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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】チュアブル錠およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/20 20060101AFI20240603BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20240603BHJP
   A23L 33/15 20160101ALI20240603BHJP
   A23L 33/155 20160101ALI20240603BHJP
   A23L 33/16 20160101ALI20240603BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240603BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
A61K9/20
A23L33/10
A23L33/15
A23L33/155
A23L33/16
A61K47/38
A61K47/36
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021520605
(86)(22)【出願日】2019-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 IL2019051205
(87)【国際公開番号】W WO2020089921
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】262768
(32)【優先日】2018-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】521150787
【氏名又は名称】アンブロシア サプハーブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ラズ,シャロン
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0070287(US,A1)
【文献】特表2011-527184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00- 47/69
A23L 5/40- 5/49
A23L 31/00- 33/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)生物活性分子を含む圧縮コアと、(ii)前記圧縮コア上の保護層であって、セルロース系ポリマーを含む保護層と、(iii)前記保護層上の1つ以上のソフトコーティング層であって、各ソフトコーティング層が、ガムベース粉末を含むソフトコーティング層とを含み、前記セルロース系ポリマーが、エチルセルロースポリマーを含む、チュアブル錠。
【請求項2】
前記セルロース系ポリマーが、エチルセルロースポリマーであり、前記保護層が、任意選択で残留有機溶媒を含む、請求項1に記載のチュアブル錠。
【請求項3】
前記圧縮コアが、9~12キロポンドの硬度を有する圧縮錠剤である、請求項1または2に記載のチュアブル錠。
【請求項4】
前記保護層の上に、前記ガムベース粉末の2つ以上の層を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のチュアブル錠。
【請求項5】
前記ガムベース粉末の10~25の層を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のチュアブル錠。
【請求項6】
前記ソフトコーティング層のそれぞれが、前記ガムベース粉末を前記保護層または前のソフトコーティング層に結合するためのソフトコーティング結合剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のチュアブル錠。
【請求項7】
前記ソフトコーティング結合剤が、糖系材料およびアラビアガムを含む、請求項6に記載のチュアブル錠。
【請求項8】
前記ソフトコーティングが油性剤を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のチュアブル錠。
【請求項9】
前記油性剤が油性香味料を含む、請求項8に記載のチュアブル錠。
【請求項10】
前記油性剤が2つ以上のソフトコーティング層の間に存在する、請求項8または9に記載のチュアブル錠。
【請求項11】
前記ソフトコーティングが、ハードコーティング結合剤を含むハードコーティングでコーティングされている、請求項1~10のいずれか一項に記載のチュアブル錠。
【請求項12】
前記ハードコーティング結合剤が、糖系材料およびアラビアガムを含む、請求項11に記載のチュアブル錠。
【請求項13】
室温で少なくとも1年間貯蔵した後、その外層に目に見える亀裂がないことによって決定されるように、貯蔵安定性である、請求項1~12のいずれか一項に記載のチュアブル錠。
【請求項14】
チュアブル錠の調製方法であって、
(a)生物活性分子を含む圧縮錠剤の上に保護層を形成するために保護材料を適用することであって、前記保護材料が、セルロース系ポリマーおよび有機溶媒を含み、前記セルロース系ポリマーが、エチルセルロースポリマーを含む、保護材料を適用することと、
(b)前記保護層の上に1つ以上のソフトコーティング層を適用することであって、前記ソフトコーティング層が、ガムベース粉末を含む、ソフトコーティング層を適用することと、を含む、方法。
【請求項15】
前記適用することが、前記セルロース系ポリマーが前記有機溶媒に溶解しているときに、前記セルロース系ポリマーを前記圧縮錠剤上に噴霧することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記セルロース系ポリマーがエチルセルロースである、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記有機溶媒がエタノール、または99%エタノールである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上のソフトコーティング層を適用する前に、前記有機溶媒を蒸発させることを含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ以上のソフトコーティング層を適用することが、保護された錠剤をソフトコーティング結合剤溶液で湿潤させ、前記湿潤した錠剤上にガムベース粉末を展延することを含む、請求項14~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ソフトコーティング結合剤溶液が、水に溶解された糖系材料およびアラビアガムを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記1つ以上のソフトコーティング層を適用することが、湿潤した錠剤をドラム内で混合しながらガムベース粉末を前記ドラムに導入し、それによって前記錠剤上に前記ガムベース粉末の層を形成することを含む、請求項14~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
追加のソフトコーティング層を適用する前に、前記ガムベース粉末の層を乾燥させることを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記錠剤をドラム内で混合しながらガムベース粉末を前記ドラムに前記導入することを10~25回繰り返して、前記ガムベース粉末の10~25の層を含むソフトコーティングを得る、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ソフトコーティング上にハードコーティングを適用することを含む、請求項14~23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生物活性分子の経口送達のためのチュアブル錠およびそれらの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書にて開示する主題の背景として関連すると考えられる参考文献を以下に示す。
-国際特許出願公開第WO09080020号(US8,722,022に対応)
-国際特許出願公開第WO09080022号(US8,603,440に対応)
-国際特許出願公開第WO10008879号(US2011/0104239に対応)
-国際特許出願公開第WO13091631号(US2017/224671に対応)
-米国特許第6,551,634号
-国際特許出願公開第WO10003425号(US2011/117173に対応)
-日本特許第5836037号
-国際特許出願公開第WO17105564号.....
-米国特許出願公開第2016/296474号
-米国特許出願公開第2006/039872号
-米国特許出願公開第2001/053397号
-国際特許出願公開第WO9320708号
【0003】
本明細書における上記の参考文献の認識は、これらが現在開示されている主題の特許性に何らかの形で関連していることを意味するものとして推論されるべきではない。
【発明の概要】
【0004】
ガムベース材料は、一般的に対象物質の送達に使用される。
【0005】
例えば、WO09080020は、圧縮されたチューインガム錠剤で医薬有効成分を投与する方法を記載している。
【0006】
WO09080022は、1つ以上の医薬有効成分および1つ以上の促進剤を含む圧縮チューインガム錠剤を記載し、チューインガム錠剤は、チューインガム組成物を含む少なくとも1つのチューインガムモジュールを含み、チューインガム組成物は、ガムベースを含むチューインガム顆粒を含み、前記促進剤は、少なくとも一部が前記チューインガム顆粒の少なくとも一部の中に含まれている。
【0007】
WO10008879は、約6ヵ月を超える貯蔵寿命を有することができるプロバイオティクスを含む、押し出された、中心充填された、またはコーティングされた菓子材料、ならびにその製造方法を記載している。
【0008】
WO13091631は、ニコチンおよび錠剤材料を含む第1のモジュール、ならびにガムベースおよびニコチンを含む第2のモジュールである2つのモジュールを含む圧縮チューインガム錠剤からのニコチンの送達を記載している。
【0009】
US6,551,634は、チューインガムまたは風船ガム片の製造方法およびチューインガムまたは風船ガム片を記載しており、ガム片は、香料、香料と薬剤との混合物またはすべて薬剤の混合物を含み得るコアを有し、このコアは、ガム状の塊を含まない中間層でカプセル化され、次に、後者は、外層でカプセル化される。中間層は、コアを外層との接触から分離する。
【0010】
WO10003425は、粉末状チューインガム組成物、ならびにコアおよびチューインガム組成物の1つ以上の層を含むチューインガムを記載している。このチューインガムは、中心充填チューインガムと呼ばれる。チューインガム組成物を含む1つ以上の中間区画を接着剤として使用することができる。
【0011】
JP5836037は、複層香気成分含有チューインガムを記載している。
【0012】
WO17105564は、層を含み得るカフェインおよびL-テアニンと組み合わされた粉末状ガムベースを含むチューインガムを記載している。
【0013】
米国特許出願公開第2016/296474号は、消費者、特にヒト個人への1つ以上の有効成分の送達に適した経口のチュアブル剤形を記載している。この剤形は、ガム状組成物を含む第1の成分、粒子材料であるかまたは予め形成された固体ユニットもしくは予め形成された複数の固体ユニットである第2の成分、および有効成分から形成される多成分組成物として構成される。
【0014】
米国特許出願公開第2006/039872号は、層状チューインガム錠剤の総重量に基づいて、35.5~86.5重量%のガムベースを含む少なくとも1つの層を含む層状チューインガム錠剤を記載している。このガムベースは、0.1~2.5mmの範囲の平均直径を有する圧縮ガム顆粒中に存在する。
【0015】
米国特許出願公開第2001/053397号は、香料、香料と薬剤との混合物またはすべての薬剤の混合物を含み得るコアを有するチューインガムまたは風船ガム片の製造方法およびチューインガムまたは風船ガム片を記載している。コアは、ガム状の塊を含まない中間層によりカプセル化される。中間層は、ガム状の塊を含むガムを噛む人の口内に置かれるガム片の外層である外層によりカプセル化される。中間層は、コアを外層との接触から分離する。
【0016】
最後に、国際特許出願公開第WO9320708号は、板状チューインガムの貯蔵寿命を延ばす方法、およびその方法に従って調製された貯蔵安定性チューインガムを記載している。具体的には、チューインガムシートの両面に、部分的に乾燥させると接着剤として作用する食用フィルム形成剤の水溶液がコーティングされる。次に、ワックスの層が、食用フィルム形成剤の各層に適用される。
【0017】
概要
本開示は、その第1の態様に従って、(i)生物活性分子を含む圧縮コアと、(ii)前記圧縮コア上の保護層と、(iii)ガムベース粉末を含む保護層上の1つ以上のソフトコーティング層とを含むチュアブル錠を提供し、前記保護層は、水不溶性セルロース系ポリマーを含む。
【0018】
好ましい実施形態では、水不溶性セルロース系ポリマーは、商標名Ethocel(商標)としても知られているエチルセルロース(EC)ポリマーを含むか、またはそれである。
【0019】
さらなる態様によれば、本開示は、以下を含むチュアブル錠を調製する方法を提供し、この方法は、
(a)生物活性分子を含む圧縮錠剤の上に、水不溶性セルロース系ポリマーを含む保護材料を適用して、前記圧縮錠剤上に保護コーティングを形成することと、
(b)前記保護コーティングの上に1つ以上のソフトコーティング層を適用し、前記ソフトコーティング層は、ガムベース粉末を含むこととを含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本明細書に開示されている主題をより良く理解し、実際にそれがどのように実行され得るかを例証するために、添付の図面を参照して、非限定的な例としてのみ、実施形態をここで説明する。
【0021】
図1A-B】錠剤および各層の概略図を示し、図1Aは、錠剤のコア、保護層および保護層上のソフトコーティングを示し、図1Bは、ソフトコーティング上の追加の層を示している。
図2】本開示に従って得られたショウガ含有錠剤(表1のコア錠剤#1)の写真画像である。
図3A-D】水中に配置後、異なる時点におけるEC保護コーティングを有する(右側の錠剤)またはEC系保護コーティングを有しない(左側の錠剤)、追加の層(保護コーティング後に施される)を有しないベリー類+ビタミンC含有錠剤(表1のコア錠剤#3)の写真画像である。図3Aは時点t=0における画像であり、図3Bは時点t=4時間における画像であり、図3Cは時点t=18時間における画像である。
図4A-B】保護層を有する(図4A)または保護層を有しない(図4B)錠剤(表1のコア錠剤#3)の写真画像であり、製造から1年後に撮影された画像である。
図5】貯蔵後の保護層を有しないガムコーティングマルチビタミン錠剤(表1のコア錠剤#2)の写真画像である。
図6A-E】異なる時点における保護コーティングを有するまたは有しないビタミン含有錠剤(表1のコア錠剤#2)の写真画像である。図6Aは時間t=0におけるHPMC保護コーティングを有する錠剤(表1のコア錠剤#2)の画像であり、図6Bは、図6Aのビーカーの40分後の画像である。図6Cはt=0におけるカルナウバ蝋を有する錠剤の画像であり、図6Dは20分後の図6Cのビーカーの画像である。図6Eは蜜蝋コーティングを有する錠剤の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、ガムコーティングされたチュアブル錠の完全性を改善する必要性に基づいている。具体的には、ガムベース材料と組み合わせた錠剤は、(貯蔵中)時間の経過とともに亀裂が生じ、損傷した商業的に劣った製品をもたらすことがわかった。
【0023】
とりわけ、ガムコーティングされたチュアブル錠の亀裂を克服することを目的として、錠剤上の保護コーティングが開発され、製品の外側コーティングの亀裂を本質的に防止することによって、ガムコーティング錠剤の安定性を予想外に改善する方法でチュアブル錠に導入された。
【0024】
具体的には、生物活性分子を含む圧縮錠を含むか、または生物活性分子を含む圧縮錠剤であるコアと、前記圧縮コアを外部環境から密封する(圧縮錠とガム含有コーティングとの間に挟持される)コア上の保護コーティングとを含むチュアブル錠が、今回開発された。より具体的には、保護コーティング上に、以下でさらに論じるように、1つ以上のガムベース粉末層、および任意選択で、ソフトコーティング結合剤および油性材料などの他の材料を含むソフトコーティング/ガムコーティングがある。
【0025】
市販され、業界で一般的に使用されている他の様々な想定される水不溶性ポリマーから、保護コーティングに含まれる水不溶性ポリマーの特定の選択により、他の不溶性ポリマーにより生じていた亀裂の形成の大幅な排除が可能になることが見出された。
【0026】
以下でさらに論じられるように、セルロース系ポリマーは、エチルセルロース系ポリマーであるか、または主にEC系ポリマーを含むことが好ましい。これに関連して、主にECポリマーを含む保護コーティングに言及する場合、保護コーティング中のポリマーの総量のうちのECポリマーの量が、40重量%以上、時には50重量%以上、時には60重量%以上、時には70重量%以上、時には80重量%以上、時には90重量%以上、時には95重量%以上、あるいは98重量%以上である限り、コーティングは他のポリマー、または他の水不溶性ポリマーを含み得ることを理解されたい。
【0027】
本開示との関係において、錠剤の外側表面/コーティングの亀裂に言及する場合、それは、外側表面の連続性におけるあらゆる欠陥または陥凹を包含すると理解されるべきである。亀裂は、細長い割れ目もしくは裂け目の形態であるか、または表面などに分布する1つ以上の開口の形態である可能性があり、亀裂は任意の寸法または深さであり得、複数の亀裂が表面に現れる場合、亀裂が異なれば、サイズおよび形状も異なる。
【0028】
本開示との関係において、保護コーティングは、単一の亀裂の形成さえも防止する。
【0029】
本開示との関係において、亀裂は、目視検査によって観察することができるものである。したがって、本明細書にて開示する錠剤は、目視検査によっては見られないが拡大ツールによって観察され得る外側表面の不連続性のレベルを含み得る可能性がある。
【0030】
さらに、本発明との関係において、保護コーティングは、水または水分と接触したときに錠剤の安定性をもたらす。
【0031】
圧縮コアは、少なくとも1つの生物活性物質および任意選択で充填剤材料を含む圧縮錠剤である。
【0032】
本開示との関係において、圧縮コア内の充填剤は、典型的には不活性物質であり、錠剤業界で知られているものであり、したがって、本明細書にて開示される錠剤の制限要素と見なされるべきではない。
【0033】
生物活性物質に関しては、以下でさらに論じるように、例えば、身体からの有益な応答を刺激するなど、対象の幸福に有益な効果を有するものとして理解されるべきである。
【0034】
本開示との関係において、生物活性物質は、植物、動物、海洋生物などから得られる天然分子であり、代謝プロセスを調節し、より良い健康の促進をもたらすことができる。それにとらわれるものではないが、生物活性物質は、抗酸化活性、酵素の阻害または誘導、受容体活性の阻害、および遺伝子発現の誘導および阻害などの有益な効果を示すことができる。
【0035】
錠剤のコアに組み込むことができる様々な想定される生物活性物質がある。例えば、それらに限定されることなく、錠剤は、ビタミンC、葉酸、B12他などのビタミン、亜鉛、鉄、カルシウム他などのミネラル、クランベリー、ショウガ他などのハーブを担持することができる。
【0036】
圧縮コアは、硬く圧縮された錠剤である。硬度は、当技術分野において既知の従来の錠剤硬度試験技術によって決定することができる。
【0037】
理解されているように、錠剤の硬度は、「使用前の貯蔵、輸送、および取り扱いの条件下での」錠剤の破壊点および構造的完全性を反映している。錠剤が「硬すぎる」場合、所要時間内に崩壊しない場合があり、溶解試験に失敗する可能性がある。錠剤が「柔らかすぎる」場合、コーティングまたは梱包、および出荷作業などの後続の処理中の取り扱いに耐えられない可能性がある。
【0038】
コア錠剤の硬度は、「VanderKamp(登録商標)VK200」などの任意の従来の錠剤硬度計によって測定することができるが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、コア錠剤の硬度は、4~20キロポンド(kp)、時には5~15kp、時には8~14kp、時には8~20kp、さらに時には、9~12kpの範囲であり、各範囲は、本開示の別個の実施形態を構成する。
【0039】
圧縮錠剤コアは、保護コーティングでコーティングされている。錠剤のコア上のこの保護コーティングは、1つ以上の薄層を含み、各層は、少なくとも水不溶性セルロース系ポリマーを含む。通常、保護コーティングは、均一な均質なコーティングがコア錠剤上に形成されるまで、錠剤のコア上に噴霧される。そのような噴霧されたコーティングは、非常に薄いミクロンの厚さを有することが理解される。
【0040】
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、水不溶性非膨潤性セルロース系ポリマーを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、非生分解性ポリマーを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、エチルセルロース(EC)を含み、すなわち、水不溶性ポリマーは、ECポリマーであるか、またはECポリマーを含む。
【0043】
いくつかの例によれば、ECは、45~55%、時には48.5~50%のエトキシ基%を有するもの、または48.0~49.5%のエトキシ基%を有するものであり、例えば、Aqualon(EC-10)によって製造されたようなもの、またはCAS番号9004-57-3を有するようなものである。
【0044】
特に、他の水不溶性セルロース系ポリマーが検討されており(本明細書で例示されるヒドロキシプロピルメチルセルロース)、驚くべきことに、ECポリマーが錠剤の安定性に関して最良の結果をもたらすことが見出された。
【0045】
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、エチルセルロースを含むか、または本質的にエチルセルロースからなり、任意選択で残留有機溶媒を含む。
【0046】
本開示との関係において、「残留」量に言及する場合、それは、分析ツールによって検出可能であるが、錠剤の完全性にわずかなまたは全く影響を及ぼさない量および/または錠剤を消費する存在に影響を及ぼさない量として理解されるべきである。いくつかの実施形態では、「残留」量は、最終製品(錠剤および少なくとも保護コーティング)の総重量のうち3%w/w以下である。
【0047】
保護コーティングは、ガムベースのソフトコーティング(「ガムコーティング」と呼ばれることもある)で覆われている。ソフトコーティングは、少なくともガムベース粉末を含む。
【0048】
ガムベース粉末は、ガム産業で一般的に使用される任意の既知の市販のガムベース粉末であり得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、ソフトコーティングは、粉末を圧縮錠剤に結合するためのソフトコーティング結合剤を含む。ソフトコーティング結合剤は、ガム産業で一般的に使用される任意の結合剤であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、ソフトコーティング結合剤は、糖系材料とアラビアガム(アカシアガム)との組み合わせを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、糖系材料は、糖、糖代替物、糖アルコールおよびそれらの任意の組み合わせのいずれか1つである。
【0052】
いくつかの実施形態では、ソフトコーティング結合剤は、1つ以上の糖アルコールを含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、糖アルコールは、エチレングリコール(2炭素)、グリセロール(3炭素)、エリスリトール(4炭素)、トレイトール(4炭素)、アラビトール(5炭素)、キシリトール(5炭素)、リビトール(5炭素)、マンニトール(6炭素)、ソルビトール(6炭素)、ガラクチトール(6炭素)、フシトール(6炭素)、イジトール(6炭素)、イノシトール(6炭素;環状糖アルコール)、ボレミトール(7炭素)、イソマルト(12炭素)、マルチトール(12炭素)、ラクチトール(12炭素)、マルトトリイトール(18炭素)、マルトテトライトール(24炭素)およびポリグリシトールからなる群から選択される。
【0054】
上記の糖アルコールおよびそれらの任意の組み合わせのそれぞれは、本開示の別個の実施形態を構成する。
【0055】
いくつかの実施形態では、ソフトコーティング結合剤は、1つ以上の糖代替物を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、糖代替物(糖アルコールではない)は、エリスリトール、フラクトオリゴ糖、グリチルリチン、グリセロール、加水分解水添デンプン、イヌリン、イソマルトオリゴ糖、イソマルツロース、マビンリン、マルトデキストリン、ミラクリン、モナチン、モネリン、オスラジン、ペンタジン、ポリデキストロース、プシコース、タガトースおよびタウマチンからなる群から選択される。
【0057】
上記の糖代替物(および糖アルコール)ならびにそれらの任意の組み合わせのそれぞれは、本開示の別個の実施形態を構成する。
【0058】
いくつかの実施形態では、糖アルコールは、少なくともイソマルトを含むか、またはイソマルトである。
【0059】
いくつかの実施形態では、糖代替物は、少なくともマルトデキストリンを含むか、またはマルトデキストリンである。
【0060】
いくつかの実施形態では、ソフトコーティング結合剤は、アラビアガムを含む。
【0061】
本開示によれば、ソフトコーティング結合剤とともに使用することができる様々なタイプのアラビアガムが存在する。
【0062】
アラビアガムは、アカシアガム(欧州食品安全機関によってE番号E414で識別)という用語でも知られている。100種を超えるアカシアが知られているが、アカシアガムは、例えば、Fabaceae科に属する主に2種のアカシアの木(Acacia SenegalおよびAcacia Seyal)から採取した硬化した樹液の浸出液として得られる水溶性タイプの繊維である。アカシアガムは、炭水化物の複合混合物(D-ガラクトース主鎖と、末端にL-ラムノースまたはL-アラビノース単位を有するD-グルクロン酸の側鎖とから主に構成される高い割合の炭水化物(約97%)および低い割合のタンパク質(<3%)による糖タンパク質と多糖類との複合体)からなる食用生体高分子であり、低血糖指数およびプレバイオティクス効果を有する(すなわち、有益な細菌の増殖および/または活性を刺激する非消化性繊維化合物)。アカシアガムの分子量は200~600kDaである。アカシアガムはヒトの腸では消化されないため、食品業界では安定剤として使用されている(E414)。いくつかの実施形態では、アカシアガムは商業的に入手されている。
【0063】
いくつかの実施形態では、アラビアガムは、Acacia Seyalの木またはAcacia Senegalの木に由来するものである。アラビアガムの他の供給源は、Acacia Bussei、Acacia Drepanolobinn、Acacia Mellifera、Acacia Nilotica、およびAcacia Tortilisである可能性がある。ソフト(チューインガム)コーティングが適用されると、次にこれはハードコーティングでコーティングされ、カリカリしたクラストコーティングを有する錠剤を提供する。
【0064】
保護コーティング上のガム含有ソフトコーティングは、ガムベース粉末のいくつかの層で構成され、各層は、ソフトコーティング結合剤の使用によって互いに接着され、圧縮錠剤(compressed tabled)に接着されている。特に、典型的には、各層は同じ結合剤組成物によってその前の層に結合されるが、異なる結合剤組成物がガムベース粉末の異なる層、例えばアラビアガムと混合された異なる糖系材料を接着するために使用され得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、ガム含有ソフトコーティングは、ガムベース粉末の少なくとも5つ、時には少なくとも10、そして時には少なくとも15の薄層を含む。いくつかの実施形態では、このガム含有コーティングは、ガムベース粉末の5~30の薄層を含み、他のいくつかの実施形態では、ガム含有コーティングは、10~30の層を含み、いくつかのさらなる実施形態では、ガム含有ソフトコーティングは、15~25の層を含む。上記のように、これらの薄層は、そのようなガムベース粉末と、それらの間の適切なソフトコーティング結合剤との組み合わせであり、ガムベース粉末の層は、ガム含有ソフトコーティングの所望の厚さに達するまで層ごとに適用および接着される。
【0066】
いくつかの実施形態では、ソフトコーティングは、油性剤などの他の成分を含む。油性剤は、少なくとも必ずしもすべてではないが2つのガムベース含有層の間の中間層として適用される。例えば、ソフトコーティングは、20層のガムベース粉末を含み得、ガムベース粉末の3層ごとに、油性剤の薄層(噴霧層)が存在するであろう。
【0067】
いくつかの実施形態では、油性剤もまた、ソフトコーティング結合剤(アラビアガムおよび糖系材料の混合物)に添加される。
【0068】
いくつかの実施形態では、油性剤は、油性香味料である。それらに限定されることなく、油性香味料は、中鎖トリグリセリド(MCT)油、ココナッツ、トウモロコシ、パーム油およびトリアセチンからなる群から選択される1つまたは組み合わせである。
【0069】
いくつかの実施形態では、ガム含有ソフトコーティングは、ガムベース粉末、結合剤、および油性香味料の層の組み合わせを含む。
【0070】
以下にさらに示されるように、ソフトコーティングの層の間に油性香味料を含めることは、とりわけ、その咀嚼性に関して、得られるチュアブル錠の品質を著しく改善した。具体的には、得られた錠剤はより柔らかく、より伸縮性があった(噛んだ後、手でガムを伸ばすことがより簡単であった。
【0071】
次に、ソフトコーティングはハードコーティングで被覆される(場合によっては、チュアブル錠にクラストまたはクラストのようなコーティングを施す)。
【0072】
いくつかの実施形態では、ハードコーティングは、アラビアガムおよび糖系材料(単一の糖系化合物または糖系化合物の組み合わせ)の混合物を含み、本明細書では「ハードコーティング結合剤」という用語で呼ばれる。
【0073】
いくつかの実施形態では、ハードコーティング結合剤は、ソフトコーティングにおける結合剤を構成するのと同じ糖系材料を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、ハードコーティング結合剤は、ソフトコーティングにおける結合剤を構成するアラビアガムを含む。
【0075】
さらにいくつかのさらなる実施形態では、ハードコーティング結合剤は、ソフトコーティングにおける結合剤を構成するアラビアガムおよび糖系材料を含む。この実施形態によれば、ハードコーティング結合剤のアラビアガムと糖系材料との間の比率またはブリックスは、ソフトコーティング結合剤のものとは異なり得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、ハードコーティングは、乳化剤および/または増粘剤、および/または顔料(例えば、二酸化チタン)などの他の成分を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、ハードコーティングは、少なくとも二酸化チタン(アラビアガムおよび糖系材料との混合物)を含む。
【0078】
ハードコーティングは、ハードコーティング結合剤のいくつかの薄層で構成されている。
【0079】
いくつかの実施形態では、ハードコーティングは、ハードコーティング結合剤の少なくとも5つ、時には少なくとも10、時には少なくとも15の薄層、すなわち、糖系材料とアラビアガム(および任意選択で他の成分)との混合物を含む。顔料などの追加の成分は、各層に含まれていてもよく、またはハードコーティングの外層に含まれていてもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、このハードコーティングは、ハードコーティング結合剤の5~30の薄層を含み、他のいくつかの実施形態では、ハードコーティングは、10~30の層を含み、いくつかのさらなる実施形態では、ハードコーティングは、ハードコーティング結合剤の15~25の層を含む。
【0081】
ソフトコーティングの層およびハードコーティングの層を適用する方法を以下にさらに説明する。
【0082】
いくつかの実施形態では、追加のカラーコーティングがハードコーティング上に適用される。
【0083】
次に、コーティングされた錠剤は、錠剤に光沢のある/艶のある独特の外観を与えるためにガムコーティングされた錠剤に通常適用されるように、艶出しが施されてもよい。艶出しは、任意の手段および当技術分野で知られている任意の材料を用いて実施することができ、通常、艶出しパン(ドラムコーター)内で適用される。
【0084】
いくつかの実施形態では、艶出しは、ハードコーティングの上にワックス系材料を適用することによって施される。
【0085】
それらに限定されることなく、艶出しコーティングは、微結晶蝋、カルナウバ蝋、カンデリラ蝋、蜜蝋および固形パラフィンからなる群から選択される材料の1つまたは組み合わせを含み、それぞれが本開示の別個の実施形態を構成する。
【0086】
図1A~1Bは、本開示の非限定的な実施形態による、チュアブル錠を形成する圧縮錠剤上の各コーティングの図解を示す。具体的には、図1Aは、保護層でコーティングされ、その上にソフトコーティングが施された圧縮コアを示し、図1Bは、様々なコーティングと、圧縮コア上のそれらの順序(最も外側の層である艶出しコーティングから最も内側の圧縮錠剤コアまで)とを示している。
【0087】
チュアブル錠は、本開示の追加の態様を構成する方法によって製造される。
【0088】
本開示によれば、この方法は、少なくとも以下のステップを含む。
-生物活性分子を含む圧縮錠剤の上に、水不溶性ポリマーを含む保護材料を適用して、前記圧縮錠剤上に保護コーティングを形成するステップ。
-前記保護コーティングの上に1つ以上のソフトコーティング層を適用するステップであって、前記ソフトコーティング層は、少なくともガムベース粉末、好ましくはガムベース粉末とソフトコーティング結合剤との組み合わせを含むステップ。
【0089】
いくつかの実施形態では、錠剤のコア上への保護材料の適用は、上記で定義された水不溶性ポリマーを有機溶媒に溶解し、溶解したポリマーを圧縮錠剤上に噴霧することを含む。
【0090】
有機溶媒は、いくつかの実施形態によれば、極性溶媒である。
【0091】
いくつかの実施形態では、溶媒は極性プロトン性溶媒である。
【0092】
いくつかの実施形態では、溶媒はアルカノール、具体的にはC2nOHである。
【0093】
いくつかの実施形態では、有機溶媒はエタノール、好ましくは99%エタノールである。
【0094】
錠剤コアに保護材料を噴霧した後、有機溶媒を蒸発させる。先に進む前にすべての有機溶媒を除去することが望ましいが、後続のコーティング段階中に、いくらかの残留量の有機溶媒が圧縮コアに残っている可能性があることに留意されたい。
【0095】
次に、保護コーティングの上にソフトコーティングが適用される。ソフトコーティングは、ガムベース粉末の層で構成され、ソフトコーティング結合剤と連続して交互に適用される。言い換えれば、毎回乾燥ガムベース粉末を適用する前に、錠剤をソフトコーティング結合剤の水溶液で湿潤させる。
【0096】
いくつかの実施形態では、ソフトコーティング結合剤による錠剤の湿潤およびその後の湿潤した錠剤上へのガムベース粉末の展延は、ドラム内で錠剤を回転させることによる。
【0097】
ソフトコーティング結合剤溶液は、水に溶解させた、上記のソフトコーティング結合剤成分を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、ソフトコーティング結合剤溶液は、糖系材料およびアラビアガムを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、ソフト(ガムベース粉末)コーティングの各層は、ソフトコーティングの次の層を追加する前に乾燥される。粉末の次の層を適用する前に、ドラム内で回転する乾燥したコーティング錠剤を、ソフトコーティング結合剤溶液で湿潤させ、十分に湿潤したときにのみ、乾燥粉末を回転ドラムに入れる。
【0100】
各ソフトコーティング層は、組成が同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、各層はそれらのブリックスが異なる場合がある。
【0101】
具体的には、ソフトコーティング結合剤溶液は、そのブリックス値によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、ソフトコーティング結合剤溶液は、60~70のブリックスによって特徴付けられる。
【0102】
いくつかの実施形態では、最初のソフトコーティング層に使用されるソフトコーティング結合剤溶液は、(圧縮コアから遠く離れた)ソフトコーティングの後続の層で使用されるものよりも高い。例えば、これに限定されるものではないが、ソフトコーティングの最初の層を形成するために使用される結合剤溶液のブリックスは約67であり、後続の層のブリックスは約62である。ブリックスの違いは、望ましい結果に基づいている。62のブリックスは外層をより滑らかにし、粗さを少なくすることがわかっているが、最初の層に使用される67のより高いブリックスはより速く乾燥する。したがって、より多くの内部ソフトコーティング層のより速い乾燥を可能にするために、上記で特定された範囲の上限により近いブリックスレベルを有する結合剤溶液を使用することが可能である。
【0103】
これらの層は、所定量のガムベース粉末が保護された錠剤の上に適用されるまで、言い換えれば、所望の厚さのソフトコーティングが生成されるまで適用される。
【0104】
いくつかの実施形態では、ガムベース粉末は、少なくとも700gのガム粉末が1000gの保護された錠剤の上に適用されるまで適用される。
【0105】
いくつかの実施形態では、ガム含有ソフトコーティングは、ガムベース粉末の少なくとも5つ、時には少なくとも10、そして時には少なくとも15の薄層を含む。いくつかの実施形態では、このガムベース含有コーティングは、ガムベース粉末の5~30の薄層、10~30の層、そして時には15~25の層が適用されるまで実行される。
【0106】
いくつかの実施形態では、ガムベース粉末の1つ以上の層の間で、ガムベースが乾燥した後、コーティングされた錠剤に、油性材料、典型的には油性香味料が噴霧される。
【0107】
いくつかの実施形態では、油性材料は、ガムベース粉末の少なくとも1つの層、時には少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ以上の層に噴霧される。
【0108】
いくつかの実施形態では、油性剤の適用は、ガムベース粉末のすべての層、またはガムベース粉末の2番目の層ごと、または3番目の層ごと、または4番目の層ごとの後に行われる。
【0109】
いくつかの実施形態では、油性剤の適用は、層の固定された順序ではなく、油性剤が噴霧されるガムベース粉末の少なくとも3つの層がある限り、むしろランダムである。
【0110】
次に、ソフト(ガムベース)コーティングされた錠剤は、錠剤産業で知られているように、追加の層でコーティングされ得る。
【0111】
例えば、ソフトコーティングされた錠剤は、ソフトコーティングの上に、ハードコーティングを含み得る。そのようなハードコーティングは、ハードコーティング結合剤の1つ以上の層を適用することによって得ることができ、ハードコーティング結合剤の組成は上記で定義された通りである。
【0112】
いくつかの実施形態では、ハードコーティングの層は、ソフトコーティング結合剤を適用するために使用されるのと同様の方法で、ドラムでハードコーティング結合剤を順次適用することによって生成される。具体的には、ガムベースでコーティングされた錠剤をハードコーティング結合剤の溶液で湿潤させ、ドラム内で混合し、乾燥させてから、ハードコーティング結合剤の次の層を適用する。
【0113】
いくつかの実施形態では、ハードコーティングは、上記のように、顔料も含む。二酸化チタンなどの顔料は、結合剤溶液に混合される。
【0114】
いくつかのさらなる実施形態では、錠剤は、ハードコーティングの上にカラーコーティングによってコーティングされ得る。カラーコーティングの適用は、前のコーティングと同じ方法、すなわち、ドラム内で着色溶液により錠剤を湿潤させることによるものであり得る。
【0115】
最後に、いくつかの実施形態によれば、コーティングされた錠剤は、典型的には、ハードコーティングの上に、任意選択でカラーコーティングの上に艶出し材料を適用することによって艶出しすることができる。
【0116】
非限定的な実施形態の説明
材料
錠剤:各錠剤の重量は800mgで、水溶性担体/充填剤としてソルビトール、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム、およびビタミン、ミネラル、植物由来成分(plant derived parts)、香味料のうちの1つ以上を含み、すべて以下の表1に示す。
【表1】
【0117】
上記の錠剤コアを、以下に詳述するように、保護コーティングまたは異なる成分のソフトコーティングおよびハードコーティングでコーティングした。
【0118】
保護コーティングには、セルロース系ポリマー(例えば、ECまたはHPMC)またはワックス系材料(微結晶蝋または蜜蝋およびカルナウバ蝋)が含まれていた。
【0119】
ソフトコーティングおよびハードコーティングには、チューインガム粉末、イソマルト、アラビアガム、トゥッティフルッティなどの香味料、二酸化チタン(通常はハードコーティング)、黒ニンジンおよびベニバナ抽出物などの着色剤(通常はハードコーティング)の異なる組み合わせが含まれていた。
【0120】
錠剤コアの外側の層は、以下に説明する着色剤を除いて同一であった。
【0121】
方法
(a)錠剤の作成:
各錠剤の成分をふるいにかけ、担体であるソルビトールと混合して、微細な混合物を形成し、そこへ滑沢剤であるステアリン酸マグネシウムを加え、均一な混合物が得られるまでさらに混合した。次に、混合物を打錠および除塵にかけた(従来の技術による)。
【0122】
錠剤の硬度は、錠剤硬度計(VanderKamp(登録商標)VK200)によって測定し、9~12キロポンドであることを確認した(錠剤は、噛むのに十分な柔らかさでありながら、ドラムコーター内で破壊されたり亀裂を生じたりすることなく次のステップに耐えるのに十分な硬さである必要がある)。
【0123】
(b)保護コーティングの付与:
保護コーティングのために、エチルセルロース(AQUALON(商標)EC-N10)の99%エタノール溶液を、72μlに8mgのECを溶解することによって調製し、得られた溶液を、錠剤がドラム内で回転しているときに錠剤に噴霧した。エタノールを蒸発させて、乾燥したECコーティング錠剤(「EC錠剤」)を得た。理論に拘束されるものではないが、このEC層は、各錠剤を液体の浸透、したがって崩壊から防止および保護する(以下に説明するそれぞれの図を参照)。
【0124】
参照/比較として、保護コーティングのない錠剤もまた、以下に記載するように形成した。
【0125】
(c)ガム層(ソフトコーティング)の付与
表2に、ガム(ソフト)コーティングの組成を示す。
【表2】
【0126】
ガム層を調製するために、沸騰した精製水にイソマルトを添加してイソマルト溶液を調製した(1+2)。溶液が透明になった(すべてのイソマルトが溶解した)ら、冷却した。
【0127】
別の容器で、アラビアガムを精製水(70℃)に攪拌しながら加えた(3+4)。次に、この溶液を数時間静置した後、泡を除去し、2つの溶液を混合した。この混合物は、ガム結合溶液を構成する。屈折計で測定した際に、混合したガム結合溶液の糖濃度は67ブリックスであった。
【0128】
ECコア錠剤のコーティングは、錠剤をドラム内で回転させるドラムの壁に摩擦を生じさせるために、混合した結合溶液で事前に曝露したドラム内であった。次に、錠剤(1kg)をドラムの中に入れた。
【0129】
これとは別に、ガムベース粉末(6)を香料粉末(7)と混合することによってチューインガム粉末を調製した。
【0130】
最初のガム層は、ドラムを回転させ、そこへ結合溶液(67ブリックス)を加えることによって調製した。後続層では、溶液の量が増加する一方で、糖濃度は62ブリックスに減少した。一定量の混合した結合溶液を添加するたびに、チューインガム粉末を錠剤上に展延し、混合した結合溶液(結合剤として作用)によって錠剤に「接着」した。
【0131】
約800グラムのチューインガム粉末を使用したときに、ガムコーティングを終了した。次に、多層ガム錠剤を、乾燥するまで24時間(20℃~25℃、湿度40%)トレイ上に置いた(played on a tray)。
【0132】
ドラム内の製品が湿潤しすぎて空気乾燥が十分でない場合、イソマルト8を追加することに留意されたい。
【0133】
(d)ソフトコーティング上のハード「クラスト」コーティングの付与
まず、イソマルトが完全に溶解するまで(透明な溶液が形成されるまで)沸騰した精製水にイソマルトを加えることにより、クラスティング溶液を調製した。次に、透明溶液を冷却した。
【0134】
別の容器で、アラビアガムを精製水(70℃)に攪拌しながら加えた。次に、この溶液を数時間静置した後、泡を除去した。
【0135】
次に、2つの溶液を混合し、水に溶解した二酸化チタンを最終的に混合した溶液に加えた。
【0136】
屈折計で測定した際に、TiO混合溶液の糖濃度は67ブリックスであった。TiOを添加する前に濃度を測定した。
【0137】
多層ガム錠剤のコーティングは、錠剤をドラム内で回転させるドラムの壁に摩擦を生じさせるために、混合した溶液で事前に曝露したドラム内であった。
【0138】
次に、錠剤をドラム内に入れ、ドラムを回転させながら、TiO混合溶液を、ドラムをあふれさせることなく、錠剤を湿潤させるまで、バッチ量で各量を徐々に加えた。各添加の間に、錠剤を乾燥させるのに十分な時間を与え、こうして各添加によりクラストコーティングの薄層を形成した。
【0139】
約20回のコーティング(20の層の形成)後、クラストコーティングした錠剤を取り出し、乾燥するまで24時間(20℃~25℃、湿度40%)乾燥トレイ上に置いた。
【0140】
表3に、ハードコーティングを調製するために使用した成分を示す。
【表3】
【0141】
(e)カラーコーティングの付与
まず、イソマルトが完全に溶解するまで(透明な溶液が形成されるまで)沸騰した精製水にイソマルト(270mg)を加えることにより、着色料を調製した。次に、透明溶液を冷却した。
【0142】
別の容器で、アラビアガム(17.28mg)を精製水(70℃)に攪拌しながら加えた。次に、この溶液を数時間静置した後、泡を除去した。
【0143】
次に、2つの溶液を混合し、水に溶解した二酸化チタンおよび黒ニンジンおよびベニバナ抽出物などの着色剤を最終的に混合した溶液に加えた。濃度は、対象の色によって異なる場合があることに留意されたい。
【0144】
屈折計で測定した際に、混合した着色溶液の糖濃度は67ブリックスであった。
【0145】
前の層で行われたように、多層ガム錠剤のコーティングは、錠剤をドラム内で回転させるドラムの壁に摩擦を生じさせるために、混合した着色溶液で事前に曝露したドラム内であった。
【0146】
次に、クラストコーティングした錠剤をドラム内に入れ、ドラムを回転させながら、混合した着色溶液を、ドラムをあふれさせることなく、錠剤を湿潤させるまで、バッチ量で各量を徐々に加えた。各添加の間に、錠剤を乾燥させるのに十分な時間を与え、こうして各添加によりカラーコーティングの薄層を形成した。
【0147】
約10回のコーティング(10の層の形成)後、クラストコーティングした錠剤を取り出し、乾燥するまで24時間(20℃~25℃、湿度40%)乾燥トレイ上に置いた。
【0148】
様々な例示的なコーティング錠剤で使用した着色剤:
-ショウガ含有錠剤-ベニバナ抽出物
-マルチビタミン含有錠剤-黒ニンジン抽出物
-ハーブ含有錠剤-黒ニンジン抽出物
【0149】
(f)艶出し
着色した錠剤の艶出しのために、艶出し剤として使用される微結晶蝋およびカルナウバ蝋とともに金属バッフルをドラムに配置した。次に、ドラムを高速(25~35RPM)で約20分間回転させた。
【0150】
結果
コーティング層は同一である(ただし、中間体の有無にかかわらず、保護コーティング)が、錠剤コアが異なる、様々なタイプの錠剤が形成された。
【0151】
一般に、保護(EC系)コーティングが製品を安定化させること、すなわち、外側のコーティングの亀裂を大幅に防止/保護することもわかっている。
【0152】
さらに、コーティングされた錠剤に油性香味料を噴霧すると、得られた製品は、油を噴霧されなかった同じ製品と比較して、より柔らかくなったことがわかった(記載されていない)。
【0153】
ショウガ含有錠剤
図2は、25℃で貯蔵してから12ヵ月後に撮影されたショウガ含有錠剤の写真画像である。
【0154】
見られるように、黄色の錠剤はそれらの表面に目に見える亀裂または欠けがなく、コーティングされた錠剤が貯蔵安定性であることを示している。
【0155】
コーティングされた錠剤に油性香味料を噴霧すると、得られた製品は、油を噴霧されなかった同じ製品と比較して、より柔らかくなったこともわかった(記載されていない)。
【0156】
図3A~3Dは、EC系保護コーティングを有するまたは有しない錠剤の写真画像であり、追加の層(例えば、保護コーティングの上に付与されるソフトコーティングおよび/またはハードコーティング)がすべて存在しない。
【0157】
図3Aは水に入れた直後に、図3Bは水に入れてから4時間後に、図3Cは水に入れてから18時間後に、図3Dは水に入れてから24時間後に撮影したものである。
【0158】
図3A~3Dは、時間の経過とともに、保護EC保護コーティングを含む錠剤が崩壊しない、すなわち水中で安定であることを明確に示している。
【0159】
小児用錠剤
図4Aは、ハーブ含有コア錠剤(表1の錠剤3)およびEC保護コーティングを使用して製造された錠剤の製造から1年後に撮影された写真画像である。比較すると、図4Bは、同じ方法で製造された錠剤の写真画像であるが、保護(EC)噴霧層を有しない。
【0160】
見られるように、ピンク色の錠剤は、保護コーティングを含むと、それらの表面に目に見える亀裂または欠けがなく(図4A)、コーティングされた錠剤が貯蔵安定性であることを示している。
【0161】
保護層がない場合、図4Aに示す表と同じ貯蔵条件で保管した場合、1年後に外側表面に亀裂が生じた。これは図4Bに示され、錠剤の完全性を維持するための保護層の必要性を明確に裏付けている。
【0162】
マルチビタミン錠剤
図5は、EC保護層を含まないマルチビタミン含有錠剤(表1のコア錠剤#2)の写真画像である。画像は製造から1年後に撮影されたものである。
【0163】
ショウガ錠剤およびハーブ錠剤(表1のコア)と同様に、EC保護コーティングの存在は、貯蔵後の錠剤の完全性を維持するために重要であることがわかった。
【0164】
上記の結果に基づいて、とりわけバリアとして作用する保護コーティングは、貯蔵中に錠剤を保護し、したがって、特に大規模な商業生産にとって不可欠であることは明らかである。
【0165】
比較例
エチルセルロース系保護コーティングの非自明な選択をさらに強調するために、ビタミン含有コア錠剤(表1のコア錠剤2として)を上記のように調製し、Ethocelについて上記したのと同じ方法でヒドロキシプロピルメチルセルロースで、または蜜蝋(最初に60℃で液化)もしくはカルナウバ蝋(粉末として適用)でコーティングした。これらの保護層のいずれも、一度水中に置かれたコーティングされた錠剤の崩壊を首尾よく防止せず、これは、Ethocelコーティングについて図4A~4Bに示された結果と完全に矛盾している。
【0166】
具体的には、図6A~6Bは、すでに水中で40分後のHPMCコーティング錠剤の崩壊を示し、図6C~6Dは、すでに水中で20分後のカルナウバ蝋コーティング(carnauba was-coated)錠剤の崩壊を示し、図6Eは、蝋の融解により圧縮コア錠剤が損傷したため、蜜蝋でビタミン錠剤をコーティングできなかったことを示している。

図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E