IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝三菱電機産業システム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-製造設備の診断支援装置 図1
  • 特許-製造設備の診断支援装置 図2
  • 特許-製造設備の診断支援装置 図3
  • 特許-製造設備の診断支援装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】製造設備の診断支援装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
G05B23/02 302Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021535134
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2020025867
(87)【国際公開番号】W WO2022003871
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2021-06-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘 稔
【合議体】
【審判長】刈間 宏信
【審判官】田々井 正吾
【審判官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-180322(JP,A)
【文献】特開2019-048337(JP,A)
【文献】特開2002-232969(JP,A)
【文献】特開2001-356801(JP,A)
【文献】特開昭63-238916(JP,A)
【文献】実開昭59-077506(JP,U)
【文献】特開2017-188015(JP,A)
【文献】特開2019-074969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00 - G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延材を一方向に搬送しながら加工する製造設備の各工程における運転情報と当該圧延材の搬送方向の位置の情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
外部からの操作により、当該圧延材の異常箇所の範囲として、当該圧延材の搬送方向の位置の範囲指定する指定部と、
前記指定部により当該圧延材の前記範囲が指定された際に、前記記憶部により記憶された各工程の運転情報の中から、前記指定部により指定された前記範囲に対応した各工程の位置において変化した運転情報を抽出して端末装置に送信する抽出部と、
を備え
前記記憶部は、前記運転情報として、当該圧延材の温度を記憶し、
前記抽出部は、前記変化した運転情報として、当該圧延材の温度の単位時間当たりの変化率が予め設定された閾値よりも大きい範囲の温度を抽出する製造設備の診断支援装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、製造設備の診断支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、製造設備の診断支援装置を開示する。当該診断支援装置は、類似した装置が設置される製造設備の診断において、装置の状態以外の要因が診断に及ぼす影響を抑制し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特許第6572979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の診断支援装置は、製造設備における過去の運転情報との比較により異常の診断を行う。製造設備の過去の運転情報がないと、製造設備の診断を行うことができない。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、製造設備の過去の運転情報がなくても、製造設備を効率的に診断することを支援できる製造設備の診断支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る製造設備の診断支援装置は、圧延材を一方向に搬送しながら加工する製造設備の各工程における運転情報と当該圧延材の搬送方向の位置の情報とを対応付けて記憶する記憶部と、外部からの操作により、当該圧延材の異常箇所の範囲として、当該圧延材の搬送方向の位置の範囲指定する指定部と、前記指定部により当該圧延材の前記範囲が指定された際に、前記記憶部により記憶された各工程の運転情報の中から、前記指定部により指定された前記範囲に対応した各工程の位置において変化した運転情報を抽出して端末装置に送信する抽出部と、を備え前記記憶部は、前記運転情報として、当該圧延材の温度を記憶する。前記抽出部は、前記変化した運転情報として、当該圧延材の温度の単位時間当たりの変化率が予め設定された閾値よりも大きい範囲の温度を抽出する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、診断支援装置は、材料圧延材の位置の範囲が指定された際に当該範囲に対応した位置において変化した運転情報を抽出する。このため、製造設備の過去の運転情報がなくても、製造設備を効率的に診断することを支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における製造設備の診断支援装置が適用される圧延設備の構成図である。
図2】実施の形態1における製造設備の診断支援装置と端末装置とのブロック図である。
図3】実施の形態1における製造設備の診断支援装置の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
図4】実施の形態1における製造設備の診断支援装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における製造設備の診断支援装置が適用される圧延設備の構成図である。
【0011】
図1に示されるように、圧延設備は、複数の加熱炉1とサイジングプレス2と複数のエッジャ3と複数の粗圧延機4とシャー5と複数の仕上圧延機6と複数の巻取機7とを備える。
【0012】
複数の加熱炉1は、圧延設備の最も上流側に設けられる。複数の加熱炉1は、圧延材を加熱し得るように設けられる。
【0013】
サイジングプレス2は、複数の加熱炉1の下流側に設けられる。サイジングプレス2は、圧延材を幅方向に圧延し得るように設けられる。
【0014】
複数のエッジャ3は、サイジングプレス2の下流側に設けられる。複数のエッジャ3は、圧延材を幅方向に圧延し得るように設けられる。
【0015】
複数の粗圧延機4の各々は、複数のエッジャ3の各々の下流側に設けられる。複数の粗圧延機4は、圧延材を厚み方向に圧延し得るように設けられる。
【0016】
シャー5は、複数の粗圧延機4の下流側に設けられる。シャー5は、圧延材を切断し得るように設けられる。
【0017】
複数の仕上圧延機6は、シャー5の下流側に設けられる。複数の仕上圧延機6は、圧延材を厚み方向に圧延し得るように設けられる。
【0018】
複数の巻取機7は、複数の仕上圧延機6の下流側に設けられる。複数の巻取機7は、圧延材を巻き取り得るように設けられる。
【0019】
診断支援装置8は、圧延設備の各装置の運転状態または圧延材の状態を示す運転情報を常時または間欠的に収集する。診断支援装置8は、圧延設備の各工程における運転情報を当該圧延材の位置の情報と対応付けて記憶する。例えば、診断支援装置8は、図示されない測定器から圧延材にかかる荷重の情報、各装置に流れる電流の情報、各工程における圧延材の速度の情報、手介入信号の有無の情報等を運転情報として記憶する。
【0020】
診断支援装置8は、当該圧延材の調査対象の位置の範囲が指定された際に、自らが記憶した運転情報の中から、指定された範囲に対応した位置において変化した運転情報を抽出する。
【0021】
例えば、図1の上段に示されるように、仕上圧延機6において圧延材の異常が担当者により発見された場合、異常に関わる当該圧延材の異常個所の範囲が指定される。この場合、診断支援装置8は、当該範囲に対応した位置において特に変動が大きい運転情報を抽出する。
【0022】
例えば、図1の中段に示されるように、診断支援装置8は、シャー5の工程において特に変動が大きい運転情報を抽出する。
【0023】
例えば、図1の下段に示されるように、診断支援装置8は、下流側の粗圧延機4の工程において特に変動が大きい運転情報を抽出する。
【0024】
端末装置9は、診断支援装置8により抽出された運転情報を表示する。
【0025】
次に、図2を用いて、診断支援装置8と端末装置9とを説明する。
図2は実施の形態1における製造設備の診断支援装置と端末装置とのブロック図である。
【0026】
図2に示されるように、診断支援装置8は、記憶部8aと指定部8bと抽出部8cとを備える。
【0027】
記憶部8aは、圧延材の識別情報とトラッキング情報とを運転情報に対応付けて記憶する。この際、記憶部8aは、各工程の境界情報に基づいて圧延材の先後端を認識する。例えば、記憶部8aは、各工程における圧延材にかかる荷重の情報を境界情報として圧延材の先後端を認識する。例えば、記憶部8aは、圧延材に係る荷重が0から急激に大きくなったときに圧延材の先端を認識する。例えば、記憶部8aは、圧延材に係る荷重が急激に0となったときに圧延材の後端を認識する。
【0028】
指定部8bは、外部からの情報に基づいて圧延材および当該圧延材の調査対象の位置の範囲を指定する。指定部8bは、記憶部8aに記憶された運転情報の中から、当該圧延材の調査対象の位置の範囲に対応した運転情報を指定する。
【0029】
抽出部8cは、指定部8bにより指定された運転情報の中から、予め設定された条件を満たす運転情報を変化した運転情報として抽出する。例えば、運転情報がオンまたはオフを示す情報である場合、抽出部8cは、オンからオフに切り替わった範囲の運転情報またはオフからオンに切り替わった範囲の運転情報を抽出する。例えば、運転情報が圧延材の温度等の数値を示す情報である場合、抽出部8cは、ステップ状に変化した範囲の運転情報を抽出する。例えば、運転情報が圧延材の温度等の数値を示す情報である場合、抽出部8cは、単位時間当たりの変化率の値が予め設定された閾値よりも大きい範囲の運転情報を抽出する。例えば、運転情報が圧延材の温度等の数値を示す情報である場合、抽出部8cは、過去の運転情報に対して特徴的な差がある範囲の運転情報を抽出する。なお、運転情報が圧延材の温度等の数値を示す情報である場合、抽出部8cは、全く変化のない範囲の運転情報を抽出する。
【0030】
端末装置9は、入力部9aと出力部9bとを備える。
【0031】
入力部9aは、外部からの操作を受け付け得るように設けられる。例えば、圧延設備の診断時において、入力部9aは、圧延設備の診断者の操作に基づいて圧延材および当該圧延材の調査対象の位置の範囲を指定する情報を診断支援装置8に向けて送信する。
【0032】
出力部9bは、外部からの情報を受け付ける。出力部9bは、当該情報を出力する。例えば、出力部9bは、当該情報を表示する。例えば、出力部9bは、抽出部8cが抽出した運転情報を表示する。この際、出力部9bは、当該圧延材の識別情報と工程の識別情報とを運転情報に対応付けて表示する。
【0033】
次に、図3を用いて、診断支援装置8の動作の概要を説明する。
図3は実施の形態1における製造設備の診断支援装置の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【0034】
ステップS1では、診断支援装置8は、当該圧延材の調査対象の位置の範囲を指定する情報の入力が受け付けられたか否かを判定する。ステップS1で当該圧延材の調査対象の位置の範囲を指定する情報の入力が受け付けられていない場合、診断支援装置8は、ステップS1の動作を行う。ステップS1で当該圧延材の調査対象の位置の範囲を指定する情報の入力が受け付けられた場合、診断支援装置8は、ステップS2の動作を行う。
【0035】
ステップS2では、診断支援装置8は、自らが記憶した運転情報の中から、指定された範囲に対応した位置において変化した運転情報を抽出する。その後、診断支援装置8は、ステップS3の動作を行う。ステップS3では、診断支援装置8は、自らが抽出した情報を端末装置9に向けて送信する。その後、診断支援装置8は、ステップS1の動作を行う。
【0036】
以上で説明した実施の形態1によれば、診断支援装置8は、圧延材の位置の範囲が指定された際に当該範囲に対応した位置において変化した運転情報を自動で抽出する。このため、経験が浅い担当者でも、製造設備の過去の運転情報がなくても、圧延設備を効率的に診断することを支援できる。その結果、圧延設備のトラブルを早期に解決することができる。
【0037】
この際、異常が発見された工程よりも上流の工程における運転情報のみを抽出すれば、圧延設備をより効率的に診断することができる。
【0038】
また、診断支援装置8は、指定された範囲に対応した位置においてオンからオフに切り替わった運転情報またはオフからオンに切り替わった運転情報を抽出する。このため、圧延設備の異常事象をより確実に把握することができる。
【0039】
また、診断支援装置8は、指定された範囲に対応した位置において予め設定された変化条件を満たす運転情報を抽出する。このため、圧延設備の異常事象をより確実に把握することができる。
【0040】
なお、診断支援装置8において変化した運転情報を端末装置9に表示させる際、当該運転情報に当該各工程または当該装置の識別情報を対応付けて表示させてもよい。この場合、圧延設備の異常事象をより確実に把握することができる。
【0041】
また、複数の装置をまとめて1つの工程としてもよい。例えば、複数の仕上圧延機6をまとめて1つの工程としてもよい。例えば、複数の巻取機7をまとめて1つの工程としてもよい。この場合も、製造設備の過去の運転情報がなくても、圧延設備を効率的に診断することを支援できる。
【0042】
また、実施の形態1の診断支援装置8を圧延設備以外の製造設備に適用してもよい。例えば、実施の形態1の診断支援装置8を材料としての紙を加工する製紙設備に適用してもよい。この場合、経験が浅い担当者でも、製造設備の過去の運転情報がなくても、当該製造設備を効率的に診断することを支援できる。
【0043】
次に、図4を用いて、診断支援装置8の例を説明する。
図4は実施の形態1における製造設備の診断支援装置のハードウェア構成図である。
【0044】
診断支援装置8の各機能は、処理回路により実現し得る。例えば、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。例えば、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える。
【0045】
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える場合、診断支援装置8の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリ100bに格納される。少なくとも1つのプロセッサ100aは、少なくとも1つのメモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、診断支援装置8の各機能を実現する。少なくとも1つのプロセッサ100aは、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。例えば、少なくとも1つのメモリ100bは、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等である。
【0046】
処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。例えば、診断支援装置8の各機能は、それぞれ処理回路で実現される。例えば、診断支援装置8の各機能は、まとめて処理回路で実現される。
【0047】
診断支援装置8の各機能について、一部を専用のハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。例えば、抽出部8cの機能については専用のハードウェア200としての処理回路で実現し、抽出部8cの機能以外の機能については少なくとも1つのプロセッサ100aが少なくとも1つのメモリ100bに格納されたプログラムを読み出して実行することにより実現してもよい。
【0048】
このように、処理回路は、ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで診断支援装置8の各機能を実現する。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本開示の製造設備の診断支援装置は、システムに利用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 加熱炉、 2 サイジングプレス、 3 エッジャ、 4 粗圧延機、 5 シャー、 6 仕上圧延機、 7 巻取機、 8 診断支援装置、 8a 記憶部、 8b 指定部、 8c 抽出部、 9 端末装置、 9a 入力部、 9b 出力部、 100a プロセッサ、 100b メモリ、 200 ハードウェア
図1
図2
図3
図4