(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】ミネラル日焼け止め組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20240603BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240603BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240603BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20240603BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240603BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/02
A61K8/06
A61K8/29
A61K8/37
A61Q17/04
(21)【出願番号】P 2021523911
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(86)【国際出願番号】 US2019060115
(87)【国際公開番号】W WO2020097233
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-09-14
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シャー,アニル
(72)【発明者】
【氏名】ブリイヴァ,パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】メッカ,ジェイミー
(72)【発明者】
【氏名】ボドナー,ブライアン,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ポールッチ,ジェニファー,リン
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-536949(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0009471(US,A1)
【文献】特表2017-515864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油中水エマルションの形態の日焼け止め組成物であって、
a
.20%~60%の水相;
b.
7.5%~25%で存在する1種以上のミネラルUVフィルタリング剤;
c.
(i)1%~1.7%で存在するポリC10~30アルキルアクリレート、
または(ii)ポリC10~30アルキルアクリレートと水素化ホホバ油
の混合物であって前記ポリC10~30アルキルアクリレートは1%~3%で存在し、前記水素化ホホバ油は0.5%~2%で存在する混合物
、から選択される1種以上の油増粘剤;
および
d.1種以上の軟化薬であって、前記1種以上の軟化薬は、シリコーンを含まない軟化薬を15%~40%含む、1種以上の軟化薬
を含み、
前記油増粘剤の総量が、
1.0%~4%であり;
前記水素化ホホバ
油がポリC10~30アルキルアクリレートと共に存在する場合、前記水素化ホホバ油の量は、ポリC10~30アルキルアクリレートの量の1.5倍以下であり;
前記組成物が、25℃で
、10rad/秒
で0.1Pa・s
~5Pa・sの粘度を有し;か
つ
10rad/秒での最大粘度転移の変曲点
が30℃
~40℃の範囲にあ
り、
全ての量は、前記日焼け止め組成物の全重量に対する量である、
日焼け止め組成物。
【請求項2】
前記日焼け止め組成物が、皮膚温度に接触すると高剪断粘度転移温度を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記日焼け止め組成物がシリコーンを含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記油増粘剤の総量が、前記日焼け止め組成物の総重量に基づいて
1%~
3.7%で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリC10~30アルキルアクリレートが30℃以上の融点を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリC10~30アルキルアクリレートが40℃~50℃の融点を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
さらに1種以上の軟化薬を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記1種以上の軟化薬が、ジカプリリル炭酸塩、ジカプリリルエーテル、イソノニルイソノナノエート、C12~15アルキルベンゾエート、イソヘキサデカン、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
さらに1種以上の乳化剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記1種以上の乳化剤が、グリセリルエステ
ル、アルコキシル化カルボン酸及びそれらの混合物から選択される、請求項
9に記載の組成物。
【請求項11】
前記
1種以上の乳化剤が、グリセリルエステルとアルコキシル化カルボン酸の混合物を含む、請求項
10に記載の組成物。
【請求項12】
前記1種以上の乳化剤が、ポリグリセリル-4イソステアリン酸塩
、PEG-30ジポリヒドロキシステアリン酸塩、またはそれらの組み合わせである、請求項
10に記載の組成物。
【請求項13】
前記1種以上の乳化剤が、
ポリグリセリル-4イソステアリン酸塩およびPEG-30ジポリヒドロキシステアリン酸塩であ
り、
前記乳化剤が総量5%~6%で存在し、かつ前記1種以上の軟化薬が、ジカプリリル炭酸塩、ジカプリリルエーテル、イソノニルイソノナノエート、C12~15アルキルベンゾエート、イソヘキサデカン、またはそれらの混合物を含み、前記日焼け止め組成物は、3%~4%存在する少なくとも1つの粉末美容調整剤を含み、全ての量は、前記日焼け止め組成物の全重量に対する量である、請求項
10に記載の組成物。
【請求項14】
前記1種以上の乳化剤が、前記日焼け止め組成物の総重量に基づい
て1重量%
~8重量%で存在する、請求項
10に記載の組成物。
【請求項15】
前記1種以上のミネラルUVフィルタリング剤が、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記1種以上のミネラルUVフィルタリング剤が、前記日焼け止め組成物の総重量に基づい
て1~25重量%で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
さらに、
a)1種以上の有機UVフィルターを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記1種以上の有機UVフィルターが、パラアミノ安息香
酸、サリチル
酸、ケイ皮
酸、ベンゾフェノン又はアミノベンゾフェノン、アントラニル
酸、β,β-ジフェニルアクリル
酸、ベンジリデンカンファ
ー、フェニルベンズイミダゾー
ル、ベンゾトリアゾー
ル、トリアジ
ン、ビスレゾルシニルトリアジン、イミダゾリ
ン、ベンザルマロン
酸、4,4-ジアリールブタジエ
ン、ベンゾオキサゾー
ル、メロシアニン、マロニトリル又はマロン酸ジフェニルブタジエ
ン、カルコン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項
17に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本特許出願は、2018年11月6日に出願され、「ミネラル日焼け止め組成物」と題する米国特許出願第16/182,051号の利益を主張し、その開示は、本明細書に完全に書き換えられたかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示の分野
本開示は、日焼け止め組成物、並びに皮膚及び毛髪などの角質基質をUV放射線から保護するために該日焼け止め組成物を用いる方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
背景
紫外線(「UV」)光への曝露の悪影響は、よく知られている。日光に長時間さらされると、皮膚に日焼けなどの損傷を引き起こし、髪を乾燥させて、傷みやすくなる。皮膚が約290nm~約400nmの波長を有するUV光にさらされると、長期損傷が皮膚癌などの重篤な状態を引き起こす可能性がある。
【0004】
UV光は、皮膚内にフリーラジカルを形成することによって老化の原因にもなっている。フリーラジカルには、例えば、一重項酸素、ヒドロキシルラジカル、スーパーオキシドアニオンラジカル、一酸化窒素ラジカル及び水素ラジカルが含まれる。フリーラジカルはDNA、膜脂質及びタンパク質を攻撃し、炭素ラジカルを生成する。それらは、次に、酸素と反応し、ペルオキシルラジカルを生成し、隣接する脂肪酸を攻撃して、新しい炭素ラジカルを生み出し得る。このカスケードは、脂質過酸化生成物を生成する連鎖反応につながる。細胞膜への損傷は、細胞透過性が喪失し、細胞間イオン濃度が増加し、かつ廃棄物を排出又は解毒する能力を低下させる。最終的な結果は、皮膚の弾力性の喪失及びしわの出現である。このプロセスは、一般に、光老化と呼ばれる。
【0005】
日焼け止めを用いて、UV損傷から保護し、光老化の兆候を遅らせることができる。日焼け止め組成物によって与えられるUV保護の程度は、そこに含まれるUVフィルターの量及び種類に直接関連する。UVフィルターの量が多いほど、UV保護の程度が大きくなる。それにもかかわらず、UVフィルターの最も低い量で最高の光保護効果を達成することが望ましい。特に、化粧品製剤においてより多くの量が使用される場合、皮膚に塗布するとミネラルUVフィルタリング剤も白色になるので、ミネラルUVフィルタリング剤を配合する場合に、最小量のUVフィルターで高い光保護を達成することが特に望ましい。本開示の発明者らは、ホワイトニングが最小であるか又は全くなく、良好な美学と良好な有効性を有するミネラルベースの日焼け止めを製剤化する方法を発見した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、高度の日焼け防止を提供し、皮膚温度付近で生じる高剪断粘性転移温度の存在により、皮膚に塗布すると美的に満足できる日焼け止め組成物に関する。該日焼け止め組成物には、非刺激性で、天然物で、皮膚に優しいことが知られているミネラルUVフィルタリング剤が含まれる。ミネラルベースの日焼け止め組成物の欠点の1つは、皮膚に塗布すると白く見える場合が多いということである。消費者は日焼け止め組成物が自然に見える(目立たない)ことを好む。しかし、ホワイトニングを最小限にするか、又は全く示さず、日焼け防止係数(SPF)が高いミネラルベースの日焼け止め製品の開発は困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、組成物の感触及び美的性を向上させる特定の比率での成分の組み合わせを発見した。油中水エマルジョンの形態の日焼け止め組成物は、典型的には、
a.日焼け止め組成物の総重量に対して約20重量%~約60重量%の水相;
b.1種以上のミネラルUVフィルタリング剤;
c.ポリC10~30アルキルアクリレート、水素化ホホバ油及びその誘導体、並びにそれらの混合物から選択される1種以上の油増粘剤;
を含み、
油増粘剤の総量は、日焼け止め組成物の総重量に対して約0.5重量%~約4重量%であり;
水素化ホホバ油及びその誘導体の量は、ポリC10~30アルキルアクリレートの量の1.5倍以下であり;
該組成物は、25℃で、約10rad/秒で約0.1Pa・s~約5Pa・sの粘度を有し;かつ
約10rad/秒での最大粘度転移の変曲点は30℃~40℃である。
【発明の効果】
【0008】
1以上の実施形態では、該日焼け止め組成物は、皮膚温度と接触すると、高剪断粘度転移温度を示す。いくつかの実施形態では、該日焼け止め組成物はシリコーンを含まない。
【0009】
いくつかの実施形態では、油増粘剤の総量は、日焼け止め組成物の総重量に基づいて約0.5重量%~約4重量%で存在する。一実施形態では、日焼け止め組成物の粘度は、約10rad/秒で、25℃で、約0.1Pa・s~約5Pa・sである。
【0010】
いくつかの実施形態では、ポリC10~30アルキルアクリレートは、30℃以上の融点を有する。一実施形態では、ポリC10~30アルキルアクリレートは、40℃~50℃の融点を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、該日焼け止め組成物は、1種以上の軟化薬を含み得る。1以上の実施形態では、1種以上の軟化薬は、ジカプリリル炭酸塩、ジカプリリルエーテル、イソノニルイソノナノエート、C12~15アルキルベンゾエート、イソヘキサデカン、及びそれらの混合物から選択される。
【0012】
いくつかの実施形態では、該日焼け止め組成物は、1種以上の乳化剤を含み得る。いくつかの実施形態では、1種以上の乳化剤は、グリセリルエステル及び誘導体、アルコキシル化カルボン酸及びそれらの混合物から選択される。一実施形態では、乳化剤は、グリセリルエステルとアルコキシル化カルボン酸の混合物を含む。いくつかの実施形態では、1種以上の乳化剤は、ポリグリセリル-4イソステアリン酸塩である。いくつかの実施形態では、1種以上の乳化剤は、PEG-30ジポリヒドロキシステアリン酸塩である。いくつかの実施形態では、1種以上の乳化剤は、日焼け止め組成物の総重量に基づいて約1重量%~約8重量%で存在する。いくつかの実施形態では、1種以上の乳化剤は、日焼け止め組成物の総重量に基づいて約2重量%~約7重量%で存在する。
【0013】
いくつかの実施形態では、1種以上のミネラルUVフィルタリング剤は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、ジルコニウム酸化物、及びそれらの混合物から選択される。1以上の実施形態では、1種以上のミネラルUVフィルタリング剤は、日焼け止め組成物の総重量に基づいて約1~約25重量%で存在する。
【0014】
いくつかの実施形態では、該日焼け止め組成物は、1種以上の有機UVフィルターを含み得る。1以上の実施形態では、1種以上の有機UVフィルターは、パラアミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ベンゾフェノン又はアミノベンゾフェノン、アントラニル酸誘導体、β,β-ジフェニルアクリル酸誘導体、ベンジリデンカンファー誘導体、フェニルベンズイミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ビスレゾルシニルトリアジン、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロン酸誘導体、4,4-ジアリールブタジエン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、メロシアニン、マロニトリル又はマロン酸ジフェニルブタジエン誘導体、カルコン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0015】
本開示はまた、UV放射線から皮膚を保護する方法であって、本発明で開示される有効量の日焼け止め組成物を皮膚に塗布することを含む方法に関する。
【0016】
本技術の実施を、添付の図を参照して、単なる例としてこれから説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、約10rad/秒で測定した2つの異なる例の組成物の温度に対する粘度変化を表すプロットであり、y軸は粘度をPa・sで表し、x軸は日焼け止め組成物の温度を℃で表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
様々な態様は、図に示す配置及び器械性に限定されないことを理解すべきである。
【0019】
本開示は、一般的な発明の概念に従って例示的な実施形態を説明し、いかなる方法でも発明の範囲を限定することを意図するものではない。実際に、本明細書に記載の発明は、本明細書で説明される例示的な実施形態より広く、かつ限定されず、本明細書で使用される用語は、その完全な通常の意味を有する。
【0020】
開示の詳細な説明
本明細書において以下の用語が使用される場合、それらは以下に定義されるとおりに使用される。
【0021】
用語「含む(comprising)」、「有する」及び「含む(including)」は、そのオープンで、非限定的な意味で使用される。
【0022】
用語「1つ」及び「その」は、複数及び単数形を包含すると理解される。
【0023】
用語「ミネラルUVフィルタリング剤」は、「ミネラルUVスクリーニング剤」、「無機UVフィルタリング剤」、「無機UVスクリーニング剤」、「ミネラルUVフィルター」、及び「無機UVフィルター」と交換可能である。ミネラルUVフィルタリング剤は、280~400nmのUV放射を排除、散乱、又は吸収することができる、化学構造中に炭素原子を含まない化合物である。
【0024】
本明細書で定義される用語「水相」は、水溶性又は水分散性であり、かつ例のエマルション組成物の調製中に水と組み合わされる組成物中の全成分の合計を表す。
【0025】
本開示の組成物及び方法は、本明細書に記載の開示の必須要素及び制限、並びに本明細書に記載されるか、若しくはそうでなければ有用である追加又は任意の成分、構成要素、又は制限を含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなることができる。
【0026】
本明細書では、全ての割合、部分及び比率は、特に明示されない限り、本開示の組成物の総重量に基づく。
【0027】
本明細書に開示される全ての範囲及び値は、包括的で、組み合わせ可能である。例えば、本明細書に記載の範囲内に含まれる本明細書に記載のいかなる値又は点も、サブ範囲などを導出するための最小値又は最大値として役立ち得る。さらに、提供される全ての範囲は、与えられた範囲内の全ての特定の範囲、及び与えられた範囲内のサブ範囲の組み合わせを含むことが意図される。そのため、1~5の範囲は、具体的に、1、2、3、4及び5、並びに2~5、3~5、2~3、2~4、1~4などのサブ範囲を含む。
【0028】
操作例の中又は特に示される場合以外は、成分の量及び/又は反応条件を表す全ての数は、全ての場合において、示された数の±5%以内を意味する用語「約」で修飾されていると理解されるべきである。
【0029】
本明細書で使用する表現「少なくとも1つ」は、表現「1以上」と交換可能であり、そのため、個々の成分及び混合物/組み合わせを含む。
【0030】
本明細書で使用する用語「治療する」(及びその文法的バリエーション)は、本開示の組成物を皮膚及び/又は毛髪の表面上に塗布することを指す。本明細書で使用する用語「治療する」(及びその文法的バリエーション)は、本開示の組成物と皮膚又は毛髪との接触を指す。
【0031】
本明細書で使用する用語「実質的に含まない」又は「本質的に含まない」は、組成物の総重量に基づいて、組成物に添加される特定の材料が約2重量%未満あることを意味する。それにもかかわらず、該組成物は、約1重量%未満、約0.5重量%未満、約0.1重量%未満、0.01重量%未満の特定の材料を含み得るか、又は全く含まない。
【0032】
成分又は原料のパーセント量に関して、本明細書で使用する用語「活性材料」は、成分又は原料の100%活性を指す。
【0033】
「美容上許容される」とは、問題の項目が皮膚や毛髪などの角質基質と適合していることを意味する。例えば、「美容上許容される担体」とは、皮膚や毛髪などの角質基質と適合している担体を意味する。
【0034】
用語「それらの混合物」は、混合物にA、B、C、D、E、及びFの全てが含まれる必要はない(ただし、A、B、C、D、E、及びFの全てが含まれてもよいが)。むしろ、A、B、C、D、E、及びFのうちの任意の2種以上の混合物を含むことができることを示す。言い換えると、それは、「A、B、C、D、E、F、並びにA、B、C、D、E、及びFのうちの任意の2種以上の混合物からなる群から選択される1種以上の要素」という語句に相当する。
【0035】
同様に、用語「その塩」はまた、「それらの塩類」に関係する。そのため、本開示は、「A、B、C、D、E、F、その塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される要素」を指す場合、A、B、C、D、及びFのうちの1種以上が含まれてよく、Aの塩、Bの塩、Cの塩、Dの塩、Eの塩、及びFの塩のうちの1種以上が含まれてよく、又はA、B、C、D、E、F、F、Aの塩、Bの塩、Cの塩、Dの塩、Eの塩、及びFの塩のうちの任意の2つの混合物が含まれてよいことを示す。
【0036】
本開示全体で言及される塩には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアンモニウム対イオンなどの対イオンを有する塩が含まれ得る。しかし、この対イオンのリストは限定的でない。
【0037】
語句「粘度」は、流体又は組成物の厚さを指し、流体又は組成物の流れに対する抵抗の測定値である。ここで、「粘度」は、「動粘度」ではなく「動的粘度」又は「絶対粘度」と同義であり、当業者に知られている方法でレオメータによって測定される。本明細書における粘度の測定値は、特に指定しない限りパスカル秒(Pa・s)で報告される。
【0038】
用語「油増粘」とは、エマルションの油相と組み合わせると、前記油相に対する増粘作用をもたらす任意の原料を意味する。
【0039】
用語「水相」は、水、水溶性、水混和性及び水分散性成分を意味する。
【0040】
濃度の範囲についての表現「包括」は、範囲の限界が定義された間隔に含まれることを意味する。
【0041】
本明細書で定義される用語「ポリマー」には、ホモポリマーと、異なる少なくとも2種のモノマーから形成されるコポリマーが含まれる。
【0042】
用語「INCI」は、パーソナルケア成分を説明するために、パーソナルケア製品評議会の国際命名委員会が提供する名前のシステムである化粧品成分の国際命名法の略称である。
【0043】
本明細書で使用する用語「重量比」又は「質量比」は、前記物質を含む混合物に比例する物質の量を参照し、混合物中に含まれる前記物質の重量での量を、前記物質を含む混合物の重量で割ることによって計算される。例として、A、B、及びCの混合物中の物質Aについての重量比0.4は、物質A、B、及びCの総重量で割った物質Aの重量が0.4であることを示す。
【0044】
本明細書で使用する場合、提供される全ての範囲は、所定の範囲内の全ての特定の範囲、及び所定の範囲内のサブ範囲の組み合わせを含むことを意味する。そのため、1~5の範囲は、具体的には1、2、3、4及び5、並びに2~5、3~5、2~3、2~4、1~4などのサブ範囲を含む。
【0045】
同定された様々なカテゴリの成分のいくつかは重複し得る。重複が存在し、組成物が両方の成分を含む(又は組成物が重複する3種以上の成分を含む)場合には、重なり合う化合物は2種以上の成分を表さない。例えば、脂肪酸は、非イオン性界面活性剤と脂肪化合物の両方として特徴付けられ得る。特定の組成物が非イオン性界面活性剤と脂肪化合物の両方を含む場合、単一脂肪酸は非イオン性界面活性剤としてのみ、又は脂肪化合物としてのみ機能する(単一脂肪酸は非イオン性界面活性剤と脂肪化合物の両方として機能しない)。
【0046】
この明細書で引用される全ての出版物及び特許出願は、参照により、あらゆる目的のために、各個々の出版物又は特許出願が参照によって組み込まれるように具体的かつ個別に示されるように、本明細書に組み込まれる。本開示と、参照により本明細書に組み込まれる出版物又は特許出願との間に矛盾が生じた場合、本開示が優先する。
【0047】
本開示は、高度の日焼け防止を提供し、皮膚温度付近で生じる高剪断粘性温度転移の存在により皮膚に塗布すると、美的に満足できる日焼け止め組成物に関する。油中水エマルションの形態の日焼け止め組成物は、典型的には
a.日焼け止め組成物の総重量に対して約20重量%~約60重量%の水相;
b.1種以上のミネラルUVフィルタリング剤;
c.ポリC10~30アルキルアクリレート、水素化ホホバ油及びその誘導体、並びにそれらの混合物から選択される1種以上の油増粘剤;
を含み、
油増粘剤の総量は、日焼け止め組成物の総重量に対して約0.5重量%~約4重量%であり;
水素化ホホバ油及びその誘導体の量は、ポリC10~30アルキルアクリレートの量の1.5倍以下であり;
該組成物は、25℃で、約10rad/秒で約0.1Pa・s~約5Pa・sの粘度を有し;かつ
約10rad/秒での最大粘度転移の変曲点は約30℃~約40℃の範囲にある。
【0048】
本開示の日焼け止め組成物は、組成物に使用される油増粘剤の特定の比、組成物に使用される油増粘剤の総量、及び組成物中の水相の量の範囲によって、皮膚温度付近(30℃~40℃)で高剪断粘度転移点を示す。日焼け止めの組成物は、ミネラルUVフィルタリング剤の存在にもかかわらず白化を最小限示すか、又は全く示さないという点、および組成物がシリコーンを含まないという事実にもかかわらず心地よさと美的効果を最小限示すか、又は全く示さないという点で特に特有である。
【0049】
いくつかの実施形態では、該日焼け止め組成物は、皮膚温度付近で高剪断粘性転移を示す。1以上の実施形態では、該日焼け止め組成物はシリコーンを含まない。
【0050】
用語「高剪断粘性転移」は、約10rad/秒で25℃~70℃の最大粘性転移の変曲点を指す。物理的には、温度が上昇するにつれて剪断を加えている間の、流体又は組成物の流動特性の急激な変化を表す。本開示において、より濃い物理的状態からより薄い物理的状態(ローションから液体又はクリームから液体)への組成物の変換を定量化する手段である。高剪断で起こる最大の粘性転移は、皮膚に日焼け止め組成物を塗布している人に明らかになる転移を表し、したがって、組成物の全体的な美学に最も明白な効果を有するであろう。理論に束縛されることなく、組成物中に存在する特定の範囲の水相及び油増粘剤は、特定の比の油増粘剤と共に、皮膚温度付近で生じる高剪断粘性転移を示す本組成物を作る。これは、皮膚に広がる容易さに関連する本組成物の改善された美的感覚、及び皮膚上での製品の改善された分布を提供するため、本発明にとって好ましい。
【0051】
ミネラルUVフィルタリング剤
【0052】
いくつかの実施形態では、1種以上のミネラルUVフィルタリング剤は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、及びそれらの混合物から選択される。いくつかの実施形態では、1種以上のミネラルUVフィルタリング剤は、日焼け止め組成物の総重量に基づいて約1重量%~約25重量%で存在する。ミネラル日焼け止め組成物中のミネラルUVフィルタリング剤の総量は変更できるが、典型的には、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%から約14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、又は25%である。
【0053】
ミネラルUVフィルタリング剤の非限定的な例には、例えば、酸化チタン(アモルファス又はルチル及び/若しくはアナターゼ型に結晶化された)、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム若しくは酸化セリウムの色素又はナノ色素などの処理されるか又は未処理の金属酸化物が含まれる。特に好ましいミネラルUVフィルタリング剤には、二酸化チタン及び/又は酸化亜鉛が含まれる。
【0054】
いくつかの例では、平均粒径は、約5nm~約25μm、約10nm~約10μm、又は約15nm~約5μmであり得る。ミネラルUVフィルタリング剤は、約5nm~約100nm、約5nm~約75nm、又は約10nm~50nmの平均粒径を有するナノ色素であり得る。例えば、約1μm~約25μm、約5μm~約20μm、又は約10μm~約15μmのより大きな粒径も有用であり得る。
【0055】
処理された色素は、アミノ酸、蜜蝋、脂肪酸、脂肪アルコール、陰イオン界面活性剤、レシチン、脂肪酸のナトリウム、カリウム、亜鉛、鉄又はアルミニウムの塩、金属(チタン又はアルミニウム)アルコキシド、ポリエチレン、シリコーン、タンパク質(コラーゲン又はエラスチン)、アルカノールアミン、ケイ素酸化物、金属酸化物、ヘキサメタリン酸ナトリウム、アルミナ又はグリセロールなどの、例えば、Cosmetics&Toiletries,February 1990,105巻,pp.53-64に記載されている化合物を用いた化学的、電子的、機械化学的及び/又は機械的性質の1以上の表面処理を受けた色素である。
【0056】
処理された色素は、
-シリカ及びアルミナ、Tayca社の製品「マイクロ二酸化チタンMT 500 SA」及び「マイクロ二酸化チタンMT 100 SA」、並びにTioxide社の製品「Tioveil Fin」、「Tioveil OP」、「Tioveil MOTG」及び「Tioveil IPM」など;
-アルミナ及びステアリン酸アルミニウム、Tayca社の製品「マイクロ二酸化チタンMT 100 T」など;
-アルミナ及びラウリン酸アルミニウム、Tayca社の製品「マイクロ二酸化チタンMT 100 S」など;
-酸化鉄及びステアリン酸鉄、Tayca社の製品「マイクロ二酸化チタンMT 100 F」など;
-シリカ、アルミナ及びシリコーン、Tayca社の製品「マイクロ二酸化チタンMT 100 SAS」、「マイクロ二酸化チタンMT 600 SAS」及び「マイクロ二酸化チタンMT 500 SAS」など:
-ヘキサメタリン酸ナトリウム、Tayca社の製品「マイクロ二酸化チタンMT 150 W」など;
-オクチルトリメトキシシラン、Degussa社の製品「T-805」など;
-アルミナ及びステアリン酸、Kemira社の製品「UVT M160」など;
-アルミナ及びグリセロール、Kemira社の製品「UVT-M212」など;
-アルミナ及びシリコーン、Kemira社の製品「UVT-M262」など
で処理された酸化チタンであり得る。
【0057】
シリコーンで処理された他の酸化チタン色素は、Degussa Silices社によって商標名「T805」で販売されている製品などの、オクチルトリメチルシランで処理され、そのため基本粒子の平均サイズが25~40nmであるTiO2、Cardre社によって商標名「70250 Cardre UF TiO2SI3」で販売されている製品などの、ポリジメチルシロキサンで処理され、そのため基本粒子平均サイズが21nmであるTiO2、Color Techniques社によって商標名「マイクロ二酸化チタンUSPグレード疎水性」で販売されている製品などの、ポリジメチルヒドロゲノシロキサンで処理され、そのため基本粒子平均サイズが25nmであるアナターゼ/ルチルTiO2である。
【0058】
コーティングしていない酸化チタン色素は、例えば、商標名「マイクロ二酸化チタン MT 500 B」又は「マイクロ二酸化チタン MT 600 B」でTayca社によって、「P 25」という名称でDegussa社によって、「Oxyde de titane透明PW」という名称でWackher社によって、「UFTR」という名称でMyoshi Kasei社によって、「ITS」という名称でTomen社によって、及び「Tioveil AQ」という名称でTioxide社によって販売されている。
【0059】
コーティングされていない酸化亜鉛色素は、例えば、
-Sunsmart社によって「Z-Cote」という名称で販売されているもの;
-Elementis社によって「Nanox」という名称で販売されているもの;
-Nanophase Technologies社によって「Nanogard WCD 2025」という名称で販売されているもの
である。
【0060】
コーティングされた酸化亜鉛色素は、例えば、
-Toshibi社によって「酸化亜鉛CS-5」という名称で販売されているもの(ポリメチルヒドロゲノシロキサンでコーティングされたZnO);
-Nanophase Technologies社によって「Nanogard酸化亜鉛FN」という名称で販売されているもの(Finsolv TN、C12~C15アルキルベンゾエート中40%分散として);
-Daito社によって「Daitopersion ZN-30」及び「Daitopersion ZN-50」という名称で販売されているもの(シリカとポリメチルヒドロゲノシロキサンでコーティングされたナノ酸化亜鉛を30%又は50%含むシクロポリメチルシロキサン/オキシエチレン化ポリジメチルシロキサンの分散体);
-Daikin社によって「NFDウルトラファインZNO」という名称で販売されているもの(シクロペンタシロキサンの分散体としてパーフルオロアルキルエチルに基づくパーフルオロアルキルリン酸塩とコポリマーでコーティングされたZnO);
-Shin-Etsu社によって「SPD-Z1」という名称で販売されているもの(シクロジメチルシロキサン中に分散している、シリコーン移植アクリルポリマーでコーティングされたZnO);
-ISP社によって「Escalol Z100」という名称で販売されているもの(エチルヘキシルメトキシシンナメート/PVP-ヘキサデセン/メチコンコポリマー混合物に分散しているアルミナ処理ZnO);
-Fuji Pigment社によって「Fuji ZNO-SMS-10」という名称で販売されているもの(シリカとポリメチルシルセスキオキサンでコーティングされたZnO);
-Elementis社によって「Nanox Gel TN」という名称で販売されているもの(ヒドロキシステアリン酸とのC12~C15アルキル安息香酸重縮合物中に55%の濃度で分散したZnO)
である。
【0061】
コーティングされていない酸化セリウム色素は、Rhone-Poulenc社によって「コロイド状酸化セリウム」という名称で販売されている。コーティングされていない酸化鉄ナノ色素は、例えば、Arnaud社によって「Nanogard WCD 2002 (FE 45B)」、「Nanogard Iron FE 45 BL AQ」、「Nanogard FE 45R AQ」及び「Nanogard WCD 2006(FE 45R)」という名称で販売されているか)、又はMitsubishi社によって「TY-220」という名称で販売されている。コーティングされた酸化鉄ナノ色素は、例えば、Arnaud社によって「Nanogard WCD 2008(FE 45B FN)」、「Nanogard WCD 2009 (FE 45B 556)」、「Nanogard FE 45 BL 345」及び「Nanogard FE 45 BL」という名称で販売されているか、又はBASF社によって「Transparent Iron Oxide」という名称で販売されている。
【0062】
金属酸化物の混合物、特に、Ikeda社によって「Sunveil A」という名称で販売されている、二酸化チタンと二酸化セリウムの混合物のシリコーンコーティングされた等しい重量の混合物、また、Kemira社によって販売されている製品「M261」などの二酸化チタンと二酸化亜鉛のアルミナ、シリカ及びシリコーンコーティング混合物、又はKemira社によって販売されている製品「M211」などの二酸化チタンと二酸化亜鉛のアルミナ、シリカ及びグリセロールコーティング混合物を含む二酸化チタンと二酸化セリウムの混合物も使用され得る。
【0063】
ミネラル日焼け止め組成物中のミネラルUVフィルタリング剤の総量は変更できるが、典型的には、日焼け止め組成物の総重量に基づいて約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%から約14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、又は25%である。
【0064】
油増粘剤
【0065】
本開示における油増粘剤の総量は変更できるが、典型的には、全組成物の約0.5重量%~約4重量%、好ましくは全組成物の約0.7重量%~約3.7重量%、より好ましくは全組成物の約1.0重量%~約3.5重量%の量である。日焼け止め組成物中の油増粘剤の総量は変更できるが、典型的には、日焼け止め組成物の総重量に対して約0.5重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%から約2重量%、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、又は4重量%である。
【0066】
1以上の実施形態では、水相は、日焼け止め組成物の総重量に対して約20重量%~約60重量%で存在する。
【0067】
日焼け止め組成物中の水相は変更できるが、典型的には、日焼け止め組成物の総重量に対して約20重量%、35重量%、40重量%、45重量%、46重量%、48重量%、50重量%から約48重量%、50重量%、52重量%、54重量%、56重量%、58重量%、又は60重量%である。
【0068】
1以上の実施形態では、日焼け止め組成物の粘度は、約10rad/秒で、25℃で約0.1Pa・s~約5Pa・sである。
【0069】
ミネラル日焼け止め組成物の粘度は変更できるが、典型的には、約10rad/秒で、25℃で測定した場合、約0.1Pa・s、0.2Pa・s、0.3Pa・s、0.4Pa・s、0.5Pa・s、1Pa・s、1.5Pa・s、2Pa・sから約2Pa・s、2.5Pa・s、3Pa・s、4Pa・s、又は5Pa・sである。
【0070】
本開示で使用する油増粘剤は、半結晶性若しくは結晶性ポリマー及び/又は半結晶性若しくは結晶性ワックスから選択できる。組成物の所望の粘度及び高剪断粘度転移温度を維持するために、油増粘剤の総量、油増粘剤の比率、及び水相の量を調整することが好ましい。
【0071】
(I)半結晶性又は結晶性ポリマー
【0072】
半結晶性又は結晶性ポリマーは、好ましくは、半結晶性ポリマーである。用語「半結晶性ポリマー」は、結晶化可能な部分、結晶化可能なペンデント及び/若しくは末端の鎖、又は骨格中及び/若しくは端部にある結晶化可能なブロック、並びに骨格中の非結晶部分を含み、相の変化の可逆的一次温度、特に融解(固液転移)を有するポリマーを意味する。結晶化可能な部分がポリマー骨格の結晶化可能なブロックの形態である場合、ポリマーの非結晶部分は非結晶ブロックの形態である。半結晶性ポリマーは、この場合、少なくとも1つの結晶化可能なブロック及び少なくとも1つの非結晶ブロックを含む、例えば、ジブロック、トリブロック又はマルチブロックタイプのブロックコポリマーである。用語「ブロック」は、一般的に、少なくとも5つの同一の繰り返し単位を意味する。結晶化可能なブロック(複数可)は、非結晶ブロック(複数可)とは異なる化学的性質のものである。
【0073】
本開示による半結晶性ポリマーは、30℃以上、好ましくは30℃~60℃の範囲、特に40℃~50℃の範囲の融点を有する。この融点は、状態変化の一次温度である。
【0074】
この融点は、任意の公知の方法によって、特に、差動走査熱量計(DSC)、例えば、TA Instruments社がDSC Q2000という名称で販売されている熱量計を用いて測定され得る。
【0075】
都合のよいことに、本開示が適用される半結晶性ポリマー(複数可)は、1000以上の数平均分子量を有する。
【0076】
都合のよいことに、本開示の組成物の半結晶性ポリマー(複数可)は、2000~800 000、好ましくは3000~500 000、より良いのは4000~150 000、特に100 000未満、及びさらにより良いのは4000~99 000の数平均分子量Mnを有する。好ましくは、それらは、5600を超える、例えば、5700~99 000の範囲の数平均分子量を有する。
【0077】
本開示の目的で、表現「結晶化可能な鎖又はブロック」は、それが単独で取得された場合に、温度が融点より上か下かに応じて、非結晶状態から結晶状態に可逆的に変化する鎖又はブロックを意味する。本開示の目的のために、「鎖」は、ポリマー骨格に対して垂れ下がっているか、又は側面にある原子のグループである。「ブロック」は、骨格に属する原子のグループであり、このグループは、ポリマーの繰り返し単位の1つを構成する。都合のよいことに、「垂れ下がっている結晶化可能な鎖」は、少なくとも6個の炭素原子を含む鎖であり得る。
【0078】
好ましくは、半結晶性ポリマーの結晶化可能なブロック(複数可)又は鎖(複数可)は、各ポリマーの総重量の少なくとも30%、さらにより良いのは少なくとも40%を表す。結晶化可能なブロックを含む本開示の半結晶性ポリマーは、ブロック又はマルチブロックポリマーである。それらは、反応性二重結合(又はエチレン結合)を含むモノマーの重合又は重縮合を介して取得され得る。本開示のポリマーが結晶化可能な側鎖を含むポリマーである場合、それらの側鎖は、ランダム形態又は統計的形態において都合がよい。
【0079】
好ましくは、本開示による組成物に用いることができる半結晶性ポリマーは、合成起源のものである。さらに、それらは多糖の骨格を含まない。一般に、半結晶性ポリマーの結晶化可能な単位(鎖又はブロック)は、半結晶性ポリマーの製造に使用される結晶化可能なブロック(複数可)又は鎖(複数可)を含むモノマー(複数可)に由来する。
【0080】
本開示によれば、半結晶性ポリマーは、少なくとも1つの結晶化可能なブロックと少なくとも1つの非結晶ブロックを含むブロックコポリマー、並びに繰り返し単位あたり少なくとも1つの結晶化可能な側鎖を担持するホモポリマー及びコポリマー、並びにそれらの混合物から選択され得る。
【0081】
本開示に使用され得る半結晶性ポリマーは、特に、
-結晶化が制御されているポリオレフィンのブロックコポリマー、特にモノマーがEP-A-0 951 897に記載されているもの、
-特に脂肪族若しくは芳香族ポリエステル型又は脂肪族/芳香族コポリエステル型の重縮合物、
-少なくとも1つの結晶化可能な側鎖を担持するホモポリマー又はコポリマー、及び骨格中に少なくとも1つの結晶化可能なブロックを担持するホモポリマー又はコポリマー、例えば、文書US-A-5 156 911に記載されているもの、
-特に、文書WO-A-01/19333に記載のフルオロ基(複数可)を含有する、少なくとも1つの結晶化可能な側鎖を担持するホモポリマー又はコポリマー、
-並びにそれらの混合物
である。
【0082】
最後の2つの場合では、結晶化可能な側鎖(複数可)又はブロック(複数可)は疎水性である。
【0083】
(i)結晶化可能な側鎖を含む半結晶性ポリマー
【0084】
特に、文書US-A-5 156 911及びWO-A-01/19333で定義されているものを挙げることができる。それらは、結晶化可能な疎水性側鎖を担持する1種以上のモノマーの重合から生じる重量単位で50%~100%を含むホモポリマー又はコポリマーである。
【0085】
それらのホモポリマー又はコポリマーは、前述の条件を満たしているという条件で、任意の性質のものである。
【0086】
それらは
-重合に対して反応性二重結合(複数可)又はエチレン結合(複数可)、すなわちビニル基、(メタ)アクリル基又はアリル基を含む1種以上のモノマーの重合、特にフリーラジカル重合、
-例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリウレア又はポリアミドなどの、共反応基(カルボン酸、スルホン酸、アルコール、アミン又はイソシアネート)を担持する1種以上のモノマーの重縮合
の結果から生じ得る。
【0087】
一般に、それらのポリマーは、特に、式(I):
【化1】
(式中、
Mはポリマー骨格の原子を表し、Sはスペーサーを表し、Cは結晶化可能な基を表す)
で表され得る結晶化可能な鎖(複数可)を含む少なくとも1つのモノマーの重合から生じるホモポリマー及びコポリマーから選択される。
【0088】
結晶化可能な鎖「-S-C」は、脂肪族又は芳香族であり得、必要に応じて、フッ素化又は全フッ素置換され得る。「S」は特に、基(CH2)n又は(CH2CH2O)n又は(CH2O)を表し、直鎖又は分岐鎖又は環状であり得、nは0から22の範囲の整数である。好ましくは、「S」は直鎖の基である。好ましくは「S」及び「C」は異なる。
【0089】
結晶化可能な鎖「-S-C」が炭化水素系脂肪族鎖である場合、それらは、少なくとも11個の炭素原子、かつ40個以下の炭素原子、さらにより良いのは24個以下の炭素原子を含む炭化水素系アルキル鎖を含む。それらは、特に、少なくとも12個の炭素原子を含む脂肪族鎖又はアルキル鎖であり、それらは、好ましくは、C14~C24アルキル鎖である。フルオロアルキル鎖又はパーフルオロアルキル鎖である場合、それらは少なくとも6つのフッ素化炭素原子、特に少なくとも11個の炭素原子を含み、そのうち少なくとも6個の炭素原子がフッ素化される。
【0090】
結晶化可能な鎖(複数可)を担持する半結晶性ポリマー又はコポリマーの例として、以下のモノマー:C14~C24であるアルキル基を有する飽和アルキルの(メタ)アクリレート、C11~C15パーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、フッ素原子の有無にかかわらず、C14~C24であるアルキル基を有するN-アルキル(メタ)アクリルアミド、C14~C24であるアルキル基を有するアルキル鎖又はパーフルオロ(アルキル)鎖を含むビニルエステル(パーフルオロアルキル鎖あたり少なくとも6個のフッ素原子を有する)、C14~C24であるアルキル基及びパーフルオロアルキル鎖あたり少なくとも6つのフッ素原子を有するアルキル鎖又はパーフルオロ(アルキル)鎖を含むビニルエーテル、例えば、オクタデセンなどのC14~C24α-オレフィン、12~24個の炭素原子を含むアルキル基を有するパラアルキルスチレン、及びそれらの混合物、のうちの1種以上の重合から生じるものを挙げることができる。
【0091】
ポリマーが重縮合の結果生じた場合には、上記で定義された炭化水素系及び/又はフッ素化された結晶化可能な鎖は、二酸、ジオール、ジアミン又はジイソシアネートであり得るモノマー由来である。
【0092】
本開示の対象となるポリマーがコポリマーである場合、それらはさらに共重合から生じる基Y又はZを0~50%含む:
【0093】
α)極性又は非極性モノマー又はそれら2つの混合物であるY:
【0094】
Yが極性モノマーである場合には、ポリオキシアルキレン化基(特にオキシエチレン化及び/又はオキシプロピレン化基)を担持するモノマー、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、例えば、N,N-ジイソプロピルアクリルアミドなど、又はN-ビニルピロリドン(NVP)、N-ビニルカプロラクタム、少なくとも1個のカルボン酸基を担持するモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸若しくはフマル酸、又はカルボン酸無水基を担持するモノマー、例えば、無水マレイン酸、及びそれらの混合物のいずれかである。
【0095】
Yが非極性モノマーである場合には、それは、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル(メタ)アクリレート型のエステル、ビニルエステル、アルキルビニルエーテル、α-オレフィン、スチレン又はC1~C10アルキル基で置換されたスチレン、例えば、α-メチルスチレンであり得る。
【0096】
本開示の目的のために、用語「アルキル」は、特に記述される場合を除き、特にC8~C24の飽和基を意味し、C14~C24がより良い。
【0097】
β)極性モノマー又は極性モノマーの混合物であるZ。この場合、Zは上記で定義した「極性Y」と同じ定義を有する。
【0098】
好ましくは、結晶化可能な側鎖を含む半結晶性ポリマーは、上で定義した、特にC14~C24のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート又はアルキル(メタ)アクリルアミドのホモポリマー、好ましくは(メタ)アクリル酸とは異なる性質の親水性モノマーとそれらのモノマーのコポリマー、例えば、N-ビニルピロリドン又はヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物である。
【0099】
(ii)少なくとも1つの結晶化可能なブロックを骨格中に担持するポリマー
【0100】
それらのポリマーは、特に、異なる化学的性質の少なくとも2つのブロックからなるブロックコポリマーであり、そのうちの1つは結晶化可能である。
-特許US-A-5 156 911で定義されたブロックポリマーが使用され得る;
-結晶化可能な鎖を含むオレフィン又はシクロオレフィンのブロックコポリマー、例えば、以下のブロック重合に由来するもの:
-シクロブテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、ノルボルネン(すなわち、ビシクロ(2,2,1)-2-ヘプテン)、5-メチルノルボルネン、5-エチルノルボルネン、5,6-ジメチルノルボルネン、5,5,6-トリメチルノルボルネン、5-エチリデンノルボルネン、5-フェニルノルボルネン、5-ベンジルノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、1,4,5,8-ジメタノ-1,2,2,3,4,4a,5,8a-テトラヒドロナフタレン、ジシクロペンタジエン、又はそれらの混合物、
-エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン又は1-エイコセン、又はそれらの混合物、
-特に、コポリ(エチレン/ノルボルネン)ブロック及び(エチレン/プロピレン/エチリデンノルボルネン)ブロックテルポリマー。上述のものなどの少なくとも2つのC2~C16、さらにより良いのはC2~C12及びさらにより良いのはC4~C12のα-オレフィンのブロック共重合から生じるもの、特に、エチレンと1-オクテンのブロックバイポリマーも使用され得る。
-コポリマーは、少なくとも1つの結晶化可能なブロックを含むコポリマーであり得、コポリマー残基は非結晶である(室温で)。それらのコポリマーは、異なる化学的性質の2つの結晶化可能なブロックを含み得る。好ましいコポリマーは、常温で、結晶化可能なブロック、及び疎水性と親油性の両方であり、結果的に分配される非結晶ブロックを同時に含むもの;例えば、結晶化可能なブロックの1つと以下の非結晶ブロックの1つを含むポリマーが挙げられる:
-自然界で結晶化可能なブロック:a)ポリエステル型、例えば、ポリ(アルキレンテレフタレート)、b)ポリオレフィン型、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン。
-非結晶及び親油性ブロック、例えば、非結晶ポリオレフィン又はポリ(イソブチレン)などのコポリ(オレフィン)S、水素化ポリブタジエン又は水素化ポリ(イソプレン)。
【0101】
結晶化可能なブロックと別々の非結晶ブロックを含むそのようなコポリマーの例として、以下のものが挙げられる:
【0102】
a)ポリ(ε-カプロラクトン)-b-ポリ(ブタジエン)ブロックコポリマー、好ましくは、S.Nojima,Macromolecules,32,3727-3734(1999)の論文「ポリ(ε-カプロラクトン)ブロックポリブタジエンコポリマーの溶解挙動」に記載されているものなどの水素化されたものが使用される。
【0103】
β)B.Boutevinら,Polymer Bulletin,34,117-123(1995)による論文「PP/PBTの形態学的及び機械的特性の研究」で引用されている水素化されたブロック又はマルチブロックポリ(ブチレンテレフタレート)-b-ポリ(イソプレン)ブロックコポリマー。
【0104】
γ)P.Rangarajanら,Macromolecules,26,4640-4645(1993)による論文「エチレン-(エチレン-アルト-プロピレン)の半結晶ブロックコポリマーの形態」及びP.Richterら,Macromolecules,30,1053-1068(1997)による「結晶コアを有するポリマー凝集体:システムポリ(エチレン)ポリ(エチレン-プロピレン)」に引用されているポリ(エチレン)-b-コポリ(エチレン/プロピレン)ブロックコポリマー。
【0105】
δ)I.W.Hamley,Advances in Polymer Science,148巻,113-137(1999)による一般論文「ブロックコポリマーにおける結晶化」で述べられているポリ(エチレン)-b-ポリ(エチルエチレン)ブロックコポリマー。
【0106】
本開示の組成物中の半結晶性ポリマーは、部分的に架橋されていても、又はされていなくてもよいが、架橋の程度が、それらの融点以上に加熱することによって、必要に応じて、組成物中に存在する液体脂肪相中でのそれらの溶解又は分散を妨げないという条件である。次に、重合時に多官能モノマーとの反応による化学架橋の場合であり得る。物理的な架橋の場合もあり得、これは、水素の結合の確立又はポリマーによって生じる基間の双極型、例えば、カルボキシレートイオノマー間の双極性相互作用であって、少量であり、ポリマー骨格によって生じる相互作用によるか、又はポリマーによって生じる結晶化可能なブロックと非結晶ブロックとの間の相分離によるものであり得る。
【0107】
好ましくは、本開示による組成物の半結晶性ポリマーは架橋されない。
【0108】
本開示の特定の実施形態によれば、ポリマーは、飽和C14~C24アルキル(メタ)アクリレート、C11~C15パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、C14~C24N-アルキル(メタ)-アクリルアミド(フッ素原子の有無にかかわらず)、C14~C24アルキル鎖又はパーフルオロアルキル鎖を含むビニルエステル、C14~C24アルキル鎖又はパーフルオロアルキル鎖を含むビニルエーテル、C14~C24α-オレフィン、12~24個の炭素原子を含むアルキル基を有するパラアルキルスチレンから選択される結晶化可能な鎖を含む少なくとも1つのモノマーと、少なくとも1つの任意にフッ素化されるC1~C10モノカルボン酸エステル又はアミドとの重合から生じるコポリマーから選択され、これは、以下の式(ω):
【化2】
(式中、
R
1はH又はCH
3であり、Rは任意にフッ素化されたC
1~C
10アルキル基を表し、XはO、NH又はNR
2を表し、R
2は任意にフッ素化されたC
1~C
10アルキル基を表す)
によって表され得る。
【0109】
本開示の1以上の特定の実施形態によれば、ポリマーは、飽和C14~C22アルキル(メタ)アクリレート及びさらにより具体的にはポリ(ステアリルアクリレート)又はポリ(ベヘニルアクリレート)から選択される結晶化可能な鎖を含むモノマーに由来する。
【0110】
本開示による組成物に使用され得る半結晶性ポリマーを構造化する具体的な例として、INCI名「ポリC10~C30アルキルアクリレート」を有するポリマー、例えば、Air Products社のIntelimer(登録商標)製品、例えば、ポリステアリルアクリレートで、融点が48℃である製品Intelimer(登録商標)IPA13-1、又はベヘニルポリマーである製品Intelimer(登録商標)IPA13-6を挙げることができる。
【0111】
半結晶性ポリマーは特に以下のものであり得る:
【0112】
-COOH基を含む特許US-A-5 156 911の実施例3、4、5、7、9及び13に記載されているものであって、アクリル酸とC5~C16アルキル(メタ)アクリレートの共重合、より具体的には以下の共重合から生じるもの:
・1/16/3の重量比のアクリル酸、ヘキサデシルアクリレートとイソデシルアクリレート、
・1/19の重量比のアクリル酸とペンタデシルアクリレート、
・2.5/76.5/20の重量比のアクリル酸、ヘキサデシルアクリレートとエチルアクリレート、
・5/85/10の重量比のアクリル酸、ヘキサデシルアクリレートとメチルアクリレート、
・2.5/97.5の重量比のアクリル酸とオクタデシルメタクリレート、
・8.5/1/0.5の重量比のへキサデシルアクリレート、8エチレングリコール単位を含むポリエチレングリコールメタクリレートモノメチルエーテルとアクリル酸。
【0113】
文書US-A-5 736 125に記載されている、融点が44℃であるNational Starchの構造「O」、また文書WO-A-01/19333の実施例1、4、6、7及び8に記載されているフルオロ基を含む結晶化可能なペンデント鎖を有する半結晶性ポリマーを使用することも可能である。
【0114】
文書US-A-5 519 063又はEP-A-550 745に記載されていて、それぞれの融点が40℃及び38℃であるステアリルアクリレートとアクリル酸又はNVPの共重合によって得られる半結晶性ポリマーを使用することも可能である。
【0115】
文書US-A-5 519 063及びEP-A-550 745に記載されていて、それぞれの融点が60℃及び58℃であるベヘニルアクリレートとアクリル酸又はNVPの共重合により得られる半結晶性ポリマーを使用することも可能である。
【0116】
好ましくは、半結晶性ポリマーはいかなるカルボキル基も含まない。
【0117】
最後に、本開示による半結晶性ポリマーはまた、米国特許出願第2007/0 031 361号に記載されているものなどのメタロセン触媒作用により得られるワックス状のポリマーから選択され得る。
【0118】
それらのポリマーは、メタロセン触媒を介して、すなわち、低圧で、かつメタロセン触媒の存在下で重合することにより調製されるエチレン及び/若しくはプロピレンのホモポリマー又はコポリマーである。
【0119】
その文書に記載されているメタロセン触媒を介して得られるワックスの重量平均分子量(Mw)は、25000g/mol以下であり、例えば、2000~22 000g/mol及びより良いのは4000~20 000g/molの範囲にある。
【0120】
その文書に記載のメタロセン触媒を介して得られるワックスの数平均分子量(Mn)は、好ましくは15 000g/mol以下であり、例えば、1000~12 000g/mol及びより良いのは2000~10 000g/molの範囲にある。
【0121】
ポリマーの多分散指数Iは、数平均分子量Mnに対する重量平均分子質量Mwの比に等しい。好ましくは、ワックス状ポリマーの多分散指数は1.5~10であり、より好ましくは1.5~5、さらにより好ましくは1.5~3、及びさらにより良いのは2~2.5である。
【0122】
ワックス状ホモポリマー及びコポリマーは、例えば文書EP 571 882に記載のプロセスに従って、メタロセン触媒を介してエチレン及び/又はプロピレンモノマーから公知の方法で取得され得る。
【0123】
メタロセン触媒を介して調製されるエチレン及び/又はプロピレンのホモポリマー及びコポリマーは、変性されていないか、又は「極性」変更(極性変更ワックス、すなわち、極性ワックスの特性を有するように変更されたワックス)であり得る。極性変更ワックス状ホモポリマー及びコポリマーは、空気などの酸素を含むガスでの酸化によって前述のものなどの未変更ワックス状ホモポリマー及びコポリマーから、又はマレイン酸若しくはアクリル酸あるいはそれらの酸の誘導体などの極性モノマーとの接合によって、既知の方法で調製され得る。メタロセン触媒を介して得られたポリオレフィンの極性変更を可能にするそれら2つの経路は、それぞれ、文献EP890 583及びUS5 998 547に記載されており、例えば、それら2つの文献の内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0124】
本開示によれば、特に好ましいメタロセン触媒を介して調製されるエチレン及び/又はプロピレンの極性変更ホモポリマー及びコポリマーは、親水性特性を有するように変更されたポリマーである。挙げることができる例には、エチレン及び/若しくはプロピレンホモポリマー、又は無水マレイン酸、アクリレート、メタクリレート、ポリビニルピロリドン(PVP)などの親水性基の存在により修飾されるコポリマーが含まれる。
【0125】
無水マレイン酸又はアクリレートなどの親水性基の存在により修飾されるエチレン及び/若しくはプロピレンホモポリマー又はコポリマーが特に好ましい。
【0126】
挙げることができる例には、
-Clariant社によって販売されている無水マレイン酸(PPMA)で修飾されたポリプロピレンワックス、又はClariant社がLicoCareという名称で販売されているもの、例えば、LicoCare PP207 LP3349、LicoCare CM401 LP3345、LicoCare CA301 LP3346及びLicoCare CA302 LP3347などのポリプロピレンエチレン無水マレイン酸コポリマー、あるいは
-製品LicoCare PE 102 LP3329などのClariant社によって販売されている未修飾ポリエチレンワックス
が含まれる。
【0127】
(II)半結晶性ワックス又は結晶性ワックス
【0128】
半結晶性又は結晶性ワックスは、極性及び無極性の炭化水素系ワックス、又はそれらの混合物から選択される。
【0129】
本開示の文脈で考慮される用語「ワックス(複数可)」は、一般に室温(25℃)で固体である親油性化合物であり、固体/液体の可逆的状態変化を伴い、30℃以上の融点を有し、最大200℃、特に最大120℃であり得る。
【0130】
特に、本開示に適する半結晶性又は結晶性ワックスは、40℃以上で、60℃以下の融点を有し得る。さらに、本開示に適する半結晶性又は結晶性ワックスは、100℃以下、好ましくは85℃以下、及び特に70℃以下の融点を有し得る。
【0131】
本開示で使用される半結晶性又は結晶性ワックスは、半結晶性若しくは結晶性の無極性又は極性ワックスであり得る。
【0132】
(i)無極性ワックス
【0133】
本開示の目的で、用語「無極性ワックス」は、以下に定義されている25℃での溶解度パラメータδaが0(J/cm3)1/2と等しいワックスを意味する。
【0134】
無極性ワックスは、特に、炭素及び水素原子のみで構成され、N、O、Si及びPなどのヘテロ原子を含まない炭化水素系ワックスである。
【0135】
用語「炭化水素系ワックス」は、炭素及び水素原子、並びに必要に応じて酸素及び窒素原子から本質的に形成されるか、又はそれらで構成され、ケイ素若しくはフッ素原子を含まないワックスを意味する。それは、アルコール、エステル、エーテル、カルボン酸、アミン及び/又はアミド基を含み得る。
【0136】
ハンセン三次元溶解性空間における溶解度パラメータの定義及び計算は、C.M.Hansen:3次元溶解性パラメータ(The three-dimensional solubility parameters),J.Paint Technol.39,105(1967)の論文に記載されている。
【0137】
このハンセン空間によると:
-δDは、分子の衝突時に誘起される双極子の形成に由来するロンドン分散力を特徴とし;
-δpは、永久双極子間のデバイ相互作用力及び誘発される双極子と永久双極子との間のケーソム相互作用力を特徴とし;
-δhは、特定の相互作用力(水素結合、酸/塩基、ドナー/アクセクターなど)を特徴とし;かつ
-δaは式:δa=(δp2+δh2)1/2によって決定される。
【0138】
パラメータδp、δh、δD及びδaは、(J/cm3)1/2で表される。
【0139】
より具体的には、無極性ワックスは、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、オゾケライト、ポリエチレンワックス、ポリメチレンワックス及びマイクロワックス、並びにそれらの混合物から選択され得る。
【0140】
使用され得るマイクロクリスタリンワックスとして、Sonneborn社によって販売されているマルチワックスW445(登録商標)、及びParamelt社によって販売されているマイクロワックスHW(登録商標)及びベースワックス30540(登録商標)を挙げることができる。
【0141】
挙げることができるオゾケライトは、オゾケライトワックスSP1020Pである。
【0142】
挙げることができるポリエチレンワックスには、New Phase Technologies社によって販売されているPerformalene500-Lポリエチレン及びPerformalene400ポリエチレンが含まれる。
【0143】
挙げることができるポリメチレンワックスには、Cirebelle社によって販売されている61℃~67℃の融点を有する参照Cirebelle303で販売されているポリメチレンワックス及び79℃~84℃の融点を有する参照Cirebelle 108で販売されているポリメチレンワックスが含まれる。
【0144】
無極性ワックスとして本開示による組成物に使用され得るマイクロワックスとして、特にMicro Powders社によってMicropoly200(登録商標)、220(登録商標)、220L(登録商標)及び250S(登録商標)という名称で販売されているものなどのポリエチレンマイクロワックスを挙げることができる。
【0145】
(ii)極性ワックス
【0146】
本開示の目的で、用語「極性ワックス」は、25℃での溶解度パラメータδaが0(J/cm3)1/2以外であるワックスを意味する。
【0147】
本明細書で、用語「極性ワックス」は、炭素原子及び水素原子から本質的に形成されるか、又はそれらで構成され、酸素、窒素、ケイ素又はリン原子などの少なくとも1つの高電気陰性ヘテロ原子を含むワックスを意味する。
【0148】
炭化水素系極性ワックスとして、エステルワックスから選択されるワックスが特に好ましい。
【0149】
用語「炭化水素系」は、炭素及び水素原子、必要に応じて酸素及び窒素原子から本質的に形成されるか、又はそれらで構成され、ケイ素又はフッ素原子を含まない化合物を意味する。
【0150】
本開示によれば、用語「エステルワックス」は、少なくとも1つのエステル機能を含むワックスを意味する。
【0151】
以下のものが、エステルワックスとして特に使用され得る:
【0152】
-以下のものから選択されるものなどのエステルワックス:
【0153】
i)式R1COOR2のワックスであって、式中、R1及びR2が直鎖、分岐鎖又は環状の脂肪族鎖を表し、その中の原子数が10~50の範囲にあり、O、N又はPなどのヘテロ原子を含み、融点は25~120℃の範囲にあるワックス。
【0154】
単独又は混合物として、特に、C20~C40アルキル(ヒドロキシステアリルオキシ)ステアリン酸塩(20~40個の炭素原子を含むアルキル基)、又はC20~C40アルキルステアリン酸塩のエステルワックスとして利用され得る。このようなワックスは、特に、Koster Keunen社によってKester Wax K 82 P(登録商標)、ヒドロキシポリエステルK 82 P(登録商標)、Kester Wax K 80 P(登録商標)及びKester Wax K82Hという名称で販売されている。
【0155】
ii)Clariantによって販売されているLicowax KPS Flakes(INCI名:グリコールモンタナート)などのグリコール及びブチレングリコールモンタナート(オクタコサノエート)ワックス。
【0156】
iii)Heterene社によってHest 2T-4S(登録商標)という名称で販売されているビス(1,1,1-トリメチロールプロパン)テトラステアリン酸塩。
【0157】
iv)一般式R3-(-OCO-R4-COO-R5)のジカルボン酸のジエステルワックスであって、式中、R3とR5が同一又は異なり、好ましくは同一であり、C4~C30アルキル基(4~30個の炭素原子を含むアルキル基)を表し、R4は、1種以上の不飽和基を含んでも、又は含まなくてもよい直鎖又は分岐鎖のC4~C30脂肪族基(4~30個の炭素原子を含むアルキル基)を表し、好ましくは直鎖で不飽和であるジエステルワックス。
【0158】
v)直鎖又は分岐鎖のC8~C32脂肪鎖を有する動物油又は植物油の触媒水素化によって取得されるワックス、例えば、水素化ホホバ油、水素化ヒマワリ油、水素化ヒマシ油、水素化ココナッツ油など、及びSophim社によってPhytowax Ricin 16L64(登録商標)及び22L73(登録商標)という名称で販売されているものなどの、セチルアルコールでエステル化されたヒマシ油の水素化によって得られるワックスについても挙げることができる。そのようなワックスは、特許出願FR-A-2792190に記載されており、Phytowax Olive 18 L 57という名称で販売されるものなどのステアリルアルコールでエステル化されたオリーブ油の水素化によって得られるワックスである。
【0159】
v)蜜蝋、合成蜜蝋、ポリグリセロール化蜜蝋、カルナウバワックス、カンデリラワックス、オキシプロピレン化ラノリンワックス、ライスブランワックス、オウリキュリーワックス、エスパルトグラスワックス、コルクファイバーワックス、サトウキビワックス、ジャパンワックス、櫨蝋、モンタンワックス、オレンジワックス、ローレルワックス及び水素化ホホバワックス。カンデリラワックスが好ましく使用される。
【0160】
軟化薬/油類
【0161】
油は、植物由来又は動物由来の油、合成油、シリコーン油、炭化水素油及び脂肪アルコールからなる群から選択され得る。
【0162】
植物油の例として、例えば、亜麻仁油、ツバキ油、マカダミアナッツ油、コーン油、ミンク油、オリーブオイル、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、ベニバナ油、ホホバ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ナタネ油、ゴマ油、大豆油、ピーナッツ油、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0163】
動物油の例として、例えば、スクアレン及びスクワランを挙げることができる。
【0164】
合成油の例として、イソドデカン及びイソヘキサデカンなどのアルカン油、エステル油、エーテル油、及び人工トリグリセリドを挙げることができる。
【0165】
エステル油は、好ましくは、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐鎖のC1~C26脂肪族モノ酸又はポリ酸と、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐鎖のC1~C26脂肪族モノアルコール又はポリアルコールの液体エステルであり、エステルの炭素原子の総数が10以上である。
【0166】
好ましくは、モノアルコールのエステルについては、本開示のエステルが由来するアルコールと酸の中から少なくとも1つが分岐鎖である。
【0167】
モノ酸及びモノアルコールのモノエステルの中でも、パルミチン酸エチル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ミリスチン酸イソプロピル又はミリスチン酸エチルなどのミリスチン酸アルキル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、ネオペンタン酸イソデシル、及びネオペンタン酸イソステアリルを挙げることができる。
【0168】
C4~C22ジカルボン酸又はトリカルボン酸とC1~C22アルコールのエステル、及びモノカルボン酸、ジカルボン酸、又はトリカルボン酸と非糖C4~C26ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、テトラヒドロキシ、又はペンタヒドロキシアルコールのエステルも使用され得る。
【0169】
特に挙げることができるのは、セバシン酸ジエチル;サルコシン酸イソプロピルラウロイル;セバシン酸ジイソプロピル;セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル);アジピン酸ジイソプロピル;アジピン酸ジ-n-プロピル;アジピン酸ジオクチル;アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル);アジピン酸ジイソステアリル;マレイン酸ビス(2-エチルヘキシル);クエン酸トリイソプロピル;クエン酸トリイソセチル;クエン酸トリイソステアリル;トリ乳酸グリセリル;トリオクタン酸グリセリル;クエン酸トリオクチルドデシル;クエン酸トリオレイル;ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール;ジイソノナン酸ジエチレングリコールである。
【0170】
エステル油として、C6~C30、好ましくは、C12~C22の脂肪酸の糖エステル及びジエステルを用いることができる。用語「糖」は、アルデヒド又はケトン官能基の有無にかかわらず、少なくとも4個の炭素原子を含む、いくつかのアルコール官能基を含む酸素担持炭化水素系化合物を意味することが思い出される。それらの糖は、単糖類、オリゴ糖、又は多糖類であり得る。
【0171】
挙げることができる適切な糖の例には、スクロース(又はサッカスロース)、グルコース、ガラクトース、リボース、フコース、マルトース、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース、及びラクトース、並びにそれらの誘導体、特に、メチル誘導体などのアルキル誘導体、例えば、メチルグルコースが含まれる。
【0172】
脂肪酸の糖エステルは、特に、前述の糖類と、直鎖若しくは分岐鎖、飽和若しくは不飽和のC6~C30及び好ましくは、C12~C22の脂肪酸のエステル又はエステルの混合物を含む群から選択され得る。それらが不飽和である場合、それらの化合物は、1~3個の共役又は非共役炭素-炭素二重結合を有し得る。
【0173】
このバリアントによるエステルは、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、及びポリエステル、並びにそれらの混合物から選択され得る。
【0174】
それらのエステルは、例えば、オレエート、ラウレート、パルミテート、ミリステート、ベヘネート、ココエート、ステアレート、リノレート、リノレネート、カプレート、及びアラキドネート、又はそれらの混合物、特に、オレオパルミテート、オレオステアレート、及びパルミトステアレートの混合エステル、並びにペンタエリスリチルテトラエチルヘキサノエートなどであり得る。
【0175】
より具体的には、モノエステル及びジエステル、特に、スクロース、グルコース、又はメチルグルコースのモノオレエート又はジオレエート、ステアレート、ベヘネート、オレオパルミテート、リノレート、リノレネート、及びオレオステアレートが利用される。
【0176】
挙げることができる例は、ジオレイン酸メチルグルコースであるAmerchol社によってGlucate(登録商標)DOという名称で販売されている製品である。
【0177】
好ましいエステル油の例として、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジオクチル、ヘキサン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸エチル、オクタン酸セチル、オクタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソデシル、プロピオン酸ミリスチル、2-エチルヘキシル、2-エチルヘキサン酸、オクタン酸2-エチルヘキシル、カプリル酸/カプリン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、サルコシン酸イソプロピルラウロイル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸エチルヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸イソデシル、グリセリルトリ(2-エチルヘキサン酸)、ペンタエリスリチルテトラ(2-エチルヘキサン酸)、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0178】
エーテル油の例として、例えば、ジカプリリルエーテルなどの短い炭化水素鎖又はその複数の鎖を有するエーテル油を挙げることができる。
【0179】
人工トリグリセリドの例として、例えば、カプリルカプリリルグリセリド、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリル及びトリ(カプリン酸/カプリル酸/リノレン酸)グリセリルを挙げることができる。
【0180】
乳化剤
【0181】
日焼け止め組成物は、必要に応じて、単独で又は混合物として、必要に応じて共乳化剤として使用される両性、アニオン性、カチオン性又は非イオン性の乳化剤などの1種以上の乳化剤を含み得る。乳化剤は、日焼け止め組成物がエマルションの形態である場合に最も頻繁に使用される。乳化剤は、得られるエマルション(W/O又はO/W)に応じて適切な方法で選択される。
【0182】
W/Oエマルションの場合、挙げることができる乳化剤の例には、Dow Corning社によって商標名DC 5225 Cで販売されているシクロメチコンとジメチコンコポリオールの混合物などのジメチコンコポリオール、及びDow Corning社によってDow Corning5200製剤援助という名称で販売されているラウリル・ジメチコンコポリオールなどのアルキル・ジメチコンコポリオール、及びGoldschmidt社によってAbil EM 90TMという名称で販売されているセチルジメチコンコポリオールが含まれる。米国特許第5,412,004号の実施例3、4、及び8並びに米国特許第5,811,487号の実施例の手順に従って得られるものなどの、少なくとも1つのオキシアルキレン基を含む架橋されたエラストマー固体オルガノポリシロキサン、特に、Shin-Etsu社によって参照KSG 21で販売されている製品などの米国特許第5,412,004号の実施例3(合成実施例)の製品も、W/Oエマルションの界面活性剤として使用され得る。
【0183】
O/Wエマルションについて、挙げることができる乳化剤の例には、グリセロールのオキシアルキレン化(より具体的には、ポリオキシエチレン化)脂肪酸エステル;ソルビタンのオキシアルキレン化脂肪酸エステル;オキシアルキレン化(オキシエチレン化及び/又はオキシプロピレン化)脂肪酸エステル;オキシアルキレン化(オキシエチレン化及び/又はオキシプロピレン化)脂肪アルコールエーテル;ステアリン酸スクロースなどの糖エステル;及びそれらの混合物などの非イオン性乳化剤が含まれる。
【0184】
非イオン性両親媒性脂質として使用できる糖の脂肪酸エステルは、特に、C8~C22脂肪酸とスクロースの、マルトースの、グルコースの又はフルクトースのエステル又はエステルの混合物、及びC14~C22脂肪酸とメチルグルコースのエステル又はエステルの混合物を含む群から選択できる。
【0185】
エマルションに使用できるエステルの脂肪単位を形成するC8~C22又はC14~C22脂肪酸は、それぞれ8~22個又は14~22個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の直鎖アルキル鎖を含む。エステルの脂肪単位は、特に、ステアリン酸塩、ベヘン酸塩、アラキドン酸塩、パルミチン酸塩、ミリスチン酸塩、ラウリン酸塩、カプリン酸塩及びそれらの混合物から選択できる。
【0186】
脂肪酸とスクロースの、マルトースの、グルコースの若しくはフルクトースのエステル又はエステルの混合物の例として、それぞれHLB(親水性親油性バランス)が5、7、11及び16である、Croda社によってCrodesta F50、F70、F110及びF160という名称で販売されている製品などの、モノステアリン酸スクロース、ジステアリン酸スクロース、トリステアリン酸スクロース及びそれらの混合物を挙げることができ;脂肪酸とメチルグルコースのエステル又はエステル混合物の例としては、Goldschmidt社によってTego-care 450という名称で販売されているメチルグルコース及びポリグリセロール-3のジステアリン酸塩を挙げることができる。メチルO-ヘキサデカノイル-6-D-グルコシド及びO-ヘキサデカノイル-6-D-マルトシドなどのグルコースモノエステル又はマルトースモノエステルも挙げることができる。
【0187】
非イオン性両親媒性脂質として使用できる糖の脂肪アルコールエーテルは、特に、C8~C22脂肪アルコールとグルコースの、マルトースの、スクロースの又はフルクトースのエーテル又はエーテルの混合物、及びC14~C22脂肪アルコールとメチルグルコースのエーテル又はエーテルの混合物を含む群から選択できる。それらは、特にアルキルポリグルコシドである。
【0188】
本開示のエマルションに使用できるエーテルの脂肪単位を形成するC8~C22又はC14~C22脂肪アルコールは、それぞれ8~22個又は14~22個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の直鎖アルキル鎖を含む。エーテルの脂肪単位は、特に、デシル、セチル、ベヘニル、アラキジル、ステアリル、パルミチル、ミリスチル、ラウリル、カプリル及びヘキサデカノイル単位、及びセテアリールなどのそれら混合物から選択できる。
【0189】
糖の脂肪アルコールエーテルの例として、例えば、Henkel社によってそれぞれPlantaren2000及びPlantaren1200という名称で販売されているデシルグルコシド及びラウリルグルコシドなどのアルキルポリグルコシド、必要に応じて、例えば、Seppic社によってMontanov 68という名称で、Goldschmidt社によってTego-care CG90という名称で、及びHenkel社によってEmulgade KE3302という名称で販売されているセトステアリルアルコールとの混合物としてのセトステアリルグルコシド、並びにアラキジルとベヘニルアルコールの混合物の形態のアラキジルグルコシド、及びSeppic社によってMontanov 202という名称で販売されているアラキジルグルコシドを挙げることができる。
【0190】
この種の非イオン性両親媒性脂質としてより具体的に利用されるのは、モノステアリン酸スクロース、ジステアリン酸スクロース、トリステアリン酸スクロース及びそれらの混合物、メチルグルコースの及びポリグリセロール-3のジステアリン酸塩、及びアルキルポリグルコシドである。
【0191】
非イオン性両親媒性脂質として使用できるグリセロール脂肪エステルは、特に、16~22個の炭素原子を有する飽和直鎖アルキル鎖を含む少なくとも1つの酸と1~10個のグリセロール単位から形成されるエステルを含む群から選択できる。本開示のエマルションにおけるそれらのグリセロール脂肪エステルのうちの1種以上が利用され得る。
【0192】
それらのエステルは、特に、ステアリン酸塩、ベヘン酸塩、アラキドン酸塩、パルミチン酸塩及びそれらの混合物から選択され得る。好ましくは、ステアリン酸塩及びパルミチン酸塩が使用される。
【0193】
本開示のエマルションに使用できる界面活性剤の例として、Nikko社によってそれぞれNikkol Decaglyn 1-S、2-S、3-S及び5-Sという名称で販売されている製品などのデカグリセロールのモノステアリン酸塩、ジステアリン酸塩、トリステアリン酸塩及びペンタステアリン酸塩(10個のグリセロール単位)(CTFA名:ポリグリセリル-10ステアリン酸塩、ポリグリセリル-10ジステアリン酸塩、ポリグリセリル-10トリステアリン酸塩、ポリグリセリル-10ペンタステアリン酸塩)、並びにNikko社によってNikkol DGMSという名称で販売されている製品などのモノステアリン酸ジグリセリル(CTFA名:ポリグリセリル-2ステアリン酸塩)を挙げることができる。
【0194】
非イオン性両親媒性脂質として使用できるソルビタン脂肪エステルは、特に、C16~C22脂肪酸とソルビタンのエステル及びC16~C22脂肪酸とソルビタンのオキシエチレン化エステルを含む群から選択される。それらは、それぞれ、16~22個の炭素原子を有する少なくとも1つの飽和直鎖アルキル鎖を含む少なくとも1つの脂肪酸と、ソルビトール又はエトキシル化ソルビトールから形成される。オキシエチレン化エステルは、一般に、1~100個のエチレンオキシド単位から、好ましくは2~40個のエチレンオキシド(EO)単位を含む。
【0195】
それらのエステルは、特にステアリン酸塩、ベヘン酸塩、アラキドン酸塩、パルミチン酸塩及びそれらの混合物から選択できる。好ましくは、ステアリン酸塩及びパルミチン酸塩が使用される。
【0196】
ソルビタン脂肪エステル及びオキシエチレン化ソルビタン脂肪エステルの例として、ICI社によってSpan60という名称で販売されているモノステアリン酸ソルビタン(CTFA名:ステアリン酸ソルビタン)、ICI社によってSpan40という名称で販売されているモノパルミチン酸ソルビタン(CTFA名:パルミチン酸ソルビタン)、又はICI社によってTween 65という名称で販売されているトリステアリン酸ソルビタン20 EO(CTFA名:ポリソルベート65)を挙げることができる。
【0197】
エトキシル化脂肪エーテルは、典型的には、1~100個のエチレンオキシド単位と16~22個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪アルコール鎖で構成されるエーテルである。エーテルの脂肪鎖は、特に、ベヘニル、アラキジル、ステアリル及びセチル単位、並びにそれらの混合物、セテアリールなどから選択できる。エトキシル化脂肪エーテルの例としては、Nikko社によってNikkol BB5、BB10、BB20及びBB30という名称で販売されている製品などの、5、10、20及び30エチレンオキシド単位(CTFA名:ベヘネス-5、ベヘネス-10、ベヘネス-20及びベヘネス-30)を含むベヘニルアルコールのエーテル、並びにICI社によってBrij72という名称で販売されている製品などの2エチレンオキシド単位を含むステアリルアルコールのエーテル(CTFA名:ステアレス-2)を挙げることができる。
【0198】
非イオン性両親媒性脂質として使用できるエトキシル化脂肪エステルは、1~100個のエチレンオキシド単位と16~22個の炭素原子を含む少なくとも1つの脂肪酸鎖で構成されるエステルである。エステルの脂肪鎖は、特に、ステアリン酸塩、ベヘン酸塩、アラキジン酸塩及びパルミチン酸塩の単位、並びにそれらの混合物から選択できる。エトキシル化脂肪エステルの例として、ICI社によってMyrj 52(CTFA名:PEG-40ステアリン酸塩)という名称で販売されている製品などの40エチレンオキシド単位を含むステアリン酸のエステル、及びGattefosse社によってCompritol HD5 ATOという名称で販売されている製品などの8エチレンオキシド単位(CTFA名:PEG-8ベヘン酸塩)を含むベヘン酸のエステルを挙げることができる。
【0199】
非イオン性両親媒性として使用できるエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーは、特にポロキサマーから、特にx=z=6、y=39(HLB 2)を有する式(V)のPluronic L81という名称でICI社によって販売されている製品などのPoloxamer 231;x=z=10、y=47(HLB 6)を有する式(V)のPluronic L92という名称でICI社によって販売されている製品などのPoloxamer 282;x=z=11、y=21(HLB 16)を有する式(V)のPluronic L44という名称でICI社によって販売されている製品などのポロキサマー124から選択できる。
【0200】
非イオン性両親媒性脂質として、参照により本明細書に組み込まれる文書EP-A-705593に記載の非イオン性界面活性剤の混合物を挙げることができる。
【0201】
適切な疎水性変更乳化剤には、例えば、Inutec SP1という商標名でBeneo Orafti社から市販されているイヌリンラウリルカルバメートが含まれる。
【0202】
日焼け止め組成物中の乳化剤の総量は、存在する場合、変更できるが、典型的には、日焼け止め組成物の総重量に基づいて約0.1~約30重量%である。場合によって、乳化剤の総量は、日焼け止め組成物の総重量に基づいて約0.1~約20重量%、約0.1~約15重量%、約0.1~約10重量%、約0.5~約30重量%、約0.5~約20重量%、約0.5~約15重量%、約0.5~約10重量%、約1~約30重量%、約1~約20重量%、約1~約15重量%、約1~約10重量%、又は約5~約5重量%である。
【0203】
活性剤
【0204】
本開示による日焼け止め組成物は、必要に応じて、さらに活性剤を含むことができる。適切な活性剤には、例えば、抗にきび剤、抗菌剤、抗炎症剤、鎮痛薬、抗紅斑(anti-erythemal)剤、鎮痒剤、抗皮膚剤、抗乾癬剤、抗真菌剤、皮膚保護剤、ビタミン類、抗酸化物質、スカベンジャー、抗刺激剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗老化剤、プロトプロテクション剤、育毛促進剤、毛髪成長抑制剤、脱毛剤、抗ふけ剤、抗脂漏性剤、角質除去剤、創傷治癒剤、抗外寄生生物剤、皮脂調節剤、免疫調節剤、ホルモン、植物、保湿剤、収斂薬、クレンザー、センセート、抗生物質、麻酔薬、ステロイド、組織治癒物質、組織再生物質、ヒドロキシアルキル尿素、アミノ酸、ペプチド、ミネラル、セラミド、バイオヒアルロン酸、ビタミン、美白剤、セルフタンニング剤、コエンザイムQ10、ナイアシンイミド、カプカシン、カフェイン、及び前述のいずれかの任意の組み合わせが含まれる。
【0205】
アジュバント
【0206】
本開示による日焼け止め組成物は、必要に応じて、1種以上のアジュバント、pH調節剤、軟化薬、保湿剤、コンディショニング剤、保湿剤、キレート剤、噴霧剤、レオロジー修飾剤及びゲル化剤などの乳化剤、着色剤、香料、臭気マスキング剤、UV安定化剤、保存剤、及び前述のいずれかの任意の組み合わせを含むことができる。pH調節剤の例には、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、クエン酸、水酸化ナトリウム、酢酸、水酸化カリウム、乳酸、及びそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0207】
適切なコンディショニング剤には、シクロメチコン;ワセリン;ジメチコン;ジメチコノール;シクロペンタシロキサン及びジイソステアロイルトリメチロールプロパンシロキシシリケートなどのシリコーン;ヒアルロン酸ナトリウム;パルミチン酸イソプロピル;大豆油;リノール酸;PPG-12/飽和メチレンジフェニルジイソシアネートコポリマー;尿素;アモジメチコン;トリデセス-12;塩化セキモニウム(cekimonium);ジフェニルジメチコン;プロピレングリコール;グリセリン;ヒドロキシアルキル尿素;トコフェロール;第四級アミン;及びそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0208】
適切な防腐剤には、クロロフェネシン、ソルビン酸、エチレンジニトリロテトラアセテート二ナトリウム、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、フィチン酸、イミダゾリジニル尿素、デヒドロ酢酸ナトリウム、ベンジルアルコール、メチルクロロイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン、及びそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0209】
有機UVフィルター
【0210】
いくつかの実施形態では、該日焼け止め組成物は、さらに、1種以上の有機UVフィルターを含むことができる。いくつかの実施形態では、1種以上の有機UVフィルターは、パラアミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、シンナミック誘導体、ベンゾフェノン又はアミノベンゾフェノン、アントラニル酸誘導体、β,β-ジフェニルアクリル酸誘導体、ベンジリデンカンファー誘導体、フェニルベンズイミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ビスレゾルシニルトリアジン、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロン酸誘導体、4,4-ジアリールブタジエン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、メロシアニン、マロニトリル又はマロン酸ジフェニルブタジエン誘導体、カルコン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0211】
場合によって、1種以上の有機UVフィルターは、0.001重量%~約30重量%、約0.001~約20重量%、0.001~約10重量%、約0.1~約30重量%、約0.1重量%~約25重量%、約0.1~約20重量%、約0.1~約18重量%、0.1~約15重量%、約0.1~約12重量%、約0.1~約10重量%、0.1~約8重量%、約0.1~約6重量%、約1重量%~約30重量%、約0.1重量%~約25重量%、約1重量%~約20重量%、約1重量%~約18重量%、約1重量%~約15重量%、約1重量%~約12重量%、約1重量%~約10重量%、約1重量%~約8重量%、約1重量%~約6重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約18重量%、約5重量%~約15重量%、約5重量%~約12重量%、約5重量%~約10重量%、約5重量%~約8重量%、又は約3重量%~約20重量%の量であり、重量%は日焼け止め組成物の総重量に基づく。
【0212】
本開示はまた、UV放射線から皮膚を保護する方法であって、請求項1に記載の有効量の日焼け止め組成物を皮膚に塗布することを含む方法に関する。
【0213】
実施例
以下の実施例は、例示目的でのみ提供されるものであり、限定することを意図するものではない。
【0214】
実施例1
(油中水日焼け止めエマルション)
油中水エマルションの形態の日焼け止め組成物を調べた。W/O日焼け止めエマルションの関心は、油増粘剤、及び水相に対する特定の比率の油相を含んでいるため、皮膚に接触したときにローションから液体に変換されることであった。日焼け止め組成物の詳細を、以下の表1に提供する。
【0215】
【0216】
上記表中の製剤を作製する際に、以下の手順を用いた。
1)メインケトル内で、相Bを70℃に加熱し、混合する。
2)相Bが溶けて均一になったら、相B1を加えて、20分間均質化する。
3)別のケトル内で、相Bを70℃に加熱し、混合する。
4)70℃で相Aを相Bに添加する。20分間均質化する。
5)冷却を開始する。バッチの通気を避けるために均質化を減らす。
6)冷却しながら、45℃で相Cを添加し、5分間均質化する。
7)35℃で相Dを添加し、5分間均質化する。
8)室温まで冷却する。
【0217】
実施例2:
(粘度測定)
【0218】
皮膚と接触すると、ローションから液体へのエマルションの物理的な形質転換を示すために、W/O日焼け止めエマルションを調べた。この特有の特性を示すために、該組成物の粘度と高剪断粘度転移温度を測定した。結果を以下の表に提示する。表2に提示する発明例は、実施例1に記載の手順に従って調製した。
【表2】
*25℃で、約10rad/秒での動的粘度
**25℃~70℃で、約10rad/秒での最大粘度転移の変曲点
***水相は、水、水溶性、水混和性及び水分散性成分を含む。
****ポリC10~30ポリアクリレート:Air Products社のインテリマー(登録商標)
【表3】
*25℃で、約10rad/秒での動的粘度
**25℃~70℃で、約10rad/秒での最大粘度転移の変曲点
***水相は、水、水溶性、水混和性及び水分散性成分を含む。
****ポリC10~30ポリアクリレート:Air Products社のインテリマー(登録商標)
【0219】
粘度と高剪断転移温度を測定する以下の手順を使用した:40mmのステンレス鋼のクロスハッチ幾何学を用いて、高度なペルチェプレート(温度制御用)を搭載したハイブリッドレオメーター(モデル:TA Instruments社のDHR-3)を用いて、組成物を分析した。動的粘度を約10rad/秒で、25℃で記録する。高剪断粘度転移温度は、25℃~70℃の3℃/分の温度での一定の傾斜に、一定の流量(10rad/秒)で測定した粘度の最大変化の変曲点を特定することによって計算した。変曲点は、25℃~70℃の温度範囲にわたる動的粘度の傾きが最小値となる温度として計算した。全ての試料について、動的粘度測定前と温度ランプを適用する前に、プレシア(25℃で、約10rad/秒で20秒)を行った。
【0220】
発明例の粘度を測定した。測定した数値は約0.3~約1.5Pa・sで、高剪断粘度転移温度は、約10rad/秒で、約30℃~約40℃であった。
【0221】
表3に示す比較例は、実施例1に記載の手順に従って調製した。
【0222】
【表4】
*25℃で、約10rad/秒での動的粘度
**25℃~70℃で、約10rad/秒での最大粘度転移の変曲点
***水相は、水、水溶性、水混和性及び水分散性成分を含む。
****ポリC10~30ポリアクリレート:Air Products社のインテリマー(登録商標)
【0223】
粘度と高剪断粘度転移温度を測定するために前記と同様の手順を用いた。
【0224】
比較例の粘度を測定すると、約0.3Pa・s~約12Pa・sであり、高剪断粘度転移温度を測定すると、約10rad/秒で、約43℃~約69℃であった。
【0225】
結果
【0226】
本発明及び比較例について収集したデータによれば、油増粘剤の総量、ポリC10~30アルキルアクリレートと水素化ホホバ油の比率、及び水相の総量は、粘度と高剪断粘度転移温度の両方に相関していることが明らかである。油増粘剤の量、油増粘剤の比率、及び水相の量の組み合わせは、本開示の概要に適合する例を定義し、本例に記載の美的に満足できる特質を発揮するのに適切な粘度及び高剪断粘性転移温度を有する組成物を当業者が調製することを可能にする。
【0227】
本発明例では、油増粘剤の総量が約0.5%~約4.0%以下であり、水相全体が約20%~約60%であり、水素化ホホバ油の量がポリC10~30アルキルアクリレートの量の1.5倍以下である場合に、粘度は低いまま(5Pa・s未満)で、高剪断粘度転移温度は皮膚温度の範囲(30~40℃)であり、エマルション状態から液体状態への転移を有することを可能にする。
【0228】
これは比較例については当てはまらなかった。
【0229】
実際、比較例3の場合に、水素化ホホバ油の不在下で高量のポリC10~30アルキルアクリレートを有するため、粘度は非常に高かった(11.79Pa・s)。この例は、低粘度を得るために両方の油増粘剤の組み合わせが必要であることを実証する。比較例1、2、及び4では、水素化ホホバ油の量はポリC10~30アルキルアクリレートの量の1.5倍以上であり、その結果、高剪断粘度転移温度は皮膚温度の範囲を上回る(43℃以上)。特に、比較例4は、ポリC10~30アルキルアクリレートを含まず、所望の発明範囲(68.942℃)を上回る高剪断粘度転移温度をもたらす。発明例4及び例5と比較例1の比較は、ポリC10~30アルキルアクリレートに対する水素化ホホホバ油の比率の特異性を示す。特に、例4及び例5は、本開示の概要に含まれるが、水素化ホホバ油を多量に使用すると(比較例1)、高剪断粘度転移温度は、本開示の概要で指定された皮膚温度の範囲(30℃~40℃)を超えて上昇する。