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特許7497398情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/60 20170101AFI20240603BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240603BHJP
   G06V 10/00 20220101ALI20240603BHJP
   G06V 20/58 20220101ALI20240603BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
G06T7/60 200J
G06T7/00 650A
G06V10/00
G06V20/58
G08G1/16 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022152284
(22)【出願日】2022-09-26
(65)【公開番号】P2024046916
(43)【公開日】2024-04-05
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 康司
(72)【発明者】
【氏名】藤本 知之
(72)【発明者】
【氏名】橋 恵太
(72)【発明者】
【氏名】小笹 隆幸
【審査官】新井 則和
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-188914(JP,A)
【文献】特開2011-154480(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112001235(CN,A)
【文献】特開2018-092501(JP,A)
【文献】特開2011-192164(JP,A)
【文献】山田 健太郎, 奥平 雅士,スマートフォン画像と空中写真を用いた視覚障碍者向け横断歩道抽出方式に関する検討,映像情報メディア学会技術報告 Vol.39 No.8,2015年02月28日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/60
G06T 7/00
G06V 10/00
G06V 20/58
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載カメラのカメラ画像に映る複数の線素から、始点位置および終点位置がそれぞれ前記カメラ画像上の奥行き方向において揃っており互いに平行な複数の線素を含む線素グループを抽出し、
前記線素グループにおいて、一定間隔の線素の数が所定数以上であり、かつ、始点間隔が横断歩道の規格寸法を基準とする所定範囲内である線素の組が所定値以上ある場合、前記線素グループは横断歩道であると判定する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記カメラ画像上の直線状のエッジを線素として抽出し、
前記カメラ画像上の奥行き方向につき手前側の一端である始点が車両に最も近い線素を基準線素として抽出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記線素グループにつき、前記始点位置が前記基準線素の前記始点を基準とする所定範囲内である線素を抽出する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記線素グループにつき、前記終点位置が前記基準線素の終点を基準とする所定範囲内である線素を抽出する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記線素グループにつき、前記奥行きの長さが所定範囲内の長さである線素を抽出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記線素グループにつき、平行度を示す前記基準線素との角度差が所定範囲内である線素を抽出する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記線素グループにつき、前記始点の横方向間隔である始点間隔が所定値未満である複数の線素を1本の線素として抽出する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記一定間隔の線素は、前記始点間隔が前記横断歩道の規格寸法を基準とする所定範囲内の線素である、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
車載カメラのカメラ画像に映る複数の線素から、始点位置および終点位置がそれぞれ前記カメラ画像上の奥行き方向において揃っており互いに平行な複数の線素を含む線素グループを抽出することと、
前記線素グループにおいて、一定間隔の線素の数が所定数以上であり、かつ、始点間隔が横断歩道の規格寸法を基準とする所定範囲内である線素の組が所定値以上ある場合、前記線素グループは横断歩道であると判定することと、
を含む、情報処理方法。
【請求項10】
車載カメラのカメラ画像に映る複数の線素から、始点位置および終点位置がそれぞれ前記カメラ画像上の奥行き方向において揃っており互いに平行な複数の線素を含む線素グループを抽出すること、
前記線素グループにおいて、一定間隔の線素の数が所定数以上であり、かつ、始点間隔が横断歩道の規格寸法を基準とする所定範囲内である線素の組が所定値以上ある場合、前記線素グループは横断歩道であると判定すること、
をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載カメラによるカメラ画像に基づいて自車走行レーンの左右を区画する車線を検出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-090584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術には、車線の誤検出を防止するうえで、さらなる改善の余地がある。
【0005】
例えば、交差点周辺は車線以外の路面標示が多数存在する。このような路面標示のうち、特に横断歩道は車線に近い位置に車線と平行な複数の線分が存在するため、車線の誤検出を招くおそれがある。
【0006】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、車線の誤検出を防止することができる情報処理装置、情報処理方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る情報処理装置は、車載カメラのカメラ画像に映る複数の線素から、始点位置および終点位置がそれぞれ前記カメラ画像上の奥行き方向において揃っており互いに平行な複数の線素を含む線素グループを抽出し、前記線素グループにおいて、一定間隔の線素の数が所定数以上であり、かつ、始点間隔が横断歩道の規格寸法を基準とする所定範囲内である線素の組が所定値以上ある場合、前記線素グループは横断歩道であると判定する。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様によれば、車線の誤検出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る車線検出方法の説明図(その1)である。
図2図2は、実施形態に係る車線検出方法の説明図(その2)である。
図3図3は、実施形態に係る車載装置の構成例を示すブロック図である。
図4図4は、車線検出処理部の構成例を示すブロック図である。
図5図5は、線素グループの抽出条件の説明図である。
図6図6は、横断歩道の判定条件の説明図である。
図7図7は、除外処理の変形例を示す図(その1)である。
図8図8は、除外処理の変形例を示す図(その2)である。
図9図9は、除外処理の変形例を示す図(その3)である。
図10図10は、実施形態に係る車載装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する情報処理装置、情報処理方法およびプログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
また、以下では、実施形態に係る情報処理装置が、車両に搭載される車載装置10(図3参照)である場合を例に挙げて説明を行う。車載装置10は、例えばドライブレコーダである。また、以下では、実施形態に係る情報処理方法が、車載装置10の実行する車線検出方法であるものとする。
【0012】
また、以下では、「平行」と言った場合、厳密な平行状態を指すのではなく、ほぼ平行である場合を広く含むものとする。
【0013】
また、以下では、「所定」と言った場合、「予め決められた」と言い換えてもよい。例えば、「所定値」は「予め決められた値」と言い換えてもよい。
【0014】
また、以下では、「車線」と言った場合、区画線自体を指すものとする。区画線自体ではなく、区画線に挟まれた車両の走行範囲を指す場合は、「走行車線」と表記する。
【0015】
まず、実施形態に係る車線検出方法の概要について、図1および図2を用いて説明する。図1および図2は、実施形態に係る車線検出方法の説明図(その1)および(その2)である。
【0016】
車載装置10は、車載カメラであるカメラ11(図3参照)を有する。車載装置10は、カメラ11によって撮像されたカメラ画像に基づいて車線検出処理を実行する。車線検出処理では、車載装置10は、車両が走行する自車走行レーンの左右を区画する区画線である車線を検出する。
【0017】
車載装置10を含む車載システムは、車載装置10による車線の検出結果および検出された車線から推定される車線位置と自車位置の距離等に基づいて、車線変更判定機能や、車線逸脱防止支援機能や、車線維持支援機能といった各種の機能を実現することができる。
【0018】
車線検出処理では、車載装置10は、カメラ画像の画素を2値化し、線素を抽出する。線素は、例えば区画線部分と路面部分の境界線として現れる線分である。言い換えれば、線素は、カメラ画像上の直線状のエッジである。そして、車載装置10は、抽出した線素群である車線候補のうちから基準となる車線を選定し、カメラ画像のフレーム間における同一性判定を経て車線を検出する。
【0019】
ところで、線素は車線以外の区画線部分と路面部分との境界線としても現れる。例えば、図1には、交差点付近で線素として抽出された横断歩道のエッジ部分である線素#1~#14を表している。
【0020】
車線検出処理では、それまでに推定した車線の信頼度や連続性を判定することで、ある程度の誤検出要因を処理対象から除外することはできる。ただし、横断歩道は、自車走行レーンの車線に近い位置に図1に示すように実空間において車線と平行な複数の線素が抽出されるため、信頼度や連続性の判定だけでは処理対象から除外することが難しく、車線の誤検出を招くおそれがある。
【0021】
言い換えれば、図1の例の場合で、線素#1~#14の並び方の特徴から横断歩道を検出し、当該横断歩道と見なす横断歩道領域ER内の線素#1~#14を処理対象から除外することができれば、横断歩道による車線の誤検出を防止することができる。
【0022】
そこで、実施形態に係る車線検出方法では、車載装置10のコントローラ13(図3参照)が、各線素の奥行きの長さ、始点位置、終点位置、平行度、始点間隔に基づいて線素グループを抽出することとした。そして、コントローラ13は、線素グループの各線素が横断歩道の特徴に対応する線素の数、線素の位置、始点間隔の各要件をすべて満たすならば、線素グループの各線素を横断歩道であると判定することとした。
【0023】
図2は、図1に示した車載カメラのカメラ画像をワールド座標系に射影した状態を模式的に表している。X軸方向は奥行方向であり、X軸の正方向が車両から遠ざかる方向である。
【0024】
図2に示すように、実施形態に係る車線検出方法では、コントローラ13が、抽出された各線素の奥行きの長さDL、始点位置SP、終点位置EP、平行度AD、始点間隔SIに基づいて線素グループを抽出する(ステップS1)。
【0025】
車両から見て手前側の線素の一端が始点となり、他端が終点となる。コントローラ13は、始点のX軸位置が近い順に線素を探索し、始点のX軸位置が最も近い線素を基準線素とする。図2の例では、線素#7が基準線素となる。
【0026】
ステップS1では、コントローラ13は、奥行きの長さDLが所定範囲内の長さであり、始点が基準線素の始点を基準とする始点位置SPの範囲内にあり、終点が基準線素の終点を基準とする終点位置EPの範囲内にあり、基準線素との平行度ADが平行に近い各線素を抽出して線素グループとしてグループ化する。始点同士のY軸方向の間隔である始点間隔SIが所定値未満の線素群は1つの線素として取り扱う。
【0027】
なお、始点が始点位置SPの範囲内にあることは、各線素の始点の位置がある程度揃っていることを示す。同様に、終点が終点位置EPの範囲内にあることは、各線素の終点の位置がある程度揃っていることを示す。
【0028】
そして、コントローラ13は、線素グループの各線素が線素の数、線素の位置、線素の間隔(始点間隔SIに相当)の各要件をすべて満たすならば、横断歩道であると判定する(ステップS2)。ステップS2では、コントローラ13は、線素の数が所定値以上であり、線素が車両の走行車線中央の一定範囲CWの位置に所定値以上あり、始点間隔SIが横断歩道の規格寸法に近い間隔である場合に、線素グループ内の各線素を横断歩道と判定する。
【0029】
図2では、ステップS1およびステップS2を経て線素#1~#14が横断歩道と判定された例を示している。前述の各要件における具体的な数値の例については、図5および図6を用いて後述する。
【0030】
そして、コントローラ13は、横断歩道として判定された各線素を車線検出処理の処理対象から除外する。この除外処理の具体例については、図7図9等を用いた説明で後述する。
【0031】
このように、実施形態に係る車線検出方法では、コントローラ13が、各線素の奥行きの長さDL、始点位置SP、終点位置EP、平行度AD、始点間隔SIに基づいて線素グループを抽出する。そして、コントローラ13は、線素グループの各線素が線素の数、線素の位置、線素の間隔の各要件をすべて満たす場合に、横断歩道であると判定する。
【0032】
すなわち、コントローラ13は、線素の並び方の特徴から横断歩道を検出する。また、コントローラ13は、横断歩道として検出された各線素を車線検出処理の処理対象から除外する。
【0033】
したがって、実施形態に係る車線検出方法によれば、横断歩道による車線の誤検出を防止することができる。以下、上述した車線検出方法を適用した車載装置10の構成例について、より具体的に説明する。
【0034】
図3は、実施形態に係る車載装置10の構成例を示すブロック図である。また、図4は、車線検出処理部13bの構成例を示すブロック図である。なお、図3および図4では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0035】
換言すれば、図3および図4に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、各ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0036】
また、図3および図4を用いた説明では、既に説明済みの構成要素については、説明を簡略するか、説明を省略する場合がある。
【0037】
図3に示すように、実施形態に係る車載装置10は、カメラ11と、記憶部12と、コントローラ13とを有する。
【0038】
カメラ11は、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を備え、この撮像素子を用いて予め決められた撮像範囲を撮像する。カメラ11は、例えばフロントガラスやダッシュボード等の車両の各所に車両前方の所定の撮像範囲を撮像するように取り付けられる。
【0039】
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の記憶デバイスによって実現され、図3の例では、条件情報12aを記憶する。
【0040】
条件情報12aは、線素の並び方の特徴から横断歩道を検出するための要件である線素グループの抽出条件および横断歩道の判定条件を定めた情報である。これらの条件の詳細については図5および図6を用いた説明で後述する。
【0041】
コントローラ(controller)13は、いわゆるプロセッサや制御部に相当する。コントローラ13は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、記憶部12に記憶されている図示略の実施形態に係るプログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、コントローラ13は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現することができる。
【0042】
コントローラ13は、取得部13aと、車線検出処理部13bとを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。
【0043】
取得部13aは、カメラ11によって撮像されたカメラ画像を取得し、車線検出処理部13bへ出力する。
【0044】
車線検出処理部13bは、カメラ11によって撮像されたカメラ画像に基づいて車線検出処理を実行する。また、車線検出処理部13bは、車線検出処理の実行結果を外部装置50へ出力する。
【0045】
外部装置50は、前述の車線変更判定機能や、車線逸脱防止支援機能や、車線維持支援機能といった各種の機能に該当するアプリケーションを実行する装置である。外部装置50は、例えばECU(Electronic Control Unit)である。なお、車載装置10と外部装置50とは、一体であってもよい。
【0046】
図4に示すように、車線検出処理部13bは、線素抽出部13baと、横断歩道検出部13bbと、除外部13bcと、車線抽出部13bdと、フレーム処理部13beと、出力部13bfとを有する。
【0047】
線素抽出部13baは、カメラ画像を2値化し、線素を抽出する。横断歩道検出部13bbは、上述したステップS1およびステップS2による横断歩道検出処理を実行する。ここで、当該横断歩道検出処理について、図5および図6を用いて各種条件の具体的な数値を挙げながら説明する。
【0048】
図5は、線素グループの抽出条件の説明図である。また、図6は、横断歩道の判定条件の説明図である。横断歩道検出部13bbは、線素抽出部13baによって抽出された各線素の奥行きの長さDL、始点位置SP、終点位置EP、平行度AD、始点間隔SIに基づいて線素グループを抽出する。
【0049】
このとき、図5に示すように、横断歩道検出部13bbは例えば、奥行きの長さDLが1.0m~9.0m以内であり、始点が基準線素±1.0m以内の始点位置SPにあり、終点が基準線素±5.0m以内の終点位置EPにあり、平行度ADが基準線素±10deg以内である線素を抽出して線素グループとしてグループ化する。始点間隔SIが0.07未満の線素群は1本のみカウントする。
【0050】
また、横断歩道検出部13bbは、線素グループの各線素が線素の数、線素の位置、線素の間隔の各要件をすべて満たすならば、横断歩道であると判定する。
【0051】
このとき、図6に示すように、横断歩道検出部13bbは例えば、線素の数が7本以上であり、線素の位置につき線素が車両の走行車線中央±1.0m以内に1本以上あり、線素の間隔につき始点間隔SIが0.45±0.15m以内の組が4個以上である場合に、線素グループ内の各線素を横断歩道と判定する。
【0052】
なお、線素の数が例えば7本以上というのは線素が十分に多いことを示すものであり、多重線や横断歩道以外の路面標示(矢印等)との区別に有効な要件となる。線素の位置の要件についても同様である。また、線素の間隔についての要件は、横断歩道の白線幅ならびに白線間隔の規格寸法が約0.45mであることに基づくものであり、横断歩道以外の路面標示(文字、矢印等)との区別に有効な要件となる。
【0053】
図4の説明に戻る。除外部13bcは、横断歩道検出部13bbによって横断歩道と判定された各線素を車線検出処理の処理対象から除外する。このとき、除外部13bcは、例えば横断歩道と判定された線素自体を車線検出処理の処理対象から除外する。
【0054】
あるいは、除外部13bcは、例えば横断歩道と判定された線素グループを取り囲む矩形状の横断歩道領域ERを設定し(図1参照)、処理対象から当該横断歩道領域ERを除外する。
【0055】
除外部13bcによる除外処理のさらなる変形例を図7図9に示す。図7図9は、除外処理の変形例を示す図(その1)~(その3)である。なお、説明を分かりやすくするために、図8および図9では横断歩道として判定された線素グループの線素#1~#14のうち、最外縁の線素#1,#14以外の線素#2~#13を破線で表している。
【0056】
図7に示すように、除外部13bcは、例えばカメラ画像のフレーム間において、横断歩道が検出されたフレーム(図中の「横断歩道検出フレーム」)を車線検出処理対象フレームの中から抜き取ることによって処理対象から除外してもよい。
【0057】
また、図8に示すように、除外部13bcは、例えば図1に示した矩形状の横断歩道領域ERを線素グループ内の最外縁の線素(図8の例では線素#1,#14)によって切り取った台形状に加工し、当該台形状の領域を処理対象から除外するようにしてもよい。
【0058】
また、図9に示すように、除外部13bcは、例えば横断歩道として判定された線素グループ内の始点を結んだ線と、終点を結んだ線と、最外縁の線素とで取り囲んだ領域を横断歩道領域ERとして設定し、当該横断歩道領域ERを処理対象から除外するようにしてもよい。なお、除外処理の説明では、横断歩道領域ERが矩形状や台形状である例を挙げたが、これらに限られるものではなく任意の形状であってよい。
【0059】
図4の説明に戻る。車線抽出部13bdは、線素抽出部13baによって抽出され、除外部13bcによって処理対象から除外されなかった線素に基づいて基準となる車線を選定する。車線抽出部13bdは、車線が「追い越し可能」または「はみ出し可能」な破線である場合、かかる破線を探索して1つの実線として統合し、基準となる車線を選定する。
【0060】
フレーム処理部13beは、カメラ画像のフレーム間における車線の同一性を判定する。出力部13bfは、検出された車線の車線位置と自車位置の距離や横移動速度等を推定し、車線検出処理の実行結果として外部装置50へ出力する。
【0061】
次に、車載装置10が実行する処理手順について、図10を用いて説明する。図10は、実施形態に係る車載装置10が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、図10は、カメラ画像1フレーム分の処理手順を示している。当該処理手順は、車線検出処理が実行される間繰り返される。
【0062】
図10に示すように、車載装置10のコントローラ13は、カメラ11からカメラ画像を取得する(ステップS101)。
【0063】
そして、コントローラ13は、カメラ画像から線素を抽出する(ステップS102)。つづいて、コントローラ13は、各線素の奥行きの長さDL、始点位置SP、終点位置EP、平行度AD、始点間隔SIに基づいて線素グループを抽出する(ステップS103)。
【0064】
そして、コントローラ13は、線素グループの各線素が線素の数、線素の位置、線素の間隔の各要件をすべて満たすか否かを判定する(ステップS104)。
【0065】
ここで、各要件をすべて満たす場合(ステップS104,Yes)、コントローラ13は、線素グループを横断歩道と判定する(ステップS105)。そして、コントローラ13は、横断歩道と判定した各線素を車線検出処理の対象から除外し(ステップS106)、ステップS107へ遷移する。
【0066】
一方、各要件をすべて満たさない場合(ステップS104,No)、そのままステップS107へ遷移する。そして、コントローラ13は、ステップS107で車線検出処理を実行し、カメラ画像1フレーム分の処理を終了する。
【0067】
上述してきたように、実施形態に係る車載装置10(「情報処理装置」の一例に相当)は、コントローラ13を備える。コントローラ13は、カメラ11(「車載カメラ」の一例に相当)のカメラ画像から抽出した線素に基づいて車線を検出する車線検出処理を実行する。また、コントローラ13は、各線素の奥行きの長さL、始点位置SP、終点位置EP、平行度ADおよび始点間隔SIに基づいて線素グループを抽出し、上記線素グループの各線素が横断歩道の特徴に対応する線素の数、線素の位置および線素の間隔の各要件をすべて満たすならば、上記線素グループの各線素を横断歩道であると判定する。
【0068】
したがって、実施形態に係る車載装置10によれば、横断歩道と判定された各線素を車線検出処理の処理対象から除外することが可能となるので、車線の誤検出を防止することができる。
【0069】
また、コントローラ13は、上記カメラ画像上の直線状のエッジを線素として抽出し、上記カメラ画像上の奥行き方向につき手前側の一端である始点が車両に最も近い線素を基準線素として抽出する。
【0070】
したがって、実施形態に係る車載装置10によれば、基準線素を基準として線素グループの各線素を抽出することができる。
【0071】
また、コントローラ13は、上記線素グループにつき、上記始点位置SPが上記基準線素の上記始点を基準とする所定範囲内である線素を抽出する。
【0072】
したがって、実施形態に係る車載装置10によれば、始点の位置がある程度揃った各線素を線素グループの線素として抽出することができる。
【0073】
また、コントローラ13は、上記線素グループにつき、上記終点位置EPが上記基準線素の終点を基準とする所定範囲内である線素を抽出する。
【0074】
したがって、実施形態に係る車載装置10によれば、終点の位置がある程度揃った各線素を線素グループの線素として抽出することができる。
【0075】
また、コントローラ13は、上記線素グループにつき、上記奥行きの長さDLが所定範囲内の長さである線素を抽出する。
【0076】
したがって、実施形態に係る車載装置10によれば、奥行きの長さDLがある程度揃った各線素を線素グループの線素として抽出することができる。
【0077】
また、コントローラ13は、上記線素グループにつき、上記平行度ADを示す上記基準線素との角度差が所定範囲内である線素を抽出する。
【0078】
したがって、実施形態に係る車載装置10によれば、基準線素と平行に近い各線素を線素グループの線素として抽出することができる。
【0079】
また、コントローラ13は、上記線素グループにつき、上記始点の横方向間隔である上記始点間隔SIが所定値未満である複数の線素を1本の線素として抽出する。
【0080】
したがって、実施形態に係る車載装置10によれば、線素のバラつきによって処理コストが高まるのを軽減することができる。
【0081】
また、コントローラ13は、上記線素グループの線素の数が所定値以上である場合を上記線素の数に関する要件を満たすとして判定する。
【0082】
したがって、実施形態に係る車載装置10によれば、線素の数に関する要件に基づいて、多重線や横断歩道以外の路面標示(矢印等)と横断歩道とを区別して横断歩道を検出することができる。
【0083】
また、コントローラ13は、上記線素グループの線素がカメラ11を搭載する車両が走行する走行車線中央の一定範囲内に所定値以上ある場合を上記線素の位置に関する要件を満たすとして判定する。
【0084】
したがって、実施形態に係る車載装置10によれば、線素の位置に関する要件に基づいて、多重線や横断歩道以外の路面標示(矢印等)と横断歩道とを区別して横断歩道を検出することができる。
【0085】
また、コントローラ13は、上記線素グループにおいて、上記始点間隔SIが横断歩道の規格寸法を基準とする所定範囲内である線素の組が所定値以上ある場合を上記線素の間隔に関する要件を満たすとして判定する。
【0086】
したがって、実施形態に係る車載装置10によれば、線素の間隔に関する要件に基づいて、横断報道以外の区画線や路面標示(文字等)と横断歩道とを区別して横断歩道を検出することができる。また、実施形態に係る車載装置10によれば、線素の抽出における画像処理結果を流用することで高速に横断歩道の検出結果を得られるため、検出結果を他の画像認識機能等へ応用する場合等のコストを抑えられるという副次的な効果も得ることができる。
【0087】
また、実施形態に係る車線検出方法は、車載装置10が実行する情報処理方法であって、カメラ11のカメラ画像から抽出した線素に基づいて車線を検出する車線検出処理を実行することと、各線素の奥行きの長さL、始点位置SP、終点位置EP、平行度ADおよび始点間隔SIに基づいて線素グループを抽出することと、上記線素グループの各線素が横断歩道の特徴に対応する線素の数、線素の位置および線素の間隔の各要件をすべて満たすならば、上記線素グループの各線素を横断歩道であると判定することと、を含む。
【0088】
したがって、実施形態に係る車線検出方法によれば、横断歩道と判定された各線素を車線検出処理の処理対象から除外することが可能となるので、車線の誤検出を防止することができる。
【0089】
また、実施形態に係るプログラムは、カメラ11のカメラ画像から抽出した線素に基づいて車線を検出する車線検出処理を実行すること、各線素の奥行きの長さL、始点位置SP、終点位置EP、平行度ADおよび始点間隔SIに基づいて線素グループを抽出すること、上記線素グループの各線素が横断歩道の特徴に対応する線素の数、線素の位置および線素の間隔の各要件をすべて満たすならば、上記線素グループの各線素を横断歩道であると判定すること、をコンピュータに実行させる。
【0090】
したがって、実施形態に係るプログラムによれば、横断歩道と判定された各線素を車線検出処理の処理対象から除外することが可能となるので、車線の誤検出を防止することができる。
【0091】
なお、実施形態に係るプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。当該記録媒体も、本開示の一態様である。
【0092】
また、上述した実施形態において挙げた線素グループの抽出条件および横断歩道の判定条件における各種パラメータの値はあくまで一例であって、当該値を限定するものではない。
【0093】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0094】
10 車載装置
11 カメラ
12 記憶部
12a 条件情報
13 コントローラ
13a 取得部
13b 車線検出処理部
13ba 線素抽出部
13bb 横断歩道検出部
13bc 除外部
13bd 車線抽出部
13be フレーム処理部
13bf 出力部
50 外部装置
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