬製剤もしくは組成物の他の成分と有害な様態で相互作用することなく、対象に投与される。担体は、有効成分の分解を最小限にするよう、また、対象における有害な副作用を最小限にするよう選択される。
【0155】
適切な担体及びそれらの製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,David B.Troy,ed.,Lippicott Williams & Wilkins(2005)に記載されている。典型的には、適切な量の薬理学的に許容される塩を製剤中に用いて製剤を等張性にするが、所望であれば、製剤は高張性または低張性であり得る。薬理学的に許容される担体の例としては、滅菌水、生理食塩水、リンゲル液のような緩衝液、及びデキストロース溶液が挙げられるが、これらに限定されない。溶液のpHは一般に、約5~約8または約7~7.5である。他の担体には、免疫原性ポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクス等の徐放性調製物が含まれる。マトリクスは、例えば、フィルム、リポソーム、または微粒子等の成形物品の形態にある。特定の担体が、例えば、投与経路及び投与される組成物の濃度に応じて、より好ましい場合がある。担体は、ヒトまたは他の対象に対するキメラポリペプチドまたはキメラポリペプチドをコードする核酸配列の投与に適したものである。
【0156】
医薬製剤または組成物は、局所または全身的な治療が所望されるか否かに応じて、及び治療される領域に応じて、いくつかの方法で投与される。組成物は、いくつかの投与経路のいずれかを介して投与され、これには、局所、経口、非経口、静脈内、関節内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮、肝内、頭蓋内、噴霧/吸入を含むか、または気管支鏡検査を介した設置によるものが含まれる。いくつかの実施形態では、組成物は、腫瘍内、関節内、髄腔内等、局所的に(非全身的に)投与される。
【0157】
非経口投与用調製物には、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液、及びエマルジョンが含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物性油、例えば、オリブ油等、及び注入可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチル等である。水性担体には、水、アルコール溶液/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液が含まれ、生理食塩水及び緩衝媒体が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、または不揮発性油が含まれる。静脈内ビヒクルには、液体及び栄養補充薬、電解質補充薬(リンゲルデキストロースに基づくもの等)等が含まれる。例えば、抗菌薬、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガス等のような保存剤及び他の添加剤が任意選択で存在する。
【0158】
局所投与用製剤には、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、点滴薬、坐剤、スプレー剤、液剤及び粉末が含まれる。従来の医薬担体、水性基剤、粉末基剤もしくは油性基剤、粘稠剤等が任意選択で必要であるかまたは望ましい。
【0159】
経口投与用組成物には、粉末もしくは顆粒、水もしくは非水性媒体に溶解させた懸濁液もしくは溶液、カプセル、小袋またはテーブルズが含まれる。粘稠剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤または結合剤が任意選択で望ましい。
【0160】
任意選択で、キメラポリペプチドまたはキメラポリペプチドをコードする核酸配列は、ベクターによって投与される。インビトロまたはインビボで、例えば、発現ベクターを介して、核酸分子及び/またはポリペプチドを細胞に送達するために使用することができるいくつかの組成物及び方法がある。これらの方法及び組成物は、ウイルス系送達システム及び非ウイルス系送達システムの2つの種類に大別することができる。そのような方法は、当該技術分野において周知であり、本明細書に記載する組成物及び方法とともに使用するために容易に適合可能である。そのような組成物及び方法は、インビトロまたはインビボで細胞をトランスフェクトまたは形質導入するため、例えば、コードされたキメラポリペプチドを発現し、好ましくは分泌する細胞株を製造するため、または核酸を対象に治療的に送達するために使用することができる。本明細書に開示するキメラ核酸の成分は、典型的には、融合タンパク質をコードするようインフレームで機能的に連結される。
【0161】
本明細書で使用する場合、プラスミドまたはウイルスベクターは、開示の核酸を分解されない状態で細胞に輸送し、かつ、送達先の細胞に核酸分子及び/またはポリペプチドの発現をもたらすプロモーターを含む物質である。ウイルスベクターは、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、シンドビス、及び他のRNAウイルス等であり、これらのウイルスでHIV骨格を有するものが含まれる。また、これらのウイルスの特性を共有し、ベクターとしての使用に適した任意のウイルスファミリーも好ましい。レトロウイルスベクターは、Coffin et al.,Retroviruses,Cold Spring Harbor Laboratory Press (1997)により概説されており、ベクター及びその製造方法について参照により本明細書に組み込まれる。複製欠損アデノウイルスの構築が記載されている(Berkner et al.,J.Virol.61:1213-20(1987)、Massie et al.,Mol.Cell.Biol.6:2872-83(1986)、Haj-Ahmad et al.,J.Virol.57:267-74(1986)、Davidson et al.,J.Virol.61:1226-39(1987)、Zhang et al.,BioTechniques 15:868-72(1993))。これらのウイルスのベクターとしての利点と使用は、それらが最初の感染細胞内で複製できるが、新しい感染性ウイルス粒子を形成することができないため、他の細胞型に伝播することができる範囲が制限されることである。組換え型アデノウイルスは、気道上皮、肝細胞、血管内皮、CNS実質、及び他の多くの組織部位への直接のインビボ送達後に高効率を達成することが示されている。他の有用な系には、例えば、複製ワクシニアウイルスベクター及び宿主限定非複製ワクシニアウイルスベクターが含まれる。
【0162】
提供されるポリペプチド及び/または核酸分子は、ウイルス様粒子を介して送達することができる。ウイルス様粒子(VLP)は、ウイルスの構造タンパク質に由来するウイルスタンパク質(複数可)で構成されている。ウイルス様粒子を作製及び使用するための方法は、例えば、Garcea and Gissmann,Current Opinion in Biotechnology 15:513-7(2004)に記載されている。
【0163】
提供されるポリペプチドは、サブウイルス密集体(subviral dense bodies)(DB)によって送達することができる。DBは、膜融合によってタンパク質を標的細胞に輸送する。DBを作製及び使用するための方法は、例えば、Pepperl-Klindworth et al.,Gene Therapy 10:278-84(2003)に記載されている。
【0164】
提供されるポリペプチドは、外被凝集体によって送達することができる。外被凝集体を作製及び使用するための方法は、国際公開公報第WO2006/110728号に記載されている。
【0165】
非ウイルス系送達方法には、核酸分子及びポリペプチドをコードする核酸配列を含む発現ベクターを含めることができ、ここで、核酸は、発現制御配列に機能的に連結される。適切なベクター骨格には、例えば、プラスミド、人工染色体、BAC、YAC、またはPAC等の当該技術分野で日常的に使用されるものが含まれる。多数のベクター及び発現系が、Novagen(Madison,Wis.)、Clonetech(Pal Alto,Calif.)、Stratagene(La Jolla,Calif.)、及びInvitrogen/Life Technologies(Carlsbad,Calif.)等の企業から市販されている。ベクターは、典型的には、1つ以上の調節領域を含有する。調節領域には、限定することなく、プロモーター配列、エンハンサー配列、応答配列、タンパク質認識部位、誘導性要素、タンパク質結合配列、5’及び3’の非翻訳領域(UTR)、転写開始部位、終結配列、ポリアデニル化配列、及びイントロンが含まれる。そのようなベクターはまた、CHO細胞等の適切な宿主細胞での発現によってキメラポリペプチドを作製するために使用することもできる。
【0166】
哺乳類宿主細胞においてベクターからの転写を制御する好ましいプロモーターは、様々な供給源から得てよく、例えば、ポリオーマウイルス、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、最も好ましくは、サイトメガロウイルス(CMV)等のウイルスのゲノムから得るか、または異種哺乳類プロモーター、例えば、β-アクチンプロモーターもしくはEF1αプロモーターから得るか、またはハイブリッドもしくキメラプロモーター(例えば、β-アクチンプロモーターに融合させたCMVプロモーター)から得てよい。もちろん、宿主細胞または関連種からのプロモーターもまた本明細書では有用である。
【0167】
エンハンサーとは、一般に、機能する転写開始部位からの距離が一定ではなく、転写単位に対して5’でも3’でもあり得るDNA配列を指す。さらに、エンハンサーは、イントロン内部にあり得、またコード配列自体の内部にもあり得る。それらは、通常、長さが10~300塩基対(bp)であり、シスで機能する。エンハンサーは通常、近傍のプロモーターからの転写を増加させるよう機能する。エンハンサーには、転写の調節を媒介する応答配列を含有させることもできる。哺乳類の遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、フェトプロテイン、及びインスリン)から多くのエンハンサー配列が知られており、典型的には、一般的な発現には真核細胞ウイルスからのエンハンサーを使用する。好ましい例は、複製起点の後期側のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーである。
【0168】
プロモーター及び/またはエンハンサーは誘導性であり得る(例えば、化学的または物理的に調節される)。化学的に調節されるプロモーター及び/またはエンハンサーは、例えば、アルコール、テトラサイクリン、ステロイド、または金属の存在によって調節され得る。物理的に調節されるプロモーター及び/またはエンハンサーは、例えば、温度及び光等の環境要因によって調節され得る。任意選択で、プロモーター領域及び/またはエンハンサー領域は、構成的プロモーター及び/またはエンハンサーとして作用して、転写される転写単位の領域の発現を最大化することができる。特定のベクターでは、プロモーター領域及び/またはエンハンサー領域は、細胞型特異的な様態で活性であり得る。任意選択で、特定のベクターでは、プロモーター領域及び/またはエンハンサー領域は、細胞型に関係なく、すべての真核細胞において活性であり得る。この種の好ましいプロモーターは、CMVプロモーター、SV40プロモーター、β-アクチンプロモーター、EF1αプロモーター、及びレトロウイルスの長い末端反復配列(LTR)である。
【0169】
ベクターにはまた、例えば、複製起点及び/またはマーカーも含めることができる。マーカー遺伝子は、細胞に対し、選択可能な表現型、例えば抗生物質耐性等を付与することができる。マーカー産物は、ベクターが細胞に送達されたかどうか、送達された後は、それが発現されているかどうかを決定するために使用される。哺乳類細胞の選択マーカーの例は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ、ネオマイシン、ネオマイシン類似体G418、ハイグロマイシン、ピューロマイシン、及びブラストサイジンである。そのような選択マーカーが哺乳動物宿主細胞に首尾よく移されると、形質転換された哺乳動物宿主細胞は、選択圧下に置かれた場合に生き残ることができる。他のマーカーの例には、例えば、E.coli lacZ遺伝子、緑色蛍光タンパク質(GFP)、及びルシフェラーゼが含まれる。さらに、発現ベクターには、発現されたポリペプチドの操作または検出(例えば、精製または局在化)を容易にするよう設計されたタグ配列が含まれ得る。タグ配列、例えば、GFP、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c-myc、ヘマグルチニン、またはFLAG(商標)タグ(Kodak;New Haven,Conn.)等の配列は、典型的には、コードされたポリペプチドとの融合体として発現される。そのようなタグは、カルボキシル末端またはアミノ末端のいずれかを含め、ポリペプチド内のどこにでも挿入することができる。
【0170】
本明細書で使用する場合、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質という用語は、ペプチド結合によって連結される2つ以上のアミノ酸を意味するために広く使用される。タンパク質、ペプチド、及びポリペプチドはまた、本明細書ではアミノ酸配列を指すために同じ意味で使用される。本明細書では、分子を構成するアミノ酸の特定のサイズまたは数を示唆するためにはポリペプチドという用語は使用されないこと、本発明のペプチドは最大で数個からそれ以上のアミノ酸残基を含有することができることを認識されるべきである。全体を通して使用する場合、対象は脊椎動物であり得、より具体的には、哺乳類(例えば、ヒト、ウマ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、マウス、ウサギ、ラット、及びモルモット)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、及び他の任意の動物であり得る。かかる用語は特定の年齢または性別を意味しない。したがって、雌雄を問わず、成体及び新生の対象が包含されることが意図される。本明細書で使用する場合、患者または対象は、同じ意味で使用されてよく、疾患または障害(例えば、がん)を有する対象を指し得る。患者または対象という用語には、ヒト対象及び獣医学の対象が含まれる。
【0171】
疾患もしくは障害を発症するリスクのある対象は、その疾患もしくは障害への遺伝的素因があり得、例えば、家族病歴を有するか、またはその疾患もしくは障害を引き起こす遺伝子変異があるか、またはその疾患もしくは障害の早期兆候もしくは症状を示す。現在疾患または障害を有する対象は、その疾患または障害の1つまたは2つ以上の症状を有しており、その疾患または障害と診断されている場合がある。
【0172】
本明細書に記載する方法及び薬剤は、予防的処置及び治療的処置の両方に有用である。予防的使用の場合、治療的有効量の、本明細書に記載するキメラポリペプチドまたはキメラポリペプチドをコードするキメラ核酸配列を、発症前(例えば、がんまたは炎症の明らかな徴候の前)または早期発症中(例えば、がんまたは炎症の初期の徴候及び症状時)に対象に投与する。予防的投与は、がんまたは炎症の症状の発現前に数日から数年間行うことができる。予防的投与は、例えば、がんに対する遺伝的素因があると診断された対象の予防的治療において使用することができる。治療的治療では、がんまたは炎症(例えば、自己免疫疾患)の診断または発症後に、治療的有効量の、本明細書に記載のキメラポリペプチドまたはキメラポリペプチドをコードする核酸配列を対象に投与することが行われる。予防的使用はまた、患者が、炎症が予測される治療、例えば、化学療法等を受けている場合にも適用され得る。
【0173】
本明細書に教示される方法に従って、対象は、有効量の薬剤(例えば、キメラポリペプチド)を投与される。有効量及び有効投与量という用語は、同じ意味で使用される。有効量という用語は、所望の生理学的応答を生じさせるために必要な任意の量として定義される。薬剤を投与するための有効量及びスケジュールは、経験的に決定されてよく、そのような決定を行うことは、当業者の技量の範囲内である。投与のための投与量範囲は、疾患または障害の1つ以上の症状が影響を受ける(例えば、低減または遅延する)、所望の効果をもたらすために十分に多いものである。投与量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応等のような実質的な有害副作用を引き起こすほど大量であってはならない。一般的、投与量は、年齢、状態、性別、疾患の種類、疾患もしくは障害の程度、投与経路、または他の薬物がレジメンに含まれるか否かにより変動し、当業者により決定され得る。投与量は、禁忌があった場合には、個々の医師が調整することができる。投与量は変動し得るとともに、1回分以上の用量を連日、1日または数日間投与され得る。所与のクラスの医薬品に適切な投与量について、手引を文献に見出することができる。
【0174】
本明細書で使用する場合、治療、治療する、または治療することという用語は、疾患もしくは状態の影響またはその疾患もしくは状態の症状を低減させる方法を指す。したがって、開示の方法では、治療とは、確立された疾患もしくは状態またはその疾患もしくは状態の症状の重症度における、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の低減を指し得る。例えば、疾患を治療するための方法は、対象の疾患の1つ以上の症状において、対照と比較して10%の低減がある場合、治療とみなされる。したがって、低減は、天然または対照でのレベルと比較して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、または10%~100%の間の任意の低減率であり得る。治療は必ずしも疾患、状態、またはその疾患もしくは状態の症状の治癒または完全な除去を指すものではないと理解される。
【0175】
本明細書で使用する場合、疾患または障害を予防する、予防すること、及び予防という用語とは、行為、例えば、対象がその疾患または障害の1つ以上の症状を示し始める前、またはそれとほぼ同時に行われる、キメラポリペプチドまたはキメラポリペプチドをコードする核酸配列の投与等の行為であって、その疾患もしくは障害の1つ以上の症状の発症または増悪を阻害するかまたは遅らせる行為を指す。本明細書で使用する際、減少、低減、または阻害に関する言及は、対照レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上の変化を含む。このような用語は、完全な排除を含み得るが、必ずしもそれを含むとは限らない。
【0176】
開示される方法及び組成物に、使用され得るか、それらと併用され得るか、それらの調製において使用され得るか、またはそれらの産物である、材料、組成物、及び成分が開示される。これら及び他の材料は、本明細書において開示され、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、群等が開示される場合、これらの化合物の様々な個々及び集約的組み合わせ及び順列のそれぞれに関する具体的な言及が明確に開示されない場合があるが、それぞれが具体的に企図され、本明細書に記載されることが理解される。例えば、ある方法が開示及び考察され、その方法を含む、いくつかの分子に対して行われ得るいくつかの修飾が考察される場合、その方法のあらゆる組み合わせ及び順列、ならびに可能な修飾は、明らかに他の意味が明示されない限り、具体的に企図される。同様に、これらの任意の部分集合または組み合わせもまた、具体的に企図され開示される。この概念は、本開示の全態様に適用され、これには、開示される組成物を使用する方法でのステップが含まれるが、これに限定されない。したがって、実施され得る多様な追加ステップある場合、これらの追加ステップの各々は、開示される方法の任意の具体的な方法のステップまたは方法のステップの組み合わせを用いて実施可能であること、及びそのような組み合わせまたは組み合わせの部分集合の各々が具体的に企図され、開示されるとみなされるべきであることが理解される。
【0177】
本明細書で引用した刊行物及びそれらを引用した理由となる材料は、参照によりそれら全体が具体的に本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0178】
以下は、本発明の方法及び組成物の実施例である。本明細書で提供される概要を踏まえ、他の様々な実施形態を実施してよいことが理解される。
【0179】
実施例1:MMP9プロテアーゼによる融合タンパク質のプロテアーゼ切断
当業者であれば、タンパク質切断アッセイを設定する方法に精通しているであろう。1×PBS(pH7.4)中の100ugのタンパク質を1ugの活性MMP9(Sigmaカタログ番号SAE0078-50またはEnzoカタログBML-SE360)で切断し、室温で最大16時間インキュベートした。消化されたタンパク質は、その後、機能解析で使用するか、または試験前に-80℃で保存することができる。当該技術分野において周知の方法を使用してSDS PAGEにより切断の程度をモニターした。図9に示すとおりである。
【0180】
実施例2:HEK Blueアッセイ
HEK-Blue IL12細胞(InvivoGen)を、40mg/mlのヒト血清アルブミン(HSA)を含むかまたは含まない培地中に250,000細胞/ウェルの濃度にて懸濁播種し、組換え型hIL12、キメラIL12(マウスp35/ヒトp40)または活性化可能なhIL12の希釈系列を用いて、37℃、5%COにて24時間刺激した。非切断型及び切断型の活性化可能なhIL12の活性を試験した。切断型誘導性hIL12を活性MMP9とのインキュベーションによって生成した。IL12活性を、比色に基づくアッセイである試薬QUANTI-Blue(InvivoGen)を使用して、分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)活性の定量により評価した。図7、8、11および13に示すとおりである。
【0181】
実施例3:脾細胞T-Blastアッセイ
T-Blastを、PHAとの6日間インキュベーション及び組換え型hIL12との24時間インキュベーションでマウス脾細胞から誘導した。その後、Tblastを、200,000細胞/ウェルの濃度で、40mg/mlのヒト血清アルブミン(HSA)を含むかまたは含まない培地に懸濁播種し、組換え型hIL12またはキメラIL12(マウスp35/ヒトp40)またはマウスIL12の希釈系列を用いて、37℃、5%COにて72時間刺激した。非切断型及び切断型のIL12の活性を試験した。切断型誘導性hIL12を活性MMP9とのインキュベーションによって生成した。IL12活性を、mIFNγ alphaLISAを使用したIFNγ産生の下流定量によって評価した。
【0182】
実施例4:プロテアーゼ活性化融合タンパク質のインビボ送達は腫瘍増殖の低下をもたらす
キメラポリペプチドを調べてインビボでの生物学的効果を有する可能性があるか否かを決定する。これらの実験では、腹腔内に注入された腫瘍細胞が迅速かつ優先的に、大網に見られる一連の組織化された免疫凝集体である乳斑に最初に結合して増殖する系を使用する(Gerber et al.,Am.J.Pathol.169:1739-52(2006))。この系では、融合タンパク質を腹腔内に複数回送達することができること、また、解離した大網細胞を調べることによって腫瘍増殖を分析できることから、腫瘍増殖に対する融合タンパク質治療の効果を調べる好都合な方法が提供される。これらの実験では、インビトロでMMP2及びMMP9の両方を発現する、急速に増殖する腫瘍細胞株であるColon38細胞株が使用され得る。大網組織は通常、比較的少量のMMP2及びMMP9を発現するが、Colon38腫瘍が大網に存在する場合はMMPレベルが増加する。この腫瘍モデルを使用して、腫瘍増殖に影響を与えるIL-2変異タンパク質融合タンパク質の能力を調べる。Colon38細胞を腹腔内注射し、1日間結合及び増殖させた後、腹腔内により融合タンパク質で連日処置する。7日目、動物を屠殺し、フローサイトメトリー及びコロニー形成アッセイを使用して大綱を腫瘍増殖について調べる。
【0183】
実施例5:CD20を標的とする例示的な活性化可能なインターロイキンタンパク質の構築
活性化可能なインターロイキンドメインの生成
ヒトIL-12p35鎖標準配列は、Uniprot受託番号P29459である。ヒトIL-12p40鎖標準配列は、Uniprot受託番号P29460である。IL-12p35及びIL-12p40を発現構成体にクローニングする。プロテアーゼ切断部位をIL-12p35ドメインとIL-12p40ドメインの間に誘導する。腫瘍内または腫瘍細胞上に存在するCD20ポリペプチドに結合することができるIL-12ポリペプチドを以下のとおり作製する。(1)IFNgポリペプチド配列をコードする核酸配列と、(2)1つ以上のポリペプチドリンカーの核酸配列と、を含有するよう、核酸を生成する。活性化可能なインターロイキンプラスミド構成体は、任意選択のFlag、His、または他のアフィニティータグを有することができ、HEK293または他の適切なヒトもしくは哺乳類の細胞株に電気穿孔し、精製する。検証アッセイには、プロテアーゼ存在下でIL-12刺激に対して応答性であるT細胞を使用するT細胞活性化アッセイが含まれる。
【0184】
scFv CD20結合ドメインの生成
CD20は、Bリンパ球に存在する細胞表面タンパク質の1つである。CD20抗原は、B細胞の非ホジキンリンパ腫(NHL)の90%以上に見られるものを含め、正常及び悪性のプレBリンパ球と成熟Bリンパ球に見られる。抗原は、造血幹細胞、活性化Bリンパ球(形質細胞)及び正常組織では見られない。そのため、主にマウス由来であるいくつかの抗体、すなわち、1F5、2B8/C2B8、2H7、及び1H4が記載されている。
【0185】
したがって、ヒト抗CD20抗体またはヒト化抗CD20抗体を使用して、活性化可能なインターロイキンタンパク質のCD20結合ドメインのscFv配列を生成する。ヒトまたはヒト化のVL及びVHドメインをコードするDNA配列を取得し、構成体のコドンを、任意選択で、ホモサピエンスの細胞での発現用に最適化する。scFvにおけるVLドメインとVHドメインの出現順序を変更し(すなわち、VL-VH、またはVH-VLの配向)、サブユニット「G4S」(配列番号87)または「GS」(配列番号87)の3つのコピー(GS)(配列番号90)が可変ドメイン同士をつないで、scFvドメインを作製する。抗CD20 scFvプラスミド構成体は、任意選択のFlag、His、または他のアフィニティータグを有することができ、HEK293または他の適切なヒトまたは哺乳類の細胞株に電気穿孔し、精製する。検証アッセイには、FACSによる結合分析、Proteonを使用する動態解析、及びCD20発現細胞の染色が含まれる。
【0186】
活性化可能なインターロイキンタンパク質をコードするDNA発現構成体のクローニング
図10に示すとおり、プロテアーゼ切断部位ドメインを有する活性化可能なインターロイキン構成体を使用して、活性化可能なインターロイキンタンパク質を、抗CD20 scFvドメイン及び血清中半減期延長要素(例えば、HSA結合ペプチドまたはVHドメイン)と組み合わせて構築する。CHO細胞での活性化可能なインターロイキンタンパク質の発現用に、すべてのタンパク質ドメインのコード配列を哺乳類発現ベクター系にクローニングする。簡単に言えば、活性化可能なインターロイキンドメイン、血清中半減期延長要素、及びCD20結合ドメインをコードする遺伝子配列を、ペプチドリンカーL1及びL2とともに別々に合成し、サブクローニングする。次いで、得られる構成体を、CD20結合ドメイン-L1-IL-12p35-L2-プロテアーゼ切断ドメイン-L3-IL-12p40-L4-抗CD20 scFv-L5-血清中半減期延長要素の順序で互いに連結して最終構成体を得る。すべての発現構成体は、タンパク質の分泌及び精製を促進するため、それぞれ、N末端シグナルペプチド及びC末端ヘキサヒスチジン(6×His)タグ(配列番号91)のコード配列を含むように設計される。
【0187】
安定的にトランスフェクトされたCHO細胞における活性化可能なインターロイキンタンパク質の発現
CHO細胞発現系(Flp-In(登録商標)、Life Technologies)、CHO-K1チャイニーズハムスター卵巣細胞(ATCC、CCL-61)由来細胞(Kao and Puck,Proc.Natl.Acad Sci USA 1968;60(4):1275-81)を使用する。Life Technologiesが提供する標準細胞培養プロトコルに従って接着細胞を継代培養する。
【0188】
懸濁液中での増殖に適応させるために、細胞を組織培養フラスコから剥離させ、無血清培地に入れる。懸濁液に適応した細胞を、10%DMSOを含む培地で凍結保存する。
【0189】
分泌された活性化可能なインターロイキンタンパク質を安定して発現する組換え型CHO細胞株は、懸濁液適応細胞のトランスフェクションによって生成される。抗生物質ハイグロマイシンBによる選択時、生存細胞密度を週2回測定し、細胞を遠心分離にかけ、最大密度0.1×10生存細胞/mLで新鮮な選択培地に再懸濁する。選択の2~3週間後、活性化可能なインターロイキンタンパク質を安定して発現する細胞プールを回収し、その時点で、細胞を振とうフラスコ内の標準培地に移す。タンパク質ゲル電気泳動またはフローサイトメトリーを実行して、組換え型分泌タンパク質の発現を確認する。安定した細胞プールをDMSO含有培地中で凍結保存する。
【0190】
活性化可能なインターロイキンタンパク質は、安定的にトランスフェクトされたCHO細胞株の10日間流加培養で、細胞培養上清への分泌により産生される。10日後、典型的には、培養生存率75%超で細胞培養上清を回収する。産生培養物から試料を1日おきに採取し、細胞密度と生存率を評価する。回収日に、細胞培養上清を遠心分離によって除去し、以降の使用前に真空ろ過する。
【0191】
細胞培養上清中のタンパク質発現量と産物の完全性をSDS-PAGEで分析する。
【0192】
活性化可能なインターロイキンタンパク質の精製
活性化可能なインターロイキンタンパク質を、CHO細胞培養上清から2段階の手順で精製する。第1のステップで、構築物をアフィニティークロマトグラフィーに供し、その後、第2のステップでSuperdex 200での分取サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に供する。試料は緩衝液交換され、限外ろ過によって典型的濃度の1mg/mL超まで濃縮される。最終試料の純度と均一性(通常90%超)を、還元条件下及び非還元条件下でのSDS PAGE、それに続く抗HSAまたは抗イディオタイプ抗体を使用するイムノブロッティング、ならびに分析SECによってそれぞれ評価する。精製されたタンパク質を、使用時まで等量分割にて-80℃で保存する。
【0193】
実施例6:フローサイトメトリーによる抗原親和性の決定
先行実施例の活性化可能なインターロイキンタンパク質を、ヒトCD20細胞及びカニクイザルCD20細胞に対するそれらの結合親和性について試験する。
【0194】
先行実施例の活性化可能なインターロイキンタンパク質の100μLの系列希釈及び少なくとも1つのプロテアーゼとともにCD20細胞をインキュベートする。FACS緩衝液で3回洗浄した後、細胞を、同じ緩衝液中で0.1mLの10μg/mLマウスモノクローナル抗イディオタイプ抗体とともに氷上で45分間インキュベートする。2回目の洗浄サイクルの後、前回と同じ条件下、細胞を0.1mLの15μg/mL FITC結合ヤギ抗マウスIgG抗体とともにインキュベートする。対照として、細胞を、活性化可能なインターロイキンタンパク質を用いずに抗His IgGとともにインキュベートし、その後、FITC結合ヤギ抗マウスIgG抗体とともにインキュベートする。次に、細胞を再度洗浄し、死細胞を排除するために、2μg/mLのヨウ化プロピジウム(PI)を含有する0.2mLのFACS緩衝液に再懸濁させた。1×10の生細胞の蛍光を、MXPソフトウェアを使用するBeckman-Coulter FC500 MPLフローサイトメーター(Beckman-Coulter,Krefeld,Germany)またはIncyteソフトウェアを使用するMillipore Guava EasyCyteフローサイトメーター(Merck Millipore,Schwalbach,Germany)を使用して測定する。CXPソフトウェア(Beckman-Coulter,Krefeld,Germany)またはIncyteソフトウェア(Merck Millipore,Schwalbach,Germany)を使用して細胞試料の平均蛍光強度を計算する。二次試薬及び三次試薬単独で染色した細胞の蛍光強度値を減算後、次に、その値を、GraphPad Prism(Windows(登録商標)用バージョン6.00、GraphPad Software,La Jolla California USA)の1部位結合(双曲線)を求める方程式を用いたK値の計算に使用する。
【0195】
CD20の結合性及び交差反応性をヒトCD20腫瘍細胞株で評価する。交差反応性のK比を、組換え型ヒト抗原または組換え型カニクイザル抗原を発現するCHO細胞株について決定されたK値を使用して計算する。
【0196】
実施例7:細胞毒性アッセイ
先行実施例の活性化可能なインターロイキンタンパク質を、そのCD20標的細胞に対する免疫応答の媒介についてインビトロで評価する。
【0197】
蛍光標識したCD20REC-1細胞(マントル細胞リンパ腫細胞株、ATCC CRL-3004)を、先行実施例の活性化可能なインターロイキンタンパク質及び少なくとも1つのプロテアーゼの存在下で、ランダムドナーから単離されたPBMCまたはエフェクター細胞としてのCB15 T細胞(標準化T細胞株)とともにインキュベートする。加湿インキュベーター内で37℃にて4時間インキュベートした後、標的細胞から上清への蛍光色素の放出を分光蛍光光度計で測定する。先行実施例の活性化可能なインターロイキンタンパク質を用いずにインキュベートされた標的細胞及びインキュベーション終了時にサポニン添加によって完全に溶解された標的細胞をそれぞれ、陰性対照及び陽性対照として使用する。
【0198】
測定した残存する生きている標的細胞に基づいて、特定の細胞溶解のパーセンテージを次式に従って計算する:[1-(生きている標的(試料)の数/生きている標的(自然発生的))の数]×100%。GraphPad Softwareを使用して非線形回帰/4-パラメータロジスティックフィットによりシグモイド型用量反応曲線及びEC50値を計算する。所与の抗体濃度について得られた溶解値を使用して、Prismソフトウェアを使用した4パラメータロジスティックフィット分析によりシグモイド用量反応曲線を計算する。
【0199】
実施例8:活性化可能なインターロイキンタンパク質の薬物動態
先行実施例の活性化可能なインターロイキンタンパク質を半減時間消失について動物試験で評価する。
【0200】
活性化可能なインターロイキンタンパク質を、伏在静脈への0.5mg/kgのボーラス注射としてカニクイザルに投与する。別のカニクイザル群は、サイズは同等であるが血清中半減期延長要素を欠くサイトカインの投与を受ける。第3及び第4の群はそれぞれ、血清中半減期延長要素を有するサイトカイン、及びCD20と血清中半減期延長要素とを有するサイトカインの投与を受け、いずれも活性化可能なインターロイキンタンパク質とサイズが同等である。各試験群は5匹のサルで構成される。示されている時点で血清試料を採取して段階希釈し、CD20に対する結合ELISAを使用してタンパク質の濃度を決定する。
【0201】
被験物質血漿濃度を使用して薬物動態解析を実施する。各被験物質の群平均血漿データは、投与後時間に対してプロットされた場合、多指数プロファイルに従っている。データは、分布相及び消失相について、ボーラス投与量及び一次速度定数を用いて標準の2コンパートメントモデルにより適合される。静脈内投与のデータの最良適合を求める一般方程式は、c(t)=Ae-αt+Be-βtであり、式中、c(t)は、時間tにおける血漿濃度であり、A及びBはY軸上の切片であり、α及びβはそれぞれ、分布相及び消失相の見かけの一次速度定数である。α相はクリアランスの初期相であり、動物のすべての細胞外液へのタンパク質の分布を反映し、減衰曲線の第2またはβ相の部分は真の血漿クリアランスを表す。そのような方程式を適合させるための方法は、当技術分野で周知である。例えば、A=D/V(α-k21)/(α-β)、B=D/V(β-k21)/(α-β)であり、α及びβ(α>βの場合)は二次方程式r+(k12+k21+k10)r+k21k10=0の根であり、V=分布容積、k10=消失速度、k12=コンパートメント1からコンパートメント2への移動速度、k21=コンパートメント2からコンパートメント1への移動速度、及びD=投与した用量、という推定パラメータを使用する。
【0202】
データ分析:濃度対時間プロファイルのグラフを、KaleidaGraph(KaleidaGraph(商標)V.3.09 Copyright 1986-1997.Synergy Software.Reading,Pa.)を使用して作成する。測定感度未満(LTR)として報告された値はPK分析に含めず、グラフに表わさない。薬物動態パラメータを、WinNonlinソフトウェア(WinNonlin(登録商標)Professional V.3.1 WinNonlin(商標)Copyright 1998-1999.Pharsight Corporation.Mountain View,Calif.)を使用してコンパートメント分析によって決定する。薬物動態パラメータを、Ritschel W A and Kearns G L,1999,IN:Handbook Of Basic Pharmacokinetics Including Clinical Applications,5th edition,American Pharmaceutical Assoc.,Washington,D.C.に記載のように算出する。
【0203】
先行実施例の活性化可能なインターロイキンタンパク質は、血清中半減期延長要素を欠くタンパク質と比較して、消失半減時間の増加等、改善された薬物動態パラメータを有すると予想される。
【0204】
実施例9:異種移植腫瘍モデル
先行実施例の活性化可能なインターロイキンタンパク質を異種移植モデルで評価する。
【0205】
雌の免疫欠損NOD/scidマウスに致死量以下で照射し(2Gy)、4×10のRamos RA1細胞を右背側腹に皮下接種する。腫瘍が100~200mmに達したら、動物を3つの処置群に割り付ける。群2及び群3(動物8匹ずつ)に1.5×10の活性化ヒトT細胞を腹腔内注射する。3日後、群3の動物は引き続き、50μgの先行実施例の活性化可能なインターロイキンタンパク質により合計9回の静脈内投与(1日1回×9日)で処置される。群1及び群2はビヒクルのみで処置する。体重及び腫瘍体積を30日間測定する。
【0206】
先行実施例の活性化可能なインターロイキンタンパク質で処置された動物は、それぞれのビヒクル処置対照群と比較して、腫瘍増殖において統計的に有意な遅延を有することが予想される。
【0207】
本明細書において本発明の好ましい実施形態を示し、また記載してきたが、そのような実施形態が例として提供されているだけであることは当業者には明らかであろう。ここで、当業者は、本発明から逸脱することなく多数の変形、変更、及び代用を想定するであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する様々な代替案が本発明の実施において採用され得ることを理解されるべきである。以下の特許請求の範囲により本発明の範囲が定義されること、ならびにこれらの特許請求の範囲に含まれる方法及び構造、ならびにそれらの均等物が、それにより包含されることが意図される。
実施例10:MC38実験
インビトロでMMP9を発現する、急速に増殖する結腸腺癌細胞株であるMC38細胞株を使用した。この腫瘍モデルを使用して、融合タンパク質が腫瘍増殖に影響を与える能力を調べた。
実施例10a:MC38 IFNa及びIL-12
薬剤及び処置:
【表4】
手順:
潰瘍形成を低減する細胞を移植するためマウスにイソフルランによる麻酔をかけた。CR雌C57BL/6マウスを、側腹皮下への5×10のMC38腫瘍細胞含有0%マトリゲルにより準備した。細胞注入量は0.1mL/マウスであった。マウスは開始日に8~12週齢であった。腫瘍が平均サイズ100~150mmに達した時点でペアマッチを実施し、処置を開始した。体重は、開始時、その後は週2回、終了まで測定された。キャリパーでの測定を週2回、終了まで行った。いかなる有害反応も直ちに報告された。30%超の体重減少が1回観察された、または25%超の体重減少が3回連続して測定された個々の動物は、安楽死させた。平均体重減少が20%超であるかまたは死亡率が10%超のいかなる群も投与を中止し、その群は安楽死させなかったが、回復させる。体重減少が20%超である群内で、個々の体重減少のエンドポイントに達した個体は安楽死させた。体重減少に関連する群処置が元の体重の10%以内の減少まで回復した場合、より低い用量またはより少ない頻度の投与スケジュールで投与を再開した。非処置の体重回復%の例外は、個々の場合に応じて許可された。エンドポイントは腫瘍増殖遅延(TGD)であった。動物を個々にモニターした。実験の終点は、腫瘍体積が1500mmまたは45日目のいずれか早く達した方とした。応答個体はその後も追跡された。終点に達した際、動物を安楽死させる。
【0208】
実施例11:血清アルブミン結合ドメインである遮断部分を含有する、条件付きで活性な融合タンパク質
この実施例では、誘導性活性を有する、すなわち、典型的には遮断部分と活性部分の間のリンカーの切断時に活性部分からの遮断部分の分離によって、誘導されるまでは不活性である、融合タンパク質、好ましくはサイトカインの作製及び活性を記載する。融合タンパク質は、CDRループを介して血清アルブミンと結合する単一抗体可変ドメイン(dAb)を含有し、1つ以上の非CDRループ(例えば、Cループ)を介して活性部分(ここでは抗CD3 scFV)に結合する。血清アルブミン結合性遮断部分は、プロテアーゼ切断可能リンカーを介して活性部分に機能的に連結され、活性部分は、プロテアーゼで切断可能ではないリンカーを介して標的指向性ドメイン(ここでは抗上皮成長因子受容体(EGFR)dAbまたは抗前立腺特異的膜抗原(PSMA)dAb)に機能的に連結される。これらの融合タンパク質は、プロテアーゼ切断可能リンカーの切断、それに続く抑制性アルブミン結合ドメインの遊離時に活性化される不活性タンパク質として投与することができる。融合タンパク質中の抗CD3 scFVは、本開示に記載の融合タンパク質において所望されるサイトカインの代替である。所望のサイトカイン(例えば、IL-2、IL-12、インターフェロン)またはその機能的断片もしくは変異タンパク質、標的指向性ドメイン、及びサイトカインまたはその機能的断片もしくは変異タンパク質と結合及び阻害もするアルブミン結合dAbを含有する、同様の融合タンパク質は、本明細書に記載及び例示される方法を使用して調製することができる。所望のサイトカインまたはその機能的断片もしくは変異タンパク質と結合しその活性を阻害する抗血清アルブミンdAbにより、サイトカインの立体的マスキング(結合している血清アルブミンに対するサイトカインの近接による)及びサイトカインの特異的マスキング(サイトカインへの非CDRループ(例えば、Cループ)を介した結合による)の両方が提供され得る。所望のサイトカインまたはその機能的断片もしくは変異タンパク質と結合しその活性を阻害する抗血清アルブミンdAbは、適切な方法を使用して、例えば、抗血清アルブミン結合dAbの非CDRループ(例えば、Cループ)にアミノ酸配列多様性を導入し、所望のサイトカインへの結合についてスクリーニングすること等によって得ることができる。選択には、ファージディスプレイ等、任意の適切な方法を使用することができる。例えば、使用され得る例示的な抗血清アルブミンdabは以下の配列を有しており、Cループ(太字下線部)内のアミノ酸配列を多様化(例えば、ランダム化)して、得られるdAbを、CDR相互作用を介した血清アルブミンへの結合、及び非CDRループ相互作用を介したサイトカインへの結合についてスクリーニングを行うことができる。所望される場合、既知のサイトカイン結合ペプチドのアミノ酸配列をCループに導入することができる。
【化1】
【0209】
A.ProTriTACのプロテアーゼ活性化はインビトロでの活性の大幅な増強をもたらす
精製ProTriTAC(プロドラッグ)、切断不可能ProTriTAC[プロドラッグ(切断不可能)]、及びプロテアーゼ活性化ProTriTAC(活性薬物)を模倣する組換え型活性薬物断片を、ELISAアッセイにおける組換え型ヒトCD3への結合、フローサイトメトリーアッセイにおける精製したヒト初代T細胞への結合、及びT細胞依存性細胞傷害アッセイにおける機能的効力について試験した。
【0210】
ELISAでは、適応濃度の可溶性ProTriTACタンパク質を、固定化した組換え型ヒトCD3e(R&D Systems)とともに、15mg/mlのヒト血清アルブミンを添加したPBS中で室温にて1時間インキュベートした。SuperBlock(Thermo Fisher)を使用してプレートを遮断し、0.05%Tween-20含有PBSを使用して洗浄し、非競合的抗CD3イディオタイプモノクローナル抗体11D3を使用し、その後、ペルオキシダーゼ標識二次抗体及びTMB-ELISA基質溶液(Thermo Fisher)を使用して検出した。
【0211】
フローサイトメトリーでは、示された濃度の可溶性ProTriTACタンパク質を、2%ウシ胎児血清含有PBSと15mg/mlのヒト血清アルブミンとの存在下、精製したヒト初代T細胞とともに4℃で1時間インキュベートした。プレートを2%ウシ胎児血清含有PBSで洗浄し、AlexaFluor 647標識非競合的抗CD3イディオタイプモノクローナル抗体11D3を使用して検出し、FlowJo 10(FlowJo,LLC)を使用してデータを分析した。
【0212】
T細胞依存性細胞傷害アッセイにおける機能的効力の場合、示された濃度の可溶性ProTriTACタンパク質を、精製した休止ヒトT細胞(エフェクター細胞)及びHCT116がん細胞(標的細胞)とともにインキュベートし、その際、エフェクター:標的細胞の比を10:1にして37℃で48時間インキュベートした。HCT116標的細胞株はルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定的にトランスフェクトされており、ONE-Glo(Promega)により特定のT細胞媒介性細胞殺滅を測定することができた。
【0213】
B.ProTriTACはげっ歯類腫瘍異種移植モデルにおいて強力なプロテアーゼ依存性の抗腫瘍活性を示す
免疫不全状態NCGマウスにおける、増殖したヒトT細胞と混合したHCT116皮下異種移植腫瘍において、ProTriTACを、そのインビボでの抗腫瘍活性について評価した。具体的には、第0日目、マウス1匹につき、5×106のHCT116細胞を2.5×106の増殖したT細胞と混合した。ProTriTACの投与を翌日から開始し、1日1回×10のスケジュールで腹腔内注入により実施した。示されている時間において、腫瘍体積測定値をキャリパー測定を使用して求め、式V=(長さ×幅×幅)/2を使用して計算した。
【0214】
C.例示的ProTriTAC三重特異性分子の発現、精製及び安定性
タンパク質産生
誘導性融合タンパク質分子をコードする配列を、哺乳類発現ベクターpcDNA 3.4(Invitrogen)内に、リーダー配列の後、6×ヒスチジンタグの前にクローニングした(配列番号91)。Expi293F細胞(Life Technologies A14527)をExpi 293培地中0.2~8×1e6細胞/mlでOptimum Growth Flasks(Thomson)内に浮遊状態で維持した。Expi293 Expression System Kit(Life Technologies、A14635)プロトコルに従ってExpi293細胞に精製プラスミドDNAをトランスフェクトし、トランスフェクション後4~6日間維持した。別の方法では、融合タンパク質分子をコードする配列を哺乳類発現ベクターpDEF38(CMC ICOS)にクローニングしてCHO-DG44 dhfr-細胞にトランスフェクトし、安定なプールを生成し、精製前に最大12日間、産生培地で培養した。条件培地中の例示的融合タンパク質の量は、標準曲線用の対照融合タンパク質を使用して、プロテインAチップ付きOctet RED 96装置(ForteBio/Pall)を使用して定量した。いずれかの宿主細胞からの条件培地をろ過し、アフィニティークロマトグラフィー及び脱塩クロマトグラフィーによって部分的に精製した。続いて、融合タンパク質は、イオン交換によってポリッシュされ、画分プールと同時に添加物含有中性緩衝液中に製剤化される。最終純度を、SDS-PAGE、及びAcquity BEH SEC 200 1.7u 4.6×150mmカラム(Waters Corporation)を使用する分析SECを使用して評価し、1290 LC Systemで中性pHの添加物を用いて水性/有機移動相に分割し、Chemstation CDSソフトウェア(Agilent)でピークを積分した。CHO宿主細胞から精製された融合タンパク質は以下に示すSDS-PAGEに示す。
【0215】
安定性評価
2つの製剤にして精製された融合タンパク質を滅菌チューブにさらに等量分割し、1回が-80℃及び室温で1時間超で構成される凍結融解サイクルを5回、または37℃で1週間のインキュベーションによってストレスを与えた。ストレスを受けた試料は、UV透過96ウェルプレート(Corning 3635)をSpectraMax M2及びSoftMaxProソフトウェア(Molecular Devices)とともに使用したUV分光測定法、SDS-PAGE、ならびに分析SECによって濃度及び濁度について評価し、ストレスを受けていない対照試料についての同じ分析と比較した。293宿主細胞から精製された単一の例示的ProTriTAC分子についての対照及びストレスを受けた試料の分析SECによるクロマトグラムのオーバーレイを以下に示す。
【0216】
結果は、ProTriTACがCHO安定プールからの通常のTriTACと同等の収率で生成されたこと、また、タンパク質が、凍結融解の繰り返し後及び37℃で1週間の後も安定であったことを示している。
【0217】
D.3週間のカニクイザル薬物動態試験におけるインビボでのProTriTACの機能的マスキング及び安定性の実証
PSMA指向性ProTriTAC(配列番号74)、切断不可能ProTriTAC(配列番号75)、マスキングなし/切断不可能TriTAC(配列番号78)、及び活性薬物を模倣するプロテアーゼ活性化ProTriTAC(配列番号76)の1回量をカニクイザルに0.1mg/kgで静脈内注射により投与した。示されている時点で血漿試料を採取した。ProTriTACの濃度を、ビオチン化組換え型ヒトPSMA(R&D systems)を用いたリガンド結合アッセイ、及びスルホタグ付き抗CD3イディオタイプ抗体クローニング11D3をMSDアッセイ(Meso Scale Diagnostic, LLC)で使用して決定した。薬物動態パラメータを、静脈内ボーラス投与経路と一致する非コンパートメント方法を使用したPhoenix WinNonlin薬物動態ソフトウェアを使用して推定した。
【0218】
インビボでのプロドラッグ変換速度を計算するため、循環血中活性薬物の濃度を、以下の連立微分方程式[Pはプロドラッグの濃度であり、Aは活性薬物の濃度であり、kは循環血中プロドラッグ活性化の速度であり、kc,Pはプロドラッグのクリアランス速度であり、kc,Aは活性薬物のクリアランス速度である]を解くことにより推定した。
【数1】
【0219】
プロドラッグ、活性薬物、及び切断不可能なプロドラッグ対照(kc,NCLV)のクリアランス速度をカニクイザルにおいて経験的に決定した。循環血中プロドラッグ活性化の速度を推定するため、切断可能なプロドラッグと切断不可能なプロドラッグの間のクリアランス速度の差は、循環血中の非特異的な活性化のみから生じると仮定した。したがって、循環血中でプロドラッグが変換されて活性薬物になる速度は、切断不可能なプロドラッグのクリアランス速度から切断可能なプロドラッグのクリアランス速度を減算することによって推定した。
【数2】
【0220】
循環血中プロドラッグの初期濃度を経験的に決定し、活性薬物の初期濃度をゼロと仮定した。
【0221】
結果及び考察
この実施例11の結果は、サイトカインまたはその機能的断片もしくは変異タンパク質あるいは抗CD3 scFV等、所望の治療活性を有するポリペプチドを含有する融合タンパク質は、治療活性が、血清アルブミンと活性ポリペプチドの両方に結合するマスキングドメインによってマスキングされるよう調製することができることを示す。マスキングドメインは、プロテアーゼ切断可能リンカーを介して活性ドメインに機能的に連結されている。結果は、この型の融合タンパク質が、腫瘍等、治療活性の所望の位置でのプロテアーゼ切断時に活性化される、不活性タンパク質として投与可能であることを示している。
【0222】
実施例11で使用される融合タンパク質のアミノ酸配列を配列番号71~78として示す。
【0223】
例としての融合タンパク質構成体を表3に詳細に示す。表3において、「L」は「リンカー」の略語であり、「cleav.link.」は「切断可能なリンカー」の略語である。他の略語で「mIFNg」はマウスインターフェロンガンマ(IFNg)を示し、「hAlbumin」はヒト血清アルブミン(HSA)を示し、「mAlbumin」はマウス血清アルブミンを示す。
表3:構成体順列表
【表3-1】
【表3-2】
配列表
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【表5-6】
【表5-7】
【表5-8】
【表5-9】
【表5-10】
【表5-11】
【表5-12】
【表5-13】
【表5-14】
参照による組み込み
【0224】
本明細書で引用したすべての特許及び非特許刊行物の開示全体は、それぞれ、あらゆる目的のために参照することによりその全体が組み込まれる。
【0225】
他の実施形態
上記の開示は、独立した有用性を有する複数の別個の発明を包含し得る。これらの発明の各々を、その好ましい形態(複数可)で開示してきたが、多数の変形が可能であるため、本明細書に開示及び例示されるその具体的な実施形態は限定的な意味で考慮されるべきではない。本開示の主題は、本明細書で開示される様々な要素、特徴、機能、及び/または特性の、すべての新規かつ非自明の組み合わせと組み合わせ構成要素が含まれる。以下の特許請求の範囲は、特に、新規かつ非自明であるとみなされる特定の組み合わせ及び組み合わせ構成要素を指摘する。特徴、機能、要素、及び/または特性の他の組み合わせ及び組み合わせ構成要素で具体化された発明は、本出願、本出願からの優先権を主張する出願、または関連出願において特許請求され得る。そのような特許請求の範囲もまた、異なる発明を対象とするのか、または同じ発明を対象とするのか、また、元の特許請求の範囲と比較して範囲が広いか、狭いか、等しいか、もしくは異なるかということにかかわらず、本開示の発明の主題に含まれるとみなされる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)

[A]-[L1]-[D]または[A]-[L1]-[D]-[L2]-[B]または[B]-[L1]-[A]-[L1]-[D]
[式中、
Aは、インターロイキン12(IL-12)ポリペプチドであり、
Bは、半減期延長要素であり、
L1及びL2はそれぞれ独立してポリペプチドリンカーであり、ここで、L1は、プロテアーゼ切断可能なポリペプチドリンカーであり、L2は、任意選択でプロテアーゼ切断可能であるポリペプチドリンカーであり、
Dは、IL-12遮断部分である]の融合ポリペプチドであって、
前記融合ポリペプチドは減弱されたIL-12受容体アゴニストであるが、(i)前記L1プロテアーゼ切断可能なポリペプチドリンカーの切断時、または(ii)前記L2がプロテアーゼ切断可能なポリペプチドリンカーである場合はL1とL2の両方の切断時、生成される前記融合ポリペプチドの前記IL-12ポリペプチド含有断片は、天然に存在するIL-12ポリペプチドと同等の効力及び半減期のIL-12受容体アゴニストである、前記融合ポリペプチド。
(項目2)
a)インターロイキン12(IL-12)ポリペプチド[A]、
b)IL-12遮断部分[D]、及び
c)プロテアーゼ切断可能なポリペプチドリンカー[L]
のそれぞれのうちの少なくとも1つを含む融合ポリペプチドであって、
前記IL-12ポリペプチドと前記IL-12遮断部分とは、前記プロテアーゼ切断可能なポリペプチドリンカーによって機能的に連結され、前記融合ポリペプチドはIL-12受容体活性化活性が減弱されており、前記融合ポリペプチドの前記IL-12受容体活性化活性は、前記プロテアーゼ切断可能なポリペプチドリンカーの切断により産生される前記IL-12ポリペプチドを含有するポリペプチドのIL-12受容体活性化活性よりも少なくとも約10倍低い、前記融合ポリペプチド。
(項目3)
[A]は前記融合ポリペプチドのN末端である、項目2に記載の融合ポリペプチド。
(項目4)
[A]は、式
[A1]-[L3]-[A2]または[A2]-[L3]-[A1]を有し、式中、
A1は、IL-12p40サブユニットポリペプチドであり、
A2は、IL-12p35サブユニットポリペプチドであり、
L3は、任意選択でプロテアーゼ切断が可能なポリペプチドリンカーである、項目1~3のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目5)
[A]は、式[A1]-[L3]-[A2]を有し、L3は、プロテアーゼ切断が可能ではない、項目4に記載の融合ポリペプチド。
(項目6)
前記切断型ポリペプチドの断片を含有する前記IL-12ポリペプチドのアゴニスト活性が、前記非切断型融合ポリペプチドのアゴニスト活性と比較して少なくとも10倍増大している、項目1~5のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目7)
前記アゴニスト活性を、HEK Blueレポーター細胞アッセイを使用して評価する、項目6に記載の融合ポリペプチド。
(項目8)
各プロテアーゼ切断可能ポリペプチドリンカーは、独立して、カリクレイン、トロンビン、キマーゼ、カルボキシペプチダーゼA、カテプシンG、カテプシンL、エラスターゼ、PR-3、グランザイムM、カルパイン、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、ADAMメタロプロテアーゼ、プラスミノーゲン活性化因子、カテプシン、カスパーゼ、トリプターゼ、及び腫瘍細胞表面プロテアーゼからなる群から選択されるプロテアーゼによる切断を受けることができる配列を含む、項目1~7のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目9)
各プロテアーゼ切断可能ポリペプチドは、独立して、同じプロテアーゼのための2つ以上の切断部位、もしくは異なるプロテアーゼによって切断される2つ以上の切断部位を含むか、または前記プロテアーゼ切断可能ポリペプチドのうちの少なくとも1つが、2つ以上の異なるプロテアーゼの切断部位を含む、項目8に記載の融合ポリペプチド。
(項目10)
IL-12遮断部分は、前記融合ポリペプチドによる前記IL-12受容体の活性化を阻害する、項目1~9のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目11)
前記IL-12遮断部分は前記IL-12ポリペプチドに非共有結合で結合する、項目1~10のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目12)
前記IL-12遮断部分は前記IL-12 p40サブユニットポリペプチドと結合する、項目1~11のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目13)
前記IL-12遮断部分は前記IL-12 p35サブユニットポリペプチドと結合する、項目1~11のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目14)
前記IL-12遮断部分はIL-12 p70と結合する、項目1~11のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目15)
前記IL-12遮断部分は、前記IL-12に対する同族受容体のリガンド結合ドメインもしくは断片、前記IL-12ポリペプチドと結合する単一ドメイン抗体、FabもしくはscFv、または抗体もしくは抗体断片であって、単一ドメイン抗体、Fab、及び前記IL-12の受容体と結合するscFvから選択される前記抗体もしくは抗体断片、を含む、項目1~14のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目16)
前記IL-12遮断部分は半減期延長要素でもある、項目1~15のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目17)
前記IL-12遮断部分は、前記IL-12のアゴニスト活性を立体的に遮断する、項目1~10または16のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目18)
前記IL-12遮断部分は、ヒト血清アルブミンであるか、またはヒト血清アルブミンを動員する抗原結合ポリペプチドである、項目17に記載の融合ポリペプチド。
(項目19)
前記IL-12は、前記プロテアーゼ切断可能なポリペプチドリンカーがプロテアーゼによって切断された後、前記IL-12遮断部分から自由に解離する、項目1~18のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目20)
前記融合ポリペプチドは前記IL-2受容体に結合する、項目1~19のいずれかに記載の融合ポリペプチド。
(項目21)
少なくとも1つの半減期延長要素をさらに含む、項目1~20のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目22)
前記半減期延長要素は、ヒト血清アルブミンであるか、またはヒト血清アルブミンと結合する抗原結合ポリペプチドである、項目21に記載の融合ポリペプチド。
(項目23)
前記半減期延長要素は免疫グロブリンFcである、項目21に記載の融合ポリペプチド。
(項目24)
前記非共有結合の会合はpH依存性である、項目11に記載の融合ポリペプチド。
(項目25)
IL-12受容体活性化は、標準的なインビトロ受容体活性化アッセイ、ならびにモルに基づく等量の前記IL-12ポリペプチド及び融合ポリペプチドを使用して決定される、項目1~24のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目26)
IL-12は、前記プロテアーゼ切断可能配列がプロテアーゼによって切断された後、前記IL-12遮断部分及び/または半減期延長要素から自由に解離する、項目1~25のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目27)
半減期延長要素[B]をさらに含み、式
[B]-[L1]-[A]-[L2]-[D]
[式中、L1及びL2はそれぞれ独立してポリペプチドリンカーであり、L1は、プロテアーゼ切断可能なポリペプチドリンカーであり、L2は、任意選択でプロテアーゼ切断が可能なポリペプチドリンカーである]を有する、項目2~23のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目28)
L2はプロテアーゼ切断可能リンカーである、項目27に記載の融合ポリペプチド。
(項目29)
L1は、第1のプロテアーゼに対する基質であり、L2は、第2のプロテアーゼに対する基質である、項目1または3~28のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目30)
腫瘍特異抗原結合ペプチドをさらに含む、項目1~29のいずれかに記載の融合ポリペプチド。
(項目31)
前記腫瘍特異抗原結合ペプチドは、切断不可能なリンカーによって前記IL-12ポリペプチドに連結される、項目30に記載の融合ポリペプチド。
(項目32)
前記腫瘍特異的抗原結合ペプチドは、切断可能なリンカーによって、前記IL-12ポリペプチド、前記半減期延長要素または前記IL-12遮断部分に連結される、項目30に記載の融合ポリペプチド。
(項目33)
IL-12のドメイン間にリンカーをさらに含む、項目1~32のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目34)
前記プロテアーゼ切断可能なポリペプチドリンカーのプロテアーゼ切断により産生される前記IL-12ポリペプチド含有断片の血清中半減期は、天然に存在するIL-12の半減期と同等である、項目3~32のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目35)
項目1~34のいずれかに記載のポリペプチドをコードする核酸。
(項目36)
項目35に記載の核酸を含むベクター。
(項目37)
項目36に記載のベクターを含む宿主細胞。
(項目38)
項目37に記載の宿主細胞を、所望のポリペプチドの発現及び採取に適切な条件下で培養することを含む、医薬組成物を製造する方法。
(項目39)
i)有効量の、項目1~34のいずれかに記載の融合ポリペプチドと、ii)薬理学的に許容される添加物とを含む医薬組成物。
(項目40)
腫瘍を治療するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の、項目1~34のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドを投与することを含む、前記方法。
(項目41)
医薬品として使用するための、項目1~34のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目42)
腫瘍の治療における、それを必要とする対象での使用のための、項目1~34のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
(項目43)
腫瘍を治療することを、それを必要とする対象において行うための医薬組成物であって、有効成分として、項目1~34のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドを含む、前記医薬組成物。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2
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図4-1】
図4-2】
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図8-2】
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【配列表】
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