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特許7497342電力システム熱負荷の予測方法及び予測装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】電力システム熱負荷の予測方法及び予測装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240603BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20240603BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20240603BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/00 170
H02J3/00 130
G06Q10/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021514413
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 CN2019107946
(87)【国際公開番号】W WO2020063689
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】201811114080.8
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521101789
【氏名又は名称】新智数字科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ENNEW DIGITAL TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 105, 1/F, Building 1, 0388 Qiu, Huaxiang Road Economic and Technological Development Zone Langfang, Hebei 065001, China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】黄 信
(72)【発明者】
【氏名】劉 勝偉
【審査官】山崎 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-084805(JP,A)
【文献】特開2016-029320(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104036356(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104239964(CN,A)
【文献】Li Jie, et al.,Short-term load forecasting based on improved extreme learning machine,2017 IEEE 2nd International Conference on Big Data Analysis,IEEE,2017年10月23日,p.584-588
【文献】Jianfeng Wang, et al.,Short-term load forecasting based on piecewise similar selecting method,Engineering Journal of Wuhan University,Vol. 49,No.3,[online],2016年12月31日,p.435-440,[検索日 2023.08.16],インターネット,<URL:http://www.xml-data.org/WHDXXBGXB/html/54e24c5f-ce63-46d0-989f-cb3db4d6c98b.htm>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H02J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラム命令に関連するハードウェアが、
電力システム熱負荷の日々の時系列データである履歴デイリーデータを前処理するステップS1と、
前処理後の前記履歴デイリーデータからデータ日基準線を取得するステップS2と、
取得した前記データ日基準線を複数の時間帯に分割するステップS3と、
前記履歴デイリーデータと前記データ日基準線との傾向類似値を分割された時間帯毎にそれぞれ算出し、前記傾向類似値が予め定めた基準値より大きい日の前記履歴デイリーデータを選択するステップS4と、
ステップS4で選択された日の前記履歴デイリーデータの前記時間帯毎の時系列データを行列要素として並べた類似系列行列を形成するステップS5と、
構築したエクストリームラーニングマシンELMに前記類似系列行列を入力してトレーニングし、予測モデルを取得し、電力システム熱負荷の予測を行うステップS6と、
実行し、
前記ステップS2は、前記ステップS1において前処理した複数の日数分の前記履歴デイリーデータのうち、予測されるべき日に最も近い予め設定された複数の日数分の前記履歴デイリーデータを選択し、選択した複数の日数分の前記履歴デイリーデータについて対応する時点のデータの平均値を算出し、1日のすべての時点について前記平均値を算出することにより、前記平均値を値とするデータ日基準線を求め、
前記ステップS3は、前記データ日基準線が極大値および極小値となる時点に基づいて、前記データ日基準線を分割することにより、前記データ日基準線を複数の前記時間帯に分けることを特徴とする電力システム熱負荷の予測方法。
【請求項2】
ステップS1は、電力システム熱負荷の前記履歴デイリーデータに対して、ノイズ除去、充填及び正規化処理を行うことを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力システム熱負荷の予測方法。
【請求項3】
ステップS2は、前記予測されるべき日に最も近い予め設定された複数の日数の前記履歴デイリーデータから前記データ日基準線を求める
ことを特徴とする請求項1に記載の電力システム熱負荷の予測方法。
【請求項4】
ステップS3は、前記データ日基準線のうち、隣接する2つのポイントとの傾きの差が予め設定された閾値よりも大きいポイントと、前記極大値および極小値となる時点において、前記データ日基準線を分割することにより、前記時間帯に分ける、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力システム熱負荷の予測方法。
【請求項5】
データ処理モジュール、基準線決定モジュール、時間分割モジュール、類似算出モジュール、サンプル選別モジュール及びトレーニングモデルモジュールを含み、
前記データ処理モジュールは、電力システム熱負荷の日々の時系列データである履歴デイリーデータを前処理するために用いられ、
前記基準線決定モジュールは、前記データ処理モジュールで前処理された前記履歴デイリーデータからデータ日基準線を取得するために用いられ、
前記時間分割モジュールは、前記基準線決定モジュールで取得されたデータ日基準線を複数の時間帯に分割するために用いられ、
前記類似算出モジュールは、前記履歴デイリーデータと前記データ日基準線との傾向類似値を分割された時間帯毎にそれぞれ算出し、前記傾向類似値が予め定めた基準値より大きい日の前記履歴デイリーデータを選択するために用いられ、
前記サンプル選別モジュールは、前記類似算出モジュールにより選択された日の前記履歴デイリーデータの前記時間帯毎の時系列データを行列要素として並べた類似系列行列を形成するために用いられ、
前記トレーニングモデルモジュールは、構築したエクストリームラーニングマシンELMに、前記サンプル選別モジュールにより形成された前類似系列行列を入力してトレーニングし、予測モデルを取得し、電力システム熱負荷の予測を行うために用いられ、
前記基準線決定モジュールは、前記データ処理モジュールが前処理した複数の日数分の前記履歴デイリーデータのうち、予測されるべき日に最も近い予め設定された複数の日数分の前記履歴デイリーデータを選択し、選択した複数の日数分の前記履歴デイリーデータについて対応する時点のデータの平均値を算出し、1日のすべての時点について前記平均値を算出することにより、前記平均値を値とするデータ日基準線を求め、
前記時間分割モジュールは、前記データ日基準線が極大値および極小値となる時点に基づいて、前記データ日基準線を分割することにより、前記データ日基準線を複数の時間帯に分ける
ことを特徴とする電力システム熱負荷の予測装置。
【請求項6】
前記データ処理モジュールは、電力システム熱負荷の前記履歴デイリーデータに対して、ノイズ除去、充填及び正規化処理を行うためにもちいられ、
かつ/または、
前記基準線決定モジュールは、前記予測されるべき日に最も近い予め設定された複数の日数の前記履歴デイリーデータから前記データ日基準線を求める、
ことを特徴とする請求項5に記載の電力システム熱負荷の予測装置。
【請求項7】
前記時間分割モジュールは、前記データ日基準線のうち、隣接する2つのポイントとの傾きの差が予め設定された閾値よりも大きいポイントと、前記極大値および極小値となる時点において、前記データ日基準線を分割することにより、前記時間帯に分ける、
ことを特徴とする請求項5に記載の電力システム熱負荷の予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータ分析技術分野に関し、特に電力システム熱負荷の予測方法及び予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
時系列は、ファンドや株式のリアルタイム取引データ、小売市場の日販量データ、プロセス工業のセンサーモニタリングデータ、天文観測データ、航空宇宙レーダー、衛星モニタリングデータ、リアルタイム天気温度及び大気質指数など、人々の日常生活および工業生産に広く存在している。工業界ではこれまで、類似度照会方法、分類方法、クラスタリング方法、予測方法、異常検出方法など、多くの時系列分析方法が提案されてきた。その中、多くの方法は時系列の類似度判断を必要とするため、時系列類似度測定方法は工業界で広い応用需要がある。
【0003】
しかし、従来の電力システム熱負荷予測は、いずれも単一の天候要因に基づいて類似な傾向を選択するアルゴリズムであり、同一負荷日の異なる時間帯において負荷変動に影響する要因は考慮されていない。よって、熱負荷の予測精度に影響を与える。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施例は動的な分割とエクストリームラーニングマシンアルゴリズムに基づいて将来24時間の負荷傾向を予測し、予測の正確性を向上させる電力システム熱負荷の予測方法及び予測装置を提供する。
【0005】
第1形態では、本発明の実施例は、
電力システム熱負荷の履歴データを前処理するステップS1と、
前処理後の履歴デイリーデータからデータ日基準線を取得するステップS2と、
取得したデータ日基準線をいくつかの時間帯に分割するステップS3と、
履歴デイリーデータを選別し、選別後の履歴デイリーデータとデータ日基準線との傾向類似値を分割された時間帯毎にそれぞれ算出するステップS4と、
予め設定された基準値より大きい傾向類似値に対応する履歴デイリーデータを選択して類似系列行列を形成するステップS5と、
構築したエクストリームラーニングマシンELMに類似系列行列を入力してトレーニングし、予測モデルを取得し、電力システム熱負荷の予測を行うステップS6と、
を含む電力システム熱負荷の予測方法を提供する。
【0006】
好ましくは、
ステップS6は、具体的に、電力システム熱負荷の履歴デイリーデータに対して、ノイズ除去、充填及び正規化処理を行うことを含む。
【0007】
好ましくは、
ステップS2は、具体的に、予測されるべき日に最も近い予め設定された日数のデータ平均値をデータ日基準線とすることを含む。
【0008】
好ましくは、
ステップS3は、具体的に、データ日基準線の極値点に基づいて、データ日基準線をいくつかの時間帯に分割することを含む。
【0009】
好ましくは、
ステップS3は、具体的に、データ日基準線のうち、隣接する2つのポイントとの傾きの差が予め設定された閾値よりも大きいポイントと極値点とに基づいて、データ日基準線をいくつかの時間帯に分割することを含む。
【0010】
好ましくは、
ステップS4は、具体的に、環境要因によって履歴日と予測されるべき日との類似値を算出し、予め設定された閾値より大きい類似値に対応する類似履歴日を選択することと、
類似履歴デイリーデータとデータ日基準線との傾向類似値を、分割された時間帯毎にそれぞれ算出することと、を含む。
【0011】
第2形態では、本発明の実施例は、
データ処理モジュール、基準線決定モジュール、時間分割モジュール、類似算出モジュール、サンプル選別モジュール及びトレーニングモデルモジュールを含み、
前記データ処理モジュールは、電力システム熱負荷の履歴デイリーデータを前処理するために用いられ、
前記基準線決定モジュールは、前記データ処理モジュールで前処理された履歴デイリーデータからデータ日基準線を取得するために用いられ、
前記時間分割モジュールは、前記基準線決定モジュールで取得されたデータ日基準線をいくつかの時間帯に分割するために用いられ、
前記類似算出モジュールは、履歴デイリーデータを選別し、選別後の履歴デイリーデータとデータ日基準線との傾向類似値を分割された時間帯毎にそれぞれ算出するために用いられ、
前記サンプル選別モジュールは、予め設定された基準値より大きい傾向類似値に対応する履歴デイリーデータを選択して類似系列行列を形成するために用いられ、
前記トレーニングモデルモジュールは、構築したエクストリームラーニングマシンELMに、前記サンプル選別モジュールによる類似系列行列を入力してトレーニングし、予測モデルを取得し、電力システム熱負荷の予測を行うために用いられる電力システム熱負荷の予測装置を提供する。
【0012】
好ましくは、前記データ処理モジュールは、具体的に、電力システム熱負荷の履歴デイリーデータに対して、ノイズ除去、充填及び正規化処理を行うためにもちいられる。
【0013】
好ましくは、前記基準線決定モジュールは、具体的に、予測されるべき日に最も近い予め設定された日数のデータ平均値をデータ日基準線とするために用いられる。
【0014】
好ましくは、前記時間分割モジュールは、具体的に、データ日基準線の極値点に基づいて、データ日基準線をいくつかの時間帯に分割するために用いられる。
【0015】
好ましくは、前記時間分割モジュールは、具体的に、データ日基準線のうち、隣接する2つのポイントとの傾きの差が予め設定された閾値よりも大きいポイントと極値点とに基づいて、データ日基準線をいくつかの時間帯に分割するために用いられる。
【0016】
好ましくは、前記類似算出モジュールは、具体的に、環境要因によって履歴日と予測されるべき日との類似値を算出し、予め設定された閾値より大きい類似値に対応する類似履歴日を選択するとともに、類似履歴デイリーデータとデータ日基準線との傾向類似値を、分割された時間帯毎にそれぞれ算出するために用いられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、従来技術と比較すると、少なくとも以下のような効果を有する。
【0018】
1、知能学習能力を持ち、予測の正確性を高めることができる。
2、傾向による分割の時系列表示方法を採用し、電力システムの熱負荷時系列の異なる傾向に基づいてそれを分割して、熱負荷時系列における重要な変化傾向情報を効果的に保留するので、熱負荷の変化傾向をより正確的に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下、本発明の実施例または従来技術における技術案をより明確に説明するために、実施例または従来技術の説明に必要な図面について簡単に説明する。明らかに、以下の説明における図面は、本発明に記載のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を払うことなく、これらの図面に基づいて他の図面を取得可能である。
【0020】
図1】本発明の一実施例によって提供される電力システム熱負荷の予測方法のフローチャートである。
図2】本発明の一実施例によって提供される電力システム熱負荷の予測装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の目的、技術案及び利点をより明確にするために、本発明の技術案を、本発明の実施例の図面に合わせて明確かつ完全的に説明する。もちろん、説明される実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明における実施例により、当業者が創造的な労働を行わないうえで取得した他の全ての実施例は、本発明の範囲に属する。
【0022】
図1に示すように、本発明の実施例は、
電力システム熱負荷の履歴データを前処理するステップS1と、
前処理後の履歴デイリーデータからデータ日基準線を取得するステップS2と、
取得したデータ日基準線をいくつかの時間帯に分割するステップS3と、
履歴デイリーデータを選別し、選別後の履歴デイリーデータとデータ日基準線との傾向類似値を分割された時間帯毎にそれぞれ算出するステップS4と、
予め設定された基準値より大きい傾向類似値に対応する履歴デイリーデータを選択して類似系列行列を形成するステップS5と、
構築したエクストリームラーニングマシンELMに類似系列行列を入力してトレーニングし、予測モデルを取得し、電力システム熱負荷の予測を行うステップS6と、
を含む電力システム熱負荷の予測方法を提供する。
【0023】
本実施例では、エクストリームラーニングマシンELMニューラルネットワークが構築され、ネットワークは、入力層、隠れ層、出力層の3層に分けられる。その学習プロセスは、隠れ層ノードパラメータを調整する必要がなく、入力層から隠れ層への特徴マッピングは、ランダムであってもよいし、人為的に与えられてもよい。その学習プロセスは大域的極小値に収束しやすい。付与されたN組のトレーニングデータについて、ELMを用いてL個の隠れ層とM個の出力層を含むものに対して学習を行うには、下記のステップが含まれる。(1)ノードパラメータをランダムに割り当てる:算出開始時にSLFNのノードパラメータがランダムに生成され、すなわち、ノードパラメータと入力データとが独立している。ここで、ランダム生成は任意の連続確率分布(continuous probability distribution)に従うことができる。(2)隠れ層の出力行列を算出する:隠れ層の出力行列の大きさはN行M列であり、すなわち、行数が入力されたトレーニングデータ数、列数が隠れ層ノード数である。出力行列は本質的にN個の入力データをL個のノードにマッピングしたものである。(3)出力重みを求める:隠れ層の出力重み行列の大きさはL行M列であり、すなわち行数が隠れ層ノード数、列数が出力層ノード数である。ELMアルゴリズムでは、他のアルゴリズムと異なり、出力層について誤差ノードを持たなくてもよい(あるいは持たないように提案される)ので、出力変数が1つしかない場合に、出力重み行列はベクトルとなる。ELMアルゴリズムのコアは、エラー関数が最小になるように出力重みを求めることである。
【0024】
本実施例では知能学習能力を有し、予測の正確性を高めることができる。傾向による分割の時系列表示方法を採用し、電力システムの熱負荷時系列の異なる傾向に基づいてそれを分割し、熱負荷時系列における重要な変化傾向情報を効果的に保持し、熱負荷の変化傾向をより正確に予測することができる。
【0025】
本出願の全ての実施例は、特定の前提条件の下で確立されていることが説明されるべきである。この仮定条件には、1時間あたりの温度や湿度などの過去のリアルタイムの気象要因が既知であると仮定すること、24時間予測されるべき気象要素が既知であると仮定すること(気象プラットフォームから入手可能)が含まれる。
【0026】
本発明の一実施例において、ステップS6は、具体的に、電力システム熱負荷の履歴デイリーデータに対して、ノイズ除去、充填及び正規化処理を行うことを含む。
【0027】
本実施例では、履歴デイリーデータに対する前処理によりデータ精度を向上させ、熱負荷予測の正確性をさらに保証することができる。
【0028】
本発明の一実施例において、ステップS2は、具体的に、予測されるべき日に最も近い予め設定された日数のデータ平均値をデータ日基準線とすることを含む。
【0029】
本実施例では、時系列データにとって相対的に重要な影響点は、通常、局所の極大値点及び極小値点であるが、短期負荷については、予測されるべき日に近い時点ほど予測への影響が大きく、一般に「近大遠小」という原則と呼ばれ、本出願では、予測されるべき日に最も近い予め設定された日数のデータ平均値をデータ日基準線として選択する。例えば、予め設定された日数が3日であれば、同一時点で3つの履歴データがあり、同一時点についてその平均値を求めると、その時点の基準値が得られ、全ての時点について算出が完了すればデータ日基準線が得られる。その他、予測されるべき日と履歴日の気象傾向類似性が上位となるN日間の対応するデータから、その平均値をデータ日基準線として求めるようにしてもよい。具体的なNの取り方は、実際の状況に応じて決めることができる。例えば、予測されるべき日の気象傾向との類似度がそれぞれA、B、C、D、E、F、G、H、I、M、Pである10日間の履歴データがあり、かつ、A>B>C>D>E>F>G>H>I>M>Pであり、Nが3をとると、A、B、Cに対応するデータが選択されるようになる。
【0030】
本発明の一実施例において、ステップS3は、具体的に、データ日基準線の極値点に基づいて、データ日基準線をいくつかの時間帯に分割することを含む。
【0031】
本実施例では、データ日基準線は、極大値および極小値によっていくつかの時間帯に分割される。たとえば、24時間において、2つの極大値と2つの極小値があり、4つのキーポイントがあるため、データ日基準線は5つのセグメントに分割される。
【0032】
本発明の一実施例において、ステップS3は、具体的に、データ日基準線のうち、隣接する2つのポイントとの傾きの差が予め設定された閾値よりも大きいポイントと極値点とに基づいて、データ日基準線をいくつかの時間帯に分割することを含む。
【0033】
本実施例では、時間帯の分割のためのキーポイントを極大値と極小値とで決定するだけでなく、実際のデータ状況に合わせてキーポイントを修正する。そのほかに、業務上で16:00~18:00に成長が小さなピークが来るなど、業務知識に基づいてキーポイントを修正することも可能となり、分割際に、16:00と18:00の2つのポイントをキーポイントとする。
【0034】
本発明の一実施例において、ステップS4は、具体的に、環境要因によって履歴日と予測されるべき日との類似値を算出し、予め設定された閾値より大きい類似値に対応する類似履歴日を選択することと、
類似履歴デイリーデータとデータ日基準線との傾向類似値を、分割された時間帯毎にそれぞれ算出することと、を含む。
【0035】
本実施例では、傾向類似値は、以下の式により算出されることができる。
【0036】
ただし、RXYは傾向類似値を表し、E(XY)はXYの期待を表し、E(X)はXの期待を表し、E(Y)はYの期待を表し、D(X)はYの分散を表す。Xはデータ日基準線であり、Yは履歴デイリーデータである。
【0037】
本実施例では、予め設定された基準値よりも大きい傾向類似値に対応する履歴デイリーデータを選択して類似系列行列を形成する。当該行列は下記のものであってもよい。
【0038】
ただし、cijは分割された時間帯におけるi番目のセグメントのj番目の類似系列である。
【0039】
ここで、実験により本発明の優位性を検証した。30日間の熱負荷予測値(1日24時間、1時間あたり1つの熱負荷値に対応し、時間帯は2018.06.01-2018.06.30として選択される)を実験データとして選び、そのうち23日間のデータをトレーニングセットデータとし、後の7日間のデータをテストデータセットとした。実験効果の指標としては二乗平均平方根誤差RMSEと平均相対誤差MAPEが選択された。
【0040】
3つのアルゴリズムをそれぞれ比較した。
(1)単純な気象類似性アルゴリズム、
(2)類似サブシーケンスの直接接続アルゴリズム、
(3)本発明のアルゴリズム。
【0041】
3つの方法の二乗平均平方根誤差RMSEと平均相対誤差MAPE指標を比較して説明する。データは以下の通りである。
【0042】
二乗平均平方根誤差RMSE:
【0043】
平均相対誤差MAPE:
【0044】
ただし、yは真の値を表し、ydは予測値を表し、nはサンプル数を表す。
【0045】
次の表1に算出結果を示す。
表1
【0046】
実験データを比較すると、本発明で提出される方法は熱負荷の予測においてより優れている効果を奏することが分かる。
【0047】
図2に示すように、本発明の実施例は、データ処理モジュール、基準線決定モジュール、時間分割モジュール、類似算出モジュール、サンプル選別モジュール及びトレーニングモデルモジュールを含み、
データ処理モジュールは、電力システム熱負荷の履歴デイリーデータを前処理するために用いられ、
基準線決定モジュールは、前記データ処理モジュールで前処理された履歴デイリーデータからデータ日基準線を取得するために用いられ、
時間分割モジュールは、前記基準線決定モジュールで取得されたデータ日基準線をいくつかの時間帯に分割するために用いられ、
類似算出モジュールは、履歴デイリーデータを選別し、選別後の履歴デイリーデータとデータ日基準線との傾向類似値を分割された時間帯毎にそれぞれ算出するために用いられ、
サンプル選別モジュールは、予め設定された基準値より大きい傾向類似値に対応する履歴デイリーデータを選択して類似系列行列を形成するために用いられ、
トレーニングモデルモジュールは、構築したエクストリームラーニングマシンELMに、前記サンプル選別モジュールによる類似系列行列を入力してトレーニングし、予測モデルを取得し、電力システム熱負荷の予測を行うために用いられる電力システム熱負荷の予測装置を提供する。
【0048】
本実施例では、エクストリームラーニングマシンELMニューラルネットワークが構築され、ネットワークは、入力層、隠れ層、出力層の3層に分けられる。その学習プロセスは、隠れ層ノードパラメータを調整する必要がなく、入力層から隠れ層への特徴マッピングは、ランダムであってもよいし、人為的に与えられてもよい。その学習プロセスは大域的極小値に収束しやすい。付与されたN組のトレーニングデータについて、ELMを用いてL個の隠れ層とM個の出力層を含むものに対して学習を行うには、下記のステップが含まれる。(1)ノードパラメータをランダムに割り当てる:算出開始時にSLFNのノードパラメータがランダムに生成され、すなわち、ノードパラメータと入力データとが独立している。ここで、ランダム生成は任意の連続確率分布(continuous probability distribution)に従うことができる。(2)隠れ層の出力行列を算出する:隠れ層の出力行列の大きさはN行M列であり、すなわち、行数が入力されたトレーニングデータ数、列数が隠れ層ノード数である。出力行列は本質的にN個の入力データをL個のノードにマッピングしたものである。(3)出力重みを求める:隠れ層の出力重み行列の大きさはL行M列であり、すなわち行数が隠れ層ノード数、列数が出力層ノード数である。ELMアルゴリズムでは、他のアルゴリズムと異なり、出力層について誤差ノードを持たなくてもよい(あるいは持たないように提案される)ので、出力変数が1つしかない場合に、出力重み行列はベクトルとなる。ELMアルゴリズムのコアは、エラー関数が最小になるように出力重みを求めることである。
【0049】
本実施例では知能学習能力を有し、予測の正確性を高めることができる。傾向による分割の時系列表示方法を採用し、電力システムの熱負荷時系列の異なる傾向に基づいてそれを分割し、熱負荷時系列における重要な変化傾向情報を効果的に保持し、熱負荷の変化傾向をより正確に予測することができる。
【0050】
本出願の全ての実施例は、特定の前提条件の下で確立されていることが説明されるべきである。この仮定条件には、1時間あたりの温度や湿度などの過去のリアルタイムの気象要因が既知であると仮定すること、24時間予測されるべき気象要素が既知であると仮定すること(気象プラットフォームから入手可能)が含まれる。
【0051】
本発明の一実施例において、前記データ処理モジュールは、具体的に電力システム熱負荷の履歴デイリーデータに対して、ノイズ除去、充填及び正規化処理を行うために用いられる。
【0052】
本実施例では、履歴デイリーデータに対する前処理によりデータ精度を向上させ、熱負荷予測の正確性をさらに保証することができる。
【0053】
本発明の一実施例において、前記基準線決定モジュールは、具体的に、予測されるべき日に最も近い予め設定された日数のデータ平均値をデータ日基準線とするために用いられる。
【0054】
本実施例では、時系列データにとって相対的に重要な影響点は、通常、局所の極大値点及び極小値点であるが、短期負荷については、予測されるべき日に近い時点ほど予測への影響が大きく、一般に「近大遠小」という原則と呼ばれ、本出願では、予測されるべき日に最も近い予め設定された日数のデータ平均値をデータ日基準線として選択する。例えば、予め設定された日数が3日であれば、同一時点で3つの履歴データがあり、同一時点についてその平均値を求めると、その時点の基準値が得られ、全ての時点について算出が完了すればデータ日基準線が得られる。その他、予測されるべき日と履歴日の気象傾向類似性が上位となるN日間の対応するデータから、その平均値をデータ日基準線として求めるようにしてもよい。具体的なNの取り方は、実際の状況に応じて決めることができる。例えば、予測されるべき日の気象傾向との類似度がそれぞれA、B、C、D、E、F、G、H、I、M、Pである10日間の履歴データがあり、かつ、A>B>C>D>E>F>G>H>I>M>Pであり、Nが3をとると、A、B、Cに対応するデータが選択されるようになる。
【0055】
本発明の一実施例において、前記時間分割モジュールは、具体的に、データ日基準線の極値点に基づいて、データ日基準線をいくつかの時間帯に分割するために用いられる。
【0056】
本実施例では、データ日基準線は、極大値および極小値によっていくつかの時間帯に分割される。たとえば、24時間において、2つの極大値と2つの極小値があり、4つのキーポイントがあるため、データ日基準線は5つのセグメントに分割される。
【0057】
本発明の一実施例において、前記時間分割モジュールは、具体的に、データ日基準線のうち、隣接する2つのポイントとの傾きの差が予め設定された閾値よりも大きいポイントと極値点とに基づいて、データ日基準線をいくつかの時間帯に分割するために用いられる。
【0058】
本実施例では、時間帯の分割のためのキーポイントを極大値と極小値とで決定するだけでなく、実際のデータ状況に合わせてキーポイントを修正する。そのほかに、業務上で16:00~18:00に成長が小さなピークが来るなど、業務知識に基づいてキーポイントを修正することも可能となり、分割際に、16:00と18:00の2つのポイントをキーポイントとする。
【0059】
本発明の一実施例において、前記類似算出モジュールは、具体的に、環境要因によって履歴日と予測されるべき日との類似値を算出し、予め設定された閾値より大きい類似値に対応する類似履歴日を選択することと、類似履歴デイリーデータとデータ日基準線との傾向類似値を、分割された時間帯毎にそれぞれ算出することに用いられる。
【0060】
本実施例では、傾向類似値は、以下の式により算出されることができる。
【0061】
ただし、RXYは傾向類似値を表し、E(XY)はXYの期待を表し、E(X)はXの期待を表し、E(Y)はYの期待を表し、D(X)はYの分散を表す。Xはデータ日基準線であり、Yは履歴デイリーデータである。
【0062】
本実施例では、予め設定された基準値よりも大きい傾向類似値に対応する履歴デイリーデータを選択して類似系列行列を形成する。当該行列は下記のものであってもよい。
【0063】
ただし、cijは分割された時間帯におけるi番目のセグメントのj番目の類似系列である。
【0064】
ここで、実験により本発明の優位性を検証した。30日間の熱負荷予測値(1日24時間、1時間あたり1つの熱負荷値に対応し、時間帯は2018.06.01-2018.06.30として選択される)を実験データとして選び、そのうち23日間のデータをトレーニングセットデータとし、後の7日間のデータをテストデータセットとした。実験効果の指標としては二乗平均平方根誤差RMSEと平均相対誤差MAPEが選択された。
【0065】
3つのアルゴリズムをそれぞれ比較した。
(1)単純な気象類似性アルゴリズム、
(2)類似サブシーケンスの直接接続アルゴリズム、
(3)本発明のアルゴリズム。
【0066】
3つの方法の二乗平均平方根誤差RMSEと平均相対誤差MAPE指標を比較して説明する。データは以下の通りである。
【0067】
二乗平均平方根誤差RMSE:
【0068】
平均相対誤差MAPE:
【0069】
ただし、yは真の値を表し、ydは予測値を表し、nはサンプル数を表す。
【0070】
次の表1に算出結果を示す。
表1
【0071】
実験データを比較すると、本発明で提出される方法は熱負荷の予測においてより優れている効果を奏することが分かる。
【0072】
上述装置内の各モジュール間の情報の交換、実行過程などの内容は、本発明方法の実施例と同一の思想に基づくため、具体的な内容は本発明方法の実施例での説明を参照することができ、ここで説明を省略する。
【0073】
本明細書では、第1および第2類のような関係用語は、1つのエンティティまたはオペレーションを他のエンティティまたはオペレーションから区別するためにのみ使用されるが、必ずしもこれらのエンティティまたはオペレーションの間にそのような実際の関係または順序が存在する必要がないし、暗示する必要もない。さらに、「含む」、「含まれる」という用語、またはその任意の他の変形例は、非排他的な包含をカバーすることを意図している。これによって、一連の要素を含むプロセス、方法、商品又は機器は、それらの要素だけでなく、明示的に列挙されていない他の要素も含むことになり、あるいは、そのようなプロセス、方法、商品または装置の固有する要素も含む。これ以上の制限なしの場合、「1つ.....を含む」という文言によって定義される要素は、その要素を含むプロセス、方法、商品または装置内に他の同じ要素が存在することを排除するものではない。
【0074】
当業者であれば、上述方法の実施の全部または一部を実現するためのステップは、プログラム命令に関連するハードウェアによって実行されることができ、前述したプログラムはコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されてもよく、このプログラムは、実行時に上述方法の実施例を含むステップを実行するものであり、前述した記憶媒体は、ROM、RAM、磁気ディスク、光ディスク等のプログラムコードを記憶可能な各種の媒体を含むことを理解できるだろう。
【0075】
最後に、以上述べたことは、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明の特許請求の範囲を説明するためのもので、本発明の範囲を限定するためのものではない。本発明の精神および原理の範囲内で行われるあらゆる変更、均等置換、変更などは、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
図1
図2