(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】酸素化された血液の体積流量を計算するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0265 20060101AFI20240603BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20240603BHJP
A61B 5/026 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
A61B5/0265
A61B5/1455
A61B5/026 120
(21)【出願番号】P 2021544780
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(86)【国際出願番号】 IB2020050806
(87)【国際公開番号】W WO2020157724
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-30
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521338743
【氏名又は名称】フロー シーピーアール インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】クロストラネック ジェッセ エム.
(72)【発明者】
【氏名】タルッリ エミディオ
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-535407(JP,A)
【文献】特表2017-536904(JP,A)
【文献】特開2001-112725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
第1の側および第1の側とは反対の第2の側を有する支持体であって、組織の目標領域に隣接するヒトの皮膚に取り外し可能に付着されるように構成された、支持体と、
目標領域を流れる血液の血中酸素化率を決定するための、目標領域を流れる血液による光の吸収を検出するために、支持体の第2の側で支持体に固定された光学センサと、
目標領域を流れる血液の流量を決定するための、目標領域の磁場の変化を検出するために、支持体の第2の側で支持体に固定された磁気センサと、
支持体に固定され、光学センサおよび磁気センサのうちの少なくとも1つに結合されて、血中酸素化率および流量を決定し、血中酸素化率と流量とに基づいて目標領域を流れる酸素化された血液の体積流量を計算するプロセッサと、
を含む、装置。
【請求項2】
光学センサおよび磁気センサのうちの少なくとも1つに電気的に接続されて、光学センサおよび磁気センサのうちの少なくとも1つに電力を供給するように構成された電源をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光学センサは、
第2の側から離れる方向に2つの異なる波長で光を放出するように構成された光源と、
目標領域を流れる血液による光の吸収を測定するように構成された受信機と、
を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記磁気センサは、
磁場を誘導するように構成された磁石と、
目標領域で磁場の変化を検出するように構成された少なくとも2つの磁気検出器と、
を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の側で支持体に固定され、前記プロセッサに結合されて、酸素化された血液の体積流量に基づいて通知を生成するように構成されたインジケータをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
通知は、聴覚信号および視覚信号のうちの1つまたは複数を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記インジケータは、
酸素化された血液の体積流量が第1の閾値を超えているときに、第1の信号を発し、
酸素化された血液の体積流量が第1の閾値を下回り、流量が第2の閾値を下回っているときに、第2の信号を発し、
酸素化された血液の体積流量が第1の閾値を下回り、流量が第2の閾値を超えているときに、第3の信号を発する、
ように構成される、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
支持体に固定され、光学センサ、磁気センサ、およびプロセッサのうちの少なくとも1つに結合されて、血中酸素化率、流量、およ
び酸素化された血液の体積流量のうちの少なくとも1つを
外部プロセッサへ通信するように構成された通信インターフェースをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
目標領域に隣接するヒトの皮膚に支持体を取り外し可能に付着するために、支持体の第1の側に固定された接着剤層をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
目標領域は少なくとも部分的にヒトの首にある、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
方法であって、
装置の支持体の第2の側に固定された光学センサで、ヒトの組織の目標領域を流れる血液による光の吸収であって、目標領域を流れる血液の血中酸素化率を決定するための光の吸収を検出するステップと、
支持体の第2の側に固定された磁気センサで、目標領域を流れる血液の流量を決定するための、目標領域の磁場の変化を検出するステップと、
支持体に固定されたプロセッサで、血中酸素化率と流量とに基づいて、目標領域を流れる酸素化された血液の体積流量を計算するステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
光学センサおよび磁気センサのうちの少なくとも1つに電気的に接続された電源によって、光学センサおよび磁気センサのうちの少なくとも1つに電力を供給するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
光学センサで、血中酸素化率を検出するステップは、
光源によって、支持体から離れる方向に2つの異なる波長の光を放出するステップと、
受信機によって、目標領域を流れる血液による光の吸収を測定するステップと、
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
磁気センサで、流量を検出するステップは、
磁石によって、目標領域に磁場を誘導するステップと、
少なくとも2つの磁気検出器によって、目標領域の磁場の変化を検出するステップと、
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
酸素化された血液の体積流量に基づいて通知を生成するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
通知は、聴覚信号および視覚信号のうちの1つまたは複数を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
通知を生成するステップは、
酸素化された血液の体積流量が第1の閾値を超えているときに、第1の信号を発するステップと、
酸素化された血液の体積流量が第1の閾値を下回り、流量が第2の閾値を下回っているときに、第2の信号を発するステップと、
酸素化された血液の体積流量が第1の閾値を下回り、流量が第2の閾値を超えているときに、第3の信号を発するステップと、
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
酸素化された血液の体積流量を計算するために、
無線送信機を介して、血中酸素化率および流量を、装置の外部に収容された第2のプロセッサに通信するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
目標領域でヒトの皮膚に支持体を付着するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
目標領域はヒトの首である、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
装置であって、
第1の側および第1の側とは反対の第2の側を有する支持体であって、組織の目標領域に隣接するヒトの皮膚に取り外し可能に付着されるように構成された、支持体と、
目標領域を流れる血液の血中酸素化率を決定するための、目標領域を流れる血液による光の吸収を検出するために、支持体の第2の側で支持体に固定された光学センサと、
目標領域を流れる血液の流量を決定するための、目標領域の磁場の変化を検出するために、支持体の第2の側で支持体に固定された磁気センサと、
光学センサおよび磁気センサのうちの少なくとも1つに結合された通信インターフェースであって、血中酸素化率および流量を決定し、血中酸素化率と流量とに基づいて、目標領域を流れる酸素化された血液の体積流量を計算するために、光の吸収および磁場の変化を外部プロセッサに伝達するように構成された、通信インターフェースと、
を含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、一般に、医療機器、より具体的には、ヒトの組織の目標領域における酸素化された血液の体積流量を計算するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の心肺蘇生法(CPR)は医療現場で一般的なイベントであり、米国だけで年間40万件の発生率が報告されている。米国心臓協会によって提供されるようなガイドラインは、通常、救助者がCPRを実行するために胸骨圧迫と換気を提供するためのアルゴリズムを提供する。そのようなアルゴリズムは、異なる患者生理機能を有する異なる患者に対して異なる効力を有する可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書の一態様は、酸素化された血液の体積流量を計算するための装置に向けられている。この装置は、第1の側および第1の側の反対側の第2の側を有する支持体を含み、支持体は、組織の目標領域に隣接するヒトの皮膚に取り外し可能に付着されるように構成される。この装置は、目標領域を流れる血液の血中酸素化率(blood oxygenation percentage)を決定するための、目標領域を流れる血液による光の吸収を検出するために、支持体の第2の側で支持体に固定された光学センサをさらに含む。この装置は、目標領域を流れる血液の流量を決定するための、目標領域の磁場の変化を検出するために、支持体の第2の側で支持体に固定された磁気センサをさらに含む。この装置は、支持体に固定され、光学センサおよび磁気センサの少なくとも1つに結合されて、血中酸素化率および流量を決定し、血中酸素化率と流量とに基づいて目標領域を流れる酸素化された血液の体積流量を計算するプロセッサをさらに含む。
【0004】
本明細書の別の態様は、酸素化された血液の体積流量を計算するための方法に向けられている。この方法は、装置の支持体の第2の側に固定された光学センサで、ヒトの組織の目標領域を流れる血液による光の吸収であって、目標領域を流れる血液の血中酸素化率を決定するための光の吸収を検出するステップを含む。この方法は、支持体の第2の側に固定された磁気センサで、目標領域を流れる血液の流量を決定するための、目標領域の磁場の変化を検出するステップをさらに含む。この方法は、支持体に固定されたプロセッサで、血中酸素化率と流量とに基づいて、目標領域を流れる酸素化された血液の体積流量を計算するステップをさらに含む。
【0005】
本明細書では、要素は、1つまたは複数の機能を実行する「ように構成された」、またはそのような機能「のために構成された」と説明し得る。一般に、機能を実行するように構成された、または機能を実行するために構成された要素は、機能を実行することが可能であるか、または機能を実行するのに適しているか、または機能を実行するように適合されているか、または機能を実行するように動作可能であるか、またはさもなければ機能を実行することができる。
【0006】
本明細書の目的のために、「X、Y、およびZの少なくとも1つ」および「X、Y、およびZの1つまたは複数」の用語は、Xのみ、Yのみ、Zのみ、または、2つ以上のアイテムX、Y、およびZの任意の組み合わせ(例えば、XYZ、XY、YZ、ZZなど)として解釈できることが理解される。同様のロジックは、「少なくとも1つの・・・」および「1つ以上の・・・」の用語が出現する2つ以上のアイテムに適用できる。
【0007】
「約」、「実質的に」、「本質的に」、「ほぼ」などの用語は、例えば当業者によって理解されるように、「に近い」と定義される。いくつかの実装形態では、それらの用語は「10%以内」、他の実装形態では「5%以内」、さらに別の実装形態では「1%以内」、さらに別の実装形態では「0.5%以内」であると理解される。
【0008】
実装形態は、次の図を参照して説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、使用中の酸素化された血液の体積流量を計算するためにヒトに付着された例示的な装置の概略図を示す。
【
図3】
図3は、別の実装形態による
図1の装置のブロック図を示す。
【
図4】
図4は、酸素化された血液の体積流量を計算する例示的な方法のフローチャートを示す。
【
図6】
図6は、酸素化された血液の体積流量に基づいて通知を生成するための例示的な方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
「患者に焦点を合わせた」生理学的測定が蘇生の努力を導くために使用されるとき、研究は改善された結果を示した。特に、拡張期血圧および/または直接CPRへのカプノグラフィックETCO2のリアルタイムモニタリングは、患者の生存率と退院率の改善を示した。心停止の約50%は、管理された病院環境の外でファーストレスポンダの救急医療サービス要員によって治療される。このような急性の状況では、同時CPR中に侵襲的な生理学的モニタを挿入することは困難で非現実的であり、次善の結果につながる。したがって、臨床的に関連する患者の生理学のリアルタイム測定を救助者に提供するための非侵襲的技術が必要である。
【0011】
図1は、本開示による酸素化された血液の体積流量を計算するための装置100の概略図を示す。装置100は、組織102の目標領域に隣接するヒト101の皮膚に取り外し可能に付着される。本実装形態では、目標領域102は、少なくとも部分的にヒト101の首にある。特に、目標領域102は、装置100のセンサの範囲内の首の組織の体積を含む。例えば、目標領域102は、頸動脈および/または頸静脈の一部を含む首の組織の一部を含み得る。目標領域102は、装置100に直接隣接する組織(すなわち、装置100が付着している皮膚の領域を含む)を含み得るか、または目標領域102は、装置100に隣接するが装置100から離れている組織(すなわち、ヒト101の範囲内の組織であるが、装置100が付着している皮膚の領域、または組織の他の周辺領域を含まない)を含み得る。いくつかの実装形態では、2つ以上の装置100を、ヒト101の首を横切る両側構成に付着させ得て、例えば、2つ以上の目標領域102が2つの頸動脈を横切る酸素化された血液の体積流量(すなわち、脳への血流の約80%を含む)を測定できるようにする。
【0012】
図2を参照すると、装置100の概略図が示されている。装置100は、装置100の内部構成要素を支持するように構成された支持体200を含む。支持体200は、第1の側202と、第1の側の反対側の第2の側204とを有する。例えば、支持体200は、層間に内部構成要素を支持する1つまたは複数の材料の層を含むパッドまたはパッチを含み得る。支持体200は、織物、プラスチック(例えば、PVC、ポリエチレンまたはポリウレタン)、ラテックス、またはヒトの皮膚との接触に適していて、かつ目標領域102の輪郭に適合するように柔軟である他の材料などの可撓性材料を含み得る。装置100はまた、支持体200の第1の側202に固定された接着剤層206を含み、目標領域102で装置100をヒト101の皮膚に取り外し可能に付着する。例えば、接着剤層206は、アクリレート(例えば、メタクリレート、エポキシジアクリレート、ビニル樹脂)、または人の皮膚に取り外し可能に付着するための他の適切な接着材料を含み得る。
【0013】
装置100は、第2の側204で支持体200に固定された光学センサ210を含む。光学センサ210は、一般に、本明細書でより詳細に説明するように、目標領域102を流れる血液の血中酸素化率を決定するために、目標領域102を流れる血液による光の吸収を検出するように構成される。装置100は、第2の側204で支持体200に固定された磁気センサ220をさらに含む。磁気センサ220は、一般に、本明細書でより詳細に説明するように、目標領域102を流れる血液の流量を決定するために、目標領域102内の磁場の変化を検出するように構成される。
【0014】
装置100は、第2の側204で支持体200に固定されたプロセッサ201をさらに含む。プロセッサ201は、光学センサ210および磁気センサ220のうちの少なくとも1つに結合されている。プロセッサ201は、中央処理装置(CPU)、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、処理コア、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または同様のものを含み得る。プロセッサ201は、一般に、本明細書に記載の機能を実行するために、光学センサ210および磁気センサ220を含む、装置100の構成要素を制御するように構成される。プロセッサ201はさらに、血中酸素化率および流量を決定し、血中酸素化率および流量に基づいて目標領域102を流れる酸素化された血液の体積流量を計算するように構成される。
【0015】
図3は、コンピューティングデバイス310と通信する装置100を含むシステム300のブロック図を示す。コンピューティングデバイス310は、装置100および他のコンピューティングデバイスと通信するように構成された通信インターフェース312を含む。コンピューティングデバイス310は、通信インターフェース312と相互接続されたプロセッサ314をさらに含む。プロセッサ314は、血中酸素化率、流量、および酸素化された血液の体積流量を決定するように構成され得る。コンピューティングデバイス310は、例えば、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレット、携帯電話、または他の適切なデバイスであり得る。コンピューティングデバイス310は、酸素化された血液の体積流量を表示するためのディスプレイ(図示せず)、または酸素化された血液の体積流量に関連する閾値条件に基づいて通知を生成するための別の適切なインジケータをさらに含み得る。例えば、コンピューティングデバイス310は、携帯型AEDデバイス、医療監視システムの構成要素などであることができる。
【0016】
特に、光学センサ210は、第2の側204から離れる方向に2つの異なる波長で発光するように構成された第1および第2の光源212-1および212-2(総称して光源212と呼ばれ、集合的に光源212と呼ばれ、この命名法は本明細書の他の場所で使用される)を含む。光源212は、例えば、発光ダイオード(LED)、レーザーなどであり得る。光学センサ210は、目標領域102を流れる血液による光の吸収を測定するように構成された、フォトダイオードなどの受信機214をさらに含む。第1の光源212-1は、第1の波長λ1(例えば、約905nm(赤外線範囲内))で光を放出するように構成され、第2の光源212-2は、第2の波長λ2(例えば、約660nm(赤色範囲内))で光を放出するように構成される。プロセッサ201は、光学センサ210、特に光源212を制御して、2つの異なる波長λ1およびλ2で同時に発光するように構成される。したがって、受信機214は、第1の波長λ1の反射光および第2の波長λ2の反射光を測定し、そこから、第1の波長λ1の光の第1の吸収および第2の波長λ2の光の第2の吸収を計算し得る。
【0017】
より一般的には、装置100は、酸素飽和度(oxygen saturation)または酸素化率(oxygen percentage)を測定するように構成された適切なデバイスを含む。例えば、装置100は、光学センサ210の代わりにまたはそれに加えて、末梢パルスオキシメータを含むことができる。他の例では、例えば挿管された患者で測定されるような呼気終末CO2測定(ET-CO2)もまた、酸素飽和度または酸素化率を測定するために光学センサ210の代わりにまたはそれに加えて使用され得る。
【0018】
磁気センサ220は、目標領域102に磁場を誘導するように構成された磁石222と、目標領域102での磁場の変化を検出するように構成された少なくとも2つの磁気検出器224-1および224-2を含む。磁石222は、棒磁石などの永久磁石であり得るか、または電磁石であり得る。例えば、プロセッサ201は、電源250を制御して、磁石122に磁場を誘導するための電流を生成し得る。いくつかの実装形態では、磁気センサ220は、2つ以上の磁石222を含む。例えば、磁気センサ220は、より均一な磁場を達成するために、磁気検出器224に対して空間的に配置された2つ以上の磁石222を含むことができる。具体的には、2つの磁石222を、磁気検出器224の反対側に配置し得る。
【0019】
いくつかの実装形態では、磁気センサ220は、3つ以上の磁気検出器224を含むことができ、装置100が、以下でさらに説明するように、三角測量を使用して血液が流れる血管の深さを決定できるようにする。他の実装形態では、磁気センサ220は、例えば、血管が表面的である場合(例えば、橈骨動脈)、2つの磁気検出器224のみを含む。
【0020】
さらに別の実装形態では、磁気センサ220は、発泡体、ゲルなどの変形可能な材料に支持された磁石を含み得る。磁力が検出されると、変形可能な材料を磁石が機械的にたわませる可能性があり、したがって、検出された磁力を決定することができる。具体的には、変形可能な材料の機械的たわみは、磁力に比例し得る。
【0021】
本実装形態では、装置100は、プロセッサ201に結合された通信インターフェース230をさらに含む。通信インターフェース230は、一般に、装置100がコンピューティングデバイス310などの他のコンピューティングデバイスと通信できるように構成される。例えば、装置100は、通信インターフェース230を介して、光の吸収および磁場の変化を外部プロセッサに通信して、血中酸素化率および流量を決定し、血中酸素化率と流量とに基づいて、目標領域を流れる酸素化された血液の体積流量を計算するように構成され得る。通信インターフェース230は、装置100が他のコンピューティングデバイスと通信することを可能にするための無線送信機(例えば、ブルートゥース(登録商標)送信機)または他の適切なハードウェアを含み得る。
【0022】
本実装形態では、装置100は、インジケータ240および電源250をさらに含む。インジケータ240は、一般に、酸素化された血液の体積流量に基づいて通知を生成するように構成される。インジケータ240は、通知を生成するためにインジケータ240を制御するように構成されたプロセッサ201と相互接続されている。通知には、聴覚信号と視覚信号との1つ以上が含まれ得る。例えば、インジケータ240は、LEDライト242-1、242-2、および242-3を含む。各LEDライト242は、異なる通知に相当し得て、異なる波長の(すなわち、異なる色の)光を放出するように構成し得る。特に、プロセッサ201は、以下でさらに説明するように、酸素化された血液の体積流量に関連するさまざまな異なる閾値条件の検出時に、LEDライト242を介して異なる信号を発するようにインジケータ240を制御するように構成され得る。他の実装形態では、インジケータ240はスピーカーを含み得て、信号は聴覚信号であり得る。例えば、聴覚信号は、異なる閾値条件に基づく3つの異なるトーン、メッセージ、または命令を含み得る。
【0023】
電源250は、光学センサ210および磁気センサ220に電気的に接続されていて、一般に、光学センサ210および磁気センサ220に電力を供給するように構成される。電源250はまた、電源250を制御するように構成されたプロセッサ201と相互接続されている。
【0024】
ここで
図4を参照すると、目標領域の酸素化された血液の体積流量を計算するための例示的な方法400が示されている。説明を容易にするために、方法400は、
図1および
図2に示されるように、装置100に関連して説明される。いくつかの実装形態では、方法400はまた、別の適切なシステムを使用して実装または実行され得る。
【0025】
ブロック405で、光学センサ210は、目標領域102内を流れる血液による光の吸収を検出する。特に、受信機214は、第1の波長λ1の光の第1の吸収および第2の波長λ2の光の第2の吸収を測定する。いくつかの実装形態では、第1および第2の吸収値は、さらなる処理のためにプロセッサ201に伝達される。他の実装形態では、第1および第2の吸収値は、さらなる処理のために、通信インターフェース230を介してコンピューティングデバイス310に通信される。
【0026】
ブロック410で、磁気センサ220は、目標領域102内の磁場の変化を検出する。磁場の変化はまた、さらなる処理のためにプロセッサ201またはコンピューティングデバイス310に伝達され得る。
【0027】
ブロック415で、目標領域102を流れる酸素化された血液の体積流量が計算される。特に、酸素化された血液の体積流量は、血中酸素化率と流量とに基づいて計算される。本実装形態では、ブロック415は、プロセッサ201によるその性能に関連して説明される。他の実装形態では、ブロック415は、コンピューティングデバイス310、特に、プロセッサ314、または他の適切なシステムによって実行され得る。
【0028】
プロセッサ201は、ブロック405で、光学センサ210によって検出された光の吸収に基づいて、目標領域102を流れる血液の血中酸素化率を決定するように構成される。血中酸素化率は、第1の波長λ1の光と第2の波長λ2の光の吸収度の比に基づいて決定され得る。特に、オキシヘモグロビン(すなわち、酸素化された血液)およびデオキシヘモグロビン(すなわち、脱酸素化された血液)の濃度は、波長λ1およびλ2の光の吸収、ならびにオキシヘモグロビンおよびデオキシヘモグロビンによる光の吸収を記述するための事前定義されたパラメータに基づいて計算され得る。次に、血中酸素化率は、酸素化された血液の濃度および脱酸素化された血液の濃度の合計に対する酸素化された血液の濃度の比率に基づいて決定され得る。
【0029】
プロセッサ201はさらに、ブロック410で、磁気センサ220によって検出された目標領域102内の磁場の変化に基づいて、目標領域102を流れる血液の流量を決定するように構成される。目標領域102を流れる血液の流量は、目標領域102で検出された磁場の変化に基づいて決定され得る。具体的には、磁気センサ220によって検出された信号のピークごとの曲線下の積分面積を使用し得る。オキシヘモグロビンは反磁性であり、つまり、磁場が適用されていない場合、正味の磁気モーメントはゼロを呈し、適用された外部場に反対の磁気モーメントを弱く発生するだけであることを意味する。対照的に、デオキシヘモグロビンは常磁性であり、つまり、外部磁場の適用が磁気モーメントをその磁場と一直線に並べることを意味する。したがって、デオキシヘモグロビンの存在は磁場を強化する(つまり、磁束密度を増加させる)。
【0030】
血管の断面の中央を中心とする正味の磁化ベクトルは、常磁性双極子の数と双極子の有効体積とに基づいて定義し得る。正味の磁化ベクトルの値は、それが血流に応じて変化するので、時間の関数であり、磁束密度の変化に関連する信号の振幅は、血流の平均速度に血管の断面積を乗算することによって与えられる、血管を通る血液の体積流量に相当する。血流の速度に血管の断面積を掛けると、血液の体積流量が得られる。検出器224によって検出された信号は、正味磁化ベクトルの時間的変動に比例する。特に、信号の振幅は、正味磁化ベクトルの値および検出器224から血管までの距離に依存する。したがって、検出器224の幾何学的構成を使用して、血管の位置を特定し得る。
【0031】
例えば、
図5Aは、血管の方向にほぼ垂直な平面502内に間隔を置いて配置された磁気検出器224-1、224-2および第3の磁気検出器224-3、ならびに均一な磁場を提供する磁石222-1および222-2を示す。これにより、
図5Bに示される幾何学的配置が得られる。値Mは正味の磁化ベクトルを表す。値r
1、r
2およびr
3は、血管の中心から各検出器224までのそれぞれの距離を表す。値dは、検出器224間の間隔を表し、値sおよびlは、第1の検出器224-1に対する血管の中心のx座標およびy座標を表す。距離sおよびlは、磁気検出器224によって検出された変化の大きさ(振幅)、および検出器224と血管との間の幾何学的関係に基づいて決定し得る。
【0032】
血管の配置を決定した後、磁石222によって生成される磁場の大きさは、血管の深さに基づいて決定し得る。例えば、血管の深さと磁場の大きさとの間の関係は、実験データに基づいて事前に保存され得る。したがって、装置100は、決定された血管の深さに基づいて磁場の大きさを取得し得る。最後に、測定された信号強度を磁場の大きさと相関させて、存在する常磁性の量の定量的測定値を取得し得て、これは、デオキシヘモグロビンの体積流量に相当する。
【0033】
いくつかの実装形態では、目標領域102は患者の首であり得て、装置100は頸動脈上に配置され得る。したがって、脱酸素化された血液の血中酸素化率および体積流量を使用して、全体の体積流量および酸素化された血液の体積流量を計算し得る。逆に、装置100を頸静脈上に配置して、(主に脱酸素化された血液を含む頸静脈に基づいて)全体の体積流量を決定し、全体の体積流量および血中酸素化率に基づいて、酸素化された血液の体積流量を計算し得る。
【0034】
いくつかの実装形態では、プロセッサ201は、フーリエ解析を使用して、頸動脈および隣接する内頸静脈から常磁性信号を分離するようにさらに構成され得る。特に、高周波を使用して頸動脈信号を抽出し得る一方、低周波は頸静脈を通る流れに対応する。
【0035】
ブロック415で、プロセッサ201は、インジケータ240を制御して、酸素化された血液の計算された体積流量に基づいて通知を生成するようにさらに構成され得る。例えば、プロセッサ201は、
図6に示される例示的な方法600による通知を生成し得る。
【0036】
ブロック605で、プロセッサ201は、酸素化された血液の体積流量が第1の閾値を超えているかどうかを決定するように構成される。例えば、第1の閾値は、酸素化された血液の所望の最小量を表し得る。決定が肯定的である場合、プロセッサ201は、ブロック610に進むように構成される。ブロック610で、プロセッサ201は、LEDライト242-1を制御して第1の信号を発するように構成される。例えば、第1の信号は、緑色光、または酸素化された血液の所望の最小量が達成されていることを示す聴覚信号であり得る。
【0037】
ブロック605での決定が否定的である場合、プロセッサ201は、ブロック615に進むように構成される。ブロック615で、プロセッサ201は、流量が第2の閾値を下回っているかどうかを決定するように構成される。例えば、第2の閾値は、所望の最小流量を表し得る。目標領域の血液の流量が第2の閾値を下回る場合、プロセッサ201は、ブロック620に進むように構成される。
【0038】
ブロック620で、プロセッサ201は、LEDライト242-2を制御して第2の信号を発するように構成される。例えば、第2の信号は、酸素化された血液の体積流量を増加させるために、目標領域の血液の流量を増加させる(例えば、CPR中の圧迫の速度または深さを増加させることによって)必要があることを示す、橙色光または聴覚信号であり得る。
【0039】
ブロック615で、プロセッサ201が、目標領域の血液の流量が第2の閾値を超えていると決定した場合、プロセッサ201は、ブロック625に進むように構成される。ブロック625で、プロセッサ201は、LEDライト242-3を制御して第3の信号を発するように構成される。例えば、第3の信号は、酸素化された血液の体積流量を増加させるために、目標領域の血液の血中酸素化率を増加させる(例えば、CPR中に酸素を増加させるためにベンチレーションを提供することによって)必要があることを示す、赤色光または聴覚信号であり得る。
【0040】
本開示は、酸素化された血液の体積流量を計算するための非侵襲的な装置および方法を提供する。この装置は、例えば、CPR中に首を流れる酸素の量を決定するために使用され得る。特に、首を流れる酸素化された血液の体積流量は、脳に流れる酸素化された血液の量の良い指標を提供する。特に、脳の血流の約80%は頸動脈を介して提供され、したがって、頸動脈内の酸素化された血液の測定は、CPR中に達成された脳灌流の代理測定を提供する。
【0041】
いくつかの実装形態では、装置自体はコンパクトで電池式であり得て、外部電源および解釈のための追加のデバイスを必要としない。特に、装置は、酸素化された血液の体積流量に基づいて通知を生成するように構成された視覚的インジケータなどのインジケータを含み得る。例えば、装置は、酸素化された血液の体積流量が脳に酸素を供給するのに十分であるときに、第1の信号を発し得る。装置は、酸素化された血液の体積流量および流量が低いときに、第2の信号を発し得て、これは、酸素化された血液の体積流量を増加させるために流量を増加させる必要があることを示す。例えば、装置は、圧迫の増加した速度または深さが必要であることを救助者に示すためのインジケータを含み得る。他の実装形態では、第2の信号は、酸素化された血液の体積流量が低く、血中酸素化率が高いときに発し得て、これは、流量を酸素化された血液の体積流量に増やす必要があることを同様に示す。装置は、酸素化された血液の体積流量が低く、流量が多い場合に第3の信号を発し得て、これは、血中酸素化率を増加させる必要があることを示す。例えば、装置は、血液に酸素を供給し、したがって血中酸素化率を増加させるために換気が必要であることを救助者に示すためのインジケータを含み得る。他の実装形態では、第3の信号は、酸素化された血液の体積流量および血中酸素化率が低いときに発し得る。
【0042】
したがって、この装置は、CPR中の酸素化された血液の体積流量のリアルタイムモニタリングを提供する。さらに、いくつかの実装形態では、酸素化された血液の体積流量の計算およびインジケータは、装置自体に提供される。したがって、この装置は、CPR中に干渉したりさもなければ切断されたりする可能性のあるワイヤやその他の接続を必要とせずに、救助者にリアルタイムのフィードバックを提供するスタンドアロンの補助医療機器として使用し得る。
【0043】
さらに、いくつかの実装形態では、この装置は、データをワイヤレスに(例えば、ブルートゥース(登録商標)、または別の適切なワイヤレス通信プロトコルを介して)外部コンピューティングデバイスに送信するように構成された通信インターフェースを含む。いくつかの実装形態では、酸素化された血液の体積流量の計算は、装置自体に提供され得る。したがって、装置は、表示またはさらなる処理のために、結果を外部コンピューティングデバイスに伝達するように構成され得る。さらに、いくつかの実装形態では、装置は、酸素化された血液の体積流量の計算、表示、およびさらなる処理のために、検出された光の吸収および磁場の変化を外部コンピューティングデバイスに伝達するように構成され得る。例えば、外部コンピューティングデバイスは、血中酸素化率、流量、および酸素化された血液の体積流量の値を表示し得る。聴覚的通知または視覚的通知に加えてまたはその代わりに、いくつかの実装形態では、換気サポートマシン、胸骨圧迫マシン、または他のCPR支援デバイスなどの他のデバイスにそれらの操作を可能にするために、酸素化された血液の体積流量のリアルタイム測定を提供し得る。すなわち、CPR支援デバイスの操作パラメータは、CPRを実行する際の支援デバイスの有効性を高めるために、酸素化された血液の体積流量に応答してリアルタイムで変更され得る。
【0044】
さらなる実装形態では、装置は、脳または他の主要な器官への酸素化された血液の体積流量を追跡するために、外科的処置などの他の医学的処置中に使用され得る。例えば、この装置は、頭蓋内圧(ICP)の増加が懸念される神経集中治療室の患者における脳血流(CBF)の代理測定として使用し得る。具体的には、ICPが増加すると、CBFは減少する。したがって、この装置は、頭蓋内圧亢進症の発症が臨床的に懸念される患者(頭部外傷患者など)のCBFの変化(減少)に対してリアルタイムの継続的監視を提供することにより、非侵襲的に使用され得る。したがって、脳実質へのプローブの挿入を伴う穿頭孔などの侵襲的手段を回避し得る。装置はまた、急性虚血性脳卒中および頸動脈狭窄の検出およびモニタリングに使用するために、右頸動脈および左頸動脈から脳への酸素化された血液の体積流量の比を評価し得る。いくつかの実装形態では、装置はまた、例えば、透析瘻の在宅モニタとしての患者による、病院環境の外での使用に適したフィードバックを提供し得る。
【0045】
他の例では、装置は、末梢血行再建術中の組織酸素化を監視するために使用され得る。
【0046】
特許請求の範囲は、上記の実施例に記載された実施形態によって限定されるべきではなく、全体としての説明と一致する最も広い解釈を与えられるべきである。