IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オーユー スケルトン テクノロジーズ グループの特許一覧

特許7497343炭化物由来炭素の生成における、金属又は半金属ハロゲン化物の高温ガス状流の冷却/急冷方法
<>
  • 特許-炭化物由来炭素の生成における、金属又は半金属ハロゲン化物の高温ガス状流の冷却/急冷方法 図1
  • 特許-炭化物由来炭素の生成における、金属又は半金属ハロゲン化物の高温ガス状流の冷却/急冷方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】炭化物由来炭素の生成における、金属又は半金属ハロゲン化物の高温ガス状流の冷却/急冷方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/05 20170101AFI20240603BHJP
   B01J 19/00 20060101ALN20240603BHJP
【FI】
C01B32/05
B01J19/00 301B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021516973
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2019076124
(87)【国際公開番号】W WO2020064976
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-23
(73)【特許権者】
【識別番号】513306442
【氏名又は名称】オーユー スケルトン テクノロジーズ グループ
【住所又は居所原語表記】Sepise No.7,Tallinn 11415,Estonia
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】マルカリアン オハネス
(72)【発明者】
【氏名】ポールマン セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】レイス ヤーン
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-080325(JP,A)
【文献】特表2001-509468(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0219488(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0117094(US,A1)
【文献】米国特許第02446181(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/05
B01J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CDC生成における凝縮器の腐食を低減するための方法であって、
前記方法は、ガス状流の金属又は半金属ハロゲン化物を、300℃を超える温度範囲で熱交換器を利用せずに、前記凝縮器の手前で前記ガス状流を液体冷却剤と直接接触させることにより前記金属又は半金属ハロゲン化物の前記ガス状流の純度を一定に保ちながら冷却/急冷するステップによるものであること;
前記金属又は半金属ハロゲン化物の前記ガス状流の温度の低下は、前記凝縮器の入口の前で行われ、
前記冷却剤を直接前記ガス(状)流に接触させることにより、前記凝縮器に入る前記ガス状流の温度が低下すること;並びに、
前記冷却剤は、前記ガス状流から凝縮された前記金属又は半金属ハロゲン化物と同じ化学組成の液体金属又は半金属ハロゲン化物であること;
特徴とする方法。
【請求項2】
金属又は半金属炭化物から非炭素原子を抽出し、炭素を生成するための装置であって、
前記装置は、炭化物―炭素変換のための反応器(101)と、生成された金属又は半金属ハロゲン化物を収集するための凝縮器(102)とを備え、
前記装置は、液体冷却剤のタンク(103)と、前記タンクに接続している供給用のポンプ(104)と、供給流弁(105)と、戻り流弁(107)と、供給用の前記ポンプ(104)に接続している圧力リリーフ弁(106)とを含む冷却ユニットを更に備え、
前記凝縮器(102)に流入するガス(状)流の温度は、供給用の前記ポンプ(104)によって、前記液体冷却剤のタンク(103)から前記供給流弁(105)を介して、前記反応器(101)の出口で前記ガス状流に導入される液体冷却剤の気化によって吸収される熱により低下すること、並びに、前記液体冷却剤は、副生成された前記金属又は半金属ハロゲン化物と同じ化学組成の液体金属又は半金属ハロゲン化物であること、を特徴とする、装置。
【請求項3】
前記凝縮器(102)へ流入する前記金属又は半金属ハロゲン化物の前記ガス状流の流量は、前記供給流弁(105)によって、前記ポンプの吐出に対して前記供給流弁の開口部を操作することにより制御され、
前記供給流弁(105)の開口部は、冷却/急冷セクションの後に続く、温度センサ(108)によって制御され、
第2段階では、前記凝縮器に流入する前記ガス状流の流量は、前記戻り弁(107)によって制御可能であることを特徴とする、請求項記載の装置。
【請求項4】
前記冷却ユニットの安全性は、供給用の前記ポンプ(104)に接続している前記圧力リリーフ弁(106)によって制御され、
前記パイプの圧力が所定の値を超える場合は、前記圧力リリーフ弁(106)を開くことによって、前記冷却剤は前記タンクへ向けられることを特徴とする、請求項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細孔炭素の高度な製造工程に関する。本明細書に記載の装置及び方法は、気相流の冷却/急冷に関しており、金属炭化物から多孔質炭素及び金属ハロゲン化物を製造することに関連する。本明細書に記載の装置及び方法は更に詳細には、直接の接触により、多孔質炭素及び金属ハロゲン化物から、金属炭化物のハロゲン化により生じる気相に対して繰り返し冷却/急冷を行うための方法及び器材に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質炭素材料は、エネルギー貯蔵、ろ過及び吸着プロセスなど、さまざまな用途で使用されている。特にはろ過の用途と同様に、エネルギー貯蔵における、この種の材料の高い比表面積は興味深い。炭化物由来炭素(CDC)は、狭細孔分布かつ高い表面積対体積率の高性能細孔炭素の一つである。CDCは、昇温によるハロゲン化により、含有する半金属から金属炭化物を化学的に剥離し製造することができ、生成物として金属塩化物と細孔炭素とを残す。
【0003】
炭化物の網目構造から非炭素原子を抽出する間にCDCが形成されるので、炭素の正確なナノ構造及び特性はテンプレート、すなわち炭化物前駆体に大いに依存する。CDCを生成するために用いることができる炭化物材料は、粉末、ペレット、又は薄膜の形状であり得る。構造秩序の観点から炭化物前駆体は、モノリシック結晶、多結晶、又は多孔質有機的形態の炭化物であるか、もしくは他の形態であってもよい。
【0004】
炭化物から非炭素原子を抽出するには、いくつかの方法がある。最もよく普及しているのは、化学反応式1のような、高温下でハロゲンガスを用いる化学抽出である。

MCx + y/2X → MX + xC 式1
【0005】
一実施例において、ハロゲンガスは塩素ガス(Cl)である。塩素化反応の質量バランスによれば、異なる炭化物からの炭素(CDC)の理論収率は、炭化モリブデンの6%(wt.)以下から、炭化ケイ素の約30%(wt.)の範囲となる。しかし、炭化物の塩素化反応の主生成物は、表1にあるように、それぞれの炭化物形成金属又は半金属の塩化物(MCl)である。
【0006】
(表1)塩素処理による、異なる炭化物からの生成物(CDC及びMCl)の相対的な重量分布
【0007】
CDC生成に関わるガス状流は、金属ハロゲン化物及びハロゲンガス又はその水素誘導体から成る。ガス状流から液体金属ハロゲン化物を収集するために、反応器から出てくる流れを凝縮器へと送る。CDC生成における反応条件のため、ガス状流は600℃以上に温度が上昇した状態で反応器を出る。金属ハロゲン又は金属塩化物は腐食速度の速い金属合金を生じることが知られているので、凝縮器の構造材として特殊材料を使用しなくてはならない。金属合金の腐食は、望ましくない汚染物質をガス状流にもたらす。特殊材料を使用しても、温度が上昇すれば汚染物質を生じさせる可能性がある。
【0008】
典型的な構造材料である316L SS(ステンレス鋼)は凝縮器に使用可能であるが、(Special Metals Corporation,出版番号SMC―026,2000年)のとおり、乾燥塩素との接触を含む運用での推奨上限は343℃(表2)である。これにより、腐食速度は実質的に下がり、300℃未満では更に下がる。下記の表2には、いくつかの特殊な合金に対するこの種の上限が示されている。
(表2)ニッケル合金及び他の市販合金の腐食耐性
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】英国特許出願公開第783534号
【文献】英国特許出願公開第679537号
【文献】英国特許出願公開第803432号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の1つの目的は、CDCの製造工程で使用される(凝縮器の)構造材料において、腐食が促進するという問題の解決法を提供することにあり、それによって、当該プロセス中に生成されるガス状流から、金属ハロゲン化物を同時に生成するための、金属炭化物からCDCへの変換技術を改良することである。
【0011】
構造材料の要件を緩和し、凝縮金属ハロゲン化物の流れに含まれる望ましくない汚染物質を低減するためには、反応器から出るガス状流を冷却/急冷することが必要である。これは、300℃を超える温度で、冷却器/凝縮器本体及び/又は他の腐食が生じやすい又は汚染の可能性がある部品と、ガス流が直接接触するより前に行われる必要がある。構造材料の要件が緩和されると、保守で必要とされる労力が低減され、続いて製造コストが抑えられる。凝縮された金属ハロゲン化物の流れにおける汚染物質の濃度が低下するため、結果として金属ハロゲン化物の価値が高められる。加えて、本発明による方法はCDCの工程において、設備投資(特殊でない材料構造、工程における複雑度の緩和、安全な器具使用)と、運用費の低減(保守、取換、効率)に影響を与える。これは明らかに、先に述べた方法と比較し、混合比によって調節可能な金属又は半金属ハロゲン化物純度を維持又は増加させるための、更に制御が可能かつ効率的な直接熱交換プロセスである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明における金属及びメタロイドは、例えば、ホウ素、シリコン、チタン、ニオブ、ジルコニウムである。
【0013】
金属炭化物系CDC生成方法に関わるガス状の排気流は、大量の残留反応性ハロゲンガスを含むが、これは、規制法を遵守するために中和されなければならない。金属又は半金属ハロゲン化物(例えば金属又は半金属塩化物)がある場合に、水溶液(化学反応のための方程式2を参照)を用いると、中和方法がほとんど妨げられる可能性がある。そして、反応生成物としての不溶性金属酸化物のため、中和剤が必要となり、中和装置(プラント)の複雑さが増すこととなる。

M(IV)Cl + 2HO → MO + 4HCl 式2
【0014】
中和装置の複雑さを低減させるために、凝縮後は、排気流の金属ハロゲン化物が過剰となる場合に生じる金属酸化物の形成を防止しなくてはならない。
【0015】
本発明は、炭化物―炭素変換時に生成される高温ガス状流に起因する腐食問題を最小限に抑え、更には回避するための解決策を提供するものである。より正確には本発明は、ガス状流から金属又は半金属ハロゲン化物(例えば金属又は半金属塩化物)を液化させるために、ガス状流が凝縮器へ入る前に予備冷却するための方法を提供する。このように凝縮プロセスの効率は上昇する。従って本発明は、中和装置に入る排気ガス状中の金属ハロゲン化物の集中(濃度)を最小限に抑え、この装置のメンテナンスや複雑さ、中和剤の損失を低減するための解決策も提示する。
【0016】
先行技術には、室温の液体金属塩化物(例えばTiCl又はSiCl)から取り出した、室温の固体金属塩化物(例えばFeCl)を凝縮させるために、ガス状流の予冷を行う方法について記載されている。英国特許出願公開第783534号には、TiO含有鉱石の炭素熱塩素化反応器から出てくるガス状流のための冷却領域内部にある外部的に冷却されたパイプの使用法について記載されている。英国特許出願公開第679537号と英国特許出願公開第803432号には、ガス状流に注入された液体塩化チタンを用いて内部を直接冷却することにより、チタンと鉄両方の塩化物を含む蒸気混合物から、金属ハロゲン化物、特に塩化鉄を凝縮させることについて記載されている。
しかし、これらの文書には、凝縮器内のガス状流による腐食を低減または回避するために、CDC生成、もしくは金属炭化物のハロゲン化(例えば塩素化)に関わるガス状流をどのように処理するかについては記載されていない。
【0017】
そこで本発明の目的は、表面積の大きい物質が相互作用することなく、金属又は半金属ハロゲン化物(例えば金属塩化物)とハロゲン(例えば塩素)ガスから成るガス状流を、冷却/急冷することである。その結果、凝縮器材の腐食を回避することができ、材料の必要要件(その後のコスト)が緩和され、最終的に冷却又は凝縮された金属ハロゲン化物の流れに含まれる望ましくない汚染物質が低減される。
【0018】
本発明による方法については、これより図面を参照し詳細に後述する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ガス状流を冷却する装置が、CDC生成装置に存在するガス流にどのように接続しているかについて示している。この図では最適数の要素(手段)が用いられているが、このセクションの制御及び洞察(insight)を高めるために追加部品を追加することができる点に注意する。ギアポンプ(本発明における好ましいタイプ)の動作の性質上、又は他の適切な容積ポンプタイプのために、安全装置(圧力リリーフ弁)を装置に接続する。温度の制御は、ポンプの吐出に対して弁開口部を操作することにより行うことができ、これは、冷却/急冷セクションの後に続く、温度センサで制御される空気圧弁により行うことができるので、流量や温度におけるいずれの変化又は攪乱にも対応することができる。もしくは、よりシンプルな小型ユニットでは、手動弁が装備されている場合は手動で、可変周波数ドライブのモーターバルブが装備されている場合は追加で行うことができる。
図2】金属又は半金属ハロゲン化物の高温と低温両方の流れを混合することにより得られる出力流の最終的な温度を推定するシミュレーション結果を示している。図2(a)は、1kg/時間の高温流量と1kg/時間の低温流量の混合(すなわち高温流量と低温流量の混合比は1:1)について説明する図である。図2(b)は、1kg/時間の高温流量と2kg/時間の低温流量の混合(すなわち高温流量と低温流量の混合比は1:2)について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、炭化物をハロゲン含有ガスと高温下で反応させ、金属又は半金属炭化物から非炭素原子を抽出した、金属又は半金属炭化物、もしくはこの種の炭化物の混合物からの炭素生成における冷却方法について記載している。
【0021】
本明細書に記載される方法は、300℃を超える温度範囲で熱交換器を利用せずに、ガス状流を冷却剤に直接接触させることにより、金属又は半金属ハロゲン化物のガス状流の純度を一定に保ちつつガス状流を冷却/急冷することにより、ガス状流の温度を低下させることを含む。大規模な製造では、価値を高めるために非常に純度の高い金属又は半金属ハロゲン化物が必要とされるので、ガス状流の組成が一定であることは重要である。この方法によれば、凝縮器のガス状流入口の手前でガス状流の温度は低下する。
【0022】
凝縮器に流入する前のガス状流の温度を低下させ約300℃とするような、ガス状流と冷却剤の混合比が利用される場合は、腐食を最小限に抑えることができると本発明は主張する。更に温度が低下すると、凝縮器の腐食速度も低下する点に注意する。
【0023】
熱衝撃は、パラメータの値(流量、単位長さ当たりの温度低下、単位長さ当たりの温度差を含むがこれに限定されない)を選択する際に考慮しなければならない事項の1つである。石英又は特定種の黒鉛(強化炭素複合材)は熱衝撃に対して耐性があるで、液体金属ハロゲン化物の1つ以上の入口を持つ小さいセクション又は複数のセクションをこの工程に利用することができる。ガス―液体間の接触を促進することにより質量及び伝熱特性を高めるためには、(流れとしては内部への)液体吐出ヘッドが十分な表面積を有する必要がある。
【0024】
一実施例では、表1に示される通常反応に従い、CDCの合成のために炭化ケイ素(SiC)が使用される。反応器の管の加熱側面及び反応ゾーンの長さに応じて、この流れの温度は、塩素化反応器の出口では約900~1100℃となる。SiCの塩素化の場合、ガス状流の組成の大部分は四塩化ケイ素(SiCl、STC)及び未反応塩素ガス(Cl)である。これらの主成分に加えて、塩素ガス流(純度99.8%)内には水分が含まれているため、このガス状流が未知量の塩酸(HCl)を含み得ることに注意されたい(システム内で次々とHClに変化する)。
【0025】
本発明は、前記CDC生成技術におけるいくつかの改良を実現する。より詳しくは、ハロゲンガス(例えば塩素)を用いた炭化物の高温処理により、金属又は半金属炭化物からCDCを合成する際に生じるガス状流を処理するための新しい方法について、本発明は記載する。本発明はCDC生成における以下の主題に直接関連する。
・ガス状流からの金属又は半金属ハロゲン化物のための凝縮器内の腐食低減
・金属又は半金属ハロゲン化物を主成分とする凝縮物中の腐食汚染物質の低減
・構造物の特殊材料の低減又は除去
・金属又は半金属ハロゲン化物ガス状流の高純度保持
【0026】
一実施例において、ガス状流に加えられる冷却剤は、凝縮器内でガス状流から凝縮される金属又は半金属ハロゲン化物と、同じ化学組成の液体金属又は半金属ハロゲン化物である。この場合の温度低下は、反応器の出口でガス状流に導入される、液体金属又は半金属ハロゲン化物の気化によって吸収される熱により成し遂げられる。
【0027】
本発明により腐食速度が下がり、その結果、凝縮器の金属部品における汚染物が凝縮液中に現れることが少なくなり、生成される金属又は半金属ハロゲン化物の純度を向上させるので、価値が高まる。
【0028】
下記の説明では、本発明における冷却システムの装置及び動作に関して詳細な情報を提供する。本発明は、この段落における実施例の特定の説明に限定されるように見なされるべきではない。
【0029】
図1を参照し、この発明によるガス状流を冷却する装置について説明する。この装置は、炭化物―炭素変換のための反応器と、生成された金属又は半金属塩化物を収集するための凝縮器と、冷却ユニットとを備え、当該冷却ユニットは以下を備える。
・金属又は半金属ハロゲン化物のタンク103(例えば四塩化ケイ素(STC)タンク(供給源))
・反応器101から供給流弁105を介して、液体金属又は半金属ハロゲン化物の流れをガス状流出口へ導くための、金属又は半金属ハロゲン化物タンク103に接続されている金属又は半金属ハロゲン化物ポンプ(好適にはギアポンプ)104。液体金属又は半金属ハロゲン化物の流れは、流れが凝縮器102に入る前に、前記ガス状流に導入される。
・配管及び弁
配管及び弁は、供給流弁105と、圧力リリーフ弁106と、戻り流弁107とを備え、そして反応器101からのガス状流に液体金属又は半金属ハロゲン化物を供給するための配管を備える。温度の制御は、ポンプ104の吐出で供給流弁105の開口部を操作することにより行われ、これは、冷却/急冷セクションの後、温度センサで制御される空気圧弁により行うことができるので、流量や温度の変化又は攪乱にも対応することができる。もしくは、よりシンプルな小型ユニットでは、手動弁が装備されている場合は手動で行うことができる。
【0030】
弁(105、106、107)は全て、金属又は半金属ハロゲン化物ポンプ104に接続しており、ここで供給流弁105の機能は、反応器からガス状流出口に導かれた液体金属又は半金属ハロゲン化物流のパラメータを取り込み、制御することである。供給流弁105が制御するパラメータは、流量である。
【0031】
液体金属又は半金属ハロゲン化物は、液体の沸点近くの常温で保たれる点に注意すること。これは、液体による、顕熱エネルギーの取り込みが遅れることを回避するためであり、液体を潜熱相変化エネルギー領域に近づけるためである。この領域では、大量のエネルギーが必要になるため、ガス流全体の温度が低下する。
【0032】
供給流弁105の機能は、反応器を出て凝縮器へ流入するガス流に混入させる液体金属又は半金属ハロゲン化物の流れを制御することである。これは、ポンプの吐出に対して前記戻り弁107の開口部を操作することにより行うことができる。戻り弁107は、必要に応じて流れを戻すオプションがあることに加えて、流れと液体供給の配管抵抗をさらに制御する。計装としては、流量と温度とに関わることができる可変周波数ドライブを使用して、ポンプのモーターをさらに制御することができる。
【0033】
圧力リリーフ弁106は、容積ポンプの性質上、目詰まりや圧力の上昇に備えてシステムの安全性を保証するために、よっては、装置の配管及び/又は他の部品の損傷を回避するために必要である。
【0034】
好適な種類のギアポンプ104又は適した容積ポンプは、例えば、回転式容積ポンプ(例えばWendelkolbenポンプ)、往復式容積ポンプ(例えばピストン、プランジャ、又はダイアフラムポンプ)又はリニア式容積ポンプ(例えばロープ又は鎖ポンプ)であるか、もしくは同じ作業を行うのに適した適切なポンプを用いてもよい(例えば、遠心ポンプを用いることもできる)。
【0035】
タンク103からの液体金属又は半金属ハロゲン化物の流れは、ちょうど反応器101の出口でガス状流に導入され、続いてこのガス状流と混ざり蒸発する。必要とされる気化の潜熱が高温ガス状流から取り除かれるので、温度(ガス状流の顕熱)は低下する。液体金属又は半金属ハロゲン化物の流れは、供給流弁105によって制御される
【0036】
使用するガス状流と、液体金属又は半金属ハロゲン化物の量次第で、温度を大幅に低下させることができる。大規模な生産では高純度の金属又は半金属ハロゲン化物が付加価値として求められるため、同時にガス状流の組成の純度は一定に保たれる。
【0037】
図2は、金属又は半金属ハロゲン化物の高温と低温両方の流れの混合について説明する図であり、金属又は半金属ハロゲン化物の高温と低温両方の流れを混合することにより得られる出力流の最終的な温度を推定するシミュレーション結果を示す。高温流は金属又は半金属ハロゲン化物から出る反応器のガス流を表す一方で、低温流は急冷のために用いられる金属又は半金属ハロゲン化物の液体流を表す。
図2(a)の一例では、1kg/時間の高温流量と1kg/時間の低温流量の混合(すなわち高温流量と低温流量の混合比は1:1)について説明しており、図2(b)の一例では、1kg/時間の高温流量と2kg/時間の低温流量の混合(すなわち高温流量と低温流量の混合比は1:2)について説明している。
【0038】
蒸発の潜熱は、異なるソースによる、下記の表3で確認することができる。すべてのソースにおいて近い値が示されている。
【0039】
(テーブル3)異なるソースによる半金属ハロゲン化物としてのSTCの蒸発の潜熱
(ウェブドキュメント: https://webbook.nist.gov/cgi/cbook.cgi?ID=C10026047&Mask=4 2018年8月2日にアクセス)
【0040】
2つのケースが図示されており、混合流量比は、図2(a)におけるケース(a)では1:1であり、図2(b)におけるケース(b)では1:2である。低温流の流量の方が大きいので、最終的な出力流(混合)は全体としては低下した温度となる。以下の表4から分かるように、1:1の流量比は必要な温度低下を達成するには低すぎると考えられるが、1:2の比率では望ましい目標温度を達成及び上回ることができる。
【0041】
(テーブル4)図2のケースにおける簡略化した流れについてのテーブル
【0042】
本発明による方法と装置は、CDC生成における凝縮器の腐食を低減するために使用される。更にこの方法では、同一組成のエアロゾル金属又は半金属ハロゲン化物(エアロゾル金属又は半金属塩化物の温度は200℃未満)をガス状流に直接接触させてガス流を冷却/急冷することにより、ガス状流と一緒に、分離/回収容器を出て下流の装置に向かう金属又は半金属ハロゲン化物の回収率および削減率を高めることができる。
本明細書は以下の開示を含む。
<開示1>
CDC生成における凝縮器の腐食を低減するための方法であって、
前記方法は、ガス状流の金属又は半金属ハロゲン化物を、300℃を超える温度範囲で熱交換器を利用せずに、前記凝縮器の手前で前記ガス状流を液体冷却剤と直接接触させることにより前記金属又は半金属ハロゲン化物の前記ガス状流の純度を一定に保ちながら冷却/急冷するステップによるものであることを特徴とする方法。
<開示2>
前記金属又は半金属ハロゲン化物の前記ガス状流の温度の低下は、前記凝縮器の入口の前で行われ、
前記冷却剤を直接前記ガス(状)流に接触させることにより、前記凝縮器に入る前記ガス状流の温度が低下することを特徴とする、開示1記載の方法。
<開示3>
前記冷却剤は、前記ガス状流から凝縮された前記金属又は半金属ハロゲン化物と同じ化学組成の液体金属又は半金属ハロゲン化物であることを特徴とする、開示2記載の方法。
<開示4>
金属又は半金属炭化物から非炭素原子を抽出し、炭素を生成するための装置であって、
前記装置は、炭化物―炭素変換のための反応器(101)と、生成された前記金属又は半金属塩化物を収集するための凝縮器(102)とを備え、
前記装置は、液体冷却剤のタンク(103)と、前記タンクに接続している供給用のポンプ(104)と、供給流弁(105)と、戻り流弁(107)と、供給用の前記ポンプ(104)に接続している圧力リリーフ弁(106)とを含む冷却ユニットを更に備え、
前記凝縮器(102)に流入するガス(状)流の温度は、供給用の前記ポンプ(104)によって、前記液体冷却剤のタンク(103)から前記供給流弁(105)を介して、前記反応器(101)の出口で前記ガス状流に導入される液体金属又は半金属ハロゲン化物の気化によって吸収される熱により低下することを特徴とする、装置。
<開示5>
前記凝縮器(102)へ流入する前記金属又は半金属ハロゲン化物の前記ガス状流の流量は、前記供給流弁(105)によって、前記ポンプの吐出に対して前記供給流弁の開口部を操作することにより制御され、
前記供給流弁(105)の開口部は、冷却/急冷セクションの後に続く、温度センサ(108)によって制御され、
第2段階では、前記凝縮器に流入する前記ガス状流の流量は、前記戻り弁(107)によって制御可能であることを特徴とする、開示5記載の装置。
<開示6>
前記冷却ユニットの安全性は、供給用の前記ポンプ(104)に接続している前記圧力リリーフ弁(106)によって制御され、
前記パイプの圧力が所定の値を超える場合は、前記圧力リリーフ弁(106)を開くことによって、前記冷却剤は前記タンクへ向けられることを特徴とする、開示4記載の装置。
図1
図2