(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】車両用赤外線灯具システム、車両用赤外線センサシステム、車両用赤外線センサ内蔵灯具および光学センサ内蔵灯具
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/24 20060101AFI20240603BHJP
B60Q 1/14 20060101ALI20240603BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20240603BHJP
F21V 9/00 20180101ALI20240603BHJP
【FI】
B60Q1/24 Z
B60Q1/14 A
F21V23/00 115
F21V9/00 300
(21)【出願番号】P 2021546654
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2020034656
(87)【国際公開番号】W WO2021054276
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2019170540
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019170541
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019183066
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019183067
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 光之
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-127924(JP,A)
【文献】特開2004-051057(JP,A)
【文献】特開2011-040174(JP,A)
【文献】特開2009-018726(JP,A)
【文献】特開2018-156862(JP,A)
【文献】特開2011-157022(JP,A)
【文献】国際公開第2014/024385(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/144144(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/051906(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/24
B60Q 1/14
F21V 23/00
F21V 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線カメラが搭載された車両に搭載される車両用赤外線灯具システムであって、
赤外線を出射する赤外線光源と、
前記赤外線光源から出射される赤外線を灯具前方へ出射させる光学部材と、
対向車または先行車の位置情報を取得する他車両位置取得部と、
前記他車両位置取得部が取得した前記対向車または前記先行車の位置情報に基づき、前記対向車または前記先行車の少なくとも一部に赤外線の照射強度が他の領域の照射強度より低い減光領域が形成されるように、前記赤外線光源の点灯状態を制御する制御部と、
を備える、車両用赤外線灯具システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記他車両位置取得部から前記対向車の右端部および左端部の位置情報を取得し、前記制御部は前記減光領域の境界線を前記右端部よりも左方、および、前記左端部よりも右方に設定する、請求項1に記載の車両用赤外線灯具システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記他車両位置取得部から前記対向車の車幅方向の中央位置を取得し、取得した前記中央位置から右方および左方に所定距離離れた位置に前記減光領域の境界線を設定する、請求項1に記載の車両用赤外線灯具システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記他車両位置取得部から前記先行車の位置情報を取得したときに、前記先行車の少なくとも一部に前記減光領域が形成されるように
前記赤外線光源を制御し、
前記制御部は、前記他車両位置取得部から前記対向車の位置情報を取得したときに、前記対向車の少なくとも一部に赤外線が照射されない遮光領域が形成されるよう
に前記赤外線光源を制御する、請求項1に記載の車両用赤外線灯具システム。
【請求項5】
前記先行車と自車両との距離を取得する距離取得部を有し、
前記制御部は、前記距離取得部が取得した前記距離に応じて前記赤外線光源の減光度合いを制御する、請求項4に記載の車両用赤外線灯具システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記距離取得部が取得した距離が近いほど前記赤外線光源の前記減光度合いを大きくする、請求項5に記載の車両用赤外線灯具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両に用いられる車両用赤外線灯具システム、車両用赤外線センサシステム、車両用赤外線センサ内蔵灯具および光学センサ内蔵灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などにより暗視装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ある車両が赤外線により得られる画像を鮮明にしようとして赤外線を照射したりあるいは照射する赤外線の強度を高めることが行われる。ところが対向車や前走車などの他車両が自車両の前方に位置している場合、この他車両に赤外線を照射してしまうと強い強度で反射されてしまい、自車両の赤外線カメラの画像にハレーションが生じてしまう。このようにハレーションが生じてしまう場合には、赤外線カメラの感度を減じることにより、ハレーションの生じない画像を得ることができる。しかしながら、この場合に得られた赤外線カメラからの画像には、歩行者など反射強度の低い物体が撮影されていないことがある。
本発明は、赤外線カメラの画像にハレーションが生じることを抑制しつつ赤外線の反射強度の低い物体も検出可能な車両用赤外線灯具システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係る車両用赤外線灯具システムは、
赤外線カメラが搭載された車両に搭載される車両用赤外線灯具システムであって、
赤外線を出射する赤外線光源と、
前記赤外線光源から出射される赤外線を灯具前方へ出射させる光学部材と、
対向車または先行車他車両の位置情報を取得する他車両位置取得部と、
前記他車両位置取得部が取得した前記対向車または前記先行車の位置情報に基づき、前記対向車または前記先行車の少なくとも一部に赤外線の照射強度が他の領域の照射強度より低い減光領域が形成されるように、前記赤外線光源の点灯状態を制御する制御部と、備える。
【0006】
本発明によれば、赤外線カメラの画像にハレーションが生じることを抑制しつつ赤外線の反射強度の低い物体も検出可能な車両用赤外線灯具システムを提供することができる。
【0007】
本発明の一側面に係る車両用赤外線センサシステムは、
赤外線カメラと、赤外線センサとが搭載された車両に用いられる車両用赤外線センサシステムであって、
赤外線光源と、
前記赤外線光源から出射した赤外線を灯具前方へ出射させる光学部材と、
前記赤外線光源の点灯状態を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記赤外線光源を、前記赤外線カメラで撮像するのに適した第一モードと、前記赤外線センサでセンシングするのに適した第二モードとで駆動可能であり、
前記制御部は、前記赤外線センサの出力に応じて、前記第一モードによる駆動時に、赤外線の照射強度が他の領域よりも低い減光領域を設定する。
【0008】
本発明によれば、赤外線カメラと赤外線センサに適した光を共通の光源により出射可能な車両用赤外線センサシステムを提供することができる。
【0009】
本発明の一側面に係る車両用赤外線センサ内蔵灯具は、
可視光を出射する可視光光源を有する可視光ユニットと、
可視光を前方へ出射させる投影レンズと、
反射型の赤外線カットフィルタと、
赤外線を検出する赤外線センサと、を有し、
前記赤外線カットフィルタが、前記可視光光源と前記投影レンズの間に配置され、
前記赤外線センサが、前記赤外線カットフィルタで折り返される前記投影レンズの仮想焦点付近に配置され、
前記可視光光源から出射された可視光は前記赤外線カットフィルタを透過して前記投影レンズに入射し、灯具前方から前記投影レンズを介して前記赤外線カットフィルタへ入射した赤外線は前記赤外線センサへ向けて反射されるように構成されている。
【0010】
本発明によれば、車両の大型化・重量化を招きにくい、赤外線センサを有する車両用赤外線センサ内蔵灯具を提供することができる。
【0011】
本発明の一側面に係る光学センサ内蔵灯具は、
第一光源と、
光学センサと
前記第一光源が出射する光のピーク波長とは異なるピーク波長を有し、前記光学センサの受光感度の高い波長の光を出射する第二光源と、
前記第一光源から出射された光、および、前記第二光源から出射された光を灯具前方へ走査して出射させる走査部と、
前記走査部から出射された光を灯具前方へ投影する投影レンズと、
前記第一光源が配置され、前記第一光源への給電機能を有する第一基板と、
前記第二光源が配置され、前記第二光源への給電機能を有する第二基板と、を有し、
前記第二基板は、前記走査部から見て前記第一基板の後方に設けられ、
前記第一基板には、前記第二光源から出射された光を前記走査部へ透過させる空隙部が設けられている。
【0012】
本発明によれば、大型化が抑制され、車両への搭載性が高められた光学センサ内蔵灯具が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、赤外線カメラの画像にハレーションが生じることを抑制しつつ赤外線の反射強度の低い物体も検出可能な車両用赤外線灯具システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る車両用赤外線灯具システムが組み込まれる車両システムのブロック図である。
【
図2】車両用灯具に搭載されるランプユニットの内部構成を示す模式図である。
【
図3】車両用赤外線灯具システムが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】他車両に照射される配光パターンの一例を示す図である。
【
図5】他車両に照射される配光パターンにおいてマージンを取って形成された減光領域の一例を示す図である。
【
図6】車両用赤外線灯具システムが実行する処理の別の例を示すフローチャートである。
【
図7】前走車と対向車とに照射される配光パターンの一例を示す図である。
【
図8】本発明の第二実施形態に係る車両用赤外線センサシステムが組み込まれる車両システムのブロック図である。
【
図9】車両用灯具に搭載されるランプユニットの内部構成を示す模式図である。
【
図10】ランユニットに搭載される赤外線光源の正面図である。
【
図11】ランプユニットの赤外線の照射可能範囲を示す模式図である。
【
図12】センシングモード時の配光パターンの一例を示す模式図である。
【
図13】撮像モード時の配光パターンの一例を示す模式図である。
【
図14】赤外線光源の点灯タイミングと赤外線カメラの露光タイミングを示すタイムチャートである。
【
図15】本発明の第三実施形態に係る車両用赤外線センサ内蔵灯具が組み込まれる車両システムのブロック図である。
【
図16】車両用赤外線センサ内蔵灯具の内部構成を示す模式図である。
【
図17】車両用赤外線センサ内蔵灯具に搭載される可視光光源の正面図である。
【
図18】赤外線配光パターンの一例を示す模式図である。
【
図19】可視光配光パターンの一例を示す模式図である。
【
図20】時刻tに赤外線カメラで撮像された画像の一例を示す図である。
【
図21】時刻t+1に照射される赤外線配光パターンの一例を示す模式図である。
【
図22】本発明の第四実施形態に係る光学センサ内蔵灯具が組み込まれる車両システムのブロック図である。
【
図23】光学センサ内蔵灯具の内部構成を示す模式図である。
【
図25】光学センサ内蔵灯具から出射される各々の光の照射範囲を示す模式図である。
【
図26】制御部が可視光LEDを制御することにより得られる配光パターンの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
<第一実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る車両用赤外線灯具システム100が組み込まれる車両システム2のブロック図である。当該車両システム2が搭載される車両1は、自動運転モードで走行可能な車両(自動車)である。
図1に示すように、車両システム2は、車両制御部3と、センサ5と、カメラ6と、レーダ7と、HMI(Human Machine Interface)8と、GPS(Global Positioning System)9と、無線通信部10と、地図情報記憶部11とを備えている。また、車両システム2は、ステアリングアクチュエータ12と、ステアリング装置13と、ブレーキアクチュエータ14と、ブレーキ装置15と、アクセルアクチュエータ16と、アクセル装置17とを備えている。さらに、車両システム2は、車両用赤外線灯具システム100を備えている。
【0017】
車両制御部3は、車両1の走行を制御するように構成されている。車両制御部3は、例えば、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)により構成されている。電子制御ユニットは、プロセッサとメモリを含むマイクロコントローラと、その他電子回路(例えば、トランジスタ等)を含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)及び/又はGPU(Graphics Processing Unit)である。メモリは、各種車両制御プログラム(例えば、自動運転用の人工知能(AI)プログラム等)が記憶されたROM(Read Only Memory)と、各種車両制御データが一時的に記憶されるRAM(Random Access Memory)を含む。プロセッサは、ROMに記憶された各種車両制御プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されている。
【0018】
センサ5は、加速度センサ、速度センサ、ジャイロセンサ等を備える。センサ5は、車両1の走行状態を検出して、走行状態情報を車両制御部3に出力するように構成されている。センサ5は、運転者が運転席に座っているかどうかを検出する着座センサ、運転者の顔の方向を検出する顔向きセンサ、外部天候状態を検出する外部天候センサ及び車内に人がいるかどうかを検出する人感センサ等をさらに備えてもよい。さらに、センサ5は、車両1の周辺環境の照度を検出する照度センサを備えてもよい。
【0019】
カメラ(車載カメラ)6は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(相補型MOS)等の撮像素子を含むカメラである。カメラ6の撮像は、車両制御部3から送信される信号に基づいて制御される。カメラ6は受光した可視光に基づいて画像を生成可能である。カメラ6は赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。
【0020】
レーダ7は、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ又はレーザーレーダ等である。レーダ7は、LiDAR(Light Detection and RangingまたはLaser Imaging Detection and Ranging)を備えていてもよい。LiDARは、一般にその前方に非可視光を出射し、出射光と戻り光とに基づいて、物体までの距離、物体の形状、物体の材質などの情報を取得するセンサである。カメラ6とレーダ7(センサの一例)は、車両1の周辺環境(他車、歩行者、道路形状、交通標識、障害物等)を検出し、周辺環境情報を車両制御部3に出力するように構成されている。
【0021】
HMI8は、運転者からの入力操作を受付ける入力部と、走行情報等を運転者に向けて出力する出力部とから構成される。入力部は、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、車両1の運転モードを切替える運転モード切替スイッチ等を含む。出力部は、各種走行情報を表示するディスプレイである。
【0022】
GPS9は、車両1の現在位置情報を取得し、当該取得された現在位置情報を車両制御部3に出力するように構成されている。無線通信部10は、車両1の周囲にいる他車に関する情報(例えば、走行情報)を他車から受信すると共に、車両1に関する情報(例えば、走行情報)を他車に送信するように構成されている(車車間通信)。また、無線通信部10は、信号機や標識灯等のインフラ設備からインフラ情報を受信すると共に、車両1の走行情報をインフラ設備に送信するように構成されている(路車間通信)。地図情報記憶部11は、地図情報が記憶されたハードディスクドライブ等の外部記憶装置であって、地図情報を車両制御部3に出力するように構成されている。
【0023】
車両1が自動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、走行状態情報、周辺環境情報、現在位置情報、地図情報等に基づいて、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号のうち少なくとも一つを自動的に生成する。ステアリングアクチュエータ12は、ステアリング制御信号を車両制御部3から受信して、受信したステアリング制御信号に基づいてステアリング装置13を制御するように構成されている。ブレーキアクチュエータ14は、ブレーキ制御信号を車両制御部3から受信して、受信したブレーキ制御信号に基づいてブレーキ装置15を制御するように構成されている。アクセルアクチュエータ16は、アクセル制御信号を車両制御部3から受信して、受信したアクセル制御信号に基づいてアクセル装置17を制御するように構成されている。このように、自動運転モードでは、車両1の走行は車両システム2により自動制御される。
【0024】
一方、車両1が手動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、アクセルペダル、ブレーキペダル及びステアリングホイールに対する運転者の手動操作に従って、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号を生成する。このように、手動運転モードでは、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号が運転者の手動操作によって生成されるので、車両1の走行は運転者により制御される。
【0025】
次に、車両1の運転モードについて説明する。運転モードは、自動運転モードと手動運転モードとからなる。自動運転モードは、完全自動運転モードと、高度運転支援モードと、運転支援モードとからなる。完全自動運転モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御の全ての走行制御を自動的に行うと共に、運転者は車両1を運転できる状態にはない。高度運転支援モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御の全ての走行制御を自動的に行うと共に、運転者は車両1を運転できる状態にはあるものの車両1を運転しない。運転支援モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御のうち一部の走行制御を自動的に行うと共に、車両システム2の運転支援の下で運転者が車両1を運転する。一方、手動運転モードでは、車両システム2が走行制御を自動的に行わないと共に、車両システム2の運転支援なしに運転者が車両1を運転する。
【0026】
また、車両1の運転モードは、運転モード切替スイッチを操作することで切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、運転モード切替スイッチに対する運転者の操作に応じて、車両1の運転モードを4つの運転モード(完全自動運転モード、高度運転支援モード、運転支援モード、手動運転モード)の間で切り替える。また、車両1の運転モードは、自動運転車が走行可能である走行可能区間や自動運転車の走行が禁止されている走行禁止区間についての情報または外部天候状態についての情報に基づいて自動的に切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、これらの情報に基づいて車両1の運転モードを切り替える。さらに、車両1の運転モードは、着座センサや顔向きセンサ等を用いることで自動的に切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、着座センサや顔向きセンサからの出力信号に基づいて、車両1の運転モードを切り替える。
【0027】
車両用赤外線灯具システム100は、車両用赤外線灯具4と、車両用赤外線灯具4に接続される他車両位置取得部102および距離取得部103と、を備えている。
【0028】
車両用赤外線灯具4は、赤外線を照射可能なランプユニット30と、車両用赤外線灯具4の各部を制御する制御部101と、を有している。車両用赤外線灯具4は車両1の前部に搭載される。
【0029】
他車両位置取得部102は、他車両(例えば、前走車や対向車等を含む)の位置情報を取得する取得部である。他車両位置取得部102は、例えば、車両1に搭載される赤外線カメラや可視光カメラなど(車載カメラ6の一例)によって撮像された画像に基づいて他車両の位置情報を取得する。また、他車両位置取得部102は、例えば、LiDAR(レーダ7の一例)によって取得された情報に基づいて他車両の位置情報を取得する。
【0030】
距離取得部103は、他車両と自車両1との距離を取得する取得部である。距離取得部103は、例えば、LiDARによって取得された情報に基づいて他車両との距離情報を取得する。また、距離取得部103は、例えば、車載カメラ6によって撮像された画像を解析処理することによって他車両との距離情報を取得する。
【0031】
他車両位置取得部102および距離取得部103は、車両用赤外線灯具4の制御部101に接続されている。ランプユニット30、他車両位置取得部102および距離取得部103は、制御部101によって制御される。なお、他車両位置取得部102と距離取得部103は、本実施形態において制御部101から独立した構成とされているが、例えば制御部101の処理を実行する処理部として制御部101に含まれる構成とされてもよい。
【0032】
図2は、車両用赤外線灯具4に搭載されるランプユニット30の内部構成を示す模式図である。
図2に示すように、ランプユニット30は、ハウジング30aと、赤外線光源32と、回転リフレクタ33(光学部材の一例)と、赤外線カメラ34と、レンズ部品35と、遮光壁36と、を有している。
【0033】
ハウジング30aの内部は、遮光壁36によって第一灯室37と第二灯室38の2つの空間に仕切られている。赤外線光源32と、回転リフレクタ33とは第一灯室37に設けられている。赤外線カメラ34は第二灯室38に設けられている。
【0034】
赤外線光源32は、赤外線を出射するLED(Light Emitting Diode)で構成されている。赤外線光源32は、赤外線を出射するLD(Laser Diode)で構成されていてもよい。赤外線光源32によって広い範囲を照射することが求められる場合には出射光の拡散度合いが大きいLEDを用いることが好ましい。赤外線光源32によって他車両等のセンシングが求められる場合には出射光の拡散度合いが小さいLDを用いることが好ましい。赤外線光源32は、基板39に搭載されている。赤外線光源32は、例えば、3つの赤外線光源32が基板39上に鉛直方向に延びる仮想的な直線の上に複数列並べて設けられている。赤外線光源32は、列ごとにLEDまたはLDを搭載するようにしてもよい。基板39に配列された赤外線光源32の鉛直方向および水平方向における点灯タイミングは制御部101によって制御される。
【0035】
回転リフレクタ33は、赤外線光源32から出射された赤外線を走査して灯具前方へ出射する走査手段である。回転リフレクタ33は、回転軸線R回りに回転する。回転リフレクタ33は、回転軸線R回りに延びる軸部33aと、軸部33aから径方向に延びる2枚のブレード33bを備えている。ブレード33bの表面が反射面とされている。この反射面は周方向に徐々に回転軸線Rに対する角度が変化する捩られた形状とされている。具体的には、赤外線光源32から出射された赤外線が回転リフレクタ33の反射面で反射されるときに、反射されて出射される方向が、左端から右端まで徐々に変化するような形状とされている。これにより、ランプユニット30は、所定の範囲の領域に赤外線光源32からの光を走査して出射させることができる。例えば、ランプユニット30は、
図4に示されるような照射可能範囲P1に赤外線を照射させることができる。
【0036】
ハウジング30aの前方には、レンズ部品35が設けられている。レンズ部品35は、第一レンズ要素35aと、第二レンズ要素35bを有している。第一レンズ要素35aは、第一灯室37の前方に配置されている。第一レンズ要素35aには、赤外線光源32から出射し回転リフレクタ33で反射された光が入射する。第一レンズ要素35aは、当該入射した赤外線光源32の光を灯具前方へ出射させる。回転リフレクタ33の反射点は、第一レンズ要素35aの焦点近傍に配置されている。第二レンズ要素35bは、第二灯室38の前方に配置されている。第二レンズ要素35bは、灯具前方からの光、例えば、他車両等の対象物で反射された反射光を集めて、集めた光を赤外線カメラ34に導く。赤外線カメラ34の受光面は、第二レンズ要素35bの焦点近傍に配置されている。第一レンズ要素35aの後方焦点F1の距離は、第二レンズ要素35bの後方焦点F2の距離よりも短い。第一レンズ要素35aと第二レンズ要素35bは、単一のレンズ部品35として一体的に形成されている。
【0037】
赤外線カメラ34は、赤外線光源32から出射される赤外線のピーク波長に最も高い感度を有するカメラである。赤外線カメラ34は、受光した赤外線の強さに応じた信号を出力する。赤外線カメラ34は、赤外線光源32から灯具前方に出射された赤外線の反射光に応じた画像を取得可能である。赤外線カメラ34が取得した画像は制御部101に送信される。
【0038】
遮光壁36は、第一レンズ要素35aの光軸と第二レンズ要素35bの光軸との間に設けられている。例えば、遮光壁36は、赤外線光源32から出射され第一レンズ要素35aに入射せずに赤外線カメラ34に入射しようとする光を遮る位置に設けられている。
【0039】
図3および
図4を参照して、車両用赤外線灯具システム100の動作例について説明する。
図3は、車両用赤外線灯具システム100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図4は、車両1のランプユニット30から他車両に向けて照射される配光パターンの一例を示す図である。
【0040】
車両1の走行中において、車両用赤外線灯具システム100の制御部101は、通常状態において、車両用赤外線灯具4が赤外線を照射可能な最大範囲(以降、照射可能範囲と呼ぶ)P1の全ての領域に通常領域を設定している。車両用赤外線灯具システム100の制御部101は、通常領域に対応する領域を照射する赤外線光源32に例えば第一電流値の電流を供給し、ある照度で赤外線を照射させている。
【0041】
車両1が走行を開始してすぐは、上述したように照射可能範囲P1の全ての領域に通常領域が設定され、照射可能範囲P1に均一の照度で赤外線が照射されている。この状態において、自車両1の前方の画像が赤外線カメラ34によって撮像される。赤外線カメラ34によって撮像された画像は、制御部101に送信される。
【0042】
制御部101は、赤外線カメラ34によって撮像された画像に基づいて、撮像された画像中に他車両が存在しているか否か判定する(ステップS01)。制御部101は、例えば、赤外線カメラ34が取得した画像のうち、輝度が所定値以上になった画素に他車両が存在していると判定し、この画素に対応する位置を他車両の位置として特定する。また、制御部101は、赤外線カメラ34によって撮像された画像において自車両1の基準点から見た対象物のなす方位角を参照して他車両の位置を特定してもよい。あるいは、赤外線カメラ34によって撮像された画像において対象物が占めている複数の画素の領域に基づいて他車両の位置を特定してもよい。
【0043】
撮像された画像中に他車両が存在しないと判定された場合には(ステップS01:No)、制御部101は、照射可能範囲P1の全ての領域に通常領域を維持した状態で処理を終了する。
【0044】
一方、撮像された画像中に他車両が存在すると判定された場合には(ステップS01:Yes)、制御部101は、検出された他車両に関する情報と共に、赤外線カメラ34によって撮像された画像を他車両位置取得部102と距離取得部103に送信する。
【0045】
本例では、
図4に示すように、自車両1の前方に他車両Aが存在する画像が赤外線カメラ34によって撮像されたとする。そこで制御部101は、上記ステップS01において他車両を検出する。
【0046】
他車両位置取得部102は、赤外線カメラ34によって撮像された画像に基づいて、検出された他車両Aの左端部の位置情報および右端部の位置情報を取得する(ステップS02)。取得された他車両の位置情報は、他車両位置取得部102から制御部101に送信される。
【0047】
距離取得部103は、赤外線カメラ34によって撮像された画像に基づいて、検出された他車両Aと自車両1との距離情報を取得する(ステップS03)。取得された他車両Aの距離情報は、距離取得部103から制御部101に送信される。
【0048】
制御部101は、他車両位置取得部102によって取得された他車両Aの位置情報、および距離取得部103によって取得された他車両Aの距離情報に基づいて、他車両Aの少なくとも一部の領域を、赤外線の照射強度が他の領域に照射される赤外線の照射強度よりも低い減光領域に設定する(ステップS04)。本例の減光領域は、上記通常領域よりも赤外線の照射強度が低い領域を意味する。制御部101は、赤外線光源32に上記第一電流値よりも小さい第二電流値の電流を供給し、通常領域の照度よりも低い照度で赤外線で減光領域を照射する。
【0049】
例えば、制御部101は、他車両位置取得部102から取得した他車両Aの右端部および左端部の位置情報に基づいて、
図4に示すように、減光領域Q1の右境界線41を他車両Aの右端部43よりも左方に設定し、減光領域Q1の左境界線42を他車両Aの左端部44よりも右方に設定する。すなわち、減光領域Q1の幅W1は、他車両Aの幅W2よりも狭い幅に設定される。また、減光領域Q1は、他車両Aの車幅方向における中央部に設定される。また、制御部101は、例えば、他車両位置取得部102から取得した他車両Aの右端部および左端部の位置情報に基づいて他車両Aの車幅方向における中央位置45を特定し、減光領域Q1の右境界線41を中央位置45と他車両Aの右端部との間に設定し、減光領域Q1の左境界線42を中央位置45と他車両Aの左端部との間に設定してもよい。
【0050】
また、例えば、制御部101は、距離取得部103から取得した他車両Aと自車両1との距離情報に基づいて、自車両1から他車両Aまでの距離に応じた赤外線光源32の減光度合いを設定するようにしてもよい。具体的には、自車両1から他車両Aまでの距離が近いほど赤外線光源32に供給される第二電流値を小さくして、減光領域Q1に対する赤外線光源32の減光度合いを大きくする。これとは反対に、自車両1から他車両Aまでの距離が遠いほど赤外線光源32に供給される第二電流値を大きくして、減光領域Q1に対する赤外線光源32の減光度合いを小さくする。
【0051】
なお、制御部101は、照射可能範囲P1内のうち、減光領域Q1以外の領域を通常領域Sとして設定する。
【0052】
このように上記実施形態に係る車両用赤外線灯具システム100は、赤外線の反射強度が高い他車両が位置する領域に減光領域Q1が形成されるように構成されている。このため、照射可能範囲P1内に存在する他車両に対して弱い照度の赤外線を照射することが可能であり、当該赤外線の他車両からの反射強度を弱くすることができる。したがって、他車両から反射された赤外線によって自車両1の赤外線カメラ34の画像にハレーションが生じることを抑制することができる。また、車両用赤外線灯具システム100は、減光領域Q1に設定した領域以外の領域には通常領域Sを設定しているので、当該通常領域Sには減光領域Q1よりも高い照度の赤外線が照射される。このため、例えば、
図4に示すように、他車両Aの横にいる歩行者Bや他車両Aの後にいる歩行者Cなど、他車両の近傍にいる赤外線の反射強度の低い物体を赤外線カメラ34によって検出しやすくなる。
【0053】
ところで、自車両の前方を可視光で照射する車両用前照灯においては、他車両のドライバーに眩しさを与えないようにするために、他車両の位置を検知してその範囲に可視光の照度が抑制された減光領域を設定することが知られている。
図5は、光源が可視光を出射する場合において、他車両Aに設定される減光領域Q2の一例を示す図である。
図5に示すように、可視光を照射する場合には他車両Aのドライバーに眩しさを与えないために、減光領域Q2の右境界線51が他車両Aの右端部43よりも右方に設定され、左境界線52が他車両Aの左端部44よりも左方に設定されている。すなわち、可視光を照射する場合の減光領域Q2は、他車両Aの領域に対してマージンを設けた領域に設定されている。減光領域Q2の幅W3は、他車両Aの幅W2よりも広い幅に設定されている。この場合、他車両Aのドライバーに対する眩しさを抑制することはできるが、他車両Aの領域に関する情報と、他車両Aの近傍にいる歩行者B,Cに関する情報を取得しにくい。
【0054】
これに対して、車両用赤外線灯具システム100は、前方を照射する光源が赤外線光源32で構成されている。また、
図4に示すように、減光領域Q1が他車両Aの車幅方向における内側(中央部)に形成されている。赤外線光源の光は、赤外線であるため可視光とは異なり、他車両のドライバーに眩しさを与えない。また、赤外線カメラが車両に搭載される場合には、車両の幅方向中央に搭載されることが多い。したがって、この構成によれば、他車両Aのドライバーに眩しさを与えないようにすることができるとともに、他車両Aに赤外線カメラが搭載されていても当該赤外線カメラにグレアを与えにくくすることができる。また、減光領域Q1以外の領域には通常領域Sが設定されているので、他車両Aの中央部を除く左端部および右端部に関する情報を自車両1の赤外線カメラ34で取得することができる。
【0055】
また、車両用赤外線灯具システム100によれば、自車両1から他車両Aまでの距離に応じて、赤外線光源32から減光領域Q1へ照射される赤外線の減光度合いが変化されるように構成されている。このため、他車両Aまでの距離に適した赤外線の照射強度により、全ての他車両に関する情報を正確に取得することができる。
【0056】
(変形例)
図6および
図7を参照して、車両用赤外線灯具システム100の別の動作例について説明する。
図6は、車両用赤外線灯具システム100が実行する処理の別の一例を示すフローチャートである。
図7は、車両1のランプユニット30から前走車および対向車に向けて照射される配光パターンの一例を示す図である。本例においては、車両用赤外線灯具システム100は、他車両が対向車か前走車かに応じて減光領域と遮光領域とを設定する。
【0057】
図6においてステップS11までの処理は、上述した
図3におけるステップS01までの処理と同様の処理である。
【0058】
本例では、
図7に示すように、自車両1の前方に他車両A,Dが存在する画像が赤外線カメラ34によって撮像されたとする。そこで制御部101は、上記ステップS11において他車両A,Dを検出する。
【0059】
他車両位置取得部102は、赤外線カメラ34によって撮像された画像に基づいて、検出された他車両Aの左端部の位置情報および右端部の位置情報と、他車両Dの左端部の位置情報および右端部の位置情報と、を取得する(ステップS12)。取得された他車両A,Dの位置情報はそれぞれ、他車両位置取得部102から制御部101に送信される。
【0060】
距離取得部103は、赤外線カメラ34によって撮像された画像に基づいて、検出された他車両Aと自車両1との距離情報、および他車両Dと自車両1との距離情報を取得する(ステップS13)。取得された他車両Aの距離情報および他車両Dの距離情報は、距離取得部103から制御部101に送信される。
【0061】
制御部101は、検出された他車両が前走車であるか対向車であるかを判定する(ステップS14)。例えば撮影タイミングが異なる二枚の赤外線カメラの画像を比較し、他車両の位置が閾値を超えて大きく変化している場合、あるいは他車両の占める領域が閾値を超えて大きく変化している場合などに、この他車両は対向車であると判定し、そうでない場合にこの他車両は前走車であると判定してもよい。あるいは、車両1がレーダを搭載していた場合に、反射波を検出するまでの時間が所定値よりも短ければ、あるいは反射波の波長が閾値を超えて短ければ、該他車両は対向車であると判定し、そうでない場合は該他車両は前走車だと判定してもよい。以下の説明では、他車両Aが対向車であり、他車両Dが前走車であると判定されたものとする。
【0062】
制御部101は、検出された他車両Dが前走車であると判定された場合には(ステップS14:Yes)、他車両位置取得部102によって取得された前走車Dの位置情報、および距離取得部103によって取得された前走車Dの距離情報に基づいて、前走車Dの少なくとも一部の領域を、赤外線の照射強度が通常領域よりも低い減光領域に設定する(ステップS15)。
【0063】
一方、制御部101は、検出された他車両Aが対向車であると判定された場合には(ステップS14:No)、他車両位置取得部102によって取得された対向車Aの位置情報、および距離取得部103によって取得された対向車Aの距離情報に基づいて、対向車Aの少なくとも一部の領域を、赤外線が照射されない遮光領域に設定する(ステップS16)。制御部101は、遮光領域が走査されるタイミングで赤外線光源32に供給する電流をゼロにして、赤外線光源32を消灯させる。
【0064】
制御部101は、
図7に示すように、上述した
図3のステップS04における減光領域Q1の設定と同様に、前走車Dの車幅方向における中央部に減光領域Q1を設定し、対向車Aの車幅方向における中央部に遮光領域Tを設定する。また、制御部101は、上述した
図3のステップS04における赤外線光源32の減光度合いの設定と同様に、自車両1から対向車Aまでの距離、および自車両1から前走車Dまでの距離に応じて赤外線光源32の減光度合いを設定する。
【0065】
このような車両用赤外線灯具システム100によれば、対向車Aの車幅方向における中央部に遮光領域Tが形成されるように構成されている。このため、例えば、対向車Aに赤外線カメラが搭載されていても当該赤外線カメラにグレアを与えないようにすることができる。また、前走車Dの車幅方向における中央部に減光領域Q1が形成されるように構成されている。このため、前走車Dのすぐ近くに物体が存在する場合、例えば、
図7に示すように、減光領域Q1の範囲内である前走車Dと自車両1との間に歩行者Eがいる場合でも、前走車Dには弱い照度で赤外線が照射されているので自車両1の赤外線カメラ34で歩行者Eを検出することが可能である。なお、前走車Dには、後方の情報を取得するリア赤外線カメラが搭載されている場合もある。減光領域Q1に照射する赤外線によって、この前走車Dのリア赤外線カメラにハレーションを生じさせるおそれはあるものの、このようなリア赤外線カメラは駐車時などに用いられるものであり、走行時に用いられるものではない。このため、走行中に後方から前走車Dに赤外線を照射しても問題が生じにくい。
なお、遮光領域の照度は減光領域の照度よりも低ければよく、遮光領域に赤外線を照射してもよい。
【0066】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0067】
上述した実施形態では、赤外線光源32から出射された赤外線を回転リフレクタ33によって走査し、レンズ部品35を介して灯具前方へ出射する光学部材について説明したが、これに限られない。例えば、赤外線光源32と回転リフレクタ33との部分をマルチアレイ型の赤外線光源で構成し、当該光源の光をレンズ部品35を介して灯具前方へ出射する光学部材であってもよい。マルチアレイ型の赤外線光源とは、例えば、複数の赤外線光源が縦方向および横方向にそれぞれ配列された構造の光源である。各々の赤外線光源は、各々異なる方向へ光を出射可能であり、全ての赤外線光源により灯具前方の所定の範囲を照射するように構成されている。特定の赤外線光源の点灯状態が制御されることで灯具前方の特定の領域の照度が制御される。
【0068】
また、上述した実施形態では、赤外線カメラ34が赤外線光源32と共通のランプユニット30内(灯具内)に設けられているがこれに限られない。例えば、赤外線カメラ34は、灯具内ではなく、車両1の他の部位に設けられていてもよい。
【0069】
また、上述した実施形態では、減光領域に弱い照度の赤外線が照射される例を説明したが、例えば、減光領域に赤外線を照射しないようにしてもよい。
【0070】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態に係る車両用赤外線センサシステムを説明する。
近年、車両にはカメラや赤外線フォトダイオードなど、複数の検出原理に基づくセンサユニットが搭載されるようになってきている。このように複数種類のセンサユニットをそれぞれ車両に搭載すると、車両が大型化する。
本発明の第二実施形態は、赤外線カメラと赤外線センサに適した光を共通の光源により出射可能な車両用赤外線センサシステムを提供する。
【0071】
図8は、本発明の第二実施形態に係る車両用赤外線センサシステム1100が組み込まれる車両システム2のブロック図である。
当該車両システム2が搭載される車両1は、上述した第一実施形態と同じ、自動運転モードで走行可能な車両(自動車)である。
図8に示すように、車両システム2は、車両制御部3と、センサ5と、カメラ6と、レーダ7と、HMI(Human Machine Interface)8と、GPS(Global Positioning System)9と、無線通信部10と、地図情報記憶部11とを備えている。また、車両システム2は、ステアリングアクチュエータ12と、ステアリング装置13と、ブレーキアクチュエータ14と、ブレーキ装置15と、アクセルアクチュエータ16と、アクセル装置17とを備えている。さらに、車両システム2は、車両用赤外線センサシステム1100を備えている。これらは、
図1に示した第一実施形態と同様であるため、同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0072】
カメラ(車載カメラ)6は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(相補型MOS)等の撮像素子を含むカメラである。カメラ6の撮像は、車両制御部3から送信される信号に基づいて制御される。カメラ6は、受光した可視光に基づいて画像を生成可能である。カメラ6は、赤外線を検出する赤外線カメラ6aを含む。赤外線カメラ6aは、受光した赤外線に基づいて画像を生成可能である。
【0073】
車両用赤外線センサシステム1100は、ランプユニット1030と、制御部1101とが搭載される車両用灯具1004(例えばヘッドランプ等)を備えている。制御部1101は、車両用灯具1004の動作を制御する。制御部1101は、車両制御部3と通信可能に接続されている。車両用灯具1004は、車両1の前部に搭載される。
【0074】
図9は、車両用灯具1004に搭載されるランプユニット1030の内部構成を示す模式図である。
図9に示すように、ランプユニット1030は、ハウジング1030aと、赤外線光源1032と、赤外線センサ1034と、レンズ部品1035と、遮光壁1036と、を有している。
【0075】
ハウジング1030aの内部は、遮光壁1036によって第一灯室1037と第二灯室1038の2つの空間に仕切られている。赤外線光源1032は第一灯室1037に設けられている。赤外線センサ1034は第二灯室1038に設けられている。
【0076】
赤外線光源1032は、赤外線を出射する複数のLED(Light Emitting Diode)で構成されている。赤外線光源1032は、基板1039に搭載されている。基板1039に搭載される赤外線光源1032の点消灯は、制御部1101によって制御される。赤外線光源1032は、例えば、赤外線カメラ6aで撮像するのに適した撮像モード(第一モード)用の点消灯状態と、赤外線センサ1034でセンシングするのに適したセンシングモード(第二モード)用の点消灯状態とに駆動制御される。
【0077】
赤外線センサ1034は、赤外線を検出するフォトダイオード(PD)で構成されている。赤外線センサ1034は、受光した赤外線の強さに応じた信号を出力する。赤外線センサ1034は、受光した赤外線の強度が高いほど信号強度の高い信号を出力する。赤外線センサ1034は、赤外線光源1032から出射される赤外線のピーク波長に最も高い受光感度を有する。赤外線センサ1034は、赤外線光源1032から灯具前方に出射された赤外線の反射光を受光するとともに反射光のピーク波長を検出するように構成されている。赤外線センサ1034が取得した反射光に関する情報は制御部1101に送信される。赤外線センサ1034の動作、例えば、赤外線を検出するセンシング動作等は、制御部1101から送信される信号に基づいて制御される。
【0078】
赤外線カメラ6aは、赤外線光源1032から出射される赤外線のピーク波長に最も高い感度を有するカメラである。赤外線カメラ6aは、赤外線光源1032から灯具前方に出射された赤外線の反射光に応じた画像を取得可能である。赤外線カメラ6aが取得した画像は制御部1101に送信される。赤外線カメラの動作、例えば、車両1の前方を撮像する撮像動作等は、車両制御部3から送信される信号に基づいて制御されてもよいし、制御部1101から送信される信号に基づいて制御されてもよい。
【0079】
ハウジング1030aの前部には、レンズ部品1035が設けられている。レンズ部品1035は、投影レンズ1035a(光学部材の一例)と、集光レンズ1035bを有している。投影レンズ1035aは、第一灯室1037の前部に配置されている。投影レンズ1035aには、赤外線光源1032から出射された光が入射する。投影レンズ1035aは、当該入射した赤外線光源1032の光を灯具前方へ出射させる。赤外線光源1032は、投影レンズ1035aの焦点近傍に配置されている。集光レンズ1035bは、第二灯室1038の前部に配置されている。集光レンズ1035bは、灯具前方からの光、例えば、赤外線光源1032から出射され他車両等の検出対象物で反射された反射光を集めて、集めた光を赤外線センサ1034に導く。赤外線センサ1034の受光面は、集光レンズ1035bの焦点近傍に配置されている。投影レンズ1035aの後方焦点の距離は、集光レンズ1035bの後方焦点の距離よりも短い。投影レンズ1035aと集光レンズ1035bは、単一のレンズ部品1035として一体的に形成されている。
【0080】
遮光壁1036は、投影レンズ1035aの光軸と集光レンズ1035bの光軸との間に設けられている。例えば、遮光壁1036は、赤外線光源1032から出射され投影レンズ1035aに入射せずに直接赤外線センサ1034に入射しようとする光を遮る位置に設けられている。
【0081】
図10は、赤外線光源1032の正面図である。
図10に示すように、赤外線光源1032は、を上下方向(01~10)と左右方向(a~p)の二次元にアレイ状に配列された複数の赤外線LEDを備えている。以降の説明において、
図10の上からn番目(nは01~10のいずれか)でかつ右からx番目(xはa~pのいずれか)に位置する赤外線光源1032を赤外線LEDnxと呼ぶ。例えば赤外線LED03jとは、
図10の上から03番目でかつ右からj番目に位置する赤外線LEDである。
【0082】
各々の赤外線LED01a~10pは、各々異なる方向へ光を出射可能である。赤外線光源1032は、制御部1101によって制御され、特定の赤外線LEDの点消灯状態が制御されることで灯具前方の特定の領域の照度が制御されるように構成されている。
【0083】
本実施形態において制御部1101は、赤外線カメラで撮像するのに適した撮像モード(第一モード)と、赤外線センサでセンシングするのに適したセンシングモード(第二モード)とで赤外線光源1032を駆動する。以下、
図11から
図13を用いて撮像モードとセンシングモードを説明する。
【0084】
図11は、ランプユニット1030の照射可能範囲Qを示す模式図である。
図11の照射可能範囲Qは、例えば、車両用灯具1004の25m前方に仮想鉛直スクリーンを設置したときに当該鉛直スクリーンに表示される。照射可能範囲Qは、ランプユニット1030が赤外線を照射することが可能な最大範囲であり、赤外線光源1032の全ての赤外線LED01a~10pを点灯させることによって照射される。
【0085】
図11においては説明の便宜のために、照射可能範囲Qを縦方向に10個、横方向に11個の領域に区切っている。
図11の照射可能範囲Qのうち、縦方向の上からN番目(Nは01~10のいずれか)でかつ横方向で左からX番目(XはAからPのいずれか)で指定される領域を、領域QNXと称する。例えば
図10において右上端部に位置する赤外線LED01aを点灯させると、
図11における右上端部に位置する領域Q01Aに赤外線が照射される。あるいは赤外線LED06pを点灯させると、
図11における領域Q06Pに光が照射される。本車両用赤外線センサシステム1100においては、各々の赤外線LED01a~10pを点灯したときにどの領域Q01A~Q10Pに赤外線が照射されるかがメモリに記録されており、制御部1101はこのメモリから係る情報を読み出し可能にされている。
【0086】
また以降の説明において、縦方向の上からN番目でかつ横方向の全ての領域を、領域QNと称する。この領域QNは、左右方向に延びる帯状の領域である。例えば縦方向の上から7番目の横方向のA~P番目の領域は領域Q07と呼ぶ。
図10における赤外線LED07a~07pを点灯させると、領域Q07に赤外線が照射される。本実施形態では、H線が領域Q06と領域Q07との間に位置するように照射可能範囲Qが分割されている。
【0087】
図12は、センシングモードとして制御部1101が赤外線光源1032を駆動したときに照射される照射パターンを示す模式図である。
図12に示すように、本例ではセンシングモードとして、制御部1101は、他車両等の検出対象物をセンシングするために領域Q02と、領域Q04と、領域Q06が照射されるように赤外線光源1032を制御する。
【0088】
制御部1101は、センシングモードにおいて、任意の瞬間に一つの赤外線LEDのみを点灯させ、点灯させる赤外線LEDを順次変更することにより、照射可能範囲Q内に他車両等の対象物が存在するかセンシングする。制御部1101は、任意の方向からの赤外線の反射光の有無を赤外線センサ1034によって検出し、灯具前方の対象物の有無および位置を特定する。制御部1101は、例えば、ある方向から赤外線センサ1034が所定値以上の強度の反射光を検出したとき、この方向に他車両が存在すると判定する。
【0089】
例えば、制御部1101は、領域Q02内において、任意の瞬間に一つの赤外線LEDのみを点灯させ、点灯される赤外線LEDを順次変化させることで、左右方向に延びる領域Q02を走査する。具体的には、制御部1101は、赤外線LED02a~10pを順次点消灯させることで帯状の領域Q02を走査する。領域Q02の走査が終了したら順次、領域Q04、領域Q06を走査する。なお、本例ではセンシングモードとして領域Q02,Q04,Q06を照射することとしたが、センシングモードにおける照射範囲はこれに限られない。
【0090】
図12に示したように、自車両の前方に他車両Zが存在する場合、領域Q04D~Q04G,Q06D~Q06Gに赤外線が照射された時に、赤外線センサ1034は強い強度の反射光を検出する。すなわち、制御部1101が赤外線LED04d~04g,06d~06gを点灯したときに赤外線センサ1034から所定値以上の信号が出力される。そこで制御部1101は領域Q04D~Q04G,Q06D~Q06Gに他車両が位置しており、他の領域には他車両が存在していないと判定する。
【0091】
図13は、撮像モードとして制御部1101が赤外線光源1032を駆動したときに照射される照射パターンを示す模式図である。
図13において制御部1101は、通常領域と減光領域を含む配光パターンを形成している。撮像モードにおいては、センシングモードとは異なり、制御部1101は複数の赤外線LED01a~10pを一斉に点灯させる。
【0092】
制御部1101は、撮像モードにおいて、他車両Zが存在しない領域には通常領域Sを設定し、他車両Zが存在する領域には減光領域Rを設定する。図示の例では、他車両Zが存在する領域Q04D~Q04G,Q06D~Q06Gを含む上下方向の全ての領域QD,QE,QF,QGを減光領域Rに設定し、他の領域を通常領域Sに設定している。
制御部1101は、通常領域Sに赤外線を照射する赤外線LEDには第一電流値の電流を供給し、減光領域Rに赤外線を照射する赤外線LEDには第一電流値よりも低い第二電流値の電流を供給する。すなわち、制御部1101は、減光領域Rには通常領域Sの照度よりも低い照度となるように赤外線を照射する。
【0093】
このように本実施形態において制御部1101は、センシングモードで赤外線を照射したときに得られた赤外線センサ1034の出力に応じて、撮像モードによる赤外線光源1032の駆動時に、赤外線の照射強度が他の領域Sよりも低い減光領域Rを設定する。これにより、赤外線カメラ6aにより車両前方を撮影する際に、反射強度の高い他車両Zからの赤外線の反射光の強度と、他の領域からの赤外線の反射光の強度とが大きく異なることを抑制でき、赤外線カメラ6aで取得した画像にハレーションが生じることを抑制することができる。
【0094】
本実施形態に係る車両用赤外線センサシステム1100よれば、赤外線光源1032の駆動が、赤外線カメラ6aで撮像するのに適した撮像モードと、赤外線センサ1034でセンシングするのに適したセンシングモードとに切り替えられるよう構成されている。このため、赤外線カメラ6a用の光と赤外線センサ1034用の光を共通の赤外線光源1032によって出射することができる。したがって、車両用赤外線センサシステム1100を構成する部品の点数を削減することができ、車両1の大型化を抑制することができる。
【0095】
さらに、制御部1101が、赤外線センサ1034の出力に応じて、撮影モードによる駆動時に、赤外線の照射強度が他の領域Sよりも低い減光領域Rを設定する。このため、赤外線カメラ6aにより車両前方を撮影する際に、反射強度の高い物体(他車両Zなど)からの赤外線の反射光の強度と、他の領域からの赤外線の反射光の強度とが大きく異なることを抑制でき、赤外線カメラ6aで取得した画像にハレーションが生じることを抑制することができる。
【0096】
また、車両用赤外線センサシステム1100よれば、赤外線光源1032が複数の赤外線LEDを二次元に配列させたマルチアレイ型の光源で構成されている。このため、照射可能範囲Qにおける特定の領域の照度を正確かつ容易に制御することができる。また、簡便な構成で赤外線カメラ6a用の光と赤外線センサ1034用の光を出射することができる。
【0097】
また、車両用赤外線センサシステム1100よれば、投影レンズ1035aの焦点近傍に赤外線光源1032が配置され、集光レンズ1035bの焦点近傍に赤外線センサ1034が配置されている。このため、精度よく赤外線光源1032の光を任意の方向に出射することが可能であり、赤外線センサ1034の検出精度を高めることができる。さらに投影レンズ1035aと集光レンズ1035bとが一体であるため、部品点数の増大を抑制できる。
【0098】
また、車両用赤外線センサシステム1100よれば、赤外線光源1032から出射された光が直接赤外線センサ1034に入射することを防止する遮光壁1036が設けられている。このため、赤外線センサ1034の光検出時において、赤外線光源1032の光が直接赤外線センサ1034に入射するのを抑制することができ、赤外線センサ1034の検出精度を高めることができる。
【0099】
また、車両用赤外線センサシステム1100よれば、撮像モードでは、各々の赤外線LED01a~10pを一斉に点灯させて赤外線カメラ6aの画角内のすべての領域に赤外線を照射するように構成されている。また、センシングモードでは、任意の瞬間に一つの赤外線LEDのみを点灯させ、点灯させる赤外線LEDを順次変えることで任意の方向からの赤外線の反射光の有無を検出し、灯具前方の物体の有無および位置を検出するように構成されている。このため、撮像モードでは赤外線カメラ6aの撮像精度を高めることができ、センシングモードでは赤外線センサ1034の検出精度を高めることができる。
【0100】
次に赤外線光源1032の点灯タイミングと赤外線カメラ6aの露光タイミングについて詳しく説明する。
図14は、赤外線光源1032の点灯タイミングと、赤外線カメラ6aの露光タイミングと、を示すタイムチャートである。
図14に示すように、制御部1101は、撮像モードとセンシングモードを繰り返すように赤外線光源1032を駆動する。また制御部1101は、赤外線カメラ6aの露光タイミングであるシャッタ開期間とシャッタ閉期間とに連動して撮像モードとセンシングモードとを切り替える。すなわち制御部1101が、赤外線光源1032をセンシングモードで駆動しているときは赤外線カメラ6aをシャッタ閉期間とし、赤外線光源1032を撮像モードで駆動しているときは赤外線カメラ6aをシャッタ開期間とする。
【0101】
制御部1101は、センシングモードにおいて、任意の瞬間に一つの赤外線LEDを点灯させ、残りの赤外線LEDを消灯させる。次の瞬間には、次の赤外線LEDを点灯させて残りの赤外線LEDを消灯させる。このように赤外線LEDを順次点消灯させることにより、照射可能範囲Qを走査する。
このように制御部1101がセンシングモードで赤外線光源1032を駆動している時は、赤外線カメラ6aをシャッタ閉期間とし、赤外線センサ1034を動作させる。そして上述したように、赤外線センサ1034の出力に応じて通常領域Sと減光領域Rを設定する。
【0102】
制御部1101は、撮像モードにおいて、全ての赤外線LEDに第一電流値または第二電流値の電流を供給し、赤外線LEDを発光させる。これにより、赤外線カメラ6aの撮影に適した明るさで車両前方を赤外線で照らす。制御部1101は、撮像モードで赤外線光源1032を駆動している時は、赤外線カメラ6aをシャッタ開期間とする。このとき制御部1101は、赤外線センサ1034は非動作状態としてもよい。
【0103】
このようなセンシングモードおよび撮像モードにおいて、制御部1101は、赤外線LED01a~10pをPWM(Pulse Width Modulation)制御している。制御部1101は、撮像モード時に赤外線LED01a~10pに通電される電流のデューティが、センシングモード時に赤外線LED01a~10pに通電される電流のデューティよりも大きくなるように制御する。また、制御部1101は、撮像モード時に赤外線LED01a~10pに通電される瞬間電流値i2が、センシングモード時に赤外線LED01a~10pに通電される瞬間電流値i1よりも小さくなるように制御する。
【0104】
なお、撮像モード時の赤外線LED01a~10pの制御と、センシングモード時の赤外線LED01a~10pの制御とは、例えば、赤外線LED01a~10pに入力するパルスの通電時間、または赤外線LED01a~10pに入力するパルスの非通電時間が異なるように制御されてもよい。また、撮像モード時の赤外線LED01a~10pの制御と、センシングモード時の赤外線LED01a~10pの制御とは、例えば、赤外線LED01a~10pに投入する投入電流が異なるように制御されてもよい。制御部1101は、赤外線センサ1034のセンシング結果に応じて撮像モード時に減光領域を設定する場合、例えば、赤外線LED01a~10pに入力するパルスの通電時間、パルスの非通電時間、および投入電流の少なくとも一つを変化させる。
【0105】
また、制御部1101は、例えば、赤外線LED01a~10pにパルス電流を入力する場合、センシングモードにおいて、上述したように任意の瞬間に一つの赤外線LEDを点消灯させ、点消灯させる赤外線LEDを順次変化させる。このため、各々の赤外線LED01a~10pに入力されるパルス電流の通電タイミングは、互いに重ならないように制御されている。
【0106】
このように本実施形態に係る車両用赤外線センサシステム1100によれば、赤外線カメラ6aの露光タイミングに連動して撮像モードとセンシングモードとが切り替えられるように構成されている。このため、赤外線カメラ6aの撮影時にセンシング用の強い強度の赤外線が照射されず、赤外線カメラ6aにより鮮明な画像を得やすい。
【0107】
また、車両用赤外線センサシステム1100によれば、撮像モードで通電される電流のデューティがセンシングモードで通電される電流のデューティよりも大きくなるように構成されている。このため、センシングモードで赤外線の強い反射光を得ることができ、赤外線センサ1034の検出精度を高めやすい。
【0108】
また、車両用赤外線センサシステム1100によれば、撮像モードで通電される瞬間電流値がセンシングモードで通電される瞬間電流値よりも小さくなるように構成されている。赤外線カメラ6aによる撮影時には局所的に強い照度で赤外線が照射されるよりも、広い範囲に適度な照度の光が照射されている方が好ましい。一方で、赤外線センサ1034によるセンシング時には、特定の領域が強い照度で赤外線が照射されることが好ましい。本実施形態によれば、互いに異なる特性が要求される二つのシチュエーションのそれぞれに適した配光パターンが、単一の赤外線光源1032によって得られる。
【0109】
また、車両用赤外線センサシステム1100によれば、赤外線センサ1034の出力に応じて撮像モードとセンシングモードとを切り替える際に、赤外線光源1032に入力するパルスの通電時間、非通電時間および投入電流の少なくとも一つを変えるように構成されている。
【0110】
また、車両用赤外線センサシステム1100によれば、センシングモードにおいて、各々の赤外線LED41a~50pに入力されるパルス電流の通電タイミングが互いに重ならないよう構成されている。このため、各赤外線LED41a~50pから出射された赤外線の反射光を検出する赤外線センサ1034の検出精度を高めることができる。
【0111】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0112】
上記実施形態では、車両用灯具1004内に赤外線光源1032と赤外線センサ1034とが搭載されている例を示すが、これに限られない。例えば、赤外線光源1032および赤外線センサ1034と共に赤外線カメラ6aが車両用灯具1004内に搭載されていてもよい。また、車両用灯具1004内には、赤外線光源1032、赤外線センサ1034、赤外線カメラのうちの、赤外線光源1032のみが搭載されていてもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、赤外線光源1032は、赤外線を出射するLEDで構成されているが、例えば、赤外線を出射するLD(Laser Diode)を含む構成とされてもよい。赤外線光源1032によって広い範囲を照射することが求められる場合には出射光の拡散度合いが大きいLEDを用いることが好ましい。赤外線光源1032によって他車両等のセンシングが求められる場合には出射光の拡散度合いが小さいLDを用いることが好ましい。そこで、赤外線光源1032を、例えば、左右方向の列ごとにLEDまたはLDを搭載するようにしてもよい。
【0114】
<第三実施形態>
ところで近年では、暗視装置など各種のセンサが車両に搭載されることが求められており、車両が大型化したり重くなったりしやすい。
本発明の第三実施形態は、車両の大型化・重量化を招きにくい、赤外線センサを有する車両用赤外線センサ内蔵灯具を提供する。
【0115】
図15は、本発明の第三実施形態に係る車両用赤外線センサ内蔵灯具2004が組み込まれる車両システム2のブロック図である。当該車両システム2が搭載される車両1は、自動運転モードで走行可能な車両(自動車)である。
図15に示すように、車両システム2は、車両制御部3と、車両用赤外線センサ内蔵灯具2004と、センサ5と、カメラ6と、レーダ7と、HMI(Human Machine Interface)8と、GPS(Global Positioning System)9と、無線通信部10と、地図情報記憶部11とを備えている。さらに、車両システム2は、ステアリングアクチュエータ12と、ステアリング装置13と、ブレーキアクチュエータ14と、ブレーキ装置15と、アクセルアクチュエータ16と、アクセル装置17とを備えている。
【0116】
車両用赤外線センサ内蔵灯具2004は、可視光ユニット2020と、赤外線ユニット2030と、制御部2101と、を備えている。車両用赤外線センサ内蔵灯具2004は、車両1の前部に搭載される灯具(例えばヘッドランプ等)である。可視光ユニット2020は、可視光を出射可能なユニットである。赤外線ユニット2030は、赤外線を出射可能なユニットである。制御部2101は、車両制御部3と通信可能に接続されている。車両制御部3は、所定の条件を満たした場合に車両用赤外線センサ内蔵灯具2004の点消灯を制御するための指示信号を生成して、当該指示信号を制御部2101に送信する。制御部2101は、受信した指示信号に基づいて、可視光ユニット2020、赤外線ユニット2030などの動作を制御する。制御部2101で取得された情報および車両制御部3で取得された情報は、相互間で送受信される。
【0117】
カメラ(車載カメラ)6は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(相補型MOS)等の撮像素子を含むカメラである。カメラ6の撮像は、車両制御部3から送信される信号に基づいて制御される。カメラ6は、受光した可視光に基づいて画像を生成可能である。カメラ6は、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。赤外線カメラは、受光した赤外線に基づいて画像を生成可能である。
【0118】
図16は、車両用赤外線センサ内蔵灯具2004の内部構成を示す模式図である。
図16に示すように、車両用赤外線センサ内蔵灯具2004は、ハウジング2040と、レンズ部品2045と、遮光壁2046と、可視光ユニット2020と、赤外線ユニット2030と、赤外線カットフィルタ2034と、赤外線センサ2035と、を有している。
【0119】
ハウジング2040の内部は、遮光壁2046によって第一灯室2047と第二灯室2048の2つの空間に仕切られている。可視光ユニット2020と、赤外線カットフィルタ2034と、赤外線センサ2035は第一灯室2047に設けられている。赤外線ユニット2030は第二灯室2048に設けられている。
【0120】
ハウジング2040の前部には、レンズ部品2045が設けられている。レンズ部品2045は、第一レンズ部2045aと、第二レンズ部2045bを有している。第一レンズ部2045aは、第一灯室2047の前部に配置されている。第二レンズ部2045bは、第二灯室2048の前部に配置されている。第一レンズ部2045aと第二レンズ部2045bは、単一のレンズ部品2045として一体的に形成されている。
【0121】
可視光ユニット2020は、可視光を出射する可視光光源2021と、当該可視光光源2021が搭載される基板2022と、を有する。可視光光源2021は、複数の可視光LED(Light Emitting Diode)で構成されている。可視光光源2021の点消灯は、制御部2101によって制御される。
【0122】
図17は、可視光光源2021の正面図である。
図17に示すように、可視光光源2021は、上下方向(01~10)と左右方向(a~p)との二次元のアレイ状に配列された複数の可視光LEDを備えている。以降の説明において、
図17の上からn番目(nは01~10のいずれか)でかつ左からx番目(xはa~pのいずれか)に位置する可視光LEDを可視光LEDnxと呼ぶ。例えば、可視光LED03jとは、
図17の上から03番目でかつ左からj番目に位置する可視光LEDである。各々の可視光LED01a~10pは、各々異なる方向へ光を出射可能である。可視光光源2021は、制御部2101によって制御され、特定の可視光LEDの点消灯状態が制御されることで灯具前方の特定の領域の照度が制御されるように構成されている。本実施形態において制御部2101は、可視光光源2021から出射される可視光によって車両1の前方を視認するのに適した配光パターンが形成されるように可視光光源2021を制御する。
【0123】
図16に戻り、赤外線ユニット2030は、赤外線を出射する赤外線光源2031と、当該赤外線光源2031が搭載される基板2032と、赤外線を反射させる回転リフレクタ2033と、を有する。赤外線光源2031は、複数の赤外線LD(Laser Diode)で構成されている。本実施形態において、3つの赤外線光源2031が基板2032上下方向に並べて設けられている。赤外線光源2031は、車両用赤外線センサ内蔵灯具2004の正面視において、第一レンズ部2045aと重ならない位置に設けられている。これにより、赤外線光源2031から出射された赤外線は、第一レンズ部2045aに遮られることなく灯具前方へ出射される。各々の赤外線光源2031の点消灯タイミングは、制御部2101によって制御される。
【0124】
回転リフレクタ2033は、赤外線光源2031から出射された赤外線を走査して灯具前方へ出射する走査手段である。回転リフレクタ2033は、回転軸線R回りに回転する。回転リフレクタ2033は、回転軸線R回りに延びる軸部2033aと、軸部2033aから径方向に延びる複数枚のブレード2033bを備えている。ブレード2033bの表面が反射面とされている。この反射面は周方向に徐々に回転軸線Rに対する角度が変化する捩られた形状とされている。具体的には、赤外線光源2031から出射された赤外線が回転リフレクタ2033の外周面に設けられた反射面で反射されるときに、反射されて出射される方向が、回転リフレクタ2033の回転位相によって左端から右端まで徐々に変化するような形状とされている。回転リフレクタ2033の反射点は、第二レンズ部2045bの焦点近傍に配置されている。回転リフレクタ2033の動作は、制御部2101によって制御される。
【0125】
制御部2101は、赤外線光源2031から出射される赤外線によって他車両等の対象物をセンシングするのに適した配光パターンを形成するように赤外線ユニット2030を制御する。より具体的には、制御部2101は、赤外線光源2031の点灯タイミングと、回転リフレクタ2033の回転位相とを制御することにより、灯具前方の任意の位置に向けて赤外線光源2031の赤外線を出射させる。
【0126】
可視光光源2021は、車両1の前方を視認するための光を照射する光源として用いられるため広い範囲を照射することが求められる。これに対して、赤外線光源2031は、他車両等の対象物をセンシングするための光を照射する光源として用いられるため特定の領域を強い照度で照射することが求められる。このため、出射光の拡散度合いが大きいLEDを可視光光源2021として採用し、出射光の拡散度合いが小さいLDを赤外線光源2031として採用することが好ましい。
【0127】
レンズ部品2045の第一レンズ部2045aには、可視光光源2021から出射した可視光が入射する。第一レンズ部2045aは、当該入射した可視光を灯具前方へ出射させる。第一レンズ部2045aは、可視光光源2021から出射された可視光を灯具前方へ出射させる投影レンズとして機能する。
また、第一レンズ部2045aは、灯具前方からの光、例えば、赤外線光源2031から出射され他車両等の対象物で反射された赤外線の反射光を集光し、赤外線カットフィルタ2034を介して赤外線センサ2035に導く。第一レンズ部2045aは、赤外線を赤外線センサ2035に集光させる集光レンズとして機能する。
【0128】
レンズ部品2045の第二レンズ部2045bには、赤外線光源2031から出射し回転リフレクタ2033で反射された赤外線が入射する。第二レンズ部2045bは、赤外線光源2031から出射された赤外線を灯具前方へ出射させる投影レンズとして機能する。
【0129】
遮光壁2046は、第一レンズ部2045aの光軸と第二レンズ部2045bの光軸との間に設けられている。例えば、遮光壁2046は、可視光光源2021から出射された可視光が第一レンズ部2045aに入射せずに第二レンズ部2045bへ直接入射するのを防止する位置であって、赤外線光源2031から出射された赤外線が第二レンズ部2045bに入射せずに第一レンズ部2045aへ直接入射するのを防止する位置に設けられている。
【0130】
赤外線カットフィルタ2034は、赤外線を反射させることにより赤外線の透過を抑制する反射型の光学フィルタである。赤外線カットフィルタ2034は、第一灯室内において、可視光光源2021と第一レンズ部2045aの間に配置されている。赤外線カットフィルタ2034は、灯具前方から第一レンズ部2045aを介して当該赤外線カットフィルタ2034へ入射する赤外線を赤外線センサ2035へ向けて反射させる。また、赤外線カットフィルタ2034は、可視光光源2021から出射された可視光を透過させる。赤外線カットフィルタ2034を透過した可視光は、第一レンズ部2045aに入射する。
【0131】
赤外線センサ2035は、赤外線を検出するフォトダイオード(PD)で構成されている。赤外線センサ2035は、赤外線カットフィルタ2034で折り返される第一レンズ部2045aの仮想焦点付近に配置されている。赤外線センサ2035は、検出した赤外線の強さに応じた信号を出力する。赤外線センサ2035は、検出された赤外線の強度が高いほど信号強度の高い信号を出力する。赤外線センサ2035は、赤外線光源2031から出射される赤外線のピーク波長に最も高い受光感度を有する。赤外線センサ2035は、赤外線光源2031から灯具前方に出射された赤外線の反射光を受光するとともに反射光のピーク波長を検出する。赤外線センサ2035が取得した反射光に関する情報は制御部2101に送信される。赤外線センサ2035の動作、例えば赤外線を検出するセンシング動作等は、制御部2101から送信される信号に基づいて制御される。
【0132】
次に、制御部2101が他車両等の対象物をセンシングする制御について説明する。
図18は、赤外線ユニット2030の赤外線光源2031から出射された赤外線が照射する領域を示す模式図である。
図18に示す模式図は、例えば、車両用赤外線センサ内蔵灯具2004の25m前方に設置された仮想鉛直スクリーンに表示される。
【0133】
制御部2101は、赤外線光源2031から出射される赤外線によって他車両等の対象物をセンシングするように赤外線ユニット2030を制御する。
範囲Q01は、基板2032上の最も上方に設けられた赤外線光源2031から出射される赤外線によって照射される領域である。最も上方に設けられた赤外線光源2031を点灯させた直後は、範囲Q1の左端を含む範囲Q1の一部分の領域Q1aに赤外線が照射される。回転リフレクタ2033を回転させるに従い、赤外線が照射される領域Q1aが右方に移動する。このようにして回転リフレクタ2033が一回転する間に、最も上方の赤外線光源2031は範囲Q1の全ての領域に赤外線を照射する。
範囲Q03は、基板2032上の最も下方に設けられた赤外線光源2031から出射される赤外線によって照射される領域である。最も下方に設けられた赤外線光源2031を点灯させた直後は、範囲Q3の左端を含む範囲Q3の一部分の領域に赤外線が照射される。回転リフレクタ2033を回転させるに従い、赤外線が照射される領域が右方に移動する。このようにして回転リフレクタ2033が一回転する間に、最も下方の赤外線光源2031は範囲Q3の全ての領域に赤外線を照射する。
範囲Q02は、基板2032上の上下方向の中間に設けられた赤外線光源2031から出射される赤外線によって照射される領域である。中間に設けられた赤外線光源2031を点灯させた直後は、範囲Q2の左端を含む範囲Q2の一部分の領域に赤外線が照射される。回転リフレクタ2033を回転させるに従い、赤外線が照射される領域が右方に移動する。このようにして回転リフレクタ2033が一回転する間に、中間の赤外線光源2031は範囲Q2の全ての領域に赤外線を照射する。
範囲Q01,Q02,Q03は左右方向に延びる直線状である。各範囲Q01~Q03は、鉛直方向に0.4度以上の上下幅を有していることが好ましい。範囲Q03の領域は、H線と重なっている。
【0134】
赤外線ユニット2030から出射された赤外線は、灯具前方の物体によって反射される。この反射された赤外線は第一レンズ部2045aを通過し、赤外線カットフィルタ2034によって反射され、赤外線センサ2035に導かれる。
【0135】
図18に示すように、自車両の前方に他車両CAが存在する場合、他車両CAが占める領域に照射する赤外線光源2031を点灯したときに、赤外線センサ2035は強い強度の赤外線を検出する。制御部2101は、赤外線センサ2035から出力される信号強度が所定値以上であるとき、その範囲に他車両CAが存在すると判定する。あらかじめ、回転リフレクタ2033の回転位相と、そのときの赤外線光源2031が赤外線を照射する領域(位置)がメモリに記録されている。制御部2101はこのメモリにアクセス可能とされている。制御部2101は、赤外線センサ2035が所定値以上の信号強度の信号を出力したときに、回転リフレクタ2033の回転位相を取得し、赤外線がどの領域に照射されているかを取得し、赤外線が照射されている領域に他車両CAが存在すると判断する。
【0136】
次に、制御部2101が上記センシングの結果に基づいて可視光の配光パターンを変更する制御について説明する。
図19は、可視光ユニット2020の可視光光源2021から出射された可視光によって形成される可視光配光パターンの一例を示す模式図である。
図19も上記
図18と同様に設置された仮想鉛直スクリーンに表示される。
【0137】
照射可能範囲Tは、車両用赤外線センサ内蔵灯具2004が可視光を照射することが可能な最大範囲であり、可視光光源2021の全ての可視光LED01a~10pを点灯させることによって照射可能である。
図19においては説明の便宜のために、照射可能範囲Tを縦方向に10個、横方向に11個の領域に区切っている。照射可能範囲Tのうち、縦方向の上からN番目(Nは01~10のいずれか)でかつ横方向で左からX番目(XはAからPのいずれか)で指定される領域を範囲TNXと称する。例えば、
図17において右上端部に位置する可視光LED01aを点灯させると、
図19における左上端部に位置する範囲T01Aに可視光が照射される。また、可視光LED06pを点灯させると、
図19における範囲T06Pに可視光が照射される。
【0138】
また、横方向の左からX番目でかつ縦方向の全ての領域を、範囲TXと称する。この範囲TXは、上下方向に延びる帯状の照射範囲である。例えば、横方向の左からD番目で縦方向の01番目~10番目の領域は範囲TDと呼ぶ。
図17における縦方向の可視光LED01d~10dを点灯させると、範囲TDに可視光が照射される。また、縦方向の上からN番目でかつ横方向の全ての領域を、範囲TNと称する。この範囲TNは、左右方向に延びる帯状の照射範囲である。例えば、縦方向の上から7番目で横方向のA番目~P番目の領域は範囲T07と呼ぶ。
図17における可視光LED07a~07pを点灯させると、範囲T07に可視光が照射される。本例では、H線が範囲Q06と範囲Q07との間に位置している。
制御部2101は、自車両の前方に他車両等の対象物が存在しない通常状態において、照射可能範囲Tの全領域を通常領域Uに設定し、この領域に所定の照度で可視光が照射されるように可視光光源2021を制御する。
【0139】
制御部2101は、赤外線センサ2035から出力される信号に応じて、可視光配光パターンを変更する。例えば、制御部2101は、赤外線センサ2035から出力された信号に基づいて他車両CAを検出すると、照射可能範囲Tにおける他車両CAが存在する領域に減光領域Vを設定し、他車両CAが存在しない領域に通常領域Uを設定する。制御部2101は、減光領域Vに通常領域Uよりも低い照度の可視光が照射されるように可視光光源2021を制御する。制御部2101は、他車両CAが検出された領域に可視光が弱く照射されるように照射可能範囲Tに形成される可視光配光パターンを変更する。
【0140】
図19に示すように、制御部2101は、例えば、赤外線センサ2035から出力された信号に基づいて他車両CAが存在すると判定された範囲TD~TGを減光領域Vに設定し、他の領域を通常領域Uに設定する。制御部2101は、可視光LED01d~01g,02d~02g,03d~03g,04d~04g,05d~05g,06d~06g,07d~07g,08d~08g,09d~09g,10d~10gに第一電流値で電流を供給し、その他の可視光LEDに第一電流値より大きい第二電流値で電流を供給する。なお、本実施形態例では、他車両CAとして自車両の前方に存在する前走車を示すが、これに限られない。他車両は例えば対向車などであってもよい。
【0141】
本実施形態に係る車両用赤外線センサ内蔵灯具2004は、可視光光源2021から出射された可視光が赤外線カットフィルタ2034を透過して第一レンズ部2045aに入射され、灯具前方から第一レンズ部2045aを介して赤外線カットフィルタ2034に入射した赤外線が赤外線センサ2035へ向けて反射されるように構成されている。この構成によれば、可視光を灯具前方に投影させる投影レンズとして設けられている第一レンズ部2045aを、赤外線を赤外線センサ2035に集光させる集光レンズとしても機能させることができる。このため、車両用赤外線センサ内蔵灯具2004を構成する部品の点数を削減することができるので、当該灯具2004を小型化および軽量化しやすい。したがって、当該灯具2004に赤外線センサ2035を搭載しても車両1の大型化・重量化を抑制することができる。
【0142】
また、車両用赤外線センサ内蔵灯具2004によれば、赤外線センサ2035の出力信号に基づいて他車両CAが検出されると、他車両CAが検出された領域に可視光が弱く照射されるように照射可能範囲Tに形成される可視光配光パターンが変更される。このため、検出された他車両CAの領域に照射される可視光の照度を低くすることができ、他車両CAへの眩しさを低減することができる。
【0143】
また、車両用赤外線センサ内蔵灯具2004よれば、可視光光源2021から出射された可視光が第二レンズ部2045bに直接入射することを防止するとともに、赤外線光源2031から出射された赤外線が第一レンズ部2045aに直接入射することを防止する遮光壁2046が設けられている。このため、可視光光源2021の可視光出射時において、可視光光源2021の可視光が第二レンズ部2045bから投影されないようにでき、第一レンズ部2045aから投影される可視光によって任意の可視光配光パターンを形成することができる。また、赤外線センサ2035の光検出時において、赤外線光源2031の光が直接赤外線センサ2035に入射するのを抑制することができ、赤外線センサ2035の検出精度を高めることができる。
【0144】
(変形例)
上述した実施形態においては、赤外線センサ2035としてフォトダイオードを用いた例を説明したが、本発明はこれに限られない。赤外線センサとして赤外線カメラ2135を用いてもよい。
図20はある時刻tに赤外線カメラ2135が撮像した灯具前方の画像を示す。
図21は、時刻t+1に赤外線ユニット2030から出射された赤外線によって形成される赤外線配光パターンの一例を示す。
【0145】
上記実施形態では赤外線光源2031から出射された赤外線が回転リフレクタ2033によって直線状の範囲Q1~Q3をスイープされる例(
図18参照)について説明したが、本例では
図21に示される照射範囲Xのように灯具前方の広い範囲に一様に赤外線が照射される。このような配光は、例えば、赤外線カメラ2135の露光時間内にすべての範囲に赤外線が照射されるように、回転リフレクタ2033の回転速度を調整して高速で赤外線をスイープしてもよい。あるいは回転リフレクタ2033を用いずに、アレイ状に配列した赤外線光源2031とその前方に配置した投影レンズにより、灯具前方の広範囲に赤外線を照射してもよい。
制御部2101は、センシングを開始する初期状態において照射範囲Xの全領域を通常領域Yに設定し、この領域に所定の照度で赤外線が照射されるように赤外線光源2031を制御する。
【0146】
赤外線カメラ2135は、赤外線光源2031から出射される赤外線のピーク波長に最も高い感度を有するカメラである。赤外線カメラ2135は、赤外線光源2031から灯具前方に出射された赤外線の反射光に応じた画像を取得可能である。赤外線カメラ2135は、検出した赤外線の強さに応じた信号を出力する。赤外線カメラ2135の動作は、制御部2101によって制御されてもよいし、車両制御部3によって制御されてもよい。
【0147】
赤外線ユニット2030から出射され灯具前方の物体によって反射された赤外線は、第一レンズ部2045aを介して赤外線カットフィルタ2034で反射され、赤外線カメラ2135に導かれる。赤外線カメラ2135は、検出された赤外線に応じて、例えば、時刻tに
図20に示すような画像Wを撮像する。赤外線カメラ2135によって撮像された画像Wは、制御部2101に送信される。制御部2101は、撮像された画像W中に他車両等の対象物が存在しているか否か判定する。
【0148】
時刻tで撮像した画像Wに基づき、制御部2101は時刻t+1において、赤外線カメラ2135から出力される信号に応じて、照射範囲Xの赤外線配光パターンを変更する。例えば、制御部2101は、赤外線カメラ2135から出力された信号に基づいて他車両CAを検出すると、
図21に示すように照射範囲Xにおける他車両CAが存在する領域に減光領域Zを設定し、他車両CAが存在しない領域に通常領域Yを設定する。制御部2101は、減光領域Zに通常領域Yよりも低い照度の赤外線が照射されるように赤外線光源2031を制御する。制御部2101は、他車両CAが検出された領域に赤外線が弱く照射されるように照射範囲Xの赤外線配光パターンを変更する。
例えば回転リフレクタ2033によって赤外線をスイープすることにより照射範囲Xに赤外線を照射するように構成されている場合には、回転リフレクタ2033が、減光領域Zを照射する回転位相となったときに赤外線光源2031に第一電流値で電流を供給し、通常領域Yを照射する回転位相となったときに赤外線光源2031に第一電流値より高い第二電流値で電流を供給する。
あるいは赤外線ユニット2030が基板2032上にアレイ状に配列された赤外線光源2031を有している場合には、減光領域Zを照射する赤外線光源2031に第一電流値で電流を供給し、通常領域Yを照射する赤外線光源2031に第二電流値で電流を供給する。
【0149】
また、上記変形例では他車両CAが検出された領域を減光領域Zに設定し、当該減光領域Z以外の領域を通常領域Yに設定しているが、これに限られない。例えば、他車両CAが検出された領域を通常領域に設定し、当該通常領域以外の領域を強調領域に設定してもよい。強調領域には、通常領域に照射する赤外線よりも強い赤外線が照射されるように、強調領域を照射する際には赤外線光源2031へ第二電流値より大きい第三電流値で電流を供給する。
【0150】
また、車両用赤外線センサ内蔵灯具2004によれば、赤外線配光パターンにおいて、赤外線の反射強度が高い他車両CAが存在する領域に減光領域Zが形成されるように構成されている。このため、照射範囲X内に存在する他車両CAに対して弱い照度で赤外線を照射することが可能であり、他車両CAからの赤外線の反射強度を弱くすることができる。したがって、他車両CAから反射された赤外線によって自車両1の赤外線カメラ2135の画像にハレーションが生じることを抑制することができ、他車両など灯具前方の物体の検出精度を高めることができる。
【0151】
また、他車両CAが検出された領域を通常領域に設定し、当該通常領域以外の領域を強調領域に設定する構成の場合には、例えば、
図21に示すように、他車両CAの近傍にいる歩行者HUなど、赤外線の反射強度の低い物体を赤外線カメラ2135によって検出しやすくなる。
【0152】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0153】
また、上記実施形態では、可視光光源2021から出射された可視光の配光パターンを変更する手段として二次元のアレイ状に配列された複数の可視光LEDを備える可視光光源を用いているが、これに限られない。例えば、
図16に示す赤外線ユニット2030と同様に、回転リフレクタを用いて配光パターンを変更してもよい。
【0154】
<第四実施形態>
例えばカメラやドライバーに適した可視光を出射する光源と、センサに適した光を出射する光源といったように、二種類の光源を有するセンサ搭載灯具においては、灯具が大型化し、車両への搭載性が高くないという不具合があった。
本発明の第四実施形態は、大型化が抑制され、車両への搭載性が高められた光学センサ内蔵灯具を提供する。
【0155】
図22は、本発明の実施形態に係る光学センサ内蔵灯具3004が組み込まれる車両システム3002のブロック図である。当該車両システム3002が搭載される車両1は、上述した第一実施形態と同じ、自動運転モードで走行可能な車両(自動車)である。
図22に示すように、車両システム3002は、車両制御部3と、光学センサ内蔵灯具3004と、センサ5と、カメラ6と、レーダ7と、HMI(Human Machine Interface)8と、GPS(Global Positioning System)9と、無線通信部10と、地図情報記憶部11とを備えている。さらに、車両システム3002は、ステアリングアクチュエータ12と、ステアリング装置13と、ブレーキアクチュエータ14と、ブレーキ装置15と、アクセルアクチュエータ16と、アクセル装置17とを備えている。
【0156】
光学センサ内蔵灯具3004は、可視光および赤外線を出射可能な灯具である。光学センサ内蔵灯具3004は、車両1の前部に搭載される灯具(例えばヘッドランプ等)である。光学センサ内蔵灯具3004は、当該灯具3004の動作を制御する制御部3101を備えている。制御部3101は、車両制御部3と通信可能に接続されている。車両制御部3は、所定の条件を満たした場合に光学センサ内蔵灯具3004の点消灯を制御するための指示信号を生成して、当該指示信号を制御部3101に送信する。制御部3101は、受信した指示信号に基づいて、光学センサ内蔵灯具3004の動作を制御する。制御部3101で取得された情報および車両制御部3で取得された情報は、相互間で送受信される。
【0157】
カメラ(車載カメラ)6は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(相補型MOS)等の撮像素子を含むカメラである。カメラ6の撮像は、車両制御部3から送信される信号に基づいて制御される。カメラ6は、受光した可視光に基づいて画像を生成可能である。カメラ6は、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。赤外線カメラは、受光した赤外線に基づいて画像を生成可能である。
【0158】
図23は、光学センサ内蔵灯具3004の内部構成を示す模式図である。
図23に示すように、光学センサ内蔵灯具3004は、ハウジング3030と、第一光源3031と、第二光源3032と、回転リフレクタ3033(走査部の一例)と、投影レンズ3034と、赤外線センサ3035(光学センサの一例)と、第一基板3036と、第二基板3037と、を備えている。
【0159】
ハウジング3030は、前方側に開口部を有する本体部3030aと、本体部3030aの開口部を覆うように取り付けられた透明のアウタカバー3030bと、を有している。本体部3030aとアウタカバー3030bとによって形成される一つの灯室3030cの内部に、第一光源3031、第二光源3032、回転リフレクタ3033、投影レンズ3034、赤外線センサ3035等が収容されている。
【0160】
第一光源3031は、ドライバーが車両1の周囲を視認するため、またはカメラ6で撮像するための可視光を出射する。第一光源3031は複数のLED(Light Emitting Diode)で構成されている。第一光源3031(本実施形態では以下「可視光LED3031」と称する)は第一基板3036に搭載されている。可視光LED3031の点消灯は、制御部3101によって制御される。第一光源3031の詳しい構成は
図24で後述する。
【0161】
第二光源3032は、車両1の前方に存在する他車両等の対象物をセンシングするための光を出射する。第二光源3032は、第一光源3031が出射する光のピーク波長とは異なるピーク波長の光を出射する。本実施形態においては、第二光源3032は、可視光よりも波長が長い赤外線を出射する。第二光源3032はLD(Laser Diode)で構成されている。第二光源3032(本実施形態では以下「赤外線LD3032」と称する)は第二基板3037に搭載されている。赤外線LD3032の点消灯は、制御部3101によって制御される。赤外線LD3032の出射方向にはコリメートレンズ3038が設けられている。コリメートレンズ3038は、赤外線LD3032から出射された赤外線を平行光にさせる。
【0162】
第一光源3031は、車両1の前方を確認するための光を照射する光源として用いられるため広い範囲を照射することが求められる。これに対して、第二光源3032は、他車両等の対象物を検出するための光を照射する光源として用いられるため特定の領域を強い照度で照射することが求められる。このため、出射光の拡散度合いが比較的大きいLEDを第一光源3031として採用し、出射光の拡散度合いが小さいLDを第二光源3032として採用することが好ましい。
【0163】
回転リフレクタ3033は、可視光LED3031から出射された可視光、および赤外線LD3032から出射された赤外線を走査して灯具前方へ出射させる走査手段である。回転リフレクタ3033は、回転軸線R回りに回転する。回転リフレクタ3033は、回転軸線R回りに延びる軸部3033aと、軸部3033aから径方向に延びる複数枚(本例では3枚)のブレード3033b(反射部の一例)を備えている。各々のブレードのねじれ角度は互いに異なっている。ブレード3033bの表面が反射面とされている。この反射面は周方向に徐々に回転軸線Rに対する角度が変化する捩られた形状とされている。
【0164】
回転リフレクタ3033は、可視光LED3031から出射された可視光を灯具前方に向けて反射する部位と赤外線LD3032から出射された赤外線を灯具前方に向けて反射する部位とが同一の反射体(ブレード3033b)、または、一体となった反射体(ブレード3033b)とされている。回転リフレクタ3033の反射点は、投影レンズ3034の焦点近傍となるように設定されている。回転リフレクタ3033の動作は、制御部3101によって制御される。制御部3101は、可視光LED3031および赤外線LD3032の点灯タイミングと、回転リフレクタ3033の回転位相とを制御することにより、灯具前方の任意の領域に向けて可視光LED3031の可視光および赤外線LD3032の赤外線を出射させる。
【0165】
具体的には、可視光LED3031から出射された可視光が回転リフレクタ3033の反射面で反射されるときに、反射されて出射される方向が、回転リフレクタ3033の回転位相によって例えば左から右へ徐々に変化する。また、赤外線LD3032から出射された赤外線が回転リフレクタ3033の反射面で反射されるときに、反射されて出射される方向が、回転リフレクタ3033の回転位相によって左から右へ徐々に変化する。
【0166】
投影レンズ3034は、灯室3030c内に設けられている。投影レンズ3034はアウタカバー3030bと回転リフレクタ3033との間に設けられている。投影レンズ3034には、可視光LED3031および赤外線LD3032から出射し回転リフレクタ3033で反射された光が入射する。投影レンズ3034は、当該入射した可視光LED3031の可視光および赤外線LD3032の赤外線を灯具前方へ投影する。
【0167】
赤外線センサ3035は、赤外線を検出するフォトダイオード(PD)で構成されている。赤外線センサ3035は、検出した赤外線の強さに応じた信号を出力する。赤外線センサ3035は、検出された赤外線の強度が高いほど信号強度の高い信号を出力する。赤外線センサ3035は、赤外線LD3032から出射される赤外線のピーク波長に最も高い受光感度を有する。赤外線センサ3035は、赤外線LD3032から灯具前方に出射された赤外線の反射光を検出する。赤外線センサ3035が取得した反射光に関する情報は制御部3101に送信される。赤外線センサ3035の動作、例えば赤外線を検出するセンシング動作等は、制御部3101によって制御される。
【0168】
第一基板3036は、例えば、第一基板3036に搭載されている可視光LED3031の出射面が回転リフレクタ3033のブレード3033bに対向するように設けられている。第一基板3036は、可視光LED3031への給電機能を有している。第一基板3036は、第一基板3036に形成された給電パターンを介して可視光LED3031に電力を供給する。
第二基板3037は、例えば、第二基板3037に搭載されている赤外線LD3032の出射面が回転リフレクタ3033のブレード3033bに対向するように設けられている。第二基板3037は、赤外線LD3032への給電機能を有している。第二基板3037は、第二基板3037に形成された給電パターンを介して赤外線LD3032に電力を供給する。第二基板3037は、ブレード3033bから見て第一基板3036の後方に設けられている。
本実施形態においては、第一基板3036は第二基板3037と平行になるように設けられている。
【0169】
第一基板3036の可視光LED3031は、第二基板3037の赤外線LD3032よりも、投影レンズ3034の仮想焦点Fを通る焦点面Pに近い位置に設けられている。仮想焦点Fは、回転リフレクタ3033のブレード3033bで折り返されたときの投影レンズ3034の焦点を意味する。焦点面Pは、仮想焦点Fを通る面のうち赤外線LD3032の光軸に直交する面を意味する。
【0170】
図24は、可視光LED3031が搭載されている第一基板3036を、第一基板3036の正面側(可視光LED3031が搭載されている側)から見た図である。
図24に示すように、本実施形態では、6つの可視光LED3031が、第一基板3036上に設けられている。第一基板3036の中央部には、空隙部3039が設けられている。
【0171】
空隙部3039は、第一基板3036を貫通している。空隙部3039は、第二基板3037の赤外線LD3032から出射された赤外線を回転リフレクタ3033のブレード3033bへ向けて透過させることができる位置に設けられている。空隙部3039は、第二基板3037に搭載された赤外線LD3032の光軸上に設けられている。
図24に示したように、第一基板3036および第二基板3037を第二基板3037の鉛直方向から見ると、空隙部3039を介して赤外線LD3032が視認できる位置および大きさに、空隙部3039が設けられている。
【0172】
図25は、本実施形態の光学センサ内蔵灯具3004から出射される可視光および赤外線の照射範囲を示す模式図である。
図25に示す照射範囲は、例えば、光学センサ内蔵灯具3004の25m前方に設置された仮想鉛直スクリーンに表示される。
【0173】
範囲Q01,02,03は、第一基板3036の可視光LED3031から出射される可視光の照射範囲である。範囲Q01~03は、ドライバーが車両1の周囲を視認するため、またはカメラ6で撮像するために使用される照射範囲である。6つの可視光LED3031が点灯しているときに回転リフレクタ3033を回転させると、6つの可視光LED3031が可視光を照射する領域Q01aは左方から右方へ徐々に移動する。
範囲Q01は、可視光LED3031が点灯されてから回転リフレクタ3033が1/3回転するまでに可視光が照射される範囲である。回転リフレクタ3033の第一ブレードによって可視光LED3031から出射された可視光が反射され、範囲Q01に可視光がスイープされる。
範囲Q02は、可視光LED3031が点灯しているときに回転リフレクタ3033が1/3~2/3回転する間に可視光が照射される範囲である。回転リフレクタ3033の第二ブレードによって可視光LED3031から出射された可視光が反射され、範囲Q02に可視光がスイープされる。
範囲Q03は、可視光LED3031が点灯しているときに回転リフレクタ3033が2/3~1回転する間に可視光が照射される範囲である。回転リフレクタ3033の第三ブレードによって可視光LED3031から出射された可視光が反射され、範囲Q03に可視光がスイープされる。
範囲Q01~03は左右方向に延びる帯状の領域である。最も下に位置する範囲Q03は、H線を含む領域とすることが好ましい。制御部3101は、可視光LED3031の点灯タイミングと、回転リフレクタ3033の回転位相とを制御することにより、灯具前方の範囲Q01~03の任意の領域に可視光を照射させることができる。
【0174】
範囲Q11,Q12,Q13は第二基板3037の赤外線LD3032から出射される赤外線の照射範囲である。範囲Q11,Q12,Q13には、上述した範囲Q01~Q03と同様に、回転リフレクタ3033の回転位相に応じて赤外線LD3032の赤外線が照射される。
すなわち範囲Q11は、赤外線LD3032が点灯されてから回転リフレクタ3033が1/3回転するまでに赤外線が照射される範囲である。回転リフレクタ3033の第一ブレードによって赤外線LD3032から出射された赤外線が反射され、範囲Q11に赤外線がスイープされる。
範囲Q12は、赤外線LD3032が点灯しているときに回転リフレクタ3033が1/3~2/3回転する間に赤外線が照射される範囲である。回転リフレクタ3033の第二ブレードによって赤外線LD3032から出射された赤外線が反射され、範囲Q12に赤外線がスイープされる。
範囲Q13は、赤外線LD3032が点灯しているときに回転リフレクタ3033が2/3~1回転する間に赤外線が照射される範囲である。回転リフレクタ3033の第三ブレードによって赤外線LD3032から出射された赤外線が反射され、範囲Q13に赤外線がスイープされる。
範囲Q11~Q13は左右方向に延びる直線状の領域である。範囲Q11は範囲Q01の中に設けられ、範囲Q12は範囲Q02の中に設けられ、範囲Q13は範囲Q03の中に設けられることが好ましい。
範囲Q11~Q13の直線状領域は、鉛直方向に0.4度以上の上下幅を有していることが好ましい。制御部3101は、赤外線LD3032の点灯タイミングと、回転リフレクタ3033の回転位相とを制御することにより、範囲Q11~Q13の任意の位置に赤外線LD3032の赤外線を照射することができる。
【0175】
灯具前方に対向車などの物体が存在する場合には、赤外線LD3032から出射された赤外線が該物体によって反射され、赤外線センサ3035によって高い強度の反射光が検出される。回転リフレクタ3033の回転位相と、そのときに可視光および赤外線が出射される領域との関係がメモリに記録されている。制御部3101はこのメモリにアクセス可能とされている。制御部3101は、まず赤外線LD3032を点灯させて回転リフレクタ3033を回転させ、赤外線センサ3035の出力を取得する。制御部は、赤外線センサ3035が所定値以上の信号強度の信号を出力したとき、そのときの回転リフレクタ3033の回転位相を取得し、そのときに赤外線が照射されていた領域(位置)を特定する。制御部3101は、この特定された領域(位置)に物体が存在すると判定する。制御部3101は、赤外線センサ3035の出力の信号強度が所定値未満の場合には、対応する領域に物体は存在しないと判定する。
【0176】
図26は、制御部3101が可視光LED3031を制御することにより得られる配光パターンの一例を示している。
図26に示すような配光パターンを形成するために制御部3101は、以下のように制御する。
【0177】
制御部3101は、例えば
図26に示すように、可視光の照射範囲である範囲Q01~03内に他車両Zが存在すると判定した場合、他車両Zを含む所定の領域に減光領域Tを設定し、他の領域に通常領域Sを設定する。制御部3101は、可視光LED3031に第一電流値の電流を供給して、通常領域Sに向けて所定の照度で可視光を照射する。制御部3101は、可視光LED3031に第一電流値よりも小さい第二電流値の電流を供給して、減光領域Tに向けて通常領域Sよりも照度の低い可視光を照射する。これにより、他車両Zにグレアを与えず、かつ、より広い範囲を明るく照らす視認性の高い配光パターンが形成される。
【0178】
ところで、車両用の灯具においては、車両の前端部や後端部の右端部や左端部といったコーナー部などの屈曲した空間、あるいはグリルとボンネットの間などの狭小な空間等に灯具を構成する複数の部品を搭載する必要がある。一方で、車両用の灯具は、光源、反射部材、レンズ部材などで構成される光学系を、所望の像が得られるように設計する必要がある。このため、少なくとも検出対象物をセンシングするためのセンサ用光源を含む二種類の光源を備えた灯具においては、複数の光学系が必要になり灯具が大型化しやすく、車両への搭載性が低下する。
【0179】
これに対して本発明に係る光学センサ内蔵灯具3004は、車両の前方を照射する可視光LED3031が搭載された第一基板3036の後方に、他車両等の対象物をセンシングする赤外線LD3032が搭載された第二基板3037が配置され、第一基板3036に形成された空隙部3039を介して赤外線LD3032の赤外線が第一基板3036の前方へ透過されるように構成されている。これにより、可視光LED3031を含む光学系と、赤外線LD3032を含む光学系とを単一の光学系としてまとめることができ、可視光LED3031の可視光を反射させる回転リフレクタと当該可視光を投影させる投影レンズ3034とを、赤外線LD3032の赤外線を反射および投影させるそれらの部材と共通化することができる。また、光学センサ内蔵灯具3004内を単一の灯室3030cで構成することができる。したがって、二種類の光源を備えた光学センサ内蔵灯具3004においても、当該灯具3004が大型化するのを抑制することができ、車両1への搭載性を向上させることができる。
【0180】
また、第一基板3036に搭載された可視光LED3031は、第二基板3037に搭載された赤外線LD3032よりも、投影レンズ3034の仮想焦点Fを通る焦点面Pに近い位置に設けられている。このため、可視光LED3031から出射される可視光を灯具前方に拡散しないで照射させることができる。また、第一基板3036の後方に配置される第二基板3037には可視光LED3031よりも拡散しにくい赤外線LD3032が搭載されている。このため、赤外線LD3032が投影レンズ3034の焦点面Pから離れた位置に設けられていても、赤外線LD3032の赤外線を灯具前方に拡散しないで照射させることができる。
【0181】
また、赤外線LD3032には、赤外線LD3032から出射された赤外線を平行光にするコリメートレンズ3038が取り付けられている。このため、赤外線LD3032から出射される赤外線の指向性を高めることができ、特定の領域に絞って赤外線を照射することができるので、赤外線センサ3035の検出精度を高めることができる。
【0182】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0183】
上記実施形態では、第一基板3036の中央部に一つの空隙部3039が形成され、第二基板3037に一つの赤外線LD3032が搭載されているが、これに限られない。例えば、第一基板3036に複数の空隙部3039を設け、第一基板3036の正面視でこれらの空隙部3039の各々から赤外線LD3032が視認されるように構成してもよい。あるいは、第一基板3036の正面視で、単一の空隙部3039から複数の赤外線LD3032が視認されるように構成してもよい。
【0184】
また、上記実施形態では、第二光源3032を赤外線LDで構成しているが、これに限られない。例えば、第二光源3032は赤外線を照射するLEDで構成されてもよい。
【0185】
また、上記実施形態では、第一光源3031を可視光LEDで構成し、第二光源3032を赤外線LDで構成しているが、これに限られない。例えば、第一光源3031を赤外線LEDで構成し、第二光源3032は、第一光源3031が出射する赤外線のピーク波長とは異なる波長にピークを有する赤外線LDで構成してもよい。この場合、赤外線LEDから灯具前方に出射される赤外線の反射光に応じた画像が赤外線カメラによって撮像される。赤外線カメラは、赤外線LEDから出射される赤外線のピーク波長に最も高い感度を有する。また、赤外線LD3032から灯具前方に出射される赤外線の反射光が赤外線センサ3035によって検出される。赤外線センサ3035は、赤外線LD3032から出射される赤外線のピーク波長に最も高い感度を有する。制御部3101は、赤外線センサ3035から出力される信号に応じて、赤外線カメラの撮像に適した配光パターンとなるように赤外線LEDを制御する。例えば、制御部3101は、他車両が検出された領域に減光領域を設定して、赤外線カメラの画像のうち他車両に該当する部位にハレーションが生じることを抑制することができる。
【0186】
本出願は、2019年9月19日出願の日本特許出願(特願2019-170540)、2019年9月19日出願の日本特許出願(特願2019-170541)、2019年10月3日出願の日本特許出願(特願2019-183066)および2019年10月3日出願の日本特許出願(特願2019-183067)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0187】
本発明によれば、赤外線カメラの画像にハレーションが生じることを抑制しつつ赤外線の反射強度の低い物体も検出可能な車両用赤外線灯具システムを提供することができる。