(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】製剤
(51)【国際特許分類】
A01N 37/42 20060101AFI20240603BHJP
A01N 33/12 20060101ALI20240603BHJP
A01N 43/40 20060101ALI20240603BHJP
A01N 25/04 20060101ALI20240603BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
A01N37/42
A01N33/12 101
A01N43/40 101P
A01N25/04 101
A01P21/00
(21)【出願番号】P 2021549245
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 EP2020052725
(87)【国際公開番号】W WO2020173675
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-02
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520222106
【氏名又は名称】シンジェンタ クロップ プロテクション アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100218578
【氏名又は名称】河井 愛美
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ トーマス
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/075646(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N,A01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)農薬Aを含む水相と、
(ii)農薬Bを含む油相と
を含むエマルションであって、
前記相(i)が前記相(ii)中に分散されるか、又は前記相(ii)が前記相(i)中に分散されるかのいずれかであり、
前記農薬Aが、メピコートの塩及びクロルメコートの塩並びにこのような塩の混合物から選択され、
前記農薬Bが、トリネキサパックエチルであるが、
ただし前記エマルションがマイクロエマルションではな
く、
前記農薬Aの濃度が、200g/L~600g/Lであり、並びに
前記農薬Bの濃度が、25g/L~150g/Lである、エマルション。
【請求項2】
前記相(ii)が前記相(i)中に分散される、請求項1に記載のエマルション。
【請求項3】
前記農薬Aがメピコートクロリド又はクロルメコートクロリドである、請求項1又は2に記載のエマルション。
【請求項4】
乳化剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記相(i)と前記相(ii)との間の界面において固体粒子をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記農薬Aの濃度が
225g/l~
500g/lである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記農薬Bの濃度が
33g/l~150g/lである、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
(i)農薬Aを含む水相と、
(ii)農薬Bを含む油相と
を含むエマルションに関し、ここで、相(i)が相(ii)中に分散されるか、又は相(ii)が相(i)中に分散されるかのいずれかであり、農薬Aは、メピコートの塩及びクロルメコートの塩並びにこのような塩の混合物から選択され、農薬Bは、トリネキサパックエチルであるが、ただしエマルションはマイクロエマルションではない。また、レディミックスエマルションであるこのようなエマルション;植物成長を調節するためのこのようなエマルションの使用;並びに作物植物の倒伏を防止及び/又は低減するためのこのようなエマルションの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2015/075646号には、トリネキサパックエチル及びクロルメコートクロリドを含むレディミックスマイクロエマルションが開示される。しかしながら、このようなマイクロエマルションにおいて、トリネキサパックエチルは不十分な化学安定性を示し、貯蔵試験中に著しく分解し得ることが見出されている;改善された化学安定性を有する代替の製剤を提供するという問題が当業者に提示される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
驚くことに、特定のエマルション(マイクロエマルションではない)は、トリネキサパックエチルの劇的に改善された化学安定性を示すことがここで見出された。
【発明を実施するための形態】
【0004】
したがって、本発明は、
(i)農薬Aを含む水相と、
(ii)農薬Bを含む油相と
を含むエマルションを提供し、ここで、相(i)が相(ii)中に分散されるか、又は相(ii)が相(i)中に分散されるかのいずれかであり、農薬Aは、メピコートの塩及びクロルメコートの塩並びにこのような塩の混合物から選択され、農薬Bは、トリネキサパックエチルであるが、ただしエマルションはマイクロエマルションではない。
【0005】
エマルションは、可溶性乳化剤によって、固体粒子によって、又は可溶性乳化剤及び固体粒子の組合せによって安定化され得る。
【0006】
相(i)が相(ii)中に分散される場合、エマルションは油中水エマルション(EO)であり、相(ii)が相(i)中に分散される場合、エマルションは水中油エマルション(EW)である。
【0007】
適切には、相(ii)が相(i)中に分散され、エマルションは水中油エマルション(EW)である。
【0008】
好ましくは、農薬Aはメピコートクロリド及びクロルメコートクロリドから選択され、より好ましくは、メピコートクロリドである。
【0009】
農薬Bはトリネキサパックエチルである。
【0010】
エマルションは、1つの液体の、第2の液体連続相中の分散液であり、ここで、関係する2つの液体は本質的に非混和性であるか、又は限られた相互混和性を有する。エマルションを形成するために、十分なエネルギーを供給して1つの相を、第2の相中に分散される液滴に分裂させながら、2つの非混和性相が混合される。エネルギー入力は、攪拌、超音波、又は狭いオリフィスを通して繰り返される強制流などの様々な形態で行うことができる。
【0011】
エマルションの安定性又は不安定性における基本的要因は、分散された液体の液滴と、他方の連続液体相との間の界面張力(すなわち自由エネルギー)の度合いである。
【0012】
比較すると、マイクロエマルションは、水に非混和性の有機溶液、水、及び界面活性剤の熱力学的に安定な等方性液体混合物であり、ここで、マイクロエマルションは、成分を単純混合すると自然に形成される(国際公開第2015/075646号)。
【0013】
界面張力があまり良好でないために、水中油(EW)及び油中水(EO)エマルションは熱力学的に不安定であり、時間と共に合体し、相分離を引き起こすことになる。エマルション液滴の合体を遅くするために、エマルション液滴は、乳化剤の添加によって安定化させることができる。このような乳化剤は、界面活性剤、ポリマー、又は液体/液体界面に吸着する固体粒子であり得る。乳化剤は相間の界面張力を低下させ、エマルション液滴の形成を促進する。また乳化剤は、エマルション液滴が合体するのを防止する物理的バリアも形成する。
【0014】
コロイド固体は、液体-液体界面に吸着することによって、分散したエマルション液滴を安定化させ得る(すなわち、本発明において、エマルションは、相(i)と相(ii)との間の界面に固体粒子をさらに含み得る)。このようなエマルションはピッカリングエマルションである。コロイド固体は、エマルション液滴の表面を被覆できるように十分に小さくなければならない。コロイド固体は、液体-液体界面に吸着し、それによりエマルションを安定化することができるように、分散相及び連続相を形成する両方の液体に対して十分な親和性を有さなければならない。本発明のあらゆるピッカリングエマルションのためのコロイド安定剤として、カーボンブラック、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、製剤中に存在する成分のいずれにも不溶性のポリマー、シリカ及びクレイを含む様々な種類の固体材料が使用され得る。コロイドクレイ粒子は架橋されていてもよい。
【0015】
コロイド固体の特定の例としては、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、沈降シリカ及びヒュームドシリカ、天然及び合成クレイ、例えば、アタパルジャイト、カオリナイト及びLaponite(登録商標)、並びにこれらの混合物が挙げられる。コロイド固体は表面修飾されていてもよく、例えば、ジメチルジクロロシラン、ヘキサデシルシラン又は酸化アルミニウムの存在によって、或いはアルカン修飾(alkane decoration)によって修飾されたヒュームドシリカ又は沈降シリカである。
【0016】
またピッカリングエマルションは、解膠剤(例えば、Sokalan(登録商標)PA30CL)も含み得る。
【0017】
架橋ピッカリングエマルションは、保持助剤(例えば、Pluronic(登録商標)6400)も含み得る。
【0018】
本発明においてコロイド安定剤として使用するのに適したポリマーは、前記繊維上に表面活性特性を付与するように修飾された高分子繊維を含む。
【0019】
界面活性剤は、水の表面張力を低下させる化合物である。界面活性剤の例は、イオン性(アニオン性、カチオン性又は両性)及び非イオン性の界面活性剤である。界面活性剤も乳化剤として使用することができる。本発明に従うエマルションは、通常、少なくとも1つの界面活性剤(1つ、2つ、3つ又はそれ以上の界面活性剤)を含む。
【0020】
適切なイオン性界面活性剤は、芳香族スルホン酸、例えば、リグノスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、又は脂肪酸のアルカリ、アルカリ土類及びアンモニウム塩、アルキル-及びアルキルアリールスルホネート、アルキルスルファート、ラウリルエーテルスルファート、及び脂肪アルコールスルファート、並びに硫酸化ヘキサ-、へプタ-及びオクタ-デカノールの塩、及び脂肪アルコールグリコールエーテルの塩、スルホン化ナフタレン及びその誘導体とホルムアルデヒドとの縮合物、ナフタレン又はナフタレンスルホン酸とフェノール及びホルムアルデヒドとの縮合物、アルコキシル化アルコールのポリカルボン酸又はリン酸エステルである。
【0021】
適切な非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、アルコキシル化アルコール、例えば、エトキシル化イソオクチル-、オクチル-又はノニル-フェノール、アルキルフェニルポリグリコールエーテル、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、イソトリデシルアルコール、脂肪アルコール/エチレンオキシド縮合物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセテート、ソルビトールエステル、リグニン-亜硫酸廃液、及びタンパク質、変性タンパク質、多糖類(例えば、メチルセルロース)、疎水的加工デンプン、ポリビニルアルコール(例えば、Mowiol(登録商標))、ポリアルコキシレート、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、並びにこれらのコポリマー又はブロックポリマーである。
【0022】
好ましい非イオン性界面活性剤は、ポリビニルアルコールである。特に好ましいのは、ポリ酢酸ビニルのけん化によって調製されたポリビニルアルコールであり、けん化の度合いは少なくとも60%であるが、好ましくは80~95%である。この種の適切な製品は、Mowiol(登録商標)という登録商標で市販されているものである。特に好ましいポリビニルアルコールは、約31,000ダルトンの分子量、及び86.7~88.7mol%のけん化度を有するMowiol(登録商標)4-88である。
【0023】
油相は、水に実質的に溶解しない又は水と混和しない液体を含む。油相として使用するのに適した油の例としては、植物油、メチル化植物油、芳香族油及び炭化水素溶媒(例えば、芳香族化合物又は脂肪族エステル)が挙げられるが、これらに限定されない。農薬Bはそれ自体が油であってもよいし、又は疎水性溶媒中に可溶化されて油相を形成してもよいし、又は油相中に分散されるか、若しくは本発明の油及び水相の界面に吸収されてもよい。
【0024】
本発明のエマルションは、任意に、オストワルド熟成阻害剤を含有する。本発明での使用に適したオストワルド熟成阻害剤は、分散相中に可溶性又は混和性であるか、或いはそれ自体が、連続相中に実質的に不溶性である少なくとも1つの有効成分を含有する分散相としての役割を果たすか、或いはコロイド固体として、連続相と分散相の間の液体-液体界面に吸着された有効成分を有する。オストワルド熟成阻害剤は、連続相よりも分散相に対してより親和性を有さなければならない。水中油エマルションのために適切なオストワルド熟成阻害剤には、溶媒、例えば、植物油、メチル化植物油、鉱油、液体炭化水素溶媒、及び少なくとも200ダルトンの分子量、好ましくは少なくとも400ダルトンの分子量を有するポリマー又はオリゴマーが含まれる。適切なポリマーの例は、スチレン、アルキルスチレン、イソプレン、ブテン、ブタジエン、アクリロニトリル、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン及びビニルエステルのポリマー及びコポリマーである。
【0025】
エマルション液滴を安定化させるために、コロイド固体と組み合わせて高分子共安定剤(co-stabiliser)が使用されてもよい。本発明において有用な高分子共安定剤は十分に高い分子量を有する水溶性ポリマーであり、これらは、pH、温度又は電解質濃度の特定の条件下で可溶性であり、これらのパラメータの1つ又は複数が変更されたときにその溶解度の低下を示し、溶解度の低下は、固体コロイド粒子の軟凝集を引き起こすのに十分である。ポリマーの溶解度は、ポリエチレンオキシドを含み得るがこれに限定されないpH感受性基、又はポリアクリル酸及びポリエチレンを含み得るがこれらに限定されない電解質依存性基(この場合、ポリマーは、高電解質強度において溶解性が低くなる)によって制御することができる。代表的な高分子共安定剤には、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アクリルグラフトポリマー及びポリビニルアルコールが含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
通常、農薬Bは、25g/l~150g/l、適切には33g/l~100g/lでエマルション中に存在し得る。
【0027】
通常、農薬Aは、200g/l~600g/l、適切には225g/l~500g/lでエマルション中に存在し得る。
【0028】
適切には、トリネキサパックエチルは50g/l~100g/lでエマルション中に存在し、メピコートクロリドは225g/l~450g/lでエマルション中に存在する。
【0029】
適切には、トリネキサパックエチルは33g/l~50g/lでエマルション中に存在し、クロルメコートクロリドは400~600g/l(好ましくは、500g/l)でエマルション中に存在する。
【0030】
一般に、任意の農薬有効成分(農薬A又は農薬B)は、約0.000001%~約90%w/w、好ましくは約0.001%~約90%w/wの濃度で存在し得る。本発明の農薬組成物は、すぐに使用できる製剤の形態であっても、或いはエンドユーザーによるさらなる希釈に適した濃縮形態であってもよく、農薬の濃度並びに(i)及び(ii)のブレンドは、それに応じて調整され得る。濃縮形態において、本発明の組成物は通常、農薬A及び農薬Bを、それぞれ組成物全体の1%~90%w/w、より好ましくは2%~75%w/w、さらにより好ましくは3%~50%w/wで独立して含有する。
【0031】
本発明の組成物は、農業従事者の水のスプレータンクに添加するように設計された濃縮物に関連してもよいし、或いはさらに希釈することなく直接適用されてもよい。また本発明は、農業従事者の水のスプレータンク内で、濃縮物がスプレータンク内の水と混合されたときに生じる組成物にも関する。
【0032】
本発明の組成物は、粘度調整剤、消泡剤、抗菌剤、着色剤又は香料などの他の成分を含んでいてもよい。
【0033】
本発明の組成物は、単一の容器内にパッケージ化されたレディミックスエマルション製剤の形態であってもよく、希釈の直後にすぐに使用することができる。
【0034】
また本発明は、エマルション重合によって調製されるカプセル懸濁液製剤も企図する。
【0035】
本発明の組成物は、1つ又は複数の植物に有効量の本組成物を適用することを含む、植物成長を調節するための方法において使用され得る。
【0036】
本発明の組成物は、1つ又は複数の植物に有効量の本組成物を適用することを含む、作物植物の倒伏を防止及び/又は低減するための方法において使用され得る。
【0037】
本発明の組成物は、1つ又は複数の植物に有効量の本組成物を適用することを含む、根系を強化するための方法において使用され得る。
【0038】
上記の方法は、菜種、又は好ましくは、穀草、イネ、トウモロコシ及びサトウキビから選択される単子葉植物である1つ又は複数の植物を含み得る。より好ましくは、植物は穀草植物である。
【0039】
上記の方法は、有効量の組成物が0.5~5l/ha、より適切には1~3l/haの量で適用されることを含み得る。
【0040】
以下の実施例は、本発明に従うエマルションに関連する改善された化学安定性を実証する。他に明言されない限り、全ての濃度及び比率は重量による。
【実施例】
【0041】
実施例1
この実施例は、本発明に従ってトリネキサパックエチル(100g/lの濃度)及びクロルメコートクロリド(450g/lの濃度)を含むエマルションを提供する。
【0042】
エマルションA:100mlの容器にクロルメコートクロリド(36.7g)及び水(27.4g)を入れた。クロルメコートクロリドが完全に溶解するまで、混合物をパドルスターラーで攪拌した。Imerys(登録商標)RLO7645クレイ(8.0g)を添加し、パドルスターラーによる攪拌によって混ぜ入れた。25℃未満の温度を維持しながら、Silverson(登録商標)高せん断ミキサー(5000rpm)を用いて、Solvesso(登録商標)200ND中のトリネキサパックエチルの50%w/w溶液(16.0g)を混ぜ入れた。10分以内に、均質なエマルションが形成された。
【0043】
エマルションB:100mlの容器にクロルメコートクロリド(36.7g)及び水(27.4g)を入れた。クロルメコートクロリドが完全に溶解するまで、混合物をパドルスターラーで攪拌した。水中のMowiol(登録商標)4-88の20%w/w溶液(8.1g)を添加した。パドルスターラーで攪拌することによって混合物を均質にした。25℃未満の温度を維持しながら、Silverson(登録商標)高せん断ミキサー(5000rpm)を用いて、Solvesso(登録商標)200ND中のトリネキサパックエチルの50%w/w溶液(16.0g)を混ぜ入れた。10分以内に、均質なエマルションが形成された。
【0044】
実施例2
この実施例は、本発明に従ってトリネキサパックエチル(100g/lの濃度)及びメピコートクロリド(450g/lの濃度)を含むエマルションを提供する。
【0045】
エマルションC:380mlの容器にメピコートクロリド(114.2g)及び水(60.8g)を入れた。メピコートクロリドが完全に溶解するまで、混合物をパドルスターラーで攪拌した。パドルスターラーを用いてImerys(登録商標)RLO7645クレイ(25.4g)を混ぜ入れた。25℃未満の温度を維持しながら、Silverson(登録商標)高せん断ミキサー(5000rpm)を用いてクレイを5分間分散させた。高せん断混合(5000rpm)を継続しながら、Solvesso(登録商標)200ND中のトリネキサパックエチルの50%w/w溶液(49.9g)を添加した。5分後に、均質なエマルションが形成された。水(15.8g)の添加により濃度を調整した。パドルスターラーで2時間攪拌することにより、製剤を均質にした。
【0046】
エマルションD:250mlの容器にメピコートクロリド(68.9g)及び水(46.0g)を入れた。メピコートクロリドが完全に溶解するまで、混合物をパドルスターラーで攪拌した。水中のMowiol(登録商標)4-88の20%w/w溶液(15.1g)を添加し、混合物をパドルスターラーで10分間攪拌した。25℃未満の温度を維持しながら、Silverson(登録商標)高せん断ミキサー(5000rpm)を用いて、Solvesso(登録商標)200ND中のトリネキサパックエチルの50%w/w溶液(30.1g)を混ぜ入れた。10分後に、均質なエマルションが形成された。
【0047】
実施例3
これは比較例である。
【0048】
マイクロエマルションE:国際公開第2015/075646号の18頁、表1に従って、トリネキサパックエチル(2.14%w/wの濃度)及びクロルメコートクロリド(25%w/wの濃度)を含むマイクロエマルションを調製した。
【0049】
溶液F:使用前にトリネキサパックエチルを50℃で溶融させた。150mlのガラス瓶にメピコートクロリド(28.7g)、水(6.9g)、エタノール(69.1g)、及びトリネキサパックエチル(6.6g)を入れた。ガラス瓶をローラー上に16時間放置した。この間に、均質な透明溶液が生じた。
【0050】
溶液G:使用前にトリネキサパックエチルを50℃で溶融させた。150mlのガラス瓶にメピコートクロリド(28.7g)、水(6.4g)、1,2-プロピレングリコール(91.0g)、及びトリネキサパックエチル(6.6g)を入れた。ガラス瓶をローラー上に16時間放置した。この間に、均質な透明溶液が生じた。
【0051】
実施例4
この実施例は、クロルメコートクロリドの存在下でのトリネキサパックエチルの安定性を説明する。
【0052】
上記の実施例に従うエマルション及び比較マイクロエマルションに、標準分析技術を用いてトリネキサパックエチルの化学安定性が測定される促進貯蔵試験(54℃で2週間)を行った。-18℃で貯蔵した基準サンプルと比較して残存するトリネキサパックエチルの濃度は百分率として以下の表1に示され、表には、トリネキサパックエチル[TXP]及びクロルメコートクロリド[CCC]のg/l濃度が示されている。
【0053】
【0054】
トリネキサパックエチルは、マイクロエマルション中よりも本発明に従うエマルション製剤中で著しく化学的により安定であった。
【0055】
実施例5
この実施例は、メピコートクロリドの存在下でのトリネキサパックエチルの安定性を説明する。
【0056】
上記の実施例に従うエマルション及び比較溶液に、標準分析技術を用いてトリネキサパックエチルの化学安定性が測定される促進貯蔵試験(54℃で2週間)を行った。-18℃で貯蔵した基準サンプルと比較して残存するトリネキサパックエチルの濃度は百分率として以下の表2に示され、表には、トリネキサパックエチル[TXP]及びメピコートクロリド[MPQ]のg/l濃度が示されている。
【0057】
【0058】
トリネキサパックエチルは、溶液中よりも本発明に従うエマルション製剤中で著しく化学的により安定であった。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕(i)農薬Aを含む水相と、
(ii)農薬Bを含む油相と
を含むエマルションであって、
前記相(i)が前記相(ii)中に分散されるか、又は前記相(ii)が前記相(i)中に分散されるかのいずれかであり、
前記農薬Aが、メピコートの塩及びクロルメコートの塩並びにこのような塩の混合物から選択され、
前記農薬Bが、トリネキサパックエチルであるが、
ただし前記エマルションがマイクロエマルションではない、エマルション。
〔2〕前記相(ii)が前記相(i)中に分散される、前記〔1〕に記載のエマルション。
〔3〕前記農薬Aがメピコートクロリド又はクロルメコートクロリドである、前記〔1〕又は〔2〕に記載のエマルション。
〔4〕乳化剤をさらに含む、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔5〕前記相(i)と前記相(ii)との間の界面において固体粒子をさらに含む、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔6〕前記農薬Aの濃度が200g/l~600g/lである、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔7〕前記農薬Bの濃度が25g/l~150g/lである、前記〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の組成物。