(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】眼球インプラントシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
A61F9/007 160
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022176981
(22)【出願日】2022-11-04
(62)【分割の表示】P 2018533607の分割
【原出願日】2016-12-13
【審査請求日】2022-12-02
(32)【優先日】2015-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513269561
【氏名又は名称】アイスター メディカル
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンディースト ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】デ マルコ エミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ロワ セシル
【審査官】松山 雛子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0310137(US,A1)
【文献】特表2010-533565(JP,A)
【文献】特表2014-512240(JP,A)
【文献】特表2010-509003(JP,A)
【文献】特表2002-541977(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0060752(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0280317(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0150770(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラントを眼の
後腔に埋め込む埋込み器具であって、
ハウジングと、
遠位端と近位端とを有する固定シャフトであって、前記近位端が前記ハウジング内に取付けられ該ハウジングに固定され、前記遠位端が前記ハウジングから延びる固定シャフトと、
前記固定シャフト上にかつ少なくとも部分的に前記ハウジング内に装着された摺動要素を含む送出機構であって、前記摺動要素が前記ハウジングに対してかつ少なくとも前記固定シャフトに対して第1の位置と第2の位置の間で移動されるように構成されている送出機構と
遠位端と近位端とを有する中空シャフトであって、前記固定シャフトの遠位端上
を摺動可能であり、前記近位端で前記摺動要素に連結されるように構成され、前記遠位端で該中空シャフトの一部分内にインプラントを保持するように構成され、前記摺動要素を第1位置から第2位置に動かすことによって前記固定シャフト上を後退し前記インプラントを前記中空シャフトの遠位端内から解放するように構成されている中空シャフトと、を備えている埋込み器具において、
前記送出機構が、ハウジング内に装着されて前記固定シャフトと平行であるように構成されたスライダシャフトを更に含み、前記摺動要素は、前記スライダシャフトと固定シャフトの両方に装着され
る、
ことを特徴とする埋込み器具。
【請求項2】
前記中空シャフトの近位端は固定要素に取付けられ、前記固定要素
は、
前記固定シャフトを前記ハウジングに固定するとともに、前記固定シャフト上で前記ハウジング内に挿入
されて前記ハウジング内で
前記摺動要素を係合できるように構成され
る、
請求項1に記載の埋込み器具。
【請求項3】
前記固定要素は、摺動要素接続部分と係合するように構成された接続部分を備え
る、
請求項2に記載の埋込み器具。
【請求項4】
前記固定要素の前記接続部分は、少なくとも2つの係合面を提供する凹部を含み、前記摺動要素接続部分は、前記固定要素の挿入によって押し離されるように構成された少なくとも2つの末端部分を含み、該少なくとも2つの末端部分は、該固定要素の係合面と係合する係合面を提供するように構成され
る、
請求項3に記載の埋込み器具。
【請求項5】
前記固定要素は、前記ハウジングの中への該固定要素の挿入の正しい向きを示すように構成された面を有する本体部分を備え
る、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の埋込み器具。
【請求項6】
前記固定要素は、ワンタッチ固定式接続要素を備え
る、
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の埋込み器具。
【請求項7】
前記中空シャフトは、前記固定シャフトの外形に実質的に適合するように構成された内形を有す
る、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の埋込み器具。
【請求項8】
前記中空シャフトは、略透明なプラスチック材料で構成され、該略透明なプラスチック材料が、熱硬化性プラスチック材料及び熱可塑性材料の一方で作られ
る、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の埋込み器具。
【請求項9】
前記中空シャフトは、生体適合性金属材料で作られる、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の埋込み器具。
【請求項10】
前記中空シャフトは、斜角付き先端を含
む、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の埋込み器具。
【請求項11】
前記中空シャフトの前記遠位端は、前記インプラントが埋め込まれることになる前記眼の眼球組織の曲率に適合するように可撓性であるように構成され
る、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の埋込み器具。
【請求項12】
前記中空シャフトは、前記眼の前房に対する前記後腔に関する挿入深さを示す少なくとも1つのマーカを含
む、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の埋込み器具。
【請求項13】
前記インプラントと前記眼の
前記後腔との間の視覚的コントラストのための光を提供するように構成された光源を備え
る、
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の埋込み器具。
【請求項14】
前記光源が、少なくとも一色の光を放出するように構成された少なくとも1つの光放出源を備え
る、
請求項13に記載の埋込み器具。
【請求項15】
前記光源に接続され、該光源によって放出された光を前記中空シャフトの前記遠位端に向けるように構成された光導波路を更に含
む、
請求項13又は14に記載の埋込み器具。
【請求項16】
前記光導波路は、前記固定シャフトの少なくとも一部及び前記中空シャフトの少なくとも一部のうちの一方上に形成され
る、
請求項15に記載の埋込み器具。
【請求項17】
前記ハウジング上に装着され、該ハウジングに対して動くように構成されたボタンを更に含み、前記ボタンは、前記送出機構に接続され、前記ハウジングに対して移動される時に前記摺動要素を第1の位置と第2の位置との間で移動させるように構成されている、
請求項1乃至16のいずれか1項に記載の埋込み器具。
【請求項18】
眼の後部空間にインプラントを埋込む眼用インプラントシステムであって、
眼の後部空間に埋め込まれるように構成されたインプラントと、
請求項1乃至17のいずれか1項に記載の埋込み器具と、を備え、前記インプラントは、前記中空シャフトの遠位端に配置され
る、
ことを特徴とする眼用インプラントシステム。
【請求項19】
更に、前記埋込み器具に可撓性的に連結されるように構成され、前記送出機構の摺動要素を第1位置と第2位置との間で動かすように構成された起動機構を備え
る、
請求項18に記載の眼用インプラントシステム。
【請求項20】
前記起動機構は
、作動機構に接続されるように構成された空気圧プランジャデバイスを備え、前記作動機構は、前記送出機構に接続され、内側部分と該内側部分を少なくとも部分的に取り囲む外側部分とを有し、前記内側及び外側部分は、互いに対して可動であるように構成され
る、
請求項19に記載の眼用インプラントシステム。
【請求項21】
前房と眼球とに対する後腔内のインプラントの挿入深さを示すように構成された少なくとも1つのマーカを有す
る、
請求項18乃至20のいずれか1項に記載の眼用インプラントシステム。
【請求項22】
前記マーカが前房内のコントラストを与えるように選択された色を有している、
請求項21に記載の眼用インプラントシステム。
【請求項23】
埋込み器具用ハウジングであって、
近位端と遠位端を有する固定シャフトであって、前記近位端がハウジング内に装着されて該ハウジングに対して固定され、前記遠位端が前記ハウジングから延びる固定シャフトと、
前記固定シャフト上かつ少なくとも部分的にハウジング内に装着された摺動要素を有する送出機構であって、前記摺動要素が前記ハウジングに対してかつ少なくとも固定シャフトに対して第1位置と第2位置の間で移動するように構成された上記送出機構と、を備えている埋込み器具用ハウジングであって、
前記送出機構が、ハウジング内に装着されて前記固定シャフトと平行であるように構成されたスライダシャフトを更に備え、前記摺動要素が、前記スライダシャフトと固定シャフトの両方に装着されている、
ことを特徴とする埋め込みデバイス用ハウジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼球インプラントシステムに関し、より具体的には、以下に限定されるものではないが、眼内の予め決められた場所に眼球インプラントを送出するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳類の眼は、角膜と虹彩と水晶体との間に位置付けられた前房を含む。この前房は、房水として公知の流体で満たされている。複数の微小通路を含む小柱網は、虹彩と角膜の間の隅角に位置付けられる。正常なヒトの眼では、虹彩の背後の毛様体により、典型的に毎分約2.2から2.7マイクロリットル(μl/min)の一定速度で房水が発生される。通例の流出経路では、この房水は、水晶体と虹彩の間を越して流れ、次に、小柱網を通じて出て、循環系に戻される。
【0003】
正常な眼からのこの流出を維持する眼圧(IOP)は、10mmHgから20mmHgの範囲内に留まる傾向がある。しかし、心周期、瞬き、日周性、及び他の原因に関連するIOPの有意な変化がある場合がある。虹彩角膜角が開いたままである緑内障の最も優勢な慢性形態では、眼球内の余分な液体の蓄積を引き起こす小柱網流体流出経路の閉塞があり、その結果、常に約18mmHgよりも高い値までIOPを上昇させる。一部の場合では、IOPは、50mmHg又はそれよりも高い程の高さである場合がある。時間と共に、この圧力増加は、視神経に不可逆的な損傷及び視力の喪失をもたらす。
【0004】
緑内障は、世界的に失明の主要な原因であり、8000万人を超える人々を冒している。緑内障は、高血圧、糖尿病、ステロイドの使用、及び人種起源を含む多くの条件に関連付けられる。薬物療法、レーザ小柱網形成術、小柱網切除術、及び眼内ドレナージインプラントを含む様々な治療が、緑内障に対して現在利用可能である。
【0005】
薬物は、流体流入、すなわち、毛様体による房水の形成を制御するために又は小柱網を通る流体放出を容易にするために多くの場合に点眼液の形態で投与される。不規則な投薬量、副作用、及び不十分な患者コンプライアンスが共通の課題である。
【0006】
緑内障治療のための薬物使用に対する代替として、小柱網閉鎖の周りの又はそれを通したシャント経路又はドレーン管の外科的生成は、過剰流体及び従ってIOPの蓄積を解放する手段として採用されている。小柱網形成術では、房水が小柱網を通って排出されて眼の前房内の眼圧を低減することができるように、レーザを使用して眼の小柱網に小さい開口部が生成される。この治療方法は、主として開放隅角緑内障に対して使用される。
【0007】
外科技術は、小柱網切除術を含む。小柱網切除術は、小柱網に小さい開口部が生成され、流体が、前房から流れ出て、結膜の下に集まり、かつ眼の後部によって再吸収されることを可能にする外科技術である。
【0008】
埋め込み式デバイスは、他の治療法の効果がなくなった場合に最も頻繁に使用される。これらのインプラントは、ドレナージ経路を通して前房から離れるように房水を引き出すことができるように眼の中に挿入されるドレナージデバイスを含む。従来のインプラント、例えば、Moltenoインプラント、Baerveldtシャント、及びAhmedバルブを用いると、排出経路は、前房と結膜下の強膜上に位置付けられた流体分散プレートとの間に位置付けられたチューブによって形成される。プレートから分散した流体は、眼の外層の中にゆっくりと再吸収されるプール又は「ブレブ」を形成する。ごく最近に、低侵襲性手法、すなわち、結膜及び強膜の限定的な外科的手技を通して埋め込まれ、従って、従来のドレナージインプラントよりも安全な外科的プロファイルを示し、緑内障治療パラダイムを変える新世代のドレナージデバイスが設計されている。MIGS(低侵襲性緑内障手術)と呼ばれる微小ドレナージデバイス、例えば、iStent Supra(登録商標)Suprachoroidal Micro-Bypass Stent、Cypass Micro-Stent、及びXen Gel Stentは、脈絡膜上腔又は結膜下腔のいずれかにアクセスすることによって眼圧を低減するように設計される。
【0009】
iStent Supra(登録商標)Suprachoroidal Micro-Bypass Stent及びCypass Micro-Stentでは、ステントを長手方向に通って延びる内腔があり、ガイド又はシャフトが、ターゲット組織内に位置決めするために内腔に挿入され、正確に位置決めされると、ガイド又はシャフトは、ターゲット組織にステントを残して引っ込められる。そのような1つのインプラントは、例えば、US-B-8337393に説明されている。
【0010】
US-B-8852136は、眼の強膜内腔への眼内シャントの埋め込みを開示している。埋め込みデバイスは、眼内シャントを保持するように構成された中空シャフトを含み、かつ眼内に挿入されるように構成され、そこから眼内シャントは、中空シャフトが眼から取り除かれる前に放出又は配備される。眼内シャントは、それが前房から眼の強膜内腔への通路を形成し、それによって房水を前房から眼の上強膜血管複合体の中に排出することができるように位置決めされる。眼内シャントの配置はまた、結膜下腔又は脈絡膜上腔の中への拡散を可能にする。
【0011】
US-B-8388568はまた、眼内への眼内シャントの埋め込みを開示している。配備デバイスが、眼内シャントをそれが眼内のターゲット組織の中に挿入される時に保持するように構成され、ターゲット組織内の所定位置にある状態で、眼内シャントは、そこから配備又は放出される。配備デバイスの一部の実施形態では、その一部分は、配備デバイスが前房を横切って前進して眼内シャントの配備のために正しく位置決めされていることを示す抵抗を与えるように設計される。眼内シャントの配備は、前房から結膜下腔又は脈絡膜上腔の中への房水の流れに対して備えることができる。
【0012】
ステント及び眼内インプラントを埋め込むためのデバイスは公知であるが、それらは、上述のUS-B-8852136及びUS-B-8388568に説明されているように、ステントを埋め込みのための内腔によってガイド又はシャフト上に装着する必要があるか又はデバイスから眼内の正確な場所の中にインプラントを放出する必要があるなどの欠点を有する傾向がある。これに加えて、そのようなデバイスは、眼の中に挿入され、ステント又は眼内インプラントは、デバイスから配備され、そのデバイスは、眼から取り除かれる。
【0013】
WO-A-2011/084550は、眼の網膜領域の中に物質を埋め込むための埋め込みシステムを説明している。埋め込みシステムは、送出ユニット支持体又はハウジングと、送出ユニット支持体又はハウジング内に装着された送出ユニット(マンドレル又は固定シャフト及びマンドレルガイド又は中空シャフトの形態にある)と、送出ユニット支持体の外側に装着された送出コントローラ又はスライダとを含む。送出コントローラは、マンドレル又は固定シャフトに又はマンドレルガイド又は中空シャフトにそのいずれかで取り付けることができ、マンドレルガイドを通るマンドレルの移動は、能動的な移動と見なされ、マンドレルの上のマンドレルガイドの後退は、受動的な移動と見なされる。バネを使用して能動的又は受動的な移動のいずれかのために送出ユニットを長手方向に付勢することができる。一実施形態では、埋め込まれる物質は、マンドレルの遠位端に位置付けられ、他の実施形態では、埋め込まれる物質を保持するためにノズルをマンドレルガイドの遠位端上に設けることができる。
【0014】
しかし、WO-A-2011/084550に説明された埋め込みシステムの各実施形態では、送出コントローラがマンドレル又はマンドレルガイドのいずれかにのみ取り付けられるので、物質が眼の中に埋め込まれる時に滑らかで安定した移動を保証する安定性がハウジング内に提供されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】US-B-8337393
【文献】US-B-8852136
【文献】US-B-8388568
【文献】WO-A-2011/084550
【文献】EP-B-2517619
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、インプラントがデバイスから放出されることを必要としない埋め込みデバイスを提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、眼の中への埋め込み中にインプラントをガイド上に装着する必要のない埋め込みデバイスを提供することである。
【0018】
本発明の更に別の目的は、埋め込みデバイスが簡単な前後移動を使用して眼にインプラントを送出する眼球インプラントシステムを提供することである。
【0019】
本発明の更に別の目的は、埋め込み式デバイスがその一部分にインプラントを含み、インプラントが眼の後腔に残されてインプラントの一部分が前房へのアクセスを提供する眼球インプラントシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一態様により、眼の後腔の中にインプラントを埋め込むための埋め込みデバイスを提供し、デバイスは、ハウジングと、ハウジング内に装着されてそれに対して固定された近位端とハウジングから延びる遠位端とを有する固定シャフトと、固定シャフト上にかつ少なくとも部分的にハウジング内に装着された摺動要素を含む送出機構であって、摺動要素が、ハウジングにかつ少なくとも固定シャフトに対して第1の位置と第2の位置の間で移動するように構成された上記送出機構と、遠位端及び近位端を有し、かつ固定シャフトの遠位端の上に装着されてその近位端で摺動要素に接続されるように構成された中空シャフトであって、その遠位端でその一部分内にインプラントを保持するように構成され、その第1から第2の位置までの摺動要素の移動によって固定シャフトの上を後退して中空シャフトの遠位端内からインプラントを解除するように構成された上記中空シャフトとを含み、送出機構が、ハウジング内に装着されて固定シャフトと平行であるように構成されたスライダシャフトを更に含み、摺動要素が、スライダシャフトと固定シャフトの両方上に装着されることを特徴とする。
【0021】
摺動要素が両方のシャフト上に装着された状態で固定シャフトに平行であるようにスライダシャフトを構成することにより、中空シャフトが固定シャフトの上を後退する時に摺動要素の滑らかで安定した移動がもたらされる。
【0022】
これに加えて、本発明の埋め込みデバイスは、送出機構が中空シャフトにのみ作用してインプラントを眼の後腔内の所定位置に残しながら固定シャフトの上で中空シャフトを後退させるという利点を有する。事実上、中空シャフトの遠位端からの配備中に眼内インプラント自体との接触は必要ない。
【0023】
更に、インプラントを埋め込みデバイスから放出する又はインプラントを眼の後腔に注入する必要はない。
【0024】
一実施形態では、中空シャフトの近位端は固定要素に装着され、固定要素は、固定シャフトの上でハウジング内に挿入されるように、かつハウジング内で摺動要素と係合するように構成される。固定要素は、摺動要素接続部分と係合するように構成された接続部分を含むことができる。これに加えて、固定要素の接続部分は、少なくとも2つの係合面を与える凹部を含むことができ、摺動要素接続部分は、固定要素の挿入によって押し離されるように構成された少なくとも2つの末端部分を含み、少なくとも2つの末端部分は、固定要素の係合面と係合する係合面を与えるように構成される。
【0025】
一実施形態では、固定要素は、固定要素をハウジング内に挿入するための正しい向きを示すようにその面が構成された本体部分を含む。
【0026】
好ましい実施形態では、固定要素は、ワンタッチ固定接続要素を含む。
【0027】
一実施形態では、中空シャフトは、実質的に固定シャフトの外部プロファイルに適合するように構成された内部プロファイルを含む。中空シャフト及び固定シャフトの適合する内部及び外部プロファイルを有することにより、中空シャフトは、固定シャフトをガイドとして使用し、インプラントを中空シャフトの遠位端から解除してそれを後腔内の所定位置に残す固定シャフト上の滑らかな後退を保証することができる。
【0028】
一実施形態では、中空シャフトは、実質的に透明なプラスチック材料を含み、実質的に透明なプラスチック材料は、熱硬化性プラスチック材料及び熱可塑性材料のうちの一方を含む。プラスチック材料は、可撓性又は剛性とすることができ、かつ生体適合性プラスチック材料を含むことができる。これに代えて、中空シャフトは、生体適合性金属材料を含む。生体適合性材料の使用により、埋め込み過程中に眼の刺激が防止される。
【0029】
中空シャフトは、斜角付き先端を含むことが好ましい。好ましくは、斜角付き先端は、埋め込み過程中に眼への損傷及び刺激を軽減するために無傷性であるように構成される。中空シャフトの遠位端を可撓性であるように構成してインプラントが埋め込まれる眼の眼球組織の曲率に適合することも好ましい。
【0030】
別の実施形態では、中空シャフトは、眼の前房に対する後腔のための挿入深さを示す少なくとも1つのマーカを含む。中空シャフト上に1又は2以上のマーカを使用することにより、インプラントが後腔内に正確に位置決めされることを保証する1又は2以上の表示が提供される。
【0031】
更に別の実施形態では、埋め込みデバイスは、インプラントと眼の後腔との間に視覚的コントラストのための光を提供するように構成された光源を含む。少なくとも一色の光を放出するように構成された少なくとも1つの発光源を設けることができる。光源の具備は、インプラントがより可視的になり、かつ眼内で容易に識別可能であるという利点を有する。光の色の選択は、それが、周囲組織との間で明確なコントラストが存在するようにインプラントにより吸収又は反射される色である可能性があるので、インプラントの正確な位置決めを可能にする。コントラストがあることを保証するために周囲組織に従って光の色が選択される場合が当て嵌まると考えられる。
【0032】
光源に接続した光導波路を設けることができ、光導波路は、光源によって放出された光を中空シャフトの遠位端に向けるように構成される。光導波路を使用することにより、インプラントの埋め込み中に光が眼に溢れないように光をより適切に誘導することができる。光導波路は、固定シャフトの少なくとも一部上又は中空シャフトの少なくとも一部上のいずれかに形成することができる。これは、光を中空シャフトの遠位端に向けるために追加の構成要素が必要とされないことを意味する。
【0033】
埋め込みデバイスの手動作動では、ボタンが、ハウジング上に装着され、かつハウジングに対して移動されるように構成され、ボタンは、送出機構に接続され、かつハウジングに対して移動された時に摺動要素を第1の位置と第2の位置の間で移動するように構成される。実際に、固定シャフトの遠位端から近位端方向へのボタンの移動は、固定シャフトの上での中空シャフトの後退を引き起こし、インプラントを中空シャフトから解除する。
【0034】
本発明の別の態様により、眼の後腔の中にインプラントを埋め込むように構成された眼球インプラントシステムを提供し、眼球システムは、眼の後腔に埋め込まれるように構成されたインプラントと、上述のような埋め込みデバイスとを含み、インプラントは、中空シャフトの遠位端に位置付けられる。
【0035】
一実施形態では、眼球インプラントシステムは、「単回使用」のために提供することができ、かつインプラントを眼の後腔の中に埋め込む状態に組み立てられる。これは、インプラントが埋め込まれる度にインプラントを中空シャフト内に位置決めする又は中空シャフトをインプラントをその遠位端に位置付けて固定シャフト上に装着する必要がないという利点がある。
【0036】
別の実施形態では、起動機構が、埋め込みデバイスに可撓的に接続されるように構成され、かつ送出機構の摺動要素をその第1及び第2の位置間で移動するように構成される。埋め込みデバイスの一部を形成しない個別の起動機構を有することにより、固定シャフトの上で中空シャフトを後退させるためにより良い制御を提供することができる。実際に、埋め込みデバイスを保持するのとは異なる手を使って起動機構を作動させることができるので、滑らかな後退を提供することができる。
【0037】
更に別の実施形態では、起動機構は、作動機構に接続されるように構成された空気圧プランジャデバイスを含み、作動機構は、送出機構に接続され、かつ内側部分と内側部分を少なくとも部分的に取り囲む外側部分とを含み、内側及び外側部分は、互いに対して可動であるように構成される。内側部分と外側部分を含んで起動機構を埋め込みデバイスに接続する作動機構を有することにより、一方の部分が、2つのデバイス間の間隔を決定することができ、同時に他方の部分の相対移動が、埋め込みデバイスの摺動要素を起動することができる。好ましい実施形態では、作動機構は、その上に外側シースが設けられた個別の起動機構に送出機構内の摺動要素を接続する内側ワイヤを含む。内側ワイヤは、外側シース内で摺動可能である。
【0038】
インプラントは、前房と眼球とに対する後腔内のインプラントの挿入深さを示すように構成された少なくとも1つのマーカを含むことができる。これは、インプラントが後腔内に正確に位置決めされているかを決定する方法を提供するという利点を有する。マーカは、前房内のコントラストを与えるように選択された色を含むことが好ましい。
【0039】
本発明の別の態様により、ハウジング内に装着されてそれに対して固定された近位端とハウジングから延びる遠位端とを有する固定シャフトと、固定シャフト上にかつ少なくとも部分的にハウジング内に装着された摺動要素を含む送出機構であって、摺動要素がハウジングに対してかつ少なくとも固定シャフトに対して第1の位置と第2の位置の間で移動するように構成された上記送出機構とを含み、送出機構が、ハウジング内に装着されて固定シャフトと平行であるように構成されたスライダシャフトを更に含み、摺動要素が、スライダシャフトと固定シャフトの両方上に装着されることを特徴とする埋め込みデバイスのためのハウジングを提供する。
【0040】
本発明の更に別の態様により、遠位端及び近位端を有し、かつ固定シャフトの遠位端の上に装着されて摺動要素にその近位端で接続されるように構成された中空シャフトであって、その遠位端でその一部分内にインプラントを保持するように構成され、その第1から第2の位置までの摺動要素の移動によって固定シャフトの上を後退して中空シャフトの遠位端内からインプラントを解除するように構成された上記中空シャフトと、中空シャフトの遠位端に位置決めされたインプラントと、中空シャフトがそれに接続される固定接続要素とを含む埋め込みデバイスのための中空シャフトアセンブリを提供する。
【0041】
本発明の更に別の態様により、ハウジングと上述のような中空シャフトアセンブリとを含む眼球埋め込みキットを提供する。
【0042】
本発明のより良い理解のために、ここで一例として添付図面を以下に参照する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図2】眼の前房及び外層の各部分を示す眼の拡大断面図である。
【
図3】本発明による埋め込みデバイスを示す図である。
【
図4】
図3の埋め込みデバイスの内部を示す図である。
【
図5】
図3の埋め込みデバイスの分解組立図である。
【
図6】埋め込まれるインプラントと共に
図3の埋め込みデバイスの一部を形成する中空シャフトを示す図である。
【
図8】
図3の埋め込みデバイスに使用されるインプラントに対する2つの代替構成を示す図である。
【
図9】低侵襲性「ab interno」法を使用するインプラントの埋め込みを示す図である。
【
図11】眼の所定位置にあるインプラントを示す図である。
【
図12】
図3の埋め込みデバイスに接続した起動機構を示す図である。
【
図13】
図12の起動機構をそのハンドルの一部を取り外して示す図である。
【
図16】本発明による埋め込みデバイスの別の実施形態の斜視図である。
【
図17】ハンドルの一部分を取り外した
図16の埋め込みデバイスの斜視図である。
【
図19】中空シャフトとのワンタッチ装着接続の第1の実施形態を示す図である。
【
図20】中空シャフトとのワンタッチ装着接続の第2の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明を特定の実施形態及び特定の図面を参照して説明するが、本発明は、それらに限定されない。説明される図面は概略的なものに過ぎず、非限定的である。図面において、要素の一部のサイズは説明のために誇張され、一定の縮尺で描かれない場合がある。
【0045】
本発明は、単回使用「低侵襲性」埋め込み又は配備デバイスを含み、そこから眼内シャント又はインプラントが、脈絡膜上腔、すなわち、眼の強膜と脈絡膜の間に位置する空間の中に、又は結膜下腔、すなわち、眼の結膜と強膜の間に位置する空間の中に配備されるシステムに関する。眼内シャント又はインプラントは、埋め込み又は配備デバイスの一部分内に事前装填され、かつ以下でより詳細に説明するようにそこから解除される。一実施形態では、埋め込み又は配備デバイスは単回使用であるが、埋め込み又は配備デバイスが再使用可能であることは容易に認められるであろう。
【0046】
眼内シャント又はインプラントは、図面を参照して以下で説明するように、眼の前房と眼の後部(脈絡膜上腔、強膜内腔、又は結膜下腔)との間にドレナージ経路を設けるための機構を提供する。眼内シャント又はインプラントは、EP-B-2517619に説明されているような生体適合性材料で製造することができる。眼内シャント又はインプラントが、他の適切な生体適合性材料、例えば、シリコーンで製造可能であることは容易に認められるであろう。
【0047】
EP-B-2517619では、説明される生体適合性材料は多孔性であり、類似の直径を含む相互接続した孔隙のアレイを定める生体適合性ポリマー骨格を含む。典型的には、孔隙の平均直径は約20μmと約90μmの間、好ましくは約25μmと約75μmの間である。本発明のインプラントに使用する場合に、好ましい範囲は約25μmと約36μmの間である。
【0048】
眼内シャント又はインプラントは、矩形又は楕円形の断面を有して長さが5mm、幅が1.1mm、及び深さが0.6mmの実質的に円筒形とすることができ、又は円形断面を有して特定の直径と類似の長さを含む実質的に円筒形とすることができる。眼内シャント又はインプラントは、ブロック又はシートの厚みがシャント又はインプラントの長さに等しいか又はそれよりも大きい厚みを含む生体適合性材料のブロック又はシートから打ち抜かれる。眼内シャント又はインプラントは、例えば、打抜き以外の適切な切断手段を使用して他の方法で形成可能であることは容易に理解されるであろう。
【0049】
本明細書に使用する用語「ターゲット組織」は、眼内シャント又はインプラントが位置決めされる組織、すなわち、脈絡膜上腔、結膜下腔、又は強膜内腔を指す。
【0050】
本明細書に使用する用語「天然アンカー」は、眼内に送出又は配備された状態でそれを正しい位置に保持するのにいずれの要素も必要としない構成要素を指す。
【0051】
本明細書に使用する用語「後部」は、眼の前房の背後の場所を指す。この用語は、眼の組織層、例えば、脈絡膜上腔及び結膜下腔のような眼内の組織層間に存在する空間に又は例えば強膜内腔のような眼内の1組織層内に作り出される空間に適用される場合がある。
【0052】
本明細書に使用する用語「配備する」及び「配備」は、埋め込み又は配備デバイスから眼内のターゲット組織への眼内シャント又はインプラントの送出を指す。これらの用語は、シャント又はインプラントをターゲット組織の中に送出するのに力が使用される埋め込み又は配備デバイスからの眼内シャント又はインプラントの注入、放出、又は前進を含むことを意図していない。
【0053】
本明細書に使用する用語「眼内シャント」、「シャント」、「眼内インプラント」又は「インプラント」は、眼の中に埋め込まれる構成要素を指す。用語「インプラント」は、埋め込まれるものを指す場合がより一般的であるが、シャントを指すためにも使用される。用語「シャント」は、房水が眼の前房からその背後に位置付けられたターゲット組織へ通過することができる構成要素を指す。
【0054】
同じである構成要素は同じもので参照され、修正及び/又は代替であるものは、添え字「A」及び「B」など、又はプライム(’)及びダブルプライム(’’)などのいずれかで参照される。これに加えて、類似の構成要素は、最初の1桁が異なって最後の2桁が同じであり、例えば、中空シャフトは、
図3~
図6に示す実施形態では参照番号330、
図16及び17では参照番号630、
図19では参照番号730、及び
図20では参照番号830を有する。
【0055】
最初に
図1及び
図2を参照すると、角膜110、虹彩120、瞳孔130、水晶体140、及び毛様体150(
図2により明瞭に示されている)の位置を示す眼100のサジタル断面が示されている。前房160は、水晶体140と角膜110の間に位置付けられる。
【0056】
正常な眼では、房水は毛様体150内で発生し、通常の流出経路では、矢印180に示すように、虹彩120と水晶体140の間を前房160内へ循環し、その後、虹彩120と角膜110の間の虹彩角膜角240に位置付けられた多孔性の小柱網170を通って出ていく。強膜190及び脈絡膜195も示されている。
【0057】
緑内障の眼では、小柱網170は、一般的に塞がれて眼の内部に有害な圧力上昇を引き起こす。本発明による眼内シャント又はインプラント200は、強膜190と脈絡膜195の間に、すなわち、脈絡膜上腔に前房160を通じたアクセスを有して埋め込まれ、前房160から強膜下領域210への流体路を形成し、この閉塞をバイパスして流体流れを回復させることができる。
【0058】
シャント又はインプラントは、配備又は埋め込みデバイスの一部を形成する中空シャフト内に事前装填されて圧縮されるものとすることができる。シャント又はインプラントは配備前に圧縮されるので、配備後にターゲット組織内に、すなわち、強膜と脈絡膜の間(脈絡膜上腔)又は結膜と強膜の間(結膜下腔)のいずれかに位置付けられた状態で延びて周囲組織と一体化し、それと共に天然アンカーを形成する。
【0059】
シャント又はインプラントはその上にマーカを設けることができるので、シャント又はインプラントを配備するオペレータは、その一部を前房に残してターゲット組織内でのシャント又はインプラントの深さを制御することができる。シャント又はインプラントの眼内への配置は、以下でより詳細に説明するように、埋め込み又は配備デバイスを使用して行われる。
【0060】
埋め込みデバイスは、前房を通じたアクセスを有して眼内シャント又はインプラントを眼の後腔の中に埋め込むための低侵襲性デバイスを含む。一実施形態、すなわち、「ab interno」法では、事前装填されたシャント又はインプラントを収容する中空シャフトが、角膜を通り、前房を横切ってターゲット組織に挿入される。第2の実施形態、すなわち、「ab externo」法では、事前装填されたシャント又はインプラントを収容する中空シャフトが、ターゲット組織から前房に挿入される。本発明の埋め込みデバイスは、「ab interno」法と「ab externo」法の両方に使用することができる。
【0061】
埋め込みデバイスは、その最も簡単な形態では、中空シャフトの遠位端の鋭い部分によって形成することができる角膜切開部を通してその一部を挿入するように構成された手動作動式手持ち式デバイスを含む。シャント又はインプラントの配備は、
図9~
図11を参照して以下でより詳細に説明する挿入及び配備機構の作動に従うものである。
【0062】
埋め込みデバイスの一実施形態では、近位端及び遠位端を含む人間工学的な形状のハンドル又はハウジングを提供する。直線スライダを含む送出機構が、ハンドル又はハウジングの遠位端から近位端に向けて定められる方向への移動のためにハンドル又はハウジングに装着される。送出機構は、その一部分がハンドル又はハウジング内に装着された状態でハンドルに取り付けられ、送出機構は、ハンドル又はハウジング内に装着されたシャフトを含み、かつそれに対して固定される。シャフトは、ハンドル又はハウジング内の近位端と、ハンドル又はハウジングから延びる遠位端とを含む。中空シャフトは、固定シャフトの上に取り付け可能であり、かつ直線スライダと係合可能な近位端とシャント又はインプラントが事前装填される遠位端とを含む。中空シャフトは、あらゆる適切な生体適合性かつ滅菌可能な熱硬化性又は熱可塑性材料、又はこれに代えて生体適合性かつ滅菌可能な金属で製造することができる。
【0063】
中空シャフトは、以下でより詳細に説明するように、固定シャフトの周りに適合し、かつハンドル又はハウジングと固定シャフトの両方に対して可動であるような大きさにされる。中空シャフトは内部プロファイルを有し、固定シャフトは外部プロファイルを有し、中空シャフトの内部プロファイルは実質的に固定シャフトの外部プロファイルに適合するように構成される。このような内部及び外部プロファイルは、あらゆる適切な断面形状、例えば、円形、楕円形、矩形、正方形などを含むことができる。
【0064】
中空シャフトはまた、その内部プロファイルと同様又は異なるものとすることができる外部プロファイルを有することが認められるであろう。
【0065】
デバイスの代替実施形態では、可撓性ワイヤを使用してハンドル又はハウジング内の送出機構に接続可能な起動機構が設けられる。起動機構は、起動された時に固定シャフトの上で中空シャフトを後退させて、ターゲット組織内にシャント又はインプラントを配備する、解除する、又は残すように作動するプランジャを含む。
【0066】
更に別の実施形態では、起動機構のプランジャは、その滑らかな作動を保証するために空気圧で又は電気的に制御されるものとすることができる。更に別の実施形態では、起動機構のプランジャは、滑らかな移動及び/又は平行移動速度制御のためにOリング又はバネを含む制御式摩擦システムの一部を形成することができる。
【0067】
埋め込みデバイスは、中空シャフトの遠位端をターゲット組織空間内に延ばし、シャント又はインプラントをその内部の所定位置に残してそこから後退させるように構成される。ハンドル内の直線スライダは、固定シャフトの上で中空シャフトを後退させて、シャント又はインプラントをターゲット組織に注入することを必要とせずにシャント又はインプラントをターゲット組織内に正確に位置決めされた状態にしておく。
【0068】
ハンドル内の直線スライダに接続され、第三者によって起動可能な個別の起動機構を使用することにより、中空シャフトの滑らかな後退が可能になると同時に、埋め込みデバイスを保持するオペレータの手の移動を最小にする。
【0069】
本発明により、埋め込みデバイスは、中空シャフトを後退させながらもシャント又はインプラントを所定位置に維持するように作動するだけなので、固定シャフトによるシャント又はインプラントの眼内への物理的配備はない。
【0070】
中空シャフトは、シャント又はインプラントが上述のように収容される円形断面又は他のあらゆる適切な断面の内部プロファイルを有することができる。一実施形態では、シャント又はインプラントは、少なくともその遠位端で中空シャフトの内部プロファイルの断面と類似の断面を有することができる。
【0071】
シャント又はインプラントが配備のために位置付けられる中空シャフトの遠位端は、中空シャフトの残りと同じか又は異なる断面を有することができる。中空シャフトの遠位端は、平坦でも湾曲していてもよい。遠位端の先端は斜角付きとすることができ、又は平坦又は先細の面を有する場合がある。中空シャフトの遠位端の先端は、鈍い又は鋭い場合があり、鋭い場合に、先端を使用して組織を切開することができ、シャント又はインプラントを眼の後腔に正確に位置決めすることを可能にする。これに加えて、中空シャフトは、その遠位端内でのシャント又はインプラントの位置決めを示すためにその上にマーカを配置することができる。一実施形態では、中空シャフトの少なくとも遠位端は透明とすることができる。
【0072】
ハンドル又はハウジングは、光ファイバケーブル又は光導波路を通じて中空シャフトに結合された内蔵型発光ダイオード(LED)光源を更に含むことができる。一実施形態では、中空シャフトは、少なくともその遠位端が透明であるように構成可能なので、ターゲット組織の中に送出される眼内シャント又はインプラントに向けて光を向けることができる。光導波路は、中空シャフト又は固定シャフトのいずれかの一方の一部に形成することができる。
【0073】
LED光源は、少なくとも一色の光を放出可能な少なくとも1つのLED素子を含むことができる。シャント又はインプラントの位置がターゲット組織内で決定されることを可能にする視覚的なコントラストを提供するために、少なくとも1つのLED素子によって放出される光の色は選択可能である場合がある。
【0074】
ここで
図3に移ると、ハンドル又はハウジング310と、近位端320bがハンドル又はハウジング310内に位置付けられた状態で遠位端320aがハンドル又はハウジングから延びるようにハンドル又はハウジング内に装着された固定シャフト320とを含む埋め込みデバイス300が示されている(
図4参照)。中空シャフト330は、その近位端(図示せず)がハンドル又はハウジング310内に装着されてその遠位端330aが固定シャフト320の遠位端320aの上で延びる状態で固定シャフト320上に装着される。以下でより詳細に説明する起動機構に埋め込み式デバイスを接続するワイヤ340が示されている。
【0075】
図4は、ハンドル又はハウジング310の第1の部分315aが除去された埋め込みデバイス300を示している。図示のように、固定シャフト320の近位端320bは、固定要素360によってハンドル又はハウジング320の第2の部分315bに接続される。固定シャフト320及びスライダシャフト380は、ハンドル又はハウジング310の端面310aに当接する第1の位置と固定要素360に当接する第2の位置との間で摺動可能であるように構成された摺動要素370を通過する。
【0076】
中空シャフト330の近位端330bは摺動要素370と係合し、摺動要素370が第1の位置から第2の位置まで移動する時に固定シャフト320の上を摺動するように構成される。
【0077】
埋め込みデバイス300の分解組立図が
図5に示されている。図示のように、ハンドル又はハウジング310は、第1の部分315a及び第2の部分315bを含む。上述のように、固定シャフト320は、固定要素360によってハンドル又はハウジング310内に装着され、固定要素360は、ハンドル又はハウジング310の第2の部分315bに固定される。
【0078】
固定シャフト320と平行にスライダシャフト380が位置付けられる。スライダシャフト380は、その上を摺動要素370が遠位端385aから固定要素360に隣接する部分まで摺動することができる実質的に円筒形部分385を含むことができる。スライダシャフト380の近位端385bには、第2の部分315bのスロット315c内に保持されたヘッド部分385cを設けることができる。同様に、スライダシャフト380の遠位端385aは、第2の部分315bのスロット315d内に位置付けられる。
図5では別々のスロットとして示されるが、スロット315c、315dは、スライダシャフト380の端部385a、385b、385cを収容するために第2の部分315b内に延びる単一形状のスロットを含むことができることは認められるであろう。
【0079】
ワイヤ340は、外部可撓性中空ワイヤ345aと内部剛性ワイヤ345bとを含む。外部ワイヤ345aは、ハンドル又はハウジング310の第2の部分315bのスロット315eに接続され、内側ワイヤ345bは、孔370aを通して摺動要素370に接続され、ハンドル又はハウジング310に対するその移動を起動するように構成され、すなわち、内側ワイヤ345bは、ハンドル又はハウジング310の近位端310bに向けて摺動要素370を移動するように作動する。ハンドル又はハウジングの近位端310bに向けて摺動要素370を移動することにより、以下でより詳細に説明するように、中空シャフト330は、眼の後部内の所定位置にシャント又はインプラント200を残しながら固定シャフト320の上を後退する。
【0080】
ハンドル又はハウジング310の第1の部分315aが第2の部分315bの上に装着されると、固定要素360に装着された固定シャフト320、摺動要素370、及びスライダシャフト380は、そこに保持される。
【0081】
ハンドル又はハウジング310の遠位端310aには、固定シャフト320の遠位端320aが貫通して突出する細長開口390がそこに形成される。中空シャフト330の近位端330bは、開口390を通して挿入されるように、及び摺動要素370の一部と係合するように構成される(図示せず)。
【0082】
中空シャフト330は、
図7にも示されるシャント又はインプラント200と共に
図6に示されている。一実施形態では、中空シャフト330は、円形の内部断面を有する円形断面を有することができる。別の実施形態では、中空シャフト330は、長円形の断面、すなわち、2つの実質的に平行な辺が各端部で円弧により接続された断面を有することができる。更に別の実施形態では、中空シャフト330は、矩形の内部断面を有する矩形断面を有することができる。他の実施形態では、その断面は、内部断面が中空シャフト330の外形によって定められる断面とは異なる形状であるようなものである場合がある。
【0083】
シャント又はインプラント200は、その近位端200aの近くにマーカ205を配置することができるので、実質的に透明な中空シャフト330を通してその位置を見ることができる。例えば、より良好な視認性のために、シャント又はインプラント200の近位端200bに2つのマーカを設けるなどでシャント又はインプラント200上に他のマーカを設けることができることは容易に認められるであろう。
【0084】
上述のように、シャント又はインプラント200は、埋め込み前に中空シャフト330の遠位端330aに位置付けられ、かつ上述のような適切な生体適合性材料を含む。一般的に、シャント又はインプラントは、長さが4mm~7mmとすることができ、0.4mm~2mmの直径を含むことができる。一実施形態では、シャント又はインプラント200は円形断面を有するが、中空シャフト330の内部断面に適合するあらゆる適切な断面を有することができることは容易に認められるであろう。別の実施形態では、シャントは、長さが3mm~9mm、厚みが0.3mm~1mm、幅が0.5mm~2mmの矩形断面を有することができる。好ましい実施形態では、シャントは、長さ5mm、厚み0.6mm、幅1.1mmである。更に別の実施形態では、シャントは、矩形断面を有するシャントの寸法と類似の寸法を含む楕円形断面を有することができる。
【0085】
図8a及び8bは、シャント又はインプラント200に関して示された構成に対する2つの代替構成を示している。
図8aでは、シャント又はインプラント200Aは、その近位端200a’にマーカ205’を有して遠位端200b’で広がっており、
図8bでは、シャント又はインプラント200Bは、その遠位端200b’’と近位端200a’’の両方で広がり、その間に「くびれ」部分200c’’を含む。上述の場合のように、マーカ205’’は、その近位端200a’’に設けられる。
【0086】
一実施形態では、埋め込みデバイス300は、その滅菌包装が取り除かれた時に使える状態である滅菌ユニットとして、すなわち、ハンドル又はハウジング310(
図3~
図5を参照して上述した内部構成要素を含む)、固定シャフト320、及びその遠位端330aの内側にシャント又はインプラント200を含む中空シャフト330として提供される。
【0087】
組み立てられた時に、摺動要素370から延びる固定シャフト320の部分は、摺動要素370から延びる中空シャフト330の部分よりも少なくともシャント又はインプラント200の長さだけ短い。これは、シャント又はインプラント200が、埋め込み構成においてその遠位端330aで固定シャフト320の遠位端320aの端部に対して中空シャフト330の遠位端330aに位置付けられることを意味する。
【0088】
図示しないが、摺動要素370は、摺動要素370と固定要素360の間の固定シャフト320上に位置付けられた弾性要素によって第1の位置に付勢される場合があり、第2の位置までの移動は、弾性要素の作用に逆らうものであり、眼内シャント又はインプラントの解除中の固定シャフト320上の中空シャフト330の滑らかな移動を保証する。弾性要素は、摺動要素370の適切な付勢を提供するために、ハンドル又はハウジング内のあらゆる他の適切な場所に配置可能であることが認められるであろう。弾性要素は、圧縮バネ、又は摺動要素370がハンドル又はハウジング内の第1の位置から第2の位置まで移動する時に変形可能であるあらゆる他の適切な弾性要素とすることができる。
【0089】
図9は、「ab interno」法を使用する眼内シャント又はインプラント200の埋め込みを示している。図示のように、シャント又はインプラント200は、固定シャフト320上に装着された中空シャフト330内に保持されており、中空シャフト330及び固定シャフト320の全長は明確にするために示されていない。この実施形態では、中空シャフト330は、その遠位端330aに斜角付き先端335を有し、斜角付き先端は、角膜110を通る中空シャフトの貫通を容易にするのに使用される。中空シャフト330は、次に、眼の前房160の中に、前房を横切って虹彩角膜角240まで、かつ強膜下腔210内に向けられる。図示のように、中空シャフト330の遠位端330aにある斜角付き先端335は、図示の強膜下腔への柔らかい貫通を提供するようにも構成される。
【0090】
中空シャフト330の遠位端330aは角膜の中への切開部を提供する必要はなく、これは個別のツールによって行われて中空シャフトをその作られた切開部に挿入することができることは容易に認められるであろう。
【0091】
図10は、
図9と類似するが、強膜下腔210内の所定位置にある眼内シャント又はインプラント200を示している。中空シャフト330は、固定シャフト320に対して後退して示されている。眼内シャント又はインプラント200のそれが正確に位置決めされた後の強膜下腔内への配備中に、摺動要素370は、ハンドル又はハウジング310内をその遠位端310aから固定要素360に向けて移動する。この移動により、摺動要素370に接続された中空シャフト330は、シャント又はインプラント200を強膜下腔内の所定位置に残しながら固定シャフト320の上を後退する。
【0092】
最も簡単な実施形態では、摺動要素370の一部分は、ハンドル又はハウジング310の部分315aを通って延びることができ、かつシャント又はインプラント200を眼内に埋め込む医師が第1の位置から第2の位置まで手動で移動するように構成される。しかし、他の実施形態では、摺動要素370は、ハンドル又はハウジング310内に位置付けられ、以下でより詳細に説明する起動機構を使用して作動されるように構成される。埋め込みデバイス300の中空シャフト300の虹彩角膜角240からの引き出し中に、シャント又はインプラント200を移動しない又は損傷しないようにかつ眼自体に損傷がないように、中空シャフト330の滑らかで制御された後退を行うことが重要である。
【0093】
図11は、埋め込みデバイスが眼から除去された状態で所定位置にあるシャント又はインプラント200を示している。図示のように、シャント又はインプラン200の大部分は強膜下腔210に位置決めされ、その近位端200aが前房160内にある。房水が前房160から脈絡膜上腔に流れるので、眼の眼圧を低減する。
【0094】
図3~
図5を参照して上述したように、埋め込みデバイス300はまた、外部可撓性中空ワイヤ345aと内部剛性ワイヤ345bとを含むワイヤ340を含む。
図12~
図14は、ワイヤ340を通じた起動機構400への埋め込みデバイス300の接続を示している。
【0095】
起動機構400は、プランジャ420が装着されたハンドル410を含み、ワイヤ340を通じてハンドル410に接続されている。外部ワイヤ345aは起動機構400のスロット410aに接続され、内側ワイヤ345bはプランジャ420の一部分430に接続される。プランジャ420の押下げ、すなわち、プランジャ420のハンドル410に向う移動は、内側ワイヤ345bを埋め込みデバイス300のハンドル310から引き出し、摺動要素370をその第1の位置から第2の位置まで移動して固定シャフト320の上で中空シャフト330を後退させる。プランジャ420の早期の押下げを防止するために、プランジャの移動をそれが取り除かれるまで防止するために停止要素440(
図12)が設けられる。
【0096】
図15は、ハウジング又はハンドル410と類似したハウジング又はハンドルを含む空気圧起動機構500が示されている。ハウジングは、ピストン(全体的に520として示す)が装着される第1の部分515a及び第2の部分515bを含む。プランジャ530はピストン520に接続され、プランジャ530が押し下げられるとピストンが作動し、内側ワイヤ345bが埋め込みデバイス300のハンドル310から引き出されて、上述のように固定シャフトの上で中空シャフト330を後退させる。停止要素440も示されており、かつ
図12を参照して上述したように作動する。
【0097】
起動機構の滑らかで制御された作動が望ましく、起動機構のプランジャを空気圧で制御することにより、滑らかで制御されたその作動を保証することができることは容易に理解されるであろう。代替として、起動機構のプランジャは、滑らかな移動及び/又は平行移動速度制御のためにOリング又はバネを含む制御式摩擦システムの一部を形成することができる(図示せず)。
【0098】
図16は、ハンドル又はハウジング610と、ハンドル又はハウジング610内に装着された固定シャフト620とを含む埋め込みデバイスの更に別の実施形態600を示している。図示のように、ハンドル又はハウジング610は、遠位端610a及び近位端610bを含む。
【0099】
デバイス600はまた、ワンタッチ装着接続要素(OTFC)635に取り付けられた中空シャフト630を含む中空シャフトアセンブリを含む。OTFC365は中空なので、OTFC365がハンドル又はハウジング610の遠位端610a内に装着された時に、固定シャフト620は、それを通って中空シャフト630に入り込むことができる。
【0100】
OTFC635の遠位端635aは、中空シャフト630を保持し、OTFC635の近位端635bは、ハンドル610の遠位端に形成された細長開口690に挿入された時に摺動要素670内に装着されるように構成される(
図19を参照してより詳細に説明される)。
【0101】
着脱可能なカバー695が、OTFC635の遠位端635aの上にかつ中空シャフト630の上に設けられる。カバー695は、OTFC635がハンドル610内に挿入された時に、中空シャフト630と、中空シャフト630の遠位端630a内に位置付けられたシャント又はインプラント(図示せず)とを保護するように意図している。着脱可能なカバー695は任意であり、中空シャフトの近位端630bがハンドル又はハウジング610内の摺動要素670に接続された後、及びシャント又はインプラントの埋め込み時に中空シャフト630の遠位端630aが眼に挿入される前にOTFC635から取り外さなければならない。
【0102】
ここで
図17に移ると、OTFC635と摺動要素670の間の相互接続を示すためにハンドル610の第1の部分(図示せず)を取り外した埋め込みデバイス600が示されている。固定シャフト620の近位端620bは、固定要素660によってハンドル又はハウジング610の第2の部分615bに接続される。固定シャフト620及びスライダシャフト680は、ハンドル又はハウジング610の端面610aに当接する第1の位置と固定要素660に当接する第2の位置との間で摺動可能であるように構成された摺動要素670を通過する。摺動要素670は、
図18を参照して以下でより詳細に説明される。
【0103】
OTFCの近位端635bは、中空シャフト630を固定シャフト620の上に位置付けながら摺動要素670の接続要素675と係合する。中空シャフト630は、OTFC635に固定され、OTFC630の近位端635bは、摺動要素670の接続要素675と係合するので、結果として中空シャフトは、摺動要素670に対して固定され、かつ摺動要素670が第1の位置から第2の位置まで移動する時に固定シャフト620の上を摺動するように構成される。
【0104】
外部起動機構(図示せず)からワイヤ又は接続部(図示せず)を受け入れるスロット615e及びコネクタ615fが示されている。
【0105】
図17に示すように、固定シャフト620は、固定要素660によってハンドル又はハウジング610内に装着され、固定要素660は、ハンドル又はハウジング610の第2の部分615bに固定される。固定シャフト620と平行にスライダシャフト680が位置付けられる。スライダシャフト680は、その上を摺動要素670がその遠位端(図示せず)から固定要素660に隣接する部分まで摺動することができる実質的に円筒形部分685を含むことができる。
【0106】
図3~
図5を参照して上述したように、摺動要素670をハンドル又はハウジング610の近位端610bに向けて移動することにより、中空シャフト630は、シャント又はインプラント200、200A、200B(
図7及び
図8)を上述のように眼の後部内の所定位置に残しながら固定シャフト620の上を後退する。
【0107】
ハンドル又はハウジング610の第1の部分がその第2の部分615bの上に装着されると、固定要素660に装着された固定シャフト620、摺動要素670、及びスライダシャフト680はそこに保持される。
【0108】
ハンドル又はハウジング610の遠位端610aには、固定シャフト620の遠位端が貫通して突出する細長開口690がそこに形成される。OTFC635の近位端635bは、開口690を通して挿入されるようにかつ摺動要素670の接続要素675と係合するように構成される。摺動要素670の作動は、上
図3~
図5及び
図13~
図15に関して上述した通りである。
【0109】
図16及び
図17には明瞭に示していないが、OTFC630は、ハンドル又はハウジング610に挿入された時に正しい向きをもたらす平坦面を有する全体として丸みを帯びた本体部分635gを有することが容易に認められるであろう。これに加えて、中空シャフト630が本体部分635gを通って延び、OTFC735の近位端735bで実質的に終端し、上述のように固定シャフト620がその中に挿入可能になることが容易に認められるであろう。
【0110】
図18は、摺動要素670をより詳細に示している。摺動要素670は、遠位端670d及び近位端670eを有する本体部分670cを含む。上述のように、摺動要素670は、長手方向に延びる孔(
図18には示さないが、摺動要素370に関して
図5に示すものと類似する)を有し、それを通して固定シャフト630がハンドル又はハウジング610の細長開口690の中に通って延びる(
図16に示すように)。別の長手方向に延びる孔(
図18には示さないが、摺動要素370に関して
図5に示すものと類似する)は、摺動要素670がスライダシャフト680上に装着されることを可能にする。
図3~
図5を参照して上述したように、制御ワイヤに接続するための接続部(図示せず)も近位端670eに設けることができる。
【0111】
摺動要素670には、図示のように近位端670eの近くから遠位端670dに向けて延び、次にそれぞれ接続要素675f、675gに延びる部分670f(
図18では1つの部分だけが見られる)がその長さに沿って形成される。接続要素675f、675gは、OTFC635(
図16参照)上に設けられたそれぞれの係合面635j、635kと係合するための平坦な係合面675j、675kを提供するそれぞれの末端部分675h、675iを含む。
【0112】
末端部分675h、675iは、内向きにバネ付勢され、従って、OTFC635が摺動要素670の遠位端670dを通って延びる固定シャフト630の上でハンドル又はハウジング610に挿入される時に、OTFC365の近位端635bは、末端部分675h、675iの傾斜面675l、675mと係合してOTFC635の係合面635j、635kが末端部分のそれぞれの係合面675j、675kと係合するまで末端部分675h、675iを押し離す端面635dを含む接続部分(
図19及び
図20を参照してより詳細に説明する)を形成する。それぞれの係合面が係合した状態で、OTFC365は、ハンドル又はハウジング610内に装着された摺動要素670内に確実に保持される。
【0113】
図18を参照して2つの末端部分675h、675iだけを説明するが、OTFC635の近位端635bとの確実な係合を提供するためにあらゆる適切な数の末端部分を実施することができることは容易に認められるであろう。
【0114】
ワンタッチ固定式接続は、中空シャフト上に取り付けられるあらゆる他の適切な固定接続要素によって置換可能であることも容易に認められるであろう。
【0115】
ここで
図19に移ると、中空シャフト730にその遠位端735aで接続されたOTFC735を含む中空シャフト(又はOTFC)アセンブリが示されている。使用前に、着脱可能なカバー(図示せず)を中空シャフト730に対して設けることができる。OTFC735は、
図18を参照して上述した摺動要素670に接続するように構成された近位端735bでの接続部分735dを有する本体部分735cを有する。接続部分735dは、
図18を参照して上述したように、摺動要素670の傾斜面675l、675mと係合する傾斜面735l、735mを有する端面735eを含む。
【0116】
これに加えて、上述のように摺動要素670のそれぞれの係合面675j、675kと係合する係合面735j、735kを定める凹部735fが接続部分735dに隣接して設けられる。末端部分675h、675iが傾斜面735l、735mに沿って端面735dを超えて凹部735fまで進んだ状態で、係合面735j、735kは、摺動要素670のそれぞれの係合面675j、675kと係合し、中空シャフト730が固定シャフト620の上に位置付けられた状態で中空シャフト又はOTFCアセンブリをハンドル又はハウジング610内の所定位置に保持する(
図16及び
図17に関して上述したように)。
【0117】
OTFC735の本体部分735cは、そこに平坦面735hが形成された全体として丸みを帯びた本体部分735gを含む。平坦面735hは、ハンドル又はハウジング610内に位置付けられた摺動要素670の中に近位端735bを挿入するための正しい向きに関する表示をユーザに提供する。
【0118】
図19に示す実施形態では、中空シャフト730は、その遠位端730aの近くに、遠位端730aに斜角付き先端730dを有して設けられた湾曲部分を有する。使用時に、斜角付き先端730dは、斜角が上向きになるように向けられることになる。斜角付き先端730dの上向き配向は、OTFC735の平坦面735hと位置合わせされるので、中空シャフト又はOTFCアセンブリをハンドル又はハウジング610に正しく挿入することができる。上述のように、シャント又はインプラント(図示せず)は、中空シャフト730の遠位端730aに位置付けられるが、中空シャフト730内に完全に収まるように斜角付き先端730dからは後退している。
【0119】
図19には示していないが、中空シャフト730は、本体部分735gを通って延びてOTFC735の近位端で実質的に終端するので、上述のように固定シャフト620(
図16及び
図17)がその中に挿入可能であることは容易に認められるであろう。これに加えて、中空シャフト730は、その遠位端730a(これも図示せず)にシャント又はインプラントを保持するように構成される。
【0120】
図20は、その遠位端835aで中空シャフト830に接続されたOTFC835を含む別の中空シャフト又はOTFCアセンブリを示している。使用前に、着脱可能なカバー(図示せず)を中空シャフト830に対して設けることができる。OTFC835は、
図18を参照して上述した摺動要素670に接続するように構成された近位端835bでの接続部分835dを有する本体部分835cを有する。接続部分835dは、
図18を参照して上述したように、摺動要素670の傾斜面675l、675mと係合する傾斜面835l、835mを有する端面835eを含む。
【0121】
これに加えて、上述のように摺動要素670のそれぞれの係合面675j、675kと係合する係合面835j、835kを定める凹部835fが接続部分835dに隣接して設けられる。末端部分675h、675iが傾斜面835l、835mに沿って端面835dを超えて凹部835fに進んだ状態で、係合面835j、835kは、摺動要素670のそれぞれの係合面675j、675kと係合し、中空シャフト830が固定シャフト620の上に位置付けられた状態で中空シャフト又はOTFCアセンブリをハンドル又はハウジング610内の所定位置に保持する(
図16及び
図17に関して上述したように)。
【0122】
OTFC835の本体部分835cは、そこに平坦面835hが形成された全体として丸みを帯びた本体部分835gを含む。平坦面835hは、ハンドル又はハウジング610内に位置付けられた摺動要素670の中に近位端835bを挿入するための正しい向きに関する表示をユーザに提供する。
【0123】
図20に示す実施形態では、中空シャフト830は、遠位端830aに斜角付き先端830dを有して実質的に真っ直ぐである。使用時に、斜角付き先端830dは、斜角が上向きになるように向けられることになる。斜角付き先端830dの上向き配向は、OTFC835の平坦面835hと位置合わせされるので、中空シャフト又はOTFCアセンブリをハンドル又はハウジング610に正しく挿入することができる。上述のように、シャント又はインプラント(図示せず)は、中空シャフト830内に完全に収まるように中空シャフト830の遠位端830a内に位置付けられる。
【0124】
図20には示していないが、中空シャフト830は、本体部分835gを通って延びてOTFC835の近位端で実質的に終端するので、上述のように固定シャフト620(
図16及び
図17)がその中に挿入可能であることは容易に認められるであろう。
【0125】
別の実施形態では、中空シャフトの先端は可撓性であり、虹彩角膜角で強膜湾曲に適合するように曲がり、シャント又はインプラントは、その一部分が前房に延びてIOPを低減するドレナージ経路を提供する状態で脈絡膜上腔内で強膜岬と毛様体の間に位置決めされる。
【0126】
上
図16~
図20を参照して説明した実施形態では、ユーザ(典型的に外科医)には、その遠位端610aで固定シャフト620が細長開口690を通って延びるハンドル610(
図16)が提供される。ハンドル610は、好ましくは滅菌パッケージで提供される。ユーザには、中空シャフト又はOTFCアセンブリも提供される(
図16、
図19及び
図20を参照して上述したように)。中空シャフト又はOTFCアセンブリはまた、保管中にシャント又はインプラントが乾燥するのを防ぐために生理食塩水を収容することができる滅菌包装(着脱可能なカバーの有無を問わず)で提供される。2つの滅菌パッケージを開封した状態で、OTFC本体の平坦面をハンドル610と正しく位置合わせすることによって中空シャフト又はOTFCアセンブリをハンドル又はハウジング610に取り付け、その後にOTFCの近位端がハンドル又はハウジング610内の摺動要素670と接続するまで中空シャフト又はOTFCアセンブリを開口690に挿入する。ハンドル又はハウジング610はまた、アクチュエータに接続され、その時に本発明のシステムは使用準備が整う。本発明のシステムは、中空シャフト又はOTFCアセンブリがハンドル又はハウジングに既に装着された状態で単一品目として、すなわち、単一パッケージで供給可能であることは容易に認められるであろう。この場合に、この単一パッケージは、滅菌されることになり、上述のように着脱可能なカバーを有するか又はそうでない場合がある。
【0127】
使用後に、中空シャフト又はOTFCアセンブリ(この時点でシャント又はインプラントのない)と共にハンドルは、アクチュエータから切り離され、本発明のシステムのこれらの要素は単回使用なので廃棄される。アクチュエータは、滅菌後に再使用することができ、又は廃棄することができる。しかし、ハンドルも、中空シャフト又はOTFCアセンブリが切り離された状態で、適切な滅菌の後に再使用可能であることは容易に認められるであろう。
【0128】
代替として又は追加として、OTFC上に他のタイプの符号化を設けて、使用前に中空シャフト又はOTFCアセンブリがハンドル又はハウジング610の中に正しく挿入されることを保証することができる。
【0129】
上述の各実施形態では、中空シャフトは、それがその中に挿入されてそれが通過する組織の外傷を最小にする無傷性先端を含む。
【0130】
上述のように、摺動要素は、ワイヤによってハンドル又はハウジングに接続した起動機構によって作動される。しかし、スライダを作動させる他の方法も可能であることは容易に認められるであろう。例えば、アクチュエータとハンドル又はハウジングとの間に無線リンクを設けることができ、この無線リンクにわたって、脈絡膜上腔が意図された埋め込み部位の場合に前房と脈絡膜上腔の間の所定位置にシャント又はインプラントを残しながら中空シャフトと共に摺動要素を後退させるサーボ機構に適切な制御信号を送ることができる。
【0131】
脈絡膜上腔の中にシャント又はインプラントを埋め込むためのデバイス又はシステムに関して本発明を説明したが、他の埋め込み部位、例えば、結膜下腔及び強膜内腔も可能である。理想的には、中空シャフトは、インプラントがその中に置かれるように意図された眼球組織の曲率に適合するように可撓性であるように構成される。
【0132】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、かつ代替が可能であることは容易に認められるであろう。